説明

N,N’−架橋ビスインドリルマレイミドの製造における新規中間体およびその用途

【課題】医薬として有用なアミノ置換N,N’−架橋ビスインドリルマレイミド化合物の合成において鍵となる中間体を提供する。
【解決手段】下式で示される化合物。


(式中、R1はO−トシル基である。)該化合物は、望ましくない有毒不純物を伴わず、高い収率でN,N’−架橋ビスインドリルマレイミド化合物を製造するのに有用である。また、該化合物は、アイソザイム選択的PKC阻害物質としても有用であり、糖尿病およびその合併症、虚血、炎症、中枢神経系障害、心臓血管疾患、皮膚疾患および癌に関連する状態の処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
プロテインキナーゼCアイソザイムの広在性およびその生理学上の重要な役割は、高度に選択的なPKC阻害物質製造の動機を与える。あるアイソザイムの疾患状態との結び付きを実証する証拠が与えられれば、他のPKCアイソザイムおよび他のプロテインキナーゼと比べて1つまたは2つのプロテインキナーゼCアイソザイムに対して選択的な阻害化合物が優れた治療薬剤であるとするのは理にかなっている。そのような化合物はその特異性によってより大きな効能およびより少ない毒性を示す。
【背景技術】
【0002】
あるクラスのPKCアイソザイムに選択的なN,N’−架橋ビスインドリルマレイミド化合物は1995年6月14日発行のHeathら., (EP 0 657 458)に開示されている。このN,N’−架橋化合物群において好ましい化合物は、式I:
【化1】

(式中、Rはアミノ基、アルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基である)で示される化合物を含む。Heathらは以下のように製造されるいくつかのこれらアミノ置換N,N’−架橋ビスインドリルマレイミド化合物を例証している。
【化2】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、アミノ置換N,N’−架橋ビスインドリルマレイミド化合物を製造するために用いたO−メシレート機能が有毒であり、アミノ置換N,N’−架橋ビスインドリルマレイミド化合物の製造において望ましくない不純物であることが見いだされた。O−メシレート中間体を最終生成物から確実に取り除くためには高価な精製技術を使用しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はアミノ置換N,N’−架橋ビスインドリルマレイミド化合物の合成において鍵となる中間体を提供する。この新規中間体はO−メシレート中間体を経由せずに容易にアミノ置換N,N’−架橋ビスインドリルマレイミド化合物に変換される。この中間体はまた劇的に、より反応性が高い。アミノ置換N,N’−架橋ビスインドリルマレイミド化合物の製造の際に、この中間体をできるだけ低い温度、短い反応時間で用いると、副生成物がより少なくなり収率がより高くなるので、好ましい。これゆえ、この中間体は望ましくない有毒不純物を伴わない高い収率でN,N’−架橋ビスインドリルマレイミド化合物を製造するのに有用である。
【0005】
さらに、特許請求している化合物はアイソザイム選択的PKC阻害物質として有用である。それゆえこの化合物は、糖尿病およびその合併症、虚血、炎症、中枢神経系障害、心臓血管疾患、皮膚疾患および癌に関連する状態の処置に有用である。
【0006】
本発明は式II:
【化3】

[ここに、R1は臭素原子(Br)、ヨウ素原子(I)またはO−トシル基である]
で示される化合物を与える。
【0007】
さらに本発明は式IIで示される化合物および製薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含有する医薬製剤に関する。
【0008】
本発明のもう1つの態様は、式IIの化合物を式Iで示されるアミノ置換N,N’−架橋ビスインドリルマレイミド化合物の製造に用いる方法であり、これは式IIの化合物を非反応性の極性溶媒中でアミン化合物と反応させることを本質とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書に開示し特許請求している本発明の目的のために、以後の用語および略語を次のように定義する。
【0010】
用語「C1−C4アルキル」は1〜4つの炭素原子をもつ環状、直鎖または分岐鎖状のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基などを表す。
【0011】
用語「アリール」は置換もしくは非置換のベンジル基、フェニル基またはナフチル基を表す。
【0012】
用語「アミン化合物」は本明細書に用いている−N(CF3)CH3)、−NH(CF3)または−NR34(式中、R3およびR4は独立に水素原子、C1−C4アルキル基、フェニル基、ベンジル基であるか、あるいはR3およびR4が結合している窒素原子と一緒になって、飽和もしくは不飽和の5または6員環を形成する)を意味する。
【0013】
上記のように、本発明は式II:
【化4】

(式中、R1は臭素原子、ヨウ素原子またはO−トシル基である)
で示される化合物に関する。
【0014】
式IIの化合物には種々の立体異性体が存在し得ることがわかっている。本発明の好ましい化合物は式IIaおよびIIb:
【化5】

の化合物である。しかしながら、ラセミ体および個々の光学異性体ならびにその混合物は本発明の一部を構成する。
【0015】
本発明の化合物は式:
【化6】

で示される化合物から最も容易に製造される。このヒドロキシ置換N,N’−架橋ビスインドリルマレイミド化合物(化合物III)は1995年6月14日発行のHeathら., EP 0 657 458(これは引用によって本明細書に包含される)に記載の技術によって製造される。
【0016】
特許請求している化合物は以下のように製造される:
【化7】

(R1は前記定義と同意義である)。R1は臭素原子またはヨウ素原子であるのが好ましく、最も好ましいのは臭素原子である。特許請求しているトシレート(p−トルエンスルホニル)化合物は、塩基、例えばピリジンの存在下、THF、エーテル、塩化メチレンまたは他の非反応性有機溶媒中でこのアルコール体をp−トルエンスルホン酸無水物と反応させることによって製造する。この反応は一般に窒素の存在下、室温から反応混合物の還流温度で行う。
【0017】
特許請求しているハロゲン化物はこのアルコール体を臭素源またはヨウ素源と反応させることによって製造する。臭素源およびヨウ素源はHI、HBr、LiBr、CaBr2、PBr3、R5PBr2、N−ブロモスクシンイミド、CBr4、アリール−Br、ベンジル−Br、SOBr2(ここに、R5はフェニル基、フェニルオキシ基、アルキル基またはアリール基である)を含む、当分野において認められるたくさんの試薬とすることができる。当業者であれば1,1’−カルボニルジイミダゾールのような種々の活性化試薬を反応に加えることができるのは理解されよう。ヒドロキシ体(III)からハロゲン化物(II)への転換はRichard C. Larock, A GUIDE TO FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS, VCH Publishers, p. 356-63 (1989)(これは引用によって本明細書に包含される)に開示され当分野において認められている技術によって行うことができる。好ましい条件は、PX3、(フェニル)3PX2または(フェノキシ)3PX2(ここに、Xは臭素原子またはヨウ素原子である)のようなハロゲン化リン試薬の存在下に上記臭素源またはヨウ素源を用いる条件である。この反応はTHF、アセトニトリル、塩化メチレン、または当分野において認められている他の非反応性溶媒中で行うのが適切である。DMFおよび他の溶媒もまた、Barluenga J. Synthesis p. 426 (1985)およびHodosi G, Carbohydrate Research 230:327-42 (1992)に記載のフィルスマイヤー型試薬の生成によって有効である。
【0018】
式IIで示される化合物は以下のように、式IVで示されるアミノ置換N,N’−架橋ビスインドリルマレイミド化合物に転換される:
【化8】

[ここに、R1は臭素原子、ヨウ素原子、またはO−トシル基であり;R2は−N(CF3)CH3)、−NH(CF3)、または−NR34(式中、R3およびR4は独立して水素原子、C1−C4アルキル基、フェニル基、ベンジル基であるか、あるいはR3およびR4が結合している窒素と一緒になって、飽和もしくは不飽和の5または6員環を形成する)である]。好ましくは、R2はN(CH3)。
【0019】
化合物IIを用いて化合物IVを生成させる方法は化合物IIを式:HN(CF3)CH3)、HNH(CF3)、またはHNR34(ここにR3およびR4は独立して水素原子、C1−C4アルキル基、フェニル基、ベンジル基であるか、あるいはこれらが結合している窒素原子と一緒になって、飽和もしくは不飽和の5または6員環を形成する)で示されるアミン化合物と非反応性の極性非プロトン溶媒中で反応させることを特徴とする。この反応は温度0℃から反応混合物の還流温度までの範囲でDMF、THF:水、またはジメチルアセトアミド中にて行うのが好ましい。この反応は一般に約1〜20時間で完了する。好ましくは、室温から50℃で反応を行う。化合物IVは標準的な技術を用いて反応混合物から精製できるが、反応混合物から直接結晶化するのが好ましい。
【0020】
最も驚くべきは、特許請求している中間体をアミノ置換N,N’−ビスインドリルマレイミド化合物の製造に用いると、より高い収率が得られ、有毒不純物の生成を回避できることである。そして意外にも、本発明の中間体は既知のメシレート中間体よりも高い反応性を示した。HN(CH32に対する種々の脱離基の反応性を表1に示した。当分野において推測される相対的な反応性はCAREY AND SUNDBERG, Part A, 3rd Edition, page 291 (1990)に記載されている。
【0021】
表1. HN(CH3)2との反応速度
基 Krel
(離脱基のHN(CH3)2との反応速度)
p-トルエンスルホネート 2.2×10-2
MsO- 5.5×10-3
Cl- 9.8×10-4
- 2.0×10-1
Br- 2.2×10-2
【0022】
表1のデータはトシル基、ブロミドおよびヨウダイドが意外にも反応性が高いことを示している(特にブロミドおよびヨウダイドは既知のメシレート中間体よりも4〜36倍も高い反応性を示す)。H2NCH3、H2N(ベンジル)を用いてもMsOに比べて高い反応性が見られた。反応性の増大により反応がより低温でより短時間に完了するようになる。さらに本発明の中間体を用いることにより生成物中の不純物がほとんどなくなる。既知のO−メシル中間体を用いると、アミノ置換N,N’−ビスインドリルマレイミド化合物を生成する反応は、マレイミドのカルボニル基での反応から生じる副生成物のために不純度のレベルが15〜30%となる。本発明の中間体を用いると不純度のレベルは5%より低くなり、これは実質的な進歩である。
【0023】
前述のように、アミノ置換N,N’架橋ビスインドリルマレイミド化合物を製造するために用いられていたO−メシレート機能は有毒であり、またアミノ置換N,N’−架橋ビスインドリルマレイミド化合物の製造において望ましくない不純物であることが分かった。最終生成物からO−メシラート中間体を確実に取り除くためには高価な精製技術を用いなければならない。それゆえ、本発明の中間体および本発明の中間体を用いるアミノ置換N,N’架橋ビスインドリルマレイミド化合物の製造方法のさらなる利点は有毒不純物を取り除くための困難な精製工程が回避されることである。
【0024】
本発明の中間体を用いて製造される好ましい化合物は以下の通りである:(S)−13−[(ジメチルアミノ)メチル]−10,11,14,15−テトラヒドロ−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ−[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン、特にそのメシレ−ト塩として;(S)−13−[(モノメチルアミノ)メチル]−10,11,14,15−テトラヒドロ−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ−[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン;(S)−13−[(ピロリジノ)メチル]−10,11,14,15−テトラヒドロ−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ−[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン一塩酸塩;および(S)−13−[ベンジルアミノメチル]−10,11,14,15−テトラヒドロ−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ−[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン。
【0025】
式IVで示される好ましい一置換アミン化合物は本発明の化合物から直接製造できる。高い収率の直接的な方法でこれらの化合物を製造するのはメシレート中間体では不可能である。
【0026】
式IVで示される化合物は遊離塩基として製造され、好ましくは当分野において認められている技術によって製薬的に許容される塩に変換する。好ましい塩は塩酸塩およびメシレート塩をなどである。
【0027】
以下の実施例および製造例は本発明を単に例示するためのものである。本発明の範囲は単に以下の実施例のみから構成されるものと理解するべきではない。以下の実施例および製造例では融点、核磁気共鳴スペクトル、質量スペクトル、シリカゲルの高圧液体クロマトグラフィー、N,N’−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、および酢酸エチルはそれぞれM.Pt.、NMR、MS、HPLC、DMF、THF、およびEtOAcと略記する。記号「NMR」および「MS」はそのスペクトルが所期の構造を満足することを示す。
【0028】
製造例1
3−(2−[(メチルスルホニル)オキシ]エトキシ]−4−トリフェニルメトキシ)−1−ブタノールメタンスルホネート
トリチルクロライド(175.2g、0.616モル)を窒素雰囲気下、CH2Cl2500mLに溶解した。トリエチルアミン(71.9g、100mL、0.710モル)を加えた後、R,S−グリシドール(50.0g、0.648モル)を加え、反応溶液を4時間緩やかな還流温度(42℃)にまで加熱した。この反応物を室温にまで冷却し、塩化アンモニウムの飽和水溶液250mL次いでブライン(塩水)250mLで2回抽出した。水相をCH2Cl2100mLで逆抽出し、有機相を乾燥(MgSO4)し、減圧下で蒸発させて、油状物としてトリチル−グリシドールを得、これをエタノールから再結晶し、固形のトリチル−グリシドール104.4g(54%)を得た。
【0029】
ビニルマグネシウムブロミド(50mL、50ミリモル、2.0当量)の1MTHF溶液を窒素雰囲気下で−20℃にまで冷却し、触媒量のヨウ化銅を加えた(0.24g、1.26ミリモル、0.05当量)。得られた混合物を−20℃で5分間撹拌した後、乾燥THF40mL中のトリチル−グリシドール(7.91g、25.0ミリモル)の溶液を−20℃で15分間かけて滴加する。この反応混合物を−20℃で3時間撹拌した後、室温にまで戻し、15分間撹拌した。この反応混合物を−30℃に冷却することによって反応を停止し、塩化アンモニウムの飽和水溶液125mLをゆっくりと加えた。得られた混合物を酢酸エチル200mLで抽出した。次いで有機相を脱イオン水125mL中のエチレンジアミンテトラ酢酸、二ナトリウム塩、二水和物(EDTA)0.93g(2.50ミリモル、0.1当量)の水溶液で抽出し、すべての金属を取り除いた。水相を酢酸エチル50mLで逆抽出し、有機相をまとめ、ブライン100mLで洗浄し、乾燥(MgSO4)し、減圧下で蒸発させ、油状物を得、これを3/1ヘキサン/酢酸エチル1.2Lを用いてシリカ(76g)に通し、濾過した。濾液を減圧下で蒸発させ、明黄色油状物の1−(トリフェニルメトキシ)−4−ペンテン−2−オール9.07g(100%)を得た。
【0030】
鉱油中の水素化ナトリウム60%懸濁液(6.13g、0.153モル、1.5当量)を乾燥THF175mLに懸濁し、これは室温で加えた。得られた混合物を45℃で1.5時間懸濁した後、新たに蒸留した臭化アリル17.7mL(0.204ミリモル、2.0当量)をシリンジによって加えた。この反応物を45℃で1時間加熱した。この反応はTLCまたはHPLCによってモニターできる。この反応混合物を0℃にまで冷却し、塩化アンモニウムの飽和水溶液400mLをゆっくりと加え、過剰の塩基を失活(クエンチ)する。得られた混合物を酢酸エチル800mLで抽出し、有機相を水500mLで洗浄する。水相を酢酸エチル100mLで逆抽出し、有機相をまとめ、ブライン200mLで洗浄し、乾燥(MgSO4)し、減圧下で蒸発させ、黄色油状物の1,1’,1’’−[[[2−(2−プロペニルオキシ)−4−ペンテニル]オキシ]メチリジン]トリス[ベンゼン]41.5g(>100%)を得た。
【0031】
1,1’,1’’−[[[2−(2−プロペニルオキシ)−4−ペンテニル]オキシ]メチリジン]トリス[ベンゼン](39.3g、0.102モル)を無水メチルアルコール390mLおよびCH2Cl260mLの溶液に溶解し、粘性のある反応溶液に窒素気泡を通しながら、−50℃から−40℃に冷却した。次いで−50℃から−40℃で80分間、反応物の色が淡青色に変化するまでオゾン気泡を反応混合物に通した。得られた混合物を窒素雰囲気下で0℃にまであたためた後、反応温度を10℃以下に保ちながら、エタノール85mL/水85mL中のホウ水素化ナトリウム(23.15g、0.612モル、6当量)溶液をゆっくりと加え、反応を停止した。この反応物を氷浴中で30分間撹拌し、次いで室温にまで戻し、一晩撹拌した。あたためる温度は31℃にまで上がった。この反応混合物を塩化アンモニウムの飽和水溶液400mLで希釈し、酢酸エチル800mLで抽出した。有機相を水400mLで洗浄し、水相を酢酸エチル150mLで逆抽出した。有機相をまとめ、ブライン200mLで洗浄し、乾燥(MgSO4)し、減圧下で蒸発させ、濁った油状物を得た。この油状物を2/1ヘキサン/酢酸エチルから3回再結晶を繰り返し、3−(2−ヒドロキシエトキシ)−4−(トリフェニルメトキシ)−1−ブトノ−ル28.9gを得た(72%)。
【0032】
3−(2−ヒドロキシエトキシ)−4−(トリフェニルメトキシ)−1−ブトノール(14.0g、35.7ミリモル)をCH2Cl2140mLに溶解し、これを窒素雰囲気下で0℃にまで冷却し、トリエチルアミン(10.8g、14.9mL、0.107モル、3.0当量)を加えた。次いでメタンスルホニルクロライド(11.0g、7.46mL、96.4ミリモル、2.7当量)を<5℃で滴加した。得られた反応混合物をさらにCH2Cl2(300mL)で希釈し、水200mLおよび塩化アンモニウムの飽和水溶液200mLで洗浄した。水相をCH2Cl250mLで逆抽出し、有機相をまとめ、ブリン100mLで洗浄し、乾燥(MgSO4)し、減圧下で蒸発させ、白色固形の3−(2−[(メチルスルホニル)オキシ]エトキシ]−4−トリフェニルメトキシ)−1−ブタノールメタンスルホネート18.4g(94%)を得た。
【0033】
製造例2
(S)−トリチルグリシドール
トリチルクロライド(2866g、10.3モル)を窒素雰囲気下でCH2Cl27Lに溶解した。トリエチルアミン(1189g、1638mL、11.8モル)を加えた後、CH2Cl21Lを洗浄液として用いて(R)−(+)−グリシドール(795.0g、10.6モル)を加えた。反応溶液を緩やかな還流温度(42℃)にまで3〜4時間加熱した。反応物を室温にまで冷却した後、ブリン3Lを加えた。有機相を乾燥(600g Na2SO4)し、減圧下で蒸発させ、油状物標題化合物を得、これをエタノールから再結晶し、固形の標題化合物2354g(70%)を得た。
【0034】
製造例3
(S)−3−[2−[(メチルスルホニル)オキシ]エトキシ]−4−(トリフェニルメトキシ)−1−ブタノールメタンスルホネート
ビニルマグネシウムブロミド(5.76L、5.76モル、1.96当量)の1M THF溶液を窒素雰囲気下で−20℃にまで冷却し、触媒量のヨウ化銅を加えた(28.2g、0.148モル、0.05当量)。得られた混合物を−20℃で5分間撹拌した後、乾燥THF3.2L中の(S)−トリチル−グリシドール(929.0g、2.94モル)の溶液を−20℃で1.5時間かけて滴加した。反応混合物を−20℃で1時間撹拌した。反応混合物を−30℃にまで冷却することによって反応を停止し、塩化アンモニウムの飽和水溶液5Lをゆっくりと加えた。次いで有機相をエチレンジアミン四酢酸、二ナトリウム塩二水和物(EDTA)の10重量%/容量溶液1Lで2回抽出し、すべての金属を取り除いた。有機相をブライン2Lで洗浄し、乾燥(MgSO4)し、減圧下で蒸発させ、油状物の(S)−1−0−トリフェニルメチル−4−ヒドロキシペンタノール1061g(96%)を得た。
【0035】
鉱油中の水素化ナトリウム(268.9g、6.72モル、1.5当量)の60%懸濁液を窒素雰囲気下で乾燥THF2.8Lに懸濁し、乾燥THF5.6L中の(S)−1−0−トリフェニルメチル−4−ヒドロキシペンタノール(1543g、4.48モル)溶液を室温で加えた。得られた混合物を室温で1.5時間撹拌した後、新たに蒸留した臭化アリル770mL(8.89モル、2.0当量)を20分間かけて加えた。反応物を1〜2時間45℃にまで加熱した。この反応混合物を15〜20℃にまで冷却し、塩化アンモニウムの飽和水溶液2Lをゆっくりと加え、過剰の塩基をクエンチした。得られた混合物を酢酸エチル1Lおよび水1Lで希釈し、有機相を単離した。水相を酢酸エチル500mLで逆抽出し、有機相をまとめ、乾燥(MgSO4)し、減圧下で蒸発させ、黄色油状物の(S)−1,1’,1’’−[[[2−(2−プロペニルオキシ)−4−ペンテニル]オキシ]メチリジン]トリス[ベンゼン]1867g(98%)を得た。 (S)−1,1’,1’’−[[[2−(2−プロペニルオキシ)−4−ペンテニル]オキシ]メチリジン]トリス[ベンゼン](1281g、3.33モル)を無水メチルアルコール4LおよびCH2Cl23.6Lの溶液に溶解し、粘性のある反応溶液に窒素気泡を通しながら−50℃から−40℃にまで冷却した。スーダンIII指示薬をこの反応物に加え、−50℃〜−35℃で13時間、反応物が桃色から明緑/黄色に変化するまでオゾン気泡を反応混合物に通した。得られた反応混合物を窒素雰囲気下で0℃にまで戻した後、これをエタノール2.5L/水2.5L中のホウ水素化ナトリウム(754g、19.9モル、6当量)の溶液に反応温度を30℃以下に保ちながら40分間かけてゆっくりと加えた。次いでこの反応物を室温で一晩撹拌した。反応はHPLCによってモニターできる。この反応混合物を10〜15℃にまで冷却し、塩化アンモニウムの飽和水溶液4Lへ<20℃でゆっくりと加えた。次いで反応停止した混合物を濾過し、固形物をCH2Cl23Lで洗浄した。有機相を単離し、塩化アンモニウムの飽和水溶液3Lで洗浄し、水相をCH2Cl21Lで逆抽出した。有機相をまとめ、乾燥(MgSO4)し、減圧下で蒸発させ、油状物の(S)−3−(2−ヒドロキシエトキシ)−4−(トリフェニルメトキシ)−1−ブタノ−ル1361g(>100%)を得た。
【0036】
(S)−3−(2−ヒドロキシエトキシ)−4−(トリフェニルメトキシ)−1−ブタノ−ル(500g、1.27モル)をCH2Cl24.8Lに溶解し、これを窒素雰囲気下、0℃にまで冷却し、トリエチルアミン(386.4g、532mL、3.81モル、3.0当量)を加えた。次いでメタンスルホニルクロライド(396.3g、268mL、3.46モル、2.7当量)を<5℃で30分間かけて滴加した。得られた反応混合物を0〜5℃で1〜2時間撹拌し、反応をHPLCによってモニターした。この反応混合物をさらにCH2Cl22Lで希釈し、水2Lおよび塩化アンモニウムの飽和水溶液2Lで2回洗浄した。水相をCH2Cl21Lで逆抽出し、有機相をまとめ、乾燥(MgSO4)し、減圧下で蒸発させ、粗製の固形物を得、これを1/1ヘプタン/酢酸エチルから再結晶3回し、固形の(S)−3−[2−[(メチルスルホニル)オキシ]エトキシ]−4−(トリフェニルメトキシ)−1−ブタノールメタンスルホネート615g(88%)を得た。NMR。MS。
【0037】
製造例4
(S)−10,11,14,15−テトラヒドロ−13−(ヒドロキシメチル)−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン
2,3−ビス−(1H−インドール−3−イル)−N−メチルマレイミド(114.7g、0.336モル)および(S)−3−[2−[(メチルスルホニル)オキシ]エトキシ]−4−(トリフェニルメトキシ)−1−ブタノールメタンスルホネート(220.0g、0.401モル、1.2当量)をDMF4.3Lに溶解した。次いでこの試薬溶液をDMF7L中の炭酸セシウム(437.8g、1.34モル、4.0当量)の50℃スラリーに70時間かけてゆっくりと加えた(約1mL/分)。70〜72時間後、この反応物を冷却し、濾過し、DMFを減圧下で取り除き、残留物を得、これをCH2Cl24.6mLに溶解した。有機相を1N HCl水溶液1.15L次いでブライン4.6Lで抽出した。水相をまとめて、CH2Cl21.1Lで逆抽出した。有機相をまとめ、乾燥(Na2SO4)し、濾過した。溶媒のほとんどを減圧下で取り除き、得られた溶液をさらにCH2Cl24〜5ガロンを用い、シリカゲル2Kgに通して濾過し、ベースライン(基線)物質を取り除いた。溶媒を減圧下で取り除き、得られた紫色固形物をアセトニトリル7容量(粗製の(S)−10,11,14,15−テトラヒドロ−2−メチル−13−[(トリフェニルメトキシ)メチル]−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオンの重さを基準として)中にトリチュレートし、乾燥後、(S)−10,11,14,15−テトラヒドロ−2−メチル−13−[(トリフェニルメトキシ)メチル]−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン150.2g(57%)を得た(HPLCによると標品に対して89%純度)。
【0038】
(S)−10,11,14,15−テトラヒドロ−2−メチル−13−[(トリフェニルメトキシ)メチル]−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン(32.7g、46.9ミリモル)をエタノール1.6Lおよび10N KOH水溶液1.6L中に懸濁した。得られた混合物を緩やかな還流温度(78℃)にまで19時間加熱した。還流温度に達すると固形物のほとんどが溶解した。反応溶液を10〜15℃にまで冷却し、10N HCl水溶液(1.2L)を<15℃でゆっくりと加え、酸度をpH=1に調節した。酸性にすると赤色のスラリーが生成した。この反応混合物をCH2Cl2500mLで希釈し、20分間撹拌し、濾過し、ほとんどの塩を取り出した。この塩をさらにCH2Cl2(1.5L)で洗浄し、濾液を水1Lで2回抽出した。水相をまとめ、CH2Cl21Lで逆抽出し、有機相を乾燥(MgSO4)した。溶媒を減圧下で取り除き、紫色固形の(S)−10,11,14,15−テトラヒドロ−13−[(トリフェニルメトキシ)メチル]−4,9:16,21−ジメテノ−13H−ジベンゾ[E,K]フロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3−ジオン36.0g(>100%)を得た(HPLC領域で80%純度)。
【0039】
(S)−10,11,14,15−テトラヒドロ−13−[(トリフェニルメトキシ)メチル]−4,9:16,21−ジメテノ−13H−ジベンゾ[E,K]フロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3−ジオン(36.0g、推定46.9ミリモル)を窒素雰囲気下で乾燥DMF320mLに溶解し、前もって混合しておいた1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(99mL、75.7g、0.469モル、10当量)およびメタノール(9.5mL、7.51g、0.235モル、5当量)の溶液で処理した。得られた溶液を45℃で7時間加熱した。この反応はHPLCによってモニターできる。ほとんどのDMFを減圧下で取り除き、得られた残留物を酢酸エチル200mLで抽出し、水200mLで洗浄し、5%LiCl水溶液100mLで2回洗浄した。水相を酢酸エチル100mLで逆抽出した。有機相をまとめ、塩化アンモニウムの飽和水溶液200mLで洗浄した。有機相をまとめ、乾燥(MgSO4)し、減圧下で蒸発させ、粗製の紫色固形(S)−10,11,14,15−テトラヒドロ−13−[(トリフェニルメトキシ)メチル]−4,9:16,21−ジメテノ−1H;13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン35.9g(>100%)を得た。
【0040】
(S)−10,11,14,15−テトラヒドロ−13−[(トリフェニルメトキシ)メチル]−4,9:16,21−ジメテノ−1H;13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン(34.0、推定46.8ミリモル)をCH2Cl2350mLに溶解し、窒素雰囲気下で−25℃にまで冷却する。<0℃で約1〜2分間無水塩酸ガスを反応溶液へ導入した。得られたスラリーを室温にまで戻し、1時間撹拌した。この反応はHPLCによってモニターできる。このスラリーを濾過し、固形物をCH2Cl2200mLで洗浄した。この固形物を減圧オーブン中、50℃で乾燥し、紫色固形の(S)−10,11,14,15−テトラヒドロ−13−(ヒドロキシメチル)−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン18.6g(90%)を得た(HPLC領域で93%純度)。
【実施例】
【0041】
実施例1
(S)−10,11,14,15−テトラヒドロ−13−[ブロモ(メチル)]−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ−[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン
臭素(2.0当量)およびピリジン(0.1当量)を塩化メチレン(10容量)へ加え、この溶液を−5℃にまで冷却した。この臭素をトリフェニルホスファイト(2.0当量)で滴定した。すべての臭素が消費されると溶液は黄色から透明に変化した。2番目の反応容器へ塩化メチレン(10容量)中の(S)−10,11,14,15−テトラヒドロ−13−[ヒドロキシ(メチル)]−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン(1.0当量)を加えた。このスラリーを−5℃にまで冷却した。次いでトリフェニルホスファイトジブロミド溶液をピローロジオンのスラリーへ加え、この反応物を室温にまで戻し、12〜16時間撹拌し、反応を完了させた。(HPLCによると<0.4%化合物III)。このスラリーを減圧下に室温で2時間かけて濃縮し、次いで脱イオン水1容量でクエンチし、15分間撹拌した。トルエン(40容量)をこの反応物のスラリーへ加え、生成物を沈殿させた。10℃で1時間撹拌した後、生成物を濾別し、トルエン(5容量)で2回、脱イオン水(5容量)、最後にトルエン5容量で洗浄した。標題ブロミド化合物を減圧乾燥機中、50℃で乾燥した。収率85〜90%(不純物1〜2%)。
【0042】
さらに不純物のレベルを下げるために、生成物をアセトン:水、メタノール:水、イソプロパノール:水、または酢酸エチルのような溶媒系中へ再びスラリー化する。生成物は比1:1から5:1のTHF:水中へ再スラリー化するのが好ましい。
【0043】
実施例2
(S)−13−[(ジメチルアミノ)メチル]−10,11,14,15−テトラヒドロ−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン
N,N−ジメチルホルムアミド(17容量)中の(S)−10,11,14,15−テトラヒドロ−13−[ブロモ(メチル)]−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン(1.0当量)溶液へジメチルアミン(10.73Kg、12当量)を加えた。反応容器を密閉し、45℃で9時間加熱した。次いでこの反応物を室温にまで冷却し、12〜16時間撹拌した。NaOH(12N、1.1当量)をこの反応物に加え、遊離塩基とした。この溶液をさらに2時間撹拌した。N,N−ジメチルホルムアミドを減圧下で5〜7容量にまで取り除いた後、60℃のMeOH(30容量)を同温度で1時間かけてこの反応物に加えた。次いでこの反応物を室温にまで冷却し、一晩撹拌した後、さらに0〜10℃にまで冷却した。得られた生成物を濾別し、MeOH(3容量)で洗浄した。この物質を減圧乾燥機中、50℃で恒量になるまで乾燥した。収率85〜92%。この反応で使用した他の溶媒はTHF/水およびジメチルアセトアミドであるが、出発物質および生成物の溶解度が低いため、反応は極性非プロトン溶媒中で行うべきである。in situで臭酸塩を遊離させるのに他の塩基を試した(以下参照)が、最も効果的な塩基は6N NaOH、12N NaOHおよびK2CO3であった。
【0044】
実施例3
(S)−10,11,14,15−テトラヒドロ−13−[ヨード(メチル)]−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン
(S)−10,11,14,15−テトラヒドロ−13−[メタンスルホニロキシ]−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン(1.0g、1.94ミリモル)を乾燥N,N−ジメチルホルムアミド20mL(20容量)中に取った。この溶液にヨウ化ナトリウム(3.0g、19.4ミリモル、10.0当量)を加え、この反応物を撹拌し、50℃で36時間加熱した。この反応物を環境温度にまで冷却し、水(50mL、50容量)を加えることによって生成物を単離した。析出した紫色固形生成物を5:1THF:水から再結晶して標題化合物0.87g(81%)を得た。
【0045】
実施例4
(S)−10,11,14,15−テトラヒドロ−13−[p−トルエンスルホニルオキシ(メチル)]−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン
(S)−10,11,14,15−テトラヒドロ−13−[ヒドロキシメチル]−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサ−ジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン(1.0g、2.27ミリモル)をジクロロメタン20mL(20容量)中に取った。この溶液へ無水トルエンスルホン酸(2.22g、6.80ミリモル、3.0当量)およびピリジン(0.72g、9.08ミリモル、4.0当量)を加え、反応物を撹拌し、42℃で2時間加熱還流した。この反応物を環境温度にまで冷却し、ジクロロメタン40mLで希釈した。有機相を1N塩酸50mLおよびブライン50mLで洗浄した。水相をジクロロメタン30mLで逆抽出し、有機相をまとめ、溶媒を塩化メチレンからエタノールに交換した。析出した紫色固形生成物を濾過し、標題化合物1.25g(93%収率)を得た。
【0046】
実施例5
(S)−13−[(モノメチルアミノ)メチル]−10,11,14,15−テトラヒドロ−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン
メチルアミン(37.1g、1.19モル、20当量)を、温度を23℃以下に保持しつつN,N−ジメチルアセトアミド600mlに溶解した。この溶液に実施例1の化合物(30g、0.0595モル)を加えた。得られた反応物を密閉容器内にて環境温度で24時間撹拌した。この反応中に生成されるHBrを、トリエチルアミン(8.3ml、0.0595モル、1当量)を加えて除去し、得られた反応物をさらに30分撹拌した後、4℃に冷却し、反応温度を25℃以下に保持しつつ水450mlをゆっくりと加えた。水を加えるとスラリーが形成され、それを1時間撹拌し、濾過し、得られた濾過固形物を水200mlをさらに用いて洗浄した。この固形物を50℃の減圧オーブン中で乾燥し、標題化合物25.03g(93%)を得た。
【0047】
実施例6
(S)−13−[(ピロリジノ)メチル]−10,11,14,15−テトラヒドロ−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン一塩酸塩
実施例1の化合物(1.0g、1.0当量)をN,N−ジメチルアセトアミド5ml中に取り、ピロリジン(1.6ml、10当量)を加えた。得られた反応物を45℃に9時間加熱し、次いで室温にまで冷却した。この赤色スラリーに12N NaOH(0.17ml、1.0当量)を加え、混合物を室温にて2時間撹拌し、赤色の溶液を得た。溶媒を減圧下に除去し、得られた油状物質を塩化メチレン(100ml)で希釈し、飽和塩化アンモニウム(100ml)および5%LiCl溶液(2x100ml)で洗浄した。減圧下に塩化メチレンを除去し、油状物質を得、これにメチルt−ブチルエーテルを加えて赤色固形物として標題化合物を沈殿させた。濾過してこの固形物を単離し、50℃にて減圧オーブン内で一晩乾燥し、生成物0.8g(81%)を得た。
【0048】
実施例7
(S)−13−[ベンジルアミノメチル]−10,11,14,15−テトラヒドロ−4,9:16,21−ジメテノ−1H,13H−ジベンゾ[E,K]ピローロ[3,4−H][1,4,13]オキサジアザシクロヘキサデシン−1,3(2H)−ジオン
実施例1の化合物をN,N−ジメチルアセトアミド20容量中に取り、ベンジルアミン(6当量)を一回で加えた。得られた反応物を密閉容器内で撹拌し、80℃に24時間加熱した。その反応物を環境室温にまで冷却し、トリエチルアミン(1当量)を加えてHBrを除去し、得られた反応物をさらに30分撹拌した。酢酸エチルを加え、有機層を塩化ナトリウムの飽和溶液で洗浄した。この溶液の酢酸エチルをエタノールに溶媒変換して赤色スラリーを得、これを濾過し、赤色固形物として標題化合物を得た(収率79%)。
【0049】
実施例8
動力学試験
【化9】

動力学試験のため、ジメチルアミン2モル濃度のN,N−ジメチルアセトアミド(DMA)溶液を調製した。化合物A(0.25g、0.45mmol)、化合物B(0.229g、0.45mmol)、化合物C(0.209g、0.45mmol)、化合物D(0.236g、0.45mmol)および化合物E(0.271g、0.45mmol)をそれぞれDMA(〜20ml/g、4−6ml)に溶解し、ジメチルアミン2モル濃度のDMA溶液(4.5ml、9.0mmol、20当量)を各反応物に加えた。これらの反応溶液を封栓し、23℃にて撹拌し、HPLC分析用に経時的にサンプリングした。アイソクラティック(isocratic)な50/50THF/0.1%トリフルオロ酢酸緩衝化水の1ml/分の移動相および233nmにセットしたUV検出器を用いて4.6mm x 25cmゾルバックスSB−CNカラムを利用した(Rt 化合物A=10.4分、Rt 化合物B=9.3分、Rt 化合物C=9.0分、Rt 化合物D=6.2分、Rt 化合物E=10.6分)。3点検量線の一次方程式(0.1mg/ml、0.05mg/mlおよび0.025mg/mlの濃度に対して対応する応答領域)から各化合物について応答係数を得、その係数から反応物濃度を測定した。HPLC分析の前に反応物試料(0.1ml)を計量フラスコ中で25mlに希釈し、得られた濃度(mg/ml)をモル濃度(mmol/ml)に変換した。化合物A、B、C、DまたはEの濃度で割ったジメチルアミン濃度の常用対数を時間に対してプロットした。各プロットから得られた直線の傾きを、最初のアミン濃度から最初の化合物濃度を差し引いた差で割り、二次速度定数(単位:LM-1Hr-1)を得た。得られた結果を表Iに示す。
【0050】
実施例9
メシレート対ブロミドとジメチルアミン、メチルアミンおよびベンジルアミンとの比較速度試験
動力学試験に使用するため、メチルアミンおよびジメチルアミンの2モル濃度N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)溶液を調製した。化合物D(1.03g、1.98mmol)および化合物B(1.00g、1.98mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド(メチルアミンおよびジメチルアミン反応については20ml/g、ベンジルアミン反応については36ml/g)中にて一緒にし、メチルアミンの2モル濃度DMA溶液(19.8ml、39.7mmol、20当量)またはジメチルアミンの2モル濃度DMA溶液(19.8ml、39.7mmol、20当量)またはベンジルアミン(4.25g、39.7mmol、20当量)を加えた。これらの反応溶液を封栓し、23℃にて撹拌し、HPLC分析用に経時的にサンプリングした。アイソクラティック(isocratic)な45/55THF/0.1%トリフルオロ酢酸緩衝化水の1ml/分の移動相および233nmにセットしたUV検出器を用いて4.6mm x 25cmゾルバックスSB−CNカラムを利用した(Rt 化合物D=11.4分、Rt 化合物B=19.9分)。3点検量線の一次方程式(0.1mg/ml、0.05mg/mlおよび0.025mg/mlの濃度に対して対応する応答領域)から各化合物について応答係数を得、その係数から反応物濃度を測定した。HPLC分析を行う前に反応物試料(0.1ml)を計量フラスコ中で25mlに希釈し、得られた濃度(mg/ml)をモル濃度(mmol/ml)に変換した。化合物濃度で割ったアミン濃度の常用対数を時間に対してプロットした。各プロットから得られた直線の傾きを、最初のアミン濃度から最初の化合物濃度を差し引いた差で割り、二次速度定数(単位:LM-1Hr-1)を得た。これにより、特許請求しているブロミド中間体から直接、メチルアミノおよびベンジルアミノ誘導体が高収率で調製された。メシレート中間体からは、メチルアミノおよびベンジルアミノ誘導体が直接、高収率には得られなかった。
【0051】
このように、本発明の化合物はさらに、選択的プロテインキナーゼCインヒビターとして活性を示す。この化合物の活性は、カルシウムカルモジュリン依存性プロテインキナーゼ検定、カゼインプロテインキナーゼII検定、cAMP依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニット検定および1995年6月14日発行のEP0 657 458[Heathら](これは引用によって本明細書に包含される)に記載されているタンパク−チロシンキナーゼ検定によって測定した。特許請求している化合物は10μM以下のIC50値を有しており、これらの検定において活性でありアイソザイム選択的である。
【0052】
この証明された薬理活性を有している化合物はプロテインキナーゼCが病因となっていると示されている状態の処置に有用である。当業界にて認められている状態には、糖尿病およびその合併症(特に微小血管性糖尿病合併症、網膜症、腎症および神経障害)、虚血、炎症、中枢神経系障害、心臓血管疾患、アルツハイマー病、皮膚疾患および癌などがある。
【0053】
式:IIで示される化合物は好ましくは投与前に製剤化する。従って、本発明のもうひとつの態様は式:IIで示される化合物および1つまたはそれ以上の製薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含有する医薬組成物に関する。
【0054】
本発明の医薬組成物は周知かつ容易に入手可能な成分を用いて既知の手法によって調製される。本発明の組成物を作製するには、活性成分を通常、担体と混合し、または担体で希釈し、またはカプセル、サシエ、ペーパーもしくは他のコンテナの形態にできる担体内に充填する。担体を希釈剤として利用する際には、担体は固形物、半固形物または、活性成分のビヒクル、賦形剤もしくは媒質として有用な液状物質であることができる。従って、本発明の組成物は錠剤、ピル剤、粉末剤、トローチ剤、サシエ剤(sachet)、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、溶液剤、シロップ剤、エアロゾル剤(固体として、または液状媒質中)、ゼラチン軟および硬カプセル剤、坐剤、滅菌注射液剤および滅菌密封粉末剤などの剤形とすることができる。
【0055】
適当な担体、賦形剤および希釈剤を幾つか例示すれば、ラクトース、デキストロース、シュクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカントゴム、ゼラチン、珪酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水性シロップ(water syrup)、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱油が挙げられる。本発明の製剤はさらに、滑沢剤、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、保存剤、甘味料または香料を含むことができる。本発明の組成物は、患者に投与した後、活性成分を即時に、持続して、または徐放して放出するよう製剤化することができる。
【0056】
化合物の医薬的有効量は哺乳動物においてPKC活性を阻害できる量である。通常の1日投与量は活性化合物約0.01mg/kgから約20mg/kgである。本発明の組成物は好ましくは、それぞれが約1から約500mgを、より普通には約5から約300mgを含有する単位投与剤形の形態に製剤化する。しかし、投与する治療学的用量は処置する症状、投与する化合物の種類および選択する投与経路などの関連する状況を勘案して医師によって決定されるので、上記の投与量の範囲はいかなる意味においても本発明の範囲の限定を意図していないことは理解されよう。「単位投与剤形」なる用語は、ヒト対象および他の哺乳動物に対する単一投与に適した物理的に別個の単位を意味しており、各単位それぞれは所望の治療効果を得るよう計算された活性成分の予め決められた量を適当な製薬学的担体とともに含有している。
以下に製剤例を挙げるが、これは単なる例示であり、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0057】
製剤例1
ゼラチン硬カプセル剤を以下の成分を使用して調製する:
用量
(mg/カプセル剤)
活性成分 5
乾燥デンプン 185
ステアリン酸マグネシウム 10
総量 200mg
上記成分を混合し、200mg量のゼラチン硬カプセルに充填する。
【0058】
製剤例2
以下の成分を使用して錠剤を調製する:
用量
(mg/カプセル剤)
活性成分 20
微結晶セルロース 400
フュームド二酸化珪素 10
ステアリン酸
総量 435mg
上記成分を混合し、圧縮して各435mg重量の錠剤を成形する。
【0059】
製剤例3
活性成分10mgを含有する各錠剤を以下のようにして調製する:
用量
(mg/カプセル剤)
活性成分 10mg
デンプン 45mg
微結晶セルロース 35mg
ポリビニルピロリドン(10%水溶液として) 4mg
カルボキシメチルデンプン・ナトリウム 4.5mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
タルク 1mg
総量 100mg
【0060】
活性成分、デンプンおよびセルロースをNo.45メッシュ米国ふるいに通し、充分に混合する。ポリビニルピロリドンの溶液をこの粉末と混合し、次いでNo.14メッシュ米国ふるいに通す。このようにして調製した顆粒を50℃で乾燥し、No.18メッシュ米国ゆるいに通す。この顆粒に、前もってNo.60メッシュ米国ふるいに通しておいたカルボキシメチルデンプン・ナトリウム、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクを加え、混合した後、錠剤成形装置にて圧縮し、各100mg重量の錠剤を作成する。
【0061】
製剤例4
活性成分40mgを含有するカプセル剤を以下のようにして調製する:
用量
(mg/カプセル剤)
活性成分 40mg
デンプン 59mg
微結晶セルロース 59mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
総量 200mg
活性成分、セルロース、デンプンおよびステアリン酸マグネシウムを混合し、No.45メッシュ米国ふるいに通し、200mg量のゼラチン硬カプセルに充填する。
【0062】
本明細書において本発明の基本、好ましい態様および操作手順を説明してきた。しかし、ここに保護を求めようとする発明は、本明細書に開示した特定の形態が制限的なものでなく例示と見なされるべきものであるので、開示の形態には限定されないと解釈すべきである。当業者ならば、本発明の精神を逸脱することなく、修飾および改変が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

[式中、R1はO−トシルである]
で示される化合物。

【公開番号】特開2008−138006(P2008−138006A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338808(P2007−338808)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【分割の表示】特願平9−519838の分割
【原出願日】平成8年11月18日(1996.11.18)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】