説明

PONシステム、局側装置とその運用方法及びアクセス制御装置

【課題】 複数のPON回線に対する上り多重アクセス制御をそれより少ないアクセス制御部に行わせ、残りのアクセス制御部に通信フレームを疎通させない縮退モードを行う。
【解決手段】 複数のPON回線4A,4Bが接続された局側装置2の上位スイッチ11と下位スイッチ14を、次の(a)及び(b)のように切り替え可能な縮退制御部20を設ける。
(a) 上位スイッチ11に入力される第1及び第2PON回線4A,4Bへの下りフレームの出力先を、第1のアクセス制御部12Aに集中し、第1のアクセス制御部12Aから下位スイッチ14に入力される下りフレームの出力先を、第1及び第2の光送受信部16A,16Bに分散する。
(b) 第1及び第2の光送受信部16A,16Bから下位スイッチ14に入力される上りフレームの出力先を、時分割で多重して第1のアクセス制御部12Aに集中する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局側装置と複数の宅側装置とをツリー構造の通信回線で接続したPON(Passive Optical Network )システムと、このシステムの構成要素である局側装置と、この局側装置の運用方法及びアクセス制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PONシステムは、P2MP(Point to Multi Point)の接続形態における光分岐を無電力で行う光通信システムであり、局側装置と、この局側装置を頂点として分岐する一芯の光ファイバ網よりなるツリー構造のPON回線と、その分岐した光ファイバの終端にそれぞれ接続された複数の宅側装置とを備えている(例えば、特許文献1〜3参照)。
このPONシステムにおいては、半導体レーザ等の光源を直接或いは外部変調したNRZ(Non-Return to Zero)光信号を伝送し、所定の情報を送受信する。
【0003】
かかるPONシステムでは、局側装置が送信する光信号よりなる下りフレームは、各宅側装置に放送形式で伝送される。宅側装置は、ディスカバリの際に局側装置から通知された、下りフレームのプリアンブルに含まれる論理リンク識別子(例えば、IEEE Std 802.3TM−2008に規定されるPONの場合はLLID。以下、代表的にLLIDと記す場合がある。)を参照して、自局宛(マルチキャストの場合も含む。)の下りフレームを受信し、それ以外の下りフレームを廃棄する。
逆に、各宅側装置がPON回線に送出する光信号よりなる上りフレームについては、衝突を防止すべく、局側装置がLLIDごとに時分割で多重アクセス制御を行っている。従って、局側装置は、各宅側装置からの上り光信号をバースト的に受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−289780号公報
【特許文献2】特開2007−174364号公報
【特許文献3】特開2007−243284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PONシステムの局側装置には、アクセス制御プロトコルに基づいてPON区間の上りフレームの多重アクセス制御を行うアクセス制御部(以下、「アクセス制御装置」ともいう。)が含まれている。例えば、IEEE Std 802.3TM−2008やIEEE Std 802.3avTM−2009に規定されるPONの場合は、MPCP(MultiPoint Control Protocol )が上記アクセス制御プロトコルに相当する。
このアクセス制御装置は、通常、複数のLSI(Large Scale Integrated Circuit )を制御基板に実装して構成されており、プログラマブルな論理回路(Field-Programmable Gate Array :FPGA)やマイクロプロセッサ(Micro-Processing Unit:MPU)のメモリに予め記憶させたコンピュータプログラムに従って動作する。
【0006】
従って、アクセス制御装置に対する機能の追加や変更(以下、これらを纏めて「変更等」という。)を行うには、論理回路やマイクロプロセッサが実行するコンピュータプログラムを更新する必要がある。
しかし、コンピュータプログラムの更新作業には、通常、アクセス制御装置のプロセッサ等を初期状態にリセットしてから、変更等の後の機能で再起動をかける手順が含まれるので、リセットから再起動が完了するまでの更新作業中は、上位ネットワークとPON回線のデータ転送を停止せざるを得ないという問題があった。
【0007】
かかる更新に伴う通信断時間は、電話や映像信号の伝送に求められる通信品質を維持できるほど短くなく、例えば、MPCPで規定するタイムアウト時間(1秒間)よりも長時間となるのが普通である。
このため、従来では、電話などの通信が不通となる被害を最小限に抑えるために、通信事業者の作業員が、トラフィックが比較的少ない深夜の時間帯に、タイミングを見計らってコンピュータプログラムの更新を行うといった作業を行っており、アクセス制御装置に対する機能の変更等に非常に手間がかかっていた。
【0008】
また、従来の局側装置では、アクセス制御装置がPON側の光送受信部と1対1対応で接続されているため、PON回線のトラフィックが少なくて局側装置によるデータ転送量が小さい場合でも、アクセス制御装置を常に稼働させておく必要があり、アクセス制御装置の消費電力を下げることができないという欠点もある。
【0009】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み、複数のPON回線が接続された局側装置において、複数のPON回線に対する上り多重アクセス制御をそれより少ないアクセス制御部に行わせ、残りのアクセス制御部に通信フレームを疎通させない縮退モードを行えるようにすることを第1の目的とする。
【0010】
また、本発明は、局側装置でのデータ転送を停止させずに、アクセス制御部に対するコンピュータプログラムの更新を行えるようにすることを第2の目的とする。
更に、本発明は、局側装置のアクセス制御部での消費電力を低下できるようにすることを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明の局側装置は、複数の宅側装置とPONシステムを構成する局側装置であって、第1のPON回線に接続可能な第1の光送受信部と、第2のPON回線に接続可能な第2の光送受信部と、前記第1のPON回線に対する上り多重アクセス制御である通常回線制御と、前記第1及び第2のPON回線に対する前記上り多重アクセス制御である複数回線制御とを実行可能な第1のアクセス制御部と、前記第2のPON回線に対する前記上り多重アクセス制御である通常回線制御を実行可能な第2のアクセス制御部と、前記両アクセス制御部上位側に設けられた上位スイッチと、前記両アクセス制御部と両光送受信部との間に設けられた下位スイッチと、前記両スイッチを次の(a)及び(b)のように切り替え可能な縮退制御部と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
(a) 上位スイッチに入力される第1及び第2PON回線への下りフレームの出力先を、第1のアクセス制御部に集中させ、第1のアクセス制御部から下位スイッチに入力される下りフレームの出力先を、第1及び第2の光送受信部に分散させる。
(b) 第1及び第2の光送受信部から下位スイッチに入力される上りフレームの出力先を、時分割で多重して第1のアクセス制御部に集中させる。
【0013】
本明細書において、「第1のアクセス制御部」とは、自身が通常管理する第1のPON回線に加えて、他の第2のPON回線についての上り多重アクセス制御を同時に行う、上記複数回線制御が可能なアクセス制御部(後述の「アクティブ」な状態になり得るアクセス制御部)のことをいい、「第2のアクセス制御部」とは、第1のアクセス制御部が当該複数回線制御を行う結果、通信フレームが疎通しなくなるアクセス制御部(後述の「スタンバイ」の状態になり得るアクセス制御部)のことをいう。
【0014】
本発明の局側装置によれば、縮退制御部が、両スイッチを上記(a)及び(b)のように切り替えると、第1のアクセス制御部が複数回線制御を実行し、その結果、第2のアクセス制御部に通信フレームが疎通しなくなる。
このため、第1及び第2のPON回線が接続された局側装置において、複数のPON回線をこれより少ない第1のアクセス制御部に担わせ、残りの第2のアクセス制御部に通信フレームを疎通させない縮退モードを行うことができ、前記第1の目的が達成される。
【0015】
(2) 本発明の局側装置において、前記縮退制御部は、更に、前記両スイッチを次の(c)及び(d)のように切り替え可能であることが好ましい。
(c) 上位スイッチに入力される第1及び第2PON回線への下りフレームの出力先を、第1及び第2のアクセス制御部に分散させ、第1及び第2のアクセス制御部から下位スイッチに入力される下りフレームの出力先を、それぞれ第1及び第2の光送受信部に設定させる。
(d) 第1及び第2の光送受信部から下位スイッチに入力される上りフレームの出力先を、それぞれ第1及び第2のアクセス制御部に設定させる。
【0016】
この場合、縮退制御部が、両スイッチを上記(c)及び(d)のように切り替えると、第1のアクセス制御部が第1のPON回線に対して通常回線制御を行い、第2のアクセス制御部が第2のPON回線に対して通常回線制御を実行する。
このため、縮退モードで運用されている局側装置を、第1及び第2のアクセス制御部がともに通常回線制御を行う通常モードに復帰させることができる。
【0017】
(3) 本発明の局側装置において、前記第1のアクセス制御部は、前記第1のPON回線のための論理リンク識別子と、前記第2のPON回線のための論理リンク識別子とを、値が重複しないように保持する管理テーブルを有し、当該管理テーブルに保持された論理リンク識別子を用いて、前記複数回線制御を行う必要がある。
その理由は、PONでは、論理リンク識別子によって宅側装置を識別するので、各PON回線で論理リンク識別子が重複していると、複数回線制御を行う場合に適切な上り多重アクセス制御ができなくなるからである。
【0018】
なお、第1のアクセス制御部が、複数回線制御の場合でも論理リンク識別子の値が重複しないように管理する方法としては、第1及び第2アクセス制御部が通常回線制御を行っている期間中に互いの論理リンク識別子を通知し合ったり、第1のアクセス制御部が奇数を用い第2のアクセス制御部が偶数を用いるというように、両者が必ず異なる論理リンク識別子の値となるように設定したりする方法がある。
あるいは、第1及び第2アクセス制御部がそれぞれ通常回線制御を行っている状態から第1のアクセス制御部のみ複数回線制御を行う状態(縮退状態)へ移行する際に第2アクセス制御部の論理リンクを一旦切断し、第1のアクセス制御部にて再度論理リンクを確立させる方法もある。
【0019】
(4) 一方、PONでは、局側装置は、MACアドレスやRTT(Round Trip Time )などの情報を論理リンク識別子ごとに管理しており、それらの情報が異なる場合は、別の宅側装置と見なして論理リンクをいったん切断し、ディスカバリをやり直す。
また、PONでは、局側装置は、内部クロックのカウント値(時刻)を制御フレームの送信時点にタイムスタンプとして記して宅側装置との時刻同期を図っている。従って、宅側装置は、自局で維持する時刻と局側装置から通知されたタイムスタンプ値が所定値以上ずれている場合は、論理リンクを切断する。
【0020】
このため、本発明の局側装置において、第1のアクセス制御部が、論理リンク識別子の値のみを第2のアクセス制御部と共有するだけでは、縮退制御部が局側装置の動作モードを縮退モードに切り替える場合に、第2のPON回線に属する宅側装置との論理リンクがすべていったん切断されてしまい、それらの宅側装置とのディスカバリをすべて最初からやり直す必要が生じ、その分通信が不通となる時間が長くなる。
【0021】
そこで、縮退モードへの切り替えによって論理リンクが自動的に切断されるのを防止するため、前前記第1のアクセス制御部は、論理リンクを維持するために必要な情報を前記第2のアクセス制御部から取得して論理リンク識別子ごとに前記管理テーブルに予め保持し、保持された前記情報を用いて、前記複数回線制御を行うことが好ましい。
このようにすれば、論理リンクを維持するのに必要な情報(上記MACアドレスやRTTなど)を、複数回線制御の当初から第1のアクセス制御部が把握でき、その情報が不明であることによる論理リンクの自動的な切断を未然に防止できる。
【0022】
(5)(6) また、同様の理由で、前記第1のアクセス制御部は、前記第2のアクセス制御部と同期するクロックを用いて、及び、前記第2のアクセス制御部が使用するタイムスタンプとのずれが所定値以下のタイムスタンプを用いて、前記複数回線制御を行うことが好ましい。
この場合、第1のアクセス制御部が第2のアクセス制御部と同期するクロックを用い、第2アクセス制御部が使用するタイプスタンプとのずれが所定値以下のタイプスタンプを用いるので、第1のアクセス制御部が第2のPON回線に属する宅側装置が通知するタイムスタンプは、第2のアクセス制御部の場合と概ね一致する。
【0023】
従って、第2のPON回線に属する宅側装置が、縮退モードの切り替え前後で許容されるタイムスタンプ値の範囲内にないタイムスタンプを通知されることによる論理リンクの自動的な切断を未然に防止できる。
なお、第1及び第2のアクセス制御部がほぼ同じタイムスタンプを維持することは、必ずしも必須の技術的特徴ではなく、第1のアクセス制御部が第2のアクセス制御部と同期するクロックを用いるだけでもよい。この場合でも、切り替え時に異なるアクセス制御部から異なるタイムスタンプを通知された場合には、宅側装置が論理リンクを切断しないという規約を採用することにより、宅側装置の論理リンクを維持することができる。
【0024】
(7) もっとも、本発明の局側装置において、縮退制御部による両スイッチの切り替えに伴う論理リンクの切断を、許容することにしてもよい。この場合、前記第1及び第2のアクセス制御部は、前記縮退制御部が前記両スイッチの切り替えを行う前後で前記上り多重アクセス制御の制御主体が変わる論理リンク識別子の登録を、解除することが好ましい。
このようにすれば、上記縮退モードへの切り替えによって論理リンクが自動的に切断されるのを防止するように前記複数回線制御を行う場合に比べて、比較的簡単に縮退モードを実現することができる。
【0025】
(8) 本発明の局側装置において、前記第1のアクセス制御部は、前記複数回線制御において、前記下位スイッチにおける上りフレームの入力元を、ディスカバリプロセスごとに前記第1又は第2の光送受信部のいずれかに固定して、前記宅側装置の登録シーケンスを実行することが好ましい。
この場合、第1のアクセス制御部が複数回線制御を行っている期間中でも、新たな宅側装置を適切にPONに加入させることができる。また、局側装置は、新たにPONに加入した宅側装置が第1あるいは第2のいずれのPON回線に属する宅側装置であるかを把握することができる。
【0026】
(9) また、本発明の局側装置において、前記第1及び第2のアクセス制御部は、許可する上りフレームの送信タイミングが、前記縮退制御部による前記両スイッチの切り替え前であるグラントのみを生成することが好ましい。
このようにすれば、両スイッチの切り替え前に第1又は第2のアクセス制御部が許可したグラントにより、両スイッチの切り替え後に宅側装置が上りフレームを送信することによる、上り送信の衝突を未然に防止することができる。
【0027】
(10) 更に、本発明の局側装置において、前記第1のアクセス制御部は、前記複数回線制御において、同じ前記PON回線に属する前記宅側装置に許可する上りフレームの送信タイミングが連続するように、当該上りフレームのスケジューリングを行うことが好ましい。
この場合、第1のアクセス制御部が、宅側装置がどのPON回線に属するかを考慮せずに、ランダムに上りフレームのスケジューリングを行う場合に比べて、所定時間内における下位スイッチの切り替え回数を削減でき、下位スイッチの切り替えに伴う時間的オーバーヘッドが小さくない場合でも総オーバーヘッドを比較的小さく抑えることができる。
【0028】
(11) 本発明方法は、少なくとも2つのPON回線が接続された局側装置の動作モードを切り替えて運用する方法であって、切り替え可能な前記動作モードとして、次の(x)及び(y)が含まれることを特徴とする。
(x) 第1のPON回線に対する上り多重アクセス制御を第1のアクセス制御部が行い、第2のPON回線に対する当該上り多重アクセス制御を第2のアクセス制御部が行う通常モード
(y) 第1及び第2のPON回線に対する当該上り多重アクセス制御である複数回線制御を第1のアクセス制御部が行い、第2のアクセス制御部に通信フレームを疎通させない縮退モード
【0029】
本発明方法によれば、局側装置の切り替え可能な動作モードとして、上記(x)及び(y)が含まれるので、少なくとも2つのPON回線が接続された局側装置において、複数のPON回線をこれより少ない第1のアクセス制御部に担わせ、残りの第2のアクセス制御部に通信フレームを疎通させない縮退モードを行うことができる。このため、前記第1の目的が達成される。
【0030】
(12) 本発明方法において、前記縮退モードの期間中に、前記第2のアクセス制御部に含まれるプログラマブルな構成部品に対するコンピュータプログラムの変更と、その変更後の再起動を行うことが好ましい。
すなわち、縮退モードでは、第1及び第2のPON回線に対する上り多重アクセス制御である複数回線制御を第1のアクセス制御部が行うので、この縮退モードの期間中に、第2アクセス制御部に対するコンピュータプログラムの変更と再起動を行えば、局側装置でのデータ転送を停止させずにコンピュータプログラムの更新を行える。このため、本発明の第2の目的が達成される。
【0031】
(13) また、縮退モードにおいては、第2のアクセス制御部に通信フレームが疎通しないので、本発明方法において、前記縮退モードの期間中に、前記第2のアクセス制御への電力供給を停止又は抑制することにしてもよい。
このようにすれば、第1及び第2のアクセス制御部の双方に通常通り電源供給する場合に比べて、局側装置のアクセス制御部での消費電力を低下させることができる。このため、前記第3の目的が達成される。
【0032】
(14) 一方、縮退モードにおいては、第1のアクセス制御部が、通常モードの場合よりも多数の宅側装置に対して上り多重アクセス制御を行うので、通常モードの場合よりも宅側装置の通信帯域が低下する。
そこで、本発明方法において、前記第1及び第2のPON回線におけるトラフィックが所定値以下である時間帯に、前記縮退モードを実行することが好ましい。このようにすれば、第1のアクセス制御部が制御する宅側装置が増加することに伴う、上り帯域の低下を出来るだけ抑えることができる。
【0033】
(15) 本発明のアクセス制御装置は、本発明の局側装置に好適に採用できる制御装置(前記「アクセス制御部」と同じ。)である。
すなわち、本発明のアクセス制御装置は、上り多重アクセス制御を行うアクセス制御装置であって、宅側装置を識別するための論理リンク識別子を保持する管理テーブルと、前記管理テーブルに保持された論理リンク識別子を用いて、前記上り多重アクセス制御を行うPON制御部と、を備えており、前記PON制御部は、自身が通常管理する第1のPON回線のための論理リンク識別子と、他のアクセス制御装置が通常管理する第2のPON回線のための論理リンク識別子とを、値が重複しないように前記管理テーブルに保持し、当該管理テーブルに保持された論理リンク識別子を用いて、前記第1及び第2のPON回線に対する前記上り多重アクセス制御である複数回線制御を行うことを特徴とする。
【0034】
本発明のアクセス制御装置によれば、PON制御部が、自身が通常管理する第1のPON回線のための論理リンク識別子と、他のアクセス制御装置が通常管理する第2のPON回線のための論理リンク識別子とを、値が重複しないように管理テーブルに保持し、管理テーブルに保持された論理リンク識別子を用いて、第1及び第2のPON回線に対する上り多重アクセス制御である複数回線制御を行うので、その結果、局側装置に収容した他のアクセス制御装置に、通信フレームが疎通しなくなる。
【0035】
このため、複数のPON回線が接続された局側装置において、複数のPON回線を本発明のアクセス制御装置に担わせ、残りの他のアクセス制御装置に通信フレームを疎通させない縮退モードを行うことができ、前記第1の目的が達成される。
【0036】
(16) 本発明のPONシステムは、アクセス制御装置において、前記第1及び第2のPON回線にそれぞれ接続された複数の前記宅側装置と、上述の(11)〜(14)のいずれかに記載の運用方法が可能な前記局側装置と、を備えていることを特徴とする。
このため、本発明のPONシステムは、上述の(11)〜(14)のいずれかに記載の局側装置と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0037】
以上の通り、本発明によれば、複数のPON回線に対する上り多重アクセス制御をそれより少ないアクセス制御部が行うので、残りのアクセス制御部に通信フレームを疎通させない縮退モードを実行することができる。
また、本発明によれば、上記縮退モードにおいて、通信フレームが疎通しないアクセス制御部に対するコンピュータプログラムを更新することにより、局側装置でのデータ転送を停止させずに、アクセス制御部に対するコンピュータプログラムの更新を行える。
【0038】
更に、本発明によれば、上記縮退モードにおいて、通信フレームが疎通しないアクセス制御部に対する電力供給を停止又は抑制することにより、局側装置のアクセス制御部の消費電力を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係るPONシステムの接続形態を示す図である。
【図2】局側装置の構成を示すブロック図である。
【図3】通常モードにおける通常フレームの流れを示す図である。
【図4】系統A側にアクセス制御を集中させる場合の、縮退モードにおける通常フレームの流れを示す図である。
【図5】系統B側にアクセス制御を集中させる場合の、縮退モードにおける通常フレームの流れを示す図である。
【図6】アクティブなアクセス制御部による上りの帯域割当の一例を示すシーケンス図である。
【図7】アクティブなアクセス制御部による上りの帯域割当の別例を示すシーケンス図である。
【図8】上位スイッチの変形例を示すためのPONシステムの接続形態を示す図である。
【図9】下位スイッチの変形例を示すためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態を説明する。
〔PONシステムの接続形態〕
図1は、本発明の実施形態に係るPONシステムの接続形態を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のPONシステムは、通信事業者側の光回線終端装置(OLT:Optical Line Terminal )1と、宅側の光回線終端装置(ONU:Optical Network Unit)3とが、ツリー構造のPON回線4A,4Bで接続された接続形態(トポロジ)となっている。
【0041】
事業者側の光回線終端装置1は、複数の光加入者終端盤(OSU:Optical Subscriber Unit )2を1つの筐体に収容した集合体よりなり、この終端盤2にPON回線4A,4Bがそれぞれ接続されている。
以下、本実施形態においては、各々の光加入者終端盤2或いはその集合体である光回線終端装置1を「局側装置」といい、この局側装置にPON回線4A,4Bにて接続された宅側の回線終端装置3を「宅側装置」という。また、「局側装置」を「OSU」又は「OLT」と略記し、「宅側装置」を「ONU」と略記することがある。
【0042】
局側装置2には、それぞれ2系統のPON回線4A,4Bが接続されており、これらのPON回線4A,4Bは、局側装置2に繋がる一芯の光ファイバ5と、受動光分岐ノードである光カプラ6と、この光カプラ6から分岐する一芯の光ファイバ7とを有する。
光ファイバ7は、所定の分岐数(例えば、32や64分岐)で光カプラ6から分岐しており、その終端に宅側装置3がそれぞれ接続されている。また、局側装置2の上位側(図1の左側)は上位網に通じており、各宅側装置3の下位側(図1の右側)はそれぞれ下位網に通じている。
【0043】
PON回線4A,4Bにおける伝送方式としては、上り下りの伝送レートが10G(ボーレートは、10.3125Gbps)の10G−EPON、上り下りの伝送レートが1G(ボーレートは、1.25Gbps)のGE−PON、或いは、下りの伝送レートが10Gでかつ上りの伝送レートが1Gである非対称10G−EPONを採用することができる。
このため、局側装置2は、1Gと10Gの双方の伝送レートに対応しており、宅側装置3は、1GONU、10G非対称ONU、或いは、10G対称ONUよりなる。
【0044】
〔局側装置の構成〕
図2は、局側装置2の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、局側装置2は、上位側(図2の上側)から下位側に向かって順に、上位スイッチ11、アクセス制御部12A,12B、管理部13、下位スイッチ14、光送受信制御部15及び光送受信部16A,16Bを備えている。
【0045】
本実施形態の局側装置2は、2系統のPON回線4A,4BをMPCPに則って制御することに対応して、それらのPON回線4A,4Bがそれぞれ接続される2つの光送受信部16A,16Bと、2つのアクセス制御部12A,12Bとを備えている。
なお、以下において、PON回線4A,4Bとアクセス制御部12A,12Bと光送受信部16A,16Bの系統を互いに区別する表現として、「系統A」及び「系統B」を用いることがある。
【0046】
上位スイッチ11は、アクセス制御部12A,12Bの上位側に接続されたL2スイッチよりなる。この上位スイッチ11は、アクセス制御部12A,12Bが送出する上りフレームを多重して上位網に中継し、上位網からPON回線4A,4Bへの下りフレームをユニキャストフレームの場合は分離して、ユニキャストフレームでない場合は必要に応じてコピーして、各々のアクセス制御部12A,12Bに中継する機能を有する。
なお、上位スイッチ11は、上位網からの下りフレームを上位網に折り返したり、アクセス制御部12A,12Bからの上りフレームをアクセス制御部12A,12Bに折り返したりすることも可能である。
【0047】
管理部13は、局側装置2の管理と、アクセス制御部12A,12Bを介しての宅側装置3の管理とを行うものであり、管理インタフェース19と縮退制御部20とを有する。
管理インタフェース19は管理ネットワークに接続されており、このネットワークを介して運用者である通信事業者からの指令を受けることができる。
なお、図1の例では、管理ネットワークが上位網と別のネットワークとなっているが、両者は同一のネットワークであってもよい。
【0048】
縮退制御部20は、管理インタフェース19からの入力信号に基づいて、上位スイッチ11の切り替えと、光送受信制御部15を介した下位スイッチ14の切り替えとを行うが、その詳細については後述する。
下位スイッチ14は、アクセス制御部12A,12BのPON側(図2の下側)に接続され、光送受信部16A,16Bの上位側に接続されたL1スイッチよりなる。この下位スイッチ14は、アクセス制御部12A,12Bと光送受信部16A,16Bとの間の電気信号の方路を物理層レベルで切り替える機能を有する。
【0049】
〔アクセス制御部と光送受信部の構成〕
本実施形態のアクセス制御部12A,12Bと光送受信部16A,16Bは、いずれも系統Aと系統Bとで同じ構成及び機能を有する。そこで、以下においては、主として、系統Aを例にとってその構成及び機能を説明する。
アクセス制御部12Aは、複数のLSIを制御基板に実装して構成された制御装置よりなり、プログラマブルな論理回路(FPGA)やマイクロプロセッサ(MPU)を有する。アクセス制御部12Aのメモリ等に格納されるコンピュータプログラムには、FPGAの回路設計のためのVHDL及びVerilogなどのハードウェア記述言語や、MPUが行う処理内容を定義するC言語などで記述され、FPGAやMPUなどのデバイスの構造に合わせてコンパイルなどの処理がなされたコードが含まれる。
【0050】
図1に示すように、アクセス制御部12Aは、上位側から下位側に向かって順に、上位側送信部22、上位側受信部23、中継処理部24、LLID管理テーブル25、PON制御部26、PON側受信部27及びPON側送信部28を備えている。
上位スイッチ11から入力された下りフレームは、上位側受信部23により受信されて中継処理部24に送られる。中継処理部24は、その下りフレームをPON側送信部28に送出し、PON側送信部28は、その下りフレームを下位スイッチ14に入力する。
【0051】
下位スイッチ14から入力された上りフレームは、PON側受信部27により受信されて、中継処理部24又はPON制御部26に送られる。
PON側受信部27は、上りフレームがデータフレームである場合は、それを中継処理に24に渡し、MPCPフレームやOAMフレームなどの制御フレームである場合は、それをPON制御部26に渡す。中継処理部24は、そのデータフレームを上位側送信部22に送出し、上位側送信部は、そのデータフレームを上位スイッチ11に入力する。
【0052】
PON制御部26は、PON側受信部27から受けた制御フレームの性質に応じた所定の処理を行う。
例えば、PON制御部26は、受信した制御フレームが、自身がPON回線4A,4Bにブロードキャスト送信したディスカバリゲートに応答する、宅側装置3からのレジスタ要求である場合には、その宅側装置3のためのLLIDを決定し、決定したLLIDの値を記したレジスタを生成して、そのレジスタをPON側送信部28に下り送信させる。
【0053】
また、PON制御部26は、受信した制御フレームが、自身が送信したノーマルゲート(グラント)に対応する、宅側装置3からのレポートである場合には、それに記された送信要求量に応じて、所定のアルゴリズムで上りの動的帯域割当を行う。
そして、PON制御部26は、動的帯域割当の結果決定した送信許可量と、上り送信タイミングを記した所定のLLID宛のグラントを生成し、そのグラントをPON側送信部28に下り送信させる。
【0054】
PON制御部26は、LLID管理テーブル(以下、単に「管理テーブル」ともいう。)25の管理も行う。この管理テーブル25には、宅側装置を識別するためのLLIDがエントリに含まれる。また、PON制御部26は、LLIDのエントリごとに、論理リンクを維持するのに必要な情報を保持する。この必要情報には、例えば次のものが含まれるが、これらに限られない。
1) PON回線4A,4Bの種別情報
この識別情報は、ONUが系統A又は系統Bのいずれに属するかを示す情報である。
【0055】
2)ONUの種別情報
この種別情報は、ONUが1GONU、10G非対称ONU又は10G対称ONUのいずれかを示す情報である。
3)ONUのMACアドレス
4)ONUのRTT情報
【0056】
5)QoSパラメータ
このパラメータは、当該ONUに設定する優先度クラス、最低保証帯域及び最大許容帯域を定義するためのパラメータである。
6)上位ネットワークにおけるVLANモード
【0057】
本実施形態では、系統Aと系統Bの各PON制御部26は、中継処理部24、上位側送受信部22,23及び上位スイッチ11を介して、或いは、図示しない制御回線を介して互いに通信可能である。
系統AのPON制御部26は、上記通信により、系統BのPON制御部26が使用するLLIDの値と重複しないように自身が使用するLLIDを決定し、系統Aと系統Bの双方で使用するLLIDと、それに対応する上記必要情報を管理テーブル25に保持する。ただし、後述の通り、縮退モードへの移行時にいったん系統Bの論理リンクが切断されるのを許容する実装の場合は、そのような決定は不要である。
【0058】
また、LLIDを互いに通知し合う方法は、論理リンクが確立又は切断される毎に通知してもよいし、縮退に関する動作モードの切り替え前に纏めて通知してもよい。なお、系統Aと系統BでのLLIDの一意性については、系統Aと系統BのPON制御部26間で互いに通知し合う方法だけでなく、系統Aと系統BのPON制御部26が使用するLLIDの数値範囲を予め分けておく方法で確保することもできる。
すなわち、例えば、系統Aでは奇数を用い、系統Bでは偶数を用いることにしたり、系統Aでは0からインクリメントした値を用い、系統Bでは所定値からデクリメントした値を用いたりしてLLIDの番号空間を分離することにより、系統Aと系統Bとで使用するLLIDの重複を防止できる。
【0059】
系統A及び系統BのPON制御部26は、局側装置2内に設けられた同じクロック発生器(図示せず。)で動作しており、このクロック発生器でカウントした時刻(タイムスタンプ)についても、上記通信によってお互いに把握している。
系統AのPON制御部26は、系統BのPON制御部26から通知されたタイムスタンプと自身のPONカウンタとを比較する。系統AのPON制御部26は、それらの時刻差が所定値(例えば、128ns)以下であるかを判定し、それを超える場合には、自身のカウンタを系統Bに合わせるか、系統B側でカウンタを合わせるように通知する。
【0060】
光送受信部16Aは、周知の光トランシーバよりなり、光受信部30、光送信部31及び合分波部32を内部に有する。光受信部30は、アバランシェフォトダイオード等の受光素子よりなり、光送信部31は、レーザダイオード等の発光素子よりなる。
PON回線4Aからの上り光信号は、合分波部32を通じて光受信部30により受信され、光受信部30は、受信した上り光信号を電気信号に変換して下位スイッチ14に入力する。下位スイッチ14からの下り電気信号は、光送信部31によって光信号に変換され、この下りの光信号は、合分波部32を通じてPON回線4Aに送出される。
【0061】
縮退制御部20は、管理ネットワーク経由で受信する運用者からの指令に基づき、スイッチを切り替えるための制御信号を上位スイッチ11と光送受信制御部15に出力する。
また、光送受信制御部15は、縮退制御部20からの制御信号と、系統Aや系統BのPON制御部26からの制御信号とに基づいて、下位スイッチ14の切り替えと、光送受信部16A,16B内の光受信部30に対する受信制御を行う。この受信制御は、次の上りバースト受信に合わせて、光受信部30の受信態勢(例えば、伝送レートに合わせた受信増幅回路やクロック再生回路、復号回路の選択やリセットなど)を適合させる制御である。
【0062】
〔縮退制御部によるスイッチ制御〕
図3は、通常モードにおける通信フレームの流れを示す図である。また、図4は、系統A側にアクセス制御を集中させる場合の、縮退モードにおける通常フレームの流れを示す図であり、図5は、系統B側にアクセス制御を集中させる場合の、縮退モードにおける通常フレームの流れを示す図である。
【0063】
なお、図3〜図5では、上位スイッチ11と上位網との間の接続を示す矢印が一本線で描いてあるが、これは物理的な接続が一本であることを意味するものではない。また、物理的な接続の接続先が一箇所であることを意味するものでもなく、上位スイッチ11から上位網への物理的な接続が複数本あり、接続先が複数の上位装置である場合もある。
以下、図3〜図5を参照して、縮退制御部20が行うスイッチ制御の内容について説明する。
【0064】
縮退制御部20は、管理インタフェース19から受信する指令が「通常モード」である場合は、両スイッチ11,14の方路を図3のように設定する。この方路の設定を、上りフレームと下りフレームに分けて説明すると、次の通りである。
S1) 上位スイッチ11に入力される系統Aと系統BのPON回線4A,4Bへの下りフレームの出力先を、系統Aと系統Bのアクセス制御部12A,12Bに分散させる。
なお、この場合の出力先は、下りフレームに含まれる情報、例えば、VLAN番号や宛先MACアドレス等に基づいて判定される。系統Aと系統BのPON回線4A,4Bへの下りフレームがユニキャストフレームの場合には、系統Aあるいは系統BのPON回線4A,4Bのいずれかへ転送され、下りフレームがユニキャストフレームでない場合には、PON回線4A,4Bのいずれか片方に転送されるか、あるいは必要に応じて系統Aと系統BのPON回線4A,4Bの両方へ転送される。
【0065】
S2) 系統Aと系統Bのアクセス制御部12A,12Bから下位スイッチ14に入力される下りフレームの出力先を、それぞれ系統A及び系統Bの光送受信部16A,16Bに設定する。
S3) 系統Aと系統Bの光送受信部16A,16Bから下位スイッチ14に入力される上りフレームの出力先を、それぞれ系統A及び系統Bのアクセス制御部12A,12Bに設定する。
【0066】
このように、通常モードでは、同じ系統A,Bのアクセス制御部12A,12Bと光送受信部16A,16Bとが、上り下りの双方に関して1対1対応で接続される。
従って、この通常モードでは、系統Aのアクセス制御部12Aは、自身が通常管理する1つのPON回線4Aに対する上り多重アクセス制御(以下、これを「通常回線制御」という。)を行い、系統Bのアクセス制御部12Bも、同様に、自身が通常管理する1つのPON回線4Bに対する上り多重アクセス制御である通常回線制御を行う。
【0067】
縮退制御部20は、管理インタフェース19から受信する指令が、系統A側にアクセス制御を集中させる「縮退モード」である場合は、両スイッチ11,14の方路を図4のように設定する。この方路の設定を、上りフレームと下りフレームに分けて説明すると、次の通りである。
S4) 上位スイッチ11に入力される系統Aと系統BのPON回線4A,4Bへの下りフレームの出力先を、系統Aのアクセス制御部12Aに集中させる。
【0068】
S5) 系統Aのアクセス制御部12Aから下位スイッチ14に入力される下りフレームの出力先を、系統A及び系統Bの光送受信部16A,16Bに分散させる。
S6) 系統Aと系統Bの光送受信部16A,16Bから下位スイッチ14に入力される上りフレームの出力先を、下位スイッチ14に対して時分割の多重制御を行って系統Aのアクセス制御部12Aに集中させる。
【0069】
より具体的には、縮退モードにおいてデータが疎通するアクセス制御部12Aを「アクティブ」、縮退モードにおいてデータが疎通しないアクセス制御部12Bを「スタンバイ」と定義すると、下位スイッチ14は、アクティブなアクセス制御部12AのPON側送信部28から受けた下りフレームをコピーし、それらを各系統A,Bの光送受信部16A,16Bの光送信部31に入力する。
【0070】
また、下位スイッチ14は、各系統A,Bの光送受信部16A,16Bの光受信部30からの上りフレームを、アクティブなアクセス制御部12AのPON側受信部27に対して時分割多重して入力する。
このとき、アクティブなアクセス制御部12AのPON制御部26は、各々のPON回線4A,4Bから光送受信部16A,16Bを経由して受信する上り方向のバースト信号が、下位スイッチ14において欠損しないように、自身が宅側装置3にグラントした送信タイミングに基づいて光送受信制御部15に切り替えタイミングを指示する。
【0071】
このように、図4の縮退モードにおいては、縮退制御部20が上記のように両スイッチ11,14を制御することで、アクティブなアクセス制御部12Aが両系統A,BのPON回線4A,4Bに対する上り多重アクセス制御(以下、これを「複数回線制御」という。)を行うことになる。
また、その結果、スタンバイのアクセス制御部12Bには、両スイッチ11,14から上り及び下りフレームが入力されず、通信フレームが疎通しない非通信状態となる。
【0072】
また、縮退制御部20は、管理インタフェース19から受信する指令が、系統B側にアクセス制御を集中させる「縮退モード」である場合は、両スイッチ11,14の方路を図5のように設定する。この方路の設定を、上りフレームと下りフレームに分けて説明すると、次の通りである。
S7) 上位スイッチ11に入力される系統Aと系統BのPON回線4A,4Bへの下りフレームの出力先を、系統Bのアクセス制御部12Bに集中させる。
【0073】
S8) 系統Bのアクセス制御部12Bから下位スイッチ14に入力される下りフレームの出力先を、系統A及び系統Bの光送受信部16A,16Bに分散させる。
S9) 系統Aと系統Bの光送受信部16A,16Bから下位スイッチ14に入力される上りフレームの出力先を、下位スイッチ14に対して時分割の多重制御を行って系統Bのアクセス制御部12Bに集中させる。
【0074】
従って、図5の縮退モードでは、図4の縮退モードとは逆に、系統Bのアクセス制御部12Bがアクティブとなって、両系統A,BのPON回線4A,4Bに対して複数回線制御を行い、その結果、系統Aのアクセス制御部12Aがスタンバイとなって、通信フレームが疎通しない非通信状態となる。
【0075】
〔局側装置の運用方法〕
このように、本実施形態では、運用者からの指令に応じて、いずれか一方のアクセス制御部12A,12Bが両系統A,BのPON回線4A,4Bをアクセス制御する複数回線制御を行い、他方のアクセス制御部12A,12Bに通信フレームを疎通させない縮退モードを、局側装置2に実行させることができる。
【0076】
従って、例えばPONシステムの運用者は、上記縮退モードの期間中に、スタンバイとなったアクセス制御部12A,12Bに含まれるFPGAやMPUなどのプログラマブルな構成部品に対して、コンピュータプログラムの変更とその変更後の再起動を行うことができる。なお、コンピュータプログラムの「変更」には、当該プログラムの修正、追加及び削除などが含まれる。
【0077】
この場合、縮退モードでは、系統A及び系統BのPON回線4A,4Bについての複数回線制御をアクティブなアクセス制御部12A,12Bが行うので、この縮退モードの期間中に、スタンバイのアクセス制御部12A,12Bに対するコンピュータプログラムの変更と再起動を行うようにすれば、局側装置2でのデータ転送を停止させずに、コンピュータプログラムの更新を行うことができる。
【0078】
また、局側装置の別の運用方法として、縮退モードの期間中に、スタンバイのアクセス制御12A,12Bへの電力供給を停止又は抑制することにしてもよい。
この場合、系統A,Bのアクセス制御部12A,12Bの双方に通常通り電源供給する場合に比べて、局側装置2のアクセス制御部12A,12Bにおける消費電力を低下させることができる。
【0079】
なお、縮退モードにおいては、アクティブなアクセス制御部12A,12Bが、通常モードの場合よりも多数の宅側装置3に対して上り多重アクセス制御を行うので、通常モードの場合よりも宅側装置3の通信帯域が低下することになる。
このため、縮退モードを行う時間帯は、PON回線4A,4Bにおけるトラフィックが所定値以下となる例えば夜中の時間帯とすることが好ましい。この場合、アクティブなアクセス制御部12A,12Bが制御する宅側装置3が増加することに伴う、宅側装置3あたりの通信帯域の低下の影響を軽減できるようになる。
【0080】
本実施形態の局側装置2では、上述の通り、アクセス制御部12A,12BのPON制御部26が、両系統A,BでLLIDの値が重複しないように管理し、そのLLIDごとに、論理リンクを維持するのに必要な情報を互いに共有している。
また、アクセス制御部12A,12BのPON制御部26は、上り多重アクセス制御を行うに当たって、同じクロック発生器を用いてクロックの同期を図るとともに、互いのタイムスタンプのずれが所定値以下となるように時刻同期を図っている。
【0081】
従って、本実施形態の局側装置2では、通常モードから縮退モードへの切り替え、或いは逆に、縮退モードから通常モードへの切り替えを行うことにより、MPCPに基づく上り多重アクセス制御の制御主体が変更されても、両系統A,BのPON回線4A,4Bに属する宅側装置3との論理リンクが維持される。
このため、モードの切り替えごとにLLIDが自動的に切断されることによって、通信が不通となる時間が長くなることを防止できるという利点がある。
【0082】
〔第1の変形例〕
上述の実施形態において、縮退制御部20が両スイッチ11,14の方路を切り替えることによる局側装置2の動作モードの切り替えにより、論理リンクが自動的に切断されるのを許容する実装としてもよい。
もっとも、かかる実装の場合には、各々の系統A,Bのアクセス制御部12A,12BのPON制御部26は、縮退制御部20が両スイッチ11,14の切り替えを行う前後で上り多重アクセス制御の制御主体が変わるLLIDの登録を、解除することが好ましい。
【0083】
例えば、局側装置2の動作モードを、通常モードから、系統Aがアクティブとなり系統Bがスタンバイとなる縮退モードに切り替える場合には、系統Bのアクセス制御部12BのPON制御部26は、PON回線4Bに属する宅側装置3からデレジスタ要求を受信したか否かに関係なく、一律に、PON回線4Bに属するすべての宅側装置3に対してデレジスタを送信するようにすればよい。
【0084】
このようにすれば、局側装置2の動作モードが縮退モードに切り替わった後に、PON回線4Bに属する宅側装置3がアクセス制御部12AのPON制御部26にレジスタ要求を行い、この要求を契機として、アクセス制御部12AのPON制御部26が、PON回線4Bに属する宅側装置3に対して新たにLLIDを割り当てるので、局側装置2の動作モードを縮退モードに切り替える前に、各々の系統A,BのPON制御部26が使用するLLIDの値を重複しないように管理する必要がなくなる。
従って、比較的簡単に縮退モードを実現することができる。
【0085】
〔第2の変形例〕
上述の実施形態において、アクティブなアクセス制御部12A,12Bによる宅側装置3の登録方法として、複数回線制御の実行期間中においては、下位スイッチ14における上りフレームの入力元を、ディスカバリプロセスごとに系統A又は系統Bの光送受信部16A,16Bのいずれかに固定し、その固定状態で宅側装置3の登録シーケンスを実行することが好ましい。
【0086】
その理由は、次の通りである。すなわち、宅側装置3の登録シーケンスは、次の制御フレームを局側装置2と宅側装置3とがやり取りする手順で行われる。
1)局側装置2がディスカバリゲートをブロードキャストする。
2)宅側装置3がレジスタ要求を局側装置2に返す。
3)局側装置2がLLIDを記したレジスタを宅側装置3に送信する。
4)宅側装置3がレジスタ確認を局側装置2に返す。
【0087】
従って、例えば、系統Aのアクセス制御部12AのPON制御部26が上記登録シーケンスの主体である場合に、その登録シーケンスの途中で、下位スイッチ14における上りフレームの入力元が切り替わると、宅側装置3からの応答(レジスタ要求やレジスタ確認)を当該アクセス制御部12AのPON制御部26が受信できなくなり、宅側装置3の登録シーケンスを適切に実行できなくなる。
【0088】
この点、ディスカバリプロセスごとに光送受信部16A,16Bを固定して登録シーケンスを実行すれば、その登録シーケンスの手順を同じアクセス制御部12A,12Bが適切に実行することができ、アクティブなアクセス制御部12A,12Bが複数回線制御を行っている期間中でも、新たな宅側装置3を適切にPONに加入させることができる。
また、この場合、アクティブなアクセス制御部12A,12Bは、新たな宅側装置3がA,Bいずれの系統のPONに属するかを確実に把握することができる。
【0089】
〔第3の変形例〕
上述の実施形態において、各系統A,Bのアクセス制御部12A,12Bは、MPCPに従う上り多重アクセス制御において、許可する上りフレームの送信タイミングが、縮退制御部20による両スイッチ11,14の切り替え前であるグラントのみを生成することが好ましい。
【0090】
より具体的には、グラントの生成時点をt1、スイッチ11,14の切り替え時点をt2、グラントに記す上りフレームの送信タイミングをt3とし、系統A側にアクセス制御を集中させるようにスイッチ11,14を切り替える場合を想定すると、縮退モードにおいてスタンバイとなるアクセス制御部12BのPON制御部26は、t1<t2<t3となるタイミングの場合には、グラントを生成せず、t1<t3<t2となるタイミングの場合に限り、グラントを生成するようにする。
【0091】
その理由は、t1<t2<t3となるタイミングで、縮退モードにおいてスタンバイとなるアクセス制御部12BのPON制御部26がグラントを生成すると、このPON制御部26がスイッチ11,14の切り替え前に許可したグラントに基づく上りフレームが、スイッチ11,14の切り替え後に局側装置2に到達し、アクティブなアクセス制御部12AのPON制御部26が過去にグラントした他の上りフレームと衝突する可能性があるからである。
【0092】
この点、縮退モードにおいてスタンバイとなるアクセス制御部12BのPON制御部26が、t1<t3<t2となるタイミングのみでグラントを生成すれば、縮退モードへの切り替えに伴う上記のような上り送信の衝突を未然に回避することができ、縮退モードへの移行を適切に行うことができる。
【0093】
〔第4の変形例〕
上述の実施形態において、縮退モードにおいてアクティブとなるアクセス制御部12A,12BのPON制御部26は、複数回線制御を行う場合に、同じPON回線4A,4Bに属する宅側装置3に許可する上りフレームの送信タイミングが出来るだけ連続するように、当該上りフレームのスケジューリングを行うことが好ましい。
【0094】
図6及び図7は、上記スケジューリングの効果を示すためのシーケンス図であり、図6では、アクティブなアクセス制御部12A,12Bが、ONUの系統A,Bに関係なく上りフレームをスケジューリングする場合を示し、図7では、同じ系統A,Bの上りフレームを連続させて上りフレームをスケジューリングする場合を示している。
なお、図6及び図7において、ONU1とONU3は系統AのPON回線4Aに属し、ONU2は系統BのPON回線4Bに属するものとする。
【0095】
図6に示す例では、OSUは、ONU1(系統A)→ONU2(系統B)→ONU3(系統A)の順でONU1〜3が上り送信を行うように、上りフレームのスケジューリングを行っている。
この場合、図6の最上部に示すように、OSUが各ONU1〜3から受信するレポート又はデータ付きレポートの系統種別を並べると、A→B→A→A→B→A→A→B→Aとなり、系統種別が合計6回切り替わる。
【0096】
従って、図6に示すスケジューリングでは、合計9個の上りフレームを受信する際に、下位スイッチ14の切り替えを6回も行う必要がある。
しかし、このように、下位スイッチ14が頻繁に切り替わるスケジューリングでは、下位スイッチ14の切り替えの時間的オーバーヘッドが小さくない場合、上りの帯域が無駄に圧迫されることになる。
【0097】
これに対して、図7に示す例では、OSUは、ONU1(系統A)→ONU3(系統A)→ONU2(系統B)の順でONU1〜3が上り送信を行うように、すなわち、PON回線4Aに属する系統Aの上り送信タイミングが連続するように、上りフレームのスケジューリングを行っている。
この場合、図7の最上部に示すように、OSUが各ONU1〜3から受信するレポート又はデータ付きレポートの系統種別を並べると、A→A→B→A→A→A→A→B→Bとなり、系統種別が合計3回切り替わる。
【0098】
従って、図7に示すスケジューリングでは、合計9個の上りフレームを受信する際に、下位スイッチ14の切り替えが3回で済んでいる。
このように、同じPON回線4A,4Bに属する宅側装置3に許可する上りフレームの送信タイミングを連続させるようにすれば、それを考慮しないでランダムに上りフレームのスケジューリングを行う場合に比べて、所定時間内における下位スイッチ14の切り替え回数を削減できる。このため、下位スイッチ14の切り替えに伴う上り帯域の損失を小さくできるという利点がある。
【0099】
〔第5の変形例〕
上述の実施形態では、OLT1を構成するOSU2がそれぞれ上位スイッチ11を有する場合を例示したが、上位スイッチ11は、例えば図8に示すように、各OSU2の上位側を多重する冗長化した集線盤11aにより構成することにしてもよい。
この場合、上位スイッチ11のすべての機能を集線盤11aに行わせるようにすれば、OSU2の実装基板に上位スイッチ11が不要となる。もっとも、上位スイッチ11の機能を集線盤11aとOSU2の実装基板に分担させてもよい。
【0100】
〔第6の変形例〕
上述の実施形態において、下位スイッチ14の機能の一部をアクセス制御部12A,12Bに組み込むことにしてもよい。図9はその実装例を示すブロック図である。
図9に示すように、この変形例の下位スイッチ14は、アクセス制御部12A,12BにおけるPON側受信部27とPON側送信部28にそれぞれ組み込まれた内部スイッチ14R,14Tと、アクセス制御部12A,12Bの外部に設けられた外部スイッチ14Cとから構成されている。
【0101】
受信側の内部スイッチ14Rは、系統A用の入力ポートIAと系統B用の入力ポートIBとを有し、送信側の内部スイッチ14Tは、系統A用の出力ポートOAと系統B用の出力ポートOBとを有する。
また、外部スイッチ14Cは、上位側のポートとして、内部スイッチ14Rの2つの入力ポートIA,IBに対応する2つの出力ポートと、内部スイッチ14Tの2つの出力ポートOA,OBに対応する2つの入力ポートとを有する。
【0102】
各系統A,BのPON制御部26は、縮退制御部20からの指令により通常回線制御又は複数回線制御のいずれかの上り多重アクセス制御を行う。ここで、系統Aのアクセス制御部12Aに着目すると、この制御部12AのPON側送信部28は、系統Aが通常回線制御である場合は、内部スイッチ14Tの出力ポートOAのみから、外部スイッチ14Cの対応ポートに下りデータを入れる。
また、アクセス制御部12AのPON側送信部28は、系統Aが複数回線制御である場合には,内部スイッチ14Tの双方のポートOA,OBから、外部スイッチ14Cの対応ポートに下りデータを入れる。
【0103】
一方、外部スイッチ14Cは、系統Aが通常回線制御である場合は、系統Aの光受信部30から受けた下りデータを、PON側受信部27の内部スイッチ14Rの入力ポートIAに入れる。
また、外部スイッチ14Cは、系統Aが複数回線制御である場合は、系統Aの光受信部30から受けた上りデータを、PON側受信部27の内部スイッチ14Rの入力ポートIAに入れるとともに、系統Bの光受信部30から受けた上りデータを、PON側受信部27の内部スイッチ14Rの入力ポートIBに入れる。
【0104】
そして、系統AのPON制御部26は、内部スイッチ14Rの入力ポートIA,IBからそれぞれ入力される上りデータに対して、それらの上りデータに対するPON側受信部27における受信処理が競合しないように、時分割多重制御を行う。系統Bのアクセス制御部12Bについても、系統Aの場合と同様の上記処理が行われる。
なお、図9の変形例において、送信側の内部スイッチ14Tは1ポートとし、複数回線制御の場合に下りデータをコピーさせることにしてもよい。
【0105】
図9の変形例に示すように、局側装置2の動作モードを切り替える場合における、通信データの各系統A,Bへの振り分け処理(方路選択)を外部スイッチ14Cにて行い、複数回線制御の場合に必要となる、両系統A,Bの上りデータに対する時分割多重を、アクセス制御部12A,12Bの内部に設けた内部スイッチ14Rにて行うことにしてもよい。
【0106】
〔その他の変形例〕
今回開示した実施形態(上述の各変形例を含む。)はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲に記載した構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、上述の実施形態では、双方の系統A,Bのアクセス制御部12A,12Bが、複数回線制御を実行可能となっているが、例えば、一方のアクセス制御部12Aのみが複数回線制御を実行でき、他方のアクセス制御部12Bは通常回線制御のみを実行するものであってもよい。
【0107】
この場合、アクセス制御部12Aだけが複数回線制御を実行するので、縮退モードにおいて、当該アクセス制御部12Aがスタンバイになることがない。
従って、アクセス制御部12Aをスタンバイにしてコンピュータプログラムの更新を行うことはできなくなるが、アクセス制御部12Bの電力供給を停止又は抑制して消費電力を低減することは可能であり、消費電力を低減するために縮退モードを利用する場合には一定の効果がある。
【0108】
上述の実施形態では、局側装置2に2系統のPON回線4A,4Bが接続され、アクセス制御部12A,12Bと光送受信部16A,16Bが、2つの系統A,Bに対応してそれぞれ1対設けられているが、これらは3系統以上あってもよい。
例えば、3系統(系統A〜C)のPON回線4A〜4Cを有する局側装置2の場合は、系統Cの光送受信部16Cを系統A,Bのアクセス制御部12B,12Cに分散して帰属させ、アクセス制御部12Cを非通信状態とする縮退構成や、系統B,Cの光送受信部16B,16Cを系統Aのアクセス制御部12Aに帰属させ、アクセス制御部12B,12Cを同時に非通信状態とする縮退構成など、種々の縮退構成を定義できる。
【0109】
このように、3系統以上のPON回線4A〜4Cを制御する局側装置2を想定すると、縮退モードの場合にアクティブとなる、特許請求の範囲の「第1」のPON回線、アクセス制御部及び光送受信部は、複数存在することがあり得る。また、同様に、縮退モードの場合にスタンバイとなる、特許請求の範囲の「第2」のPON回線、アクセス制御部及び光送受信部についても、複数存在することがあり得る。
【符号の説明】
【0110】
1 局側装置(OLT)
2 局側装置(OSU)
3 宅側装置(ONU)
4A PON回線
4B PON回線
11 上位スイッチ
12A アクセス制御部
12B アクセス制御部
14 下位スイッチ
15 光送受信制御部
16A 光送受信部
16B 光送受信部
19 管理インタフェース
20 縮退制御部
25 管理テーブル
26 PON制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の宅側装置とPONシステムを構成する局側装置であって、
第1のPON回線に接続可能な第1の光送受信部と、
第2のPON回線に接続可能な第2の光送受信部と、
前記第1のPON回線に対する上り多重アクセス制御である通常回線制御と、前記第1及び第2のPON回線に対する前記上り多重アクセス制御である複数回線制御とを実行可能な第1のアクセス制御部と、
前記第2のPON回線に対する前記上り多重アクセス制御である通常回線制御を実行可能な第2のアクセス制御部と、
前記両アクセス制御部の上位側に設けられた上位スイッチと、
前記両アクセス制御部と両光送受信部との間に設けられた下位スイッチと、
前記両スイッチを次の(a)及び(b)のように切り替え可能な縮退制御部と、
を備えていることを特徴とする局側装置。
(a) 上位スイッチに入力される第1及び第2PON回線への下りフレームの出力先を、第1のアクセス制御部に集中させ、第1のアクセス制御部から下位スイッチに入力される下りフレームの出力先を、第1及び第2の光送受信部に分散させる。
(b) 第1及び第2の光送受信部から下位スイッチに入力される上りフレームの出力先を、時分割で多重して第1のアクセス制御部に集中させる。
【請求項2】
前記縮退制御部は、更に、前記両スイッチを次の(c)及び(d)のように切り替え可能である請求項1に記載の局側装置。
(c) 上位スイッチに入力される第1及び第2PON回線への下りフレームの出力先を、第1及び第2のアクセス制御部に分散し、第1及び第2のアクセス制御部から下位スイッチに入力される下りフレームの出力先を、それぞれ第1及び第2の光送受信部に設定させる。
(d) 第1及び第2の光送受信部から下位スイッチに入力される上りフレームの出力先を、それぞれ第1及び第2のアクセス制御部に設定させる。
【請求項3】
前記第1のアクセス制御部は、前記第1のPON回線のための論理リンク識別子と、前記第2のPON回線のための論理リンク識別子とを、値が重複しないように保持する管理テーブルを有し、当該管理テーブルに保持された論理リンク識別子を用いて、前記複数回線制御を行う請求項1又は2に記載の局側装置。
【請求項4】
前記第1のアクセス制御部は、論理リンクを維持するのに必要な情報を前記第2のアクセス制御部から取得して論理リンク識別子ごとに前記管理テーブルに予め保持し、保持された前記情報を用いて、前記複数回線制御を行う請求項3に記載の局側装置。
【請求項5】
前記第1のアクセス制御部は、前記第2のアクセス制御部と同期するクロックを用いて、前記複数回線制御を行う請求項4に記載の局側装置。
【請求項6】
前記第1のアクセス制御部は、前記第2のアクセス制御部が使用するタイムスタンプとのずれが所定値以下のタイムスタンプを用いて、前記複数回線制御を行う請求項4又は5に記載の局側装置。
【請求項7】
前記第1及び第2のアクセス制御部は、前記縮退制御部が前記両スイッチの切り替えを行う前後で、前記上り多重アクセス制御の制御主体が変わる論理リンク識別子の登録を解除する請求項1〜6のいずれか1項に記載の局側装置。
【請求項8】
前記第1のアクセス制御部は、前記複数回線制御において、前記下位スイッチにおける上りフレームの入力元を、ディスカバリプロセスごとに前記第1又は第2の光送受信部のいずれかに固定して、前記宅側装置の登録シーケンスを実行する請求項1〜7のいずれか1項に記載の局側装置。
【請求項9】
前記第1及び第2のアクセス制御部は、許可する上りフレームの送信タイミングが、前記縮退制御部による前記両スイッチの切り替え前であるグラントのみを生成する請求項1〜8のいずれか1項に記載の局側装置。
【請求項10】
前記第1のアクセス制御部は、前記複数回線制御において、同じ前記PON回線に属する前記宅側装置に許可する上りフレームの送信タイミングが連続するように、当該上りフレームのスケジューリングを行う請求項1〜9のいずれか1項に記載の局側装置。
【請求項11】
少なくとも2つのPON回線が接続された局側装置の動作モードを切り替えて運用する方法であって、切り替え可能な前記動作モードとして、次の(x)及び(y)が含まれることを特徴とする局側装置の運用方法。
(x) 第1のPON回線に対する上り多重アクセス制御を第1のアクセス制御部が行い、第2のPON回線に対する当該上り多重アクセス制御を第2のアクセス制御部が行う通常モード
(y) 第1及び第2のPON回線に対する当該上り多重アクセス制御である複数回線制御を第1のアクセス制御部が行い、第2のアクセス制御部に通信フレームを疎通させない縮退モード
【請求項12】
前記縮退モードの期間中に、前記第2のアクセス制御部に含まれるプログラマブルな構成部品に対するコンピュータプログラムの変更と、その変更後の再起動を行う請求項11に記載の局側装置の運用方法。
【請求項13】
前記縮退モードの期間中に、前記第2のアクセス制御への電力供給を停止又は抑制する請求項11に記載の局側装置の運用方法。
【請求項14】
前記第1及び第2のPON回線におけるトラフィックが所定値以下である時間帯に、前記縮退モードを実行する請求項11〜13のいずれか1項に記載の局側装置の運用方法。
【請求項15】
上り多重アクセス制御を行うアクセス制御装置であって、
宅側装置を識別するための論理リンク識別子を保持する管理テーブルと、
前記管理テーブルに保持された論理リンク識別子を用いて、前記上り多重アクセス制御を行うPON制御部と、を備えており、
前記PON制御部は、自身が通常管理する第1のPON回線のための論理リンク識別子と、他のアクセス制御装置が通常管理する第2のPON回線のための論理リンク識別子とを、値が重複しないように前記管理テーブルに保持し、当該管理テーブルに保持された論理リンク識別子を用いて、前記第1及び第2のPON回線に対する前記上り多重アクセス制御である複数回線制御を行うことを特徴とするアクセス制御装置。
【請求項16】
前記第1及び第2のPON回線にそれぞれ接続された複数の前記宅側装置と、
請求項11に記載の運用方法が可能な前記局側装置と、
を備えていることを特徴とするPONシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−48369(P2013−48369A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186211(P2011−186211)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】