説明

PC橋張出し架設用型枠支持装置

【課題】張出型枠移動作業車によって吊り持ち支持される下段作業台をなくすることによりPC橋張出し架設用型枠支持装置の軽量化を図る。
【解決手段】 吊り材25により新設張出し部21の底面型枠27を支持させる前後に配置した複数の底面型枠受け梁26a,26bを支持させ、該底面型枠受け梁に前記新設張出し施工部の底面型枠27を支持させ、前後配置の底面型枠受け梁の両端部間に新設張出し部施工用の側面足場を支持させる側面足場受材30を支持させ、側面足場受材30は、その一端側を前後配置の一方の底面型枠受け梁26aに水平方向の枢支軸を介して回動自在に支持させ、他端側を他方の底面型枠受け梁26bに対して上下に伸縮する高さ調整具を介して支持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PC橋を片持式にて延長方向に張出し架設するためのPC橋張出し架設用型枠支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、PC橋の張出し架設工法では、既設部分から延長させる新設張出し部を構築するための足場及び型枠を支持させるための張出型枠移動作業車が使用されている。この移動作業台車は図4、図5に示すように、既設部分1上に支持されて新設張出し部2の上方に向けて張出した主構3を有しており、張出し架設施工に際しては、主構3を既設部分1の先端部に移動させて固定し、主構3の上面に支持させた吊り用の横梁4より鋼棒からなる吊り材5を使用して鋼材から足場支持用の横梁6を吊り持ち支持させ、その横梁6上に、新設張出し施工部の下及びその両側部と前方部に及ぶ下段作業台7敷設している。この下段作業台7の上側に、吊り材5によって吊り持ちさせた底面型枠受け梁8を設置し、その上に底面型枠9を組み、下段作業台7の周縁部に側面足場10、前方足場11及び必要な型枠を組立てて場所打ちコンクリートを打設することにより新設張出部2を構築している(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−13328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の型枠支持装置では、新設張出し施工部の下面には底面型枠が組立てられ、下段作業台との間は、必要がない空間が形成されているに過ぎない場合が殆どであり、このために不要な重量増となって張出型枠移動作業車に対する負荷が大きくなり、張出型枠移動作業車自体の強度をこれに耐え得る強さにしなければならず、全体の重量増を来たすとともに、張出型枠移動作業車製造コストが大きくなるという問題があった。
【0004】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、張出型枠移動作業車によって吊り持ち支持される下段作業台をなくして無駄なスペースを削減することによってコストを削減し、且つ軽量化することによって張出型枠移動作業車に対する負荷を少なくして経済性を高めることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、橋梁の既設主桁部分上に支持され、該既設部分から張出し施工される新設張出し部の上方に延びる主構を有する張出型枠移動作業車を備え、該張出型枠移動作業車の前記主構より垂下した吊り材により、足場及び型枠を支持させてなるPC橋張出し架設用型枠支持装置において、
前記吊り材により新設張出し部の底面型枠を支持させる前後に配置した複数の底面型枠受け梁を支持させ、該底面型枠受け梁に前記新設張出し施工部の底面型枠を支持させ、
前記前後配置の底面型枠受け梁の両端部間に新設張出し部施工用の側面足場を支持させる側面足場受材を支持させ、
該側面足場受材は、その一端側を前記前後配置の一方の底面型枠受け梁に水平方向の枢支軸を介して回動自在に支持させ、他端側を他方の底面型枠受け梁に対して上下に伸縮する高さ調整具を介して支持させるようにしたことにある。
【0006】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記高さ調整具は、縦向きのネジ軸に対して螺嵌した昇降金具と、該昇降金具を回転させるハンドルとを備えた高さ調整ジャッキをもって構成させ、前記昇降金具の上面に突設した突起に前記側面足場受材の底面側を点支承させたことにある。
【0007】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の何れか1の構成に加え、前記張出型枠移動作業車の張り出し支持フレームの先端から垂下させた吊り材により、前記新設張出し施工部の先端部前方位置に前方足場を吊り下げ支持させたことにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、吊り材により新設張出し部の底面型枠を支持させる前後に配置した複数の底面型枠受け梁を支持させ、該底面型枠受け梁に前記新設張出し施工部の底面型枠を支持させ、前記前後配置の底面型枠受け梁の両端部間に新設張出し部施工用の側面足場を支持させる側面足場受材を支持させ、該側面足場受材は、その一端側を前記前後配置の一方の底面型枠受け梁に水平方向の枢支軸を介して回動自在に支持させ、他端側を他方の底面型枠受け梁に対して上下に伸縮する高さ調整具を介して支持させるようにして、該側面足場受材上に新設張出し部施工用の側面足場を支持させ、張出型枠移動作業車の前進移動時には、該側面足場に該新設張出し部の側面型枠を支持させることができるようにしたことにより、順次新設される橋体の断面の高さの変化に対し、作業足場を高さ調整することにより、安全且つ能率的に作業を行うことができ、また、底面型枠下の下段作業台が不要になり、使用材料が減少し製造コストが低減されるとともに、組立て解体の工期が短縮される。
【0009】
また、下段作業台を不要として使用材料を少なくしたことにより全体の重量が軽くなり、PC橋張り出し架設に必要なPC鋼材の量を少なくすることができ、工費が低減される。更に、張出型枠移動作業車が軽量化されることによって移動時の安全性が増す。
【0010】
更に、下段作業台がなくなることにより架設時の張出型枠移動作業車下方空間が広くなり、交差道路、航路等の建築限界を侵す割合が少なくなる等の効果がある。
【0011】
また、側面足場受材は、その一端側をピン支承とし、他端側を高さ調整具を介して支持されているため、これを支持している底面型枠受け梁に高低差があっても、水平に保つことが容易となり、側面足場組み立て及び支持構造の安全性が維持できる。
【0012】
また、本発明は、前記高さ調整具を、縦向きのネジ軸に対して螺嵌した昇降金具と、該昇降金具を回転させるハンドルとを備えた高さ調整ジャッキをもって構成させ、前記昇降金具の上面に突設した突起に前記側面足場受材の底面側を点支承させることにより、側面足場受材の底面と、高さ調整金具の頂面、即ち昇降金具の頂面に対する角度が変更されても、これに対応して支障なく支持される。
【0013】
更に本発明では、前記張出型枠移動作業車の張り出し支持フレームの先端から垂下させた吊り材により、前記新設張出し施工部の先端部前方位置に前方足場を吊り下げ支持させることにより、底面型枠下と両側部及び前方部に跨った足場がなくても、前方部の足場及び型枠を支障なく支持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明の実施の形態を図1〜図3に示した実施例に基づいて説明する。図1及び図2は本発明に係るPC橋張出し架設用型枠支持装置を簡略化して示したものであり、図中符号20はPC橋の既設主桁部分を示しており、21はその先端延長方向に構築される新設張出部、22は既設主桁部分20の上に前述した従来例と同様に設置した張出型枠移動作業車であり23は新設張出部21上に伸びる張出型枠移動作業車の主構である。この主構22上には、左右方向に向けた吊り用の横梁24a及び前方方向に伸びる延長梁24bが固定されている。
【0015】
張出型枠移動作業車22の主構23からは、その新設張出し部21の両側部に鋼棒からなる吊り材25が垂下されている。この吊り材25によって底面型枠を支持させる新設張出部幅方向に向けた底面型枠受け梁26a,26bが前後に間隔を隔てて吊り持ち支持されている。この両底面型枠受け梁26a,26bは、新設張出部21の底面の傾斜に合わせて互いにその高さを違えて設置され、その上に新設張出部21の底面型枠27を支持させている。
【0016】
この底面型枠受け梁26a,26bは鋼材から成り、その両端が新設張出部21の側部まで延長された長さのものが使用され、前後配置の両底面型枠受け梁の両端部間に側面足場受材30が支持されている。この側面足場受材30は図3に示すように、前後方向に向けた梁をもって構成されており、その前端側が前方側の底面型枠受け梁26aに対してその底面がピン支承金具31を介して枢支されており、後端側が後方側の底面型枠受け梁26bに対し、その下面が高さ調整具32を介して支持されている。
【0017】
尚、側面足場受材30は、本例に示したように梁材を用いる他、枠状に組立てた足場受枠であってもよく、盤状に形成した足場受板材であってもよい。
【0018】
ピン支承金具31は、図3に示すように側面足場受材30の下面に突設された前方側支持台30aに固定した支承具31aと、底面型枠受け梁26aの上面に固定した支承具31bとを水平方向に向けた枢支軸31cによって枢着しているものであり、枢支軸31cは側面足場受材30の長さ方向と直行する向き、即ち、新設張出部21の幅方向に向けられており、これによって側面足場受材30は後端側が枢支軸31cを中心にして上下に回動できるようになっている。
【0019】
高さ調整金具32は、ネジ軸32aを使用した高さ調整ジャッキをもって構成され、ネジ軸32aを後方側の底面型枠受け梁26bの上面に縦向きに固定し、その先端側外周に昇降金具32bが螺嵌され、昇降金具32bの外周に回転操作用ハンドル32cが突設され、このハンドル32cをもって昇降金具32bを回転させることによって、ジャッキ全体の長さが変更されるようになっている。
【0020】
高さ調整金具32を構成している昇降金具32bの上端面の中央には頂面が球面状をした支承突起33が突設され、これに側面足場受材30の後端側下面に突設した後方側支持台30bの支承版34が当接され、これによって側面足場受材30の後端側下面が点支承されている。
【0021】
このように側面足場受材30を、その一端側をピン支承させ、他端側を高さ調整具32を介して高さを調整できるようにしたことにより、これを支持している両底面型枠受け梁26a,26b間に、底面型枠27の角度に合わせた高低差があっても、側面足場受材30を水平に保つことができる。また、高さ調整具32側を点支承としていることにより、高さ調整金具32の頂面、即ち昇降金具32bの頂面に対する角度が変更されても、これに対応して両端側が支障なく支えられる。
【0022】
このようにして支持された側面足場受材30の上面に、新設張出部21の側面型枠(図示せず)を支持させるための側面足場35を設置する。また、張出型枠移動作業車の主構22上に備えた延長梁24bより吊り材36を垂下させ、この吊り材36に前方足場受梁37が吊り持ちされ、その上に前面型枠(図示せず)を支持させる前方足場38を組立てる。
【0023】
このように、本例におけるPC橋張出し架設用型枠支持装置では、底面型枠を支持させる前後の底面型枠受け梁26a,26bの両端に側面足場受材30を支持させ、その側面足場受材上に新設張出し部施工用の側面足場を支持させるとともに、張出型枠移動作業車の前進移動時には、該側面足場に該新設張出し部の側面型枠を支持させることができるようにしたことにより、底面型枠27下の下段作業台が不要になり、その分だけ軽量化がなされるとともに、使用材料も減少し、張出型枠移動作業車全体の製造コストが削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかるPC橋張出し架設用型枠支持装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】同上の正面図である。
【図3】図1に示す装置の側面足場受の取り付け上体を示す側面図である。
【図4】従来のPC橋張出し架設用型枠支持装置の概略構成を示す側面図である。
【図5】同上の正面図である。
【符号の説明】
【0025】
20 既設主桁
21 新設張出部
23 主構
24a 吊り用の横梁
24b 前方延長梁
25 吊り材
26a,26b 底面型枠受け梁
27 底面型枠
30 側面足場受材
30a 前方側支持台
30b 後方側支持台
31 ピン支承金具
31a 支承具
31b 支承具
31c 枢支軸
32 高さ調整具
32a ネジ軸
32b 昇降金具
32c ハンドル
33 支承突起
34 支承版
35 側面足場
36 吊り材
37 前方足場受梁
38 前方足場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の既設主桁部分上に支持され、該既設部分から張出し施工される新設張出し部の上方に延びる主構を有する張出型枠移動作業車を備え、該張出型枠移動作業車の前記主構より垂下した吊り材により、足場及び型枠を支持させてなるPC橋張出し架設用型枠支持装置において、
前記吊り材により新設張出し部の底面型枠を支持させる前後に配置した複数の底面型枠受け梁を支持させ、該底面型枠受け梁に前記新設張出し施工部の底面型枠を支持させ、
前記前後配置の底面型枠受け梁の両端部間に新設張出し部施工用の側面足場を支持させる側面足場受材を支持させ、
該側面足場受材は、その一端側を前記前後配置の一方の底面型枠受け梁に水平方向の枢支軸を介して回動自在に支持させ、他端側を他方の底面型枠受け梁に対して上下に伸縮する高さ調整具を介して支持させたことを特徴としてなるPC橋張出し架設用型枠支持装置。
【請求項2】
前記高さ調整具は、縦向きのネジ軸に対して螺嵌した昇降金具と、該昇降金具を回転させるハンドルとを備えた高さ調整ジャッキをもって構成させ、前記昇降金具の上面に突設した突起に前記側面足場受材の底面側を点支承させてなる請求項1に記載のPC橋張出し架設用型枠支持装置。
【請求項3】
前記張出型枠移動作業車の張り出し支持フレームの先端から垂下させた吊り材により、前記新設張出し施工部の先端部前方位置に前方足場を吊り下げ支持させてなる請求項1又は2のいずれかに記載のPC橋張出し架設用型枠支持装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−235687(P2009−235687A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80610(P2008−80610)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【Fターム(参考)】