PWM制御された交流電流の測定方法およびその装置
【課題】PWM制御された交流電流の振幅および実効値を正確に測定する。
【解決手段】PWM制御された交流電流を電圧信号に変換する電流電圧変換ステップと、電流電圧変換ステップにおいて変換した電圧信号を、当該電圧信号の波形を再現可能なサンプリング周期で、デジタル信号に変換するA/D変換ステップと、A/D変換ステップにおいて変換したデジタル信号に基づいて、交流電流の振幅および実効値を算出する測定ステップとを有する。
【解決手段】PWM制御された交流電流を電圧信号に変換する電流電圧変換ステップと、電流電圧変換ステップにおいて変換した電圧信号を、当該電圧信号の波形を再現可能なサンプリング周期で、デジタル信号に変換するA/D変換ステップと、A/D変換ステップにおいて変換したデジタル信号に基づいて、交流電流の振幅および実効値を算出する測定ステップとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、PWM(Pulse Width Modulation)制御された交流電流を測定する測定方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒータやランプ等の負荷に断線等の故障が生じていないかを検出するため、負荷に流れる交流電流を測定するものが知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1に開示される方法では、負荷に流れる交流電流を電圧信号に変換し、この電圧信号を整流・平滑することで直流の電圧信号に変換して、測定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−91576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の交流電流の測定方法では、交流電流を電圧信号に変換し、この電圧信号を整流・平滑した後に、測定を行っている。
一方、負荷のパワー制御を行うため、この負荷に流れる交流電流をPWM制御したものがある。このPWM制御では、例えば図7,9に示すように、1周期における交流電流のON/OFF期間の割合(デューティ比)を調整している。
【0005】
ここで、PWM制御された交流電流を従来の測定方法を用いて測定した場合、測定期間(例えば1周期)内で交流電流がOFFとなる期間が含まれる場合があり、このOFF期間も含めて平滑を行うことになる。そのため、図7〜10に示すように、PWM制御によるデューティ比が変化して交流電流71,91のOFF期間が変化すると、ON期間での交流電流71,91の振幅は変わらないにも関わらず、平滑を行った電圧信号82,102(83,103)が変化してしまう。よって、交流電圧の振幅・実効値を正しく測定することができず、負荷の断線等の故障を正しく検出することができないという課題があった。なお図8,10において、符号81,101は交流電流71,91を電圧信号に変換したものを全波整流した電圧信号であり、電圧信号82,102は平滑回路の時定数が短い場合での信号であり、電圧信号83,103は平滑回路の時定数が長い場合での信号である。
また、従来の測定方法のように整流を行う場合、この整流を行うダイオードで電圧降下が発生し、測定値に誤差が発生してしまうという課題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、PWM制御された交流電流の振幅および実効値を正確に測定することができるPWM制御された交流電流の測定方法およびその装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るPWM制御された交流電流の測定方法は、PWM制御された交流電流を電圧信号に変換する電流電圧変換ステップと、電流電圧変換ステップにおいて変換した電圧信号を、当該電圧信号の波形を再現可能なサンプリング周期で、デジタル信号に変換するA/D変換ステップと、A/D変換ステップにおいて変換したデジタル信号に基づいて、交流電流の振幅および実効値を算出する測定ステップとを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、上記のように構成したので、整流・平滑処理が不要となり、PWM制御によるデューティ比の変動に伴う誤演算がなくなるため、交流電流の振幅および実効値を正確に測定することができる。また、整流・平滑処理を行う構成要素が不要なため、装置の小型化およびコストダウンを図ることができる。また、整流処理が不要なため、ダイオードによる電圧降下がなくなり、高精度に測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る交流電流測定装置の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る交流電流測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1に係る交流電流測定装置により測定された交流波形を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る交流電流測定装置の構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る交流電流測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2に係る交流電流測定装置により測定された交流波形を示す図である。
【図7】PWM制御された交流電流の波形を示す図である。
【図8】従来の測定方法を用いて図7に示す交流電流を測定した際の波形を示す図である。
【図9】図7に示す交流電流に対して、PWMのデューティ比を変化させた場合での交流電流の波形を示す図である。
【図10】従来の測定方法を用いて図9に示す交流電流を測定した際の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
交流電流測定装置1は、図1に示すヒータやランプ等の負荷2に交流電源3からの交流電流が正常に流れているかを測定することで、負荷2に断線等の故障が生じていないかを検出するものである。なお交流電源3からの交流電流は、負荷2のパワー制御を行うため、PWM制御されている。すなわち、1周期における交流電流のON/OFF期間の割合(デューティ比)が調整されている。
このPWM制御された交流電流を測定する交流電流測定装置1は、図1に示すように、電流電圧変換部11、増幅器12、A/D変換器13、記憶部14および測定部15から構成されている。
【0011】
電流電圧変換部11は、負荷2と交流電源3との間に直列接続され、電流が流れることによって生じる両端の電圧を検出することで、負荷2に流れる交流電流を電圧信号に変換するものである。この電流電圧変換部11は、例えば抵抗、トランスやホール素子等から構成される。
増幅器12は、電流電圧変換部11により変換された電圧信号を増幅するものである。
【0012】
A/D変換器13は、増幅器12により増幅された電圧信号を、この電圧信号の波形を再現可能なサンプリング周期(例えば1ms)で、デジタル信号に変換するものであり、ソフトウェアで実現される。なお、A/D変換器13は、所定の測定期間(例えば1周期や複数周期)を計るタイマを保持しており、このタイマに従い、測定期間での交流電圧に対するA/D変換を行う。
記憶部14は、A/D変換器13により変換されたデジタル信号を記憶するものである。
【0013】
測定部15は、記憶部14に記憶された測定期間での各デジタル信号に基づいて、交流電流の振幅およびその実効値を算出するものであり、ソフトウェアで実現される。この測定部15は、測定期間での各デジタル信号の中から最大値を検出し、この最大値の倍を交流電流の振幅として算出する。また、測定部15は、算出した振幅に、交流電流の波形に応じた係数を乗算することで、実効値を算出する。この測定部15により算出された交流電流の実効値はディスプレイ(不図示)上に表示される。
【0014】
次に、上記のように構成された交流電流測定装置1の動作について説明する。なお、負荷2には図7に示す交流電流が流れ、交流電流測定装置1の測定期間は1周期とする。
交流電流測定装置1の動作では、図2に示すように、まず、電流電圧変換部11が、負荷2に流れる交流電流を電圧信号に変換する(ステップST1,電流電圧変換ステップ)。次いで、増幅器12が、電流電圧変換部11により変換された電圧信号を増幅する(ステップST2,増幅ステップ)。これにより、図3に示すような電圧信号31となる。
【0015】
次いで、A/D変換器13が、増幅器12により増幅された電圧信号を、この電圧信号の波形を再現可能なサンプリング周期で、デジタル信号に変換する(ステップST3,A/D変換ステップ)。なおA/D変換器13は、タイマに従い、測定期間での交流電圧に対するA/D変換を行う。このA/D変換器13により変換されたデジタル信号は記憶部14に記憶される。これにより、図3に示すようなサンプリング周期でデジタル信号32を取得することができる。
【0016】
次いで、測定部15が、記憶部14に記憶された測定期間での各デジタル信号の中から最大値を検出する(ステップST4)。これにより、図3に示す測定期間(1周期)でのデジタル信号の最大値33を検出することができる。
次いで、測定部15が、検出した最大値の倍を交流電流の振幅として算出する(ステップST5)。次いで、測定部15が、算出した振幅に、交流電流の波形に応じた係数を乗算して、交流電流の実効値を算出する(ステップST6)。例えば、図3に示すような歪のない波形(サイン波)の場合には、係数は1/(2×√2)となる。
なお、ステップST4〜6は本願発明の測定ステップに対応する。
このように動作することで、負荷2に流れる交流電流の振幅および実効値を正確に測定することができる。その後、この測定結果に基づいて、負荷2に交流電流が正常に流れているかを判断し、負荷2に断線等の故障が生じているかを判断する。
【0017】
以上のように、この実施の形態1によれば、PWM制御された交流電流を電圧信号に変換し、この電圧信号の波形を再現可能なサンプリング周期で直接A/D変換するように構成したので、整流・平滑処理が不要となり、PWM制御によるデューティ比の変動に伴う誤演算がなくなるため、交流電流の振幅および実効値を正確に測定することができる。また、整流・平滑処理を行う構成要素が不要なため、装置の小型化およびコストダウンを図ることができる。また、整流処理が不要なため、ダイオードによる電圧降下がなくなり、高精度に測定を行うことができる。
【0018】
実施の形態2.
実施の形態1では、交流電流を電圧信号に変換して増幅した後、そのままA/D変換を行っている。そのため、得られるデジタル信号は、図3に示すような0Vを基準とした信号となる。しかしながら、オペアンプやA/D変換器などの回路では、0V付近の電圧は扱うことができため、図3に示すデジタル信号を交流電流測定以外の用途に使用することはできない。そこで、このデジタル信号を他の用途にも使用可能とするため、電圧信号をレベルシフトした後A/D変換を行うようにしたものについて示す。
【0019】
図4に示す実施の形態2に係る交流電流測定装置1は、図1に示す実施の形態1に係る交流電流測定装置1の構成に加算器16を追加し、測定部15を測定部15bに変更したものである。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
加算器16は、A/D変換器13の前段に設けられ、A/D変換器13で用いる電圧信号に所定値を加算して、レベルシフトを行うものである。
また、測定部15bは、記憶部14に記憶された測定期間での各デジタル信号に基づいて、交流電流の振幅およびその実効値を算出するものであり、ソフトウェアで実現される。この測定部15bは、測定期間での各デジタル信号の中から最大値および最小値を検出し、この最大値と最小値との差分から交流電流の振幅を算出する。また、測定部15bは、算出した振幅に、交流電流の波形に応じた係数を乗算することで、実効値を算出する。この測定部15bにより算出された交流電流の実効値はディスプレイ(不図示)上に表示される。
【0020】
次に、上記のように構成された交流電流測定装置1の動作について説明する。なお、図5に示す実施の形態2に係る交流電流測定装置1の動作において、図2に示す実施の形態1に係る交流電流測定装置1の動作と同様の動作については、同一の符号を付しその説明を簡略化する。また、負荷2には図7に示す交流電流が流れ、交流電流測定装置1の測定期間は1周期とする。
交流電流測定装置1の動作では、図5に示すように、まず、電流電圧変換部11が、負荷2に流れる交流電流を電圧信号に変換し(ステップST1)、増幅器12が、この電圧信号を増幅する(ステップST2)。
【0021】
次いで、加算器16が、増幅器12により増幅された電圧信号に所定値を加算して、レベルシフトを行う(ステップST7,加算ステップ)。これにより、図3に示す電圧信号31を図6に示す電圧信号61にレベルシフトすることができる。
次いで、A/D変換器13が、加算器16によりレベルシフトされた電圧信号を、この電圧信号の波形を再現可能なサンプリング周期で、デジタル信号に変換する(ステップST3)。このA/D変換器13により変換されたデジタル信号は記憶部14に記憶される。これにより、図6に示すようなサンプリング周期でデジタル信号62を取得することができる。
【0022】
次いで、測定部15bが、記憶部14に記憶された測定期間での各デジタル信号の中から最大値および最小値を検出する(ステップST8)。これにより、図6に示す測定期間(1周期)でのデジタル信号の最大値63および最小値64を検出することができる。
次いで、測定部15bが、検出した最大値から最小値を差分して交流電流の振幅を算出する(ステップST9)。次いで、測定部15bが、算出した振幅に、交流電流の波形に応じた係数を乗算して、実効値を算出する(ステップST6)。
なお、ステップST8,9,6は本願発明の測定ステップに対応する。
このように動作することで、負荷2に流れる交流電流の振幅および実効値を正確に測定することができる。その後、この測定結果に基づいて、負荷2に交流電流が正常に流れているかを判断し、負荷2に断線等の故障が生じているかを判断する。
【0023】
以上のように、この実施の形態2によれば、交流電圧をレベルシフトした後A/D変換するように構成したので、実施の形態1における効果に加えて、得られたデジタル信号を交流電流測定以外の用途にも使用することが可能となる。
【0024】
なお、実施の形態1,2では、交流電流の波形として、図7に示すような歪のない波形(サイン波)を用いて説明を行ったが、これに限るものではなく、その他の歪を有する波形(例えば方形波や三角波等)に対しても同様に適用可能である。この場合に、測定部15,15bは、事前に波形の歪み具合を把握しておくことで、この波形に応じた係数を用いて、算出した交流電流の振幅から実効値を算出することができる。
また、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 交流電流測定装置、2 負荷、3 交流電源、11 電流電圧変換部、12 増幅器、13 A/D変換器、14 記憶部、15,15b 測定部、16 加算器。
【技術分野】
【0001】
この発明は、PWM(Pulse Width Modulation)制御された交流電流を測定する測定方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヒータやランプ等の負荷に断線等の故障が生じていないかを検出するため、負荷に流れる交流電流を測定するものが知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1に開示される方法では、負荷に流れる交流電流を電圧信号に変換し、この電圧信号を整流・平滑することで直流の電圧信号に変換して、測定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−91576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の交流電流の測定方法では、交流電流を電圧信号に変換し、この電圧信号を整流・平滑した後に、測定を行っている。
一方、負荷のパワー制御を行うため、この負荷に流れる交流電流をPWM制御したものがある。このPWM制御では、例えば図7,9に示すように、1周期における交流電流のON/OFF期間の割合(デューティ比)を調整している。
【0005】
ここで、PWM制御された交流電流を従来の測定方法を用いて測定した場合、測定期間(例えば1周期)内で交流電流がOFFとなる期間が含まれる場合があり、このOFF期間も含めて平滑を行うことになる。そのため、図7〜10に示すように、PWM制御によるデューティ比が変化して交流電流71,91のOFF期間が変化すると、ON期間での交流電流71,91の振幅は変わらないにも関わらず、平滑を行った電圧信号82,102(83,103)が変化してしまう。よって、交流電圧の振幅・実効値を正しく測定することができず、負荷の断線等の故障を正しく検出することができないという課題があった。なお図8,10において、符号81,101は交流電流71,91を電圧信号に変換したものを全波整流した電圧信号であり、電圧信号82,102は平滑回路の時定数が短い場合での信号であり、電圧信号83,103は平滑回路の時定数が長い場合での信号である。
また、従来の測定方法のように整流を行う場合、この整流を行うダイオードで電圧降下が発生し、測定値に誤差が発生してしまうという課題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、PWM制御された交流電流の振幅および実効値を正確に測定することができるPWM制御された交流電流の測定方法およびその装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るPWM制御された交流電流の測定方法は、PWM制御された交流電流を電圧信号に変換する電流電圧変換ステップと、電流電圧変換ステップにおいて変換した電圧信号を、当該電圧信号の波形を再現可能なサンプリング周期で、デジタル信号に変換するA/D変換ステップと、A/D変換ステップにおいて変換したデジタル信号に基づいて、交流電流の振幅および実効値を算出する測定ステップとを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、上記のように構成したので、整流・平滑処理が不要となり、PWM制御によるデューティ比の変動に伴う誤演算がなくなるため、交流電流の振幅および実効値を正確に測定することができる。また、整流・平滑処理を行う構成要素が不要なため、装置の小型化およびコストダウンを図ることができる。また、整流処理が不要なため、ダイオードによる電圧降下がなくなり、高精度に測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る交流電流測定装置の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る交流電流測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1に係る交流電流測定装置により測定された交流波形を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る交流電流測定装置の構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る交流電流測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2に係る交流電流測定装置により測定された交流波形を示す図である。
【図7】PWM制御された交流電流の波形を示す図である。
【図8】従来の測定方法を用いて図7に示す交流電流を測定した際の波形を示す図である。
【図9】図7に示す交流電流に対して、PWMのデューティ比を変化させた場合での交流電流の波形を示す図である。
【図10】従来の測定方法を用いて図9に示す交流電流を測定した際の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
交流電流測定装置1は、図1に示すヒータやランプ等の負荷2に交流電源3からの交流電流が正常に流れているかを測定することで、負荷2に断線等の故障が生じていないかを検出するものである。なお交流電源3からの交流電流は、負荷2のパワー制御を行うため、PWM制御されている。すなわち、1周期における交流電流のON/OFF期間の割合(デューティ比)が調整されている。
このPWM制御された交流電流を測定する交流電流測定装置1は、図1に示すように、電流電圧変換部11、増幅器12、A/D変換器13、記憶部14および測定部15から構成されている。
【0011】
電流電圧変換部11は、負荷2と交流電源3との間に直列接続され、電流が流れることによって生じる両端の電圧を検出することで、負荷2に流れる交流電流を電圧信号に変換するものである。この電流電圧変換部11は、例えば抵抗、トランスやホール素子等から構成される。
増幅器12は、電流電圧変換部11により変換された電圧信号を増幅するものである。
【0012】
A/D変換器13は、増幅器12により増幅された電圧信号を、この電圧信号の波形を再現可能なサンプリング周期(例えば1ms)で、デジタル信号に変換するものであり、ソフトウェアで実現される。なお、A/D変換器13は、所定の測定期間(例えば1周期や複数周期)を計るタイマを保持しており、このタイマに従い、測定期間での交流電圧に対するA/D変換を行う。
記憶部14は、A/D変換器13により変換されたデジタル信号を記憶するものである。
【0013】
測定部15は、記憶部14に記憶された測定期間での各デジタル信号に基づいて、交流電流の振幅およびその実効値を算出するものであり、ソフトウェアで実現される。この測定部15は、測定期間での各デジタル信号の中から最大値を検出し、この最大値の倍を交流電流の振幅として算出する。また、測定部15は、算出した振幅に、交流電流の波形に応じた係数を乗算することで、実効値を算出する。この測定部15により算出された交流電流の実効値はディスプレイ(不図示)上に表示される。
【0014】
次に、上記のように構成された交流電流測定装置1の動作について説明する。なお、負荷2には図7に示す交流電流が流れ、交流電流測定装置1の測定期間は1周期とする。
交流電流測定装置1の動作では、図2に示すように、まず、電流電圧変換部11が、負荷2に流れる交流電流を電圧信号に変換する(ステップST1,電流電圧変換ステップ)。次いで、増幅器12が、電流電圧変換部11により変換された電圧信号を増幅する(ステップST2,増幅ステップ)。これにより、図3に示すような電圧信号31となる。
【0015】
次いで、A/D変換器13が、増幅器12により増幅された電圧信号を、この電圧信号の波形を再現可能なサンプリング周期で、デジタル信号に変換する(ステップST3,A/D変換ステップ)。なおA/D変換器13は、タイマに従い、測定期間での交流電圧に対するA/D変換を行う。このA/D変換器13により変換されたデジタル信号は記憶部14に記憶される。これにより、図3に示すようなサンプリング周期でデジタル信号32を取得することができる。
【0016】
次いで、測定部15が、記憶部14に記憶された測定期間での各デジタル信号の中から最大値を検出する(ステップST4)。これにより、図3に示す測定期間(1周期)でのデジタル信号の最大値33を検出することができる。
次いで、測定部15が、検出した最大値の倍を交流電流の振幅として算出する(ステップST5)。次いで、測定部15が、算出した振幅に、交流電流の波形に応じた係数を乗算して、交流電流の実効値を算出する(ステップST6)。例えば、図3に示すような歪のない波形(サイン波)の場合には、係数は1/(2×√2)となる。
なお、ステップST4〜6は本願発明の測定ステップに対応する。
このように動作することで、負荷2に流れる交流電流の振幅および実効値を正確に測定することができる。その後、この測定結果に基づいて、負荷2に交流電流が正常に流れているかを判断し、負荷2に断線等の故障が生じているかを判断する。
【0017】
以上のように、この実施の形態1によれば、PWM制御された交流電流を電圧信号に変換し、この電圧信号の波形を再現可能なサンプリング周期で直接A/D変換するように構成したので、整流・平滑処理が不要となり、PWM制御によるデューティ比の変動に伴う誤演算がなくなるため、交流電流の振幅および実効値を正確に測定することができる。また、整流・平滑処理を行う構成要素が不要なため、装置の小型化およびコストダウンを図ることができる。また、整流処理が不要なため、ダイオードによる電圧降下がなくなり、高精度に測定を行うことができる。
【0018】
実施の形態2.
実施の形態1では、交流電流を電圧信号に変換して増幅した後、そのままA/D変換を行っている。そのため、得られるデジタル信号は、図3に示すような0Vを基準とした信号となる。しかしながら、オペアンプやA/D変換器などの回路では、0V付近の電圧は扱うことができため、図3に示すデジタル信号を交流電流測定以外の用途に使用することはできない。そこで、このデジタル信号を他の用途にも使用可能とするため、電圧信号をレベルシフトした後A/D変換を行うようにしたものについて示す。
【0019】
図4に示す実施の形態2に係る交流電流測定装置1は、図1に示す実施の形態1に係る交流電流測定装置1の構成に加算器16を追加し、測定部15を測定部15bに変更したものである。その他の構成は同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
加算器16は、A/D変換器13の前段に設けられ、A/D変換器13で用いる電圧信号に所定値を加算して、レベルシフトを行うものである。
また、測定部15bは、記憶部14に記憶された測定期間での各デジタル信号に基づいて、交流電流の振幅およびその実効値を算出するものであり、ソフトウェアで実現される。この測定部15bは、測定期間での各デジタル信号の中から最大値および最小値を検出し、この最大値と最小値との差分から交流電流の振幅を算出する。また、測定部15bは、算出した振幅に、交流電流の波形に応じた係数を乗算することで、実効値を算出する。この測定部15bにより算出された交流電流の実効値はディスプレイ(不図示)上に表示される。
【0020】
次に、上記のように構成された交流電流測定装置1の動作について説明する。なお、図5に示す実施の形態2に係る交流電流測定装置1の動作において、図2に示す実施の形態1に係る交流電流測定装置1の動作と同様の動作については、同一の符号を付しその説明を簡略化する。また、負荷2には図7に示す交流電流が流れ、交流電流測定装置1の測定期間は1周期とする。
交流電流測定装置1の動作では、図5に示すように、まず、電流電圧変換部11が、負荷2に流れる交流電流を電圧信号に変換し(ステップST1)、増幅器12が、この電圧信号を増幅する(ステップST2)。
【0021】
次いで、加算器16が、増幅器12により増幅された電圧信号に所定値を加算して、レベルシフトを行う(ステップST7,加算ステップ)。これにより、図3に示す電圧信号31を図6に示す電圧信号61にレベルシフトすることができる。
次いで、A/D変換器13が、加算器16によりレベルシフトされた電圧信号を、この電圧信号の波形を再現可能なサンプリング周期で、デジタル信号に変換する(ステップST3)。このA/D変換器13により変換されたデジタル信号は記憶部14に記憶される。これにより、図6に示すようなサンプリング周期でデジタル信号62を取得することができる。
【0022】
次いで、測定部15bが、記憶部14に記憶された測定期間での各デジタル信号の中から最大値および最小値を検出する(ステップST8)。これにより、図6に示す測定期間(1周期)でのデジタル信号の最大値63および最小値64を検出することができる。
次いで、測定部15bが、検出した最大値から最小値を差分して交流電流の振幅を算出する(ステップST9)。次いで、測定部15bが、算出した振幅に、交流電流の波形に応じた係数を乗算して、実効値を算出する(ステップST6)。
なお、ステップST8,9,6は本願発明の測定ステップに対応する。
このように動作することで、負荷2に流れる交流電流の振幅および実効値を正確に測定することができる。その後、この測定結果に基づいて、負荷2に交流電流が正常に流れているかを判断し、負荷2に断線等の故障が生じているかを判断する。
【0023】
以上のように、この実施の形態2によれば、交流電圧をレベルシフトした後A/D変換するように構成したので、実施の形態1における効果に加えて、得られたデジタル信号を交流電流測定以外の用途にも使用することが可能となる。
【0024】
なお、実施の形態1,2では、交流電流の波形として、図7に示すような歪のない波形(サイン波)を用いて説明を行ったが、これに限るものではなく、その他の歪を有する波形(例えば方形波や三角波等)に対しても同様に適用可能である。この場合に、測定部15,15bは、事前に波形の歪み具合を把握しておくことで、この波形に応じた係数を用いて、算出した交流電流の振幅から実効値を算出することができる。
また、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 交流電流測定装置、2 負荷、3 交流電源、11 電流電圧変換部、12 増幅器、13 A/D変換器、14 記憶部、15,15b 測定部、16 加算器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PWM制御された交流電流を電圧信号に変換する電流電圧変換ステップと、
前記電流電圧変換ステップにおいて変換した電圧信号を、当該電圧信号の波形を再現可能なサンプリング周期で、デジタル信号に変換するA/D変換ステップと、
前記A/D変換ステップにおいて変換したデジタル信号に基づいて、前記交流電流の振幅および実効値を算出する測定ステップと
を有するPWM制御された交流電流の測定方法。
【請求項2】
前記測定ステップにおいて、前記デジタル信号の最大値を検出し、当該最大値の倍を前記交流電流の振幅として算出し、当該振幅に基づいて実効値を算出する
ことを特徴とする請求項1記載のPWM制御された交流電流の測定方法。
【請求項3】
前記A/D変換ステップの前段で、当該A/D変換ステップで用いる電圧信号に所定値を加算して、レベルシフトを行う加算ステップをさらに有し、
前記測定ステップにおいて、前記デジタル信号の最大値および最小値を検出し、当該最大値と最小値との差分から振幅を算出し、当該振幅に基づいて実効値を算出する
ことを特徴とする請求項1記載のPWM制御された交流電流の測定方法。
【請求項4】
PWM制御された交流電流を電圧信号に変換する電流電圧変換部と、
前記電流電圧変換部により変換された電圧信号を、当該電圧信号の波形を再現可能なサンプリング周期で、デジタル信号に変換するA/D変換器と、
前記A/D変換器により変換されたデジタル信号に基づいて、前記交流電流の振幅および実効値を算出する測定部と
を備えたPWM制御された交流電流の測定装置。
【請求項1】
PWM制御された交流電流を電圧信号に変換する電流電圧変換ステップと、
前記電流電圧変換ステップにおいて変換した電圧信号を、当該電圧信号の波形を再現可能なサンプリング周期で、デジタル信号に変換するA/D変換ステップと、
前記A/D変換ステップにおいて変換したデジタル信号に基づいて、前記交流電流の振幅および実効値を算出する測定ステップと
を有するPWM制御された交流電流の測定方法。
【請求項2】
前記測定ステップにおいて、前記デジタル信号の最大値を検出し、当該最大値の倍を前記交流電流の振幅として算出し、当該振幅に基づいて実効値を算出する
ことを特徴とする請求項1記載のPWM制御された交流電流の測定方法。
【請求項3】
前記A/D変換ステップの前段で、当該A/D変換ステップで用いる電圧信号に所定値を加算して、レベルシフトを行う加算ステップをさらに有し、
前記測定ステップにおいて、前記デジタル信号の最大値および最小値を検出し、当該最大値と最小値との差分から振幅を算出し、当該振幅に基づいて実効値を算出する
ことを特徴とする請求項1記載のPWM制御された交流電流の測定方法。
【請求項4】
PWM制御された交流電流を電圧信号に変換する電流電圧変換部と、
前記電流電圧変換部により変換された電圧信号を、当該電圧信号の波形を再現可能なサンプリング周期で、デジタル信号に変換するA/D変換器と、
前記A/D変換器により変換されたデジタル信号に基づいて、前記交流電流の振幅および実効値を算出する測定部と
を備えたPWM制御された交流電流の測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−181133(P2012−181133A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45030(P2011−45030)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】
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