説明

N−アシルトリプタミンを含有する組成物

【課題】安全性の高いしみ、吹き出物、筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛及び/又は打撲痛、創傷、火傷、ひび割れ、痔、二日酔いの予防又は改善用組成物を提供する。
【解決手段】次式(I):
【化1】


(式中、Rは炭素数2〜29の飽和脂肪族炭化水素基を表す。)
で示されるN−アシルトリプタミン、又はその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を含有するしみ、吹き出物、筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛、打撲痛、創傷、火傷、ひび割れ、痔及び/又は二日酔いの予防及び/又は改善用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−アシルトリプタミンを含有する組成物、具体的には、しみ、吹き出物、創傷、火傷、ひび割れ、痔、筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛、打撲痛、二日酔いを予防又は改善するための組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会に移行しつつある現在、高齢者の生活の質(QOL)を高めることは、社会福祉上重要な課題である。年齢を重ねるに従い、皮膚は衰えて、加齢皮膚には、深い「しみ」や固くなった吹き出物が形成されて、顔や手、体に現れる。若者向けの「しみ」や吹き出物を対象とした化粧品は多種、多数売られているが、高齢者は対象とされていない。加齢により、傷や火傷、ひび割れの治りや、筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛、打撲痛、二日酔いなどの治る速度も、遅くなっている。この衰えた体の新陳代謝能力を高めることができれば、前述の障害を改善でき、高齢者のQOLを高め、肉体的にも精神的にも、幸せを感じさせることができる。
【0003】
N−アシルトリプタミンについては、抗鬱・抗ストレス作用について(特許文献1)、勃起障害治療及び育毛・増毛作用について(特許文献2)、メラトニン拮抗作用について(特許文献3)、それぞれ報告されているが、N−アシルトリプタミンが、しみ、吹き出物、創傷、火傷、痔、筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛、打撲痛、二日酔いの予防又は改善作用を有することは知られていない。
【0004】
N−アシルトリプタミンは、バンレイシ属(Annona)に属する植物の種子成分として単離構造決定された天然物である(非特許文献1及び非特許文献2)。これらの植物は、中央アメリカ、エジプト、インド、東南アジア諸国で栽培され、ギュウシンリ(Annona reticulata)、チェリモア(Annona cherimola)、イランイラン(Cananga odorata)などがこの属に属する。カカオ(Theobroma cacao)にも、N−アシルトリプタミン誘導体は含まれている。これらの果実は生食の他、ジャムやママレード、アイスクリームなどに加工されて食されている。
【0005】
N−アシルトリプタミンに構造上類似する化合物として、脳の松果腺から分泌されるホルモンであるメラトニン(N−アセチル−5−メトキシトリプタミン)、モノアミン神経伝達物質であるセロトニン(5−ヒドロキシトリプタミン)が知られており、例えば、メラトニンについては、皮膚老化の防御作用について(特許文献4)、しわ防止作用について(特許文献5)、それぞれ報告されているが、例えば、特許文献3においてN−アシルトリプタミンのメラトニン拮抗作用が報告されているように、トリプタミンの5位のメトキシ基又は水酸基の有無により、生理活性は大きく異なり、メラトニンの作用から5位にメトキシ基を有しないN−アシルトリプタミンの生理活性を予測することは困難である。
【0006】
また、骨粗鬆症は、骨を作る骨芽細胞の働きが弱まり、破骨細胞の働きが強くなることにより発症するが、メラトニンは骨芽細胞の働きを弱めることが報告されており(非特許文献3)、高齢者がメラトニンを服用すれば、骨粗鬆症を引き起こす可能性が高くなるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−137780号公報
【特許文献2】特許第3964417号公報
【特許文献3】特開平4−173777号公報
【特許文献4】特開平3−145419号公報
【特許文献5】特開2001−348322号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】D. Chavez, L.A. Acevedo, R. Mata, J. Nat. Prod., 62, 1119-1122 (1999)
【非特許文献2】U. Maeda, N. Hara, Y. Fujimoto, A. Srivastava, Y.K. Gupta, M. Sahai, Phytochemistry, 34, 1633-1635 (1993)
【非特許文献3】N. Suzuki, M. Somei, K. Kitamura, R.J. Reiter, A. Hattori, J. Pineal Res., 44, 326-334 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、安全性の高いしみ、吹き出物、筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛、打撲痛、創傷、火傷、ひび割れ、痔、二日酔いの予防又は改善用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、N−アシルトリプタミンが、α受容体を阻止して男性器及び皮膚血管を拡張する作用を持つことを見出し、勃起不能治療薬や頭髪の育毛等への応用に関する特許を所有している(特許文献2)。
【0011】
前記特許の展開を図るため、臨床試験を行っていたところ、N−アシルトリプタミンの新規な作用を見出した。即ち、これらの化合物は、血管拡張作用を原因として、各組織の新陳代謝機能を高め、古い皮膚の細胞が新しい細胞に置き換わる速度が速められて、顔や腕にできるしみや、皮膚にできる吹き出物が、垢として落ちていく。その結果、しみや吹き出物の治療に、著効を示すことを見出した。更に、傷、火傷、痔、手足のひび割れの修復能力も促進されることが判った。肝臓の機能も昂進され、疲労物質の代謝やアルコールの代謝速度が促進されて、運動後の筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛、打撲痛及び二日酔いの治療にも著効を示した。
【0012】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)次式(I):
【化1】

(式中、Rは炭素数2〜29の飽和脂肪族炭化水素基を表す。)
で示されるN−アシルトリプタミン、又はその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を含有するしみ及び/又は吹き出物の予防及び/又は改善用組成物。
【0013】
(2)前記式(I)で示されるN−アシルトリプタミン、又はその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を含有する筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛及び/又は打撲痛の予防及び/又は改善用組成物。
(3)前記式(I)で示されるN−アシルトリプタミン、又はその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を含有する創傷、火傷、ひび割れ及び/又は痔の予防及び/又は改善用組成物。
(4)前記式(I)で示されるN−アシルトリプタミン、又はその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を含有する二日酔いの予防及び/又は改善用組成物。
(5)前記式(I)においてRが炭素数6〜17の飽和脂肪族炭化水素基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安全性の高いしみ、吹き出物、筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛、打撲痛、創傷、火傷、ひび割れ、痔、二日酔いの予防又は改善用組成物を提供することができる。本発明は、高齢者の生活の質(QOL)を高める組成物を提供することを主な目的とするが、当然のことながら、本発明の組成物は若者にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の組成物を適用する前の患部(右腕外側)のしみの状態を示す写真である。
【図2】図2は、本発明の組成物を適用した後の患部(右腕外側)のしみの状態を示す写真である。
【図3】図3は、猫による受傷直後の患部(右腕手首に近い部分)の創傷の状態を示す写真である。
【図4】図4は、猫による受傷直後の患部(右腕中央部)の創傷の状態を示す写真である。
【図5】図5は、本発明の組成物を適用した後の患部(右腕手首に近い部分)の創傷の状態を示す写真である。
【図6】図6は、本発明の組成物を適用した後の患部(右腕中央部)の創傷の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記式(I)においてRで表される炭素数2〜29の飽和脂肪族炭化水素基としては、例えば、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基等の直鎖状又は分岐状のC2−29−アルキル基等の炭素数2〜29の飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0017】
前記炭素数2〜29の飽和脂肪族炭化水素基としては、炭素数6〜17の飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。特に、前記式(I)においてRで表される炭素数2〜29の飽和脂肪族炭化水素基が炭素数8のオクチル基であるN−ノナノイルトリプタミンが最も強い作用を示し、好適に実施できる。
【0018】
前記式(I)で示される化合物の薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、ピロ硫酸、メタリン酸等の無機酸、又はクエン酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸)等の有機酸との塩が挙げられる。
【0019】
前記式(I)で示される化合物は、公知化合物であり、合成、又は植物からの抽出により調製することができ、例えば、トリプタミンと各種カルボン酸のハロゲン化物とを反応させるか、あるいはトリプタミンと各種カルボン酸とをカルボン酸の活性化剤共存下に反応させて合成できる(特許文献2、K. Yamada, Y. Tanaka, M. Somei, Heterocycles, 79, 635-645 (2009))。
【0020】
また、前記式(I)で示される化合物を含む植物、バンレイシ属(Annona)植物(例えば、ギュウシンリ(Annona reticulata)、チェリモア(Annona cherimola)、バンレイシ(Annona squamosa))、イランイラン(Cananga odorata)又はカカオ(Theobroma cacao))の種子又は果実を含水エタノールで抽出した後、例えば、非特許文献1に記載の方法に従ってカラムクロマトグラフィーで精製して、N−アシルトリプタミンの混合物を得ることができる。この混合物をそのまま、本発明の組成物の有効成分として使用してもよい。
【0021】
N−アシルトリプタミンを天然物として含む植物の果実が、食されていることから、その安全性は証明されている。また、本発明者らは、N−ノナノイルトリプタミンについて、雄のddyマウスを用いた毒性試験を行い、そのLD50が80mg/kg以上であり(K. Yamada, Y. Tanaka, M. Somei, Heterocycles, 79, 635-645 (2008))、解剖所見にも何ら異常は認められず、N−アシルトリプタミンが安全な化合物であることを見出した。更に、中国内モンゴルで山羊のカシミアの毛の増収を目的とした実験で、N−ノナノイルトリプタミンを、一日1.0mg/50kg/dayの用量で2年半に渡って投与しても、何ら異常がなく、強い繁殖効果、及びカシミアの毛が重量比で1.2〜1.7倍に増産されることを見出した(M. Somei, Heterocycles, 75, 1021-1053 (2008))。これらの結果から、N−アシルトリプタミンの安全性が確認された。
【0022】
本発明の組成物は、前記したように安全性が高いので、単独あるいは他の医薬もしくは任意の製剤用担体、希釈剤、被覆剤等と混合し、任意の剤形にして投与できる。投与方法としては、経口、非経口、直腸経由、経皮又は他の任意の投与経路を用いることができる。経口投与する場合には、散剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、経口用液体製剤等を例示でき、非経口投与する場合には、注射剤、液体製剤、軟膏剤、クリーム剤、塗布剤、貼付剤、噴射剤等を、直腸投与する場合には、坐剤、カプセル剤等を例示することができる。これらの調製方法は、それぞれ既知の方法に従うことができる。
【0023】
本発明の組成物は、前記したように安全性が高いので、これを各種の飲食品に配合することにより、しみ、吹き出物、創傷、火傷、手足のひび割れ、筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛、打撲痛、二日酔いの予防・改善作用を有する組成物を提供することができる。例えば、組成物としては、チューインガム、チョコレート、スナック等の菓子、ジュース、スポーツドリンク、清涼飲料水、牛乳、果実飲料、ココア等の飲料、アイスクリーム、ヨーグルト、ふりかけ、香辛料、健康用食品(例えば、特定保健用食品)、そのほかの食品をあげることができる。
【0024】
本発明の組成物におけるN−アシルトリプタミンの含有量は、その剤形に応じて最適量が異なるので限定されるものではないが、一般的に製剤当りの含有量を0.001重量%〜10重量%、好ましくは0.01〜1重量%になるように調整する。
【0025】
成人の場合、N−アシルトリプタミンの用量は、体重1kg及び1日1回当り0.001〜10mg、好ましくは0.01〜0.1mgである。この使用量を1日1回又は数回に分けて投与することができる。
【実施例】
【0026】
以下に、本発明を具体的に説明するため、調製例及び実施例をあげるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
(調製例1)合成方法
染井らの方法(K. Yamada, Y. Tanaka, M. Somei, Heterocycles, 79, 635-645 (2009))に従いN−ノナノイルトリプタミンを合成し、以下の調製例3及び実施例に用いた。
【0028】
(調製例2)植物からの抽出方法
インドネシア産バンレイシ(Annona squamosa)の果実を乾燥し、全体を粉砕した。この粉砕粉末50 gに、80%エタノール水溶液を1L加え1時間加熱還流して抽出した。冷却後、抽出液を濾過して不溶物を除き、溶媒を減圧留去、乾燥して、バンレイシ果実の粗抽出物18.4gを得た。この粗抽出物からは、D. Chavez らの方法(非特許文献1)に従ってカラムクロマトグラフィーで精製して、N−アシルトリプタミンの混合物が得られた。
【0029】
(調製例3)組成物の調製
散剤:ガラクトース又は乳糖を希釈剤として、N−ノナノイルトリプタミンを0.5重量%となるように混和して製した。
液剤:N−ノナノイルトリプタミン4gをエタノール4Lに溶解し、精製水1Lを加えて、0.8%エタノール水溶液を製した。
クリーム剤:ワセリン、グリセリン、馬鈴薯澱粉の7:1.5:1.5の混合物に、N−ノナノイルトリプタミンを0.5重量%となるように混和して製した。
【0030】
本発明の組成物は、N−アシルトリプタミンを必須成分とするが、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、食品、化粧品、医薬部外品、医薬品等に一般的に用いられる各種成分、例えばグリチルレチン酸、ホルモン剤、ビタミン剤、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、半極性界面活性剤、保温剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、香料、色剤、各種植物の抽出エキス等を配合することができる。
【0031】
(実施例1)「しみ」の治療
治療患者:65歳、健康男子。
治療場所:患者の自宅。
治療期間:2007年9月12日から10月31日(50日間)。
患部状況:加齢により、自然に形成された右腕外側の黒い「しみ」3カ所。
使用組成物:調製例3の液剤及びクリーム剤。
治療方法:調製例3の液剤を「しみ」に塗布し、乾いた後に調製例3のクリーム剤を擦り込んだ。12時間おきに、1日2回塗布と擦り込みを行った。
結 果:50日間という短い期間で、図1で見られる3個の「しみ」が、図2のように薄くなり、下側の一個は完全に消失した。その結果、肌がきれいになった。
【0032】
(実施例2)「しみ」及び固い「つらら状の吹き出物」の治療
治療患者:59歳、健康女子。
治療場所:患者の自宅。
治療期間:2007年10月1日から2008年9月30日(1年間)。
患部の状況:右頬及び左頬上の直径3cmの黒い大きな「しみ」が、加齢により自然に形成されていた。また、両目の瞼下、首に多数の「つらら状の吹き出物」が生成している。
使用組成物:調製例3の液剤及びクリーム剤。
治療方法:調製例3の液剤を、「しみ」及び首にある「つらら状の吹き出物」に塗布した。液が乾いた後に、調製例3のクリーム剤を擦り込んだ。12時間おきに、1日2回塗布と擦り込みを行った。
結 果:1ヶ月で、「つらら状の吹き出物」の数が減少し、また「しみ」の色が浅くなった。3ヶ月で吹き出物の全てが、消えてなくなった。右頬上の「しみ」は、薄くなったが、左頬上の「しみ」は、まだ濃かった。半年後、右頬上の「しみ」は、目立たなくなり、左頬上の「しみ」は、薄くなった。1年後、左頬上の「しみ」は、ほとんどなくなった。左頬上の「しみ」は、まだ残っているが、極めて薄くなった。その結果、肌がきれいになった。
【0033】
(実施例3)創傷治療
治療患者:65歳、健康男子。
治療場所:患者の自宅。
治療期間:2007年8月19日(受傷)から8月26日。
受傷状況:戯れていた飼い猫に右腕を激しく引っかかれ、多数の傷を負った。
治療薬物:調製例3のクリーム剤。
治療方法:調製例3のクリーム剤を受傷直後に塗布した。以後、12時間おきに塗布した。
結 果:受傷直後塗布により、出血、痛みが止まる(図3(右腕手首に近い部分)、図4(右腕中央部))。1日後、傷口は、通常見られる血液凝固の「かさぶた」がなく、代わりに薄い皮膜ができて傷口が塞がっていた。「かさぶた」だと、風呂に入り、その上を洗うと傷口が開くが、傷口は開かず、洗うことができた。修復速度が早く、1週間で完治した(図5(右腕手首に近い部分)、図6(右腕中央部))。
【0034】
(実施例4)手指のひび割れ治療
治療患者:60歳、健康主婦。
治療場所:患者の自宅。
治療期間:2008年12月20日から1月31日。
受傷状況:冬の炊事、洗濯等の水を扱うことに加え、寒風にさらされることにより、手の親指、人差し指、中指の先端部が乾燥して、大きなひび割れを生じていた。出血、痛みも伴って、裁縫などができなくなってしまった。
治療薬物:調製例3のクリーム剤。
治療方法:調製例3のクリーム剤を洗濯後、炊事後、及び就寝前に患部に擦り込んだ。
結 果:クリームを擦り込み、30分後には痛みが止まり、かさかさの皮膚が柔らかくなった。1日後、傷口も塞がり始めた。作業をしても、痛みをこらえる程ではなくなった。修復速度が早く、約40日後には、ほぼ完治した。
【0035】
(実施例5)天ぷら火傷治療
治療患者:58歳、健康主婦。
治療場所:患者の自宅。
治療期間:2008年5月2日(受傷)から5月10日。
受傷状況:天ぷらを揚げていたところ、突然油がはねて、顔面に火傷を負った。すぐに水で冷やしたが、火ぶくれになった。
治療薬物:調製例3の液剤。
治療方法:調製例3の液剤を受傷直後患部に塗布した。痛みはきつかった。以後、12時間おきに塗布した。
結 果:塗布により、ひどい痛みが徐々に治まり、普通に就寝もできた。1日後、腫れも退き、火ぶくれによる傷口が塞がった。修復速度が早く、9日でほぼ完治した。
【0036】
(実施例6)痔の治療
治療患者:64歳の健康男子。
治療場所:患者の自宅。
治療期間:2006年12月9日から2007年6月8日(半年間)。
状 況:長年の経過で、切れ痔となった。排便時には痛みと共に、血液が吹き出て人にはいえぬ苦しみを耐えていた。
治療薬物:調製例3のクリーム剤。
治療方法:12時間おきに1日2回、患部に擦り込んだ。
結 果:日常生活上感じていた痛みが、1時間後には和らいだ。3日後には、患部の皮膚が柔らかくなり、傷口が塞がった。1ヶ月後には、排便時の出血も痛みもほとんど感じなくなった。3ヶ月後、痔であったことを忘れるほど、気にならなくなり、半年でほぼ完治した。
【0037】
(実施例7)筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛及び打撲痛の解消
治療患者:63歳、健康男子。
治療場所:患者の自宅。
治療期間:2005年11月3日から11月5日(3日間)。
状 況:朝の野球の試合でピッチャーとして、約100球を投げた。また打球があたり、左足に打撲を受けた。試合直後の12時頃から筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛及び打撲痛が出始め、痛みと、だるさで膝が笑い、体の自由が利かなくなった。
治療薬物:組成物調製欄に記した散剤及び液剤。
治療方法:調製例3の散剤をN−ノナノイルトリプタミン1mg相当量1日2回、12時間おきに服用した。また、筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛及び打撲部に調製例3の液剤を8時間おきに1日3回塗布した。
結 果:服用及び塗布後、2時間で、筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛及び打撲痛はひどいが、手足の自由がきき始め、歩けるようになった。5時間後の夕方には、だるさが解消した。翌日、12時には筋肉痛、肩こり、腰痛及び関節痛は若い頃と同じ程度になった。時間の経過と共に、筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛及び打撲痛が、ぐんぐんと消えていくのを、本人が感じていた。翌3日目には、ほとんど筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛及び打撲痛は解消し、普段通りの生活に戻った。
以後、スポーツや筋肉労働を始める1時間前に、前述の散剤を服用することにより、作業後の筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛、だるさを、ほとんど感じなくなった。
【0038】
(実施例8)二日酔いの治療
治療患者:36歳及び40歳の健康男子二人。
治療場所:中国ゴビ砂漠植樹旅行先。
治療期間:2009年5月15日。
状 況:北京における前夜の歓迎会で、白酒(アルコール濃度、55%)の乾杯を重ねて、ダウンした。翌朝、顔色は蒼白、目もうつろで、気持ちが悪く、食欲は全くなかった。団体旅行の計画遂行に、支障を来す事態なので無理矢理目を覚まさせた。
治療薬物:調製例3の散剤。
治療方法:N−ノナノイルトリプタミン1mg相当量の前述の散剤を一回服用した。
結 果:二人とも、ほぼ同じ経過を辿った。服用1時間後、気持ち悪さが軽くなり、飛行機に搭乗する意欲が湧いた。約2時間のフライト中、機内で眠った。時間の経過と共に顔の血色がよくなり、快く眠っている様子であった。服用3時間後、目的地の飛行場に到着した時には、二人とも気分が回復した。時間の経過と共にどんどん回復して、その後の上下に激しく揺すられる2時間の車の移動でも、何ら支障がなかった。服用5時間後、食欲が復活、腹が減ったと食事を取り、砂漠における植樹の重労働作業にも元気に参加できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】

(式中、Rは炭素数2〜29の飽和脂肪族炭化水素基を表す。)
で示されるN−アシルトリプタミン、又はその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を含有するしみ及び/又は吹き出物の予防及び/又は改善用組成物。
【請求項2】
前記式(I)で示されるN−アシルトリプタミン、又はその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を含有する筋肉痛、肩こり、腰痛、関節痛及び/又は打撲痛の予防及び/又は改善用組成物。
【請求項3】
前記式(I)で示されるN−アシルトリプタミン、又はその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を含有する創傷、火傷、ひび割れ及び/又は痔の予防及び/又は改善用組成物。
【請求項4】
前記式(I)で示されるN−アシルトリプタミン、又はその薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を含有する二日酔いの予防及び/又は改善用組成物。
【請求項5】
前記式(I)においてRが炭素数6〜17の飽和脂肪族炭化水素基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−1280(P2011−1280A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144286(P2009−144286)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(502258635)
【Fターム(参考)】