説明

RFIDタグ通信装置、及びRFIDタグ通信システム

【課題】移動体識別用無線設備であるRFIDタグ通信装置が複数台を使用して動作させるシステムにおいて、複数台のRFIDタグ通信装置の通信による送信信号の相互干渉を抑制する制御を行い、安定した通信を行う。
【解決手段】RFIDタグ通信装置が送信信号を送出中にも受信信号を監視し、自身の送信信号のレベル変動が小さい送出期間に受信信号のレベル変動が大きいことが観測されると、他のRFIDタグ通信装置が送信を行っていると判断している。そして、受信信号に所定レベルより大きいレベル変動を検出した場合には、RFIDタグ通信装置がバックスキャッタ信号の応答を返す期間に移行する前に送信信号を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信信号を出力し、RFIDタグからの応答信号を受信してそれを処理するRFIDタグ通信装置、及びRFIDタグ通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、RFID(Radio Frequency Identification)タグに識別コードなどの情報を記録しておき、このタグを物品等に貼付させ、RFIDリーダ・ライタとの間で電波を使って情報を送受信することにより、物品等の識別および流通等の管理が行われている。
【0003】
図1は、RFIDタグ通信装置が通信可能距離にあるRFIDタグとの間で通信を行う場合における従来の構成を示す図である。図1においては、RFIDタグ通信装置110が照射する制御信号をRFIDタグ120が受信して、RFIDタグ120が応答信号をRFIDタグ通信装置110へ返すことにより通信を行っている。また、RFIDタグ120がパッシブ型の場合はRFIDタグ通信装置110が照射する送信信号を動作電力として応答信号を返す。RFIDタグ通信装置が単体で動作する場合は、RFIDタグ通信装置は通信可能距離にある識別対象のRFIDタグとの間で安定して通信が行える。
【0004】
ここで、日本国内においてRFIDタグ通信装置は、送信信号の最大出力電力により、特定小電力無線局と構内無線局に分類され、出力電力の大きいものは、構内無線局に分類される。日本国内の電波法により、構内無線局に分類するRFIDタグ通信装置は、使用する設置場所を申請する必要がある。このため、RFIDタグ通信装置を移動して使用する場合には、移動するごとに設置場所を変更する必要がある。
【0005】
【特許文献1】特開2007−172310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1に示されるような従来の構成のRFIDタグ通信装置は、特定小電力無線局の分類でない場合には使用する設置場所を申請して、RFIDタグ通信装置を使用する必要がある。
【0007】
RFIDタグ通信装置を移動して使用する場合、設置場所を変更して使用することを変更申請にて届出をする必要がある。
【0008】
RFIDタグ通信装置は設定場所以外で使用することが、設置場所以外の設置されている無線局の干渉波となり、違法電波の発射となることから、使用場所を管理する必要がある。
【0009】
そのため、例えば、特許文献1に開示されているように、RFIDタグ通信装置が登録サーバに登録されていないと不正なRFIDタグ装置であるとして読取りを行わせない方法が提案されている。
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示の方法では、不正なRFIDタグ通信装置が読取りのための通信を行うことを妨げる妨害波を発射するのであって、違法電波の発射を防止するものではない。また、RFIDタグ通信装置が登録サーバの管理外にあった場合において、RFIDタグ通信装置の動作を制御するものではない。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、RFIDタグ通信装置が設置場所以外、あるいは設置場所内の特定のゾーンで使用する場合に、RFIDタグ通信装置の送信信号の送信制御処理を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
図2は、上記課題を解決するために、本発明によるRFIDタグ通信装置の内部構成を示す図である。
【0013】
本発明ではRFIDタグ通信装置を使用する設置場所または設置場所を区分したゾーンに対して位置情報送出装置を置き、その位置情報送出装置から特定の信号を送出する。また、RFIDタグ通信装置200の内部構成に位置情報検出部211を設け、RFIDタグ通信装置200の外から、特定の信号を受けるようにしている。
【0014】
外部からの特定の信号は、有線で接続するためのコネクタ240を介して受信するか、無線で接続するためのコネクタ241に取り付けたアンテナ250を介して受信する。
【0015】
位置情報送出装置から送出される特定の信号を受信したRFIDタグ通信装置200内の位置情報検出部211は、特定の信号から情報を抽出してRFIDタグ通信装置200内の位置情報比較部210に渡す。
【0016】
この位置情報比較部210は、上記の位置情報検出部211から受取った情報がRFIDタグ通信装置200内の位置情報記録部212に登録してある位置情報と一致するか比較する。
【0017】
位置情報記録部212に登録してある位置情報と位置情報検出部211から受取った情報が一致した場合にRFIDタグ通信装置200内の処理部213に、位置情報が一致したことを通知する。
【0018】
RFIDタグ通信装置200内の処理部213は、位置情報が一致したことが判明するとRFIDタグ通信装置200内の信号送信部214を送信許可状態とする。
【0019】
このため、RFIDタグ通信装置200内の位置情報検出部211が特定の信号を検出できなかった場合は、RFIDタグ通信装置200が送信信号を送出することが出来ない。
【0020】
また、上記の位置情報検出部211が受取った情報が上記の位置情報記録部212にない場合においてもRFIDタグ通信装置200が送信信号を送出することが出来ない。
【0021】
図3に本発明による、位置情報記録部に記録する情報を示した図である。
【0022】
位置情報記録部300には、位置情報310の他に設置場所で使用する場合の信号送信部の送信制御設定を位置情報310に紐付けして記録する。
【0023】
位置情報検出部で検出された位置情報が位置情報記録部にある位置情報と一致した場合に、位置情報記録部の一致する位置情報に紐付けされた送信制御設定を信号送信部に設定した後に送信許可状態とする。
【0024】
さらなる本発明の特徴は、以下本発明を実施するための最良の形態および添付図面によって明らかになるものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、RFIDタグ通信装置が本来設置される環境でのみ使用できることから、違法電波の発射を未然に防止できるようになる。このため、他の無線局装置間との電波干渉を抑えることができるようになる。
【0026】
また、設置する場所を記録している位置情報記録部内の位置情報と共に紐付けされた送信制御情報を使用して信号送信部を制御することにより、設置場所で利用する送信設定を個別に行う必要がないので、利便性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。
<第1の実施形態>
図4は、本発明の第1の実施形態によるRFIDタグ通信システムの概略構成を示す図である。RFIDタグ通信システムは、RFIDタグ通信装置410と、1つの位置情報送出装置430を備え、RFIDタグ420の読取を繰り返し実施するものである。このとき、RFIDタグ通信装置は、位置情報送出装置と信号線で接続してあり、位置情報送出装置からRFIDタグ通信装置に対して位置情報を繰り返し送出するものである。RFIDタグ通信装置は、位置情報送出装置から位置情報を受信し続け、内部に格納されている位置情報と一致する場合は、RFIDタグと通信することができるものである。
【0028】
また、図5は、RFIDタグ通信装置と位置情報送出装置が無線で通信を行う場合を示している。位置情報送出装置530からの位置情報信号550がRFIDタグ通信装置510で受信し続ける間、RFIDタグ通信装置510がRFIDタグ520と通信することができるものである。
【0029】
図6においては、RFIDタグ通信装置610が、位置情報送出装置630からの位置情報送出信号の到達範囲外に移動した様子を示す図である。
【0030】
このとき、RFIDタグ通信装置610は、位置情報の信号を受信できないことからRFIDタグ通信装置610の送信を停止し、RFIDタグ621と通信することが出来ない。
【0031】
図7は、RFIDタグ通信装置710が、位置情報送出装置730からの位置情報信号の到達範囲外から信号が受信できる範囲に移動した様子を示す図である。
【0032】
このときは、RFIDタグ通信装置710が位置情報の信号を受信できる状態になり、内部に格納されている位置情報と一致すると信号送信部が送信許可状態になるのでRFIDタグ721と通信が可能となる。
【0033】
以上のように、他のRFIDタグ通信装置と比較して、機器を設置場所から移動した場合に違法電波の発射を防止できると共に他の無線局装置への電波干渉を抑制することができる。
<第2の実施形態>
図8は、RFIDタグ通信装置810が位置情報送出装置830から発射されている位置情報信号の到達範囲内に設置し、RFIDタグ通信装置812が位置情報送出装置831から発射されている位置情報信号の到達範囲内に設置している様子を示す図である。
【0034】
図9は、位置情報送出装置830が発射する位置情報信号の到達範囲内から位置情報送出装置831が発射する位置情報信号の到達範囲内へRFIDタグ通信装置810を移動して使用する様子を示す図である。この場合に、既に移動先の範囲で使用しているRFIDタグ通信装置812と信号送信部の制御設定が干渉する設定であったことを示している。
【0035】
図10は図9と同様に、位置情報送出装置830が発射する位置情報信号の到達範囲内から位置情報送出装置831が発射する位置情報信号の到達範囲内へRFIDタグ通信装置810を移動して使用する場合に、信号送信部の制御設定が正しく行われた様子を示す図である。
【0036】
以上説明したように、設置場所が区分されたゾーンを跨ってRFIDタグ通信装置がゾーンを移動して使用する場合には、一般的なRFIDタグ通信装置がゾーンを移動するたびに干渉が発生しないように設定を変更する必要があることに対して、RFIDタグ通信装置が使用するゾーンを認識できることから信号送信部の制御設定を自動で行い、RFIDタグとの通信が正常に行える。
<まとめ>
本発明は、例えば、複数の場所を移動して利用する移動体識別用無線設備を用いたシステムに適用することができる。
【0037】
本発明では、RFIDタグ通信装置が位置情報送出装置から発射される位置情報信号の到達範囲を越えて移動すると、RFIDタグ通信装置が位置情報信号を受信できなくなり、このことから送信が許可されていない場所に移動されたと判断して送信を抑制する機能を有しても良い。
【0038】
この位置情報送出装置から送出する位置情報信号は、信号線を用いてRFIDタグ通信装置が受信できる機能を有しても良い。
【0039】
また、位置情報送出装置から送出する位置情報信号は、無線信号を用いてRFIDタグ通信装置が受信できる機能を有しても良い。
【0040】
RFIDタグ通信装置は、位置情報送出装置から送出する位置情報信号を自身が内部に持つ位置情報と一致するか比較確認することで送信を許可する機能を有しても良い。
【0041】
RFIDタグ通信装置は、自身が内部に持つ位置情報と紐付けした送信制御設定の情報を持つことにより、位置情報信号と一致するか比較確認することで送信設定を制御する機能を有しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】RFIDタグ通信装置が単体で動作する場合を説明する図である。
【図2】RFIDタグ通信装置の内部構成を説明する図である。
【図3】RFIDタグ通信装置の内部構成(図2)において、位置情報記録部に記録されている情報を説明する図である。
【図4】RFIDタグ通信装置が位置情報送出装置から送出される位置情報信号を有線で受信して動作することを説明する図である。
【図5】RFIDタグ通信装置が位置情報送出装置から送出される位置情報信号を無線で受信できる範囲で動作することを説明する図である。
【図6】RFIDタグ通信装置が位置情報送出装置から送出される位置情報信号を受信できる範囲外で使用する場合に送信動作が停止することを説明する図である。
【図7】RFIDタグ通信装置が位置情報送出装置から送出される位置情報信号を受信できる範囲内へ移動して使用する場合に送信動作が可能となることを説明する図である。
【図8】RFIDタグ通信装置が位置情報送出装置から送出される位置情報信号を受信できる範囲が複数存在する場合を説明する図である。
【図9】RFIDタグ通信装置が位置情報送出装置から送出される位置情報信号を受信できる複数の範囲を移動した際に干渉が発生してしまう場合を説明する図である。
【図10】RFIDタグ通信装置が位置情報送出装置から送出される位置情報信号を受信できる複数の範囲を移動した際に正常に通信が行える場合を説明する図である。
【符号の説明】
【0043】
110…RFIDタグ通信装置、120…RFIDタグ、130…空中線伝播中のRFIDタグ通信装置の送信信号、140…空中線伝播中のRFIDタグの応答信号、200…RFIDタグ通信装置、210…位置情報比較部、211…位置情報検出部、212…位置情報記録部、213…処理部、214…信号送信部、215…信号受信部、220…アンテナ接続コネクタ、230…アンテナ、240…位置情報受信コネクタ(有線)、241…位置情報受信コネクタ(無線)、250…位置情報受信アンテナ、300…位置情報記録部、310…登録位置、320…送信制御設定、410…RFIDタグ通信装置(1)、420…RFIDタグ(1)、430…位置情報送出装置、440…RFIDタグ通信装置(1)の送信信号、441…RFIDタグ通信装置(1)の受信信号、450…位置情報信号ケーブル、460…位置情報信号到達範囲、510…RFIDタグ通信装置(1)、520…RFIDタグ(1)、521…RFIDタグ(2)、530…位置情報送出装置、540…RFIDタグ通信装置(1)の送信信号、541…RFIDタグ通信装置(1)の受信信号、550…空中線伝播中の位置情報信号、560…位置情報信号到達範囲、810…RFIDタグ通信装置(1)、811…RFIDタグ通信装置(2)、820…RFIDタグ(1)、821…RFIDタグ(2)、822…RFIDタグ(3)、830…位置情報送出装置(1)、831…位置情報送出装置(2)、840…RFIDタグ通信装置(1)の送信信号とRFIDタグ通信装置(2)の送信信号との電波干渉、841…RFIDタグ(1)の応答信号とRFIDタグ(2)の応答信号との電波干渉、842…RFIDタグ(1)の応答信号とRFIDタグ通信装置(2)の送信信号との電波干渉、850…位置情報送出装置(1)から発射する空中線伝播中の位置情報信号、851…位置情報送出装置(2)から発射する空中線伝播中の位置情報信号、860…位置情報送出装置(1)からの位置情報信号到達範囲、861…位置情報送出装置(2)からの位置情報信号到達範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を出力し、RFIDタグからの応答信号を受信してそれを処理するRFIDタグ通信装置であって、
位置情報送出装置から供給される、場所を特定するための位置情報信号を取得する位置情報検出部と、
前記RFIDタグ通信装置が送信を許可される位置情報を記録する位置情報記録部と、
前記位置情報検出部からの位置情報と位置記録部に登録してある位置情報とを比較する位置情報比較部の結果に基づいて、
位置記録部に登録してある位置情報と一致した位置情報を取得できた場合にのみ、送信可能状態となり、所定の送信信号を出力する信号送信部の送信を制御する処理部を備えることを特徴とするRFIDタグ通信装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記位置情報比較部の結果により特定できた位置情報に基づいて位置記録部に登録してある位置情報に付随する情報を取得し、
前記位置情報に付随する情報に基づいて所定の周波数により、前記信号送信部の出力を制御することを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグ通信装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記位置情報比較部の結果により特定できた位置情報に基づいて位置記録部に登録してある位置情報に付随する情報を取得し、
前記位置情報に付随する情報に基づいて所定の出力レベルにより、前記信号送信部の出力を制御することを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグ通信装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記位置情報比較部の結果により特定できた位置情報に基づいて位置記録部に登録してある位置情報に付随する情報を取得し、
前記位置情報に付随する情報に基づいて所定の送信間隔により、前記信号送信部の出力を制御することを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグ通信装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記位置情報比較部の結果により特定できた位置情報に基づいて位置記録部に登録してある位置情報に付随する情報を取得し、
前記位置情報に付随する情報に基づいて所定の変調方式により、前記信号送信部の出力を制御することを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグ通信装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記位置情報比較部の結果により特定できた位置情報に基づいて位置記録部に登録してある位置情報に付随する情報を取得し、
前記位置情報に付随する情報に基づいて所定の通信速度により、前記信号送信部の出力を制御することを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグ通信装置。
【請求項7】
前記処理部は、信号送信部が前記所定の送信信号を出力する前に少なくとも1回以上は、前記位置情報検出部と前記位置記録部からの情報を前記位置情報比較部で比較し、比較結果に基づいて前記処理部が前記信号送信部の制御を継続することを特徴とする請求項2に記載のRFIDタグ通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−130028(P2010−130028A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298929(P2008−298929)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】