説明

RFIDコイルを備える携帯型カード

携帯型カードが送受信機からの信号を受信し、位相変調または振幅変調された信号を出力し、その信号から、送受信機が、カードから送信される情報を引き出すRFID型システムについて説明される。別の例では、カードは、コイルまたはコイルに接続される回路の特性を変更することによって、3mH以上の自己インダクタンスを含むコイルを有してもよく、これは、送受信機からの信号の負荷を促進し、負荷変化は、追加の情報の抽出に使用されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、RFIDリーダと通信するための、例えば、携帯型カード状の新しいタイプのRFID素子に関する。
【0002】
典型的なRFIDタグまたは素子は、非常に単純な要素であり、電磁場(通常は無線信号)を受信し、そこからエネルギーを得て、そしてこのエネルギーを使用して、検知された電磁場に負荷(又は情報荷物;load)を与えるためにコイルを活性化するように構成される。電磁場のこのような負荷は、格納されたデータに従って、通常は、データ転送が発生するリーダにより検出可能であり得る電磁場の振幅変調として実行される。
【0003】
しかしながら、通常は、動作領域は、極めて限定され、タグおよび通信は、特定の周波数に限定される。
【0004】
第1の側面では、本発明は、無線で通信するシステムに関する。このシステムは、第1及び第2の要素を有するが、
前記第1の要素は、第1の周波数または波長を有すると共に第1の位相を有する第1の電磁場または信号を提供する第1の提供手段を備え、
前記第2の要素は、
・ 前記第1の電磁場および前記第1の位相を検出しうる手段と、
・ 前記第1の周波数または波長を有するが前記第1の位相と逆の位相を有し、かつその中に追加の情報を備える第2の電磁場または信号を提供および出力しうる第2の提供手段と、
を備え、
前記第1の要素は、前記第2の電磁場を検出し、そこから前記追加の情報を引き出すように構成される。
【0005】
この構成において、前記第1および第2の電磁場または信号は、RF信号等の電磁場である。標準的なRFIDタグは、4つの周波数間隔(低周波数:125〜135kHz(ISO 18000)、高周波数:13.56MHz(ISO18000-3)、超高周波数:865〜868MHz(ISO18000-6, EPC GEN2, ETSI 302-208)、およびマイクロ周波数:2.45GHz(ISO18000-4))のうちの1つを使用する。
【0006】
当然ながら、第1の電磁場は、他の周波数または位相を含み得る。通常、第1の周波数は、第1の要素および第2の要素が相互に範囲内にあるか否かを判断するために、第2の要素が探索する搬送波周波数である。
【0007】
第2の要素は、第1の電磁場又は信号の位相と逆の位相の第2の電磁場又は信号を提供する。この逆位相は、第1の位相と同一ではない位相である。第1の要素の検出スキームに依存して、第1の位相よりも多くまたは少なく逆位相を回転させることが望ましいであろう。当然ながら、位相シフトは、位相シフトのために周波数を微妙に少しだけシフトさせるが、実際の変調は、それとは別の位相であり、位相のシフトによって生じる僅かな周波数シフトではない。これにもかかわらず、信号は、変調時に、この構成において同一の周波数を有する。
【0008】
第1の要素は、第1の信号および第2の信号の組み合わせを検出する。
【0009】
単純な検出スキームは、第1の電磁場の強度または負荷(又は情報荷物;load)が判断されるスキームである。第1の位相に対して180度回転した逆位相(反転位相)を提供することは、第1の電磁場を抑制または減衰させる(それによって第1の電磁場に対する負荷としての役割を果たす)。それによって、第1の電磁場と同一の位相および周波数の第2の電磁場が生成される。第2の要素からの情報は、第2の要素の位相の反転位相の振幅を変化させることによって提供される。
【0010】
別の検出スキームは、第1の信号と比較した、第2の電磁場又は信号の位相のシフトに基づく。
【0011】
2つの信号が存在することは、振幅変調に似ている。結果的に、位相変調および振幅変調は、同じように有用である。
【0012】
加えて、周波数シフトまたは変調も有用である。
【0013】
本発明の別の側面は、無線で通信するシステムに関する。このシステムは、第1及び第2の要素を有するが、
前記第1の要素は、少なくとも125KHzの第1の周波数を有する第1の電磁場または信号を提供しうる第1の提供手段を備え、
前記第2の要素は、
・ 少なくとも3mHの自己誘導を有するコイルを備える電気回路と、
・ 所定の情報に従って前記コイルに負荷を与える手段と、
を備える第2の提供手段を備え、
前記第1の要素は、
・ 前記第1の電磁場の負荷を検出しうる手段と、
・ 前記検出された負荷から前記所定の情報を抽出しうる手段と、
をさらに備える。
【0014】
これに関し、電磁場中に自己誘導の大きいコイルを配することは、コイルの負荷時に、第1の要素からの電磁場に自動的に負荷を与える。
【0015】
少なくとも3mHの自己誘導は、かなり広帯域のアンテナをもたらし、これは、様々な周波数を使用する通信が望まれる場合に望ましい。
【0016】
好ましくは、コイルの自己インダクタンスは4mH以上であり、6mH以上等でもよい。当然ながら、コイルの自己インダクタンスは、例えば、磁気的に誘導性の材料をコイルの巻線の芯に利用することによって具体的要求に適合させることができる。
【0017】
好ましくは、コイルには、広い周波数スパンにおいて磁場導体としての役割を果たしうる芯材であって、第1の電磁場に存在する場合に、それ自体、第1の電磁場に負荷を与えることが可能な芯材を用いることが好ましい。
【0018】
例えばコイル巻線に電気的に負荷を与えたり、コイル巻線を短絡したり、芯材の飽和レベルを変えてコイルの磁気特性を変えたりすることによって、負荷を変化させることができる。
【0019】
上記側面の両方において、前記第2の要素が携帯型であること、ならびに前記第2の手段が、
・ 前記第2の要素の表面に沿って(例えば表面直下に平行して配されるように)延在する電磁的に誘導性の材料と、
・ 導電性材料による1本以上の巻線(コイル)であって、前記電磁的に誘導性の材料の周囲に配される巻線と、
・ 電気信号を前記巻線に供給するように構成されるコントローラと、
を備えることが好ましい。
【0020】
実際は、このコイルおよび誘導性材料は、標準的なクレジットカードの磁気ストリップが搭載される位置に配置されてもよい。このコイルは、磁気ストリップを模倣するようにも使用され得る。この詳細は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第WO2005/086102号において説明される。
【0021】
第1の側面によると、前記コントローラは、第1の信号によって巻線に生成された電気信号を検知し、それによって第1の電磁場および第1の位相を検出する検出手段の機能も形成するように構成されてもよい。
【0022】
したがって、信号を検知するためと、第2の信号を出力するために、同一のコイルが使用されてもよい。この第2の信号は、単に、コイルの巻線に負荷を与えることにより電磁場に負荷を与えることによって生成されてもよい。
【0023】
一般に、第2の要素は、データストレージを備えることが好ましく、追加の情報は、データストレージに格納されるデータに関する。この追加のデータは、所有者またはユーザの身元に関するか、または所有者またはユーザの(またはそれに関連する)銀行口座に関するものであってもよい。これらのデータは、ユーザ又は所有者にとっての機密情報であり得るため、例えば、暗号化されてもよい。
【0024】
好ましくは、前記第2の提供手段は、振幅変調によって第2の電磁場に追加の情報を含めるように構成される。別の例では、第2の提供手段は、追加の情報に従って、例えば、経時的に負荷を変調し得る。
【0025】
好適な実施形態では、第2の要素は、第2の提供手段に電力を提供するための電源をさらに備える。これにより、提供手段の動作に十分なエネルギーをコイルがまず得なければならない状況に比べ、第2の提供手段の動作が高速に実行されうるという利益がもたらされる。また、第2の電磁場の生成に多くの電力が利用可能となり得るので、特に第1の側面により第1の電磁場に対して加える影響を、大きくすることが可能となる。
【0026】
特定の実施形態では、第2の要素は、ユーザから生体認証パラメータを入手し、パラメータを、第2の要素のストレージ手段に格納される情報と比較し、パラメータが格納される情報に一致する場合にのみ、第2の提供手段が第2の電磁場を提供するように制御する手段をさらに備える。
【0027】
これは、転送されるデータがプライベート情報であって、誰もが利用可能でないようなシステムの一部であってもよい。したがって、データ通信が第1の電磁場および第2の電磁場を介するため、データストレージにおけるデータは暗号化されてもよい。
【0028】
実際は、第1の要素および第2の要素間の通信は、双方向通信であってもよく、第1の要素は、データを第2の要素に提供し、第2の要素は、第1の要素からのデータ(例えば、その身元)が受け入れ可能である場合にのみ、第2の提供手段を動作させる。
【0029】
特に利点の大きい実施形態では、第2の要素は、検出された第1の電磁場の信号強度を判断または推定する手段を備え、第2の電磁場または信号の信号強度及び/又は負荷を適宜適合させる。より具体的には、受信した第1の信号の強度が弱い場合、信号強度の強い又は負荷の強い第2の電磁場又は信号を出力することが望まれてもよい。これは、第1の要素が離れていること、ならびにより強い信号強度の第2の信号またはより大きな負荷が第1の要素への到達に必要とされるというしるしとして解釈されてもよい。
【0030】
この実施形態は、多数の形態で実装されうる。単純な例ではあるが、第1の場合として、第1の信号の信号強度が一定の閾値を下回る場合に、強い強度の第2の信号及び/又は負荷が使用され、第2の場合として、第1の信号の信号強度が閾値を上回る場合に、弱い強度の第2の信号及び/又は負荷が使用される形態が挙げられる。
【0031】
別の例では、複数の閾値を使用してもよく、または第1の信号の信号強度を、第2の信号及び/又は負荷に必要または所望されるものに変換するために計算を使用してもよい。
【0032】
第3の側面は、第1の側面のシステムにおける第2の要素として使用される要素に関する。この要素は、
・ 第1の電磁場および第1の位相を検出しうる手段と、
・ 第1の周波数または波長を有するが第1の位相と逆の位相を有し、かつその中に追加の情報を備える第2の電磁場を提供および出力しうる第2の提供手段と、
を備える。
【0033】
また、第4の側面は、第2の側面のシステムにおける第2の要素として使用される要素に関する。この要素は、
・ 少なくとも3mHの自己誘導を有するコイルを備える電気回路と、
・ 所定の情報に従って前記コイルに負荷を与える手段と、
を備える。
【0034】
上述のように、第3の側面または第4の側面において、上記要素は、好ましくは携帯型であり、また、
・ 第2の要素の表面に沿って延在する電磁的に誘導性の材料と、
・ 導電性材料による1本以上の巻線(コイル)であって、上記電磁的に誘導性の材料の周囲に配される巻線と、
・ 電気信号を巻線に供給するように構成されるコントローラと、
を備える。
【0035】
この構成において、第2の要素は、多くの場合、人が持ち運ぶことのできる携帯型である。第2の要素の好適な寸法は、標準的なクレジットカードまたはIDカードの寸法である。望ましい重さは、電子機器およびコイルが、例えばクレジットカードに通常使用されるプラスチック材料よりも重いことを考慮して、可能な限り軽くする。
【0036】
第3の側面または第4の側面に関連し、上記検出手段は、コントローラによって形成されることが好ましく、また、コントローラは、第1の信号によって巻線において生成される電気信号を検知するようにも構成される。
【0037】
一般に、要素は、データストレージをさらに備えることが好ましく、追加の情報は、データストレージに格納されるデータに関する。
【0038】
加えて、第2の提供手段は、振幅変調によって第2の電磁場に追加の情報を含めるように適合されてもよい。別の例では、追加の情報は、例えば、経時的に負荷を変調することによって負荷において提供されてもよい。
【0039】
さらに、第2の提供手段に電力を提供するための電源を要素がさらに有する場合に、利点が考えられる。
【0040】
最後に、上記要素は、ユーザから生体認証パラメータを入手し、パラメータを、ストレージ手段に格納される情報と比較し、パラメータが格納される情報に一致する場合にのみ、第2の提供手段が第2の電磁場を提供するように制御する手段をさらに備えることが好ましい。
【0041】
上述のように、要素は、検出された第1の電磁場の信号強度を判断または推定する手段をさらに備えることが好ましく、第2の電磁場/信号の負荷および/または信号強度を適宜適合させる。
【0042】
本発明の第5の側面は、第1の側面のシステムを動作させる方法に関する。この方法は、
・ 第1の要素の提供手段が、第1の周波数または波長を有し、かつ第1の位相を有することと、
・ 第2の要素の検出手段が、第1の電磁場および第1の位相を検出することと、
・ 第2の提供手段が、第1の周波数または波長を有するが第1の位相と逆の位相を有し、かつその中に追加の情報を備える第2の電磁場を提供および出力することと、
・ 第1の要素が、第2の電磁場を検出し、それから追加の情報を引き出すことと、
を含む。
【0043】
前述のように、第1の要素は、通常、第2の電磁場により第1の電磁場に与えられる負荷、すなわち、第1の電磁場および第2の電磁場の組み合わせを検出する。
【0044】
第6の側面は、第3の側面のシステムを動作させる方法に関する。この方法は、
・ 第1の要素の提供手段が、125KHz以上である第1の周波数を有し、かつ第1の位相を有する第1の電磁場を提供することと、
・ 第2の提供手段が、所定の情報に関連して第1の電磁場に負荷を与えるためにコイルに負荷を与えることであって、少なくとも3mHの自己誘導を有し、かつ第1の電磁場中にあるコイルに負荷を与えることと、
・ 第1の要素が、第1の電磁場の負荷を検出し、そこから追加の情報を引き出すことと、
を含む。
【0045】
一般に、第2の電磁場を提供するステップは、導電性材料による巻線(コイル)に電気信号を提供することを含むことが好ましく、巻線は、第2の要素の表面に沿って延在する電磁的に誘導性の材料の周囲に配される。
【0046】
また、第5の側面または第6の側面に関連し、検出するステップは、コントローラが、第1の信号により巻線に生成された電気信号を検知することを含むことが好ましい。
【0047】
通常は、第2の電磁場または負荷を提供するステップは、データストレージから追加のデータを読み取ることを含む。
【0048】
好ましくは、第2の電磁場を提供するステップは、振幅変調によって第2の電磁場に追加の情報を含めることを含む。また、負荷は、追加のデータをその中に組み込むために、例えば、経時的な負荷の変調によって提供されてもよい。
【0049】
また、電源が第2の提供手段に電力を提供するステップをさらに有することが好ましい。
【0050】
多くの用途において、ユーザから生体認証パラメータを入手し、パラメータを情報と比較し、パラメータが格納される情報に一致する場合にのみ、第2の電磁場を提供するステップをさらに有することが望まれる。
【0051】
上述のように、特に利点の大きい実施形態では、上述の方法は、検出手段が、第1の電磁場の信号強度を検出または推定するステップをさらに含み、負荷を与えるステップまたは第2の提供手段が第2の電磁場を提供および出力するステップは、検出または推定された信号強度に適合される信号強度を含む第2の電磁場または信号に負荷を与えること又は出力することを含む。この効果を得るための多くの形態が存在する。
【0052】
本発明の第7の側面は、第3の側面の要素の動作方法に関する。この方法は、
・ 第1の電磁場および第1の位相を検出することと、
・ 第1の周波数または波長を有するが第1の位相と逆の位相を有し、かつその中に追加の情報を備える第2の電磁場を提供および出力することと、
を含む。
【0053】
第8の側面は、第4の側面の要素の動作方法に関する。この方法は、
・ 第2の提供手段のコイルを第1の電磁場/信号に位置させることと、
・ 第2の提供手段が、所定の情報に関連して、コイルに負荷を与えることと、
を含む。
【0054】
第2の電磁場に負荷を与えるまたは提供するステップは、導電性材料による巻線(コイル)に電気信号に負荷を与えるまたは提供することを含むことが好ましい。巻線は、第2の要素の表面に沿って延在する電磁的に誘導性の材料の周囲に配されることが好ましい。
【0055】
第7の側面または第8の側面に関連し、第1の信号によって巻線に生成された電気信号を検知するステップが実行されてもよい。
【0056】
好ましくは、提供するステップは、データストレージから追加のデータを読み取ることを含む。
【0057】
また、第2の電磁場を提供するステップは、振幅変調によって第2の電磁場に追加の情報を含めることを含む。第1の電磁場に負荷を提供するステップは、追加の情報をその中に組み込むために、例えば、経時的に負荷を変調することを含むことが好ましい。
【0058】
加えて、より高速な動作を実行可能にするため、及び/又は第1の電磁場に対してより大きな影響を与えるため、第2の提供手段に電源が電力を提供するステップが実行されてもよい。
【0059】
また、上述の方法は、ユーザから生体認証パラメータを入手し、パラメータを情報と比較し、パラメータが格納される情報に一致する場合にのみ、第2の電磁場を提供するステップをさらに含んでもよい。
【0060】
最後に、上記検出ステップは、第1の電磁場の信号強度を検出または推定することを含んでもよく、上記負荷を与えるステップまたは提供するステップは、検出または推定された信号強度に適合される信号強度を含む第2の電磁場または信号に負荷を与えるまたは出力することを含んでもよい。
【0061】
以下において、第1の要素および第2の要素を示す図面を参照して、好適な実施形態について説明する。
【0062】
図1において、標準的なIDカードまたはクレジットカードの寸法を有する携帯型カード20が提供される。カード20の磁気ストリップの標準的な位置において、磁気的に誘導性の材料のストリップ24が提供され、その周囲に、導電性材料の少なくとも1つの巻線(winding)22が提供され、ストリップ24に電磁場を発生させる。
【0063】
好ましくは、ストリップ24においてもたらされる電磁場は、例えば、国際公開WO2005/086102において説明されるように、標準的なIDカードまたはクレジットカードの標準的な磁気ストリップを模倣するように使用されてもよい。
【特許文献1】国際公開WO2005/086102
【0064】
ストリップ24および巻線22に作用する電磁場30により生成された任意の信号を検知するために、カード20上に、巻線22と協働しうるように接続されるプロセッサ26が提供される。
【0065】
加えて、プロセッサ26は、以下にさらに説明するように、電気信号を生成し、巻線22およびストリップ24が電磁場32を生成するように、信号を巻線22に供給するようにも構成される。プロセッサは、再充電可能または再充電不可能な電池等の電源28から電力を受ける。
【0066】
また、このシステムは、電磁場30を生成するための、ならびに電磁場32を受信および分析するための手段12を有する別の要素10も備える。
【0067】
通常、自己誘導が、100μH以上、10μH以上、1mH以上、3、4、6mH以上などの、比較的大きい自己誘導を含むコイルを提供することが、望まれることに留意されたい。
【0068】
このシステムの動作は以下の通りである。
【0069】
送受信機12は、所定の周波数および位相を有する信号30を出力する。当然ながら、この信号は、単一の周波数である必要はない。この信号は、とりわけ、振幅変調されていてもよい。1つの周波数を搬送波周波数とみなし、別の信号または全てのタイプの情報が、当該搬送波周波数において搬送されるとしてもよい。
【0070】
信号30がストリップ24に作用すると、巻線22に電気信号が生じる。この信号は、プロセッサ26へと導かれ、プロセッサ26によって検知される。
【0071】
するとプロセッサ26は、信号30の位相を判断し、既知でない場合は、その周波数を判断する。巻線22から受信した信号を分析する前に、プロセッサ26は、信号のフィルタリングを含む、雑音を抑制又はキャンセルする既知の技術を使用してもよい。
【0072】
位相が決定されると、プロセッサ26は、信号30と同じ周波数を有するが、信号30とは位相が異なる第2の電気信号を生成する。この生成は、第1の位相に関する情報を保持するために、例えば、位相ロックループ(Phase-Locked Loop)を使用して実行されてもよい。
【0073】
プロセッサ26により決定される周波数および位相に加えて、プロセッサ26は、追加の情報を第2の電気信号に加えて、この情報を要素10に送信する。
【0074】
要素10は、当該追加の情報を得るために、受信した信号(信号32、または信号30と信号32との組み合わせ)を復号する。
【0075】
この第2の電気信号は、対応する電磁信号32がストリップ24によって出力されるように、巻線22へと送られる。
【0076】
送受信機12は、信号30を継続的に出力することに加え、信号30または信号32における負荷変化(load change)を継続的に探索する。この負荷変化は、信号30の負荷変化として考えられ得る。信号30の周波数と同一の周波数を有する信号32は、信号32の位相が、信号30の位相と異なり、90°を超えてシフトされる場合に信号30に負荷をかける。したがって、送受信機12は、信号30を継続的に検知し、信号30と信号32との位相差に起因する電磁場30の減少として信号32を検知する。
【0077】
実際は、送受信機12は、例えば、振幅/位相/周波数変調によって、または多重周波数で送信することによって、信号30に情報を含めてもよい。信号は、巻線22によって受信され、プロセッサ26によって抽出される。これらの情報に基づき、カード20またはプロセッサ26は、信号32を出力するか否かを判断し得る。したがって、送受信機12は、カード20に対して自身の識別情報を提供することができ、また、信号30に含める情報に基づいて、(信号32のパラメータ等の、)カード20の動作モードを指定することができる。
【0078】
応答が求められていることをプロセッサ26が決定した場合、またはこのような判断が必要とされない場合(例えば、カード20が常に応答する場合)、カード20は、上述のように動作する。
【0079】
特に利点の大きな実施形態では、要素20は、信号30の信号強度を判断または推定するように構成される。この強度は、信号32が要素10に到達するために必要な信号強度を判断するべく、1つ以上の閾値と比較されてもよい。
【0080】
これらの閾値は、受信した信号強度を、送信する信号強度に相関させるために使用されてもよい。単純な例として、信号30の強度が一定の閾値を下回る場合に、信号強度の高い第1の信号32が使用され、信号30の強度が閾値を上回る場合に、信号強度の低い第2の信号32が使用される例が挙げられる。当然ながら、望みの数の閾値を使用してもよい。受信した信号強度を出力信号強度に変換する計算によって閾値を定めてもよい。
【0081】
このように、受信した信号強度は、要素10と要素20との間の距離または障害物の定量化として解釈されてもよく、これは、信号32が要素10に確実に到達するのに必要または望まれる出力信号強度に変換される。
【0082】
別の実施形態では、信号32は、信号30と同じ周波数および位相を有するが、振幅が変調される信号である。したがって、要素10は、そのような信号(信号32、または信号30と信号32との組み合わせ)を受信し、その信号から、追加の情報を決定してもよい。
【0083】
別の実施形態では、プロセッサ26は、そこへの電流提供の代わりに、もしくは電流提供に加えて、コイル/巻線22またはコイル/巻線22を備える電気回路の電気特性の変化をもたらすように構成される。別の例では、コイル22の磁気特性を可変としてもよく、例えば、芯材24の飽和レベルを可変とする。
【0084】
コイル22の磁気特性を変化させる場合、吸収/減衰/負荷される信号30の量は変動するが、これは、送受信機12によって検出可能である。飽和レベルの変化は、DC電圧をコイル22に供給することによって実現されてもよい。
【0085】
コイル22の電気特性の変化は、その巻線の短絡であってもよく、これも、電磁場または信号30の負荷における検出可能な変化を提供する。
【0086】
コイル22を備える電気回路の特性の変更は、電磁場30(電磁場30の負荷)への干渉に起因して、コイル22によりもたらされるエネルギーを吸収するように構成される、例えば抵抗器の提供であり得る。
【0087】
当然ながら、上記の全負荷技術を組み合わせてもよく、また、例えば、コイルの負荷またはコイルの磁気特性を変化させることに関する他の手法は、当業者に既に知られている。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】第1の要素および第2の要素を描いた図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の要素を有し、無線で通信しうるシステムであって、
前記第1の要素は、第1の周波数または波長を有すると共に第1の位相を有する第1の電磁場または信号を提供する第1の提供手段を備え、
前記第2の要素は、
・ 前記第1の電磁場および前記第1の位相を検出しうる手段と、
・ 前記第1の周波数または波長を有するが前記第1の位相と逆の位相を有し、かつその中に追加の情報を備える第2の電磁場または信号を提供および出力しうる第2の提供手段と、
を備え、
前記第1の要素は、前記第2の電磁場を検出し、そこから前記追加の情報を引き出すように構成される、システム。
【請求項2】
第1及び第2の要素を有し、無線で通信しうるシステムであって、
前記第1の要素は、少なくとも125KHzの第1の周波数を有する第1の電磁場または信号を提供しうる第1の提供手段を備え、
前記第2の要素は、
・ 少なくとも3mHの自己誘導を有するコイルを備える電気回路と、
・ 所定の情報に従って前記コイルに負荷を与える手段と、
を備える第2の提供手段を備え、
前記第1の要素は、
・ 前記第1の電磁場の負荷を検出しうる手段と、
・ 前記検出された負荷から前記所定の情報を抽出しうる手段と、
をさらに備える、システム。
【請求項3】
前記第2の要素は携帯型であり、前記第2の提供手段は、
・ 前記第2の要素の表面に沿って延在する電磁的に誘導性の材料と、
・ 導電性材料による1本以上の巻線であって、前記電磁的に誘導性の材料の周囲に配される巻線と、
・ 電気信号を前記巻線に供給するように構成されるコントローラと、
を備える、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記検出手段は、前記第1の信号によって前記巻線に生成された電気信号を検知するように構成されるコントローラによって形成される、請求項1および3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2の要素はデータストレージを備え、前記追加の情報は、前記データストレージに格納されるデータに関する、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記第2の提供手段は、振幅変調によって前記第2の電磁場に前記追加の情報を含めるように構成される、請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記第2の要素は、前記第2の提供手段に電力を提供しうる電源をさらに備える、請求項1から6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記第2の要素は、
ユーザから生体認証パラメータを入手し、前記パラメータを、前記第2の要素のストレージ手段に格納される情報と比較し、前記パラメータが前記格納される情報に一致する場合にのみ、前記第2の提供手段が前記第2の電磁場を提供するように制御しうる手段
をさらに備える、請求項1から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記第2の要素は、前記検出された第1の電磁場の信号強度を判断または推定しうる手段を備え、前記第2の電磁場/信号の負荷および/または信号強度を適合させる、請求項1から8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおける前記第2の要素として使用される要素であって、
・ 前記第1の電磁場および前記第1の位相を検出しうる手段と、
・ 前記第1の周波数または波長を有するが前記第1の位相と逆の位相を有し、かつその中に追加の情報を備える前記第2の電磁場を提供および出力しうる第2の提供手段と、
を備える、要素。
【請求項11】
請求項2に記載のシステムにおける前記第2の要素として使用される要素であって、
・ 少なくとも3mHの自己誘導を有するコイルを備える電気回路と、
・ 所定の情報に従って前記コイルに負荷を与える手段と、
を備える、要素。
【請求項12】
携帯型であり、また、
・ 前記第2の要素の表面に沿って延在する電磁的に誘導性の材料と、
・ 導電性材料による1本以上の巻線であって、前記電磁的に誘導性の材料の周囲に配される巻線と、
・ 電気信号を前記巻線に供給するように構成されるコントローラと、
を備える、請求項10または11に記載の要素。
【請求項13】
前記検出手段は、前記第1の信号によって前記巻線に生成された電気信号を検知するように構成される前記コントローラによって形成される、請求項10および12に記載の要素。
【請求項14】
データストレージをさらに備え、前記追加の情報は、前記データストレージに格納されるデータに関する、請求項10から13のいずれかに記載の要素。
【請求項15】
前記第2の提供手段は、振幅変調によって前記第2の電磁場に前記追加の情報を含めるように構成される、請求項10から14のいずれかに記載の要素。
【請求項16】
前記第2の提供手段に電力を提供しうる電源をさらに備える、請求項10から15のいずれかに記載の要素。
【請求項17】
ユーザから生体認証パラメータを入手し、前記パラメータを、ストレージ手段に格納される情報と比較し、前記パラメータが前記格納される情報に一致する場合にのみ、前記第2の提供手段が前記第2の電磁場を提供するように制御しうる手段をさらに備える、請求項10から16のいずれかに記載の要素。
【請求項18】
前記検出された第1の電磁場の信号強度を判断または推定しうる手段をさらに備え、前記第2の電磁場/信号の負荷および/または信号強度を適合させる、請求項10から17のいずれかに記載の要素。
【請求項19】
請求項1に記載のシステムの動作方法であって、
前記第1の要素の前記提供手段が、前記第1の周波数または波長を有し、かつ前記第1の位相を有することと、
前記第2の要素の前記検出手段が、前記第1の電磁場および前記第1の位相を検出することと、
前記第2の提供手段が、前記第1の周波数または波長を有するが前記第1の位相と逆の位相を有し、かつその中に追加の情報を備える前記第2の電磁場を提供および出力することと、
前記第1の要素が、前記第2の電磁場を検出し、それから前記追加の情報を引き出すことと、
を含む、方法。
【請求項20】
請求項2に記載のシステムの動作方法であって、
前記第1の要素の前記提供手段が、125KHz以上である第1の周波数を有し、かつ前記第1の位相を有する第1の電磁場を提供することと、
前記第2の提供手段が、所定の情報に関連して前記第1の電磁場に負荷を与えるためにコイルに負荷を与えることであって、少なくとも3mHの自己誘導を有し、かつ前記第1の電磁場中にあるコイルに負荷を与えることと、
前記第1の要素が、前記第1の電磁場の前記負荷を検出し、そこから前記追加の情報を引き出すことと、
を含む、方法。
【請求項21】
前記第2の電磁場を提供するステップは、導電性材料による巻線に電気信号を供給することを含み、前記巻線は、前記第2の要素の表面に沿って延在する電磁的に誘導性の材料の周囲に配される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記検出するステップは、コントローラが、前記第1の信号によって前記巻線に生成された電気信号を検知することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の電磁場を提供するステップは、データストレージから前記追加のデータを読み取ることを含む、請求項19から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記第2の電磁場を提供するステップは、振幅変調によって前記第2の電磁場に前記追加の情報を含めることを含む、請求項19から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
電源が、前記第2の提供手段に電力を提供するステップをさらに含む、請求項19から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
ユーザから生体認証パラメータを入手し、前記パラメータを情報と比較し、前記パラメータが格納される情報に一致する場合にのみ、前記第2の電磁場を提供するステップをさらに含む、請求項19から25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記検出手段が、前記第1の電磁場の信号強度を検出または推定するステップをさらに含み、前記第2の提供手段が、前記第2の電磁場を提供および出力するステップは、前記検出または推定された信号強度に適合される信号強度を含む前記第2の電磁場または信号に負荷を与えるおよび/または出力することを含む、請求項19から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
請求項10に記載の前記要素の動作方法であって、
前記第1の電磁場および前記第1の位相を検出することと、
前記第1の周波数または波長を有するが前記第1の位相と逆の位相を有し、かつその中に追加の情報を備える前記第2の電磁場を提供および出力することと、
を含む、方法。
【請求項29】
請求項12に記載の要素の動作方法であって、
前記第2の提供手段の前記コイルを前記第1の電磁場/信号に位置させることと、
前記第2の提供手段が、所定の情報に関連して、前記コイルに負荷を与えることと、
を含む、方法。
【請求項30】
前記第2の電磁場を提供するステップは、導電性材料による巻線に電気信号を供給することを含み、前記巻線は、前記第2の要素の表面に沿って延在する電磁的に誘導性の材料の周囲に配される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の信号によって前記巻線に生成された電気信号を検知するステップをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
提供するステップは、データストレージから前記追加のデータを読み取ることを含む、請求項28から31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記第2の電磁場を提供するステップは、振幅変調によって前記第2の電磁場に前記追加の情報を含めることを含む、請求項28から32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
電源が、前記第2の提供手段に電力を提供するステップをさらに含む、請求項28から33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
ユーザから生体認証パラメータを入手し、前記パラメータを情報と比較し、前記パラメータが格納される情報に一致する場合にのみ、前記第2の電磁場を提供するステップをさらに含む、請求項28から34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記検出ステップは、前記第1の電磁場の信号強度を検出または推定することをさらに含み、前記負荷を与えるステップ及び/又は前記提供するステップは、前記検出または推定された信号強度に適合される信号強度を含む前記第2の電磁場または信号に負荷を与えること及び/又は出力することを含む、請求項28から35のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−525437(P2010−525437A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503501(P2010−503501)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054673
【国際公開番号】WO2008/128965
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(509053592)
【氏名又は名称原語表記】CARDLAB APS
【住所又は居所原語表記】William Wains Gade 9−14, DK−1432 Copenhagen K (DK)
【Fターム(参考)】