QT間隔延長およびこれに伴う疾病の治療
本発明は、QT間隔延長およびこれに伴う先天性QT延長症候群、後天性QT延長症候群、心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中(これらに限定されない)などの疾病の治療法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓学に関し、特に先天性QT延長症候群、後天性QT延長症候群、心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中など(これらに限定されることはない)のQT間隔延長およびこれに伴う疾病の治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンチャネルは細胞膜にまたがる巨大分子の水性タンパク質のトンネルである。非常に多くのイオンチャネルが存在することが知られている。これらのチャネルは、第2の命である脳、心臓および筋肉をそれぞれ通過する様々な電気的信号を発生させ、統制している。イオンチャネルは、これらが通過することを可能にするイオン、例えばナトリウム、カリウム、カルシウムまたはクロリドのタイプおよびゲート制御特性に基づいて分類される。イオンの各タイプに対して異なるチャネルがしばしばある。イオンチャネルにおけるイオンの移動の方向は、電気的および化学的な濃度勾配によって制御される。多くのチャネルでは、イオンの移動は、機械依存性、電位依存性およびリガンド依存性のサブタイプへのゲート制御されたイオンチャネル大分類の根拠を形成するゲート構造により制御される。したがって、イオンチャネルは連続的には開口されていない。この代わりに、これらは簡単に開口し、次に再び閉口する「ゲート」を有する。個々の細胞内のゲート制御されたイオンチャネルの同期活動は、興奮性組織に特有の複雑で不可欠な電圧波形を生じる。
【0003】
休止期では、細胞はこれらの細胞膜上のイオンチャネルが開口しているか閉口しているかどうかに依存して、これらの細胞膜を横切る電気的な電位差(電圧)を維持する。典型的には、細胞の内部(細胞質)は、細胞外液に比べて電気的に陰性であり、したがって、細胞は休止期中に分極化される。細胞膜を横切るこの電気的な電位差は静止膜電位と呼ばれる。心筋細胞については、静止膜電位は約−90mVである。
【0004】
電気興奮性細胞は、これらがイオンチャネルの開閉を引き起こし得る異なる刺激に暴露されると、興奮状態となる。イオンチャネル活性を変更する(またはゲート制御する)ことが知られている刺激の主なタイプは、膜(即ち電位依存性チャネル)を横切る電圧の変化、機械的ストレス(即ち機械依存性チャネル)またはリガンド結合(即ちリガンド依存性チャネル)である。細胞が興奮すると、これは活動電位と呼ばれる膜貫通電位変化のサイクルを経る。
【0005】
心臓では、心臓の心室細胞の活動電位は5つの相を含む。第0相は、プラスに荷電されたナトリウムイオンの細胞への殆ど排他的な流入により、細胞膜がマイナスの静止電位からプラスの電位まで急速に通過する場合の急激な脱分極相である。この流入は膜電位がプラスになる原因となる。これが1ミリセカンド未満であり、最も速い相であるので、第0相は活動電位の「アップストローク」とも呼ばれる。脱分極中に、電位差は実際には逆になり、この結果、細胞質の電位は細胞外液のこれよりも約20mV超過する。アップストロークは、カリウムイオンの一時的な流出による部分的なまたは初期の再分極の短い期間(第1相)に直ちに続き、次いでこれはプラトー相(第2相)に続く。プラトー相の過程では、プラスに荷電したカリウムイオンの流出によって平衡化するプラスに荷電したカルシウムイオンの流入がある。プラトー相に続いて、膜は分極の休止期(即ち、脱分極後のマイナス値への膜電位の戻り変化)へ戻り再分極(第3相)する。この最終的な再分極は、カリウムイオンの流出がカルシウムイオンの流入を超え始める場合に生じる。第3相の再分極は、第0相の脱分極よりもゆっくりと進行する。カリウムチャネルによるカリウム電流は、第3相の持続、したがって活動電位の持続を決定する際に重要な役割を果たす。活動電位の最終相(第4相)は、膜電位変化に関しては活動しない。第4相は、活動電位の過程で細胞を出たカリウムイオンと交換に細胞内へ入ったナトリウムとカルシウムのイオンの除去によってイオン濃度が回復される相である。
【0006】
心筋細胞の各活動電位は、この細胞の収縮を引き起こす。すべての心筋細胞の協同した収縮は、協調した心臓の収縮または心拍を形成する。同時に、すべての心筋細胞からの統合された電気的信号(活動電位)は、身体の表面へ発信される。この信号は、特有の波形を生成する心電図(ECGまたはEKGなど)に記録することができる。波形の異なる部分は、文字P、Q、R、SおよびTによって示され、これらは心臓の異なる領域からの活動電位の合計を表す。波形の異なる部分間の時間の一定間隔は、心臓の状態に関する有益な情報を提供する。例えば、波のQRS群の始めからT波(「QT」間隔として知られている。)の終わりへの期間は、心室の脱分極および再分極の持続の基準を提供する。言いかえれば、これは心臓の心室活動電位の期間の測定である。
【0007】
残念なことに、一部の個人では、QT間隔の持続時間が延長される。QT間隔の延長は、臨床的には「QT延長症候群」(以下、「LQTS」)と称され、特定の医学的病状、例えば心室性頻拍性不整脈、特に突然の心臓死に至り得る多形性心室頻拍の危険性を増加させることに関係している。QT間隔延長または活動電位持続の増加は、内部(または流入)ナトリウムもしくはカルシウム電流の増加、または外部(または流出)カリウム電流の1つ以上の阻害に起因し得る。心臓の第3相の再分極に関係するカリウムチャネルのうちの2種類は、遅延整流カリウムチャネルIκrおよびIκsの急速活性型成分および緩徐活性型成分と称される。これらのチャネルは、活動電位の持続時間、即ちQT間隔の測定に重要な役割を有している。これらのチャネルのいずれかの任意の欠陥または遮断は、活動電位持続時間およびQT間隔を延長する。急速遅延整流カリウムチャネルIκrは、ヒトエーテル・ア・ゴー・ゴー(ether−a−go−go)関連遺伝子(以下、「hERG」と呼ぶ。)によりコードされる。したがって、チャネルは、「hERG」チャネルとしても知られている。QT間隔の延長は、これらのイオンチャネルで、1つ以上の遺伝的欠陥(これらは「先天性LQTS」と呼ばれる。)、または1種以上の薬物の作用(本明細書で「後天性LQTS」と呼ばれる。)に起因すると一般に考えられる。これにもかかわらず、延長されたQT間隔は、心筋虚血(Puddu,et al.,Journal of Electrocardiology,19(3):203−11(1986))、心不全(Brooksby et al.,European Heart Journal,20(18):1335−41(1999))糖尿病(Veglio et al.,Journal of Internal Medicine,251(4):317−24(2002))および脳卒中(Wong et al.,Heart(British Cardiac Society),89(4):377−81(2003))を含む多くの心臓血管系の病気または他の疾病に見られ、これらの全てが高い死亡率と関係している。
【0008】
基線QT間隔の測定および決定は、首尾一貫はしていないが、心虚血、心不全および脳卒中を有する患者の死亡の前兆の指標であることが示された。これは、QT延長が上記の疾病に関連した死亡の要因かもしれないことを示唆している。確かに心不全患者(Beuckelmann,et al.,Circulation Research,73(2):379−85(1993))および心筋梗塞の動物(Kaprrielian et al.,American Journal of Physiology,283:H1157−H1168(2002))からの分離された筋細胞を使用する電気生理学による研究および実験的に引き起こされた心不全(Despa et al.,Circulation,105:2543−2548(2002);Rose et al.,American Journal of Physiology,288:H2077−H2087(2005))は、健全な正常な対照と比較して、一過性の外部への電流(Ito)、内部への整流(Ik1)K+チャネル、および遅延整流電流が減少し得ることを証明した(Janse,Cardiovascular Research,61:208−217(2004)。
【0009】
先天性LQTSに対する治療オプションは、β−ブロッカー治療によるQT間隔の直接、および間接的な縮小心臓ペーシングおよび植え込み型除細動器を含む(Ackerman,M.J.,Mayo Clin.Proc.,73:250−269(1998);Wehrens et al.,Ann.Intern.Med.,137:981−992(2002);Khan,Am.Heart J.143:7−14(2002))。イオンチャネルの薬理学的変調は、ある程度の成功をした。ナトリウムチャネルブロッカーは、LQT3を有する患者でQT間隔を直接縮小することができる。なぜならQT延長がナトリウムチャネル不活性化の欠陥により、心臓の活動電位プラトー中に変異したナトリウムチャネルが活動し過ぎるのを引き起こすからである。この「機能の獲得」は、メキシレチンおよびフレカイニドなどのナトリウムチャネルブロッカーで薬理学的に逆にすることができる(Schwartz et al.,Circulation,92:3381−3386(1995);Wang et al.,J.Clin.Invest.99:1714−1720 (1997);Windle et al.,Electrocardiol,6:153−158(2001);Liu et al.,J.Pharmacogenomics,3:173−179(2003))。このアプローチは作用機序に基づき有効であるが、LQT3を有する先天性LQTS患者の少数に限定される。しかしながら、心臓毒性に対する電位は、電位再入回路の伝導を遅らせることおよび不整脈を引き起こすことにより、ナトリウムチャネルブロッカー(これは、クラスI抗不整脈薬と呼ばれる。)に対してよく確立されている(Nattel,Cardiovasc.Res.,37:567−577(1998))。カリウムの静脈内(i.v.)注入のような細胞外のカリウム濃度を増加させることに基づく方法は、カリウムチャネルを再分極する活性を増加させることによりQT間隔を短縮する。QT間隔は、この治療を受けた患者で著しく短縮された(Compton et al.,Circulation,94:1018−1022(1996))。しかしながら、この治療法はこれが自制不能なi.v.注入を必要とし、十分に高い長期的なカリウムレベルを達成するのは困難であるので、広く使用されていない(Etheridge et al.,J.Am.Coll.Cardiol.,42:1777−1782(2003))。ATP−感受性カリウム(KATP)チャネルオープナーであるニコランジルは、患者の先天的に延長されたQT間隔を正規化することが示された(Shimizu et al.,Curr.Pharm.Des.11:1561−1572(2005))。しかしながら、KATPチャネルオープナーはすべて、心臓だけでなく血管平滑筋におけるKATPチャネルの存在により望ましくない血管拡張作用(例えば低血圧)を伴う(Quast et al.,Cardiovasc.Res.,28:805−810(1994))。イオンチャネルを直接ターゲットとする治療は、LQT3の場合のように、成功し得り一般に役立ちそうである。
【0010】
また、細胞内のカルシウム過負荷が、心筋虚血傷害に関与することも当分野で知られている(Farber J.L.,Laboratory Investigation,47(2):114−23(1982))。増加した細胞質のカルシウム濃度(カルシウム過負荷)は、心筋静止張力の不可逆的増加をもたらして、この結果、心臓の正常な弛緩を妨ぐ(Lowe et al.,Journal of Molecular & Cellular Cardiology,11(10):1017−31(1979))。カリウムチャネルの開口は、活動電位プラトーを短縮し、再分極化を促進し、これによりL−タイプカルシウムチャネルを通るカルシウムの流入の減少をもたらすことによって心筋保護を提供する。心筋虚血の治療のために安全で有効なカリウムチャネルオープナーを同定する努力がされてきた(Gomma et al.,Drugs,61(12):1705−10(2001))。これまでのところ、KATPオープナーだけが研究されてきた。上で議論したように、非標的組織中のKATPチャネルの普及は、これらの薬剤による望ましくない副作用の可能性を増加させる。さらに、KATPオープナーは、有意にQT間隔を短縮し、ある状況下では不整脈源となり得る。
【0011】
Iκrカリウムチャネルの活性を増加させることによる逆転QT延長またはカルシウム過負荷は、後天性および先天性LQTS、心筋虚血、心不全、糖尿病および脳卒中の治療においても有益であり得る。最近の2つのレポート(Kang et al.,Mol.Pharmacol.,67:827−836(2005);Zhou et al.,Mol.Pharmacol.,68:876−884(2005))は、hERGアゴニストとして作用し、延長されたQTの逆転のための薬物治療の開発を可能にし得る薬剤分子について記述している。しかしながら、これらの化合物のマイクロモル濃度は、hERG電流を増加させる必要があり(これは経口投与後のヒトでは達成されないかもしれない)、これらは正常な活動電位の持続期間およびQT間隔(これらは催不整脈の危険に移行するかもしれない)を短縮する。
【0012】
この結果、延長されたQT間隔を安全に短縮し、カルシウム過負荷を減少するために使用することができる医薬的に許容されるカリウムチャネルオープナーに対する必要性が当分野にある。このような薬剤は、LQTS、心不全、糖尿病、脳卒中、心筋虚血などの様々な心血管疾病または他の関連疾病を治療するのに役立つ。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の要約
1実施態様では、本発明は、QT延長を患う患者のQT間隔を短縮する方法に関する。この方法は以下のステップを含む。
【0014】
QT延長を患う患者に、少なくとも1つの医薬的に許容されるヒトのエーテル・ア・ゴー・ゴー関連遺伝子(「hERG」)チャネルアゴニストの治療上有効量を投与すること;そこでは前記少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストは、QT延長を患っていない患者に投与された場合、QT間隔を短縮しない。
【0015】
上記の方法によって治療されるQT延長を患う患者は、先天性QT延長症候群、後天性QT延長症候群、心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中に罹患し得る。
【0016】
上記方法のhERGチャネルアゴニストの投与は、前記患者のhERGチャネルの電流を増加させる。具体的には、hERGチャネルの電流の増加は、電圧依存性であることが分かった。より具体的には、少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストは、陽性の膜間電位でhERGチャネルの電流を増加させることが判明した。この陽性の膜間電位は、約+0.1mVから約+50mV、好ましくは約+5mVから約+30mV、最も好ましくは約+10mVから約+20mVである。
【0017】
上記の方法で使用することのできるhERGチャネルアゴニストは、以下の式を有するものを含む。
【0018】
【化5】
{式中、R1は
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)である。]であり、
式中、R2は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R3は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R5は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R6は、
【0019】
【化6】
であり、
R7は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基であり;および
R8は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基である。}
【0020】
上記の式を有するhERGチャネルアゴニストの例は、2−[3−シアノ−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチルチアゾール−5−カルボン酸、2−[3−シアノ−4−(3−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[3−シアノ−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−(3−シアノ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[4−(2−カルボキシプロポキシ)−3−シアノフェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸および医薬的に許容されるこれらの塩からなる群から選択される。
【0021】
別の実施形態では、本発明は心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中に罹患した患者を治療する方法に関する。この方法は、心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中を患う患者に、少なくとも1つの医薬的に許容されるヒトのエーテル・ア・ゴー・ゴー関連遺伝子(「hERG」)チャネルアゴニストの治療上有効量を投与するステップを含み、前記少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストは、QT延長を患っていない患者に投与された場合、QT間隔を短縮しない。
【0022】
上記方法のhERGチャネルアゴニストの投与は、前記患者のhERGチャネルの電流を増加させる。具体的には、hERGチャネルの電流の増加は、電圧依存性であることが分かった。より具体的には、少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストは、陽性の膜間電位でhERGチャネルの電流を増加させることが判明した。この陽性の膜間電位は、約+0.1mVから約+50mV、好ましくは約+5mVから約+30mV、最も好ましくは約+10mVから約+20mVである。
【0023】
上記の方法で使用することのできるhERGチャネルアゴニストは、以下の式を有するものを含む。
【0024】
【化7】
{式中、R1は
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R2は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R3は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R5は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R6は、
【0025】
【化8】
であり、
R7は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基であり;および
R8は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基である。}
上記の式を有するhERGチャネルアゴニストの例は、2−[3−シアノ−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチルチアゾール−5−カルボン酸、2−[3−シアノ−4−(3−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[3−シアノ−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−(3−シアノ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[4−(2−カルボキシプロポキシ)−3−シアノフェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸およびこれらの医薬的に許容される塩からなる群から選択される。
【0026】
発明の詳細な説明
本明細書および添付された特許請求の範囲で使用されるように、単数形の「a」、「an」、および「the」は文脈が他を明示しない限り複数の意味を含む。したがって、例えば、「an active agent」への言及は、単一の活性薬剤のみならず、2つ以上の異なる活性薬剤の組み合わせを含む。
【0027】
定義
本発明について記述し、請求する際に、以下の用語が下記に説明される定義に従って使用される。
【0028】
用語「後天性LQTS」は、1つ以上の薬物の作用の結果であると考えられる、患者のQT間隔の延長を指す。
【0029】
用語「投与する(administer)」、「投与すること(administering)」、「投与された(administered)」または「投与(administration)」は、薬物を被験者または患者に提供する任意の方法を指す。投与経路は、当業者に知られた任意の手段で達成することができる。このような手段は、経口投与、頬側投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、吸入投与などを含むが、これらに限定されない。
【0030】
用語「先天性LQTS」は、1つ以上の遺伝的欠陥の結果であると考えられる、患者のQT間隔の延長を指す。
【0031】
用語「剤形」は、ある有効成分(即ち少なくとも1つのhERGチャネルアゴニスト)の特定の所定量(即ち服用量)を含有するように設計された任意の固体、半固体または液体の医薬組成物を指す。適切な剤形は、経口投与、頬側投与、直腸投与、局所もしくは粘膜送達、または皮下埋め込み、または他の埋め込み型薬物送達システムなどを含む医薬品送達システムであり得る。本発明の医薬組成物の剤形は、好ましくは固形であると考えられるが、これらは液体または半固体の成分を含有してもよい。より好ましくは、剤形は、患者に有効成分を送達するための経口的に投与されるシステムである。
【0032】
活性成分(即ち少なくとも1つのhERGチャネルアゴニスト)の「有効量」または「治療上有効量」は、所望の結果を提供する非毒性ではあるが活性成分の十分な量を意味する。「有効な」活性成分の量は、各被験者により、個人の年齢および一般的な条件、特定の活性成分、または活性成分などに依存して変わる。したがって、正確な「有効量」を指定することは必ずしも可能だとは限らない。しかしながら、いずれの個々の場合でも適切な「有効量」は、当業者により習慣的な実験を用いて決定することができる。
【0033】
用語「ヒトのエーテル・ア・ゴー・ゴー関連遺伝子(「hERG」)チャネルアゴニスト」は、QT延長を患う患者の心臓hERGチャネルの電流を強めるか増加させる化合物、ペプチド、活性成分または薬物を指し、これにより前記患者のQT間隔を逆転または短縮する。さらに、本発明の方法で使用されるhERGチャネルアゴニストは、QT延長を患っていない患者に投与された場合、QT間隔を短縮しない。
【0034】
本発明で使用することができるhERGチャネルアゴニストの例は、以下の式Iを有する化合物である。
【0035】
【化9】
{式中、R1は、
水素;カルボキシル;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;ホルミル基;非置換もしくは置換C1−C10アルキル;非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;OR;S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);またはNRR’;
[式中、RまたはR’は各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
式中、R2は、
水素;カルボキシル;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;ホルミル基;非置換もしくは置換C1−C10アルキル;非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ基;OR;S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);またはNRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R3は、
水素;カルボキシル;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;OR;S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);またはNRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R5は、
水素;カルボキシル;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;ホルミル基;非置換もしくは置換C1−C10アルキル;非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基;非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ基;OR;S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);またはNRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R6は、
【0036】
【化10】
であり、
R7は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基であり;および
R8は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基である。}
上記の式Iでは、さらにこの鎖上または環状部に置換基を有してもよい置換基、即ちピリジル基、チエニル基、フリル基またはナフチル基;C1−C10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基;5員から7員の複素環基;C1−C10のアルコキシ基、アリールオキシ基またはアラルキルオキシ基;非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ基;およびC1−C10のアルキル(モノ−もしくはジ−置換)アミノ基、アリール(モノ−もしくはジ−置換)アミノ基は、C1−C4ハロゲン化アルキル基、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、ヒドロキシル基、モノ−もしくはジ−置換アルキルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基またはホルミル基、またはハロゲン原子、5員から7員の環状2級アミノ基などの複素環などの1個以上で置換されることができる。好ましい置換基は、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、メトキシ基およびエトキシ基である。
【0037】
本明細書で使用される用語「C1−C4アルキル」は、メチル基、エチル基、プロピル基(イソ−またはn−)およびブチル基(i−、n−、tert−またはsec−)を指す。
【0038】
本明細書で使用される用語「C1−C4アルキルアミノカルボニル」は、1から4個の炭素原子のアルキル基とアミノカルボニル基からなる基を指す。
【0039】
本明細書で使用される用語「非置換もしくは置換C1−C10アルキル」は、モノ−またはジ−置換されることができる、C1−C10の直鎖状もしくは分枝状の脂肪族炭化水素残基、環状脂肪族炭化水素残基、または鎖−環状脂肪族炭化水素残基を指す。例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、neo−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルプロピル、メトキシエチル、エトキシエチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用される用語「非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ」は、1個の水素原子がオキシ基で置換されているアルキル基(モノ−またはジ−置換されることができる。)を指す。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(n−またはiso−)、ブトキシ(n−、iso−、sec−またはtert−)、3−メチルブトキシ、2−エチルブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、3−メチル−2−ブテニルオキシ、ゲラニルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシル−C1−C10−アルキルオキシ(例えばシクロヘキシルメチルオキシ)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書で使用される用語「C1−C5アルコキシカルボニル」は、1から5個の炭素原子を有するアルコキシ基とカルボニル基とからなる基を指す。
【0042】
本明細書で使用される用語「非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ」は、アルキル基(モノ−またはジ−置換されることができる。)とアミノ基とからなる基を指す。例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で使用される用語「アミノカルボニル」は、アミノ基とカルボニル基とからなる基を指す。
【0044】
本明細書で使用される用語「アリール」基は、5員もしくは6員の単環もしくは縮合環からなる芳香族炭化水素残基または芳香族複素環基を指す。例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−ピロリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリジルなどが挙げられるが、これらに限定されない。前記芳香族炭化水素残基または芳香族複素環もしくは縮合環が、モノ−またはジ−置換されている場合、前記アリール基は「置換されている」アリール基と考えられる。
【0045】
本明細書で使用される用語「非置換もしくは置換アリールアミノ」は、アリール基(モノ−またはジ−置換されることができる。)とアミノ基とからなる基を指す。例としては、フェニルアミノ、メチルフェニルアミノなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用される用語「アリールオキシ」基は、アリール基とオキシ基を指す。例としては、フェノキシ、1−ナフトキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書で使用される用語「アラルキル」は、アリール基で置換されているアルキル基(例えばC1−C10アルキル基の任意の基)を指す。例としては、ベンジル、1−フェニルエチル、1−メチル−1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、シンナミル、2−ピロリルメチル、フルフリル、テニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいのはベンジル基である。
【0048】
本明細書で使用される用語「非置換または置換アラルキルアミノ」は、アラルキル(モノ−またはジ−置換の)基とアミノ基とからなる基を指す。例としては、ベンジルアミノ、メチルベンジルアミノなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書で使用される用語「アルキルカルボニル」は、アルキル基とカルボニル基とからなる基を指す。例としては、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2−メチルプロパノイル、ペンタノイル、2−メチルブタノイル、3−メチルブタノイル、ピバロイル、ヘキサノイル、シクロプロピルカルボニルなどのC2−C7低級脂肪族アシル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用される用語「アリールカルボニル」は、アリール基とカルボニル基とからなる基を指す。例としては、ベンゾイル、トルオイル、2−ピロールカルボニル、2−フルオイル、2−チオフェンカルボニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書で使用される用語「アラルキルカルボニル」は、アラルキル基とカルボニル基とからなる基を指す。例としては、フェニルアセチル、3−フェニルプロパノイル、4−フェニルブタノイル、シンナモイル、2−ピロリルアセチル、2−フリルアセチル、2−チエニルアセチルなどのC5−C10アラルキルカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用される用語「アラルキルオキシ」は、アラルキル基とオキシ基とからなる基を指す。例としては、ベンジルオキシ、1−フェニルエトキシ、1−メチル−1−フェニルエトキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で使用される用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を指す。塩素およびフッ素が特に好ましい。
【0054】
本明細書で使用される用語「ハロアルキル」は、ハロゲン原子とアルキル基とからなる基を指す。
【0055】
本明細書で使用される用語「非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル」は、1から10個の炭素原子からなるハロアルキル基を指し、アルキル基はモノ−またはジ−置換されることができる。
【0056】
本明細書で使用される用語「ヒドロキシアルコキシ」は、1個の水素原子がヒドロキシ基で置換されているアルコキシ基を指す。例としては、ヒドロキシメトキシおよび2−ヒドロキシエトキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
上記の式Iにおいて、ORの例としては、エトキシ、プロポキシ(n−またはiso−)、ブトキシ(n−、iso−、sec−またはtert−)、ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、シクロプロピルメチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、フェニルオキシ、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ、メトキシエチルオキシ、エトキシエチルオキシ、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
上記の式Iにおいて、S(O)nRの例としては、エチルチオ、イソプロピルチオ、イソプロピルスルフィニル、イソプロピルスルホニル、ペンチルスルホニル、フェニルチオ、フェニルスルフィニル、フェニルスルホニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
上記の式Iにおいて、NRR’の例としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ベンジルアミノ、フェネチルアミノなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
上記の式Iにおいて、RおよびR’が、互いにこれらが結合している窒素原子と共に一緒になって原子を表す場合には、非置換もしくは置換の5員または7員の複素環を形成することができる。複素環の例としては、モルホリノ、1−ピロリル、1−ピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジノなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
上記の式Iにおいて、5員または7員の環状−2級アミノ基の例としては、モルホリノ、1−ピロリル、1−ピロリジノ、ピペリジノなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
上記の式Iを有するhERGチャネルアゴニストの例としては、2−[3−シアノ−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチルチアゾール−5−カルボン酸(これは本明細書では「フェブキソスタット」とも称される。)、2−[3−シアノ−4−(3−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[3−シアノ−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−(3−シアノ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[4−(2−カルボキシプロポキシ)−3−シアノフェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸または医薬的に許容されるこれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物を製造する方法は、米国特許第5,614,520号に記載されており、これは参照により本明細書に組込まれる。さらに、フェブキソスタットは、健康な被験者ではQT間隔を延長しないことが当分野では知られている(Yu,P.,et al.,J.Clin.Pharmacol.,44(10):1195(2004)参照。)。
【0063】
用語「QT延長症候群」または「LQTS」は、患者のQT間隔の延長を指す。
【0064】
用語「患者」は、動物、好ましくは哺乳動物を指し、ヒトまたは非ヒトを含む。用語「患者」および「被験者」は本明細書中では互換的に使用されてもよい。
【0065】
「医薬的に許容される賦形剤」または「医薬的に許容される添加剤」に記載されている「医薬的に許容される」によって、生物学的にまたはそうでなくても不適当ではない材料、即ちいかなる不適当な生物学的作用も引き起こすことなく患者に投与される医薬組成物中に配合されることができる材料を意味する。
【0066】
用語「治療すること」または「治療」は、症状の重篤度および/または頻度の減少、症状および/または根本的な原因の除去、症状および/またはこの根本的な原因の発生の防止、および損傷の改善または治療を指す。したがって、例えば、患者を「治療」することは、疾病または病気を防止または軽減することによる臨床的に症候性の個体の治療と同様に、感受性のある個体における特定疾患または有害な生理学的事象の予防を含む。
【0067】
本発明
簡潔に上記したように、本発明は、QT延長を患う患者のQT間隔を逆転または短縮する方法に関する。具体的には、本発明の方法は、先天性もしくは後天性LQTS、心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中(患者が前述のどれかに罹患しているかどうかを決定する方法は、当業者に周知である。)に罹患している患者の治療に使用することができる。さらに、本発明の方法は、心筋虚血などの細胞内カルシウム過負荷を有する疾病の患者に、および治療を必要とする患者に、細胞内のカルシウム過負荷を減少するために使用することもできる。
【0068】
本発明の方法は一般的に、このような治療を必要とする患者に少なくとも1つの医薬的に許容されるhERGチャネルアゴニストの治療上有効量を投与することを含む。本明細書でより詳細に議論されるように、少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストの投与は、QT延長(先天性もしくは後天性LQTS、心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中に罹患している患者などで)に罹患している患者の心臓におけるhERGチャネルの電流を強めるか増加させ、これにより前記患者のQT間隔を短縮する。しかしながら、本発明のhERGチャネルアゴニストは、当分野で知られている他のhERGチャネルアゴニストとは、QT延長を患っていない患者に投与されたときQT間隔を短縮しない点で異なる。
【0069】
簡潔に上記したように、本発明の方法を使用して、QT延長は少なくとも1つの医薬的に許容されるhERGチャネルアゴニストの治療上有効量を前記患者に投与してカリウムチャネル、特にhERGチャネルまたはIKrを再分極する活性を増加させることにより、QT延長(先天性もしくは後天性LQTS、心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中)に罹患している患者でQT延長を逆転(即ち短縮)することができる。具体的には、QT延長を患う患者への少なくとも1つの医薬的に許容されるhERGチャネルアゴニストの治療上有効量の投与は、外側のカリウム電流、特にhERGチャネル(即ちIKr)での電流を強めるか増加させ、これにより前記患者のQT間隔を逆転するか短縮する。しかしながら、本明細書の方法に使用するために記載されたhERGチャネルアゴニストは、QT延長を患う患者のhERGチャネルの電流を増加させるだけでなく、最も重要なことには、本発明のhERGチャネルアゴニストは、延長されたQT間隔(例えば正常で健康な患者など)を患っていない正常な患者ではQT間隔を短縮しないことである。
【0070】
さらに、QT延長を患う患者への少なくとも1つのhERGチャネルアゴニスト投与後のhERGチャネルの電流の強化または増加は、電圧依存性であることが判明した。より具体的には、hERGチャネルの電流の増加は、陽性の膜電位、具体的には約+0.1mVから約+50mV、より好ましくは、約+5mVから約+30mV、およびさらに好ましくは約+10mVから約+20mVで発生することが分かった。本発明のhERGチャネルアゴニストは、活動電位プラトー(QT延長を患う患者で)の過程でのhERGチャネルの電流を強めるか増加させる。通常、hERGチャネルはプラトー電位で殆ど不活性化されるが、本発明のhERGチャネルアゴニストはこの期間の電流を強めるか増加させる。
【0071】
本発明の方法で使用することができるhERGチャネルアゴニストを同定する方法は、当業者に知られている習慣となっている技術を使用して容易に達成することができる。例えば、本明細書の実施例に記述されるように、全細胞パッチクランプ法による測定は、本明細書中で記載したようにhERGチャネルの電流を増加させるhERGチャネルアゴニストをスクリーニングするために、hERGのcDNAで形質移入された細胞株(HEK293およびCHO細胞)上で行なうことができる。一旦このようなhERGチャネルアゴニストが同定されたならば、これらはこれらの化合物がQT延長を患う患者でのQT延長を逆転または減少するかどうかを決定するためにさらにスクリーニングされる。これはQT延長を患う患者にこのようなhERGチャネルアゴニストを投与し、次に、少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストが血液中を循環している間に、前記患者のECG/EKGを取ることにより達成することができる。当業者であれば、ECG/EKGを読み取ることにより、前記患者へのhERGチャネルアゴニストの投与が患者の延長されたQT間隔を短縮したかどうかを容易に決定することができる。
【0072】
心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中を患う患者のために、当業者は習慣となっている技術を用いて、前記患者へのhERGチャネルアゴニストの投与後に、上記疾病のいずれかに伴う疾病事象(即ち、患者がどれくらい頻繁に脳卒中および/または心臓発作を経験するかという意味)の死亡率(死亡)または頻度の減少、および/または症状、生化学的マーカー(即ち、心筋虚血の罹患患者に対する、クレアチンリン酸キナーゼ(CPK)の減少、心筋虚血または脳卒中などの罹患患者におけるC反応性蛋白(CRP)の減少)の改善および/またはこれらの疾病に関連したECG/EKGの異常を簡単に観察することができる。
【0073】
上述の方法に加えて、広く様々な疾病状態を防ぐ際に有用性を示した幾つかの医薬化合物は公には役立たない。なぜならこれらの化合物は、QT間隔を延長する傾向があり、したがって後天性LQTSを引き起こすからである。本明細書に記述された方法の発見により、これらの薬物は今では公に利用できる。特に、QT間隔(本明細書で記述されたhERGチャネルアゴニストは、これらの化合物がQT延長を患っていない正常な患者ではなくて、QT延長を患う患者のみのQT間隔を短縮または逆転するという選択性がある。)を選択的に短縮することができるhERGチャネルアゴニストは、これらの化合物がQT間隔を延長するという事実がなければ公共に有益である化合物との併用投与をすることができる。hERGチャネルアゴニストの併用投与によって、これらの化合物の有害な影響は、これらをこれらの意図された目的に役立つようにするために緩和することができる。このような薬物は多種多様な化合物クラスから来て、抗ヒスタミン剤、抗うつ薬、神経遮断薬、抗マラリア剤、マクロライド系抗生物質、セロトニン拮抗薬およびカルシウム拮抗薬を含むが、これらに限定されない。
【0074】
したがって、別の医薬化合物と組み合わせた少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストを含有する組成物は、本発明の一部である。下記する賦形剤および剤形を用いて、このような組み合わせを含有する製剤は、当業者の選択の問題である。さらに、当業者は、様々なコーティングまたは他の分離技術が、化合物の組み合わせが不適合であるような場合に使用できることを認識する。
【0075】
本発明の方法に従って使用されるhERGチャネルアゴニストは、無機酸または有機酸に由来した医薬的に許容される塩の形態で提供することができる。医薬的に許容される塩は当分野で周知である。例えば、S.M.Berge et al.は、医薬的に許容される塩をJ.Pharmaceutical Sciences,66:1 et seq.(1977)に詳細に記述している。塩類は、化合物の最終の分離および精製過程で、または別々に適切な有機酸で遊離塩基の官能基を反応させることによりin situ(インシチュ)で調製することができる。代表的な酸付加塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イソチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、およびウンデカン酸塩を含むが、これらに限定されない。また、塩基性の窒素含有基は、低級アルキルハライド(例えば、メチル、エチル、プロピル、およびブチルクロライド、ブロマイド、およびヨージド);硫酸ジアルキル(例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミル硫酸);長鎖ハライド(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルクロライド、ブロマイドおよびヨージド);アリールアルキルハライド(例えば、ベンジルおよびフェネチルブロマイド)および他などの薬剤によって4級化することができる。これにより、水溶性もしくは油溶性または分散性の生成物が得られる。医薬的に許容される酸付加塩の形成に使用することのできる酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸などの無機酸、およびシュウ酸、マレイン酸、コハク酸およびクエン酸などの有機酸を含む。
【0076】
塩基付加塩は、化合物の最終の分離および精製過程で、カルボン酸含有部分を適切な塩基(例えば、医薬的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩)またはアンモニアまたは有機の1級、2級もしくは3級アミンと反応させることによりインシチュで調製することができる。医薬的に許容される塩は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウムエ塩およびアルミニウム塩など)由来のカチオンおよび非毒性の4級アンモニアおよびアミンカチオン(例えば、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびエチルアンモニウム)を特に含むが、これらに限定されない。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンは、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジンなどを含む。
【0077】
少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストは、所望の送達ルートに依存して主として選択の問題である、多様な方法で製剤化することができる。例えば、経口投与用の固体の剤型には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤等がある。この様な固体の剤型においては、hERGチャネルアゴニストは、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの少なくとも1種の不活性で医薬的に許容される賦形剤または担体および/または(a)非限定的にデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸などの充填剤または増量剤;(b)非限定的にカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアラビアゴムなどの結合剤;(c)非限定的にグリセロールなどの保湿剤;(d)非限定的に寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のシリケートおよび炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(e)非限定的にパラフィンなどの溶解遅延剤;(f)非限定的に第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(g)非限定的にセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤;(h)非限定的にカオリンおよびベントナイトクレイなどの吸収剤;ならびに(i)非限定的にタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどの滑沢剤およびこれらの混合物と混合し得る。
【0078】
類似タイプの固形組成物は、ラクトース(乳糖)、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いる軟質または硬質ゼラチンカプセル中の充填剤としても使用され得る。
【0079】
錠剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固形剤型は、腸溶性コーティングおよび製薬業界で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製され得る。前記固形剤型は、場合により乳白剤を含有することができ、活性成分のみまたは活性成分が優先的に腸管の特定部分に場合によりゆっくり放出されるような組成物の形態であってもよい。使用可能な包埋組成物の例はポリマー物質およびワックス類を含む。
【0080】
経口投与用液体剤型には、医薬的に許容される乳液、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤が含まれる。液体剤型は、hERGチャネルアゴニストに加えて当業界で慣用されている不活性希釈剤(例えば、水または他の溶媒)、可溶化剤および乳化剤(例えば、非限定的にエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル)およびこの混合物を含有してもよい。
【0081】
組成物は、標的部位で局所送達のために冠動脈内ステント(細かいワイヤメッシュからなる管状装置)、または生分解性高分子を経由してカテーテルによって送達することもできる。
【0082】
非経口注射剤に適した組成物は、生理学的に許容される無菌の水性もしくは非水性の溶液、分散液、懸濁液または乳液および無菌の注射用液もしくは分散液への再構成用の無菌粉末を含むことができる。適切な水性および非水性の担体、希釈剤、溶剤またはビヒクルの例としては、水、エタノール、多価アルコール類(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなど)、植物油(オリーブオイルなど)、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステル、およびこれらの適切な混合物を含むが、これらに限定されない。
【0083】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントを含有することもできる。微生物作用の防止は、種々の抗菌剤および抗カビ剤、例えばパラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実にすることができる。また、等張化剤、例えば、糖類、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましい場合がある。注射可能な医薬剤型の延長された吸収は、吸収を遅らせる薬剤(例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によりもたらすことができる。
【0084】
懸濁液は、有効成分(即ちhERGチャネルアゴニスト)に加えて、懸濁化剤、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール類、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル類、微結晶セルロース、アルミニウムメタ水酸化物、ベントナイト、寒天およびトラガカント、またはこれらの物質の混合物などを含有することができる。
【0085】
適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には要求される粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0086】
ある場合には、薬物(即ちhERGチャネルアゴニスト)の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることが望ましい。これは、水溶性が劣る結晶または非晶質の液体懸濁液の使用によって達成することができる。次に、薬物の吸収速度は、この溶解速度に依存し、今度は結晶のサイズおよび結晶形に依存する。または、非経口的に投与された製剤の遅延の吸収は、薬物を油性ビヒクルに溶解または懸濁することにより達成される。注射可能なデポ製剤は、薬物のマイクロカプセルマトリックスをポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性高分子中に形成させることにより作製される。薬物のポリマーに対する比率および使用される特定ポリマーの性質に依存して、薬物放出の割合は制御することができる。他の生分解性高分子の例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポ注射製剤は、体内組織と相容性である、リポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を内包することによっても調製される。
【0087】
注射製剤は、例えば、除菌フィルタでのろ過により、または使用直前に無菌水または他の無菌注射用媒体に溶解または分散することのできる無菌の固形組成物形態で滅菌剤を配合することにより殺菌することができる。
【0088】
本発明の化合物の局所投与用剤形は、粉末、スプレー、軟膏および吸入剤を含む。有効成分は、無菌条件下、医薬的に許容される担体および任意の必要とされる防腐剤、緩衝剤または必要とされ得る推進剤と混合される。眼科用製剤、眼軟膏剤、粉末剤および溶液剤もまた本発明の範囲内のものと考えられる。
【0089】
本発明の方法で使用される製剤は、一般に1つ以上のhERGチャネルアゴニストの治療上有効量を含むことが理解される。本明細書で使用される用語「治療上有効量」は、任意の医療に適用可能な合理的な利益/リスク比で、例えば、組成物、hERGチャネルアゴニスト、または製剤の所望の疾病(即ち延長されたQT間隔)を治療するのに必要な十分な量を意味する。他の医薬と同様に、本発明の医薬組成物の1日使用量の合計は、主治医によって正しい医学的判断の範囲内に決定されることが理解される。任意の特定患者のための特定の治療上有効量のレベルは、治療されている疾患および疾患の重篤度;使用される特定化合物の活性;使用される特定組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、患者の性別および食事;使用される特定化合物の時限投与、投与経路、および排泄速度;治療期間;使用される特定化合物と併用してまたは同時に使用される薬物;および医学分野の当業者に知られている他の要因を含む様々な要因に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低いレベルでの化合物の服用を始め、次いで所望の効果が達成されるまで徐々に服用量を増加させることは、充分に当分野の技術範囲内である。
【0090】
本発明の製剤は、個々の患者、投与部位および投与方法、投与計画、および他の医者に知られている要因を考慮して、適切な医療実務に従って投与され、服用される。
【0091】
したがって、本明細書の目的のための治療上有効量は、当分野で知られているような考察によって容易に決定することができる。患者に単回または分割投薬されたhERGチャネルアゴニストの1日あたりの治療上有効量は、体重1キログラム当たり、毎日約0.01mgから約750mgの範囲である(mg/kg/日)。より具体的には、患者は1日あたり約5.0mgから約1000mg、好ましくは1日あたり約20mgから約500mg、および最も好ましくは、1日あたり約40mgから約300mgのhERGチャネルアゴニストを投薬されることができる。
【0092】
上記したように、本発明は、QT延長を患う患者のQT間隔を逆転または短縮する方法に関係する。本発明の方法は、患者に治療上有効量の少なくとも1つの医薬的に許容されるhERGチャネルアゴニストを投与することにより、QT延長を患う患者の心臓におけるhERGチャネルの電流を増加させることを含む。本明細書に記載されたように、一旦患者が少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストを投与されると、QT間隔を逆転または短縮する際の治療の有効性および進行が、前記患者でのECG/EKGを行い、当業者に既知の習慣となっている技術を用いて前記患者のQT間隔を測定することにより観察することができる。ECG/EKGは、処置医が満足するまでQT間隔を逆転または短縮するまで必要に応じて何度も繰り返すことができる。
【0093】
心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中を患う患者のために、当業者は習慣となっている技術を用いて、前記患者へのhERGチャネルアゴニストの投与後に、上記疾病のいずれかに伴う疾病事象(即ち、患者がどれくらい頻繁に脳卒中および/または心臓発作を経験するかという意味)の死亡率(死亡)または頻度の減少、および/または症状、生化学的マーカー(即ち、心筋虚血の罹患患者に対する、クレアチンリン酸キナーゼ(CPK)の減少、心筋虚血または脳卒中などの罹患患者におけるC反応性蛋白(CRP)の減少)の改善および/またはこれらの疾病に関連したECG/EKGの異常を簡単に観察することができる。
【0094】
例示によって、限定的ではないが本発明の実施例を次に挙げるものとする。
【実施例1】
【0095】
ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞で発現されたクローン化hERGチャネルに対するフェブキソスタットの効果:ピークテール電流に集中した全細胞パッチクランプ法による測定
材料および方法
溶液および化学薬品
バスおよび電極溶液の調製に使用された全ての化学薬品は、特に明記しない限り、Sigma(St.Louis,MO)から購入され、ACS試薬等級純度またはこれより高級のものであった。フェブキソスタットは帝人(日本の山口市)から入手した。フェブキソスタットを含有する溶液はすべて、可能な場合は常にガラス製の容器中で調製された。フェブキソスタットおよびテルフェナジン(陽性対照)の試験液は、修正HEPES緩衝タイロード(HBT)溶液(mM組成):NaCl、137;KCl、5.4;CaCl2、1.8;MgCl2、1;HEPES、10;グルコース、10;NaOHで7.4に調節されたpHを用いて毎日調製された。HBT溶液は、1週間毎に新たに調製した。テルフェナジン溶液は、HBT中60nM濃度で調製された。HBT溶液はフェブキソスタットまたはテルフェナジンの溶液を調製する前に室温に加温した。新鮮な試験液および対照液は、各実験日に調製された。全細胞記録のためのピペット溶液は以下のとおり(mM組成):K−アスパラギン酸塩、130;MgCl2、5;EGTA、5;ATP、4;HEPES、10;KOHで7.2に調節されたpH。ピペット溶液はバッチで調製され、−20℃で保存され、使用日ごとに新たに解凍された。
【0096】
細胞培養
HEK293細胞は、hERGのcDNAで安定に形質移入された。安定な形質移入体は、発現プラスミドに組み入れられたhERGのcDNAおよびG418遺伝子の共発現によって選択された。選択圧は培地にG418を含めることにより維持された。細胞は、10%ウシ胎仔血清、100U/mLペニシリンGナトリウム、100μg/mL硫酸ストレプトマイシンおよび500μg/mLのG418が添加された、ダルベッコ改変イーグル培地/Nutrient Mixture F−12(D−MEM/F−12)中で培養された。細胞は極低温記憶装置の中で維持されたストックと共に、湿った5%CO2雰囲気下37℃で組織培養恒温器中に維持された。電気生理学のために使われる細胞は、35mmの組織培養皿またはガラス製カバーグラスの上にプレート化した。実験はすべて、特に明示しない限り、室温(22℃から25℃)で行なわれた。各細胞は、これ自体の対照として作用した。
【0097】
電気生理学
Warner PC501AおよびAxon Instruments Axopatch 200Bパッチクランプ増幅器が、全細胞パッチクランプ記録のために使用された。電流の記録は、PC互換性デスクトップコンピュータに取付けられたAxon Instruments Digidata 1320A AD/DAコンバータによって、デジタル変換用のサンプリング周波数の0.2でアナログフィルターされた。Axon Instruments Clampex 8.2ソフトウェアがデータを得るために、および刺激電圧波形を発生させるために使用された。Axon Instruments pCLAMP8.2のアプリケーション(Molecular Devices Corp.,Sunnyvale,CA)およびMicrosoft Excel 2000表計算ソフトウェアの1組が、データを分析するために使用された。
【0098】
ガラス製カバーグラスまたはプラスチック製35mmペトリ皿に付着した細胞は、記録室へ移され、HBT溶液でかん流した。パッチピペットは、火仕上げ後に1から5のMΩ抵抗を有するピペットを生成するために、P97水平プラー(Sutter Instrument Co.,Novato,CA)上にTW150−Fガラス毛細管から作製した。hERGチャネル機能のフェブキソスタット変調に対する濃度応答の関係は、0.1から500μMの範囲のフェブキソスタット濃度で評価された。これらの濃度は、hERGチャネルを発現する細胞に累積的に適用された。各濃度はn>3(n=測定の数)を有した。フェブキソスタットの1つまたは2つの濃度だけが各細胞に適用された。テルフェナジン(60nM)は、陽性対照として2個の細胞に適用された。
【0099】
パッチクランプ電圧プロトコル
濃度応答
安定してhERGを発現する細胞は、−80mVで保持された。フェブキソスタットまたはテルフェナジンによるhERG電流の開始および定常状態変調は、10秒間隔で繰り返された固定振幅(脱分極:+20mV、2秒間;再分極:−50mV、2秒間)を有するパルスパターンを使用して測定された。ピークテール電流は、−50mVへの2秒ステップの過程で測定された。定常状態はフェブキソスタットまたはテルフェナジンを適用する前に少なくとも30秒間維持された。新しい定常状態が達成されるまで、フェブキソスタットまたはテルフェナジンの適用後のピークテール電流が測定された。
【0100】
周波数依存性
細胞は少なくとも1分間−80mVで保持された。次いで定常状態の値(典型的には20から30パルスの範囲)に達するのに十分なパルス列(脱分極:+60mV、250ms;再分極:−50mV、70ms)が、0.3Hzおよび3Hzの周波数で繰り返される列中のパルスで印加された。ピークテール電流に対するフェブキソスタットの効果の周波数依存性は、500μMフェブキソスタットでの平衡の前後に測定された。ピークテール電流は列の各パルスにおける−50mVへのステップの過程で測定された。
【0101】
データ分析
データ収集と分析は、pCLAMP8.2アプリケーション(Molecular Devices Corp.,Sunnyvale,CA)の1対を使用して行なわれた。定常状態は、経時的で制限的な一定の変化率(線形時間依存)として定義された。被験物質の適用前後の定常状態が、薬物効果を測定するために使用された。
【0102】
フェブキソスタットhERG変調の周波数依存性の分析
周波数依存性(使用依存性)の分析用のデータは、パルスの各列における最初のパルスのピーク電流に正規化され、各周波数での列からの正規化データは、プールされて平均経時的変化を構築した。
【0103】
温度依存性の分析
温度依存性の分析データは、少なくとも2個の細胞での室温(22℃から25℃)および生理的温度近辺(35±2℃)の各温度における500μMフェブキソスタット存在下の電流を比較した。
【0104】
結果
HEK/hERGピークテール電流のフェブキソスタット変調
これらの初期パッチクランプ測定は、フェブキソスタットの潜在的なhERG遮断効果を評価することであった。対照的に、試験された濃度範囲(0.1から500μM)に対する正規化されたピークテール電流の経時的変化に関するフェブキソスタットの定常状態効果は、平均電流で1.01から1.09までのわずかな増加を示し、テール電流の動力学では何の変化もなかった(表1)。さらに、フェブキソスタットは、+20mVステップの過程で明白だったhERG電流の電圧依存性の増加をもたらした。500、50、1および0.1μMのフェブキソスタット平衡の前後で必要とされる個々のHEK/hERG電圧−クランプ電流−時間(I−T)の記録は、図1および図2で重畳されて示される。+20mVでの効果の大きさは変動したが、一貫して存在した。10秒間隔で繰り返された連続する記録で測定された+20mVでのフェブキソスタット適用に対する正規化されたピーク電流応答の経時的変化は、より小さい定常状態効果に傾斜した初期の急速な増加からなるものであった(図3)。これらの結果は、フェブキソスタットはhERGブロッカーではなくて、QT延長を引き起こさず、この代わりにフェブキソスタットは新規なhERGアゴニストであることを示している。
【0105】
HEK/hERGピークテール電流の大きさ(−50mVで測定された。)の500μM フェブキソスタット変調の使用依存性または周波数依存性の評価は、活性化パルスを0.3Hzの周波数で繰り返した場合、対照での、およびフェブキソスタットによる平衡後の正規化されたピークテール電流の大きさの経時的変化には差異を示さなかった。3Hzのより高い活性化周波数では、フェブキソスタットは、対照に対して、正規化されたピークテール電流の大きさの経時的変化に小さな有意でない減少をもたらした(図4)。これは、心拍数の違いがhERGチャネルに対するフェブキソスタットの遮断活性の欠如に大きく影響しないということを示唆する。
【0106】
35±2℃までバスの温度を上昇させることは、500μMフェブキソスタットの適用に起因するピークテール電流の大きさに対する効果を、室温(22℃から25℃)で得られたものから有意に変更しなかった(表2)。+20mVでのhERG電流に対するアゴニスト効果は、35±2℃で依然として存在しており、質的に類似していた。これらの結果は、上記した室温で観察されたフェブキソスタットの効果が、体温で身体中にも発生しているに違いないことを証明している。
【0107】
テルフェナジンは確立された、強力なhERGブロッカーであり、陽性対照として使用された。ピークテール電流に対する60nMテルフェナジン適用の効果が測定された。予想通りに、60nMテルフェナジンは、HEK/hERGピークテール電流の77±3%(n=2)を遮断した(表3)。
【0108】
要約すると、これらの結果は、500μMまでの濃度のフェブキソスタットは、HEK/hERGピークテール電流に対して望ましくない遮断効果を有しないことを示す。また、ピークテール電流に対する500μMフェブキソスタットの遮断効果の欠如は、使用依存性または温度依存性ではなかった。この代わりに、+20mVの間のhERG電流における電圧依存性の増加が観察され、これはフェブキソスタットが新規なhERGアゴニストであることを示唆した。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【実施例2】
【0112】
チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)で発現されたクローン化hERGチャネルに対するフェブキソスタットの効果:陽性電位におけるアゴニスト効果に焦点を当てた全細胞パッチクランプ法による測定。
【0113】
材料および方法
溶液および化学薬品
バスおよび電極溶液の調製に使用されたすべての化学薬品は、特に明記しない限り、Sigma(St.Louis,MO)から購入され、ACS試薬等級純度またはこれより高級のものであった。フェブキソスタットは帝人(日本の山口市)から得た。フェブキソスタットを含有する溶液はすべて、可能な場合は常にガラス製の容器中で調製された。フェブキソスタットおよびテルフェナジン(陽性対照)の試験液は、修正HEPES緩衝タイロード(HBT)溶液(mM組成):NaCl、137;KCl、5.4;CaCl2、1.8;MgCl2、1;HEPES、10;グルコース、10;NaOHで7.4に調節されたpHを用いて毎日調製された。HBT溶液は、1週間毎に新たに調製した。テルフェナジン溶液は、HBT中60nM濃度で調製された。HBT溶液はフェブキソスタットまたはテルフェナジンの溶液を調製する前に室温に加温した。新鮮な試験液および対照液は、各実験日に調製された。全細胞記録のためのピペット溶液は以下のとおり(mM組成):K−アスパラギン酸塩、130;MgCl2、5;EGTA、5;ATP、4;HEPES、10;KOHで7.2に調節されたpH。ピペット溶液はバッチで調製され、−20℃で保存され、使用日毎に新たに解凍された。
【0114】
細胞培養
CHO細胞は、hERGのcDNAで安定に形質移入された。安定な形質移入体は、発現プラスミドに組み入れられたhERGのcDNAおよびG418遺伝子の共発現によって選択された。選択圧は培地にG418を含めることにより維持された。細胞は、10%ウシ胎仔血清、100U/mLペニシリンGナトリウム、100μg/mL硫酸ストレプトマイシンおよび500μg/mLのG418が添加された、ダルベッコ改変イーグル培地/Nutrient Mixture F−12(D−MEM/F−12)中で培養された。細胞は極低温記憶装置の中で維持されたストックと共に、湿った5%CO2雰囲気下37℃で組織培養恒温器中に維持された。電気生理学のために使われる細胞は、35mmの組織培養皿またはガラス製カバーグラスの上にプレート化した。実験はすべて、特に明示しない限り、室温(22℃から25℃)で行なわれた。各細胞は、これ自体の対照として作用した。
【0115】
電気生理学
Warner PC501AおよびAxon Instruments Axopatch 200Bパッチクランプ増幅器が、全細胞パッチクランプ記録のために使用された。電流の記録は、PC互換性デスクトップコンピュータに取付けられたAxon Instruments Digidata 1320A AD/DAコンバータによって、デジタル変換用のサンプリング周波数の0.2でアナログフィルターされた。Axon Instruments Clampex 8.2ソフトウェアがデータを得るために、および刺激電圧波形を発生させるために使用された。Axon Instruments pCLAMP8.2のアプリケーション(Molecular Devices Corp.,Sunnyvale,CA)およびMicrosoft Excel 2000表計算ソフトウェアの1対が、データを分析するために使用された。
【0116】
ガラス製カバーグラスまたはプラスチック製35mmペトリ皿に付着した細胞は、記録室へ移され、HBT溶液でかん流した。パッチピペットは、火仕上げ後に1から5のMΩ抵抗を有するピペットを生成するために、P97水平プラー(Sutter Instrument Co.,Novato,CA)上にTW150−Fガラス毛細管から作製した。hERGチャネル機能のフェブキソスタット変調に対する濃度応答の関係は、0.0001から10μMの範囲のフェブキソスタット濃度で評価された。これらの濃度は、hERGチャネルを発現する細胞に累積的に適用された。各濃度はn>3(n=測定の数)を有した。フェブキソスタットの1つまたは2つの濃度だけが各細胞に適用された。テルフェナジン(60nM)は、陽性対照として2個の細胞に適用された。
【0117】
パッチクランプ電圧プロトコル
濃度応答
安定してhERGを発現する細胞は、−80mVで保持された。フェブキソスタット(0.0001から10μM)またはテルフェナジン(60nM)によるhERG電流の開始および定常状態変調は、10秒間隔で繰り返された固定振幅(脱分極:+20mV、2秒間;再分極:−50mV、2秒間)を有するパルスパターンを使用して測定された。ピークテール電流は、−50mVへの2秒ステップの過程で測定された。陽性電位におけるhERG電流の変調のために、+20mVへのステップの過程のピーク電流が測定された。定常状態はフェブキソスタットまたはテルフェナジンを適用する前に少なくとも30秒間維持された。新しい定常状態が達成されるまで、フェブキソスタットまたはテルフェナジン適用後のピーク電流が測定された。
【0118】
周波数依存性
細胞は少なくとも1分間−80mVで保持された。次いで定常状態の値(典型的には20から30パルスの範囲)に達するのに十分なパルス列(脱分極:+60mV、250ms;再分極:−50mV、70ms)が、0.3Hzおよび3Hzの周波数で繰り返されるパルス列で印加された。hERGチャネル機能のフェブキソスタット変調の周波数依存性は、1μMフェブキソスタットでの平衡の前後に測定された。hERGチャネルのフェブキソスタットの周波数依存性変調は、この列の各パルスにおける+60mVおよび−50mVへのステップの過程で測定されたピーク電流の大きさの経時的変化として測定された。
【0119】
定常状態I−V関係
−80mVの保持電位から、10mV増加分での−70から+80mVまでの電圧4秒間の脱分極電圧ステップ、続いて5秒間の−50mVへの再分極が、対照中および1μMフェブキソスタットの存在下での定常状態I−V関係を測定するために使用された。電圧プロトコルは15秒間隔で繰り返した。正規化された定常状態I−V関係が、正規化のための脱分極パルスの終わりに電流振幅を使用して生成された。
【0120】
活性化(G−V関係)の電圧依存性
ピークテール電流は、対照中および1μMフェブキソスタットの存在下で、定常状態I−Vプロトコル(上記)の再分極化ステップ(−50mV)の間に測定された。
【0121】
完全に活性化されたhERGのI−V関係
−80mVの保持電圧から、細胞は1秒間+60mVに脱分極されてhERG電流を十分に活性化、および部分的に不活性化し、次いで10mV増加分で−100から+40mVの範囲の電圧に5秒間再分極した。電圧プロトコル反復の間隔は、15秒であった。ピーク電流が再分極のステップで測定され、電圧の関数としてプロットされた。完全に活性化されたhERGのI−V関係が、対照中および1μMフェブキソスタットの存在下で測定された。
【0122】
交換的I−V関係(保守的プロトコル)
0mVの保持電位から、−80mVへの25ms過分極化パルスの後に、10mV増加分での−120mVから+40mVの電位への脱分極ステップが続けられた。電圧プロトコルは10秒間隔で繰り返された。正規化されたピークI−V関係が、電圧の関数としてプロットされた可変電圧ステップの過程でのピーク電流振幅を使用して生成された。交換的hERGのI−V関係は、対照中および1μMフェブキソスタットの存在下で測定された。
【0123】
不活性化の電圧依存性
定常状態不活性化−電圧関係は、初期電流の定常状態電流に対する割合を代替I−V関係プロトコルからの各ステップ電圧での1秒可変電圧ステップにおいて算出することにより測定された。
【0124】
データ分析
データ収集と分析は、pCLAMP8.2アプリケーション(Molecular Devices Corp.,Sunnyvale,CA)の1対を使用して行なわれた。定常状態は、経時的で制限的な一定の変化率(線形時間依存)として定義された。被験製品の適用前後の定常状態が、薬物効果を測定するために使用された。
【0125】
EC50データの分析
フェブキソスタットアゴニストの効果を定量化するために、以下の形式のヒル方程式が使われた。
【化11】
(式中、EC50は、半分の最大刺激を生むフェブキソスタットの濃度であり、Imaxは、最大の刺激値であり、I0は初期の対照電流であり、[Test]はフェブキソスタットの濃度であり、ITest/IControlは、試験液と対照溶液での定常状態チャネル電流振幅の比であり、およびHill定数のNは、協同性の尺度である。もしNが1に固定されると、式(1)は電流刺激に対する単純な1対1の結合モデルとなる。
【0126】
フェブキソスタットhERG変調の周波数依存性の分析
周波数依存性(使用依存性)の分析用データは、−50mVでの第1パルスのピーク電流、および+60mVでの第2パルスのピーク電流に各パルス列で正規化され、各周波数の列からの正規化されたデータは、プールされて平均時系列を構築した。
【0127】
hERG活性化の電圧依存性の分析
活性化の電圧依存性は、以下の方程式の単一ボルツマン分布に適合した。
【化12】
(式中、ITail(V)は、定常状態I−V関係プロトコルでの可変電圧V活性化ステップによって誘発されたピークテール電流である。ITail Maxは、60、70および80mVへの電圧ステップの間の電流ピーク値の平均として算出された。V1/2およびKvは、このボルツマン分布の中間点電位および指数関数的な傾斜係数である)。
hERG不活性化の電圧依存性の分析
方程式(2)に類似の方程式が、不活性化の電圧依存性を以下の形式の単一ボルツマン分布に適合させるために使用された。
【化13】
(式中、ISteady(V)は、定常状態の不活性化が代替I−V関係での−80mVより大きい電位に対して達成された場合の1秒可変電圧ステップの終わりにおける電流であり、IPeak(V)は、各電圧Vの1秒ステップの初めの電流である)。−80mV以下の電位については、Isteady(v)は、1秒可変電圧ステップの初めの電流の外挿値であった。外挿値は、電流の過渡現象の減衰過程に単一の指数関数を適合させることにより得られた。不活性化に関する初期の測定値はすべて、−80mV(IPeak(V=80mV)の値)における不活性化に対する相対的なものであった。この相対的な測定値は陰性電位におけるチャネル利用度に対する漸近値が1となるように正規化された。V1/2およびKVの最適合値は、非線形最小2乗フィッティングにより決定された。V1/2およびKVは、中間点電位であり、このボルツマン分布に対する外挿傾斜係数である。等号の左側の項はチャネル利用度であり、チャネル不活性化は、「1−チャネル利用度」として定義される。
【0128】
結果
HEK293細胞は、陽電位において異種で発現されたhERG電流とオーバーラップする内因性の遅延整流電流を有する。陽電位でフェブキソスタットのアゴニスト効果を特徴づけるために、CHO細胞が、異種的にhERGチャネル(CHO/hERG)を発現するために使用された。この理由は、形質移入されなかったCHO細胞は、フェブキソスタットが上記のHEK/hERGの例において観察されるようなhERGチャネル活性を変調する電位範囲にわたって小さな時間非依存性バックグラウンド電流だけを有するからである。
【0129】
+20mVでのCHO/hERG電流に対するフェブキソスタットのアゴニスト効果
hERGがCHO細胞中で発現されると、フェブキソスタットは、+20mVステップの過程では明白だったが、−50mVステップの過程ではより多く減少したhERG電流における電圧−依存性増加を再びもたらした。対照の過程および1μMフェブキソスタットの適用後に獲得されたサンプルCHO/hERG電圧−クランプI−T記録は、図5に示される。0.1Hzで獲得した連続記録中の+20mVで最大電流として測定されたフェブキソスタット適用のアゴニスト作用の時間的経過は、最初の1から2分間で最大に上昇した電流の初期の急激な増加と、これに続くフェブキソスタット適用の少なくとも3分後に確立されたより小さな定常状態(維持された)電流へのゆっくりとした減衰とから構成された。1μM(図6)および0.1μM(図7)のフェブキソスタットの適用前(対照1および対照2)および適用後の+20mV電圧ステップによって喚起されたピーク電流の2個の細胞における時間的経過は両方とも、初期および定常状態アゴニスト応答および0.1μMでの効果の流失を示す。+20mVで正規化されたピーク電流の時間的経過から測定された初期の電流増加(表4)および定常状態成分(表5)のための簡略な統計は、フェブキソスタットが濃度依存性であるアゴニスト効果を示した。+20mVでピーク電流の時間的経過から測定された初期の、および定常状態応答成分の濃度応答関係は、初期成分(図8)に対して0.003のおよび定常状態成分(図9)に対して0.070μMのEC50値を与えた。
【0130】
【表4】
【0131】
【表5】
【0132】
−50mV(テール電流)でのCHO/hERG電流に対するフェブキソスタットの効果
ピークテール電流(表6)および−50mVへの2秒ステップの終わりのテール電流(表7)に関する簡略的統計は、フェブキソスタットのアゴニスト効果がHEK/hERG細胞中で同定された電圧感受性を保持することを確認した。表4から7に示された測定値は、CHO/hERG細胞の同じセットから得られた。−50mV電圧ステップの過程のhERGピークテール電流に対するフェブキソスタットの効果は小さすぎたので、EC50値に適合させることができなかった。陽性対照(60nMテルフェナジン)の適用は、予想通りに、テルフェナジンによるHEK/hERGの遮断と同様に、CHO/hERGピークテール電流を76±5%(表8)遮断した(上記実施例1参照)。
【0133】
【表6】
【0134】
【表7】
【0135】
【表8】
【0136】
CHO/hERG電流に対するフェブキソスタットによる効果の周波数依存性または使用依存性
1μMフェブキソスタットによるアゴニスト効果の周波数依存性を測定する実験では、+60mVおよび−50mVで測定されたCHO/hERGピーク電流の増強は、0.3Hzの刺激反復周波数では観察されなかったが、3Hzの周波数では明白であった(図10および11)。これらの結果は、フェブキソスタットのアゴニスト効果が、周波数依存性または使用依存性であることを示した。この効果は、より高周波数においてより明白であり得る。
【0137】
CHO/hERG電圧ゲート制御パラメータのフェブキソスタット変調
1例として、図12の定常状態I−V関係を生成するために分析された1個の細胞からの電流トレースのファミリーが、図13に重畳されて示される。定常状態電流−電圧(I−V)関係は、フェブキソスタットへの暴露の前後に3個の細胞中で測定された(図12)。1μMフェブキソスタットによるCHO/hERG電流の最大の増加が、+10および+20mVで起きる。この結果は、+20mVでの電流に対する明白な効果および図1、2 および5で見られた−50mVの電流に対する効果の相対的な欠如と一致している。
【0138】
定常状態コンダクタンス−電圧(G−V)関係(図14)は、+60、+70および+80mVで測定されたピークテール電流の平均によって正規化された+60mV未満の電圧でのピークテール電流の測定値から構築された。中間点電位(V1/2)に対する値は、フェブキソスタットの非存在下および存在下でそれぞれ0.9および−2.1mVであった。傾斜係数(Kv)は、それぞれ対照および1μMフェブキソスタットによる平衡過程でのe倍変化当たり9.9および9.8mVであった。V1/2およびKVの値に関してフェブキソスタットの非存在下および存在下の差は些細で小さかったが、このことは、フェブキソスタットのアゴニスト効果が、hERG活性化の電圧依存性におけるより陰性電位への単純なシフトの結果によるものではないことを示している。
【0139】
1例として図15を生成するために分析されたCHO/hERG細胞からの電流トレースのファミリーが、図16に重畳されて示される。完全に活性化されたI−V関係(図15)は、+60mVで開発されたフェブキソスタットのアゴニスト効果が−60mV以下の電位への再分極によって無効化されたことを示す。刺激は、不活性化ゲート制御すると完全に活性化されたI−V関係(−50mVまで陽性)の整流を発生させる電位範囲を通過して持続する。これは、陰性電位過程でのピークテール電流測定で見られる減少したアゴニスト効果と一致する。
【0140】
1例として図17を生成するために分析されたCHO/hERG細胞からの電流トレースのファミリーが、図18に重畳されて示される。チャネル利用度−電圧関係(図17)は、正規化されたG−V関係のように、フェブキソスタット適用の応答において殆ど変わりはない。チャネル不活性化は「1−チャネル利用度」に等しい。1μMフェブキソスタットの非存在下および存在下における中間点電位V1/2に対するゲート制御パラメータ値は、それぞれ−67.6および−67.3mVであった。Kvに対する値は、対照および1μMフェブキソスタットに関するe倍変化当たりそれぞれ27.9および29.6mVであった。これらの結果は、より陽性の電位へのチャネル利用度の単純な電圧シフトは、フェブキソスタットのアゴニスト効果を説明していないことを示唆する。
【0141】
瞬時I−V関係(図19)は、開口hERGチャネルのコンダクタンス特性を測定する。この測定は、電圧クランプが膜電位をチャネルゲートよりはるかに速く変更するという能力に基づく。この結果、−80mVで開口したチャネルの数は、電圧プロトコル中で指定された膜電位の変化後、短期間不変である。−80mVからの電圧変化の直後に測定された電流は、チャネルゲーティングとは無関係であり、開口hERGチャネルのコンダクタンス特性だけを反映する。多くのカリウムチャネルのように、開口チャネルに関して測定されたI―V関係は、測定された電圧範囲に関して線形であり、hERGチャネルに関連した整流はすべて、電圧依存性のゲーティングに由来する。hERGチャネルに対する瞬間的なI−Vの傾斜には小さな増加があり、このことはフェブキソスタットがある状態での開口チャネルの数の小さな増加を示すが、I−V関係の線形性は影響されず、フェブキソスタットが開口hERGチャネルのコンダクタンス特性を変更しないことを証明している。
【0142】
要約すると、フェブキソスタットは、クローン化hERGチャネルを安定して発現するCHO細胞中において全細胞パッチクランプ法で測定されたhERG電流に対するアゴニスト効果を有していた。アゴニスト効果は電圧依存性であり、+10および+20mVで発生する最大効果を有する陽性電位でより明白であった。アゴニスト応答は、細胞へのフェブキソスタットの維持された適用の間、初期最大効果およびより小さな定常状態効果を有する二相性であった。初期最大効果および定常状態効果の濃度依存性は、0.003μMおよび0.070μMのEC50値をそれぞれ与えた。
【0143】
フェブキソスタットのアゴニスト効果は電圧依存性であり、急速に生じる。閉口チャネルは、フェブキソスタットによってより少ない刺激を受ける。開口チャネルおよび脱分極電位は刺激を必要とし、刺激効果は開口チャネルと急速に平衡化する。フェブキソスタットのアゴニスト効果は、hERG活性化の電圧依存性のより陰性電位への単純な移行の結果ではなく、またチャネル不活性化のより陽性電位への単純な電圧移行の結果でもない。フェブキソスタットは、開口hERGチャネルのコンダクタンス特性を変更しない。いかなる理論にも拘束されることは望まないが、本発明者らはこれらの観察と一致するアゴニスト効果に関する1つの可能性のある機構が、hERGチャネル開口の爆発的持続を増加させることができると考える。
【実施例3】
【0144】
単離された心臓のプルキンエ線維におけるdl−ソタロールおよびATX IIによって誘発された活動電位および活動電位持続の延長に対するフェブキソスタットの効果
材料および方法
溶液および化学薬品
実験溶液の調製で使用される化学薬品は、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)またはCalbiochem(San Diego,CA)から入手され、ACS試薬等級純度であった。フェブキソスタットを含有する溶液はすべて、可能な場合は常にガラス製の容器中で調製された。フェブキソスタットの試験液は、ストック液を毎週新たに調製された修正タイロード液で希釈して調製され、冷蔵された。(mM組成):NaCl、131;KCl、4.0;CaCl2、2.0;MgCl2、0.5;NaHCO3、18.0;NaH2PO4、1.8;グルコース、5.5.使用前に、タイロード液は、95%O2と5%CO2(pH7.2,室温)の混合物で通気された。フェブキソスタット濃度は、1000μMストック液をタイロード液に連続的に希釈して調製された。タイロード液は室温にまで加温され、この後フェブキソスタット液または陽性対照液を調製した。フェブキソスタット液は、使用前6時間以内に新たに調製され、光から保護された。フェブキソスタットは、プルキンエ線維アッセイにおいて10、100、1000nMの濃度で試験された。
【0145】
dl−ソタロール(Sigma−Aldrich)は、クラスIII抗不整脈特性を有する強力なβ−アドレナリン受容体拮抗剤である。この薬物は、急速な遅延整流カリウム電流IKrを選択的に遮断することにより心臓の活動電位持続時間(APD)を延長する。dl−ソタロール液は、この化学薬品をタイロード液へ直接溶解して毎日新たに調製された。
【0146】
ATX II(毒素II、アネモニア・スルカータ(Anemonia sulcata))はCalbiochemから入手され、イソギンチャク毒の有毒ポリペプチド成分である。ATX IIは特異的に興奮性膜の電圧ゲート制御Na+チャネルに作用し、持続的な不活性化しないNa+電流を誘発する。これらの持続的なNa+電流はAPD延長を引き起こす。試験液は、蒸留水で調製された1000倍濃縮のストックのタイロード液での希釈により調製された。
【0147】
プルキンエ繊維電気生理
繊維の調製
プルキンエ繊維は、標準方法(Gintant et al,2001)によって犬の心室から切除された。つまり、実験用として繁殖された5から7匹のビーグル犬(若い雌の成犬、Marshall Farms USA Inc.,NY)が、AAALAC認証設備に収容された。毎試験日に、犬はペントバルビタールナトリウム(30mg/kgのi.v.)で麻酔をかけられた。心臓は、左側方開胸術によって速やかに切除され、冷やされて、酸素負荷された保存タイロード液(8mM KCl)を含む容器に入れられ、ウエットアイス上、ChanTestに輸送された。両方の心室からの使用可能な自走プルキンエ繊維はすべてこれらの筋肉付着物と共に切除された。繊維は使用するまで、酸素負荷された標準タイロード液(4mM KCl)中、室温で保存された。
【0148】
電気生理記録
プルキンエ繊維は、熱したプラットフォームに固定されたガラス底のPlexiglasチャンバー(おおよこの容積、1ml)にマウントされ、標準タイロード液の約4ml/minでかん流された。浴温は、SH−27Bインライン溶液予熱器、シリーズ20チャンバプラットフォームヒーターおよびTC−344Bデュアルチャネルフィードバック温度調節器(Warner Instruments,Inc.,Hamden,CT)の組み合わせを使用して、37±1℃に維持された。浴温はサーミスタープローブを使用して記録された。細胞内の膜電位は,ホウケイ酸ガラスキャピラリーチューブからP−97水平プラー((Sutter Instrument Co.,Novato,CA)上に引かれ、3MのKCl溶液で満たされ、Ag−AgClワイヤによってWarner Instruments IE 210細胞内の電位計アンプ(Warner Instruments,Inc.,Hamden,CT)に接続された従来の細胞内の微小電極を使用して記録された。膜電位は、3MのKCl−寒天ブリッジを介してタイロード液に接するAg−AgClワイヤ電極に参照された。
【0149】
活動電位は、反復電気的刺激(0.1から3msの持続時間、約1.5回の閾値振幅)によって誘発された。2極性の、絶縁された(先端は除く)プラチナワイヤ電極は、Dagan社の光アイソレートされた電気刺激器S−900(Dagan Corp.,Minneapolis,MN)によって発生したパルスを伝えるために使用された。アナログ信号は、DT3010 AD/DAボード(Data Translation,Inc.,Marlboro,MA)を使用して50kHzのデジタル化の前に20kHzで低パスフィルターされ、NOTOCORD−HEM 3.5のソフトウェア(Notocord Systems SA,Croissy sur Seine,France)によって制御されたPC−互換性のコンピュータを使用してハードディスクに保存された。
【0150】
濃度応答および速度依存性は、次のテスト手順によって決定された。プルキンエ繊維は、対照AP応答を得る前に、少なくとも25分の安定化期間に2秒(0.5Hzの刺激周波数と等価)のBCLで連続的にゆっくり拍動した。−80mVより陰性の休止電位および正常なAP形態(APD90=250から450ms)を有する繊維のみが使用された。許容される繊維は、20分間2秒BCLで連続的に刺激された。この期間の終わりに、コントロール条件下の基線APD速度依存性または周波数依存性が、2秒、1秒および0.34秒(1および3Hzの刺激周波数とそれぞれ等価)のBCLでおよそ50パルスからなる刺激パルス列を使用して測定された。2秒BCLに戻った後に、最低濃度の試験液が平衡状態とするために20分間適用され、刺激列が繰り返された。全シーケンス[BCL(1つのサイクル当たり合計23分間)を減少させる際、刺激列の3つのサイクルが後続する20分間の平衡状態]は、増加した薬物濃度で累積的に繰り返された。各刺激列からの最後の5つの記録された活動電位からの平均応答は、各試験条件に対して分析された。
【0151】
フェブキソスタットに対するプルキンエ繊維電気生理学的応答
これらの効果の活動電位パラメータと速度依存性に関してフェブキソスタット効果を調べるために、フェブキソスタット(10、100および1000nM)の3つの濃度が、累積的に(例えば3回の23分暴露期間)上記で概説した1群の4つのプルキンエ繊維に適用された。
【0152】
フェブキソスタットによるソタロールまたはATX IIに対するプルキンエ繊維の電気生理学的応答の変調
フェブキソスタットによるソタロールに対するプルキンエ繊維応答の変調は、両方の化合物に暴露された繊維の応答を測定し、ソタロール単独に対する応答と比較してアッセイされた。ソタロール単独群では、50μMでのソタロールが、フェブキソスタット試験群(3つの23分暴露期間)におけるとほぼ同じの各繊維における暴露期間を有する4つのプルキンエ繊維に適用された。ソタロール+フェブキソスタット群では、50μMでのソタロールが、測定期間中ずっと適用され、100および1000nMでのフェブキソスタットが第2および第3の23分間暴露期間にそれぞれ適用された。
【0153】
ATX IIを用いた同様の一連の実験では、3つの23分暴露期間すべての間、20nMのATX II単独の適用に対する4つのプルキンエ繊維の応答が測定された。実験は、ATX IIへ100nM(暴露期間1および2)および1000nM(暴露期間3)フェブキソスタットを添加して7つの繊維で繰り返された。
【0154】
データ分析
活動電位分析
データは、Notocord−Hem version 3.5およびMicrosoft Excel 2000のAP分析モジュールを使用して分析された。以下のパラメータが決定された。RMP(静止膜電位、mV)、APA(活動電位振幅、mV)、Vmax(最大上昇率V/s)、APD60およびAPD90(それぞれ60および90%再分極での活動電位持続時間、ms)。濃度応答データは、試験品適用前に基線と比較して示される。各刺激周波数のAPD60、APD90およびVmaxは、各濃度における基線からの%変化(△%)として示される。RMPとAPAのデータは、膜電位(△mV)の絶対的な変化として示される。
【0155】
統計分析
データは平均±SEMとして報告された。プールされたデータは、各条件に関して表された。対照基線、薬物濃度および刺激周波数。フェブキソスタット、50μMソタロールまたは20nMのATX IIによって誘発された活動電位パラメータの変化は、薬物のない対照期間の間に得られた平均が、各薬物濃度における平衡後に得られた平均とは有意に異なる(P<0.05)かを決定するために、対サンプルに対する両側Studentのt検定を用いて評価された。活動電位パラメータにおけるソタロール誘発変化またはATX II誘発変化に対するフェブキソスタットの効果は、20nMのATX−IIまたは50μMのソタロール単独の存在下に得られたデータと、フェブキソスタットと一緒にこれらの薬物の1種の存在下で行われた時間適合された実験からのデータとを比較して、Studentのt検定により評価された。統計分析はMicrosoft Excel 2000で行なわれた。
【0156】
結果
活動電位パラメータに対するフェブキソスタットの効果
徐脈(BCL=2秒)をシミュレートするBCLでは、フェブキソスタット濃度10、100および100OnM(表9、図20)でAPD90の平均変化は、それぞれ−2.4±0.8%、−1.9±0.7%および−6.8±3.7%であった。1秒および0.34秒のより短い周期の長さ(正常脈および頻脈をそれぞれシミュレートする)では、1000nMフェブキソスタット(表10および11)においてのAPD90の平均変化がそれぞれ−2.4±1.0%および−2.0±1.0%であった。これらの小さな効果のどれもが統計的に有意ではなかったし(P<0.05)、また、これらは生物学上重要であるとは考えられない。フェブキソスタットは、任意の濃度またはBCL療法で最大上昇率(Vmax)、活動電位振幅または静止電圧振幅を有意に変化させなかった。
【0157】
要約すると、フェブキソスタットはhERGアゴニストではあるけれども、これは単独では活動電位パラメータに対して影響を及ぼさなかった。
【0158】
【表9】
【0159】
【表10】
【0160】
【表11】
【0161】
【表12】
【0162】
【表13】
【0163】
【表14】
【0164】
dl−ソタロールおよびATX IIによって誘発された活動電位持続時間の延長のフェブキソスタット変調
フェブキソスタットに比べて、同一の記録条件下では、陽性対照のdl−ソタロールは、50μMで有意なAPD延長をもたらした(図21)。dl−ソタロールの同じ濃度の効果は、各23分の暴露期間にオーバータイムを増加させ、プルキンエ繊維組織とのソタロール平衡の遅いコンポーネントを反映した。第3の23分の暴露期間の終わりに、2秒のBCL(図21(表15)、1秒のBCL(表16)および0.34秒のBCL(表17)で、40.9±8.8%、34.8±7.5%および14.6±7.2%のAPD90延長が、それぞれあった。50μMのソタロールは、BCL2秒、1秒および0.34秒で、最大上昇率(Vmax)、活動電位振幅または静止電位振幅を有意に変更しなかった。図23は、50μMのdl−ソタロールと一緒の100および1000nMのフェブキソスタットの添加が、2秒(表18および図23)または1秒および0.34秒のBCL(表19および20)での活動電位持続時間の延長を変更しなかったことを示している。ソタロールと一緒のフェブキソスタットは、最大上昇率(Vmax)、活動電位振幅または静止電位振幅を変更しなかった。
【0165】
【表15】
【0166】
【表16】
【0167】
【表17】
【0168】
【表18】
【0169】
【表19】
【0170】
【表20】
【0171】
ソタロールのように、20nMのATX IIが有意なAPD延長を誘発し各23分暴露期間の間増加され、これはプルキンエ繊維組織とのATX II平衡の遅いコンポーネントを反映した。また、これは同様にプラトー電位を高めた(図22)。第3の23分暴露期間の終わりでは、20μMのATX IIは、APD90の最大延長を2秒BCL(表21、図22)で75.1±8.1%、1秒BCL(表22)で46.4±6.2%、および0.34秒BCL(表23)で13.6±2.8%にまで誘発した。1000nMのフェブキソスタットは、APD90の最大ATX II誘発延長を2秒BCL(図24、表24))で37.2±3.6%(△%=−50%対ATX II単独)、1秒BCL(表25)で27.7±2.5%(△%=−40%対ATX II単独)、および0.34秒BCL(表26)で9.0±1.2%(△%=−34%対ATX II単独)に減少させた。ATX II誘発延長に対しての1000nMフェブキソスタットの弱める効果は、BCL2秒および1秒(図24)で統計学的に有意であった。100nMフェブキソスタットは、試験されたすべての刺激間隔においてATX−IIによって誘発されたAPD延長を適度に短縮した。しかしながら、この効果は、BCL0.34秒(図24)で統計学的に有意であるのみであった。ATX IIこれ自体またはフェブキソスタット併用では、ATX IIは、最大上昇率(Vmax)、活動電位振幅または静止電位振幅を変更しなかった。
【0172】
【表21】
【0173】
【表22】
【0174】
【表23】
【0175】
【表24】
【0176】
【表25】
【0177】
【表26】
【0178】
結論として、10、100および1000nMのフェブキソスタットは、活動電位パラメータこれ自体には何らの効果を有さなかった。フェブキソスタットは、ソタロール誘発活動電位延長に何の効果も有さなかった。しかしながら、100および1000nMのフェブキソスタットは、用量依存的にATX II誘発活動電位延長を短縮した。
【0179】
当業者であれば、記述した目的を実施するために、およびこの結果と利点のみならず、また同様にそこに内在するものを得るために、本発明がよく適合されていることを容易に理解する。本明細書に記載されている分子錯体および方法、手順、処理、分子、特定化合物は、現在好ましい実施形態の代表であって、例示的なものであり、本発明の範囲を制限することを意図しているものではない。本発明の範囲および精神を逸脱することなく、ここに開示された発明に対して置換および修正の変更がなされ得ることは、当業者にとって容易に明白なことである。
【0180】
本明細中で記述された特許および刊行物はすべて、本発明が属する当業者の水準を示す。すべての特許および刊行物は、あたかも個々の刊行物がそれぞれ具体的に、個別的に参照により組込まれることが示されるのと同様に参照により本明細書に組込まれる。
【0181】
本明細書に例示的に適切に記述された発明は、本明細書で具体的に示されていない任意の要素、制限の非存在下で実施されてもよい。したがって、例えば、本明細書での各実例の場合、「含むこと(comprising)」、「本質的に成ること(consisting essentially of)」、および「成ること(consisting of)」の用語のいずれもが、他の2つの用語のいずれかと置き換えられてもよい。使用された用語および表現は、説明するための用語として使用され、制限するためのものではなく、また、示されて記述された特徴のどんな均等物またはこの一部をも除外する用語および表現として使用する意図はなく、様々な修正が主張された本発明の範囲内で可能であることが認識される。したがって、本発明は好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されてきたけれども、本明細書中に開示された思想の修正および変更は、当業者に依存することができ、またこのような修正および変更は、主張された特許請求の範囲で定義された本発明の範囲内にあると考えられることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】2−[3−シアノ−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチルチアゾール−5−カルボン酸(以下「フェブキソスタット」と称する)の50および500μM適用の前後のサンプルHEK/hERG電流トレースを表す。HEK/hERG電流[電流(pA);時間(ms)]が、濃度応答(下側のパネル中に示される)に対して記述された電圧手順[電圧](mV)]を使用して得られた。フェブキソスタット存在下での電流記録は、指示濃度での平衡の3分後に得られた。
【図2】0.1および1μMのフェブキソスタット適用の前後のサンプルHEK/hERG電流トレースを表す。HEK/hERG電流[電流(pA);時間(ms)]が、濃度応答(下側のパネル中に示される)に対して記述された電圧手順[電圧](mV)]を使用して得られた。0.1および1μMのフェブキソスタット存在下での電流記録は、フェブキソスタット暴露の少なくとも3分後に得られた。
【図3】+20mVでの50μMフェブキソスタット適用の前、間および後に測定されたHEK/hERG電流のサンプル経時的変化を示す。
【図4】HEK/HERGピークテール電流に対するフェブキソスタット効果の使用依存性または周波数依存性を示す。500μMフェブキソスタット平衡の前およびこの後で、周波数0.3Hz(上方のパネル)および3.0Hz(下方のパネル)の反復試験パルスが適用された。電流振幅は最初のパルスに正規化され、時間に対してプロットされた。データは2個の細胞の平均である。
【図5】フェブキソスタット適用の前およびこの適用中のサンプルCHO/hERG電流トレースを示す。CHO/hERG電流[電流(pA);時間(ms)]が、濃度応答に対して記述された電圧手順を使用して得られ、下方パネルの中に示される。定常状態効果の記録はフェブキソスタット適用の開始後7分で得られた。
【図6】+20mVで1μMのフェブキソスタット適用前および適用後に測定されたCHO/hERG電流のサンプル経時変化を示す。細胞は、細胞に隣接して配置された3つの毛管のアレイからのタイロード液でかん流された。溶液のフローアーチファクトを制御するために、対照溶液はフェブキソスタット含有溶液に交換する前に、2つの毛管(対照1および対照2)の間で交換された。
【図7】+20mVでの0.1μMフェブキソスタット適用前および適用後に測定されたCHO/hERG電流のサンプル経時変化を示す。細胞は、細胞に隣接して配置された3つの毛管のアレイからのタイロード液でかん流された。溶液のフローアーチファクトを制御するために、対照溶液はフェブキソスタット含有溶液に交換する前に、2つの毛管(対照1および対照2)の間で交換された。
【図8】+20mVにおけるhERG電流に対するフェブキソスタット(「TMX−67」としても知られている)の初期最大効果の濃度応答を示す。フェブキソスタット(丸印)±標準誤差の適用後に存在する平均微小電流は、単一結合方程式(実線)に適合された。算出されたEC50は0.003μMであった。観察数は括弧の中に示される。
【図9】+20mVにおけるhERG電流に対するフェブキソスタットの定常状態効果の濃度応答を示す。フェブキソスタット(丸印)±標準誤差の適用後に存在する平均微小電流は、単純な結合方程式(実線)に適合された。算出されたEC50は0.070μMであった。観察数は括弧の中に示される。
【図10】+60mVで測定されたフェブキソスタットアゴニスト効果の使用依存性を示す。1μMフェブキソスタット平衡の前後で、0.3Hz(上方パネル)および3.0Hz(下方パネル)の周波数で反復試験パルスが適用された。パルス列はこのステップ波形の反復:脱分極、+60mV、250ms;再分極:−50mV、70ms;続いて−80mVの保持電位への戻しにより生成した。ピーク電流振幅は、+60mVステップの開始に測定された。ピーク電流は、対照およびフェブキソスタット溶液におけるこの第2パルス列の振幅に正規化され、手順の開始前の定常状態薬物効果が周波数依存性効果とオーバーラップしないようにした。正規化された電流は、時間に対してプロットされた。データは3個の細胞の平均である。
【図11】−50mVで測定されたフェブキソスタットアゴニスト効果の使用依存性を示す。1μMフェブキソスタット平衡の前後で、0.3Hz(上方パネル)および3.0Hz(下方パネル)の周波数で反復試験パルスが適用された。パルス列はこのステップ波形の反復:脱分極、+60mV、250ms;再分極:−50mV、70ms;続いて−80mVの保持電位への戻りにより生成された。ピークテール電流振幅は、−50mVで測定され、続いて+60mVでチャネルの活性化および不活性化が行われた。ピークテール電流は、対照およびフェブキソスタット溶液における第1パルス列振幅に正規化され、手順の開始前の定常状態薬物効果が周波数依存性効果とオーバーラップしないようにした。正規化された電流は、時間に対してプロットされた。データは3個の細胞の平均である。
【図12】活性化および定常状態I−V関係の電圧依存性に対するフェブキソスタットの効果を示す。対照中、および1μMフェブキソスタットでの平衡化後の4秒駆動電圧ステップの終わりに3個の細胞で測定された電流の値(平均±標準誤差)が、各電圧ステップに対してプロットされる。データは、各細胞に対する対照中での最大値に正規化された。
【図13】定常状態I−V電流記録に対するフェブキソスタットの効果を示す。各パネルは、対照(上方パネル)および1μMのフェブキソスタット(下方パネル)の電流の下に図解された電圧プロトコルによって発生したCHO/hERG細胞からの16個の重畳された電流記録を示す。
【図14】対照およびフェブキソスタット処置細胞における定常状態G−V関係を示す。正規化されたコンダクタンスは、定常的なI−V関係プロトコルの−50mV再分極電圧ステップの過程で3個のCHO/hERG細胞におけるピークテール電流振幅の値(平均±標準誤差)から測定された。対照中および1μMフェブキソスタットでの平衡後の測定は、先の可変電圧ステップの間の各電圧に対してプロットされる。対照およびフェブキソスタットのデータは、ボルツマン(Boltzmann)方式に適合させた。正規化電流=1/(1+e−(V−V1/2)Kv)(式中、Vは、−50mV再分極ステップに先立つ定常状態I−V関係プロトコルの4秒駆動電圧ステップの電圧であり、V1/2は、半分の最大コンダクタンスが発生する電位であり、およびKvは曲線の勾配を設定する指数勾配係数である)。対照およびフェブキソスタットにおけるV1/2に対する値は、それぞれ0.9および−2.1mVであった。対照およびフェブキソスタットにおけるKvに対する値は、それぞれ9.9および9.8mVであった。
【図15】対照およびフェブキソスタット処置細胞における完全に活性化されたI−V関係を示す。対照中および1μMフェブキソスタットでの平衡後に3個の細胞中で測定された正規化ピーク電流値(平均±標準誤差)は、各電圧ステップに対してプロットされる。ピーク電流測定は、電圧プロトコルの第2の5秒持続可変電圧ステップの間に行われた。データは、各細胞の対照での最大値に正規化された。
【図16】完全に活性化されたI−Vの電流記録に対するフェブキソスタットの効果を示す。各パネルは、対照(上方パネル)および1μMのフェブキソスタット(下方パネル)の電流の下に図解された電圧プロトコルによって発生したCHO/hERG細胞からの15個の重畳された電流記録を示す。
【図17】不活性化の電圧依存性に対するフェブキソスタットの効果を示す。対照および1μMのフェブキソスタットで平衡化後の3個のCHO/hERG細胞で測定された正規化チャネル利用度値(平均±標準誤差)は、各電圧ステップに対してプロットされる。ピーク電流測定は、電圧プロトコルの第2の1秒間持続可変電圧ステップの過程で行われた。データは、各細胞の対照に対して最大値に正規化された。データは次式に適合させた。チャネル利用度=1/(1+e(V−V1/2)/Kv))(式中、Vは、プロトコルにおける可変電圧ステップの電圧であり、V1/2は、半分の最大チャネル利用度の電圧であり、およびKvは曲線の勾配を設定する指数勾配係数である)。対照およびフェブキソスタットにおけるV1/2に対する値は、それぞれ−68および−67mVであった。対照およびフェブキソスタットにおけるKvに対する値は、e倍の変化当たりそれぞれ−28および−30mVであった。活性化されたチャネルの一部分は「1−チャネル利用度」である。
【図18】代替I−V関係に対するフェブキソスタットの効果を示す。各パネルは、対照(上方パネル)および1μMのフェブキソスタット(下方パネル)の電流の下に図解された電圧プロトコルによって発生した、CHO/hERG細胞からの17個の重畳された電流記録を示す。
【図19】瞬間的I−V関係に対するフェブキソスタットの効果を示す。対照および1μMのフェブキソスタットで平衡化後における、代替I−V関係電圧プロトコルでの1秒可変電圧ステップの初めに3個の細胞中で測定された電流の値(平均±標準誤差)は、各電圧ステップに対してプロットされる。データは、各細胞の対照中、0mV値に正規化された。
【図20】活動電位に対するフェブキソスタットの効果を示す。フェブキソスタット(10、100および1000nM)の増加する濃度での平衡前(対照)および平衡後の記録が重畳された。フェブキソスタットは、活動電位パラメータのいずれに対しても有意の変化を引き起こさなかった。温度は37±1℃に維持され、BCLは2秒にセットされた。
【図21】活動電位に対する50μMソタロールの効果を示す。平衡前(対照)および50μMソタロールで23分間(1)、50μMソタロールで46分間(2)および50μMソタロールで69分間(3)平衡化した後の重畳された記録。温度=37±1℃、BCL=2s。ソタロールは有意にAPDを延長した。
【図22】活動電位に対する20nMのATX IIの効果を示す。平衡前(対照)および20nMのATX IIで23分間(1)、46分間(2)および69分間(3)平衡化した後の重畳された記録。温度=37±1℃、BCL=2秒。ATX IIは有意にAPDを延長した。
【図23】活動電位持続時間に対するフェブキソスタット(TMXとしても知られている)およびソタロールの効果を示す。基線に対するAPD90(BCL=2s)の%変化は、暴露期間に対してプロットされた。フェブキソスタット群(白抜き菱形、n=4)において、10、100および1000nMフェブキソスタット濃度が、暴露期間1、2および3に累積的にそれぞれ適用された。ソタロール群(塗りつぶした正方形、n=4)では、50μMソタロールが、暴露期間1、2および3の過程で連続的に適用された。ソタロールおよびフェブキソスタットの併用群(白抜き三角形、n=4)では、30μMソタロール、50μMソタロール100nMフェブキソスタット、および50μMソタロール+1000nMフェブキソスタットが、暴露期間1、2および3の過程で累積的にそれぞれ適用された。ソタロールのデータは、ソタロール+フェブキソスタット暴露期間1の値によってソタロールのデータを正規化することにより、ソタロール+フェブキソスタットのデータ上に重ねられた。正規化されたソタロールのデータ(×印)は、期間2および3のソタロール+フェブキソスタットのデータを重ね合わせ、100および1000nM濃度のフェブキソスタットがソタロールAPD90延長の時間的経過に効果がなかったことを示している。
【図24】ATX Il誘発APD90延長に対するフェブキソスタットの効果を示す。測定は、2秒(A)、1秒(B)および0.34秒(C)のBCLで行われた。各BCLでのAPD90(平均±標準誤差)の%変化は、20nMのATX II+100nMフェブキソスタット(暴露期間1および2)、20nMのATX II+1000nMフェブキソスタット(暴露期間3)の連続適用の間中に暴露期間に対してプロットされた。菱形、三角形および正方形の記号で図示されたデータは、2、1および0.34秒のBCLでそれぞれ得られた。塗りつぶされた、および白抜きの記号は、ATX II単独(n=4繊維)およびATX II+フェブキソスタット(n=7繊維)で得られたデータを表した。*は、ATX II群およびATX II+フェブキソスタット群(P<0.05、スチューデントt検定)の間の統計的に有意な差を表す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓学に関し、特に先天性QT延長症候群、後天性QT延長症候群、心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中など(これらに限定されることはない)のQT間隔延長およびこれに伴う疾病の治療法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオンチャネルは細胞膜にまたがる巨大分子の水性タンパク質のトンネルである。非常に多くのイオンチャネルが存在することが知られている。これらのチャネルは、第2の命である脳、心臓および筋肉をそれぞれ通過する様々な電気的信号を発生させ、統制している。イオンチャネルは、これらが通過することを可能にするイオン、例えばナトリウム、カリウム、カルシウムまたはクロリドのタイプおよびゲート制御特性に基づいて分類される。イオンの各タイプに対して異なるチャネルがしばしばある。イオンチャネルにおけるイオンの移動の方向は、電気的および化学的な濃度勾配によって制御される。多くのチャネルでは、イオンの移動は、機械依存性、電位依存性およびリガンド依存性のサブタイプへのゲート制御されたイオンチャネル大分類の根拠を形成するゲート構造により制御される。したがって、イオンチャネルは連続的には開口されていない。この代わりに、これらは簡単に開口し、次に再び閉口する「ゲート」を有する。個々の細胞内のゲート制御されたイオンチャネルの同期活動は、興奮性組織に特有の複雑で不可欠な電圧波形を生じる。
【0003】
休止期では、細胞はこれらの細胞膜上のイオンチャネルが開口しているか閉口しているかどうかに依存して、これらの細胞膜を横切る電気的な電位差(電圧)を維持する。典型的には、細胞の内部(細胞質)は、細胞外液に比べて電気的に陰性であり、したがって、細胞は休止期中に分極化される。細胞膜を横切るこの電気的な電位差は静止膜電位と呼ばれる。心筋細胞については、静止膜電位は約−90mVである。
【0004】
電気興奮性細胞は、これらがイオンチャネルの開閉を引き起こし得る異なる刺激に暴露されると、興奮状態となる。イオンチャネル活性を変更する(またはゲート制御する)ことが知られている刺激の主なタイプは、膜(即ち電位依存性チャネル)を横切る電圧の変化、機械的ストレス(即ち機械依存性チャネル)またはリガンド結合(即ちリガンド依存性チャネル)である。細胞が興奮すると、これは活動電位と呼ばれる膜貫通電位変化のサイクルを経る。
【0005】
心臓では、心臓の心室細胞の活動電位は5つの相を含む。第0相は、プラスに荷電されたナトリウムイオンの細胞への殆ど排他的な流入により、細胞膜がマイナスの静止電位からプラスの電位まで急速に通過する場合の急激な脱分極相である。この流入は膜電位がプラスになる原因となる。これが1ミリセカンド未満であり、最も速い相であるので、第0相は活動電位の「アップストローク」とも呼ばれる。脱分極中に、電位差は実際には逆になり、この結果、細胞質の電位は細胞外液のこれよりも約20mV超過する。アップストロークは、カリウムイオンの一時的な流出による部分的なまたは初期の再分極の短い期間(第1相)に直ちに続き、次いでこれはプラトー相(第2相)に続く。プラトー相の過程では、プラスに荷電したカリウムイオンの流出によって平衡化するプラスに荷電したカルシウムイオンの流入がある。プラトー相に続いて、膜は分極の休止期(即ち、脱分極後のマイナス値への膜電位の戻り変化)へ戻り再分極(第3相)する。この最終的な再分極は、カリウムイオンの流出がカルシウムイオンの流入を超え始める場合に生じる。第3相の再分極は、第0相の脱分極よりもゆっくりと進行する。カリウムチャネルによるカリウム電流は、第3相の持続、したがって活動電位の持続を決定する際に重要な役割を果たす。活動電位の最終相(第4相)は、膜電位変化に関しては活動しない。第4相は、活動電位の過程で細胞を出たカリウムイオンと交換に細胞内へ入ったナトリウムとカルシウムのイオンの除去によってイオン濃度が回復される相である。
【0006】
心筋細胞の各活動電位は、この細胞の収縮を引き起こす。すべての心筋細胞の協同した収縮は、協調した心臓の収縮または心拍を形成する。同時に、すべての心筋細胞からの統合された電気的信号(活動電位)は、身体の表面へ発信される。この信号は、特有の波形を生成する心電図(ECGまたはEKGなど)に記録することができる。波形の異なる部分は、文字P、Q、R、SおよびTによって示され、これらは心臓の異なる領域からの活動電位の合計を表す。波形の異なる部分間の時間の一定間隔は、心臓の状態に関する有益な情報を提供する。例えば、波のQRS群の始めからT波(「QT」間隔として知られている。)の終わりへの期間は、心室の脱分極および再分極の持続の基準を提供する。言いかえれば、これは心臓の心室活動電位の期間の測定である。
【0007】
残念なことに、一部の個人では、QT間隔の持続時間が延長される。QT間隔の延長は、臨床的には「QT延長症候群」(以下、「LQTS」)と称され、特定の医学的病状、例えば心室性頻拍性不整脈、特に突然の心臓死に至り得る多形性心室頻拍の危険性を増加させることに関係している。QT間隔延長または活動電位持続の増加は、内部(または流入)ナトリウムもしくはカルシウム電流の増加、または外部(または流出)カリウム電流の1つ以上の阻害に起因し得る。心臓の第3相の再分極に関係するカリウムチャネルのうちの2種類は、遅延整流カリウムチャネルIκrおよびIκsの急速活性型成分および緩徐活性型成分と称される。これらのチャネルは、活動電位の持続時間、即ちQT間隔の測定に重要な役割を有している。これらのチャネルのいずれかの任意の欠陥または遮断は、活動電位持続時間およびQT間隔を延長する。急速遅延整流カリウムチャネルIκrは、ヒトエーテル・ア・ゴー・ゴー(ether−a−go−go)関連遺伝子(以下、「hERG」と呼ぶ。)によりコードされる。したがって、チャネルは、「hERG」チャネルとしても知られている。QT間隔の延長は、これらのイオンチャネルで、1つ以上の遺伝的欠陥(これらは「先天性LQTS」と呼ばれる。)、または1種以上の薬物の作用(本明細書で「後天性LQTS」と呼ばれる。)に起因すると一般に考えられる。これにもかかわらず、延長されたQT間隔は、心筋虚血(Puddu,et al.,Journal of Electrocardiology,19(3):203−11(1986))、心不全(Brooksby et al.,European Heart Journal,20(18):1335−41(1999))糖尿病(Veglio et al.,Journal of Internal Medicine,251(4):317−24(2002))および脳卒中(Wong et al.,Heart(British Cardiac Society),89(4):377−81(2003))を含む多くの心臓血管系の病気または他の疾病に見られ、これらの全てが高い死亡率と関係している。
【0008】
基線QT間隔の測定および決定は、首尾一貫はしていないが、心虚血、心不全および脳卒中を有する患者の死亡の前兆の指標であることが示された。これは、QT延長が上記の疾病に関連した死亡の要因かもしれないことを示唆している。確かに心不全患者(Beuckelmann,et al.,Circulation Research,73(2):379−85(1993))および心筋梗塞の動物(Kaprrielian et al.,American Journal of Physiology,283:H1157−H1168(2002))からの分離された筋細胞を使用する電気生理学による研究および実験的に引き起こされた心不全(Despa et al.,Circulation,105:2543−2548(2002);Rose et al.,American Journal of Physiology,288:H2077−H2087(2005))は、健全な正常な対照と比較して、一過性の外部への電流(Ito)、内部への整流(Ik1)K+チャネル、および遅延整流電流が減少し得ることを証明した(Janse,Cardiovascular Research,61:208−217(2004)。
【0009】
先天性LQTSに対する治療オプションは、β−ブロッカー治療によるQT間隔の直接、および間接的な縮小心臓ペーシングおよび植え込み型除細動器を含む(Ackerman,M.J.,Mayo Clin.Proc.,73:250−269(1998);Wehrens et al.,Ann.Intern.Med.,137:981−992(2002);Khan,Am.Heart J.143:7−14(2002))。イオンチャネルの薬理学的変調は、ある程度の成功をした。ナトリウムチャネルブロッカーは、LQT3を有する患者でQT間隔を直接縮小することができる。なぜならQT延長がナトリウムチャネル不活性化の欠陥により、心臓の活動電位プラトー中に変異したナトリウムチャネルが活動し過ぎるのを引き起こすからである。この「機能の獲得」は、メキシレチンおよびフレカイニドなどのナトリウムチャネルブロッカーで薬理学的に逆にすることができる(Schwartz et al.,Circulation,92:3381−3386(1995);Wang et al.,J.Clin.Invest.99:1714−1720 (1997);Windle et al.,Electrocardiol,6:153−158(2001);Liu et al.,J.Pharmacogenomics,3:173−179(2003))。このアプローチは作用機序に基づき有効であるが、LQT3を有する先天性LQTS患者の少数に限定される。しかしながら、心臓毒性に対する電位は、電位再入回路の伝導を遅らせることおよび不整脈を引き起こすことにより、ナトリウムチャネルブロッカー(これは、クラスI抗不整脈薬と呼ばれる。)に対してよく確立されている(Nattel,Cardiovasc.Res.,37:567−577(1998))。カリウムの静脈内(i.v.)注入のような細胞外のカリウム濃度を増加させることに基づく方法は、カリウムチャネルを再分極する活性を増加させることによりQT間隔を短縮する。QT間隔は、この治療を受けた患者で著しく短縮された(Compton et al.,Circulation,94:1018−1022(1996))。しかしながら、この治療法はこれが自制不能なi.v.注入を必要とし、十分に高い長期的なカリウムレベルを達成するのは困難であるので、広く使用されていない(Etheridge et al.,J.Am.Coll.Cardiol.,42:1777−1782(2003))。ATP−感受性カリウム(KATP)チャネルオープナーであるニコランジルは、患者の先天的に延長されたQT間隔を正規化することが示された(Shimizu et al.,Curr.Pharm.Des.11:1561−1572(2005))。しかしながら、KATPチャネルオープナーはすべて、心臓だけでなく血管平滑筋におけるKATPチャネルの存在により望ましくない血管拡張作用(例えば低血圧)を伴う(Quast et al.,Cardiovasc.Res.,28:805−810(1994))。イオンチャネルを直接ターゲットとする治療は、LQT3の場合のように、成功し得り一般に役立ちそうである。
【0010】
また、細胞内のカルシウム過負荷が、心筋虚血傷害に関与することも当分野で知られている(Farber J.L.,Laboratory Investigation,47(2):114−23(1982))。増加した細胞質のカルシウム濃度(カルシウム過負荷)は、心筋静止張力の不可逆的増加をもたらして、この結果、心臓の正常な弛緩を妨ぐ(Lowe et al.,Journal of Molecular & Cellular Cardiology,11(10):1017−31(1979))。カリウムチャネルの開口は、活動電位プラトーを短縮し、再分極化を促進し、これによりL−タイプカルシウムチャネルを通るカルシウムの流入の減少をもたらすことによって心筋保護を提供する。心筋虚血の治療のために安全で有効なカリウムチャネルオープナーを同定する努力がされてきた(Gomma et al.,Drugs,61(12):1705−10(2001))。これまでのところ、KATPオープナーだけが研究されてきた。上で議論したように、非標的組織中のKATPチャネルの普及は、これらの薬剤による望ましくない副作用の可能性を増加させる。さらに、KATPオープナーは、有意にQT間隔を短縮し、ある状況下では不整脈源となり得る。
【0011】
Iκrカリウムチャネルの活性を増加させることによる逆転QT延長またはカルシウム過負荷は、後天性および先天性LQTS、心筋虚血、心不全、糖尿病および脳卒中の治療においても有益であり得る。最近の2つのレポート(Kang et al.,Mol.Pharmacol.,67:827−836(2005);Zhou et al.,Mol.Pharmacol.,68:876−884(2005))は、hERGアゴニストとして作用し、延長されたQTの逆転のための薬物治療の開発を可能にし得る薬剤分子について記述している。しかしながら、これらの化合物のマイクロモル濃度は、hERG電流を増加させる必要があり(これは経口投与後のヒトでは達成されないかもしれない)、これらは正常な活動電位の持続期間およびQT間隔(これらは催不整脈の危険に移行するかもしれない)を短縮する。
【0012】
この結果、延長されたQT間隔を安全に短縮し、カルシウム過負荷を減少するために使用することができる医薬的に許容されるカリウムチャネルオープナーに対する必要性が当分野にある。このような薬剤は、LQTS、心不全、糖尿病、脳卒中、心筋虚血などの様々な心血管疾病または他の関連疾病を治療するのに役立つ。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の要約
1実施態様では、本発明は、QT延長を患う患者のQT間隔を短縮する方法に関する。この方法は以下のステップを含む。
【0014】
QT延長を患う患者に、少なくとも1つの医薬的に許容されるヒトのエーテル・ア・ゴー・ゴー関連遺伝子(「hERG」)チャネルアゴニストの治療上有効量を投与すること;そこでは前記少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストは、QT延長を患っていない患者に投与された場合、QT間隔を短縮しない。
【0015】
上記の方法によって治療されるQT延長を患う患者は、先天性QT延長症候群、後天性QT延長症候群、心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中に罹患し得る。
【0016】
上記方法のhERGチャネルアゴニストの投与は、前記患者のhERGチャネルの電流を増加させる。具体的には、hERGチャネルの電流の増加は、電圧依存性であることが分かった。より具体的には、少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストは、陽性の膜間電位でhERGチャネルの電流を増加させることが判明した。この陽性の膜間電位は、約+0.1mVから約+50mV、好ましくは約+5mVから約+30mV、最も好ましくは約+10mVから約+20mVである。
【0017】
上記の方法で使用することのできるhERGチャネルアゴニストは、以下の式を有するものを含む。
【0018】
【化5】
{式中、R1は
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)である。]であり、
式中、R2は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R3は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R5は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R6は、
【0019】
【化6】
であり、
R7は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基であり;および
R8は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基である。}
【0020】
上記の式を有するhERGチャネルアゴニストの例は、2−[3−シアノ−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチルチアゾール−5−カルボン酸、2−[3−シアノ−4−(3−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[3−シアノ−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−(3−シアノ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[4−(2−カルボキシプロポキシ)−3−シアノフェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸および医薬的に許容されるこれらの塩からなる群から選択される。
【0021】
別の実施形態では、本発明は心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中に罹患した患者を治療する方法に関する。この方法は、心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中を患う患者に、少なくとも1つの医薬的に許容されるヒトのエーテル・ア・ゴー・ゴー関連遺伝子(「hERG」)チャネルアゴニストの治療上有効量を投与するステップを含み、前記少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストは、QT延長を患っていない患者に投与された場合、QT間隔を短縮しない。
【0022】
上記方法のhERGチャネルアゴニストの投与は、前記患者のhERGチャネルの電流を増加させる。具体的には、hERGチャネルの電流の増加は、電圧依存性であることが分かった。より具体的には、少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストは、陽性の膜間電位でhERGチャネルの電流を増加させることが判明した。この陽性の膜間電位は、約+0.1mVから約+50mV、好ましくは約+5mVから約+30mV、最も好ましくは約+10mVから約+20mVである。
【0023】
上記の方法で使用することのできるhERGチャネルアゴニストは、以下の式を有するものを含む。
【0024】
【化7】
{式中、R1は
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R2は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R3は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R5は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R6は、
【0025】
【化8】
であり、
R7は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基であり;および
R8は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基である。}
上記の式を有するhERGチャネルアゴニストの例は、2−[3−シアノ−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチルチアゾール−5−カルボン酸、2−[3−シアノ−4−(3−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[3−シアノ−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−(3−シアノ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[4−(2−カルボキシプロポキシ)−3−シアノフェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸およびこれらの医薬的に許容される塩からなる群から選択される。
【0026】
発明の詳細な説明
本明細書および添付された特許請求の範囲で使用されるように、単数形の「a」、「an」、および「the」は文脈が他を明示しない限り複数の意味を含む。したがって、例えば、「an active agent」への言及は、単一の活性薬剤のみならず、2つ以上の異なる活性薬剤の組み合わせを含む。
【0027】
定義
本発明について記述し、請求する際に、以下の用語が下記に説明される定義に従って使用される。
【0028】
用語「後天性LQTS」は、1つ以上の薬物の作用の結果であると考えられる、患者のQT間隔の延長を指す。
【0029】
用語「投与する(administer)」、「投与すること(administering)」、「投与された(administered)」または「投与(administration)」は、薬物を被験者または患者に提供する任意の方法を指す。投与経路は、当業者に知られた任意の手段で達成することができる。このような手段は、経口投与、頬側投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、吸入投与などを含むが、これらに限定されない。
【0030】
用語「先天性LQTS」は、1つ以上の遺伝的欠陥の結果であると考えられる、患者のQT間隔の延長を指す。
【0031】
用語「剤形」は、ある有効成分(即ち少なくとも1つのhERGチャネルアゴニスト)の特定の所定量(即ち服用量)を含有するように設計された任意の固体、半固体または液体の医薬組成物を指す。適切な剤形は、経口投与、頬側投与、直腸投与、局所もしくは粘膜送達、または皮下埋め込み、または他の埋め込み型薬物送達システムなどを含む医薬品送達システムであり得る。本発明の医薬組成物の剤形は、好ましくは固形であると考えられるが、これらは液体または半固体の成分を含有してもよい。より好ましくは、剤形は、患者に有効成分を送達するための経口的に投与されるシステムである。
【0032】
活性成分(即ち少なくとも1つのhERGチャネルアゴニスト)の「有効量」または「治療上有効量」は、所望の結果を提供する非毒性ではあるが活性成分の十分な量を意味する。「有効な」活性成分の量は、各被験者により、個人の年齢および一般的な条件、特定の活性成分、または活性成分などに依存して変わる。したがって、正確な「有効量」を指定することは必ずしも可能だとは限らない。しかしながら、いずれの個々の場合でも適切な「有効量」は、当業者により習慣的な実験を用いて決定することができる。
【0033】
用語「ヒトのエーテル・ア・ゴー・ゴー関連遺伝子(「hERG」)チャネルアゴニスト」は、QT延長を患う患者の心臓hERGチャネルの電流を強めるか増加させる化合物、ペプチド、活性成分または薬物を指し、これにより前記患者のQT間隔を逆転または短縮する。さらに、本発明の方法で使用されるhERGチャネルアゴニストは、QT延長を患っていない患者に投与された場合、QT間隔を短縮しない。
【0034】
本発明で使用することができるhERGチャネルアゴニストの例は、以下の式Iを有する化合物である。
【0035】
【化9】
{式中、R1は、
水素;カルボキシル;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;ホルミル基;非置換もしくは置換C1−C10アルキル;非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;OR;S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);またはNRR’;
[式中、RまたはR’は各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
式中、R2は、
水素;カルボキシル;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;ホルミル基;非置換もしくは置換C1−C10アルキル;非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ基;OR;S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);またはNRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R3は、
水素;カルボキシル;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;OR;S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);またはNRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R5は、
水素;カルボキシル;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;ホルミル基;非置換もしくは置換C1−C10アルキル;非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基;非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ基;OR;S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);またはNRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり、
式中、R6は、
【0036】
【化10】
であり、
R7は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基であり;および
R8は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基である。}
上記の式Iでは、さらにこの鎖上または環状部に置換基を有してもよい置換基、即ちピリジル基、チエニル基、フリル基またはナフチル基;C1−C10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基;5員から7員の複素環基;C1−C10のアルコキシ基、アリールオキシ基またはアラルキルオキシ基;非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ基;およびC1−C10のアルキル(モノ−もしくはジ−置換)アミノ基、アリール(モノ−もしくはジ−置換)アミノ基は、C1−C4ハロゲン化アルキル基、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、ヒドロキシル基、モノ−もしくはジ−置換アルキルアミノ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基またはホルミル基、またはハロゲン原子、5員から7員の環状2級アミノ基などの複素環などの1個以上で置換されることができる。好ましい置換基は、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、メトキシ基およびエトキシ基である。
【0037】
本明細書で使用される用語「C1−C4アルキル」は、メチル基、エチル基、プロピル基(イソ−またはn−)およびブチル基(i−、n−、tert−またはsec−)を指す。
【0038】
本明細書で使用される用語「C1−C4アルキルアミノカルボニル」は、1から4個の炭素原子のアルキル基とアミノカルボニル基からなる基を指す。
【0039】
本明細書で使用される用語「非置換もしくは置換C1−C10アルキル」は、モノ−またはジ−置換されることができる、C1−C10の直鎖状もしくは分枝状の脂肪族炭化水素残基、環状脂肪族炭化水素残基、または鎖−環状脂肪族炭化水素残基を指す。例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、iso−ペンチル、neo−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルプロピル、メトキシエチル、エトキシエチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用される用語「非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ」は、1個の水素原子がオキシ基で置換されているアルキル基(モノ−またはジ−置換されることができる。)を指す。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ(n−またはiso−)、ブトキシ(n−、iso−、sec−またはtert−)、3−メチルブトキシ、2−エチルブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、3−メチル−2−ブテニルオキシ、ゲラニルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシル−C1−C10−アルキルオキシ(例えばシクロヘキシルメチルオキシ)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書で使用される用語「C1−C5アルコキシカルボニル」は、1から5個の炭素原子を有するアルコキシ基とカルボニル基とからなる基を指す。
【0042】
本明細書で使用される用語「非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ」は、アルキル基(モノ−またはジ−置換されることができる。)とアミノ基とからなる基を指す。例としては、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書で使用される用語「アミノカルボニル」は、アミノ基とカルボニル基とからなる基を指す。
【0044】
本明細書で使用される用語「アリール」基は、5員もしくは6員の単環もしくは縮合環からなる芳香族炭化水素残基または芳香族複素環基を指す。例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−ピロリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリジルなどが挙げられるが、これらに限定されない。前記芳香族炭化水素残基または芳香族複素環もしくは縮合環が、モノ−またはジ−置換されている場合、前記アリール基は「置換されている」アリール基と考えられる。
【0045】
本明細書で使用される用語「非置換もしくは置換アリールアミノ」は、アリール基(モノ−またはジ−置換されることができる。)とアミノ基とからなる基を指す。例としては、フェニルアミノ、メチルフェニルアミノなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用される用語「アリールオキシ」基は、アリール基とオキシ基を指す。例としては、フェノキシ、1−ナフトキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書で使用される用語「アラルキル」は、アリール基で置換されているアルキル基(例えばC1−C10アルキル基の任意の基)を指す。例としては、ベンジル、1−フェニルエチル、1−メチル−1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピル、シンナミル、2−ピロリルメチル、フルフリル、テニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。好ましいのはベンジル基である。
【0048】
本明細書で使用される用語「非置換または置換アラルキルアミノ」は、アラルキル(モノ−またはジ−置換の)基とアミノ基とからなる基を指す。例としては、ベンジルアミノ、メチルベンジルアミノなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書で使用される用語「アルキルカルボニル」は、アルキル基とカルボニル基とからなる基を指す。例としては、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2−メチルプロパノイル、ペンタノイル、2−メチルブタノイル、3−メチルブタノイル、ピバロイル、ヘキサノイル、シクロプロピルカルボニルなどのC2−C7低級脂肪族アシル基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用される用語「アリールカルボニル」は、アリール基とカルボニル基とからなる基を指す。例としては、ベンゾイル、トルオイル、2−ピロールカルボニル、2−フルオイル、2−チオフェンカルボニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書で使用される用語「アラルキルカルボニル」は、アラルキル基とカルボニル基とからなる基を指す。例としては、フェニルアセチル、3−フェニルプロパノイル、4−フェニルブタノイル、シンナモイル、2−ピロリルアセチル、2−フリルアセチル、2−チエニルアセチルなどのC5−C10アラルキルカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用される用語「アラルキルオキシ」は、アラルキル基とオキシ基とからなる基を指す。例としては、ベンジルオキシ、1−フェニルエトキシ、1−メチル−1−フェニルエトキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で使用される用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を指す。塩素およびフッ素が特に好ましい。
【0054】
本明細書で使用される用語「ハロアルキル」は、ハロゲン原子とアルキル基とからなる基を指す。
【0055】
本明細書で使用される用語「非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル」は、1から10個の炭素原子からなるハロアルキル基を指し、アルキル基はモノ−またはジ−置換されることができる。
【0056】
本明細書で使用される用語「ヒドロキシアルコキシ」は、1個の水素原子がヒドロキシ基で置換されているアルコキシ基を指す。例としては、ヒドロキシメトキシおよび2−ヒドロキシエトキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
上記の式Iにおいて、ORの例としては、エトキシ、プロポキシ(n−またはiso−)、ブトキシ(n−、iso−、sec−またはtert−)、ペンチルオキシ、n−ヘキシルオキシ、シクロプロピルメチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、フェニルオキシ、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ、メトキシエチルオキシ、エトキシエチルオキシ、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
上記の式Iにおいて、S(O)nRの例としては、エチルチオ、イソプロピルチオ、イソプロピルスルフィニル、イソプロピルスルホニル、ペンチルスルホニル、フェニルチオ、フェニルスルフィニル、フェニルスルホニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
上記の式Iにおいて、NRR’の例としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ベンジルアミノ、フェネチルアミノなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
上記の式Iにおいて、RおよびR’が、互いにこれらが結合している窒素原子と共に一緒になって原子を表す場合には、非置換もしくは置換の5員または7員の複素環を形成することができる。複素環の例としては、モルホリノ、1−ピロリル、1−ピロリジニル、ピペリジノ、ピペラジノなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
上記の式Iにおいて、5員または7員の環状−2級アミノ基の例としては、モルホリノ、1−ピロリル、1−ピロリジノ、ピペリジノなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
上記の式Iを有するhERGチャネルアゴニストの例としては、2−[3−シアノ−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチルチアゾール−5−カルボン酸(これは本明細書では「フェブキソスタット」とも称される。)、2−[3−シアノ−4−(3−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[3−シアノ−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−(3−シアノ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[4−(2−カルボキシプロポキシ)−3−シアノフェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸または医薬的に許容されるこれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物を製造する方法は、米国特許第5,614,520号に記載されており、これは参照により本明細書に組込まれる。さらに、フェブキソスタットは、健康な被験者ではQT間隔を延長しないことが当分野では知られている(Yu,P.,et al.,J.Clin.Pharmacol.,44(10):1195(2004)参照。)。
【0063】
用語「QT延長症候群」または「LQTS」は、患者のQT間隔の延長を指す。
【0064】
用語「患者」は、動物、好ましくは哺乳動物を指し、ヒトまたは非ヒトを含む。用語「患者」および「被験者」は本明細書中では互換的に使用されてもよい。
【0065】
「医薬的に許容される賦形剤」または「医薬的に許容される添加剤」に記載されている「医薬的に許容される」によって、生物学的にまたはそうでなくても不適当ではない材料、即ちいかなる不適当な生物学的作用も引き起こすことなく患者に投与される医薬組成物中に配合されることができる材料を意味する。
【0066】
用語「治療すること」または「治療」は、症状の重篤度および/または頻度の減少、症状および/または根本的な原因の除去、症状および/またはこの根本的な原因の発生の防止、および損傷の改善または治療を指す。したがって、例えば、患者を「治療」することは、疾病または病気を防止または軽減することによる臨床的に症候性の個体の治療と同様に、感受性のある個体における特定疾患または有害な生理学的事象の予防を含む。
【0067】
本発明
簡潔に上記したように、本発明は、QT延長を患う患者のQT間隔を逆転または短縮する方法に関する。具体的には、本発明の方法は、先天性もしくは後天性LQTS、心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中(患者が前述のどれかに罹患しているかどうかを決定する方法は、当業者に周知である。)に罹患している患者の治療に使用することができる。さらに、本発明の方法は、心筋虚血などの細胞内カルシウム過負荷を有する疾病の患者に、および治療を必要とする患者に、細胞内のカルシウム過負荷を減少するために使用することもできる。
【0068】
本発明の方法は一般的に、このような治療を必要とする患者に少なくとも1つの医薬的に許容されるhERGチャネルアゴニストの治療上有効量を投与することを含む。本明細書でより詳細に議論されるように、少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストの投与は、QT延長(先天性もしくは後天性LQTS、心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中に罹患している患者などで)に罹患している患者の心臓におけるhERGチャネルの電流を強めるか増加させ、これにより前記患者のQT間隔を短縮する。しかしながら、本発明のhERGチャネルアゴニストは、当分野で知られている他のhERGチャネルアゴニストとは、QT延長を患っていない患者に投与されたときQT間隔を短縮しない点で異なる。
【0069】
簡潔に上記したように、本発明の方法を使用して、QT延長は少なくとも1つの医薬的に許容されるhERGチャネルアゴニストの治療上有効量を前記患者に投与してカリウムチャネル、特にhERGチャネルまたはIKrを再分極する活性を増加させることにより、QT延長(先天性もしくは後天性LQTS、心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中)に罹患している患者でQT延長を逆転(即ち短縮)することができる。具体的には、QT延長を患う患者への少なくとも1つの医薬的に許容されるhERGチャネルアゴニストの治療上有効量の投与は、外側のカリウム電流、特にhERGチャネル(即ちIKr)での電流を強めるか増加させ、これにより前記患者のQT間隔を逆転するか短縮する。しかしながら、本明細書の方法に使用するために記載されたhERGチャネルアゴニストは、QT延長を患う患者のhERGチャネルの電流を増加させるだけでなく、最も重要なことには、本発明のhERGチャネルアゴニストは、延長されたQT間隔(例えば正常で健康な患者など)を患っていない正常な患者ではQT間隔を短縮しないことである。
【0070】
さらに、QT延長を患う患者への少なくとも1つのhERGチャネルアゴニスト投与後のhERGチャネルの電流の強化または増加は、電圧依存性であることが判明した。より具体的には、hERGチャネルの電流の増加は、陽性の膜電位、具体的には約+0.1mVから約+50mV、より好ましくは、約+5mVから約+30mV、およびさらに好ましくは約+10mVから約+20mVで発生することが分かった。本発明のhERGチャネルアゴニストは、活動電位プラトー(QT延長を患う患者で)の過程でのhERGチャネルの電流を強めるか増加させる。通常、hERGチャネルはプラトー電位で殆ど不活性化されるが、本発明のhERGチャネルアゴニストはこの期間の電流を強めるか増加させる。
【0071】
本発明の方法で使用することができるhERGチャネルアゴニストを同定する方法は、当業者に知られている習慣となっている技術を使用して容易に達成することができる。例えば、本明細書の実施例に記述されるように、全細胞パッチクランプ法による測定は、本明細書中で記載したようにhERGチャネルの電流を増加させるhERGチャネルアゴニストをスクリーニングするために、hERGのcDNAで形質移入された細胞株(HEK293およびCHO細胞)上で行なうことができる。一旦このようなhERGチャネルアゴニストが同定されたならば、これらはこれらの化合物がQT延長を患う患者でのQT延長を逆転または減少するかどうかを決定するためにさらにスクリーニングされる。これはQT延長を患う患者にこのようなhERGチャネルアゴニストを投与し、次に、少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストが血液中を循環している間に、前記患者のECG/EKGを取ることにより達成することができる。当業者であれば、ECG/EKGを読み取ることにより、前記患者へのhERGチャネルアゴニストの投与が患者の延長されたQT間隔を短縮したかどうかを容易に決定することができる。
【0072】
心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中を患う患者のために、当業者は習慣となっている技術を用いて、前記患者へのhERGチャネルアゴニストの投与後に、上記疾病のいずれかに伴う疾病事象(即ち、患者がどれくらい頻繁に脳卒中および/または心臓発作を経験するかという意味)の死亡率(死亡)または頻度の減少、および/または症状、生化学的マーカー(即ち、心筋虚血の罹患患者に対する、クレアチンリン酸キナーゼ(CPK)の減少、心筋虚血または脳卒中などの罹患患者におけるC反応性蛋白(CRP)の減少)の改善および/またはこれらの疾病に関連したECG/EKGの異常を簡単に観察することができる。
【0073】
上述の方法に加えて、広く様々な疾病状態を防ぐ際に有用性を示した幾つかの医薬化合物は公には役立たない。なぜならこれらの化合物は、QT間隔を延長する傾向があり、したがって後天性LQTSを引き起こすからである。本明細書に記述された方法の発見により、これらの薬物は今では公に利用できる。特に、QT間隔(本明細書で記述されたhERGチャネルアゴニストは、これらの化合物がQT延長を患っていない正常な患者ではなくて、QT延長を患う患者のみのQT間隔を短縮または逆転するという選択性がある。)を選択的に短縮することができるhERGチャネルアゴニストは、これらの化合物がQT間隔を延長するという事実がなければ公共に有益である化合物との併用投与をすることができる。hERGチャネルアゴニストの併用投与によって、これらの化合物の有害な影響は、これらをこれらの意図された目的に役立つようにするために緩和することができる。このような薬物は多種多様な化合物クラスから来て、抗ヒスタミン剤、抗うつ薬、神経遮断薬、抗マラリア剤、マクロライド系抗生物質、セロトニン拮抗薬およびカルシウム拮抗薬を含むが、これらに限定されない。
【0074】
したがって、別の医薬化合物と組み合わせた少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストを含有する組成物は、本発明の一部である。下記する賦形剤および剤形を用いて、このような組み合わせを含有する製剤は、当業者の選択の問題である。さらに、当業者は、様々なコーティングまたは他の分離技術が、化合物の組み合わせが不適合であるような場合に使用できることを認識する。
【0075】
本発明の方法に従って使用されるhERGチャネルアゴニストは、無機酸または有機酸に由来した医薬的に許容される塩の形態で提供することができる。医薬的に許容される塩は当分野で周知である。例えば、S.M.Berge et al.は、医薬的に許容される塩をJ.Pharmaceutical Sciences,66:1 et seq.(1977)に詳細に記述している。塩類は、化合物の最終の分離および精製過程で、または別々に適切な有機酸で遊離塩基の官能基を反応させることによりin situ(インシチュ)で調製することができる。代表的な酸付加塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イソチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、およびウンデカン酸塩を含むが、これらに限定されない。また、塩基性の窒素含有基は、低級アルキルハライド(例えば、メチル、エチル、プロピル、およびブチルクロライド、ブロマイド、およびヨージド);硫酸ジアルキル(例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミル硫酸);長鎖ハライド(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルクロライド、ブロマイドおよびヨージド);アリールアルキルハライド(例えば、ベンジルおよびフェネチルブロマイド)および他などの薬剤によって4級化することができる。これにより、水溶性もしくは油溶性または分散性の生成物が得られる。医薬的に許容される酸付加塩の形成に使用することのできる酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸などの無機酸、およびシュウ酸、マレイン酸、コハク酸およびクエン酸などの有機酸を含む。
【0076】
塩基付加塩は、化合物の最終の分離および精製過程で、カルボン酸含有部分を適切な塩基(例えば、医薬的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩)またはアンモニアまたは有機の1級、2級もしくは3級アミンと反応させることによりインシチュで調製することができる。医薬的に許容される塩は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウムエ塩およびアルミニウム塩など)由来のカチオンおよび非毒性の4級アンモニアおよびアミンカチオン(例えば、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、およびエチルアンモニウム)を特に含むが、これらに限定されない。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンは、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジンなどを含む。
【0077】
少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストは、所望の送達ルートに依存して主として選択の問題である、多様な方法で製剤化することができる。例えば、経口投与用の固体の剤型には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤および顆粒剤等がある。この様な固体の剤型においては、hERGチャネルアゴニストは、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの少なくとも1種の不活性で医薬的に許容される賦形剤または担体および/または(a)非限定的にデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸などの充填剤または増量剤;(b)非限定的にカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアラビアゴムなどの結合剤;(c)非限定的にグリセロールなどの保湿剤;(d)非限定的に寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のシリケートおよび炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(e)非限定的にパラフィンなどの溶解遅延剤;(f)非限定的に第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(g)非限定的にセチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤;(h)非限定的にカオリンおよびベントナイトクレイなどの吸収剤;ならびに(i)非限定的にタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどの滑沢剤およびこれらの混合物と混合し得る。
【0078】
類似タイプの固形組成物は、ラクトース(乳糖)、ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いる軟質または硬質ゼラチンカプセル中の充填剤としても使用され得る。
【0079】
錠剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固形剤型は、腸溶性コーティングおよび製薬業界で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製され得る。前記固形剤型は、場合により乳白剤を含有することができ、活性成分のみまたは活性成分が優先的に腸管の特定部分に場合によりゆっくり放出されるような組成物の形態であってもよい。使用可能な包埋組成物の例はポリマー物質およびワックス類を含む。
【0080】
経口投与用液体剤型には、医薬的に許容される乳液、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤が含まれる。液体剤型は、hERGチャネルアゴニストに加えて当業界で慣用されている不活性希釈剤(例えば、水または他の溶媒)、可溶化剤および乳化剤(例えば、非限定的にエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル)およびこの混合物を含有してもよい。
【0081】
組成物は、標的部位で局所送達のために冠動脈内ステント(細かいワイヤメッシュからなる管状装置)、または生分解性高分子を経由してカテーテルによって送達することもできる。
【0082】
非経口注射剤に適した組成物は、生理学的に許容される無菌の水性もしくは非水性の溶液、分散液、懸濁液または乳液および無菌の注射用液もしくは分散液への再構成用の無菌粉末を含むことができる。適切な水性および非水性の担体、希釈剤、溶剤またはビヒクルの例としては、水、エタノール、多価アルコール類(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンなど)、植物油(オリーブオイルなど)、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステル、およびこれらの適切な混合物を含むが、これらに限定されない。
【0083】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントを含有することもできる。微生物作用の防止は、種々の抗菌剤および抗カビ剤、例えばパラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などによって確実にすることができる。また、等張化剤、例えば、糖類、塩化ナトリウムなどを含むことが望ましい場合がある。注射可能な医薬剤型の延長された吸収は、吸収を遅らせる薬剤(例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)の使用によりもたらすことができる。
【0084】
懸濁液は、有効成分(即ちhERGチャネルアゴニスト)に加えて、懸濁化剤、例えばエトキシ化イソステアリルアルコール類、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル類、微結晶セルロース、アルミニウムメタ水酸化物、ベントナイト、寒天およびトラガカント、またはこれらの物質の混合物などを含有することができる。
【0085】
適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には要求される粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0086】
ある場合には、薬物(即ちhERGチャネルアゴニスト)の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることが望ましい。これは、水溶性が劣る結晶または非晶質の液体懸濁液の使用によって達成することができる。次に、薬物の吸収速度は、この溶解速度に依存し、今度は結晶のサイズおよび結晶形に依存する。または、非経口的に投与された製剤の遅延の吸収は、薬物を油性ビヒクルに溶解または懸濁することにより達成される。注射可能なデポ製剤は、薬物のマイクロカプセルマトリックスをポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性高分子中に形成させることにより作製される。薬物のポリマーに対する比率および使用される特定ポリマーの性質に依存して、薬物放出の割合は制御することができる。他の生分解性高分子の例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポ注射製剤は、体内組織と相容性である、リポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を内包することによっても調製される。
【0087】
注射製剤は、例えば、除菌フィルタでのろ過により、または使用直前に無菌水または他の無菌注射用媒体に溶解または分散することのできる無菌の固形組成物形態で滅菌剤を配合することにより殺菌することができる。
【0088】
本発明の化合物の局所投与用剤形は、粉末、スプレー、軟膏および吸入剤を含む。有効成分は、無菌条件下、医薬的に許容される担体および任意の必要とされる防腐剤、緩衝剤または必要とされ得る推進剤と混合される。眼科用製剤、眼軟膏剤、粉末剤および溶液剤もまた本発明の範囲内のものと考えられる。
【0089】
本発明の方法で使用される製剤は、一般に1つ以上のhERGチャネルアゴニストの治療上有効量を含むことが理解される。本明細書で使用される用語「治療上有効量」は、任意の医療に適用可能な合理的な利益/リスク比で、例えば、組成物、hERGチャネルアゴニスト、または製剤の所望の疾病(即ち延長されたQT間隔)を治療するのに必要な十分な量を意味する。他の医薬と同様に、本発明の医薬組成物の1日使用量の合計は、主治医によって正しい医学的判断の範囲内に決定されることが理解される。任意の特定患者のための特定の治療上有効量のレベルは、治療されている疾患および疾患の重篤度;使用される特定化合物の活性;使用される特定組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、患者の性別および食事;使用される特定化合物の時限投与、投与経路、および排泄速度;治療期間;使用される特定化合物と併用してまたは同時に使用される薬物;および医学分野の当業者に知られている他の要因を含む様々な要因に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低いレベルでの化合物の服用を始め、次いで所望の効果が達成されるまで徐々に服用量を増加させることは、充分に当分野の技術範囲内である。
【0090】
本発明の製剤は、個々の患者、投与部位および投与方法、投与計画、および他の医者に知られている要因を考慮して、適切な医療実務に従って投与され、服用される。
【0091】
したがって、本明細書の目的のための治療上有効量は、当分野で知られているような考察によって容易に決定することができる。患者に単回または分割投薬されたhERGチャネルアゴニストの1日あたりの治療上有効量は、体重1キログラム当たり、毎日約0.01mgから約750mgの範囲である(mg/kg/日)。より具体的には、患者は1日あたり約5.0mgから約1000mg、好ましくは1日あたり約20mgから約500mg、および最も好ましくは、1日あたり約40mgから約300mgのhERGチャネルアゴニストを投薬されることができる。
【0092】
上記したように、本発明は、QT延長を患う患者のQT間隔を逆転または短縮する方法に関係する。本発明の方法は、患者に治療上有効量の少なくとも1つの医薬的に許容されるhERGチャネルアゴニストを投与することにより、QT延長を患う患者の心臓におけるhERGチャネルの電流を増加させることを含む。本明細書に記載されたように、一旦患者が少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストを投与されると、QT間隔を逆転または短縮する際の治療の有効性および進行が、前記患者でのECG/EKGを行い、当業者に既知の習慣となっている技術を用いて前記患者のQT間隔を測定することにより観察することができる。ECG/EKGは、処置医が満足するまでQT間隔を逆転または短縮するまで必要に応じて何度も繰り返すことができる。
【0093】
心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中を患う患者のために、当業者は習慣となっている技術を用いて、前記患者へのhERGチャネルアゴニストの投与後に、上記疾病のいずれかに伴う疾病事象(即ち、患者がどれくらい頻繁に脳卒中および/または心臓発作を経験するかという意味)の死亡率(死亡)または頻度の減少、および/または症状、生化学的マーカー(即ち、心筋虚血の罹患患者に対する、クレアチンリン酸キナーゼ(CPK)の減少、心筋虚血または脳卒中などの罹患患者におけるC反応性蛋白(CRP)の減少)の改善および/またはこれらの疾病に関連したECG/EKGの異常を簡単に観察することができる。
【0094】
例示によって、限定的ではないが本発明の実施例を次に挙げるものとする。
【実施例1】
【0095】
ヒト胎児腎臓(HEK)293細胞で発現されたクローン化hERGチャネルに対するフェブキソスタットの効果:ピークテール電流に集中した全細胞パッチクランプ法による測定
材料および方法
溶液および化学薬品
バスおよび電極溶液の調製に使用された全ての化学薬品は、特に明記しない限り、Sigma(St.Louis,MO)から購入され、ACS試薬等級純度またはこれより高級のものであった。フェブキソスタットは帝人(日本の山口市)から入手した。フェブキソスタットを含有する溶液はすべて、可能な場合は常にガラス製の容器中で調製された。フェブキソスタットおよびテルフェナジン(陽性対照)の試験液は、修正HEPES緩衝タイロード(HBT)溶液(mM組成):NaCl、137;KCl、5.4;CaCl2、1.8;MgCl2、1;HEPES、10;グルコース、10;NaOHで7.4に調節されたpHを用いて毎日調製された。HBT溶液は、1週間毎に新たに調製した。テルフェナジン溶液は、HBT中60nM濃度で調製された。HBT溶液はフェブキソスタットまたはテルフェナジンの溶液を調製する前に室温に加温した。新鮮な試験液および対照液は、各実験日に調製された。全細胞記録のためのピペット溶液は以下のとおり(mM組成):K−アスパラギン酸塩、130;MgCl2、5;EGTA、5;ATP、4;HEPES、10;KOHで7.2に調節されたpH。ピペット溶液はバッチで調製され、−20℃で保存され、使用日ごとに新たに解凍された。
【0096】
細胞培養
HEK293細胞は、hERGのcDNAで安定に形質移入された。安定な形質移入体は、発現プラスミドに組み入れられたhERGのcDNAおよびG418遺伝子の共発現によって選択された。選択圧は培地にG418を含めることにより維持された。細胞は、10%ウシ胎仔血清、100U/mLペニシリンGナトリウム、100μg/mL硫酸ストレプトマイシンおよび500μg/mLのG418が添加された、ダルベッコ改変イーグル培地/Nutrient Mixture F−12(D−MEM/F−12)中で培養された。細胞は極低温記憶装置の中で維持されたストックと共に、湿った5%CO2雰囲気下37℃で組織培養恒温器中に維持された。電気生理学のために使われる細胞は、35mmの組織培養皿またはガラス製カバーグラスの上にプレート化した。実験はすべて、特に明示しない限り、室温(22℃から25℃)で行なわれた。各細胞は、これ自体の対照として作用した。
【0097】
電気生理学
Warner PC501AおよびAxon Instruments Axopatch 200Bパッチクランプ増幅器が、全細胞パッチクランプ記録のために使用された。電流の記録は、PC互換性デスクトップコンピュータに取付けられたAxon Instruments Digidata 1320A AD/DAコンバータによって、デジタル変換用のサンプリング周波数の0.2でアナログフィルターされた。Axon Instruments Clampex 8.2ソフトウェアがデータを得るために、および刺激電圧波形を発生させるために使用された。Axon Instruments pCLAMP8.2のアプリケーション(Molecular Devices Corp.,Sunnyvale,CA)およびMicrosoft Excel 2000表計算ソフトウェアの1組が、データを分析するために使用された。
【0098】
ガラス製カバーグラスまたはプラスチック製35mmペトリ皿に付着した細胞は、記録室へ移され、HBT溶液でかん流した。パッチピペットは、火仕上げ後に1から5のMΩ抵抗を有するピペットを生成するために、P97水平プラー(Sutter Instrument Co.,Novato,CA)上にTW150−Fガラス毛細管から作製した。hERGチャネル機能のフェブキソスタット変調に対する濃度応答の関係は、0.1から500μMの範囲のフェブキソスタット濃度で評価された。これらの濃度は、hERGチャネルを発現する細胞に累積的に適用された。各濃度はn>3(n=測定の数)を有した。フェブキソスタットの1つまたは2つの濃度だけが各細胞に適用された。テルフェナジン(60nM)は、陽性対照として2個の細胞に適用された。
【0099】
パッチクランプ電圧プロトコル
濃度応答
安定してhERGを発現する細胞は、−80mVで保持された。フェブキソスタットまたはテルフェナジンによるhERG電流の開始および定常状態変調は、10秒間隔で繰り返された固定振幅(脱分極:+20mV、2秒間;再分極:−50mV、2秒間)を有するパルスパターンを使用して測定された。ピークテール電流は、−50mVへの2秒ステップの過程で測定された。定常状態はフェブキソスタットまたはテルフェナジンを適用する前に少なくとも30秒間維持された。新しい定常状態が達成されるまで、フェブキソスタットまたはテルフェナジンの適用後のピークテール電流が測定された。
【0100】
周波数依存性
細胞は少なくとも1分間−80mVで保持された。次いで定常状態の値(典型的には20から30パルスの範囲)に達するのに十分なパルス列(脱分極:+60mV、250ms;再分極:−50mV、70ms)が、0.3Hzおよび3Hzの周波数で繰り返される列中のパルスで印加された。ピークテール電流に対するフェブキソスタットの効果の周波数依存性は、500μMフェブキソスタットでの平衡の前後に測定された。ピークテール電流は列の各パルスにおける−50mVへのステップの過程で測定された。
【0101】
データ分析
データ収集と分析は、pCLAMP8.2アプリケーション(Molecular Devices Corp.,Sunnyvale,CA)の1対を使用して行なわれた。定常状態は、経時的で制限的な一定の変化率(線形時間依存)として定義された。被験物質の適用前後の定常状態が、薬物効果を測定するために使用された。
【0102】
フェブキソスタットhERG変調の周波数依存性の分析
周波数依存性(使用依存性)の分析用のデータは、パルスの各列における最初のパルスのピーク電流に正規化され、各周波数での列からの正規化データは、プールされて平均経時的変化を構築した。
【0103】
温度依存性の分析
温度依存性の分析データは、少なくとも2個の細胞での室温(22℃から25℃)および生理的温度近辺(35±2℃)の各温度における500μMフェブキソスタット存在下の電流を比較した。
【0104】
結果
HEK/hERGピークテール電流のフェブキソスタット変調
これらの初期パッチクランプ測定は、フェブキソスタットの潜在的なhERG遮断効果を評価することであった。対照的に、試験された濃度範囲(0.1から500μM)に対する正規化されたピークテール電流の経時的変化に関するフェブキソスタットの定常状態効果は、平均電流で1.01から1.09までのわずかな増加を示し、テール電流の動力学では何の変化もなかった(表1)。さらに、フェブキソスタットは、+20mVステップの過程で明白だったhERG電流の電圧依存性の増加をもたらした。500、50、1および0.1μMのフェブキソスタット平衡の前後で必要とされる個々のHEK/hERG電圧−クランプ電流−時間(I−T)の記録は、図1および図2で重畳されて示される。+20mVでの効果の大きさは変動したが、一貫して存在した。10秒間隔で繰り返された連続する記録で測定された+20mVでのフェブキソスタット適用に対する正規化されたピーク電流応答の経時的変化は、より小さい定常状態効果に傾斜した初期の急速な増加からなるものであった(図3)。これらの結果は、フェブキソスタットはhERGブロッカーではなくて、QT延長を引き起こさず、この代わりにフェブキソスタットは新規なhERGアゴニストであることを示している。
【0105】
HEK/hERGピークテール電流の大きさ(−50mVで測定された。)の500μM フェブキソスタット変調の使用依存性または周波数依存性の評価は、活性化パルスを0.3Hzの周波数で繰り返した場合、対照での、およびフェブキソスタットによる平衡後の正規化されたピークテール電流の大きさの経時的変化には差異を示さなかった。3Hzのより高い活性化周波数では、フェブキソスタットは、対照に対して、正規化されたピークテール電流の大きさの経時的変化に小さな有意でない減少をもたらした(図4)。これは、心拍数の違いがhERGチャネルに対するフェブキソスタットの遮断活性の欠如に大きく影響しないということを示唆する。
【0106】
35±2℃までバスの温度を上昇させることは、500μMフェブキソスタットの適用に起因するピークテール電流の大きさに対する効果を、室温(22℃から25℃)で得られたものから有意に変更しなかった(表2)。+20mVでのhERG電流に対するアゴニスト効果は、35±2℃で依然として存在しており、質的に類似していた。これらの結果は、上記した室温で観察されたフェブキソスタットの効果が、体温で身体中にも発生しているに違いないことを証明している。
【0107】
テルフェナジンは確立された、強力なhERGブロッカーであり、陽性対照として使用された。ピークテール電流に対する60nMテルフェナジン適用の効果が測定された。予想通りに、60nMテルフェナジンは、HEK/hERGピークテール電流の77±3%(n=2)を遮断した(表3)。
【0108】
要約すると、これらの結果は、500μMまでの濃度のフェブキソスタットは、HEK/hERGピークテール電流に対して望ましくない遮断効果を有しないことを示す。また、ピークテール電流に対する500μMフェブキソスタットの遮断効果の欠如は、使用依存性または温度依存性ではなかった。この代わりに、+20mVの間のhERG電流における電圧依存性の増加が観察され、これはフェブキソスタットが新規なhERGアゴニストであることを示唆した。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【実施例2】
【0112】
チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)で発現されたクローン化hERGチャネルに対するフェブキソスタットの効果:陽性電位におけるアゴニスト効果に焦点を当てた全細胞パッチクランプ法による測定。
【0113】
材料および方法
溶液および化学薬品
バスおよび電極溶液の調製に使用されたすべての化学薬品は、特に明記しない限り、Sigma(St.Louis,MO)から購入され、ACS試薬等級純度またはこれより高級のものであった。フェブキソスタットは帝人(日本の山口市)から得た。フェブキソスタットを含有する溶液はすべて、可能な場合は常にガラス製の容器中で調製された。フェブキソスタットおよびテルフェナジン(陽性対照)の試験液は、修正HEPES緩衝タイロード(HBT)溶液(mM組成):NaCl、137;KCl、5.4;CaCl2、1.8;MgCl2、1;HEPES、10;グルコース、10;NaOHで7.4に調節されたpHを用いて毎日調製された。HBT溶液は、1週間毎に新たに調製した。テルフェナジン溶液は、HBT中60nM濃度で調製された。HBT溶液はフェブキソスタットまたはテルフェナジンの溶液を調製する前に室温に加温した。新鮮な試験液および対照液は、各実験日に調製された。全細胞記録のためのピペット溶液は以下のとおり(mM組成):K−アスパラギン酸塩、130;MgCl2、5;EGTA、5;ATP、4;HEPES、10;KOHで7.2に調節されたpH。ピペット溶液はバッチで調製され、−20℃で保存され、使用日毎に新たに解凍された。
【0114】
細胞培養
CHO細胞は、hERGのcDNAで安定に形質移入された。安定な形質移入体は、発現プラスミドに組み入れられたhERGのcDNAおよびG418遺伝子の共発現によって選択された。選択圧は培地にG418を含めることにより維持された。細胞は、10%ウシ胎仔血清、100U/mLペニシリンGナトリウム、100μg/mL硫酸ストレプトマイシンおよび500μg/mLのG418が添加された、ダルベッコ改変イーグル培地/Nutrient Mixture F−12(D−MEM/F−12)中で培養された。細胞は極低温記憶装置の中で維持されたストックと共に、湿った5%CO2雰囲気下37℃で組織培養恒温器中に維持された。電気生理学のために使われる細胞は、35mmの組織培養皿またはガラス製カバーグラスの上にプレート化した。実験はすべて、特に明示しない限り、室温(22℃から25℃)で行なわれた。各細胞は、これ自体の対照として作用した。
【0115】
電気生理学
Warner PC501AおよびAxon Instruments Axopatch 200Bパッチクランプ増幅器が、全細胞パッチクランプ記録のために使用された。電流の記録は、PC互換性デスクトップコンピュータに取付けられたAxon Instruments Digidata 1320A AD/DAコンバータによって、デジタル変換用のサンプリング周波数の0.2でアナログフィルターされた。Axon Instruments Clampex 8.2ソフトウェアがデータを得るために、および刺激電圧波形を発生させるために使用された。Axon Instruments pCLAMP8.2のアプリケーション(Molecular Devices Corp.,Sunnyvale,CA)およびMicrosoft Excel 2000表計算ソフトウェアの1対が、データを分析するために使用された。
【0116】
ガラス製カバーグラスまたはプラスチック製35mmペトリ皿に付着した細胞は、記録室へ移され、HBT溶液でかん流した。パッチピペットは、火仕上げ後に1から5のMΩ抵抗を有するピペットを生成するために、P97水平プラー(Sutter Instrument Co.,Novato,CA)上にTW150−Fガラス毛細管から作製した。hERGチャネル機能のフェブキソスタット変調に対する濃度応答の関係は、0.0001から10μMの範囲のフェブキソスタット濃度で評価された。これらの濃度は、hERGチャネルを発現する細胞に累積的に適用された。各濃度はn>3(n=測定の数)を有した。フェブキソスタットの1つまたは2つの濃度だけが各細胞に適用された。テルフェナジン(60nM)は、陽性対照として2個の細胞に適用された。
【0117】
パッチクランプ電圧プロトコル
濃度応答
安定してhERGを発現する細胞は、−80mVで保持された。フェブキソスタット(0.0001から10μM)またはテルフェナジン(60nM)によるhERG電流の開始および定常状態変調は、10秒間隔で繰り返された固定振幅(脱分極:+20mV、2秒間;再分極:−50mV、2秒間)を有するパルスパターンを使用して測定された。ピークテール電流は、−50mVへの2秒ステップの過程で測定された。陽性電位におけるhERG電流の変調のために、+20mVへのステップの過程のピーク電流が測定された。定常状態はフェブキソスタットまたはテルフェナジンを適用する前に少なくとも30秒間維持された。新しい定常状態が達成されるまで、フェブキソスタットまたはテルフェナジン適用後のピーク電流が測定された。
【0118】
周波数依存性
細胞は少なくとも1分間−80mVで保持された。次いで定常状態の値(典型的には20から30パルスの範囲)に達するのに十分なパルス列(脱分極:+60mV、250ms;再分極:−50mV、70ms)が、0.3Hzおよび3Hzの周波数で繰り返されるパルス列で印加された。hERGチャネル機能のフェブキソスタット変調の周波数依存性は、1μMフェブキソスタットでの平衡の前後に測定された。hERGチャネルのフェブキソスタットの周波数依存性変調は、この列の各パルスにおける+60mVおよび−50mVへのステップの過程で測定されたピーク電流の大きさの経時的変化として測定された。
【0119】
定常状態I−V関係
−80mVの保持電位から、10mV増加分での−70から+80mVまでの電圧4秒間の脱分極電圧ステップ、続いて5秒間の−50mVへの再分極が、対照中および1μMフェブキソスタットの存在下での定常状態I−V関係を測定するために使用された。電圧プロトコルは15秒間隔で繰り返した。正規化された定常状態I−V関係が、正規化のための脱分極パルスの終わりに電流振幅を使用して生成された。
【0120】
活性化(G−V関係)の電圧依存性
ピークテール電流は、対照中および1μMフェブキソスタットの存在下で、定常状態I−Vプロトコル(上記)の再分極化ステップ(−50mV)の間に測定された。
【0121】
完全に活性化されたhERGのI−V関係
−80mVの保持電圧から、細胞は1秒間+60mVに脱分極されてhERG電流を十分に活性化、および部分的に不活性化し、次いで10mV増加分で−100から+40mVの範囲の電圧に5秒間再分極した。電圧プロトコル反復の間隔は、15秒であった。ピーク電流が再分極のステップで測定され、電圧の関数としてプロットされた。完全に活性化されたhERGのI−V関係が、対照中および1μMフェブキソスタットの存在下で測定された。
【0122】
交換的I−V関係(保守的プロトコル)
0mVの保持電位から、−80mVへの25ms過分極化パルスの後に、10mV増加分での−120mVから+40mVの電位への脱分極ステップが続けられた。電圧プロトコルは10秒間隔で繰り返された。正規化されたピークI−V関係が、電圧の関数としてプロットされた可変電圧ステップの過程でのピーク電流振幅を使用して生成された。交換的hERGのI−V関係は、対照中および1μMフェブキソスタットの存在下で測定された。
【0123】
不活性化の電圧依存性
定常状態不活性化−電圧関係は、初期電流の定常状態電流に対する割合を代替I−V関係プロトコルからの各ステップ電圧での1秒可変電圧ステップにおいて算出することにより測定された。
【0124】
データ分析
データ収集と分析は、pCLAMP8.2アプリケーション(Molecular Devices Corp.,Sunnyvale,CA)の1対を使用して行なわれた。定常状態は、経時的で制限的な一定の変化率(線形時間依存)として定義された。被験製品の適用前後の定常状態が、薬物効果を測定するために使用された。
【0125】
EC50データの分析
フェブキソスタットアゴニストの効果を定量化するために、以下の形式のヒル方程式が使われた。
【化11】
(式中、EC50は、半分の最大刺激を生むフェブキソスタットの濃度であり、Imaxは、最大の刺激値であり、I0は初期の対照電流であり、[Test]はフェブキソスタットの濃度であり、ITest/IControlは、試験液と対照溶液での定常状態チャネル電流振幅の比であり、およびHill定数のNは、協同性の尺度である。もしNが1に固定されると、式(1)は電流刺激に対する単純な1対1の結合モデルとなる。
【0126】
フェブキソスタットhERG変調の周波数依存性の分析
周波数依存性(使用依存性)の分析用データは、−50mVでの第1パルスのピーク電流、および+60mVでの第2パルスのピーク電流に各パルス列で正規化され、各周波数の列からの正規化されたデータは、プールされて平均時系列を構築した。
【0127】
hERG活性化の電圧依存性の分析
活性化の電圧依存性は、以下の方程式の単一ボルツマン分布に適合した。
【化12】
(式中、ITail(V)は、定常状態I−V関係プロトコルでの可変電圧V活性化ステップによって誘発されたピークテール電流である。ITail Maxは、60、70および80mVへの電圧ステップの間の電流ピーク値の平均として算出された。V1/2およびKvは、このボルツマン分布の中間点電位および指数関数的な傾斜係数である)。
hERG不活性化の電圧依存性の分析
方程式(2)に類似の方程式が、不活性化の電圧依存性を以下の形式の単一ボルツマン分布に適合させるために使用された。
【化13】
(式中、ISteady(V)は、定常状態の不活性化が代替I−V関係での−80mVより大きい電位に対して達成された場合の1秒可変電圧ステップの終わりにおける電流であり、IPeak(V)は、各電圧Vの1秒ステップの初めの電流である)。−80mV以下の電位については、Isteady(v)は、1秒可変電圧ステップの初めの電流の外挿値であった。外挿値は、電流の過渡現象の減衰過程に単一の指数関数を適合させることにより得られた。不活性化に関する初期の測定値はすべて、−80mV(IPeak(V=80mV)の値)における不活性化に対する相対的なものであった。この相対的な測定値は陰性電位におけるチャネル利用度に対する漸近値が1となるように正規化された。V1/2およびKVの最適合値は、非線形最小2乗フィッティングにより決定された。V1/2およびKVは、中間点電位であり、このボルツマン分布に対する外挿傾斜係数である。等号の左側の項はチャネル利用度であり、チャネル不活性化は、「1−チャネル利用度」として定義される。
【0128】
結果
HEK293細胞は、陽電位において異種で発現されたhERG電流とオーバーラップする内因性の遅延整流電流を有する。陽電位でフェブキソスタットのアゴニスト効果を特徴づけるために、CHO細胞が、異種的にhERGチャネル(CHO/hERG)を発現するために使用された。この理由は、形質移入されなかったCHO細胞は、フェブキソスタットが上記のHEK/hERGの例において観察されるようなhERGチャネル活性を変調する電位範囲にわたって小さな時間非依存性バックグラウンド電流だけを有するからである。
【0129】
+20mVでのCHO/hERG電流に対するフェブキソスタットのアゴニスト効果
hERGがCHO細胞中で発現されると、フェブキソスタットは、+20mVステップの過程では明白だったが、−50mVステップの過程ではより多く減少したhERG電流における電圧−依存性増加を再びもたらした。対照の過程および1μMフェブキソスタットの適用後に獲得されたサンプルCHO/hERG電圧−クランプI−T記録は、図5に示される。0.1Hzで獲得した連続記録中の+20mVで最大電流として測定されたフェブキソスタット適用のアゴニスト作用の時間的経過は、最初の1から2分間で最大に上昇した電流の初期の急激な増加と、これに続くフェブキソスタット適用の少なくとも3分後に確立されたより小さな定常状態(維持された)電流へのゆっくりとした減衰とから構成された。1μM(図6)および0.1μM(図7)のフェブキソスタットの適用前(対照1および対照2)および適用後の+20mV電圧ステップによって喚起されたピーク電流の2個の細胞における時間的経過は両方とも、初期および定常状態アゴニスト応答および0.1μMでの効果の流失を示す。+20mVで正規化されたピーク電流の時間的経過から測定された初期の電流増加(表4)および定常状態成分(表5)のための簡略な統計は、フェブキソスタットが濃度依存性であるアゴニスト効果を示した。+20mVでピーク電流の時間的経過から測定された初期の、および定常状態応答成分の濃度応答関係は、初期成分(図8)に対して0.003のおよび定常状態成分(図9)に対して0.070μMのEC50値を与えた。
【0130】
【表4】
【0131】
【表5】
【0132】
−50mV(テール電流)でのCHO/hERG電流に対するフェブキソスタットの効果
ピークテール電流(表6)および−50mVへの2秒ステップの終わりのテール電流(表7)に関する簡略的統計は、フェブキソスタットのアゴニスト効果がHEK/hERG細胞中で同定された電圧感受性を保持することを確認した。表4から7に示された測定値は、CHO/hERG細胞の同じセットから得られた。−50mV電圧ステップの過程のhERGピークテール電流に対するフェブキソスタットの効果は小さすぎたので、EC50値に適合させることができなかった。陽性対照(60nMテルフェナジン)の適用は、予想通りに、テルフェナジンによるHEK/hERGの遮断と同様に、CHO/hERGピークテール電流を76±5%(表8)遮断した(上記実施例1参照)。
【0133】
【表6】
【0134】
【表7】
【0135】
【表8】
【0136】
CHO/hERG電流に対するフェブキソスタットによる効果の周波数依存性または使用依存性
1μMフェブキソスタットによるアゴニスト効果の周波数依存性を測定する実験では、+60mVおよび−50mVで測定されたCHO/hERGピーク電流の増強は、0.3Hzの刺激反復周波数では観察されなかったが、3Hzの周波数では明白であった(図10および11)。これらの結果は、フェブキソスタットのアゴニスト効果が、周波数依存性または使用依存性であることを示した。この効果は、より高周波数においてより明白であり得る。
【0137】
CHO/hERG電圧ゲート制御パラメータのフェブキソスタット変調
1例として、図12の定常状態I−V関係を生成するために分析された1個の細胞からの電流トレースのファミリーが、図13に重畳されて示される。定常状態電流−電圧(I−V)関係は、フェブキソスタットへの暴露の前後に3個の細胞中で測定された(図12)。1μMフェブキソスタットによるCHO/hERG電流の最大の増加が、+10および+20mVで起きる。この結果は、+20mVでの電流に対する明白な効果および図1、2 および5で見られた−50mVの電流に対する効果の相対的な欠如と一致している。
【0138】
定常状態コンダクタンス−電圧(G−V)関係(図14)は、+60、+70および+80mVで測定されたピークテール電流の平均によって正規化された+60mV未満の電圧でのピークテール電流の測定値から構築された。中間点電位(V1/2)に対する値は、フェブキソスタットの非存在下および存在下でそれぞれ0.9および−2.1mVであった。傾斜係数(Kv)は、それぞれ対照および1μMフェブキソスタットによる平衡過程でのe倍変化当たり9.9および9.8mVであった。V1/2およびKVの値に関してフェブキソスタットの非存在下および存在下の差は些細で小さかったが、このことは、フェブキソスタットのアゴニスト効果が、hERG活性化の電圧依存性におけるより陰性電位への単純なシフトの結果によるものではないことを示している。
【0139】
1例として図15を生成するために分析されたCHO/hERG細胞からの電流トレースのファミリーが、図16に重畳されて示される。完全に活性化されたI−V関係(図15)は、+60mVで開発されたフェブキソスタットのアゴニスト効果が−60mV以下の電位への再分極によって無効化されたことを示す。刺激は、不活性化ゲート制御すると完全に活性化されたI−V関係(−50mVまで陽性)の整流を発生させる電位範囲を通過して持続する。これは、陰性電位過程でのピークテール電流測定で見られる減少したアゴニスト効果と一致する。
【0140】
1例として図17を生成するために分析されたCHO/hERG細胞からの電流トレースのファミリーが、図18に重畳されて示される。チャネル利用度−電圧関係(図17)は、正規化されたG−V関係のように、フェブキソスタット適用の応答において殆ど変わりはない。チャネル不活性化は「1−チャネル利用度」に等しい。1μMフェブキソスタットの非存在下および存在下における中間点電位V1/2に対するゲート制御パラメータ値は、それぞれ−67.6および−67.3mVであった。Kvに対する値は、対照および1μMフェブキソスタットに関するe倍変化当たりそれぞれ27.9および29.6mVであった。これらの結果は、より陽性の電位へのチャネル利用度の単純な電圧シフトは、フェブキソスタットのアゴニスト効果を説明していないことを示唆する。
【0141】
瞬時I−V関係(図19)は、開口hERGチャネルのコンダクタンス特性を測定する。この測定は、電圧クランプが膜電位をチャネルゲートよりはるかに速く変更するという能力に基づく。この結果、−80mVで開口したチャネルの数は、電圧プロトコル中で指定された膜電位の変化後、短期間不変である。−80mVからの電圧変化の直後に測定された電流は、チャネルゲーティングとは無関係であり、開口hERGチャネルのコンダクタンス特性だけを反映する。多くのカリウムチャネルのように、開口チャネルに関して測定されたI―V関係は、測定された電圧範囲に関して線形であり、hERGチャネルに関連した整流はすべて、電圧依存性のゲーティングに由来する。hERGチャネルに対する瞬間的なI−Vの傾斜には小さな増加があり、このことはフェブキソスタットがある状態での開口チャネルの数の小さな増加を示すが、I−V関係の線形性は影響されず、フェブキソスタットが開口hERGチャネルのコンダクタンス特性を変更しないことを証明している。
【0142】
要約すると、フェブキソスタットは、クローン化hERGチャネルを安定して発現するCHO細胞中において全細胞パッチクランプ法で測定されたhERG電流に対するアゴニスト効果を有していた。アゴニスト効果は電圧依存性であり、+10および+20mVで発生する最大効果を有する陽性電位でより明白であった。アゴニスト応答は、細胞へのフェブキソスタットの維持された適用の間、初期最大効果およびより小さな定常状態効果を有する二相性であった。初期最大効果および定常状態効果の濃度依存性は、0.003μMおよび0.070μMのEC50値をそれぞれ与えた。
【0143】
フェブキソスタットのアゴニスト効果は電圧依存性であり、急速に生じる。閉口チャネルは、フェブキソスタットによってより少ない刺激を受ける。開口チャネルおよび脱分極電位は刺激を必要とし、刺激効果は開口チャネルと急速に平衡化する。フェブキソスタットのアゴニスト効果は、hERG活性化の電圧依存性のより陰性電位への単純な移行の結果ではなく、またチャネル不活性化のより陽性電位への単純な電圧移行の結果でもない。フェブキソスタットは、開口hERGチャネルのコンダクタンス特性を変更しない。いかなる理論にも拘束されることは望まないが、本発明者らはこれらの観察と一致するアゴニスト効果に関する1つの可能性のある機構が、hERGチャネル開口の爆発的持続を増加させることができると考える。
【実施例3】
【0144】
単離された心臓のプルキンエ線維におけるdl−ソタロールおよびATX IIによって誘発された活動電位および活動電位持続の延長に対するフェブキソスタットの効果
材料および方法
溶液および化学薬品
実験溶液の調製で使用される化学薬品は、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)またはCalbiochem(San Diego,CA)から入手され、ACS試薬等級純度であった。フェブキソスタットを含有する溶液はすべて、可能な場合は常にガラス製の容器中で調製された。フェブキソスタットの試験液は、ストック液を毎週新たに調製された修正タイロード液で希釈して調製され、冷蔵された。(mM組成):NaCl、131;KCl、4.0;CaCl2、2.0;MgCl2、0.5;NaHCO3、18.0;NaH2PO4、1.8;グルコース、5.5.使用前に、タイロード液は、95%O2と5%CO2(pH7.2,室温)の混合物で通気された。フェブキソスタット濃度は、1000μMストック液をタイロード液に連続的に希釈して調製された。タイロード液は室温にまで加温され、この後フェブキソスタット液または陽性対照液を調製した。フェブキソスタット液は、使用前6時間以内に新たに調製され、光から保護された。フェブキソスタットは、プルキンエ線維アッセイにおいて10、100、1000nMの濃度で試験された。
【0145】
dl−ソタロール(Sigma−Aldrich)は、クラスIII抗不整脈特性を有する強力なβ−アドレナリン受容体拮抗剤である。この薬物は、急速な遅延整流カリウム電流IKrを選択的に遮断することにより心臓の活動電位持続時間(APD)を延長する。dl−ソタロール液は、この化学薬品をタイロード液へ直接溶解して毎日新たに調製された。
【0146】
ATX II(毒素II、アネモニア・スルカータ(Anemonia sulcata))はCalbiochemから入手され、イソギンチャク毒の有毒ポリペプチド成分である。ATX IIは特異的に興奮性膜の電圧ゲート制御Na+チャネルに作用し、持続的な不活性化しないNa+電流を誘発する。これらの持続的なNa+電流はAPD延長を引き起こす。試験液は、蒸留水で調製された1000倍濃縮のストックのタイロード液での希釈により調製された。
【0147】
プルキンエ繊維電気生理
繊維の調製
プルキンエ繊維は、標準方法(Gintant et al,2001)によって犬の心室から切除された。つまり、実験用として繁殖された5から7匹のビーグル犬(若い雌の成犬、Marshall Farms USA Inc.,NY)が、AAALAC認証設備に収容された。毎試験日に、犬はペントバルビタールナトリウム(30mg/kgのi.v.)で麻酔をかけられた。心臓は、左側方開胸術によって速やかに切除され、冷やされて、酸素負荷された保存タイロード液(8mM KCl)を含む容器に入れられ、ウエットアイス上、ChanTestに輸送された。両方の心室からの使用可能な自走プルキンエ繊維はすべてこれらの筋肉付着物と共に切除された。繊維は使用するまで、酸素負荷された標準タイロード液(4mM KCl)中、室温で保存された。
【0148】
電気生理記録
プルキンエ繊維は、熱したプラットフォームに固定されたガラス底のPlexiglasチャンバー(おおよこの容積、1ml)にマウントされ、標準タイロード液の約4ml/minでかん流された。浴温は、SH−27Bインライン溶液予熱器、シリーズ20チャンバプラットフォームヒーターおよびTC−344Bデュアルチャネルフィードバック温度調節器(Warner Instruments,Inc.,Hamden,CT)の組み合わせを使用して、37±1℃に維持された。浴温はサーミスタープローブを使用して記録された。細胞内の膜電位は,ホウケイ酸ガラスキャピラリーチューブからP−97水平プラー((Sutter Instrument Co.,Novato,CA)上に引かれ、3MのKCl溶液で満たされ、Ag−AgClワイヤによってWarner Instruments IE 210細胞内の電位計アンプ(Warner Instruments,Inc.,Hamden,CT)に接続された従来の細胞内の微小電極を使用して記録された。膜電位は、3MのKCl−寒天ブリッジを介してタイロード液に接するAg−AgClワイヤ電極に参照された。
【0149】
活動電位は、反復電気的刺激(0.1から3msの持続時間、約1.5回の閾値振幅)によって誘発された。2極性の、絶縁された(先端は除く)プラチナワイヤ電極は、Dagan社の光アイソレートされた電気刺激器S−900(Dagan Corp.,Minneapolis,MN)によって発生したパルスを伝えるために使用された。アナログ信号は、DT3010 AD/DAボード(Data Translation,Inc.,Marlboro,MA)を使用して50kHzのデジタル化の前に20kHzで低パスフィルターされ、NOTOCORD−HEM 3.5のソフトウェア(Notocord Systems SA,Croissy sur Seine,France)によって制御されたPC−互換性のコンピュータを使用してハードディスクに保存された。
【0150】
濃度応答および速度依存性は、次のテスト手順によって決定された。プルキンエ繊維は、対照AP応答を得る前に、少なくとも25分の安定化期間に2秒(0.5Hzの刺激周波数と等価)のBCLで連続的にゆっくり拍動した。−80mVより陰性の休止電位および正常なAP形態(APD90=250から450ms)を有する繊維のみが使用された。許容される繊維は、20分間2秒BCLで連続的に刺激された。この期間の終わりに、コントロール条件下の基線APD速度依存性または周波数依存性が、2秒、1秒および0.34秒(1および3Hzの刺激周波数とそれぞれ等価)のBCLでおよそ50パルスからなる刺激パルス列を使用して測定された。2秒BCLに戻った後に、最低濃度の試験液が平衡状態とするために20分間適用され、刺激列が繰り返された。全シーケンス[BCL(1つのサイクル当たり合計23分間)を減少させる際、刺激列の3つのサイクルが後続する20分間の平衡状態]は、増加した薬物濃度で累積的に繰り返された。各刺激列からの最後の5つの記録された活動電位からの平均応答は、各試験条件に対して分析された。
【0151】
フェブキソスタットに対するプルキンエ繊維電気生理学的応答
これらの効果の活動電位パラメータと速度依存性に関してフェブキソスタット効果を調べるために、フェブキソスタット(10、100および1000nM)の3つの濃度が、累積的に(例えば3回の23分暴露期間)上記で概説した1群の4つのプルキンエ繊維に適用された。
【0152】
フェブキソスタットによるソタロールまたはATX IIに対するプルキンエ繊維の電気生理学的応答の変調
フェブキソスタットによるソタロールに対するプルキンエ繊維応答の変調は、両方の化合物に暴露された繊維の応答を測定し、ソタロール単独に対する応答と比較してアッセイされた。ソタロール単独群では、50μMでのソタロールが、フェブキソスタット試験群(3つの23分暴露期間)におけるとほぼ同じの各繊維における暴露期間を有する4つのプルキンエ繊維に適用された。ソタロール+フェブキソスタット群では、50μMでのソタロールが、測定期間中ずっと適用され、100および1000nMでのフェブキソスタットが第2および第3の23分間暴露期間にそれぞれ適用された。
【0153】
ATX IIを用いた同様の一連の実験では、3つの23分暴露期間すべての間、20nMのATX II単独の適用に対する4つのプルキンエ繊維の応答が測定された。実験は、ATX IIへ100nM(暴露期間1および2)および1000nM(暴露期間3)フェブキソスタットを添加して7つの繊維で繰り返された。
【0154】
データ分析
活動電位分析
データは、Notocord−Hem version 3.5およびMicrosoft Excel 2000のAP分析モジュールを使用して分析された。以下のパラメータが決定された。RMP(静止膜電位、mV)、APA(活動電位振幅、mV)、Vmax(最大上昇率V/s)、APD60およびAPD90(それぞれ60および90%再分極での活動電位持続時間、ms)。濃度応答データは、試験品適用前に基線と比較して示される。各刺激周波数のAPD60、APD90およびVmaxは、各濃度における基線からの%変化(△%)として示される。RMPとAPAのデータは、膜電位(△mV)の絶対的な変化として示される。
【0155】
統計分析
データは平均±SEMとして報告された。プールされたデータは、各条件に関して表された。対照基線、薬物濃度および刺激周波数。フェブキソスタット、50μMソタロールまたは20nMのATX IIによって誘発された活動電位パラメータの変化は、薬物のない対照期間の間に得られた平均が、各薬物濃度における平衡後に得られた平均とは有意に異なる(P<0.05)かを決定するために、対サンプルに対する両側Studentのt検定を用いて評価された。活動電位パラメータにおけるソタロール誘発変化またはATX II誘発変化に対するフェブキソスタットの効果は、20nMのATX−IIまたは50μMのソタロール単独の存在下に得られたデータと、フェブキソスタットと一緒にこれらの薬物の1種の存在下で行われた時間適合された実験からのデータとを比較して、Studentのt検定により評価された。統計分析はMicrosoft Excel 2000で行なわれた。
【0156】
結果
活動電位パラメータに対するフェブキソスタットの効果
徐脈(BCL=2秒)をシミュレートするBCLでは、フェブキソスタット濃度10、100および100OnM(表9、図20)でAPD90の平均変化は、それぞれ−2.4±0.8%、−1.9±0.7%および−6.8±3.7%であった。1秒および0.34秒のより短い周期の長さ(正常脈および頻脈をそれぞれシミュレートする)では、1000nMフェブキソスタット(表10および11)においてのAPD90の平均変化がそれぞれ−2.4±1.0%および−2.0±1.0%であった。これらの小さな効果のどれもが統計的に有意ではなかったし(P<0.05)、また、これらは生物学上重要であるとは考えられない。フェブキソスタットは、任意の濃度またはBCL療法で最大上昇率(Vmax)、活動電位振幅または静止電圧振幅を有意に変化させなかった。
【0157】
要約すると、フェブキソスタットはhERGアゴニストではあるけれども、これは単独では活動電位パラメータに対して影響を及ぼさなかった。
【0158】
【表9】
【0159】
【表10】
【0160】
【表11】
【0161】
【表12】
【0162】
【表13】
【0163】
【表14】
【0164】
dl−ソタロールおよびATX IIによって誘発された活動電位持続時間の延長のフェブキソスタット変調
フェブキソスタットに比べて、同一の記録条件下では、陽性対照のdl−ソタロールは、50μMで有意なAPD延長をもたらした(図21)。dl−ソタロールの同じ濃度の効果は、各23分の暴露期間にオーバータイムを増加させ、プルキンエ繊維組織とのソタロール平衡の遅いコンポーネントを反映した。第3の23分の暴露期間の終わりに、2秒のBCL(図21(表15)、1秒のBCL(表16)および0.34秒のBCL(表17)で、40.9±8.8%、34.8±7.5%および14.6±7.2%のAPD90延長が、それぞれあった。50μMのソタロールは、BCL2秒、1秒および0.34秒で、最大上昇率(Vmax)、活動電位振幅または静止電位振幅を有意に変更しなかった。図23は、50μMのdl−ソタロールと一緒の100および1000nMのフェブキソスタットの添加が、2秒(表18および図23)または1秒および0.34秒のBCL(表19および20)での活動電位持続時間の延長を変更しなかったことを示している。ソタロールと一緒のフェブキソスタットは、最大上昇率(Vmax)、活動電位振幅または静止電位振幅を変更しなかった。
【0165】
【表15】
【0166】
【表16】
【0167】
【表17】
【0168】
【表18】
【0169】
【表19】
【0170】
【表20】
【0171】
ソタロールのように、20nMのATX IIが有意なAPD延長を誘発し各23分暴露期間の間増加され、これはプルキンエ繊維組織とのATX II平衡の遅いコンポーネントを反映した。また、これは同様にプラトー電位を高めた(図22)。第3の23分暴露期間の終わりでは、20μMのATX IIは、APD90の最大延長を2秒BCL(表21、図22)で75.1±8.1%、1秒BCL(表22)で46.4±6.2%、および0.34秒BCL(表23)で13.6±2.8%にまで誘発した。1000nMのフェブキソスタットは、APD90の最大ATX II誘発延長を2秒BCL(図24、表24))で37.2±3.6%(△%=−50%対ATX II単独)、1秒BCL(表25)で27.7±2.5%(△%=−40%対ATX II単独)、および0.34秒BCL(表26)で9.0±1.2%(△%=−34%対ATX II単独)に減少させた。ATX II誘発延長に対しての1000nMフェブキソスタットの弱める効果は、BCL2秒および1秒(図24)で統計学的に有意であった。100nMフェブキソスタットは、試験されたすべての刺激間隔においてATX−IIによって誘発されたAPD延長を適度に短縮した。しかしながら、この効果は、BCL0.34秒(図24)で統計学的に有意であるのみであった。ATX IIこれ自体またはフェブキソスタット併用では、ATX IIは、最大上昇率(Vmax)、活動電位振幅または静止電位振幅を変更しなかった。
【0172】
【表21】
【0173】
【表22】
【0174】
【表23】
【0175】
【表24】
【0176】
【表25】
【0177】
【表26】
【0178】
結論として、10、100および1000nMのフェブキソスタットは、活動電位パラメータこれ自体には何らの効果を有さなかった。フェブキソスタットは、ソタロール誘発活動電位延長に何の効果も有さなかった。しかしながら、100および1000nMのフェブキソスタットは、用量依存的にATX II誘発活動電位延長を短縮した。
【0179】
当業者であれば、記述した目的を実施するために、およびこの結果と利点のみならず、また同様にそこに内在するものを得るために、本発明がよく適合されていることを容易に理解する。本明細書に記載されている分子錯体および方法、手順、処理、分子、特定化合物は、現在好ましい実施形態の代表であって、例示的なものであり、本発明の範囲を制限することを意図しているものではない。本発明の範囲および精神を逸脱することなく、ここに開示された発明に対して置換および修正の変更がなされ得ることは、当業者にとって容易に明白なことである。
【0180】
本明細中で記述された特許および刊行物はすべて、本発明が属する当業者の水準を示す。すべての特許および刊行物は、あたかも個々の刊行物がそれぞれ具体的に、個別的に参照により組込まれることが示されるのと同様に参照により本明細書に組込まれる。
【0181】
本明細書に例示的に適切に記述された発明は、本明細書で具体的に示されていない任意の要素、制限の非存在下で実施されてもよい。したがって、例えば、本明細書での各実例の場合、「含むこと(comprising)」、「本質的に成ること(consisting essentially of)」、および「成ること(consisting of)」の用語のいずれもが、他の2つの用語のいずれかと置き換えられてもよい。使用された用語および表現は、説明するための用語として使用され、制限するためのものではなく、また、示されて記述された特徴のどんな均等物またはこの一部をも除外する用語および表現として使用する意図はなく、様々な修正が主張された本発明の範囲内で可能であることが認識される。したがって、本発明は好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されてきたけれども、本明細書中に開示された思想の修正および変更は、当業者に依存することができ、またこのような修正および変更は、主張された特許請求の範囲で定義された本発明の範囲内にあると考えられることを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】2−[3−シアノ−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチルチアゾール−5−カルボン酸(以下「フェブキソスタット」と称する)の50および500μM適用の前後のサンプルHEK/hERG電流トレースを表す。HEK/hERG電流[電流(pA);時間(ms)]が、濃度応答(下側のパネル中に示される)に対して記述された電圧手順[電圧](mV)]を使用して得られた。フェブキソスタット存在下での電流記録は、指示濃度での平衡の3分後に得られた。
【図2】0.1および1μMのフェブキソスタット適用の前後のサンプルHEK/hERG電流トレースを表す。HEK/hERG電流[電流(pA);時間(ms)]が、濃度応答(下側のパネル中に示される)に対して記述された電圧手順[電圧](mV)]を使用して得られた。0.1および1μMのフェブキソスタット存在下での電流記録は、フェブキソスタット暴露の少なくとも3分後に得られた。
【図3】+20mVでの50μMフェブキソスタット適用の前、間および後に測定されたHEK/hERG電流のサンプル経時的変化を示す。
【図4】HEK/HERGピークテール電流に対するフェブキソスタット効果の使用依存性または周波数依存性を示す。500μMフェブキソスタット平衡の前およびこの後で、周波数0.3Hz(上方のパネル)および3.0Hz(下方のパネル)の反復試験パルスが適用された。電流振幅は最初のパルスに正規化され、時間に対してプロットされた。データは2個の細胞の平均である。
【図5】フェブキソスタット適用の前およびこの適用中のサンプルCHO/hERG電流トレースを示す。CHO/hERG電流[電流(pA);時間(ms)]が、濃度応答に対して記述された電圧手順を使用して得られ、下方パネルの中に示される。定常状態効果の記録はフェブキソスタット適用の開始後7分で得られた。
【図6】+20mVで1μMのフェブキソスタット適用前および適用後に測定されたCHO/hERG電流のサンプル経時変化を示す。細胞は、細胞に隣接して配置された3つの毛管のアレイからのタイロード液でかん流された。溶液のフローアーチファクトを制御するために、対照溶液はフェブキソスタット含有溶液に交換する前に、2つの毛管(対照1および対照2)の間で交換された。
【図7】+20mVでの0.1μMフェブキソスタット適用前および適用後に測定されたCHO/hERG電流のサンプル経時変化を示す。細胞は、細胞に隣接して配置された3つの毛管のアレイからのタイロード液でかん流された。溶液のフローアーチファクトを制御するために、対照溶液はフェブキソスタット含有溶液に交換する前に、2つの毛管(対照1および対照2)の間で交換された。
【図8】+20mVにおけるhERG電流に対するフェブキソスタット(「TMX−67」としても知られている)の初期最大効果の濃度応答を示す。フェブキソスタット(丸印)±標準誤差の適用後に存在する平均微小電流は、単一結合方程式(実線)に適合された。算出されたEC50は0.003μMであった。観察数は括弧の中に示される。
【図9】+20mVにおけるhERG電流に対するフェブキソスタットの定常状態効果の濃度応答を示す。フェブキソスタット(丸印)±標準誤差の適用後に存在する平均微小電流は、単純な結合方程式(実線)に適合された。算出されたEC50は0.070μMであった。観察数は括弧の中に示される。
【図10】+60mVで測定されたフェブキソスタットアゴニスト効果の使用依存性を示す。1μMフェブキソスタット平衡の前後で、0.3Hz(上方パネル)および3.0Hz(下方パネル)の周波数で反復試験パルスが適用された。パルス列はこのステップ波形の反復:脱分極、+60mV、250ms;再分極:−50mV、70ms;続いて−80mVの保持電位への戻しにより生成した。ピーク電流振幅は、+60mVステップの開始に測定された。ピーク電流は、対照およびフェブキソスタット溶液におけるこの第2パルス列の振幅に正規化され、手順の開始前の定常状態薬物効果が周波数依存性効果とオーバーラップしないようにした。正規化された電流は、時間に対してプロットされた。データは3個の細胞の平均である。
【図11】−50mVで測定されたフェブキソスタットアゴニスト効果の使用依存性を示す。1μMフェブキソスタット平衡の前後で、0.3Hz(上方パネル)および3.0Hz(下方パネル)の周波数で反復試験パルスが適用された。パルス列はこのステップ波形の反復:脱分極、+60mV、250ms;再分極:−50mV、70ms;続いて−80mVの保持電位への戻りにより生成された。ピークテール電流振幅は、−50mVで測定され、続いて+60mVでチャネルの活性化および不活性化が行われた。ピークテール電流は、対照およびフェブキソスタット溶液における第1パルス列振幅に正規化され、手順の開始前の定常状態薬物効果が周波数依存性効果とオーバーラップしないようにした。正規化された電流は、時間に対してプロットされた。データは3個の細胞の平均である。
【図12】活性化および定常状態I−V関係の電圧依存性に対するフェブキソスタットの効果を示す。対照中、および1μMフェブキソスタットでの平衡化後の4秒駆動電圧ステップの終わりに3個の細胞で測定された電流の値(平均±標準誤差)が、各電圧ステップに対してプロットされる。データは、各細胞に対する対照中での最大値に正規化された。
【図13】定常状態I−V電流記録に対するフェブキソスタットの効果を示す。各パネルは、対照(上方パネル)および1μMのフェブキソスタット(下方パネル)の電流の下に図解された電圧プロトコルによって発生したCHO/hERG細胞からの16個の重畳された電流記録を示す。
【図14】対照およびフェブキソスタット処置細胞における定常状態G−V関係を示す。正規化されたコンダクタンスは、定常的なI−V関係プロトコルの−50mV再分極電圧ステップの過程で3個のCHO/hERG細胞におけるピークテール電流振幅の値(平均±標準誤差)から測定された。対照中および1μMフェブキソスタットでの平衡後の測定は、先の可変電圧ステップの間の各電圧に対してプロットされる。対照およびフェブキソスタットのデータは、ボルツマン(Boltzmann)方式に適合させた。正規化電流=1/(1+e−(V−V1/2)Kv)(式中、Vは、−50mV再分極ステップに先立つ定常状態I−V関係プロトコルの4秒駆動電圧ステップの電圧であり、V1/2は、半分の最大コンダクタンスが発生する電位であり、およびKvは曲線の勾配を設定する指数勾配係数である)。対照およびフェブキソスタットにおけるV1/2に対する値は、それぞれ0.9および−2.1mVであった。対照およびフェブキソスタットにおけるKvに対する値は、それぞれ9.9および9.8mVであった。
【図15】対照およびフェブキソスタット処置細胞における完全に活性化されたI−V関係を示す。対照中および1μMフェブキソスタットでの平衡後に3個の細胞中で測定された正規化ピーク電流値(平均±標準誤差)は、各電圧ステップに対してプロットされる。ピーク電流測定は、電圧プロトコルの第2の5秒持続可変電圧ステップの間に行われた。データは、各細胞の対照での最大値に正規化された。
【図16】完全に活性化されたI−Vの電流記録に対するフェブキソスタットの効果を示す。各パネルは、対照(上方パネル)および1μMのフェブキソスタット(下方パネル)の電流の下に図解された電圧プロトコルによって発生したCHO/hERG細胞からの15個の重畳された電流記録を示す。
【図17】不活性化の電圧依存性に対するフェブキソスタットの効果を示す。対照および1μMのフェブキソスタットで平衡化後の3個のCHO/hERG細胞で測定された正規化チャネル利用度値(平均±標準誤差)は、各電圧ステップに対してプロットされる。ピーク電流測定は、電圧プロトコルの第2の1秒間持続可変電圧ステップの過程で行われた。データは、各細胞の対照に対して最大値に正規化された。データは次式に適合させた。チャネル利用度=1/(1+e(V−V1/2)/Kv))(式中、Vは、プロトコルにおける可変電圧ステップの電圧であり、V1/2は、半分の最大チャネル利用度の電圧であり、およびKvは曲線の勾配を設定する指数勾配係数である)。対照およびフェブキソスタットにおけるV1/2に対する値は、それぞれ−68および−67mVであった。対照およびフェブキソスタットにおけるKvに対する値は、e倍の変化当たりそれぞれ−28および−30mVであった。活性化されたチャネルの一部分は「1−チャネル利用度」である。
【図18】代替I−V関係に対するフェブキソスタットの効果を示す。各パネルは、対照(上方パネル)および1μMのフェブキソスタット(下方パネル)の電流の下に図解された電圧プロトコルによって発生した、CHO/hERG細胞からの17個の重畳された電流記録を示す。
【図19】瞬間的I−V関係に対するフェブキソスタットの効果を示す。対照および1μMのフェブキソスタットで平衡化後における、代替I−V関係電圧プロトコルでの1秒可変電圧ステップの初めに3個の細胞中で測定された電流の値(平均±標準誤差)は、各電圧ステップに対してプロットされる。データは、各細胞の対照中、0mV値に正規化された。
【図20】活動電位に対するフェブキソスタットの効果を示す。フェブキソスタット(10、100および1000nM)の増加する濃度での平衡前(対照)および平衡後の記録が重畳された。フェブキソスタットは、活動電位パラメータのいずれに対しても有意の変化を引き起こさなかった。温度は37±1℃に維持され、BCLは2秒にセットされた。
【図21】活動電位に対する50μMソタロールの効果を示す。平衡前(対照)および50μMソタロールで23分間(1)、50μMソタロールで46分間(2)および50μMソタロールで69分間(3)平衡化した後の重畳された記録。温度=37±1℃、BCL=2s。ソタロールは有意にAPDを延長した。
【図22】活動電位に対する20nMのATX IIの効果を示す。平衡前(対照)および20nMのATX IIで23分間(1)、46分間(2)および69分間(3)平衡化した後の重畳された記録。温度=37±1℃、BCL=2秒。ATX IIは有意にAPDを延長した。
【図23】活動電位持続時間に対するフェブキソスタット(TMXとしても知られている)およびソタロールの効果を示す。基線に対するAPD90(BCL=2s)の%変化は、暴露期間に対してプロットされた。フェブキソスタット群(白抜き菱形、n=4)において、10、100および1000nMフェブキソスタット濃度が、暴露期間1、2および3に累積的にそれぞれ適用された。ソタロール群(塗りつぶした正方形、n=4)では、50μMソタロールが、暴露期間1、2および3の過程で連続的に適用された。ソタロールおよびフェブキソスタットの併用群(白抜き三角形、n=4)では、30μMソタロール、50μMソタロール100nMフェブキソスタット、および50μMソタロール+1000nMフェブキソスタットが、暴露期間1、2および3の過程で累積的にそれぞれ適用された。ソタロールのデータは、ソタロール+フェブキソスタット暴露期間1の値によってソタロールのデータを正規化することにより、ソタロール+フェブキソスタットのデータ上に重ねられた。正規化されたソタロールのデータ(×印)は、期間2および3のソタロール+フェブキソスタットのデータを重ね合わせ、100および1000nM濃度のフェブキソスタットがソタロールAPD90延長の時間的経過に効果がなかったことを示している。
【図24】ATX Il誘発APD90延長に対するフェブキソスタットの効果を示す。測定は、2秒(A)、1秒(B)および0.34秒(C)のBCLで行われた。各BCLでのAPD90(平均±標準誤差)の%変化は、20nMのATX II+100nMフェブキソスタット(暴露期間1および2)、20nMのATX II+1000nMフェブキソスタット(暴露期間3)の連続適用の間中に暴露期間に対してプロットされた。菱形、三角形および正方形の記号で図示されたデータは、2、1および0.34秒のBCLでそれぞれ得られた。塗りつぶされた、および白抜きの記号は、ATX II単独(n=4繊維)およびATX II+フェブキソスタット(n=7繊維)で得られたデータを表した。*は、ATX II群およびATX II+フェブキソスタット群(P<0.05、スチューデントt検定)の間の統計的に有意な差を表す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
QT延長を患う患者に、少なくとも1つの医薬的に許容されるヒトのエーテル・ア・ゴー・ゴー(ether−a−go−go)関連遺伝子(「hERG」)チャネルアゴニストの治療上有効量を投与するステップを含み、前記少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストは、QT延長を患っていない患者に投与された場合、QT間隔を短縮しない、QT延長を患う患者のQT間隔を短縮する方法。
【請求項2】
患者へのhERGチャネルアゴニストの投与が、前記患者のhERGチャネルの電流を増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストによってもたらされるhERGチャネルにおける電流の増加が電圧依存性である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストが、陽性膜貫通電位でのhERGチャネルの電流を増加させる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
陽性膜貫通電位が、約+0.1mVから約+50mVの間である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
陽性膜貫通電位が、約+5mVから約+30mVの間である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
陽性膜貫通電位が、約+10mVから約+20mVの間である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が先天性QT延長症候群に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が後天性QT延長症候群に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記患者が心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
hERGチャネルアゴニストが、次式
【化1】
{式中、R1は
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
式中、R2は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
式中、R3は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
式中、R5は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
式中、R6は、
【化2】
であり、
R7は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基であり;および
R8は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基である。}を有する少なくとも1つの化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
hERGチャネルアゴニストが、2−[3−シアノ−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチルチアゾール−5−カルボン酸、2−[3−シアノ−4−(3−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[3−シアノ−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−(3−シアノ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[4−(2−カルボキシプロポキシ)−3−シアノフェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸およびこれらの医薬的に許容される塩からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中に罹患している患者に、少なくとも1つの医薬的に許容されるヒトのエーテル・ア・ゴー・ゴー関連遺伝子(「hERG」)チャネルアゴニストの治療上有効量を投与するステップを含み、前記少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストは、QT延長を患っていない患者に投与された場合、QT間隔を短縮しない、心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中を患っている患者を治療する方法。
【請求項14】
患者へのhERGチャネルアゴニストの投与が、前記患者のhERGチャネルの電流を増加させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストによってもたらされるhERGチャネルにおける電流の増加が電圧依存性である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストが、陽性膜貫通電位でのhERGチャネルの電流を増加させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
陽性膜貫通電位が、約+0.1mVから約+50mVの間である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
陽性膜貫通電位が、約+5mVから約+30mVの間である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
陽性膜貫通電位が、約+10mVから約+20mVの間である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
hERGチャネルアゴニストが、次式
【化3】
{式中、R1は
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
式中、R2は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
式中、R3は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
式中、R5は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
R6は、
【化4】
であり、
R7は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基であり;および
R8は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基である。}を有する少なくとも1つの化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
hERGチャネルアゴニストが、2−[3−シアノ−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチルチアゾール−5−カルボン酸、2−[3−シアノ−4−(3−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[3−シアノ−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−(3−シアノ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[4−(2−カルボキシプロポキシ)−3−シアノフェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸およびこれらの医薬的に許容される塩からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項1】
QT延長を患う患者に、少なくとも1つの医薬的に許容されるヒトのエーテル・ア・ゴー・ゴー(ether−a−go−go)関連遺伝子(「hERG」)チャネルアゴニストの治療上有効量を投与するステップを含み、前記少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストは、QT延長を患っていない患者に投与された場合、QT間隔を短縮しない、QT延長を患う患者のQT間隔を短縮する方法。
【請求項2】
患者へのhERGチャネルアゴニストの投与が、前記患者のhERGチャネルの電流を増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストによってもたらされるhERGチャネルにおける電流の増加が電圧依存性である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストが、陽性膜貫通電位でのhERGチャネルの電流を増加させる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
陽性膜貫通電位が、約+0.1mVから約+50mVの間である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
陽性膜貫通電位が、約+5mVから約+30mVの間である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
陽性膜貫通電位が、約+10mVから約+20mVの間である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記患者が先天性QT延長症候群に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記患者が後天性QT延長症候群に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記患者が心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
hERGチャネルアゴニストが、次式
【化1】
{式中、R1は
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
式中、R2は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
式中、R3は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
式中、R5は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
式中、R6は、
【化2】
であり、
R7は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基であり;および
R8は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基である。}を有する少なくとも1つの化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
hERGチャネルアゴニストが、2−[3−シアノ−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチルチアゾール−5−カルボン酸、2−[3−シアノ−4−(3−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[3−シアノ−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−(3−シアノ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[4−(2−カルボキシプロポキシ)−3−シアノフェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸およびこれらの医薬的に許容される塩からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中に罹患している患者に、少なくとも1つの医薬的に許容されるヒトのエーテル・ア・ゴー・ゴー関連遺伝子(「hERG」)チャネルアゴニストの治療上有効量を投与するステップを含み、前記少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストは、QT延長を患っていない患者に投与された場合、QT間隔を短縮しない、心筋虚血、心不全、糖尿病または脳卒中を患っている患者を治療する方法。
【請求項14】
患者へのhERGチャネルアゴニストの投与が、前記患者のhERGチャネルの電流を増加させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストによってもたらされるhERGチャネルにおける電流の増加が電圧依存性である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つのhERGチャネルアゴニストが、陽性膜貫通電位でのhERGチャネルの電流を増加させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
陽性膜貫通電位が、約+0.1mVから約+50mVの間である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
陽性膜貫通電位が、約+5mVから約+30mVの間である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
陽性膜貫通電位が、約+10mVから約+20mVの間である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
hERGチャネルアゴニストが、次式
【化3】
{式中、R1は
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
式中、R2は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
式中、R3は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
式中、R5は、
水素;
カルボキシル;
ハロゲン原子;
ニトロ基;
シアノ基;
ホルミル基;
非置換もしくは置換C1−C10アルキル;
非置換もしくは置換C1−C10ハロアルキル;
非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基;
非置換もしくは置換ヒドロキシアルコキシ;
OR;
S(O)nR(式中、nは0から5の整数である。);または
NRR’;
[式中、RまたはR’は、各々独立して水素、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基またはアラルキルカルボニル基であり、またはRおよびR’は、これに結合した窒素原子と一緒になって、非置換もしくは置換の5員から7員の複素環を形成し;またはCOR”(式中、R”は、非置換もしくは置換C1−C10アルキル基、アリ−ル基またはアラルキル基、ヒドロキシル基;非置換もしくは置換C1−C10アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アミノ基、非置換もしくは置換C1−C10アルキルアミノ基、非置換もしくは置換アリールアミノ基、非置換もしくは置換アラルキルアミノ基、または5員から7員の環状アミノ基である。)]であり;
R6は、
【化4】
であり、
R7は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基であり;および
R8は、水素、C1−C4アルキル基、カルボキシル基、COO−グルコロニド基またはCOO−スルファート基、C1−C5アルコキシカルボニル基、カルバモイル基またはC1−C4アルキルアミノカルボニル基である。}を有する少なくとも1つの化合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
hERGチャネルアゴニストが、2−[3−シアノ−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチルチアゾール−5−カルボン酸、2−[3−シアノ−4−(3−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[3−シアノ−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−(3−シアノ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−[4−(2−カルボキシプロポキシ)−3−シアノフェニル]−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸およびこれらの医薬的に許容される塩からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2009−516691(P2009−516691A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541420(P2008−541420)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/045042
【国際公開番号】WO2007/062028
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(502137754)タツプ・フアーマシユーテイカル・プロダクツ・インコーポレイテツド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/045042
【国際公開番号】WO2007/062028
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(502137754)タツプ・フアーマシユーテイカル・プロダクツ・インコーポレイテツド (10)
【Fターム(参考)】
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