説明

MR撮像スキャンパラメータの自動算定のためのシステム及び方法

【課題】MR撮像に関するセットアップ及びスキャンパラメータの自動化を可能にするシステム及び方法を提供する。
【解決手段】MR撮像スキャンパラメータを自動算定するため、第1の視野域で収集される複数のスライスを含む第1組のMRデータを撮像対象から収集するようにプログラムされたコンピュータ(20)は、該複数のスライスを複数のローカライザ画像とするように再構成すること、及び該複数のローカライザ画像に基づいて3D物体を特定すること、を行うようにプログラムされている。コンピュータ(20)はさらに、スキャンを処方すること、第2組のMRデータを収集するように該処方されたスキャンを実行すること、及び該第2組のMRデータを画像にするように再構成すること、を行うようにプログラムされている。処方されるスキャンは、3D物体の境界に基づいた縮小視野域と3D物体の境界に基づいたシム領域のうちの一方を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は全般的にはMR撮像に関し、またさらに詳細には、MRスキャンのスキャンパラメータを自動的に決定することに関する。
【背景技術】
【0002】
人体組織などの物質を均一な磁場(偏向磁場B)にかけると、組織中のスピンの個々の磁気モーメントはこの偏向磁場と整列しようとして、この周りをラーモアの特性周波数によってランダムな秩序で歳差運動することになる。この物質や組織に、x−y平面内にありラーモア周波数に近い周波数の磁場(励起磁場B)がかけられると、正味の整列モーメント(すなわち、「縦磁化」)Mは、x−y平面内に来るように回転させられ(すなわち、「傾けられ(tipped)」)、正味の横方向磁気モーメントMが生成される。励起信号Bを停止させた後、励起したスピンにより信号が放出され、さらにこの信号を受信し処理して画像を形成することができる。
【0003】
これらの信号を用いて画像を作成する際には、磁場傾斜(G、G及びG)が利用される。典型的には、撮像しようとする領域は、使用する具体的な位置特定方法に従ってこれらの傾斜を変更させる一連の計測サイクルによりスキャンを受ける。得られた受信NMR信号の組はディジタル化され、よく知られた多くの再構成技法のうちの1つを用いて画像を再構成するように処理される。
【0004】
MR撮像のための従来の技法は、撮像対象または物体の視野域(FOV)からMR撮像データを収集するように構成させた撮像スキャンを処方することを含む。FOVの範囲内にある物体の指定の領域に関するシム調整パラメータを処方することも有利となり得る。MRスキャナを操作する技師はFOV及び/またはシム領域を手作業で指定または規定することを求められることが多い。例えば心臓MRスキャンでは、体幹上部全体ではなく心臓にわたる部分だけをシム調整することによって、体幹上部全体にわたるシム補正を試みる場合と比較して磁場均一性が大幅に改善される。(磁場不均一に対する補正操作は、マグネットシムの補正として知られることに留意されたい。この操作には、磁場(B)を空間マッピングしかつ例えば球座標フレームにおいて磁場の必要な成分(すなわち、球面調和成分)を算定すること、並びにシムコイルに必要な電流を加えて対応する球面調和磁場成分を生成させることが必要である。)したがって、指定の解剖部位に関してFOV及びシム領域を規定することについて技師を訓練することが重要である。しかし新興の市場分野において熟練した技師を見出すことは困難なことがある。このため、未熟練の技師がMRスキャンを実施することによって、画質を低下させることや診断情報を損なうことがあり得る。さらに一般の技師は慣れない解剖学領域を扱う際の広範な経験を有していないことがある。したがってこうした技師では、これらのタイプのスキャンを実施する際に要する時間が長くなり過ぎることや、スキャンの画質が低いか一貫しないことになり得る。
【0005】
FOV及び/またはシム領域を手作業で規定することには例えば、解剖学画像上で所望のFOVやシム領域の境界をトレースすることを含むことがある。しかしこうした手作業のトレースは、スキャンの周辺にMRIアーチファクトを生じることや、ノイズの多い画像の場合では身体の各部位の明確な境界を見出すことの困難を含むことがある。
【0006】
MRスキャナを操作するよく訓練された技師に対しては、FOV及び/またはシム領域に対する手作業の規定に加えて、撮像対象の患者を撮像のためにセットアップし準備することが要求されることが多い。こうしたセットアップには、患者をスキャナテーブル上に手作業で位置決めした後に患者の関心領域がスキャナ整列光またはマーカと一致するようにテーブルを手作業で位置決めすることによって、MRスキャナ内部で患者にランドマーク設定することを含むことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7643864号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、MR撮像に関するセットアップ及びスキャンパラメータの自動化を可能にするシステム及び方法があることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によるMRI装置は、偏向磁場を印加するようにマグネットのボアの周りに位置決めされた複数の傾斜コイルを有するMRIシステムを含む。RF送受信器システム及びRFスイッチは、MR画像を収集するためにRFコイルアセンブリに対してRF信号を送信及び受信させるようなパルスモジュールによって制御を受けている。本MRI装置はさらに、第1の視野域で収集された複数のスライスを備える第1組のMRデータを撮像対象から収集するようにプログラムされたコンピュータを含む。このコンピュータはさらに、該複数のスライスを複数のローカライザ画像とするように再構成すること、及び該複数のローカライザ画像に基づいて3D物体を特定すること、を行うようにプログラムされている。このコンピュータはさらに、スキャンを処方すること、処方されたスキャンを実行して第2組のMRデータを収集すること、並びに該第2組のMRデータを画像となるように再構成すること、を行うようにプログラムされている。処方されるこのスキャンは、3D物体の境界に基づいた縮小視野域と3D物体の境界に基づいたシム領域のうちの一方を含む。
【0010】
本発明の別の態様による方法は、第1の視野域において撮像対象から複数のローカライザMRデータを収集するステップと、該複数のローカライザMRデータの複数のスライスを第1の複数の画像とするように再構成するステップと、該第1の複数の画像に基づいて撮像対象の一部分に関する3D物体を作成するステップと、を含む。本方法はさらに、3D物体の境界に基づいて決定した第1の視野域より小さい第2の視野域を介して3D物体のMR撮像データを収集すること、及び3D物体の境界に基づいて決定したシム領域を介して3D物体のMR撮像データを収集することのうちの一方を行うように構成されたスキャン処方を生成するステップを含む。MR撮像データを収集するためにこのスキャン処方に基づいたスキャンが実行されると共に、収集したMR撮像データから解剖学画像が再構成される。この解剖学画像はユーザに対して表示される。
【0011】
本発明のさらに別の態様では本発明は、コンピュータ読み取り可能記憶媒体上に保存されると共に、コンピュータにより実行させた際に該コンピュータに対して、第1の視野域において撮像対象からMR撮像データの複数のスライスを収集するように構成されたローカライザスキャンを処方すること、該処方されたローカライザスキャンを実行すること、並びにMR撮像データを複数のローカライザ画像とするように再構成すること、を行わせる命令を有するコンピュータプログラムの形で具現化される。この命令はコンピュータに対してさらに、複数のローカライザ画像に基づいて3D物体を生成すること、並びに第1の視野域の境界より小さい境界を有する3D物体の少なくとも一部分を囲繞する領域を特定すること、を行わせている。3D物体の当該部分のMRデータ収集を含む非ローカライザスキャンは、当該領域が非ローカライザスキャンに関する第2の視野域と非ローカライザスキャンに関するシムエリアのうちの一方を含むようにして実行させている。この命令はコンピュータに対してさらに、非ローカライザスキャンの実行中に収集したMRデータを解剖学画像とするように再構成すること、及び該解剖学画像をユーザに対して表示すること、を行わせている。
【0012】
別の様々な特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面から明らかとなろう。
【0013】
図面では、本発明を実施するために目下のところ企図される実施形態を図示している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を組み込んだMR撮像システムのブロック概要図である。
【図2】本発明の一実施形態による自動決定されたFOV領域またはシム領域を有するMR撮像スキャンの準備及び実行のための技法を表した流れ図である。
【図3】本発明の一実施形態による図2の技法の処理に関する3Dモデルを特定するステップを表した流れ図である。
【図4】本発明の別の実施形態による図2の技法の処理に関する3Dモデルを特定するステップを表した流れ図である。
【図5】本発明の別の実施形態による図2の技法の処理に関するFOV境界を特定するステップを表した流れ図である。
【図6】本発明の別の実施形態による図2の技法の処理に関するシム境界を特定するステップを表した流れ図である。
【図7】本発明の一実施形態による図5の流れ図のステップの一実施形態を表した概要図である。
【図8】本発明の一実施形態によるスキャナ内部において物体を位置特定するための技法を表した流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、本発明の一実施形態を組み込んだ磁気共鳴撮像(MRI)システム10の主要コンポーネントを表している。このシステムの動作は、キーボードその他の入力デバイス13、制御パネル14及び表示画面16を含むオペレータコンソール12から制御を受けている。コンソール12は、オペレータが画像の作成及び表示画面16上への画像表示を制御できるようにする単独のコンピュータシステム20と、リンク18を介して連絡している。コンピュータシステム20は、バックプレーン20aを介して互いに連絡した多くのモジュールを含む。これらのモジュールには、画像プロセッサモジュール22、CPUモジュール24、並びに当技術分野でフレームバッファとして知られる画像データアレイを記憶するためのメモリモジュール26が含まれる。コンピュータシステム20は、高速シリアルリンク34を介して単独のシステム制御部32と連絡している。入力デバイス13は、マウス、ジョイスティック、キーボード、トラックボール、タッチ作動スクリーン、光学読取り棒、音声制御器、あるいは同様な任意の入力デバイスや同等の入力デバイスを含むことができ、また入力デバイス13は対話式幾何学指定のために使用することができる。
【0016】
システム制御部32は、バックプレーン32aにより互いに接続させたモジュールの組を含んでいる。これらのモジュールには、CPUモジュール36や、シリアルリンク40を介してオペレータコンソール12に接続したパルス発生器モジュール38が含まれる。システム制御部32は、実行すべきスキャンシーケンスを指示するオペレータからのコマンドをこのリンク40を介して受け取っている。パルス発生器モジュール38は、各システムコンポーネントを動作させて所望のスキャンシーケンスを実行させ、発生させるRFパルスのタイミング、強度及び形状、並びにデータ収集ウィンドウのタイミング及び長さを指示するデータを発生させている。パルス発生器モジュール38は、スキャン中に発生させる傾斜パルスのタイミング及び形状を指示するために1組の傾斜増幅器42と接続させている。パルス発生器モジュール38はさらに、生理学的収集制御器44から患者データを受け取ることができ、この生理学的収集制御器44は、患者に装着した電極からのECG信号など患者に接続した異なる多数のセンサからの信号を受け取っている。また最終的には、パルス発生器モジュール38はスキャン室インタフェース回路46と接続されており、スキャン室インタフェース回路46はさらに、患者及びマグネット系の状態に関連付けした様々なセンサからの信号を受け取っている。さらにこのスキャン室インタフェース回路46を介して、患者位置決めシステム48は患者を所望のスキャン位置まで移動させるコマンドを受け取っている。
【0017】
パルス発生器モジュール38が発生させる傾斜波形は、Gx増幅器、Gy増幅器及びGz増幅器を有する傾斜増幅器システム42に加えられる。各傾斜増幅器は、収集した信号の空間エンコードに使用する磁場傾斜を生成させるように全体を番号50で示す傾斜コイルアセンブリ内の物理的に対応する傾斜コイルを励起させている。傾斜磁場コイルアセンブリ50は、偏向マグネット54及び全身用RFコイル56を含むマグネットアセンブリ52の一部を形成している。システム制御部32内の送受信器モジュール58は、RF増幅器60により増幅を受けて送信/受信スイッチ62によりRFコイル56に結合されるようなパルスを発生させている。患者内の励起された原子核が放出して得られた信号は、同じRFコイル56により検知し、送信/受信スイッチ62を介して前置増幅器64に結合させることができる。増幅したMR信号は、送受信器58の受信器部分で復調され、フィルタ処理され、さらにディジタル化される。送信/受信スイッチ62は、パルス発生器モジュール38からの信号により制御し、送信モードではRF増幅器60をコイル56と電気的に接続させ、受信モードでは前置増幅器64をコイル56に接続させている。送信/受信スイッチ62によってさらに、送信モードと受信モードのいずれにおいても単独のRFコイル(例えば、表面コイル)の利用を可能とさせることができる。
【0018】
RFコイル56により取り込まれたMR信号は送受信器モジュール58によりディジタル化され、システム制御部32内のメモリモジュール66に転送される。未処理のk空間データのアレイをメモリモジュール66内に収集し終わると1回のスキャンが完了となる。この未処理のk空間データは、各画像を再構成させるように別々のk空間データアレイの形に配置し直しており、これらの各々は、データをフーリエ変換して画像データのアレイにするように動作するアレイプロセッサ68に入力される。この画像データはシリアルリンク34を介してコンピュータシステム20に送られ、コンピュータシステム20において画像データはメモリ内に格納される。この画像データは、オペレータコンソール12から受け取ったコマンドに応じて長期記憶内にアーカイブしたり、画像プロセッサ22によりさらに処理してオペレータコンソール12に伝達しディスプレイ16上に表示させたりすることができる。
【0019】
MRIシステム10は、スキャン室インタフェース回路46に結合させた光学式撮像デバイスまたはカメラ70を含む。カメラ70は、写真などの静止画像を取り込むように構成されることや、ビデオなどの動く像を取り込むように構成されることがある。一実施形態ではそのカメラ70は閉回路方式テレビジョンカメラである。MRIシステム10は、カメラ70を介して取り込んだ画像を用いて、例えばマグネットアセンブリ52を基準とした患者の箇所や患者の向き(例えば、患者の位置決めがヘッドファーストとフィートファーストのいずれであるのかあるいは患者が仰臥位と腹臥位のいずれにあるのかなど)を決定するためにその内部に位置決めされた患者に自動的にランドマーク設定することがある。自動患者ランドマーク設定に関するこれらの例や別の例については、図8に関連して以下で説明することにする。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に従ったMR撮像スキャンの準備及び実行のための技法72を示した流れ図を表している。技法72は、スキャン中またはその準備中のユーザ関与を軽減または排除するようにMRスキャンの1つまたは複数のスキャン用パラメータまたは要素を自動的に計算または規定するためのステップを含む。
【0021】
技法72は、MRスキャンを介してMRデータが収集されるブロック74で開始される。一実施形態ではそのMRスキャンは、低分解能または高分解能の撮像データを収集するように構成させたローカライザスキャンである。ローカライザスキャンを介して収集される撮像データは関心対象解剖領域の位置特定に有用な任意のタイプのMRデータとし得ることが企図される。一実施形態では、関心対象の組織または臓器に関して収集されるMRデータのそれぞれのスライスに対応して複数のMRデータ組が収集される。この複数のMRデータ組は組織/臓器の完全なボリュームに関するMRデータを包含することが好ましい。この撮像データは本来的にボリュメトリックなデータであり、2次元スライスを積み重ねたものまたは3次元ボリュームのいずれかを成すことが可能である。ローカライザスキャンを介して収集した撮像データはブロック76において、1枚または複数枚の画像とするように再構成される。例えば、収集MRデータの各スライスごとに1つの画像を再構成することがある。
【0022】
ブロック78には、関心対象の物体または組織の3次元(3D)モデルを特定するための処理ブロックを表している。図3及び4を参照すると、ブロック78における3Dモデルの特定を実行するように企図した実施形態を図示している。図3に示した3Dモデルの特定は、ブロック92において技法72のブロック76で再構成した画像の傾斜記述を生成するステップを含む。この画像の傾斜記述はブロック94において、組織変化を示す傾斜変化が大きいエリアを決定または発見するように解析される。例えば心臓領域の画像では傾斜変化が大きいエリアが、患者の心臓と肺の間の組織/空気境界面を示すことがある。画像の傾斜記述内において、患者の組織、臓器及びその他の解剖学的フィーチャ間の別のタイプの境界面も決定可能である。組織/臓器の3Dモデルは、ブロック96において組織/臓器の完全ボリュームに関する解析画像に基づいて構築されることがある。
【0023】
図4に示した3Dモデルの特定は、ブロック98において、技法72のブロック76で再構成した画像のそれぞれの中で組織/臓器の解剖領域をその他の領域から分離するように該画像のそれぞれにおいて組織/臓器の解剖領域を切り出し(segmenting)するステップを含む。一実施形態では、画像内における関心対象の組織/臓器のその他の組織/臓器からの切り出しは、関心対象の組織/臓器の周りにある画像の領域に対してマスクを付与するステップを含む。ブロック100では、画像のうちの未マスキング領域の重心が見出されるまたは決定される。このマスク及び重心を用いてブロック102において、関心対象解剖領域の物理的分界または境界が決定される。
【0024】
再度図2を見ると、ブロック78で決定した3Dモデルに基づいて関心対象の物体または組織の視野域(FOV)境界またはシム境界を特定するための処理ブロックをブロック80に表している。図5及び6を参照すると、ブロック80におけるFOV/シム境界の特定を実行するように企図した実施形態を表している。図5に示すFOV境界の特定はブロック104における所望のスキャン面の決定を含む。一実施形態ではその所望のスキャン面は、ユーザにより入力されることや、スキャナにより自動的に決定されることがある。この所望のスキャン面は、後続のスキャンにおいて組織/臓器のMRデータを収集しようとする撮像面を意味している。後続のスキャンは一例では、所望のスキャン面に沿って組織/臓器に関するより高分解能の撮像データを収集すること、あるいは技法72のブロック74で実施した撮像スキャンシーケンスのスキャン面と異なる所望のスキャン面に沿って組織/臓器に対して撮像スキャンシーケンスを適用すること、を行うように実施されることがある。ブロック106では、ベクトル/回転行列に沿ってモデルがフォーマット変更されると共に、このモデルのスライスが所望のスキャン面に沿ってこれから抽出される。
【0025】
さらに図5を参照するとブロック108において、抽出スライスに沿ってモデルの境界を位置特定するように抽出スライスが解析される。このモデルの境界はブロック110において、その回転を最適化させるように回転させることがある。例えば、抽出スライスに沿った物体の回転によって、所与のFOVサイズに関して折り返しアーチファクトが生じることがあり、あるいは最適でない大きなFOVが生じることがある。抽出スライス内の物体に対して面内ツイストを実行すると、物体を矩形のFOVに整列させてMRスキャン中に収集される非物体データの量を削減するのに役立つ。例えば図7は、第1の向き120に沿ったモデル境界118と、モデル境界118に嵌め合した第2の向き124に沿ったバウンディングボックス122と、を表している。面内ツイストによってモデル境界118及び第1の向き120を第2の向き124に沿って向き変更すると、向き変更後のモデル境界118に嵌め合してバウンディングボックス122の場合と比べて面積がより小さくなったバウンディングボックス126が得られる。したがって、3Dモデルの境界の外部におけるデータ収集が最小化される。
【0026】
再度図5を参照するとブロック112において、モデル境界がその内部の中央に来るようにFOVの境界が調整される。FOV境界は、FOVに関する収集データ内の折り返しアーチファクトの可能性を回避しながらモデル境界をぴったりと抜き出すように調整される。FOV境界はしたがって、技法72のブロック74でMRデータの収集に使用したFOVの境界より小さい、または該境界と比較して縮小されている。
【0027】
図6に示すように、技法72のブロック80に対応するシム境界の特定は、ブロック114におけるシム調整に不用な領域を3Dモデルからマスキングすることを含む。例えば心スキャンニングでは、体幹部のうち胸壁脂肪など高強度領域をシム調整領域から除外することが好ましいことがある。ブロック116では、関心対象の解剖領域または物体の境界を囲繞するようにシム境界が調整される。
【0028】
図2の技法72に戻ると、ブロック80で特定したFOVまたはシム領域の境界がブロック82において物理的な空間寸法に変換される。ブロック84ではFOVまたはシム領域の境界の物理的空間寸法に基づいたスキャンが処方されると共に、ブロック86では該処方されたスキャンが実施すなわち実行されて3DモデルからのMRデータが収集される。ブロック88では収集したMRデータが画像にするように再構成されており、この画像はブロック90においてユーザに対して表示されることがある。
【0029】
本発明の実施形態は、シム境界を自動的に決定することなくFOV境界を自動的に決定すること、FOV境界を自動的に決定することなくシム境界を自動的に決定すること、並びにFOV境界とシム境界の両方を自動的に決定すること、を含む。したがってブロック86におけるスキャンの実行は、FOV境界が自動的に決定されるスキャン、シム境界が自動的に決定されるスキャン、あるいはFOV境界とシム境界の両方が自動的に決定されるスキャンの実施を含む。
【0030】
図8は、本発明の一実施形態によるMRIシステム内部で撮像対象または患者にランドマーク設定するための技法128を表した流れ図である。技法128は、図1のコンピュータ20などのコンピュータによって実行されることがある。技法128は、図1に示したMRIシステム10などのMRIシステムの患者テーブル上において患者の1枚または複数枚の光学画像を収集するブロック130で開始される。光学画像は例えば、患者テーブル上に患者を位置決めし終えた後でカメラ70を介して収集されることがある。技法128は、ブロック132における外部患者フィーチャの認識を含む。例えば、鼻の先端や目の縁を位置特定するような顔認識アルゴリズムが実行されることがある。患者に関する別の部分またはフィーチャを特定するような別の認識アルゴリズムが実行されることがある。患者の特定のフィーチャの認識に加えて認識アルゴリズムは、フィーチャのサイズまたは向きを決定するように実行されることがある。例えば、光学画像内において患者の身長や体重が認識されることがある。別の例では、患者の位置決めがヘッドファーストとフィートファーストのいずれであるのかあるいは患者が仰臥位と腹臥位のいずれにあるのかを示すために患者の向きが決定されることがある。本処理法は、技師により実施される時間がかかる手作業の幾つかのステップが自動化処理によって置き換えられているような方式を記述しており、この際に患者はスキャンテーブル上に快適な状態で配置されていると共に、そのスキャンプロセスは技師が(一実施形態では、押しボタンによって)検査を開始させると自動的に進行する。この処理法は、患者の向き、患者体重、撮像視野域内の解剖構造の領域、フェーズドアレイ素子コイルの適正な選択(スキャンしようとする解剖構造や撮像視野域に基づく)、並びにスキャンしようとする解剖構造がMRマグネットのアイソセンタに来るような箇所へのテーブルの平行移動を自動的に決定する。
【0031】
認識したフィーチャを用いてブロック134において、MRIシステムまたはスキャナ内部で患者が位置特定されることがある。患者テーブル上での患者の位置は、スキャナによるマグネットアセンブリ内部での患者の位置決めを支援することによって決定されることがある。テーブル上の患者の位置は、例えば患者テーブルの位置に基づきかつテーブル位置を基準とした認識した患者フィーチャに基づいて決定されることがある。決定した患者位置に基づいて、患者内部の関心対象の目標解剖構造に対するスキャン処方は、関心対象解剖構造をスキャナ内部の所定の位置に配置させるようなテーブル移動距離を含むことがある。
【0032】
ブロック136では、患者の1枚または複数枚の解剖学画像を収集することがある。一実施形態ではそのMRIシステムは、低品質ローカライザ撮像スキャンシーケンスを介するなどにより患者のリアルタイム解剖学画像を収集し再構成することがある。別の実施形態では、画像記憶箇所から解剖学画像が収集されることがある。画像記憶箇所から収集した解剖学画像は、MRIシステムと異なる様式を有するイメージスキャナを用いて収集し再構成した解剖学画像とし得ることが企図される。例えば、超音波、X線、CTや同様の撮像様式を介して収集された解剖学画像が企図される。さらに、この解剖学画像は異なる対象に関する基準画像や基準の役割をする抽象アトラス(abstract atlas)とし得ることが企図される。
【0033】
解剖学画像はブロック138において、内部の患者フィーチャを認識するために解析される。すなわち、画像スキャンの処方を支援するために患者の内部ランドマークが認識されることがある。例えば心臓検査では、心臓の心尖部を位置特定するために解剖学画像(複数の画像のこともある)が解析されることがある。解剖学画像(複数の画像のこともある)内における患者の内部ランドマークの解析は、スキャナ内部における患者のサイズまたは向きの決定に対する追加の支援となることがある。
【0034】
患者に関する認識した外部及び/または内部フィーチャ並びにスキャナ内での患者の位置特定に基づいて、ブロック140においてMRIスキャンが処方されることがある。処方されるスキャンは患者に関する認識済みフィーチャの任意の数の組み合わせに基づくことがあることが企図される。例えばその認識済みフィーチャは、患者のまたは患者の内部解剖構造に関する推定されるサイズ及び/または重量を含むことがあり、あるいは患者の外部または内部フィーチャの箇所を含むことがある。これらのスキャンパラメータはしたがって、患者体型に当てはまるように適合するように処方されることがあり、また例えばスキャンレンジ、視野域、撮像分解能、造影剤の投与、撮像時間、空間分解能、その他に関して最適化させることが好ましい。
【0035】
スキャン処方に関して支援とするための光学的または解剖学画像の収集に加えて、光学的及び/または解剖学画像はさらに呼吸運動の空間範囲を自動的に決定するために、またさらには呼吸停止過程中に呼吸停止の自動指示を提供するために使用されることがある。例えば、患者の最大呼吸停止能力(すなわち、患者が自分の呼吸を停止できる最大時間)が自動的に決定されることがある。光学的または解剖学画像はまた、撮像対象の解剖構造が予期しない動きを受けたか否かを自動的に決定するため、あるいはスキャンの早期終了のトリガとなり得るような患者状態を検出するために使用されることがある。
【0036】
上述した方法は、単一の箇所に関するスキャンについて記述している。しかし本方法は、全身撮像スキャンにおいて身体全体がスキャンを受ける際にも等しく適用可能である。この場合、患者の初期箇所が図8に示した技法によって決定されると共に、上に記載し図2〜7に示した技法を各箇所ごとに反復することによって複数の箇所についてスキャンのタイプ、撮像パラメータ及びコイル選択が決定されることがある。この方式ではこの複数の箇所によって身体全体あるいはその大部分が包含されることがある。
【0037】
上述した方法は、フロッピー(商標)ディスケットその他の磁気記憶媒体、CD ROMその他の光学記憶媒体、フラッシュメモリその他の半導体記憶デバイス、ハードドライブ、あるいは別の任意のコンピュータ読み取り可能記憶媒体などの1つまたは複数の有形コンピュータ読み取り可能記憶媒体内に具現化された命令を包含したコンピュータプログラムコードの形態で具現化することが可能であり、このコンピュータプログラムコードをコンピュータ内にロードしてこれによって実行させると、このコンピュータは開示した方法を実施するための装置となる。
【0038】
開示した方法及び装置に関する技術的寄与は、自動決定の視野域領域や自動決定のシム領域などMRスキャンのスキャンパラメータに対するコンピュータ実現による自動決定を提供できることである。
【0039】
本発明の一実施形態によるMRI装置は、偏向磁場を印加するようにマグネットのボアの周りに位置決めされた複数の傾斜コイルを有するMRIシステムを含む。RF送受信器システム及びRFスイッチは、MR画像を収集するためにRFコイルアセンブリに対してRF信号を送信及び受信させるようなパルスモジュールによって制御を受けている。本MRI装置はさらに、第1の視野域で収集された複数のスライスを備える第1組のMRデータを撮像対象から収集するようにプログラムされたコンピュータを含む。このコンピュータはさらに、該複数のスライスを複数のローカライザ画像とするように再構成すること、及び該複数のローカライザ画像に基づいて3D物体を特定すること、を行うようにプログラムされている。このコンピュータはさらに、スキャンを処方すること、処方されたスキャンを実行して第2組のMRデータを収集すること、並びに該第2組のMRデータを画像となるように再構成すること、を行うようにプログラムされている。処方されるこのスキャンは、3D物体の境界に基づいた縮小視野域と3D物体の境界に基づいたシム領域のうちの一方を含む。
【0040】
本発明の別の実施形態による方法は、第1の視野域において撮像対象から複数のローカライザMRデータを収集するステップと、該複数のローカライザMRデータの複数のスライスを第1の複数の画像とするように再構成するステップと、該第1の複数の画像に基づいて撮像対象の一部分に関する3D物体を作成するステップと、を含む。本方法はさらに、3D物体の境界に基づいて決定した第1の視野域より小さい第2の視野域を介して3D物体のMR撮像データを収集すること、及び3D物体の境界に基づいて決定したシム領域を介して3D物体のMR撮像データを収集することのうちの一方を行うように構成されたスキャン処方を生成するステップを含む。MR撮像データを収集するためにこのスキャン処方に基づいたスキャンが実行されると共に、収集したMR撮像データから解剖学画像が再構成される。この解剖学画像はユーザに対して表示される。
【0041】
本発明のさらに別の実施形態では本発明は、コンピュータ読み取り可能記憶媒体上に保存されると共に、コンピュータにより実行させた際に該コンピュータに対して、第1の視野域において撮像対象からMR撮像データの複数のスライスを収集するように構成されたローカライザスキャンを処方すること、該処方されたローカライザスキャンを実行すること、並びにMR撮像データを複数のローカライザ画像とするように再構成すること、を行わせる命令を有するコンピュータプログラムの形で具現化される。この命令はコンピュータに対してさらに、複数のローカライザ画像に基づいて3D物体を生成すること、並びに第1の視野域の境界より小さい境界を有する3D物体の少なくとも一部分を囲繞する領域を特定すること、を行わせている。3D物体の当該部分のMRデータ収集を含む非ローカライザスキャンは、当該領域が非ローカライザスキャンに関する第2の視野域と非ローカライザスキャンに関するシムエリアのうちの一方を含むようにして実行させている。この命令はコンピュータに対してさらに、非ローカライザスキャンの実行中に収集したMRデータを解剖学画像とするように再構成すること、及び該解剖学画像をユーザに対して表示すること、を行わせている。
【0042】
この記載では、本発明(最適の形態を含む)を開示するため、並びに当業者による任意のデバイスやシステムの製作と使用及び組み込んだ任意の方法の実行を含む本発明の実施を可能にするために例を使用している。本発明の特許性のある範囲は本特許請求の範囲によって規定していると共に、当業者により行われる別の例を含むことができる。こうした別の例は、本特許請求の範囲の文字表記と異ならない構造要素を有する場合や、本特許請求の範囲の文字表記と実質的に差がない等価的な構造要素を有する場合があるが、本特許請求の範囲の域内にあるように意図したものである。
【符号の説明】
【0043】
10 磁気共鳴撮像(MRI)システム
12 オペレータコンソール
13 キーボードその他の入力デバイス
14 制御パネル
16 表示画面
18 リンク
20 単独のコンピュータシステム
20a バックプレーン
22 画像プロセッサモジュール
24 CPUモジュール
26 メモリモジュール
28 ディスク記憶装置
30 テープ駆動装置
32 単独のシステム制御部
32a バックプレーン
34 高速シリアルリンク
36 CPUモジュール
38 パルス発生器モジュール
40 シリアルリンク
42 傾斜増幅器組
44 生理学的収集制御器
46 スキャン室インタフェース回路
48 患者位置決めシステム
50 傾斜コイルアセンブリ
52 マグネットアセンブリ
54 偏向マグネット
56 全身用RFコイル
58 送受信器モジュール
60 RF増幅器
62 送信/受信スイッチ
64 前置増幅器
66 メモリモジュール
68 アレイプロセッサ
70 カメラ
72 技法
74 ローカライザスキャンを介してデータを収集する
76 ローカライザ画像を再構成する
78 3Dモデルを特定する
80 FOV/シム境界を特定する
82 FOV/シムの境界を物理的寸法に変換する
84 スキャンを処方する
86 スキャンを実施する
88 画像を再構成する
90 画像を表示する
92 傾斜記述を生成する
94 傾斜記述を解析する
96 3Dモデルを構築する
98 解剖領域を切り出す
100 解剖領域の重心を求める
102 解剖領域の境界を決定する
104 所望のスキャン面を決定する
106 モデル及び抽出スライスをフォーマット変更する
108 抽出スライス内でモデルの境界を位置特定する
110 回転を最適化する
112 FOVの境界を調整する
114 シム調整に不用な領域をマスキングする
116 解剖領域境界に合わせてシムの境界を調整する
118 モデル境界
120 第1の向き
122 バウンディングボックス
124 第2の向き
126 バウンディングボックス
128 技法
130 自動的に位置特定しスキャンを処方する
132 外部患者フィーチャを認識する
134 スキャナ内で患者を位置特定する
136 解剖学画像を収集する
138 内部患者フィーチャを認識する
140 スキャンを処方する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネット(54)のボアの周りに位置決めされた複数の傾斜コイル(50)と、MR画像を収集させるためにRFコイルアセンブリ(56)にRF信号を送るようにパルスモジュール(38)により制御を受けるRF送受信器システム(58)及びRFスイッチ(62)と、を有する磁気共鳴撮像(MRI)システム(10)と、
コンピュータ(20)であって、
第1の視野域で収集される複数のスライスを含む第1組のMRデータを撮像対象から収集すること、
前記複数のスライスを複数のローカライザ画像とするように再構成すること、
前記複数のローカライザ画像に基づいて3D物体を特定すること、
3D物体の境界に基づいた縮小視野域及び3D物体の境界に基づいたシム領域のうちの一方を含むスキャンを処方すること、
第2組のMRデータを収集するように前記処方されたスキャンを実行すること、
前記第2組のMRデータを画像にするように再構成すること、
を行うようにプログラムされたコンピュータ(20)と、
を備えるMRI装置。
【請求項2】
前記コンピュータ(20)は3D物体を特定するようにプログラムされるにあたって、
前記複数のローカライザ画像の各々に関する傾斜記述を生成すること、
前記複数のローカライザ画像内で高傾斜変化を特定すること、
前記高傾斜変化に基づいて物体の3Dモデルを構築すること、
を行うようにプログラムされている、請求項1に記載のMRI装置。
【請求項3】
前記コンピュータ(20)はさらに、
関心対象のスキャン面に沿った3Dモデルの境界を位置特定すること、
前記3Dモデルの境界を囲繞するように視野域を縮小した境界を生成すること、
を行うようにプログラムされている、請求項2に記載のMRI装置。
【請求項4】
前記コンピュータ(20)はさらに、関心対象のスキャン面を特定しているユーザ入力を受け取るようにプログラムされている、請求項3に記載のMRI装置。
【請求項5】
前記コンピュータ(20)はさらに、3Dモデル境界の外部でのデータ収集を最小化するために関心対象のスキャン面内における3Dモデル境界の回転を最適化するようにプログラムされている、請求項3に記載のMRI装置。
【請求項6】
前記コンピュータ(20)は3D物体を特定するようにプログラムされるにあたって、
前記複数のローカライザ画像の各々に対してマスクを適用して関心対象物体を切り出すこと、
前記関心対象物体の重心を位置特定すること、
前記関心対象物体の3D境界を決定すること、
を行うようにプログラムされている、請求項1に記載のMRI装置。
【請求項7】
前記コンピュータ(20)はさらに、前記3D境界を囲繞するようなシム領域を生成するようにプログラムされている、請求項6に記載のMRI装置。
【請求項8】
前記コンピュータ(20)はさらに、前記関心対象物体の少なくとも1つの領域がシム領域の外部に来るようにマスキングするようにプログラムされている、請求項7に記載のMRI装置。
【請求項9】
前記コンピュータ(20)は、シム領域の近くの関心対象でない少なくとも1つの解剖学的フィーチャをマスキングするようにプログラムされている、請求項8に記載のMRI装置。
【請求項10】
撮像対象の視覚画像を収集するように構成された光学カメラ(70)をさらに備えると共に、前記コンピュータ(20)はさらに該光学カメラ(70)により収集した視覚画像を用いて撮像対象のスキャン用パラメータを決定するように構成されている、請求項1に記載のMRI装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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