説明

PDADMACで被覆された活性炭粒子を含むフィルター、及びその製造方法

被覆活性炭を製造するシステム及び方法の幾つかの態様は、約100μm以下の粒径を有する活性炭粒子を用意し、そして活性炭粒子の表面上にカチオン性ポリマー溶液の液滴を噴霧することによって活性炭粒子を被覆する工程を含み、カチオン性ポリマー溶液は約1重量%〜約15重量%のカチオン性ポリマーを含み、液滴径は約5μm〜約100μmの間である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して飲用水を製造する浄水フィルター及び方法に関し、具体的にはポリマー被覆を有する活性炭を含む浄水フィルター、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の汚染物質、特に水中の汚染物質としては、重金属(例えば鉛)、微生物(例えばバクテリア、ウィルス)、酸(例えばフミン酸)、又はNSF/ANSI標準規格No.53にリストされている任意の汚染物質のような種々の元素及び組成物を挙げることができる。本明細書において用いる「微生物」、「微生物学的有機体」、「微生物因子」、及び「病原菌」という用語は交換可能に用いられる。本明細書において用いるこれらの用語は、バクテリア、ウィルス、寄生生物、原虫、及び細菌として特徴付けることができる種々のタイプの微生物を指す。種々の状況においては、上記に示すこれらの汚染物質は水を用いる前に除去しなければならない。例えば、多くの医療分野及び幾つかの電子部品の製造においては、非常に純粋な水が必要である。より通常的な例としては、全ての有害な汚染物質を水から除去しなければならず、その後に飲用可能、即ち摂取に適するようになる。幾つかの工業/都市水処理システムにおいては濾過が行われているが、これらのフィルターは消費者に優しい水濾過用途、例えば家庭用及び個人用のフィルター用途において用いるか、及び/又は飲用水を製造するために好適又は必要な除去性能のために好適ではないか、及び/又はそれを達成できない可能性がある。その結果として、汚染物質の向上した除去能力を有するフィルターに対する継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
一態様によれば、被覆された活性炭を製造する方法が提供される。この方法は、約100μm以下の粒径を有する活性炭粒子を用意し、そして活性炭粒子の表面上にカチオン性ポリマー溶液の液滴を噴霧することによって活性炭粒子を被覆する工程を含み、カチオン性ポリマー溶液は約1重量%〜約15重量%のカチオン性ポリマーを含み、液滴径は約5μm〜約100μmの間である。
【0004】
本発明の幾つかの態様によって与えられるこれらの及び更なる目的及び有利性は、図面と合わせて以下の詳細な説明を考察すればより完全に理解されるであろう。
本発明の特定の態様の以下の詳細な記載は、添付の図面と合わせて読むと最も良好に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1A及び1Bは、活性炭上に80〜120μmの液滴径を有する12重量%のpDADMAC溶液を噴霧被覆した際の、炭素粒子イオン及びカチオン性ポリマーイオンのそれぞれの配置を示す二次イオン質量分析(SIMS)顕微鏡写真である。
【図2】図2A及び2Bは、本発明の1以上の態様にしたがって活性炭上に20μmの液滴径を有する4重量%のpDADMAC溶液を噴霧被覆した際の、炭素粒子イオン及びカチオン性ポリマーイオンのそれぞれの配置を示すSIMS顕微鏡写真である。
【図3】図3は、本発明の1以上の態様によるカチオン性被覆活性炭粒子を製造する方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図面に示す態様は例示のものであり、特許請求された発明を限定することは意図していない。更に、図面及び発明の個々の特徴は、詳細な説明を考察すればより完全に明白であり理解されるであろう。
【0007】
本発明の幾つかの態様は、その上にカチオン性ポリマー被覆を有する活性炭粒子を含む改良された活性炭フィルター、及びこれらの被覆された活性炭粒子を製造する方法に関する。具体的には、本発明の幾つかの態様は、溶出を減少させるようにカチオン性ポリマー被覆を適用することに関する。本明細書において用いる「溶出」とは、水を導入することによって活性炭粒子上のカチオン性ポリマー被覆の少なくとも一部を洗い流すことを意味する。精製された飲用水を製造することが望ましいので、カチオン性ポリマーが濾過した水中に溶出することは望ましくない。したがって、本方法は、微生物除去性能を維持しながら、溶出を最小にするように被覆の均質性及び量を最適にする。
【0008】
以下に詳細に記載する活性炭フィルターは、流体から重金属、フミン酸、及び/又は微生物のような汚染物質を除去するために個々に運転することができ、或いはかかる汚染物質をより効率的及び/又は増加したレベルで除去するためにタンデムで用いることができる。例えば、本フィルターは、4のMS2バクテリオファージの対数減少と共に6のバクテリアRTの対数減少が推奨される微生物学的精製装置に関するEPA標準指針を満足することができる。浄水フィルターは、工業的及び商業的用途、並びに個人消費用途、例えば家庭及び個人的使用の用途において用いることができる。浄水フィルターは、当業者によく知られている種々の据付設備、電気器具、又は部品と共に用いるように運転することができる。
【0009】
炭素フィルターに活性炭粒子を含ませることができ、種々の好適な組成及び構造を含ませることができる。一態様においては、炭素フィルターは、ブロック構造に圧縮されている活性炭の粒子又は粉末を含むフィルターブロックであってよい。本明細書において用いる「フィルターブロック」という句は、一緒に結合して液体、例えば水、空気、炭化水素などを濾過することができる構造体を形成するフィルター粒子の混合物を指すように意図される。かかるフィルターブロックには、フィルター粒子、バインダー粒子、及び鉛、水銀、ヒ素等のような特定の汚染物質を除去するための他の粒子又は繊維を含ませることができる。フィルターブロックは形状及び流動パターンを変化させることができる。多くの意図される現在のフィルターブロック製造方法の1つは、オーム加熱を用いるシングルキャビティ圧縮成形法である。
【0010】
或いは、炭素フィルターに、バインダーを用いてか又は用いないで炭素粒子の緩い床を含ませることができる。他の態様においては、活性炭粒子を、当業者によく知られている任意の基材媒体、例えば不織基材中に含侵させることができる。更に、本発明のフィルターにはまた、逆浸透システム、紫外光システム、オゾンシステム、イオン交換システム、電解水システム、及び当業者に公知の他の水処理システムなどの他のフィルターシステムを含ませることもできる。また、本発明のフィルターにフィルターブロックの周りを覆うプレフィルターを含ませて、フィルターブロックが懸濁粒子によって詰まるのを抑止することもできる。更に、本発明のフィルターに指示器システム及び/又は遮断システムを含ませて、フィルターの残りの寿命/能力を消費者に示し、フィルターの残りの寿命/能力がゼロである場合にはフィルターを遮断することができる。
【0011】
小数の代表的な態様によれば、炭素フィルターの活性炭粒子に、種々の源からの炭素、例えば木質系炭素、ヤシ殻炭、又はこれらの組合せを含ませることができる。他の源、例えば好適なリグノセルロース誘導炭素は本発明において意図される。幾つかの態様においては、複数の炭素粒子の混合物を用いて所望の粒子及び孔の径分布を達成することが望ましい可能性がある。例えば、主としてメソ多孔質(2〜50nmの間の孔径)である木質系炭素、及び主として微多孔質(2nm未満の孔径)であるヤシ殻炭を混合することができる。かかる活性炭粒子の構造及び組成の例は、米国特許7,316,323、6,852,224、6,827,854、6,783,713、6,733,827、6,565,749、6,423,224、6,290,848、及び米国公開20080015611、20070080103、20040159596、20040232065、20040129617、及び20040164018(これらは全てその全部を参照として本明細書中に包含する)において与えられている。
【0012】
[0001]本明細書において用いる「中央粒径」という句は、この下方又は上方に粒子の全体積の50%が存在する粒子の直径を指す。この中央粒径はDv,0.50として示される。粒子を別々の径に分別するための多くの方法及び機械が当業者に公知であるが、篩別は、粒径及び粒径分布を測定するための最も容易で、最も安価な通常の方法の1つである。粒子の径分布を求めるための別の好ましい方法は、光散乱を用いるものである。更に、「粒子スパン」という句は、与えられた粒子試料の統計的表示であり、以下のようにして計算することができる。まず、上記に記載のようにして中央粒径Dv,0.50を計算する。次に、同様の方法によって、粒子試料を10重量%のフラクションで分ける粒径:Dv,0.10を求め、次に粒子試料を90重量%のフラクションで分ける粒径:Dv,0.90を求める。粒子スパンは、(Dv,0.90−Dv,0.10)/Dv,0.50に等しい。1つの代表的な態様においては、炭素フィルターに、約100μm未満、約50μm未満、約40μm未満、約37.5μm未満、又は約35μm未満の中央粒径を有する活性炭フィルター粒子を含ませることができる。更に、フィルター粒子は、約1.8以下、約1.5以下、約1.4以下、及び約1.3以下の粒子スパンを有していてよい。
【0013】
[0002]更に、活性炭は、約0.5mL/g〜約0.7mL/gのメソ細孔容積、及び約1mL/g〜約1.5mL/gの全細孔容積を示してよい。更に、1つの代表的な態様においては、活性炭は、約2nm〜約50nmの細孔径を有するメソ細孔、直径約30μmの粒径、及び約1〜約1.6又は約1.3〜約1.4のスパンを有していてよい。本明細書において用いる「メソ細孔」という用語は、2nm〜50nmの間(又は同等に20Å〜500Åの間)の幅又は直径を有する粒子内細孔を指すように意図される。本明細書において用いる「メソ細孔容積」という句は全てのメソ細孔の容積を指す。
【0014】
1以上の態様によれば、活性炭粒子はカチオン性ポリマーによって被覆することができる。本発明において用いるための代表的なカチオン性ポリマーは、ポリ(N−メチルビニルアミン)、ポリアリルアミン、ポリアリルジメチルアミン、ポリジアリルメチルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(pDADMAC)、ポリジアリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート(pDADMAT)、ポリジアリルジメチルアンモニウムナイトレート(pDADMAN)、ポリジアリルジメチルアンモニウムペルクロレート(pDADMAP)、ポリビニルピリジニウムクロリド、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリビニルイミダゾール、ポリ(4−アミノメチルスチレン)、ポリ(4−アミノスチレン)、ポリビニル(アクリルアミド−co−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)、ポリビニル(アクリルアミド−co−ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリエチレンイミン、ポリリシン、DAB−Am及びPAMAMデンドリマー、ポリアミノアミド、ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリジメチルアミン−エピクロロヒドリン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、キトサン、グラフトデンプン、塩化メチルによるポリエチレンイミンのアルキル化の生成物、エピクロロヒドリンによるポリアミノアミドのアルキル化の生成物、カチオン性モノマーによるカチオン性ポリアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド(AETAC)、ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロリド(METAC)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、イオネン、シラン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、カチオン性ポリマーは、ポリアミノアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(pDADMAC)、ポリジメチルアミン−エピクロロヒドリン、ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリ−[2−(2−エトキシ)−エトキシエチル−グアニジニウム]クロリドからなる群から選択される。
【0015】
多くのカチオン性ポリマーが被覆中で用いるように意図されるが、一態様においては、カチオン性ポリマーにポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(pDADMAC)を単独か又は1種類以上のカチオン性ポリマーと組み合わせて含ませることができる。カチオン性ポリマー溶液には、約1重量%〜約15重量%のカチオン性ポリマー、又は約2重量%〜約8重量%のカチオン性ポリマー、又は具体的には約2重量%のカチオン性ポリマーを含ませることができる。乾燥の後、pDADMACは、約1重量%〜約4重量%、又は約2重量%のpDADMAC被覆炭素を含んでいてよい。更に、部分的にはDADMACの重合度によって定まるpDADMACポリマーに関する分子量は、pDADMAC被覆の有効性に影響を与えることも見出された。例えば、約200,000g/モル以下の重量平均分子量(Mw)及び約100,000g/モル以下の数平均分子量(Mn)を有するpDADMACポリマーは、ポリマーのモルあたり約300,000g/モル〜約500,000g/モルのMw及び約150,000g/モル〜約300,000g/モルのMnを有するpDADMACポリマーよりも優れていることが分かった。より大きなポリマー鎖を有すると、炭素粒子表面上にpDADMACが過剰に被覆される可能性がより高く、これによって溶出が引き起こされる可能性がある。
【0016】
[0003]更に、炭素フィルターには、有機バインダー、無機バインダー、又はこれらの組合せを含ませることができる。好適なバインダーの1つの例はポリエチレンバインダーである。更に、炭素ブロックフィルターは全てのタイプの流体汚染物質を除去するのに有効であるが、更なる重金属除去組成物を利用することが望ましい可能性がある。例えば、アモルファスケイ酸チタン(ATS)は鉛吸着剤として非常に有効である。他の好適な重金属除去成分が本発明において意図される。また、イオン交換樹脂、更なる吸着剤、又はこれらの組合せのような更なる成分を用いることも意図される。
【0017】
[0004]例えば図3に示すような更なる態様は、活性炭粒子にカチオン性被覆を施すための改良された方法に関する。上述したように、活性炭粒子は、除去しようとする汚染物質によって種々の径を有することができる。一態様においては、活性炭粒子は、約100μm以下、又は20μm〜80μmの間、又は約30μm〜40μmの間の平均粒径を有する。本明細書において用いる「平均粒径」とは、粒子の全体積に関する中間又は平均直径を指す。活性炭粒子は、カチオン性ポリマー溶液の液滴を活性炭粒子の表面上に噴霧することによって被覆することができる。液滴は、約5μm〜約100μm、又は約15μm〜約55μm、又は約20μm〜約30μmの間の径を有していてよい。液滴径を減少させることによって、カチオン性被覆が活性炭粒子上により均一且つ均質に分布し、これによってカチオン性ポリマーの溶出が最小になる。
【0018】
図1A〜2Bは、被覆活性炭粒子の比較の二次イオン質量分析(SIMS)画像を示す。図1A〜1B及び2A〜2Bに関しては、活性炭粒子はそれぞれ36及び35ミクロンの中央粒径を有する。図1A〜2Bは、80〜120μmの液滴によりpDADMACの12重量%溶液を噴霧することによって製造した被覆活性炭粒子(図1A及び1B)、及び本発明の1以上の態様にしたがって20μmの液滴によりpDADMACの4重量%溶液を噴霧することによって製造した被覆活性炭粒子の画像(図2A及び2B)を示す。図1A及び1Bを参照すると、左の画像は被覆炭素粒子に特異的なCイオンのマップであり、右の画像はポリマーに特異的な塩化物イオンのマップである。図1A〜1Bにおいて示されるように、炭素粒子のフィールド(図1A)はポリマーのフィールド(図1B)との非常に少ない一致を示し、これはポリマーの存在を示す。対照的に、図2A及び2Bは、炭素(図2A)とポリマー(図2B)の配置の間に密な一致を示す。両方の画像の組は、500×500μmの視野を表し、被覆炭素の両方の試料からとった幾つかの異なる画像の代表例である。カチオン性ポリマー溶液には、当業者によく知られている任意の好適な溶媒、例えば水、アルキルアルコール、又はこれらの組合せを含ませることができる。カチオン性ポリマー溶液中のカチオン性ポリマーの量を希釈することによって、ポリマーの移動性が増加し、これによってポリマー鎖に伸びる余地が与えられ、したがってカチオン性ポリマーと活性炭粒子との間の結合メカニズムが強化される。希釈はまた、噴霧時間を増加させ、ミキサー内でのより長い滞留時間を与え、それによってカチオン性ポリマーの付着が最大になる。カチオン性ポリマーの付着を最大にすることによって、カチオン性ポリマーの溶出が減少した。
【0019】
種々の装置及び反応機構がカチオン性ポリマーの噴霧被覆のために意図される。例えば、炭素粒子を、任意の好適な反応容器、例えばプラウミキサー、静止床又は移動床反応器、流動床反応器等の中に配置することができる。カチオン性ポリマーを供給するためには、反応容器は、噴霧被覆装置と接続するか又は連絡させなければならない。例えば、反応容器にノズル口を含ませることができ、これによってカチオン性被覆の反応容器中への噴霧供給が可能になる。噴霧時間は、供給するカチオン性ポリマー溶液の量、及び活性炭粒子上への所望の被覆の量によって約30秒間乃至数時間以下の範囲であってよい。1つの好適な商業的な態様は、ノズル口を有するLittleford FM-130プラウミキサーである。多くの噴霧被覆システムが反応容器のノズル口へ接続するのに好適であるが、1つの好適な商業的な装置は、Spraying Systemsによって製造されているSUN 13二流体ノズルである。他の好適な商業的な装置としては、Spraying Systemsによって製造されているSUE 15及びSUE 25の商業的ノズルが挙げられる。SUN 13は、液滴を形成する液体溶液を剪断するカチオン性被覆溶液及び空気が噴霧ノズルの内部で混合される内部混合ノズルである。SUE 15及びSUE 25の商業的ノズルは、空気及びカチオン性溶液がノズルから排出された後に混合される外部混合ノズルである。被覆工程は、約60psi〜約90psiのノズルにおける空気圧で行うことができる。更に、被覆工程は、約20psi〜約90psiのノズルにおける液体圧で行うことができる。反応容器内の圧力は1気圧か又はその付近である。実際、噴霧供給中は容器を排気して加圧を避けることができる。
【0020】
被覆の後、被覆活性炭粒子を乾燥することができる。一態様においては、被覆活性炭粒子は、被覆のために用いるものと同じ反応容器内で乾燥することができる。例えば、プラウミキサーにカバーを付けて真空乾燥のために好適なようにすることができる。大気圧又は非真空オーブン、環状乾燥器、又は他の好適な態様も、本発明において意図される。種々の乾燥温度及び乾燥時間が本発明において意図される。例えば、乾燥は、約50℃〜約150℃、又は70℃〜約100℃の間、又は約80℃の生成物温度を得るのに十分な温度において行うことができる。乾燥時間は、例えば約30分間〜約4時間、又は約3時間以下で変化させることができる。1つの代表的な態様においては、乾燥は、約80℃の温度において約3時間以下の時間行うことができる。本発明者らによって発見されたように、乾燥時間及び温度を制御しないと、温度によって第4級ポリマーの第3級状態への還元が引き起こされて、揮発性の副生成物、例えば塩化メチルの放出と共にカチオン電荷の低下が起こる可能性がある。
【0021】
上述したように、本発明者らはpDADMACの安定性は少なくとも部分的に温度依存性であることを認識した。粒状炭上にpDADMACを吸着させると、主として疎水性の表面上にカチオン性の高分子電解質が得られ、これは特により高い温度において不安定な状態を構成する可能性がある。その結果として、pDADMACが転位反応を起こして電荷が消失し、それによって第4級ポリマーから第3級ポリマーに還元され、塩化メチルのような副生成物が形成される可能性がある。本発明者らによって発見されたように、pDADMACの塩化物イオンを非求核対イオンで置換することによって、この再配置を排除して、それによってカチオン性被覆の温度安定性を増加させることができる。種々の対イオン、例えば硝酸塩及び過塩素酸塩が本発明において意図されるが、1つの代表的な態様においては、対イオンとしては塩化物ではなくトリフルオロメタンスルホネートを挙げることができる。pDADMATは、高温においては第4級状態からあまり還元されないように思われる。
【0022】
温度と電荷安定性との間の関係を試験するために、実験を行って吸着されたpDADMACによる炭素上の電荷をInverse Ion-Exchange HPLC-UVによって測定した。炭素粒子を小さなカートリッジ内に充填し、カラムとして通常の高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムに接続する。pDADMAC中の第4級窒素の塩化物対イオンを臭化物によって置換し、これを次に硫酸塩によって置換して、標準臭化物に対して分析する。次に、下記に記載する電荷平衡メートル%を用いてpDADMACに起因する電荷を計算することができる。
【0023】
pDADMACに関する電荷平衡%は次の通りである。
【0024】
【数1】

【0025】
(ここで、全ての標準試料注入からの標準応答係数(標準RF)は
【0026】
【数2】

【0027】
(臭化物標準試料は40mg当量の被覆炭素をベースとする)
である)
試料電荷応答は、
【0028】
【数3】

【0029】
である。
「%標準pDADMAC」の値は、それぞれ被覆炭素粉末又は被覆炭素を含むフィルターのいずれを分析するかによって、「2」又は「0.5」のいずれかである。
【0030】
下表1に示す2つの実験例においては、pDADMACで被覆した炭素試料を、二重実験で、真空下において80℃、120℃、及び160℃に3時間かけた。炭素を2重量%レベルの目標で被覆し、実際の試料は約1.8重量%と測定された。次に、Inverse IE-HPLCによって、標準臭化物に対して電荷に関して分析した。得られた電荷は、上記に示す%電荷平衡pDADMACとして計算した。下表1に示すように、対照試料は1.81の%電荷平衡pDADMACを与えた。表1に再び戻ると、80℃〜120℃の間では大きな変化は観察されなかったが、約160℃において50%より多い電荷損失が観察され、実験1及び2においてそれぞれ0.81及び0.72の値が得られた。
【0031】
【表1】

【0032】
上述したように、被覆炭素を再び湿潤させると、カチオン性ポリマー被覆の一部が溶出する可能性がある。「過剰被覆」された(即ち、炭素表面の大体の負荷容量を超える量のポリマーを有する)活性炭粒子はより多い溶出を示すので、溶出は部分的には被覆レベルに関係していることが見出された。カチオン性ポリマー溶液の内部のカチオン性ポリマーを溶出させ、液滴径を最小にすることによって、溶出及び被覆の均質性に対する改良が得られる。例えば、上記に記載のカチオン性被覆の適用方法は、他の通常の被覆方法と比べて、カチオン性ポリマーの溶出を少なくとも60%減少させ、更なる態様においてはカチオン性ポリマーの溶出を少なくとも90%減少させる。
【実施例】
【0033】
以下に記載する実験方法は、原材料のFL4440(pDADMAC)溶液中の約36%のポリマー固形分濃度を仮定して、RGC粒状活性炭上にFL4440(pDADMAC)溶液の2.0重量%被覆を行うことを目標とする。
【0034】
【表2】

【0035】
原材料を別々の容器中に加え、18.9kgのUSP水及び1.1kgのFloquat FL4440を混合タンク中に加え、20.0kgのRGC粒状活性炭をLittleford FM-130Dプラウミキサー中に加えた。ポリマー溶液を5分間混合し、次に20〜25psiに加圧し、次に、60〜90psiの空気を用いる単一のSUE 15二流体霧化ノズルによってポリマー溶液をFM-130Dミキサー中に供給する。これらの噴霧パラメーター下では、SUE 15ノズルは溶液を20μmの液滴で供給する。RGC粒状活性炭を、この被覆段階中において、約80RPMの軸回転速度で室温において混合する。溶液の供給が完了したら、FM-130Dミキサー上に真空を引き、加圧水蒸気を加えて、ミキサーのカバーを約140℃の温度に加熱する。RGCは約80℃の生成物温度を目標として乾燥段階中に混合し続ける。生成物の温度によって生成物が乾燥したことを示したら、生成物をミキサーから排出し、フィルター、例えばフィルターブロック中に導入することができる。
【0036】
フィルターブロックを製造する代表的な態様においては、45%の被覆炭、36%のSAI Inc.からの活性化ヤシ殻炭、3%のCalgon CarbonからのATS鉛吸着剤、及び16%のポリエチレンバインダーから構成される粉末ブレンドをミキサーに充填した。この混合物の一部を成形型中に配置し、8000Jにおける炭素の抵抗加熱によって加熱した。得られたブロックは166psiの圧縮強さを有していた。得られたブロックによって浄水フィルターカートリッジを製造し、微生物精製業者に対するEPA標準指針に対して試験した。ブロックは、7.05のバクテリアRTの対数減少、及びMS2バクテリオファージに関して4.79の対数減少を示した。対比的に、16000kJのエネルギーを用いて同じ実験を行うと、ポリマーの分解、並びに結果として起こるMS2及びバクテリアRTの性能における損失が認められた。具体的には、バクテリアRTの平均対数減少は4.46であり、一方、MSの減少は1.33に低下した。
【0037】
「好ましくは」、「一般に」、「通常は」、「望ましくは」、及び「典型的には」などの用語は、特許請求する発明の範囲を限定したり、或いは幾つかの特徴が特許請求する発明の構造又は機能に対して重大、本質的、又は更には重要であることを示すために本明細書において用いられるものではない。むしろ、これらの用語は、単に、本発明の特定の態様において利用することができるか又はできない別の又は更なる特徴を強調するように意図されるものである。
【0038】
本発明を詳細に及びその具体的な態様を参照して記載したが、特許請求の範囲において規定される発明の範囲から逸脱することなく修正及び変更が可能であることは明らかであろう。より具体的には、本発明の幾つかの形態は本明細書において好ましいか又は特に有利であると示されているが、本発明は発明のこれらの好ましい形態に必ずしも限定されないと意図される。
【0039】
発明の詳細な説明において引用されている全ての文献は、関連する部分が参照によって本明細書中に包含され、いずれの文献の引用も本発明に対する従来技術であることを認めるように解釈すべきではない。本明細書中の用語のいずれかの意味又は定義が参照として包含される文献中の用語のいずれかの意味又は定義と矛盾する限りにおいては、本明細書中において用語に割り当てられた意味又は定義に準拠する。
【0040】
本発明の特定の態様を示し且つ記載したが、発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の他の変更及び修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、特許請求の範囲においては、発明の範囲内の全てのかかる変更及び修正がカバーされると意図される。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
約100μm以下の平均粒径を有する活性炭粒子を用意し、そして活性炭粒子の表面上にカチオン性ポリマー溶液の液滴を噴霧することによって活性炭粒子を被覆することを含み、カチオン性ポリマー溶液が約1重量%〜約15重量%のカチオン性ポリマーを含み、液滴径が約5μm〜約100μmの間である、被覆活性炭の製造方法。
【請求項2】
カチオン性ポリマーが、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(pDADMAC)、ポリジアリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート(pDADMAT)、又は両方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
pDADMACポリマーが、約200,000g/モル以下の重量平均分子量(Mw)、及び約100,000g/モル以下の数平均分子量(Mn)を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
カチオン性ポリマー溶液が約2重量%〜約8重量%のカチオン性ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
カチオン性ポリマー溶液が約2重量%〜約4重量%のカチオン性ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
被覆工程を約20psi〜約90psiの液体圧で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
被覆工程を約60psi〜約90psiの空気圧で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
カチオン性ポリマー溶液の液滴径が約15〜約55μmの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
カチオン性ポリマー溶液の液滴径が約20〜約30μmの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
カチオン性ポリマー溶液の被覆によってカチオン性ポリマーの溶出が少なくとも60%少なくなる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
カチオン性ポリマー溶液の被覆によってカチオン性ポリマーの溶出が少なくとも90%少なくなる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
被覆活性炭粒子を乾燥することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
乾燥を約70℃〜約100℃の間の温度で行う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって製造される被覆活性炭粒子。
【請求項15】
請求項1に記載の方法によって製造される被覆活性炭粒子を含むフィルター。
【請求項16】
被覆活性炭粒子がカーボンブロックフィルター内に存在する、請求項15に記載のフィルター。
【請求項17】
被覆活性炭粒子が炭素フィルター床に成形されている、請求項15に記載のフィルター。
【請求項18】
フィルターが、6のバクテリアRTの対数減少、及び4のMS2バクテリオファージに関する対数減少を示す、請求項15に記載のフィルター。
【請求項19】
被覆活性炭粒子を基材媒体中に含侵させる、請求項13に記載のフィルター。
【請求項20】
活性炭粒子が約100μm未満の中央粒子を含む、請求項1に記載のフィルター。

【図3】
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【公表番号】特表2013−513480(P2013−513480A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544640(P2012−544640)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/059635
【国際公開番号】WO2011/081820
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(512156268)ピュア・ウォーター・ピュリフィケーション・プロダクツ,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】