説明

MRI装置

【課題】血流を広範囲に描出することができるMRI装置を提供する。
【解決手段】非選択的RF反転パルスP1を印加し、動脈血ARおよび静脈血VEの縦磁化成分Mzを反転させる。その直後に選択的RF反転パルスP2を印加することにより、静脈血VEの縦磁化成分MzをMz=1に反転させる。その後、第2の待ち時間Tw2が経過した時点で、非選択的RF反転パルスP3を印加し、静脈血VEの縦磁化成分Mzを再びMz=−1に反転させる。非選択的RF反転パルスP3を印加した後、第3の待ち時間Tw3が経過した時点で、データの収集を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液を撮像するMRI装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば血管を流れる血液を撮像する場合に、MRI装置が使用されている。血流を撮像する方法として、例えばTime-SLIP法が知られている(非特許文献1参照)。
【非特許文献1】宮崎美津恵、外6名、「非造影MR Angiographyの最近の発展」、映像情報Medical、産業開発機構株式会社、2006年9月号、p.952−957
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
非特許文献1の方法では、血流の遅い患者を撮像する場合、描出される血流範囲が狭くなることがある。
【0004】
本発明は、上記の事情に鑑み、血流を広範囲に描出することができるMRI装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題を解決する本発明のMRI装置は、
被検体の撮像領域を流れる体液が背景組織よりも強調されるように、上記被検体を撮像するMRI装置であって、
上記体液の縦磁化成分および上記背景組織の縦磁化成分が、正の値を有するように、上記被検体に静磁場を印加する静磁場印加手段、
上記被検体にRFパルスを送信する送信コイル、
上記送信コイルから、上記体液の縦磁化成分および上記背景組織の縦磁化成分を上記正の値から負の値に反転させる第1の反転パルスが送信されるように、上記送信コイルを制御する第1の送信コイル制御手段、
上記送信コイルから、上記第1の反転パルスにより上記負の値に反転した上記背景組織の縦磁化成分を上記正の値に反転させる第2の反転パルスが送信されるように、上記送信コイルを制御する第2の送信コイル制御手段、
上記送信コイルから、上記第2の反転パルスにより上記正の値に反転した上記背景組織の縦磁化成分を上記負の値に反転させる第3の反転パルスが送信されるように、上記送信コイルを制御する第3の送信コイル制御手段、
上記送信コイルから、上記体液のデータを収集するための励起パルスが送信されるように、上記送信コイルを制御する第4の送信コイル制御手段、
上記第1の反転パルスが送信されてから、第1の待ち時間が経過した時点で、上記第2の反転パルスが送信されるように、上記第2の送信コイル制御手段を制御する第1の反転パルス送信制御手段、
上記第2の反転パルスが送信されてから、第2の待ち時間が経過した時点で、上記第3の反転パルスが送信されるように、上記第3の送信コイル制御手段を制御する第2の反転パルス送信制御手段、および
上記第3の反転パルスが送信されてから、第3の待ち時間が経過した時点で、上記励起パルスが送信されるように、上記第4の送信コイル制御手段を制御する第3の反転パルス送信制御手段、
を有するMRI装置であって、
上記第3の反転パルス送信制御手段は、上記撮像領域を流れる上記第1の体液の縦磁化成分の絶対値が、上記撮像領域の背景組織の縦磁化成分の絶対値よりも大きい間に、上記励起パルスが送信されるように、上記第3の待ち時間を設定する。
また、上記の問題を解決する本発明のプログラムは、
被検体の撮像領域を流れる体液が背景組織よりも強調されるように、上記被検体を撮像するMRI装置であって、上記体液の縦磁化成分および上記背景組織の縦磁化成分が、正の値を有するように、上記被検体に静磁場を印加する静磁場印加手段と、上記被検体にRFパルスを送信する送信コイルとを有するMRI装置を、
上記送信コイルから、上記体液の縦磁化成分および上記背景組織の縦磁化成分を上記正の値から負の値に反転させる第1の反転パルスが送信されるように、上記送信コイルを制御する第1の送信コイル制御手段、
上記送信コイルから、上記第1の反転パルスにより上記負の値に反転した上記背景組織の縦磁化成分を上記正の値に反転させる第2の反転パルスが送信されるように、上記送信コイルを制御する第2の送信コイル制御手段、
上記送信コイルから、上記第2の反転パルスにより上記正の値に反転した上記背景組織の縦磁化成分を上記負の値に反転させる第3の反転パルスが送信されるように、上記送信コイルを制御する第3の送信コイル制御手段、
上記送信コイルから、上記体液のデータを収集するための励起パルスが送信されるように、上記送信コイルを制御する第4の送信コイル制御手段、
上記第1の反転パルスが送信されてから、第1の待ち時間が経過した時点で、上記第2の反転パルスが送信されるように、上記第2の送信コイル制御手段を制御する第1の反転パルス送信制御手段、
上記第2の反転パルスが送信されてから、第2の待ち時間が経過した時点で、上記第3の反転パルスが送信されるように、上記第3の送信コイル制御手段を制御する第2の反転パルス送信制御手段、および
上記第3の反転パルスが送信されてから、第3の待ち時間が経過した時点で、上記励起パルスが送信されるように、上記第4の送信コイル制御手段を制御する第3の反転パルス送信制御手段であって、上記撮像領域を流れる上記第1の体液の縦磁化成分の絶対値が、上記撮像領域の背景組織の縦磁化成分の絶対値よりも大きい間に、上記励起パルスが送信されるように、上記第3の待ち時間を設定する第3の反転パルス送信制御手段、
として機能させるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のMRI装置では、第1の反転パルスによって、体液および背景組織の縦磁化成分が負の値に反転する。負の値に反転した背景組織の縦磁化成分は、第2の反転パルスによって一旦正の値に戻った後、第3の反転パルスによって、再び負の値に反転する。したがって、背景組織の縦磁化成分が正の値に戻ってから、再び負の値に反転するまでの間に、体液の縦緩和が或る程度進んでいる。このため、体液の縦磁化成分は、背景組織の縦磁化成分よりも先にヌルポイントに到達する。したがって、背景組織の縦磁化成分がヌルポイント付近に到達した時点では、体液の縦磁化成分は、ヌルポイントよりも大きい値になる。この時点で体液のデータを収集することによって、体液が背景組織よりも十分に強調されたMR画像を得ることができる。
【0007】
また、背景組織の縦磁化成分が正の値に戻ってから、再び負の値に反転するまでの間に、体液は縦緩和しながら流れる。縦緩和しながら流れる体液は、背景組織の縦磁化成分が負の値からヌルポイントに到達するまでの間に、更に縦緩和しながら流れる。したがって、データ収集が開始されるまでに、ヌルポイントよりも十分に大きい縦磁化成分を有する体液が、撮像領域内に広範囲に行き渡る。このため、体液の速度が遅い被検体を撮像する場合であっても、体液を広範囲に描出することができる。
【0008】
尚、本発明において、背景組織とは、撮像対象の体液を除く被検体の全ての組織を含む概念である。したがって、本発明においては、例えば、撮像対象の体液が動脈血であり、背景組織が静脈血や脂肪の場合などがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。尚、本発明は、発明を実施するための最良の形態に限定されるものではない。
【0010】
図1は、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置1の一例である。このMRI装置1は発明を実施するための最良の形態の一例である。
【0011】
MRI装置1は、マグネットアセンブリ2を有している。マグネットアセンブリ2は、被検体13を挿入するためのボア3を有している。また、マグネットアセンブリ2は、静磁場印加手段4と、勾配コイル5と、送信コイル6とを有している。
【0012】
静磁場印加手段4はボア3内に一定の静磁場を印加する。勾配コイル5は、ボア3内に勾配磁場を発生する。送信コイル6はボア3内にRFパルスを送信する。
【0013】
また、MRI装置1は、ベローズ7および心拍センサ8を有している。
【0014】
ベローズ7は、被検体13の呼吸を検出し、呼吸信号7aをコントローラ10に送信する。また、心拍センサ8は、被検体13の心拍を検出し、心電信号8aをコントローラ10に送信する。
【0015】
コントローラ10は、受け取った呼吸信号7aおよび心電信号8aに基づいて、被検体13の呼吸状態および心拍状態を計算し、計算結果に基づいて、勾配コイル5および送信コイル6などを制御する。この結果、勾配コイル5は被検体13に勾配パルスを印加し、送信コイル6は被検体13に送信パルスを送信する。
【0016】
また、MRI装置1は受信コイル9を有している。受信コイル9は被検体13からのMR信号を受信する。受信されたMR信号はコントローラ10に供給される。
【0017】
コントローラ10は、受信コイル9からのMR信号に基づいて画像を再構成する。再構成された画像は、表示部11に表示される。MRI装置1の操作者は、表示部11および操作部12を通じてインタラクティブにMRI装置1を操作することができる。
【0018】
図2は、被検体13の撮像領域FOVを概略的に示す図である。
【0019】
図2には、被検体13の心臓14に繋がっている動脈15および静脈16が示されている。動脈血ARは、上流領域UPから、撮像領域FOVを経由して、下流領域DWに流れる。静脈血VEは、動脈血ARとは反対に、下流領域DWから、撮像領域FOVを経由して、上流領域UPに向かって流れる。本形態では、腎臓17を含む領域を撮像領域FOVとし、撮像領域FOVを流れる動脈血ARのMR画像を取得する場合について説明する。
【0020】
尚、撮像領域FOVには、動脈血ARの他に静脈血VEが流れており、更に静止組織(例えば、腎臓17)なども含まれている。本実施形態では、動脈血ARを描出することを考えているので、動脈血ARと一緒に、静脈血VEや腎臓17自体も描出されてしまうと、動脈血ARの血流状態を視認することが困難になる。したがって、撮像対象ではない組織(静脈血VE、腎臓17など)はできるだけ描出されないようする必要がある。そこで、本実施形態では、撮像対象ではない組織(静脈血VE、腎臓17など)はできるだけ描出されないようするため、以下のようなパルスシーケンスを実行する。
【0021】
図3は、撮像領域FOVを流れる動脈血ARのMR画像を取得するために実行されるパルスシーケンスの一例を示す図である。
【0022】
パルスシーケンス50は、第1の反転期間IR1、第2の反転期間IR2、第3の反転期間IR3、およびデータ収集期間ACQを有している。
【0023】
第1の反転期間IR1の時刻taにおいて、送信コイル6(図1参照)は、被検体13に非選択的RF反転パルスP1を送信する。この非選択的RF反転パルスP1によって、上流領域UP、撮像領域FOV、および下流領域DWの組織(動脈血AR、静脈血VE、静止組織など)の縦磁化成分が反転する。
【0024】
第2の反転期間IR2において、勾配コイル5(図1参照)は被検体13に勾配パルスGを印加する。勾配パルスGが印加されている間に、送信コイル6は、時刻tbにおいて選択的RF反転パルスP2を送信する。選択的RF反転パルスP2は、非選択的RF反転パルスP1から、待ち時間Tw1が経過した時点で送信される。勾配パルスGおよび選択的RF反転パルスP2は、撮像領域FOVおよび下流領域DW(図4参照)に含まれる組織(動脈血AR、静脈血VE、静止組織など)の縦磁化成分が反転するように調節されている。第2の反転期間IR2の後に、第3の反転期間IR3が設けられている。
【0025】
第3の反転期間IR3の時刻tcにおいて、送信コイル6は、被検体13に非選択的RF反転パルスP3を送信する。非選択的RF反転パルスP3は、選択的RF反転パルスP2から、待ち時間Tw2が経過した時点で送信される。第3の反転期間IR3の後に、データ収集期間ACQが設けられている。
【0026】
データ収集期間ACQの間に、データが収集される。データ収集期間ACQの間、送信コイル6は、データを収集するための多数の励起パルスPdaを印加する。この励起パルスPdaは、非選択的RF反転パルスP3から、待ち時間Tw3が経過した時点で送信される。
【0027】
図3では、非選択的RF反転パルスP1と励起パルスPdaとの間の反転時間がTIa、選択的RF反転パルスP2と励起パルスPdaとの間の反転時間がTIb、非選択的RF反転パルスP3と励起パルスPdaとの間の反転時間がTIcで示されている。したがって、待ち時間Tw1=TIa−TIb、待ち時間Tw2=TIb−TIc、および待ち時間Tw3=TIcとなる。
【0028】
反転時間TIa、TIb、およびTIcの一例は、以下の通りである。
TIa:1680ms
TIb:(1680−Δt)ms
TIc:840ms
TIbのΔtは、例えば数msである。
この場合、待ち時間Tw1、Tw2、およびTw3は、以下の通りである。
Tw1 :Δtms ・・・(1)
Tw2 :840ms−Δt ・・・(2)
Tw3 :840ms ・・・(3)
【0029】
図3に示すパルスシーケンス50を実行するため、コントローラ10は、以下のように構成されている。
【0030】
図4は、コントローラ10の機能ブロック図の一例である。
【0031】
コントローラ10は、タイミング算出部101、第1の送信コイル制御手段102、第2の送信コイル制御手段103、第3の送信コイル制御手段104、第4の送信コイル制御手段105、第1の反転パルス送信制御手段106、第2の反転パルス送信制御手段107、第3の反転パルス送信制御手段108、および勾配コイル制御手段109を有している。
【0032】
タイミング算出部101は、呼吸信号7aおよび心電信号8aに基づいて、パルスシーケンス50(図3参照)を実行するタイミングを算出する。尚、タイミング算出部101は、呼吸信号7aおよび心電信号8aの一方のみを使用してパルスシーケンス50を実行するタイミングを算出してもよい。また、呼吸信号7aおよび心電信号8aを使用せずにパルスシーケンス50を実行することも可能のである。
【0033】
第1の送信コイル制御手段102は、送信コイル6から、非選択的RF反転パルスP1(図3参照)が送信されるように、送信コイル6を制御する。
第2の送信コイル制御手段103は、送信コイル6から、選択的RF反転パルスP2(図3参照)が送信されるように、送信コイル6を制御する。
第3の送信コイル制御手段104は、送信コイル6から、非選択的RF反転パルスP3(図3参照)が送信されるように、送信コイル6を制御する。
第4の送信コイル制御手段105は、送信コイル6から、動脈血ARのデータを収集するための励起パルスPdaが送信されるように、送信コイル6を制御する。
第1の反転パルス送信制御手段106は、非選択的反転RFパルスP1が送信されてから、第1の待ち時間Tw1が経過した時点で、選択的RF反転パルスP2が送信されるように、第2の送信コイル制御手段103を制御する。
第2の反転パルス送信制御手段107は、選択的RF反転パルスP2が送信されてから、第2の待ち時間Tw2が経過した時点で、非選択的RF反転パルスP3が送信されるように、第3の送信コイル制御手段104を制御する。
第3の反転パルス送信制御手段108は、非選択的RF反転パルスP3が送信されてから、第3の待ち時間Tw3が経過した時点で、励起パルスPdaが送信されるように、第4の送信コイル制御手段105を制御する。また、第3の反転パルス送信制御手段108は、撮像領域FOVを流れる動脈血ARの縦磁化成分Mzが、撮像領域FOVの静脈血VEの縦磁化成分Mzよりも大きい間に、励起パルスPdaが送信されるように、第3の待ち時間Tw3を設定する。
勾配コイル制御手段109は、勾配コイル5から勾配パルスGが印加されるように、勾配コイル5を制御する。
【0034】
次に、MRI装置1がどのような処理を実行するかについて説明する。
【0035】
図5は、MRI装置1の処理フローを示す図である。
【0036】
先ず、ステップS11では、タイミング算出部101(図4参照)が、呼吸信号7aおよび心電信号8aに基づいて、パルスシーケンス50(図3参照)を実行するタイミングを算出する。ステップS11の後、ステップS12に進む。
【0037】
ステップS12では、パルスシーケンス(図3参照)を実行することにより、被検体13の撮像領域FOVから動脈血ARのデータを収集する。
【0038】
ステップS12で、動脈血ARのデータを収集した後、ステップS13に進み、更にデータの収集を続行するかどうかが判断される。データの収集を続行する場合は、ステップS11に戻る。ステップS13において、データの収集を続行しないと判断された場合、ループを終了する。
【0039】
ステップS12は、図3に示すパルスシーケンス50を実行するため、7つのサブステップS121〜サブステップS127を有している。
【0040】
サブステップS121では、第1の送信コイル制御手段102(図4参照)が、送信コイル6(図1参照)から、非選択的RF反転パルスP1(図3参照)が送信されるように、送信コイル6を制御する。この結果、第1の反転期間IR1の時刻taに、非選択的RF反転パルスP1が送信される。サブステップS123では、第2の送信コイル制御手段103(図4参照)が、送信コイル6(図1参照)から、選択的RF反転パルスP2(図3参照)が送信されるように、送信コイル6を制御する。この結果、第2の反転期間IR2の時刻taに、選択的RF反転パルスP2が送信される。サブステップS125では、第3の送信コイル制御手段104(図4参照)が、送信コイル6(図1参照)から、非選択的RF反転パルスP3(図3参照)が送信されるように、送信コイル6を制御する。この結果、第3の反転期間IR3の時刻tcに、非選択的RF反転パルスP3が送信される。サブステップS127では、第4の送信コイル制御手段105(図4参照)が、送信コイル6(図1参照)から、動脈血ARのデータを収集するための励起パルスPdaが送信されるように、送信コイル6を制御する。
【0041】
また、ステップS12は、更に、サブステップS122、S124、およびS126を有している。サブステップS122では、第1の反転パルス送信制御手段106(図4参照)が、非選択的反転RFパルスP1が送信されてから、第1の待ち時間Tw1(=TIa−TIb)が経過した時点で、選択的RF反転パルスP2が送信されるように、第2の送信コイル制御手段103を制御する。サブステップS124では、第2の反転パルス送信制御手段107(図4参照)が、選択的RF反転パルスP2が送信されてから、第2の待ち時間Tw2(=TIb−TIc)が経過した時点で、非選択的RF反転パルスP3が送信されるように、第3の送信コイル制御手段104を制御する。サブステップS126では、第3の反転パルス送信制御手段108(図4参照)が、非選択的RF反転パルスP3が送信されてから、第3の待ち時間Tw3(=TIc)が経過した時点で、励起パルスPdaが送信されるように、第4の送信コイル制御手段105を制御する。
【0042】
MRI装置1は、図5に示すフローに従ってパルスシーケンス50(図3参照)を実行することによって、動脈血ARが強調された血流画像を取得することができる。以下に、パルスシーケンス50を実行することによって、動脈血ARが強調された血流画像を取得できる理由について、図3および図6〜図11を参照しながら説明する。
【0043】
図6〜図11は、図3に示すパルスシーケンス50の各時刻における被検体13の動脈血ARと静脈血VEの縦磁化成分Mを示すグラフである。
【0044】
図6〜図11のグラフの横軸Rは、図2に示す被検体13の上流領域UP、撮像領域FOV、および下流領域DWを表している。図6〜図11のグラフの縦軸は、被検体13の動脈血ARおよび静脈血VEの縦磁化成分Mzを示す。
【0045】
先ず、図6のグラフについて考察する。
【0046】
図6は、第1の反転期間IR1の開始直前(図3の時刻t1)における動脈血ARおよび静脈血VEの縦磁化成分Mzを示している。図6(a)のグラフには、時刻t1における動脈血ARの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表すラインA1が示されている。図6(b)のグラフには、時刻t1における静脈血VEの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表すラインV1が示されている。
【0047】
(1)図6(a)のグラフについて
時刻t1では、非選択的RF反転パルスP1はまだ送信されていない。したがって、動脈血ARの縦磁化成分Mzは、静磁場印加手段4によって(図1参照)、上流領域UP、撮像領域FOV、および下流領域DWに渡って、Mz=1となっている。
【0048】
(2)図6(b)のグラフについて
静脈血VEの縦磁化成分Mzも、上流領域UP、撮像領域FOV、および下流領域DWに渡って、Mz=1である。
【0049】
時刻t1の直後に、非選択的RF反転パルスP1が送信される(図3参照)。非選択的RF反転パルスP1が送信されると、動脈血ARおよび静脈血VEの縦磁化成分Mzは、図7のグラフに示すように変化する。
【0050】
図7は、非選択的RF反転パルスP1の送信直後(図3の時刻t2)における動脈血ARおよび静脈血VEの縦磁化成分Mzを示している。
【0051】
図7(a)のグラフには、時刻t2における動脈血ARの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表すラインA2が示されている。
【0052】
図7(b)のグラフには、時刻t2における静脈血VEの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表すラインV2が示されている。
【0053】
(1)図7(a)のグラフについて
第1の反転期間IR1の間に、非選択的RF反転パルスP1が送信される。したがって、動脈血ARの縦磁化成分Mzは、ラインA2に示すように、上流領域UP、撮像領域FOV、および下流領域DWの全体に渡って、Mz=1からMz=−1に反転する。
【0054】
(2)図7(b)のグラフについて
静脈血VEの縦磁化成分Mzも、動脈血ARの縦磁化成分Mzと同様に、Mz=1からMz=−1に反転する。
【0055】
第1の反転期間IR1の後、第2の反転期間IR2が設けられる(図3参照)。第2の反転期間IR2の間に、勾配パルスGと選択的RF反転パルスP2が印加される。勾配パルスGおよび選択的RF反転パルスP2は、撮像領域FOVおよび下流領域DW(図2参照)の組織の縦磁化成分が反転するように調節されている。したがって、第2の反転期間IR2の間に、撮像領域FOVおよび下流領域DW内の動脈血ARおよび静脈血VEの縦磁化成分Mzは、図8のグラフに示すように変化する。
【0056】
図8は、選択的RF反転パルスP2の送信直後(図3の時刻t3)における動脈血ARおよび静脈血VEの縦磁化成分Mzを示している。図8(a)のグラフには、時刻t3における動脈血ARの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表すラインA3が示されている。図8(b)のグラフには、時刻t3における静脈血VEの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表すラインV3が示されている。
【0057】
(1)図8(a)のグラフについて
第2の反転期間IR2の間に送信された選択的RF反転パルスP2によって、動脈血ARの縦磁化成分Mzは、撮像領域FOVおよび下流領域DW内において、Mz=−1からMz=1に反転する。尚、本実施形態では、非選択的RF反転パルスP1を送信してから、選択的RF反転パルスP2が送信されるまでの待ち時間Tw1は、非常に短く、数ms程度である(式(1)参照)。したがって、第2の反転期間IR2が終了しても、上流領域UPの動脈血ARは、ほとんど縦緩和していない。このため、上流領域UPの縦磁化成分Mzは、時刻t=t3においても、Mz=−1のままである。
【0058】
(2)図8(b)のグラフについて
静脈血VEの縦磁化成分Mzも、動脈血ARの縦磁化成分Mzと同様に、撮像領域FOVおよび下流領域DW内において、Mz=−1からMz=1に反転する。
【0059】
第2の反転期間IR2の後、第3の反転期間IR3が設けられる(図3参照)。ただし、第2の反転期間IR2と第3の反転期間IR3との間には、第2の待ち時間Tw2が設けられている。したがって、第2の待ち時間Tw2の間に、動脈血ARおよび静脈血VEの縦緩和が進み、その結果、動脈血ARおよび静脈血VEの縦磁化成分Mzは、図9のグラフに示すように変化する。
【0060】
図9は、第3の反転期間IR3の開始直前(図3の時刻t4)における動脈血ARおよび静脈血VEの縦磁化成分Mzを示している。
【0061】
図9(a)のグラフには、時刻t4における動脈血ARの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表すラインA4(実線)が示されている。また、図9(a)のグラフには、図8(a)に示されているラインA3が一点鎖線で示されている。
【0062】
図9(b)のグラフには、時刻t4における静脈血VEの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表すラインV4(実線)が示されている。また、図9(b)のグラフには、図8(b)に示されているラインV3が一点鎖線で示されている。
【0063】
(1)図9(a)のグラフについて
上流領域UPの動脈血ARの縦磁化成分Mzは、時刻t3において、Mz=−1である(ラインA3参照)。しかし、時刻t3においてMz=−1である動脈血ARは、第2の待ち時間Tw2の間に縦緩和が進む。本実施形態では、待ち時間Tw2は、動脈血ARの縦磁化成分Mzが、Mz=−1からヌルポイントに到達するまでの時間(約840ms)にほぼ等しい(式(2)参照)。したがって、時刻t3においてMz=−1である動脈血ARは、時刻t4において、実質的にヌルポイントにまで縦磁化回復する。ただし、動脈血ARは、上流領域UPから下流領域DWに向かって流れるので、ラインA3上の縦磁化成分Mz=−1(横軸Rの位置P2よりも左側の範囲)は、ラインA4上の縦磁化成分Mz=0(横軸Rの位置P4よりも左側の範囲)に変化する。例えば、ラインA3上の縦磁化成分MA3_1(横軸Rの位置P1)は、動脈血ARが流れることによって、ラインA4上の縦磁化成分MA4_1(横軸Rの位置P2)に変化する。また、ラインA3上の縦磁化成分MA3_2(横軸Rの位置P2)は、動脈血ARが流れることによって、ラインA4上の縦磁化成分MA4_2(横軸Rの位置P4)に変化する。
【0064】
尚、時刻t3においてMz=1である動脈血ARは、時刻t4においてもMz=1のままである。ただし、動脈血ARは、上流領域UPから下流領域DWに向かって流れるので、ラインA3上の縦磁化成分Mz=1(横軸Rの位置P2よりも右側の範囲)は、ラインA4上の縦磁化成分Mz=1(横軸Rの位置P4よりも右側の範囲)に変化する。例えば、ラインA3上の縦磁化成分MA3_3(横軸Rの位置P3)は、動脈血ARが流れることによって、ラインA4上の縦磁化成分MA4_3(横軸Rの位置P5)に変化する。
【0065】
(2)図9(b)のグラフについて
時刻t3においてMz=−1である静脈血VEも、第2の待ち時間Tw2の間に縦緩和する。静脈血VEの縦磁化成分Mzが、Mz=−1からヌルポイントに到達するまでの時間は、動脈血ARの場合と実質的に同じ時間である。したがって、時刻t3においてMz=−1である静脈血VEは、時刻t4において、実質的にヌルポイントにまで縦磁化回復する。ただし、静脈血VEは、動脈血ARの流速よりも遅い流速で、動脈血ARとは反対方向に流れるので、ラインV3上の縦磁化成分Mz(時刻t3)は、ラインV4上の縦磁化成分Mz(時刻t4)に変化する。例えば、ラインV3上の縦磁化成分MV3_1(横軸Rの位置P2)は、静脈血VEが流れることによって、ラインV4上の縦磁化成分MV4_1(横軸Rの位置P1’)に変化する。
【0066】
時刻t4の直後に、非選択的RF反転パルスP3が印加される(図3参照)。非選択的RF反転パルスP3が印加されると、動脈血ARおよび静脈血VEの縦磁化成分Mzは、図10のグラフに示すように変化する。
【0067】
図10は、非選択的RF反転パルスP3の送信直後(図3の時刻t5)における動脈血ARおよび静脈血VEの縦磁化成分Mzを示している。
【0068】
図10(a)のグラフには、時刻t5における動脈血ARの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表すラインA5(実線)が示されている。また、図10(a)のグラフには、図9(a)に示されているラインA4が一点鎖線で示されている。
【0069】
図10(b)のグラフには、時刻t5における静脈血VEの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表すラインV5(実線)が示されている。また、図10(b)のグラフには、図9(b)に示されているラインV4が一点鎖線で示されている。
【0070】
(1)図10(a)のグラフについて
ラインA4(時刻t4)の動脈血ARの縦磁化成分Mz=0は、非選択的RF反転パルスP3によって、Mz=−1に反転する。この結果、ラインA4上の縦磁化成分Mzは、ラインA5の縦磁化成分Mzに変化する。尚、時刻t4とt5との間の時間間隔は十分に短いので、時刻t4から時刻t5の間の動脈血ARの移動距離は無視できる。したがって、例えば、ラインA4上の縦磁化成分MA4_3(横軸Rの位置P5)は、ラインA5上の縦磁化成分MA5_3(横軸Rの位置P5)に変化する。
【0071】
(2)図10(b)のグラフについて
静脈血VEについても、動脈血ARと同様に、縦磁化成分Mz=1は、Mz=−1に)に反転する。したがって、ラインV4上の縦磁化成分Mzは、ラインV5の縦磁化成分Mzに変化する。尚、時刻t4とt5との間の時間間隔は十分に短いので、時刻t4から時刻t5の間の静脈血VEの移動距離は無視できる。したがって、例えば、ラインV4上の縦磁化成分MV4_3(横軸Rの位置P5)は、ラインV5上の縦磁化成分MV5_3(横軸Rの位置P5)に変化する。
【0072】
第3の反転期間IR3の後、データ収集期間ACQが設けられる(図3参照)。ただし、第3の反転期間IR3とデータ収集期間ACQとの間には、第3の待ち時間Tw3が設けられている。したがって、第3の待ち時間Tw3の間に、動脈血ARおよび静脈血VEの縦磁化成分Mzは、図11のグラフに示すように変化する。
【0073】
図11は、データ収集期間ACQの開始直前(図3の時刻t6)における動脈血ARおよび静脈血VEの縦磁化成分Mzを示している。
【0074】
図11(a)のグラフには、時刻t6における動脈血ARの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表すラインA6(実線)が示されている。また、図11(a)のグラフには、図10(a)に示されているラインA5が一点鎖線で示されている。
【0075】
図11(b)のグラフには、時刻t6における静脈血VEの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表すラインV6(実線)が示されている。また、図11(b)のグラフには、図10(b)に示されているラインV5が一点鎖線で示されている。
【0076】
図11の説明に当たっては、先に図11(b)について説明し、次いで、図11(a)について説明する。
【0077】
(1)図11(b)のグラフについて
時刻t5においてMz=−1である静脈血VEは、第3の待ち時間Tw3の間に縦緩和する。本実施形態では、第3の待ち時間Tw3は、静脈血VEの縦磁化成分MzがMz=−1からヌルポイントに到達するまでの時間(840ms)に設定されている。したがって、ラインV5上の縦磁化成分Mz=−1(横軸Rの位置P1’よりも右側の範囲)は、第3の待ち時間Tw3の間に縦緩和し、データ収集期間の開始直前(時刻t6)において、実質的にヌルポイントに到達する。ただし、静脈血VEは、下流領域DWから上流領域UPに向かって流れるので、ラインV5上の縦磁化成分Mz=−1(横軸Rの位置P1’よりも右側の範囲)は、ラインV6上の縦磁化成分Mz=0(横軸Rの位置P2’よりも右側の範囲)に変化する。例えば、ラインV5上の縦磁化成分MV5_1(横軸Rの位置P1’)は、静脈血VEが流れることによって、ラインV6上の縦磁化成分MV6_1(横軸Rの位置P2’)に変化する。図11(b)から分かるように、撮像領域FOV内の静脈血VEは、時刻t6において、縦磁化成分Mzがゼロになっていることが分かる。
【0078】
(2)図11(a)のグラフについて
時刻t5においてMz=−1である動脈血ARも、第3の待ち時間Tw3の間に縦緩和する。動脈血ARの縦磁化成分Mzが、Mz=−1からヌルポイントに到達するまでの時間は、静脈血VEの場合と実質的に同じ時間である。したがって、ラインA5上の縦磁化成分Mz=−1(横軸Rの位置P4よりも右側の範囲)は、第3の待ち時間Tw3の間に縦緩和し、データ収集期間の開始直前(時刻t6)において、実質的にヌルポイントに到達する。ただし、動脈血ARは上流領域UPから下流領域DWに向かって流れるので、ラインA5上の縦磁化成分Mz=−1(横軸Rの位置P4よりも右側の範囲)は、ラインA6上の縦磁化成分Mz=0(横軸Rの位置P6よりも右側の範囲)に変化する。例えば、ラインA5上の縦磁化成分MA5_3(横軸Rの位置P5)は、ラインA6上の縦磁化成分MA6_3(横軸Rの位置P7)に変化する。
【0079】
また、ラインA5上の縦磁化成分Mz=0(横軸Rの位置P4よりも左側の範囲)は、第3の待ち時間Tw3の間に、Mz=α(0<α<1)まで縦磁化回復する。本実施形態では、αは約0.5〜0.6である。ただし、動脈血ARは上流領域UPから下流領域DWに向かって流れるので、ラインA5上の縦磁化成分Mz=0(横軸Rの位置P4よりも左側の範囲)は、ラインA6上の縦磁化成分Mz=α(横軸Rの位置P6よりも左側の範囲)に変化する。例えば、ラインA5上における縦磁化成分MA5_1(横軸Rの位置P1)は、ラインA6上の縦磁化成分MA6_1(横軸Rの位置P2)に変化する。また、ラインA5上の縦磁化成分MA5_2(横軸Rの位置P4)は、ラインA6上の縦磁化成分MA6_2(横軸Rの位置P6)に変化する。図11(a)から分かるように、撮像領域FOV内の動脈血ARは、時刻t6において、縦磁化成分Mzが0より大きい値α(=0.5〜0.6)なっていることが分かる。
【0080】
図11(a)と(b)とを比較すると、撮像領域FOVの範囲において、動脈血ARの縦磁化成分Mはα(=0.5〜0.6)であるが(ラインA6)、静脈血VEの縦磁化成分Mは0(ゼロ)である(ラインV6)。したがって、図3に示すパルスシーケンス50を実行することによって、動脈血ARが強調された血流画像を得ることができる。
【0081】
尚、動静脈分離の方法として、例えば、Time−SLIP方法が知られている(非特許文献参照)。しかし、このTime−SLIP法では、上記の実施形態で得られる撮像領域FOVよりも狭い範囲でしか動脈血ARを撮像することができない。その理由について、上記の実施形態とTime−SLIP法とを比較しながら説明する。
【0082】
図12は、本実施形態のパルスシーケンスとTime−SLIP法のパルスシーケンスとを示す図である。
【0083】
図12(a)は、上記の実施形態のパルスシーケンス50(図3参照)であり、図12(b)は、Time−SLIP法のパルスシーケンスの一例である。
【0084】
Time−SLIP法のパルスシーケンス51は、本発明の実施形態のパルスシーケンス50と同じタイミングで第3の反転期間IR3が設けられている。しかし、Time−SLIP法のパルスシーケンスでは、第1の反転期間IR1、第2の反転期間IR2は設けられておらず、代わりに、第3の反転期間IR3の直後に第4の反転期間IR4が設けられている。
【0085】
以下に、これらのパルスシーケンス50および51を実行することにより、動脈血ARの縦磁化成分がどのように変化するかについて説明する。
【0086】
図13〜図19は、図12に示すパルスシーケンス50および51の各時刻における被検体13の動脈血ARの縦磁化成分Mを示すグラフである。
【0087】
図13〜図19のグラフの横軸Rは、図2に示す被検体13の上流領域UP、撮像領域FOV、および下流領域DWを表している。図13〜図19のグラフの縦軸は、被検体13の動脈血ARおよび静脈血VEの縦磁化成分Mzを示す。
【0088】
図13〜図19のグラフ(a)は、本実施形態のパルスシーケンス50(図12(a)参照)を実行した場合の各時刻における動脈血ARの縦磁化成分Mzを示す。一方、図13〜図19のグラフ(b)は、Time-SLIP法のパルスシーケンス51(図12(b)参照)を実行した場合の各時刻における動脈血ARの縦磁化成分Mzを示す。
【0089】
Time-SLIP法によるパルスシーケンス51では、時刻t4まではパルスは印加されていない。したがって、Time-SLIP法では、時刻t1〜t4における動脈血ARの縦磁化成分Mzは、図13〜図16のグラフ(b)に示すように、上流領域UP、撮像領域FOV、および下流領域DWに渡って、Mz=1である。
【0090】
時刻t4の直後に、第3の反転期間IR3が開始される。
第3の反転期間IR3の間に、非選択的RF反転パルスP3が印加される。非選択的RF反転パルスP3が印加されると、動脈血ARの縦磁化成分Mzは、図17のグラフに示すように変化する。
【0091】
図17は、第3の反転期間IR3の終了直後(図12の時刻t5)における動脈血ARの縦磁化成分Mzを示している。
【0092】
図17(a)は、本実施形態のグラフであり、時刻t5における動脈血ARの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表すラインA5(実線)が示されている。また、図17(a)のグラフには、図16(a)に示されているラインA4が一点鎖線で示されている。
【0093】
図17(b)は、Time-SLIP法のグラフであり、時刻t5における動脈血ARの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表すラインA51(実線)が示されている。また、図17(b)のグラフには、図16(b)に示されているラインA41が一点鎖線で示されている。
【0094】
第3の反転期間IR3の間に、非選択的RF反転パルスP3が印加されると、上流領域UP、撮像領域FOV、および下流領域DWの全体に渡って、被検体13の組織の縦磁化成分Mが反転する。この結果、動脈血ARの縦磁化成分Mz=1は、Mz=−1に反転する。図17(a)(本実施形態)では、ラインA4からラインA5に変化し、図17(b)(Time-SLIP法)では、ラインA41からラインA51に変化する。図17(a)と図17(b)とを比較すると、図17(a)では、撮像領域FOVは、縦磁化成分Mz=−1の領域だけでなく、Mz=0の領域も有しているが、図17(b)では、撮像領域FOVの全体に渡って、縦磁化成分Mz=−1であることが分かる。
【0095】
Time-SLIP法では、第3の反転期間IR3の直後に、第4の反転期間IR4が設けられる。第4の反転期間IR4の間に、被検体13に勾配パルスGが印加され、勾配パルスGが印加されている間に、選択的RF反転パルスP4が送信される。これらの勾配パルスGおよび選択的RF反転パルスP4は、上流領域UP(図2参照)の組織(動脈血AR、静脈血VE、静止組織など)の縦磁化成分が反転するように調節されている。したがって、第4の反転期間IR4に選択的RF反転パルスP4を送信することによって、Time-SLIP法では、動脈血ARの縦磁化成分Mzは、図18のグラフに示すように変化する。
【0096】
図18は、時刻t5’時点における動脈血ARの縦磁化成分Mzを示している。
【0097】
図18(a)は、時刻t5’における本実施形態の動脈血ARの縦磁化成分Mzのグラフである。図18(b)は、時刻t5’におけるTime-SLIP法の動脈血ARの縦磁化成分Mzのグラフである。
【0098】
Time-SLIP法においては、第4の反転期間IR4の間に、上流領域UPの組織の縦磁化成分が反転する。したがって、図18(b)に示すように、動脈血ARの縦磁化成分Mzは、上流領域UPにおいて、Mz=−1からMz=1に反転する。
【0099】
一方、本実施形態の場合、時刻t5〜t5’の間に選択的RF反転パルスP4は印加されない。したがって、本実施形態では、時刻t5’のグラフA5’は、時刻t5のグラフA5(図17(a)参照)と実質的に同じである。尚、時刻t5とt5’との間の時間間隔は十分に短い(数ms程度)ので、時刻t5から時刻t5’の間の動脈血ARの移動距離は無視されている。時刻t5’の後、データ収集期間ACQが開始される。
【0100】
図19は、データ収集期間ACQの開始直前(図12の時刻t6)における動脈血ARの縦磁化成分Mzを示している。
【0101】
図19(a)は、時刻t6における本実施形態の動脈血ARの縦磁化成分Mzのグラフである。図19(b)は、時刻t6におけるTime-SLIP法の動脈血ARの縦磁化成分Mzのグラフである。
【0102】
図19(a)は、本実施形態のグラフであり、時刻t6における動脈血ARの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表すラインA6(実線)が示されている。また、図19(a)のグラフには、図18(a)に示されているラインA5’が一点鎖線で示されている。
【0103】
図19(b)は、Time-SLIP法のグラフであり、時刻t6における動脈血ARの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表すラインA61(実線)が示されている。また、図19(b)のグラフには、図18(b)に示されているラインA51’が一点鎖線で示されている。
【0104】
本実施形態においては(図19(a))、時刻t6における動脈血ARの縦磁化成分Mzは、図11を参照しながら説明したように、ラインA6で表される。図19(a)では、時刻t5’において、位置P4とP6との間の縦磁化成分Mzは、Mz=−1であるが、位置P2とP4との間の縦磁化成分Mzは、Mz=0である。したがって、時刻t5’において縦磁化成分Mz=0の動脈血ARが、縦緩和しながら流れることによって、時刻t6において、撮像領域FOVの縦磁化成分Mzは、Mz=α(=0.5〜0.6)となる。
【0105】
一方、Time-SLIP法では、時刻t5’において、上流領域UPの縦磁化成分MzはMz=1である(図18(b)参照)。したがって、上流領域UPの縦磁化成分Mz=1の動脈血ARが撮像領域FOVに流入することによって、時刻t6において、撮像領域FOVの位置P2とP4との間の縦磁化成分MzはM=1になる。
【0106】
しかし、Time-SLIP法では、時刻t5’において、撮像領域FOVの縦磁化成分MzはMz=−1である。時刻t5’において縦磁化成分Mz=−1の動脈血ARは、時刻t6の時点では、Mz=0までしか回復しない。したがって、時刻t6において、撮像領域FOVの位置P4とP6との間の縦磁化成分MzはM=0になる。このため、撮像領域FOVの位置P4とP6との間では、動脈の血流状態を視認することができない。
【0107】
これに対して、本実施形態では、図19(a)に示すように、動脈血ARの縦磁化成分Mzは、撮像領域FOVの全体に渡ってゼロより大きい値α(=0.5〜0.6)を有している。したがって、本実施形態では、Time−SLIP法よりも、撮像領域FOV内において、距離x(位置P4と位置P6との間の距離)の分だけ動脈の血流を広範囲に撮像できることがわかる。
【0108】
また、撮像領域FOVに流入する動脈血ARは、SI(上下)方向だけでなく、RL(左右)方向およびAP(前後)方向にも流れる。したがって、本実施形態を使用することによって、SI方向、RL方向、およびAP方向において、Time-SLIP法よりも、距離xの分だけ広範囲に動脈血ARを撮像することができる。例えば、Time−SLIP法では腎臓17内の動脈血ARが十分に描出できない場合でも、本実施形態を使用することによって腎臓17内の動脈血ARを十分に描出することができる。
【0109】
尚、本実施形態(ラインA6)では、縦磁化成分Mzは、撮像領域FOVにおいて、Mz=α(=0.5〜0.6)である。したがって、α<1であるので、撮像領域FOVの位置P2とP4との間の範囲では、本実施形態における動脈血ARは、Time−SLIP法で撮像された動脈血ARよりも、視認しにくいのではないかとも考えられる。しかし、本実施形態では、動脈血ARの縦磁化成分MはMz=α(=0.5〜0.6)の大きさを有するとともに、静脈血VEの縦磁化成分Mは0(ゼロ)である(図11(b)参照)。したがって、静脈血VEは血流画像の中に実質的に描出されないので、動脈の血流状態は十分に視認できると考えられる。
【0110】
尚、本実施形態のデータ収集開始時点の動脈血ARの縦磁化成分Mzは、Mz=αであるが(図11(a)および図19(a)参照)、データ収集開始時点の動脈血ARの縦磁化成分Mzを、αよりも大きくすることもできる。データ収集時点の動脈血ARの縦磁化成分Mzを、αよりも大きくしたい場合は、例えば、第2の待ち時間Tw2を短くすればよい。以下に、第2の待ち時間Tw2を短くすることにより、データ収集開始時点の動脈血ARの縦磁化成分Mzを、αよりも大きくすることができる理由について説明する。
【0111】
先ず、第2の待ち時間Tw2として、2つの第2の待ち時間Tw2を考える。1つは、上記の実施形態と同じ待ち時間Tw2=840msであり、もう1つは、840msよりも短い待ち時間Tw2である。ここでは、840msよりも短い待ち時間Tw2として、Tw2=600msを考える。
【0112】
図20〜図22は、2つの待ち時間Tw2(840msおよび600ms)において、図3に示すパルスシーケンス50の各時刻における動脈血ARの縦磁化成分Mがどのように変化するかを示すグラフである。尚、時刻t1、t2、およびt3における動脈血ARの縦磁化成分Mzは、待ち時間Tw2の値に関わらず、図13、図14、および図15のグラフで表されるので、説明は省略する。
【0113】
待ち時間Tw2=840ms、およびTw2=600msの場合、時刻t4における動脈血ARの縦磁化成分は、図20に示すグラフで示される。
【0114】
図20は、Tw2=840ms、およびTw2=600msの場合において、時刻t4における動脈血ARの縦磁化成分Mzを示す図である。
【0115】
図20(a)および(b)には、それぞれラインA4およびラインA42が示されている。ラインA4は、待ち時間Tw2(=840ms)の場合の時刻t4における動脈血ARの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表している。ラインA42は、待ち時間Tw2(=600ms)の場合の時刻t4における動脈血ARの縦磁化成分Mzと被検体13の領域Rとの関係を表している。
【0116】
ラインA4(待ち時間Tw2=840ms)では、縦磁化成分Mzは、位置Pa’の左側の範囲において、ヌルポイントに到達している。しかし、ラインA42の待ち時間Tw2は600msであるので、ラインA42では、縦磁化成分Mzは、まだヌルポイントに到達していない。ラインA42は、位置Paの左側の範囲において、Mz=−βである(0<β<1)。
【0117】
時刻t4の直後に、第3の反転期間IR3が設けられ(図3参照)、第3の反転期間IR3の間に、非選択的RF反転パルスP3が印加される。非選択的RF反転パルスP3が印加されると、動脈血ARの縦磁化成分Mzは、図21のグラフに示されるように変化する。
【0118】
図21は、第3の反転期間IR3の終了直後(図3の時刻t5)における動脈血ARの縦磁化成分Mzを示している。
【0119】
図21(a)および(b)には、ラインA5およびラインA52が示されている。ラインA5は、待ち時間Tw2=840msの場合の時刻t5における動脈血ARの縦磁化成分Mzを表している。ラインA52は、待ち時間Tw2=600msの場合の時刻t5における動脈血ARの縦磁化成分Mzを表している。
【0120】
非選択的RF反転パルスP2が印加されたので、動脈血ARの縦磁化成分Mzは反転する。その結果、待ち時間Tw2(=840ms)の場合、位置Pa’の左側の範囲では、縦磁化成分Mz=0のままであるが、一方、待ち時間Tw2(=600ms)の場合、位置Paの左側の範囲では、縦磁化成分MzがMz=−βからMz=+βに反転する。
【0121】
第3の反転期間IR3の後、データ収集期間ACQが設けられる。ただし、第3の反転期間IR3とデータ収集期間ACQとの間には、第3の待ち時間Tw3が設けられている。第3の待ち時間Tw3は、上記の実施形態と同様に、840msとする。第3の待ち時間Tw3の間に、動脈血ARの縦磁化成分Mzは、図22のグラフに示すように変化する。
【0122】
図22は、データ収集期間ACQの開始時点(図3の時刻t6)における動脈血ARの縦磁化成分Mzを示している。
【0123】
図22(a)および(b)には、それぞれラインA6およびラインA62が示されている。ラインA6は、待ち時間Tw2=840msの場合の時刻t6における動脈血ARの縦磁化成分Mzを表している。ラインA52は、待ち時間Tw2=600msの場合の時刻t6における動脈血ARの縦磁化成分Mzを表している。
【0124】
動脈血ARは、時刻t5〜t6の間に縦緩和する。待ち時間Tw2=840msの場合、縦磁化成分Mzは、Mz=αにまで回復している。一方、待ち時間Tw2=600msの場合、縦磁化成分Mzは、Mz=γにまで回復している。図21を参照すると、待ち時間Tw2a=840msの場合の縦磁化成分Mzは、位置Pa’の左側の範囲において、ヌルポイントであるが、一方、待ち時間Tw2=600msの場合の縦磁化成分Mzは、位置Paの左側の範囲において、ヌルポイントよりも大きい値βを有している。したがって、図22に示すように、待ち時間Tw2=600msの場合の縦磁化成分Mzは、αよりも大きくなり、γまで縦緩和する。
【0125】
したがって、待ち時間Tw2を短くすることによって、データ収集開始時点における動脈血ARの縦磁化成分Mzを大きくすることができる。
【0126】
ただし、待ち時間Tw2を短くすると、図22(b)に示すように、撮像領域FOV内の一部において、動脈血ARの縦磁化成分Mzはゼロになる。したがって、待ち時間Tw2を短くすることによって、撮像領域FOVに描出される動脈血ARの範囲が狭くなる。このため、動脈血ARを広範囲に渡って描出したい場合は、待ち時間Tw2を短くし過ぎないことが好ましい。尚、待ち時間Tw2を、動脈血ARの縦磁化成分MzがMz=−1からヌルポイントに到達するまでの時間(840ms)よりも長くすることも可能である。
【0127】
本実施形態では、第3の待ち時間Tw3は、静脈血VEの縦磁化成分MzがMz=−1からヌルポイントに到達するまでの時間に設定されている。しかし、動脈血ARを静脈血VEから十分に分離することができるのであれば、第3の待ち時間Tw3は、静脈血VEの縦磁化成分MzがMz=−1からヌルポイントに到達するまでの時間よりも、長く又は短くすることも可能である。
【0128】
本実施形態では、静脈血VEが描出されないようにするため、第3の待ち時間Tw3は、静脈血VEの縦磁化成分MzがMz=−1からヌルポイントに到達するまでの時間に設定されている。しかし、静脈血VE以外の他の組織(例えば、腎臓17)が描出されないようにしたい場合は、第3の待ち時間Tw3を、他の組織の縦磁化成分MzがMz=−1からヌルポイントに到達するまでの時間に設定すればよい。
【0129】
本実施形態では、動脈血ARを描出している。しかし、本発明を用いることによって、静脈血VEを描出することも可能である。静脈VEを描出したい場合は、第3の待ち時間Tw3を、動脈血AR又は他の組織(例えば、静止組織)の縦磁化成分MzがMz=−1からヌルポイントに到達するまでの時間に設定すればよい。
【0130】
本実施形態では、第1および第3の反転期間IR1およびIR3には、非選択的RF反転パルスP1およびP3が送信されている。しかし、撮像領域FOV内を流れる動脈ARを十分に描出できるのであれば、非選択的RF反転パルスP1およびP3の代わりに、選択的RF反転パルスを送信してもよい。
【0131】
また、本実施形態では、待ち時間Tw1は、数msであるが、待ち時間Tw1をもっと長くすることも可能である。例えば、待ち時間Tw1を待ち時間Tw2よりも長くすることも可能である。ただし、待ち時間Tw1を長くするほど、動脈血ARの縦磁化成分Mz=αがゼロに近づくので、待ち時間Tw1は短いことが好ましい。
【0132】
また、本実施形態では、腎臓17を含む部位を撮像しているが、本発明は、他の部位(頭部など)を撮像する場合にも適用することができる。
【0133】
尚、本実施形態では、動脈血ARの縦磁化成分Mzが正の値を有しているときに、動脈血ARのデータが収集されている。しかし、動脈血ARを背景組織よりも十分に強調することができるのであれば、動脈血ARの縦磁化成分Mzが負の値を有しているときに、動脈血ARのデータを収集することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】MRI装置1のブロック図の一例である。
【図2】被検体13の撮像領域FOVを概略的に示す図である。
【図3】撮像領域FOVを流れる動脈血ARのMR画像を取得するために実行されるパルスシーケンスの一例を示す図である。
【図4】コントローラ10の機能ブロック図の一例である。
【図5】MRI装置1の処理フローを示す図である。
【図6】図3に示すパルスシーケンス50の時刻t1における被検体13の動脈血ARと静脈血VEの縦磁化成分Mを示すグラフである。
【図7】図3に示すパルスシーケンス50の時刻t2における被検体13の動脈血ARと静脈血VEの縦磁化成分Mを示すグラフである。
【図8】図3に示すパルスシーケンス50の時刻t3における被検体13の動脈血ARと静脈血VEの縦磁化成分Mを示すグラフである。
【図9】図3に示すパルスシーケンス50の時刻t4における被検体13の動脈血ARと静脈血VEの縦磁化成分Mを示すグラフである。
【図10】図3に示すパルスシーケンス50の時刻t5における被検体13の動脈血ARと静脈血VEの縦磁化成分Mを示すグラフである。
【図11】図3に示すパルスシーケンス50の時刻t6における被検体13の動脈血ARと静脈血VEの縦磁化成分Mを示すグラフである。
【図12】本実施形態のパルスシーケンスとTime−SLIP法のパルスシーケンスとを示す図である。
【図13】図12に示すパルスシーケンス50および51の時刻t1における被検体13の動脈血ARの縦磁化成分Mを示すグラフである。
【図14】図12に示すパルスシーケンス50および51の時刻t2における被検体13の動脈血ARの縦磁化成分Mを示すグラフである。
【図15】図12に示すパルスシーケンス50および51の時刻t3における被検体13の動脈血ARの縦磁化成分Mを示すグラフである。
【図16】図12に示すパルスシーケンス50および51の時刻t4における被検体13の動脈血ARの縦磁化成分Mを示すグラフである。
【図17】図12に示すパルスシーケンス50および51の時刻t5における被検体13の動脈血ARの縦磁化成分Mを示すグラフである。
【図18】図12に示すパルスシーケンス50および51の時刻t5’における被検体13の動脈血ARの縦磁化成分Mを示すグラフである。
【図19】図12に示すパルスシーケンス50および51の時刻t6における被検体13の動脈血ARの縦磁化成分Mを示すグラフである。
【図20】TIa=840ms、およびTIa=600msの場合において、時刻t4における動脈血ARの縦磁化成分Mzを示す図である。
【図21】第3の反転期間IR3の終了直後(図3の時刻t5)における動脈血ARの縦磁化成分Mzを示している。
【図22】データ収集期間ACQの開始時点(図3の時刻t6)における動脈血ARの縦磁化成分Mzを示している。
【符号の説明】
【0135】
1 MRI装置
2 マグネットアセンブリ
3 ボア
4 静磁場印加手段
5 勾配コイル
6 送信コイル
7 ベローズ
7a 呼吸信号
8 心拍センサ
8a 心電信号
9 受信コイル
10 コントローラ
11 表示部
12 操作部
13 被検体
14 心臓
15 動脈
16 静脈
17 腎臓
50 パルスシーケンス
101 タイミング算出部
102 第1の送信コイル制御手段
103 第2の送信コイル制御手段
104 第3の送信コイル制御手段
105 第4の送信コイル制御手段
106 第1の反転パルス送信制御手段
107 第2の反転パルス送信制御手段
108 第3の反転パルス送信制御手段
109 勾配コイル制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の撮像領域を流れる体液が背景組織よりも強調されるように、前記被検体を撮像するMRI装置であって、
前記体液の縦磁化成分および前記背景組織の縦磁化成分が、正の値を有するように、前記被検体に静磁場を印加する静磁場印加手段、
前記被検体にRFパルスを送信する送信コイル、
前記送信コイルから、前記体液の縦磁化成分および前記背景組織の縦磁化成分を前記正の値から負の値に反転させる第1の反転パルスが送信されるように、前記送信コイルを制御する第1の送信コイル制御手段、
前記送信コイルから、前記第1の反転パルスにより前記負の値に反転した前記背景組織の縦磁化成分を前記正の値に反転させる第2の反転パルスが送信されるように、前記送信コイルを制御する第2の送信コイル制御手段、
前記送信コイルから、前記第2の反転パルスにより前記正の値に反転した前記背景組織の縦磁化成分を前記負の値に反転させる第3の反転パルスが送信されるように、前記送信コイルを制御する第3の送信コイル制御手段、
前記送信コイルから、前記体液のデータを収集するための励起パルスが送信されるように、前記送信コイルを制御する第4の送信コイル制御手段、
前記第1の反転パルスが送信されてから、第1の待ち時間が経過した時点で、前記第2の反転パルスが送信されるように、前記第2の送信コイル制御手段を制御する第1の反転パルス送信制御手段、
前記第2の反転パルスが送信されてから、第2の待ち時間が経過した時点で、前記第3の反転パルスが送信されるように、前記第3の送信コイル制御手段を制御する第2の反転パルス送信制御手段、および
前記第3の反転パルスが送信されてから、第3の待ち時間が経過した時点で、前記励起パルスが送信されるように、前記第4の送信コイル制御手段を制御する第3の反転パルス送信制御手段、
を有するMRI装置であって、
前記第3の反転パルス送信制御手段は、前記撮像領域を流れる前記第1の体液の縦磁化成分の絶対値が、前記撮像領域の背景組織の縦磁化成分の絶対値よりも大きい間に、前記励起パルスが送信されるように、前記第3の待ち時間を設定する、MRI装置。
【請求項2】
前記第1の待ち時間と第2の待ち時間との合計時間は、前記第1の反転パルスによって前記負の値に反転した前記第1の体液の縦磁化成分がヌルポイントに到達するまでの時間である、請求項1に記載のMRI装置。
【請求項3】
前記第1の待ち時間と第2の待ち時間との合計時間は、前記第1の反転パルスによって前記負の値に反転した前記第1の体液の縦磁化成分がヌルポイントに到達するまでの時間よりも短い、請求項1に記載のMRI装置。
【請求項4】
前記第1の待ち時間は、前記第2の待ち時間よりも短い、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項5】
前記第3の待ち時間は、前記第3の反転パルスによって前記負の値に反転した前記第2の体液の縦磁化成分がヌルポイントに到達するまでの時間である、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項6】
前記第3の反転パルスは、前記撮像領域に流入した体液の縦磁化成分を反転させる、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項7】
勾配コイルを有する、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項8】
前記勾配コイルから勾配パルスが印加されるように、勾配コイルを制御する勾配コイル制御手段、を有する請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項9】
前記被検体の呼吸を検出し、呼吸信号を出力する呼吸検出手段、を有する請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項10】
前記呼吸検出手段が出力した呼吸信号に基づいて、パルスシーケンスを実行するタイミングを算出するタイミング算出手段を有する、請求項9に記載のMRI装置。
【請求項11】
前記被検体の心拍を検出し、心電信号を出力する心拍検出手段、を有する請求項1〜10のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項12】
前記心拍検出手段が出力した心電信号に基づいて、パルスシーケンスを実行するタイミングを算出するタイミング算出手段を有する、請求項11に記載のMRI装置。
【請求項13】
前記第1の反転パルスは、非選択的RF反転パルスである、請求項1〜12のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項14】
前記第2の反転パルスは、選択的RF反転パルスである、請求項1〜13のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項15】
前記第3の反転パルスは、非選択的RF反転パルスである、請求項1〜14のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項16】
前記体液は動脈血であり、前記背景組織は静脈血、脳脊髄液、又は静止組織である、請求項1〜15のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項17】
前記体液は脳脊髄液であり、前記背景組織は動脈血、静脈血、又は静止組織である、請求項1〜15のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項18】
前記体液は静脈血であり、前記背景組織は動脈血、脳脊髄液、又は静止組織である、請求項1〜15のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項19】
前記静止組織は、腎臓である、請求項16〜18のうちのいずれか一項に記載のMRI装置。
【請求項20】
被検体の撮像領域を流れる体液が背景組織よりも強調されるように、前記被検体を撮像するMRI装置であって、前記体液の縦磁化成分および前記背景組織の縦磁化成分が、正の値を有するように、前記被検体に静磁場を印加する静磁場印加手段と、前記被検体にRFパルスを送信する送信コイルとを有するMRI装置を、
前記送信コイルから、前記体液の縦磁化成分および前記背景組織の縦磁化成分を前記正の値から負の値に反転させる第1の反転パルスが送信されるように、前記送信コイルを制御する第1の送信コイル制御手段、
前記送信コイルから、前記第1の反転パルスにより前記負の値に反転した前記背景組織の縦磁化成分を前記正の値に反転させる第2の反転パルスが送信されるように、前記送信コイルを制御する第2の送信コイル制御手段、
前記送信コイルから、前記第2の反転パルスにより前記正の値に反転した前記背景組織の縦磁化成分を前記負の値に反転させる第3の反転パルスが送信されるように、前記送信コイルを制御する第3の送信コイル制御手段、
前記送信コイルから、前記体液のデータを収集するための励起パルスが送信されるように、前記送信コイルを制御する第4の送信コイル制御手段、
前記第1の反転パルスが送信されてから、第1の待ち時間が経過した時点で、前記第2の反転パルスが送信されるように、前記第2の送信コイル制御手段を制御する第1の反転パルス送信制御手段、
前記第2の反転パルスが送信されてから、第2の待ち時間が経過した時点で、前記第3の反転パルスが送信されるように、前記第3の送信コイル制御手段を制御する第2の反転パルス送信制御手段、および
前記第3の反転パルスが送信されてから、第3の待ち時間が経過した時点で、前記励起パルスが送信されるように、前記第4の送信コイル制御手段を制御する第3の反転パルス送信制御手段であって、前記撮像領域を流れる前記第1の体液の縦磁化成分の絶対値が、前記撮像領域の背景組織の縦磁化成分の絶対値よりも大きい間に、前記励起パルスが送信されるように、前記第3の待ち時間を設定する第3の反転パルス送信制御手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−201841(P2009−201841A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48923(P2008−48923)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】