説明

MEMSフィルタ装置およびその製造方法

【課題】 設計に柔軟性があり、質量負荷の影響を無視することのできるMEMSフィルタの連結体を提供する。
【解決手段】 本発明は、カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube;CNT)など、マイクロサイズMEMS共振器に比べて質量が非常に小さい、ナノサイズの連結体を連結部に使用することにより、質量負荷の影響がMEMSフィルタの特性に反映されない構造を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMSフィルタ装置およびその製造方法に係り、特にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術とナノチューブ・ナノワイヤー技術を用いて形成したMEMSフィルタの連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MEMSフィルタにおいて主に使用されている材料としては、シリコン(単結晶と多結晶)があげられる。シリコンはICプロセスとの親和性が良好であるだけでなく、機械・電気特性が良好であることから広く使用されているが、フィルタの励振や検出方法としては、現在でも種々の方法が提案されている。これら多数の方法の中でも静電容量型共振器を使用したフィルタはプロセス上、比較的簡単に微細構造を作製することが可能であることから、GHz帯のMEMSフィルタの実現が期待されている。
【0003】
主に現在の静電容量型MEMSフィルタの構成は、多数のMEMS共振器がマイクロサイズの梁などで機械的に連結された構造になっており、フィルタの中心周波数は連結したMEMS共振器の共振周波数で決定される。又、多数のMEMS共振器を連結させることによってMEMS共振器と同じ数だけの周波数モードが、位相変化によって現れるようになっている。そしてMEMSフィルタの周波数帯域幅は、各共振器を連結する連結体のばね定数kcijと、MEMS共振器と連結体の接続部位のばね定数krcとによって決定される。
【0004】
非特許文献1は静電容量型MEMSフィルタの例であり、2つの多結晶シリコン製両持ち梁MEMS共振器を多結晶シリコン梁で連結した構造を用いている。フィルタの中心周波数は8MHzでQ値が40〜450、又、周波数帯域幅が0.2〜2.5%、通過損失が2dB以下という結果が達成されている。MEMS共振器の設計仕様は、長さ40.8μm、幅8μm、厚さ1.2μmで連結梁は長さ20.35μm、幅0.75μm、厚さ1.2μmと比較的共振器と近い寸法で構成されている。この非特許文献1のように、MEMS共振器とこれを連結する連結体としての連結梁とが同等のマイクロサイズであって、弾性波λの1/8以下の長さで構成された場合、その連結体の質量がMEMS共振器の質量に加算され、フィルタの中心周波数がずれてしまうことがある。このような質量負荷による影響(mass loading effects)がフィルタ特性に反映されてしまうことで所望の通過波形を得ることができないことがある。
【0005】
また、非特許文献2では、MEMS共振器を機械的に3つ連結した例が示されており、この場合を図28のブロック図で示す。10は第1のMEMS共振器、12は第2のMEMS共振器、14は第3のMEMS共振器で表され、16、18は、それぞれこれらを接続する第1、第2の連結梁を示す。又、図29は図1の電気的等価回路を示しており、前記第1および第2の連結梁16,18がλ/8以下の長さで構成された時に対応する。20,22,24は前記第1乃至第3のMEMS共振器10,12、14を示し、26,28は前記第1および第2の連結梁16,18を示す。図29の場合、第1の連結梁16の質量は26a,26bのインダクターL、第2の連結梁18の質量は28a, 28bのインダクターLで示され、各Lの値は連結梁の静的質量の1/2に等しくなる。
【0006】
これを式3で示すと、ZLはインダクターLのインピーダンス、wは共振周波数、Mは連結梁の静的質量に等しくなる。又、連結梁のばね定数26c、28c はコンデンサーCの逆数で表される。これを式4で示すと、ZCはコンデンサーCのインピーダンス、kは連結梁の静的ばね定数を表す。
【数3】

【数4】

【0007】
図30にこの3段のMEMSフィルタの通過波形の1例を示す。連結梁の質量を無視することができれば、通過波形は理想波形30に近い波形を表すはずであるが、第2のMEMS共振器12が左右に結合する第1および第2の連結梁16,18の質量の影響によって、第1のMEMS共振器、第3のMEMS共振器と比較して質量が増加し、その影響で歪んだ波形32などを有する結果になる。このような問題から非特許文献2における著者は2つの方法を提案している。
【0008】
その1つは連結体をλ/4の長さで設計することによって、図29の等価回路で示す連結体26の26a,26bが26cのコンデンサーCのマイナスの値に置き換えられ、これによって連結梁の質量がMEMSフィルタの特性に現れない方法を使用した。又、もう1つの方法として連結体とMEMS共振器が結合する配置を変え、共振時の振動振幅が小さい節に連結梁を結合することで、MEMS共振器と連結体の接続部位にあたるMEMS共振器質量mrcとばね定数krcが、連結梁の質量mcij とばね定数kcijに比べて比較的大きい値が得られることから、この方法では、質量負荷の影響を低減することができる。
【0009】
特許文献1では、振動周波数が〜1GHzの円周等高(Radial Contour)モード円盤型MEMS共振器を含む構造を有している。この円周等高モードでは円盤型の中心を節とし水平面上で均一に振動するモードで、電極は円盤型の周りに設け静電力で振動させ、振動容量変化比を検出している。円盤型共振器はMEMSフィルタにも応用でき、梁やU型を有する連結体を提供している。
【0010】
【非特許文献1】Frank Bannon III, John R. Clark, C.T.-C. Nguyen,“High-Q HF MicromechanicalFilters”, IEEE Journal of Solid-State Circuits, vol.35, no.4, 2000
【非特許文献2】Ku Wang, C.T.-C. Nguyen,“Higher Order Medium Frequency MicromechanicalElectronic Filters”, Journal of Microelectromechanical Systems, vol.8, no.4, 1999
【特許文献1】米国特許2003−6628177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、多結晶シリコン連結梁を利用した上記MEMSフィルタの構成では、フィルタを構成する共振器と連結梁が同じマイクロサイズであるため、質量負荷の影響がフィルタ特性に反映されるという課題があった。また、今後さらに高い周波数でMEMSフィルタが設計される場合、MEMS共振器の構造寸法がさらに小さくなることが考えられ、従来の構成では連結梁から発生する質量負荷の影響がさらに増加することが予想される。この課題を解決するためにさらに2つの方法(非特許文献2参照)を提案しているが、いずれのMEMSフィルタも高周波用のフィルタとして用いるためには課題が残されている。
【0012】
また、上述したλ/4の長さの連結体を用いる方法では、連結梁を作製するための加工限界による製造誤差が影響して実際に設計値の長さが得られないことが予想される。又、この方法では連結梁の長さが設計上1つの値に固定されるので、ばね定数を変えるには連結体の幅のみに依存してくる。一方、幅は通常ICの製造工程で使用されるトップ・ダウン技術の限界があるため、今後、高周波用のフィルタに必要なナノオーダーの幅を作製するのは困難になる。
【0013】
又、第2の方法として、連結体が共振器の節となるように配置する手法を使用したが、これでは共振器の構造あるいは連結体の配置に厳しい限定がかかってしまい、設計が複雑になる。さらには、連結体を共振器の節付近に配置することによってMEMS共振器と連結体の接続部位のばね定数krcがある程度固定されてしまい、所望なMEMSフィルタのQ値、あるいは周波数帯域幅を得るには、連結体のばね定数kcijのみで決定されてしまう。このように、ばね定数kcijは、連結体の形状に依存するため、設計の柔軟性に欠けている。
【0014】
また特許文献1で振動周波数が〜1GHzの円周等高モード円盤型MEMS共振器を含む構造が提案されているが、この円周等高モードでは円盤型の中心を節として、水平面上で均一に振動する。このモードを使用した場合、MEMS共振器と連結体の接続部位にあたるMEMS共振器のばね定数krcを増大するためには、連結体を節付近から連結する必要がある。しかし、特許文献1で示されているMEMS共振器をMEMSフィルタとして連結する場合、フォトリソグラフィー・プロセスなどから製作される連結梁では、連結体を円盤型MEMS共振器の中心部から連結させることが困難になる。しかもQ値が高い1次円周等高モードで振動させると、各円盤型MEMS共振器の半径が2.76μmにまで収縮され、結果、マイクロサイズの連結体を繋げれば、質量負荷の影響が大きくなってしまうことが考えられる。
【0015】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、設計に柔軟性があり、質量負荷の影響を無視することのできるMEMSフィルタの連結体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明は、カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube;CNT)など、マイクロサイズMEMS共振器に比べて質量が十分に小さい、ナノサイズの連結体を連結部に使用することにより、質量負荷の影響がMEMSフィルタの特性に反映されない構造を提案するものである。なお従来のMEMS共振器の質量を参考にした上、連結体としては、MEMS共振器に比べて十分に質量が小さく、1×10-15kg以下であるのが望ましい。
【0017】
また、本発明では、カーボンナノチューブなどのナノサイズの連結体を連結部に使用することにより、トップ・ダウン技術に頼るのではなく、材料の自己組織化を利用したボトム・アップ技術で製造可能であることを発見し、これに着目してなされたもので、ボトム・アップ技術で製造することにより設計にも柔軟性をもたせることを可能とする。
【0018】
本発明は、CNTあるいはこれと同程度のサイズをもつナノサイズの連結体をMEMSフィルタの連結体として用い、機械的に結合させる方法である。現在のCNT製造技術は幅広く知られているが、MEMSフィルタに活用するために、2つの連結方法を提案する。
【0019】
まず本発明の第1では、連結体となるCNTとMEMS共振器を集積させて構成する。製造に際しては、MEMS共振器の製造工程後、次の工程として設計上、望ましい2つ以上のMEMS共振器の間にCNTを成長させ、連結する。
また本発明の第2では、連結体となるCNTとMEMS共振器の製造を分離して構成し、最後の工程でCNTとMEMS共振器を連結したものである。例えば、分離して構成されたCNTを設計上、望ましいMEMS共振器周辺に移動させ、連結する。
【0020】
すなわち、本発明のMEMSフィルタ装置は、機械的振動可能に形成された振動体と、前記振動体に対して所定の間隔を隔てて配設された電極とを有し、電気機械変換を可能にする電気機械共振器を、連結体を介して複数個連結してなり、前記連結体がナノサイズの線状体であることを特徴とする。
この構成により、質量負荷の影響を低減し、特性の優れたフィルタ装置を提供することが可能となる。
【0021】
また、本発明のMEMSフィルタ装置は、前記連結体がカーボンナノチューブ(CNT)であるものを含む。
この構成によれば、自己組織化により極めて微細な構造体を精度よく形成することができる。
【0022】
また、本発明のMEMSフィルタ装置は、前記連結体はナノワイヤであるものを含む。
この構成によれば、自己組織化により極めて微細な構造体を精度よく形成することができる。
【0023】
また、本発明のMEMSフィルタ装置は、前記振動体は、四角形をなし少なくとも1つの節を有するMEMS共振器を構成すると共に、基板に支持せしめられる少なくとも1つの支持機構を具備したものを含む。
この構成によれば、形状が安定しており、節での支持が容易である上、連結が容易である。
【0024】
また、本発明のMEMSフィルタ装置は、前記連結体が複数本で構成されるものを含む。
この構成により、より強固な連結が可能となる。
【0025】
また、本発明のMEMSフィルタ装置は、前記連結体が前記振動体の複数箇所を接続するものを含む。
この構成により、連結を強固にすることができる。また振動体の上下に連結体が形成される場合、ばね定数の低減が可能となる。
【0026】
また、本発明のMEMSフィルタ装置は、前記連結体がコイル状体であるものを含む。
この構成により、ばね定数の低減が可能となり、設計に柔軟性を持たせることができる。
【0027】
また、本発明のMEMSフィルタ装置は、前記支持機構がカーボンナノチューブで構成されているものを含む。
この構成により、振動に自由度を持たせることができるだけでなく、通常のMEMS共振器で支持機構から試作基板に逃げる弾性波損失によるQ値の劣化も低減することができる。またこの支持機構と連結体とを兼ねるようにすれば、より高度の振動を実現することができる。
【0028】
また、本発明のMEMSフィルタ装置は、前記連結体は前記振動体の節で連結されているものを含む。
この構成により、より質量負荷の影響を低減することができる。
【0029】
また、本発明のMEMSフィルタ装置の製造方法は、機械的振動可能に形成された少なくとも2つの振動体と、前記各振動体に対して所定の間隔を隔てて配設された電極とを有し、電気機械変換を可能にする電気機械共振器を、基板上に近接して配置形成する工程と、前記振動体を、ボトムアップ技術により、ナノサイズの線状体からなる連結体で接続する連結構造を形成する工程とを含むことを特徴とする。
この方法によれば、極めて容易に質量負荷の影響が少なく、高精度のMEMSフィルタ装置を提供することができる。
【0030】
また、本発明のMEMSフィルタ装置の製造方法は、前記連結構造を形成する工程が、前記振動体の所定の位置に触媒を形成し、前記触媒から前記連結体を成長する工程を含むものを含む。
この構成によれば、触媒の形成箇所を特定することにより、極めて位置精度よく連結体を形成することができる。
【0031】
また、本発明のMEMSフィルタ装置の製造方法は、前記連結構造を形成する工程が、前記振動体の所定の位置で前記連結体を移動し配置する工程を含むものを含む。
この構成によれば、連結位置を調整し、より高精度の位置決めを実現することが可能となる。
【0032】
また、本発明のMEMSフィルタ装置の製造方法は、前記連結構造を形成する工程が、 カーボンナノチューブを形成する工程を含むものを含む。
【0033】
また、本発明のMEMSフィルタ装置の製造方法は、カーボンナノワイヤを形成する工程を含むものを含む。
この構成によれば、自己組織化により極めて微細な構造体を精度よく形成することができる。
【0034】
また、本発明のMEMSフィルタ装置の製造方法は、前記連結構造を形成する工程が、第1のMEMS共振器に負のDC電圧を印加するとともに、前記第1のMEMS共振器に隣接して設けられた第2のMEMS共振器には、正のDC電圧を印加せしめることによってカーボンナノチューブまたはカーボンナノワイヤを成長させる工程を含むことを特徴とする。
この構成によれば、連結体を効率よく成長させることができ、また、MEMS共振器を連結配置し、交互に正および負の電圧を印加することにより、同時に多数の連結体を効率よく形成することができる。また多数個同時に連結しておき、成長後に適宜切断分離してもよい。
【0035】
また、本発明のMEMSフィルタ装置の製造方法は、前記連結構造を形成する工程が、前記振動体の節に相当する位置に前記連結体を配置する工程を含むものを含む。
この構成によれば、位置合わせが容易で、より質量負荷の影響を低減した構造体を容易に形成することが可能となる。
【0036】
また、本発明のMEMSフィルタ装置の製造方法は、前記連結構造を形成する工程が、原子力顕微鏡(AFM)のプローブを用いて前記連結体を前記振動体の所望の領域に配置する工程と、前記連結体の結合に先立ち、走査型トンネル顕微鏡(STM)のプローブで生成されるパルスを用いて導電性粒子を前記振動体の所望の領域に移動させ配置する工程とを含む。
この方法によれば、より高精度の位置決めが可能となる。
【0037】
また、本発明のMEMSフィルタ装置の製造方法は、前記連結構造を形成する工程が、前記振動体の形状加工を行なうMEMS工程において犠牲層を除去し、前記振動体の形状加工を行なうに先立ち、実行される。
この構成によれば、振動体の形状加工により、より強固な接続が可能となる。
【発明の効果】
【0038】
本発明のMEMSフィルタによれば、簡易でかつ低コストで製造可能なナノサイズのCNTなどをMEMS共振器の機械的連結体に使用することにより、質量負荷の影響をMEMSフィルタの特性に反映させない構造を提供することができる。又、CNTを活用することによって、MEMSフィルタのQ値や周波数帯域幅の設計の際に柔軟性を持たせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0040】
本発明の実施の形態を説明するに先立ち、本発明の原理について説明する。
まず、MEMSフィルタの周波数帯域幅は式(1)で表される。式(1)中、QFilterはMEMSフィルタのQ値、BWは周波数帯域幅、foはMEMSフィルタの中心周波数、Cijは正規化した結合係数、krcはCNTが連結するMEMS共振器の実効ばね定数、kcijは連結体のばね定数を表す。ボトム・アップ技術で製造可能なCNTなどを使用することにより、従来のトップ・ダウン技術では製造が困難であった連結体の幅や直径がナノサイズで構成可能となる。さらに、連結体が縦振動モード(Extensional Mode)で結合される場合、CNTのばね定数は式(2)で表される。式(2)中、EはCNTのヤング率、Aは断面面積、Lは長さを表す。
【数1】

【数2】

【0041】
連結体の質量はCNTの密度から算出することができるが、通常のマイクロサイズMEMS共振器と比べると数桁以上の質量低減が可能となる(詳細は実施の形態1で後述する)。本発明によれば、連結体の質量の影響が無視できるため、λ/4の長さの制約がなくなり、MEMS共振器と連結体の接続部位にあたるMEMS共振器質量mrcが最大となる節付近に配置を限定する必要がなくなる。
【0042】
これにより、連結体の位置を変えることができ、krcを広い範囲で可変とすることができるため、式(1)で示されるkrc/kcijを自由に変えることができ、設計に自由度を持たせることが可能となる。又、数桁以上質量が軽いCNTを使用するため、CNTを複数並列に連結することによりkcijを増加させ、コイル形や波形などのCNTを使用することによりkcijを減少させることも可能である。
【0043】
(実施の形態1)
次に本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1のMEMSフィルタ装置を示す斜視図であり、MEMSフィルタの第1の連結方法に従って連結したものである。図2、3において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0044】
このMEMSフィルタ装置は、図1に示すように、第1および第2のMEMS共振器34,36を、CNTで構成された第1の連結体38で接続したことを特徴とする。この第1および第2のMEMS共振器34,36は、同じ構造を有しており、図1に示すように、四角形状の振動子を構成し、第1の連結体38によって機械的接続がなされている。42は各MEMS共振器の中心部に接続されている円柱を示し、これは構造体34と36を支える支柱の役割をするもので、図示しない基板に連結されている。
【0045】
この各MEMS共振器34,36の寸法は、縦、横がいずれも7μm、厚さ2μmで、支柱42の直径と高さはほぼ1μm程度である。このMEMS共振器は、有限要素解析(Finite Element Analysis; FEA)を使って算出した結果、共振周波数が水平振動の振動モードで〜1GHzである。図2ではこのMEMS共振器の静止状態を表し、図3では共振器の振動状態を示す。この振動モードでは、1辺の中心と角の位相が180°異なるように共振し、各MEMS共振器34、36の角も水平振動するため、図1に示す第1の連結体38は縦振動で連結されることになる。
【0046】
この第1の連結体38は要部拡大図を図4に示すように中空糸形状をなしている。このMEMSフィルタ装置では、左右に各MEMS共振器が連結されるため、連結体38は矢印の方向に振動する。図1のMEMSフィルタ装置において、支柱42は、MEMS共振器34,36の共振時の節付近に配置され、各MEMS共振器の中心に位置している。
【0047】
次に、このMEMSフィルタ装置の操作について説明する。
まず、MEMSフィルタ装置の操作時には、図1に示すように、支柱42を介して、大きさVpのDCバイアス電圧を印加し、第1のMEMS共振器34の各辺と所定の間隔を隔てて形成された固定電極41にAC入力電圧を印加することによってMEMS共振器34の振動子と固定電極41の間に静電気力を生起せしめ、MEMS共振器を振動させる。
このMEMSフィルタ装置の場合、第2のMEMS共振器36の固定電極41から出力電流を検出することにより、最終的にこの装置の出力特性として測定する。なお、図1では第1、2のMEMS共振器と第1の連結体38のみで形成したMEMSフィルタ装置を示すが、さらに別のMEMS共振器を連結してもよい。
【0048】
次に、このMEMSフィルタ装置の製造工程について説明する。
図5乃至10は、図1の破線43で示す断面に沿って表された製造工程を示す。
まず、ベース層90としてのシリコン基板表面に酸化シリコン膜からなる酸化膜92を介して、デバイス形成層としての所望のキャリア濃度のシリコン層94を貼着したSOI( Silicon-On-Insulator )基板に、フォトリソグラフィにより形成したマスクを介して反応性イオンエッチング(RIE)を用いた異方性エッチング工程を行い、溝96を形成する(図5)。ここでベース層90の厚みは第1および第2のMEMS共振器の高さ、酸化層92の厚みは支柱42の高さに等しくなるため、あらかじめSOI基板の各層の厚みを選択する。例としてベース層90が2μm、酸化シリコン層92が1μm、デバイス層を構成するシリコン層94が300〜500μmとしたSOI基板を用意する。またエッチングはCFを用いた異方性エッチングを用い、まず、シリコン層94をエッチングし、続いて酸化膜92もエッチングをする。
【0049】
次に図6に示すように、溝96に支柱42となるポリシリコン層を形成する。ここではLPCVD法によりポリシリコン膜を成膜し、成膜後に、シリコン層94上のポリシリコンをエッチバックし、除去する。
【0050】
そして図7に示すように、同様にフォトリソグラフィによってマスクパターンを形成した後、RIEで異方性エッチングを行い、第1および第2のMEMS共振器(の振動体)34と36を形成する。この工程における断面図では表わされないが、図1の検出電極41も同じ工程で形成することが可能である。
【0051】
次に図8に示すように、犠牲層102を形成する。この場合、犠牲層102としては、例えばレジストなどを使用するが、スピナー等を用いてスピンコートする際、MEMS共振器34と36の角に相当する部分(以下角)104が他のレジスト膜厚より薄いことを有する。これについて、さまざまな方法が考えられるが、例えばレジストの粘度が高い材料を使用したり、膜厚をMEMS共振器34と36の高さと比較してなるべく薄く積んだり、あるいはソフトベーク、ハードベークの温度と時間を最適化して、レジストをこのMEMS共振器の角から流れるように形成することが可能である。
【0052】
そして図9に示すように、RIE等などでドライエッチングを行い、MEMS共振器の角104が表面に現れる程度に犠牲層102を薄くする。
【0053】
次に、真空蒸着法により角104に白金などの触媒106を数nm程度の厚みで形成し、犠牲層102とその上に堆積された蒸着物である触媒106をアセトンなどを充填した超音波容液器中で除去する(リフトオフ)。又、最後にMEMS共振器34と36を基板から開放するため、HF液で酸化膜層92などを除去する(図10参照)。
【0054】
このようにして、触媒の形成されたMEM共振器34,36の振動体の角104にCNT形成用の触媒106を形成したのち、CVDのチャンバー内でその間隔にCNTを成長させ連結させ、各振動体を接続する。
【0055】
図11は、本発明の実施の形態1におけるMEMSフィルタ装置の製造に用いられるCNTの成長装置のブロック図を示す。第1の連結方法で用いられる成長装置では、フィルタとなるMEMS共振器の形状加工を行なった後、次の工程としてCNTなどの製造方法を使用して、設計上、望ましい2つ以上のMEMS共振器に触媒を設置し、CVDのチャンバー内でその間隔にCNTを成長させ連結させる。この時、第1、2、3、4MEMS共振器34,36、44、46にバイアス直流電圧56を印加することによって、電気配線52がマイナス電位、電気配線54がプラス電位となるようにし、それぞれに繋がる34,44がマイナス、36、46がプラス電位になる。
【0056】
これによってCNT38、40、48はマイナスからプラス電極に成長する。成長方向を図5の矢印で示す。破線50はこの後にも前記連結体40、MEMS共振器36の振動体と同様に、MEMS共振器と連結体が続くことを示すが、本連結方法を活用することによって、複数のCNTを同時に成長させることが可能となり、時間やコストの低減も可能である。以上のボトム・アップ技術により、高精度のナノサイズオーダーの連結体が製造可能となる。
【0057】
なお、本実施の形態1のMEMSフィルタ装置を形成する際には、CNTで構成された連結体を切断すればよく、多数個のMEMSフィルタ装置を同時形成することができる。
また3個以上のMEMSフィルタを連結したMEMSフィルタ装置の実現も容易である。
【0058】
図12、図13、図14に、本発明の実施の形態1の変形例を示す。この例では、図12,13,14における連結体付近を拡大した図を示す。各図が連結体38を変形した構成になっており、これによって式(1)のばね定数kcijを変えることを可能とする。図12、図13、図14の連結体38の寸法は設計によって変わり、又、CNTが単層CNT(SWCNT)か多層CNT(MWCNT)にもよって変わってくるが、直径は約1nmから50nm、長さは約1μmから5μmで成長が可能である。図12は連結体CNT38を上下の角の間に連結した構成で、触媒58を両側の角に付着することによって作製される。
【0059】
図12のように連結体38が上下に配置された構成では、連結体のkcijを増加させることが可能となる。又、図12の破線で示す円は触媒58が下面に付着している事を示している。
【0060】
図13は連結体38の長さをより長くし、波形に垂れるような形状を有する構造である。もともとCNTは、溶けた触媒粒子と炭素系ガスの分子との化学反応によって成長することが知られている。また触媒58として用いる材料の種類によって化学反応を起こす場所が異なり、例えば、触媒58として鉄(Fe)を用いた場合、化学反応を起こす場所は最初のマイナス電極とCNTの境界面に現れ、その結果、CNTがプラス電極に到達しても成長が続き、その結果、波形を有する形状を有することになる。図13のように連結体38に波形を有することによりkcijを減少させることが可能となり、式(1)で表されるkrc/kcijの設計の柔軟性をもたせることができる。
【0061】
図14は、38を並列に複数並べる構成を有する。この構成は、図12、13の触媒58と比べて大きな触媒58を付着することによって38が複数成長し、結果、図14の構成が可能となる。図8の場合、kcijの増加が可能となる。よって、図12、図13、図14の構成では、連結体のkcijを変化させることができる。
【0062】
図12乃至図14のCNTの寸法は、設計のkcijによって決定される。例えば、非特許文献1のkcij=113N/mを使用した場合、式(2)より、CNTの長さLを1μmで計算すれば直径が12nm、Lを3μmで計算すれば、直径が20nmと算出される。ここでCNTのヤング率はE=1E12Paとした。又、CNT質量はM=ρ*Vで示され、Mは質量、ρは密度、Vは体積を表す。CNTを円筒として考えるとρ=1400kg/mを使用することで、Lが1μmの場合はM=1.131E−22kg,Lが3μmの場合はM=1.319E−18kgが算出できる。
【0063】
これに対し、従来例で説明した非特許文献1の多結晶シリコン連結梁の質量は、同様な方法を使用して算出すると、M=6.670E−14kgとなる。これらの比較によってCNTを連結体に使用することで4桁以上の質量減少が可能となることが明らかになる。
【0064】
なお、図12乃至図14においてCNTの位置はMEMS共振器の四角型の角に配置されたが、場所については限定することなく、式(1)の設計値krcに等しくなるようにすればよい。
【0065】
又、CNTの成長がしやすい場所を選択することによってより、強固な連結構造を得ることが可能となる。例えば、図15に示すようにMEMS共振器の四角型の角を三角爪にしたり、あるいは図16に示すようにMEMS共振器の四角型の角に片持ち梁カンチレバーを形成した構造にすることで1本のCNTをより所望の配置となるように成長させることが可能となる。
三角爪にすることにより、連結部の面積が小さくてもより強固な接続が可能となる。また片持ち梁カンチレバーを形成することにより、より確実な振動を実現することができる。
【0066】
式(1)の設計値krcはMEMS共振器によっても変化するが、例えば非特許文献1のMEMS共振器で振幅が大きい付近では、ばね定数が低くkrc=1362N/mで表され、又、ばね定数が高い節付近ではkrc=96061N/mで表される。設計上所望のkrc/kcijが要求される場合、たとえ実際のCNTのばね定数kcijが算出式(2)から相違しても、krcが94000N/m以上と広い範囲で変化できるため、krc/kcijを設計上所望の値に設定することができる。
【0067】
なお、本実施の形態1において、四角型のMEMS共振器34、36を2個連結したが、図11に示したように、MEMS共振器34、36、44、46を4個連結したまま用いてもよく、構造には限定はなく、連結体38が成長し易い構成を用いるようにすれば良い。
【0068】
(実施の形態2)
次に本発明の実施の形態2について説明する。
本発明の実施の形態1における支柱42は、ポリシリコンで構成したが、本実施の形態では、この支柱に相当する部分をCNT12で構成する例について説明する。
【0069】
本実施の形態では、振動体の節に相当する部分に孔を形成しておき、この孔に挿通せしめられるように自然組織化によりCNTを成長した後、振動体との接続部にポリシリコンなどを充填し、強固な接続を得るように形成することを特徴とする。
【0070】
図17乃至22は図1の破線43の断面に相当するで断面で表された製造工程を示す。図17は図5と同様の工程で、図17は図5において溝96を形成するためのマスクとして用いたフォトレジストからなるの犠牲層110を除去する前を示す。
【0071】
そして真空蒸着法により、触媒106を形成する(図18)。この例では、蒸着装置を使用することで溝96の側面に付着するのを避けるようにする。
そして図19に示すように、リフトオフにより犠牲層110を除去する工程後、溝96の底に残された触媒106にCNT112を成長させる。
又、図20では、CNT112の成長後、LPCVD法により、溝96内に酸化シリコン膜114を埋める。ここでは支柱42の高さまで酸化シリコン膜114を形成する。又、LPCVD法を用いても良いが、LPCVD法を用いた場合はシリコン層94の上に残った酸化シリコン膜はCMPなどで除去する必要があるため、あらかじめ犠牲層を形成して沖,この上層にスパッタ法により酸化シリコン膜を成膜し、成膜後犠牲層を除去すると共に犠牲層上の酸化シリコン膜を除去するリフトオフ工程を行い、不要な場所には酸化膜が堆積されないようにしても良い。
なお、ここでは酸化シリコン膜を用いたが、材料には限定は無く、後の工程で除去できる膜質であれば良く、例えば真空蒸着法により、メタルを蒸着し、リフトオフにより犠牲層を除去して不要な場所にメタルが堆積されない方法をとっても良い。
【0072】
次に図21に示すように、MEMS共振器の部分となる溝96をLPCVD法によりポリシリコンなどで埋めて、デバイス層を構成するシリコン層94の上に残ったポリシリコンはCMPなどで除去する。
【0073】
最後に図22は図10で示したのと同様の工程を示し、振動子のパターニング、触媒の形成とともに酸化シリコン膜92を除去し振動子を形成する図20〜22の製造工程を実行し、CNTを支柱に用いた振動子が形成される。
この構成により、CNTの形成とMEMS工程を一体化することにより、製造が容易となる上、振動子と連結体との結合を強固にすることができ、位置合わせも極めて容易である。
【0074】
(実施の形態3)
図23は本発明の実施の形態3におけるMEMSフィルタの第2の連結方法を示す。図24、25、26において、図23と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0075】
本実施の形態では、図23に示すように、四角型を有する第1、2のMEMS共振器70、72の節に相当する中心部を、CNTからなる第1の連結体74で機械的に接続したことを特徴とするものである。他は図1に示した実施の形態1と同様であり、76は各MEMS共振器の固定電極を示している。
また製造方法としては前述した第2の連結方法に相当するもので第1、2のMEMS共振器70、72の振動子を形成したのち連結体74で連結するという方法をとる。
【0076】
また振動モードとして、実施の形態1のMEMS共振器振動モードを使用することを前提とする。この振動モードでは四角型の中心を節としている。このため最適な構造として図23に示すように支柱84をMEMS共振器70,72の下面中心から支える他、式(1)から示されるMEMS共振器と連結体の接続部位にあたるMEMS共振器ばね定数krcを増加させるため、連結体74を用いてMEMS共振器70,72をその節付近で連結する。
【0077】
図24、25、26、27では第2の連結方法を使用するが、構成を簡潔にするため、図24、25、26で表す図は、図23の実施の形態3で表される第1のMEMS共振器70と第1の連結体74のみについて説明する。
なお第2の連結方法では、連結体とMEMS共振器の製造を分離して構成し、最後の工程で連結体をMEMS共振器に接続する方法を用い、ナノサイズの第1の連結体74を移動する方法が必要となる。そこで図22では、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)などにより、連結体74とAFMプローブ78との間にファンデルワールス力を働かせ、吸着した連結体74を四角型の中心点まで移動する。図25は、さらに連結体74をMEMS共振器70に近づけ所望の中心付近に接触させる。その場合、走査形プローブ顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope; STM)80などにより、接続部位に導電体粒子82を設ける。STMプローブ80に直流電圧をパルス電圧で印加することで、その電界で働く静電力により、導電体粒子82をプローブ80の端部に蒸着し、これを接続部位に移動する。
【0078】
また、STMのプローブ80に蒸着した導電体粒子82を第1のMEMS共振器70と第1の連結体74の接続部位に配置するには、同様に直流パルス電圧86を印加することによって可能となる。図27は図25の続きで、第1の連結体74を第2のMEMS共振器72に接続する工程を示す。ここでは、図22でAFMプローブ78とCNTの端部74が接触している状態を保ち第2のMEMS共振器72の四角型中心部に移動させ、図25で導電体粒子82を移動させた方法と同様の手段を使用し、導電体粒子88を第2のMEMS共振器72と第1の連結体74の接続部位に配置する。この工程によって、第1と第2のMEMS共振器70、72は第1の連結体74によって接続される。図26は図25の変形図を示し、AFMプローブ78の移動中、第1の連結体74をコイル状に成形したものである。この構成により、式(1)のkcijを減少することが可能となる。
【0079】
なお、本実施の形態1乃至3において、MEMS共振器を連結する連結体をCNTで構成した、例えばボトム・アップ技術で製造可能な他のナノワイヤーであっても良い。又、CNTの種類は、例えば単層CNT(SWCNT)、多層CNT(MWCNT)のどちらを使用しても良い。
【0080】
本発明は前記実施の形態に限定されることなく、適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明にかかるMEMSフィルタは、簡易でしかも低コスト製造可能なナノサイズのCNTなどをMEMS共振器の機械的連結体に使用することによって、質量負荷の影響のないMEMSフィルタ特性を提供するとともに、設計に柔軟性を有する、小型、高性能の、モバイル端末を実現するものである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態1におけるMEMSフィルタ装置を示す図
【図2】本発明の実施の形態1を有限要素解析で表したMEMS共振器の静止状態を示す図
【図3】本発明の実施の形態1を有限要素解析で表したMEMS共振器の振動状態を示す図
【図4】本発明の実施の形態1における連結体の振動方向と縦振動モードを示す図
【図5】本発明の実施の形態1におけるMEMSフィルタ装置の製造工程を示す図
【図6】本発明の実施の形態1におけるMEMSフィルタ装置の製造工程を示す図
【図7】本発明の実施の形態1におけるMEMSフィルタ装置の製造工程を示す図
【図8】本発明の実施の形態1におけるMEMSフィルタ装置の製造工程を示す図
【図9】本発明の実施の形態1におけるMEMSフィルタ装置の製造工程を示す図
【図10】本発明の実施の形態1におけるMEMSフィルタ装置の製造工程を示す図
【図11】本発明の実施の形態1における連結体の形成工程を示す説明図
【図12】本発明の実施の形態1における連結体38を上下の角に成長させた斜視図
【図13】本発明の実施の形態1における連結体38に波形を有する図
【図14】本発明の実施の形態1における連結体38を並列に複数並べる構成を有する図
【図15】本発明の実施の形態1における連結体38の連結部(MEMS共振器の角に三角爪を構成した)の変形例を示す図
【図16】本発明の実施の形態1における連結体38の連結部(MEMS共振器の角にカンチレバーを構成した)の変形例を示す図
【図17】本発明の実施の形態2におけるMEMSフィルタ装置の製造工程を示す図
【図18】本発明の実施の形態2におけるMEMSフィルタ装置の製造工程を示す図
【図19】本発明の実施の形態2におけるMEMSフィルタ装置の製造工程を示す図
【図20】本発明の実施の形態2におけるMEMSフィルタ装置の製造工程を示す図
【図21】本発明の実施の形態2におけるMEMSフィルタ装置の製造工程を示す図
【図22】本発明の実施の形態2におけるMEMSフィルタ装置の製造工程を示す図
【図23】本発明の実施の形態3におけるMEMSフィルタ装置を示す図
【図24】本発明の実施の形態3におけるAFMを使用して連結体74を移動する工程図
【図25】本発明の実施の形態3におけるSTMを使用して連結体74を導電体粒子82で付着する接続工程図
【図26】本発明の実施の形態3における連結体74にコイル形を有する変形図
【図27】本発明の実施の形態3における連結体74を第2のMEMS共振器72に接続する工程図
【図28】従来例のMEMS共振器を機械的に3つ連結したブロック図
【図29】図1の電気的等価回路図
【図30】図28の構造3段のMEMSフィルタ通過波形図
【符号の説明】
【0083】
10、12、14 第1、2、3のMEMS共振器
16、18 第1、2の連結梁
20 第1のMEMS共振器の等価回路
22 第2のMEMS共振器の等価回路
24 第3のMEMS共振器の等価回路
26、28 第1、2の連結梁の等価回路
30 理想波形
32 歪んだ波形
34、36 第1、2のMEMS共振器
38、40、48 第1、2、3の連結体
41 固定電極
42 支柱
43 破線
44、46 第3、4のMEMS共振器
50 破線
52、54 マイナス、プラス電気配線
56 バイアス直流電圧
58 触媒
70、72 第1、2のMEMS共振器
74、76 第1、2の連結体
78 AFMプローブ
80 STMプローブ
82、88 第1、2導電体粒子
86 直流パルス電圧
90 SOI基板のシリコン層(ベース層)
92 SOI基板の酸化シリコン層
94 SOI基板のシリコン層(デバイス層)
96 溝
102 犠牲層
104 MEMS共振器34と36の角部分
106 触媒
110 96を構成するための犠牲層
112 CNT
114 CVD酸化シリコン膜
116 CVDポリシリコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的振動可能に形成された振動体と、前記振動体に対して所定の間隔を隔てて配設された電極とを有し、電気機械変換を可能にする電気機械共振器を、連結体を介して複数個連結してなり、
前記連結体がナノサイズの線状体であることを特徴とするMEMSフィルタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のMEMSフィルタ装置であって、
前記連結体はカーボンナノチューブ(CNT)であることを特徴とするMEMSフィルタ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のMEMSフィルタ装置であって、
前記連結体はナノワイヤであることを特徴とするMEMSフィルタ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のMEMSフィルタ装置であって、
前記振動体は、四角形をなし少なくとも1つの節を有するMEMS共振器を構成すると共に、基板に支持せしめられるように少なくとも1つの支持機構を具備したことを特徴とするMEMSフィルタ装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のMEMSフィルタ装置であって、
前記連結体は複数本で構成されることを特徴とするMEMSフィルタ装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載のMEMSフィルタ装置であって、
前記連結体は前記振動体の複数箇所を接続するように構成されたことを特徴とするMEMSフィルタ装置。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれかに記載のフィルタ装置であって、
前記連結体はコイル状体であることを特徴とするMEMSフィルタ装置。
【請求項8】
請求項4に記載のMEMSフィルタ装置であって、
前記支持機構はカーボンナノチューブで構成されることを特徴とするMEMSフィルタ装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のMEMSフィルタ装置であって、
前記連結体は前記振動体の節で連結されることを特徴とするMEMSフィルタ装置。
【請求項10】
機械的振動可能に形成された少なくとも2つの振動体と、前記各振動体に対して所定の間隔を隔てて配設された電極とを有し、電気機械変換を可能にする電気機械共振器を、基板上に近接して配置形成する工程と、
前記振動体を、ボトムアップ技術により、ナノサイズの線状体からなる連結体で接続する連結構造を形成する工程とを含むことを特徴とするMEMSフィルタ装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載のMEMSフィルタ装置の製造方法であって、
前記連結構造を形成する工程は、前記振動体の所定の位置に触媒を形成し、前記触媒から前記連結体を成長する工程を含むことを特徴とするMEMSフィルタ装置の製造方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載のMEMSフィルタ装置の製造方法であって、
前記連結構造を形成する工程は、前記振動体の所定の位置で前記連結体を移動し配置する工程を含むことを特徴とするMEMSフィルタ装置の製造方法。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれかに記載のMEMSフィルタ装置の製造方法であって、
前記連結構造を形成する工程は、
カーボンナノチューブを形成する工程を含むことを特徴とするMEMSフィルタ装置の製造方法。
【請求項14】
請求項10乃至12のいずれかに記載のMEMSフィルタ装置の製造方法であって、
カーボンナノワイヤを形成する工程を含むことを特徴とするMEMSフィルタ装置の製造方法。
【請求項15】
請求項13乃至14のいずれかに記載のMEMSフィルタ装置の製造方法であって、
前記連結構造を形成する工程が、第1のMEMS共振器に負のDC電圧を印加するとともに、前記第1のMEMS共振器に隣接して設けられた第2のMEMS共振器には、正のDC電圧を印加せしめることによってカーボンナノチューブまたはカーボンナノワイヤを成長させる工程を含むことを特徴とするMEMSフィルタ装置の製造方法。
【請求項16】
請求項10乃至15のいずれかに記載のMEMSフィルタ装置の製造方法であって、
前記連結構造を形成する工程は、前記振動体の節に相当する位置に前記連結体を配置する工程を含むことを特徴とするMEMSフィルタ装置の製造方法。
【請求項17】
請求項10乃至15のいずれかに記載のMEMSフィルタ装置の製造方法であって、
前記連結構造を形成する工程は、原子力顕微鏡(AFM)のプローブを用いて前記連結体を前記振動体の所望の領域に配置する工程と、
前記連結体の結合に先立ち、走査型トンネル顕微鏡(STM)のプローブで生成されるパルスを用いて導電性粒子を前記振動体の所望の領域に移動させ配置する工程とを含むことを特徴とするフィルタ装置の製造方法。
【請求項18】
請求項10乃至17のいずれかに記載のフィルタ装置の製造方法であって、
前記連結構造を形成する工程は、前記振動体の形状加工を行なうMEMS工程において犠牲層を除去し、前記振動体の形状加工を行なうに先立ち、実行されることを特徴とするMEMSフィルタ装置の製造方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−41911(P2006−41911A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218798(P2004−218798)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)