説明

N−アシルアミノトリオールの製造法

【課題】アミノトリオールを選択的にN−アシル化し、工業的に有利な手法にて、効率良くN−アシル化アミノトリオールを製造する方法の提供。
【解決手段】式(2)で表されるアミノトリオールと式(3)で表される脂肪酸エステルを、エタノール及び/又はメタノール中、塩基性触媒の存在下に反応させる式(1)で表されるN−アシルアミノトリオールの製造法。


〔R1は炭素数8〜20の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基、R2は水酸基を有していてもよい炭素数7〜29の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基を示し、R3は炭素数1〜6のアルキル基を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノトリオールからN−アシルアミノトリオールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N−アシルアミノトリオール骨格を有する代表的な成分であるセラミドは、皮膚の角質層に存在し、水分保持に必要な脂質バリアを構築し、水分を維持していくために重要な役割を果たしている。近年、セラミドやそれと同様の機能を有するセラミド機能物質を化粧品等に配合し、外部から水分保持機能を付与することが行われている。
【0003】
アミド化合物の製造は、一般的に、アミン化合物を塩基性触媒の存在下に、酸無水物、酸ハロゲン化物、脂肪酸エステル、脂肪酸などを用いてN−アシル化することにより行われる。しかしながら、分子内にアルコール性水酸基を複数有するアミノアルコールのアシル化は、水酸基のアシル化による過アシル化体が副次的に生成され易く、より選択的なN−アシル化方法が求められる。
【0004】
斯かる観点から、1)アミノアルコールを特定の混合酸無水物を用いてN−アシル化する方法(特許文献1)、2)アミノアルコールを含水有機溶媒中、酸ハロゲン化物を用いてN−アシル化する方法(特許文献2)が報告されている。
【0005】
1)の方法では副生成物が多い等の問題があり、2)の方法では、酸ハロゲン化物の反応性が非常に高く、水分と反応して有害な塩化水素等を発生するなど取り扱いに注意が必要であり装置への負荷も高いこと、反応のpH制御システムが必要であること等の問題がある。
【0006】
また、脂肪酸エステルと塩基を用いたアミノアルコールのN−アシル化反応としては、3)水酸化カリウム等の塩基触媒の存在下、溶媒を使用すること無く、生成する低級アルコールを留去しつつ反応させる方法(特許文献3)、4)アミノジオールと脂肪酸エステルを炭素数3〜8のアルコール中で、生成する低級アルコールを留去しつつ反応させる方法(特許文献4)が報告されている。
しかしながら、3)の方法は、例えばセラミド3(N−アシル化フィトスフィンゴシン)のように融点が高い化合物の製造には適さず過アシル化体が副生され易いという問題がある。また、4)の方法は、アミノジオールを原料とする方法であり、アミノトリオールのN−アシル化に関しては記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平7−505163号公報
【特許文献2】特表2002−514654号公報
【特許文献3】特開昭63−216852号公報
【特許文献4】特許第4101320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、アミノトリオールを選択的にN−アシル化し、工業的に有利な手法にて、効率良くN−アシル化アミノトリオールを製造する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、簡易且つ効率の良い、アミノトリオールの選択的なN−アシル化について検討したところ、アミノトリオールと脂肪酸エステルを塩基性触媒の存在下、エタノール及び/又はメタノール中で反応させるという方法により、煩雑な操作を必要とせず、且つ高収率、高純度でN−アシルアミノトリオールを製造できることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は以下の1)〜5)に係るものである。
1)下記式(2):
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、R1は炭素数8〜20の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基を示す。〕
で表されるアミノトリオールと下記式(3):
【0013】
【化2】

【0014】
〔式中、R2は水酸基を有していてもよい炭素数7〜27の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基を示し、R3は炭素数1〜6のアルキル基を示す。〕
で表される脂肪酸エステルを、エタノール及び/又はメタノール中、塩基性触媒の存在下に反応させることを特徴とする下記式(1):
【0015】
【化3】

【0016】
〔式中、R1及びR2は前記と同一のものを示す。〕
で表されるN−アシルアミノトリオールの製造法。
2)20〜79℃で、反応を行う、上記1)の方法。
3)目的物を析出させながら反応を行なう、上記1)又は2)の方法
4)R3がメチル基、エチル基である上記1)〜3)の方法。
5)塩基性触媒が、金属エチラート又はメチラートである上記1)〜4)の方法。
6)R1がテトラデシル基である上記1)〜5)の方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造法は、1)用いる試薬が安全で取り扱いが容易で、穏和な条件で反応が進行する、2)過アシル化体等の生成が殆どない、3)精製がろ過だけでよく、再結晶等の更なる精製を必要としない、4)系内に目的物が析出した懸濁系でも反応が進行する、という効果を有する。すなわち、本発明の方法によれば、セラミド3に代表されるN−アシルアミノトリオールを工業的有利に製造可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のN−アシルアミノトリオール製造法は、下記反応式で示されるように、アミノトリオール(2)と脂肪酸エステル(3)を、塩基性触媒の存在下、エタノール及び/又はメタノール中で反応させ、N−アシルアミノトリオール(1)を製造するものである。
【0019】
【化4】

【0020】
〔式中、R1は炭素数8〜20の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基を示し、R2は水酸基を有していてもよい炭素数7〜27の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基を示し、R3は炭素数1〜6のアルキル基を示す。〕
【0021】
式(1)及び(2)におけるR1の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基としては、直鎖又は分岐の何れでもよいが、炭素数10〜18の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基が好ましい。また、不飽和の脂肪族炭化水素基としてはアルケニル基が好ましく、二重結合を1〜2個有するアルケニル基がより好ましい。
【0022】
1としてより好適には、炭素数10〜18の直鎖のアルキル基が挙げられ、例えば、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基が挙げられ、テトラデシル基がより好ましい。
【0023】
式(1)におけるR2の水酸基を有していてもよい炭素数7〜27の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基としては、直鎖又は分岐の何れでもよいが、炭素数9〜23の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基が好ましい。また、不飽和の脂肪族炭化水素基としてはアルケニル基が好ましく、二重結合を1〜2個有するアルケニル基がより好ましい。飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基の水素原子と置換し得る水酸基としては、1〜2個が好ましい。
【0024】
2としてより好適には、炭素数9〜23の直鎖の水酸基を1個有していてもよいアルキル基が挙げられ、例えばノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、11−ヒドロキシ−ペプタデシル基、1−ヒドロキシ−ウンデシル基、1−ヒドロキシ−トリデシル基、1−ヒドロキシ−ペンタデシル基、1−ヒドロキシ−ヘプタデシル基、cis−8−ヘプタデセニル基、cis,cis−8,11−ヘプタデカンジエニル基等が挙げられ、ウンデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、ヘンイコシル基、11−ヒドロキシ−ペプタデシル基、1−ヒドロキシ−ペンタデシル基がより好ましい。
【0025】
式(3)におけるR3の炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖又は分岐の何れでもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等が挙げられ、このうち炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基がより好ましい。
【0026】
式(3)で示される脂肪酸エステルの好適な具体例としては、例えば、ノナン酸メチル、ノナン酸エチル、デカン酸メチル、デカン酸エチル、ウンデカン酸メチル、ウンデカン酸エチル、ドデカン酸メチル、ドデカン酸エチル、ドデカン酸イソプロピル、トリデカン酸メチル、トリデカン酸エチル、テトラデカン酸メチル、テトラデカン酸エチル、ペンタデカン酸メチル、ペンタデカン酸エチル、ヘキサデカン酸メチル、ヘキサデカン酸エチル、ヘキサデカン酸イソプロピル、ヘプタデカン酸メチル、ヘプタデカン酸エチル、オクタデカン酸メチル、オクタデカン酸エチル、オクタデカン酸イソプロピル、ノナデカン酸メチル、ノナデカン酸エチル、エイコサン酸メチル、エイコサン酸エチル、ドコサン酸メチル、ドコサン酸エチル、cis−9−ヘキサデセン酸メチル、cis−9−ヘキサデセン酸エチル、cis−9−オクタデセン酸メチル、cis−9−オクタデセン酸エチル、cis,cis−9,12−オクタデカジエン酸メチル、cis,cis−9,12−オクタデカジエン酸エチル、2−ヒドロキシドデカン酸メチル、2−ヒドロキシドデカン酸エチル、2−ヒドロキシテトラデカン酸メチル、2−ヒドロキシテトラデカン酸エチル、2−ヒドロキシヘキサデカン酸メチル、2−ヒドロキシヘキサデカン酸エチル、2−ヒドロキシヘキサデカン酸イソプロピル、12−ヒドロキシオクタデカン酸メチル、12−ヒドロキシオクタデカン酸エチル、12−ヒドロキシオクタデカン酸イソプロピル、等が挙げられる。
【0027】
尚、上記式(1)〜(3)で示される化合物は、其々単一化合物である他、R1及び/又はR2の複数種が混在する混合物であってもよい。
【0028】
本発明の方法において、出発原料として使用されるアミノトリオール(2)は、例えば、Liebigs Annalen (1995), (5), 755、Tetrahedron Letters (2003), 44(28), 5281に記載された方法に準じて合成することができる。すなわち、糖質の構造を利用するなどによって、合成することができる。また、国際公開第1995/012683号パンフレット、米国特許第5958742号明細書に記載の微生物菌株を用いた発酵法により製造することもできる。
【0029】
本発明におけるアシル化反応は、反応溶媒としてエタノール及び/又はメタノールが用いられるが、化粧品原料としての使用を考慮した場合、安全性の点からエタノールを用いるのが好ましい。また、エタノール及びメタノールは、それぞれ単独で使用することができるが、適宜組み合わせて使用することもできる。
【0030】
斯かるアルコール溶媒の使用量は、目的物であるN−アシルアミノトリオール、原料のアミノトリオール(2)、脂肪酸エステル(3)の溶解性や反応性等を考慮して適宜調節すればよいが、目的物であるN−アシルアミノトリオール(1)の理論収量に対して2〜15倍量(重量)とするのが好ましく、5〜10倍量とするのがより好ましい。
【0031】
本反応において用いられる塩基としては、特に限定はされず、ナトリウム、カリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムiso−プロポキシド、ナトリウムn-プロポキシド、ナトリウムn-ブトキシド、ナトリウムiso−ブトキシド、カリウムiso−プロポキシド、カリウムn-ブトキシド、カリウムiso−ブトキシド、カリウムt-ブトキシド等の金属アルコラート、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属ハライド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウム(トリメチルシリル)アミド等の有機金属塩基が使用できるが、金属アルコラートを使用するのが好ましく、金属エチラート又はメチラートを使用するのがより好ましく、ナトリウムエトキシド又はナトリウムメトキシドを使用するのが特に好ましい。尚、反応溶媒がエタノールの場合は金属エチラート、メタノールの場合は金属メチラートを使用するのが好ましく、粉末品、溶液品のいずれを用いてもよい。
斯かる塩基の使用量は、用いる塩基の種類によっても異なるが、通常触媒量でよい。すなわち、アミノトリオール(2)に対して、0.001〜0.5モル、好ましくは0.01〜0.3モル量程度使用される。例えば、ナトリウムアルコキシド等の金属アルコラートを用いた場合、0.05〜0.2モル量程度使用すれば足りる。
【0032】
脂肪酸エステル(3)の使用量は、アミノトリオール(2)1モルに対して、通常1〜3モルであればよく、1.1〜2.0モルが好ましい。
【0033】
斯かるアミノトリオール(2)、脂肪酸エステル(3)、及び塩基の反応系への投入順序等は特に制限はないが、例えば、アミノトリオール(2)と脂肪酸エステル(3)をアルコール溶媒に予め溶解させた後、塩基を添加するのが好ましい。
【0034】
反応は、20℃〜79℃、このましくは40℃〜70℃で行うことができ、反応時間は6〜48時間、好ましくは12〜36時間である。
また、反応を低温で行なうなどして、目的物であるN−アシルアミノトリオール(1)が析出し、反応系内が懸濁系(不均一系)となる場合でも、反応系が均一系となる場合と比較して、低温であるにも関わらず反応は良好に進行する(実施例参照)。さらに、過アシル体生成の懸念も低減でき、装置への負荷も小さくて済む。
【0035】
本反応は、必要であればアルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気下で反応させることができる。本発明において、脂肪酸エステル(3)として、メチルエステル或いはエチルエステルを用い、また塩基として金属エチラート又はメチラートを用いた場合には、アシル化反応の際に生成する副生成物は、溶媒と同じエタノール又はメタノールであることから、これらを反応系外に留去する必要はない。したがって、本発明においては、斯かる副生成物を反応系外に出すために、反応を減圧下で或いは不活性ガスを導入することにより行う必要はない。
【0036】
尚、本発明において、目的物であるNアシルアミノトリオール(1)の単離は、必要に応じて溶媒を加え、必要に応じて反応溶液を冷却し、ろ過、洗浄、乾燥を行なえばよい。上述したように副生成物が殆ど生成しないことから、有機合成化学で常用される再結晶や各種クロマトグラフィー等による精製を必要とすることなく、高純度品が取得可能である。
以下に実施例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0037】
以下の実施例において、各種データは、以下の分析機器又は条件にて測定した。
1)融点:融点測定器 535 (ビュッヒ社製)
2)赤外吸収スペクトル:SPECTRUM ONE(B) (PERKIN ELMER社製)
3)核磁器共鳴スペクトル:Avace500 (BRUKER社製)
4)純度算出:TLCバンド強度をLane & spot analyzer 6.0(アトー社製)で解析。
【0038】
実施例1 N-ドコサノイル-フィトスフィンゴシンの合成
ベヘン酸メチル(シグマアルドリッチ社製) 1.68g、フィトスフィンゴシン(Cosmoferm社製) 1.00g エタノール(関東化学社製)16mlを30mlナスフラスコに加え、55℃の湯浴にて15分間攪拌した。反応系中が均一になったのを確認した後、21%ナトリウムエトキシド-エタノール溶液(シグマアルドリッチ社製) 124μl を加えた。2時間後に析出物を確認し、一昼夜攪拌し続けた。30℃まで冷却した後、沈殿物をろ過、洗浄し、白色固体のN-ドコサノイル-フィトスフィンゴシン 1.90gを収率94.1%(純度>98%)で得た。
【0039】
融点120-122℃
IR (ATR, cm-1) 3326, 2913, 2849, 1613, 1556, 1467, 1075, 720
MS(positive):[M+H]+=640.8, [M+Na]+=662.7
1H-NMR (重ピリジン, 500MHz, δ) 0.85(3H, t, J =7.1Hz), 0.85(3H, t, J =7.1H), 1.16-1.48(58H, br), 1.69(1H, m), 1.82(2H, m), 1.94(2H, m), 2.24(1H, m), 2.45(2H, t, J =7.4Hz), 4.29(1H, m), 4.40(1H, ddd, J =6.2, 6.2, 5.2Hz), 4.49(2H, m), 5.10(1H, m), 6.19(1H, d, J =6.9Hz), 6.53(1H, d, J =6.9Hz), 6.62(1H, t, J =5.0Hz), 8.51(1H, d, J =8.3Hz)
【0040】
実施例2 N-オクタデカノイル-フィトスフィンゴシンの合成
ステアリン酸エチル(関東化学社製) 1.47g、フィトスフィンゴシン1.00g 、エタノール13.2mlを30mlナスフラスコに加え、55℃の湯浴にて15分間攪拌した。反応系中が均一になったのを確認した後、21%ナトリウムエトキシド-エタノール溶液 123μlを加えた。2時間後に析出物を確認し、一昼夜攪拌し続けた。30℃まで冷却した後、沈殿物をろ過、洗浄し、白色固体のN-オクタデカノイル-フィトスフィンゴシン 1.61gを収率87.5%(純度>98%)で得た。
【0041】
融点125-126℃
IR (ATR, cm-1) 3338, 2954, 2915, 2950, 1611, 1541, 1472, 1075, 716
MS(positive):[M+H] +=584.6, [M+Na]+=606.5
1H-NMR (重ピリジン, 500MHz, δ) 0.85(3H, t, J =6.9Hz), 0.85(3H, t, J =6.9Hz), 1.16-1.49(50H, br), 1.69(1H, m), 1.82(2H, m), 1.94(2H, m), 2.24(1H, m), 2.45(2H, t, J =7.5Hz), 4.29(1H, m), 4.40(1H, ddd, J =5.9, 5.9, 5.5Hz), 4.49(2H, m), 5.10(1H, m), 6.19(1H, d, J =6.8Hz), 6.53(1H, d, J =6.6Hz), 6.62(1H, t, J =5.0Hz), 8.51(1H, d, J =8.3Hz)
【0042】
実施例3 N-オクタデカノイル-フィトスフィンゴシンの合成
ステアリン酸エチル(関東化学社製) 1.47g、フィトスフィンゴシン1.00g 、エタノール13.2mlを30mlナスフラスコに加え、75℃の湯浴にて15分間攪拌した。反応系中が均一になったのを確認した後、21%ナトリウムエトキシド-エタノール溶液 123μlを加え、一昼夜攪拌し続けた。30℃まで冷却した後、沈殿物をろ過、洗浄し、白色固体のN-オクタデカノイル-フィトスフィンゴシン 1.57gを収率86.3%(純度>98%)で得た。
【0043】
融点125-126℃
IR (ATR, cm-1) 3338, 2954, 2915, 2950, 1611, 1541, 1472, 1075, 716
MS(positive):[M+H]+=584.6, [M+Na]+=606.5
1H-NMR (重ピリジン, 500MHz, δ) 0.85(3H, t, J =6.9Hz), 0.85(3H, t, J =6.9Hz), 1.16-1.49(50H, br), 1.69(1H, m), 1.82(2H, m), 1.94(2H, m), 2.24(1H, m), 2.45(2H, t, J =7.5Hz), 4.29(1H, m), 4.40(1H, ddd, J =5.9, 5.9, 5.5Hz), 4.49(2H, m), 5.10(1H, m), 6.19(1H, d, J =6.8Hz), 6.53(1H, d, J =6.6Hz), 6.62(1H, t, J =5.0Hz), 8.51(1H, d, J =8.3Hz)
【0044】
実施例4 N-ヘキサデカノイル-フィトスフィンゴシンの合成
パルミチン酸メチル(関東化学社製) 1.11g、フィトスフィンゴシン1.00g 、メタノール(関東化学社製)14mlを30mlナスフラスコに加え、55℃の湯浴にて15分間攪拌した。反応系中が均一になったのを確認した後、1mol/llナトリウムメトキシド-メタノール溶液(関東化学社製)315μlを加えた。2時間後に析出物を確認し、一昼夜攪拌し続けた。30℃まで冷却した後、沈殿物をろ過、洗浄し、白色固体のN-ヘキサデカノイル-フィトスフィンゴシン 1.55gを収率88.6%(純度>98%)で得た。
【0045】
融点114-117℃
IR (ATR, cm-1) 3336, 2917, 2849, 1611, 1542, 1468, 1076, 717
MS(positive):[M+H]+=556.7, [M+Na]+=584.7
1H-NMR (重ピリジン, 500MHz, δ) 0.85(3H, t, J =7.0Hz), 0.85(3H, t, J =7.0Hz), 1.16-1.49(46H, br), 1.69(1H, m), 1.82(2H, m), 1.94(2H, m), 2.24(1H, m), 2.45(2H, t, J =7.6Hz), 4.29(1H, m), 4.40(1H, ddd, J =5.9, 5.9, 5.5Hz), 4.49(2H, m), 5.10(1H, m), 6.19(1H, d, J =6.7Hz), 6.53(1H, d, J =6.2Hz), 6.62(1H, t, J =5.4Hz), 8.52(1H, d, J =8.5Hz)
【0046】
実施例5 N-ヘキサデカノイル-フィトスフィンゴシンの合成
パルミチン酸イソプロピル(和光純薬社製) 1.41g、フィトスフィンゴシン1.00g 、エタノール14mlを30mlナスフラスコに加え、55℃の湯浴にて15分間攪拌した。反応系中が均一になったのを確認した後、水酸化カリウム(関東化学社製)17.7mgを加えた。2時間後に析出物を確認し、一昼夜攪拌し続けた。30℃まで冷却した後、沈殿物をろ過、洗浄し、白色固体のN-ヘキサデカノイル-フィトスフィンゴシン 1.45gを収率82.9%(純度95%)で得た。
【0047】
融点114-117℃
IR (ATR, cm-1) 3336, 2917, 2849, 1611, 1542, 1468, 1076, 717
MS(positive):[M+H]+ =556.7, [M+Na]+=584.7
1H-NMR (重ピリジン, 500MHz, δ) 0.85(3H, t, J =7.0Hz), 0.85(3H, t, J =7.0Hz), 1.16-1.49(46H, br), 1.69(1H, m), 1.82(2H, m), 1.94(2H, m), 2.24(1H, m), 2.45(2H, t, J =7.6Hz), 4.29(1H, m), 4.40(1H, ddd, J =5.9, 5.9, 5.5Hz), 4.49(2H, m), 5.10(1H, m), 6.19(1H, d, J =6.7Hz), 6.53(1H, d, J =6.2Hz), 6.62(1H, t, J =5.4Hz), 8.52(1H, d, J =8.5Hz)
【0048】
実施例6 N-ドデカノイル-フィトスフィンゴシンの合成
ドデカン酸メチル(和光純薬社製)1.31g、フィトスフィンゴシン1.50g、エタノール16mlを30mlナスフラスコに加え、75℃の湯浴にて15分間攪拌した。反応系中が均一になったのを確認した後、21%ナトリウムエトキシド-エタノール溶液 123μlを加え、一昼夜攪拌し続けた。室温まで冷却した後、沈殿物をろ過、洗浄し、白色固体のN-オクタデカノイル-フィトスフィンゴシン 1.96gを収率83.5%(純度>98%)で得た。
【0049】
融点112-114℃
IR (ATR, cm-1) 3325, 2917, 2850, 1612, 1556, 1467, 1076, 721
MS(positive):[M+H]+=500.9, [M+Na]+=522.6
1H-NMR (重ピリジン, 500MHz, δ) 0.85(3H, t, J =7.0Hz), 0.85(3H, t, J =7.0Hz), 1.16-1.49(46H, br), 1.69(1H, m), 1.82(2H, m), 1.94(2H, m), 2.24(1H, m), 2.45(2H, t, J =7.4Hz), 4.29(1H, m), 4.40(1H, ddd, J =5.6, 5.6, 5.5Hz), 4.49(2H, m), 5.10(1H, m), 6.19(1H, d, J =6.6Hz), 6.53(1H, d, J =6.2Hz), 6.62(1H, t, J =5.2Hz), 8.52(1H, d, J =8.5Hz)
【0050】
実施例7 N-(12-ヒドロキシオクタデカノイル)-フィトスフィンゴシンの合成
12-ヒドロキシオクタデカン酸メチル(シグマアルドリッチ社製)1.39g、フィトスフィンゴシン1.00g、メタノール13.2mlを30mlナスフラスコに加え、55℃の湯浴にて15分間攪拌した。反応系中が均一になったのを確認した後、1mol/lナトリウムメトキシド-メタノール溶液315μlを加えた。3時間後に沈殿を確認し、一昼夜攪拌し続けた。30℃まで冷却した後、沈殿物をろ過、洗浄し、ジアステレオ混合物として白色固体のN-(12-ヒドロキシオクタデカノイル)-フィトスフィンゴシン 1.68gを収率89.2%(純度96%)で得た。
【0051】
融点137-139℃
IR (ATR, cm-1) 3359, 2917, 2850, 1618, 1553, 1469, 1076, 1041, 722
MS(positive):[M+H]+=600.7, [M+Na]+=622.6
【0052】
実施例8 N-(2ヒドロキシヘキサデカノイル)-フィトスフィンゴシンの合成
2-ヒドロキシパルミチン酸メチル(TCI社製)1.26g、フィトスフィンゴシン1.00g、メタノール13.2mlを30mlナスフラスコに加え、55℃の湯浴にて15分間攪拌した。反応系中が均一になったのを確認した後、1mol/lナトリウムメトキシド-メタノール溶液315μlを加え、一昼夜攪拌し続けた。室温まで冷却した後、沈殿物をろ過、洗浄し、ジアステレオ混合物として白色固体のN-(2-ヒドロキシオクタデカノイル)-フィトスフィンゴシン 1.60gを収率88.8%(純度98%)で得た。
【0053】
融点124-129℃
IR (ATR, cm-1) 3306, 2917, 2849, 1632, 1620, 1537, 1467, 1072, 720
MS(positive):[M+H]+=572.7, [M+Na]+=594.7
【0054】
比較例1 N-オクタデカノイル-フィトスフィンゴシンの合成
特開昭63−216852号公報(前記特許文献3)に記載の方法に従い、下記のとおりN-オクタデカノイル-フィトスフィンゴシンを合成した。
フィトスフィンゴシン5.00g を100ml2口ナスフラスコにいれ、窒素雰囲気下、攪拌しながら加熱融解した。完全に融解するまでに、145℃まで加熱する必要があった。水酸化カリウム88mgを加え、10kpaにて減圧攪拌したところ、析出物が生成し、攪拌が止まったため、さらに155℃まで加熱して融解させた。ステアリン酸メチル(関東化学社製) 4.98gを滴下ロートを用いて滴下し、10kpaにて1.5時間減圧攪拌した。TLC上では煩雑な生成物が確認された。アセトン、エタノールで2回晶析をしたが、目的物を高純度で得ることはできなかった。収量4.01g、収率43.7%(純度67%)
【0055】
比較例2 N-オクタデカノイル-フィトスフィンゴシンの合成
特許第4101320号公報(前記特許文献4)に記載の方法に従い、下記のとおりN-オクタデカノイル-フィトスフィンゴシンを合成した。
フィトスフィンゴシン1.59g、水酸化カリウム50mg 、ブタノール(関東化学社製)15mlを100ml2口ナスフラスコにいれ、90℃にて30分攪拌した。窒素を導入しながら、ステアリン酸メチル2.24gのブタノール5ml溶液を滴下ロートを用いて滴下し、90℃で2時間攪拌した。TLC上で原料が残存していたが、目的物以外の生成物も確認された。-10℃まで冷却し、沈殿物をろ過、洗浄したが、目的物を高純度で得ることはできなかった。収量2.00g、収率68.5%(純度80%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2):
【化1】

〔式中、R1は炭素数8〜20の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基を示す。〕
で表されるアミノトリオールと下記式(3):
【化2】

〔式中、R2は水酸基を有していてもよい炭素数7〜27の飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基を示し、R3は炭素数1〜6のアルキル基を示す。〕
で表される脂肪酸エステルを、エタノール及び/又はメタノール中、塩基性触媒の存在下に反応させることを特徴とする下記式(1):
【化3】

〔式中、R1及びR2は前記と同一のものを示す。〕
で表されるN−アシルアミノトリオールの製造法。
【請求項2】
20〜79℃で反応を行う、請求項1記載の方法。
【請求項3】
目的物を析出させながら反応を行なう、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
3がメチル基又はエチル基である請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
塩基性触媒が、金属エチラート又はメチラートである請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
1がテトラデシル基である請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。

【公開番号】特開2013−60381(P2013−60381A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199022(P2011−199022)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】