説明

PTFE粉末及びPTFE成形用粉末製造方法

【課題】成形体において、表面粗度Ra、引張強度及び/又は引張伸びを従来よりも向上させることができ、また、絶縁破壊強度を良好にすることができ、更に、所望により見掛け密度及び/又は粉末流動性にも優れるポリテトラフルオロエチレン粉末、並びに、ポリテトラフルオロエチレン粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】非変性ポリテトラフルオロエチレンからなる粉末であり、平均粒子径が1〜6μmであるポリテトラフルオロエチレン粉末を造粒して得られ、アモルファスインデックスが0.25以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン造粒粉末。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体において、表面平滑性、引張強度及び/又は引張伸びを従来よりも向上させることができ、また、絶縁破壊強度に優れることができ、更に、所望により優れた見掛け密度及び/又は粉末流動性をも有することができるポリテトラフルオロエチレン粉末、並びに、ポリテトラフルオロエチレン成形用粉末を製造するためのPTFE成形用粉末製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕は、耐熱性、耐薬品性、耐候性、電気的絶縁性、非粘着性等に優れ、幅広い用途を有する熱可塑性樹脂であるが、溶融粘度が極めて高いので、低溶融粘度である一般の熱可塑性樹脂に用いられる通常のプラスチック成形加工方法、例えば一般的な押出成形、射出成形等を適用することができないとされてきた。
【0003】
このため、PTFEの成形には、通常のプラスチック成形加工方法の代わりに、焼結成形法が一般に用いられている。樹脂の焼結成形法は、樹脂の成形用粉末を用いて予備成形し、得られる予備成形体を樹脂の融点以上の温度に加熱して樹脂粒子を焼結することにより成形体を得るものである。
【0004】
PTFEの焼結成形法としては、圧縮成形、ラム押出成形法等がある。
【0005】
圧縮成形は、一般的に、金型にPTFEの成形用粉末を充填し圧縮して得られる予備成形体を炉に入れて焼結し、のちに冷却して成形を完了するものである。
【0006】
ラム押出成形法は、シリンダー内において、一端から間欠的に供給したPTFEの成形用粉末を、各供給分ごとにピストン(ラム)を用いて圧入し、個々の圧入体を下降させて前供給分の圧入体と接合させ、焼成により融着させた連続体を、冷却を経てシリンダーの他端から押し出すものである。
【0007】
これらのPTFEの焼結成形法において、成形用粉末としてPTFEの重合上がりの粉砕品を用いると、一般的にボイドがなく緻密な成形体が得られやすく、表面平滑性、引張強度、引張伸び、高圧電気絶縁性等の成形体についての成形体物性が良好となる傾向にある。
【0008】
PTFEの重合上がりの粉砕品は、その一方、一般的に見掛け密度、粉末流動性等の粉体についての粉体物性に劣るので、成形機のホッパーや細径のシリンダー内で成形用粉末が凝集してブリッジを形成したり、金型やシリンダーへの充填が不均一となる等、取扱い性が不充分となる傾向があった。
【0009】
PTFEの重合上がりの粉砕品は、また、見掛け密度が低く単位重量当りの成形用粉末が嵩高くなるので、金型やシリンダーの小型化は容易でなく、1つの金型やシリンダー当りの生産性向上が困難であるという不都合があった。
【0010】
PTFEの重合上がりの粉砕品の見掛け密度や粉末流動性を高めることを目的として、造粒することが考えられる。しかしながら、得られる造粒物は、見掛け密度や粉末流動性は向上しているものの、造粒時に剪断力が加えられており、得られる成形体物性が低下するという問題があった。
【0011】
粉末流動性と見掛け密度の向上を目的として、特願平5−180694号公報には、フィラー及び平均粒子径が20μm以下であるPTFEの粉末を原料とするPTFEの造粒物が開示されているが、成形体物性が優れることは記載されていない。
【0012】
PTFEの造粒方法として、例えば特開平10−259252号公報、特開平10−316763号公報等には、テトラフルオロエチレン99〜99.999モル%とパーフルオロビニルエーテル1〜0.001モル%とを懸濁重合法で共重合して得られ、平均粒子径が100μm未満であるPTFEの重合上がりの粉末又はその粉砕品を界面活性剤の存在下に水中で造粒する方法が開示されている。
【0013】
PTFEの成形用粉末は、このように、従来、粉体物性が良い場合には成形体物性が劣る傾向にあり、成形体物性が良い場合には粉体物性が劣る傾向にあったので、通常、用途に応じて何れの特性を重視するかによって選択されていた。
【0014】
例えば、従来、ボールバルブシート等の大量生産される汎用品等は、成形体物性よりも成形時における取扱い性や加工性が重要視され、成形体物性が多少劣っても粉体物性の良い成形用粉末が選択されてきた。しかしながら、このような汎用品等であっても、成形体物性の向上が望ましい。
【0015】
不純物の残存量を低減することにより成形体物性を向上させることを目的として、WO96/28498号公報には、懸濁重合によって得られるPTFE粗粒子を湿潤状態で微粉砕したのち、洗浄することを特徴とするPTFEの成形用粉末の製造方法が開示されている。
【0016】
成形体物性として耐屈曲疲労性を高めることを目的として、例えば、WO93/16126号公報には、示差走査型熱量計〔DSC〕で測定する結晶化熱が18.0〜25.0J/gであり、比表面積が0.5〜9.0m/gであり、平均粒子径が100μm以下であり、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)単位を0.01〜1重量%含むPTFEの成形用粉末であって、得られる成形品が特定の曲げ寿命と耐クリープ性とを有するものが開示されている。しかしながら、表面粗度Ra、引張強度、引張伸び、粉末流動性等については記載されておらず、また、粉砕方法についても記載されていない。
【0017】
粉体物性よりも成形体物性が重視されてきたPTFEの成形品としては、例えば、直径が通常200mm以上のいわゆる大物がある。大物は、経済性から成形のニーズは高いが、大物ゆえに予備成形時の加圧が制限されるので、粉体物性が多少劣っても、低加圧で一定レベル以上の成形体物性を得る必要がある。
近年、PTFEは、半導体製造分野等に用途が拡大され、例えば絶縁シール、絶縁ノズル等の高圧絶縁材料等にも用いられるようになってきた。半導体関連分野では、その性質上、絶縁破壊強度に優れる等の高度の成形体物性が要求され、また、製品の汚染防止のため切削は望ましくない一方、表面平滑性は求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特願平5−180694号公報
【特許文献2】特開平10−259252号公報
【特許文献3】特開平10−316763号公報
【特許文献4】国際公開第96/28498号パンフレット
【特許文献5】国際公開第93/16126号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
発明の要約
本発明の目的は、上記現状に鑑み、成形体において、表面粗度Ra、引張強度及び/又は引張伸びを従来よりも向上させることができ、また、絶縁破壊強度を良好にすることができ、更に、所望により見掛け密度及び/又は粉末流動性にも優れるポリテトラフルオロエチレン粉末、並びに、ポリテトラフルオロエチレン成形用粉末の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、測定用成形体a1の表面粗度Raが0.92μm未満であることを特徴とするPTFE粉末である。
【0021】
本発明は、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.9μm未満であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0022】
本発明は、流動度が0.5回以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.9μm未満であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0023】
本発明は、流動度が0.5回以上であり、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.9μm未満であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0024】
本発明は、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が9.1kV以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0025】
本発明は、流動度が0.5回以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が9.1kV以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0026】
本発明は、流動度が0.5回以上であり、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が9.1kV以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0027】
本発明は、測定用成形体a3の引張強度が58.7MPa以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0028】
本発明は、測定用成形体a3の引張伸びが556%以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0029】
本発明は、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが431%以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0030】
本発明は、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.5μm未満であり、測定用成形体a3の引張強度が47.8MPa以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0031】
本発明は、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.2μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが423%以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0032】
本発明は、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.4μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが370%以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0033】
本発明は、流動度が0.5回以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.4μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが370%以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0034】
本発明は、流動度が0.5回以上であり、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.4μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが370%以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0035】
本発明は、測定用成形体a1の表面粗度Raが0.92μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が10kV以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0036】
本発明は、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.5μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が8.5kV以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0037】
本発明は、流動度が0.5回以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.5μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が8.5kV以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0038】
本発明は、流動度が0.5回以上であり、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a1の成形品の表面粗度Raが2.5μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が8.5kV以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0039】
本発明は、測定用成形体a3の引張強度が47.8MPa以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが451%以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0040】
本発明は、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が11.5kV以上であり、測定用成形体a3の引張強度が47.8MPa以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0041】
本発明は、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が10kV以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが556%以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0042】
本発明は、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.2μm未満であり、測定用成形体a3の引張強度が47.8MPa以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが423%以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0043】
本発明は、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が10kV以上であり、測定用成形体a3の引張強度が47.8MPa以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが451%以上であることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン粉末である。
【0044】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン未粉砕粉末を粉砕することよりなるポリテトラフルオロエチレン成形用粉末を製造するためのポリテトラフルオロエチレン成形用粉末製造方法であって、上記ポリテトラフルオロエチレン未粉砕粉末は、懸濁重合により得られたポリテトラフルオロエチレン系ポリマーからなるものであり、上記ポリテトラフルオロエチレン系ポリマーは、非変性ポリテトラフルオロエチレン及び/又は変性ポリテトラフルオロエチレンからなるものであり、上記粉砕は、得られる粒子が実質的に繊維化しないように行うものであることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン成形用粉末製造方法である。
【0045】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0046】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン粉末〔PTFE粉末〕に係る。
【0047】
本明細書において、以下、「ポリテトラフルオロエチレン」なる用語は、PTFEともいうことがあるが、単に上記「ポリテトラフルオロエチレン」という用語を簡略化して表記するものである。
【0048】
本明細書において、上記「PTFE粉末」とは、PTFE系ポリマーからなる粉末状固体であって、成形体物性、又は、成形体物性及び粉体物性を有するものを意味する。
【0049】
上記「PTFE系ポリマー」は、変性PTFE及び/又は非変性PTFEからなるものである。
【0050】
なお、本明細書において、「PTFE系ポリマーからなる粉末状固体」は、省略して「PTFE粉体」ということがあるが、本発明のPTFE粉末、後述するPTFE成形用粉末、又は、後述するPTFE未粉砕粉末であると断らない限り、本発明のPTFE粉末、後述するPTFE成形用粉末、又は、後述するPTFE未粉砕粉末に限定されないPTFE系ポリマーからなる一般的な粉末状固体を意味する。
【0051】
本明細書において、上記「一般的な粉末状固体」とは、重合して得られたばかりの重合上がりの原粉末、並びに/又は、上記重合上がりの原粉末に対し粗粉砕、洗浄、乾燥、粉砕及び造粒の各処理を施したものを意味する。
【0052】
本明細書において、上記「重合上がりの原粉末」とは、重合により得られるポリマーからなる粉末であって、重合反応液から取り出した後、洗浄、粗粉砕、乾燥、粉砕、造粒及び/若しくはPTFE系ポリマーの融点以上の温度への加熱の各処理を特に施していないものを意味する。
【0053】
本発明のPTFE粉末は、成形体を作製した場合に表面粗度Ra、引張強度〔TS〕及び/又は引張伸び〔EL〕に優れ、表面粗度Ra、引張強度又は引張伸びをそれぞれ従来のPTFE粉体よりも向上させることができるものであり、更に、所望により優れた見掛け密度及び/又は粉末流動性をも有することができるものである。
【0054】
本発明のPTFE粉末は、また、成形体を作製した場合に、優れた絶縁破壊電圧〔BDV〕を有することができるものであり、更に、所望により表面粗度Ra、引張強度及び/又は引張伸びにも優れていたり、見掛け密度及び/又は粉末流動性にも優れていることが可能なものである。
【0055】
本明細書において、表面粗度Ra、絶縁破壊電圧、引張強度及び/又は引張伸びを、総称して「成形体物性」ということがある。本明細書において、見掛け密度及び/又は粉末流動性を、総称して「粉体物性」ということがある。
【0056】
本明細書において、表面粗度Raは、測定用成形体a1についての測定値で表す値であり、絶縁破壊電圧は、測定用成形体a2についての測定値で表す値であり、引張強度及び引張伸びは、測定用成形体a3についての測定値で表す値である。本発明のPTFE粉末の場合、上記測定用成形体a1、上記測定用成形体a2及び上記測定用成形体a3は、後述する各成形体物性の測定方法において、PTFE粉体として本発明のPTFE粉末を用いて得たものである。
【0057】
本発明のPTFE粉末は、測定用成形体a1の表面粗度Raを例えば2.5μm未満にすることができるので、本発明のPTFE粉末から得られる成形体全般において表面の凹凸が少ない表面平滑性を有することができる。従って、表面粗度Raが低い本発明のPTFE粉末は、例えばボールバルブシート等の表面平滑性が望まれる成形品の成形に好適に用いることができる。
【0058】
表面粗度Raが低い本発明のPTFE粉末は、表面平滑性に優れるので、従来、切削等の表面平滑化処理が必要であった場合であっても、表面平滑化処理を行わなくても済む場合がある。従って、例えば、無切削のシールリング等の製造工程に切削工程を含まないが表面平滑性が望まれる成形品の成形に好適に用いることができる。
【0059】
表面粗度Raが低い本発明のPTFE粉末は、切削等の表面平滑化処理を必要としない場合があり、その時は切削屑等の不純物の混入を排除することが求められる半導体製造分野における器具、部品類等の成形品の成形に好適に用いることができる。半導体製造分野で用いられる成形品としては特に限定されず、例えば、半導体用途や、各種角槽、スライディングパット等に用いる大判シート等が挙げられる。この大判シートは、メーター角シートと称されることもある。
【0060】
上記測定用成形体a1の表面粗度Raは、好ましくは1.9μm未満、より好ましくは1.2μm未満、更に好ましくは0.8μm未満にすることができ、上記範囲内で用途に応じて調整することができる。上記表面粗度Raは、通常、上記範囲内であれば0.5μm以上、例えば0.55μm以上であってもよい。
【0061】
本明細書において、上記表面粗度は、PTFE粉体210gを直径50mmの金型に充填し、29.4MPa(300kgf/cmG)の成形圧力下に5分間保持し、得られた予備成形体を50℃/時の昇温速度で室温から365℃に昇温し、365℃で5.5時間保持したのち、50℃/時で冷却し、得られた成形体の上部表面を東京精密機械社製の表面あらさ測定機を用い、JIS B 0601の中心線平均粗さ(Ra)法に従って測定することにより得られる値である。本明細書において、この測定の対象とした成形体を「測定用成形体a1」という。
【0062】
本発明のPTFE粉末は、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧を例えば8.5kV以上にすることができるので、本発明のPTFE粉末から得られる成形体全般において優れた高圧絶縁性を有することができる。従って、本発明のPTFE粉末は、例えば高圧変圧機用コンデンサーの絶縁テープや絶縁シール、遮断器用絶縁ノズル等の高圧絶縁材料等の成形に好適に用いることができる。
【0063】
上記測定用成形体a2の絶縁破壊電圧は、好ましくは9.1kV以上、より好ましくは10kV以上、更に好ましくは12kV以上、特に好ましくは13kV以上にすることができ、上記範囲内で用途に応じて調整することができる。上記絶縁破壊電圧は、通常、上記範囲内であれば18kV以下、例えば15kV以下、更に14kV以下であってもよい。
【0064】
本明細書において、上記絶縁破壊電圧は、PTFE粉体210gを直径50mmの金型に充填し、29.4MPa(300kgf/cmG)の成形圧力下に5分間保持し、得られた予備成形体(直径約50mm、厚さ50mm)を室温から50℃/時の昇温速度で365℃に昇温し、365℃で5.5時間保持した後、50℃/時で冷却して得られた成形品を切削して得られた0.1mmの厚さのスカイブシートを用いてJIS K 6891に準じて測定することにより得られる値である。本明細書において、この測定の対象とした0.1mmの厚さのスカイブシートを測定用成形体a2という。
【0065】
本発明のPTFE粉末は、測定用成形体a3の引張強度を例えば47.8MPa以上にすることができるので、本発明のPTFE粉末から得られる成形体全般において、引張力を加えた場合、優れた機械的強度を有することができる。
【0066】
従って、本発明のPTFE粉末は、例えば、機械・器具類等にはめ込むための引張時に高強度が望まれる成形品、例えばシールリング等の成形に好適に用いることができる。シールリングとしては、リングに切断箇所があり、器具類等へのはめ込み時に変形が加えられるもの、リングに切断箇所がなく輪ゴム状のいわゆるエンドレスタイプのものの何れであっても好適に用いることができる。
【0067】
本発明のPTFE粉末は、特に、機械的強度に優れる点から、引張り強度を必要とする成形品、例えばボールバルブシート等の成形にも好適に用いることができる。
【0068】
上記測定用成形体a3の引張強度は、好ましくは50MPa以上、より好ましくは58.7MPa以上、更に好ましくは60MPa以上、特に好ましくは65MPa以上にすることができ、上記範囲内で用途に応じて調整することができる。上記引張強度は、通常、上記範囲内であれば70MPa以下、例えば66MPa以下であってもよい。
【0069】
本発明のPTFE粉末は、測定用成形体a3の引張伸びを例えば370%以上にすることができるので、本発明のPTFE粉末から得られる成形体全般において引張り時に高い伸びを示し、機器・器具類等への装着時や加工時において引張り力が加えられる場合であっても切断を防止することができる。
【0070】
従って、本発明のPTFE粉末は、器具等へのはめ込み時に高い伸びが望まれる成形品、例えばシールリング等の成形に好適に用いることができる。シールリングとしては、引張強度に関して上述したリングに切断箇所があるものと、リングに切断箇所がないものの何れでもよいが、後者の方が引張伸びに優れることを充分に活かすことができる。
【0071】
上記測定用成形体a3の引張伸びは、好ましくは450%以上、より好ましくは500%以上、更に好ましくは550%以上、特に好ましくは600%以上にすることができ、上記範囲内で用途に応じて調整することができる。上記引張伸びは、通常、上記範囲内であれば650%以下、例えば630%以下であってもよい。
【0072】
本明細書において、上記引張強度及び上記引張伸びは、PTFE粉体210gを直径50mmの金型に充填し、300kgf/cmGの成形圧力下に5分間保持し、得られた予備成形体(直径約50mm、厚さ50mm)を室温から50℃/時の昇温速度で365℃に昇温し、365℃で5.5時間保持した後、50℃/時で冷却して得られた成形品を切削して得られた0.3mmの厚さのスカイブシートを用い、JISダンベル3号で試験片を打ち抜き、JIS K 6891−58に準拠して、総荷重500kgのオートグラフを用い、引張速度200mm/分で引張り、破断時の応力と伸びとを測定することにより得られる値である。本明細書において、この測定の対象にした試験片を測定用成形体a3という。
【0073】
本発明のPTFE粉末は、このように優れた成形体物性、即ち、表面粗度Ra、絶縁破壊電圧、引張強度及び/又は引張伸びを有するとともに、所望により、粉体物性、即ち、粉末流動性及び/又は見掛け密度にも優れたものである。本明細書において、粉末流動性は、後述の測定法により得られる流動度として表す。
【0074】
本発明のPTFE粉末は、流動度を例えば0.5回以上にすることができるので、成形機のホッパーや細径のシリンダー内で成形用粉末が凝集してブリッジを起したり、金型やシリンダーへの充填が不均一となる等の不都合がなく、取扱い性を向上させることができる。
【0075】
本発明のPTFE粉末の流動度は、好ましくは4回以上にすることができる。本発明のPTFE粉末の流動度は、後述の測定方法から8回が最大値であり、通常、上記範囲内であれば8回以下、例えば6回以下であってもよい。
【0076】
本明細書において、流動度は、特開平3−259925号公報等に記載した方法に準じた下記の測定方法により得られる値である。本発明のPTFE粉末の場合、下記の測定方法において、被測定粉末として本発明のPTFE粉末を用いる。即ち、測定装置としては、図1に示すように支持台42に中心線を一致させて支持した上下のホッパー31及び32を用いる。上部ホッパー31は、入口33の直径74mm、出口34の直径12mm、入口33から出口34までの高さ123mmで、出口34に仕切板35があり、これによって中の粉末を保持したり落したりすることが適宜できる。下部ホッパー32は入口36の直径76mm、出口37の直径12mm、入口36から出口37までの高さ120mmで、上部ホッパーと同様出口37に仕切板38が設けられている。上部ホッパーと下部ホッパーとの距離は各仕切板の間が15cmとなるように調節されている。なお、図1中39及び40はそれぞれ各ホッパーの出口カバーであり、41は落下した粉末の受器である。
【0077】
流動度は、まず粉末流動性が「良」であるか「不良」であるかを判定し、得られる判定結果から後述の方法により求める。
【0078】
粉末流動性の測定は、被測定粉末約200gを23.5〜24.5℃に調温した室内に4時間以上放置し、10メッシュ(目の開き1680ミクロン)でふるったのち、同温度で行う。
【0079】
(i)まず、容量30ccのコップに丁度1杯の被測定粉末を上部ホッパー31へ入れたのち、ただちに仕切板35を引抜いて被測定粉末を下部ホッパーへ落す。落ちないときは針金でつついて落す。被測定粉末が下部ホッパー32に完全に落ちてから15±2秒間放置したのち下部ホッパーの仕切板38を引抜いて被測定粉末が出口37から流れ落ちるかどうかを観察し、このとき8秒以内に全部流れ落ちた場合を落ちたものと判定する。
【0080】
(ii)以上と同じ測定を3回繰り返して落ちるかどうかを観察し、3回のうち2回以上流れ落ちた場合は粉末流動性「良」と判定し、1回も落ちない場合は粉末流動性「不良」と判定する。3回のうち1回だけ流れ落ちた場合は、更に2回同じ測定を行い、その2回とも落ちた場合は結局その被測定粉末の粉末流動性は「良」と判定し、それ以外の場合は粉末流動性「不良」と判定する。
【0081】
(iii)以上の測定で粉末流動性「良」と判定された被測定粉末については、次の同じ容量30ccのコップ2杯の粉末を上部ホッパーへ入れて前述したところと同様にして測定を行い、結果が粉末流動性「良」となったときは順次被測定粉末の杯数を増加してゆき、「不良」となるまで続け、最高8杯まで測定する。各測定の際には、前回の測定で下部ホッパーから流出した被測定粉末を再使用してもよい。
【0082】
(iv)以上の測定においてPTFE粉体は使用量が多いほど流れ落ちにくくなる。そこで粉末流動性「不良」となったときの杯数から1を引いた数をもってその被測定粉末の「流動度」と定める。
【0083】
本発明のPTFE粉末は、見掛け密度を例えば0.45g/cm以上にすることができるので、上記粉末流動性に優れる場合と同様に取扱い性を向上することができるほか、成形用粉末として単位重量当りの嵩を低くすることができるので、成形機の金型やシリンダーの小型化や、1つの金型やシリンダー当りの生産性向上を可能にすることができる。
【0084】
本発明のPTFE粉末の見掛け密度は、好ましくは0.5g/cm以上、より好ましくは0.6g/cm以上、更に好ましくは0.7g/cm以上、特に好ましくは0.8g/cm以上にすることができる。本発明のPTFE粉末の見掛け密度は、通常、上記範囲内であれば1g/cm以下、例えば0.92g/cm以下、更に0.85g/cm以下であってもよい。
【0085】
本明細書において、見掛け密度は、JIS K 6891−5.3に準じて測定することにより得られる値である。
【0086】
本発明のPTFE粉末は、上述のように、PTFE系ポリマーからなる粉末状固体である。上記PTFE系ポリマーは、上述のように、変性PTFE及び/又は非変性PTFEからなるものである。
【0087】
従って、本発明のPTFE粉末は、非変性PTFEのみからなるものであってもよいし、変性PTFEのみからなるものであってもよいし、非変性PTFE及び変性PTFEからなるものであってもよいし、これらに加えフィラー、添加剤等を含有する混合物であってもよい。
【0088】
本明細書において、上記「変性PTFE」とは、単量体成分としてテトラフルオロエチレン〔TFE〕及び少量のその他の共単量体を含有し、共重合することにより得られる共重合体を意味する。
【0089】
本明細書において、上記「非変性PTFE」とは、単量体成分として上記その他の共単量体を含有せずに重合することにより得られるTFEのホモポリマーを意味する。
【0090】
上記その他の共単量体としてはTFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロペン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕;トリフルオロエチレン;パーフルオロビニルエーテル等が挙げられる。
【0091】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(I)
【0092】
CF=CF−ORf (I)
【0093】
(式中、Rfはパーフルオロ脂肪族炭化水素基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ脂肪族炭化水素基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されている脂肪族炭化水素基を意味する。上記パーフルオロ脂肪族炭化水素基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0094】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(I)において、Rfが炭素数が1〜10、好ましくは1〜6であるパーフルオロアルキル基を表すものであるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PFAVE〕が挙げられる。
【0095】
上記PFAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、たとえばパーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられ、耐クリープ性及びモノマーコストの点から、パーフルオロプロピル基が好ましい。
【0096】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、また、上記一般式(I)におけるRfがパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)が挙げられる。この場合、上記Rfにおけるパーフルオロアルコキシル基は、炭素鎖が直鎖状又は分枝状の鎖式炭素鎖であるものであってもよいし、酸素数が1〜3である環状エーテル構造を有するものであってもよい。このような上記Rfとしては特に限定されず、例えば、パーフルオロ(2−メトキシプロピル)基、パーフルオロ(2−プロポキシプロピル)基等の炭素数が4〜9であるパーフルオロ(アルコキシアルキル)基;下記一般式
【0097】
【化1】

【0098】
(式中、mは0若しくは1〜4の整数を表す。)で表される有機基;又は、下記一般式
【0099】
【化2】

【0100】
(式中、nは1〜4の整数を表す。)で表される有機基等が挙げられる。
【0101】
上記変性PTFEにおいて、上記テトラフルオロエチレンと、上記その他の共単量体とのモル比としては、種類によるが、上記テトラフルオロエチレン:上記その他の共単量体が99:2〜99.999:0.001が好ましく、99:1〜99.999:0.001であることがより好ましい。上記その他の共単量体の含有率が、0.001モル%未満であると、耐クリープ性(全変形)が低下する場合があり、1モル%を超えると、引張強度等が低下しやすく、また、高価なパーフルオロ(ビニルエーテル)を用いる場合、含有率に見合った耐クリープ性の改善がみられず経済的に不利となる場合がある。更に好ましくは、99.97:0.03〜99.8:0.2である。上記その他の共単量体の含有率は、上記テトラフルオロエチレンと上記その他の共重合体との合計モル数の0.03モル%がより好ましい下限であり、1モル%がより好ましい上限であり、0.2モル%が更に好ましい上限である。
【0102】
上記変性PTFEとしては、例えば平均分子量、共重合組成等が異なるものを1種又は2種以上用いてよく、上記非変性PTFEとしては、例えば平均分子量が異なるものを1種又は2種以上用いてもよい。
【0103】
本発明のPTFE粉末において、上記PTFE系ポリマーは、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、溶液重合等の従来公知の重合方法により得ることができるが、工業的に多用されている点等から、懸濁重合又は乳化重合を用いることが好ましく、懸濁重合がより好ましい。
【0104】
上記各種重合方法の条件としては特に限定されないが、例えば懸濁重合を行う場合、例えばWO93/16126号公報に記載された下記のような方法により行うことが好ましい。
【0105】
即ち、開始剤として55℃における半減期が18〜120時間である過硫酸塩を用い、40〜55℃で重合することが好ましい。上記開始剤の仕込量としては、重合開始後3時間までの分解量が、重合水に対する濃度として4×10−7〜8×10−6モル/リットルになる量が好ましい。上記範囲内の開始剤の半減期又は分解量であると、高分子量のPTFE系ポリマーが得られ、例えば優れた引張強度が得られやすく、また、工業的製造に適した重合速度となる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。
【0106】
上記重合においては、場合により、パーフルオロカルボン酸塩のようなテロゲン的に不活性の乳化剤、例えば、パーフルオロオクタン酸アンモニウム、パーフルオロノナン酸アンモニウム等を、重合水の1〜200ppmの量で添加してもよい。このように乳化剤を少量添加すると、得られるPTFE粉体の比表面積が増大する。
【0107】
重合時間は、通常、約8〜25時間である。
【0108】
本発明のPTFE粉末としては、上述のような成形体物性、又は、成形体物性及び粉体物性を有するものであれば、上記PTFE系ポリマーの重合上がりの原粉末であってもよいし、上記重合上がりの原粉末に対し、粗粉砕、洗浄、乾燥、粉砕及び/又は造粒の各処理を施したものであってもよい。
【0109】
上記粗粉砕、上記洗浄及び上記乾燥の方法としては、特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。例えば、上記PTFE系ポリマーを懸濁重合により得る場合、通常、重合上がりの原粉末は平均粒子径が約数mm程度であるので、水媒体中で粗粉砕した後、洗浄槽で洗浄し、乾燥する。なお、本明細書において上記粗粉砕は、上記粉砕とは別の工程で行うものであり、通常得られる平均粒子径が約100μmを超えるものであり、主として、このように比較的大きい平均粒子径の粒子を得る点で、上記粉砕とは区別される。
【0110】
上記粉砕は、通常、PTFE系ポリマーの重合上がりの原粉末に、必要に応じ、粗粉砕、洗浄及び/又は乾燥を行った後に行う。本明細書において、このようにPTFE系ポリマーの重合上がりの原粉末に対し、必要に応じ、粗粉砕、洗浄及び/又は乾燥を行ったものであって、上記粉砕、上記造粒又はPTFE系ポリマーの融点以上の温度への加熱の何れをも行っていないものを、「PTFE未粉砕粉末」ということがある。
【0111】
本発明のPTFE粉末は、上記粉砕を行うことにより、例えば、PTFE系ポリマーの重合上がりの原粉末の粒子径を揃えた成形用粉末とすることができ、目的とする粒子径範囲内にない粒子を除去する工程が不要となったり、成形体物性や粉体物性を向上することができる。
【0112】
上記粉砕により得られる粒子の平均粒子径としては特に限定されないが、緻密で成形体物性に優れた成形体を得ることができ、更に粉体物性に優れる場合もある点から、例えば、100μm以下が好ましく、より好ましい下限は3μmであり、より好ましい上限は60μmであり、3〜60μmがより好ましく、目的とする成形体物性等によって上記範囲内で適宜選択することができる。
【0113】
本明細書において、上記粉砕の後における平均粒子径は、次のドライレーザー法に準じて得られる値である。
【0114】
即ち、HELOS&RODOSシステム(商品名、SYMPATEC社製)を用いて被測定粉末を測定し、累積重量百分率50に相当する値を、
【0115】
被測定粉末の平均粒子径d50=Xμm
【0116】
として、採用する。
【0117】
測定方法は、15〜30gの被測定粉末を、上記システムのホッパーに乗せ、ホッパーに付属の振動機にて被測定粉末をディストリビューターへ送る。次に、ディストリビューターは、−150mbarで被測定粉末を吸い込み、吸い込まれた被測定粉末は、分散圧力1barの圧縮空気により分散される。分散された被測定粉末は、上記システムの測定センサー部へ運ばれ、レーザーにより映し出された被測定粉末の影を測定センサー部が感知する事で上記システムが、被測定粉末の粒度分布を演算し、平均粒子径d50の値を求める。
【0118】
上記粉砕の方法としては特に限定されず、例えば、水の存在下又は乾燥状態において、ハンマー・ミル、羽根付きの回転子を有する粉砕機、気流エネルギー型粉砕機、衝撃粉砕機等の各種粉砕機を用いる方法等であってもよいが、粉砕により得られる粒子が実質的に繊維化しないように行うことが好ましい。
【0119】
上記粉砕は、得られるPTFE粉体が「実質的に繊維化しない」ものであれば、少量の繊維化が生じるものであってもよい。
【0120】
上記粉砕により得られる粒子が実質的に繊維化しないことは、また、例えば得られた粒子を電子顕微鏡写真により観察した場合、粒子表面に繊維状片が実質的に出ておらず、滑らかな曲面を有することによっても示すことができる。
【0121】
本明細書において、このように粒子の繊維化を実質的に防止することができる粉砕方法を、「繊維化防止粉砕方法」という。
【0122】
上記粉砕の方法として、上記繊維化防止粉砕方法を用いることにより、繊維化を全く又はほとんど生じることなく微粉砕することができる。従って、得られるPTFE粉体を成形に用いる場合、予備成形における加圧時に圧力伝達性に優れ、成形体物性に優れた稠密な成形体を得ることができ、所望により粉体物性にも優れた本発明のPTFE粉末を得ることができる。
【0123】
上記繊維化防止粉砕方法としては、例えば、粉砕時に加える剪断力をできるだけ少なくすることができる方法が好ましい。このような上記繊維化防止粉砕方法としては特に限定されず、例えば、エアージェット粉砕法、冷凍粉砕法、冷凍エアージェット粉砕法、ウォータージェット粉砕法等が挙げられる。上記粉砕の方法は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0124】
上記エアージェット粉砕法、冷凍粉砕法、冷凍エアージェット粉砕法及びウォータージェット粉砕法としては、PTFE成形用粉末製造方法について後述するものと同様である。
【0125】
上記粉砕の方法としては、冷凍粉砕法、冷凍エアージェット粉砕法及びエアージェット粉砕法が好ましく、冷凍エアージェット粉砕法がより好ましい。
【0126】
上記造粒は、通常、PTFE系ポリマーの重合上がりの原粉末に上記粉砕を行ったものに対して行う。本発明のPTFE粉末は、上記造粒を行うことにより、成形体物性をあまり損なうことなく粉体物性を向上させることができる。
【0127】
従って、本発明のPTFE粉末は、用途に応じて上記造粒を行うか否かを選択することができ、成形用粉末として選択の余地を拡大することができるとともに、上記造粒を行う場合と行わない場合の何れであっても、上述のように成形体物性、又は、成形体物性及び粉体物性に優れたものとすることができる。
【0128】
本発明のPTFE粉末としては、例えば、成形体物性を重視する用途の場合、上記粉砕の後上記造粒を行わないものとすることができ、例えば、粉体物性を重視する用途の場合又は粉体物性及び成形体物性を重視する用途の場合、上記粉砕の後上記造粒を行ったものとすることができる。
【0129】
上記造粒により得られる粒子の平均粒子径としては特に限定されず、被造粒物の粒子径、造粒条件等にもよるが、成形体物性をあまり損なうことなく粉体物性を向上させることができる点から、例えば、30〜800μmにすることができるが、好ましい上限は700μmであり、好ましくは30〜700μmであり、目的とする成形体物性と粉体物性に応じて上記範囲内で適宜選択することができる。
【0130】
本明細書において、上記造粒の後における平均粒子径は、WO98/41569号公報記載の粒状粉末の平均粒径の測定法により得られる値である。即ち、上から順に10、20、32、48、60及び80メッシュ(インチメッシュ)の標準ふるいを重ね、10メッシュふるい上にPTFE粉体をのせ、ふるいを振動させて下方へ順次細かいPTFE粉体の粒子を落下させ、各ふるい上に残留したPTFE粉体の割合を%で求めたのち、対数確率紙上に各ふるいの目の開き(横軸)に対して残留割合の累積パーセント(縦軸)を目盛り、これらの点を直線で結び、この直線上で割合が50%となる粒径を求め、この値を平均粒子径とする。
【0131】
上記造粒の方法としては特に限定されないが、水中造粒法が好ましい。上記水中造粒法としては特に限定されず、例えば、通常用いられる方法を用いることができるが、水中で攪拌して造粒する際に、水と液−液界面を形成する有機液体並びにノニオン性及び/又はアニオン性界面活性剤の存在下に攪拌して造粒することが好ましい。このような造粒方法は、特開平10−259252号公報及び特開平10−316763号公報に記載されており、本明細書において、「乳化分散造粒法」という。
【0132】
上記造粒の方法として上記乳化分散造粒法を用いると、造粒時に上記有機液体の液滴が小さく球形に近い形状になるので、この液滴中で造粒されるPTFE系ポリマーの粒子は、平均粒子径が小さく、球形に近い形状となり、この結果、見かけ密度、粉末流動性ともに向上させることができるものと考えられる。
【0133】
上記乳化分散造粒法で用いる水と液−液界面を形成する有機液体としては、例えば1−ブタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン等のケトン類;ペンタン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。なかでも、不燃性であり、フロン規制の要求等を満足する点から、ハロゲン化炭化水素が好ましく、塩化炭化水素やフッ化塩化炭化水素がより好ましい。
【0134】
上記水と液−液界面を形成する有機液体は、PTFE系ポリマーの被造粒粉末の好ましくは30〜90重量%を添加することが好ましい。より好ましい下限は50重量%であり、より好ましい上限は80重量%であり、より好ましくは50〜80重量%を添加することが好ましい。
【0135】
上記乳化分散造粒法で用いるノニオン性界面活性剤としては、例えば、アミンオキシド類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、炭素数3〜4のポリ(オキシアルキレン)単位からなる疎水性セグメントとポリ(オキシエチレン)単位からなる親水性セグメントとを有するセグメント化ポリアルキレングリコール類等が挙げられる。
【0136】
上記乳化分散造粒法で用いるアニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等の高級アルコール硫酸エステル塩;フルオロアルキル基又はクロロフルオロアルキル基を有する含フッ素カルボン酸系又は含フッ素スルホン酸系のアニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0137】
上記乳化分散造粒法において、上記有機液体並びに上記ノニオン性及び/又はアニオン性界面活性剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0138】
上記粉砕時、上記粉砕の後及び/又は上記造粒の後において、必要に応じ、分級を行ってもよい。上記分級の方法としては特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。上記分級は、例えば上記造粒の後に行う場合、分級条件によって平均粒子径が比較的小さいPTFE粉体の造粒品を得ることができ、粉体物性は通常若干悪くなるものの、成形体物性を向上させることができ、上記分級の前の値と比較し、特に表面粗度Raを例えば40%にまで低下させることができ、引張伸びを例えば110〜130%に向上させることができる。
【0139】
本発明のPTFE粉末は、必要に応じ、補強材等のフィラー;添加剤等を適当量含有したものであってもよく、これらは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0140】
上記PTFE粉末がフィラー、添加剤等を含有するものである場合、得られるPTFE粉末に均一に分散させる点から、フィラー、添加剤等は、通常、上記粉砕の後又は上記造粒時に、配合することが好ましい。
【0141】
上記添加剤としては特に限定されず、例えば、PTFE系ポリマーの成形用粉末に通常用いられるものであってよく、例えば、触媒、担持材、着色剤等が挙げられる。
【0142】
上記フィラーとしては特に限定されず、例えば、ガラス繊維、グラファイト粉末、青銅粉末、金粉末、銀粉末、銅粉末、ステンレス鋼粉末、ステンレス綱繊維、ニッケル粉末、ニッケル繊維等の金属繊維又は金属粉末;二硫化モリブデン粉末、フッ化雲母粉末、コークス粉末、カーボン繊維、チッ化ホウ素粉末、カーボンブラック等の無機系繊維又は無機系粉末;ポリオキシベンゾイルポリエステル等の芳香族系耐熱樹脂粉末;ポリイミド粉末、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体〔PFA〕粉末、ポリフェニレンサルファイド粉末等の有機系粉末等が挙げられる。
【0143】
本発明のPTFE粉末としては、上記成形体物性、又は、上記成形体物性及び上記粉体物性を有するものであれば特に限定されないが、上記造粒を経ないものである場合、上記PTFE系ポリマーが上記非変性PTFEであり、上記PTFE系ポリマーのアモルファスインデックス(AI)が0.25以上である上記PTFE未粉砕粉末に対し上記粉砕を行ったものが好ましい。本明細書において、上記PTFE系ポリマーが上記範囲内のAIを有する上記非変性PTFEである上記PTFE未粉砕粉末に上記粉砕を行うことにより得られる本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(I)」という。
【0144】
AIは、赤外吸収において、778cm−1の吸光度(A778)と、2367cm−1の吸光度(A2367)との比(A778/A2367)である。2367cm−1の吸光度は、CF伸縮振動の倍音であり、被測定物であるフィルム厚みに比例して増減するものである。AIは、単位厚み当りの吸光度とX線回折との検量線により結晶化度の指標となるものであり、AIの値が高いほど、結晶化度が低い。
【0145】
上記PTFE粉末(I)は、このように結晶化度が極めて低いPTFE系ポリマーからなる上記PTFE未粉砕粉末に上記粉砕を行ったものであることから、成形時の圧縮圧力により表面粗度Raが従来よりも低く、引張強度及び引張伸びが従来よりも高く、絶縁破壊電圧が高い成形体を容易に得ることができるものと考えられる。AIは、0.25〜0.4であってよいが、好ましい下限は0.3であり、好ましくは、0.3〜0.4である。
【0146】
上記範囲内のAIは、例えば、PTFE系ポリマーの重合温度を比較的低くすること等により得ることができる。PTFE系ポリマーの重合温度は、例えば、1〜40℃とすることにより、AI値が上記範囲内であるPTFE未粉砕粉末を容易に得ることができる。上記PTFE系ポリマーの重合温度の好ましい下限は3℃であり、好ましい上限は25℃である。
【0147】
本明細書において、AIは、JIS K 0117に準拠した測定方法により得られる値である。
【0148】
上記PTFE粉末(I)は、上記非変性PTFEからなるものである。一般に非変性PTFEは、変性PTFEと異なり、結晶化度が高くAIが低い傾向にある。しかしながら、本発明のPTFE粉末(I)は、非変性PTFEであるにもかかわらず、上記のように高いAIを有し、上述のように成形体物性に優れた成形体を得ることができるものと考えられる。
【0149】
上記PTFE粉末(I)の平均粒子径としては特に限定されず、例えば、60μm以下にすることができる。上記範囲内であると、表面平滑性、引張強度、引張伸び及び/又は高圧絶縁性に優れた成形体を容易に得ることができる。好ましい下限は1μmであり、好ましくは、1〜60μmである。
【0150】
上記PTFE粉末(I)の平均粒子径としては、特に表面平滑性に優れた成形体を得ることができる点から、25μm以下が好ましい。上記範囲内であると、表面粗度Raは従来よりも低くすることができる。このような平均粒子径は、例えば3〜25μmであってもよい。
【0151】
上記PTFE粉末(I)の平均粒子径としては、特に引張強度に優れた成形体を得ることができる点から、20〜60μmが好ましい。上記範囲内であると、引張強度は従来よりも大きくすることができる。好ましい下限は40μmであり、更に好ましい下限は45μmであり、好ましい上限は60μmであり、更に好ましい上限は55μmである。上記PTFE粉末(I)の平均粒子径としては、好ましくは、40〜60μmであり、更に好ましくは、45〜55μmである。
【0152】
上記PTFE粉末(I)の平均粒子径としては、特に引張伸びに優れた成形体を得ることができる点から、6μm以下が好ましい。上記範囲内であると、引張伸びは従来よりも高くすることができる。このような平均粒子径は、例えば1〜6μmであってよいが、より好ましい下限は3μmであり、より好ましくは、3〜6μmである。
【0153】
従って、上記PTFE粉末(I)の平均粒子径は、特に引張強度に優れる点から、20〜60μmがより好ましい。上記PTFE粉末(I)の平均粒子径は、特に表面粗度Ra及び引張伸びが優れる点から、6μm以下が好ましく、より好ましい下限は1μmであり、更に好ましい下限は3μmであり、1〜6μmがより好ましく、3〜6μmが更に好ましい。上記PTFE粉末(I)の平均粒子径は、上記成形体物性が全体的に良好である点から、20〜60μmがより好ましい。
【0154】
本発明のPTFE粉末としては、上記造粒を経ないものである場合、また、上記PTFE系ポリマーが上記変性PTFEであり、かつ、上記PTFE系ポリマーが18〜25J/gの結晶化熱を有するものである上述のPTFE未粉砕粉末に対し上記粉砕を行ったものが好ましい。本明細書において、上記PTFE系ポリマーが上記範囲内の結晶化熱を有する上記変性PTFEである上記PTFE未粉砕粉末に上記粉砕を行うことにより得られる本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(II)」という。
【0155】
上記PTFE粉末(II)における上記変性PTFEとしては、単量体成分としてTFE及びPFAVEを用い、共重合することにより得られる共重合体が好ましく、PFAVEとしては、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)が好ましい。PFAVEが単量体成分全体に占める割合としては、0.03〜0.2重量%が好ましい。
【0156】
上記結晶化熱は、PTFE系ポリマーの分子量の指標となるものであり、結晶化熱が高いほど、分子量が高い傾向にある。より好ましい上限は23.5J/gであり、より好ましくは、18〜23.5J/gである。
【0157】
上記範囲内の結晶化熱は、例えば、PTFE系ポリマーの重合反応において上述の範囲内の半減期又は分解量を有する開始剤を選択したり、重合温度や重合時間を調整すること等により得ることができる。
【0158】
上記PTFE粉末(II)は、このように比較的高分子量である上記変性PTFEからなる上記PTFE未粉砕粉末に上記粉砕を行って得られるものであるので、上記PTFE系ポリマーが特に機械的強度と可撓性とを併有するものと考えられ、引張強度及び引張伸びが従来よりも高く、絶縁破壊電圧が高い成形体を容易に得ることができるものと考えられる。
【0159】
本明細書において、上記結晶化熱は、未焼結のPTFE粉体を約3mg精秤し、専用のアルミパンに収納し、示差走査型熱量計(DSC。商品名:DSC−50、島津製作所社製)を用いて測定することにより得られる値である。測定は、まずアルミパンを窒素雰囲気下250℃に昇温して一旦保持し、更に10℃/分の速度で380℃に昇温して結晶を充分融解させ、次いで380℃から10℃/分の速度で250℃に降温し、結晶化点における結晶化熱を測定することにより行う。なお、結晶化熱の値は図2に示すように、得られるDSCチャートの275℃の点からピーク他端へ接線を引き、ピークの曲線と接線で囲まれた面積から求めるものである。図2は実施例8の例である。
【0160】
上記PTFE粉末(II)の平均粒子径としては特に限定されず、例えば、60μm以下にすることができ、通常、1〜25μmにすることができる。上記範囲内であると、引張強度、引張伸び及び/又は高圧絶縁性に優れた成形体を容易に得ることができる。
【0161】
上記PTFE粉末(II)の平均粒子径としては、特に引張強度に優れた成形体を得ることができる点から、13μm以下が好ましい。上記範囲内であると、引張強度は従来よりも高くすることができる。このような平均粒子径は、例えば1〜13μmであってもよい。
【0162】
上記PTFE粉末(II)の平均粒子径としては、特に引張伸びに優れた成形体を得ることができる点から、6μm以下が好ましい。上記範囲内であると、引張伸びは従来よりも高くすることができる。このような平均粒子径は、例えば1〜6μmであってもよい。
【0163】
本発明のPTFE粉末としては、上記造粒を経ないものである場合、また、上記PTFE系ポリマーが上記変性PTFEであり、かつ、平均粒子径が100μm以下となるように微粉砕したものが好ましい。本明細書において、上記PTFE系ポリマーが上記変性PTFEであり、上記範囲内の平均粒子径を有するように上記粉砕を行ったものであり、上記造粒を行わない本発明のPTFE粉末であって、上記PTFE粉末(II)以外のものを、「PTFE粉末(III)」という。
【0164】
上記PTFE粉末(III)は、上述のように、上記変性PTFEを用い、上記範囲内のように小さい平均粒子径を有し、好ましくは実質的に繊維化していない粒子からなるものであり、可撓性を有し緻密な成形体を得ることができるので、表面粗度Ra及び引張伸びが従来よりも高く、絶縁破壊電圧が高い成形体を容易に得ることができるものと考えられる。
【0165】
上記PTFE粉末(III)の平均粒子径としては特に限定されず、例えば、1〜25μmにすることができる。上記範囲内であると、表面平滑性、引張伸び及び/又は高圧絶縁性に優れた成形体を容易に得ることができる。
【0166】
上記PTFE粉末(III)の平均粒子径としては、特に表面平滑性に優れた成形体を得ることができる点から、1〜13μmが好ましい。上記範囲内であると、表面粗度Raは従来よりも低くすることができる。好ましい下限は6μmであり、好ましい上限は10μmであり、好ましくは、6〜10μmである。
【0167】
上記PTFE粉末(III)の平均粒子径としては、特に引張伸びに優れた成形体を得ることができる点から、1〜13μmが好ましい。上記範囲内であると、引張伸びは従来よりも高くすることができる。好ましい下限は6μmであり、好ましい上限は10μmであり、好ましくは、6〜10μmである。
【0168】
本発明のPTFE粉末としては、上記造粒を経たものである場合、優れた成形体物性をできるだけ維持し得る点から、被造粒物が上記PTFE粉末(I)、上記PTFE粉末(II)及び/又は上記PTFE粉末(III)であるものが好ましい。
【0169】
本明細書において、上記造粒を経た本発明のPTFE粉末は、被造粒物が上記PTFE粉末(I)であるものを「PTFE粉末(I′)」といい、被造粒物が上記PTFE粉末(II)であるものを「PTFE粉末(II′)」といい、被造粒物が上記PTFE粉末(III)であるものを「PTFE粉末(III′)」という。
【0170】
上記PTFE粉末(I′)、上記PTFE粉末(II′)及び上記PTFE粉末(III′)は、被造粒物が上述のように成形体物性に優れたものであり、優れた成形体物性をあまり損なうことなく、粉体物性を向上することができる。
【0171】
上記PTFE粉末(I′)、上記PTFE粉末(II′)及び上記PTFE粉末(III′)の平均粒子径としては特に限定されず、例えば、30〜800μmにすることができるが、好ましい上限は700μmであり、好ましくは30〜700μmである。
【0172】
これらの上記造粒を経た本発明のPTFE粉末の被造粒物の平均粒子径としては特に限定されないが、優れた成形体物性及び粉体物性を得やすい点から、1〜25μmが好ましい。
【0173】
本発明のPTFE粉末は、上述のように、優れた成形体物性を有することができ、特に、表面粗度Ra、引張強度又は引張伸びをそれぞれ従来のPTFE系ポリマーからなる粉末状固体よりも向上させることができるものである。本発明のPTFE粉末は、また、優れた成形体物性とともに、所望により、優れた粉体物性を有することができるものである。
【0174】
本発明のPTFE粉末がこのように有利な効果を奏する機構としては明確ではないが、以下のように考えられる。
【0175】
即ち、本発明のPTFE粉末としては上述のような成形体物性、又は、成形体物性及び粉体物性を有する粉末状固体であれば特に限定されないが、上述のように、上記造粒を経ていない場合、成形体物性に優れ、なかでも、上記PTFE粉末(I)、上記PTFE粉末(II)又は上記PTFE粉末(III)である場合、特に優れた成形体物性を得ることができる。
【0176】
従って、本発明のPTFE粉末の優れた特性は、上述のように、AIが0.25以上である非変性PTFE、若しくは、結晶化熱が18〜25J/gである変性PTFEからなる上記PTFE未粉砕粉末に上記粉砕を行ったこと、又は、変性PTFEからなり上記粉砕により平均粒子径が100μm以下になることによるものと考えられる。上記粉砕としては、特に上記繊維化防止粉砕方法による場合、実質的に繊維化しにくく、成形体物性を向上させやすい。
【0177】
本発明のPTFE粉末は、また、上述のように、上記造粒を経ることにより、粉体物性を向上させることができ、なかでも、上記PTFE粉末(I)、上記PTFE粉末(II)又は上記PTFE粉末(III)に上記造粒を行ったものである場合、優れた粉体物性と成形体物性とを併せ持つことができる。
【0178】
本発明のPTFE粉末は、以下の具体的特徴を有するものである。
【0179】
(1)本発明のPTFE粉末は、測定用成形体a1の表面粗度Raが0.92μm未満であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(1)」という。上記範囲内の表面粗度Raであると、表面平滑性に優れた成形体を得ることができる。上記範囲内の表面粗度Raは、従来のPTFE粉体では得られていなかった。
【0180】
上記PTFE粉末(1)としては、上記PTFE粉末(I)、上記PTFE粉末(III)及び上記PTFE粉末(I′)が好ましく、平均粒子径が1〜25μmの上記PTFE粉末(I)、平均粒子径が1〜13μmの上記PTFE粉末(III)及び平均粒子径が20〜250μmの上記PTFE粉末(I′)がより好ましい。
【0181】
上記PTFE粉末(1)としては、好ましくは、測定用成形体a1の表面粗度Raが0.8μm未満であるものである。このような上記PTFE粉末(1)としては、平均粒子径が1〜25μmの上記PTFE粉末(I)及び平均粒子径が20〜60μmの上記PTFE粉末(I′)が好ましい。
【0182】
上記PTFE粉末(1)としては特に限定されず、例えば、低表面粗度が要求される成形品、例えば、ボールバルブシート、無切削のシールリング、半導体の角槽に用いられる大判シート等等の成形に好適に用いることができる。
【0183】
(2)本発明のPTFE粉末は、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.9μm未満であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(2)」という。上記範囲内の見掛け密度及び表面粗度Raであると、金型等の小型化、ホッパーでのブリッジ防止等が可能になるとともに、表面平滑性に優れた成形体を得ることができる。
【0184】
上記PTFE粉末(2)としては、上記PTFE粉末(I′)が好ましい。
【0185】
従来のPTFE粉体では、見掛け密度の増加に伴って上記表面粗度Raが上昇する相関を示し、例えば見掛け密度が上記範囲内である場合、上記表面粗度Raは1.9μm以上となっていたが、上記PTFE粉末(2)は、このような相関的概念から全く外れるものである。
【0186】
上記PTFE粉末(2)としては、好ましくは、見掛け密度が0.6g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.6μm未満であるものである。
【0187】
上記PTFE粉末(2)としては、より好ましくは、見掛け密度が0.7g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.2μm未満であるものである。このような上記PTFE粉末(2)としては、平均粒子径が80〜140μmである上記PTFE粉末(I′)が好ましい。
【0188】
上記PTFE粉末(2)としては特に限定されず、例えば、低表面粗度が要求され、生産性を高めるために高い見掛け密度が要求される成形品、例えば、半導体用途や、各種角槽、スライディングパット等に用いる大判シート等が挙げられる。
【0189】
(3)本発明のPTFE粉末は、流動度が0.5回以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.9μm未満であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(3)」という。
【0190】
上記範囲内の流動度及び表面粗度Raであると、粉末流動性に優れ、ホッパーでのブリッジを防止することができるとともに、表面平滑性に優れた成形体を得ることができる。また、圧縮成形時の加圧を低くしても、優れた成形体物性を有することができるので、いわゆる大物の成形品にも好適に用いることができる。
【0191】
上記PTFE粉末(3)としては、好ましくは、流動度が0.5回以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.6μm未満であるものである。
【0192】
上記PTFE粉末(3)としては、より好ましくは、流動度が0.5回以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.2μm未満であるもの、又は、流動度が4回以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.6μm未満であるものであり、後者の方が望ましい。
【0193】
上記PTFE粉末(3)としては、更に好ましくは、流動度が4回以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.2μm未満であるものである。
【0194】
上記PTFE粉末(3)としては、上記PTFE粉末(I′)が好ましい。
【0195】
上記PTFE粉末(3)としては特に限定されず、例えば、低表面粗度が要求され、生産性を高めるために高い粉末流動性が要求される成形品、例えば、半導体の角槽に用いられる大判シート等の成形に好適に用いることができる。
【0196】
(4)本発明のPTFE粉末は、流動度が0.5回以上であり、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.9μm未満であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(4)」という。上記範囲内の流動度、見掛け密度及び表面粗度Raであると、粉末流動性に優れ、ホッパーでのブリッジ防止、金型等の小型化等が可能になるとともに、表面平滑性に優れた成形体を得ることができる。
【0197】
上記PTFE粉末(4)としては、好ましくは、流動度が0.5回以上であり、見掛け密度が0.6g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.6μm未満であるもの、又は、流動度が4回以上であり、見掛け密度が0.6g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.9μm未満であるものであり、後者の方が望ましい。
【0198】
上記PTFE粉末(4)としては、より好ましくは、流動度が0.5回以上であり、見掛け密度が0.6g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.2μm未満であるもの、又は、流動度が4回以上であり、見掛け密度が0.8g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.6μm未満であるものであり、後者の方が望ましい。
【0199】
上記PTFE粉末(4)としては、上記PTFE粉末(I′)が好ましい。
【0200】
上記PTFE粉末(4)としては特に限定されず、例えば、低表面粗度が要求され、生産性を高めるために高い粉末流動性と高い見掛け密度とが要求される成形品、例えば、半導体の角槽に用いられる大判シート等の成形に好適に用いることができる。
【0201】
(5)本発明のPTFE粉末は、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が9.1kV以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(5)」という。上記範囲内の見掛け密度及び絶縁破壊電圧であると、ホッパーでのプリッジ防止、金型等の小型化等が可能になるとともに、絶縁破壊強度に優れた成形体を得ることができる。
【0202】
従来のPTFE粉体では、見掛け密度の増加に伴って上記絶縁破壊電圧が低下する相関を示し、例えば見掛け密度が上記範囲内である場合、上記絶縁破壊電圧は9.1kV未満となっていたが、上記PTFE粉末(5)は、このような相関的概念から全く外れるものである。
【0203】
上記PTFE粉末(5)としては、好ましくは、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が12kV以上であるもの、又は、見掛け密度が0.5g/cm以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が9.1kV以上であるものであり、後者の方が望ましい。
【0204】
上記PTFE粉末(5)としては、より好ましくは、見掛け密度が0.6g/cm以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が12kV以上であるものである。
【0205】
上記PTFE粉末(5)としては、上記PTFE粉末(I′)、上記PTFE粉末(II′)及び上記PTFE粉末(III′)が好ましい。
【0206】
上記PTFE粉末(5)としては特に限定されず、例えば、高い絶縁破壊電圧が要求され、生産性を高めるために高い見掛け密度が要求される成形品、例えば、絶縁テープ、絶縁ノズル等の成形に好適に用いることができる。
【0207】
(6)本発明のPTFE粉末は、流動度が0.5回以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が9.1kV以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(6)」という。上記範囲内の流動度及び上記絶縁破壊電圧であると、粉末流動性に優れ、ホッパーでのブリッジを防止することができるとともに、絶縁破壊強度の高い成形体を得ることができる。
【0208】
従来のPTFE粉体では、流動度の増加に伴って上記絶縁破壊電圧が低下する相関を示し、例えば流動度が上記範囲内である場合、上記絶縁破壊電圧は9.1kV未満となっていたが、上記PTFE粉末(6)は、このような相関的概念から全く外れるものである。
【0209】
上記PTFE粉末(6)としては、好ましくは、流動度が0.5回以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が10kV以上であるもの、又は、流動度が4回以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が9.1kV以上であるものであり、後者が望ましい。
【0210】
上記PTFE粉末(6)としては、より好ましくは、流動度が0.5回以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が12kV以上であるもの、又は、流動度が4回以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が10kV以上であるものであり、後者が上記PTFE粉末(6)として特に好ましい。
【0211】
上記PTFE粉末(6)としては、上記PTFE粉末(I′)、上記PTFE粉末(II′)及び上記PTFE粉末(III′)が好ましい。上記PTFE粉末(I′)としては平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE粉末(I)に上記造粒を行ったものが好ましい。
【0212】
上記PTFE粉末(6)としては特に限定されず、例えば、高い絶縁破壊電圧が要求され、生産性を高めるために高い粉末流動性が要求される成形品、例えば、絶縁テープ、絶縁ノズル等の成形に好適に用いることができる。
【0213】
(7)本発明のPTFE粉末は、流動度が0.5回以上であり、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が9.1kV以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(7)」という。上記範囲内の流動度、見掛け密度及び絶縁破壊電圧であると、ホッパーでのブリッジ防止、金型等の小型化等が可能になるとともに、絶縁破壊強度に優れた成形体を得ることができる。
【0214】
上記PTFE粉末(7)は、上記PTFE粉末(5)及び上記PTFE粉末(6)について上述したように、従来のPTFE粉体では流動度又は見掛け密度の増加に伴って上記絶縁破壊電圧が低下する相関を示していたが、このような相関的概念から全く外れるものである。
【0215】
上記PTFE粉末(7)としては、好ましくは、流動度が0.5回以上であり、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が10kV以上であるもの、又は、流動度が4回以上であり、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が9.1kV以上であるものであり、後者が望ましい。
【0216】
上記PTFE粉末(7)としては、より好ましくは、流動度が0.5回以上であり、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が12kV以上であるもの、又は、流動度が4回以上であり、見掛け密度が0.6g/cm以上であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が9.1kV以上であるものであり、後者が上記PTFE粉末(7)として特に好ましい。
【0217】
上記PTFE粉末(7)としては、上記PTFE粉末(I′)、上記PTFE粉末(II′)及び上記PTFE粉末(III′)が好ましい。上記PTFE粉末(I′)としては平均粒子径1〜13μmである上記PTFE粉末(I)に上記造粒を行ったものが好ましい。
【0218】
上記PTFE粉末(7)としては特に限定されず、例えば、高い絶縁破壊電圧が要求され、生産性を高めるために高い見掛け密度と高い粉末流動性とが要求される成形品、例えば、絶縁テープ、絶縁ノズル等の成形に好適に用いることができる。
【0219】
(8)本発明のPTFE粉末は、測定用成形体a3の引張強度が58.7MPa以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(8)」という。上記範囲内の引張強度であると、引張力を加えた場合であっても機械的強度に優れた成形体を得ることができる。上記範囲内の引張強度は、従来のPTFE粉体では得られていなかった。
【0220】
上記PTFE粉末(8)としては、上記PTFE粉末(I)及び上記PTFE粉末(II)が好ましく、平均粒子径が40〜60μmである上記PTFE粉末(I)及び平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE粉末(II)がより好ましい。
【0221】
上記PTFE粉末(8)としては、好ましくは、測定用成形体a3の引張強度が60MPa以上であるものである。
【0222】
上記PTFE粉末(8)としては、より好ましくは、測定用成形体a3の引張強度が65MPa以上であるものである。このような上記PTFE粉末(8)としては、平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE粉末(II)が好ましい。
【0223】
上記PTFE粉末(8)としては特に限定されず、例えば、高い引張強度が要求される成形品、例えば、シールリング、ボールバルブシート等の成形に好適に用いることができる。
【0224】
(9)本発明のPTFE粉末は、測定用成形体a3の引張伸びが556%以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(9)」という。上記範囲内の引張伸びであると、引張り時に高い伸びを示し、機器・器具類等への装着時や加工時に切断しにくい成形体を得ることができる。上記範囲内の引張伸びは、従来のPTFE粉体では得られていなかった。
【0225】
上記PTFE粉末(9)としては、上記PTFE粉末(I)、上記PTFE粉末(II)及び上記PTFE粉末(III)が好ましく、平均粒子径が1〜6μmである上記PTFE粉末(I)、平均粒子径が1〜6μmである上記PTFE粉末(II)及び平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE粉末(III)がより好ましい。
【0226】
上記PTFE粉末(9)としては、好ましくは、測定用成形体a3の引張伸びが600%以上であるものである。このような上記PTFE粉末(9)としては、平均粒子径が1〜6μmである上記PTFE粉末(II)が好ましい。
【0227】
上記PTFE粉末(9)としては特に限定されず、例えば、高い引張伸びが要求される成形品、例えば、エンドレスタイプのシールリング等の成形に好適に用いることができる。
【0228】
(10)本発明のPTFE粉末は、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが431%以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(10)」という。上記範囲内の見掛け密度及び引張伸びであると、ホッパーでのブリッジ防止、金型等の小型化等が可能になるとともに、引張り時に高い伸びを示し、機器・器具類等への装着時や加工時に切断しにくい成形体を得ることができる。
【0229】
上記PTFE粉末(10)としては、好ましくは、見掛け密度が0.6g/cm以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが450%以上であるものである。
【0230】
上記PTFE粉末(10)としては、上記PTFE粉末(I′)が好ましく、平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE粉末(I)に上記造粒を行ったものがより好ましい。
【0231】
上記PTFE粉末(10)としては特に限定されず、例えば、高い引張伸びが要求され、生産性を高めるために高い見掛け密度が要求される成形品、例えば、エンドレスタイプのシールリング等の成形に好適に用いることができる。
【0232】
(11)本発明のPTFE粉末は、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.5μm未満であり、測定用成形体a3の引張強度が47.8MPa以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(11)」という。上記範囲内の表面粗度Ra及び引張強度であると、表面平滑性に優れ、引張力を加えた場合であっても機械的強度に優れた成形体を得ることができる。
【0233】
上記PTFE粉末(11)としては、上記PTFE粉末(I)、上記PTFE粉末(II)及び上記PTFE粉末(III)が好ましい。
【0234】
上記PTFE粉末(11)としては、好ましくは、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.2μm未満であり、測定用成形体a3の引張強度が50MPa以上であるもの、又は、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.5μm未満であり、測定用成形体a3の引張強度が65MPa以上であるものであり、前者よりも後者の方が望ましい。
【0235】
前者としては、上記PTFE粉末(I)及び上記PTFE粉末(II)が好ましく、これらはそれぞれ平均粒子径が13〜60μmであるものがより好ましい。後者としては、上記PTFE粉末(II)が好ましく、平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE粉末(II)がより好ましい。
【0236】
上記PTFE粉末(11)としては、より好ましくは、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.5μm未満であり、測定用成形体a3の引張強度が65MPa以上であるものである。
【0237】
上記PTFE粉末(11)としては特に限定されず、例えば、低表面粗度が要求され、高い引張強度が要求される成形品、例えば、ボールバルブシートの成形に好適に用いることができる。
【0238】
(12)本発明のPTFE粉末は、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.2μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが423%以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(12)」という。上記範囲内の表面粗度Ra及び引張伸びであると、表面平滑性に優れ、引張り時に高い伸びを示し、機器・器具類等への装着時や加工時に切断しにくい成形体を得ることができる。
【0239】
上記PTFE粉末(12)としては、上記PTFE粉末(I)、上記PTFE粉末(II)、上記PTFE粉末(III)及び上記PTFE粉末(I′)が好ましい。上記PTFE粉末(I′)としては、平均粒子径が6〜13μmである上記PTFE粉末(I)に上記造粒を行い、平均粒子径が20〜250μmであるものが好ましい。
【0240】
上記PTFE粉末(12)としては、好ましくは、測定用成形体a1の表面粗度Raが0.92μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが556%以上であるものである。このような上記PTFE粉末(12)としては、上記PTFE粉末(I)及び上記PTFE粉末(II)が好ましく、平均粒子径が1〜6μmである上記PTFE粉末(I)及び平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE粉末(II)がより好ましい。
【0241】
上記PTFE粉末(12)としては特に限定されず、例えば、機器・器具類等への装着時の高伸びと、切削することなく低表面粗度が要求される成形品、例えば、無切削のシールリングの成形に好適に用いることができる。
【0242】
(13)本発明のPTFE粉末は、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.4μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが370%以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(13)」という。上記範囲内の見掛け密度、表面粗度Ra及び引張伸びであると、ホッパーでのブリッジ防止、金型等の小型化等が可能になるとともに、表面平滑性に優れ、引張り時に高い伸びを示すので機器・器具類等への装着時や加工時に切断しにくい成形体を得ることができる。
【0243】
上記PTFE粉末(13)としては、上記PTFE粉末(I′)及び上記PTFE粉末(II′)が好ましい。
【0244】
上記PTFE粉末(13)としては、好ましくは、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.9μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが400%以上であるもの、又は、見掛け密度が0.6g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.4μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが370%以上であるものであり、前者よりも後者の方が望ましい。前者としては、上記PTFE粉末(I′)が好ましい。後者としては、上記PTFE粉末(I′)及び上記PTFE粉末(II′)が好ましい。
【0245】
上記PTFE粉末(13)としては、より好ましくは、流動度が4回以上であり、見掛け密度が0.6g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.9μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが400%以上であるものである。このような上記PTFE粉末(13)としては、上記PTFE粉末(I′)が好ましい。
【0246】
上記PTFE粉末(13)としては特に限定されず、例えば、生産性の点から高見掛け密度を有し、無切削時に低表面粗度を有し、機器・器具類等への装着時の高伸びが要求される成形品、例えば、無切削のシールリングの成形に好適に用いることができる。
【0247】
(14)本発明のPTFE粉末は、流動度が0.5回以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.4μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが370%以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(14)」という。上記範囲内の流動度、表面粗度Ra及び引張伸びであると、ホッパーでのブリッジ防止が可能になるとともに、表面平滑性に優れ、引張り時に高い伸びを示すので機器・器具類等への装着時や加工時に切断しにくい成形体を得ることができる。
【0248】
上記PTFE粉末(14)としては、上記PTFE粉末(I′)及び上記PTFE粉末(II′)が好ましい。
【0249】
上記PTFE粉末(14)としては、好ましくは、流動度が4回以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.4μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが370%以上であるもの、又は、流動度が4回以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.9μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが400%以上であるものであり、前者よりも後者の方が望ましい。前者としては、上記PTFE粉末(I′)及び上記PTFE粉末(II′)が好ましい。後者としては、上記PTFE粉末(I′)が好ましい。
【0250】
上記PTFE粉末(14)としては特に限定されず、例えば、生産性の点から高い粉末流動度を有し、無切削時に低表面粗度を有し、機器・器具類等への装着時の高伸びが要求される成形品、例えば、無切削のシールリングの成形に好適に用いることができる。
【0251】
(15)本発明のPTFE粉末は、流動度が0.5回以上であり、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.4μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが370%以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(15)」という。上記範囲内の流動度、見掛け密度、表面粗度Ra及び引張伸びであると、ホッパーでのブリッジ防止、金型等の小型化等が可能になるとともに、表面平滑性に優れ、引張り時に高い伸びを示すので機器・器具類等への装着時や加工時に切断しにくい成形体を得ることができる。
【0252】
上記PTFE粉末(15)としては、上記PTFE粉末(I′)及び上記PTFE粉末(II′)が好ましい。
【0253】
上記PTFE粉末(15)としては、好ましくは、流動度が0.5回以上であり、見掛け密度が0.6g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.4μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが370%以上であるもの、又は、流動度が4回以上であり、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.4μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが370%以上であるものであり、後者の方が望ましい。
【0254】
上記PTFE粉末(15)としては、より好ましくは、流動度が4回以上であり、見掛け密度が0.6g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.4μm未満であり、測定用成形体a3の引張伸びが370%以上であるものである。
【0255】
上記PTFE粉末(15)としては特に限定されず、例えば、生産性の点から高流動度と高見掛け密度とを有し、無切削時に低表面粗度を有し、機器・器具類等への装着時の高伸びが要求される成形品、例えば、無切削のシールリングの成形に好適に用いることができる。
【0256】
(16)本発明のPTFE粉末は、測定用成形体a1の表面粗度Raが0.92μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が10kV以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(16)」という。上記範囲内の表面粗度Ra及び絶縁破壊電圧であると、表面平滑性に優れ、絶縁破壊強度の高い成形体を得ることができる。
【0257】
上記PTFE粉末(16)としては、上記PTFE粉末(I)及び上記PTFE粉末(III)が好ましく、平均粒子径が1〜25μmである上記PTFE粉末(I)及び平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE粉末(III)がより好ましい。
【0258】
上記PTFE粉末(16)としては、好ましくは、測定用成形体a1の表面粗度Raが0.8μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が12kV以上であるものである。このような上記PTFE粉末(16)としては、平均粒子径が1〜25μmである上記PTFE粉末(I)が好ましい。
【0259】
上記PTFE粉末(16)としては特に限定されず、例えば、低表面粗度が要求され、高い絶縁破壊電圧が要求される成形品、例えば、絶縁テープ、絶縁ノズル等の成形に好適に用いることができる。
【0260】
(17)本発明のPTFE粉末は、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.5μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が8.5kV以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(17)」という。上記範囲内の見掛け密度、表面粗度Ra及び絶縁破壊電圧であると、ホッパーでのブリッジ防止、金型等の小型化等が可能になるとともに、表面平滑性に優れ、絶縁破壊強度の高い成形体を得ることができる。
【0261】
上記PTFE粉末(17)としては、上記PTFE粉末(I′)及び上記PTFE粉末(II′)が好ましい。
【0262】
上記PTFE粉末(17)としては、好ましくは、見掛け密度が0.6g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.5μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が8.5kV以上であるものである。
【0263】
上記PTFE粉末(17)としては、より好ましくは、見掛け密度が0.8g/cm以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.5μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が8.5kV以上であるものである。このような上記PTFE粉末(17)としては、上記PTFE粉末(I′)が好ましい。
【0264】
上記PTFE粉末(17)としては特に限定されず、例えば、生産性の点から高い見掛け密度が要求され、低表面粗度と高い絶縁破壊電圧とが要求される成形品、例えば、絶縁テープ、絶縁ノズル等の成形に好適に用いることができる。
【0265】
(18)本発明のPTFE粉末は、流動度が0.5回以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.5μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が8.5kV以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(18)」という。上記範囲内の流動度、表面粗度Ra及び絶縁破壊電圧であると、ホッパーでのブリッジ防止が可能になるとともに、表面平滑性に優れ、絶縁破壊強度の高い成形体を得ることができる。
【0266】
上記PTFE粉末(18)としては、上記PTFE粉末(I′)及び上記PTFE粉末(II′)が好ましい。
【0267】
上記PTFE粉末(18)としては、好ましくは、流動度が0.5回以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.9μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が9.1kV以上であるもの、又は、流動度が4回以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが2.5μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が8.5kV以上であるものであり、後者の方が望ましい。
【0268】
上記PTFE粉末(18)としては、より好ましくは、流動度が4回以上であり、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.9μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が9.1kV以上であるものである。このような上記PTFE粉末(18)としては、上記PTFE粉末(I′)が好ましい。
【0269】
上記PTFE粉末(18)としては特に限定されず、例えば、生産性の点から高い粉末流動性が要求され、低表面粗度と高い絶縁破壊電圧とが要求される成形品、例えば、絶縁テープ、絶縁ノズル等の成形に好適に用いることができる。
【0270】
(19)本発明のPTFE粉末は、流動度が0.5回以上であり、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a1の成形品の表面粗度Raが2.5μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が8.5kV以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(19)」という。上記範囲内の流動度、見掛け密度、表面粗度Ra及び絶縁破壊電圧であると、ホッパーでのブリッジ防止、金型等の小型化等が可能になるとともに、表面平滑性に優れ、絶縁破壊強度の高い成形体を得ることができる。
【0271】
上記PTFE粉末(19)としては、上記PTFE粉末(I′)及び上記PTFE粉末(II′)が好ましい。
【0272】
上記PTFE粉末(19)としては、好ましくは、流動度が0.5回以上であり、見掛け密度が0.6g/cm以上であり、測定用成形体a1の成形品の表面粗度Raが2.5μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が8.5kV以上であるもの、又は、流動度が4回以上であり、見掛け密度が0.45g/cm以上であり、測定用成形体a1の成形品の表面粗度Raが2.5μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が8.5kV以上であるものであり、後者の方が望ましい。
【0273】
上記PTFE粉末(19)としては、より好ましくは、流動度が4回以上であり、見掛け密度が0.6g/cm以上であり、測定用成形体a1の成形品の表面粗度Raが2.5μm未満であり、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が8.5kV以上であるものである。
【0274】
上記PTFE粉末(19)としては特に限定されず、例えば、生産性の点から高い粉末流動性と見掛け密度とが要求され、低表面粗度と高い絶縁破壊電圧とが要求される成形品、例えば、絶縁テープ、絶縁ノズル等の成形に好適に用いることができる。
【0275】
(20)本発明のPTFE粉末は、測定用成形体a3の引張強度が47.8MPa以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが451%以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(20)」という。上記範囲内の引張強度及び引張伸びであると、引張力を加えた場合であっても機械的強度に優れるとともに、高い伸びを示し、機器・器具類等への装着時や加工時に切断しにくい成形体を得ることができる。
【0276】
上記PTFE粉末(20)としては、上記PTFE粉末(I)、上記PTFE粉末(II)及び上記PTFE粉末(III)が好ましい。
【0277】
上記PTFE粉末(20)としては、好ましくは、測定用成形体a3の引張強度が50MPa以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが500%以上であるものである。このような上記PTFE粉末(20)としては、上記PTFE粉末(II)が好ましい。
【0278】
上記PTFE粉末(20)としては、より好ましくは、測定用成形体a3の引張強度が65MPa以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが550%以上であるものである。
【0279】
上記PTFE粉末(20)としては特に限定されず、例えば、機器・器具類等への装着時の高伸びと高強度とが要求される成形品、例えば、エンドレスタイプのシールリングの成形に好適に用いることができる。
【0280】
(21)本発明のPTFE粉末は、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が11.5kV以上であり、測定用成形体a3の引張強度が47.8MPa以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(21)」という。上記範囲内の絶縁破壊電圧及び引張強度であると、絶縁破壊強度が高く、引張力を加えた場合であっても機械的強度に優れた成形体を得ることができる。
【0281】
上記PTFE粉末(21)としては、上記PTFE粉末(I)、上記PTFE粉末(II)及び上記PTFE粉末(III)が好ましい。
【0282】
上記PTFE粉末(21)としては、好ましくは、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が12kV以上であり、測定用成形体a3の引張強度が50MPa以上であるものである。このような上記PTFE粉末(21)としては、上記PTFE粉末(I)及び上記PTFE粉末(II)が好ましく、上記PTFE粉末(I)としては、平均粒子径が13〜60μmであるものが好ましい。
【0283】
上記PTFE粉末(21)としては、より好ましくは、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が13kV以上であり、測定用成形体a3の引張強度が65MPa以上であるものである。このような上記PTFE粉末(21)としては、上記PTFE粉末(II)が好ましい。
【0284】
上記PTFE粉末(21)としては特に限定されず、例えば、高い破壊電圧と、機器・器具類等へ巻き付け時に高強度が要求される成形品、例えば、絶縁テープ、絶縁ノズルの成形に好適に用いることができる。
【0285】
(22)本発明のPTFE粉末は、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が10kV以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが556%以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(22)」という。上記範囲内の絶縁破壊電圧及び引張伸びであると、絶縁破壊強度が高く、引張り時に高い伸びを示し、機器・器具類等への装着時や加工時に切断しにくい成形体を得ることができる。
【0286】
上記PTFE粉末(22)としては、上記PTFE粉末(I)、上記PTFE粉末(II)及び上記PTFE粉末(III)が好ましく、平均粒子径が1〜6μmである上記PTFE粉末(I)、平均粒子径が1〜6μmである上記PTFE粉末(II)及び平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE粉末(III)がより好ましい。
【0287】
上記PTFE粉末(22)としては、好ましくは、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が13kV以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが600%以上であるものである。このような上記PTFE粉末(22)としては、平均粒子径が1〜13μmである上記PTFV粉末(III)が好ましい。
【0288】
上記PTFE粉末(22)としては特に限定されず、例えば、高い絶縁破壊電圧と、機器・器具類等への装着時の高伸びが要求される成形品、例えば、絶縁テープ、絶縁ノズルの成形に好適に用いることができる。
【0289】
(23)本発明のPTFE粉末は、測定用成形体a1の表面粗度Raが1.2μm未満であり、測定用成形体a3の引張強度が47.8MPa以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが423%以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(23)」という。上記範囲内の表面粗度Ra、引張強度及び引張伸びであると、表面平滑性に優れ、引張力を加えた場合であっても、機械的強度に優れ、高い伸びを示して機器・器具類等への装着時や加工時に切断しにくい成形体を得ることができる。
【0290】
上記PTFE粉末(23)としては、上記PTFE粉末(I)、上記PTFE粉末(II)及び上記PTFE粉末(III)が好ましい。
【0291】
上記PTFE粉末(23)としては、好ましくは、測定用成形体a1の表面粗度Raが0.92μm未満であり、測定用成形体a3の引張強度が47.8MPa以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが556%以上であるものである。このような上記PTFE粉末(23)としては、平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE粉末(III)が好ましい。
【0292】
上記PTFE粉末(23)としては特に限定されず、例えば、無切削時に低表面粗度を有し、機器・器具類等への装着時の高強度と高伸びとが要求される成形品、例えば、無切削のシールリングの成形に好適に用いることができる。
【0293】
(24)本発明のPTFE粉末は、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が10kV以上であり、測定用成形体a3の引張強度が47.8MPa以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが451%以上であることを特徴とするものである。本明細書において、このような特徴を有する本発明のPTFE粉末を、「PTFE粉末(24)」という。上記範囲内の絶縁破壊電圧、引張強度及び引張伸びであると、絶縁破壊強度が高く、引張力を加えた場合であっても、機械的強度に優れ、高い伸びを示して機器・器具類等への装着時や加工時に切断しにくい成形体を得ることができる。
【0294】
上記PTFE粉末(24)としては、上記PTFE粉末(I)、上記PTFE粉末(II)及び上記PTFE粉末(III)が好ましく、平均粒子径が6〜13μmである上記PTFE粉末(I)、平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE粉末(II)及び平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE粉末(III)がより好ましい。
【0295】
上記PTFE粉末(24)としては、好ましくは、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が13kV以上であり、測定用成形体a3の引張強度が47.8MPa以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが451%以上であるものである。
【0296】
上記PTFE粉末(24)としては、より好ましくは、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧が13kV以上であり、測定用成形体a3の引張強度が65MPa以上であり、測定用成形体a3の引張伸びが500%以上であるものである。このような上記PTFE粉末(24)としては、平均粒子径が6〜13μmである上記PTFE粉末(II)が好ましい。
【0297】
上記PTFE粉末(24)としては特に限定されないが、高い絶縁破壊電圧と、機器・器具類等への装着時の高強度と高伸びとが要求される成形品、例えば、絶縁テープ、絶縁ノズルの成形に好適に用いることができる。
【0298】
本発明のPTFE粉末は、上述のように、成形体において、表面粗度Ra、引張強度及び/又は引張伸びを従来よりも向上させることができ、また、絶縁破壊強度を良好にすることができ、所望により、見掛け密度及び/又は粉末流動性にも優れたものにすることができるものである。
【0299】
従って、本発明のPTFE粉末は、上述のように、これらの成形体物性の少なくとも1つが要求される成形品、切削等の表面平滑化処理が望まれない成形品等の各種成形品の成形に好適に用いることができる。本発明のPTFE粉末は、また、圧縮成形時の加圧を低くしてもこれらの成形体物性に優れる点から、いわゆる大物の成形品の成形にも好適である。
【0300】
本発明のPTFE粉末を用いる成形の方法としては特に限定されず、例えば、PTFE系ポリマーの形成用粉末に通常用いられる方法等が用いられ、例えば、圧縮成形、ラム押出成形法等の焼結成形法に好適に用いられる。各成形方法の成形条件としては特に限定されず、例えば従来公知の方法を用いることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
【0301】
本発明のPTFE粉末を用いた成形時には、所望により優れた粉体物性が得られるので、ホッパーでのブリッジの防止、成形機の金型や細径のシリンダーへの均一な充填等の取扱い性の向上や、金型等の小型化が可能となり、例えば自動圧縮成形機等にも好適に用いることができる。
【0302】
本発明のPTFE成形用粉末製造方法は、PTFE成形用粉末を製造するためのものである。
【0303】
本明細書において、上記「PTFE成形用粉末」とは、PTFE系ポリマーからなる粉末状固体であって、成形に用いられるものであり、本発明のPTFE成形用粉末製造方法により得られるものを意味する。上記PTFE系ポリマーは、本発明のPTFE粉末について上述したように、変性PTFE及び/又は非変性PTFEからなるものである。上記成形としては特に限定されないが、圧縮成形、ラム押出成形、等圧圧縮成形等に好適に用いることができる。
【0304】
本発明のPTFE成形用粉末製造方法は、PTFE未粉砕粉末を粉砕することよりなるものである。
【0305】
上記PTFE未粉砕粉末は、懸濁重合により得られたPTFE系ポリマーからなるものである。
【0306】
上記PTFE未粉砕粉末は、懸濁重合により得られたものであれば、非変性PTFEのみからなるものであってもよいし、変性PTFEのみからなるものであってもよいし、非変性PTFE及び変性PTFEからなるものであってもよいし、これらに加えフィラー、添加剤等を含有する混合物であってもよい。
【0307】
上記「変性PTFE」は、本発明のPTFE粉末について上述したように、単量体成分としてテトラフルオロエチレン〔TFE〕及び少量のその他の共単量体を含有し、共重合することにより得られる共重合体を意味する。
【0308】
上記その他の共単量体としては、本発明のPTFE粉末について上述したその他の共単量体と同様である。
【0309】
上記変性PTFEにおいて、上記テトラフルオロエチレンと、上記その他の共単量体とのモル比としては、種類によるが、上記テトラフルオロエチレン:上記その他の共単量体が99:1〜99.999:0.001であることが好ましい。上記その他の共単量体の含有率が0.001モル%未満であると、耐クリープ性(全変形)が低下する場合があり、1モル%を超えると、引張強度等が低下しやすく、また、高価なパーフルオロ(ビニルエーテル)を用いる場合、含有率に見合った耐クリープ性の改善がみられず経済的に不利となる場合がある。更に好ましくは、99.97:0.03〜99.8:0.2である。上記その他の共単量体の含有率は、上記テトラフルオロエチレンと上記その他の共単量体との合計モル数の0.03モル%がより好ましい下限であり、0.2モル%がより好ましい上限である。
【0310】
本発明のPTFE成形用粉末製造方法において、上記変性PTFEは、結晶化熱が18〜25J/gであるものが好ましい。
【0311】
結晶化熱は、上述したように、PTFE系ポリマーの分子量の指標となるものであり、結晶化熱が高いほど、分子量が高い傾向にある。上記変性PTFEは、上記範囲内の結晶化熱を有することにより比較的高分子量を有することとなり、得られる上記PTFE成形用粉末から成形される成形体は、後述する成形体物性に優れる傾向にある。より好ましい上限は23.5J/gであり、より好ましくは、18〜23.5J/gである。
【0312】
上記変性PTFEは、標準比重〔SSG〕が2.16以下であるものが好ましい。SSGは、PTFE系ポリマーの分子量の指標となるものであり、SSGが低いほど、分子量が高い傾向にある。上記範囲内のSSGであれば、上記変性PTFEは比較的高分子量であることとなり、得られる上記PTFE成形用粉末から成形される成形体は、後述する成形体物性に優れる傾向にある。好ましい下限は2.14であり、好ましくは2.14〜2.16である。
【0313】
本明細書において、SSGは、ASTM D−4894に準じて、測定する。被測定粉末12gを直径28.6mmの円筒状金型で成形し、得られた成形物を、初期温度290℃に設定し、昇温速度120℃/時で360℃まで昇温し、この温度で30分保持し、次いで降温速度60℃/時で294℃まで冷却し、この温度で24分保持する焼成条件で焼成し、得られた焼成物を、自動比重計(商品名、島津製作所社製)を用いて測定する。
【0314】
上記変性PTFEとしては、例えば平均分子量、共重合組成、SSG及び/又は結晶化熱が異なるものを1種又は2種以上用いてよい。
【0315】
本明細書において、上記「非変性PTFE」とは、本発明のPTFE粉末について上述した非変性PTFEと同様に、単量体成分として上記その他の共単量体を含有せずに重合することにより得られるTFEのホモポリマーを意味する。
【0316】
上記非変性PTFEは、アモルファスインデックス〔AI〕が0.25以上であることが好ましい。
【0317】
従って、上記非変性PTFE(ホモPTFE)は、本発明のPTFE粉末について上述したように、上記範囲内のAI値を有することにより結晶化度が極めて低いこととなり、得られる上記PTFE成形用粉末から成形される成形体は、後述する成形体物性に優れる傾向にある。AIは、0.25〜0.4であってよいが、好ましい下限は0.3であり、好ましくは、0.3〜0.4である。
【0318】
上記非変性PTFEとしては、例えばAI値及び/又は平均分子量が異なるものを1種又は2種以上用いてもよい。
【0319】
本発明のPTFE成形用粉末製造方法において、上記PTFE系ポリマーは、懸濁重合により得られるものである。
【0320】
上記懸濁重合の条件としては特に限定されないが、本発明のPTFE粉末について上述した懸濁重合と同様に、例えばWO93/16126号公報に記載された方法により行うことが好ましい。
【0321】
上記変性PTFEの重合反応においては、上述の範囲内の半減期又は分解量を有する開始剤を選択したり、重合温度や重合時間を調整すること等により、上述の範囲内の結晶化熱を有するように調整することができる。
【0322】
上記非変性PTFEの重合反応においては、例えば、PTFE系ポリマーの重合温度を比較的低くすること等により、上述の範囲内のAI値を得ることができる。上述の範囲のAI値を容易に得ることができるPTFE系ポリマーの重合温度は、上述のPTFE粉末(I)のAIに関して説明した重合温度と同様である。
【0323】
上記重合においては、本発明のPTFE粉末について上述した重合と同様に、乳化剤を添加してもよい。
【0324】
重合時間は、通常、8〜25時間である。
【0325】
上記重合により得られる上記PTFE系ポリマーは、重合上がりの原粉末として取り出すことができる。
【0326】
本発明のPTFE成形用粉末製造方法は、上記PTFE未粉砕粉末を粉砕することよりなるものである。
【0327】
本明細書において、上記「PTFE未粉砕粉末」とは、本発明のPTFE粉末について上述したように、PTFE系ポリマーの重合上がりの原粉末に対し、必要に応じ、粗粉砕、洗浄及び/又は乾燥を行ったものであって、上記粉砕又は造粒の何れをも行っていないものを意味する。
【0328】
従って、上記PTFE未粉砕粉末としては、上記PTFE系ポリマーの重合上がりの原粉末であってもよいし、上記重合上がりの原粉末に対し、必要に応じ、粗粉砕、洗浄及び/又は乾燥の各処理を施したものであってもよい。
【0329】
上記粗粉砕、上記洗浄及び上記乾燥の方法としては、特に限定されず、例えば、本発明のPTFE粉末について上述したように、従来公知の方法を用いることができる。
【0330】
上記粉砕は、得られる粒子が実質的に繊維化しないように行うものであることを特徴とする。
【0331】
上記粉砕は、得られるPTFE成形用粉末が「実質的に繊維化しない」ものであれば、少量の繊維化が生じるものであってもよい。
【0332】
上記粉砕により得られる粒子が実質的に繊維化していないことは、本発明のPTFE粉末について上述したように、例えば得られた粒子を電子顕微鏡写真により観察した場合、粒子表面に繊維状片が実質的に出ておらず、滑らかな曲面を有することによっても示すことができる。
【0333】
上記粉砕の方法としては、例えば、粉砕時に加える剪断力をできるだけ少なくすることができるものが好ましい。このような上記粉砕の方法としては特に限定されず、例えば、エアージェット粉砕法、冷凍粉砕法、冷凍エアージェット粉砕法、ウォータージェット粉砕法等が挙げられる。上記粉砕の方法は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0334】
上記エアージェット粉砕法は、圧縮空気を噴射することにより被粉砕樹脂粒子を粉砕する方法である。上記エアージェット粉砕法は、例えばエアージェット粉砕機を用いて行うことができる。このような粉砕方法としては、例えば、特願2000−165035号公報及び特願2000−319668号公報に記載された方法等を用いることができる。
【0335】
上記エアージェット粉砕法としては、例えば、ジェット粉砕装置における粉砕室の上部又は下部から連続して供給される被粉砕樹脂粒子を流動化させながら、上記粉砕室に配置されるジェットノズルから圧縮空気を粉砕室の軸心上に向けて噴射し、被粉砕樹脂粒子同士を衝突させ、更に上記粉砕室の底壁に衝突させることにより粉砕し、目的とする粒子径の粉砕樹脂粒子を回収する方法等が挙げられる。
【0336】
上記ジェットノズルとしては、例えば直径が5〜10mmのものを3〜5本用いることができる。上記圧縮空気としては、例えば3〜30m/分のものを用いることができる。
【0337】
上記粉砕室の底壁としては、上記ジェットノズルに対して平行な平坦面を全面又は一部に有するもの(以下、「底壁a」という)、又は、円錐形の突起が上記噴射点の直下に形成されたもの(以下、「底壁b」という)を用いる。上記底壁aとしては、底壁自体を上記平坦面としたもの、例えば図3の部分切欠斜視図に示すようなものであってもよいし、底壁に設けられた円錐台形の平坦な頂面を上記平坦面としたもの、例えば図4の要部縦断面図に示すようなものであってもよい。
【0338】
上記ジェット粉砕装置としては特に限定されず、例えば、図3及び図4に示すジェット粉砕装置A等が挙げられる。上記ジェット粉砕装置Aは、図3及び図4に示すように、円筒状の粉砕室1と、上記粉砕室1の上部に配置される被粉砕樹脂粒子の原料供給手段と、上記粉砕室1の上部に配置され、粉砕された粉砕樹脂粒子を分級する分級手段2と、上記粉砕室1の底壁3から胴部4の所定の部位に上記粉砕室1内の噴射点(軸心上の1点)5に向けて配置される3本のジェットノズル6と、圧縮空気発生手段と、発生した圧縮空気を上記ジェットノズル6に供給するガスマニホールド7及び配管8と、分級された製品を捕捉する粉集器とを備えている。上記原料供給手段としては、ホッパー等を用いることができ、上記粉砕室1に供給管9により接続されている。上記分級手段は、分級器ローター10と回転駆動モータとからなるものを用いることができる。上記分級器ローター10と粉集器とは排出管11により接続されている。
【0339】
上記ジェット粉砕装置Aでは、上記粉砕室1の上部供給口13に矢印S方向からから被粉砕樹脂粒子が連続して投入され、上記粉砕室1内を落下するが、上記ジェットノズル6から噴射される圧縮空気の噴射流により上記噴射点に吹付けられ、上記噴射点の周囲に形成される粉砕領域で被粉砕樹脂粒子同士が衝突して粉砕される。次いで上記噴射点の周辺で衝突して飛散した粉砕粒子の大部分は、上記ジェットノズル6からの噴射流によって上記底壁3の平坦面に衝突し、更に粉砕される。このとき、上記ジェットノズル6が粉砕効率の良い位置に配置されているので効率良く被粉砕樹脂粒子を粉砕することができ、微粉砕された粒子の量が多くなる。このようにして粉砕された樹脂粒子は、上記粉砕室1の上部に配置される分級装置の上記分級器ローター10の回転力により上記排出管11を通して吸引され、集粉器に集められ、回収される。
【0340】
上記底壁aとして図4に示すものは、粉砕室1の底壁3に円錐台形の突起20が形成され、この円錐台形の頂部が平坦面21を形成している。
【0341】
上記底壁bは、上記底壁a1の平坦面に代わり、円錐形の突起を設けたものである。上記円錐形の突起を設けることにより、上記噴射点で相互に衝突し粉砕された樹脂粒子が突起の表面に衝突することにより、粉砕を促進させるとともに、上記粉砕室内の空気の流れをスムーズにし、被粉砕樹脂粒子の流動を促進することにより粒子の衝突効率を向上させ、更に粉砕樹脂粒子の回収をも容易にすることができる。
【0342】
上記冷凍粉砕法は、冷凍させた状態にある被粉砕樹脂粒子を、ハンマーミル等による衝撃力を利用することにより粉砕する方法である。上記冷凍させた状態にある被粉砕樹脂粒子は、通常、−100℃以下であり、例えば、−140〜−110℃等であってよい。
【0343】
上記冷凍粉砕法は、例えば冷凍粉砕機を用いて行うことができる。上記冷凍粉砕法としては、例えば、液体窒素等の低温の液体気体とともに粉砕機に供給すること等により冷凍させた被粉砕樹脂粒子を、ハンマーミル状の衝撃式粉砕機によって粉砕する方法等が挙げられる。
【0344】
上記冷凍エアージェット粉砕法は、冷凍させた状態にある被粉砕樹脂粒子を、圧縮空気を噴射することにより粉砕する方法である。上記冷凍させた状態にある被粉砕樹脂粒子は、上記冷凍粉砕法と同様、通常、−100℃以下であり、例えば、−140〜−110℃等であってよい。
【0345】
上記冷凍エアージェット粉砕法は、例えば上記冷凍エアージェット粉砕機を用いて行うことができる。上記冷凍エアージェット粉砕法としては、例えば、液体窒素等の液化ガスとともに粉砕機に供給すること等により冷凍させた被粉砕樹脂粒子を、上記エアージェット粉砕法と同様、圧縮空気を噴射して粉砕する方法等が挙げられる。
【0346】
上記ウォータージェット粉砕法は、被粉砕樹脂粒子を、水を噴射することにより粉砕する方法である。上記ウォータージェット粉砕法は、例えばウォータージェット粉砕機を用いて行うことができる。上記ウォータージェット粉砕法としては、例えば、粉砕機の粉砕室内のジェットノズルから噴出させた水により、被粉砕樹脂粒子を粉砕させる方法等が挙げられる。
【0347】
上記粉砕の方法としては、冷凍粉砕法、冷凍エアージェット粉砕法及びエアージェット粉砕法が好ましく、冷凍エアージェット粉砕法がより好ましい。
【0348】
本発明のPTFE成形用粉末製造方法において、上記粉砕は、上記粉砕の後における上記PTFE未粉砕粉末の平均粒子径が100μm以下となるように行うことが好ましい。上記粉砕によれば、このように微小な粒子を実質的に繊維化させることなく得ることができる。上記平均粒子径は、例えば1〜100μmであってよく、緻密で成形体物性に優れた成形体を得ることができる点から、例えば、好ましい下限は3μmであり、好ましい上限は60μmであり、3〜60μmが好ましい。上記平均粒子径は、目的とする成形体物性に応じて後述のように適切な値となるように、例えば上記粉砕や上記分級の条件等を調節することによって、上記範囲内で調整することができる。
【0349】
上記粉砕の後における平均粒子径は、本発明のPTFE粉末について上述した場合と同様に、ドライレーザー法に準じて得られる値である。
【0350】
なお、従来の粉砕により得られる粒子は、粒子径が小さいほど繊維化の程度が大きくなっており、繊維化させずに微粉砕することは困難であった。このような繊維化は、粉砕後の平均粒子径が、例えば100μm以下、特に60μm以下である場合、顕著であった。しかしながら、上記PTFE成形用粉末としては、平均粒子径が例えば100μm以下であり、かつ、実質的に繊維化していない粒子を得ることができる。
【0351】
上記粉砕により、上記PTFE成形用粉末が得られる。
【0352】
上記PTFE成形用粉末は、所望により、上記粉砕の後、造粒したものであってもよい。
【0353】
上記造粒により得られる粒子の平均粒子径としては特に限定されず、本発明のPTFE粉末について上述した造粒により得られる粒子の平均粒子径と同様に、例えば、30〜800μmにすることができるが、好ましい上限は700μmであり、好ましくは30〜700μmであり、目的とする成形体物性と粉体物性に応じて上記範囲内で適宜選択することができる。
【0354】
本明細書において、上記造粒の後における平均粒子径は、本発明のPTFE粉末について上述した測定方法と同じくWO98/41569号公報記載の粒状粉末の平均粒径の測定法により得られる値である。
【0355】
上記造粒の方法としては特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができるが、水中造粒法が好ましい。上記水中造粒法としては特に限定されず、例えば、本発明のPTFE粉末について上述した造粒の方法と同様に、乳化分散造粒法であることが好ましい。
【0356】
上記造粒の方法として上記乳化分散造粒法を用いると、上述したように、造粒時に上記有機液体の液滴が小さく球形に近い形状になるので、この液滴中で造粒されるPTFE系ポリマーの粒子は、平均粒子径が小さく、球形に近い形状となり、この結果、見掛け密度、粉末流動性ともに向上させることができるものと考えられる。
【0357】
上記乳化分散造粒法及び上記乳化分散造粒法で用いる界面活性剤は、本発明のPTFE粉末について上述したものと同様である。
【0358】
上記粉砕時、上記粉砕の後及び/又は上記造粒の後において、本発明のPTFE粉末について上述したことと同様に、必要に応じ、分級を行ってもよい。上記分級の方法としては特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。上記分級は、例えば上記造粒の後に行う場合、分級条件によって平均粒子径が比較的小さいPTFE粉体の造粒品を得ることができ、粉体物性は通常若干悪くなるものの、成形体物性を向上させることができ、上記分級の前の値と比較し、特に表面粗度Raを例えば40%にまで低下させることができ、引張伸びを例えば110〜130%に向上させることができる。
【0359】
上記PTFE成形用粉末は、本発明のPTFE粉末について上述したことと同様に、必要に応じ、補強材等のフィラー;添加剤等を適当量含有したものであってもよく、これらは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0360】
上記PTFE成形用粉末がフィラー、添加剤等を含有するものである場合、得られるPTFE成形用粉末に均一に分散させる点から、フィラー、添加剤等は、通常、上記粉砕の後又は上記造粒時に、配合することが好ましい。
【0361】
上記フィラー及び添加剤としては特に限定されず、例えば、本発明のPTFE粉末について上述したフィラー並びに添加剤と同様のものが挙げられる。
【0362】
本発明のPTFE成形用粉末製造方法により得られた上記PTFE成形用粉末は、成形体を作製した場合に表面粗度Ra、引張強度〔TS〕及び/又は引張伸び〔EL〕に優れ、表面粗度Ra、引張強度又は引張伸びをそれぞれ従来のPTFE粉体よりも向上させることができるものである。上記PTFE成形用粉末は、また、成形体を作製した場合に、優れた絶縁破壊電圧〔BDV〕を有することができるものであり、更に、所望により表面粗度Ra、引張強度及び/又は引張伸びにも優れていることが可能なものである。
【0363】
本明細書において、上述したように、表面粗度Raは、測定用成形体a1についての測定値で表す値であり、絶縁破壊電圧は、測定用成形体a2についての測定値で表す値であり、引張強度及び引張伸びは、測定用成形体a3についての測定値で表す値である。上記PTFE成形用粉末の場合、上記測定用成形体a1、上記測定用成形体a2及び上記測定用成形体a3は、上述の各成形体物性の測定方法において、PTFE粉体として上記PTFE成形用粉末を用いて得たものである。
【0364】
上記PTFE成形用粉末は、測定用成形体a1の表面粗度Raを2.5μm未満にすることができるので、上記PTFE成形用粉末から得られる成形体全般において表面の凹凸が少ない表面平滑性を有することができる。従って、上記範囲内の表面粗度Raを得ることができる上記PTFE成形用粉末は、例えばボールバルブシート等の表面平滑性が望まれる成形品の成形に好適に用いることができる。
【0365】
上記範囲内の表面粗度Raを得ることができる上記PTFE成形用粉末は、表面平滑性に優れるので、従来、切削等の表面平滑化処理が必要であった場合であっても、表面平滑化処理を行う必要がない。従って、例えば、無切削のシールリング等の製造工程に切削工程を含まないが表面平滑性が望まれる成形品の成形に好適に用いることができる。
【0366】
上記範囲内の表面粗度Raを得ることができる上記PTFE成形用粉末は、切削等の表面平滑化処理を必要としない場合があり、その場合は、切削屑等の不純物の混入を排除することが求められる半導体製造分野における器具、部品類等の成形品の成形に好適に用いることができる。半導体製造分野で用いられる成形品としては特に限定されず、例えば、本発明のPTFE粉末について上述したものと同様のものが挙げられる。
【0367】
上記表面粗度Raは、好ましくは1.9μm未満、より好ましくは1.2μm未満にすることができ、上記範囲内で用途に応じて調整することができる。上記表面粗度Raは、通常、上記範囲内であれば0.5μm以上、例えば0.55μm以上であってもよい。
【0368】
上記表面粗度Raは、更に好ましくは0.92μm未満にすることができる。このように低い表面粗度Raが得られるPTFE粉体は、従来、得られていなかった。上記表面粗度Raが0.92μm未満である上記PTFE成形用粉末としては、後述するPTFE成形用粉末(I)及びPTFE成形用粉末(III)が好ましく、平均粒子径が1〜25μmの上記PTFE成形用粉末(I)及び平均粒子径が1〜13μmの上記PTFE成形用粉末(III)がより好ましい。上記表面粗度Raは、特に好ましくは0.8μm未満にすることができる。
【0369】
上記PTFE成形用粉末は、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧を例えば8.5kV以上にすることができるので、上記PTFE成形用粉末から得られる成形体全般において優れた高圧絶縁性を有することができる。従って、上記PTFE成形用粉末は、例えば高圧変圧機用コンデンサーの絶縁テープや絶縁シール、遮断器用絶縁ノズル等の高圧絶縁材料等の成形に好適に用いることができる。
【0370】
上記絶縁破壊電圧は、好ましくは9.1kV以上、より好ましくは10kV以上、更に好ましくは12kV以上、特に好ましくは13kV以上にすることができ、上記範囲内で用途に応じて調整することができる。上記絶縁破壊電圧は、通常、上記範囲内であれば18kV以下、例えば15kV以下、更に14kV以下であってもよい。
【0371】
上記PTFE成形用粉末は、測定用成形体a1の表面粗度Raを0.92μm未満にし、上記絶縁破壊電圧を10kV以上にすることができる。このような上記PTFE成形用粉末としては、後述するPTFE成形用粉末(I)及びPTFE成形用粉末(III)が好ましく、平均粒子径が1〜25μmである上記PTFE成形用粉末(I)及び平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE成形用粉末(III)がより好ましい。
【0372】
好ましくは、上記表面粗度Raを0.8μm未満にし、上記絶縁破壊電圧が12kV以上にすることができる。このような上記PTFE成形用粉末としては、平均粒子径が1〜25μmである上記PTFE成形用粉末(I)が好ましい。
【0373】
上記PTFE成形用粉末は、測定用成形体a3の引張強度を例えば47.8MPa以上にすることができるので、上記PTFE成形用粉末から得られる成形体全般において、引張力を加えた場合、優れた機械的強度を有することができる。
【0374】
従って、上記PTFE成形用粉末は、例えば、機械・器具類等にはめ込むための引張時に高強度が望まれる成形品、例えばシールリング等の成形に好適に用いることができる。シールリングとしては、リングに切断箇所があり、器具類等へのはめ込み時に変形が加えられるもの、リングに切断箇所がなく輪ゴム状のいわゆるエンドレスタイプのものの何れであっても好適に用いことができる。
【0375】
上記PTFE成形用粉末は、機械的強度に優れる点から、引張力は通常加えられないが高強度が望まれる成形品、例えばボールバルブシート等の成形にも好適に用いることができる。
【0376】
上記引張強度は、好ましくは50MPa以上にすることができ、上記範囲内で用途に応じて調整することができる。上記引張強度は、通常、上記範囲内であれば70MPa以下、例えば66MPa以下であってもよい。
【0377】
上記引張強度は、より好ましくは58.7MPa以上にすることができる。このように高い引張強度が得られるPTFE粉体は、従来、得られていなかった。上記引張強度が58.7MPa以上である上記PTFE成形用粉末としては、後述するPTFE成形用粉末(I)及びPTFE成形用粉末(II)が好ましく、平均粒子径が40〜60μmである上記PTFE成形用粉末(I)及び平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE成形用粉末(II)がより好ましい。上記引張強度は、更に好ましくは60MPa以上にすることができる。
【0378】
上記引張強度は、特に好ましくは65MPa以上にすることができる。このような上記PTFE成形用粉末としては、平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE成形用粉末(II)が好ましい。
【0379】
上記PTFE成形用粉末は、上記引張強度を47.8MPa以上にし、測定用成形体a3の絶縁破壊電圧を11.5kV以上にすることができる。このような上記PTFE成形用粉末としては、後述するPTFE成形用粉末(I)、PTFE成形用粉末(II)及びPTFE成形用粉末(III)が好ましい。
【0380】
好ましくは、上記引張強度を50MPa以上にし、上記絶縁破壊電圧を12kV以上にすることができる。このような上記PTFE成形用粉末としては、上記PTFE成形用粉末(I)及び上記PTFE成形用粉末(II)が好ましく、上記PTFE成形用粉末(I)としては、平均粒子径が13〜60μmであるものが好ましい。
【0381】
より好ましくは、上記引張強度を65MPa以上にし、上記絶縁破壊電圧を13kV以上にすることができる。このような上記PTFE成形用粉末としては、上記PTFE成形用粉末(II)が好ましい。
【0382】
上記PTFE成形用粉末は、測定用成形体a3の引張伸びを例えば370%以上にすることができるので、上記PTFE成形用粉末から得られる成形体全般において引張り時に高い伸びを示し、機器・器具類等への装着時や加工時において引張り力が加えられる場合であっても切断を防止することができる。
【0383】
従って、上記PTFE成形用粉末は、器具等へのはめ込み時に高い伸びが望まれる成形品、例えばシールリング等の成形に好適に用いることができる。シールリングとしては、引張強度に関して上述したリングに切断箇所があるものと、リングに切断箇所がないものの何れでもよいが、後者の方が引張伸びに優れることを充分に活かすことができる。
【0384】
上記引張伸びは、好ましくは450%以上、より好ましくは500%以上にすることができ、上記範囲内で用途に応じて調整することができる。上記引張伸びは、通常、上記範囲内であれば650%以下、例えば630%以下であってもよい。
【0385】
上記引張伸びは、更に好ましくは556%以上にすることができる。このように高い引張伸びが得られるPTFE粉体は、従来、得られていなかった。このような上記PTFE成形用粉末としては、後述するPTFE成形用粉末(I)、PTFE成形用粉末(II)及びPTFE成形用粉末(III)が好ましく、平均粒子径が1〜6μmである上記PTFE成形用粉末(I)、平均粒子径が1〜6μmである上記PTFE成形用粉末(II)及び平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE成形用粉末(III)がより好ましい。
【0386】
上記引張伸びは、特に好ましくは600%以上にすることができる。このような上記PTFE成形用粉末としては、平均粒子径が1〜6μmである上記PTFE成形用粉末(II)が好ましい。
【0387】
上記PTFE成形用粉末は、上記引張伸びを556%以上にし、測定用成形体a2の絶縁破壊電圧を10kV以上にすることができる。このような上記PTFE成形用粉末としては、上記PTFE成形用粉末(I)、上記PTFE成形用粉末(II)及び上記PTFE成形用粉末(III)が好ましく、平均粒子径が1〜6μmである上記PTFE成形用粉末(I)、平均粒子径が1〜6μmである上記PTFE成形用粉末(II)及び平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE成形用粉末(III)がより好ましい。
【0388】
好ましくは、上記引張伸びを600%以上にし、上記絶縁破壊電圧を13kV以上にすることができる。このような上記PTFE成形用粉末としては、平均粒子径が1〜13μmである上記PTFE成形用粉末(III)が好ましい。
【0389】
上記PTFE成形用粉末は、造粒したものである場合、造粒条件等によるが、上述の優れた成形体物性、即ち、表面粗度Ra、絶縁破壊電圧、引張強度及び/又は引張伸びをあまり損なうことなく、粉末流動性、見掛け密度等の粉体物性を向上させることができる。
【0390】
上記PTFE成形用粉末は、流動度を例えば0.5回以上にすることができるので、成形機のホッパーや細径のシリンダー内で成形用粉末が凝集してブリッジを起したり、金型やシリンダーへの充填が不均一となる等の不都合がなく、取扱い性を向上させることができる。
【0391】
上記PTFE成形用粉末の流動度は、好ましくは4回以上にすることができる。上記PTFE成形用粉末の流動度は、上述の測定方法から8回が最大値であり、通常、上記範囲内であれば8回以下、例えば6回以下であってもよい。
【0392】
本明細書において、流動度は、上述したように、特開平3−259925号公報等に記載した方法に準じた測定方法により得られる値である。上記PTFE成形用粉末の場合、上記測定方法において、被測定粉末として上記PTFE成形用粉末を用いる。
【0393】
上記PTFE成形用粉末は、見掛け密度を例えば0.45g/cm以上にすることができるので、上記粉末流動性に優れる場合と同様に取扱い性を向上させることができるほか、成形用粉末として単位重量当りの嵩を低くすることができるので、成形機の金型やシリンダーの小型化や、1つの金型やシリンダー当りの生産性向上を可能にすることができる。
【0394】
上記PTFE成形用粉末の見掛け密度は、好ましくは0.5g/cm以上、より好ましくは0.6g/cm以上、更に好ましくは0.7g/cm以上、特に好ましくは0.8g/cm以上にすることができる。上記PTFE成形用粉末の見掛け密度は、通常、上記範囲内であれば1g/cm以下、例えば0.92g/cm以下、更に0.85g/cm以下であってもよい。
【0395】
本明細書において、見掛け密度は、上述したように、JIS K 6891−5.3に準じて測定することにより得られる値である。
【0396】
本明細書において、上記PTFE系ポリマーが上記非変性PTFEである上記PTFE未粉砕粉末に上記粉砕を行うことにより得られた上記PTFE成形用粉末であって、上記造粒を行わないものを「PTFE成形用粉末(I)」という。
【0397】
本明細書において、上記PTFE系ポリマーが上記変性PTFEである上記PTFE未粉砕粉末に上記粉砕を行うことにより得られた上記PTFE成形用粉末であって、上記造粒を行わないものを「PTFE成形用粉末(II)」という。
【0398】
本明細書において、上記PTFE系ポリマーが上記変性PTFEであり、平均粒子径が100μm以下であり、上記造粒を行わないものである上記PTFE成形用粉末であって、上記PTFE成形用粉末(II)以外のものを、「PTFE成形用粉末(III)」という。
【0399】
上記PTFE成形用粉末(I)、上記PTFE成形用粉末(II)及び上記PTFE成形用粉末(III)の各平均粒子径は、従って、それぞれ上記粉砕の後における上記PTFE未粉砕粉末の平均粒子径と同じである。
【0400】
上記PTFE成形用粉末(I)の平均粒子径としては特に限定されず、例えば、60μm以下にすることができる。上記範囲内であると、表面平滑性、引張強度、引張伸び及び/又は高圧絶縁性に優れた成形体を容易に得ることができる。好ましい下限は1μmであり、好ましくは、1〜60μmである。
【0401】
上記PTFE成形用粉末(I)の平均粒子径としては、特に表面平滑性に優れた成形体を得ることができる点から、25μm以下が好ましい。上記範囲内であると、表面粗度Raは従来よりも低くすることができる。このような平均粒子径は、例えば3〜25μmであってもよい。
【0402】
上記PTFE成形用粉末(I)の平均粒子径としては、特に引張強度に優れた成形体を得ることができる点から、25〜60μmが好ましい。上記範囲内であると、引張強度は従来よりも大きくすることができる。好ましい下限は40μmであり、更に好ましい下限は45μmであり、好ましい上限は60μmであり、更に好ましい上限は55μmである。上記PTFE成形用粉末(I)の平均粒子径としては、好ましくは、40〜60μmであり、更に好ましくは、45〜55μmである。
【0403】
上記PTFE成形用粉末(I)の平均粒子径としては、特に引張伸びに優れた成形体を得ることができる点から、6μm以下が好ましい。上記範囲内であると、引張伸びは従来よりも高くすることができる。このような平均粒子径は、例えば1〜6μmであってよいが、より好ましい下限は3μmであり、より好ましくは、3〜6μmである。
【0404】
従って、上記PTFE成形用粉末(I)の平均粒子径は、特に引張強度に優れる点から、25〜60μmがより好ましい。上記PTFE成形用粉末(I)の平均粒子径は、特に表面粗度Ra及び引張伸びが優れる点から、6μm以下が好ましく、より好ましい下限は1μmであり、更に好ましい下限は3μmであり、1〜6μmがより好ましく、3〜6μmが更に好ましい。上記PTFE成形用粉末(I)の平均粒子径は、上記成形体物性が全体的に良好である点から、25〜60μmがより好ましい。
【0405】
上記PTFE成形用粉末(I)がこのように成形体物性に優れる理由としては、次のように考えられる。即ち、上記PTFE成形用粉末(I)は、上述の範囲内のAI値を有する上記非変性PTFEからなる上記PTFE未粉砕粉末に上記粉砕を行ったものであるので、上記非変性PTFEは上述のように結晶化度が極めて低い。
【0406】
従って、被粉砕粒子自体が実質的に繊維化しにくいものであるとともに、上記粉砕が粒子の繊維化を実質的に防止し得るものであるので、上記粉砕により得られる粒子の繊維化はかなり抑制される。その結果、上記PTFE成形用粉末(I)は、成形時の圧縮圧力により表面粗度Raが従来よりも低く、引張強度及び引張伸びが従来よりも高く、絶縁破壊電圧が高い成形体を容易に得ることができるものと考えられる。
【0407】
なお、一般に非変性PTFEは、変性PTFEと異なり、結晶化度が高くAIが低い傾向にあるが、本発明における上記非変性PTFEは、上記のように高いAI値を有するので、上述のように成形体物性に優れた成形体を得ることができるものと考えられる。
【0408】
上記PTFE成形用粉末(II)の平均粒子径としては特に限定されず、例えば、60μm以下にすることができ、通常、1〜25μmにすることができる。上記範囲内であると、引張強度、引張伸び及び/又は高圧絶縁性に優れた成形体を容易に得ることができる。
【0409】
上記PTFE成形用粉末(II)の平均粒子径としては、特に引張強度に優れた成形体を得ることができる点から、13μm以下が好ましい。上記範囲内であると、引張強度は従来よりも高くすることができる。このような平均粒子径は、例えば1〜13μmであってもよい。
【0410】
上記PTFE成形用粉末(II)の平均粒子径としては、特に引張伸びに優れた成形体を得ることができる点から、6μm以下が好ましい。上記範囲内であると、引張伸びは従来よりも高くすることができる。このような平均粒子径は、例えば1〜6μmであってもよい。
【0411】
上記PTFE成形用粉末(II)がこのように成形体物性に優れる理由としては、次のように考えられる。即ち、上記PTFE成形用粉末(II)は、上述の範囲内の結晶化熱を有する上記変性PTFEからなる上記PTFE未粉砕粉末に上記粉砕を行ったものであるので、上記変性PTFEは上述のように比較的高分子量を有し、特に機械的強度と可撓性とを併有するものと考えられる。また、上記粉砕は、粒子の繊維化を実質的に防止し得るものである。従って、得られる上記PTFE成形用粉末(II)は、上記PTFE系ポリマーが機械的強度と可撓性とを有するので、引張強度及び引張伸びが従来よりも高く、絶縁破壊電圧が高い成形体を容易に得ることができるものと考えられる。
【0412】
上記PTFE成形用粉末(III)の平均粒子径としては特に限定されず、例えば、1〜25μmにすることができる。上記範囲内であると、表面平滑性、引張伸び及び/又は高圧絶縁性に優れた成形体を容易に得ることができる。
【0413】
上記PTFE成形用粉末(III)の平均粒子径としては、特に表面平滑性に優れた成形体を得ることができる点から、1〜13μmが好ましい。上記範囲内であると、表面粗度Raは従来よりも低くすることができる。好ましい下限は6μmであり、好ましい上限は10μmであり、好ましくは6〜10μmである。
【0414】
上記PTFE成形用粉末(III)の平均粒子径としては、特に引張伸びに優れた成形体を得ることができる点から、1〜13μmが好ましい。上記範囲内であると、引張伸びは従来よりも高くすることができる。好ましい下限は6μmであり、好ましい上限は10μmであり、好ましくは6〜10μmである。
【0415】
上記PTFE成形用粉末(III)がこのように成形体物性に優れる理由としては、次のように考えられる。即ち、上記PTFE成形用粉末(III)は、上記変性PTFEを用い、上記範囲内のように小さい平均粒子径を有し、実質的に繊維化していない粒子からなるものであり、可撓性を有し緻密な成形体を得ることができるので、表面粗度Ra及び引張伸びが従来よりも高く、絶縁破壊電圧が高い成形体を容易に得ることができるものと考えられる。
【0416】
本明細書において、上記造粒を経た上記PTFE成形用粉末は、被造粒物が上記PTFE成形用粉末(I)であるものを「PTFE成形用粉末(I′)」といい、被造粒物が上記PTFE成形用粉末(II)であるものを「PTFE成形用粉末(II′)」といい、被造粒物が上記PTFE成形用粉末(III)であるものを「PTFE成形用粉末(III′)」という。
【0417】
上記PTFE成形用粉末(I′)、上記PTFE成形用粉末(II′)及び上記PTFE成形用粉末(III′)は、被造粒物が上述のように成形体物性に優れたものであり、優れた成形体物性をあまり損なうことなく、粉体物性を向上することができる。
【0418】
上記PTFE成形用粉末(I′)、上記PTFE成形用粉末(II′)及び上記PTFE成形用粉末(III′)の平均粒子径としては特に限定されず、例えば、30〜800μmにすることができるが、好ましい上限は700μmであり、好ましくは30〜700μmである。
【0419】
これらの上記造粒を経た上記PTFE成形用粉末の被造粒物の平均粒子径としては特に限定されないが、優れた成形体物性及び粉体物性を得やすい点から、1〜25μmが好ましい。
【0420】
本発明のPTFE成形用粉末製造方法は、上述のように、特定のPTFE未粉砕粉末を実質的に繊維化しないように粉砕することから、成形における加圧時に圧力伝達性に優れ、成形体の表面粗度Ra、絶縁破壊電圧、引張強度及び/又は引張伸びの成形体物性を優れたものにすることができる上記PTFE成形用粉末を得ることができる。本発明のPTFE成形用粉末製造方法は、上記粉砕の後、上記造粒を行うことにより、成形体物性をあまり損なうことなく、見掛け密度及び/又は粉末流動性の粉体物性にも優れた上記PTFE成形用粉末を得ることもできる。
【0421】
従って、上記PTFE成形用粉末は、上述のように、上記成形体物性の少なくとも1つが要求される成形品、切削等の表面平滑化処理が望まれない成形品等の各種成形品の成形に好適に用いることができる。上記PTFE成形用粉末は、また、圧縮成形時の加圧を低くしてもこれらの成形体物性に優れる点から、いわゆる大物の成形品等を含む各種成形品の成形にも好適である。上記PTFE成形用粉末は、更に、所望により粉体物性を向上させることにより、成形時の取扱い性の向上や、金型等の小型化等も可能にすることができる。
【0422】
上記PTFE成形用粉末を用いる成形の方法としては特に限定されず、例えば、PTFE粉末について上述したものと同様である。
【0423】
上記PTFE成形用粉末製造方法により製造されたPTFE成形用粉末も、本発明の一つである。
【発明を実施するための形態】
【0424】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0425】
製造例1 PTFE未粉砕粉末(I)の製造
内容量2000リットルの攪拌機付きステンレス・スチール製のオートクレープに脱酸素した純水1600リットルを入れ、内部の空気を窒素で置換し、ついでテトラフルオロエチレンで置換したのち、内部の温度を30℃に保ちつつ、内部の圧力が4気圧になるまでテトラフルオロエチレンを圧入し、重合開始剤として(NHを添加して攪拌しながらテトラフルオロエチレンの重合を行った。重合に伴って圧力が低下するので、内部の圧力が4気圧に保たれるように、テトラフルオロエチレンを連続的に追加した。5時間後に撹拌を中止し、未反応のテトラフルオロエチレンを回収したのち内容物を取り出した。生成重合体である平均粒子径5〜7mmのPTFE系ポリマーの原粉末をT.K.パイプラインホモミキサー2S型機(商品名、特殊機化工業社製)を用いて粗粉砕し、平均粒子径約900μmのPTFE未粉砕粉末(I)を得た。得られたPTFE未粉砕粉末(I)のPTFE系ポリマーのアモルファスインデックス〔AI〕を上述の方法により測定したところ、0.300であった。
【0426】
製造例2 PTFE未粉砕粉末(III)の製造
炭酸アンモニウム3.3gを純水54.8リットルに溶かした溶液を170リットル容のオートクレーブに仕込み、イカリ型撹拌翼を用い110rpmで撹拌した。脱気したのちテトラフルオロエチレンをゲージ圧0.5kgf/cmGになるまで仕込んだ。この操作を3回繰り返したのちパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)をテトラフルオロエチレンを用いて圧入し、反応系の温度を50℃に上げたのちテトラフルオロエチレンを反応系内圧が8kgf/cmGになるまで圧入した。これに過硫酸アンモニウムを加えて重合を開始した。重合は、反応系内圧が8kgf/cmGに維持されるようにテトラフルオロエチレンを連続的に圧入し、水位媒体の重量に対して30重量%のテトラフルオロエチレンが消費されるまで行ったのち、モノマーを放出した。室温にまで冷却後、得られたPTFE系ポリマーの原粉末を取り出し、粗く粉砕した。この粗粉末を乾燥して、PTFE未粉砕粉末(III)を得た。得られたPTFE未粉砕粉末(III)のPTFE系ポリマーの結晶化熱と標準比重〔SSG〕とを上述の方法により測定したところ、結晶化熱は22J/g、SSGは2.148であった。
【0427】
製造例3 PTFE未粉砕粉末(II)の製造
炭酸アンモニウム3.3gを純水54.8リットルに溶かした溶液を170リットル容のオートクレーブに仕込み、イカリ型撹拌翼を用い110rpmで撹拌した。脱気したのちテトラフルオロエチレンをゲージ圧0.5kgf/cmGになるまで仕込んだ。この操作を3回繰り返したのちパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)をテトラフルオロエチレンを用いて圧入し、反応系の温度を70℃に上げたのちテトラフルオロエチレンを反応系内圧が8kgf/cmGになるまで圧入した。これに過硫酸アンモニウムを加えて重合を開始した。重合は、反応系内圧が8kgf/cmGに維持されるようにテトラフルオロエチレンを連続的に圧入し、水位媒体の重量に対して22.5重量%のテトラフルオロエチレンが消費されるまで行なったのち、モノマーを放出した。室温にまで冷却後、得られたPTFE系ポリマーの原粉末を取り出し、粗く粉砕した。この粗粉末を乾燥して、PTFE未粉砕粉末(II)を得た。得られたPTFE未粉砕粉末(II)のPTFE系ポリマーの結晶化熱と標準比重〔SSG〕とを上述の方法により測定したところ、結晶化熱は30J/g、SSGは2.170であった。
【0428】
製造例4 PTFE未粉砕粉末(I)の製造
内容量2000リットルの攪拌機付きステンレス・スチール製のオートクレーブに脱酸素した純水1600リットルを入れ、内部の空気を窒素で置換し、ついでテトラフルオロエチレンで置換したのち、内部の温度を10℃に保ちつつ、内部の圧力が6気圧になるまでテトラフルオロエチレンを圧入し、重合開始剤として(NH及びFeSOを添加して攪拌しながらテトラフルオロエチレンの重合を行った。重合に伴って圧力が低下するので、内部の圧力が6気圧に保たれるように、テトラフルオロエチレンを連続的に追加した。4時間後に撹拌を中止し、未反応のテトラフルオロエチレンを回収したのち内容物を取り出した。生成重合体である平均粒子径2〜3mmのPTFE系ポリマーの原粉末をT.K.パイプラインホモミキサー2S型機(商品名、特殊機化工業社製)を用いて粗粉砕し、平均粒子径約400μmのPTFE未粉砕粉末(I)を得た。得られたPTFE未粉砕粉末(I)のPTFE系ポリマーのアモルファスインデックス〔AI〕を上述の方法により測定したところ、0.300であった。
【0429】
本明細書において、上述の「PTFE粉末」と「PTFE成形用粉末」は、以下、まとめて、造粒を経ないものである場合「PTFE粉砕物」ということがあり、造粒を経るものである場合「PTFE造粒物」ということがある。
【0430】
実施例1〜5 PTFE粉砕物(I)のエアージェット粉砕法による製造と評価
製造例1で得たPTFE未粉砕粉末(I)をカウンタージェットミル(商品名、ホソカワミクロン社製)を用い、表1に示す条件でエアージェット気流を発生させながら、表1に示す平均粒子径になるように粉砕してPTFE粉砕物1〜5を得た。得られたPTFE粉砕物1〜5について、上述の各方法により物性を測定し、結果を表2に示す。
【0431】
実施例6〜7 PTFE粉砕物(III)のエアージェット粉砕法による製造と評価
PTFE未粉砕粉末(I)の代わりに製造例2で得たPTFE未粉砕粉末(III)を用いる以外は、実施例1〜5と同様にしてPTFE粉砕物6〜7を得た。得られたPTFE粉砕物6〜7について、上述の各方法により物性を測定し、結果を表2に示す。
【0432】
実施例8〜10 PTFE粉砕物(II)のエアージェット粉砕法による製造と評価
PTFE未粉砕粉末(I)の代わりに製造例3で得たPTFE未粉砕粉末(II)を用いる以外は、実施例1〜5と同様にしてPTFE粉砕物8〜10を得た。得られたPTFE粉砕物8〜10について、上述の各方法により物性を測定し、結果を表2に示す。
【0433】
実施例11〜15 PTFE粉砕物(I)のエアージェット粉砕法による製造と評価
製造例4で得たPTFE未粉砕粉末(I)をカウンタージェットミル(商品名、ホソカワミクロン社製)を用い、表1に示す条件でエアージェット気流を発生させながら、表1に示す平均粒子径になるように粉砕してPTFE粉砕物11〜15を得た。得られたPTFE粉砕物11〜15について、上述の各方法により物性を測定し、結果を表2に示す。
【0434】
【表1】

【0435】
比較例1 PTFE系ポリマーの粉砕物の製造と評価
製造例1で得たPTFE未粉砕粉末(I)を、パルペライザーAP−44型式(商品名、ホソカワミクロン社製)を用いて周速75m/時、動力36kw、処理速度180kg/時の条件で乾式微粉砕し、平均粒子径が54μmのPTFE系ポリマーの粉砕物を得た。得られたPTFE系ポリマーの粉砕物について、上述の各方法により物性を測定し、結果を表2に示す。
【0436】
比較例2 PTFE系ポリマーの粉砕物の製造と評価
内容量2000リットルの攪拌機付きステンレス・スチール製のオートクレーブに脱酸素した純水1600リットルを入れ、内部の空気を窒素で置換し、ついでテトラフルオロエチレンで置換したのち、内部の温度を70℃に保ちつつ、内部の圧力が4気圧になるまでテトラフルオロエチレンを圧入し、重合開始剤として(NHを添加して攪拌しながらテトラフルオロエチレンの重合を行った。重合に伴って圧力が低下するので、内部の圧力が4気圧に保たれるように、テトラフルオロエチレンを連続的に追加した。5時間後に撹拌を中止し、未反応のテトラフルオロエチレンを回収したのち内容物を取り出した。生成重合体であるPTFE系ポリマーの原粉末をT.K.パイプラインホモミキサー2S型機(商品名、特殊機化工業社製)を用いて粗粉砕し、平均粒子径1500μm以下のPTFE未粉砕粉末を得た。
【0437】
このPTFE未粉砕粉末を、比較例1と同様にして乾式微粉砕し、平均粒子径が50μmのPTFE系ポリマーの粉砕物を得た。得られたPTFE系ポリマーの粉砕物について、上述の各方法により物性を測定し、結果を表2に示す。
【0438】
比較例3 PTFE系ポリマーの粉砕物の製造と評価
PTFE未粉砕粉末(I)の代わりに製造例2で得たPTFE未粉砕粉末(III)を用いる以外は、比較例1と同様にして乾式微粉砕し、平均粒子径が40μmのPTFE系ポリマーの粉砕物を得た。得られたPTFE系ポリマーの粉砕物について、上述の各方法により物性を測定し、結果を表2に示す。
【0439】
比較例4 PTFE系ポリマーの粉砕物の製造と評価
PTFE未粉砕粉末(I)の代わりに製造例3で得たPTFE未粉砕粉末(II)を用いる以外は、比較例1と同様にして乾式微粉砕し、平均粒子径が42μmのPTFE系ポリマーの粉砕物を得た。得られたPTFE系ポリマーの粉砕物について、上述の各方法により物性を測定し、結果を表2に示す。
【0440】
比較例5〜6 PTFE系ポリマーの粉砕物の評価
PTFE系ポリマーの粉砕物として、非造粒品である7J及び7AJ(いずれも商品名、三井デュポンフロロケミカル社製)について、上述の各方法により物性を測定し、結果を表2に示す。
【0441】
比較例7 PTFE系ポリマーの粉砕物の製造と評価
製造例4で得たPTFE未粉砕粉末(I)を、パルペライザーAP−44型式(商品名、ホソカワミクロン社製)を用いて周速75m/時、動力36kw、処理速度180kg/時の条件で乾式微粉砕し、平均粒子径が55μmのPTFE系ポリマーの粉砕物を得た。得られたPTFE系ポリマーの粉砕物について、上述の各方法により物性を測定し、結果を表2に示す。
【0442】
【表2】

【0443】
表2から、上述の各PTFE未粉砕粉末を乾式微粉砕したもの、及び、PTFE系ポリマーの従来の非造粒粉砕品についての比較例1〜7に比べ、上記各PTFE未粉砕粉末をエアージェット粉砕法により粉砕した実施例1〜15では、各測定用成形体の表面粗度Ra、引張強度及び/又は引張伸びに優れ、これらの成形体物性は従来よりも向上させることができ、絶縁破壊強度に優れたPTFE粉砕物を得ることができることがわかった。
【0444】
実施例16 PTFE造粒物(I′)の製造と評価
コーン翼を備えた10リットル造粒槽にイオン交換水を6〜8リットル仕込み17〜25℃に温調した。実施例1で得たPTFE粉砕物1を1500g造粒槽に仕込んだ。ついでコーン翼を900rpmで回転させながらノニオン性界面活性剤として下記式
【0445】
【化3】

【0446】
で表されるプロノン#208(商品名、日本油脂社製)をPTFE粉砕物1に対し250ppm添加し、2〜3分後、有機液体としてジクロロメタンを1200g仕込んだ。引き続き3分間900rpmで撹拌しながら有機液体とPTFE粉砕物1とをなじませた後、コーン翼をディスパー翼に切り替え、2分間2000rpmで、有機液体に湿潤させながら、粒状に形成し始めているPTFE粉砕物1を整粒した。
【0447】
次に、再びディスパー翼をコーン翼に切り替え、900rpmにて撹拌しながら、15〜20分間かけて37〜40℃に昇温し、その温度で30分間維持して有機液体を留去した。撹拌停止後150メッシュの篩を用い、粒状になったPTFE造粒物と水とを分離した。分取したPTFE造粒物は、箱型熱風循環式乾燥機を用い165〜170℃で12〜20時間かけて乾燥し、PTFE造粒物(I′)としてPTFE造粒物1を得た。
【0448】
得られたPTFE造粒物1について、上述の各方法により物性を測定し、結果を表4に示す。
【0449】
実施例17〜23 PTFE造粒物(I′)の製造と評価
PTFE粉砕物1〜3を用い、ノニオン性界面活性剤の添加量、有機液体の配合量、37〜40℃の維持時間を表3に示すように変えた以外は実施例16と同様にしてPTFE造粒物(I′)としてPTFE造粒物2〜8を得た。
【0450】
得られたPTFE造粒物2〜8について、上述の各方法により測定した物性を表4に示す。なお、表3におけるノニオン性界面活性剤の添加量は、PTFE粉砕物に対するもの(ppm)である。
【0451】
実施例24 PTFE造粒物(III′)の製造と評価
PTFE粉砕物7を用い、ノニオン性界面活性剤として下記式
【0452】
【化4】

【0453】
で表されるプロノン#104(商品名、日本油脂社製)をPTFE粉砕物7に対し250ppm添加し、有機液体の配合量、37〜40℃の維持時間を表3に示すように変えた以外は実施例16と同様にしてPTFE造粒物(III′)としてPTFE造粒物9を得た。
【0454】
得られたPTFE造粒物9について、上述の各方法により物性を測定し、結果を表4に示す。
【0455】
実施例25 PTFE造粒物(II′)の製造と評価
PTFE粉砕物10を用い、ノニオン性界面活性剤として上記プロノン#104をPTFE粉砕物10に対し250ppm添加し、有機液体の配合量、37〜40℃の維持時間を表3に示すように変えた以外は実施例16と同様にしてPTFE造粒物(II′)としてPTFE造粒物10を得た。
【0456】
得られたPTFE造粒物10について、上述の各方法により物性を測定し、結果を表4に示す。
【0457】
実施例26〜33 PTFE造粒物(I′)の製造と評価
PTFE粉砕物11〜13を用い、ノニオン性界面活性剤の添加量、有機液体の配合量、37〜40℃の維持時間を表3に示すように変えた以外は実施例16と同様にしてPTFE造粒物(I′)としてPTFE造粒物11〜18を得た。得られたPTFE造粒物11〜18について、上述の各方法により測定した物性を表4に示す。なお、表3におけるノニオン性界面活性剤の添加量は、PTFE粉砕物に対するもの(ppm)である。
【0458】
【表3】

【0459】
実施例34 PTFE造粒物(I′)の分級と評価
実施例17で得たPTFE造粒物2を60メッシュの標準篩で分級し、得られた篩下を用い、上述の各方法により物性を測定し、結果を表4に示す。
【0460】
実施例35 PTFE造粒物(I′)の分級と評価
実施例20で得たPTFE造粒物5を80メッシュの標準篩で分級し、得られた篩下を用い、上述の各方法により物性を測定し、結果を表4に示す。
【0461】
実施例36 PTFE造粒物(I′)の分級と評価
実施例23で得たPTFE造粒物8を80メッシュの標準篩で分級し、得られた篩下を用い、上述の各方法により物性を測定し、結果を表4に示す。
【0462】
実施例37 PTFE造粒物(I′)の分級と評価
実施例27で得たPTFE造粒物2を60メッシュの標準篩で分級し、得られた篩下を用い、上述の各方法により物性を測定し、結果を表4に示す。
【0463】
実施例38 PTFE造粒物(I′)の分級と評価
実施例30で得たPTFE造粒物5を80メッシュの標準篩で分級し、得られた篩下を用い、上述の各方法により物性を測定し、結果を表4に示す。
【0464】
実施例39 PTFE造粒物(I′)の分級と評価
実施例33で得たPTFE造粒物8を80メッシュの標準篩で分級し、得られた篩下を用い、上述の各方法により物性を測定し、結果を表4に示す。
【0465】
比較例8〜22 PTFE系ポリマーの造粒物の評価
ポリフロンTFEモールディングパウダーM−31、ポリフロンTFEモールディングパウダーM−32、ポリフロンTFEモールディングパウダーM−33、ポリフロンTFEモールディングパウダーM−391S、ポリフロンTFEモールディングパウダーM−391、ポリフロンTFEモールディングパウダーM−392、ポリフロンTFEモールディングパウダーM−393、ニューポリフロンTFEモールディングパウダーM−139(いずれも商品名、ダイキン工業社製);アフロンTFE−G307、アフロンTFE−G320、アフロンTFE−G350、アフロンTFE−G352(いずれも商品名、旭硝子社製);テフロン(登録商標)−800J、テフロン(登録商標)−810J(いずれも商品名、三井デュポンフロロケミカル社製);ホスタフロンTFM−1600(ダイネオン社製)について、上述の各方法により物性を測定し、結果を表4に示す。
【0466】
【表4】

【0467】
表4から、上述のPTFE系ポリマーの従来の造粒品についての比較例8〜22に比べ、上記各PTFE粉砕物(I)〜(III)を造粒した実施例16〜39では、各測定用成形体の表面粗度Ra、絶縁破壊強度、引張強度及び/又は引張伸びを良好にすることができ、見掛け密度と流動度に優れたPTFE造粒物が得られることがわかった。造粒後に分級した実施例21〜23及び実施例37〜39では、分級前に比べ、見掛け密度と流動度は劣るが、表面粗度Ra、引張強度及び/又は引張伸びに優れ、特に表面粗度Raの低下が顕著であることがわかった。
【0468】
実施例40 PTFE粉砕物(I)の冷凍粉砕法による製造
製造例1で得たPTFE未粉砕粉末(I)を、液体窒素とともに冷凍粉砕機(商品名、IMマテリアル社製)に供給し、−120℃の粉砕温度で平均粒子径が34.7μmになるように粉砕した。上記冷凍粉砕機は、ハンマーミル状の衝撃式粉砕機である。
【0469】
実施例41〜42 PTFE粉砕物(II)の冷凍粉砕法による製造
PTFE未粉砕粉末(I)の代わりに製造例3で得たPTFE未粉砕粉末(II)を用い、実施例40と同様にして平均粒子径がそれぞれ28.3μm、33.8μmになるように粉砕した。
【0470】
実施例43 PTFE粉砕物(I)の冷凍粉砕法による製造
製造例4で得たPTFE未粉砕粉末(I)を、液体窒素とともに冷凍粉砕機(商品名、IMマテリアル社製)に供給し、−120℃の粉砕温度で平均粒子径が34.7μmになるように粉砕した。上記冷凍粉砕機は、ハンマーミル状の衝撃式粉砕機である。
【0471】
実施例40〜43から、PTFE粉砕物(I)〜(II)を冷凍粉砕法により粉砕することによっても、微粉砕が可能であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0472】
本発明のPTFE粉末は、上述の構成よりなることから、表面粗度Ra、引張強度及び/又は引張伸びを従来よりも向上させ、絶縁破壊強度に優れた成形体を得ることができ、所望により、見掛け密度及び/又は粉末流動性にも優れる。本発明のPTFE成形用粉末製造方法は、また、上述の構成よりなることから、成形体において、表面粗度Ra、引張強度及び/又は引張伸びを従来よりも向上させ、絶縁破壊強度にも優れることができる上記PTFE成形用粉末を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0473】
【図1】図1は、流動度を調べるために用いた装置の概略説明図である。
【図2】図2は、実施例8におけるDCSで測定したDSCチャートから結晶化熱を求める方法の説明図である。
【図3】図3は、ジェット粉砕装置の部分切欠斜視図である。
【図4】図4は、ジェット粉砕装置の要部縦断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非変性ポリテトラフルオロエチレンからなる粉末であり、
平均粒子径が1〜6μmであるポリテトラフルオロエチレン粉末を造粒して得られ、
アモルファスインデックスが0.25以上である
ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン造粒粉末。
【請求項2】
平均粒子径が30〜800μmである請求項1記載の造粒粉末。
【請求項3】
流動度が4回以上である請求項1又は2記載の造粒粉末。
【請求項4】
見掛け密度が0.5g/cm以上である請求項1、2又は3記載の造粒粉末。
【請求項5】
表面粗度Raが2.5μm未満である請求項1、2、3又は4記載の造粒粉末。
【請求項6】
絶縁破壊電圧が9.1kV以上である請求項1、2、3、4又は5記載の造粒粉末。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の造粒粉末を得る方法であって、
懸濁重合によりポリテトラフルオロエチレン未粉砕粉末を得る工程、
前記ポリテトラフルオロエチレン未粉砕粉末を粉砕して粉砕粉末を得る工程、及び、
前記粉砕粉末を造粒する工程、を含み、
前記ポリテトラフルオロエチレン未粉砕粉末は、非変性ポリテトラフルオロエチレンからなり、
前記非変性ポリテトラフルオロエチレンは、アモルファスインデックス〔AI〕が0.25以上であり、
前記粉砕粉末は、平均粒子径が1〜6μmである
ことを特徴とする造粒粉末の製造方法。
【請求項8】
懸濁重合の重合温度が1〜40℃である請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
重合開始剤として55℃における半減期が18〜120時間である過硫酸塩を添加する工程を含む請求項7又は8記載の製造方法。
【請求項10】
粉砕は、エアージェット粉砕法、冷凍粉砕法、冷凍エアージェット粉砕法及びウォータージェット粉砕法からなる群より選択される少なくとも1種の方法により行う請求項7、8又は9記載の製造方法。
【請求項11】
造粒は、水中造粒法により行う請求項7、8、9又は10記載の製造方法。
【請求項12】
造粒は、水と液−液界面を形成する有機液体、並びに、ノニオン性及び/又はアニオン性界面活性剤の存在下に、粉砕粉末が分散した水を攪拌することにより行う請求項7、8、9、10又は11記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−163629(P2010−163629A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105325(P2010−105325)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【分割の表示】特願2007−198149(P2007−198149)の分割
【原出願日】平成14年10月24日(2002.10.24)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】