説明

MPEG方式のトランスポートストリーム送受信システム

【課題】MPEG方式のトランスポートストリームの空き帯域を利用して別のストリームと再生同期するタイムスタンプを付与して送信するようにして、再生時における同期がとれるようにしたトランスポート送受信システムを提供する。
【解決手段】MPEG方式のトランスポートストリームを送信する送信手段と、該トランスポートストリームを受信して記録、蓄積、再生することができる受信手段とからなり、送信手段は、トランスポートストリームの空き帯域に、所定の放送番組を構成するパケットを送るようにすると共に、この放送番組の再生用タイミングを所定のフィールドにタイムスタンプして送るようにし、受信手段は、蓄積してある放送番組をタイムスタンプを利用して再生するようにしたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MPEG方式のトランスポート送受信システムに関するものであり、詳しくはデジタル放送のMPEGトランスポートストリームの空き帯域に放送番組を送ると共に再生用タイミングをタイムスタンプして送るようにして、蓄積されている放送番組の再生時における同期を円滑に行うようにしたMPEG方式のトランスポート送受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術におけるMPEG方式のトランスポートストリームを受信して蓄積して再生するための記録再生装置600は、図5に示すように、トランスポートストリームを受信することができるチューナ610と、このチューナ610で受信した信号を蓄積する蓄積メディアであるハードディスク620に蓄積すると共に多重化したデータを分離するデマルチプレクサ630と、デマルチプレクサ630から受信した信号を復号するデコーダ640と、復号化された信号をAV(Audio Visual)信号として出力する構成になっている。
【0003】
このような構成からなる記録再生装置600においては、MPEG方式のトランスポートストリームを蓄積メディアであるハードディスク620に一旦蓄積しておき、その蓄積されているトランスポートストリームを連続再生して別の放送番組等を作成することができる。
【0004】
ところで、MPEG方式のトランスポートストリームによりデータ(例えば、画像)を圧縮して送出する際に、原画像の種類によって必要とする帯域が異なり、ある放送番組に着目すると、図4に示すように、時間軸上で必要な帯域が変化してしまう。そのため、例えば「A」、「B」の時間帯が必要帯域の少ない部分となってしまう。
【0005】
例えば、デジタル放送でMPEG方式の信号(データ)を流すときに使用するチャンネル、例えば、衛星放送のトランスポンダ等は一定の帯域容量を持っており、図4に示すように、必要帯域が変化するデータを流すと時間によって容量に余剰が生じ、図における「C」、「C’」のような空き帯域が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術で説明したようにトランスポートストリームに「C」、「C’」のような空き帯域(図4参照)が生じると、従来技術で説明した記録再生装置において、蓄積メディアに一旦蓄積しておきそれを連続再生して別の番組を構成しようとした場合には、この「C」、「C’」はタイムスタンプ(Time Stamp)に不連続があることとなり、その切れ目で破綻してしまうという問題がある。もし、この蓄積が細切れに行われた場合は数多くの破綻が生じ使用に耐えなくなるという問題もある。
【0007】
又、受信側においては、MPEG方式のトランスポートストリームの一時的な空き帯域を利用して蓄積目的で別のストリームを送ろうとした時に、蓄積メディアからの再生時の同期を確保する手段が存在しないという問題がある。
【0008】
従って、MPEG方式のトランスポートストリームの空き帯域を利用して送出した放送番組を蓄積し、この蓄積してある放送番組の同期をとって再生できるようにすることに解決しなければならない課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係るMPEG方式のトランスポートストリーム送受信システムは、次に示す構成にすることである。
【0010】
(1)MPEG方式のトランスポートストリームを送信する送信手段と、該トランスポートストリームを受信して記録、蓄積、再生することができる受信手段とからなり、前記送信手段は、前記トランスポートストリームの空き帯域に、所定の放送番組を構成するパケットを送るようにすると共に、該放送番組の再生用タイミングを所定のフィールドにタイムスタンプして送るようにし、前記受信手段は、蓄積してある前記放送番組を前記タイムスタンプを利用して同期再生するようにしたことを特徴とするMPEG方式のトランスポートストリーム送受信システム。
(2)前記放送番組は、蓄積目的の放送番組であることを特徴とする請求項1に記載のMPEG方式のトランスポートストリーム送受信システム。
(3)前記タイムスタンプするフィールドは、PCR(Program Clock Reference)であることを特徴とする請求項1に記載のMPEG方式のトランスポートストリーム送受信システム。
(4)前記受信手段は、自走クロックと前記タイムスタンプの再生用タイミングとが合致したときに、前記蓄積してある放送番組を再生することを特徴とする請求項1に記載のMPEG方式のトランスポートストリーム送受信システム。
(5)前記トランスポートストリームの空き帯域の検出は、実時間で受信することができる放送番組を送出している帯域を監視して検出することを特徴とする請求項1に記載のMPEG方式のトランスポートストリーム送受信システム。
【発明の効果】
【0011】
このように、トランスポートストリームの空き帯域を利用して、別の放送番組を送る際にその放送番組の再生タイミングをタイムスタンプして送るようにし、この蓄積されている放送番組を再生する際に、タイムスタンプを利用して同期をとることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明に係るMPEG方式のトランスポートストリーム送受信システムのうち送信装置を略示的に示したブロック図である。
【図2】本願発明に係るMPEG方式のトランスポートストリーム送受信システムのうち受信装置を略示的に示したブロック図である。
【図3】同タイムスタンプコンパレータの構成を詳細にしたブロック図である。
【図4】トランスポートストリームの空き領域の状態を示した説明図である。
【図5】従来技術における記録再生装置の略示的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係るMPEG方式のトランスポートストリーム送受信システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
本発明の手法は、データ(例えば画像)をMPEG等を利用して圧縮すると原画像の種類によって必要とする帯域が異なり、ある放送番組に着目すると、従来技術で説明した図4に示すように、時間軸上で必要な帯域が変化する。図4においてはA及びBで示される時間帯が必要帯域の少ない部分である。デジタル放送でMPEG方式の信号を流すときに使用するチャンネル、例えば衛星放送のトランスポンダは一定の帯域容量を持っており、図4のように必要帯域が変化する信号を流すと時間によって容量に余剰が生じ、C、C’がその余剰部分である空き帯域が発生する。本発明は、この空き帯域を利用して別のストリームである所定の放送番組を構成する一連のパケットをこの空き帯域が発生する毎に送ると共にその再生同期をとるためのタイムスタンプを所定のフィールドに記述するというものである。
【0015】
ここで、C、C’を利用してこれをハードディスク等の蓄積メディアに一旦貯めこんでおき、この連続再生して別の放送番組を構成する場合、C、C’はタイムスタンプに不連続がありその切れ目で破綻してしまう。もし、この蓄積が細切れに行われた場合は数多くの破綻が生じ使用に耐えなくなる。これを解決する手段として、本発明では余剰部分で送るストリームには予め再生時に同期をとるためのタイムスタンプを所定のフィールド、例えばPCR(Program Clock Reference)に記述しておき、再生時の同期に使用するというものである。
【0016】
図1は、送信手段において再生時に使用するタイムスタンプを記述する手法を具現化する送信装置を示したものであり、実時間のリアルタイムに放送番組を送信するリアルタイムソース(放送番組)をエンコード及びタイムスタンプを記述するエンコード/タイムスタンプ100と、このリアルタイムの放送番組パケットを多重化するマルチプレクサ110と、空き帯域に別の例えば蓄積用放送番組を多重化する空き帯域多重化部200と、空き帯域の放送番組とリアルタイムの放送番組とを多重化する空き帯域用マルチプレクサ120とから構成されている。
【0017】
空き帯域多重化部200は、蓄積用放送番組からなるレコードソースと、このレコードソースに所定のフィールド(実施例の場合PCR)にタイムスタンプを記述するエンコード/タイムスタンプ210と、タイムスタンプが記述された放送番組を蓄積するハードディスク220と、ハードディスク220に蓄積されている蓄積用放送番組を格納するFIFO(First In First Out)230と、リアルタイムの放送番組の多重化から空き帯域を検出するビットレートモニタ240とから構成されている。尚、フィールドはPCRに限定されることなく、例えばパケットのヘッダ近傍に記述してもよく、トランスポートストリームの空き帯域に流れる別のストリームを記録、蓄積した後に、再生する際に同期がとれればよい。
【0018】
このような構成からなる、送信装置において、トランスポートストリームの空き帯域(余剰部分)を利用して別のストリームを送り、記録するためのソース(蓄積用放送番組)はエンコードしたタイムスタンプを付与し、それを一旦ハードディスク220等の記録媒体に記録し、送出時には、実時間で送る放送番組群による帯域占有状態を監視し(A点)、それに空きがある場合はハードディスク220より読み出したパケットを多重化する。このようにして、トランスポートストリームの空き帯域が発生する毎に、所定の放送番組を構成する一連のパケットを離散的に送るようにすると共に、この放送番組の再生用タイミングを所定のフィールドにタイムスタンプして送ることができるのである。
【0019】
図2は、受信手段である受信装置を示したものであり、トランスポートストリームの空き帯域を利用して送られてきた放送番組を蓄積するための蓄積メディアであるハードディスク300と、ハードディスク300に蓄積されている放送番組と同期をとるための再生部400と、再生された放送番組をデコードするデコーダ500とから構成されている。再生部400は、ハードディスクに蓄積されている放送番組を読み出して格納するFIFO410と、FIFO410からのデータのうちタイムスタンプと自走クロックであるクロック生成器440からのクロックと比較して同期を取るためのタイムスタンプコンパレータ420と、比較して同期がとれた放送番組データを分離するデマルチプレクサ430とから構成されている。
【0020】
このような構成からなる受信装置において、蓄積メディアであるハードディスク300から放送番組を読み出す時に、自走するクロック生成器440を用いて、記述されているタイムスタンプとクロック生成器440からのクロックとを比較して、クロック生成器440のクロックに同期させて放送番組のパケットを再生することができる。
【0021】
図3は、図2に示すタイムスタンプコンパレータ420を詳細に示したものであり、タイムスタンプコンパレータ420はFIFO410からの信号を数百バイト(実施例において188バイト)をバッファリングするバッフア421と、タイムスタンプをデコードするタイムスタンプデコーダ422と、プログラマブルカウンタ423とから構成されている。
【0022】
このような構成において、クロック生成器440からのクロックとパケット上のタイムスタンプを比較するためには、FIFO410から放送番組パケットを読み出し、パケットのタイムスタンプ部分(PCR)をデコードし、それをプログラマブルカウンタ423のカウント値にセットし、クロック生成器440からのクロックでカウントダウンしてゼロになった時にFIFO410とバッフア421に出力要求を出すようにすればよい。
【0023】
以上説明したように、本発明に係るMPEG方式のトランスポート送受信システムは、トランスポートストリームの空き帯域を利用して送る別のストリームの放送番組に再生タイミング用のタイムスタンプを記述するようにしたことにより、別ストリームの放送番組を記録、蓄積した後に、再生する際にタイムスタンプを利用して同期再生することができるという効果がある。
【符号の説明】
【0024】
100;エンコード/タイムスタンプ、110;マルチプレクサ、120;空き帯域、200;空き帯域多重化部、210;エンコード/タイムスタンプ、220;ハードディスク、230;FIFO、240;ビットレートモニタ、300;ハードディスク、400;再生部、410;FIFO、420;タイムスタンプコンパレータ、430;デマルチプレクサ、440;クロック生成器、500;デコーダ、421;バッフア、422;タイムスタンプデコーダ、423;プログラマブルカウンタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
MPEG方式のトランスポートストリームを送信する送信手段と、該トランスポートストリームを受信して記録、蓄積、再生することができる受信手段とからなり、前記送信手段は、前記トランスポートストリームの空き帯域に、所定の放送番組を構成するパケットを送るようにすると共に、該放送番組の再生用タイミングを所定のフィールドにタイムスタンプして送るようにし、前記受信手段は、蓄積してある前記放送番組を前記タイムスタンプを利用して同期再生するようにしたことを特徴とするMPEG方式のトランスポートストリーム送受信システム。
【請求項2】
前記放送番組は、蓄積目的の放送番組であることを特徴とする、請求項1に記載のMPEG方式のトランスポートストリーム送受信システム。
【請求項3】
前記タイムスタンプするフィールドは、PCR(Program Clock Reference)であることを特徴とする、請求項1に記載のMPEG方式のトランスポートストリーム送受信システム。
【請求項4】
前記受信手段は、自走クロックと前記タイムスタンプの再生用タイミングとが合致したときに、前記蓄積してある放送番組を再生することを特徴とする、請求項1に記載のMPEG方式のトランスポートストリーム送受信システム。
【請求項5】
前記トランスポートストリームの空き帯域の検出は、実時間で受信することができる放送番組を送出している帯域を監視して検出することを特徴とする、請求項1に記載のMPEG方式のトランスポートストリーム送受信システム。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−61828(P2011−61828A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238955(P2010−238955)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【分割の表示】特願2000−198940(P2000−198940)の分割
【原出願日】平成12年6月30日(2000.6.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】