説明

RNA干渉によるPTP1Bシグナル導入の調節

生物学的シグナル導入の調節にかかわる短い干渉RNA(siRNA)ポリヌクレオチドに関係する組成物および方法が提供される。シグナル導入を媒介する酵素類のタンパク質チトシンホスファターゼ(PTP)群のメンバーであるPTP1Bの発現を干渉するsiRNAポリヌクレオチドが示される。或る好ましい実施形態において、siRNAはヒトまたはネズミPTP−1Bを含むシグナル導入経路を調節し、また或る別の実施形態においてはインスリンレセプターおよび/またはJak2を含むシグナル導入経路を調節する。PTP1B媒介性生物学的シグナル導入の調節は、細胞増殖、細胞分化および/または細胞生存の欠陥に関連する疾患、例えば、代謝障害(糖尿病や肥満など)、癌、自己免疫病、感染症および炎症性疾患およびその他の諸疾患に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2002年5月23日に出願された米国仮特許出願第60/383,249号および2003年4月14日に出願された米国仮特許出願第60/462,942号の利益を主張する。これらは、その全体が参考として本明細書で援用される。
【0002】
(発明の背景)
(技術的分野)
本発明は全体として細胞増殖、細胞分化および細胞生存の欠陥に関連する疾患を治療するのに有用な組成物および方法に関するものである。特に、本発明は、タンパク質チロシンホスファターゼであるPTP1B、およびそのポリペプチド変異体の発現を干渉する二本鎖RNAポリヌクレオチド類に、関するものである。本発明は、このようなRNAポリヌクレオチドの使用によりシグナル導入(signal transduction)経路のコンポーネント類の活性化を変化させ、または増殖反応、細胞の分化および発達、および細胞生存に導く細胞代謝プロセスを変化させることにも関係する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
ポリペプチド中の特定のチロシン残基をリン酸化するタンパク質チロシンキナーゼ(PTK)と、特定のホスホチロシン残基を脱リン酸化するタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)との作用によって調整される可逆的タンパク質チロシンリン酸化は、多くの細胞性活性を調節する重要なメカニズムである。PTPおよびPTKの多様性および複雑さは同等であり、ポジティブおよびネガティブ両方のシグナルを送達して細胞機構が正しく機能するためにはPTPも同様に重要であることが次第に明らかになってきた。調節されたチロシンリン酸化は、生物学的シグナル導入のための特殊な経路、例えば、細胞分裂、細胞生存、アポトーシス、増殖および分化に関連する経路に関与する。これらの経路の欠陥および/または機能異常が、有効な治療手段が解明されていない幾つかの病的状態、例えば、悪性腫瘍、自己免疫病、糖尿病、肥満および感染症などの根底にあるかも知れない。
【0004】
酵素類のなかのタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)ファミリは脊椎動物では構造的に多様な100種類以上のタンパク質からなる;そのなかの約40種類のヒトPTPは保存された250アミノ酸PTP触媒ドメインを共通して有するが、非触媒部分にはかなりの変動がみられる(Charbonneau and Tonks,1992 Annu.Rev.Cell Biol.8:463−493;Tonks,1993 Semin.Cell Biol.4:373−453;Andersen et al.,Mol Cell Biol.21:7117−36(2001))。この構造的多様性は個々のPTPファミリのメンバーの生理学的役割の多様性を反映するものと考えられ、それらは或る場合には増殖、発達および分化に特異的機能を有することが証明されている(Desai et al.,1996 Cell 84:599−609;Kishihara et al.,1993 Cell 74:143−156;Perkins et al.,1992 Cell 70:225−236;Pingel and Thomas,1989 Cell 58:1055−1065;Schultz et al.,1993 Cell 73:1445−1454)。PTPファミリには、インビトロで精巧な基質特異性をあらわし、種々様々の細胞シグナル伝達経路の調節にかかわるレセプター様の非経膜的酵素が含まれる(Andersen et al.,Mol. Cell. Biol.21:7117(2001);Tonks and Neel,Curr.Opin.Cell Biol.13:182(2001))。このようにPTPは種々の生理学的機能に関係し、PTPの活性を変化させ(すなわち、統計的に有意な増加または減少)または調節(例えば、アップ−レギュレーションまたはダウン−レギュレーション)させることによって生理学的プロセスに対する治療行為の機会が増える。
【0005】
最近の研究からPTPの構造、発現および調節に関してかなり多くの情報が得られたとはいえ、PTPがそれらの効果を発揮するための多くのチロシンリン酸化基質の性質はまだ確認されていない。限られた数の合成ホスホペプチド基質に関する研究により、異なるPTPでは基質選択性に若干の差があることが証明されている(Cho et al.,1993 Protein Sci. 2:977−984;Dechert et al.,1995 Eur.J.Biochem.231:673−681)。PTP基質のPTP−媒介性脱リン酸化の分析によると、触媒活性は、リン酸化チロシン残基に対して基質ポリペプチド中の特異的位置にある或るアミノ酸残基の存在によって高まることが示唆されている(Salmeen et al.,2000 Molecular Cell 6:1401;Myers et al.,2001 J.Biol.Chem.276:47771;Myers et al.,1997 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:9052;Ruzzene et al.,1993 Eur.J.Biochem.211:289−295;Zhang et al.,1994 Biochemistry 33:2285−2290)。したがって、これらの研究に使用された基質の生理学的有効性は不明であるとはいえ、PTPはインビトロにおいて或るレベルの基質選択性を示す。
【0006】
酵素のPTPファミリは進化の過程で共通して保存されているPTP触媒ドメインとして知られる約250アミノ酸のセグメントを含む。この保存されたドメイン内には特殊なシグニチャ(signature)配列モチーフ、CXR(配列番号_)がある。これは全てのPTPの中で不変である。大部分のPTPには、上記のシグニチャー配列モチーフを含む11アミノ酸保存配列([I/V]HCXAGXXR[S/T])G(配列番号1)が見いだされる。このモチーフ中のシステイン残基はこのファミリのメンバーでは不変であり、ホスホチロシン脱リン酸反応を触媒するために必須である。それは入ってくる基質のホスホチロシン残基上に存在するリン酸部分を攻撃する求核剤として機能する。システイン残基が部位特異的突然変異によってセリンに(例えば、システインからセリンへの突然変異体、または「CS」突然変異体)またはアラニン(例えば、システインからアラニンへの突然変異体または「CA」突然変異体)に変化している場合、生成するPTPは触媒としては不完全であるが、少なくともインビトロでは、その基質と複合体を形成するかまたはその基質に結合する能力を保持している。
【0007】
PTPファミリのあるメンバーのCS突然変異体、例えば、MKP−1(Sun et al.,1993 Cell 75:487)はインビトロでホスホチロシルポリペプチド基質に効果的に結合し、安定な酵素−基質複合体を形成し、それによって「基質捕獲」突然変異体PTPとして機能する。このような複合体を突然変異体PTPおよびホスホチロシルポリペプチド基質の両方が存在する細胞から分離することができる。非制限的理論により、このようなCS突然変異体PTPの発現は、CS突然変異体が基質に結合し、その基質を差し押さえるメカニズムによって、例えば、対応する野生型PTP(およびPTPシグナル伝達経路のその他のPTPおよび/またはその他のコンポーネント類)の正常機能と拮抗し、基質と触媒的な活性のある野生型酵素との相互作用を排除する(Sun et al.,1993、など)。
【0008】
しかし、その他のあるPTPファミリメンバーのCS突然変異体はホスホチロシルポリペプチド基質に結合し、複合体を形成する;これら複合体の存在は一過性であり、CS突然変異体がインビボで細胞に発現する際には不安定である。あるPTPのCS突然変異体、PTP1B(PTP−1B)、はこのようなPTPの一例である。ホスホチロシルポリペプチド基質と安定な複合体を形成できるこのような酵素類の触媒的に不完全な突然変異体は、野生型タンパク質チロシンホスファターゼ触媒ドメインの不変アスパルテート残基を突然変異させ、それを、酵素のKmの顕著な変化は起こさないがKcatを減少させるアミノ酸で置換することによって誘導される。これについては米国特許第5912138号および第5951979号、米国特許出願第09/323426号およびPCT/US97/13016およびPCT/US00/14211などに開示されている。例えば、PTP1BのAsp181がアラニンに突然変異してアスパルテート→アラニン(D to AまたはDA)突然変異体PTP1B−D181Aを形成すると、そのホスホチロシルポリペプチド基質と安定な複合体を形成するPTP1B「基質捕獲」突然変異体酵素が生成する(Flint et al.,1997 Proc.Natl.Acad.Sci.94:1680)。その他のPTPの基質が同様な基質捕獲アプローチを使用して確認でき、例えば、PTPファミリメンバーPTP−PEST(Garton et al.,1996 J.Mol.Cell.Biol.16:6408)、TCPTP(Tiganis et al.,1998 Mol. Cell. Biol.18:1622)、PTP−HSCF(Spencer et al.,1997 J.Cell Biol.138:845)およびPTP−H1(Zhang et al.,1999 J.Biol.Chem.274:17806)の基質類がある。
【0009】
非経膜的PTPの一つであるPTP1Bは数種のチロシンリン酸化タンパク質を基質として認識し、それらタンパク質の多くはヒトの病気に関係がある。例えば、インスリンシグナル伝達経路におけるPTP1Bの治療的阻害はインスリン作用の増強に役立ち、それによってII 型糖尿病患者に共通するインスリン抵抗状態を緩和する。PTP1Bは数種の増殖因子/ホルモンレセプターPTK、例えば、p210Bcr−Ab1(LaMontagne et al.,Mol Cell Biol.18:2965−75(1998);LaMontagne et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA95:14094−99(1998))、EGFレセプター、PDGFレセプターおよびインスリンレセプター(IR)などのレセプターチロシンキナーゼ類(Tonks et al.,Curr.Opin.Cell Biol.13:182−95(2001))、およびJak2などのJAKファミリメンバー類(Myers et al.,J.Biol.Chem.276:47771−74(2001))、ならびにサイトカイン類によって誘導されるシグナル伝達事象(Tonks and Neel,2001)などによって開始するシグナル伝達のネガティブレギュレータとして作用する。PTP1Bの活性は数種のアミノ酸残基の修飾によって調節される;例えば、Ser残基のリン酸化(Brautigan and Pinault、1993;Dadke et al.,2001;Flint et al.,1993)および触媒的モチーフ中の活性Cys残基の酸化(Lee et al.,1998;Meng et al.,2002)など。これはタンパク質チロシンホスファターゼおよび二重鎖ホスファターゼファミリメンバーに進化過程で保存される(Andersen et al.,2001)。その上、PTP1Bの発現レベルの変化が、数種のヒト疾患、特にチロシンリン酸化の正常パターンの崩壊に関連する疾患に認められている。例えば、インスリンシグナル伝達経路におけるPTP1BのようなPTP類の治療的阻害がインスリン作用の増強に役立ち、それによって2型糖尿病患者に共通するインスリン抵抗状態を緩和させることができる。
【0010】
真性糖尿病は開発国における人口の5−10%が侵される一般的消耗性疾患であり、多くの国々では五大死因の一つである。世界の人口の約2%が糖尿病患者であり、その症例の圧倒的部分(>97%)が2型糖尿病で、残りが1型糖尿病である。子供や若年者に診断されることが多い1型糖尿病では、膵島のベータ細胞によるインスリン産生が破壊される。2型糖尿病、すなわち、「遅発性」または「成人型」の糖尿病は、細胞および組織が、供給されるインスリンを有効に使用できない複雑な代謝疾患である;ある症例ではインスリン産生も不十分である。細胞レベルにおいては、遅発性真性糖尿病を特徴づける消耗性表現型として例えば、インスリン分泌障害およびインスリン感受性低下、すなわち、インスリンに対する反応の障害がある。
【0011】
研究の結果、患者は真性糖尿病の前に関連疾患にかかっており、または糖尿病が関連疾患と合併して起きることが判明している。例えば、米国では推定4000万人が遅発性耐糖障害(IGT)にかかっている。IGT患者はインスリン分泌の増加によって糖に反応することができない。毎年、IGT患者の数パーセント(5〜10%)がインスリン欠乏性インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)に進行する。これらの患者の若干はさらに進行してインスリン依存型真性糖尿病(IDDM)になる。NIDDMおよびIDDMは、膵ベータ細胞によるインスリン放出の減少および/または通常はインスリン感受性を示す細胞および組織のインスリン反応性の低下と関連がある。真性糖尿病のその他の症状や真性糖尿病に先行するまたは関連する異常には、肥満、血管の病変、および盲目および難聴を含む種々の末梢神経障害がある。
【0012】
1型糖尿病は生涯続くインスリン治療を必要とし、それは体重増加および低血糖のリスク増加などの好ましくない副作用を伴うことが多い。2型糖尿病(NIDDM)の現在の治療は食事療法、運動療法およびインスリン注射または血糖値を下げるように処方された経口薬剤による薬物療法がある。このような現在使用できる経口薬剤の例はスルホニル尿素類、ビグアニド類、チアゾリジンジオン類、レパグリニド、およびアカルボースなどを含み、その各々はインスリンおよび/または糖レベルを変化させる。しかし現在の薬物療法はいずれもこの疾患をその全過程にわたってコントロールすることはできず、現在の治療のいずれも2型NIDDMにおけるインスリン分泌障害、インスリン抵抗および過剰肝グルコース産生などの生理的異常の全てを正常にすることはできない。その上これらの薬剤を用いても治療の失敗することが多く、多剤治療が必要になることが多い。
【0013】
特定の種の代謝性疾患または異常において、一つ以上の生化学的プロセスが、同化的であれ異化的であれ(例えば、それぞれ物質の形成または破壊)、変化し(例えば、統計的有意に増加または減少する)、または病気のない人または健常者、例えば、適切にコントロールされている人々にあらわれるレベルに比べて調節する(例えば、統計的有意な程度にアップレギュレートまたはダウンレギュレートされる)。この変化は基質、酵素、補因子または特定のプロセスに含まれる生化学反応における他の任意の成分の増加または減少に起因する。ある種の疾患の根底にはPTP活性の変化(すなわち、正常状態に比較して統計的有意な増加または減少した)があり、ある種の代謝性疾患におけるPTPの役割を示唆している。
【0014】
例えば、ノックアウト・マウス・モデルのマウスPTP1B遺伝子相同体の破壊は、少なくとも一つの機能的PTP1B遺伝子を有する対照(コントロール)動物に比較して高いインスリン感受性、低濃度の循環インスリンおよびグルコース、および高脂肪食においても体重増加抵抗性を有するPTP1B−/−マウスを生ずる(Elchebly et al.,Science 283:1544(1999))。インスリンレセプターの高リン酸化は、PTP1B欠乏マウスの或る種の組織にも見いだされた。これはインスリンおよびグルコース代謝の生理的調節にPTP1Bが関与するという知見と一致する(同文献)。PTP1B欠乏マウスは肥満の低下(脂肪細胞量は減少するが脂肪細胞数は減少しない)、基礎代謝速度およびエネルギー消費の増加およびインスリン刺激グルコース利用の増加を示す(Klaman et al.,2000 Mol. Cell Biol.20:5479)。さらに、変化したPTP活性はその他の生物系における糖代謝の異常と相関関係にあった(例えば、 McGuire et al.,Diabetes 40:939(1991);Myerovitch et al.,J.Clin.Invest.84:976(1989);Sredy et al.,Metabolism 44:1074(1995));例えば、インスリンレセプターを介する生物学的シグナル導入にPTPが関係しているなど(WO99/46268および本明細書に記載の参考文献などを参照)。
【0015】
結晶学的、動態的およびPTP1B−ペプチド結合アッセイを統合すると、PTP1Bとインスリンレセプター(IR)との相互作用が証明された(Salmeen et al.,Mol.Cell 6:1401−12(2000))。インスリンレセプター(IR)は2つの細胞外αサブユニットおよび2つの経膜的βサブユニットを含む。レセプターの活性化は、両方のβサブユニットのチロシン残基の自己リン酸化を起こす。上記サブユニットの各々はタンパク質キナーゼドメインを含む。PTP1Bとインスリンレセプターキナーゼ(IRK)との間に起こる広範囲の相互作用はIRKの位置1162および1163に、pTyr−1162がPTP1Bの活性部位に位置するように、タンデムpTyr残基を含む(同上)。PTP1BによってIRKが最適に認識されるためには、Asp/Glu−pTyr−pTyr−Arg/Lysモチーフが関係している。このモチーフはTrk、FGFR、およびAxlを含むその他のレセプターPTKにも存在する。さらにこのモチーフはPTKのJAKファミリに見いだされる。このファミリのメンバーはサイトカインレセプター(満腹ホルモン・レプチンによって認識される典型的サイトカインレセプターを含める)からのシグナルを伝達する(Touw et al.,Mol. Cell.Endocrinol.160:1−9(2000))。
【0016】
PTP1Bの発現レベルにおける変化が、数種のヒト疾患、特に、チロシンリン酸化の正常パターンの破壊と関係する疾患で認められている。例えば、PTP1Bの発現は、p210 Bcr−Abl、慢性骨髄性白血球(CML)の初期症状発現を直接引き起こすPTKによって特異的に誘導される(LaMontagne et al.,Mol. Cell Biol.18:2965−75(1998);LaMontagne et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:14094−99(1998))。この腫瘍タンパク質に反応したPTP1Bの発現は一部は転写因子Sp1、Sp3およびEgr−1によって調節される(Fukuda et al.,J.Biol.Chem.276:25512−19(2001))。これらの転写因子は、転写開始部位から−49ないしー37塩基対の間に位置するヒトPTP1Bプロモータ中のp210 Bcr−Abl反応性配列(PRS)に結合することが示されているが、幾つかの追加的独立的PTP1B転写事象(これに関する転写因子(類)も転写因子識別因子(類)も確認されていない)を媒介するようにはみえない(同文献)。
【0017】
RNA干渉(RNAi)は、二本鎖RNAによってもたらされるポリヌクレオチド配列特異的、転写後遺伝子サイレンシング・メカニズムであり、このメカニズムは特異的メッセンジャーRNA(mRNA)の分解を起こし、それによって前記mRNAによってコードされる所望標的ポリペプチドの発現を減少させる(例えば、WO99/32619;WO01/75164;米国特許第6506559号;Fire et al.,Nature 391:806−11(1998);Sharp,Genes Dev.13:139−41(1999);Elbashir et al.,Nature 411:494−98(2001);Harborth et al.,J.Cell Sci.114:4557−65(2001))。RNAiは以下にも記載されるように、発現が阻害されているポリペプチドの部分をコードするエキソン配列に対応する配列を有する二本鎖RNA(dsRNA)などの二本鎖ポリヌクレオチド類によって媒介される。報告によると、RNAiはイントロンまたはプロモータ配列と同一の配列を有する二本鎖RNAポリヌクレオチドによっては生じない(Elbashir et al.,2001)。RNAi経路はショウジョウバエ属(Drosophila)およびケノルハブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)によって最もよく特徴づけられるが、哺乳動物(ヒトを含む)のような比較的高等な真核生物においても特殊なポリペプチドの発現を妨害する「短い干渉RNA」(small interference RNA;siRNA)ポリヌクレオチドが議論されている(例えば、 Tuschl 2001 Chembiochem.2:239−245;Sharp,2001 Genes Dev.15:485;Bernstein et al.,2001 RNA7:1509;Zamore, 2002 Science 296:1265;Plasterk,2002 Science 296:1263;Zamore, 2001 Nat.Struct.Biol.8:746;Matzke et al.,2001 Science 293:1080;Scadden et al.,2001 EMBO Rep.2:1107)。
【0018】
現在の非制限的モデルによると、RNAi経路は、長いdsRNAがATP依存性、選択的(processive)切断により短い干渉RNA(siRNA)と呼ばれる約18−27(例えば、19、20、21、22、23、24、25、26など)ヌクレオチド塩基対長の二本鎖フラグメントになることによって開始する(Hutvagner et al.,Curr.Opin.Gen.Dev.12:225−32(2002);Elbashir et.al., 2001;Nykaenen et.al., Cell 107:309−21(2001);Bass, Cell 101:235−38(2000);Zamore et al.,Cell 101:25−33(2000)を参照されたい)。Drosophilaにおいて、「ダイサー」として知られる酵素が長い二本鎖RNAをsiRNAに切断する;ダイサーはdsRNA−特異的エンドヌクレアーゼのRNaseIIIファミリに属する(WO01/68836;Bernstein et al.,Nature 409:363−66(2001))。さらにこの非制限的モデルによると、siRNA二本鎖はタンパク質複合体に組み込まれ、その後上記siRNAのATP−依存性巻き戻しが起こり、siRNAはその後活性RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)を生成する(WO01/68836)。上記複合体はsiRNAのガイド・ストランドに相補的な標的RNAを認識し、切断し、これによって特異的タンパク質の発現を阻害する(Hutvagner et al.,上記と同じ文献)。
【0019】
C.elegansおよびDrosophilaにおいて、RNAiは長い二本鎖RNAポリヌクレオチドによって媒介される(WO99/32619;WO01/75164;Fire et al.,1998;Clemens et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:6499−6503(2000);Kisielow et.al.,Biochem.J.363:1−5(2002);WO01/92513(酵母中のRNAi媒介性サイレンシング)も参照されたい)。しかし、哺乳動物細胞においては、長いdsRNAポリヌクレオチド(すなわち、30塩基対より長い)によるトランスフェクションは、タンパク質合成の開始を全体的にブロックし、mRNAの分解を起こす非特異的配列反応を活性化する(Bass,Nature 411:428−29(2001))。ヒトおよびその他の哺乳動物細胞への約18−27ヌクレオチド塩基対長の二本鎖RNAのトランスフェクションは、対応するヌクレオチド配列を含むメッセンジャーRNA(mRNA)によってコードされる特定のポリペプチドの発現を配列特異的様態で阻害する(WO01/75164;Elbashir et al.,2001;Elbashir et al.,Genes Dev.15:188−200(2001);Harborth et al.,J.Cell Sci.114:4557−65(2001);Carthew et al.,Curr.Opin.Cell Biol.13:244−48(2001);Mailand et al.,Nature Cell Biol.Advance Online Publication(Mar.18,2002);Mailand et al.,2002 Nature Cell Biol.4:317)。
【0020】
siRNAポリヌクレオチドは、遺伝子発現を配列特異的に改変または調節し、特定のコードされたポリペプチド産物の産生量の変化を得るために使用する場合、当業者に公知のその他のポリヌクレオチド類にまさる利点を幾つか提供する。これらの利点としては、このようなポリヌクレオチド(例えば、アンチセンス、リボザイム、または三重鎖ポリヌクレオチド類)に比較して有効siRNAポリヌクレオチド濃度が低く、siRNAポリヌクレオチド安定性が高く、siRNAポリヌクレオチド オリゴヌクレオチド長が短いことなどが挙げられる。簡単な基礎知識として、「アンチセンス」ポリヌクレオチドは配列特異的様態でmRNAまたはDNAなどの標的核酸に結合し、DNAの転写またはmRNAの翻訳を阻害する(米国特許第5168053号;米国特許第5190931号;米国特許第5135917号、米国特許第5087617号などを参照;「ダンベル」アンチセンス・オリゴヌクレオチドを記載しているClusel et al.,1993 Nucleic Acids Res.21:3405−11も参照されたい)。「リボザイム」ポリヌクレオチドは任意のRNA転写体を標的とすることができ、そのような転写体を触媒的に切断することができ、mRNAの翻訳を妨害する(米国特許第5272262号、第5144019号および米国特許第5168053号;第5180818号、第5116742号および第5093246号;U.S.2002/193579などを参照)。「三重鎖」DNA分子とは、二重鎖DNAに結合して共直線的な三重鎖分子を形成し、それによって転写を阻止する一重鎖DNAストランドをいう(二重鎖DNA上の標的部位に結合する合成オリゴヌクレオチドを作製する方法を記載した米国特許第5176996号などを参照されたい)。このような三本鎖構造は不安定で、生理的条件下で一過的に形成されるに過ぎない。一本鎖ポリヌクレオチドは容易に細胞内に拡散せず、そのためヌクレアーゼ消化を受けやすいから、アンチセンスまたは三重鎖テクノロジーのための一本鎖DNAの作製は、安定性および細胞による吸収を改善するために化学的に修飾したヌクレオチドを必要とすることが多い。対照的に、siRNAは完全細胞によって容易に取り込まれ、アンチセンスまたはリボザイムポリヌクレオチドに必要な濃度より数桁低い濃度で特殊なポリペプチドの発現を有効に妨害し、化学的修飾ヌクレオチドの使用を必要としない。
【0021】
重要なことは、所望の標的mRNA配列の特徴(GC含有量パーセント、翻訳開始コドンからの位置、指定されたsiRNAのホモログのインシリコ配列データベース検索に基づく配列類似性など)に基づきsiRNAに有効なオリゴヌクレオチド配列を確認するための選択基準を案出する多数の試みにもかかわらず、現在のところ、所望の標的mRNAに対応するヌクレオチド配列として生成し得る無数の可能の候補siRNA(例えば、約18−27ヌクレオチド塩基対のdsRNA)のどれが実際にsiRNA活性(すなわち、上記mRNAによってコードされるポリペプチドの発現の干渉)を表すかを、信頼性の程度にかかわらず予測できないことである。その代わりに、個々の具体的な候補siRNAポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド配列を作製し、試験して所望ポリペプチド標的の発現の干渉が起きるかどうかを確認しなければならない。よって、所定のPTPポリペプチドの発現を確実に特異的に変えることができsiRNAポリヌクレオチドを設計するための通常使用されるような方法は存在せず、したがって、PTPの圧倒的多数にとって効果的なsiRNAポリヌクレオチド配列は現在のところ知られていない。
【0022】
したがって、現在、生物学的シグナル導入の治療的調節のために望ましい目標としては、PTP1B媒介性細胞性事象を調節すること、特にPTP1B結合分子、基質および結合相手の相互作用の阻害または増強すること、またはまたはPTP1B活性を調節するその他の作用物質の阻害または増強が挙げられる。よって、当該分野において、ホスホチロシン・シグナル伝達の調節に介入する能力の改善に対する必要性である;例えば、PTP1B触媒活性、PTP1B基質分子へのPTP1B結合および/またはPTP1Bコーディング遺伝子発現の変化によってPTP1Bを調節することが必要になる。PTP1Bをこのように調節する能力が高まれば、ホスホチロシンシグナル伝達経路に関係するタンパク質の活性を調節し、このような経路に関連する病気を治療する方法の開発は容易になる。本発明はこれらの必要性に応え、さらにその他の関連する利益をもたらすものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0023】
(発明の概要)
本発明は、PTP1Bを調節するための、本明細書に開示されるヌクレオチド配列などの特殊のsiRNAポリヌクレオチドを含む組成物および方法に関するものである。そのため、ある実施形態において配列番号83−86、88−91、93−96、98−101、104−105および108−109から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含み、ある実施形態においては配列番号83−86、88−91、93−96、98−101およびこれらの相補的ポリヌクレオチドから選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む単離された短い干渉RNA(siRNA)ポリヌクレオチドを提供することが本発明の一局面である。また別の実施形態において、いずれの短い干渉RNAポリヌクレオチドもPTP1Bポリペプチドの発現を干渉することができ、その際に、PTP−1Bポリペプチドは、Genbank登録番号M31724、NM_002827、またはM33689に示されるアミノ酸発現を含む。また別の実施形態において、siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号83−86、88−91、93−96、98−101から選択される配列の位置1−19の任意の位置において、または配列番号104、105、108および109から選択される配列の任意の位置において1、2、3または4個のヌクレオチドが異なる。その他の実施形態において、siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が配列番号83−86、88−91、93−96、98−101から選択される配列の位置1−19の任意の位置において、または配列番号104、105、108および109から選択される配列の任意の位置において少なくとも2、3または4個のヌクレオチドが異なる。
【0024】
特定の好ましい実施形態において、本発明は配列番号83によるヌクレオチド配列を含む単離されたsiRNAポリヌクレオチドまたはその相補体、または配列番号88によるヌクレオチド配列を含む単離されたsiRNAポリヌクレオチドまたはその相補体、または配列番号93によるヌクレオチド配列を含む単離されたsiRNAポリヌクレオチドまたはその相補体、または配列番号98によるヌクレオチド配列を含む単離されたsiRNAポリヌクレオチドまたはその相補体、または配列番号104または105によるヌクレオチド配列を含む単離されたsiRNAポリヌクレオチド、または配列番号108または109によるヌクレオチド配列を含む単離されたsiRNAポリヌクレオチドを提供する。
【0025】
上記の発明のその他の幾つかの実施形態によると、上記ポリヌクレオチドは天然に発生するヌクレオチドの合成ヌクレオチドアナログを少なくとも1つは含む。また別の実施形態において、上記ポリヌクレオチドは検出可能標識に連結され、さらに別の実施形態においては、上記標識は色素、放射性核種、発光基、蛍光基、およびビオチンから選択されるレポーター分子であり、さらに別の実施形態において上記蛍光基はフルオレセインイソチオシアネートである。また別の実施形態において、検出可能標識は磁気粒子である。関連実施形態によると、上記のsiRNAポリヌクレオチドのいずれかと、生理学的に容認される担体とを含む薬学的組成物が提供され、ある実施形態においては担体はリポソームを含む。
【0026】
本発明は、短い干渉RNA(siRNA)を転写することができるポリヌクレオチドを含む組換え核酸構築物も提供し、上記ポリヌクレオチドは(i)第一のプロモータ;(ii)第二のプロモータ;および(iii)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのDNAポリヌクレオチド・セグメントまたはその相補体を含んでなり、その際各DNAポリヌクレオチド・セグメントおよびその相補体は上記第一および第二プロモータの少なくとも1つに作動可能に結合し、上記プロモータ類は上記DNAポリヌクレオチド・セグメントおよびその逆相補体(reverse complment)の転写をおこすような位置にある。また別の実施形態は、短い干渉RNA(siRNA)を転写に向かわせるポリヌクレオチドを含む組換え核酸構築物を提供する;上記ポリヌクレオチドは配列番号102、103、106および107から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのDNAポリヌクレオチド・セグメントに作動可能に結合するプロモータを含む。その他の一実施形態において、組換え核酸構築物は第一プロモータに作動可能に結合する第一エンハンサと、第二プロモータに作動可能に結合する第二エンハンサとから選択される少なくとも一つのエンハンサを含む。ある実施形態において、組換え核酸構築物は(i)上記構築物中に位置し、第一プロモータによって指示される転写を終止させる第一転写ターミネータと(ii)上記構築物中に位置し、第二プロモータによって指示される転写を終止させる第二転写ターミネータとから選択される少なくとも1つの転写ターミネータを含む。その他の実施形態において、siRNAはPTP1Bポリペプチドの発現を干渉することができ、その際PTP1BポリペプチドはGenbank登録番号M31724、NM_002827およびM33689からなる群から選択される配列に示されるようなアミノ酸配列を含む。また別の実施形態において、本発明は短い干渉RNA(siRNA)を転写に向けることができるポリヌクレオチドを含む組換え核酸構築物を提供し、上記ポリヌクレオチドは少なくとも1つのプロモータとDNAポリヌクレオチド・セグメントとを含み、上記DNAポリヌクレオチド・セグメントは上記プロモータに作動可能に結合し、上記DNAポリヌクレオチド・セグメントは(i)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのDNAポリヌクレオチドまたはその相補体;(ii)上記(i)のDNAポリヌクレオチドに作動可能に結合する少なくとも4つのヌクレオチドを含むスペーサ配列;および(iii)上記スペーサ配列に作動可能に結合する(i)のDNAポリヌクレオチドの逆相補体を含んでなる。その他のある実施形態において、siRNAは少なくとも1つ、そして4つ以下のヌクレオチドのオーバーハングを有し、そのオーバーハングは(iii)の3’のすぐ近くに位置する。その他の実施形態において、スペーサ配列は少なくとも9ヌクレオチドを含む。さらに別の実施形態において、スペーサ配列は(iii)に隣接する2つのウリジンヌクレオチドを含む。また別の実施形態において、組換え核酸構築物はDNAポリヌクレオチド・セグメントに作動可能に結合する少なくとも1つの転写ターミネータを含む。関連実施形態により、本発明は上記の組換え核酸構築物でトランスフォームまたはトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態は、siRNAポリヌクレオチドと生理学的に容認される担体とを含む薬学的組成物を提供し、その組成物においてsiRNAポリヌクレオチドが(i)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101、104−105、および108−109から選択される少なくとも一つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチド、(ii)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチドおよびその相補的ポリヌクレオチド、(iii)(i)または(ii)によるRNAポリヌクレオチドであって、siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、配列番号83−86、88−91、93−96、98−101に示される配列から選択される配列の位置1−19の任意の位置、または配列番号104、105、108および109に示される配列から選択される配列の任意の位置の、1、2または3個のヌクレオチドによって異なるRNAポリヌクレオチド、および(iv)(i)または(ii)によるRNAポリヌクレオチドであって、siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が配列番号83−86、88−91、93−96、98−101に示される配列から選択される配列の1−19位置の任意の位置、または配列番号104、105、108および109に示される配列から選択される配列の任意の位置の2、3または4個のヌクレオチドによって異なるsiRNAポリヌクレオチドから選択される。また別の実施形態において、担体はリポソームを含む。
【0028】
本発明のまた別の局面に目を向けると、PTP1Bポリペプチドまたはその変異体の発現を干渉する方法であって、PTP1Bポリペプチドを発現できる少なくとも1つの細胞を含む対象と、siRNAポリヌクレオチドとを、PTP1Bポリペプチドの発現を干渉するのに十分な時間および十分な条件で接触させ、その際(a)PTP1BポリペプチドがGenbank登録番号M31724、NM_002827、NM_011201およびM33689から選択される配列に示されるようなアミノ酸配列を含み、(b)siRNAポリペプチドが(i)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101、104−105、および108−109から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリペプチド、(ii)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101から選択される少なくとも1つの配列を含むRNAポリヌクレオチドおよびその相補的ポリヌクレオチド、(iii)siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、配列番号83−86、88−91、93−96、98−101に示される配列から選択される配列の位置1−19の任意の位置、または配列番号104、105、108および109に示される配列から選択される配列の任意の位置の、1、2または3個のヌクレオチドによって異なる(i)または(ii)に記載のRNAポリヌクレオチド、および(iv)siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が配列番号;83−86、88−91、93−96、98−101に示される諸配列から選択される配列の位置1−19の任意の位置、または配列番号104、105、108および109に示される諸配列から選択される配列の任意の位置の2、3または4個のヌクレオチドによって異なる(i)または(ii)に記載のRNAポリヌクレオチド、から選択される前記方法が提供される。
【0029】
本発明は、Genbank登録番号M31724、NM_002827、およびM33689から選択される配列に示されるアミノ酸配列を含むPTP1BポリペプチドまたはこのPTP1Bポリペプチドの変異体の発現を干渉する方法であって、(i)PTP1Bポリペプチドを発現できる少なくとも1つの細胞を含む対象と、(ii)上記のような組換え核酸構築物とを、PTP1Bポリペプチドの発現を干渉するのに十分な時間および十分な条件下で接触させることを含む前記方法も提供する。また別の実施形態においては、PTP1Bシグナル導入経路のあるコンポーネントを確認するための、以下の諸工程を含む方法が提供される:A.siRNAポリヌクレオチドと、PTP1BポリペプチドまたはPTP1Bポリペプチド変異体を発現できる少なくとも1つの細胞を含む第一の生物学的サンプルとを、siRNAが存在しない場合のPTP1Bの発現に十分な条件下で十分な時間接触させる;その際(1)上記PTP1BポリペプチドはGenbank登録番号M31724、NM_002827、およびM33689から選択される配列に示されるようなアミノ酸配列を含み、(2)siRNAポリヌクレオチドは(i)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101、104−105、および108−109から選択される少なくとも1つのヌクレオチドを含むRNAポリヌクレオチド、(ii)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチドおよびその相補的ポリヌクレオチド、(iii)siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、配列番号83−86、88−91、93−96、98−101に示される配列から選択される配列の位置1−19の任意の位置、または配列番号104、105、108および109に示される配列から選択される配列の任意の位置の、1、2または3個のヌクレオチドによって異なる(i)または(ii)に記載のRNAポリヌクレオチド、および(iv)siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が配列番号;83−86、88−91、93−96、98−101に示される諸配列から選択される配列の1−19位置の任意の位置、または配列番号104、105、108および109に示される諸配列から選択される配列の任意の位置の2、3または4個のヌクレオチドによって異なる(i)または(ii)に記載のRNAポリヌクレオチド、から選択され;B.上記細胞中のリン酸化され得る少なくとも1種類のタンパク質のリン酸化レベルと、siRNAポリヌクレオチドと接触させなかった対照サンプル中のそのタンパク質のリン酸化レベルとを比較し、その際siRNAポリヌクレオチドが存在しない場合のタンパク質のリン酸化レベルに比較したsiRNAポリヌクレオチドの存在下における上記タンパク質のリン酸化レベルの変化は、そのタンパク質がPTP1Bシグナル導入経路の一コンポーネントであることを示唆する。さらに別の実施形態において、上記シグナル導入経路はJak2キナーゼを含む。
【0030】
また別の局面において、本発明は細胞内のインスリンレセプタータンパク質のリン酸化状態を調節するための方法であって、上記細胞とsiRNAポリヌクレオチドとをPTP1Bポリペプチドの発現を干渉するのに十分な条件下で十分な時間接触させ、その際(a)PTP1BポリペプチドはfGenbank登録番号M31724、NM_002827、NM_011201、およびM33689から選択される配列で示されるようなアミノ酸配列を含み、(b)siRNAポリヌクレオチドが(i)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101またはその相補体および配列番号104、105、108、および109から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチド、(ii)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチドおよびその相補的ポリヌクレオチド、(iii)siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、配列番号83−86、88−91、93−96、98−101に示される諸配列から選択される配列の位置1−19の任意の位置、または配列番号104、105、108および109に示される諸配列から選択される配列の任意の位置の、1、2または3個のヌクレオチドによって異なる(i)または(ii)に記載のRNAポリヌクレオチド、および(iv)siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、配列番号;83−86、88−91、93−96、98−101に示される諸配列から選択される配列の1−19位置の任意の位置、または配列番号104、105、108および109に示される諸配列から選択される配列の任意の位置にある2、3または4個のヌクレオチドによって異なる(i)または(ii)に記載のRNAポリヌクレオチド、から選択され、(c)インスリンレセプタータンパク質が、配列番号_−_からなる群から選択されるアミノ酸配列またはその変異体を含むポリペプチドを有する前記方法を提供する。
【0031】
また別の実施形態において、細胞内のJak2タンパク質のリン酸化状態を変化させる方法であって、上記細胞とsiRNAポリヌクレオチドとを、PTP1Bポリペプチドの発現を干渉するのに十分な条件下で十分な時間接触させることを含む方法が提供される;その際(a)PTP1BポリペプチドはGenbank登録番号M31724、NM_002827、NM_011201およびM33689から選択される配列で示されるアミノ酸配列を含み、(b)siRNAポリヌクレオチドは、(i)配列番号83−86、88−91、93−96および98−101またはその相補体および配列番号104、105、108および109から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチド、(ii)配列番号83−86、88−91、93−96および98−101から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチドおよびその相補的ポリヌクレオチド、(iii)siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、配列番号83−86、88−91、93−96、98−101に示される諸配列から選択される配列の位置1−19の任意の位置、または配列番号104、105、108および109に示される諸配列から選択される配列の任意の位置にある1、2または3個のヌクレオチドによって異なる(i)または(ii)に記載のRNAポリヌクレオチド、および(iv)siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、配列番号;83−86、88−91、93−96、98−101に示される諸配列から選択される配列の1−19位置の任意の位置、または配列番号104、105、108および109に示される諸配列から選択される配列の任意の位置にある2、3または4個ののヌクレオチドによって異なる(i)または(ii)に記載のRNAポリヌクレオチド、から選択され、(c)Jak2タンパク質は、配列番号_−_からなる群から選択されるアミノ酸配列またはその変異体を含むポリペプチドを有する。本発明のまた別の実施形態はJak2関連性疾患を治療する方法であって、その治療を必要とする対象に上記の薬学的組成物を投与し、その際siRNAポリヌクレオチドはPTP1Bポリペプチドまたはその変異体の発現を阻害するという方法を提供する。ある実施形態において、Jak2関連性疾患は糖尿病、肥満、高血糖性アポトーシス、炎症または神経変性疾患である。また別の局面において、本発明は短い干渉RNA(siRNA)ポリヌクレオチドを提供する:このsiRNAは、ある実施形態では配列番号83−86、88−91、93−96、98−101、104−105、および108−109から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含み、ある別の実施形態では配列番号83−86、88−91、93−96、98−101およびその相補的ポリヌクレオチドから選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む。本発明は配列番号18−21、33−36、43−46、53−56および58−61から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチドを含む短い干渉RNA(siRNA)も提供する。その他のある実施形態は、上記の配列番号を有するヌクレオチド配列を含む単離されたsiRNA類に関連するものであり、このようなsiRNAを作り、治療に使用するための組成物および方法も含む。
【0032】
本発明のこれらのおよびその他の実施形態は下記の詳細な説明および添付の図面を参照することによって明らかとなる。ここに開示される全ての参考文献は、個別に組み込めるように、参考としてそのまま本明細書に組み込まれる。同時に出願された同時係属出願、出願番号__および出願番号__(それぞれ弁理士整理番号200125.441D1および200125.448)も参考として組み込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(発明の詳細な説明)
本発明は、一部は、ヒトまたはマウスPTP1Bポリペプチドのような所望のPTP1Bポリペプチド(例えば、Genbank登録番号M31724、NM_002827、NM_011201、M33689、NM_012637、NM_012637、M33962;発明番号:_−_;Andersen et al.,2001 Mol Cell Biol.21:7117)またはその変異体の発現を特異的に調節することができる短いRNAポリヌクレオチド配列の予期せざる発見に関する。理論によって束縛されるものではないが、本発明のRNAポリヌクレオチドは短い干渉RNA(siRNA)のメカニズムを加えることによって所望標的ポリペプチドの発現を特異的に低減する。とりわけ、そして本明細書に非常に詳細に記載するように、本発明によって、所望PTP1B標的ポリペプチドをコードする対応ポリヌクレオチド配列から誘導される、19、20、21、22、23、24、25、26または27ヌクレオチドを含む幾つかの特殊なRNAiオリゴヌクレオチド配列の驚くべき確認に関係する組成物および方法が提供される。これらの配列は任意のアルゴリズム、配列アラインメント実験またはその他の系統的パラダイムによって予想することはできず、本明細書に始めて開示されるオリゴヌクレオチドのような、実際的候補オリゴヌクレオチドの生成、およびそれらのRNAi活性の機能的試験によって決定しなければならない。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、siRNAポリヌクレオチドはPTP1B標的ポリペプチドまたはその変異体の発現を干渉し、siRNAポリヌクレオチドはそのヌクレオチド塩基配列が、標的ポリペプチドをコードする標的ポリヌクレオチド、例えば、標的mRNA配列またはそのようなmRNAをコードするエキソン配列の、一部分の配列に特異的に対応するRNAオリゴヌクレオチドまたはRNAポリヌクレオチドを含む。好ましい実施形態において、本発明は哺乳動物(ある特に好ましい実施形態ではヒトであり、ある特に好ましい実施形態では非ヒト哺乳動物である)の特殊なポリペプチドの発現を干渉するsiRNAポリヌクレオチドに関係する。したがって、非制限的理論によると、本発明のsiRNAポリヌクレオチドは、所望PTP1BをコードするmRNAの配列特異的分解に導く。
【0035】
(siRNAポリヌクレオチド)
ここに使用する用語「siRNA」は(i)長さが18塩基対、19塩基対、20塩基対、21塩基対、22塩基対、23塩基対、24塩基対、25塩基対、26塩基対、27塩基対、28塩基対、29塩基対または30塩基対であり、PTP−1BポリペプチドまたはPTP−1Bポリペプチド変異体の発現および活性を干渉することができる、二本鎖RNAオリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドであって、その際siRNAの一本鎖がPTP−1Bポリペプチド、その変異体、またはその相補的配列をコードするRNAポリヌクレオチド配列の一部を含む、上記二本鎖RNAオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド;(ii)18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、25ヌクレオチド、26ヌクレオチド、27ヌクレオチド、28ヌクレオチド、29ヌクレオチドまたは30ヌクレオチドの長さを有し、標的PTP−1Bポリペプチド、またはPTP−1Bポリペプチド変異体の発現および/または活性を干渉することができるか、または相補的配列にアニールして標的ポリペプチド発現を干渉できるdsRNAを形成するか、いずれかである一本鎖オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであって、その際そのような一本鎖オリゴヌクレオチドはPTP−1Bポリペプチド、その変異体、またはその相補的配列をコードするRNAポリヌクレオチド配列の一部を構成する上記一本鎖オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド;または(iii)このようなオリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドが1、2、3または4個の核酸の変化または置換を有する上記(i)または(ii)のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのいずれかを意味する。以下に記載される幾つかのRNAiオリゴヌクレオチド配列はPTP1Bポリペプチドをコードする標的mRNAの3’非コーディング領域に相補的である。
【0036】
siRNAポリヌクレオチドは、RNA干渉、転写後遺伝子サイレンシングメカニズム、の効果を媒介するRNA核酸分子である。siRNAポリヌクレオチドは二本鎖RNA(dsRNA)を含むのが好ましいが、それに限定するものではなく、一本鎖RNAを含むこともできる(Martinez et al.,Cell 110:563−74(2002))。siRNAポリヌクレオチドはここに提供されるようなヌクレオチド類(リボヌクレオチド類またはデオキシリボヌクレオチド類または両者の組み合わせ)および/またはヌクレオチドアナログのその他の天然発生性、組換え、または合成一本鎖または二本鎖ポリマー(例えば、5’→3’ホスホジエステル結合をしたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドなど)を含む。よって、本発明のsiRNAポリヌクレオチドの転写に導くことができるDNA配列として本明細書に開示される幾つかの例示的配列は、相補的ヌクレオチド塩基ペアリングの原理が十分確立されているならば、対応するRNA配列およびそれらの相補体も含めて記載するものであることは当然である。siRNAは、RNAポリメラーゼプロモータ、例えば、U6プロモータまたはH1 RNAポリメラーゼIIIプロモータなどを含むDNA(ゲノム、cDNAまたは合成)をテンプレートとして用いて転写される。あるいは、siRNAは合成的に誘導されたRNA分子でもよい。特定の実施形態において、本発明のsiRNAポリヌクレオチドは平滑末端を有する、すなわち、二本鎖において一本の鎖の各ヌクレオチドは対置する鎖のヌクレオチドと完全に相補的である(例えば、ワトソン−クリック塩基対)。その他のある実施形態において、本発明のsiRNAポリヌクレオチドの少なくとも一つの鎖は、siRNAポリヌクレオチドのいずれかの鎖、より好ましくは両方の鎖の3’末端において「オーバーハング」した(すなわち、対置鎖の相補的塩基と塩基対を形成していない)少なくとも1つ、より好ましくは2つのヌクレオチドを有する。本発明の好ましい実施形態において、siRNAポリヌクレオチド二本鎖の各鎖は3’末端に2ヌクレオチド−オーバーハングを有する。2ヌクレオチド−オーバーハングは好ましくはチミジン・ジヌクレオチド(TT)であるが、その他の塩基を含んでもよい、例えば、TCジヌクレオチドまたはTGジヌクレオチド、またはその他の任意のジヌクレオチドなど。siRNAポリヌクレオチドの3’末端の検討のためにはWO01/75164などを参照されたい。
【0037】
好ましいsiRNAポリヌクレオチドとしては、約18−30ヌクレオチド塩基対、より好ましくは約18、19、20、21、22、23、24、25、26または27塩基対、その他の好ましい実施形態では約19、20、21、22、または23塩基対、または約27塩基対の二本鎖オリゴマーヌクレオチドが含まれる。ここで上に記した「約(about)」という語の使用は、ある実施形態において、ある条件下では、選択されたポリペプチドの発現を干渉することができる機能的siRNAポリヌクレオチドを生成する操作的切断過程は無条件には効率的でないことを示唆する。例えば、「約」18、19、20、21、22、23、24、または25塩基対のsiRNAポリヌクレオチドは、非制限的理論によるプロセッシング、生合成または人工的合成における変動性の結果として、長さが1、2、3または4個の塩基対だけ異なる(例えば、ヌクレオチド挿入または欠失によって)siRNAポリヌクレオチド分子を1つ以上含む。考慮される本発明のsiRNAポリヌクレオチドも、特定の配列から1、2、3または4つのヌクレオチドだけ異なる(例えば、ヌクレオチド置換(移動または転換を含む)によって)ことによって多様性を示すポリヌクレオチド配列を含む。その差異は、二本鎖ポリヌクレオチドのセンス鎖に位置するかアンチセンス鎖に位置するかには無関係に、分子の長さによって、特定のsiRNAポリヌクレオチド配列の位置1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または19の任意の位置に、またはsiRNAポリヌクレオチドの位置20、21、22、23、24、25、26または27に起きる。ヌクレオチド置換は二本鎖ポリヌクレオチドの一つの鎖だけに、例えば、アンチセンス鎖だけに見いだされ、上記置換されたヌクレオチドが一般的には水素結合塩基対を形成する相補的ヌクレオチドは、必ずしもこれに対応してセンス鎖が置換されていなくともよい。好ましい実施形態において、siRNAポリヌクレオチドはある特殊なヌクレオチド配列に関して相同である。ここに記載されるように、好ましいsiRNAポリヌクレオチドはPTP−1Bポリペプチドの発現を干渉する。これらのポリヌクレオチド類はプローブまたはプライマーとしても使用される。
【0038】
本発明のsiRNAポリヌクレオチドであるポリヌクレオチド類は、ある実施形態において、一本鎖オリゴヌクレオチド・フラグメント(例えば、約18−30ヌクレオチド;これは18から30までの任意の整数のヌクレオチドを含むものと理解すべきである)および普通はスペーサ配列によって分離されているその逆相補体を含む一本鎖ポリヌクレオチドから誘導される。そのようなある実施形態によると、上記スペーサの切断は一本鎖オリゴヌクレオチド・フラグメントとその逆相補体とを与え、それらがアニールして本発明の二本鎖siRNAポリヌクレオチドを形成(任意に、どちらかの鎖または両方の鎖の3’末端および/または5’末端から1、2、3またはそれ以上のヌクレオチドの付加または除去をおこす追加的プロセッシング工程で)できるようにする。ある実施形態において、スペーサの切断前(任意に、どちらかの鎖または両方の鎖の3’末端および/または5’末端から1、2、3またはそれ以上のヌクレオチドの付加または除去をおこす追加的プロセッシング工程の前)には、そのスペーサは上記フラグメントおよびその逆相補体がアニールして二本鎖構造(例えば、ヘアピンポリヌクレオチドのような構造)を形成できるような長さである。そのためスペーサ配列は、本発明において作られるような、2つの相補的ポリヌクレオチド配列領域(これらの領域はアニールして二本鎖核酸を形成した際にsiRNAポリヌクレオチドを構成する)の間に位置する任意のポリヌクレオチド配列でよい。スペーサ配列は少なくとも4つのヌクレオチドを含むのが好ましいが、ある実施形態においては、そのスペーサは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21−25、26−30、31−40、41−50、51−70、71−90、91−110、111−150、151−200またはそれ以上のヌクレオチドを含み得る。スペーサによって分離された2つの相補的ヌクレオチド配列を含む一本鎖ヌクレオチドから誘導されるsiRNAポリヌクレオチドの例が、記載されている(Brummelkamp et al.,2002 Science 296:550;Paddison et al.,2002 Genes Develop.16:948;Paul et al.,Nat.Biotechnol.20:505−508(2002);Grabarek et al.,BioTechniques 34:734−44(2003))。
【0039】
ポリヌクレオチド変異体は、siRNAポリヌクレオチドの活性が実質的に低下しないように、上記のように1つ以上の置換、付加、欠失および/または挿入を含むことができる。siRNAポリヌクレオチドの活性に対する効果は、概ね、ここに記載されるようにして、または一般的方法によって評価される。変異体は、天然(ネイティブ)PTP−1Bをコードするポリヌクレオチド配列の部分の少なくとも75%、78%、80%、85%、87%、88%または89%の同一性を示すのが好ましく、少なくとも約90%、92%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を示すのがより好ましい。パーセント同一性は、ポリヌクレオチド類の配列と、完全PTP1Bポリヌクレオチドの対応部分とを、当業者には公知のように、しかも本明細書に記載のように、AlignアルゴリズムまたはBLASTアルゴリズムなどの当業者に公知のコンピューターアルゴリズムの使用を含む任意の方法を用いて比較することによって容易に決定できる(Altschul,J.Mol.Biol.219:555−565、1991;Henikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915−10919,1992)。上記アルゴリズムはNCBIウェブサイトで使用できる([online]Internet:<URL:http://www/ncbi.nlm.nih.gov/cgi−bin/BLASTを参照)。既定のパラメータを使用できる。
【0040】
特定のsiRNAポリヌクレオチド変異体は、天然PTP1B遺伝子の一部分に実質的に相同である。このようなポリヌクレオチド変異体から誘導される(例えば、熱変性によって)一本鎖核酸はおだやかなストリンジェント条件下でハイブリッド化し、天然PTP1Bポリペプチド(または相補的配列)をコードする天然発生性DNAまたはRNA配列を形成することができる。おだやかなストリンジェント条件下で検出可能にハイブリッド化するポリヌクレオチドは、ある特定のポリヌクレオチドに相補的な、少なくとも10連続ヌクレオチドを含むヌクレオチド配列、より好ましくは11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30の連続ヌクレオチドを含むヌクレオチド配列を有する。ある好ましい実施形態において、このような配列(またはその相補体)は、発現の干渉が望まれるPTP1Bポリペプチドに特異的であり、ある別の実施形態においては、PTP1B、およびポリペプチド発現の干渉が望まれる1種類以上のPTPがその配列(またはその相補体)を共有している。
【0041】
適切なおだやかなストリンジェント条件とは、例えば、5X SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中で予備的洗浄;50℃〜70℃、5X SSCで1〜16時間(例えば、一晩)ハイブリダイゼーション;その後22−65℃で、0.05〜0.1%SDSを含む2X、0.5Xおよび0.2X SSCのうちの1種類以上によって、20〜40分間、1または2回洗浄することを含む。付加的ストリンジェンシーのためには、条件は、50〜60℃の0.1X SSCおよび0.1%SDS中で15−40分洗浄することを含む。当業者には公知のように、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーの変動は、プレ−ハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーションおよび洗浄過程に使用される時間、温度、および/または溶液の濃度を変えることによって実現する。適切な条件は一部には、使用するプローブの、およびブロットされた発端核酸サンプルの特殊なヌクレオチド配列にも依存する。よって、プローブの所望の選択性が確認される場合は、そのプローブが1つ以上のある発端配列にはハイブリッド化することができ、その他の発端配列にはハイブリッド化できないという特性に基づいて、余計な実験を行うことなく適切なストリンジェント条件を容易に選択できることは当然である。
本発明の配列特異的siRNAポリヌクレオチドは、数種の基準のうちの1種類以上を使用して設計される。例えば、対象のポリペプチド(例えば、本明細書に記載のPTP1Bおよびその他のポリペプチド)をコードする配列に同一の19連続ヌクレオチドを有するsiRNAポリヌクレオチドを設計するために、そのポリヌクレオチド配列のオープン・リーディング・フレームを、下記の特性の一つ以上を有する21塩基配列について走査する:(1)比 A+T/G+Cが約1:1で、2:1または1:2より大きくない;(2)5’末端にAAジヌクレオチドまたはCAジヌクレオチド;(3)内部ヘアピンループの融点が55℃未満;(4)ホモダイマー融点が37℃未満((3)および(4)に記載した融点の計算は、当業者に公知のコンピュータソフトウエアを使用して決定できる);(5)少なくとも16連続ヌクレオチドの配列がその他のあらゆる公知のポリヌクレオチド配列に存在することが確認されていない(このような評価は、市販されるデータベースを検索するためのBLASTなど当業者が使用できるコンピュータプログラムを用いて容易に確認できる)。あるいは、siRNAポリヌクレオチド配列は、種々の販売会社(オリゴエンジン(OligoEngine)(商標)(シアトル、WA);ダルマコン社(Dharmacon,Inc.)(ラファイエット、CO);アンビオン社(Ambion Inc.)(オースチン、TX);およびキアゲン社(QIAGEN,Inc.)(バレンシア、CA)など)から市販されるコンピュータソフトウェアを使用して設計および選択できる。(Elbashir et al.,Genes & Development 15:188−200(2000);Elbashir et al.,Nature 411:494−98(2000);および[online]Internet:<URL:http://www/.mpibpc.gwdg.de/abteilungen//100/105/Tuschl_MIV2(3)_2002.pdf.も参照されたい)。その後siRNAポリヌクレオチド類を、それらの標的ポリペプチドの発現を干渉する能力について当業者に公知の、ここに記載される方法によって試験することができる。siRNAポリヌクレオチドの効果の測定は、そのポリペプチド発現干渉能力の考察だけでなく、そのsiRNAポリヌクレオチドが有害な毒性作用、例えば、細胞のアポトーシスなどを示すかどうかの考察も含む;細胞死はRNA干渉(例えば、細胞内のPTP1B発現の干渉)の望ましい効果ではない。
【0042】
上記の方法を使用して設計された全てのsiRNAがPTP1B標的ポリペプチドの発現のサイレンシングまたは干渉において有効であるとは限らないことを認めなければならない。さらに、上記のsiRNA類は種々異なる程度にサイレンシングをおこす。このようなsiRNA類をそれらの有効性について試験し、与えられたsiRNAの、PTP1Bの発現を干渉または調節する(例えば、統計的に有意に減少させるなど)能力に基づいて選択を行わなければならない。よって、PTP1Bポリペプチドの発現を干渉することができる特殊なsiRNAポリヌクレオチドの確認には、以下により詳細に示すように、各siRNAの作製および試験が必要である(実施例参照)。
【0043】
さらに、タンパク質発現を干渉する全てのsiRNAが生理的に重要な効果を有するとは限らない。発明者はここに、細胞増殖、アポトーシス誘発および/またはタンパク質チロシンリン酸化(インスリンレセプターリン酸化など)レベルの変化など、調節した標的ポリペプチドの発現の影響を測定して、本発明のsiRNAの使用によって認められる標的タンパク質発現の干渉レベルが臨床的に適切な重要性を有するかどうかを決定するための、生理学的に適切なアッセイを考案し、ここに記載する。さらに、非制限的理論により、本発明は対象とする1種類以上のポリペプチドの変化した(例えば、統計的に有意に減少または増加した)発現レベルおよび/または対象とする1種類以上のリンタンパク質の変化した(すなわち、増加または減少した)リン酸化レベルを企図する。上記変化したレベルは、特異的標的ポリペプチド発現のRNAi媒介性阻害に反応して誘発されるPTP1Bタンパク質発現および/または細胞代償メカニズムの障害に起因し得る。
【0044】
当業者は、遺伝コードの変性の結果、ここに記載される一つのポリペプチドを多くのヌクレオチド配列がコードし得ることを容易に理解する。すなわち、あるアミノ酸は数種のコドンの一つによってコードされることもあり、ある特定のヌクレオチド配列が他とは異なる(これはここに開示され、当業者に公知のアラインメント法によって確認できる)一方、それらの配列が同一アミノ酸配列を有するポリペプチドをコードできることを当業者は容易に確認することができる。例を挙げると、ポリペプチド中のアミノ酸ロイシンは6種類のコドン(TTA、TTG、CTT、CTC、CTAおよびCTG)の一つによってコードされる。それはセリンも同様である(TCT、TCC、TCA、TCG、AGTおよびAGC)。その他のアミノ酸、例えば、プロリン、アラニン、バリンなどは4種類のコドン(プロリンではCCT、CCC、CCA、CCG;アラニンではGCT、GCC、GCA、GCG;バリンではGTT、GTC,GTA、GTG)の任意の1種類によってコードされる。これらのポリヌクレオチドの幾つかは、任意の天然遺伝子のヌクレオチド配列に対して最小の相同性を有する。それにもかかわらず、コドン利用の差によって変動するポリヌクレオチド類を本発明は詳細に考慮する。
【0045】
標的ポリヌクレオチド(例えば、対象とする標的ポリペプチドをコードすることができるポリヌクレオチド)を含むポリヌクレオチド類を、特に所望されるsiRNAポリヌクレオチドの作製のために、およびsiRNAポリヌクレオチドに使用される所望配列の同定および選択のために有用な種々の方法の中の任意の方法を使用して作ることができる。例えば、ポリヌクレオチドを適切な細胞または組織型から作られたcDNAから増幅することができる。このようなポリヌクレオチドはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によって増幅される。このアプローチでは、配列特異的プライマーをここに提供される配列に基づいて設計してもよいし、購入または合成することもできる。増幅部分を利用して、公知の方法によって適切なライブラリー(例えば、ヒト骨格筋cDNA)から完全長の遺伝子またはその所望部分を分離することができる。このような方法では、ライブラリー(cDNAまたはゲノムのライブラリー)を増幅に適した1種類以上のポリヌクレオチドプローブまたはプライマーを使用してスクリーニングする。好ましくはライブラリーは比較的大きい分子を含むようにサイズで選択する。ランダム・プライムド・ライブラリーも遺伝子の5’および上流領域を確認するためには好ましい。本発明によって考慮されるsiRNAポリヌクレオチドのための適切な配列もsiRNAポリヌクレオチド配列のライブラリーから選択できる。
【0046】
ハイブリダイゼーション法では、部分的配列を公知の方法によって標識化する(例えば、ニック−トランスレーション法または32Pによる末端標識化)。細菌またはバクテリオファージ・ライブラリーをその後変性細菌コロニーを含むフィルター(またはファージ・プラークを含むローン(lawns))を標識化プローブとハイブリッド化することによってスクリーニングすることができる(Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Mannual、Cold Spring Harbor Laboratories, Cold Spring Harbor,NY,2001 などを参照されたい)。ハイブリダイジング・コロニーまたはプラーク類を選択し、増殖させ、DNAを単離してその後分析する。クローン類を分析し、部分的配列からのプライマーとベクターからのプライマーを用いるPCRなどによって追加的配列の量を決定することができる。制限地図および部分的配列を作り、1種類以上の重なり合うクローンを確認することができる。完全長のcDNA分子は、公知の方法を用いて適切なフラグメントを結合することによって作ることができる。
【0047】
あるいは、部分的cDNA配列から完全長コーディング配列を得るための多数の増幅法が当業者には公知である。このような方法の中で、増幅はPCRによって行われるのが普通である。このような一方法は「急速cDNA末端増幅」またはRACEとして知られている。この方法は内部プライマーおよび外部プライマーの使用を含む。これはポリA領域またはベクター配列にハイブリッド化し、既知配列の5’および3’である配列を確認する。種々の市販キットのうちの任意のキットを使用して増幅工程を行うことができる。プライマー類は例えば、当業者に公知のソフトウェアを使用して設計できる。プライマー類(またはここに考慮されるその他の用途のためのオリゴヌクレオチド、例えば、プローブ類およびアンチセンスオリゴヌクレオチド類)は、長さが好ましくは15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、または32ヌクレオチドであり、少なくとも40%のGC含有量を有し、約54℃ないし72℃の温度で標的配列にアニールする。増幅領域は上記のように配列決定され、オーバーラッピング配列は連続配列に組み立てられる。本発明によって考慮されるある種のオリゴヌクレオチドはある好ましい実施形態では18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33−35、35−40、41−45、46−50、56−60、61−70、71−80、81−90またはそれ以上のヌクレオチド長を有する。
【0048】
PTP1Bポリペプチド発現を干渉するために有用な多数の特異的siRNAポリヌクレオチド配列が実施例、図面および配列表に示される。siRNAポリヌクレオチドは一般的に、固相化学合成などを含む当業者に公知の任意の方法によって作られる。ポリヌクレオチド配列の修飾もオリゴヌクレオチド指向性部位特異的突然変異誘発などの標準的突然変異誘発法を使用して挿入される。さらに、siRNAは化学的に修飾されまたは結合して、それらの血清中安定性および/または送達性を改善することができる。本発明の一局面として、リボースが除去されたここに記載のsiRNAが含まれる。あるいは、siRNAポリヌクレオチド分子が適切なDNA配列(例えば、PTPをコードするポリヌクレオチド配列、またはその所望部分)のインビトロまたはインビボ転写によって作られる。その際上記DNAが、適切なRNAポリメラーゼプロモータ(T7、U6、H1またはSP6など)を有するベクターに組み込まれることが条件である。さらに、siRNAポリヌクレオチドは、所望siRNAがインビボで生成できるような転写(および任意に適切なプロセッシング過程)を助長するDNA配列(例えば、ここに提供される組換え核酸構築物など)のように、患者に投与することができる。
【0049】
よって、PTP1Bコーディング配列の少なくとも部分に相補的なsiRNAポリヌクレオチドは、遺伝子発現を調節するために使用され、またはプローブまたはプライマーとして使用される。siRNAポリヌクレオチド配列およびそれらを標的に送達するためのDNAコーディング遺伝子の確認は、PTP1Bに関連してここに記載される方法に関係する。このようなsiRNAポリヌクレオチド配列およびそれらを標的に送達するためのDNAコーディング遺伝子の確認も、ここに記載される方法に関係する。上に述べたように、siRNAポリヌクレオチドは好ましい安定性特性を示し、必ずしも必要ではないがホスホロチオエート、メチルホスホネート、スルホン、スルフェート、ケチル、ホスホロジチオエート、ホスホルアミデート、リン酸エステル、およびこの種のその他の結合などの結合の使用によって内因性核酸分解酵素による分解に抵抗するようにさらに設計してもよい(Agrwal et al.,Tetrahedron Lett.28:3539−3542(1987);Miller et al.,J.Am.Chem.Soc.93:6657−6665(1971);Stec et al.,Tetrahedron Lett.26:2191−2194(1985);Moody et al.,Nucleic Acids Res.12:4769−4782(1989);Uzananski et al.,Nucleic Acids Res.(1989);Letsinger et al.,Tetrahedron 40:137−143(1984);Eckstein,Annu.Rev.Biochem.54:367−402(1985);Eckstein,Trend Biol.Sci.14:97−100(1989);Stein,In:Oligodeoxynucleotides.Antisense Inhibitors of Gene Expression,Cohen,ed.,Macmillan Press,London,pp.97−117(1989);Jager et al.,Biochemistry 27:7237−7246(1988))。
【0050】
本発明の任意のポリヌクレオチドをさらに修飾してインビボ安定性を高めることができる。可能な修飾は、非制限的に、5’および/または3’末端へのフランキング配列の付加;主鎖におけるホスホジエステル結合よりむしろホスホロチオエートまたは2’O−メチル結合の使用;および/またはイノシン、クエオシン、およびワイブトシンなどの非伝統的塩基類、ならびにアデニン、シチジン、グアニン、チミンおよびウリジンのアセチル−、メチル−、チオ−およびその他の修飾された型の挿入を含む。
【0051】
本明細書に記載されるヌクレオチド配列は、確立された組換えDNA法によってその他の種々の配列に結合することができる。例えば、あるポリヌクレオチドを、プラスミド、ファージミド、ラムダファージ誘導体、およびコスミドなど、種々のクローニングベクターのいずれかにクローン化することができる。特に興味深いベクターには、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクターおよびシークエンシング・ベクターなどがある。概して適切なベクターは少なくとも1種類の生体において機能する複製開始点、適切な(convenient)制限酵素部位、および1つ以上の選択可能マーカーを含む。(WO01/96584;WO01/29058;米国特許第6326193号;U.S.2002/0007051などを参照されたい)。その他の因子は所望の用途に依存し、当業者には明らかである。例えば、本発明は、インビボでPTP1Bポリペプチドのような所望標的ポリペプチドの発現を干渉するためのベクターを含む組換え核酸構築物の作製にsiRNAポリヌクレオチド配列を使用することを考慮する;本発明は、siRNAトランスジェニックまたは「ノックアウト」動物および細胞(1種類以上の所望ポリペプチド(標的ポリペプチドなど)の発現が完全または部分的に抑制されている細胞、細胞クローン、系、系統または生体など)の生成も考慮する。本明細書に記載されるような所望ポリペプチドの発現に干渉できるsiRNAポリヌクレオチドとは、siRNAポリヌクレオチドの不在下で標的ポリペプチド発現が十分に起きる条件で、十分な時間、ここに提供される対象または生物学的ソースと接触させた際に、検出できる標的ポリペプチドの発現レベルの統計的有意な減少(あるいは、発現の「ノックダウン」とも言う)を起こす任意のsiRNAポリヌクレオチドなどである。その減少は、当業者に公知の、本明細書に提供される一般的ポリペプチド発現測定法を使用して、siRNAの不在下で検出されるポリペプチドの発現レベルに対して10%より大きいのが好ましく、20%より大きいのがより好ましく、30%より大きいのがより好ましく、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%より大きいのがより好ましい。細胞中のsiRNAポリヌクレオチドの存在が細胞のアポトーシスまたは細胞死などの不都合な毒性作用を起こさないのが好ましい(この場合細胞のアポトーシスはRNA干渉の所望効果ではない)。
【0052】
特定の実施形態において、siRNAポリヌクレオチドは哺乳動物の細胞に入り、そこで発現できるように作られる。このような構造は以下に記載するように治療的目的のためには特に有用である。当業者は標的細胞中でポリヌクレオチドを発現させる多くの方法があることを認めており、任意の適切な方法を使用できる。例えば、ポリヌクレオチドを公知の方法を使用してウィルスベクターに挿入することができる(U.S.2003/0068821なども参照されたい)。ウィルスベクターは付加的に遺伝子を運搬し、または取り込み、選択可能マーカー(形質導入された細胞の同定または選択に役立つ)および/またはターゲティング部分、例えば、特殊な標的細胞上のレセプターのためのリガンドをコードする遺伝子など、が上記ベクターを標的特異的にする。ターゲティングは当業者に公知の方法によって抗体を用いて達成することもできる。
【0053】
治療的目的のためのその他の組成物は、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、および水中油乳濁液、ミセル、混合ミセルおよびリポソームを含む脂質性の系を含む。インビトロおよびインビボ送達ビヒクルとして使用する好ましいコロイド系はリポソーム(すなわち、人工膜の小胞)である。このような系の製法および使用は当業者には公知である。
【0054】
他の実施形態において、1つ以上のプロモータが確認され、分離され、および/または標準的手法により本発明の組換え核酸構築物に組み込まれる。本発明はそのようなプロモータ配列、またはその一つ以上のシス作用性調節因子またはトランス作用性調節因子を含む核酸分子を提供する。そのような調節因子はsiRNAの発現を高め、或いは抑制する。5’−フランキング領域はここに提供されるゲノム配列に基づき、標準的手法によって作製される。必要ならば、PCRまたはその他の標準的方法を使用して追加的5’配列を生成することができる。5’領域を標準的方法を使用してサブクローン化し、配列決定する。プライマーの伸長および/またはRNase保護分析を使用してcDNAから導き出される転写開始部位を明らかにすることができる。
【0055】
プロモータ領域の境界を決めるために、種々のサイズの推定プロモータ・インサートを、適切なレポーター遺伝子を含み、プロモータまたはエンハンサーは含まない異種発現系にサブクローンする。適切なレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコール・アセチル・トランスフェラーゼ、分泌アルカリ性ホスファターゼをコードする遺伝子、または緑色蛍光タンパク質遺伝子を含む(Ui−Tei et al.,FEBS Lett.479:79−82(2000)などを参照されたい)。適切な発現系はよく知られており、公知の技術で作ることもできるし市場で購入することもできる。内部欠失構築物は特異的内部制限部位を使用して、または非特異的制限部位の部分消化によって作られる。その後構築物は、高レベルのsiRNAポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド発現をあらわす細胞にトランスフェクトする。概して、レポーター遺伝子の高レベル発現を示す最小5’フランキング領域を有する構築物はプロモータとして確認される。このようなプロモータ領域をレポーター遺伝子に結合し、これを使用して物質類の、プロモータによる転写を調節する能力を測定する。
【0056】
機能的プロモータが決定されると、シス作用性因子およびトランス作用性因子が配置される。シス作用性配列は前以て特徴づけられた転写モチーフに対する相同性に基づいて確認されるのが普通である。決定された配列内にその後点突然変異を作り、このような配列の調節的役割を評価する。このような突然変異は部位特異的突然変異誘発技術またはPCRに基づく方法によって作られる。変化したプロモータを上記のようにレポーター遺伝子発現ベクターにクローン化し、その突然変異がレポーター遺伝子発現に与える効果を評価する。
【0057】
概して、ここに記載されるポリペプチドおよびポリヌクレオチドは分離されている。「分離された」ポリペプチドまたはポリヌクレオチドとは、本来の環境から取り出されたものである。例えば、天然発生性タンパク質は、もしも天然系において共存する物質類の若干または全てから分離されているならば、分離されていると言える。このようなポリペプチド類は少なくとも90%純度であるのが好ましく、少なくとも約95%純度であるのがより好ましく、少なくとも約99%純度であるのが最も好ましい。ポリヌクレオチドは、例えば、それが天然環境の一部ではないベクターにクローン化される場合、分離されたと考えられる。「遺伝子」はポリペプチド鎖の産生に関係するDNAのセグメントを含む;さらにそれはコーディング領域に先行する領域およびコーディング領域に続く領域「リーダーおよびトレイラー」、例えば、プロモータおよび/またはエンハンサーおよび/またはその他の調節配列など、ならびに個々のコーディングセグメント(エキソン)間の介入配列(イントロン)を含む。
【0058】
例えば、インスリンによって誘導されるシグナル導入経路におけるあるコンポーネントの発現を干渉するsiRNAの効果は、インスリンレセプターベータ(IR−β)、および/または下流シグナル伝達分子PKB/Akt、および/または本明細書に提供される特定のシグナル導入経路のコンポーネントであるその他の任意の下流ポリペプチド、のチロシンリン酸化レベルを測定することによって評価される。
【0059】
上記のように、調節されたチロシンリン酸化は、細胞分裂、細胞生存、アポトーシス、増殖および分化に関係するものを含めた、生物学的シグナル導入のための特殊な経路に貢献する。本発明に関連する「生物学的シグナル導入経路」または「誘導性シグナル伝達経路」は細胞内のこれらのおよび類似のプロセスの制御に関係する分子コンポーネント類間の一過性または安定的関係または相互作用を含む。対象とする特定の経路に依って、このような経路の誘導を測定するための適切なパラメータが選択される。例えば、細胞増殖と関係するシグナル伝達経路では、次のような種々の公知の方法を使用して増殖を定量することができる;例えば、トリチウム化チミジンの細胞内DNAへの挿入、細胞呼吸活性の検出可能の(例えば、蛍光法または比色法)インディケータ(例えば、テトラゾリウム塩(黄色)―3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)または3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム(MTS)―からホルマザン色素(紫)への変換)のモニタリング、または細胞の計数など。細胞生物学分野でも同様に、細胞生存の評価(ウィルス染料、代謝的インディケータなど)およびアポトーシスの測定(アネキシンV結合、DNAフラグメント化アッセイ、カスパス活性化、マーカー分析など、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)など)のための複数の方法が知られている。その他のシグナル伝達経路は特殊な細胞表現型[例えば、遺伝子発現の特異的誘導(転写または翻訳生成物として検出可能、またはそのような生成物のバイオアッセイによって、または細胞形質因子の核への局在として検出可能)、細胞内メディエータのレベルの変化(統計的有意な増加または減少)(例えば、活性化キナーゼ、またはホスファターゼ、環状ヌクレオチドまたは生理的活性イオン種などのレベルの変化)、変化した細胞周期プロフィール、または変化した細胞形態など]と関連し、ここに提供される特定の刺激に対する細胞の応答性が容易に確認され、特定の細胞が誘導可能のシグナル伝達経路を含むかどうかを明らかにすることができる。
【0060】
(PTP1B)
本発明に使用するPTP1Bの配列は、必要の範囲では、下記の群、(例えば、Genbank登録番号M31724(配列番号_−_);NM_002827(配列番号_−_);NM_011201(配列番号_−_);M31724(配列番号_−_);M33689(配列番号_−_);M33962(配列番号_−_))から選択される任意の配列を意味する。本発明は単一ヌクレオチド多型性(SNPs)を含むPTP1Bの変異体または突然変異型、または対立型も含む。
【0061】
部位特異的突然変異による個々のアミノ酸の特異的置換は公知であり、当業者が熟知する方法によって行われる。生成した突然変異体PTPの触媒活性に与える効果は、本明細書に示され、またこれまでに開示されているように(例えば、WO98/04712;Flint et al.,1997 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:1680)、生成した修飾タンパク質をKmの保存およびKcatの1分間あたり1未満の減少について試験することによって実験的に測定される。さらに生成した突然変異体PTP分子の、1個以上のチロシン残基をリン酸化する能力に与える効果も、そのような突然変異体を、例えば、その突然変異体がタンパク質チロシンキナーゼのためのリン酸アクセプタとして作用するインビトロまたはインビボ条件下にその突然変異体をさらした後、ホスホチロシンの存在について試験するだけで、実験的に決定される。
【0062】
より詳細には、アミノ酸位置のナンバーによって1つのPTP1B配列に番号をつけ、それから匹敵するアミノ酸または保存残基であるアミノ酸、例えば、各位置の、極性(D、E、K、R、H、S、T、N、Qなど)、疎水性(A、P、V、L、I、M、F、W、Yなど)または中性(C、Gなど)アミノ酸残基の数を最大にするようにその配列をアライニングして比較するというきまりに基づくと、2つのPTP1Bポリペプチド配列の部分は「対応する」アミノ酸配列、領域、フラグメントとみなされる。同様に、公知の野生型PTP1B DNA配列中の核酸配列の位置に番号をつけ、それによって候補PTP DNA配列と公知のPTP DNAとを、少なくとも20の連続ヌクレオチドを有する所定の配列中のヌクレオチドの少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%およびより好ましくは少なくとも90%が一致するように整列させるという慣習により、ここに提供される突然変異すべき候補PTP、またはある部分、領域、フラグメントなどをコードするDNA配列も、公知の野生型PTP1BコーディングDNA配列に対応する。ある好ましい実施形態において、候補PTP DNA配列は対応する公知のPTP1B DNA配列に95%以上一致する。ある特に好ましい実施形態において、候補PTP DNA配列の部分、領域またはフラグメントは対応する公知のPTP1B DNA配列に一致する。当業者には公知のように、DNAが、ある特徴を起こす特定の遺伝子において不規則性(例えば、一般的または広まった形)を含まない個体はその遺伝子については野生型遺伝子相補体(遺伝子型)を有すると言える一方、その遺伝子に関してDNAに突然変異と知られる不規則性の存在、例えば、ヌクレオチドの1つ以上における置換、挿入または欠失の存在は、変化した、または突然変異遺伝子型を示唆する。
【0063】
DNAの修飾は種々の方法、例えば、対象のポリペプチドをコードするDNAの部位特異的(site−specific またはsite−directed)突然変異誘発および、プライマーを使用してDNAテンプレートに変化を導入し増幅するDNA増幅法、例えば、オーバーラップ伸長によるPCRスプライシング(SOE)の使用などによって行われる。部位特異的突然変異誘発は一般的には一本鎖および二本鎖型を有するファージベクター、例えば、公知の、市販されているM13ファージベクターなどを使用して行われる。一本鎖ファージ複製開始点を含むその他の適切なベクター類を使用してもよい(Veira et al.,Meth.Enzymol.15:3,1987)。概して、部位特異的突然変異誘発は対象のタンパク質(例えば、PTP1B)をコードする一本鎖ベクターの構築によって行われる。一本鎖ベクター中のDNAに相同の領域内に所望の突然変異を含むオリゴヌクレオチドプライマーを、大腸菌(E.Coli)DNAポリメラーゼI(クレノウ・フラグメント)のようなDNAポリメラーゼの添加によって上記ベクターにアニールする。それはプライマーとして二本鎖領域を用い、一つの鎖は変化した配列をコードし、他の鎖は元の配列をコードするヘテロ二本鎖を生成する。部位特異的突然変異誘発に関する追加的開示は例えば、 Kunkel et al.,(Methods in Enzymol.154:367,1987)および米国特許第4518584号および第4737462号に見いだされる。ヘテロ二本鎖は適切な細菌細胞に導入され、所望突然変異を含むクローンが選択される。生成する変化したDNA分子が適切な宿主細胞に組換えによって発現し、修飾タンパク質を産生する。
【0064】
本発明のsiRNAを他のヌクレオチド分子またはポリペプチドに融合させ、それらを運搬するかまたはその他の機能を実現させてもよい。例えば、PTP1Bの発現を特異的に干渉することができるsiRNAオリゴヌクレオチドを含む融合タンパク質はアフィニティ・タグ・ポリペプチド配列を含むことができる。上記ポリペプチド配列は、リガンドの特異的アフィニティ干渉を介してそのようなポリペプチドの検出および分離を容易にするポリペプチドまたはペプチドを指す。上記リガンドは、ここに提供される特異的結合相互作用によってアフィニティ・タグが相互作用する任意の分子、レセプター、対レセプター、抗体などである。このようなペプチドには、例えば、米国特許第5011912号および Hopp et al.,(1988Bio/technology 6:1204)に記載されている抗原性識別ペプチドなどのポリ−ヒス(poly−His)または「FLAG(商標)」など、またはXPRESS(商標)エピトープ・タグ(Invitrogen,Carlsbad, CA)がある。上記アフィニティ配列は、細菌性宿主の際にマーカーに融合する成熟ポリペプチドの精製を行うための例えば、pBAD/His(Invitrogen)またはpQE−9ベクターによって供給されるヘキサ−ヒスチジンであり、または例えば、上記アフィニティ配列は、哺乳動物宿主、例えば、COS−7細胞を使用する場合にはヘマグルチニン(HA)タグでもよい。HAタグはインフルエンザ・ヘマグルチニンタンパク質から誘導される抗体識別エピトープに対応する(Wilson et al.,1984 Cell 37:767)。
【0065】
本発明はベクター類にも関係し、siRNAポリヌクレオチドを含みまたはコードする構築物にも関係する。特に、転写されて、上記のような本発明によるPTP1Bポリヌクレオチド特異的siRNAポリヌクレオチドを与えるDNAポリヌクレオチド・セグメントのような任意の核酸を含む「組換え核酸構築物」に関係し;本発明のベクターおよび/または構築物で遺伝子的に操作される宿主細胞、および本発明のsiRNAポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび/または融合蛋白、または組換え技術によるそれらのフラグメントまたは変異体の産生に関係する。ここにRNAポリペプチドヌクレオチドとして開示されるsiRNA配列は、ここに開示されるものなど、十分確立された方法を使用して対応するDNA配列を産生するように設計される。こうして、例えば、あるDNAポリヌクレオチドは、ここ(配列リストを含む)に記載される任意のsiRNA配列から作られ、その際本発明のsiRNA配列が、対応するDNAポリヌクレオチド(およびそれらの相補体)も提供するとして認識される。したがってこれらのポリヌクレオチド類は、考慮される本発明の範囲内に含まれ、例えば、主題の発明の組換え核酸構築物(これからsiRNAが転写される)に組み込まれる。
【0066】
本発明により、ベクターはRNA分子の転写のための1つ以上のプロモータ、例えば、ヒトU6snRNAプロモータ(Miyagishi et al.,Nat.Biotechnol.20:497−500(2002);Lee et al.,Nat.Biotechnol.20:500−505(2002);Paul et al.,Nat.Biotechnol.20:505−508(2002);Grabarek et al.,Bio/techniques 34:73544(2003)などを参照;Sui et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:5515−20(2002)も参照されたい)。siRNAポリヌクレオチドの各鎖は分離したプロモータの方向で各別々に転写され、その後細胞内でハイブリッド化してsiRNAポリヌクレオチド二本鎖を形成する。各鎖は別々のベクターから転写されてもよい(Lee et al.,同上)。あるいは、PTP1B配列に特異的なセンスまたはアンチセンス配列が単一プロモータのコントロール下、siRNAポリヌクレオチドがヘアピン分子を形成するように転写される(Paul et al.,同上)。このような一例において、siRNA特異的配列の相補的鎖は少なくとも4個のヌクレオチドを含むが、ここに記載のように少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、94 18ヌクレオチドまたはそれより多いヌクレオチドを含むスペーサによって分離される。さらに、ヘアピンを形成するU6プロモータのコントロール下で転写したsiRNAは、転写終止シグナルとして機能する3’末端に約4個のウリジン伸長を有する(Miyagishi et al.,同上;Paul et al.,同上)。説明のために、標的配列が19ヌクレオチドであるならば、siRNAヘアピンポリヌクレオチド(5’末端に始まる)は19ヌクレオチドセンス配列を有し、その後にスペーサが(19ヌクレオチドセンス配列の3’末端に隣接する2個のウリジン・ヌクレオチドとして)続き、そのスペーサは19ヌクレオチドアンチセンス配列に結合し、その後に4−ウリジン・ターミネータ配列が続き、それはオーバーハングとなる。このようなオーバーハングを有するsiRNAポリヌクレオチドは標的ポリペプチドの発現を効果的に干渉する(id)。組換え構築物も、siRNAポリヌクレオチド特異的配列に作動可能に結合するまた別のRNAポリメラーゼIIIプロモータ、H1 RNAプロモータ、を使用して作られる。上記siRNAポリメラーゼ特異的配列はsiRNA特異的配列を含むヘアピン構造の転写にまたはsiRNA二本鎖ポリヌクレオチドの各鎖の別々の転写に使用される(Brummelkamp et al.,Science 296:550−53(2002);Paddison et al.,同上などを参照されたい)。siRNAポリヌクレオチドの転写のための配列の挿入に有用なDNAベクター類には、pSUPERベクター(Brummelkamp et al.,同上,参照);pCWRSVNから誘導れるpAVベクター(Paul et al.,同上,参照);およびpIND(Lee et al.,同上 参照)などがある。
【0067】
PTP1Bポリペプチドは適切なプロモータの制御下で哺乳動物細胞、酵母、細菌またはその他の細胞に発現することができ、ここに記載のようなポリペプチド発現を干渉できるsiRNAポリヌクレオチドを確認するための容易に使える系をもたらす。原核および真核宿主において使用するための適切なクローニングおよび発現ベクターは例えば、 Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Thied Edition Cold Spring Harbor,New York,(2001)に記載されている。
【0068】
概して、本発明の組換え核酸構築物またはベクター類の構築に使用するための組換え発現ベクターは、宿主細胞の形質転換を可能にする複製開始点および選択可能マーカーを含む:例えば、大腸菌のアンピシリン耐性遺伝子および S.cerevisiae TRP1遺伝子、および下流の構造配列(siRNAポリヌクレオチド配列など)の転写に向ける高度に発現した遺伝子から誘導されるプロモータを含む。このようなプロモータは、3−ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、α−因子、酸性ホスファターゼ、または熱ショックタンパク質などの糖分解酵素をコードするオペロンから誘導できる。PTPポリペプチド発現(PTP融合タンパク質および基質トラッピング突然変異体PTPを含む)のために、および対象のその他のポリペプチドのその他の発現のために、翻訳開始配列および翻訳終止配列を有する適切な相に非相同性構造配列が組み立てられる。任意に上記の非相同性配列は、所望の特徴、例えば、発現した組換え産物の安定化または簡単な精製などを与えるN−末端識別ペプチドを含む融合タンパク質をコードすることができる。
【0069】
細菌を使用するための有用な発現構築物は、発現ベクターに、所望のsiRNAポリヌクレオチドをコードする構造DNA配列を、例えば、機能的プロモータと作動可能に結合した適切な転写開始および転写終止シグナルと共に挿入することによって構成される。その構築物は1つ以上の表現型選択可能マーカーおよび複製開始点を含み、ベクター構築物を確実に維持し、所望ならばその宿主内で増幅することができる。形質転換のための適した原核生物宿主としては、大腸菌、枯草菌(Bacillus subtilis)、マウスチフス菌(Salmonella typhimurium)およびシュードモナス属の種々の種、およびブドウ球菌(Staphylococcus)がある、ただしその他のものもすぐれた材料として使用できる。その他の任意のプラスミドまたはベクターも、宿主内で複製でき、生育可能である限り、使用できる。
【0070】
代表的な、だが非制限的な例として、細菌使用のための有用な発現ベクターは、公知のクローニングベクターpBR322(ATCC37017)の遺伝因子類を含む市販のプラスミドから誘導される選択可能マーカーおよび細菌性複製開始点を含むことができる。このような市販のベクターは例えば、pKK223−3(ファルマシア・ファイン・ケミカル(Pharmacia Fine Chemicals),アプザラ,スエーデン)およびGEM1(プロメガ・バイオテック,マジソン,ウィスコンシン、USA)を含む。これらのpBR322の「主鎖」部分を適切なプロモータと結合させ、構造配列を発現させる。
【0071】
適切な宿主系を形質転換し、宿主系を適切な細胞密度に増殖させた後、選択されるプロモータがここに記載される調節プロモータである場合は、その選択されたプロモータを適切な手段(例えば、温度シフトまたは化学的誘発)によって誘導し、細胞を追加的期間培養する。通常は、細胞を遠心分離によって採取し、物理的または化学的手段によって破壊し、生成した粗抽出物を保存してその後精製する。タンパク質の発現に使用する微生物細胞は任意の便利な方法、例えば、凍結−融解循環、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用によって破壊する;このような方法は当業者には公知である。
【0072】
例えば、ここに記載の本発明の核酸(例えば、DNA配列であって、これからsiRNAが転写されるというDNA配列)は、ここに記載の組換え核酸構築物としての種々の発現ベクター構築物のいずれにも含まれる。このようなベクターおよび構築物には、染色体性、非染色体性および合成DNA配列、例えば、SV40の誘導体類;細菌性プラスミド;ファージDNA;バキュロウィルス;酵母プラスミド;プラスミドと、ワクシニア、アデノウィルス、鶏痘ウィルスおよびシュードラビーなどファージDNA、ウィルスDNAとの組合わせから誘導されるベクターがある。しかしその他の任意のベクターも、それが宿主内で複製でき、生育可能である限り、組換え核酸構築物の作製のために使用できる。
適切なDNA配列(類)を種々の操作法によってベクターに挿入することができる。概して、DNA配列は適切な制限酵素部位に、当業者に公知の方法によって挿入される。DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限酵素などを含む酵素的反応のための、クローニング、DNA分離、増幅および精製の標準的技術、および種々の分離法は当業者には公知であり、当業者によって一般的に使用される。つぎのような多数の標準的技術が報告されている;Ausubel et al.(1993 Current Protocols in Molecular Biology,Green Publ.Assoc.Inc.& John Wiley & Sons,Inc.,Boston,MA); Sambrook,et al.(2001 Molecular Cloning,Thied Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,New York);Maniatis et al.,(1982 Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,New York);など。
【0073】
発現ベクターにおけるDNA配列は少なくとも1つの適切な発現制御配列(例えば、プロモータまたは調節されたプロモータ)に操作可能に連結し、mRNA合成に向かう。このような発現制御配列の代表的例は、LTRまたはSV40プロモータ、大腸菌lacまたはtrp、ファージラムダ Pプロモータおよび、原核または真核細胞またはそれらのウィルスにおける遺伝子の発現を制御することが知られているその他のプロモータ類などである。プロモータ領域はCAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベクターまたは選択可能マーカーを有するその他のベクターを使用して任意の所望遺伝子から選択できる。2つの適切なベクターはpKK232−8およびpCM7である。特に有名な細菌性プロモータには、lacI、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダP、Pおよびtrpなどがある。真核細胞プロモータはCMV最初期プロモータHSVチミジンキナーゼ、初期および後期SV40、レトロウィルスからのLTRs、およびマウスメタロチオネイン−Iなどがある。適切なベクターおよびプロモータの選択は当業者のレベルの範囲内であり、PTP1Bポリペプチドをコードする核酸に作動可能に結合する少なくとも1つのプロモータまたは調節されたプロモータを含む特に好ましい組換え発現構築物の製法がここに記載される。
【0074】
上記のように、ある実施形態において、ベクターはレトロウィルスベクターのようなウィルスベクターでよい。例えば、レトロウィルスプラスミドベクター類を誘導できるレトロウィルスは、非制限的に、モロニーのマウス白血病ウィルス、脾臓壊死ウィルス、次のようなレトロウィルス類;ラウス肉腫ウィルス、ハーベイ肉腫ウィルス、トリ白血病ウィルス、ギボンサル白血病ウィルス、ヒト免疫不全ウィルス、アデノウィルス、骨髄増殖性肉腫ウィルス、および乳癌ウィルスなどである。
【0075】
ウィルスベクターは1つ以上のプロモータを含む。使用できる適切なプロモータは、非制限的に、レトロウィルスLTR;SV40プロモータ;および Miller,et al.,Biotechniques7:980−990(1989)に記載されるヒトサイトメガロウィルス(CMV)プロモータ、またはその他の任意のプロモータ(例えば、非制限的にヒストン、ポルIII、およびβ−アクチンプロモータなどの真核細胞性プロモータ)を含む。その他の使用できるウィルスプロモータには、非制限的に、アデノウィルスプロモータ類、チミジンキナーゼ(TK)プロモータ類、およびB19パルボウィルスプロモータ類がある。適切なプロモータの選択は、ここに含まれる教示から当業者には理解でき、調節されたプロモータ類または上記のプロモータ類の中から選択される。
【0076】
レトロウィルスプラスミドベクターを用いてパッケージング細胞系を形質転換し、プロデューサ細胞系を形成する。トランスフェクトされるパッケージング細胞の例は非制限的に、PE501、PA317、ψ−2、ψ−AM、PA12、T19−14X、VT−19−17−H2、ψCRE、ψCRIP、GP+E−86、GP+envAM12、およびMiller,Human Gene Therapy,1:5−14(1990)(これは参考としてそのまま本明細書に組み込まれる)に記載されるDAN細胞系などがある。ベクターは当業者に公知の任意の手段によってパッケージング細胞を形質転換する。このような手段には、非制限的に、エレクトロポレーション、リポソームの使用およびリン酸カルシウム沈殿などがある。これらに代わる一つの方法において、レトロウィルスプラスミドベクターはリポソームに封入され、または脂質に結合し、その後宿主に投与される。
【0077】
プロデューサ細胞系はPTP1Bポリペプチドおよびその変異体および融合タンパク質をコードする核酸配列(類)を含む感染性レトロウィルスベクター粒子を生成する。このようなレトロウィルスベクター粒子をその後使用してインビトロまたはインビボで真核細胞を形質転換する。形質転換された真核細胞は、ポリペプチドまたは融合タンパク質の発現を特異的に干渉することができるsiRNAポリヌクレオチドをコードする核酸配列(類)を発現する。形質転換される真核細胞は、非制限的に、胚幹細胞、胚性癌細胞、ならびに造血幹細胞、肝細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、ケラチノサイト、内皮細胞、気管上皮細胞および種々の損他の培養適応細胞系を含む。
【0078】
また別の局面において、本発明は上記の組換えPTP1B発現構築物を含む宿主細胞に関連する。宿主細胞は一般的には本発明のベクターおよび/または発現構築物、例えば、クローニングベクター、シャトルベクターまたは発現構築物などで遺伝子的に操作(形質導入、形質転換まはトランスフェクト)される。ベクターまたは構築物は、例えば、プラスミド、ウィルス粒子、ファージなどである。操作された宿主細胞は、プロモータ類、選択トランスフォーマントまたは増幅する特定の遺伝子、例えば、siRNAポリヌクレオチド類をコードする遺伝子またはその融合タンパク質などを適切に活性化するように改変された一般的栄養培地に培養できる。発現のために選択された特定の宿主細胞の培養条件、例えば、温度、pHなどは、当業者は容易に理解する。
【0079】
宿主細胞は哺乳動物細胞のような比較的高等な真核細胞、または酵母細胞のような比較的低級の真核細胞でよく、または宿主細胞は細菌細胞のような原核細胞でよい。本発明による適切な宿主細胞の代表的例には、非制限的に、大腸菌、ストレプトマイセス属、マウスチフス菌などの細菌細胞;酵母などの真菌細胞;DrosophilaS2およびスポドプテラSf9などの昆虫細胞;CHO、COSまたは293細胞などの動物細胞;アデノウィルス;植物細胞、またはインビトロ増幅にすでに適応した、または新たに確立された任意の適切な細胞が含まれる。適切な宿主の選択はここに示す教示により、当業者の範囲内であるようにみえる。
【0080】
本発明の組換え核酸構築物からsiRNAポリヌクレオチドを産生するために、種々の哺乳動物細胞培養系も使用できる。したがって本発明は一部には、PTP1Bポリペプチドに特異的なsiRNAポリヌクレオチドをコードする核酸配列に作動可能に結合した少なくとも1つのプロモータを含む組換え核酸構築物を含む宿主細胞を培養することによって、siRNAポリヌクレオチドを生産する方法に関係する。幾つかの実施形態において、プロモータは、ここに示すような調節されたプロモータ、例えば、テトラサイクリン抑制性プロモータである。幾つかの実施形態において、組換え発現構築物はここに提供されるような組換えウィルス発現構築物である。哺乳動物発現系の例には、Gluzman,Cell 23:175(1981)が報告したサル腎臓線維芽細胞のCOS−7系、および適合するベクター、例えば、C127細胞系、3T3細胞系、CHO細胞系、HeLa細胞系、HEK細胞系およびBHK細胞系などを発現し得るその他の細胞系が含まれる。哺乳動物発現ベクターは複製開始点、適切なプロモータ、エンハンサを含み、組換えsiRNAポリヌクレオチド構築物の作製に関して本明細書に記載されるような任意の必要なリボソーム結合部位、ポリアデニレーション部位、スプライスのドナーおよびアクセプタ部位、転写終止配列、5’フランキング非転写配列なども含む。SV40スプライスから誘導されるDNA配列、およびポリアデニレーション部位を用いて必要な非転写性遺伝因子を提供できる。上記構築物の宿主細胞への導入は当業者には公知の種々の方法、例えば、非制限的に、カチオン性リポソームを含むリポソーム類、リン酸カルシウム・トランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、またはエレクトロポレーション(Davis et al.,1986 Basic Methods in Molecular Biology)、またはその他の適切な技術がある。
【0081】
発現した組換えsiRNAポリヌクレオチドは完全宿主細胞;完全細胞小器官、例えば、細胞膜、細胞内小胞またはその他の細胞小器官;または破壊された細胞調製物、例えば、非制限的に、細胞ホモジネートまたは溶解物、ミクロソーム、単層および多重層膜小胞またはその他の調製物において有用である。あるいは、発現した組換えsiRNAポリヌクレオチドは、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィ、ホスホセルロースクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレシチンクロマトグラフィを含む方法によって、組換え細胞培養物から回収され精製される。細胞に高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)を最終的精製工程に使用することができる。
【0082】
(サンプル)
本発明により、ここに示されるようなPTP1Bポリペプチドの発現を干渉する方法が提供される。PTP1Bポリペプチドの発現を干渉する方法であって、siRNAポリヌクレオチドを、一般的には生物学的サンプルまたは対象または生物学的ソースにPTP1Bを発現できる細胞と接触させることを含んでなる方法も提供される。ここで使用する用語「サンプル」はPTP1Bを含む生物学的サンプルであり、対象または生物学的ソースから血液サンプル、生検標本、組織外植体、器官培養物、任意のその他の組織または細胞調製物を得ることによって提供される。サンプルはさらに形態学的一体性または物理的状態が例えば、切開、解離、溶解、フラグメント化、ホモゲナイゼーション、生化学的または化学的抽出、粉末化、凍結乾燥、超音波法または、対象または生物学的ソースから誘導されるサンプルをプロセッシングするためのその他の任意の手段によって破壊された、組織または細胞調製物を言う。ある好ましい実施形態において、サンプルは、少なくとも1つのPTP1Bポリペプチドを含む細胞であり、ある特に好ましい実施形態において上記細胞は誘導性生物学的シグナル伝達経路を含み、少なくともその1つのコンポーネントはPTP1Bである。特に好ましい実施形態において、細胞は哺乳動物細胞、例えば、Rat−1線維芽細胞、COS細胞、CHO細胞、HEK−293細胞、HepG2、HII4E−C3、L6、および3T3−L1、またはその他の公知のモデル細胞系(それらはアメリカ培養コレクション(ATCC、マナサス、VA)から入手できる)である。その他の好ましい実施形態において、細胞系はPTP1Bノックアウト動物から誘導され、それにヒトインスリンレセプター(HIR)、例えば、1BKOマウス胚線維芽細胞がトランスフェクトされる。
【0083】
対象または生物学的ソースはヒトまたは非ヒト動物、一次細胞培養物または培養に適応した細胞系、例えば、非制限的に、染色体に組み込まれたまたはエピソームの組換え核酸配列、固定されたまたは固定可能の細胞系、体細胞ハイブリッド細胞系、分化したまたは分化可能の細胞系、形質転換された細胞系などを含む遺伝的に設計された細胞系である。任意に、ある状況においては、生物学的サンプル中の細胞を過酸化水素および/または、反応性酸素種(ROS)発生を直接または間接に促進するその他の作用物質、ここに記載される生物学的刺激などで処理することが好ましく;あるその他の状況では生物学的サンプル中の細胞を、N−アセチルシステイン(NAC)またはスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)などのROS掃去剤、または当業者に公知のその他のROS掃去剤で処理することが好ましい;その他の状況において細胞性グルタチオン(GSH)は、細胞をL−ブチオニン−SR−スルホキシミン(Bso)で処理することによって除去される;またその他の環境においては、細胞をペルバナデートで処理し、サンプル中のチロシンリン酸化タンパク質を豊富にする。サンプル中のチロシンリン酸化タンパク質を増加させるために、タンパク質チロシンキナーゼをコードする少なくとも一つの遺伝子をトランスフェクトした細胞系である対象または生物学的ソースを使用するなど、その他の手段も利用できる。
【0084】
それに加えて、またはその他に、生物学的シグナル伝達経路は、このような細胞と、研究下のシグナル伝達経路に依って種々様々である公知または未知の適切な刺激とを接触させることによって誘導される。例えば、誘導された際にタンパク質チロシンリン酸化および/またはタンパク質チロシン脱リン酸化を起こすシグナル伝達経路は、対象または生物学的ソースの細胞中で、タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)および/またはPTP活性を刺激することが当業者には知られている種々の方法および組成物のうちの1種類以上を使用して刺激される。これらの刺激としては非制限的に、細胞を、サイトカイン類、増殖因子類、ホルモン類、ペプチド類、低分子メディエータ類、細胞ストレッサ類(例えば、紫外線;温度シフト;浸透圧性ショック;ROS、またはそれらのソース、例えば、過酸化水素、スーパーオキシド、オゾンなど、またはROS産生を誘発しまたは促進する任意の作用物質(Halliwell and Gutteridge,Free Radicals in Biology and Medicine(第3版)1999 Oxford,UK);重金属類;アルコール)またはPTK媒介性タンパク質チロシンリン酸化および/またはPTP媒介性リンタンパク質チロシン脱リン酸化を誘導するその他の作用物質に曝露することをなどを含む。このような作用物質には、例えば、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−3)、インターフェロン(例えば、IFN−γ)、ヒト成長ホルモン、インスリン、上皮成長因子(EGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、顆粒球コロニー形成刺激因子(G−CSF)、顆粒球−巨核球コロニー形成刺激因子(GM−CSF)、変換増殖因子(TGF−β1など)、腫瘍壊死因子(TGF−αなど)および線維芽細胞成長因子(FGF;例えば、塩基性FGF(bFGF))、抗原を認識するT細胞レセプターを介してT−リンパ球活性化をトリガーできる任意の作用物質またはこれら作用物質の組み合わせ(TCR;TCR誘導性作用物質にはスーパー抗原類、特に組換え香華および/またはMHC由来ペプチド類、MHCペプチドテトラマー類(Altman et al.,1996 Science 274:94−96);TCR特異的抗体類またはそのフラグメント類または誘導体類)、レクチン(PHA、PWM、ConAなど)、マイトジェン、G−タンパク質結合レセプターアゴニスト、例えば、アンギオテンシン−2、トロンビン、チロトロピン、副甲状腺ホルモン、リゾホスファチジン酸(LPA)、スフィンゴシン−1−リン酸、セロトニン、エンドセリン、アセチルコリン、血小板活性化因子(PAF)またはブラジキニン、ならびに当業者に公知のその他の作用物質(Rhee et al.,[online]10 October 2000 Science’s stke,Internet:URL<www.stke.org/cgl/content/full/ OC_sigtrans;2000/53/pel>、およびその中に記載の参考文献を参照)などがある。
【0085】
上記のように、調節されたチロシンリン酸化は生物学的シグナル導入のための特異的経路、例えば、細胞分裂、細胞生存、アポトーシス、増殖および分化などに関係する経路に貢献し、本発明に関連する「誘導性シグナル伝達経路」は細胞内のこれらおよび類似のプロセスの制御に関係する一過性または安定的関係または相互作用を含む。対象とする特定経路に依って、このような経路の誘導を決定する適切なパラメーターを選択することができる。例えば、細胞増殖に関連するシグナル伝達経路については、増殖、例えば、トリチウム化チミジンの細胞性DNAへの挿入、細胞性呼吸活性の検出可能指標のモニター(MTTアッセイなど)または細胞計数など、種々の公知の方法を使用できる。同様に、細胞生物学分野では細胞生存の評価(例えば、生体色素、代謝インジケータなど)およびアポトーシスの測定(例えば、アネキシンV結合、DNAフラグメンテーション・アッセイ、カスパス活性化、PARP切断など)のための多数の方法が知られている。その他のシグナル伝達経路は特定の細胞表現型と関係している、たとえば遺伝子発現の特異的誘導(転写産物または翻訳生成物とて、またはこのような生成物のバイオアッセイによって、または細胞形質因子の核内局所化として検出できるような)、細胞内メディエータ(活性化キナーゼまたはホスファターゼ、または環状ヌクレオチドまたは生理学的活性イオン種など)の変化した(例えば、統計的有意な増加または減少)レベル、変化した細胞周期プロフィール、または変化した細胞形態などと関係し、ここに示されるような特殊な刺激に対する細胞性反応性が容易に確認され、特定の細胞が誘導性シグナル伝達経路を含むかどうかを決定できる。
【0086】
好ましい実施形態において、PTP1B基質は、PTP1Bに特異的に結合しおよび/またはPTP1Bによって脱リン酸化される、天然にまたは非天然に発生する任意のリン酸化ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である。
【0087】
本発明に使用するための、ここに示されるようなPTP1B基質の確認および選択は当業者が熟知する方法によって行ってもよいし、例えば、WO00/75339、米国特許出願第09/334575号または米国特許出願第10/366547号およびこれらの記載されている参考文献の開示によって行ってもよい。リン酸化タンパク質/PTP複合体は例えば、米国特許第5352660号に記載されている一般的分離法、例えば、塩折、クロマトグラフィ、電気泳動、ゲル濾過、分画化、吸収、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、凝集反応、それらの組み合わせまたはその他の方法によって分離できる。公知のPTP1B基質は、分子生物学および/またはペプチド合成の原理を利用する公知の方法によって作成することもできる(Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Green Publ.Assoc.Inc.& John Wiley & Sonse,Inc.,Boston,MA(1993); Sambrook,et al.Molecular Cloning,Thied Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Plainview,NY(2001);Fox,Molec.Biotechnol.3:249(1995);Maeji et al.,Pept.Res.8:33(1995)など)。
【0088】
したがって、本発明のPTP1B基質ペプチド類は、当業者に公知のチロシンリン酸化PTP1B基質配列に一致するかまたは類似のアミノ酸配列を有するここに示すようなPTP1B基質タンパク質、ポリペプチドおよびペプチドから誘導される。例えば、説明のために、そして非制限的に、上に参照される公知のPTP1B基質タンパク質は本発明による使用のためには、ここに記される参考文献および実施例に記載されるポリペプチド類に、およびここに開示されるその種のポリペプチドの部分に、少なくとも70%の類似性(好ましくは70%同一性)、より好ましくは80%の類似性(より好ましくは80%同一性)、より好ましくは90%の類似性(より好ましくは90%同一性)およびさらにより好ましくは95%の類似性(さらに好ましくは95%同一性)を有するペプチド類と考えられる。当業者には公知のように、2つのポリペプチド間の「類似性」は、ポリペプチドのアミノ酸配列およびその保存されたアミノ酸置換基を、第二のポリペプチドの配列と比較する(例えば、GENEWORKS、AlignアルゴリズムまたはBLASTアルゴリズム、またはこの他の上記のアルゴリズムを使用)ことによって決定される。
【0089】
本発明のいくつかの好ましい実施形態において、siRNAポリヌクレオチドおよび/またはPTP1B基質は検出可能に標識化され、特に好ましい実施形態においてはsiRNAポリヌクレオチドおよび/またはPTP基質は放射性または蛍光シグナルを発生することができる。siRNAポリヌクレオチドおよび/またはPTP基質は適切なレポーター分子または部分、例えば、32Pのような放射性核種(Pestka et al.,1999 Protein Expr.Purif.17:203−14)、ヨウ素[125Iまたは131I]のようなラジオハロゲン(Wilbur,1992 Bioconjug.Chem.3:433−70)またはトリチウム[H];酵素;または当業者に公知の、本開示に基づいて使用される特定の蛍光検出法によって選択される種々の発光材料(例えば、化学発光材料)または蛍光材料(例えば、フルオロファオ)など、に共有または非共有結合することによって検出可能に標識化される。ここに示されるsiRNAポリヌクレオチドおよび/またはPTP基質を標識化するための蛍光レポーター部分および方法は、例えば、 Haugland(1996 Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals−Sixth Ed.Molecular Probes,Eugene,OR;1999 Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals− Seventh Ed.Molecular Probes,Eugene,OR.[Internet]<:http:/www.probes.com/lit/>)およびここに記載の参考文献に見いだされる。本発明の方法におけるフルオロファオなどとして使用するのに特に好ましいのはフルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、アレキサフルオル−594(AlexaFluor−594)、アレキサフルオル−488、オレゴングリーン、BODIPY−FL、ウンベリフェロン、ジクロロトリアジニルアミン・フルオレセイン、ダンシルクロリド、フィコエリスリンまたはCy−5である。適切な酵素の例は、非制限的に、ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ、ビオチン、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼおよびアセチルコリンエステラーゼなどである。適切な発光材料はルミノールなどであり、適切な放射性材料は放射性燐[32P]などである。本発明のその他の幾つかの好ましい実施形態において、検出可能に標識化されたsiRNAポリヌクレオチドは、磁気粒子、例えば、常磁性または反磁性粒子またはその他の磁気粒子または当業者に公知で、目的の用途に適したその他のもの(好ましくはマイクロ粒子)などを含む。理論によって束縛されるものではないが、幾つかのこのような実施形態において、磁気粒子を含むsiRNAポリヌクレオチドに結合し、吸着し、吸収され、内包され、またはその他の方法によって結合した細胞を選択する方法が提供される。例えば、1つ以上のPTP1B−特異的SiRNAポリヌクレオチド磁気粒子共役体を含む細胞の集団またはサブ集団の選択的分離はその後のPTPシグナル伝達経路の特徴づけまたは調節にある利益を与える。
【0090】
本発明の幾つかの実施形態において、対象とする特殊なPTP1B−特異的siRNAポリヌクレオチドは、候補siRNAポリヌクレオチドと、PTP1B遺伝子を含み、PTB1B遺伝子の転写または発現を可能にすることができる細胞を含むサンプルとを、PTB1B転写または発現(例えば、翻訳)を検出するのに十分な条件下で十分な時間接触させ、PTB1B転写レベル、PTB1Bポリペプチド発現および/またはPTB1B機能的発現(例えば、PTB1B触媒活性)を候補siRNAポリヌクレオチドの不在下と存在下とで比較することによって確認される。PTB1B転写または発現がsiRNAポリヌクレオチドの存在下では減少するのが好ましい。それによってPTB1B活性を調節するPTP活性部位特異的アプローチの代わりとなる。(しかし本発明はこのように制限される必要はなく、siRNAの特異的標的となるもの以外のシグナル形質転換コンポーネントの転写および/または発現レベルが、あるPTB1B特異的siRNAポリヌクレオチドの存在下では増加するというその他の実施形態も考慮する。非制限的理論によれば、そのような増加はsiRNAの結果として誘導される細胞性代償(cellular compensatory)メカニズムに起因する)。
【0091】
PTB1Bを発現し、IR−βのようなインスリンレセプターを含む細胞では、siRNAポリヌクレオチドは、非制限的理論によると、PTB1B発現の干渉を介してPTB1Bレベルを低下させることによってインスリンレセプターのリン酸化の増加を起こす。インスリンレセプターリン酸化の測定法は当業者には公知であり(例えば、Cheatham et al.,1995 Endocr.Rev.16:117−142)、以下に詳細に説明される。細胞がインスリンレセプターを含むその他の幾つかの実施形態において、その他の種々の細胞インスリン反応は全て、非制限的に、糖取り込み(Elchebly et al.,1999 Science 283:1544;McGuire et al.,19991 Diabetes 40:939;Myerovitch et al.,1989 J.Clin.Invest.84:976;Sredy et al.,1995 Metabolisum 44:1074;WO99/46268);糖合成(Berger et al.,1998 Anal.Biochem.261:159)、Glut4の細胞膜への動員現象(Robinson et al.,1992 J.Cell.Biol.117:1181);肝転写事象、またはアミノ酸輸入(Hyde et al.,2002、J.Biol.Chem.277:13628−34(2002))などを含む技術的に確立された方法によってモニターできる。細胞がインスリンレセプターを含むその他の幾つかの実施形態において、モニターできる細胞性インスリン反応は、MAPキナーゼリン酸化、AKTリン酸化、およびインスリンレセプターの下流のその他のインスリン刺激リン酸化事象、例えば、P13キナーゼ、perk、pSTAT5およびIRS1など、およびホスホエノールピルベート・カルボキシキナーゼ転写(Forest et al.,1990 Molec.Endocrinol.4:1302)、ホスファチジルイノシトール三リン酸キナーゼ活性化(Endeman et al.,1990 J.Biol.Chem.265:396)、脂質生成(Moody et al.,1974 Horm.Metab.Res.6:12)、脂質分解(Hess et al.,1991 J.Cell.Biochem.45:374)、TYK2脱リン酸化およびJAK2(Genbank番号:NM_004972、AF058925、AF005216、NM_031514、およびNM_008261)脱リン酸化(Myers et al.,2001 J.Biol.Chem.276:47771)、インターフェロン刺激pSTAT1およびpSTAT3、およびEGFまたはPDGRFリン酸化(Ullrich et al.,1990 Cell 61:203)などである。それに加えてインスリンレセプターの例えば、位置tyr1162/tyr1163および位置tyr972などにおけるリン酸化は、tyr1162/tyr1163またはtyr972に部位特異的である抗ホスホチロシン抗体で検出することができる。
【0092】
PTP1B活性は、適切な基質の活性化に依って発現するレポーター遺伝子をトランスフェクトした全細胞においても測定できる。例えば、適切な細胞(すなわち、PTP1Bを発現することができ、PTP1Bポリペプチド発現を干渉できることが知られているかまたは予想されるPTP1B特異的siRNAポリヌクレオチドをトランスフェクトした細胞)にレポーター遺伝子に結合した基質依存性プロモータをトランスフェクトする。このような系において、前記レポーター遺伝子の発現(これは当業者に公知の方法を使用して容易に検出できる)は、基質の活性化に依存する。基質の脱リン酸化はレポーター活性の減少に基づいて検出される。PTP1Bに特異的な候補siRNAポリヌクレオチドをこのような系に加えて、PTP1B活性に対するそれらの効果を評価することができる。
【0093】
その他の局面において、本発明は動物モデルを提供する:その際動物は、適切なPTP1B特異的siRNAポリヌクレオチドを例えば、導入遺伝子として導入することによって、機能的PTP1Bを発現しない(または有意に減少した量を発現する)。このような動物は、例えば、標準的相同組換え技術によって、または別の方法として例えば、適したプロモータ(例えば、偏在するか、または組織特異的なプロモータ)によって調節されるsiRNAコーディング配列を含むプラスミドを卵母細胞にマイクロインジェクションし、その後代理母に移植するという方法によってつくられる。この方法によって作られた動物モデルを使用してPTPシグナル伝達経路のコンポーネント類および調節物質類の活性をインビボで研究することができる。
【0094】
(治療法)
PTP1Bポリペプチドの発現を干渉し、上記の方法によって確認される1種類以上のsiRNAポリヌクレオチドを、患者のPTP1B活性を調節(例えば、抑制または増強)するために使用することができる。ここに使用する用語「患者」はヒトを含む任意の哺乳動物であり、上記「患者」は不都合なPTP1B活性に関連する病気にかかっているものでも、疾患が検出されないものでもよい。よって、治療は存在する病気の治療でも、予防的治療でもよい。シグナル導入および/またはPTP1B活性と関係する病気としては、細胞増殖に関連する任意の病気、例えば、癌、移植片対宿主疾患(GVHD)、自己免疫病、アレルギーまたは、非調節PTP1B活性が関係しているその他の病気などがある。
【0095】
患者に投与するためには、1種類以上の特異的siRNAポリヌクレオチドを、そのまま単独で、または化学的修飾またはリボース除去を加え、または加えずに、またはここに記載のような適切なベクター(例えば、DNA配列を含むベクターであって、そのDNA配列から特異的siRNAを転写できる上記ベクター)に組み込んで、薬学的組成物として処方するのが普通である。薬学的組成物は滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液または乳濁液でよく、追加的に、生理的に容認できる担体(すなわち、活性成分の活性を阻害しない無毒性物質)を含む。このような組成物は固体、液体またはガス(エアロゾル)の形でよい。あるいは、本発明の組成物は凍結乾燥物として処方されてもよく、化合物類を公知の技術によってリポソームに封入することもできる。本発明の範囲内の薬学的組成物は生物学的に活性または不活性のその他の成分も含むことができる。そのような成分には非制限的に、緩衝剤(例えば、中性緩衝食塩液またはリン酸緩衝食塩液)、炭水化物類(グルコース、マンノースまたはデキストラン類)、マンニット、タンパク質類、ポリペプチド類または、グリシンのようなアミノ酸類、抗酸化剤、EDTAまたはグルタチオンのようなキレート化剤、安定剤、色素、芳香剤および懸濁剤および/または保存料などがある。
【0096】
当業者に公知の任意の適切な担体を本発明の薬学的組成物に使用することができる。治療的使用のための担体は公知であり、例えば、 Remingtons Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro ed.1985)に記載されている。概して、担体の種類は投与法によって選択される。薬学的組成物は任意の適切な投与法、例えば、局所的、経口的、鼻孔内、髄腔内、直腸内、膣内、舌下または、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、腔内、道内または尿道内注射または注入のような非経口投与のために処方される。非経口投与では担体は好ましくは、水、食塩液、アルコール、脂肪、ワックスまたは緩衝液などである。経口投与では、上記の担体のいずれかまたは固体担体、例えば、マンニット、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、カオリン、グリセリン、デキストリン澱粉、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、グルコース、スクロースおよび/または炭酸マグネシウムなどが使用される。
【0097】
薬学的組成物(例えば、経口投与または注射による送達などのための)は液体の形でもよい(例えば、エリキシル、シロップ、溶液、乳濁液または懸濁液など)。液体薬学的組成物は例えば、下記の1種類以上を含むことができる:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩液、好ましくは生理的食塩液、リンゲル溶液、等張塩化ナトリウム、溶媒または懸濁媒質として働く合成モノ−またはジグリセリドのような固定油、ポリエチレングリコール類、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の溶媒類;ベンジルグリコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤;酢酸化合物、クエン酸化合物またはリン酸化合物などの緩衝剤および毒性を調節するために塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの作用物質類。非経口製剤はガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または多数回投与用バイアルに封入することができる。生理的食塩液の使用が好ましく、注射用薬学的組成物は無菌であるのが好ましい。
【0098】
ここに記載される組成物は持続的放出のために処方することができる(すなわち、投与後化合物が徐々に放出されるカプセルまたはスポンジとしての組成物)。このような組成物は概して公知の技術によって調製され、例えば、経口的、経腸的または皮下移植によって、または所望標的部位に移植することによって投与される。徐放性組成物は担体基質に分散した作用物質および/または速度調節膜によって包囲された貯蔵器内に含まれた作用物質を含むことができる。このような組成物内に使用する担体は生体適合性であり、生体内分解性でもよい;活性成分放出度が比較的一定である組成物が好ましい。徐放性組成物内に含まれる活性化合物の量は移植部位、放出速度および期待持続時間、および治療または予防すべき病気の性質に依存する。
【0099】
薬学的組成物のなかで、本明細書に記載のようなポリペプチド特異的siRNAポリヌクレオチドを含む治療薬(またはsiRNAポリヌクレオチドをコードする組換え核酸構築物など)を種々の化合物のいずれかに結合させる。例えば、そのような作用物質を、その作用物質の標的部位への送達を容易にする標的化部分(モノクローナルまたはポリクローナル抗体、タンパク質またはリポソーム)に結合する。ここに使用する用語「標的化部分」とは、ある作用物質に結合して標的細胞または標的組織へのその作用物質の運搬を高め、それによってその作用物質の局所的濃度を高める任意の物質(化合物または細胞など)である。標的化部分は抗体類またはそれらのフラグメント、レセプター、リガンドおよび標的組織の細胞、または標的細胞近くの細胞に結合するその他の分子を含む。抗体標的化剤は完全(全)分子、そのフラグメント、またはその機能的同等物でよい。抗体フラグメントの例はF(ab’)、Fab’、FabおよびF[v]フラグメントであり、それらは一般的方法または遺伝子工学またはタンパク質工学によって作ることができる。結合は一般的に共有結合であり、例えば、直接縮合またはその他の反応によって、または二−または多官能価リンカーによって形成される。標的化部分は、作用物質が治療効果をあらわすと予測される細胞(類)または組織(類)に基づいて選択される。
【0100】
薬学的組成物は治療(または予防)すべき疾患に適するやり方で投与される。適切な投与量および適切な持続時間および投与頻度は、患者の状態、患者の疾患の種類および重症度、活性成分の特定の型および投与法などの諸要因によって決定される。一般に、適切な投与量および適切な治療法では、治療および/または予防効果(完全−または部分的軽快の頻度の増加、またはより長い無病状態および/または生存、または症状の緩和など、臨床的結果が改善される)をもたらす十分な量の作用物質(類)が提供される。予防的使用においては、用量は細胞増殖関連性疾患の発生を阻止し、遅らせ、またはその重症度を軽減するのに十分な量でなければならない。
【0101】
最適用量は実験モデルおよび/または臨床試験を用いて決定するのが普通である。概して、1用量に存在するsiRNAポリヌクレオチドの量または1用量中に存在するDNAによって現場で生成する(例えば、siRNAポリヌクレオチドを含む組換え核酸構築物から)siRNAポリヌクレオチドの量は宿主体重1kgあたり約0.01μgないし約100μg、典型的には約0.1μgないし約10μgの範囲である。一般には効果的治療をもたらす最小用量の使用が好ましい。患者は通常、治療または予防する病気に適した、当業者に公知のアッセイによって治療効果または予防効果をモニターされる。適切な用量サイズは患者のからだの大きさによって変動するが、一般的には体重10−60kgの動物では約10mLないし約500mLの範囲である。
【0102】
下記の実施例は説明のために記載されるもので、制限するためのものではない。
【実施例】
【0103】
(実施例1)
(特異的siRNAによるPTP1Bの干渉)
この実施例は配列特異的siRNAポリヌクレオチドをトランスフェクトした細胞におけるPTP−1B発現に与える効果を記載する。
【0104】
マウス線維芽細胞におけるマウスPTP1B内因性発現の、配列特異的なsiRNAポリヌクレオチドによる干渉
マウスPTP1Bポリペプチド(Genbank登録番号NM_011201、配列番号;_)をコードするマウスPTP1Bポリヌクレオチド(Genbank登録番号NM_011201、配列番号_)に特異的な3種類のsiRNA配列、およびヒトPTP1Bポリペプチド(Genbank登録番号NM_002827、配列番号_)をコードするヒトPTP1Bポリヌクレオチド(Genbank登録番号NM_002827、配列番号NM_)に特異的な1種類のsiRNA配列を下記のように設計した。2個のアデニン塩基(AA)が5’末端にフランクし、ほぼ1:1のA+T/G+C比を有する21−塩基配列のための標的cDNAのオープン・リーディング・フレームを先ず最初に走査することによって、各PTP1Bに特異的なsiRNAヌクレオチド配列を選んだ。A+T/G+C比が2:1または1:2より大きい21塩基配列は排除した。この基準に合う21−塩基配列が確認されなかった場合は、PTP1Bをコードするポリヌクレオチド配列から、5’末端に塩基CAを有する21塩基配列を探し出した。各21マーの特異性を、一般的データベースのBLAST検索を実施することによって確認した。21のうち少なくとも16の連続ヌクレオチドが標的配列以外のポリヌクレオチド配列と100%一致する配列はこの実験には使用しなかった。
【0105】
TCPTP分析のためのセンスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチド類を製造者(ダルマコン・リサーチ社、ラファイエット、CO)の標準プロトコルにしたがって合成した。この実施例およびその他の実施例に記載されるいくつかの実験のために、製造者は二本鎖siRNAポリヌクレオチドをゲル精製し、それをその後使用した。製造者が二本鎖siRNAを提供しなかった場合は、トランスフェクションの直前に、センスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチド類をアニーリング緩衝液(100mM酢酸カリウム、30mM HEPES−KOH、pH7.4、2mM酢酸マグネシウム)中で90℃で1分間、その後37℃で60分間インキュベートしてアニーリングすることによって二本鎖siRNAを作った。
【0106】
各実施例において、各siRNA配列はsiRNAポリヌクレオチドのセンス鎖およびその対応する配列識別名をあらわす。特に記載されていない限り、細胞にトランスフェクトされたsiRNAはセンス鎖およびその相補的アンチセンス鎖からなり、それらの鎖は二本鎖siRNAポリヌクレオチドを形成する。
【0107】
マウスC57B16#3細胞、クローン3および10を標準的細胞培養法によって細胞培養基に保持した。各C57B16#3クローンに200nMの下記siRNAをトランスフェクトした:mPTP1B.1(配列番号_)、mPTP1B.2(配列番号_)mPTP1B.3(配列番号_)およびhPTP1B.1(配列番号_)。各siRNAを50μlOPTIMEM(商標)に希釈して、最終濃度200nM/ウェルにした。別のチューブにおいて、リポフェクタミン(商標)3μlをOPTIMEM(商標)10μlと一緒にした。各溶液を7分間インキュベートした。それから2溶液を混合し、室温で22分間インキュベートした。混合溶液の最終容量を100μlに調節し、その後C57B16#3細胞を加えた。細胞に特異的siRNA、ヒトPTP1BsiRNA、またはアニーリング緩衝液のみをトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞をsiRNAと共に6日間インキュベートした。
【0108】
ELISA抽出緩衝液(50mMトリス−HCl、pH7.5(室温);2mM EDTA、pH7−8;1mMリン酸化合物(ポリリン酸);1mM NaVO4(モノマー)、pH10;0.1%トリトン X−100;プロテアーゼ・インヒビタ・カクテル・セットIII、(カルビオヘム、サンジエゴ、カリフォルニア、カタログ番号#539134))中に抽出することによって細胞溶解物を調製した。溶解物をSDS−PAGEゲルによって分離し、イムノブロットによって分析した。溶解物を遠心分離し、トランスフェクした各細胞培養物サンプルからの上澄液部分(10μl)を10μlのSDS−PAGE還元サンプル緩衝液と合一した。そのサンプルを5分間95℃で加熱しそれから14%トリス−グリシンSDS−PAGEゲル(インビトロゲン・ライフ・テクノロジース、カールスバド、CA、からのNOVEX(商標))に塗布した。電気泳動後、分離されたタンパク質を電気泳動によってゲルからイモビロン(Immobilon)−P ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(ミリポア社、ベドフォード、マサチューセッツ)に移した。PVDF膜をTBST(20mM トリスpH7.5、150mM NaCl、0.05%ツイーン−20)中5%ミルク中でブロックし;抗マウスPTP1Bモノクローナル抗体(Dr.Ben Neel、ハーバード大学、ケンブリッジ、マサチューセッツ)と共に室温で2−16時間インキュベートし;TBSTで3×10分間洗浄した;その後適切なホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)共役IgG(1:10,000)(アマーシャム・ビオサイエンシス社、ピスカタウェイ、ニュージャージー)と共に室温で30分間インキュベートした。結合は、製造者のインストラクション(アマーシャム・ビオサネンシス社、ピスカタウェイ、ニュージャージー)にしたがってECL化学発光試薬で検出された。図1に示すように、内因性PTP1Bの発現レベルは、マウスPTP1B配列特異的siRNAポリヌクレオチドをトランスフェクトしたC57B16細胞においてのみ減少した。
【0109】
第二のマウス細胞系においてマウスPTP1Bの内因性発現に対するRNAiの影響を調べた。ここに記載の方法によって、マウスPTP1B:3T3IR線維芽細胞に20nM mPTP1B1.1(配列番号_);mPTP1B1.6(配列番号_);およびmPTP1B1.8(配列番号_)をトランスフェクトした。mPTP1B1.1をトランスフェクトした細胞におけるマウスPTP1B発現レベルは、非特異的siRNA(hPTP1B1.3(配列番号_))をトランスフェクトした細胞に比較して約80%減少した;mPTP1B1.6をトランスフェクトした細胞は約40%減少し;mPTP1B1.8をトランスフェクトした細胞は約60%減少した。
【0110】
(同時トランスフェクション・アッセイにおけるsiRNAによるマウスPTP1B発現の干渉)
野生型マウスPTP1B(mPTP1B)(Genbank登録番号NM_011201、配列番号_および_)をコードする組換え発現構築物を作製した。下記のオリゴヌクレオチド・プライマー類を野生型構築物のために使用した。BamHIおよびEcoRI制限部位の配列には下線を引く。
mPTP1Bセンス(mPTP1B5’BamHI)
5’−GGGGGGGATCCATGGAGATGGAGAAGGAGTTCGAGG−3’(配列番号_)
mPTP1Bアンチセンス(mPTP1B3’EcoRI)
5’−GGGGGAATTCTCAGTGAAAACACACCCGGTAGCAC−3’(配列番号_)
ベクターpCMVTag2B(ストラタジーン社、ラジョラ、カリフォルニア)を制限酵素BamHI(ニューイングランド・ビオラボ、ビバリー、MA)で37℃で3時間消化した。消化したベクターをクレノー・ポリメラーゼ(ニューイングランド・ビオラボ社)と共に25℃で15分間インキュベートして、後退した(recessed)3’末端を満たし、その後コウシ腸ホスファターゼ(ニューイングランド・ビオラボ)と共に37℃で30分間インキュベートした。提供者のインストラクションにより、T4リガーゼ(インビトロゲン・ライフ・テクノロジース)を用いて16℃、一晩のリゲーションによって、ゲイトウエイ(商標)リーディング・フレーム・カセットB(インビトロゲン・ライフ・テクノロジース、カールスバド、カリフォルニア)をpCMVTag2Bベクターに挿入した。DB3.1(商標)コンピテント大腸菌細胞を結合したベクター(GWpCMVTag2)で形質転換し、標準的分子生物学的方法によってDNAを分離した。
mPTP1B野生型の発現のためのベクターを次のように構築した。20μl mPTP1BcDNAまたは20μlのpENTR3C(商標)ベクターを1μlのBamHI(ニューイングランド・ビオラボ);1μl EcoRI(ニューイングランド・ビオラボ);5μl 10X EcoRI緩衝液(ニューイングランド・ビオラボ);5μl 10 X BSA(ニューイングランド・ビオラボ);および18μl蒸留水で37℃で3時間消化することによって、mPTP1B構築物をゲイトウエイ(商標)エントリーベクターpENTR3C(商標)(インビトロゲン・ライフ・テクノロジース)にサブクローニングした。消化したDNAを1%アガロースゲル上を移動させ、消化したバンドを切り取り、キアゲン(QIAGEN)・ゲル抽出キット(キアゲン社、バレンシア、カリフォルニア)を使用してDNAをゲル精製した。1μlの10X リゲーション緩衝液(インビトロゲン・ライフ・テクノロジース)、1μl T4 DNAリガーゼ(4U/μl)(インビトロゲン、カールスバド、カリフォルニア)および2μlの蒸留水を用いて、4μlのmPTP1B cDNAを16℃で一晩、2μlのpENTR3C(商標)ベクターに結合させた。この構築物をライブラリー・エフィシェンシー(Library Efficiency)(商標)DH5α(商標)細胞に形質転換した。pENTR3C(商標)mPTP1B WT構築物をGWpCMVTag2ベクターにクローニングすることによって、フラグ(FLAG)(商標)エピトープ−タグつきmPTP1B構築物を作製した。mPTP1Bポリヌクレオチドを含むpENTR3C(商標)構築物を、VspI(プロメガ社、マジソン、ウィスコンシン)で37℃で2時間消化することによって線状にした。そのDNAをキアゲンPCR精製キット(キアゲン社)を用いて精製した。3μl(100ng/μl)のGWpCMVTag2ベクターをゲイトウエイ(商標)LR反応反応液中で、6μlの線状pENTR3C(商標)mPTP1B WT、3μlのTE緩衝液、4μlのクロナーゼ(商標)酵素、および4μlのLR反応緩衝液(インビトロゲン・ライフ・テクノロジース)と、室温で1時間一緒にした。この反応液に10分間プロテイナーゼK(インビトロゲン・ライフ・テクノロジース)を添加後、ライブラリー・エフィシエンシー(商標)DH5α(商標)細胞を発現構築物で形質転換した。
マウスPTP1B発現ベクター(0.5μg)を20nMマウスPTP1B配列特異的siRNAポリヌクレオチドと共に、PTP1Bノックアウトマウス線維芽細胞に同時トランスフェクトした(PTP1B KOマウス胚線維芽細胞をPTP1B.ノックアウトマウスからの13日胎児からつくり、細胞系を確立し、それにヒトインスリンレセプターをトランスフェクトした(1BKO+HIR)(HIR、ジュリーモイヤーズ、エリリリー社(Julie Moyers,Eli Lily and Company)、インディアナポリス、インディアナ))。細胞にsiRNAまたはアニーリング緩衝液のみをトランスフェクトした。各siRNAを250μl OPTIMEM(商標)低血清メジウム(ギプコ社)で希釈し、細胞濃度を20nMとした。別のチューブにおいて、リポフェクタミン(商標)2000(インビトロゲン・ライフ・テクノロジース、カールスバド、カリフォルニア)を250μl OPTIMEM(商標)と合一した。各溶液を7分間インキュベートした。2溶液を混合し、室温で22分間インキュベートした。混合溶液の最終容量を100μlに調節し、それから細胞を加えた。トランスフェクトした細胞を37℃で18時間インキュベートした後、細胞溶解物を調製し、4−12%SDS−PAGEによって分離し、抗−PTP1Bマウスモノクローナル抗体を使用してイムノブロットを行った(上記参照)。結果を表1にまとめる。下の各21mer配列は3’末端にジヌクレオチドの「オーバーハング」を含むこと、および、ここに記載の本発明の幾つかの好ましい実施形態は、5’末端から始まる19−merポリヌクレオチド配列ならびに表に示される21−merポリヌクレオチドを含むと考えなければならないことがわかる。
【0111】
(表1.同時トランスフェクション・アッセイにおけるsiRNAによるマウスPTP−1B発現の干渉)
【0112】
【表1−1】

【0113】
【表1−2】

【0114】
(同時トランスフェクション・アッセイにおけるsiRNAによるラットPTP1B発現の干渉)
同時トランスフェクション・アッセイを上記のように行った;この際1BKO+HIRマウス線維芽細胞にラットPTP1Bポリペプチド(配列番号_)(Genbank登録番号NM_012637)をコードする配列を含む発現ベクターおよび配列特異的siRNA、rPTP1B1.1(5’−agaagaaaaagagaugguctt−3’(配列番号_))(20nM)を同時トランスフェクトした。同時トランスフェクションアッセイで試験したその他のラットPTP1B特異的siRNAポリヌクレオチド類は、rPTP1B1.2(5’−cggaugguggguggagguctt−3’(配列番号_));rPTP1B1.3(5’−uggcaagugcaaggagcuctt−3’(配列番号_));およびrPTP1B1.4(5’−cuacaccaccuggccugactt−3’(配列番号_))を含む。ラットPTP1Bポリペプチドの発現レベルは、細胞溶解物を抗−ヒトPTP1B抗体(これもラットPTP1Bに特異的に結合する)(PHO2、オンコジーン・リサーチ・プロダクトTM社、サンジエゴ、カリフォルニア)と共にイムノブロッティングすることによって測定した。
【0115】
(同時トランスフェクション・アッセイにおけるsiRNAによるヒトPTP−1B発現の干渉)
ヒトPTP1Bコーディング配列を標準的分子生物学的方法によってPmtベクターにクローン化した(Flint et al.,EMBO J.12:1937−46(1993)を参照)。1BKO+HIR細胞にヒトPTP1B発現ベクターおよびヒトPTP−1B配列に特異的なsiRNAポリヌクレオチド(20nM)をリポフェクタミン2000を使用して一晩同時トランスフェクトした。細胞を上記のように溶解し、溶解物を4−12%SDS−PAGEによって分離し、PDVF膜上に移した。ヒトPTP−1Bの発現レベルを抗ヒトPTP−1B抗体(PHO2、オンコジーン・リサーチ・プロダクト(商標)社、サンジエゴ、カリフォルニア)と共にイムノブロッティングすることによって測定した。ヒトPTP1Bの発現の干渉が、表2に示すように4種類のsiRNAポリヌクレオチドで認められた。下に示す各21−mer配列が3’末端にジヌクレオチドの「オーバーハング」を含むことおよび本発明が5’−末端に始まる19−merポリヌクレオチド配列ならびに表に示す21−merポリヌクレオチドを含むと考えなければならないことが認められる。
【0116】
(表2.同時トランスフェクション・アッセイにおけるヒトPTP1B発現のsiRNA干渉)
【0117】
【表2】

【0118】
(siRNAによるヒトPTP1Bの内因性発現の干渉)
ヒトPTP1Bの内因性発現に与える配列特異的siRNAの影響を2種類の細胞系で試験した。HeLa細胞に上記のようにリポフェクタミン2000を用いて、hPTP1B1.1、hPTP1B1.2、hPTP1B1.3、hPTP1B1.4およびhPTP1B1.5を20nMでトランスフェクトし、3日後、PTP1Bの発現レベルをイムノブロッティングによって分析した。siRNA hPTP1B1.1をトランスフェクトしたHeLa細胞において、ヒトPTP1Bの発現の有意な減少は認められなかった。hPTP1B1.2およびhPTP1B1.4をトランスフェクトしたHeLa細胞ではヒトPTP1Bの発現レベルは80%減少し、hPTP1B1.3をトランスフェクトした細胞では発現レベルは90%減少した。配列特異的siRNA hPTP1B1.2、hPTP1B1.3、hPTP1B1.4、hPTP1B1.5(20nM)をトランスフェクトした第二の細胞系、293−HEK−HIR(ジュリーモイヤーズ、エリリリー社から寄贈された)ではヒトPTP1Bの内因性発現は90%減少した。
【0119】
ヒトPTP1Bおよび配列特異的ヘアピンベクター類の一過性トランスフェクション
ヘアピン挿入物の形のヒトPTP1B配列特異的siRNAの効果を一過性同時トランスフェクション・アッセイにおいて試験した。細胞(1BKO+HIRマウス線維芽細胞)にヒトPTP1B発現ベクター(上を参照)をトランスフェクトし、上記のトランスフェクション法によりhPTP1Bヘアピンベクター(1、0.5および0.25μg)を同時トランスフェクトした。ヒトPTP1B特異的配列をヒトU6小核RNAプロモータを有するフレームにおいてベクターに導入した。このベクターは David Engelke(ミシガン大学、アンアーバー、ミシガン)からの贈り物であった(Paul et al.,Nat.Biotechnol.20:446−48(2002)も参照されたい)。ヘアピンベクターに導入された各鎖の配列は次のようであった。
【0120】
【化1】

【0121】
細胞にトランスフェクトし、24時間後に細胞溶解物を調製し、ヒトPTP1Bの発現を抗ヒトPTP1B抗体と共にイムノブロッティングすることによって測定した(上を参照)。細胞溶解物をヒトインスリンレセプターベータ鎖(IRβ)(C−19、カタログ番号SC−711、サンタクルーズ・バイオテクノロジー)に特異的な抗体と共にイムノブロッティングした。結果を図2に示す。
【0122】
マウスPTP1Bに特異的な配列を含むヘアピンベクターも構築する。各鎖の下記の配列がヘアピンベクターに挿入される。
【0123】
【化2】

【0124】
(実施例2)
(PTP1Bに特異的なsiRNAの、インスリンレセプターチロシンリン酸化に与える影響)
この実施例は、細胞シグナル伝達経路におけるコンポーネント類の機能に対するRNAiの効果を説明するものである。インスリンシグナル伝達のダウンレギュレーションにおけるPTP1Bの役割は、PTP1Bノックアウトマウスの表現型(Elchebly et al.,Science 283:1544−48(1999);Klaman et al.,Mol Cell Biol.20:5479−89(2000);米国特許出願第10/366,547号も参照されたい)などを含む種々のアプローチから引き出されるデータによって説明されている(Cheng et al.,Eur.J.Biochem.269:1050−59(2002))。
【0125】
ヒトPTP1BsiRNAのIR−βリン酸化レベルに与える効果をELISA法によって評価した。292−HEK HIR細胞に0、1、5および10nM hPTP1B1.3(配列番号_)またはmPTP1B1.1(配列番号_)をトランスフェクトした。トランスフェクション後72時間目に細胞を濃度0、20、50および100nMのインスリンに7分間曝露した。細胞溶解物を実施例1のように調製し、総細胞タンパク質を製造者のインストラクション(ビオーラド、ヘラクレス、CA)によるビオーラドタンパク質アッセイによって定量した。ELISAは次のように行った。ダイネックス・イムロン(Dynex Immulon)HB4Xプレートに、5μg/ml無脂肪酸BSA(faf−BSA)を含むCMF(カルシウムマグネシウムを含まない)−PBSで1:1000に希釈した抗インスリンレセプター抗体Ab−1(1mg/ml;ネオマーカーズ社(NeoMarkers,Inc.)、フレモント、カリフォルニア)を塗布した。プレートを4℃で少なくとも4時間インキュベートした。抗体溶液を吸引によって除去し、その後3%faf−BSA+CMF−PBSを300μlを添加した。プレートを室温でボルテックス・プラットフォーム・シェーカー(設定#5)で撹拌しながら1時間インキュベートした。吸引後、3%faf−BSA+CMF−PBS溶液、約10−20μgの溶解物をウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。プレートをTBST(20mMトリス、−HCl、pH7.5 150mM NaCl;0.05%ツイーン20)で3回洗った。抗インキュベートレセプターホスホチロシン特異的抗体(pTyr1162/63、ビオソース・インターナショナル社(Biosouce International)、カマリロ、カリフォルニア、カタログ番号#44−804)をTBSTで1:2000に希釈し、室温でプレートに1時間加えた。それらのプレートをTBSTで3回洗った。その後HRP共役抗ウサギ抗体(アマーシャム・ビオサイエンシス、カタログ番号#NA934V)(TBSTで1:2000に希釈)をウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。プレートをTBSTで3回洗い、脱イオン化無菌水で1回洗った。TMB溶液(シグマ・アルドリッヒ)(100μl/ウェル)を加え、色がわずか変化するまで(細胞型およびインスリン反応によって10−30分)展開させた。反応を1.8N HSO 100μl添加によって停止し、混合した。各ウェルの光学密度をスペクトラマックス・プレート・リーダー(モレキュラー・デバイセス社(Molecular Devices Corp.)、サニーベイル、カリフォルニア)において450nMで測定した。データを図3に示す。各細胞溶解物のPTP1B発現レベルを上記のようにイムノブロットによって測定した。PTP1Bポリペプチドを抗ヒトPTP−1B抗体を使用して検出した(PHO2、オンコジーン・リサーチ・プロダクト(商標)社)。種々の濃度のどちらかのsiRNAをトランスフェクトした細胞に発現したPTP1Bの量をイムノブロットの濃度分析によって定量した。ヒトPTP1Bの発現レベルは、hPTP1B1.3siRNAをトランスフェクトしなかった細胞の発現レベルのパーセントとしてあらわされる(すなわち、非トランスフェクト細胞のレベルは100パーセントである)(図3の表を参照されたい)。
【0126】
第二の実験では、292−HEK HIR細胞に0、0.05、3または10nM siRNAをトランスフェクトした。これらの細胞にトランスフェクトされたsiRNAポリヌクレオチドとしてはhPTP1B1.2(配列番号_)、hPTP1B1.3(配列番号_)、mPTP1B1.1(配列番号_)、およびrPTP1B1.2(配列番号_)がある。トランスフェクションの72時間後に細胞を濃度0、1、5、10、50および100nMのインスリンに7分間曝露した。細胞溶解物を調製し、総細胞タンパク質を上記のように定量した。上記のようにELISAを行った。細胞溶解物を96ウェルプレートに塗布し、ブロックし、抗pYpY1162/1163−IR−β抗体で試験した。結合を酵素共役二次試薬を使用して検出した。図4に示すように、hPTP1B1.3をトランスフェクトした細胞にインスリンレセプターのリン酸化の増加が認められた。
PTP1B発現レベルのパーセント減少をインスリンレセプターのリン酸化レベルと比較した。個別の3実験において、292−HEK HIR細胞に0、0.5、3または10nM hPTP1B1.3 siRNAをトランスフェクトし、その後濃度0、5、10、20、50および100nMのインスリンに7分間曝露した。細胞溶解物のELISAおよびイムノブロットを上記のように行った。インスリンレセプターのリン酸化状態に与えるhPTP1B1.3の効果を図5にまとめる。各データ点は2個づつのウェルで測定した平均光学密度をあらわす。
【0127】
(実施例3)
ヒトおよびマウスPTP1B特異的siRNAポリヌクレオチド
ヒトPTP1Bを発現することができ、下記のsiRNAのいずれかをトランスフェクトした細胞において、ヒトPTP1Bの発現レベルを実施例1に記載の方法および操作法によって測定する。インスリンレセプターチロシンリン酸化に及ぼすヒトPTP1B特異的siRNAの効果を実施例2に記載される方法によって測定する。ベクター(このベクターからヘアピンベクターが転写される)に組み込まれる、および/または実施例1に記載の方法によってリポソームを介してトランスフェクトされるsiRNA配列を表3−5に示す。ヒトPTP1B標的配列はGenbank登録番号NM_002827(配列番号_)に示されるヒトPTP1Bヌクレオチド配列から誘導された。表3は、AAジヌクレオチド・リーダー配列が先行する19−塩基対ヒトPTP1B標的配列を示す。表4はCAジヌクレオチド・リーダー配列が先行する19−塩基対ヒトPTP1B標的配列を示す。リーダー配列とは、5’と19塩基対標的mRNA配列との間にある2つのヌクレオチドを言い、「終止配列(エンディング配列)」とは3’直前のmRNA配列である2個のヌクレオチドを言う。位置番号は19−ヌクレオチド標的配列の第一ヌクレオチドの、またはその周囲のヌクレオチド位置を意味する。mRNAの領域はコーディング領域(CR)またはオープン・リーディング・フレーム/コーディング領域(ORF/CF)および非翻訳領域(UTR)と呼ばれる。配列中に存在する終結コドン(UAG)には下線を引き、太字にする。表5はダルマコン(Dharmacon)siRNAシステムを用いて選択したヒトPTP1BsiRNAポリヌクレオチド配列を示す。これらの配列は下記のパラメーターを用いて作成された:(1)リーダー配列はジヌクレオチドAA、CA、TAおよびGAを含んでいた;(2)5’UTR、コーディング領域、および3’UTRは走査された;(4)G+C含有量は約31−63%の間に変動した;(5)異なる19ヌクレオチド配列内の諸配列のオーバーラップが容認された。これらの配列をBLASTプログラムを使用して既知ヒトゲノム配列と比較した。可能性のある標的配列は、19−ヌクレオチド標的配列のなかの16以上の連続ヌクレオチドが他のヒトポリヌクレオチド配列と同一である場合には除外された。残る19−ヌクレオチドsiRNA配列を表5に示す。表中、暗くなっている列の配列もその他の方法によって決定された。
【0128】
同様に、配列特異的siRNAポリヌクレオチドをトランスフェクトした細胞におけるマウスまたはラットPTP1Bの発現レベルも実施例1に記載される方法および操作によって測定される。インスリンレセプターリン酸化に与えるマウスまたはラットPTP1B特異的siRNAの効果を実施例2に記載の方法によって確認する。表6および表7は、AAジヌクレオチドリーダー配列およびCAジヌクレオチドリーダー配列をそれぞれ有するマウスPTP1B(Genbank登録番号NM_011201、配列番号_)に特異的な19−ヌクレオチド siRNA配列を示す。表8は、これら配列を既知マウスゲノム配列と比較したことを除けば、上の記載と同様に、ダルマコンsiDESIGNおよびBLASTプログラムを使用して選択された、19−ヌクレオチドsiRNA配列を示す。表9は、これら配列が既知ラットゲノム配列と比較されたことを除けば上記と同様に、ダルマコンsiDESIGNおよびBLASTプログラムを使用して選択された、19−ヌクレオチドsiRNA配列を示す。
【0129】
表3−9に示された各siRNA配列は、siRNAのセンス鎖の配列およびその対応する配列確認体のリストである。ここに記載されるsiRNAポリヌクレオチドは19のヌクレオチドのセンス鎖とその相補的(またはアンチセンス)鎖からなると理解される。さらに、本発明のsiRNAポリヌクレオチドは一般的には各鎖の3’末端にジヌクレオチド・オーバーハング(それは任意の2個のヌクレオチドである)を有する。
【0130】
(表3.ヒトPTP1B siRNAポリヌクレオチド配列)
【0131】
【表3−1】

【0132】
【表3−2】

【0133】
【表3−3】

【0134】
(表4.ヒトPTP1B siRNAポリヌクレオチド配列(CAリーダー))
【0135】
【表4−1】

【0136】
【表4−2】

【0137】
【表4−3】

【0138】
(表5.ヒトPTP1B siRNAポリヌクレオチド配列(BLAST後))
【0139】
【表5−1】

【0140】
【表5−2】

【0141】
(表6.マウスPTP1B siRNAポリヌクレオチド配列(AAリーダー))
【0142】
【表6−1】

【0143】
【表6−2】

【0144】
【表6−3】

【0145】
(表7.マウスPTP1B siRNAポリヌクレオチド配列(CAリーダー)
【0146】
【表7−1】

【0147】
【表7−2】

【表7−3】

【0148】
表8.マウスPTP1B siRNAポリヌクレオチド配列(BLAST後)
【0149】
【表8−1】

【0150】
【表8−2】

【0151】
表9.ラットPTP1BsiRNAポリヌクレオチド配列(BLAST後)
【0152】
【表9−1】

【0153】
【表9−2】

【0154】
【表10−1】

【0155】
【表10−2】

【0156】
【表10−3】

【0157】
前述のことから、説明の目的で本発明の特殊な実施態様をここに記載したが、本発明の精神および範囲を逸脱することなく種々の変更が行われ得ることは当然である。よって、本発明は添付の請求項によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0158】
【図1】図1は、マウスPTP1BまたはヒトPTP1Bポリヌクレオチド配列に特異的なsiRNAによるマウスPTP1Bの内因性発現に与える効果のイムノブロットを示す。発現はマウス抗−PTP1Bモノクローナル抗体を使用して検出された。データはC57B16#3マウス細胞の2種類のクローンに関して示される。両方のクローンにmPTP1B1.1siRNA(レーン3および8);mPTP1B1.2(レーン4および9);mPTP1B1.3(レーン5および10)をトランスフェクトした。一つのクローン、C57B16#3クローン3にhPTP1B1.1をトランスフェクトした(レーン6)。レーン2:トランスフェクトしていないC57B16#3、クローン3(NT);レーン7:トランスフェクトしていないC57B16#3、クローン10。
【図2】図2は、ヒトPTP−1BsiRNAヘアピンベクターと共に1BKO+HIRマウス線維芽細胞に同時トランスフェクトしたヒトPTP1Bの発現のイムノブロット分析を描く。発現は抗ヒトPTP1B抗体(h1B)で検出した(下方のイムノブロット)。タンパク質発現の対照として、細胞溶解物を抗ヒトインスリンレセプター(IR)抗体で検査した(上方のイムノブロット)。
【図3】図3は、インスリンレセプター(IR)リン酸化チロシンのレベルを、0、0.5、3または10nM hPTP1B1.3(H1.3、配列番号_)(図3A)またはmPTP1B1.1b(M1.1、配列番号_)(図3B)siRNAをトランスフェクトした293−HEK HIR細胞において測定したELISA検定の結果である。細胞におけるヒトPTP1Bの発現レベルをイムノブロットによって比較した(各図の右の表を参照されたい)。
【図4】図4は、インスリンレセプター(IR)リン酸化チロシンのレベルを、0、0.5、3または10nM siRNAをトランスフェクトした293−HEK HIR細胞において測定したELISA検定の結果である。細胞にトランスフェクトされたsiRNAポリヌクレオチドは、mPTP1B1.1b(M1.1、配列番号_)(図4A);hPTP1B1.2(H1.2、配列番号_)(図4B);hPTP1B1.3(H1.3、配列番号_)(図4C);およびrPTP1B1.2(R1.2、配列番号_)(図4D)を含んでいた。トランスフェクション後72時間目に、細胞を指示された濃度でインスリンに7分間曝露した。細胞溶解物を調製し、96ウェルプレート上に塗布し、抗−pY−IR−β抗体で検定した。
【図5】図5は、hPTP1B1.3をトランスフェクトし、50nMインスリン(Ins)で刺激した細胞におけるインスリンレセプターリン酸化レベルをあらわす別々の3実験(Exp.1、2、3)からのELISAデータである。
【配列表】


































































































































【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号83−86、88−91、93−96、98−101、104−105、および108−109からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む単離された短い干渉RNA(siRNA)ポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号83−86、88−91、93−96、98−101からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む請求項1記載の短い干渉RNAポリヌクレオチドおよびその相補的ポリヌクレオチド。
【請求項3】
Genbank登録番号M31724、NM_002827、およびM33689からなる群から選択される配列に示されるようなアミノ酸配列を含んでなるPTP1Bポリペプチドの発現を干渉することができる請求項1または請求項2のいずれかの項に記載の短い干渉RNAポリヌクレオチド。
【請求項4】
siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号83−86、88−91、93−96および98−101に示される諸配列からなる群から選択される配列の位置1−19のいずれかの位置、または104、105、108および109に示される諸配列からなる群から選択される配列の任意の位置における1、2、3または4個のヌクレオチドが異なる請求項1または請求項2のいずれかの項に記載のsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項5】
siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号83−86、88−91、93−96および98−101に示される諸配列からなる群から選択される配列の位置1−19のいずれかの位置、または104、105、108および109に示される諸配列からなる群から選択される配列の任意の位置における少なくとも2、3または4個のヌクレオチドが異なる請求項1または請求項2のいずれかの項に記載のsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項6】
配列番号83によるヌクレオチド配列を含む単離されたsiRNAポリヌクレオチドまたはその相補体。
【請求項7】
配列番号88によるヌクレオチド配列を含む単離されたsiRNAポリヌクレオチドまたはその相補体を。
【請求項8】
配列番号93によるヌクレオチド配列を含む単離されたsiRNAポリヌクレオチドまたはその相補体。
【請求項9】
配列番号98によるヌクレオチド配列を含む単離されたsiRNAポリヌクレオチドまたはその相補体。
【請求項10】
配列番号104または105によるヌクレオチド配列を含む単離されたsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項11】
配列番号108または109によるヌクレオチド配列を含む単離されたsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項12】
ポリヌクレオチドが天然に発生するヌクレオチドの少なくとも1つの合成ヌクレオチドアナログを含む請求項1または請求項2に記載のsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項13】
ポリヌクレオチドが検出可能標識に結合される請求項1または請求項2に記載のsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項14】
前記検出可能標識がレポーター分子である請求項13記載のsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項15】
前記レポーター分子が、色素、放射性核種、発光基、蛍光基およびビオチンからなる群から選択される請求項14記載のsiRNA。
【請求項16】
前記蛍光基がフルオレセイン・イソチオシアネートである請求項15記載のsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項17】
前記検出可能標識が磁気粒子である、請求項13記載のsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項18】
請求項1または請求項2のいずれかの項に記載のsiRNAポリヌクレオチドおよび生理学的に容認される担体を含む薬学的組成物。
【請求項19】
担体がリポソームを含む、請求項18記載の薬学的組成物。
【請求項20】
短い干渉RNA(siRNA)を転写させることができるポリヌクレオチドを含む組換え核酸構築物であって、該ポリヌクレオチドは
(i)第一のプロモータ;(ii)第二のプロモータ;および(iii)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのDNAポリヌクレオチドセグメントまたはその相補体からなり、各DNAポリヌクレオチドセグメントおよびその相補体は第一および第二プロモータの少なくとも1つに作動可能に結合し、前記プロモータ類はDNAポリヌクレオチドセグメントおよびその逆相補体を転写させるように方向づける
前記組換え核酸構築物。
【請求項21】
短い干渉RNA(siRNA)を転写させることができるポリヌクレオチドを含む組換え核酸構築物であって、該ポリヌクレオチドは、配列番号102、103、106および107からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのDNAポリヌクレオチドセグメントに作動可能に結合するプロモータを含む
前記組換え核酸構築物。
【請求項22】
第一プロモータに作動可能に結合する第一エンハンサーおよび第二プロモータに作動可能に結合する第二エンハンサーから選択される少なくとも1つのエンハンサーを含む請求項20または請求項21のいずれかの項に記載の組換え核酸構築物。
【請求項23】
(i)構築物中に位置し、第一プロモータによる転写を停止させる第一転写ターミネータおよび(ii)構築物中に位置し、第二プロモータによる転写を停止させる第二転写ターミネータから選択される少なくとも1つの転写ターミネータを含む請求項20に記載の組換え核酸構築物。
【請求項24】
前記siRNAがPTP1Bの発現を干渉することができ、該PTP1BポリペプチドがGenbank登録番号M31724、NM_002827、およびM33689からなる群から選択される配列に示されるアミノ酸配列を含む請求項20または請求項21のいずれかの項に記載の組換え核酸構築物。
【請求項25】
短い干渉RNA(siRNA)を転写させることができるポリヌクレオチドを含む組換え核酸構築物であって、該ポリヌクレオチドは少なくとも1つのプロモータとDNAポリヌクレオチドセグメントとを含み、該DNAポリヌクレオチドセグメントは該プロモータに作動可能に結合し、該DNAポリヌクレオチドセグメントは(i)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む少なくとも1つのDNAポリヌクレオチドまたはその相補体;(ii)(i)のDNAポリヌクレオチドに作動可能に結合する少なくとも4つのヌクレオチドを含むスペーサ配列;および(iii)スペーサ配列に作動可能に結合する(i)のDNAポリヌクレオチドの逆相補体を含む、組換え核酸構築物。
【請求項26】
siRNAが少なくとも1個かつ4個未満のヌクレオチドのオーバーハングを含み、前記オーバーハングは(iii)の3’直前に位置する請求項25記載の組換え核酸構築物。
【請求項27】
スペーサ配列が少なくとも9ヌクレオチドを含む請求項25記載の組換え核酸構築物。
【請求項28】
スペーサ配列が(iii)と隣接する2個のウリジンヌクレオチドを含む請求項25記載の組換え核酸構築物。
【請求項29】
DNAポリヌクレオチドセグメントに作動可能に結合する少なくとも1個の転写ターミネータを含む請求項25記載の組換え核酸構築物。
【請求項30】
請求項20、21、23および25−29のいずれかの項に記載の組換え核酸構築物で形質転換された、またはトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項31】
siRNAポリヌクレオチドおよび生理学的に容認される担体を含む薬学的組成物であって、前記siRNAポリヌクレオチドが
(i)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101、104−105、および108−109からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチド、
(ii)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチドおよびその相補的ポリヌクレオチド、
(iii)前記siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号83−86、88−91、93−96および98−101に示される諸配列からなる群から選択される配列の位置1−19のいずれかの位置における、または配列番号104、105、108および109に示される諸配列からなる群から選択される配列の任意の位置における1、2、または3個のヌクレオチドが異なる、(i)または(ii)によるRNAポリヌクレオチド、
(iv)前記siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号83−86、88−91、93−96および98−101に示される諸配列からなる群から選択される配列の位置1−19のいずれかの位置における、または配列番号104、105、108および109に示される諸配列からなる群から選択される配列の任意の位置における2、3または4個のヌクレオチドが異なる、(i)または(ii)によるRNAポリヌクレオチド
からなる群から選択される
薬学的組成物。
【請求項32】
担体がリポソームを含む請求項31記載の薬学的組成物。
【請求項33】
PTP1Bポリペプチドまたはその変異体の発現を干渉するための方法であって、PTP1Bポリペプチドを発現できる少なくとも1つの細胞を含む対象と、siRNAポリヌクレオチドとを、PTP1Bポリペプチドの発現を干渉するのに十分な時間および十分な条件下で接触させることを含んでなり、
(a)PTP1BポリペプチドはGenbank登録番号M31724、NM_002827、NM_011201、およびM33689からなる群から選択される配列に示されるアミノ酸配列を含み、
(b)siRNAポリヌクレオチドは
(i)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101、104−105および108−109からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチド、
(ii)配列番号83−86、88−91、98−101からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチド、およびその相補的ポリヌクレオチド、
(iii)siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号83−86、88−91、93−96および98−101に示される諸配列からなる群から選択される配列の位置1−19のいずれかの位置における、または配列番号104、105、108および109に示される諸配列からなる群から選択される配列の任意の位置における1、2、または3つのヌクレオチドが異なる、(i)または(ii)によるRNAポリヌクレオチド、
(iv)siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号83−86、88−91、93−96および98−101に示される諸配列からなる群から選択される配列の位置1−19のいずれかの位置における、または配列番号104、105、108および109に示される諸配列からなる群から選択される配列の任意の位置における2、3または4つのヌクレオチドが異なる、(i)または(ii)によるRNAポリヌクレオチド
からなる群から選択される
方法。
【請求項34】
Genbank登録番号M31724、NM_002827、およびM33689からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むPTP1Bポリペプチドまたは前記PTP1Bポリペプチドの変異体の発現を干渉する方法であって、PTP1Bポリペプチド発現を干渉するのに十分な条件下で十分な時間、(i)PTP1Bポリペプチドを発現できる少なくとも1つの細胞を含む対象と(ii)請求項18または請求項22のいずれかに記載の組換え核酸構築物とを接触させることを含んでなる方法。
【請求項35】
PTP1Bシグナル導入経路の成分を確認する方法であって:
A.siRNAポリヌクレオチドと、PTP1Bポリペプチドまたは前記PTP1Bポリペプチドの変異体を発現することができる少なくとも1つの細胞を含む第一の生物学的サンプルとを、siRNAポリヌクレオチドが存在しない場合のPTP1B発現のために十分な条件下で、十分な時間接触させ、
PTP1BポリペプチドはGenbank登録番号M31724、NM_002827、およびM33689からなる群から選択される配列に示されるアミノ酸配列を含み、
siRNAポリヌクレオチドは
(i)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101、104−105および108−109からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチド、
(ii)配列番号83−86、88−91、98−101からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチド、およびその相補的ポリヌクレオチド、
(iii)siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号83−86、88−91、93−96および98−101に示される諸配列からなる群から選択される配列の位置1−19のいずれかの位置における、または配列番号104、105、108および109に示される諸配列からなる群から選択される配列の任意の位置における1、2、または3個のヌクレオチドが異なる、(i)または(ii)によるRNAポリヌクレオチド、
(iv)siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号83−86、88−91、93−96および98−101に示される諸配列からなる群から選択される配列の位置1−19のいずれかの位置における、または配列番号104、105、108および109に示される諸配列からなる群から選択される配列の任意の位置における2、3または4個のヌクレオチドが異なる、(i)または(ii)によるRNAポリヌクレオチド
からなる群から選択され;
B.前記細胞においてリン酸化され得る少なくとも1種類のタンパク質のリン酸化レベルをsiRNAポリヌクレオチドと接触しなかった対照サンプル中の前記タンパク質のリン酸化レベルと比較する
ことを含み、
siRNAポリヌクレオチドが存在しない場合のタンパク質のリン酸化レベルに比較してsiRNAポリヌクレオチドの存在下におけるタンパク質の変化したリン酸化レベルは、前記タンパク質がPTP1Bシグナル導入経路の成分であることを示唆する
方法。
【請求項36】
シグナル導入経路がJak2キナーゼを含む請求項35記載の方法。
【請求項37】
細胞内のインスリンレセプタータンパク質リン酸化状態を調整する方法であって、
前記細胞とsiRNAポリヌクレオチドとを、PTP1Bポリペプチドの発現を干渉するのに十分な条件下で十分な時間接触させ、その際
(a)PTP1BポリペプチドがGenbank登録番号M31724、NM_002827、NM_011201、およびM33689からなる群から選択される配列に示されるアミノ酸配列を含み、
(b)siRNAポリヌクレオチドは
(i)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101またはそれらの相補体および配列番号104、105、108および109からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチド、
(ii)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチド、およびその相補的ポリヌクレオチド、
(iii)siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号83−86、88−91、93−96および98−101に示される諸配列からなる群から選択される配列の位置1−19のいずれかの位置における、または配列番号104、105、108および109に示される諸配列からなる群から選択される配列の任意の位置における1、2、または3個のヌクレオチドが異なる、(i)または(ii)によるRNAポリヌクレオチド、
(iv)siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号83−86、88−91、93−96および98−101に示される諸配列からなる群から選択される配列の位置1−19のいずれかの位置における、または配列番号104、105、108および109に示される諸配列からなる群から選択される配列の任意の位置における2、3または4個のヌクレオチドが異なる、(i)または(ii)によるRNAポリヌクレオチド
からなる群から選択され;
(c)前記インスリンレセプタータンパク質が配列番号_−_からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその変異体を含む
方法。
【請求項38】
細胞内のJak2タンパク質リン酸化状態を変える方法であって、該細胞とsiRNAポリヌクレオチドとを、PTP1Bポリペプチドの発現を干渉するのに十分な条件下で十分な時間接触させることを含み、その際
(a)PTP1BポリペプチドはGenbank登録番号M31724、NM_002827、NM_011201、およびM33689からなる群から選択される配列に示されるアミノ酸配列を含み、
(b)siRNAポリヌクレオチドは、
(i)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101またはそれらの相補体、および配列番号104、105、108および109からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチド、
(ii)配列番号83−86、88−91、93−96、98−101からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチド、およびその相補的ポリヌクレオチド、
(iii)siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号83−86、88−91、93−96および98−101に示される諸配列からなる群から選択される配列の位置1−19のいずれかの位置における、または配列番号104、105、108および109に示される諸配列からなる群から選択される配列の任意の位置における1、2、または3個のヌクレオチドが異なる、(i)または(ii)によるRNAポリヌクレオチド、
(iv)siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号83−86、88−91、93−96および98−101に示される諸配列からなる群から選択される配列の位置1−19のいずれかの位置における、または配列番号104、105、108および109に示される諸配列からなる群から選択される配列の任意の位置における2、3または4個のヌクレオチドが異なる、(i)または(ii)によるRNAポリヌクレオチド
からなる群から選択され、
(c)Jak2タンパク質が、配列番号_−_からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその変異体を含む
方法。
【請求項39】
請求項31に記載の薬学的組成物をそれを必要とする対象に投与することを含む、Jak2関連性疾患を治療する方法であって、siRNAポリヌクレオチドがPTP1Bポリペプチドまたはその変異体の発現を抑制する方法。
【請求項40】
Jak2関連性疾患が糖尿病、肥満、高血糖性アポトーシス、炎症、および神経変性疾患からなる群から選択される請求項39記載の方法。
【請求項41】
配列番号18−21、33−36、43−46、53−56および58−61からなる群から選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含むRNAポリヌクレオチドを含む単離された短い干渉RNA(siRNA)ポリヌクレオチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−506961(P2006−506961A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−506754(P2004−506754)
【出願日】平成15年5月23日(2003.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/016651
【国際公開番号】WO2003/099227
【国際公開日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【出願人】(504308213)セプティア, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】