説明

N−ハロゲン化アミノ酸を使用する、尿路感染症(UTI)を含む細菌感染症および真菌感染症の予防のためのシステムおよび方法

医療用デバイスにおいて、一般に感染の発生および生物膜確立、特にカテーテル関連尿路感染症症(CAUTI)を含む尿路感染症症(UTI)を防止/予防するシステムが開示される。システムは、医療用デバイス(例えば、カテーテル)、および抗菌化合物を含む抗菌組成物を含む。医療用デバイスは、デバイスの内側および/または外側部分の両方、ならびに膀胱の内側自体および尿道に組成物を送達する。感染の減少または排除は、医療用デバイスを組成物で灌注するか、膀胱を組成物に浸すか、または膀胱を組成物で灌注することによって達成され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
医療用デバイスにおいて、一般に感染の発生および生物膜確立、特にカテーテル関連尿路感染症(CAUTI)を含む尿路感染症(UTI)を防止/予防するシステムが開示される。システムは、医療用デバイス(例えば、カテーテル)、および抗菌化合物を含む抗菌組成物を含む。医療用デバイスは、デバイスの内側および/または外側部分の両方、ならびに膀胱の内側自体および尿道に組成物を送達する。感染の減少または排除は、医療用デバイスを組成物で灌注するか、膀胱を組成物に浸すか、または膀胱を組成物で灌注することによって達成され得る。さらに、医療用デバイスは、尿道開口部を通して挿入する前または間に、そのような組成物によって殺菌され得る。医療用デバイスはまた、本明細書に記載の組成物中で保存され得る。カテーテルまたはカテーテル様デバイスに加えて、ペースメーカー、心臓弁、埋込型デバイス、乳房インプラント、骨内インプラント、ステント、外科用プレートなどの他の侵襲性の医療用デバイスもまた、本明細書に記載の組成物中で保存され得る。本発明において説明する材料としては、N−ハロゲン化アミノ酸を含む組成物が挙げられる。医療用デバイスはまた、記載する組成物中で保存され得る。関連する組成物は、広範で、非特異的で、迅速な抗菌活性を有し、プランクトン微生物、ならびに生物膜および皮殻に付随する微生物に対して有効である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
病院で発生した感染症の40%超が尿路感染症(UTI)であり、これらの大部分が、尿路カテーテルを用いる患者において生じるカテーテル関連尿路感染症(CAUTI)である(Hashmi, Kelly et al. 2003)。実際に、尿路カテーテルは、菌血症の2番目に一般的な原因である(Maki and Tambyah 2001)。菌血症は、循環血中での生存可能な細菌の存在である。
【0003】
CAUTIを予防するために設計された種々のアプローチが使用されているが;それらを組み合わせてすら、CAUTIの発症を遅延させ得るのみで、CAUTIを予防できないままである。
【0004】
1日当たり、カテーテルを用いた患者の5%が細菌尿(正常で無菌の尿中での細菌の存在)に罹患し(3〜10%);30日間までカテーテルを用いた患者のほぼ全てが、細菌尿を有している。無徴候性である細菌尿は初期において診断され得ないので、細菌尿を有する患者の10〜25%はUTIに罹患している(Saint and Chenoweth 2003)。
【0005】
細菌尿を有する患者の1〜4%では、感染は腎臓または血流に広がり、致死的となり得る菌血症(血中での生存可能な細菌)を導く(Saint and Chenoweth 2003)。
【0006】
CAUTIおよび菌血症に至る細菌増殖の主要な理由は、カテーテル表面上での生物膜の確立である(Morris, Stickler et al. 1999;Maki and Tambyah 2001;Tenke, Riedl et al. 2004;Trautner and Darouiche 2004)。生物膜は、表面(例えば、デバイス)に付着する粘着性物質(通常、多糖)中に包まれている微生物コロニーの発達を導く細菌が産生し、生息するマトリックスである。細菌のリザーバーを提供することに加えて、生物膜はまた、長期にわたって、カテーテルを通る流れを制限するか、またはカテーテルを通る流れを完全にブロックし得る、細菌によって作られた結晶性沈着物によるカテーテル皮殻をもたらし得る。
【0007】
1つの態様において、本発明のシステムは、(a)細菌の集積を妨げること;ならびに(b)医療用デバイス、膀胱および尿道中およびその周辺の細菌を死滅させることによって有効である。医療用デバイスおよび膀胱中およびその周辺のそのような細菌の集積としては、プランクトン細菌、または生物膜中に包埋されている細菌などの生物膜形態の細菌が挙げられる。プランクトン細菌は、生物膜中の固着の細菌とは対照的に、自由に浮遊する細菌である。システムはまた、生物膜の形成を処置または防止すること、生物膜中に包埋されている細菌を死滅させること、および生物膜を除去することに有用である。システムはまた、その細胞毒性の低さに起因して、特に炎症を起こしているかまたは感染している膀胱組織によって十分許容される。この特有な特性の組合せが、このシステムが細菌尿に有効であって、CAUTIおよび菌血症への進行を制限することを可能にする。
【0008】
発明の分野
本発明は、抗菌処理/処置を提供するシステムおよび方法に関する。システムは、医療用デバイス(例えば、カテーテル)および抗菌組成物を含む。特定の態様において、方法は、微生物を死滅させ、微生物の生物膜形成を防止することによる感染の処置、防止または抑制のために、医療用デバイスを洗い流すか、洗浄するか、滴下するか、灌注するか、および/またはコーティングする工程を包含する。システムは、そのような処置の選択を実施するためのキットまたはトレイで提供され得る。
【0009】
本明細書で使用される用語「微生物」は、患者に使用する場合に医療用デバイス中および周辺の領域に生息する、細菌、真菌およびウイルスを含む。
【0010】
組成物は、閉塞および障害のない医療用デバイスを維持するのに有用である。組成物はまた、患者の膀胱の内側および外側の両方を含む感染を処置、予防および抑制するのに有用である。本明細書に記載する組成物で処理した医療用デバイスは、医療用デバイスを受けている患者において尿路感染症を導く細菌尿をよりもたらしそうになく、そのようなデバイスの1つは尿路カテーテルである。他の制限しない医療用デバイスとしては、心臓カテーテル、中心静脈カテーテル、腹膜透析カテーテルなどの血管内カテーテル、血液透析シャント、気管内チューブ、外科用ドレインなどの透析シャント、およびポートなどのデバイスの付属物が挙げられる。
【0011】
尿道カテーテルなどの医療用デバイスの管理および維持における本発明の医薬組成物の使用方法もまた、本願において開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の背景
尿路カテーテルは、膀胱から尿を排出するか、または採取するために身体に入れる屈曲性のチューブシステムである。尿路カテーテルは、特定の外科手技の間または後に膀胱を排出するために使用される。尿路カテーテルはまた、男性および女性の両方において尿失禁および/または尿閉を管理するために使用される。
【0013】
患者のおかれている医学的症状に依存して、尿路カテーテルは、(a)膀胱を空にするのに十分な時間だけ断続的に、(b)短期間(数時間もしくは数日、例えば、手術中および手術直後)、(c)長期間(数日〜数週間、例えば、手術後)、または(d)連続的もしくは慢性的な長期間(30日もしくはより長く、例えば、脊髄傷害(SCI)および長期医療看護施設(LTCF)において)使用され得る。一定期間、所定の位置に入れられる留置カテーテルは一般に、尿を採取するために滅菌の容器に取り付けられる。
【0014】
最も一般的に使用されるフォーリー留置カテーテルは、尿道を通して膀胱に挿入される、尿を排出する柔軟なシリコンまたはラテックスチューブであって、空気または液体で膨張される小さなバルーンによって保持される。尿路カテーテルは、多様な大きさ、材料(コーティングされないか、またはシリコン、ハイドロゲル、抗菌剤など他の材料でコーティングされたラテックス、シリコン)、および型(フォーリーカテーテル、ストレートカテーテル、Coude−tipカテーテルなど)で市販されている。
【0015】
カテーテルは一般に、尿道を通して膀胱に入れられるが、いくつかの場合、恥骨上留置カテーテルが恥骨上部の腹部に外科的に作成した開口(ストーマ)を通じて膀胱に直接入れられる。
【0016】
カテーテル関連合併症:
留置カテーテル使用の面倒な事態としては、皮殻および障害、細菌尿、尿道および/または腎臓感染症が挙げられ、それらは次に血液感染症(菌血症または敗血症(血液中毒もしくは敗血性発熱)もしくは敗血性ショック)に進行し得る。断続的なカテーテルの使用はまた、細菌尿(尿中の細菌の存在)および続く尿路感染症をもたらし得る。カテーテルの皮殻は、ウレアーゼを産生する細菌によって引き起こされる感染が原因であり;ウレアーゼの漸増する活性は、局所pHの上昇およびリン酸カルシウムおよびマグネシウムの結晶の形成をもたらす。これらの結晶はカテーテルを覆い、カテーテル管腔の部分的または全体の閉塞を引き起こし得る(Stickler, Young et al. 2003)。
【0017】
CAUTIの定義:
カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)は、米国における急性および延長看護病院での、最も一般的な院内(病院で発生する)感染症の1つである。それは下部尿路として集合的に知られる膀胱および尿道を冒す。
【0018】
CAUTIの根本的な原因は、病原性生物膜の形成である。ウレアーゼ産生細菌は、カテーテル表面にコロニー形成し、多糖マトリックス中に包埋される生物膜群集を作る。漸増するウレアーゼは、アンモニアを発生させ、それは生物膜および尿のpHを上昇させ;この環境下にて、リン酸カルシウムおよびマグネシウムで構成される硬質の結晶が形成され、マトリックス中に包埋される(Stickler, Jones et al. 2003)。このプロセスを妨げる有効な戦略は、あったとしても少数である。尿道カテーテルは、生物膜群集の部分である付着した微生物で必然的にコロニー形成される。個体は、3〜10%/日の速度で細菌尿を発達させ;発症率は、慢性的にカテーテルを用いた個体では30日目までに100%に達する(Trautner, Hull et al. 2005)。尿路カテーテルの表面の生物膜および結晶性皮殻の発達は、プロテウス・ミラビリスを使用する実験モデルで実証されている(Stickler, Jones et al. 2003)。抗菌剤での膀胱の予防的な灌注は、コロニー形成を防止せず、そして抗菌抵抗性を導かず;過酸化水素での予防的な灌注もまた、有効ではない(Cravens and Zweig 2000)。
【0019】
細菌の膀胱への重要な侵入経路は、カテーテルの尿道開口部を通しての挿入の間に、カテーテルの移動の間にカテーテルの外部表面に沿った移動によって生じる。尿路感染症において見出される微生物としては、大腸菌、プロテウス、エンテロバクターおよびクレブシエラ種などの腸内グラム陰性桿菌、グラム陽性菌、増殖期のカンジダ酵母株、ならびにプロビデンシアおよびシュードモナスなどのいくつかの腸内生物が挙げられる(Hashmi, Kelly et al. 2003)。
【非特許文献1】Anwar, H., J. L. Strap, et al. (1992). ”Eradication of biofilm cells of Staphylococcus aureus with tobramycin and cephalexin.” Can J Microbiol 38(7): 618−25.
【非特許文献2】Baillie, L. (1987). ”Chlorhexidine resistance among bacteria isolated from urine of catheterized patients.” J Hosp Infect 10(1): 83−6.
【非特許文献3】Cho, Y. H., S. J. Lee, et al. (2001). ”Prophylactic efficacy of a new gentamicin−releasing urethral catheter in short−term catheterized rabbits.” BJU Int 87(1): 104−9.
【非特許文献4】Costerton, J. W., P. S. Stewart, et al. (1999). ”Bacterial biofilms: a common cause of persistent infections.” Science 284(5418): 1318−22.
【非特許文献5】Cravens, D. D. and S. Zweig (2000). ”Urinary catheter management.” Am Fam Physician 61(2): 369−76.
【非特許文献6】Darouiche, R. O., J. A. Smith, Jr., et al. (1999). ”Efficacy of antimicrobial−impregnated bladder catheters in reducing catheter−associated bacteriuria: a prospective, randomized, multicenter clinical trial.” Urology 54(6): 976−81.
【非特許文献7】Donlan, R. M. and J. W. Costerton (2002). ”Biofilms: survival mechanisms of clinically relevant microorganisms.” Clin Microbiol Rev 15(2): 167−93.
【非特許文献8】Galloway, A. (1997). ”Prevention of urinary tract infection in patients with spinal cord injury−−a microbiological review.” Spinal Cord 35(4): 198−204.
【非特許文献9】Hashmi, S., E. Kelly, et al. (2003). ”Urinary tract infection in surgical patients.” Am J Surg 186(1): 53−6.
【非特許文献10】Maki, D. G. and P. A. Tambyah (2001). ”Engineering out the risk for infection with urinary catheters.” Emerg Infect Dis 7(2): 342−7.
【非特許文献11】Morris, N. S., D. J. Stickler, et al. (1999). ”The development of bacterial biofilms on indwelling urethral catheters.” World J Urol 17(6): 345−50.
【非特許文献12】Muncie, H. L., Jr., J. M. Hoopes, et al. (1989). ”Once−daily irrigation of long−term urethral catheters with normal saline. Lack of benefit.” Arch Intern Med 149(2): 441−3.
【非特許文献13】Pearman, J. W., M. Bailey, et al. (1991). ”Bladder instillations of trisdine compared with catheter introducer for reduction of bacteriuria during intermittent catheterisation of patients with acute spinal cord trauma.” Br J Urol 67(5): 483−90.
【非特許文献14】Saint, S. and C. E. Chenoweth (2003). ”Biofilms and catheter−associated urinary tract infections.” Infect Dis Clin North Am 17(2): 411−32.
【非特許文献15】Stickler, D., R. Young, et al. (2003). ”Why are Foley catheters so vulnerable to encrustation and blockage by crystalline bacterial biofilm?” Urol Res 31(5): 306−11.
【非特許文献16】Stickler, D. J., G. L. Jones, et al. (2003). ”Control of encrustation and blockage of Foley catheters.” Lancet 361(9367): 1435−7.
【非特許文献17】Tenke, P., C. R. Riedl, et al. (2004). ”Bacterial biofilm formation on urologic devices and heparin coating as preventive strategy.” Int J Antimicrob Agents 23 Suppl 1: S67−74.
【非特許文献18】Trautner, B. W. and R. O. Darouiche (2004). ”Catheter−associated infections: pathogenesis affects prevention.” Arch Intern Med 164(8): 842−50.
【非特許文献19】Trautner, B. W. and R. O. Darouiche (2004). ”Role of biofilm in catheter−associated urinary tract infection.” Am J Infect Control 32(3): 177−83.
【非特許文献20】Trautner, B. W., R. A. Hull, et al. (2005). ”Prevention of catheter−associated urinary tract infection.” Curr Opin Infect Dis 18(1): 37−41.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0020】
関連技術の説明
CAUTIの有効な処置は、以下の3つの分野において本質的にうまくいかなければならない:感染を防止/予防/処理/処置すること、カテーテルが感染に起因する皮殻および閉塞に抵抗することに役立つこと、ならびに感染が栄えることを可能にする生物膜に浸透/根絶すること。以下に要約する文献の概説は、これらの問題の全てを効率的に解決する抗菌剤は今のところ存在しないことを示している(Trautner and Darouiche 2004)。これまでに試みられた戦略の主要な問題は、抗菌剤に抵抗性の細菌叢が最終的には再出現することである。
【0021】
現在、CAUTIを最小化するために使用されている最も有効な戦略は、閉鎖型ドレナージシステムの使用であるが;このシステムの増強が、CAUTIをさらに最小化するために未だ必要とされている。そのような増強の1つとしては、カテーテルの材料の表面修飾−すなわち、カテーテルの材料をCAUTIを引き起こす細菌にとって不快なものであるように設計することが挙げられる。それらのマトリックス中に銀合金を含むカテーテルの概説は、それらがカテーテル関連細菌を減少させることに部分的にのみ有効であることを示している(Saint and Chenoweth 2003)。抗菌剤に浸透させた尿路カテーテルがまた、程度を変動させて研究されており;ミノサイクリンおよびリファンビン(Darouiche, Smith et al. 1999)、ニトロフラゾン(Maki and Tambyah 2001)および遊離ゲンタマイシン(Cho, Lee et al. 2001; Maki and Tambyah 2001)を含むデバイスが、いくらか有望である。しかし、これらの薬剤全てを用いても、使用を延長することで、患者が関連する細菌への抵抗性を発達させる結果になるのかどうか明らかでない(Saint and Chenoweth 2003)。実際に、一部の人々は表面の修飾が滴下または灌注より有望であると示すと考えているが(Tenke, Riedl et al. 2004)、別の人々はCAUTIを予防するための表面修飾がせいぜいさえない結果しか産んでいないと考えている(Trautner and Darouiche 2004)。
【0022】
とは言うものの、全身に送達されるか、膀胱に滴下されるか、またはカテーテルを灌注するために使用されているこれまでの抗菌剤は、CAUTIを予防することに有効でないことが示されている(Trautner and Darouiche 2004)。CAUTIの処置としてのカテーテル灌注の特定の懸念は、長期間のカテーテルの使用についてであって、CAUTIを引き起こす細菌および他の細菌叢が該抗菌剤に対して抵抗性になるので、処理は無効になってしまうだろう(Maki and Tambyah 2001; Saint and Chenoweth 2003; Trautner and Darouiche 2004)。抗生物質ネオマイシン、および独立して灌注のために抗菌剤ポビドンヨードを使用する研究は、CAUTIを処置することに利点を示していない(Hashmi, Kelly et al. 2003)。
【0023】
膀胱灌注または滴下の使用は、デブリおよび石形成、ならびに感染を防止/予防するために推奨されている(Galloway 1997)。尿路カテーテル、およびフォーリーカテーテルは特に、局所細菌によって生じられた結晶由来の皮殻および閉塞にかなり敏感であり(Stickler, Young et al. 2003);カテーテルを灌注するための抗菌溶液の使用は、皮殻および閉塞を防止することにいくらか成功し得る。抗菌剤としてトリクロサンを使用する研究室での実験は、皮殻を防止するのに有望であることを示しているが(Stickler, Jones et al. 2003);身体でのこの薬剤の長期間の使用は、抵抗性細菌の出現をもたらし得る。同様に、この目的のためにクロルヘキシジン溶液を使用していくらか成功しているが(Baillie 1987; Pearman, Bailey et al. 1991)、細菌がクロルヘキシジンに対する抵抗性を発達させるので、長期間の使用は実際的でない(Baillie 1987)。さらに、カテーテルの閉鎖型ドレナージシステムを破損することで、患者への感染および身体的傷害の危険性が増加する(Galloway 1997; Cravens and Zweig 2000)。
【0024】
尿路カテーテルにおいて抗菌剤を使用することにおけるさらに別の考慮は、薬剤が生物膜に浸透し、除去できるかどうかである。カテーテルを灌注するための生理食塩水の使用は、細菌尿を減少させ、生物膜を除去することに対してほぼまたは全く効果を有していない(Muncie, Hoopes et al. 1989)。これまでに、抗菌剤(軟膏および潤滑剤として、採取バッグ中にて、カテーテル材料に浸透させて、および膀胱滴下または灌注で)の使用はまた、生物膜を処置できていない(Donlan and Costerton 2002; Tenke, Riedl et al. 2004)。
【0025】
発明の説明
好ましいものとして特徴づけられるか、または好ましいものとして特徴づけられないかに関わらず、本発明のいずれの態様または特徴も、そのような他の特徴が好ましいものとして特徴づけられるか、または好ましいものとして特徴づけられないかに関わらず、本発明のいずれの他の態様または特徴とも組み合わせられ得る。例えば、pH範囲または特定の組成物(例えば、特定の処方物の特定のN−ハロゲン化もしくはN,N−ジハロゲン化アミノ酸)の特定のpHなどの、好ましいものとして記載する特徴が、本発明から逸脱せずに、別の組成物(別の特定の処方物のN−ハロゲン化もしくはN,N−ジハロゲン化アミノ酸)と組み合わせられ得る。この記載はまた、置換基の任意の組合せにも適用される。例えば、好ましいものとして特徴づけられる置換基は、好ましいものとして特徴づけられていないいずれの他の置換基とも組み合わせられ得る。
【0026】
用語「含む」または「包含する」は、本明細書の文中にて制限されない用語として互換的に使用される。
【0027】
本明細書において提供されるシステムは、医療用デバイス(例えばカテーテルであるが、カテーテルに限定されない)および抗菌組成物を含む。システムは、(a)細菌の抵抗性の誘導および(b)重大な毒性といった望ましくない特性を有さない、代替の抗菌処置の選択肢を提供する。抗菌組成物は、N−ハロゲン化アミノ酸もしくはその誘導体である化合物またはN−ハロゲン化アミノ酸ソース、またはその混合物、またはN−ハロゲン化アミノ酸と次亜ハロゲン酸(HOHal、ここで、Halはクロロもしくはブロモである)との組合せを含む。
【0028】
この実施態様において、医療用デバイスが中心静脈カテーテル(CVC)であるシステムが提供される。この型のカテーテルは、頸部、胸部または鼠径部の大静脈中に入れられる。全てのカテーテルが細菌を血流に導入し得るが、CVCもまた、黄色ブドウ菌敗血症および表皮ブドウ球菌敗血症を引き起こし得る。
【0029】
1つの実施態様において、医療用デバイスが腹膜透析カテーテルであるシステムが提供される。腎不全の場合、血液から尿素およびカリウムなどの廃棄物を除去し、ならびに過剰な液体を除去するために、腹膜透析が使用される。腹膜透析は、腸を取り囲む天然の半透膜である腹膜への接続を必要とする。この接続は正常な皮膚境界を破壊する。腎不全を有する人達は一般に免疫系がいくぶん抑制されているので、感染は比較的一般的な問題である。
【0030】
腹膜透析は典型的に患者の自宅および職場で行われるが、ほとんどいずれの場所でも行われ得;作業する清潔な区域、透析液バッグを持ち上げる手段および透析液を温める方法が必要とされるすべてである。主に考慮すべきことは、カテーテルにともなう感染の可能性であって;腹膜炎が最も一般的で重篤な合併症であって、カテーテルの出口部位または「トンネル」(腹膜から出口部位までの通路)の感染は、腹膜炎より重篤でないものの、より頻繁である。これが理由で、患者は感染に対するいくつかの予防措置を取るように助言される。
【0031】
腹膜透析は、腎臓が血液から尿素およびカリウムなどの廃棄物、ならびに過剰な液体を除去できない場合(すなわち、腎不全)、これをする方法である。それは腎透析の形態であって、従って、腎置換療法である。腹膜透析は、腸を取り囲む腹膜が天然の半透膜として作用し得(透析を参照のこと)、特別に処方された透析液が膜の周辺に滴下される場合、次いで拡散によって透析が起こり得るという原則に基づいて機能する。過剰な液体もまた、浸透、液体中のグルコース濃度変化させることによって除去され得る。透析液は、患者の腹部に入れられ、臍付近を腹膜から表面まで走る腹膜透析カテーテル(最も一般的な型をTenckhoff Catheterという)を介して滴下される。腹膜透析カテーテルはまた、皮膚の下を通り、肋骨周辺もしくは胸骨(胸骨柄カテーテルという)、さらには鎖骨周辺までなどの別の部位から出得る。これは、短時間の外科手術として行われる。出口部位は、外科医または患者の好みに基づいて選択され、解剖学または衛生上の課題によって影響され得る。より多くの詳細が、以下において見出され得る:http://en.wikipedia.org/wiki/Peritoneal_dialysisまたはMerck’s Manual of Medical Information (以降、「MMOMI」), Home Edition, 1997, Editor−in−Chief Robert Berkow, M.D. pp. 600, 656−658。
【0032】
1つの実施態様において、医療用デバイスが血液透析シャントであるシステムが提供される。最も一般的な3つの型としては、静脈カテーテル、動静脈(AV)Ciminoスフィテル、または合成移植片が挙げられる。3つ全ての場合で、2つのチューブ(または2つの管腔を有する1つのチューブ)が、浄化されるべき血液をまず取り出し、次いで清潔な血液を身体に戻すことを必要とされる。血液透析は皮膚を通しての循環システムへの連続的な接続を必要とするので、血液透析を受けている患者は微生物の進入口を有しており、それは心臓弁(心内膜症)または骨(骨髄炎)に影響を及ぼす敗血症または感染を導き得る。より多くの詳細が、以下の参照において見出され得る:http://en.wikipedia.org/wiki/HemodialysisおよびMMOMI, pp. 654−657。
【0033】
1つの実施態様において、医療用デバイスが気管内チューブ(ETT)であるシステムが提供される。ETTは、気道管理および肺換気のために、口中に入れられ、次いで気管(気道)に降ろされる。これらのETTは、患者において人工呼吸器関連肺炎(VAP)を引き起こす高い危険性がある。VAPは、病院で発生する肺炎のサブセットであり、挿管および人工呼吸の少なくとも48時間後に発症する。一般に使用される抗生物質に対する細菌の抵抗性ゆえに、VAPの特に重要な原因であるいくつかの細菌が存在する。より多くの詳細が、以下の参照において見出され得る:http://en.wikipedia.org/wiki/Ventilator−associated_pneumonia
【0034】
1つの実施態様において、医療用デバイスが外科用ドレインであるシステムが提供される。外科用ドレインは、創傷から膿汁、血液または他の液体またはより多くの胸水を除去するために使用されるチューブである。外科手術後に挿入されたドレインは、創傷がより迅速に治癒するのに役立つ。詳細は、MMOMI, pp. 225−227, 935−936および171において見出され得る。
【0035】
1つの実施態様において、医療用デバイスが、細菌感染に感染しやすいポートなどの医療用デバイスの付属物であるシステムが提供される。
【0036】
用語「N−ハロゲン化アミノ酸」は、その最も広い意味において、アミノ基の少なくとも1個の水素がハロゲンに置換されているハロゲン化アミノ酸を含む。用語はまた、「N,N−ジハロゲン化アミノ酸」などの、アミノ基の少なくとも2つの水素が2つのハロゲン原子に置換されているハロゲン化アミノ酸を含む。用語はさらに、2つ以上のアミノ基の水素原子がハロゲン原子に置換されてもよい少なくとも2つのアミノ基を含む、ハロゲン化アミノ酸を含む。
【0037】
従って、本発明は、その最も広い態様において、抗菌システム、抗菌組成物、または抗菌システムもしくは抗菌組成物を使用する処理/処置方法を提供する。1つの態様において、抗菌組成物は、式(I):
A−C(R)R(CH−C(YZ)−X’ (I)
[式中、
Aは水素、HalNH−またはHalN−であり、ここで、Halはクロロおよびブロモからなる群より選択され;
Rは炭素−炭素単結合、または3〜6つの炭素原子を有する二価のシクロアルキレンラジカルであり;
は水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;
は水素または低級アルキルであり;
nは0または1〜13の整数であるか、あるいは
およびRはともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成し;
Yは水素、低級アルキルまたは−NH、−NHHalまたは−NHalであり;
Zは水素または低級アルキルであり;ならびに
X’は水素、−COOH、−CONH、−SOH、−SONHまたは−P(=O)(OH)である]
で表されるN−ハロ−もしくはN,N−ジハロアミノ酸、またはその誘導体を含む。Rが二価のシクロアルキレンラジカルである場合、nは整数11を超えないだろう。すなわち、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10および11であり得る。すわわち、酸性基X’を含むアミノ酸は、16原子までの鎖を有するだろう。二価のシクロアルキレンラジカルまたは二価ラジカル−(CH−において、1個の水素原子は、−NHHalまたは−NHalに置換されてもよい。本発明のN−ハロ−またはN,N−ジハロアミノ酸は、3個までの−NHHalまたは−NHal基を含んでもよいが、1または2個の−NHHalまたは−NHal基を含むN−ハロゲン化アミノ酸が好ましい。1つの−NHal基を含むN,N−ジハロアミノ酸が、最も好ましい。この基は、オメガ位の酸性基R(Rが−COOHである場合)またはX’に対して、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロン位などであり得る。
【0038】
式(I)で表される化合物の誘導体は、医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステルもしくはアリール基を有するエステル、置換基X’が結合する炭素原子に結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体を含む。この態様における用語「低級」は、1〜6個、好ましくは1〜4個の炭素原子を含む残基を含む。この態様における用語「アリール」は、1または2個の芳香環中に5〜10個の炭素原子を有するアリールを含み、所望により1〜4個の炭素原子を含む脂肪族側鎖を含んでもよく、所望により環系中にN、OまたはSなどのヘテロ原子を2個まで含んでもよい。従って、本明細書で使用するように、環中にヘテロ原子を含むこれらの環系は、「ヘテロアリール」と定義され得る。アリールエステルは、フェノール、ベンジルアルコール、α−ナフトール、β−ナフトール、ニコチニルアルコールなどの化合物を用いて形成され得る。
【0039】
好ましい実施態様において、Rは炭素炭素単結合であり、nは0または1〜7の整数、より好ましくは0または1〜5の整数、そして最も好ましくは0または1〜3の整数、すなわち1、2または3である。n=4またはn=5またはn=6またはn=7またはn=8またはn=9であるN,N−ジハロアミノ酸もまた、好ましい。N−ハロゲン化アミノ酸は、N−ハロゲン化アミノ酸が体液などの水分または水溶液との接触で生じるか、または活性化されるようにデバイス材料中に含有させるか、または包埋させてもよい。別の態様において、抗菌化合物は、水溶液の成分を含んでもよく、溶液は得られた抗菌組成物の一部として使用してもよい。
【0040】
本明細書で使用される用語「N−ハロゲン化アミノ酸」は、アミノ酸化合物のアミン基(−NH)上の1つまたは両方の水素原子がハロゲンに置換されてもよいアミノ酸化合物または組成物をいい、ここで、ハロゲンまたはハロ基はブロモまたはクロロである。
【0041】
式(II):
HalN−C(R)−(CH−C(YZ)−X (II)
で表されるN,N−ジハロ−アミノ酸またはその誘導体を含む抗菌システム、組成物または方法もまた、提供される。
【0042】
上記の式中、Halはクロロおよびブロモからなる群より選択され;Rは水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;Rは水素、低級アルキルであるか;あるいはRおよびRはともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成し;nは0または1〜3の整数であり;Yは水素、低級アルキル、−NH、−NHHalまたはNHalであり;およびZは水素または低級アルキルであり;ならびにXは−COOH、−CONH、−SOHまたは−SONHである。上記の各組成物の1つの特定の態様において、Halは臭素または塩素である。
【0043】
式(II)で表される化合物の誘導体は、医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステルもしくはアリール基を含むエステル、置換基Xが結合する炭素原子に結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体を含む。この態様における用語「低級」は、1〜6個、好ましくは1〜4個の炭素原子を含む残基を含む。この態様における用語「アリール」は、1または2個の芳香環中に5〜10個の炭素原子を有するアリールを含み、所望により1〜4個の炭素原子を含む脂肪族側鎖を含んでもよく、所望により環系中にN、OまたはSなどのヘテロ原子を2個まで含んでもよい。アリールエステルは、フェノール、ベンジルアルコール、α−ナフトール、β−ナフトール、ニコチニルアルコールなどの化合物とともに形成され得る。
【0044】
本明細書に記載するシステム、組成物および方法はまた、式(IIA):
HalNH−C(R)−(CH−C(YZ)−X (IIA)
[式中、Hal、R、R、n、Y、ZおよびXは上記の意味を有する]
で表されるN−モノハロアミノ酸およびその誘導体を含む。Rが低級アルキルまたは−COOH基であり;Rが低級アルキルであるか;あるいは、RおよびRがともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成する、式(IIA)で表される化合物およびその誘導体が好ましい。上記の各組成物の1つの特定の態様において、Halは臭素または塩素である。
【0045】
式(IIA)で表される化合物の誘導体は、医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステルもしくはアリール基を含むエステル、置換基Xが結合する炭素原子に結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体を含む。この態様における用語「低級」は、1〜6個、好ましくは1〜4個の炭素原子を含む残基を含む。この態様における用語「アリール」は、1または2個の芳香環中に5〜10個の炭素原子を有するアリールを含み、所望により1〜4個の炭素原子を含む脂肪族側鎖を含んでもよく、所望により環系中にN、OまたはSなどのヘテロ原子を2個まで含んでもよい。アリールエステルは、フェノール、ベンジルアルコール、α−ナフトール、β−ナフトール、ニコチニルアルコールなどの化合物とともに形成され得る。
【0046】
本発明は、式(III):
A−C(R)R(CH−C(YZ)−X’ (III)
[式中、Aは水素またはHalN−であり、ここで、Halはクロロおよびブロモからなる群より選択され;
Rは炭素−炭素単結合、または3〜6つの炭素原子を有する二価の(C−C)シクロアルキレンラジカルであり、
は水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;
は低級アルキルであるか;あるいは
およびRはともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成し;
nは0または1〜13の整数であり;
Yは水素、低級アルキルまたは−NH、−NHHalまたは−NHalであり;
Zは水素または低級アルキルであり;ならびに
X’は水素、−COOH、−CONH、−SOH、−SONHまたは−P(=O)(OH)である]
で表されるN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体を含む、システム、組成物および方法を提供する。Rが二価の(C−C)シクロアルキレンラジカルである場合、nは11を超えないだろう。言い換えると、酸性基X’を含むアミノ酸は、16原子までの鎖を有するだろう。所望により、二価の(C−C)シクロアルキレンラジカルまたは二価ラジカル−(CH−において、1個の水素原子は、−NHHalまたは−NHalと置換されてもよい。本発明のN,N−ジハロアミノ酸は、−NHal基を3個まで含んでもよいが、1または2個の−NHalを有するN,N−ジハロアミノ酸が好ましい。1個の−NHal基を有するN,N−ジハロアミノ酸が、最も好ましい。この基は、オメガ位のR基またはR基(Rが−COOHである場合)またはX’に対して、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロン位であり得る。N−モノハロアミノ、特に式(III)の−NHal基が−NHHal基で置換されるN−モノクロロアミノ酸およびその誘導体(式(IIIA))もまた含まれる。
【0047】
式(III)、(IVA)または(IVB)(下に記載する)で表される化合物の誘導体は、医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステルもしくはアリール基を含むエステル、置換基XもしくはX’が結合する炭素原子に結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体、およびそれらのN−モノハロアミノ酸誘導体を含む。この態様における用語「低級」は、1〜6個、好ましくは1〜4個の炭素原子を含む残基を含む。この態様における用語「アリール」は、1または2個の芳香環中に5〜10個の炭素原子を有するアリールを含み、所望により1〜4個の炭素原子を含む脂肪族側鎖を含んでもよく、所望により環系中にN、OまたはSなどのヘテロ原子を2個まで含んでもよい。アリールエステルは、フェノール、ベンジルアルコール、α−ナフトール、β−ナフトール、ニコチニルアルコールなどの化合物を用いて形成され得る。
【0048】
好ましい実施態様において、Rは炭素炭素単結合であり、nは0または1〜7の整数、より好ましくは0または1〜5の整数、そして最も好ましくは0または1〜3の整数である。
【0049】
別の態様において、抗菌活性を有するシステム、組成物および方法は、式(IVA)もしくは(IVB):
HalN−C(R)−(CH−C(YZ)−X (IVA)
HalNH−C(R)−(CH−C(YZ)−X (IVB)
[式中、Halはクロロおよびブロモからなる群より選択され;
は水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;
は低級アルキルであるか;あるいは
およびRはともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成し;
nは0または1〜3の整数であり;
Yは水素、低級アルキルまたは−NHであり;
Zは水素または低級アルキルであり;ならびに
Xは−COOH、−CONH、−SOHまたは−SONHである]
で表されるN,N−ジハロアミノ酸またはN−モノハロ誘導体を含み、ここで、誘導体は、医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステル、アリール基を含むエステル、置換基Xが結合する炭素原子に結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体からなる群より選択され、ここで、YはC1−6アルキル−CONH−である。この態様における用語「アリール」は、1または2個の芳香環中に5〜10個の炭素原子を有するアリールを含み、所望により1〜4個の炭素原子を含む脂肪族側鎖を含んでもよく、所望により環系中にN、OまたはSなどのヘテロ原子を2個まで含んでもよい。アリールエステルは、フェノール、ベンジルアルコール、α−ナフトール、β−ナフトール、ニコチニルアルコールなどの化合物を用いて形成され得る。
【0050】
別の態様において、式(IVA)で表されるN,N−ジハロアミノ酸またはそのN−モノハロ誘導体(IVB)を含む上記の組成物は、Rが水素または低級アルキルであり;nが0、1または2であり;Yが水素または低級アルキルであり;Xが−SOHまたは−SONHであるか;あるいはその誘導体;誘導体が医薬上許容される塩または低級アルカノールを有するエステルからなる群より選択されるものである。
【0051】
さらなる態様において、式(IVA)で表されるN,N−ジハロアミノ酸またはそのN−モノハロ誘導体(IVB)を含む上記の組成物は、YおよびZが水素であり;Xが−SOHであり;および誘導体が医薬上許容される塩であるものである。上記の式の別の態様において、Halはクロロである。
【0052】
式(I)、(II)、(IIA)、(III)、(IIIA)、(IVA)または(IVB)で表される化合物またはそれらの誘導体の医薬上許容される塩は、医薬上許容される陽イオンを有する塩を含む。N−ハロ−またはN,N−ジハロアミノ酸の塩は、−COOH、−SOHまたは−SONH基を有する塩基の塩を含む。医薬上許容される塩はまた、アンモニウム、アルカリ金属、マグネシウムまたはカルシウム塩、および任意の有機アミン塩を含む。アルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウムおよびアルミニウム塩が、好ましい。アルカリ金属塩、特にリチウム、ナトリウムおよびカリウム塩が、特に好ましい。一般に、ハロゲン化アミノ酸の塩は、体液に接触した場合または酸性溶媒に接触した場合に放出され得る遊離ハロゲン化アミノ酸ソースとして機能し得る。
【0053】
酸付加塩の例としては、限定するものではないが、アミンなどの塩基性残基のミネラルもしくは有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリもしくは有機塩などが挙げられる。医薬上許容される塩としては、限定するものではないが、ヒドロハライド、硫酸、メト硫酸、メタン硫酸、トルエンスルホン酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、乳酸などが挙げられる。
【0054】
適切な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985, p. 1418、またはThe Merck Index, Thirteenth Edition, 2001, Merck Research Laboratories Division of Merck & Co.出版, Inc. MISC−22およびMISC−23頁において見出される(それらの開示全体を出典明示で本明細書の一部とする)。置換基XもしくはX’が結合する炭素原子に結合する−NH基の医薬上許容される酸付加塩としては、とりわけ塩酸、スルホン酸、リン酸、硝酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸および他の酸との塩が挙げられる。
【0055】
式(I)、(II)、(IIA)、(III)、(IIIA)、(IVA)および(IVB)で表される化合物のさらなる誘導体としては、低級アルカノールを有する−COOHまたは−SOH基のエステル、アリール基を含むエステル(本明細書に記載)および置換基XもしくはX’が結合する炭素原子に結合するアミノ酸の低級アルカノイル誘導体が挙げられる。式(I)、(II)、(IIA)、(III)、(IIIA)、(IVA)および(IVB)で表される化合物のさらなる誘導体としてはまた、アミノ酸分子の特定の基が保護基によって保護されるN−ハロアミノ酸またはN,N−ジハロアミノ酸が挙げられる。本明細書で使用される「保護基」としては、(a)反応性基が望ましくない化学反応に関与することから保護し、(b)反応性基の保護がもはや必要とされなくなった後に容易に除去され得る化学基を意味する。保護基の除去は、化学合成によって実施され得るか、または、所望により、保護基は適切な条件またはインビボで水分もしくは液体などの溶媒に接触した場合に除去され得る。
【0056】
「アミノ保護基」は、特定の化学反応によってほかに修飾される反応性アミノ基を保護する保護基を意味する。アミノ保護基の制限しない例としては、2〜4個の炭素原子を有するホルミル基もしくは低級アルカノイル基、特にアセチルもしくはプロピオニル基、モノメトキシトリチル基などのトリチルもしくは置換トリチル基、4,4−ジメトキシトリチルもしくは4,4−ジメトキシトリフェニルメチル基などのジメトキシトリチル基、トリフルオロアセチル、およびN−(9−フルオレニル−メトキシカルボニル)もしくは「FMOC」基、ベンジルオキシカルボニル(CBZ基)のような、アリルオキシカルボニルもしくは(C−C12)アリール低級アルキルカルボナート(例えば、ベンジルクロロカルボナート由来のN−ベンジルオキシカルボニル基)などのハロカルボナート由来か、もしくは第3級ブチルハロカルボナート、特に第3級ブチルクロロカルボナートもしくはジ(低級)アルキルジカルボナート、特にジ(t−ブチル)−ジカルボナートなどのビフェニルアルキルハロカルボナートもしくは第三級アルキルハロカルボナート由来の他の保護基、およびフタリル基が挙げられる。適切な保護基の他の例は、T.W. Greene, Protecting Groups in Organic Synthesis, 3rd edition, John Wiley & Sons, Inc. 1999において見出され得る。特定の官能基(例えば、アミノまたはカルボキシ基)が保護されるハロゲン化アミノ酸は、酸性溶媒、水、または体液などの水溶液と接触した場合に非保護または遊離ハロゲン化アミノ酸のソースとして機能し得る。
【0057】
式(I)、(II)、(IIA)、(III)、(IIIA)、(IVA)または(IVB)で表される化合物の−CONHまたは−SONH基において、1または2個の水素原子が1または2個のHal原子と置換されてもよく、ここで、Halはクロロもしくはブロモであって、−CONHCl、−CONCl、−SONHBrまたは−SONBr基を有する化合物を生じる。同様に、−CONHAlkまたは−CONHAcまたは−SONHAlkまたは−SONHAc(ここで、Alkが低級アルキルであり、Acが低級アシルである)であるアルキル化またはアシル化−CONHまたは−SONH基において、−NH水素原子は、クロロまたはブロモに置換されてもよい。低級アルキルおよび低級アシルは、1〜4個の炭素原子を有する基を意味する。
【0058】
好ましい誘導体は、医薬上許容される塩である。
別の態様において、上記の組成物としては、以下の化合物またはその誘導体が挙げられ、誘導体は、医薬上許容される塩および低級アルカノールとのエステルからなる群より選択される:N,N−ジクロロ−2,2−ジメチルタウリン、N−クロロ−2,2−ジメチルタウリン、N,N−ジクロロ−1,1,2,2−テトラメチルタウリン、N−クロロ−1,1,2,2−テトラメチル−タウリン、N,N−ジブロモ−2,2−ジメチルタウリン、N−ブロモ−2,2−ジメチルタウリン、N,N−ジブロモ−1,1,2,2−テトラメチルタウリン、N−ブロモ−1,1,2,2−テトラメチルタウリン、N,N−ジクロロ−2−メチルタウリン、N−クロロ−2−メチルタウリン、N,N−ジクロロ−2,2,3,3−テトラメチル−βアラニン、N−クロロ−2,2,3,3−テトラメチル−β−アラニン、N,N−ジクロロ−3,3−ジメチルホモタウリン、N−クロロ−3,3−ジメチルホモタウリン、N,N−ジクロロ2−メチル−2−アミノ−エタンスルホン酸、Nクロロ−2−メチル−2−アミノ−エタンスルホン酸、N,N−ジクロロ 1−メチル−エタンスルホン酸、N,N−ジクロロ 1−メチル−エタンスルホン酸、N−クロロアミノトリメチレンホスホン酸、N,N−ジブロモ−2−アミノ−5−ホスホノ−ペンタン酸、N−ブロモ 2−アミノ−5−ホスホノペンタン酸、N,N−ジクロロアミノエチル−ホスポン酸ジエステル、N,N−ジクロロアミノエチル−ホスポン酸ジエチルエステル、N−クロロアミノエチルホスポン酸ジエステル、N−クロロアミノエチルホスポン酸ジエチルエステル、N,N−ジクロロ 1−アミノ−1−メチルエタンホスホン酸、N−クロロ 1−アミノ−1−メチル−エタンホスホン酸、N,N−ジクロロ 1−アミノ−2−メチルエタンホスホン酸、N−クロロ 1−アミノ−2−メチルエタンホスホン酸、N,N−ジクロロ 1−アミノ−2−メチルプロパンホスホン酸、N−クロロ 1−アミノ−2−メチルプロパンホスホン酸、N,N−ジクロロロイシンホスホン酸、N−クロロロイシンホスホン酸、N,N−ジクロロ−4−アミノ−4−ホスホノ酪酸、N−クロロ 4−アミノ−4−ホスホノ酪酸、(±)N,N−ジクロロ 2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸、(±)N−クロロ 2−アミノ−5−ホスホノ−吉草酸、N,N−ジクロロ(+)2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸、N−クロロ(+)2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸、N,N−ジクロロ d,l−2−アミノ−3−ホスホノプロピオン酸、N−クロロ d,l−2−アミノ−3−ホスホノプロピオン酸、N,N−ジクロロ 2−アミノ−8−ホスホノオクタン酸、N−クロロ 2−アミノ−8−ホスホノオクタン酸、N,N−ジクロロロイシンボロン酸、N−クロロロイシンボロン酸、N,N−ジクロロ−β−アラニンボロン酸、またはN−クロロ−β−アラニンボロン酸、およびその医薬上許容される塩またはエステル。
【0059】
別の態様において、式(I)、(II)、(IIA)、(III)、(IIIA)、(IVA)もしくは(IVB)で表されるモノ−もしくはジハロアミノ酸、またはそれらの誘導体を含む、本明細書に記載の組成物は、Halがクロロであるものである。さらに別の態様において、式(I)、(II)、(IIA)、(III)、(IIIA)、(IVA)もしくは(IVB)で表されるモノ−もしくはジハロアミノ酸、またはそれらの誘導体を含む、本明細書に記載の組成物は、Halがブロモまたはクロロであるものである。
【0060】
N−ハロゲン化アミノ酸およびそれらの誘導体および好ましいN−ハロゲン化アミノ酸、N−ハロゲン化アミノ酸の調製プロセスのさらなる詳細は、2206年1月25日に出願され、係属中のPCT出願第PCT/US2006/002875号において開示されている(その開示全体を出典明示で本明細書の一部とする)。上で参照する係属中の出願において好ましいものとして示唆されるN−ハロゲン化アミノ酸が、本明細書において開示する抗菌システムにおける使用に好ましく、出典明示で本明細書の一部とする。
【0061】
抗菌システム、組成物および方法は、式(I):
A−C(R)R(CH−C(YZ)−X’ (I)
[式中、
Aは水素、HalNH−またはHalN−であり、ここで、Halはクロロおよびブロモからなる群より選択されるが、クロロが好ましく;
Rは炭素−炭素単結合、または3〜6個の炭素原子を有する二価のシクロアルキレンラジカルであり;
は水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;
は水素または低級アルキルであるか;あるいは
およびRはともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成し;
nは0または1〜5の整数であり;、
Yは水素、低級アルキルまたは−NH、−NHHalまたは−NHalであり;
Zは水素または低級アルキルであり;
X’は水素、−COOH、−CONH、−SOH、−SONHまたは−P(=O)(OH)であり;
Rが二価のシクロアルキレンラジカルであり、nが1〜3の整数である場合、二価のラジカルRまたは二価ラジカル−(CHは−NHHalまたは−NHalと置換されてもよい]
で表されるN,N−ジハロアミノ酸またはその誘導体をさらに含み、誘導体は、医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステル、または置換基XもしくはX’が結合する炭素原子に結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体である。
【0062】
上記の式の別の態様において、Rは低級アルキルである。上記の式のさらに別の態様において、Rは炭素炭素単結合である。
【0063】
別の態様において、N−ハロ−もしくはN,N−ジハロアミノ酸が1個もしくは2個の−NHHalもしくは−NHalを含むか、またはN−ハロ−もしくはN,N−ジハロアミノ酸が1個の−NHHalもしくは−NHalを含む、システム、組成物または方法が提供される。上記の1つのバリエーションにおいて、−NHHalまたは−NHal基は、X’基に対してアルファ、ベータまたはガンマ位にある。別の態様において、Aは−NHHalまたは−NHalである。さらに別の態様において、−NHHalまたは−NHal基は、二価のラジカルRまたは−(CH−に結合する。上記の別の態様において、Halはクロロである。
【0064】
本発明の1つの態様において、誘導体は医薬上許容される塩である。
本発明の別の態様において、式(II):
HalN−C(R)−(CH−C(YZ)−X (II)
[式中、Halはクロロおよびブロモからなる群より選択されるハロゲンであり;
は水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;
は水素、低級アルキルであるか;あるいは
およびRはともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成し;
nは0または1〜3の整数であり;
Yは水素、低級アルキル、または−NHであり;
Zは水素または低級アルキルであり;ならびに
Xは−COOH、−SOHである]
もしくはHalN−基がHalHN−基で置換される式(IIA)を有するN−ハロゲン化アミノ酸、またはその誘導体を含むシステム、組成物および方法が提供され、誘導体は、医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステル、および置換基Xが結合する炭素原子に結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体からなる群より選択される。
【0065】
さらに別の態様において、式(II):
HalN−C(R)−(CH−C(YZ)−X (II)
[式中、Halはクロロおよびブロモからなる群より選択されるハロゲンであり;
は水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;
は水素、低級アルキルであり;
nは0または1〜3の整数であり;
Yは水素、低級アルキル、または−NHであり;
Zは水素または低級アルキルであり;
Xは−COOH、−CONH、−SOHまたは−SONHである]
もしくはHalN−基がHalHN−基で置換される式(IIA)を有するN−ハロゲン化アミノ酸、またはその誘導体を含むシステム、組成物および方法が提供され、誘導体は、医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステル、および置換基Xが結合する炭素原子に結合する−NH基の低級アルカノイル誘導体からなる群より選択される。式(II)中のHalNは、HalHN−と置換され得る(式(IIA))。
【0066】
1つの態様において、式(IVA)もしくは(IVB):
HalN−C(R)−(CH−C(YZ)−X (IVA)
HalNH−C(R)−(CH−C(YZ)−X (IVB)
[式中、Halはクロロおよびブロモからなる群より選択されるハロゲンであり;
は水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;
は低級アルキルであり;
nは0または1〜3の整数であり;
Yは水素、低級アルキルまたは−NHであり;
Zは水素または低級アルキルであり;ならびに
Xは−COOH、−CONH、−SOHまたは−SONHである]
で表されるN−ハロゲン化アミノ酸またはその誘導体を含むシステム、組成物および方法が提供され、誘導体は、医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステルからなる群より選択される。1つのバリエーションにおいて、Rは水素または低級アルキルであり;nは0、1または2であり;Yは水素または低級アルキルであり;Zは水素または低級アルキルであり;ならびにXは−SOHまたは−SONHであるか;あるいはその誘導体;誘導体は医薬上許容される塩または低級アルカノールを有するエステルからなる群より選択される。別のバリエーションにおいて、YおよびZはともに水素であり;Xは−SOHであるか;または誘導体は医薬上許容される塩である。
【0067】
別のバリエーションにおいて、本発明は、2006年1月25日に出願され、係属中のPCT出願第PCT/US2006/002875号(その開示全体を出典明示で本明細書の一部とする)に記載の次亜ハロゲン酸もしくは次亜ハロゲン酸ソースと、式(I)、(II)、(IIA)、(III)、(IIIA)、(IVA)もしくは(IVB)で表されるハロゲン化アミノ酸またはその誘導体、または特定のハロゲン化アミノ酸、またはハロゲン化アミノ酸の併用を含む、抗菌システム、組成物および方法を提供する。抗菌システム、組成物または方法においてN−ハロゲン化ソースが次亜ハロゲン酸ソースと併用される場合、ハロゲン化アミノ酸中のハロゲン原子、および次亜ハロゲン酸中のハロゲン原子は同じである。すなわち、N−塩素化アミノ酸は、次亜塩素酸とともに使用されるだろう。例えば、N,N−ジクロロ−2,2−ジメチルタウリンは、次亜塩素酸と一緒に使用され得る。アミノ保護ハロゲン化アミノ酸が次亜塩素酸と併用される場合、非保護ハロゲン化アミノ酸が、本明細書に記載の抗菌システム、組成物および方法において放出され得る。これは、組成物中に次亜塩素酸が存在することで、保護基の除去および遊離ハロゲン化アミノ酸の放出がもたらされることを意味する。
【0068】
本明細書に記載の抗菌化合物の使用は、尿路感染症(UTI)、特にカテーテル関連尿路感染症(CAUTI)の有効な処置であるので、以下の重要な領域において有用である:感染を可能にする細菌の生物膜形成が栄え、カテーテルを用いた患者において細菌尿を引き起こす機会を最小化すること、形成し得る生物膜に浸透/根絶するか、生物膜を減少させること、ならびにカテーテルが感染、および続く生物膜形成に起因する皮殻および閉塞に抵抗するのに役立つこと。
【0069】
システムは、本明細書に記載の他のデバイスと組み合わせることで、ウイルス、酵母または真菌感染、特に細菌感染に付随するものなどの他の微生物感染を処置し、防止/予防することに有用である。本明細書に記載の抗菌化合物、システムおよび処置はまた、特に高齢患者、化学療法を受けている患者、HIV患者などのウイルス疾患に罹患している患者、免疫系が医薬品によって下方制御され得る、移植を受けた患者、および侵襲性手技に供された患者などの免疫低下している患者における菌血症または敗血症(血液中毒または敗血性発熱)または敗血性ショックの危険性を減少させることに役立つ。
【0070】
本発明の実施において用いられる抗菌化合物は、抗生物質に分類されるものではない。本発明の目的のために、「抗生物質」は、感染性微生物を抑制するか、または破壊し得る、微生物によって産生される化学物質、または合成もしくは半合成アナログ、またはそのような化学物質の誘導体(例えば、ペニシリン)と定義される。
【0071】
これらの従来の抗生物質は、所望により本発明のシステムと体系的に組み合わせて使用され得るものの、従来の抗生物質の乱用を回避することが本発明の目的である。抗菌化合物の組成物および抗菌組成物が、医療用デバイス、特にカテーテルおよびポートの洗い流しおよびコーティングでの使用のために提供される。
【0072】
本発明の好ましい医療用デバイスは、本明細書に記載の尿路カテーテルである。
尿路カテーテルは、尿道を通じて膀胱に挿入されるチューブからなる。男性において、尿路カテーテルはペニスの先端を通して挿入され、女性において、尿路カテーテルは道を通じて挿入される。
図1:挿入プロセスの間のカテーテル
【0073】
最も知られたカテーテルは、二重管腔フォーリーカテーテル、外科出術から回復中の病院の患者にしばしば用いられるデバイスである。フォーリーカテーテルの先端は、フォーリーカテーテルの先端が膀胱に入るまで挿入される。先端付近にあって、可膨張性で、小さく、両側性のバルーンは、膨張させた場合、カテーテルを所定の場所にて保持する。チューブの先端は開口を有していて、尿の採取のために採取容器への流動を可能にする。「T」接合部などの側面ポートが、さらなる感染の手段を最小化する一方で、滴下および灌注の繰り返しを容易にするために、カテーテル経路に導入され得る。これらのカテーテルは、断続的なバックフローを使用して洗い流され得る(すなわち、処置組成物による、ポート開口からカテーテルを遡って膀胱までの灌注)。
図2:挿入後のフォーリーカテーテル
【0074】
外科手術後の血液および細片を除去するために、膀胱を洗い流すか、すすぐ必要が認められる場合、三重管腔フォーリーカテーテルが代わりに使用され得る。この型のカテーテルは、リザーバーからの液体が膀胱に提供され、メインの管腔を通って尿とともに容器へと流出され得るさらなる管腔を有する。これらのカテーテルは、連続的な流れを使用して洗浄され得る。
図3:挿入後の三重管腔フォーリーカテーテル
【0075】
本明細書に記載の処置に従って使用される典型的なカテーテルは、米国特許第4,245,639号および米国特許第4,337,775号において開示されている。これらのカテーテルは、ドレナージ手段(例えば、カニューレ)、およびドレナージ手段を患者の膀胱の所定の場所にて保持する手段(例えば、可膨張性バルーン)を有する。ドレナージおよび保持手段は、細菌の生物膜形成に曝され得る内側および外側表面を有する。
【0076】
カテーテルは一般に、尿道を通じて膀胱に入れられるが、いくつかの場合、恥骨上留置カテーテルは、恥骨上部の腹部に外科的に作成した開口(ストーマ)を通して膀胱に直接入れられる。
【0077】
抗菌組成物
本発明の1つの実施態様において、殺菌(すなわち、病原体を不活性化する能力)有効量の抗菌組成物を用いた医療用デバイスおよび/または周辺組織の処理/処置方法が提供される。量はmMの単位で与えられ、mMはミリモル/lに等しい。別の態様において、医療用デバイスが患者に挿入される前または後に、医療用デバイスの使用に付随する感染を処置するか、抑制するか、減少させるかまたは防止/予防する方法が提供される。
【0078】
方法は、医療用デバイスを殺菌有効量の抗菌組成物水溶液で処理または接触させる工程を包含し、この組成物は以下を含む:
(A)抗菌化合物であって、以下:
(1)ハロゲン化アミノ酸またはハロゲン化アミノ酸ソースの少なくとも1つを含み、次亜ハロゲン酸(HOHal、ここで、Halはクロロまたはブロモ)または次亜ハロゲン酸ソースと組み合わせてもよく;
(2)ハロゲン化アミノ酸はN−ハロゲン化またはN,N−ジハロゲン化アミノ酸の少なくとも1つを単独または組み合わせて含み;
(3)ハロゲン化アミノ酸の濃度は、組成物中で約1mM〜約1000mMの範囲である、抗菌化合物、ならびに
(B)水溶液であって、以下:
(1)塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1つの塩類成分(ハロゲン化物塩)を含み;
(2)組成物のpHは約2〜約8、好ましくは2.6〜7.5の範囲であり;
(3)塩類成分の濃度は、0〜約20g/l、好ましくは約2〜約20g/l組成物水溶液、より好ましくは約4〜約12g/lであり;
(4)酸、緩衝剤およびキレート剤、有機または無機を含む他の構成物を含んでもよい、水溶液。
【0079】
最適のpH範囲は処置されるべき症状、組成物を含む成分および構成物およびそれらの相対的な割合、使用する化合物にとって好ましいpH範囲、ならびに特定の組成物およびそれらの使用方法に用いられる他の変量に依存する。
【0080】
本発明のいくつかの態様において、N−ハロアミノ酸化合物を含む組成物のpH範囲は、pH2〜pH8の間であってもよい。特定のバリエーションにおいて、組成物のpH範囲は、pH〜4〜pH6、pH4.5〜pH5.5、pH2〜pH4、pH2.5〜pH3.5、pH5〜pH8、pH6〜pH7の間であってもよいか、または組成物の生物学的活性を至適化するために所望されるpHである。
【0081】
モノハロアミノ酸(またはN−ハロアミノ酸)化合物を含む組成物について、pH範囲は好ましくはpH7〜pH8である。特定の症状において、これらの化合物は、低いpH値で不均化反応が増加し、遊離アミンおよび対応するジクロロ化合物を生じることが観察されている。
【0082】
HOBrまたはHOClの使用を含む組成物について、組成物のpHは好ましくは、3.5〜pH7.5、またはpH4〜pH7、pH5〜pH6の間である。
【0083】
従って、特定の治療的適用、特定の症状、組成物を含む特定の成分、または上記の化合物の混合物を含む組成物のpHに依存して、pH範囲は当業者によって決定される組成物の有効性を至適化するように選択されるべきである。
【0084】
本明細書に記載するように、ハロゲン化物塩は、組成物の任意の成分である。すなわち、ハロゲン化物塩は組成物中に存在してもよく、存在しなくてもよい。組成物の1つの特定の態様において、ハロゲン化物塩は、組成物中に約0.05g/lまたはより高い濃度で存在し得る。
【0085】
別の態様において、方法は、医療用デバイスを使用して、上記の水溶液を患者に投与する工程を包含する。1つの特定のバリエーションにおいて、医療用デバイスはカテーテルである。
【0086】
N−ハロゲン化アミノ酸ソースは、それは物理的な組成物、例えば、その環境に依存してN−ハロゲン化アミノ酸を放出する能力を有する組成物である。N−ハロゲン化アミノ酸ソースは、N−ハロゲン化アミノ酸に適合性であって、N−ハロゲン化アミノ酸によって易酸化性でなく、または次亜ハロゲン酸とハロゲン化アミノ酸との組合せ(そのような組合せが用いられる場合)によって易酸化性でないN−ハロゲン化アミノ酸のキャリアであってもよい。そのようなキャリアは、例えば、尿道開口を浄化するために、本明細書に記載のシステムと組み合わせて使用され得る布などの易酸化性材料であってもよい。別のN−ハロゲン化アミノ酸ソースとしては、体液などの水または水溶液システムまたは溶液と接触した場合にN−ハロゲン化アミノ酸を放出する非易酸化性微小カプセルが挙げられ得る。別のN−ハロゲン化アミノ酸ソースは、体液などの水または水溶液システムまたは溶液と接触した場合にN−ハロゲン化アミノ酸を放出するN−ハロゲン化アミノ酸前駆物質またはプロドラッグであってもよい。好ましいN−ハロゲン化ソースはN−ハロゲン化アミノ酸であって、最も好ましくはN,N−ジクロロ−2,2−ジメチルタウリンである。
【0087】
別の態様において、この開示は本明細書で考察する医療用デバイスの使用のための抗菌組成物を記載する。
好ましいデバイス処理または患者の医学的処置は、抗菌化合物N,N−ジクロロ−2,2−ジメチルタウリンを含む抗菌組成物を使用する。他の好ましいN−ハロゲン化化合物は上に記載されており、式(I)、(II)、(IIA)、(III)、(IIIA)、(IVA)もしくは(IVB)によって含まれるか、または上記の特定の化学名によって同定される。
【0088】
一般に、本明細書に記載のシステムにおいて、上記の請求項1に記載の構成物5および/または構成物6の各構成物は、0、または約1mM〜約100mMの濃度で存在してもよい。
【0089】
好ましいデバイスまたは処理/処置では、N−ハロゲン化アミノ酸の濃度が500mMまで、または300mMまで、または200mMまで、または150mMまでである。デバイスまたは処理/処置は、N−ハロゲン化アミノ酸濃度またはN−ハロゲン化アミノ酸と次亜ハロゲン酸との組合せの濃度(以降、「組合せ濃度」という)は、組成物中で約4mM〜約100mMの範囲であることがより好ましい。1つのバリエーションにおいて、N−ハロゲン化アミノ酸の濃度または組合せ濃度は、約10mM〜約70mM、または約5mM〜約40mMの範囲である。別のバリエーションにおいて、N−ハロゲン化アミノ酸の濃度または組合せ濃度は、約50mM〜約80mM、または約4mM〜約50mMの範囲である。別のバリエーションにおいて、N−ハロゲン化アミノ酸の濃度または組合せ濃度は、約60mM〜約75mM、または約30mM〜約500mMの範囲である。別のバリエーションにおいて、総または組合せ濃度(N−ハロゲン化アミノ酸および次亜ハロゲン酸濃度)は、2mM〜20mMであってもよい。
【0090】
塩類成分(ハロゲン化物塩)に関して、好ましい無機塩は、約2%重量、好ましくは約0.2〜約2%重量、より好ましくは0.4〜約1.2%重量NaClの濃度(通常または等張の生理食塩水溶液の約4分の1からわずかに高い)の塩化ナトリウムである。用語「ハロゲン化物塩」および用語「塩類成分」は、本明細書に記載の組成物が生物学上または生理学上許容される塩濃度を達成することを目的とするという事実を反映するように、本明細書において互換的に使用される。本発明のさらに別の態様において、水溶液中の無機塩は、約0.7〜約1.0%重量の濃度である。上記のバリエーションにおいて、無機塩は塩化ナトリウムである。N−ブロモまたはN,N−ジブロモアミノ酸が使用される場合、N−ブロモまたはN,N−ジブロモアミノ酸が分解するので、塩類成分が存在しないことが好ましい。Parker’s McGraw−Hill Dictionary of Scientific and Technical Terms, S. P. Parker, editor, Fifth Editionに従えば、「通常の生理食塩水」、「生理学的生理食塩水」、「生理学的塩溶液」は、「100ml中に0.9gの塩化ナトリウムを含み、体液と等張である、精製水中の塩化ナトリウム溶液」と定義される。ハロゲン化リチウム、ハロゲン化カリウムなどの異なるハロゲン化物塩について、等張溶液を構成する塩の濃度は、本発明の溶液の所望のモル浸透圧濃度を維持するために、水溶液中の塩化ナトリウム濃度と異なってもよい。
【0091】
より有効なデバイスは、塩類成分の濃度が約7〜約10g/l組成物の範囲である組成物で処理され得る。同じく、最も有効な抗菌処置選択肢において、患者は、ハロゲン化物塩の濃度が約7〜約10g/lであり、9g/lが最も好ましい抗菌組成物で処置される。
【0092】
処理/処置に好ましいpHは、約3.3〜約5.5、より好ましくは約3.5〜5.0の範囲である。組成物の使用に依存して、pHは、約3.5〜約4.5、または約3.5〜約4.0、または約3.8〜約4.3、または約4.0〜約4.5、または約4.3〜約4.8、または約4.5〜約5.0、または約4.8〜約5.3、または約5.0〜約5.5であってもよい。pHは、約2.0〜約8.0の広範なpH範囲内の任意のpH範囲(例えば、2.6〜6;6〜8など)でよい。例えば、カテーテルの先端周辺に皮殻形成の危険性を有する患者にとって、より酸性であるpH範囲が、リン酸カルシウムまたはマグネシウム結晶由来の結晶沈着に対抗するために好ましい。
【0093】
上記のように、医療用デバイスまたは膀胱中および周辺の領域における細菌は、ウレアーゼ、尿素を二酸化炭素および2当量のアンモニアに加水分解する酵素を産生する。加水分解は、尿のpHを上昇させる。漸増するpHの結果として、リン酸カルシウムおよびマグネシウム沈着物の形成を促し、それはカテーテルの先端に皮殻を生じる。
【0094】
緩衝系:pHの上昇に対抗するために、適切な緩衝系は、pHをより低い範囲で維持するために使用されてもよい。至適な緩衝系および緩衝条件および緩衝濃度の選択は、当業者に知られている。それらの選択は、他の因子の中でも、尿のpH、尿中の尿素の量、細菌感染の程度および種類などに依存する。しかし、一般に、緩衝液量は、カテーテルおよび患者の膀胱の中および周辺のpHを3〜6、または3.5〜5の間で維持するような量で、本明細書に記載の抗菌組成物中に存在し得る。
【0095】
電解質溶液を含む緩衝系の例としては、ClarkおよびLubs溶液,pH2.2〜4.0(Bower and Bates, J. Res Natn. Bur. Stand. 55, 197 (1955));β,β−ジメチルグルタル酸−NaOH緩衝溶液,pH3.2〜7.0(Stafford, Watson, and Rand, BBA 18, 318 (1955));酢酸ナトリウム−酢酸緩衝溶液,pH3.7〜5.6;コハク酸−NaOH緩衝溶液,pH3.8〜6.0(Gomeri, Meth. Enzymol. 1, 141 (1955));カコジル酸ナトリウム−HCl緩衝溶液,pH5.0〜7.0(Pumel, Bull. Soc. Chim. Biol. 30, 129 (1948));NaHPO−NaHPO緩衝溶液,pH5.8〜7.0(Gomeri and Sorensons, Meth. Enzmol. 1, 143 (1955));重フタル酸カリウム/HCl,pH3.0〜3.8;重フタル酸カリウム/NaOH pH4.0〜6;KHPO/NaOH,pH6.0〜7.0;およびリン酸モノカリウム/NaOH,pH6.0〜pH8.0またはNaOH/ホウ酸,pH7.8〜pH8.0(OECD Guideline for Testing Chemicals ”Hydrolysis as a Function of pH,” Adopted 12 May 1981, 111, pp. 10−11を参照のこと)などの周知の緩衝系が挙げられる。N−ハロアミノ酸の安定性に関して、N−ハロアミノ酸は、より低いpHで、N,N−ジハロアミノ酸およびデスハロゲン化アミノ酸に不均化されるので、より高いpH範囲が好ましい。単独での安定性に関して、N−ハロアミノ酸の好ましいpH範囲は、約7〜約8である。しかし、N,N−ジハロアミノ酸が対応するN−ハロアミノ酸より強力な抗菌効果を有するので、不均化反応は本明細書で開示するシステム、組成物および使用におけるN−ハロアミノ酸の使用を妨げない。しかし、そのことは、より長い安定性が必要とされるであろうキットおよびトレイの調製のための判断材料であろう。N,N−ジハロアミノ酸について、これらの化合物はより広範なpH範囲にわたって安定であるので、pH範囲は重大ではない。
【0096】
酸、エステルおよび塩:好ましい酸は、生物学上安全な濃度であって、抗菌化合物と生物学上適合性であるものである。酸は、酢酸、安息香酸、プロピオン酸、シュウ酸、塩酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、ジエチレントリアミン五酢酸、およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステル(Paraben)から選択される群のものであるか、または酸の生物学上許容される塩形態がクエン酸カリウム、メタリン酸カリウム、酢酸ナトリウム、およびリン酸ナトリウムから選択される群のものである。
【0097】
キレート剤:抗菌組成物はまた、生物学上許容され、抗菌化合物の存在下で安定であって、例えばCa2+またはMg2+の不溶性塩によってデバイスの皮殻を防止する安定なキレート剤を含み得る。
【0098】
構成物の性質に依存して、これらの構成物の各々は複数の機能を果たす。例えば、単一の構成物は、酸性、緩衝および/またはキレーティング特性を有し得る。他の構成物の好ましい濃度範囲は、1〜100mMである。キレート剤の濃度は、キレート剤が、カルシウム、マグネシウムおよびその混合物からなる群より選択される成分約10mMまで、約5mMまで、約2mMまで、または約1mMまでをキレートするように選択され得る。
【0099】
緩衝剤は、本明細書に記載のシステムおよび組成物について、いずれの所望されるpHまたはpH範囲も達成するように選択され得る。例えば、特定のシステムについて、緩衝剤組成物は、pHを約3.5〜約4.5の間で維持するように選択される。
【0100】
カテーテル表面は生物膜形成において重要な役割を担うので、好ましいデバイス表面は、組織接触に柔軟な表面を提供し、細菌尿またはCAUTIの敏感性を減少させる、漸増する親水性を有する。漸増する表面親水性は、例えばポリビニルピロリドンおよびポリエチレングリコールを用いるハイドロゲルコーティングによってなされる。
【0101】
あるいは、抗菌化合物(すなわち、N−ハロゲン化アミノ酸ソース)は、N−ハロゲン化アミノ酸が水溶液と接触することで生じるか、または活性化されるように、デバイス材料に含有されるか、包埋され得る。さらに、化合物は、周辺の空間に徐々に拡散され得る。あるいは、抗菌化合物は非活性な状態で存在し、水溶液中でカテーテルに供給される物質との化学反応によって活性化され得る。
【0102】
所望により、患者は、本発明の方法と組み合わせて、広域性または特異的な抗生物質で同時に、体系的に処置されてもよい。
【0103】
いくつかの実施例において、デバイスは、デバイスに接続されたリザーバー中に含まれる抗菌組成物を含む(図3を参照のこと)。一般に、ぶら下げたボトルなど、デバイス自体の位置より上方に持ち上げられる。
【0104】
リザーバーは、屈曲性であるか、または強固な管組織を有し得る分注導管またはデバイスを通じてカテーテルデバイスに取り付けられ得る。リザーバーが生物学的液体を受けるドレナージ容器中の抗菌組成物分注デバイスと構成されるように、デバイスは構成される。ドレナージ容器は、容器由来の尿を空にする場合など、多重分注デバイスがドレナージ容器に入れられ得るように、構成され得る。好ましいデバイスは、ドレナージ容器のより低い部位に分注デバイスを有し、抗菌組成物は分注デバイスから容器へと分注され得る。リザーバーはまた、デバイスが患者の膀胱に挿入された場合、カテーテルを所定の場所で固定するように構成され得る。
【0105】
本明細書に記載の処置から恩恵を最も受けるカテーテルの使用は、フォーリーカテーテルなどの留置カテーテルの使用である。あるいは、カテーテルはまた、断続的カテーテルであってもよい。
【0106】
同じく、本明細書に記載の処置から恩恵を受ける患者は、カテーテルの使用に関連または非関連の両方であり得る感染症に罹患している患者である。例としては、細菌感染症によって引き起こされるか、もしくは増悪される間質性膀胱炎、または真菌膀胱炎、特に神経学的傷害もしくは障害によって引き起こされる低活動膀胱疾患、過活動膀胱疾患、膀胱の制御の欠如(例えば、尿失禁患者、CAUTI、細菌尿もしくは尿道傷害に罹患している患者)などが挙げられる。
【0107】
本明細書に記載のデバイスは、尿道開口部を通しての挿入の前に、上記の抗菌組成物で処理され得る。いくつかのデバイス処理選択肢は、デバイスの灌注、洗い流し、すすぎまたは洗浄を含む。いくつかの処置選択肢は、本明細書に記載の組成物を使用する、患者の膀胱の洗浄および滴下を含む。
【0108】
処理/処置方法の手順:
デバイスを患者に挿入する前または後で、医療用デバイス中または周辺の感染を処置、抑制、減少または防止する方法、ならびにデバイスを患者に挿入した後で、患者において感染を予防または処置する方法は、以下のそれぞれの処理/処置工程を分離するか、組み合わせて包含する:
(a)患者へのデバイスの挿入前または患者からのデバイスの除去後に、上で定義する組成物にデバイスを接触させる工程;
(b)患者へのデバイスの挿入前または患者からのデバイスの除去後に、上で定義する組成物でデバイスを洗浄するか、浸すか、または洗い流す工程;
(c)患者への挿入後に、上で定義する組成物でデバイスを灌注して、デバイス上の皮殻を除去する工程;あるいは
(d)抗菌組成物をデバイスを通して患者の膀胱に滴下して、膀胱または尿道の内面の真菌、ウイルスまたは細菌感染症を処置または予防する工程。
【0109】
上記のそれぞれの処置工程を、下に記載する。
微生物感染症を処置、抑制または予防するための患者の処置は、本明細書に記載の組成物を含む溶液の十分量を使用するべきである。十分量は、1つの処理/処置手順(例えば、灌注または滴下)について、本明細書に記載するか、または特定の適用に必要と考える、N−ハロゲン化アミノ酸濃度または組合せ濃度で、滴下について1〜100mlの間、および灌注について10〜1000mlの間の用量範囲を意味する。重篤な感染の場合、手順は、抗菌効果を最大化するように繰り返されなければならないかもしれないことは、自明である。
【0110】
本発明は、上記の抗菌組成物で処理されるデバイス、あるいは(a)デバイス、またはデバイスを通じて患者を上記の抗菌組成物の殺菌有効量で処置するか、もしくはそれに接触させる工程、あるいは(b)上記の抗菌組成物をデバイス、もしくはデバイスを通じて患者に投与する工程を包含する、デバイスが患者に挿入される前または後で医療用デバイスの中もしくは付近の感染を処置、抑制、減少または予防する方法に関する。別の態様において、本発明はまた、該デバイスが患者に挿入される前もしくは後に医療用デバイス中または付近の感染を処置、抑制、減少、または防止する方法、あるいは(a)デバイス、またはデバイスを通じて患者を上記の抗菌組成物の殺菌有効量で処置するか、もしくはそれに接触させる工程、(b)あるいは上記の抗菌組成物をデバイス、もしくはデバイスを通じて患者に投与する工程を包含する、患者において感染を処置、抑制または予防する方法に関する。
【0111】
カテーテルデバイスの処理に使用される抗菌組成物溶液の量は、デバイスを満たすのに十分であるべきである。そのようなデバイスは典型的に、約1〜3mlの範囲の内部容量を有する。しかし、容量はデバイスの管組織の長さおよび直径とともに当然変動し、それは患者それぞれに依存し得る。本明細書に記載の抗菌組成物より大きな容量(例えば、20〜100ml)が、膀胱滴下などの手順に必要とされ得る。
【0112】
抗菌組成物を使用する前処理/処置:
本明細書に記載の医学的処置の選択肢および本発明の処理されるデバイスは主に、既に所定の場所にあるカテーテルに抗菌組成物を導入することに関するものの、当業者は、患者の身体を挿入部位およびその周辺に接触させることが細菌増殖のための部位の排除に役立ち得ることを理解されるだろう。従って、本発明の組成物によって、患者は処置され、カテーテルなどの医療用デバイスの表面は前処理されて、細菌尿を予防し、それによって続いて起こり得る感染を予防し得る。1つの方法において、医療用デバイスは、まず組成物で、次いで、挿入後に、断続的に上記の抗菌処理選択肢で繰り返し処理され得る。
【0113】
包装:
本発明はまた、本明細書に記載の処理/処置方法に有用である、上記の抗菌組成物を含むキットまたはトレイに関する。例えば、そのようなキットまたはトレイは、カテーテルの挿入、灌注または滴下のための抗菌組成物を事前に充填した、閉鎖型滅菌カテーテルシリンジを含み得る。トレイまたはキットは、潤滑剤、事前に包装した殺菌剤サプライ、事前に包装した追加の抗菌組成物、事前に包装したアルコールワイプなどを含み得る。さらに、キットまたはトレイは、本明細書の処理/処置におけるキットまたはトレイの使用方法の説明書を含み得る。
【0114】
処置される微生物:
本明細書に記載の抗菌組成物で処理したカテーテルの使用は、限定するものではないが、以下の微生物(細菌、ウイルスおよび真菌)によって引き起こされる細菌尿を減少させる:黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)および他のブドウ球菌(Staphylococcus)種、大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、プロテウス ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロビデンシア スチュアルティ(Providencia stuartii)、シュードモナス(Pseudomonas)種、腸球菌(Enterococci)、プロテウス(Proteus)種、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、エンテロバクター(Enterobacter)種、カンジダ(Candida)種、カンジダ グラブラタ(Candida galabrata)、カンジダ アルビカンス(Candida albicans)、セラチア マルセセンス(Serratia marcescens)、シトロバクター(Citrobacter)spp、モルガネラ モルガニー(Morganella morganii)、フェカリス菌(Enterococcus faecalis)、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)種、クロストリジウム ディフィシル(Clostridium difficile)、ラクトバチルス(Lactobacillus)種、および他の尿路疾患性微生物、アデノウイルスおよびヘルペス。
【0115】
本明細書の開示によるカテーテルなどの医療用デバイスの処理、または患者の抗菌処置は、上記の抗菌組成物でのカテーテルなどのデバイスの処理、またはそのような組成物のカテーテルデバイスを通じた患者への投与が含まれる。そのような処理/処置は、カテーテルの使用前のカテーテルの処理、および男性または女性の患者、成人または小児に挿入される間のカテーテルの処理を含む。処置/処理は、本明細書に記載の組成物とカテーテルとの接触の任意の形態、患者への投与を通じての本明細書に記載の組成物での抗菌処置を含む。そのような処理/処置の制限しない例としては、すすぐこと、洗浄すること、洗い流すこと、滴下することおよび灌注することが挙げられる。処理/処置はまた、抗菌組成物を含むカテーテルのバルーンの膨張を含む。処理/処置はまた、患者の膀胱を、本明細書に記載の組成物に浸すことが挙げられる。
【実施例】
【0116】
実施例1:カテーテルを用いる使用のための代表的な組成物としては、以下が挙げられる:
組成物A:
33mM N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン
0.9% NaCl
pH4
組成物B
33mM N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン
0.4% NaCl
pH4
組成物C:
33mM N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン
0.9% NaCl
pH3.5
組成物D:
20mM N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン
0.9% NaCl
pH2
組成物E:
50mM N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン
0.9% NaCl
pH5
15mM リンゴ酸
組成物F:
100mM N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン
0.9% NaCl
pH7
20mM リン酸
20mM リンゴ酸
組成物G
100mM N−クロロタウリン
0.9% NaCl
20mM 全リン酸ナトリウム緩衝液
pH 7.5
組成物H
40mM N,N−ジクロロタウリン
20mM HOCl
0.9% NaCl
10mM 酢酸−酢酸ナトリウム(pH4)
組成物I
40mM N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン
40mM N−クロロ2,2−ジメチルタウリン
100mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)
0.9% NaCl
【0117】
組成物A〜Iを、溶液の形態で調製する。全ての溶液を精製水で調製する。アミノ酸をインサイツ(in situ)にて水溶液中でハロゲン化することによって調製した後に、N−ハロゲン化アミノ酸を使用してもよい。溶液を調製するためにN−クロロ2,2−ジメチルタウリンまたはN−クロロタウリンをインサイツで使用し、次いで、インサイツの調製物をpH約8より高くして、モノハロゲン化化合物のみが形成されることを確実にしなければならない。ハロゲン化完了の後に、緩衝液を使用してpHを7〜8の範囲内に調整してもよく、生理食塩水を添加してもよい。組成物を含むN,N−ジハロアミノ酸の調製のために、pHが6または6より低く調整されていれば、正確なpHは重要ではない。あるいは、組成物のいくつかは、精製水中で溶解し、緩衝剤および塩類成分を添加してもよい固体形態で、N−ハロゲン化アミノ酸を含んでもよい。最上の方法は、低い生理食塩水濃度である組成物を調製することである。
【0118】
実施例2:カテーテルを尿道を通して女性および男性に挿入すること
以下は、カテーテルを挿入し、抗菌組成物を使用するための一般的な手順の説明である。当業者は無菌技術、閉塞を扱うことを含むカテーテルの扱いおよび医師、看護師または医療専門家に協力を求める時期を知ることに熟達であると考え、本発明に関連する工程のみ記載する。手順の残りの工程(例えば、手の洗浄または衛生化、カテーテルの円滑化、カテーテルを所定の場所に入れ、カテーテルのバルーンを膨張させること)、防護対策(例えば、滅菌手袋の使用および滅菌手袋の使用方法)、処置される患者への指示(例えば、呼吸または弛緩の指示)は、医師または看護師に周知である。
【0119】
−尿道開口を浄化するために、抗菌組成物C(実施例1に記載)5〜100mlを使用する。
−挿入プロセスの間、尿道がカテーテルと接触する前に殺菌されているように、カテーテルを通して抗菌組成物を徐々に押し込む。
カテーテルが尿道を通して膀胱まで挿入される時に、カテーテルを湿らせるために、抗菌組成物C1〜20mlを使用する。
【0120】
実施例3:部分的に閉塞した(外皮で覆われた)尿路カテーテルの流れをよくすること
以下は、部分的に閉塞したカテーテルを通る流れを改善するためのカテーテル灌注手順の例である。尿が膀胱から排出され得るように、カテーテルを組成物で灌注して、カテーテルの先端にある皮殻(栓)を除去する。
【0121】
本発明によるカテーテルの灌注は、上記の抗菌組成物を用いて栓をされた尿路カテーテルの流れをよくするための手順を構成し得る。当業者が無菌技術、閉塞を扱うことを含むカテーテルの扱いおよび医師、看護師または医療専門家に協力を求める時期を知ることに熟達であると考え、本発明に関連する工程のみ記載する。手順の残りの工程(例えば、カテーテルのバルーンを膨張させる方法)、防護対策(例えば、滅菌手袋の使用および滅菌手袋の使用方法)、処置される患者への指示(例えば、呼吸または弛緩の指示)は、医師または看護師によく知られている。
【0122】
本明細書で開示する組成物を用いた灌注手順のために、以下の指示を使用してもよい。
−シリンジ中に、抗菌組成物A(実施例1に記載)1〜100mlを引き込む。
−カテーテルをドレナージ管組織からは外した後に、抗菌組成物を含むシリンジをカテーテルに挿入する。
−シリンジのプランジャーを穏やかに押して、組成物をカテーテル中に徐々に押し込む。
−組成物がカテーテルに容易に流れ込まない場合、非常にわずかな力を使ってプランジャーを穏やかに引き戻して、液体を吸引する(退かせる)。
−抗菌組成物をカテーテルに挿入した後に、シリンジをカテーテルから取り除き、接続管組織を挿入する。
−再接続した後に管組織を点検して、尿が流れているかどうか見る。10〜15分間後に尿が流れていない場合、灌注プロセスを繰り返す。
【0123】
実施例4:膀胱滴下手順
本明細書で開示される組成物を用いる患者のための灌注手順のために、以下の指示を使用してもよい。当業者が無菌技術、閉塞を扱うことを含むカテーテルの扱いおよび医師、看護師または医療専門家に協力を求める時期を知ることに熟達であると考え、本発明に関連する工程のみ記載する。手順の残りの工程、防護対策(例えば、滅菌手袋の使用および滅菌手袋の使用方法)、処置される患者への指示(例えば、呼吸または弛緩の指示)は、医師または看護師によく知られている。
【0124】
膀胱洗浄または膀胱浴ともいう膀胱滴下は、炎症、感染を緩和し、膀胱の保護性上皮を修復する手助けをし得る。この処置の間、カテーテルを使用して、本明細書に記載の組成物Bで膀胱を満たす。15〜30分の範囲の時間、組成物を膀胱内に保持する。次いで、組成物を、尿道を通じて排尿するか、またはカテーテルを通じて膀胱から排出させる。2〜3ヶ月の期間にわたって、滴下処置を数回繰り返してもよい。滅菌シリンジによって、本明細書に記載の組成物20〜80mlの膀胱への直接の滴下を達成し、膀胱内に10〜100分間留まるようにする。抗菌組成物を自発的な排尿によって排出させてもよい。最大の徴候軽減が得られるまで、処置を1週間に1度繰り返すことを推奨する。従って、処置の間隔を適切に増加させてもよい。
【0125】
実施例5:抗菌組成物の有効性
発明者らは、従来の微生物学的方法を使用する強力なインビトロモデルを考案し、留置フォーリーカテーテル管腔内側および管腔外側の殺菌において、生理食塩水と比較して、0.9%生理食塩水中の33mM N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン、pH3.5の抗菌有効性を評価した。
【0126】
下記の材料および方法を使用して、フォーリーカテーテルを覆う大腸菌またはプロテウス ミラビリス生物膜に対する抗菌組成物の有効性を測定した。
【0127】
材料:
フォーリーカテーテル(BARD社製)
0.9%生理食潜水中N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン(33mM)、pH3.5
Escherichia coli ATCC 25922
Proteus mirabilis ATCC 29245
デキストロース、レシチン、チオ硫酸ナトリウム、カゼインの膵臓消化物、Tween(登録商標)80、酵母エキス、重硫酸ナトリウム、チオグリコール酸ナトリウム、リン酸一カリウムおよびブロムクレゾールパープルを含むブロスを含む中和剤ブロス
栄養ブロスおよび寒天
分光光度計
【0128】
N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリンの生物膜形成を破壊する活性を、以下のように評価した。まず、プロテウス ミラビリスまたは大腸菌いずれかの存在下で、中性ブロス中にて48時間、1cmの長さのカテーテル断片上に生物膜を確立させた。続いて、生物膜を有するカテーテル断片を、種々の期間にわたって、0.9%生理食塩水中33mMN,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン(pH3.5)に曝した。曝露後に、カテーテル断片を中性剤ブロス1ml中に移して、反応を停止させた。次いで、中性剤ブロス0.1ml(10%)を栄養寒天上にプレーティングし、コロニー数を計数した。処理したサンプル当たりのコロニー形成単位(CFU)/ml実測値を得るために、得られたCFU値に10を掛け算した。
【0129】
処理後のカテーテル断片に残された生存細菌量を測定するために、生物膜を有するカテーテル断片を、新しい増殖培地を含む試験管中に移した。振盪機にて37℃で4時間増殖させた後に、吸光度を600nmで読み取った。
【0130】
結果を以下の表にて示す。n.d.は、データを収集しなかった場合を示す。
【0131】
【表1】

【0132】
【表2】

【0133】
この研究の条件下、大腸菌およびプロテウス ミラビリスに48時間感染させ、次いで生理食塩水0.9%中33mM N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン、pH3.5で処理したカテーテルは、最小の回復可能なCFU/ml細菌を示した。このカテーテルはまた、処理したカテーテルから細菌を再培養しようと試みたが、非常に低い吸光度数を示した(平均0.057OD600単位、各データは列挙せず)。一方で、同じく感染させ、生理的食塩水で処理したカテーテルは抑制されず、120分間処理してさえむしろ有意な再増殖をもたらした(生菌および吸光度の両方で)。従って、本明細書に記載のインビトロ生物膜殺菌モデルは、生理食塩水に比べて、生理食塩水0.9%中33mM N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン、pH3.5の有意な抗菌特性を示した。
【0134】
視覚的実験は、感染の間にカテーテル表面に生物膜が形成され、続いて、生理食塩水0.9%、pH3.5中N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン33mMで除去され、生理食塩水では除去されないことを示した。
【0135】
実施例6:N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン(DCDMT)による生物膜の根絶および予防のためのインビトロモデルの確立:
【0136】
部分A:インビトロで生物膜を作製するための準備および検証
14サイズのフォーリーカテーテル(NovaCal社製)を利用する試験システムを確立し、それを切断し、無菌技術を使用して、事前に滅菌した流動システム(図4)に挿入した。システムは4個の平行なチャンネル(カテーテル1本当たり1つのチャンネル)からなる。フローブレイク(flow break)を介して滅菌培地をシステムに供給して、培地リザーバーへの逆増殖を防止した。システム全体を37℃のインキュベーターに入れた。30分間人工尿培地でシステムを馴化させた後で、人工尿培地中で37℃にて1晩培養した、ウレアーゼ陽性Escherichia coli 25922の培養物2.0mlを、フローブレイクに最も近い弁(カテーテルの膀胱側)を介して、システムに導入した。各接種物を試験して、ウレアーゼ産生を確認した。接種の後に、システムを2時間静止状態(流動無し)下に置き、細菌をカテーテルに付着させた。次いで、人工尿培地の流動を開始させ、3日間0.75ml/分の速度で維持した。
図4:インビトロ生物膜モデル
【0137】
モデルシステム中での生物膜形成の密度を評価するために、最初の実験を実施した。生細胞数は、生物膜が、3日目までにカテーテル中に10CFU/cmで確立されることを示した。5日目および7日目の細胞数は、およそそのレベルのままであった。生物膜の脱離発生の可能性を防止するために、処理を3日目に実施することを決定した。
【0138】
部分B:N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリンによる生物膜根絶
使用した試験項目は、滅菌生理食塩水、N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン、4mM、pH4、0.9%重量NaCl、N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン、40mM、pH4、0.9%重量NaClである。
【0139】
処理有効性の実証:
20mlの各処理溶液、N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリンおよび滅菌コントロール溶液を30mlシリンジに負荷し、シリンジポンプに接続した。シリンジから流動フローブレイクから最も遠いバルブ(カテーテルのバッグ側)まで、管組織の滅菌区域を接続した。この末端を、サンプリングを目的とする前部と名付ける。ポンプを作動させ、処理物をカテーテルを通じて、2.0ml/分で10分間導入した。過剰な溶媒および処理溶液を廃液容器中に捕獲した。10分後に、シリンジポンプを停止させ、溶液を30分間、カテーテル中に静置した。次いで、溶液をカテーテルを通してシリンジ中に引き出し、溶媒で30分間すすぎ、次いで、カテーテルをサンプリングした。
【0140】
有効なサンプリングについて:
各カテーテルを3個のセグメント(前部、中央、末端)に分割し、各セグメントをサブサンプリングした。1つのサブサンプルをプレート上での計数によって細菌集団を決定するために使用し、別のサブサンプルをLIVE/DEAD(登録商標)Baclight(登録商標)細菌生存率キット(L7012, Molecular Probes, Oregon, USA)を用いて染色し、共焦点レーザー顕微鏡(CSLM)を使用することによって分析し、第3のサンプルを走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して撮像した。生細胞計数のために、管組織の区域3cmを取り出し、滅菌ステンレススチールロッドを用いて、滅菌リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)10.0mlを含む試験管中に掻き出した。次いで、試験管を2分間超音波処理し、懸濁物を1分間ボルテックスした。PBS中で段階希釈し、プレーティングすることによって、生存可能(増殖可能)細菌数をプレート上で計数した。結果をCFU/cmで表し、以下のように計算した:
(CFU平均) × 希釈 × (掻き出した容量)
プレーティングした容量 (表面領域)
【0141】
掻き出した区域のカテーテル管腔内側の表面領域を測定し、2.826cmであった。
【0142】
結果およびデータの解釈:
3つの処理物の走行は、3本のカテーテル上で各々実施される:コントロールとして、PBSまたは滅菌0.9%生理食塩水で処理したカテーテル、4mMおよび40mM N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリンで処理したカテーテル。結果を表2に示す。log(CFU/cm)を9個(3個のカテーテル断片の各試験項目についての3つの処理物からなる)の処理の平均から計算した。
【0143】
【表3】

【0144】
CBE(モンタナ州立大学生物膜エンジニアリングセンター(Center for Biofilm Engineering)http://www.erc.montana.edu)で開発された尿路カテーテルモデルは、有効な尿路カテーテルモデル試験システムとして知られている。大腸菌生物膜は、3日以内に一定の生細胞数(約10cfu/cm)まで増殖した。モデルのうち5本の試験カテーテル中で増殖した生物膜の完全性は、カテーテル中で異なる処理条件に曝露した生物膜の比較を可能にした。
【0145】
NovaCal製品、4mMおよび40mM N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリンは、細菌数および生物膜の存在を有意に減少させた(画像の視覚的解釈)。より高い濃度のN,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリンは、より低い濃度のN,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリンより、有意に高い細菌除去を示した。
【0146】
部分C:N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリンによる生物膜防止
使用した試験項目は、以下である:
滅菌生理食塩水
蒸留水と1:3で希釈したホワイトビネガー(フィルター滅菌)
ネオマイシン処方物:滅菌生理食塩水1000ml中に1ml
N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン,40mM,pH4,0.9%重量NaCl
【0147】
生物膜防止研究のために、以下の連続的な工程を行った:
0日目:上で詳細に記載する試験システムは、無菌技術を使用して、切断し、事前に滅菌した流動システムに挿入した、14サイズのフォーリーカテーテルを利用する。滅菌溶媒を流動フローブレイクを介してシステムに供給して、溶媒リザーバーへの逆増殖を防止した。システム全体を37℃のインキュベーターに入れた。システムを人工尿溶媒で30分間馴化させ、各カテーテルを殺菌剤で処理した。各処理溶液20.0mlを30mlのシリンジに負荷し、シリンジポンプに接続した。シリンジから流動フローブレイクから最も遠いバルブ(カテーテルのバッグ側)まで、管組織の滅菌区域を接続した。この末端を、サンプリングを目的とする前部と名付ける。ポンプを作動させ、処理物をカテーテルを通じて、2.0ml/分で10分間導入した。過剰な溶媒および処理溶液を廃液容器中に捕獲した。10分後に、シリンジポンプを停止させ、溶液を30分間、カテーテル中に静置した。次いで、溶液をカテーテルを通じてシリンジ中に引き出した。次いで、カテーテルを30分間滅菌溶媒ですすいだ。
【0148】
0日目のみ:人工尿溶媒中、37℃で1晩増殖させたウレアーゼ陽性Escherichia coli ATCC 25922の培養物由来の接種物を、フローブレイクに最も近い弁(カテーテルの膀胱側)を介して、システムに導入した。各接種物を試験して、ウレアーゼ産生を確認した。接種の後に、システムを2時間静止状態(流動無し)下に置き、細菌がカテーテルへ付着することを可能にした。次いで、人工尿培地の流動を開始させ、3日間0.75ml/分の速度で維持した。
【0149】
1、3および5日目:生細胞計数のために、管組織の区域3cmを取り出し、滅菌ステンレススチールロッドを用いて、滅菌リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)10.0mlを含む試験管中に掻き出した。次いで、試験管を2分間超音波処理し、懸濁物を1分間ボルテックスした。PBS中で段階希釈し、プレーティングすることによって、プレート上で生存可能(増殖可能)な細菌数を計数した。結果をCFU/cmとして表し、第1段階で記載したように計算した。
【0150】
第1および3日目:サンプリングした後に、カテーテルを殺菌し、上記の滅菌溶媒ですすいだ。
【0151】
2および4日目:カテーテルを殺菌し、上記の滅菌溶媒ですすいだ。サンプルは採取しなかった。
【0152】
5日目:画像化のためにサンプルを採取し、生細胞数データのためにカテーテルの両側からサンプルを採取した。
【0153】
【表4】

【0154】
図5:生物膜防止実験。表3でのデータの表示。DCDMT=N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン
表3および図5にて理解されるように、N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリンは、この実験の5日の持続時間の間、生物膜形成を抑制したようである。N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリンは、ビネガーおよびネオスポリンと比較して、特に5日目で、カテーテル内の生物膜形成を抑制するのに有意により良好なようである。
【0155】
実施例7:患者から採取したカテーテルにおける、N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリンを使用する細菌数減少の確立
使用した試験項目は、以下である:
滅菌リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)
N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン,40mM,pH4,0.9%重量NaCl
【0156】
N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリンを用いた患者のカテーテルのエキソビボ処理
病院の職員は患者のカテーテルを取り出し、滅菌バッグ中に入れた。Bozeman Deaconess Hospital(BDH)研究室において、カテーテルの外側を70%エタノールで拭き取った。次いで、カテーテルを無菌的に3つのカテーテル部分(バッグ側、中央および患者側)に切断した。定規およびカミソリの刃を使用して、各部分を3cm長の区域に切断した。
【0157】
コントロールとする3つの区域(バッグ側1つ、中央1つおよび患者側1つ)を滅菌PBS中に入れた。3つの区域(バッグ側1つ、中央1つおよび患者側1つ)を40mM N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン中に入れた。全てのカテーテル区域を、それぞれ滅菌ガラス試験管中で30分間処理し、各々を十分な溶液に完全に浸した。処理の後に、各3cmの区域を処理試験管およびPBSコントロール試験管から取り出し、滅菌PBSを含む第2のガラス試験管に入れて、処理溶液を除去するために2分間すすいだ。次いで、区域を試験管から取り出し、1.0cmおよび2.0cmの断片に無菌的に切断した。2.0cmの断片を滅菌PBS10mlを含む試験管中に入れ、ボルテックスし、超音波処理し、希釈したPBS中で段階希釈し、プレーティングすることによって、プレート上で生存可能な(増殖可能な)細菌数を計数した。サンプルを、血液寒天培地上にプレーティングした。結果を、コロニー計数単位/cm、CFU/cmとして表した(2.0cm長×0.25cm(半径)×3.14(pi)=1.57cmとして計算した)。
【0158】
【表5】

【0159】
結果
平均で、40mM N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリンでのカテーテルの処理は、PBSでのカテーテルの処理と比較して、1.8の細菌増殖の対数減少をもたらした。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】挿入プロセスの間のカテーテル
【図2】挿入後のフォーリーカテーテル
【図3】挿入後の三重管腔フォーリーカテーテル
【図4】インビトロ生物膜モデル
【図5】生物膜防止実験。表3でのデータの表示。DCDMT=N,N−ジクロロ2,2−ジメチルタウリン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、抗菌処理/処置システム:
(a)微生物感染症の危険性を有するか、または微生物感染症に罹患している患者への刺入または挿入のための医療用デバイス;ならびに
(b)抗菌組成物水溶液であって、以下:
(1)N−ハロゲン化アミノ酸、その誘導体もしくはN−ハロゲン化アミノ酸誘導体もしくはN−ハロゲン化アミノ酸ソースまたはその混合物の少なくとも1つの抗菌有効量を含む組成物を含み、
(2)塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つのハロゲン化物塩を含んでもよく、
ハロゲン化物塩の濃度は、0.05〜約20g/l、好ましくは約2〜20g/l、より好ましくは約4〜約20g/l組成物水溶液であり、
(3)pHは約2〜約8であり、
(4)HOBrもしくはHOCl、またはHOBrもしくはHOClを放出可能なソースもしくは組成物の抗菌有効量を含んでもよく、ならびに
(5)pHを約2〜8の間の範囲で維持するために、緩衝剤、カルシウムおよびマグネシウムキレート剤、抗菌処理システムと適合性である生物学上許容される酸および/またはその塩、およびその混合物からなる群より選択される構成物を含んでもよい、抗菌組成物水溶液。
【請求項2】
N−ハロゲン化アミノ酸もしくはN−ハロゲン化アミノ酸誘導体もしくはN−ハロゲン化アミノ酸ソース、および次亜ハロゲン酸または次亜ハロゲン酸ソース由来の任意の次亜ハロゲン酸の抗菌有効量が、組成物水溶液中で約1mM〜約1000mMの濃度で存在する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
医療用デバイスが、中心静脈カテーテル、腹膜カテーテル、血液透析シャント、気管内チューブ、外科用ドレイン、膀胱内もしくはその周辺での細菌、真菌またはウイルス感染および/または患者の血流中に他の感染の危険性を有するか、または罹患している患者の膀胱への挿入のためのカテーテル、ならびにデバイスの任意の付属物からなる群より選択される侵襲性デバイスである、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
付属物がポートである、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
N−ハロゲン化アミノ酸の濃度が、組成物中で約2mM〜約100mMである、請求項2記載のシステム。
【請求項6】
N−ハロゲン化アミノ酸のアミノ基の少なくとも1個の水素が、塩素または臭素からなる群より選択されるハロゲンと置換される、請求項2記載のシステム。
【請求項7】
N−ハロゲン化アミノ酸またはN,N−ジハロゲン化アミノ酸がN−クロロアミノ酸、N,N−ジクロロアミノ酸、N−ブロモ−アミノ酸およびN,N−ジブロモアミノ酸からなる群より選択される、請求項2記載のシステム。
【請求項8】
N−ハロゲン化アミノ酸が、式(I):
A−C(R)R(CH−C(YZ)−X’ (I)
[式中、
Aは水素、HalNH−またはHalN−であり、ここで、Halはクロロおよびブロモからなる群より選択され;
Rは炭素−炭素単結合、または3〜6個の炭素原子を有する二価のシクロアルキレンラジカルであり;
は水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;
は水素または低級アルキルであり;
nは0または1〜13の整数であるか、あるいは
およびRはともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成し;
Yは水素、低級アルキルまたは−NH、−NHHalまたは−NHalであり;
Zは水素または低級アルキルであり;
X’は水素、−COOH、−CONH、−SOH、−SONHまたは−P(=O)(OH)であり;ならびに
Rが二価のシクロアルキレンラジカルである場合、nは11またはそれ未満であり;
ここで、二価のシクロアルキレンラジカルまたは二価ラジカル−(CH−中の1個の水素原子は−NHHalまたは−NHalと置換されてもよい]
で表されるN−ハロ−もしくはN,N−ジハロアミノ酸、またはその誘導体を含む、請求項2記載のシステム。
【請求項9】
Rが炭素炭素単結合であり、nが0または1〜7の整数である、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
nが0または1〜3の整数である、請求項9記載のシステム。
【請求項11】
N−ハロゲン化アミノ酸が、式(II):
HalN−C(R)−(CH−C(YZ)−X (II)
[式中、Halはクロロおよびブロモからなる群より選択され;
は水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;
は水素、低級アルキルであるか;あるいは
およびRはともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成し;
nは0または1〜3の整数であり;
Yは水素、低級アルキル、−NH、−NHHalまたはNHalであり;
Zは水素または低級アルキルであり;ならびに
Xは−COOH、−CONH、−SOHまたは−SONHである]
で表されるN,N−ジハロ−アミノ酸またはその誘導体を含む、請求項2記載のシステム。
【請求項12】
N−ハロゲン化アミノ酸が、式:
HalNH−C(R)−(CH−C(YZ)−X (IIA)
[式中、Hal、R、R、n、Y、ZおよびXは請求項11に記載の通りである]
で表されるN−モノハロアミノ酸またはその誘導体を含み;それらの誘導体では好ましくは、Rは低級アルキルまたは−COOH基であり;Rは低級アルキルであるか、あるいは、RおよびRはともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成する、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
N−ハロゲン化アミノ酸が、式(III):
A−C(R)R(CH−C(YZ)−X’ (III)
[式中、Aは水素またはHalN−であり、ここで、Halはクロロおよびブロモからなる群より選択され;
Rは炭素−炭素単結合、または3〜6個の炭素原子を有する二価の(C−C)シクロアルキレンラジカルであり、
は水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;
は低級アルキルであるか;あるいは
およびRはともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成し;
nは0または1〜13の整数であり;
Yは水素、低級アルキルまたは−NH、−NHHalまたは−NHalであり;
Zは水素または低級アルキルであり;
X’は水素、−COOH、−CONH、−SOH、−SONHまたは−P(=O)(OH)であり;ならびに
Rが二価の(C−C)シクロアルキレンラジカルである場合、次いで、nは11またはそれ未満であり;
ここで、二価のシクロアルキレンラジカルまたは二価のラジカル−(CH−1水素の1個の水素は−NHHalまたは−NHalと置換されてもよい]
またはその誘導体を含む、請求項2記載のシステム。
【請求項14】
Rが炭素炭素単結合であり、nが0または1〜7の整数である、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
nが0または1〜3の整数である、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
N−ハロゲン化アミノ酸が、式(IVA)もしくは(IVB):
HalN−C(R)−(CH−C(YZ)−X (IVA)
HalNH−C(R)−(CH−C(YZ)−X (IVB)
[式中、Halはクロロおよびブロモからなる群より選択され;
は水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;
は低級アルキルであるか;あるいは
およびRはともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成し;
nは0または1〜3の整数であり;
Yは水素、低級アルキルまたは−NHであり;
Zは水素または低級アルキルであり;ならびに
Xは−COOH、−CONH、−SOHまたは−SONHである]
で表される化合物またはその誘導体を含み、ここで、誘導体は、医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステル、アリール基を含むエステルからなる群より選択され、ここで、YはC1−6アルキル−CONH−である、請求項2記載のシステム。
【請求項17】
が水素または低級アルキルであり;nが0、1または2であり;Yが水素または低級アルキルであり;およびXが−SOHまたは−SONHであるか;あるいはその誘導体;誘導体が医薬上許容される塩または低級アルカノールを有するエステルからなる群より選択される、請求項16記載のシステム。
【請求項18】
YおよびZが水素であり;Xが−SOHであり;または誘導体が医薬上許容される塩である、請求項16記載のシステム。
【請求項19】
Halがクロロである、請求項16記載のシステム。
【請求項20】
N−ハロゲン化アミノ酸が、N,N−ジクロロ−2,2−ジメチルタウリン、N−クロロ−2,2−ジメチルタウリン、N,N−ジクロロ−1,1,2,2−テトラメチルタウリン、N−クロロ−1,1,2,2−テトラメチル−タウリン、N,N−ジブロモ−2,2−ジメチルタウリン、N−ブロモ−2,2−ジメチルタウリン、N,N−ジブロモ−1,1,2,2−テトラメチルタウリン、N−ブロモ−1,1,2,2−テトラメチルタウリン、N,N−ジクロロ−2−メチルタウリン、N−クロロ−2−メチルタウリン、N,N−ジクロロ−2,2,3,3−テトラメチル−βアラニン、N−クロロ−2,2,3,3−テトラメチル−β−アラニン、N,N−ジクロロ−3,3−ジメチルホモタウリン、N−クロロ−3,3−ジメチルホモタウリン、N,N−ジクロロ2−メチル−2−アミノ−エタンスルホン酸、Nクロロ−2−メチル−2−アミノ−エタンスルホン酸、N,N−ジクロロ 1−メチル−エタンスルホン酸、N,N−ジクロロ 1−メチル−エタンスルホン酸、N−クロロアミノトリメチレンホスホン酸、N,N−ジブロモ−2−アミノ−5−ホスホノ−ペンタン酸、N−ブロモ 2−アミノ−5−ホスホノペンタン酸、N,N−ジクロロアミノエチル−ホスポン酸ジエステル、N,N−ジクロロアミノエチル−ホスポン酸ジエチルエステル、N−クロロアミノエチルホスポン酸ジエステル、N−クロロアミノエチルホスポン酸ジエチルエステル、N,N−ジクロロ 1−アミノ−1−メチルエタンホスホン酸、N−クロロ 1−アミノ−1−メチル−エタンホスホン酸、N,N−ジクロロ 1−アミノ−2−メチルエタンホスホン酸、N−クロロ 1−アミノ−2−メチルエタンホスホン酸、N,N−ジクロロ 1−アミノ−2−メチルプロパンホスホン酸、N−クロロ 1−アミノ−2−メチルプロパンホスホン酸、N,N−ジクロロロイシンホスホン酸、N−クロロロイシンホスホン酸、N,N−ジクロロ−4−アミノ−4−ホスホノ酪酸、N−クロロ 4−アミノ−4−ホスホノ酪酸、(±)N,N−ジクロロ 2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸、(±)N−クロロ 2−アミノ−5−ホスホノ−吉草酸、N,N−ジクロロ(+)2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸、N−クロロ(+)2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸、N,N−ジクロロ d,l−2−アミノ−3−ホスホノプロピオン酸、N−クロロ d,l−2−アミノ−3−ホスホノプロピオン酸、N,N−ジクロロ 2−アミノ−8−ホスホノオクタン酸、N−クロロ 2−アミノ−8−ホスホノオクタン酸、およびその医薬上許容される塩またはエステルからなる群より選択される物質である、請求項2記載のシステム。
【請求項21】
Xが−COOHまたは−SOHであるN−ハロゲン化アミノ酸を含み、ならびに誘導体が医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステルであるか、あるいはYがC1−6アルキル−CONH−である、請求項11記載のシステム。
【請求項22】
N,N−ジハロゲン化アミノ酸を含み、ここで、Rが水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;Rが水素または低級アルキルであり、ならびに誘導体が医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステルであるか、あるいはYがC1−6アルキル−CONH−である、請求項11記載のシステム。
【請求項23】
N−ハロゲン化アミノ酸を含み、ここで、Rは低級アルキルであり、およびXは−COOH、−SOHまたは−SONHであり、および誘導体が医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステルであるか、あるいはYはC1−6アルキル−CONH−N−である、請求項16記載のシステム。
【請求項24】
N−ハロゲン化アミノ酸が式(IVB)で表される化合物である、請求項23記載のシステム。
【請求項25】
が水素または低級アルキルであり、nが0、1または2であり;Yが水素または低級アルキルであり;Xが−SOHまたは−SONHであるか;あるいは誘導体が医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステルからなる群より選択される、請求項23記載のシステム。
【請求項26】
YおよびZがともに水素であり;Xが−SOHであるか;あるいは誘導体が医薬上許容される塩である、請求項23記載のシステム。
【請求項27】
pHが約3〜約5.5である、請求項2記載のシステム。
【請求項28】
ハロゲン化物塩の濃度が約7〜約10g/lである、請求項2記載のシステム。
【請求項29】
ハロゲン化物塩の濃度が約9g/lである、請求項28記載のシステム。
【請求項30】
構成物の濃度が約1〜100mMの範囲である、請求項2記載のシステム。
【請求項31】
キレート剤の濃度が、カルシウム、マグネシウムおよびその混合物からなる群より選択される成分約10mMまでをキレートするように選択される、請求項30記載のシステム。
【請求項32】
生物学上許容される酸および/またはその塩の濃度が約1mM〜約100mMである、請求項2記載のシステム。
【請求項33】
N−ハロゲン化アミノ酸の濃度が組成物中で約2mM〜約50mMであり;pHが約3.5〜約4.5であり;ハロゲン化物塩の濃度が約7〜約10g/l組成物であり;HOBrまたはHOClの濃度が0mM、または約1mM〜約20mMであり、緩衝剤の濃度が0mM、または約1mM〜約100mMであり;キレート剤の濃度が0mM、または約1mM〜約100mMであり;ならびに生物学上許容される酸および/またはその塩の濃度が0mM、または約1mM〜約100mMである、請求項2記載のシステム。
【請求項34】
患者への刺入または挿入のための医療用デバイスの使用を必要とする、微生物感染症の危険性を有するか、または微生物感染症に罹患している患者の処置方法であって、この方法は以下の工程を包含する:
(a)抗菌組成物水溶液を含む抗菌組成物でデバイスを前処理する工程であって、抗菌組成物水溶液は、以下:
(1)N−ハロゲン化アミノ酸、その誘導体もしくはN−ハロゲン化アミノ酸誘導体もしくはN−ハロゲン化アミノ酸ソースまたはその混合物の少なくとも1つの抗菌有効量を含む組成物を含み、
(2)塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つのハロゲン化物塩を含んでもよく、
ハロゲン化物塩の濃度は、0.05〜約20g/l、好ましくは約2〜20g/l、より好ましくは約4〜約20g/l組成物水溶液であり、
(3)pHは約2〜約8であり、
(4)HOBrもしくはHOCl、またはHOBrもしくはHOClを放出可能なソースもしくは組成物の抗菌有効量を含んでもよく、ならびに
(5)pHを約2〜8の間の範囲で維持するために、緩衝剤、カルシウムおよびマグネシウムキレート剤、抗菌処理/処置システムと適合性である生物学上許容される酸および/またはその塩、およびその混合物からなる群より選択される構成物を含んでもよい、工程;ならびに
(b)デバイスを患者に挿入する工程。
【請求項35】
デバイスがカテーテルである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
カテーテルの前処理が、カテーテルの使用前に、カテーテルの灌注および/または患者の身体の開口部内側の灌注によって実施される、請求項35記載の方法。
【請求項37】
カテーテルが、組織接触により柔軟な表面を提供し、細菌尿またはCAUTIの敏感性を減少させる親水性ポリマー材料を含む外部表面を含む、請求項3記載のシステム。
【請求項38】
抗菌処理/処置の説明書を含んでもよい、患者の抗菌処理に適応させたキットまたはトレイの形態である、請求項3記載のシステム。
【請求項39】
デバイスを使用する前の、細菌尿またはCAUTIまたは付随する真菌もしくはウイルス感染の予防のためのデバイス処理方法であって、この方法は以下の工程を包含する:
(a)抗菌組成物水溶液を含む抗菌組成物水溶液にデバイスを接触させる工程であって、抗菌組成物水溶液は、以下:
(1)N−ハロゲン化アミノ酸、N−ハロゲン化アミノ酸誘導体もしくはN−ハロゲン化アミノ酸ソースまたはその混合物の少なくとも1つの抗菌有効量を含む組成物を含み、
(2)塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つのハロゲン化物塩を含んでもよく、
ハロゲン化物塩の濃度は、0.05〜約20g/l、好ましくは約2〜20g/l、より好ましくは約4〜約20g/l組成物水溶液であり、
(3)pHは約2〜約8であり、
(4)HOBrもしくはHOCl、またはHOBrもしくはHOClを放出可能なソースもしくは組成物の抗菌有効量を含んでもよく、ならびに
(5)pHを約2〜8の間の範囲で維持するために、緩衝剤、カルシウムおよびマグネシウムキレート剤、抗菌処理/処置システムと適合性である生物学上許容される酸および/またはその塩、およびその混合物からなる群より選択される構成物を含んでもよく、
ここで、デバイスを抗菌組成物に接触させる工程は、生物膜および/または皮殻によるデバイスの閉塞の防止をもたらす、工程。
【請求項40】
デバイスがカテーテルである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
N−ハロゲン化アミノ酸、もしくはN−ハロゲン化アミノ酸誘導体、またはHOBrもしくはHOClを放出可能なソースもしくは組成物の抗菌有効量が約2mM〜約50mMである、請求項39記載の方法。
【請求項42】
ハロゲン化物塩の濃度が約0.1〜約10g/lである、請求項39記載の方法。
【請求項43】
ハロゲン化物塩の濃度が約9g/l組成物である、請求項39記載の組成物。
【請求項44】
HOClもしくはHOBr、またはHOBrもしくはHOClを放出可能なソースもしくは組成物の抗菌有効量が約2mM〜約50mMである、請求項39記載の方法。
【請求項45】
生物学上許容される酸が酢酸、安息香酸、プロピオン酸、シュウ酸、塩酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、ジエチレントリアミン五酢酸、およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステル(Paraben)からなる群より選択される物質であるか、または生物学上許容される酸の塩形態がクエン酸カリウム、メタリン酸カリウム、酢酸ナトリウム、およびリン酸ナトリウムからなる群より選択される、請求項39記載の方法。
【請求項46】
組成物水溶液のpHが約3〜約5で維持される、請求項39記載の方法。
【請求項47】
N−ハロゲン化アミノ酸、N−ハロゲン化アミノ酸誘導体、またはN−ハロゲン化アミノ酸ソース、およびHOBrもしくはHOCl、またはHOBrもしくはHOClソースの抗菌有効総量が約2mM〜約20mMである、請求項39記載の方法。
【請求項48】
ハロゲン化物塩の濃度が約0.1g/l〜約10g/lである、請求項47記載の方法。
【請求項49】
ハロゲン化物塩の濃度が約9g/lである、請求項48記載のカテーテル。
【請求項50】
デバイスが患者に挿入される前または後に、以下:
(A)N−ハロゲン化アミノ酸、またはN−ハロゲン化アミノ酸誘導体もしくはN−ハロゲン化アミノ酸ソースの少なくとも1つの抗菌有効量を含み;
(B)塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つのハロゲン化物塩を含んでもよく、ハロゲン化物塩の濃度は、0.05〜約20g/l、好ましくは約2〜約20g/l、より好ましくは約4〜約12g/l組成物であり、
(C)ここで、組成物のpHは約2〜約8、好ましくは2.6〜7であり;
(D)N−ハロゲン化アミノ酸、またはN−ハロゲン化アミノ酸誘導体もしくはN−ハロゲン化アミノ酸ソースの抗菌有効量は、組成物中約1mM〜約1000mMであってもよく、
(E)HOBrもしくはHOCl、またはHOBrもしくはHOClを放出可能なソースもしくは組成物の抗菌有効量を含んでもよく;ならびに
(F)pHを約2〜6の間で維持し、生物膜および/または皮殻によるデバイスの閉塞を防止するために、緩衝剤、カルシウムおよびマグネシウムキレート剤、抗菌処置システムと適合性である生物学上許容される酸および/またはその塩、およびその混合物からなる群より選択される構成物を含んでもよい
組成物を使用する、医療用デバイス中または周辺での抗菌感染を処置、抑制または防止/予防する方法であって、以下の処理/処置工程を分離するか、組み合わせて包含する:
(a)患者へのデバイスの挿入前または患者からのデバイスの除去後に、成分(A)〜(D)を含み、および成分(E)または(F)を含んでもよい組成物にデバイスを接触させる工程;
(b)患者へのデバイスの挿入前または患者からのデバイスの除去後に、成分(A)〜(D)を含み、および成分(E)または(F)を含んでもよい組成物でデバイスを洗浄するか、浸すか、または洗い流す工程;
(c)患者への挿入後にデバイス上の皮殻を除去するために、成分(A)〜(D)を含み、および成分(E)または(F)を含んでもよい組成物でデバイスを灌注する工程;あるいは
(d)成分(A)〜(D)を含み、および成分(E)または(F)を含んでもよい組成物をデバイスを通して患者に滴下して、真菌または細菌感染症を処置または予防する工程。
【請求項51】
デバイスの挿入が患者の膀胱に対してであって、該方法が膀胱の内面の真菌または細菌感染を処置または予防するために使用される、請求項50記載の方法。
【請求項52】
ハロゲン化物塩の濃度が約7g/l〜約10g/lである、請求項50記載の方法。
【請求項53】
ハロゲン化物塩の濃度が約9g/l組成物である、請求項52記載の組成物。
【請求項54】
請求項50記載の成分(A)〜(D)を含み、そして成分(E)または(F)を含んでもよく;請求項50記載のキットまたはトレイを使用するための説明書を含んでもよいキットまたはトレイ。
【請求項55】
患者における微生物感染症の処置または予防のための抗菌組成物水溶液であって、この組成物は、以下:
(a)N−ハロゲン化アミノ酸、N−ハロゲン化アミノ酸誘導体またはN−ハロゲン化アミノ酸ソースの少なくとも1つの抗菌有効量を含み;
(b)塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウムおよびその混合物からなる群より選択される少なくとも1つのハロゲン化物塩を含んでもよく;ハロゲン化物塩の濃度は、0〜約20g/l、好ましくは約2〜約20g/l、より好ましくは約4〜約12g/l組成物水溶液であり;
(c)pHは約2〜約8であり;ならびに
(d)pHを約2〜8の間の範囲で維持するために、緩衝剤、カルシウムおよびマグネシウムキレート剤、抗菌処置システムと適合性である生物学上許容される酸および/またはその塩、およびその混合物からなる群より選択される構成物を含み;
(e)HOBrもしくはHOCl、またはHOBrもしくはHOClを放出可能なソースもしくは組成物の抗菌有効量を含んでもよい、抗菌組成物水溶液。
【請求項56】
N−ハロゲン化アミノ酸、N−ハロゲン化アミノ酸誘導体またはN−ハロゲン化アミノ酸ソースの抗菌有効量が、組成物水溶液中で約0.1mM〜約100mMである、請求項55記載の組成物。
【請求項57】
N−ハロゲン化アミノ酸、N−ハロゲン化アミノ酸誘導体またはN−ハロゲン化アミノ酸ソースの抗菌有効量が、組成物水溶液中で約2mM〜約20mMである、請求項56記載の組成物。
【請求項58】
pHが約2〜約5である、請求項55記載の組成物。
【請求項59】
ハロゲン化物塩の濃度が約0.1〜約10g/l組成物である、請求項55記載の組成物。
【請求項60】
ハロゲン化物塩の濃度が約9g/l組成物である、請求項59記載の組成物。
【請求項61】
N−ハロゲン化アミノ酸が、式(I):
A−C(R)R(CH−C(YZ)−X’ (I)
[式中、
Aは水素、HalNH−またはHalN−であり、ここで、Halはクロロおよびブロモからなる群より選択され;
Rは炭素−炭素単結合、または3〜6つの炭素原子を有する二価のシクロアルキレンラジカルであり;
は水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;
は水素または低級アルキルであり;
nは0または1〜13の整数であるか、あるいは
およびRはともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成し;
Yは水素、低級アルキルまたは−NH、−NHHalまたは−NHalであり;
Zは水素または低級アルキルであり;
X’は水素、−COOH、−CONH、−SOH、−SONHまたは−P(=O)(OH)であり;ならびに
Rが二価のシクロアルキレンラジカルである場合、nは11またはそれ未満であり;
ここで、二価のシクロアルキレンラジカルまたは二価ラジカル−(CH−中の1個の水素原子は−NHHalまたは−NHalと置換されてもよい]
で表されるN−ハロ−もしくはN,N−ジハロアミノ酸、またはその誘導体;あるいは式(I)で表されるN−ハロゲン化アミノ酸の誘導体、またはソースを含む、請求項55記載の組成物。
【請求項62】
N−ハロゲン化アミノ酸が、式(II):
HalN−C(R)−(CH−C(YZ)−X (II)
[式中、Halはクロロおよびブロモからなる群より選択され;
は水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;
は水素、低級アルキルであるか;あるいは
およびRはともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成し;
nは0または1〜3の整数であり;
Yは水素、低級アルキル、−NH、−NHHalまたはNHalであり;
Zは水素または低級アルキルであり;ならびに
Xは−COOH、−CONH、−SOHまたは−SONHである]
で表されるN,N−ジハロ−アミノ酸もしくはその誘導体、または式(II)で表されるN−ハロゲン化アミノ酸ソースを含む、請求項55記載の組成物。
【請求項63】
N−ハロゲン化アミノ酸が、式(IIA):
HalNH−C(R)−(CH−C(YZ)−X (IIA)
[式中、Hal、R、R、n、Y、ZおよびXは請求項11に記載の通りである]
で表されるN−モノハロアミノ酸もしくはその誘導体、または式(IIA)で表されるN−ハロゲン化アミノ酸ソースを含み;それらの誘導体では好ましくは、Rは低級アルキルまたは−COOH基であり;Rは低級アルキルであるか;あるいは、RおよびRはともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成する、請求項55記載の組成物。
【請求項64】
N−ハロゲン化アミノ酸が、式(III):
A−C(R)R(CH−C(YZ)−X’ (III)
[式中、Aは水素またはHalN−であり、ここで、Halはクロロおよびブロモからなる群より選択され;
Rは炭素−炭素単結合、または3〜6つの炭素原子を有する二価の(C−C)シクロアルキレンラジカルであり、
は水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;
は低級アルキルであるか;あるいは
およびRはともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成し;
nは0または1〜13の整数であり;
Yは水素、低級アルキルまたは−NH、−NHHalまたは−NHalであり;
Zは水素または低級アルキルであり;
X’は水素、−COOH、−CONH、−SOH、−SONHまたは−P(=O)(OH)であり;
Rが二価の(C−C)シクロアルキレンラジカルである場合、次いで、nは11またはそれ未満であり;ならびに
ここで、二価のシクロアルキレンラジカルまたは二価ラジカル−(CH−1水素の1個の水素原子は−NHHalまたは−NHalと置換されてもよい]
もしくはその誘導体、または式(III)で表されるN−ハロゲン化アミノ酸ソースを含む、請求項55記載の組成物。
【請求項65】
N−ハロゲン化アミノ酸が、式(IVA)もしくは(IVB):
HalN−C(R)−(CH−C(YZ)−X (IVA)
HalNH−C(R)−(CH−C(YZ)−X (IVB)
[式中、Halはクロロおよびブロモからなる群より選択され;
は水素、低級アルキルまたは−COOH基であり;
は低級アルキルであるか;あるいは
およびRはともに炭素原子に結合して、(C−C)シクロアルキル環を形成し;
nは0または1〜13の整数であり;
Yは水素、低級アルキルまたは−NHであり;
Zは水素または低級アルキルであり; ならびに
Xは−COOH、−CONH、−SOHまたは−SONHである]
で表される化合物もしくはその誘導体、または式(IVA)もしくは(IVB)で表されるN−ハロゲン化アミノ酸ソースを含み、ここで、誘導体は医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステル、アリール基を含むエステルからなる群より選択され、ここで、YはC1−6アルキル−CONH−である、請求項55記載の組成物。
【請求項66】
N−ハロゲン化アミノ酸が、N,N−ジクロロ−2,2−ジメチルタウリン、N−クロロ−2,2−ジメチルタウリン、N,N−ジクロロ−1,1,2,2−テトラメチルタウリン、N−クロロ−1,1,2,2−テトラメチル−タウリン、N,N−ジブロモ−2,2−ジメチルタウリン、N−ブロモ−2,2−ジメチルタウリン、N,N−ジブロモ−1,1,2,2−テトラメチルタウリン、N−ブロモ−1,1,2,2−テトラメチルタウリン、N,N−ジクロロ−2−メチルタウリン、N−クロロ−2−メチルタウリン、N,N−ジクロロ−2,2,3,3−テトラメチル−βアラニン、N−クロロ−2,2,3,3−テトラメチル−β−アラニン、N,N−ジクロロ−3,3−ジメチルホモタウリン、N−クロロ−3,3−ジメチルホモタウリン、N,N−ジクロロ2−メチル−2−アミノ−エタンスルホン酸、Nクロロ−2−メチル−2−アミノ−エタンスルホン酸、N,N−ジクロロ 1−メチル−エタンスルホン酸、N,N−ジクロロ 1−メチル−エタンスルホン酸、N−クロロアミノトリメチレンホスホン酸、N,N−ジブロモ−2−アミノ−5−ホスホノ−ペンタン酸、N−ブロモ 2−アミノ−5−ホスホノペンタン酸、N,N−ジクロロアミノエチル−ホスポン酸ジエステル、N,N−ジクロロアミノエチル−ホスポン酸ジエチルエステル、N−クロロアミノエチルホスポン酸ジエステル、N−クロロアミノエチルホスポン酸ジエチルエステル、N,N−ジクロロ 1−アミノ−1−メチルエタンホスホン酸、N−クロロ 1−アミノ−1−メチル−エタンホスホン酸、N,N−ジクロロ 1−アミノ−2−メチルエタンホスホン酸、N−クロロ 1−アミノ−2−メチルエタンホスホン酸、N,N−ジクロロ 1−アミノ−2−メチルプロパンホスホン酸、N−クロロ 1−アミノ−2−メチルプロパンホスホン酸、N,N−ジクロロロイシンホスホン酸、N−クロロロイシンホスホン酸、N,N−ジクロロ−4−アミノ−4−ホスホノ酪酸、N−クロロ 4−アミノ−4−ホスホノ酪酸、(±)N,N−ジクロロ 2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸、(±)N−クロロ 2−アミノ−5−ホスホノ−吉草酸、N,N−ジクロロ(+)2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸、N−クロロ(+)2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸、N,N−ジクロロ d,l−2−アミノ−3−ホスホノプロピオン酸、N−クロロ d,l−2−アミノ−3−ホスホノプロピオン酸、N,N−ジクロロ 2−アミノ−8−ホスホノオクタン酸、N−クロロ 2−アミノ−8−ホスホノオクタン酸、およびその医薬上許容される塩またはエステルからなる群より選択される物質である、請求項55記載の組成物。
【請求項67】
Xが−COOHまたは−SOHであり、および誘導体が医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステルであるか、あるいはYがC1−6アルキル−CONH−である、請求項61記載の組成物。
【請求項68】
Xが−SOHであり、および誘導体が医薬上許容される塩、低級アルカノールを有するエステルであるか、あるいはYがC1−6アルキル−CONHである、請求項67記載の組成物。
【請求項69】
N−ハロゲン化アミノ酸がN−ハロ−またはN,N−ジハロアミノ酸、あるいは、医薬上許容される塩または低級アルカノールを有するエステルの群より選択されるその誘導体を含み、ここで、Rは水素または低級アルキルであり;nは0、1または2であり;Yは水素または低級アルキルであり;およびXは−SOHまたは−SONHである、請求項65記載の組成物。
【請求項70】
構成物の濃度が約1〜100mMである、請求項55記載の組成物。
【請求項71】
キレート剤の濃度が、カルシウム、マグネシウムおよびその混合物からなる群より選択される成分約10mMまでをキレートするように選択される、請求項55記載の組成物。
【請求項72】
生物学上許容される酸および/またはその塩の濃度が約1mM〜約100mMである、請求項55記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−511493(P2009−511493A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534729(P2008−534729)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/039216
【国際公開番号】WO2007/044559
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(302058613)ノバベイ・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】NOVABAY PHARMACEUTICALS,INC.
【Fターム(参考)】