NOXを含有する被処理ガスの脱硝方法
【課題】比較的低濃度のNOXガスに対する除去率を向上させる。
【解決手段】被処理ガス中の被処理ガス成分であるNOXをオゾン酸化し、このオゾン酸化後の被処理ガス中の残存NOX成分を吸収液によって吸収除去するNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法において、オゾンを被処理ガス中と吸収液中の双方に添加するNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法であって、被処理ガス中に供給のオゾンとのモル比を、0.1から2倍の範囲とし、吸収液中に、1ppm以上、飽和濃度以下のオゾンを予め添加しておく。
【解決手段】被処理ガス中の被処理ガス成分であるNOXをオゾン酸化し、このオゾン酸化後の被処理ガス中の残存NOX成分を吸収液によって吸収除去するNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法において、オゾンを被処理ガス中と吸収液中の双方に添加するNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法であって、被処理ガス中に供給のオゾンとのモル比を、0.1から2倍の範囲とし、吸収液中に、1ppm以上、飽和濃度以下のオゾンを予め添加しておく。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内燃機関や燃焼炉等の低濃度排気ガス中の被処理ガス成分や金属溶解プロセスや硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸等の鉱酸の製造設備より出る高濃度排ガス中の被処理ガス成分等をオゾン酸化して水または有機溶媒などの所謂吸収液中に吸収除去する場合に適用し得る被処理ガスの脱硝方法、特にNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物(NOX(Nitrogen Oxide))(以降、NOXと表記する)とは一酸化窒素(以降、NOと表記する)、二酸化窒素(以降、NO2と表記する)、亜酸化窒素(以降、N2Oと表記する)、四酸化二窒素(以降、N2O4と表記する)などの総称である。
NOXの発生源は大別すると二種類に分けられる。
一つは火力発電所やボイラー、自動車などで化石燃料の燃焼により発生する排ガスに含まれるNOXである。燃焼プロセスからのNOX排ガスに含まれるのは大部分がNOであり、その濃度は高くても数百ppmである。燃焼プロセスからのNOは、その窒素源によって燃焼用空気中の窒素が高温燃焼場で同じく空気中の酸素によって酸化されて生成するいわゆるサーマル(thermal)NOと、燃料中に含まれる窒素化合物から生成するフュエル(fuel)NOに分類される。
さらに、サーマルNOはその生成メカニズムの違いによって、ゼルドビッチ(Zeldovich)NOとプロンプト(prompt)NO(即発窒素酸化物とも言われる)の2種類に分類される。これらに関しては非特許文献1に詳細に記されている。
もう一方は、主に金属溶解・エッチング・ニトロ化反応など硝酸を用いる化学プロセスから発生するNOXである。これらは燃焼排ガスとは異なり排ガス中に含まれるNOX濃度が、数千ppm〜数vol%と非常に高い。また、NOX組成はNO2が大部分を占める。NOXによる大気汚染は光化学スモッグや酸性雨などと関連し地球規模での大きな問題となっている。特にNO2に関しては呼吸器への悪影響も報告されており(非特許文献1参照)、厳しい環境基準が定められている。工場など主要なNOX発生源では施設の種類ごとに排出制限も設けられている。
【0003】
そこで大気中へのNOX排出量を抑制するために何らかの対策が必要となる。NOX排出量を抑制するための手法については多くの研究者によって研究が行われてきた。NOXの排出抑制法としては次の二つの方法が挙げられる。
・低NOX燃焼法
・排煙脱硝法
【0004】
低NOX燃焼法とは、運転の改善や、低NOXバーナーの設置あるいは炉の改善によって燃焼火炎からのNOの生成を抑制しようというものである。具体的には、炉出口から排ガスをリサイクルし燃焼用空気と混合させる排ガス再循環法や、1段目で燃料過剰燃焼を行い2段目で燃料希薄燃焼を行う二段燃焼法などがある。これらの技術に関しては現在までに多くの研究が行われ(非特許文献2〜4参照)、実用化されてきた。しかしながら低NOX燃焼法によるNOX低減率は通常30-50 %程度である(非特許文献5参照)。したがって、低NOX燃焼法のみでは環境基準値を満たさない場合には次に述べる排煙脱硝法が有効となる。
【0005】
排煙脱硝法は水を用いるかどうかによって、
・乾式プロセス
・湿式プロセス
に大別できる。
【0006】
乾式プロセスの代表的なものとして、選択的無触媒還元法(以降、SNCR法と表記する)と選択的接触還元法(以降、SCR法と表記する)が挙げられる。酸素存在下でNOと等モルのアンモニアガスを供給することによりNOを選択的にN2へと還元するこれらの手法(非特許文献6〜7参照)は、火力発電所などのNOX発生源で広く利用されている。
しかしながらNOX還元反応に適した温度が非常に高く(例えば、SNCR法では800-1000 oC、SCR法では200-400 oC)、排ガス温度が低い場合には排ガスを加熱する必要がある。また、触媒劣化の問題や装置が大型化するといった問題がある。
【0007】
一方の湿式プロセスは水やアルカリ性水溶液などの吸収溶媒にNOXを溶解させることによって除去する手法である。しかしながら、図6に例示の表1に示されるようにNOの水に対する溶解度が他の大気汚染ガスと比較してはるかに小さいため、水を吸収液として用いるとNOX除去率は非常に低くなる。そこで、通常、オゾン(以降、O3と表記する)や過酸化水素などの酸化剤を用いてNOを溶解度の高いNO2やN2O5へ酸化してから吸収させる手法(非特許文献8,9参照)や、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性水溶液を用いた反応吸収系(非特許文献10〜12参照)が採用されることが多い。アルカリによる反応吸収を用いると高いNOX除去率が得られるが、硝酸塩や亜硝酸塩を含む廃液が大量に発生するため、その処理にコストがかかるという問題を抱えている。
【0008】
我々は最もシンプルな脱硝法である水によるNOX吸収除去プロセスに着目した。吸収液として水を用いるメリットは、薬液を使用しないためコストを低く抑えられることと、吸収液を硝酸として回収・再利用できることである。しかしながらNOの溶解度が非常に低い(図6に例示の表1)ため、NOXはほとんど水に溶けない。我々は時間経過に伴って無害な酸素(以降、O2と表記する)に分解するクリーンな酸化剤であるO3を用い、NOをNO2へと酸化してから水で処理する手法を選択した。
【0009】
従来のガス処理装置を用いたNOxガス処理装置は、特開2005−34772に記されるように、NOx含有空気にオゾンを供給し、吸着剤に吸着され易いNO2に酸化する。
次いで、NOx濃度が低い場合は水に対する吸収効率が極端に落ちることから、吸着塔において吸着濃縮し、吸着塔を昇温してNOxを脱着後、水と気液接触させNOx成分を吸収除去している。
この方法は濃度変動の大きいNOx処理を行うには適しているが、吸着剤に吸着されるNOx量に限りがあるため、NOxが飽和吸着の状態の前にNOx成分を脱着しガス吸収装置で脱着する必要があった。また、脱着時には通常加熱処理が行われるため、多量のエネルギーを要し、かつ、脱着時の高濃度高温のNOx水蒸気混合ガスに耐える耐食性の材料を用いる必要があり材料面、コスト面で問題があった。
【0010】
また、NOとO3の反応および水への吸収メカニズムは以下の通りである。
NOとO3の反応機構は以下のように説明できる。まず、気相中でO3とNOが次のように反応し、NO2, N2O3が生成する。
NO+O3 → NO2+O2 ・・・(1)
2NO+O3 → N2O3+O2 ・・・(2)
ここで、NO2はN2O4と次のような平衡関係にある。
2NO2 ←→ N2O4 ・・・(3)
そしてNO2やN2O3が水と接触することにより次のような反応が起こる(非特許文献13参照)。
2NO2+H2O → HNO3+HNO2 ・・・(4)
(N2O4+H2O → HNO3+HNO2)
N2O3+H2O → 2HNO2 ・・・(5)
式(4), (5)の反応により生じた3 molの亜硝酸(以降、HNO2と表記する)は次の反応を経て自己分解し、1 molの硝酸(以降、HNO3と表記する)と2 molのNOへ転化する(非特許文献14参照)。
3HNO2 → HNO3+H2O+2NO ・・・(6)
式(6)で表されるように、ここで発生したNOが気相へ放散されるため、水によるNOX除去率は低くなる。
しかしながら酸化剤としてO3を用いた場合、水へのO3の溶解度(570 mg・L-1, 20oC)がO2の溶解度(8.84 mg・L-1 20oC)よりも高いため水中にO3が一部溶解し、液相で以下の反応が起こると考えられる(非特許文献15参照)。
HNO2+O3 → HNO3+O2 ・・・(7)
式(7)で表される反応によりNOの放散が抑制され、結果的にNOX除去率が向上すると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−34772号公報(図1及びその説明)
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】環境庁環境保健部環境安全課監訳, WHO環境保全クライテリア・窒素酸化物, 丸善 (1999)
【非特許文献2】山岸一夫ら, “低NOX燃焼法の研究”, 日本機械学会誌, 77巻, 663号, pp.225-232 (1974)
【非特許文献3】Kobayashi, H.ら, “Performance of High Temperature Air Combustion Boiler with Low NOX Emission”, JSME International Journal B, 45, pp.481-486 (2002)
【非特許文献4】Jarquin-Lopez, G. et al., “Analytical and experimental research for decreasing nitrogen oxides emissions”, Applied Thermal Engineering, 29, pp.1614-1621 (2009)
【非特許文献5】定方正毅, 大気クリーン化のための化学工学, 培風館 (1999)
【非特許文献6】Caton, J. A. et al., “The Selective Non-Catalytic Reduction of Nitric Oxide Using Ammonia at up to 15% Oxygen”, Canadian Journal of Chemical Engineering, 73, pp.345-350 (1995)
【非特許文献7】Somnath, B., “Chemical and Biochemical Processes for NOX Control from combustion Off-Gases”, Chem. Eng. Comm., 194, pp.1374-1395 (2007)
【非特許文献8】Thomas, D. et al., “THE ABSORPTION-OXIDATION OF NOX WITH HYDROGEN PEROXIDE FOR THE TREATMENT OF TAIL GASES”, Chemical Engineering Science, 51, pp.2649-2654 (1996)
【非特許文献9】Young, S. M. et al., “Removal of sulfur dioxide and nitrogen oxides by using ozone injection and absorption-reduction technique”, Fuel Processing Technology, 87, pp.591-597 (2006)
【非特許文献10】Thomas, D. et al., “Nitrogen Oxides Scrubbing with Alkaline Solutions”, Chemical Engineering Technology, 23, pp.449-455 (2000)
【非特許文献11】Paiva, J. L. et al., “Absorption of nitrogen oxides in aqueous solutions in a structured packing pilot column”, Chemical Engineering and Processing, 43, pp.941-948 (2004)
【非特許文献12】Xiaowen, Z. et al., “Nitrogen Oxides Absorption on Calcium Hydroxide at Low Temperature”, Ind. Eng. Chem. Res., 47, pp.3827-3833 (2008)
【非特許文献13】Joshi, J. B., “Invited review absorption of NOX gases”, Chem. Eng. Comm., 33, pp.1-92 (1985)
【非特許文献14】Sherwood, T. K.; Pigford, R. L.; Wilke, C. R.; Mass Transfer, McGraw-Hill (1975)
【非特許文献15】Chacuk, A. et al., “Intensification of nitrous acid oxidation”, Chemical Engineering Science, 62, pp.7446-7453 (2007)
【非特許文献16】次田敦洋, “ガラス繊維を充填物として用いたガス吸収装置に関する研究”, 大阪府立大学工学部化学工学科卒業論文 (2009)
【非特許文献17】Yasuda, M. et al., “High-Efficiency NOX Absorption in Water Using Equipment Packed with a Glass Fiber Filter”, Environ. Sci. Technol., 45, pp.1840-1846 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
供給ガス中のNOx濃度が低い場合、NOxが水に溶解することにより生じる亜硝酸の分解反応によりNOが生成し、それが空気中に放散されるために低NOx分圧の場合NOx除去効率が極端に低い(非特許文献16,17参照)。そのため、吸着装置などの前処理装置を用いずにNOx処理することは非常に困難である。
【0014】
非常に空隙率が大きく、圧力損失の少ないガラス繊維フィルターを備えたガス吸収塔がある14)。この装置はその圧力損失の低さゆえ、大量のガスを処理することが可能であり、この装置を用いて10,000ppm以上の高濃度NOX排ガスを水のみで処理した場合、非常に高いNOX除去率が得られるが、200ppm程度の低濃度NOXガスに対しては除去率が向上しなかった。
【0015】
本発明は、前述のような実情に鑑み、比較的低濃度のNOXガスに対する除去率を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、試験研究に基づく鋭意検討の結果、被処理ガスのみならず吸収液にもO3を添加することにより、600ppm以下のNOXの完全除去ができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、被処理ガス成分をオゾン酸化し気液接触媒体を通して水に吸収除去するガス処理方法において、オゾンの供給が被処理ガス中(気相)と気液接触媒体に供給される吸収液中(液相)の双方で行なわれるようにした。
【0018】
具体的には、本発明に係るNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法は、被処理ガス中の被処理ガス成分であるNOXをオゾン酸化し、このオゾン酸化後の被処理ガス中の残存NOX成分を吸収液によって吸収除去するNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法において、オゾンを被処理ガス中と吸収液中の双方に添加することを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
【発明の効果】
【0019】
この発明は、被処理ガス中の被処理ガス成分であるNOXをオゾン酸化し、このオゾン酸化後の被処理ガス中の残存NOX成分を吸収液によって吸収除去するNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法において、オゾンを被処理ガス中と吸収液中の双方に添加することを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法としたので、比較的低濃度のNOXガスに対する除去率を効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態1を示す図で、本発明の方法を確立するための実験に使用した実験システムの概略構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示す図で、本発明の方法を確立するための実験で確認したNOx除去率に及ぼすオゾン酸化の効果を例示する図である。
【図3】この発明の実施の形態1を示す図で、本発明の方法を確立するための実験で確認したNOX濃度の経時変化比較−オゾン 添加率の影響を例示する図である。
【図4】この発明の実施の形態1を示す図で、本発明の方法を確立するための実験でオゾン飽和水を処理液として用いた脱硝試験における供給NOX濃度(ppm)とNOX除去率(%)との関係(その1)を例示する図である。
【図5】この発明の実施の形態1を示す図で、本発明の方法を確立するための実験でオゾン飽和水を処理液として用いた脱硝試験における供給NOX濃度(ppm)とNOX除去率(%)との関係(その2)を例示する図である。
【図6】「表1 ガスの溶解度」を示す図である。
【図7】「表2 NOxの水吸収」を示す図である。
【図8】「表3 NOXの組成−吸収塔の入口濃度と出口濃度−」を示す図である。
【図9】「表4 水中オゾンの半減期の温度依存性」を示す図である。
【図10】実験で確認したオゾン水濃度(mg/L)と気相オゾン濃度(mg/L)との環境温度依存性に係る相関をグラフで示す図である。
【図11】実験で確認した図10に基づく気液分配係数の温度依存性をグラフで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態1.
本発明は低濃度NOX、特に船舶やボイラー排ガスに含まれる600ppm以下のNOXの完全除去を目指して実験・研究して確立されたものであり、実験に使用した実験システム、試薬、試料ガス、ガス吸収装置ほかを実施の形態1として例示するものである。
以下、3.1 試薬および試料ガス、3.2 ガス吸収装置、ほかについて項目順に説明する。
【0022】
3.1 試薬および試料ガス
塩化ナトリウム(以降、NaClと表記する)、硝酸(以降、HNO3と表記する)、水酸化ナトリウム(以降、NaOHと表記する)はナカライテスク株式会社より購入した。これらの試薬は特級を使用し、精製等は特に行わなかった。液相にはイオン交換水を用いた。80vol% N2と20vol% NOの混合ガスは住友精化株式会社より購入した。二酸化炭素(以降、CO2と表記する)ガスは高圧ガス工業株式会社より購入した。
【0023】
3.2 ガス吸収装置
図1にガスおよび吸収液のフローを含めた実験システムを示す。図1において、1はオゾナイザ、2はコンプレッサ、3はNOボンベ、42,43は流量制御器、5はガス混合器、6はガス吸収装置、61は吸収塔、62は水供給ノズル、63はフィルタユニット、631はフィルタ、632は水分散板、633はフィルタ指示板、64は気液分離室、81は流量計、9は循環ポンプ、10は排出水採取口、11は供給オゾン水、12は入口ガス採取ライン、13は出口ガス採取ライン、14は処理後ガス、15はNO/NOx計である。
【0024】
実験に用いたガス吸収装置6の中心部には、紡績技術により開発されたガラス繊維フィルターユニット(Type GRF-1; 公害防止機器研究所, Osaka: 層長10 cm; 繊維径12μm;空隙率0.89)63が設置されている。塔61頂部のノズル62よりステンレス製水分散板632に向かって噴霧された液(オゾンが添加された吸収液)は水分散板632を伝って同心円上に広がり、ガラス繊維フィルターユニット63の外表面をゆっくりと流下する。ガス(オゾンが供給された前記被処理ガス)は液の流れと垂直な方向から供給され、液をフィルター631の内側へ押し込みながらフィルター631内部を通過する。その後ガスと液は重力により気液分離室64内で分離される。最終的に液は塔底部のバルブから排出した。
【0025】
3.3 NOXの水吸収
NO/N2混合ガスはコンプレッサから供給される空気によって希釈し、ガス混合器内でよく混合した。混合後のガス中に含まれるNOX濃度を200, 1,200, 1,600, 2,000ppmとした。装置の立ち上げ後約1時間が経過してから気相のNOX濃度を測定した。塔入口および出口におけるNOおよびNOX濃度はポータブルガス分析装置(BCL-611ASS; 株式会社ベスト測器)により測定した。定常状態に達した後でもNOX濃度は±20ppm程度変動するため、10分間の平均値を採用した。塔底から排出される硝酸の濃度は導電率メーター(ES-51; 株式会社堀場製作所)により求めた。なお全ての実験は20±3oCで行った。
【0026】
3.4 O3存在下/非存在下におけるNOXの水吸収
3.3同様、NO/N2混合ガスを空気で希釈し、塔入口におけるNOX濃度が40-2000ppmとなるようにバルブを調整した。O3ガスはオゾナイザ(PZ-3A特型; 株式会社ロキテクノ及びSGA-01A-PSA8; 住友精密工業株式会社)により発生させ、図1で示すように空気の流路に添加した。O3濃度はO3モニター(EG-2001; 荏原実業株式会社)を用いて測定した。本実験で用いたガス分析計は化学発光式分析法を用いているため、気相にO3が存在する条件では正確なNO濃度を測定することができなかった。
【0027】
3.7 飽和O3水を用いたNOX吸収
飽和O3水はオゾン水製造装置(OS-2N; 多田電機株式会社)を用いて作製した。水中の溶存O3濃度は吸光光度計(UV-2100; 株式会社島津製作所)を用い、波長259.8 nmの吸光度から求めた。なお、水中におけるO3のモル吸光係数は3,314 dm3・mol-1・cm-1を用いた。吸収塔へ供給したO3水の濃度は約45 mg・dm-3であった。
【0028】
(比較例)
4.1 NOXの水吸収
NOXの水による吸収実験を行った。ガスおよび水の流量は実験項で述べた通りである。塔入口におけるNOX濃度は200から2,000ppmで変化させた。表2は塔入口及び出口におけるNOX及びNO濃度と気相の物質収支から計算したNOX除去率を示している。表より、塔入口でのNOX濃度が200ppmのときNOX除去率は約10%であるのに対し、2,000ppmのとき約40%まで上がったことからNOX除去率は供給されるNOXの濃度に依存することが分かった。低濃度NOXに関してはその組成の大部分をNOが占めるため殆ど水に吸収されないが、空気中のO2によるNOの酸化反応速度はNO濃度の2乗に比例する27)ため供給ガス中のNO濃度が高くなるにつれてNO2やN2O4の割合が増加する。その結果、水に対する溶解度が上がり、NOX除去率が向上したと考えられる。
【0029】
4.2 O3存在下または非存在下におけるNOX吸収
まず、NOX除去率に及ぼすO3の影響を調べるために、気相中にO3存在下または非存在下で水による脱硝実験を行った。O3添加量は供給したNOと等モルとした。結果を図2に示す。
4.1で述べたように、O3非存在下では供給されるNOX濃度が低いほどNOX除去率は低下した。これは図8に例示の表3に示されるようにNOX濃度が低い場合、溶解度の低いNOの割合が増加するためだと考えられる。また、気相にNOと等モルのO3を供給したところ、NOX除去率は大きく向上した。したがって、気相中に存在するNOを除去する上でオゾン酸化は非常に効果的であると言える。しかしながら、気相中に存在するNOXを完全に除去することはできなかった。これはO3の水に対する溶解度が低いため、液相中に生じたHNO2を酸化するのに十分なO3が水中に存在しなかったと考えられる。また、フィルター内部での水およびガスの流動状態によって界面での物質移動が抑制された可能性もある。
【0030】
4.5 NOX除去率に及ぼすガス流量及びO3添加量の影響
図2より、気相へO3を添加することによってNOX除去率が向上することがわかったが、O3には毒性があるため過剰量のO3を供給すると未反応O3が新たな汚染ガスとして放出されてしまう恐れがあるため、O3濃度の最適化が必要となる。そこで、NOX除去率に及ぼすガス流量およびO3添加量の影響について検討を行った。イオン交換水の流量は0.2 dm3・min-1とし、塔入口におけるNOX濃度は2,000ppmに保った。
【0031】
図3はガス流量がそれぞれ4.0 m3・h-1, 1.0 m3・h-1(共に2気圧下)の時、供給ガス中のO3/NO比を0〜1まで変化させた場合の、入口及び出口におけるNOX濃度の経時変化を示している。図3(a)より明らかなように、ガス流量が4 m3・h-1の時はNOと等モルのO3を添加してもNOXを完全に取り除くことはできなかった。一方、図3(b)で示されるように、ガス流量を1.0 m3・h-1とすると、O3/NO = 0.9および1.0のとき、気相中のNOXを完全に除去することができた。これはガラス繊維フィルター内における気相の滞留時間が延び、O3によるNOの気相酸化が有効に行われたためと思われる。したがって、以上の結果より、高流速のNOX排ガスを処理する場合には、フィルターユニット内部におけるガスの滞留時間を長くするために、フィルターユニットを多段にする、あるいは層長の長いフィルターユニットを用いるといった改良の必要性が示唆された。
【0032】
4.6 飽和O3水を吸収液として用いたNOX吸収
図7に例示の表2で示されるように、入口NOX濃度が200ppm以下の場合のNOX除去率は10%程度であった。また、図3においてガス流速が4.0 m3・h-1の場合には気相にO3を加えてもNOXを完全に除去することは出来なかった。これは、大部分のO3が吸収液に溶解することなく流出またはNO酸化反応により消費され、溶存O3によるHNO2酸化の効果が最小限に抑えられたと考えた。しかしながら、O3には毒性があるため、気相へ過剰にO3を添加すると活性炭等によるO3除去が必要となる。そこで我々は吸収液として飽和O3水を用いることにした。
【0033】
脱硝実験に先立ち、飽和O3水の分解速度を調べた。大気圧下、10, 20, 30oCでの飽和O3水の吸光度を経時的に測定することにより求めた飽和O3水の半減期を図9に例示の表4に示す。図9に例示の表4より、室温付近における飽和O3水の半減期は約2時間であることが解った。この結果から、水に溶解したO3は比較的不安定であり保存には適さないことが明らかとなった。したがって、飽和O3水を吸収液として用いて脱硝実験を行う際には、回分式ではなく連続式の飽和O3水供給システムを組み立てた。
【0034】
図4は気相にO3が存在下または非存在下で吸収液として飽和O3水を用いた脱硝実験の結果を示している。図より、水を吸収液として用いた場合よりも僅かにNOX除去率は向上したものの、最大でも40%程度であった。これは、水に溶解したO3が気相に放散されてしまうため、溶存O3によるHNO2の酸化反応速度が低下したと考えられる。また、4.2で述べたように気相のみにO3を添加するとNOX除去率は大きく向上したが気相中のNOXを完全に取り除くことは出来なかった。そこで、飽和O3水を吸収液として用い、かつ気相にもNOと等モルのO3ガスを添加して脱硝実験を行ったところ、40〜120ppmのNOXを完全に除去することに成功した。この結果より、飽和O3水は過酸化水素や過マンガン酸カリウムなどの酸化剤よりも有用であることが明らかとなった。さらに、気相にNOの1.5倍のモル量のO3を供給したところ、目標とする600ppm以下のNOXの完全除去が達成できた(図5)。したがって以上の結果より、低濃度NOX排ガスのNOX除去率向上のためには、液相におけるHNO2の酸化反応が非常に重要であるということが解った。
【0035】
上述の実験、研究、各種検討から、その結果として、低濃度NOX排ガスのNOX除去率向上のために以下のような技術的特徴点が明確になった。
特徴点1.被処理ガス中の被処理ガス成分であるNOXをオゾン酸化し、このオゾン酸化後の被処理ガス中の残存NOX成分を吸収液によって吸収除去するNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法において、オゾンを被処理ガス中と吸収液中の双方に添加することを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
特徴点2.特徴点1において、前記オゾン酸化後の被処理ガス中の残存NOX成分が吸収液との接触によって転化したNOの気相への放散を、前記吸収液中に添加されたオゾンにより抑制または防止することを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
特徴点3.特徴点1または特徴点2において、前記被処理ガス成分と前記被処理ガス中に供給のオゾンとのモル比を、0.1から2倍の範囲とすることを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
特徴点4.特徴点1または特徴点2において、前記被処理ガス成分を吸収する前記吸収液中に、1ppm以上、飽和濃度以下のオゾンを予め添加しておくことを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
特徴点5.特徴点1または特徴点2において、前記オゾンが供給された前記被処理ガスと、前記オゾンが添加された吸収液との混合接触が、気液分離機能を有するガス吸収装置内で行われることを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
特徴点6.特徴点1または特徴点2において、前記オゾンが供給された前記被処理ガスと、前記オゾンが添加された吸収液との混合接触が、繊維状の多孔質体内で行われることを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
特徴点7.特徴点5において、前記オゾンが供給された前記被処理ガスと、前記オゾンが添加された吸収液との混合接触が、前記ガス吸収装置内の繊維状の多孔質体内で行われ、前記多孔質体の下方で前記気液分離が行われることを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
特徴点8.特徴点1〜特徴点7の何れか一において、前記吸収液中に添加された液相オゾンの濃度Cと、被処理ガス中に添加された気相オゾンの濃度Pとを、相関式C=S×Pによって定める(但しSは環境温度に依存して変わる分配係数)ことを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
なお、実験の結果、オゾン水濃度(mg/L)と気相オゾン濃度(mg/L)との環境温度依存性に係る相関は図10のようになることが確認された。また、図10に基づく気液分配係数の温度依存性は図11のようになることが確認された。この図11に基づく分配係数は、具体的にはS=(0.604(1+t/273)×(1±0.1))/(1+0.063t×(1±0.1))となる(但し、t:温度[℃])ことが確認された。
特徴点9.本発明の被処理ガス成分の水吸収方法によれば、吸着装置などの前処理装置を用いないで簡便な被処理ガス成分の処理方法を提供することが可能となる。
特徴点10.本発明の被処理ガス成分の水吸収方法によれば、被処理ガス成分の処理とオゾンを発生させるための電力のみが必要となるため、トンネルや遠隔地等の人が常時滞在できない発生源に対してメンテナンスフリーの被処理ガス成分の除去プロセスを提供できる。
特徴点11.また、本発明によれば、600ppm以下のNOxを含む排ガスの完全脱硝が達成できる。
【符号の説明】
【0036】
1 オゾナイザ、
2 コンプレッサ、
3 NOボンベ、
42,43 流量制御器、
5 ガス混合器、
6 ガス吸収装置、
61 吸収塔、
62 水供給ノズル、
63 フィルタユニット、
631 フィルタ、
632 水分散板、
633 フィルタ指示板、
64 気液分離室、
81 流量計、
9 循環ポンプ、
10 排出水採取口、
11 供給オゾン水、
12 入口ガス採取ライン、
13 出口ガス採取ライン、
14 処理後ガス、
15 NO/NOx計。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内燃機関や燃焼炉等の低濃度排気ガス中の被処理ガス成分や金属溶解プロセスや硫酸、塩酸、硝酸、フッ化水素酸等の鉱酸の製造設備より出る高濃度排ガス中の被処理ガス成分等をオゾン酸化して水または有機溶媒などの所謂吸収液中に吸収除去する場合に適用し得る被処理ガスの脱硝方法、特にNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物(NOX(Nitrogen Oxide))(以降、NOXと表記する)とは一酸化窒素(以降、NOと表記する)、二酸化窒素(以降、NO2と表記する)、亜酸化窒素(以降、N2Oと表記する)、四酸化二窒素(以降、N2O4と表記する)などの総称である。
NOXの発生源は大別すると二種類に分けられる。
一つは火力発電所やボイラー、自動車などで化石燃料の燃焼により発生する排ガスに含まれるNOXである。燃焼プロセスからのNOX排ガスに含まれるのは大部分がNOであり、その濃度は高くても数百ppmである。燃焼プロセスからのNOは、その窒素源によって燃焼用空気中の窒素が高温燃焼場で同じく空気中の酸素によって酸化されて生成するいわゆるサーマル(thermal)NOと、燃料中に含まれる窒素化合物から生成するフュエル(fuel)NOに分類される。
さらに、サーマルNOはその生成メカニズムの違いによって、ゼルドビッチ(Zeldovich)NOとプロンプト(prompt)NO(即発窒素酸化物とも言われる)の2種類に分類される。これらに関しては非特許文献1に詳細に記されている。
もう一方は、主に金属溶解・エッチング・ニトロ化反応など硝酸を用いる化学プロセスから発生するNOXである。これらは燃焼排ガスとは異なり排ガス中に含まれるNOX濃度が、数千ppm〜数vol%と非常に高い。また、NOX組成はNO2が大部分を占める。NOXによる大気汚染は光化学スモッグや酸性雨などと関連し地球規模での大きな問題となっている。特にNO2に関しては呼吸器への悪影響も報告されており(非特許文献1参照)、厳しい環境基準が定められている。工場など主要なNOX発生源では施設の種類ごとに排出制限も設けられている。
【0003】
そこで大気中へのNOX排出量を抑制するために何らかの対策が必要となる。NOX排出量を抑制するための手法については多くの研究者によって研究が行われてきた。NOXの排出抑制法としては次の二つの方法が挙げられる。
・低NOX燃焼法
・排煙脱硝法
【0004】
低NOX燃焼法とは、運転の改善や、低NOXバーナーの設置あるいは炉の改善によって燃焼火炎からのNOの生成を抑制しようというものである。具体的には、炉出口から排ガスをリサイクルし燃焼用空気と混合させる排ガス再循環法や、1段目で燃料過剰燃焼を行い2段目で燃料希薄燃焼を行う二段燃焼法などがある。これらの技術に関しては現在までに多くの研究が行われ(非特許文献2〜4参照)、実用化されてきた。しかしながら低NOX燃焼法によるNOX低減率は通常30-50 %程度である(非特許文献5参照)。したがって、低NOX燃焼法のみでは環境基準値を満たさない場合には次に述べる排煙脱硝法が有効となる。
【0005】
排煙脱硝法は水を用いるかどうかによって、
・乾式プロセス
・湿式プロセス
に大別できる。
【0006】
乾式プロセスの代表的なものとして、選択的無触媒還元法(以降、SNCR法と表記する)と選択的接触還元法(以降、SCR法と表記する)が挙げられる。酸素存在下でNOと等モルのアンモニアガスを供給することによりNOを選択的にN2へと還元するこれらの手法(非特許文献6〜7参照)は、火力発電所などのNOX発生源で広く利用されている。
しかしながらNOX還元反応に適した温度が非常に高く(例えば、SNCR法では800-1000 oC、SCR法では200-400 oC)、排ガス温度が低い場合には排ガスを加熱する必要がある。また、触媒劣化の問題や装置が大型化するといった問題がある。
【0007】
一方の湿式プロセスは水やアルカリ性水溶液などの吸収溶媒にNOXを溶解させることによって除去する手法である。しかしながら、図6に例示の表1に示されるようにNOの水に対する溶解度が他の大気汚染ガスと比較してはるかに小さいため、水を吸収液として用いるとNOX除去率は非常に低くなる。そこで、通常、オゾン(以降、O3と表記する)や過酸化水素などの酸化剤を用いてNOを溶解度の高いNO2やN2O5へ酸化してから吸収させる手法(非特許文献8,9参照)や、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性水溶液を用いた反応吸収系(非特許文献10〜12参照)が採用されることが多い。アルカリによる反応吸収を用いると高いNOX除去率が得られるが、硝酸塩や亜硝酸塩を含む廃液が大量に発生するため、その処理にコストがかかるという問題を抱えている。
【0008】
我々は最もシンプルな脱硝法である水によるNOX吸収除去プロセスに着目した。吸収液として水を用いるメリットは、薬液を使用しないためコストを低く抑えられることと、吸収液を硝酸として回収・再利用できることである。しかしながらNOの溶解度が非常に低い(図6に例示の表1)ため、NOXはほとんど水に溶けない。我々は時間経過に伴って無害な酸素(以降、O2と表記する)に分解するクリーンな酸化剤であるO3を用い、NOをNO2へと酸化してから水で処理する手法を選択した。
【0009】
従来のガス処理装置を用いたNOxガス処理装置は、特開2005−34772に記されるように、NOx含有空気にオゾンを供給し、吸着剤に吸着され易いNO2に酸化する。
次いで、NOx濃度が低い場合は水に対する吸収効率が極端に落ちることから、吸着塔において吸着濃縮し、吸着塔を昇温してNOxを脱着後、水と気液接触させNOx成分を吸収除去している。
この方法は濃度変動の大きいNOx処理を行うには適しているが、吸着剤に吸着されるNOx量に限りがあるため、NOxが飽和吸着の状態の前にNOx成分を脱着しガス吸収装置で脱着する必要があった。また、脱着時には通常加熱処理が行われるため、多量のエネルギーを要し、かつ、脱着時の高濃度高温のNOx水蒸気混合ガスに耐える耐食性の材料を用いる必要があり材料面、コスト面で問題があった。
【0010】
また、NOとO3の反応および水への吸収メカニズムは以下の通りである。
NOとO3の反応機構は以下のように説明できる。まず、気相中でO3とNOが次のように反応し、NO2, N2O3が生成する。
NO+O3 → NO2+O2 ・・・(1)
2NO+O3 → N2O3+O2 ・・・(2)
ここで、NO2はN2O4と次のような平衡関係にある。
2NO2 ←→ N2O4 ・・・(3)
そしてNO2やN2O3が水と接触することにより次のような反応が起こる(非特許文献13参照)。
2NO2+H2O → HNO3+HNO2 ・・・(4)
(N2O4+H2O → HNO3+HNO2)
N2O3+H2O → 2HNO2 ・・・(5)
式(4), (5)の反応により生じた3 molの亜硝酸(以降、HNO2と表記する)は次の反応を経て自己分解し、1 molの硝酸(以降、HNO3と表記する)と2 molのNOへ転化する(非特許文献14参照)。
3HNO2 → HNO3+H2O+2NO ・・・(6)
式(6)で表されるように、ここで発生したNOが気相へ放散されるため、水によるNOX除去率は低くなる。
しかしながら酸化剤としてO3を用いた場合、水へのO3の溶解度(570 mg・L-1, 20oC)がO2の溶解度(8.84 mg・L-1 20oC)よりも高いため水中にO3が一部溶解し、液相で以下の反応が起こると考えられる(非特許文献15参照)。
HNO2+O3 → HNO3+O2 ・・・(7)
式(7)で表される反応によりNOの放散が抑制され、結果的にNOX除去率が向上すると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−34772号公報(図1及びその説明)
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】環境庁環境保健部環境安全課監訳, WHO環境保全クライテリア・窒素酸化物, 丸善 (1999)
【非特許文献2】山岸一夫ら, “低NOX燃焼法の研究”, 日本機械学会誌, 77巻, 663号, pp.225-232 (1974)
【非特許文献3】Kobayashi, H.ら, “Performance of High Temperature Air Combustion Boiler with Low NOX Emission”, JSME International Journal B, 45, pp.481-486 (2002)
【非特許文献4】Jarquin-Lopez, G. et al., “Analytical and experimental research for decreasing nitrogen oxides emissions”, Applied Thermal Engineering, 29, pp.1614-1621 (2009)
【非特許文献5】定方正毅, 大気クリーン化のための化学工学, 培風館 (1999)
【非特許文献6】Caton, J. A. et al., “The Selective Non-Catalytic Reduction of Nitric Oxide Using Ammonia at up to 15% Oxygen”, Canadian Journal of Chemical Engineering, 73, pp.345-350 (1995)
【非特許文献7】Somnath, B., “Chemical and Biochemical Processes for NOX Control from combustion Off-Gases”, Chem. Eng. Comm., 194, pp.1374-1395 (2007)
【非特許文献8】Thomas, D. et al., “THE ABSORPTION-OXIDATION OF NOX WITH HYDROGEN PEROXIDE FOR THE TREATMENT OF TAIL GASES”, Chemical Engineering Science, 51, pp.2649-2654 (1996)
【非特許文献9】Young, S. M. et al., “Removal of sulfur dioxide and nitrogen oxides by using ozone injection and absorption-reduction technique”, Fuel Processing Technology, 87, pp.591-597 (2006)
【非特許文献10】Thomas, D. et al., “Nitrogen Oxides Scrubbing with Alkaline Solutions”, Chemical Engineering Technology, 23, pp.449-455 (2000)
【非特許文献11】Paiva, J. L. et al., “Absorption of nitrogen oxides in aqueous solutions in a structured packing pilot column”, Chemical Engineering and Processing, 43, pp.941-948 (2004)
【非特許文献12】Xiaowen, Z. et al., “Nitrogen Oxides Absorption on Calcium Hydroxide at Low Temperature”, Ind. Eng. Chem. Res., 47, pp.3827-3833 (2008)
【非特許文献13】Joshi, J. B., “Invited review absorption of NOX gases”, Chem. Eng. Comm., 33, pp.1-92 (1985)
【非特許文献14】Sherwood, T. K.; Pigford, R. L.; Wilke, C. R.; Mass Transfer, McGraw-Hill (1975)
【非特許文献15】Chacuk, A. et al., “Intensification of nitrous acid oxidation”, Chemical Engineering Science, 62, pp.7446-7453 (2007)
【非特許文献16】次田敦洋, “ガラス繊維を充填物として用いたガス吸収装置に関する研究”, 大阪府立大学工学部化学工学科卒業論文 (2009)
【非特許文献17】Yasuda, M. et al., “High-Efficiency NOX Absorption in Water Using Equipment Packed with a Glass Fiber Filter”, Environ. Sci. Technol., 45, pp.1840-1846 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
供給ガス中のNOx濃度が低い場合、NOxが水に溶解することにより生じる亜硝酸の分解反応によりNOが生成し、それが空気中に放散されるために低NOx分圧の場合NOx除去効率が極端に低い(非特許文献16,17参照)。そのため、吸着装置などの前処理装置を用いずにNOx処理することは非常に困難である。
【0014】
非常に空隙率が大きく、圧力損失の少ないガラス繊維フィルターを備えたガス吸収塔がある14)。この装置はその圧力損失の低さゆえ、大量のガスを処理することが可能であり、この装置を用いて10,000ppm以上の高濃度NOX排ガスを水のみで処理した場合、非常に高いNOX除去率が得られるが、200ppm程度の低濃度NOXガスに対しては除去率が向上しなかった。
【0015】
本発明は、前述のような実情に鑑み、比較的低濃度のNOXガスに対する除去率を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、試験研究に基づく鋭意検討の結果、被処理ガスのみならず吸収液にもO3を添加することにより、600ppm以下のNOXの完全除去ができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、被処理ガス成分をオゾン酸化し気液接触媒体を通して水に吸収除去するガス処理方法において、オゾンの供給が被処理ガス中(気相)と気液接触媒体に供給される吸収液中(液相)の双方で行なわれるようにした。
【0018】
具体的には、本発明に係るNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法は、被処理ガス中の被処理ガス成分であるNOXをオゾン酸化し、このオゾン酸化後の被処理ガス中の残存NOX成分を吸収液によって吸収除去するNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法において、オゾンを被処理ガス中と吸収液中の双方に添加することを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
【発明の効果】
【0019】
この発明は、被処理ガス中の被処理ガス成分であるNOXをオゾン酸化し、このオゾン酸化後の被処理ガス中の残存NOX成分を吸収液によって吸収除去するNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法において、オゾンを被処理ガス中と吸収液中の双方に添加することを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法としたので、比較的低濃度のNOXガスに対する除去率を効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態1を示す図で、本発明の方法を確立するための実験に使用した実験システムの概略構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示す図で、本発明の方法を確立するための実験で確認したNOx除去率に及ぼすオゾン酸化の効果を例示する図である。
【図3】この発明の実施の形態1を示す図で、本発明の方法を確立するための実験で確認したNOX濃度の経時変化比較−オゾン 添加率の影響を例示する図である。
【図4】この発明の実施の形態1を示す図で、本発明の方法を確立するための実験でオゾン飽和水を処理液として用いた脱硝試験における供給NOX濃度(ppm)とNOX除去率(%)との関係(その1)を例示する図である。
【図5】この発明の実施の形態1を示す図で、本発明の方法を確立するための実験でオゾン飽和水を処理液として用いた脱硝試験における供給NOX濃度(ppm)とNOX除去率(%)との関係(その2)を例示する図である。
【図6】「表1 ガスの溶解度」を示す図である。
【図7】「表2 NOxの水吸収」を示す図である。
【図8】「表3 NOXの組成−吸収塔の入口濃度と出口濃度−」を示す図である。
【図9】「表4 水中オゾンの半減期の温度依存性」を示す図である。
【図10】実験で確認したオゾン水濃度(mg/L)と気相オゾン濃度(mg/L)との環境温度依存性に係る相関をグラフで示す図である。
【図11】実験で確認した図10に基づく気液分配係数の温度依存性をグラフで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態1.
本発明は低濃度NOX、特に船舶やボイラー排ガスに含まれる600ppm以下のNOXの完全除去を目指して実験・研究して確立されたものであり、実験に使用した実験システム、試薬、試料ガス、ガス吸収装置ほかを実施の形態1として例示するものである。
以下、3.1 試薬および試料ガス、3.2 ガス吸収装置、ほかについて項目順に説明する。
【0022】
3.1 試薬および試料ガス
塩化ナトリウム(以降、NaClと表記する)、硝酸(以降、HNO3と表記する)、水酸化ナトリウム(以降、NaOHと表記する)はナカライテスク株式会社より購入した。これらの試薬は特級を使用し、精製等は特に行わなかった。液相にはイオン交換水を用いた。80vol% N2と20vol% NOの混合ガスは住友精化株式会社より購入した。二酸化炭素(以降、CO2と表記する)ガスは高圧ガス工業株式会社より購入した。
【0023】
3.2 ガス吸収装置
図1にガスおよび吸収液のフローを含めた実験システムを示す。図1において、1はオゾナイザ、2はコンプレッサ、3はNOボンベ、42,43は流量制御器、5はガス混合器、6はガス吸収装置、61は吸収塔、62は水供給ノズル、63はフィルタユニット、631はフィルタ、632は水分散板、633はフィルタ指示板、64は気液分離室、81は流量計、9は循環ポンプ、10は排出水採取口、11は供給オゾン水、12は入口ガス採取ライン、13は出口ガス採取ライン、14は処理後ガス、15はNO/NOx計である。
【0024】
実験に用いたガス吸収装置6の中心部には、紡績技術により開発されたガラス繊維フィルターユニット(Type GRF-1; 公害防止機器研究所, Osaka: 層長10 cm; 繊維径12μm;空隙率0.89)63が設置されている。塔61頂部のノズル62よりステンレス製水分散板632に向かって噴霧された液(オゾンが添加された吸収液)は水分散板632を伝って同心円上に広がり、ガラス繊維フィルターユニット63の外表面をゆっくりと流下する。ガス(オゾンが供給された前記被処理ガス)は液の流れと垂直な方向から供給され、液をフィルター631の内側へ押し込みながらフィルター631内部を通過する。その後ガスと液は重力により気液分離室64内で分離される。最終的に液は塔底部のバルブから排出した。
【0025】
3.3 NOXの水吸収
NO/N2混合ガスはコンプレッサから供給される空気によって希釈し、ガス混合器内でよく混合した。混合後のガス中に含まれるNOX濃度を200, 1,200, 1,600, 2,000ppmとした。装置の立ち上げ後約1時間が経過してから気相のNOX濃度を測定した。塔入口および出口におけるNOおよびNOX濃度はポータブルガス分析装置(BCL-611ASS; 株式会社ベスト測器)により測定した。定常状態に達した後でもNOX濃度は±20ppm程度変動するため、10分間の平均値を採用した。塔底から排出される硝酸の濃度は導電率メーター(ES-51; 株式会社堀場製作所)により求めた。なお全ての実験は20±3oCで行った。
【0026】
3.4 O3存在下/非存在下におけるNOXの水吸収
3.3同様、NO/N2混合ガスを空気で希釈し、塔入口におけるNOX濃度が40-2000ppmとなるようにバルブを調整した。O3ガスはオゾナイザ(PZ-3A特型; 株式会社ロキテクノ及びSGA-01A-PSA8; 住友精密工業株式会社)により発生させ、図1で示すように空気の流路に添加した。O3濃度はO3モニター(EG-2001; 荏原実業株式会社)を用いて測定した。本実験で用いたガス分析計は化学発光式分析法を用いているため、気相にO3が存在する条件では正確なNO濃度を測定することができなかった。
【0027】
3.7 飽和O3水を用いたNOX吸収
飽和O3水はオゾン水製造装置(OS-2N; 多田電機株式会社)を用いて作製した。水中の溶存O3濃度は吸光光度計(UV-2100; 株式会社島津製作所)を用い、波長259.8 nmの吸光度から求めた。なお、水中におけるO3のモル吸光係数は3,314 dm3・mol-1・cm-1を用いた。吸収塔へ供給したO3水の濃度は約45 mg・dm-3であった。
【0028】
(比較例)
4.1 NOXの水吸収
NOXの水による吸収実験を行った。ガスおよび水の流量は実験項で述べた通りである。塔入口におけるNOX濃度は200から2,000ppmで変化させた。表2は塔入口及び出口におけるNOX及びNO濃度と気相の物質収支から計算したNOX除去率を示している。表より、塔入口でのNOX濃度が200ppmのときNOX除去率は約10%であるのに対し、2,000ppmのとき約40%まで上がったことからNOX除去率は供給されるNOXの濃度に依存することが分かった。低濃度NOXに関してはその組成の大部分をNOが占めるため殆ど水に吸収されないが、空気中のO2によるNOの酸化反応速度はNO濃度の2乗に比例する27)ため供給ガス中のNO濃度が高くなるにつれてNO2やN2O4の割合が増加する。その結果、水に対する溶解度が上がり、NOX除去率が向上したと考えられる。
【0029】
4.2 O3存在下または非存在下におけるNOX吸収
まず、NOX除去率に及ぼすO3の影響を調べるために、気相中にO3存在下または非存在下で水による脱硝実験を行った。O3添加量は供給したNOと等モルとした。結果を図2に示す。
4.1で述べたように、O3非存在下では供給されるNOX濃度が低いほどNOX除去率は低下した。これは図8に例示の表3に示されるようにNOX濃度が低い場合、溶解度の低いNOの割合が増加するためだと考えられる。また、気相にNOと等モルのO3を供給したところ、NOX除去率は大きく向上した。したがって、気相中に存在するNOを除去する上でオゾン酸化は非常に効果的であると言える。しかしながら、気相中に存在するNOXを完全に除去することはできなかった。これはO3の水に対する溶解度が低いため、液相中に生じたHNO2を酸化するのに十分なO3が水中に存在しなかったと考えられる。また、フィルター内部での水およびガスの流動状態によって界面での物質移動が抑制された可能性もある。
【0030】
4.5 NOX除去率に及ぼすガス流量及びO3添加量の影響
図2より、気相へO3を添加することによってNOX除去率が向上することがわかったが、O3には毒性があるため過剰量のO3を供給すると未反応O3が新たな汚染ガスとして放出されてしまう恐れがあるため、O3濃度の最適化が必要となる。そこで、NOX除去率に及ぼすガス流量およびO3添加量の影響について検討を行った。イオン交換水の流量は0.2 dm3・min-1とし、塔入口におけるNOX濃度は2,000ppmに保った。
【0031】
図3はガス流量がそれぞれ4.0 m3・h-1, 1.0 m3・h-1(共に2気圧下)の時、供給ガス中のO3/NO比を0〜1まで変化させた場合の、入口及び出口におけるNOX濃度の経時変化を示している。図3(a)より明らかなように、ガス流量が4 m3・h-1の時はNOと等モルのO3を添加してもNOXを完全に取り除くことはできなかった。一方、図3(b)で示されるように、ガス流量を1.0 m3・h-1とすると、O3/NO = 0.9および1.0のとき、気相中のNOXを完全に除去することができた。これはガラス繊維フィルター内における気相の滞留時間が延び、O3によるNOの気相酸化が有効に行われたためと思われる。したがって、以上の結果より、高流速のNOX排ガスを処理する場合には、フィルターユニット内部におけるガスの滞留時間を長くするために、フィルターユニットを多段にする、あるいは層長の長いフィルターユニットを用いるといった改良の必要性が示唆された。
【0032】
4.6 飽和O3水を吸収液として用いたNOX吸収
図7に例示の表2で示されるように、入口NOX濃度が200ppm以下の場合のNOX除去率は10%程度であった。また、図3においてガス流速が4.0 m3・h-1の場合には気相にO3を加えてもNOXを完全に除去することは出来なかった。これは、大部分のO3が吸収液に溶解することなく流出またはNO酸化反応により消費され、溶存O3によるHNO2酸化の効果が最小限に抑えられたと考えた。しかしながら、O3には毒性があるため、気相へ過剰にO3を添加すると活性炭等によるO3除去が必要となる。そこで我々は吸収液として飽和O3水を用いることにした。
【0033】
脱硝実験に先立ち、飽和O3水の分解速度を調べた。大気圧下、10, 20, 30oCでの飽和O3水の吸光度を経時的に測定することにより求めた飽和O3水の半減期を図9に例示の表4に示す。図9に例示の表4より、室温付近における飽和O3水の半減期は約2時間であることが解った。この結果から、水に溶解したO3は比較的不安定であり保存には適さないことが明らかとなった。したがって、飽和O3水を吸収液として用いて脱硝実験を行う際には、回分式ではなく連続式の飽和O3水供給システムを組み立てた。
【0034】
図4は気相にO3が存在下または非存在下で吸収液として飽和O3水を用いた脱硝実験の結果を示している。図より、水を吸収液として用いた場合よりも僅かにNOX除去率は向上したものの、最大でも40%程度であった。これは、水に溶解したO3が気相に放散されてしまうため、溶存O3によるHNO2の酸化反応速度が低下したと考えられる。また、4.2で述べたように気相のみにO3を添加するとNOX除去率は大きく向上したが気相中のNOXを完全に取り除くことは出来なかった。そこで、飽和O3水を吸収液として用い、かつ気相にもNOと等モルのO3ガスを添加して脱硝実験を行ったところ、40〜120ppmのNOXを完全に除去することに成功した。この結果より、飽和O3水は過酸化水素や過マンガン酸カリウムなどの酸化剤よりも有用であることが明らかとなった。さらに、気相にNOの1.5倍のモル量のO3を供給したところ、目標とする600ppm以下のNOXの完全除去が達成できた(図5)。したがって以上の結果より、低濃度NOX排ガスのNOX除去率向上のためには、液相におけるHNO2の酸化反応が非常に重要であるということが解った。
【0035】
上述の実験、研究、各種検討から、その結果として、低濃度NOX排ガスのNOX除去率向上のために以下のような技術的特徴点が明確になった。
特徴点1.被処理ガス中の被処理ガス成分であるNOXをオゾン酸化し、このオゾン酸化後の被処理ガス中の残存NOX成分を吸収液によって吸収除去するNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法において、オゾンを被処理ガス中と吸収液中の双方に添加することを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
特徴点2.特徴点1において、前記オゾン酸化後の被処理ガス中の残存NOX成分が吸収液との接触によって転化したNOの気相への放散を、前記吸収液中に添加されたオゾンにより抑制または防止することを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
特徴点3.特徴点1または特徴点2において、前記被処理ガス成分と前記被処理ガス中に供給のオゾンとのモル比を、0.1から2倍の範囲とすることを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
特徴点4.特徴点1または特徴点2において、前記被処理ガス成分を吸収する前記吸収液中に、1ppm以上、飽和濃度以下のオゾンを予め添加しておくことを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
特徴点5.特徴点1または特徴点2において、前記オゾンが供給された前記被処理ガスと、前記オゾンが添加された吸収液との混合接触が、気液分離機能を有するガス吸収装置内で行われることを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
特徴点6.特徴点1または特徴点2において、前記オゾンが供給された前記被処理ガスと、前記オゾンが添加された吸収液との混合接触が、繊維状の多孔質体内で行われることを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
特徴点7.特徴点5において、前記オゾンが供給された前記被処理ガスと、前記オゾンが添加された吸収液との混合接触が、前記ガス吸収装置内の繊維状の多孔質体内で行われ、前記多孔質体の下方で前記気液分離が行われることを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
特徴点8.特徴点1〜特徴点7の何れか一において、前記吸収液中に添加された液相オゾンの濃度Cと、被処理ガス中に添加された気相オゾンの濃度Pとを、相関式C=S×Pによって定める(但しSは環境温度に依存して変わる分配係数)ことを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法である。
なお、実験の結果、オゾン水濃度(mg/L)と気相オゾン濃度(mg/L)との環境温度依存性に係る相関は図10のようになることが確認された。また、図10に基づく気液分配係数の温度依存性は図11のようになることが確認された。この図11に基づく分配係数は、具体的にはS=(0.604(1+t/273)×(1±0.1))/(1+0.063t×(1±0.1))となる(但し、t:温度[℃])ことが確認された。
特徴点9.本発明の被処理ガス成分の水吸収方法によれば、吸着装置などの前処理装置を用いないで簡便な被処理ガス成分の処理方法を提供することが可能となる。
特徴点10.本発明の被処理ガス成分の水吸収方法によれば、被処理ガス成分の処理とオゾンを発生させるための電力のみが必要となるため、トンネルや遠隔地等の人が常時滞在できない発生源に対してメンテナンスフリーの被処理ガス成分の除去プロセスを提供できる。
特徴点11.また、本発明によれば、600ppm以下のNOxを含む排ガスの完全脱硝が達成できる。
【符号の説明】
【0036】
1 オゾナイザ、
2 コンプレッサ、
3 NOボンベ、
42,43 流量制御器、
5 ガス混合器、
6 ガス吸収装置、
61 吸収塔、
62 水供給ノズル、
63 フィルタユニット、
631 フィルタ、
632 水分散板、
633 フィルタ指示板、
64 気液分離室、
81 流量計、
9 循環ポンプ、
10 排出水採取口、
11 供給オゾン水、
12 入口ガス採取ライン、
13 出口ガス採取ライン、
14 処理後ガス、
15 NO/NOx計。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理ガス中の被処理ガス成分であるNOXをオゾン酸化し、このオゾン酸化後の被処理ガス中の残存NOX成分を吸収液によって吸収除去するNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法において、オゾンを被処理ガス中と吸収液中の双方に添加することを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法。
【請求項2】
前記オゾン酸化後の被処理ガス中の残存NOX成分が吸収液との接触によって転化したNOの気相への放散を、前記吸収液中に添加されたオゾンにより抑制または防止することを特徴とする請求項1に記載のNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法。
【請求項3】
前記被処理ガス成分と前記被処理ガス中に供給のオゾンとのモル比を、0.1から2倍の範囲とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法。
【請求項4】
前記被処理ガス成分を吸収する前記吸収液中に、1ppm以上、飽和濃度以下のオゾンを予め添加しておくことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法。
【請求項5】
前記オゾンが供給された前記被処理ガスと、前記オゾンが添加された吸収液との混合接触が、気液分離機能を有するガス吸収装置内で行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法。
【請求項6】
前記オゾンが供給された前記被処理ガスと、前記オゾンが添加された吸収液との混合接触が、繊維状の多孔質体内で行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法。
【請求項7】
前記オゾンが供給された前記被処理ガスと、前記オゾンが添加された吸収液との混合接触が、前記ガス吸収装置内の繊維状の多孔質体内で行われ、前記多孔質体の下方で前記気液分離が行われることを特徴とする請求項5に記載のNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法。
【請求項8】
前記吸収液中に添加された液相オゾンの濃度Cと、被処理ガス中に添加された気相オゾンの濃度Pとを、相関式C=S×Pによって定める(但しSは環境温度に依存して変わる分配係数)ことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか一に記載のNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法。
【請求項1】
被処理ガス中の被処理ガス成分であるNOXをオゾン酸化し、このオゾン酸化後の被処理ガス中の残存NOX成分を吸収液によって吸収除去するNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法において、オゾンを被処理ガス中と吸収液中の双方に添加することを特徴とするNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法。
【請求項2】
前記オゾン酸化後の被処理ガス中の残存NOX成分が吸収液との接触によって転化したNOの気相への放散を、前記吸収液中に添加されたオゾンにより抑制または防止することを特徴とする請求項1に記載のNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法。
【請求項3】
前記被処理ガス成分と前記被処理ガス中に供給のオゾンとのモル比を、0.1から2倍の範囲とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法。
【請求項4】
前記被処理ガス成分を吸収する前記吸収液中に、1ppm以上、飽和濃度以下のオゾンを予め添加しておくことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法。
【請求項5】
前記オゾンが供給された前記被処理ガスと、前記オゾンが添加された吸収液との混合接触が、気液分離機能を有するガス吸収装置内で行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法。
【請求項6】
前記オゾンが供給された前記被処理ガスと、前記オゾンが添加された吸収液との混合接触が、繊維状の多孔質体内で行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法。
【請求項7】
前記オゾンが供給された前記被処理ガスと、前記オゾンが添加された吸収液との混合接触が、前記ガス吸収装置内の繊維状の多孔質体内で行われ、前記多孔質体の下方で前記気液分離が行われることを特徴とする請求項5に記載のNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法。
【請求項8】
前記吸収液中に添加された液相オゾンの濃度Cと、被処理ガス中に添加された気相オゾンの濃度Pとを、相関式C=S×Pによって定める(但しSは環境温度に依存して変わる分配係数)ことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか一に記載のNOXを含有する被処理ガスの脱硝方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−717(P2013−717A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137278(P2011−137278)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年12月21日 大阪府立大学 大阪市立大学 大阪産業創造館主催の「大阪府立大学・大阪市立大学 「ニューテクフェア」」において文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年2月11日 ACS(American Chemical Society)発行の「ENVIRONMENTAL Science & Technology」に発表
【出願人】(591041369)多田電機株式会社 (13)
【出願人】(511151248)株式会社公害防止機器研究所 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年12月21日 大阪府立大学 大阪市立大学 大阪産業創造館主催の「大阪府立大学・大阪市立大学 「ニューテクフェア」」において文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年2月11日 ACS(American Chemical Society)発行の「ENVIRONMENTAL Science & Technology」に発表
【出願人】(591041369)多田電機株式会社 (13)
【出願人】(511151248)株式会社公害防止機器研究所 (1)
【Fターム(参考)】
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