RAGE融合タンパク質及びその使用方法
第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEポリペプチドを含むRAGE融合タンパク質が開示される。RAGE融合タンパク質は、RAGEリガンド結合部位及びイムノグロブリンCH2ドメインに直接連結されたドメイン間リンカーを含むRAGEポリペプチドドメインを利用することができる。かかる融合タンパク質は、RAGEリガンドに対する特異的な高親和性の結合を提供することができる。RAGE介在性の病理の治療剤としてのRAGE融合タンパク質の使用も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本発明は、2004年8月3日に出願された米国仮特許出願第60/598,555号に基づく米国特許法第119条(e)による優先権の利益を主張する。米国仮特許出願第60/598,555号の開示は、その全体が参考文献として本明細書中に援用されている。
【0002】
本発明は、最終糖化産物受容体(Receptor for Advanced Glycated Endproducts (RAGE))の制御に関する。より特別には、本発明は、RAGEポリペプチドを含む融合タンパク質、かかる融合タンパク質の製造方法、及びRAGEに基づく障害の治療のためのかかるタンパク質の使用を記載する。
【背景技術】
【0003】
アルドース糖類とタンパク質または脂質とのインキュベーションは、タンパク質上のアミノ基の非酵素的糖化及び酸化を起こし、アマドリ付加化合物を生成する。時間の経過とともに、該付加化合物はさらなる転位、脱水素化、及び他のタンパク質との架橋形成を受けて、最終糖化産物(AGE)として知られる複合体を生成する。AGEの生成を促進する因子は、(アミロイドーシスにおけるような)遅延性のタンパク質ターンオーバー、リジン含量の高い巨大分子の蓄積、及び(糖尿病におけるような)高い血糖レベルを含む(Hori et al., J. Biol. Chem. 270: 25752-761 (1995))。AGEは、糖尿病に関連する合併症を含む様々な障害及び正常な老化に結び付けられてきた。
【0004】
AGEは、単球、マクロファージ、微小脈管系の内皮細胞、平滑筋細胞、メサンギウム細胞及びニューロン上の細胞表面受容体への特異的かつ飽和性の結合を示す。最終糖化産物受容体(RAGE)は、分子のイムノグロブリンスーパーファミリーの一員である。RAGEの細胞外(N末端)ドメインは、3つのイムノグロブリン型領域:1つのV(可変)型ドメインに続く2つのC型(定常)ドメイン、を含む(Neeper et al., J. Biol. Chem., 267:14998-15004 (1992); Schmidt et al., Circ. (Suppl.) 96#194(1997))。1つの膜貫通ドメイン及び短い高度に荷電したサイトゾル側末端が細胞外ドメインに続いている。N末端細胞外ドメインは、RAGEのタンパク分解またはV及びCドメインから成る可溶性RAGE(sRAGE)を生成するための分子生物学的アプローチによって単離されることができる。
【0005】
RAGEは、白血球、ニューロン、ミクログリア細胞及び血管内皮細胞を含む複数の細胞タイプ上に発現される(Hori et al., J. Biol. Chem. 270: 25752-761 (1995))。増加したRAGEのレベルは、老化組織(Schleicher et al., J. Clin. Invest., 99(3): 457-468 (1997))、並びに糖尿病性の網膜、脈管系及び腎臓(Schmidt et al., Nature Med., 1:1002-1004(1995))においても見出される。
【0006】
AGEに加えて、他の化合物もRAGEに結合し、そして調節することができる。RAGEは、アミロイドベータ(Aβ)、血清アミロイドA(SAA)、最終糖化産物(AGE)、S100(カルグラニュリンファミリーの前炎症性メンバー)、カルボキシメチルリジン(CML)、アンフォテリン及びCD11b/CD18を含む機能的及び構造的に異なる複数のリガンドに結合する(Bucciarelli et al., Cell Mol. Life Sci., 59:1117-128 (2002);Chavakis et al., Microbes Infect., 6:1219-1225(2004));Kokkola et al., Scand. J. Immunol., 61:1-9(2005);Schmidt et al., J. Clin. Invest., 108:949-955 (2001);Rocken et al., Am. J. Pathol., 162:1213-1220 (2003))。
【0007】
AGE、S100/カルグラニュリン、β−アミロイド、CML(Nε−カルボキシメチルリジン)及びアンフォテリンなどのリガンドのRAGEへの結合が、多様な遺伝子の発現を修飾することが示された。そして、これらの相互作用は、p38活性化、p21ras、MAPキナーゼ、Erk1-2リン酸化、及び炎症性シグナル伝達の転写メディエーター、NF-κBを含むシグナル伝達メカニズムを開始することができる(Yeh et al., Diabetes, 50:1495-1504(2001))。例えば、多くの細胞タイプにおいて、RAGEとそのリガンドの間の相互作用は酸化的ストレスを生じることができ、それによってフリーラジカル感受性転写因子NF-κBの活性化をおこし、そして、サイトカインIL-1β及びTNF-アルファなどのNF-κBにより制御される遺伝子の活性化を引き起こす。さらに、RAGE発現は、NF-κBを介して上方制御され、そして炎症部位または酸化的ストレス部位における発現の増加を示す(Tanaka et al., J. Biol. Chem., 275:25781-25790 (2000))。したがって上行性でかつしばしば有害であるスパイラルは、リガンドの結合によって開始されるポジティブフィードバックループによって刺激される。
【0008】
異なる組織及び器官におけるRAGEの活性化は、多数の病態生理学的結論に導くことができる。RAGEは、急性及び慢性の炎症(Hofmann et al., Cell 97:889-901 (1999))、増加した血管透過性などの遅発性の糖尿病合併症の発生(Wautier et al., J. Clin. Invest., 97: 238-243(1995))、腎症(Teillet et al., J. Am. Soc. Nephrol., 11:1488-1497(2000))、動脈硬化(Vlassara et al., The Finnish Medical Society DUODECIM, Ann. Med. 28:419-426(1996))及び網膜症(Hammes et al., Diabetologia, 42: 603-607(1999))を含む様々な状態に結び付けられてきた。RAGEは、アルツハイマー病(Yan et al., Nature, 382:685-691 (1996))及び腫瘍の浸潤及び転移(Taguchi et al., Narture, 405:354-357 (2000))にも結び付けられてきた。
【0009】
RAGEの広範な発現及び複数の異なる病気のモデルにおけるそのみかけの多面的な役割にもかかわらず、RAGEは正常な発達に必須であるとは見えない。例えば、RAGEノックアウトマウスは明白な異常な表現型を有さず、これは慢性的に刺激された場合にRAGEが病気の病理において役割を演じる一方、RAGEの阻害がいかなる望まれない急性の表現型にも寄与しないように見えることを示唆している(Liliensiek et al., J. Clin. Invest., 113:1641-50(2004))。
【0010】
生理学的リガンドのRAGEへの結合をアンタゴナイズすることは、過剰濃度のAGE及び他のRAGEリガンドにより引き起こされる病態生理学的変化を下方制御することができる。内因性リガンドのRAGEへの結合を減少させることによって、RAGE介在性の障害に関連する症状が減少させられることができる。可溶性RAGE(sRAGE)は、RAGEリガンドのRAGEへの結合を有効にアンタゴナイズすることができる。しかしながら、sRAGEは、インビボで投与された場合、1つ以上の障害のために治療的に有用であるためには短すぎるかもしれない半減期を有するかもしれない。したがって、AGEや他の生理学的リガンドのRAGE受容体への結合をアンタゴナイズする化合物であって、所望の薬物動態プロフィールを有する化合物を開発する必要がある。
【発明の開示】
【0011】
要約
本発明の実施態様は、RAGE融合タンパク質及びかかるタンパク質の使用方法を含む。本発明は、多様な方法で具体化されることができる。本発明の実施態様は、第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を含むことができる。1つの実施態様においては、該融合タンパク質はRAGEリガンド結合部位を含む。該融合タンパク質はさらに、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含むことができる。
【0012】
本発明は、また、RAGE融合タンパク質の作製方法も含む。1つの実施態様においては、該方法は、RAGEポリペプチドを、第二の非RAGEポリペプチドに連結することを含む。1つの実施態様においては、RAGEポリペプチドはRAGEリガンド結合部位を含む。該方法は、RAGEポリペプチドを、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結させることをふくんでよい。
【0013】
他の実施態様においては、本発明は、対象においてRAGE介在性の障害を治療するための方法及び組成物を含んでよい。該方法は、本発明の融合タンパク質を対象に投与することを含んでよい。該組成物は、医薬として許容可能な担体中の本発明のRAGE融合タンパク質を含んでよい。
【0014】
本発明の特別な実施態様に関連する様々な利益がある。1つの実施態様においては、本発明の融合タンパク質は、対象に投与された場合、代謝的に安定である。本発明の融合タンパク質は、RAGEリガンドへの高親和性の結合も示すことができる。ある実施態様においては、本発明の融合タンパク質は、高ナノモル〜低マイクロモル範囲の親和性でRAGEリガンドに結合する。生理学的なRAGEリガンドへの高親和性の結合によって、本発明の融合タンパク質は、内因性のリガンドのRAGEへの結合を阻害するために使用されることができ、それによってRAGE介在性疾患を軽減する手段を提供する。
【0015】
また、本発明の融合タンパク質は、タンパク質または核酸の形態で提供されてもよい。1つの例示的な実施例において、融合タンパク質は全身に投与され、そして脈管系に留まって、RAGEにより部分的に仲介される血管の病気を潜在的に治療する。他の例示的な実施態様においては、融合タンパク質は局所投与されて、RAGEリガンドがその病理に寄与する病気を治療することができる。或いは、融合タンパク質をコードする核酸構築物が、ウイルスまたは裸のDNAなどの好適な担体を用いてある部位に送達されることができ、ここで、一過性の局所的な発現がRAGEリガンドと受容体との相互作用を局所的に阻害することができる。したがって、投与は(融合タンパク質が投与される場合などの)一過性に、または(融合タンパク質が組換えDNAとして投与される場合などの)本質的により持続性のものであることができる。
【0016】
以下の本明細書において記載される本発明のさらなる特徴がある。本発明が以下の請求項、明細書及び図面において示される詳細に限って適用されるものでないことは理解されるべきである。本発明は他の実施態様及び多様な方法で実行または実施されることができる。
【0017】
詳細な説明
この明細書の目的のためには、特記されない限り、明細書中で使用される成分、反応条件などの量を表すすべての数は、「約」という用語によってすべての場合において加減されると理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、以下の明細書に記載された数のパラメータは、本発明によって得ることを追求される所望の性質に依存して変動することのできる近似値である。少なくとも、そして本願の原理の等価物を特許請求の範囲に限定することを試みるのではなく、各数のパラメータは、少なくとも報告された重要な数字に照らして、かつ通常の概数化技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0018】
本発明の広い範囲を示す数の範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例中に記載された数値は可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値もそれらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含む。さらに、本明細書中に開示されるすべての範囲は、その中に包含される任意のそしてすべての部分的範囲を含むと理解されるべきである。例えば、記載された「1〜10」という範囲は、最小値1及び最大値10の間(そしてそれらの値を含めた)すべての部分的範囲、すなわち、1〜6.1などの1以上の最小値で始り、かつ、5.5〜10などの10以下の最大値で終わる、すべての部分的範囲を含むと考えられるべきである。さらに、「本明細書中に組み込まれる」とされるいなかる文献も、その全体が組み込まれていると理解されるべきである。
【0019】
さらに、本明細書において使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、明記され、そして明白に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことは留意される。「または」という用語は、内容が明らかにそうでない場合を除き、「及び/または」という用語と交換可能に使用される。
【0020】
また、「部分」及び「断片」という用語は、ポリペプチド、核酸または他の分子構築物の部分を意味するために、交換可能に使用される。
【0021】
本明細書中で使用される「上流」という用語は、分子がタンパク質である場合には第二の残基のN−末端側、または分子が核酸である場合には第二の残基に対して5’側にある残基を意味する。また、本明細書中で使用される「下流」という用語は、該分子がタンパク質である場合には第二の残基のC-末端側、または該分子が核酸である場合には第二の残基の3’側にある残基を意味する。
【0022】
別に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。熟練者は、本分野の定義及び用語については、特に「Current Protocols in Molecular Biology (Ansubel)」に注意を向ける。アミノ酸残基についての略語は、20の一般的なL-アミノ酸のうちの1つを意味するために本分野において使用される標準的な3文字及び/または1文字のコードである。
【0023】
「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドである。該用語は、一本鎖核酸、二本鎖核酸並びにヌクレオチドまたはヌクレオシドアナログから作られるRNA及びDNAを含むように使用される。
【0024】
「ベクター」という用語は、第二の核酸分子を細胞中に輸送するために使用されることのできる核酸分子を指す。1つの実施態様においては、ベクターは、該ベクター中に挿入されたDNA配列の複製を可能とする。ベクターは、少なくともいくつかの宿主細胞中での該核酸分子の発現を促進するためのプロモーターを含むことができる。ベクターは自発的に(染色体外で)複製することができるかまたは宿主細胞染色体中に組み込まれることができる。1つの実施態様において、該ベクターは、該ベクター中に挿入された核酸配列の少なくとも一部分に由来するタンパク質を産生することのできる発現ベクターを含むことができる。
【0025】
本分野で知られているとおり、核酸配列を相互にハイブリダイズさせるための条件は、低〜高ストリンジェンシーにわたるものとして記述されることができる。一般に、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、ハイブリッドを低塩緩衝液中で高温で洗浄することを意味する。ハイブリダーゼーションは、65℃で0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの本分野で標準的なハイブリダイゼーション溶液を用いて、結合したDNAを濾過し、そして0.25M NaHPO4、3.5%SDS中で洗浄し、続いて、プローブの長さによって室温〜68℃の間の温度で0.1xSSC/0.1%SDSで洗浄することであってよい(例えば、Ausubel, F. M. et al., Short Protocols in Molecular Biology, 4th Ed., Chapter 2, John Wiley & Sons, N.Y.を参照のこと)。例えば、高ストリンジェンシーな洗浄は、14塩基オリゴヌクレオチドプローブのためには、37℃で、または17塩基オリゴヌクレオチドプローブのためには48℃において、または20塩基オリゴヌクレオチドのためには55℃において、または25塩基オリゴヌクレオチドの場合には60℃において、または約250オリゴヌクレオチドの長さのヌクレオチドプローブのためには65℃で6xSSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中で洗浄することを含む。核酸プローブは、[γ−32P]ATPなどの放射性ヌクレオチドで末端標識することによって、または[α−32P]dCTPなどの放射能標識ヌクレオチドをランダムプライマー標識によって取り込むことによって放射性ヌクレオチドで標識されることができる。或いは、プローブは、ビオチン標識またはフルオレセイン標識されたヌクレオチドの取り込みによって標識されることができ、そして該プローブは、ストレプトアビジンまたは抗−フルオレセイン抗体を用いて検出される。
【0026】
本明細書中で使用される「小有機分子」は、少なくとも1つの炭素原子を含む、分子量2,000ダルトン未満の分子である。
【0027】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書中で交換可能に使用され、部分的または完全長のタンパク質のいずれかを含むことのできるタンパク質分子を記述する。
【0028】
「融合タンパク質」という用語は、2つ以上のタンパク質に由来するアミノ酸配列を有するタンパク質またはポリペプチドをさす。融合タンパク質は、別々のタンパク質に由来するアミノ酸部分の間のアミノ酸連結領域も含むことができる。
【0029】
本明細書中で使用される「非−RAGEポリペプチド」は、RAGEまたはその断片に由来しない任意のポリペプチドである。かかる非−RAGEポリペプチドは、イムノグロブリンペプチド、二量体化ポリペプチド、安定化ポリペプチド、両親媒性ペプチド或いはタンパク質の標的化または精製のための「タグ」を提供するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0030】
本明細書中で使用される「イムノグロブリンペプチド」は、イムノグロブリン重鎖またはその部分を含むことができる。1つの実施態様においては、重鎖の一部分は、Fc断片またはその一部分であることができる。本明細書中で使用されるFc断片は、重鎖ヒンジポリペプチド、並びに一量体または二量体形態いずれかのイムノグロブリンの重鎖のCH2及びCH3ドメインを含む。或いは、CH1及びFc断片は、イムノグロブリンポリペプチドとして使用されることができる。重鎖(又はその部分)は、既知の重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、またはIgA(α)の任意の1つに由来することができる。さらに、重鎖(又はその部分)は、既知の重鎖サブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)、またはこれらのアイソタイプまたはサブタイプの生理活性の変化した変異体に由来することができる。変更されることのできる生理活性の例は、ヒンジ領域の修飾などによるいくつかのFc受容体へのアイソタイプの結合能の減少を含む。
【0031】
「同一性」または「同一性パーセント」という用語は、2つのアミノ酸配列間または2つの核酸配列間の配列同一性をさす。同一性パーセントは2つの配列を整列化することによって決定されることができ、そして比較される配列に共通の位置における同一の残基(すなわち、アミノ酸またはヌクレオチド)の数をさす。配列の整列化及び比較は、本分野において標準的なアルゴリズム(例えば、Smith and Waterman, 1981, Adv. Appl. Math,. 2:482; Needleman and Wunsch, 1970、J. Mol. Biol. 48:443; Pearson and Lipman, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:2444を参照のこと)或いはBLASTまたはFASTAとして公的に利用可能なこれらのアルゴリズムのコンピュータ化バージョン(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, WI)を用いて実施されることができる。また、National Institute of Health, Bethesda MDを通して利用可能なENTREZも配列の比較に使用されることができる。1つの実施態様においては、2つの配列の同一性パーセントは、ギャップウェイト(gap weight)1のGCGを用いて、各アミノ酸ギャップが2つの配列間の単一のアミノ酸ミスマッチであるように重み付けされるように決定されることができる。
【0032】
本明細書中で使用される用語「保存残基」は、同じ構造及び/または機能を有する複数のタンパク質の間で同一であるアミノ酸を意味する。保存残基の領域は、タンパク質の構造又は機能にとって重要であることができる。したがって、3次元のタンパク質中に同定された連続的な保存残基は、タンパク質の構造または機能にとって重要であることができる。保存残基または3−D構造の保存領域を発見するためには、異なる種からの同一または類似のタンパク質についての配列或いは同じ種の個体の配列の比較が行われることができる。
【0033】
本明細書中で使用される用語「相同体」は、野生型アミノ酸配列とある程度の相同性を有するポリペプチドを意味する。相同性の比較は、目視によって、またはより通常では容易に利用可能な配列比較プログラムの助けによって実行されることができる。これらの商業的に利用可能なコンピュータプログラムは、2つ以上の配列間の相同性パーセントを算出することができる(例えば、Wilbur, W.J. and Lipman, D. J. 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80: 726-730)。例えば、相同な配列は、別の実施態様では、お互いに少なくとも75%同一、85%同一、90%同一、95%同一、または98%同一であるアミノ酸配列を含むと解釈されることができる。
【0034】
本明細書中で使用されるポリペプチドまたはタンパク質「ドメイン」は、独立した単位を含むポリペプチドまたはタンパク質に沿った領域を含む。ドメインは、構造、配列及び/または生理活性によって定義されることができる。1つの実施態様においては、ポリペプチドドメインは、タンパク質の残りの部分から実質的に独立した方法で折りたたんだタンパク質の領域を含むことができる。ドメインは、PFAM、PRODOM、PROSITE、BLOCKS、PRINTS、SBASE、ISREC、PROFILES、SAMRT、及びPROCLASSなどの、しかしこれらに限られないドメインデータベースを用いて同定されることができる。
【0035】
本明細書中で使用される「イムノグロブリンドメイン」は、イムノグロブリンのドメインに構造的に相同または同一なアミノ酸配列である。イムノグロブリンドメインのアミノ酸配列の長さは、任意の長さであってよい。1つの実施態様においては、イムノグロブリンドメインは、250アミノ酸未満であるかもしれない。例示的な実施例においては、イムノグロブリンドメインは約80〜150アミノ酸の長さであるかもしれない。例えば、IgGの可変領域、並びにCH1、CH2、及びCH3領域はそれぞれイムノグロブリンドメインである。他の実施例においては、IgMの可変、CH1、CH2、CH3及びCH4領域はそれぞれイムノグロブリンドメインである。
【0036】
本明細書中で使用される「RAGEイムノグロブリンドメイン」は、イムノグロブリンのドメインに構造的に相同または同一なRAGEタンパク質からのアミノ酸配列である。例えば、RAGEイムノグロブリンドメインは、RAGEV-ドメイン、RAGE Ig様C2-タイプ1ドメイン(「C1ドメイン」)またはRAGE Ig様C2-タイプ2ドメイン(「C2ドメイン」)を含むことができる。
【0037】
本明細書中で使用される「ドメイン間リンカー」は、2つのドメインを一緒に結合させるポリペプチドを含む。Fcヒンジ領域は、IgG中のドメイン間リンカーの例である。
【0038】
本明細書中で使用される「直接連結された」とは、(核酸配列、ポリペプチド、ポリペプチドドメインなどの)2つの異なる基の間の共有結合であって、連結された該2つの基の間にいかなる介在性原子も有さないものをさす。
【0039】
本明細書中で使用される「リガンド結合ドメイン」は、リガンドの結合に関与するタンパク質のドメインをさす。リガンド結合ドメインという用語は、リガンド結合ドメインの相同体またはその部分の相同体を含む。この点で、リガンド結合ドメインの結合特異性が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、または親水性における類似性に基づいて、リガンド結合部位における慎重なアミノ酸置換が行われることができる。
【0040】
本明細書中で使用される「リガンド結合部位」は、リガンドと直接的に相互作用するタンパク質中の残基またはリガンドと直接的に相互作用する残基のごく近傍にリガンドを位置づけることに関与する残基を含む。リガンド結合部位中の残基の相互作用は、モデルまたは構造中のリガンドへの残基の空間的近接性によって定義されることができる。リガンド結合部位という用語は、リガンド結合部位の相同体またはその部分を含む。この点で、リガンド結合ドメインの結合特異性が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、または親水性における類似性に基づいて、リガンド結合部位における慎重なアミノ酸置換が行われることができる。リガンド結合部位は、タンパク質またはポリペプチドの1つ以上のリガンド結合ドメイン中に存在することができる。
【0041】
本明細書中で使用される用語「相互作用」は、リガンドまたは化合物、あるいはその部分または断片と、着目の第二の分子の部分との間の近接した状態をさす。相互作用は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、または静電的若しくは疎水性相互作用などの結果としての非共有結合であってよく、或いは共有結合であってもよい。
【0042】
本明細書中で使用される「リガンド」は、基質またはそのアナログ若しくは部分を含む、リガンド結合部位と相互作用する、分子または化合物または物質をさす。本明細書中で記載されるとおり、「リガンド」という用語は着目のタンパク質に結合する化合物をさすことができる。リガンドはアゴニスト、アンタゴニストまたは調節剤であることができる。或いは、リガンドは生物学的効果を有さなくてもよい。或いは、リガンドは他のリガンドの結合をブロックし、それによって生物学的効果を阻害してもよい。リガンドは、小分子阻害剤を含んでよいが、これに限られない。これらの小分子は、ペプチド、ペプチド模倣剤、有機化合物などを含んでよい。リガンドはポリペプチド及び/またはタンパク質も含んでよい。
【0043】
本明細書中で使用される「調節剤化合物」は、着目の分子の生理活性を変化させるかまたは変更する分子をさす。調節剤化合物は、着目の分子の活性を増加または減少させ、或いは物理的もしくは化学的特性または機能的もしくは免疫学的性質を変化させることができる。RAGEについては、調節剤化合物は、RAGEまたはその部分の活性を増加または減少させ、或いは特性または機能的若しくは免疫学的性質を変化させることができる。調節剤化合物は、天然及び/または化学的に合成された若しくは人工的なペプチド、修飾されたペプチド(例えば、ホスホペプチド)、抗体、炭化水素、モノサッカライド、オリゴサッカライド、ポリサッカライド、糖脂質、複素環式化合物、ヌクレオシドまたはヌクレオチドまたはその部分、及び有機小分子または無機小分子を含むことができる。調節剤化合物は、内因性の生理学的化合物であってよく、または天然若しくは合成の化合物であってよい。或いは、調節剤化合物は、有機小分子であってよい。「調節剤化合物」という用語は、化学的に修飾されたリガンドまたは化合物も含み、そして異性体及びラセミ体も含む。
【0044】
「アゴニスト」は、受容体に結合して、関連する受容体に特異的な薬理学的応答を引き出す複合体を形成する化合物を含む。
【0045】
「アンタゴニスト」は、アゴニストまたは受容体に結合して、実質的な薬理学的応答を起こさせず、かつアゴニストによって誘発された生物学的応答を阻害することのできる複合体を形成する、化合物を含む。
【0046】
したがって、RAGEアゴニストは、RAGEに結合し、そしてRAGE−介在性細胞プロセスを刺激することができ、そしてRAGEアンタゴニストはRAGE介在性プロセスがRAGEアゴニストによって刺激されることを阻害することができる。例えば、1つの実施態様においては、RAGEアゴニストによって刺激される細胞プロセスはTNF-α遺伝子転写の活性化を含む。
【0047】
「ペプチド模倣剤」という用語は、分子間の相互作用においてペプチドに対する置換体として働く構造体をさす(Morgan et al., 1989, Ann. Reports Med. Chem. 24:243-252)。ペプチド模倣剤は、アミノ酸及び/またはペプチド結合をふくんでもまたは含まなくてもよいが、ペプチドまたは、アゴニストまたはアンタゴニストの構造的または機能的特徴を保持する合成構造体をさす。ペプチド模倣剤はペプトイド、オリゴペプトイド(Simon et al., 1972, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 89:9367);及び本発明のペプチドまたはアゴニストまたはアンタゴニストに相当するすべての可能なアミノ酸配列を表す、設計された長さのペプチドを含むペプチドライブラリーも含む。
【0048】
「治療すること」という用語は、病気又は障害の症状を改善することをさし、そして該障害を治癒させること、該障害の発症を実質的に予防すること、又は対象の状態を改善することを含んでよい。本明細書中で使用される用語「治療」は、障害に起因する1つの症状又はほとんどの症状の軽減を含む、患者が罹っている所与の障害のためのすべてのスペクトルの治療、特定の障害の治癒、又は該障害の発症の予防をさす。
【0049】
本明細書中で使用される用語「EC50」は、測定された生物学的効果の50%を生じる剤の濃度として定義される。例えば、測定可能な生物学的効果を有する治療剤のEC50は、該剤が該生物学的効果の50%を示す値を含んでよい。
【0050】
本明細書中で使用される「IC50」という用語は、測定された効果の50%の阻害を生じる剤の濃度として定義される。例えば、RAGE結合のアンタゴニストのIC50は、該アンタゴニストがRAGEのリガンド結合部位へのリガンドの結合を50%減少させる値を含んでよい。
【0051】
本明細書中で使用される「有効量」は、対象において所望の効果を生じるのに有効な剤の量を意味する。「治療的有効量」という用語は、動物又はヒトの求められている治療的応答を引き出すであろう、薬物又は医薬の量をさす。有効量を含む実際の用量は、投与経路、対象のサイズ又は健康、治療される障害などに依存してよい。
【0052】
本明細書中で使用される「医薬として許容可能な担体」という用語は、例えば、RAGE-介在性の障害又は病気の治療のために投与される治療用組成物のために、ヒト又は動物対象において使用するのに好適な化合物及び組成物をさすことができる。
【0053】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、慣用の無毒性担体、希釈剤、アジュバント、ビヒクルなどを含む単位用量製剤として、哺乳動物宿主に、経口で、非経口で、局所に、吸入スプレーにより、鼻腔内、又は直腸などに投与されることのできる組成物をさす。
【0054】
本明細書中で使用される「非経口」という用語は、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、嚢内注射又は輸注技術を含む。
【0055】
RAGE融合タンパク質
本発明の実施態様は、RAGE融合タンパク質、かかる融合タンパク質の作製方法、及びかかる融合タンパク質の使用方法を含む。本発明は、さまざまな方法で具体化されることができる。
【0056】
例えば、本発明の実施態様は、第二の非RAGEポリペプチドに連結したRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。1つの実施態様において、融合タンパク質は、RAGEリガンド結合部位を含んでよい。ある実施態様においては、該リガンド結合部位は、該融合タンパク質の最もN-末端のドメインを含む。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメイン、又はその部分を含んでよい。ある実施態様においては、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9又はそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10又はそれに対して90%同一の配列を含む。
【0057】
ある実施態様においては、RAGEポリペプチドはイムノグロブリンドメイン又は(その断片などの)イムノグロブリンドメインの部分を含むポリペプチドに連結されることができる。1つの実施態様においては、イムノグロブリンドメインを含むポリペプチドは、少なくとも、ヒトIgGのCH2又はCH3ドメインのうちの少なくとも1つの部分を含む、。
【0058】
RAGEタンパク質又はポリペプチドは、(配列番号1などの)完全長ヒトRAGEタンパク質;又はヒトRAGEの断片を含んでよい。本明細書中で使用されるRAGEポリペプチドの断片は、少なくとも5アミノ酸の長さであり、30アミノ酸超の長さであることができるが、完全なアミノ酸配列よりは短い。別の実施態様においては、RAGEポリペプチドは、ヒトRAGEに対して70%、又は80%、又は85%、又は90%同一の配列又はその断片を含むことができる。例えば、ある実施態様においては、RAGEポリペプチドは、第一の残基としてメチオニンよりはグリシンを含む、ヒトRAGE又はその断片を含んでよい(Neeper et al., (1992)などを参照のこと)。或いは、ヒトRAGEはシグナル配列が除去された完全長RAGE(配列番号2又は配列番号3)(図1A及び1B)又はそのアミノ酸配列の部分を含んでよい。
【0059】
本発明の融合タンパク質は、(配列番号4などの)sRAGE、sRAGEに対して90%同一のポリペプチド、又はsRAGEの断片も含んでよい。本明細書中で使用されるとおり、sRAGEは、膜貫通領域又は細胞質側末端を含まないRAGEである(Park et al., Nature Med., 4:1025-1031 (1998))。例えば、RAGEポリペプチドは、最初の残基としてメチオニンよりもグリシンを有する、ヒトsRAGE又はその断片を含む(Neeper et al., (1992))。或いは、RAGEポリペプチドは、(配列番号5又は配列番号6などの)シグナル配列が除去されたヒトsRAGE(図1C)又はそのアミノ酸配列の部分を含んでよい。
【0060】
他の実施態様においては、RAGEタンパク質は、(配列番号7又は配列番号8;図1Dなどの)RAGE Vドメイン(Neeper et al., (1992);Schmidt et al., (1997))を含んでよい。或いは、RAGE Vドメインに対して90%同一な配列又はその断片が使用されてよい。
【0061】
或いは、RAGEタンパク質は、(配列番号9又は配列番号10、図1Dなどの)RAGE Vドメインの断片を含んでよい。1つの実施態様においては、RAGEタンパク質はリガンド結合部位を含んでよい。ある実施態様においては、リガンド結合部位は配列番号9又はそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10又はそれに対して90%同一の配列、を含んでよい。さらに他の実施態様においては、RAGE断片は合成ペプチドである。
【0062】
したがって、本発明の融合タンパク質中で使用されるRAGEポリペプチドは、完全長RAGEの断片を含んでよい。本分野で知られているとおり、RAGEは、Vドメイン並びにお互いにドメイン間リンカーによって連結されているC1及びC2ドメインである、3つのイムノグロブリン様ポリペプチドドメインを含む。完全長RAGEは、C2ドメインの下流の膜貫通ポリペプチド及び細胞質内末端(C末端)も含み、C2ドメインに連結されている。
【0063】
ある実施態様においては、RAGEポリペプチドはいかなるシグナル配列残基も含まない。RAGEのシグナル配列は、完全長RAGEの残基1〜22又は残基1〜23のいずれかを含んでよい。
【0064】
例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜116(配列番号7)又はそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜116(配列番号8)又はそれに対して90%同一の配列を含んでよい。或いは、RAGEポリペプチドは、RAGEのC1ドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸124-221(配列番号11)又はそれに対して90%同一の配列を含んでよい。他の実施態様においては、RAGEポリペプチドは、RAGEのC2ドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸227-317(配列番号12)又はそれに対して90%同一の配列を含んでよい。或いは、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23−123(配列番号13)又はそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24−123(配列番号14)又はそれに対して90%同一の配列を含んでよい。或いは、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン、C1ドメイン及びドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23−226(配列番号17)又はそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24−226(配列番号18)又はそれに対して90%同一の配列を含んでよい。或いは、RAGEポリペプチドは、(すなわち、V、C1及びC2ドメイン及びドメイン間リンカーをコードする)sRAGEに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23−339(配列番号5)又はそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24−339(配列番号6)又はそれに対して90%同一の配列を含んでよい。或いはこれらの各配列の断片も使用されてよい。
【0065】
融合タンパク質は、RAGEまたはその断片に由来しないいくつかのタイプのペプチドを含んでもよい。融合タンパク質の第二のポリペプチドは、イムノグロブリンに由来するポリペプチドを含んでよい。1つの実施態様においては、該イムノグロブリンポリペプチドは、イムノグロブリン重鎖またはその部分(すなわち、断片)を含んでよい。例えば、重鎖断片は、イムノグロブリンのFc断片に由来するポリペプチドを含んでよく、ここで、該Fc断片は、重鎖ヒンジポリペプチド、並びにイムノグロブリン重鎖のCH2及びCH3ドメインをモノマーとして含む。重鎖(又はその部分)は、既知の重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、またはIgA(α)のいずれに由来してもよい。さらに、重鎖(又はその部分)は、既知の重鎖サブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)、または生理活性を変化させるこれらのアイソタイプまたはサブタイプの突然変異体のいずれに由来してもよい。第二のポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメイン或いは、これらのドメインのいずれかまたは両方の部分を含んでよい。例示的な実施例として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはその部分を含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含んでよい。
【0066】
イムノグロブリン鎖のFc部分は、インビボで前炎症性であることができる。したがって1つの実施態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、イムノグロブリンに由来するドメイン間ヒンジポリペプチドよりもむしろRAGEに由来するドメイン間リンカーを含む。
【0067】
したがって、1つの実施態様においては、融合タンパク質はさらに、イムノグロブリンのCH2ドメイン或いはイムノグロブリンのCH2ドメインの断片または部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含んでよい。1つの実施態様においては、CH2ドメインまたはその断片は、配列番号42を含む。1つの実施態様においては、RAGEポリペプチドは、リガンド結合部位を含んでよい。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメインまたはその部分を含んでよい。ある実施態様においては、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9またはそれに対して90%同一である配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一である配列を含む。
【0068】
本発明の融合タンパク質中で使用されるRAGEポリペプチドは、RAGEイムノグロブリンドメインを含んでよい。さらにまたは或いは、RAGEの該断片は、ドメイン間リンカーを含んでよい。或いは、RAGEポリペプチドは、ドメイン間リンカーの上流(すなわち、よりN-末端に近い)または下流(すなわち、よりC-末端に近い)に連結されたRAGEイムノグロブリンドメインを含んでよい。さらに他の実施態様においては、RAGEポリペプチドは、それぞれがドメイン間リンカーでお互いに連結された2つ(またはそれ以上)のRAGEイムノグロブリンドメインを含んでよい。RAGEポリペプチドはさらに、1つ以上のドメイン間リンカーで相互に連結された複数のRAGEイムノグロブリンドメインを含んでよく、ここで、N-末端RAGEイムノグロブリンドメイン及び/またはC-末端イムノグロブリンドメインに結合した末端ドメイン間リンカーを有する。RAGEイムノグロブリンドメイン及びドメイン間リンカーのさらなる組み合わせは、本発明の範囲内にある。
【0069】
1つの実施態様において、RAGEポリペプチドは、RAGEイムノグロブリンドメインのC末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN末端アミノ酸に連結されており、かつRAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメイン又はその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されているように、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを含む。イムノグロブリンのCH2ドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメイン、或いはこれらのドメインのどちらかまたは両方の部分を含んでよい。例示的な実施態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはその部分を含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含んでよい。
【0070】
上記のように、本発明の融合タンパク質は、RAGE由来の単一のまたは複数のドメインを含んでよい。また、RAGEポリペプチドドメインに連結されたドメイン間リンカーを含むRAGEポリペプチドは、完全長RAGEタンパク質の断片を含んでよい。例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜136(配列番号15)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜136(配列番号16)またはそれに対して90%同一の配列を含んでよい。或いは、RAGEポリペプチドは、Vドメイン、C1ドメイン、これら2つのドメインを連結するドメイン間リンカー、及びC1の下流の第二のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜251(配列番号19)またはそれに対して90%同一の配列、或いは、ヒトRAGEのアミノ酸24〜251(配列番号20)またはそれに対して90%同一の配列を含んでよい。
【0071】
例えば、1つの実施態様においては、融合タンパク質はRAGEタンパク質に由来する2つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチドに由来する2つのイムノグロブリンドメインを含んでよい。融合タンパク質は、第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端に連結され、第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第二のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、そしてRAGE第二ドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第一のRAGEドメイン間リンカーに連結された第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第二のRAGEドメイン間リンカーを含んでよい。1つの実施態様において、4つのドメインのRAGE融合タンパク質は、配列番号32を含んでよい。別の実施態様においては、4つのドメインのRAGE融合タンパク質は、配列番号33または配列番号34を含む。
【0072】
或いは、3つのドメインの融合タンパク質は、RAGEに由来する1つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチドに由来する2つのイムノグロブリンドメインを含んでよい。例えば、融合タンパク質は、RAGEドメイン間リンカーを介して、CH2イムノグロブリンドメインまたはCH2イムノグロブリンドメインの部分のN-末端アミノ酸に連結された単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含んでよい。1つの実施態様においては、3つのドメインのRAGE融合タンパク質は、配列番号35を含んでよい。別の実施態様においては、3つのドメインのRAGE融合タンパク質は配列番号36または配列番号37を含んでよい。
【0073】
RAGEドメイン間リンカー断片は、天然にRAGEイムノグロブリンドメインの下流にあり、そしてしたがってそれに連結されているペプチドを配列を含んでよい。例えば、RAGE Vドメインについては、該ドメイン間リンカーは、天然にVドメインよりも下流にあるアミノ酸配列を含んでよい。ある実施態様においては、リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜123に対応する配列番号21を含んでよい。或いは、リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含んでよい。例えば、配列番号21の上流及び下流の(1〜3、1〜5、又は1〜10或いは1〜15アミノ酸などの)数個のアミノ酸を含むドメイン間リンカーが使用されることができる。したがって、1つの実施態様においては、ドメイン間リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜136を含む配列番号23を含む。或いは、例えば、リンカーのいずれかの末端から1、2または3アミノ酸を除去した配列番号21の断片が使用されることができる。別の実施態様においては、リンカーは、配列番号21または配列番号23に対して70%同一、または80%同一、または90%同一な配列を含んでよい。
【0074】
RAGE C1ドメインについては、リンカーは、天然にC1ドメインの下流にあるペプチド配列を含んでよい。ある実施態様においては、リンカーは完全長RAGEのアミノ酸222〜251に対応する配列番号22を含んでよい。或いは、リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含んでよい。例えば、配列番号22の上流または下流の数個の(1〜3、1〜5、又は1〜10、又は1〜15アミノ酸)を含むリンカーが使用されてよい。或いは、例えば、リンカーのいずれかの末端から1〜3、1〜5、または1〜10、または1〜15アミノ酸が除去された、配列番号22の断片が使用されてよい。例えば、1つの実施態様においては、RAGEドメイン間リンカーは、アミノ酸222〜226に対応する配列番号24を含んでよい。或いは、ドメイン間リンカーは、RAGEアミノ酸318〜342に対応する配列番号44を含んでよい。
【0075】
RAGE融合タンパク質の製造方法
本発明は、RAGE融合タンパク質の製造方法も含む。したがって、1つの実施態様においては、本発明は、RAGEリガンド結合部位を含むRAGEポリペプチドを第二の非RAGEポリペプチドに共有結合するステップを含む、RAGE融合タンパク質の製造方法を含む。例えば、連結されたRAGEポリペプチド及び第二の非RAGEポリペプチドは組換えDNA構築物によりコードされてよい。該方法はさらに、DNA構築物を発現ベクター中に組み込むステップを含んでよい。また、該方法は、該発現ベクターを宿主細胞に挿入するステップを含んでよい。
【0076】
例えば、本発明の実施態様は、第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。1つの実施態様においては、融合タンパク質は、RAGEリガンド結合部位を含んでよい。ある実施態様においては、リガンド結合部位は融合タンパク質の最もN-末端のドメインを含む。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメインまたはその部分を含んでよい。ある実施態様においては、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含む。
【0077】
ある実施態様においては、RAGEポリペプチドは、イムノグロブリンドメインまたは(その断片などの)イムノグロブリンドメインの部分に連結されることができる。1つの実施態様においては、イムノグロブリンドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgGのCH2またはCH3ドメインのうちの少なくとも1つの部分を含む。
【0078】
融合タンパク質は、組換えDNA技術によって設計されることができる。例えば、1つの実施態様においては、本発明は、第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEポリペプチドをコードする単離された核酸配列を含んでよい。ある実施態様においては、RAGEポリペプチドは、RAGEリガンド結合部位を含んでよい。
【0079】
RAGEタンパク質またはポリペプチドは、(配列番号1などの)完全長ヒトRAGE、またはヒトRAGEの断片を含んでよい。ある実施態様においては、RAGEポリペプチドは、いかなるシグナル配列残基も含まない。RAGEのシグナル配列は、完全長RAGE(配列番号1)の残基1〜22または残基1〜23を含んでよい。別の実施態様においては、RAGEポリペプチドは、ヒトRAGEに対して70%、80%、または90%同一の配列またはその断片を含んでよい。例えば、1つの実施態様において、RAGEポリペプチドは、メチオニンよりもグリシンを第一の残基として含む、ヒトRAGEまたはその断片を含んでよい(例えば、Neeper et al., (1992)を参照のこと)。或いは、ヒトRAGEは、シグナル配列が除去された完全長RAGE(配列番号2または配列番号3)(図1A及び1B)またはそのアミノ酸配列の部分を含んでよい。本発明の融合タンパク質はまた、sRAGE(例えば、配列番号4)、sRAGEに対して90%同一のポリペプチド、またはsRAGEの断片を含んでよい。例えば、RAGEポリペプチドは、ヒトsRAGEまたはその断片であって、メチオニンよりもグリシンを第一の残基として含むものを含んでよい(例えば、Neeper et al., (1992)を参照のこと)。或いは、ヒトRAGEは、シグナル配列が除去されたsRAGE(例えば、配列番号5または配列番号6)(図1C)またはそのアミノ酸配列の部分を含んでよい。他の実施態様においては、RAGEタンパク質はVドメインを含んでよい(例えば、配列番号7または配列番号8;図1D)。或いは、Vドメインに対して90%同一の配列またはその断片が使用されてよい。或いは、RAGEタンパク質はVドメインの部分を含むRAGEの断片(例えば、配列番号9または配列番号10、図1D)を含んでよい。ある実施態様においては、リガンド結合部位は、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含んでよい。さらに他の実施態様においては、RAGE断片は合成ペプチドである。
【0080】
ある実施態様においては、核酸配列は、ヒトRAGEのアミノ酸1〜118をコードする配列番号25またはその断片を含む。例えば、配列番号25のヌクレオチド1〜348を含む配列は、ヒトRAGEのアミノ酸1〜116をコードするために使用されることができる。或いは、該核酸は、ヒトRAGEのアミノ酸1〜123をコードするために配列番号26を含むことができる。或いは、該核酸は、ヒトRAGEのアミノ酸1〜136をコードするために配列番号27を含むことができる。或いは、該核酸は、ヒトRAGEのアミノ酸1〜230をコードするために配列番号28を含むことができる。或いは、該核酸は、ヒトRAGEのアミノ酸1〜251をコードするために配列番号29を含むことができる。或いは、これらの核酸配列の断片は、RAGEポリペプチド断片をコードするために使用されることができる。
【0081】
融合タンパク質は、RAGEまたはその断片に由来しないいくつかのタイプのペプチドを含んでよい。融合タンパク質の第二のポリペプチドは、イムノグロブリンに由来するポリペプチドを含んでよい。重鎖(又はその部分)は、知られた重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、またはIgA(α)のうちのいずれの1つに由来してもよい。さらに、重鎖(又はその部分)は、知られた重鎖サブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)、或いは生理活性を変更するこれらのアイソタイプまたはサブタイプの突然変異体に由来してもよい。第二のポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはこれらのドメインのいずれか若しくは両方の部分を含んでもよい。例示的な実施態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはその部分を含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含んでよい。イムノグロブリンペプチドは、配列番号39または配列番号41の核酸配列によってコードされることができる。
【0082】
イムノグロブリン鎖のFc部分はインビボにおいて前炎症性であることができる。したがって、本発明のRAGE融合タンパク質は、イムノグロブリン由来のドメイン間ヒンジポリペプチドよりも、RAGE由来のドメイン間リンカーを含んでよい。例えば、1つの実施態様においては、融合タンパク質は組換えDNA構築物によってコードされることができる。また、該方法は、発現ベクター中に該DNA構築物を組み込むステップを含んでよい。また、該方法は、該発現ベクターを宿主細胞中にトランスフェクトすることを含んでよい。
【0083】
したがって、1つの実施態様においては、本発明は、RAGEポリペプチドをイムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに共有結合させるステップを含む、RAGE融合タンパク質の製造方法を含む。1つの実施態様において、融合タンパク質はRAGEリガンド結合部位を含んでよい。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメインまたはその部分を含んでよい。ある実施態様において、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含む。
【0084】
例えば、1つの実施態様において、本発明は、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはその断片を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドをコードする核酸を含む。1つの実施態様において、CH2ドメインまたはその断片は、配列番号42を含む。第二のポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを含んでよい。例示的な実施態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含んでよい。イムノグロブリンペプチドは、配列番号39または配列番号41の核酸配列によってコードされることができる。
【0085】
1つの実施態様においては、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、そしてRAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、RAGEポリペプチドは、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを含んでよい。イムノグロブリンのCH2ドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはこれらのドメインのいずれかまたは両方の部分を含むポリペプチドを含んでよい。例示的な実施態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはその部分を含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含んでよい。
【0086】
本発明の融合タンパク質は、RAGEからの単一または複数のドメインを含んでよい。また、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたドメイン間リンカーを含むRAGEポリペプチドは、完全長RAGEタンパク質の断片を含んでよい。例えば、1つの実施態様においては、融合タンパク質は、RAGEタンパク質由来の2つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチド由来の2つのイムノグロブリンドメインを含んでよい。第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸に連結され、第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸がRAGEの第二のイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、そして、RAGEの第二のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、融合タンパク質は、第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第一のドメイン間リンカーに連結された第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第二のRAGEドメイン間リンカーを含んでよい。例えば、RAGEポリペプチドは、V-ドメイン、C1ドメイン、これら2つのドメインを連結するドメイン間リンカー及びC1の下流の第二のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜251(配列番号19)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜251(配列番号20)またはそれに対して90%同一の配列を含んでよい。1つの実施態様において、配列番号30またはその断片を含む核酸構築物は、4つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードすることができる。
【0087】
或いは、3つのドメインの融合タンパク質は、RAGE由来の1つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチド由来の2つのイムノグロブリンドメインを含んでよい。例えば、融合タンパク質は、RAGEドメイン間リンカーを介してCH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に連結された単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含んでよい。例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜136(配列番号15)またはそれに対して90%同一の配列或いは、ヒトRAGEのアミノ酸24〜136(配列番号16)またはそれに対して90%同一の配列を含んでよい。1つの実施態様において、配列番号31またはその断片を含む核酸構築物は、3つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードすることができる。
【0088】
RAGEドメイン間リンカー断片は、天然にRAGEイムノグロブリンドメインの下流にあり、そしてしたがってそれに連結されたペプチド配列を含んでよい。例えば、RAGE Vドメインについては、ドメイン間リンカーは天然にVドメインの下流にあるアミノ酸配列を含んでよい。ある実施態様においては、リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜123に対応する配列番号21を含んでよい。或いは、該リンカーは天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含んでよい。例えば、配列番号21の上流及び下流にある数個のアミノ酸(例えば、1〜3、1〜5、又は1〜10又は1〜15アミノ酸)を含むドメイン間リンカーが使用されることができる。したがって、1つの実施態様においては、ドメイン間リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜136を含む配列番号23を含む。或いは、例えば、リンカーのいずれかの末端から1、2、または3個のアミノ酸を除去した配列番号21の断片が使用されることができる。別の実施態様においては、リンカーは、配列番号21または配列番号23に対して70%同一、または80%同一、または90%同一の配列を含むことができる。
【0089】
RAGE C1ドメインについては、リンカーは、天然にC1ドメインの下流にあるペプチド配列を含んでよい。ある実施態様においては、リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸222〜251に対応する、配列番号22を含んでよい。或いは、リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含んでよい。例えば、配列番号22の上流及び下流の数個のアミノ酸(1〜3、1〜5、又は1〜10、又は1〜15アミノ酸)を含むリンカーが使用されることができる。或いは、リンカーのいずれかの末端から1〜3、1〜5または1〜10、または1〜15のアミノ酸が除去された、配列番号22の断片が使用されることができる。例えば、1つの実施態様においては、RAGEドメイン間リンカーは、アミノ酸222〜226に対応する、配列番号24を含むことができる。或いは、ドメイン間リンカーはRAGEアミノ酸318〜342に対応する、配列番号44を含むことができる。
【0090】
該方法はさらに、DNA構築物を発現ベクター中に取り込むステップを含んでよい。したがって、ある実施態様においては、本発明は、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする発現ベクターを含む。ある実施態様においては、RAGEポリペプチドは、本明細書中に記載されたもののような、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、そしてRAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその部分を含むポリペプチドのN-末端に直接連結されるように、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを有する構築物を含む。例えば、細胞をトランスフェクトするために使用される発現ベクターは、配列番号30またはその断片、或いは配列番号31またはその断片の核酸配列を含んでよい。
【0091】
該方法はさらに、本発明の発現ベクターで細胞をトランスフェクトするステップを含んでよい。したがって、ある実施態様においては、本発明は、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を細胞が発現するように、本発明のRAGE融合タンパク質を発現する発現ベクターでトランスフェクトされた細胞を含む。ある実施態様において、RAGEポリペプチドは、本明細書中に記載されたもののような、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、そしてRAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを有する構築物を含む。例えば、発現ベクターは、配列番号30またはその断片、或いは配列番号31またはその断片の核酸配列を含んでよい。
【0092】
例えば、RAGE-IgG Fc融合タンパク質を発現するために、ヒトRAGEの異なる長さの5’cDNA配列とヒトIgG1 Fc(γ1)の3’cDNA配列を融合させることによって、プラスミドが構築されることができる。発現カセット配列は、標準的な組換え技術を用いて、pcDNA3.1発現ベクター(Invitrogen, CA)などの発現ベクター中に挿入されることができる。
【0093】
また、該方法は、発現ベクターを宿主細胞中にトランスフェクトすることを含んでよい。1つの実施態様においては、組換え体は、チャイニーズハムスター卵母細胞中にトランスフェクトされ、そして発現最適化されることができる。別の実施態様においては、細胞は0.1〜20グラム/リッター、または0.5〜10グラム/リッター、または約1〜2グラム/リッターを産生することができる。
【0094】
本分野で知られているように、かかる核酸構築物は、例えば、着目の突然変異を含むプライマーで核酸テンプレートをPCR増幅することによって、突然変異によって修飾されることができる。こうして、RAGEリガンドに対する多様な親和性を含むポリペプチドが設計されることができる。1つの実施態様においては、突然変異配列は、出発DNAに対して90%以上の同一であることができる。したがって、変異体は、ストリンジェントな条件下(すなわち、1モルの塩中、DNA二量体の融解温度(TM)よりも約20〜27℃低いことに等価である)でハイブリダイズする核酸配列を含むことができる。
【0095】
コード配列は、発現ベクターを適切な宿主中にトランスフェクトすることによって発現されることができる。例えば、組換えベクターは、チャイニーズハムスター卵母(CHO)細胞中に安定にトランスフェクトされることができ、細胞は選択されそしてクローン化された融合タンパク質を発現する。ある実施態様においては、組換え構築体を発現する細胞は、抗生物質G418を適用することによって、プラスミドにコードされたネオマイシン耐性について選択される。個々のクローンが選択され、そして、細胞上清のウエスタンブロット分析によって検出された高レベルの組換えタンパク質を発現するクローンが増殖され、そしてProtein Aカラムを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって遺伝子産物が精製されることができる。
【0096】
本発明の融合タンパク質をコードする組換え核酸の見本としての実施例を図2〜5に示す。例えば、上記のように、組換えDNA構築物によって産生された融合タンパク質は、第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEポリペプチドを含んでよい。融合タンパク質は、RAGEタンパク質に由来する2つのドメイン及びイムノグロブリンに由来する2つのドメインを含むことができる。融合タンパク質TTP-4000(TT4)をコードする、このタイプの構造を有する例示的な核酸構築物を図2(配列番号30)に示す。図2に示すように、(太字で強調された)コード配列1〜753は、RAGE N-末端タンパク質配列をコードするが、754〜1386の配列はIgG Fcタンパク質配列をコードする。
【0097】
配列番号30またはそれに対して90%同一の配列に由来する場合、融合タンパク質は配列番号32の4つのドメインのアミノ酸配列またはシグナル配列が除去された該ポリペプチド(例えば、配列番号33または配列番号34)(図4)を含むことができる。図4においては、RAGEアミノ酸配列は太字で強調されている。イムノグロブリン配列は、IgGのCH2及びCH3イムノグロブリンドメインである。図6Bに示すように、完全長TTP-4000RAGE融合タンパク質の最初の251アミノ酸は、RAGEポリペプチド配列として、アミノ酸1〜22/23を含むシグナル配列、アミノ酸23/24〜116を含む(リガンド結合部位を含む)Vイムノグロブリンドメイン、アミノ酸117〜123を含むドメイン間リンカー、アミノ酸124−221を含む第二のイムノグロブリンドメイン(C1)、及びアミノ酸222〜251を含む下流のドメイン間リンカーを、RAGEポリペプチド配列として含む。
【0098】
ある実施態様において、融合タンパク質は第二のRAGEイムノグロブリンドメインを必ずしも含まなくてよい。例えば、融合タンパク質はRAGE由来の1つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチド由来の2つのイムノグロブリンドメインを含んでよい。このタイプの融合タンパク質をコードする核酸構築物の例を図3(配列番号31)に示す。図3に示すように、(太字で強調された)ヌクレオチド1〜408からのコード配列はRAGE N-末端タンパク質配列をコードするが、409〜1041からの配列はIgG1 Fc(γ1)タンパク質配列をコードする。
【0099】
配列番号31又はそれに対して90%同一の配列に由来する場合、融合タンパク質は配列番号35の3つのドメインのアミノ酸配列または(配列番号36または配列番号37などの)シグナル配列が除去されたポリペプチド(図5)を含むことができる。図5においては、RAGEアミノ酸配列は太字で強調されている。図6Bに示すように、完全長TTP-3000RAGE融合タンパク質の最初の136アミノ酸は、アミノ酸1〜22/23を含むシグナル配列、アミノ酸23/24〜116を含む(リガンド結合部位を含む)Vイムノグロブリンドメイン、及びアミノ酸117〜136を含むドメイン間リンカーをRAGEポリペプチドとして含む。137〜346の配列は、IgGのCH2及びCH3イムノグロブリンドメインを含む。
【0100】
本発明の融合タンパク質は、第二のポリペプチドを含まないRAGEポリペプチドよりも改善されたインビボ安定性を含むことができる。融合タンパク質は、さらに修飾されて安定性、有効性、力価及びバイオアベイラビリティーが改善されることができる。したがって、本発明の融合タンパク質は、翻訳後プロセシングまたは化学的修飾によって修飾されてよい。例えば、融合タンパク質は、L-、D-、または非天然のアミノ酸、α−二置換アミノ酸、またはN-アルキルアミノ酸を含むために合成により調製されてよい。さらに、タンパク質はアセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、ホスファチジルイノシトールなどの脂質の結合、ジスルフィド結合の形成などによって修飾されることができる。融合タンパク質の生物学的安定性を増加させるために、さらにポリエチレングリコールが付加されてもよい。
【0101】
RAGEアンタゴニストのRAGE融合タンパク質への結合
本発明の融合タンパク質は、多数の適用がある。例えば、本発明の融合タンパク質は、RAGEアゴニスト、アンタゴニストまたは調節剤などのRAGEリガンドを同定するための結合アッセイに使用されることができる。
【0102】
例えば、1つの実施態様においては、本発明は以下の:(a)第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を提供し、ここで、該RAGEポリペプチドはリガンド結合部位を含み;(b)着目の化合物とRAGEに対する既知の結合親和性を有するリガンドを上記融合タンパク質と混合し;そして(c)着目の化合物の存在下における、上記知られたRAGEリガンドのRAGE融合タンパク質への結合を測定する、を含むRAGE調節剤の検出方法を提供する。ある実施態様においては、リガンド結合部位は、融合タンパク質の最もN-末端のドメインを含む。
【0103】
RAGE融合タンパク質は、RAGE調節剤の検出のためのキットも提供することができる。例えば、1つの実施態様においては、本発明のキットは、以下の:(a)陽性対照としての、RAGEに対する知られた結合親和性を有する化合物;(b)第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEポリペプチドを含むRAGE融合タンパク質、ここで、該RAGEポリペプチドはRAGEリガンド結合部位を含み;そして(c)使用のための指導書、を含むことができる。ある実施態様においては、該リガンド結合部位は、融合タンパク質の最もN-末端のドメインを含む。
【0104】
RAGEタンパク質またはポリペプチドは、(配列番号1などの)完全長ヒトRAGE、またはヒトRAGEの断片を含むことができる。ある実施態様においては、RAGEポリペプチドはいかなるシグナル配列残基も含まない。RAGEのシグナル配列は、完全長RAGE(配列番号1)の残基1〜22または残基1〜23を含むことができる。別の実施態様においては、RAGEポリペプチドは、ヒトRAGEに対して70%、80%または90%同一の配列、またはその断片を含むことができる。例えば、1つの実施態様においては、RAGEポリペプチドはメチオニンよりもグリシンが第一の残基である、ヒトRAGEまたはその断片を含むことができる(Neeper et al., (1992)を参照のこと)。或いは、ヒトRAGEは(配列番号2または配列番号3などの)(図1A及び1B)シグナル配列が除去された完全長RAGEまたは該アミノ酸配列の部分を含むことができる。本発明の融合タンパク質は、(配列番号4などの)sRAGE、sRAGEに対して90%同一のポリペプチド、またはsRAGEの断片を含むこともできる。例えば、RAGEポリペプチドは、メチオニンよりもグリシンが第一の残基である、ヒトsRAGE、またはその断片を含むことができる(Neeper et al., (1992)を参照のこと)。或いは、ヒトRAGEは(配列番号5または配列番号6などの)(図1C)シグナル配列が除去されたsRAGEまたは該アミノ酸配列の部分を含むことができる。他の実施態様においては、RAGEタンパク質は(配列番号7または配列番号8;図1Dなどの)Vドメインを含むことができる。或いは、Vドメインに90%同一の配列またはその断片も使用されてよい。或いは、RAGEタンパク質は、(配列番号9または配列番号10;図1Dなどの)Vドメインの部分を含むRAGE断片を含むことができる。ある実施態様においては、リガンド結合部位は、配列番号9、またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。さらなる他の実施態様においては、RAGE断片は合成ペプチドである。
【0105】
融合タンパク質は、RAGEまたはその断片に由来しない数種のペプチドを含むことができる。融合タンパク質の第二のポリペプチドは、イムノグロブリンに由来するポリペプチドを含むことができる。重鎖(又はその部分)は、既知の重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、またはIgA(α)のいずれに由来してもよい。さらに、重鎖(又はその部分)は、既知の重鎖サブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)、または生理活性を変更するこれらのアイソタイプまたはサブタイプの突然変異体のいずれに由来することもできる。第二のポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはこれらのドメインのいずれかまたは両方の部分を含んでもよい。例示的な実施例として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはそれらの部分を含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含んでよい。イムノグロブリンペプチドは、配列番号39または配列番号41の核酸配列によってコードされることができる。
【0106】
イムノグロブリン鎖のFc部分はインビボにおいて前炎症性であることができる。したがって、本発明のRAGE融合タンパク質は、イムノグロブリン鎖よりもRAGEに由来するFc配列を含むことができる。ある実施態様においては、融合タンパク質は、CH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドに連結されたRAGEイムノグロブリンドメインを含んでよい。1つの実施態様においては、RAGEポリペプチドは、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、かつ、RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に連結されるように、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを含むことができる。イムノグロブリンのCH2ドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはこれらのドメインの両方若しくはいずれかの部分を含むポリペプチドを含むことができる。例示的な実施態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはその部分を含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含むことができる。
【0107】
本発明の融合タンパク質は、RAGE由来の単一または複数のドメインを含むことができる。また、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたドメイン間リンカーを含むRAGEポリペプチドは、完全長RAGEタンパク質の断片を含むことができる。例えば、1つの実施態様においては、融合タンパク質は、RAGEタンパク質に由来する2つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチドに由来する2つのイムノグロブリンドメインを含むことができる。融合タンパク質は、第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸に連結され、第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸がRAGE第二イムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、そして、RAGE第二ドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第一のドメイン間リンカーに連結された第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第二のRAGEドメイン間リンカーを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドはV-ドメイン、C1ドメイン、これらの2つのドメインを連結するドメイン間リンカー、及びC1の下流の第二のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜251(配列番号19)またはそれに対して90%同一である配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜251(配列番号20)またはそれに対して90%同一である配列を含むことができる。1つの実施態様において、配列番号30またはその断片を含む核酸構築物は、4つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードすることができる。
【0108】
或いは、3つのドメインの融合タンパク質がRAGE由来の1つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチド由来の2つのイムノグロブリンドメインを含むことができる。例えば、融合タンパク質は、RAGEドメイン間リンカーを介してCH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に連結された単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜136(配列番号15)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜136(配列番号16)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。1つの実施態様において、配列番号31またはその断片を含む核酸構築物は、3つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードすることができる。
【0109】
本明細書中に記載のとおり、RAGEドメイン間リンカー断片は、天然にRAGEイムノグロブリンドメインの下流にあり、そしてしたがってそれに連結したペプチド配列を含むことができる。例えば、RAGE Vドメインについては、ドメイン間リンカーは天然にVドメインの下流にあるペプチド配列を含むことができる。ある実施態様においては、該リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜123に対応する配列番号21を含むことができる。或いは、該リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含むことができる。例えば、配列番号21の上流及び下流の数個のアミノ酸(1〜3、1〜5、又は1〜10又は1〜15など)を含むドメイン間リンカーが使用されてよい。したがって、1つの実施態様において、該ドメイン間リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜136を含む配列番号23を含む。或いは、例えば、いずれかの末端から1、2または3個のアミノ酸が除去された配列番号21の断片が使用されることができる。別の実施態様においては、リンカーは、配列番号21または配列番号23に対して70%同一、または80%同一、または90%同一の配列を含むことができる。
【0110】
RAGE C1ドメインについては、リンカーは、天然にC1ドメインの下流にあるペプチド配列を含むことができる。ある実施態様においては、該リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸222〜251に対応する配列番号22を含むことができる。或いは、該リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含むことができる。例えば、配列番号22の上流及び下流の(1〜3、1〜5、又は1〜10、又は1〜15アミノ酸である)数個のアミノ酸を含むリンカーが使用可能である。或いは、例えば、リンカーのいずれかの末端から例えば、1〜3、1〜5、または1〜10、または1〜15のアミノ酸が除去された、配列番号22に断片が使用可能である。例えば、1つの実施態様においては、RAGEドメイン間リンカーは、アミノ酸222〜226に対応する配列番号24を含むことができる。或いは、ドメイン間リンカーは、RAGEアミノ酸318〜342に対応する配列番号44を含むことができる。
【0111】
例えば、RAGE融合タンパク質は、潜在的なRAGEリガンドを同定するための結合アッセイにおいて使用されることができる。かかる結合アッセイの1つの例示的な実施態様においては、知られたRAGEリガンドは、1ウエルあたり約5マイクログラムの濃度で(Maxisorbプレートなどの)固体基材上にコーティングされることができ、ここで、各ウエルは約100マイクロリッター(μL)の総体積を含む。リガンドを吸着させるために、プレートは4℃で一夜インキュベートされる。或いは、(室温などの)より高温においてより短いインキュベーション時間が使用されてよい。リガンドの基材への吸着を可能とする時間の後、アッセイウエルは吸引され、そして(50mMイミダゾール緩衝液、pH7.2中、1%BSAなどの)ブロッキング緩衝液が、非特異的結合をブロックするために添加されてよい。例えば、ブロッキング緩衝液は、室温で1時間プレートに加えられることができる。そして、プレートは吸引され、及び/または洗浄緩衝液で洗浄されてよい。1つの実施態様において、20mMイミダゾール、150mM NaCl、0.05%Tween-20、5mM CaCl2及び5mM MgCl2を含むpH7.2の緩衝液が洗浄緩衝液として使用されてよい。そして、融合タンパク質は希釈率を増加させながら、アッセイウエルに添加されることができる。そして、RAGE融合タンパク質は、結合が平衡に達することができるように、アッセイウエル中の固定化リガンドとともにインキュベートされる。1つの実施態様において、RAGE融合タンパク質は、固定化リガンドとともに約1時間、37℃でインキュベートされる。別の実施態様において、より低い温度でのより長いインキュベーション時間が使用されることができる。融合タンパク質と固定化リガンドがインキュベートされた後、いかなる未結合融合タンパク質も除去するために、プレートは洗浄されてよい。固定化リガンドに結合した融合タンパク質は様々な方法で検出されることができる。1つの実施態様においては、検出はELISAを採用する。したがって、1つの実施態様においては、抗ヒトIgG1マウスモノクローナル抗体、ビオチン化抗マウスIgGヤギ抗体、及びアビジン結合アルカリホスファターゼを含む免疫検出複合体がアッセイウエル中に固定化された融合タンパク質に添加されることができる。免疫検出複合体は、融合タンパク質と免疫検出複合体間の結合が平衡に達するように、固定化融合タンパク質に結合させられる。例えば、該複合体は、融合タンパク質に室温で1時間結合させられる。その時点で、いかなる未結合複合体もアッセイウエルを洗浄緩衝液で洗浄することによって除去されることができる。結合複合体は、アルカリホスファターゼの基質、パラ−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)を加え、そしてPNPPのパラ−ニトロフェノール(PNP)への変換を405nmの吸収の増加として測定することによって、検出されることができる。
【0112】
ある実施態様において、RAGEリガンドは、ナノモル(nM)またはマイクロモル(μM)の親和性をもってRAGE融合タンパク質に結合する。RAGEリガンドの本発明のRAGE融合タンパク質への結合を例解する実験を図7に示す。初期濃度がそれぞれ1.082mg/mL及び370μg/mLである、TTP-3000(TT3)及びTTP-4000(TT4)溶液を調製した。図7に示すように、様々な希釈率において融合タンパク質TTP-3000及びTTP-4000は固体化されたRAGEリガンドAmyloid-beta(Aベータ)(BiosourceからのAmyloid Beta (1-40))、S100b(S100)、及びアンフォテリン(Ampho)に結合することができ、吸収が増加する。(BSAのみによるコーティングなどの)リガンドの非存在下では、吸収は増加しない。
【0113】
本発明の結合アッセイは、RAGEへのリガンドの結合を定量するために使用可能である。別の実施態様において、RAGEリガンドは、本発明の融合タンパク質に、0.1〜1000ナノモル(nM)、または1〜500nM、または10〜80nMの範囲の結合親和性をもって結合することができる。
【0114】
本発明の融合タンパク質は、RAGEに結合する能力を有する化合物を同定するために使用されることもできる。図8及び9にそれぞれしめすとおり、RAGEリガンドは、TTP-3000(TT3)またはTTP-4000(TT4)融合タンパク質への結合に関して固定化されたアミロイドベータと競合するその能力についてアッセイされることができる。したがって、10μMの最終アッセイ濃度(FAC)のRAGEリガンドは、アミロイド−ベータへのRAGE融合タンパク質の結合を、最初のTTP-4000溶液(図8)またはTTP-3000(図9)の1:3、1:10、1:30及び1:100の濃度において置換することができることがわかる。
【0115】
細胞エフェクターの調節
本発明の融合タンパク質の実施態様は、RAGEによって仲介される生物学的応答を調節するために使用されることができる。例えば、融合タンパク質は、RAGE誘発性の遺伝子発現の増加を調節するために設計されることができる。したがって、ある実施態様においては、本発明の融合タンパク質は生物学的酵素の機能を調節するために使用されることができる。例えば、RAGE及びそのリガンドとの相互作用は、酸化的ストレス及びNF-κBの活性化を生じさせ、そしてNF-κβはIL-1β、TNF-αなどのサイトカインの遺伝子を制御する。さらに、p21ras、MAPキナーゼ、ERK1、及びERK2を含むいくつかの他の制御経路が、AGE及び他のリガンドのRAGEへの結合によって活性化されることが示されている。
【0116】
細胞エフェクターTNF-αの発現を調節するための本発明の融合タンパク質の使用を図10に示す。THP-1骨髄細胞は、10%FBSを補充したRPMI-1640培地中で培養されることができ、S100bによるRAGEの刺激を介してTNF-αを分泌するように誘導される。かかる刺激がRAGE融合タンパク質の存在下で起こる場合、RAGEへのS100bの結合によるTNF-αの誘導は阻害されることができる。したがって、図10に示すように、10μgのTTP-3000(TT3)またはTTP-4000(TT4)RAGE融合タンパク質の添加は、S100bによるTNF-αの誘導を約50%〜75%減少させる。融合タンパク質TTP-4000は、TNF-αのS100bによる誘導をブロックすることにおいて、少なくともsRAGEと同様に有効である(図10)。RAGE配列についてのTTP-4000及びTTP-3000の阻害特異性は、IgGのみがS100b刺激細胞に添加された実験によって示される。IgGとS100bのアッセイへの添加は、S100b単独と同じTNF-αレベルを示す。
【0117】
RAGE融合タンパク質の生理学的特性
sRAGEがRAGE-介在性疾患の調節において治療的利益を有することができる一方、ヒトsRAGEは血漿中のsRAGEの比較的短い半減期に基づく独立型の治療剤としての限界を有するかもしれない。例えば、sRAGE免疫反応性の保持によって評価される場合、げっ歯類のsRAGEが正常及び糖尿病ラットで約20時間である一方、ヒトsRAGEは2時間未満の半減期を有する(Renard et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 290:1458-1466 (1999))。
【0118】
sRAGEに類似の結合特性を有するが、より安定な薬物動態プロフィールを有するRAGE治療剤を作るために、1つ以上のヒトイムノグロブリンドメインに連結されたRAGEリガンド結合部位を含むRAGE融合タンパク質が使用されることができる。本分野で知られている通り、イムノグロブリンドメインはイムノグロブリン重鎖のFc部分を含んでよい。
【0119】
イムノグロブリンFc部分は、融合タンパク質にいくつかの寄与をすることができる。例えば、Fc融合タンパク質は、かかる融合タンパク質の血清半減期をしばしば数時間から数日まで増加させることができる。薬物動態における安定性の増加は一般に、Fc断片のCH2及びCH3領域間のリンカーとFcRn受容体との相互作用の結果である(Wines et al., J. Immunol., 164:5313-5318(2000))。
【0120】
イムノグロブリンFcポリペプチドを含む融合タンパク質が増加した安定性という利益を与えることができるにもかかわらず、イムノグロブリン融合タンパク質は、宿主中に導入された場合、炎症反応を引き出すことができる。炎症反応は、その大部分が、融合タンパク質のイムノグロブリンのFc部分によることができる。前炎症性反応は、標的が(がん細胞、自己免疫疾患を引き起こすリンパ球集団などの)除去される必要のある病気の細胞種上に発現される場合、望ましい機能であるかもしれない。ほとんどの可溶性タンパク質がイムノグロブリンを活性化しないため、標的が可溶性タンパク質である場合、前炎症性反応は中立的な機能であることができる。しかしながら、その破壊が厄介な副作用に導くタイプの細胞上に標的が発現された場合、前炎症性反応はネガティブな機能であるかもしれない。また、炎症カスケードが融合タンパク質が組織標的に結合する部位において構築された場合にも、前炎症性反応はネガティブな機能であることができる。なぜなら、炎症の多くのメディエーターが周囲の組織に対して有害であり、及び/または全身的な影響を及ぼすことができる。
【0121】
イムノグロブリンFc断片上の主要な前炎症性部位は、CH1及びCH2の間のヒンジ領域上にある。このヒンジ領域は、多様な白血球上のFcR1-3と相互作用し、これらの細胞が標的を攻撃する引き金となる(Wines et al., J. Immunol., 164:5313-5318 (2000))。
【0122】
RAGE介在性疾患のための治療剤として、RAGE融合タンパク質は前炎症性反応が起こることを必要としない。したがって、本発明のRAGE融合タンパク質の実施態様は、イムノグロブリンドメインに連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を含むことができ、ここで、イムノグロブリン由来のFcヒンジ領域が除去されてRAGEポリペプチドで置換される。こうして、炎症細胞上でのRAGE融合タンパク質とFc受容体の間の相互作用が最小化されることができる。しかしながら、融合タンパク質の様々なイムノグロブリンドメイン間の適切なスタッキング及び他の3次元構造の相互作用を維持することは重要であるだろう。したがって、本発明の融合タンパク質の実施態様は、生物学的に不活性であるが、構造的に類似した、RAGEのV及びC1ドメインを分離するRAGEドメイン間リンカー、またはRAGEのC1及びC2ドメインを分離するリンカーをイムノグロブリン重鎖の正常なヒンジ領域の代わりに置換することができる。したがって、融合タンパク質のRAGEポリペプチドは、天然にはRAGEイムノグロブリンドメインの下流に見出されてRAGEイムノグロブリンドメイン/リンカー断片を形成する、ドメイン間リンカー配列を含むことができる。こうして、RAGEまたはイムノグロブリンのいずれかの寄与による、イムノグロブリンドメイン間の3次元相互作用が維持されることができる。
【0123】
ある実施態様においては、本発明のRAGE融合タンパク質は、sRAGEに比べて実質的に増加した薬物動態の安定性を含むことができる。例えば、図11は、RAGE融合タンパク質TTP-4000がそのリガンドを飽和したら、その半減期は300時間を超えることができることを示す。これは、ヒト血漿中でわずか数時間であるsRAGEの半減期とは対照的である。
【0124】
したがって、ある実施態様においては、本発明のRAGE融合タンパク質は、許容できない量の炎症を生じさせずにRAGE介在性疾患を治療するための手段として、生理学的リガンドのRAGEへの結合をアンタゴナイズするために使用されることができる。本発明の融合タンパク質は、IgGに比べて、実質的に減少した前炎症性反応を生じることを示す。例えば、図12に示すように、RAGE融合タンパク質TTP-4000は、ヒトIgG刺激によるTNF-α放出が検出される条件下ではTNF-αの細胞からの放出を刺激しない。
【0125】
RAGE融合タンパク質による病気の治療
本発明は、ヒト対象におけるRAGE介在性障害の治療方法も含む。ある実施態様においては、該方法は、第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEリガンド結合部位を含むRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を対象に投与することを含むことができる。1つの実施態様において、融合タンパク質はRAGEリガンド結合部位を含んでよい。ある実施態様において、リガンド結合部位は最もN-末端のドメインを含んでよい。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメイン、またはその部分を含んでよい。ある実施態様において、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9またはそれに対して90%同一である配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一である配列を含む。
【0126】
ある実施態様においては、RAGEポリペプチドは、イムノグロブリンドメインまたは(その断片などの)イムノグロブリンドメインの部分に連結されることができる。1つの実施態様において、イムノグロブリンドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgGのCH2またはCH3ドメインのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分を含む。
【0127】
RAGEタンパク質またはポリペプチドは、(配列番号1などの)完全長ヒトRAGEまたはヒトRAGEの断片を含むことができる。ある実施態様においては、RAGEポリペプチドはいかなるシグナル配列残基も含まない。RAGEのシグナル配列は完全長RAGE(配列番号1)の残基1〜22または残基1〜23のいずれかを含むことができる。別の実施態様においては、RAGEポリペプチドは、ヒトRAGEに対して70%、80%または90%同一の配列あるいはその断片を含むことができる。例えば、1つの実施態様においては、RAGEポリペプチドは、メチオニンよりもグリシンを第一の残基として含む、ヒトRAGEまたはその断片を含むことができる(Neeper et al., (1992)などを参照のこと)。或いは、ヒトRAGEは、シグナル配列が除去された完全長RAGE(配列番号2または配列番号3など)(図1A及び1B)またはそのアミノ酸配列の部分を含むことができる。本発明の融合タンパク質はまた、(配列番号4などの)sRAGE、sRAGEに90%同一のポリペプチド、またはsRAGEの断片も含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、メチオニンよりもグリシンを第一の残基として含む、ヒトsRAGEまたはその断片を含むことができる(例えば、Neeper et al., (1992)を参照のこと)。或いは、ヒトRAGEは、シグナル配列が除去されたsRAGE(例えば、配列番号5または配列番号6)(図1C)またはそのアミノ酸配列の部分を含むことができる。他の実施態様においては、RAGEタンパク質は、Vドメインを含むことができる(配列番号7または配列番号8;図1Dなど)。或いは、Vドメインに対して90%同一の配列またはその断片が使用されてよい。或いは、RAGEタンパク質は、Vドメインの部分(配列番号9または配列番号10;図1D)を含むRAGEの断片を含むことができる。ある実施態様においては、リガンド結合部位は、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。さらに他の実施態様においては、RAGE断片は合成ペプチドである。
【0128】
融合タンパク質は、RAGEまたはその断片に由来しない数種のペプチドを含むことができる。融合タンパク質の第二のポリペプチドは、イムノグロブリン由来のポリペプチドを含むことができる。重鎖(又はその部分)は、知られた重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、またはIgA(α)のいずれか1つに由来することができる。さらに、重鎖(又はその部分)は、知られた重鎖サブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)、或いは生理活性を変化させるこれらのアイソタイプまたはサブタイプの突然変異体のいずれか1つに由来してもよい。第二のポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはこれらのドメインのいずれかまたは両方の部分を含むことができる。例示的な実施態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはその部分を含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含むことができる。イムノグロブリンペプチドは、配列番号39または配列番号41の核酸配列によってコードされることができる。
【0129】
例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜116(配列番号7)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜116(配列番号8)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、RAGEポリペプチドは、RAGEのC1ドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸124〜221(配列番号11)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、他の実施態様においては、RAGEポリペプチドは、RAGEのC2ドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸227〜317(配列番号12)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜123(配列番号13)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜123(配列番号14)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、RAGEポリペプチドは、V-ドメイン、C1ドメイン及びこれらの2つのドメインを連結するドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜226(配列番号17)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜226(配列番号18)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、RAGEポリペプチドは、sRAGE(すなわち、V、C1、及びC2ドメイン及びドメイン間リンカーをコードする)に対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜339(配列番号5)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜339(配列番号6)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、これらの各配列の断片も使用されることができる。
【0130】
イムノグロブリン鎖のFc部分は、インビボで前炎症性であることができる。したがって、1つの実施態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、イムノグロブリン由来のドメイン間ヒンジポリペプチドよりもRAGEに由来するドメイン間リンカーを含む。
【0131】
したがって、1つの実施態様において、融合タンパク質はさらに、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはその断片を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含むことができる。1つの実施態様において、CH2ドメインまたはその断片は配列番号42を含む。
【0132】
1つの実施態様において、RAGEポリペプチドは、RAGEイムノグロブリンドメインのC末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、かつ、RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを含む。イムノグロブリンのCH2ドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを含むことができる。例示的な実施態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含むことができる。
【0133】
本発明の融合タンパク質は、RAGE由来の単一または複数のドメインを含むことができる。また、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたドメイン間リンカーを含むRAGEポリペプチドは、完全長RAGEタンパク質の断片を含むことができる。例えば、1つの実施態様においては、融合タンパク質は、RAGEタンパク質由来の2つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチド由来の2つのイムノグロブリンドメインを含むことができる。融合タンパク質は、第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端に連結され、第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸がRAGEの第二のイムノグロブリンドメインのC-末端に連結され、そして、RAGEの第二のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第一のドメイン間リンカーに連結された第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第二のRAGEドメイン間リンカーを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、V-ドメイン、C1ドメイン、これら2つのドメインを連結するドメイン間リンカー、及びC1の下流の第二のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜251(配列番号19)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜251(配列番号20)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。1つの実施態様において、配列番号30またはその断片を含む核酸構築物は、4つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードすることができる。
【0134】
或いは、3つのドメインの融合タンパク質は、RAGE由来の1つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチド由来の2つのイムノグロブリンドメインを含むことができる。例えば、融合タンパク質は、RAGEドメイン間リンカーを介してCH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に連結された単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのV-ドメイン及び下流のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜136(配列番号15)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜136(配列番号16)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。1つの実施態様において、配列番号31またはその断片を含む核酸構築物は、3つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードすることができる。
【0135】
RAGEドメイン間リンカー断片は、天然にRAGEイムノグロブリンドメインの下流にあり、そしてしたがってそれに連結されたペプチド配列を含むことができる。例えば、RAGE Vドメインについては、ドメイン間リンカーは天然にVドメインの下流にあるアミノ酸配列を含むことができる。ある実施態様において、リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜123に対応する配列番号21を含むことができる。或いは、リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含むことができる。例えば、配列番号21の下流及び上流の(例えば、1〜3、1〜5、又は1〜10、又は1〜15アミノ酸である)数個のアミノ酸を含むドメイン間リンカーが使用されることができる。したがって、1つの実施態様においては、ドメイン間リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜136を含む配列番号23を含む。或いは、例えば、リンカーのいずれかの末端から1、2または3個のアミノ酸が除去された配列番号21の断片が使用されてもよい。別の実施態様においては、リンカーは、配列番号21または配列番号23に対して70%同一、または80%同一または90%同一の配列を含むことができる。
【0136】
RAGE C1ドメインについては、リンカーは天然にはC1ドメインの下流にあるペプチド配列を含むことができる。ある実施態様においては、リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸222〜251に対応する配列番号22を含むことができる。或いは、リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含むことができる。例えば、配列番号22の上流及び下流の(1〜3、1〜5、又は1〜10、又は1〜15アミノ酸などの)数個のアミノ酸を含むリンカーが使用されることができる。或いは、リンカーのいずれかの末端から1〜3、1〜5、又は1〜10、又は1〜15個のアミノ酸が除去された配列番号22の断片が使用されることができる。例えば、1つの実施態様において、RAGEドメイン間リンカーは、アミノ酸222〜226に対応する配列番号24を含むことができる。或いは、ドメイン間リンカーは、RAGEアミノ酸318〜342に対応する配列番号44を含むことができる。
【0137】
ある実施態様において、本発明の融合タンパク質は多様な経路で投与されることができる。本発明のRAGE融合タンパク質の投与は、腹腔内(IP)注射を採用することができる。或いは、RAGE融合タンパク質は、経口で、鼻腔内に、またはエアロゾルとして投与されることができる。他の実施態様においては、投与は静脈内(IV)である。RAGE融合タンパク質はまた、皮下に注射されることもできる。他の実施態様においては、融合タンパク質の投与は動脈内である。他の実施態様においては、投与は舌下である。また、投与は徐放性カプセルを採用することもできる。さらなる実施態様においては、投与は、坐剤などによるような経直腸的であることができる。例えば、自己投与が望ましい場合、皮下投与は慢性の障害を治療するために有用であることができる。
【0138】
治療剤としてRAGEを調節する化合物の用途を立証するために、様々な動物モデルが使用されてきた。これらのモデルの例は以下のようなものである:
a)糖尿病及び正常ラットの両方における動脈損傷後の再狭窄のラットモデルにおいて、RAGEを介して内皮、平滑筋及びマクロファージの活性化を阻害することによって、sRAGEは新生内膜の形成を阻害し(Zhou et al., Circulation 107:2238-2243 (2003));
b)sRAGEまたは抗RAGE抗体を用いる、RAGE/リガンド相互作用の阻害は、全身性のアミロイドーシスのマウスモデルにおいてアミロイドプラーク形成を減少させた(Yan et al., Nat. Med., 6:643-651(2000))。アミロイドプラークの減少に付随して、炎症性サイトカイン、インターロイキン−6(IL-6)及びマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)が減少し、並びに治療された動物におけるNF-κBの活性化が減少し;
c)(RAGEを過剰発現し、かつRAGEをドミナントネガティブに発現する)RAGEトランスジェニックマウスは、ADのマウスモデルにおいてプラーク形成及び認知障害を示し(Arancio et al., EMBO J., 23:4096-4105 (2004));
d)sRAGEによる糖尿病ラットの治療は、血管透過性を減少させ(Bonnardel-Phu et al., Diabetes, 48: 2052-2058 (1999));
e)sRAGEによる治療は、糖尿病性アポリポタンパク質E-ヌルマウスにおける動脈硬化病変を減少させ、そしてdb/dbマウスにおける糖尿病性腎症の機能的及び形態学的指数を減少させ(Hudson et al., Arch. Biochem. Biophys., 419:80-88 (2003));そして
f)sRAGEはコラーゲン誘発性の関節炎のマウスモデル(Hofmann et al., Genes Immunol., 3:123-135 (2002))、実験的アレルギー性脳脊髄塩のマウスモデル(Yan et al., Natl Med. 9:28-293 (2003))、及び炎症性腸疾患のマウスモデル(Hofmann et al., Cell. 97:889-901 (1999))において、炎症の重篤度を軽減した。
【0139】
したがって、ある実施態様においては、本発明の融合タンパク質は、RAGEにより仲介される糖尿病の症状及び/または糖尿病の結果としての合併症を治療するために使用されることができる。別の実施態様においては、糖尿病または糖尿病の後期合併症の症状は、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性の脚の潰瘍、糖尿病の冠血管合併症または糖尿病性ニューロパチーを含むことができる。
【0140】
その発現が糖尿病の病理に関連する分子の受容体としてもともと同定されたRAGE自体は糖尿病の合併症の病理生理学に必須である。インビボにおいて、RAGEとそのリガンドとの相互作用の阻害は、糖尿病の合併症及び炎症の複数のモデルにおいて治療的であることが示された(Hudson et al., Arch Biochem. Biophys., 419:80-88 (2003))。例えば、抗RAGE抗体による2ヶ月の治療は、糖尿病マウスにおいて腎臓機能を正常化し、異常な腎臓の病理組織診断を減少させた(Flyvbjerg et al, Diabetes 53:166-172 (2004))。さらに、RAGEリガンドに結合し、RAGE/リガンド相互作用を阻害する可溶性形態のRAGE(sRAGE)による治療は、糖尿病性アポリポタンパク質E-ヌルマウスにおける動脈硬化病変を減少させ、そしてdb/dbマウスにおける糖尿病性腎症の機能的及び形態学的病理を軽減した(Bucciarelli et al., Circulation 106: 2827-2835 (2002))。
【0141】
また、高血糖症及び全身的または局所的な酸化物ストレスに関連する他の状態の存在下、究極的に糖化最終産物(AGE)を形成する、巨大分子の非酵素的な糖酸化が、腎障害における炎症部位で亢進されることが示された(Dyer et al., J. Clin. Invest., 91:2463-2469 (1993);Reddy et al., Biochem., 34:10872-10878 (1995);Dyer et al., J. Biol. Chem., 266:11654-11660 (1991);Degenhardt et al., Cell Mol. Biol., 44:1139-1145 (1998))。透析に関連するアミロイドーシスの患者において見出されるAGE-β2-ミクログロブリンからなる関節のアミロイド(Miyata et al., J. Clin. Invest. 92:1243-1252 (1993);Miyata et al., J. Clinl Invest., 98:1088-1094 (1996))におけるように局所的に、或いは一般に、糖尿病患者の脈管構造及び組織(Schmidt et al., Nature Med. 1:1002-1004 (1995))によって例示されるように、AGEの脈管構造中での蓄積は発生することができる。糖尿病患者における経時的なAGEの進行性の蓄積は、内因性のクリアランスメカニズムは、AGE蓄積部位において有効に機能することができないことを示唆する。かかる蓄積したAGEは、多くのメカニズムによって細胞の性質を変化させる能力を有する。RAGEが正常な脈管構造及び組織中では低いレベルで発現されるにもかかわらず、受容体のリガンドが蓄積する環境においては、RAGEが上方調節されることが示された(Li et al., J. Biol. Chem. 272:16498-16506 (1997);Li et al., J. Biol. Chem. 273:30870-30878 (1998);Tanaka et al., J.Biol. Chem., 275:25781-25790 (2000)。RAGEの発現は、糖尿病の脈管構造中の内皮、平滑筋細胞及び浸潤性の単核食細胞において増加する。細胞培養における研究も、AGE-RAGE相互作用が血管の恒常性に重要な細胞の性質を変化させることを示している。
【0142】
糖尿病に関連する病理の治療におけるRAGE融合タンパク質の使用を図13に示す。RAGE融合タンパク質TTP-4000が、血管損傷後の平滑筋の増殖と血管内膜の拡張の測定を含む、再狭窄の糖尿病ラットモデルにおいて評価された。図13に示されるように、TTP-4000治療は、糖尿病に関連する再狭窄における内膜/中膜(I/M)比を用量応答性に顕著に減少させることができる(図13A;表1)。また、TTP-4000治療は、再狭窄に関連する血管平滑筋細胞の増殖を用量応答性に顕著に減少させることができる。
【0143】
【表1】
【0144】
他の実施態様においては、本発明の融合タンパク質は、アミロイドーシス及びアルツハイマー病を治療または逆行させるためにも使用されることができる。RAGEは、アミロイドベータ(Aβ)並びにSAA及びアミリンを含む他のアミロイド生成性のタンパク質の受容体である(Yan et al, Nature, 382:685-691 (1996);Yan et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 94:5296-5301 (1997);Yan et al., Nat. Med., 6:643-651 (2000);Sousa et al., Lab Invest., 80:1101-1110 (2000))。また、AGE、S100b及びAβタンパク質を含むRAGEリガンドは、ヒトにおける老人斑の周囲の組織中に見出される(Luth et al., Cereb. Cortex 15:211-220 (2005);Petzold et al., Neurosci. Lett., 336:167-170 (2003);Sasaki et al., Brain Res., 12:256-262 (2001);Yan et al., Restor. Neurol Neurosci., 12:167-173 (1998))。サブユニットの組成(アミロイド−βペプチド、アミリン、血清アミロイドA、プリオン由来のペプチド)に関係なくRAGEがβシート繊維状物質に結合することが示された(Yan et al, Nature, 382:685-691 (1996);Yan et al., Nat. Med. 6:643-651 (2000))。さらに、アミロイドの沈着は、RAGE発現を亢進させることが示された。例えば、アルツハイマー病(AD)患者の脳においては、ニューロン及びグリアにおいてRAGEの発現が増加する(Yan et al., Nature 382:685-691 (1996))。RAGEリガンドの発現と同時に、RAGEはADを有する個人の海馬中の星状細胞およびミクログリア細胞において上方調節される(Lue et al., Exp. Neurol., 171:29-45 (2001))。これらの発見は、RAGEを発現する細胞が老人斑の近傍においてRAGE/RAGEリガンド相互作用を介して活性化されることを示唆する。インビトロにおいても、ミクログリア細胞のAβ介在性の活性化が、RAGEのリガンド結合ドメインに対する抗体でブロックされることができる(Yan et al., Proc. Natl, Acad. Sci., USA, 94:5296-5301 (1997))。RAGEが線維の集合の中心としての役割を果たすことが可能であることも実証された(Deane et al., Nat. Med. 9:907-913 (2003))。
【0145】
sRAGEまたは抗RAGE抗体のいずれかを用いるRAGE/リガンド相互作用のインビボでの阻害も、全身性のアミロイドーシスのマウスモデルにおいてアミロイドプラーク形成を減少させることができる(Yan et al., Nat. Med. 6:643-651 (2000))。ニューロンにおいてSweden変異及びLondon変異(突然変異体hAPP)を有するヒトRAGE及びヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)を過剰発現する、ダブルトランスジェニックマウスは、それらのシングルミュータントhAPPトランスジェニック対応物よりも早く学習障害及び神経病理学的な異常を発生した。対照的に、同じミュータントhAPPバックグラウンドにおいて、ドミナントネガティブな形態のRAGEを発現するニューロンによりAβシグナリング能力が低下したダブルトランスジェニックマウスは、それらのシングルAPPトランスジェニック対応物に比べて、遅い、神経病理学的異常及び学習異常を生じた(Arancio et al., EMBO J., 23:4096-4105(2004))。
【0146】
さらに、RAGE−アミロイド相互作用の阻害は、細胞性RAGE及び細胞ストレスマーカーの発現(並びにNF-κBの活性化)を低下させ、そしてアミロイド沈着を減少させることが示され(Yan et al., Nat Med. 6:643-651 (2000))、(初期段階においても)アミロイドに富む環境、並びにアミロイドの蓄積という両方の心配な細胞の性質におけるRAGE-アミロイド相互作用の役割を示唆している。
【0147】
したがって、本発明のRAGE融合タンパク質は、アミロイドーシスを治療し、そしてアルツハイマー病(AD)に関連するアミロイドプラーク及び認知障害を減少させることにも使用されることができる。上記のように、sRAGEは、ADの動物モデルにおける脳内のアミロイドプラーク形成及び引き続く炎症性マーカーの増加を減少させることが示された。図14A及び14Bは、ADを有し、そしてTTP-4000またはマウスsRAGEで3ヶ月間治療されたマウスは、ビヒクルまたはヒトIgG陰性対照(IgG1)を受容したマウスよりも、少ないアミロイドベータ(Aβ)プラーク及びより低度の認知障害を有した。sRAGEのように、TTP-4000もまた、ADに関連する炎症性サイトカインIL-1及びTNF-αを減少させることができる(データは示さない)。
【0148】
本発明の融合タンパク質は、動脈硬化及び他の冠血管系の障害を治療するためにも使用されることができる。したがって、虚血性心疾患が糖尿病患者において特に高いことが示されている(Robertson, et al., Lab Invest., 18:538-551 (1968);Kannel et al., J. Am. Med. Assoc., 241:2035-2038 (1979);Kannel et al., Diab. Care, 2:120-126 (1979))。さらに、糖尿病患者における動脈硬化が、糖尿病にかかっていない患者よりもより加速され、広範囲に及ぶことを研究が示した(例えば、Waller et al., Am. J. Med., 69:498-506 (1980);Crall et al, Am. J. Med. 64:221-230 (1978);Hamby et al., Chest, 2:251-257 (1976);及びPyorala et al., Diab. Metab. Rev., 3:463-524 (1978)を参照のこと)。糖尿病の状況下での加速された動脈硬化に多くの理由があるにもかかわらず、AGEの減少がプラーク形成を低下させうることが示された。
【0149】
例えば、本発明のRAGE融合タンパク質は、脳卒中を治療することにも使用されることができる。病気に関連した脳卒中の動物モデルにおいて、TTP-4000をsRAGEと比較した場合、TTP-4000は、梗塞体積の顕著な減少を提供することがわかった。このモデルにおいて、マウスの中部頚動脈(middle carotid artery)を結紮し、梗塞を形成するために再かん流した。RAGE融合タンパク質の脳卒中の治療または予防における有効性を評価するために、再かん流の直前にマウスをsRAGEまたはTTP-4000または対照イムノグロブリンで処置した。表2からわかるように、これらの動物において梗塞領域を制限することにおいてTTP-4000がsRAGEよりも有効であったことは、そのより良い血漿中半減期によってTTP-4000がsRAGEよりも有効であり、sRAGEよりも大きな保護を維持することができたことを示唆している。
【0150】
【表2】
【0151】
他の実施態様においては、本発明の融合タンパク質は癌を治療するために使用されることができる。1つの実施態様においては、本発明の融合タンパク質を用いて治療される癌は、RAGEを発現する癌細胞を含む。例えば、本発明のRAGE融合タンパク質で治療されることのできる癌は、いくつかの肺癌、いくつかの神経膠腫、いくつかの乳頭腫などを含む。アンフォテリンは、RAGEと相互作用することがわかっている、高移動度群Iの非ヒストン染色体DNA結合タンパク質である(Rauvala et al., J. Biol. Chem. 262:16625-16635 (1987);Parkikinen et al., J. Biol. Chem. 268:19726-19738 (1993))。アンフォテリンが神経突起の伸長を促進し、並びに(細胞移動性に寄与することでも知られている)線溶系におけるプロテアーゼ複合体の集合のための表面としての役割を果たすことが示されている。さらに、RAGEをブロックすることの局所的な腫瘍成長の阻害効果は、原発腫瘍モデル(C6神経膠腫)、ルイス肺癌転移モデル(Taguchi et al., Nature 405:354-360 (2000))、及びv-Ha-rasトランス遺伝子を発現するマウスにおける自然発生的乳頭腫(Leder et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 87:9178-9182 (1990))において観察されている。
【0152】
さらに他の実施態様においては、本発明の融合タンパク質は、炎症を治療するために使用されることができる。例えば、別の実施態様においては、本発明の融合タンパク質は自己免疫に関連した炎症、炎症性腸疾患に関連した炎症、リューマチ関節炎に関連した炎症、乾癬に関連した炎症、多発性硬化症に関連した炎症、低酸素症に関連した炎症、脳卒中に関連した炎症、心臓発作に関連した炎症、出血性ショックに関連した炎症、敗血症に関連した炎症、器官の移植に関連した炎症、または創傷治癒の障害を治療するために使用される。
【0153】
例えば、血栓溶解療法のあと、顆粒球などの炎症性細胞は虚血組織に浸潤し、そして低酸素症によって死滅させられるよりも多くの細胞を破壊することのできる酸素ラジカルを生成する。抗体または他のタンパク質アンタゴニストによる、好中球が組織に浸潤することができることを担う好中球上の受容体の阻害は、反応を軽減することが示されている。RAGEがこの好中球受容体のリガンドであるため、RAGEの断片を含む融合タンパク質は、おとりとして作用し、そして好中球が再かん流部位に移動することを防ぎ、そしてさらなる組織の破壊を予防する。炎症の予防におけるRAGEの役割は、sRAGEが、おそらくRAGEを介する内皮、平滑筋細胞の増殖及びマクロファージの活性化を阻害することによって、糖尿病ラット及び正常ラットの動脈損傷後の再狭窄のラットモデルにおける新内膜の増殖を阻害することを示す研究によって示されることができる(Zhou et al., Circulation, 107:2238-2243 (2003))。さらに、sRAGEは、遅延型過敏症、実験的自己免疫性脳炎及び炎症性腸疾患を含む炎症のモデルを阻害した(Hofman et al., Cell, 97:889-901 (1999))。
【0154】
また、ある実施態様においては、本発明の融合タンパク質は、自己免疫に基づく障害を治療するために使用されることができる。例えば、本発明の融合タンパク質は、腎障害を治療するために使用されることができる。したがって、本発明の融合タンパク質は、全身性のループス腎炎または炎症性のループス腎炎を治療するために使用されることができる。例えば、S100/カルグラニュリンは、結合ペプチドによって結合された2つのEF-ハンド領域に特徴を有する、密接に関連したカルシウム結合ポリペプチドのファミリーを含むことが示されている(Schafer et al., TIBS, 21:134-140 (1996);Zimmer et al., Brain Res. Bull., 37:417-429 (1995);Rammes et al., J. Biol. Chem., 272:9496-9502 (1997):Lugering et al., Eur. J. Clin. Invest., 25:659-664 (1995))。それらがシグナルペプチドを有さないにもかかわらず、嚢胞性線維症及びリューマチ関節炎におけるように、S100/カルグラニュリンは、特に慢性の免疫/炎症性反応部位において、細胞外空間へのアクセスを得ている。RAGEは、S100/カルグラニュリンファミリーの多くのメンバーの受容体であり、リンパ球及び単核食細胞などの細胞に対するそれらの前炎症性効果を仲介する。また、遅発性過敏症反応、IL-10ヌルマウスにおける大腸炎、コラーゲン誘発性関節炎及び実験的自己免疫性脳炎モデルについての研究も、(おそらく、S-100/カルグラニュリンとの)RAGE-リガンド相互作用が炎症カスケードにおいて近接した役割を果たすことを示唆する。
【0155】
したがって、さまざまな選ばれた実施態様において、本発明は、対象に治療的有効量の本発明の融合タンパク質を投与することによって、対象におけるAGEとRAGEの相互作用を阻害する方法を提供することができる。本発明のRAGE融合タンパク質を用いて治療される対象は、動物であってよい。ある実施態様においては、該対象はヒトである。対象は、糖尿病、腎症、ニューロパチー、網膜症、脚の潰瘍、アミロイドーシスまたは腎障害などの糖尿病の合併症、及び炎症などのAGE関連疾患に罹患していてよい。或いは、対象はアルツハイマー病を有する個人であってよい。別の実施態様においては、対象は癌を有する個人であってよい。さらに他の実施態様においては、対象は全身性のループスエリテマトーデスまたは炎症性ループス腎炎に罹患していてよい。他の病気はRAGEにより仲介され、そして本発明の融合タンパク質を用いて治療されることができる。したがって、本発明のさらなる別な実施態様においては、融合タンパク質は、ヒトまたは動物対象におけるクローン病、関節炎、血管炎、腎症、網膜症、及びニューロパチーの治療のために使用されることができる。
【0156】
治療的有効量は、RAGEと対象中のAGEまたは他の種類の内因性RAGEリガンドとの相互作用を防ぐことができる量を含んでよい。したがって、該量は治療される対象によって変化するであろう。化合物の投与は、毎時間、毎日、毎週、毎月、毎年または1回の事象であってよい。様々な他の実施態様において、融合タンパク質の有効量は、約1ng/kg体重〜約100mg/kg体重、または約10μg/kg体重〜約50mg/kg体重、または約100μg/kg体重〜約10mg/kg体重であることができる。実際の有効量は、本分野で標準的な方法を用いる、用量/応答アッセイによって確立されることができる(Johnson et al., Diabetes. 42:1179, (1993))。したがって、当業者に知られている通り、有効量は、化合物のバイオアベイラビリティー、生物活性、及び生分解性に依存することができる。
【0157】
組成物
本発明は、医薬として許容可能な担体と混合された本発明の融合タンパク質を含む組成物を包含することができる。融合タンパク質は、第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEポリペプチドを含むことができる。1つの実施態様において、融合タンパク質は、RAGEリガンド結合部位を含むことができる。ある実施態様において、リガンド結合部位は融合タンパク質の最もN-末端のドメインを含む。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメイン、またはその部分を含むことができる。ある実施態様において、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含む。
【0158】
ある実施態様において、RAGEポリペプチドは、イムノグロブリンドメインまたは(その断片などの)イムノグロブリンドメインの部分に連結されることができる。1つの実施態様において、イムノグロブリンドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgGのCH2またはCH3のうちの少なくとも1つの少なくとも1部分を含む。
【0159】
RAGEタンパク質またはポリペプチドは、(配列番号1などの)完全長ヒトRAGE、またはヒトRAGEの断片を含むことができる。ある実施態様において、RAGEポリペプチドはいかなるシグナル配列残基も含まない。RAGEのシグナル配列は、完全長RAGE(配列番号1)の残基1〜22または残基1〜23を含むことができる。別の実施態様においては、RAGEポリペプチドはヒトRAGEに対して70%、80%または90%同一の配列またはその断片を含むことができる。例えば、1つの実施態様においては、RAGEポリペプチドは、第一の残基としてメチオニンよりもグリシンを含む、ヒトRAGEまたはその断片を含むことができる(Neeper et al., (1992))。或いは、ヒトRAGEは、(配列番号2または配列番号3などの)(図1A及び1B)シグナル配列が除去された完全長RAGE或いはそのアミノ酸配列の部分を含むことができる。本発明の融合タンパク質は、(配列番号4などの)sRAGE、sRAGEに対して90%同一のポリペプチド、またはsRAGEの断片を含むこともできる。例えば、RAGEポリペプチドは、第一の残基としてメチオニンよりもグリシンを含む、ヒトsRAGE、またはその断片を含むことができる(Neeper et al., (1992))。或いは、ヒトRAGEは、(配列番号5または配列番号6などの)(図1C)シグナル配列が除去されたsRAGEまたはそのアミノ酸配列の一部分を含むことができる。他の実施態様においては、RAGEタンパク質は、(配列番号7または配列番号8;図1Dなどの)Vドメインを含むことができる。或いは、Vドメインに対して90%同一の配列またはその断片が使用されることができる。或いは、RAGEタンパク質は、(配列番号9または配列番号10;図1Dなどの)Vドメインの部分を含むRAGEの断片を含んでもよい。ある実施態様においては、リガンド結合部位は、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含んでよい。さらに他の実施態様においては、RAGE断片は合成ペプチドである。
【0160】
例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜116(配列番号7)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜116(配列番号8)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、RAGEポリペプチドは、RAGEのC1ドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸124〜221(配列番号11)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。他の実施態様においては、RAGEポリペプチドは、RAGEのC2ドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸227〜317(配列番号12)またはそれに対して90%同一の配列含むことができる。或いは、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜123(配列番号13)またはそれに対して90%同一の配列、或いは、ヒトRAGEのアミノ酸24〜123(配列番号14)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、RAGEポリペプチドは、Vドメイン、C1ドメイン及びこれら2つのドメインを連結するドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜226(配列番号17)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜226(配列番号18)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、RAGEポリペプチドは、sRAGE(すなわち、V、C1、及びC2ドメイン及びドメイン間リンカーをコードする)に対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜339(配列番号5)またはそれに対して90%同一の配列、或いヒトRAGEのアミノ酸24〜223(配列番号6)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、これらの配列それぞれの断片が使用されることができる。
【0161】
融合タンパク質は、RAGEまたはその断片に由来しない数種のペプチドを含むことができる。融合タンパク質の第二のポリペプチドは、イムノグロブリンに由来するポリペプチドを含むことができる。重鎖(又はその部分)は、既知の重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、またはIgA(α)のいずれに由来してもよい。さらに、重鎖(又はその部分)は、既知の重鎖サブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)、または生理活性を変更するこれらのアイソタイプまたはサブタイプの突然変異体のいずれに由来することもできる。第二のポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはこれらのドメインのいずれかまたは両方の部分を含んでもよい。例示的な実施例として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはそれらの部分を含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含んでよい。イムノグロブリンペプチドは、配列番号39または配列番号41の核酸配列によってコードされることができる。
【0162】
イムノグロブリン鎖のFc部分はインビボにおいて前炎症性であることができる。したがって、1つの実施態様においては、本発明のRAGE融合タンパク質はイムノグロブリンに由来するドメイン間ヒンジポリペプチドよりもRAGEに由来するドメイン間リンカーを含む。
【0163】
したがって、1つの実施態様においては、融合タンパク質はさらに、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはその断片を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含むことができる。1つの実施態様において、CH2ドメインまたはその断片は配列番号42を含む。
【0164】
1つの実施態様においては、RAGEポリペプチドは、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、かつ、RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを含む。イムノグロブリンのCH2ドメインまたはその部分を含むポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを含むことができる。例示的な実施態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含むことができる。
【0165】
本発明の融合タンパク質は、RAGEの単一または複数のドメインを含むことができる。また、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたドメイン間リンカーを含むRAGEポリペプチドは、完全長RAGEタンパク質の断片も含むことができる。例えば、1つの実施態様において、融合タンパク質は、RAGEタンパク質に由来する2つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチドに由来する2つのイムノグロブリンドメインを含むことができる。融合タンパク質は、第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸に連結され、第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸がRAGEの第二のイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、そしてRAGEの第二のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第二のRAGEドメイン間リンカーに連結された第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第一のドメイン間リンカーを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、V-ドメイン、C1ドメイン、これら2つのドメインを連結するドメイン間リンカー、及びC1の下流の第二のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜251(配列番号19)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜251(配列番号20)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。1つの実施態様において、配列番号30又はその断片を含む核酸構築物は、4つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードすることができる。
【0166】
或いは、3つのドメインの融合タンパク質は、RAGE由来の1つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチド由来の2つのイムノグロブリンドメインを含むことができる。例えば、融合タンパク質は、RAGEドメイン間リンカーを介してCH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドに連結された単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜136(配列番号15)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜136(配列番号16)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。1つの実施態様において、配列番号31またはその断片を含む核酸構築物は、3つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードすることができる。
【0167】
RAGEドメイン間リンカー断片は、天然にRAGEイムノグロブリンドメインの下流にあり、そしてしたがってそれに連結したペプチド配列を含むことができる。例えば、RAGE Vドメインについては、ドメイン間リンカーは天然にVドメインの下流にあるアミノ酸配列を含むことができる。ある実施態様においては、該リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜123に対応する配列番号21を含むことができる。或いは、該リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含むことができる。例えば、配列番号21の上流及び下流の数個のアミノ酸(1〜3、1〜5、又は1〜10又は1〜15アミノ酸など)を含むドメイン間リンカーが使用されてよい。したがって、1つの実施態様において、該ドメイン間リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜136を含む配列番号23を含む。或いは、例えば、リンカーのいずれかの末端から1、2または3個のアミノ酸が除去された配列番号21の断片が使用されることができる。別の実施態様においては、リンカーは、配列番号21または配列番号23に対して70%同一、または80%同一、または90%同一の配列を含むことができる。
【0168】
RAGE C1ドメインについては、リンカーは、天然にC1ドメインの下流にあるペプチド配列を含むことができる。ある実施態様においては、該リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸222〜251に対応する配列番号22を含むことができる。或いは、該リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含むことができる。例えば、配列番号22の上流及び下流の(1〜3、1〜5、又は1〜10、又は1〜15アミノ酸である)数個のアミノ酸を含むリンカーが使用可能である。或いは、リンカーのいずれかの末端から例えば、1〜3、1〜5、または1〜10、または1〜15のアミノ酸が除去された、配列番号22の断片が使用可能である。例えば、1つの実施態様においては、RAGEドメイン間リンカーは、アミノ酸222〜226に対応する配列番号24を含むことができる。或いは、ドメイン間リンカーは、RAGEアミノ酸318〜342に対応する配列番号44を含むことができる。
【0169】
医薬として許容可能な担体は、本分野で知られた標準的な医薬として許容可能な担体のいずれを含むこともできる。担体は、希釈剤を含むことができる。1つの実施態様においては、医薬担体は液体であることができ、そして融合タンパク質または核酸構築物は溶液の形態であることができる。他の実施態様においては、医薬として許容可能な担体は、粉末、凍結乾燥粉末または錠剤の形態の固体であることができる。或いは、医薬担体は、ゲル、坐剤またはクリームであってよい。別の実施態様においては、担体はリポソーム、マイクロカプセル、ポリマーに封入された細胞またはウイルスであってよい。したがって、医薬として許容可能な担体という用語は、水、アルコール、リン酸緩衝生理食塩水、(シュークロース又はマンニトールなどの)糖、油脂または油脂/水エマルジョン若しくはトリグリセライドエマルジョンなどのエマルジョン、多様な種類の湿潤剤、錠剤、被覆錠剤及びカプセルを包含するが、これらに限定されない、任意の標準的な医薬として許容可能な担体を含むことができる。
【0170】
本発明のRAGE融合タンパク質の投与はさまざまな経路を使用することができる。したがって、本発明のRAGE融合タンパク質の投与は、腹腔内(IP)注射を使用することができる。或いは、RAGE融合タンパク質は、経口で、鼻腔内に、またはエアロゾルとして投与されることができる。他の実施態様においては、投与は静脈内(IV)である。RAGE融合タンパク質は、皮下注射されることもできる。他の実施態様においては、融合タンパク質の投与は動脈内である。他の実施態様においては、投与は舌下である。また、投与は徐放性カプセルを使用することもできる。さらに他の実施態様においては、投与は、坐剤などによるような経直腸であることができる。例えば、自己投与が望ましい場合、慢性の障害を治療するために皮下投与が有用であることができる。
【0171】
医薬組成物は、無毒性の非経口的に許容可能な溶媒またはビヒクル中の滅菌注射用溶液の形態であることができる。使用されることのできる許容可能なビヒクル及び溶媒のなかには、水、リンガー溶液、3−ブタンジオール、等張性塩化ナトリウム溶液、または、生理的に許容可能なクエン酸、酢酸、グリシン、ヒスチジン、リン酸、トリスまたはコハク酸緩衝液などの水性緩衝液がある。注射用溶液は、化学的分解及び凝集物形成に対して保護するための安定化剤を含むことができる。安定化剤は、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)及びブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)などの抗酸化剤、緩衝剤(クエン酸、グリシン、ヒスチジン)、または界面活性剤(ポリソルベート80、ポロキサマー)を含むことができる。溶液は、ベンジルアルコール及びパラベンなどの抗菌性保存剤も含むことができる。溶液は、凝集を減少させるために、ポリソルベート80、ポロキサマー、または本分野の他の界面活性剤などの界面活性剤を含むこともできる。溶液は、組成物の浸透圧をヒト血液に類似するように調節するために、糖または食塩水などの他の添加剤を含むこともできる。
【0172】
医薬組成物は、希釈剤で再構成した上で注射するための滅菌凍結乾燥粉末の形態であることができる。希釈剤は、注射用の水、静菌性の注射用の水または滅菌生理食塩水の形態であることができる。凍結乾燥粉末は、融合タンパク質の溶液を凍結乾燥して、乾燥形態のタンパク質を生成することによって作られることができる。本分野で知られている通り、凍結乾燥タンパク質は、一般に、タンパク質の液体溶液よりも高い安定性及び長い保存寿命を有する。凍結乾燥粉末(ケーキ)は、pHを調節するために、生理的に許容可能なクエン酸、酢酸、グリシン、ヒスチジン、リン酸、トリスまたはコハク酸緩衝剤などの緩衝剤を含むことができる。凍結乾燥粉末はまた、その物理的及び化学的安定性を維持するために、リオプロテクタント(lyoprotectant)を含むこともできる。一般に使用されるリオプロテクタントは、非還元糖およびシュークロース、マンニトール、またはトレハロースなどのジサッカライドである。凍結乾燥粉末は、化学的分解及び凝集物形成に対して保護するための安定化剤を含むことができる。安定化剤は、抗酸化剤(BHA、BHT)、緩衝剤(クエン酸、グリシン、ヒスチジン)、または界面活性剤(ポリソルベート80、ポロキサマー)を含むことができるが、これらに限定されない。凍結乾燥粉末はまた、ベンジルアルコール及びパラベンなどの抗菌性保存剤も含むことができる。凍結乾燥粉末はまた、凝集を減少させるために、ポリソルベート80及びポロキサマーなどのこれらに限られない界面活性剤を含むこともできる。凍結乾燥粉末は、粉末の再構成後にヒト血液に類似するように浸透圧を調節するための添加剤(例えば、糖または食塩水)も含むことができる。凍結乾燥粉末はまた、糖およびジサッカライドなどの充填剤も含むことができる。
【0173】
注射のための医薬組成物は、油性の懸濁液の形態であることもできる。この懸濁液は、上記の好適な分散剤または湿潤剤及び懸濁剤を用いて知られた方法によって製剤されることができる。さらに、滅菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒として便利に使用される。この目的のために、合成モノ−またはジグリセリドを使用する任意のブランドの固定油が使用されることができる。また、油性懸濁液は、活性成分を、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはココナツ油などの植物油または液体パラフィンなどの鉱油中に懸濁することによって製剤されることができる。例えば、オレイン酸などの脂肪酸は注射剤の調製において使用されることができる。油性懸濁液は、蜜蝋、固形パラフィン、またはセチルアルコールなどの増粘剤を含むことができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって保存されることができる。
【0174】
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルジョンまたは水性懸濁液の形態であることもできる。油相は、オリーブ油、またはラッカセイ油などの植物油、或いは、液体パラフィンなどの鉱油、或いはそれらの混合物であることができる。好適な乳化剤は、アカシアゴムまたはトラガントゴムなどの天然ゴム、或いは大豆、レシチン、などの天然のホスファチド、及びモノオレイン酸ソルビタンなどのエステルまたは脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステル、及びポリオキシエチレンソルビタンなどの前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合産物であることができる。
【0175】
水性懸濁液は、賦形剤と混合した活性化合物を含むこともできる。かかる賦形剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴム、及びアカシアゴムなどの懸濁剤;レシチンなどの天然のホスファチドなどの分散剤または湿潤剤、またはステアリン酸ポリオキシエチレンなどの、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合産物、またはヘプタデカエチルエネオキシセタノールなどの、エチレンオキシドと長鎖脂肪酸アルコールの縮合産物、またはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールなどの、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルとの縮合産物、またはモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンなどの、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合産物を含むことができる。
【0176】
水を加えることによって水性懸濁液を調製するために好適な分散性粉末及び顆粒は、分散剤、懸濁剤、及び1つ以上の保存剤と混合した活性化合物を提供することができる。好適な保存剤、分散剤及び懸濁剤は上記されている。
【0177】
組成物は、本発明の化合物の直腸投与のための坐剤の形態であることもできる。これらの組成物は、通常温度で固体であるが直腸温度では液体でありそして直腸中で融解して薬物を放出する、好適な非刺激性の賦形剤と薬物を混合することによって調製されることができる。かかる物質は、ココアバター及びポリオエチレングリコールなどを含む。
【0178】
局所使用のためには、本発明の化合物を含むクリーム、軟膏、ゼリー、溶液または懸濁液が使用されることができる。局所適用は、うがい薬、ガーグルも含むことができる。好適な保存剤、BHA及びBHTなどの抗酸化剤、分散剤、界面活性剤、または緩衝剤が使用されることができる。
【0179】
本発明の化合物は、小さな単層ベシクル、大きな単層ベシクル、及び多層ベシクルなどのリポソームデリバリーシステムの形態で投与されることもできる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなどの多様なリン脂質から形成されることができる。
【0180】
ある実施態様においては、本発明の化合物は、代謝酵素による循環からのクリアランスをさらに遅らせるために修飾されることができる。1つの実施態様においては、化合物は、ポリエチレングリコール(PEG)、PEGとポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドンまたはポリプロリンのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーの共有結合による付加によって修飾されることができる。かかる修飾は、水性溶液中での化合物の溶解度を増加させることもできる。PEGなどのポリマーは、1つ以上の反応性アミノ残基、スルフヒドリル残基またはカルボキシル残基に共有結合で付加されることができる。カルボン酸または炭酸誘導体の活性エステル、特にその中の脱離基が、アミノ基との反応のためのN-ヒドロキシサクシニミド、p−ニトロフェノール、イミダゾールまたは1−ヒドロキシ−2−ニトロベンゼン−3スルホン、スルフヒドリル基との反応のための多モードのまたはハロアセチル誘導体、及び糖基との反応のためのアミノヒドラジンまたはヒドラジド誘導体であるものを含む、PEGの多数の活性化形態が記載された。
【0181】
本発明の融合タンパク質とともに使用されることのできるタンパク質製剤の調製のためのさらなる方法が米国特許第6,267,958号及び同第5,567,677号に記載されている。
【0182】
本発明のさらなる側面においては、本発明のRAGE調節剤は、アジュバント治療剤または他の知られた治療剤との併用治療剤による治療において利用される。以下は、本発明のRAGE融合タンパク質調節剤と併用して利用されることのできるアジュバント及び追加の治療剤の完全でないリストである;
【0183】
抗癌剤の薬理学的分類:
1.アルキル化剤:シクロホスファミド、ニトロソウレア、カルボプラチン、シスプラチン、プロカルバジン
2.抗生物質:ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン
3.代謝拮抗剤:メトトレキセート、シタラビン、フルオロウラシル
4.植物アルカロイド:ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、パクリタキセル
5.ホルモン:タモキシフェン、酢酸オクトレオチド、フィナステリド、フルタミド
6.生物学的反応修飾剤:インターフェロン、インターロイキン
【0184】
リューマチ関節炎の治療薬の薬理学的分類:
1.鎮痛剤:アスピリン
2.NSAID(非ステロイド系抗炎症剤):イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナック
3.DMARD(疾患修飾性抗リューマチ薬):メトトレキセート、金製剤、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン
4.生物学的反応修飾剤、DMARD:エタネルセプト、インフリキシマブ、グルココルチコイド
【0185】
糖尿病の治療薬の薬理学的分類:
1.スルホニルウレア:トルブタミド、トラザミド、グリブリド、グリピジド
2.ビグアニド:メトホルミン
3.混合型の経口剤:アカルボース、トログリタゾン
4.インスリン
【0186】
アルツハイマー病の治療薬の薬理学的分類:
1.コリンエステラーゼ阻害剤:タクリン、ドネペジル
2.抗精神病剤:ハロペリドール、チオリダジン
3.抗うつ薬:デシプラミン、フルオキセチン、トラゾドン、パロキセチン
4.抗けいれん薬:カルバマゼピン、バルプロン酸
【0187】
1つの実施態様においては、本発明はしたがって、RAGE介在性疾患の治療方法であって、そのような治療を必要とする対象に、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、抗生物質、ホルモン、生物学的反応修飾剤、鎮痛剤、NSAID、DMARD、グルココルチコイド、スルホニルウレア、ビグアニド、インスリン、コリンエステラーゼ阻害剤、抗精神病薬、抗うつ薬、および抗けいれん薬からなる群から選ばれる治療剤と併用したRAGE融合タンパク質の治療的有効量を投与することを含む上記方法を提供することができる。さらなる実施態様においては、本発明は、さらに、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、抗生物質、ホルモン、生物学的反応修飾剤、鎮痛剤、NSAID、DMARD、グルココルチコイド、スルホニルウレア、ビグアニド、インスリン、コリンエステラーゼ阻害剤、抗精神病薬、抗うつ薬、及び抗けいれん薬から成る群から選らばれる、1つ以上の治療剤を含む、上記の本発明の医薬組成物を提供する。
【実施例】
【0188】
本発明の対象である本発明の概念の特徴及び利益を、以下の実施例においてさらに例解する。
【0189】
実施例1:RAGE-IgG Fc融合タンパク質の生成
RAGE-IgG Fc融合タンパク質を発現させるために2つのプラスミドを構築した。両プラスミドを、ヒトRAGEからの異なる長さの5’cDNA配列と、ヒトIgG Fc(γ1)からの同じ3’cDNA配列をライゲーションすることによって構築した。これらの発現配列(すなわち、ライゲーション産物)を次に、pcDNA3.1発現ベクター(Invitrogen, CA)中に挿入した。融合タンパク質のコード領域をコードする核酸配列を図2及び3に示す。TTP-4000融合タンパク質については、(太字で強調された)1〜753の核酸配列はRAGE N-末端タンパク質配列をコードするが、754〜1386の核酸配列はIgG Fcタンパク質配列をコードする(図2)。TTP-3000については、(太字で強調された)1〜408の核酸配列は、RAGE N-末端タンパク質配列をコードするが、409〜1041の核酸配列は、IgG Fcタンパク質配列をコードする(図3)。
【0190】
RAGE融合タンパク質を生成するために、配列番号30または配列番号31のいずれかの核酸配列を含む発現ベクターを、安定にCHO細胞中にトランスフェクトした。陽性の形質転換体を、プラスミドによって付与されたネオマイシン耐性について選択し、そしてクローン化した。上清のウエスタンブロット分析によって検出した高生産性クローンを増殖させ、そして遺伝子産物をProtein Aカラムを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。細胞が組換えTTP-4000をリッター当たり約1.3グラムのレベルで産生するように、発現を最適化した。
【0191】
2つの融合タンパク質をコードする発現されたポリペプチドを図4〜6に例解する。TTP-4000の4つのドメイン構造については、(図4に太字で示した)最初の251アミノ酸は、ヒトRAGEタンパク質(図4、6B)のシグナル配列(1〜22/23)、Vイムノグロブリン(及びリガンド結合)ドメイン(23/24〜116)、第二のドメイン間リンカー(117〜123)、第二のイムノグロブリンドメイン(CH1)(124〜221)、及び第二のリンカー(222−251)を含む。252〜461の配列は、IgGのCH2及びCH3イムノグロブリンドメインを含む。
【0192】
TTP-3000の3つのドメイン構造については、(太字で示した)最初の136アミノ酸は、ヒトRAGEタンパク質(図5、6B)のシグナル配列(1〜22/23)、Vイムノグロブリン(及びリガンド結合)ドメイン(23/24〜116)及びドメイン間リンカー配列(117〜136)を含む。さらに、TT3については、137〜346の配列は、IgGのCH2及びCH3イムノグロブリンドメインを含む。
【0193】
実施例2:RAGE-IgG1融合タンパク質の活性の試験方法
A.インビトロのリガンド結合:
知られたRAGEリガンドを、1ウエルあたり5マイクログラムの濃度でMaxisorbプレートの表面上にコーティングした。プレートを4℃で一夜インキュベートした。リガンドのインキュベーション後、プレートを吸引し、そして50mM イミダゾール緩衝液(pH7.2)中1%BSAのブロッキング緩衝液を室温で1時間、プレートに加えた。そして、プレートを吸引し、及び/または洗浄緩衝液(20mM イミダゾール、150mM NaCl、0.05%Tween-20、5mM CaCl2、及び5mM MgCl2、pH7.2)で洗浄した。初期濃度が1.082mg/mlのTTP-3000(TT3)溶液及び初期濃度が370μg/mlのTTP-4000(TT4)溶液を調製した。融合タンパク質を最初のサンプルの希釈度を増加させて加えた。RAGE融合タンパク質を37℃で1時間、固定化リガンドとともにインキュベートし、その後、プレートを洗浄し、融合タンパク質の結合についてアッセイした。21ng/100μLの最終アッセイ濃度(FAC)まで1:11,000に希釈した抗ヒトIgG1マウスモノクローナル抗体、500ng/mLのFACまで1:500に希釈したビオチン化抗マウスIgGヤギ抗体、及びアビジン結合アルカリホスファターゼを含む免疫検出複合体を添加することによって、結合を検出した。該複合体は、1時間室温で固定化融合タンパク質とともにインキュベートし、その後、プレートを洗浄し、そしてアルカリホスファターゼ基質であるパラ−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)を加えた。複合体の固定化融合タンパク質への結合を、PNPPのパラニトロフェノール(PNP)への転換を、405nmにおいて分光光学的に測定することによって定量化した。
【0194】
図7に示すように、融合タンパク質TTP-4000(TT4)及びTTP-3000(TT3)は、知られたRAGEリガンド、アミロイドベータ(Aベータ)、S100b(S100)、及びアンフォテリン(Ampho)と特異的に相互作用する。リガンドの非存在下、すなわち、BSAコーティングのみ(BSAまたはBSA+洗浄)では、免疫検出複合体の非特異的結合に寄与しうるレベルを超える吸収の増加はなかった。アミロイドベータを標識リガンドとして使用する場合、アッセイの前にアミロイドベータをプレインキュベートすることが必要であるかもしれない。プレインキュベーションは、アミロイドベータが折りたたみシートの形態でRAGEに優先的に結合するため、アミロイドベータを折りたたみシート形態に自己凝集させることができる。
【0195】
RAGE融合タンパク質TTP-4000及びTTP-3000とRAGEリガンドとの特異的相互作用のさらなる証拠は、融合タンパク質への結合に関して、RAGEリガンドが知られたRAGEリガンドと有効に競合することができることを示す研究によって実証される。これらの研究においては、アミロイド−β(A-ベータ)をMaxisorbプレート上に固定化し、そして融合タンパク質を上記のように加えた。さらに、RAGEリガンドを、融合タンパク質と同時にいくつかのウエルに添加した。
【0196】
TTP-4000(TT4)が123μg/mL(1:3希釈、図8)で存在した場合、RAGEリガンドはTTP-4000の結合を約25%〜30%ブロックしたことがわかった。TTP-4000の最初の溶液を10または30のファクターで希釈した場合(1:10又は1:30)、融合タンパク質の固定化リガンドへの結合はRAGEリガンドによって完全に阻害された。同様に、TTP-3000(TT3)が360μg/mLで存在した場合(1:3希釈、図9)、RAGEリガンドはTTP-3000の結合を約50%ブロックした。TTP-3000の最初の溶液を10のファクターで希釈した場合(1:10)、融合タンパク質の固定化リガンドへの結合はRAGEリガンドによって完全に阻害された。したがって、RAGE融合タンパク質のRAGEリガンドへの結合の特異性は用量依存的であった。また、図8及び9に示すように、融合タンパク質の非存在下、すなわち、免疫検出複合体のみを用いた場合(「複合体のみ」)、本質的に結合は検出されなかった。
【0197】
B.細胞に基づくアッセイにおけるRAGE融合タンパク質の効果
先の研究は、骨髄THP-1細胞がTNF-αをRAGEリガンドに応答して分泌することを示した。このアッセイにおいては、THP-1細胞を、10%FBSを補充したRPMI-1640培地中で、ATCCにより提供されたプロトコールを用いて培養した。融合タンパク質TTP-3000(TT3)またはTTP-4000(TT4)(10μg)、sRAGE(10μg)、及びヒトIgG(10μg)(すなわち、陰性対照)の存在下または非存在下で、0.1mg/ml のS100bによるRAGEの刺激を介してTNF-αを分泌するように細胞を誘発した。THP-1細胞により分泌されたTNF-αの量を、タンパク質の細胞培養への添加の24時間後に、商業的に入手可能なTNF-αのためのELISAキット(R&D Systems, Minneapolis, MN)を用いて測定した。図10中の結果は、融合タンパク質がS100b/RAGE誘発性のTHF-αの産生をこれらの細胞において阻害することを実証する。図10に示すように、10μgのTTP-3000またはTTP-4000RAGE融合タンパク質の添加により、S100b(0.1mg/mlのFAC)によるTNF-αの誘導はそれぞれ約45%〜70%減少した。融合タンパク質TTP-4000は、S100bによるTNF-αの誘導をブロックすることにおいて、少なくともsRAGEと同等に効果的であることができる(図10)。TTP-4000及びTTP-3000のRAGE配列についての阻害特異性を、IgGのみをS100b刺激した細胞に添加した実験によって示す。IgG及びS100bのアッセイへの添加は、S100b単独と同じレベルのTNF-αを示す。融合タンパク質のRAGE配列についてのTTP-4000及びTTP-3000によるTNF-α誘導の阻害特異性を、IgGのみをS100b刺激した細胞に添加した実験によって示す。IgG、すなわち、RAGE配列を含まないヒトIgG(10μg/ウエルで添加したSigmaヒトIgG)、及びS100bのアッセイへの添加が、S100b単独と同レベルのTNF-αを示すことがわかる。
【0198】
実施例3:TTP-4000の薬物動態プロフィール
TTP-4000がヒトsRAGEに比べて優れた薬物動態プロフィールを有するか否かを決定するために、ラット及び非ヒト霊長類にTTP-4000(5mg/kg)を静脈内(IV)注射し、そしてTTP-4000の存在について血漿を評価した。これらの実験において、2匹の実験未使用の雄性のサルが末梢静脈中に単回IVボーラス投与のTTP-4000(5mg/ml/kg)を受容し、続いて約1.0ミリリッター(mL)の生理食塩水を流した。血液サンプル(約1.0mL)を投薬前(すなわち、TTP-4000の注射の前)、または投薬の0.083、0.25、0.5、2、4、8、12、24、48、72、96、120、168、240、288、及び336時間後に(リチウムヘパリンを含む)チューブ中に採取した。採取の後、チューブを冷蔵下(2℃〜8℃)での1500×gで15分間の遠心分離まで、湿った氷の上に置いた(最大30分)。採取された各血漿サンプルを、実施例6に記載のように注射後のさまざまな時点におけるRAGEポリペプチドについてELISAを用いてアッセイするまで、凍結保存した(−70℃±10℃)。
【0199】
図11に示す速度プロフィールは、2匹の動物におけるアルファ相のかなり急勾配のスロープによって証明されるように、一旦TTP-4000がそのリガンドを飽和したら、それは300時間超の最終半減期を保持することを明らかにする。この半減期は、血漿中のヒトsRAGEの半減期(一般に約2時間)よりも顕著に長く、そして急性及び半慢性の適応症のための単回注射の機会を提供する。図11においては、各曲線は、同じ実験条件下での異なる動物を表す。
【0200】
実施例4:TTP-4000のFcの活性化
ヒトIgGに比較した、RAGE融合タンパク質TTP-4000によるFc受容体の活性化を測定するために実験を行った。Fc受容体の活性化を、Fc受容体を発現するTHP-1細胞からのTNF-αの分泌を測定することによって測定した。これらの実験において、96ウエルプレートを10μg/ウエルのTTP-4000またはヒトIgGでコーティングした。Fc刺激は、TNF-α分泌を引き起こす。TNF-αの量を、酵素免疫測定法(ELISA)によって測定した。
【0201】
したがって、このアッセイにおいては、骨髄細胞株、THP-1(ATCC#TIB-202)を、ATCCの指示にしたがって10%ウシ胎児血清を補充したRPIM-1640培地中に維持した。典型的には、ウエルを10μg/ウエルの熱凝集(63℃で30分)したTTP-4000またはヒトIgG1のいずれかでプレコーティングすることによるFc受容体刺激を介して、ウエルあたり40,000〜80,000細胞がTNF-アルファを分泌するよう誘導した。THP-1細胞によって分泌されたTNF-アルファの量を、処理ウエル中の細胞を24時間培養したものから集めた上清中で、商業的に入手可能なTNF ELISAキット(R&D Systems, Minneapolis, MN#DTA00C)を使用説明書にしたがって使用して測定した。
【0202】
結果を図12に示し、ここで、TTP-4000は2ng/ウエル未満のTNFを生成し、IgGは40ng/ウエル超を生成した。
【0203】
実施例5:TTP-4000のインビボ活性
ヒト疾患のいくつかのインビボモデルにおいて、TTP-4000の活性をsRAGEに比較した。
【0204】
A.再狭窄の動物モデルにおけるTTP-4000
RAGE融合タンパク質TTP-4000を、血管の損傷後の21日間、平滑筋の増殖及び内膜の拡張を測定することを含む、再狭窄の糖尿病ラットモデルにおいて評価した。これらの実験において、左総頚動脈のバルーンによる損傷を、標準的な手順を用いてZucker糖尿病ラット及び非糖尿病ラットにおいて実施した。負荷用量(3mg/ラット)のIgG、TTP-4000またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を、損傷の1日前に腹腔内(IP)投与した。損傷の7日後まで、1日おき(すなわち、損傷の1、3、5及び7日後)に維持量を送達した。維持量は、1つの群については1mg/動物の高い量、または第二の群については0.3mg/動物の低い量であった。血管平滑筋細胞(VSMC)の増殖を測定するために、動物を損傷の4日および21日後にと殺した。
【0205】
細胞増殖の測定のために、4日の動物はブロモデオキシウリジン(BrDdU)50mg/kgの腹腔内注射を、安楽死の18、12及び2時間前に受けた。と殺後、左及び右頚動脈の全体を採取した。標本を包埋の少なくとも24時間前にHistochoice中に保存した。VSMC増殖の評価を、抗BrdUマウスモノクローナル抗体を用いて実施した。蛍光標識抗マウスヤギ二次抗体を適用した。切片当たりのBrdU陽性の核の数を治療計画に対してブラインドの二人の観察者が計測した。
【0206】
残りのラットを形態計測分析のために21日目にと殺した。形態計測分析は、Van Gieson染色した(5mm離れた)一連の頚動脈切片について、コンピュータ化されたデジタル顕微鏡面積測定ソフトウエアImage-Pro Plusを用いて、試験群についてブラインドの観察者が実施した。すべてのデータを平均±SDとして表した。SPSSソフトウエアを用いて統計学的分析を実施した。連続的な変数を、対応のないt検定を用いて比較した。0.05以下のP値を、統計学的に有意であるとした。
【0207】
図13A及び13Bに見られるように、TTP−4000治療は、用量応答性に、内膜/中膜比及び血管平滑筋細胞増殖を有意に減少させた。図13Bにおいては、y軸はBrdU増殖性細胞の数を表す。
【0208】
B.ADの動物モデルにおけるTTP4000
TTP-4000が、ADのマウスモデルにおいてアミロイド生成及び認知障害に影響することができるか否かを評価するために実験を行った。PDGF-B鎖プロモーターの制御下で、ヒトSweden突然変異体アミロイド前駆体タンパク質(APP)を発現するトランスジェニックマウスを利用した。経時的に、これらのマウスは高レベルのRAGEリガンド、アミロイドベータ(Aβ)を産生する。先に、このモデルにおいて、3ヶ月間のsRAGE治療が脳中のアミロイドプラークの形成及び関連する炎症性マーカーの増加を減少させることが示された。
【0209】
この実験において使用したAPPマウス(雄性)は、血小板由来増殖因子B(PDGF-B)鎖遺伝子プロモーターの制御下で(Sweden 及びLondon突然変異を有する)ヒトAPP遺伝子のマウス卵子へのマイクロインジェクションによって設計した。該マウスは、C57BL/6バックグラウンドにおいて作製され、Molecular Therapeutics Inc.によって開発されたものである。動物に餌を自由摂取させ、そして同胞交配によって維持した。この構築物から作出したマウスは6月齢にアミロイド沈着をはじめた。動物は6ヶ月間老化させ、そして90日間維持し、アミロイド定量のためにと殺した。
【0210】
APPトランスジェニックマウスに、6月齢時に開始して90日間、ビヒクルまたはTTP4000を1日おきに[qod(i.p.)]投与した。実験の最後に、動物をと殺し、そして脳中のAβプラーク負荷(すなわち、プラーク数)をについて調べた。6ヶ月の対照APP群を、アミロイド沈着のベースラインを決定するためにと殺した。さらに、試験の最後に、動物を(モーリス水迷路)行動分析に供した。研究者らは、試験化合物についてはブラインドであった。一日おきに、0.25ml/マウスのサンプルをマウスに与えた。さらに、一群のマウスには、ヒトsRAGEを200μg/日で与えた。
【0211】
1.アミロイドベータの沈着
組織学的試験のために、動物をペントバルビタールナトリウム(50mg/kg)の腹腔内注射(IP)によって麻酔した。動物を、4℃のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、続いて4%パラホルムアルデヒドで経心的にかん流した。脳を切除し、4%パラホルムアルデヒド中に一夜置いた。脳をパラフィン処理し、そして包埋した。脳から10個の一連の30μmの厚さの切片を得た。トランスジェニック動物の脳中でのアミロイド沈着を検出するために、4℃で一夜、切片を一次抗体(Aβペプチド抗体)に供した(Guo et al., J. Neurosci., 22:5900-5909 (2002))。切片を、トリス緩衝生理食塩水(TBS)で洗浄し、そして二次抗体を加えて、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、切片を、Vector ABC Eliteキット(Vector Laboratories)により指示されたようにインキュベートし、そしてジアミノ安息香酸(DAB)で染色した。反応を水中で停止させ、そしてキシレン処理後にカバーガラスを載せた。各切片中のアミロイド面積を、Quick Captureフレームグラバーカードを備えたPower Macintosh(登録商標)コンピュータ、Olympus顕微鏡上に搭載したHitachi CCDカメラ及びカメラスタンドから成る、コンピュータ支援画像分析システムによって決定した。NIH Image Analysis Software、v.1.55を使用した。画像を捕捉し、そしてアミロイドの総面積を10個の切片にわたって決定した。治療状態についてブラインドの一人のオペレーターがすべての測定を行った。切片のアミロイド体積を合計し、切片の総数で割って、アミロイド体積を計算した。
【0212】
定量分析のためには、APPトランスジェニックマウス(Biosource International, Camarillo, CA)の脳中のヒト総AβであるAβtotal及びAβ1-42を測定するために、酵素免疫測定法(ELISA)を使用した。Aβtotal及びAβ1-42は、塩酸グアニジンによってマウス脳から抽出し、そして製造者の記載のとおりに定量した。このアッセイは、脳からの(可溶性及び凝集した両方の)Aβペプチド全体を抽出する。
【0213】
2.認知機能
モーリス水迷路試験を以下のように実施した:すべてのマウスを、実験の最後にモーリス水迷路試験で一回、試験した。マウスには、1.2mのオープンフィールド水迷路でトレーニングした。プールに、深さ30cmの水を満たし、そして25℃に維持した。逃避プラットフォーム(10cm平方)を水表面の1cm下に置いた。トライアルの間、プラットフォームをプールから除去した。いかなる迷路外の手がかりも隠すために、白いカーテンで囲ったプール中で手がかり試験を行った。すべての動物が連続して3日間、非空間的なプレトレーニング(NSP)を受けた。これらは、プラットフォームを見つけるための記憶の保持を測定するための最終的な行動試験用の動物を準備するためのトライアルである。これらのトライアルは記録されず、トレーニングのみを目的とするものである。トレーニング及び学習の試験のためには、迷路外の手がかりに対してカーテンを取り除いた(これは、泳ぎの障害を有する動物を同定することを可能とする)。第1日において、マウスを隠れたプラットフォーム上に20秒間置き(トライアル1)、トライアル2〜3のためには、動物を手がかりのあるプラットフォームまたは隠れたプラットフォーム(トライアル4)から10cm離れたところで放し、プラットフォームまで泳がせた。トライアルの第2日において、プールの中心または各四分円の中心の間に、隠れたプラットフォームを無作為に移動させた。無作為に壁に向かって動物をプール中に放し、プラットフォームに到達するために60秒間を許容した(3つのトライアル)。第3のトライアルにおいて、動物に3つのトライアル、2つは隠れたプラットフォーム、そして1つは手がかりのあるプラットフォームによる、を与えた。NSPの2日後、動物を最後の行動トライアル(モーリス水迷路試験)に供した。これらのトライアルについては(動物につき3回)、プラットフォームは、プールの1つの四分円の中心におき、無作為に、壁に向かって動物を放した。動物は、60秒間(潜期、プラットフォームを見つけるのにかかる時間)、プラットフォームを探し、または泳ぐことが可能である。すべての動物を投薬の4〜6時間以内に試験し、試験群に対してブラインドのオペレーターが、試験のために無作為に選択した。
【0214】
結果を、平均±標準偏差(SD)として表した。アミロイドと行動試験における相違の有意性をt−検定法を用いて分析した。6月齢のAPP対照群とTTP-4000処置動物、並びに9月齢のAPPビヒクル処理群及びTTP-4000処置動物の間で比較を行った。0.05未満の相違を有意であると考えた。アミロイド及び行動における変化のパーセントを、各群におけるデータを合計し、そして対照で割ることによって決定した(すなわち、1、i.p./6月対照=変化の%)。
【0215】
図14A及び14Bは、TTP-4000またはマウスsRAGEのいずれかで3ヶ月治療したマウスがビヒクル及び陰性対照ヒトIgG1(IgG1)で治療した動物よりもより少ないAβプラーク及びより少ない認知障害を有したことを示す。このデータは、トランスジェニックマウスモデルにおけるAD病理を減少させるのにTTP-4000が有効であることを示す。sRAGEのように、TTP-4000が炎症性サイトカインIL-1及びTNF-αを減少させることができることもわかった(データは示さない)。
【0216】
C.脳卒中の動物モデルにおけるTTP-4000の有効性
脳卒中の病気に関連した動物モデルにおいても、TTP-4000をsRAGEと比較した。このモデルにおいては、マウスの中部頚動脈を1時間結紮し、その後23時間再かん流し、その時点でと殺して脳内の梗塞領域を評価した。マウスを再かん流の直前にsRAGEまたはTTP-4000または対照イムノグロブリンで処置した。
【0217】
これらの実験において、雄性C57BL/6に、250μl/マウスのビヒクルまたは(250μl/マウスのTTP-3000、TTP-4000の)TTP試験品を注射した。虚血の開始1時間後にマウスに腹腔内注射した。1時間の脳虚血後、24時間の再かん流にマウスを供した。虚血を誘発するために、各マウスを麻酔し、そして外部から温めることによって体温を36〜37℃に維持した。首の正中線切開によって左総頚動脈(CCA)を露出させた。マイクロサージカルクリップを内頚動脈(ICA)の起点の周囲に設置した。ECAの遠位末端をシルクで結紮し、そして横切開した。6−0シルクをECAの切開口の周りに緩く結んだ。先端熱加工したナイロン縫合糸をそっとECAの切開口に挿入した。6−0シルクのループを切開口の周りにきつく締め、そしてナイロン縫合糸を、前大脳動脈に達して前交通動脈及び中部脳大動脈を閉塞するまで、内頚動脈(ICA)を通して進めた。ナイロン縫合糸を所定の位置に1時間おいた後、動物を再麻酔し、直腸温度を記録し、そして縫合糸を除去し、切開を閉じた。
【0218】
動物をペントバルビタールナトリウム(50mg/kg)を腹腔内注射して麻酔し、そして脳を切除することによって、梗塞体積を測定した。そして、梗塞領域全体を通じて、脳を4つの2mm切片に切断し、そして2%塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)中に30分間置いた。その後、切片を4%パラホルムアルデヒド中に一夜置いた。各切片中の梗塞面積を、Quick Captureフレームグラバーカードを備えたPower Macintosh(登録商標)コンピュータ、Olympus顕微鏡上に搭載したHitachi CCDカメラ及びカメラスタンドから成る、コンピュータ支援画像分析システムを用いて決定した。NIH Image Analysis Software、v.1.55を使用した。画像を捕捉し、そして梗塞の総面積を切片にわたって測定した。治療状態についてブラインドの一人のオペレーターがすべての測定を行った。切片の梗塞体積を合計し、総梗塞体積を計算した。結果は、平均±標準偏差(SD)で表す。梗塞体積データにおける相違の有意性を、t−検定を用いて分析した。
【0219】
表2中のデータに例解されるように、TTP-4000は、これらの動物における梗塞領域を制限することにおいてsRAGEよりもより有効であったことは、TTP-4000がそのより良い血漿中半減期により、これらのマウスにおいてより大きな保護を維持することができることを示唆している。
【0220】
実施例6:ELISAによるRAGE融合タンパク質の検出
最初に、1XPBS pH 7.3中、10μg/mlの濃度のRAGE特異的モノクローナル抗体1HB1011の50μLを、一夜インキュベーションすることによってプレート上にコーティングした。使用の準備ができたら、プレートを300μLの1Xイミダゾール−Tween洗浄緩衝液で3回洗浄し、そして1%BSAでブロッキングした。(希釈)サンプルと既知の希釈率のTTP-4000の標準希釈液を、最終体積100μLで加えた。サンプルを室温で1時間インキュベートする。インキュベート後、プレートを3回洗浄する。1%BSAを含む1X PBS中の抗ヒトIgG11ヤギ抗体(Sigma A3312)APコンジュゲートを加え、室温で1時間インキュベートする。プレートを3回洗浄する。パラニトロフェニルホスフェートで色を明確にする。
【0221】
実施例7:RAGE融合タンパク質に対するRAGEリガンドの結合の定量
図15は、TTP-4000によるさまざまな固定化された既知のRAGEリガンドへの飽和−結合曲線を示す。リガンドをマイクロタイタープレート上に固定化し、0〜360nMで増加する濃度の融合タンパク質の存在下でインキュベートした。融合タンパク質−リガンド相互作用を、アルカリホスファターゼと結合した、融合キメラのIgG部分に特異的なポリクローナル抗体を用いて検出する。相対的Kdを、Graphpad Prizmソフトウエアを用いて計算し、そしてRAGE-RAGEリガンド値の確立された文献値とマッチさせた。HMG1B=アンフォテリン、CML=カルボキシメチルリジン、Aベータ=アミロイドベータ1〜40。
【0222】
以上は、本発明の原理を例示するのみであると考えられる。当業者は多くの修飾及び変更に容易に想到するため、以上は、本発明を示されそして記載された実施態様そのものに限定することを意図せず、かつ、添付された請求項の範囲に属するすべての好適な修飾及び等価物は本発明の概念内にある。
【図面の簡単な説明】
【0223】
本発明のさまざまな特徴、側面及び利益は、以下の図を参照することでより明らかとなるであろう。
【図1A】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルA、配列番号1、ヒトRAGEのアミノ酸配列;及び配列番号2、アミノ酸1〜22のシグナル配列を含まないヒトRAGEのアミノ酸配列。
【図1B】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルB、配列番号3、アミノ酸1〜23のシグナル配列を含まないヒトRAGEのアミノ酸配列。
【図1C】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルC、配列番号4、ヒトsRAGEのアミノ酸配列;配列番号5、アミノ酸1〜22のシグナル配列を含まないヒトsRAGEのアミノ酸配列;及び配列番号6、アミノ酸1〜23のシグナル配列を含まないヒトsRAGEのアミノ酸配列。
【図1D】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルD、配列番号7、ヒトRAGEのV-ドメインを含むアミノ酸配列;配列番号8、ヒトRAGEのV-ドメインを含む別のアミノ酸配列;配列番号9、ヒトRAGEのV-ドメインのN-末端断片;配列番号10、ヒトRAGEのV-ドメインの別のN-末端断片;配列番号11、ヒトRAGEのアミノ酸124〜221のアミノ酸配列;配列番号12、ヒトRAGEのアミノ酸227〜317のアミノ酸配列;配列番号13、ヒトRAGEのアミノ酸23〜123のアミノ酸配列;
【図1E】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルE、配列番号14、ヒトRAGEのアミノ酸24〜123のアミノ酸配列;配列番号15、ヒトRAGEのアミノ酸23〜136のアミノ酸配列;配列番号16、ヒトRAGEのアミノ酸24〜136のアミノ酸配列;配列番号17、ヒトRAGEのアミノ酸23〜226のアミノ酸配列;配列番号18、ヒトRAGEのアミノ酸24〜226のアミノ酸配列。
【図1F】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルF、配列番号19、ヒトRAGEのアミノ酸23〜251のアミノ酸配列;配列番号20、ヒトRAGEのアミノ酸24〜251のアミノ酸配列;配列番号21、RAGEドメイン間リンカー;配列番号22、第二のRAGEドメイン間リンカー;配列番号23、第三のRAGEドメイン間リンカー;配列番号24、第四のRAGEドメイン間リンカー。
【図1G】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルG、配列番号25、ヒトRAGEアミノ酸1〜118をコードするDNA;配列番号26、ヒトRAGEアミノ酸1〜123をコードするDNA;配列番号27、ヒトRAGEアミノ酸1〜136をコードするDNA。
【図1H】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルH、配列番号28、ヒトRAGEアミノ酸1〜230をコードするDNA;及び配列番号29、ヒトRAGEアミノ酸1〜251をコードするDNA。
【図1I】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルI、配列番号38、ヒトIgGのCH2及びCH3ドメインの部分的アミノ酸配列;配列番号39、ヒトIgGのヒトCH2及びCH3ドメインの部分をコードするDNA;配列番号40、ヒトIgGのCH2及びCH3ドメインのアミノ酸配列。
【図1J】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルJ、配列番号41、ヒトIgGのヒトCH2及びCH3ドメインをコードするDNA;配列番号42、ヒトIgGのCH2ドメインのアミノ酸配列;配列番号43、ヒトIgGのCH3ドメインのアミノ酸配列;及び配列番号44、第五のRAGEドメイン間リンカー。
【図2】図2は、本発明の実施態様によるRAGE融合タンパク質(TTP-4000)コード領域のDNA配列(配列番号30)を示す。太字で強調したコード配列1〜753は、RAGE N末端タンパク質配列をコードし、配列754〜1386は、ヒトIgG Fc(γ1)タンパク質配列をコードする。
【図3】図3は、本発明の実施態様による、別のRAGE融合タンパク質(TTP-3000)コード領域のDNA配列(配列番号31)を示す。太字で強調したコード配列1〜408は、RAGE N-末端タンパク質配列をコードし、配列409〜1041はヒトIgG Fc(γ1)タンパク質配列をコードする。
【図4】図4は、それぞれ、本発明の別々の実施態様による、4つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードする、配列番号32(TTP-4000)、配列番号33及び配列番号34のアミノ酸配列を示す。RAGE配列は、太字で強調されている。
【図5】図5は、それぞれ、本発明の別々の実施態様による、3つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードする、配列番号35(TTP3000)、配列番号36及び配列番号37のアミノ酸配列を示す。RAGE配列は、太字で強調されている。
【図6A】図6Aは、ヒトRAGE及びヒトIgガンマ-1 Fcタンパク質中のたんぱく質ドメインの比較、並びに本発明の別々の実施態様によるTTP-3000(136位)及びTTP-4000(251位)を作製するために使用される切断ポイントを示す。
【図6B】図6Bは、本発明の別々の実施態様によるTTP-3000及びTTP-4000のドメイン構造を示す。
【図7】図7は、本発明の実施態様による、RAGEリガンドであるアミロイド−ベータ(A-ベータ)、S100b(S100)及びアンフォテリン(Ampho)へのsRAGE及びRAGE融合タンパク質TTP-4000(TT4)及びTTP-3000(TT3)のインビトロの結合アッセイの結果を示す。
【図8】図8は、本発明の実施態様による、RAGE融合タンパク質TTP-4000(TT4)(「タンパク質」)の、免疫検出試薬のみを含む(「複合体のみ」)陰性対照に比較した、アミロイド−ベータに対するインビトロの結合アッセイの結果、及びRAGEアンタゴニスト(「RAGEリガンド」)によるかかる結合のアンタゴニズムを示す。
【図9】図9は、本発明の実施態様による、RAGE融合タンパク質TTP-3000(TT3)(「タンパク質」)の、免疫検出試薬のみを含む(「複合体のみ」)陰性対照に比較した、アミロイド−ベータに対するインビトロの結合アッセイの結果、及びRAGEアンタゴニスト(「RAGEリガンド」)によるかかる結合のアンタゴニズムを示す。
【図10】図10は、本発明の実施態様による、S100b-RAGE誘発性のTNF-α産生の、RAGE融合タンパク質TTP-3000(TT3)及びTTP-4000(TT4)、並びにsRAGEによる阻害を測定する、細胞に基づくアッセイの結果を示す。
【図11】図11は、本発明の実施態様による、RAGE融合タンパク質TTP-4000の薬物動態プロフィールを示し、ここで、各曲線は同じ実験条件下での異なる動物を表す。
【図12】図12は、本発明の実施態様による、炎症反応の尺度としての、RAGE融合タンパク質TTP-4000による刺激及びヒトIgG刺激によるTHP-1細胞からのTNF-α放出の相対的レベルを示す。
【図13A】図13Aは、本発明の別々の実施態様による、糖尿病の動物における再狭窄を減少させるためのRAGE融合タンパク質TTP-4000の使用を示し、ここで、TTP-4000RAGE-融合タンパク質が、陰性対照(IgG)に比べて、内膜/中膜比を減少させたことを示す。
【図13B】図13Bは、本発明の別々の実施態様による、糖尿病の動物における再狭窄を減少させるためのRAGE融合タンパク質TTP-4000の使用を示し、ここで、TTP-4000RAGE-融合タンパク質が、用量依存的に血管平滑筋細胞の増殖を減少させたことを示す。
【図14A】図14Aは、本発明の別々の実施態様による、アルツハイマー病(AD)を有する動物におけるアミロイド形成を減少させるための、RAGE融合タンパク質TTP-4000の使用を示し、ここで、TTP-4000RAGE融合タンパク質は脳中のアミロイド負荷を減少させた。
【図14B】図14Bは、本発明の実施態様による、アルツハイマー病(AD)を有する動物における認知障害を減少させるための、RAGE融合タンパク質TTP-4000の使用を示し、ここで、TTP-4000RAGE融合タンパク質は、認知障害を改善した。
【図15】図15は、本発明の実施態様による、さまざまな固定化された既知のRAGEリガンドに対するTTP-4000による飽和−結合曲線を示す。
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本発明は、2004年8月3日に出願された米国仮特許出願第60/598,555号に基づく米国特許法第119条(e)による優先権の利益を主張する。米国仮特許出願第60/598,555号の開示は、その全体が参考文献として本明細書中に援用されている。
【0002】
本発明は、最終糖化産物受容体(Receptor for Advanced Glycated Endproducts (RAGE))の制御に関する。より特別には、本発明は、RAGEポリペプチドを含む融合タンパク質、かかる融合タンパク質の製造方法、及びRAGEに基づく障害の治療のためのかかるタンパク質の使用を記載する。
【背景技術】
【0003】
アルドース糖類とタンパク質または脂質とのインキュベーションは、タンパク質上のアミノ基の非酵素的糖化及び酸化を起こし、アマドリ付加化合物を生成する。時間の経過とともに、該付加化合物はさらなる転位、脱水素化、及び他のタンパク質との架橋形成を受けて、最終糖化産物(AGE)として知られる複合体を生成する。AGEの生成を促進する因子は、(アミロイドーシスにおけるような)遅延性のタンパク質ターンオーバー、リジン含量の高い巨大分子の蓄積、及び(糖尿病におけるような)高い血糖レベルを含む(Hori et al., J. Biol. Chem. 270: 25752-761 (1995))。AGEは、糖尿病に関連する合併症を含む様々な障害及び正常な老化に結び付けられてきた。
【0004】
AGEは、単球、マクロファージ、微小脈管系の内皮細胞、平滑筋細胞、メサンギウム細胞及びニューロン上の細胞表面受容体への特異的かつ飽和性の結合を示す。最終糖化産物受容体(RAGE)は、分子のイムノグロブリンスーパーファミリーの一員である。RAGEの細胞外(N末端)ドメインは、3つのイムノグロブリン型領域:1つのV(可変)型ドメインに続く2つのC型(定常)ドメイン、を含む(Neeper et al., J. Biol. Chem., 267:14998-15004 (1992); Schmidt et al., Circ. (Suppl.) 96#194(1997))。1つの膜貫通ドメイン及び短い高度に荷電したサイトゾル側末端が細胞外ドメインに続いている。N末端細胞外ドメインは、RAGEのタンパク分解またはV及びCドメインから成る可溶性RAGE(sRAGE)を生成するための分子生物学的アプローチによって単離されることができる。
【0005】
RAGEは、白血球、ニューロン、ミクログリア細胞及び血管内皮細胞を含む複数の細胞タイプ上に発現される(Hori et al., J. Biol. Chem. 270: 25752-761 (1995))。増加したRAGEのレベルは、老化組織(Schleicher et al., J. Clin. Invest., 99(3): 457-468 (1997))、並びに糖尿病性の網膜、脈管系及び腎臓(Schmidt et al., Nature Med., 1:1002-1004(1995))においても見出される。
【0006】
AGEに加えて、他の化合物もRAGEに結合し、そして調節することができる。RAGEは、アミロイドベータ(Aβ)、血清アミロイドA(SAA)、最終糖化産物(AGE)、S100(カルグラニュリンファミリーの前炎症性メンバー)、カルボキシメチルリジン(CML)、アンフォテリン及びCD11b/CD18を含む機能的及び構造的に異なる複数のリガンドに結合する(Bucciarelli et al., Cell Mol. Life Sci., 59:1117-128 (2002);Chavakis et al., Microbes Infect., 6:1219-1225(2004));Kokkola et al., Scand. J. Immunol., 61:1-9(2005);Schmidt et al., J. Clin. Invest., 108:949-955 (2001);Rocken et al., Am. J. Pathol., 162:1213-1220 (2003))。
【0007】
AGE、S100/カルグラニュリン、β−アミロイド、CML(Nε−カルボキシメチルリジン)及びアンフォテリンなどのリガンドのRAGEへの結合が、多様な遺伝子の発現を修飾することが示された。そして、これらの相互作用は、p38活性化、p21ras、MAPキナーゼ、Erk1-2リン酸化、及び炎症性シグナル伝達の転写メディエーター、NF-κBを含むシグナル伝達メカニズムを開始することができる(Yeh et al., Diabetes, 50:1495-1504(2001))。例えば、多くの細胞タイプにおいて、RAGEとそのリガンドの間の相互作用は酸化的ストレスを生じることができ、それによってフリーラジカル感受性転写因子NF-κBの活性化をおこし、そして、サイトカインIL-1β及びTNF-アルファなどのNF-κBにより制御される遺伝子の活性化を引き起こす。さらに、RAGE発現は、NF-κBを介して上方制御され、そして炎症部位または酸化的ストレス部位における発現の増加を示す(Tanaka et al., J. Biol. Chem., 275:25781-25790 (2000))。したがって上行性でかつしばしば有害であるスパイラルは、リガンドの結合によって開始されるポジティブフィードバックループによって刺激される。
【0008】
異なる組織及び器官におけるRAGEの活性化は、多数の病態生理学的結論に導くことができる。RAGEは、急性及び慢性の炎症(Hofmann et al., Cell 97:889-901 (1999))、増加した血管透過性などの遅発性の糖尿病合併症の発生(Wautier et al., J. Clin. Invest., 97: 238-243(1995))、腎症(Teillet et al., J. Am. Soc. Nephrol., 11:1488-1497(2000))、動脈硬化(Vlassara et al., The Finnish Medical Society DUODECIM, Ann. Med. 28:419-426(1996))及び網膜症(Hammes et al., Diabetologia, 42: 603-607(1999))を含む様々な状態に結び付けられてきた。RAGEは、アルツハイマー病(Yan et al., Nature, 382:685-691 (1996))及び腫瘍の浸潤及び転移(Taguchi et al., Narture, 405:354-357 (2000))にも結び付けられてきた。
【0009】
RAGEの広範な発現及び複数の異なる病気のモデルにおけるそのみかけの多面的な役割にもかかわらず、RAGEは正常な発達に必須であるとは見えない。例えば、RAGEノックアウトマウスは明白な異常な表現型を有さず、これは慢性的に刺激された場合にRAGEが病気の病理において役割を演じる一方、RAGEの阻害がいかなる望まれない急性の表現型にも寄与しないように見えることを示唆している(Liliensiek et al., J. Clin. Invest., 113:1641-50(2004))。
【0010】
生理学的リガンドのRAGEへの結合をアンタゴナイズすることは、過剰濃度のAGE及び他のRAGEリガンドにより引き起こされる病態生理学的変化を下方制御することができる。内因性リガンドのRAGEへの結合を減少させることによって、RAGE介在性の障害に関連する症状が減少させられることができる。可溶性RAGE(sRAGE)は、RAGEリガンドのRAGEへの結合を有効にアンタゴナイズすることができる。しかしながら、sRAGEは、インビボで投与された場合、1つ以上の障害のために治療的に有用であるためには短すぎるかもしれない半減期を有するかもしれない。したがって、AGEや他の生理学的リガンドのRAGE受容体への結合をアンタゴナイズする化合物であって、所望の薬物動態プロフィールを有する化合物を開発する必要がある。
【発明の開示】
【0011】
要約
本発明の実施態様は、RAGE融合タンパク質及びかかるタンパク質の使用方法を含む。本発明は、多様な方法で具体化されることができる。本発明の実施態様は、第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を含むことができる。1つの実施態様においては、該融合タンパク質はRAGEリガンド結合部位を含む。該融合タンパク質はさらに、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含むことができる。
【0012】
本発明は、また、RAGE融合タンパク質の作製方法も含む。1つの実施態様においては、該方法は、RAGEポリペプチドを、第二の非RAGEポリペプチドに連結することを含む。1つの実施態様においては、RAGEポリペプチドはRAGEリガンド結合部位を含む。該方法は、RAGEポリペプチドを、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結させることをふくんでよい。
【0013】
他の実施態様においては、本発明は、対象においてRAGE介在性の障害を治療するための方法及び組成物を含んでよい。該方法は、本発明の融合タンパク質を対象に投与することを含んでよい。該組成物は、医薬として許容可能な担体中の本発明のRAGE融合タンパク質を含んでよい。
【0014】
本発明の特別な実施態様に関連する様々な利益がある。1つの実施態様においては、本発明の融合タンパク質は、対象に投与された場合、代謝的に安定である。本発明の融合タンパク質は、RAGEリガンドへの高親和性の結合も示すことができる。ある実施態様においては、本発明の融合タンパク質は、高ナノモル〜低マイクロモル範囲の親和性でRAGEリガンドに結合する。生理学的なRAGEリガンドへの高親和性の結合によって、本発明の融合タンパク質は、内因性のリガンドのRAGEへの結合を阻害するために使用されることができ、それによってRAGE介在性疾患を軽減する手段を提供する。
【0015】
また、本発明の融合タンパク質は、タンパク質または核酸の形態で提供されてもよい。1つの例示的な実施例において、融合タンパク質は全身に投与され、そして脈管系に留まって、RAGEにより部分的に仲介される血管の病気を潜在的に治療する。他の例示的な実施態様においては、融合タンパク質は局所投与されて、RAGEリガンドがその病理に寄与する病気を治療することができる。或いは、融合タンパク質をコードする核酸構築物が、ウイルスまたは裸のDNAなどの好適な担体を用いてある部位に送達されることができ、ここで、一過性の局所的な発現がRAGEリガンドと受容体との相互作用を局所的に阻害することができる。したがって、投与は(融合タンパク質が投与される場合などの)一過性に、または(融合タンパク質が組換えDNAとして投与される場合などの)本質的により持続性のものであることができる。
【0016】
以下の本明細書において記載される本発明のさらなる特徴がある。本発明が以下の請求項、明細書及び図面において示される詳細に限って適用されるものでないことは理解されるべきである。本発明は他の実施態様及び多様な方法で実行または実施されることができる。
【0017】
詳細な説明
この明細書の目的のためには、特記されない限り、明細書中で使用される成分、反応条件などの量を表すすべての数は、「約」という用語によってすべての場合において加減されると理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、以下の明細書に記載された数のパラメータは、本発明によって得ることを追求される所望の性質に依存して変動することのできる近似値である。少なくとも、そして本願の原理の等価物を特許請求の範囲に限定することを試みるのではなく、各数のパラメータは、少なくとも報告された重要な数字に照らして、かつ通常の概数化技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0018】
本発明の広い範囲を示す数の範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例中に記載された数値は可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値もそれらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含む。さらに、本明細書中に開示されるすべての範囲は、その中に包含される任意のそしてすべての部分的範囲を含むと理解されるべきである。例えば、記載された「1〜10」という範囲は、最小値1及び最大値10の間(そしてそれらの値を含めた)すべての部分的範囲、すなわち、1〜6.1などの1以上の最小値で始り、かつ、5.5〜10などの10以下の最大値で終わる、すべての部分的範囲を含むと考えられるべきである。さらに、「本明細書中に組み込まれる」とされるいなかる文献も、その全体が組み込まれていると理解されるべきである。
【0019】
さらに、本明細書において使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、明記され、そして明白に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことは留意される。「または」という用語は、内容が明らかにそうでない場合を除き、「及び/または」という用語と交換可能に使用される。
【0020】
また、「部分」及び「断片」という用語は、ポリペプチド、核酸または他の分子構築物の部分を意味するために、交換可能に使用される。
【0021】
本明細書中で使用される「上流」という用語は、分子がタンパク質である場合には第二の残基のN−末端側、または分子が核酸である場合には第二の残基に対して5’側にある残基を意味する。また、本明細書中で使用される「下流」という用語は、該分子がタンパク質である場合には第二の残基のC-末端側、または該分子が核酸である場合には第二の残基の3’側にある残基を意味する。
【0022】
別に定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、当業者に一般的に理解されるのと同じ意味を有する。熟練者は、本分野の定義及び用語については、特に「Current Protocols in Molecular Biology (Ansubel)」に注意を向ける。アミノ酸残基についての略語は、20の一般的なL-アミノ酸のうちの1つを意味するために本分野において使用される標準的な3文字及び/または1文字のコードである。
【0023】
「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドである。該用語は、一本鎖核酸、二本鎖核酸並びにヌクレオチドまたはヌクレオシドアナログから作られるRNA及びDNAを含むように使用される。
【0024】
「ベクター」という用語は、第二の核酸分子を細胞中に輸送するために使用されることのできる核酸分子を指す。1つの実施態様においては、ベクターは、該ベクター中に挿入されたDNA配列の複製を可能とする。ベクターは、少なくともいくつかの宿主細胞中での該核酸分子の発現を促進するためのプロモーターを含むことができる。ベクターは自発的に(染色体外で)複製することができるかまたは宿主細胞染色体中に組み込まれることができる。1つの実施態様において、該ベクターは、該ベクター中に挿入された核酸配列の少なくとも一部分に由来するタンパク質を産生することのできる発現ベクターを含むことができる。
【0025】
本分野で知られているとおり、核酸配列を相互にハイブリダイズさせるための条件は、低〜高ストリンジェンシーにわたるものとして記述されることができる。一般に、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、ハイブリッドを低塩緩衝液中で高温で洗浄することを意味する。ハイブリダーゼーションは、65℃で0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの本分野で標準的なハイブリダイゼーション溶液を用いて、結合したDNAを濾過し、そして0.25M NaHPO4、3.5%SDS中で洗浄し、続いて、プローブの長さによって室温〜68℃の間の温度で0.1xSSC/0.1%SDSで洗浄することであってよい(例えば、Ausubel, F. M. et al., Short Protocols in Molecular Biology, 4th Ed., Chapter 2, John Wiley & Sons, N.Y.を参照のこと)。例えば、高ストリンジェンシーな洗浄は、14塩基オリゴヌクレオチドプローブのためには、37℃で、または17塩基オリゴヌクレオチドプローブのためには48℃において、または20塩基オリゴヌクレオチドのためには55℃において、または25塩基オリゴヌクレオチドの場合には60℃において、または約250オリゴヌクレオチドの長さのヌクレオチドプローブのためには65℃で6xSSC/0.05%ピロリン酸ナトリウム中で洗浄することを含む。核酸プローブは、[γ−32P]ATPなどの放射性ヌクレオチドで末端標識することによって、または[α−32P]dCTPなどの放射能標識ヌクレオチドをランダムプライマー標識によって取り込むことによって放射性ヌクレオチドで標識されることができる。或いは、プローブは、ビオチン標識またはフルオレセイン標識されたヌクレオチドの取り込みによって標識されることができ、そして該プローブは、ストレプトアビジンまたは抗−フルオレセイン抗体を用いて検出される。
【0026】
本明細書中で使用される「小有機分子」は、少なくとも1つの炭素原子を含む、分子量2,000ダルトン未満の分子である。
【0027】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書中で交換可能に使用され、部分的または完全長のタンパク質のいずれかを含むことのできるタンパク質分子を記述する。
【0028】
「融合タンパク質」という用語は、2つ以上のタンパク質に由来するアミノ酸配列を有するタンパク質またはポリペプチドをさす。融合タンパク質は、別々のタンパク質に由来するアミノ酸部分の間のアミノ酸連結領域も含むことができる。
【0029】
本明細書中で使用される「非−RAGEポリペプチド」は、RAGEまたはその断片に由来しない任意のポリペプチドである。かかる非−RAGEポリペプチドは、イムノグロブリンペプチド、二量体化ポリペプチド、安定化ポリペプチド、両親媒性ペプチド或いはタンパク質の標的化または精製のための「タグ」を提供するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0030】
本明細書中で使用される「イムノグロブリンペプチド」は、イムノグロブリン重鎖またはその部分を含むことができる。1つの実施態様においては、重鎖の一部分は、Fc断片またはその一部分であることができる。本明細書中で使用されるFc断片は、重鎖ヒンジポリペプチド、並びに一量体または二量体形態いずれかのイムノグロブリンの重鎖のCH2及びCH3ドメインを含む。或いは、CH1及びFc断片は、イムノグロブリンポリペプチドとして使用されることができる。重鎖(又はその部分)は、既知の重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、またはIgA(α)の任意の1つに由来することができる。さらに、重鎖(又はその部分)は、既知の重鎖サブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)、またはこれらのアイソタイプまたはサブタイプの生理活性の変化した変異体に由来することができる。変更されることのできる生理活性の例は、ヒンジ領域の修飾などによるいくつかのFc受容体へのアイソタイプの結合能の減少を含む。
【0031】
「同一性」または「同一性パーセント」という用語は、2つのアミノ酸配列間または2つの核酸配列間の配列同一性をさす。同一性パーセントは2つの配列を整列化することによって決定されることができ、そして比較される配列に共通の位置における同一の残基(すなわち、アミノ酸またはヌクレオチド)の数をさす。配列の整列化及び比較は、本分野において標準的なアルゴリズム(例えば、Smith and Waterman, 1981, Adv. Appl. Math,. 2:482; Needleman and Wunsch, 1970、J. Mol. Biol. 48:443; Pearson and Lipman, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:2444を参照のこと)或いはBLASTまたはFASTAとして公的に利用可能なこれらのアルゴリズムのコンピュータ化バージョン(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, WI)を用いて実施されることができる。また、National Institute of Health, Bethesda MDを通して利用可能なENTREZも配列の比較に使用されることができる。1つの実施態様においては、2つの配列の同一性パーセントは、ギャップウェイト(gap weight)1のGCGを用いて、各アミノ酸ギャップが2つの配列間の単一のアミノ酸ミスマッチであるように重み付けされるように決定されることができる。
【0032】
本明細書中で使用される用語「保存残基」は、同じ構造及び/または機能を有する複数のタンパク質の間で同一であるアミノ酸を意味する。保存残基の領域は、タンパク質の構造又は機能にとって重要であることができる。したがって、3次元のタンパク質中に同定された連続的な保存残基は、タンパク質の構造または機能にとって重要であることができる。保存残基または3−D構造の保存領域を発見するためには、異なる種からの同一または類似のタンパク質についての配列或いは同じ種の個体の配列の比較が行われることができる。
【0033】
本明細書中で使用される用語「相同体」は、野生型アミノ酸配列とある程度の相同性を有するポリペプチドを意味する。相同性の比較は、目視によって、またはより通常では容易に利用可能な配列比較プログラムの助けによって実行されることができる。これらの商業的に利用可能なコンピュータプログラムは、2つ以上の配列間の相同性パーセントを算出することができる(例えば、Wilbur, W.J. and Lipman, D. J. 1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80: 726-730)。例えば、相同な配列は、別の実施態様では、お互いに少なくとも75%同一、85%同一、90%同一、95%同一、または98%同一であるアミノ酸配列を含むと解釈されることができる。
【0034】
本明細書中で使用されるポリペプチドまたはタンパク質「ドメイン」は、独立した単位を含むポリペプチドまたはタンパク質に沿った領域を含む。ドメインは、構造、配列及び/または生理活性によって定義されることができる。1つの実施態様においては、ポリペプチドドメインは、タンパク質の残りの部分から実質的に独立した方法で折りたたんだタンパク質の領域を含むことができる。ドメインは、PFAM、PRODOM、PROSITE、BLOCKS、PRINTS、SBASE、ISREC、PROFILES、SAMRT、及びPROCLASSなどの、しかしこれらに限られないドメインデータベースを用いて同定されることができる。
【0035】
本明細書中で使用される「イムノグロブリンドメイン」は、イムノグロブリンのドメインに構造的に相同または同一なアミノ酸配列である。イムノグロブリンドメインのアミノ酸配列の長さは、任意の長さであってよい。1つの実施態様においては、イムノグロブリンドメインは、250アミノ酸未満であるかもしれない。例示的な実施例においては、イムノグロブリンドメインは約80〜150アミノ酸の長さであるかもしれない。例えば、IgGの可変領域、並びにCH1、CH2、及びCH3領域はそれぞれイムノグロブリンドメインである。他の実施例においては、IgMの可変、CH1、CH2、CH3及びCH4領域はそれぞれイムノグロブリンドメインである。
【0036】
本明細書中で使用される「RAGEイムノグロブリンドメイン」は、イムノグロブリンのドメインに構造的に相同または同一なRAGEタンパク質からのアミノ酸配列である。例えば、RAGEイムノグロブリンドメインは、RAGEV-ドメイン、RAGE Ig様C2-タイプ1ドメイン(「C1ドメイン」)またはRAGE Ig様C2-タイプ2ドメイン(「C2ドメイン」)を含むことができる。
【0037】
本明細書中で使用される「ドメイン間リンカー」は、2つのドメインを一緒に結合させるポリペプチドを含む。Fcヒンジ領域は、IgG中のドメイン間リンカーの例である。
【0038】
本明細書中で使用される「直接連結された」とは、(核酸配列、ポリペプチド、ポリペプチドドメインなどの)2つの異なる基の間の共有結合であって、連結された該2つの基の間にいかなる介在性原子も有さないものをさす。
【0039】
本明細書中で使用される「リガンド結合ドメイン」は、リガンドの結合に関与するタンパク質のドメインをさす。リガンド結合ドメインという用語は、リガンド結合ドメインの相同体またはその部分の相同体を含む。この点で、リガンド結合ドメインの結合特異性が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、または親水性における類似性に基づいて、リガンド結合部位における慎重なアミノ酸置換が行われることができる。
【0040】
本明細書中で使用される「リガンド結合部位」は、リガンドと直接的に相互作用するタンパク質中の残基またはリガンドと直接的に相互作用する残基のごく近傍にリガンドを位置づけることに関与する残基を含む。リガンド結合部位中の残基の相互作用は、モデルまたは構造中のリガンドへの残基の空間的近接性によって定義されることができる。リガンド結合部位という用語は、リガンド結合部位の相同体またはその部分を含む。この点で、リガンド結合ドメインの結合特異性が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、または親水性における類似性に基づいて、リガンド結合部位における慎重なアミノ酸置換が行われることができる。リガンド結合部位は、タンパク質またはポリペプチドの1つ以上のリガンド結合ドメイン中に存在することができる。
【0041】
本明細書中で使用される用語「相互作用」は、リガンドまたは化合物、あるいはその部分または断片と、着目の第二の分子の部分との間の近接した状態をさす。相互作用は、水素結合、ファンデルワールス相互作用、または静電的若しくは疎水性相互作用などの結果としての非共有結合であってよく、或いは共有結合であってもよい。
【0042】
本明細書中で使用される「リガンド」は、基質またはそのアナログ若しくは部分を含む、リガンド結合部位と相互作用する、分子または化合物または物質をさす。本明細書中で記載されるとおり、「リガンド」という用語は着目のタンパク質に結合する化合物をさすことができる。リガンドはアゴニスト、アンタゴニストまたは調節剤であることができる。或いは、リガンドは生物学的効果を有さなくてもよい。或いは、リガンドは他のリガンドの結合をブロックし、それによって生物学的効果を阻害してもよい。リガンドは、小分子阻害剤を含んでよいが、これに限られない。これらの小分子は、ペプチド、ペプチド模倣剤、有機化合物などを含んでよい。リガンドはポリペプチド及び/またはタンパク質も含んでよい。
【0043】
本明細書中で使用される「調節剤化合物」は、着目の分子の生理活性を変化させるかまたは変更する分子をさす。調節剤化合物は、着目の分子の活性を増加または減少させ、或いは物理的もしくは化学的特性または機能的もしくは免疫学的性質を変化させることができる。RAGEについては、調節剤化合物は、RAGEまたはその部分の活性を増加または減少させ、或いは特性または機能的若しくは免疫学的性質を変化させることができる。調節剤化合物は、天然及び/または化学的に合成された若しくは人工的なペプチド、修飾されたペプチド(例えば、ホスホペプチド)、抗体、炭化水素、モノサッカライド、オリゴサッカライド、ポリサッカライド、糖脂質、複素環式化合物、ヌクレオシドまたはヌクレオチドまたはその部分、及び有機小分子または無機小分子を含むことができる。調節剤化合物は、内因性の生理学的化合物であってよく、または天然若しくは合成の化合物であってよい。或いは、調節剤化合物は、有機小分子であってよい。「調節剤化合物」という用語は、化学的に修飾されたリガンドまたは化合物も含み、そして異性体及びラセミ体も含む。
【0044】
「アゴニスト」は、受容体に結合して、関連する受容体に特異的な薬理学的応答を引き出す複合体を形成する化合物を含む。
【0045】
「アンタゴニスト」は、アゴニストまたは受容体に結合して、実質的な薬理学的応答を起こさせず、かつアゴニストによって誘発された生物学的応答を阻害することのできる複合体を形成する、化合物を含む。
【0046】
したがって、RAGEアゴニストは、RAGEに結合し、そしてRAGE−介在性細胞プロセスを刺激することができ、そしてRAGEアンタゴニストはRAGE介在性プロセスがRAGEアゴニストによって刺激されることを阻害することができる。例えば、1つの実施態様においては、RAGEアゴニストによって刺激される細胞プロセスはTNF-α遺伝子転写の活性化を含む。
【0047】
「ペプチド模倣剤」という用語は、分子間の相互作用においてペプチドに対する置換体として働く構造体をさす(Morgan et al., 1989, Ann. Reports Med. Chem. 24:243-252)。ペプチド模倣剤は、アミノ酸及び/またはペプチド結合をふくんでもまたは含まなくてもよいが、ペプチドまたは、アゴニストまたはアンタゴニストの構造的または機能的特徴を保持する合成構造体をさす。ペプチド模倣剤はペプトイド、オリゴペプトイド(Simon et al., 1972, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 89:9367);及び本発明のペプチドまたはアゴニストまたはアンタゴニストに相当するすべての可能なアミノ酸配列を表す、設計された長さのペプチドを含むペプチドライブラリーも含む。
【0048】
「治療すること」という用語は、病気又は障害の症状を改善することをさし、そして該障害を治癒させること、該障害の発症を実質的に予防すること、又は対象の状態を改善することを含んでよい。本明細書中で使用される用語「治療」は、障害に起因する1つの症状又はほとんどの症状の軽減を含む、患者が罹っている所与の障害のためのすべてのスペクトルの治療、特定の障害の治癒、又は該障害の発症の予防をさす。
【0049】
本明細書中で使用される用語「EC50」は、測定された生物学的効果の50%を生じる剤の濃度として定義される。例えば、測定可能な生物学的効果を有する治療剤のEC50は、該剤が該生物学的効果の50%を示す値を含んでよい。
【0050】
本明細書中で使用される「IC50」という用語は、測定された効果の50%の阻害を生じる剤の濃度として定義される。例えば、RAGE結合のアンタゴニストのIC50は、該アンタゴニストがRAGEのリガンド結合部位へのリガンドの結合を50%減少させる値を含んでよい。
【0051】
本明細書中で使用される「有効量」は、対象において所望の効果を生じるのに有効な剤の量を意味する。「治療的有効量」という用語は、動物又はヒトの求められている治療的応答を引き出すであろう、薬物又は医薬の量をさす。有効量を含む実際の用量は、投与経路、対象のサイズ又は健康、治療される障害などに依存してよい。
【0052】
本明細書中で使用される「医薬として許容可能な担体」という用語は、例えば、RAGE-介在性の障害又は病気の治療のために投与される治療用組成物のために、ヒト又は動物対象において使用するのに好適な化合物及び組成物をさすことができる。
【0053】
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、慣用の無毒性担体、希釈剤、アジュバント、ビヒクルなどを含む単位用量製剤として、哺乳動物宿主に、経口で、非経口で、局所に、吸入スプレーにより、鼻腔内、又は直腸などに投与されることのできる組成物をさす。
【0054】
本明細書中で使用される「非経口」という用語は、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射、嚢内注射又は輸注技術を含む。
【0055】
RAGE融合タンパク質
本発明の実施態様は、RAGE融合タンパク質、かかる融合タンパク質の作製方法、及びかかる融合タンパク質の使用方法を含む。本発明は、さまざまな方法で具体化されることができる。
【0056】
例えば、本発明の実施態様は、第二の非RAGEポリペプチドに連結したRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。1つの実施態様において、融合タンパク質は、RAGEリガンド結合部位を含んでよい。ある実施態様においては、該リガンド結合部位は、該融合タンパク質の最もN-末端のドメインを含む。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメイン、又はその部分を含んでよい。ある実施態様においては、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9又はそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10又はそれに対して90%同一の配列を含む。
【0057】
ある実施態様においては、RAGEポリペプチドはイムノグロブリンドメイン又は(その断片などの)イムノグロブリンドメインの部分を含むポリペプチドに連結されることができる。1つの実施態様においては、イムノグロブリンドメインを含むポリペプチドは、少なくとも、ヒトIgGのCH2又はCH3ドメインのうちの少なくとも1つの部分を含む、。
【0058】
RAGEタンパク質又はポリペプチドは、(配列番号1などの)完全長ヒトRAGEタンパク質;又はヒトRAGEの断片を含んでよい。本明細書中で使用されるRAGEポリペプチドの断片は、少なくとも5アミノ酸の長さであり、30アミノ酸超の長さであることができるが、完全なアミノ酸配列よりは短い。別の実施態様においては、RAGEポリペプチドは、ヒトRAGEに対して70%、又は80%、又は85%、又は90%同一の配列又はその断片を含むことができる。例えば、ある実施態様においては、RAGEポリペプチドは、第一の残基としてメチオニンよりはグリシンを含む、ヒトRAGE又はその断片を含んでよい(Neeper et al., (1992)などを参照のこと)。或いは、ヒトRAGEはシグナル配列が除去された完全長RAGE(配列番号2又は配列番号3)(図1A及び1B)又はそのアミノ酸配列の部分を含んでよい。
【0059】
本発明の融合タンパク質は、(配列番号4などの)sRAGE、sRAGEに対して90%同一のポリペプチド、又はsRAGEの断片も含んでよい。本明細書中で使用されるとおり、sRAGEは、膜貫通領域又は細胞質側末端を含まないRAGEである(Park et al., Nature Med., 4:1025-1031 (1998))。例えば、RAGEポリペプチドは、最初の残基としてメチオニンよりもグリシンを有する、ヒトsRAGE又はその断片を含む(Neeper et al., (1992))。或いは、RAGEポリペプチドは、(配列番号5又は配列番号6などの)シグナル配列が除去されたヒトsRAGE(図1C)又はそのアミノ酸配列の部分を含んでよい。
【0060】
他の実施態様においては、RAGEタンパク質は、(配列番号7又は配列番号8;図1Dなどの)RAGE Vドメイン(Neeper et al., (1992);Schmidt et al., (1997))を含んでよい。或いは、RAGE Vドメインに対して90%同一な配列又はその断片が使用されてよい。
【0061】
或いは、RAGEタンパク質は、(配列番号9又は配列番号10、図1Dなどの)RAGE Vドメインの断片を含んでよい。1つの実施態様においては、RAGEタンパク質はリガンド結合部位を含んでよい。ある実施態様においては、リガンド結合部位は配列番号9又はそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10又はそれに対して90%同一の配列、を含んでよい。さらに他の実施態様においては、RAGE断片は合成ペプチドである。
【0062】
したがって、本発明の融合タンパク質中で使用されるRAGEポリペプチドは、完全長RAGEの断片を含んでよい。本分野で知られているとおり、RAGEは、Vドメイン並びにお互いにドメイン間リンカーによって連結されているC1及びC2ドメインである、3つのイムノグロブリン様ポリペプチドドメインを含む。完全長RAGEは、C2ドメインの下流の膜貫通ポリペプチド及び細胞質内末端(C末端)も含み、C2ドメインに連結されている。
【0063】
ある実施態様においては、RAGEポリペプチドはいかなるシグナル配列残基も含まない。RAGEのシグナル配列は、完全長RAGEの残基1〜22又は残基1〜23のいずれかを含んでよい。
【0064】
例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜116(配列番号7)又はそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜116(配列番号8)又はそれに対して90%同一の配列を含んでよい。或いは、RAGEポリペプチドは、RAGEのC1ドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸124-221(配列番号11)又はそれに対して90%同一の配列を含んでよい。他の実施態様においては、RAGEポリペプチドは、RAGEのC2ドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸227-317(配列番号12)又はそれに対して90%同一の配列を含んでよい。或いは、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23−123(配列番号13)又はそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24−123(配列番号14)又はそれに対して90%同一の配列を含んでよい。或いは、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン、C1ドメイン及びドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23−226(配列番号17)又はそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24−226(配列番号18)又はそれに対して90%同一の配列を含んでよい。或いは、RAGEポリペプチドは、(すなわち、V、C1及びC2ドメイン及びドメイン間リンカーをコードする)sRAGEに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23−339(配列番号5)又はそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24−339(配列番号6)又はそれに対して90%同一の配列を含んでよい。或いはこれらの各配列の断片も使用されてよい。
【0065】
融合タンパク質は、RAGEまたはその断片に由来しないいくつかのタイプのペプチドを含んでもよい。融合タンパク質の第二のポリペプチドは、イムノグロブリンに由来するポリペプチドを含んでよい。1つの実施態様においては、該イムノグロブリンポリペプチドは、イムノグロブリン重鎖またはその部分(すなわち、断片)を含んでよい。例えば、重鎖断片は、イムノグロブリンのFc断片に由来するポリペプチドを含んでよく、ここで、該Fc断片は、重鎖ヒンジポリペプチド、並びにイムノグロブリン重鎖のCH2及びCH3ドメインをモノマーとして含む。重鎖(又はその部分)は、既知の重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、またはIgA(α)のいずれに由来してもよい。さらに、重鎖(又はその部分)は、既知の重鎖サブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)、または生理活性を変化させるこれらのアイソタイプまたはサブタイプの突然変異体のいずれに由来してもよい。第二のポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメイン或いは、これらのドメインのいずれかまたは両方の部分を含んでよい。例示的な実施例として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはその部分を含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含んでよい。
【0066】
イムノグロブリン鎖のFc部分は、インビボで前炎症性であることができる。したがって1つの実施態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、イムノグロブリンに由来するドメイン間ヒンジポリペプチドよりもむしろRAGEに由来するドメイン間リンカーを含む。
【0067】
したがって、1つの実施態様においては、融合タンパク質はさらに、イムノグロブリンのCH2ドメイン或いはイムノグロブリンのCH2ドメインの断片または部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含んでよい。1つの実施態様においては、CH2ドメインまたはその断片は、配列番号42を含む。1つの実施態様においては、RAGEポリペプチドは、リガンド結合部位を含んでよい。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメインまたはその部分を含んでよい。ある実施態様においては、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9またはそれに対して90%同一である配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一である配列を含む。
【0068】
本発明の融合タンパク質中で使用されるRAGEポリペプチドは、RAGEイムノグロブリンドメインを含んでよい。さらにまたは或いは、RAGEの該断片は、ドメイン間リンカーを含んでよい。或いは、RAGEポリペプチドは、ドメイン間リンカーの上流(すなわち、よりN-末端に近い)または下流(すなわち、よりC-末端に近い)に連結されたRAGEイムノグロブリンドメインを含んでよい。さらに他の実施態様においては、RAGEポリペプチドは、それぞれがドメイン間リンカーでお互いに連結された2つ(またはそれ以上)のRAGEイムノグロブリンドメインを含んでよい。RAGEポリペプチドはさらに、1つ以上のドメイン間リンカーで相互に連結された複数のRAGEイムノグロブリンドメインを含んでよく、ここで、N-末端RAGEイムノグロブリンドメイン及び/またはC-末端イムノグロブリンドメインに結合した末端ドメイン間リンカーを有する。RAGEイムノグロブリンドメイン及びドメイン間リンカーのさらなる組み合わせは、本発明の範囲内にある。
【0069】
1つの実施態様において、RAGEポリペプチドは、RAGEイムノグロブリンドメインのC末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN末端アミノ酸に連結されており、かつRAGEドメイン間リンカーのC末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメイン又はその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されているように、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを含む。イムノグロブリンのCH2ドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメイン、或いはこれらのドメインのどちらかまたは両方の部分を含んでよい。例示的な実施態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはその部分を含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含んでよい。
【0070】
上記のように、本発明の融合タンパク質は、RAGE由来の単一のまたは複数のドメインを含んでよい。また、RAGEポリペプチドドメインに連結されたドメイン間リンカーを含むRAGEポリペプチドは、完全長RAGEタンパク質の断片を含んでよい。例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜136(配列番号15)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜136(配列番号16)またはそれに対して90%同一の配列を含んでよい。或いは、RAGEポリペプチドは、Vドメイン、C1ドメイン、これら2つのドメインを連結するドメイン間リンカー、及びC1の下流の第二のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜251(配列番号19)またはそれに対して90%同一の配列、或いは、ヒトRAGEのアミノ酸24〜251(配列番号20)またはそれに対して90%同一の配列を含んでよい。
【0071】
例えば、1つの実施態様においては、融合タンパク質はRAGEタンパク質に由来する2つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチドに由来する2つのイムノグロブリンドメインを含んでよい。融合タンパク質は、第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端に連結され、第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第二のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、そしてRAGE第二ドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第一のRAGEドメイン間リンカーに連結された第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第二のRAGEドメイン間リンカーを含んでよい。1つの実施態様において、4つのドメインのRAGE融合タンパク質は、配列番号32を含んでよい。別の実施態様においては、4つのドメインのRAGE融合タンパク質は、配列番号33または配列番号34を含む。
【0072】
或いは、3つのドメインの融合タンパク質は、RAGEに由来する1つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチドに由来する2つのイムノグロブリンドメインを含んでよい。例えば、融合タンパク質は、RAGEドメイン間リンカーを介して、CH2イムノグロブリンドメインまたはCH2イムノグロブリンドメインの部分のN-末端アミノ酸に連結された単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含んでよい。1つの実施態様においては、3つのドメインのRAGE融合タンパク質は、配列番号35を含んでよい。別の実施態様においては、3つのドメインのRAGE融合タンパク質は配列番号36または配列番号37を含んでよい。
【0073】
RAGEドメイン間リンカー断片は、天然にRAGEイムノグロブリンドメインの下流にあり、そしてしたがってそれに連結されているペプチドを配列を含んでよい。例えば、RAGE Vドメインについては、該ドメイン間リンカーは、天然にVドメインよりも下流にあるアミノ酸配列を含んでよい。ある実施態様においては、リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜123に対応する配列番号21を含んでよい。或いは、リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含んでよい。例えば、配列番号21の上流及び下流の(1〜3、1〜5、又は1〜10或いは1〜15アミノ酸などの)数個のアミノ酸を含むドメイン間リンカーが使用されることができる。したがって、1つの実施態様においては、ドメイン間リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜136を含む配列番号23を含む。或いは、例えば、リンカーのいずれかの末端から1、2または3アミノ酸を除去した配列番号21の断片が使用されることができる。別の実施態様においては、リンカーは、配列番号21または配列番号23に対して70%同一、または80%同一、または90%同一な配列を含んでよい。
【0074】
RAGE C1ドメインについては、リンカーは、天然にC1ドメインの下流にあるペプチド配列を含んでよい。ある実施態様においては、リンカーは完全長RAGEのアミノ酸222〜251に対応する配列番号22を含んでよい。或いは、リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含んでよい。例えば、配列番号22の上流または下流の数個の(1〜3、1〜5、又は1〜10、又は1〜15アミノ酸)を含むリンカーが使用されてよい。或いは、例えば、リンカーのいずれかの末端から1〜3、1〜5、または1〜10、または1〜15アミノ酸が除去された、配列番号22の断片が使用されてよい。例えば、1つの実施態様においては、RAGEドメイン間リンカーは、アミノ酸222〜226に対応する配列番号24を含んでよい。或いは、ドメイン間リンカーは、RAGEアミノ酸318〜342に対応する配列番号44を含んでよい。
【0075】
RAGE融合タンパク質の製造方法
本発明は、RAGE融合タンパク質の製造方法も含む。したがって、1つの実施態様においては、本発明は、RAGEリガンド結合部位を含むRAGEポリペプチドを第二の非RAGEポリペプチドに共有結合するステップを含む、RAGE融合タンパク質の製造方法を含む。例えば、連結されたRAGEポリペプチド及び第二の非RAGEポリペプチドは組換えDNA構築物によりコードされてよい。該方法はさらに、DNA構築物を発現ベクター中に組み込むステップを含んでよい。また、該方法は、該発現ベクターを宿主細胞に挿入するステップを含んでよい。
【0076】
例えば、本発明の実施態様は、第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を提供する。1つの実施態様においては、融合タンパク質は、RAGEリガンド結合部位を含んでよい。ある実施態様においては、リガンド結合部位は融合タンパク質の最もN-末端のドメインを含む。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメインまたはその部分を含んでよい。ある実施態様においては、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含む。
【0077】
ある実施態様においては、RAGEポリペプチドは、イムノグロブリンドメインまたは(その断片などの)イムノグロブリンドメインの部分に連結されることができる。1つの実施態様においては、イムノグロブリンドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgGのCH2またはCH3ドメインのうちの少なくとも1つの部分を含む。
【0078】
融合タンパク質は、組換えDNA技術によって設計されることができる。例えば、1つの実施態様においては、本発明は、第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEポリペプチドをコードする単離された核酸配列を含んでよい。ある実施態様においては、RAGEポリペプチドは、RAGEリガンド結合部位を含んでよい。
【0079】
RAGEタンパク質またはポリペプチドは、(配列番号1などの)完全長ヒトRAGE、またはヒトRAGEの断片を含んでよい。ある実施態様においては、RAGEポリペプチドは、いかなるシグナル配列残基も含まない。RAGEのシグナル配列は、完全長RAGE(配列番号1)の残基1〜22または残基1〜23を含んでよい。別の実施態様においては、RAGEポリペプチドは、ヒトRAGEに対して70%、80%、または90%同一の配列またはその断片を含んでよい。例えば、1つの実施態様において、RAGEポリペプチドは、メチオニンよりもグリシンを第一の残基として含む、ヒトRAGEまたはその断片を含んでよい(例えば、Neeper et al., (1992)を参照のこと)。或いは、ヒトRAGEは、シグナル配列が除去された完全長RAGE(配列番号2または配列番号3)(図1A及び1B)またはそのアミノ酸配列の部分を含んでよい。本発明の融合タンパク質はまた、sRAGE(例えば、配列番号4)、sRAGEに対して90%同一のポリペプチド、またはsRAGEの断片を含んでよい。例えば、RAGEポリペプチドは、ヒトsRAGEまたはその断片であって、メチオニンよりもグリシンを第一の残基として含むものを含んでよい(例えば、Neeper et al., (1992)を参照のこと)。或いは、ヒトRAGEは、シグナル配列が除去されたsRAGE(例えば、配列番号5または配列番号6)(図1C)またはそのアミノ酸配列の部分を含んでよい。他の実施態様においては、RAGEタンパク質はVドメインを含んでよい(例えば、配列番号7または配列番号8;図1D)。或いは、Vドメインに対して90%同一の配列またはその断片が使用されてよい。或いは、RAGEタンパク質はVドメインの部分を含むRAGEの断片(例えば、配列番号9または配列番号10、図1D)を含んでよい。ある実施態様においては、リガンド結合部位は、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含んでよい。さらに他の実施態様においては、RAGE断片は合成ペプチドである。
【0080】
ある実施態様においては、核酸配列は、ヒトRAGEのアミノ酸1〜118をコードする配列番号25またはその断片を含む。例えば、配列番号25のヌクレオチド1〜348を含む配列は、ヒトRAGEのアミノ酸1〜116をコードするために使用されることができる。或いは、該核酸は、ヒトRAGEのアミノ酸1〜123をコードするために配列番号26を含むことができる。或いは、該核酸は、ヒトRAGEのアミノ酸1〜136をコードするために配列番号27を含むことができる。或いは、該核酸は、ヒトRAGEのアミノ酸1〜230をコードするために配列番号28を含むことができる。或いは、該核酸は、ヒトRAGEのアミノ酸1〜251をコードするために配列番号29を含むことができる。或いは、これらの核酸配列の断片は、RAGEポリペプチド断片をコードするために使用されることができる。
【0081】
融合タンパク質は、RAGEまたはその断片に由来しないいくつかのタイプのペプチドを含んでよい。融合タンパク質の第二のポリペプチドは、イムノグロブリンに由来するポリペプチドを含んでよい。重鎖(又はその部分)は、知られた重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、またはIgA(α)のうちのいずれの1つに由来してもよい。さらに、重鎖(又はその部分)は、知られた重鎖サブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)、或いは生理活性を変更するこれらのアイソタイプまたはサブタイプの突然変異体に由来してもよい。第二のポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはこれらのドメインのいずれか若しくは両方の部分を含んでもよい。例示的な実施態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはその部分を含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含んでよい。イムノグロブリンペプチドは、配列番号39または配列番号41の核酸配列によってコードされることができる。
【0082】
イムノグロブリン鎖のFc部分はインビボにおいて前炎症性であることができる。したがって、本発明のRAGE融合タンパク質は、イムノグロブリン由来のドメイン間ヒンジポリペプチドよりも、RAGE由来のドメイン間リンカーを含んでよい。例えば、1つの実施態様においては、融合タンパク質は組換えDNA構築物によってコードされることができる。また、該方法は、発現ベクター中に該DNA構築物を組み込むステップを含んでよい。また、該方法は、該発現ベクターを宿主細胞中にトランスフェクトすることを含んでよい。
【0083】
したがって、1つの実施態様においては、本発明は、RAGEポリペプチドをイムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに共有結合させるステップを含む、RAGE融合タンパク質の製造方法を含む。1つの実施態様において、融合タンパク質はRAGEリガンド結合部位を含んでよい。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメインまたはその部分を含んでよい。ある実施態様において、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含む。
【0084】
例えば、1つの実施態様において、本発明は、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはその断片を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドをコードする核酸を含む。1つの実施態様において、CH2ドメインまたはその断片は、配列番号42を含む。第二のポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを含んでよい。例示的な実施態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含んでよい。イムノグロブリンペプチドは、配列番号39または配列番号41の核酸配列によってコードされることができる。
【0085】
1つの実施態様においては、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、そしてRAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、RAGEポリペプチドは、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを含んでよい。イムノグロブリンのCH2ドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはこれらのドメインのいずれかまたは両方の部分を含むポリペプチドを含んでよい。例示的な実施態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはその部分を含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含んでよい。
【0086】
本発明の融合タンパク質は、RAGEからの単一または複数のドメインを含んでよい。また、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたドメイン間リンカーを含むRAGEポリペプチドは、完全長RAGEタンパク質の断片を含んでよい。例えば、1つの実施態様においては、融合タンパク質は、RAGEタンパク質由来の2つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチド由来の2つのイムノグロブリンドメインを含んでよい。第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸に連結され、第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸がRAGEの第二のイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、そして、RAGEの第二のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、融合タンパク質は、第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第一のドメイン間リンカーに連結された第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第二のRAGEドメイン間リンカーを含んでよい。例えば、RAGEポリペプチドは、V-ドメイン、C1ドメイン、これら2つのドメインを連結するドメイン間リンカー及びC1の下流の第二のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜251(配列番号19)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜251(配列番号20)またはそれに対して90%同一の配列を含んでよい。1つの実施態様において、配列番号30またはその断片を含む核酸構築物は、4つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードすることができる。
【0087】
或いは、3つのドメインの融合タンパク質は、RAGE由来の1つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチド由来の2つのイムノグロブリンドメインを含んでよい。例えば、融合タンパク質は、RAGEドメイン間リンカーを介してCH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に連結された単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含んでよい。例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜136(配列番号15)またはそれに対して90%同一の配列或いは、ヒトRAGEのアミノ酸24〜136(配列番号16)またはそれに対して90%同一の配列を含んでよい。1つの実施態様において、配列番号31またはその断片を含む核酸構築物は、3つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードすることができる。
【0088】
RAGEドメイン間リンカー断片は、天然にRAGEイムノグロブリンドメインの下流にあり、そしてしたがってそれに連結されたペプチド配列を含んでよい。例えば、RAGE Vドメインについては、ドメイン間リンカーは天然にVドメインの下流にあるアミノ酸配列を含んでよい。ある実施態様においては、リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜123に対応する配列番号21を含んでよい。或いは、該リンカーは天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含んでよい。例えば、配列番号21の上流及び下流にある数個のアミノ酸(例えば、1〜3、1〜5、又は1〜10又は1〜15アミノ酸)を含むドメイン間リンカーが使用されることができる。したがって、1つの実施態様においては、ドメイン間リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜136を含む配列番号23を含む。或いは、例えば、リンカーのいずれかの末端から1、2、または3個のアミノ酸を除去した配列番号21の断片が使用されることができる。別の実施態様においては、リンカーは、配列番号21または配列番号23に対して70%同一、または80%同一、または90%同一の配列を含むことができる。
【0089】
RAGE C1ドメインについては、リンカーは、天然にC1ドメインの下流にあるペプチド配列を含んでよい。ある実施態様においては、リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸222〜251に対応する、配列番号22を含んでよい。或いは、リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含んでよい。例えば、配列番号22の上流及び下流の数個のアミノ酸(1〜3、1〜5、又は1〜10、又は1〜15アミノ酸)を含むリンカーが使用されることができる。或いは、リンカーのいずれかの末端から1〜3、1〜5または1〜10、または1〜15のアミノ酸が除去された、配列番号22の断片が使用されることができる。例えば、1つの実施態様においては、RAGEドメイン間リンカーは、アミノ酸222〜226に対応する、配列番号24を含むことができる。或いは、ドメイン間リンカーはRAGEアミノ酸318〜342に対応する、配列番号44を含むことができる。
【0090】
該方法はさらに、DNA構築物を発現ベクター中に取り込むステップを含んでよい。したがって、ある実施態様においては、本発明は、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする発現ベクターを含む。ある実施態様においては、RAGEポリペプチドは、本明細書中に記載されたもののような、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、そしてRAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその部分を含むポリペプチドのN-末端に直接連結されるように、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを有する構築物を含む。例えば、細胞をトランスフェクトするために使用される発現ベクターは、配列番号30またはその断片、或いは配列番号31またはその断片の核酸配列を含んでよい。
【0091】
該方法はさらに、本発明の発現ベクターで細胞をトランスフェクトするステップを含んでよい。したがって、ある実施態様においては、本発明は、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を細胞が発現するように、本発明のRAGE融合タンパク質を発現する発現ベクターでトランスフェクトされた細胞を含む。ある実施態様において、RAGEポリペプチドは、本明細書中に記載されたもののような、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、そしてRAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを有する構築物を含む。例えば、発現ベクターは、配列番号30またはその断片、或いは配列番号31またはその断片の核酸配列を含んでよい。
【0092】
例えば、RAGE-IgG Fc融合タンパク質を発現するために、ヒトRAGEの異なる長さの5’cDNA配列とヒトIgG1 Fc(γ1)の3’cDNA配列を融合させることによって、プラスミドが構築されることができる。発現カセット配列は、標準的な組換え技術を用いて、pcDNA3.1発現ベクター(Invitrogen, CA)などの発現ベクター中に挿入されることができる。
【0093】
また、該方法は、発現ベクターを宿主細胞中にトランスフェクトすることを含んでよい。1つの実施態様においては、組換え体は、チャイニーズハムスター卵母細胞中にトランスフェクトされ、そして発現最適化されることができる。別の実施態様においては、細胞は0.1〜20グラム/リッター、または0.5〜10グラム/リッター、または約1〜2グラム/リッターを産生することができる。
【0094】
本分野で知られているように、かかる核酸構築物は、例えば、着目の突然変異を含むプライマーで核酸テンプレートをPCR増幅することによって、突然変異によって修飾されることができる。こうして、RAGEリガンドに対する多様な親和性を含むポリペプチドが設計されることができる。1つの実施態様においては、突然変異配列は、出発DNAに対して90%以上の同一であることができる。したがって、変異体は、ストリンジェントな条件下(すなわち、1モルの塩中、DNA二量体の融解温度(TM)よりも約20〜27℃低いことに等価である)でハイブリダイズする核酸配列を含むことができる。
【0095】
コード配列は、発現ベクターを適切な宿主中にトランスフェクトすることによって発現されることができる。例えば、組換えベクターは、チャイニーズハムスター卵母(CHO)細胞中に安定にトランスフェクトされることができ、細胞は選択されそしてクローン化された融合タンパク質を発現する。ある実施態様においては、組換え構築体を発現する細胞は、抗生物質G418を適用することによって、プラスミドにコードされたネオマイシン耐性について選択される。個々のクローンが選択され、そして、細胞上清のウエスタンブロット分析によって検出された高レベルの組換えタンパク質を発現するクローンが増殖され、そしてProtein Aカラムを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって遺伝子産物が精製されることができる。
【0096】
本発明の融合タンパク質をコードする組換え核酸の見本としての実施例を図2〜5に示す。例えば、上記のように、組換えDNA構築物によって産生された融合タンパク質は、第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEポリペプチドを含んでよい。融合タンパク質は、RAGEタンパク質に由来する2つのドメイン及びイムノグロブリンに由来する2つのドメインを含むことができる。融合タンパク質TTP-4000(TT4)をコードする、このタイプの構造を有する例示的な核酸構築物を図2(配列番号30)に示す。図2に示すように、(太字で強調された)コード配列1〜753は、RAGE N-末端タンパク質配列をコードするが、754〜1386の配列はIgG Fcタンパク質配列をコードする。
【0097】
配列番号30またはそれに対して90%同一の配列に由来する場合、融合タンパク質は配列番号32の4つのドメインのアミノ酸配列またはシグナル配列が除去された該ポリペプチド(例えば、配列番号33または配列番号34)(図4)を含むことができる。図4においては、RAGEアミノ酸配列は太字で強調されている。イムノグロブリン配列は、IgGのCH2及びCH3イムノグロブリンドメインである。図6Bに示すように、完全長TTP-4000RAGE融合タンパク質の最初の251アミノ酸は、RAGEポリペプチド配列として、アミノ酸1〜22/23を含むシグナル配列、アミノ酸23/24〜116を含む(リガンド結合部位を含む)Vイムノグロブリンドメイン、アミノ酸117〜123を含むドメイン間リンカー、アミノ酸124−221を含む第二のイムノグロブリンドメイン(C1)、及びアミノ酸222〜251を含む下流のドメイン間リンカーを、RAGEポリペプチド配列として含む。
【0098】
ある実施態様において、融合タンパク質は第二のRAGEイムノグロブリンドメインを必ずしも含まなくてよい。例えば、融合タンパク質はRAGE由来の1つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチド由来の2つのイムノグロブリンドメインを含んでよい。このタイプの融合タンパク質をコードする核酸構築物の例を図3(配列番号31)に示す。図3に示すように、(太字で強調された)ヌクレオチド1〜408からのコード配列はRAGE N-末端タンパク質配列をコードするが、409〜1041からの配列はIgG1 Fc(γ1)タンパク質配列をコードする。
【0099】
配列番号31又はそれに対して90%同一の配列に由来する場合、融合タンパク質は配列番号35の3つのドメインのアミノ酸配列または(配列番号36または配列番号37などの)シグナル配列が除去されたポリペプチド(図5)を含むことができる。図5においては、RAGEアミノ酸配列は太字で強調されている。図6Bに示すように、完全長TTP-3000RAGE融合タンパク質の最初の136アミノ酸は、アミノ酸1〜22/23を含むシグナル配列、アミノ酸23/24〜116を含む(リガンド結合部位を含む)Vイムノグロブリンドメイン、及びアミノ酸117〜136を含むドメイン間リンカーをRAGEポリペプチドとして含む。137〜346の配列は、IgGのCH2及びCH3イムノグロブリンドメインを含む。
【0100】
本発明の融合タンパク質は、第二のポリペプチドを含まないRAGEポリペプチドよりも改善されたインビボ安定性を含むことができる。融合タンパク質は、さらに修飾されて安定性、有効性、力価及びバイオアベイラビリティーが改善されることができる。したがって、本発明の融合タンパク質は、翻訳後プロセシングまたは化学的修飾によって修飾されてよい。例えば、融合タンパク質は、L-、D-、または非天然のアミノ酸、α−二置換アミノ酸、またはN-アルキルアミノ酸を含むために合成により調製されてよい。さらに、タンパク質はアセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、ホスファチジルイノシトールなどの脂質の結合、ジスルフィド結合の形成などによって修飾されることができる。融合タンパク質の生物学的安定性を増加させるために、さらにポリエチレングリコールが付加されてもよい。
【0101】
RAGEアンタゴニストのRAGE融合タンパク質への結合
本発明の融合タンパク質は、多数の適用がある。例えば、本発明の融合タンパク質は、RAGEアゴニスト、アンタゴニストまたは調節剤などのRAGEリガンドを同定するための結合アッセイに使用されることができる。
【0102】
例えば、1つの実施態様においては、本発明は以下の:(a)第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を提供し、ここで、該RAGEポリペプチドはリガンド結合部位を含み;(b)着目の化合物とRAGEに対する既知の結合親和性を有するリガンドを上記融合タンパク質と混合し;そして(c)着目の化合物の存在下における、上記知られたRAGEリガンドのRAGE融合タンパク質への結合を測定する、を含むRAGE調節剤の検出方法を提供する。ある実施態様においては、リガンド結合部位は、融合タンパク質の最もN-末端のドメインを含む。
【0103】
RAGE融合タンパク質は、RAGE調節剤の検出のためのキットも提供することができる。例えば、1つの実施態様においては、本発明のキットは、以下の:(a)陽性対照としての、RAGEに対する知られた結合親和性を有する化合物;(b)第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEポリペプチドを含むRAGE融合タンパク質、ここで、該RAGEポリペプチドはRAGEリガンド結合部位を含み;そして(c)使用のための指導書、を含むことができる。ある実施態様においては、該リガンド結合部位は、融合タンパク質の最もN-末端のドメインを含む。
【0104】
RAGEタンパク質またはポリペプチドは、(配列番号1などの)完全長ヒトRAGE、またはヒトRAGEの断片を含むことができる。ある実施態様においては、RAGEポリペプチドはいかなるシグナル配列残基も含まない。RAGEのシグナル配列は、完全長RAGE(配列番号1)の残基1〜22または残基1〜23を含むことができる。別の実施態様においては、RAGEポリペプチドは、ヒトRAGEに対して70%、80%または90%同一の配列、またはその断片を含むことができる。例えば、1つの実施態様においては、RAGEポリペプチドはメチオニンよりもグリシンが第一の残基である、ヒトRAGEまたはその断片を含むことができる(Neeper et al., (1992)を参照のこと)。或いは、ヒトRAGEは(配列番号2または配列番号3などの)(図1A及び1B)シグナル配列が除去された完全長RAGEまたは該アミノ酸配列の部分を含むことができる。本発明の融合タンパク質は、(配列番号4などの)sRAGE、sRAGEに対して90%同一のポリペプチド、またはsRAGEの断片を含むこともできる。例えば、RAGEポリペプチドは、メチオニンよりもグリシンが第一の残基である、ヒトsRAGE、またはその断片を含むことができる(Neeper et al., (1992)を参照のこと)。或いは、ヒトRAGEは(配列番号5または配列番号6などの)(図1C)シグナル配列が除去されたsRAGEまたは該アミノ酸配列の部分を含むことができる。他の実施態様においては、RAGEタンパク質は(配列番号7または配列番号8;図1Dなどの)Vドメインを含むことができる。或いは、Vドメインに90%同一の配列またはその断片も使用されてよい。或いは、RAGEタンパク質は、(配列番号9または配列番号10;図1Dなどの)Vドメインの部分を含むRAGE断片を含むことができる。ある実施態様においては、リガンド結合部位は、配列番号9、またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。さらなる他の実施態様においては、RAGE断片は合成ペプチドである。
【0105】
融合タンパク質は、RAGEまたはその断片に由来しない数種のペプチドを含むことができる。融合タンパク質の第二のポリペプチドは、イムノグロブリンに由来するポリペプチドを含むことができる。重鎖(又はその部分)は、既知の重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、またはIgA(α)のいずれに由来してもよい。さらに、重鎖(又はその部分)は、既知の重鎖サブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)、または生理活性を変更するこれらのアイソタイプまたはサブタイプの突然変異体のいずれに由来することもできる。第二のポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはこれらのドメインのいずれかまたは両方の部分を含んでもよい。例示的な実施例として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはそれらの部分を含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含んでよい。イムノグロブリンペプチドは、配列番号39または配列番号41の核酸配列によってコードされることができる。
【0106】
イムノグロブリン鎖のFc部分はインビボにおいて前炎症性であることができる。したがって、本発明のRAGE融合タンパク質は、イムノグロブリン鎖よりもRAGEに由来するFc配列を含むことができる。ある実施態様においては、融合タンパク質は、CH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドに連結されたRAGEイムノグロブリンドメインを含んでよい。1つの実施態様においては、RAGEポリペプチドは、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、かつ、RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に連結されるように、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを含むことができる。イムノグロブリンのCH2ドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはこれらのドメインの両方若しくはいずれかの部分を含むポリペプチドを含むことができる。例示的な実施態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはその部分を含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含むことができる。
【0107】
本発明の融合タンパク質は、RAGE由来の単一または複数のドメインを含むことができる。また、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたドメイン間リンカーを含むRAGEポリペプチドは、完全長RAGEタンパク質の断片を含むことができる。例えば、1つの実施態様においては、融合タンパク質は、RAGEタンパク質に由来する2つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチドに由来する2つのイムノグロブリンドメインを含むことができる。融合タンパク質は、第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸に連結され、第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸がRAGE第二イムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、そして、RAGE第二ドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第一のドメイン間リンカーに連結された第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第二のRAGEドメイン間リンカーを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドはV-ドメイン、C1ドメイン、これらの2つのドメインを連結するドメイン間リンカー、及びC1の下流の第二のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜251(配列番号19)またはそれに対して90%同一である配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜251(配列番号20)またはそれに対して90%同一である配列を含むことができる。1つの実施態様において、配列番号30またはその断片を含む核酸構築物は、4つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードすることができる。
【0108】
或いは、3つのドメインの融合タンパク質がRAGE由来の1つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチド由来の2つのイムノグロブリンドメインを含むことができる。例えば、融合タンパク質は、RAGEドメイン間リンカーを介してCH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に連結された単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜136(配列番号15)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜136(配列番号16)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。1つの実施態様において、配列番号31またはその断片を含む核酸構築物は、3つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードすることができる。
【0109】
本明細書中に記載のとおり、RAGEドメイン間リンカー断片は、天然にRAGEイムノグロブリンドメインの下流にあり、そしてしたがってそれに連結したペプチド配列を含むことができる。例えば、RAGE Vドメインについては、ドメイン間リンカーは天然にVドメインの下流にあるペプチド配列を含むことができる。ある実施態様においては、該リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜123に対応する配列番号21を含むことができる。或いは、該リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含むことができる。例えば、配列番号21の上流及び下流の数個のアミノ酸(1〜3、1〜5、又は1〜10又は1〜15など)を含むドメイン間リンカーが使用されてよい。したがって、1つの実施態様において、該ドメイン間リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜136を含む配列番号23を含む。或いは、例えば、いずれかの末端から1、2または3個のアミノ酸が除去された配列番号21の断片が使用されることができる。別の実施態様においては、リンカーは、配列番号21または配列番号23に対して70%同一、または80%同一、または90%同一の配列を含むことができる。
【0110】
RAGE C1ドメインについては、リンカーは、天然にC1ドメインの下流にあるペプチド配列を含むことができる。ある実施態様においては、該リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸222〜251に対応する配列番号22を含むことができる。或いは、該リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含むことができる。例えば、配列番号22の上流及び下流の(1〜3、1〜5、又は1〜10、又は1〜15アミノ酸である)数個のアミノ酸を含むリンカーが使用可能である。或いは、例えば、リンカーのいずれかの末端から例えば、1〜3、1〜5、または1〜10、または1〜15のアミノ酸が除去された、配列番号22に断片が使用可能である。例えば、1つの実施態様においては、RAGEドメイン間リンカーは、アミノ酸222〜226に対応する配列番号24を含むことができる。或いは、ドメイン間リンカーは、RAGEアミノ酸318〜342に対応する配列番号44を含むことができる。
【0111】
例えば、RAGE融合タンパク質は、潜在的なRAGEリガンドを同定するための結合アッセイにおいて使用されることができる。かかる結合アッセイの1つの例示的な実施態様においては、知られたRAGEリガンドは、1ウエルあたり約5マイクログラムの濃度で(Maxisorbプレートなどの)固体基材上にコーティングされることができ、ここで、各ウエルは約100マイクロリッター(μL)の総体積を含む。リガンドを吸着させるために、プレートは4℃で一夜インキュベートされる。或いは、(室温などの)より高温においてより短いインキュベーション時間が使用されてよい。リガンドの基材への吸着を可能とする時間の後、アッセイウエルは吸引され、そして(50mMイミダゾール緩衝液、pH7.2中、1%BSAなどの)ブロッキング緩衝液が、非特異的結合をブロックするために添加されてよい。例えば、ブロッキング緩衝液は、室温で1時間プレートに加えられることができる。そして、プレートは吸引され、及び/または洗浄緩衝液で洗浄されてよい。1つの実施態様において、20mMイミダゾール、150mM NaCl、0.05%Tween-20、5mM CaCl2及び5mM MgCl2を含むpH7.2の緩衝液が洗浄緩衝液として使用されてよい。そして、融合タンパク質は希釈率を増加させながら、アッセイウエルに添加されることができる。そして、RAGE融合タンパク質は、結合が平衡に達することができるように、アッセイウエル中の固定化リガンドとともにインキュベートされる。1つの実施態様において、RAGE融合タンパク質は、固定化リガンドとともに約1時間、37℃でインキュベートされる。別の実施態様において、より低い温度でのより長いインキュベーション時間が使用されることができる。融合タンパク質と固定化リガンドがインキュベートされた後、いかなる未結合融合タンパク質も除去するために、プレートは洗浄されてよい。固定化リガンドに結合した融合タンパク質は様々な方法で検出されることができる。1つの実施態様においては、検出はELISAを採用する。したがって、1つの実施態様においては、抗ヒトIgG1マウスモノクローナル抗体、ビオチン化抗マウスIgGヤギ抗体、及びアビジン結合アルカリホスファターゼを含む免疫検出複合体がアッセイウエル中に固定化された融合タンパク質に添加されることができる。免疫検出複合体は、融合タンパク質と免疫検出複合体間の結合が平衡に達するように、固定化融合タンパク質に結合させられる。例えば、該複合体は、融合タンパク質に室温で1時間結合させられる。その時点で、いかなる未結合複合体もアッセイウエルを洗浄緩衝液で洗浄することによって除去されることができる。結合複合体は、アルカリホスファターゼの基質、パラ−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)を加え、そしてPNPPのパラ−ニトロフェノール(PNP)への変換を405nmの吸収の増加として測定することによって、検出されることができる。
【0112】
ある実施態様において、RAGEリガンドは、ナノモル(nM)またはマイクロモル(μM)の親和性をもってRAGE融合タンパク質に結合する。RAGEリガンドの本発明のRAGE融合タンパク質への結合を例解する実験を図7に示す。初期濃度がそれぞれ1.082mg/mL及び370μg/mLである、TTP-3000(TT3)及びTTP-4000(TT4)溶液を調製した。図7に示すように、様々な希釈率において融合タンパク質TTP-3000及びTTP-4000は固体化されたRAGEリガンドAmyloid-beta(Aベータ)(BiosourceからのAmyloid Beta (1-40))、S100b(S100)、及びアンフォテリン(Ampho)に結合することができ、吸収が増加する。(BSAのみによるコーティングなどの)リガンドの非存在下では、吸収は増加しない。
【0113】
本発明の結合アッセイは、RAGEへのリガンドの結合を定量するために使用可能である。別の実施態様において、RAGEリガンドは、本発明の融合タンパク質に、0.1〜1000ナノモル(nM)、または1〜500nM、または10〜80nMの範囲の結合親和性をもって結合することができる。
【0114】
本発明の融合タンパク質は、RAGEに結合する能力を有する化合物を同定するために使用されることもできる。図8及び9にそれぞれしめすとおり、RAGEリガンドは、TTP-3000(TT3)またはTTP-4000(TT4)融合タンパク質への結合に関して固定化されたアミロイドベータと競合するその能力についてアッセイされることができる。したがって、10μMの最終アッセイ濃度(FAC)のRAGEリガンドは、アミロイド−ベータへのRAGE融合タンパク質の結合を、最初のTTP-4000溶液(図8)またはTTP-3000(図9)の1:3、1:10、1:30及び1:100の濃度において置換することができることがわかる。
【0115】
細胞エフェクターの調節
本発明の融合タンパク質の実施態様は、RAGEによって仲介される生物学的応答を調節するために使用されることができる。例えば、融合タンパク質は、RAGE誘発性の遺伝子発現の増加を調節するために設計されることができる。したがって、ある実施態様においては、本発明の融合タンパク質は生物学的酵素の機能を調節するために使用されることができる。例えば、RAGE及びそのリガンドとの相互作用は、酸化的ストレス及びNF-κBの活性化を生じさせ、そしてNF-κβはIL-1β、TNF-αなどのサイトカインの遺伝子を制御する。さらに、p21ras、MAPキナーゼ、ERK1、及びERK2を含むいくつかの他の制御経路が、AGE及び他のリガンドのRAGEへの結合によって活性化されることが示されている。
【0116】
細胞エフェクターTNF-αの発現を調節するための本発明の融合タンパク質の使用を図10に示す。THP-1骨髄細胞は、10%FBSを補充したRPMI-1640培地中で培養されることができ、S100bによるRAGEの刺激を介してTNF-αを分泌するように誘導される。かかる刺激がRAGE融合タンパク質の存在下で起こる場合、RAGEへのS100bの結合によるTNF-αの誘導は阻害されることができる。したがって、図10に示すように、10μgのTTP-3000(TT3)またはTTP-4000(TT4)RAGE融合タンパク質の添加は、S100bによるTNF-αの誘導を約50%〜75%減少させる。融合タンパク質TTP-4000は、TNF-αのS100bによる誘導をブロックすることにおいて、少なくともsRAGEと同様に有効である(図10)。RAGE配列についてのTTP-4000及びTTP-3000の阻害特異性は、IgGのみがS100b刺激細胞に添加された実験によって示される。IgGとS100bのアッセイへの添加は、S100b単独と同じTNF-αレベルを示す。
【0117】
RAGE融合タンパク質の生理学的特性
sRAGEがRAGE-介在性疾患の調節において治療的利益を有することができる一方、ヒトsRAGEは血漿中のsRAGEの比較的短い半減期に基づく独立型の治療剤としての限界を有するかもしれない。例えば、sRAGE免疫反応性の保持によって評価される場合、げっ歯類のsRAGEが正常及び糖尿病ラットで約20時間である一方、ヒトsRAGEは2時間未満の半減期を有する(Renard et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 290:1458-1466 (1999))。
【0118】
sRAGEに類似の結合特性を有するが、より安定な薬物動態プロフィールを有するRAGE治療剤を作るために、1つ以上のヒトイムノグロブリンドメインに連結されたRAGEリガンド結合部位を含むRAGE融合タンパク質が使用されることができる。本分野で知られている通り、イムノグロブリンドメインはイムノグロブリン重鎖のFc部分を含んでよい。
【0119】
イムノグロブリンFc部分は、融合タンパク質にいくつかの寄与をすることができる。例えば、Fc融合タンパク質は、かかる融合タンパク質の血清半減期をしばしば数時間から数日まで増加させることができる。薬物動態における安定性の増加は一般に、Fc断片のCH2及びCH3領域間のリンカーとFcRn受容体との相互作用の結果である(Wines et al., J. Immunol., 164:5313-5318(2000))。
【0120】
イムノグロブリンFcポリペプチドを含む融合タンパク質が増加した安定性という利益を与えることができるにもかかわらず、イムノグロブリン融合タンパク質は、宿主中に導入された場合、炎症反応を引き出すことができる。炎症反応は、その大部分が、融合タンパク質のイムノグロブリンのFc部分によることができる。前炎症性反応は、標的が(がん細胞、自己免疫疾患を引き起こすリンパ球集団などの)除去される必要のある病気の細胞種上に発現される場合、望ましい機能であるかもしれない。ほとんどの可溶性タンパク質がイムノグロブリンを活性化しないため、標的が可溶性タンパク質である場合、前炎症性反応は中立的な機能であることができる。しかしながら、その破壊が厄介な副作用に導くタイプの細胞上に標的が発現された場合、前炎症性反応はネガティブな機能であるかもしれない。また、炎症カスケードが融合タンパク質が組織標的に結合する部位において構築された場合にも、前炎症性反応はネガティブな機能であることができる。なぜなら、炎症の多くのメディエーターが周囲の組織に対して有害であり、及び/または全身的な影響を及ぼすことができる。
【0121】
イムノグロブリンFc断片上の主要な前炎症性部位は、CH1及びCH2の間のヒンジ領域上にある。このヒンジ領域は、多様な白血球上のFcR1-3と相互作用し、これらの細胞が標的を攻撃する引き金となる(Wines et al., J. Immunol., 164:5313-5318 (2000))。
【0122】
RAGE介在性疾患のための治療剤として、RAGE融合タンパク質は前炎症性反応が起こることを必要としない。したがって、本発明のRAGE融合タンパク質の実施態様は、イムノグロブリンドメインに連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を含むことができ、ここで、イムノグロブリン由来のFcヒンジ領域が除去されてRAGEポリペプチドで置換される。こうして、炎症細胞上でのRAGE融合タンパク質とFc受容体の間の相互作用が最小化されることができる。しかしながら、融合タンパク質の様々なイムノグロブリンドメイン間の適切なスタッキング及び他の3次元構造の相互作用を維持することは重要であるだろう。したがって、本発明の融合タンパク質の実施態様は、生物学的に不活性であるが、構造的に類似した、RAGEのV及びC1ドメインを分離するRAGEドメイン間リンカー、またはRAGEのC1及びC2ドメインを分離するリンカーをイムノグロブリン重鎖の正常なヒンジ領域の代わりに置換することができる。したがって、融合タンパク質のRAGEポリペプチドは、天然にはRAGEイムノグロブリンドメインの下流に見出されてRAGEイムノグロブリンドメイン/リンカー断片を形成する、ドメイン間リンカー配列を含むことができる。こうして、RAGEまたはイムノグロブリンのいずれかの寄与による、イムノグロブリンドメイン間の3次元相互作用が維持されることができる。
【0123】
ある実施態様においては、本発明のRAGE融合タンパク質は、sRAGEに比べて実質的に増加した薬物動態の安定性を含むことができる。例えば、図11は、RAGE融合タンパク質TTP-4000がそのリガンドを飽和したら、その半減期は300時間を超えることができることを示す。これは、ヒト血漿中でわずか数時間であるsRAGEの半減期とは対照的である。
【0124】
したがって、ある実施態様においては、本発明のRAGE融合タンパク質は、許容できない量の炎症を生じさせずにRAGE介在性疾患を治療するための手段として、生理学的リガンドのRAGEへの結合をアンタゴナイズするために使用されることができる。本発明の融合タンパク質は、IgGに比べて、実質的に減少した前炎症性反応を生じることを示す。例えば、図12に示すように、RAGE融合タンパク質TTP-4000は、ヒトIgG刺激によるTNF-α放出が検出される条件下ではTNF-αの細胞からの放出を刺激しない。
【0125】
RAGE融合タンパク質による病気の治療
本発明は、ヒト対象におけるRAGE介在性障害の治療方法も含む。ある実施態様においては、該方法は、第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEリガンド結合部位を含むRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を対象に投与することを含むことができる。1つの実施態様において、融合タンパク質はRAGEリガンド結合部位を含んでよい。ある実施態様において、リガンド結合部位は最もN-末端のドメインを含んでよい。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメイン、またはその部分を含んでよい。ある実施態様において、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9またはそれに対して90%同一である配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一である配列を含む。
【0126】
ある実施態様においては、RAGEポリペプチドは、イムノグロブリンドメインまたは(その断片などの)イムノグロブリンドメインの部分に連結されることができる。1つの実施態様において、イムノグロブリンドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgGのCH2またはCH3ドメインのうちの少なくとも1つの少なくとも一部分を含む。
【0127】
RAGEタンパク質またはポリペプチドは、(配列番号1などの)完全長ヒトRAGEまたはヒトRAGEの断片を含むことができる。ある実施態様においては、RAGEポリペプチドはいかなるシグナル配列残基も含まない。RAGEのシグナル配列は完全長RAGE(配列番号1)の残基1〜22または残基1〜23のいずれかを含むことができる。別の実施態様においては、RAGEポリペプチドは、ヒトRAGEに対して70%、80%または90%同一の配列あるいはその断片を含むことができる。例えば、1つの実施態様においては、RAGEポリペプチドは、メチオニンよりもグリシンを第一の残基として含む、ヒトRAGEまたはその断片を含むことができる(Neeper et al., (1992)などを参照のこと)。或いは、ヒトRAGEは、シグナル配列が除去された完全長RAGE(配列番号2または配列番号3など)(図1A及び1B)またはそのアミノ酸配列の部分を含むことができる。本発明の融合タンパク質はまた、(配列番号4などの)sRAGE、sRAGEに90%同一のポリペプチド、またはsRAGEの断片も含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、メチオニンよりもグリシンを第一の残基として含む、ヒトsRAGEまたはその断片を含むことができる(例えば、Neeper et al., (1992)を参照のこと)。或いは、ヒトRAGEは、シグナル配列が除去されたsRAGE(例えば、配列番号5または配列番号6)(図1C)またはそのアミノ酸配列の部分を含むことができる。他の実施態様においては、RAGEタンパク質は、Vドメインを含むことができる(配列番号7または配列番号8;図1Dなど)。或いは、Vドメインに対して90%同一の配列またはその断片が使用されてよい。或いは、RAGEタンパク質は、Vドメインの部分(配列番号9または配列番号10;図1D)を含むRAGEの断片を含むことができる。ある実施態様においては、リガンド結合部位は、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。さらに他の実施態様においては、RAGE断片は合成ペプチドである。
【0128】
融合タンパク質は、RAGEまたはその断片に由来しない数種のペプチドを含むことができる。融合タンパク質の第二のポリペプチドは、イムノグロブリン由来のポリペプチドを含むことができる。重鎖(又はその部分)は、知られた重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、またはIgA(α)のいずれか1つに由来することができる。さらに、重鎖(又はその部分)は、知られた重鎖サブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)、或いは生理活性を変化させるこれらのアイソタイプまたはサブタイプの突然変異体のいずれか1つに由来してもよい。第二のポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはこれらのドメインのいずれかまたは両方の部分を含むことができる。例示的な実施態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはその部分を含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含むことができる。イムノグロブリンペプチドは、配列番号39または配列番号41の核酸配列によってコードされることができる。
【0129】
例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜116(配列番号7)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜116(配列番号8)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、RAGEポリペプチドは、RAGEのC1ドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸124〜221(配列番号11)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、他の実施態様においては、RAGEポリペプチドは、RAGEのC2ドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸227〜317(配列番号12)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜123(配列番号13)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜123(配列番号14)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、RAGEポリペプチドは、V-ドメイン、C1ドメイン及びこれらの2つのドメインを連結するドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜226(配列番号17)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜226(配列番号18)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、RAGEポリペプチドは、sRAGE(すなわち、V、C1、及びC2ドメイン及びドメイン間リンカーをコードする)に対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜339(配列番号5)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜339(配列番号6)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、これらの各配列の断片も使用されることができる。
【0130】
イムノグロブリン鎖のFc部分は、インビボで前炎症性であることができる。したがって、1つの実施態様において、本発明のRAGE融合タンパク質は、イムノグロブリン由来のドメイン間ヒンジポリペプチドよりもRAGEに由来するドメイン間リンカーを含む。
【0131】
したがって、1つの実施態様において、融合タンパク質はさらに、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはその断片を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含むことができる。1つの実施態様において、CH2ドメインまたはその断片は配列番号42を含む。
【0132】
1つの実施態様において、RAGEポリペプチドは、RAGEイムノグロブリンドメインのC末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、かつ、RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを含む。イムノグロブリンのCH2ドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを含むことができる。例示的な実施態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含むことができる。
【0133】
本発明の融合タンパク質は、RAGE由来の単一または複数のドメインを含むことができる。また、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたドメイン間リンカーを含むRAGEポリペプチドは、完全長RAGEタンパク質の断片を含むことができる。例えば、1つの実施態様においては、融合タンパク質は、RAGEタンパク質由来の2つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチド由来の2つのイムノグロブリンドメインを含むことができる。融合タンパク質は、第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端に連結され、第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸がRAGEの第二のイムノグロブリンドメインのC-末端に連結され、そして、RAGEの第二のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第一のドメイン間リンカーに連結された第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第二のRAGEドメイン間リンカーを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、V-ドメイン、C1ドメイン、これら2つのドメインを連結するドメイン間リンカー、及びC1の下流の第二のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜251(配列番号19)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜251(配列番号20)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。1つの実施態様において、配列番号30またはその断片を含む核酸構築物は、4つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードすることができる。
【0134】
或いは、3つのドメインの融合タンパク質は、RAGE由来の1つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチド由来の2つのイムノグロブリンドメインを含むことができる。例えば、融合タンパク質は、RAGEドメイン間リンカーを介してCH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に連結された単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのV-ドメイン及び下流のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜136(配列番号15)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜136(配列番号16)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。1つの実施態様において、配列番号31またはその断片を含む核酸構築物は、3つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードすることができる。
【0135】
RAGEドメイン間リンカー断片は、天然にRAGEイムノグロブリンドメインの下流にあり、そしてしたがってそれに連結されたペプチド配列を含むことができる。例えば、RAGE Vドメインについては、ドメイン間リンカーは天然にVドメインの下流にあるアミノ酸配列を含むことができる。ある実施態様において、リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜123に対応する配列番号21を含むことができる。或いは、リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含むことができる。例えば、配列番号21の下流及び上流の(例えば、1〜3、1〜5、又は1〜10、又は1〜15アミノ酸である)数個のアミノ酸を含むドメイン間リンカーが使用されることができる。したがって、1つの実施態様においては、ドメイン間リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜136を含む配列番号23を含む。或いは、例えば、リンカーのいずれかの末端から1、2または3個のアミノ酸が除去された配列番号21の断片が使用されてもよい。別の実施態様においては、リンカーは、配列番号21または配列番号23に対して70%同一、または80%同一または90%同一の配列を含むことができる。
【0136】
RAGE C1ドメインについては、リンカーは天然にはC1ドメインの下流にあるペプチド配列を含むことができる。ある実施態様においては、リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸222〜251に対応する配列番号22を含むことができる。或いは、リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含むことができる。例えば、配列番号22の上流及び下流の(1〜3、1〜5、又は1〜10、又は1〜15アミノ酸などの)数個のアミノ酸を含むリンカーが使用されることができる。或いは、リンカーのいずれかの末端から1〜3、1〜5、又は1〜10、又は1〜15個のアミノ酸が除去された配列番号22の断片が使用されることができる。例えば、1つの実施態様において、RAGEドメイン間リンカーは、アミノ酸222〜226に対応する配列番号24を含むことができる。或いは、ドメイン間リンカーは、RAGEアミノ酸318〜342に対応する配列番号44を含むことができる。
【0137】
ある実施態様において、本発明の融合タンパク質は多様な経路で投与されることができる。本発明のRAGE融合タンパク質の投与は、腹腔内(IP)注射を採用することができる。或いは、RAGE融合タンパク質は、経口で、鼻腔内に、またはエアロゾルとして投与されることができる。他の実施態様においては、投与は静脈内(IV)である。RAGE融合タンパク質はまた、皮下に注射されることもできる。他の実施態様においては、融合タンパク質の投与は動脈内である。他の実施態様においては、投与は舌下である。また、投与は徐放性カプセルを採用することもできる。さらなる実施態様においては、投与は、坐剤などによるような経直腸的であることができる。例えば、自己投与が望ましい場合、皮下投与は慢性の障害を治療するために有用であることができる。
【0138】
治療剤としてRAGEを調節する化合物の用途を立証するために、様々な動物モデルが使用されてきた。これらのモデルの例は以下のようなものである:
a)糖尿病及び正常ラットの両方における動脈損傷後の再狭窄のラットモデルにおいて、RAGEを介して内皮、平滑筋及びマクロファージの活性化を阻害することによって、sRAGEは新生内膜の形成を阻害し(Zhou et al., Circulation 107:2238-2243 (2003));
b)sRAGEまたは抗RAGE抗体を用いる、RAGE/リガンド相互作用の阻害は、全身性のアミロイドーシスのマウスモデルにおいてアミロイドプラーク形成を減少させた(Yan et al., Nat. Med., 6:643-651(2000))。アミロイドプラークの減少に付随して、炎症性サイトカイン、インターロイキン−6(IL-6)及びマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)が減少し、並びに治療された動物におけるNF-κBの活性化が減少し;
c)(RAGEを過剰発現し、かつRAGEをドミナントネガティブに発現する)RAGEトランスジェニックマウスは、ADのマウスモデルにおいてプラーク形成及び認知障害を示し(Arancio et al., EMBO J., 23:4096-4105 (2004));
d)sRAGEによる糖尿病ラットの治療は、血管透過性を減少させ(Bonnardel-Phu et al., Diabetes, 48: 2052-2058 (1999));
e)sRAGEによる治療は、糖尿病性アポリポタンパク質E-ヌルマウスにおける動脈硬化病変を減少させ、そしてdb/dbマウスにおける糖尿病性腎症の機能的及び形態学的指数を減少させ(Hudson et al., Arch. Biochem. Biophys., 419:80-88 (2003));そして
f)sRAGEはコラーゲン誘発性の関節炎のマウスモデル(Hofmann et al., Genes Immunol., 3:123-135 (2002))、実験的アレルギー性脳脊髄塩のマウスモデル(Yan et al., Natl Med. 9:28-293 (2003))、及び炎症性腸疾患のマウスモデル(Hofmann et al., Cell. 97:889-901 (1999))において、炎症の重篤度を軽減した。
【0139】
したがって、ある実施態様においては、本発明の融合タンパク質は、RAGEにより仲介される糖尿病の症状及び/または糖尿病の結果としての合併症を治療するために使用されることができる。別の実施態様においては、糖尿病または糖尿病の後期合併症の症状は、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性の脚の潰瘍、糖尿病の冠血管合併症または糖尿病性ニューロパチーを含むことができる。
【0140】
その発現が糖尿病の病理に関連する分子の受容体としてもともと同定されたRAGE自体は糖尿病の合併症の病理生理学に必須である。インビボにおいて、RAGEとそのリガンドとの相互作用の阻害は、糖尿病の合併症及び炎症の複数のモデルにおいて治療的であることが示された(Hudson et al., Arch Biochem. Biophys., 419:80-88 (2003))。例えば、抗RAGE抗体による2ヶ月の治療は、糖尿病マウスにおいて腎臓機能を正常化し、異常な腎臓の病理組織診断を減少させた(Flyvbjerg et al, Diabetes 53:166-172 (2004))。さらに、RAGEリガンドに結合し、RAGE/リガンド相互作用を阻害する可溶性形態のRAGE(sRAGE)による治療は、糖尿病性アポリポタンパク質E-ヌルマウスにおける動脈硬化病変を減少させ、そしてdb/dbマウスにおける糖尿病性腎症の機能的及び形態学的病理を軽減した(Bucciarelli et al., Circulation 106: 2827-2835 (2002))。
【0141】
また、高血糖症及び全身的または局所的な酸化物ストレスに関連する他の状態の存在下、究極的に糖化最終産物(AGE)を形成する、巨大分子の非酵素的な糖酸化が、腎障害における炎症部位で亢進されることが示された(Dyer et al., J. Clin. Invest., 91:2463-2469 (1993);Reddy et al., Biochem., 34:10872-10878 (1995);Dyer et al., J. Biol. Chem., 266:11654-11660 (1991);Degenhardt et al., Cell Mol. Biol., 44:1139-1145 (1998))。透析に関連するアミロイドーシスの患者において見出されるAGE-β2-ミクログロブリンからなる関節のアミロイド(Miyata et al., J. Clin. Invest. 92:1243-1252 (1993);Miyata et al., J. Clinl Invest., 98:1088-1094 (1996))におけるように局所的に、或いは一般に、糖尿病患者の脈管構造及び組織(Schmidt et al., Nature Med. 1:1002-1004 (1995))によって例示されるように、AGEの脈管構造中での蓄積は発生することができる。糖尿病患者における経時的なAGEの進行性の蓄積は、内因性のクリアランスメカニズムは、AGE蓄積部位において有効に機能することができないことを示唆する。かかる蓄積したAGEは、多くのメカニズムによって細胞の性質を変化させる能力を有する。RAGEが正常な脈管構造及び組織中では低いレベルで発現されるにもかかわらず、受容体のリガンドが蓄積する環境においては、RAGEが上方調節されることが示された(Li et al., J. Biol. Chem. 272:16498-16506 (1997);Li et al., J. Biol. Chem. 273:30870-30878 (1998);Tanaka et al., J.Biol. Chem., 275:25781-25790 (2000)。RAGEの発現は、糖尿病の脈管構造中の内皮、平滑筋細胞及び浸潤性の単核食細胞において増加する。細胞培養における研究も、AGE-RAGE相互作用が血管の恒常性に重要な細胞の性質を変化させることを示している。
【0142】
糖尿病に関連する病理の治療におけるRAGE融合タンパク質の使用を図13に示す。RAGE融合タンパク質TTP-4000が、血管損傷後の平滑筋の増殖と血管内膜の拡張の測定を含む、再狭窄の糖尿病ラットモデルにおいて評価された。図13に示されるように、TTP-4000治療は、糖尿病に関連する再狭窄における内膜/中膜(I/M)比を用量応答性に顕著に減少させることができる(図13A;表1)。また、TTP-4000治療は、再狭窄に関連する血管平滑筋細胞の増殖を用量応答性に顕著に減少させることができる。
【0143】
【表1】
【0144】
他の実施態様においては、本発明の融合タンパク質は、アミロイドーシス及びアルツハイマー病を治療または逆行させるためにも使用されることができる。RAGEは、アミロイドベータ(Aβ)並びにSAA及びアミリンを含む他のアミロイド生成性のタンパク質の受容体である(Yan et al, Nature, 382:685-691 (1996);Yan et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 94:5296-5301 (1997);Yan et al., Nat. Med., 6:643-651 (2000);Sousa et al., Lab Invest., 80:1101-1110 (2000))。また、AGE、S100b及びAβタンパク質を含むRAGEリガンドは、ヒトにおける老人斑の周囲の組織中に見出される(Luth et al., Cereb. Cortex 15:211-220 (2005);Petzold et al., Neurosci. Lett., 336:167-170 (2003);Sasaki et al., Brain Res., 12:256-262 (2001);Yan et al., Restor. Neurol Neurosci., 12:167-173 (1998))。サブユニットの組成(アミロイド−βペプチド、アミリン、血清アミロイドA、プリオン由来のペプチド)に関係なくRAGEがβシート繊維状物質に結合することが示された(Yan et al, Nature, 382:685-691 (1996);Yan et al., Nat. Med. 6:643-651 (2000))。さらに、アミロイドの沈着は、RAGE発現を亢進させることが示された。例えば、アルツハイマー病(AD)患者の脳においては、ニューロン及びグリアにおいてRAGEの発現が増加する(Yan et al., Nature 382:685-691 (1996))。RAGEリガンドの発現と同時に、RAGEはADを有する個人の海馬中の星状細胞およびミクログリア細胞において上方調節される(Lue et al., Exp. Neurol., 171:29-45 (2001))。これらの発見は、RAGEを発現する細胞が老人斑の近傍においてRAGE/RAGEリガンド相互作用を介して活性化されることを示唆する。インビトロにおいても、ミクログリア細胞のAβ介在性の活性化が、RAGEのリガンド結合ドメインに対する抗体でブロックされることができる(Yan et al., Proc. Natl, Acad. Sci., USA, 94:5296-5301 (1997))。RAGEが線維の集合の中心としての役割を果たすことが可能であることも実証された(Deane et al., Nat. Med. 9:907-913 (2003))。
【0145】
sRAGEまたは抗RAGE抗体のいずれかを用いるRAGE/リガンド相互作用のインビボでの阻害も、全身性のアミロイドーシスのマウスモデルにおいてアミロイドプラーク形成を減少させることができる(Yan et al., Nat. Med. 6:643-651 (2000))。ニューロンにおいてSweden変異及びLondon変異(突然変異体hAPP)を有するヒトRAGE及びヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)を過剰発現する、ダブルトランスジェニックマウスは、それらのシングルミュータントhAPPトランスジェニック対応物よりも早く学習障害及び神経病理学的な異常を発生した。対照的に、同じミュータントhAPPバックグラウンドにおいて、ドミナントネガティブな形態のRAGEを発現するニューロンによりAβシグナリング能力が低下したダブルトランスジェニックマウスは、それらのシングルAPPトランスジェニック対応物に比べて、遅い、神経病理学的異常及び学習異常を生じた(Arancio et al., EMBO J., 23:4096-4105(2004))。
【0146】
さらに、RAGE−アミロイド相互作用の阻害は、細胞性RAGE及び細胞ストレスマーカーの発現(並びにNF-κBの活性化)を低下させ、そしてアミロイド沈着を減少させることが示され(Yan et al., Nat Med. 6:643-651 (2000))、(初期段階においても)アミロイドに富む環境、並びにアミロイドの蓄積という両方の心配な細胞の性質におけるRAGE-アミロイド相互作用の役割を示唆している。
【0147】
したがって、本発明のRAGE融合タンパク質は、アミロイドーシスを治療し、そしてアルツハイマー病(AD)に関連するアミロイドプラーク及び認知障害を減少させることにも使用されることができる。上記のように、sRAGEは、ADの動物モデルにおける脳内のアミロイドプラーク形成及び引き続く炎症性マーカーの増加を減少させることが示された。図14A及び14Bは、ADを有し、そしてTTP-4000またはマウスsRAGEで3ヶ月間治療されたマウスは、ビヒクルまたはヒトIgG陰性対照(IgG1)を受容したマウスよりも、少ないアミロイドベータ(Aβ)プラーク及びより低度の認知障害を有した。sRAGEのように、TTP-4000もまた、ADに関連する炎症性サイトカインIL-1及びTNF-αを減少させることができる(データは示さない)。
【0148】
本発明の融合タンパク質は、動脈硬化及び他の冠血管系の障害を治療するためにも使用されることができる。したがって、虚血性心疾患が糖尿病患者において特に高いことが示されている(Robertson, et al., Lab Invest., 18:538-551 (1968);Kannel et al., J. Am. Med. Assoc., 241:2035-2038 (1979);Kannel et al., Diab. Care, 2:120-126 (1979))。さらに、糖尿病患者における動脈硬化が、糖尿病にかかっていない患者よりもより加速され、広範囲に及ぶことを研究が示した(例えば、Waller et al., Am. J. Med., 69:498-506 (1980);Crall et al, Am. J. Med. 64:221-230 (1978);Hamby et al., Chest, 2:251-257 (1976);及びPyorala et al., Diab. Metab. Rev., 3:463-524 (1978)を参照のこと)。糖尿病の状況下での加速された動脈硬化に多くの理由があるにもかかわらず、AGEの減少がプラーク形成を低下させうることが示された。
【0149】
例えば、本発明のRAGE融合タンパク質は、脳卒中を治療することにも使用されることができる。病気に関連した脳卒中の動物モデルにおいて、TTP-4000をsRAGEと比較した場合、TTP-4000は、梗塞体積の顕著な減少を提供することがわかった。このモデルにおいて、マウスの中部頚動脈(middle carotid artery)を結紮し、梗塞を形成するために再かん流した。RAGE融合タンパク質の脳卒中の治療または予防における有効性を評価するために、再かん流の直前にマウスをsRAGEまたはTTP-4000または対照イムノグロブリンで処置した。表2からわかるように、これらの動物において梗塞領域を制限することにおいてTTP-4000がsRAGEよりも有効であったことは、そのより良い血漿中半減期によってTTP-4000がsRAGEよりも有効であり、sRAGEよりも大きな保護を維持することができたことを示唆している。
【0150】
【表2】
【0151】
他の実施態様においては、本発明の融合タンパク質は癌を治療するために使用されることができる。1つの実施態様においては、本発明の融合タンパク質を用いて治療される癌は、RAGEを発現する癌細胞を含む。例えば、本発明のRAGE融合タンパク質で治療されることのできる癌は、いくつかの肺癌、いくつかの神経膠腫、いくつかの乳頭腫などを含む。アンフォテリンは、RAGEと相互作用することがわかっている、高移動度群Iの非ヒストン染色体DNA結合タンパク質である(Rauvala et al., J. Biol. Chem. 262:16625-16635 (1987);Parkikinen et al., J. Biol. Chem. 268:19726-19738 (1993))。アンフォテリンが神経突起の伸長を促進し、並びに(細胞移動性に寄与することでも知られている)線溶系におけるプロテアーゼ複合体の集合のための表面としての役割を果たすことが示されている。さらに、RAGEをブロックすることの局所的な腫瘍成長の阻害効果は、原発腫瘍モデル(C6神経膠腫)、ルイス肺癌転移モデル(Taguchi et al., Nature 405:354-360 (2000))、及びv-Ha-rasトランス遺伝子を発現するマウスにおける自然発生的乳頭腫(Leder et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 87:9178-9182 (1990))において観察されている。
【0152】
さらに他の実施態様においては、本発明の融合タンパク質は、炎症を治療するために使用されることができる。例えば、別の実施態様においては、本発明の融合タンパク質は自己免疫に関連した炎症、炎症性腸疾患に関連した炎症、リューマチ関節炎に関連した炎症、乾癬に関連した炎症、多発性硬化症に関連した炎症、低酸素症に関連した炎症、脳卒中に関連した炎症、心臓発作に関連した炎症、出血性ショックに関連した炎症、敗血症に関連した炎症、器官の移植に関連した炎症、または創傷治癒の障害を治療するために使用される。
【0153】
例えば、血栓溶解療法のあと、顆粒球などの炎症性細胞は虚血組織に浸潤し、そして低酸素症によって死滅させられるよりも多くの細胞を破壊することのできる酸素ラジカルを生成する。抗体または他のタンパク質アンタゴニストによる、好中球が組織に浸潤することができることを担う好中球上の受容体の阻害は、反応を軽減することが示されている。RAGEがこの好中球受容体のリガンドであるため、RAGEの断片を含む融合タンパク質は、おとりとして作用し、そして好中球が再かん流部位に移動することを防ぎ、そしてさらなる組織の破壊を予防する。炎症の予防におけるRAGEの役割は、sRAGEが、おそらくRAGEを介する内皮、平滑筋細胞の増殖及びマクロファージの活性化を阻害することによって、糖尿病ラット及び正常ラットの動脈損傷後の再狭窄のラットモデルにおける新内膜の増殖を阻害することを示す研究によって示されることができる(Zhou et al., Circulation, 107:2238-2243 (2003))。さらに、sRAGEは、遅延型過敏症、実験的自己免疫性脳炎及び炎症性腸疾患を含む炎症のモデルを阻害した(Hofman et al., Cell, 97:889-901 (1999))。
【0154】
また、ある実施態様においては、本発明の融合タンパク質は、自己免疫に基づく障害を治療するために使用されることができる。例えば、本発明の融合タンパク質は、腎障害を治療するために使用されることができる。したがって、本発明の融合タンパク質は、全身性のループス腎炎または炎症性のループス腎炎を治療するために使用されることができる。例えば、S100/カルグラニュリンは、結合ペプチドによって結合された2つのEF-ハンド領域に特徴を有する、密接に関連したカルシウム結合ポリペプチドのファミリーを含むことが示されている(Schafer et al., TIBS, 21:134-140 (1996);Zimmer et al., Brain Res. Bull., 37:417-429 (1995);Rammes et al., J. Biol. Chem., 272:9496-9502 (1997):Lugering et al., Eur. J. Clin. Invest., 25:659-664 (1995))。それらがシグナルペプチドを有さないにもかかわらず、嚢胞性線維症及びリューマチ関節炎におけるように、S100/カルグラニュリンは、特に慢性の免疫/炎症性反応部位において、細胞外空間へのアクセスを得ている。RAGEは、S100/カルグラニュリンファミリーの多くのメンバーの受容体であり、リンパ球及び単核食細胞などの細胞に対するそれらの前炎症性効果を仲介する。また、遅発性過敏症反応、IL-10ヌルマウスにおける大腸炎、コラーゲン誘発性関節炎及び実験的自己免疫性脳炎モデルについての研究も、(おそらく、S-100/カルグラニュリンとの)RAGE-リガンド相互作用が炎症カスケードにおいて近接した役割を果たすことを示唆する。
【0155】
したがって、さまざまな選ばれた実施態様において、本発明は、対象に治療的有効量の本発明の融合タンパク質を投与することによって、対象におけるAGEとRAGEの相互作用を阻害する方法を提供することができる。本発明のRAGE融合タンパク質を用いて治療される対象は、動物であってよい。ある実施態様においては、該対象はヒトである。対象は、糖尿病、腎症、ニューロパチー、網膜症、脚の潰瘍、アミロイドーシスまたは腎障害などの糖尿病の合併症、及び炎症などのAGE関連疾患に罹患していてよい。或いは、対象はアルツハイマー病を有する個人であってよい。別の実施態様においては、対象は癌を有する個人であってよい。さらに他の実施態様においては、対象は全身性のループスエリテマトーデスまたは炎症性ループス腎炎に罹患していてよい。他の病気はRAGEにより仲介され、そして本発明の融合タンパク質を用いて治療されることができる。したがって、本発明のさらなる別な実施態様においては、融合タンパク質は、ヒトまたは動物対象におけるクローン病、関節炎、血管炎、腎症、網膜症、及びニューロパチーの治療のために使用されることができる。
【0156】
治療的有効量は、RAGEと対象中のAGEまたは他の種類の内因性RAGEリガンドとの相互作用を防ぐことができる量を含んでよい。したがって、該量は治療される対象によって変化するであろう。化合物の投与は、毎時間、毎日、毎週、毎月、毎年または1回の事象であってよい。様々な他の実施態様において、融合タンパク質の有効量は、約1ng/kg体重〜約100mg/kg体重、または約10μg/kg体重〜約50mg/kg体重、または約100μg/kg体重〜約10mg/kg体重であることができる。実際の有効量は、本分野で標準的な方法を用いる、用量/応答アッセイによって確立されることができる(Johnson et al., Diabetes. 42:1179, (1993))。したがって、当業者に知られている通り、有効量は、化合物のバイオアベイラビリティー、生物活性、及び生分解性に依存することができる。
【0157】
組成物
本発明は、医薬として許容可能な担体と混合された本発明の融合タンパク質を含む組成物を包含することができる。融合タンパク質は、第二の非RAGEポリペプチドに連結されたRAGEポリペプチドを含むことができる。1つの実施態様において、融合タンパク質は、RAGEリガンド結合部位を含むことができる。ある実施態様において、リガンド結合部位は融合タンパク質の最もN-末端のドメインを含む。RAGEリガンド結合部位は、RAGEのVドメイン、またはその部分を含むことができる。ある実施態様において、RAGEリガンド結合部位は、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含む。
【0158】
ある実施態様において、RAGEポリペプチドは、イムノグロブリンドメインまたは(その断片などの)イムノグロブリンドメインの部分に連結されることができる。1つの実施態様において、イムノグロブリンドメインを含むポリペプチドは、ヒトIgGのCH2またはCH3のうちの少なくとも1つの少なくとも1部分を含む。
【0159】
RAGEタンパク質またはポリペプチドは、(配列番号1などの)完全長ヒトRAGE、またはヒトRAGEの断片を含むことができる。ある実施態様において、RAGEポリペプチドはいかなるシグナル配列残基も含まない。RAGEのシグナル配列は、完全長RAGE(配列番号1)の残基1〜22または残基1〜23を含むことができる。別の実施態様においては、RAGEポリペプチドはヒトRAGEに対して70%、80%または90%同一の配列またはその断片を含むことができる。例えば、1つの実施態様においては、RAGEポリペプチドは、第一の残基としてメチオニンよりもグリシンを含む、ヒトRAGEまたはその断片を含むことができる(Neeper et al., (1992))。或いは、ヒトRAGEは、(配列番号2または配列番号3などの)(図1A及び1B)シグナル配列が除去された完全長RAGE或いはそのアミノ酸配列の部分を含むことができる。本発明の融合タンパク質は、(配列番号4などの)sRAGE、sRAGEに対して90%同一のポリペプチド、またはsRAGEの断片を含むこともできる。例えば、RAGEポリペプチドは、第一の残基としてメチオニンよりもグリシンを含む、ヒトsRAGE、またはその断片を含むことができる(Neeper et al., (1992))。或いは、ヒトRAGEは、(配列番号5または配列番号6などの)(図1C)シグナル配列が除去されたsRAGEまたはそのアミノ酸配列の一部分を含むことができる。他の実施態様においては、RAGEタンパク質は、(配列番号7または配列番号8;図1Dなどの)Vドメインを含むことができる。或いは、Vドメインに対して90%同一の配列またはその断片が使用されることができる。或いは、RAGEタンパク質は、(配列番号9または配列番号10;図1Dなどの)Vドメインの部分を含むRAGEの断片を含んでもよい。ある実施態様においては、リガンド結合部位は、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含んでよい。さらに他の実施態様においては、RAGE断片は合成ペプチドである。
【0160】
例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜116(配列番号7)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜116(配列番号8)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、RAGEポリペプチドは、RAGEのC1ドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸124〜221(配列番号11)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。他の実施態様においては、RAGEポリペプチドは、RAGEのC2ドメインに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸227〜317(配列番号12)またはそれに対して90%同一の配列含むことができる。或いは、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜123(配列番号13)またはそれに対して90%同一の配列、或いは、ヒトRAGEのアミノ酸24〜123(配列番号14)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、RAGEポリペプチドは、Vドメイン、C1ドメイン及びこれら2つのドメインを連結するドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜226(配列番号17)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜226(配列番号18)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、RAGEポリペプチドは、sRAGE(すなわち、V、C1、及びC2ドメイン及びドメイン間リンカーをコードする)に対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜339(配列番号5)またはそれに対して90%同一の配列、或いヒトRAGEのアミノ酸24〜223(配列番号6)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。或いは、これらの配列それぞれの断片が使用されることができる。
【0161】
融合タンパク質は、RAGEまたはその断片に由来しない数種のペプチドを含むことができる。融合タンパク質の第二のポリペプチドは、イムノグロブリンに由来するポリペプチドを含むことができる。重鎖(又はその部分)は、既知の重鎖アイソタイプ:IgG(γ)、IgM(μ)、IgD(δ)、IgE(ε)、またはIgA(α)のいずれに由来してもよい。さらに、重鎖(又はその部分)は、既知の重鎖サブタイプ:IgG1(γ1)、IgG2(γ2)、IgG3(γ3)、IgG4(γ4)、IgA1(α1)、IgA2(α2)、または生理活性を変更するこれらのアイソタイプまたはサブタイプの突然変異体のいずれに由来することもできる。第二のポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはこれらのドメインのいずれかまたは両方の部分を含んでもよい。例示的な実施例として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインまたはそれらの部分を含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含んでよい。イムノグロブリンペプチドは、配列番号39または配列番号41の核酸配列によってコードされることができる。
【0162】
イムノグロブリン鎖のFc部分はインビボにおいて前炎症性であることができる。したがって、1つの実施態様においては、本発明のRAGE融合タンパク質はイムノグロブリンに由来するドメイン間ヒンジポリペプチドよりもRAGEに由来するドメイン間リンカーを含む。
【0163】
したがって、1つの実施態様においては、融合タンパク質はさらに、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはその断片を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含むことができる。1つの実施態様において、CH2ドメインまたはその断片は配列番号42を含む。
【0164】
1つの実施態様においては、RAGEポリペプチドは、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、かつ、RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたRAGEドメイン間リンカーを含む。イムノグロブリンのCH2ドメインまたはその部分を含むポリペプチドは、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを含むことができる。例示的な実施態様として、ヒトIgG1のCH2及びCH3ドメインを含むポリペプチドは、配列番号38または配列番号40を含むことができる。
【0165】
本発明の融合タンパク質は、RAGEの単一または複数のドメインを含むことができる。また、RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたドメイン間リンカーを含むRAGEポリペプチドは、完全長RAGEタンパク質の断片も含むことができる。例えば、1つの実施態様において、融合タンパク質は、RAGEタンパク質に由来する2つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチドに由来する2つのイムノグロブリンドメインを含むことができる。融合タンパク質は、第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸に連結され、第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸がRAGEの第二のイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、そしてRAGEの第二のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第二のRAGEドメイン間リンカーに連結された第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第一のドメイン間リンカーを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、V-ドメイン、C1ドメイン、これら2つのドメインを連結するドメイン間リンカー、及びC1の下流の第二のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜251(配列番号19)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜251(配列番号20)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。1つの実施態様において、配列番号30又はその断片を含む核酸構築物は、4つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードすることができる。
【0166】
或いは、3つのドメインの融合タンパク質は、RAGE由来の1つのイムノグロブリンドメイン及びヒトFcポリペプチド由来の2つのイムノグロブリンドメインを含むことができる。例えば、融合タンパク質は、RAGEドメイン間リンカーを介してCH2イムノグロブリンドメインまたはその断片を含むポリペプチドに連結された単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含むことができる。例えば、RAGEポリペプチドは、RAGEのVドメイン及び下流のドメイン間リンカーに対応する、ヒトRAGEのアミノ酸23〜136(配列番号15)またはそれに対して90%同一の配列、或いはヒトRAGEのアミノ酸24〜136(配列番号16)またはそれに対して90%同一の配列を含むことができる。1つの実施態様において、配列番号31またはその断片を含む核酸構築物は、3つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードすることができる。
【0167】
RAGEドメイン間リンカー断片は、天然にRAGEイムノグロブリンドメインの下流にあり、そしてしたがってそれに連結したペプチド配列を含むことができる。例えば、RAGE Vドメインについては、ドメイン間リンカーは天然にVドメインの下流にあるアミノ酸配列を含むことができる。ある実施態様においては、該リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜123に対応する配列番号21を含むことができる。或いは、該リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含むことができる。例えば、配列番号21の上流及び下流の数個のアミノ酸(1〜3、1〜5、又は1〜10又は1〜15アミノ酸など)を含むドメイン間リンカーが使用されてよい。したがって、1つの実施態様において、該ドメイン間リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸117〜136を含む配列番号23を含む。或いは、例えば、リンカーのいずれかの末端から1、2または3個のアミノ酸が除去された配列番号21の断片が使用されることができる。別の実施態様においては、リンカーは、配列番号21または配列番号23に対して70%同一、または80%同一、または90%同一の配列を含むことができる。
【0168】
RAGE C1ドメインについては、リンカーは、天然にC1ドメインの下流にあるペプチド配列を含むことができる。ある実施態様においては、該リンカーは、完全長RAGEのアミノ酸222〜251に対応する配列番号22を含むことができる。或いは、該リンカーは、天然のRAGE配列のさらなる部分を有するペプチドを含むことができる。例えば、配列番号22の上流及び下流の(1〜3、1〜5、又は1〜10、又は1〜15アミノ酸である)数個のアミノ酸を含むリンカーが使用可能である。或いは、リンカーのいずれかの末端から例えば、1〜3、1〜5、または1〜10、または1〜15のアミノ酸が除去された、配列番号22の断片が使用可能である。例えば、1つの実施態様においては、RAGEドメイン間リンカーは、アミノ酸222〜226に対応する配列番号24を含むことができる。或いは、ドメイン間リンカーは、RAGEアミノ酸318〜342に対応する配列番号44を含むことができる。
【0169】
医薬として許容可能な担体は、本分野で知られた標準的な医薬として許容可能な担体のいずれを含むこともできる。担体は、希釈剤を含むことができる。1つの実施態様においては、医薬担体は液体であることができ、そして融合タンパク質または核酸構築物は溶液の形態であることができる。他の実施態様においては、医薬として許容可能な担体は、粉末、凍結乾燥粉末または錠剤の形態の固体であることができる。或いは、医薬担体は、ゲル、坐剤またはクリームであってよい。別の実施態様においては、担体はリポソーム、マイクロカプセル、ポリマーに封入された細胞またはウイルスであってよい。したがって、医薬として許容可能な担体という用語は、水、アルコール、リン酸緩衝生理食塩水、(シュークロース又はマンニトールなどの)糖、油脂または油脂/水エマルジョン若しくはトリグリセライドエマルジョンなどのエマルジョン、多様な種類の湿潤剤、錠剤、被覆錠剤及びカプセルを包含するが、これらに限定されない、任意の標準的な医薬として許容可能な担体を含むことができる。
【0170】
本発明のRAGE融合タンパク質の投与はさまざまな経路を使用することができる。したがって、本発明のRAGE融合タンパク質の投与は、腹腔内(IP)注射を使用することができる。或いは、RAGE融合タンパク質は、経口で、鼻腔内に、またはエアロゾルとして投与されることができる。他の実施態様においては、投与は静脈内(IV)である。RAGE融合タンパク質は、皮下注射されることもできる。他の実施態様においては、融合タンパク質の投与は動脈内である。他の実施態様においては、投与は舌下である。また、投与は徐放性カプセルを使用することもできる。さらに他の実施態様においては、投与は、坐剤などによるような経直腸であることができる。例えば、自己投与が望ましい場合、慢性の障害を治療するために皮下投与が有用であることができる。
【0171】
医薬組成物は、無毒性の非経口的に許容可能な溶媒またはビヒクル中の滅菌注射用溶液の形態であることができる。使用されることのできる許容可能なビヒクル及び溶媒のなかには、水、リンガー溶液、3−ブタンジオール、等張性塩化ナトリウム溶液、または、生理的に許容可能なクエン酸、酢酸、グリシン、ヒスチジン、リン酸、トリスまたはコハク酸緩衝液などの水性緩衝液がある。注射用溶液は、化学的分解及び凝集物形成に対して保護するための安定化剤を含むことができる。安定化剤は、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)及びブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)などの抗酸化剤、緩衝剤(クエン酸、グリシン、ヒスチジン)、または界面活性剤(ポリソルベート80、ポロキサマー)を含むことができる。溶液は、ベンジルアルコール及びパラベンなどの抗菌性保存剤も含むことができる。溶液は、凝集を減少させるために、ポリソルベート80、ポロキサマー、または本分野の他の界面活性剤などの界面活性剤を含むこともできる。溶液は、組成物の浸透圧をヒト血液に類似するように調節するために、糖または食塩水などの他の添加剤を含むこともできる。
【0172】
医薬組成物は、希釈剤で再構成した上で注射するための滅菌凍結乾燥粉末の形態であることができる。希釈剤は、注射用の水、静菌性の注射用の水または滅菌生理食塩水の形態であることができる。凍結乾燥粉末は、融合タンパク質の溶液を凍結乾燥して、乾燥形態のタンパク質を生成することによって作られることができる。本分野で知られている通り、凍結乾燥タンパク質は、一般に、タンパク質の液体溶液よりも高い安定性及び長い保存寿命を有する。凍結乾燥粉末(ケーキ)は、pHを調節するために、生理的に許容可能なクエン酸、酢酸、グリシン、ヒスチジン、リン酸、トリスまたはコハク酸緩衝剤などの緩衝剤を含むことができる。凍結乾燥粉末はまた、その物理的及び化学的安定性を維持するために、リオプロテクタント(lyoprotectant)を含むこともできる。一般に使用されるリオプロテクタントは、非還元糖およびシュークロース、マンニトール、またはトレハロースなどのジサッカライドである。凍結乾燥粉末は、化学的分解及び凝集物形成に対して保護するための安定化剤を含むことができる。安定化剤は、抗酸化剤(BHA、BHT)、緩衝剤(クエン酸、グリシン、ヒスチジン)、または界面活性剤(ポリソルベート80、ポロキサマー)を含むことができるが、これらに限定されない。凍結乾燥粉末はまた、ベンジルアルコール及びパラベンなどの抗菌性保存剤も含むことができる。凍結乾燥粉末はまた、凝集を減少させるために、ポリソルベート80及びポロキサマーなどのこれらに限られない界面活性剤を含むこともできる。凍結乾燥粉末は、粉末の再構成後にヒト血液に類似するように浸透圧を調節するための添加剤(例えば、糖または食塩水)も含むことができる。凍結乾燥粉末はまた、糖およびジサッカライドなどの充填剤も含むことができる。
【0173】
注射のための医薬組成物は、油性の懸濁液の形態であることもできる。この懸濁液は、上記の好適な分散剤または湿潤剤及び懸濁剤を用いて知られた方法によって製剤されることができる。さらに、滅菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒として便利に使用される。この目的のために、合成モノ−またはジグリセリドを使用する任意のブランドの固定油が使用されることができる。また、油性懸濁液は、活性成分を、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはココナツ油などの植物油または液体パラフィンなどの鉱油中に懸濁することによって製剤されることができる。例えば、オレイン酸などの脂肪酸は注射剤の調製において使用されることができる。油性懸濁液は、蜜蝋、固形パラフィン、またはセチルアルコールなどの増粘剤を含むことができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって保存されることができる。
【0174】
本発明の医薬組成物は、水中油型エマルジョンまたは水性懸濁液の形態であることもできる。油相は、オリーブ油、またはラッカセイ油などの植物油、或いは、液体パラフィンなどの鉱油、或いはそれらの混合物であることができる。好適な乳化剤は、アカシアゴムまたはトラガントゴムなどの天然ゴム、或いは大豆、レシチン、などの天然のホスファチド、及びモノオレイン酸ソルビタンなどのエステルまたは脂肪酸及びヘキシトール無水物に由来する部分エステル、及びポリオキシエチレンソルビタンなどの前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合産物であることができる。
【0175】
水性懸濁液は、賦形剤と混合した活性化合物を含むこともできる。かかる賦形剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴム、及びアカシアゴムなどの懸濁剤;レシチンなどの天然のホスファチドなどの分散剤または湿潤剤、またはステアリン酸ポリオキシエチレンなどの、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合産物、またはヘプタデカエチルエネオキシセタノールなどの、エチレンオキシドと長鎖脂肪酸アルコールの縮合産物、またはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトールなどの、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルとの縮合産物、またはモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンなどの、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合産物を含むことができる。
【0176】
水を加えることによって水性懸濁液を調製するために好適な分散性粉末及び顆粒は、分散剤、懸濁剤、及び1つ以上の保存剤と混合した活性化合物を提供することができる。好適な保存剤、分散剤及び懸濁剤は上記されている。
【0177】
組成物は、本発明の化合物の直腸投与のための坐剤の形態であることもできる。これらの組成物は、通常温度で固体であるが直腸温度では液体でありそして直腸中で融解して薬物を放出する、好適な非刺激性の賦形剤と薬物を混合することによって調製されることができる。かかる物質は、ココアバター及びポリオエチレングリコールなどを含む。
【0178】
局所使用のためには、本発明の化合物を含むクリーム、軟膏、ゼリー、溶液または懸濁液が使用されることができる。局所適用は、うがい薬、ガーグルも含むことができる。好適な保存剤、BHA及びBHTなどの抗酸化剤、分散剤、界面活性剤、または緩衝剤が使用されることができる。
【0179】
本発明の化合物は、小さな単層ベシクル、大きな単層ベシクル、及び多層ベシクルなどのリポソームデリバリーシステムの形態で投与されることもできる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなどの多様なリン脂質から形成されることができる。
【0180】
ある実施態様においては、本発明の化合物は、代謝酵素による循環からのクリアランスをさらに遅らせるために修飾されることができる。1つの実施態様においては、化合物は、ポリエチレングリコール(PEG)、PEGとポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドンまたはポリプロリンのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーの共有結合による付加によって修飾されることができる。かかる修飾は、水性溶液中での化合物の溶解度を増加させることもできる。PEGなどのポリマーは、1つ以上の反応性アミノ残基、スルフヒドリル残基またはカルボキシル残基に共有結合で付加されることができる。カルボン酸または炭酸誘導体の活性エステル、特にその中の脱離基が、アミノ基との反応のためのN-ヒドロキシサクシニミド、p−ニトロフェノール、イミダゾールまたは1−ヒドロキシ−2−ニトロベンゼン−3スルホン、スルフヒドリル基との反応のための多モードのまたはハロアセチル誘導体、及び糖基との反応のためのアミノヒドラジンまたはヒドラジド誘導体であるものを含む、PEGの多数の活性化形態が記載された。
【0181】
本発明の融合タンパク質とともに使用されることのできるタンパク質製剤の調製のためのさらなる方法が米国特許第6,267,958号及び同第5,567,677号に記載されている。
【0182】
本発明のさらなる側面においては、本発明のRAGE調節剤は、アジュバント治療剤または他の知られた治療剤との併用治療剤による治療において利用される。以下は、本発明のRAGE融合タンパク質調節剤と併用して利用されることのできるアジュバント及び追加の治療剤の完全でないリストである;
【0183】
抗癌剤の薬理学的分類:
1.アルキル化剤:シクロホスファミド、ニトロソウレア、カルボプラチン、シスプラチン、プロカルバジン
2.抗生物質:ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン
3.代謝拮抗剤:メトトレキセート、シタラビン、フルオロウラシル
4.植物アルカロイド:ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、パクリタキセル
5.ホルモン:タモキシフェン、酢酸オクトレオチド、フィナステリド、フルタミド
6.生物学的反応修飾剤:インターフェロン、インターロイキン
【0184】
リューマチ関節炎の治療薬の薬理学的分類:
1.鎮痛剤:アスピリン
2.NSAID(非ステロイド系抗炎症剤):イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナック
3.DMARD(疾患修飾性抗リューマチ薬):メトトレキセート、金製剤、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン
4.生物学的反応修飾剤、DMARD:エタネルセプト、インフリキシマブ、グルココルチコイド
【0185】
糖尿病の治療薬の薬理学的分類:
1.スルホニルウレア:トルブタミド、トラザミド、グリブリド、グリピジド
2.ビグアニド:メトホルミン
3.混合型の経口剤:アカルボース、トログリタゾン
4.インスリン
【0186】
アルツハイマー病の治療薬の薬理学的分類:
1.コリンエステラーゼ阻害剤:タクリン、ドネペジル
2.抗精神病剤:ハロペリドール、チオリダジン
3.抗うつ薬:デシプラミン、フルオキセチン、トラゾドン、パロキセチン
4.抗けいれん薬:カルバマゼピン、バルプロン酸
【0187】
1つの実施態様においては、本発明はしたがって、RAGE介在性疾患の治療方法であって、そのような治療を必要とする対象に、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、抗生物質、ホルモン、生物学的反応修飾剤、鎮痛剤、NSAID、DMARD、グルココルチコイド、スルホニルウレア、ビグアニド、インスリン、コリンエステラーゼ阻害剤、抗精神病薬、抗うつ薬、および抗けいれん薬からなる群から選ばれる治療剤と併用したRAGE融合タンパク質の治療的有効量を投与することを含む上記方法を提供することができる。さらなる実施態様においては、本発明は、さらに、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、抗生物質、ホルモン、生物学的反応修飾剤、鎮痛剤、NSAID、DMARD、グルココルチコイド、スルホニルウレア、ビグアニド、インスリン、コリンエステラーゼ阻害剤、抗精神病薬、抗うつ薬、及び抗けいれん薬から成る群から選らばれる、1つ以上の治療剤を含む、上記の本発明の医薬組成物を提供する。
【実施例】
【0188】
本発明の対象である本発明の概念の特徴及び利益を、以下の実施例においてさらに例解する。
【0189】
実施例1:RAGE-IgG Fc融合タンパク質の生成
RAGE-IgG Fc融合タンパク質を発現させるために2つのプラスミドを構築した。両プラスミドを、ヒトRAGEからの異なる長さの5’cDNA配列と、ヒトIgG Fc(γ1)からの同じ3’cDNA配列をライゲーションすることによって構築した。これらの発現配列(すなわち、ライゲーション産物)を次に、pcDNA3.1発現ベクター(Invitrogen, CA)中に挿入した。融合タンパク質のコード領域をコードする核酸配列を図2及び3に示す。TTP-4000融合タンパク質については、(太字で強調された)1〜753の核酸配列はRAGE N-末端タンパク質配列をコードするが、754〜1386の核酸配列はIgG Fcタンパク質配列をコードする(図2)。TTP-3000については、(太字で強調された)1〜408の核酸配列は、RAGE N-末端タンパク質配列をコードするが、409〜1041の核酸配列は、IgG Fcタンパク質配列をコードする(図3)。
【0190】
RAGE融合タンパク質を生成するために、配列番号30または配列番号31のいずれかの核酸配列を含む発現ベクターを、安定にCHO細胞中にトランスフェクトした。陽性の形質転換体を、プラスミドによって付与されたネオマイシン耐性について選択し、そしてクローン化した。上清のウエスタンブロット分析によって検出した高生産性クローンを増殖させ、そして遺伝子産物をProtein Aカラムを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。細胞が組換えTTP-4000をリッター当たり約1.3グラムのレベルで産生するように、発現を最適化した。
【0191】
2つの融合タンパク質をコードする発現されたポリペプチドを図4〜6に例解する。TTP-4000の4つのドメイン構造については、(図4に太字で示した)最初の251アミノ酸は、ヒトRAGEタンパク質(図4、6B)のシグナル配列(1〜22/23)、Vイムノグロブリン(及びリガンド結合)ドメイン(23/24〜116)、第二のドメイン間リンカー(117〜123)、第二のイムノグロブリンドメイン(CH1)(124〜221)、及び第二のリンカー(222−251)を含む。252〜461の配列は、IgGのCH2及びCH3イムノグロブリンドメインを含む。
【0192】
TTP-3000の3つのドメイン構造については、(太字で示した)最初の136アミノ酸は、ヒトRAGEタンパク質(図5、6B)のシグナル配列(1〜22/23)、Vイムノグロブリン(及びリガンド結合)ドメイン(23/24〜116)及びドメイン間リンカー配列(117〜136)を含む。さらに、TT3については、137〜346の配列は、IgGのCH2及びCH3イムノグロブリンドメインを含む。
【0193】
実施例2:RAGE-IgG1融合タンパク質の活性の試験方法
A.インビトロのリガンド結合:
知られたRAGEリガンドを、1ウエルあたり5マイクログラムの濃度でMaxisorbプレートの表面上にコーティングした。プレートを4℃で一夜インキュベートした。リガンドのインキュベーション後、プレートを吸引し、そして50mM イミダゾール緩衝液(pH7.2)中1%BSAのブロッキング緩衝液を室温で1時間、プレートに加えた。そして、プレートを吸引し、及び/または洗浄緩衝液(20mM イミダゾール、150mM NaCl、0.05%Tween-20、5mM CaCl2、及び5mM MgCl2、pH7.2)で洗浄した。初期濃度が1.082mg/mlのTTP-3000(TT3)溶液及び初期濃度が370μg/mlのTTP-4000(TT4)溶液を調製した。融合タンパク質を最初のサンプルの希釈度を増加させて加えた。RAGE融合タンパク質を37℃で1時間、固定化リガンドとともにインキュベートし、その後、プレートを洗浄し、融合タンパク質の結合についてアッセイした。21ng/100μLの最終アッセイ濃度(FAC)まで1:11,000に希釈した抗ヒトIgG1マウスモノクローナル抗体、500ng/mLのFACまで1:500に希釈したビオチン化抗マウスIgGヤギ抗体、及びアビジン結合アルカリホスファターゼを含む免疫検出複合体を添加することによって、結合を検出した。該複合体は、1時間室温で固定化融合タンパク質とともにインキュベートし、その後、プレートを洗浄し、そしてアルカリホスファターゼ基質であるパラ−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)を加えた。複合体の固定化融合タンパク質への結合を、PNPPのパラニトロフェノール(PNP)への転換を、405nmにおいて分光光学的に測定することによって定量化した。
【0194】
図7に示すように、融合タンパク質TTP-4000(TT4)及びTTP-3000(TT3)は、知られたRAGEリガンド、アミロイドベータ(Aベータ)、S100b(S100)、及びアンフォテリン(Ampho)と特異的に相互作用する。リガンドの非存在下、すなわち、BSAコーティングのみ(BSAまたはBSA+洗浄)では、免疫検出複合体の非特異的結合に寄与しうるレベルを超える吸収の増加はなかった。アミロイドベータを標識リガンドとして使用する場合、アッセイの前にアミロイドベータをプレインキュベートすることが必要であるかもしれない。プレインキュベーションは、アミロイドベータが折りたたみシートの形態でRAGEに優先的に結合するため、アミロイドベータを折りたたみシート形態に自己凝集させることができる。
【0195】
RAGE融合タンパク質TTP-4000及びTTP-3000とRAGEリガンドとの特異的相互作用のさらなる証拠は、融合タンパク質への結合に関して、RAGEリガンドが知られたRAGEリガンドと有効に競合することができることを示す研究によって実証される。これらの研究においては、アミロイド−β(A-ベータ)をMaxisorbプレート上に固定化し、そして融合タンパク質を上記のように加えた。さらに、RAGEリガンドを、融合タンパク質と同時にいくつかのウエルに添加した。
【0196】
TTP-4000(TT4)が123μg/mL(1:3希釈、図8)で存在した場合、RAGEリガンドはTTP-4000の結合を約25%〜30%ブロックしたことがわかった。TTP-4000の最初の溶液を10または30のファクターで希釈した場合(1:10又は1:30)、融合タンパク質の固定化リガンドへの結合はRAGEリガンドによって完全に阻害された。同様に、TTP-3000(TT3)が360μg/mLで存在した場合(1:3希釈、図9)、RAGEリガンドはTTP-3000の結合を約50%ブロックした。TTP-3000の最初の溶液を10のファクターで希釈した場合(1:10)、融合タンパク質の固定化リガンドへの結合はRAGEリガンドによって完全に阻害された。したがって、RAGE融合タンパク質のRAGEリガンドへの結合の特異性は用量依存的であった。また、図8及び9に示すように、融合タンパク質の非存在下、すなわち、免疫検出複合体のみを用いた場合(「複合体のみ」)、本質的に結合は検出されなかった。
【0197】
B.細胞に基づくアッセイにおけるRAGE融合タンパク質の効果
先の研究は、骨髄THP-1細胞がTNF-αをRAGEリガンドに応答して分泌することを示した。このアッセイにおいては、THP-1細胞を、10%FBSを補充したRPMI-1640培地中で、ATCCにより提供されたプロトコールを用いて培養した。融合タンパク質TTP-3000(TT3)またはTTP-4000(TT4)(10μg)、sRAGE(10μg)、及びヒトIgG(10μg)(すなわち、陰性対照)の存在下または非存在下で、0.1mg/ml のS100bによるRAGEの刺激を介してTNF-αを分泌するように細胞を誘発した。THP-1細胞により分泌されたTNF-αの量を、タンパク質の細胞培養への添加の24時間後に、商業的に入手可能なTNF-αのためのELISAキット(R&D Systems, Minneapolis, MN)を用いて測定した。図10中の結果は、融合タンパク質がS100b/RAGE誘発性のTHF-αの産生をこれらの細胞において阻害することを実証する。図10に示すように、10μgのTTP-3000またはTTP-4000RAGE融合タンパク質の添加により、S100b(0.1mg/mlのFAC)によるTNF-αの誘導はそれぞれ約45%〜70%減少した。融合タンパク質TTP-4000は、S100bによるTNF-αの誘導をブロックすることにおいて、少なくともsRAGEと同等に効果的であることができる(図10)。TTP-4000及びTTP-3000のRAGE配列についての阻害特異性を、IgGのみをS100b刺激した細胞に添加した実験によって示す。IgG及びS100bのアッセイへの添加は、S100b単独と同じレベルのTNF-αを示す。融合タンパク質のRAGE配列についてのTTP-4000及びTTP-3000によるTNF-α誘導の阻害特異性を、IgGのみをS100b刺激した細胞に添加した実験によって示す。IgG、すなわち、RAGE配列を含まないヒトIgG(10μg/ウエルで添加したSigmaヒトIgG)、及びS100bのアッセイへの添加が、S100b単独と同レベルのTNF-αを示すことがわかる。
【0198】
実施例3:TTP-4000の薬物動態プロフィール
TTP-4000がヒトsRAGEに比べて優れた薬物動態プロフィールを有するか否かを決定するために、ラット及び非ヒト霊長類にTTP-4000(5mg/kg)を静脈内(IV)注射し、そしてTTP-4000の存在について血漿を評価した。これらの実験において、2匹の実験未使用の雄性のサルが末梢静脈中に単回IVボーラス投与のTTP-4000(5mg/ml/kg)を受容し、続いて約1.0ミリリッター(mL)の生理食塩水を流した。血液サンプル(約1.0mL)を投薬前(すなわち、TTP-4000の注射の前)、または投薬の0.083、0.25、0.5、2、4、8、12、24、48、72、96、120、168、240、288、及び336時間後に(リチウムヘパリンを含む)チューブ中に採取した。採取の後、チューブを冷蔵下(2℃〜8℃)での1500×gで15分間の遠心分離まで、湿った氷の上に置いた(最大30分)。採取された各血漿サンプルを、実施例6に記載のように注射後のさまざまな時点におけるRAGEポリペプチドについてELISAを用いてアッセイするまで、凍結保存した(−70℃±10℃)。
【0199】
図11に示す速度プロフィールは、2匹の動物におけるアルファ相のかなり急勾配のスロープによって証明されるように、一旦TTP-4000がそのリガンドを飽和したら、それは300時間超の最終半減期を保持することを明らかにする。この半減期は、血漿中のヒトsRAGEの半減期(一般に約2時間)よりも顕著に長く、そして急性及び半慢性の適応症のための単回注射の機会を提供する。図11においては、各曲線は、同じ実験条件下での異なる動物を表す。
【0200】
実施例4:TTP-4000のFcの活性化
ヒトIgGに比較した、RAGE融合タンパク質TTP-4000によるFc受容体の活性化を測定するために実験を行った。Fc受容体の活性化を、Fc受容体を発現するTHP-1細胞からのTNF-αの分泌を測定することによって測定した。これらの実験において、96ウエルプレートを10μg/ウエルのTTP-4000またはヒトIgGでコーティングした。Fc刺激は、TNF-α分泌を引き起こす。TNF-αの量を、酵素免疫測定法(ELISA)によって測定した。
【0201】
したがって、このアッセイにおいては、骨髄細胞株、THP-1(ATCC#TIB-202)を、ATCCの指示にしたがって10%ウシ胎児血清を補充したRPIM-1640培地中に維持した。典型的には、ウエルを10μg/ウエルの熱凝集(63℃で30分)したTTP-4000またはヒトIgG1のいずれかでプレコーティングすることによるFc受容体刺激を介して、ウエルあたり40,000〜80,000細胞がTNF-アルファを分泌するよう誘導した。THP-1細胞によって分泌されたTNF-アルファの量を、処理ウエル中の細胞を24時間培養したものから集めた上清中で、商業的に入手可能なTNF ELISAキット(R&D Systems, Minneapolis, MN#DTA00C)を使用説明書にしたがって使用して測定した。
【0202】
結果を図12に示し、ここで、TTP-4000は2ng/ウエル未満のTNFを生成し、IgGは40ng/ウエル超を生成した。
【0203】
実施例5:TTP-4000のインビボ活性
ヒト疾患のいくつかのインビボモデルにおいて、TTP-4000の活性をsRAGEに比較した。
【0204】
A.再狭窄の動物モデルにおけるTTP-4000
RAGE融合タンパク質TTP-4000を、血管の損傷後の21日間、平滑筋の増殖及び内膜の拡張を測定することを含む、再狭窄の糖尿病ラットモデルにおいて評価した。これらの実験において、左総頚動脈のバルーンによる損傷を、標準的な手順を用いてZucker糖尿病ラット及び非糖尿病ラットにおいて実施した。負荷用量(3mg/ラット)のIgG、TTP-4000またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を、損傷の1日前に腹腔内(IP)投与した。損傷の7日後まで、1日おき(すなわち、損傷の1、3、5及び7日後)に維持量を送達した。維持量は、1つの群については1mg/動物の高い量、または第二の群については0.3mg/動物の低い量であった。血管平滑筋細胞(VSMC)の増殖を測定するために、動物を損傷の4日および21日後にと殺した。
【0205】
細胞増殖の測定のために、4日の動物はブロモデオキシウリジン(BrDdU)50mg/kgの腹腔内注射を、安楽死の18、12及び2時間前に受けた。と殺後、左及び右頚動脈の全体を採取した。標本を包埋の少なくとも24時間前にHistochoice中に保存した。VSMC増殖の評価を、抗BrdUマウスモノクローナル抗体を用いて実施した。蛍光標識抗マウスヤギ二次抗体を適用した。切片当たりのBrdU陽性の核の数を治療計画に対してブラインドの二人の観察者が計測した。
【0206】
残りのラットを形態計測分析のために21日目にと殺した。形態計測分析は、Van Gieson染色した(5mm離れた)一連の頚動脈切片について、コンピュータ化されたデジタル顕微鏡面積測定ソフトウエアImage-Pro Plusを用いて、試験群についてブラインドの観察者が実施した。すべてのデータを平均±SDとして表した。SPSSソフトウエアを用いて統計学的分析を実施した。連続的な変数を、対応のないt検定を用いて比較した。0.05以下のP値を、統計学的に有意であるとした。
【0207】
図13A及び13Bに見られるように、TTP−4000治療は、用量応答性に、内膜/中膜比及び血管平滑筋細胞増殖を有意に減少させた。図13Bにおいては、y軸はBrdU増殖性細胞の数を表す。
【0208】
B.ADの動物モデルにおけるTTP4000
TTP-4000が、ADのマウスモデルにおいてアミロイド生成及び認知障害に影響することができるか否かを評価するために実験を行った。PDGF-B鎖プロモーターの制御下で、ヒトSweden突然変異体アミロイド前駆体タンパク質(APP)を発現するトランスジェニックマウスを利用した。経時的に、これらのマウスは高レベルのRAGEリガンド、アミロイドベータ(Aβ)を産生する。先に、このモデルにおいて、3ヶ月間のsRAGE治療が脳中のアミロイドプラークの形成及び関連する炎症性マーカーの増加を減少させることが示された。
【0209】
この実験において使用したAPPマウス(雄性)は、血小板由来増殖因子B(PDGF-B)鎖遺伝子プロモーターの制御下で(Sweden 及びLondon突然変異を有する)ヒトAPP遺伝子のマウス卵子へのマイクロインジェクションによって設計した。該マウスは、C57BL/6バックグラウンドにおいて作製され、Molecular Therapeutics Inc.によって開発されたものである。動物に餌を自由摂取させ、そして同胞交配によって維持した。この構築物から作出したマウスは6月齢にアミロイド沈着をはじめた。動物は6ヶ月間老化させ、そして90日間維持し、アミロイド定量のためにと殺した。
【0210】
APPトランスジェニックマウスに、6月齢時に開始して90日間、ビヒクルまたはTTP4000を1日おきに[qod(i.p.)]投与した。実験の最後に、動物をと殺し、そして脳中のAβプラーク負荷(すなわち、プラーク数)をについて調べた。6ヶ月の対照APP群を、アミロイド沈着のベースラインを決定するためにと殺した。さらに、試験の最後に、動物を(モーリス水迷路)行動分析に供した。研究者らは、試験化合物についてはブラインドであった。一日おきに、0.25ml/マウスのサンプルをマウスに与えた。さらに、一群のマウスには、ヒトsRAGEを200μg/日で与えた。
【0211】
1.アミロイドベータの沈着
組織学的試験のために、動物をペントバルビタールナトリウム(50mg/kg)の腹腔内注射(IP)によって麻酔した。動物を、4℃のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、続いて4%パラホルムアルデヒドで経心的にかん流した。脳を切除し、4%パラホルムアルデヒド中に一夜置いた。脳をパラフィン処理し、そして包埋した。脳から10個の一連の30μmの厚さの切片を得た。トランスジェニック動物の脳中でのアミロイド沈着を検出するために、4℃で一夜、切片を一次抗体(Aβペプチド抗体)に供した(Guo et al., J. Neurosci., 22:5900-5909 (2002))。切片を、トリス緩衝生理食塩水(TBS)で洗浄し、そして二次抗体を加えて、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、切片を、Vector ABC Eliteキット(Vector Laboratories)により指示されたようにインキュベートし、そしてジアミノ安息香酸(DAB)で染色した。反応を水中で停止させ、そしてキシレン処理後にカバーガラスを載せた。各切片中のアミロイド面積を、Quick Captureフレームグラバーカードを備えたPower Macintosh(登録商標)コンピュータ、Olympus顕微鏡上に搭載したHitachi CCDカメラ及びカメラスタンドから成る、コンピュータ支援画像分析システムによって決定した。NIH Image Analysis Software、v.1.55を使用した。画像を捕捉し、そしてアミロイドの総面積を10個の切片にわたって決定した。治療状態についてブラインドの一人のオペレーターがすべての測定を行った。切片のアミロイド体積を合計し、切片の総数で割って、アミロイド体積を計算した。
【0212】
定量分析のためには、APPトランスジェニックマウス(Biosource International, Camarillo, CA)の脳中のヒト総AβであるAβtotal及びAβ1-42を測定するために、酵素免疫測定法(ELISA)を使用した。Aβtotal及びAβ1-42は、塩酸グアニジンによってマウス脳から抽出し、そして製造者の記載のとおりに定量した。このアッセイは、脳からの(可溶性及び凝集した両方の)Aβペプチド全体を抽出する。
【0213】
2.認知機能
モーリス水迷路試験を以下のように実施した:すべてのマウスを、実験の最後にモーリス水迷路試験で一回、試験した。マウスには、1.2mのオープンフィールド水迷路でトレーニングした。プールに、深さ30cmの水を満たし、そして25℃に維持した。逃避プラットフォーム(10cm平方)を水表面の1cm下に置いた。トライアルの間、プラットフォームをプールから除去した。いかなる迷路外の手がかりも隠すために、白いカーテンで囲ったプール中で手がかり試験を行った。すべての動物が連続して3日間、非空間的なプレトレーニング(NSP)を受けた。これらは、プラットフォームを見つけるための記憶の保持を測定するための最終的な行動試験用の動物を準備するためのトライアルである。これらのトライアルは記録されず、トレーニングのみを目的とするものである。トレーニング及び学習の試験のためには、迷路外の手がかりに対してカーテンを取り除いた(これは、泳ぎの障害を有する動物を同定することを可能とする)。第1日において、マウスを隠れたプラットフォーム上に20秒間置き(トライアル1)、トライアル2〜3のためには、動物を手がかりのあるプラットフォームまたは隠れたプラットフォーム(トライアル4)から10cm離れたところで放し、プラットフォームまで泳がせた。トライアルの第2日において、プールの中心または各四分円の中心の間に、隠れたプラットフォームを無作為に移動させた。無作為に壁に向かって動物をプール中に放し、プラットフォームに到達するために60秒間を許容した(3つのトライアル)。第3のトライアルにおいて、動物に3つのトライアル、2つは隠れたプラットフォーム、そして1つは手がかりのあるプラットフォームによる、を与えた。NSPの2日後、動物を最後の行動トライアル(モーリス水迷路試験)に供した。これらのトライアルについては(動物につき3回)、プラットフォームは、プールの1つの四分円の中心におき、無作為に、壁に向かって動物を放した。動物は、60秒間(潜期、プラットフォームを見つけるのにかかる時間)、プラットフォームを探し、または泳ぐことが可能である。すべての動物を投薬の4〜6時間以内に試験し、試験群に対してブラインドのオペレーターが、試験のために無作為に選択した。
【0214】
結果を、平均±標準偏差(SD)として表した。アミロイドと行動試験における相違の有意性をt−検定法を用いて分析した。6月齢のAPP対照群とTTP-4000処置動物、並びに9月齢のAPPビヒクル処理群及びTTP-4000処置動物の間で比較を行った。0.05未満の相違を有意であると考えた。アミロイド及び行動における変化のパーセントを、各群におけるデータを合計し、そして対照で割ることによって決定した(すなわち、1、i.p./6月対照=変化の%)。
【0215】
図14A及び14Bは、TTP-4000またはマウスsRAGEのいずれかで3ヶ月治療したマウスがビヒクル及び陰性対照ヒトIgG1(IgG1)で治療した動物よりもより少ないAβプラーク及びより少ない認知障害を有したことを示す。このデータは、トランスジェニックマウスモデルにおけるAD病理を減少させるのにTTP-4000が有効であることを示す。sRAGEのように、TTP-4000が炎症性サイトカインIL-1及びTNF-αを減少させることができることもわかった(データは示さない)。
【0216】
C.脳卒中の動物モデルにおけるTTP-4000の有効性
脳卒中の病気に関連した動物モデルにおいても、TTP-4000をsRAGEと比較した。このモデルにおいては、マウスの中部頚動脈を1時間結紮し、その後23時間再かん流し、その時点でと殺して脳内の梗塞領域を評価した。マウスを再かん流の直前にsRAGEまたはTTP-4000または対照イムノグロブリンで処置した。
【0217】
これらの実験において、雄性C57BL/6に、250μl/マウスのビヒクルまたは(250μl/マウスのTTP-3000、TTP-4000の)TTP試験品を注射した。虚血の開始1時間後にマウスに腹腔内注射した。1時間の脳虚血後、24時間の再かん流にマウスを供した。虚血を誘発するために、各マウスを麻酔し、そして外部から温めることによって体温を36〜37℃に維持した。首の正中線切開によって左総頚動脈(CCA)を露出させた。マイクロサージカルクリップを内頚動脈(ICA)の起点の周囲に設置した。ECAの遠位末端をシルクで結紮し、そして横切開した。6−0シルクをECAの切開口の周りに緩く結んだ。先端熱加工したナイロン縫合糸をそっとECAの切開口に挿入した。6−0シルクのループを切開口の周りにきつく締め、そしてナイロン縫合糸を、前大脳動脈に達して前交通動脈及び中部脳大動脈を閉塞するまで、内頚動脈(ICA)を通して進めた。ナイロン縫合糸を所定の位置に1時間おいた後、動物を再麻酔し、直腸温度を記録し、そして縫合糸を除去し、切開を閉じた。
【0218】
動物をペントバルビタールナトリウム(50mg/kg)を腹腔内注射して麻酔し、そして脳を切除することによって、梗塞体積を測定した。そして、梗塞領域全体を通じて、脳を4つの2mm切片に切断し、そして2%塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)中に30分間置いた。その後、切片を4%パラホルムアルデヒド中に一夜置いた。各切片中の梗塞面積を、Quick Captureフレームグラバーカードを備えたPower Macintosh(登録商標)コンピュータ、Olympus顕微鏡上に搭載したHitachi CCDカメラ及びカメラスタンドから成る、コンピュータ支援画像分析システムを用いて決定した。NIH Image Analysis Software、v.1.55を使用した。画像を捕捉し、そして梗塞の総面積を切片にわたって測定した。治療状態についてブラインドの一人のオペレーターがすべての測定を行った。切片の梗塞体積を合計し、総梗塞体積を計算した。結果は、平均±標準偏差(SD)で表す。梗塞体積データにおける相違の有意性を、t−検定を用いて分析した。
【0219】
表2中のデータに例解されるように、TTP-4000は、これらの動物における梗塞領域を制限することにおいてsRAGEよりもより有効であったことは、TTP-4000がそのより良い血漿中半減期により、これらのマウスにおいてより大きな保護を維持することができることを示唆している。
【0220】
実施例6:ELISAによるRAGE融合タンパク質の検出
最初に、1XPBS pH 7.3中、10μg/mlの濃度のRAGE特異的モノクローナル抗体1HB1011の50μLを、一夜インキュベーションすることによってプレート上にコーティングした。使用の準備ができたら、プレートを300μLの1Xイミダゾール−Tween洗浄緩衝液で3回洗浄し、そして1%BSAでブロッキングした。(希釈)サンプルと既知の希釈率のTTP-4000の標準希釈液を、最終体積100μLで加えた。サンプルを室温で1時間インキュベートする。インキュベート後、プレートを3回洗浄する。1%BSAを含む1X PBS中の抗ヒトIgG11ヤギ抗体(Sigma A3312)APコンジュゲートを加え、室温で1時間インキュベートする。プレートを3回洗浄する。パラニトロフェニルホスフェートで色を明確にする。
【0221】
実施例7:RAGE融合タンパク質に対するRAGEリガンドの結合の定量
図15は、TTP-4000によるさまざまな固定化された既知のRAGEリガンドへの飽和−結合曲線を示す。リガンドをマイクロタイタープレート上に固定化し、0〜360nMで増加する濃度の融合タンパク質の存在下でインキュベートした。融合タンパク質−リガンド相互作用を、アルカリホスファターゼと結合した、融合キメラのIgG部分に特異的なポリクローナル抗体を用いて検出する。相対的Kdを、Graphpad Prizmソフトウエアを用いて計算し、そしてRAGE-RAGEリガンド値の確立された文献値とマッチさせた。HMG1B=アンフォテリン、CML=カルボキシメチルリジン、Aベータ=アミロイドベータ1〜40。
【0222】
以上は、本発明の原理を例示するのみであると考えられる。当業者は多くの修飾及び変更に容易に想到するため、以上は、本発明を示されそして記載された実施態様そのものに限定することを意図せず、かつ、添付された請求項の範囲に属するすべての好適な修飾及び等価物は本発明の概念内にある。
【図面の簡単な説明】
【0223】
本発明のさまざまな特徴、側面及び利益は、以下の図を参照することでより明らかとなるであろう。
【図1A】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルA、配列番号1、ヒトRAGEのアミノ酸配列;及び配列番号2、アミノ酸1〜22のシグナル配列を含まないヒトRAGEのアミノ酸配列。
【図1B】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルB、配列番号3、アミノ酸1〜23のシグナル配列を含まないヒトRAGEのアミノ酸配列。
【図1C】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルC、配列番号4、ヒトsRAGEのアミノ酸配列;配列番号5、アミノ酸1〜22のシグナル配列を含まないヒトsRAGEのアミノ酸配列;及び配列番号6、アミノ酸1〜23のシグナル配列を含まないヒトsRAGEのアミノ酸配列。
【図1D】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルD、配列番号7、ヒトRAGEのV-ドメインを含むアミノ酸配列;配列番号8、ヒトRAGEのV-ドメインを含む別のアミノ酸配列;配列番号9、ヒトRAGEのV-ドメインのN-末端断片;配列番号10、ヒトRAGEのV-ドメインの別のN-末端断片;配列番号11、ヒトRAGEのアミノ酸124〜221のアミノ酸配列;配列番号12、ヒトRAGEのアミノ酸227〜317のアミノ酸配列;配列番号13、ヒトRAGEのアミノ酸23〜123のアミノ酸配列;
【図1E】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルE、配列番号14、ヒトRAGEのアミノ酸24〜123のアミノ酸配列;配列番号15、ヒトRAGEのアミノ酸23〜136のアミノ酸配列;配列番号16、ヒトRAGEのアミノ酸24〜136のアミノ酸配列;配列番号17、ヒトRAGEのアミノ酸23〜226のアミノ酸配列;配列番号18、ヒトRAGEのアミノ酸24〜226のアミノ酸配列。
【図1F】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルF、配列番号19、ヒトRAGEのアミノ酸23〜251のアミノ酸配列;配列番号20、ヒトRAGEのアミノ酸24〜251のアミノ酸配列;配列番号21、RAGEドメイン間リンカー;配列番号22、第二のRAGEドメイン間リンカー;配列番号23、第三のRAGEドメイン間リンカー;配列番号24、第四のRAGEドメイン間リンカー。
【図1G】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルG、配列番号25、ヒトRAGEアミノ酸1〜118をコードするDNA;配列番号26、ヒトRAGEアミノ酸1〜123をコードするDNA;配列番号27、ヒトRAGEアミノ酸1〜136をコードするDNA。
【図1H】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルH、配列番号28、ヒトRAGEアミノ酸1〜230をコードするDNA;及び配列番号29、ヒトRAGEアミノ酸1〜251をコードするDNA。
【図1I】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルI、配列番号38、ヒトIgGのCH2及びCH3ドメインの部分的アミノ酸配列;配列番号39、ヒトIgGのヒトCH2及びCH3ドメインの部分をコードするDNA;配列番号40、ヒトIgGのCH2及びCH3ドメインのアミノ酸配列。
【図1J】図1は、本発明の別々の実施態様による多様なRAGE配列を示す:パネルJ、配列番号41、ヒトIgGのヒトCH2及びCH3ドメインをコードするDNA;配列番号42、ヒトIgGのCH2ドメインのアミノ酸配列;配列番号43、ヒトIgGのCH3ドメインのアミノ酸配列;及び配列番号44、第五のRAGEドメイン間リンカー。
【図2】図2は、本発明の実施態様によるRAGE融合タンパク質(TTP-4000)コード領域のDNA配列(配列番号30)を示す。太字で強調したコード配列1〜753は、RAGE N末端タンパク質配列をコードし、配列754〜1386は、ヒトIgG Fc(γ1)タンパク質配列をコードする。
【図3】図3は、本発明の実施態様による、別のRAGE融合タンパク質(TTP-3000)コード領域のDNA配列(配列番号31)を示す。太字で強調したコード配列1〜408は、RAGE N-末端タンパク質配列をコードし、配列409〜1041はヒトIgG Fc(γ1)タンパク質配列をコードする。
【図4】図4は、それぞれ、本発明の別々の実施態様による、4つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードする、配列番号32(TTP-4000)、配列番号33及び配列番号34のアミノ酸配列を示す。RAGE配列は、太字で強調されている。
【図5】図5は、それぞれ、本発明の別々の実施態様による、3つのドメインのRAGE融合タンパク質をコードする、配列番号35(TTP3000)、配列番号36及び配列番号37のアミノ酸配列を示す。RAGE配列は、太字で強調されている。
【図6A】図6Aは、ヒトRAGE及びヒトIgガンマ-1 Fcタンパク質中のたんぱく質ドメインの比較、並びに本発明の別々の実施態様によるTTP-3000(136位)及びTTP-4000(251位)を作製するために使用される切断ポイントを示す。
【図6B】図6Bは、本発明の別々の実施態様によるTTP-3000及びTTP-4000のドメイン構造を示す。
【図7】図7は、本発明の実施態様による、RAGEリガンドであるアミロイド−ベータ(A-ベータ)、S100b(S100)及びアンフォテリン(Ampho)へのsRAGE及びRAGE融合タンパク質TTP-4000(TT4)及びTTP-3000(TT3)のインビトロの結合アッセイの結果を示す。
【図8】図8は、本発明の実施態様による、RAGE融合タンパク質TTP-4000(TT4)(「タンパク質」)の、免疫検出試薬のみを含む(「複合体のみ」)陰性対照に比較した、アミロイド−ベータに対するインビトロの結合アッセイの結果、及びRAGEアンタゴニスト(「RAGEリガンド」)によるかかる結合のアンタゴニズムを示す。
【図9】図9は、本発明の実施態様による、RAGE融合タンパク質TTP-3000(TT3)(「タンパク質」)の、免疫検出試薬のみを含む(「複合体のみ」)陰性対照に比較した、アミロイド−ベータに対するインビトロの結合アッセイの結果、及びRAGEアンタゴニスト(「RAGEリガンド」)によるかかる結合のアンタゴニズムを示す。
【図10】図10は、本発明の実施態様による、S100b-RAGE誘発性のTNF-α産生の、RAGE融合タンパク質TTP-3000(TT3)及びTTP-4000(TT4)、並びにsRAGEによる阻害を測定する、細胞に基づくアッセイの結果を示す。
【図11】図11は、本発明の実施態様による、RAGE融合タンパク質TTP-4000の薬物動態プロフィールを示し、ここで、各曲線は同じ実験条件下での異なる動物を表す。
【図12】図12は、本発明の実施態様による、炎症反応の尺度としての、RAGE融合タンパク質TTP-4000による刺激及びヒトIgG刺激によるTHP-1細胞からのTNF-α放出の相対的レベルを示す。
【図13A】図13Aは、本発明の別々の実施態様による、糖尿病の動物における再狭窄を減少させるためのRAGE融合タンパク質TTP-4000の使用を示し、ここで、TTP-4000RAGE-融合タンパク質が、陰性対照(IgG)に比べて、内膜/中膜比を減少させたことを示す。
【図13B】図13Bは、本発明の別々の実施態様による、糖尿病の動物における再狭窄を減少させるためのRAGE融合タンパク質TTP-4000の使用を示し、ここで、TTP-4000RAGE-融合タンパク質が、用量依存的に血管平滑筋細胞の増殖を減少させたことを示す。
【図14A】図14Aは、本発明の別々の実施態様による、アルツハイマー病(AD)を有する動物におけるアミロイド形成を減少させるための、RAGE融合タンパク質TTP-4000の使用を示し、ここで、TTP-4000RAGE融合タンパク質は脳中のアミロイド負荷を減少させた。
【図14B】図14Bは、本発明の実施態様による、アルツハイマー病(AD)を有する動物における認知障害を減少させるための、RAGE融合タンパク質TTP-4000の使用を示し、ここで、TTP-4000RAGE融合タンパク質は、認知障害を改善した。
【図15】図15は、本発明の実施態様による、さまざまな固定化された既知のRAGEリガンドに対するTTP-4000による飽和−結合曲線を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合タンパク質であって、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含む、前記融合タンパク質。
【請求項2】
前記RAGEポリペプチドが、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、かつ該RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメイン又はその部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記RAGEイムノグロブリンドメインに連結された前記RAGEドメイン間リンカーを含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記RAGEポリペプチドがリガンド結合部位を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記RAGEリガンド結合部位が、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含む、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたドメイン間リンカーを含む前記RAGEポリペプチドが、完全長RAGEタンパク質の断片を含む、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
さらに、第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸に連結され、上記第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が上記第二のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、そして、RAGE第二ドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分のN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び前記第一のRAGEドメイン間リンカーに連結された前記第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第二のRAGEドメイン間リンカーを含む、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
配列番号33または配列番号34のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
配列番号32のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
イムノグロブリンCH2ドメインまたはその部分に直接連結された前記RAGEドメイン間リンカーが、配列番号22またはそれに対して90%同一の配列、或いは、配列番号24またはそれに対して90%同一の配列を含む、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
RAGEドメイン間リンカーを介してCH2イムノグロブリンドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に連結された、単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含む、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
配列番号36または配列番号37のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
配列番号35のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
イムノグロブリンCH2に直接連結された前記RAGEリンカーが、配列番号21またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号23またはそれに対して90%同一の配列を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする、単離された核酸配列。
【請求項15】
前記RAGEポリペプチドが、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、そして、前記RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメイン又はその部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記RAGEイムノグロブリンドメインに連結された前記RAGEドメイン間リンカーを含む、請求項14に記載の単離された核酸配列。
【請求項16】
配列番号30またはその断片、或いは配列番号31またはその断片を含む、請求項15に記載の核酸配列。
【請求項17】
イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含む、融合タンパク質をコードする、発現ベクター。
【請求項18】
前記RAGEポリペプチドが、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、そして前記RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記RAGEイムノグロブリンドメインに連結された前記RAGEドメイン間リンカーを含む、請求項17に記載の発現ベクター。
【請求項19】
配列番号30の核酸配列またはその断片、或いは配列番号31の核酸配列またはその断片を含む、請求項17に記載の発現ベクター。
【請求項20】
イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を発現するように、請求項17の発現ベクターでトランスフェクトされた細胞。
【請求項21】
医薬担体中の治療的有効量のRAGE融合タンパク質を含む組成物であって、ここで、上記RAGE融合タンパク質が、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含む、前記組成物。
【請求項22】
前記RAGEポリペプチドが、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、そして前記RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記RAGEイムノグロブリンドメインに連結された前記RAGEドメイン間リンカーを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記RAGEポリペプチドがリガンド結合部位を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記RAGEリガンド結合部位が、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたドメイン間リンカーを含む前記RAGEポリペプチドが、完全長RAGEタンパク質の断片を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
前記RAGEポリペプチドが、第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸に連結され、第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が前記第二のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、そして、RAGE第二のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分のN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び前記第一のRAGEドメイン間リンカーに連結された前記第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び前記第二のRAGEドメイン間リンカーを含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記RAGE融合タンパク質が、配列番号33または配列番号34のアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記融合タンパク質が、RAGEドメイン間リンカーを介してCH2イムノグロブリンドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されている、単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
前記RAGE融合タンパク質が、配列番号36または配列番号37のアミノ酸配列を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記RAGE融合タンパク質が、注射用溶液として製剤される、請求項21に記載の組成物。
【請求項31】
前記RAGE融合タンパク質が、滅菌された凍結乾燥粉末として製剤される、請求項21に記載の組成物。
【請求項32】
RAGE融合タンパク質の製造方法であって、RAGEポリペプチドを、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに共有結合させるステップを含む、前記方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、ここで、前記RAGEポリペプチドが、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、そして前記RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記RAGEイムノグロブリンドメインに連結された前記RAGEドメイン間リンカーを含む、前記方法。
【請求項34】
前記RAGEポリペプチドがリガンド結合部位を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記RAGEリガンド結合部位が、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたドメイン間リンカーを含む前記RAGEポリペプチドが、完全長RAGEタンパク質の断片を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記RAGEポリペプチドが、第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸に連結され、第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第二のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、そして、RAGEの第二のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分のN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び前記第一のRAGEドメイン間リンカーに連結された前記第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び前記第二のRAGEドメイン間リンカーを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記RAGEポリペプチドが、RAGEドメイン間リンカーを介してCH2イムノグロブリンドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に連結された、単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記融合タンパク質が組換えDNA構築物によってコードされる、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
さらに、前記DNA構築物を発現ベクター中に組み込むステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記発現ベクターを宿主細胞中にトランスフェクトすることを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
対象におけるRAGE介在性の障害を治療する方法であって、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含むRAGE融合タンパク質を対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
前記RAGEポリペプチドが、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、そして、前記RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記RAGEイムノグロブリンドメインに連結された前記RAGEドメイン間リンカーを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記RAGEリガンド結合部位が、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたドメイン間リンカーを含む前記RAGEポリペプチドが、完全長RAGEタンパク質の断片を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸に連結され、第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が前記第二のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、そして、前記RAGE第二ドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分のN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び前記第一のRAGEドメイン間リンカーに連結された前記第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び前記第二のRAGEドメイン間リンカーをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記RAGE融合タンパク質が、配列番号33または配列番号34のアミノ酸配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記RAGE融合タンパク質が、配列番号35のアミノ酸配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
イムノグロブリンCH2ドメインまたはその部分に直接連結された前記RAGEドメイン間リンカーが、配列番号22またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号24またはそれに対して90%同一の配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
RAGEドメイン間リンカーを介してCH2イムノグロブリンドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に連結された、単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記RAGE融合タンパク質が、配列番号36または配列番号37のアミノ酸配列を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記RAGE融合タンパク質が、配列番号35のアミノ酸配列を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
イムノグロブリンCH2またはその部分に直接連結された前記RAGEドメイン間リンカーが、配列番号21又はそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号23またはそれに対して90%同一の配列を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記RAGE融合タンパク質の前記対象への静脈内投与を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項55】
前記RAGE融合タンパク質の前記対象への腹腔内投与を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項56】
前記RAGE融合タンパク質の前記対象への皮下投与を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項57】
前記融合タンパク質が、糖尿病の症状または糖尿病の後期合併症の症状を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項58】
前記糖尿病または糖尿病の後期合併症の症状が、糖尿病性腎症を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記糖尿病または糖尿病の後期合併症の症状が、糖尿病性網膜症を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記糖尿病または糖尿病の後期合併症の症状が、糖尿病性の脚の潰瘍を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記糖尿病または糖尿病の後期合併症の症状が、循環器の合併症を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記糖尿病または糖尿病の後期合併症の症状が、糖尿病性ニューロパチーを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
前記融合タンパク質が、アミロイドーシスを治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項64】
前記融合タンパク質が、アルツハイマー病を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項65】
前記融合タンパク質が、癌を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項66】
前記融合タンパク質が、自己免疫に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項67】
前記融合タンパク質が、炎症性腸疾患に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項68】
前記融合タンパク質が、リューマチ関節炎に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項69】
前記融合タンパク質が、乾癬に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項70】
前記融合タンパク質が、多発性硬化症に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項71】
前記融合タンパク質が、低酸素症に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項72】
前記融合タンパク質が、脳卒中に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項73】
前記融合タンパク質が、心臓発作に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項74】
前記融合タンパク質が、出血性ショックに関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項75】
前記融合タンパク質が、敗血症に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項76】
前記融合タンパク質が、器官移植に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項77】
前記融合タンパク質が、創傷治癒の障害に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項78】
前記融合タンパク質が、腎障害を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項1】
融合タンパク質であって、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含む、前記融合タンパク質。
【請求項2】
前記RAGEポリペプチドが、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、かつ該RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメイン又はその部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記RAGEイムノグロブリンドメインに連結された前記RAGEドメイン間リンカーを含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記RAGEポリペプチドがリガンド結合部位を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記RAGEリガンド結合部位が、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含む、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたドメイン間リンカーを含む前記RAGEポリペプチドが、完全長RAGEタンパク質の断片を含む、請求項2に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
さらに、第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸に連結され、上記第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が上記第二のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、そして、RAGE第二ドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分のN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び前記第一のRAGEドメイン間リンカーに連結された前記第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び第二のRAGEドメイン間リンカーを含む、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
配列番号33または配列番号34のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
配列番号32のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
イムノグロブリンCH2ドメインまたはその部分に直接連結された前記RAGEドメイン間リンカーが、配列番号22またはそれに対して90%同一の配列、或いは、配列番号24またはそれに対して90%同一の配列を含む、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
RAGEドメイン間リンカーを介してCH2イムノグロブリンドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に連結された、単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含む、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
配列番号36または配列番号37のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
配列番号35のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
イムノグロブリンCH2に直接連結された前記RAGEリンカーが、配列番号21またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号23またはそれに対して90%同一の配列を含む、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする、単離された核酸配列。
【請求項15】
前記RAGEポリペプチドが、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、そして、前記RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメイン又はその部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記RAGEイムノグロブリンドメインに連結された前記RAGEドメイン間リンカーを含む、請求項14に記載の単離された核酸配列。
【請求項16】
配列番号30またはその断片、或いは配列番号31またはその断片を含む、請求項15に記載の核酸配列。
【請求項17】
イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含む、融合タンパク質をコードする、発現ベクター。
【請求項18】
前記RAGEポリペプチドが、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、そして前記RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記RAGEイムノグロブリンドメインに連結された前記RAGEドメイン間リンカーを含む、請求項17に記載の発現ベクター。
【請求項19】
配列番号30の核酸配列またはその断片、或いは配列番号31の核酸配列またはその断片を含む、請求項17に記載の発現ベクター。
【請求項20】
イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含む融合タンパク質を発現するように、請求項17の発現ベクターでトランスフェクトされた細胞。
【請求項21】
医薬担体中の治療的有効量のRAGE融合タンパク質を含む組成物であって、ここで、上記RAGE融合タンパク質が、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含む、前記組成物。
【請求項22】
前記RAGEポリペプチドが、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、そして前記RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記RAGEイムノグロブリンドメインに連結された前記RAGEドメイン間リンカーを含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記RAGEポリペプチドがリガンド結合部位を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記RAGEリガンド結合部位が、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたドメイン間リンカーを含む前記RAGEポリペプチドが、完全長RAGEタンパク質の断片を含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項26】
前記RAGEポリペプチドが、第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸に連結され、第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が前記第二のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、そして、RAGE第二のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分のN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び前記第一のRAGEドメイン間リンカーに連結された前記第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び前記第二のRAGEドメイン間リンカーを含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記RAGE融合タンパク質が、配列番号33または配列番号34のアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記融合タンパク質が、RAGEドメイン間リンカーを介してCH2イムノグロブリンドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されている、単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含む、請求項25に記載の組成物。
【請求項29】
前記RAGE融合タンパク質が、配列番号36または配列番号37のアミノ酸配列を含む、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記RAGE融合タンパク質が、注射用溶液として製剤される、請求項21に記載の組成物。
【請求項31】
前記RAGE融合タンパク質が、滅菌された凍結乾燥粉末として製剤される、請求項21に記載の組成物。
【請求項32】
RAGE融合タンパク質の製造方法であって、RAGEポリペプチドを、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに共有結合させるステップを含む、前記方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、ここで、前記RAGEポリペプチドが、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、そして前記RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記RAGEイムノグロブリンドメインに連結された前記RAGEドメイン間リンカーを含む、前記方法。
【請求項34】
前記RAGEポリペプチドがリガンド結合部位を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記RAGEリガンド結合部位が、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたドメイン間リンカーを含む前記RAGEポリペプチドが、完全長RAGEタンパク質の断片を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記RAGEポリペプチドが、第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸に連結され、第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第二のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、そして、RAGEの第二のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分のN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び前記第一のRAGEドメイン間リンカーに連結された前記第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び前記第二のRAGEドメイン間リンカーを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記RAGEポリペプチドが、RAGEドメイン間リンカーを介してCH2イムノグロブリンドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に連結された、単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記融合タンパク質が組換えDNA構築物によってコードされる、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
さらに、前記DNA構築物を発現ベクター中に組み込むステップを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記発現ベクターを宿主細胞中にトランスフェクトすることを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
対象におけるRAGE介在性の障害を治療する方法であって、イムノグロブリンのCH2ドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドに直接連結されたRAGEポリペプチドを含むRAGE融合タンパク質を対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
前記RAGEポリペプチドが、RAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸がドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸に連結され、そして、前記RAGEドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がイムノグロブリンのCH2ドメインまたはその部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記RAGEイムノグロブリンドメインに連結された前記RAGEドメイン間リンカーを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記RAGEリガンド結合部位が、配列番号9またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号10またはそれに対して90%同一の配列を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
RAGEイムノグロブリンドメインに連結されたドメイン間リンカーを含む前記RAGEポリペプチドが、完全長RAGEタンパク質の断片を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
第一のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が第一のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、第二のRAGEイムノグロブリンドメインのN-末端アミノ酸が第一のドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸に連結され、第二のドメイン間リンカーのN-末端アミノ酸が前記第二のRAGEイムノグロブリンドメインのC-末端アミノ酸に連結され、そして、前記RAGE第二ドメイン間リンカーのC-末端アミノ酸がCH2イムノグロブリンドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分のN-末端アミノ酸に直接連結されるように、前記第一のRAGEイムノグロブリンドメイン及び前記第一のRAGEドメイン間リンカーに連結された前記第二のRAGEイムノグロブリンドメイン及び前記第二のRAGEドメイン間リンカーをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記RAGE融合タンパク質が、配列番号33または配列番号34のアミノ酸配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記RAGE融合タンパク質が、配列番号35のアミノ酸配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
イムノグロブリンCH2ドメインまたはその部分に直接連結された前記RAGEドメイン間リンカーが、配列番号22またはそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号24またはそれに対して90%同一の配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
RAGEドメイン間リンカーを介してCH2イムノグロブリンドメインまたはイムノグロブリンのCH2ドメインの部分を含むポリペプチドのN-末端アミノ酸に連結された、単一のRAGEイムノグロブリンドメインを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記RAGE融合タンパク質が、配列番号36または配列番号37のアミノ酸配列を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記RAGE融合タンパク質が、配列番号35のアミノ酸配列を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
イムノグロブリンCH2またはその部分に直接連結された前記RAGEドメイン間リンカーが、配列番号21又はそれに対して90%同一の配列、或いは配列番号23またはそれに対して90%同一の配列を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記RAGE融合タンパク質の前記対象への静脈内投与を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項55】
前記RAGE融合タンパク質の前記対象への腹腔内投与を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項56】
前記RAGE融合タンパク質の前記対象への皮下投与を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項57】
前記融合タンパク質が、糖尿病の症状または糖尿病の後期合併症の症状を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項58】
前記糖尿病または糖尿病の後期合併症の症状が、糖尿病性腎症を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記糖尿病または糖尿病の後期合併症の症状が、糖尿病性網膜症を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記糖尿病または糖尿病の後期合併症の症状が、糖尿病性の脚の潰瘍を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記糖尿病または糖尿病の後期合併症の症状が、循環器の合併症を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記糖尿病または糖尿病の後期合併症の症状が、糖尿病性ニューロパチーを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
前記融合タンパク質が、アミロイドーシスを治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項64】
前記融合タンパク質が、アルツハイマー病を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項65】
前記融合タンパク質が、癌を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項66】
前記融合タンパク質が、自己免疫に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項67】
前記融合タンパク質が、炎症性腸疾患に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項68】
前記融合タンパク質が、リューマチ関節炎に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項69】
前記融合タンパク質が、乾癬に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項70】
前記融合タンパク質が、多発性硬化症に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項71】
前記融合タンパク質が、低酸素症に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項72】
前記融合タンパク質が、脳卒中に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項73】
前記融合タンパク質が、心臓発作に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項74】
前記融合タンパク質が、出血性ショックに関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項75】
前記融合タンパク質が、敗血症に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項76】
前記融合タンパク質が、器官移植に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項77】
前記融合タンパク質が、創傷治癒の障害に関連する炎症を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【請求項78】
前記融合タンパク質が、腎障害を治療するために使用される、請求項42に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図1H】
【図1I】
【図1J】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【公表番号】特表2008−512988(P2008−512988A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524978(P2007−524978)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/027705
【国際公開番号】WO2006/017647
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(507036832)トランステック ファーマ,インコーポレイティド (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/027705
【国際公開番号】WO2006/017647
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(507036832)トランステック ファーマ,インコーポレイティド (11)
【Fターム(参考)】
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