RTK−GPS測量システム
【課題】電波障害の少ない固定局を選択可能なRTK-GPS測量システムを提供する。
【解決手段】本発明のRTK-GPS測量システムは、RTK-GPS測量を実行するために、IP−VPN通信ネットワーク網10に、補正データを送信する固定局16、17と補正データを受信する移動局15との通信を確立するサーバ9が設けられ、
各固定局と移動局を構成する衛星測位手段が、人工衛星からの電波を受信する衛星測位部11と、各衛星測位手段との間での通信を行う通信部12と、衛星測位部11と通信部12との制御を行う制御部13とを少なくとも備え、移動局15の制御部13が固定局16、17の各衛星測位手段の制御部13に登録された障害物情報を受信して、複数の固定局の中から最適な補正データの送信を行う固定局を選択可能である。
【解決手段】本発明のRTK-GPS測量システムは、RTK-GPS測量を実行するために、IP−VPN通信ネットワーク網10に、補正データを送信する固定局16、17と補正データを受信する移動局15との通信を確立するサーバ9が設けられ、
各固定局と移動局を構成する衛星測位手段が、人工衛星からの電波を受信する衛星測位部11と、各衛星測位手段との間での通信を行う通信部12と、衛星測位部11と通信部12との制御を行う制御部13とを少なくとも備え、移動局15の制御部13が固定局16、17の各衛星測位手段の制御部13に登録された障害物情報を受信して、複数の固定局の中から最適な補正データの送信を行う固定局を選択可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御コマンドや補正データの送受信をネットワーク網を利用して行うRTK−GPS測量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、GPS等の測位用の人工衛星を用いて、2つの観測局の相対的な位置関係を高精度に求める干渉測位システムの1つとして、キネマティック測位システム(RTK−GPS測量システム)が知られている(特許文献等1)。
【0003】
このキネマティック測位システムは、2つの観測点の一方を既知の参照点としかつ他方を未知の観測点とし、両観測点にそれぞれ置かれた観測局によりGPS等の人工衛星からの電波を同時に受信してその相対的な位置関係を高精度に求めることにより、既知の参照点の位置座標から未知の観測点の位置座標を高精度に求めるものである。このキネマティック測位システムでは、観測点で記録された信号を、後で処理解析して位置座標を求めている。
【0004】
このキネマティック測位システムを更に発展させたものとして、リアルタイムキネマティック測位システム(以後、RTK測位システムという)も知られている。
【0005】
このRTK測位システムは、2つの観測点のうちの位置座標が既知の参照点に一方の観測局を固定局として固定的に観測点を設置し観測データを移動局に送信して、位置座標が未知の観測点に他方の観測局を移動局として設置し、測位衛星信号と固定局から送信された観測データを受信してこれと同時に解析処理を行うことによって、移動局の位置座標をリアルタイムで測定するものである。
【0006】
すなわち、RTK測位システムでは、図1に示すように、まず、位置座標が既知の参照点である観測点Aに固定局M1を配置する。また、求めようとする位置座標が未知の点である観測点Bに移動局M2を配置する。移動局M2は測定の終了後、次の求めようとする位置座標が未知の点である観測点(測点)へ随時移動させ、固定局M1と移動局M2とにより人工衛星Saからの測位衛星信号(電波)を受信して、移動局M2が固定局M1を参照して、受信と同時にリアルタイムで解析処理を行い、未知点である観測点Bの位置を順次求めるものである。
【0007】
このRTK測位システムでは、移動局M2がある特定の固定局M1を参照できる範囲(以下、固定局参照範囲という)は、その固定局M1を中心とする半径約10km程の範囲である。
【0008】
これは、固定局M1と移動局M2との距離があまり離れすぎると、観測点の電離層や大気層の差異の影響が無視できなくなり、測定精度が劣化するからである。
【0009】
一方、固定局M1の補正データを移動局M2で参照可能にするためには、固定局M1から移動局M2へ補正データを送信する必要があるが、この送信のために、固定局M1から特定周波数の無線により送信する手段が用いられている。このため、固定局M1に送信手段(例えば周波数400MHz、出力10mW程度の送信機Seが設けられ、補正データを常時送信している。移動局M2の側には、この送信機Seからの電波を受信可能な無線用の受信機Scが装備され、この送信された補正データが参照可能とされている。
【0010】
また、図2に示すように、データ送受信の媒体としての衛星測位用データサーバDsbを利用した衛星測位システムも知られている。
【0011】
この衛星測位システムには、GPS測位用データサーバDsbを通じて、少なくとも1つの移動局M2と、複数の固定局M1、M1’と、それらの移動局M2と、固定局M1、M2との通信を確立する通信手段Sx、Syが接続されていている。
【0012】
この衛星測位システムでは、固定局M1、M1’は、通例、位置座標が既知である地点に固定的に配置され、常時、又は定期に人工衛星Saからの電波を受信し、固定局M1、M1’は設置位置に関する補正データを得ている。
【0013】
そして、測定した補正データは通信手段Sxにより常時又は定期にGPS測位用データサーバDsbに送信される。このため、通信インターフェースの通信装置Sxは、固定局M1、M2が既知の位置に固定的に配置されていることと、補正データを高速で通信することとが条件とされている。それゆえ、通信インターフェースの通信装置Sxは、WANなどの専用回線を常時接続して利用されている。
【特許文献1】特開2002−311124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、無線で、補正データの配信を行う場合、一般的に補正データの送信に使用する無線の周波数は、各固定局M1、M1’で異なるように設定される。これは、無線到達範囲の境界が隣接しているとき、境界周辺では、固定局を識別することが困難であり、誤測定の原因となるからである。また、無線到達範囲に重複があると、その重複エリア内で混信が生じるからである。ここでは、固定局M1、M1’を2個として説明しているが、固定局が3個以上でも同じである。
【0015】
このように、参照すべき固定局が複数個存在する場合(例えばM1、M1’)には、その無線送信機M11がそれぞれ異なる周波数に設定されるため、移動局M2の受信周波数を使用する固定局に応じて調整する必要が生じる。通常、測量作業計画を参照して固定局として使用したいM1、M1’、…を選択し、作業前に使用したい固定局の周波数を調べて調整するようにしている。従って、移動局M2がある固定局(例えば、M1)の参照可能範囲を超えて別の固定局(例えば、M1’)の参照可能範囲に移動した場合、異なる固定局M1、M1’、…を参照しなければならない。
【0016】
このため、常に自己の移動局M2の現在位置と固定局(M1又はM1’等)の位置との関係を認識して作業しなければならないという不都合がある。
【0017】
また、固定局M1、M1’、…から配信される補正データの中から、固定局と移動局での共通衛星数等の条件により使用が可能でかつ人工衛星Saの受信状況の良いものを選択し、選択した固定局に応じて受信周波数を測定者が適宜設定しなければならない不便さもある。
【0018】
更に、無線の場合、固定局M1、M1’、…から移動局M2への一方向の通信に限定されていているので、例えば、固定局M1から移動局M2の状況を確認するというような双方向のデータの送受を行うことができない不都合もある。
【0019】
また、インターネットの場合、回線の使用に不正なアクセスを受ける可能性がある。
【0020】
更に、ネットワーク網を介在して通信を行う場合、通信の相手を決めるために固定的なアドレスが必要であるが、IPアドレスを固定的に使用しようとすると、これは有限であり、取得には限界がある。また、コストも非常に高い。
【0021】
一般的なプロバイダを使用した場合、IPアドレスは動的なものとなるため、アクセスのたびにIPアドレスは変更されて、相手を選択して接続するときの固定的なアドレスとして使用ができないという不便さがある。
【0022】
本システムでは、IP-VPN内での固有のIDがあれば良いので、機械ID等の固有の番号をアドレスとして使用し、接続先を指定できる。
【0023】
RTK−GPSを利用する公共測量作業マニュアル(国土地理院技術資料 A・1-No.228 平成12年6月http://psgsv.gsi.go.jp/koukyou/rtk_manual/htm/mokuji.htm )による間接観測法は、固定局1点から移動局2点への補正データの配信が必要なので、携帯電話回線では作業できない不都合がある。
【0024】
本発明は、上記の測量時の不便さを少しでも解消できるように為されたもので、障害の少ない固定局を選択可能なRTK-GPS測量システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
請求項1に記載のRTK-GPS測量システムは、RTK-GPS測量を実行するために、IP−VPN通信ネットワーク網に、補正データを送信する固定局としての複数の衛星測位手段と前記補正データを受信する移動局としての他の複数個の衛星測位手段との通信を確立するサーバが設けられ、各衛星測位手段は、人工衛星からの電波を受信する衛星測位部と、前記各衛星測位手段との間での通信を行う通信部と、前記衛星測位部と前記通信部との制御を行う制御部とを少なくとも備え、前記移動局の制御部が前記固定局の各衛星測位手段の制御部に登録された障害物情報を受信して、複数の固定局の中から最適な補正データの送信を行う固定局を選択可能であることを特徴とする。
【0026】
請求項2に記載のRTK-GPS測量システムは、RTK-GPS測量を実行するために、IP−VPN通信ネットワーク網に、補正データを送信する固定局としての複数の衛星測位手段と前記補正データを受信する移動局としての他の複数個の衛星測位手段との通信を確立するサーバが設けられ、各衛星測位手段は、人工衛星からの電波を受信する衛星測位部と、前記各衛星測位手段との間での通信を行う通信部と、前記衛星測位部と前記通信部との制御を行う制御部とを少なくとも備え、前記固定局の制御部は受信した信号のS/N比が基準値より低くなるような天空図上での領域を推定する推定手段を備え、前記移動局の制御部は前記天空図上での領域内に存在する人工衛星からの電波に基づく補正データを除去してRTK-GPS解析を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に記載の発明によれば、移動局の制御部が固定局の各衛星測位手段の制御部に登録された障害物情報を受信して、複数の固定局の中から障害の少ない固定局を選択可能であるので、固定局と移動局の共通受信衛星が最大数になる適切な固定局を選択できる。
【0028】
請求項2に記載の発明によれば、ノイズ障害を除去してRTK測量作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面に基づき、本発明の好適な実施の形態を説明する。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
図3は本発明に係わるRTK-GPS測量システムの実施例の概要を示す全体構成図である。
【0031】
この衛星測位システムは、RTK-GPS測量を実行可能な複数個の衛星測位手段としての観測局と、1個のサーバ9とを通信ネットワーク10内に有する。
【0032】
観測局の少なくとも一つは、測位位置解析処理のための補正データを送信する固定局として利用され、観測局の少なくとも他の一つは、補正データを受信する移動局として利用される。
【0033】
各観測局は、図4に示すように、人工衛星Saからの電波を受信することにより自己の位置座標を求める衛星測位部11と、各観測局同士との間での通信を行う通信部12と、各衛星測位部11と通信部12との制御を行う制御部13とを有する。その図3、図4において、14は人工衛星Saからの電波を受信するGPSアンテナである。
【0034】
その制御部13には、通信ボタン13A、切り換えボタン13B、指示ボタン13C、表示部13Dが設けられている。なお、制御部13に搭載するファームウェア機能により表示部13Dに切り替え機能ボタンを表示し、これにより切り替えを行うことができるようにしても良い。
【0035】
この制御部13にはハンドヘルドPC等が用いられ、制御部13は、例えば、各衛星測位部11のGPS受信機の設定及びその制御や通信部12の設定及びその制御等の機能を有する。
【0036】
衛星測位部11は、4個以上の人工衛星Saを用いて位置解析を行うことが一般的であるが、これに限るものではない。。
【0037】
通信部12は、例えば、人工衛星Saからの受信データと既知の位置座標とを組み合わせた補正データ(たとえば、CMRやRTCMと呼ばれるフォーマットのデータ)をパケット通信で送信する機能を有する。
【0038】
これら衛星測位部11と通信部12と制御部13とは一体化されてコンパクトにまとめられている。
【0039】
図3には、3つの観測局が配置されており、ここでは、3つのうちの1つの観測局が移動局15として用いられ、残りの2つの観測局が固定局16、17として用いられているものとする。
【0040】
各衛星測位部11は人工衛星Saからの電波を受信することにより自己の位置座標を求める役割を果たす。通信部12はサーバ9を介して各観測局同士の通信を行う役割を果たす。
【0041】
各通信部12には各観測局毎に固有のIDが割り当てられ、サーバ9には各観測局毎に、その各通信部12に固有のIDが登録されている。サーバ9は主として固有のIDの登録と認証の機能を有する。
【0042】
通信ネットワーク網10は、ここではIP-VPN網であり、各通信部は無線送受信装置としての携帯電話網であり、固有のIDは携帯電話番号等であるが、各観測局に固有の機械番号であっても良い。
【0043】
ここでは、各通信部はIP通信網を介して通信ネットワーク網10に接続される。なお、携帯電話を用いる場合には携帯電話回線用の通信カードを用いてIP-VPN(仮想私設通信網)に接続する。ここで、IP-VPN(仮想私設通信網)とは、公衆回線をあたかも専用回線であるかのように利用できるサービスであり、公知の技術である。すなわち、IP−VPNは、通信事業者の保有する広域IP通信網を経由して構築されるVPNのことで、IP−VPNを経由することにより、遠隔のネットワークをLANで接続しているのと同様に運用でき、インターネットであっても認証技術や暗証化技術を用いることで保護された仮想的な専用回線を構築できる。
【0044】
サーバ9は、ここでは、一つの移動局15と他の二つの固定局16、17との間での通信を確立する機能を有する。
【0045】
そのサーバ9は、補正データとしてのパケットデータ配信や、制御コマンドの送信、データ記録、ログインIDの認証、通信ネットワーク網10の監視の役割を果たす。
【0046】
このRTK-GPS測量システムでは、通信ボタン13Aを操作して、図5に示すように、移動局15から通信確立要求(通信相手先の固有ID)を通信ネットワーク網10を経由してサーバ9に送信すると、サーバ9が通信元である移動局15の固有IDを認証してログインを許可すると共に、通信の相手先である固定局16、17の固有IDを検索して、固定局16又は固定局17と移動局15との通信が確立される。
【0047】
このRTK-GPS測量システムによれば、1個の移動局15が複数個の固定局16、17のいずれかを選択できる。
【0048】
また、IP−VPNを利用しているので、通信速度を向上させることができると共に、セキュリティの向上を図ることができる。
【0049】
この実施例1では、通信ネットワーク網10に配置されている移動局は1個であるが、通信ネットワーク網10に移動局を複数個配置し、サーバ9に複数個の移動局毎に固有のIDを登録し、移動局として用いられる観測局の制御部13に固定局を選択できる選択手段を設ける構成とすれば、複数個の移動局が存在する場合であっても、複数個の固定局の中から特定の固定局を選択できる。
【0050】
以下に、RTK作業手順の一例を説明する。
(1)固定局の初期化と設定を行う。
【0051】
一般的なRTK測量の作業手順により、観測局を参照点に配置して固定局設定作業を行う。
【0052】
通信ネットワーク網10へのログインを行い、サーバ9による認証を受けるため、固定局の衛星測位部11に接続された通信部12を通じて、通信ネットワーク網10へのアクセスを行う。
【0053】
このとき、ネットワーク通信網10に存在するサーバ9は、通信部固有のIDを用いて認証を行い、アクセスの可否を決める。
【0054】
固定局の設定と通信ネットワーク網10へのログインが終了すると、通信ネットワーク網10を通じての要求に応じて補正データの配信が開始される。
(2)移動局の初期化と設定を行う。
【0055】
つぎに、一般的なRTK測量の作業手順により、位置座標が未知の測点に移動局を配置して移動局初期化作業を行う。
【0056】
測定計画に基づき移動局を観測点に設置し、人工衛星Saからの電波を受信しつつ単独測位を行う。この単独測位で得られた位置座標情報は、通常、基本的に20〜100mの誤差を有する。
【0057】
次に、通信ネットワーク網10へのログインを行い、サーバ9による認証を受けるため、移動局の衛星測位部11に接続された通信部12を通じて、通信ネットワーク網10へのアクセスを行う。このとき、通信ネットワーク網10に存在するサーバ9は、通信部固有のIDを用いて認証を行い、アクセスの可否を決める。
(3)移動局の設定と通信ネットワーク網10へのログインすると、ネットワーク通信網10を通じて補正データの配信が可能な固定局が移動局の制御部13の表示部13Dに表示される。移動局の測量作業者は固定局として使用したい観測局を表示部13Dに表示された複数の観測局の中から選択する。
【0058】
移動局により選択された固定局の補正データがサーバ9を介して通信ネットワーク網10を通じて移動局に配信される。
(4)移動局は、サーバ9を通じて要求した固定局の補正データを受信し、移動局の受信データとともに、制御部13の解析処理手段により解析を行うことによって誤差を補正し、厳密な位置情報を得る。
(5)この補正により、10mm前後の測位精度を得ることができる。得られた結果は移動局に装備された制御部13のデータメモリに記録され、作業終了後に他の場所でマップの作成等の処理を行う。
【0059】
また、図3に示すように、通信ネットワーク網10に、移動局として用いられる各衛星測位手段により得られた測位データをオンラインで解析処理するための集中解析処理装置(集中端末装置)19Aを配備し、集中解析処理装置19Aに固有IDを割り当て、この固有IDをサーバ9に登録し、通信ネットワーク網10に接続された集中解析処理装置19Aと移動局との間の通信をサーバ9を介して確立し、移動局を用いてスタティック観測により得られた測位データをサーバ9を経由して集中解析処理装置19Aに送信し、集中解析処理装置19Aにより測位データを解析することにより、基線解析処理が可能となる。
【0060】
この集中解析処理装置19Aを通信ネットワーク網10に配備することにすれば、各移動局を構成する衛星測位部11、通信部12、制御部13の観測機材を測量現場から事務所に持ち帰って測位データをPC(パーソナルコンピュータ)へダウンロードすることなく、基線解析が可能となる。
【0061】
更に、通信ネットワーク網10に制御部13の機能を実行するファームウェアを更新する集中端末装置19Bを配備し、集中端末装置19Bに固有のIDを割り当て、この固有のIDをサーバ9に登録し、通信ネットワーク網10に接続された集中端末装置19Bと各観測局との間の通信をサーバ9を介して確立すれば、各観測局の制御部13のファームウエアのバージョンアップが可能となる。また、衛星測位部11のファームウエアのバージョンアップを可能とする構成、通信部12のファームウエアのバージョンアップを可能とする構成としても良い。
【0062】
このものでは、各衛星測位手段の制御部13には、電波障害物作成用プログラムが内蔵されている。その電波障害物作成用プログラムによる電波障害物情報は、現況を手動入力しても良いし、受信情報と衛星軌道情報とを基にして自動作成することもできる。固定局16、17の各制御部13に登録された電波障害物情報はその各通信部12から移動局15の各通信部12に送信される。移動局15の制御部13は固定局16、17から送信された電波障害物情報に基づいて天空図を作成し、この天空図を表示部13Dに表示させる。
【0063】
図6(a)、(b)、(c)は、その移動局15の表示部13Dに表示された天空図20が示されている。図6(a)はその移動局15そのものによって作成された天空図20を示し、図6(b)はその移動局15の表示部13Dに表示された固定局16の天空図21を示し、図6(c)はその移動局15の表示部13Dに表示された固定局17の天空図22を示している。
【0064】
これらの天空図20と天空図21、22とは、その移動局15の表示部13Dに対比可能に並べて表示される。
【0065】
これらの天空図20〜22において、符号Z0は観測点それぞれの天頂を示し、符号Z1は水平面に対する高度を示し、符号Z2は所定高度角以下の領域を隠蔽するリング状マスクを示し、符号Z3は電波障害物が存在する領域を示し、符号Zsi(i=1〜n)は天空に存在する人工衛星を示している。そのリング状マスクZ2はいわゆる低高度角に存在する人工衛星からの電波の受信を禁止するために用いられる。低高度角に存在する人工衛星から到来する電波にはノイズ成分が多く含まれているからである。
【0066】
移動局15によって作成された天空図20には人工衛星Zs1〜Zs5が存在し、固定局16によって作成された天空図21には人工衛星Zs2、Zs3、Zs4、Zs5、Zs6が存在し、固定局17によって作成された天空図22には人工衛星Zs1〜Zs7が存在する。
【0067】
測量作業者は、移動局15の表示部13Dに表示された各天空図2021、22を対比させて、固定局16と固定局17とのいずれを用いるかを判断する。ここでは、共通する人工衛星Zsiの個数が最も多い固定局17を選択する。この例では、移動局15の人工衛星の個数は5個であり、移動局17の共通する人工衛星の個数も5個である。
【0068】
このように、移動局15の制御部13が固定局16、17の各衛星測位手段の制御部13に登録された障害物情報を受信して、複数の固定局16、17の中から電波障害の少ない固定局を選択する。これには、例えば、指示ボタン13Cを用いる。
【0069】
共通衛星の個数で比較して差異がないときには、受信強度の高い衛星がより多いこと、固定局16、17から移動局15までの距離がより近くであること等を比較して選択する。
【0070】
いずれの固定局を選択したとしても、移動局15に表示されている人工衛星の個数に対して、RTK測量による解析処理を行うための人工衛星の個数が満たないときには、人工衛星飛来の予測と電波障害物情報との関係とから、天空を飛来する人工衛星の個数が最も多くなる時間を知得できるので、その時間帯にRTK測量を行うことにすれば良い。
(実施例2)
図7〜図11は自動的に電波障害物情報を作成する自動作成プログラムを用いて、電波障害物情報を作成する実施例の説明に用いる天空図を示している。
【0071】
固定局16又は固定局17を12時間以上同一の観測点A(図2参照)に設置したままとし、各衛星測位部11により人工衛星の電波を受信する。測量に用いる人工衛星は、例えばGPS衛星であれば、約12時間で周回軌道を一周する。
【0072】
従って、12時間以上同一の観測点で上空を通過する人工衛星から発せられた電波を受信することにより人工衛星の軌道を知得できる。
【0073】
図7はある観測点(ここでは、例えば観測点Aとする)に設置された固定局16(又は固定局17)の制御部13に組み込まれた電波障害情報自動作成プログラムによって作成された天空図23上での人工衛星Saの軌跡SRを描いている。この図7において、軌跡SRとして多数の条線が描かれているが、これは上空を通過する人工衛星Saは多数個存在するからである。
【0074】
一方、各人工衛星Saの暦情報とその観測点に置かれた固定局16(又は固定局17)の位置情報とにより各人工衛星の軌道を演算により求めることができる。電波障害情報自動作成プログラムを用いて求められた各人工衛星の天空図23’上での軌跡が図8に示すようなものであったとする。この図8は、電波障害物が何ら存在しないとしたならば、その固定局16又は固定局17が観測点Aに設置されているときに、本来天空図23上に描かれる軌跡SRを表している。これに対して、実際の観測結果を示す図7の天空図23では、軌跡SRの各条線が右斜め上部分に描かれていない。
【0075】
天空図23上には、図9に示すように、既述のリング状のマスクZ2が施されるが、このリング状のマスクZ2を考慮に入れたとしても、図7に示す天空図23には、人工衛星Saからの電波を受信できない領域、すなわち、電波障害物領域z3が存在していることが、図7に示す天空図23と図8に示す天空図23’とを対比することによって把握できる。
【0076】
従って、電波障害情報自動作成プログラムにより、ある観測点に設置された固定局の上空を通過する各人工衛星Saの実際の軌跡を求めると共に、各人工衛星のその観測点において予測される各人工衛星Saの軌跡を求め、実際の軌跡と予測軌跡との差分により、ある観測点において実際の測定により得られた天空図23上での電波障害物領域Z3の大きさとその形状とを図10に示すように推定できる。
【0077】
そして、電波障害情報自動作成プログラムは、このようにして得られた電波障害物領域Z3を固定局の制御部13に保存させる。そして、移動局15の求めに応じて、この電波障害物情報を移動局15に送信する。
【0078】
すると、移動局15の表示部13Dに固定局で自動的に求められた天空図23が表示される。これによって、移動局15は自己の天空図20と送信されてきた固定局の天空図23とを対比させて、その固定局を用いるか否かを決定できる。
【0079】
この実施例では、固定局の制御部13の表示部13Dに各人工衛星Saの実際の軌跡を描かせて表示させているが、自動的に求められた人工衛星Saの軌跡情報を固定局の表示部13Dに表示させる必要はなく、固定局の制御部13のメモリに電波障害物領域情報を保存し、移動局の求めに応じて電波障害物領域情報を送信するようにすれば良い。
(実施例3)
図11は受信した電波に所定比以上のノイズが重畳されているノイズ障害領域(以下、高ノイズ障害領域)が表示されている天空図24を示している。
【0080】
人工衛星Saからの電波が遮蔽物(例えば、ビル等が乱立する建造物の地域)を通過すると、マルチパス現象が生じ、このマルチパス現象により、固定局は高ノイズが重畳された人工衛星Saからの電波を受信することになる。
【0081】
この高ノイズを含む電波を用いてRTK測量を行うと、測量に支障を来す。そこで、固定局の制御部13にノイズ解析プログラム(ノイズ障害領域推定プログラム)を組み込み、実際に到来する人工衛星Saからの電波に含まれているノイズを解析させ、天空図20上の各軌跡SRの各位置においてS/N比を求める。このS/N比が基準とする値よりも小さいノイズ障害領域Z3’を図11に示すように特定する。基準とする値は、衛星受信高度角ごとに適当な値を設定してもよい。また、実際に受信している全衛星のS/N比から基準とする値を求めることもできる。
【0082】
固定局(例えば、固定局16)はこのノイズ障害領域Z3’に関するS/N比領域情報を移動局(例えば、移動局15)に送信する。移動局の制御部13には、人工衛星Saの飛来情報(履歴情報)から、このノイズ障害領域Z3’を通過する衛星番号とその時間帯とを演算する演算プログラムを組み込み、このノイズ障害領域Z3’を通過中の人工衛星からの電波をRTK測量に使用しないように設定する。
【0083】
このように、移動局の制御部13を構成すれば、たとえ、選択された固定局から送信されてきた補正情報にノイズ障害領域Z3’を通過中の人工衛星からの電波が含まれていたとしても、移動局ではそのノイズ障害領域Z3’を通過中の人工衛星からの電波を用いてのRTK測量が行われないことになる。
【0084】
従って、選択された固定局から送信されてきた補正情報にノイズ障害領域Z3’を通過中の人工衛星からの電波が含まれていたとしても、建造物や樹木等に起因する高ノイズが含まれた補正情報を事前に予測でき、良質な補正情報のみを用いて、正確なRTK測量の実施を確保できる。
【0085】
電波障害物領域Z3の情報と、ノイズ障害領域Z3’の情報とを併用して、以下に説明する使い方がある。
(1)各固定局の観測点における電波障害物領域Z3の情報とノイズ障害領域Z3’の情報とを移動局の側で得ることができ、より良い条件で、すなわち、ノイズ障害を除去して観測点をRTK測量の観測時に参照する固定局として選択できる。
(2)ノイズ障害領域Z3’を通過中の人工衛星から受信された電波をRTK解析処理に使用しないように設定できる。
(3)固定局の位置情報と電波障害物領域Z3の情報とノイズ障害領域Z3’の情報とをその固定局の制御部のメモリに保存し、移動局の要求に応じて配信することができる。
(4)固定局からサーバ9に固定局の位置情報と電波障害物領域Z3の情報とノイズ障害領域Z3’の情報とを送信し、サーバ9にこれらを保存させる。サーバ9はこれらの情報を移動局の要求に応じて配信し、移動局はこれらの情報を参照することができる。
【0086】
この実施例によれば、固定局のみで自動的に電波障害物領域Z3、ノイズ障害領域Z3’の各情報を作成することが可能であり、常設の固定局のように、長期間の観測に用いる固定局にあっては、建築構造物の増設や移動、季節の変化による樹木の成長等の環境変化に基づき、固定局の周辺の環境変化がある場合であっても、電波障害物領域Z3、ノイズ障害領域Z3’の情報をリアルタイムで更新が可能であるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】従来のRTK測位システムの一例を示す説明図である。
【図2】従来のRTK測位システムの不具合を説明するための説明図である。
【図3】本発明のRTK−GPS測量システムの一例を示す説明図である。
【図4】本発明のRTK−GPS測量システムに用いる衛星測位手段の構成の一例を示す概要図である。
【図5】本発明のRTK−GPS測量システムによる通信の一例を示す模式図である。
【図6】各衛星測位手段の制御部に表示される人工衛星の飛来情報を示す図であって、(a)は移動局の上空を飛来する人工衛星の飛来情報を示す天空図、(b)はある固定局の上空を飛来する人工衛星の飛来情報を示す天空図、(c)は(b)に示す固定局とは異なる固定局の上空を飛来する人工衛星の飛来情報を示す天空図である。
【図7】固定局の上空を実際に飛来する人工衛星の軌跡を示す天空図である。
【図8】固定局の上空を飛来すると予想される人工衛星の軌跡を示す天空図である。
【図9】図7に示すリング状のマスクを施した状態を示す天空図である。
【図10】図8に示す天空図と図9に示す天空図とから求められた障害物入りの天空図である。
【図11】ノイズ障害領域を示す天空図である。
【符号の説明】
【0088】
9…サーバ
10…通信ネットワーク網
11…衛星測位部
12…通信部
13…制御部
13F…入力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御コマンドや補正データの送受信をネットワーク網を利用して行うRTK−GPS測量システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、GPS等の測位用の人工衛星を用いて、2つの観測局の相対的な位置関係を高精度に求める干渉測位システムの1つとして、キネマティック測位システム(RTK−GPS測量システム)が知られている(特許文献等1)。
【0003】
このキネマティック測位システムは、2つの観測点の一方を既知の参照点としかつ他方を未知の観測点とし、両観測点にそれぞれ置かれた観測局によりGPS等の人工衛星からの電波を同時に受信してその相対的な位置関係を高精度に求めることにより、既知の参照点の位置座標から未知の観測点の位置座標を高精度に求めるものである。このキネマティック測位システムでは、観測点で記録された信号を、後で処理解析して位置座標を求めている。
【0004】
このキネマティック測位システムを更に発展させたものとして、リアルタイムキネマティック測位システム(以後、RTK測位システムという)も知られている。
【0005】
このRTK測位システムは、2つの観測点のうちの位置座標が既知の参照点に一方の観測局を固定局として固定的に観測点を設置し観測データを移動局に送信して、位置座標が未知の観測点に他方の観測局を移動局として設置し、測位衛星信号と固定局から送信された観測データを受信してこれと同時に解析処理を行うことによって、移動局の位置座標をリアルタイムで測定するものである。
【0006】
すなわち、RTK測位システムでは、図1に示すように、まず、位置座標が既知の参照点である観測点Aに固定局M1を配置する。また、求めようとする位置座標が未知の点である観測点Bに移動局M2を配置する。移動局M2は測定の終了後、次の求めようとする位置座標が未知の点である観測点(測点)へ随時移動させ、固定局M1と移動局M2とにより人工衛星Saからの測位衛星信号(電波)を受信して、移動局M2が固定局M1を参照して、受信と同時にリアルタイムで解析処理を行い、未知点である観測点Bの位置を順次求めるものである。
【0007】
このRTK測位システムでは、移動局M2がある特定の固定局M1を参照できる範囲(以下、固定局参照範囲という)は、その固定局M1を中心とする半径約10km程の範囲である。
【0008】
これは、固定局M1と移動局M2との距離があまり離れすぎると、観測点の電離層や大気層の差異の影響が無視できなくなり、測定精度が劣化するからである。
【0009】
一方、固定局M1の補正データを移動局M2で参照可能にするためには、固定局M1から移動局M2へ補正データを送信する必要があるが、この送信のために、固定局M1から特定周波数の無線により送信する手段が用いられている。このため、固定局M1に送信手段(例えば周波数400MHz、出力10mW程度の送信機Seが設けられ、補正データを常時送信している。移動局M2の側には、この送信機Seからの電波を受信可能な無線用の受信機Scが装備され、この送信された補正データが参照可能とされている。
【0010】
また、図2に示すように、データ送受信の媒体としての衛星測位用データサーバDsbを利用した衛星測位システムも知られている。
【0011】
この衛星測位システムには、GPS測位用データサーバDsbを通じて、少なくとも1つの移動局M2と、複数の固定局M1、M1’と、それらの移動局M2と、固定局M1、M2との通信を確立する通信手段Sx、Syが接続されていている。
【0012】
この衛星測位システムでは、固定局M1、M1’は、通例、位置座標が既知である地点に固定的に配置され、常時、又は定期に人工衛星Saからの電波を受信し、固定局M1、M1’は設置位置に関する補正データを得ている。
【0013】
そして、測定した補正データは通信手段Sxにより常時又は定期にGPS測位用データサーバDsbに送信される。このため、通信インターフェースの通信装置Sxは、固定局M1、M2が既知の位置に固定的に配置されていることと、補正データを高速で通信することとが条件とされている。それゆえ、通信インターフェースの通信装置Sxは、WANなどの専用回線を常時接続して利用されている。
【特許文献1】特開2002−311124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、無線で、補正データの配信を行う場合、一般的に補正データの送信に使用する無線の周波数は、各固定局M1、M1’で異なるように設定される。これは、無線到達範囲の境界が隣接しているとき、境界周辺では、固定局を識別することが困難であり、誤測定の原因となるからである。また、無線到達範囲に重複があると、その重複エリア内で混信が生じるからである。ここでは、固定局M1、M1’を2個として説明しているが、固定局が3個以上でも同じである。
【0015】
このように、参照すべき固定局が複数個存在する場合(例えばM1、M1’)には、その無線送信機M11がそれぞれ異なる周波数に設定されるため、移動局M2の受信周波数を使用する固定局に応じて調整する必要が生じる。通常、測量作業計画を参照して固定局として使用したいM1、M1’、…を選択し、作業前に使用したい固定局の周波数を調べて調整するようにしている。従って、移動局M2がある固定局(例えば、M1)の参照可能範囲を超えて別の固定局(例えば、M1’)の参照可能範囲に移動した場合、異なる固定局M1、M1’、…を参照しなければならない。
【0016】
このため、常に自己の移動局M2の現在位置と固定局(M1又はM1’等)の位置との関係を認識して作業しなければならないという不都合がある。
【0017】
また、固定局M1、M1’、…から配信される補正データの中から、固定局と移動局での共通衛星数等の条件により使用が可能でかつ人工衛星Saの受信状況の良いものを選択し、選択した固定局に応じて受信周波数を測定者が適宜設定しなければならない不便さもある。
【0018】
更に、無線の場合、固定局M1、M1’、…から移動局M2への一方向の通信に限定されていているので、例えば、固定局M1から移動局M2の状況を確認するというような双方向のデータの送受を行うことができない不都合もある。
【0019】
また、インターネットの場合、回線の使用に不正なアクセスを受ける可能性がある。
【0020】
更に、ネットワーク網を介在して通信を行う場合、通信の相手を決めるために固定的なアドレスが必要であるが、IPアドレスを固定的に使用しようとすると、これは有限であり、取得には限界がある。また、コストも非常に高い。
【0021】
一般的なプロバイダを使用した場合、IPアドレスは動的なものとなるため、アクセスのたびにIPアドレスは変更されて、相手を選択して接続するときの固定的なアドレスとして使用ができないという不便さがある。
【0022】
本システムでは、IP-VPN内での固有のIDがあれば良いので、機械ID等の固有の番号をアドレスとして使用し、接続先を指定できる。
【0023】
RTK−GPSを利用する公共測量作業マニュアル(国土地理院技術資料 A・1-No.228 平成12年6月http://psgsv.gsi.go.jp/koukyou/rtk_manual/htm/mokuji.htm )による間接観測法は、固定局1点から移動局2点への補正データの配信が必要なので、携帯電話回線では作業できない不都合がある。
【0024】
本発明は、上記の測量時の不便さを少しでも解消できるように為されたもので、障害の少ない固定局を選択可能なRTK-GPS測量システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
請求項1に記載のRTK-GPS測量システムは、RTK-GPS測量を実行するために、IP−VPN通信ネットワーク網に、補正データを送信する固定局としての複数の衛星測位手段と前記補正データを受信する移動局としての他の複数個の衛星測位手段との通信を確立するサーバが設けられ、各衛星測位手段は、人工衛星からの電波を受信する衛星測位部と、前記各衛星測位手段との間での通信を行う通信部と、前記衛星測位部と前記通信部との制御を行う制御部とを少なくとも備え、前記移動局の制御部が前記固定局の各衛星測位手段の制御部に登録された障害物情報を受信して、複数の固定局の中から最適な補正データの送信を行う固定局を選択可能であることを特徴とする。
【0026】
請求項2に記載のRTK-GPS測量システムは、RTK-GPS測量を実行するために、IP−VPN通信ネットワーク網に、補正データを送信する固定局としての複数の衛星測位手段と前記補正データを受信する移動局としての他の複数個の衛星測位手段との通信を確立するサーバが設けられ、各衛星測位手段は、人工衛星からの電波を受信する衛星測位部と、前記各衛星測位手段との間での通信を行う通信部と、前記衛星測位部と前記通信部との制御を行う制御部とを少なくとも備え、前記固定局の制御部は受信した信号のS/N比が基準値より低くなるような天空図上での領域を推定する推定手段を備え、前記移動局の制御部は前記天空図上での領域内に存在する人工衛星からの電波に基づく補正データを除去してRTK-GPS解析を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に記載の発明によれば、移動局の制御部が固定局の各衛星測位手段の制御部に登録された障害物情報を受信して、複数の固定局の中から障害の少ない固定局を選択可能であるので、固定局と移動局の共通受信衛星が最大数になる適切な固定局を選択できる。
【0028】
請求項2に記載の発明によれば、ノイズ障害を除去してRTK測量作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面に基づき、本発明の好適な実施の形態を説明する。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
図3は本発明に係わるRTK-GPS測量システムの実施例の概要を示す全体構成図である。
【0031】
この衛星測位システムは、RTK-GPS測量を実行可能な複数個の衛星測位手段としての観測局と、1個のサーバ9とを通信ネットワーク10内に有する。
【0032】
観測局の少なくとも一つは、測位位置解析処理のための補正データを送信する固定局として利用され、観測局の少なくとも他の一つは、補正データを受信する移動局として利用される。
【0033】
各観測局は、図4に示すように、人工衛星Saからの電波を受信することにより自己の位置座標を求める衛星測位部11と、各観測局同士との間での通信を行う通信部12と、各衛星測位部11と通信部12との制御を行う制御部13とを有する。その図3、図4において、14は人工衛星Saからの電波を受信するGPSアンテナである。
【0034】
その制御部13には、通信ボタン13A、切り換えボタン13B、指示ボタン13C、表示部13Dが設けられている。なお、制御部13に搭載するファームウェア機能により表示部13Dに切り替え機能ボタンを表示し、これにより切り替えを行うことができるようにしても良い。
【0035】
この制御部13にはハンドヘルドPC等が用いられ、制御部13は、例えば、各衛星測位部11のGPS受信機の設定及びその制御や通信部12の設定及びその制御等の機能を有する。
【0036】
衛星測位部11は、4個以上の人工衛星Saを用いて位置解析を行うことが一般的であるが、これに限るものではない。。
【0037】
通信部12は、例えば、人工衛星Saからの受信データと既知の位置座標とを組み合わせた補正データ(たとえば、CMRやRTCMと呼ばれるフォーマットのデータ)をパケット通信で送信する機能を有する。
【0038】
これら衛星測位部11と通信部12と制御部13とは一体化されてコンパクトにまとめられている。
【0039】
図3には、3つの観測局が配置されており、ここでは、3つのうちの1つの観測局が移動局15として用いられ、残りの2つの観測局が固定局16、17として用いられているものとする。
【0040】
各衛星測位部11は人工衛星Saからの電波を受信することにより自己の位置座標を求める役割を果たす。通信部12はサーバ9を介して各観測局同士の通信を行う役割を果たす。
【0041】
各通信部12には各観測局毎に固有のIDが割り当てられ、サーバ9には各観測局毎に、その各通信部12に固有のIDが登録されている。サーバ9は主として固有のIDの登録と認証の機能を有する。
【0042】
通信ネットワーク網10は、ここではIP-VPN網であり、各通信部は無線送受信装置としての携帯電話網であり、固有のIDは携帯電話番号等であるが、各観測局に固有の機械番号であっても良い。
【0043】
ここでは、各通信部はIP通信網を介して通信ネットワーク網10に接続される。なお、携帯電話を用いる場合には携帯電話回線用の通信カードを用いてIP-VPN(仮想私設通信網)に接続する。ここで、IP-VPN(仮想私設通信網)とは、公衆回線をあたかも専用回線であるかのように利用できるサービスであり、公知の技術である。すなわち、IP−VPNは、通信事業者の保有する広域IP通信網を経由して構築されるVPNのことで、IP−VPNを経由することにより、遠隔のネットワークをLANで接続しているのと同様に運用でき、インターネットであっても認証技術や暗証化技術を用いることで保護された仮想的な専用回線を構築できる。
【0044】
サーバ9は、ここでは、一つの移動局15と他の二つの固定局16、17との間での通信を確立する機能を有する。
【0045】
そのサーバ9は、補正データとしてのパケットデータ配信や、制御コマンドの送信、データ記録、ログインIDの認証、通信ネットワーク網10の監視の役割を果たす。
【0046】
このRTK-GPS測量システムでは、通信ボタン13Aを操作して、図5に示すように、移動局15から通信確立要求(通信相手先の固有ID)を通信ネットワーク網10を経由してサーバ9に送信すると、サーバ9が通信元である移動局15の固有IDを認証してログインを許可すると共に、通信の相手先である固定局16、17の固有IDを検索して、固定局16又は固定局17と移動局15との通信が確立される。
【0047】
このRTK-GPS測量システムによれば、1個の移動局15が複数個の固定局16、17のいずれかを選択できる。
【0048】
また、IP−VPNを利用しているので、通信速度を向上させることができると共に、セキュリティの向上を図ることができる。
【0049】
この実施例1では、通信ネットワーク網10に配置されている移動局は1個であるが、通信ネットワーク網10に移動局を複数個配置し、サーバ9に複数個の移動局毎に固有のIDを登録し、移動局として用いられる観測局の制御部13に固定局を選択できる選択手段を設ける構成とすれば、複数個の移動局が存在する場合であっても、複数個の固定局の中から特定の固定局を選択できる。
【0050】
以下に、RTK作業手順の一例を説明する。
(1)固定局の初期化と設定を行う。
【0051】
一般的なRTK測量の作業手順により、観測局を参照点に配置して固定局設定作業を行う。
【0052】
通信ネットワーク網10へのログインを行い、サーバ9による認証を受けるため、固定局の衛星測位部11に接続された通信部12を通じて、通信ネットワーク網10へのアクセスを行う。
【0053】
このとき、ネットワーク通信網10に存在するサーバ9は、通信部固有のIDを用いて認証を行い、アクセスの可否を決める。
【0054】
固定局の設定と通信ネットワーク網10へのログインが終了すると、通信ネットワーク網10を通じての要求に応じて補正データの配信が開始される。
(2)移動局の初期化と設定を行う。
【0055】
つぎに、一般的なRTK測量の作業手順により、位置座標が未知の測点に移動局を配置して移動局初期化作業を行う。
【0056】
測定計画に基づき移動局を観測点に設置し、人工衛星Saからの電波を受信しつつ単独測位を行う。この単独測位で得られた位置座標情報は、通常、基本的に20〜100mの誤差を有する。
【0057】
次に、通信ネットワーク網10へのログインを行い、サーバ9による認証を受けるため、移動局の衛星測位部11に接続された通信部12を通じて、通信ネットワーク網10へのアクセスを行う。このとき、通信ネットワーク網10に存在するサーバ9は、通信部固有のIDを用いて認証を行い、アクセスの可否を決める。
(3)移動局の設定と通信ネットワーク網10へのログインすると、ネットワーク通信網10を通じて補正データの配信が可能な固定局が移動局の制御部13の表示部13Dに表示される。移動局の測量作業者は固定局として使用したい観測局を表示部13Dに表示された複数の観測局の中から選択する。
【0058】
移動局により選択された固定局の補正データがサーバ9を介して通信ネットワーク網10を通じて移動局に配信される。
(4)移動局は、サーバ9を通じて要求した固定局の補正データを受信し、移動局の受信データとともに、制御部13の解析処理手段により解析を行うことによって誤差を補正し、厳密な位置情報を得る。
(5)この補正により、10mm前後の測位精度を得ることができる。得られた結果は移動局に装備された制御部13のデータメモリに記録され、作業終了後に他の場所でマップの作成等の処理を行う。
【0059】
また、図3に示すように、通信ネットワーク網10に、移動局として用いられる各衛星測位手段により得られた測位データをオンラインで解析処理するための集中解析処理装置(集中端末装置)19Aを配備し、集中解析処理装置19Aに固有IDを割り当て、この固有IDをサーバ9に登録し、通信ネットワーク網10に接続された集中解析処理装置19Aと移動局との間の通信をサーバ9を介して確立し、移動局を用いてスタティック観測により得られた測位データをサーバ9を経由して集中解析処理装置19Aに送信し、集中解析処理装置19Aにより測位データを解析することにより、基線解析処理が可能となる。
【0060】
この集中解析処理装置19Aを通信ネットワーク網10に配備することにすれば、各移動局を構成する衛星測位部11、通信部12、制御部13の観測機材を測量現場から事務所に持ち帰って測位データをPC(パーソナルコンピュータ)へダウンロードすることなく、基線解析が可能となる。
【0061】
更に、通信ネットワーク網10に制御部13の機能を実行するファームウェアを更新する集中端末装置19Bを配備し、集中端末装置19Bに固有のIDを割り当て、この固有のIDをサーバ9に登録し、通信ネットワーク網10に接続された集中端末装置19Bと各観測局との間の通信をサーバ9を介して確立すれば、各観測局の制御部13のファームウエアのバージョンアップが可能となる。また、衛星測位部11のファームウエアのバージョンアップを可能とする構成、通信部12のファームウエアのバージョンアップを可能とする構成としても良い。
【0062】
このものでは、各衛星測位手段の制御部13には、電波障害物作成用プログラムが内蔵されている。その電波障害物作成用プログラムによる電波障害物情報は、現況を手動入力しても良いし、受信情報と衛星軌道情報とを基にして自動作成することもできる。固定局16、17の各制御部13に登録された電波障害物情報はその各通信部12から移動局15の各通信部12に送信される。移動局15の制御部13は固定局16、17から送信された電波障害物情報に基づいて天空図を作成し、この天空図を表示部13Dに表示させる。
【0063】
図6(a)、(b)、(c)は、その移動局15の表示部13Dに表示された天空図20が示されている。図6(a)はその移動局15そのものによって作成された天空図20を示し、図6(b)はその移動局15の表示部13Dに表示された固定局16の天空図21を示し、図6(c)はその移動局15の表示部13Dに表示された固定局17の天空図22を示している。
【0064】
これらの天空図20と天空図21、22とは、その移動局15の表示部13Dに対比可能に並べて表示される。
【0065】
これらの天空図20〜22において、符号Z0は観測点それぞれの天頂を示し、符号Z1は水平面に対する高度を示し、符号Z2は所定高度角以下の領域を隠蔽するリング状マスクを示し、符号Z3は電波障害物が存在する領域を示し、符号Zsi(i=1〜n)は天空に存在する人工衛星を示している。そのリング状マスクZ2はいわゆる低高度角に存在する人工衛星からの電波の受信を禁止するために用いられる。低高度角に存在する人工衛星から到来する電波にはノイズ成分が多く含まれているからである。
【0066】
移動局15によって作成された天空図20には人工衛星Zs1〜Zs5が存在し、固定局16によって作成された天空図21には人工衛星Zs2、Zs3、Zs4、Zs5、Zs6が存在し、固定局17によって作成された天空図22には人工衛星Zs1〜Zs7が存在する。
【0067】
測量作業者は、移動局15の表示部13Dに表示された各天空図2021、22を対比させて、固定局16と固定局17とのいずれを用いるかを判断する。ここでは、共通する人工衛星Zsiの個数が最も多い固定局17を選択する。この例では、移動局15の人工衛星の個数は5個であり、移動局17の共通する人工衛星の個数も5個である。
【0068】
このように、移動局15の制御部13が固定局16、17の各衛星測位手段の制御部13に登録された障害物情報を受信して、複数の固定局16、17の中から電波障害の少ない固定局を選択する。これには、例えば、指示ボタン13Cを用いる。
【0069】
共通衛星の個数で比較して差異がないときには、受信強度の高い衛星がより多いこと、固定局16、17から移動局15までの距離がより近くであること等を比較して選択する。
【0070】
いずれの固定局を選択したとしても、移動局15に表示されている人工衛星の個数に対して、RTK測量による解析処理を行うための人工衛星の個数が満たないときには、人工衛星飛来の予測と電波障害物情報との関係とから、天空を飛来する人工衛星の個数が最も多くなる時間を知得できるので、その時間帯にRTK測量を行うことにすれば良い。
(実施例2)
図7〜図11は自動的に電波障害物情報を作成する自動作成プログラムを用いて、電波障害物情報を作成する実施例の説明に用いる天空図を示している。
【0071】
固定局16又は固定局17を12時間以上同一の観測点A(図2参照)に設置したままとし、各衛星測位部11により人工衛星の電波を受信する。測量に用いる人工衛星は、例えばGPS衛星であれば、約12時間で周回軌道を一周する。
【0072】
従って、12時間以上同一の観測点で上空を通過する人工衛星から発せられた電波を受信することにより人工衛星の軌道を知得できる。
【0073】
図7はある観測点(ここでは、例えば観測点Aとする)に設置された固定局16(又は固定局17)の制御部13に組み込まれた電波障害情報自動作成プログラムによって作成された天空図23上での人工衛星Saの軌跡SRを描いている。この図7において、軌跡SRとして多数の条線が描かれているが、これは上空を通過する人工衛星Saは多数個存在するからである。
【0074】
一方、各人工衛星Saの暦情報とその観測点に置かれた固定局16(又は固定局17)の位置情報とにより各人工衛星の軌道を演算により求めることができる。電波障害情報自動作成プログラムを用いて求められた各人工衛星の天空図23’上での軌跡が図8に示すようなものであったとする。この図8は、電波障害物が何ら存在しないとしたならば、その固定局16又は固定局17が観測点Aに設置されているときに、本来天空図23上に描かれる軌跡SRを表している。これに対して、実際の観測結果を示す図7の天空図23では、軌跡SRの各条線が右斜め上部分に描かれていない。
【0075】
天空図23上には、図9に示すように、既述のリング状のマスクZ2が施されるが、このリング状のマスクZ2を考慮に入れたとしても、図7に示す天空図23には、人工衛星Saからの電波を受信できない領域、すなわち、電波障害物領域z3が存在していることが、図7に示す天空図23と図8に示す天空図23’とを対比することによって把握できる。
【0076】
従って、電波障害情報自動作成プログラムにより、ある観測点に設置された固定局の上空を通過する各人工衛星Saの実際の軌跡を求めると共に、各人工衛星のその観測点において予測される各人工衛星Saの軌跡を求め、実際の軌跡と予測軌跡との差分により、ある観測点において実際の測定により得られた天空図23上での電波障害物領域Z3の大きさとその形状とを図10に示すように推定できる。
【0077】
そして、電波障害情報自動作成プログラムは、このようにして得られた電波障害物領域Z3を固定局の制御部13に保存させる。そして、移動局15の求めに応じて、この電波障害物情報を移動局15に送信する。
【0078】
すると、移動局15の表示部13Dに固定局で自動的に求められた天空図23が表示される。これによって、移動局15は自己の天空図20と送信されてきた固定局の天空図23とを対比させて、その固定局を用いるか否かを決定できる。
【0079】
この実施例では、固定局の制御部13の表示部13Dに各人工衛星Saの実際の軌跡を描かせて表示させているが、自動的に求められた人工衛星Saの軌跡情報を固定局の表示部13Dに表示させる必要はなく、固定局の制御部13のメモリに電波障害物領域情報を保存し、移動局の求めに応じて電波障害物領域情報を送信するようにすれば良い。
(実施例3)
図11は受信した電波に所定比以上のノイズが重畳されているノイズ障害領域(以下、高ノイズ障害領域)が表示されている天空図24を示している。
【0080】
人工衛星Saからの電波が遮蔽物(例えば、ビル等が乱立する建造物の地域)を通過すると、マルチパス現象が生じ、このマルチパス現象により、固定局は高ノイズが重畳された人工衛星Saからの電波を受信することになる。
【0081】
この高ノイズを含む電波を用いてRTK測量を行うと、測量に支障を来す。そこで、固定局の制御部13にノイズ解析プログラム(ノイズ障害領域推定プログラム)を組み込み、実際に到来する人工衛星Saからの電波に含まれているノイズを解析させ、天空図20上の各軌跡SRの各位置においてS/N比を求める。このS/N比が基準とする値よりも小さいノイズ障害領域Z3’を図11に示すように特定する。基準とする値は、衛星受信高度角ごとに適当な値を設定してもよい。また、実際に受信している全衛星のS/N比から基準とする値を求めることもできる。
【0082】
固定局(例えば、固定局16)はこのノイズ障害領域Z3’に関するS/N比領域情報を移動局(例えば、移動局15)に送信する。移動局の制御部13には、人工衛星Saの飛来情報(履歴情報)から、このノイズ障害領域Z3’を通過する衛星番号とその時間帯とを演算する演算プログラムを組み込み、このノイズ障害領域Z3’を通過中の人工衛星からの電波をRTK測量に使用しないように設定する。
【0083】
このように、移動局の制御部13を構成すれば、たとえ、選択された固定局から送信されてきた補正情報にノイズ障害領域Z3’を通過中の人工衛星からの電波が含まれていたとしても、移動局ではそのノイズ障害領域Z3’を通過中の人工衛星からの電波を用いてのRTK測量が行われないことになる。
【0084】
従って、選択された固定局から送信されてきた補正情報にノイズ障害領域Z3’を通過中の人工衛星からの電波が含まれていたとしても、建造物や樹木等に起因する高ノイズが含まれた補正情報を事前に予測でき、良質な補正情報のみを用いて、正確なRTK測量の実施を確保できる。
【0085】
電波障害物領域Z3の情報と、ノイズ障害領域Z3’の情報とを併用して、以下に説明する使い方がある。
(1)各固定局の観測点における電波障害物領域Z3の情報とノイズ障害領域Z3’の情報とを移動局の側で得ることができ、より良い条件で、すなわち、ノイズ障害を除去して観測点をRTK測量の観測時に参照する固定局として選択できる。
(2)ノイズ障害領域Z3’を通過中の人工衛星から受信された電波をRTK解析処理に使用しないように設定できる。
(3)固定局の位置情報と電波障害物領域Z3の情報とノイズ障害領域Z3’の情報とをその固定局の制御部のメモリに保存し、移動局の要求に応じて配信することができる。
(4)固定局からサーバ9に固定局の位置情報と電波障害物領域Z3の情報とノイズ障害領域Z3’の情報とを送信し、サーバ9にこれらを保存させる。サーバ9はこれらの情報を移動局の要求に応じて配信し、移動局はこれらの情報を参照することができる。
【0086】
この実施例によれば、固定局のみで自動的に電波障害物領域Z3、ノイズ障害領域Z3’の各情報を作成することが可能であり、常設の固定局のように、長期間の観測に用いる固定局にあっては、建築構造物の増設や移動、季節の変化による樹木の成長等の環境変化に基づき、固定局の周辺の環境変化がある場合であっても、電波障害物領域Z3、ノイズ障害領域Z3’の情報をリアルタイムで更新が可能であるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】従来のRTK測位システムの一例を示す説明図である。
【図2】従来のRTK測位システムの不具合を説明するための説明図である。
【図3】本発明のRTK−GPS測量システムの一例を示す説明図である。
【図4】本発明のRTK−GPS測量システムに用いる衛星測位手段の構成の一例を示す概要図である。
【図5】本発明のRTK−GPS測量システムによる通信の一例を示す模式図である。
【図6】各衛星測位手段の制御部に表示される人工衛星の飛来情報を示す図であって、(a)は移動局の上空を飛来する人工衛星の飛来情報を示す天空図、(b)はある固定局の上空を飛来する人工衛星の飛来情報を示す天空図、(c)は(b)に示す固定局とは異なる固定局の上空を飛来する人工衛星の飛来情報を示す天空図である。
【図7】固定局の上空を実際に飛来する人工衛星の軌跡を示す天空図である。
【図8】固定局の上空を飛来すると予想される人工衛星の軌跡を示す天空図である。
【図9】図7に示すリング状のマスクを施した状態を示す天空図である。
【図10】図8に示す天空図と図9に示す天空図とから求められた障害物入りの天空図である。
【図11】ノイズ障害領域を示す天空図である。
【符号の説明】
【0088】
9…サーバ
10…通信ネットワーク網
11…衛星測位部
12…通信部
13…制御部
13F…入力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RTK-GPS測量を実行するために、IP−VPN通信ネットワーク網に、補正データを送信する固定局としての複数の衛星測位手段と前記補正データを受信する移動局としての他の複数個の衛星測位手段との通信を確立するサーバが設けられ、
各衛星測位手段は、人工衛星からの電波を受信する衛星測位部と、前記各衛星測位手段との間での通信を行う通信部と、前記衛星測位部と前記通信部との制御を行う制御部とを少なくとも備え、
前記移動局の制御部が前記固定局の各衛星測位手段の制御部に登録された障害物情報を受信して、複数の固定局の中から最適な補正データの送信を行う固定局を選択可能であることを特徴とするRTK-GPS測量システム。
【請求項2】
RTK-GPS測量を実行するために、IP−VPN通信ネットワーク網に、補正データを送信する固定局としての複数の衛星測位手段と前記補正データを受信する移動局としての他の複数個の衛星測位手段との通信を確立するサーバが設けられ、
各衛星測位手段は、人工衛星からの電波を受信する衛星測位部と、前記各衛星測位手段との間での通信を行う通信部と、前記衛星測位部と前記通信部との制御を行う制御部とを少なくとも備え、
前記固定局の制御部は受信した信号のS/N比が基準値よりも低くなるような天空図上での領域を推定する推定手段を備え、前記移動局の制御部は前記天空図上での領域内に存在する人工衛星からの電波に基づく補正データを除去してRTK-GPS解析を行うことを特徴とするRTK-GPS測量システム。
【請求項1】
RTK-GPS測量を実行するために、IP−VPN通信ネットワーク網に、補正データを送信する固定局としての複数の衛星測位手段と前記補正データを受信する移動局としての他の複数個の衛星測位手段との通信を確立するサーバが設けられ、
各衛星測位手段は、人工衛星からの電波を受信する衛星測位部と、前記各衛星測位手段との間での通信を行う通信部と、前記衛星測位部と前記通信部との制御を行う制御部とを少なくとも備え、
前記移動局の制御部が前記固定局の各衛星測位手段の制御部に登録された障害物情報を受信して、複数の固定局の中から最適な補正データの送信を行う固定局を選択可能であることを特徴とするRTK-GPS測量システム。
【請求項2】
RTK-GPS測量を実行するために、IP−VPN通信ネットワーク網に、補正データを送信する固定局としての複数の衛星測位手段と前記補正データを受信する移動局としての他の複数個の衛星測位手段との通信を確立するサーバが設けられ、
各衛星測位手段は、人工衛星からの電波を受信する衛星測位部と、前記各衛星測位手段との間での通信を行う通信部と、前記衛星測位部と前記通信部との制御を行う制御部とを少なくとも備え、
前記固定局の制御部は受信した信号のS/N比が基準値よりも低くなるような天空図上での領域を推定する推定手段を備え、前記移動局の制御部は前記天空図上での領域内に存在する人工衛星からの電波に基づく補正データを除去してRTK-GPS解析を行うことを特徴とするRTK-GPS測量システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−309667(P2007−309667A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−136277(P2006−136277)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)
【Fターム(参考)】
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