説明

PC製品の成形用型枠およびその成形用型枠を用いたPC製品の製造方法およびそのPC製品を用いた柱の構築方法

【課題】 内型枠の成形面の幅長さを可変として、1つの内型枠で寸法の異なる多種類のPC製品に対応し、製品単価の可及的な低減化を図る。
【解決手段】 外型枠14の開口側を上方に向け、その内部に所定隙間δをもって内型枠12をセットし、これら内外型枠12,14間の隙間に高流動コンクリート15を打設して矩形型PC管Pを製造する。矩形型PC管Pは、これを半割りしてコ字型PC製品P1 ,P2 を形成する。内型枠12を、互いに分割されたコーナ部型枠16と平面部型枠18とを重合して各辺を伸縮自在に構成し、その重合量を可変調節して内型枠12の辺の長さを所望値に設定保持する可変機構19を設ける。内型枠12を外型枠14にセットした際に、その一対の対向辺12a,12bのコンクリート打設隙間δにそれぞれ仕切り板32,32を配置する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、柱の構築用として適したPC(プレキャストコンクリート)製品の成形用型枠およびその成形用型枠を用いたPC製品の製造方法およびそのPC製品を用いた柱の構築方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年では建造物の柱を構築するのにあたって、プレキャストされた中空筒状のコンクリート型枠体を柱のコア部外側を囲んで設置し、この型枠内にコンクリートを打設することにより、この型枠体と一体化させた柱を構築する工法があり、このときに用いられるプレキャストコンクリート(以下、PCと称する)柱型枠体としては、例えば特公平7−103635号(Int.Cl.E04C 3/34)等により提案されたものが知られている。
【0003】一方、鉄骨造の柱の場合には、これを火災時の火炎から熱的に保護し得るようにする必要があり、このためその耐火被覆として、ロックウール等を柱表面に吹き付けて層状に形成したり、ケイカル板等の耐火被覆板を用いて柱の周囲を囲繞して形成している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、係る従来のPC柱型枠体を用いた柱の構築方法では、当該PC柱型枠体は中空筒体として一体に形成されるものであるため、新設の鉄筋コンクリート柱には適用し得るものの、鉄骨コンクリート柱や既存柱の補強には適用できないという問題があった。
【0005】即ち、鉄筋コンクリート柱の場合ではコア部が柱主筋及び剪断補強筋で構成され、このコア部の上方から前記PC柱型枠体を被せることは可能であるが、コア部が鉄骨でなる場合には、当該鉄骨には梁との仕口部において、側方に水平に突出する接合用部材が一体的に設けられているのが一般的であるため、この梁との接合用部材が邪魔になって、コア部の鉄骨にPC柱型枠体を被せることができない。また、既存柱を補強する場合にあっても、PC柱型枠体を被せることができない。従って、鉄骨コンクリート柱を構築する場合や、既存柱を補強する場合にあっては、木枠を用いた従前の工法に頼らざるを得ず、当該木枠の取付け、取り外し作業は煩雑で手間がかかるため工期が長くなってしまうという課題がある。
【0006】一方、鉄骨造の柱に耐火被覆を施すにあたって、ロックウールを用いる場合には、ロックウールの吹き付け材料が飛散するためその作業環境は悪くなり、当該ロックウール吹き付け作業中は他の業種がその場所で作業を行うことができず、よって工期が長期化し、さらに飛散したロックウールのリサイクルが困難なため産業廃棄物の発生を生じ、美観も損なわれるという課題がある。また、耐火被覆板を用いた場合には、コストが嵩んでしまうという課題がある。
【0007】そこで、上記のように柱のコア部構成部材が鉄骨柱であったり、あるいは既存柱であったりして、矩形筒状のPC製品を使用することができない場合や、若しくは鉄骨造の柱の外周に耐火被覆層を形成するような場合において、PC製品を用いて施工しようとすれば、梁の構築時に採用されているように断面をコ字状に形成して、柱のコア部構成部材の両側から挟む様にして建て込むことが考えられる。
【0008】しかし、断面コ字状の内型枠と外型枠とを用いて製造する従前のコ字型PC製品の製造方法では、コンクリートを打設して行う一回の成形工程毎に1個づつの製品しか得られず、しかも型枠に打設したコンクリートはその養生を待って脱型されるため、1個のコ字型PC製品を製造するために要する時間は著しく長くなり、例えば1日に1個程度となって生産能率が著しく悪いものであった。
【0009】また、特公平4−53685号公報(Int.Cl.B28B 1/20)に開示されるように、遠心コンクリート成形機を用いて断面矩形状のPC製品として一旦成形し、これを後で半割りすることにより、一度の成形工程で2個のコ字型PC製品を製造することができる技術が本出願人によって提案されている。
【0010】ところが、この遠心成形によるコ字型PC製品の製造方法では、予め所定寸法に形成された成形用型枠を回転させつつ内部のコンクリートを締め固めて生産効率を高めようとするため、このときの遠心力に耐え得る強度をもたせて成形用型枠を作製しなければならず、当該型枠の作製コストが高くなるのが否めなかった。
【0011】また、遠心コンクリート成形機を用いる場合のみならず、断面コ字状の内外型枠を用いて行う従前の成型方法にあっても、1つの成形用型枠では若干の寸法調節を行うことができないため、単一寸法のコ字型PC製品のみしか製造することができず、よって寸法の異なる他のPC製品の成形用として転用することができない。従って、寸法の若干異なる相似形のPC製品を製造する場合にあっても、それぞれに個別の成形用型枠を作製する必要があり、延いては多数の成形用型枠を用意しなければならず、製造するPC製品の製品単価の高騰が余儀なくされてしまう。また、遠心コンクリート成形機には遠心成形用の回転装置が用いられるが、この回転装置は装置の関係から自ずと大きさに制約が生じ、このため、長さや断面が大きなコ字型PC製品を製造するには限界があり、また当該遠心成形では内周面が円形となるので長方形断面の製品を製造することが困難であった。
【0012】本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、1回の製造工程で一対の半割り状態のPC製品が得られるとともに、内型枠の成形面の幅長さを可変にしてその矩形断面の大きさを拡縮調整し得、型組と脱型とが容易に行え、寸法の異なる多種類のPC製品にも対応し得、製品単価の可及的な低減化が図れるPC製品の成形用型枠およびその成形用型枠を用いたPC製品の製造方法およびそのPC製品を用いた柱の構築方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するための本発明によるPC製品の成形用型枠およびその成形用型枠を用いたPC製品の製造方法およびそのPC製品を用いた柱の構築方法を達成するための手段を以下請求項毎に述べる。
【0014】■請求項1に示すPC製品の成形用型枠は、内型枠を外型枠内に所定隙間を設けて配置し、これら内外型枠間にコンクリートを打設してPC製品を成形する成形用型枠において、上記内型枠を、互いに分割された4つのコーナ部型枠と4つの平面部型枠とによって矩形断面を呈する筒状に形成し、且つ該コーナ部型枠と該平面部型枠とは重合させて上記矩形断面の大きさを拡縮自在に構成するとともに、その重合量を可変調節して内型枠の断面の大きさを所望値に設定保持する可変機構を設け、かつ、内型枠を外型枠にセットした状態で画成されるコンクリート打設隙間の一対の対向する部分に長手方向に沿ってそれぞれ配置される仕切り板を備えたことを特徴とする。
【0015】■請求項2に示す成形用型枠を用いたPC製品の製造方法は、互いに分割された4つのコーナ部型枠と4つの平面部型枠とを重合させて断面矩形の拡縮自在な筒状の内型枠を構成し、これらコーナ部型枠と平面部型枠との重合量を大きくして該内型枠を縮小させた状態でその外側の少なくとも両端部近傍にそれぞれ環状の拘束部材を配置し、この状態でコーナ部型枠と平面部型枠とを重合量が小さくなる方向に相対移動して、上記拘束部材の内側いっぱいに内型枠を拡大して固定し、外側に拘束部材が取り付けられたこの内型枠を外型枠内に所定隙間を設けて配置するとともに、これら内外型枠によって画成されるコンクリート打設隙間の一対の対向する部分にその長手方向に沿わせてそれぞれ仕切り板を配置した状態で、該コンクリート打設隙間にコンクリートを打設し、所定期間養生してコンクリートが所定の強度発現した後に、該内型枠を縮小して脱型するとともに、仕切り板を取り外し、この仕切り板を取り外した箇所で上記拘束部材を分離することを特徴とする。
【0016】■請求項3に示すPC製品を用いたの柱の構築方法は、互いに分割された4つのコーナ部型枠と4つの平面部型枠とを重合させて断面矩形の拡縮自在な筒状の内型枠を構成し、これらコーナ部型枠と平面部型枠との重合量を大きくして該内型枠を縮小させた状態でその外側の少なくとも両端部近傍にそれぞれ環状の拘束部材を配置し、この状態でコーナ部型枠と平面部型枠とを重合量が小さくなる方向に相対移動して、上記拘束部材の内側いっぱいに内型枠を拡大して固定し、外側に拘束部材が取り付けられたこの内型枠を外型枠内に所定隙間を設けて配置するとともに、これら内外型枠によって画成されるコンクリート打設隙間の一対の対向する部分にその長手方向に沿わせてそれぞれ仕切り板を配置した状態で、該コンクリート打設隙間にコンクリートを打設し、所定期間養生してコンクリートが所定の強度発現した後に、該内型枠を縮小して脱型するとともに、仕切り板を取り外し、この仕切り板を取り外した箇所で上記拘束部材を分離して一対のPC製品を形成し、これら一対のPC製品を柱のコア部構成部材の両側から挟むように建て込んで取り付け、該PC製品同士を接合することを特徴とする。
【0017】請求項4に示すPC製品を用いた柱の構築方法は、前記請求項3において、柱のコア部構成部材の両側から挟むように建て込んで取り付けた一対のPC製品を接合した後、該PC製品を型枠にして内部にコンクリートを充填することを特徴とする。
【0018】■請求項5に示すPC製品を用いた柱の構築方法は、前記請求項4において、一対のPC製品の接合を分離された拘束部材同士の再結合により行うことを特徴とする。
【0019】■請求項6に示すPC製品を用いた柱の構築方法は、前記請求項5において、拘束部材が内型枠の長手方向に沿って所定のピッチで多数配置された閉鎖型のフープ筋でなることを特徴とする。
【0020】■請求項7に示すPC製品を用いた柱の構築方法は、互いに分割された4つのコーナ部型枠と4つの平面部型枠とを重合させて断面矩形の拡縮自在な筒状の内型枠を構成し、これらコーナ部型枠と平面部型枠との重合量を大きくして該内型枠を縮小させた状態でその外側の少なくとも両端部近傍に環状の拘束部材を配置し、この状態でコーナ部型枠と平面部型枠とを重合量が小さくなる方向に相対移動して、上記拘束部材の内側いっぱいに内型枠を拡大して固定し、外側に拘束部材が取り付けられたこの内型枠を外型枠内に所定隙間を設けて配置するとともに、これら内外型枠によって画成されるコンクリート打設隙間の一対の対向する部分にその長手方向に沿わせてそれぞれ所定寸法を有する仕切り板を配置し、且つ該コンクリート打設隙間内には、該仕切板の配置部分で予め分離されている閉鎖型に結合可能なフープ筋を該内型枠の長手方向に沿わせて所定のピッチで多数配置しておき、該コンクリート打設隙間にコンクリートを打設して所定期間養生して後にコンクリートが所定の強度発現した後に、該内型枠を縮小して脱型するとともに、仕切り板を取り外し、この仕切り板を取り外した箇所で上記拘束部材を分離して一対のPC製品を形成し、これら一対のPC製品を柱のコア部構成部材の両側から挟むように建て込んで取り付け、該フープ筋の分離端同士を各々結合した後、該PC製品を型枠にして内部にコンクリートを充填することを特徴とする。
【0021】■請求項8に示すPC製品を用いた柱の構築方法は、前記請求項3〜7において、前記柱のコア部構成部材が鉄骨、あるいは鉄骨鉄筋、若しくは既存柱からなることを特徴とする。
【0022】以下、本発明の作用を請求項毎に述べる。
【0023】■請求項1のPC製品の成形用型枠にあっては、断面矩形の筒状に形成される内型枠が4つのコーナー部型枠と4つの平面部型枠とを重合されて、断面の大きさが拡縮可能に構成され、可変機構によってその重合量を可変調節して内型枠の矩形断面の大きさを所望値に設定保持できるので、この重合量を多くしたり少なくしたりすることにより、内型枠の矩形断面の大きさを簡単に拡縮変化させて設定することができる。つまり、上記重合量を多くすることにより内型枠の面の幅長を短くしてこの内型枠を縮小し、小型にすることができる一方、上記重合量を少なくすることにより内型枠の幅長を長くして内型枠を拡大し、大型とすることができ、多少の範囲であれば任意の大きさに拡縮して可変設定調節可能である。また、寸法が大きく異なるPC製品を作製したい場合でも、所望の大きさの平面部型枠を複数種容易しておけば、コーナー型枠を共通化させて対応することもできる。
【0024】ここで、内型枠と外型枠との間に成形されるPC製品は断面矩形の環状となるが、内型枠を外型枠にセットした際に、そのPC製品の一対の対向面を形成する部分のコンクリート打設隙間にそれぞれ長手方向に沿わせて配置する仕切り板を備えたので、これら仕切り板により断面矩形状となるPC製品が半割りされて2個のL字形若しくはコ字型PC製品を成形できる。
【0025】■請求項2の成形用型枠を用いたPC製品の製造方法にあっては、互いに分割された4つのコーナ部型枠と4つの平面部型枠とを重合させて断面矩形の拡縮自在な筒状の内型枠を構成して、これらコーナ部型枠と平面部型枠との重合量を大きくして縮小した状態でその外側の少なくとも両端部近傍にそれぞれ環状の拘束部材を配置し、この状態でコーナ部型枠と平面部型枠とを重合量が小さくなる方向に相対移動して、上記拘束部材の内側いっぱいに内型枠を拡大して固定する。従って、このように内型枠の外側が拘束部材で拘束されることにより、製造しようとするPC製品の大きさに合わせて内型枠の拡大量を簡単に調整することができる。ここで、拘束部材には鉄板、鉄筋、ワイヤロープなどが使用できる。
【0026】そして、外側に拘束部材が取り付けられた上記内型枠を外型枠内に所定隙間を設けて配置するとともに、内型枠と外型枠とで画成される断面矩形で筒状のコンクリート打設隙間における一対の対向する部分にそれぞれ長手方向に沿って仕切り板を配置した状態で、そのコンクリート打設隙間にコンクリートを打設し、所定期間養生してコンクリートが所定の強度発現した後に、コーナ部型枠と平面部型枠とをこれらの重合量が大きくなる方向に相対移動して内型枠を縮小させて脱型することにより、上記拘束部材が埋設された断面が矩形で環状のPC製品を得ることができ、また、内型枠はその大きさを簡単に変えられるので、重合量の可変設定範囲であれば1つの内型枠で大きさが多少異なるPC製品を製造できる。またさらに、平面部型枠として寸法の異なるものを用意すれば、コーナー部型枠を共通使用して寸法が大きく異なるPC製品の製造にも対応することが可能で、長方形断面のPC製品も製造できる。
【0027】そして、脱型した後、上記仕切り板を取り外し、この仕切り板を取り外した箇所で上記拘束筋を分離することにより、矩形で環状に成形されたPC製品は仕切り板の配置位置で略半割りすることができ、分割されたPC製品は2個のL字型若しくはコ字型PC製品として製造されるため、1つの型枠を用いた1度の成形工程で対をなす2個のPC製品が得られることになる。
【0028】■請求項3のPC製品を用いた柱の構築方法にあっては、前記2つに分割した一対のPC製品を用い、これらを柱のコア部構成部材の両側から挟むようにして囲んで取り付けて互いに接合することにより、柱の表面仕上げを能率良く施すことができ、更には、該PC製品を耐火被覆として機能させることができる。また、半割りされたコ字型PC製品には拘束部材が埋設されているため、当該PC製品を柱に取り付けた際に、両側から突き合わせたPC製品の拘束部材は対向して分離時の位置に配置されるため、この分離した拘束部材同士を容易に再度結合させて簡単に両PC製品の相互の形状維持が図れる。
【0029】■請求項4のPC製品を用いた柱の構築方法にあっては、上記請求項3において、さらに接合後のPC製品を型枠にして内部にコンクリートを充填するようにしたので、上記請求項3と同様に仕上げおよび耐火被覆を施すことができるのは勿論のこと、柱の強度を向上させることができる。
【0030】■請求項5のPC製品を用いた柱の構築方法にあっては、前記請求項4において、拘束部材同士を再結合させるので、当該拘束部材を剪断補強部材として機能させることができ、PC製品を構造部材としても機能させて柱強度の向上を図ることができ、現場でこの種の剪断補強筋などを配設する手間の可及的な省略化が図れる。
【0031】■請求項6のPC製品を用いた柱の構築方法にあっては、前記請求項5において拘束部材を内型枠の長手方向に沿って所定のピッチで多数配置された閉鎖型のフープ筋とするので、PC製品を構造部材として充分に機能させて柱強度の可及的な向上を図ることができるだけでなく、現場でこの種の剪断補強筋などを配設する手間を省略することができる。
【0032】■請求項7のPC製品を用いた柱の構築方法にあっては、前記請求項4のものにさらに加えて、さらにPC製品製造時にその内部に閉鎖型フープ筋を埋設して、当該当該フープ筋は仕切り板の位置で予め分離しておき、拘束部材を仕切り板を取り外した部位で分離することで一対のPC製品とし、これらを柱のコア部材の両側から挟むようにして囲んで取り付け、予め分離してあるフープ筋同士を互いに再結合することで一対のPC製品を一体的に接合し、この後当該PC製品を型枠にして内部にコンクリートを打設充填するので、請求項4と同様の作用効果が得られるのみならず、フープ筋によりPC製品を単なる打ち込み型枠としてだけでなく、構造部材として充分に機能させて柱の強度の可及的な向上を図ることができ、かつ一対のPC製品製造時にフープ筋を分離する手間を省略できる。
【0033】■請求項8のPC製品を用いた柱の構築方法にあっては、前記請求項3〜7において、柱のコア部構成部材を鉄骨、あるいは鉄骨鉄筋、若しくは既存柱とするので、鉄骨や鉄骨鉄筋の場合にあってはその耐火被覆の施工が簡易に且つ見栄え良く行え、またコンクリートを充填したり、さらにはPC製品の分離した拘束部材やフープ筋の分離端同士を結合させることで、強度的に優れた柱を短期に構築できる。また、既存柱の場合にあっては、耐震補強等のための強度向上を短期にかつ見栄えよく行える。
【0034】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明する。図1から図7は本発明のPC製品の成形用型枠およびその成形用型枠を用いたPC製品の製造方法の一実施形態を示し、図1は左右で切断位置を異ならせた型枠の断面図、図2は内型枠のコーナ部型枠を示し、(a)は片側端部の正面図、(b)は(a)中A−A線断面図、図3は内型枠の平面部型枠を示し、(a)は片側端部の平面図、(b)は(a)中B−B線断面図,(c)は(a)中C−C線断面図、図4は上下で型枠の大きさを異ならせた型枠の断面図、図5は内型枠のコーナ部分の拡大断面図、図6は内外型枠から脱型された矩形状のPC製品からコ字型PC製品を製造する工程を(a)から(c)によって示す説明図、図7R>7はコ字型PC製品を柱に被覆した状態を示す断面図である。
【0035】即ち、本実施形態のPC製品の成形用型枠10は、図1に示すように内型枠12と外型枠14とを備え、内型枠12は断面矩形の筒状に形成されるとともに、外型枠14は内方に所定隙間をもって該内型枠12を内包する断面コ字型に形成される。そして、上記外型枠14をその開口側を上方に向け、その内部に所定隙間δをもって内型枠12をセットし、これら内外型枠12,14間の隙間に高流動コンクリート15を打設して矩形型PC管Pが製造されるようになっている。該矩形型PC管Pは、後述するようにこれを半割りしてコ字型PC製品P1 ,P2 が形成される。
【0036】ここで、上記矩形型PC管Pを成形するための成形用型枠10の基本構成は、上記内型枠12を、互いに分割された4つのコーナ部型枠16と4つの平面部型枠18とにより矩形断面を呈する筒状に形成し、且つコーナ部型枠16と平面部型枠18とは重合させて上記矩形断面の大きさを拡縮自在に構成するとともに、その重合量を可変調節して内型枠12の矩形断面の大きさを所望値に設定保持する可変機構19を設けることにより構成する。
【0037】上記可変機構19としては、上記コーナ部を挟んで隣設される上記平面部型枠18,18間に跨って配置される長さ調整が可能で圧縮にも強い支保治具が用いられ、具体的には本実施形態ではターンバックル20を使用している。
【0038】上記コーナ部型枠16は、図2に示すように薄板状の鉄板16aをL字状に折曲して構成され、このL形のコーナ部型枠16の内側には適宜間隔をもって補強リブ23が固設されるとともに、このコーナ部型枠16の両端部にはガイド板22が固設される。上記ガイド板22の両端部には、図1に示したように上記平面部型枠18の端部を嵌合する切れ込み状の係合部22aが形成される。尚、同図は左側半分と右側半分との断面位置が異なるため、ガイド板22が左側上下に2箇所、ターンバックル20また補強リブ23が右側上下に2箇所設けられているが、これらガイド板22およびターンバックル20,補強リブ23は内型枠12の四隅にそれぞれ設けられることは言うまでもない。また、上記コーナ部型枠16および上記平面部型枠18は、成形しようとする矩形型PC管Pの長さに応じた長さに形成される。
【0039】一方、上記平面部型枠18は、図3に示すように端太パイプ24の片面に、薄板状の鉄または木製等の平板26が張り合わされることにより構成される。端太パイプ24は断面矩形状の角形パイプで、平行な2本の主骨部24a間に適宜間隔をもって補強部24bが結合されて全体的に梯子状に構成され、上記平板26に作用する打設コンクリートの圧力を受けて、この平板26が変形するのを防止するようになっている。そして、上記コーナ部型枠16の両側部分は、上記平面部型枠18の平板26の両側部の外側に摺動可能に密接重合される。また、上記平板26の外側面、つまりコンクリートの打設面に凹凸模様を形成しておくことにより、成形された矩形型PC管Pの内側にこれに沿った凹凸を付し、該矩形型PC管Pに後打ちされるコンクリートとの付着性が向上される。
【0040】そして、上記コーナ部型枠16の鉄板16a内面に上記平面部型枠18の平板26の外面が摺動自在に重合され、この重合量の可変調節により内型枠12の辺の長さが変化されて断面の大きさが拡縮される。従って、コーナ部型枠16部分は上記鉄板16aの厚さ分だけ隙間δが減少されるが、この鉄板16aは薄板状に形成されているため、矩形型PC管Pの肉厚変化に殆ど影響無く、略一定厚として成形することができる。
【0041】上記平面部型枠18は、幅の異なる大きさのものが複数種類用意され、この幅が異なる平面部型枠18を適宜に選択して交換することによっても、内型枠12の大きさが調整されるようになっている。つまり、幅の小さな平面部型枠18を用いた場合は図4中上半分の状態となり、幅の大きな平面部型枠18を用いた場合は同図中下半分の状態となる。また、このように平面部型枠18の幅変化で内型枠12の辺を大きく変化させることができ、そして、このように大きく変化させた状態で平面部型枠18とコーナ部型枠16との重合量を変化させることにより、各辺の長さの微調整を行うことができる。さらには、幅寸法の大小異なる2種の平面部型枠18を用いることにより、長方形断面とすることもできる。
【0042】上記ターンバックル20は、図5にも示すように上記コーナ部を挟んで隣設される平面部型枠18間に跨って配置され、このターンバックル20によって隣設される平面部型枠18間の距離を精度良く調整することができる。また、該ターンバックル20のねじ軸20aの先端部には、上記端太パイプ24の角部に係止されるようにY字状の取付け部20bが設けられている。
【0043】そして、かかる構成になる内型枠12を用いて矩形型PC管Pを製造するには、成形しようとする矩形型PC管Pの大きさに応じた平面部型枠18を用い、この平面部型枠18とコーナ部型枠16との重合量を大きくした状態、つまり、内型枠12の辺を短縮して断面の大きさを縮小させた状態で、その外側に環状の拘束部材たる拘束筋30を配置する。この状態でコーナ部型枠16と平面部型枠18とを重合量が小さくなる方向、つまり、内型枠12の辺を延長する方向に移動して、上記拘束筋30の内側いっぱいに内型枠12を拡大する。なお、上記拘束筋30は内型枠12の形状を保持できればよいので、成形するPC管Pの長手方向に沿って少なくとも両端部近傍に、また必要で有ればさらに中央部等にも設けて数カ所に配置すれば足りる。なお、拘束部材には上記鉄筋でなる拘束筋の他、鉄板、ワイヤロープなどを使用することもできる。
【0044】ここで、本実施形態では上記内型枠12を外型枠14にセットした際に、その一対の対向辺、本実施形態では上下方向の対向辺12a,12bの中央部のコンクリート打設隙間δにそれぞれ仕切り板32,32を配置する。これら仕切り板32,32は、内型枠12の長さ方向(図1中紙面直角方向)に連続して形成され、これら仕切り板32,32によって打設した高流度コンクリート15を左右部分で堰き止めるものとする。
【0045】そして、内型枠12の外側に拘束筋30を取り付けた状態で、この内型枠12を外型枠14内に所定隙間δを設けて配置する。次いで、これら内外型枠12,14間の隙間δに上方から上記高流動コンクリート15を、内型枠12の上方に所定厚さが形成されるように打設するとともに、所定期間養生し、この高流動コンクリートが所定の強度発現した後に、コーナ部型枠16と平面部型枠18とを重合量が大きくなる方向に相対移動し、縮小させて脱型する。
【0046】そして、内型枠12および外型枠14を脱型することにより図6(a)に示すように矩形型PC管Pが成形され、次に、同図(b)に示すように該矩形型PC管Pの対向辺12a,12bに配置した仕切り板32,32を取り外す。そして、同図(c)に示すようにこの仕切り板32,32を取り外した箇所で拘束筋30を分離して半割りすることにより、2個のコ字型PC製品P1 ,P2 を製造する。なお、図示例では仕切り板32,32を対向する辺の中央部に配しているが、中央部限らず対向する辺のいずれの部位に配しても良く、コーナー部付近に配すれば略L字型のPC製品が得られることになる。
【0047】そして、このようにして製造されたコ字型PC製品P1 ,P2 は、図7(a)に示すように鉄骨造の柱でコア部構成部材となる鉄骨柱40をその両側から挟むようにして建て込んで囲むことにより、当該鉄骨柱40の外周を覆う耐火被覆とすることができる。このとき、両コ字型PC製品P1 ,P2 は接続プレート42等を介してボルト44等で一体的に接合してその形状保持を図るようにする。
【0048】ここで、当該形状保持を行わせるにあたっては、上記分離した拘束筋30を利用することもできる。即ち、PC製品の製造時において拘束筋30の配設部位における仕切り板32の寸法を大きくしておき、製造された両コ字型PC製品P1,P2 を突き合わせたときに、図7(b)に示すように拘束筋30の端部30aが所定の長さに亘って露出するように切欠き部48を形成する。これにより当該切欠き部48部に露出する分離された拘束筋30の端部30a,30a同士を再結合して形状保持に利用することができる。この際、拘束筋30,30の両端部を重ねて溶接接合しても良いし、あるいは同図(c)または(d)に示すように、拘束筋30自体を結合手段50により結合することもできる。ここで、同図(c)に示した結合手段50は筒状のホルダー51に両側から拘束筋の端部30a,30aを挿通してラップさせ、その端部間に楔54を打ち込んで固定係止するよう構成したものである。また、同図(d)に示した結合手段50は拘束筋の両端部30a,30aをカプラー56で結合するようにしたものである。
【0049】また、本実施形態では上記鉄骨柱40として断面十字状の型鋼を用い、この鉄骨柱40の両側から上記コ字型PC製品P1 ,P2 を突き合わせて建て込み、切断された拘束筋30同士を機械的または溶接により接合して耐火被覆としているが、これらコ字型PC製品P1 ,P2 を型枠として用い、内部にはさらに適宜主筋を配筋する等してコンクリートを打設することにより、鉄骨鉄筋コンクリート柱40aとして構成してより強度のある柱を構築することができる。あるいは既存柱をコア部構成部材にして構築することにより、当該既存柱の耐震補強にも適用することができる。なお、その際にはコンクリートの打設圧力に抗するために周囲をコラムクランプ等で拘束するとともに、コ字型PC製品P1 ,P2 の接合部分にあく隙間を型板で塞いでおく必要があるが、従前の型板を用いて支保工で支える工法に比して、その作業性は格段に優れたものとなり、工期の短縮も可及的に図れるようになる。
【0050】このように、上記コ字型PC製品P1 ,P2 を柱40の型枠として用いた場合は、これら柱強度を大幅に増大できるとともに、柱40の表面を能率良く仕上げることができ、更には、該コ字型PC製品P1 ,P2 を耐火被覆として用いることができる。また、コ字型PC製品P1 ,P2 の拘束筋30を剪断補強筋として機能させて有効利用でき、現場でこの種の補強筋を配筋する手間の簡略化にも寄与することができる。
【0051】図8,図9は他の実施形態を示し、上記実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。即ち、この実施形態では図8(a)に示すように、矩形型PC管Pにはその製造時に拘束筋30の他にさらに閉鎖型の多数のフープ筋52をそのコンクリート打設隙間内に配置して埋設するとともに、これら拘束筋30とフープ筋52とは結合手段50によって各々結合分離自在となし、かつ仕切り板32,32を所定寸法tをもって形成し、そして、同図(b)に示すように該仕切り板32,32を取り外した箇所内の略中央部位で拘束筋30とフープ筋52とを各々分離して、半割りされた一対のコ字型PC製品P1,P2 の両方の端面から拘束筋30とフープ筋52の端部をそれぞれ突出させる。このとき拘束筋30とフープ筋52とのそれぞれの端部30a,52aの突出量は、上記仕切り板32,32の寸法tの略半分になる。
【0052】従って、この実施形態では図9に示すように鉄骨柱40の外周を囲んで一対のコ字型PC製品P1 ,P2 を配置すると、両コ字型PC製品P1 ,P2 から突出する拘束筋30とフープ筋52の端部30a,52aは、対向してほぼ分離時の状態となる。このため、結合手段50により容易にそれら分離した拘束筋30とフープ筋52とを再結合することができる。なお、フープ筋52は結合手段を設けずに環状等の閉鎖型に形成して分離時には切り離し、再結合時には必要な重ね継手長さをもって容易に再結合することができる。あるいは、フープ筋52は予め一対のコ字状に2分割形成して内型枠の外側面に嵌合固定させ、その対をなすそれぞれの端部同士をラップさせて仕切り板内にこれに係止させて配するようにしても良く、このようにすれば、重ね継手代を大きくとれる。そして、これらコ字型PC製品P1 ,P2 の内部に主筋54をさらに配するなどした後に、当該コ字型PC製品P1 ,P2 を型枠にして、内部にコンクリートを打設して柱を構築する。
【0053】従って、当該実施形態によれば両コ字型PC製品P1 ,P2 は埋設したフープ筋が一体的に再結合されているから剪断補強筋として十分に機能し、よってこれら両コ字型PC製品P1 ,P2 は強度負担可能な構造部材となり、柱の強度は著しく向上される。ここで、柱のコア部構成部材は図示した鉄骨柱40にかぎらず、既存柱とすることもできるのは勿論であり、特に既存柱にあっては耐震補強等を施すにあたって、強度の高い柱を短期にしかも見栄え良く構築することができる。
【0054】なお、上記各実施形態では拘束部材として鉄筋でなる拘束筋30を採用しているが、これに代えて鉄板やワイヤロープなどを用いることもできる。また、フープ筋52を環状に形成してあれば、当該フープ筋52に拘束筋の機能を発揮させることができるので、拘束筋は省略し得る。さらに、拘束筋30とフープ筋52との双方を設ける場合には、上記のようにフープ筋30を予め分離させておくことで一対のPC製品P1 ,P2 を製造する際に、当該フープ筋を分離する手間を省略することができる。
【0055】また、上記各実施形態では剪断補強筋となる拘束筋30及びフープ筋を配置して、これがコ字型PC製品内に埋設される場合を開示したが、これ以外に主筋を埋設することもでき、更には該主筋に代えてプレストレスが付加された緊張材を埋設してプレストレストコンクリートとして成形することもできる。
【0056】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明にあっては以下に述べるような優れた効果を奏する。
【0057】(1)請求項1のPC製品の成形用型枠にあっては、断面矩形の筒状に形成される内型枠が4つのコーナー部型枠と4つの平面部型枠とを重合されて、断面の大きさが拡縮可能に構成され、可変機構によってその重合量を可変調節して内型枠の矩形断面の大きさを所望値に設定保持できるので、この重合量を多くしたり少なくしたりすることにより、内型枠の矩形断面の大きさを簡単に拡縮変化させて設定することができる。つまり、上記重合量を多くすることにより内型枠の面の幅長を短くしてこの内型枠を縮小し、小型にすることができる一方、上記重合量を少なくすることにより内型枠の幅長を長くして内型枠を拡大し、大型とすることができ、多少の範囲であれば任意の大きさに拡縮して可変設定調節可能である。また、寸法が大きく異なるPC製品を作製したい場合でも、所望の大きさの平面部型枠を複数種容易しておけば、コーナー型枠を共通化させて対応することもできる。
【0058】ここで、内型枠と外型枠との間に成形されるPC製品は断面矩形の環状となるが、内型枠を外型枠にセットした際に、そのPC製品の一対の対向面を形成する部分のコンクリート打設隙間にそれぞれ長手方向に沿わせて配置する仕切り板を備えたので、これら仕切り板により断面矩形状となるPC製品が半割りされて2個のL字形若しくはコ字型PC製品を成形できる。
【0059】(2)請求項2の成形用型枠を用いたPC製品の製造方法にあっては、互いに分割された4つのコーナ部型枠と4つの平面部型枠とを重合させて断面矩形の拡縮自在な筒状の内型枠を構成して、これらコーナ部型枠と平面部型枠との重合量を大きくして縮小した状態でその外側の少なくとも両端部近傍にそれぞれ環状の拘束部材を配置し、この状態でコーナ部型枠と平面部型枠とを重合量が小さくなる方向に相対移動して、上記拘束部材の内側いっぱいに内型枠を拡大して固定する。従って、このように内型枠の外側が拘束部材で拘束されることにより、製造しようとするPC製品の大きさに合わせて内型枠の拡大量を簡単に調整することができる。ここで、拘束部材には鉄板、鉄筋、ワイヤロープなどが使用できる。
【0060】そして、外側に拘束部材が取り付けられた上記内型枠を外型枠内に所定隙間を設けて配置するとともに、内型枠と外型枠とで画成される断面矩形で筒状のコンクリート打設隙間における一対の対向する部分にそれぞれ長手方向に沿って仕切り板を配置した状態で、そのコンクリート打設隙間にコンクリートを打設し、所定期間養生してコンクリートが所定の強度発現した後に、コーナ部型枠と平面部型枠とをこれらの重合量が大きくなる方向に相対移動して内型枠を縮小させて脱型することにより、上記拘束部材が埋設された断面が矩形で環状のPC製品を得ることができ、また、内型枠はその大きさを簡単に変えられるので、重合量の可変設定範囲であれば1つの内型枠で大きさが多少異なるPC製品を製造できる。またさらに、平面部型枠として寸法の異なるものを用意すれば、コーナー部型枠を共通使用して寸法が大きく異なるPC製品の製造にも対応することが可能で、長方形断面のPC製品も製造できる。
【0061】そして、脱型した後、上記仕切り板を取り外し、この仕切り板を取り外した箇所で上記拘束筋を切断することにより、矩形で環状に成形されたPC製品は仕切り板の配置位置で略半割りすることができ、分割されたPC製品は2個のL字型若しくはコ字型PC製品として製造されるため、1つの型枠を用いた1度の成形工程で対をなす2個のPC製品が得られることになる。
【0062】(3)請求項3のPC製品を用いた柱の構築方法にあっては、前記2つに分割した一対のPC製品を用い、これらを柱のコア部構成部材の両側から挟むようにして囲んで取り付けて互いに接合することにより、柱の表面仕上げを能率良く施すことができ、更には、該PC製品を耐火被覆として機能させることができる。また、半割りされたコ字型PC製品には拘束部材が埋設されているため、当該PC製品を柱に取り付けた際に、両側から突き合わせたPC製品の拘束部材は対向して分離時の位置に配置されるため、この分離した拘束部材同士を容易に再度結合させて簡単に両PC製品の相互の形状維持が図れる。
【0063】(4)請求項4のPC製品を用いた柱の構築方法にあっては、上記請求項3において、さらに接合後のPC製品を型枠にして内部にコンクリートを充填するようにしたので、上記請求項3と同様に仕上げおよび耐火被覆を施すことができるのは勿論のこと、柱の強度を向上させることができる。
【0064】(5)請求項5のPC製品を用いた柱の構築方法にあっては、前記請求項4において、拘束部材同士を再結合させるので、当該拘束部材を剪断補強部材として機能させることができ、PC製品を構造部材としても機能させて柱強度の向上を図ることができ、現場でこの種の剪断補強筋などを配設する手間の可及的な省略化が図れる。
【0065】(6)請求項6のPC製品を用いた柱の構築方法にあっては、前記請求項5において拘束部材を内型枠の長手方向に沿って所定のピッチで多数配置された閉鎖型のフープ筋とするので、PC製品を構造部材として充分に機能させて柱強度の可及的な向上を図ることができるだけでなく、現場でこの種の剪断補強筋などを配設する手間を省略することができる。
【0066】(7)請求項7のPC製品を用いた柱の構築方法にあっては、前記請求項4のものにさらに加えて、さらにPC製品製造時にその内部に閉鎖型フープ筋を埋設して、当該当該フープ筋は仕切り板の位置で予め分離しておき、拘束部材を仕切り板を取り外した部位で分離することで一対のPC製品とし、これらを柱のコア部材の両側から挟むようにして囲んで取り付け、予め分離してあるフープ筋同士を互いに再結合することで一対のPC製品を一体的に接合し、この後当該PC製品を型枠にして内部にコンクリートを打設充填するので、請求項4と同様の作用効果が得られるのみならず、フープ筋によりPC製品を単なる打ち込み型枠としてだけでなく、構造部材として充分に機能させて柱の強度の可及的な向上を図ることができ、かつ一対のPC製品製造時にフープ筋を分離する手間を省略できる。
【0067】(8)請求項8のPC製品を用いた柱の構築方法にあっては、前記請求項3〜7において、柱のコア部構成部材を鉄骨、あるいは鉄骨鉄筋、若しくは既存柱とするので、鉄骨や鉄骨鉄筋の場合にあってはその耐火被覆の施工が簡易に且つ見栄え良く行え、またコンクリートを充填したり、さらにはPC製品の分離した拘束部材やフープ筋の分離端同士を結合させることで、強度的に優れた柱を短期に構築できる。また、既存柱の場合にあっては、耐震補強等のための強度向上を短期にかつ見栄えよく行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコ字型PC製品の成形用型枠の一実施形態を示す左右で切断位置を異ならせた型枠の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態で内型枠のコーナ部型枠を示し、(a)は片側端部の正面図、(b)は(a)中A−A線断面図である。
【図3】本発明の一実施形態で内型枠の平面部型枠を示し、(a)は片側端部の平面図、(b)は(a)中B−B線断面図、(c)は(a)中C−C線線断面図である。
【図4】本発明の一実施形態の上下で型枠の大きさを異ならせた型枠の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の内型枠のコーナ部分の拡大断面図である。
【図6】本発明の一実施形態の内外型枠から脱型された矩形状のPC製品からコ字型PC製品を製造する工程を(a)から(c)によって示す説明図である。
【図7】(a)は本発明の一実施形態のコ字型PC製品を柱に被覆した状態を示す断面図、(b)は拘束筋を再結合させるための構成の一例を示す概略図、(c)は拘束筋の結合手段の一例を示す概略図、(d)は拘束筋の結合手段の他の例を示す概略図である。
【図8】本発明の他の実施形態の内外型枠から脱型された矩形状のPC製品からコ字型PC製品を製造する工程を(a)(b)によって示す説明図である。
【図9】本発明の他の実施形態のコ字型PC製品を構造部材として機能させて柱に被覆した状態を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
P 矩形型PC管
P1 ,P2 PC製品
10 PC製品の成形用型枠
12 内型枠
14 外型枠
15 高流動コンクリート
16 コーナ部型枠
18 平面部型枠
30 拘束筋
32 仕切り板
40 鉄骨柱(柱)
48 切欠き部
50 結合分離手段
52 フープ筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】 内型枠を外型枠内に所定隙間を設けて配置し、これら内外型枠間にコンクリートを打設してPC製品を成形する成形用型枠において、上記内型枠を、互いに分割された4つのコーナ部型枠と4つの平面部型枠とによって矩形断面を呈する筒状に形成し、且つ該コーナ部型枠と該平面部型枠とは重合させて上記矩形断面の大きさを拡縮自在に構成するとともに、その重合量を可変調節して内型枠の断面の大きさを所望値に設定保持する可変機構を設け、かつ、内型枠を外型枠にセットした状態で画成されるコンクリート打設隙間の一対の対向する部分に長手方向に沿ってそれぞれ配置される仕切り板を備えたことを特徴とするPC製品の成形用型枠。
【請求項2】 互いに分割された4つのコーナ部型枠と4つの平面部型枠とを重合させて断面矩形の拡縮自在な筒状の内型枠を構成し、これらコーナ部型枠と平面部型枠との重合量を大きくして該内型枠を縮小させた状態でその外側の少なくとも両端部近傍にそれぞれ環状の拘束部材を配置し、この状態でコーナ部型枠と平面部型枠とを重合量が小さくなる方向に相対移動して、上記拘束部材の内側いっぱいに内型枠を拡大して固定し、外側に拘束部材が取り付けられたこの内型枠を外型枠内に所定隙間を設けて配置するとともに、これら内外型枠によって画成されるコンクリート打設隙間の一対の対向する部分にその長手方向に沿わせてそれぞれ仕切り板を配置した状態で、該コンクリート打設隙間にコンクリートを打設し、所定期間養生してコンクリートが所定の強度発現した後に、該内型枠を縮小して脱型するとともに、仕切り板を取り外し、この仕切り板を取り外した箇所で上記拘束部材を分離することを特徴とする成形用型枠を用いたPC製品の製造方法。
【請求項3】 互いに分割された4つのコーナ部型枠と4つの平面部型枠とを重合させて断面矩形の拡縮自在な筒状の内型枠を構成し、これらコーナ部型枠と平面部型枠との重合量を大きくして該内型枠を縮小させた状態でその外側の少なくとも両端部近傍にそれぞれ環状の拘束部材を配置し、この状態でコーナ部型枠と平面部型枠とを重合量が小さくなる方向に相対移動して、上記拘束部材の内側いっぱいに内型枠を拡大して固定し、外側に拘束部材が取り付けられたこの内型枠を外型枠内に所定隙間を設けて配置するとともに、これら内外型枠によって画成されるコンクリート打設隙間の一対の対向する部分にその長手方向に沿わせてそれぞれ仕切り板を配置した状態で、該コンクリート打設隙間にコンクリートを打設し、所定期間養生してコンクリートが所定の強度発現した後に、該内型枠を縮小して脱型するとともに、仕切り板を取り外し、この仕切り板を取り外した箇所で上記拘束部材を分離して一対のPC製品を形成し、これら一対のPC製品を柱のコア部構成部材の両側から挟むように建て込んで取り付け、該PC製品同士を接合することを特徴とするPC製品を用いた柱の構築方法。
【請求項4】 前記請求項3において、柱のコア部構成部材の両側から挟むように建て込んで取り付けた一対のPC製品を接合した後、該PC製品を型枠にして内部にコンクリートを充填することを特徴とするPC製品を用いた柱の構築方法。
【請求項5】 前記請求項4において、一対のPC製品の接合を分離された拘束部材同士の再結合により行うことを特徴とするPC製品を用いた柱の構築方法。
【請求項6】 前記請求項5において、拘束部材が内型枠の長手方向に沿って所定のピッチで多数配置された閉鎖型のフープ筋でなることを特徴とするPC製品を用いた柱の構築方法。
【請求項7】 互いに分割された4つのコーナ部型枠と4つの平面部型枠とを重合させて断面矩形の拡縮自在な筒状の内型枠を構成し、これらコーナ部型枠と平面部型枠との重合量を大きくして該内型枠を縮小させた状態でその外側の少なくとも両端部近傍に環状の拘束部材を配置し、この状態でコーナ部型枠と平面部型枠とを重合量が小さくなる方向に相対移動して、上記拘束部材の内側いっぱいに内型枠を拡大して固定し、外側に拘束部材が取り付けられたこの内型枠を外型枠内に所定隙間を設けて配置するとともに、これら内外型枠によって画成されるコンクリート打設隙間の一対の対向する部分にその長手方向に沿わせてそれぞれ所定寸法を有する仕切り板を配置し、且つ該コンクリート打設隙間内には、該仕切板の配置部分で予め分離されている閉鎖型に結合可能なフープ筋を該内型枠の長手方向に沿わせて所定のピッチで多数配置しておき、該コンクリート打設隙間にコンクリートを打設して所定期間養生して後にコンクリートが所定の強度発現した後に、該内型枠を縮小して脱型するとともに、仕切り板を取り外し、この仕切り板を取り外した箇所で上記拘束部材を分離して一対のPC製品を形成し、これら一対のPC製品を柱のコア部構成部材の両側から挟むように建て込んで取り付け、該フープ筋の分離端同士を各々結合した後、該PC製品を型枠にして内部にコンクリートを充填することを特徴とするPC製品を用いた柱の構築方法。
【請求項8】 前記柱のコア部構成部材が鉄骨、あるいは鉄骨鉄筋、若しくは既存柱からなることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載のPC製品を用いた柱の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図8】
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