説明

MUC1に対する癌特異的な免疫反応の産生及び癌特異的MUC1抗体

本発明は、免疫原性グリコペプチドを用いてMUC1に対する癌特異的な免疫反応を誘導する方法を提供する。本発明の他の態様は、免疫原性グリコペプチドを含む医薬組成物及び免疫原性グリコペプチドを含む癌ワクチンである。他の態様は、免疫原性グリコペプチドを使用して産生した抗体並びに治療及び診断における前記抗体の使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫原性のグリコペプチドを用いてMUC1に対する高度に癌に関連するか又は癌特異的な免疫反応を誘導するための方法を提供する。本発明の他の態様は、免疫原性のグリコペプチドを含む医薬組成物並びに免疫原性グリコペプチドを含む癌ワクチンである。他の態様は、免疫原性グリコペプチドを用いて産生した抗体並びに治療及び診断における前記抗体の使用である。
【背景技術】
【0002】
ヒトムチンMUC1は、単層上皮及び腺上皮の先端表面上で発現する多形性膜貫通糖タンパク質である。MUC1は、アデノカルシノーマにおいて過剰発現しており、異常にOグリコシル化されている。ムチンの細胞外ドメインは、5箇所の潜在的なO−グリコシル化部位を有する20アミノ酸残基のタンデムリピート(25〜125)を様々な数において含有する。O−グリカンは、癌細胞において不完全に処理されて、癌に一般的な糖抗原Tn(GalNAcα1−O−Ser/Thr)、STn(NeuAcα2−6GalNAcα1−O−Ser/Thr)、及びT(Galβ1−3GalNAcα1−O−Ser/Thr)の発現をもたらす。乳癌細胞によって発現されるMUC1は、短い癌関連Tn、STn、及びT抗原並びに正常細胞によって広く認められるモノ及びジシアリルコア1構造(ST、NeuAcα2−3Galβ1−3[NeuAcα2−6]+/−GalNAcα1−O−Ser/Thr)を有する。対照的に、正常な胸の上皮細胞において発現されるMUC1は、一般的に、ラクトサミン伸長鎖を有する分枝コア2O−グリカン類(Galβ1−3[GlcNAcβ1−6]GalNAcα1−O−Ser/Thr)を有する。細胞膜に結合したムチンは、長い間、免疫治療のための主要な標的であると解されている。乳癌患者における抗MUC1抗体及びMUC1を含有する循環免疫複合体の存在は、予後の改善に関連しており、このことは、標的としてのMUC1を明らかに支持している。しかしながら、(細胞に基づく治療方法とは対照的に所定の免疫原を使用する)患者又はヒトMUC1遺伝子を発現するトランスジェニック動物における癌関連形態のMUC1に対する効果的な細胞性又は液性免疫反応の刺激は、成し遂げられていない。ペプチド/タンパク質免疫原に基づく、活性を有する特異的な免疫治療のための戦略は、これまで、各種の担体に接合されているか又はアジュバントと共に投与される、各種の長さの非グリコシル化MUC1タンデムリピートペプチドに限定されている。これらの戦略では、一般的には、ムチンが自己抗原として発現している宿主の癌細胞によって発現されるMUC1に対する効果的な免疫反応を生じさせることができない。
【0003】
過去に、精製MUC1並びにMUC1に由来する合成ペプチド及びグリコペプチドに対する多数のモノクローナル抗体(MAb)が製造されている。これらのMAbのエピトープは、伝統的には、短いオーバーラップペプチドのスキャンによって規定され、大半のMAbは、重度にO−グリコシル化したムチンのタンデムリピートドメイン中にエピトープを規定する。MAbの1つの大きなグループは、ヒト乳脂肪球(HMFG)に対して製造され、それはHMFG1、115D8、及びSM3を含み、その大半が野生型マウスにおける免疫優性ペプチドエピトープであると解されているムチンタンデムリピートのPDTR領域にあるエピトープと反応する。PDTR領域外のタンデムリピートエピトープを規定するMAbは少数のみが報告されている。乳癌組織抽出物に対して産生された1つであるDF3は、115D8と共にCA 15−3スクリーニングアッセイにおいて使用され、TRPAPGSというペプチドエピトープを規定する。非グリコシル化MUC1ペプチドを用いた免疫は、GSTAPペプチドに反応性を有する、低いアフィニティーのモノクローナル抗体(BCP9)を産生する。
【0004】
大半のMUC1抗体は、ペプチド主鎖と反応するが、多くの場合、その結合は、グリカンの存在によって調節される。幾つかの場合において、B27.29、115D8、及びVU−2−G7を用いて認められているように、特定のグリカンの存在が結合を促進し得る。他の例では、SM3及びHMFG1を用いて認められているように、グリカンは結合を阻害し得る。SM3は、化学的に脱グリコシル化したHMFGに対して産生され、HMFGに対して産生された他のMAbとは対照的に、PDTR領域に結合する抗体は正常の胸の上皮において認められる大きな分枝O−グリカンによって選択的に阻害されるため、癌関連MUC1に高い選択性を示す。
【0005】
MUC1糖型と特異的に反応する少数の抗体が報告されている。1つのMAbであるBW835は、癌細胞株MCF−7及びSW−613の注射を交互に行うことによって産生され、その特異性は、ThrがT抗原(Galβ1−3GalNAcα1−O−Ser/Thr)で置換されているグリコペプチドエピトープであるVTSAに限定されることが報告されている(Hanisch et al.1995)。MAbであるMY.1E12(Yamamoto et al.1996)はHMFGに対して産生され、同じペプチド配列に対してエピトープをマッピングしているが、T構造のシアル化(ST)が反応性を促進する(Takeuchi et al.2002)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Burch ell, J. M., Mungul, A. & Taylor-Papadimitriou, J. (2001). O-linked glycosylation in the mammary gland: changes that occur during malignancy. J.Mammary.Gland.Biol.Neoplasia., 6, 355-364.Clausen,H., Stroud,M., Parker,J., Springer,G., & Hakomori,S. (1988) Monoclonal-Antibodies
【非特許文献2】Directed to the Blood Group-A Associated Structure, Galactosyl-A - Specificity and Relation to the Thomsen-Friedenreich Antigen. Molecular Immunology, 25, 199-204.
【非特許文献3】Hanisch, F. G., Stadie, T. & Bosslet, K. (1995). Monoclonal antibody BW835 defines a site-specific Thomsen-Friedenreich disaccharide linked to threonine within the VTSA motif of MUC1 tandem repeats. Cancer Res., 55, 4036-4040.
【非特許文献4】Kjeldsen,T., Clausen,H., Hirohashi,S., Ogawa,T., Iijima,H., & Hakomori,S. (1988) Preparation and Characterization of Monoclonal-Antibodies Directed to the Tumor-Associated O-Linked Sialosyl-2-]6 Alpha-N-Acetylgalactosaminyl (Sialosyl-Tn)Epitope. Cancer Research, 48, 2214-2220
【非特許文献5】Kjeldsen,T., Hakomori,S., Springer,G.F., Desai,P., Harris,T., & Clausen,H. (1989) Coexpression of Sialosyl-Tn (Neuac-Alpha-2-]6Galnac-Alpha-1-]O-Ser/Thr) and Tn (Galnac-Alpha-1-]O-Ser/Thr) Blood-Group Antigens on Tn Erythrocytes. Vox Sanguinis, 57, 81-87.
【非特許文献6】Mensdorff-Pouilly,S., Petrakou,E., Kenemans,P., van Uffelen,K., Verstraeten,A.A., Snijdewint,F.G.M., van Kamp,G.J., Schol,D.J., Reis,C.A., Price,M.R., Livingston,P.O., & Hilgers,J. (2000) Reactivity of natural and induced human antibodies to MUC1 mucin with MUC1 peptides and N-acetylgalactosamine (GalNAc) peptides. International Journal of Cancer, 86, 702-712.R
【非特許文献7】eis,C.A., Hassan,H., Bennett,E.P., & Clausen,H. (1998a) Characterization of a panel of monoclonal antibodies using GalNAc glycosylated peptides and recombinant MUC1. Tumor Biology, 19, 127-133.
【非特許文献8】Reis,C.A., Sorensen,T., Mandel,U., David,L., Mirgorodskaya,E., Roepstorff,P., Kihlberg,J., Hansen,J.E.S., & Clausen,H. (1998b) Development and characterization of an antibody directed to an alpha-N-acetyl-D-galactosamine glycosylated MUC2 peptide. Glycoconjugate Journal, 15, 51-62.
【非特許文献9】Sorensen, A. L., Reis, C. A., Tarp, M. A., Mandel, U., Ramachandran, K., Sankaranarayanan, V., Schwientek, T., Graham, R., Taylor-Papadimitriou, J., Hollingsworth, M. A., Burchell, J. & Clausen, H. (2006). Chemoenzymatically synthesized multimeric Tn/STn MUC1 glycopeptides elicit cancer-specific anti-MUC1 antibody responses and override tolerance. Glycobiology, 16, 96-107.
【非特許文献10】Springer,G.F. (1984) T and Tn, General Carcinoma Auto-Antigens. Science, 224, 1198-1206.
【非特許文献11】Takeuchi, H., Kato, K., da-Nagai, K., Hanisch, F. G., Clausen, H. & Irimura, T. (2002). The epitope recognized by the unique anti-MUC1 monoclonal antibody MY.1E12 involves sialyl alpha 2-3galactosyl beta 1-3N-acetylgalactosaminide linked to a distinct threonine residue in the MUC1 tandem repeat. J.Immunol.Methods, 270, 199-209.
【非特許文献12】Yamamoto, M., Bhavanandan, V. P., Nakamori, S. & Irimura, T. (1996). A novel monoclonal antibody specific for sialylated MUC1 mucin. Jpn.J.Cancer Res., 87, 488-496.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近、本発明者は、長いTn−又はSTn−MUC1タンデムリピートグリコペプチドを用いる免疫によって、ヒト化MUC1トランスジェニックBalb/cマウスにおける免疫寛容を無効にし得ることを見出した(Sorensen et al.2006及び本明細書の実施例1)グリコペプチドワクチンを用いて誘導される液性免疫反応は、Tn/STn−MUC1糖型及びヒト癌細胞によって発現されるMUC1に高度に特異的であった。更にこれらのグリコペプチドに対する免疫を特徴付けるため、本発明者は、MUC1トランスジェニックマウスにおいて生じたポリクローナル反応を摸倣したモノクローナル抗体を産生した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、免疫原性のグリコペプチドを用いてMUC1に対する高度に癌に関連するか又は癌特異的な免疫反応を誘導するための方法を提供する。本発明の他の態様は、免疫原性のグリコペプチドを含む医薬組成物並びに免疫原性グリコペプチドを含む癌ワクチンである。他の態様は、免疫原性グリコペプチドを用いて産生した抗体並びに治療及び診断における前記抗体の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】多量体Tn及びSTn MUC1グリコペプチドの化学酵素合成:合成60mer MUC1タンデムリピートペプチドを、部位選択的組換えポリペプチドGalNAc−トランスフェラーゼ(GalNAc−T2、−T4、及び−T11)を用いてグリコシル化した。MUC1タンデムリピート配列中のGAlNAc結合部位は、組換えGalNAcトランスフェラーゼを用いてin vitroでグリコシル化したMUC1 60merタンデムリピートペプチドのMALDI−TOFマススペクトル分析によって示されるように厳密に制御されている。GalNac−T11を使用して、2GalNAc残基が1つのタンデムリピート毎に添加され、GalNAc−T2により3残基が添加され、続いてGalNAc−T2及び−T4を用いて全5残基が添加される。結合部位は、上述のマススペクトル分析により確認した。5つのGalNAc残基をリピート毎に与えるGalNAc−T4を用いるグリコシル化は、高度に切断されたNH末端を有するペプチド設計のために、全部で14のみを可能にする。STnを形成するシアル酸を有するGalNAc残基の更なるグリコシル化は、組換えネズミST6GalNAc−Iを用いて達成される。MALDI−TOFによって結合されたシアル酸残基の数の評価は、糖結合の不安定な性質により過小評価され得る。シアル化は、抗STn(ポジティブ)及び抗Tn(ネガティブ)モノクローナル抗体を用いた免疫反応パターンによって評価されるものが完全であると解される。コア1T構造は、組換えβ3Galトランスフェラーゼを用いて生産した。形成したグリコペプチドは、各々のMALDI−TOFプロフィールの上端に示されている。示しているスペクトルのマススケールは、5,000から10,000カウントである。
【図2】完全なO−グリカン結合を有するMUC1グリコペプチドは、最も免疫原性であり、Tn及びSTnグリコペプチドは、MUC1トランスジェニックマウスにおいて強力な抗体反応を誘導する。(a)完全なTnグリコシル化MUC1(MUC160Tn15)を用いて免疫した(四匹のうちの)一匹の代表的な野生型Balb/cマウス由来の血清のELISAアッセイ。記号表示は、以下:■= MUC160Tn15; □= MUC160Tn9; ○= MUC160STn15; ●= OSM (STn); ▲= MUC160Tn6 ; △= MUC160; ◆= AOSM (Tn)を示す。反応性を与えなかった追加の試験ペプチドは、非グリコシル化MUC2、Tn MUC2、及びTn MUC4を含む。(b)完全なSTnグリコシル化MUC1グリコペプチド(MUC160STn15)を用いて免疫した(四匹のうちの)一匹の代表的な野生型マウス由来の血清のELISAアッセイ。最も高い抗体力価は、前記MUC1糖型を免疫原として使用して認められたが、他のMUC1糖型を用いても同等の反応性が認められた。非グリコシル化MUC1を用いた低い反応性がTn免疫マウスにおいて特に認められた。非常に低いレベルの抗Tn及びStnハプテン抗体が、ムチンOSM(主にSTn糖型を有するヒツジ顎下腺ムチン)及びAOSM(Tn糖型を有するアシアロムチン)を抗原として用いて検出された。非MUC1ペプチド又はTn−グリコシル化を有するグリコペプチドでは反応性が認められなかった。(c)完全なTnグリコシル化MUC1(MUC160Tn15)を用いて免疫した(四匹のうちの)一匹のMUC1.Tgマウス由来の血清のELISAアッセイ。(d)完全なSTnグリコシル化MUC1グリコペプチド(MUC160STn15)を用いて免疫した(四匹のうちの)一匹のMUC1.Tgマウスに由来する血清のELISAアッセイ。最も高い抗体力価は、前記MUC1糖型を免疫原として用いて認められたが、他のMUC1糖型を用いても同等の反応性が認められた。非グリコシル化MUC1並びにムチンOSM(STn)及びAOSM(Tn)並びに非MUC1 Tnグリコペプチドでは反応性が検出されなかった。
【図3】Tn MUC1を用いて免疫した野生型及びMUC1.Tgマウスにおいて誘導される免疫反応を摸倣するモノクローナル抗体5E5の特性決定。(a)モノクローナル抗体5E5を用いたELISAアッセイは、MUC1タンデムリピート配列の全ての糖型との強力な反応を示すが、非グリコシル化MUC1ペプチドには反応性を示さなかった。弱い反応性が、AOSMを用いても認められたが、他のTnグリコペプチドでは反応性が検出されなかった。記号表示は図2と同様である。ネガティブ対照ペプチドは、非グリコシル化MUC2、Tn MUC2、Tn MUC4Tn、及びTn MUC4Tnを含む。Mab 5E5で染色した免疫蛍光(最上列)は、Tn MUc1糖型を発現するCHO ldlD細胞との反応性を示し、非グリコシル化MUC1、ST MUC1、又はT MUC1(ノイラミニダーゼで前処理後)の糖型を発現する細胞並びに野生型のCHO ldlD細胞とは反応性を示さない。MUC1(HMFG2)、Tn(5F4)、及びT(HH8)に対する対照抗体を含めて、MUC1並びに各糖型Tn、T、及びSTの発現を確認した。(c)各種のMUC−1糖型を分泌するCHO ldlD細胞の培養培地のSDS−PAGEウエスタンブロット分析。モノクローナル抗体5E5は、分泌Tn MUC1糖型に対して厳密な特異性を示したが、HMFG2は、全ての糖型並びに非グリコシル化MUC1と反応した。(d)モノクローナル抗体5E5を用いた胸の組織の免疫組織化学染色。グレードIIの原発性浸潤性乳管癌を5E5で染色した。周囲の組織は陰性であることに注意すべきである(A)。5E5で染色したin situ腺管癌(B)。DCISの領域を示すグレードIIの腺管癌。浸潤及びDCISの双方を5E5で染色している(C)。5E5で染色したグレードIIIの原発性浸潤性乳管癌(D)。
【図4】MUC1 Tn及びSTnグリコペプチドで免疫したMUC1.Tgマウスは、癌関連MUC1糖型に限られたMUC1グリコペプチドに特異的な反応を生じる。(a)MUC1 Tn又はSTnグリコペプチドを用いて免疫したMUC1.Tgマウスに由来する血清は、Tn MUC1と反応するが、CHO ldlD細胞において発現するMUC1の非グリコシル化又はT/ST糖型とは反応しなかった。非グリコシル化MUC1を用いて免疫したTgマウス由来の血清は、非グリコシル化MUC1を発現するCHO ldlD細胞と好適ではあるが弱く反応する。(b)MUC1グリコペプチドを用いて免疫したTgマウス由来の血清は、癌細胞によって発現されるMUC1を認識する。MUC160Stn15(C)を用いて免疫した1匹のTgマウス由来の血清を用いた、STn(B)及びMUC1(A)の双方(モノクローナル抗体HB−STn及びHMFG2によって測定される)を発現する原発性乳癌の免疫組織化学染色。
【図5】MAb特異性の特徴づけのために使用されるグリコペプチド。ビオチン化60merグリコペプチド:接頭数字は、ペプチドのO−グリカンの数を示す。Tn: GalNAcα1-O-Ser/Thr; STn: NeuAcα2-6GalNAcα1-O-Ser/Thr; T: Galβ1-3GalNAcα1-O-Ser/Thr; ST: NeuAcα2-3Galβ1-3GalNAcα1-O-Ser/Thr; core 3: GlcNAcβ1-3GalNAcα1-O-Ser/Thr。ビオチン化25merバリン置換グリコペプチドTAP25V9: 9位におけるバリン置換; TAP25V21: 21位におけるバリン置換; 2Tn-TAP25V9及び2Tn-TAP25V21は、所定の位置において、Tn (GalNAcα1-O-Ser/Thr)でグリコシル化されている。21mer:所定の位置において、単独のTn(GalNAcα1-O-Ser/Thr)又はT(Galβ1-3GalNAcα1-O-Ser/Thr)グリカンを有する合成グリコペプチド。
【図6】ELISAによるMAbである2D9及び5E5の特異性分析。パネルA及びD:捕捉ELISAによる、MAbである2D9及び5E5とビオチン化60merグリコペプチドとの反応性。高密度のTn及びSTn糖型との強力な反応性が、双方のMAbについて認められる。パネルB及びE:捕捉ELISAによる、MAbである2D9及び5E5とビオチン化バリン置換25merグリコペプチドとの反応性。GSTA領域のThrにおいてTnグリコシル化されたペプチドとの強力な反応性が、双方のMAbについて認められた。は、Tnグリコシル化を示す。パネルC及びF:直接結合ELISAによる、MAbである2D9及び5E5と、単独のTn又はTグリカンでグリコシル化された21merグリコペプチドとの反応性。GSTA領域のThrにおいてTnグリコシル化されたペプチドとの強力な反応性が、双方のMAbについて認められた。は、Tnグリコシル化を示す。25及び21merペプチドの対照は、図5のパネルB及びCにおいて、MAb 5E10を用いて示す。
【図7】15Tn−MUC1 60merグリコペプチドで免疫したMUC1トランスジェニックマウス由来の血清の特異性分析。パネルA:直接結合ELISAによる、60merグリコペプチドとの反応性。3から5のTnグリカンをタンデムリピート毎に有するグリコペプチドとの強力な反応が認められる。完全なSTn−グリコシル化ペプチドとのより低い反応性が認められる。非グリコシル化ペプチドとの反応性は認められなかった。パネルB:捕捉ELISAによるビオチン化バリン置換25merグリコペプチドとの反応性。GSTA領域のThrでTnグリコシル化されているペプチドとの強力な反応性が認められる。は、Tnグリコシル化を示す。
【図8】ELISAによるMAbである1B9、BW835、及びMY.1E12の特異性分析。パネルA:MAbである1B9のビオチン化60merグリコペプチドとの反応性。コア3及びSTグリカンとの反応性も認められる(詳細は本文参照のこと)。パネルB:MAbである1B9のビオチン化バリン置換25merグリコペプチドとの反応性。GSTA領域のThr及びVTSAのThrにTグリカンを有するグリコペプチドとの反応性が認められる。パネルC:MAbである1B9のGal/GalNAcにおいて増殖させたCHO ldlD細胞との反応性。1B9は、ST−MUC1を発現する細胞の約2%と反応するが(ノイラミニダーゼ処理なし)、T−MUC1を提示する細胞の約20%と反応する(ノイラミニダーゼ処理あり)。パネルD:MAbであるBW835のビオチン化60merグリコペプチドとの反応性。公開されているエピトープを括弧の中に記載した(がTグリコシル化を示す)。T又はコア3をタンデムリピート毎に有するグリコペプチドとの強力な反応性が認められる。5つのSTグリカンをタンデムリピート毎に有するものとのより低い反応性が認められる。パネルE:MAbであるMY.1E12のビオチン化60merグリコペプチドとの反応性。公開されているエピトープを括弧の中に記載する(*はST−グリコシル化を示す)。5つのSTグリカンをタンデムリピート毎に有するグリコペプチドとの強力な反応性が認められる。3つのSTグリカンをタンデムリピート毎に有するものとの、より低い反応性が認められる。
【図9】ELISAによるMAbである5E10及びSM3の特異性分析パネルA:MAbである5E10のビオチン化60merグリコペプチドとの反応性。STnグリカンで完全にグリコシル化された際を除き、全ての試験したペプチドとの反応性が認められる。非グリコシル化及びTn糖型が好ましく、次いでT及びST糖型が好ましいことが認められる。3つのSTnグリカンをタンデムリピート毎に有するグリコペプチドとの最も低い反応性が認められる。パネルB:MAbである5E10のビオチン化バリン置換25merグリコペプチドとの反応性。強力な反応性が、Tnグリコシル化とは独立して全てのペプチドについて認められる。パネルC:MAbである5E10の、単独のTn又はTグリカンでグリコシル化されている21merグリコペプチドとの反応性。PDTR領域のThrにおいてTグリカンを有するペプチドを除き、全てのグリコペプチドとの比較的強力な反応性が認められる。パネルD:MAbであるSM3のビオチン化60merグリコペプチドとの反応性。5つのO−グリカンをタンデムリピート毎に有するペプチド又は非グリコシル化ペプチドについて、最も強力な反応性が認められる。好ましい糖型は、Tn、STn、コア3、T、及びSTの順である。パネルE:MAbであるSM3のビオチン化バリン置換25merグリコペプチドとの反応性。非グリコシル化ペプチド及びGSTA領域のThrがTnグリコシル化されているペプチドについて、弱い反応性が認められる。VTSA領域のThrにおいてグリコシル化されているグリコペプチドについては、反応性が認められない。パネルF:MAbであるSM3の、単独のTn又はTグリカンでグリコシル化されている21merグリコペプチドとの反応性。PDTR領域のThrにおいてT又はTnグリコシル化を有するグリコペプチドについて、最も強力な反応性が認められる。残りのTグリコシル化グリコペプチド及び幾つかのTnグリコシル化グリコペプチドについて、低い反応性が認められる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
MUC1に対する癌特異的な免疫反応を誘導する方法。
【0011】
驚くべきことに、グリコシル化GSTAモチーフを含む免疫原性グリコペプチドを用いた免疫が、MUC1に対する癌特異的免疫反応を誘導することが示された。例えば、癌細胞に対する液性免疫が生じ得ることが示された。
【0012】
本明細書において「免疫原性グリコペプチド」と称する際は、癌特異的免疫反応を誘導するために使用される免疫原性グリコペプチドの下記の実施態様の全てを意味する。
【0013】
かくして、本発明の1つの態様は、GSTAモチーフを含む免疫原性グリコペプチドを用いた哺乳動物の免疫を含むMUC1に対する癌特異的な免疫反応を誘導する方法であって、前記GSTAモチーフが、少なくともGSTAモチーフのT残基又はS残基でO−グリコシル化されている、方法に関する。
【0014】
好ましくは、前記哺乳動物は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、及びイヌからなる群から選択される。
【0015】
好ましい実施態様では、前記MUC1に対する免疫反応が、先天性免疫、液性免疫、細胞性免疫、又はそれらの任意の組み合わせのいずれかである。
【0016】
他の好ましい実施態様では、MUC1は、癌細胞において異常にグリコシル化及び発現されており、すなわち、免疫反応が、好ましくは癌細胞において異常にグリコシル化及び発現されているMUC1に対するものであり、例えば分枝コア2に基づく構造などの正常なグリコシル化パターンを有するMUC1にはより低度に反応するものである
【0017】
本明細書において示すように、GSTAモチーフは4つのアミノ酸の伸長鎖であり、その文字は、アミノ酸の一文字表記によってアミノ酸の識別するものである。
【0018】
本明細書で示すO−グリコシル化は、セリン又はスレオニンの側差のヒドロキシル基における糖鎖の存在を示す。
【0019】
本明細書で示すTnグリコシル化は、(GalNAcα1−O−Ser/Thr)、すなわち、セリン又はスレオニンの側鎖であるヒドロキシルにおけるGalNAcα1置換として記載されてもよい。
【0020】
本明細書で示すSTnグリコシル化は、(NeuAcα2−6GalNAcα1−O−Ser/Thr)、すなわち、セリン又はスレオニンの側差であるヒドロキシルにおけるNeuAcα2−6GalNAcα1置換として記載されてもよい。STnにおけるシアル酸は、任意の−OHの位置においてOアセチル化されてよい。
【0021】
好ましくは、GSTAモチーフのO−グリコシル化は、STnグリカン又はTnグリカンのいずれかである。
【0022】
好ましい実施態様では、GSTAモチーフのS残基及びT残基は、同時にOグリコシル化される。この実施態様では、S及びT残基は、同じO−グリコシル化を有するか又は異なるO−グリコシル化を有してよい。
【0023】
かくして、好ましい実施態様では、S残基及びT残基のO−グリコシル化は、STnグリカン又はTnグリカンのいずれかである。
【0024】
他の好ましい実施態様では、GSTAモチーフは20アミノ酸残基のタンデムリピートに存在し、前記タンデムリピートは、5箇所の潜在的なO−グリコシル化部位を含む。
【0025】
本明細書で示すように、タンデムリピートは、天然タンパク質において認められる反復配列である。好ましいタンデムリピートは、MUC1のタンデムリピート配列である。
【0026】
好ましい実施態様では、5箇所の潜在的なO−グリコシル化部位のうち少なくとも3箇所がグリコシル化され、Tn又はSTnのいずれかを有する。
【0027】
他の好ましい実施態様では、5箇所の潜在的なO−グリコシル化部位の全てがTn又はSTnのいずれかを有する。
【0028】
本発明者は、MUC1タンパク質に対する免疫反応を誘導する免疫原性グリコペプチドの能力が、免疫原性グリコペプチドのグリコシル化の程度に依存することを実証した。かくして、より高度のグリコシル化は、より強い免疫反応を誘導する。しかしながら、ある状況では、強力な免疫反応が、望ましくないか又は不必要である可能性があり、例えば、MUC1タンパク質又は異常にグリコシル化したMUC1タンパク質に結合する抗体を生じるハイブリドーマ細胞産生のために、免疫反応が強力である必要はない。
【0029】
好ましい実施態様では、GSTAモチーフはタンデムリピート中に存在し、前記タンデムリピートの配列は、
a) VTSAPDTRPAPGSTAPPAHG (配列番号1)
b) 配列番号1に対して少なくとも75%の類似性を有する配列番号1の天然バリアント
c) 1つ又は複数の保存的置換によって調製され、且つ、配列番号1に対して少なくとも75%の類似性を有する、配列番号1の人工バリアント
d) 1から3のアミノ酸が欠失した配列番号1の切断型断片
からなる群から選択される。
【0030】
配列番号1は、ヒトに存在するMUC1のタンデムリピート配列である。
【0031】
配列番号1に対して少なくとも75%の類似性を有する配列番号1の天然バリアントは、天然に存在する配列番号1のバリアントと解されるべきである。他の実施態様では、天然のバリアントが、80%、85%、90%、及び95%からなる群から選択される類似性の程度を有することが好ましい。
【0032】
本明細書で示す配列番号1の人工バリアントは、例えば遺伝子工学又は化学的合成によって人工的に調製されたバリアントである。典型的には、人工バリアントは、1つ又は複数の保存的置換を用いて調製されるであろう。
【0033】
配列番号1の切断型断片は、ペプチドのN末端、ペプチドのC末端、又は双方の末端のいずれかにおいて切断されている。好ましい実施態様では、切断の長さ(欠失アミノ酸残基の数)は、1残基、2残基、3残基、4残基、5残基、6残基、7残基、8残基、9残基、及び10残基からなる群から選択される。切断型断片が双方の末端において切断される際は、ペプチドの最短の長さは、9アミノ酸残基、10アミノ酸残基、11アミノ酸残基、12アミノ酸残基、13アミノ酸残基、14アミノ酸残基、15アミノ酸残基、及び16アミノ酸残基からなる群から選択されるであろう。
【0034】
好ましい実施態様では、GSTAモチーフは、配列番号1の切断型断片又は前記切断型断片に対して少なくとも70%の類似性の程度を有するバリアントに存在する
【0035】
本明細書で示す保存的置換は、類似の電荷、大きさ、又は疎水度の別のアミノ酸残基を用いた1つのアミノ酸残基の置換である。
【0036】
好ましい保存的置換は、1つのアミノ酸残基が、以下に示すアミノ酸の群:
・極性側鎖を有するアミノ酸(Asp、Glu、Lys、Arg、His、Asn、Gln、Ser、Thr、Tyr、及びCys)
・非極性側鎖を有するアミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、Pro、及びMet)
・脂肪族側鎖を有するアミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、Ile)
・環状側鎖を有するアミノ酸(Phe、Tyr、Trp、His、Pro)
・芳香族側鎖を有するアミノ酸(Phe、Tyr、Trp)
・酸性側鎖を有するアミノ酸(Asp、Glu)
・塩基性側鎖を有するアミノ酸(Lys、Arg、His)
・アミド側差を有するアミノ酸(Asn、Gln)
・ヒドロキシ側鎖を有するアミノ酸(Ser、Thr)
・硫黄を含有する側鎖を有するアミノ酸(Cys、Met)
・中性の弱疎水性アミノ酸(Pro、Ala、Gly、Ser、Thr)
・親水性の酸性アミノ酸(Gln、Asn、Glu、Asp)及び
・疎水性アミノ酸(Leu、Ile、Val)
の内の別のアミノ酸により置換されるものである。
【0037】
特に好ましい保存的アミノ酸置換の群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、及びアスパラギン−グルタミンである。
【0038】
2つのペプチドの間の類似性の程度又は類似性の割合を決定するための各種の方法が既知である。類似性の程度又は類似性の割合を本明細書で示す際は、以下の方法を使用する。
【0039】
比較しようとするペプチドを、最適に整列させる。アラインメントプログラムは、最も良好なアラインメントを実施するのに役立つ。2つの配列を整列させる際は、2つのペプチドの間の類似性の程度を示すスコアが与えられる。同一のアミノ酸残基の位置が、1のスコアを与える。保存的置換を有する位置が、0.5のスコアを与える。アラインメントを最適化するために導入されるギャップは、0.25のスコアを与える。非保存的置換は0のスコアを与える。比較のウィンドウの全ての位置についてスコアを得た後に、そのスコアをまとめ、比較のウィンドウの長さに対して正規化する。正規化した値が、本明細書で使用する類似性の割合又は類似性の程度である。例えば、配列番号1に対して1つの非保存的置換及び3つの保存的置換を有するタンデムリピートペプチドについて考えると、そのペプチドのスコアは、16+(3*0.5)=17.5である。対応する類似性の割合は、17.5/20=87.5%である。
【0040】
好ましい実施態様では、タンデムリピートのグリコシル化パターンが、
・VTTnSAPDTRPAPGSTTnAPPAHG
・VTTnSAPDTRPAPGSTnTTnAPPAHG
・VTTnSAPDTTnRPAPGSTnTTnAPPAHG
・VTTnSTnAPDTRPAPGSTnTTnAPPAHG
・VTTnSTnAPDTTnRPAPGSTnTTnAPPAHG
・VTSTnSAPDTRPAPGSTSTnAPPAHG
・VTSTnSAPDTRPAPGSSTnTSTnAPPAHG
・VTSTnSAPDTSTnRPAPGSSTnTSTnAPPAHG
・VTSTnSSTnAPDTRPAPGSSTnTSTnAPPAHG
・VTSTnSSTnAPDTSTnRPAPGSSTnTSTnAPPAHG
からなる群から選択される。
【0041】
更に好ましい実施態様では、タンデムリピートのグリコシル化パターンは、
・VTTnSAPDTRPAPGSTnTTnAPPAHG
・VTTnSTnAPDTTnRPAPGSTnTTnAPPAHG
・VTSTnSAPDTRPAPGSSTnTSTnAPPAHG
・VTSTnSSTnAPDTSTnRPAPGSSTnTSTnAPPAHG
からなる群から選択される。
【0042】
免疫についての有利な効果が、1を超えるタンデムリピートを組み合わせることによって報告されている。かくして、好ましい実施態様では、免疫原性グリコペプチドは、1を超えるタンデムリピートを含み、例えば、2を超えるタンデムリピートを含み、例えば、3を超えるタンデムリピートを含み、例えば、4を超えるタンデムリピートを含み、例えば、5を超えるタンデムリピートを含み、例えば、6を超えるタンデムリピートを含み、例えば、7を超えるタンデムリピートを含み、例えば、8を超えるタンデムリピートを含み、例えば、9を超えるタンデムリピートを含み、並びに、例えば、10を超えるタンデムリピートを含む。
【0043】
更に、好ましい実施態様では、免疫原性グリコペプチドは、ヒト血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、チログロブリン、オブアルブミン、インフルエンザヘマグルチニン、PADREポリペプチド、マラリアスポロゾイト周囲(CS)タンパク質、B型肝炎表面抗原(HBSAgI9−2s)、ヒートショックプロテイン(HSP)65、ヒト結核菌、コレラ毒素、毒性を低減させたコレラ毒素変異体、ジフテリア毒素、ジフテリア毒素と交差反応するCRM197タンパク質、組換え連鎖球菌C5aペプチダーゼ、化膿連鎖球菌ORF1224、化膿連鎖球菌ORF1664、化膿連鎖球菌ORF2452、肺炎クラミジアORF T367、肺炎クラミジアORF T858、破傷風トキソイド、又はHIVgp120T1からなる群から選択される適切な担体に結合する。
【0044】
担体への結合は、免疫学的ペプチドの有効性を増大するために為される。
【0045】
医薬組成物
免疫原性グリコペプチドは癌特異的な免疫反応を誘導し得るため、本発明の他の実施態様は、免疫原性グリコペプチドを含む医薬組成物である。
【0046】
好ましい実施態様では、前記医薬組成物は、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、若しくは肺癌の治療又は予防のための癌ワクチンである。
【0047】
癌の治療又は予防方法
本発明の他の態様は、免疫原性グリコペプチドを含む上述の医薬組成物を投与する工程を含む、癌の治療又は予防方法である。そうすることで、癌特異的免疫反応が生じるであろう。
【0048】
抗体
本発明の他の態様は、免疫原性グリコペプチドを用いて調製した抗体、前記抗体の調製方法、並びに治療及び診断における前記抗体の使用である。
【0049】
かくして、本発明の他の態様は、
・適切な哺乳動物を免疫原性グリコペプチドで免疫する
・前記哺乳動物の抗体産生細胞を連続細胞株の細胞と融合する
・前記融合において得られたハイブリッド細胞をクローン化する
・所望の抗体を分泌する細胞クローンを選択する
を特徴とする、免疫原性グリコペプチドに特異的なモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞の調製のための方法である。
【0050】
更なる他の態様は、
・上述の方法によって調製されたハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体
・免疫原性グリコペプチドに対するmRNAディスプレイ、リボソームディスプレイ、ファージディスプレイ、及び共有結合ディスプレイ(covalent display)などの分子ディスプレイ技術によって調製されるモノクローナル抗体
からなる群から選択されるモノクローナル抗体である。
【0051】
伝統的には、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術を用いて調製されている。しかしながら、mRNAディスプレイ、リボソームディスプレイ、ファージディスプレイ、及び共有結合ディスプレイなどの代替的な技術が現在では利用可能である。これらはすべて、ペプチドライブラリーが免疫原性グリコペプチドに対して選択される、ディスプレイ技術である。その様な技術は、例えば、ヒト化抗体又は完全なヒト抗体を同定するために使用されてよい。
【0052】
好ましい実施態様では、モノクローナル抗体は、癌細胞上のMUC1に結合するが、非悪性細胞上のMUC1には結合しない。
【0053】
他の好ましい実施態様では、モノクローナル抗体は、癌細胞で異常にグリコシル化及び発現されているMUC1に好適に結合する。
【0054】
更なる他の実施態様では、モノクローナル抗体は、免疫原性グリコペプチドのO−グリコシル化GSTAモチーフに直接的に結合するか又は少なくとも相互作用する。本発明者のデータは、O−グリコシル化GSTAモチーフに結合する抗体が実際に癌特異的であり、癌に対する特異性が当該相互作用にあることを強力に示す。理論に結びつけることを意図しないが、本発明者は、O−グリコシル化GSTAモチーフに結合又は相互作用する抗体は癌特異性を示すであろうと解している。それらがS残基及びT残基に同時にO−グリコシル化を有するO−グリコシル化GSTAモチーフに結合又は相互作用する場合は、特にそうであろう。
【0055】
好ましい実施態様では、前記免疫原性グリコペプチドを用いて調製される抗体は、ヒトにおける抗体の免疫原性を低減するために、ヒト化抗体又は完全なヒト抗体である。このことは、抗体が治療に使用される場合に、典型的には望ましい。
【0056】
しかしながら、ある状況においては、急速なクリアランスが望ましく、その様な場合には、非ヒト化抗体が治療剤として興味を持たれる。1つのその様な状況は、毒素又は放射性同位体に結合した抗体を投与する際であってよい。その様な結合抗体は、その標的を即時に検出するか、又は一般的な毒性を有することを明らかにするはずである。本発明の一つの実施態様は結合抗体である。
【0057】
本発明の他の実施態様は、STHM1 06092102の受入番号で2006年9月19日にEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)に寄託されたハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体である5E5である。
【0058】
本発明の他の実施態様は、STHM2 06092101の受入番号で2006年9月19日にECACCに寄託したハイブリドーマによって分泌されたモノクローナル抗体である2D9である。
【0059】
上述の寄託は、2006年9月19日にMads Agervig Tarpによって為された。寄託によって、以下の参照番号:Q6847が与えられた。
【0060】
本発明の他の実施態様は、医薬としての免疫原性グリコペプチドを用いて調製したモノクローナル抗体の使用である。
【0061】
好ましい実施態様では、前記医薬は、癌の治療又は予防のために使用される。
【0062】
更なる他の態様は、免疫原性グリコペプチドを使用して調製したモノクローナル抗体の癌の治療又は予防のための医薬の調製のための使用である。
【0063】
免疫原性グリコペプチドを使用して調製したモノクローナル抗体は癌特異性を示すため、本発明のさらなる態様は、免疫原性グリコペプチドを使用して調製したモノクローナル抗体を含む医薬組成物である。
【0064】
好ましい実施態様では、医薬組成物の抗体は、毒素又は放射性同位体に接合されている。
【0065】
本発明の他の実施態様は、
・個体からのサンプルを準備する工程
・免疫原性グリコペプチドを用いて調製した抗体を前記サンプルと接触させる工程
・前記サンプルと相互作用しない抗体を除去する工程
・前記サンプルと相互作用する抗体から、前記個体が癌を有しているか又は癌を発症するリスクがあるか否かを決定する工程
を含む、個体が癌を有するか又は癌を発症するリスクがあるか否かを決定する方法である。
【0066】
本発明のさらなる他の態様は、
・腫瘍患者からの自己抗原提示細胞(APC)を準備する工程
・前記腫瘍患者からの自己APCを有効量の本発明の免疫原性グリコペプチドと接触させる工程であって、前記接触が、エンドサイトーシス、プロセシング、前記APCによる前記グリコペプチド又は融合分子の断片のMHCクラスII提示を可能にする条件下において実施される、工程
・患者における免疫治療用途のための前記ペプチド又は融合分子断片提示APCを単離する工程
を含む、MUC1に対する効果的な免疫反応を誘導し得る、自己APCの集団を生じるex vivo方法である。
【0067】
本発明のさらなる他の態様は、
a.ヒト抗体を含むサンプルを準備する工程
b.ペプチドインヒビター及びO−グリカン糖インヒビターと前記サンプルとを接触させる工程
c.工程bのサンプルを前記グリコペプチドと更に接触させる工程
d.前記グリコペプチドサンプルと相互作用する抗体の量を定量する工程
を含む、免疫原性グリコペプチドに結合する抗体の存在を決定するための方法である。
【0068】
ヒトは、Tn、STn、及びT糖構造に対する天然抗体を有し、これらは、癌患者において増大しているようである。その様な抗体は、分析したモノクローナル抗体パネルである抗−Tn、−STn、及び−T抗体と同様に、対応するMUC1グリコペプチドと反応するであろう。ヒト血清中の新規MUC1グリコペプチド抗体を同定するために、抗ペプチド又は抗糖抗体からの干渉を受けることなく、グリコペプチド特異的抗体を選択的に同定し得るアッセイを開発することが必要である。
【0069】
理論に結び付けることを意図しないが、ペプチドインヒビター及びO−グリカン糖インヒビターを使用して、免疫原性グリコペプチドに特異的な抗体、すなわち、免疫原性グリコペプチドに結合するが、糖単独又は非グリコシル化ペプチドに結合しない抗体に影響を与えることなく、交差反応抗体を中和することが可能であると解されている。かくして、免疫原性グリコペプチドに特異的な抗体の存在は、検出及び定量さえ可能である。これらの抗体は癌特異的であることが示されているため、前記方法は、癌との関連において診断及び予後のために使用されてよい。
【0070】
前記サンプルは、血清、血漿、乳などの体液、唾液、粘膜からの分泌物、糞、尿、及びそれらの任意の抗体調製物であってよい。
【0071】
前記ペプチドインヒビターは、典型的には、免疫原性グリコペプチドと同じアミノ酸配列であるが、グリコシル化されていないペプチドである。他の実施態様では、前記ペプチドインヒビターは、正常細胞に典型的に存在する、完全にプロセシングされた分枝コア2O−グリカンを含む。
【0072】
前記糖インヒビターは、典型的には、Tn、STn、又はTであろう。上述の糖の多価PAA接合体も好ましい。更なる他の実施態様では、前記糖インヒビターは、GalNAc、GlcNAc、Gal、Glc、及びNeuAcなどのモノサッカリドである。糖の他の組み合わせが同じ効果を有することも当業者には明らかであろう。
【0073】
好ましい実施態様では、本発明の方法は、ペプチドインヒビター及び/又はO−グリカン糖インヒビターと相互作用する抗体を除去する工程を更に含む。
【0074】
更なる他の実施態様では、ペプチドインヒビター及びO−グリカンインヒビターが、ペプチドインヒビター及び/又はO−グリカン糖インヒビターと相互作用する抗体を除去するために使用される固体支持体上に固定化される。
【0075】
更なる他の実施態様では、免疫原性グリコペプチドに結合する抗体が、免疫原性グリコペプチドのO−グリコシル化GSTAモチーフに結合する。本明細書から明らかなように、その様な抗体は癌特異的であり、その存在は、個体が癌を有することを示し得る。
【0076】
かくして、他の実施態様では、
a.癌を有する疑いがある個体からのサンプルを準備する
b.グリコペプチドと相互作用する抗体の測定量を、対照群から決定される標準量と比較する
c.標準量超の抗体の測定量は、個体における癌を示す
d.標準量未満の抗体の測定量は、癌を有しない個体を示す。
【0077】
免疫原性グリコペプチドに結合する抗体の存在を測定する上述の方法は、本発明の免疫原性グリコペプチドに必ずしも限定されないことに注意すべきである。前記方法は、他のグリコペプチドに特異的に結合する(ペプチド又は糖単独には結合しない)抗体の検出にも適用可能なはずである。
【実施例】
【0078】
(実施例1)
原料及び方法
多量体Tn及びSTn MUC1グリコペプチドの化学酵素合成
MUC1 60mer(VTSAPDTRPAPGSTAPPAHG)n=3ペプチドを、Fontenotにより最初に報告されているように合成した。使用する対照ペプチドは、MUC2(PTTTPISTTTMVTPTPTPTC)及びMUC4(CPLPVTDTSSASTGHATPLPV)のタンデムリピート由来であった。ペプチドは、精製組換えヒトグリコシルトランスフェラーゼポリペプチドGalNAc−T2、GalNAc−T4、及びGalNAc−T11を使用してin vitroでグリコシル化した。GalNAc置換ペプチドは、精製組換えマウスST6GalNAc−Iを使用してシアル化した。ペプチドのGalNAcグリコシル化は、25mMカコジル酸緩衝液(pH7.4)、10mM MnCl、0.25% Triton X−100、及び2mM UDP−GalNAcを含有する反応混合物(1mgペプチド/ml)において実施した。2GalNAcをTR毎に有する1mg 60merペプチドのグリコシル化(MUC160Tn)は、GalNAc−T11を用いて得られた。TR毎の3GalNAcの包含(MUC160Tn)は、GalNAc−T2を用いて得られた。MUC1 TRにおける全ての5つの推定上のO−グリコシル化部位の置換(MUC160Tn15)は、GalNAc−T4との反応においてMUC160Tnを基質として用いて実施した。シアル化は、20mM Bis−Tris緩衝液(pH6.5)、20mM EDTA、1mMジチオスレイトール、及び2mM CMP−NANA(Sigma)を含有する反応混合物(1mgペプチド/ml)中で実施した。グリコシル化は、ナノスケール逆相カラム(Poros R3、PerSeptive Biosystem)及びMALDI−TOF質量分析器を用いてモニターした。グリコペプチドは、0.1% TFA及び0から80%のアセトニトリルグラジエントを用いる1100 Hewlett Packard systemにおいてZorbax 300SB−C3カラム(9.4mm×25cm)でHPLCによって精製した。グリコシル化反応の定量及び収量の見積もりは、標準物質として10μgに秤量したペプチドを用いたuv 210吸収によるHPLCピークの比較によって行った。ペプチドのGAlNAc−グリコシル化は、一般的に、80から90%の収率であったが、シアル化工程は、60から80%の間の収率でより変化していた。精製グリコペプチドは、ディレイド・エクストラクションを取り付けたVoyager DE又はVoyager DE Pro MALDI飛行時間質量分析器(PerSeptive Biosystems Inc.,Framingham,MA)によるMALDI−TOF質量分析によって特徴付けられた。MALDIマトリックスは、0.1%トリフルオロ酢酸の30%アセトニトリル水溶液における2:1の混合物に溶解した2,5−ジヒドロキシ安息香酸 10g/L(Aldrich,Milwaukee,WI)であった。約1pmol/μlの濃度にまで0.1%トリフルオロ酢酸に溶解したサンプルを、プローブチップ上に1μlのサンプルを配置して、その後に1μlのマトリックスを配置することによる分析のために調製した。全てのマススペクトルがリニアモードで得られた。データ処理は、GRAMS/386ソフトウェアを用いて実施した。
【0079】
免疫プロトコール
グリコペプチドを、グルタルアルデヒドを用いて、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(Pierce,Rockford,IL)に結合させた。接合効率は、抗MUC1 ELISAの画分を用いて、PD−10カラムにおけるサイズ排除クロマトグラフィーによる反応を分析することによって評価した。本質的に、排除された画分について全て反応性を確認し、排除していない画分における顕著な反応性によってペプチドを含有することが期待された。更なる評価として、ELISAにおける対応グリコペプチドとのKLH接合体の比較滴定分析を実施した。双方の分析は、前記接合体がほぼ完全であり、1:300のKLHに対するグリコペプチドの割合をもたらすはずである。トランス遺伝子発現についてホモ接合性のMUC1トランスジェニックマウス(MUC1.Tg)を、H2−kバックグラウンドにおいて最初に開発した。その後、これらのマウスをBalb/c株に対して15世代の間に亘って戻し交配して、純粋なBalb/c(H2−d)バックグラウンドを得た(Graham and Taylor Papadimitriou,見公開のデータ)。メスのBalb/c野生型マウスとMUC1.Tgマウスに、10又は15μgの(グリコ)ペプチドを200μlの全容量(フロイントアジュバント(Sigma)との1:1混合物)で皮下に注射した。マウスは、14日ごとに4回の免疫を受け、血液サンプルを、3回目と4回目の免疫の1週間後に尾又は眼から出血させて得た。
【0080】
マウスモノクローナル抗−MUC1抗体である5E5の産生
モノクローナル抗体は、完全にGalNAcでグリコシル化され、KLHに結合させた60mer MUC1グリコペプチドで免疫した野生型のBalb/cマウスから過去に開示されているように生産した。スクリーニングは、グリコペプチドのELISAアッセイ、その後の乳癌細胞株(MCF7、T47D、MTSV1−7)を用いた免疫細胞学及び乳癌組織を用いた免疫組織学に基づくものであった。選択は、同じマウスの全血清に類似する反応性パターンに基づくものであった。
【0081】
ELISAアッセイ
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)は、96ウェルMaxiSorpプレート(Nunc,Denmark)を用いて実施した。プレートは、重炭酸−炭酸緩衝液(pH9.6)中の1μg/mlのグリコペプチドを用いて4度で一晩コーティングして、PBS中の5%BSAでブロッキングし、血清(PBSで希釈)又はモノクローナル抗体を用いて2時間に亘って室温でインキュベートした。結合した抗体は、ペルオキシダーゼ接合ウサギ抗−マウスイムノグロブリン(Dako,Denmark)又はアイソタイプ特異的な抗体ペルオキシダーゼ−接合ヤギ抗−マウスIgM、IgG1、IgG2a、IgG2b、又はIgG3(Southern Biotechnology Associates,USA)を用いて検出した。プレートは、O−フェニレンジアミンタブレット(Dako,Denmark)を用いて発色させ、492nmで読取った。対照抗体は、抗−MUC1抗体であるHMFG2及びSM3並びに抗糖抗体である5F4(Tn)及び3F1(STn)を含んだ。対照血清は、KLHに結合させたMUC4ムチンペプチドで免疫したマウスを含んだ。
【0082】
細胞株
ヒト哺乳動物細胞株であるMCF7、MTSV1−7、及びT47D、並びにネズミ膵臓癌細胞株であるPanc02は、過去に開示されているように培養した。CHO ldlD細胞は、32のタンデムリピートを含有する全長をコードするMUC1で安定にトランスフェクトし、所定のGal/GalNAcを添加して又は添加せずに増殖させた。6ウェルプレート(Nunc,Denmark)中のCHO ldlD細胞のコンフルエントな培養物を、GalNAc及びGalの非存在下、1mM GalNAcの存在下、又は1mM GalNAc及び0.1mM Gal(Sigma Aldrich)の存在下において10%FCSを含むHAM’S F12において増殖させた。前記培地は、増殖の48時間後に回収し、免疫アッセイに使用した。細胞はトリプシン処理して、洗浄し、免疫細胞学のためにカバースライド上で乾燥させた。
【0083】
SDS−PAGEウエスタンブロット
SDS−PAGEウエスタンブロットは、製造業者の説明書に従って実施した(4から12%のグラジエントゲル、Biowhittaker Molecular Applications)。膜は、15%のスキムミルク粉末(Merck Eurolab)によってブロッキングして、MAbである5E5及びHMFG2を用いて一晩に亘って4℃でインキュベートし、次いで、ビオチン化ヤギ抗−マウスIgG1(0.5μg/ml)(Southern Biotechnology Inc)を用いて1時間に亘って室温でインキュベートした。膜を、アビジンセイヨウワサビペルオキシダーゼ接合体(0.36μg/ml)(Dako)を用いて30分に亘って室温でインキュベートし、次いで、0.04% 4−クロロ−1−ナフトール(Sigma)及び0.025% Hを含有する50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.6)とインキュベートした。
【0084】
免疫細胞化学
細胞株は、氷冷アセトン又はメタノール:アセトン中で10分間に亘って固定化した。固定化した細胞を、マウス血清(1:200/1:400/1:800)又はモノクローナル抗体を用いて一晩に亘って5℃でインキュベートし、次いで、FITC接合ウサギ抗マウスイムノグロブリン(Dako,Denmark)を用いて45分間に亘って室温でインキュベートした。スライドに、p−フェニレンジアミンを含有するグリセロールをのせ、Zeiss蛍光顕微鏡で試験した。
【0085】
免疫組織化学
凍結組織サンプルを、冷メタノール/アセトン(50:50)中で10分間に亘って固定化した。ホルマリンで固定化し、パラフィンワックスに埋め込んだ乳癌組織が、Institute of Molecular Pathology and Immunology of the University of Porto,Portogalから得られた。全てのケースは、組織のタイプによって簡便に分類した。アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体方法を免疫染色に使用した。パラフィン切片は、ワックスを除いて、再水和し、メタノール中の0.5% Hで30分間に亘って処理した。切片はTBSですすいで、ラビット非免疫血清と20分間に亘ってインキュベートした。切片をすすいで、一次抗体を用いて一晩に亘って5℃でインキュベートした。切片をすすいで、TBS中に1:200に希釈したビオチン標識ウサギ抗−マウス血清(Dako,Denmark)を用いて30分間に亘ってインキュベートし、TBSですすぎ、アビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体(Dako,Denmark)を用いて1時間に亘ってインキュベートした。切片をTBSですすぎ、0.1%Hを含有する0.05M TBS中で新しく調製した0.05% 3,3’−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリドを用いて発色させた。切片をヘマトキシリンで染色し、脱水して、標本にした。
【0086】
結果
多量体TnおよびSTn MUC1グリコペプチドの化学酵素合成
合成60mer MUC1タンデムリピートペプチドは、部位選択的組換えポリペプチドGalNAc−トランスフェラーゼ(CalNAc−T2、−T4、及び−T11)を用いてグリコシル化した。組換えGalNAcトランスフェラーゼを用いてin vitroでグリコシル化されたMUC160merタンデムリピートペプチドのMALDI−TOF質量分析によって示されるように、MUC1タンデムリピート配列中のGalNAc結合部位は厳密に制御されている。GalNAc−T11を使用して2つのGalNAc残基をタンデムリピート毎に添加し、GalNAc−T2によって3残基を添加し、続いてGalNAc−T2及び−T4を使用して全部で5つの残基を添加した(図1)結合部位は、過去に開示されているように質量分析によって確認した。5つのGalNAc残基をリピート毎に与えるGalNAc−T4を用いたグリコシル化は、NH2−末端が高度に切断されているペプチドの設計のために全部で14のみを可能にする。STnを形成するシアル酸を有するGalNAc残基の更なるグリコシル化は、組換えネズミST6GalNAc−Iを用いて達成した。MALDI−TOFによる結合したシアル酸残基の数の評価は、当該糖鎖結合の不安定な性質により過小評価される。シアル化は、抗STn(ポジティブ)及び抗Tn(ネガティブ)モノクローナル抗体を用いた免疫反応パターンによって評価されるものが完全であると解される。コア1構造は、組換えβ3Galトランスフェラーゼを用いて生産した。形成したグリコペプチドは、図1の各々のMALDI−TOFプロフィールの上端に示されている。
【0087】
完全なO−グリカン結合を有するMUC1グリコペプチドは最も免疫原性であり、Tn及びSTnグリコペプチドはMUC1トランスジェニックマウスにおける強力な抗体反応を誘導する。
最初の試験では、2、3、及び5のO−グリカンをリピート毎に有するMUC1Tn糖型を免疫原として試験して、3及び5のO−グリカンを有するグリコペプチドが、ELISAによる各免疫原に対する最も強力な免疫反応を生じ、より重要には、MUC1を発現する癌細胞に対して反応性の抗体を誘導した(データは示さず)。更なる試験のために、完全なO−グリカンの占有を有するMUC1を選択し、図2に示すように、完全にTnグリコシル化されたMUC1(MUC160Tn15)又は完全なSTnグリコシル化MUC1グリコペプチド(MUC160STn15)のいずれかで免疫した野生型Balb/cマウス(図2ac)及びMUC1.Tgマウス(図2bd)由来の血清は、双方のマウスにおいて高い抗体力価を生じた。最も高い抗体力価は、免疫原として使用したMUC1糖型について認められたが、他のMUC1糖型をについても同様の反応性が認められた。低い反応性が、非グリコシル化MUC1について、特にTn免疫マウスにおいて認められた。非常に低いレベルの抗−Tn及びSTnハプテン抗体が、ムチンOSM(主にSTn糖型を有するヒツジ顎下腺ムチン)及びA−OSM(Tn糖型を有するアシアロムチン)を抗原として用いて検出された。非MUC1ペプチド又はTnグリコシル化を有するグリコペプチドは、反応性が認められなかった。
【0088】
Tn MUC1を用いて免疫したMUC1.Tgマウス及び野生型マウスにおいて誘導される免疫反応を摸倣するモノクローナル抗体5E5の特徴づけ
グリコペプチドに対する免疫反応の特異性をさらに特徴づけ規定するために、本発明者は、検出したポリクローナル反応の特異性を本質的に反映した、完全なTnグリコシル化MUC1グリコペプチドで免疫したマウスからモノクローナル抗体(5E5と称する)を単離した(図3a)。抗体5E5は、MUC1タンデムリピートの全てのTn及びSTn糖型と反応し、非グリコシル化MUC1ペプチドとは反応を示さず、非MUC1ペプチド主鎖上に存在するTnハプテンとは非常に弱く反応性を示すのみであった。特異性に関与する広範なO−グリカン構造を評価するために、本発明者は、CHO ldlD細胞系を利用した。CHO ldlD細胞は、UDP−Gal/GalNACエピメラーゼを欠失しており、GalNAc及びGalの各々の外部からの添加がない条件下において、GalNAc O−グリコシル化及びガラクトシル化の不全が生じる。完全長をコードするMUC1遺伝子(CHO ldlD/MUC1)で安定にトランスフェクトしたCHO ldlD細胞は、GalNAcの存在下、Gal及びGalNAcの存在下、又は双方の不在下において増殖し、Tn、ST、又は非グリコシル化MUC1糖型の各々を発現する細胞を生じさせる。図3bに示すように、CHO ldlD MUC1細胞は、増殖培地に対する糖の添加にかかわらず、一般的な抗MUC1抗体であるHMFG2によって検出されるようにMUC1を発現する。GalNAc単独において増殖した細胞は、予測されたように、Tn抗原のみを発現し、T又はSTを発現しないが、Gal及びGalNAcにおいて増殖した細胞は、予測されたようにSTのみを発現する。興味深いことに、GalNAc単独において増殖した細胞は、STn構造を発現せず、CHO ldlD細胞が顕著な量のST6GalNAc−Iを発現しないことが示している。トランスフェクトしていないCHO ldlD細胞が非常に弱い反応性を示すのみであったため(データ示さず)、抗糖抗体の染色は、MUC1の発現に高度に依存した。CHO ldlD細胞によって生産されるMUC1糖型の更なる確認は、糖の存在下又は非存在下で増殖して分泌されたMUC1−IgGキメラ構築物の質量分析により達成された(結果は他の場所に示す)。5E5は、CHO ldlD細胞において発現した組換えMUC1のTn糖型に特異的に反応し、非グリコシル化又は更なるグリコシル化T及びST MUC1糖型と反応しなかった(図3bc)。5E5は、大半の乳癌において強力に発現したMUC1の癌関連糖型を規定する(表1、図3d)。5E5は、全ての腺管癌を染色し(n=18)、2の小葉癌を染色した。ポジティブ細胞の割合は、25%未満から75%超の間で変化した。良性病変の6ケースを染色し、そのうち2ケース(1つが線維症及び1つが線維腺腫)のみが5E5でポジティブ染色を示し、これらの場合では25%未満の細胞が染色された。この染色パターンは、モノクローナル抗体であるHMFG2の癌における場合に密接に従うものであるが、5E5は、正常の胸及び良性病変においてより制限されていた。このことは、Tn及びSTn MUC1タンデムリピートグリコペプチドが原発ワクチン候補を表わすことを更に示すものである。
【0089】
【表1】

【0090】
TnおよびSTn MUC1グリコペプチドで免疫したMUC1.Tgマウスは、癌関連MUC1グリコペプチドに限定的なMUC1グリコペプチド特異的反応を生じる。
MUC1タンデムリピートペプチドワクチンは、一般的に、ムチンが自己抗原として発現する際に、おそらくは免疫寛容により、癌関連MUC1に対する液性反応の誘導において効果的ではない。しかしながら、図2において示すように、TnとSTn60merMUC1グリコペプチドの双方が、MUC1トランスジェニックマウスにおけるグリコペプチドに対する強力な抗体反応を誘導した。その抗体反応の特異性は、本質的に、野生型マウスにおいて認められるものと同一である。Tgサブクラスの分布は、主にIgG1であるが、STn60merMUC1に対する反応は、IgG2A及びIgG2Bサブクラスを含み、顕著な切り替えを示す(データ示さず)。誘導された抗体は、野生型血清(データ示さず)及びモノクローナル抗体5E5(図3b)と同様に、CHO ldlD細胞において発現した組換えTn MUC1と反応した(図4a)。さらに、Tn MUC1グリコペプチドで免疫したマウスに由来する血清は、主にTnを有するが、幾つかのT及びST O−グリカンを有する、ヒト乳ガン細胞株T47Dと強力に反応した。MUC160Tn15に対して作製した血清は、T47D細胞の強力な染色を示した。2又は3のTnをタンデムリピート毎に有するMUC160merで免疫したマウス由来の血清は、腫瘍細胞株について中程度の反応性を示した。MUC160Tn15で免疫したMUC1.Tgマウス由来の血清は、T47Dの中程度の染色を示した。他の乳癌細胞株であるMCF7は、部分的にコア2構造に基づくO−グリカンを有するMUC1の発現を示し、かくして、正常な上皮細胞において認められるパターンと非常に近似しているグリコシル化パターンを有することを示した。MUC160Tn15で免疫したマウス由来の血清は、MCF7について、T47D細胞よりも低い反応性を示した。MCF7は、MUC160Tn15に対して作製した血清によって染色しなかった。全ての血清は、高レベルのC2GnT1を発現し、コア2に基づくO−グリカンを有するMUC1を産生する非腫瘍形成性上皮細胞株であるMTSV1−7について非常に低い反応性を示した。最後に、MUC160STn15で免疫したMUC1トランスジェニックマウス由来の抗血清は、MUC1及びSTnを発現する原発性乳癌と反応した(図4b)。
【0091】
(実施例2)
原料及び方法
グリコペプチドの化学酵素合成
3のタンデムリピートを示すMUC1 60merペプチド(VTSAPDTRPAPGSTAPPAHG)n=3を、最初に報告されたとおりに合成した(Cancer Research UKによる)。マウスの免疫のために、ペプチドは、GalNAc−T2及び−T4の共同の作用によって、in vitroで完全にTn−グリコシル化された。捕捉ELISAのために、60merペプチドのNH末端ビオチン化バリアントは、in vitroグリコシル化して、11の異なる糖型を形成した(図5)。さらに、対照ペプチドとして、1.4タンデムリピートに相当するMUC2 33merペプチド(PTTTPITTTTTVTPTPTPTGTQTPTTTPISTTC)(Dr.P.O.Livingston)は、20の潜在的な受容部位のうち約12を占有するものとしてGalNAc−T2によってTnグリコシル化された。2種のバリン置換NH末端ビオチン化25mer MUC1ペプチドTAP25V9 (T1APPAHGVV9SAPDTRPAPGST21APPA)及びTAP25V21 (T1APPAHGVT9SAPDTRPAPGSV21APPA)を合成して、異なるポリペプチドGalNAc−トランスフェラーゼを用いたそれらのグリコシル化産物は過去に開示されているように特性決定した。これらのペプチドは、GalNAc−T11を用いることによって、Thr及びThr21又はThr及びThrの各々において酵素でin vitroグリコシル化された(図5)。さらに、AHGVTSAPDTRPAPGSTAPPAの配列に基づく単独のTn−グリカン(Tn−A1−Tn−A4)又は単独のT−グリカン(T−A1−T−A4)のいずれかを有する、8の異なる21mer MUC1グリコペプチドを化学的に合成した(図5)。
【0092】
免疫のためのMUC1 60merグリコペプチド接合物
15のGalNAc残基を有する60merMUC1ペプチドを、グリコペプチド:mcKLHが300:1のモル比でグルタルアルデヒドを用いて、Imject(登録商標) Maricultureキーホールリンペットヘモシアニン(mcKLH)(Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL)に接合した。過剰なグルタルアルデヒドを、PD−10脱塩カラム(Amersham Biosciences,Uppsala,Sweden)においてPBSで溶出して除去した。280nm及び210nmのODの読み取りに基づいて、画分をプールした。未接合のペプチドの溶出時間に相当する画分は、210nmにおけるODの読み取りによれば、ペプチドを含有していなかった。さらに、ELISAでは、接合の割合が、前記接合物及び未接合のグリコペプチドとグリコペプチド又はグリカン単独に対するモノクローナル抗体との反応性を比較することによって、ほぼ完全であることが推定された。
【0093】
CHO ldlD細胞における組換えMUC1の生産
16のタンデムリピートを含有する可溶性MUC1−ネズミIdG2a融合構築物で安定にトランスフェクトしたCHO ldlD細胞を、10%FCS及び600μg/mlのG418を含むIscove’s修飾Dulbecco’s培地で培養した。これらの細胞中のUDP−Gal/UDP−GalNAc 4−エピメラーゼの欠如を利用して、1mM GalNAcと共に培養して可溶性Tn−MUC1を発現する細胞を産生し、1mM GalNAc及び0.1mM Galと共に培養して可溶性ST−MUC1を発現する細胞を産生した。糖タンパク質(6×Hisタグ付加した)をNi−NTAアガロース(Qiagen,Hilden,Germany)で精製した。精製ST MUC1は、ノイラミニダーゼ(50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中、0.2U/ml)で処理して、T−MUC1をNi−NTAアガロースでノイラミニダーゼを除去するために再精製した。
【0094】
MAb 2D9の産生
MAb 5E5と同様に、メスのBalb/cマウスを、KLHに接合した15Tn−MU1 60merグリコペプチドで免疫した。3回目の免疫の7日後に尾から出血させて回収し、ネガティブ対照として役に立つTn−MUC2グリコペプチドを用いてELISAによって、又はTn−MUC1、ST−MUC1(ノイラミニダーゼ処理後のT−MUC)、若しくは非グリコシル化MUC1を発現するCHO ldlD MUC1F細胞、T47D(ヒト乳管癌)、MCF7(ヒト乳癌)、及びMTSV1−7(ヒトの胸)を用いて免疫細胞化学によって、血清を試験した。4回目の免疫の3日後に、一匹のマウスに由来する脾臓細胞をNS1ミエローマ細胞と融合させた。興味ある抗原に特異的なハイブリドーマを、少なくとも3回の限界希釈法によってクローン化した。
【0095】
他のモノクローナル抗体
2種の対照抗体を、GalNAc中で増殖させるか(MAb 5E10)又はGal及びGalNAc中で増殖させて、その後にノイラミニダーゼで処理(MAb 1B9)したCHO ldlD細胞由来の精製した可溶性MUC1に対してメスのBalb/cマウスにおいて産生させた。免疫は、フロイント完全アジュバント中に乳化させた40μg/100μlの免疫原の1回の皮下注射、その後のフロイント不完全アジュバントの2から3週間間隔における2回の注射、並びに最後のアジュバントなしの追加免疫によって実施した。異なる選択基準で上述のようにして、免疫細胞化学的に2種のクローンが選択された。O−グリコシル化からは独立して全ての試験したMUC1発現細胞株と反応し、そのためユニバーサルな抗MUC1MAbとして役に立ち得るため、MAb 5E10が選択された。T抗原を提示するノイラミニダーゼで処理した細胞に対する特異性を示すため、MAb 1B9が選択された。
【0096】
ELISAアッセイ
酵素免疫吸着測定法(ELISA)を、NuncImmuno MaxiSorp F96プレート(Nunc,Roskilde,Denmark)を用いて実施した。非ビオチン化グリコペプチドは、2μg/mlの最初の濃度から連続的に希釈し、炭酸−重炭酸緩衝液(pH9.6)中で1時間37℃又は一晩4℃でコーティングした。捕捉ELISAのために、炭酸−重炭酸緩衝液(pH9.6)中で1.5μg/mlのストレプトアビジン(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)で1時間37℃又は一晩4℃でプレートをコーティングした。SuperBlock Blocking緩衝液(Pierce,Rockford,IL)で1時間室温においてブロッキングした。ストレプトアビジンコーティングプレートは、2μg/mlの最初の濃度から連続的に希釈したビオチン化グリコペプチドを用いてインキュベートし、1時間37℃又は一晩4℃でインキュベートした。その後、モノクローナル抗体を用いて2時間室温又は一晩4℃でプレートをインキュベートした。5E5、2D9、1B9、5E10、及びSM3は、非希釈の培養物上清として使用したが、MY.1E12腹水は1:1000で使用し、精製BW835は1μg/mlで使用した。MY.1E12は、Dr.T.Irimuraから提供されたものであり、BW835はDrs.F.−G.Hanisch及びT.Schwientekによるものである。Tn−MUC1で免疫したMUC1トランスジェニックマウス由来の血清は、1:100又は1:200の最初の希釈からPBS中の2%BSAで連続的に希釈した。結合した抗体は、HRP接合ポリクローナルウサギ抗−マウスイムノグロブリン(Dako,Glostrup,Denmark)で検出した。TMB+ 1段階基質システム(Dako,Glostrup,Denmark)を用いてプレートを発色させ、1N HSOで反応を停止させ、450nmで読取った。
【0097】
免疫細胞化学
細胞株を氷冷アセトン中で10分に亘って固定化した。固定化した細胞は非希釈MAb上清と一晩4℃でインキュベートし、その後に、蛍光イソチオシアネート(FITC)接合ウサギ抗−マウスイムノグロブリン(Dako,Glostrup,Denmark)と45分室温でインキュベートした。スライドにp−フェニレンジアミンを含有するグリセロールをのせ、Zeiss蛍光顕微鏡(FluoresScience,Hallbergmoos,Germany)で試験した。
【0098】
結果
MUC1モノクローナル抗体の産生
MAb 5E5(IgG1)は、過去に開示されているように(Sorensen et al.)、KLHに接合させた15のGalNAc残基を有する60mer MUC1タンデムリピートペプチドに対して産生させた。この抗体は、タンデムリピートドメインにTn又はSTnを有するMUC1と特異的に反応し、各種の広範な乳癌と反応するが、正常な胸の上皮とは反応を示さないことが示された(Sorensen et al.2006)。本来、その反応性のパターンが本質的に完全なTn−又はSTnグリコシル化を有するMUC1タンデムリピートグリコペプチドで免疫したMUC1トランスジェニックマウス由来の全血清のものを反映するため、5E5が選択された(Sorensen et al.2006)。本試験では、本発明者は、免疫及びスクリーニングプロトコルを再現し、本質的に同じ特異性を示す(図6)他のモノクローナル抗体である2D9(IgG1)を単離し、その様な抗体が一般的なものであることを示した。
【0099】
2種の追加のMUC1抗体は、Tn糖型(5E10)を産生するためにGalNAcにおいて増殖させた、又はST糖型を産生するためにGalおよびGalNAcにおいて増殖させて、その後にノイラミニダーゼ処理によりT糖型(1B9)を低減させたCHO ldlD細胞において発現した精製組換え分泌MUC1(rMUC1)に対して産生した。免疫細胞化学によって、MAb 5E10は、試験した全てのMUC1発現細胞株と反応し、そのため、潜在的にユニバーサルな抗MUC1 MAbとして役に立ち得る。MUC1のT糖型を提示するノイラミニダーゼ処理細胞に対して特異性を示すため、MAb 1B9が選択された。
【0100】
Tn−MUC1タンデムリピートグリコペプチドに対して産生されたMAb 5E5及び2D9のエピトープマッピング
前記抗体の特異性を、酵素化学法によって産生した60merグリコペプチドのパネルを用いる直接結合ELISAアッセイによって最初に測定した(図5)(Sorensen et al.2006)。MAb 5E5及び2D9は、Tn及びStn O−グリカンを有するMUC1タンデムリピートグリコペプチドに対して高い選択性とともに同様の反応性パターンを示し、双方の抗体が、最も高いO−グリカン占有率を有するTn−MUC1糖型に好適であることを示したが、直接結合アッセイでは、2D9は、STn糖型と比較して、Tn糖型に顕著により良好な反応性を示した(データ示さず)。抗体の結合特異性を完全に評価し、直接結合ELISAアッセイにおけるMUC1ペプチド及びグリコペプチドの吸着及び提示における差異に関する問題を排除するために、ストレプトアビジン−ビオチン捕捉ELISAを、60merのMUC1ビオチン化グリコペプチドの大きなパネルを用いて開発した(図5)。図6に示す結果は、2つのMAb 5E5及び2D9が、グリカンがTn又はSTnであり、少なくとも2つのO−グリカン、好ましくは3又は5つのO−グリカンをMUC1リピート毎に有するグリコペプチドエピトープと反応することが明らかに確認される。これは、配列のVTSA又はGSTV領域のいずれかにおけるO−グリカンがエピトープには必要であることを示唆し得る(図5)。CHO ldlD細胞におけるMUC1の組換え発現は、MUC1の異なる糖型の提示を可能にする(Sorensen et al.2006)。MAb 5E5及び2D9は、Tn−MUC1と反応するが、T及びST−MUC1グリコペプチドとの反応性の欠如により予測されるようにT−MUC1糖型とは反応しなかった(図6、パネルA及びD)。興味深いことに、弱い反応性は、コア3−グリコシル化糖型(GlcNAcβ1−3GalNAcα1−O−Ser/Thr)について認められたが、3つのO−グリカンをタンデムリピート毎に有する場合に認められ、5つのO−グリカンをタンデムリピート毎に有する場合には認められなかった。これの有意性は現時点では明らかではなく、コア3O−グリカン構造を合成するβ3Gn−T6酵素の発現は胃、直腸、及び小腸に限定されている。
【0101】
更なるグリコペプチドのバリアントは、エピトープをより正確に規定するために必要であるが、現在の60mer MUC1ペプチドの酵素グリコシル化は、ポリペプチドGalNAcトランスフェラーゼの基質特異性に限定される。そのため、所定のスレオニン残基のバリン置換を有する2種の25merペプチドを使用し、GalNAc−T11を利用して個々の部位にTnを有する糖型を化学酵素的に生じさせた。最初のThrのTnグリコシル化に加えて、2種のグリコペプチドは、VTSA領域のThr(2Tn−TAP25V21)又はGSTA領域のThr(2Tn−TAP25V9)においてTnグリコシル化された。GSTA領域におけるSer及びThrの双方の酵素的なTnグリコシル化は、ビオチン化60merペプチドとの反応性の増大が認められ、TAP25V9ペプチドとは不可能であった。図6に示すように(パネルB及びE)、5E5及び2D9は、VTSA領域のThrにTnグリコシル化を有する2Tn−TAP25V21と反応しないが、強力な反応性が、GSTA領域のThrにTnグリコシル化を有する2Tn−TAP25V9グリコペプチドについて認められた。この反応性は、単独のTn又はT O−グリカンを有する合成MUC1グリコペプチドのパネルを用いた直接結合ELISAにおいて確認された(図5)。5E5及び2D9は、GSTA領域のThrにTnを有するグリコペプチドに対して強力な反応性を示したが、Tグリカンが当該スレオニンにあるか又は他のTn又はTグリコシル化グリコペプチドについては反応性を示さなかった(図6、パネルC及びF)。要約すると、5E5及び2D9は、GSTAのThrがTn又はStnグリコシル化されている際にMUC1グリコペプチドと反応し、Ser及びThrの双方がグリコシル化されている際により強力であった。
【0102】
Tn−MUC1免疫MUC1トランスジェニックマウス由来の全血清の特異性分析
KLHに接合させた15Tn−MUC1 60merグリコペプチドで免疫したマウスの全血清は、高密度のTn−及びSTn−MUC1グリコペプチドに好ましいことを示した(図7、パネルA)。より重要なことに、Tnグリコシル化GSTA配列についての同じ特異性が、バリン置換グリコペプチドについて認められた(図7、パネルB)。上記のデータをまとめると、これらの結果は、明らかに、Tn及び/又はsTnでグリコシル化されたMUC1タンデムリピートのGSTA領域が、新規な免疫優性MUC1グリコペプチドエピトープを示す。
【0103】
MAb 1B9及び5E10の特徴づけ
CHO ldlD細胞において発現させた組換えMUC1糖タンパク質に対して産生した前記2種のMAbは、MUC1 60merビオチン化グリコペプチドのパネルを用いて捕捉ELISAにより分析した。MAb 1B9は、3つのT O−グリカンをタンデムリピート毎に有するMUC1グリコペプチドについて強力な反応性を示したが、非常に弱い反応が、タンデムリピート毎5つのT O−グリカンで完全に置換されたグリコペプチドについて認められた(図8、パネルA)。中程度の反応性が、コア3及びSTで置換したペプチドについて認められたが、タンデムリピート毎に3つのグリカンを有するペプチドにのみであった(図8、パネルA)。単独のT O−グリカンを有するMUC1グリコペプチドを用いたELISAによって、アミノ酸配列GSTAのThrでT−グリコシル化されたペプチドについて反応性が示されただけでなく、より弱い反応性が、アミノ酸配列VTSAのThrにT−グリコシル化を有するペプチドについて認められた(図8、パネルB)。単独のTn O−グリカンを有するMUC1グリコペプチドについては反応性が認められなかった。更に、1B9は、GalNAc単独で増殖した際に、CHO ldlD MUC1発現細胞と反応しなかったが、Galを増殖培地に添加した際には、ST−MUC1の発現が生じた。顕著に高められた反応性が、細胞のノイラミニダーゼ処理によりT−MUC1を曝露した後に認められた(図8、パネルC)。これらのデータは、1B9のエピトープは、グリコペプチドエピトープではなく、むしろPDTR領域ではなくVTSA又はGSTA領域のいずれかにβ1−3結合ジサッカリドを用いたグリコシル化を必要とする立体構造エピトープであることを示唆する。
【0104】
MAb 5E10は、ビオチン化MUC1 60merペプチドについて最も高い反応性を示し、又は前記ペプチドが非グリコシル化又は2つのみのTnグリカンでタンデムリピート毎に置換されている際に最も高い反応性を示した。Tnグリコシル化に対する反応性は、グリコシル化の密度が増大するにつれて低減した。反応性における更なる低減は、Tグリコシル化の導入、それに続くコア3グリコシル化の導入による低減と共に認められた。最も低い反応性は、シアル化の程度の増大と共に認められ、特にNeuAcがGalNAcにα2−6結合(STn)している際に認められた。STnで完全に置換されているペプチドについては、反応性が全く認められなかった。ビオチン化バリン置換in vitroTnグリコシル化MUC1ペプチドを用いたELISAにおいて、グリコシル化に関係なく、4つの全てのペプチドについて同じ反応性が認められた(図9、パネルB)。単独のTn又はT O−グリカンを有するMUC1グリコペプチドを用いたELISAにおいて、アミノ酸配列GSTAのThrでT−グリコシル化されたペプチドを除く、全てのペプチドで等しい反応性が認められた(図9、パネルC)。免疫細胞学において、5E10は、GalNAcと共培養、Galと共培養、又は糖を含まずに培養することからは独立して、CHO ldlD MUC1発現細胞と反応した(データ示さず)。まとめると、5E10は、完全なSTn占有を有するものを除き、試験した全てのMUC1糖型と反応した。
【0105】
MUC1糖型と反応することが過去に報告されている他のMAbとの比較
MAb SM3は、MUC1タンデムリピートのPDTR領域に結合し、ThrのTn−グリコシル化はその結合を促進する。過去の報告と一致して、SM3は、非グリコシル化ペプチド及びタンデムリピート毎に5つのO−グリカンの完全なO−グリカン占有を有するグリコペプチドと好適に反応するが、2つ又は3つのO−グリカンを有するグリコペプチドとの反応性は低い(図9、パネルD)。これらの結果は、T、ST、及びコア3 O−グリカンが等しく良好に反応することを示した本発明者の試験を確認し拡張する。本試験について、本発明者は、コア2糖型を有していなかったが、細胞株を用いた試験によって、MUC1のコア2グリコシル化がSM3エピトープを阻害することが明示されている。弱い反応性が、非グリコシル化又はアミノ酸配列VTSA又はGSTAのThrでTnグリコシル化された、ビオチン化バリン置換ペプチドについて認められた(図9、パネルE)。単独のTn又はT O−グリカンを有するMUC1グリコペプチドを用いたELISAでは、高い反応性が、アミノ酸配列PDTRのThrがT又はTnのいずれかで置換された際に認められた。より低い反応性が、残りのT−MUC1グリコペプチドについて認められたが、残りのTn−MUC1グリコペプチドについて反応性は認められなかった(図9、パネルF)。
【0106】
MAb BW835は、ジサッカリドTで完全にグリコシル化されたビオチン化MUC1 60merグリコペプチドを用いた捕捉ELISAにおいて反応した(図8、パネルC)。興味深いことに、BW835は、コア3 O−グリコシル化ペプチドと等しく良好に反応し、前記抗体はT糖型自体を必要としないことが示された。より低い反応性が、完全にST−グリコシル化されたペプチドについても認められた。弱い反応性が、3つのみO−グリカンを有するTグリコペプチドについて認められ、類似の弱い反応性が完全にTnグリコシル化したグリコペプチドについて認められた。2つ又は3つのTnグリカンをTR毎に有するグリコペプチド、STn−グリコシル化ペプチド、又は非グリコシル化ペプチドについては反応性が認められなかった。これらの結果は、エピトープの過去の特徴づけと一致し、これを拡張するものである。
【0107】
先に公開されたデータに従って、MY.1E12は、ビオチン化60merグリコペプチドを用いて評価すると、MUC1のST−糖型に厳格な特異性を示した(図8、パネルD)。BW835とは対照的に、MY.1E12は、3つのST O−グリカンをタンデム配列ごとに有するペプチドに対して好ましいことを示し、エピトープが、VTSA領域のThr及びSerの双方がグリコシル化される際に少なくとも部分的に破壊されることが示された。
【0108】
(実施例3)
原料及び方法
3のタンデムリピートを示すMUC1 60merペプチド(VTSAPDTRPAPGSTAPPAHG)n=3は、実施例1及び2に記載のように、5モルのTn、STn、及びTを用いてin vitroでグリコシル化されている。対照グリコペプチドは、同じ糖型を有するMUC2 33merペプチド(PTTTPITTTTTVTPTPTPTGTQTPTTTPISTTC)を含む。ネズミモノクローナル抗−MUC1抗体、5E10、5E5、及び1B9は、実施例2に開示している。ネズミモノクローナル抗体Tn(3E1、5F4)、T(3F1、TKH2)、及びT(HH8、3C9)は、過去に開示されているように製造した(Kjeldsen et al.1989;Kjeldsen et al.1998;Hirohashiet al.1985;Clausen et al.1988)。モノサッカリドであるGalNAc、GlcNAc、Gal、Glc、及びNeuAcはSigmaから購入した。GalNAcα−アガロース(GlycoSorb−1)はGlycoRexから購入した。OSM及びアシアロ−OSMは、過去に開示されているように製造した(Reis et al.1998b;Reis et al.1998a)。BSMはSigmaから購入し、アシアロ−BSMはノイラミニダーゼ処理によって過去に開示されているように調製した(Reis et al.1998b;Reis et al.1998a)。Tn(GalNAcα1−)、STn(NeuAcα2−6GalNAcα1−)、及びT(Galβ1−3GalNAcα1−)多価PAA接合体はGlycoTechから購入した。
【0109】
ELISAアッセイ
酵素免疫吸着測定法(ELISA)は、Nunc−Immuno MaxiSorp F96プレート(Nunc,Roskide,Denmark)を用いて実施した。ペプチド及びグリコペプチドは、1、0.2、及び0.05μg/mlの濃度で1時間37℃又は一晩4℃で炭酸−重炭酸干渉液(pH9.6)中でコーティングする。プレートはSuperBlock Blocking Buffer(Pierce,Rockford,IL)で1時間室温においてブロッキングする。その後、プレートを、モノクローナル抗−MUC1抗体 5E5、1B9、及び5E10並びに抗糖抗体3E1、5F4、3F1、TKH2、HH8、及び3C9(非希釈の培養上清から出発する)の希釈物で2時間室温においてインキュベートする。その後の阻害実験では、固定した(グリコ)ペプチド及びモノクローナル抗体の濃度を使用し、コーティングしたELISAプレートに移す前に、モノクローナル抗体の適当な希釈物を連続的に希釈したインヒビターである糖及び糖接合体(0.5Mモノサッカリド、10μg/ml (グリコ)ペプチド、100μg/mlPAA接合物、及び10μgのムチンから出発する)と事前に30分室温でインキュベートする。結合した抗体は、HRP−接合ポリクローナルウサギ抗−マウスイムノグロブリン(Dako,Glostrup,Denmark)で検出される。プレートは、TMB+ 1段階基質システム(Dako,Glostrup,Denmark)で発色させ、1N HSOで反応を停止させ、450nmで読取る。
【0110】
結果
抗体の終点力価の測定
最初のELISAアッセイを実施して、更なる阻害アッセイのための抗体の適当な希釈並びにペプチド及びグリコペプチドの適当なコーティング濃度を規定する。各抗体のために、適当な抗原及び抗体希釈物を終点力価の評価によって決定し、約1のOD450読み取りを生じる条件を更なる試験に使用する。
【0111】
Tn、Stn、及びTグリコシル化を有するグリコペプチドに結合する抗体の阻害
糖ハプテンに対する抗体 − グリコペプチドのペプチド主鎖にかかわらずTn、STn、及びTに対する抗体は、各々の糖型を有するMUC1及びMUC2の双方のグリコペプチドと反応する。
【0112】
かくして、抗Tn抗体1E3及び5F4は、Tn−グリコペプチドとのみ反応し、抗STn抗体TKH2及び3F1はSTn−グリコペプチドとのみ反応するが、抗T抗体はT−グリコペプチドと反応する。阻害ELISAアッセイは、各々のグリコペプチドに対する結合が、対応するグリコペプチド、ムチン類(アシアロ−OSMを有するTn抗体、OSMを有するSTn抗体、及びアシアロ−BSMを有するT抗体)、PAA接合物、並びに高濃度のモノサッカリド(GalNAcを有するTn抗体、NeuAcを有するSTn抗体、及びGalを有するT抗体)によって阻害され得ることを更に示す。さらに、GlycoSorb−1 Tn吸着体はTn抗体を阻害し得る。
【0113】
MUC1に対する抗体
MUC1ペプチドに対する抗体(5E10)は、全てのMUC1ペプチド及びグリコペプチドによって阻害されるが、MUC2ペプチド及びグリコペプチド並びに全ての他のグリカン及び糖接合体は阻害し得ない。これとはまさに対照的に、MUC1 Tn/STn糖型特異的な抗体5E5及び2D9は、Tn−MUC1グリコペプチドによってのみ阻害され、より低い程度において、STn−MUC1グリコペプチドによって阻害される。同様に、MUC1T糖型特異的抗体1B9は、T−MUC1グリコペプチドによって阻害されるのみである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GSTAモチーフを含む免疫原性グリコペプチドで動物を免疫する工程を含む、MUC1に対する癌特異的な免疫反応を誘導する方法であって、前記GSTAモチーフが、GSTAモチーフの少なくともT残基又はS残基でO−グリコシル化されている、方法。
【請求項2】
前記MUC1に対する免疫反応が、先天性免疫、液性免疫、細胞性免疫、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記MUC1が、癌細胞で異常にグリコシル化及び発現されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記O−グリコシル化が、STnグリカン及びTnグリカンからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記S残基及びT残基の双方がO−グリコシル化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記O−グリコシル化が、STnグリカン又はTnグリカンのいずれかである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記GSTAモチーフが20アミノ酸残基のタンデムリピートに存在し、前記タンデムリピートが5つの潜在的なO−グリコシル化部位を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記5つの潜在的なO−グリコシル化部位のうちの少なくとも3つの部位が、グリコシル化されて、Tn又はSTnのいずれかを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記5つの潜在的なO−グリコシル化部位の全てが、Tn又はSTnのいずれかを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記タンデムリピートの配列が、
a) VTSAPDTRPAPGSTAPPAHG (配列番号1)
b) 配列番号1に対して少なくとも75%の類似性を有する配列番号1の天然バリアント
c) 1つ又は複数の保存的置換によって調製され、且つ、配列番号1に対して少なくとも75%の類似性を有する、配列番号1の人工バリアント
d) 1から3のアミノ酸が欠失した配列番号1の切断型断片
からなる群から選択される、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記グリコシル化のパターンが、
・VTTnSAPDTRPAPGSTTnAPPAHG
・VTTnSAPDTRPAPGSTnTTnAPPAHG
・VTTnSAPDTTnRPAPGSTnTTnAPPAHG
・VTTnSTnAPDTRPAPGSTnTTnAPPAHG
・VTTnSTnAPDTTnRPAPGSTnTTnAPPAHG
・VTSTnSAPDTRPAPGSTSTnAPPAHG
・VTSTnSAPDTRPAPGSSTnTSTnAPPAHG
・VTSTnSAPDTSTnRPAPGSSTnTSTnAPPAHG
・VTSTnSSTnAPDTRPAPGSSTnTSTnAPPAHG
・VTSTnSSTnAPDTSTnRPAPGSSTnTSTnAPPAHG

からなる群から選択される、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫原性グリコペプチドが、1を超えるタンデムリピートを含み、例えば、2を超えるタンデムリピートを含み、例えば、3を超えるタンデムリピートを含み、例えば、4を超えるタンデムリピートを含み、例えば、5を超えるタンデムリピートを含み、例えば、6を超えるタンデムリピートを含み、例えば、7を超えるタンデムリピートを含み、例えば、8を超えるタンデムリピートを含み、例えば、9を超えるタンデムリピートを含み、並びに、例えば、10を超えるタンデムリピートを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫原性グリコペプチドが、ヒト血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、チログロブリン、オブアルブミン、インフルエンザヘマグルチニン、PADREポリペプチド、マラリアスポロゾイト周囲(CS)タンパク質、B型肝炎表面抗原(HBSAgI9−2s)、ヒートショックプロテイン(HSP)65、ヒト結核菌、コレラ毒素、毒性を低減させたコレラ毒素変異体、ジフテリア毒素、ジフテリア毒素と交差反応するCRM197タンパク質、組換え連鎖球菌C5aペプチダーゼ、化膿連鎖球菌ORF1224、化膿連鎖球菌ORF1664、化膿連鎖球菌ORF2452、肺炎クラミジアORF T367、肺炎クラミジアORF T858、破傷風トキソイド、又はHIVgp120T1からなる群から選択される適切な担体に結合している、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に規定の免疫原性グリコペプチドを含む医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物が、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、若しくは肺癌の治療又は予防のための癌ワクチンである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、癌を治療又は予防する方法。
【請求項17】
請求項1から13のいずれか一項に規定の免疫原性グリコペプチドに結合する抗体の調製のための方法。
【請求項18】
請求項1から13のいずれか一項に規定の免疫原性グリコペプチドで適切な哺乳動物を免疫し、
前記哺乳動物の抗体産生細胞を連続細胞株の細胞と融合させ、
前記融合において得られたハイブリドーマ細胞をクローン化し、及び
所望の抗体を分泌する細胞クローンを選択すること
を特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に規定の免疫原性グリコペプチドに特異的なモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞の調製のための方法。
【請求項19】
請求項18に規定のハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体、並びに
請求項1から12のいずれか一項に規定の免疫原性グリコペプチドに対する分子ディスプレイ技術によって調製されるモノクローナル抗体
からなる群から選択される、モノクローナル抗体。
【請求項20】
前記抗体が癌細胞上のMUC1に結合するが、非悪性細胞上のMUC1には結合しない、請求項19に記載のモノクローナル抗体。
【請求項21】
前記抗体がO−グリコシル化されたGSTAモチーフに結合する、請求項19又は20に記載のモノクローナル抗体。
【請求項22】
ヒト化されているか又は完全なヒトの請求項19から21のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項23】
STHM1 06092102の受入番号で2006年9月19日にEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)に寄託したハイブリドーマによって分泌される、請求項19から21のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、5E5。
【請求項24】
STHM2 06092101の受入番号で2006年9月19日にEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)に寄託したハイブリドーマによって分泌される、請求項19から21のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、2D9。
【請求項25】
医薬として使用するための請求項19から24のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体。
【請求項26】
前記医薬が癌の治療又は予防のために使用される、請求項25に記載のモノクローナル抗体。
【請求項27】
癌の治療又は予防のための医薬の調製のための、請求項19から24のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体の使用。
【請求項28】
診断、モニタリング、又はイメージングのための、請求項19から24のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体の使用。
【請求項29】
請求項19から24のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体を含む医薬組成物。
【請求項30】
a)個体からのサンプルを準備する工程
b)請求項19から24のいずれか一項に記載の抗体を前記サンプルと接触させる工程
c)前記サンプルと相互作用しない抗体を除去する工程
d)前記サンプルと相互作用する抗体から、前記個体が癌を有するか又は癌を発症するリスクがあるか否かを決定する工程
を含む、個体が癌を有するか又は癌を発症するリスクがあるか否かを決定する方法。
【請求項31】
(a)腫瘍患者からの自己抗原提示細胞(APC)を準備する工程
(b)前記腫瘍患者由来の自己APCを、有効量の請求項1から13のいずれか一項に規定の免疫原性グリコペプチドと接触させる工程であって、前記接触が、エンドサイトーシス、プロセシング、及び前記APCによる前記ペプチド又は融合分子の断片のMHCクラスII提示を可能にする条件下で実施される、工程
(c)患者における免疫治療用途のために前記ペプチド又は融合分子断片提示APCを単離する工程
を含む、MUC1に対する効果的な免疫反応を誘導することが可能である、自己APCの集団を産生させるex vivo方法。
【請求項32】
a)ヒト抗体を含むサンプルを準備する工程
b)ペプチドインヒビター及びO−グリカン糖インヒビターと前記サンプルとを接触させる工程
c)工程b)のサンプルを請求項1から13のいずれか一項に規定のグリコペプチドとさらに接触させる工程
d)前記グリコペプチドサンプルと相互作用する抗体の量を定量する工程
を含む、請求項1から13のいずれか一項に規定のグリコペプチドに結合する抗体の存在を測定する方法。
【請求項33】
前記ペプチドインヒビター及び/又はO−グリカン糖インヒビターと相互作用する抗体を除去する工程をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ペプチドインヒビター及びO−グリカン糖インヒビターが固体担体に固定化され、前記ペプチドインヒビター及び/又はO−グリカン糖インヒビターと相互作用する抗体を除去するために使用される、請求項32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗体が、前記グリコペプチドのO−グリコシル化GSTAモチーフに結合する、請求項32から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記サンプルが、癌を有する疑いがある個体から提供され、
前記グリコペプチドと相互作用する抗体の測定量を、対照群から決定された標準量と比較し、
前記標準量を超える抗体の測定量が、個体における癌の指標であり、
前記標準量未満の抗体の測定量が、癌を有しない個体の指標である、
請求項32から35のいずれか一項に記載の方法。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−505775(P2010−505775A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530756(P2009−530756)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際出願番号】PCT/DK2007/050139
【国際公開番号】WO2008/040362
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(509096072)クーベンハヴンス・ユニヴェルシテット (1)
【出願人】(598176569)キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド (57)
【氏名又は名称原語表記】CANCER RESEARCH TECHNOLOGY LIMITED
【Fターム(参考)】