説明

OFDM信号合成用受信装置及び中継装置

【課題】干渉波とともに、遅延時間が長く、レベルが大きい希望波のマルチパスが受信される環境においても、干渉波を抑圧して希望波を受信する。
【解決手段】OFDM信号合成用受信装置は、受信アンテナによって受信したOFDM信号を周波数領域の受信キャリアシンボルに変換するFFT部(40)と、前記受信キャリアシンボルを、OFDM信号を構成するサブキャリアごとに第1重み係数により重み付け合成してアレー合成信号を生成するアレー合成部(50)と、送信シンボルを推定した参照信号を生成し、該参照信号と前記アレー合成信号との誤差が最小となるように第2重み係数を生成する重み係数最適化部(61,63)と、前記第2重み係数の逆数に対してフィルタ処理した後、該フィルタ処理した第2重み係数の逆数の再度逆数を前記第1重み係数として生成するフィルタ処理部(62,64)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式を用いるデジタル放送やデジタル伝送のOFDM信号合成用受信装置に関し、特にデジタル放送や無線LANなどにおいて電波を受信する際に問題となるフェージングや干渉波の対策にアダプティブアレーアンテナ技術やダイバーシティ受信技術を適用するOFDM信号合成用受信装置及び中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アダプティブアレーアンテナ技術やダイバーシティ受信技術を適用し、アレーアンテナの各アレー素子が出力する各受信OFDM信号のサブキャリアに対して重み係数を算出するOFDM信号合成用受信装置が知られている(例えば、特許文献1乃至3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−174427号公報
【特許文献2】特開2005−295506号公報
【特許文献3】特開2008−66982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載の技法では、重み係数が直接算出されるのはSP(Scattered Pilot)信号が伝送されるサブキャリアのみに限られ、その他のサブキャリアについてはSP信号が伝送されるサブキャリアについて算出した重み係数を補間することによって得ている。重み係数の補間結果が正しい値を与えるためには、SP信号による重み係数の算出が標本化定理を満足している場合、つまり重み係数が算出されるサブキャリア間隔(SP信号が挿入されるサブキャリア方向の間隔)が重み係数のサブキャリア方向の変化に対するナイキスト間隔以下である場合に制限される。遅延時間の長いマルチパス波を受信している場合や干渉波の到来角度及びアレー素子間隔といった受信条件によっては、重み係数のサブキャリア方向の変化に対するナイキスト間隔が、重み係数を算出するサブキャリア間隔より狭くなることがあり、この場合にはSP信号が伝送されるサブキャリアについての重み係数が正確に算出されていても、データのみが伝送されるサブキャリアについての重み係数は補間処理では正しく算出できず、結果として最適な合成信号を得ることができなかった。
【0005】
また、特許文献2に記載の技法では、全てのサブキャリアにおいて、SP信号を用いて求める伝送路応答を入力ベクトル、無歪み応答を参照信号として最適化することにより重み係数を得ている。しかし、SP信号が伝送されないサブキャリアにおいても重み係数を最適化するためには、多くの演算が必要であった。
【0006】
また、特許文献2及び特許文献3に記載の技法では、シンボル判定値を参照信号として全てのサブキャリアにおいて重み係数を得ている。しかし、シンボル判定に軽減困難な誤りがある場合には、重み係数が最適値へ収束しないことにより、干渉波を充分抑圧できないことがあった。
【0007】
本発明の目的は、干渉波とともに、遅延時間が長く、レベルが大きい希望波のマルチパスが受信される環境においても、干渉波を抑圧して希望波を受信することができるOFDM信号合成用受信装置及び中継装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るOFDM信号合成用受信装置は、複数のアレー素子で構成される受信アンテナによってOFDM信号を受信するOFDM信号合成用受信装置であって、受信アンテナによって受信したOFDM信号を周波数領域の受信キャリアシンボルに変換するFFT部と、OFDM信号を構成するサブキャリアごとに、前記受信キャリアシンボルを第1重み係数により重み付け合成してアレー合成信号を生成するアレー合成部と、送信シンボルを推定した参照信号を生成し、該参照信号と前記アレー合成信号との誤差が最小となるように第2重み係数を生成する重み係数最適化部と、前記第2重み係数の逆数に対してフィルタ処理した後、該フィルタ処理した第2重み係数の逆数の再度逆数を前記第1重み係数として生成するフィルタ処理部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るOFDM信号合成用受信装置において、前記重み係数最適化部は、前記受信キャリアシンボルから、所定のサブキャリア番号のサブキャリアによって伝送される所定のシンボル番号のSP信号を受信SP信号として抽出する受信SP信号抽出部と、前記アレー合成信号から、アレー合成後のSP信号を抽出する合成SP信号抽出部と、既知のSP信号の真値を前記参照信号(送信SP信号)として生成する送信SP信号生成部と、前記参照信号から前記アレー合成後のSP信号を減じた誤差信号を算出する誤差算出部と、前記受信SP信号を用いて前記誤差信号が最小となるように前記SP信号が伝送されるサブキャリアに対する前記第2重み係数を算出する重み係数制御部とを備え、前記フィルタ処理部は、前記第2重み係数の逆数を算出する第1逆数算出部と、前記第2重み係数の逆数を内挿補間し、かつ、フィルタ処理した補正逆数重み係数を生成する補間LPF部と、前記補正逆数重み係数の逆数を前記第1重み係数として算出する第2逆数算出部とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るOFDM信号合成用受信装置において、前記重み係数最適化部は、前記受信キャリアシンボルから送信シンボルを推定して前記参照信号を生成する参照信号生成部と、前記参照信号から前記アレー合成信号を減じた誤差信号を算出する誤差算出部と、前記受信キャリアシンボルを用いて前記誤差信号が最小となるように前記サブキャリアに対する前記第2重み係数を算出する重み係数制御部とを備え、前記フィルタ処理部は、前記第2重み係数の逆数を算出する第1逆数算出部と、前記第2重み係数の逆数をフィルタ処理した補正逆数重み係数を生成するLPF部と、前記補正逆数重み係数の逆数を前記第1重み係数として算出する第2逆数算出部とを備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るOFDM信号合成用受信装置において、前記参照信号生成部は、前記受信キャリアシンボルを、処理対象となるサブキャリアにおける前記第1重み係数を用いて重み付け合成を行い、第1参照アレー合成信号を生成する第1参照アレー合成部と、処理対象となるサブキャリアに隣接するサブキャリアにおける前記第1重み係数を逆数補間した補間重み係数を生成する逆数補間部と、前記受信キャリアシンボルを、前記補間重み係数を用いて重み付け合成を行い、第2参照アレー合成信号を生成する第2参照アレー合成部と、前記第1参照アレー合成信号及び前記第2参照アレー合成信号をそれぞれシンボル判定したシンボル判定信号を生成するシンボル判定部と、前記各シンボル判定信号の変調誤差比を算出する変調誤差比算出部と、前記各変調誤差比のうち大きいほうの変調誤差比を特定する指示信号を生成する最大値検出部と、前記各シンボル判定信号のうち、前記指示信号が示す変調誤差比が大きい値であるシンボル判定信号を選択し、前記参照信号とする選択部とを備えることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明に係る中継装置は、上述したOFDM信号合成用受信装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、干渉波とともに、遅延時間が長くレベルが大きい希望波のマルチパスが受信される環境においても、干渉波を抑圧して希望波を受信することができるOFDM信号合成用受信装置及び中継装置を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による実施例1のOFDM信号合成用受信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による実施例1のOFDM信号合成用受信装置の重み最適化部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明による実施例1のOFDM信号合成用受信装置のフィルタ処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明による実施例1のOFDM信号合成用受信装置のフィルタ処理部の動作を説明する図である。
【図5】本発明による実施例2のOFDM信号合成用受信装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明による実施例2のOFDM信号合成用受信装置の重み最適化部の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明による実施例2のOFDM信号合成用受信装置の参照信号生成部の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明による実施例2のOFDM信号合成用受信装置のフィルタ処理部の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明による実施例2のOFDM信号合成用受信装置のフィルタ処理部の動作を説明する図である。
【図10】本発明による実施例2のOFDM信号合成用受信装置のマルチパス環境における干渉除去特性を示す図である。
【図11】本発明によるOFDM信号合成用受信装置を備える中継装置の構成を示すブロック図である。
【図12】SP信号の配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明において、アレー素子数をL、任意のアレー素子に付したアレー素子番号をl(0≦l≦L−1)とする。また、OFDM信号を構成するサブキャリア数をK、任意のサブキャリアに付したキャリア番号をk(0≦k≦K−1)、SP(Scattered Pilot)信号が伝送されるサブキャリア数をK(SP)、SP信号が伝送される任意のサブキャリアに付したキャリア番号をk(SP)(0≦k(SP)≦K(SP)−1)とする。さらに、OFDM信号を構成する任意のシンボルに付したシンボル番号をiとする。
【実施例1】
【0016】
本発明による実施例1のOFDM信号合成用受信装置について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明による実施例1のOFDM信号合成用受信装置1の構成を示すブロック図である。OFDM信号合成用受信装置1は、複数のアレー素子で構成される受信アンテナ10(10〜10L−1)と、アレー素子数分の受信フィルタ20(20〜20L−1)と、アレー素子数分の受信変換部30(30〜30L−1)と、アレー素子数分のFFT部40(40〜40L−1)と、サブキャリア数分のアレー合成部50(50〜50K−1)と、重み係数算出部60とを備える。重み係数算出部60は、SP信号が伝送されるサブキャリア数分の重み係数最適化部61(61〜61K(SP)−1)と、アレー素子数分のフィルタ処理部62(62〜62L−1)とを備える。
【0017】
受信アンテナ10は、OFDM信号を受信して受信フィルタ20に出力する。
【0018】
受信フィルタ20は、受信アンテナ10から入力される信号のうち、希望波の周波数帯域外の不要な信号成分を除去し、受信変換部30に出力する。
【0019】
受信変換部30は、受信フィルタ20から入力される信号を周波数変換してIF(Intermediate Frequency)信号を生成する。続いて、IF信号をA/D変換したデジタルIF信号を直交復調し、等価ベースバンド信号をFFT部に出力する。
【0020】
FFT部40は、受信変換部30から入力される等価ベースバンド信号をFFT(Fast Fourier Transform;高速フーリエ変換)処理して周波数領域信号のキャリアシンボル(以下、「受信キャリアシンボル」という。)に変換し、アレー合成部50及び重み係数最適化部61に出力する。
【0021】
アレー合成部50は、次式(1)〜(3)示すように、OFDM信号を構成するサブキャリアごとに、FFT部40から入力される受信キャリアシンボルを、フィルタ処理部62から入力される重み係数(すなわち、後述する補正重み係数)により重み付け合成してアレー合成信号(以下、「合成キャリアシンボル」ともいう。)を生成し、重み係数最適化部61及び外部に出力する。
【0022】
【数1】

【0023】
重み係数最適化部61は、FFT部40から入力される受信キャリアシンボルを用いて送信シンボルを推定した参照信号を生成し、この参照信号とアレー合成部50から入力されるアレー合成信号との誤差が最小となるように最適化した重み係数を生成し、フィルタ処理部62に出力する。この重み係数最適化部61の詳細は後述する。
【0024】
フィルタ処理部62は、重み係数最適化部61から入力される重み係数に対して内挿補間及びフィルタ処理を施して補正し、補正後の重み係数(以下、「補正重み係数」という。)をアレー合成部50に出力する。このフィルタ処理部62の詳細は後述する。
【0025】
図2は、本発明による実施例1の重み最適化部61の構成を示すブロック図である。重み最適化部61は、アレー素子数分の受信SP信号抽出部611(611〜611L−1)と、送信SP信号生成部612と、合成SP信号抽出部613と、誤差算出部614と、重み係数制御部615とを備える。
【0026】
受信SP信号抽出部611は、FFT部40から入力される受信キャリアシンボルのうち、予め決められたサブキャリア番号のサブキャリアによって伝送される、予め決められたシンボル番号のSP信号を受信SP信号として抽出し、抽出した受信SP信号x’k(SP)を重み係数制御部615に出力する。図12は、SP信号の配置を説明する図であり、SP信号を黒丸で、その他のキャリアシンボルを白丸で示している。SP信号とは、信号生成時における振幅及び位相が予め決められた値の信号であり、例えば、地上デジタルテレビジョン放送の放送方式であるIDSB−T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式やDVB−T(Digital Video Broadcasting-Terrestrial)方式においては、基準信号として挿入されている。IDSB−T方式の場合では、受信SP信号抽出部611は、FFT部40から入力されるキャリアシンボルのうち、次式(4)を満たすキャリアシンボルを受信SP信号として抽出する。
【0027】
k mod12=3(i mod4) (4)
ここで、modは剰余を表す。なお、以下では、簡単のためシンボル番号iを省略する。
【0028】
SP信号は送信側において振幅及び位相が予め定められているため、受信側であるOFDM信号合成用受信装置1においても、送信側と同じSP信号(以下、「送信SP信号」という。)を生成することができる。送信SP信号生成部612は、式(4)を満たす真値の送信SP信号を生成し、誤差算出部614に出力する。
【0029】
合成SP信号抽出部613は、アレー合成部50から入力される合成キャリアシンボルのうち、式(4)を満たすキャリアシンボルを合成SP信号として抽出し、抽出した合成SP信号を誤差算出部614に出力する。
【0030】
誤差算出部614は、次式(5)に示すように、送信SP信号生成部612から入力される送信SP信号から、合成SP抽出部613から入力される合成SP信号を減じた誤差信号を算出し、重み係数制御部615に出力する。
【0031】
k(SP)=rk(SP)−dk(SP) (5)
ここで、rk(SP)はキャリア番号k(SP)の送信SP信号であり、dk(SP)はキャリア番号k(SP)の合成SP信号であり、ek(SP)はキャリア番号k(SP)の誤差信号である。
【0032】
重み係数制御部615は、受信SP信号抽出部611から入力される受信SP信号x’k(SP)を用いて、誤差算出部614から入力される誤差信号ek(SP)が最小となるように重み係数wk(SP)を最適化し、フィルタ処理部62に出力する。最適化手法としては、最小2乗誤差法であるLMS(Least Mean Square)やRLS(Recursive Least-Squares)といったアルゴリズムを用いることができる。LMSアルゴリズムでは、時刻nの重み係数w(n)を用いて、重み係数w(n+1)を次式(6)で示すように更新していくことにより、誤差信号ek(SP)を最小化することができる。
【0033】
【数2】

ここで、μは更新前後の変化量を規定するステップサイズであり、上付きの*は複素共役を表す。
【0034】
また、RLSアルゴリズムでは、次式(7)〜(9)を用いて重み係数を更新する。
【0035】
【数3】

ここで、g(n)はゲインベクトル、P(n)は相関逆行列、λは忘却係数である。LMSやRLSは公知の技法であるため、説明は省略する。
【0036】
図3は、本発明による実施例1のフィルタ処理部62の構成を示すブロック図である。フィルタ処理部62は、SP信号が伝送されるサブキャリア数分の第1逆数算出部621(621〜621K(SP)−1)と、補間LPF(Low Pass Filter)部622と、サブキャリア数分の第2逆数算出部623(623〜623K−1)とを備える。
【0037】
第1逆数算出部621は、次式(10)に示すように、重み係数制御部615から入力される重み係数wk(SP)の逆数(以下、「逆数重み係数」という。)vk(SP)を算出し、補間LPF部622に出力する。
【0038】
【数4】

【0039】

【0040】
【数5】

ここで、↑はアップサンプリングを表し、↑3は3倍のアップサンプリングを意味する。また、LPFはLPF処理を表す。
【0041】

【0042】
【数6】

【0043】
図4は、遅延時間が長くレベルが大きい希望波のマルチパスが受信される環境における、フィルタ処理部62の動作を説明する図である。図4(a)は、第1逆数算出部621に入力される重み係数wk(SP)の複素共役値をIFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)処理したときの値を示しており、図4(b)は、第1逆数算出部621から出力される逆数重み係数vk(SP)の複素共役値をIFFT処理したときの値を示している。図4(a)では、受信信号に含まれる希望波のマルチパス成分が巡回的に出現しているのに対し、図4(b)では、非巡回的に出現する。そして、逆数重み係数vk(SP)を内挿補間処理し、第2逆数算出部623により再度逆数を取ることで、SP信号が伝送されないサブキャリアの重み係数を正しく求めることができるようになる。
【0044】
したがって、実施例1のOFDM信号合成用受信装置1によれば、少ない演算量、少ない処理回路で、干渉波を抑圧して希望波を受信することができるようになる。
【0045】
次に、本発明による実施例2のOFDM信号合成用受信装置2について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施例1と同じ構成要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0046】
図5は、本発明による実施例2のOFDM信号合成用受信装置2の構成を示すブロック図である。実施例2のOFDM信号合成用受信装置2は、複数のアレー素子で構成される受信アンテナ10(10〜10L−1)と、アレー素子数分の受信フィルタ20(20〜20L−1)と、アレー素子数分の受信変換部30(30〜30L−1)と、アレー素子数分のFFT部40(40〜40L−1)と、サブキャリア数分のアレー合成部50(50〜50K−1)と、重み係数算出部60とを備える。重み係数算出部60は、サブキャリア数分の重み係数最適化部63(63〜63K−1)と、アレー素子数分のフィルタ処理部64(64〜64L−1)とを備える。実施例2のOFDM信号合成用受信装置2は、実施例1のOFDM信号合成用受信装置1(図1参照)と比較して、重み係数算出部60の内部の処理が相違するため、以下に実施例2の重み係数算出部60について説明する。
【0047】
重み係数最適化部63は、FFT部40から入力される受信キャリアシンボル及びフィルタ処理部64から入力される補正重み係数を用いて送信シンボルを推定した参照信号を生成し、この参照信号とアレー合成部50から入力されるアレー合成信号との誤差が最小となるように最適化した重み係数を生成し、フィルタ処理部64に出力する。この重み係数最適化部63の詳細は後述する。
【0048】
フィルタ処理部64は、重み係数最適化部63から入力される重み係数に対してフィルタ処理を施して補正し、補正後の重み係数(以下、「補正重み係数」という。)をアレー合成部50に出力する。このフィルタ処理部64の詳細は後述する。
【0049】
図6は、本発明による実施例2の重み最適化部63の構成を示すブロック図である。重み最適化部63は、参照信号生成部631と、誤差算出部632と、重み係数制御部633とを備える。
【0050】
参照信号生成部631は、FFT部40から入力される受信キャリアシンボル及びフィルタ処理部64から入力される重み係数(すなわち、後述する補正重み係数)を用いて、受信キャリアシンボルから送信シンボルを推定した参照信号を生成し、誤差算出部632へ出力する。
【0051】
誤差算出部632は、誤差算出部614は、次式(13)に示すように、参照信号生成部631から入力されるキャリア番号kの参照信号rから、アレー合成部50から入力されるキャリア番号kの合成キャリアシンボルdkを減じ、キャリア番号kの誤差信号eを算出し、重み係数制御部633に出力する。
【0052】
=rk−dk (13)
【0053】

【0054】
【数7】

ここで、μは更新前後の変化量を規定するステップサイズであり、上付きの*は複素共役を表す。
【0055】
また、RLSアルゴリズムでは、次式(15)〜(17)を用いて重み係数を更新する。
【0056】
【数8】

ここで、g(n)はゲインベクトル、P(n)は相関逆行列、λは忘却係数である。
【0057】
図7は、本発明による実施例2のOFDM信号合成用受信装置2の参照信号生成部631の構成を示すブロック図である。参照信号生成部631は、逆数補間部6311と、2つの参照アレー合成部6312(6312−1及び6312−2)と、2つのシンボル判定部6313(6313−1及び6313−2)と、2つの変調誤差比(MER:Modulation Error Ratio)算出部6314(6314−1及び6314−2)と、最大値検出部6315と、選択部6316とを備える。
【0058】

【0059】
【数9】

【0060】

【0061】
【数10】

【0062】

【0063】
【数11】

【0064】
シンボル判定部6313−1は、次式(21)に示すように、参照アレー合成部6312から入力されるアレー合成信号をデマッピング、再マッピングし、シンボル判定を行い、シンボル判定信号dk1を変調誤差比算出部6314及び選択部6316に出力する。同様に、シンボル判定部6313−2は、次式(22)に示すように、シンボル判定したシンボル判定信号dk2を変調誤差比算出部6314及び選択部6316に出力する。シンボル判定は、与えられた合成キャリアシンボルと送信キャリアシンボルとを比較し、ノルムが最も小さい送信キャリアシンボルをシンボル判定信号とする。
【0065】
【数12】

ここで、decはシンボル判定を行う関数を表す。
【0066】
変調誤差比算出部6314−1は、参照アレー合成部6312−1から入力されるアレー合成信号yk1及びシンボル判定部6313−1から入力されるシンボル判定値dk1を用い、次式(23)により変調誤差比R1を算出し、最大値検出部6315に出力する。同様に、変調誤差比算出部6314−2は、参照アレー合成部6312−2から入力されるアレー合成信号yk2及びシンボル判定部6313−2から入力されるシンボル判定値dk2を用い、次式(24)により変調誤差比R2を算出し、最大値検出部6315に出力する。なお、変調誤差比の算出については、例えば、ETR 290: “Measurement guidelines for DVB Systems”, ETSI Technical Report, may 1997に記載されているように、公知の技法なので説明を省略する。
【0067】
【数13】

【0068】
最大値検出部6315は、次式(25)に示すように、変調誤差比算出部6314から入力される変調誤差値R1及びR2のうち、大きいほうの変調誤差比を特定する指示信号を選択部6315へ出力する。
【数14】

ここで、arg maxは変調誤差値Rmのうち、変調誤差比が最大であるmの値を返す関数である。
【0069】
選択部6316は、次式(26)に示すように、シンボル判定部6313から入力されるシンボル判定信号のうち、最大値検出部6315から入力される指示信号に基づき、指示信号が示す変調誤差比が大きい値であるシンボル判定信号を選択し、参照信号rkとして誤差算出部632に出力する。
【0070】
【数15】

【0071】
図8は、本発明による実施例2のOFDM信号合成用受信装置のフィルタ処理部64の構成を示すブロック図である。フィルタ処理部64は、サブキャリア数分の第1逆数算出部641(641〜641K−1)と、LPF部642と、サブキャリア数分の第2逆数算出部643(643〜643K−1)とを備えている。
【0072】
第1逆数算出部641は、次式(27)により、重み係数制御部633から入力される重み係数wの逆数(以下、「逆数重み係数」という。)vを算出し、LPF部642に入力する。
【0073】
【数16】

【0074】

【0075】
【数17】

ここで、LPFはLPF処理を表す。
【0076】

【0077】
【数18】

【0078】
図9は、遅延時間が長くレベルが大きい希望波のマルチパスが受信される環境における、フィルタ処理部64の動作を説明する図である。図9(a)は、第1逆数算出部641に入力される重み係数wの複素共役値をIFFT処理したときの値を示しており、図9(b)は、第1逆数算出部641から出力される逆数重み係数vの複素共役値をIFFT処理したときの値を示している。図9(a)では、受信信号に含まれる希望波のマルチパス成分が巡回的に出現しているのに対し、図9(b)では、非巡回的に出現する。そして、LPF処理により高周波成分を除去することにより、収束していない重み係数を最適解に引き込むことができるようになる。
【0079】
図10は、計算機シミュレーションにより求めた、マルチパス環境における干渉除去特性を示す図であり、横軸にマルチパスのD/U比(desired to undesired ratio)、縦軸にBER(Bit Error Rate)を示している。比較のため本発明によるOFDM信号合成用受信装置と、特許文献2に記載の受信装置に特許文献3に記載の位相補正値算出部を組み合わせたOFDM信号合成用受信装置の干渉除去特性を合わせて示している。伝送パラメータは、地上デジタル放送の放送方式であるISDB−Tのモード3、GI比1/8(126μs)、キャリア変調は64QAM、内符号の符号化率は3/4である。特に、マルチパスのD/U比が小さい(レベルが大きい)場合に、本発明OFDM信号合成用受信装置で良好な干渉除去効果が得られていることが分かる。
【0080】

【0081】
次に、本発明によるOFDM信号合成用受信装置を備える中継装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例3】
【0082】
図11は、実施例1のOFDM信号合成用受信装置1又は実施例2のOFDM信号合成用受信装置2を備える中継装置3の構成を示すブロック図である。中継装置3は、外部の受信アンテナ10と、OFDM信号合成用受信装置1又は2と、IFFT部70と、GI付加部80と、送信変換部90と、パワーアンプ100と、送信フィルタ110と、送信アンテナ120とを備える。
【0083】
受信アンテナ10は、親局から送信されるOFDM信号を受信してOFDM信号合成用受信装置1又2に出力する。
【0084】
OFDM信号合成用受信装置1又は2は、FFT後のキャリアシンボルをアレー合成処理することにより、マルチパス歪みや希望波と同一周波数帯域内の妨害波を除去し、IFFT部70に出力する。
【0085】
IFFT部70は、OFDM信号合成用受信装置1又は2から入力されるアレー合成信号をIFFT処理して時間領域の信号に変換し、GI付加部80に出力する。
【0086】
GI付加部80は、IFFT部70から入力される時間領域の信号に対して、OFDMシンボルの先頭にGIを付加し、入力信号と同じ周波数のIF信号として送信変換部90に出力する。
【0087】
送信変換部90は、GI付加部508から入力されるIF信号を周波数変換してRF(Radio Frequency)信号を生成し、一定レベルになるように増幅してパワーアンプ100に出力する。
【0088】
パワーアンプ100は、送信変換部90から入力されるRF信号を所望の出力の送信信号を得るため電力増幅し、送信フィルタ110に出力する。
【0089】
送信フィルタ110は、パワーアンプ100から入力される送信信号に対して、帯域外の不要輻射成分を除去し、送信アンテナ120に出力する。
【0090】
送信アンテナ120は、送信フィルタ110により帯域外の不要な成分が除去された送信信号を放射する。
【0091】
上述の各実施例は、個々に代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0092】
このように、本発明によれば、干渉波とともに、遅延時間が長くレベルが大きい希望波のマルチパスが受信される環境においても、干渉波を抑圧し希望波を受信することができるので、OFDM信号を複数のアレーアンテナで受信する任意の用途に有用である。
【符号の説明】
【0093】
1,2 OFDM信号合成用受信装置
10 受信アンテナ
20 受信フィルタ
30 受信変換部
40 FFT部
50 アレー合成部
60 重み係数算出部
61,63 重み係数最適化部
611 受信SP信号抽出部
612 送信SP信号生成部
613 合成SP信号抽出部
614,632 誤差算出部
615,633 重み係数制御部
62,64 フィルタ処理部
621,641 第1逆数算出部
622 補間LPF部
623,643 第2逆数算出部
63 重み係数最適化部
631 参照信号生成部
6311 逆数補間部
6312 参照アレー合成部
6313 シンボル判定部
6314 変調誤差比算出部
6315 最大値検出部
6316 選択部
642 LPF部
3 中継装置
70 IFFT部
80 GI付加部
90 送信変換部
100 パワーアンプ
110 送信フィルタ
120 送信アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアレー素子で構成される受信アンテナによってOFDM信号を受信するOFDM信号合成用受信装置であって、
受信アンテナによって受信したOFDM信号を周波数領域の受信キャリアシンボルに変換するFFT部と、
OFDM信号を構成するサブキャリアごとに、前記受信キャリアシンボルを第1重み係数により重み付け合成してアレー合成信号を生成するアレー合成部と、
送信シンボルを推定した参照信号を生成し、該参照信号と前記アレー合成信号との誤差が最小となるように第2重み係数を生成する重み係数最適化部と、
前記第2重み係数の逆数に対してフィルタ処理した後、該フィルタ処理した第2重み係数の逆数の再度逆数を前記第1重み係数として生成するフィルタ処理部と、
を備えることを特徴とするOFDM信号合成用受信装置。
【請求項2】
前記重み係数最適化部は、
前記受信キャリアシンボルから、所定のサブキャリア番号のサブキャリアによって伝送される所定のシンボル番号のSP信号を受信SP信号として抽出する受信SP信号抽出部と、
前記アレー合成信号から、アレー合成後のSP信号を抽出する合成SP信号抽出部と、
既知のSP信号の真値を前記参照信号として生成する送信SP信号生成部と、
前記参照信号から前記アレー合成後のSP信号を減じた誤差信号を算出する誤差算出部と、
前記受信SP信号を用いて前記誤差信号が最小となるように前記SP信号が伝送されるサブキャリアに対する前記第2重み係数を算出する重み係数制御部とを備え、
前記フィルタ処理部は、
前記第2重み係数の逆数を算出する第1逆数算出部と、
前記第2重み係数の逆数を内挿補間し、かつ、フィルタ処理した補正逆数重み係数を生成する補間LPF部と、
前記補正逆数重み係数の逆数を前記第1重み係数として算出する第2逆数算出部とを備える
ことを特徴とする、請求項1に記載のOFDM信号合成用受信装置。
【請求項3】
前記重み係数最適化部は、
前記受信キャリアシンボルから送信シンボルを推定して前記参照信号を生成する参照信号生成部と、
前記参照信号から前記アレー合成信号を減じた誤差信号を算出する誤差算出部と、
前記受信キャリアシンボルを用いて前記誤差信号が最小となるように前記サブキャリアに対する前記第2重み係数を算出する重み係数制御部とを備え、
前記フィルタ処理部は、
前記第2重み係数の逆数を算出する第1逆数算出部と、
前記第2重み係数の逆数をフィルタ処理した補正逆数重み係数を生成するLPF部と、
前記補正逆数重み係数の逆数を前記第1重み係数として算出する第2逆数算出部とを備える
ことを特徴とする、請求項1に記載のOFDM信号合成用受信装置。
【請求項4】
前記参照信号生成部は、
前記受信キャリアシンボルを、処理対象となるサブキャリアにおける前記第1重み係数を用いて重み付け合成を行い、第1参照アレー合成信号を生成する第1参照アレー合成部と、
処理対象となるサブキャリアに隣接するサブキャリアにおける前記第1重み係数を逆数補間した補間重み係数を生成する逆数補間部と、
前記受信キャリアシンボルを、前記補間重み係数を用いて重み付け合成を行い、第2参照アレー合成信号を生成する第2参照アレー合成部と、
前記第1参照アレー合成信号及び前記第2参照アレー合成信号をそれぞれシンボル判定したシンボル判定信号を生成するシンボル判定部と、
前記各シンボル判定信号の変調誤差比を算出する変調誤差比算出部と、
前記各変調誤差比のうち大きいほうの変調誤差比を特定する指示信号を生成する最大値検出部と、
前記各シンボル判定信号のうち、前記指示信号が示す変調誤差比が大きい値であるシンボル判定信号を選択し、前記参照信号とする選択部と、
を備えることを特徴とする、請求項3に記載のOFDM信号合成用受信装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のOFDM信号合成用受信装置を備えることを特徴とする中継装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−188221(P2011−188221A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51128(P2010−51128)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】