説明

MEMSベース形のナノポジショナおよびナノマニピュレータ

サブナノメートルの分解能およびミリニュートンの力のアウトプットの両方を達成できるMEMSベース形ナノマニピュレータが提供される。ナノマニピュレータまたはナノポジショナは、インプット変位を減少させかつインプット力を増幅するリニア増幅機構と、増幅機構を駆動して前後運動を生じさせるマイクロアクチュエータと、増幅機構のインプット変位を測定するポジションセンサとを有している。ポジショナセンサは、ナノマニピュレーション中に正確な閉ループ制御を可能にするポジションフィードバックを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願)
本願は、2006年6月23日付カナダ国特許第2,551,194号の利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、ナノテクノロジおよびナノサイエンスおよびナノエンジニアリングに関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロエレクトロメカニカルシステム(Microelectromechanical Systems:MEMS)とは、非常に小さいスケールの技術をいい、ナノレベルのナノエレクトロメカニカルシステム(nanoelectromechanical systems:NEMS)に集中して使用されるが、NEMSはまた、アクティブエレメントとしてナノスケール材料を用いているナノデバイスをも含むものである。
【0004】
ナノ材料(例えば、カーボンナノチューブ、シリコンナノワイヤおよび酸化亜鉛ナノロッド)のマニピュレーションおよび特徴付けを含むナノサイエンスおよびナノテクノロジにおける最近の進歩およびNEMSの開発は、ナノメートルのポジショニング分解能、マイクロメートル運動範囲、高反復性および大きい力アウトプット(すなわち、ペイロードドライビング能力)を有するマニピュレータを必要とする。現在では、SEM(走査形電子顕微鏡:scanning electron microscope)またはTEM(透過形電子顕微鏡:transmission electron microscope)内の正確なポジショニングおよびマニピュレーションに使用される殆どの一般的ナノマニピュレータが、圧電アクチュエータを使用している。
【0005】
MEMS技術を使用するデバイスを製造するのに、他の多くの試みがなされている。ナノポジショニングには、静電マイクロアクチュエータが最も一般的に使用されている。10nmのポジショニング分解能が得られる、静電容量形ポジションセンサを備えたコームドライブ(comb drive)マイクロアクチュエータが提案されている(下記非特許文献1参照)。しかしながら、このデバイスは、そのサブマイクロニュートン力のアウトプットのため、用途が制限されている。このデバイスは、荷重を駆動するときに、分解能およびポジショニング能力が犠牲にされる。
【0006】
ナノポジショナの開発には、電熱(electrothermal)マイクロアクチュエータも使用された。下記非特許文献2には、電熱アクチュエータにより作動される2段階(粗運動段階および微細運動段階)ナノポジショナが開示されている。
【0007】
また、ナノ材料の機械的特性試験についての30nmの分解能をもつ熱的作動段階も報告されている(下記非特許文献3参照)。電熱マイクロ作動は非常に大きいアウトプットが得られるが、ヒステリシスおよび熱ドリフトのため、開ループ作動におけるポジショニング精度は比較的低くなる(数十ナノメートルから数百ナノメートル)。また、プローブチップの温度を良く制御することが困難であるため、温度に敏感な用途での使用が妨げられる。
【0008】
下記特許文献1には、多壁形ナノチューブを嵌合するのにナノマニピュレーションシステムを使用することが教示されている。この特許は、ナノマニピュレータを必要とする特定用途を開示しているが、ナノマニピュレータ自体に関する情報は全く開示されていない。
【0009】
下記特許文献2には、2つのカーボンナノチューブおよび静電体を使用して、ナノスケール物品を把持するための1対のナノピンセット(nanotweezers)を形成することが開示されている。ナノピンセットは、このポジショニングおよび移動を行うナノマニピュレータに取付けられ、これは、ナノマニピュレータを必要とする他の特定用途である。
【0010】
下記特許文献3は、圧電アクチュエータを使用してナノポジショニングを行うことに関するものである。ポジショニング段階はマイクロデバイスではなく、むしろマクロシステムである。一般に圧電アクチュエータをベースとするシステムは、1nmの運動分解能が得られる。しかしながら、圧電アクチュエータに特有のヒステリシスおよびクリープにより、大きい開ループポジショニングエラーが生じ、従って複雑な補償制御アルゴリズムが必要になる。
【0011】
下記特許文献4には、SEMまたはTEMに使用する圧電アクチュエータを使用したナノマニピュレーションシステムが開示されている。商業的に入手できる圧電ナノマニピュレータは、高コストであることに加え、サイズが大きい(5cmから20cm)ため、用途に厳格なスペース条件がある場合には、使用が制限されてしまう。このシステムはSEMの内部に取付けることはできても、大き過ぎるため、TEMのチャンバ内に適合させることはできない。このシステムは5nmの運動分解能を有するマクロスケールシステムであり、本発明によるMEMSベース形ナノマニピュレータ(mm×mmのサイズおよびサブナノメートルの運動分解能を有する)とは異なるものである。
【0012】
要するに、既知の圧電段階は1nmのポジショニング分解能を達成できるが、圧電アクチュエータに特有のヒステリシスおよびクリープのために大きい開ループポジショニングエラーが生じ、従って、複雑な補償制御アルゴリズムが必要になる。また、商業的に入手できる圧電ナノマニピュレータは、高コストであることに加え、サイズが大きい(5cmから10cm)ため、用途に厳格なスペース条件がある場合、特にTEMのチャンバ内に使用することは制限されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,874,668号明細書
【特許文献2】米国特許第6,805,390号明細書
【特許文献3】米国特許第5,903,085号明細書
【特許文献4】米国特許第6,967,335号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】P. Cheung and R. Horowitz著「静電駆動形ポリシリコンマイクロアクチュエータの設計、製造、ポジション検出および制御(Design, fabrication, position sensing, and control of an electrostatically-driven polysilicon microactuator)」(IEEE Trans. Magnetics, 第32巻、第122頁−128頁、1996年)
【非特許文献2】N.B. HubbardおよびL.L. Howell著「2段階熱作動形ナノポジショナの設計および特徴付け(Design and characterization of a dual-stage, thermally actuated nanopositioner)」(J. of Nicromechanics and Microengineering, 第15巻、第8号、第1482頁−1493頁、2005年)
【非特許文献3】S.N. Lu、D.A. Dikin、S.L. Zhang、F.T. Fisher、J. LeeおよびR.S. Ruoff著「マイクロマシンによる熱的作動形試験段階でのナノスケールの分解能の実現(Realization of nanoscale resolution with a micromachined thermally actuated testing stage)」(Review of Scientific Instruments、第5巻、第6号、第2154頁−2162頁、2004年)
【非特許文献4】Yu Sun、S.N. Fry、D.P. Potassek、D.J. BellおよびB.J. Nelson著「新規なコームドライブ形態を備えたマイクロ力センサを用いたフルーツフライフライト挙動の特徴付け(Characterizing fruit fly flight behavior using microforce sensor with a new comb drive configuration)」(IEEE/ASME Journal of Microelectromechanical Systems、第14巻、第1号、第4頁−11頁、2005年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
MEMSベース形ナノマニピュレータは、低コスト、小サイズ、高速レスポンスおよびシステムの集積化に対するフレキシビリティがある等の長所を有しているが、既存のMEMSデバイス(例えば、静電アクチュエータおよび電熱アクチュエータ)は、高ポジショニング分解能および大きい力アウトプットの両方を達成することができない。
【0016】
要望されているものは、既存のMEMSデバイスの上記欠点を解消できる、サブナノメートルの分解能およびミリニュートン力のアウトプットを有する新規なMEMSベース形ナノマニピュレータである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様では、サブナノメートルの分解能およびミリメートル力のアウトプットの両方を達成できるMEMSベース形ナノマニピュレータが提供される。
【0018】
本発明の他の態様では、ナノマニピュレーションおよびナノポジショニング中の正確な閉ループ制御を可能にするポジションフィードバックが得られる集積形変位センサが提供される。
【0019】
本発明の一実施形態では、ナノマニピュレータは、MEMS静電マイクロアクチュエータの高い反復可能性および高速レスポンスを得るのに有効であると同時に、小さいアウトプット力に制限されないようにする。本発明のデバイスは、高度にリニアな増幅機構と、横向きコームドライブマイクロアクチュエータと、静電容量形ポジションセンサとを集積している。増幅機構は、コームドライブマイクロアクチュエータにより付与されるインプット変位を減少させて、アウトプットプローブチップでの高いポジショニング分解能を達成すること、およびナノ物品をマニピュレートするアウトプット力を増幅することに使用される。静電容量形ポジションセンサは、インプット変位を測定するポジションエンコーダとしてインプット端に配置される。増幅機構の厳格なリニアリティは、ポジションセンサがアウトプットプローブチップの正確なポジションフィードバックを行って、閉ループ制御形ナノマニピュレーションを可能にすることを保証する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】1自由度のナノマニピュレータを示す図面である。
【図2】図1のA−A線におけるナノマニピュレータの断面図である。
【図3】単軸撓みヒンジピボットを備えたリニア増幅機構を示す概略図である。
【図4】フレキシブルビームピボットを備えたリニア増幅機構を示す概略図である。
【図5】2つの1自由度ナノマニピュレータを直角に連結することにより作られた2自由度ナノマニピュレータを示す図面である。
【図6】2段レバー機構を集積したナノマニピュレータを示す図面である。
【図7】単軸撓みヒンジピボットを備えた2段レバー機構を示す概略図である。
【図8】フレキシブルビームピボットを備えた2段レバー機構を示す概略図である。
【図9】差動トリプレート静電容量形ポジションセンサを集積したナノマニピュレータを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の1つ以上の実施形態を単なる例示として説明する。図面には、本発明の1つ以上の実施形態が例示されている。本明細書の説明および添付図面は、図示および理解の補助のみを目的とするもので、本発明の限定を意味するものではないことを理解すべきである。
【0022】
本発明は、サブナノメートル分解能およびミリメートル力のアウトプットの両方を達成できるMEMSベース形のナノマニピュレータを提供する。ナノマニピュレーション中の正確な閉ループ制御を可能にするポジションフィードバックを得るための集積形変位センサも提供される。
【0023】
本発明はナノマニピュレータまたはナノポジショナのいずれの機能も有することを特に理解すべきである。ナノマニピュレータとしては、本明細書で説明する用途以外に、デバイスは、例えば生物理的特性の特徴付けまたはナノチューブ、ナノワイヤおよびナノ粒子等のナノサイズ物品の正確な拾い上げおよび配置のように、生物学的分子と正確に相互作用することに適用できる。ナノポジショナとしては、デバイスは、例えば、データ伝達用のコンピュータのハードドライブのサスペンションヘッドに取付けられるx−y正確ポジショナとして面内ポジショニングする一定範囲の正確な用途を見出すことができる。現在では、メソスケールの圧電ポジショナが、ハードドライブのサスペンションヘッドに使用されている。ハードドライブ産業の比較的長期の目的は、0.01nmのポジショニング分解能を達成することにある。この超高分解能は本発明の能力の範囲内のものであり、本発明はまた、低コスト、閉ループ作動、およびデバイス全体の高い再現性をも提供できる。
【0024】
本発明の一実施形態では、ナノマニピュレータは、図1および図2に示すように、3つの主要部品、すなわち(i)インプット変位を小さくしまたは低減させかつインプット力を増幅または増大させるリニア増幅機構2と、(ii)前後方向の運動を生じさせる増幅機構を駆動する横向きコームドライブマイクロアクチュエータC1、C2、C5、C6と、(iii)増幅機構のインプット変位を測定する静電容量形ポジションセンサC3、C4とを有している。静電容量形ポジションセンサは、例えば、シャフト3を介してインプット端に連結できる。
【0025】
コームドライブマイクロアクチュエータは、MEMSリサーチに一般的に使用されているコンポーネンツであり、その設計は良く知られている。本発明の背景において、コームドライブマイクロアクチュエータは、高速レスポンスであるが小さい力のアウトプットを有している。増幅機構2は減少モードで使用され、マイクロアクチュエータC1、C2、C5およびC6に、大きいインプット変位(この変位は、アウトプット端9でナノスケール変位に減少される(図3))を生じさせる低インプット剛性を付与する。増幅機構2のインプット剛性およびインプット端での拘束ビーム(tethering beams)TB1、TB2,…、TB6の剛性を変えることにより、ナノマニピュレータの分解能および運動範囲を調節できる。
【0026】
コームドライブマイクロアクチュエータにより発生される全静電容量力Feは、
【数1】


ここで、εは誘電率、Vは作動電圧、haはフィンガ厚、gaは隣接する作動コームフィンガ間のギャップ、およびNaは作動コームフィンガ対の数である。
【0027】
従って、ナノマニピュレータのアウトプット変位youtは、
【数2】


ここで、αは増幅機構の減少比、およびKsumはナノマニピュレータのインプット剛性である。
【0028】
インプット変位を測定しかつアウトプット変位を得るために、電極対C4、C5のキャパシタンス変化が測定される。静電容量形センサのキャパシタンス変化ΔCは、

【数3】


ここで、Nsは検出コームフィンガ対の数、hsは検出フィンガ厚、gsは隣接検出コームフィンガ間のギャップ、およびyinはインプット変位である。
【0029】
アウトプット変位youtも次式から正確に予測できる。

【数4】

【0030】
デバイスは、デバイス厚の正確な制御および機械的連結および電気的絶縁の便宜を与えるSOI(シリコンオンインシュレータ:silicon on insulator)上のDRIE(ディープリアクティブイオンエッチング:deep reactive ion etching)により構成するのが好ましい(これらのマイクロファブリケーション法は、例えば上記非特許文献4から知られている)。作動コームドライブと検出コームドライブの群間の電気的絶縁は、デバイスのシリコン層5(図2)内に形成されかつ二酸化ケイ素層6で終端しているエッチングギャップ4により達成される。
【0031】
図3および図4には、リニア増幅機構の構造的細部が示されている。この機構は、2つの一般的な増幅機構、すなわちフレキシブルピボットにより直列に連結されたトグル機構T1、T2およびレバー機構L1、L2を集積している。ピボットは、図3の単軸撓みヒンジH1、H2、…、H6、または図4のフレキシブルビームB3、B4、…、B8で形成できる。インプット変位は最初にトグル機構により減少され、次にレバー機構により運動が更に減少される。レバーの回転によりアウトプット端で横方向変位が引起こされないようにするため、2対のトグル機構T1、T2およびレバー機構L1、L2は対称的に構成されている。フレキシブルビームB1、B2は、レバー機構の2つのアウトプット端をアウトプットプラットホーム9に連結している。
【0032】
増幅機構の減少比αは、

【数5】


ここで、l0およびl1はレバーの短ビームおよび長ビームの長さ、l2はトグルビームの長さ、θ1、θ2はレバーの長ビームおよびトグルビームの回転角である。
【0033】
増幅機構のインプット剛性Ksumは、

【数6】




ここで、Khingeは単軸撓みヒンジの捩り剛性、Eはシリコンのヤング係数、w、hおよびlはフレキシブルビームB1、B2の幅、高さおよび長さ、W1、1およびL1はフレキシブルビームTB2、TB3、TB4およびTB5の幅、高さおよび長さ、およびW2、2およびL2はフレキシブルビームTB1、TB6の幅、高さおよび長さである。
【0034】
例えば2自由度のナノマニピュレータは、図5に示すように、2つの1自由度ナノマニピュレータNM1、NM2を直角に連結することにより構成できる。プローブチップをx方向に沿って駆動するように応答できるNM2は、4つの拘束ビームTB1、TB2、TB3およびTB4により懸架されている。NM2は、NM1を駆動してy方向に沿う運動を生じさせる。
【0035】
ナノマニピュレータはまた、インプット変位の減少およびアウトプット力の増幅を行うべく、他の増幅機構を採用することができる。図6は2段レバー機構2を集積したナノマニピュレータを示し、その構成が図7および図8に示されている。2つのレバー機構L1、L4、インプット端8およびアウトプット端9はフレキシブルピボットにより連結されており、フレキシブルピボットは、図7に示す単軸撓みヒンジH1、H2、H8およびH9で構成するか、図8に示すフレキシブルビームB1、B2、B8およびB9で構成できる。インプット変位は、L1およびL2により2倍減少される。同様な対称的構成により、レバー回転により引起こされるアウトプット端の横方向変位が除去される。
【0036】
ポジション検出は、リニアニティおよび横向きコームドライブよりも高い分解能を達成すべく、横向きコームドライブまたは差動横向きコームドライブのいずれかを用いることができる。図9に示すように、バルクマイクロマシニングに適した差動トリプレートコーム構造C3、C4は、横向きコームポジションセンサ(図1のC3、C4)より高い感度を有し、従って、ナノマニピュレータの運動分解能を更に改善する。
【0037】
上記の例では、横向きコームドライブマイクロアクチュエータの使用を説明したが、本発明の他の実施形態も可能である。例えば、一般に、電熱マイクロアクチュエータの反復可能性はコームドライブマイクロアクチュエータより低いが、本発明の集積形ポジションセンサでは、電熱マイクロアクチュエータの低い反復可能性を補償する閉ループポジショニングを遂行できる。従って、閉ループポジショニングが可能な集積形ポジションセンサによれば、本発明の他の実施形態では、コームドライブ静電マイクロアクチュエータの代わりに電熱マイクロアクチュエータを使用できる。
【0038】
本発明の他の設計的特徴として、粗い・微細なアクチュエーション機構を含むことも理解すべきである。上述したものは、数マイクロメートルの全体的運動を生じさせることができるナノマニピュレータ・ナノポジショナである。これらのデバイスと他の静電マイクロアクチュエータまたは電熱マイクロアクチュエータとを、粗いポジショニング用アウターループとして集積することにより、デバイスは、数十マイクロメートルの作動範囲を有すると同時に、同じサブナノメートルの運動分解能を発揮する。
【0039】
また、本発明のx−y面内ナノポジショナを、例えばマイクロアセンブリを用いてx−y−z3次元ナノポジショニングデバイスに拡張すれば、例えば、原子間力顕微鏡(atomic force microscopy:AFM)スキャニング、光学的干渉顕微鏡(optical coherence microscopy:OCM)およびフェーズ−シフト干渉計等のより広い用途が可能になる。
【0040】
要するに、本発明のMEMSナノマニピュレータは、次のような長所、すなわち(i)サブナノメートルの分解能、(ii)ミリニュートンの力アウトプット、(iii)閉ループ制御ナノマニピュレーションの可能性、(iv)高速レスポンス、(v)ウェーハレベルのマイクロファブリケーションによる低コスト、および(vi)小サイズを有している。
【0041】
当業者ならば、本発明の範囲から逸脱することなく、本願で説明した1つ以上の実施形態の他の変更が可能でありかつ実施できることは明らかであろう。
【符号の説明】
【0042】
2 増幅機構(2段レバー機構)
5 シリコン層
6 二酸化ケイ素層
8 インプット端
9 アウトプット端(アウトプットプラットホーム)
B1、B2、…、B9 フレキシブルビーム
C1、C2、C5、C6 横向きコームドライブマイクロアクチュエータ
C3、C4 静電容量形ポジションセンサ
H1、H2、…、H6 単軸撓みヒンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)増幅機構と、
(b)増幅機構のインプット端に連結されたマイクロアクチュエータとを有する、物品をマニピュレートしまたはポジショニングするデバイスにおいて、
増幅機構が、インプット変位を減少させかつインプット力を増幅し、
マイクロアクチュエータが、インプット端を一軸に沿って前後に駆動し、これによりアウトプット端を前記軸に沿って前後に運動させる、
ことを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記インプット端に静電容量形ポジションセンサが連結されていることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記静電容量形ポジションセンサは、増幅機構の前後方向のインプット変位を測定し、これにより増幅機構のアウトプット変位を予測することを特徴とする請求項2記載のデバイス。
【請求項4】
前記静電容量形ポジションセンサは、横向きコームドライブポジションセンサまたは差動横向きコームドライブポジションセンサであることを特徴とする請求項2記載のデバイス。
【請求項5】
前記マイクロアクチュエータは、コームドライブ静電マイクロアクチュエータまたは電熱マイクロアクチュエータであることを特徴とする請求項2記載のデバイス。
【請求項6】
前記増幅機構は、対称的に構成されたトグル機構およびレバー機構を有していることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
前記増幅機構は1対のトグル機構および1対のレバー機構を有し、トグル機構およびレバー機構は対称的に構成されていることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項8】
前記トグル機構およびレバー機構はフレキシブルに連結されていることを特徴とする請求項7記載のデバイス。
【請求項9】
前記トグル機構およびレバー機構は、単軸撓みヒンジまたはフレキシブルビームにより連結されていることを特徴とする請求項8記載のデバイス。
【請求項10】
前記レバー機構は、フレキシブルビームによりアウトプット端に連結されていることを特徴とする請求項6記載のデバイス。
【請求項11】
運動分解能が1nmより小さいことを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項12】
粗−微細アクチュエーション機構を形成すべく第二マイクロアクチュエータに集積されており、第二マイクロアクチュエータは粗いポジショニングを行うアウタループとして作動することを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項13】
物品のマニピュレーションおよびポジショニングを行うタンデムデバイスであって、第一ナノマニピュレータおよび第二マニピュレータを有し、第一ナノマニピュレータおよび第二ナノマニピュレータの各々が、増幅機構と、この増幅機構のアウトプット端に連結されたマイクロアクチュエータとを備え、第一ナノマニピュレータおよび第二マニピュレータは実質的に直角位置に配置されることを特徴とする、タンデムデバイス。
【請求項14】
2つの方向に沿う面内運動を生じさせることができることを特徴とする請求項13記載のタンデムデバイス。
【請求項15】
前記第一ナノマニピュレータまたは第二ナノマニピュレータは拘束ビームにより支持されていることを特徴とする請求項13記載のタンデムデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−541079(P2009−541079A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516835(P2009−516835)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際出願番号】PCT/CA2007/001092
【国際公開番号】WO2007/147241
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(508377185)
【出願人】(508377174)
【Fターム(参考)】