説明

MIMO無線システム

【課題】通信エリアの全域に亘って均一な通信速度を実現できるMIMO無線システムを提供する。
【解決手段】無線機本体11に接続された複数本のアンテナ12を用いてデータの送受信を行うMIMO無線システム10において、複数本のアンテナ12は、1本以上の漏洩同軸ケーブル13と、漏洩同軸ケーブル13以外のアンテナ12である通常のアンテナ14と、を含み、漏洩同軸ケーブル13は、通常のアンテナ14を囲むように配置されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機本体に接続された複数本のアンテナを用いてデータの送受信を行うMIMO無線システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN(Local Area Network)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、セルラーなどの無線通信の更なる高速化のために、複数本のアンテナを組み合わせてデータ送受信の容量を広げるMIMO(Multiple Input Multiple Output)が用いられている。
【0003】
MIMOは、複数本のアンテナで同時に異なるデータを送信し、受信時に合成することで通信容量の拡大を図る無線通信技術である。例えば、アンテナが2本なら2倍、3本なら3倍と言うように、通信容量を拡大することができる。
【0004】
従来のMIMO無線システムでは、図4(a)に示すように、複数本のアンテナ41が無線機本体42に直接設置された無線機40を用い、この無線機40を構築すべき通信エリアAの中心部に配置して、MIMO通信を行えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−239544号公報
【特許文献2】特開2008−236552号公報
【特許文献3】特開2006−295433号公報
【特許文献4】特開2007−318278号公報
【特許文献5】特開2004−343402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のMIMO無線システムでは、図4(b)に示すように、通信エリアA内であっても無線機40(アンテナ41)から遠い端末ほど通信速度が低下すると言う問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、通信エリアの全域に亘って均一な通信速度を実現できるMIMO無線システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために創案された本発明は、無線機本体に接続された複数本のアンテナを用いてデータの送受信を行うMIMO無線システムにおいて、前記複数本のアンテナは、1本以上の漏洩同軸ケーブルと、該漏洩同軸ケーブル以外のアンテナである通常のアンテナと、を含み、前記漏洩同軸ケーブルは、前記通常のアンテナを囲むように配置されるMIMO無線システムである。
【0009】
前記通常のアンテナが通信エリアの中心部に配置され、前記漏洩同軸ケーブルが前記通信エリアの外周縁部に沿って配置されると良い。
【0010】
前記複数本のアンテナの2本以上が漏洩同軸ケーブルで構成されると共に前記漏洩同軸ケーブルのそれぞれが前記通常のアンテナを異なる径で囲むように配置されると良い。
【0011】
前記無線機本体と前記複数本のアンテナとがケーブルを用いて接続され、前記無線機本体の配置と前記複数本のアンテナの配置とがそれぞれ独立に決定されると良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通信エリアの全域に亘って均一な通信速度を実現できるMIMO無線システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るMIMO無線システムを示す図であり、(a)はMIMO無線システムの構成図、(b)はMIMO無線システムの水平面における通信速度分布図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るMIMO無線システムを示す図であり、(a)はMIMO無線システムの構成図、(b)はMIMO無線システムの水平面における通信速度分布図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係るMIMO無線システムを示す図であり、(a)はMIMO無線システムの構成図、(b)はMIMO無線システムの水平面における通信速度分布図である。
【図4】従来のMIMO無線システムを説明する図であり、(a)はMIMO無線システムにおける無線機の斜視図、(b)はMIMO無線システムの水平面における通信速度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0015】
図1は、本発明の好適な第1の実施の形態に係るMIMO無線システムを示す図であり、(a)はMIMO無線システムの構成図、(b)はMIMO無線システムの水平面における通信速度分布図である。
【0016】
図1(a)に示すように、第1の実施の形態に係るMIMO無線システム10は、無線機本体11に接続された複数本のアンテナ12を用いてデータの送受信を行うシステムであり、複数本のアンテナ12は、1本以上の漏洩同軸ケーブル(開放同軸ケーブル;LCX)13と、漏洩同軸ケーブル13以外のアンテナ12である通常のアンテナ14と、を含み、漏洩同軸ケーブル13は、通常のアンテナ14を囲むように配置されることを特徴とする。
【0017】
このMIMO無線システム10は、建屋15の天井裏16などに設置され、建屋15内に通信エリアAを形成するものである。
【0018】
無線機本体11には、データを送受信するための複数本のアンテナ12が接続される。アンテナ12の本数は特に限定するものではないが、MIMO効果を得るために複数本である必要がある。
【0019】
本実施の形態においては、無線機本体11に2本のアンテナ12を接続し、その一方を漏洩同軸ケーブル13で構成し、他方を通常のアンテナ(例えば、無線機本体11に直接設置されるダイポールアンテナ素子)14で構成した。なお、通常のアンテナ14としては、スロットアンテナ、パッチアンテナなど、様々なアンテナを適用することが可能である。
【0020】
無線機本体11と漏洩同軸ケーブル13とは、同軸ケーブル17を用いて接続される。これにより、無線機本体11(通常のアンテナ14)の配置と漏洩同軸ケーブル13の配置がそれぞれ独立に決定される。また、漏洩同軸ケーブル13は、その全長に亘って所定の強度以上の電波が漏洩するように構成される。
【0021】
漏洩同軸ケーブル13及び通常のアンテナ14は、通信エリアAの通信速度の低いエリア、即ち電界強度が所定の値に満たないエリアを無くすように配置される。具体的には、通常のアンテナ14が無線機本体11と共に構築すべき通信エリアAの中心部に配置され、漏洩同軸ケーブル13が構築すべき通信エリアAの外周縁部に沿って配置される。これにより、通信エリアAのほぼ全域において安定に通信が行えるようになる。
【0022】
このMIMO無線システム10においては、図1(b)に示すように、通常のアンテナ14から遠い位置では漏洩同軸ケーブル13からの電波が届いて通信速度が保たれ、通常のアンテナ14と漏洩同軸ケーブル13との中間領域ではMIMO効果が働いて通信速度が保たれる。
【0023】
その結果として、従来のMIMO無線システムに比べて通信速度の上限は多少低くなるものの、通信エリアAの全域に亘ってほぼ均一な通信速度を実現できる。
【0024】
次に、第2の実施の形態を説明する。
【0025】
図2(a)に示すように、第2の実施の形態に係るMIMO無線システム20は、複数本のアンテナ12の2本以上が漏洩同軸ケーブル13で構成されると共に漏洩同軸ケーブル13のそれぞれが通常のアンテナ14を異なる径で囲むように配置されたことを特徴とする。
【0026】
本実施の形態においては、無線機本体11に4本のアンテナ12を接続し、そのうち2本を漏洩同軸ケーブル13a,13bで構成し、残りの2本を通常のアンテナ(例えば、無線機本体11に直接設置されるダイポールアンテナ素子)14で構成した。
【0027】
このうち、2本の通常のアンテナ14が無線機本体11と共に構築すべき通信エリアAの中心部に配置され、一方の漏洩同軸ケーブル13aが構築すべき通信エリアAの外周縁部に沿って配置され、更に無線機本体11(2本の通常のアンテナ14)と一方の漏洩同軸ケーブル13aとの間に、他方の漏洩同軸ケーブル13bが配置される。
【0028】
このMIMO無線システム20においては、図2(b)に示すように、通常のアンテナ14から遠い位置では、漏洩同軸ケーブル13aからの電波が届いて通信速度が保たれる。
【0029】
また、通常のアンテナ14と漏洩同軸ケーブル13aとの中間領域では、通常のアンテナ14と漏洩同軸ケーブル13bとのMIMO効果又は漏洩同軸ケーブル13aと漏洩同軸ケーブル13bとのMIMO効果が働いて通信速度が保たれる。
【0030】
その結果として、従来のMIMO無線システムに比べて通信速度の上限は多少低くなるものの、通信エリアAの全域に亘ってほぼ均一な通信速度を実現できる。また、第1の実施の形態に係るMIMO無線システム10に比べてより広い範囲で通信エリアAを構築することができる。
【0031】
次に、第3の実施の形態を説明する。
【0032】
図3(a)に示すように、第3の実施の形態に係るMIMO無線システム30は、無線機本体11と複数本のアンテナ12とが同軸ケーブル17を用いて接続され、無線機本体11の配置と複数本のアンテナ12の配置とがそれぞれ独立に決定されることを特徴とする。
【0033】
本実施の形態においては、無線機本体11に2本のアンテナ12を同軸ケーブル17を用いて接続し、その一方を漏洩同軸ケーブル13で構成し、他方を通常のアンテナ(例えば、無線機本体11に同軸ケーブル17を介して設置される全方向性アンテナ)14で構成した。
【0034】
このMIMO無線システム30においては、図3(b)に示すように、第1の実施の形態に係るMIMO無線システム10と同様に、通常のアンテナ14から遠い位置では漏洩同軸ケーブル13からの電波が届いて通信速度が保たれ、通常のアンテナ14と漏洩同軸ケーブル13との中間領域ではMIMO効果が働いて通信速度が保たれる。
【0035】
その結果として、従来のMIMO無線システムに比べて通信速度の上限は多少低くなるものの、通信エリアAの全域に亘ってほぼ均一な通信速度を実現できる。
【0036】
また、2本のアンテナ12は、それぞれ同軸ケーブル17を用いて無線機本体11と接続されているため、その配置が無線機本体11の配置と独立しており、漏洩同軸ケーブル13及び通常のアンテナ14の配置が無線機本体11の配置に依存しない。
【0037】
従って、無線機本体11を別室などに配置することが可能となり、システムの構築に際して設計の自由度が向上する。
【0038】
前述の実施の形態においては、矩形状の通信エリアAを形成する例を示したが、通信エリアAの形状は特に限定されるものではない。この場合も同様に、漏洩同軸ケーブル13を通信エリアAの外周縁部に沿って配置すると良い。
【0039】
また、前述の第3の実施の形態においては、無線機本体11と複数本のアンテナ12とを接続するケーブルとして同軸ケーブル17を用いたが、光ファイバを用いることが可能である。例えば、ケーブル長が長い場合や分岐数が多い場合(1つの無線機本体11から多数の部屋へアンテナ12を設置している場合)は、光電変換装置を介した光ファイバに置き換え、光ファイバにて高周波信号を伝送できる「光RF」方式を用いても本発明の効果に変わりはない。また、この際、波長多重技術を使うことで、光ファイバを1本に集約可能である。
【0040】
また、漏洩同軸ケーブルの長さが長くなり、所定の電波強度が得られない場合は、ブースターを介して複数の漏洩同軸ケーブルを繋ぎ合わせて使用しても本発明の効果に変わりはない。この場合、ブースターは、1箇所につき「上り下り」の2系統になり、デュプレクサで周波数分割して、上り下りの信号を別々に増幅することとなる。
【符号の説明】
【0041】
10 MIMO無線システム
11 無線機本体
12 複数本のアンテナ
13 漏洩同軸ケーブル
14 通常のアンテナ
15 建屋
16 天井裏
17 同軸ケーブル
A 通信エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線機本体に接続された複数本のアンテナを用いてデータの送受信を行うMIMO無線システムにおいて、
前記複数本のアンテナは、1本以上の漏洩同軸ケーブルと、該漏洩同軸ケーブル以外のアンテナである通常のアンテナと、を含み、
前記漏洩同軸ケーブルは、前記通常のアンテナを囲むように配置されることを特徴とするMIMO無線システム。
【請求項2】
前記通常のアンテナが通信エリアの中心部に配置され、前記漏洩同軸ケーブルが前記通信エリアの外周縁部に沿って配置される請求項1に記載のMIMO無線システム。
【請求項3】
前記複数本のアンテナの2本以上が漏洩同軸ケーブルで構成されると共に前記漏洩同軸ケーブルのそれぞれが前記通常のアンテナを異なる径で囲むように配置される請求項1又は2に記載のMIMO無線システム。
【請求項4】
前記無線機本体と前記複数本のアンテナとがケーブルを用いて接続され、前記無線機本体の配置と前記複数本のアンテナの配置とがそれぞれ独立に決定される請求項1〜3のいずれかに記載のMIMO無線システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−165057(P2012−165057A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21843(P2011−21843)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】