説明

MAX遺伝子含有ベクター

本発明は、max遺伝子含有クローニングベクターの構築に関する。具体的には、本発明は、輸送ベクターを用いたmax遺伝子含有クローニングベクターの細胞内への導入に関する。また、細胞内にmax遺伝子含有クローニングベクターが存在すると、同じ細胞中で異なるmax遺伝子の発現が可能となる。さらに、本発明は、異なるmax遺伝子の発現が、細胞保護、特に神経保護を有する遺伝子治療、並びに医学および獣医学の神経変性状態の治療への適用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、max遺伝子含有クローニングベクターの構築に関する。具体的には、本発明は、輸送ベクターを用いたmax遺伝子含有クローニングベクターの細胞内への導入に関する。また、細胞内におけるmax遺伝子含有クローニングベクターの存在は、細胞中でmax遺伝子の差次的発現を可能にする。さらに、本発明は、前記max遺伝子が、神経変性状態に対する医学および獣医学治療に適用されうる細胞保護活性、特に神経保護活性を有する、差次的発現の遺伝子治療の方法を参照する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療
DNA組換え技術およびヒトゲノムのシークエンシングの著しい発展により、遺伝子治療技術を通じて、遺伝性疾患および遺伝特性の後天性疾患だけでなく、変性疾患および感染性疾患を含む病気に対して、新たな視点が切り開かれた。
【0003】
一定の疾患の遺伝的基礎の同定、そのいくつかは単一遺伝子の突然変異によるものだけでなく、発症機序または疾患に対する防御力のメカニズムのいずれかに関連する、または関与するリスクファクターの同定が、治療目的で遺伝子発現に直接介入する機会を示した。
【0004】
遺伝子治療は、治療目的で挿入技術および細胞内における外因性遺伝子物質の発現のセットである。遺伝子物質の輸送はin vivo(標的微生物に直接輸送)または細胞の形質導入によるex vivoで行われ、次いで標的微生物に挿入されうる。すなわち、遺伝子治療は、幹細胞を含めた細胞療法と組み合わされうる。
【0005】
遺伝子治療は1960年代に着想され、1980年代の終わりに最初の臨床試験に至った。2009年1月までに、Journal of Gene Medicineに総数約1,500の進行中の臨床試験が記録されている。この中で、中南米全域においては、1例がメキシコで記録されているのみであり、南アメリカでは記録がない。ブラジルにおける遺伝子治療の研究は、ブラジル科学技術省および米国学術研究会議の遺伝子治療ネットワークによって促進された。
【0006】
生物学的ベクター
細胞は通常、外因性DNAの進入に対して抵抗性がある。この障害を乗り越えるために、遺伝子(「輸送ベクター」として知られている)の挿入にビヒクルが用いられ、DNA進入の可能性が高くなる。当該技術分野の現状において最も頻繁に用いられているベクターは、微生物が通常、生細胞に感染することから、ウイルスから誘導される。しかしながら、外因性細胞にDNAを導入したDNAプラスミドのような「非ウイルス」ベクターも用いられうる。細胞内へのクローニングベクターの導入を目的とした一定の物理的および生物学的技術が存在する。非ウイルスベクターのうち、DNA−リン酸カルシウム、DNA−DEAEデキストラン、DNA−脂質、DNA−脂質−タンパク質、および人工染色体などの、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、プラスミドの投与、バリスティックDNAインジェクション、プラスミド、リポソーム、カチオン性脂質化合物、タンパク質、または天然アミドタンパク質の1つが遺伝子治療に利用しうる。ウイルス輸送ベクターのうち、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、組換えアデノ随伴ウイルス、単純ヘルペス、レンチウイルス、泡沫状、HIVおよびワクシニアの1つを利用しうる。
【0007】
遺伝子治療を目的としたウイルスベクターを用いるため、前記ウイルスは、ウイルスの複製がなく、および有害作用をもたない、細胞感染能がある最小構造を得るため、ウイルス病原に関連したすべての遺伝子を除去するDNA組換え技術によって修飾される。関連遺伝子が前記構造に加えられ、生じた構造は、処理される微生物の細胞に関連遺伝子を挿入するために用いられうる。
【0008】
しかし、挿入および微生物への遺伝子の発現は、侵襲的な工程である。導入された遺伝子およびウイルスベクターは、遺伝子発現のアンバランス、または非自己抗原の存在に関連した悪影響を引き起こしうる。標的微生物は、炎症の活性化および免疫応答によって存在するウイルスと反応し、遺伝子治療の標的が損傷されうる。遺伝子治療に適用されるバイオテクノロジーの最も競争的な領域の1つは、より安全であると同時に、標的細胞に増殖感染能および関連遺伝子の長期間の発現を維持しうるベクターの探索である。
【0009】
特に、アデノ随伴ウイルス(AAV)由来の構造は、ヒト臨床試験において遺伝子輸送の潜在的なベクターとしてターゲットにされている。最も好ましい性質には、(I)ヒト疾患を有するアデノ随伴ウイルスと関連がない;(II)異なる組織由来の細胞株に感染能がある;(III)エピソームの形態においてAAV由来ベクターが持続性であり、このため挿入突然変異が回避される;(IV)非分裂細胞に感染能がある。
【0010】
組換えAAV(rAAV)を有する形質導入の能力は、分化した細胞を含む、多様な細胞タイプで実証されており、筋肉、肝臓、中枢神経系および肺のような臓器へのin vivoでの遺伝子導入に対して、このベクターシステムの大きな可能性を示唆している。前記rAAVベクターは、外因性関連遺伝子を配置する逆方向末端配列(ITRs)を輸送するプラスミドに由来する。前記逆方向末端配列は、各145塩基対の対称配列であり、AAV DNAの複製を必要とする。従来から、rAAVベクターは、2つのプラスミドを有するHEK293細胞のコトランスフェクションによって以前は産生されており、前記2つのプラスミドは、ヘルパーウイルス(アデノウイルスまたはヘルペスウイルス)とともに、第1のプラスミドのITRsによって配置された関連遺伝子、および第2のプラスミドのパッケージング遺伝子reqおよびcapを含み、その役割は、AAVの複製に補助的な要因を提供することである。しかしながら、現代の技術では、関連遺伝子を含むメインAAVプラスミドのコトランスフェクション、ITRsによって配置されたその調節配列、さらにパッケージングに必要なすべての最小配列を含むヘルパープラスミドのみを利用する。この方法は、生産収率の増加に加えて、病原性のアデノウイルスによって調製されたrAAVの汚染の回避を目的とし、このため、最小ヘルパープラスミドで置換される。前記rAAVプラスミドは細胞溶解後に回収され、前記ヘルパープラスミドは、パッケージング細胞株のDNAとともに除去される。そのため、現在は、以下3つの要素がAAVのパッケージングに必要とされる:(I)培養液中の真核細胞;(II)関連遺伝子および複製配列を有するメインプラスミド;(III)ウイルス複製配列を有するヘルパープラスミド。
【0011】
組換えAAVベクターは、一般的に非病原性であり、近年用いられているベクターの中では最も安全である。そのため、rAAVに基づく発現プラットホームは、臨床用途に大きな潜在性を有している。
【0012】
特許分野では、様々な文献で遺伝子治療用の輸送ベクターの構造が記載されている。以下にいくつかの例を記載する。
【0013】
米国特許第6,521,225号明細書には、新規なアデノ随伴ウイルスベクターの構築、特に、肝臓への治療用分子の輸送するものであることが記載されている。前記ベクターは、2つの逆方向末端反復(ITRs)を含み、それぞれ5−15ヌクレオチドの特定配列を含み、1または2以上の欠失または置換を許容する。
【0014】
他の文献の米国特許第3,482,634号明細書には、組換えAAVの産生に有用なベクターの構築が記載されている。前記記載された方法は、5’−3’核酸の1分子、パルボウイルス由来のP5プロモータ、1つのスペーサー、1つのAAV rep配列、1つのAAV cap配列を含有する宿主細胞を含む。前記スペーサーは、遺伝子産物であるrep78およびrep68の発現を減少させる。前記第2の核酸分子は、1つのミニ遺伝子およびITRsによって配置されたトランス遺伝子を交互に含み、宿主細胞における発現、並びに複製およびrAAVパッケージのための本質的な機能について規定する配列を制御している。
【0015】
国際公開第01829723号パンフレットには、適合骨マトリックスをもたない患者に対して、トランス遺伝子を含む輸送ビヒクルの局所投与により、骨病変の処置に対するトランス遺伝子の輸送するためのビヒクルとして、ウイルスおよび非ウイルスベクターの両方が記載されている。本文献は、in vivoにおいて、標的細胞に対して、骨病変部の骨誘導因子を生産するようにする、治療的骨誘導因子と関連する遺伝子情報を含む輸送ウイルスベクターまたは輸送非ウイルスベクターが記載されている。
【0016】
これらの文献は、問題となる生物学的ベクターが、max遺伝子含有クローニングベクターを含まず、およびその用途として神経保護治療の記載がないため、本発明とは重複しない。
【0017】
神経変性疾患
最近、本願の神経変性疾患の分野において、遺伝子治療の適用に関する文献におけるいくつかの最近のレビューがある。1つの具体的な例では、中枢神経系の一部である網膜が、近年遺伝子治療のターゲットとなっている、変性網膜症または網膜ジストロフィとして知られる神経変性疾患の対象となったものである。
【0018】
安全なウイルスベクターを用いて、適切な遺伝子を特定の神経変性病変に組み合わせた事例が、すでにパーキンソン病、レーバー先天性黒内障、およびアルツハイマー病の治療いくつかの場合で臨床試験が行われている。
【0019】
様々な特許文献には、神経病変疾患の対する遺伝子治療が記載されている。1つの例が米国特許第6,683,058号明細書であり、脳神経性疾患を治療する方法が記載されている。この文献には、標的(損傷、疾患、またはコリン作動性神経の機能障害)へのニューロトロフィンの治療的輸送の形成が記載されている。後者は、哺乳類の脳内でニューロトロフィンをコードする、長期間で組換えニューロトロフィンの集合が規定された輸送を生じる、トランス遺伝子を受け取る。
【0020】
本発明には、前記ベクターの使用を含むmax遺伝子の発現のいかなる修飾とも関係なく、ニューロトロフィンが関与する脳疾患に対する治療性能を有する生物学的ベクターが記載されているため、前記文献とは異なる。
【0021】
プログラム細胞死
一般的な変性疾患、および特定の神経変性疾患の治療は、しばしばプログラム細胞死(PCD)への細胞の感受性に影響を及ぼす要因の多様性によって妨げられる。この場合、通常は薬物に対する単一の治療標的の感受性がなく、そのため、通常の治療では、しばしば有意な治療効果がなく、大きく制限される。
【0022】
最近では、ほとんどの神経変性疾患は、不知または効果的な治療に長期間かかるものがある。この疾患のクラスは、神経系、特にニューロンの細胞間でPCDの確率が増加することを特徴とする。これらの発症メカニズムは、ハンチントン病のような突然変異、脳血管疾患のような酸素および栄養の供給の変化、またはアルツハイマー病のような複合的な遺伝および非遺伝の複雑なバランスを含む。本技術分野における研究は、細胞死および細胞保護のメカニズムの研究、および細胞ストレスおよびPCDの可能性を狙った臓器または組織の回復または機能的保護に対する実験戦略のデザインの研究について、世界中で精力的に、および集中して行われている。
【0023】
特許分野では、米国特許第7,256,181号明細書には、PCD修飾用ウイルスベクターの使用が説明されている。その中には、in vivoの遺伝子治療を目的とした、輸送ベクターを介したインターフェロン−βの非経口投与からなるガンの治療方法が記載されている。インターフェロン−βは、大規模な細胞障害が生じた場合に、アポトーシスを誘導しうる分子をコードするp53遺伝子の導入経路の一部であることが知られている。
【0024】
前記文献は、誘導を目的とした遺伝子治療を意味しており、max遺伝子もしくは他の転写要因とは関係なく、様々なウイルスベクターおよびインターフェロンβをコードする遺伝子の使用を意味する、PCDの阻害剤ではないため、本発明とは重複しない。
【0025】
他の実施例、このときPCDの経路に作用するウイルスベクターの潜在的使用と関連している、は米国特許第6,998,118号明細書に記載されている。この文献には、シナプス部周辺に注入され、細胞体に向かい、ニューロンの軸索に沿って輸送されたrAAVベクターを用いて神経形質導入し、その結果、非特定遺伝子の発現が許容される方法が記載されている。前記記載された方法は、軸索輸送に逆行して輸送されうるアデノ随伴ウイルスベクターが使用され、ニューロンに遺伝子が導入または発現し、並びにベクター中に挿入された遺伝子に依存する、神経細胞成長の刺激または阻害およびアルツハイマー病のような疾患の治療において、神経経路の究明に適用されうる。
【0026】
前記文献には、いずれの場合にも適用されうる関連遺伝子を特定することなく、ニューロンにおける遺伝子の進入および発現を許容する一般的な遺伝子治療が記載されているため、max遺伝子の発現の制御を介した神経変性を制御する遺伝子治療を目的とした具体的なベクターを記載する、本発明と重複しない。
【0027】
神経保護治療
最も有望な神経変性疾患の原因を含む多様な要因に直面した場合の代案は、神経保護治療の開発、すなわち、一般的にPCDへの神経系の細胞の感受性を減らすことである。神経栄養素(神経系の作用を有する成長因子のクラス)または他の神経保護分子のいずれかに基づく薬理学的方法は、薬物の継続投与の必要性から有効性がほとんどないことが示されている。これは、薬の一部またはすべてが血液から神経組織へ分布することを阻害する、血液脳関門を通過させるための、神経組織中への直接の注入または脳脊髄液への継続注射もしくは持続的点滴のいずれかを意味する。脳組織の反復的な操作によるリスクを回避するため、前記溶液は、処置の数の減少、理想的には単一の処置に基づく治療開発の段階にある。
【0028】
前記目的は、PCDが作用する様々な要因に対抗して神経組織を保護することができる、標的遺伝子の発見に基づく遺伝子治療開発を通して達成されうる。しかしながら、神経変性の遺伝子治療のための標的遺伝子の同定は簡単なことではない。ハンチントン病のような場合であっても、単一遺伝子の直接的なアプローチ(通常、単一遺伝子の疾患)は適さない。今までのところ、わずかな予備的な遺伝子治療アッセイにおいて、それは神経変性の患者の臨床症状の悪化を阻害することが明らかとなり、その手法は、中枢神経系の中で特異的な神経回路の機能的回復を目的とする、特定の神経栄養または特定遺伝子の発現の存在による、神経集団の選択的な感受性に基づいて、その条件に固有のものである。
【0029】
前記遺伝子治療の標的は、もしかすると、PCDメカニズムの全体でありうる。PCDの細胞死のいくつかの形態は同定され、細胞ストレスの多様なタイプの結果として引き起こされる。最も知られた細胞死の形態は、アポトーシスによるPCDである。それにもかかわらず、実験的研究では、PCDの他の形態とともに、アポトーシスの様々な経路が示されている。また、細胞死の一定の経路の阻害は、細胞が他の経路による細胞死を阻害せず、例えば、アポトーシス自体の阻害が活性化されうることも知られている(Guimaraes CA and Linden R−Programmed cell deaths.Apoptosis and alternative deathstyles.Eur J Biochem.2004 May;271(9):1638−50)。
【0030】
今までに開発された、ある一定の実験的遺伝子治療療法は、遺伝子の導入または差次的発現(過剰発現)のいずれかに基づくものであり、細胞保護効果を有するが、潜在的にガンを生じる可能性がある。この矛盾は、ガンが本質的には細胞増殖およびPCDの機構の間バランスの喪失の結果として生じるためであり、後者の阻害は発ガンの可能性を有する。よって、神経変性疾患の第2の遺伝子治療の試みは、発ガン性のない、細胞保護遺伝子の発現に基づく神経保護する方法を開発することである。
【0031】
特許分野では、細胞保護/発ガンバランスを維持することの重要性は、米国特許第7,186,699号明細書に発見されうる。この際、抗腫瘍活性を有し、化学療法または放射線治療を問わず、PCD誘導遺伝子の1または2以上の抗血管新生遺伝子をコードする導入または発現遺伝子に使用される、VEGF−TRAPをコードするアデノ随伴ウイルスベクターが記載されている。
【0032】
この文献は、神経保護要因の発現に言及していないため、本発明と重複しない。本明細書がPCDの阻害に関するものであるのに対し、前記特許はPCDの導入方法と関連するものである。
【0033】
網膜神経節細胞およびmax遺伝子
脊椎動物の網膜の細胞の様々な集団の中で、網膜神経節細胞(RGC)は、軸索が視神経を形成するニューロンであり、網膜内で脳内の視覚系の上位で処理された情報伝達に関与する。その変性は失明をもたらす。
【0034】
一般的に、今までに開発されたPCDに対する治療的介入の方法は、回復または機能維持の観点がない、PCDによる細胞死のメカニズムが既に不可逆的である場合の相対的に細胞変性の工程の後期に作用する。
【0035】
したがって、PCDのメカニズムに基づく介入のための新規な解決方法は、細胞ストレスから細胞死実行メカニズムの誘導に移る、できるだけ早い段階で行われるべきである。
【0036】
齧歯動物の網膜におけるPCDメカニズムの実験的研究では、網膜ニューロンおよび前駆細胞に転写因子の核排除が存在することが示されている。すなわち、正常細胞の核に通常見られる転写因子は、後者が細胞ストレスまたは細胞障害の異なる形態となっている場合、これらの細胞の細胞質に現れる(Linden R, Chiarini LB.Nuclear exclusion of transcription factors associated with apoptosis in developing nervous tissue.Braz J Med Biol Res.1999 Jul;32(7):813−20)。
【0037】
続く実験的研究では、転写因子Maxは軸索の横断面上のRGC初期の核から除かれており、カスパーゼ(アポトーシスによる細胞死に関与するプロテアーゼ)活性が独立していることが示されている(Petrs−Silva H,de Freitas FG,Linden R,Chiarini LB)。転写因子maxの早期核排除は、カスパーゼ活性と独立した網膜神経節細胞死と関連している(J Cell Physiol.2004 Feb;198(2):179−87)。同一グループの他の研究では、Maxの核排除のメカニズムが研究され、核からのこのタンパク質の喪失は、ユビキチン−プロテアソームシステム内の核、および細胞質中で新たに合成されたMaxの保持を原因として低下することを見出した(Petrs−Silva H,Chiarini LB&Linden R−Exp Neurol.2008 Sep;213(1):202−9)。これらすべての事象は、細胞死実行メカニズムへのRGCのコミットメント前の早期段階で生じる。
【0038】
max遺伝子は、maxタンパク質の21−22kDaの2つのアイソフォームをコードする。遺伝子の転写の制御において、Maxの機能は、ガン遺伝子c−Mycによってコードされた転写因子の活性に依存する。転写因子として機能するためには、c−MycはMaxとヘテロ二量化しなければならない。同様に、Maxはc−Myc、およびMntおよびMxd1−4(以前は、Mad1、Mxil、Mad3およびMad4として知られていた)のような転写因子のネットワークを含む他のタンパク質とヘテロ二量化、並びにホモ二量化することができる。Myc−MaxへテロダイマーおよびMax−Maxホモダイマーは、ゲノムDNAにおける同一成分に対する親和性を有し、反対の効果を有する。このため、Max−Maxホモダイマーは、Myc−Maxへテロダイマーの発ガン性を阻害し、Maxは、max遺伝子に形質導入された細胞に抗ガン作用を有する。
【0039】
特許分野において、ある文献には、ウイルスベクターと関連したmax遺伝子が記載されている。米国特許第5,693,487号明細書には、max遺伝子をコードするヌクレオチド配列、および結果として生じる、MycまたはMadのいずれかと形成した場合に、配列特異的な方法においてDNAと形成できる、ヘリックス−ループ−ヘリックスタンパク質の複合体を形成することが記載されている。当該文献では、一定の条件下でmax cDNAの核酸配列、またはmad cDANの核酸配列とハイブリダイゼーションできる核酸分子を参照する。MycポリペプチドまたはMadポリペプチドと関連する場合、Max遺伝子は、CACGTGを含む核酸配列と結合できる。
【0040】
米国特許第5,302,519号明細書には、Madポリペプチドをコードし、Maxポリペプチドと結合することができ、およびCACGTG核酸配列へのMaxの結合を阻害できる、核酸配列が記載されている。
【0041】
上述の文献は、max遺伝子の核酸配列と他の配列との特異的相互作用と関連し、および特異的DNA配列と結合する単独のMaxポリペプチドの発現と関連するため、本発明と重複しない。
【0042】
米国特許第5,512,473号明細書は、Maxポリペプチドと相互作用する、Mxi1ポリペプチドの核酸配列および発現を参照する。当該文献は、Max遺伝子と相互作用するほかのDNA配列および他のポリペプチドを参照するため、本発明と重複しない。
【0043】
同様に、米国特許第5,811,298号明細書および米国特許第6,140,476号明細書には、Max遺伝子をコードする配列と融合された、Mxi遺伝子のリプレッサードメインに対するコード配列からなるキメラ遺伝子を含むプラスミドおよびウイルスベクターが記載されている。前記キメラ遺伝子は、c−Mycファミリーの発ガン性タンパク質の活性を促進する腫瘍を特異的に阻害する、Rep−Maxと呼ばれる融合タンパク質をコードするベクターによって発現させる。当該先行技術文献は、(a)bHLH、LZ、およびカルボキシ末端のMaxドメインのみを含む、融合Mxi−Max構成、すなわち、例えば、Maxタンパク質のリン酸化部位を含むN−末端Maxドメインをコードするmax遺伝子の5’ORFがない、換言すると、本発明において用いられるMax構造とは根本的に異なる構造を参照している;(b)本発明で記載されたMaxポリペプチドの効果の代わりに、Mxiポリペプチドドメインのリプレッサー効果を参照している;(c)本発明で記載されたMaxの神経保護効果とは異なり、c−Mycファミリーの発ガンタンパク質の活性を促進する腫瘍におけるMxiドメインのリプレッサーを特に参照している;(d)本発明に記載されたMaxポリペプチドの直接的な効果と異なり、融合ポリペプチドのMxiドメインのリプレッサー効果を促進するものとして、単独のMax遺伝子の効果を参照している;(e)本発明に記載されたMax含有ベクターの神経保護活性と異なり、rep−maxキメラ構成を含むベクターの抗腫瘍活性を参照していることから、本発明と重複しない。
【0044】
上述の文献は、max遺伝子を利用したキメラを参照し、maxそれ自体を含むベクターを参照しないため、本発明と重複しない。また、前記文献は、神経保護活性を有するmax遺伝子の発現の調節を目的として、ウイルスベクターにmax遺伝子の付加については言及していない。
【0045】
いずれの文献にも、max遺伝子含有クローニングベクター、max遺伝子含有輸送ベクター、および細胞保護、特に神経保護療法へのそれらの使用については記載されていない。
【0046】
本発明は、max遺伝子含有クローニングベクターの構築に関する。具体的には、本発明は、輸送ベクターを用いたmax遺伝子含有クローニングベクターの細胞内への導入に関する。また、細胞内におけるmax遺伝子含有クローニングベクターの存在は、細胞中で細胞保護活性、特に神経保護活性を有するmax遺伝子の差次的発現を可能にし、神経変性状態に対する医学および獣医学治療に適用されうる。
【発明の概要】
【0047】
発明の効果
一実施態様において、本発明はmax遺伝子を含有する生物学的ベクターからなり、
(a)クローニングベクター、この際、前記クローニングベクターは
(a1)max遺伝子またはそのフラグメントを発現できるヌクレオチド配列;
(a2)適切なプロモータ;
を含む:
(b)ウイルス輸送ベクター、非ウイルス輸送ベクター、およびこれらの組み合わせを含む群から選択される輸送ベクター:
を含む。
【0048】
ある実施形態において、前記(a)のクローニングベクターは、プラスミド、ウイルス、コスミドおよび/またはYACの群のベクターを含む。
【0049】
ある実施形態において、前記(b)のプロモータは、細胞内にmax遺伝子および/またはそのフラグメントを直接発現することができる配列のいずれかを含む。
【0050】
ある実施形態において、前記プロモータは、CBA、CMVおよび/またはCBA/CMVおよび/またはハイブリッドCBA/CMVおよび/または様々な細胞タイプのそれぞれ1つに特異的なプロモータを含む群から優先的に選択される。
【0051】
ある実施形態において、前記プロモータは、ニューロン特異的プロモータの群から選択される。
【0052】
ある実施形態において、非ウイルス輸送ベクターは、プラスミド、リポソーム、カチオン性脂質化合物、タンパク質、DNA−DEAEデキストラン、DNA−脂質、DNA−タンパク質、DNA−脂質−タンパク質、人工染色体、ナノ粒子、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、プラスミドの投与、DNAのバリスティックインジェクションを含む群から選択される。
【0053】
ある実施形態において、ウイルス輸送ベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、組換えアデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、泡沫状、HIV、ワクシニアを含む群から選択される。
【0054】
本発明の追加の目的は、
(a)クローニングベクターを準備する工程、この際、前記クローニングベクターは
(a1)max遺伝子またはそのフラグメントを発現できるヌクレオチド配列;
(a2)適切なプロモータ;
を含む:
(b)ウイルス輸送ベクター、非ウイルス輸送ベクター、およびこれらの組み合わせを含む群から選択される輸送ベクターを準備する工程:
(c)生物学的ベクター(b)をクローニングベクター(a)と接触させる工程:
を含む、max遺伝子含有生物学的ベクターを産生する方法からなる。
【0055】
本発明の追加の目的は、生物学的ベクターを適切な細胞と接触させる工程を含む、細胞内にmax遺伝子を発現させる方法からなり、この際、前記生物学的ベクターは、
(a)クローニングベクター、この際、前記クローニングベクターは
(a1)max遺伝子またはそのフラグメントを発現できるヌクレオチド配列;
(a2)適切なプロモータ;
を含む:
(b)ウイルス輸送ベクター、非ウイルス輸送ベクター、およびこれらの組み合わせを含む群から選択される輸送ベクター;
を含む。
【0056】
ある実施形態において、生物学的ベクターは、薬学的に許容されるビヒクル中に存在し、前記薬学的に許容されるビヒクルは、薬学的に許容される賦形剤および担体を含む群から選択され、経口、非経口、静脈内、筋肉内、脳内、脳室内、眼内を含む一連の治療計画で表されうる特定の組成物の使用について、適当な投与量および治療が選択される。
【0057】
ある実施形態において、前記高等動物、例えばヒトの細胞はニューロンである。
【0058】
本発明の追加の目的は、max遺伝子含有生物学的ベクターを、少なくとも1つの標的細胞に導入する段階を含む遺伝子治療方法からなり、前記標的細胞におけるmax遺伝子の差次的発現が細胞活性の調節を促進しうる。
【0059】
前記細胞活性の調節が細胞保護機能を有する。
【0060】
前記細胞は、高等動物、例えばヒトの細胞はニューロンである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、輸送ベクターpTR−CBA−maxの配列を示す。
【図2】図2は、輸送ベクターpTR−SBsmCBA−maxの配列を示す。
【図3】図3は、輸送ベクターpHpa−trs−SK−maxの配列を示す。
【図4】図4は,rAAV−Maxによるin vivoにおける神経保護のデータを示す。新生仔ラット(生後1日)の片目にpTR−CBA−maxを投与し、もう一方の片目にpTR−CBA−GFPを注射した。14日後、前記動物を麻酔で安楽死させ、眼を除去し、網膜を解剖した。約1mmの網膜組織の組織片を切り取り、5%ウシ胎仔血清の培地に30時間静置した後、組織を4%パラホルムアルデヒドに固定した。網膜神経節細胞における細胞死率は、サンプル部分における細胞の総数に関連した、アポトーシスによる細胞死の指標となる、濃縮した核の割合(ヒストグラムにおける平均値および標準誤差)によって評価した。rAAV−Maxと形質導入された網膜の組織片は、コントロールのrAAV−GFPと形質導入された組織片よりも約50%細胞死率が低かった。Maxの発現の増加は、免疫組織化学手法によって確認され、GFPの発現は、コントロールのタンパク質の内在蛍光によって確認された。
【図5】図5は、rAAV−Maxによる、in vivoの神経保護のデータを示す。スキームに示されるように、ラットを4つの実験群に分類した。2つのグループには、生後1日後または60日後のいずれかに、pTR−CBA−maxを片目に投与した。3つのグループには生後60日後に(上記注射をした場合、注射した側を)視神経を損傷させ、4つのグループすべてを生後74日後に麻酔で安楽死させた。4%のパラホルムアルデヒドに固定化させた後、眼を除去し、網膜全体をゼラチン化したガラススライドに水平にマウントして、固定化した組織を接着した。生細胞の核または細胞死の指標となる核濃縮の特性は、緑色蛍光でDNAをラベルするDNA挿入剤のsytox greenで染色し、レーザー共焦点顕微鏡法で得られた顕微鏡写真で数えることによって、神経節細胞層を定量した。
【0062】
総数を核(細胞)濃度に変換し、その結果、平均値および標準誤差の形態で示される。水平な破線は、アマクリン細胞(灰色)に置き換えた平均密度を示し、ラットの神経節細胞層に見られた。この際、神経節細胞(黒色)を評価するため、全数から差し引かれている。生後1日でrAAV−maxで形質導入された網膜は、神経節細胞の死から防御された。生後1日で視神経を損傷させた形質導入した網膜は、pTR−CBA−maxベクターが介在するトランス遺伝子の発現に必要な時間(約14日間)のため、有意な防御を示さなかった。
【図6】図6は、rAAV−Maxによるin vivoの神経保護の他の実施例におけるデータを示す。スキームに示されるように、ラットを4つの実験群に分類した。生後1日のすべての動物に、RGCの細胞体へ軸索に沿って輸送される赤色蛍光マイクロスフェアの懸濁剤を上丘(RGC軸索の投射標的)に頻回注射した。この手順は、中枢神経系における神経変性モデルを構成するニューロンのタイプを確実に同定に役立つ。3つのグループには、生後30日後または60日後のいずれかに、pTR−CBA−maxを片目に注射した。3つのグループには、生後60日後に(上記注射をした場合、注射した側を)視神経を破砕によって損傷させ、4つのグループすべてを生後74日後に麻酔で安楽死させた。4%のパラホルムアルデヒドに固定化させた後、眼を除去し、網膜全体を解剖し、固定化した組織を接着するためにゼラチン化したガラススライドに水平にマウントして調製した。RGCはマイクロスフェアでラベルした赤色によって同定される一方、神経節細胞層における細胞中の核はDNA挿入剤のsytox green(緑色)でラベルされる。共焦点顕微鏡法で得られた顕微鏡写真で数えることによって、RGCを定量した。総数を核(細胞)濃度に変換し、その結果、平均値および標準誤差の形態で示される。前と同じように、損傷前の30日間のRGCの形質導入により神経保護が生じた(Petrs−Silva et al,未発表の結果)。
【発明を実施するための形態】
【0063】
下記に示す実施例は、本発明の技術的範囲を制限するものではなく、本発明を行うための多くの方法を例示するためのものである。
【0064】
本明細書中において、「クローニングベクター」は、外因性DNAに挿入されうるDNAフラグメントの遺伝子情報を増幅できるベクターであり、プラスミド、ウイルス、コスミド、および/またはYACsを含む群から選択されうる。前記クローニングベクターは、細胞中のDNA配列の発現を促進できる配列であるプロモータを含む。前記プロモータは、CBA、CMV、および/またはハイブリッドCBA/CMV、および/または例えば、ニューロン特異的プロモータのような標的細胞に特異的なプロモータを含む群から優先的に選択される。
【0065】
本明細書中において、「輸送ベクター」は、クローニングベクターを含む標的細胞への遺伝子情報のキャリアであり、ウイルスおよび非ウイルス輸送ベクターを含む群から選択されうる。
【0066】
本明細書中において、「ウイルス輸送ベクター」は、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、泡沫状、HIV、ワクシニアを含む群である。
【0067】
本明細書中において、「非ウイルス輸送ベクター」は、DNA−リン酸カルシウム、DNA−DEAEデキストラン、DNA−脂質、DNA−タンパク質、DNA−脂質−タンパク質、人工染色体、ナノ粒子、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、プラスミドの投与、DNAのバリスティックインジェクションなどの、プラスミド、リポソーム、カチオン性脂質、タンパク質、およびアミドタンパク質化合物を含むものである。
【0068】
本明細書中において、「生物学的ベクター」は、少なくとも1つの輸送ベクターが挿入されたクローニングベクターである。
【0069】
本明細書中において、「薬学的に許容される」とは、当業者に周知の薬学的に許容される賦形剤およびキャリアであり、経口、非経口、静脈内、経鼻内、硝子体内、筋肉内、脳内、脳室内、眼内を含む一連の治療計画で表されうる特定の組成物、その投与および/またはその製剤を使用できる投与量および治療の開発でありうる。
【0070】
本明細書において、「標的細胞」は、max遺伝子の発現によって利益を受けうる細胞である。このような細胞は、例えばニューロンのような高等動物の細胞を含む。
【0071】
本明細書中において、「活性の調節」とは、max遺伝子またはサイレンシングのいずれかの過剰発現を目的とした、標的細胞におけるDNA、RNAおよび/またはタンパク質のような要素の発現のいずれの調節、さらに標的細胞におけるmax遺伝子の発現の間および/または後の細胞の反応における、いずれの変化も含む。特に、調節は、max遺伝子の過剰発現の促進を目的とするものである。
【実施例】
【0072】
実施例1−プラスミドの構築
max21およびmax22に対するcDNAsはRobert N.Eisenman(Fred Hutchinson Cancer Research Center −Seatle,Washington)から提供された。
【0073】
rAAVメインプラスミドは、William Hauswirth(University of Florida−Gainesville,Florida,USA)から提供されたプラスミドpTR−UF11を基に構築された。前記構築において、AAV2 ITRs(逆方向末端配列)によって配置されたトランス遺伝子は、CBA(チキンβ―アクチン)プロモータによって制御された発現を有し、381塩基対を有するCMV(サイトメガロウイルス)の前初期エンハンサー、および1352塩基対を有するチキン−β−アクチン−エクソン 1−イントロン1プロモータのハイブリッドである。この配列すべては、次いで、SV−40ポリアデニル化が行われる。
【0074】
CBA−CMVの組み合わせは、網膜細胞、特に神経節細胞において、効率よく形質導入が生じる。しかしながら、プロモータおよびエンハンサーの組み合わせは、細胞タイプ、特にニューロンタイプにおける使用のために、本発明の技術的範囲内でいつかは改良されうる。
【0075】
使用された手順は、制限されないが、例えば(a)pTR−SB−smCBA、この際、ネオマイシン、その真核生物のプロモータHSV−tk、またはポリオーマウイルスのエンハンサーPYF441への耐菌性、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化シグナルの遺伝子配列のコードを含まず、プラスミド由来のベクターがヒト患者における臨床アッセイに使用できる、(b)DNA二重鎖を含むrAAVベクターであり、上述したベクターとは異なるpHpa−trs−SK、のような他のプラスミドに適用する。前記ベースベクターpHpaは、Dr J.Samulski(University of North Carolina,USA)からフロリダ大学のDr. William Hauswirthへ授与されたものが、出願人のグループに提供された。そして、その構築は、DNA二重鎖を含むベクターの形成、続く相補鎖の合成段階を相対的に遅いスキッピングによって、トランス遺伝子の発現の促進を狙ったものである。この場合、前記プロモータは、CMV(サイトメガロウイルス)であるが、必要に応じて、本発明の技術的範囲内で他のプロモータに置き換えられうる。出願人の研究室では、最長7日間、本ベクターが網膜におけるトランス遺伝子を発現させ、前記トランス遺伝子発現の必要とする時間を50%減少していることを示す実験を行った(Petrs−Silva et al,未発表の結果)。
【0076】
実施例2−pTR−CBA−MAX21プラスミドおよびPTR−CBA−GFPプラスミドの構築
1pfu(1.5U/50μl反応)ポリメラーゼ(Stratagene社)をPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)に用いて、NotI制限酵素で切断するためのコンセンサス配列を配置させたmaxクローンを発生させた。用いられたプライマーは、フォワード(5’−gcggccgcatgagcgataacgat−3’)およびリバース(5’−gcggccgcttagctggcctccat−3’)である。発生したクローンをTOPOブリッジプラスミドに挿入し、次いで、前記手順およびTOPO TA Cloning Kit(Inbitrogen社)の試薬に従った。GFP(緑色蛍光タンパク質)の遺伝子は、規定通りに実験コントロールとして使用され、pBIISKブリッジプラスミドにおけるNotI切断配列によって配置された。挿入物を含むプラスミドは、1U/μgのDNA濃度を37℃で1時間、NotI酵素(Promega社)で分解させた。生じたフラグメントは、DNA clearing kit(Inbitrogen社)を用いて、アガロースゲルで精製した。
【0077】
NotIによって発生された凝集末端を有した時点で、クローンはpTR−UFプラスミドに結合しており、また、NotIで分解される前に37℃で30分間、SAP(エビ由来アルカリホスファターゼ−Promega社,5U/μg DNA)を用いて脱リン酸化し、75℃で10分間不活性化させ、フェノール−フロロホルム(Sigma社)で精製し、並びに3倍容量の80%エタノールおよび10%容量の3M酢酸ナトリウムで沈殿させた。最終反応容量20μlにおいて、T4DNAリガーゼ1μl(20,000U/ml−Promega社)を用いて、氷浴中、反応開始温度を13℃、反応終了温度を200℃として、終夜連結反応が行われた。連結生成物4μlを用いて、エレクトロポレーション(25μFD,200Ohmsおよび1.25Kvolts)によるエレクトロコンピテント細菌recAおよびrecB(SURE細胞−Inbitrogen社)50μlに形質導入させた。前記細菌を、インキュベータシェイカー中、200rpm、37℃の条件で、抗生物質を含まないLB培地(1%NaCl,1%ペプトン,0.5%酵母エキス)でさらに1時間インキュベートし、次いで、LB寒天培地(1.5%寒天中,1%NaCl,1%ペプトン,0.5%酵母エキス)に移し、アンピシリン(50μg/ml)を添加し、37℃、14時間で成長させて、発生したコロニーを単離した。
【0078】
抗生物質により選択されたコロニーを、インキュベータシェイカー中、200rpm、37℃の条件で、アンピシリンを含むLB培地5ml中に14時間成長させ、解析に十分なプラスミドを得た。懸濁液中の細菌は、Wizard−plus mini−prep kit(Promega社)を用いてプラスミドの精製に用いられた。前記プラスミドは、pTR−UFプラスミド:フォワード(5’−tctttttcctacagctcctgggcaa−3’)およびリバース(5’−gcattctagttgtggtttgtccaaa−3’)の配列のプライマーを用いて、DNA配列を通じた、クローンの存在および方向性について解析された。前記プラスミドはまた、DNAの濃度が1U/μg、室温、1時間でSmaI制限酵素(Promega社)により分解され、クローンの存在、その方向性、および繰り返し配列であるITRsが、長期間の培養中に細菌から容易にプラスミドが除かれることが確認された。
【0079】
実施例3−プラスミドの調製
ウイルスベクターの効率的な調製に必要とされる大規模形質導入には、高度に精製されたメインプラスミドおよびヘルパーpDGプラスミドの両方を大量に必要とする。上述したように、ヘルパープラスミドは、パッケージングおよびパッケージング工程のヘルパーウイルスとしてのアデノウイルスの存在を回避するために必要とされる最小配列のみを含む。
【0080】
実施例3.1−MAXI−PREP
関連の構築物を含む細菌のコロニーを、インキュベータシェイカー中、200rpm、37℃の条件で、アンピシリンを含むLB培地5mlの懸濁液中で5時間成長させ、次いで、10%KHPO緩衝液および0.1%アンピシリンを含むTB培地(1.2%トリプトン,2.4%酵母および0.4%グリセロール)1Lに移し、37℃でプレインキュベートした。LB培地中のコロニーは、37℃、シェイカー中でさらに14時間静置した。前記培地を、JA−10 rotorを用いて4,000rpmで遠心分離して、細菌を沈殿させた。遠心分離した培地のそれぞれ250mlに対して、20mlの再懸濁溶液(50mMトリス−塩酸,pH8.0,10mM EDTA,pH8.0,20μg/ml RNAse)をペレットに添加し、後者をピペットで分離した。次いであらかじめ調製した溶解液20ml(0.2N NaOH,SDS 1%(w/v))を添加した。前記混合物を振とうし、室温で5分間インキュベートした。最後に、振とうしながら20mlの中和溶液(3M酢酸カリウム,28.7%酢酸(w/v))を添加した。前記混合物を氷上に10分間静置し、次いでJA−10 rotorを用いて8,000rpmで10分間遠心分離した。上清を集め、0.6容量のイソプロパノールを添加、混合して、氷上に少なくとも20分間インキュベートした。次に、前記混合物を、JA−10 rotorを用いて、10,000rpmで20分間スピンさせた。前記上清を捨て、ペレットを10mlの80%エタノールで洗浄し、室温で乾燥するまで静置させた。
【0081】
実施例3.2−塩化セシウム密度勾配による精製
前記乾燥ペレットを、ピペットを用いて10mlのTE(100mMトリス−塩酸pH7.6,10mM EDTA pH8.0)に慎重に溶解した。次に、1gの塩化セシウムを溶液1mlにそれぞれ添加した。前記混合物を超遠心分離機用チューブ(25.4×89.1mm,Quick−Seal−Beckman社)に移し、100μlの臭化エチジウム(740μg/ml)(Invitrogen社)を添加した。前記チューブを封じ、Vti−65 rotorを用いて45,000rpmで終夜遠心分離した。遠心分離後、臭化エチジウムで染色したチューブにおける一番下のバンドをシリンジおよび#18ニードルで除去した。前記DNAを、飽和ブタノール水溶液を用いて3度洗浄した。DNAの最初の容量の2.5倍量の水を添加し、全量の2倍量のエタノールを添加し、混合物を氷上にインキュベートした後、JA−10 rotorを用いて、15,000rpmで20分間遠心分離した。上清を捨てた後、パレットを80%エタノールで洗浄して、室温で乾燥させ、水で再懸濁させた。
【0082】
実施例4−プラスミドの投与量
DNA濃度を、分光光度計を用いて、UV(紫外線光)吸収により測定した。DNA5μlを995μlの水に添加し、260nmの励起における光学濃度を読んだ。サンプルの純度を解析するため、280nmの励起における第2の測定を行った。260nmおよび280nmにおける2つの測定値の比率を決定した。前記比率が2〜1.5の範囲の場合、プラスミドがトランスフェクションに用いられうる。1.5以下の場合には、さらに精製する必要がある。
【0083】
実施例5−細胞培養
ヒト胎児由来腎臓細胞株(HEK−293)を、10%ウシ胎仔血清(FBS−Gibco社)、100U/mlペニシリンG(Gibco社)、および100mg/mlストレプトマイシン(Gibco社)を添加した完全DMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)(Gibco社)に保持した。前記培養を5%CO、および37℃でインキュベータに保持した。前記細胞を、洗浄用PBSおよび0.05%トリプシン/0.53mMEDTA含有HBSS(Gibco社)を用いて、3日ごとに1〜3の培養フラスコを通過させ、細胞を分離した。1つの大規模トランスフェクションが、調製したそれぞれのベクターに行われた。いずれのトランスフェクションにおいて、10の棚を有する6,320cmの細胞工場(NUNC)が用いられた。トランスフェクションの前日に、1〜3の細胞工場を通過させたため、トランスフェクション当日に、添加した合計1×10の細胞は75−80%が集密的であった。
【0084】
実施例6−トランスフェクション
トランスフェクションは、リン酸カルシウムを用いた沈殿によって行われた。ヘルパープラスミドpDG1.8mg、メインプラスミド0.6mgの混合物を0.25M CaClの50mlにおいてDNAのモル比が1:1となるように作製し、さらに2×50mlHBS、pH7.05(250mM HEPES遊離酸、1.4MNaCl、および14mM NaPO)を添加した。前記2×HBS溶液を最後に添加した。前記混合物を室温で1−2分インキュベートし、次いで完全培地1100mlを添加した。前記細胞培地を除去し、新たな培地を添加した。前記細胞を72時間インキュベートした。前記時間の最後に、培養培地を捨て、細胞をPBSで洗浄し、5mM EDTA含有PBS中に分離した。次に、前記細胞を10−15分間1,000gで遠心分離し、上清を捨て、パレットを溶解緩衝液(150mM NaCl,50mMトリス−塩酸,pH8.4)60mlに再懸濁させ、−20℃でベクターの精製までストックした。
【0085】
実施例7−ウイルスベクターの精製
実施例7.1−細胞溶解およびイオジキサノール勾配
細胞を、エタノール/ドライアイスで3サイクル凍結させて溶解させ、37℃で溶かした。ベンゾナーゼ(Sigma社)を最終濃度50U/mlで添加し、37℃で30分間インキュベートした。前記溶解物質を、4,000gで20分間遠心分離して、ウイルスベクターを含む上清をイオジキサノール(5,5’−[(2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジイル)ビス(アセチル−1,3−ベンゼンカルボキサミド)])(OptiPrep−Axis−Shield社)の4つの勾配に分割した。イオジキサノールは、密度勾配を形成するための非イオン性の培地であり、すべてに密度において等浸透圧性を保持し、ウイルスベクターの精製の効率が向上し、塩化セシウムまたはスクロースにおける感染性および毒性の喪失を回避する(Zolotukhin,S.et al,1999)。rAAVの密度は約1,266g/mlであり、50%イオジキサノール50%と等しい。よって、細胞溶解物の最小密度15ml、次いでをPBS−MK(1mM MgClおよび2.5mM KClを含むPBS)中15%イオジキサノール(Sigma社)15ml、25%イオジキサノール15ml、40%イオジキサノール15ml、最後に65%イオジキサノール15ml中に静置することで、非連続勾配がチューブ(28,8×107.7mm,Quick−seal−Beckman社)中で発生する。前記チューブを封じ、70Ti rotorを用いて、69,000rpm(350,000g)、18℃で1時間遠心分離した。シリンジの#18ニードルを用いて、40%および60%間の接触面から、約5mlを吸引した。この物質を続くクロマトグラフィのために4℃で保存または凍結させた。
【0086】
実施例7.2−クロマトグラフィ
イオジキサノール勾配で得られたフラクションを、次にカラムクロマトグラフィで精製および濃縮した。FPLC AKTAシステム(Pharmacia社)において、5ml/minで5mlヘパリンHiTrapイオン交換カラム(Pharmacia社)が用いられ、0.5M NaClを含むPBS−MKで溶出させた。前記カラムは、5ml/minではじめに25mlの緩衝液A(20mMトリス−塩酸,15mM NaCl,pH8.5)、次いで25mlの緩衝液B(20mMトリス−塩酸,500mM NaCl,pH8.5)、さらに25mlの緩衝液Aで平衡化させた。前記イオジキサノールベクターのフラクションを緩衝液Aで1:1に希釈し、3−5ml/minの流速で前記カラムに適用した。サンプルをHiTrapカラムに流した後、50mlの緩衝液Aで洗浄した。前記ベクターを緩衝液Bで溶出し、1mlのフラクション約50個に分画させ、ベクターを含む前記フラクションを集めた。次に、ベクターを濃縮し、Biomax 100K concentrate(Millipore社)で脱塩化させて、微小真菌中、最大14,000rpmで1分間の遠心分離を3サイクルさせた。それぞれのサイクルにおいて、ウイルスを1mlに濃縮し、次いで乳酸リンゲル液を10ml添加した。rAAVベクターは−80℃でストックした。
【0087】
実施例8−rAAVタンパク質の解析
実施例8.1−タンパク質の抽出
それぞれストックした15μlを、5分間煮沸したサンプル緩衝液(トリス−塩酸0.5M pH6.8およびブロモフェノールブルー中に45%グリセロール100%,5%2−β−メルカプト−エタノール,2%SDSを含む)に混合し、12%ポリアクリルアミドゲル(Bio−Rad社)に適用した。
【0088】
実施例8.2−銀染色
ベクターのストックを精製するために、Bio−Rad kitを用いて、銀染色したポリアクリルアミドゲル中の前タンパク質を解析した。
【0089】
実施例9−滴定
前記精製したベクターのストックをDNAse Iで処理し、汚染物質を含まないDNAを分解した。精製したベクターのストック10μlを、反応混合物(50mMトリス−塩酸,pH7.5,10mM MgCl)100μl中10UのDNAse I(Boehringer)を用いて、37℃で1時間インキュベートした。反応の終わりに、プロテインキナーゼK緩衝液(10mMトリス−塩酸,pH8.0,10mM EDTA,1%SDS)10μl×10を添加し、次いでプロテインキナーゼK(18.6mg/ml,Boehringer社)1μlを添加した。前記混合物を42℃で1時間インキュベートした。ウイルスDNAを、フェノール/クロロホルムを用いた2つの抽出液、次いで、クロロホルムを用いた1つの抽出液、キャリアとして10μgのグリコーゲンを用いて、−20℃で終夜エタノールを用いた沈殿物に精製した。次に、前記混合物を、微小真菌中、最大14,000rpmの速度で30分間遠心分離した。沈殿したDNAを100μlの水で再懸濁させた。PCR用の各反応混合物は、トランス遺伝子含有ベクターとは明らかに異なるが、既知濃度を有するウイルスベクターの産生に用いられるメインプラスミドでありうる、一般的なプラスミドの2連続希釈で希釈されたウイルスDNAを1μl有する。前記一般的に最適な速度は1から100pgの範囲内にあり、他に用いられる希釈は、1、10、50および100pgの発現速度と同等である。用いられたプライマーは、トランス遺伝子挿入の上流および下流にすぐ接した配列を参照する:フォワード(5’− agttattaatagtaatcaatta−3’)およびリバース(5’−atcctttcagggtattccagta−3’)。各反応生成物は、0.5μl/mlの臭化エチジウムを含む、2%アガロース(Invitrogen社)ゲルで解析した。2つのバンドまで行われる電気泳動で分解され、比較が可能となるバンドの画像は、ImageStore 7500 UVPシステム(BioRad社)を用いて得た。各バンドの密度は、画像解析ソフトウェア(ZERO−Dscan Image Analysis System,version1.0−Scanalytics社)を用いて測定された。標準DNAに対する濃度の機能に対して比率がプロットされた。ウイルスベクターストックの濃度は、ウイルスDNAおよび標準DNAの等しい分子数に対応する。
【0090】
実施例10−ベクターpTR−CBA−max(図1):構築された血清型2rAAVベースベクター(pTR)は、いずれの細胞タイプにおいて、max遺伝子の発現を促進できる、選択されたネオマイシン耐性遺伝子およびCBA(チキンベータ−アクチン)ジェネラルプロモータを含む。AAV由来のベクターは、発現工程が相対的に遅く、トランスフェクションの後、トランス遺伝子の発現が最大約14日間に達する。前記pTR−CBA−maxベクターは、in vivoおよびin vitroの両方において、軸索のトランスフェクション後の網膜神経節細胞の細胞死への感度が減少している。
【0091】
実施例10.1−in vitro実験における、軸索のトランスフェクション後の網膜神経節細胞の細胞死への感度
神経節細胞におけるMaxの形質導入:新生仔ラット(生後1日)の片目にhte pTR−CBA−maxを注射した。14日後、動物を麻酔で安楽死させ、眼を除去してリン酸緩衝液中4%パラホルムアルデヒドに浸して固定した。前記眼を、クライオスタットおよび10マイクロメートルの切片に切り取り、免疫組織化学用にガラススライドにマウントした。前記Maxタンパク質は、特異的抗体との反応、続く第2抗体による赤色蛍光の発生により検出された。RGCでラベルされたクラスIIIのベータ−チューブリンの前記タンパク質は、特異的抗体との反応、続く第2抗体による緑色蛍光の発生により検出された。レーザー共焦点顕微鏡により顕微鏡写真を得た。Maxタンパク質含量は、pTR−CBA−maxベクター(mod.from Petrs−Silva et al,2005)でトランスフェクトされたRGC中で明らかに増大した。
【0092】
rAAV−Maxによるin vitroにおける神経保護:新生仔ラット(生後1日)の片目にpTR−CBA−maxを、もう一方の片目にpTR−CBA−GFP(コントロール)を注射した。14日後、動物を麻酔で安楽死させ、眼を除去して、網膜を解剖した。約1mmの網膜組織の組織片を切り取り、5%ウシ胎仔血清の培地に30時間保持した後、前記組織を4%パラホルムアルデヒドで固定した。神経節細胞の細胞死率は、サンプル中の全細胞数に対する(ヒストグラムにおける平均値および標準誤差)、アポトーシスの細胞死を示す濃縮核の百分率で評価された。前記rAAV−maxで形質導入された網膜は、コントロールのrAAV−GFPで形質導入した組織片よりも、約50%低い細胞死の比率を示した(図4)。Maxの発現の増加は、免疫組織化学的手法により確認され、一方GFPの発現は、後者のタンパク質の内在蛍光により確認された(Petrs−Silva et al,未公表の結果)。
【0093】
実施例10.2−in vivo実験における、軸索のトランスフェクション後の網膜神経節細胞の細胞死への感度
rAAV−maxによるin vivoの神経保護:図5のスキームに示されるように、ラットを4つの実験グループに分類した。2つのグループには、生後1日または生後60日に、片目にpTR−CBA−maxを注射した。3つのグループには、生後60日に(上記注射をした場合、注射した側を)視神経を損傷させ、4つのグループを生後74日に麻酔で安楽死させた。次いで、4%パラホルムアルデヒドで固定し、眼を除去し、全網膜を固定化した組織を接着させるために、ゼラチン化させたガラススライドに水平にマウントした。死細胞を示す生細胞の核および濃縮核は、緑色蛍光でDNAをラベルするDNA挿入剤のsytox greenで染色させ、レーザー共焦点顕微鏡により得た顕微鏡写真の神経節層を数えることによって定量した。数は核(細胞)密度に変換され、その結果は、平均値および標準誤差の形で示される。平行の破線は、ラットの神経節細胞で見られたアマクリン細胞(灰色)に置き換えた密度を示しており、神経節細胞(黒色)の密度を評価するため、総数から差し引かれている。生後1日にrAAV−maxで形質導入された網膜は、神経節細胞の死から保護された。同日に視神経をも損傷させた、形質導入された網膜は、pTR−CBA−maxベクターからトランス遺伝子が運ばれたトランス遺伝子の発現に時間(約14日)が必要とされたため、有意な保護作用を示さなかった(Petrs−Silva et al,未公表の結果)。
【0094】
rAAV−maxによるin vitroの神経保護:図6のスキームに示されるように、ラットを4つの実験グループに分類した。生後1日に、すべての動物の上丘(RGC軸索の投射標的)に、赤色蛍光性マイクロスフェアを頻回投与し、軸索に沿ってRGCの細胞体に移動した。この手順は、中枢神経系の神経変性のモデルとなる、このタイプのニューロンを確実に同定するのに役立つ。3つのグループには、生後30日および生後60日に、片目にpRT−CBA−maxを注射した。3つのグループには、生後60日に、圧迫して(上記注射をした場合、注射した側を)視神経を損傷させ、4つすべてのグループを、生後74日に麻酔で安楽死させた。次いで、4%パラホルムアルデヒドで固定し、眼を除去し、全網膜を固定化した組織を接着させるために、ゼラチン化させたガラススライドに水平にマウントした。前記RGCはマイクロスフェアを用いて赤色でラベルさせて同定し、一方、神経節細胞層の細胞のすべての核は、DNA挿入剤のsytox green(緑色)でラベルさせた。前記RGCは、レーザー共焦点顕微鏡により得た顕微鏡写真を数えることによって定量した。数は核(細胞)密度に変換され、その結果は、平均値および標準誤差の形で示される。再び、損傷前の30日にRGCの形質導入では、神経保護を生じた(Petrs−Silva et al,未公表の結果)。
【0095】
実施例11−ベクターpTR−SB−smCBA−max(図2):デザイン1で用いられた、ベースベクターと同様の、構築された血清型2rAAVベースベクター(pTR)。本ベクターは、ネオマイシン耐菌性遺伝子、その真核性HSV−tkプロモータ、PYF441ポリマーウイルスエンハンサ、およびウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルをコードする配列の欠失配列を有する。これらの変異では、トランス遺伝子発現の速度は変わらず、神経系のベクターの分布も変化しない。しかしながら、この変化は、前記ベクターをヒト臨床アッセイに適したものにする。
【0096】
実施例12−ベクターpHpa−trs−SK−max(図3):上述したベクターとは異なる、構築された血清型2sc AAVベースベクター(pHpa)。前記pHpaベースベクターはフロリダ大学のWilliam Hauswirth博士らのグループで修飾されたものであり、二重らせん構造の形成によってトランス遺伝子の発現を促進し、このため相対的に遅い相補鎖の合成段階をスキップする。この場合、プロモータはCMV(サイトメガロウイルス)である。このベクターのタイプは、トランス遺伝子を最高で7日で発現する、すなわち、トランス遺伝子の発現に必要な時間が50%まで短くなる。出願人の研究室で行われた試験では、網膜組織でこのベクターを形質導入させたGFPトランス遺伝子の発現の促進が確認された(Petrs−Silva et al,未公表の結果)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
max遺伝子を含有する生物学的ベクターであって、
(a)クローニングベクター、この際、前記クローニングベクターは
(a1)max遺伝子またはそのフラグメントを発現できるヌクレオチド配列;
(a2)適切なプロモータ;
を含む:
(b)ウイルス輸送ベクター、非ウイルス輸送ベクター、およびこれらの組み合わせを含む群から選択される輸送ベクター:
を含むことを特徴とする、生物学的ベクター。
【請求項2】
前記(a)のクローニングベクターが、プラスミド、ウイルス、コスミドおよび/またはYACの群のベクターを含むことを特徴とする、請求項1に記載の生物学的ベクター。
【請求項3】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号1、2、3、4、5およびこれらの組み合わせを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の生物学的ベクター。
【請求項4】
前記プロモータが、プロモータCBA、CMVおよび/またはCBA/CMVを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の生物学的ベクター。
【請求項5】
前記非ウイルス輸送ベクターが、DNA−リン酸カルシウム、DNA−DEAEデキストラン、DNA−脂質、DNA−タンパク質、DNA−脂質−タンパク質、人工染色体、ナノ粒子、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、プラスミドの投与、DNAのバリスティックインジェクション、およびこれらの組み合わせなどの、プラスミド、リポソーム、カチオン性脂質、タンパク質、およびアミドタンパク質化合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の生物学的ベクター。
【請求項6】
前記ウイルス輸送ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、組換えアデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、泡沫状、HIV、ワクシニアおよびこれらの組み合わせを含む群から選択されること特徴とする、請求項1に記載の生物学的ベクター。
【請求項7】
(a)クローニングベクターを準備する工程、この際、前記クローニングベクターは
(a1)max遺伝子またはそのフラグメントを発現できるヌクレオチド配列;
(a2)適切なプロモータ;
を含む:
(b)ウイルス輸送ベクター、非ウイルス輸送ベクター、およびこれらの組み合わせを含む群から選択される生物学的ベクターを準備する工程:
(c)生物学的ベクター(b)をクローニングベクター(a)と接触させる工程:
を含むことを特徴とする、max遺伝子含有生物学的ベクターを産生する方法。
【請求項8】
前記(a)のクローニングベクターが、プラスミド、ウイルス、コスミドおよび/またはYACの群のベクターを含むことを特徴とする、請求項7に記載の生物学的ベクターを産生する方法。
【請求項9】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号1、2、3、4、5およびこれらの組み合わせを含む群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の生物学的ベクターを産生する方法。
【請求項10】
前記プロモータが、プロモータCBA、CMVおよび/またはCBA/CMV、および/または、代わりに、例えばニューロンのような特定の細胞タイプに特異的なプロモータを含む群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の生物学的ベクターを産生する方法。
【請求項11】
前記非ウイルス輸送ベクターが、DNA−リン酸カルシウム、DNA−DEAEデキストラン、DNA−脂質、DNA−タンパク質、DNA−脂質−タンパク質、人工染色体、ナノ粒子、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、プラスミドの投与、DNAのバリスティックインジェクション、およびこれらの組み合わせなどの、プラスミド、リポソーム、カチオン性脂質、タンパク質、およびのアミドタンパク質化合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の生物学的ベクターを産生する方法。
【請求項12】
前記ウイルス輸送ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、組換えアデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、泡沫状、HIV、ワクシニアおよびこれらの組み合わせを含む群から選択されること特徴とする、請求項7に記載の生物学的ベクターを産生する方法。
【請求項13】
生物学的ベクターを適切な細胞と接触させる工程を含み、この際、前記生物学的ベクターが、
(a)クローニングベクター、この際、前記クローニングベクターは
(a1)max遺伝子またはそのフラグメントを発現できるヌクレオチド配列;
(a2)適切なプロモータ;
を含む:
(b)ウイルス輸送ベクター、非ウイルス輸送ベクター、およびこれらの組み合わせを含む群から選択される輸送ベクター;
を含むことを特徴とする、細胞内にmax遺伝子を発現させる方法。
【請求項14】
標的細胞が、高等動物のいずれかの細胞であることを特徴とする、請求項13に記載の発現方法。
【請求項15】
前記高等動物がヒトである、請求項14に記載の発現方法。
【請求項16】
前記標的細胞がニューロンである、請求項14に記載の発現方法。
【請求項17】
前記(a)のクローニングベクターが、プラスミド、ウイルス、コスミドおよび/またはYACの群のベクターを含むことを特徴とする、請求項13に記載の発現方法。
【請求項18】
前記ヌクレオチド配列が、配列番号1、2、3、4、5およびこれらの組み合わせを含む群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の発現方法。
【請求項19】
前記プロモータが、プロモータCBA、CMVおよび/またはCBA/CMV、および/または、代わりに、例えばニューロンのような特定の細胞タイプに特異的なプロモータを含む群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の発現方法。
【請求項20】
前記非ウイルス輸送ベクターが、DNA−リン酸カルシウム、DNA−DEAEデキストラン、DNA−脂質、DNA−タンパク質、DNA−脂質−タンパク質、人工染色体、ナノ粒子、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、プラスミドの投与、DNAのバリスティックインジェクション、およびこれらの組み合わせなどの、プラスミド、リポソーム、カチオン性脂質、タンパク質、およびアミドタンパク質化合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の発現方法。
【請求項21】
前記ウイルス輸送ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、組換えアデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、泡沫状、HIV、ワクシニアおよびこれらの組み合わせを含む群から選択されること特徴とする、請求項13に記載の発現方法。
【請求項22】
前記生物学的ベクターが、薬学的に許容されるビヒクルを伴うことを特徴とする、請求項13に記載の発現方法。
【請求項23】
前記薬学的に許容されるビヒクルが、薬学的に許容される賦形剤および担体を含む群から選択され、経口、非経口、静脈内、筋肉内、脳内、脳室内および眼内を含む一連の治療計画で表されうる特定の組成物の使用について、適当な投与量および治療が選択されることを特徴とする、請求項22に記載の発現方法。
【請求項24】
max遺伝子含有生物学的ベクターを、高等動物の少なくとも1つの標的細胞に導入し、前記標的細胞の細胞活性を調節する段階を含むことを特徴とする、遺伝子治療方法。
【請求項25】
前記高等動物が、ヒトであることを特徴とする、請求項24に記載の遺伝子治療方法。
【請求項26】
前記細胞がニューロンであることを特徴とする、請求項24に記載の遺伝子治療方法。
【請求項27】
選択的な細胞保護機能を有する標的細胞の活性を調節することを特徴とする、請求項24に記載の遺伝子治療方法。
【請求項28】
選択的な神経保護機能を有する標的細胞の活性を調節することを特徴とする、請求項24に記載の遺伝子治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−516047(P2011−516047A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502198(P2011−502198)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/BR2009/000093
【国際公開番号】WO2009/121157
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510263401)ユニヴァーシダード フェデラル ド リオ デ ジャネイロ (1)
【Fターム(参考)】