説明

RFID型触覚センサ及びRFID型触覚センサ入力装置

【課題】センサ設置位置に関係なく安定した検出感度を得ることができ、しかも、構造が簡単で配線量を大幅に削減することが可能な触覚センサを提供する。
【解決手段】外部電磁波による電力供給と信号伝達を行うアンテナ一体型の無線タグT1と、圧力を検出する感圧素子4とを有し、無線タグT1上に感圧素子4を配置している。このようにアンテナ一体型の無線タグT1上に感圧素子4を単に配置する構造とすることにより、センサ構造が単純となり、量産効果によるコストダウンを図ることができる。しかも、無線タグT1上に感圧素子4を配置し、接触圧力等の感圧を直接検出する構造とすることで、設置位置に関係なく、常に安定した検出感度を得ることができる。さらに、RFID用タグを用いることで、無線による電力供給とセンサ検出データの通信を行うことが可能となり、配線量を大幅に削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物に押し当てたときの接触を検出する触覚センサに関し、さらに詳しくは、外部電磁波による電力供給と信号伝達を行うアンテナ一体型の無線タグと触覚センサとを組み合わせたRFID(Radio Frequency Identification)型触覚センサ及びRFID型触覚センサ入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物に押し当てたときの接触を検出する触覚センサとして、高周波コイルの変形量で圧力を検出するセンサ素子をゴム系弾性材料内に埋め込んだ構造の埋込み型触覚センサ(例えば、特許文献1参照)と、感圧素子の上下にそれぞれ複数の電極を配置した構造のマトリクス型触覚センサ(例えば、特許文献2参照)がある。
【0003】
埋込み型触覚センサの一例を図10に示す。この例の埋込み型触覚センサは、シリコンゴム等の人口皮膚部材501内に複数のセンサ素子502・・502を埋め込むとともに、人口皮膚部材501の表面上に電力送信コイル504と信号受信コイル503を配置している。このような埋込み型触覚センサに用いるセンサ素子502としては、例えば図11に示すように、センサ回路521上に電力供給コイル522と信号送信コイル523を配置したもの(無線センサ)がある。なお、センサ素子502を人口皮膚部材501に埋め込む方法としては、液状のシリコンゴムにセンサ素子502を混入し、成型用金型等にシリコンゴムを流し込み、硬化させるという方法が採用されている。
【0004】
以上の構造の埋込み型触覚センサの動作原理を説明する。
【0005】
まず、電力送信コイル504より磁界を発生させ、その発生磁界をセンサ素子502の電力供給コイル522で受けて電気変換し、センサ回路521に電力を供給する。センサ回路521には、電力供給コイル522または信号送信コイル523を利用してLC発振回路が構成されており、特定周波数の発振が行われるが、電力供給コイル522または信号送信コイル523に外力が加わるとコイルが変形し、このコイル変形によりLC発振回路の発振周波数が変化する。そして、LC発振回路の発振周波数を信号送信コイル523にて送信し、人口皮膚部材501の表面上の信号受信コイル503で受信する。ここで、受信信号の周波数分析を行うと、信号周波数が特定周波数である場合、外力が加わっていない状態であると判断することができ、特定周波数からずれている場合は、外力が加わったと判断することができるので、触覚センサと同等の機能を果たすことができる。
【0006】
一方、マトリクス型触覚センサとしては、例えば図12に示す構造のものがある。図12に示すマトリクス型触覚センサは、上層部に、複数のXラインの配線パターン613a〜613cとその各配線パターン613a〜613c上に配置された電極パターン614a〜614dを有するフレキシブルプリント基板612が配置され、下層部に、複数のYラインの配線パターン623a〜623dとその各配線パターン623a〜623d上に配置された電極パターン624a〜624cを有するフレキシブルプリント基板622が配置されており、さらに、それら上下のフレキシブルプリント基板612とフレキシブルプリント基板622との間にシート状感圧センサ素子611が挟み込まれた構造となっている。なお、電極パターン614a〜614dと電極パターン624a〜624cは、シート状感圧センサ素子611と接触できるように各フレキシブルプリント基板612,622の面方向に配置されている。
【0007】
以上の構造のマトリクス型触覚センサの動作原理を説明する。まず、上層部のフレキシブルプリント基板612のXラインの複数の配線パターン613a〜613cのうちの1つの電線パターン、例えば電線パターン613aに電圧を印加した状態で、電極パターン614a〜614d上に圧力を加えると、感圧センサ素子611を通して下層部のフレキシブルプリント基板622の配線パターン623a〜623d上に配置された電極パターン624a〜624cに接触する。このとき、各分部に加えられた圧力に応じて感圧センサ素子611の抵抗値が変化するため、電線パターン623a〜623dの各々の電圧を測定することによりXラインの感圧を検出することができる。同様に、電線パターン613b及び613cについて電圧を印加して、電線パターン623a〜623dの各分部の電圧を測定すれば、センサ全体の感圧分布を検出することができる。
【特許文献1】特開平11−245190号公報
【特許文献2】特開昭62−080528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、高周波コイルの変形量で圧力を検出する触覚センサ(無線センサ)を、ゴム系弾性材料内に埋め込んだ構造(埋込み型触覚センサ)では、ゴム系弾性材料内にセンサを埋め込むための金型費用、開発費用及び開発日程が大幅に必要であるので、センサの形状変更を行う場合、開発に多くの時間を要するとともに、コストが高くつく。また、単純にセンサをゴム系弾性材料内に埋め込んだ場合、センサの方向と埋め込み位置が均一にならない場合が多く、感度にバラツキが生じる。特に、アンテナ(コイル)が磁界と交差する方向(垂直方向)に埋め込まれなかった場合、センサとの通信ができなくなる。
【0009】
一方、マトリクス型触覚センサの場合、センサ素子数が多くなると配線量が増加するため、ロボット等の触覚センサとして利用する場合、その配線処理が困難になるという問題がある。
【0010】
本発明はそのような実情に鑑みてなされたもので、設置位置に関係なく安定した検出感度を得ることができ、しかも、構造が簡単で配線量を大幅に削減することが可能なRFID型触覚センサの提供と、そのような特徴を有するRFID型触覚センサを備えたRFID型触覚センサ入力装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のRFID型触覚センサは、外部電磁波による電力供給と信号伝達を行うアンテナ一体型の無線タグと、圧力を検出する感圧素子とを備え、前記無線タグ上に前記感圧素子が配置されていることを特徴としている。
【0012】
本発明のRFID型触覚センサによれば、アンテナ一体型の無線タグ上に感圧素子を配置しているので、センサ構造が単純であり、量産効果によるコストダウンを図ることができる。しかも、被対象物等に貼り付けて使用することが可能であるので、設置が容易であり、任意の自由なレイアウトで触覚センサを配置することができる。また、無線タグ上に感圧素子を配置し、接触圧力等の感圧を直接検出する構造であるので、設置位置に関係なく、常に安定した検出感度を得ることができる。
【0013】
本発明のRFID型触覚センサにおいて、無線タグ上に複数の感圧素子を配置しておいてもよい。このような構造を採用すると、感圧検出部の分解能を容易に向上させることができる。また、感圧検出用の電極を複数(例えば3つ以上)配置しておいてもよく、この場合も、感圧検出部の分解能を容易に向上させることができる。
【0014】
本発明のRFID型触覚センサにおいて、当該RFID型触覚センサをシート状の軟質材料で覆うとともに、その軟質材料の片面(無線タグ側の面)に粘着剤層を形成した貼付け構造(シールタイプ)としておいてもよい。このようにRFID型触覚センサを貼付け構造とすることにより、設置が更に容易となり、任意の自由なレイアウトでRFID型触覚センサを配置することができる。
【0015】
本発明において、RFID型触覚センサをスイッチ(例えば押ボタンスイッチ)の表面または裏面に配置して入力装置を構成してもよい。この場合、押ボタンスイッチのオン/オフを非接触で検出することができる。また、スイッチ自体の配線も不要とすることが可能になる。
【0016】
本発明において、RFID型触覚センサの複数個をシート上にマトリクス状に配置することにより、分解能を高めたRFID型触覚センサ入力装置を構成してもよい。また、この場合、RFID型触覚センサと同一シート上にリーダー・ライタ及びそのアンテナを配置しておけば、例えば文字や図形等を入力する携帯用キーボードや携帯用タブレットを構築することができる。
【0017】
本発明のRFID型触覚センサの具体的な使用例として、ロボットの指または外装部に配置する形態を挙げることができる。
【0018】
本発明のRFID型触覚センサは、外部電磁波による電力供給と信号伝達を行うアンテナ一体型の無線タグを有するRFID型触覚センサであって、ロボットの指または外装部に設けられた柔軟材の表面上にRFID型触覚センサを配置し、前記RFID型触覚センサに被対象物が接触したときの前記柔軟材の変形により、RFID型触覚センサとロボット側に配置されたリーダー・ライタのアンテナとの距離が所定値以下となったときに、RFID型触覚センサとリーダー・ライタとの通信が可能となるように構成しておいてもよい。このような構成を採用すれば、柔軟材の変形量から被対象物との接触を検出することができるので、RFID型触覚センサの感圧素子部を省略することが可能となり、触覚センサの構造を簡略化することができる。
【0019】
このように柔軟材の変形量から被対象物との接触を検出する構造の場合、RFID型触覚センサ側の送信出力または受信感度の制御により検出距離を可変にすることで、リーダー・ライタとRFID型触覚センサとの通信距離や感度を自由に設定することができる。また、リーダー・ライタ側の送信出力または受信感度の制御により検出距離を可変にすることで、リーダー・ライタとRFID型触覚センサとの通信距離や感度を自由に設定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のRFID型触覚センサによれば、アンテナ一体型の無線タグ上に感圧素子を単に配置する構造であるので、センサ構造が単純であり、量産効果によるコストダウンを図ることができる。しかも、被対象物等に貼り付けて使用することが可能であるので、設置が容易であり、任意の自由なレイアウトで触覚センサを配置することができる。また、無線タグ上に感圧素子を配置し、接触圧力等の感圧を直接検出する構造であるので、設置位置に関係なく、常に安定した検出感度を得ることができる。
【0021】
ここで、リーダー・ライタとRFID型触覚センサとの通信は、近接した位置で使用することが多く、この場合、RFID型触覚センサのアンテナの小型化を図ることができるので、RFID型触覚センサ自体も小型化することが可能となる。従って、RFID型触覚センサを複数配置することにより、単位面積当りのセンサ分解能を容易に向上させることができる。さらに、本発明によるRFID型触覚センサは、無線による電力供給とセンサ検出データの通信を行うため、配線量を大幅に削減することができる。また、配線量の増加に伴うセンサの配置制限を大幅に緩和することができる。
【0022】
本発明のRFID型触覚センサ入力装置によれば、上記した特徴を有するRFID型触覚センサの複数個をシート上にマトリクス状に配置しているので、分解能の向上を図ることができる。しかも、無線による電力供給とセンサ検出データの通信を行うため、配線量を大幅に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
<実施形態1>
図1は本発明のRFID型触覚センサの一例を模式的に示す図である。
【0025】
この例のRFID型触覚センサS1は、RFID回路1、アンテナ(ループアンテナ)2、基板3、及び、感圧素子4、感圧検出用の電極5a,5b等を備えている。
【0026】
RFID回路1及びアンテナ2は基板3の一面上に形成されており、これらRFID回路1、アンテナ2及び基板3によって、外部磁界により電力供給と信号伝達を行うアンテナ一体型の無線タグT1が構成されている。
【0027】
基板3の片面(アンテナ2とは反対側の面)に凹部3aが形成されており、その凹部3aに電極5a,5bが配置されている。これら電極5a,5bはそれぞれ配線6a,6bを介してRFID回路1に接続されている。感圧素子4は、電極5a、5b上に所定の間隔をあけて対向した状態で配置されている。なお、感圧素子4としては、圧力が加わるとその素子の抵抗値が変化する感圧ゴム等を利用することができる。
【0028】
以上の構造のRFID型触覚センサS1において、感圧素子4にZ方向の圧力が加わると、感圧素子4の抵抗値が変化する。従って、感圧素子4と接触する電極5aと電極5bの間の抵抗値をRFID回路1で検出することにより、Z方向の接触圧力を測定することができる。そして、このようにして測定されたZ方向の接触圧力の検出値(感圧値)を、アンテナ2からRFID用リーダー・ライタ(図示せず)にデータ送信することにより、当該RFID型触覚センサS1と離れた位置で、触覚検出を行うことが可能になる。
【0029】
次に、RFID型触覚センサS1の回路構成を一例を図2を参照しながら説明する。
【0030】
この例の回路ブロックは、RFID回路部10及び感圧検出回路部20によって構成されている。RFID回路部10は、主に無線タグとしての回路ブロックで、RFID用リーダー・ライタから送信され、アンテナ2で受けた電磁波を整流して電力を発生させる電力供給部11と、電磁波を信号として受信する無線受信部13を備えている。
【0031】
アンテナ2で受信した受信電波は無線受信部13のアンプ(図示せず)にて増幅され、復調器15によってデジタル信号に変換される。その変換後のデジタル信号は、シリアル通信による既知のフォーマットで構成されているため、シリアル通信処理部16で意味のあるデータとしてCPU17に転送される。
【0032】
このとき、受信したデータが、感圧データを転送するためのコマンドである場合、感圧素子4の感圧値を、感圧検出回路部20のセンサ回路部21で検出し、CPU17に感圧データとして送る。次に、CPU17は、EEPROM(不揮発性メモリ)19に予め記憶されている自分自身の識別番号と感圧データとをシリアル通信処理部16に送り、シリアル転送の信号フォーマットに変換する。その変換後の信号を、変調器14において変調して無線転送するため信号として無線送信部12に送りアンテナ2から無線送信する。そして、アンテナ2からの無線信号をRFID用リーダー・ライタで受信することにより、RFID型触覚センサでの感圧検出を無線通信にて行うことができる。
【0033】
なお、CPU17に接続されているROM/RAM18には、以上の動作を実行するためのプログラム等が書き込まれている。
【0034】
次に、RFID型触覚センサS1の使用形態の一例を図3を参照しながら説明する。
【0035】
この例では、RFID型触覚センサS1を被対象物Wに設置する一方、ロボットの指30にリーダー・ライタ31及びアンテナ32を配置しておき、RFID型触覚センサS1の感圧素子4で感圧検出を行い、その感圧データを、無線タグT1からアンテナ32を介してリーダー・ライタ31に送信することにより触覚検出を行う点に特徴がある。
【0036】
さらに、この例では、RFID型触覚センサS1を、紙やビニール系シート等のシート状の軟質材料7で板形状に覆うとともに、そのシート状の軟質材料7の片面(無線タグT1側の面)に粘着剤層を形成して貼付け構造(シールタイプ)にした点に特徴がある。このようにRFID型触覚センサS1を貼付け構造とすることにより、設置が更に容易となり、任意の自由なレイアウトでRFID型触覚センサS1を配置することができる。
【0037】
なお、図3に示す例では、リーダー・ライタ31をロボットの指30に設置しているが、腕時型のリーダー・ライタを人の腕につけるという応用例も考えることができる。
【0038】
以上のRFID型触覚センサS1によれば、基板3に形成したRFID回路1及びアンテナ2からなる無線タグT1上に感圧素子4を単に配置した構造であるので、センサ構造が単純であり、量産効果によるコストダウンを図ることができる。しかも、被対象物等に貼り付けて使用することが可能であるので、設置が容易であり、任意の自由なレイアウトで触覚センサを配置することができる。また、無線タグT1上に感圧素子4を配置し、接触圧力等の感圧を直接検出する構造であるので、設置位置に関係なく、常に安定した検出感度を得ることができる。
【0039】
ここで、例えば図3に示すように、リーダー・ライタ31とRFID型触覚センサS1との通信は、近接した位置で使用する場合が多い。この場合、RFID型触覚センサS1のアンテナ2の小型化を図ることが可能であるので、RFID型触覚センサS1自体を小型化(例えば0.4mm角以下)することが可能となる。従って、多数のRFID型触覚センサS1・・S1を配置することにより、単位面積当りのセンサ分解能を容易に向上させることができる。
【0040】
しかも、本発明の触角センサはRFIDタイプであるので、無線による電力供給とセンサ検出データの通信を行うことが可能となり、配線量を大幅に削減することができる。また、配線量の増加に伴うセンサの配置制限を大幅に緩和することができる。
【0041】
<実施形態2>
図4は本発明のRFID型触覚センサの他の例を模式的に示す図である。
【0042】
この例のRFID型触覚センサS2は、前記した図1の構造において、感圧素子を2つに分割し、その分割した各感圧素子104a,104bにそれぞれ電極105a,105bと電極105c,105dを配置している点に特徴がある。それ以外の構造は、図1のRFID型触覚センサS1と同じである。この例のように、感圧検出部分を2つの感圧素子104a,104bで構成することにより、触覚センサの分解能を容易に向上させることができる。
【0043】
なお、この例において、2つの感圧素子104a,104bの合わせ部分(分割部分)には保持板103が配置されている。また、各感圧素子104a,104bのそれぞれに対して配置された電極105a,105bと電極105c,105dは、それぞれ、配線106a〜106dを介してRFID回路1に接続されている。
【0044】
<実施形態3>
図5は本発明のRFID型触覚センサの別の例を模式的に示す図である。
【0045】
この例のRFID型触覚センサS3は、前記した図1の構造において、1つの感圧素子4に対して4つの電極205a〜205dを配置した点に特徴がある。それ以外の構造は図1のRFID型触覚センサS1と同じである。なお、4つの電極205a〜205dはそれぞれ配線206a〜206dを介してRFID回路1に接続されている。
【0046】
この例の動作原理を説明すると、4つの電極205a〜205dのうち、まず、2つの電極205aと電極205bを利用して、感圧素子4の抵抗値(つまり電極205aと電極205bとの間の感圧)を測定する。次に、前記と同様に、電極205bと電極205cを利用して、感圧素子4の抵抗値(つまり電極205bと電極205cとの間の感圧)を測定し、さらに、電極205cと電極205dを利用して、感圧素子4の抵抗値(つまり電極205cと電極205dとの間の感圧)を測定することにより、1つの感圧素子4に対して3箇所の感圧を検出することが可能になる。
【0047】
以上のように、この例のRFID型触覚センサS3によれば、図1の構造において、電極及び配線を追加するだけで、簡単な構造のもとに分解能を向上させることができるという利点がある。
【0048】
<実施形態4>
上記した特徴を有する図1のRFID型触覚センサS1、図4のRFID型触覚センサS2、または、図5のRFID型触覚センサS3のいずれかのRFID型触覚センサを、押ボタンスイッチの表面または裏面に配置してRFID型触覚センサ入力装置を構成すれば、押ボタンスイッチのオン/オフを非接触で検出することができる。また、押ボタンスイッチ自体の配線も不要とすることが可能になる。しかも、図1、図4及び図5の各RFID型触覚センサS1,S2,S3は、被対象物に容易に貼り付けることが可能であるので、押ボタンスイッチの任意の部位に自由に設置することが可能である。
【0049】
さらに、RFID型触覚センサを押ボタンスイッチに適用した場合、ボタンを押す動作を行ったときに、リーダー・ライタのアンテナとRFID型触覚センサが接近した位置関係となるように構成することが可能であるので、RFID型触覚センサのアンテナ及びリーダー・ライタのアンテナの小型化を図ることができる。
【0050】
なお、以上は押ボタンスイッチに適用した例について説明したが、これに限られることなく、押ボタンスイッチと類似形状をした物の表面または裏面上にRFID型触覚センサを配置してもよい。
【0051】
<実施形態5>
図6は本発明のRFID型触覚センサ入力装置の一例を模式的に示す図である。この例では、図1に示すRFID型触覚センサS1を複数個用い、それらRFID型触覚センサS1・・S1をマトリクス状(この例では8行×8列)に配置してセンサ群の全体をシート構造とした点に特徴がある。
【0052】
そして、この例においても、各RFID型触覚センサS1・・S1の検出値(感圧値)を非接触で読み取ることができるので、配線量を増加させることなく、自由な設置が可能なRFID型触覚センサ入力装置を構築することができる。
【0053】
なお、この例のRFID型触覚センサ入力装置は、文字や図形等を入力する携帯用キーボードや携帯用タブレットに応用することが可能である。
【0054】
図7は本発明のRFID型触覚センサ入力装置の他の例を模式的に示す図である。この例では、複数のRFID型触覚センサS1・・S1をシート8上に配置するとともに、その同一のシート8上にリーダー・ライタ31及びそのアンテナ32を配置してRFID型触覚センサ入力装置を構築した点に特徴がある。この例においても、携帯用キーボードや携帯用タブレットに応用することが可能である。
【0055】
なお、図6及び図7のRFID型触覚センサ入力装置において、RFID型触覚センサS1に替えて、図4のRFID型触覚センサS2または図5のRFID型触覚センサS3等を用いてもよい。
【0056】
<実施形態6>
図8は本発明のRFID型触覚センサの応用例を模式的に示す図である。
【0057】
この例では、ロボットの外装部30a(またはロボットの指30等)に、複数のRFID型触覚センサS1・・S1を配置する一方、ロボットの指30(またはハンド本体部分等)にリーダー・ライタ31及びそのアンテナ32を配置し、それらリーダー・ライタ31及びアンテナ32によって、RFID型触覚センサS1に対象物が接触した否かを検出するように構成した点に特徴があり、このような構造を採用すれば、設置と配置が自由な触覚センサを構築することができる。
【0058】
なお、図8に示す構造において、RFID型触覚センサS1に替えて、図4のRFID型触覚センサS2または図5のRFID型触覚センサS3等を用いてもよい。
【0059】
また、図8に示す構造に限られることなく、他の応用例として、ロボットの指や外装部に替えて、データ・グローブ等の表面にRFID型触覚センサを設置することにより、データ・グローブで被対象物に接触した否かを検出する触覚センサとしても利用できる。
【0060】
<実施形態7>
図9は本発明のRFID型触覚センサの別の例を模式的に示す図である。
【0061】
この例では、ロボットの外装部30a(またはロボットの指30等)にシリコンゴム等の柔軟材33を設け、その柔軟材33の表面上に複数のRFID型触覚センサS4・・S4を配置する一方、ロボットの指30(またはハンド本体部分等)にリーダー・ライタ31及びそのアンテナ32を配置している。この例では、各RFID型触覚センサS4として、図1において感圧素子4及び電極5a,5bを省略した構造の触覚センサを用いている。
【0062】
そして、この例では、被対象物WがRFID型触覚センサS4・・S4に接触したときに柔軟材33が変形し、リーダー・ライタ31のアンテナ32とRFID型触覚センサS4・・S4との間の距離Dが短くなったときに通信が可能な状態とすることができる。
【0063】
すなわち、図9に示す構造において、各RFID型触覚センサS4・・S4とリーダー・ライタ31のアンテナ32との通信距離を限定(通信距離の限定については後述する)しておけば、通常状態(被対象物Wが非接触の状態)では、リーダー・ライタ31のアンテナ32とRFID型触覚センサS4・・S4とは双方向通信を行うことができないが、例えばRFID型触覚センサS4−b,S4−cに被対象物Wが接触して柔軟材33が変形すると、それらRFID型触覚センサS4−b,S4−cとアンテナ32との間の各距離Dが短くなって双方向通信が可能となり、これによって、例えばRFID型触覚センサS4−b,S4−cが被対象物Wと接触したことを検出することができる。
【0064】
この例のRFID型触覚センサによれば、柔軟材33の変形量から被対象物との接触を検出することができるので、図1に示す感圧素子4及び電極5a,5bを省略することができ、触覚センサの構造を簡略化することができる。
【0065】
−通信距離の限定について−
通信距離を限定する手法としては、リーダー・ライタまたはRFID型触覚センサにおいて、送信出力または受信感度のいずれか1つの機能について制限(制御)することにより距離限定を実現することができる。勿論、アンテナの大きさを変更することによっても送信出力や受信感度が変えることができる。
【0066】
そして、このようにして通信距離を限定することにより、上記したように、図1に示す感圧素子4と電極5a,5bを省略することが可能となる。また、図9の構造の触覚センサに、図1に示すRFID型触覚センサS1をそのまま適用した場合は、リーダー・ライタと複数のRFID型触覚センサと双方向通信可能な個数が少なくなるので、リーダー・ライタが双方向通信する回数が大幅に削減される結果、双方向通信が多い場合に比べ、より速い通信サイクルを実現することができる。
【0067】
−送信出力・受信感度の制御について−
次に、RFID型触覚センサまたはリーダー・ライタの送信出力・受信感度を制御する手法について説明する。
【0068】
まず、RFID型触覚センサの送信出力については、図2に示す無線送信部12から送信出力する電磁波の大きさを変えることにより、RFID型触覚センサの送信出力を可変とすることができる。また、複数のRFID型触覚センサを用いる場合、無線送信部12から送信出力する電磁波の大きさをRFID型触覚センサ毎に変えることにより、各RFID型触覚センサの送信出力を可変とすることができる。
【0069】
そして、このようにRFID型触覚センサの送信出力を可変にすることにより、リーダー・ライタとRFID型触覚センサの通信距離(検出距離)を可変とすることが可能となり、これによって、リーダー・ライタとRFID型触覚センサ間の配置設定や距離をよりフレキシブルに設定することができる。
【0070】
次に、RFID型触覚センサの送信出力の最適な設定方法について説明する。まず、初期状態としてRFID型触覚センサの送信出力を最大に設定し、次に、リーダー・ライタからRFID型触覚センサに通信コマンドを送信し、そのコマンドに対するレスポンスをRFID型触覚センサからリーダー・ライタに返す。このとき、一回のレスポンス通信時に、図2に示すCPU17の制御により無線送信部12の出力を前回のレスポンスより1ステップ小さな送信出力とする。ここで、1ステップの制御が仮に1mmの通信距離に対応している場合、1mm単位で通信距離が短くなる。
【0071】
そして、このような通信サイクルを繰り返すと、何れリーダー・ライタとRFID型触覚センサ間で通信ができない状態となる。このときの送信出力制御量をRFID型触覚センサのEEPROM19等の不揮発性メモリに記憶し、RFID型触覚センサの送信出力をこの制御量に固定する。このような設定を行うと、RFID型触覚センサが被対象物に押し付けられていない状態のときは、リーダー・ライタと双方向通信が行えないが、RFID型触覚センサが被対象物に1mm(所定値)以上押し付けられると、リーダー・ライタ間の距離が短くなり双方向通信が可能となる。つまり、通常通信で双方向通信が可能な場合は、RFID型触覚センサが押し付けられたことを意味し、触覚センサとしての役割を果たすことができる。
【0072】
また、RFID型触覚センサの受信感度については、図2に示す無線受信部13で受信する電磁波の感度を変えることにより、RFID型触覚センサの受信感度を可変とすることができる。また、複数のRFID型触覚センサを用いる場合、無線受信部13で受信する電磁波の感度をRFID型触覚センサ毎に変えることにより、各RFID型触覚センサの受信感度を可変とすることができる。
【0073】
そして、このようにRFID型触覚センサの受信感度を可変にすることにより、リーダー・ライタとRFID型触覚センサの通信距離(検出距離)を可変とすることが可能となり、これによって、リーダー・ライタとRFID型触覚センサ間の配置設定や距離をよりフレキシブルに設定することができる。
【0074】
一方、リーダー・ライタの送信出力または受信感度を制御することにより、リーダー・ライタとRFID型触覚センサの通信距離を可変とすることも可能である。
【0075】
具体的には、RFID型触覚センサとほぼ同構造のリーダー・ライタの無線送信部から送信出力する電磁波の大きさを変えることにより、RFID型触覚センサの送信出力を可変とすることができる。また、複数のRFID型触覚センサを用いる場合、RFID型触覚センサとほぼ同構造のリーダー・ライタの無線送信部から送信出力する電磁波の大きさをRFID型触覚センサ毎に変えることにより、各RFID型触覚センサの送信出力を可変とすることができる。
【0076】
そして、このようにリーダー・ライタの送信出力を可変にすることにより、リーダー・ライタとRFID型触覚センサの通信距離(検出距離)を可変とすることが可能となり、これによって、リーダー・ライタとRFID型触覚センサ間の配置設定や距離をよりフレキシブルに設定することができる。
【0077】
さらに、リーダー・ライタの受信感度についても、同様に、RFID型触覚センサとほぼ同構造のリーダー・ライタの無線受信部から受信する電磁波の感度を変えることによりリーダー・ライタとRFID型触覚センサの通信距離を可変とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明のRFID型触覚センサの一例を模式的に示す図である。
【図2】図1のRFID型触覚センサの回路構成を示すブロック図である。
【図3】図1のRFID型触覚センサの使用例を模式的に示す図である。
【図4】本発明のRFID型触覚センサの他の例を模式的に示す図である。
【図5】本発明のRFID型触覚センサの別の例を模式的に示す図である。
【図6】本発明のRFID型触覚センサ入力装置の一例を模式的に示す図である。
【図7】本発明のRFID型触覚センサ入力装置の他の例を模式的に示す図である。
【図8】RFID型触覚センサの応用例を模式的に示す図である。
【図9】本発明のRFID型触覚センサの別の例を模式的に示す図である。
【図10】埋込み型触覚センサの構造を模式的に示す図である。
【図11】図10の触覚センサに用いるセンサ素子の構造を模式的に示す図である。
【図12】マトリクス型触覚センサの構造を模式的に示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0079】
S1 RFID型触覚センサ
1 RFID回路
2 アンテナ
3 基板
3a 凹部
4 感圧素子
5a,5b 電極
6a,6b 配線
10 RFID回路部
11 電力供給部
12 無線送信部
13 無線受信部
14 変調器
15 復調器
16 シリアル通信処理部
17 CPU
18 ROM/RAM
19 EEPROM
20 感圧検出回路部
21 センサ回路部
30 ロボットの指
30a ロボットの外装部
31 リーダー・ライタ
32 アンテナ
S4 RFID型触覚センサ
33 柔軟材(感圧素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電磁波による電力供給と信号伝達を行うアンテナ一体型の無線タグと、圧力を検出する感圧素子とを備え、前記無線タグ上に前記感圧素子が配置されていることを特徴とするRFID型触覚センサ。
【請求項2】
請求項1記載のRFID型触覚センサにおいて、前記無線タグ上に複数の感圧素子が配置されていることを特徴とするRFID型触覚センサ。
【請求項3】
請求項1または2記載のRFID型触覚センサにおいて、感圧検出用の電極が複数配置されていることを特徴とするRFID型触覚センサ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のRFID型触覚センサにおいて、当該RFID型触覚センサがシート状の軟質材料で覆われているとともに、その軟質材料の片面に粘着剤層が形成されていることを特徴とするRFID型触覚センサ。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のRFID型触覚センサとスイッチとを備え、前記RFID型触覚センサが前記スイッチの表面または裏面に配置されていることを特徴とするRFID型触覚センサ入力装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のRFID型触覚センサの複数個がシート上にマトリクス状に配置されていることを特徴とするRFID型触覚センサ入力装置。
【請求項7】
請求項6記載のRFID型触覚センサ入力装置において、前記RFID型触覚センサと同一シート上にリーダー・ライタ及びそのアンテナが配置されていることを特徴とするRFID型触覚センサ入力装置。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれかに記載のRFID型触覚センサにおいて、当該RFID型触覚センサがロボットの指または外装部に配置されていることを特徴とするRFID型触覚センサ。
【請求項9】
外部電磁波による電力供給と信号伝達を行うアンテナ一体型の無線タグを有するRFID型触覚センサであって、ロボットの指または外装部に設けられた柔軟材の表面上に当該RFID型触覚センサが配置されており、前記RFID型触覚センサに被対象物が接触したときの前記柔軟材の変形により、前記RFID型触覚センサと前記ロボット側に配置されたリーダー・ライタのアンテナとの距離が所定値以下となったときに、前記RFID型触覚センサと前記リーダー・ライタとの通信が可能となるように構成されていることを特徴とするRFID型触覚センサ。
【請求項10】
請求項9記載のRFID型触覚センサにおいて、当該RFID型触覚センサ側の送信出力を制御することにより検出距離が可変であることを特徴とするRFID型触覚センサ。
【請求項11】
請求項9または10記載のRFID型触覚センサにおいて、当該RFID型触覚センサ側の受信感度を制御することにより検出距離が可変であることを特徴とするRFID型触覚センサ。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれかに記載のRFID型触覚センサにおいて、前記リーダー・ライタ側の送信出力を制御することにより検出距離が可変であることを特徴とするRFID型触覚センサ。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれかに記載のRFID型触覚センサにおいて、前記リーダー・ライタ側の受信感度を制御することにより検出距離が可変であることを特徴とするRFID型触覚センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−349461(P2006−349461A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175081(P2005−175081)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】