説明

PET/MRI複合撮像システムにおける動き補正

診断撮像装置は、磁気共鳴信号を収集する磁気共鳴検査システム(1)、及び原子核崩壊信号を収集する放射型トモグラフィシステム(2)を有する。磁気共鳴信号から動き補正を取得するために分析モジュール(4)が設けられる。この動き補正に基づいて、再構成モジュール(5)が、原子核崩壊信号から、動き補正された放射トモグラフィ画像を再構成する。また、診断撮像装置及び治療モジュールを有する治療装置が開示される。システムコントローラは更に、治療モジュールに結合され、診断撮像装置によって生成された画像情報に基づいて治療モジュールを制御する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴検査システムと放射型トモグラフィシステムとを有する診断撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陽電子放出断層撮影(PET)と磁気共鳴撮像(MRI)とを含む診断撮像装置が、非特許文献1から知られている。
【0003】
非特許文献1は、PET検査におけるデータ分析を間違ったものにし得る動きアーチファクトの問題に係るものである。この既知の手法は、再構成された磁気共鳴画像から3次元(3D)標的の擬似的なPET透過(トランスミッション)像を作り出す。磁気共鳴画像から得られる擬似的なPET透過像は、PETシステムの空間応答を模擬する。そして、このPET透過像とPET放射(エミッション)像との間でフレーム位置整合(アライメント)アルゴリズムが適用され、透過像と放射像とが位置整合される。
【0004】
この既知の手法は、透過データと放射データとの間の位置不整合(ミスレジストレーション)のみが考慮に入れられる点で限界がある。また、この既知の手法は、様々な(中間)画像の再構成に多大な計算労力を必要とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S.Sechet等、「Frame misalignment-induced errors in PET studies:an investigation on strategies for correction」、Nuclear Science: A Symposium Conference Record、2002年11月、第2巻、p.1330-1334
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、多大な計算労力を必要とすることなく動きアーチファクトを一層良好に補正する陽電子放出断層撮影を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、
− 磁気共鳴信号を収集する磁気共鳴検査システム、
− 原子核崩壊信号を収集する放射型トモグラフィシステム、
− 磁気共鳴信号から動き補正を取得する分析モジュール、及び
− この動き補正に基づいて、原子核崩壊信号から、動き補正された放射トモグラフィ画像を再構成する再構成モジュール、
を有する本発明に従った診断撮像装置によって達成される。
【0008】
例えば陽電子放出断層撮影(PET)システム又は単一光子放出断層撮影(SPECT)システム等の放射型トモグラフィシステムは、検査される対象物内の化合物の放射性崩壊による放射を検出する。放射性崩壊の検出は、放射型トモグラフィシステムによって収集される原子核崩壊信号を生成する。原子核崩壊信号は、複数の方向から検出された放射性放射を表す。磁気共鳴検査システムは、対象物内の(原子核又は電子)スピンのRF励起により生成された磁気共鳴信号を収集する。すなわち、磁気共鳴信号は、例えばプロトン、19F、31P等の原子核スピンの磁気共鳴、又は電子スピン共鳴に関係し得る。励起スピンの減衰時、磁気共鳴信号はk空間の走査によって収集される。すなわち、磁気共鳴信号は、磁気共鳴信号の波数ベクトル(kベクトル)を走査することによって収集される。本発明の洞察は、磁気共鳴信号は検査対象内で発生する動き、又は検査対象の動きに関する情報を含むということである。対象物は検査される患者であってもよく、動きは患者全体としての患者の体の動き、又は脳検査における患者の頭部の動きなどの患者の体の一部の動きに関係してもよい。動きはまた、例えば呼吸運動又は心臓運動などの患者の体内での内部運動であってもよい。動き補正は、収集された磁気共鳴信号から磁気共鳴画像を再構成することを必要とせずに、磁気共鳴信号から取得され得る。この動き補正及び原子核崩壊信号に基づいて、動き補正された放射型トモグラフィ画像が再構成される。この動き補正された放射トモグラフィ画像は、低いアーチファクトレベルを有し、あるいは更には、動きアーチファクトを有しないので、高い診断画像品質が達成される。すなわち、低いコントラストを有する細部が、良好に視認可能にされ、とりわけ、動きアーチファクトによって不明瞭にされることがない。
【0009】
原子核崩壊信号及び磁気共鳴信号の双方の収集は、放射型トモグラフィシステムと磁気共鳴検査システムとに共通のシステムコントローラによって制御される。この共通のシステムコントローラは、原子核崩壊信号と磁気共鳴信号との間に明確な関係が構築されるように原子核崩壊信号と磁気共鳴信号とを結び付けることを可能にする。すなわち、磁気共鳴信号に含まれる動き情報が、原子核崩壊信号に影響を及ぼす動きと等しくなる。磁気共鳴信号と原子核崩壊信号との間のこの関係により、磁気共鳴信号から得られた動きを、動き補正された放射トモグラフィ画像を再構成することに適用することが可能になる。動き補正は、収集された原子核崩壊信号に動き補正を適用することによって実行され、補正された原子核崩壊信号から、動き補正された放射トモグラフィ画像が再構成される。代替的に、収集された原子核崩壊信号から一次放射トモグラフィ画像を再構成し、一次放射トモグラフィ画像に動き補正を適用して、動き補正されたトモグラフィ画像を生成してもよい。
【0010】
本発明のこれら及びその他の態様を、従属請求項に規定する実施形態を参照して更に詳述する。
【0011】
本発明の一態様に従って、収集の時間、すなわち、原子核崩壊信号及び磁気共鳴信号がそれぞれ収集される期間のうちの時点又は時間的な位置が整合(レジストレーション)される。この原子核崩壊信号及び磁気共鳴信号の収集の時間整合は、例えば、対応する原子核崩壊信号及び磁気共鳴信号を同時に収集することによって、あるいは原子核崩壊信号及び磁気共鳴信号の双方にタイムスタンプを与えることによって達成され得る。故に、磁気共鳴信号から取得された動き補正を、同一時点に収集された原子核崩壊信号に適用することが可能である。従って、磁気共鳴信号から取得された動き補正は、原子核崩壊信号に影響を及ぼした同一の動きに関係し、動き補正される放射トモグラフィ画像の正確な動き補正が達成される。システムコントローラに時間整合機能を実装すると都合が良い。
【0012】
原子核崩壊信号はしばしば、検査される患者に放射性医薬品を投与することによって生成される。投与されると、放射性医薬品は患者の体内で放射性崩壊し、検査対象の患者の体からの放射性放射線(通常、ガンマ線)の放出を生じさせる。原子核崩壊信号は放射性医薬品の投与の時点から収集され得るので、原子核崩壊信号及び磁気共鳴信号の収集をトリガーすることは、比較的高い信号レベルを有する原子核崩壊信号の時間効率の良い収集を提供する。
【0013】
本発明の他の一態様に従って、動き補正はまた、収集された磁気共鳴信号に基づいて、動き補正された磁気共鳴画像を再構成するために用いられる。その場合、動き補正された放射トモグラフィ画像と、動き補正された磁気共鳴画像とを一緒に見ることができる。しばしば、動き補正された放射トモグラフィ画像、及び動き補正された磁気共鳴画像は、相補的な生理学的情報及び/又は解剖学的形態情報を表す。動き補正された放射トモグラフィ画像、及び動き補正された磁気共鳴画像は、別々に利用可能にされてもよく、また、例えば、単純に隣り合わせで示されてもよい。これらの相補的な情報はまた、ユーザが単一の画像を見るだけで、原子核崩壊起源の情報と磁気共鳴起源の情報とを該画像内で把握できるように、1つの結合画像へと組み合わされてもよい。
【0014】
k空間の中心領域におけるMRデータの冗長性に基づくと、動き補正は正確であり且つ多大な計算労力を要しない。非常に関連性ある動きは空間的に粗いスケールで発生する。すなわち、患者の生体構造の微細部より遙かに大きい大きさを含む。従って、より大きい寸法の構造及びその動きは、k空間の中心領域の磁気共鳴信号によって表される。一方、構造の微細部はk空間の周辺領域からの磁気共鳴信号によって表される。冗長性を生じさせる中心領域の大きさは、動き補正の要求精度、及び磁気共鳴信号の許容可能な収集時間の長さに基づいてユーザによって選定されてもよい。所謂プロペラ(PROPELLER)収集シーケンスにより、非常に良好な結果が達成される。プロペラ収集シーケンスそれ自体は、James G. Pipeによる論文「Motion correction with PROPELLER MRI: Application to Head Motion and Free-breathing Cardiac Imaging」、MRM、第42巻、1999年、p.963-969にて詳細に議論されている。この論文においては、収集された磁気共鳴画像から再構成された磁気共鳴画像それ自体の動き補正が議論されている。プロペラ法は、k空間の原点の周りで連続的に回転される長方形の平面状ストリップ(すなわち、k空間内の平面又は薄いスラブ内)に沿ってk空間を走査する。この2次元(2D)収集はk空間の連続した平面に対して繰り返され得る。この手法は比較的短い収集時間を必要とする。代替的に、回転面又は薄いスラブに垂直なk空間方向に位相エンコーディングを適用することによって、真の3次元k空間収集が実行されてもよい。他の1つの真の3次元k空間収集は、k空間内の2つの例えば直交する軸の周りで同時に、k空間の原点を含む柱状又は棒状の容積部を回転させることを含む。従って、k空間の中心領域は、連続する個々のストリップに関してサンプリングされる。中心領域は、この例において、連続する個々のストリップの重なりによって形成され、中心領域の大きさは、ストリップ、又は柱状若しくは棒状のk空間ボリュームの幅と、k空間におけるストリップ同士の無機の差とによって定められる。k空間の中心領域からサンプリングされた磁気共鳴信号の冗長性は、とりわけ、位置、回転及び位相における空間的な不一致を補正することを可能にする。また、この冗長性は、平面を貫くスループレーンの動きによる影響を受けたデータを排除することを可能にする。さらに、この冗長性は、動き補正された磁気共鳴画像内の低い空間周波数のアーチファクトを低減する平均化を可能にする。プロペラ収集シーケンスは事実上周期的であるので、k空間内のストリップ(群)の複数回の回転を実行することによって、磁気共鳴信号の継続収集が可能である。磁気共鳴信号の継続収集は、最終的に再構成される磁気共鳴画像の信号対雑音比を増大させることを可能にする。原子核崩壊信号の継続収集は、再構成される放射トモグラフィ画像の信号対雑音比及び空間解像度の双方を向上させる。
【0015】
本発明は更に、とりわけ請求項1乃至8の何れか一項に記載されるような本発明に従った診断装置に治療システムが機能的に結合された治療装置に関する。磁気共鳴検査システムは、検査される患者の解剖学的形態又は局所的な温度分布に関する情報を提供する。放射型トモグラフィシステムは、局所的な代謝作用に関する機能性情報を提供する。また、本発明に従って、局所的な代謝作用に関する機能性情報及び/又は解剖学的形態情報に動き補正が適用される。これらの動き補正された情報に基づいて、治療システムが制御される。すなわち、治療活性の適用、とりわけ、治療活性がもたらされる位置及び/又は治療活性の強度及び継続時間が、磁気共鳴検査システム及び放射型トモグラフィシステムからの動き補正された情報に基づいて制御される。この治療システムは、例えば、高強度超音波(high-intensity ultrasound;HIFU)システムとして実現されてもよい。HIFUシステムは、局所(焦点)領域に、組織を局所的に変化させる或いは破壊する高強度の超音波を生成する。診断撮像装置は、解剖学的情報と局所代謝との組み合わせに基づいて、とりわけ悪性腫瘍である病変の位置を特定する能力を有する。そして、治療システムは、病変に正確に、例えば高強度集束超音波放射などの治療行為を適用するために制御される。また、診断撮像装置は、例えば磁気共鳴サーモグラフィによって、治療行為の効果を監視することが可能である。磁気共鳴サーモグラフィそれ自体は、J. de Poorterの論文「Noninvasive MRI Thermometry with the proton resonance frequency (PRF) method: In Vivo results in human muscle」、Magnetic Resonance Imaging、第33巻、1995年、p.74-81から既知である。
【0016】
本発明に係る診断撮像装置の他の一例において、放射型トモグラフィシステムは、原子核崩壊信号を受信する高エネルギー検出器を含む。磁気共鳴検査システムは、傾斜エンコーディング磁場を生成する双方の傾斜コイルを含む。磁気共鳴検査システムはまた、磁気共鳴信号の送信及び/又は受信を行うRFアンテナを含む。RFアンテナ及び高エネルギー検出器の双方は、検査される患者が位置付けられ得る検査領域の周りに配置される。RFアンテナ及び高エネルギー検出器は、検査領域の大きさ、とりわけ幅を妥協させることなくRFアンテナ及び高エネルギー検出器の双方が検査対象の患者に比較的近接されるように、一体化されてもよい。RFアンテナが検査対象の患者に近接するので、検査される患者内のRF励起場の空間分布を良好に制御することが可能であり、検査される患者への不要なRF(SAR)負荷を生じさせることなく、十分なスピンの励起が達成される。また、磁気共鳴信号は、検査対象の患者に近接するRFアンテナによって、より高い感度で検出される。さらに、原子核崩壊信号は、検査対象の患者に近接する高エネルギー検出器によって、高感度に検出される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明のこれら及びその他の態様は、以下にて説明する実施形態及び添付の図面を参照することにより明らかになる。
【図1】本発明に従った診断撮像装置の一実施形態を概略的に示す図である。
【図2A】本発明に係る診断撮像装置により実行される制御、データフロー及び処理を示すフローチャートである。
【図2B】本発明に係る診断撮像装置により実行される制御、データフロー及び処理を示すフローチャートである。
【図3A】本発明に従った、核放出崩壊データ(PETデータ)を、同時に収集された磁気共鳴信号(MRIデータ)を用いて動き補正するためのデータ処理を示すフローチャートである。
【図3B】本発明に従った、核放出崩壊データ(PETデータ)を、同時に収集された磁気共鳴信号(MRIデータ)を用いて動き補正するためのデータ処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明に従った診断撮像装置の一実施形態の概略図を示している。この診断撮像装置は、磁気共鳴検査装置1と、実際にはPETスキャナ2である放射型トモグラフィシステム2とを有する。磁気共鳴検査システムは、検査領域12内に静的で均一な主磁場を生成する主磁石11を有する。この主磁場は、検査される患者内のスピンの不均一な方位を主磁場の磁力線に沿わせる。RFシステム13は、検査される患者の体内のスピンを励起するために検査領域内にRF励起電磁場を放射する1つ以上のRFアンテナ63を備えている。緩和していくスピンがRF帯域内の磁気共鳴信号を放出し、この磁気共鳴信号は、特にRF受信コイルの形態をしたRFアンテナによって拾い集められる。RFシステムは、RF励起場の送信(Tx)機能と磁気共鳴信号の受信(Rx)機能とを有する。送信及び受信に同一のハードウェアが用いられてもよい。RF励起と信号収集とを切り替えるためにTx/Rxスイッチ61が設けられている。また、局所RF受信アンテナとして別個の表面コイルが用いられてもよい。とりわけ、患者の生体構造の該当部分からの磁気共鳴信号の生成及び受信のために局所表面コイル又は局所体積コイル(すなわち、T/Rバードケイジ型ヘッドコイル)を用いることができる。すなわち、本発明に係る磁気共鳴検査システムは必ずしも、スピンの励起及び磁気共鳴信号の受信のために別のコイルを備えた固定式のMRボディコイルが利用可能であることを必要としない。Tx/Rxスイッチ61にはRF増幅器システム62が結合されている。RF増幅器システム62は、RFアンテナ63にRF波形を与える機能を有する。また、一時的な傾斜磁場、すなわち、読み出し傾斜パルス及び位相エンコーディング傾斜を生成するために傾斜コイルシステム14が設けられている。これらの傾斜磁場は、通常、互いに直交方向に向けられ、磁気共鳴信号を空間エンコーディングする。傾斜コイル72を作動させ傾斜エンコーディング磁場を生成するために傾斜増幅器71が設けられている。傾斜増幅器71は傾斜コイル72とともに傾斜システム14を形成する。RF受信アンテナによって収集された磁気共鳴信号は、分光計を含むMRIデータ収集システム(MRI−DAS)に与えられる。
【0019】
この例ではPETスキャンシステム2である放射型トモグラフィシステムは、検査される患者からの原子核崩壊信号を収集するために検査領域の周りに配置されたPET検出器リングを有する。とりわけ、PET検出器リング及びRFアンテナは、同一の関心ボリュームに対して感度を有するように構成され、例えば、同一の関心ボリュームの周りに配置される。特に、PET検出器リングの中心は検査領域12の中心と一致する。とりわけ、PET検出器リングはRFコイル63と一体化される。例えば、PET検出器が有するガンマ線に対して感度を有する検出器素子群が、RFコイルの導電体ロッド同士の間に設置される。例えば、RFコイル63は、PET検出器の検出器素子群の間に配置された薄いストリップから成る。検出器素子群は個々の検出器結晶によって形成される。斯くして、RFコイルの導電体ロッドはPET検出器素子群を機械的に支持する。また、PET検出器はRFコイルの機能に殆どあるいは全く干渉せず、この逆も然りである。RFコイルと一体化されたPET検出器リング21は、検査領域から見て、傾斜コイルの前方に配置される。すなわち、RFコイルを備えたPET検出器は、検査される患者に対して、傾斜コイルよりも近くに配置される。これにより、PET検出器リング21及びRFアンテナ(コイル)がそれらそれぞれの、検査領域12内に高い感度を有する空間領域を有することが達成される。検出器の結晶は有意な導電性を有しないので、傾斜磁場に悪影響を及ぼさずに傾斜コイル内で動作することができる。また、半導体部品から成る検出器の電子回路は、傾斜コイルの動作により誘起される渦電流が最小化されるように搭載される。PET検出器リング21により受信された原子核崩壊信号は、電子的な減衰信号(PETデータ)に変換された後、PET収集システム22へと送られる。PET収集システムは、直接的に所謂シノグラムとなるPETデータを収集する。
【0020】
個々の検出器対は、当該対の離隔した検出器を接続するそれぞれの同時計数線(ライン・オブ・レスポンス)を付随して有する。ライン・オブ・レスポンスは、その方位角と、当該ライン・オブ・レスポンスとPET検出器リングの中心との間の最短距離とによって特定される。個々の同時計数(コインシデンス)事象に対して、複数のライン・オブ・レスポンスが形成され、それらの角度及び方位が収集される。これらは、プロットされたとき、問題とするコインシデンスに関する正弦波状の曲線を生じる(故に、シノグラムと呼ばれる)。コインシデンス事象のシノグラムの方位角及び(ライン・オブ・レスポンスとPET検出器リングの中心との間の)最短距離から、その事象の位置を決定することができる。複数のコインシデンス事象に関してそれぞれのライン・オブ・レスポンスの角度及び方位がシノグラム内の画素として収集され、最終的に、シノグラム内の個々の画素は、そのライン・オブ・レスポンス、すなわち等価的に、一対の(対向する)検出器の方位、に関するコインシデンス事象の数を表す。最終的なシノグラムから、例えばフィルタ補正逆投影法によって、画像を再構成することが可能である。PETデータからPET画像を再構成するため、とりわけシノグラム、そして、磁気共鳴信号から磁気共鳴画像を再構成するため再構成器5が設けられる。通常、再構成器5はソフトウェアにて実現される。
【0021】
磁気共鳴検査システムは、RFアンテナすなわちRFコイル63によりRF励起場を印加することによって、検査領域内に位置付けられた検査される対象物内にスピンを励起する。RFコイルはRF増幅器62によって、そしてTx/Rxスイッチを送信モードにて動作させることによって活性化される。RF励起により、励起スピンの緩和が対象物からの磁気共鳴信号を生じさせる。磁気共鳴信号はRFコイルによって受信され且つMRIに与えられ、磁気共鳴信号の収集のためにk空間が走査される。k空間はエンコーディング傾斜を適用することによって走査され、受信MRIデータはMRI−DAS64、そして最終的に再構成器5に与えられる。ホストコンピュータ3がRFシステム13及び傾斜システム14を制御して、磁気共鳴信号の収集のためにk空間を走査する好適な収集シーケンスを実行する。特に、磁気共鳴検査システムは、k空間の中心領域を冗長的に走査するプロペラ型収集シーケンスを実行する。この冗長的なスキャンは、k空間の同一の中心領域が相次いで複数回サンプリングされることを意味する。動きが発生しない場合、これら相次ぐサンプルは基本的に相等しい。従って、k空間の中心からの相次ぐサンプルの変化は、相次いでのサンプリング中に例えば動きによる変化が発生したことを表す。特に、k空間内で走査された各ストリップに関する動き補正パラメータが評価される。これらのパラメータは、とりわけ、回転、並進、及び平面を貫いてのスループレーン重み付けに関係する。また、k空間の中心領域を冗長的にサンプリングするその他の収集シーケンスが用いられてもよい。k空間の中心での冗長性を十分に達成するように動作する収集シーケンスの具体的な例は、k空間の中心の周期的な再走査を伴う3D−TRICKS法である。また、k空間の中心を外れた位置から走査を開始してk空間の中心から最大のコントラスト強調で信号を収集することを含み、且つk空間の中心と周辺領域とのそれぞれで異なる収集手法を用いる4D−TRACKS法によっても良好な結果が達成される。また、これらの収集シーケンスにパラレルイメージング技術が組み合わされてもよい。
【0022】
収集されたPETデータ及びMRIデータは‘タイプスタンプ付与’され、k空間内での個々のストリップからの磁気共鳴信号の収集に必要な時間に相当するフレーム群にグループ分けされる。磁気共鳴信号は、PETデータの収集と同時に収集することができる。そして、個々のPETシノグラムに対し、k空間内のそれぞれのストリップが収集される。磁気共鳴信号のk空間内で回転された次のストリップが収集されるとき、同時に収集されたPETデータが、k空間内の新たに回転されたストリップに関する新たなフレームとして記憶される。
【0023】
ホストコンピュータ内には、とりわけソフトウェアモジュールとして、分析ユニット4が組み込まれている。分析ユニット4は、冗長的に走査されたk空間の中心領域からサンプリングされたデータから、必要な動き補正を取得する。磁気共鳴信号から得られた動き補正が、同時に収集されたPETデータに適用される。具体的には、個々のPETシノグラムが、後に動き補正される個々のPET画像フレームへと処理すなわち再構成される。動き補正は、投影再構成の前に個々のシノグラムに適用されることができる。必要な補正は、空間ドメインからシノグラム空間へと変換される。その後、動き補正されたPET画像フレームが、動き補正されたPET画像へと(例えば、加重加算によって)再構成される。代替的に、動き補正は、画像フレームの幾何学配置の回転及び歪みを含む個々のPET画像フレームに適用されてもよい。また、スループレーンの動きの補正も、個々のPET画像フレームの画素ごとの重み付けを含んでもよい。
【0024】
図2A及び2Bは、磁気共鳴信号(MRIデータ)及び原子核崩壊信号(PETデータ)の同時収集及び前処理のフロー図を示している。MRIデータは、MRIデータ及びPETデータの双方の動き補正と、これら収集データから再構成された画像とに適したものとなるように収集される。
【0025】
図3A及び3Bは、動き補償された磁気共鳴画像と、動き補償されたエミッショントモグラフィ画像(PET画像)とを再構成するために用いられる全ての(MRI及びPET)データの収集完了後の再構成のフロー図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 磁気共鳴信号を収集する磁気共鳴検査システム、
− 原子核崩壊信号を収集する放射型トモグラフィシステム、
− 前記磁気共鳴信号から動き補正を取得する分析モジュール、及び
− 前記動き補正に基づいて、前記原子核崩壊信号から、動き補正された放射トモグラフィ画像を再構成する再構成モジュール、
を有する診断撮像装置。
【請求項2】
− 前記磁気共鳴検査システム及び前記放射型トモグラフィシステムに結合されたシステムコントローラであり、
− 前記磁気共鳴検査システムによる磁気共鳴信号の収集、及び
− 前記放射型トモグラフィシステムによる原子核崩壊信号の収集、
を制御する機能を有するシステムコントローラ、
を含む請求項1に記載の診断撮像装置。
【請求項3】
− 前記システムコントローラは更に、前記磁気共鳴信号及び前記原子核崩壊信号の収集の時間を整合させる機能を有し、且つ
− 前記動き補正を取得するための磁気共鳴信号、及び前記放射トモグラフィ画像の再構成のための原子核崩壊信号は、等しい収集時間を有する、
請求項2に記載の診断撮像装置。
【請求項4】
前記システムコントローラによる前記時間の整合は、磁気共鳴信号及び原子核崩壊信号を同時に収集するように前記磁気共鳴検査システム及び前記放射型トモグラフィシステムを制御することにより行われる、請求項3に記載の診断撮像装置。
【請求項5】
前記システムコントローラによる前記時間の整合は、前記磁気共鳴信号及び前記原子核崩壊信号にタイムスタンプを付与することにより行われる、請求項3に記載の診断撮像装置。
【請求項6】
前記システムコントローラによる前記時間の整合は、検査対象に放射性医薬品を投与した時点に基づいて、前記磁気共鳴検査システム及び/又は前記放射型トモグラフィシステムによる信号収集をトリガーすることを含む、請求項3に記載の診断撮像装置。
【請求項7】
前記再構成モジュールは更に、前記動き補正に基づいて、前記磁気共鳴信号から、動き補正された磁気共鳴画像を再構成する、請求項1乃至3の何れかに記載の診断撮像装置。
【請求項8】
前記磁気共鳴検査システムは、磁気共鳴信号の収集において、k空間の中心領域にデータの冗長性を生じさせるようにk空間を走査する、請求項1に記載の診断撮像装置。
【請求項9】
請求項2に記載の診断撮像装置及び治療モジュールを有する治療装置であって、前記システムコントローラは更に、前記治療モジュールに結合され、前記診断撮像装置によって生成された画像情報に基づいて前記治療モジュールを制御する機能を有する、治療装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2010−512907(P2010−512907A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542308(P2009−542308)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/IB2007/055080
【国際公開番号】WO2008/075265
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】