説明

PPAR調節剤の塩および代謝障害の治療方法

ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体の強力な修飾物質の塩形態、同様のものからなる医薬組成物および同様のものを使用して疾患を治療する方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年10月25日にファイルされた米国仮出願番号60/730,249に優先権を主張するものとし、この開示はその全体が本明細書に記載されているものとみなす。
【0002】
本発明は、様々な疾患を治療するための塩および方法に関するものであり、その治療は、これらの塩を使用して核内受容体仲介過程を調節することにより、特に、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)により仲介される過程の調節により行なわれる。
【背景技術】
【0003】
ペルオキシソーム増殖剤は、哺乳類に投与されるとき、肝および腎ペルオキシソームのサイズおよび数の飛躍的な増加だけでなく、同時に[β]−酸化サイクルに必要な酵素の発現の増加を介して脂肪酸を代謝するためのペルオキシソームの能力の上昇も誘発する、構造的に多様なグループの化合物である(Lazarow and Fujiki,Ann.Rev.Cell Biol.1:489−530(1985);Varnecq and Draye,Essays Biochem.24:1115−225(1989);and Nelali et al.,Cancer Res.48:5316−5324(1988))。一つ以上のPPARを活性または一つ以上のPPARと相互作用する化合物は、動物モデルにおいて、トリグリセライドおよびコレステロールレベルの調整に関与している。このグループに含まれる化合物は、フィブラートクラスの抗高脂肪血症剤、除草剤およびフタル酸可塑剤である(Reddy and Lalwani,Crit.Rev.Toxicol.12:1−58(1983))。ペルオキシソーム増殖は、また、高脂肪食および低温じゅん化などの食事または生理的要因により誘発される。
【0004】
PPARにより調節される生物学的過程は、PPAR受容体リガンドに反応を示す受容体または受容体併用により調節されるものである。これらの過程は、例えば、血漿脂肪輸送および脂肪酸異化、(例えば、膵β細胞機能異常、インスリン分泌性腫瘍および/またはインスリンに対する自己抗体、インスリン受容体または膵β細胞に刺激性である自己抗体による自己免疫低血糖から生じる)低血糖症/高インスリン血症に関わるインスリン感受性および血中グルコースレベルの調整、アテローム性動脈硬化プラークの形成を導くマクロファージ分化、炎症反応、癌化、過形成、および脂肪細胞分化を含む。
【0005】
PPARのサブタイプは、PPAR−α、PPAR−δ(NUC1、PPAR−βおよびFAARとして知られる)および2つのPPAR−γのサブタイプを含む。これらのPPARは、PPAR応答成分(PPRE)と呼ばれるDNA配列成分に結合することにより標的遺伝子の発現を調整できる。現時点で、PPREは、脂質代謝を調整するタンパク質をコード化する多数の遺伝子のエンハンサー中で同定されており、PPARが脂肪生成シグナル伝達カスケードおよび脂質ホメオスタシスで中心的役割を果たすことを示唆する(H.KellerおよびW.Wahli,Trends Endoodn.Met.291−296,4(1993))。
【0006】
ペルオキシゾーム増殖剤がそれらの多面効果を及ぼすメカニズムの見識は、これらの化学物質により活性化される核内ホルモン受容体スーパーファミリーのメンバーの同定により提供される(Isseman and Green,Nature 347−645−650(1990))。PPAR−α(または代わりに、PPARα)と呼ばれる受容体は、続いて、様々な媒体および長鎖脂肪酸により活性化され、ラットアシルCoAオキシダーゼおよびヒドラターゼ−デヒドロゲナーゼ(ペルオキシソームβ酸化に必要な酵素)だけでなく脂肪酸ω−ヒドロキシラーゼであるウサギシトクロームP450 4A6をコード化する遺伝子の発現を刺激することを示す(Gottlicher et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4653−4657(1992);Tugwood et al.,EMBO J 11:433−439(1992);Bardot et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.192:37−45(1993);Muerhoff et al.,J Biol.Chem.267:19051−19053(1992);and Marcus et al.,Proc.Natl.Acad Sci.USA 90(12):5723−5727(1993)。
【0007】
核内受容体PPAR−γの活性化薬(または代わりに、PPARy)、例えば、トログリタゾンは、インスリン作用の強化、 血清グルコースの減少、およびタイプ2の糖尿病をもつ患者の血清トリグリセリドレベルの減少に小さいが有意な作用をもつことが臨床的に示されている。例えば、D.E.Kelly et al.,Curr.Opin.Endocrinol.Diabetes,90−96,5 (2),(1998);M.D.Johnson et al.,Ann.Pharmacother.,337−348,32(3),(1997);およびM.Leutenegger et al.,Curr.Tlier.Res.,403−416,58(7),(1997)を参照のこと。
【0008】
PPARの第三のサブタイプ、PPARδ(PPARδ、NUCl)は、体に広く発現し、異常脂肪血症および他の疾患の治療に有益な分子標的であることを示している。例えば、インスリン抵抗肥満アカゲザルの最近の研究で、強力で選択的なPPARδ化合物は、用量反応関係をもって、VLDLを減少し、HDLを増加することを示した(Oliver et al.,Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A.98:5305,2001)。また、野生型およびHDL欠如ABCAl+マウスの最近の研究において、異なる強力で選択的なPPARδ化合物が、腸において一部的にコレステロールの吸収を減少させ、同時にコレステロール吸収タンパク質NPClLlの発現を減少させることを示した(van der Veen et al.,J.Lipid Res.2005 46:526−534)。
【0009】
PPARには3つのサブタイプがあり、これらの全ては、ヒトの身体のエネルギーホメオスタシスおよび他の重要な生物学的過程において重要な役割を果たすことが示され、代謝および他の疾患の治療に重要な分子標的であることを示されたため(Willson, et al.J.Med.Chem.43:527−550(2000)を参照)、PPARサブタイプの一つのみと選択的に相互作用可能な、または複数のPPARサブタイプと相互作用可能な化合物の同定が当該分野で所望されている。このような化合物は、例えば、肥満の治療または防止、糖尿病の治療または防止、異常脂肪血症、代謝X症候群および他の使用などの広範囲の様々な使用を見出すであろう。
【発明の開示】
【0010】
[発明の概要]
本発明は、これに制限されないが、エネルギーホメオスタシス、脂肪代謝、脂肪細胞分化、炎症、および、例えば、高血糖症および抗インスリン血症などの糖尿病状態に関連するものを含む状態および疾患の治療および防止に役立つ新規塩形態のPPAR調節物質を提供する。本発明は、前記塩を含む医薬組成物、および、例えば、エネルギーホメオスタシス、脂肪代謝、脂肪細胞分化、炎症、および、これに制限されないが、高血糖症および高インスリン血症を含む糖尿病状態に関連する状態および疾患の治療のためのそれらの使用方法を提供する。
【0011】
特定の実施形態において、塩は、2006年9月14日に出版された米国特許出願公開番号US2006/0205736A1および2006年7月27日に出版されたUS2006/0167012A1に記述される式Iの化合物から形成され、この内容は、参照によりその全体が本明細書に記載されているものとする。式(I)は、以下の構造を有する:
【0012】
【化1】

式中、
Aは、3〜5個の原子を有し5〜7員環を形成する、飽和または不飽和炭化水素鎖あるいは複素原子含有炭化水素鎖であり、
Tは、−C(O)OH、−C(O)NHおよびテトラゾールからなる群から選択され、
は、−(CR−、−Z(CR−、−(CRZ−、−(CRZ(CR−からなる群から選択され、
Zは、O、S またはNRであり、
nは、0、1、または2であり、
rおよびsは、0または1であり、
およびRは、水素、ハロ、任意に置換された低級アルキル、任意に置換された低級へテロアルキル、任意に置換された低級アルコキシおよび低級パーハロアルキルからなる群から独立して選択されるか、あるいは一緒に任意に置換されたシクロアルキルを形成してよく、
、XおよびXは、水素、任意に置換された低級アルキル、任意に置換されたシクロアルキル、ハロゲン、パーハロアルキル、ヒドロキシ、任意に置換された低級アルコキシ、ニトロ、シアノおよびNHからなる群から独立して選択され、
は、任意にXおよびXと置換された飽和または不飽和シクロアルキルあるいはヘテロシクロアルキルリンカーからなる群から選択され、
およびXは、水素、任意に置換された低級アルキル、ハロゲン、低級パーハロアルキル、ヒドロキシ、任意に置換された低級アルコキシ、ニトロ、シアノ、NHおよびCORからなる群から独立して選択され、
Rは、低級アルキルおよび水素からなる群から選択され、
は、結合、二重結合、−(CR−、カルボニルおよび−(CRCR=CR−からなる群から選択され、
mは、0、1または2であり、
およびRは、水素、任意に置換された低級アルキル、任意に置換された低級アルコキシ、任意に置換されたアリール、低級パーハロアルキル、シアノおよびニトロからなる群から独立して選択され、
は、水素、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたシクロアルケニルおよび−N=(CR)からなる群から選択され、
およびRは、水素、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたシクロアルケニルおよび任意に置換されたヘテロシクロアルキルからなる群から独立して選択される。
【0013】
本発明は、本発明の一つ以上の塩および一つ以上の医薬的に許容できる稀釈剤、賦形剤または担体を含む医薬組成物も提供する。本発明は、タイプII糖尿病、高コレステロール血症、炎症障害または関連する疾患の治療または防止方法をさらに提供し、その方法には、このような治療または防止を必要とする患者に治療に有効な量の本発明の一つ以上の塩を投与することが含まれる。
【0014】
本発明は、PPAR受容体により介在される状態または疾患の治療あるいは防止方法をも提供し、その方法にはこのような治療または防止を必要とする患者に治療に有効な量の本発明の塩を投与することが含まれる。
【0015】
本発明の新規塩形態は、動物またはヒトに使用する製剤の調製のための医薬品有効成分として特に有益である。従って、本発明は、最終医薬品としてのこれらの個体形態の使用を含む。本発明の塩および最終医薬品は、例えば、エネルギーホメオスタシス、脂肪代謝、脂肪細胞分化および炎症に関する状態および疾患の治療および防止に有益である。
【0016】
[発明の詳細な説明]
本発明は、少なくとも一つのペルオキシソーム増殖活性化受容体(PPAR)機能を調整する式Iの塩形態の化合物を開示する。本明細書に記述される化合物は、PPARδおよびPPARγの双方、またはPPARαおよびPPARδの双方、あるいはPPARサブタイプの3つ全てを活性、あるいは主にPPARγ、PPARαまたはPPARγを選択的に活性する。従って、本発明は、前記PPARを本発明の塩と接触させることを含むPPARの調整方法を提供する。ある好適な実施形態における前記修飾は、PPARαおよびPPARγよりもPPARδに選択的である。あるより好適な実施形態におけるPPARδの前記調整は、前記他のサブタイプよりも100倍または以上に選択的である。最も好ましくは、前記調整は、前記他のサブタイプよりも200〜500倍選択的である。
【0017】
本発明は、本明細書に記述される式Iの塩の化合物とPPARを接触させるステップを含む、少なくとも一つのペルオキシソーム増殖活性化受容体(PPAR)機能を調節する方法に関する。細胞表現型、細胞増殖、PPARの作用、PPAR発現または自然結合相手とのPPAR結合における変化は、モニターすることができる。このような方法は、疾患治療の様式、生物学的試験法、細胞試験法、生化学的試験法などであってよい。
【0018】
本発明は、本明細書に記述される式Iの塩の化合物の治療有効量を患者に投与することを含む、疾患治療の方法を記述する。従って、ある実施形態における本発明は、患者のHDL上昇、LDLc降下、高密度の小LDL粒子サイズのから正常なLDLへの変更またはコレステロール吸収の抑制;患者のインスリン抵抗の減少または血圧の低下;肥満、糖尿病、特に、タイプ2糖尿病、高インスリン血症、代謝X症候群、異常脂肪血症および高コレステロール血症の治療;患者の血管疾患、アテローム性動脈硬化、冠状心疾患、脳血管疾患、心不全および末梢血管疾患を含む心血管疾患の治療;患者の結腸、皮膚および肺癌を含む癌の治療;患者のリウマチ性関節炎、喘息、変形関節炎、酸化ストレスに関する疾患、組織損傷に対する炎症反応および自己免疫疾患を含む炎症疾患の治療;および患者の多嚢胞性卵巣症候群、更年期、気腫病原、虚血関連の臓器損傷、ドキソルビシン誘発心筋損傷、薬物誘発性肝毒性、超毒性肺傷害、瘢痕、創傷治癒、神経性食欲不振症および神経性過食症の治療における方法を提供し、全て、式Iの塩の化合物の治療有効量の投与を含む。好ましくは、PPARは、PPARα、PPARδ,およびPPARγからなる群から選択されてよい。より好ましくは、PPARはPPARδである。
【0019】
本明細書で使用されるように、以下の用語は、以下に示す意味を有する。
【0020】
本明細書で使用されるように、「アシル」という用語は、単独または併用して、アルケニル、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、複素環またはカルボニルに結合する原子が炭素である他の分子部分に結合するカルボニルを指す。「アセチル」基は、−C(O)CH基を指す。「アルキルカルボニル」または「アルカノイル」基は、カルボニル基を介して親分子部分に結合するアルキル基を指す。このような基の例は、メチルカルボニルおよびエチルカルボニルを含む。アシル基の例は、ホルミル、アルカノイルおよびアロイルを含む。
【0021】
本明細書で使用されるように「アルケニル」という用語は、単独または併用して、1つ以上の二重結合を有し、2〜20、好ましくは2〜6個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖炭化水素ラジカルを指す。アルケニレンは、エテニレン[(−CH=CH−),(−C::C−)]などの2つ以上の位置で結合する炭素−炭素二重結合システムを指す。適切なアルケニルラジカルの例は、エテニル、プロペニル、2−メチルプロペニル、1,4−ブタジエニルなどを含む。
【0022】
本明細書で使用されるように、「アルコキシ」という用語は、単独または併用して、アルキルエーテルラジカルを指し、その用語アルキルは以下に定義される。適切なアルキルエーテルラジカルの例は、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシなどを含む。
【0023】
本明細書で使用されるように、「アルキル」という用語は、単独または併用して、1〜20を含む、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖アルキルラジカルを指す。アルキル基は、本明細書に定義されるように任意に置換されてよい。アルキルラジカルの例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチル、ノイルなどを含む。本明細書で使用されるように「アルキレン」という用語は、単独または併用して、メチレン(−CH−)などの2つ以上の位置で結合される直鎖または分枝鎖飽和炭化水素由来の飽和脂肪族基を指す。
【0024】
本明細書で使用されるように、「アルキルアミノ」という用語は、単独または併用して、アミノ基を介して親分子部分に結合されるアルキル基を指す。適切なアルキルアミノ基は、モノまたはジアルキル化されてよく、例えば、N−メチルアミノ、N−エチルアミノ、N,N−ジメチルアミノ、N,N−エチルメチルアミノなどの基を形成する。
【0025】
本明細書で使用されるように、「アルキリデン」という用語は、単独または併用して、炭素−炭素に重結合の1個の炭素原子が、アルケニル基が結合する分子部分に存在するアルケニル基を指す。
【0026】
本明細書で使用されるように、「アルキルチオ」という用語は、単独または併用して、用語アルキルが上述のように定義され、硫黄が一重または二重に酸化されてよいアルキルチオエーテル(R−S−)ラジカルを指す。適切なアルキルチオエーテルの例は、メチルチオ、エチルチオ、n−プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオ、イソプロピルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、メタンスルホニル、エタンスルホニルなどを含む。
【0027】
本明細書で使用されるように、「アルキニル」という用語は、単独または併用して、1つ以上の三重結合を有し、2〜20、好ましくは2〜6、より好ましくは2〜4個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖炭化水素ラジカルを指す。「アルキニレン」は、エチニレン(−C:::C−, −C≡C−)などの2つ以上の位置で結合する炭素−炭素三重結合を指す。アルキニルラジカルの例は、エチニル、プロピニル、ヒドロキシプロピニル、ブチン−1−イル、ブチン−2−イル、ペンチン−1−イル、3−メチルブチン−1−イル、ヘキシン−2−イルなどを含む。
【0028】
本明細書で使用されるように、「アミド」および「カルバモイル」という用語は、単独または併用して、以下に記述するように、カルボニル基を介して親分子部分に結合する、または逆に結合するアミノ基を指す。本明細書で使用されるように、「C−アミド」という用語は、単独または併用して、本明細書で定義されるように、Rを有する−C(=O)−NR基を指す。本明細書で使用されるように、「N−アミド」という用語は、単独または併用して、本明細書で定義されるように、Rを有するRC(=O)NH−基を示す。本明細書で使用されるように、「アシルアミノ」という用語は、単独または併用して、アミノ基を介して親分子部分に結合するアシル基を含む。「アシルアミノ」基の例は、アセチルアミノ(CHC(O)NH−)である。
【0029】
本明細書で使用されるように、「アミノ」という用語は、単独または併用して、−NRR’を指し、式中、RおよびR’は、水素、アルキル、アシル、ヘテロアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルからなる群から独立して選択され、これらのいずれもそれ自体任意に置換される。
【0030】
本明細書で使用されるように、「アリール」という用語は、単独または併用して、1、2または3環を含む炭素環芳香族システムを意味し、このような環は、ペンダント状に一緒に結合されるか、または縮合されてよい。用語「アリール」は、ベンジル、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、インダニル、インデニル、アヌレニル、アズレニル、テトラヒドロナフチルおよびビフェニルなどの芳香族ラジカルを含む。
【0031】
本明細書で使用されるように、「アリールアルケニル」または「アラルケニル」という用語は、単独または併用して、アルケニル基を介して親分子部分に結合されるアリール基を指す。
【0032】
本明細書で使用されるように、「アリールアルコキシ」または「アラルコキシ」という用語は、単独または併用して、アルコキシ基を介して親分子部分に結合されるアリール基を指す。
【0033】
本明細書で使用されるように、「アリールアルキル」または「アラルキル」という用語は、単独または併用して、アルキル基を介して親分子部分に結合されるアリール基を指す。
【0034】
本明細書で使用されるように、「アリールアルキニル」または「アラルキニル」という用語は、単独または併用して、アルキニル基を介して親分子部分に結合されるアリール基を指す。
【0035】
本明細書で使用されるように、「アリールアルカノイル」または「アラルカノイル」という用語は、単独または併用して、ベンゾイル、ナフトイル、フェニルアセチル、3−フェニルプロピオニル(ヒドロシンナモイル)、4−フェニルブチリル、(2−ナフチル)アセチル、4−クロロヒドロシンナモイルなどのアリール置換アルカンカルボン酸由来のアシルラジカルを指す。
【0036】
本明細書で使用されるように、アリールオキシという用語は、単独または併用して、オキシを介して親分子部分に結合されるアリール基を指す。
【0037】
本明細書で使用されるように、「ベンゾ」および「ベンズ」という用語は、単独または併用して、ベンゼン由来の二価のラジカルC=を指す。
【0038】
本明細書で使用されるように、「カルバメート」という用語は、単独または併用して、窒素または酸末端のいずれかからの親分子部分に結合され、本明細書で定義されるように任意に置換されてよいカルバミン酸(−NHCOO−)のエステルを指す。
【0039】
本明細書で使用されるように、「O−カルバミル」という用語は、単独または併用して、本明細書で定義するように、RおよびR’を有する基である−OC(O)NRR’を指す。
【0040】
本明細書で使用されるように、「N−カルバミル」という用語は、単独または併用して、本明細書で定義するように、RおよびR’を有する−OC(O)NRR’−基を指す。
【0041】
本明細書で使用されるように、「カルボニル」という用語は、単独の時、ホルミル[−C(O)H]を含み、併用する時、−C(O)−基である。
【0042】
本明細書で使用されるように、「カルボキシ」という用語は、−C(O)OHまたはカルボン酸塩中などの対応する「カルボキシレート」アニオンを指す。「O−カルボキシ」基は、Rが本明細書で定義されるRC(O)O−基を指す。「C−カルボキシ」基は、Rが本明細書で定義される−C(O)OR基を指す。
【0043】
本明細書で使用されるように、「シアノ」という用語は、単独または併用して、−CNを指す。
【0044】
本明細書で使用されるように、「シクロアルキル」という用語は、単独または併用して、各環状部分が3〜12、好ましくは3〜7個の炭素原子環員を含み、本明細書で定義されるように任意に置換される任意にベンゾ縮合環システムであってよい、飽和または部分的に飽和単環式、二環式または三環式アルキルラジカルを示す。前記シクロアルキルが部分的に飽和の時、任意にシクロアルケニルと呼ばれてよい。このようなシクロアルキルラジカルの例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、オクタヒドロナフチル、2,3−ジヒドロ−lH−インデニル、アダマンチルなどを含む。本明細書で使用されるように、「二環式」および「三環式」は、デカヒドロナフタレン、オクタヒドロナフタレンなどの縮合環システムだけでなく、多環(多中心)飽和または部分的に不飽和タイプの双方を含むことを意図する。後者のタイプの異性体は、一般的に、ビシクロ[1,1,1]ペンタン、カンフル、アダマンタンおよびビシクロ[3,2,1]オクタンにより例示される。
【0045】
本明細書で使用される、「エステル」という用語は、単独または併用して,炭素原子で接続される2つの分子部分を架橋するカルボキシ基を指す。
【0046】
本明細書で使用される、「エーテル」という用語は、単独または併用して,炭素原子で接続される2つの分子部分を架橋するオキシ基を指す。
【0047】
本明細書で使用される、「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、単独または併用して、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
【0048】
本明細書で使用される、「ハロアルコキシ」という用語は、単独または併用して、酸素原子を介して親分子部分に結合されるハロアルキル基を指す。
【0049】
本明細書で使用される、「ハロアルキル」という用語は、単独または併用して、1つ以上の水素がハロゲンと置換される、上述に定義する意味を有するアルキルラジカルを示す。特定的に含まれるものは、モノハロアルキル、ジハロアルキルおよびポリハロアルキルラジカルである。一例として、モノハロアルキルラジカルは、ラジカル内にヨウ化、臭化、クロロまたはフルオロ原子を有してよい。ジハロおよびポリハロアルキルラジカルは、2つ以上の同じハロ原子または異なるハロラジカルの組み合わせを有してよい。ハロアルキルラジカルの例は、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ジフルオロクロロメチル、ジクロロフルオロメチル、ジフルオロエチル、ジフルオロプロピル、ジクロロエチルおよびジクロロプロピルを含む。「ハロアルキレン」は、2つ以上の位置で結合されるハロアルキル基を示す。例は、フルオロメチレン(−CFH−)、ジフルオロメチレン(−CF−)、クロロメチレン(−CHCl−)などを含む。
【0050】
本明細書で使用される、「ヘテロアルキル」という用語は、単独または併用して、完全飽和または1〜3の不飽和度を含み、指定の炭素数およびO、NおよびSからなる群から選択される1〜3個のヘテロ原子を含み、窒素および硫黄原子が任意で酸化され、窒素へテロ原子が任意に四級化される、安定した直鎖または分枝鎖あるいは環状炭化水素ラジカルあるいはその組み合わせを指す。ヘテロ原子O、NおよびSは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に配置されてよい。最大2個のへテロ原子は、例えば、−CH−NH−OCHなどのように、連続性であってよい。
【0051】
本明細書で使用されるように、「ヘテロアリール」および互換的に「シクロへテロアリール」という用語は、単独または併用して、3〜7員、好ましくは5〜7員の不飽和へテロ単環または少なくとも縮合環の一つが不飽和である縮合多環を指し、少なくとも1つの原子はO、SおよびNから選択される。上記用語は、複素環ラジカルがアリールラジカルと縮合する、ヘテロアリールラジカルは、他のヘテロアリールラジカルと縮合するか、またはヘテロアリールラジカルは、シクロアルキルラジカルと縮合する縮合多環も含む。ヘテロアリール基の例は、ピロリル、ピロリニル、イミダソリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピラダジニル、トリアゾリル、ピラニル、フリル、チエニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、キノオキサリニル、キナゾリニル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾピラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾロピリダジニル、テトラヒドロイソキノリニル、チエノピリジニル、フロピリジニル、ピロロピリジニルなどを含む。例となる三環式複素環基は、カルバゾリル、ベンジドリル、フェナントロリニル、ジベンゾフィラニル、アクリジニル、フェナントリジニル、キサンテニルなどを含む。
【0052】
本明細書で使用されるように、「ヘテロシクロアルキル」および互換的に「複素環」または「シクロへテロアルキル」という用語は、単独または併用して、それぞれが、環員として、少なくとも1つ、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2ヘテロ原子を含む、飽和、部分的に飽和または完全不飽和単環式、二環式または三環式複素環ラジカルを指し、各前記へテロ原子は、窒素、酸素および硫黄からなる群から独立して選択され、各環に好ましくは3〜8環員、より好ましくは各環に3〜7環員、最も好ましくは5〜6環員を有する。「ヘテロシクロアルキル」および「複素環」は、スルホン、スルホキシド、第三級窒素環員のN−オキシドおよび炭素環縮合およびベンゾ縮合環システムを含むことを意図し、さらに、両用語は、複素環が本明細書で定義するようにアリール基に縮合、または別の複素環基に縮合するシステムも含む。本発明の複素環基は、アジリジニル、アゼチニジル、1,3−ベンゾジオキソリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロイソキノリニル、ジヒドロシンノリニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロ[1,3]オキサゾロ[4,5−b]ピリジニル、ベンゾチアゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピリジニル、1,3−ジオキサニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、イソインドリニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピロリジニル、テトラヒドロピリジニル、ピペリジニル、チオモルホリニルなどにより例示される。複素環基は、特に禁止されない限り、任意に置換されてよい。
【0053】
本明細書で使用されるように、「ヒドラジニル」という用語は、単独または併用して、単一結合、すはわち、−N−N−により結合される2つのアミノ基を指す。
【0054】
本明細書で使用されるように、「ヒドロキシ」という用語は、単独または併用して、−OHを指す。
【0055】
本明細書で使用されるように、「ヒドロキシアルキル」という用語は、単独または併用して、アルキル基を介して親分子部分に結合されるヒドロキシ基を指す。
【0056】
本明細書で使用されるように、「イミノ」という用語は、単独または併用して、=N−を指す。
【0057】
本明細書で使用されるように、「イミノヒドロキシ」という用語は、単独または併用して、=N(OH)および=N−O−を指す。
【0058】
「主鎖で」という表現は、基の本発明の化合物への結合位置から開始する炭素原子の最も長い連続性または隣接鎖を指す。
【0059】
「イソシアナト」という用語は、−NCO基を指す。
【0060】
「イソチオシアナト」という用語は、−NCS基を指す。
【0061】
「原子の直鎖」という表現は、炭素、窒素、酸素および硫黄から独立して選択される最も長い原子の直鎖を指す。
【0062】
本明細書で使用されるように、「低級」という用語は、単独または併用して、1から6を含む炭素原子を含むことを意味する。
【0063】
本明細書で使用されるように、「メルカプチル」という用語は、単独または併用して、Rが本明細書で定義されるRS−基を指す。
【0064】
本明細書で使用されるように、「ニトロ」という用語は、単独または併用して、−NOを指す。
【0065】
本明細書で使用されるように、「オキシ」または「オキサ」という用語は、単独または併用して、−O−を指す。
【0066】
本明細書で使用されるように、「オキソ」という用語は、単独または併用して、=Oを指す。
【0067】
本明細書で使用されるように、「パーハロアルコキシ」という用語は、全ての水素原子がハロゲン原子により置換されるアルコキシ基を指す。
【0068】
本明細書で使用されるように、「パーハロアルキル」という用語は、単独または併用して、全ての水素原子がハロゲン原子により置換されるアルキル基を指す。
【0069】
本明細書で使用されるように、「スルホン酸塩」、「スルホン酸」および「スルホン基の」という用語は、単独または併用して、RSO−基を指し、そのアニオンはスルホン酸として、塩の生成で使用される。
【0070】
「硫酸」という用語は、−HSOを指す。
【0071】
本明細書で使用されるように、「スルファニル」という用語は、単独または併用して、−S−を指す。
【0072】
本明細書で使用されるように、「スルフィニル」という用語は、単独または併用して、−S(O)−を指す。
【0073】
本明細書で使用されるように、「スルホニル」という用語は、単独または併用して、−S(O)−を指す。
【0074】
「N−スルホンアミド」という用語は、本明細書で定義されるようなRおよびR’を有するRS(=O)NR’−基を指す。
【0075】
「S−スルホンアミド」という用語は、本明細書で定義されるようなRおよびR’を有する−S(=O)NRR’基を指す。
【0076】
本明細書で使用されるように、「チア」および「チオ」という用語は、単独または併用して、酸素が硫黄と置換される、−S−基またはエーテルを示す。チオ基の酸化誘導体、つまり、スルフィニルおよびスルホニルは、チアおよびチオの定義に含まれる。
【0077】
本明細書で使用されるように、「チオール」という用語は、単独または併用して、−SH基を指す。
【0078】
本明細書で使用されるように、「チオカルボニル」という用語は、単独の時、チオホルミル−C(S)Hを含み、併用する時、−C(S)−基である。
【0079】
「N−チオカルバミル」という用語は、本明細書で定義されるRおよびR’を有するROC(S)NR’−基を指す。
【0080】
「O−チオカルバミル」という用語は、本明細書で定義されるRおよびR’を有する−OC(S)NRR’基を指す。
【0081】
「チオシアナト」という用語は、−CNS基を指す。
【0082】
「トリハロメタンスルホンアミド」という用語は、Xがハロゲンで、Rが本明細書で定義されるX3CS(O)NR−基を指す。
【0083】
「トリハロメタンスルホニル」という用語は、XがハロゲンであるXCS(O)−基を指す。
【0084】
「トリハロメトキシ」という用語は、XがハロゲンであるXCO−基を指す。
【0085】
本明細書で使用されるように、「三置換シリル」という用語は、単独または併用して、3つの自由原子価で、置換アミノの定義下で本明細書に挙げる基と置換されるシリコン基を指す。例は、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、トリフェニルシリルなどを含む。
【0086】
本明細書のいずれの定義も、合成構造基を記述するために他のいずれの定義と併用して使用されてよい。慣例により、このようなあらゆる定義の末尾の要素は、親分子部分に結合するものである。例えば、合成基アルキルアミドは、アミド基を介して親分子に結合するアルキル基を表し、用語アルコキシアルキルは、アルキル基を介して親分子に結合するアルコキシ基を表す。
【0087】
基が「ヌル」と定義される時、前記基は、欠損しているという意味である。
【0088】
「任意に置換される」という用語は、前駆基が置換または非置換されてよいという意味である。置換される時、「任意に置換される」基の置換基は、これに制限されないが、単独または併用して、以下の基または特定の指定された一連の基から独立して選択される一つ以上の置換基を含む。低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルカノイル、低級へテロアルキル、低級へテロシクロアルキル、低級ハロアルキル、低級ハロアルケニル、低級ハロアルキニル、低級パーハロアルキル、低級パーハロアルコキシ、低級シクロアルキル、フェニル、アリール、アリールオキシ、低級アルコキシ、低級ハロアルコキシ、オキソ、低級アシルオキシ、カルボニル、カルボキシル、低級アルキルカルボニル、低級カルボキシエステル、低級カルボキシアミド、シアノ、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、アリールアミノ、アミド、ニトロ、チオール、低級アルキルチオ、アリールチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、アリールチオ、スルホネート、スルホン酸、三置換シリル、N、SH、SCH、C(O)CH、COCH、COH、ピリジニル、チオフェン、フラニル、低級カルバメートおよび低級尿素。2つの置換基は、例えば、0〜3個のヘテロ原子を含む縮合5、6または7員カルボキシルまたは複素環を形成するために一緒に結合してよく、例えば、メチレンジオキシまたはエチレンジオキシを形成する。任意に置換される基は、非置換(例えば、−CHCH)、完全置換(例えば、−CFCF)、一置換(例えば、−CHCHF)または完全置換と一置換(例えば、−CHCF)の間のあらゆるレベルで置換されてよい。置換基が置換について指定なしに記載される場合、置換および非置換の双方が、包含される。置換基が「置換」として指定される場合、置換された形態が、特に意図される。さらに、異なる一連の特定の分子部分への任意の置換基は、必要に応じて定義されてよく、これらの場合、任意置換は、定義されるように行われ、通常、「〜と任意に置換される」という表現が直後に続く。
【0089】
単独で表示され、数の指定のない用語Rまたは用語R’は、定義されない限り、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルからなる群から選択される分子部分を指し、いずれも任意に置換されてよい。このようなRおよびR’基は、本明細書で定義されるように任意に置換されると理解するべきである。R基が数指定を有するかどうかに関わらず、R,R’およびn=(1、2、3,...n)であるRを含む全てのR基、全ての置換基および全ての用語は、群からの選択において、他の全てから独立していることを理解するべきである。あらゆる変数、置換基または用語(例えば、アリール、複素環、Rなど)が、式または一般構造で1回以上現れる場合、各出現でのその定義は、他の全てに出現する定義から独立している。当該分野の者は、特定の基が親分子に結合されてよい、または記述されるようにいずれの端からの要素の鎖で位置を占めてよいことをさらに認識する。従って、例として、−C(O)N(R)−などの非対称基は、炭素または窒素のいずれかで親分子部分に結合されてよい。
【0090】
不斉中心が本発明の化合物に存在する。これらの中心は、キラル炭素原子の周りの置換基配置によるが、シンボル「R」または「S」により指定される。本発明は、ジアステレオマー、エナンチオマーおよびエピマー形態だけでなく、d−異性体および1−異性体およびその混合体を含む、全ての立体化学異性体を含む。化合物の個々の立体異性体は、キラル中心を含む市場で入手可能な出発材料から合成的に調製されるか、あるいはエナンチオマー産物の混合物の調製後、ジアステレオマー混合物への変換などの分離、次に分離または再結晶、クロマトグラフィ法、キラルクロマトグラフカラム上でのエナンチオマーの直接分離または当該分野で周知の他の適切な方法により調製されてよい。特定の立体化学の出発化合物は、市場で入手可能であるか、または当該分野で周知の技術により生成され回復されるかのいずれかである。さらに、本発明の化合物は、幾何異性体として存在してよい。本発明は、全てのシス、トランス、シン、アンチ、エントゲーゲン(E)およびツザンメン(Z)異性体および、その適切な混合物を含む。さらに、化合物は、互変異性体として存在してよく、全ての互変異性体は、本発明により提供される。また、本発明の化合物は、非溶媒和形態だけでなく、水、エタノールなどの医薬的に許容される溶媒を用いて溶媒和形態で存在できる。概して、溶媒和形態は、本発明の目的では、非溶媒和形態に相当するとみなす。
【0091】
「結合」という用語は、2つの原子間、または結合により接合した原子がより大きな構造の一部と見なされる時、2つの分子部分間の共有結合を指す。結合は、特定されない限り、単一、二重または三重であってよい。分子図の2つの原子間の点線は、追加の結合がその位置で存在するまたは不在であるかもしれないことを示す。
【0092】
が「結合」と指定される場合、以下に示す構造(右側)は、実体指定されたGがGとGを接続する単一結合につぶれることを意図する。
【0093】
【化2】

同様に、G内で、nが0またはrおよびsの双方が0の時、GはAとTを接続する結合につぶれる。
【0094】
本明細書で使用されるように、「糖尿病」は、タイプI真性糖尿病(若年性糖尿病)またはタイプII真性糖尿病(インスリン非依存型糖尿病またはNIDDM)、好ましくは、タイプII糖尿病を指す。
【0095】
本明細書で使用されるように、「PPAR介在状態または障害」または「PPAR介在状態または疾患」という用語は、例えば、正常以下または以上の不適切なPPAR作用により特徴づけされる状態、障害または疾患を指す。不適切なPPAR作用は、通常PPARを発現しない細胞でのPPAR発現、PPAR発現の増加(例えば、特定のエネルギーホメオスタシス、脂肪代謝、脂肪細胞分化および炎症障害および疾患を導く)、PPAR発現の減少(例えば、特定のエネルギーホメオスタシス、脂肪代謝、脂肪細胞分化および炎症障害および疾患を導く)の結果として生じる。PPAR介在状態または障害は、不適切なPPAR作用により完全にまたは部分的に仲介される可能性がある。しかし、PPAR仲介状態または障害は、PPAR調整が根底にある状態または障害(例えば、PPAR調節物質が少なくともある患者において患者の健康にある改善を生じる)に、ある作用を生じるものである。PPAR介在状態および障害の例は、これに制限されないが、例えば、糖尿病、タイプII糖尿病、肥満、高血糖症、インスリン抵抗、高インスリン血症、高コレステロール血症、高血圧、高リポタンパク血症、高脂血症、高トリグリセリド血症および異常脂肪血症などの代謝障害、例えばリウマチ性関節炎およびアテローム性動脈硬化などの炎症状態を含む。
【0096】
様々な形態「調整」という用語は、特定のペルオキソソーム増殖活性化受容体、好ましくはPPARδ受容体に関する機能または作用を増加または減少するための化合物の能力を意味する。本明細書に記述される調整は、直接的または間接的いずれかのPPARの抑制または活性を含む。抑制剤は、拮抗剤などの、例えば、結合して、部分的または完全に刺激を阻害し、活性化を減少、防止、遅延し、シグナル変換を不活性化、減感、または下方調節する化合物である。活性剤は、作動薬などの、例えば、結合して、活性化を刺激、増加、開放、活性、促進、強化し、シグナル変換を感作、または上方調節する化合物である。さらに、PPAR受容体作用の調節は、PPAR受容体に関する作用の拮抗、作動、部分的拮抗および/または部分的作動を含むことを意図する。
【0097】
本明細書で使用されるように、「組成物」という用語は、特定の成分(および指示される場合、特定量で)を含む生成物だけでなく、特定の量で特定の成分の組み合わせから直接または間接的に生じるあらゆる生成物を含むことを意図する。「医薬的に許容できる」は、稀釈剤、賦形剤または担体が製剤の他の成分と適合し、その受給者に有害であってはならないことを意味する。
【0098】
「治療有効量」という用語は、研究者、獣医、医師または他の臨床従事者により求められる組織、システム、動物またはヒトの生物学的または医学的反応を誘発する、あるいは治療される疾患の一つ以上の症状の発達を防止またはある程度軽減する対象塩の量を示す。糖尿病または異常脂肪血症の治療に関して、治療的に有効な量は、(1)血糖値の減少、(2)例えば、トリグリセリド、低密度リポタンパク質などの脂質の正常化、(3)治療される疾患、状態または障害に関する一つ以上の症状のある程度の軽減(または好ましくは、排除)、および/または(4)HDLの増加の効果を有する量を指してよい。
【0099】
「対象」とういう用語は、本明細書で、これに制限されないが、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを含む哺乳類などの動物を含むよう定義される。好適な実施形態において、対象はヒトである。
【0100】
「強化する」または「強化」という用語は、効力または持続時間のいずれかにおいて、所望する作用を増加または延長することを意味する。従って、治療薬の作用の強化において、用語「強化」は、効力または持続時間のいずれかにおいて、システムにおける他の治療薬の作用を増加または延長する能力を指す。本明細書で使用される「増強有効量」は、所望するシステムで別の治療薬の作用を強化するのに十分な量を指す。患者に使用される時、本使用における有効量は、疾患、障害または状態(これに制限されないが代謝障害を含む)の重度および経過、以前の治療、患者の健康状態および薬物に対する反応、および治療医師の判断に依存する。ルーチン的な実験により、このような増強有効量を判断することは、当事者にとって、当該分野の技術内であると考えられる。
【0101】
「塩」という用語は、式Iの化合物を酸性および塩基性試薬と混合することにより調製された塩を含むことを意味する。本発明は、上に挙げた塩の形態、特に酸添加塩の化合物を含む。適切な塩は、有機および無機酸の双方と形成されるそれらを含む。酸添加塩は、このような化合物の中性形態を、稀釈していないかまたは適切な不活性溶媒中のいずれかで十分な量の所望する酸と接触させることにより得られる。このような酸添加塩は、通常、医薬的に許容される。しかし、医薬的に許容されない塩の塩は当該の化合物の調製および精製ににおいて有用である可能性がある。酸添加塩の例は、塩酸、塩化臭素酸、硝酸、炭酸、炭酸水素酸、リン酸、リン酸水素酸、リン酸二水素酸、硫酸、硫酸水素酸、ヨウ化水素酸または亜リン酸などの無機酸から生成されるもの、および、比較的非毒性の有機酸、例えば、酢酸;プロピオン酸;イソ酪酸;マレイン酸;安息香酸;コハク酸;スベリン酸;フマル酸;マンデル酸;フタル酸;ベンゼンスルホン酸;p−トルエンスルホン酸、m−トルエンスルホン酸およびo−トルエンスルホン酸を含むトルエンスルホン酸;クエン酸;酒石酸;メタンスルホン酸などから生じる塩を含む。また、アルギネートなどのアミノ酸の塩、グルクロン酸またはガラクツロン酸などの有機酸の塩を含む(例えば、Berge et al.J.Pharm.Sci.66:1−19(1977)を参照のこと)。塩基添加塩も形成されてよく、医薬的に許容される可能性がある。塩の調製および選択のより詳細な考察は、Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use(Stahl,P.Heinrich.Wiley−VCHA,Zurich,Switzerland,2002)を参照のこと。
【0102】
化合物の中性形態は、塩を塩基または酸と接触させ、従来の方法で親化合物を分離することにより再生されてよい。化合物の親形態は、極性溶媒中の溶解度などの特定の物理的性質において様々な塩形態と異なるが、本発明の目的において、塩は化合物の親形態と同等である。
【0103】
以下に記述する特定の塩は、本発明の式Iの化合物の「トシレート塩」または「p−トルエンスルホネート塩」を含む。トシレートまたはp−トルエンスルホネート塩は、p−トルエンスルホン酸から形成された酸添加塩である。
【0104】
本明細書における「多形」および「多型形態」という用語および関連用語は、同じ分子の結晶形態を指し、異なる多形は、結晶格子中の分子の配置または構造の結果として異なる物理的性質、例えば、融点温度、融解熱、溶解度、溶解速度および/または振動スペクトルを有する。多形により表される物理的性質の差異は、貯蔵安定性、圧縮性および密度(調製および製品製造において重要)、および溶解速度(生体利用性において重要な要因)などの医薬パラメータに影響する。安定性の差異は、化学反応(例えば、差次的酸化、そのため、用量が別の多形からなる時よりある多形からなる時により急速に変色する)または機械的変化(例えば、動態学的に好ましい多形のとき、保管における錠剤粒団は、熱力学的により安定した多形に変換する)または両方(例えば、ある多形の錠剤は、高湿でより破損しやすい)から生じる可能性がある。溶解度/溶解差異の結果として、極端な場合、ある多形転移は効能の欠損、または別の極端な場合、毒性を生じる可能性がある。さらに、結晶の物理的性質は、例えば、ある多形は溶媒和を形成する可能性があるかまたは不純物を濾過および洗浄するのが困難である(すなわち、粒子の形状およびサイズ分布が多形間で異なるかもしれない)などの処理において重要であるかもしれない。
【0105】
多形の分子は、多くの当該分野に周知の方法により得られる。このような方法は、これに制限されないが、融解再結晶化、溶解冷却、溶媒再結晶化、脱溶媒、急激な蒸発、急激な冷却、徐冷、蒸気拡散および昇華を含む。
【0106】
多形を特徴付けする技術は、これに制限されないが、差動走査熱量(DSC)、粉末X線回折法(XRPD)、単結晶X線回折法、振動スペクトル法、例えば、IRおよびRaman分光法、固体NMR、高温光学顕微鏡法、走査型電子顕微鏡法(SEM)、電子結晶構造解析および定量分析法、粒径分析(PSA)、表面積分析、溶解度検査および溶解検査を含む。
【0107】
本明細書で使用されるように、「溶媒和物」という用語は、溶媒を含む物質の結晶形態を指す。
【0108】
「水和物」という用語は、溶媒が水である溶媒和物を指す。
【0109】
本明細書で使用されるように、「脱溶媒和溶媒和物」という用語は、溶媒和物から溶媒を除去することにより生成される物質の結晶形態を指す。
【0110】
本明細書で使用されるように、「非晶形」という用語は、物質の非晶質形態を指す。
【0111】
塩に加え、本発明は、プロドラッグの形態での化合物を包含する。「プロドラッグ」という用語は、生体内でより活性になる化合物を指す。本発明の特定の化合物は、Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism:Chemistry,Biochemistry,and Enzymology(Testa,Bernard and Mayer,Joachim M.Wiley−VHCA,Zurich,Switzerland 2003)で記述されるように、プロドラッグとして存在してもよい。本明細書で記述される化合物のプロドラッグは、化合物を提供するために生理学的条件下で化学変化を容易に受ける構造的に変形された形態の化合物である。さらに、プロドラッグは、生体外環境下で化学または生化学方法により化合物に変換することもできる。例えば、プロドラッグは、適切な酵素または化学試薬とともに経皮パッチ貯蔵器に入れられる時、ゆっくり化合物に変換することができる。プロドラッグは、場合によって、化合物または親薬物より投与が簡単なことがあるため、しばしば有益である。これらは、例えば、経口投与による生物利用性であるが、親薬物はそうではないことがある。プロドラッグは、親薬物より医薬組成物において改善された溶解性も有する可能性がある。プロドラッグの加水分解的開裂または酸化的活性に依存するもののように、広範囲の様々なプロドラッグ誘導体が当該分野で知られる。プロドラッグの例は、非限定的に、エステル(「プロドラッグ」)として投与されるが、代謝的に、活性要素のカルボン酸に加水分解される化合物である。さらなる例は、化合物のペプチジル誘導体を含む。
【0112】
本発明は、式Iの化合物の塩、塩または他の活性材料との組み合わせを含む組成物、受容体作用、特にPPAR作用の調整におけるその使用方法に向けられるる。特別の作用の理論にとらわれる意図はないが、塩の安定性および他の性質は、PPAR調整物質の製造、調製および生体利用性に有利である。
【0113】
他の側面において、本発明は、それを必要とする患者を同定し、本明細書に記述するように、患者に式Iの化合物の塩の治療有効量を投与することを含む、疾患の治療方法に関する。
【0114】
本発明の塩は、PPAR−δの調整により改善される疾患または状態の治療に有益である。PPAR−δにより調整され、化合物および組成物が有益である特定の疾患および状態は、非限定的に、異常脂肪血症、X症候群、心不全、高コレステロール血症、心血管疾患、タイプII糖尿病、タイプI糖尿病、インスリン抵抗高脂血症、肥満、無嗅覚症、炎症および神経性食欲不振症を含む。
【0115】
本発明の塩は、(a)対象のHDLの増加、(b)対象のタイプ2糖尿病の治療、インスリン抵抗の減少、肥満治療または血圧の低下、(c)対象のLDLcの減少、(d)対象のLDL粒子サイズを小さい高密度から正常高密度に変更、(e)対象のコレステロール吸収の削減またはコレステロール排泄の増加、(f)対象のNPClLl発現の減少、(g)血管疾患、冠状心疾患、脳血管疾患および末梢血管疾患を含む、対象のアテローム性動脈硬化の治療、または(h)喘息、リウマチ性関節炎、変形関節炎、酸化ストレスに関する障害、組織傷害に対する炎症反応、乾せん、潰瘍性大腸炎および自己免疫疾患を含む、対象の炎症疾患の治療のために使用されてもよい。
【0116】
本発明の塩は、肥満、糖尿病、高インスリン血症、代謝X症候群、多嚢胞性卵巣症候群、更年期、酸化ストレスに関する障害、組織傷害に対する炎症反応、気腫病原、虚血関連の臓器損傷、ドキソルビシン誘発心筋損傷、薬物誘発性肝毒性、アテローム性動脈硬化および高毒性肺損傷からなる群から選択される疾患または状態を治療、軽減または防止するために使用されてもよい。
【0117】
本明細書に記述される塩を含む組成物は、予防および/または治療処置のために投与されてよい。治療用途において、これらの塩を含む組成物は、非制限的に、上述のように、代謝疾患、状態または障害を含むPPARに介在される、調整されるまたは関与する疾患、状態または障害を既に患っている患者に、疾患、障害または状態を治療または少なくとも部分的に停止するのに十分な量で投与される。本使用に十分な量は、疾患、障害または状態の重度および経過、以前の治療、患者の健康状態および薬物への反応、および治療医師の判断に依存する。ルーチン的な実験(例えば、用量漸増臨床試験)により、このような治療有効量を判断することは、当事者にとって、当該分野の技術内であると考えられる。
【0118】
予防用とにおいて、本明細書に記述される塩を含む組成物は、非制限的に、上述のように、代謝疾患、状態または障害を含むPPARに介在される、調整されるまたは関与する特定の疾患、状態または障害に敏感またはリスクのある患者に投与される。このような量は、「予防有効量または用量」と定義される。本使用において、正確な量は、患者の健康、体重などにも依存する。ルーチン的な実験(例えば、用量漸増臨床試験)により、このような予防有効量を判断することは、当事者にとって、当該分野の技術内であると考えられる。
【0119】
患者の状態の改善が見られたら、必要に応じて、維持量が投与される。続いて、投与の用量または回数あるいは双方は、症状の関数として、改善された疾患、障害または状態を維持するレベルに減少される。症状が所望するレベルに緩和されたら、治療を停止してよい。しかし、患者は、あらゆる症状の再発に対して長期にわたる断続的な治療を必要とする可能性がある。
【0120】
このような量に対応する所定の薬物の量は、特定の化合物、疾患状態およびその重度、治療を必要とする対象または宿主の個性(例えば、体重)などの要因により変動するが、症例を取り巻く具体的な状況、例えば、投与される具体的な薬物、投与経路、治療状態および治療を受ける対象または宿主に応じて当該分野に知られる方法でルーチン的に判断される。しかし、概して、成人治療に使用される用量は、一般的に、1日0.02〜5000mg、好ましくは1日1〜1500mgの範囲である。所望する用量が、適宜、1回の投与で与えられるか、分割用量の場合、例えば、1日2、3、4または副投与以上のように、適切な間隔で投与されてよい。
【0121】
場合によって、本明細書で記述される塩の少なくとも1つを別の治療薬と併用して投与することが適切かもしれない。例として、本明細書の化合物の1つを受けた時、患者が経験する副作用の1つが高血圧の場合、初期の治療薬と併用して降圧剤を投与することが適切かもしれない。または、単なる例として、本明細書で記述される化合物の1つの治療効果は、補助剤(すなわち、補助剤だけでは、最低限の治療的利点しか有しないが、患者への全体的な治療利点は強化される)により強化されるかもしれない。または、単なる例として、患者が経験する利益は、治療的利点も有する別の治療薬(治療方式も含む)と共に本明細書で記述する化合物の1つを投与することにより増加するかもしれない。単なる例として、本明細書で記述される塩の一つの投与を含む糖尿病の治療において、治療的利益の増大は、患者に別の糖尿病の治療薬も提供することにより生じるかもしれない。いずれの場合においても、治療される疾患、障害または状態に関わらず、患者が経験する全体的な利益は単に2つの治療薬の付加的利益であるか、または患者が相乗作用の利点を経験するかもしれない。
【0122】
可能な併用治療の特定の非限定的な例は、(a)例えば、MTP抑制剤およびLDLR上方調節剤などのスタチンおよび/または他の脂質低下剤、(b)例えば、メトホルミン、スルホニル尿素またはPPAR−γ、PPAR−αおよびPPAR−α/γ調節物質(例えば、ピオグリタゾンおよびロシグリタゾンなどのチアゾリジン)などの抗糖尿病薬、および(c)例えば、テルミサルタンなどのアンギオテンシン拮抗薬、例えば、ラシジピンなどのカルシウムチャネル拮抗剤およびエナラプリルなどのACE阻害剤を用いた式(I)の化合物の塩の使用を含む。
【0123】
いずれの場合においても、複数の治療薬(1つは本明細書で記述される化合物の一つである)は、あらゆる順序または同時にでも投与されてよい。同時の場合、複数の治療薬は、単一の統合された形態または多重形態(単なる例として、単一錠剤または2つの個々の錠剤のいずれか)で提供されてよい。治療薬の一つは、複数回投与で与えられるか、または双方が複数回投与で与えられてよい。同時でない場合、複数回投与間のタイミングは、0週以上から4週未満の間で変動してよい。
【0124】
投与の適切な経路は、例えば、経口、直腸、経粘膜、肺、眼または腸投与;筋肉内、皮下、静脈内、髄内注入を含む非経口供給だけでなく、クモ膜下、直接心室内、腹腔内、鼻腔内または眼球内注入も含む。
【0125】
代替的に、全身ではなく、例えば、臓器中に直接化合物の注入、しばしばデポ(depot)または持続放出性製剤を介して局所的に本発明の塩を投与してよい。さらに、例えば、リポソーム被覆臓器特異抗体などの標的薬物送達システムで薬物を投与してよい。リポソームは、臓器を標的にし、臓器により選択的に取り込まれる。
【0126】
本発明の塩の医薬組成物は、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣形成、研和、乳化、カプセル化、包括または圧縮過程などの、知られる方法で調製されてよい。
【0127】
従って、本発明による使用の医薬組成物は、医薬的に使用されてよい塩の製剤へのプロセスを促進する賦形剤および補助物質を含む一つ以上の生理学的に許容される担体を使用して従来の方法で調製されてよい。適切な製剤は、選択される投与経路による。あらゆる周知の技術、担体および賦形剤が、例えば、上のRemington’s Pharmaceutical Sciencesなどの当該分野において、適切に理解ている方法で使用されてよい。
【0128】
静脈内注入において、本発明の薬物は、水性溶液の形態、好ましくは、Hanks溶液、Ringer溶液または生理緩衝食塩水などの生理学的に適合する緩衝液の形態で調製されてよい。経粘膜投与において、浸透されるバリヤーに適切な透過剤が製剤に使用される。このような透過剤は、当該分野において一般的に知られる。他の非経口注入において、本発明の薬物は、水性または非水性溶液、好ましくは、生理的に適合する緩衝液または賦形剤を用いて調製されてよい。このような賦形剤は、当該分野において一般的に知られる。
【0129】
経口投与において、組成物は、塩を、当該分野で知られる医薬的に許容される担体または賦形剤と混合することにより容易に調製されてよい。このような担体は、治療される患者による経口摂取のために、本発明の塩を、錠剤、粉末、ピル、糖衣錠剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、エリキシル剤、スラリー、懸濁液として調製することを可能にする。経口使用のための医薬的調製は、一つ以上の個体賦形剤を、一つ以上の本発明の塩と混合し、任意で得られた混合物を粉砕し、必要であれば、錠剤または糖衣剤コアを得るために顆粒混合物に適切な補助物質を添加した後に加工することにより得られる。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む砂糖などの充填剤;例えば、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、イモ澱粉、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、巨視的結晶質セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース調製物;またはポリビニルピロリドン(PVPまたはポビドン)あるいはリン酸カルシウムなどの他のものである。所望する場合、架橋クロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸あるいはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの壊変剤が添加されてよい。
【0130】
糖衣剤コアは、適切な被覆を用いて提供される。この目的のために、濃縮砂糖溶液が使用されてよく、任意にアラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポルゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカ溶液および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含んでよい。識別のため、または活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、染料または色素が錠剤または糖衣被覆に添加されてよい。
【0131】
経口的に使用される医薬製剤は、ゼラチン製のプッシュ−フィット式カプセルだけでなく、グリセロールまたはソルビトールなどのゼラチンおよび可塑剤製の軟質の密封されたカプセルを含む。プッシュ−フィット式カプセルは、ラクトースなどの充填剤、澱粉などの結合剤および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および任意に安定剤と混合した活性材料を含んでよい。軟質カプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、液状パラフィンまたは液状ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁されてよい。さらに、安定剤を添加してよい。経口投与用の全ての製剤は、そのような投与に適切な用量でなければならない。
【0132】
バッカルまたは舌下投与において、組成物は、従来の方法で調製される錠剤、ロゼンジ剤またはゲルの形態を取ってよい。
【0133】
吸入による投与において、本発明による使用の化合物は、適切な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素または他の適切なガスの使用により、加圧パックまたはネブライザーからのエアゾールスプレーの形態で、適宜、供給される。加圧エアゾールの場合、用量単位は、計量を供給するためのバルブを提供することにより決定されてよい。吸入器具または吹入器での使用のための、例えば、ゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物とラクトースまたは澱粉などの適切な粉末ベースの混合粉末を用いて調製されてよい。
【0134】
本化合物は、注入、例えば、ボーラス注射または連続注入により非経口的投与用に調製されてよい。注入用の製剤は、単位投与の形態、例えば、添加の保存料とともにアンプルまたは多回投与容器で提供されてよい。組成物は、油性または水性ビヒクル中で懸濁液、溶液または乳濁液のような形態を取ってよく、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの処方剤を含んでよい。
【0135】
非経口投与用の医薬製剤は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。さらに、活性化合物の懸濁は、適切な場合油性注入懸濁液として調製されてよい。適切な親油性溶媒またはビヒクルは、胡麻油などの脂肪油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステルまたはリポソームを含む。水性注入懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどの懸濁液の粘度を増大する物質を含んでよい。任意で、懸濁液は、高濃厚化溶液の調製を可能にする適切な安定剤または化合物の溶解度を増大する薬物も含んでよい。
【0136】
代替的に、活性材料は、使用前に適切なビヒクル、例えば、減菌発熱性物質除去蒸留水で構成するための粉末形態であってよい。
【0137】
本化合物は、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む坐薬または滞留浣腸に調製されてもよい。
【0138】
前記の製剤に加え、本塩もデポ(depot)製剤として調製されてよい。このような長期間作用性製剤は、埋込み(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注入により投与されてよい。従って、本塩は、適切な高分子または疎水性物質(例えば、許容される油中の乳濁液として)、またはイオン交換樹脂を用いて、あるいは難溶性誘導体、例えば、難容性塩として調製されてよい。
【0139】
多くの疎水性医薬的塩の供給システムが使用されてよい。リポソームおよび乳濁液は、疎水性薬物のためのよく知られた供給ビヒクルまたは担体の例である。通常、より高い毒性だが、N−メチルピロリドンなどの特定の有機溶媒も使用される。さらに、本塩は、治療薬を含む個体疎水性重合体の半透過性マトリックスなどの持続放出システムを使用して供給されてよい。さまざまな持続放出物質が確立され、当該分野の者によく知られている。持続放出カプセルは、その化学的性質によるが、数週間から最大100日以上塩を放出する。治療薬の化学的性質および生物学的安定性により、タンパク質安定化のために追加の方法が使用されてよい。
【0140】
本発明は、式Iの化合物の特定の医薬的に許容される塩、すなわち、PPAR、特に、PPARδ受容体の強力な調整物質を提供し、それは、特に、エネルギーホメオスタシス、脂肪代謝、脂肪細胞分化、炎症および糖尿病または糖尿病状態に関する状態および障害の治療または防止のための特定の有用性を有する。本発明のこの側面は、非限定的に、硫酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、塩酸塩、リン酸塩およびp−トルエンスルホン酸塩を含む、式Iの化合物の塩を提供する。
【0141】
特定の実施形態において、本発明は、化合物1のp−トルエンスルホン酸(トシレート)塩を提供する。ここまで
【0142】
式Iの化合物のp−トルエンスルホン酸塩の形態において、p−トルエンスルホン酸塩は、式(II)による。
【0143】
【化3】

【0144】
本発明の各塩は、式Iの化合物の調製から生成することができる。式Iの化合物は、当該分野の者に知られるいずれの方法により合成または得られる。好適な実施形態において、式Iの化合物は、米国出願番号60/079,813に詳細が記述される方法により調製され、その内容は、参照によりその全体が本明細書に記載されているものとみなす。いずれの方法で調製された式Iの化合物は、本発明の塩形態を得るために、適切な酸、そのまま、または適切な不活性溶媒中のいずれかと接触されてよい。
【0145】
例えば、式1の化合物をp−トルエンスルホン酸と接触し、本発明のp−トルエンスルホン酸(トシレート)塩を生じさせることができる。いずれの方法にて調製された以下の化合物1および化合物2、そのラセミ体およびそのラセミ混合物を含む式1の化合物も、酢酸カルシウム、塩酸、リン酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸マグネシウムおよびp−トルエンスルホン酸からなる群から選択される試薬と、適切な溶媒中、好ましくは、1:1の比率で接触させることができる。このような溶媒は、非限定的に、ジイソプロピルエーテル、トルエン、ジクロロメタンおよびアセトニトリルを含む。当該分野で知られるあらゆる技術が、非限定的に、異なる周囲条件で異なる時間攪拌、ヘキサンまたはジエチルエーテルの添加、蒸発および温度の低下を含む、沈殿または結晶化を誘発するための条件を変動するために使用されてよい。特に、4−[シス−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−l−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸を、p−トルエンスルホン酸と接触し、4−[シス−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−l−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸トシレートを得る。本発明は、(S)−4−[シス−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−l−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸トシレート(化合物1トシレート)を含む、式1の化合物の各ラセミ体の塩を提供する。
【0146】
式1の化合物の他の塩が形成されてよい。特に、本発明は、4−[シス−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジル)−ピペラジン−l−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸およびその分離した各ラセミ体を提供する。
【0147】
以下の実施例で詳細を示すように、式Iの化合物のトシレート塩は、式Iの化合物の様々な塩の中で優れた結晶性質を示す。
【0148】
他の側面において、本発明は、ヒトおよび動物でのPPARδ作用調整のための医薬組成物を提供する。
【0149】
本明細書に記述される全ての資料、特許または出願は、米国または外国に関わらず、本明細書に参照として記載されているものとする。
【実施例1】
【0150】
化合物1の合成
【0151】
【化4】

(S)−4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−1−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸
【0152】
ステップ1
【0153】
【化5】

1,2−ビス(ブロモメチル)−3−ニトロベンゼン:5リットルのフラスコに、20gの1,2−ジメチル−3−ニトロベンゼン(0.13mol)と、50gのN−ブロモこはく酸イミド(0.28mol)と、5gのアゾビス(イソブチロニトリル)(3.0mmol)と、200mLのジクロロメタンとを入れた。この混合物に、窒素下で穏やかに緩和させるように、120ワットの投光器で18時間光を当てた。次いで、この混合物を冷却して、沈殿したこはく酸イミドを濾過によって取り除いた。濾液を濃縮して、その残留物をシリカ上のクロマトグラフィ(ヘキサン中のCHClは5%〜50%)によって精製し、2.6gの白色の固形物(64%)を得た。
【0154】
ステップ2
【0155】
【化6】

ジメチル−4−ニトロインダン−2,2−ジカルボン酸塩:15.0mLのエーテルに5.0mLのメタノールを溶解した溶液を、窒素下で、室温で撹拌して、これに0.84gの60%水酸化ナトリウム(0.021mol)を少しずつ添加した(金属ナトリウムが入手できなかったため水酸化ナトリウムを使用した)。添加の完了後に、ほぼ無色透明な溶液を5分間撹拌した。次いで、この溶液に1.3gのマロン酸ジメチルを添加し、わずかに濁った無色の溶液を得た。この溶液に、3.1gの1,2−bis(ブロモメチル)3−ニトロベンゼン懸濁液を迅速に加え、暗緑色の溶液中に懸濁した沈殿物を即時に得た。この沈殿物を濾過によって取り除き、濾液を濃縮した。残留物は、シリカ(ヘキサン中のCHClは20%〜100%)上で精製し、1.93gの灰色がかった白色の固形物(67%)を得た。
【0156】
ステップ3
【0157】
【化7】

メチル−4−ニトロインダン−2−カルボン酸塩:4.84gのジメチル−4−ニトロインダン−2,2−カルボン酸塩(0.0167mol)と、0.84gの塩化リチウム(0.0198mol)と、1.1mLの水と、18mLのジメチルスルホキシドとの混合物を、窒素下で、160℃に2時間加熱した。次いで、この溶液を冷却して、ジメチルスルホキシドを高真空下で取り除いた。残留物は、シリカ(ヘキサン中のCHClは10%〜100%)上で精製し、2.5gの白色の固形物(65%)を得た。
【0158】
ステップ4
【0159】
【化8】

メチル−4−アミノインダン−2−カルボン酸塩:2.4gのメチル−4−ニトロインダン−2−カルボン酸塩(0.11mol)と、1.1gの10%のパラジウム炭素(0.01mol)と、15mLの酢酸エチルとの混合物を、55PSIの水素下で1時間振り混ぜた。次いで、その溶液を濾過して濾液を濃縮し、2.07gの白色の固形物(100%)を得た。
【0160】
ステップ5
【0161】
【化9】

メチル−4−クロロスルホニル−2−カルボン酸塩:2.5gのメチル−4−アミノインダン−2−カルボン酸塩(0.013mol)と、12.5mLのアセトニトリルと、12.5mLのHOとの混合物を、氷塩浴で−5℃に冷却した。この混合物に、2.6mLの濃縮HCl(0.014mol)を添加した。この混合物に、5mLの水に1.0gの亜硝酸ナトリウム(0.021mol)を溶解した溶液を20分にわたり滴下した。添加の完了後に、溶液を20分間撹拌した。次いで、氷水で冷却したジャケット付き滴下漏斗に移した。その溶液を、20mLのHOにチオキサントゲン酸カリウム(0.026mol)を溶解して、窒素下で、55℃で撹拌した溶液に滴下した。添加を行なうにあたり、ジアゾニウムイオン溶液の上部に浮かんでいる、黒ずんだ層は添加しなかった。添加の完了後に、その混合物を55℃で30分間撹拌し、次いで、冷却して40mLの酢酸エチルによって抽出した。有機層を乾燥(MgSO4)して濃縮した。残留物は、ヘキサン中にスラリー充填した80mLのシリカゲル上に載せた。これを100mLのヘキサンによって溶出し、次いで、50mL留分でヘキサン中のCHClが1%〜50%の溶液で溶出して、1.3gの琥珀色の油(33%)を得た。
【0162】
3.6gの上述の化合物を、30mLのCCl4と、10mLのHOとの混合物に入れて激しく撹拌して3℃に冷却した。温度が10℃以下の状態を保持する速度で塩素ガスの気泡が生じた。転換の完了後に、相を分離して水層をCHClによって抽出した。混合した有機層を乾燥(MgSO)して濃縮し、4.0gの黄色油(>100%)を得た。
【0163】
ステップ6
【0164】
【化10】

4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン塩酸塩:200gのcis−2,6−ジメチルピペラジン(1.75mol)と、421gの1−ブロモ−4−トリフルオロメトキシベンゼン(1.74mol)、200gのtert−ブトキシドナトリウム(2.08mol)と、10gのtris(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0.011mol)と、20gの1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)塩化イミダゾリウム(0.047mol)と、4Lのトルエンとの混合物を、5回の真空−窒素サイクル(Firestone valve)を通じて脱ガスして、窒素下で、100℃に2時間加熱した。反応物を冷却して、セリットを通して濾過した。その濾液を真空下で濃縮して、残留物をヘキサン(2L)で希釈した。その混合物を濾過して、濾液をジエチルエーテル(2L)で希釈した。この濾液に、濃縮HCl(150mL、1.8mol)を添加し、得られた混合物を短時間かき混ぜて、濾過によって回収した生成物の沈殿を得て、真空(2mmHg、14時間)下で乾燥して、467gの黄褐色の固形物(86%)を得た。
【0165】
ステップ7
【0166】
【化11】

4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−1−スルホニル]−インダン−2−メチルエステル:2.13gのメチル−4−クロロスルホニル−2−カルボン酸塩(0.0078mol)と、3.0gの4[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン塩酸塩(0.0109mol)と、20mLのアセトニトリルと、3.0gのKCOとの混合物を、撹拌しながら窒素下で、60℃に20時間加熱した。次いで、その混合物を濾過して濾液を濃縮した。その残留物を、シリカ上のクロマトグラフィ(ヘキサン中のEtOAcは5%〜50%)によって精製し、2.64gの粘性のある黄色の油(66%)を得た。
【0167】
ステップ8
4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−1−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸:最少量のTHF(約15mL)に2.64gの4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−1−スルホニル]−インダン−2−メチルエステル(0.0052mol)を溶解して室温で撹拌した溶液に、最少量の水(約2.5mL)に0.14gのLiOH(0.0057mol)を溶解した溶液を加えた。栓をして室温で12時間撹拌した。HPLCによる検査で反応が85%完了したことを示したので、さらに0.020gのLiOH(合計0.125当量)を添加して、撹拌を3時間継続した。次いで、この溶液を濃縮してTHFを取り除き、EtoAcと水とに分けた。水層を0.54mLの濃塩酸で処理した。次いで、酢酸エチルによって抽出した。有機層を乾燥(MgSO)して濃縮し、2.38gの黄色非晶質固形物(93%)を得た。
【0168】
ステップ9
(S)−4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−1−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸:化合物(S)−4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−1−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸を、キラルHPLC(Chiralpak ASH、0.46×15cm、Hex/IPA=94:6(v/v)、0.1%TFA、流量=1mL/min)でラセミ化合物から分離することによって得た。LCMS 497.1(M−1)
【実施例2】
【0169】
化合物2の合成
【0170】
【化12】

(S)−4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジル)−ピペラジン−1−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸
【0171】
ステップ1
【0172】
【化13】

cis−3,5−ジメチル−1−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジル)−ピペラジン:塩化メチレン(30mL)に溶解した4−(トリフルオロメトキシ)−ベンズアルデヒド(776uL、4.38mmol)に、cis−2,6−ジメチルピペラジン(1.0g、8.77mmol)を添加した。1時間後、その混合物にナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(2.45g、8.77mmol)を添加した。その溶液を、室温でさらに4時間撹拌した。その反応物を真空濃縮し、酢酸エチルで希釈して、1N HCl(2×50mL)によって抽出した。次いで、水層をNaOHによって中和して、酢酸エチル(3×50mL)によって抽出した。有機層を乾燥(NaSO)して濃縮し、cis−3,5−ジメチル−1−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジル)−ピペラジン(1.01g、80%)を得た。H NMR(400MHz、CDOD)δ7.42(d,2H)、7.23(d,2H)、3.54(s,2H)、2.98−2.88(m,2H)、2.82−2.74(m,2H)、1.69(t,2H)、1.05(d,6H);LCMS 289.5(M+1)
【0173】
ステップ2
4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジル)−ピペラジン−1−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸:化合物4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシル−ベンジル)−ピペラジン−1−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸を、cis−3,5−ジメチル−1−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジル)−ピペラジンを使用して実施例1の過程に基づいて合成した。H NMR(400MHz、CDOD)δ7.74−7.64(m,4H)、7.47(d,1H)、7.39−7.28(m,2H)、4.42(s,2H)、4.21−2.18(m,2H)、3.50−3.34(m,5H)、3.33−3.19(m,4H)、1.56(d,6H);LCMS 497.5(M+1)
【0174】
ステップ3
(S)4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジル)−ピペラジン−1−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸:実施例2の単一エナンチオマーを、以下のプロトコルによって得た。実施例2のステップ1による生成物と、実施例1のステップ5による生成物とを、実施例9のステップ6に概説した条件を使用して反応させて、ラセミメチルエステルを得た。OJ−Hを用いて、CO中のメタノールが25%(100bar)で、5mL/minのキラル分離を行い、次いで実施例1のステップ7に概説した条件を使用して加水分解を行い、(S)4−(cis−2,6−ジメチル−4−(3−トリフルオロメトキシ)ベンジル)ピペラジン−1−イルスルホニル)−2,3−ジハイドロ−1H−インデン−カルボン酸を得た。H NMR(400MHz、CDOD)δ7.66(d,1H)、7.46(d,1H)、7.41(d,2H)、7.36−7.30(m,1H)、7.19(d,2H)、4.08−3.99(m,1H)、3.94−3.8(m,1H)、3.56−3.49(m,2H)、3.43(s,2H)、3.40−3.22(m,3H)、2.57(t,2H)、2.09−1.92(m,2H)、1.56(d,6H);LCMS 513.5。
【実施例3】
【0175】
化合物1の塩類の調製
ベンザチン:
化合物1とベンザチン塩基とを、1:1のモル比でDCM溶媒中で混合した。沈殿は生じなかった。気化させて透明薄膜を得た。真空オーブン中に1日入れ、粘着性の淡黄色の薄膜を得た。
【0176】
カルシウム:
化合物1と塩基(Ca(OAc))とを、1:1のモル比でメタノール溶媒中で混合した。沈殿は生じなかったので、溶液を気化させた。乾燥時に白色の固形物および断続的なガラスを形成した。エーテル溶媒を添加した。大部分の固形物が溶解したので、その溶液をフリーザーに1日入れ、固形物のほとんど無い透明な溶液を得た。この溶液を周囲条件下で放置して気化させ、複屈折領域のある固形物を得た。
【0177】
塩酸塩:
化合物1と塩酸とを、1:1のモル比でメタノール中で混合した。沈殿は生じなかったので、溶液を気化させ、乾燥時に透明な油を得た。この油をDCMに溶解してヘキサンを添加し、白色の溶液を得た。次いで、栓をして周囲条件下で1日放置した。得られた透明な溶液をフリーザーに入れた。
【0178】
リン酸塩:
化合物1とリン酸とを、1:1のモル比でアセトニトリル(ACN)溶媒中で混合した。沈殿は生じなかった。テトラヒドロフラン(THF)逆溶剤を添加したが、それでも沈殿は生じなかった。その溶液を周囲条件下で気化させ、不透明薄膜を得た。これは、周囲真空オーブンに1日入れた。白色の固形物が回収された。
【0179】
硫酸塩:
化合物1と硫酸とを、1:1のモル比でメタノール溶媒中で混合した。沈殿は生じなかったので、溶液を気化させ、透明薄膜を得た。これを周囲真空オーブンに3日間入れ、茶色の縞が全体に入った透明薄膜を得た。
【0180】
カリウム:
化合物1とKOH塩基とを、1:1のモル比でエタノール溶媒中で混合した。ヘキサンを添加した。沈殿は生じなかったので、溶液を気化させ、淡黄色の透明薄膜を生じた。これをEtOHで溶解し、ヘキサンを添加することによって沈殿させるようにし、不透明な溶液を得た。次いで、それを濾過した。濾過において固形物は回収されなかった。濾液を気化させて、透明薄膜を得た。これをACNで溶解し、溶液を濃縮するために、半分の量になるまで気化させた。エチルエーテルを添加したが、沈殿は生じなかった。この溶液を気化させて、透明薄膜を得た。これを周囲条件下で3日間放置、気化し、淡黄色の固形物を得た。
【0181】
マグネシウム:
化合物1と酢酸マグネシウムとを、1:1のモル比でエタノール溶媒中で混合した。沈殿は生じなかったので、溶液を気化させ、乳白色の薄膜を伴う透明な油を生じた。エチルエーテルを添加して透明な油を溶解したが、反応容器の底に乳白色の薄膜が小さな液滴のように固まった。溶液をフリーザー内に一日入れ、非混和性油滴のある透明な溶液を得た。これを周囲条件下で放置、気化し、透明薄膜を得た。これを周囲真空オーブンに1日入れ、灰色がかった固形物を得た。
【0182】
ナトリウム:
化合物1と水酸化ナトリウムとを、1:1のモル比でエタノール溶媒中で混合した。ヘキサンを添加した。沈殿は生じなかったので、溶液を気化させ、淡黄色の薄膜を生じた。これをMcOHで溶解して、エチルエーテルを添加することによって沈殿させるようにした。沈殿が生じなかったので、溶液を気化させ、透明薄膜を得た。これをジクロロメタン(DCM)で溶解し、溶液を濃縮するために、半分の量になるまで気化させた。ヘキサンを添加し、白色の沈殿物を生じた。それを周囲スラリーホイール上に4日間置いて、溶液中に透明な非混和性油を生じた。これを周囲条件下で磁気撹拌棒で2日間撹拌し、溶液の底部に透明な油を生じた。これを周囲条件下で放置し、透明薄膜を得た。これを周囲真空オーブンに1日入れ、灰色がかった固形物を得た。
【0183】
P−トルエンスルホナート:
化合物1とp−トルエンスルホン酸とを、1:1のモル比でテトラヒドロフラン(THF)溶媒中で混合した。沈殿は生じなかった。透明な溶液を氷水槽で冷却して、乾燥窒素パージ下で気化させて、灰色がかった固形物を得た。
【実施例4】
【0184】
化合物1のトシレート塩の代替的な直接調製
ステップ1
32%のHClを、0℃で、水とアセトニトリルとに亜硝酸ナトリウムを溶解した溶液に添加する。この溶液を−5℃に冷却し、水、アセトニトリル、および32%のHCl中に(R,S)−4−アミノ−インダン−カルボン酸メチルエステル塩酸塩を溶解した溶液を添加し、温度を−7℃〜−10℃に保持する。得られた冷ジアゾニウム溶液を、60℃で、水とアセトニトリルとにエチルキサントゲン酸カリウムを溶解した溶液に添加する。60℃で加熱した後に、混合物を室温に冷却し、ジクロロメタンで抽出する。有機溶液を反応器に充填して減圧下で濃縮する。ジクロロメタンと水とを添加し、その混合物を5℃に冷却して塩素ガスを通過させる。有機溶液を分離し、水溶液をジクロロメタンで抽出する。混合有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮して(R,S)−4−クロロスルホニル−インダン−2−カルボン酸を得る。HPLCを使用して反応物を監視することが可能である。
【0185】
ステップ2
炭酸カリウムを、ジクロロメタンと水とにcis−3,5−ジメチル−1−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン塩酸塩を混合した混合物に添加する。室温で撹拌した後に、有機層を回収し、水層をジクロロメタンで抽出する。混合有機溶液を反応器に充填して減圧下で濃縮し、その後にアセトニトリルと炭酸カリウムとを添加する。アセトニトリルに(R,S)−4−クロロスルホニル−インダン−2−カルボン酸を溶解した溶液を、反応混合物に添加する。50℃で加熱した後に、反応混合物を20℃に冷却する。混合物を200Lの移動可能な撹拌供給タンクに移し、Cclitcを充填し、懸濁液を撹拌する。懸濁液を濾過し、濾過ケーキをアセトニトリルで洗浄して濾液を減圧下で濃縮し、0〜5℃に冷却し、32%のHClを添加する。更なる濃縮および濾過の後に、濾液は濃縮して油を得、シリカゲルクロマトグラフィで精製し、生成物(R,S)−4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−1−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸メチルエステル(HPLCで95%を超える)を得るように、イソプロパノールで再結晶させる。
【0186】
ステップ3
疑似移動床式(Simulated Moving Bed:SMB)クロマトグラフィを使用して、(R,S)−4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−1−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸メチルエステルのS−およびR−エナンチオマーを分離した。SMB法では、Chiralpak ASカラムおよびn−ヘプタン/イソプロパノール(1:1v/v)を使用して、S−エナンチオマーである(S)−4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−1−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸メチルエステル(キラルHPLCで99%を超える)を得る。
【0187】
ステップ4
THFに(S)−4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−1−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸メチルエステルを溶解した溶液に、水に水酸化リチウムを溶解した溶液を添加し、20℃で撹拌し、減圧下で濃縮する。反応混合物を9℃に冷却し、32%のHClで中和し、トルエンで抽出する。共沸蒸留によって有機溶液から水を取り除く。蒸留後に、有機溶液を周囲温度まで冷却し、供給容器に移す。反応器にトルエンと水とに溶解したp−トルエンスルホン酸を入れ、共沸蒸留によって水を取り除く。溶液を60℃に冷却し、その後、供給容器から有機溶液を添加する。混合物を83℃で撹拌し、次いで10℃に冷却して結晶化を誘導する。生成物の懸濁液を濾過し、濾過ケーキをヘプタンで洗浄し、40℃でrotovap(ロータリーエバポレーター)上で乾燥し、(S)−4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−1−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸トシレートを得る。H NMR δ 1.60(d)、1.62(d)、2.33(s)、3.23(m)、3.49(m)、3.39(m)、4.05(m)、4.49(m)、3.40(dd)、3.23(dd)、7.14(d)、7.14(d)、7.09(d)、7.09(d)、7.59(d)、7.59(d)、7.71(d)、7.26、dd、7.57(d)、7.57(d)、7.40(d)。
【0188】
化合物1のトシレート塩のXRPDによる特性評価
(S)−4−[cis−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−1−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸トシレート(以下、任意で「トシレート化合物1」と称する)のメチルエステル前駆体が、X線構造決定に対してトシレート化合物1が不適当であることから、トシレート化合物1の代わりに、使用された。トシレート化合物1メチルエステルは、トシレート化合物1をエステル化し、その後にイソプロパノールで再結晶させて調整した。他の実験は、メチルエステルのトシレート化合物1への変換において、立体化学が保持されることを証明した。
【0189】
分析に出された試料は、極めて大型の適格な矩形ブロックを含んだ。当該のブロックを0.4×0.3×0.3mm3に整形し、鉱油でコーティングし、ナイロンループ上に取り出し、APEX検出器とKeyCool低温装置とを備えたBruker3軸プラットホーム回折計のゴニオメータステージ上で100Kに冷却した。以降のデータ収集、処理、および精緻化に使用した全てのソフトウェアは、Bruker−AXS(Madison、WI)が保持するライブラリ内に含まれる。
【0190】
0.3°のインターバルでの20の露光の3つのシーケンスで得られた60の選択された露光によって、報告された単位セル寸法の斜方晶系の結晶系に結晶を一意に割り当てることが可能であった。回折データにおける系統的な欠如から、特定の斜方晶系空間群がP21212であることが特定され、また、単位セルの容量から、8つの分子を含んでいることが特定された。100Kでの全範囲のデータを収集して40547の反射を得た。そのうちの10238は、適用範囲内で最大4倍の冗長性、および非常に低いマージR因子を提供する斜方晶系の対称性の下で結晶学的に独立したものであった。データは、最初に、1800の個々の露光を統合して反射および強度のリストを作成するSAINTによって処理した。SADABSを使用して、吸収、偏光、およびローレンツ歪に対して補正を行った。構造は、直接法(TREF)を使用して解き、以降の差のマップを使用して全ての非水素原子の位置を特定した。理想的な等方性コントリビューションとして全ての非水素原子および水素原子の異方性熱パラメータを組み込んだモデルに対してSHELXTLルーチンを使用した精緻化によって、結合パラメータに対する残差およびesdが非常に低い最終構造を得た。表1は、トシレート化合物1の結晶のデータおよび構造精緻化を表す。表2は、トシレート化合物1の原子座標および等価等方性変位パラメータを表す。表3は、トシレート化合物1の結合長さを表す。表4は、トシレート化合物1の結合角を表す。
【0191】
【表1】

【0192】
【表2】

【0193】
【表3】

【0194】
【表4】

【0195】
【表5】

【0196】
【表6】

【0197】
生物活性アッセイ
化合物1および2は、以下に述べるように、EC50の値、およびPPARα、PPARγ、およびPPARδを調節する有効性に関するそれぞれの生物活性を測定するように分析した。これらの化合物は、PPARのサブタイプを活性化させるためのそれぞれの能力に対する、CV−1細胞における過渡的なトランスフェクションアッセイ(トランス活性化アッセイ)の機能的能力に対してスクリーニングを行った。以前に確立したキメラ受容体は、同じ合成応答要素に関する受容体のサブタイプの相対的な転写活性の比較を可能にし、内因性受容体活性化が結果の解釈を複雑にしないようにするために用いた。例えば、Lehmann,J.M.、Moore,L.B.、Smith−Oliver,T.A、Wilkinson,W.O.、Wilson,T.M.、Kliewer,S.A.の「An antidiabetic thiazolidinedione is a high affinity ligand for peroxisome proliferator−activated receptorδ(PPARδ)」、J.Biol.Chem.、1995、270、12953−6を参照のこと。ネズミおよびヒトのPPARα、PPARγ、およびPPARδのリガンド結合領域は、それぞれが酵母の転写制御因子GAL4DNA結合領域に融合される。CV−1細胞は、ルシフェラーゼの発現を操作するGAL4DNAの結合部の4つ〜5つのコピーを含むレポーター構築に加えて、それぞれのPPARキメラに対する発現ベクターによって過渡的にトランスフェクションした。8〜16時間後、細胞をマルチウェルアッセイプレートに再プレーティングして、その媒体を5%の脱脂した子牛血清を補充したフェノールレッドの無いDME媒体に交換する。再プレートの4時間後、細胞を化合物または1%のDMSOで20〜24時間処理した。次いで、メーカーのプロトコルに従ってBritelite(Perkin Elmer)でルシフェラーゼ活性を分析し、Perkin Elmer ViewluxまたはMolecular Devices Acquestで測定した(例えば、Kliewer,S.A.他、Cell 1995、83、813−819を参照のこと)。
【0198】
PPARγアッセイにおける陽性対照としてロシグリタゾン(Rosiglitazone)を使用する。PPARαアッセイにおける陽性対照としてWy−14643およびGW7647を使用する。PPARδアッセイにおける陽性対照としてGW501516を使用する。結果を下記の表5に示す。
【0199】
【表7】

【0200】
前記表は、2006年9月14日に発行された、米国特許第2006/0205736号の表1を応用したものであり、その開示は、参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる。
【0201】
当業者は、上述の説明から本発明の基本的な特徴を容易に確認することができ、また、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の種々の変更および改良を行い、様々な用法および条件に適用させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PPAR調整剤化合物のp−トルエンスルホン酸塩。
【請求項2】
式Iの化合物の塩であって、
【化1】

式中、
Aは、3〜5個の原子を有し5〜7員環を形成する、飽和または不飽和炭化水素鎖あるいは複素原子含有炭化水素鎖であり、
Tは、−C(O)OH、−C(O)NHおよびテトラゾールからなる群から選択され、
は、−(CR−、−Z(CR−、−(CRZ−、−(CRZ(CR−からなる群から選択され、
Zは、O、SまたはNRであり、
nは、0、1、または2であり、
rおよびsは、0または1であり、
およびRは、水素、ハロ、任意に置換された低級アルキル、任意に置換された低級へテロアルキル、任意に置換された低級アルコキシおよび低級パーハロアルキルからなる群から独立して選択されるか、あるいは一緒に任意に置換されたシクロアルキルを形成してよく、
、XおよびXは、水素、任意に置換された低級アルキル、任意に置換されたシクロアルキル、ハロゲン、パーハロアルキル、ヒドロキシ、任意に置換された低級アルコキシ、ニトロ、シアノおよびNHからなる群から独立して選択され、
は、任意にXおよびXと置換された飽和または不飽和シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルリンカーからなる群から選択され、
およびXは、水素、任意に置換された低級アルキル、ハロゲン、低級パーハロアルキル、ヒドロキシ、任意に置換された低級アルコキシ、ニトロ、シアノ、NHおよびCORからなる群から独立して選択され、
Rは、低級アルキルおよび水素からなる群から選択され、
は、結合、二重結合、−(CR−、カルボニルおよび−(CRCR=CR−からなる群から選択され、
mは、0、1または2であり、
およびRは、水素、任意に置換された低級アルキル、任意に置換された低級アルコキシ、任意に置換されたアリール、低級パーハロアルキル、シアノおよびニトロからなる群から独立して選択され、
は、水素、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたヘテロシクロアルキル、任意に置換されたシクロアルケニルおよび−N=(CR)からなる群から選択され、
およびRは、水素、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたシクロアルケニルおよび任意に置換されたヘテロシクロアルキルからなる群から独立して選択され、
前記塩が、硫酸、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、塩酸、リン酸およびトシレートからなる群から選択される、式Iの化合物の塩。
【請求項3】
前記塩が、前記化合物のトシレート塩である、請求項2に記載の塩。
【請求項4】
前記化合物が、4−[シス−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−l−スルホニル−インダン−2−カルボン酸である、請求項2に記載の塩。
【請求項5】
前記化合物が、4−[シス−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−l−スルホニル]−インダン−2−カルボン酸である、請求項3に記載の塩。
【請求項6】
(S)−4−[シス−2,6−ジメチル−4−(4−トリフルオロメトキシ−フェニル)−ピペラジン−l−スルホニル−インダン−2−カルボン酸トシレート。
【請求項7】
医薬的に許容される稀釈剤または担体とともに請求項1に記載の塩を含む医薬組成物。
【請求項8】
医薬的に許容される稀釈剤または担体とともに請求項6に記載の塩を含む医薬組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の塩の投与を含むPPARを調整する方法。
【請求項10】
前記調整は、PPARδに対して選択的である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記選択性は、100倍以上である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項6に記載の塩の投与を含むPPARの調整方法。
【請求項13】
前記調整は、PPARδに対して選択的である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記選択性は、100倍以上である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
PPAR介在疾患の治療用の薬剤の生産のために、請求項1に記載の塩の使用。
【請求項16】
前記PPARは、PPARδである請求項15に記載の使用。

【公表番号】特表2009−513679(P2009−513679A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538141(P2008−538141)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/060172
【国際公開番号】WO2007/051095
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(505375355)カリプシス・インコーポレーテッド (11)
【Fターム(参考)】