説明

Oリング嵌入装置

【課題】リング収容溝の形状によらず、簡単に且つ確実にOリングを嵌入することが可能なOリング嵌入装置の提供。
【解決手段】制御ユニットは、外側ガイド面35を待避位置からガイド位置へ移動させるガイドスリット形成処理と、圧入ガイド38を待避位置から圧入位置へ移動させる嵌入処理とを連続的に実行する。ガイドスリット形成処理では、初期状態で内側ガイド面29の外側に巻回されたOリング3が、外側ガイド面25と内側ガイド面29との間のガイドスリット36内に収容される。嵌入処理では、ガイドスリット36内に収容されたOリング3が、上昇する圧入ガイド38によって押圧され、作業位置に保持された被組付部品1のリング収容溝に嵌入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被組付部品の裏面に環状に形成されたリング収容溝にOリングを嵌入するOリング嵌入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被組付部品の裏面に環状に形成されたリング収容溝にOリングを嵌入する場合、一般に手作業によって嵌入が行われる。
【0003】
なお、特開平3−251325号公報にはOリング挿入装置が開示されている。しかし、この装置は、ワーク凹部の底にOリングを挿入するためのものであり、環状のリング収容溝にOリングを嵌入するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−251325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記手作業によるOリングの嵌入は作業者にとって煩雑である。特に、凹凸部分を有する複雑な形状のリング収容溝の場合、手作業によるOリングの嵌入は熟練を要する困難な作業であり、作業効率が悪い。
【0006】
そこで、本発明は、リング収容溝の形状によらず、簡単に且つ確実にOリングを嵌入することが可能なOリング嵌入装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明は、被組付部品の裏面に環状に形成されたリング収容溝にOリングを嵌入するOリング嵌入装置であって、部品保持手段と、内側ガイド面と、外側ガイド面と、ガイド面移動手段と、圧入ガイドと、圧入ガイド移動手段と、制御手段とを備える。
【0008】
部品保持手段は、被組付部品の裏面が所定方向を向き且つリング収容溝が所定位置に設定される作業位置に、被組付部品を着脱自在に保持する。内側ガイド面は、所定位置のリング収容溝の内周縁に沿って近接又は接触する先端縁を有し、この先端縁から上記所定方向へ延びる。外側ガイド面は、内側ガイド面に対向配置され、上記所定方向と交叉する方向へ移動可能である。ガイド面移動手段は、外側ガイド面をガイド位置と待避位置との間で移動させる。ガイド位置の外側ガイド面は、内側ガイド面に近接し、内側ガイド面との間にガイドスリットを形成する。待避位置の外側ガイド面は、内側ガイド面から離間する。圧入ガイドは、ガイドスリット内を上記所定方向へ移動可能である。ガイド移動手段は、圧入ガイドを圧入位置と待避位置との間で移動させる。圧入位置の圧入ガイドは、上記所定位置のリング収容溝に近接し、待避位置の圧入ガイドは、このリング収容溝から離間する。制御手段は、ガイド面移動手段と圧入ガイド移動手段とを制御して外側ガイド面と圧入ガイドとを移動させる。
【0009】
外側ガイド面は、ガイド位置において上記所定位置のリング収容溝の外周縁に沿って近接又は接触する先端縁を有する。制御手段は、初期状態では外側ガイド面及び圧入ガイドを待避位置に設定する。また、制御手段は、外側ガイド面を待避位置からガイド位置へ移動させるガイドスリット形成処理と、圧入ガイドを待避位置から圧入位置へ移動させる嵌入処理とを連続的に実行する。
【0010】
ガイドスリット形成処理では、初期状態で内側ガイド面の外側に巻回されたOリングが、ガイドスリット内に収容される。嵌入処理では、ガイドスリット内に収容されたOリングが、圧入ガイドによって押圧されて上記所定位置のリング収容溝に嵌入される。
【0011】
上記構成では、被組付部品のリング収容溝へのOリングの嵌入作業を行う作業者は、被組付部品の内側ガイド面の外側にOリングを巻回した状態で、部品保持手段によって被組付部品を作業位置に保持させた後、制御手段にガイドスリット形成処理と嵌入処理とを実行させる。
【0012】
ガイドスリット形成処理では、作業位置に保持された被組付部品の内側ガイド面の外側に巻回されたOリングが、ガイドスリットに沿って変形してガイドスリット内に収容され、嵌入処理では、ガイドスリット内に収容されたOリングが、圧入ガイドによって押圧されてリング収容溝に嵌入される。
【0013】
従って、作業者は、手作業による嵌入を行うことなく、また、リング収容溝の形状が複雑か否かによらず、簡単に且つ確実にOリングをリング収容溝へ嵌入することができる。
【0014】
また、上記内側ガイド面は、上記所定方向を軸心として回転自在に支持されたローラの外周面のうち一部の領域を含んでもよい。ローラの外周面のうち内側ガイド面に含まれる領域は、ローラの回転に応じて変動する。ガイドスリット形成処理では、内側ガイド面の外側に巻回されたOリングの周方向への移動が、ローラの回転によって許容される。
【0015】
上記構成では、内側ガイド面の外側に巻回されたOリングの周方向への移動がローラの回転によって許容されるので、嵌入前のOリングの張力の偏在が、Oリングの周方向への移動によって緩和され、周方向において張力の均等化が図られた状態でOリングがリング収容溝に嵌入される。従って、過剰な負荷が加わったままOリングがリング収容溝に嵌入されてしまうことが防止され、品質の安定化を図ることができる。
【0016】
また、制御手段は、ガイドスリット形成処理において、外側ガイド面を、ガイド位置へ向けて少なくとも1回往復移動させた後にガイド位置に設定してもよい。
【0017】
上記構成では、嵌入前にOリングが周方向へ移動する機会が増えるので、張力の偏在をさらに緩和して、品質の安定化を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、リング収容溝の形状によらず、簡単に且つ確実にOリングを嵌入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態の嵌入装置に適用されるOリング及び被組付部品を示す斜視図である。
【図2】本実施形態の嵌入装置の構造を示す斜視図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図2の側面図である。
【図5】図2の嵌入装置を斜め下方から視た斜視図である。
【図6】図2の嵌入装置を斜め上方から視た斜視図である。
【図7】図2の要部側断面図である。
【図8】嵌入装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図9】嵌入装置が実行する処理を示すフローチャートである。
【図10】Oリングの嵌入工程を模式的に示す断面図であり、(a)は初期状態を、(b)は嵌入途中の状態を、(c)は嵌入後の状態をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態のOリング嵌入装置(以下、単に嵌入装置と称する)に適用されるOリング及び被組付部品を示す斜視図、図2は嵌入装置の構造を示す斜視図、図3は図2の平面図、図4は図2の側面図、図5は図2の嵌入装置を斜め下方から視た斜視図、図6は図2の嵌入装置を斜め上方から視た斜視図、図7は図2の要部側断面図、図8は嵌入装置の電気的構成を示すブロック図、図9は嵌入装置が実行する処理を示すフローチャート、図10は嵌入工程を模式的に示す断面図である。なお、図2には圧入ガイドを取り外した状態を示している。また、図10の(a)は初期状態を、(b)は嵌入途中の状態を、(c)は嵌入後の状態をそれぞれ示している。
【0021】
図1に示すように、被組付部品1の裏面1aには、環状のリング収容溝2が形成されている。リング収容溝2は、凹凸部分を有する複雑な形状を有する。Oリング3は、弾性素材によって形成され、リング収容溝2の幅よりも僅かに大きい幅(円形断面の直径)を有し、後述する嵌入装置10によってリング収容溝2の形状に沿うように変形されてリング収容溝2に嵌入される。被組付部品1の裏面1aには、ボルト孔などの複数の孔が形成され、これらのうちリング収容溝2の外側に配置された所定の複数の孔が位置決め孔4として用いられる。
【0022】
図2〜図7に示すように、嵌入装置10は、ベース11、部品載置機構12、部品保持機構13、ガイドスリット形成機構14、圧入機構15、エア回路(図示省略)、及び制御ユニット16等を備える。
【0023】
ベース11は、上下に対向配置された2枚のプレート(上プレート17と下プレート18)と、両プレート17,18を連結する複数のフレーム19とを有する。
【0024】
部品載置機構12は、載置プレート20と複数の位置決め突起21と複数のローラ22とを有する。載置プレート20の上部には、被組付部品1が載置される上面23と、上面23の外周縁から下方へ曲折して延びる側面24とが設けられている。載置プレート20の上部には、各ローラ22を収容する凹部25が切り欠き状に形成され、各ローラ22は、凹部25に収容された状態で上下方向に延びる回転軸26を中心として回転自在に載置プレート20に支持されている。載置プレート20の側面24は、凹部25以外の領域(以下、この領域を固定内側ガイド面27と称する)で露出し、各ローラ22の外周面は、固定内側ガイド面27の間で部分的に露出する。ローラ22の外周面のうち凹部25から露出している部分(以下、可動内側ガイド面28と称する)は、ローラ22の回転に応じてその領域が変動する。固定内側ガイド面27と可動内側ガイド面28とは、内側ガイド面29を構成し、この内側ガイド面29は、リング収容溝2の内周縁とほぼ同じ外形に設定されている。
【0025】
ベース11の上プレート17には、載置プレート20と後述する圧入ガイド38とを収容するための貫通孔が形成されている。載置プレート20は、上プレート17の貫通孔内に配置され、支柱30を介して下プレート18に固定される。この状態で、載置プレート20の上部は上プレート17の上面から突出する。
【0026】
位置決め突起21は、被組付部品1の位置決め孔4に対応して設けられ、内側ガイド面29の外側で上方へ突出している。各位置決め突起21に各位置決め孔4を挿入することにより、被組付部品1が作業位置に載置される。作業位置の被組付部品1は、その裏面1aが所定方向(本実施形態では下方)を向き、且つリング収容溝2が所定位置に設定される。
【0027】
部品保持機構13は、載置プレート20の上方でベース11に対して固定される保持用のエアシリンダ(図示省略)と、このエアシリンダのロッド(図示省略)に固定された保持プレート31とを有する。エアシリンダは伸長側及び短縮側にリミットスイッチ32を有する復動タイプであり、ロッドの伸長及び短縮によって保持プレート31が押圧位置と待避位置との間で降下及び上昇する。保持プレート31の押圧位置と待避位置とは、伸長側及び短縮側のリミットスイッチ32によってそれぞれ規定される。降下して押圧位置に達した保持プレート31は、上記作業位置に載置された被組付部品1を上方から押圧し、載置プレート20との間で被組付部品1を作業位置に保持する。すなわち、載置プレート20の上面23と部品保持機構13とが、被組付部品1を作業位置に着脱自在に保持する部品保持手段として機能する。
【0028】
内側ガイド面29は、作業位置に保持された被組付部品1のリング収容溝2(上記所定位置に設定されたリング収容溝2)の内周縁に沿って近接又は接触する先端縁(上端縁)を有し、この先端縁から下方へ延びる。
【0029】
ガイドスリット形成機構14は、複数のガイドスリット形成用のエアシリンダ33及び外側プレート34を有する。エアシリンダ33は、ベース11の上プレート17の上面に固定され、ガイド面移動手段として機能する。外側プレート34は、エアシリンダ33のロッドに固定され、外側プレート34は、内側ガイド面29に対向配置される外側ガイド面35を有する。エアシリンダ33は伸長側及び短縮側にリミットスイッチ32を有する復動タイプであり、外側プレート34(外側ガイド面35)は、ロッドの伸長及び短縮によってガイド位置と待避位置との間で上プレート17の上面の上を移動する。ガイド位置と待避位置とは、伸長側及び短縮側のリミットスイッチ32によってそれぞれ規定される。ガイド位置の外側ガイド面35は、内側ガイド面29に近接し、内側ガイド面29との間にガイドスリット36を形成する。待避位置の外側ガイド面35は、内側ガイド面29から離間する。外側ガイド面35は、ガイド位置において上記所定位置のリング収容溝2の外周縁に沿って近接又は接触する先端縁(上端縁)を有する。エアシリンダ33及び外側プレート34の数及び場所は、全ての外側プレート34が載置プレート20に最も近接した状態(外側ガイド面35がガイド位置に設定された状態)で内側ガイド面29の外側全域を覆うように設定されている。
【0030】
圧入機構15は、圧入用のエアシリンダ36と圧入プレート37とを有する。エアシリンダ36は、ベース11の下プレート18に固定され、圧入ガイド移動手段として機能する。圧入プレート37は、エアシリンダ36のロッドに固定され、圧入プレート37の上部には、圧入ガイド38が固定されている。圧入ガイド38は、リング収容溝2の形状に沿って環状に湾曲した板材であり、圧入プレート37から起立した状態で上方へ突出する。圧入ガイド38は、内側ガイド面29と外側ガイド面35との間に形成されるガイドスリット36内を上下方向へ移動可能に配置される。エアシリンダ36は伸長側及び短縮側にリミットスイッチ32を有する復動タイプであり、圧入ガイド38は、ロッドの伸長及び短縮によって圧入位置と待避位置との間で上昇及び下降する。圧入位置と待避位置とは、伸長側及び短縮側のリミットスイッチ32によってそれぞれ規定される。圧入位置の圧入ガイド38は、内側ガイド面29の外側全域を覆うとともに、上記所定位置に設定されたリング収容溝2に近接し、待避位置の圧入ガイド38は、リング収容溝2から離間する。
【0031】
エア回路は、コンプレッサ(図示省略)と、コンプレッサが生成する圧縮空気を貯留するエアタンク(図示省略)と、エアタンクからエアシリンダへ圧縮空気を供給するためのエア管路(図示省略)と、エア管路の途中に設けられた複数の電磁弁39とを有する。各電磁弁39は、制御ユニット16から受信する制御信号に応じて、各エアシリンダ33,36へのエアの供給を、伸長側への供給、収縮側への供給又は供給停止に切り替える。
【0032】
制御ユニット16は、スタートボタン40からの開始指示信号と各リミットスイッチ32からのロッド位置信号とを受信し、各電磁弁39へ制御信号を出力する。スタートボタン40は、ベース11の所定位置に固定され、作業者からの押下操作を受けて制御ユニット16へ開始指示信号を送信する。
【0033】
制御ユニット16は、初期状態では保持プレート31、外側ガイド面35及び圧入ガイド38を待避位置にそれぞれ設定し、スタートボタン40から開始指示信号を受信することによって、保持プレート31を待避位置から押圧位置へ移動させる被組付部品保持処理と、外側ガイド面35を待避位置からガイド位置へ移動させるガイドスリット形成処理と、圧入ガイド38を待避位置から圧入位置へ移動させる嵌入処理とを含む一連のOリング嵌入処理を実行する。
【0034】
制御ユニット16は、各エアシリンダ33,36にそれぞれ対応する電磁弁39に対して制御信号を送信し、その電磁弁39からエアシリンダ33,36へのエアの供給状態を切り替えることにより、ロッドの伸縮及び停止(保持プレート31、外側ガイド面35及び圧入ガイド38の移動や停止)を行う。また、制御ユニット16は、各エアシリンダ33,36に設けられたリミットスイッチ32からのロッド位置信号の受信に応じてロッドの伸縮を停止する。
【0035】
例えば、被組付部品保持処理において、保持プレート31を待避位置から押圧位置へ移動させる場合、制御ユニット16は、保持用のエアシリンダに対応する電磁弁39の状態を供給停止から伸長側への供給へ切り替える制御信号を出力する。この制御信号の受信に応じて電磁弁39が伸長側への供給に切り替わると、エアシリンダのロッドが伸長し、保持プレート31が待避位置から押圧位置に向かって移動する。保持プレート31が押圧位置に達すると、伸長側のリミットスイッチ32が制御ユニット16へロッド位置信号を送信する。このロッド位置信号を受信した制御ユニット16は、電磁弁39の状態を伸長側への供給から供給停止へ切り替える制御信号を出力する。この制御信号の受信に応じて電磁弁39が供給停止へ切り替わると、保持プレート31が押圧位置に設定される。また、ガイドスリット形成処理において、外側ガイド面35を待避位置からガイド位置へ移動させる場合、制御ユニット16は、ガイドスリット形成用のエアシリンダ33に対応する電磁弁39の状態を供給停止から伸長側への供給へ切り替える制御信号を出力する。この制御信号の受信に応じて電磁弁39が伸長側への供給に切り替わると、エアシリンダ33のロッドが伸長し、外側ガイド面35が待避位置からガイド位置に向かって移動する。外側ガイド面35がガイド位置に達すると、伸長側のリミットスイッチ32が制御ユニット16へロッド位置信号を送信する。このロッド位置信号を受信した制御ユニット16は、電磁弁39の状態を伸長側への供給から供給停止へ切り替える制御信号を出力する。この制御信号の受信に応じて電磁弁39が供給停止へ切り替わると、エアシリンダ33のロッドが停止し、外側ガイド面35がガイド位置に設定される。同様に、嵌入処理において、圧入ガイド38を待避位置から圧入位置へ移動させる場合、制御ユニット16は、圧入用のエアシリンダ36に対応する電磁弁39の状態を供給停止から伸長側への供給へ切り替える制御信号を出力する。この制御信号の受信に応じて電磁弁39が伸長側への供給に切り替わると、エアシリンダ36のロッドが伸長し、圧入ガイド38が待避位置から圧入位置に向かって移動する。圧入ガイド38が圧入位置に達すると、伸長側のリミットスイッチ32が制御ユニット16へロッド位置信号を送信する。このロッド位置信号を受信した制御ユニット16は、電磁弁39の状態を伸長側への供給から供給停止へ切り替える制御信号を出力する。この制御信号の受信に応じて電磁弁39が供給停止へ切り替わると、エアシリンダ36のロッドが停止し、圧入ガイド38が圧入位置で停止する。なお、圧入位置に達した圧入ガイド38を停止させずに直ぐに待避位置へ戻してもよい。この場合、伸長側のリミットスイッチ32からのロッド位置信号を受信した制御ユニット16は、電磁弁39の状態を伸長側への供給から短縮側への供給へ切り替える制御信号を出力する。
【0036】
このように、制御ユニット16は、ガイドスリット形成用のエアシリンダ33及び圧入用のエアシリンダ36に対するエアの供給状態を変更する各電磁弁39とともに、ガイド面移動手段と圧入ガイド移動手段とを制御して外側ガイド面35と圧入ガイド38とを移動させる制御手段として機能する。
【0037】
次に、作業者によるOリング3の嵌入作業において制御ユニット16が実行する処理について、図9を参照して説明する。
【0038】
作業者は、保持プレート31、外側ガイド面35及び圧入ガイド38が待避位置に設定された初期状態において、各位置決め突起21に各位置決め孔4を挿入して被組付部品1を載置プレート20の上面に載置する。これにより、被組付部品1が作業位置にセットされる。
【0039】
次に、作業者は、Oリング3を内側ガイド面29の外側に巻回する(図10(a)参照)。この巻回の際に、位置決め突起21が設けられている場所では、位置決め突起21と内側ガイド面29との間にOリング3を上方から挿入する。巻回されたOリング3は、内側ガイド面29よりも外側に拡がった状態となる。
【0040】
次に、作業者は、スタートボタン40を押下する(ステップS1)。スタートボタン40は、この押下操作に応じて開始指示信号を制御ユニット16へ送信し、開始指示信号を受信した制御ユニット16は、一連のOリング嵌入処理を開始する。
【0041】
Oリング嵌入処理において、制御ユニット16は、まず被組付部品保持処理を実行する(ステップS2)。被組付部品保持処理では、保持プレート31を待避位置から押圧位置へ下降させる。これにより、被組付部品1が作業位置に保持される。
【0042】
次に、制御ユニット16は、ガイドスリット形成処理を実行する(ステップS3)。ガイドスリット形成処理では、外側ガイド面35を、ガイド位置へ向けて少なくとも1回(本実施形態では複数回)往復移動させた後に、ガイド位置に移動させる。外側ガイド面35がガイド位置へ移動することにより、内側ガイド面29と外側ガイド面35との間にガイドスリット36が形成され、Oリング3は、ガイドスリット36に沿って変形してガイドスリット36内に収容される(図10(b)参照)。また、上記変形に際して、Oリング3の周方向への移動は、ローラ22の回転によって許容される。
【0043】
次に、制御ユニット16は、嵌入処理を実行する(ステップS4)。嵌入処理では、圧入ガイド38を、圧入位置へ向けて少なくとも1回(本実施形態では複数回)往復移動させた後に、圧入位置に移動させる。圧入位置へ移動する圧入ガイド38の先端によって、Oリング3がリング収容溝2に嵌入される(図10(c)参照)。
【0044】
最後に、制御ユニット16は、保持プレート31、外側ガイド面35及び圧入ガイド38を初期状態(待避位置)に戻す(ステップS5)。
【0045】
以上により、1つの被組付部品1に対するOリング3の嵌入作業が終了し、作業者は、Oリング3が嵌入された被組付部品1を作業位置から取り外す。次の被組付部品1にOリング3を嵌入する場合、作業者は、上記作業を繰り返して行う。
【0046】
本実施形態によれば、被組付部品1のリング収容溝2へのOリング3の嵌入作業を行う作業者は、被組付部品1を作業位置にセットし、Oリング3を内側ガイド面29の外側に巻回した後、スタートボタン40を押下して、制御ユニット16に被組付部品保持処理とガイドスリット形成処理と嵌入処理とを実行させればよい。
【0047】
従って、作業者は、手作業による嵌入を行うことなく、また、リング収容溝2の形状が複雑か否かによらず、簡単に且つ確実にOリング3をリング収容溝2へ嵌入することができる。
【0048】
また、ガイドスリット形成処理において、内側ガイド面29の外側に巻回されたOリング3が外側ガイド面35に押されて移動する際に、Oリング3の周方向への移動がローラ22の回転によって許容される。このため、嵌入前のOリング3の張力の偏在がOリング3の周方向への移動によって緩和され、周方向において張力の均等化が図られた状態(全周においてOリング3がほぼ均等に伸びた状態)でOリング3がリング収容溝2に嵌入される。従って、部分的に過剰な負荷が加わったままOリング3がリング収容溝2に嵌入されてしまうことが防止され、品質の安定化を図ることができる。
【0049】
さらに、ガイドスリット形成処理において、外側ガイド面35がガイド位置へ向けて少なくとも1回往復移動させた後にガイド位置に設定されるので、嵌入前にOリング3が周方向へ移動する機会が増大する。従って、張力の偏在をさらに緩和して、品質の安定化を図ることができる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態には限定されず、他の様々な実施形態を含むものである。例えば、保持プレート31や外側ガイド面35や圧入プレート37の移動を、エアシリンダ33,36ではなく、油圧シリンダやモータなどの他の手段によって行ってもよい。また、保持プレート31による上方からの押圧に代えて、エアの吸引等によって被組付部品1を作業位置に保持するなど、他の手段によって被組付部品1を作業位置に保持してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のOリング嵌入装置は、被組付部品の裏面に環状に形成されたリング収容溝にOリングを嵌入する場合に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:被組付部品
1a:被組付部品の裏面
2:リング収容溝
3:Oリング
10:嵌入装置(Oリング嵌入装置)
11:ベース11
12:部品載置機構
13:部品保持機構(部品保持手段)
14:ガイドスリット形成機構
15:圧入機構
16:制御ユニット(制御手段)
20:載置プレート
22:ローラ
23:載置プレートの上面(部品保持手段)
26:回転軸
27:固定内側ガイド面
28:可動内側ガイド面
29:内側ガイド面
31:保持プレート
32:リミットスイッチ
33:エアシリンダ(ガイド面移動手段)
34:外側プレート
35:外側ガイド面
36:エアシリンダ(圧入ガイド移動手段)
38:圧入ガイド
39:電磁弁(制御手段)
40:スタートスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被組付部品の裏面に環状に形成されたリング収容溝にOリングを嵌入するOリング嵌入装置であって、
前記被組付部品の裏面が所定方向を向き且つ前記リング収容溝が所定位置に設定される作業位置に、前記被組付部品を着脱自在に保持する部品保持手段と、
前記所定位置のリング収容溝の内周縁に沿って近接又は接触する先端縁を有し、該先端縁から前記所定方向へ延びる内側ガイド面と、
前記内側ガイド面に対向配置され、前記所定方向と交叉する方向へ移動可能な外側ガイド面と、
前記外側ガイド面を、前記内側ガイド面に近接し該内側ガイド面との間にガイドスリットを形成するガイド位置と、該内側ガイド面から離間する待避位置との間で移動させるガイド面移動手段と、
前記ガイドスリット内を前記所定方向へ移動可能な圧入ガイドと、
前記圧入ガイドを、前記所定位置のリング収容溝に近接する圧入位置と、該リング収容溝から離間する待避位置との間で移動させる圧入ガイド移動手段と、
前記ガイド面移動手段と前記圧入ガイド移動手段とを制御して前記外側ガイド面と前記圧入ガイドとを移動させる制御手段と、を備え、
前記外側ガイド面は、前記ガイド位置において前記所定位置のリング収容溝の外周縁に沿って近接又は接触する先端縁を有し、
前記制御手段は、初期状態では前記外側ガイド面及び前記圧入ガイドを前記待避位置に設定するとともに、前記外側ガイド面を前記待避位置から前記ガイド位置へ移動させるガイドスリット形成処理と、前記圧入ガイドを前記待避位置から前記圧入位置へ移動させる嵌入処理とを連続的に実行し、
前記ガイドスリット形成処理では、前記初期状態で前記内側ガイド面の外側に巻回されたOリングが、前記ガイドスリット内に収容され、
前記嵌入処理では、前記ガイドスリット内に収容されたOリングが、前記圧入ガイドによって押圧されて前記所定位置のリング収容溝に嵌入される
ことを特徴とするOリング嵌入装置。
【請求項2】
請求項1に記載のOリング嵌入装置であって、
前記内側ガイド面は、前記所定方向を軸心として回転自在に支持されたローラの外周面のうち一部の領域を含み、
前記ローラの外周面のうち前記内側ガイド面に含まれる領域は、該ローラの回転に応じて変動し、
前記ガイドスリット形成処理では、前記内側ガイド面の外側に巻回されたOリングの周方向への移動が、前記ローラの回転によって許容される
ことを特徴とするOリング嵌入装置。
【請求項3】
請求項2に記載のOリング嵌入装置であって、
前記制御手段は、前記ガイドスリット形成処理において、前記外側ガイド面を、前記ガイド位置へ向けて少なくとも1回往復移動させた後に該ガイド位置に設定する
ことを特徴とするOリンク嵌入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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