説明

MR撮像において種信号を定量的に分離するシステムおよび方法

【課題】MR撮像において種信号を定量的に分離するシステムおよび方法を提供すること。
【解決手段】MR撮像装置は、MRIシステム(10)とコンピュータ(20)とを含み、コンピュータ(20)は、MRIシステム(10)がパルス系列を印加するようにし、パルス系列に対するマルチエコー源データであり、位相成分および強度成分を含むマルチエコー源データを取得するようにプログラムされている。コンピュータ(20)はさらに、マルチエコー源データに基づいて、第1の種含量の第1の推定値および第2の種含量の第1の推定値を決定し、マルチエコー源データに基づいて、第1の種含量の第2の推定値および第2の種含量の第2の推定値を決定するようにプログラムされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にMR撮像(MR imaging)に関し、より詳細には、MR撮像において、種信号(species signal)を、2ステップ分離アプローチを使用して定量的に分離するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の組織などの物質が均一な磁場(分極場B)にさらされると、その組織中のスピンの個々の磁気モーメントはこの分極場と整列しようとするが、一方で、この分極場の周りを、その特性ラーモア周波数(Larmor frequency)で無作為に歳差運動する。この物質または組織が、x−y平面内の、ラーモア周波数に近い磁場(励起場B)にさらされた場合には、整列した正味のモーメント、すなわち「縦磁化(longitudinal magnetization)」Mが、x−y平面内へ回転しまたは「傾いて」、正味の横磁化モーメントMを生成することがある。励起信号Bが終了した後、励起されたスピンによって信号が放出され、この信号を受信し、処理して、画像を形成することができる。
【0003】
これらの信号を利用して画像を生成するときには、磁場勾配(magnetic field gradient)(G、GおよびG)が使用される。一般に、撮像しようとする領域を一連の測定サイクルによってスキャンする。このとき、これらの勾配は、使用する具体的な位置決定法によって異なる。得られた一組のNMR信号をディジタル化し、処理して、画像を、よく知られている多くの再構成技法のうちの1つの技法を使用して再構成する。
【0004】
MR撮像の分野では、定性的用途において、水−脂肪分離技法が伝統的に使用されている。一般に使用されている水−脂肪分離技法の1つが、2ポイントまたは3ポイント「Dixon」再構成アルゴリズムに基づくマルチエコー水−脂肪分離法である。Dixonベースのアルゴリズムは全て、複合源画像(complex source image)を必要とする。源画像中の位相情報は、Bフィールド/位相マップの推定を可能にする。フィールドマップ(field map)の滑らかさ(smoothness)のアプリオリ情報(a priori information)を利用することによって、固有の曖昧さ(intrinsic ambiguity)に起因する水−脂肪スワップ(water−fat swap)が回避される。しかしながら、これらのタイプの方法は、渦電流に起因する位相誤差(phase error)など源画像中の位相誤差の影響を受けることがある。
【0005】
複合源画像を使用する水−脂肪分離法の代替法として、源信号の強度(magnitude)に基づく水−脂肪分離法もある。これらの方法は、源データ中の位相誤差の影響を全く受けない。しかしながら、このような方法は、Bフィールドマップの滑らかさを利用して、水−脂肪曖昧さを解決することができない。その結果、脂肪フラクション(fat−fraction)、すなわち脂肪/(水+脂肪)は、0〜50%の範囲で一意的にしか決定することができない。
【0006】
上記の水−脂肪分離技法は、定性的用途に対しては十分だが、最近、肝臓の脂肪浸潤の定量などの定量的用途に水−脂肪分離技法を使用することに対する関心が高まっている。脂肪フラクションの定量に基づく肝臓の脂肪浸潤の定量は、定性的用途よりも誤差の影響を受けやすい。例えば、Dixonベースのアルゴリズムを使用するマルチエコー水−脂肪分離法における位相誤差は一般に小さく、大部分の定性的用途において許容されるが、定量的用途においては重大であることがある。
【0007】
したがって、高い正確さと高いロバストネスの両方を達成する脂肪フラクション定量を実施することができるMR撮像システムおよび方法を有することが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7468605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施形態は、MR撮像において、種信号を、2ステップ分離アプローチを使用して定量的に分離するシステムおよび方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、MR撮像装置は、マグネットの穴(bore)の周りに配置された複数のグラジエントコイルと、関心領域のMR画像を取得するためにRFコイルアセンブリにRF信号を送信するようにパルスモジュールによって制御されるRFトランシーバシステムおよびRFスイッチとを有する磁気共鳴撮像(MRI)システムを含む。このMR撮像装置はさらにコンピュータを含み、このコンピュータは、MRIシステムがパルス系列を印加するようにし、パルス系列に対するマルチエコー源データであり、位相成分および強度成分を含むマルチエコー源データを取得し、マルチエコー源データに基づいて、第1の種含量の第1の推定値および第2の種含量の第1の推定値を決定し、マルチエコー源データに基づいて、第1の種含量の第2の推定値および第2の種含量の第2の推定値を決定するようにプログラムされている。
【0011】
本発明の他の態様によれば、コンピュータ可読記憶媒体上にコンピュータプログラムが記憶されており、このコンピュータプログラムは、撮像対象の関心領域に対する複数の源画像データセットをコンピュータに取得させる命令を含み、この複数の源画像データセットは、磁気共鳴(MR)パルス系列に応答して生成されたマルチエコー源データから取得され、位相成分および強度成分を含む。このコンピュータプログラムはさらに、この複数の源画像データセットを第1の種分離アルゴリズムに入力し、関心領域内の複数のそれぞれのボクセルに対する第1の種および第2の種の量を第1の種分離アルゴリズムから決定し、この複数の源画像データセットならびに第1および第2の種の決定された量を第2の種分離アルゴリズムに入力するように、コンピュータに命令する。このコンピュータプログラムはさらに、関心領域内の複数のそれぞれのボクセルに対する第1の種および第2の種の量を第2の種分離アルゴリズムから再決定し、第1の種および第2の種の再決定された量から第1の種および第2の種に対する画像を生成するように、コンピュータに命令する。
【0012】
本発明の他の態様によれば、少なくとも第1の種および第2の種をその中に含む関心領域をMR撮像する方法は、磁気共鳴(MR)パルス系列を印加し、MRパルス系列に応答して生成されたエコーから複数の画像源信号を取得することを含み、この複数の画像信号は、第1の種からの信号および第2の種からの信号を含む。この方法はさらに、この複数の画像源信号中の位相データおよび強度データに基づいて第1の種含量および第2の種含量の第1の推定を実行し、この複数の画像源信号中の強度データに基づいて、位相データを使用せずに、第1の種含量および第2の種含量の第2の推定を実行し、第1の推定と第2の推定のうちの少なくとも一方に基づいて関心領域の少なくとも1つの画像を生成することを含む。
【0013】
以下の詳細な説明および図面から、他のさまざまな特徴および利点が明らかになる。
【0014】
図面は、本発明を実施するために現時点で企図される実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態とともに使用される例示的なMR撮像システムの概略ブロック図である。
【図2】MR撮像において、種信号を、2ステップ分離アプローチを使用して定量的に分離する、本発明の一実施形態による技法の流れ図である。
【図3】1ステップ種分離アプローチの画像結果と2ステップ種分離アプローチの画像結果とを比較する、ファントムスキャンによる画像である。
【図4】1ステップ種分離アプローチの画像結果と2ステップ種分離アプローチの画像結果とを比較する、健康な志願者の生体内スキャンによる画像である。
【図5】1ステップ種分離アプローチの画像結果と2ステップ種分離アプローチの画像結果とを比較する、重症の鉄過剰負荷を有する患者のスキャンによる画像である。
【図6】MR撮像において、種信号を、2ステップ分離アプローチを使用して定量的に分離する、本発明の他の実施形態による技法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態によれば、MR撮像において、種信号を、2ステップ分離アプローチを使用して分離するシステムおよび方法が提供される。以下では、水−脂肪分離を実行するシステムおよび方法に関する本発明の一実施形態を説明するが、別の種の分離も本発明の範囲に含まれると理解される。さらに、以下に記載するシステムおよび方法によって3種類以上の種を分離することができることも理解される。
【0017】
図1を参照すると、本発明の一実施形態を包含する好ましい磁気共鳴撮像(MRI)システム10の主要構成要素が示されている。このシステムの動作は、キーボードまたは他の入力デバイス13、制御パネル14および表示画面16を含むオペレータコンソール12から制御される。コンソール12は、リンク18を通して、画像の生成および表示画面16上への表示をオペレータが制御することを可能にする別個のコンピュータシステム20と通信する。コンピュータシステム20は、バックプレーン20aを通して互いに通信するいくつかのモジュールを含む。これらのモジュールには、画像処理装置モジュール22、CPUモジュール24、画像データアレイを記憶するフレームバッファを含むことができる記憶装置モジュール26などが含まれる。コンピュータシステム20は、高速直列リンク34を通して別個のシステム制御装置32と通信する。入力デバイス13は、マウス、ジョイスティック、キーボード、トラックボール、タッチ活動化スクリーン、ライトワンド(light wand)、音声制御あるいは任意の同様のまたは同等の入力デバイスを含むことができ、対話形式でジオメトリ(geometry)を処方するのに使用することができる。
【0018】
システム制御装置32は、バックプレーン32aによって互いに接続された一組のモジュールを含む。これらのモジュールには、CPUモジュール36、および直列リンク40を通してオペレータコンソール12に接続するパルス発生器モジュール38が含まれる。システム制御装置32は、実行するスキャンシーケンスを指示するオペレータからの指令を、リンク40を通して受け取る。パルス発生器モジュール38は、所望のスキャンシーケンスを実施するようにシステム構成部品を操作し、生成されるRFパルスのタイミング、強さおよび形状、ならびにデータ取得窓のタイミングおよび長さを指示するデータを生成する。スキャン中に生成するグラジエントパルス(gradient pulse)のタイミングおよび形状を指示するため、パルス発生器モジュール38は、一組のグラジエント増幅器(gradient amplifier)42に接続する。パルス発生器モジュール38はさらに、患者に取り付けられた電極からのECG信号などの、患者に接続されたいくつかの異なるセンサからの信号を受け取る生理的取得コントローラ(physiological acquisition controller)44から、患者データを受け取ることができる。最後に、パルス発生器モジュール38は、患者およびマグネットシステムの状態に関連した信号をさまざまなセンサから受け取るスキャン室インタフェース回路(scan room interface circuit)46に接続する。さらに、このスキャン室インタフェース回路46を通して、患者位置決めシステム48が、スキャンのための望ましい位置へ患者を移動させるための指令を受け取る。
【0019】
パルス発生器モジュール38によって生成されたグラジエント波形(gradient waveform)は、G、GおよびG増幅器を有するグラジエント増幅器システム42に印加される。グラジエント増幅器はそれぞれ、全体が50で示されたグラジエントコイル(gradient coil)アセンブリ内の対応する物理グラジエントコイルを励起して、取得した信号を空間的にコード化するために使用する磁場勾配を生成する。グラジエントコイルアセンブリ50は、分極マグネット54および全身RFコイル56を含む共鳴アセンブリ52の一部を構成する。システム制御装置32内のトランシーバモジュール58はパルスを生成し、それらのパルスは、RF増幅器60によって増幅され、送信/受信スイッチ62によってRFコイル56に結合される。患者の体内の励起された核によってその結果放出された信号を、同じRFコイル56によって感知し、送信/受信スイッチ62を通して前置増幅器64に結合することができる。増幅されたMR信号は、トランシーバ58の受信器セクションにおいて復調され、フィルタリングされ、ディジタル化される。送信/受信スイッチ62は、パルス発生器モジュール38からの信号によって、送信モードの間はRF増幅器60をコイル56に電気的に接続し、受信モードの間は前置増幅器64をコイル56に接続するように制御される。送信/受信スイッチ62はさらに、送信モードまたは受信モードにおいて、別個のRFコイル(例えば表面コイル)を使用することも可能にする。
【0020】
RFコイル56によって検出されたMR信号はトランシーバモジュール58によってディジタル化され、システム制御装置32内の記憶装置モジュール66に転送される。記憶装置モジュール66においてk空間(k−space)生データのアレイが取得されたとき、スキャンは完了となる。それぞれの画像を再構成するため、このk空間生データは、別個のk空間データアレイに再配列され、これらのアレイはそれぞれ、これらのデータを画像データアレイにフーリエ変換するように動作するアレイ処理装置68に入力される。この画像データは、直列リンク34を通してコンピュータシステム20に送られ、そこで記憶装置に記憶される。オペレータコンソール12から指令を受け取ったことに応答して、この画像データを長期記憶装置に保存し、または画像処理装置22によってさらに処理し、オペレータコンソール12に送り、表示装置16上に表示することができる。
【0021】
本発明の実施形態によれば、MRシステム10のコンピュータシステム20は、被験者の関心領域(region of interest)(ROI)に対する脂肪フラクション定量化解析を、2ステップ水−脂肪分離技法を使用して実行するようにプログラムされており、この解析では、ROIの組織内の水と脂肪の相対量が定量化される。この2ステップ水−脂肪分離技法の一方のステップでは、水と脂肪を別個の画像に分離し、Bフィールドマップを推定するために、複合源画像を使用して、水と脂肪の間の化学シフトの差(すなわち位相のずれ)を利用する水−脂肪分離アルゴリズムが使用される。この2ステップ水−脂肪分離技法のもう一方のステップでは、水と脂肪を別個の画像に分離するために、強度画像(magnitude image)が使用される。これらの第1および第2のステップはそれぞれ、画像のピクセル/ボクセルの水−脂肪含量を推定し、それぞれのステップの水−脂肪含量推定値を使用して、各ピクセル/ボクセルの水−脂肪含量の最終的な推定値または「微調整された」推定値を決定する。
【0022】
有益には、複合源画像を使用するステップから得られる水−脂肪含量推定値は、Bフィールドマップの推定を可能にし、それによって、アルゴリズムの設計が、フィールドマップの滑らかさを利用して、固有の曖昧さに起因することがある推定時の水−脂肪スワップを回避することを可能にする。しかしながら、複合源画像を使用するステップから得られる水−脂肪含量推定値は、源画像中の位相誤差の影響を受けることがある。このような位相誤差を考慮するため、強度源画像を使用するステップは、源データ中の位相誤差の影響を受けない水−脂肪含量推定値を提供する。これは、水−脂肪含量の解析から源データ中の位相成分/情報が除かれるためである。そのため、この水−脂肪分離技法のこれらの2つのステップは、水−脂肪含量の推定に関して相補的な出力を提供する。
【0023】
次に図2を参照すると、本発明の例示的な一実施形態による、被験者の脂肪フラクション定量化解析を実行するコンピュータ実現技法70(例えば図1のコンピュータシステム20によって実現される技法)が示されている。技法70は、「2ステップ」水−脂肪分離アプローチを実現し、この2ステップ水−脂肪分離技法の「第1のステップ」は、複合源画像を使用する水−脂肪分離アルゴリズムを使用し、「第2のステップ」は、強度画像を使用する水−脂肪分離アルゴリズムを使用する。水−脂肪分離技法の第1のステップから出力された水−脂肪含量の推定値は、それによって水−脂肪曖昧さを回避し、第2のステップの推定における速い収束を提供する水−脂肪含量に対する初期推測値(initial guess)として、第2のステップの水−脂肪分離アルゴリズムに入力される。
【0024】
技法70は、複数のエコーを生成するように構成された磁気共鳴(MR)パルス系列を印加するブロック72から始まる。本発明の実施形態によれば、例えばスピンエコー(spin−echo)、ファストスピンエコー(fast−spin−echo)(FSE)、スポイルドグラジエントエコーイメージング(spoiled gradient echo imaging)(SPGR)、定常自由歳差運動(steady state free precession)(SSFP)、グラジエントリコールドアクジションインステディステートイメージング(gradient recalled acquisition in steady state imaging)(GRASS)パルス系列など、エコーコヒーレント時間MR撮像(echo−coherent time MR imaging)に対応したさまざまなパルス系列のうちの任意のパルス系列を使用することができる。ブロック74で、MRパルス系列が印加されたことに応答して生成されたエコーから、マルチエコー源データないしマルチエコー源信号(すなわち画像源信号)を取得する。このマルチエコー源データは、位相情報と強度情報(すなわち位相成分と強度成分)の両方を含むという点で、複合源画像データセットの形態を有する。そのため、このマルチエコー源データは、その中に、水信号と脂肪信号の両方に対する位相情報を含み、水信号および脂肪信号に対する位相情報は、これらの複数のエコー全体にわたって存在する水と脂肪の間の化学シフトによって分離されている。
【0025】
マルチエコー源データを取得した後、ブロック76(すなわち「第1のステップ」)で、第1の水−脂肪分離アルゴリズムを適用する。この第1の水−脂肪分離アルゴリズムは、各ボクセルの水含量および脂肪含量を推定するために、複合源データ、すなわちマルチエコー源データ中の位相情報と強度情報の両方を受け取り、解析する。すなわち、第1の水−脂肪分離アルゴリズムは、その結果として水画像および脂肪画像を与える組織の各ピクセル/ボクセルの水−脂肪含量を、マルチエコー源データ中の位相データおよび強度データに基づいて推定する。
【0026】
ブロック76に対して、複合源信号を使用して水と脂肪を分離するさまざまな水−脂肪分離アルゴリズムのうちの任意のアルゴリズムを適用することができることが理解される。本発明の実施形態によれば、2ポイント、3ポイントまたは他のマルチポイントアプローチがエコーを使用して、水−脂肪化学シフトからの位相のずれをサンプリングする、Dixon再構成アルゴリズムに基づくさまざまなマルチエコー水−脂肪分離技法を使用することができる。本発明の例示的な一実施形態によれば、ブロック76で、T2減衰(T2 decay)を補償するIDEAL(Iterative Decomposition of Water and Fat with Echo Asymmetry and Least Square Estimation)技法(すなわちT2−IDEAL)を、2ステップ水−脂肪分離技法70の第1のステップとして適用する。T2−IDEALアプローチに従って実行されるものとしてブロック76を以下に説明するが、複合源画像を実現する他の技法を使用することもできることが理解される。したがって、T2−IDEALアプローチを実現する以下の実施形態が本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0027】
T2−IDEALの一実施態様によれば、あるグラジエントエコー(gradient−echo)(GRE)撮像系列を印加して、3つ以上のMRI信号を取得する。同じボクセルに共存する水成分と脂肪成分が同様のT2値を有すると仮定すると、エコー時刻(t、i=1、2、3、...k、k=取得されるエコーの数)におけるボクセルの信号(S)を下式のように表すことができる。
【0028】
【数1】

上式で、wおよびfはそれぞれ、このボクセル内の水成分および脂肪成分を表し、Δfは、水に対する脂肪の化学シフトであり、Ψは、このボクセルにおけるB場の不均質性(Hz)、すなわちフィールドマップを表し、nはこの信号中の雑音であり、R2=1/T2である。
【0029】
さらに、下式のような「複素場関数(complex field map)」を導入する。
【0030】
【数2】

次いで、「複素場関数」
【0031】
【数3】

、水含量および脂肪含量を計算することができる。最初に、以下に概要を示す反復型アルゴリズムを使用して「複素場関数」
【0032】
【数4】

を解く。
【0033】
1.複素場関数に対する初期推測値
【0034】
【数5】

を使用して、各化学種からの信号を推定する。
【0035】
【数6】

に対する有用な初期推測値は0Hzである。
【0036】
2.複素場関数に対する誤差
【0037】
【数7】

を計算する。
【0038】
3.
【0039】
【数8】

を再計算する。
【0040】
4.種信号
【0041】
【数9】

および
【0042】
【数10】

を、
【0043】
【数11】

の新たな推定値を用いて再計算する。
【0044】
5.
【0045】
【数12】

が小さくなる(例えば<1Hz)まで直上の3つのステップを繰り返す。
【0046】
6.低域フィルタを用いて最終的な複素場関数
【0047】
【数13】

を空間フィルタリングする(平滑化する)。
【0048】
7.水画像および脂肪画像の最終的な推定値を再計算する。
【0049】
次いで、
【0050】
【数14】

の収束値を分解し、実数部および虚数部を、フィールドマップおよびR2マップの推定値に割り当てる。下式によって示すように、
【0051】
【数15】

によって源信号を復調し、それによってB場不均質性とT2減衰の両方を同時に補正する。
【0052】
【数16】

全てのエコーを考慮すると、[式3]を行列の形で表すことができる。
【0053】
【数17】

T2補正後は、雑音(n’)の分散が全てのエコーに対して等しいわけではないことに留意されたい。
【0054】
【数18】

信号は指数関数的に減衰するため、[式5]は、フィールドマップおよびT2(s’)に対する補正後の源信号が、より初期のエコーにおいて、より少ない雑音を有することを示唆している。これは直観的な帰結である。この異なる雑音の分散を考慮するため、以下に示す、加重最小2乗反転(weighted least squares inversion)から水成分および脂肪成分を得る。
【0055】
【数19】

上式で、重みは
【0056】
【数20】

によって与えられる。値R2は、上記の
【0057】
【数21】

の反復推定から得られる。
【0058】
このようにして、複合源データの位相情報および強度情報を解析するブロック76でのT2−IDEALアルゴリズムの適用に基づく[式6]から、ROIの水含量および脂肪含量の推定値を得る。次いで、ブロック78で、水含量および脂肪含量の推定値を出力する。本発明の実施形態によれば、ブロック78でT2−IDEALアルゴリズムから出力される水−脂肪含量推定値は、マルチエコー源データ(すなわち源画像)中の位相誤差の影響を受ける可能性があると理解されるという点で、「粗い」推定値または「初期」推定値とみなされる。
【0059】
T2−IDEALアルゴリズムを第1の水−脂肪分離アルゴリズムとして使用する本発明の一実施形態によれば、ブロック78で、水−脂肪含量の出力に加えて、括弧内に示されているように、T2−IDEALアルゴリズムから得られたR2の推定値も出力される。T2−IDEALアルゴリズムは主に、エコー間の強度の変化に依存してR2を推定するため、R2の推定に関しては位相誤差による誤差を無視することができる。したがって、ブロック76から生成されるR2推定値またはマップを、R2に対する最終推定値として取り扱う。本発明の例示的な一実施形態によれば、T2減衰に関してマルチエコー源データを補正するため、ブロック80(破線で示されている)で、R2に対するこの最終推定値をマルチエコー源データに適用する。すなわち、ブロック80で、ブロック78でT2−IDEALアルゴリズムから出力されたR2に対する推定値に基づいて、ブロック72で取得した最初のマルチエコー源データをT2減衰に対して補正する。ブロック78で出力されるR2の推定値およびブロック80でのT2減衰に対する補正は、T2−IDEALアルゴリズムを使用するときには適用され、複合源信号を使用して水と脂肪を分離する他の水−脂肪分離アルゴリズムを使用するときには適用されないことがある任意選択のステップであることが理解される。
【0060】
図2をさらに参照すると、ブロック78で、第1の水−脂肪分離アルゴリズムから水−脂肪含量推定値を出力した後、この技法は続いて、ブロック82(すなわち「第2のステップ」)で、第2の水−脂肪分離アルゴリズムを適用する。この第2の水−脂肪分離アルゴリズムは、ROIの水含量および脂肪含量を推定するために、複合源データに含まれる強度情報だけを解析し、位相情報を利用しない。すなわち、この第2の水−脂肪分離アルゴリズムは、ROI内の組織の各ピクセル/ボクセルに対する水−脂肪含量を、マルチエコー源データ中の強度データに基づいて推定する。この第2の水−脂肪分離アルゴリズムは、強度源画像を解析して、源データ中の位相誤差の影響を受けない水−脂肪含量推定値を提供する。これは、水−脂肪含量の解析から源データ中の位相成分/情報が除かれるためである。
【0061】
この第2の水−脂肪分離アルゴリズムは、ブロック80から出力された補正された(すなわちT2減衰に対して補正された)マルチエコー源データを入力として受け取る。前述のとおり、この第2の水−脂肪分離アルゴリズムには、複合マルチエコー源データからの強度情報(強度源画像)だけが入力される。したがって、この第2の水−脂肪分離アルゴリズムにおける水および脂肪含量の推定は、源画像の位相情報には依存せず、したがって、このような推定は、源データ中の位相誤差の影響を全く受けない。しかしながら、式の非線形性および非凸性のため、水−脂肪含量の推定(すなわち再構成)は難しく、曲線の当てはめは、初期推測値の影響を強く受けることがある。したがって、この第2の水−脂肪分離アルゴリズムに対する他の入力として、ブロック78でT2−IDEALアルゴリズムから出力された水−脂肪含量の推定値を、ROIの実際の水−脂肪含量に対する初期推測値として使用する。T2−IDEALアルゴリズムからの水および脂肪含量推定値は、源画像中の位相誤差のため定量的にはおそらく正確ではないが、真の水および脂肪量に非常に近いはずである。したがって、T2−IDEALアルゴリズムからの水および脂肪含量推定値は、ブロック82の強度源データ中の水および脂肪含量の推定に対する優れた初期推測値の役目を果たし、それによってブロック76からの推定値の速い収束および追加の調整を保証し、水および脂肪画像の効率的な再構成を提供する。
【0062】
ブロック82に対して、強度源信号だけを使用して水と脂肪を分離するさまざまな水−脂肪分離アルゴリズムのうちの任意のアルゴリズムを適用することができることが理解される。本発明の例示的な一実施形態によれば、「ガウス−ニュートン(Gauss−Newton)」サーチ(search)アルゴリズムなどの非線形推定アルゴリズムを使用する。ガウス−ニュートンアルゴリズムを使用する際には、マルチエコー源データからの強度信号(Si)を下式のように記述することができる。
【0063】
【数22】

上式で、wおよびfは水含量および脂肪含量、iはエコーの添字(I=1...n、エコーの数)、cは脂肪信号変調項であり、a=|c|、b=Re{c}である。
【0064】
脂肪を、化学シフトΔfを有する単一のピークとみなす場合には、以下のようになる。
【0065】
【数23】

P個の離散ピークを有するマルチピーク脂肪スペクトルを仮定する場合には、以下のようになる。
【0066】
【数24】

=1である単一ピークの場合に関しては、この式においてwとfを交換することができる。したがって、(w,f)がこの式の一組の解である場合、(f,w)も一組の解である。このことは、他のアプリオリ情報なしでは解くことができない固有の曖昧さである。
【0067】
次いで、下記の[式10〜15]に示す反復型アルゴリズムを使用して、水および脂肪含量を、上式[式7]に基づいて解く。最初に、ブロック78からの水および脂肪値(w,f)を、下式に従って初期推測値としてセットする。
【0068】
【数25】

次に、現在の推定値に対応する信号を下式のように計算する。
【0069】
【数26】

次いで、誤差項を下式のように計算し、
【0070】
【数27】

行列Bを下記のように定義する。
【0071】
【数28】

したがって、線形最小2乗反転は、誤差項の推定値(ΔwおよびΔf)を下式に従って与える。
【0072】
【数29】

次いで、現在の推定値を下式のように更新する。
【0073】
【数30】

次いで、反復が収束し、かつ/または反復の最大数に到達したかどうかの判定を実施する。反復が収束しておらず、かつ反復の最大数にも達していない場合、この反復アルゴリズムは[式10]に戻る。反復が収束し、かつ/または反復の最大数に到達した場合には、この反復アルゴリズムは終了となり、
【0074】
【数31】

および
【0075】
【数32】

に対する許容される推定値が得られたと判定される。
【0076】
このようにして、複合源データの強度情報を解析するブロック82でのガウス−ニュートンアルゴリズムの適用に基づく[式15]から、ROIの水含量および脂肪含量の推定値を得る。次いで、ブロック84で、水含量および脂肪含量の推定値を出力する。ブロック84で出力される水含量および脂肪含量の推定値は、可能な位相誤差を考慮するためにブロック76から得た「粗い」または「初期」水−脂肪含量推定値を微調整したものであるという点で、「修正された」推定値または「更新された」推定値とみなされる。
【0077】
ブロック84で修正/更新された水−脂肪含量推定値を出力した後、技法70は続いて、ブロック85で、水含量および脂肪含量の初期推定値と水含量および脂肪含量の修正された推定値とを結合する。本発明の例示的な一実施形態によれば、ブロック85では、水含量および脂肪含量の初期推定値とそれらの修正された推定値との加重結合(weighted combination)を求める。この加重結合から、ブロック86で、水および脂肪画像を再構成し、ブロック88で、脂肪フラクション画像を再構成する。この脂肪フラクション画像を使用して、例えば肝臓の脂肪浸潤を定量化し、またはROIの他の定量的な解析を提供することができる。本発明の他の実施形態によれば、ブロック85で実行する水含量および脂肪含量の初期推定値と水含量および脂肪含量の修正された推定値との結合を実行せずに、ブロック84で出力された修正/更新された水−脂肪含量推定値から、水、脂肪および脂肪フラクション画像を直接に再構成することができることが理解される。
【0078】
次に図3〜5を参照すると、ファントム(phantom)スキャン(図3)、健康な志願者の生体内(in vivo)スキャン(図4)および重症の鉄過剰負荷を有する患者のスキャン(図5)の結果が示されている。3つの全てのケースで、2D−SPGR系列(ファントムスキャン)および3D−SPGR系列(生体内スキャン)を使用して6つのエコーを集めた。図3〜5にはそれぞれ、1ステップ水−脂肪分離アプローチの結果(画像90)と2ステップ水−脂肪分離アプローチの結果(画像92)とを比較する画像が示されている。2ステップ水−脂肪分離によって取得した画像92に関しては、T2−IDEALアルゴリズムおよびガウス−ニュートンアルゴリズムを実行して、第1の推定ステップでは複合源データの位相および強度情報を使用して水−脂肪含量を推定し、第2の推定ステップでは源データの強度情報だけを使用して水−脂肪含量を推定する、図2に関して示し、説明した2ステップ水−脂肪分離技法70を使用してこのような画像を取得した。図3〜5のそれぞれから分かるように、1ステップ水−脂肪分離技法(例えばT2−IDEAL)を介して取得した画像90は、複合源データを使用した水−脂肪含量の1回の推定に基づく水−脂肪分離を示し、3つの全てのスキャンにおいて、脂肪画像内へ漏れた少量の肝臓(または水)信号として反映された「脂肪肝」アーチファクトを示す。図3〜5にそれぞれ示された「微調整された」画像92は、第1のステップでは複合源データを使用し、第2のステップでは強度源データだけを使用する水−脂肪含量の2ステップ推定に基づいて生成される。図3〜5から分かるように、微調整された画像92は、T2−IDEALアルゴリズムだけを適用することによって生成された画像90に存在する「脂肪肝」アーチファクトを除去する。微調整された画像92では、脂肪画像において水および肝臓が雑音のように見え、このことは、例えば肝臓内の脂肪フラクションをより正確に測定できることにつながる。
【0079】
前述の技法70(図2)は、「第1のステップ」が、複合源画像を使用する水−脂肪分離アルゴリズムを使用し、「第2のステップ」が、強度画像と、第1のステップから出力された初期推測値とを使用する水−脂肪分離アルゴリズムを使用する、2ステップ水−脂肪分離技法を対象としているが、本発明の追加の実施形態によれば、他の2ステップ水−脂肪分離技法を使用することもできることが理解される。
【0080】
次に図6を参照すると、本発明の他の実施形態による、被験者の脂肪フラクション定量化解析を実行するコンピュータ実現技法100(例えば図1のコンピュータシステム20によって実現される技法)が示されている。技法100は、例えばスピンエコー、ファストスピンエコー(FSE)、スポイルドグラジエントエコーイメージング(SPGR)、定常自由歳差運動(SSFP)、グラジエントリコールドアクジションインステディステートイメージング(GRASS)パルス系列など、複数のエコーを生成するように構成された磁気共鳴(MR)パルス系列を印加するブロック102から始まる。ブロック104で、MRパルス系列が印加されたことに応答して生成されたエコーから、マルチエコー源データないしマルチエコー源信号(すなわち画像源信号)を取得する。このマルチエコー源データは、位相情報と強度情報(すなわち位相成分と強度成分)の両方を含むという点で、複合源画像データセットの形態を有する。そのため、このマルチエコー源データは、その中に、水信号と脂肪信号の両方に対する位相情報を含み、水信号および脂肪信号に対する位相情報は、これらの複数のエコー全体にわたって存在する水と脂肪の間の化学シフトによって分離されている。
【0081】
マルチエコー源データを取得した後、ブロック106(すなわち「第1のステップ」)で、第1の水−脂肪分離アルゴリズムを適用し、ブロック108(すなわち「第2のステップ」)で、第1の水−脂肪分離アルゴリズムから独立した第2の水−脂肪分離アルゴリズムを適用する。第1の水−脂肪分離アルゴリズムと第2の水−脂肪分離アルゴリズムは互いに独立して適用されるため、図6に示すように、ブロック106、108では、これらのアルゴリズムを同時に適用することができる。すなわち、図2の技法70と比べると、第1の水−脂肪分離アルゴリズムからの出力が、第2の水−脂肪分離アルゴリズムに、初期推測値として適用されることはない。
【0082】
ブロック106で適用する第1の水−脂肪分離アルゴリズムに関して、この第1の水−脂肪分離アルゴリズムは、各ボクセルの水含量および脂肪含量を推定するために、複合源データ、すなわちマルチエコー源データ中の位相情報と強度情報の両方を受け取り、解析する。すなわち、第1の水−脂肪分離アルゴリズムは、その結果として水画像および脂肪画像を与える組織の各ピクセル/ボクセルの水−脂肪含量を、マルチエコー源データ中の位相データおよび強度データに基づいて推定する。複合源信号を使用して水と脂肪を分離するさまざまな水−脂肪分離アルゴリズムのうちの任意のアルゴリズムを適用することができることが理解される。本発明の実施形態によれば、上記[式1〜6]に詳細に示したT2−IDEALなど、2ポイント、3ポイントまたは他のマルチポイントアプローチがエコーを使用して、水−脂肪化学シフトからの位相のずれをサンプリングする、Dixon再構成アルゴリズムに基づくさまざまなマルチエコー水−脂肪分離技法を使用することができる。
【0083】
ブロック108で適用する第2の水−脂肪分離アルゴリズムに関して、この第2の水−脂肪分離アルゴリズムは、ROIの水含量および脂肪含量を推定するために、複合源データに含まれる強度情報だけを受け取り、解析し、位相情報を利用しない。すなわち、この第2の水−脂肪分離アルゴリズムは、ROI内の組織の各ピクセル/ボクセルに対する水−脂肪含量を、マルチエコー源データ中の強度データに基づいて推定する。この第2の水−脂肪分離アルゴリズムは、強度源画像を解析して、源データ中の位相誤差の影響を受けない水−脂肪含量推定値を提供する。これは、水−脂肪含量の解析から源データ中の位相成分/情報が除かれるためである。上記[式7〜15]に詳細に示した「ガウス−ニュートン」サーチアルゴリズムなど、強度源信号だけを使用して水と脂肪を分離するさまざまな水−脂肪分離アルゴリズムのうちの任意のアルゴリズムを適用することができることが理解される。
【0084】
図6をさらに参照すると、ブロック110で、第1の水−脂肪分離アルゴリズムによって提供された水含量および脂肪含量の第1の推定値を出力し、ブロック112で、第2の水−脂肪分離アルゴリズムによって提供された水含量および脂肪含量の第2の推定値を出力する。ブロック110、112で水−脂肪含量の第1および第2の推定値を得た後、技法100は続いて、ブロック114で、水−脂肪含量の「最終的な」推定値または「修正された」推定値を計算する。例示的な一実施形態によれば、水−脂肪含量の「最終的な」推定値を決定するため、ブロック114で、第1および第2の水−脂肪分離アルゴリズムからの水−脂肪含量推定値の加重結合を計算する。次いで、ブロック116および118で、水−脂肪含量のこの「最終的な」推定値に基づいて、脂肪フラクションの定量化および画像再構成(すなわち水、脂肪および脂肪フラクション画像)を実行する。
【0085】
本発明の追加の実施形態によれば、図2および6に関して説明した2ステップ水−脂肪分離技法以外の他の2ステップ水−脂肪分離技法を使用することができること、またはこれらの「ステップ」の順序を逆にすることができることが理解される。このような一実施形態では、「第1のステップ」が、強度画像を使用する水−脂肪分離アルゴリズムを使用し、「第2のステップ」では、複合源画像ベースの水−脂肪分離技法が適用される。「第1のステップ」の結果にまつわる水−脂肪曖昧さの問題を解決するため、「第2のステップ」の結果が使用される。さらに、上記の[式1〜15]に示したもの以外の他の複合データおよび強度データの公式化を実施することができること、ならびに、「第2のステップ」のアルゴリズムが、「第1のステップ」のアルゴリズムと同じモデルを使用する必要はないことが理解される。例えば、「第2のステップ」のアルゴリズムは、「第1のステップ」のアルゴリズムから出力された「初期」T2推定値を同じように利用して、水のT2と脂肪のT2を別々に推定することができる。このような一実施形態では、「第1のステップ」のアルゴリズムから出力されたT2推定値を、第2のステップで推定する水のT2と脂肪のT2のそれぞれに対する初期推測値とすることになる。他の例として、第2の水−脂肪分離アルゴリズムがマルチピーク脂肪スペクトルモデルを使用し、第1の水−脂肪分離アルゴリズムが単一ピーク脂肪スペクトルモデルを使用することもでき、またはこの逆も可能である。
【0086】
開示した方法および装置の技術的な寄与は、それらが、MR撮像において、種信号を、2ステップ分離アプローチを使用して定量的に分離するコンピュータ実現技法を提供することである。
【0087】
したがって、本発明の一実施形態によれば、MR撮像装置は、マグネットの穴の周りに配置された複数のグラジエントコイルと、関心領域のMR画像を取得するためにRFコイルアセンブリにRF信号を送信するようにパルスモジュールによって制御されるRFトランシーバシステムおよびRFスイッチとを有する磁気共鳴撮像(MRI)システムを含む。このMR撮像装置はさらにコンピュータを含み、このコンピュータは、MRIシステムがパルス系列を印加するようにし、パルス系列に対するマルチエコー源データであり、位相成分および強度成分を含むマルチエコー源データを取得し、マルチエコー源データに基づいて、第1の種含量の第1の推定値および第2の種含量の第1の推定値を決定し、マルチエコー源データに基づいて、第1の種含量の第2の推定値および第2の種含量の第2の推定値を決定するようにプログラムされている。
【0088】
本発明の他の実施形態によれば、コンピュータ可読記憶媒体上にコンピュータプログラムが記憶されており、このコンピュータプログラムは、撮像対象の関心領域に対する複数の源画像データセットをコンピュータに取得させる命令を含み、この複数の源画像データセットは、磁気共鳴(MR)パルス系列に応答して生成されたマルチエコー源データから取得され、位相成分および強度成分を含む。このコンピュータプログラムはさらに、この複数の源画像データセットを第1の種分離アルゴリズムに入力し、関心領域内の複数のそれぞれのボクセルに対する第1の種および第2の種の量を第1の種分離アルゴリズムから決定し、この複数の源画像データセットならびに第1および第2の種の決定された量を第2の種分離アルゴリズムに入力するように、コンピュータに命令する。このコンピュータプログラムはさらに、関心領域内の複数のそれぞれのボクセルに対する第1の種および第2の種の量を第2の種分離アルゴリズムから再決定し、第1の種および第2の種の再決定された量から第1の種および第2の種に対する画像を生成するように、コンピュータに命令する。
【0089】
本発明のさらに別の実施形態によれば、少なくとも第1の種および第2の種をその中に含む関心領域をMR撮像する方法は、磁気共鳴(MR)パルス系列を印加し、MRパルス系列に応答して生成されたエコーから複数の画像源信号を取得することを含み、この複数の画像信号は、第1の種からの信号および第2の種からの信号を含む。この方法はさらに、この複数の画像源信号中の位相データおよび強度データに基づいて第1の種含量および第2の種含量の第1の推定を実行し、この複数の画像源信号中の強度データに基づいて、位相データを使用せずに、第1の種含量および第2の種含量の第2の推定を実行し、第1の推定と第2の推定のうちの少なくとも一方に基づいて関心領域の少なくとも1つの画像を生成することを含む。
【0090】
本発明をその最良の形態を含めて開示するため、ならびに任意の装置またはシステムを製作し、使用すること、および組み込まれた任意の方法を実行することを含め、当業者が本発明を実施することを可能にするために、本明細書はいくつかの例を使用する。本発明の特許を受けられる範囲は特許請求の範囲によって定義され、この範囲が、当業者が思いつくその他の例を含むことがある。このようなその他の例は、それらが特許請求の範囲の文字表現と異ならない構造要素を有する場合、またはそれらが特許請求の範囲の文字表現との差異が実質的にない等価の構造要素を含む場合に、特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0091】
10 MRIシステム
12 オペレータコンソール
13 入力デバイス
14 制御パネル
16 表示画面
18 リンク
20 コンピュータシステム
20a バックプレーン
22 画像処理装置モジュール
24 CPUモジュール
26 記憶装置モジュール
32 システム制御装置
32a バックプレーン
34 直列リンク
36 CPUモジュール
38 パルス発生器モジュール
40 直列リンク
42 グラジエント増幅器セット
44 生理的取得コントローラ
46 スキャン室インタフェース回路
48 患者位置決めシステム
50 グラジエントコイルアセンブリ
52 共鳴アセンブリ
54 分極マグネット
56 全身RFコイル
58 トランシーバモジュール
60 RF増幅器
62 送信/受信スイッチ
64 前置増幅器
66 記憶装置モジュール
68 アレイ処理装置
90 画像
92 画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネット(54)の穴の周りに配置された複数のグラジエントコイル(50)と、関心領域のMR画像を取得するためにRFコイルアセンブリ(56)にRF信号を送信するようにパルスモジュール(38)によって制御されるRFトランシーバシステム(58)およびRFスイッチ(62)とを有する磁気共鳴撮像(MRI)システム(10)と、
コンピュータ(20)と
を備えるMRi装置であって、前記コンピュータ(20)が、
前記MRIシステム(10)がパルス系列を印加するようにし、
前記パルス系列に対するマルチエコー源データであり、位相成分および強度成分を含むマルチエコー源データを取得し、
前記マルチエコー源データに基づいて、第1の種含量の第1の推定値および第2の種含量の第1の推定値を決定し、
前記マルチエコー源データに基づいて、前記第1の種含量の第2の推定値および前記第2の種含量の第2の推定値を決定する、
ようにプログラムされているMRI装置。
【請求項2】
Dixonベースのアルゴリズムを適用して、前記マルチエコー源データの前記位相成分および強度成分に基づいて、前記第1の種含量および前記第2の種含量の前記第1の推定値を決定するように、前記コンピュータ(20)がプログラムされている、請求項1記載のMRI装置。
【請求項3】
反復最小2乗分解アルゴリズムを適用して、前記第1の種含量および前記第2の種含量の前記第1の推定値を決定するように、前記コンピュータ(20)がプログラムされている、請求項2記載のMRI装置。
【請求項4】
非線形推定アルゴリズムを適用して、前記マルチエコー源データの前記強度成分に基づいて、前記第1の種含量および前記第2の種含量の前記第2の推定値を決定するように、前記コンピュータ(20)がプログラムされている、請求項1記載のMRI装置。
【請求項5】
前記コンピュータ(20)が、
前記マルチエコー源データの前記強度成分を前記非線形推定アルゴリズムに入力し、
前記第1の種含量および前記第2の種含量の前記第1の推定値を、前記第1および第2の種含量の前記第2の推定値の初期推測値として前記非線形推定アルゴリズムに入力し、
前記マルチエコー源データの前記強度成分ならびに前記第1の種含量および前記第2の種含量の前記第1の推定値に基づいて、前記第1の種含量の前記第2の推定値および前記第2の種含量の前記第2の推定値を決定する
ようにプログラムされている、請求項4記載のMRI装置。
【請求項6】
前記コンピュータ(20)が、
前記マルチエコー源データに対するT2減衰を推定し、
前記推定されたT2減衰に基づいて前記マルチエコー源データに補正を適用し、
前記補正されたマルチエコー源データの前記強度成分ならびに前記第1の種含量および前記第2の種含量の前記第1の推定値に基づいて、前記第1の種含量の前記第2の推定値および前記第2の種含量の前記第2の推定値を決定する
ようにプログラムされている、請求項5記載のMRI装置。
【請求項7】
前記第1の種が水を含み、前記第2の種が脂肪を含み、
前記コンピュータ(20)が、水含量の前記第1の推定値および脂肪含量の前記第1の推定値に基づいて、かつ前記水含量の前記第2の推定値および前記脂肪含量の前記第2の推定値に基づいて、前記関心領域の脂肪フラクションを定量するようにプログラムされている、
請求項1記載のMRI装置。
【請求項8】
前記水含量の前記第2の推定値および前記脂肪含量の前記第2の推定値に基づいて、前記水含量の前記第1の推定値および前記脂肪含量の前記第1の推定値から、水画像、脂肪画像および脂肪フラクション画像を再構成するように、前記コンピュータ(20)がプログラムされている、請求項7記載のMRI装置。
【請求項9】
前記MRIシステム(10)が、スピンエコー系列、ファストスピンエコー(FSE)系列、スポイルドグラジエントエコーイメージング(SPGR)系列、定常自由歳差運動撮像(SSFP)系列およびグラジエントリコールドアクジションインステディステートイメージング(GRASS)系列のうちの1つを印加するように、前記コンピュータ(20)がプログラムされている、請求項1記載のMRI装置。
【請求項10】
前記第1および第2の種含量の前記第1の推定値と前記第1および第2の種含量の前記第2の推定値の加重結合を計算するように、前記コンピュータ(20)がプログラムされている、請求項1記載のMRI装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−125703(P2011−125703A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278233(P2010−278233)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】