説明

N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]−キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドの結晶形

本発明は、形態A、形態B及び形態Cと呼ばれる、N−[3−フルオロ−4−((6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル|オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド、化合物(I)の3種類の結晶形に関する。本発明は、タンパク質キナーゼ活性の調節を利用することによって、癌を治療するための方法を提供する。本発明はまた、化合物(I)の結晶形と医薬的に許容可能な賦形剤と、を含有する医薬組成物も提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照により本明細書中に組み込まれる2009年7月17日出願の米国仮出願第61/226,509号に対して、35U.S.C.§119に基づき優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドの結晶形に関する。本発明はまた、本発明の結晶形を含有する医薬組成物にも関する。本発明は、結晶性N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドを用いてキナーゼシグナル伝達を、阻害し、制御し及び/又は調節することによって、癌を治療する方法にさらに関する。
【背景技術】
【0003】
従来から、癌治療の劇的な改善は、新規の機構を通じて作用する治療薬の同定に関連している。タンパク質キナーゼ活性化を通じたシグナル伝達は腫瘍細胞の多くの特徴に関与するので、癌治療で利用され得るある機構は、タンパク質キナーゼ活性の調節である。タンパク質キナーゼシグナル伝達は、例えば腎臓、胃、頭頸部、肺、乳、前立腺及び結腸直腸癌;肝細胞癌に;ならびに脳腫瘍細胞の成長及び増殖に特に関連がある。
【0004】
タンパク質キナーゼは、受容体型又は非受容体型として分類することができる。受容体型チロシンキナーゼは、多様な生物学的活性がある多数の膜貫通型受容体から構成される。受容体型チロシンキナーゼの詳細の考察については、Plowmanら、DN&P7(6):334−339、1994を参照のこと。タンパク質キナーゼ及びそれらのリガンドが様々な細胞活性において重要な役割を果たすので、タンパク質キナーゼ酵素活性の脱制御によって、癌に関連する無秩序な細胞増殖など、細胞特性の変化が起こり得る。癌の兆候に加えて、キナーゼシグナル伝達の変化は、例えば免疫疾患、循環器疾患、炎症性疾患及び変性疾患を含む多くのその他の病理学的疾患に関与する。従って、タンパク質キナーゼは、低分子薬物探索に対する魅力的な標的である。抗血管形成及び抗増殖活性に関する低分子調節に対する特に魅力的な標的としては、受容体型チロシンキナーゼc−Met、KDR、c−Kit、Axl、flt−3及びflt−4が挙げられる。
【0005】
キナーゼc−Metは、Met、Ron及びSeaを含むヘテロ二量体の受容体チロシンキナーゼ(RTK)のサブファミリーの原型的なメンバーである。c−Metに対する内因性リガンドは、血管形成の強力な誘導因子である肝細胞増殖因子(HGF)である。c−Metに対するHGFの結合によって、自己リン酸化を介した受容体の活性化が誘導され、その結果、受容体依存性のシグナル伝達が上昇し、これにより細胞増殖及び浸潤が促進される。抗HGF抗体又はHGFアンタゴニストは、インビボで腫瘍転移を阻害することが示されている(Maulikら、Cytokine & Growth factor Reviews 2002 13、41−59参照)。c−Met過剰発現は、乳、結腸、腎臓、肺、扁平上皮細胞骨髄性白血病、血管腫、悪性黒色腫、星状細胞腫及び膠芽細胞腫を含む多岐にわたる腫瘍型において明らかになっている。さらに、c−Metのキナーゼドメインにおける活性化突然変異が、遺伝性及び散発性腎乳頭腫及び扁平上皮癌において確認されている(例えば、Maulikら、Cytokine & growth factor reviews 2002 13、41−59;Longatiら、Curr Drug Targets 2001、2、41−55;Funakoshiら、Clinica Chimica Acta 2003、1−23参照)。
【0006】
上皮細胞増殖因子(EGF)、血管内皮成長因子(VEGF)及びエフリンシグナル伝達の阻害によって、腫瘍増殖及び生存に必要な2つのキーとなる細胞プロセスである、細胞増殖及び血管形成が阻止される(Matter A.、Drug Disc.Technol.2001 6、1005−1024)。キナーゼKDR(キナーゼ挿入ドメイン受容体チロシンキナーゼを指す。)及びflt−4(fms−様チロシンキナーゼ−4)は、両者ともVEGF受容体である。EGF、VEGF及びエフリンシグナル伝達の阻害によって、腫瘍増殖及び生存に必要な2つのキーとなる細胞プロセスである、細胞増殖及び血管形成が阻止される(Matter A.Drug Disc.Technol.2001 6、1005−1024)。EGF及びVEGF受容体は、低分子阻害に対する望ましい標的である。VEGFファミリーのメンバーは全て、細胞表面におけるチロシンキナーゼ受容体(VEGFR)への結合により細胞反応を刺激し、これによってそれらの二量体化が起こり、リン酸転移を通じて活性化されるようになる。VEGF受容体は、免疫グロブリン様ドメインを有する細胞外部分、1個の膜貫通領域及び分割されたチロシン−キナーゼドメインを含有する細胞内部分を有する。VEGFはVEGFR−1及びVEGFR−2に結合する。VEGFR−2は、VEGFに対する殆ど全ての既知の細胞反応に介在することが知られている。
【0007】
キナーゼc−Kit(幹細胞因子受容体又はスティール因子受容体とも呼ばれる。)は、血小板由来増殖因子受容体サブファミリーに属する3型受容体チロシンキナーゼ(RTK)である。c−Kit及びc−Kitリガンドの過剰発現は、ヒト消化管間質腫瘍、肥満細胞症、胚細胞腫瘍、急性骨髄性白血病(AML)、NKリンパ腫、小細胞肺癌、神経芽細胞腫、婦人科腫瘍及び結腸癌を含む様々なヒト疾患で報告されている。さらに、c−Kitの発現上昇はまた、1型神経線維腫症(NF−1)、間葉腫瘍GIST及び肥満細胞疾患が関連する新生物の発生ならびにc−Kit活性化が関与する他の疾患とも関連し得る。
【0008】
キナーゼFlt−3(fms様チロシンキナーゼ−3)は、大部分のAMLの患者において、膜近傍領域又はキナーゼドメインの活性化ループの何れかでの突然変異を介して構成的に活性化される(Reilly、Leuk.Lymphoma、2003、44:1−7)。
【0009】
従って、特に上述のc−Met、VEGFR2、KDR、c−Kit、Axl、flt−3及びflt−4を含むキナーゼのシグナル伝達を特異的に阻害し、制御し及び/又は調節する低分子化合物は、異常な細胞増殖及び血管形成に関連する疾患状態を治療又は予防する手段として特に望ましい。このようなある低分子は、N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド、化合物(I)であり、次の化学構造を有する:
【化1】


(I)。
特許文献1は、化合物(I)の合成(実施例25、30、36、42、43及び44)を記載し、キナーゼのシグナル伝達を阻害し、制御し及び/又は調節する、この分子の治療活性も開示する(Assays、表4、項目312)。化合物(I)を測定したところ、c−MetのIC50値は約0.6ナノモーラー(nM)であった。2008年11月13日出願の米国仮出願第61/199,088号に対する優先権を主張する特許文献2は、化合物(I)の大規模合成を記載する。
治療薬にとって治療効果が第一の関心事ではあるが、その開発に対しては固体形態が同様に重要であり得る。一般に、薬物開発者は、十分な水溶性(溶解率を含む。)、貯蔵安定性、吸湿性、製剤化適性及び再現性など(これらは全て、薬物の処理可能性、製造及び/又はバイオアベイラビリティーに影響を与え得る。)の所望の特性を保持する結晶形を探索することに尽力する。従って、これらの望ましい特性の一部又は全てを保持する1以上の結晶形の探索は、薬物開発に不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2005/030140号
【特許文献2】国際公開第2010/056960号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド、化合物(I)の結晶形に関する。本発明は、タンパク質キナーゼ活性の調節を利用することによる、癌治療のための方法を提供する。上記で考察したように、タンパク質キナーゼ活性化を通じたシグナル伝達は、腫瘍細胞の多くの特徴に関与する。タンパク質キナーゼシグナル伝達は、例えば、腎臓(例えば乳頭腎細胞癌)、胃(例えば転移性胃癌)、頭頸部(例えば扁平上皮癌)、肺、乳、前立腺及び結腸直腸癌、扁平上皮細胞骨髄性白血病、血管腫、悪性黒色腫、星状細胞腫、膠芽細胞腫、肝細胞癌、遺伝性及び散発性腎乳頭腫に、ならびに脳腫瘍細胞の成長及び増殖に特に関与する。
【0012】
従って、本発明はまた、癌を治療する方法にも関する。これらの方法は、癌治療を必要とする対象に、治療的有効量の化合物(I)の少なくとも1つの結晶形を投与する。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、無秩序で異常及び/又は不要な細胞活性を伴う疾患又は障害を治療する方法を提供する。これらの方法は、治療を必要とする対象に、治療的有効量の化合物(I)の少なくとも1つの結晶形を投与することを含む。
【0014】
本発明は、治療的有効量の化合物(I)の少なくとも1つの結晶形と医薬的に許容可能な賦形剤とを含有する医薬組成物をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1−A】図1−Aは、実施例1.1.1からの化合物(I)結晶形Aに対するXRPDパターンを示す。
【図1−B】図1−Bは、実施例1.1.2からの化合物(I)結晶形Aに対するXRPDパターンを示す。
【図1−C】図1−Cは、実施例1.1.1からの化合物(I)結晶形Aの固体13C NMRスペクトルを示す。
【図1−D】図1−Dは、実施例1.1.1からの化合物(I)結晶形Aの固体19F NMRスペクトルを示す。
【図1−E】図1−Eは実施例1.1.1からの化合物(I)結晶形Aのラマンスペクトルを示す。
【図1−F】図1−Fは、実施例1.1.1からの化合物(I)結晶形AのDSCサーモグラムを示す。
【図1−G】図1−Gは、実施例1.1.1からの化合物(I)結晶形AのTGAサーモグラムを示す。
【図1−H】図1−Hは、実施例1.1.2からの化合物(I)結晶形Aの重量測定による蒸気収着試験(GVS)の収着及び脱着曲線を示す。
【図2.1−A】図2.1−Aは、実施例2.1からの化合物(I)結晶形BのXRPDパターンを示す。
【図2.1−B】図2.1−Bは、実施例2.1からの化合物(I)結晶形BのTGAサーモグラムを示す。
【図2.6−A】図2.6−Aは、実施例2.6からの化合物(I)結晶形CのXRPDパターンを示す。
【図2.6−B】図2.6−Bは、実施例2.6からの化合物(I)結晶形CのTGAサーモグラムを示す。
【図3−A】図3−Aは、実施例3.1からの化合物(I)結晶形Bに対するXRPDパターンを示す。
【図3−B】図3−Bは、実施例3.1からの化合物(I)結晶形Bの固体13C NMRスペクトルを示す。
【図3−C】図3−Cは、実施例3.1からの化合物(I)結晶形Bの固体19F NMRスペクトルを示す。
【図3−D】図3−Dは、実施例3.1からの化合物(I)結晶形Bのラマンスペクトルを示す。
【図3−E】図3−Eは、実施例3.1からの化合物(I)結晶形BのDSCサーモグラムを示す。
【図3−F】図3−Fは、実施例3.1からの化合物(I)結晶形BのTGAサーモグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド化合物(I)の結晶形
本発明は、化合物(I)の結晶形に関する。下記の実施例は、それらの調製及び特性評価を含む、本発明によるこれらの結晶形化合物(I)を記載する。これらは非溶媒和結晶形である。
【0017】
化合物の固体は、溶解性、融点、x線粉末回折、固体NMRスペクトロスコピー及びラマンスペクトロスコピーなどの様々な物理的特性により特性評価することができる。化合物(I)の様々な結晶形は、それらのXRPDパターン又は固体NMRピークなど、互いにそれらの個々の分析データを比較することによって、同定するか又特性評価することができる。形態A、B及びCに対するXRPDパターンの比較から、表1で列挙されるように、各形態に対する特徴的なピークの一覧が提案される。各形態は、この一連の特徴的なピーク又はそれらの一部を特徴とし得る。結晶性固体の特性評価を行うためには、約20°2θ以下の低角のXRPDピークが好ましいことが多い。それぞれの特定の形態を同定するために使用し得る各結晶形に対するさらなるデータを下記の実施例で与える。
【表1】

【0018】
本明細書中で開示される化合物(I)の結晶形は、互いに及びその他の形態と比較して長所を有し得る。このような長所から、特定の処方又は処理に対して、又は中間体として、ある形態を使用することが提案され得る。相違の一例として、形態A及びBは互変関係がある。形態Aは、約75℃未満の温度で熱力学的に最も安定な形態であると考えられる。形態Bは、約75℃超の温度で熱力学的に最も安定な形態であると考えられる。この熱力学的安定性の相違から、結晶性化合物(I)の医薬製剤に対する製造プロセスにおける処理条件の選択に対する情報が与えられ得る。
【0019】
本発明はまた、溶液を生成させるために、N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドを熱n−プロパノール中で溶解させ;結晶形の沈殿物を得るために、その溶液を十分に冷却し;結晶形を単離する、段階を含む、結晶性N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドの形態Aを調製する方法にも関する。
【0020】
本発明は、結晶形を沈殿させるために、高温でN−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドのイソプロパノール含有溶液に十分なヘプタンを添加し;その結晶形をさらに沈殿させるために十分な条件下で、混合物を冷却し;結晶形を単離する、段階を含む、N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドの結晶形、形態Bを調製する方法にさらに関する。イソプロパノール含有溶液は、少なくとも10体積%の量のイソプロパノールを含有する溶液である。
【0021】
本発明はまた、溶液を生成させるために、N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドをメタノール中で溶解させ;結晶形を沈殿させるために十分な条件下でその溶液を静置し;結晶形を単離する、段階を含む、結晶性N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドの形態Cを調製する方法にも関する。
【0022】
治療の方法
上記で考察したように、化合物(I)は、特にc−Met、KDR、c−Kit、Axl、flt−3及びflt−4を含むキナーゼのシグナル伝達を、特異的に阻害し、制御し及び/又は調節するその能力において有益な治療特性を有する。これにより、異常な細胞増殖及び血管形成が関連する疾患状態を治療及び/又は予防するための治療薬として化合物(I)が特に望ましいものとなる。
【0023】
従って、本発明は、タンパク質キナーゼ活性の調節を利用することによる、癌の治療及び/又は予防のための方法を提供する。上記で考察したように、タンパク質キナーゼ活性化を通じたシグナル伝達は、腫瘍細胞の多くの特徴に関与する。タンパク質キナーゼシグナル伝達は、例えば、腎臓(例えば、乳頭腎細胞癌)、胃(例えば転移性胃癌)、頭頸部(例えば扁平上皮癌)、肺、乳、前立腺及び結腸直腸癌、扁平上皮細胞骨髄性白血病、血管腫、悪性黒色腫、星状細胞腫、膠芽細胞腫、肝細胞癌、遺伝性及び散発性腎乳頭腫に、ならびに脳腫瘍細胞の成長及び増殖に特に関連する。
【0024】
従って、本発明は、癌を治療及び/又は予防する方法に関する。本方法は、癌治療を必要とする対象に、治療的有効量の本発明による結晶性N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド、化合物(I)を投与することを含む。結晶性化合物(I)は、本発明の結晶形及びそれらの混合物の何れかの状態であり得る。治療しようとする対象は一般に哺乳動物であり、殆どの場合はヒトである。治療する癌は、腎臓癌、胃癌、頭頸部癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、扁平上皮細胞骨髄性白血病、血管腫、悪性黒色腫、星状細胞腫、膠芽細胞腫、遺伝性及び散発性腎乳頭腫、扁平上皮癌及び脳腫瘍など、好ましくは上記で考察したものであるが、本発明による化合物(I)の結晶形が効果を有する癌の何らかの形態であってもよい。
【0025】
別の実施形態において、本発明は、無秩序で異常及び/又は不要な細胞活性が関連する疾患又は障害を治療及び/又は予防する方法を提供する。この方法は、癌治療を必要とする対象に、治療的有効量の化合物(I)の結晶形を投与する。
【0026】
本発明の医薬組成物
本発明は、治療的有効量の本発明によるN−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド、化合物(I)の少なくとも1つの結晶形と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体(医薬的に許容可能な賦形剤としても知られる。)と、を含む医薬組成物に関する。上記で考察したように、化合物(I)の結晶形は、異常な細胞増殖及び血管形成が関連する疾患状態の治療及び/又は予防に対して治療的に有用である。化合物(I)の結晶形は、国際公開公報第2005/030140号に記載のものなど、キナーゼのシグナル伝達を阻害し、制御し及び/又は調節するための治療的活性を保持する。これらの疾患状態の治療のための医薬組成物は、特定の疾患に罹患している患者の治療に適切なように、キナーゼのシグナル伝達を阻害し、制御し及び/又は調節するための、治療的有効量の本発明による化合物(I)の少なくとも1つの結晶形を含有する。本発明の医薬組成物は、本発明による化合物(I)の結晶形を含有する何らかの医薬形態であり得る。本医薬組成物は、例えば錠剤、カプセル、縣濁液、注射物質、局所又は経皮用であり得る。本医薬組成物は、通常、約1%から約99重量%の本発明の化合物(I)の少なくとも1つの結晶形と、99%から1重量%の適切な医薬賦形剤とを含有する。一例において、本組成物は、下記で考察するように、約5%及び約75重量%が本発明の化合物(I)の結晶形であり、本組成物の残りの部分が適切な医薬賦形剤又は他のアジュバントである。
【0027】
「キナーゼのシグナル伝達を阻害し、制御し及び/又は調節するのに十分な、治療的有効量の本発明によるN−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドの結晶形」(ここでは本医薬組成物に関して考察)は、異常な細胞増殖及び血管形成が関連する様々な癌の何れかに罹患している患者を治療するのに十分な何らかの量を指す。何れかの特定の患者の治療に必要とされる実際量は、治療している疾患状態及びその重症度;使用する具体的な医薬組成物;患者の年齢、体重、全体的健康状態、性別及び食事;投与方式;投与時間;投与経路;及び本発明による化合物(I)の結晶形の排泄速度;治療期間;使用する具体的な化合物と組み合わせて又は同時に使用する何らかの薬物;及び医薬の技術分野で周知のその他のこのような因子を含む様々な因子に依存する。これらの因子は、Goodman及びGilmanの「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第10版、A.Gilman、J.Hardman及びL.Limbird編、McGraw−Hill Press、155−173、2001で考察される。本発明による化合物(I)の結晶形及びそれらを含有する医薬組成物は、抗癌剤又は癌に対して治療を受ける患者に一般に投与される他の薬剤と組み合わせて使用され得る。これらはまた、単一の医薬組成物中で1以上のこのような薬剤とともに同時処方することもできる。
【0028】
医薬組成物のタイプに依存して、医薬的に許容可能な担体は、当技術分野で公知の担体の何れか1つ又はそれらの組み合わせから選択することができる。医薬的に許容可能な担体の選択は、医薬形態及び使用しようとする所望の投与方法に依存する。本発明の医薬組成物の場合、即ち本発明の化合物(I)の結晶形を含有する組成物の場合、本発明の化合物(I)の特定の結晶形を実質的に維持するように担体を選択すべきである。言い換えると、担体は、本発明の化合物(I)の結晶形を実質的に変化させてはならない。また、担体は、何らかの望ましくない生物学的影響を生じさせるか又は本医薬組成物の何らかのその他の成分と悪影響を及ぼすように相互作用することなどによって、本発明による化合物(I)の結晶形と不適合となってはならない。
【0029】
本発明の医薬組成物は、医薬製剤の技術分野で公知の方法によって調製することができ、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(Mack Publishing Company、Easton、Pa、1990)を参照のこと。固体の剤形において、化合物(I)の少なくとも1つの結晶形をクエン酸ナトリウム又は第二リン酸カルシウム又は当業者にとって公知の何らかの他の賦形剤など、例えば(a)充填剤又は増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸、(b)結合剤、例えば、セルロース誘導体、デンプン、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアラビアゴム、(c)保湿剤、例えばグリセロール、(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、クロスカメロースナトリウム、複雑ケイ酸塩及び炭酸ナトリウム、(e)溶解遅延剤、例えばパラフィン、(f)吸収促進剤、例えば、四級アンモニウム化合物、(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール、ステアリン酸マグネシウムなど、(h)吸着剤、例えばカオリン及びベントナイト及び(i)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム又はそれらの混合物など、少なくとも1つの医薬的に許容可能な賦形剤と混合することができる。カプセル、錠剤及び丸剤の場合、剤形には緩衝剤も含まれ得る。
【0030】
医薬製剤の技術分野で公知の医薬的に許容可能なアジュバントも本発明の医薬組成物中で使用され得る。これらには、防腐剤、湿潤剤、縣濁剤、甘味料、香味料、香料、乳化剤及び分散剤が含まれるが、それらに限定される訳ではない。例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸など、様々な抗菌及び抗真菌剤によって、微生物の活動の阻止を確実にすることができる。等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましい場合もある。必要に応じて、本発明の医薬組成物はまた、湿潤又は乳化剤、pH緩衝剤、抗酸化剤など、例えばクエン酸、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、ブチル化ヒドロキシトルエンなどの少量の補助物質も含有し得る。
【0031】
上述のような固体剤形は、コーティング及びシェル、例えば当技術分野で周知の腸溶コーティングなどを用いて調製することができる。これらは、乳白剤を含有し得、遅延方式で腸管のある一定の部分において活性のある化合物を放出し得るような化合物でもあり得る。使用することができる埋め込まれる組成物の例は、ポリマー性物質及びワックスである。活性化合物、化合物(I)の少なくとも1つの結晶形は、必要に応じて1以上の上述の賦形剤を伴う、マイクロカプセル化形態でもあり得る。
【0032】
縣濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微晶質セルロース、メタ水酸化アルミニウム(alminium metahydroxide)、ベントナイト、寒天及びトラガカント又はこれらの物質の混合物などの縣濁剤を含有し得る。
【0033】
直腸投与のための組成物は、例えば、本発明の化合物を例えば、通常温度では固体であるが体温では液体となり、したがって適切な体腔中で溶融し、その中の活性化合物を放出する、カカオバター、ポリエチレングリコール又は坐薬ワックスなどの適切な非刺激性の賦形剤又は担体と混合することによって調製することができる坐薬である。
【0034】
本発明の化合物(I)の結晶形はそれらの調製中に維持されるので、本発明の医薬組成物に対しては固体剤形が好ましい。カプセル、錠剤、丸剤、粉剤及び顆粒剤を含む、経口投与用の固体剤形が特に好ましい。このような固体剤形において、本活性化合物を少なくとも1つの不活性の医薬的に許容可能な賦形剤と混合する。純粋な形態又は適切な医薬組成物中の化合物(I)の結晶形の投与は、許容される投与方式又は同様の有用性を与えるための物質の何れかを介して行われ得る。したがって、投与は、例えば、錠剤、坐薬、丸剤、軟カプセル及び硬ゼラチンカプセル、粉剤、溶液、縣濁液又はエアロゾルなど、固体、半固体、凍結乾燥粉末又は液体剤形の形態で、好ましくは、正確な投与量の単回投与に適切な単位剤形での、例えば、経口、鼻腔、非経口(静脈内、筋肉内又は皮下)、局所、経皮、膣内、膀胱内、大槽内(intracistemally)又は直腸経路であり得る。ある好ましい投与経路は、治療しようとする疾患状態の重症度に従い調整することができる好都合な投与計画を用いた経口投与である。
【実施例】
【0035】
実施例
実施例1:N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド結晶形A、化合物(I)の調製及び物理学的特性評価
【0036】
1.1 化合物(I)結晶形Aの調製
1.1.1 n−プロパノール法:N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド(1.01258g)を10mLのn−プロパノールと合わせた。この混合物を90℃に加熱し、2時間(h)攪拌し、その結果、透明な溶液を得た。この熱溶液を0.2μmナイロンフィルターでろ過した。攪拌バーを備えた4−mLスクリューキャップバイアルにろ液(1mL)を移した。試料を密封し、攪拌プレート上に置き、室温で一晩攪拌させ(およそ23℃)、その時間中に沈殿が形成された。この沈殿物を化合物(I)の結晶形Aと名付けた。
【0037】
1.1.2 ビスホスフェート塩法:N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド遊離塩基をアセトン(46.0L)及び水(12.0L)中で溶解させた。バッチ温度が30℃を超えないような速度でリン酸(85%、1.2L)を添加した。1時間攪拌しながらこのバッチをおよそ15−30℃に維持、この時間中に生成物が沈殿した。ろ過によってこの固形物を回収し、アセトンを用いて洗浄し、真空下でおよそ60℃で乾燥させ、N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドビスホスフェート(5.5kg)を得た。
【0038】
100gのN−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドのビスホスフェート塩を500mL(5体積)の水中で溶解させた。次に、10%炭酸カリウム水を用いて、水溶液pHをpH約2からpH約10に調整した。得られた遊離塩基をろ過し、一晩風乾させた。40℃で4時間、固体遊離塩基をさらに乾燥させた。78.58gの遊離塩基を回収した。回収した遊離塩基のH NMRスペクトルから、それが純粋ではないことが示された。この遊離塩基をさらに調べた。約5gの遊離塩基を500mLの酢酸エチル中で溶解させた。有機層を200mLの水で2回洗浄した。有機層を2等分した。分注物Aを硫酸マグネシウム上で乾燥させ、体積を減少させて乾固させた。他方の分注物Bは100mLの1N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、層に分離させた。分注物Bの有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空で固体にした。分注物B残渣のH NMRから、それが遊離塩基であることが示された。次に、分注物Aからの残りの遊離塩基固体を酢酸エチル中で溶解させ、1N水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、層に分離させた。硫酸マグネシウム上で有機層を乾燥させ、真空で乾固させた。この固体遊離塩基をアセトン中で溶解させ、ヘプタンを添加してすぐに沈殿させた。次に、この固体遊離塩基をろ過し、乾燥させた。総回収固体は37.6gであった。回収した固体は、化合物(I)結晶形Aであることが示された。
【0039】
1.2 化合物(I)結晶形AのX線粉末回折での特性評価
PANalytical X’Pert Pro回折計を用いて、実施例1.1.1で調製した化合物(I)結晶形AのX線粉末回折パターンを得た。バックグラウンドがゼロのケイ素の挿入試料ホルダー上で試料を穏やかに平坦化した。Cu Kα線源及び40kV及び45mAの発生装置出力で、2°から50°の連続2θ走査範囲を使用した。40.7秒のステップ時間で0.017度/ステップの2θステップサイズを用いた。試料を30rpmで回転させた。室温及び周囲湿度で実験を行った。図1−Aは、実施例1.1.1からのN−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド結晶形Aに対するXRPDパターンを示す。XRPDパターンにおいて、実験°2θ+0.1°2で次のピークが同定された:7.2、7.7、9.7、10.8、12.5、14.1、14.9、15.2、15.5、16.0、16.5、17.1、17.5、17.8、19.1、19.4、20.0、20.4、20.7、22.8、23.5、25.4、25.7、27.5、29.0、29.6、30.0、30.3、32.3。上記の表1は、形態(A)の特徴となる°2θ+0.2°2θでのピークを列挙する。XRPDパターンで同定されたか又は表1で列挙したピークのリスト全体又はその一部は、化合物(I)の形態(A)の特性を評価するのに十分であり得る。
【0040】
XYZステージ及び自動試料位置調整のためのレーザービデオ顕微鏡を備えたBrukerC2回折計;及び120sの典型的な回収時間を持つHiStarエリア検出器において、実施例1.1.2で調製した結晶性N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドのX線粉末回折を行った。密封した銅管(Cu Kα線;1.5406Å)電圧及びアンペア数を40kV及び40mAに設定した。C2におけるX線オプティクスは、0.3mmピンホールコリメーターが組み合わせられた1個のGobelミラーからなる。ビーム広がり即ち、X線スポットの有効サイズは、およそ4mmの値を与える。試料−検出器の距離を20cm(3.2−29.8°の有効2θ範囲を与える。)にして、θ−θ連続走査を用いた。計測器較正を確認するために、コランダム(α−Al)標準物質(NIST 1976平板)を毎週試験した。試料調製物は1−2mgの試料からなり、これを平坦面とするためにガラススライド上に軽く押し付けた。図1−Bは、実施例1.1.2からの化合物(I)結晶形AのXRPDパターンを示す。図1−Bのパターンは、この試料における結晶化度が低いので、図1−Aにおけるものと比較して広がっている。
【0041】
1.3 化合物(I)結晶形Aの13C及び19F固体NMRスペクトル
399.87MHzのH周波数で稼動するBruker Avance 400三重共鳴スペクトロメーターを用いて、実施例1.1.1で調製した化合物(I)結晶形Aの固体NMRスペクトルを得た。8kHzのローター周波数でBruker4−mm三重共鳴マジック角スピニングプローブとともに交差分極パルスシーケンスを用いて13C NMRスペクトルを得た。交差分極効率を促進するために、Hチャネルにおいて、75から90kHzの線形出力ランプを使用した。5パルス総サイドバンド抑制パルスシーケンスによって、スピニングサイドバンドを除去した。同じスペクトロメーター及びプローブを用い、交差分極パルスシーケンス及び12.5kHzのローター周波数のスピニングを用いて、19Fスペクトルを得た。図1−Cは、実施例1.1.1で調製した化合物(I)結晶形Aの固体13C NMRスペクトルを示す。機器の変動性及び較正のため、13C NMRピークの位置は、0ppm(100万分の一)のテトラメチルシランに対して報告し、±0.2ppmの精度と見積もった。固体13C NMRスペクトルにおいて次のピークが同定された:172.0、168.2、161.2、158.6、156.8、154.3、153.3、150.6、150.1、146.5、138.9、136.0、132.6、128.6、127.4、124.9、118.1、116.5、114.8、108.3、106.2、102.5、99.1、66.8、57.3、55.3、52.8、50.7、28.5、19.4、14.6。固体13C NMRスペクトルからの形態Aに対する特徴的なピークには、161.2、158.6、153.3、146.5、136.0、132.6、128.6、127.4及び124.9ppm±0.2ppm又はそれらのサブセットのものが含まれる。図1−Dは、実施例1.1.1で調製した化合物(I)結晶形Aの固体19F NMRスペクトルを示す。星印()を付して示されるピークは、スピニングサイドバンドである。固体19F NMRスペクトルは、機器の変動性及び較正のために、CFClに対して及び±0.2ppmの精度で、ピーク−116.8及び−128.6を示した。両固体19F NMRピークは形態Aの特徴であると考えられる。
【0042】
1.4 化合物(I)結晶形Aのラマンスペクトル
液体窒素−冷却ゲルマニウム検出器及びビデオ制御付きモーター駆動アクセサリを備えたThermo Nicolet 960スペクトロメーターを用いて、実施例1.1.1で調製した化合物(I)結晶形Aのフーリエ変換(FT)ラマンスペクトルを得た。0.55Wの出力設定で1.064μmレーザーを使用した。ガラス製顕微鏡スライド上に粉末化試料を置き、ステージを用いてビームに直接置いた。1−mmレーザースポットサイズを使用し、2cm−1解像度で512回のスキャンを回収した。化合物(I)の結晶形AのFT−ラマンスペクトルを図1−Eで示す。FTラマンスペクトルにおいて、次のピーク(ラマンシフト、cm−1±2cm−1)が観察された:218、258、370、384、456、480、571、636、649、712、751、784、801、835、870、891、969、981、1024、1051、1081、1118、1155、1208、1250、1264、1308、1327、1389、1404、1433、1454、1479、1506、1552、1584、1623、1694、2804、2831、2862、2952、3018、3088、3096。化合物(I)の結晶形Aを同定するために、これらのピーク又はそれらの一部を使用し得る。
【0043】
1.5 化合物(I)結晶形Aの熱特性評価
TA Instruments Q2000示差走査熱量計を用いて、DSCサーモグラムを得た。実施例1.1.1で調製した化合物(I)結晶形Aの1.5360mgの試料質量を直接アルミニウムDSCパンに測り取った。手で圧力をかけ、パンの各部を押し付けることによって、このパンを密封した(動き嵌め構造としても知られる。)。25℃から225℃に10℃/分で温度を上昇させた。融解吸熱に対して、180.4℃のピーク融解温度及び92.65J/gの熱流量を測定した。DSCサーモグラムを図1−Fで示す。発熱事象を上向きにプロットする。
【0044】
TA Instruments Q500熱重量分析器を用いて、TGAサーモグラムを得た。試料パンの風袋重量を測定し、実施例1.1.1で調製した10.7750ミリグラムの化合物(I)結晶形Aをこのパンに置いた。10℃/分で25℃から300℃に温度を上昇させた。150℃まで0.02%の重量損失が観察され、180℃までは1.02%のさらなる重量損失が観察されたが、殆どが分解によるものであると思われる。TGAサーモグラムを図1−Gで示す。
【0045】
1.6 化合物(I)結晶形Aの安定性試験
実施例1.1.2で調製した結晶性N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドを用いて、重量測定による蒸気収着試験(GVS)及びカールフィッシャー含水量測定実験を行った。
【0046】
重量測定による蒸気収着試験(GVS):標準的方法を用いて、GVS試験を行った。CFRSorpソフトウェアを実行するHiden IGASorp水分収着分析器において試料を試験した。試料量は一般には10mgである。水分吸脱着等温線は、下記で概説するように行った。典型的な室内湿度及び温度(40%RH、25℃)で全試料を負荷/除荷し、その後XRPDにより分析した。標準物質等温線実験は、25℃にて40%RHで開始し→90%→乾燥→35%RHで終了するサイクルであり、10%RH間隔である。実施例1.1.2で調製した結晶性化合物(I)は、25℃及び90%湿度で0.5%の重量増加を示し、XRPDによる試料の再分析から、形態の変化は示されなかった。GVS収着及び脱着曲線を図1−Hで示す。
【0047】
カールフィッシャー水分測定:標準的方法を用いて、この試験を行った。Hydranal AG Oven試薬及びアルゴンパージを用いて、Mettler Toledo DL39 Coulometerで含水量を測定した。水浸入を回避するためにピンセットを介してスバシールに連結された白金TGAパン上に固形物を測り取って試料を容器に導入した。1回の滴定におよそ10mgの試料を使用し、2つ組みで各分析を行った。実施例1.1.2で調製した結晶性化合物(I)の含水量を2つ組みで測定し、0.1%の平均値を得た。
【0048】
実施例2−結晶性N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド、化合物(I)のさらなる調製
2.1−2.8.結晶化合物(I)、形態B及びCの調製
表2で列挙する溶媒を用いて、化合物(I)の結晶形を調製した。およそ100mgの非晶質化合物(I)を4−mLスクリューキャップバイアルに入れ、10体積の候補溶媒を添加した。振盪で溶解が達成されなかった場合、バイアルを加熱した。溶解が依然として達成されなかった場合、さらなる10体積の溶媒を添加し、混合物を振盪し、加熱した。この溶液を室温で48時間静置し、次いで沈殿について調べた。固体が存在しなかった場合、スクリューキャップを緩めて溶媒蒸発させた。偏光顕微鏡によって全ての固形物をインシトゥで調べ、大きな粒子を回収し、破砕した後に十分な物質を得ることができた場合はXRPDにより調べた。表2で示される結果から、化合物(I)の結晶形を調製するための多くの適切な溶媒が明らかになる。
【表2】

【0049】
2.9 2.1の結晶形B及び2.6の結晶形Cの特性評価
X線粉末回折(XRPD):XYZステージ及び自動試料位置調整のためのレーザービデオ顕微鏡を備えたBruker C2回折計及び120sの典型的回収時間を持つHiStarエリア検出器において、X線粉末回折を行った。密封した銅管(Cu Kα線;1.5406Å)電圧及びアンペア数を40kV及び40mAに設定した。C2におけるX線オプティクスは、0.3mmピンホールコリメーターが組み合わせられた1個のGobelミラーからなる。ビーム広がり即ち、X線スポットの有効サイズは、およそ4mmの値を与える。試料−検出器の距離を20cm(3.2−29.8°の有効2θ範囲を与える。)にして、θ−θ連続走査を用いた。計測器較正を確認するために、コランダム(α−Al)標準物質(NIST 1976平板)を毎週試験した。試料調製物は、1−2mgの試料からなり、これを平坦面とするためにガラススライド上に軽く押し付けた。図2.1−A及び2.6−Aは、それぞれ上記の、アセトニトリルからの結晶形B、2.1のXRPDパターン及び結晶形C、2.6のXRPDパターンを示す。実験°2θ±0.2°2θにおける次のピークがXRPDパターンにおいて同定された:11.5、14.5、15.1、18.3、19.8、20.4、21.4、22.7、23.1、26.3、26.8及び27.2。上記表1は、図2.6−Aで示されるような形態Cの特徴となる°2θ+0.2°2θでのピークを列挙する。XRPDパターンで同定されたか又は表1で列挙されたピークの全リスト又はそれらの一部は、化合物(I)の結晶形Cを特徴付けるのに十分であり得る。図2.1−B及び2.6−Bは、それぞれ上記の、アセトニトリルからの結晶形BのTGAサーモグラム及びメタノールからの結晶形CのTGAサーモグラムを示す。
【0050】
アルメルで較正され、10℃/分の走査速度で稼動するTA Instruments Q500 TGAにおいて、熱重量分析(TGA)データを回収した。60mL/分での窒素パージを試料全体に維持した。前もって風袋重量を測定した白金坩堝上にこの試料を置いた。具体的なTGA収集法は図2.1−B及び2.6−Bで述べる。図2.1−Bは、18.1mgの試料を用いた、周囲温度から350℃の温度範囲での、アセトニトリルからの結晶形B、2.1のTGAサーモグラムを示す。図2.6−Bは、7.71mgの試料を用いた、周囲温度から250℃の温度範囲での、結晶形C、2.6のTGAサーモグラムを示す。
【0051】
実施例3:結晶性N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド、化合物(I)、形態Bのさらなる調製及び特性評価
【0052】
3.1:化合物(I)、結晶形Bの調製
乾燥させたリアクター(リアクター1)に1−(4−フルオロフェニルカルバモイル)シクロプロパンカルボン酸(21.5kg)、THF(76kg)及びN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、0.09kg)を添加し、溶解するまでこれを20℃で攪拌した。リアクターの内容物を約15℃に冷却し、リアクターの内部温度を20℃以下に維持しながら、38分間にわたり塩化オキサリル(12.7kg)を添加した。添加が完了したら、輸送ラインをTHF(3kg)ですすぎ、これをリアクターに添加した。約20℃で1時間経過後、さらなる0.6kgの塩化オキサリル及び2kgのTHFをリアクターに添加した。さらなる塩化オキサリル(0.6kg)及びTHF(2kg)を添加するプロセスを繰り返し(2回目)、次いで3回目にはより少量の塩化オキサリル(0.13kg)をTHF(2kg)とともに添加した。
【0053】
水(60L)、KCO(11.1kg)、3−フルオロ−4−[(6−(メチルオキシ)−7−{[3−(4−モルホリニル)プロピル]オキシ}−4−キノリニル)オキシ]フェニル}アミン(32.5kg、CAS Reg.No.479690−10−3及米国特許出願第2004/0242603号参照)及びTHF(177kg)を別個のリアクター(リアクター2)に添加し、このリアクターの内容物を約15℃に調整した。リアクター2の温度を20℃未満に維持しながら、リアクター1の内容物をリアクター2に添加した。リアクター1をTHF(5kg)ですすいで、これをリアクター2に移し、リアクター2の内容物の温度を約20℃に調整した。約3時間後、171kgの0.8M KCO水溶液及び酢酸イソプロピル(119kg)を添加し、混合物を10分間攪拌し、沈降させ、下の水層を捨てた。さらなる171kgの0.8M KCO水溶液を添加し、混合し、沈降させ、水層を再び捨てた。水(137kg)を添加し、混合し、沈降させ、水層を再び捨てた。水蒸気で活性化された炭素粉末(Norit Americas、Inc.社製Darco G−60)(3.4kg)及び酢酸イソプロピル(3kg)を添加し、約2.5時間攪拌し、次いで、珪藻土を含有するフィルターに通して別個のリアクター(リアクター3)に移した。酢酸イソプロピル(各33kg)でリアクター2を2回すすぎ、これを上記のフィルターに通して送り、リアクター3に含有されるバッチと合わせた。温度を50℃未満に維持しながら、リアクター3の内容物を真空下で約104Lの最終体積に濃縮した。イソプロパノール(161kg)を添加し、温度を50℃未満に維持しながら、リアクター3の内容物を真空下で約104Lの最終体積に再び濃縮した。イソプロパノール(161kg)を再び添加し、温度を50℃未満に維持しながら、リアクター3の内容物を真空下で約100Lの最終体積に濃縮した。リアクター3の内容物を約75℃に温め、約80分間保持し、約55℃に冷却した。約55℃で、約1%イソプロパノールと混合したヘプタン(1kg)をリアクターに添加し、結晶が観察されるまで、バッチを約70分間保持した。リアクター内容物を約55℃に維持しながら、約1%イソプロパノールと混合されたヘプタン(46kg)をリアクターに添加し、リアクター内容物をこの温度でさらに75分間保持した。約5時間にわたりリアクター内容物を約20℃に冷却し、この温度でさらに約12時間保持した。リアクター内容物を約5℃に冷却し、この温度で約1時間保持した。リアクター3の内容物をフィルタードライヤーに移し、イソプロパノール(18kg)及びヘプタン(8kg)の混合液ですすいだ。フィルタードライヤーの内容物を約50℃で約56時間にわたり乾燥させ、灰白色の粉末として42.8kg(89%)の化合物(I)結晶形Bを得た。
【0054】
3.2 化合物(I)結晶形BのX線粉末回折特性評価
PANalytical X’Pert Pro回折計を用いて、X線粉末回折パターンを得た。バックグラウンドがゼロのケイ素の挿入試料ホルダー上で試料を穏やかに平坦化した。Cu Kα線源及び40kV及び45mAの発生装置出力で、2°から50°の連続2θ走査範囲を使用した。40.7秒のステップ時間で0.017度/ステップの2θステップサイズを用いた。試料を30rpmで回転させた。室温及び周囲湿度で実験を行った。図3−Aは、実施例3.1からのN−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド結晶形Bに対するXRPDパターンを示す。XRPDパターンにおいて実験°2θ±0.1°2で次のピークが同定された:6.7、9.9、10.2、10.7、11.5、13.1、14.3、15.1、15.9、17.6、17.9、18.2、19.4、20.2、21.2、22.2、22.8、23.8、24.7、26.2、27.5及び30.0。上記表1は、形態Bの特徴となる°2θ+0.2°θでのピークを列挙する。XRPDパターンで同定されたか又は表1で列挙されたピークのリスト全体又はそれらの一部は、化合物(I)の形態B特徴付けるのに十分であり得る。
【0055】
3.3 化合物(I)結晶形Bの13C及び19F固体NMRスペクトル
【0056】
399.87MHzのH周波数で稼動するBruker Avance 400三重共鳴スペクトロメーターを用いて、固体NMRスペクトルを得た。8kHzのローター周波数でBruker4−mm三重共鳴マジック角スピニングプローブとともに交差分極パルスシーケンスを用いて13CNMRスペクトルを得た。交差分極効率を促進するために、Hチャネルにおいて、75から90kHzの線形電力ランプを使用した。5パルス総サイドバンド抑制パルスシーケンスによって、スピニングサイドバンドを除去した。同じスペクトロメーター及びプローブを用いて、交差分極パルスシーケンス及び12.5kHzのローター周波数のスピニングを用いて、19Fスペクトルを得た。機器の変動性及び較正のために、19FNMRピークの位置はCFClに対して報告し、±0.2ppmの精度と見積もった。図3−Bは、実施例3.1で調製した化合物(I)結晶形Bの固体13C NMRスペクトルを示す。機器の変動性及び較正のために、13C NMRのピーク位置は、0ppm(100万分の一)のテトラメチルシランに対して報告し、±0.2ppmの精度と見積もった。固体13C NMRスペクトルにおいて次のピークが同定された:171.4、167.6、162.7、160.5、156.4、154.3、151.0、150.0、147.4、139.0、137.9、133.5、131.4、126.1、122.7、117.0、107.8、104.3、100.0、68.5、63.9、56.4、54.1、31.9、29.3、25.7及び16.1。固体13C NMRスペクトルからの形態(B)に対する特徴的なピークには、162.7、160.5、147.4、137.9、133.5、131.4、126.1及び122.7±0.2ppmにおけるものが含まれる。これらのピーク又はそれらの一部は、化合物(I)の結晶形Bを同定するために使用し得る。図3−Cは、実施例3.1で調製した化合物(I)結晶形Bの固体19F NMRスペクトルを示す。機器の変動性及び較正のために、この固体19F NMRスペクトルは、CFClに対して、±0.2ppmの精度で、ピーク−116.1及び−130.4を示した。固体19F NMRスペクトルにおける両ピークは、形態Bに特徴的であると考えられる。星印()付して示されるピークはスピニングサイドバンドである。
【0057】
3.4 化合物(I)結晶形Bのラマンスペクトル
液体窒素冷却ゲルマニウム検出器を備えたThermo Nicolet 960スペクトロメーター及びビデオ制御付きのモーター駆動アクセサリを用いて、フーリエ変換(FT)ラマンスペクトルを得た。0.55Wの出力設定で1.064μmレーザーを使用した。ガラス製顕微鏡スライド上に粉末化試料を置き、ステージを用いてビームに直接置いた。1−mmレーザースポットサイズを使用し、2cm−1解像度で512回の走査を回収した。化合物(I)の結晶形BのFT−ラマンスペクトルを図3−Dで示す。FTラマンスペクトルにおいて、次のピーク(ラマンシフト、cm−1±2cm−1)が観察された:391、460、636、705、750、787、853、911、1088、1116、1163、1177、1258、1305、1330、1352、1386、1436、1463、1483、1506、1582、1623、1682、2835、2967、3003及び3076。化合物(I)の結晶形Bを同定するために、これらのピーク又はそれらの一部を使用し得る。
【0058】
3.3 化合物(I)結晶形Bの熱特性評価
TA Instruments Q2000示差走査熱量計を用いて、DSCサーモグラムを得た。実施例3.1で調製した化合物(I)結晶形Bの1.5360mgの試料質量を直接アルミニウムDSCパンに測り取った。手で圧をかけて、パンの各部を押し付けることによって、このパンを密封した(動き嵌め構造としても知られる。)。10℃/分で25℃から225℃に温度を上昇させた。195.3℃のピーク融解温度及び79.18J/gの熱流量を融解吸熱に対して測定した。DSCサーモグラムを図3−Eで示す。発熱事象を上向きにプロットする。
【0059】
TA InstrumentsQ500熱重量分析器を用いて、TGAサーモグラムを得た。試料パンの風袋重量を測定し、実施例3.1で調製した10.7750ミリグラムの化合物(I)結晶形Bをこのパンに置いた。10℃/分で25℃から300℃に温度を上昇させた。150℃まで0.02%の重量損失が観察され、180℃までは1.02%のさらなる重量損失が観察されたが、殆どが分解によるものであると思われる。TGAサーモグラムを図3−Fで示す。
【0060】
実施例4:結晶性N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド、化合物(I)、形態Bの錠剤
【0061】
示されるような4種類の濃度で、表3で報告される成分を用いて、結晶性化合物1、形態Bの錠剤を調製した。任意の水性フィルムコートとともに、この実施例における錠剤を調製した。錠剤を形成するために使用した処理ステップを表4で示す。粒内成分の調製には、さらなる処理に使用しようとする顆粒を生成させるための高せん断湿式造粒法が含まれた。使用した全成分は、製剤原料のバイオアベイラビリティーを向上させるためにバイオエンハンスメント剤として添加したラウリル硫酸ナトリウムを除き、湿式造粒法のプロセスに対して従来から使用されるものである。バイオエンハンスメントのために、結晶性化合物(I)、形態Bを微粉末化形態で使用したが、これは、製剤原料の密度が低く、操作及び処理が困難となることを意味する。より処理及び錠剤化し易い高密度物質を生成させるために、高せん断湿式造粒法を使用する。粒外成分の調製は、顆粒剤及び添加した賦形剤から錠剤を生成させるための圧縮段階であった。使用した賦形剤は、錠剤を製造するために従来から使用されるものである。XRPDにより確認したところ、最終的な錠剤中で、化合物1、形態Bの結晶形が保持されていた。
【表3】


【表4】

【0062】
平明性及び理解のために、実例及び実施例によって、前述の発明を少々詳しく述べてきた。本発明を様々な具体的実施形態及び技術に関して述べてきた。しかし、本発明の精神及び精神から逸脱することなく、多くの変更及び修正が行われ得ることを理解すべきである。当業者にとって明らかであろうが、添付の特許請求の範囲の範囲内で変更及び修正を実施することができる。従って、上記の説明が例示であり、限定するものではないことを理解されたい。従って、本発明の範囲は、上記の説明に基づいて決定されるものではなく、かかる特許請求の範囲が与えられる同等物の全範囲とともに、続く添付の特許請求の範囲に基づいて決定されるべきである。本願で引用される全ての特許、特許出願及び刊行物は、それらの全体において、個々の各特許、特許出願又は刊行物が個々に示されるのと同程度、全ての目的のために、参照により本明細書によって組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
161.2、158.6、153.3、146.5、136.0、132.6、128.6、127.4及び124.9ppm±0.2ppmにピークがある固体13C NMRスペクトル;
CFClに対して−116.8及び−128.6ppm±0.2ppmにピークがある固体19F NMRスペクトル;及び
7.2、7.7、12.5、15.5、16.5、17.1及び19.1°2θ±0.2°2θにピークがあるX線粉末回折パターン
のうち少なくとも1つを有することを特徴とする、N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドの結晶形。
【請求項2】
7.2、7.7、12.5、15.5、16.5、17.1及び19.1°2θ±0.2°2θにピークがあるX線粉末回折パターン;
161.2、158.6、153.3、146.5、136.0、132.6、128.6、127.4及び124.9ppm±0.2ppmにピークがある固体13C NMRスペクトル;及び
CFClに対して−116.8及び−128.6ppm±0.2ppmにピークがある固体19F NMRスペクトル
のうち少なくとも2つを特徴とする、請求項1に記載のN−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドの結晶形。
【請求項3】
162.7、160.5、147.4、137.9、133.5、131.4、126.1及び122.7ppm±0.2ppmにピークがある固体13C NMRスペクトル;
CFClに対して−116.1及び−130.4ppm±0.2ppmにピークがある、固体19F NMRスペクトル;及び
6.7、10.2、13.1及び22.2°2θ±0.2°2θにピークがあるX線粉末回折パターンの、
少なくとも1つを有することを特徴とする、N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドの結晶形。
【請求項4】
6.7、10.2、13.1及び22.2°2θ±0.2°2θにピークがあるX線粉末回折パターン;
162.7、160.5、147.4、137.9、133.5、131.4、126.1及び122.7ppm±0.2ppmにピークがある固体13C NMRスペクトル;及び
CFClに対して−116.1及び−130.4ppm±0.2ppmにピークがある固体19F NMRスペクトル
のうち少なくとも2つを特徴とする、請求項3に記載のN−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドの結晶形。
【請求項5】
11.5、14.5、18.3及び20.4°2θ±0.2°2θにピークがあるX線粉末回折パターンを有することを特徴とする、結晶性N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミド。
【請求項6】
治療的有効量の請求項1から5の1項に記載の結晶性N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドと、医薬的に許容可能な賦形剤と、を含む医薬組成物。
【請求項7】
癌治療を必要とする対象に、治療的有効量の請求項1から5の1項に記載の結晶性N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドを投与する段階を含む、癌を治療する方法。
【請求項8】
治療される前記の癌が、腎臓癌、胃癌、頭頸部癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、結腸直腸癌、扁平上皮細胞骨髄性白血病、血管腫、悪性黒色腫、星状細胞腫、膠芽腫、遺伝性及び散発性腎乳頭腫、扁平上皮癌、肝細胞癌及び脳腫瘍からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
溶液を生成させるために、N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドを熱n−プロパノール中で溶解させ;
結晶形の沈殿物を得るために該溶液を十分に冷却し;
該結晶形を単離する、
段階を含む、請求項1に記載の結晶性N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドを調製する方法。
【請求項10】
結晶形を沈殿させるために、高温でN−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドのイソプロパノール含有溶液に十分なヘプタンを添加し;
該結晶形をさらに沈殿させるために十分な条件下で混合物を冷却し;
該結晶形を単離する、
段階を含む、請求項3に記載のN−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドの結晶形を調製する方法。
【請求項11】
溶液を生成させるために、N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドをメタノール中で溶解させ、
結晶形を沈殿させるために十分な条件下で溶液を静置し;
該結晶形を単離する、
段階を含む、請求項5に記載の結晶性N−[3−フルオロ−4−({6−(メチルオキシ)−7−[(3−モルホリン−4−イルプロピル)オキシ]キノリン−4−イル}オキシ)フェニル]−N’−(4−フルオロフェニル)シクロプロパン−1,1−ジカルボキサミドを調製する方法。

【図1−A】
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【図1−B】
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【図1−C】
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【図1−D】
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【図1−E】
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【図1−F】
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【図1−G】
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【図1−H】
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【図2−1−A】
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【図2−1−B】
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【図2−6−A】
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【図2−6−B】
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【図3−A】
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【図3−B】
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【図3−C】
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【図3−D】
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【図3−E】
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【図3−F】
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【公表番号】特表2012−533570(P2012−533570A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520827(P2012−520827)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/042353
【国際公開番号】WO2011/009095
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(506024489)エグゼリクシス, インコーポレイテッド (50)
【Fターム(参考)】