説明

RhoA遺伝子のRNAi調節及びその使用法

本発明は、RhoA遺伝子の発現を調節するための組成物及び方法に関し、更に詳細には、化学修飾されたオリゴヌクレオチドによるRhoAの抑制に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2005年7月21日に申請された米国仮出願第60/701,470号明細書、2005年10月14日に申請された米国仮出願第60/726,838号明細書及び2005年12月7日に申請された米国仮出願第60/748,316号明細書の利益を主張するものである。これらの優先出願の各々の内容は参照してその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、RhoAの発現を調節するための組成物及び方法に関し、更に詳細には、RNA干渉を介したオリゴヌクレオチド、例えば、化学修飾されたオリゴヌクレオチドによるRhoA mRNA及びRhoA蛋白質レベルの抑制に関する。
【背景技術】
【0003】
RNA干渉、即ち“RNAi”は、二本鎖RNA(dsRNA)が虫類に導入されると遺伝子発現を阻害しうるという所見を説明するため、Fireとその共同研究者らによって最初に作り出された用語である(ファイアーら(Fire et al.),Nature第391巻:806−811ページ(1998年))。短鎖dsRNAは脊椎動物を含む多くの生物において遺伝子特異的転写後サイレンシングを導き、遺伝子機能を研究するための新しいツールを提供している。
【0004】
多くのミエリン由来の軸索成長阻害物質が特徴づけられている(閲覧のため、国際公開第1999/995394547号パンフレット;米国特許第5,858,708号明細書;シュワブ(Schwab),Neurochem.第21巻:755〜761ページ(1996年)を参照)。軸索伸長に対する阻害活性を有するCNSの白質の幾つかの構成要素であるNI35,NI250(Nogo)及びミエリン関連糖蛋白質(MAG)も記載されている(国際公開第1990/9005191号パンフレット;米国特許第5,684,133号明細書)。特に、RhoAは、それ自体がRas GTPアーゼのスーパーファミリーに属するRho(Ras相同体(Ras homologue))GTPアーゼの大ファミリーのメンバーである。全ての真核生物は少なくとも一つのRhoGTPアーゼを含む。進化の過程において、Rho GTPアーゼの数は1生物につき5〜6(酵母)から20以上(哺乳動物)に増加した(カルノブ、エー.イー.ら(Karnoub,A.E.et al.),Breast Cancer Res.Treat.,第84巻:61ページ(2004年))。他のGTPアーゼと同様に、RhoAは内因性GTPアーゼ活性を有し、不活性GDP結合状態と活性GTP結合状態との間を往来する。インビトロではGDPのGTPへの変換は極めて緩徐に生じ、GDPをGTPと交換するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)により触媒される。GTPアーゼ活性化蛋白質(GAP)はGTPのγ−リン酸の加水分解を触媒する(ウィーラー、エー.ピー.(Wheeler,A.P.),リドレイ、エー.ジェイ.(Ridley,A.J.),Exp.Cell Res.,第301巻:43ページ(2004年))。第三のセットの調節蛋白質であるグアニンヌクレオチド解離阻害物質(GDI)は、不活性GDP結合状態にてGTPアーゼをサイトゾルに隔離する。
【0005】
Rho GTPアーゼのN末端半分は、GTP結合状態とGDP結合状態との間で構造を変化させるスイッチ1及び2領域と共に、GTP結合及び加水分解に関与する大部分のアミノ酸を含む(ビショップ、エー.エル.(Bishop,A.L.),ホール、エー.(Hall,A.),Biochem.J.,第348巻(Pt.2):241ページ(2000年))。RhoファミリーGTPアーゼのC末端は、蛋白質の正確な局在に不可欠である。これは保存C末端システインのプレニル化によって翻訳後修飾され、次に、最後の3個のアミノ酸のメチル化及び蛋白分解除去が生じる(シャオ(Shao,F.),ディクソン、ジェイ.イー.(Dixon,J.E.),Adv.Exp.Med.Biol.,第529巻:79ページ(2003年))。プレニル基はGTPアーゼを膜内に固着し、この修飾は細胞増殖、形質転換及び細胞骨格構成に不可欠である(アラル、シーら(Allal,C,et al.),J.Biol.Chem.,第275巻:31001ページ(2000年))。Rho蛋白質のプレニル化はその安定性のために重要だと思われ、プレニル基を合成する酵素の阻害物質はRho蛋白質レベル及びその機能の低下を誘発する(スタマタキス、ケー.ら(Stamatakis,K.,et al.),J.Biol.Chem,第277巻:49389ページ(2002年))。RhoAの場合、プレニル化はゲラニルゲラニル基を付加する。RhoAは主に細胞質内又は原形質膜において見出される(アダムソン、ピー.ら(Adamson,P.,et al.),J.Cell Biol.,第119巻:617ページ(1992年))。
【0006】
RhoAはp75NTRの細胞内部分に結合することができ、p75NTR依存的にNogo−Rにより活性化され(ワン、ケー.シー.ら(Wang,K.C.,et al.),Nature,第420巻:74ページ(2002年))、このようにしてMAG,Nogo−66及びオリゴデンドロサイト−ミエリン糖蛋白質がRhoAを活性化させる。Nogo−Aの中央阻害ドメインであってNogo−66と異なるNiG、及びコンドロイチン硫酸プロテオグリカンであってミエリンのもう1つの構成要素であるVersican V2は、未だ解明されていないRhoA活性化の別の経路により、p75NTRの非存在下にてRhoAを活性化することができる(シュバイガイテル、アール.ら(Schweigreiter,R.,et al.,)Mol.Cell Neurosci.,第27巻:163ページ(2004年))。活性化の更なる経路が存在する可能性がある。
【0007】
RhoAは中枢神経系(CNS)に存在するが末梢神経には存在しない成長抑制機構の一部であり、損傷後のCNS組織の再生を阻害する。RhoAの発現及び活性化の双方は脳及び脊髄損傷にて誘発される(ミューラー、ケー.ら(Mueller,K.,et al.),Nature Reviews,第4巻:387ページ(2005年))。RhoAの活性化は、神経成長円錘の破壊、退縮球の形成及び神経突起の消退を惹起する。RhoAの不活性化はインビトロにて本来であれば阻害性の基質上の一次ニューロンにおける神経突起の伸長を惹起し、インビボにてラット及びマウスにおいて脊髄損傷後に軸索の再生及び機能回復を促進する(レーマン、エム.エー.ら(Lehmann,M.A.,et al.),J.Neurosci.,第19巻:7537ページ(1999年);ハラ、エム.ら(Hara,M,et al.),J.Neurosurg.,第93巻:94ページ(2000年);ダーグハム、ピー.ら(Dergham,P.,et al.),J.Neurosci.,第22巻:6570ページ(2002年))。更に、RhoAの不活性化は、脊髄損傷に誘発されるアポトーシスから脊髄の内在細胞を防御することが示されている(デュブリュイ、シー.アイ.ら(Dubreuil,C.I.,et al),J.Cell Biol.,第162巻:233ページ(2003年))。脊髄損傷後の神経保護処置が機能回復の改善につながるため、これらの所見は臨床的意義を有する(リュー、エックス.ゼット.ら(Liu,X.Z.,et al.),J.Neurosci.,第17巻:5395ページ(1997年))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
明らかに、RhoAは、例えばCNS細胞の破壊および/または再生障害を伴う疾患及び病態を対象にした治療的介入戦略の標的となりうる。本発明は、RhoA遺伝子を発現している細胞内のRhoA mRNA及び蛋白質レベルの抑制を惹起する方法及び短鎖dsRNAを含む薬剤を提供することにより、当該技術を進展させる。これらの方法及び薬剤は、例えば、RhoAの軸索伸長の阻害を阻止し、その結果、神経の成長及び増殖を刺激することにより、少なくとも部分的にRhoAに媒介される障害又は病理過程の処置に用いられうる。
【0009】
本発明は、少なくとも部分的にiRNA剤を用いたRhoA遺伝子の検討、更に、RhoA部位を標的とするiRNA剤の試験に基づく。本発明は、RhoA mRNAレベル、RhoA蛋白質レベルを低下させ、少なくとも部分的にRhoAに媒介される病理過程を処置する、例えば、対象、例えばヒトのような哺乳動物においてRhoAの軸索伸長・再生の阻害を阻止するのに有用な組成物及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様において、本発明は、下記表1に示す物質番号6477〜6836から成る群から選択される任意の1つの物質のセンス鎖配列と僅かに1,2又は3個のヌクレオチドだけ異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含むセンス鎖と、物質番号6477〜6836から成る群から選択される任意の1つの物質のアンチセンス配列と僅かに1,2又は3個のヌクレオチドだけ異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含むアンチセンス鎖とを含むiRNA剤を提供する。
【0011】
更なる態様において、本発明は、物質番号6477〜6836から成る群から選択される任意の1つの物質のセンス鎖配列と僅かに1,2又は3個のヌクレオチドだけ異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含むセンス鎖と、物質番号6477〜6836から成る群から選択される任意の1つの物質のアンチセンス配列の少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含むアンチセンス鎖とを含む、細胞内のrhoA遺伝子の発現を阻害するためのiRNA剤であって、これらの物質とのインキュベーション後にヒト培養細胞に存在するRhoA mRNAの量を、物質とインキュベートされなかった細胞に対して40%以上減少させるiRNA剤を提供する。
【0012】
更なる態様において、本発明は、物質番号6477〜6836から成る群から選択される任意の1つの物質の配列の1つと本質的に同一の少なくとも16,17又は18個のヌクレオチドの配列、但し、それぞれ1鎖につき1,2又は3個以下のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換されているが(例えば、アデノシンがウラシルに置換)、RhoA発現を阻害する能力を本質的に保持している配列を各々が含むセンス鎖とアンチセンス鎖とを含む、細胞内のrhoA遺伝子の発現を阻害するためのiRNA剤を提供する。このような物質では、センスおよび/またはアンチセンス鎖配列は、物質番号6523,6524,6530,6614,6650,6656,6657,6661,6662,6703,6712,6713,6732,6751,6756,6767,6769,6787,6789,6790,6832のセンス及びアンチセンス鎖配列から成る群から選択されることが好ましい。
【0013】
明らかに、上記実施形態において、本発明のiRNA剤のセンス鎖および/またはアンチセンス鎖は、物質番号6477〜6836の物質のセンス鎖及びアンチセンス鎖とも同一でありうる。
【0014】
本発明のiRNA剤は修飾、例えばiRNA剤が生体試料において上昇した安定性を有するような修飾を含むことができる。例えば、iRNA剤はホスホロチオアート、2’−修飾ヌクレオチド、固定ヌクレオチド、非塩基性ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミダート又はヌクレオチドを構成する非天然塩基を含むことができる。上記実施形態のために、iRNA剤はヌクレオチド修飾の存在の可能性にかかわらず、物質番号6477〜6836の物質の配列の1つを含むとみなされ、即ち2’−O−メチルグアノシンはそのような比較ではグアノシンとみなされうる。しかし、一定のパターンの修飾が本発明の特に好ましい実施形態である。従って、別の実施形態において、本発明は、センスおよび/またはアンチセンス鎖配列が物質番号AL−DP−5972,AL−DP−5973,AL−DP−5974,AL−DP−5975,AL−DP−5976,AL−DP−5978,AL−DP−5979,AL−DP−5981,AL−DP−5982,AL−DP−5983,AL−DP−5984,AL−DP−5986,AL−DP−5987,AL−DP−5988,AL−DP−5989,AL−DP−5990,AL−DP−5991,AL−DP−5992,AL−DP−5993,AL−DP−5994,AL−DP−5995,AL−DP−6176,AL−DP−6177のセンス及びアンチセンス鎖配列から成る群から選択される、細胞内のrhoA遺伝子の発現を阻害するためのiRNA剤を提供する。
【0015】
本発明のiRNA剤において、アンチセンスRNA鎖は30以下のヌクレオチド長となり、iRNA剤の二重鎖領域は15〜30ヌクレオチド対長となることができる。
本発明に係る2’−修飾ヌクレオチドは、ウリジンが2’−修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−ウリジン−アデニン−3’(5’−ua−3’)ジヌクレオチド;5’−ウリジンが2’−修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−ウリジン−グアニン−3’(5’−ug−3’)ジヌクレオチド;5’−シチジンが2’−修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−シチジン−アデニン−3’(5’−ca−3’)ジヌクレオチド;又は5’−ウリジンが2’−修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−ウリジン−ウリジン−3’(5’−uu−3’)ジヌクレオチドを含みうる。
【0016】
本発明のiRNA剤は下記のように設計されうる。
5’−ua−3’,5’−uu−3’,5’−ca−3’及び5’−ug−3’モチーフにおけるすべての5’−ヌクレオチドがセンス鎖において2’−修飾され、5’−ua−3’及び5’−ca−3’モチーフにおけるすべての5’−ヌクレオチドがアンチセンス鎖において2’−修飾され、或いは、
5’−ua−3’,5’−uu−3’,5’−ca−3’及び5’−ug−3’モチーフにおけるすべての5’−ヌクレオチドが、センス及びアンチセンス鎖において2’−修飾され、或いは、
すべてのピリミジンヌクレオチドがセンス鎖において2’−修飾され、5’−ua−3’及び5’−ca−3’モチーフにおけるすべての5’−ヌクレオチドがアンチセンス鎖において2’−修飾され、或いは、
すべてのピリミジンヌクレオチドがセンス鎖において2’−修飾され、5’−ua−3’,5’−uu−3’,5’−ca−3’及び5’−ug−3’モチーフにおけるすべての5’−ヌクレオチドがアンチセンス鎖において2’−修飾され、或いは、
センス鎖におけるすべてのピリミジンヌクレオチドが2’−修飾され、アンチセンス鎖ではヌクレオチドが2’−修飾されない。
【0017】
本発明のiRNA剤における2’−修飾は、2’−デオキシ、2’−デオキシ−2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−O−メトキシエチル(2’−O−MOE)、2’−O−アミノプロピル(2’−O−AP)、2’−O−ジメチルアミノエチル(2’−O−DMAOE)、2’−O−ジメチルアミノプロピル(2’−O−DMAP)、2’−O−ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’−O−DMAEOE)及び2’−O−N−メチルアセトアミド(2’−O−NMA)から成る群から選択されうる。
【0018】
本発明のiRNA剤は、1〜4個の不対合ヌクレオチド、好ましくは2又は3個の不対合ヌクレオチドを有するヌクレオチドオーバーハングを含むことができる。ヌクレオチドオーバーハングはiRNA剤のアンチセンス鎖の3’−末端に存在することができる。iRNA剤は、好ましくはiRNA剤のセンス鎖の3’−末端に共役結合したコレステロール部分を含むことができる。好ましい実施形態では、iRNA剤は神経細胞又は神経鞘細胞による取込みの標的となる。
【0019】
本発明は、細胞内のRhoA mRNAレベルを低下させるための方法を更に提供する。本発明の方法は、細胞内のRhoA mRNAを選択的に低下させるためにRNA干渉に関与する細胞機構を利用し、本発明のiRNA剤の1つと細胞を接触させるステップから成る。このような方法は細胞に対して直接行うことができ、或いは本発明のiRNA剤の1つを哺乳動物の被検体に投与することにより、被検体に対して行うことができる。細胞内のRhoA mRNAの減少は産生されるRhoA蛋白質の量の減少をもたらし、生体においてRhoA特異的病理/疾患作用の低下をもたらしえて、例えば、RhoAの軸索伸長・再生の阻害を阻止する。
【0020】
本発明の別の態様では、本発明のiRNA剤を投与するステップを含む、少なくとも部分的にRhoAに媒介される病理過程を有するヒト被験者を処置する方法が提供され、例えば、iRNA剤は物質番号6477〜6836の任意の1つの物質のセンス鎖配列と僅かに1,2又は3個のヌクレオチドだけ異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含むセンス鎖と、物質番号6477〜6836の任意の1つの物質のアンチセンス配列と僅かに1,2又は3個のヌクレオチドだけ異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含むアンチセンス鎖とを含む。
【0021】
本発明の上記方法の一実施形態において、病理過程は、好ましくは神経の障害又は損傷の結果としての神経の成長又は伸長の阻害である。別の好ましい実施形態において、iRNA剤は対象の細胞又は組織内のRhoAの発現を低減させるのに十分な量にて投与される。対象はヒトであることが好ましい。
【0022】
別の態様では、本発明は、
a)本発明のiRNA剤と、
b)医薬的に許容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0023】
別の実施形態において、本発明は本発明のiRNA剤を含む細胞を提供する。
別の実施形態において、本発明は細胞内のRhoA遺伝子の発現を阻害するための方法を提供し、当該方法は、
(a)本発明のiRNA剤を細胞に導入するステップと、
(b)RhoA遺伝子のmRNA転写の低下を得るのに十分な時間、ステップ(a)にて作製された細胞を維持し、これにより細胞内のRhoA遺伝子の発現を阻害するステップとを含む。
【0024】
別の実施形態において、本発明は細胞内のRhoA遺伝子の発現を阻害するためのベクターを提供し、前記ベクターは、本発明のiRNA剤の少なくとも1つの鎖をコードするヌクレオチド配列に機能的に結合した調節配列を含む。
【0025】
別の実施形態において、本発明は上記ベクターを含む細胞を提供する。
本発明の方法及び組成物、例えば方法及びiRNA組成物は、本願で述べる任意の用量/製剤及び本願で述べる任意の投与経路で使用されることができる。
【0026】
本発明の1又はそれ以上の実施形態の詳細は下記に示される。本発明の他の特徴、目的及び利点は下記の説明及び特許請求の範囲から明らかになろう。本出願はあらゆる目的のために、引用されたすべての参考文献、特許及び特許出願を参照してその全体を組み込むものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
説明を容易にするため、「ヌクレオチド」又は「リボヌクレオチド」という用語は、RNA剤の1又はそれ以上のモノマーサブユニットに関して本願で用いられることがある。本願における「リボヌクレオチド」又は「ヌクレオチド」という用語の用法は、修飾RNA又はヌクレオチドサロゲートの場合、下記に更に説明するように、1又はそれ以上の位置における修飾ヌクレオチド又はサロゲート置換部分も指すことを理解されよう。
【0028】
本願で用いられる「RNA剤」は非修飾RNA、修飾RNA又はヌクレオチドサロゲートであり、これらの各々は本願で説明され、或いはRNA合成技術分野で周知である。多くの修飾RNA及びヌクレオシドサロゲートが記載されているが、好ましい例には、非修飾RNAよりヌクレアーゼによる分解に対する抵抗性が高いものが含まれる。好ましい例には、2’糖修飾、一本鎖オーバーハング、好ましくは3’一本鎖オーバーハングの修飾又は、特に一本鎖の場合、1つ以上のリン酸基若しくは1つ以上のリン酸基類似体を含む5’−修飾を有するものが含まれる。
【0029】
本願で用いられる「iRNA剤」(「干渉RNA剤」の略語)は、標的遺伝子、例えばRhoAの発現を抑制することができるRNA剤である。理論によって限定されることを望まないが、iRNA剤は当該技術分野でRNAiと称されることもある標的mRNAの転写後開裂又は転写前機序又は翻訳前機序を含む多くの機序の1又はそれ以上の機序により作用することができる。iRNA剤は二本鎖iRNA剤とすることができる。
【0030】
本願で用いられる「dsiRNA剤」(「二本鎖iRNA剤」の略語)は、鎖間ハイブリダイゼーションが二重鎖構造の領域を形成することができる、二本以上、好ましくは二本の鎖を含むiRNA剤である。本願における「鎖」はヌクレオチド(非天然型又は修飾ヌクレオチドを含む)の隣接配列を指す。二本以上の鎖又は各鎖は別々の分子の一部を形成し、或いは、例えばリンカー、例えばポリエチレングリコールリンカーによって共有結合的に相互結合して1個の分子を形成することができる。少なくとも一本の鎖は、標的RNAに対して十分に相補的な領域を含むことができる。このような鎖は「アンチセンス鎖」と称される。アンチセンス鎖に相補的な領域を含む剤の第二の鎖は「センス鎖」と称される。しかし、dsiRNA剤は少なくとも部分的に自己相補的であって、例えば、二重鎖領域を含むヘアピン又はパンハンドル構造を形成する単一RNA分子からも形成されうる。このような場合、「鎖」という用語は同じRNA分子の別の領域に相補的なRNA分子の1つの領域を指す。
【0031】
哺乳動物細胞において、長鎖dsiRNA剤は有害となる頻度が高いインターフェロン応答を誘発しうるが、短鎖dsiRNA剤は少なくとも細胞および/または宿主に有害となるほどにインターフェロン応答を惹起しない(マンシェら(Manche et al.),Mol.Cell.Biol.12:第5238巻,1992年;リーら(Lee et al.,Virology 第199巻:491ページ,1994年;カステリら(Castelli et al.),J.Exp.Med.第186巻:967ページ,(1997年);チェンら(Zheng et al.),RNA第10巻:1934ページ,(2004年);ハイデルら(Heidel et al.)「動物における裸のsiRNAに対するインターフェロン応答の欠如(”Lack of interferon response in animals to naked siRNAs”)」、Nature Biotechm.advance online publication doi:10.1038/nbt1038(2004年11月21日))。本発明のiRNA剤は、十分に短く正常哺乳動物細胞において有害な非特異的インターフェロン応答を惹起しない分子を含む。従って、iRNA剤を含む組成物(例えば、本願で述べるように製剤化)の対象への投与は、インターフェロン応答を回避すると同時に、対象においてRhoA発現細胞におけるRhoA遺伝子の発現を低減するのに用いられることができる。十分に短く有害なインターフェロン応答を惹起しない分子は、本願ではsiRNA剤又はsiRNAと称される。本願で用いられる「siRNA剤」又は「siRNA」は、十分に短いためヒト細胞において有害なインターフェロン応答を誘発しないiRNA剤、例えばdsiRNA剤を指し、例えば、60未満であるが好ましくは50,40又は30未満のヌクレオチド対の二重鎖領域を有する。
【0032】
dsiRNA剤及びsiRNA剤を含む、本願で述べられる単離されたiRNA剤は、例えばRNA分解により、RhoA核酸の発現の低減を媒介することができる。説明の便宜上、このようなRNAは本願においてサイレンシングされるRNAとも称される。このような核酸は標的遺伝子とも称される。サイレンシングされるRNAは、内在性RhoA遺伝子の遺伝子産物であることが好ましい。
【0033】
本願で用いられるように、「RNAiを媒介する」という表現は標的遺伝子を配列特異的にサイレンシングする物質の能力を指す。「標的遺伝子をサイレンシングする」とは、当該物質と接触していない時に標的遺伝子のある種の産物を含み、および/または発現している細胞が、当該物質と接触していない同様の細胞に対して、当該物質と接触した時、このような遺伝子産物を少なくとも10%,15%,20%,25%,30%,35%,40%,45%,50%,55%,60%,65%,70%,75%,80%,85%又は90%減で含み、および/または発現するプロセスをいう。標的遺伝子のこのような産物は、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、蛋白質又は調節エレメントでありうる。
【0034】
本願で用いられるように、「相補的」という用語は、本発明の化合物と標的RNA分子、例えば、RhoA mRNAとの間に安定した特異的な結合が生じるのに十分な相補性を示すのに用いられる。特異的結合は、特異的結合が所望される条件下、即ち、インビボアッセイ又は治療上の処置の場合の生理学的条件下、或いはインビトロアッセイの場合、アッセイが実施される条件下、オリゴマー化合物の非標的配列への非特異的結合を回避するのに十分な相補性を必要とする。典型的には、非標的配列は少なくとも4個のヌクレオチドだけ標的配列と異なる。
【0035】
本願で用いられるように、iRNA剤は、細胞において標的RNAにコードされた蛋白質の産生を減少させる場合、標的RNA、例えば標的mRNA(例えば、標的RhoA mRNA)に「十分に相補的」である。iRNA剤は標的RNAに「完全に相補的」ともなることができ、例えば、標的RNAとiRNA剤はアニーリングし、好ましくはワトソン・クリック型塩基対のみでできたハイブリッドを完全な相補性の領域に形成する。「十分に相補的」なiRNA剤は、標的RhoA RNAに完全に相補的な(例えば、少なくとも10個のヌクレオチドの)内部領域を含みうる。更に、一部の実施形態において、iRNA剤は単一ヌクレオチドの相違を特異的に識別する。この場合、単一ヌクレオチドの相違の領域(例えば、7ヌクレオチド以内)に完全な相補性が見出される場合、iRNA剤はRNAiを媒介するだけである。好ましいiRNA剤は表1に示すセンス及びアンチセンス配列に基づき、或いはこれらから成り、或いはこれらを含む。
【0036】
本願で用いられるように、第二のヌクレオチド配列と比較して第一のヌクレオチド配列に言及して用いられる際の「本質的に同一」とは、第一のヌクレオチド配列が1,2又は3つまでのヌクレオチド置換(例えば、アデノシンがウラシルに置換)を除き、第二のヌクレオチド配列と同一であることをいう。ヌクレオチドの欠失、付加又は置換により、表1のiRNA剤の1つと同一ではないがその1つに由来するiRNA剤に言及して本願で用いられる、「培養ヒトRhoA発現細胞におけるRhoA発現を阻害する能力を本質的に保持している」とは、得られたiRNA剤がその由来源の表1のiRNA剤の阻害活性と20%以下異なる阻害活性を有する(残存標的mRNAの点から)ことをいう。例えば、培養ヒトRho−A発現細胞に存在するRhoA mRNAの量を70%低下させる表1のiRNA剤に由来するiRNA剤は、培養ヒトRhoA発現細胞におけるRhoA発現を阻害する能力を本質的に保持しているとみなされるために、それ自体が培養ヒトRhoA発現細胞に存在するRhoA mRNAの量を少なくとも50%低下させうる。任意で、本発明のiRNA剤は培養ヒトRhoA発現細胞に存在するRhoA mRNAの量を少なくとも50%又は少なくとも40%低下させうる。
【0037】
本願で用いられるように、「対象」はRhoA蛋白質発現に媒介される障害に対する処置を受ける哺乳動物を指す。対象はウシ、ウマ、マウス、ラット、イヌ、ブタ、ヤギ又は霊長動物のような任意の哺乳動物でよい。好ましい実施形態において、対象はヒトである。
【0038】
iRNA剤の設計及び選択
本願で用いられるように、「RhoA発現と関連する障害」は、(1)RhoA mRNAおよび/または蛋白質の存在に部分的に媒介され、(2)そのアウトカムが、存在するRhoA mRNAおよび/または蛋白質のレベルを低下させることによって影響を及ぼされうる、任意の生体又は病理状態を指す。RhoA発現と関連する特異的障害は下記に示され、主に軸索の伸長及び再生の阻害におけるRhoAの作用の原因に基づく。
【0039】
本発明は、RhoAを標的とするiRNA剤の設計、合成及び生成並びにiRNA剤とのインキュベーション後の培養細胞におけるインビトロでのRhoA遺伝子のサイレンシングの実証並びにその結果生じるRhoA特異的効果に基づく。
【0040】
iRNA剤は、配列情報及び所望の特性に基づき合理的に設計されうる。例えば、iRNA剤は候補二重鎖の相対融解温度に従って設計されうる。一般的に、二重鎖はアンチセンス鎖の5’末端においてアンチセンス鎖の3’末端より低い融解温度を有するものである。
【0041】
候補iRNA剤は、例えば、標的遺伝子として機能する遺伝子の遺伝子歩行分析を行うことにより設計されることもできる。転写領域の全て又は一部に対応する、重複し、隣接し、或いは近接配置された候補物質を生成し、試験することができる。各iRNA剤は標的遺伝子の発現を抑制する能力を試験し、評価することができる(下記「候補iRNA剤の評価」参照)。
【0042】
本出願において、ヒト、ラット及びマウスの既知のRhoA配列並びに他の既知のRhoA配列を用いて、RhoAを標的とする、見込みのあるiRNA剤が設計された。上述の表1に示す標的配列は、ラット及びマウスにおける対応配列との完全な相同性を示すヒトRhoA mRNA配列の領域から選択された。従って、siRNA剤、物質番号6477〜6836はこれら3種間の交差反応性を示すはずである。得られた結果に基づき、本発明は、培養ヒトRhoA発現細胞及び対象におけるRhoAをサイレンシングするiRNA剤を提供する。
【0043】
表1はRhoAを標的とする例示的iRNA剤を示す。
【0044】
【表1】













これらの結果に基づき、本発明は、物質番号6477〜6836によって表1に示される物質のセンス鎖配列の少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを有するセンス鎖と、物質番号6477〜6836によって表1に示される物質のアンチセンス鎖配列の少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを有するアンチセンス鎖とを含むiRNA剤を具体的に提供する。
【0045】
表1に示すiRNA剤は、標的配列に相補的な、或いは標的配列と同一の19ヌクレオチド長+3’−TTオーバーハングの二本鎖から成る。本発明は、これらの物質由来の15隣接ヌクレオチドを含む物質を提供する。しかし、これらの長さは至適である可能性があるが、iRNA剤はこれらの長さに限定されるものではない。一定の長さ範囲内では効力は鎖長というよりもヌクレオチド配列の機能であるため、より短く、或いはより長いiRNA剤が同様に効果的でありうることは当業者には周知のことである。例えば、ヤングら(Yang,et al.,PNAS第99巻:9942−9947ページ(2002年))は21〜30塩基対長のiRNA剤に対する同様の有効性を実証した。他には約15塩基対長まで減じたiRNA剤による遺伝子の効果的なサイレンシングを示している者もいる(バイロムら(Byrom,et al.)「RNアーゼIIIにより生成されたsiRNAカクテルによるRNAiの誘発(”Inducing RNAi with siRNA Cocktails Generated by RNase III”)」、Tech Notes 10(1),アンビオン、インク.(Ambion,Inc.)[米国テキサス州オースチン(Austin)]。
【0046】
従って、物質番号6477〜6836によって表1に示される配列の1つに由来するiRNA剤を生成するため、物質番号6477〜6836によって表1に示される配列から15〜22ヌクレオチドの部分配列を選択することが可能であるとともに本発明により企図される。或いは、好ましいが必須ではなく、付加ヌクレオチドが標的遺伝子、例えばRhoAのそれぞれの配列に相補的となるように、物質番号6477〜6836によって表1に示される配列の1つ又はこれらの物質の1つに由来する15隣接ヌクレオチドを含む物質に1つ又は複数のヌクレオチドを付加しうる。例えば、物質の1つに由来する最初の15ヌクレオチドをRhoA mRNAに見出される5’からのこれらの配列の8ヌクレオチドと結合し、センス及びアンチセンス鎖において23ヌクレオチドを有する物質を得ることができる。このようにして得られるiRNA剤は、培養ヒトRhoA発現細胞においてRhoA発現を阻害する能力を本質的に保持するという条件下、すべて本発明のiRNA剤に含まれる。
【0047】
iRNA剤のアンチセンス鎖は14,15,16 17,18,19,25,29,40又は50ヌクレオチド長と同等であり、或いは少なくとも14,15,16 17,18,19,25,29,40又は50ヌクレオチド長であるべきである。アンチセンス鎖は60,50,40又は30ヌクレオチド長と同等であり、或いは60,50,40又は30ヌクレオチド長未満であるべきである。好ましい範囲は15〜30,17〜25,19〜23及び19〜21ヌクレオチド長である。
【0048】
iRNA剤のセンス鎖は14,15,16 17,18,19,25,29,40又は50ヌクレオチド長と同等であり、或いは少なくとも14,15,16 17,18,19,25,29,40又は50ヌクレオチド長であるべきである。センス鎖は60,50,40又は30ヌクレオチド長と同等であり、或いは60,50,40又は30ヌクレオチド長未満であるべきである。好ましい範囲は15〜30,17〜25,19〜23及び19〜21ヌクレオチド長である。
【0049】
iRNA剤の二本鎖部分は15,16 17,18,19,20,21,22,23,24,25,29,40又は50ヌクレオチド対長と同等であり、或いは少なくとも15,16 17,18,19,20,21,22,23,24,25,29,40又は50ヌクレオチド対長であるべきである。二本鎖部分は60,50,40又は30ヌクレオチド対長と同等であり、或いは60,50,40又は30ヌクレオチド対長未満であるべきである。好ましい範囲は15〜30,17〜25,19〜23及び19〜21ヌクレオチド対長である。
【0050】
通常、本発明のiRNA剤は、それぞれのRhoA遺伝子に十分に相補的な領域を含み、ヌクレオチドの点から十分な長さであるため、iRNA剤又はその断片はRhoA遺伝子の抑制を媒介することができる。物質番号6477〜6836下の表1のiRNA剤のアンチセンス鎖のリボヌクレオチド部分は、それぞれRhoA遺伝子のmRNA配列に完全に相補的であり、それらのセンス鎖のリボヌクレオチド部分は、単一オーバーハング設計のiRNA剤におけるアンチセンス鎖上の2個の3’−末端ヌクレオチドを除き、それぞれのアンチセンス鎖のリボヌクレオチド部分に完全に相補的である。しかし、iRNA剤と標的との間に完全な相補性が存在する必要はないが、対応関係は、iRNA剤又はその分解産物が、例えば、RNAiによるRhoA mRNAの開裂により配列特異的サイレンシングを導くことを可能にするほどに十分でなければならない。
【0051】
従って、本発明のiRNA剤は、物質番号6477〜6836下の表1の配列の1つと下記のように本質的に同一の少なくとも16,17又は18個のヌクレオチドの配列、但し、それぞれ1鎖につき1,2又は3個以下のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換されているが(例えば、アデノシンがウラシルに置換)、それぞれ培養ヒトRho発現細胞におけるRhoA発現を阻害する能力を本質的に保持している配列を各々が含むセンス鎖とアンチセンス鎖とを含む物質を含む。従って、これらの物質は、物質番号6477〜6836下の表1の配列の1つと同一の少なくとも15個のヌクレオチドを有するが、標的RhoA mRNA配列に関する、或いはセンスとアンチセンス鎖の間の1,2又は3つの塩基ミスマッチが導入される。特にアンチセンス鎖における標的RhoA mRNA配列へのミスマッチは末端領域で最も許容され、存在する場合、1つの末端領域又は複数の末端領域に存在することが好ましく、例えば、5’および/または3’末端の6,5,4若しくは3ヌクレオチド内、最も好ましくはセンス鎖の5’末端又はアンチセンス鎖の3’末端の6,5,4若しくは3ヌクレオチド内に存在する。センス鎖は分子の総体的な二本鎖特性を維持するため、アンチセンス鎖と十分に相補的である必要があるのみである。
【0052】
iRNA剤が分子の一端又は両端に一本鎖又は非対合領域を含むように、センス及びアンチセンス鎖が選択されることが好ましい。従って、iRNA剤は、好ましくは対合してオーバーハング、例えば、1つ又は2つの5’又は3’オーバーハングであるが好ましくは2〜3ヌクレオチドの1つの3’オーバーハングを含むセンス及びアンチセンス鎖を含む。大部分の実施形態では1つの3’オーバーハングを含む。好ましいsiRNA剤は、iRNA剤の一端又は両端において、1〜4、好ましくは2又は3ヌクレオチド長の一本鎖オーバーハング、好ましくは3’オーバーハングを有する。オーバーハングは、一方の鎖が他方の鎖より長いことの結果又は同じ長さの二本の鎖がねじれていることの結果でありうる。オーバーハングを形成する不対合ヌクレオチドはリボヌクレオチドでありえて、或いはデオキシリボヌクレオチド、好ましくはチミジンでありうる。5’−末端はリン酸化されることが好ましい。
【0053】
二重領域の好ましい長さは15〜30であり、最も好ましくは18,19,20,21,22及び23ヌクレオチド長であり、例えば、上述のsiRNA剤の範囲内である。siRNA剤は長さ及び構造において、長鎖dsRNA由来のダイサー加工された天然産物に類似しうる。siRNA剤の二本の鎖が連結、例えば、共有結合で連結した実施形態も含まれる。必要な二本鎖領域及び好ましくは3’オーバーハングを付与するヘアピン又は、他の一本鎖構造も本発明の範囲内である。
【0054】
候補iRNA剤の評価
候補iRNA剤は、標的遺伝子の発現を抑制する能力について評価されることができる。例えば、候補iRNA剤を供し、内因的に、或いはRhoA蛋白質が発現可能な構造体でトランスフェクションされたために、標的遺伝子、例えばRhoA遺伝子を発現する細胞と接触させることができる。候補iRNA剤との接触前後の標的遺伝子の発現レベルを、例えば、mRNA又は蛋白質レベルで比較することができる。標的遺伝子から発現されたRNA又は蛋白質の量がiRNA剤との接触後に減少していると判定された場合、iRNA剤は標的遺伝子の発現を抑制すると結論づけることができる。細胞内の標的RhoA RNA又はRhoA蛋白質のレベルは、所望の任意の方法により求めることができる。例えば、標的RNAのレベルはノーザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を加えた逆転写又はRNアーゼ保護アッセイにより求めることができる。蛋白質のレベルは、例えば、ウェスタンブロット分析又は免疫蛍光法により求められることができる。好ましくは、アッセイでは、例えば、iRNA剤の神経細胞成長を促進する能力を評価することにより、機能レベルでRhoA発現を阻害するiRNA剤の能力、例えば、本来であれば阻害性の基質、例えば、ミエリンを含む基質上での軸索成長の回復も試験する。
【0055】
安定性試験、修飾及びiRNA剤の再試験
候補iRNA剤は、安定性、例えばiRNA剤が対象の体内に導入された時のように、エンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼによる切断に対する感受性に関して評価されることができる。修飾、特に切断、例えば、対象の体内に見出される成分による切断を受けやすい部位を同定するための方法を用いることができる。
【0056】
切断を受けやすい部位が同定された時、更なるiRNA剤を設計し、および/または合成することができ、例えば、切断部位上への2’−修飾、例えば2’−O−メチル基の導入により、切断可能性のある部位は切断に対して抵抗性となる。この更なるiRNA剤は安定性について再試験されることができ、iRNA剤が所望の安定性を示すことが見出されるまで、このプロセスを繰り返しうる。
【0057】
インビボ試験
RhoA遺伝子発現を阻害することが可能であると同定されたiRNA剤は、動物モデルにおいて(例えば、マウス又はラットのような哺乳動物において)インビボにて機能性について試験されることができる。例えば、iRNA剤を動物に投与し、その生体内分布、安定性並びにRhoA遺伝子発現を阻害し、或いは少なくとも部分的にRhoAに媒介される生体又は病理過程を低減する能力に関し、iRNA剤を評価することができる。
【0058】
iRNA剤を、標的組織、例えば脊髄に、また、脊髄損傷モデルの場合には脊髄損傷部位に、注射などによって直接投与することができる。iRNA剤はヒトに投与される場合と同様に動物モデルに投与されることが好ましい。
【0059】
iRNA剤はその細胞内分布についても評価されることができる。その評価はiRNA剤が細胞内に取り込まれたかを判定されることを含みうる。その評価はiRNA剤の安定性(例えば、半減期)を判定されることも含みうる。インビボでのiRNA剤の評価は、追跡可能なマーカー(例えば、フルオレセインのような蛍光マーカー;35S,32P,33P若しくはHのような放射性標識;金粒子;又は免疫組織化学検査用の抗原粒子)に接合したiRNA剤を用いることにより容易にすることができる。
【0060】
iRNA剤は、RhoA遺伝子発現を抑制する能力に関して評価されることができる。インビボでのRhoA遺伝子発現のレベルは、例えば、原位置のハイブリダイゼーションにより、或いはiRNA剤への曝露前後の組織からのRNAの単離により測定されることができる。組織を採取するために動物を殺処分する必要がある場合、未処置対照動物を比較のために用いる。RhoA mRNAは、RT−PCR、ノーザンブロット法、分枝DNAアッセイ又はRNAアーゼ保護アッセイを含むがこれらに限定されない任意の所望の方法により検出されることができる。或いは、又は更に、RhoA遺伝子発現は、iRNA剤で処理した組織抽出物のウェスタンブロット分析を行うことによりモニタリングされることができる。
【0061】
動物モデルを用いて一定の所望の効果(例えば、EC50又はED50)を得るのに必要な濃度を確定することができる。このような動物モデルは、ヒト遺伝子、例えば標的ヒトRhoA RNAを産生する遺伝子を発現するトランスジェニック動物を含むことができる。別の実施形態において、試験用組成物には、動物モデルにおける標的RhoA RNAとヒトにおける標的RhoA RNAとの間に保存された配列に、少なくとも内部領域において相補的なiRNA剤が含まれる。
【0062】
iRNAの化学的性質
本願で述べられるのは単離iRNA剤、例えば、RhoA遺伝子の発現を阻害するためにRNAiを媒介するdsRNA剤である。
【0063】
本願で述べられるRNAは、他の点では非修飾のRNA及び、例えば有効性を改善するために修飾されたRNA及びヌクレオシドサロゲートのポリマーを含む。非修飾RNAは、核酸の構成要素、即ち、糖、塩基及びリン酸部分が天然に生じるもの、好ましくはヒトの体内で天然に生じるものと同じか、或いは本質的に同じ分子を指す。当該技術では稀或いは稀有であるが天然に生じるRNAを修飾RNAと称しており、例えば、リンバッハら(Limbach et al.)Nucleic Acids Res.第22巻:2183−2196ページ(1994年)を参照されたい。このような稀或いは稀有なRNAは修飾RNAと称されることが多く(その理由は明らかにこれらが典型的に転写後修飾の結果であるためである)、本願で用いられるように非修飾RNAという用語の範囲内にある。本願で用いられる修飾RNAは、1つ又はそれ以上の核酸の構成要素、即ち、糖、塩基及びリン酸部分が天然に生じるものと異なり、好ましくはヒトの体内で生じるものと異なる分子を指す。これらは修飾“RNA”と称されるが、当然のことながら修飾のためにRNAではない分子を含む。ヌクレオシドサロゲートはリボリン酸(ribophosphate)骨格が非リボリン酸構造体に置換された分子であり、非リボリン酸構造体は、例えばリボリン酸骨格の非帯電模倣体のように、ハイブリダイゼーションがリボリン酸骨格にみられるものと実質的に同様になるように、塩基が正確な空間関係に提示されることを可能にする。上記の例を本願で述べる。
【0064】
本願で述べられる修飾は、例えばiRNA剤のように、本願で述べられる任意の二本鎖RNA及びRNA様分子に組み入れることができる。iRNA剤のアンチセンス及びセンス鎖の一方又は両方を修飾することは望ましいといえる。核酸はサブユニットのポリマー又はモノマーであるため、下記の修飾の多くは核酸内で反復される位置で生じ、例えば、塩基又はリン酸部分又はリン酸部分の非結合Oの修飾となる。場合により、修飾は核酸におけるすべての対象位置で生じるが、多くの場合、また、実際にはほとんどの場合、そのようなことはない。例として、修飾は、3’又は5’末端位置でのみ生ずることができ、末端領域、例えば末端ヌクレオチド上の位置又は鎖の最後の2,3,4,5又は10ヌクレオチドにおいてのみ生ずることができる。修飾は二本鎖領域、一本鎖領域又はその両方で生ずることができる。例えば、非結合O位置におけるホスホロチオアート修飾は、一方又は両方の末端でのみ生ずることができ、末端領域、例えば末端ヌクレオチド上の位置又は鎖の最後の2,3,4,5又は10ヌクレオチドにおいてのみ生ずることができ、或いは二本鎖及び一本鎖領域、特に末端において生ずることができる。同様に、修飾はセンス鎖、アンチセンス鎖又はその両方において生ずることができる。場合により、センス鎖とアンチセンス鎖は同修飾又は同種類の修飾を有するが、別の場合には、センス鎖とアンチセンス鎖は異なる修飾を有し、例えば、場合により、一本鎖、例えばセンス鎖のみを修飾することが望ましい
iRNAへの修飾の導入の2つの主たる目的は、生体内環境における分解に対する安定性と、薬理特性、例えば薬力学特性の向上であり、これについては更に下記に述べる。iRNA剤の糖、塩基又は骨格に対する他の好適な修飾が、2004年1月16日に申請された共同所有PCT出願第PCT/US2004/01193号に述べられている。iRNA剤は非天然型塩基、例えば、2004年4月16日に申請された共同所有PCT出願第PCT/US2004/011822号に述べられているような塩基を含むことができる。iRNA剤は非炭水化物環状担体分子のような非天然型糖を含むことができる。iRNA剤において用いられる非天然型糖の例示的な特徴が、2003年4月16日に申請された共同所有PCT出願第PCT/US2004/11829号に述べられている。
【0065】
iRNA剤は、ヌクレアーゼ耐性を高めるのに有用なヌクレオチド間結合(例えば、キラルホスホロチオアート結合)を含むことができる。加えて、或いは選択的に、iRNA剤は、ヌクレアーゼ耐性を高めるためのリボース模倣体を含むことができる。ヌクレアーゼ耐性を高めるための例示的なヌクレオチド間結合及びリボース模倣体が、2004年3月8日に申請された共同所有PCT出願第PCT/US2004/07070号に述べられている。
【0066】
iRNA剤はオリゴヌクレオチド合成のためのリガンド結合モノマーサブユニット及びモノマーを含むことができる。例示的なモノマーが2004年8月10日に申請された共同所有米国出願第10/916,185号明細書に述べられている。
【0067】
iRNA剤は、2004年3月8日に申請された共同所有PCT出願第PCT/US2004/07070号に述べられているようなZXY構造を有することができる。
iRNA剤は、両親媒性部分と複合体を形成することができる。iRNA剤と共に用いられる例示的な両親媒性部分が、2004年3月8日に申請された共同所有PCT出願第PCT/US2004/07070号に述べられている。
【0068】
別の実施形態において、iRNA剤はモジュール複合体を特徴づける送達物質と複合体を形成することができる。この複合体は、(a)縮合物質(例えば、例えばイオン相互作用又は静電的相互作用により核酸を誘引、例えば結合することが可能な物質);(b)融合誘導物質(例えば、融合することおよび/または細胞膜を通って輸送されることが可能な物質);並びに(c)特定の細胞型に結合する標的基、例えば細胞又は組織標的物質、例えばレクチン、糖蛋白質、脂質又は蛋白質、例えば抗体、の1つ以上(好ましくは2つ以上、より好ましくは3つすべて)に結合した担体物質を含むことができる。送達物質と複合体を形成するiRNA剤が、2004年3月8日に申請された共同所有PCT出願第PCT/US2004/07070号に述べられている。
【0069】
iRNA剤は、例えば、iRNA二重鎖のセンス配列とアンチセンス配列との間のように、非標準型対合を有することができる。非標準型iRNA剤の例示的な特徴が、2004年3月8日に申請された共同所有PCT出願第PCT/US2004/07070号に述べられている。
【0070】
ヌクレアーゼ耐性の亢進
iRNA剤、例えば、RhoAを標的とするiRNA剤は亢進したヌクレアーゼ耐性を有することができる。裸のRNAは、細胞質、血液又は脳脊髄液(CSF)のような生体媒質に遍在するエキソヌクレアーゼ及びエンドヌクレアーゼのような核酸分解酵素の好餌となることが多い。速やかな分解はsiRNAの標的遺伝子の発現を阻害する能力を大幅に妨げることができる。核酸分解に対する脆弱性は、siRNAのある種のヌクレオチドを化学的に修飾することにより大幅に低減することができる。しかし、siRNAを安定化させるために修飾を加えることは、その活性とのトレードオフを表すこともあり、安定化させる修飾は毒性作用さえももたらすことができる。従って、なおも所望レベルの安定性を付与する最少の修飾を導入することが望ましい。通常、センス鎖における修飾はsiRNAの活性に対する影響が少ない。
【0071】
従って、2004年5月4日に申請された共同所有米国出願第60/559,917号明細書、2004年5月27日に申請された共同所有米国出願第60/574,744号明細書及び2005年5月27日に申請された共同所有国際出願PCT/US2005/018931に述べられているように、エンドヌクレアーゼによる核酸分解に対するsiRNAの安定性を高めるため、特に易分解性位置において限定数のヌクレオチドのみを修飾することが有益である。ピリミジンヌクレオチド、具体的には5’−ua−3’配列コンテクスト、5’−ug−3’配列コンテクスト、5’−ca−3’配列コンテクスト、5’−uu−3’配列コンテクスト又は5’−cc−3’配列コンテクストにおける5’ヌクレオチドが、ほぼその順で特に分解作用を受けやすいことを見出した。配列コンテクスト5’−ua−3’及び5’−ca−3’のすべての発生或いは5’−ua−3’,5’−ca−3’及び5’−uu−3’のすべての発生或いは5’−ua−3’,5’−ca−3’,5’−uu−3’及び5’−ug−3’のすべての発生における5’−末端(most)ピリミジンが、両鎖において2’−O−メチルヌクレオチドのような2’−修飾ヌクレオチドに置換された時、本出願人らの研究所により十分に安定した高活性のsiRNAが得られた。或いは、センス鎖におけるすべてのピリミジンヌクレオチド並びにアンチセンス鎖における配列コンテクスト5’−ua−3’及び5’−ca−3’のすべての発生における5’−末端(most)ピリミジンを2’−修飾することにより、活性及び安定性の点で良好な結果が得られた。センス鎖におけるすべてのピリミジンヌクレオチド並びにアンチセンス鎖における配列コンテクスト5’−ua−3’,5’−ca−3’,5’−uu−3’及び5’−ug−3’のすべての発生における5’−末端(most)ピリミジンを2’−修飾することが必要な場合もあった。iRNA剤は少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4又は少なくとも5個のこのようなジヌクレオチドを含むことができる。
【0072】
2’−修飾ヌクレオチドは、例えば、2’−修飾リボースユニットを含むことが好ましく、例えば、2’−ヒドロキシル基(OH)は多くの異なる「オキシ」又は「デオキシ」置換基で修飾され、或いは置換されうる。
【0073】
「オキシ」−2’ヒドロキシル基の修飾の例には、アルコキシ又はアリルオキシ(OR、例えば、R=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖);ポリエチレングリコール(PEG)、O(CHCHO)CHCHOR;2’ヒドロキシルが、例えばメチレン架橋により、同じリボース糖の4’炭素に結合した「固定」核酸(LNA);O−AMINE及びアミノアルコキシ、O(CHAMINE、(例えば、AMINE=NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ又はジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミノ、ポリアミノ)が含まれる。メトキシエチル基(MOE)のみを含むオリゴヌクレオチド、(OCHCHOCH,PEG誘導体)が、強固なホスホロチオアート修飾で修飾されたものに匹敵するヌクレアーゼ安定性を示すことは注目に値する。
【0074】
「デオキシ」修飾は、水素(即ち、デオキシリボース糖であり、これらは部分的dsRNAのオーバーハング部分に特に関連する);ハロ(例えば、フルオロ);アミノ(例えば、NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ又はアミノ酸);NH(CHCHNH)CHCH−AMINE(AMINE=NH;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ又はジヘテロアリールアミノ)、−NHC(O)R(R=アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又は糖)、シアノ;メルカプト;アルキル−チオ−アルキル;チオアルコキシ;並びに任意に、例えばアミノ官能基に置換されうるアルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル及びアルキニルを含む。
【0075】
好ましい置換基は、2’−メトキシエチル、2’−OCH、2’−O−アリル、2’−C−アリル及び2’−フルオロである。
オリゴヌクレオチド骨格にフラノース糖を含めることも、エンドヌクレアーゼ的切断を低減することができる。iRNA剤は、3’カチオン基を含むことにより、或いは3’−3’結合により3’−末端においてヌクレオチドを転置することにより、更に修飾することができる。別の代替例では、3’−末端はアミノアルキル基で遮断することができ、例えば、3’C5−アミノアルキルdTとなる。他の3’接合体は3’−5’エキソヌクレアーゼ的切断を阻害することができる。理論によって限定されることはないが、ナプロキセン又はイブプロフェンのような3’接合体は、エキソヌクレアーゼがオリゴヌクレオチドの3’−末端に結合するのを立体的に遮断することにより、エキソヌクレアーゼ的切断を阻害することができる。小アルキル鎖、アリール基又は複素環接合体又は修飾糖(D−リボース、デオキシリボース、グルコース等)でも3’−5’−エキソヌクレアーゼを遮断することができる。
【0076】
核酸分解切断を、リン酸リンカー修飾、例えば、ホスホロチオアート結合の導入によっても阻害することができる。従って、好ましいiRNA剤は、通常は酸素によって占められる非架橋位置においてヘテロ原子を有する特定のキラル型の修飾リン酸基のために濃縮され、或いは純粋なヌクレオチド二量体を含む。ヘテロ原子はS,Se,Nr又はBrでよい。ヘテロ原子がSの場合、濃縮され、或いはキラル的に純粋なSp結合が好ましい。濃縮とは少なくとも70,80,90,95又は99%の好ましい形態である。修飾リン酸基結合は、特にiRNA剤の5’−又は3’−末端位置、好ましくは5’−末端位置近傍に導入される時、エキソヌクレアーゼ的切断を阻害するのに効果的である。
【0077】
5’接合体も5’−3’エキソヌクレアーゼ的切断を阻害することができる。理論によって限定されないが、ナプロキセン又はイブプロフェンのような5’接合体は、エキソヌクレアーゼがオリゴヌクレオチドの5’−末端に結合するのを立体的に遮断することにより、エキソヌクレアーゼ的切断を阻害することができる。小アルキル鎖、アリール基又は複素環接合体又は修飾糖(D−リボース、デオキシリボース、グルコース等)でも3’−5’−エキソヌクレアーゼを遮断することができる。
【0078】
iRNA剤は、二重iRNA剤が少なくとも一端に一本鎖ヌクレオチドオーバーハングを含む時、上昇したヌクレアーゼ耐性を有することができる。好ましい実施形態において、ヌクレオチドオーバーハングは1〜4、好ましくは2〜3の不対合ヌクレオチドを含む。好ましい実施形態において、末端ヌクレオチド対に直接隣接する一本鎖オーバーハングの不対合ヌクレオチドはプリン塩基を有し、末端ヌクレオチド対はG−C対であり、或いは最後の4つの相補的対合の少なくとも2つがG−C対である。更なる実施形態において、ヌクレオチドオーバーハングは1又は2つの不対合ヌクレオチドを有しえて、例示的実施形態では、ヌクレオチドオーバーハングは5’−GC−3’である。好ましい実施形態において、ヌクレオチドオーバーハングはアンチセンス鎖の3’−末端に存在する。一実施形態において、iRNA剤は、2−ntオーバーハング5’−GC−3’が形成されるように、アンチセンス鎖の3’−末端にモチーフ5’−CGC−3’を含む。
【0079】
従って、iRNA剤は、対象の体内に見出される、例えばヌクレアーゼ、例えばエンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼによる分解を阻害するために修飾を含む。これらのモノマーは本願でNRM、即ち、ヌクレアーゼ耐性促進モノマーと称され、対応する修飾はNRM修飾と称される。多くの場合、これらの修飾はiRNA剤の他の特性、例えば、蛋白質、例えば輸送蛋白質、例えば血清アルブミン又はRISCのメンバーと相互作用する能力或いは第一及び第二の配列の互いに二重鎖を形成又は別の配列、例えば標的分子と二重鎖を形成する能力も調節する。
【0080】
1又はそれ以上の異なるNRM修飾をiRNA剤又はiRNA剤の配列に導入することができる。NRM修飾は配列又はiRNA剤において2回以上用いることができる。
NRM修飾は末端のみに配置可能なものと任意の位置でよいものとを含む。一部のNRM修飾はハイブリダイゼーションを阻害しうるため、末端領域でのみ用いることが好ましく、特にアンチセンス鎖における対象配列又は遺伝子を標的とする配列の切断部位又は切断領域において用いないことが好ましい。NRM修飾はセンス鎖においては任意の位置で用いることができるが、但し、dsiRNA剤の二本鎖間の十分なハイブリダイゼーションが維持されるものとする。一部の実施形態において、標的外れのサイレンシングを最小化できるため、NRMをセンス鎖の切断部位又は切断領域に配置することが望ましい。
【0081】
多くの場合、NRM修飾はセンス鎖において構成されるか、又はアンチセンス鎖において構成されるに依存し、異なって分配される。アンチセンス鎖の場合、エンドヌクレアーゼ切断に干渉し、或いはエンドヌクレアーゼ切断を阻害する修飾は、RISC媒介性切断を受ける領域、例えば、切断部位又は切断領域に挿入されるべきではない(エルバシールら(Elbashir et al.),Genes and Dev.第15巻:188ページ(2001年))に記載のとおりであり、これは参照して本願に組み込まれる)。標的の切断は、20又は21ntアンチセンス鎖のほぼ中央又はアンチセンス鎖と相補的な標的mRNA上の第一のヌクレオチドの約10又は11ヌクレオチド上流にて生じる。本願で用いるように、切断部位は標的又はこれにハイブリダイズするiRNA剤鎖上の切断部位のいずれかの側におけるヌクレオチドを指す。標的領域とは、いずれかの方向における、切断部位の1,2又は3ヌクレオチド内のヌクレオチドのことである。
【0082】
このような修飾は、センス鎖又はアンチセンス鎖の末端領域、例えば、末端位置又は末端の2,3,4若しくは5位置に導入することができる。
連結リガンド
薬理特性を含むiRNA剤の特性は、例えば、リガンド、例えば連結リガンドの導入により影響を受け、調整されうる。
【0083】
多種多様な構成要素、例えばリガンドを、iRNA剤、例えばリガンド接合モノマーサブユニットの担体に連結することができる。リガンド接合モノマーサブユニットのコンテクストにおいて、例を下記に説明しているが、これは好ましいというだけのことであり、構成要素は他の位置においてiRNA剤に結合されうる。
【0084】
好ましい部分はリガンドであり、リガンドは、好ましくは共有結合的に、介在テザーを通じて直接又は間接に担体に結合される。好ましい実施形態において、リガンドは介在テザーを通じて担体と結合する。リガンド又は連結リガンドは、リガンド接合モノマーが成長鎖に組み込まれる時、リガンド接合モノマー上に存在しうる。一部の実施形態において、リガンドは、「前駆体」リガンド接合モノマーサブユニットが成長鎖に組み込まれた後、「前駆体」リガンド接合モノマーサブユニットに組み込まれうる。例えば、アミノ末端テザー、例えばTAP−(CHNHを有するモノマーは成長センス鎖又はアンチセンス鎖に組み込まれうる。引き続いての処理において、即ち、前駆体モノマーサブユニットの鎖への組み込み後、求電子基、例えばペンタフルオロフェニルエステル又はアルデヒド基を有するリガンドは、その後、リガンドの求電子基を前駆体リガンド接合モノマーサブユニットテザーの末端求核基と結合することにより、前駆体リガンド接合モノマーに結合することができる。
【0085】
好ましい実施形態において、リガンドはそれが組み込まれるiRNA剤の分布、標的又は存続期間を変化させる。好ましい実施形態において、リガンドは、例えば、このようなリガンドが存在しない種に比し、選択された標的、例えば分子、細胞又は細胞型、区画、例えば細胞又は器官区画、組織、器官或いは体内の領域に対する亢進した親和性を付与する。
【0086】
好ましいリガンドは輸送、ハイブリダイゼーション及び特異性を向上させることができ、生成される天然型若しくは修飾オリゴリボヌクレオチド又は本願で述べられるモノマーの任意の組合せを含む高分子および/または天然型若しくは修飾リボヌクレオチドのヌクレアーゼ耐性を向上させうる。
【0087】
一般的に、リガンドは、例えば取込みを亢進するための治療的修飾;例えば分布をモニタリングするための診断化合物又はレポーター基;架橋剤;ヌクレアーゼ耐性付与部分;並びに天然型又は稀有な核酸塩基を含むことができる。一般例には、親油性分子、脂質、レクチン、ステロイド(例えば、ウバオール、hecigenin、ジオスゲニン)、テルペン(例えばトリテルペン、例えばサルササポゲニン、フリーデリン、エピフリーデラノール(epifriedelanol)誘導化リトコール酸)、ビタミン、炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン又はヒアルロン酸)、蛋白質、蛋白質結合剤、インテグリン標的分子、ポリカチオン、ペプチド、ポリアミン及びペプチド模倣体が含まれる。
【0088】
リガンドは、天然型又は組換え又は合成分子、例えば合成ポリマー、例えば合成ポリアミノ酸となりうる。ポリアミノ酸の例には、ポリリシン(PLL)、ポリL−アスパラギン酸、ポリL−グルタミン酸、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリ(L−ラクチド−co−解糖コポリマー、ジビニルエチル−無水マレイン酸コポリマー、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2−エチルアクリル酸)、N−イソプロピルアクリルアミドポリマー又はポリホスファジンが含まれる。ポリアミン類の例には、ポリエチレンイミン、ポリリシン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、擬ペプチド−ポリアミン、ペプチド擬似ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン成分、例えばカチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミンの四級塩又はアルファ螺旋ペプチドが含まれる。
【0089】
リガンドは、標的基、例えば細胞又は組織標的剤、例えばチロトロピン、メラノトロピン、界面活性蛋白質A、ムチン炭水化物、グリコシル化ポリアミノ酸、トランスフェリン、ビスホスホネート、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸又はRGDペプチド若しくはRGDペプチド模倣体も含みうる。
【0090】
リガンドは、蛋白質、例えば糖蛋白質、リポ蛋白質、例えば低比重リポ蛋白質(LDL)又はアルブミン、例えばヒト血清アルブミン(HSA)又はペプチド、例えばco−リガンドに対する特異的親和性を有する分子又は抗体、例えば癌細胞、内皮細胞若しくは骨細胞のような特定の細胞型に結合する抗体とすることができる。リガンドはホルモン及びホルモン受容体も含みうる。リガンドは、補因子、多価ラクトース、多価ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチル−グルコサミン、多価マンノース又は多価フコースのような非ペプチド種を含むこともできる。リガンドは、例えばリポ多糖体、P38 MAPキナーゼの活性化因子又はNF−κBの活性化因子とすることができる。
【0091】
リガンドは、例えば細胞骨格を破壊することにより、例えば細胞の微小管、ミクロフィラメントおよび/または中間フィラメントを破壊することにより、iRNA剤の細胞への取込みを高めることが可能なサブスタンス、例えば薬剤でよい。薬剤は、例えばタクソン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、japlakinolide、latrunculin A、ファロイジン、スウィンホライドA(swinholide A)、インダノシン(indanocine)又はmyoservinでよい。
【0092】
一態様において、リガンドは脂質又は脂質ベースの分子である。このような脂質又は脂質ベースの分子は血清蛋白質、例えばヒト血清アルブミン(HSA)に結合することが好ましい。HSA結合リガンドは、標的組織、例えば肝臓の実質細胞を含む肝臓組織、への接合体の分布を可能にする。HSAに結合することが可能な他の分子もリガンドとして用いることができる。例えば、neproxin又はアスピリンを用いることができる。脂質又は脂質ベースのリガンドは、(a)接合体の分解に対する耐性を高め、(b)標的又は標的細胞若しくは細胞膜への輸送を向上させ、および/または(c)血清蛋白、例えばHSAへの結合を調整するのに用いることができる。
【0093】
脂質ベースのリガンドは接合体の標的組織への結合を調節、例えば制御するために用いることができる。例えば、HSAにより強固に結合する脂質又は脂質ベースのリガンドは、腎臓を標的とする可能性が少なく、従って、体内から除去されにくい。HSAにより弱く結合する脂質又は脂質ベースのリガンドは、腎臓に対して接合体を標的とするために用いることができる。
【0094】
好ましい実施形態において、脂質ベースのリガンドはHSAに結合する。脂質ベースのリガンドは、接合体が好ましくは非腎臓組織に分布されるように、十分な親和性をもってHSAに結合することが好ましい。しかし、HSA−リガンド結合が転換しないほどに親和性が強くないことが好ましい。
【0095】
別の態様において、リガンドは、成分、例えばビタミン又は栄養素であり、これは標的細胞、例えば増殖細胞に取り込まれる。これらは、例えば悪性型又は非悪性型の不要な細胞増殖、例えば癌細胞を特徴とする障害を処置するのに特に有用である。例示的なビタミンにはビタミンA,E及びKが含まれる。他の例示的なビタミンには、ビタミンB、例えば葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサール又は癌細胞に取り込まれる他のビタミン若しくは栄養素が含まれる。
【0096】
別の態様において、リガンドは細胞透過剤、好ましくは螺旋細胞透過剤である。細胞透過剤は両親媒性であることが好ましい。好ましい細胞透過剤はtat又はアンテナペディアのようなペプチドである。細胞透過剤がペプチドである場合、修飾することができ、これにはペプチジル模倣体、インバートマー(invertomer)、非ペプチド若しくは擬似ペプチド結合及びD−アミノ酸の使用が含まれる。螺旋細胞透過剤はα螺旋剤であることが好ましく、親油性及び疎油性相を有することが好ましい。
【0097】
5’−リン酸修飾
好ましい実施形態において、iRNA剤は5’リン酸化され、或いは5’第一末端においてホスホリル類似体を含む。アンチセンス鎖の5’リン酸修飾には、RISC媒介性遺伝子サイレンシングに適合する修飾が含まれる。好適な修飾には、5’−一リン酸((HO)2(O)P−O−5’);5’−二リン酸((HO)2(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−三リン酸((HO)2(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−グアノシンキャップ(7−メチル化又は非メチル化)(7m−G−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−アデノシンキャップ(Appp)及び任意の修飾又は非修飾ヌクレオチドキャップ構造(N−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−モノチオリン酸(ホスホロチオアート;(HO)2(S)P−O−5’);5’−モノジチオリン酸(ホスホロジチオアート;(HO)(HS)(S)P−O−5’),5’−ホスホロチオアート((HO)2(O)P−S−5’);並びに酸素/硫黄置換一リン酸、二リン酸及び三リン酸の任意の付加的組合せ(例えば、5’−α−チオ三リン酸、5’−γ−チオ三リン酸など)、5’−ホスホルアミダート((HO)2(O)P−NH−5’,(HO)(NH2)(O)P−O−5’),5’−アルキルホスホナート(R=アルキル=メチル、エチル、イソプロピル、プロピルなど、例えば、RP(OH)(O)−O−5’−,(OH)2(O)P−5’−CH2−),5’−アルキルエーテルホスホナート(R=アルキルエーテル=メトキシメチル(MeOCH2−),エトキシメチルなど、例えば、RP(OH)(O)−O−5’−)が含まれる。
【0098】
センス鎖はセンス鎖を不活性化し、活性RISCの形成を阻止するために修飾することができ、これにより、標的外れの作用を低減する可能性がある。これは、センス鎖の5’−リン酸化を阻止する修飾により、例えば、5’−O−メチルリボヌクレオチドによる修飾により可能となる(ニッカネンら(Nykanen et al.),「RNA干渉経路におけるATP必要条件及び小干渉RNA構造(ATP requirements and small interfering RNA structure in the RNA interference pathway)」Cell第107巻,309−321ページ(2001年)を参照)。リン酸化を阻止する他の修飾も用いることができ、例えば、単にO−MEではなくHで5’−OHを置換する。或いは、巨大基(large bulky group)を5’−リン酸に付加し、ホスホジエステル結合に変えうる。
【0099】
iRNA剤の細胞への輸送
理論によって限定されることを望まないが、コレステロール接合iRNA剤とリポ蛋白質のある種の構成成分(例えば、コレステロール、コレステリルエステル、リン脂質)との化学的類似性は、血中におけるiRNA剤のリポ蛋白質(例えば、LDL,HDL)との結合および/またはコレステロールに対する親和性を有する細胞成分、例えばコレステロール輸送経路の成分とのiRNA剤の相互作用をもたらしうる。リポ蛋白質及びその成分は、種々の能動的及び受動的輸送メカニズム、例えば、限定されずに、LDL−受容体結合LDLのエンドサイトーシス、スカベンジャー受容体Aとの相互作用を通じた酸化又は修飾LDLのエンドサイトーシス、肝臓におけるスカベンジャー受容体B1媒介性のHDLコレステロールの取込み、ピノサイトーシス又はABC(ATP結合カセット)輸送蛋白質、例えば、ABC−A1,ABC−G1又はABC−G4によるコレステロールの膜横断輸送によって、細胞により取り込まれ、処理される。従って、コレステロール接合iRNA剤は、このような輸送メカニズムを有する細胞、例えば肝細胞による取込みを促進しうる。このようにして、本発明は、このような成分(例えば、コレステロール)に対する天然リガンドをiRNA剤に接合することにより、或いは成分(例えば、LDL,HDL)に対する天然リガンドに結合するiRNA剤に化学的成分(例えば、コレステロール)を接合することにより、ある種の細胞表面部分、例えば受容体を発現している細胞に対してiRNA剤を標的とするための根拠及び一般的方法を提供する。
【0100】
他の実施形態
RNA、例えばiRNA剤は、例えば細胞内に送達される外因性DNAテンプレートから、インビボにて細胞内に生成されうる。例えば、DNAテンプレートはベクターに挿入され、遺伝子治療ベクターとして用いられることができる。遺伝子治療ベクターは、例えば静注、局所投与(米国特許第5,328,470号明細書)により、或いは定位的注射(例えば、チェンら(Chen et al.)Proc.Natl.Acad.Sci USA第91巻:3054−3057ページ(1994年)を参照)により、対象に送達することができる。遺伝子治療ベクターの医薬調製物は、許容可能な希釈剤中の遺伝子治療ベクターを含むことができ、或いは遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれた徐放マトリックスを含むことができる。DNAテンプレートは、例えば2つの転写ユニットを含むことができ、その1つはiRNA剤の上部鎖を含む転写物を生成し、もう1つはiRNA剤の下部鎖を含む転写物を生成する。テンプレートが転写されると、iRNA剤が生成され、遺伝子サイレンシングを媒介するsiRNA剤断片に処理される。
【0101】
製剤化
本願で述べられるiRNA剤は、対象への投与のために製剤化されることができる。
説明を容易にするため、このセクションにおける製剤、組成物及び方法は、主に非修飾iRNA剤に関して考察される。しかし、これらの製剤、組成物及び方法は他のiRNA剤、例えば修飾iRNA剤について実施することができ、このような実施は本発明の範囲内にあることを理解する必要がある。
【0102】
製剤化iRNA剤組成物は様々な状態をとりうる。一部の例では、組成物は少なくとも部分的に結晶質、均一に結晶質および/または無水である(例えば、80,50,30,20又は10%未満の水分)。別の例では、iRNA剤は水性相、例えば水分を含む溶液中にある。
【0103】
水性相又は結晶性組成物は、例えば、送達ビヒクル、例えばリポソーム(特に水性相で)又は粒子(例えば、結晶性組成物に適切でありうるような微粒子)に取り込まれうる。一般的に、iRNA剤組成物は目的とする投与法に適合する態様にて製剤化される。
【0104】
iRNA剤調製物は、別の物質、例えば別の治療剤又はiRNA剤を安定化する物質、例えばiRNA剤と複合してiRNPを形成する蛋白質と組み合わせて製剤化されることができる。更に他の物質には、キレート剤、例えばEDTA(例えば、Mg2+のような二価カチオンを除去するため)、塩類、RNアーゼ阻害剤(例えば、RNAsinのような広特異性RNアーゼ阻害剤)などが含まれる。
【0105】
一実施形態において、iRNA剤調製物は2以上のiRNA剤、例えば同じ遺伝子又は異なる対立遺伝子に関して、或いは異なる遺伝子に関してRNAiを媒介しうる2以上のiRNA剤を含む。このような調製物は少なくとも3,5,10,20,50又は100以上の異なるiRNA剤種を含むことができる。このようなiRNA剤は同等数の異なる遺伝子に関してRNAiを媒介することができる。
【0106】
このような調製物における2以上のiRNA剤が同じ遺伝子を標的とする場合、これらは非重複及び非隣接標的配列を有することができ、或いは標的配列は重複又は隣接することができる。
【0107】
RhoA発現に関連する障害
RhoAを標的とするiRNA剤、例えば本願で述べられるiRNA剤は、対象、例えばRhoA遺伝子発現に関連する疾患若しくは障害を有し、又は発症するリスクを有するヒトを処置し、或いはRhoAに媒介される生体プロセスが不要な場合の対象を処置するために用いられることができる。Nogo−L,RhoA及びNogo−Rが軸索の成長及び伸長の阻害に加わるため、本発明のiRNA剤は、この阻害を転換し、神経/軸索の成長及び伸長をもたらすために用いられる。このような処置は、脊髄損傷又は末梢神経死(例えば、CNSの転移癌、例えば膠芽細胞腫、星状細胞腫、乏突起膠腫、上衣腫のような神経膠腫を原因とする)のような神経系に対する損傷を処置するのに有用であり、髄膜腫、髄芽腫、神経芽細胞腫、脈絡叢乳頭腫、肉腫も本明細書で述べるiRNA剤により処置することができる。他の適応には中枢神経系の疾患が含まれ、これには、脳脊髄炎、虚血性脳卒中、アルツハイマー病、海綿状脳症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、多発性硬化症、横断性脊髄炎、運動ニューロン疾患、ギラン・バレー症候群、前脊髄動脈症候群及び統合失調症が含まれるが、これらに限定されない。
【0108】
例えば、RhoA mRNAを標的とするiRNA剤は、脊髄損傷を有する対象或いは神経の成長及び伸長により少なくとも部分的に改善することが可能な別の病理状態を有する対象を処置するために用いられることができる。このような用途では、本発明のiRNA剤は、神経損傷部位又はRhoAの阻害作用が転換されることが所望される部位に局所的に投与されることが好ましい。iRNA剤の投与はRhoA蛋白質の減少を引き起こし、軸索の伸長及び成長のNogo媒介性阻害の転換をもたらす。
【0109】
処置方法及び送達経路
iRNA剤、例えばRhoAを標的とするiRNA剤を含む組成物は、作用部位への局所送達又は対象への全身送達を成すため、様々な経路により対象に送達されうる。例示的な経路には、処置部位への直接注射、髄腔内、実質、静脈内、経鼻、経口及び点眼送達が含まれる。本発明のiRNA剤を投与する好ましい手段は処置部位への直接注射又は注入による。
【0110】
iRNA剤は、投与に好適な医薬組成物に組み込まれることができる。例えば、組成物は1種以上のiRNA剤と医薬的に許容可能な担体とを含むことができる。本願で用いられるように、「医薬的に許容可能な担体」という表現は、薬剤投与に適合するあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌及び抗真菌剤、等張性吸収遅延剤などを含むものとする。医薬的に活性化した物質に対してこのような媒質及び作用物質を用いることは当該技術分野で周知である。従来の媒質又は作用物質が活性化合物に適合しない場合を除き、組成物におけるその使用は企図される。補助的活性化合物を組成物に組み込むことも可能である。
【0111】
本発明の医薬組成物は、局所又は全身処置が所望されるか、また、処置部位に依存し、多くの方法で投与されうる。投与は局所的(点眼、鼻内、経皮)、経口又は非経口でよい。非経口投与には、静脈内点滴、皮下、腹腔内若しくは筋肉内注射又は髄腔内若しくは脳室内投与が含まれる。
【0112】
送達経路は患者の障害に依存することができる。通例、本発明のiRNA剤の送達は対象への全身送達を成すために行われる。これを達成する1つの好ましい手段は非経口投与による。特に好ましい実施形態において、脊髄損傷部位のような神経損傷部位への医薬組成物の直接適用により、処置が成される。非経口投与の製剤は、これもまた緩衝剤、希釈剤や他の添加剤を含みうる滅菌水溶液を含むことができる。静注では溶質の総濃度は調製物が等張性となるように調節される必要がある。
【0113】
前述の小干渉RNAベクターを用いて、本発明は、神経系及び又は/脳における標的位置への干渉RNAの送達のためのデバイス、システム及び方法も提供する。送達の想定経路は、本発明のdsRNAを含む少量の流体を局所神経又は局所脳組織に注入するための手段を付与する、埋め込まれた髄腔内又は実質内留置カテーテルを用いることによるものである。これらのカテーテルの近位端は、患者のからだ又は頭蓋に外科的に固定された、埋め込まれた髄腔内又は脳内アクセスポート或いは患者の胴部に位置する、埋め込まれた薬剤ポンプに結合されることができる。
【0114】
或いは、埋め込み型ポンプのような埋め込み型送達デバイスを用いることができる。本発明の範囲内の送達デバイスの例には8506型治験医療機器(メドトロニック社製[米国ミネソタ州ミネアポリス])が含まれ、これは体内又は頭蓋に皮下移植可能であり、治療剤が神経又は脳に送達されうるアクセスポートを付与する。送達は定位的に埋め込まれたポリウレタンカテーテルを通して行われる。8506型のアクセスポートと機能することが可能な2つの型のカテーテルには、米国特許第6,093,180号明細書に開示され、参照して本願に組み込まれる、脳内室への送達用のメドトロニック社製の8770型脳室カテーテルと、米国特許出願第09/540,444号明細書及び第09/625,751号明細書に開示され、参照して本願に組み込まれる、脳組織そのものへの送達(即ち、実質内送達)用のメドトロニック社製のIPAIカテーテルが含まれる。後者のカテーテルは、治療剤をカテーテル経路に沿って複数の部位に送達するために、その遠位端に複数のアウトレットを有する。前述のデバイスに加えて、本発明による小干渉RNAベクターの送達は多種多様なデバイスを用いて成すことができ、これには米国特許第5,735,814号明細書,第5,814,014号明細書及び第6,042,579号明細書が含まれるがこれらに限定されず、これらはすべて参照して本願に組み込まれる。本発明の教示を用いて、これらや他のデバイス及びシステムが本発明に従って疼痛処置のために小干渉RNAベクターの送達に好適でありうることを、当業者は認識するであろう。
【0115】
このような一実施形態において、当該方法はからだ又は脳の外側にポンプを埋め込むステップを更に含み、ポンプはカテーテルの近位端に結合され、ポンプを操作し、カテーテルの排出部を通じて少なくとも1つの小干渉RNA又は小干渉RNAベクターの所定用量を送達する。更なる実施形態では、前記体又は脳の外側のポンプに対する少なくとも1つの小干渉RNA又は小干渉RNAベクターの供給を定期的に更新する更なるステップを含む。
【0116】
従って、本発明は、米国特許第5,735,814号明細書及び第6,042,579号明細書に教示されているような埋め込み型ポンプ及びカテーテルを用いて、更に米国特許第5,814,014号明細書に教示されているような、神経又は脳に送達される小干渉RNAベクターの量を調節するために注入システムの一部としてセンサーを用いた、小干渉RNAベクターの送達を含む。本発明の方法に従って他のデバイス及びシステムを用いることができ、例えば、米国特許出願第09/872,698号明細書(2001年6月1日に申請)及び第09/864,646号明細書(2001年5月23日に申請)に開示されているデバイス及びシステムであり、これらは参照して本願に組み込まれる。
【0117】
ポンプ又はカテーテルのアウトレットは、脊髄又は他の神経の損傷部位近傍のように、医薬組成物の所望の作用部位に近接して配置されることが好ましい。
投与は対象又は別の者、例えば介護者により提供することができる。介護者はヒトにケアを提供することに関与する任意の実在でよく、例えば、病院、ホスピス、診療所、外来診療所;医師、看護師又は他の施術者のような医療従事者;或いは配偶者又は親のような保護者である。薬剤は測定量又は計量を送達するディスペンサーにて供することができる。
【0118】
「治療有効量」という用語は、期待される生理反応を与えるために処置される対象において所望レベルの薬剤を与えるのに必要な組成物に存在する量である。
「生理学的有効量」という用語は、所望の緩和又は治療効果を与えるために対象に送達される量である。
【0119】
「医薬的に許容可能な担体」という用語は、肺に対する重大な有害毒性作用なしに担体が肺に取り込まれることが可能であるこという。
「共投与」という用語は、2以上の薬剤、特に2以上のiRNA剤を対象に投与することを指す。薬剤は単一の医薬組成物に含有され、同時に投与することが可能であり、或いは薬剤は別々の製剤に含有され、連続的に対象に投与することが可能である。2剤を対象において同時に検出することが可能であるなら、2剤は共投与されるといわれる。一実施形態において、Nogo−L,RhoA及びNogo−R iRNA剤が共投与される。
【0120】
担体として有用な医薬賦形剤の種類には、ヒト血清アルブミン(HSA)のような安定化剤、炭水化物、アミノ酸及びポリペプチドのような充填剤;pH調整剤又は緩衝剤;塩化ナトリウムのような塩類などが含まれる。これらの担体は結晶形又は非晶形でよく、或いはこの2つの混合物でよい。
【0121】
特に価値のある充填剤には相溶性の炭水化物、ポリペプチド、アミノ酸又はこれらの組合せが含まれる。好適な炭水化物には、ガラクトース、D−マンノース、ソルボースなどの単糖;ラクトース、トレハロースなどの二糖;2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのようなシクロデキストリン;及びラフィノース、マルトデキストリン、デキストランなどの多糖;マンニトール、キシリトールなどのアルジトールが含まれる。好ましい炭水化物群には、ラクトース、トレハロース、ラフィノース マルトデキストリン及びマンニトールが含まれる。好適なポリペプチドにはアスパルテームが含まれる。アミノ酸にはアラニン及びグリシンが含まれ、グリシンが好ましい。
【0122】
好適なpH調整剤又は緩衝剤には、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウムなどのような有機性の酸及び塩基から調製される有機塩が含まれ、クエン酸ナトリウムが好ましい。
【0123】
用量 iRNA剤は、約75mg未満/kg体重又は約70,60,50,40,30,20,10,5,2,1,0.5,0.1,0.05,0.01,0.005,0.001若しくは0.0005mg未満/kg体重で、200nmol未満のiRNA剤/kg体重(例えば、約4.4×1016の複製)又は1500,750,300,150,75,15,7.5,1.5,0.75,0.15,0.075,0.015,0.0075,0.0015,0.00075,0.00015nmol未満のiRNA剤/kg体重の単位用量で投与することができる。単位用量は、例えば、注射(例えば、静脈内又は筋肉内、髄腔内、或いは器官に直接)、吸入用量又は局所適用により投与することができる。
【0124】
iRNA剤の器官への直接送達(例えば、肝臓へ直接)は、約0.00001mg〜約3mg/器官又は好ましくは約0.0001〜0.001mg/器官、約0.03〜3.0mg/器官、約0.1〜3.0mg/眼若しくは約0.3〜3.0mg/器官の用量とすることができる。
【0125】
用量は疾患又は障害を処置し、或いは予防するのに有効な量となりうる。
一実施形態において、単位用量は1日1回より低頻度で、例えば、2,4,8又は30日毎より少なく投与される。別の実施形態において、単位用量は頻度をもって投与されない(例えば、規則的な頻度でない)。例えば、単位用量は単回で投与されうる。iRNA剤組成物の投与後、iRNA剤媒介性サイレンシングが数日間持続するため、多くの場合、1日1回未満の頻度又は場合により、全治療レジメンで1回のみで組成物を投与することが可能である。
【0126】
一実施形態において、対象は、初期用量並びに1又はそれ以上の維持用量のiRNA剤、例えば二本鎖iRNA剤又はsiRNA剤(例えば、前駆体、例えば、siRNA剤に処理することが可能な比較的大きいiRNA剤又はiRNA剤をコードするDNA、例えば、二本鎖iRNA剤又はsiRNA剤又はその前駆体)を投与される。通常、維持用量は初期用量より少なく、例えば、初期用量より半分少ない。維持レジメンは、0.01〜75mg/kg体重/日の範囲、例えば、70,60,50,40,30,20,10,5,2,1,0.5,0.1,0.05,0.01,0.005,0.001又は0.0005mg/kg体重/日の用量で対象を処置することを含む。維持用量は5,10又は30日毎に1回以下で投与されることが好ましい。更に、治療レジメンは特定の疾患の性状、重症度及び患者の全体的な状態に依存して異なる期間、継続しうる。好ましい実施形態において、用量は1日1回以下、例えば、24,36,48時間以上毎に1回以下、例えば、5又は8日毎に1回以下、投与されうる。治療後、患者は状態の変化及び病態の症状の緩和についてモニタリングされうる。化合物の用量は、患者が現行の用量レベルに有意に応答しない場合には増量され、或いは用量は、病態の症状の緩和が認められる場合、病態が消失した場合、又は望ましくない副作用が認められる場合には減量されうる。
【0127】
有効量は、具体的な状況下で望ましく、或いは適切であるとみなされるように、単回投与又は2回以上の投与にて投与されうる。反復又は頻回注入を容易にすることが所望される場合、送達デバイス、例えば、ポンプ、半永久ステント(例えば、静脈内、腹腔内、槽内又は包内)又はレザバーが望ましい場合もある。
【0128】
良好な治療後、病態の再発を予防するために患者に維持療法を受けさせることが望ましいことがあり、この場合、本発明の化合物は0.001g〜100g/kg体重の範囲の維持用量にて投与される(米国特許第6,107,094号明細書を参照)。
【0129】
iRNA剤組成物の濃度は、障害を処置又は予防するのに有効であり、或いはヒトにおける生理状態を調整するのに十分な量である。投与されるiRNA剤の濃度又は量は、物質に求められるパラメータ並びに投与法、例えば、経鼻、口腔内、肺内又は髄腔内若しくは神経損傷部位のような局所投与に依存する。例えば、局所用製剤は刺激又は炎症を避けるため、幾つかの成分の濃度がはるかに低くてよい。
【0130】
ある種の要因が対象を効果的に処置するのに必要な用量に影響を及ぼすことができ、これには疾患又は障害の重症度、過去の治療、対象の全般的健康および/または年齢や他に存在する疾患が含まれるがこれらに限定されない。治療に用いられるsiRNAのようなiRNA剤の有効量は、特定の治療の経過にわたり増加又は減少しうるということも理解されよう。投与量の変更は診断アッセイの結果から生じ、或いはその結果から明らかとなる。例えば、iRNA剤組成物の投与後、対象をモニタリングすることができる。モニタリングからの情報に基づき、追加量のiRNA剤組成物を投与することができる。
【0131】
投与は処置対象の病態の重症度及び応答性に依存し、治療過程は数日から数ヶ月或いは治癒がもたらされ、又は病態の減弱が得られるまで継続する。至適投与計画は、患者の体内における薬剤の蓄積又は局所、例えば神経損傷部位、例えば脊髄損傷部位に投与される時の適用部位における薬剤の蓄積の測定から計算することができる。当業者であれば、至適用量、投与法及び反復率を容易に決定することができる。至適用量は、個々の化合物の相対的効力に依存して異なりえて、通常、上記のようにインビトロ及びインビボでの動物モデルにおいて有効であると見出されるEC50に基づいて推定することができる。
【0132】
本発明は、以下の実施例により更に説明されるが、更に限定するものとみなされるべきではない。
【実施例】
【0133】
正式名称を用いて以下に核酸配列を表し、具体的には表2の省略形となる。
【0134】
【表2】

(試薬源)
本願で試薬源が具体的に示されない場合、このような試薬は分子生物学での適用に標準的な品質/純度にて分子生物学用の試薬の任意の供給元から得られる。
【0135】
実施例1:配列の選択
マウス及びラットRhoA mRNAにおけるそれぞれの配列に対する完全な相同性を有するヒトRhoA mRNAの配列内の領域を同定するため、配列アラインメントを行った(ヒトRhoA mRNA:Genbankアクセッション番号NM_001664;マウスRhoA mRNA:Genbankアクセッション番号NM_016802;ラットRhoA mRNA:Genbankアクセッション番号NM_057132)。このようにして同定した相同領域内で、ヒトに存在する他のmRNA配列に対する、このような配列を含むsiRNAの交差反応の可能性のBLASTによる更なる比較により、19ヌクレオチドの可能性のあるすべての隣接配列を検討した。任意の他のヒトmRNA又はゲノム配列に対する3以上のミスマッチを有する配列のみを選択した。得られた19nt配列のセットを、表1に示す二重オーバーハングiRNA剤のセンス鎖リボヌクレオチド配列に表す。
【0136】
生体媒質における試験に対するsiRNAの安定性、特にエンド−及びエキソヌクレアーゼによる核酸分解作用に対する安定性を最大限にするため、センス鎖ではすべてのシチジン及びウリジンヌクレオチドが2’−O−メチル基を含み、また、アンチセンス鎖では5’−ca−3’又は5’−ua−3’の配列コンテクストに現れるすべてのシチジン及びウリジンが2’−O−メチル基を含むように、siRNAを合成した。
【0137】
同じ目的で、3’−末端5’−TT−3’基チミジン間にオスホロチオアート結合を導入した。siRNAのインビボ活性に関連する血清及び他の生体媒質中の最も活性の高いエキソヌクレアーゼは、siRNA鎖3’−5’を分解することにより作用するという経験をした。アンチセンス鎖における末位から二番目の2ヌクレオチドを、2’−O−メチル−5’−オスホロチオアート修飾ヌクレオチドで置換することが有益であり、十分であることが多いということが判明した(例えば、23ヌクレオチドアンチセンス鎖の5’〜3’を計算し、21及び22位のヌクレオチド);末位から二番目のヌクレオチドのみを修飾し、或いは5’−オスホロチオアート修飾ヌクレオチドのみを用いて、或いはその両方で十分である場合もある。センス鎖は同様に保護されえて、および/またはホスホジエステル又はオスホロチオアートジエステルを通じて連結リガンドに3’接合されうる。
【0138】
上記のように選択した配列に加えて、アフメッド、ゼット.ら((Ahmed,Z.,et al),Mol Cell Neurosci.第28巻:509−23ページ(2005年))の著者らが用いた4つのsiRNAに対応する4つのsiRNAを合成した。AL−DP−5850は上記アフメッド、ゼット.ら(Ahmed,Z.,et al.)のRHO−A1に対応し、AL−DP−5851は上記アフメッド、ゼット.ら(Ahmed,Z.,et al.)のRHO−A2に、AL−DP−5852はRHO−A5に、AL−DP−5853はRHO−A4に対応する。
【0139】
実施例2:siRNAの合成
Expedite 8909合成機(アプライドバイオシステムズ社(Applied Biosystems),アプレラードイッチュラント社(Applera Deutschland GmbH)[ドイツ、ダルムシュタット(Darmstadt)]と、固相担体として制御多孔性ガラス(CPG,500A,グレンリサーチ社(Glen Research)[米国バージニア州スターリング(Sterling)])を用いて、1μモルの尺度で固相合成により一本鎖RNAを生成した。それぞれ対応するホスホルアミダイト及び2’−O−メチルホスホルアミダイトを用いて(プロリゴビオヒェミー社(Proligo Biochemie GmbH))[ドイツ、ハンブルク(Hamburug)]、固相合成によりRNA及び2’−O−メチルヌクレオチドを含むRNAを生成した。ビューケージ、エス.エル.ら(Beaucage,S.L.et al.)(Edrs.),ジョンワイリーアンドサンズ社(John Wiley&Sons,Inc.)[米国ニューヨーク州ニューヨーク(New York)]における核酸化学の現行プロトコルに記載されているような標準ヌクレオチドホスホルアミダイト化学を用いて、これらの構成単位をオリゴリボヌクレオチド鎖の配列内の選択部位に組み込んだ。ヨード酸化溶剤をアセトニトリル(1%)中のBeaucage試薬(クルアケム社(Chruachem Ltd)[英国グラスゴー(Glasgow)])に置き換えることにより、オスホロチオアート結合を導入した。更なる補助試薬をマリンクロットベーカー社(Mallinckrodt Baker)[ドイツ、グリースハイム(Griesheim)]から入手した。
【0140】
所定の手順に従って粗オリゴリボヌクレオチドのアニオン交換HPLCによる脱保護及び精製を行った。分光光度計(DU 640B、ベックマン・コールター社(Beckman Coulter GmbH[ドイツ、ウンターシュライスハイム(Unterschleiβheim)])を用いて、260nmの波長にてそれぞれのRNA溶液のUV吸収により、収量及び濃度を求めた。アニーリング緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH6.8;100mM塩化ナトリウム)中、相補鎖の等モル溶液を混合して二本鎖RNAを生成し、85〜90℃で3分、水槽中で加熱し、3〜4時間にわたり室温まで冷却した。使用するまで精製RNA溶液を−20℃で保存した。
【0141】
上記合成法の結果、上記のように合成したオリゴヌクレオチドはすべて5’−末端(most)ヌクレオチド上にリン酸基を含まない。
図1に示すように、コレステロールをsiRNAに3’接合した。これらの3’−コレステロール−コンジュゲートされたsiRNAの合成のために、適切に修飾された固相担体をRNA合成のために用いた。固相担体は次のように調製した。
ジエチル−2−アザブタン−1,4−ジカルボキシレートAA
【0142】
【化1】

水(50mL)中のエチルグリシナートヒドロクロリド(32.19g,0.23モル)の撹拌氷冷溶液に、水酸化ナトリウムの4.7M溶液(50mL)を加えた。次に、アクリル酸エチル(23.1g,0.23モル)を加え、TLC(19時間)により反応の完了を確認するまで、この混合物を室温で撹拌した。19時間後、これをジクロロメタン(3×100mL)で分離した。無水硫酸ナトリウムで有機層を乾燥し、濾過し、蒸発させた。残留物を蒸留し、AA(28.8g,61%)を得た。
3−{エトキシカルボニルメチル−[6−(9H−フルオレン(fluoren)−9−イルメトキシカルボニル−アミノ)−ヘキサノイル]−アミノ}−プロピオン酸エチルエステルAB
【0143】
【化2】

Fmoc−6−アミノ−ヘキサン酸(9.12g,25.83mmol)をジクロロメタン(50mL)に溶解し、氷冷した。ジイソプロピルカルボジイミド(Diisopropylcarbodiimde)を0℃で溶液に加えた。次に、ジエチル−アザブタン−1,4−ジカルボキシラート(5g,24.6mmol)及びジメチルアミノピリジン(0.305g,2.5mmol)を加えた。溶液を室温にし、更に6時間撹拌した。TLCにより反応の完了を確認した。反応混合物を真空内で濃縮し、ジイソプロピルウレアを沈殿させるために酢酸エチルに加えた。懸濁液を濾過した。濾過物を5%塩酸水溶液、5%重炭酸ナトリウム及び水で洗浄した。硫酸ナトリウム上で混合有機層を乾燥して濃縮し、粗生成物を得て、これをカラムクロマトグラフィー(50%EtOAC/ヘキサン)により精製し、11.87g(88%)のABを生成した。
3−[(6−アミノ−ヘキサノイル)−エトキシカルボニルメチル−アミノ]−プロピオン酸エチルエステルAC
【0144】
【化3】

3−{エトキシカルボニルメチル−[6−(9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニルアミノ)−ヘキサノイル]−アミノ}−プロピオン酸エチルエステルAB(11.5g,21.3mmol)を、0℃でジメチルホルムアミド中、20%ピペリジンに溶解した。この溶液を1時間、撹拌し続けた。反応混合物を真空内で濃縮し、残留水を加え、酢酸エチルで生成物を抽出した。塩酸塩に変換することにより粗生成物を精製した。
3−({6−[17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン(phenanthren)−3−イルオキシカルボニルアミノ]−ヘキサノイル}エトキシカルボニルメチル−アミノ)−プロピオン酸エチルエステルAD
【0145】
【化4】

3−[(6−アミノ−ヘキサノイル)−エトキシカルボニルメチル−アミノ]−プロピオン酸エチルエステルACの塩酸塩(4.7g,14.8mmol)をジクロロメタンに取り込んだ。懸濁液を0℃まで氷冷した。懸濁液にジイソプロピルエチルアミン(3.87g,5.2mL,30mmol)を加えた。生成した溶液にコレステリルクロロホルマート(6.675g,14.8mmol)を加えた。反応混合物を一晩撹拌した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、10%塩酸で洗浄した。フラッシュクロマトグラフィーにより生成物を精製した(10.3g,92%)。
1−{6−[17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン(phenanthren)−3−イルオキシカルボニルアミノ]−ヘキサノイル}−4−オキソ−ピロリジン−3−カルボン酸エチルエステルAE
【0146】
【化5】

カリウムt−ブトキシド(1.1g、9.8mmol)を30mLの乾燥トルエンの中にスラリー化した。混合液を、氷上で0℃まで冷却し、5g(6.6mmol)のジエステルADをゆっくり、攪拌しながら、20分以内に加えた。添加中、温度は5℃より低く保った。攪拌を0℃で30分間続けてから1mLの氷酢酸を加え、続いて直ぐ40mlの水に溶解した4gのNaHPO/HOを加えた。得られた混合液をそれぞれ100mLのジクロロメタンを用いて2回抽出し、一つにまとめた有機抽出物をそれぞれ10mLのリン酸緩衝液を用いて2回洗浄、乾燥させ、蒸発させて乾燥させた。残留物を60mLのトルエンに溶解し、0℃に冷却してから3回に分けて、pH9.5の冷した50mLの炭酸緩衝液を用いて抽出した。水性抽出物をリン酸でpH3に調節し、5回に分けて40mLのクロロホルムで抽出し、一つにまとめてから乾燥、蒸発させて残留物を得た。残留物を25%エチル酢酸/ヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、1.9のb−ケトエステルを得た(39%)。
[6−(3−ヒドロキシ−4−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−イル)−6−オキソ−ヘキシル]−カルバミン酸17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルエステルAF
【0147】
【化6】

メタノール(2mL)を1時間かけて、還流中のb−ケトエステルAE(1.5g、2.2mmol)および水素ホウ化ナトリウム(0.226g,6mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)混合液に滴下して加えた。還流温度で1時間攪拌を続けた。室温まで冷却した後、1NのHCl(12.5mL)を加え、混合液を酢酸エチル(3×40mL)で抽出した。一つにまとめた酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空で濃縮して生成物を得て、これをカラムクロマトグラフィー(10%MeOH/CHCl)で精製した(89%)。
[6−{3−ビスー(4−ヒドロキシ−フェニル)−フェニル−メトキシメチル]−4−ヒドロキシ−ピロリジン−1−イル}−6−オキソ−ヘキシル)−カルバミン酸17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルエステルAG
【0148】
【化7】

ジオールAF(1.25gm,1.994mmol)をピリジン(2×5mL)と一緒に真空により蒸発させた。無水ピリジン(10mL)および4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(0.724g,2.13mmol)を攪拌しながら加えた。反応は室温で一晩行った。反応はメタノールを加えて止めた。反応混合液を真空で濃縮し、残留物にジクロロメタン(50mL)を加えた。有機層を1Mの重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリムで乾かし、濾過して濃縮した。残留ピリジンは、トルエンと共に蒸発させて除いた。粗生成物はクロマトグラフィー(2%MeOH/クロロホルム、Rf=5%MeOH/CHCl中で0.5)(1.75g,95%)で精製した。
スクシン酸モノ−(4−[ビス−(4−メトキシ−フェニル)−フェニル−メトキシメチル]−1−{6−[17−(1,5−ジメチル−ヘキシル)−10,13−ジメチル−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17−テトラデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルオキシカルボニルアミノ]ヘキサノイル}−ピロリジン−3−イル)エステルAH
【0149】
【化8】

化合物AG(1.0g、1.05mmol)を無水コハク酸(0.150g,1.5mmol)およびDMAP(0.073g,0.6mmol)と混合し、真空において、40℃で一晩乾燥した。混合物を無水ジクロロエタン(3mL)に溶解し、トリエチルアミン(0.318g,0.440mL,3.15mmol)を加え、溶液を室温、アルゴン雰囲気中で16時間攪拌した。次に溶液をジクロロメタン(40mL)で希釈し、氷冷したクエン酸水溶液(5重量%,30mL)および水(2X20mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリムで乾燥し、濃縮して乾燥した。残留物をそのまま次の段階に用いた。
コレステロール誘導化CPG AI
【0150】
【化9】

コハク酸AH(0.254g,0.242mmol)をジクロロメタン/アセトニトリル(3:2,3mL)の混合液に溶解した。この溶液にDMAP(0.0296g,0.242mmol)のアセトニトリル(1.25mL)溶液、2,2’−ジチオ−ビス(5−ニトロピリジン)(0.075g,0.242mmol)のアセトニトリル/ジクロロエタン(3:1,1.25mL)を連続して加えた。得られた溶液に、トリフェニルホスフィン(0.064g,0.242mmol)のアセトニトリル(0.6ml)溶液を加えた。反応混合液は明るいオレンジ色に変わった。溶液をリストアクション攪拌機を用いて短時間(5分間)攪拌した。長鎖アルキルアミン−CPG(LCAA−CPG)(1.5g,61mm/g)を加えた。懸濁液を2時間攪拌した。CPGを焼結フィルターを通して濾過し、アセトニトリル、ジクロロメタン、およびエーテルを用いて連続的に洗浄した。未反応のアミノ基は、酸性の無水/ピリジンを用いてマスクした。CPGの負荷能力は、UV測定を行って測定した(37mM/g)
コレステロール接合RNA鎖の合成および構造を図1に示す。
【0151】
活性スクリーニングのために、表3に掲載されたsiRNAを合成した。
【0152】
【表3】


実施例3:siRNA活性試験
表3に示したiRNA剤のヒトRhoAの発現を阻害する能力を、発現構築物から各遺伝子産物が発現されているヒト細胞株、または各遺伝子産物を構成的に発現している細胞株で試験した。iRNA剤は、例えばトランスフェクションまたはエレクトロポレーションによって細胞内にトランスフェクションされ、細胞に一定時間、例えば24時間作用させることができ、RhoAの発現レベルは細胞溶解物中のRhoAのmRNA濃度を測定することによって決定した。次にこれらの発現レベルを、同等であるがiRNA剤を加えることなしに処理した細胞のRhoA発現レベルと、またはハウスキーピング遺伝子(例えばGAPDH)の発現レベルと比較し、それによって表3に示されたiRNA剤のヒトRhoAの発現を阻害する能力を評価した。
【0153】
RhoA発現阻害のスクリーニング
トランスフェクションの1日前に、Neuroscreen−1細胞(セロミクス社(Cellomics Inc.)[米国ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)]を、96ウエルコラーゲンコーティングプレート(グライナーバイオワン社(Greiner Bio−One GmbH)[ドイツ、フリッケンハオゼ(Frickenhausen)]に、100μlの増殖培地(RPMI 1640,10%ウマ血清、5%ウシ胎児血清、100uペニシリン/100μg/mlストレプトマイシン、2mMのL−グルタミン、バイオクロム社(Biochrom AG)[ドイツ、ベルリン(Berlin)]に1.5×10細胞/ウエルの割合で接種した。トランスフェクションは三重でおこなった。各ウエルについて、0.5μlのリポフェクタミン2000(インビトロジェン社(Invitrogen GmbH)[ドイツ、カールスルーエ(Karlsruhe)]を12μlのOpti−MEM(インビトロジェン社)と混合し、室温で15分間インキュベーションした。ウエル当たり5μMのsiRNAのアニーリング緩衝液(20mMのリン酸ナトリウム、pH6.8;100mM塩化ナトリウム)の溶液2μlを10.5μlのOpti−MEMと混合し、これとリポフェクタミン2000−Opti−MEM混合液とを合わせて再度15分間室温でインキュベーションした。このインキュベーションの間に細胞から増殖培地を取り除き、75μl/ウエルの新鮮な培地と交換した。25μlのsiRNA−リポフェクタミン2000複合物を加え、100μlのインキュベーション体積での全体濃度を100nMにし、加湿インキュベータ(ヘレウス社(Heraeus GmbH)[ドイツ、ハーナウ(Hanau)]内で細胞を37℃、5%COで24時間インキュベーションした。
【0154】
細胞溶解物中のmRNAのレベルを、市販の分岐DNAハイブリダイゼーションアッセイ(QuantiGene bDNA−kit、ジオスペクトラ社(Genospectra))[米国カリフォルニア州フレモント(Fremont)]を用いて定量化した。細胞を、増殖培地を50μl追加し、75μlのLysis Mixture(QuantiGene bDNA−kit付属)を各ウエルに加えて集め、53℃で30分間溶解した。溶解物50μlを、QuantiGene 製造元の「bDNA−kitアッセイに関するプロトコルに従って、ラットのRhoAおよびrGAPDHに特異的なプローブ(プローブの配列は表4および表5に示す)とインキュベーションした。最後に化学発光をVictor2−Light(パーキンエルマー社(Perkin Elmer))[ドイツ、ヴィースバーデン(Wiesbaden)]を用いてRLU単位(相対光単位)で測定し、各ウエルについてRhoAプローブで得た結果をそれぞれのGAPDH地について標準化した。モック(Mock)トランスフェクション細胞(siRNAを加える以外は同じプロトコル通りの細胞)をコントロールとし、mRNAレベルの比較に用いた。
【0155】
スクリーニングで有効とされたsiRNAは、用量反応曲線を確立し、IC50濃度(遺伝子発現の50%阻害が観察される濃度)を計算することで特徴付けを行った。用量反応評価については、トランスフェクションを次の濃度で行った:5μMのsiRNA保存溶液をアニーリング緩衝液で連続希釈して100nM、33.3nM、11.1nM、3.7nM,1.2nM,0.4nM、137pM,46pM,15pM,5pM、およびモック(siRNAなし)の溶液を得て、上記プロトコルに従って希釈保存液2μlを用いた。IC50は、次のパラメータを用いて、コンピュータソフトウエアX1fitを利用したフカーブフィッティングによって決定した:投与反応1サイト、4パラメータロジスティクモデル、fit=(A+((B−A)/(1+(((10∧C)/x)∧D))))、inv=((10∧C)/((((B−A)/(y−A))−1)∧(1/D)))、res=(y−fit)。
【0156】
【表4】

【0157】
【表5】

表6には、選択された薬剤の物質番号、薬剤のセンス鎖の最も5’側のヌクレオチドに対応するヒトRhoA mRNA配列中のヌクレオチドの位置(Genbank登録番号NM_001664)、100nM濃度の薬剤で処理した細胞に残っている全RhoA mRNAのコントロールの%で表した量、およびIC50値が記載されている。
【0158】
【表6】


まとめると、薬剤AL−DP−5979、AL−DP−5990、AL−DP−5988、AL−DP−5981、AL−DP−5982、AL−DP−5986、AL−DP−5989、AL−DP−6176、およびAL−DP−6177は、RhoA mRNAの発現を80%以上低下させることができ、AL−DP−5973、AL−DP−5987、AL−DP−5994、AL−DP−5995、AL−DP−5976、AL−DP−5984、およびAL−DP−5972は、RhoA mRNAの発現を70%以上低下させることができ、AL−DP−5993、AL−DP−5975、およびAL−DP−5983はRhoA mRNAの発現を60%以上低下させることができ、AL−DP−5974はRhoA mRNAの発現を50%以上低下させることができ、AL−DP−5991、AL−DP−5992、およびAL−DP−5978はRhoA mRNAの発現を40%以上低下させることができた。AL−DP−6176およびAL−DP−6177の高い活性は、コレステリル成分が活性を大きく失わずにsiRNAのセンス鎖の3’末端に接合できることを示している。AL−DP−6176およびAL−DP−6177は、センス鎖上に3’接合コレステリルがあること以外を除いてそれぞれAL−DP−5973およびAL−DP−5987と同一である。
【0159】
実施例4:安定性試験
それらが意図する生理学的な応用に最も関係する生物学的マトリックス、即ち脳脊髄液(CSF)中でのsiRNAの安定性を検証するために、我々はこの媒体中でのsiRNAの分解半減期を決定する方法を確立した。この方法は、siRNAをCSFとインキュベーションし、続いてCSFサンプルをプロテイナーゼK処理し、CSFサンプル成分をHPLCで分離することを含む。
【0160】
以下の例はインビトロでsiRNAと接触したCSFサンプルの分析を示す。しかしながら、この方法は生体外の生物サンプル、即ちインビボでsiRNAと接触した被験体から得たサンプルにも等しく適用できる。
【0161】
ウシCSFは、月齢6ヶ月のウシ(Bos bovis)から得た(ジェイ.リハーゲ教授(Prof.Dr.J.Rehage),University of Veterinary Medicine Hannover,Foundation)[ドイツ、ハノーバー(Hannover)]。ブタCSFは、月齢3〜4ヶ月3匹の健康な乳離れしたばかりのブタ(Sus scrofa domesticus)(エム.ヴェント教授(Prof.Dr.M.Wendt),University of Veterinary Medicine Hannover,Foundation[ドイツ、ハノーバー(Hannover)])からプールした。ラットCSFは、体重175〜200gの20匹のオスSprague−Dawleyラット(Rattus norvegicus)(チャールス・リバー・ラボラトリーズ(Charles River Laboratories)[フランス、ラルブレール(L’Arbresle Cedex)])からプールした。プロテイナーゼK(20mg/ml)は、peQLab(カタログ番号04−1075[ドイツ、エルランゲン(Erlangen)])から得て、脱イオン水(18.2mΩ)で1:1に希釈しプロテイナーゼKの最終濃度を10mg/mlにした。プロテイナーゼK緩衝液(4.0mlのTRIS−HCl 1M pH7.5、1.0mlのEDTA 0.5M、1.2mlのNaCl 5M、4.0mlのSDS 10%)は新たに調製し、沈殿を避けるために使用時まで50℃に保った。
【0162】
40merのポリ(L−dT)、即ち(L−dT)40はノックソンファーマ社(Noxxon Pharma AG)[ドイツ、ベルリン(Berlin)]から得て、内部標準物質として用いた。核酸のL−エナンチオマーのポリマーは、核酸溶解分解に対し極めて高い安定性を示すが(クラスマン エスら(Klussman S,et al.),Nature Biotechn.第14巻:1112ページ(1996年))、それ以外は天然産のR−エナンチオマーからなる核酸に極めて近い性質を示す。
【0163】
siRNAインキュベーションサンプルのプロテイナーゼK処理
50μMの各siRNAのリン酸緩衝化食塩水(PBS、シグマ アルドリッチヒェミー社(Sigma−Aldrich Chemie GmbH)[ドイツ、タウフキルヘン(Taufkirchen)])溶液6μlを54μlのCSFと37℃で30分間、1、2、4、8、16、24、または48時間インキュベーションした。siRNA−分解を終了させるために、それぞれのインキュベーション時間が終了した直後にプロテイナーゼK緩衝液25μlをインキュベーションサンプルに加え、混合液を5秒間高速で攪拌し(Vortex Genie 2,カタログ番号SI0256,サイエンティフィックインダストリーズ社(Scientific Industries,Inc.)[米国ニューヨーク州ボヘミア(Bohemia)])、プロテイナーゼK(10mg/ml)を8μl添加してから5秒間攪拌し、最後に混合液をサーモミキサーの中、42℃、1050rpmで20分間インキュベーションした。
【0164】
50μMの(L−dT)40溶液(250pmole)5μLを内部標準物質として各ウエルに加え、溶液を5秒間攪拌し、チューブを1分間小型遠心分離器にかけて遠心分離し、壁内面に付いている滴を全て底に落とした。溶液を96ウエルのCaptiva 0.2μmフィルタープレート[ドイツ、バリアン(Varian)](カタログ番号A5960002)に移して、21900rcfで45分間遠心分離して濾過した。
【0165】
インキュベーション・ウェルを47.5μlの脱イオン水(18.2mΩ)で洗浄し、洗浄液をキャプティバ・フィルター・ユニット(Captiva Filter Unit)で21900rcf、15分間にわたり濾過し、この洗浄ステップを繰り返した。理論的全容量200μlのうちの約180μlが平均して2回目の洗浄ステップ後に回収された。
【0166】
複数のsiRNA一本鎖を互いに分離するとともに分解産物からそれらを分離するためのイオン交換クロマトグラフィーによる分離:
インライン脱気装置、自動サンプリング装置、カラム・オーブン、および固定波長UV検出器(ダイオネクス社(Dionex GmbH)[ドイツ、イドシュタイン(Idstein)])を備えたダイオネックス・バイオLC(Dionex BioLC)HPLCシステムを、変性条件下で用いた。標準実行パラメータは以下の通りである。
【0167】
カラム:Dionex DNA−Pac100;4×250mm
温度:75℃
溶離液A:10mM NaClO、20mM TRIS−HCl、1mM EDTA;10%アセトニトリル、pH=8.0
溶離液B:800mM NaClO、20mM TRIS−HCl、1mM EDTA;10%アセトニトリル、pH=8.0
検出:@260nm
勾配:0〜1分:10%B
1〜11分:10% −> 35%B
11〜12分:35%B −> 100%B
12〜14分:100%B −> 10%B
14〜16分:カラム再平衡化のための10%B
注入量:20μl
siRNAの2本の鎖を分離することが期待通りに行われなかった場合または1本の鎖とともに分解フラグメントが一緒に溶離された場合には、クロマトグラフィーのパラメータの調整を、温度、pH、NaBrによるNaClOの置換、アセトニトリルの濃度の変更によって、および/またはセンスもしくはアンチセンス鎖由来のピークの分離定量を可能にする分離が達成されるまでの溶離液勾配の勾配を調整することによって行う。
【0168】
完全長鎖のピーク面積は、機器(Chromeleon 6.6;ダイオネクス社(Dionex GmbH)[ドイツ、イドシュタイン(Idstein)])の製造元から提供されたソフトウェアを用いてUV検出器シグナルの積分によって得られた。
【0169】
データ分析:
積分されたセンス鎖、アンチセンス鎖、及び内部ピーク面積を全ての試料及び正規化対照について得た。
【0170】
濾過及び洗浄ステップでの液体損失からなる補正率CFを、理論上の内部標準ピーク面積に対する実験上の内部標準ピーク面積の比を計算することによって、試料毎に測定した。理論上の内部標準ピーク面積を、例えば、HPLCカラム上に(L−dT)40の50μM溶液の段階希釈を各々50μl注入することにより得た内部標準の較正曲線から得られ、また希釈系列由来のピーク面積に適合する線形最小二乗によって得られた等式による25pmol(L−dT)40に対応する理論ピーク面積の計算によって得られる。センスおよびアンチセンス鎖のピーク面積に適用される補正率CFを下記のようにして得る。
【0171】
CF=ピーク面積intStd(理論値)/ピーク面積intStd(試料)
この処置は、異なる試料のピーク面積を比較することができるように、フィルターを2回洗浄することで、実質的に完全な回収が混合濾過液状態で達成され、フィルターに保持された洗浄水の可変的な量が補正されると仮定する。
【0172】
時点ごとにセンスおよびアンチセンス鎖のピークについて得られたピーク面積を補正率CFで乗算することで、正規化ピーク面積(NPAsense,t、NPAantisense,t)を得る。
【0173】
NPAsense or antisense,t=(ピーク面積sense or antisense,t)×CF
時間tでのセンスおよびアンチセンス鎖についての残留完全長産物の相対量(%FLP)を得るために、時間t=0分(NPAsense,t=0、NPAantisense,t=0)での各鎖の正規化ピーク面積を100%として設定し、他の時点のNPAをこれらの値によって割る。
【0174】
%FLPt=1,2,3...n=(NPAt=1,2,3...n/NPAt=0)*100
siRNAをアニーリング緩衝液のみでインキュベートした対照試料から得られた値を、本方法の精度の対照として用いることが可能である。両鎖の%FLPは、インキュベーション時間に関係なく許容誤差範囲内で、100%近傍に位置しなければならない。
【0175】
次に、ln(%FLP)対時間のプロット、すなわち下記に適合する線形最小二乗の勾配から、一次速度方程式を仮定して、各々の鎖に関して分解半減期t1/2を計算する。
1/2=ln(0,5)/勾配
ラット、ウシ、およびブタCSFでのNogoLおよびRhoAに特異的なsiRNAの安定性
表7は、各々の培地で48時間インキュベートした後のブタ、ラット、およびウシCSFならびにPBSに存在する完全長二本鎖RNAの相対量の選択siRNAに関する測定結果を示す。また、いくつかのsiRNAについてセンスおよびアンチセンス鎖の分解半減期を別々に測定した。
【0176】
【表7】


表7から明らかなように、分解の影響を受けやすい選択部位内のsiRNAの修飾は、活性および安定性に関して優れた特性を持つ薬剤をもたらし得る。例えば、AL−DP−5871、AL−DP−5938、AL−DP−5963、AL−DP−5973、AL−DP−5979、AL−DP−5981、AL−DP−5986、AL−DP−5987、AL−DP−5989、およびAL−DP−5990の全ては、各々の標的遺伝子に対する阻害が上記した生体外アッセイで70%を上回り、48時間にわたるブタCSFによるインキュベーション後の残存完全長二本鎖が70%を上回る。しかし、ラットCSFがブタまたはウシCSFよりもsiRNAに対してより攻撃的であるといういくつかの兆候がある。
【0177】
実施例5:ラット後根神経節(DRG)初代培養細胞におけるRhoA発現の阻害
RhoA発現の阻害を、上記したようにNeuroscreen1細胞を用いて得られる結果を確認するために、ラット後根神経節(DRG)初代培養細胞で評価した。
【0178】
DRG細胞を生後3〜6日目にSprague−Dawleyラットから単離した。ラットを解剖し、1.3ml(0.28Wunsch単位/ml)リベラーゼ精製酵素ブレンド(Liberase Blendzyme)ロシュ社(Roche)含有S−MEM(Gibco、インビトロジェン社(Invitrogen)[米国カリフォルニア州カルスバド(Carlsbad)])を添加して37℃で35分間インキュベートすることにより解離させて単細胞にした。細胞懸濁液を組織培養プレートに前播種して非神経性細胞を除去した。次に神経を、50ng/mlマウス神経成長因子2.5S(NGF;プロメガ社(Promega Corp.)[米国ウィスコンシン州マジソン(Madison)])が追加された5%ウシ胎児血清(FBS、熱処理不活性化)および5%馬血清(熱処理不活性化)(両方とも、Gibco、インビトロジェン社(Invitrogen)[米国カリフォルニア州カルスバド(Carlsbad)])を含むグルタミン(Gibco、インビトロジェン社(Invitrogen)[米国カリフォルニア州カルスバド(Carlsbad)])含有F12−HAM培地中の組織培養バイオコート(Biocoat)(商標)PDLポリDリジン/ラミニン96穴プレート(米国マサチューセッツ州ベッドフォード、BD Biosciences)に播種し、トランスフェクションまで加湿インキュベーター中、37℃、5%COに保った。
【0179】
rhoA特異的siRNA(物質番号AL−DP−5987)を、濃度200nM、DRG培地中で試験した。この際、トランス・メッセンジャー(TransMessenger)(商標)トランスフェクション試薬(カタログ番号301525、キアゲン社(Qiagen GmbH)[ドイツ、ヒルデン(Hilden)])を用い、この試薬は脂質製剤、特異的RNA濃縮試薬(EnhancerR(商標))に基づいており、siRNA保持RNA濃縮緩衝液(BufferEC−R(商標)):エンハンサーR(商標)比(μg:μl)は一定して1:2であり、さらにsiRNA:TransMesenger(登録商標)比(μg:μl)は一定して1:12である。
【0180】
DRGを24時間後平板培養でトランスフェクトさせた。各ウェルに関して、0.52μlエンハンサー(Enhancer)R(商標)を最初に13.68μlバッファー(Buffer)EC−R(商標)と最初に混合した。25μMのALDP−5987溶液(0.26μl)を含むアニーリング緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH6.8;100mM塩化ナトリウム)0.8μlまたはアニーリング緩衝液(siRNAフリー対照)0.8μlを添加し、混合物をRTで5分間にわたりインキュベートした。3.12μl TransMessenger(商標)トランスフェクション試薬を6.88μlのバッファー(Buffer)EC−R(商標)で希釈し、混合物に添加し、この混合物をさらに10分間、室温でインキュベートすることで、トランスフェクション複合体を形成させた。50ng/mlNGF2.5S(プロメガ社(Promega Corp.)[米国ウィスコンシン州マジソン(Madison)])を追加したグルタミン(Gibco、インビトロジェン社(Invitrogen)[米国カリフォルニア州カルスバド(Carlsbad)])を含む75μl血清フリーF12−HAM培地と、1:50B27サプリメント(Gibco、インビトロジェン社(Invitrogen)[米国カリフォルニア州カルスバド(Carlsbad)])をトランスフェクション複合体に添加し、穏やかに上下にピペッティングすることによって完全に混合させた。成長培地をDRG細胞から除去し、90μlの上記トランスフェクション複合体混合物を細胞に添加した。加湿インキュベーター中5%CO、37℃での8時間インキュベーション後、上清を細胞から除去し、5%FBS、5%馬血清(両方とも、Gibco、インビトロジェン社(Invitrogen)[米国カリフォルニア州カルスバド(Carlsbad)])、50ng/mlマウスNGF2.5S(プロメガ社(Promega Corp.)[米国ウィスコンシン州マジソン(Madison)])、および1:100ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco、インビトロジェン社(Invitrogen)[米国カリフォルニア州カルスバド(Carlsbad)])を追加したグルタミンを含む新鮮F12−HAM培地を添加し、細胞を加湿インキュベーター中で37℃、5%COでさらに16時間インキュベートし、RhoA mRNAを定量した。
【0181】
RhoA mRNAレベルの測定は、製造元のプロトコルに従って、クアンチジーン(QuantiGene)(商標)bDNAキット(米国フレモント、Genospectra)を用いておこなった。手短に言うと、上清をDRG細胞から除去し、該細胞の溶解を、150μlの溶解作用試薬(Lysis Working Reagent)(溶解混合物1容量プラス培地2容量)を添加し、52℃で30分間にわたりインキュベートすることによって、おこなった。ライセート40μlを、表4および表5に示したラットRhoAおよびラットGAPDHに特異的なプローブ・セットとともに52℃、40分間にわたりインキュベートした。化学発光の読み取りは、相対光単位(Relative Light Unit、RLU)として、Victor−Light(商標)(パーキンエルマーライフアンドアナリティカルサイエンス社(PerkinElmer Life And Analytical Sciences,Inc.)[米国マサチューセッツ州ボストン(Boston)])上でおこなった。RhoAのRLUをウエル毎にGAPDHのRLUに対して正規化した。次に、正規化RhoA/GAPDH比をsiRNAフリー対照(100%として設定)と比較した。
【0182】
いくつかの独立した実験では、AL−DP−5987処理したDRG初代細胞では、siRNAフリー対照で見出されたRhoA mRNAの20〜25%まで一貫して、RhoA mRNAが減少した。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】コレステロールと共役結合したRNA鎖の合成及び構造を示す概略図である。球体は固相(制御多孔性ガラス、CPG)を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質番号6477〜6836から成る群から選択される任意の1つの物質のセンス鎖配列と僅かに1,2又は3個のヌクレオチドだけ異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含むセンス鎖と、物質番号6477〜6836から成る群から選択される任意の1つの物質のアンチセンス配列と僅かに1,2又は3個のヌクレオチドだけ異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含むアンチセンス鎖とを含む、細胞内のRhoA遺伝子の発現を阻害するためのiRNA剤。
【請求項2】
物質番号6477〜6836から成る群から選択される任意の1つの物質のセンス鎖配列と僅かに1,2又は3個のヌクレオチドだけ異なる、少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含むセンス鎖と、物質番号6477〜6836から成る群から選択される任意の1つの物質のアンチセンス配列の少なくとも15個の隣接ヌクレオチドを含むアンチセンス鎖とを含む、細胞内のRhoA遺伝子の発現を阻害するためのiRNA剤であって、これらの物質とのインキュベーション後に培養ヒト細胞に存在するRhoA mRNAの量を、前記物質とインキュベートされなかった細胞に対して40%以上減少させるiRNA剤。
【請求項3】
物質番号6477〜6836から成る群から選択される任意の1つの物質の配列の1つと本質的に同一の少なくとも16,17又は18個のヌクレオチドの配列、但し、それぞれ1鎖につき1,2又は3個以下のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換されているが(例えば、アデノシンがウラシルに置換)、RhoA発現を阻害する能力を本質的に保持している配列を各々が含むセンス鎖とアンチセンス鎖とを含む、細胞内のRhoA遺伝子の発現を阻害するためのiRNA剤。
【請求項4】
前記センスおよびアンチセンス鎖配列の少なくとも一方が、物質番号6523,6524,6530,6614,6650,6656,6657,6661,6662,6703,6712,6713,6732,6751,6756,6767,6769,6787,6789,6790,6832のセンス及びアンチセンス鎖配列から成る群から選択される、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のiRNA剤。
【請求項5】
前記センスおよびアンチセンス鎖配列の少なくとも一方が、物質番号AL−DP−5972,AL−DP−5973,AL−DP−5974,AL−DP−5975,AL−DP−5976,AL−DP−5978,AL−DP−5979,AL−DP−5981,AL−DP−5982,AL−DP−5983,AL−DP−5984,AL−DP−5986,AL−DP−5987,AL−DP−5988,AL−DP−5989,AL−DP−5990,AL−DP−5991,AL−DP−5992,AL−DP−5993,AL−DP−5994,AL−DP−5995,AL−DP−6176,AL−DP−6177のセンス及びアンチセンス鎖配列から成る群から選択される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のiRNA剤。
【請求項6】
前記アンチセンスRNA鎖が30以下のヌクレオチド長であり、前記iRNA剤の二重鎖領域が15〜30ヌクレオチド対長である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のiRNA剤。
【請求項7】
iRNA剤が生体試料において上昇した安定性を有するように修飾される、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のiRNA剤。
【請求項8】
前記修飾が、ホスホロチオアート、2’−修飾ヌクレオチド、固定ヌクレオチド、非塩基性ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミダート又はヌクレオチドを構成する非天然型塩基である、請求項7に記載のiRNA剤。
【請求項9】
ウリジンが2’−修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−ウリジン−アデニン−3’(5’−ua−3’)ジヌクレオチド;5’−ウリジンが2’−修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−ウリジン−グアニン−3’(5’−ug−3’)ジヌクレオチド;5’−シチジンが2’−修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−シチジン−アデニン−3’(5’−ca−3’)ジヌクレオチド;又は5’−ウリジンが2’−修飾ヌクレオチドである、少なくとも1つの5’−ウリジン−ウリジン−3’(5’−uu−3’)ジヌクレオチドを含む、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のiRNA剤。
【請求項10】
5’−ua−3’,5’−uu−3’,5’−ca−3’及び5’−ug−3’モチーフにおけるすべての5’−ヌクレオチドが前記センス鎖において2’−修飾され、5’−ua−3’及び5’−ca−3’モチーフにおけるすべての5’−ヌクレオチドが前記アンチセンス鎖において2’−修飾され、或いは、
5’−ua−3’,5’−uu−3’,5’−ca−3’及び5’−ug−3’モチーフにおけるすべての5’−ヌクレオチドが前記センス及びアンチセンス鎖において2’−修飾され、或いは、
すべてのピリミジンヌクレオチドが前記センス鎖において2’−修飾され、5’−ua−3’及び5’−ca−3’モチーフにおけるすべての5’−ヌクレオチドが前記アンチセンス鎖において2’−修飾され、或いは、
すべてのピリミジンヌクレオチドが前記センス鎖において2’−修飾され、5’−ua−3’,5’−uu−3’,5’−ca−3’及び5’−ug−3’モチーフにおけるすべての5’−ヌクレオチドが前記アンチセンス鎖において2’−修飾され、或いは、
前記センス鎖におけるすべてのピリミジンヌクレオチドが2’−修飾され、前記アンチセンス鎖ではヌクレオチドが2’−修飾されない、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のiRNA剤。
【請求項11】
前記2’−修飾が、2’−デオキシ、2’−デオキシ−2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−O−メトキシエチル(2’−O−MOE)、2’−O−アミノプロピル(2’−O−AP)、2’−O−ジメチルアミノエチル(2’−O−DMAOE)、2’−O−ジメチルアミノプロピル(2’−O−DMAP)、2’−O−ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’−O−DMAEOE)及び2’−O−N−メチルアセトアミド(2’−O−NMA)から成る群から選択される、請求項8から請求項10のいずれか一項に記載のiRNA剤。
【請求項12】
1〜4個の不対合ヌクレオチドを有するヌクレオチドオーバーハングを含む、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のiRNA剤。
【請求項13】
コレステロール部分を含む、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のiRNA剤。
【請求項14】
前記コレステロール部分が前記iRNA剤のセンス鎖の3’末端に接合している、請求項13に記載のiRNA剤。
【請求項15】
前記iRNA剤が神経細胞又は神経鞘細胞による取込みの標的となる、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のiRNA剤。
【請求項16】
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のiRNA剤を対象に投与するステップを含む、部分的にRhoAに媒介される病理過程を有する対象を処置する方法。
【請求項17】
前記病理過程が神経の成長又は伸長の阻害である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記病理過程が、神経の障害又は損傷の結果としての神経の成長又は伸長の阻害である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記iRNA剤が、前記対象の細胞又は組織内のRhoAの発現を低減するのに十分な量にて投与される、請求項16から請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象がヒトである、請求項16から請求項19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
a)請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のiRNA剤と、
b)医薬的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項22】
請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のiRNA剤を含む細胞。
【請求項23】
細胞内のRhoA遺伝子の発現を阻害するための方法であって、
(a)請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のiRNA剤を細胞に導入するステップと、
(b)RhoA遺伝子のmRNA転写の低下を得るのに十分な時間、ステップ(a)にて作製された細胞を維持し、これにより細胞内のRhoA遺伝子の発現を阻害するステップとを含む方法。
【請求項24】
細胞内のRhoA遺伝子の発現を阻害するためのベクターであって、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のiRNA剤の少なくとも1つの鎖をコードするヌクレオチド配列に機能的に結合した調節配列を含むベクター。
【請求項25】
請求項24に記載のベクターを含む細胞。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−502138(P2009−502138A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523010(P2008−523010)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/028488
【国際公開番号】WO2007/014077
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(505369158)アルナイラム ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】ALNYLAM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】