説明

PD−1アンタゴニストの組成物および使用方法

T細胞において阻害的シグナル伝達を低減する化合物を、強力なT細胞媒介応答をもたらすためにシクロホスファミドなどの増強剤と組み合わせて投与することを含んでなる処置計画を用いる癌および感染性疾患の処置方法が記載される。本発明の方法において有用なPD−1アンタゴニストおよび増強剤を含んでなる組成物も開示される。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本願は、2009年4月2日に出願された米国仮出願番号第61/211,697号公報、2008年8月25日に出願された同第61/091,694号公報、2008年8月25日に出願された同第61/091,709号公報、および2008年8月25日に出願された同第61/091,705号公報の優先権を主張するものであり、これらは引用することにより本発明の開示の一部とされる。
【0002】
発明の分野
本発明は、T細胞上で阻害的シグナル伝達を妨げる化合物を増強剤と組み合わせて含む治療組成物および疾患治療に有用なT細胞応答の誘導のための該成分の併せた、または個別の使用に関する。
【0003】
背景技術
癌のような感染および慢性疾患などの病態に対するTリンパ球の応答は複雑で、細胞内相互作用および可溶性メディエーター(サイトカインまたはリンホカインと呼ばれる)の産生を含む。T細胞の活性化は通常、T細胞受容体(TCR)が主要組織適合性複合体(MHC)により提示される抗原ペプチドと接触した後の抗原特異的シグナルに依存するが、この反応の程度は種々の共刺激分子から発する(eminating from)正および負の抗原非依存性シグナルにより制御される。後者はCD28/B7ファミリーの一般メンバーである。これに対し、Programmed Death−1(PD−1)は、T細胞で誘導された際に負の免疫応答を送達する受容体のCD28ファミリーのメンバーである。PD−1とそのリガンドの一つ(B7−H1またはB7−DC)との接触は、T細胞の増殖および/またはT細胞応答の強度および/または持続時間を低減する阻害応答を誘導する。
【0004】
従って、Tリンパ球応答は、受容体として働く細胞表面分子(TCR複合体ならびに他の表面分子の双方を含む)を含む種々の因子によって調節される。
【0005】
要するに、抗原特異的T細胞応答は、1)TCRと、MHCに関して提示される抗原ペプチドの結合(シグナル1)、および2)種々の受容体/リガンド対の間の接触により送達される第二の抗原非依存性シグナル(シグナル2)の二つのシグナルにより媒介される。この「第二のシグナル」は、T細胞応答の種類(活性化か阻害か)ならびにその応答の強度および持続時間の決定に極めて重要であり、B7ファミリータンパク質などの共刺激分子からの正および負のシグナルの双方によって調節される。最も詳細に特性決定されているT細胞共刺激経路はB7−CD28であり、B7−1(CD80)およびB7−2(CD86)はそれぞれ活性化CD28受容体および阻害性CTLA−4(CD152)受容体と結合することができる。最も詳細に特性決定されているT細胞共刺激経路はB7−CD28であり、B7−1(CD80)およびB7−2(CD86)はそれぞれ刺激性CD28受容体および阻害性CTLA−4(CD152)受容体と結合することができる。T細胞受容体を介したシグナル伝達に関して、CD28の結合はT細胞の抗原特異的増殖を増大させ、サイトカインの産生を増強し、分化およびエフェクター機能を活性化し、T細胞の生存を促進する(Lenshow, et al., Annu. Rev. Immunol., 14:233-258 (1996)、 Chambers and Allison, Curr. Opin. Immunol., 9:396-404 (1997)、およびRathmell and Thompson, Annu. Rev. Immunol., 17:781-828 (1999))。これに対して、CTLA−4を介したシグナル伝達は、T細胞の増殖、IL−2の産生および細胞周期の進行を阻害する負のシグナルを送達すると考えられている(Krummel and Allison, J. Exp. Med., 183:2533-2540 (1996)、およびWalunas, et al., J. Exp. Med., 183:2541-2550 (1996))。共刺激分子のB7ファミリーの他のメンバーとしては、B7−H1(Dong, et al., Nature Med., 5:1365-1369 (1999)、およびFreeman, et al., J.
Exp. Med., 192:1-9 (2000))、B7−DC(Tseng, et al., J. Exp. Med., 193:839-846 (2001)、およびLatchman, et al., Nature Immunol., 2:261-268 (2001))、B7−H2(Wang, et al., Blood, 96:2808-2813 (2000)、 Swallow, et al., Immunity, 11:423-432 (1999)、およびYoshinaga, et al., Nature, 402:827-832 (l999))、B7−H3(Chapoval, et al., Nature Immunol., 2:269-274 (2001))、およびB7−H4(Choi, et al., J. Immunol., 171:4650-4654 (2003)、 Sica, et al., Immunity, 18:849-861 (2003)、 Prasad, et al., Immunity, 18:863-873 (2003)、およびZang, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 100:10388-10392 (2003))。B7−H5(WO2006/012232に記載)は新しく見出されたB7ファミリーメンバーである。
【0006】
B7ファミリー分子は膜近位定常IgC(定常)ドメインと膜遠位IgV(可変)ドメインを有する。これらのリガンドのCD28様ファミリー受容体は共通の細胞外IgV様ドメインを有する。受容体−リガンド対の相互作用は、主としてリガンドと受容体のIgVドメインの残基により媒介される(Schwartz, et al., Nature Immunol., 3:427-434 (2002))。一般に、IgVドメインは、それぞれβ鎖の層を含む2枚のシートを有することが記載されている(Williams and Barclay, Annu. Rev. Immunol., 6:381-405 (1988))。CTLA−4の表および裏のシートはそれぞれA’GFC’C鎖およびABEDC”鎖を含む(Ostrov, et al., Science, 290:816-819 (2000))が、B7 IgVドメインの表および裏のシートはそれぞれAGFCC’C”鎖およびBED鎖からなる(Schwartz, et al., Nature, 410:604-608 (2001)、 Stamper, et al., Nature, 410:608-611 (2001)、およびIkemizu, et al., Immunity, 12:51-60 (2000))。結晶学的分析から、CTLA−4/B7結合境界は、MYPPPYモチーフからなる、CTLA−4由来のCDR3類似ループと、主としてG、F、C、C’およびC”鎖によって形成されるB7上の表面との相互作用により支配されることが明らかになった(Schwartz, et al., Nature, 410:604-608 (2001)、 and Stamper, et al., Nature, 410:608-611 (2001))。アミノ酸ホモロジー、突然変異、およびコンピューターモデリングからのデータは、このモチーフもCD28の主要なB7結合部位であるという概念に裏付けを与える(Bajorath, et al., J. Mol. Graph. Model., 15:135-139 (1997))。ICOSではMYPPPYモチーフは保存されていないが、研究では、配列FDPPPFを有し、同様の位置に存在する関連モチーフがBH−H2の受容体であるICOSとB7−H2の結合に主要な決定因子であることが示されている(Wand, et al., J. Exp. Med., 195:1033-1041 (2002))。
【0007】
B7−DC(PD−L2またはCD273とも呼ばれる)は比較的新しいB7ファミリーメンバーであり、B7−H1(PD−L1とも呼ばれる)と約34%同一のアミノ酸配列を有する。ヒトおよびマウスB7−DC2相同分子種は約70%のアミノ酸同一性を有する。B7−H1およびB7−DC転写物は種々の組織で見られる(Dong, et al., Nature Med., 5:1365-1369 (1999)、 Latchman, et al., Nature Immunol., 2:261-268 (2001)、およびTamura, Blood, 97:1809-1816 (2001))が、タンパク質の発現特性は全く異なっている。B7−H1は広範な組織および細胞種で広く発現されるが、B7−DCの発現は主として活性化された樹状細胞(DC)およびマクロファージに限られる。
【0008】
B7−H1およびB7−DCは双方とも、その細胞質ドメインにimmunoreceptor tyrosine-based inhibitory motif (ITIM)を有するCD28ファミリーの遠位メンバーである(Ishida, et al., EMBO J., 11:3887-3895 (1992))PD−1と結合する(Freeman, et al., J. Exp. Med., 192:1027-1034 (2000))ことが示されている。CD28ファミリー受容体のメンバーであるPD−1は活性化されたT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、DC、およびマクロファージで誘導的に発現される(Keir, et al Curr. Opin. Immunol. 19:309-314 (2007))。
【0009】
そのリガンドによるPD−1結合の主要な結果は、T細胞受容体(TCR)の下流でシグナル伝達を阻害することである。よって、PD−1を介したシグナル伝達は通常、T細胞に対して、T細胞増殖の低下またはT細胞活性におけるその他の低下をもたらす抑制または阻害シグナルを与える。B7−H1はT細胞において阻害的シグナル伝達を生じる主要なPD−1リガンドである。本発明は、PD−1と結合し、従って阻害的シグナル伝達を妨げるか、あるいはまたB7−H1などのPD−1のリガンドと結合し、それによりそのリガンドがPD−1と結合して阻害シグナルを送達しないようにする薬剤を提供することにより、望ましくないT細胞阻害の問題を解決する。いずれの場合でも、T細胞の増殖または活性化などのT細胞応答が刺激される。
【0010】
B7−H1は、そのより広い分布およびより高い発現レベルによるものと思われる主要なPD−1リガンドである。PD−1阻害は、PD−1およびTCRが免疫シナプスに対して互いに近接して連結される場合にのみ起こる。PD−1およびそのリガンドはいくつかの総説文献の主題となっている。
【0011】
B7−H1はまた、多くの癌(乳癌、結腸癌、食道癌、胃癌、神経膠腫、白血病、肺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、膵臓癌、腎細胞癌、および尿路上皮癌を含む)で過剰発現され、予後の悪さと関連づけられている。B7−H1は多くの腫瘍細胞系統により、特にインターフェロンγ(IFN−γ)による刺激の後に発現され、また、腫瘍浸潤骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)でアップレギュレートされている。例えば、PD−1は腫瘍特異的CD8T細胞でアップレギュレートされ、機能不全、無応答、消耗およびアポトーシスと関連がある。PD−1のアップレギュレートはまた、調節性T細胞(Treg)およびナチュラルキラーT(NKT)細胞などのさらなる細胞種での機能不全型および/または抑制型の表現型と関連づけられている。
【0012】
本発明はT細胞活性の上昇による疾患、特に癌および感染性疾患を処置するための処置計画を提供することにより、このような分子機能を用いる。
【発明の概要】
【0013】
一つの態様において、本発明は、そのような増強を必要とする哺乳類において、例えば抗原に対するT細胞応答を増強する方法であって、該哺乳類に、免疫細胞、特にT細胞において阻害的シグナル伝達を低減する化合物と増強剤を投与することを含んでなり、該処置計画が該哺乳類のT細胞応答の増強に有効である方法に関する。
【0014】
本発明の処置計画において有用な化合物としては、阻害的シグナル伝達を誘発することなくT細胞上のPD−1受容体と結合してそれを遮断するもの、PD−1リガンドと結合してそれらのPD−1との結合を妨げる化合物、双方を行う化合物およびPD−1またはPD−1の天然リガンドのいずれかをコードする遺伝子の発現を妨げる化合物が含まれる。このような化合物は本明細書において「PD−1アンタゴニスト」と呼ばれる。PD−1の天然リガンドと結合する化合物としては、PD−1それ自体、ならびにPD−1の有効断片、B7−H1リガンドの場合にはB7.1タンパク質および断片が含まれる。このようなアンタゴニストとしては、タンパク質、抗体、アンチセンス分子および小有機物が含まれる。好ましい実施形態では、該T細胞応答は、どちらかが他方を含まずに投与された場合に該PD−1アンタゴニストまたは該増強剤のいずれかにより生じるものよりも大きい。
【0015】
別の実施形態では、本発明の方法において有用な化合物は、CTLA4などのT細胞表面分子と結合して、その天然リガンドの結合により誘発される阻害シグナルを妨げるものであるか、または該天然リガンドと結合するものである。このようなアンタゴニストには、タンパク質、抗体、アンチセンス分子および小有機物が含まれる。
【0016】
一般的な実施形態では、本発明の処置計画および組成物において有用な化合物としては、PD−1とTCRとの同時結合を誘発、増強、促進および/または許容することなくPD−1と結合するものが含まれる。
【0017】
PD−1を介した阻害的シグナル伝達を妨げる、従って、PD−1アンタゴニストとして働く好ましい化合物としては、限定されるものではないが、阻害的シグナル伝達を誘発することなくPD−1と結合する、B7−DCポリペプチド、特に、これらの可溶性部分(これらの有効断片、これらの変異体および同族体を含む)、ならびに上記のいずれかを組み込んだ融合タンパク質が含まれる。好ましい実施形態では、B7−DCは配列番号1、2、3または4のアミノ酸配列を含んでなる。好ましいこのような化合物は、B7−DCの可溶性ドメイン(すなわち、膜貫通配列を含まない)を組み込んだものである。B7−DCポリペプチドの好適な断片としては、IgVおよび/またはIgCドメインを含む断片またはIgVドメインのみを含む断片が含まれ、前者が好ましい実施形態であり、配列番号1のアミノ酸20〜121はIgVドメインの好ましい例である。
【0018】
好ましいPD−1アンタゴニストはまた、限定されるものではないが、阻害的シグナル伝達を誘発することなくPD−1と結合する、B7−H1ポリペプチド(引用することにより本明細書の開示の一部とされる米国特許第6,803,192号公報に開示されている)などのPD−1の天然リガンドの有効断片、特に、これらの可溶性部分(これらの変異体および同族体を含む)、ならびに上記のいずれかを組み込んだ融合タンパク質が挙げられる。
【0019】
本発明の好ましい化合物としては、限定されるものではないが、PD−1のリガンドと結合して、これがPD−1と結合して阻害的シグナル伝達を誘発しないようにする、B7−H1と結合するB7−1の断片など、PD−1の天然リガンドと結合する有効断片、変異体および同族体、ならびに上記のいずれかを組み込んだ融合タンパク質を含む化合物が挙げられる。
【0020】
別の実施形態では、該組成物およびその使用方法としては、PD−1受容体と結合してそれを遮断するPD−1受容体アンタゴニストと、PD−1受容体リガンドと結合してそれを遮断する別個のPD−1受容体アンタゴニストの組合せが含まれる。本発明の別の実施形態は、PD−1受容体を介した阻害的シグナル伝達を誘発することなくPD−1受容体と結合し、かつ、PD−1受容体リガンドと結合してそれと拮抗する能力を有する(B7−H1など)、そうでなければPD−1受容体を介した阻害的シグナル伝達を誘発するPD−1受容体アンタゴニストを提供する。意図されるその他のPD−1受容体アンタゴニストとしては、PD−1受容体とPD−1受容体リガンドの双方と結合することができる二重特異的抗体が含まれる。
【0021】
本発明において有用な化合物の好ましい実施形態としてはまた、PD−1またはCTLA4と結合し、それによりこれらの供給源により媒介される阻害的シグナル伝達を低減するまたは無くす抗体が含まれる。
【0022】
本発明の方法で用いるための好ましい化合物としてはまた、限定されるものではないが、CTLA4と結合してその後の阻害シグナルを低減し、その上、CD28と結合しないか、またはそうでなければCD28による正のシグナル伝達を阻害するCTLA4のリガンド(B7−1およびB7−2など)の有効断片が挙げられる。
【0023】
PD−1を介した阻害的シグナル伝達を妨げる、従って、PD−1アンタゴニストとして働く好ましい化合物としては、限定されるものではないが、B7−DCと結合する、B7−DCアンタゴニスト、特に、これらの可溶性部分(これらの有効断片、これらの変異体および同族体を含む)、ならびに上記のいずれかを組み込んだ融合タンパク質が挙げられる。
【0024】
一つの実施形態では、B7−DCポリペプチド、その断片または変異体は他のポリペプチドとカップリングされて、PD−1を介した阻害的シグナル伝達を生じることなくPD−1受容体と結合し、それにより、リガンドとPD−1の結合、特にB7−H1の結合を低減する、または干渉する、およびそれにより、PD−1受容体を介した阻害的シグナル伝達に干渉することによりPD−1受容体と拮抗する融合タンパク質を形成する。このような融合タンパク質の例は、配列番号9、10、12または13のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチド、ならびにその同族体である。一つの好ましい実施形態では、B7−DCの細胞外ドメイン(ECD)の全部またはの一部が融合タンパク質の一部となり、そこで、それは免疫グロブリンのFc部分を含む第二のポリペプチドと連結されている。これの好ましい例がB7−DC−Igであり、特に、ここでこの構造は、二つのB7−DC−Ig分子がジスルフィド結合などによって互いに連結されているホモ二量体の部分である。
【0025】
特定の実施形態では、本発明の化合物において有用な断片は、所望のアンタゴニスト活性を有するポリペプチドの少なくとも10、15、25、50、75、100、150、200個のまたはそれを超える連続するアミノ酸からなる。このような断片はまた、本発明で用いられる融合タンパク質の共通部分である。
【0026】
別の態様において、本発明は、それを必要とする哺乳類においてT細胞応答を増強する方法であって、該哺乳類に抗PD−1抗体および増強剤を含んでなる有効な処置計画(該処置計画は該哺乳類のT細胞応答を増強するのに有効である)により投与することを含んでなる方法に関する。
【0027】
別の態様において、本発明は、それを必要とする哺乳類においてT細胞応答を増強する方法であって、該哺乳類に免疫調節剤および増強剤を含んでなる有効な処置計画(該処置計画は該哺乳類のT細胞応答を増強するのに有効である)により投与することを含んでなる方法に関する。このような免疫調節剤は、T細胞応答を阻害する他のCD28ファミリー受容体(CTLA4など)と拮抗する分子を含む。好ましい実施形態では、抗CTLA4抗体および増強剤を用いる。さらなる免疫調節剤としては、T細胞応答を活性化するCD28ファミリー受容体(CD28およびICOSなど)を促進する分子、T細胞応答を阻害するB7ファミリーリガンド(B7−H1、B7−DC、B7−H4など)に拮抗する分子、およびT細胞応答を活性化するB7ファミリーリガンド(B7.1およびB7.2など)を促進する分子が含まれる。
【0028】
本発明の方法のいずれかのさらなる実施形態では、PD−1アンタゴニスト化合物および増強剤の処置計画は、少なくとも一つの付加的治療薬をさらに含んでなる。意図される付加的治療薬としては、免疫調節剤が含まれる。このような方法のための例示的免疫調節剤としては、抗PD−1および抗CTLA4抗体が含まれる。
【0029】
一つの実施態様では、増強剤は、シクロホスファミドおよびシクロホスファミドの類似体、スニチニブ(Sutent)、抗TGFβおよびイマチニブ(Gleevac)、有糸分裂阻害剤(パクリタキセルなど)、アロマターゼ阻害剤(レトロゾールなど)、A2aアデノシン受容体(A2AR)アンタゴニスト、脈管形成阻害剤、アントラサイクリン、オキサリプラチン、ドキソルビシン、TLR4アンタゴニスト、およびIL−18アンタゴニストから選択される。これらの薬剤のいくつかは、腫瘍微小環境内でTreg(すなわち、調節性Tリンパ球またはT−reg)の数を低減する。
【0030】
別の実施形態では、本発明の方法および/または組成物は具体的には、前記方法および/または組成物の一部として任意の好適なアジュバントの使用を意図する。
【0031】
本発明によれば、T細胞を、インビトロ、エクスビボまたはインビボにおいてPD−1受容体アンタゴニストおよび/または増強剤を含有するその組成物と接触させることができる。PD−1受容体アンタゴニストおよび/または増強剤を含有するその組成物を用いたT細胞の接触は、T細胞の活性化の前、活性化の間、または活性化の後に行うことができる。
【0032】
特定の実施形態では、PD−1を介した阻害的シグナル伝達を回避または低減する分子および増強剤は、PD−1アンタゴニストを投与する前に増強剤を投与するなど、異なる時点で投与される。このような投与は付加的治療薬と組み合わせることができる。
【0033】
本発明の方法のいずれかの特定の実施形態では、処置計画は、PD−1アンタゴニスト、抗PD−1抗体、抗CTLA4抗体、および/または付加的治療薬のいずれかまたは総てを投与する少なくとも1時間前、または少なくとも2時間前、または少なくとも3時間前、または少なくとも5時間前、または少なくとも10時間前、または少なくとも15時間前、または少なくとも20時間前、または少なくとも24時間前、または少なくとも30時間前またはさらにはそれより前に増強剤を投与することを含む。増強剤の投与はまた、PD−1アンタゴニスト、抗PD−1抗体、抗CTLA4抗体および/または付加的治療薬のいずれかまたは総てを投与した後、例えば、PD−1アンタゴニストを投与した1時間後、2時間後、3時間後、5時間後、10時間後、15時間後、20時間後、24時間後またはさらには最大30時間後に行ってもよく、あるいはPD−1アンタゴニストの投与とともに行ってもよい。
【0034】
本発明の方法の結果として達成されるT細胞応答の増強は、癌、ウイルス感染、細菌感染および寄生虫感染の1以上含む疾患の処置に十分なものである。疾患が癌である場合、このような癌は膀胱癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、食道癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、鼻咽頭癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、胃癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌または血液性癌のいずれか1以上である。
【0035】
別の態様において、本発明は、薬学上許容される担体中に、本発明の方法で用いられるアンタゴニストの組成物を含み、ここで、前記PD−1結合分子および増強剤はそれぞれT細胞刺激の増強をもたらすのに有効な量で存在する。
【0036】
一つの好ましい実施形態では、本発明は、本発明で用いるための1以上の薬剤をその希釈のための医薬担体および投与に関する説明書とともに保持する容器を含んでなる医療用キットを含む。さらに、前記PD−1受容体アンタゴニストおよび増強剤が同時に投与される場合には、該成分の双方が薬学上許容される担体中単一の容器の成分として存在していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、B7−DC−IgがPD−1と結合することを示す。標識B7−DC−Igを、種々の濃度の、PD−1を構成的に発現するCHO細胞系統またはPD−1を発現しない親CHO細胞とともにインキュベートした。結合をフローサイトメトリーにより分析した。B7−DC−Igの中央蛍光強度(MFI)(y軸)は、プローブ濃度(x軸)の関数として示されている。B7−DC−IgはCHO.PD−1細胞(黒丸)と結合するが、非トランスフェクトCHO細胞(グレーの三角)とは結合しない。
【図2】図2は、B7−DC−IgはPD−1との結合に関してB7−H1と競合することを示す。種々の濃度の非標識B7−DC−Igをまず、PD−1を構成的に発現するCHO細胞系統とともにインキュベートした後、その細胞混合物に標識B7−H1−Igを加えた。B7−H1−Igの中央蛍光強度(MFI)(y軸)が、付加された非標識B7−DC−Ig競合物の濃度(x軸)の関数として示されている。非標識B7−DC−Igの濃度が増すにつれ、CHO細胞と結合する標識B7−H1−Igの量は減り、B7−DC−IgがPD−1との結合に関してB7−H1と競合することが示される。
【図3】図3は、シクロホスファミド(CTXまたはサイトキサン(商標))と二量体ネズミB7−DC−Igの組合せがマウスにおいて定着したCT26腫瘍(結腸癌腫)の根絶をもたらしたという試験結果を示す。グラフAは、10日目に100mg/kgのCTXで処置したマウスにおける腫瘍負荷後の日数に対する腫瘍体積(mm)を示し、一方、グラフBは、10日目にCTXで処置し、その1日後に最初のB7−DC−Ig投与を行ったマウスにおける腫瘍負荷後の日数に対する腫瘍体積(mm)を示す。各グラフの各線は1匹のマウスを表す。破線の矢印はB7−DC−Igの投与を示す。グラフCは平均腫瘍体積を示す。
【図4】図4は、CTXと二量体ネズミB7−DC−Igの組合せがマウスにおいて定着したCT26腫瘍(結腸癌腫)を根絶し、CT26の再負荷から保護したという試験結果を示す。CTXとB7−DC−Igで処置し、腫瘍接種後44日目に腫瘍成長が見られなかったマウスに腫瘍を再負荷した。その後、70日目にマウスに再負荷を行った。100日目までに腫瘍成長を示したマウスは無かった。
【図5】図5は、CTXおよびB7−DC−Ig処置は腫瘍特異的メモリーCTLの生成をもたらしたことを示す。CTXおよびB7−DC−Ig処置後に定着CT26皮下腫瘍が根絶されたマウスにCT26細胞を再負荷した。7日後、脾細胞を単離し、無関係のペプチドであるオボアルブミンまたはCT26特異的ペプチドであるAH1のいずれかでパルスした。細胞をまず抗CD8抗体で染色した後、FACS分析前に抗IFNγ抗体で細胞内染色を行った。
【図6】図6は、マウスにおいて定着したCT26腫瘍の根絶に対する、種々の用量のB7−DC−IgをCTXと組み合わせた効果を示す。9〜11週齢のBalb/Cマウスに1E05 CT26細胞を皮下移植した。9日目に、マウスに100mg/kgのCTXを注射した(IP)。24時間後の10日目に、マウスを30、100、または300μgのB7−DC−Igで処置した後、最終2回の注射を全8回行った。腫瘍成長は1週間に2回測定した。
【図7】図7は、CTXと抗PD−1抗体の組合せがマウスにおいて定着したCT26腫瘍(結腸癌腫)の根絶をもたらしたという試験結果を示す。グラフAは、非処置マウス(すなわち、ビヒクル単独で処置したマウス)における腫瘍負荷後の日数に対する腫瘍体積(mm)を示し、グラフBは、抗PD−1単独で処置(11日目に注射1回当たり300μgで始め、1週間に3回、全12回の注射)したマウスにおける腫瘍負荷後の日数に対する腫瘍体積(mm)を示し、グラフCは、11日目にCTXで処置し、12日目に最初の抗PD−1投与(注射1回当たり300μg、1週間に3回、全12回の注射)を行ったマウスにおける腫瘍負荷後の日数に対する腫瘍体積(mm)を示す。各グラフの各線は1匹のマウスを表す。破線の矢印は抗PD−1の投与を示す。
【図8】図8は、CTXと抗CTLA4抗体の組合せがマウスにおいて定着したCT26腫瘍(結腸癌腫)の根絶をもたらしたという試験結果を示す。ここで、グラフAは、11日目に100mg/kgのCTXで処置したマウスにおける腫瘍負荷後の日数に対する腫瘍体積(mm)を示し、一方、グラフBは、11日目にCTXで処置し、12日目に抗CTLA4(注射1回当たり100μg、1週間に2回、全8回の注射)で処置したマウスにおける腫瘍負荷後の日数に対する腫瘍体積(mm)を示す。各グラフの各線は1匹のマウスを表す。破線の矢印は抗CTLA−4の投与を示す。
【図9】図9は、9〜11週齢のBalb/Cマウスに、1×10 CT26細胞を皮下移植した試験結果を示す。9日目に、マウスに100mg/kgのCTXを注射した(IP)。24時間後の10日目に、マウスを100μgのB7−DC−Igで処置した。5群があった:腫瘍細胞を負荷しなかったナイーブマウス、ビヒクル注射、CTX単独、CTX+B7−DC−Ig、またはB7−DC−Ig単独。T細胞分析のため、11日目(CTX2日後)と16日目(CTX7日後)に2匹のナイーブマウスと他の群から4匹のマウスを試験から取り出した。左のパネルは、11日目、CTX注射2日後において、CTX処置マウスの脾臓のTregが、腫瘍移植を行い、ビヒクルを注射したマウスの場合よりも有意に低かったことを示す。右のパネルは、16日目、CTX7日後およびB7−DC−Ig処置6日後において、B7−DC−Igが、高いPD−1を発現するCD4+T細胞を有意に低減したことを示す。これはB7−DC−Ig処置マウスとCTX+B7−DC−Ig処置マウスの双方に見られた。腫瘍細胞を移植したマウスは、所属リンパ節(draining LN)中のPD−1+/CD4+T細胞がナイーブマウスに比べて多い傾向があった。
【図10】図10は、CTXと、B7−DC−Igとの組合せがマウス前立腺腫瘍細胞系統を尾静注したマウスにおける生存率を高めたという試験結果を示す。SP−1細胞はTRAMP前立腺腫瘍細胞注射から転移したマウス肺から単離された。B10.D2マウスにまず、尾静注により3×10SP−1細胞を注射した。5日目、12日目および19日目に、マウスに示されているように50mg/kgのCTXを注射した。6日目、13日目および20日目に、マウスに示されているように5mg/kgのB7−DC−Igを投与した。ここで、「NT」は「処置せず」を意味する。
【図11】図11は、11〜13週齢のBalb/Cマウスに、半脾臓(hemispleen)注射法を用い、単離された肝臓転移物を与えた。麻酔マウスの脾臓を二分割し、半分を鉗子で留めた。CT26細胞(1E05)を半分の脾臓の一つに注射し、30秒後に、その脾臓の半分を切除し、脾臓所属静脈を鉗子で留める。10日目に、マウスに50mg/kgのCTXを1度注射した(IP)。24時間後の11日目に、マウスを0.1×LD50(1×107CFU)の、CT26の免疫優性エピトープである組換えリステリア菌担持AH1ペプチドで処置し、その後、14日目と17日目にも処置した。また、11日目、その後18日目にマウスをB7−DC−Igで処置した。マウスの総生存率を測定した。
【発明の具体的説明】
【0038】
定義
特に定義しない限り、本明細書において用いられた総ての技術用語および科学用語は、開示された発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。特に、以下の用語およびフレーズは次の意味を有する。
【0039】
「阻害的シグナル伝達」とは、T細胞の増殖を低減することによるものであれ、他のいずれかの阻害機構によるものであれ、免疫原性T細胞応答の程度または持続時間が低減される、抗原に対するT細胞応答を抑制する、またはそうでなければ低減する作用を有するシグナル伝達を意味するものとする。このような阻害的シグナル伝達は、PD−1とB7−H1またはこのリガンド種の他のいくつかのメンバーB7−DCの結合など、PD−1と天然リガンドの結合によるものであってもよいし、あるいはB7−1またはB7−2などのCTLA4とリガンドの結合によるものであってもよい。一般に、本発明の化合物はこのような阻害的シグナル伝達を低減し、限定されるものではないが、PD−1アンタゴニストおよびCTLA4アンタゴニストを含む。
【0040】
「PD−1アンタゴニスト」とは、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、DCおよびマクロファージの表面に見られるPD−1により媒介される阻害的シグナル伝達を減衰する任意の分子を意味する。このようなアンタゴニストとしては、T細胞上のPD−1分子により生じる阻害シグナルを中断させる分子が含まれる。本発明の特定の例では、PD−1アンタゴニストは、PD−1受容体シグナル伝達経路を介した阻害的シグナル伝達を阻害、低減、抑制またはそうでなければ低減する分子である。このような低減は、(i)本発明のPD−1アンタゴニストが、シグナル伝達を誘発することなくPD−1受容体と結合して阻害的シグナル伝達を低減または遮断する場合、(ii)PD−1アンタゴニストがPD−1受容体のリガンド(例えば、アゴニスト)と結合して、それとの結合を妨げる場合(例えば、該アゴニストがB7−H1である場合)、(iii)PD−1アンタゴニストが、阻害されなければPD−1の阻害的シグナル伝達を刺激するか、またはそうでなければ促進する結果を有する調節鎖の一部である分子と結合するか、またはそうでければその活性を阻害する場合、または(iv)PD−1アンタゴニストが、特に、PD−1をコードする1以上の遺伝子または1以上のその天然リガンドの発現を低減または抑制することにより、PD−1受容体の発現またはそのリガンドの発現を阻害する場合に起こり得る。従って、本発明のPD−1アンタゴニストは、PD−1阻害的シグナル伝達の低減を果たし、それにより1以上の抗原に対するT細胞応答を増強する分子である。
【0041】
本明細書において「CTLA4アンタゴニスト」とは、T細胞応答のCTLA4媒介阻害を低減する化合物を意味する。例えば、T細胞において、CTLA4は、B7−1およびB7−2などのB7リガンドの結合の際に阻害インパルスを送達する。CTLA4アンタゴニストは、該リガンドの、活性化されたT細胞上のCTLA4への結合を妨げるものである。一つの実施態様では、このアンタゴニストは、CTLA4と結合してリガンド結合を妨げる抗CTLA4抗体である。
【0042】
本明細書において「有効断片」とは、天然ポリペプチドまたは天然ポリペプチドと高い配列相同性(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%のアミノ酸配列同一性)を有し、例えば、PD−1と結合するか、またはPD−1のリガンドと結合することにより、PD−1アンタゴニスト活性を発揮する天然ポリペプチドの一部を意味する。好ましい実施形態では、このような断片は、配列番号3、好ましくはそのアミノ酸20〜221などの、PD−1と結合するB7−DCタンパク質の細胞外ドメイン(ECD)からなるであろう。PD−1ポリペプチドの場合、有効断片は、PD−1の天然リガンドと結合し、前記リガンドによるPD−1媒介阻害的シグナル伝達の刺激を妨げる結合ドメインを含んでなる前記ポリペプチドの一部であろう。有効断片は、天然結合部位との結合に関して、それらが由来する分子と競合する能力によって同定され得る。例えば、有効断片は、PD−1との結合に関して野生型B7−DCと競合する。
【0043】
抗体に関して、「有効断片」とは、完全な免疫グロブリンよりも小さい抗体の抗原結合部分を意味する。このような断片としては、本明細書において受容体またはリガンドとして開示されるポリペプチドのいずれかと反応し、結合することができるFabおよびF(ab)’断片が含まれる。これらのFabおよびF(ab’)断片は完全抗体のFc部分を欠き、完全抗体よりも迅速に循環から排除され、非特異的組織結合性を持ち得る(Wahl et al., J. Nuc. Med. 24:316-325 (1983))。また、Fv断片も含まれる(Hochman, J. et al. (1973) Biochemistry 12:1130-1135、 Sharon, J. et al.(1976) Biochemistry 15:1591-1594)。これらの種々の断片は、プロテアーゼ切断または化学的切断などの常法を用いて作製される(例えば、Rousseaux et al., Meth. Enzymol., 121:663-69 (1986)参照)。
【0044】
本明細書においてPD−1アンタゴニストの「可溶性部分」とは、膜貫通部分またはセグメントのいずれの部分も含まない全長ポリペプチドの一部を意味する。例えば、B7−DCに関して、可溶性部分は細胞外部分(N末端シグナル配列を含むまたは含まない)を含むが、膜貫通部分のいずれの部分も含まない(または少なくとも溶解度の低減には十分でない)。従って、ヒトB7−DCのECDは配列番号3として示され、全長分子のIgV様およびIgC様ドメインの双方、すなわち、全長配列のアミノ酸20〜221(配列番号1)からなる。
【0045】
本明細書において「共刺激ポリペプチド」とは、T細胞上の細胞表面分子と相互作用した際にT細胞の活性を調節するポリペプチドである。従って、T細胞の応答はエフェクター(例えば、CTLまたは抗体産生B細胞)応答、1以上のエフェクター(例えば、CTLまたは抗体産生B細胞)応答を助けるヘルパー応答または抑制的応答であり得る。
【0046】
本明細書において「処置計画」とは、疾患の処置または抗原もしくは免疫原に対する免疫系の応答の増強もしくは低減、例えば、このような応答に関与する1以上の細胞もしくは細胞種の数もしくは活性の増大もしくは低減などの所望の生理学的変化を達成するための方法を意味する。該処置または方法は哺乳類などの動物、特にヒトに、疾患を有効に処置するまたは該生理学的変化をもたらすのに十分な量の、該計画の2以上の化学剤または成分を投与することを含んでなる。該化学剤または成分は、例えば同じ組成物の一部として一緒に投与されるか、または時にもしくは異なる時点で個別に、また単独で投与され(すなわち、各薬剤または成分の投与は1以上の薬剤または成分から有限の時間をおき)、該1以上の薬剤または成分の投与は単独または別個で投与した場合の該薬剤または成分のいずれのものよりも高い結果を達成する。
【0047】
本明細書において「単離された」とは、その化合物が天然に存在する場合と異なる環境にある、例えば、ペプチドをそれが天然には見られない濃度まで濃縮することなどによってその天然環境から分離された目的化合物(例えば、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのいずれか)を表すことを意味する。「単離された」とは、目的化合物が実質的に富化された、および/または目的化合物が部分的または実質的に精製されたサンプル内にある化合物を含むことを意味する。
【0048】
本明細書において「ポリペプチド」とは、修飾(例えば、リン酸化またはグリコシル化)とは無関係に任意の長さのアミノ酸鎖を意味する。本発明のポリペプチドは組換えポリペプチド、天然ポリペプチドまたは合成ポリペプチド、好ましくは、組換えポリペプチドであり得る。
【0049】
本明細書において「変異体」ポリペプチドは、対応する野生型ポリペプチドのアミノ酸配列に比べて少なくとも一つのアミノ酸配列の変更を含む。
【0050】
本明細書において「アミノ酸配列の変更」とは、例えば、1以上のアミノ酸の置換、欠失、または挿入であり得る。
【0051】
本明細書において「部分」、「セグメント」および「断片」とは、ポリペプチドに関して用いられる場合、アミノ酸残基などの残基の連続的配列を意味し、このような配列はより大きな配列の一部分を形成する。例えば、ポリペプチドがトリプシンまたはキモトリプシンなどの一般的なエンドペプチダーゼのいずれかで処理を受けた場合、このような処理から得られるオリゴペプチドは最初のポリペプチドの部分、セグメントまたは断片に相当する。よって、ポリペプチドの「断片」とは、全長タンパク質のより短いポリペプチドであるポリペプチドの任意のサブセットを意味する。一般に、断片はアミノ酸5個以上の長さである。
【0052】
本発明のポリペプチド(またはその断片)の誘導体、類似体または同族体は、(i)1以上のアミノ酸残基が保存または非保存アミノ酸残基(好ましくは、保存アミノ酸残基)で置換されているもの、このような置換アミノ酸残基は遺伝コードによってコードされているものであってもなくてもよい)、または(ii)1以上のアミノ酸残基が置換基を含むもの、または(iii)成熟ポリペプチドがポリペプチドの半減期を延長するための化合物(例えば、ポリエチレングリコール)などの別の化合物と融合されているもの、または(iv)成熟ポリペプチドまたはプロタンパク質配列の精製に用いられるリーダー配列または分泌配列または配列などの付加的アミノ酸が成熟ポリペプチドと融合されているものであり得る。このような誘導体および類似体は本明細書での教示から当業者の範囲内であると思われる。
【0053】
本明細書において、「価数」とは、分子当たりに利用可能な結合部位の数を意味する。
【0054】
本発明によれば、「同一性%」または「%同一」とは、配列に関していう場合、ある配列が特許請求されるまたは記載される配列と、比較される配列「比較配列」と記載されるまたは本発明の配列(「参照配列」)が整列(alignment)された後に比較されることを意味する。その後、同一性%は下式:
同一性%=100[1−(C/R)]
に従って求め、ここで、式中、Cは参照配列と比較配列とのアライメントの長さにわたる参照配列と比較配列の間の差異[すなわち、(i)参照配列中の各塩基またはアミノ酸が整列された比較配列中に対応する塩基またはアミノ酸を持たない場合、および(ii)参照配列中の各ギャップ、および(iii)整列された参照配列中の各塩基またはアミノ酸が整列された比較配列中の塩基またはアミノ酸と異なる場合が差異をなす]の数を表し、Rは、参照配列中に作り出されたギャップ(これもまた塩基またはアミノ酸として計数される)を含んだ比較配列との配列の長さにわたる参照配列中の塩基またはアミノ酸の数である。比較配列と参照配列の間に上記のように算出される同一性%が特定の最小同一性%とほぼ同じかまたはそれより大きい配列が存在する場合、上記で算出された同一性%が特定の同一性%よりも小さい配列が存在し得たとしても、その比較配列は参照配列と特定の最小同一性%を有する。
【0055】
本明細書において、「保存的アミノ酸置換」とは、置換されたアミノ酸が類似の構造的または化学的特性を有する置換を意味し、「非保存的」アミノ酸置換は、置換されたアミノ酸の電荷、疎水性、または嵩が有意に変更されるものである。非保存的置換は、(a)例えば、シートまたはらせんコンフォメーションのような置換領域におけるペプチド主鎖の構造、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性または(c)側鎖の嵩の維持に対するそれらの効果がより有意に異なる。
【0056】
保存的アミノ酸置換の例としては、置換が以下の5群のうち一つの中でのものが挙げられる:1)小さな脂肪族、非極性またはやや極性のある残基(Ala、Ser、Thr、Pro、Gly)、2)極性、負電荷を有する残基およびそれらのアミド(Asp、Asn、Glu、Gln)、極性、正電荷を有する残基(His、Arg、Lys)、大きな脂肪族、非極性残基(Met、Leu、Ile、Val、Cys)、および大きな芳香族残基(Phe、Tyr、Trp)。非保存的アミノ酸置換の例としては、1)親水性残基(例えば、セリルまたはトレオニル)が疎水性残基(例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルまたはアラニル)から(またはにより)置換される場合、2)システインまたはプロリンが他の残基から(またはにより)置換される場合、3)電気的に陽性の側鎖を有する残基(例えば、リシル、アルギニルまたはヒスチジル)が電気的に陰性の残基(例えば、グルタミルまたはアスパルチル)から(またはにより)置換される場合、または4)嵩高の側鎖を有する残基(例えば、フェニルアラニン)が側鎖を持たない残基(例えば、グリシン)から(またはにより)置換される場合が挙げられる。
【0057】
「個体」、「宿主」、「被験体」、および「患者」は、本明細書では互換的に用いられ、限定されるものではないが、霊長類、例えばヒト、ならびに齧歯類、例えばマウスおよびラット、ならびに他の実験動物を含む哺乳類を意味する。
【0058】
本明細書において「有効量」または「治療上有効な量」とは、処置される病態の1以上の症状を処置、阻害もしくは緩和するのに、またはそうでなければ、所望の薬理学的および/または生理学的効果、特に、選択された抗原に対するT細胞応答の増強を提供するのに十分な用量を意味する。厳密な用量は、被験体に依存する変数(例えば、齢、免疫系の健全性)、および投じられる処置などの様々な因子によって異なる。
【0059】
本明細書において「薬学上許容される担体」とは、任意のおよびあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張性および吸収遅延剤などを含む。薬学上有効な物質に対するこのような媒体および薬剤の使用は当該技術分野において周知である。慣例の媒体または薬剤が有効化合物と不適合である場合を除き、治療組成物でのその使用が意図される。補助的有効化合物も本組成物に配合することができる。
【0060】
「抗体」とは、完全な分子ならびに抗原結合部位を含むその断片の双方を含むことを意味する。完全な抗体構造はしばしばHとして示され、抗体が一般に2本の軽(L)アミノ酸鎖と2本の重(H)アミノ酸鎖を含んでなることを意味する。両鎖は構造的に相補する抗原標的と相互作用することができる領域を有する。これらの標的と相互作用する領域は「可変」または「V」領域と呼ばれ、抗原特異性の異なる抗体からくるアミノ酸配列の違いにより特徴付けられる。H鎖またはL鎖いずれかの可変領域は、抗原標的と特異的に結合することができるアミノ酸配列を含む。これらの配列内には、特異性の異なる抗体間で極端に変動することから「超可変」と呼ばれるより小さな配列がある。このような超可変領域は「相補性決定領域」または「CDR」領域とも呼ばれる。これらのCDR領域は、特定の抗原決定基構造に対する抗体の基本的特異性を説明する。CDRは可変領域内の非連続的アミノ酸ストレッチに相当するが、種にかかわらず、これらの重要なアミノ酸配列の可変重鎖および軽鎖領域内での位置は、可変鎖のアミノ酸配列内の位置と類似性を有することが分かっている。総ての抗体の可変重鎖および軽鎖はそれぞれ、個々の軽(L)鎖および重(H)鎖について他とはそれぞれ不連続の3つの3CDR領域(L1、L2、L3、H1、H2、H3と呼ばれる)を有する。認知されているCDR領域がKabat et al, J. Biol. Chem. 252:6609-6616 (1977)により記載されている。本発明により開示されている抗体はまた完全に合成されたものであってもよく、抗体のポリペプチド鎖が合成され、本明細書に受容体として開示されるポリペプチドとの結合に関して至適化することができる。このような抗体はキメラまたはヒト化抗体であってもよく、構造的に完全な四量体であってもよいし、あるいは二量体であって、1本の重鎖と1本の軽鎖だけを含んでなってもよい。
【0061】
発明の詳細な説明
本発明は、免疫応答を増強するための増強剤とともに投与される、T細胞、好ましくはヒトT細胞において阻害的シグナル伝達を低減または抑制する化合物を含んでなる、哺乳類において疾患を処置するための処置計画または併用療法を提供する。
【0062】
本発明の方法はまた、広域免疫調節剤およびこれらの組成物の使用に関する。一般に、これらの方法から生じるT細胞応答の増強は、同用量の前記PD−1アンタゴニストまたは前記増強剤いずれか単独を投与することから生じるT細胞応答の増強よりも大きい。
【0063】
開示されている組成物および計画は、T細胞を含む免疫応答を刺激または増強するために有用である。よって、本発明の方法は、T細胞活性の増強から利益を得る病態の処置に最も有用であり、この場合、疾患がT細胞応答の増強は、疾患がたとえ特異的にT細胞応答の低減により引き起こされる、または悪化される場合でなくとも、該疾患の処置に必要または十分である。好ましい実施形態では、治療または予防される疾患の種類は、悪性腫瘍、または細菌、ウイルス、原虫、蠕虫もしくは他の細胞内微生物病原体により引き起こされる、すなわち細胞傷害性Tリンパ球により攻撃される慢性感染性疾患である。開示されている組成物を用いたT細胞の活性化はまた、免疫抑制を特徴とする症状を治療または予防するのにも有利である。
【0064】
本発明によれば、T細胞応答は、T細胞表面の受容体と結合する分子およびそのような受容体のリガンドと結合する分子により調節され得る。PD−1の場合、PD−1と結合してその阻害作用を低減する分子および/または1以上のPD−1リガンドと結合してそれらのPD−1と結合する能力を低減する分子は、そのPD−1の能力を低減してT細胞応答を阻害し、それによりこの応答およびその免疫学的作用を増強する作用を有する。
【0065】
A.PD−1受容体アンタゴニスト
PD−1受容体のアンタゴニストを含有する組成物が提供され、PD−1のリガンドと結合してそれを遮断し、PD−1受容体に対するリガンドの結合に干渉するもしくは阻害するか、またはPD−1受容体を介した阻害的シグナル伝達を誘導することなくPD−1受容体と直接結合してそれを遮断する化合物または薬剤を含む。別の実施形態では、PD−1受容体アンタゴニストは阻害的シグナル伝達を誘発することなくPD−1受容体と直接結合し、かつまた、PD−1受容体のリガンドと結合してリガンドのPD−1受容体を介したシグナル伝達誘発を低減または阻害する。PD−1受容体と結合し、阻害シグナルの伝達を誘発するリガンドの数および/または量を低減することにより、PD−1シグナル伝達により送達される負のシグナルにより弱まる細胞が少なくなり、より強力な免疫応答が達成され得る。
【0066】
本発明によれば、PD−1シグナル伝達は主要組織適合性複合体(MHC)により提示されるペプチド抗原と近接してPD−1リガンド(B7−H1またはB7−DCなど)に結合することを必要とする(例えば、Freeman Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 105:10275-10276 (2008)参照)。よって、T細胞膜上でのPD−1およびTCRの同時結合を妨げるタンパク質、抗体または小分子は、本発明により意図される有用なPD−1アンタゴニストである。
【0067】
例示的PD−1受容体アンタゴニストとしては、限定されるものではないが、B7−DCポリペプチド(これらの同族体および変異体を含む)、ならびに以上のいずれかの有効断片、これらのいずれかを組み込んだ融合タンパク質が挙げられる。好ましい実施形態では、融合タンパク質はヒトIgGなどの抗体のFc部分と結合されたB7−DCの可溶性部分を含んでなり、ヒトB7−DCの膜貫通部分の全部または一部は組み込んでいない。PD−1受容体アンタゴニストはまた、PD−1のリガンドまたはPD−1それ自体(そのような結合の後にPD−1とTCRの同時結合が起こらない場合)と結合することによりPD−1受容体のシグナル伝達を低減するか、またはそれに干渉する小分子アンタゴニストまたは抗体であってもよく、それにより、PD−1受容体を介した阻害的シグナル伝達は誘発されない。
【0068】
本明細書で提供されるPD−1受容体アンタゴニストは一般にインビボおよびエクスビボにおいて免疫応答刺激治療薬として有用である。一般に、開示されているアンタゴニスト組成物は、被験体の免疫系が免疫応答を惹起する疾患または障害に対して疾病素因を有していた、または有している被験体を処置するのに有用である。
【0069】
1.B7−DCポリペプチド
ある特定の実施形態では、B7−DCタンパク質はPD−1受容体アンタゴニストとして使用することができる。B7−DCはPD−1の天然リガンドであり、B7−H1よりも高い親和性でPD−1と結合し、従って、B7−H1:PD−1相互作用を阻害することができる。変異体、同族体およびその断片を含む好適なB7−DCポリペプチドは、内因性シグナルペプチドを含む(配列番号1)または含まない(配列番号2)以下の全長ヒトB7−DCポリペプチドから得ることができる。
【化1】

(配列番号1)
【化2】

(配列番号2)
【0070】
B7−DCを含むB7ファミリー分子は、細胞表面で発現され、膜近位定常IgCドメインと膜遠位IgVドメインを有する。これらのリガンドの受容体は共通の細胞外IgV様ドメインを有する。受容体−リガンド対の相互作用は、主としてリガンドと受容体のIgVドメインの残基により媒介される。一般に、IgVドメインは、それぞれβ鎖の層を含む2枚のシートを有することが記載されている。これらのβ鎖はA’、B、C、C’、C’’、D、E、F、およびGと呼ばれる。このようなポリペプチドの構造は文献に記載されている(Molnar et al., Crystal structure of the complex between programmed death-1 (PD-1) and its ligand PD-L2, PNAS, Vol. 105, pp. 10483-10488 (29 July 2008)参照)。
【0071】
膜貫通タンパク質であるB7−DCは、その単量体形態で、分子の細胞外部分(細胞外ドメインまたはECD)を構成するIgVドメインと、IgCドメインとを含んでなり、このIgV様ドメインはPD−1結合ならびに本発明の方法に挙げられている他の機能に対して完全または部分的に応答する。ヒトタンパク質に関して、IgVドメインはB鎖とF鎖(上記参照)を結合するジスルフィド結合を有すること(これは多くのIgVドメインの特徴であると思われる)、およびB7−1およびB7−2の双方のIgVドメインと類似する三次元構造を有することを特徴とする(Molnar et al.(2008), 前掲参照)。
【0072】
一つの実施態様では、B7−DC変異体ポリペプチドはこれらのβ鎖の1以上内に、あり得る任意の組合せでアミノ酸変異(すなわち、置換、欠失または挿入)を含む。別の実施形態では、B7−DC変異体は、A’、C、C’、C’’、D、E、F、またはG β鎖内に1以上のアミノ酸変異(すなわち、置換、欠失、または挿入)を含む。好ましい実施形態では、B7−DC変異体はG β鎖内に1以上のアミノ酸変異を含む。別の実施形態では、変異体B7−DCポリペプチド断片は、B7−DCのIgCドメインおよびIgVドメインを含む。別の実施形態では、変異体B7−DCポリペプチド断片は、B7−DCのIgVドメインを含む。
【0073】
ヒトおよびマウスB7−DCタンパク質は短い細胞質内ドメイン、単一の膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインを含む。細胞外ドメインは、膜近位IgCドメインと膜遠位IgVドメインの二つのIgドメインを含む。変異体B7−DCポリペプチドの有用な断片は可溶性断片を含む。可溶性B7−DC断片は、産生細胞から放出、分泌またはそうでなければ抽出され得るB7−DCの断片である。一つの実施態様では、変異体B7−DCポリペプチド断片はB7−DCの全細胞外ドメインを含む。B7−DCの細胞外ドメインはネズミまたはヒトB7−DCのアミノ酸約20〜約221のアミノ酸またはその有効な断片を含む。別の実施形態では、変異体B7−DCポリペプチド断片は、B7−DCのIgCドメインおよびIgVドメインを含む。別の実施形態では、変異体B7−DCポリペプチド断片はB7−DCのIgVドメインを含む。
【0074】
PD−1のシグナル伝達には、主要組織適合性複合体(MHC)により提示されるペプチド抗原と近接してPD−1リガンド(一般にB7−H1)と結合する必要があると考えられる(Freeman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 105:10275-10276 (2008))。よって、T細胞膜でのPD−1およびTCRの同時結合を妨げるタンパク質、抗体または小分子は、本発明により意図される有用なPD−1アンタゴニストである。
【0075】
本発明の方法および組成物において有用なPD−1アンタゴニストは、ECDを組み込んだB7−DCタンパク質の断片を含む。あるいは、B7−DCの断片は、PD−1受容体と結合してPD−1受容体を介した阻害的シグナル伝達に干渉する、またはそれを妨げる、またはそうでなければ低減するのに十分な、IgVまたはIgV様ドメイン、好ましくはアミノ酸20〜221、より好ましくは20〜121を含んでなる細胞外ドメインの一部を含む。好ましい実施形態では、B7−DC断片はPD−1受容体との結合に関してB7−H1と競合する。
【0076】
一つの実施態様では、変異体B7−DCポリペプチド断片は、PD−1との結合に重要なポリペプチドの領域を含み得る。これらのポリペプチド断片は、PD−1との結合に関して競合し、かつ、天然B7−DCがPD−1と結合しないようにするのに有用であり得る。PD−1との結合に関して競合することにより、B7−H1およびB7−DCとPD−1との相互作用の阻害が、そうでなければ生じる免疫応答の抑制を阻害するので、これらの断片は免疫応答を増強するのに有用であり得る。PD−1と競合的に結合し得るマウスまたはヒトB7−DCのポリペプチド断片は、例えば、アミノ酸101〜108または110〜114を含み得る。野生型B7−DCとPD−1の結合は一般に、野生型B7−DCの断片の非存在下での野生型B7−DCとPD−1の結合レベルに比べて少なくとも50パーセント、60パーセント、70パーセント、75パーセント、80パーセント、90パーセント、95パーセント、または95パーセントを超えて阻害される。本発明の方法および/または組成物において有用な例示的B7−DC断片は、限定されるものではないが、以下の細胞外ドメインを含む。
【0077】
ヒトB7−DC細胞外ドメイン(ECD):
【化3】

(配列番号3)
およびネズミB7−DC ECD:
【化4】

(配列番号4)
カニクイザルB7−DC ECD:
【化5】

(配列番号15)
【0078】
本発明の方法および組成物において有用な他の多くの霊長類配列が、Onlamoon et al., Immunology, Vol. 124, pp. 277-293 (2008)で提供されている。
【0079】
本発明の組成物および方法において有用なPD−1アンタゴニストはまた、第一および第二のポリペプチド部分を含んでなる融合タンパク質(下記の通り)を含み、該融合タンパク質または少なくともその第一のポリペプチド部分は、特に、該融合タンパク質がPD−1と結合してそれを遮断するか、またはPD−1のリガンドと結合してそれを遮断する場合には、PD−1アンタゴニスト活性を有する。このような融合タンパク質の第一のポリペプチド部分は、PD−1アンタゴニストポリペプチドまたはそのPD−1結合断片、それ以外に本発明の方法においてPD−1アンタゴニストとして用いるために本明細書で挙げられたもののいずれかを含んでなるか、またはそれからなる。このような融合タンパク質の好ましい実施形態では、挙げられた第一のポリペプチド部分は、挙げられた第二のポリペプチド部分のN末端である。別の実施形態では、挙げられた第一のポリペプチド部分は、挙げられた第一および第二のポリペプチド部分を含んでなるアミノ酸に加えて、オリゴペプチドにより挙げられた第二のポリペプチド部分に連結され、ここで、このアミノ酸連結は該融合タンパク質のPD−1アンタゴニスト活性を実質的に低下させない。
【0080】
好ましい二量体融合タンパク質では、この二量体は、二量体化された正常なIg重鎖においてジスルフィド結合されている同じCys残基である二つのIg重鎖のCH領域におけるCys残基の共有結合から生じる。
【0081】
融合タンパク質結合相手として通常用いられる多数のポリペプチド配列が当該技術分野で周知である。有用なポリペプチド結合相手の例としては、限定されるものではないが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、myc、ヘマグルチニン、Flag(商標)タグ(Kodak, New Haven, CT)、マルトースE結合タンパク質、およびAタンパク質が挙げられる。
【0082】
さらに別の実施形態は、変異体B7−DCポリペプチドの細胞外ドメインと融合されているBirA基質を有する四量体構築物を提供する。四量体構築物を作製する方法は当該技術分野で公知である(Pertovas, et al., J. Exp. Med., 203:2281 (2006)参照)。
【0083】
例示的ネズミB7−DC融合タンパク質は、ネズミIgG2のアミノ酸237〜469と融合されているネズミB7−DCのアミノ酸20〜221を含む(CAA49868)。一つの限定されない例では、ヒトB7−DC融合タンパク質は、ヒトIgG1のアミノ酸245〜476と融合されているヒトB7−DCのアミノ酸20〜221を含む(AAA02914)。B7−DC融合タンパク質に対するシグナルペプチドは、宿主からその融合タンパク質の分泌を促進する内因性シグナルペプチドまたは他のいずれかのシグナルペプチドを含む。別の実施形態では、第一のポリペプチドはIgVドメインのみを含む。他の実施形態は、可変領域が存在しない、IgG1などのIgG抗体のヒンジおよびFcドメインを含んでなってよい。他の実施形態は、特に、エフェクター機能を低減するN297Qまたは他の突然変異を有する、IgG2またはIgG4のヒンジおよびFc領域の使用を含む。
【0084】
本発明の方法および組成物によれば、PD−1アンタゴニストとして有用なポリペプチド、またはPD−1アンタゴニストとして有用な融合タンパク質の第一のポリペプチド部分は、配列番号1のアミノ酸1〜221、好ましくは配列番号1のアミノ酸20〜221、または配列番号1のアミノ酸26〜221、または配列番号3もしくは4のアミノ酸1〜202、より好ましくは配列番号1のアミノ酸20〜121、または配列番号3もしくは4のアミノ酸1〜102と少なくとも60%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも99%に同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる。
【0085】
一つの実施態様では、PD−1アンタゴニストとして有用なポリペプチド、またはPD−1アンタゴニストとして有用な融合タンパク質の第一のポリペプチド部分は、配列番号1のアミノ酸1〜221からなるか、または配列番号1のアミノ酸20〜221からなるか、または配列番号1のアミノ酸26〜221からなるか、または配列番号3もしくは4のアミノ酸1〜202からなる。一つの実施態様では(配列番号2)、それは配列番号1のアミノ酸1〜19を含まない。
【0086】
他の特定の例では、PD−1アンタゴニストポリペプチドまたはPD−1アンタゴニスト融合タンパク質の第一のポリペプチド部分は、配列番号1のアミノ酸配列20〜121を含んでなり、好ましくは、ここで、それはその残基110〜114にアミノ酸配列WDYKYを含んでなるか、またはそれは配列番号3のアミノ酸1〜102を含んでなり、好ましくは、ここで、それはその残基91〜95にアミノ酸配列WDYKYを含んでなる。
【0087】
好ましい実施形態では、このような同一性%は、本明細書の他所に定義される保存的アミノ酸置換に頼ることにより達成される。
【0088】
このような一つの実施態様では、PD−1アンタゴニストポリペプチド、またはPD−1アンタゴニスト融合タンパク質の第一のポリペプチド部分は配列番号1のアミノ酸1〜19を含まないか、または膜貫通ドメインのいずれの部分も含まない(特にこのようなドメインの全部ではない)か、またはPD−1リガンドまたは他のPD−1アンタゴニストタンパク質の細胞内(または可溶性)ドメインの部分を含まない(特にこのようなドメインの全部ではない)。好ましい実施形態では、このようなアンタゴニストまたは第一のポリペプチド部分は配列番号1の細胞外ドメイン(ECD)のみを含んでなり、従って、前記配列のポリペプチドの可溶性部分または該可溶性部分の断片のみを含んでなる。
【0089】
他のこのような実施形態では、PD−1アンタゴニストポリペプチドまたはPD−1アンタゴニスト融合タンパク質の第一のポリペプチド部分は、PD−1リガンドのIgVドメインもしくはIgV様ドメインもしくはそのPD−1結合断片を含んでなるか、またはPD−1リガンドのIgVドメインもしくはIgV様ドメインもしくはそのPD−1結合断片からなる。特定の例では、このようなPD−1リガンドは野生型B7−DCまたはB7−H1分子、好ましくはマウスまたは霊長類、好ましくはヒト、野生型B7−DCまたはB7−H1分子である。
【0090】
他のこのような実施形態では、PD−1アンタゴニストポリペプチドまたはPD−1アンタゴニスト融合タンパク質の第一のポリペプチド部分は、PD−1リガンドのIgVドメインまたはIgV様ドメインのPD−1結合断片を含んでなり、特に、IgVドメインまたはIgV様ドメインは配列番号1のアミノ酸20〜121または配列番号3のアミノ酸1〜102からなる。
【0091】
本発明のPD−1アンタゴニストはまた、配列番号1(ヒト全長)のアミノ酸20〜121のPD−1結合断片または配列番号3(細胞外ドメインまたはECD)のアミノ酸1〜102を含む。
【0092】
その特定の実施形態では、該ポリペプチドまたはPD−1結合断片はまた、配列番号1の残基110〜114にアミノ酸WDYKYを、または配列番号3の残基91〜95にWDYKYを組み込んでいる。限定されない例として、このようなPD−1結合断片は、配列番号1のアミノ酸20〜121の配列の少なくとも10個または少なくとも20個または少なくとも30個または少なくとも40個または少なくとも50個または少なくとも60個または少なくとも70個または少なくとも75個または少なくとも80個または少なくとも85個または少なくとも90個または少なくとも95個または少なくとも100個の連続するアミノ酸を含んでなり、このような各PD−1結合断片の好ましい実施形態は、配列番号1の残基110〜114にアミノ酸WDYKYを、または配列番号3の残基91〜95にWDYKYを部分断片として含んでなる。
【0093】
本発明により具体的に意図される他の好ましいポリペプチドおよびPD−1結合断片は、配列番号1(ヒト全長)のアミノ酸20〜121のポリペプチド配列およびそのPD−1結合断片を含んでなり、このようなポリペプチドまたはPD−1結合断片では、残基42および/または102にシステインが存在し(両方の位置にシステインが存在するのが好ましい)、および/または残基21にフェニルアラニンが存在し、および/または残基28にグルタミン酸が存在し、および/またはトレオニン、および/または残基60にグルタミンが存在し、および/または残基101にグルタミン酸が存在し、および/または残基103にイソロイシンが存在し、および/または残基105にイソロイシンが存在し、および/または残基107にグリシンが存在し、および/または残基108にバリンが存在し、および/または残基110にトリプトファンが存在し、および/または残基111にアスパラギン酸が存在し、および/または残基112にチロシンが存在し、および/または残基113にリシンが存在し、および/または残基114にチロシンが存在する(ただし、PD−1結合断片の場合、この断片はこのようなアミノ酸位置を含むに十分長いものである)。
【0094】
本発明により具体的に意図されるさらなる好ましいポリペプチドおよびPD−1結合断片は、配列番号3(ヒトECD)または配列番号4(ネズミECD)のアミノ酸1〜102のポリペプチド配列およびそのPD−1結合断片を含み、このようなポリペプチドまたはPD−1結合断片では、残基23および/または83にシステインが存在し(両方の位置にシステインが存在するのが好ましい)、および/または残基2にフェニルアラニンが存在し、および/または残基9にグルタミン酸が存在し、および/または残基37にトレオニンまたはアルギニンが存在し(トレオニンが好ましい)、および/または残基41にグルタミンが存在し、および/または残基82にアルギニンが存在し、および/または残基84にロイシンが存在し、および/または残基86にイソロイシンが存在し、および/または残基88にグリシンが存在し、および/または残基89にアラニンが存在し、および/または残基91にトリプトファンが存在し、および/または残基92にアスパラギン酸が存在し、および/または残基93にチロシンが存在し、および/または残基94にリシンが存在し、および/または残基95にチロシンが存在する(ただし、PD−1結合断片の場合、この断片はこのようなアミノ酸位置を含むに十分長いものである)。
【0095】
さらなる実施形態では、上記のポリペプチドはいずれも、マウスまたは霊長類、好ましくはヒトのものなどのB7−DCまたはB7−H1ポリペプチドのシグナルドメイン、膜貫通ドメインまたはC末端ドメインに由来する例えば1〜10個の連続するアミノ酸の部分または断片を組み込み得る。
【0096】
このようなポリペプチドおよび/またはPD−1結合断片は本発明の融合タンパク質のいずれに存在してもよく、例えば、このようなポリペプチドまたはPD−1結合断片はこのような融合タンパク質の「第一のポリペプチド」に相当する。
【0097】
特定の例では、本発明の処置計画において用いるための増強剤と組み合わせた分子は、配列番号1のアミノ酸20〜221のPD−1結合断片を含んでなる。このような一つの実施態様では、断片は配列番号1のアミノ酸20〜121であり、好ましくは、断片は配列番号1のアミノ酸110〜114を含む。いくつかの実施形態(ebodiments)では、1を超えるこのような断片が存在し(本明細書の他所に記載さている通り)、分子はB7−DCタンパク質の少なくとも2、3、4、5またはそれを超える断片を含んでなり、特に、断片は配列番号1のアミノ酸20〜221の一部であるか、またはそれを含む。その好ましい実施形態では、少なくとも一つの前記断片は配列番号1のアミノ酸20〜121であり、より好ましくは、少なくとも一つの前記断片が配列番号1のアミノ酸110〜114(すなわち、配列WDYKY(配列番号14))を含む。好ましい実施形態では、PD−1結合断片は、少なくとも10または少なくとも25または少なくとも50または少なくとも75または少なくとも100個の長さの連続するアミノ酸を含んでなる。
【0098】
内因性ヒトシグナルペプチドは以下の配列MIFLLLMLSLELQLHQIAA(配列番号5)を含み、配列番号1の最初の19のアミノ酸に相当する。ある特定の実施形態では、B7−DCのポリペプチド断片は内因性または異種シグナルペプチドの1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の連続するアミノ酸を含む(形質転換細胞で発現させ、そこから分泌させることにより、組換えB7−DCポリペプチドの生産に使用することができる)。また、有用なB7−DCポリペプチドは、そのB7−DC断片がPD−1受容体に拮抗する能力を保持する限り、B7−DCの膜貫通ドメインの1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の連続するアミノ酸、および/または細胞質ドメインの1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の連続するアミノ酸またはその組合せを含み得ると考えられる。
【0099】
PD−1−/−マウスの表現型は、PD−1がインビボにおける免疫応答の負のレギュレーターであるという直接的な証拠となる。PD−1の非存在下では、C57BL/6バックグラウンドを持つマウスは狼瘡様糸球体腎炎および進行性関節炎をゆっくり発症する(Nishimura, et al., Immunity, 11:141-151 (1999))。BALB/cバックグラウンドを持つPD−1−/−マウスは致死性の自己免疫拡張型心筋症を急速に発症する(Nishimura, et al., Science. 291:319-322 (2001))。しかしながら、実質的証拠は、B7−DCがT細胞応答を共刺激する働きをし得ることを示唆している。最適に満たないTCRシグナルの存在下では、B7−DCはインビトロにおいて増殖およびサイトカイン産生の増大を引き起こす(Tseng, et al., J. Exp. Med. 193:839-846 (2001))。他方、インビトロ研究では、T細胞応答におけるB7−DCの負の調節的役割が示唆されている。これらの矛盾したように見えるデータは、PD−1以外の、T細胞上のB7−DCに対するさらなる受容体の発現により最も良く説明される。
【0100】
よって、B7−DCタンパク質、その変異体、断片および融合物は、PD−1により媒介される阻害的シグナル伝達を妨げることによりT細胞応答を増強することに加え、T細胞を活性化する未知の受容体と結合することによりT細胞応答を直接増強するという利点を持ち得る。
【0101】
2.B7−H1ポリペプチド
別の実施形態では、本発明の処置計画において増強剤と組み合わせて用いるための化合物は、好ましくはマウスまたは霊長類、好ましくはヒトに由来する哺乳類B7−H1の断片であるか、それを含んでなり、該断片はPD−1と結合してそれを遮断するが、PD−1を介した阻害的シグナル伝達はもたらさず、該断片は少なくとも10または少なくとも20または少なくとも30または少なくとも40または少なくとも50または少なくとも60または少なくとも70または少なくとも80または少なくとも90または少なくとも100個の連続するアミノ酸の長さである。他の実施形態では、断片は、PD−1と結合する機能を有するが、T細胞の増殖の低減をもたらす阻害的シグナル伝達を生じない限り、様々な長さのものであってよい。このようなB7−H1断片はまた、本発明の融合タンパク質の第一のポリペプチド部分の一部としての使用が見出せる。
【0102】
B7−H1配列は以下の通りである。
ヒトB7−H1ポリペプチド(配列番号16):
【化5】

ネズミB7−H1(配列番号17)
【化6】

アカゲザル(Macaca mulatta)PD−L1(配列番号18)
【化7】

B7−H1−Igタンパク質はWO/2001/014557号公報(2001年3月1日公開)およびWO/2002/079499号公報(2002年10月10日公開)に記載されている。
【0103】
3.PD−1および他のポリペプチド
本発明の他の有用なポリペプチドは、PD−1受容体のリガンドと結合するものを含む。これらには、B7−H1またはB7−DCなどのPD−1リガンドと結合し、内因性PD−1受容体との結合を妨げ、それにより、阻害的シグナル伝達を妨げることができるPD−1受容体タンパク質またはその可溶性断片が含まれる。B7−H1はまた、タンパク質B7.1とも結合することが示されている(Butte et al., Immunity, Vol. 27, pp. 111-122, (2007))。このような断片はまた、天然リガンドとの結合を増強するA99L突然変異などの突然変異を含むPD−1タンパク質の可溶性ECD部分も含む(Molnar et al., Crystal structure of the complex between programmed death-1 (PD-1) and its ligand PD-L2, PNAS, Vol. 105, pp. 10483-10488 (29 July 2008))。B7−H1リガンドと結合し、内因性PD−1受容体との結合を妨げ、それにより、阻害的シグナル伝達を妨げることができるB7−1またはその可溶性断片も有用である。
【0104】
本発明の方法において有用なPD−1ポリペプチドは次の通りである。
ヒトPD−1(配列番号19)
【化8】

カニクイザルPD−1(配列番号20)
【化9】

本発明によれば、B7−1およびその断片もB7−H1と結合し、B7−H1を介してT細胞へ阻害的伝達を行うことができるので、この相互作用の遮断も、B7−H1を介して生じる阻害的シグナル伝達を低減することができる。本発明で用いるための化合物には、この種の相互作用を遮断する分子が含まれる。このような分子はButteら(2007)前掲に開示されており、B7−H1:B7−1およびB7−H1:PD−1のいずれもの相互作用を遮断する二重特異性を有する抗B7−H1抗体ならびにPD−L1:B7−1相互作用を遮断する一重特異性を示す抗体を含む。B7−1を遮断することによりこの相互作用を遮断する化合物も有用であり、抗B7−1抗体を含む。
【0105】
4.変異体ポリペプチド
本発明において有用なポリペプチドは、記載されているように、1以上のアミノ酸置換、欠失、または挿入を含むように突然変異されたものを含む。突然変異誘発の方法は当該技術分野で公知である。突然変異型または変異型のポリペプチドは、PD−1のリガンドと結合することにより、PD−1受容体を介した阻害的シグナル伝達を阻害または低減する。あるいは、変異体(例えば、B7−DCポリペプチド)はPD−1受容体と結合して、PD−1受容体を介した阻害的シグナル伝達を阻害、低減、または遮断することができる。変異体ポリペプチドはいずれの起源種のものであってもよい。一つの実施態様では、変異体ポリペプチドは哺乳類種に由来する。好ましい実施形態では、変異体ポリペプチドはネズミまたは霊長類ヒト、好ましくはヒト起源のものである。
【0106】
一つの実施態様では、変異体ポリペプチドは、PD−1に対して野生型または非変異型B7−DCと同じ結合親和性を有するが、非突然変異B7−DCポリペプチドに比べてPD−1受容体を介した阻害的シグナル伝達を誘発する能力を持たないか、または10%未満であるB7−DCポリペプチドである。他の実施形態では、該変異型B7−DCポリペプチドは、PD−1阻害的シグナル伝達を誘発することなく、野生型B7−DCよりもPD−1に対して10%、20%、30%、40%、50%、または60%の結合親和性を有する。
【0107】
変異型ポリペプチド(例えば、変異体B7−DCポリペプチド)は、PD−1拮抗活性が野生型に比べて実質的に低減されていない限り、アミノ酸置換、欠失または挿入の任意の組合せを有するものである。しかしながら、このような低減がある場合には、これは、その変異体が野生型タンパク質のPD−1アンタゴニスト活性の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%または95%(少なくとも100%であることが特に好ましい)を有するよう、野生型のせいぜい半分までであるべきである。該変異体から生じるこのような活性の増強はいっそうより望ましい。一つの実施態様では、単離されたB7−DC変異体ポリペプチドは、それらのアミノ酸配列が野生型B7−DCポリペプチド、特に哺乳類に由来するもの、好ましくは野生型ネズミまたは野生型霊長類、好ましくはヒトB7−DCポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、85、90、95、97、98、99、99.5、または100%の同一性を有するようなアミノ酸変異を有する。
【0108】
ポリペプチド配列同一性は、本明細書の以上に示される同一性%の定義を用いて算出することができる。
【0109】
ポリペプチドにおけるアミノ酸の置換は「保存的」または「非保存的」であり得る。
【0110】
B7−DCを含むB7ファミリー分子は細胞表面で発現され、膜近位定常IgCドメインと膜遠位IgVドメインを有する。これらのリガンドの受容体は共通の細胞外IgV様ドメインを有する。受容体−リガンド対の相互作用は、主としてリガンドと受容体のIgVドメインの残基により媒介される。一般に、IgVドメインは、それぞれβ鎖の層を含む2枚のシートを有することが記載されている。これらのβ鎖はA’、B、C、C’、C’’、D、E、FおよびGと呼ばれる。一つの実施態様では、B7−DC変異体ポリペプチドはこれらのβ鎖の1以上内に、あり得る任意の組合せでアミノ酸変異(すなわち、置換、欠失または挿入)を含む。別の実施形態では、B7−DC変異体は、A’、C、C’、C’’、D、E、FまたはG β鎖内に1以上のアミノ酸変異(すなわち、置換、欠失または挿入)を含む。一つの実施態様では、B7−DC変異体はG β鎖内に1以上のアミノ酸変異を含む。
【0111】
ネズミまたは霊長類、好ましくはヒトB7−DCに関して、変異体B7−DCポリペプチドは、限定されるものではないが、PD−1への結合を非突然変異B7−DCの場合よりも実質的に低減しない位置での置換、欠失、または挿入を含む。
【0112】
しかしながら、挙げられたアミノ酸位置における置換は、任意のアミノ酸またはアミノ酸類似体を用いて行うことができると理解される。例えば、挙げられた位置における置換は、任意の天然アミノ酸(例えば、アラニン、アスパラギン酸、アスパラギン、アルギニン、システイン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ロイシン、バリン、イソロイシン、リシン、メチオニン、プロリン、トレオニン、セリン、フェニルアラニン、トリプトファン、またはチロシン)を用いて行うことができる。
【0113】
本明細書に記載される置換はマウスおよび霊長類、特にヒトB7−DCに関するものであるが、当業者ならば他種(例えば、ラット、ハムスター、モルモット、アレチネズミ、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ウシまたは非ヒト霊長類)由来の相当するポリペプチドにおいても等価の変更を容易に行うことができることを注記する。
【0114】
好ましい断片としては、PD−1との結合に有効なB7−DCの細胞外ドメインの全部または一部が含まれる。
【0115】
一つの実施態様では、変異体B7−DCポリペプチド断片は、PD−1の阻害的シグナル伝達を誘発することなくPD−1と結合する能力を保持するものである。一つの実施態様は、全長B7−DCの断片であり、一般に、全長変異体B7−DCポリペプチドのPD−1アンタゴニスト活性の少なくとも20パーセント、30パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、70パーセント、80パーセント、90パーセント、95パーセント、98パーセント、99パーセント、100パーセントを有する、またはさらには100パーセントを超える変異体B7−DCポリペプチドを提供する。
【0116】
変異体B7−DCポリペプチドの有用な断片は、可溶性断片を含む。可溶性B7−DC断片は、産生細胞から放出、分泌またはそうでなければ抽出され得るB7−DCの断片である。一つの実施態様では、変異体B7−DCポリペプチド断片は、B7−DCの全細胞外ドメインを含む。B7−DCの細胞外ドメインは、ネズミまたは霊長類、好ましくはヒトB7−DCのアミノ酸約20〜約221のアミノ酸を含む。別の実施形態では、変異体B7−DCポリペプチド断片は、B7−DCのIgCドメインおよびIgVドメインを含む。別の実施形態では、変異体B7−DCポリペプチド断片はB7−DCのIgVドメインを含む。
【0117】
一つの実施態様では、変異体B7−DCポリペプチド断片は、PD−1に対する結合親和性に重要なポリペプチドの領域を含む。これらのポリペプチド断片は、PD−1受容体と結合してそれを遮断し、天然リガンドがPD−1受容体と結合しないようにし、それにより、免疫応答を増強するのに有用である。天然B7−H1またはB7−DCとPD−1との相互作用を阻害すると、そうでなければ起こる免疫応答の抑制が阻害される。PD−1と結合するマウスまたは霊長類、好ましくはヒトB7−DCのポリペプチド断片としては、限定されるものではないが、アミノ酸101〜105または111〜113を含む。PD−1受容体に対するB7−H1の結合は一般に、断片の不在下でのPD−1に対するB7−H1の結合レベルに比べて少なくとも50パーセントまたは少なくとも60パーセントまたは少なくとも70パーセントまたは少なくとも75パーセントまたは少なくとも80パーセントまたは少なくとも90パーセントまたは少なくとも95パーセントまたはそれを超えて阻害される。
【0118】
ヒトPD−1変異体A99LはB7−DCおよびB7−H1と、非突然変異型ヒトPD−1よりも高い親和性で結合する(Lazar Molnar et al PNAS 105 p. 10483-10488 (2008))。本発明の一つの実施態様では、阻害的シグナル伝達を低減する働きをする化合物は、この突然変異を組み込んだPD−1のECDなどの可溶性タンパク質である。
【0119】
5.修飾ポリペプチド
本発明において有用な、記載されているように変異体、同族体およびその断片を含むポリペプチドは、ポリペプチドの、例えば、リン酸化、メチル化、アミド化、硫酸化、アシル化、グリコシル化、SUMO化(sumoylation)およびユビキチン化など、通常の細胞環境中のポリペプチドに関連していることが分かっている化学部分により修飾することができる。
【0120】
このようなポリペプチドはまた、通常は細胞環境中のポリペプチドの一部ではない化学部分により修飾することもできる。このような修飾は、ポリペプチドの標的アミノ酸残基と、選択された側鎖または末端残基と反応することできる有機誘導体化剤を反応させることによって分子に導入することができる。もう一つの有用な修飾はタンパク質の環化である。このような修飾はまた、限定されるものではないが、放射性同位元素および蛍光化合物を含む、検出可能なシグナルを直接的または間接的のいずれかで提供することができる標識の導入も含む。
【0121】
ポリペプチドの化学誘導体の例としては、コハク酸または他の無水カルボン酸で誘導体化されたリシニルおよびアミノ末端残基が挙げられる。環状無水カルボン酸での誘導体化はリシニル残基の電荷を逆転させる効果を有する。アミノ含有残基を誘導体化するための他の好適な試薬としては、ピコリンイミド酸メチルなどのイミドエステル、リン酸ピリドキサール、ピリドキサール、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O−メチルイソ尿素、2,4ペンタンジオン、およびトランスアミナーゼにより触媒されるグリオキシレートとの反応が挙げられる。カルボキシル側基、アスパルチル、またはグルタミルは、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−(4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドなどのカルボジイミド(R−N=C=N−−R’)との反応により選択的に修飾することができる。さらに、アスパルチルおよびグルタミル残基は、アンモニアとの反応により、アスパラギニルおよびグルタミニル残基に変換することができる。本発明のポリペプチドはまた、1以上のL−アミノ酸に対して置換された1以上のD−アミノ酸を含むことができる。
【0122】
他の実施形態では、増強剤を本発明のPD−1アンタゴニストに化学的に連結させるなど、CTXなどの増強剤はそれ自体、阻害的シグナル伝達を低減する化合物の一部であってもよい。
【0123】
6.融合タンパク質
(i)第二のポリペプチドと直接融合された、または(ii)場合により、第二のポリペプチドと融合されたリンカーペプチド配列と融合された、PD−1アンタゴニストタンパク質、例えばB7−DCポリペプチド(変異体、同族体およびその断片を含む)の全部または一部を含んでなる、第一の融合相手またはポリペプチド部分を有する融合ポリペプチドもまた提供される。この融合相手の存在は、例えば、PD−1アンタゴニストポリペプチドの溶解度、親和性および/または価数を変化させ得る。開示される融合タンパク質は、上記のようなPD−1アンタゴニストポリペプチドのアミノ酸変異(すなわち、置換、欠失または挿入)の任意の組合せ、断片および/または修飾を含む。一つの実施態様では、B7−DC融合タンパク質は、第一の結合相手としてB7−DCタンパク質の細胞外ドメインを含む。別の実施形態では、このようなB7−DC融合タンパク質は、第一の結合相手としてB7−DCタンパク質のIgVドメインとIgCドメインを含む。別の実施形態では、変異体B7−DC融合タンパク質は、第一の結合相手としてB7−DCタンパク質のIgVドメインを含む。
【0124】
代表的な第一の融合相手としては、本明細書の上記に開示される、霊長類、好ましくはヒトまたはネズミB7−DCポリペプチド、その断片およびその変異体を含む。好ましい断片としては、B7−DCの細胞外ドメインを含む。挙げられているように、細胞外ドメインはシグナルペプチドの1〜10個の連続するアミノ酸、B7−DC膜貫通ドメインまたはその双方を含み得る。
【0125】
一つの実施態様では、本発明の組成物および/または産物および/または方法は、PD−1受容体アンタゴニスト、特に、B7−H1などのPD−1リガンドと結合することによりPD−1受容体に拮抗し、それによりリガンドがPD−1と相互作用するのを阻害する融合タンパク質を形成するように他のポリペプチドと結合されたポリペプチド(変異体、同族体およびその断片を含む)を用いる。別の実施形態では、PD−1受容体アンタゴニストポリペプチドまたはその変異体は、PD−1受容体と結合してそれを遮断することによりPD−1受容体に拮抗し、PD−1を介した阻害的シグナル伝達を阻害または低減する融合タンパク質を形成するように他のポリペプチドと結合される。
【0126】
第二のポリペプチド結合相手または第二のポリペプチド部分は、PD−1アンタゴニストポリペプチドに対してN末端にあってもC末端にあってもよい。好ましい実施形態では、第二のポリペプチドはPD−1アンタゴニストポリペプチドのC末端である。
【0127】
好ましい実施形態では、本発明の方法および組成物および/または産物での使用が意図される融合タンパク質は、少なくとも抗体の一部を含んでなる。分子生物学および組換え技術の方法が登場したことにより、組換え手段によって抗体分子を作出し、それにより、抗体のポリペプチド構造中に見られる特定のアミノ酸配列をコードする遺伝子配列を生成することが可能である。このような抗体は該抗体のポリペプチド鎖をコードする遺伝子配列をクローニングするか、または該ポリペプチド鎖を直接合成し、合成された鎖をインビトロで組み立てて、特定のエピトープおよび抗原決定基に対して親和性を有する有効な四量体(H)構造を形成することにより、作出することができる。これにより、種々の種および供給源に由来する中和抗体に特徴的な配列を有する抗体を容易に作出することができるようになった。
【0128】
抗体の供給源、あるいはそれらがインビトロまたはインビボにおいて、ウシ、ヤギおよびヒツジなどのトランスジェニック動物を用い、実験室規模もしくは商業的規模の大細胞培養を用い、バイオリアクターで、またはどの工程にも生きた生物を用いずに直接的化学的合成により、どのように組換え構築されたか、またはどのように合成されたかによらず、総ての抗体は全体的に類似の三次元構造を有する。この構造はしばしばとして示され、抗体が一般に2本の軽(L)アミノ酸鎖と2本の重(H)アミノ酸鎖を含んでなることを意味する。両鎖は構造的に相補する抗原標的と相互作用することができる領域を有する。これらの標的と相互作用する領域は「可変」または「V」領域と呼ばれ、抗原特異性の異なる抗体からくるアミノ酸配列の違いにより特徴付けられる。
【0129】
好ましい実施形態では、PD−1受容体アンタゴニストポリペプチド(断片、突然変異体および他の変異体を含む)は、(i)第二のポリペプチドと直接融合された、または(ii)場合により、第二のポリペプチドと融合されたリンカーペプチド配列と融合されたB7−DCタンパク質のまたはその変異体の全部または一部を有する第一の融合相手を有する。この融合相手の存在は、B7−DCポリペプチドの溶解度、親和性、および/または価数を変化させ得る。より好ましい実施形態では、B7−DCポリペプチドは、Ig重鎖定常領域の1以上のドメイン、より好ましくは、ヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ、C2およびC3領域に相当するか、またはネズミ免疫グロブリンCγ2a鎖のヒンジ、C2およびC3領域に相当するアミノ酸配列と融合される。好ましい実施形態では、定常領域は好ましくは、Fc受容体結合を抑制または低減する突然変異(例えば、N297Q)を含む。
【0130】
ヒト免疫グロブリンCγ1鎖のヒンジ、C2およびC3領域は以下のアミノ酸配列:
【化10】

(配列番号6)
を有する。
ネズミ免疫グロブリンCγ2a鎖のヒンジ、C2およびC3領域は以下のアミノ酸配列:
【化11】

(配列番号7)
を有する。
【0131】
例示的ネズミB7−DC融合タンパク質は、ネズミIgG2a(CAA49868)のアミノ酸237〜469と融合されているネズミB7−DCのアミノ酸20〜221を含む。ヒトB7−DC融合タンパク質は、ヒトIgG1(AAA02914)のアミノ酸245〜476と融合されているヒトB7−DCのアミノ酸20〜221を含み得る。B7−DC融合タンパク質のシグナルペプチドは内因性シグナルペプチドであっても、または宿主からの融合タンパク質の分泌を促す他のいずれのシグナルペプチドであってもよい。
【0132】
代表的なネズミB7−DC−Ig融合タンパク質は配列番号8の核酸配列によりコードされる。
【0133】
開示されている核酸配列は、本発明の方法および組成物において有用な融合タンパク質を合成するために発現レベルを高めるようにコドンの至適化を行うことができると考えられる。コドンの至適化の方法は当該技術分野で公知である。
【0134】
配列番号8によりコードされるネズミB7−DC−Ig融合タンパク質は以下のアミノ酸配列:
【化12】

(配列番号9)
を有する。
【0135】
配列番号10は、シグナル配列を含まないネズミB7−DC−Ig融合タンパク質のアミノ酸配列を示す。
【化13】

(配列番号10)
【0136】
一つの実施態様では、ヒトB7−DC−Igは、ヒトB7−DC−Igのアミノ酸配列をコードする配列番号11の核酸配列によりコードされる。
【化14】

(配列番号12)
【0137】
本発明は特に、本発明の方法および組成物において有用な成熟融合タンパク質のシグナル配列が除去されている実施形態を意図する。好ましい実施形態では、シグナル配列は完全に除去される。
【0138】
配列番号13は、シグナル配列を含まないヒトB7−DC−Igのアミノ酸配列を示す。
【化15】

(配列番号13)
【0139】
本発明は特に、本明細書に開示される方法および組成物において用いられる、開示されているB7−DC−Ig融合タンパク質が配列番号9、10、12、または13と少なくとも約80%、85%、90%、99%、または100%の配列同一性を有する実施形態を意図する。
【0140】
本発明の別の実施形態では、融合ポリペプチドは、第一の融合相手がB7−H1などのPD−1のリガンドと結合し、第二の融合相手がPD−1受容体を介した阻害的シグナル伝達を誘発することなくPD−1受容体と結合する二重特異的機能を持ち得る。
【0141】
本発明において有用なポリペプチドは単量体であっても二量体であってもよいが、融合タンパク質自体は単量体または好ましくは二量体としてのオリゴマー形態で存在し得る。特定の実施形態では、本発明の方法および組成物においてPD−1アンタゴニストとして有用な融合タンパク質はオリゴマー形態、特に、二量体形態へと自発的な組み立ても可能であるし、あるいは当該技術分野で周知の手段によってこのようなオリゴマーを形成するように化学的に結合させることできる。例えば、本発明の実施において有用な融合タンパク質はそれ自体、抗体の一部と融合されているB7−DCポリペプチドの一部を含んでなってよく、これらを二量体へとさらに組み立てることができる。このような一つの例では、本発明で用いるためのポリペプチドは単一のアミノ酸鎖として抗体のFc領に融合され(例えば、この構築物が単一の組換えポリヌクレオチドから発現される場合)、その後、このような二つの融合産物を、個々のFc領域間のジスルフィド結合によるなどして互いに連結してホモ二量体を形成させる。
【0142】
このような二量体産物はホモ二量体(双方の単量体融合タンパク質が同じ場合)であっても、あるいはヘテロ二量体(二つの異なる融合タンパク質が互いに連結される場合)であってもよい。このような二量体の個々の単量体は、共有結合(例えば、ジスルフィド結合)または非共有結合(例えば、イオン的相互作用)によるなど、当該技術分野で公知の任意の手段によって連結することができる。本発明のこれらの例で用いられるB7−DC−Igは、ジスルフィド結合によりともに連結された2コピーの配列番号10を持つホモ二量体の形態で存在した。さらに、本発明のヘテロ二量体は、一方の単量体部分がPD−1と結合し、他方がPD−1の天然リガンドと結合する二重特異性タンパク質および融合タンパク質を含む。このようなヘテロ二量体は、本明細書の他所に十分に記載されているポリペプチドおよび融合タンパク質を結合させることにより形成される。
【0143】
本発明の別の有用な実施形態では、PD−1アンタゴニストはヘテロ二量体である(例えば、二つの融合タンパク質がともに連結されているが、同一のアミノ酸配列ではない場合)。特定の例では、各単量体はB7−DCポリペプチドの有効断片と連結された抗体のFc部分を含んでなってもよく、ここで、これらの有効断片はB7−DCポリペプチドの異なる部分に由来するか、または全長天然B7−DCポリペプチドに融合された抗体のFc部分を含んでなる融合タンパク質が、抗体のFc部分と全長天然B7−DCポリペプチドの有効断片を含んでなる融合タンパク質と連結(例えば架橋)されている。このような各場合において、各単量体融合タンパク質を形成する際に用いられる抗体の部分は、これら二つの単量体間で異なっていてもよい。このような二量体組合せはいずれも、本発明の方法および組成物により特に意図される。
【0144】
好ましい二量体融合タンパク質では、二量体は、二量体を形成した通常のIg重鎖においてジスルフィド結合されているものと同じCys残基である、2本のIg重鎖中のCH領域のCys残基の共有結合から生じている。
【0145】
さらに別の実施形態は、変異体B7−DCポリペプチドの細胞外ドメインと融合されているBirA基質を有する四量体構築物を提供する。四量体構築物の作製方法は当該技術分野で公知である(Pertovas, et al., J. Exp. Med., 203:2281 (2006)参照。
【0146】
7.抗PD−1および他の抗体
本発明の方法により意図される他のPD−1アンタゴニストは、PD−1またはPD−1のリガンドと結合する抗体および他の抗体を含む。
【0147】
一つの態様において、本発明は、それを必要とする哺乳類においてT細胞応答を増強する方法であって、該哺乳類に抗PD−1抗体および増強剤を含んでなる有効な処置計画(該処置計画は該抗原に対する該哺乳類のT細胞応答を増強するのに有効である)により投与することを含んでなる方法に関する。
【0148】
本発明の処置計画において有用な抗PD−1抗体としては、限定されるものではないが、以下の刊行物:
PCT/IL03/00425号公報(Hardyら WO/2003/099196号公報)
PCT/JP2006/309606号公報(Kormanら WO/2006/121168号公報)
PCT/US2008/008925号公報(Liら WO/2009/014708号公報)
PCT/JP03/08420号公報(Honjoら WO/2004/004771号公報)
PCT/JP04/00549号公報(Honjoら WO/2004/072286号公報)
PCT/IB2003/006304号公報(Collinsら WO/2004/056875号公報)
PCT/US2007/088851号公報(Ahmed etら WO/2008/083174号公報)
PCT/US2006/026046号公報(Kormanら WO/2007/005874号公報)
PCT/US2008/084923号公報(Terrettら WO/2009/073533号公報)
Berger et al., Clin. Cancer Res., Vol. 14, pp. 30443051 (2008)
に記載されているものが含まれる。
【0149】
本発明の方法において有用な抗PD−1抗体の特定の例は、好ましくは3mg/kgの用量で投与されるヒト抗PD−1抗体であるMDX−1106(Kosak, 米国特許第20070166281号公報(2007年7月19日公開)第42節参照)である。
【0150】
別の態様において、本発明は、それを必要とする哺乳類においてT細胞応答を増強する方法であって、該哺乳類に、抗PD−1リガンド抗体、例えば抗B7−H1抗体および増強剤を含んでなる有効な処置計画(該処置計画は該抗原に対する該哺乳類のT細胞応答を増強するのに有効である)により投与することを含んでなる方法に関する。
【0151】
本発明の処置計画において有用な抗B7−H1抗体としては、限定されるものではないが、以下の刊行物:
PCT/US06/022423号公報(WO/2006/133396号公報、2006年12月14日公開)
PCT/US07/088851号公報(WO/2008/083174号公報、2008年7月10日公開)
米国特許第2006/0110383号公報(2006年5月25日公開)
に記載されているものが含まれる。
【0152】
本発明の方法において有用な抗B7−H1抗体の特定の例は、ヒト抗B7−H1抗体であるMDX−1105(WO/2007/005874号公報、2007年1月11日公開)である。
【0153】
抗B7−DC抗体としては、7,411,051、7,052,694、7,390,888、20060099203を参照。
【0154】
本発明の別の実施形態は、B7−H1などのPD−1のリガンドと結合する抗体と架橋されたPD−1受容体と結合する抗体を含んでなる二重特異性抗体を含む。好ましい実施形態では、PD−1結合部分はPD−1受容体を介したシグナル伝達を低減または阻害する。
【0155】
本発明で用いるための抗体は、抗PD−1または抗PD−1リガンド抗体である必要はなく、免疫応答におけるT細胞の作用を媒介するのに有用な別の抗体であってもよい。この態様において、本発明は、それを必要とする哺乳類において抗原に対するT細胞応答を増強する方法であって、該哺乳類に抗CTLA4抗体および増強剤を含んでなる有効な処置計画(該処置計画は該抗原に対する該哺乳類のT細胞応答を増強するのに有効である)により投与することを含んでなる方法に関する。本発明の方法での使用が意図される抗CTLA4抗体の例としては、PCT/US2006/043690号公報(Fischkoffら WO/2007/056539号公報)に記載されているような抗体が含まれる。
【0156】
本発明の方法において有用な抗CTLA4抗体の特定の例は、好ましくは10mg/kgの用量で投与されるヒト抗CTLA4抗体である、MDX−010またはMDX−10としても知られるイピリムマブ、および好ましくは15mg/kgの用量で投与されるヒト抗CTLA4抗体であるトレメリムマブである。
【0157】
8.小分子PD−1アンタゴニスト
PD−1受容体アンタゴニストはまた、小分子アンタゴニストであってもよい。「小分子」とは、100ダルトンを超え、約2,500ダルトン未満、好ましくは100〜2000ダルトンの間、より好ましくは約100〜約1250ダルトンの間、より好ましくは約100〜約1000ダルトンの間、より好ましくは約100〜約750ダルトンの間、より好ましくは約200〜約500ダルトンの間の分子量を有する小有機化合物を意味する。これらの小分子は多くの場合、環状炭素または複素環式構造および/または1以上の官能基で置換された芳香族または多環芳香族構造を含む。これらの小分子アンタゴニストは、B7−H1およびB7−DCなどのPD−1のリガンドと結合し、そのリガンドがPD−1と相互作用しないようにすることにより、またはPD−1受容体を介したシグナル伝達を誘発することなくPD−1受容体と直接結合してそれを遮断することにより、PD−1受容体シグナル伝達を低減するか、またはそれと干渉する。
【0158】
一つの実施態様では、このような小分子は、別のPD−1アンタゴニストまたはCTLA4アンタゴニスト、例えば、PD−1もしくはそのリガンドの一つに特異的な抗体またはCTLA4もしくはそのリガンドの一つに特異的な抗体と組み合わせて投与することができる。よって、このような小分子は本発明の1以上の方法においては化合物として投与することができ、あるいは本発明の方法において有用な他の化合物と組み合わせて投与することもできる。例えば、一連の小有機化合物はB7−1リガンドと結合してCTLA4との結合を妨げることが示されている(Erbe et al., J. Biol. Chem., Vol. 277, pp. 7363-7368 (2002) 参照)。このような小有機物は、T細胞の阻害的シグナル伝達を低減するために、単独で、または抗CTLA4抗体とともに、CTX投与と組み合わせて投与することができる。
【0159】
一つの実施態様では、本発明の方法での使用が意図されるPD−1アンタゴニストまたはCTLA4アンタゴニストは、アンチセンス核酸(DNAおよびRNAの双方)ならびにsiRNA分子が含まれる。このようなアンチセンス分子は、T細胞上でのPD−1の発現ならびにB7−H1、PD−L1およびPD−L2などのT細胞リガンドの産生を妨げる。例えば、ポリエチレンイミンなどの担体と複合体化されたsiRNA(例えば、PD−1をコードするかまたはPD−1リガンドをコードする遺伝子に特異的であり、かつ、オリゴヌクレオチドが商業的に容易に購入できる、約21ヌクレオチド長のもの)(Cubillos-Ruiz et al., J. Clin. Invest. 119(8): 2231-2244 (2009)参照)は、PD−1ならびにPD−1のリガンドを発現する細胞によって容易に取り込まれ、これらの受容体およびリガンドの発現を低減して、T細胞における阻害的シグナル伝達の低減を達成し、それによりT細胞を活性化する。
【0160】
B.増強剤
本発明によれば、PD−1アンタゴニストの活性は、増強の存在により、好ましくは相乗的に増強される。増強剤はおそらく1を超える機構によってPD−1受容体アンタゴニストの有効性を高める働きをするが、厳密な作用機序は本発明の広義の実践には重要でない。
【0161】
好ましい実施形態では、増強剤はシクロホスファミドである。シクロホスファミド(CTX、Cytoxan(商標)またはNeosar(商標))はオキシアザホスホリン薬であり、類似体としては、イフォスファミド(IFO、Ifex)、ペルホスファミド、トロホスファミド(トロフォスファミド、Ixoten)およびその薬学上許容される塩、溶媒和物、プロドラッグおよび代謝産物(引用することによりそのまま本明細書の一部とされる米国特許出願20070202077号公報)が含まれる。イフォスファミド(MITOXANA(商標))はシクロホスファミドの構造類似体であり、その作用機序はシクロホスファミドと同じまたは実質的に類似していると考えられる。ペルホスファミド(4−ヒドロペルオキシシクロホスファミド)およびトロホスファミドもシクロホスファミドと構造的に関連のあるアルキル化剤である。例えば、ペルホスファミドはDNAをアルキル化し、それにより、DNA複製およびRNAおよびタンパク質合成を阻害する。宿主毒性の軽減を伴って選択性および応答を改善する試みで、新規なオキシアザホスホリン誘導体が設計され、評価された(Liang J, Huang M, Duan W, Yu XQ, Zhou S. Design of new oxazaphosphorine anticancer drugs. Curr Pharm Des. 2007、13(9):963-78. Review)。これらにはマホスファミド(NSC 345842)、グルホスファミド(D19575、β−D−グルコシルイソホスホルアミドマスタード)、S−(−)−ブロモホスファミド(CBM−11)、NSC612567(アルドホスファミドペルヒドロチアジン)およびNSC613060(アルドホスファミドチアゾリジン)が含まれる。マホスファミドは、4−ヒドロキシ−CPAの化学的に安定な4−チオエタンスルホン酸塩であるオキシアザホスホリン類似体である。グルホスファミドは、IFOのアルキル化代謝産物であるイソホスホルアミドマスタードがβ−D−グルコース分子にグルコシド結合されたIFO誘導体である。さらなるシクロホスファミド類似体は、引用することによりそのまま本明細書の一部とされる"Cyclophosphamide analogs useful as anti-t
umor agents"と題された米国特許第5,190,929号公報に記載されている。
【0162】
他の実施形態では、増強剤は調節性Tリンパ球(T−reg)の活性および/または数を低減する薬剤、好ましくは、スニチニブ(SUTENT(商標))、抗TGFβまたはイマチニブ(GLEEVAC(商標))である。挙げられている処置計画はまた、アジュバントを投与することを含んでもよい。
【0163】
有用な増強剤としてはまた、有糸分裂阻害剤、例えば、パクリタキソール、アロマターゼ阻害剤(例えば、レトロゾール)、および脈管形成阻害剤(VEGF阻害剤、例えば、アバスチン、VEGF−Trap)(例えば、Li et al., Vascular endothelial growth factor blockade reduces intratumoral regulatory T cells and enhances the efficacy of a GM-CSF-secreting cancer immunotherapy. Clin Cancer Res. 2006 Nov 15、12(22):6808-16参照)、アントラサイクリン、オキサリプラチン、ドキソルビシン、TLR4アンタゴニスト、およびIL−18アンタゴニストが含まれる。
【0164】
C.医薬組成物
一つの態様において、本発明は、PD−1を介した阻害的シグナル伝達を妨げる分子またはCTLA4アンタゴニスト、および増強剤を薬学上許容される担体中に含んでなる治療組成物に関する。該組成物の成分は哺乳類においてT細胞応答を増強するのに有効な量で存在する。特定の実施形態において、増強剤はシクロホスファミドまたはシクロホスファミド類似体であり、このような類似体の例は上記に挙げられている。
【0165】
他の特定の例において、増強剤は調節性Tリンパ球(T−reg)の活性を低減する薬剤であり、好ましくは、この活性は該T−regの数の減少により低減される。好ましい非限定的実施形態では、該薬剤はスニチニブ(SUTENT(商標))、抗TGFβまたはイマチニブ(GLEEVAC(商標))である。
【0166】
本発明の組成物の処方において有用な増強剤としてはまた、有糸分裂阻害剤、例えば、パクリタキソール、アロマターゼ阻害剤(例えば、レトロゾール)、脈管形成阻害剤(agniogenesis inhibitors)(VEGF阻害剤、例えば、アバスチン、VEGF−Trap)、アントラサイクリン、オキサリプラチン、ドキソルビシン、TLR4アンタゴニストおよびIL−18アンタゴニストが含まれる。
【0167】
本発明の治療組成物はまた、場合により、抗PD−1抗体、抗CTLA4抗体、有糸分裂阻害剤、アロマターゼ阻害剤、A2aアデノシン受容体(A2AR)アンタゴニストまたは脈管形成阻害剤の1以上であり得る少なくとも一つの付加的薬剤を含んでなる。
【0168】
本発明の治療組成物はいずれも、本明細書に記載の1以上のアジュバントを含んでもよい。
【0169】
本発明の治療組成物の成分として有用なPD−1アンタゴニストは、本発明の方法のいずれかで用いるための、本明細書に挙げられているPD−1アンタゴニストのいずれもを含む。例えば、このようなPD−1アンタゴニストとしては、本明細書に挙げられている融合タンパク質のいずれもを含む。このようなアンタゴニストはまた、本発明の方法のいずれかでにおける使用に関して記載されている融合タンパク質のいずれかの第一のポリペプチド部分として用いるために本明細書に挙げられているポリペプチドまたはPD−1結合断片のいずれであってもよい。このようなアンタゴニストはさらに、本明細書に記載されている既知の抗PD−1、抗B7−DCまたは抗B7−H1抗体などの抗体であってもよい。
【0170】
本発明の治療組成物はまた、上述のPD−1アンタゴニストに加えて、またはその代わりに、抗CTLA4抗体を含む。よって、このような組成物は、このような抗CTLA4抗体と本明細書ですでに記載されている種類の増強剤を含む。
【0171】
本発明の治療組成物は本明細書に開示される本発明の方法のいずれか使用が見出せる。このような組成物は、病態の有効な治療としての使用が意図されるとともに、本明細書に挙げられているいずれかの疾患を予防するための予防組成物としても使用が見出せる。
【0172】
一つの態様において、本発明はPD−1アンタゴニストおよび増強剤を薬学上許容される担体中に含んでなる治療組成物を意図し、ここで、PD−1アンタゴニストおよび増強剤は哺乳類においてT細胞応答を増強するのに有効な量でともに存在する。
【0173】
本発明の範囲内の治療組成物は、本明細書に開示されるPD−1アンタゴニストおよび/または抗体と挙げられている増強剤のいずれかの組合せのいずれか、および総てを含んでなる組成物を含む。限定されるものではないが、本発明の治療組成物は、有効量の1以上のPD−1アンタゴニスト、例えば、特定の配列番号として本明細書に挙げられている全長ポリペプチドまたはその同族体(該ポリペプチドのいずれかの1以上の断片を含む)のいずれかまたは総ての組合せ(これらのいずれかまたは総てが他のタンパク質と融合されている場合、例えば、本明細書に挙げられている1以上の免疫グロブリンと融合されている場合、またはこのような融合がされていない場合を含む)を含んでなり、かつ、1以上の増強剤、例えば、シクロホスファミド単独またはシクロホスファミドおよび1以上のその類似体、またはシクロホスファミドの1以上の類似体のみを含んでなる組成物を含み、あるいは増強剤はシクロホスファミドと、組成物を受容する哺乳類においてTreg数を低減する薬剤からなってもよく、あるいはシクロホスファミド類似体とTreg数を低減する薬剤からなってもよく、あるいは増強剤はTreg数または他のTreg活性を低減する1以上の薬剤のみからなってもよい。このような組合せは総て、その組成物が少なくとも一つ一つのPD−1アンタゴニスト(anatgonist)および/またはT細胞活性を媒介する抗体および少なくとも一つ一つの増強剤を含んでなる限り、本発明により意図される。
【0174】
本発明の組成物はまた、付加的な有効薬剤を含んでもよい。本発明の組成物のいずれかの好ましい実施形態では、医薬組成物または治療組成物は、抗PD−1抗体、抗CTLA4抗体、有糸分裂阻害剤(パクリタキセルなど)、アロマターゼ阻害剤(レトロゾールなど)、A2ARアンタゴニスト、脈管形成阻害剤、アントラサイクリン、オキサリプラチン、ドキソルビシン、TLR4アンタゴニストおよびIL−18アンタゴニストからなる群から選択される少なくとも一つの付加的薬剤をさらに含んでなる。
【0175】
PD−1アンタゴニストおよび/または増強剤は、好適ないずれの手段によって投与してもよい。好ましい実施形態では、PD−1アンタゴニストおよび/または増強剤は、水溶液中で非経口注射により投与される。処方物はまた懸濁液またはエマルションの形態であってもよい。一般に、有効量のペプチドまたはポリペプチドを含み、場合により薬学上許容される希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/または担体を含む医薬組成物が提供される。このような組成物は希釈剤、無菌水、様々なバッファー含量の緩衝生理食塩水(例えば、Tris−HCl、酢酸、リン酸)、pHおよびイオン強度、ならびに場合により、洗剤および可溶化剤(例えば、TWEEN(商標)20、TWEEN80、ポリソルベート80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、および保存剤(例えば、Thimersol、ベンジルアルコール)および増量剤(例えば、ラクトース、マンニトール)などの添加剤を含む。非水性溶媒またはビヒクルの例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油およびコーン油などの植物油、ゼラチン、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルがある。処方物は凍結乾燥させ、使用直前に再溶解/再懸濁させてもよい。処方物は例えば、細菌保持フィルターによる濾過、除菌剤の組成物への配合、組成物の照射または組成物の加熱によって除菌してもよい。
【0176】
本発明の医薬組成物は、非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)または皮下注射)、経皮(受動的またはイオン泳動またはエレクトロポレーションを使用)または経粘膜(鼻腔、膣、直腸、または舌下)投与経路により投与することができる。本発明の方法は、PD−1アンタゴニストおよび増強剤を別個の異なる経路により(例えば、局所的に)投与することを排除するものではない。
【0177】
PD−1アンタゴニストおよび増強剤は同時に、またはPD−1アンタゴニストの前または後に増強剤を投与するといったように異なる時点で投与してもよい。一つの実施態様では、増強剤はPD−1アンタゴニストの前および後の双方に投与される。このような一つの実施態様では、PD−1アンタゴニストの前と後に同じ増強剤が投与される。別の実施形態では、PD−1アンタゴニストの前に増強剤が投与される。
【0178】
本明細書において「有効量」または「治療上有効な量」とは、処置される障害の1以上の症状を処置、阻害、または緩和するのに、またはそうでなければされる所望の薬理学的および/または生理学的作用を提供するのに十分な用量を意味する。厳密な用量は、被験体に依存する変数(例えば、年齢、免疫系の健全性など)、疾患および行われる処置などの種々の要因によって異なる。増強剤を伴うPD−1受容体アンタゴニストおよび/または抗体の治療上有効な量は、免疫応答を活性化または持続させる。
【0179】
選択される用量は、所望の治療効果、投与経路および所望の処置の持続時間によって異なる。一般に、1日当たり0.001〜50mg/kg体重の用量レベルが哺乳類に投与される。好ましくは、該用量は1〜50mg/kg、より好ましくは1〜40mg/kg、またはさらには1〜30mg/kgであり、2〜20mg/kgの用量も好ましい用量である。他の用量例としては、2〜15mg/kg、2〜10mg/kg、またはさらには3〜5mg/kgが挙げられ、約4mg/kgの用量が具体例である。
【0180】
増強剤と抗PD−1抗体または抗CTLA4抗体などの抗体を用いる処置計画では、用量は一般に0.1〜100mg/kgの範囲であり、より狭い1〜50mg/kgの範囲が好ましく、10〜20mg/kgの範囲がより好ましい。ヒト被験体に適当な用量は5〜15mg/kgの間であり、10mg/kgの抗体(例えば、MDX−1106のようなヒト抗PD−1抗体)が最も好ましい(これとともに抗体の最大約24時間前に好適な用量のシクロホスファミドまたは他の増強剤を与える)。
【0181】
一般に、単に例としては、本発明の方法において有用なシグナル伝達アンタゴニストのいずれかの体重に基づく剤形は、5〜300mg/kgまたは5〜290mg/kgまたは5〜280mg/kgまたは5〜270mg/kgまたは5〜260mg/kgまたは5〜250mg/kgまたは5〜240mg/kgまたは5〜230mg/kgまたは5〜220mg/kgまたは5〜210mg/kgまたは20〜180mg/kgまたは30〜170mg/kgまたは40〜160mg/kgまたは50〜150mg/kgまたは60〜140mg/kgまたは70〜130mg/kgまたは80〜120mg/kgまたは90〜110mg/kgまたは95〜105mg/kgの範囲の用量を含み、3mg/kg、5mg/kg、7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、50mg/kgおよび100mg/kgの用量が好ましい用量の具体例である。このような用量は当然のことながら繰り返される。用量は当然のことながら該用量を受容する哺乳類の属性に相関する。上記に挙げたmg/kg範囲の用量は、マウスおよびラットなどの齧歯類、および霊長類、特にヒトなどを含む哺乳類にとって便宜であり、ヒトの処置には、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kgの用量が特に好ましい。
【0182】
本発明の処置計画によれば、増強剤、例えば、シクロホスファミドは、動物によって異なる無毒な用量で投与される。特定の実施形態においては、増強剤は非経口または経口(前者は静脈投与などの全身投与を含む)を含む任意の好適な投与手段により投与される。例えば、シクロホスファミドのような増強剤は通常経口投与される。このような投与は、増強剤に応じて便宜ないずれかの用量で行うことができる。各場合において用量は体重に基づき、単位剤形として投与され得る。
【0183】
CTX自体は無毒であるが、その代謝産物のいくつかは、DNAの架橋を誘導し、高用量では鎖を切断する細胞傷害性アルキル化剤である。多くの細胞が高レベルの解毒酵素アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)を発現するので、CTX耐性である。リンパ球(造血幹細胞はそうではない)は低レベルのALDHを発現するに過ぎず、細胞周期中の細胞はDNAアルキル化剤に感受性が最も高いので、CTXは増殖中のリンパ球を標的とする。
【0184】
低用量のCTX(<200mg/kg)は、ヒトおよびマウス癌モデルにおける抗腫瘍免疫応答の刺激(Brode & Cooke Crit Rev. Immunol. 28:109-126 (2008))を含む免疫刺激作用を有し得る。これらの低用量は治療には至らない、直接的な抗腫瘍活性を持たない。これに対して、高用量のCTXは抗腫瘍応答を阻害する。いくつかの機構、すなわち、(a)CD4+CD25+FoxP3+Treg(具体的には、特に抑制的であり得る増殖中のTreg)の枯渇、(b)Bリンパ球の枯渇、(c)腫瘍細胞増殖の抑制をもたらす一酸化窒素(NO)の誘導、(d)CD11b+Gr−1+MDSCの動員および拡大で、抗腫瘍免疫応答の増強におけるCTXの役割を説明することができる。これらの一次作用は、例えば、Treg枯渇の後にマクロファージのIFN−γ産生が増え、IL−10産生が減るなどの多くの二次的作用を有する。CTXはまた、I型IFNの発現を誘導し、リンパ球の恒常的増殖を促進することも示されている。
【0185】
Tregの枯渇は、CTXが抗腫瘍免疫応答を増強する機構として最もよく挙げられる。この結論は一つには養子免疫伝達試験の結果に基づくものである。AB1−HA腫瘍モデルでは、9日目にCTX処置を行ったところ、75%の治癒率が得られた。12日目に精製Tregを移入したところ、CTX応答がほぼ完全に阻害された(van der Most et al. Cancer Immunol. Immunother. 58:1219-1228 (2009)。同様の結果がHHD2腫瘍モデルでも見られ、CTXを予め処置した後にCD4+CD25+Tregの養子免疫伝達を行ったところ、ワクチンに対する治療応答が排除された(Taieb,J. J. Immunol. 176:2722-2729 (2006))。
【0186】
多くのヒト臨床試験が、低用量CTXが安全であり、十分な許容性があり、抗腫瘍免疫応答の誘導に有効な薬剤であることを実証している(Taieb,J. J. Immunol. 176:2722-2729 (2006))。
【0187】
抗腫瘍免疫応答を増強するためのCTXの至適用量は、Tregを、通常範囲を下回るが治療には至らないレベルに引き下げることによりT細胞総数を減らすものである(Machiels et al. Cancer Res. 61:3689-3697 (2001)参照)。
【0188】
CTXを免疫増強剤として用いたヒト臨床試験では、通常、300mg/mの用量が用いられた。平均的な男性(6フィート、170ポンド(78kg)、体表面積1.98m)では、300mg/mは8mg/kgまたは総タンパク質624mgである。マウス癌モデルでは、15〜150mg/kgの範囲の用量(30gのマウスで総タンパク質0.45〜4.5mgに相当)で有効性が見られた(Machiels et al. Cancer Res. 61:3689-3697 (2001), Hengst et al Cancer Res. 41:2163-2167 (1981), Hengst Cancer Res. 40:2135-2141 (1980))。
【0189】
霊長類、好ましくはヒト患者などの大型の哺乳類では、このようなmg/m用量を用いることもできるが、有限の時間間隔で投与される単位用量が好ましいものであり得る。このような単位用量は有限の時間、例えば、最大3日または最大5日または最大7日または最大10日または最大15日または最大20日または最大25日などの日単位で投与することができ、総て本発明により具体的に意図される。同じ計画が本明細書に挙げられている他の増強剤にも適用可能である。
【0190】
このような投与は総て、本発明のPD−1結合分子の投与の前または後に行うことができる。あるいは、1以上の用量の本発明のPD−1結合分子の投与を増強剤の投与と経時的に交互に行い、1以上の用量の増強剤を投与した後に1以上の用量のPD−1結合化合物を投与し、その後、1以上の用量の増強剤を投与するというように、総て薬剤を投与する研究者または臨床医により選択された、または望まれたどんな計画にも従って、均一または不均一処置コースを形成することができる。
【0191】
他の特定の実施形態では、処置計画は1以上のPD−1アンタゴニストの多回投与を含む。いくつかの実施形態では、PD−1アンタゴニストのこのような多回投与を、同じまたは異なる増強剤の多回投与と組み合わせる。
【0192】
本発明の他の実施形態と同様に、ここでは、増強剤がPD−1−アンタゴニスト投与の少なくとも1、2、3、5、10、15、20、24、または30時間前または後に投与される。
【0193】
本明細書において有用な医薬組成物はまた、それ自体、組成物を受容する個体に有害な抗体の産生を誘導せず、過度な毒性なく投与することができる任意の製薬剤を含む、任意の好適な希釈剤または賦形剤をはじめとする薬学上許容される担体を含む。薬学上許容される担体としては、限定されるものではないが、鼻腔およびその他の呼吸器送達のため、または眼球系への送達のためのスプレーを形成するのに有用な担体を含む、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールなどの液体を含む。薬学上許容される担体、希釈剤および他の賦形剤の詳細な考察はREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES (Mack Pub. Co., N.J. current edition)に示されている。
【0194】
ワクチン組成物(後述の通り)は、pHの安定化のため、またはワクチンの有効性を向上させるのに役立ち得るアジュバント、湿潤剤または乳化剤として機能させるためのさらなる物質を組み込むことができる。
【0195】
ワクチンは一般に非経口投与用に処方され、皮下または筋肉内のいずれか注射される。このようなワクチンはまた、当該技術分野で公知の方法を用いて坐剤としてまたは経口投与用に、または鼻腔もしくは呼吸器系経路による投与用に処方することができる。
【0196】
D.製造方法
単離されたPD−1アンタゴニストポリペプチド(野生型であれ突然変異型であれ、その変異体、同族体および断片、ならびにこれらのいずれかを含んでなる融合タンパク質を含む、総て本発明における使用に意図される)は、例えば、化学的合成または宿主細胞での組換え生産によって得ることができる。共刺激ポリペプチドを組換え生産するためには、そのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を用いて、細菌または真核生物宿主細胞(例えば、昆虫、酵母または哺乳類細胞)に形質転換、形質導入またはトランスフェクションを行うことができる。このヌクレオチド配列は特定の宿主細胞種においてタンパク質発現のレベルを高めるためにコドンの至適化を行うことができると考えられる。コドン至適化の方法は当該技術分野で周知である。一般に、核酸構築物は、共刺激ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された調節配列を含む。調節配列(本明細書では発現制御配列とも呼ばれる)は一般に遺伝子産物をコードしないが、それらが機能的に連結されている核酸配列の発現に影響を与える。細胞からタンパク質を分泌させるのに用いられるシグナルペプチドは内因性シグナルペプチドまたは宿主からの融合タンパク質の分泌を促す他のいずれかのシグナルペプチドであり得る。
【0197】
本発明の実践において有用な一般的な分子生物学の手法としては、分子生物学および遺伝子操作の技術分野で周知の手順を含むいくつかの標準的な参照を利用することができる(これらの手順は本明細書でさらに記載する必要はない)。有用な参照としては、Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor, N.Y., (1989), Wu et al, Methods in Gene Biotechnology (CRC Press, New York, NY, 1997), and Recombinant Gene Expression Protocols, in Methods in Molecular Biology, Vol. 62, (Tuan, ed., Humana Press, Totowa, NJ, 1997)が含まれ、これらの開示は引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0198】
E.疾患の処置
本発明により提供される治療組合せを投与することにより治療または予防される疾患としては、悪性腫瘍または細菌、ウイルス、原虫、蠕虫もしくは細胞内に侵入する他の微生物病原体により引き起こされる慢性感染性疾患が挙げられる。このような疾患は多くの場合、細胞傷害性Tリンパ球による攻撃によって対抗される。本発明は、T細胞活性の増強、T細胞増殖の増大およびT細胞阻害シグナルの低減によるT細胞応答の増強に有用な併用療法を提供するので、本発明の併用療法はこのような疾患の治療(またはさらには予防)において独特な利点を有する。
【0199】
一つの実施態様では、ウイルス感染は主としてT細胞により排除されるので、T細胞活性の増強は、動物または霊長類、好ましくはヒト被験体から感染力のあるウイルス病原体の排除の増強に治療上有用である。よって、PD−1受容体アンタゴニスト活性を有する開示されている本発明の化合物は、増強剤とともに、去基部的または全身性のウイルス感染の処置のための組合せで働く。本発明の化合物により処置される感染としては、限定されるものではないが、免疫不全(例えば、HIV)、乳頭腫(例えば、HPV)、ヘルペス(例えば、HSV)、脳炎、インフルエンザ(例えば、ヒトA型インフルエンザウイルス)、肝炎(例えば、HCV、HBV)、および風邪(例えば、ヒトライノウイルス)ウイルス感染を含む。PD−1受容体アンタゴニスト組成物の医薬処方物は、限定されるものではないが、AIDS、インフルエンザ、風邪または脳炎を含む全身性ウイルス性疾患を処置するためにも投与することができる。
【0200】
本発明の化合物により処置可能な非ウイルス性疾患としては、限定されるものではないが、アクチノミセス属、アナベナ属、バチルス属、バクテロイデス属、デロビブリオ属、ボルデテラ属、ボレリア属、カンピロバクター属、カウロバクター属、クラミジア属、クロロビウム属、クロマチウム属、クロストリジウム属、コリネバクテリウム属、サイトファガ属、ディノコッカス属、エシェリキア属、フランシセラ属、ハロバクテリア属、ヘリコバクター属、ヘモフィルス属、B型ヘモフィルス・インフルエンザ(HIB)、ハイフォミクロビウム属、レジオネラ属、リーシュマニア属、リステリア属、A型、B型およびC型髄膜炎球菌、メタノバクテリウム属、球菌属、ミオバクテリウム属(Myobacterium)、マイコプラズマ属、ミクソコッカス属、ナイセリア属、ニトロバクター属、オシラトリア属、プロクロロン属、プロテウス属、シュードモナス属、ロドスピリルム属、リケッチア属、サルモネラ菌属、赤痢菌属、スピリルム属、スピロヘータ属、ブドウ状球菌属、連鎖球菌属、ストレプトミセス属、スルフォロブス属、サーモプラズマ属、チオバチルス属およびトレポネーマ属、ビブリオ属、エルシニア属、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ種(ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)など)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、ノカルジア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、リケッチア・リケッチイ(Rickettsia ricketsii)、発疹熱リケッチア(Rickettsia typhi)、リーシュマニア属、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、クラミジア・シッタシ(Chlamydial psittaci)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydial trachomatis)、プラスモジウム種(熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)など)、ブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxopl
asma gondii)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)およびマンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)を含む微生物により引き起こされる感染が挙げられる。
【0201】
一つの実施態様では、本発明は、癌を処置するために宿主において免疫応答を誘導または増強するための方法および組成物を提供する。提供される組成物および方法で処置可能な癌の種類としては、限定されるものではないが、以下のもの:膀胱癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、食道癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、鼻咽頭癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、胃癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌および血液性癌が挙げられる。
【0202】
本明細書では処置可能な悪性腫瘍は腫瘍が由来する組織の胚起源に応じて分類される。癌腫は、皮膚または内部器官および腺の上皮下層などの内肺葉または外胚葉組織に起源する腫瘍である。発生頻度は低い肉腫は、骨、脂肪および軟骨などの中胚葉結合組織に由来する。白血病およびリンパ腫は、骨髄の造血細胞の悪性腫瘍である。白血病は単細胞として増殖するが、リンパ腫は腫瘍塊として増殖する傾向がある。悪性腫瘍は身体の多くの器官または組織で増殖し、癌を形成し得る。
【0203】
本発明の処置計画の価値の証明として、B7−DC−Igのネズミ類似体(ヒトタンパク質と72%の配列同一性を有するマウスB7−DC ECDが、マウスIgG2aのFcドメインと融合されている)が、本明細書に記載されるシクロホスファミド(CTX)前処置を組み込んだ、結腸癌、肥満細胞腫および他の腫瘍種に関する同系マウス腫瘍モデルで試験された。
【0204】
これらの結果は、免疫増強剤として働く治療用量に至らない単回のCTXで処置した後にネズミB7−DC−IGで処置すると、最大80%の動物で定着したCT26結腸癌腫瘍を根絶することを示した。さらに、CT26結腸癌腫瘍再負荷試験において、CTX+ネズミB7−DC−Ig処置の日に事前に腫瘍を根絶したマウスでは、腫瘍の再増殖は検出されなかった。これらのマウスはまた、ナイーブマウスよりも腫瘍特異的CTL集団が増えていることも示された。
【0205】
一つの実施態様では、本発明は、化合物が増強剤とともに投与される併用療法によりT細胞応答を増強するための薬剤の製造における、本明細書の他所に記載されているような、T細胞において阻害的シグナル伝達を低減する化合物の使用を意図する。さらに、T細胞において阻害的シグナル伝達を低減する該化合物および増強剤は異なる時点に投与するための別個の薬剤として提供され、好ましくは、増強剤は阻害的シグナル伝達を低減する化合物の前に、例えば阻害化合物の24時間(または本明細書に挙げられている時間間隔)前に投与される。好ましくは、該化合物および増強剤は、本明細書の他所に挙げられている、病原体により引き起こされる疾患または癌を含む、感染性疾患または癌の処置において用いるためのものである。
【0206】
好ましい実施形態では、これらの方法において有用な化合物は、ヒトIgGのFcドメインと融合されているヒトB7−DCのECDからなる組換えタンパク質(本明細書ではB7−DC−Igと呼ばれる)である。
【0207】
一つの実施態様では、本発明は、本明細書に開示されるT細胞において阻害的シグナル伝達を低減する化合物を増強剤と組み合わせて投与するための医療用キットに関し、該キットは、
(a)T細胞において阻害的シグナル伝達を低減する化合物の投与供給源、
(b)増強剤供給源、
(c)薬学上許容される担体の供給源、および
(d)上記のような使用において化合物を投与するための説明書(printed instruction)
を含んでなる。
【0208】
F.併用療法
ワクチンは癌細胞および感染細胞または感染性病原体を排除するために強いT細胞応答を必要とする。本明細書に記載されているPD−1受容体アンタゴニストは、T細胞に対して共刺激シグナルを与えるためにワクチンの成分として、増強剤とともに投与することができる。本明細書に開示されるワクチンは抗原、PD−1受容体アンタゴニスト、ならびに任意選択のアジュバントおよび標的化分子を含む。
【0209】
本発明の方法および組成物によりT細胞応答が増強される抗原としては、ペプチド、タンパク質、多糖類、糖類、脂質、核酸、またはその組合せが含まれる。疾患の場合、抗原は疾患工程によって存在する。
【0210】
開示されているPD−1受容体アンタゴニスト組成物は、その後の感染性病原体曝露に対して被験体に耐性を付与する予防用ワクチンとともに投与してもよいし、あるいは癌を有する被験体における腫瘍抗原またはウイルスに感染した被験体におけるウイルス抗原などの既存の抗原に対して被験体の免疫応答を誘導または増強するために治療用ワクチンとともに投与してもよい。
【0211】
予防的、治療的または脱感作免疫応答の所望の転帰は、当該技術分野でよく知られている原理に基づき、疾患によって異なり得る。例えば、感染性病原体に対する免疫応答は感染性病原体の定着および複製を完全に防ぐことができ、「無菌免疫(sterile immunity)」および疾病症状の非存在に影響を及ぼす。しかしながら、感染性病原体に対するワクチンは、それが症状の数、重篤度または持続時間を軽減するか、症状を有する集団中の個体数を少なくするか、または感染性病原体の伝染を軽減すれば、有効であると見なせる。同様に、癌、アレルゲンまたは感染性病原体に対する免疫応答は疾患を完全に治療する場合、症状を緩和する場合、または疾患に対する全体的な治療的介入の一面である場合がある。例えば、癌に対する免疫応答の刺激は、処置に影響を与えるための外科術、化学療法薬、放射線、ホルモンおよび他の免疫学的アプローチと組み合わせることができる。
【0212】
本発明の方法および産物は、増強剤に加えてのアジュバントの使用を排除するものではない。このようなアジュバント例えばPD−1アンタゴニストとともに投与することができる。本発明の組成物および方法において有用なアジュバントは、限定されるものではないが、以下の1以上:オイルエマルション(例えば、フロイントのアジュバント)、サポニン処方物、ウィロソーム(virosomes)およびウイルス様粒子、細菌および細菌誘導体、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、ADP−リボシル化毒素および解毒誘導体、ミョウバン、BCG、無機物含有組成物(例えば、アルミニウム塩およびカルシウム塩などの無機塩)、水酸化物、リン酸塩、硫酸塩など)、生体接着剤および/または粘膜接着剤、微粒子、リポソーム、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル処方物、ムラミルペプチド、ポリホスファゼン、イミダゾキノロン化合物、および界面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルション、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノール)であり得る。有用なアジュバントとしてまた、サイトカイン、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)、インターフェロン(例えば、インターフェロンγ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子が挙げられる。
【0213】
本明細書では、開示されているPD−1受容体アンタゴニスト(本明細書に開示されるポリペプチド、断片、変異体、同族体および融合タンパク質のいずれもを含む)がそれを必要とする被験体に1以上の付加的治療薬(増強剤に加えて)と組み合わせて投与されることを排除するものではない。付加的治療薬は処置される症状、障害または疾患に基づいて選択される。例えば、PD−1受容体アンタゴニストは、免疫応答を増強または誘発する働きし、本明細書において有効剤とみなされる1以上の付加的薬剤とともに投与することができる。
【0214】
このような薬剤としては、限定されるものではないが、アムサクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン,カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、クリサンパスターゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イフォスファミド、イリノテカン、ロイコボリン、リポソームドキソルビシン、リポソームダウノルビシン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、サトラプラチン、ストレプトゾシン、テガフール−ウラシル、テモゾロマイド、テニポシド、チオテパ、チオグアニン、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビンまたはその組合せが挙げられる。代表的なアポトーシス誘導薬としては、限定されるものではないが、フルダラビンタウロスポリン、シクロヘキシミド、アクチノマイシンD、ラクトシルセラミド、15d−PGJ(2)およびその組合せが挙げられる。
【0215】
本発明の方法および組成物により提供される治療はまた、放射線療法、外科術などの他の種類の治療と併用してもよい。
【0216】
G.アンタゴニスト活性のアッセイ
本発明は、本発明の方法を実施するのに有用ないくつかの具体的構造を挙げる。PD−1、CTLA4およびこれらのいずれかのリガンドと結合し、かつまた、T細胞において阻害的シグナル伝達を低減する能力を有する化学構造を同定するための周知のアッセイ手順を参照して、アンタゴニスト活性を有し、本発明の方法において有用である他の化合物を特定することもできる。このようなアッセイのいくつかは、選択された化学構造が受容体に結合する否かを決定するのに有用な結合アッセイであり、これらは当該技術分野で周知であり、ここで詳細に述べる必要はないであろう(例えば、それぞれT細胞を用いたPD−1シグナル伝達モジュレーターに関するアッセイを示す、米国特許第2008/0274490号公報(2008年11月6日公開)および米国特許第7,105,328号公報(2006年9月12日発行)参照、これらの開示は引用することにより本明細書の開示の一部とされる)。有効断片などの本発明の薬剤の、増殖および/またはサイトカイン産生の増大によりT細胞を活性化する作用を決定するためには、他のアッセイが用いられる。このようなアッセイもまた当該技術分野で周知である。例えば、細胞増殖の増強はH−チミジンの組み込みの増加(細胞の倍加に必要とされるDNA合成の増加による)または培養系においてT細胞によるサイトカイン産生の増大を検出するためのELISAおよび/またはRIAにより測定することができる。
【0217】
このような一試験において、ヒトB7−DC−IgのPD−1結合活性を、ELISAにより評価した。96ウェルELISAプレートを、BupH Carbonate/Bicarbonate pH9.4バッファー(Pierce)で希釈した0.75μg/mLの組換えヒトPD−1/Fc(R&D Systems)100μLで2時間コーティングした後、BSA溶液(Jackson ImmunoResearch)を用いて90〜120分間ブロックした。連続誘導体希釈したヒトB7−DC−Ig(野生型ならびにPD−1との結合の低減に関して選択されたD111S突然変異タンパク質およびK113S突然変異体)ならびにヒトIgG1イソ型対照を90分間結合させた。結合したB7−DC−Igは、100μLの0.5μg/mLビオチン結合抗ヒトB7−DCクローンMIH18(eBioscience)、次いで1:1000希釈HRP−ストレプトアビジン(BD Bioscience)およびTMB基質(BioFX)を用いて検出した。プレートリーダー(Molecular Devices)を用いて450nmの吸光度を読み取り、データを、SoftMaxで4パラメーターロジスティック適合を用いて解析した。
【0218】
ネズミB7−DC−IgのPD−1結合活性を、ELISAにより評価した。96ウェルのELISAプレートを、BupH Carbonate/Bicarbonate pH9.4バッファー(Pierce)で希釈した0.75μg/mLの組換えマウスPD−1/Fc(R&D Systems)100μLを用いて2時間コーティングし、次いでBSA溶液(Candor-Bioscience)を用いて90分間ブロックした。連続希釈したネズミB7−DC−Ig(野生型、ならびにPD−1への低減された結合のために選択されたD111SおよびK113S変異株)、ならびにネズミIgG2aイソ型対照を90分間結合させた。結合したB7−DC−Igは、100μLの0.25μg/mLビオチン結合抗マウスB7−DCクローン112(eBioscience)、次いで1:2000希釈HRP−ストレプトアビジン(BD Bioscience)およびTMB基質(BioFX)を用いて検出した。プレートリーダー(Molecular Devices)を用いて450nmの吸光度を読み取り、データを、SoftMaxで4−パラメーターロジスティック適合を用いて解析した。これらのデータは、ヒトB7−DC−Ig(野生型)はPD−1と結合するが、K113SおよびD111S突然変異体はPD−1と結合しないことを示した。
【0219】
本発明の手順の実施するに当たって、当然のことながら、特定のバッファー、培地、試薬、細胞、培養条件などに対する言及は限定を意図するものではなく、当業者が記述されている特定の文脈において注目に値するまたは価値があると認識する、関連のあるあらゆる材料を含むように読まれるべきであると理解される。例えば、あるバッファー系または培養培地は多くの場合、別のものに置き換えてもなお同じ、同一でなくとも類似の結果を達成することができる。当業者ならば、過度な実験を行うことなく、本明細書に開示されている方法および手順の使用において、それらの目的を最適に果たすような置換を行うことができる系および方法論に関して十分な知識を持っているであろう。
【0220】
本発明を以下の限定されない実施例でさらに詳しく説明する。これらの方法および例は本発明を本明細書に記載されている実施形態に何ら限定されるものではなく、他の実施形態および使用もそれ自体疑いなく当業者に示唆を与えるものと理解すべきである。
【実施例】
【0221】
実施例1
B7−DC−IgはPD01発現CHO細胞と結合する
B7−DC−Igを、最初にアロフィコシアニン(APC)と結合させ、次いでPD−1を構成的に発現するCHO細胞系統またはPD−1を発現しない親CHO細胞とともに種々な濃度でインキュベートした。結合は、フローサイトメトリーにより分析した。図1は、プローブ濃度の関数としての、B7−DC−Ig−APCの蛍光強度の中央値(MFI)を示す。B7−DC−Ig−APCはCHO.PD−1細胞(黒円)に結合するが、トランスフェクトされていないCHO細胞には結合しない(灰色三角)。
【0222】
実施例2
B7−DC−IgはPD−1との結合に関してB7−H1と競合する
B7−H1−Igを、最初にアロフィコシアニン(APC)と結合させた。B7−H1−Ig−APCをプローブおよび細胞混合物に加える前に、種々の濃度の非標識B7−DC−Igを、最初に、PD−1を構成的に発現するCHO細胞系統とインキュベートした。図2は、B7−H1−Fc−APCの蛍光強度の中央値(MFI)が、加えた非標識B7−DC−Igコンペティターの濃度(x軸)の関数として示されることを示す。非標識B7−DC−Ig濃度が増加するにつれて、CHO細胞に結合するB7−H1−Ig−APC量は減少し、このことは、PD−1への結合に関してB7−DC−IgがB7−H1と競合することを実証している。
【0223】
実施例3
CT26腫瘍モデル
マウス結腸直腸腫瘍細胞系統、CT26をATCCから入手した。ATCCのガイドラインに従って、4代継代でマスターセルバンクを作製した。細胞を試験し、マイコプラズマおよび他の病原体が混入していないことを確認した。腫瘍細胞の一つのバイアルが低温保存株から解凍されており、接種前に2代継代増殖していた。
【0224】
CT26細胞は、30mLの完全培地(RPMI+10%FBS、2mM L−Glu、および1×P/S)を用いて1:5希釈して分割し2日間培養、または30mLの完全培地を用いて1:10希釈し3日間培養した。
【0225】
培地を吸引してCT26細胞を採取し、フラスコを5mLのPBSですすぎ、5mLのトリプシンを加えて37℃にて2分間インキュベートし、次いで10mLの完全培地で中和した。600×g(〜1000rpm)で5分間遠心分離した後、培地を吸引して(sspirated)細胞ペレット10mlのプレーンRPMIを用いてピペット操作により再懸濁させた。この洗浄工程を3回繰り返した。
【0226】
接種された細胞の細胞数および生存力は、適切な希釈溶液(例えば、1:5希釈、10μL細胞+40μLトリパンプルー)を用いるトリパンプルー色素染色により分析し、最終洗浄工程の時にNOVA細胞計数により確認した。
【0227】
細胞生存力は、一般に接種に対し95%より大きかった。
CT26細胞は、最初の接種のためにプレーンRPMIを用いて6.7×10細胞/mLに希釈し、氷上で保存した。通常、各マウスには、150mL(1×10細胞)を接種した。
【0228】
9日目に、すべての担癌マウスを最初にラット用ケージにまとめ、それらのマウスを実験群に無作為に分けた。CTX溶液を1×PBSにより再構成して4mg/mLとした。マウス腹腔内に(IP)0.5mLのCTX溶液を注射し、結果として20グラムのマウスに対して2mg、すなわち100mg/kgとなった。
【0229】
10日目に、マウスに0.5mLのB7−DC−Ig(0.2mg/mL)を腹腔内注射し、結果として20グラムのマウスに対して0.1mg、すなわち5mg/kgとなった。同じ用量を1週間に2回、4週間にわたり合計8用量を投与した。腫瘍増殖は、B7−DC−Igを投与した日から開始し腫瘍を週に2回、デジタルキャリパーを用いて計測することによりモニターした。腫瘍容量は、以下に示すように計算した:
腫瘍容量=π(Dshort×(Dlong)/6=〜0.52×(Dshort×(Dlong
【0230】
腫瘍容量が2000mmであるか、または腫瘍接種部位に皮膚潰瘍および感染がある場合には、マウスを安楽死させ、試験から除外した。
【0231】
実施例4
シクロホスファミドおよびB7−DC−Igの組合せは定着腫瘍を根絶し得る
9〜11週齢のBalb/Cマウスの皮下に、上記のように1.0×10のCT26結腸直腸腫瘍細胞を移植した。腫瘍移植後10日目に、マウスに100mg/kgのシクロホスファミドを投与した。B7−DC−Ig処置は1日後である11日目に開始した。マウスを、100μgのB7−DC−Igを用いて、1週間に2用量、4週間にわたり合計8用量で処置した。CTX+B7−DC−Ig処置投与計画を受けたマウスの75%において44日までに定着腫瘍が根絶され、一方、対照CTX単独群のマウスは全例が、腫瘍増殖の結果死亡したか、または腫瘍がIACUCにより承認されたサイズを超えたため安楽死させた(結果は図3に示す)。これらの結果は、定着腫瘍に対する処置投与計画が単なる予防ではなく有効であることを実証している。
【0232】
実施例5
シクロホスファミドおよびB7−DC−Igの組合せは定着腫瘍を根絶し、腫瘍再負荷から保護し得る
上記実験でCT26結腸直腸定着腫瘍を根絶したマウスに、44日目および70日目に1×10個のCT26細胞を再負荷した。再負荷により腫瘍が増殖しなかったことは、シクロホスファミドおよびB7−DC−Igの組合せ処置が、長期にわたる抗腫瘍免疫を発展させたことを示唆している。ビヒクル対照群のマウスは全例が腫瘍を発現した(結果は図4に示す)。これらの結果は、処置投与計画の定着腫瘍に対する有効性、ならびにシクロホスファミドおよびB7−DCIgの組合せ処置が腫瘍抗原に対する記憶応答をもたらしたことを示している。
【0233】
実施例6
シクロホスファミドおよびB7−DC−Igの組合せは腫瘍特異的、記憶細胞傷害性Tリンパ球を生じさせ得る
上記実験でCT26結腸直腸定着腫瘍を根絶したマウスに、44日目に2.5×10個のCT26細胞を再負荷した。7日後、マウスの脾臓を単離した。マウス脾細胞を、Golgi遮断薬(BD BioScience)の存在下、5または50μg/mLのオボアルブミン(OVA)またはAH1ペプチドとともに6時間パルス処理し、CD8/IFNγT細胞を評価することにより記憶Tエフェクター細胞を分析した。図5の結果は、CT26腫瘍根絶マウスにおいて多量のCT26特異的Tエフェクター細胞が存在することを示している。
【0234】
実施例7
腫瘍根絶に対する用量依存的なB7−DC−Igの作用
9〜11週齢のBalb/Cマウスの皮下に、上記のように1.0×10のCT26結腸直腸腫瘍細胞を移植した。腫瘍移植後9日目に、マウスに単回用量のシクロホスファミド(100mg/kg)を投与し、10日目に30、100または300μgのB7−DC−Ig(1週間に2回、4週間、計8回)の処置を開始した。図6は、300μgで腫瘍が根絶されたマウスは70%、100μgでの腫瘍根絶は40%、30μg用量では腫瘍根絶は10%であったことを示す。
【0235】
実施例8
シクロホスファミドおよび抗PD−1の組合せは定着腫瘍を根絶し得る
9〜11週齢のBalb/Cマウスの皮下に1.0×10のCT26結腸直腸腫瘍細胞を移植した。腫瘍移植後11日目に、マウスに単回用量のシクロホスファミド(100mg/kg)を投与し、抗PD−1抗体(250μg、クローンG4、Hirano F. et al., 2005 Cancer Research)による処置を開始し、1週間に3回、4週間投与した。CTX+抗PD−1処置計画を受けたマウスの70%で腫瘍負荷後50日目に定着腫瘍が根絶され、一方、対照および抗PD−1単独群のマウスは全例が、腫瘍増殖の結果死亡したか、または腫瘍がIACUCにより承認されたサイズを超えたため安楽死させた。これらの結果は、定着腫瘍に対する処置計画が単なる予防ではなく有効であること示す。結果を図7に示す。
【0236】
実施例9
シクロホスファミドおよび抗CTLA4の組合せは定着腫瘍を根絶し得る
9〜11週齢のBalb/Cマウスの皮下に1.0×10のCT26結腸直腸腫瘍細胞を移植した。腫瘍移植後11日目に、マウスに100mg/kgのシクロホスファミドを投与した。1日後の12日目に抗CTLA4(ハムスターハイブリドーマ由来の抗マウスCTLA4−ATCC寄託番号UC10−4F10−11)処置を開始した。マウスを100μgの抗CTLA4で、1週間に2回、4週間処置した。CTX+抗CTLA4処置計画を受けたマウスの56%では腫瘍負荷後50日目に腫瘍が見られず、一方、対照群のマウスは全例が、腫瘍増殖の結果死亡したか、または腫瘍がIACUCにより承認されたサイズを超えたため安楽死させた。結果を図8に示す。これらの結果は、定着腫瘍に対する処置計画が単なる予防ではなく有効であること示す。
【0237】
実施例10
シクロホスファミドおよびB7−DC−Ig投与計画の組合せは腫瘍微小環境においてTregの低減をもたらす
図9は、9〜11週齢のBalb/Cマウスの皮下に1×105 CT26細胞を移植した試験結果を示す。9日目にマウスに100mg/kgのCTXを注射した(IP)。24時間後の10日目に、マウスを100μgのB7−DC−Igで処置した。5群があった:腫瘍細胞を負荷しなかったナイーブマウス、ビヒクル注射、CTX単独、CTX+B7−DC−IgまたはB7−DC−Ig単独。T細胞分析のため、11日目(CTX2日後)と16日目(CTX7日後)に2匹のナイーブマウスと他の群から4匹のマウスを試験から取り出した。左のパネルは、11日目、CTX注射2日後において、CTX処置マウスの脾臓のTregが、腫瘍移植を行い、ビヒクルを注射したマウスの場合よりも有意に低かったことを示す。右のパネルは、16日目、CTX7日後およびB7−DC−Ig処置6日後において、B7−DC−Igが、高いPD−1を発現するCD4+T細胞を有意に低減したことを示す。これはB7−DC−Ig処置マウスとCTX+B7−DC−Ig処置マウスの双方に見られた。腫瘍細胞を移植したマウスは、所属リンパ節(draining LN)中のPD−1+/CD4+T細胞がナイーブマウスに比べて多い傾向があった。
【0238】
実施例11
シクロホスファミドおよびB7−DC−Igの組合せは転移性前立腺腫瘍モデルにおいてマウスの生存を促進できる
9〜11週齢のB10.D2マウスに、肺転移後の親TRAMP細胞の注射から単離された3.0×105 SP−1細胞を静脈内注射した。このCTXマウスに、5日目、12日目、および19日目に3用量のCTX、50mg/kgを投与した。B7−DC−Ig処置マウスには6日目、13日目および20日目に3用量のB7−DC−Ig、5mg/kgを投与した。100日目に、対照群、無処置、CTX単独、B7−DC−Ig単独ではマウスの17%が生存したが、CTXとB7−DC−Igの組合せを投与したマウスの43%が生存した。結果を図10に示す。
【0239】
実施例12
リステリア癌ワクチンおよびB7−DC−Igの組合せはCT26肝臓移植後のマウスの生存を高め得る
11〜13週齢のBalb/Cマウスに、半脾臓(hemispleen)注射法(Yoshimura K et al., 2007, Cancer Research)を用い、CT26細胞を移植した。10日目に、マウスに50mg/kgのCTXを1回注射した(IP)。24時間後の11日目に、マウスを0.1 LD50(1×107CFU)の、CT26の免疫優性エピトープである組換えリステリア菌担持AH1ペプチドで処置し、その後、14日目と17日目にも処置した。また、11日目、その後18日目にマウスをB7−DC−Igで処置した。図11は、処置無しまたはCTXおよびロステリア癌ワクチンで処置したマウスが45日目までに総て死に至ったことを示す。3つの組合せ、CTX+リステリア癌ワクチンと、B7−DC−Igとを投与したマウスの60%が生き残った。
【0240】
参照文献




【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類においてT細胞応答を増強する方法であって、有効な処置計画を含んでなり、該計画がT細胞において阻害的シグナル伝達を低減する化合物と、増強剤とを投与することを含んでなり、該処置計画が該哺乳類においてT細胞応答を増強するのに有効である、方法。
【請求項2】
前記化合物が第一および第二のペプチド部分を含んでなる融合タンパク質であり、該第一のペプチド部分がPD−1アンタゴニストポリペプチドの有効断片を含んでなり、該第二のペプチド部分が免疫グロブリン(Ig)の一部を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PD−1アンタゴニストポリペプチドが野生型B7−DCポリペプチドである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記B7−DCがヒトB7−DCである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有効断片が前記B7−DCポリペプチドの膜貫通部分のいずれの実質的部分も含まない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記有効断片が前記B7−DCポリペプチドの可溶性部分を含んでなり、前記第二のペプチド部分が抗体のFc領域を含んでなるが、前記抗体のいずれの可変領域も含まない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記有効断片が配列番号3のアミノ酸配列を含んでなり、前記第二のポリペプチド部分が抗体のFc領域を含んでなるが、前記抗体のいずれの可変領域も含まない、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第一のペプチド部分が配列番号1のアミノ酸20〜221または20〜121と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列からなる、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記第一のペプチド部分が配列番号1のアミノ酸20〜221または20〜121のアミノ酸配列からなる、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記PD−1結合断片が、配列番号1の少なくとも10個の連続するアミノ酸、または少なくとも25個の連続するアミノ酸、または少なくとも50個の連続するアミノ酸、または少なくとも75個の連続するアミノ酸、または少なくとも90個の連続するアミノ酸、または少なくとも100個の連続するアミノ酸を含んでなる、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記融合タンパク質が、配列番号9、10、12、または13の配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記融合タンパク質が、配列番号9、10、12、または13のアミノ酸配列を含んでなる、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記融合タンパク質が単量体である、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記融合タンパク質が二量体の部分である、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記二量体がホモ二量体である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記二量体がヘテロ二量体である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記増強剤がシクロホスファミドまたはシクロホスファミドの類似体である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記増強剤が調節性Tリンパ球(T−reg)の活性を低減する薬剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記増強剤が、前記化合物の投与前に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記増強剤が、前記化合物を投与する少なくともX時間(ここで、Xは1、2、3、5、10、15、20、24、および30から選択される)前に投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記処置計画が、抗PD−1抗体、抗CTLA4抗体、有糸分裂阻害剤、アロマターゼ阻害剤、A2ARアンタゴニスト、および脈管形成阻害剤からなる群から選択される少なくとも一つの付加的薬剤を投与することをさらに含んでなる、請求項1の方法。
【請求項22】
前記化合物が野生型B7−DCポリペプチドの有効断片を含んでなるポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記有効断片が前記ポリペプチドの膜貫通部分のいずれの部分も含まない、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記B7−DCポリペプチドがヒトB7−DCポリペプチドである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記有効断片が配列番号1のアミノ酸20〜221または20〜121と少なくとも80%同一性を有するアミノ酸配列を含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記有効断片が配列番号1のアミノ酸20〜221または20〜121のアミノ酸配列からなる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記PD−1結合断片が、配列番号1または19の少なくとも10個の連続するアミノ酸、または少なくとも25個の連続するアミノ酸、または少なくとも50個の連続するアミノ酸、または少なくとも75個の連続するアミノ酸、または少なくとも90個の連続するアミノ酸、または少なくとも100個の連続するアミノ酸を含んでなる、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物が野生型B7−H1ポリペプチドの有効断片を含んでなるポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記有効断片が前記ポリペプチドの膜貫通部分のいずれの部分も含まない、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記B7−H1ポリペプチドがヒトB7−H1ポリペプチドである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記有効断片が、配列番号16の少なくとも10個の連続するアミノ酸、または少なくとも25個の連続するアミノ酸、または少なくとも50個の連続するアミノ酸、または少なくとも75個の連続するアミノ酸、または少なくとも90個の連続するアミノ酸、または少なくとも100個の連続するアミノ酸を含んでなる、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物が、野生型PD−1ポリペプチドの有効断片を含んでなるポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記有効断片が、前記ポリペプチドの膜貫通部分のいずれの部分も含まない、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記PD−1ポリペプチドがヒトPD−1ポリペプチドである、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記有効断片が、配列番号17または18の少なくとも10個の連続するアミノ酸、または少なくとも25個の連続するアミノ酸、または少なくとも50個の連続するアミノ酸、または少なくとも75個の連続するアミノ酸、または少なくとも90個の連続するアミノ酸、または少なくとも100個の連続するアミノ酸を含んでなる、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記化合物が抗PD−1抗体またはその有効断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記増強剤がシクロホスファミドまたはシクロホスファミドの類似体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記増強剤が前記化合物の投与前に投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記増強剤が、前記化合物を投与する少なくともX時間(ここで、Xは1、2、3、5、10、15、20、24、および30から選択される)前に投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記化合物が抗CTLA4抗体またはその有効断片である、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記増強剤がシクロホスファミドまたはシクロホスファミドの類似体である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記増強剤が、前記化合物の投与前に投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記増強剤が、前記化合物を投与する少なくともX時間(ここで、Xは1、2、3、5、10、15、20、24、および30から選択される)前に投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記化合物がB7−DC、B7−H1、PD−1、B7.1の細胞外ドメイン、またはこれらのいずれかの有効断片からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
前記有効断片が、少なくとも10個の連続するアミノ酸、または少なくとも25個の連続するアミノ酸、または少なくとも50個の連続するアミノ酸、または少なくとも75個の連続するアミノ酸、または少なくとも90個の連続するアミノ酸、または少なくとも100個の連続するアミノ酸を含んでなる、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記化合物が、増強されたT細胞媒介免疫応答による処置を受け得る疾患を処置するのに十分な量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記化合物が、
(a)第一および第二のペプチド部分を含んでなり、該第一のペプチド部分がPD−1アンタゴニストポリペプチドの有効断片を含んでなり、該第二のペプチド部分が免疫グロブリン(Ig)の一部を含んでなる、融合タンパク質、
(b)その有効断片を含む抗PD−1抗体、
(c)その有効断片を含む抗CTLA4抗体、
(d)PD−1結合ポリペプチドまたはPD−1リガンド結合ポリペプチド、および
(e)(a)、(b)、(c)、および(d)のいずれか2以上の組合せ
からなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記増強剤がシクロホスファミドまたはシクロホスファミドの類似体である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記増強剤が、調節性Tリンパ球(T−reg)の活性を低減する薬剤である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記増強剤がスニチニブ(SUTENT)、抗TGNFβまたはイマチニブ(GLEEVAC)、アントラサイクリン、オキサリプラチン、ドキソルビシン、TLR4アンタゴニスト、およびIL−18アンタゴニストである、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
抗PD−1抗体、抗CTLA4抗体、有糸分裂阻害剤、アロマターゼ阻害剤、A2ARアンタゴニスト、および脈管形成阻害剤からなる群から選択される少なくとも一つの付加的薬剤を投与することをさらに含んでなる、請求項47の方法。
【請求項52】
前記疾患が感染性疾患である、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
前記疾患が癌である、請求項46に記載の方法。
【請求項54】
前記癌が膀胱癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、食道癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、鼻咽頭癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、胃癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、または血液性癌である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
薬学上許容される担体中にT細胞上でProgrammed Cell Death−1(PD−1)を介した阻害的シグナル伝達を妨げる化合物および増強剤を含んでなり、該化合物および該増強剤が哺乳類においてT細胞応答を増強するのに有効な量でともに存在する、治療組成物。
【請求項56】
前記化合物が、
(a)第一および第二のペプチド部分を含んでなり、該第一のペプチド部分がPD−1アンタゴニストポリペプチドの有効断片を含んでなり、該第二のペプチド部分が免疫グロブリン(Ig)の一部を含んでなる、融合タンパク質、
(b)その有効断片を含む抗PD−1抗体、
(c)その有効断片を含む抗CTLA4抗体、
(d)PD−1結合ポリペプチド、PD−1リガンド結合ポリペプチド、PD−1ポリペプチド、またはその有効断片、および
(e)(a)、(b)、(c)、および(d)のいずれか2以上の組合せ
からなる群から選択される、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
前記増強剤がシクロホスファミドまたはシクロホスファミドの類似体である、請求項55に記載の組成物。
【請求項58】
前記増強剤がスニチニブ(SUTENT)、抗TGNFβまたはイマチニブ(GLEEVAC)、アントラサイクリン、オキサリプラチン、ドキソルビシン、TLR4アンタゴニスト、およびIL−18アンタゴニストである、請求項55に記載の組成物。
【請求項59】
抗PD−1抗体、抗CTLA4抗体、有糸分裂阻害剤、アロマターゼ阻害剤、A2ARアンタゴニスト、および脈管形成阻害剤からなる群から選択される少なくとも一つの付加的薬剤を投与することをさらに含んでなる、請求項47の組成物。
【請求項60】
前記化合物が増強剤とともに投与される併用療法によりT細胞応答を増強するための薬剤の製造におけるT細胞において阻害的シグナル伝達を低減する化合物の使用。
【請求項61】
T細胞において阻害的シグナル伝達を低減する前記化合物および増強剤が異なる時点に投与するための別個の薬剤として提供される、請求項60に記載の使用。
【請求項62】
増強剤が阻害化合物の24時間前に投与される、請求項61に記載の使用。
【請求項63】
感染性疾患の処置における請求項60に記載の化合物および増強剤の使用。
【請求項64】
癌の処置における請求項60に記載の化合物および増強剤の使用。
【請求項65】
前記癌が、膀胱癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、食道癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、鼻咽頭癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、胃癌、子宮癌、卵巣癌、精巣癌、または血液性癌である、請求項64に記載の使用。
【請求項66】
感染性疾患の処置における請求項60に記載の化合物および増強剤の使用。
【請求項67】
T細胞において阻害的シグナル伝達を低減する化合物を増強剤と組み合わせて投与するための医療用キットであり、
(a)T細胞において阻害的シグナル伝達を低減する化合物の投与供給源、
(b)増強剤供給源、
(c)薬学上許容される担体の供給源、および
(d)請求項59〜64に記載の使用において化合物を投与するための説明書
を含んでなる、キット。
【請求項68】
前記化合物がB7−DC、B7−H1、PD−1、もしくはB7−1の細胞外ドメインまたは保存的アミノ酸置換のみによりそれらと異なるポリペプチド、およびこれらの断片からなる、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−500847(P2012−500847A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524986(P2011−524986)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/004825
【国際公開番号】WO2010/027423
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(511049439)アンプリミューン、インコーポレーテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】AMPLIMMUNE, INC.
【Fターム(参考)】