説明

PTPシートのシール装置及びシール方法

【課題】内容物がカバーフィルムに付着することを抑制することが可能なPTPシートのシール装置を提供する。
【解決手段】 包装フィルム11に形成されたポケット15に内容物Nを充填しながら包装フィルム11を搬送する搬送手段と、ポケット15が収容可能な凹部19を有し、搬送手段の下流側に回転可能に設けられたシールローラ6と、シールローラ6上の包装フィルム11と接触するようにシールローラ6に供給されるカバーフィルム9を包装フィルム11に接合するヒートローラ7とからなる。カバーフィルム9は、シールローラ6の接線に対する入射角が45°以下となるように供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル剤や錠剤等が充填されるPTPシートのシール装置及びシール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PTPシート(プレススルーパックシート)は、帯状の包装フィルムに形成されたポケットにカプセル剤や錠剤などの内容物が充填された後、包装フィルムの裏面にアルミニウム箔などのカバーフィルムがシールされることにより製造される。このPTPシートを製造する装置として、シールロールとヒートローラを備え、これらのローラの間に包装フィルムとカバーフィルムとカプセル剤を供給し、カプセル剤を挟んだ包装フィルムとカバーフィルムを加熱してヒートシールする装置が知られている。(特許文献1参照)また、同種のPTPシートのシール装置として、ローラの外周面に凹部を複数備えて内容物を安定的に受け入れ自在な構成とした装置が知られている。(特許文献2、3参照)
【0003】
図7は、先の特許文献1に記載されたPTPシートの製造装置において、シールを行う部分のシール装置の構成を示す。このシール装置は、シールローラ100と、ヒートローラ110とを備えており、連続したシート状に形成された包装フィルム120がシールローラ100に搬送される。
【0004】
包装フィルム120は、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂によって形成されており、シールローラ100の上流側でポケット121が所定間隔で形成され、それぞれのポケット121にカプセル剤等の内容物Nが充填され、内容物Nの充填状態で包装フィルム120がシールローラ100に搬送される。
【0005】
シールローラ100の外面には、図8に示す如くポケット121を収容するための凹部101が形成されている。図8に示すように、これらの凹部101は、シールローラ100の外面に複数が整列状に形成されており、それぞれ凹部101が、包装フィルム120の幅方向に形成された列状のポケット121を収容するようになっている。シールローラ100は、ポケット121を収容しながら回転して包装フィルム120を回転方向に移動させる。
【0006】
ヒートローラ110は、ヒーターを内蔵した熱ローラからなり、シールローラ100の外面に接触した状態でシールローラ100の回転に伴って従動回転する。一方、シールローラ100には、樹脂コーティングされたアルミニウムフィルム等からなるカバーフィルム150が供給され、ヒートローラ110上の包装フィルム120に重ねられる。ヒートローラ110は、重なっている包装フィルム120とカバーフィルム150とをシールローラ100との間に挟み込み、加熱する。この加熱により、カバーフィルム150が包装フィルム120に接合されてヒートシールが行われる。カバーフィルム150が接合されることにより、ポケット121が封鎖されてPTPシートが形成され、その後、適宜の大きさに切断されて包装等の後工程に搬出される。
【0007】
ところで、図10は、上述のシールローラ100にカバーフィルム150を供給するためのカバーフィルム供給装置の一例を示す。この例のカバーフィルム供給装置において、カバーフィルム150は、芯ロール161に巻回されることによりロール体160となっており、このロール体160から引き出されてシールローラ100に供給される。芯ロール161は、カバーフィルム150の引き出しに応じて回転するようになっており、その回転軸162には、ブレーキドラム170が取り付けられている。ブレーキドラム170の外周には、テンションベルト180が巻き付けられており、テンションベルト180によってブレーキドラム170の制動ができるようになっている。
【0008】
テンションベルト180は、一端が装置本体190のブラケット191に固定され、他端には、調整ネジ200が連結されている。調整ネジ200は、装置本体190に対して上下調整可能に取り付けられている。調整ネジ200は、コイルばね210によって振動が吸収されるようになっている。このような構造では、調整ネジ200を回転させて調整ネジ200の上下位置を変更することにより、テンションベルト180によるブレーキドラム170への接触圧を調整できるため、ブレーキドラム170の回転を制動することができ、ロール体160からのカバーフィルム150を供給する際、カバーフィルム150のテンションを調整し、カバーフィルム150が弛まないようにテンション調整を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−335465号公報
【特許文献2】特開2005−82211号公報
【特許文献3】特開2004−99083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来のPTPシートの製造装置では、カバーフィルム150のシール時にカプセル剤などの内容物Nがカバーフィルム150に付着して不良品が発生する問題を有している。本発明者らがこの内容物Nの付着メカニズムを鋭意研究した結果、付着の原因を特定することができたので、図7を基に、以下に説明する。
【0011】
昨今のPTPシートの製造装置では、大量生産が求められているので、生産スピードを向上するために、包装フィルム120の供給スピードを上昇させており、この場合、包装フィルム120がヒートローラ110の外面に沿って移動する際、図7(a)に示すように、振動や遠心力等により内容物Nが立ち上がってその一部がポケット121から若干はみ出した状態となり易い。このように一部がポケット121からはみ出た内容物Nは、カバーフィルム150の樹脂コーティング面と接触し、この接触状態で図7(b)及び(c)に示すようにヒートローラ110と接触する。この接触により、内容物Nはカバーフィルム150と共にヒートローラ110によって加熱される。このため、内容物Nが部分的に溶融してカバーフィルム150に付着する現象が生じ、この付着状態でポケット121内に収容される。即ち、内容物Nがカバーフィルム150に付着したままでPTPシートが製造されてしまう。このような内容物Nのカバーフィルム150への付着が生じると、不良のPTPシートとなり、好ましくない。
【0012】
また、上記従来のPTPシートの製造装置においては、カバーフィルム150に皺や切れ目が発生する問題を有していた。このカバーフィルム150に皺や切れ目が発生する原因について本発明者らが鋭意研究したところ、これらの皺や切れ目の変異は、図10に示す構成のテンションベルト180を用いたテンション調整を行っていたとしても、カバーフィルム150の張力に小刻みな振動(以下、びびり振動)が発生することにより生じるとの知見を得た。この現象について以下に説明する。
図11は、ロール体160から引き出されるカバーフィルム150の張力の変動を示し、横軸がロール体160の巻き径、縦軸がカバーフィルム150の張力を示している。カバーフィルム150の張力は、ロール体160の巻き径の減少につれて徐々に大きくなってゆくが、間欠的にびびり振動が発生する。このびびり振動は、テンションベルト180の張力を調節してブレーキドラム170に一定の制動力を与えていたとしても、生産の続行に伴い、ロール体160のカバーフィルム150が減少してゆくと、ロール体160が小さくなってゆくので、それに応じて必要な制動力が変化する結果、カバーフィルム150の張力が変動することになり、この張力変動に応じた振動等が作用することが原因となって発生すると思われる。このようなびびり振動が図11に示す皺限界張力を超えると、PTPシートに皺や切れ目が発生すると思われる。
【0013】
図9は、製造されたPTPシートのカバーフィルム150に発生した皺や切れ目等の変異155を示す。この変異155は、ポケット121を中心に図9の横方向(PTPシールのヒートシール時に用いたカバーフィルム150の長さ方向)に沿って発生している。このような変異155が発生すると、シール不良となるので、不良のPTPシートとなり、好ましくない。
【0014】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたものであり、カプセル剤などの内容物がカバーフィルムに付着することを抑制することが可能なPTPシートのシール装置及びシール方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、PTPシートのカバーフィルムに皺や切れ目などの変異が発生することを抑制することが可能なPTPシートのシール装置及びシール方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のPTPシートのシール装置は、包装フィルムに形成されたポケットに内容物を充填しながら包装フィルムを搬送する搬送手段と、前記ポケットが収容可能な凹部を有し、前記搬送手段の下流側に回転可能に設けられたシールローラと、前記シールローラ上の包装フィルムと接触するようにシールローラに供給されるカバーフィルムを前記包装フィルムに接合するヒートローラとからなり、前記カバーフィルムを、前記シールローラの接線に対する入射角が45°以下となるように供給できるようにしたことを特徴とする。
【0016】
本発明は、先に記載のPTPシートのシール装置であって、前記カバーフィルムが巻回されたロール体と、前記ロール体の回転軸に接触圧を有して直接又は間接に接触する超高分子系樹脂からなるブレーキ部材と、前記カバーフィルムの張力を一定とするため前記ブレーキ部材の回転軸への接触圧が調整可能な加圧部材とを有してなることを特徴とする。
【0017】
本発明は、先に記載のPTPシートのシール装置であって、前記ポケットからの内容物の飛び出しを防止する保護プレートが前記シールローラを覆うように配置されており、前記カバーフィルムは、前記保護プレートと干渉しない入射角で供給されることを特徴とする。
【0018】
本発明は、先に記載のシールローラの上面側に包装フィルムが供給され、シールローラの上面側において前記ヒートローラによってカバーフィルムが包装フィルムに接合されるとともに、包装フィルムの進入経路に沿ってヒートローラの手前側に前記カバーフィルムの入射角度を規制するコントロールローラが設けられたことを特徴とする。
【0019】
本発明のPTPシートのシール方法は、包装フィルムに形成されたポケットに内容物を充填した後、前記ポケットをシールローラの凹部に収容しながら包装フィルムをシールローラの回転と共に移動させ、前記シールローラにカバーフィルムを供給し、シールローラ上でカバーフィルムと包装フィルムとを接触させ、加熱によってカバーフィルムを包装フィルムに接合するシール方法において、前記カバーフィルムを前記シールローラの接線に対して45°以下の入射角で供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のPTPシートのシール装置によれば、シールローラの接線に対するカバーフィルムの入射角が45°以下となっていることにより、包装フィルムのポケットから内容物が出ようとしても、内容物がポケットから出ようとする動作をカバーフィルムが押さえ込む。これにより、内容物がポケットの内部に収まった状態となり、内容物がシールローラと接触するおそれが少なく、シールローラの熱が内容物に作用することがない。このため、内容物が溶融してカバーフィルムに付着することを抑制できる。
【0021】
また、本発明のPTPシートのシール装置によれば、ロール体の回転軸に接触するブレーキ部材が超高分子系樹脂によって形成されているため、摺動特性に優れている。このため、ロール体の回転軸が円滑に制動された状態で回転でき、カバーフィルムの引き出しの際に、カバーフィルムの張力にびびり振動に起因する張力変動が発生することを抑制できる。このため、カバーフィルムに皺や切れ目などの変異が発生することを抑制することができる。
【0022】
又、本発明のPTPシートのシール装置によれば、カバーフィルムが保護プレートと干渉しない入射角で供給されるため、カバーフィルムを円滑にシールローラに供給することができると共に、保護プレートが内容物の飛び出しを確実に防止する。
【0023】
本発明のPTPシートのシール方法によれば、カバーフィルムをシールローラの接線に対して45°以下の入射角で供給するため、内容物がポケットから出る動作をカバーフィルムが押さえ込むことができる。従って、内容物がポケットの内部に収まった状態となってヒートローラと接触することがなく、ヒートローラの熱によって内容物が溶融し、カバーフィルムに付着することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】PTPシートの製造装置の全体を示す側面図である。
【図2】シール装置の断面図である。
【図3】カバーフィルムの入射角が45°における断面図である。
【図4】カバーフィルムの入射角が35°における断面図である。
【図5】カバーフィルムの入射角が20°における断面図である。
【図6】カバーフィルム供給装置を示す斜視図である。
【図7】(a)〜(d)は従来のシール装置における動作を示す側面図である。
【図8】シールローラを示す斜視図である。
【図9】カバーフィルムに発生した変異を示す正面図である。
【図10】従来のカバーフィルム供給装置を示す斜視図である。
【図11】従来におけるカバーフィルムの張力の変動を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るPTPシートのシール装置の第1実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、PTPシートのシール装置を含む製造装置全体を示す側面図、図2は、PTPシールのシール装置の要部断面図、図3〜図5は、カバーフィルムの入射角の大きさに応じた動作を示す断面図、図6は、カバーフィルム供給装置系を示す斜視図である。
【0026】
図1に示すように、PTPシートの製造装置1は、ポケット成形装置2と、本実施形態のPTPシール装置3と、加工装置4とが備えられてなり、これらが包装フィルム11の搬送路に沿って順に配置されている。又、PTPシートの製造装置1は、カバーフィルム供給装置41が備えられている。ここで用いる包装フィルム11は、塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂からなり、連続したシートの状態で搬送される。
【0027】
ポケット成形装置2は、加熱板12及び成型板13を有している。加熱板12は、シート状で供給される包装フィルム11を挟んで120〜130℃程度に加熱する。この加熱によって包装フィルム11が柔軟な状態となり、成型板13に移動する。成型板13は、一対の成形型13a、13bからなり、包装フィルム11をプレスすることにより包装フィルム11に対してポケット15を形成する。ポケット15は、包装フィルム11の長さ方向に沿って適宜間隔で形成される。又、ポケット15は、包装フィルム11の幅方向に対しては、5列等の並列状態で複数が形成される。
【0028】
PTPシートのシール装置3は、包装フィルム11の搬送手段5と、シールローラ6と、ヒートローラ7とを備えている。
搬送手段5は、ポケット成形装置2の下流側に設けられる。搬送手段5は、包装フィルム11のポケット15に対し、カプセル剤、錠剤等の内容物Nを充填する。このため、搬送手段5には、充填装置17が配置されている。
【0029】
充填装置17は、上下に方向に延びる充填筒を有しており、包装フィルム11の搬送路上に設けられている。充填装置17の充填筒は、包装フィルム11に形成されたポケット列に対応した数が設けられている。それぞれの充填筒には、図示しないシャッタが設けられており、シャッタを開くことにより内容物Nがポケット15に落下されて充填される。
【0030】
シールローラ6及びヒートローラ7は、搬送手段5の下流側に配置されている。シールローラ6の外面には、包装フィルム11のポケット15を収容する凹部19が複数整列状態で形成されている。凹部19は、包装フィルム11に形成されたポケット列に対応するように整列状態とされていてシールローラ6に形成され、例えば、図8と同様な構造に形成されている。シールローラ6は、回転して包装フィルム11を回転方向に移動させる。
【0031】
ヒートローラ7は、ローラアーム21に取り付けられた状態で図示略の支持軸に上下に旋回自在に支持されており、シールローラ6の外面に接触するように配置されている。ヒートローラ7は、加熱制御される熱ローラからなり、シールローラ6の回転に伴って従動回転する。ヒートローラ7は、カバーフィルム9を包装フィルム11の裏面にヒート接合するものである。ここで、裏面とは、ポケット15が開放されている側の包装フィルム11の面である。
【0032】
カバーフィルム9は、アルミニウム等の金属フィルムの一面にポリエチレン等の樹脂コーティングを施して構成されている。カバーフィルム9は、樹脂コーティング層がシールローラ6上の包装フィルム11と接触するようにシールローラ6に向けて供給される。供給されたカバーフィルム9は、包装フィルム11の裏面に接触し、包装フィルム11とともにヒートローラ7及びシールローラ6の間に挟まれる。
【0033】
ヒートローラ7は、カバーフィルム9の樹脂コーティング層の軟化温度よりも高温となるように加熱制御されており、樹脂コーティング層がヒートローラ7の押圧加熱によって部分的に溶融されることによりカバーフィルム9が包装フィルム11に接合される。この場合、樹脂コーティング層が例えば、ポリエチレンである場合、ヒートローラ7は195±5℃となるように加熱制御される。接触状態のカバーフィルム9及び包装フィルム11は、例えば、周速度6.6m/分で供給されることにより0.5秒間加熱される。また、0.5MPa程度の圧力で接合が行われる。
【0034】
本実施形態において、シールローラ6に対しては、保護プレート23が設けられている。保護プレート23は、ヒートローラ7と反対側におけるシールローラ6の上面部を若干の隙間を空けて部分的に覆うように配置されており、シールローラ6の上面部を部分的に覆うことにより、包装フィルム11のポケット15から内容物Nの飛び出しを防止する。この実施形態において保護プレート23はシールローラ6の外周面において包装フィルム11を引き込む部分から頂上部分までを若干の間隔を空けて覆うように配置されている。
【0035】
以上の構造のシール装置3においては、包装フィルム11がシールローラ6に達することにより、内容物Nが充填されたポケット15がシールローラ6の凹部19に収容されてシールローラ6の回転と共に包装フィルム11がシールローラ6上を移動する。カバーフィルム9は、上方からシールローラ6に供給されて包装フィルム11と接触し、この接触状態でシールローラ6及びヒートローラ7に挟まれ、ヒートローラ7によって加熱される。このため、包装フィルム11にカバーフィルム9が接合されてポケット15がシールされる。
【0036】
カバーフィルム9が接合された後、包装フィルム11は、複数のフィードローラ25を経由して加工装置4に搬送される。加工装置4は、ミシン目形成部27及び打ち抜き部29を有している。ミシン目形成部27は、包装フィルム11に対し、切断の目安となるミシン目を形成する。打ち抜き部29は、包装フィルム11を所定の長さ毎に切断する。この切断により、所定の大きさのPTPシートが形成され、形成されたPTPシートはピックアップアーム30によって吸引され、包装等の後工程に搬送される。
【0037】
本実施形態において、カバーフィルム9は、シールローラ6の周面に対して45℃以下の入射角で供給される。また、シールローラ6の上方にはカバーフィルム9の入射角を設定するため、図2に示す如くコントロールローラ33が設けられている。なお、図1では図示を簡略化するためにカバーフィルム9をシールローラ6の上方90゜近くから導入しているように描いているが、実際には図2に示す如くカバーフィルム9をコントロールローラ33を用いて斜め方向から導入する。
より詳細には、図2に示すように、コントロールローラ33が、カバーフィルム9をシールローラ6に供給する位置よりも上流側(上方側)に配置されている。コントロールローラ33は、例えば装置全体を支持するフレームなどに軸支されており、このフレームに対する軸支位置を調整することにより、シールローラ6に対する設置位置を変更可能となっており、設置位置の変更により、シールローラ6に対するカバーフィルム9の入射角を適宜変更することができる。
【0038】
図3〜図5は、コントロールローラ33の位置変更によりカバーフィルム9のシールローラ6への入射角を変更した状態を示す。カバーフィルム9の入射角は、シールローラ6の接線35に対する仰角と見ることができ、45°以下の入射角に設定することが好ましい。図3においては、カバーフィルム9の入射角が45°であり、図4においては、35°であり、図5においては、20°に設定されている。
【0039】
このように、45°以下の入射角に設定しておくことにより、カバーフィルム9はヒートシール以前の状態において、換言すると、ヒートローラ7に接する直前の状態において、シールローラ6の凹部19を覆う状態とすることができる。カバーフィルム9が凹部19を覆うことにより、カバーフィルム9は、凹部19内のポケット15に収容されている内容物Nのポケット15への収容状態を維持させるように作用する。すなわち、包装フィルム11のポケット15から内容物Nが出ようとしても、カバーフィルム9は、内容物Nがポケット15から出る動作を押さえ込むものである。これにより、内容物Nがポケット15の内部に収まった状態となるため、内容物Nがヒートローラ7と接触することがなく、ヒートローラ7の熱が内容物Nに作用することが無くなる。このため、内容物Nが溶融してカバーフィルム9に付着することを防止でき、付着に起因したPTPシート不良の発生を阻止することができる。
【0040】
カバーフィルム9は、シールローラ6への入射角が小さくなるほど、内容物Nをポケット15に押さえ込む作用が大きくなり、不良率を低減させることができる。このカバーフィルム9の入射角の下限値は、シールローラ6を覆う保護プレート23との関係で設定される。すなわち、カバーフィルム9は、保護プレート23と干渉しない入射角に設定される。このように設定することにより、カバーフィルム9の内容物Nの押さえ込み作用を支持しながらカバーフィルム9を円滑にシールローラ6に供給することができる。また、カバーフィルム9が保護プレート23に干渉しないため、保護プレート23が内容物Nの飛び出しを確実に防止することができる。以上のことから、カバーフィルム9の入射角は、20〜45°の範囲が好ましい。
【0041】
次に、図6に示すように、カバーフィルム供給装置41は、芯ロール42に巻回されたロール体43を有している。ロール体43の芯ロール42は、装置本体47に回転可能に支持される回転軸45を有しており、回転軸45にブレーキドラム51が取り付けられている。
【0042】
本実施形態において、カバーフィルム供給装置41には、ブレーキ部材48が設けられる。ブレーキ部材48は、ブロック状に形成され、下面に形成された窪み部分48aがブレーキドラム51の外周面に接触するようになっている。又、ブレーキ部材48は、加圧部材49に取り付けられている。加圧部材49としては、エアーシリンダが用いられており、図示しないエア源からのエアによって伸縮してブレーキ部材48をブレーキドラム51に対して進退移動させる。これにより、ブレーキ部材48は、ブレーキドラム51への接触圧が調整可能となってブレーキドラム51に接触している。
【0043】
このようなカバーフィルム供給装置41では、加圧部材49を制御して、ブレーキ部材48のブレーキドラム51への接触圧を調整することにより、ブレーキドラム51の回転、すなわちロール体43の回転軸45の回転を効率よくリアルタイムに制動することができ、ロール体43からのカバーフィルム9を供給する際のテンションを一定として、カバーフィルム9の引き出し量を安定化することができる。
【0044】
ブレーキ部材48は、超高分子系樹脂によって形成されている。超高分子系樹脂としては、商品名「デルリン」(デュポン(社)製)又は商品名「ジュラコン」(ポリプラスチック(社)製)で代表されるポリアセタールを選択することができる。ポリアセタールは、摺動特性に優れており、ポリアセタールからなるブレーキ部材48に対し、ブレーキドラム51が良好に摺動することができる。このため、ブレーキドラム51、すなわち回転軸45が振動することなく円滑に回転制動制御することができる。これにより、カバーフィルム9の引き出しの際に、カバーフィルム9の張力にびびり振動に伴う張力変異が発生することを抑制でき、PTPシートを製造した際にカバーフィルム9に皺や切れ目などの変異が発生することを抑制することができる。また、これらの超高分子系樹脂であるならば、耐摩耗性に優れ、硬度も高いので、シール装置の運転中に使用しても、摩耗粉などが生じるおそれが少なく、シール装置周りにおいて塵埃を発生させるおそれも少ない。
【0045】
本実施形態では、ロール体43の回転軸45にブレーキドラム51を取り付け、ブレーキドラム51にブレーキ部材48が接触した構造となっているが、ブレーキドラム51を設けることなく、ロール体43の回転軸45にブレーキ部材48を直接に接触した構造であってもよい。
【実施例】
【0046】
図2に示す構成のシール装置を用い、図3、図4、図5に示す如くコントロールローラの角度を変更してPTPシートを生産し、その効果実証試験を行った。
シールローラ(直径16.33cm)を6.6m/分の速度で回転し、ヒートローラによるシール温度を195±5℃に制御し、シール圧力を0.49MPaに設定し、アルミニウム箔の裏面にポリエチレンシートを張り合わせたカバーフィルムを用い、塩化ビニル樹脂製の包装フィルムを用いて、カプセル剤のシールを行った。アルミニウム箔は幅(8.6cmと11.1cmの2種類)でその長さ方向に沿って5列の収容凹部を形成したものである。また、包装フィルムはシールローラに対して約1/4周巻き付ける状態とした。
また、図6に示すブレーキ部材は超高分子系樹脂のデルリン(デュポン(社)製:商品名)製のものを用いてエアーシリンダによるブレーキエアー圧0.19MPa〜0.32MPaの間に調整してカバーフィルムの張力制御を行っている。
【0047】
コントロールローラの取り付け位置を調節してシールローラの接線に対して60゜の入射角度でカバーフィルムを入射しながらヒートシールしてPTPシートを生産したところ、588個(1列5個として、総数2940個)のヒートシールを行う間に、20個の不良が発生した。不良率は約3.4%であった。各包装フィルムの温度はヒートローラに入る直前で約120℃、ヒートシール後、シールローラから離れる時点における温度が60℃となっていた。
【0048】
これに対し、コントロールローラの位置を調節してシールローラの接線に対して45゜の入射角度でカバーフィルムを入射しながらヒートシールしたところ、588個(1列5個として、総数5880個)のヒートシールを行う間に1個も不良を生じなかった。
また、コントロールローラの位置を変更して、入射角度を35゜、20にそれぞれ変更して同様の試験を行ったところ、いずれの場合もヒートシールを行う間に1個も不良を生じなかった。
【0049】
ところで、本実施例において、45゜の入射角度は、カバーフィルムをシールローラに対し、ヒートローラに接触する手前の領域において巻き付け長20mmとしたことを意味し、35゜の入射角度は、カバーフィルムをシールローラに対して巻き付け長30mmとしたことを意味し、20゜の入射角度は、カバーフィルムをシールローラに対して巻き付け長60mmとしたことを意味する。なお、入射角度60゜の場合はヒートローラの手前側の領域ではカバーフィルムがシールローラには接していない状態となっていた。
以上の試験結果から、カバーフィルムの入射角度がPTPシートのシール不良発生の重要な要因であり、シールローラの接線に対して入射角度を20〜45゜の範囲とすることが重要であることを確認できた。
【符号の説明】
【0050】
3…シール装置、5…搬送手段、6…シールローラ、7…ヒートローラ、9…カバーフィルム、11…包装フィルム、15…ポケット、23…保護プレート、33…コントロールローラ、35…接線、43…ロール体、45…回転軸、48…ブレーキ部材、49…加圧部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装フィルムに形成されたポケットに内容物を充填しながら包装フィルムを搬送する搬送手段と、
前記ポケットが収容可能な凹部を有し、前記搬送手段の下流側に回転可能に設けられたシールローラと、
前記シールローラ上の包装フィルムと接触するようにシールローラに供給されるカバーフィルムを前記包装フィルムに接合するヒートローラとからなり、
前記カバーフィルムを、前記シールローラの接線に対する入射角が45°以下となるように供給できるようにしたことを特徴とするPTPシートのシール装置。
【請求項2】
前記カバーフィルムが巻回されたロール体と、前記ロール体の回転軸に接触圧を有して直接又は間接に接触する超高分子系樹脂からなるブレーキ部材と、前記カバーフィルムの張力を一定とするため前記ブレーキ部材の回転軸への接触圧が調整可能な加圧部材とを有してなることを特徴とする請求項1記載のPTPシートのシール装置。
【請求項3】
前記ポケットからの内容物の飛び出しを防止する保護プレートが前記シールローラの上面側を覆うように配置されており、前記カバーフィルムは、前記保護プレートと干渉しない入射角で供給されることを特徴とする請求項1又は2記載のPTPシートのシール装置。
【請求項4】
前記シールローラの上面側に包装フィルムが供給され、シールローラの上面側において前記ヒートローラによってカバーフィルムが包装フィルムに接合されるとともに、包装フィルムの進入経路に沿ってヒートローラの手前側に前記カバーフィルムの入射角度を規制するコントロールローラが設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシール装置。
【請求項5】
包装フィルムに形成されたポケットに内容物を充填した後、前記ポケットをシールローラの凹部に収容しながら包装フィルムをシールローラの回転と共に移動させ、前記シールローラにカバーフィルムを供給し、シールローラ上でカバーフィルムと包装フィルムとを接触させ、加熱によってカバーフィルムを包装フィルムに接合するシール方法において、
前記カバーフィルムを前記シールローラの接線に対して45°以下の入射角で供給することを特徴とするPTPシートのシール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−254306(P2010−254306A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103002(P2009−103002)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】