説明

OHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置とその処理法並びにこれを用いた液体浄化装置

【課題】外部の装置を必要とすることなく被処理水中に直接オゾンおよびOHラジカルを高効率で生成できることにより除去が困難な物質でも確実に分解でき、被処理水を処理する条件に応じてオゾンとOHラジカルの生成比率を調整、制御することで、脱臭、脱色、殺菌などの目的に応じた処理を施すことができるOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置とその処理法並びにこれを用いた液体浄化装置を提供する。
【解決手段】通電のみの操作によって被処理水中にオゾンおよびOHラジカルを生成し、その生成比率を電流値或は電圧によって任意に調整可能としたOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水中に、直接、オゾン、およびOHラジカルを生成する電気化学的促進酸化処理装置とその処理法並びにこれを用いた液体浄化装置に関し、より具体的には、通電のみの簡単な操作によってオゾンを生成し、さらにそのオゾンをオゾン生成の対極(すなわち陰極)で高効率で還元することによって、オゾンおよびオゾンよりも強い酸化力を持つOHラジカルを生成する促進酸化処理装置と処理法並びにこれを用いた液体浄化装置に関し、特に、用排水の高度処理、無害化、再生利用、循環利用技術として、生活用排水、環境用水、農業用排水、産業用排水、水産用排水などの水処理用の液体浄化装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、用排水の高度処理などを目的とする場合、オゾンやOHラジカルにより水処理することが有効であることが知られ、この場合、被処理水中に直接OHラジカル(ヒドロキシルラジカル:OH・)を生成する方法の一つとして、オゾン存在下における電気分解法が知られている。この方法は、オゾナイザー等を用いて外部で生成したオゾンを被処理水中に高濃度に溶解させ、同時に浸漬した電極に通電することによって、難分解性物質等の処理性能を向上させようとしたものである(例えば、非特許文献1、2参照)。この理由について、Amadelli et al.らは、非特許文献3において、以下に記す(式1)より、溶存酸素の陰極還元によって生成されるOHイオンによりpHが局所的に上昇し、その結果、(式2)、(式3)によりOH・が生成されると考察している。ここで、Oは、オゾニドイオンである。
+2HO+4e → 4OH (式1)
+OH → O+OH・ (式2)
+HO → OH・+OH+O (式3)
一方、Kishimotoらは、非特許文献4において、以下の(式4)、(式5)に示すように、陰極においてオゾンが直接オゾニドイオン(O3−)に還元され、OHラジカルが生成されるメカニズムを明らかにした。
+e → O (式4)
+HO → OH・+OH+O (式5)
【0003】
この場合、このような促進酸化処理に関わる技術において、O処理にH添加やUV照射などを併用することで、酸化能力の高いOHラジカルを生成させるプロセスより構成されている(例えば、非特許文献5参照)。その際、オゾン、H等は基本的に外部で生成されて被処理水中に添加される場合が通常である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「オゾン酸化法と電解法の応用によるエチレングリコールの分解」、高橋信行著、日本化学会誌(4)、1987年、p.743-751
【非特許文献2】J.Weiss,Trans.Far.Soc.,1935,p61,702
【非特許文献3】Amadelli,R.,Battisti,A.D.,Girenko,D.V.,Kovalyov,S.V.,Velichenko,A.B.,Electrochemical oxidation of trans-3,4-dihydroxycinnamic asid at PbO2 electrodes,direct electrolysis and ozone mediated reactions compared,Electrochimica Acta 46,2000,p.341-347
【非特許文献4】Kishimoto, N.,Nakagawa,T.,Asano,M.,Abe,M.,Yamada,M.,and Ono,Y,Ozonation combined with electrolysis of 1,4-dioxane using a two omparment electrolytric flow cell with solid electrolyte,Water Research 42,2008,p.379-385
【非特許文献5】「環境ホルモンの無害化と暴露量削減に関する研究開発」、榊原豊著、平成15・16年度国土交通省建設技術研究開発助成制度研究成果報告書、2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1乃至4におけるOHラジカルの生成法では、より酸化能力の高いOHラジカルを生成させるためには、オゾン処理、H添加、UV照射などを外部の装置等を用いて実施する必要が生じる。これらの処理を特許文献5において外部でおこなった場合には、そのプロセス構造や操作方法が複雑になり、特に、被処理水の水質や水量などが大きく変動する場合には、より対応が難しくなり、例えば、UV照射によりOHラジカルを生成する場合には、被処理水の濁度に影響を受けるため十分な処理を実施できなくなることがある。また、複数の装置を用いて水処理をおこなった場合、エネルギー消費量が一般的な水処理法に比べて大きくなり、エネルギー消費量が数十倍以上になることもある。
【0006】
しかも、オゾン処理は、脱臭、脱色、殺菌などを必要とする多くの水処理現場で用いられ、このとき、種々の用排水あるいは地表水、地下水等に存在する水などの被処理水の水質成分は、その場所や時間などによって異なる場合が多い。そのため、水処理をおこなう場合には、被処理水の水質成分を考慮しつつ、脱臭、脱色、殺菌などの目的に応じた処理が必要になることもある。しかも、水処理には、この被処理水が難分解性の物質を多く含むことによりOHラジカルを主に必要とする処理があったり、脱色、脱臭のみをおこなうためにオゾンのみを必要とする処理などがあり、或は、双方の処理を必要する場合もある。何れの場合にも前記の各種条件を考慮しながら水処理することが重要になっている。また、被処理水は、水質変動や流量変動によって、その比率や必要量が時間的に変動する場合もあるため、これを考慮する必要もある。
上述した理由により、高度水処理や高度下排水処理、或は高度用水処理等の水処理において、オゾンおよびOHラジカルの生成量を自由に設定でき、かつ、調整、制御できる水処理装置とその処理法の開発が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記した実情に鑑み、鋭意検討の結果開発に至ったものであり、その目的とするところは、外部の装置を必要とすることなく被処理水中に直接オゾンおよびOHラジカルを高効率で生成できることにより除去が困難な物質でも確実に分解でき、被処理水を処理する条件に応じてオゾンとOHラジカルの生成比率を調整、制御することで、脱臭、脱色、殺菌などの目的に応じた水処理を施すことができるOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置とその処理法並びにこれを用いた液体浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、通電のみの操作によって被処理水中にオゾンおよびOHラジカルを生成し、その生成比率を電流値或は電圧によって任意に調整可能としたOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は、陽極としてSnOあるいはPbO電極、Pt電極、Au電極、Pd電極、RuO電極、グラッシーカーボン電極などのオゾン生成電極を、一方、陰極としてTi、Ti/Pt、鉄、ステンレス、炭素などの導電性電極をそれぞれ装置内に浸漬すると共に、それぞれの電極面積が大きく異なるようにしたOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置である。
【0010】
請求項3に係る発明は、陽極あるいは陰極は、粒状、ネット状、平板、ロール状、フェルト状等の形状を有し、それぞれが単極、複極、多重電極として安定化電源に結線され、電極電位、電流あるいは電流密度が制御可能なOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置である。
【0011】
請求項4に係る発明は、陽極あるいは陰極が浸漬されている装置内で任意に処理水を排水することを可能としたOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置である。
【0012】
請求項5に係る発明は、オゾンを外部で生成させて被処理水中に溶解させるのではなく、直接、被処理水中に電解生成させ、同時に高効率で、かつ任意の速度で一部のオゾンをOHラジカルに転換するようにしたOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置である。
【0013】
請求項6に係る発明は、通電のみの操作によって被処理水中にオゾンおよびOHラジカルを生成し、その生成比率を電流値によって任意に調整してオゾンおよびOHラジカルを生成するようにしたOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理法である。
【0014】
請求項7に係る発明は、OHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置又は処理法を用いた液体浄化装置である。
【0015】
請求項8に係る発明は、オゾン水を外部又は内部別系統のオゾナイザーで生成し、そのオゾン水に対してOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置又は処理法を用いて促進酸化を発生させた液体浄化装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によると、通電のみの操作により、外部の装置を必要とすることなく被処理水中に直接オゾンおよびOHラジカルを高効率で生成できることにより、通常の水処理プロセスでは除去が困難である難分解性物質や有害物質、灰色物質、色素成分、異臭味成分、その他の水処理や水循環における障害の原因となる物質等を確実に分解できる。この場合、処理する条件、例えば、その利用目的や時間変動、必要とされる場所や遠隔地などに応じて、オゾンとOHラジカルの生成比率を、電流あるいは電圧の制御、又は、被処理水と電極との接触の程度等を調整、制御することにより、このオゾンとOHラジカルを任意の濃度あるいは速度で供給して、脱臭、脱色、殺菌などの目的に応じた処理を実施可能になる。これにより、各種の場所で様々な種類の水処理を実施でき、この水処理を高度の循環利用にも適用できる。しかも、被処理水の濁度などの条件に悪影響を受けにくく、高い能率により被処理水中にオゾンやOHラジカルを生成できる。
【0017】
請求項2に係る発明によると、SnOあるいはPbO電極、Pt電極、Au電極、Pd電極、RuO電極、グラッシーカーボン電極などのオゾン生成電極を陽極とすることでこの陽極によりオゾン生成能力、Ti、Ti/Pt、鉄、ステンレス、炭素などの電極を陰極とすることでこの陰極によりOHラジカル生成能力を発揮させることができ、このようにオゾン生成電極である陽極とOHラジカル生成電極である陰極とを組み合わせることにより、被処理水からOHラジカルを生成することが可能になり、このOHラジカルとオゾンとによる相乗効果による水処理が可能となる。
【0018】
請求項3に係る発明によると、陽極あるいは陰極として粒状電極やメッシュ状電極等の面積拡張電極を用いることで電極面積を拡大してオゾンの移動速度を向上させることができ、それぞれを単極、複極、多重電極として安定化電源として結線できる。この場合、特に、作用電極を多重に分割してそれぞれの電極あるいは電極部分の電流あるいは電圧を制御することによって、被処理水の電気伝導率には影響を受け難くしながらオゾンからOHラジカルを効率よく生成することができ、電解質濃度が低い地表水、一部の工業用洗浄水、水道水、飲料水などでは対極(陽極)に近接していない部分でも反応を進行させることが可能になる。
【0019】
請求項4に係る発明によると、装置内で任意に処理水を排水することが可能であることにより、オゾンとOHラジカルの生成比率を任意に調整することができる。
【0020】
請求項5に係る発明によると、外部装置を必要とすることなくオゾンを被処理水に直接生成し、このオゾンを利用して所望の割合でOHラジカルを生成できるため、極めて簡単な処理操作によってコンパクトな処理装置によって水処理できる。
【0021】
請求項6に係る発明によると、通電のみの操作により被処理水中に直接オゾンおよびOHラジカルを高効率で生成でき、簡単な処理操作によって通常の水処理プロセスでは除去が困難である難分解性物質や有害物質、灰色物質、色素成分、異臭味成分、その他の水処理や水循環における障害の原因となる物質等を確実に分解できる。この場合、処理する条件、例えば、その利用目的や時間変動、必要とされる場所や遠隔地などに応じて、オゾンとOHラジカルの生成比率を、電流あるいは電圧の制御、又は、被処理水と電極との接触の程度等を調整、制御することにより、このオゾンとOHラジカルで脱臭、脱色、殺菌などの目的に応じた処理を施すことができる。これにより、各種の場所で様々な種類の水処理を実施でき、この水処理を高度の循環利用にも適用できる。
【0022】
請求項7に係る発明によると、簡単な構成によって効果的にオゾンとOHラジカルを任意の濃度あるいは速度で供給して被処理水を殺菌・除菌できる液体浄化装置を提供することが可能になり、この液体浄化装置を、例えば、用排水の高度処理、無害化、再生利用、循環利用技術として、生活用排水、環境用水、農業用排水、産業用排水、水産用排水などの処理に適用可能であり、また、温泉水や健康施設などの循環する風呂の湯や、プール等の設備などの除菌・浄化を必要とする様々な施設にも利用できる。
【0023】
請求項8に係る発明によると、オゾン水を外部又は内部別系統のオゾナイザーで生成し、これに促進酸化を発生させることによって、オゾン水に促進効果を発生させるためのその他の手段であるUV照射の場合のように、処理水の濁りや着色がある際に極端に透過率が落ちて促進酸化できなかったり、γ線を照射する場合のように一般的でなく危険性が高くなったり、Hの添加、光触媒、高アルカリの添加のように実用性が低い等の問題がなく、オゾナイザーによる電気分解によって外部からの電流値、電圧値の調整が容易になり、濁りや着色にも影響を受けにくくなって、容易にかつ効率的に促進酸化効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明におけるOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置の一例を示した概略模式図である。
【図2】OHラジカル生成実験に用いた装置を示した概略図である。
【図3】OHラジカル/オゾン生成実験に用いた装置を示した概略図である。
【図4】OHラジカル生成実験におけるp−クロロ安息香酸及び溶存オゾンの濃度変化を示したグラフである。
【図5】OHラジカル生成実験における電流値とOHラジカル濃度の関係を示したグラフである。
【図6】OHラジカル/オゾン生成実験におけるp−クロロ安息香酸の濃度変化を示したグラフである。
【図7】OHラジカル/オゾン生成実験における溶存オゾンの濃度変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明におけるOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置とその処理法並びにこれを用いた液体浄化装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0026】
図1においては、本発明におけるOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置の一例を示している。電気化学的促進酸化処理装置本体(以下、装置本体という)1は、生成槽2、電極3、電源装置4を有し、生成槽2内には電極3が配設され、この電極3は電源装置4に繋がっている。装置本体1における生成槽1には被処理水Wが流れ、この被処理水Wは、電源装置4で印加された電極3を介して通電のみの操作によりオゾンおよびOHラジカルが生成される。装置本体1は、オゾン、OHラジカルの生成比率を電源装置4からの電流値或は電圧によって任意に調整可能となっており、この装置本体1を用いた処理法により、OHラジカルおよびオゾンを任意に調整、制御しながらこれらを生成することが可能になっている。
【0027】
生成槽2は、オゾン生成槽7とOHラジカル生成槽8とからなり、オゾン生成槽7が上流側、OHラジカル生成槽8が下流側に配設されている。そして、オゾン生成槽7内には陽極5、OHラジカル生成槽8内には陰極6が配置されている。生成槽2を形成する材料としては、オゾン生成槽7ではアクリル樹脂とし、OHラジカル生成槽8ではオゾンよりも強い酸化力を持つOHラジカル用としてフッ素樹脂、ガラス、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)のうちの何れかとすることが望ましい。
【0028】
電極3は、オゾン生成電極である陽極5とOHラジカル生成電極である陰極6とを有している。これらは、生成槽2内にそれぞれ浸漬され、直流電圧が印加されたときには、先ず、被処理水Wがオゾン生成電極5に接触し、続いて、OHラジカル生成電極6に接触し、この陽極5で生成したオゾンが高効率で陰極6により還元されるようになっている。これを達成するために、電極3の面積および形状を、大きく異なるものに設定していると共に、陰極6を多重化し、電極値あるいは電圧の調整と同時に陽極5あるいは陰極6と被処理水Wとの接触率を適宜変化させることによって、オゾン生成とオゾン還元/OHラジカル生成速度を広範囲で制御可能になっている。これにより、被処理水Wへのオゾン及びOHラジカルの供給速度、又は装置本体1内あるいは被処理水W中のオゾン及びOHラジカルの各濃度並びにその比率を制御でき、このようにオゾン生成とOHラジカル生成とを装置本体1内の電極3への通電のみでおこなうことにより、一般的な促進酸化処理技術よりも極めて簡単な操作が可能になっている。
【0029】
電極3については、物質位相および/又は電気化学反応を利用するため、平板を平行に配置したような電極系とは異なる電極系からなっており、陽極5の材料としてはオゾン生成能力を有するSnOあるいはPbO電極、Pt電極、Au電極、Pd電極、RuO電極、グラッシーカーボン電極などのオゾン生成電極を、一方、陰極6の材料としてはオゾンからOHラジカルを生成可能なTi、Ti/Pt、鉄、ステンレス、炭素などの導電性電極からなっている。これらの電極5、6は、前述したように生成槽2内にそれぞれ浸漬されると共に、それぞれの電極面積が大きく異なるように設けられている。
これらの電極5、6に対して、上記したように、被処理水Wは、先ずオゾン生成電極5に接触し、続いてOHラジカル生成電極6に接触し、処理後の水は、OHラジカル生成電極6を通過後あるいは通過途中で排出水として装置本体1より流出される。
【0030】
ここで、電極3において、オゾン生成槽7における陽極5では、以下の反応によりオゾンが生成される。
3HO → O+6H+6e
一方、OHラジカル生成槽8における陰極6では、以下の反応により上式で生成されたオゾンが還元され、被処理水W中でオゾニドイオンとなり、このオゾニドイオンがOHラジカルを生成する。
+e → O
+HO → ・OH+OH+O
この反応により、オゾン生成電極5とOHラジカル生成電極6とを組み合わせることにより、被処理水WからOHラジカルを生成することが可能になる。
【0031】
上記の陽極5、陰極6の電極形状は、粒状、ネット状、平板、ロール状、フェルト状、多孔質等などの比表面積が大きい形状を有し、これらのうちの何れか、あるいは任意の組み合わせにより形成される。
【0032】
更に、それぞれの電極5、6は、単極、複極、多重電極として安定化した電源装置4に結線され、電極電位、電流あるいは電流密度が制御可能になっている。
この場合、OHラジカル生成槽8では、低電気伝導率の被処理水Wに対しては前述した多重電極系とすることが好ましい。これにより、電極6から距離が離れたところでは作用電極への通電量が一定ではないという単極槽の欠点を改善し、作用電極の有効面積や電流効率を向上させることが可能になる。そして、被処理水Wと電極6との接触の調整との組合わせにより、確実なOHラジカルの生成が可能となる。
【0033】
上記の理由としては、オゾンの移動速度を向上させるためには電極面積を拡大させるようにすればよく、つまり、粒状電極等の面積拡張電極を用いることが重要であるからである。被処理水Wの電気伝導率が大きい場合にはほとんどの電極面が作用しやすいが、電解質濃度の低い地表水、一部の工業用洗浄水、水道水、飲料水などでは対極(陽極)5に近接している部分のみでしか反応が進行せずに、効率良くOHラジカルを生成することができない。このような場合には、作用電極を多重に分割して、それぞれの電極6あるいは電極部分の電流あるいは電圧を制御することによって、オゾンとの接触効率を上げてOHラジカル生成効率を向上させて、被処理水Wの電気伝導率には影響を受けずにオゾンからOHラジカルを効率よく生成することができる。
【0034】
電極有効面積の増加は、電極面の電流密度及び陰極/陽極間の電位勾配を減少させる。つまり、OHラジカルへの転換過程を粒状電極やメッシュ状電極等の面積拡張電極の多重化により高効率化させ、同時に電圧/電流制御あるいは電極面と被処理水Wとの接触率の設定、または両者の併用により、被処理水WへのOHラジカル及びオゾンの添加量並びに添加比率(あるいは両者の濃度と濃度比)を制御することが可能となる。この場合、装置本体1内では、被処理水Wと電極面とが接触するように適度の攪拌をおこなうことが望ましく、陽極5および陰極6から生成されるガスによる攪拌効果も期待できる。
【0035】
上記した構成により、前記した(式4)に表した被処理水W中のオゾンの電極3表面への移動速度の増加、又は電流値あるいは電極電位を増加させることによって、陽極5で生成されたオゾンから前記の(式3)あるいは(式5)の状態によりオゾニドイオンを効率良く発生させることができ、被処理水W中あるいは装置本体1内の生成オゾンからOHラジカルを効率よく生成可能となる。その際、双方が可能になる条件でのみOHラジカルを短時間で大量に生成可能になっている。
【0036】
また、陽極5あるいは陰極6が浸漬されている装置本体1では、図1に示すように、任意に被処理水Wを排水する(引き抜く)ことが可能になっており、オゾン、OHラジカルの生成量や生成比率を調整しながら、このオゾンとOHラジカルとを被処理水Wに所定割合で含有させることによって水処理を実施することが可能になっている。
【0037】
その際、オゾンを外部で生成させて被処理水W中に溶解させるのではなく、直接、この被処理水W中に電解生成させ、同時に高効率で、かつ任意の速度で一部のオゾンをOHラジカルに転換するようになっている。
【0038】
電源装置4は、例えば、電極3に流すことが可能な直流電流の電流値が数mAから数百Aの範囲で、電極3に印加することが可能な電圧が数Vから数10Vの範囲のものであることが望ましく、装置本体1の規模や被処理水Wの種類や量などによって適宜の仕様の電源装置4を使用できる。この電源装置4により、被処理水Wの入った生成槽2に浸漬させた電極3に直流電圧を印加し、被処理水Wに対して直流電流を流すことが可能になっている。
【0039】
装置本体1により処理される被処理水Wとしては、オゾンおよびOHラジカルが生成されることが望まれている、用排水、河川水、地下水、飲料水、海洋水等を例示できる。電気化学的促進酸化処理法の基本的操作は、上述したとおり通電のみの操作であればよいが、必要に応じて被処理水W中に電解質を添加するなどの追加の操作をおこなうようにしてもよい。
【0040】
被処理水Wの処理温度は、特に限定されることはなく、例えば、通常の用排水、河川水、地下水、海洋水等の一般的な温度である10〜30℃の温度範囲の被処理水を用いればよい。更に、被処理水Wが流動していれば、この温度範囲以下の温度であっても操作の容易性を維持できる。このように処理温度を制御する必要は無いが、必要に応じて所定の状態に設定することも可能である。しかし、実際の用排水、河川水、地下水、海洋水等の温度で処理すれば、温度調節に要するエネルギーコストを省くことができる。
【0041】
図示しないが、装置本体1によってオゾン処理した被処理水Wの溶存オゾン濃度を測定する場合、例えば、インジゴカルミン法が挙げられる。この方法は、オゾンが迅速にインジゴの酸性溶液を脱色し、脱色による吸度の減少割合がオゾンの濃度に比例することを応用したものである。
【0042】
一方、溶存OHラジカルの濃度を測定する場合には、OHラジカル捕捉試薬(捕捉剤)として、例えば、p−クロロ安息香酸を使用すればよい。これは、オゾン存在下での電気分解によりOHラジカルを生成してその生成量を分析する場合、OHラジカルによって容易に分解される一方、加水分解しない、装置への吸着が少ない、電極反応により分解されない、並びに、オゾンによって分解されないようなOHラジカル捕捉剤が必要であるが、p−クロロ安息香酸は、加水分解せず安定であり、吸着が少なく、オゾンとの反応も低く、二次反応速度定数が1L/mol/sなどの理由によって好適であるからである。また、電気分解による反応もほとんど起こらない。しかし、OHラジカルとは容易に反応し、その二次反応速度定数は、5×10L/mol/sである。
【0043】
なお、前述した装置本体1の生成槽2内の陽極5と陰極6との間に、図示しないあらたな電極を挿入して、陰極6あるいは陽極5の電極電位、電流密度あるいは電流値を制御してもよい。この場合、オゾンやOHラジカルの生成比率をより能率的に調整することが可能になるため、装置本体1の任意の位置からに処理水を排水することなく生成比率を変えることもできる。
陽極5と陰極6とを交互に配置すると共に、内部に固体高分子膜を設置するようにしてもよい。
更に、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【0044】
また、本発明のOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置を用いた液体浄化装置を設けることも可能である。この液体浄化装置は、例えば、用排水の高度処理、無害化、再生利用、循環利用技術として、生活用排水、環境用水、農業用排水、産業用排水、水産用排水などの処理に適用可能であり、また、温泉水や健康施設などの循環する風呂の湯や、プール等の設備などの除菌・浄化を必要とする様々な施設等に設置され、この除菌浄化装置に前述した装置本体1を組み込むことで、この液体浄化装置を介して流れる被処理水にオゾンやOHラジカルを供給して脱臭、脱色、殺菌等の処理を施すことが可能になる。
【0045】
更に、オゾン水を外部又は内部別系統のオゾナイザーで生成し、そのオゾン水に対してOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置又は処理法を用いて促進酸化を発生させた液体浄化装置を設けることも可能である。
【0046】
この場合、オゾン水に対して、促進酸化を発生させる方法としては、UVやγ線の照射、Hの添加、光触媒、高アルカリの添加等が考えられるが、UVを照射する場合は、処理水に濁りや着色がある場合、極端に透過率が落ちるため、促進酸化をすることが難しくなる。また、γ線の場合、一般的ではなく危険であり、Hの添加や高アルカリの添加も外部からの供給ではあるが実用性が低い等の問題がある。
しかし、オゾナイザーによる電気分解は、外部からの電流値、電圧値の調整が容易で、濁り、着色にも関係しないため、容易に促進酸化効果を得ることができる。
【実施例1】
【0047】
次に、本発明における電気化学的促進酸化処理装置を用いてOHラジカル生成実験を実施した実施例を述べる。図2においては、この実施例1におけるOHラジカル生成実験に用いた装置の外略図を示している。図における装置本体10は、OHラジカル生成槽11を有し、このOHラジカル生成槽11に加えて、循環ポンプ12、流量計13、オゾン溶解槽14、オゾナイザー15、チューブポンプ16、粒状活性炭17を有している。
【0048】
OHラジカル生成槽11は、水槽部18と電解部19とを有し、電解部19には、電極20、電源装置21が接続されて被処理水Wに電圧を印加可能であり、水槽部18には、被処理水Wを蓄積可能になっている。水槽部18と電解部19とには、循環ポンプ12により被処理水Wを循環させることが可能であり、被処理水Wは、流量計13により流量が測定されつつOHラジカル処理される。
【0049】
オゾン溶解槽14にはオゾナイザー15が接続され、オゾンが溶解した被処理水Wは、チューブポンプ16、16を介してこのオゾン溶解槽14内を循環する。これにより、オゾン溶解槽14内の被処理水Wに対して所定濃度のオゾンを供給してオゾン処理できる。粒状活性炭17は、適宜の容器に収納された状態でオゾン溶解槽14に接続され、オゾン溶解槽14内からの排気ガスは、この粒状活性炭17を通過して浄化されて外部に排気される。
【0050】
この装置本体10において、電解質としてNaSOを1000mg/L、OHラジカル捕捉剤としてp−クロロ安息香酸を4.5mg/Lを含有させた被処理水Wを、液容積1Lのオゾン溶解槽14からOHラジカル生成槽11に流量12mL/minで流通させる。OHラジカル生成槽11は、液容積250mLになっており、電極3である陽極22と陰極23とが配設されている。このうち、陰極23は、高さ5mm、直径3mmの円柱型の白金コーティングチタン(Pt/Ti)粒状電極として2つに多重化されて充填され、この陰極23の全面積は2100cmになっている。OHラジカル生成槽11には循環ポンプ12により流量330mL/hにより被処理水Wが循環し、両電極22、23は、完全混合状態になっている。また、陽極22及び陰極23のHRT(水理学的滞留時間)は、38minであり、OHラジカル生成槽11から流出した被処理水Wは、オゾン溶解槽14に戻り、再度オゾンを溶解した後に、OHラジカル生成槽11に戻るようになっている。
【0051】
実験時間は180minとし、0min、60min、100min、140min、180minにおけるOHラジカル生成槽11への流入サンプル、OHラジカル生成槽11からの流出サンプルを採取し、この被処理水W中の溶存オゾン濃度、p−クロロ安息香酸濃度を測定した。
【0052】
この場合、実験開始と同時にオゾナイザー15の図示しないスイッチをONにし、オゾン溶解槽14で被処理水Wに実験終了までオゾンを溶解させる。また、OHラジカル生成槽11に実験開始の1時間後から実験終了まで電源装置21により0.065Aの電流を通電する。オゾナイザー15のスイッチをONにすると、実験開始1時間後から実験終了まで、流入サンプルの溶存オゾン濃度は約4mg/Lとなり、OHラジカル生成槽11に安定した溶存オゾン濃度の被処理水Wを供給することができた。また、流出サンプルのp−クロロ安息香酸濃度は、電流値が0の条件である実験開始から実験開始1時間後までの間に、4.5mg/Lから、4.0mg/Lに減少した。この結果から、オゾンの自己分解によって一部OHラジカルが生成され、p−クロロ安息香酸を分解したと推察される。実験開始1時間後にOHラジカル生成槽11への通電を開始すると、p−クロロ安息香酸は流入、流出サンプルともに、それ以前よりも急勾配で減少し始めた。また、流出サンプルの溶存オゾン濃度は、通電によってほとんど消費されていることが分かる。
【0053】
これらの結果から、オゾン存在下で通電すると、オゾンの還元によりOHラジカルが生成され、その結果、p−クロロ安息香酸が分解されたと考えられる。また、電流値を0〜0.080Aに変化させて同様の実験をおこなうと、p−クロロ安息香酸の分解速度は、電流値の増加により大きくなる傾向が見られる。図4においては、このOHラジカル生成試験におけるp−クロロ安息香酸及び溶存オゾンの濃度変化(0.065A)を示したものである。図において、破線はOHラジカル生成槽11に通電を開始したポイントを表している。
【0054】
ここで、OHラジカル生成槽11内で生成されたOHラジカルによってp−クロロ安息香酸が分解され、このときのp−クロロ安息香酸の分解速度rが以下のように表されると仮定する。
r=k[OH・][Cp−CBA
上式の[OH・]は不明であるため、以下のように疑一次反応速度定数k´を定義する。
k´=k[OH・]
生成槽に流入、流出するp−クロロ安息香酸に対する物質収支式を立てると次式が得られる。
V・dC/dt=−k´VeC+CF−CF
【0055】
ここに、k´は疑一次反応速度定数(1/min)、kは二次反応速度定数(L/mol/min)、Vは装置内液有効容積(L)、VeはOHラジカル生成槽の有効陰極容積(L)、Fは流入量(L/min)、tは時間(min)、CはOHラジカル生成槽11内または流出p−クロロ安息香酸濃度(mol/L)、Cはその区間の平均流入p−クロロ安息香酸濃度(mol/L)とする。
【0056】
以上の式より、OHラジカル生成槽11内で生成されたOHラジカル濃度を求めることができる。このときのOHラジカル濃度と電流値との関係は、図5に示すようになる。この結果から、OHラジカル濃度と電流値にはほぼ線形(正比例)関係にあることが分かる。また、陰極23として、Pt/Ti粒状電極、グラッシーカーボン粒状電極を用いた場合にも、同一電流値の下では、OHラジカル濃度は、非特許文献4において、電極有効面積0.3mの平板電極を用いてオゾン存在下での電気分解処理で得た値よりも数百倍以上となった。これは、この実施例1において陰極23として粒状電極を用いているため、極めて高い効率でOHラジカルが生成されるためである。また、この結果から、陰極23に多重化した粒状電極等を用いて電流あるいは電圧を制御することにより、広い範囲でOHラジカル生成速度を任意に制御可能であることが確認された。
【実施例2】
【0057】
続いて、OHラジカル/オゾン生成実験の実施例を述べる。図3においては、この実施例2におけるOHラジカル/オゾン生成実験に用いた装置の概略図を示している。図における装置本体30は、OHラジカル生成槽31、オゾン生成槽32を有し、これらに加えて、循環ポンプ33、流量計34、チューブポンプ35を有している。
【0058】
OHラジカル生成槽31は、実施例1の場合と同様に、水槽部36、電解部37を有し、電解部37には、電極38、電源装置39が接続され、水槽部36には、被処理水Wを蓄積可能になっている。水槽部36と電解部37とには、循環ポンプ33と流量計34とが接続されている。
【0059】
オゾン生成槽32には、OHラジカル生成槽31とは別の電極40、電源装置41が接続され、被処理水Wに電圧を印加可能になっている。オゾン生成槽32は、チューブポンプ35を介してOHラジカル生成槽31につながっており、矢印に示したオゾン生成槽32の一次側より流れ込んだ被処理水Wは、このオゾン生成槽32によりオゾン処理された後に、電解部37に流入してOHラジカル処理されるようになっている。その後、この水は、電解部37から水槽部36に流出してこの水槽部36に蓄積され、不要な水は矢印に示すように排液として外部に排出される。
【0060】
この装置本体30において、電解質としてNaSO、NaNO、NaHPOを100mM、OHラジカル捕捉剤としてp−クロロ安息香酸を10mg/L含有する被処理水Wを、オゾン生成用の陽極部分から流入量1L/hで流通させる。オゾン生成槽32には電極38である陽極42と陰極43とが配設され、陽極42をSnOの平板とし、オゾン生成槽32の液容積を0.85L、HRTを51minとした。また、図示しないが、陽極42と陰極43との間には仕切り板を設け、この仕切り板には、直径5mmの穴を6×10個設けた。
【0061】
被処理水Wは、オゾン生成槽32を流通後、流入量1L/hでOHラジカル生成槽31に流入する。OHラジカル生成槽31は、液容積250mLであり、陽極44と陰極45とが配設されている。このうち陰極45は、直径1mmのグラッシーカーボン粒状電極が2つに多重化されて充填されており、この陰極45の全面積は4800cmである。オゾン生成槽32には、循環ポンプ33により流量290mL/hで被処理水が循環し、陽極44と陰極45とは、完全混合状態になっている。また、陽極44及び陰極45のHRTは、27minである。
【0062】
実験時間は420minとし、60minおきに、オゾン生成槽32への流入ポイント、OHラジカル生成槽31への流入ポイント、OHラジカル生成槽31からの流出ポイントで同時にサンプルを採り、この被処理水W中の溶存オゾン濃度、p−クロロ安息香酸濃度を測定した。
また、オゾン生成槽32には、実験開始1時間後から実験終了まで0.19Aの電流、OHラジカル生成槽31には実験開始3時間後から実験終了まで0.38Aの電流をそれぞれ通電する。
【0063】
オゾン生成槽32に通電すると、OHラジカル生成槽31への流入ポイントで被処理水W中の溶存オゾン濃度が急激に上昇し、約2mg/Lとなった。このオゾン生成槽32の出口から水を取り出せば、オゾンリッチな水を得ることができる。また、実験開始1時間後から実験開始3時間後まで、すなわちオゾン生成槽32のみに通電しているとき、被処理水W中のp−クロロ安息香酸濃度は、OHラジカル生成槽31への流入ポイントとOHラジカル生成槽31からの流出ポイントで大きな差はなかったことが確認された。
【0064】
続いて、OHラジカル生成槽31に通電すると、被処理水W中のp−クロロ安息香酸濃度は、OHラジカル生成槽31への流入ポイントと比較して、OHラジカル生成槽31からの流出ポイントで急激に減少した。図6、図7においては、このOHラジカル/オゾン生成実験におけるp−クロロ安息香酸の濃度変化、及び溶存オゾン濃度の変化を示している。これにより、オゾン生成槽32で生成されたオゾンが高効率でOHラジカルに変換され、被処理水W中のp−クロロ安息香酸を分解したことが確認された。このとき、陰極45の途中で被処理水Wを取り出すか、あるいは電流値を増加させれば、オゾンとOHラジカルを任意の比率で存在させることが可能であることが確認された。図6、図7において、破線はOHラジカル生成槽31に通電を開始したポイント、一点鎖線はオゾン生成槽32に通電を開始したポイントを示している。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、オゾン生成用電極(陽極)とオゾン還元用電極(陰極)を装置内に設置することによって、通電のみの簡単な操作で、被処理水中に直接オゾンおよびOHラジカルを高効率で生成せしめ、現状の水処理プロセスでは除去が困難とされている難分解性物質や有害物質、灰色物質、色素成分、異臭味成分、その他の水処理や水循環における障害の原因となる物質等を確実に分解できること、加えて、オゾンとOHラジカルの生成比率を、利用目的や時間変動等に合わせ、あるいは必要とされる場所や遠隔地で、電流あるいは電圧の制御、又は被処理水と電極との接触の程度を調整することによって、制御可能な水処理技術を提供することが可能となり、本発明は、特に、用排水の高度処理、無害化、再生利用、循環利用技術として、生活用排水、環境用水、農業用排水、産業用排水、水産用排水などの処理に好適である。
【符号の説明】
【0066】
1 装置本体
2 生成槽
3 電極
4 電源装置
5 陽極
6 陰極
7 オゾン生成槽
8 OHラジカル生成槽
W 被処理水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電のみの操作によって被処理水中にオゾンおよびOHラジカルを生成し、その生成比率を電流値或は電圧によって任意に調整可能としたことを特徴とするOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置。
【請求項2】
陽極としてSnOあるいはPbO電極、Pt電極、Au電極、Pd電極、RuO電極、グラッシーカーボン電極などのオゾン生成電極を、一方、陰極としてTi、Ti/Pt、鉄、ステンレス、炭素などの導電性電極をそれぞれ装置内に浸漬すると共に、それぞれの電極面積が大きく異なるようにした請求項1に記載のOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置。
【請求項3】
前記陽極あるいは陰極は、粒状、ネット状、平板、ロール状、フェルト状等の形状を有し、それぞれが単極、複極、多重電極として安定化電源に結線され、電極電位、電流あるいは電流密度が制御可能な請求項1又は2に記載のOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置。
【請求項4】
前記陽極あるいは陰極が浸漬されている装置内で任意に処理水を排水することを可能とした請求項1乃至3の何れか1項に記載のOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置。
【請求項5】
オゾンを外部で生成させて被処理水中に溶解させるのではなく、直接、被処理水中に電解生成させ、同時に高効率で、かつ任意の速度で一部のオゾンをOHラジカルに転換するようにした請求項1乃至4の何れか1項に記載のOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置。
【請求項6】
通電のみの操作によって被処理水中にオゾンおよびOHラジカルを生成し、その生成比率を電流値によって任意に調整してオゾンおよびOHラジカルを生成するようにしたことを特徴とするOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置又は処理法を用いた液体浄化装置。
【請求項8】
オゾン水を外部又は内部別系統のオゾナイザーで生成し、そのオゾン水に対してOHラジカルおよびオゾンを生成する電気化学的促進酸化処理装置又は処理法を用いて促進酸化を発生させた請求項7に記載の液体浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−24711(P2012−24711A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166690(P2010−166690)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(304017476)東洋バルヴ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】