ＲＨ真空脱ガス槽の槽底の鉄皮の変形防止装置および鉄皮の変形防止方法
【課題】 ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の内張り煉瓦の寿命の向上を図るために下部槽の鉄皮の変形を防止する装置および方法を提供することである。
【解決手段】 ＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の環流管４の間の槽底３ｂの部分に、下部に設置の取鍋１２からの輻射熱を遮蔽する防熱具７を設けることで、環流管４の間の鉄皮６が高温に曝されることを防止するもので、防熱具７を断熱材８とし、さらに、断熱材８の下面の両端部を下方から鉄板９で支持し、下部槽３の槽底３ｂに吊り具１０で鉄板９を吊り下げ、断熱材８と槽底３ｂの鉄皮６の間に空隙１１を設けて、鉄皮３ｂへ直接的な伝熱を抑制し、槽底３ｂの浸漬管４の間の鉄皮６の軟化および熱膨張による変形を防止し、鉄皮６の内部の下の内張り煉瓦５の割れや剥離を防いで、下部槽３ｂの寿命を大幅に延ばす。
【解決手段】 ＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の環流管４の間の槽底３ｂの部分に、下部に設置の取鍋１２からの輻射熱を遮蔽する防熱具７を設けることで、環流管４の間の鉄皮６が高温に曝されることを防止するもので、防熱具７を断熱材８とし、さらに、断熱材８の下面の両端部を下方から鉄板９で支持し、下部槽３の槽底３ｂに吊り具１０で鉄板９を吊り下げ、断熱材８と槽底３ｂの鉄皮６の間に空隙１１を設けて、鉄皮３ｂへ直接的な伝熱を抑制し、槽底３ｂの浸漬管４の間の鉄皮６の軟化および熱膨張による変形を防止し、鉄皮６の内部の下の内張り煉瓦５の割れや剥離を防いで、下部槽３ｂの寿命を大幅に延ばす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、取鍋精練した取鍋内の溶鋼を脱ガス処理するために取鍋の上部に配設して取鍋内に下部槽から２本の環流管およびその先端の浸漬管を装着して脱ガス処理するＲＨ真空脱ガス槽において、ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽とその槽底を形成する内張り煉瓦とその外装を覆う鉄皮の中、下部槽の槽底に配設の鉄皮を、その下部に配置の取鍋の溶鋼およびスラグの輻射熱から防止し、下部槽の槽底の鉄皮の変形の防止装置および防止方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
図２の（ａ）に示す従来の上部槽２ａと中間槽２ｂと下部槽３からなるＲＨ真空脱ガス槽１では、溶鋼が滞留した滞留溶鋼１４を内在している下部槽３の槽壁３ａおよび槽底３ｂの内張り煉瓦５を覆う鉄皮６は、下部槽３の下に配置の取鍋１１の溶鋼１３およびスラグ１２の表面に近いため、取鍋１１内の溶鋼１３およびスラグ１２から輻射熱を受けて鉄皮６が軟化して変形し、それに伴って下部槽３の鉄皮６内の内張り煉瓦５に鉄皮６から応力が掛かり、内張り煉瓦５に割れや剥離などが発生して内張り煉瓦５の寿命が著しく低下していた。
【０００３】
そこで、図４の（ａ）に示す従来の下部槽３の２本の環流管４の周囲の内張り煉瓦５とその外周に張られた鉄皮６からなる槽底３ｂにおいて、これらの内張り煉瓦５および鉄皮６の変形を防止するために、１．鉄皮６の厚みの変更を検討し、鉄皮６の厚みを増加すると、ＲＨ真空脱ガス槽１を吊り上げるクレーン荷重をオーバーする問題がある。そこで、２．下部槽３内の内張り煉瓦５の煉瓦ライニングの施工の見直しを行って、図４の（ｂ）に示すように、鉄皮６と内張り煉瓦５の間に緩衝材となるセラミックウールのシート１６を挿入したが、明確な効果は得られなかった。さらに、同じく図４（ｂ）に示すように、３．下部槽３の槽底３ｂの２本の環流管４の間の内張り煉瓦５の煉瓦形状を見直し、２本の環流管４の間の内張り煉瓦５の上辺を短くして熱膨張による鉄皮６の体積変化による応力を受容しうる形状としたが、明瞭な効果は得られなかった。
【０００４】
一方、従来のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の変形防止方法として、取鍋内の溶鋼からの伝熱によって下部槽の鉄皮の温度が不均一になり、２本の環流管がハの字に変形して取鍋の側壁と干渉して溶鋼処理ができなくなる事態を、ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮にガス体を吹き付けることで鉄皮変形を防止する方法が提案されている（例えば、特許文献１参照。）。
【０００５】
【特許文献１】特開平１０−２８７９１４号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明が解決しようとする課題は、ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮は、下部槽の下に配置の取鍋内の溶鋼およびスラグの表面に近いため、これらから輻射熱を受けて変形し、それに伴ってＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮内の内張り煉瓦に鉄皮から応力が掛かり、この応力により生じる内張り煉瓦の割れおよび剥離などを解消し、内張り煉瓦の寿命向上を図るＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の変形を防止する装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記の課題を解決するための手段は、請求項１の発明では、ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の槽底の鉄皮、特に溶鋼を環流するための２本の環流管の間の槽底、の鉄皮の下部に防熱具を配設したことを特徴とするＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止装置である。
【０００８】
請求項２の発明では、鉄皮の下部に配設の防熱具は断熱材からなり下面を鉄板で支持して鉄皮から吊り下げていることを特徴とする請求項１の手段のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止装置である。
【０００９】
請求項３の発明では、鉄皮から吊り下げた防熱具は鉄皮と吊り下げた鉄板との間に空隙を設けて配設していることを特徴とする請求項１又は２の手段のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止装置である。この空隙を設けることにより直接に防熱具からの熱伝導を防いで鉄皮の変形を防止する。
【００１０】
請求項４の発明では、ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の槽底の鉄皮の下部に鉄皮の変形防止用の防熱具を配設してＲＨ真空脱ガス槽の下部に配設の取鍋からの輻射熱を遮断することにより鉄皮を防熱することを特徴とするＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止方法である。
【００１１】
請求項５の発明では、鉄皮の下部に鉄皮の変形防止用の防熱具を配設する方法は防熱具を断熱材から形成して断熱材の下面を鉄板で支持し、該鉄板をＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の槽底に吊り下げることを特徴とする請求項４の手段のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止方法である。
【００１２】
請求項６の発明では、防熱具を下部槽の槽底に吊り下げて配設する方法は下部槽の槽底の鉄皮と吊り下げた防熱具との間に空隙を設けて吊り下げることを特徴とする請求項５または６の手段のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止方法である。
【発明の効果】
【００１３】
上記の手段としたことで、ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の槽底の鉄皮の変形が防止される結果、従来の下部槽の槽底の鉄皮の内部の内張り煉瓦の寿命が略３９時間であるのに対し、本発明の下部槽の槽底の鉄皮の内部の内張り煉瓦の寿命は略５１時間であり、ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の内張り煉瓦の寿命を略３０％増加することができ、本発明は従来にない優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１４】
先ず、本発明の原理を説明すると、本発明の手段は、ＲＨ真空脱ガス槽１の下部に設置の取鍋１２からの輻射熱を遮蔽し、かつ、伝熱を防止することにより、ＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の鉄皮６の軟化を抑制し、軟化による鉄皮６の変形を防止する方法である。ところで、ＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の槽底３ｂから下方に突出する２本の環流管４の間は、下部に設置の取鍋１２の溶鋼１４やスラグ１３の表面から輻射熱を受け、かつ、環流管４の間の槽底３ｂは、環流管４側が環流管４により、閉鎖された空間であるため、高温になりやすい。したがって、環流管４の間の槽底３ｂの部分に、輻射熱を遮蔽する防熱具７を設けることで、環流管４の間の鉄皮６が高温に曝されることが防止できる。この場合、防熱具７を断熱材８とすることで防熱具７の内部における伝熱が抑制でき、高温下での鉄皮６の防熱が確保できる。さらに、断熱材８の下面の両端部を下方から鉄板９で支持し、下部槽３の槽底３ｂに吊り具１０で鉄板９を吊り下げて係止するものとすると、断熱材８と槽底３ｂの鉄皮６の間に空隙１１を設けることができ、鉄皮３ｂへ直接的な伝熱を一層に抑制でき、その結果、ＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３ｂの環流管４の間の鉄皮６の軟化および熱膨張による変形がより一層に防止できる。このように鉄皮６の変形が防止されることで、鉄皮６の内部の下部槽３ｂの内張り煉瓦５に応力が掛からないので割れたり剥離たりすることがなく、下部槽３ｂの寿命が大幅に延びることとなる。
【００１５】
本発明の最良の実施の形態について、表および添付図面を参照して以下に説明する。図２の（ｂ）は、上記の図２の（ａ）と対比して、本発明におけるＲＨ真空脱ガス槽１とその下部に配置の取鍋１２の要部を模式的に示す図である。図２の（ｂ）に示すように、ＲＨ真空脱ガス槽１は上部槽２ａと中間槽２ｂと下部槽３からなり、ＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の槽底３ｂから突出する２本の環流管４に接続の浸漬管４ａを下部に配置の取鍋１２のスラグ１３および溶鋼１４に挿通し、溶鋼１４をＲＨ真空脱ガス槽に循環して真空脱ガス処理される。この場合、取鍋１２中には取鍋精練した溶鋼１４とその上部にスラグ１３が受容されており、ＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の一方の浸漬管４ａから環流管４を経て取鍋１２内の溶鋼１４を下部槽３内に吸い上げ、下部槽３内で真空脱ガス処理して他方の環流管４を経て浸漬管４ａから取鍋１２内に処理した溶鋼１４を環流する。ＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の槽底３ｂには、図３に示すように、２本の環流管４の間とその両サイドの槽底３ｂの部分に防熱具７の断熱材８を配置する。断熱材８の両サイドの下部には、断熱材８を下方から支持する鉄板９を配設し、この鉄板９を吊り具１０で下部槽３に吊り下げるものとして防熱具７としている。この場合、下部槽３の槽底３ｂと断熱材８の間には空隙１１を設けるものとすると、断熱材８から槽底３ｂへは直に熱伝導されなくなり、槽底３ｂへは主として断熱材からの輻射熱となり、槽底３ｂの昇温が抑制できる。
【００１６】
したがって、取鍋１２内の溶鋼１４やスラグ１３からの熱が防熱具７により遮断される結果、図１に示すＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の槽底３ｂに張られた鉄皮６が高温に曝されて加熱されることが阻止されるので、鉄皮６が軟化することにより生じる鉄皮６の変形が的確に防止できる。この結果、鉄皮６の変形による力が内張り煉瓦５に掛かることがなく、内張り煉瓦５の割れや剥離がなくなって下部槽３の寿命が著しく延びることとなる。このように、下部槽３の槽底３ｂに本発明における防熱具７を設けたことで、長期にわたって安定して真空脱ガス処理が可能となり、取鍋精練した溶鋼、例えば高炭素クロム軸受鋼の溶鋼の酸素量を例えば５ｐｐｍに低減でき、かつ酸化物系介在物量を大幅に低減でき、得られた軸受鋼の疲労特性を大幅に延長できる。
【００１７】
ＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の槽底３ｂに空隙１１を設けて本発明における防熱具７を設置した場合を対策後とし、一方、従来のＲＨ真空脱ガス槽１のままで、防熱具７を設置しない場合を対策前として、真空脱ガス処理して下部槽３の内張り煉瓦５の割れや剥離に至るまでの下部槽３の各回ごとの寿命を表１に示した。この場合、ＲＨ真空脱ガス処理の略３００分毎に実施する浸漬管４ａの取替えの際に、下部槽３の内部を目視で内張り煉瓦５の割れや剥離を確認するものとし、内張り煉瓦５の消耗は煉瓦残寸が０ｍｍとなるとアウトとし、内張り煉瓦５の割れは、割れが背面まで貫通したらアウトとした。表１において、本発明の防熱具７を設置した対策後の寿命は、Ｎｏ．１〜Ｎｏ．１０の１０回の実施において、平均で３０８７分であった。これに対し、防熱具７を設置しない従来のＲＨ脱ガス槽による対策前の寿命は、Ｎｏ．１〜Ｎｏ．７の７回の実施において、平均で２３６７分であった。表１の結果、本発明の防熱具７を設置したＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の寿命は、防熱具７を設置しない従来のＲＨ真空脱ガス槽１に比して略３割の延びが得られた。
【００１８】
【表１】
【図面の簡単な説明】
【００１９】
【図１】ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽を断面図により示した斜視図である。
【図２】（ａ）は取鍋に設置した従来のＲＨ真空脱ガス槽を、（ｂ）は取鍋に設置した本発明の防熱具を有するＲＨ真空脱ガス槽を一部断面図でしました模式図である。
【図３】（ａ）は下部槽と防熱具を示す側面図の、（ｂ）は下部槽と防熱具を示す下面図の模式図である。
【図４】は従来のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の槽底の環流管の周囲部分を示し、（ｂ）は下部槽の槽壁の鉄皮と内張り煉瓦の間に緩衝材のセラミックウールのシートを設置し、環流管の間の内張り煉瓦の形状を変更して対策した例を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【００２０】
１ ＲＨ真空脱ガス槽
２ａ 上部槽
２ｂ 中間槽
３ 下部槽
３ａ 槽壁
３ｂ 槽底
４ 環流管
４ａ 浸漬管
５ 内張り煉瓦
６ 鉄皮
７ 防熱具
８ 断熱材
９ 鉄板
１０ 吊り具
１１ 空隙
１２ 取鍋
１３ スラグ
１４ 溶鋼
１５ 滞留溶鋼
１６ シート
【技術分野】
【０００１】
本発明は、取鍋精練した取鍋内の溶鋼を脱ガス処理するために取鍋の上部に配設して取鍋内に下部槽から２本の環流管およびその先端の浸漬管を装着して脱ガス処理するＲＨ真空脱ガス槽において、ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽とその槽底を形成する内張り煉瓦とその外装を覆う鉄皮の中、下部槽の槽底に配設の鉄皮を、その下部に配置の取鍋の溶鋼およびスラグの輻射熱から防止し、下部槽の槽底の鉄皮の変形の防止装置および防止方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
図２の（ａ）に示す従来の上部槽２ａと中間槽２ｂと下部槽３からなるＲＨ真空脱ガス槽１では、溶鋼が滞留した滞留溶鋼１４を内在している下部槽３の槽壁３ａおよび槽底３ｂの内張り煉瓦５を覆う鉄皮６は、下部槽３の下に配置の取鍋１１の溶鋼１３およびスラグ１２の表面に近いため、取鍋１１内の溶鋼１３およびスラグ１２から輻射熱を受けて鉄皮６が軟化して変形し、それに伴って下部槽３の鉄皮６内の内張り煉瓦５に鉄皮６から応力が掛かり、内張り煉瓦５に割れや剥離などが発生して内張り煉瓦５の寿命が著しく低下していた。
【０００３】
そこで、図４の（ａ）に示す従来の下部槽３の２本の環流管４の周囲の内張り煉瓦５とその外周に張られた鉄皮６からなる槽底３ｂにおいて、これらの内張り煉瓦５および鉄皮６の変形を防止するために、１．鉄皮６の厚みの変更を検討し、鉄皮６の厚みを増加すると、ＲＨ真空脱ガス槽１を吊り上げるクレーン荷重をオーバーする問題がある。そこで、２．下部槽３内の内張り煉瓦５の煉瓦ライニングの施工の見直しを行って、図４の（ｂ）に示すように、鉄皮６と内張り煉瓦５の間に緩衝材となるセラミックウールのシート１６を挿入したが、明確な効果は得られなかった。さらに、同じく図４（ｂ）に示すように、３．下部槽３の槽底３ｂの２本の環流管４の間の内張り煉瓦５の煉瓦形状を見直し、２本の環流管４の間の内張り煉瓦５の上辺を短くして熱膨張による鉄皮６の体積変化による応力を受容しうる形状としたが、明瞭な効果は得られなかった。
【０００４】
一方、従来のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の変形防止方法として、取鍋内の溶鋼からの伝熱によって下部槽の鉄皮の温度が不均一になり、２本の環流管がハの字に変形して取鍋の側壁と干渉して溶鋼処理ができなくなる事態を、ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮にガス体を吹き付けることで鉄皮変形を防止する方法が提案されている（例えば、特許文献１参照。）。
【０００５】
【特許文献１】特開平１０−２８７９１４号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明が解決しようとする課題は、ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮は、下部槽の下に配置の取鍋内の溶鋼およびスラグの表面に近いため、これらから輻射熱を受けて変形し、それに伴ってＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮内の内張り煉瓦に鉄皮から応力が掛かり、この応力により生じる内張り煉瓦の割れおよび剥離などを解消し、内張り煉瓦の寿命向上を図るＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の変形を防止する装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記の課題を解決するための手段は、請求項１の発明では、ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の槽底の鉄皮、特に溶鋼を環流するための２本の環流管の間の槽底、の鉄皮の下部に防熱具を配設したことを特徴とするＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止装置である。
【０００８】
請求項２の発明では、鉄皮の下部に配設の防熱具は断熱材からなり下面を鉄板で支持して鉄皮から吊り下げていることを特徴とする請求項１の手段のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止装置である。
【０００９】
請求項３の発明では、鉄皮から吊り下げた防熱具は鉄皮と吊り下げた鉄板との間に空隙を設けて配設していることを特徴とする請求項１又は２の手段のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止装置である。この空隙を設けることにより直接に防熱具からの熱伝導を防いで鉄皮の変形を防止する。
【００１０】
請求項４の発明では、ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の槽底の鉄皮の下部に鉄皮の変形防止用の防熱具を配設してＲＨ真空脱ガス槽の下部に配設の取鍋からの輻射熱を遮断することにより鉄皮を防熱することを特徴とするＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止方法である。
【００１１】
請求項５の発明では、鉄皮の下部に鉄皮の変形防止用の防熱具を配設する方法は防熱具を断熱材から形成して断熱材の下面を鉄板で支持し、該鉄板をＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の槽底に吊り下げることを特徴とする請求項４の手段のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止方法である。
【００１２】
請求項６の発明では、防熱具を下部槽の槽底に吊り下げて配設する方法は下部槽の槽底の鉄皮と吊り下げた防熱具との間に空隙を設けて吊り下げることを特徴とする請求項５または６の手段のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止方法である。
【発明の効果】
【００１３】
上記の手段としたことで、ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の槽底の鉄皮の変形が防止される結果、従来の下部槽の槽底の鉄皮の内部の内張り煉瓦の寿命が略３９時間であるのに対し、本発明の下部槽の槽底の鉄皮の内部の内張り煉瓦の寿命は略５１時間であり、ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の内張り煉瓦の寿命を略３０％増加することができ、本発明は従来にない優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１４】
先ず、本発明の原理を説明すると、本発明の手段は、ＲＨ真空脱ガス槽１の下部に設置の取鍋１２からの輻射熱を遮蔽し、かつ、伝熱を防止することにより、ＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の鉄皮６の軟化を抑制し、軟化による鉄皮６の変形を防止する方法である。ところで、ＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の槽底３ｂから下方に突出する２本の環流管４の間は、下部に設置の取鍋１２の溶鋼１４やスラグ１３の表面から輻射熱を受け、かつ、環流管４の間の槽底３ｂは、環流管４側が環流管４により、閉鎖された空間であるため、高温になりやすい。したがって、環流管４の間の槽底３ｂの部分に、輻射熱を遮蔽する防熱具７を設けることで、環流管４の間の鉄皮６が高温に曝されることが防止できる。この場合、防熱具７を断熱材８とすることで防熱具７の内部における伝熱が抑制でき、高温下での鉄皮６の防熱が確保できる。さらに、断熱材８の下面の両端部を下方から鉄板９で支持し、下部槽３の槽底３ｂに吊り具１０で鉄板９を吊り下げて係止するものとすると、断熱材８と槽底３ｂの鉄皮６の間に空隙１１を設けることができ、鉄皮３ｂへ直接的な伝熱を一層に抑制でき、その結果、ＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３ｂの環流管４の間の鉄皮６の軟化および熱膨張による変形がより一層に防止できる。このように鉄皮６の変形が防止されることで、鉄皮６の内部の下部槽３ｂの内張り煉瓦５に応力が掛からないので割れたり剥離たりすることがなく、下部槽３ｂの寿命が大幅に延びることとなる。
【００１５】
本発明の最良の実施の形態について、表および添付図面を参照して以下に説明する。図２の（ｂ）は、上記の図２の（ａ）と対比して、本発明におけるＲＨ真空脱ガス槽１とその下部に配置の取鍋１２の要部を模式的に示す図である。図２の（ｂ）に示すように、ＲＨ真空脱ガス槽１は上部槽２ａと中間槽２ｂと下部槽３からなり、ＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の槽底３ｂから突出する２本の環流管４に接続の浸漬管４ａを下部に配置の取鍋１２のスラグ１３および溶鋼１４に挿通し、溶鋼１４をＲＨ真空脱ガス槽に循環して真空脱ガス処理される。この場合、取鍋１２中には取鍋精練した溶鋼１４とその上部にスラグ１３が受容されており、ＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の一方の浸漬管４ａから環流管４を経て取鍋１２内の溶鋼１４を下部槽３内に吸い上げ、下部槽３内で真空脱ガス処理して他方の環流管４を経て浸漬管４ａから取鍋１２内に処理した溶鋼１４を環流する。ＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の槽底３ｂには、図３に示すように、２本の環流管４の間とその両サイドの槽底３ｂの部分に防熱具７の断熱材８を配置する。断熱材８の両サイドの下部には、断熱材８を下方から支持する鉄板９を配設し、この鉄板９を吊り具１０で下部槽３に吊り下げるものとして防熱具７としている。この場合、下部槽３の槽底３ｂと断熱材８の間には空隙１１を設けるものとすると、断熱材８から槽底３ｂへは直に熱伝導されなくなり、槽底３ｂへは主として断熱材からの輻射熱となり、槽底３ｂの昇温が抑制できる。
【００１６】
したがって、取鍋１２内の溶鋼１４やスラグ１３からの熱が防熱具７により遮断される結果、図１に示すＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の槽底３ｂに張られた鉄皮６が高温に曝されて加熱されることが阻止されるので、鉄皮６が軟化することにより生じる鉄皮６の変形が的確に防止できる。この結果、鉄皮６の変形による力が内張り煉瓦５に掛かることがなく、内張り煉瓦５の割れや剥離がなくなって下部槽３の寿命が著しく延びることとなる。このように、下部槽３の槽底３ｂに本発明における防熱具７を設けたことで、長期にわたって安定して真空脱ガス処理が可能となり、取鍋精練した溶鋼、例えば高炭素クロム軸受鋼の溶鋼の酸素量を例えば５ｐｐｍに低減でき、かつ酸化物系介在物量を大幅に低減でき、得られた軸受鋼の疲労特性を大幅に延長できる。
【００１７】
ＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の槽底３ｂに空隙１１を設けて本発明における防熱具７を設置した場合を対策後とし、一方、従来のＲＨ真空脱ガス槽１のままで、防熱具７を設置しない場合を対策前として、真空脱ガス処理して下部槽３の内張り煉瓦５の割れや剥離に至るまでの下部槽３の各回ごとの寿命を表１に示した。この場合、ＲＨ真空脱ガス処理の略３００分毎に実施する浸漬管４ａの取替えの際に、下部槽３の内部を目視で内張り煉瓦５の割れや剥離を確認するものとし、内張り煉瓦５の消耗は煉瓦残寸が０ｍｍとなるとアウトとし、内張り煉瓦５の割れは、割れが背面まで貫通したらアウトとした。表１において、本発明の防熱具７を設置した対策後の寿命は、Ｎｏ．１〜Ｎｏ．１０の１０回の実施において、平均で３０８７分であった。これに対し、防熱具７を設置しない従来のＲＨ脱ガス槽による対策前の寿命は、Ｎｏ．１〜Ｎｏ．７の７回の実施において、平均で２３６７分であった。表１の結果、本発明の防熱具７を設置したＲＨ真空脱ガス槽１の下部槽３の寿命は、防熱具７を設置しない従来のＲＨ真空脱ガス槽１に比して略３割の延びが得られた。
【００１８】
【表１】
【図面の簡単な説明】
【００１９】
【図１】ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽を断面図により示した斜視図である。
【図２】（ａ）は取鍋に設置した従来のＲＨ真空脱ガス槽を、（ｂ）は取鍋に設置した本発明の防熱具を有するＲＨ真空脱ガス槽を一部断面図でしました模式図である。
【図３】（ａ）は下部槽と防熱具を示す側面図の、（ｂ）は下部槽と防熱具を示す下面図の模式図である。
【図４】は従来のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の槽底の環流管の周囲部分を示し、（ｂ）は下部槽の槽壁の鉄皮と内張り煉瓦の間に緩衝材のセラミックウールのシートを設置し、環流管の間の内張り煉瓦の形状を変更して対策した例を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【００２０】
１ ＲＨ真空脱ガス槽
２ａ 上部槽
２ｂ 中間槽
３ 下部槽
３ａ 槽壁
３ｂ 槽底
４ 環流管
４ａ 浸漬管
５ 内張り煉瓦
６ 鉄皮
７ 防熱具
８ 断熱材
９ 鉄板
１０ 吊り具
１１ 空隙
１２ 取鍋
１３ スラグ
１４ 溶鋼
１５ 滞留溶鋼
１６ シート
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の槽底の鉄皮の下部に防熱具を配設したことを特徴とするＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止装置。
【請求項２】
鉄皮の下部に配設の防熱具は断熱材からなり下面を鉄板で支持して鉄皮から吊り下げていることを特徴とする請求項１に記載のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止装置。
【請求項３】
鉄皮から吊り下げた防熱具は鉄皮と吊り下げた鉄板との間に空隙を設けて配設していることを特徴とする請求項１又は２に記載のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止装置。
【請求項４】
ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の槽底の鉄皮の下部に鉄皮の変形防止用の防熱具を配設してＲＨ真空脱ガス槽の下部に配設の取鍋からの輻射熱を遮断することにより鉄皮を防熱することを特徴とするＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止方法。
【請求項５】
鉄皮の下部に鉄皮の変形防止用の防熱具を配設する方法は防熱具を断熱材から形成して断熱材の下面を鉄板で支持し、該鉄板をＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の槽底に吊り下げることを特徴とする請求項４に記載のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止方法。
【請求項６】
防熱具を下部槽の槽底に吊り下げて配設する方法は下部槽の槽底の鉄皮と吊り下げた防熱具との間に空隙を設けて吊り下げることを特徴とする請求項４に記載のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止方法。
【請求項１】
ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の槽底の鉄皮の下部に防熱具を配設したことを特徴とするＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止装置。
【請求項２】
鉄皮の下部に配設の防熱具は断熱材からなり下面を鉄板で支持して鉄皮から吊り下げていることを特徴とする請求項１に記載のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止装置。
【請求項３】
鉄皮から吊り下げた防熱具は鉄皮と吊り下げた鉄板との間に空隙を設けて配設していることを特徴とする請求項１又は２に記載のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止装置。
【請求項４】
ＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の槽底の鉄皮の下部に鉄皮の変形防止用の防熱具を配設してＲＨ真空脱ガス槽の下部に配設の取鍋からの輻射熱を遮断することにより鉄皮を防熱することを特徴とするＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止方法。
【請求項５】
鉄皮の下部に鉄皮の変形防止用の防熱具を配設する方法は防熱具を断熱材から形成して断熱材の下面を鉄板で支持し、該鉄板をＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の槽底に吊り下げることを特徴とする請求項４に記載のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止方法。
【請求項６】
防熱具を下部槽の槽底に吊り下げて配設する方法は下部槽の槽底の鉄皮と吊り下げた防熱具との間に空隙を設けて吊り下げることを特徴とする請求項４に記載のＲＨ真空脱ガス槽の下部槽の鉄皮の熱膨張による変形防止方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２０１０−９５７６６（Ｐ２０１０−９５７６６Ａ）
【公開日】平成２２年４月３０日（２０１０．４．３０）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−２６８０９１（Ｐ２００８−２６８０９１）
【出願日】平成２０年１０月１７日（２００８．１０．１７）
【出願人】（０００１８００７０）山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年４月３０日（２０１０．４．３０）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年１０月１７日（２００８．１０．１７）
【出願人】（０００１８００７０）山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Ｆターム（参考）】
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