説明

S−アデノシルメチオニン安定化のためのフィチン酸および/またはデキストリンを含む飲食用組成物

【課題】S−アデノシルメチオニンが長期間にわたって安定に保たれる飲食用組成物を提供すること、およびS−アデノシルメチオニンの安定化法を提供すること。
【解決手段】本発明は、S−アデノシルメチオニンとフィチン酸とを含む飲食用組成物を提供する。この組成物において、S−アデノシルメチオニンがフィチン酸によって安定化されている。本発明はまた、S−アデノシルメチオニンと、フィチン酸およびデキストリンの組み合わせを含む飲食用組成物を提供する。フィチン酸をデキストリンと組み合わせて使用することによって、フィチン酸単独よりもさらに安定化効果が大きくなる。このデキストリンは、好ましくはγ−環状デキストリンであり、より好ましくは環状デキストリンと非環状デキストリンとの混合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、S−アデノシルメチオニンを安定化させるためにフィチン酸および/またはデキストリンを含む飲食用組成物に関する。本発明はまた、フィチン酸および/またはデキストリンを添加することによってS−アデノシルメチオニンを安定化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脂肪肝、繊維症、肝硬変、肝細胞腫瘍などの症状となって表れるアルコール性肝臓疾患(ALD)は、世界的に主要な疾患および死亡の原因となっている。現在、このようなアルコール性肝臓疾患とS−アデノシルメチオニンとの関係が注目されている。
【0003】
S−アデノシルメチオニンは生体組織全体に存在し、ホルモン、神経伝達物質、リン脂質、およびタンパク質の合成および代謝における、メチル基供与体または酵素活性化因子として、数多くの生物反応に関与する生理学的化合物である。S−アデノシルメチオニンは、メチル基転移、硫黄基転移、およびアミノプロピル基転移の3つの代謝経路により代謝される。
【0004】
S−アデノシルメチオニンは、様々な肝臓疾患に対して、治療効果があることが見出されている。例えば、非特許文献1には、ヒヒを用いた研究において、エタノールにより引き起こされた肝障害がS−アデノシルメチオニンの投与により緩和されたことが記載されている。また、非特許文献2には、S−アデノシルメチオニンの投与により、肝硬変患者の死亡率が有意に減少したことが記載されている。また、非特許文献3には、S−アデノシルメチオニンの投与が、4塩化炭素やアセトアミノフェンなどの肝細胞毒素(hepatotoxins)により引き起こされるラットの肝障害を軽減させることが記載されている。
【0005】
また、S−アデノシルメチオニンは、様々な脳内神経伝達物質の生成に関与していることが知られている。それゆえ、鬱病等の治療において優れた治療効果を奏する。例えば、非特許文献4には、鬱病患者に対するS−アデノシルメチオニン投与の効果が記載されている。鬱病患者に対して、200〜1600mg/dのS−アデノシルメチオニンの非経口および経口投与の効果は、従来の抗うつ剤のプラシーボよりも有意に勝り、三環系抗うつ剤と同様であった。さらに、S−アデノシルメチオニンの投与は、従来の抗うつ剤よりも効き始める時間が早く、三環系抗うつ剤による効果を相乗的に高める。またS−アデノシルメチオニンは、長期使用においては治療効果の減少が少なく、副作用が少ない。
【0006】
またS−アデノシルメチオニンは、骨関節症に対しても有意な治療効果を奏する。例えば、非特許文献5には、S−アデノシルメチオニンの骨関節症に対する治療効果を、プラシーボおよび非ステロイド系抗炎症剤と、痛みの軽減効果、機能回復、副作用で比較検討した結果が記載されている。その結果、S−アデノシルメチオニンは、痛みの軽減および機能回復において、非ステロイド系抗炎症剤と同程度の治療効果を奏していた。また、S−アデノシルメチオニンは、非ステロイド系抗炎症剤にしばしば見られる副作用が見られなかった。
【0007】
またS−アデノシルメチオニンは、細胞内での低メチル化の防御に関与していることが知られている。癌細胞では、染色体上のDNAの低メチル化部位と、高メチル化部位とが普遍的に見出される。この染色体上の低メチル化部位は、癌細胞の特徴であるとされている。すなわち、細胞内でのS−アデノシルメチオニン濃度の上昇は、DNAメチルトランスフェラーゼの反応を刺激する。そして、このDNAメチルトランスフェラーゼが、染色体上のDNAの高メチル化を行なうことで、染色体を低メチル化から防御していると考えられている。
【0008】
また、特許文献1には、抗炎症作用、軟骨保護作用、軟骨調節作用、軟骨安定化作用、軟骨代謝作用を促進することができる組成物として、アミノ糖、グルコサミノグリカン、およびS‐アデノシルメチオニンを含む組成物が開示されている。
【0009】
S−アデノシルメチオニンは化学的に不安定な物質であり、常温においても急速に分解が進むため、医薬品やサプリメントとして使用する際の大きな障害となっている。これまでに、リン酸化合物による安定化(特許文献2)、硫酸塩やp−トルエンスルホン酸塩などのS−アデノシルメチオニン塩をアルコール溶媒中に懸濁することによる安定化(特許文献3)、トレハロースによる安定化(非特許文献6)、および有機カルボン酸および/またはキレート形成能を有する化合物による安定化(特許文献4)などが報告されている。しかしながら、これらの安定化法は十分ではなく、より長期間S−アデノシルメチオニンを安定に保つ方法が強く望まれている。
【特許文献1】特表2002−516866号公報
【特許文献2】特開2007−197346号公報
【特許文献3】特開2008−13509号公報
【特許文献4】特開2005−229812号公報
【非特許文献1】Lieber CSら,Hepatology 1990年2月;111:65−72
【非特許文献2】Lieber CS,Annu Rev Nutr.2000;20:395−430
【非特許文献3】Gasso Mら,J Hepatol.1996年8月;25:200−205
【非特許文献4】Soeken KLら,J Fam.Pract 2002年5月,51:425−430
【非特許文献5】Detich Nら,J.Biol.Chem 2003年6月,6.20812−20820
【非特許文献6】Akessandra M.ら、Biochimica et Biophysica Acta 1573(2002)105−108
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、S−アデノシルメチオニンは肝臓疾患、鬱病治療、骨関節症、癌治療などの広範な各種疾患治療剤として有用であるが、極めて不安定であるという欠点を有している。従って、本発明は、S−アデノシルメチオニンが長期間にわたって安定に保たれる飲食用組成物を提供すること、およびS−アデノシルメチオニンの安定化法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、フィチン酸が予想外に顕著にS−アデノシルメチオニンを安定化させる効果を有することを発見した。さらに鋭意研究を重ね、フィチン酸およびデキストリンの組み合わせがさらにS−アデノシルメチオニンを安定化させる効果を有することを発見した。
【0012】
本発明は、上述の課題を解決するために、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) S−アデノシルメチオニンと、フィチン酸とを含む、飲食用組成物。
(項目2) 上記フィチン酸を、上記S−アデノシルメチオニンの2倍量以上の濃度で含む、項目1に記載の飲食用組成物。
(項目3) 上記フィチン酸を、上記S−アデノシルメチオニンの5倍量以上の濃度で含む、項目1に記載の飲食用組成物。
(項目4) さらにデキストリンを含む、項目1に記載の飲食用組成物。
(項目5) 上記フィチン酸を、上記S−アデノシルメチオニンの3倍量以上の濃度で含む、項目4に記載の飲食用組成物。
(項目6) 上記フィチン酸を、上記S−アデノシルメチオニンの5倍量以上の濃度で含む、項目4に記載の飲食用組成物。
(項目7) 上記デキストリンを、上記S−アデノシルメチオニンの5倍量〜20倍量の濃度で含む、項目4〜6のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
(項目8) 上記デキストリンを、上記S−アデノシルメチオニンの5倍量〜10倍量の濃度で含む、項目4〜6のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
(項目9) 上記デキストリンが、環状デキストリンである、項目4〜8のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
(項目10) 上記環状デキストリンが、γ−環状デキストリンである、項目9記載の飲食用組成物。
(項目11) 上記デキストリンが、環状デキストリンと非環状デキストリンとを含む、項目4〜8のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
(項目12) pHが4以下である、項目1〜11のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
(項目13) pHが3以下である、項目1〜11のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
(項目14) S−アデノシルメチオニンの安定化法であって、そのS−アデノシルメチオニンを含む組成物に、フィチン酸を添加する工程を包含する、方法。
(項目15) 上記フィチン酸を、上記S−アデノシルメチオニンの2倍量以上の濃度で添加する、項目14に記載の方法。
(項目16) 上記フィチン酸を、上記S−アデノシルメチオニンの5倍量以上の濃度で添加する、項目14に記載の方法。
(項目17) 上記S−アデノシルメチオニンを含む組成物にデキストリンを添加する工程をさらに包含する、項目14に記載の方法。
(項目18) 上記フィチン酸を、上記S−アデノシルメチオニンの3倍量以上の濃度で添加する、項目17に記載の方法。
(項目19) 上記フィチン酸を、上記S−アデノシルメチオニンの5倍量以上の濃度で添加する、項目17に記載の方法。
(項目20) 上記デキストリンを、上記S−アデノシルメチオニンの5倍量〜20倍量の濃度で添加する、項目17〜19のいずれか1項に記載の方法。
(項目21) 上記デキストリンを、上記S−アデノシルメチオニンの5倍量〜10倍量の濃度で添加する、項目17〜19のいずれか1項に記載の方法。
(項目22) 上記デキストリンが、環状デキストリンである、項目17〜21のいずれか1項に記載の方法。
(項目23) 上記環状デキストリンが、γ−環状デキストリンである、項目22に記載の方法。
(項目24) 上記デキストリンが、環状デキストリンと非環状デキストリンとを含む、項目17〜21のいずれか1項に記載の方法。
(項目25) pHを4以下に調整する工程をさらに包含する、項目14〜24のいずれか1項に記載の方法。
(項目26) pHを3以下に調整する工程をさらに包含する、項目14〜24のいずれか1項に記載の方法。
(項目27) S−アデノシルメチオニンと、フィチン酸とを含む、飲食用補填物。
(項目28) 上記フィチン酸を、上記S−アデノシルメチオニンの2倍量以上の濃度で含む、項目27に記載の飲食用補填物。
(項目29) 上記フィチン酸を、上記S−アデノシルメチオニンの5倍量以上の濃度で含む、項目27に記載の飲食用補填物。
(項目30) さらにデキストリンを含む、項目27に記載の飲食用補填物。
(項目31) 上記フィチン酸を、上記S−アデノシルメチオニンの3倍量以上の濃度で含む、項目30に記載の飲食用補填物。
(項目32) 上記フィチン酸を、上記S−アデノシルメチオニンの5倍量以上の濃度で含む、項目30に記載の飲食用補填物。
(項目33) 上記デキストリンを、上記S−アデノシルメチオニンの5倍量〜20倍量の濃度で含む、項目30〜32のいずれか1項に記載の飲食用補填物。
(項目34) 上記デキストリンを、上記S−アデノシルメチオニンの5倍量〜10倍量の濃度で含む、項目30〜32のいずれか1項に記載の飲食用補填物。
(項目35) 上記デキストリンが、環状デキストリンである、項目30〜34のいずれか1項に記載の飲食用補填物。
(項目36) 上記環状デキストリンが、γ−環状デキストリンである、項目35記載の飲食用補填物。
(項目37) 上記デキストリンが、環状デキストリンと非環状デキストリンとを含む、項目30〜34のいずれか1項に記載の飲食用補填物。
(項目38) pHが4以下である、項目27〜37のいずれか1項に記載の飲食用補填物。
(項目39) pHが3以下である、項目27〜37のいずれか1項に記載の飲食用補填物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、S−アデノシルメチオニンが長期間にわたって安定に保たれる飲食用組成物、およびS−アデノシルメチオニンの安定化法が提供される。これにより、医薬品またはサプリメントとして優れた効能を有するS−アデノシルメチオニンを、より安定な状態で消費者に供給することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明を、必要に応じて、添付の図面を参照して例示の実施例により説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0015】
以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきではない。本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行なうことができることは、当業者に明らかである。
【0016】
本発明者らは、S−アデノシルメチオニン産生酵母に含まれるS−アデノシルメチオニンの安定化について、種々の物質を検討し、フィチン酸が予想外に顕著にS−アデノシルメチオニンを安定化させる効果を有することを発見した。さらに鋭意研究を重ね、フィチン酸およびデキストリンの組み合わせがS−アデノシルメチオニンをより安定化させる効果を有することを発見した。本発明に従って、S−アデノシルメチオニン含有酵母粉末の作成のときに、デキストリンとフィチン酸との組み合わせを一定量添加することにより、S−アデノシルメチオニンの分解を顕著に防ぐことが可能となった。さらに驚くべきことに、デキストリンを環状デキストリン、特にγ−シクロデキストリンとすることによってより高い安定性効果が得られ、そしてデキストリンを環状デキストリンと非環状デキストリンとの混合物とすることによって、さらにより高い安定性効果が得られることが明らかになった。
【0017】
(定義)
本明細書において、「S−アデノシルメチオニン」とは「AdoMet」とも表記される平均分子量399.447の物質である。S−アデノシルメチオニンは、肝臓障害を緩和する(例えば、肝硬変による死亡率を減少させる)こと、鬱病に対して治療効果を有すること、関節炎の処置に有用であること、骨関節症において痛みを軽減すること、骨関節症において機能回復を促進すること、抗炎症作用を促進すること、軟骨保護作用を促進すること、軟骨調節作用を促進すること、軟骨安定化作用を促進すること、軟骨代謝作用を促進すること、アルツハイマー病を改善し得ること、HIV感染による末梢神経障害または脊髄症を改善し得ることなどが挙げられるが、これらに限定されない有用な効果を有し得る。
【0018】
本明細書において、「フィチン酸」とは、生体物質の一種で、myo−イノシトールの6リン酸エステルである(平均分子量660.08)。myo−イノシトール−1,2,3,4,5,6−6リン酸や、myo−イノシトール−1,2,3,4,5,6−ヘキサホスファート、またはヘキサキスホスファートまたはヘキサキス(リン酸二水素)ともいわれ、IPと略される。
【0019】
本明細書において、「飲食用組成物」とは、特に、健康食品またはサプリメントをいう。本発明の飲食用組成物は、安定化されたS−アデノシルメチオニンを含む任意の製品をいう。本発明の飲食用組成物は、代表的に、上述のようなS−アデノシルメチオニンの効果を表示して販売されている。本発明の飲食用組成物は代表的にはS−アデノシルメチオニンを産生する微生物を含む。この微生物は、代表的には酵母である。本発明の飲食用組成物は、代表的に、酵母を凍結乾燥粉末の形態で含んでいる。
【0020】
本明細書において、「飲食用補填物」とは、任意の飲食物に添加され、この飲食物に好ましい特性を付与し得る任意の物質をいう。この特性としては、例えば、以下に挙げるような肝臓障害の緩和、鬱病に対する治療効果、関節炎の処置に有用であること、骨関節症において痛みを軽減すること、骨関節症において機能回復を促進すること、抗炎症作用を促進すること、軟骨保護作用を促進すること、軟骨調節作用を促進すること、軟骨安定化作用を促進すること、軟骨代謝作用を促進すること、アルツハイマー病を改善し得ること、HIV感染による末梢神経障害または脊髄症を改善し得ることなどであり得る。本発明の飲食用補填物は、安定化されたS−アデノシルメチオニンを含む任意の製品をいう。本発明の飲食用補填物は、代表的に、上述のようなS−アデノシルメチオニンの効果を表示して販売されている。本発明の飲食用補填物は代表的にはS−アデノシルメチオニンを産生する微生物を含む。この微生物は、代表的には酵母である。本発明の飲食用補填物は、代表的に、酵母を凍結乾燥粉末の形態で含んでいる。
【0021】
本明細書において、「デキストリン」とは、3個以上のグルコースがグリコシド結合によって重合した任意の物質をいう。本発明におけるデキストリンの重合度は、特に限定されない。デキストリンは主に環状のデキストリン(シクロデキストリン(CD)またはシャルディンガーデキストリンともいう)と、非環状のデキストリンとに大別される。
【0022】
本明細書において、「環状デキストリン」とは、数分子のグルコースが結合し、環状構造をとった任意の環状オリゴ糖をいう。環状デキストリンとしては、グルコースが5個以上結合したものがよく知られており、特に一般的なものとしては、グルコースが6個結合した分子量973のα−環状デキストリン(シクロデキストリン)(シクロヘキサアミロース)、7個結合した分子量1135のβ−環状デキストリン(シクロデキストリン)(シクロヘプタアミロース)、8個結合した分子量1297のγ−環状デキストリン(シクロデキストリン)(シクロオクタアミロース)が挙げられる。本発明における「環状デキストリン」とは、特にこれらの重合度のものに限定されず、任意の重合度のグルコース結合環状オリゴ糖をいう。本発明における「環状デキストリン」は、分枝であっても、非分枝であってもよい。
【0023】
本明細書において、「非環状デキストリン」とは、環状構造をとっていない任意の重合度のデキストリンをいう。
【0024】
本明細書においてある特定の物質の濃度を示す場合、「S−アデノシルメチオニンのX倍量の濃度」とは、ある組成物中のS−アデノシルメチオニンの濃度(w/v)に対して、その特定の物質の濃度(w/v)がX倍であることを意味する。例えば、ある組成物において「フィチン酸をS−アデノシルメチオニンの5倍量の濃度で含む」という場合、フィチン酸は、S−アデノシルメチオニンの濃度(w/v)の5倍の濃度(w/v)でその組成物中に含まれる。同様に、「デキストリンをS−アデノシルメチオニンの5倍量の濃度で含む」という場合、デキストリンは、S−アデノシルメチオニンの濃度(w/v)の5倍の濃度(w/v)でその組成物中に含まれる。
【0025】
本明細書において、S−アデノシルメチオニンの「安定化」とは、不安定であるS−アデノシルメチオニンの分解を抑制する効果をいう。より具体的には、本明細書におけるS−アデノシルメチオニンの「安定化」とは、一定時間経過後に未処理のものと比較してS−アデノシルメチオニンの残存量が有意に増加することをいう。
【0026】
(好ましい実施形態の説明)
1つの実施形態において、本発明の飲食用組成物は、S−アデノシルメチオニンを産生する酵母と、そのS−アデノシルメチオニンを安定化するために添加されたフィチン酸とを含む。代表的には、酵母は凍結乾燥され、酵母粉末となっている。本発明の飲食用組成物は、フィチン酸を、例えばS−アデノシルメチオニンの2倍量以上の濃度、3倍量以上の濃度、4倍量以上の濃度、5倍量以上の濃度、6倍量以上の濃度、7倍量以上の濃度、8倍量以上の濃度、9倍量以上の濃度、10倍量以上の濃度、15倍量以上の濃度、20倍量以上の濃度、またはそれより多い量含む。好ましい実施形態においては、本発明の飲食用組成物は、フィチン酸を、S−アデノシルメチオニンの5倍量以上の濃度で含む。さらに好ましい実施形態においては、本発明の飲食用組成物は、フィチン酸を、S−アデノシルメチオニンの10倍量以上の濃度で含む。別の好ましい実施形態においては、本発明の飲食用組成物は、フィチン酸を、S−アデノシルメチオニンの15倍量以上の濃度で含む。別の好ましい実施形態においては、本発明の飲食用組成物は、フィチン酸を、2倍量〜20倍量、好ましくは5倍量〜20倍量、より好ましくは10倍量〜20倍量の濃度で含む。
【0027】
別の実施形態において、本発明の飲食用組成物は、S−アデノシルメチオニンを産生する酵母と、そのS−アデノシルメチオニンを安定化するために添加されたフィチン酸およびデキストリンとを含む。代表的には、酵母は凍結乾燥され、酵母粉末となっている。この実施形態において、本発明の飲食用組成物は、フィチン酸を、例えばS−アデノシルメチオニンの2倍量以上の濃度、3倍量以上の濃度、4倍量以上の濃度、5倍量以上の濃度、6倍量以上の濃度、7倍量以上の濃度、8倍量以上の濃度、9倍量以上の濃度、10倍量以上の濃度、15倍量以上の濃度、20倍量以上の濃度、またはそれより多い量含み、かつデキストリンを、例えばS−アデノシルメチオニンの2倍量以上の濃度、3倍量以上の濃度、4倍量以上の濃度、5倍量以上の濃度、6倍量以上の濃度、7倍量以上の濃度、8倍量以上の濃度、9倍量以上の濃度、10倍量以上の濃度、15倍量以上の濃度、20倍量以上の濃度、またはそれより多い量含む。
【0028】
好ましい実施形態において、本発明の飲食用組成物は、S−アデノシルメチオニンを産生する酵母と、そのS−アデノシルメチオニンを安定化するために添加されたフィチン酸および環状デキストリンとを含む。好ましくは、この環状デキストリンはγ−環状でキストリンである。この実施形態において、本発明の飲食用組成物は、フィチン酸を、例えばS−アデノシルメチオニンの2倍量以上の濃度、3倍量以上の濃度、4倍量以上の濃度、5倍量以上の濃度、6倍量以上の濃度、7倍量以上の濃度、8倍量以上の濃度、9倍量以上の濃度、10倍量以上の濃度、15倍量以上の濃度、20倍量以上の濃度、またはそれより多い量含み、かつγ−環状デキストリンを、例えばS−アデノシルメチオニンの2倍量以上の濃度、3倍量以上の濃度、4倍量以上の濃度、5倍量以上の濃度、6倍量以上の濃度、7倍量以上の濃度、8倍量以上の濃度、9倍量以上の濃度、10倍量以上の濃度、15倍量以上の濃度、20倍量以上の濃度、またはそれより多い量含む。好ましい実施形態においては、本発明の飲食用組成物は、フィチン酸を1倍量〜5倍量、好ましくは3倍量〜5倍量の濃度で、γ−環状デキストリンを、2倍量〜12倍量、好ましくは2倍量〜8倍量、より好ましくは4倍量〜8倍量の濃度で含む。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明の飲食用組成物は、S−アデノシルメチオニンを産生する酵母と、そのS−アデノシルメチオニンを安定化するために添加されたフィチン酸およびデキストリン混合物とを含む。この実施形態において、本発明の飲食用組成物は、フィチン酸を、例えばS−アデノシルメチオニンの2倍量以上の濃度、3倍量以上の濃度、4倍量以上の濃度、5倍量以上の濃度、6倍量以上の濃度、7倍量以上の濃度、8倍量以上の濃度、9倍量以上の濃度、10倍量以上の濃度、15倍量以上の濃度、20倍量以上の濃度、またはそれより多い量含み、かつデキストリン混合物を、例えばS−アデノシルメチオニンの2倍量以上の濃度、3倍量以上の濃度、4倍量以上の濃度、5倍量以上の濃度、6倍量以上の濃度、7倍量以上の濃度、8倍量以上の濃度、9倍量以上の濃度、10倍量以上の濃度、15倍量以上の濃度、20倍量以上の濃度、またはそれより多い量含む。好ましい実施形態においては、本発明の飲食用組成物は、デキストリン混合物を、5倍量〜20倍量、好ましくは5倍量〜10倍量の濃度で含む。
【0030】
本発明において、デキストリンは、環状であっても、非環状であってもよい。発明の特定の実施形態においては、デキストリンは環状デキストリンである。デキストリンの重合度も特に限定はされないが、デキストリンは、代表的には、α−デキストリン(グルコースが6個結合)、β−デキストリン(グルコースが7個結合)、γ−デキストリン(グルコースが8個結合)またはそれらの混合物であるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、本発明の飲食用組成物に含まれるデキストリンはγ−環状デキストリンである。
【0031】
本明細書において、デキストリンが環状デキストリンである、と規定されている場合、このデキストリンは完全に環状デキストリンのみからなってもよいし、例えば、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満の非環状デキストリンを含んでもよい。
【0032】
本明細書において、デキストリンがγ−環状デキストリンである、と規定されている場合、このデキストリンは完全にγ−環状デキストリンのみからなってもよいし、例えば、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満のγ−環状デキストリン以外の環状デキストリン(例えば、α−環状デキストリンまたはβ−環状デキストリンなど)または非環状デキストリンを含んでもよい。
【0033】
本発明の特定の実施形態において、デキストリンは環状デキストリンと非環状デキストリンとの混合物である。この混合物において、環状デキストリンと非環状デキストリンとの量の比率は特に限定されないが、例えば、約18以上:約82以下〜約50以上:約50以下である。
【0034】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の飲食用組成物のpHは、5以下であり、より好ましくは4以下であり、さらに好ましくは約3〜4、より好ましくは約3である。
【0035】
本発明の飲食用組成物または飲食用補填物は、安定化されたS−アデノシルメチオニンを含み、この組成物は、肝臓障害を緩和する(例えば、肝硬変による死亡率を減少させる)こと(例えば、Lieber CS. Role of S−adenosyl−L−methionine in the treatment of liver diseases. J Hepatol 1999;30:1155-9;Williams R, Lieber CS. The role of SAMe in the treatment of liver disease. Drugs 1990;40(suppl):1-2;Mato JM, Camara J, Fernandez de Paz J, et al. S−Adenosylmethionine in alcoholic liver cirrhosis: a randomized, placebo−controlled, double−blind, multicenter clinical trial. J Hepatol 1999;30:1081-9などを参照のこと)、鬱病に対して治療効果を有すること(例えば、Janicak PG, Lipinski JD, Comaty JE, et al. S−Adenosylmethionine: a literature review and preliminary report. Ala J Med Sci 1988;25:306-13;Friedel HA, Goa KL, Benfield P. S−Adenosyl−L−methionine: a review of its therapeutic potential in liver dysfunction and affective disorders in relation to its physiological role in cell metabolism. Drugs 1989;38:389-416;Bressa GM. S−Adenosyl−L−methionine (SAMe) as antidepressant: meta−analysis of clinical studies. Acta Neurol Scand 1994;154:7-14などを参照のこと)、関節炎の処置に有用であること(例えば、Bradley JD, Flusser D, Katz BP, et al. A randomized, double blind, placebo controlled trial of intravenous loading with S−adenosylmethionine (SAM) followed by oral SAM therapy in patients with knee osteoarthritis. J Rheumatol 1994;21:905-11;Padova C. S−Adenosylmethionine in the treatment of osteoarthritis: review of the clinical studies. Am J Med 1987;83:60-5を参照のこと)、骨関節症において痛みを軽減すること、骨関節症において機能回復を促進すること、抗炎症作用を促進すること、軟骨保護作用を促進すること、軟骨調節作用を促進すること、軟骨安定化作用を促進すること、軟骨代謝作用を促進すること、アルツハイマー病を改善し得ること(例えば、Morison, L. D., Smith, D. D., and Kish, S. J., Brain S−adenosylmethionine levels are severely decreased in Alzheimer’s disease. J. Neurochem., 67, 1328-1331 (1996)を参照のこと)、HIV感染による末梢神経障害または脊髄症を改善し得ること(例えば、Keating JN, Trimble KC, Mulcahy F, Scott JM, Weir DG, Evidence of brain methltransferase inhibition and early brain involvement in HIV−positive patients. Lancet, 337, 935−939, (1991);Suretees R, Hyland K, Smith I., Central nervous system methyl−group metabolism in children with neurological complications of HIV infection. Lancet, 335, 619−621, (1990);Castagna A, Le Grazie C, Accordini A, Giulidori P, Cavalli G, Bottiglieri T, Lazzarin A., Crebrospinal fluid S−adenosyl−methionine (SAMe) and glutathione concentrations in HIV infection : effect of parenteral treatment with SAMe., Neurology, 45, 1678−1683, (1995)などを参照のこと)などの有用な効果(この有用な効果は、ここに列挙したものに限定されない)を有し得る。本発明の飲食用組成物は、従来のS−アデノシルメチオニンを含む組成物と比較して、長期間(例えば、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、1年間、またはそれ以上)経過した後に、調製直後のS−アデノシルメチオニンの約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約100%のS−アデノシルメチオニンを含む。好ましい実施形態において、本発明の飲食用組成物は、加速試験機内で30日後に調製直後のS−アデノシルメチオニンの約80%以上のS−アデノシルメチオニンを含み、好ましくは加速試験機内で40日後に調製直後のS−アデノシルメチオニンの約90%以上のS−アデノシルメチオニンを含み、より好ましくは加速試験機内で60日後に調製直後のS−アデノシルメチオニンの約90%以上のS−アデノシルメチオニンを含む。
【0036】
(飲食用組成物の製造)
本発明の好適な態様は飲食用組成物である。このような飲食用組成物は、当業者に周知の方法によって製造され得る。飲食用組成物は、例えば、S−アデノシルメチオニン生産酵母を培養して培養濃縮液を取得し、この培養濃縮液をpH調整し安定化剤を添加して混合し、次いでこの混合液をフリーズドライして酵母粉末を製造することによって、製造され得る。本発明の飲食用組成物は、これをそのまま液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えば、健康食品、サプリメント、栄養補助食品、ジュース、清涼飲料、コーヒー、紅茶、日本茶、ウーロン茶、野菜ジュース、天然果汁、乳飲料、牛乳、豆乳、スポーツ飲料、ニアウォーター系飲料、栄養補給飲料、コーヒー飲料、ココア、スープ、ドレッシング、ムース、ゼリー、ヨーグルト、プリン、ふりかけ、育児用粉乳、加工乳、スポーツドリンク、栄養ドリンク、ケーキミックス、パン、ピザ、パイ、クラッカー、ビスケット、ケーキ、クッキー、スパゲティー、マカロニ、パスタ、うどん、そば、ラーメン、キャンデー、ソフトキャンデー、ガム、チョコレート、おかき、ポテトチップス、スナック、アイスクリーム、シャーベット、クリーム、チーズ、粉乳、練乳、乳飲料などの粉末状または液状の乳製品、饅頭、ういろ、もち、おはぎ、醤油、たれ、麺つゆ、ソース、だしの素、シチューの素、スープの素、複合調味料、カレーの素、マヨネーズ、ケチャップ、レトルトカレー、レトルトシチュー、レトルトスープ、レトルトどんぶり、缶詰、ハム、ハンバーグ、ミートボール、コロッケ、餃子、ピラフ、おにぎり、冷凍食品および冷蔵食品、ちくわ、蒲鉾、弁当のご飯、寿司、乳児用ミルク、離乳食、ベビーフード、スポーツ食品等に添加したり、必要に応じてデキストリン、乳糖、澱粉等の賦型剤や香料、色素等とともにペレット、錠剤、顆粒等に加工したり、またゼラチン等で被覆してカプセルに成形加工して健康食品や栄養補助食品等として利用できる。これらの食品類あるいは飲食用組成物における本発明の酵母、AdoMetまたは培養液の配合量は、当該食品や組成物の種類や状態等により一律に規定しがたいが、AdoMet含量で10〜5000mg/1食、好ましくは100〜1000mg/1食であり、サプリメントの場合には約10〜100%(好ましくは、30〜100%、より好ましくは50〜100%、さらにより好ましくは80〜100%)、飲料もしくは一般食品などの場合には約0.01%以下であり得る。
【0037】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0038】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を示して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0040】
(実施例1:リン酸によるS−アデノシルメチオニンの安定化)
酵母Saccharomyces cerevisiae K−7株(清酒酵母協会7号)、5L容ジャーファーメンター(仕込み培地量:3L)を用いて、培養温度28℃、攪拌速度 500rpm、培養時間36−48h、通気量0.5VVM、培地組成(w/100mL):グルコース5%、酵母エキス0.75%、ペプトン2.0%、メチオニン0.15%で培養した。この培養液を遠心分離(8,000rpm)し、上清を除いて、菌体を回収した。回収した菌体に除いた上清液を適量加え、菌体濃縮液を調製した。濃縮液中のAdoMet濃度を測定し、リン酸を含有AdoMet量の10倍量になるよう菌体濃縮液に添加した。またリン酸以外にクエン酸・酢酸・硫酸を用いたサンプルを作成した。この菌体濃縮液のpHをクエン酸を用いて3に調整した。調製したサンプルを−80℃で一晩凍結した。凍結乾燥を72h行い、酵母粉末を調製した。この酵母粉末をアルミパウチに梱包し、加速試験機加速試験機(Advantec,モデルTHE051FA)内(40℃、湿度75%)で保管した。この条件での加速試験機1日の保管は、常温保管の6日に相当する。定時的に酵母粉末のサンプリングを行い、過塩素酸を用いてAdoMetの抽出を行った。具体的には、酵母粉末0.02gに10%過塩素酸1mLを加え、1時間抽出を行い、遠心分離(10,000rpm,10分)により上清(抽出液)を回収した。AdoMetの測定は、UPLC(Waters,モデルTUV)を用い、抽出液を0.1%ギ酸+5mMノナンスルフォン酸ナトリウム混合液とアセトニトリルによるグラジェントで分析した。結果を以下の表1および図1に示す。結果は、各サンプルの調製時の値を100%として相対値で示されていることに注意されたい。
【0041】
【表1】

表1および図1の結果から明らかなように、リン酸または他の酸による安定化効果はわずかであった。
【0042】
(実施例2:各種物質によるS−アデノシルメチオニンの安定化)
酵母を、5L容ジャーファーメンター(仕込み培地量:3L)を用いて培養した。この培養液を遠心分離(8,000rpm)し、上清を除いて、菌体を回収した。回収した菌体に除いた上清液を適量加え、菌体濃縮液を調製した。濃縮液中のAdoMet濃度を測定し、各種安定化剤を含有AdoMet量の10倍量になるよう菌体濃縮液に添加した。本実施例では、フィチン酸(築野食品工業株式会社のTSUNOフィチン酸)と、これまでに安定化剤として報告されているピロリン酸Na、ポリリン酸Na、トレハロース、イノシトール、ツイントースと、フィチン酸を含む食品であるRICEO(米糠抽出粉末・フィチン酸含有率30%、築野食品工業株式会社)を試験した。この菌体濃縮液のpHをクエン酸を用いて3に調整した。調製したサンプルを−80℃で一晩凍結した。凍結乾燥を72h行い、酵母粉末を調製した。この酵母粉末をアルミパウチに梱包し、加速試験機内(40℃、湿度75%)で保管した。定時的に酵母粉末のサンプリングを行い、過塩素酸を用いてAdoMetの抽出を行った。AdoMetの測定にはUPLCを用いた。結果を以下の表2および図2に示す。結果は、各サンプルの調製時の値を100%として相対値で示されていることに注意されたい。
【0043】
【表2】

結果から、フィチン酸が、従来の安定化剤であるピロリン酸Na、ポリリン酸Na、トレハロースより高いAdoMetの安定性効果を有することが示された。
【0044】
(実施例3:フィチン酸と、ピロリン酸Naまたはポリリン酸NaとによるAdoMetの安定化効果の比較)
実施例2において不十分ではあるがわずかな安定化効果を示したピロリン酸Naおよびポリリン酸Naとフィチン酸とを、安定化効果について比較した。実施例2と同様の実験を、フィチン酸、ピロリン酸Naおよびポリリン酸Naについてさらに行った。結果を以下の表3および図3に示す。結果は、各サンプルの調製時の値を100%として相対値で示されていることに注意されたい。
【0045】
【表3】

(実施例4:AdoMetの安定化効果に対するフィチン酸のpHの影響)
酵母を、5L容ジャーファーメンター(仕込み培地量:3L)を用いて培養した。この培養液を遠心分離(8,000rpm)し、上清を除いて、菌体を回収した。回収した菌体に除いた上清液を適量加え、菌体濃縮液を調製した。濃縮液中のAdoMet濃度を測定し、含有AdoMet量の10倍量になるようにフィチン酸を菌体濃縮液に添加した。この菌体濃縮液のpHをクエン酸および苛性ソーダを用いて、pHを3、4、5、6、7に調整した。調製したサンプルを−80℃で一晩凍結した。凍結乾燥を72h行い、酵母粉末を調製した。この酵母粉末をアルミパウチに梱包し、加速試験機内(40℃、湿度75%)で保管した。定時的に酵母粉末のサンプリングを行い、過塩素酸を用いてAdoMetの抽出を行った。AdoMetの測定にはUPLCを用いた。結果を以下の表4および図4に示す。結果は、各サンプルの調製時の値を100%として相対値で示されていることに注意されたい。
【0046】
【表4】

結果から、フィチン酸によるAdoMetの安定化効果はpH3で最も高いことが示された。
【0047】
(実施例5:AdoMetの安定化効果に対するRICEOのpHの影響)
酵母を、5L容ジャーファーメンター(仕込み培地量:3L)を用いて培養した。この培養液を遠心分離(8,000rpm)し、上清を除いて、菌体を回収した。回収した菌体に除いた上清液を適量加え、菌体濃縮液を調製した。濃縮液中のAdoMet濃度を測定し、含有AdoMet量の10倍量になるようにRICEOを菌体濃縮液に添加した。この菌体濃縮液のpHをクエン酸および苛性ソーダを用いて、pHを3、4、5、6、7に調整した。調製したサンプルを−80℃で一晩凍結した。凍結乾燥を72h行い、酵母粉末を調製した。この酵母粉末をアルミパウチに梱包し、加速試験機内(40℃、湿度75%)で保管した。定時的に酵母粉末のサンプリングを行い、過塩素酸を用いてAdoMetの抽出を行った。AdoMetの測定にはUPLCを用いた。結果を以下の表5および図5に示す。結果は、各サンプルの調製時の値を100%として相対値で示されていることに注意されたい。
【0048】
【表5】

結果から、RICEOの安定化効果もまた、フィチン酸と同様にpH3において最も高いことが明らかになった。
【0049】
(実施例6:AdoMetの安定化効果に対するピロリン酸NaのpHの影響)
酵母を、5L容ジャーファーメンター(仕込み培地量:3L)を用いて培養した。この培養液を遠心分離(8,000rpm)し、上清を除いて、菌体を回収した。回収した菌体に除いた上清液を適量加え、菌体濃縮液を調製した。濃縮液中のAdoMet濃度を測定し、含有AdoMet量の10倍量になるようにピロリン酸Naを菌体濃縮液に添加した。この菌体濃縮液のpHをクエン酸および苛性ソーダを用いて、pHを3、4、5、6、7に調整した。調製したサンプルを−80℃で一晩凍結した。凍結乾燥を72h行い、酵母粉末を調製した。この酵母粉末をアルミパウチに梱包し、加速試験機内(40℃、湿度75%)で保管した。定時的に酵母粉末のサンプリングを行い、過塩素酸を用いてAdoMetの抽出を行った。AdoMetの測定にはUPLCを用いた。結果を以下の表6および図6に示す。結果は、各サンプルの調製時の値を100%として相対値で示されていることに注意されたい。
【0050】
【表6】

結果から、ピロリン酸Naの安定化効果もまた、フィチン酸と同様にpH3において最も高いことが明らかになった。
【0051】
(実施例7:AdoMetの安定化効果に対するフィチン酸の添加濃度の影響)
酵母を、5L容ジャーファーメンター(仕込み培地量:3L)を用いて培養した。この培養液を遠心分離(8,000rpm)し、上清を除いて、菌体を回収した。回収した菌体に除いた上清液を適量加え、菌体濃縮液を調製した。濃縮液中のAdoMet濃度を測定し、含有AdoMet量の0倍、2倍、5倍、10倍、15倍、または20倍量になるように、フィチン酸を菌体濃縮液に添加した。調製したサンプルを−80℃で一晩凍結した。凍結乾燥を72h行い、酵母粉末を調製した。この酵母粉末をアルミパウチに梱包し、加速試験機内(40℃、湿度75%)で保管した。定時的に酵母粉末のサンプリングを行い、過塩素酸を用いてAdoMetの抽出を行った。AdoMetの測定にはUPLCを用いた。結果を以下の表7および図7に示す。結果は、各サンプルの調製時の値を100%として相対値で示されていることに注意されたい。
【0052】
【表7】

フィチン酸による安定性効果は2倍量から見られはじめ、添加濃度とともに上昇していった。特に、添加濃度10倍量以上のサンプルでは保存初期ではほとんど分解が見られず、20倍量を超えるとその効果はあまり上昇しなかった。
【0053】
(実施例8:γ−環状デキストリンとフィチン酸の組み合わせによるAdoMetの安定化効果)
酵母を、5L容ジャーファーメンター(仕込み培地量:3L)を用いて培養した。この培養液を遠心分離(8,000rpm)し、上清を除いて、菌体を回収した。回収した菌体に除いた上清液を適量加え、菌体濃縮液を調製した。この菌体濃縮液をクエン酸を用いてpH3に調整した。濃縮液中のAdoMet濃度を測定し、含有AdoMet量の4倍量になるようにγ−CD(γ−100;パールエース株式会社)を、5倍量になるようにフィチン酸を菌体濃縮液に添加した。調製したサンプルを−80℃で一晩凍結した。凍結乾燥を72h行い、酵母粉末を調製した。この酵母粉末をアルミパウチに梱包し、加速試験機内(40℃、湿度75%)で保管した。定時的に酵母粉末のサンプリングを行い、過塩素酸を用いてAdoMetの抽出を行った。AdoMetの測定にはUPLCを用いた。結果を以下の表8および図8に示す。結果は、各サンプルの調製時の値を100%として相対値で示されていることに注意されたい。
【0054】
【表8】

結果から、フィチン酸とγ−CDとを組み合わせることにより、フィチン酸単独と比較して、より安定化効果が強くなることが明らかになった。
【0055】
(実施例9:AdoMetの安定化効果に対するγ−CDの添加濃度の影響)
酵母を、5L容ジャーファーメンター(仕込み培地量:3L)を用いて培養した。この培養液を遠心分離(8,000rpm)し、上清を除いて、菌体を回収した。回収した菌体に除いた上清液を適量加え、菌体濃縮液を調製した。この菌体濃縮液をクエン酸を用いてpH3に調整した。濃縮液中のAdoMet濃度を測定し、含有AdoMet量の0倍、2倍、4倍、8倍、12倍量になるようにγ−CDを菌体濃縮液に添加した。調製したサンプルを−80℃で一晩凍結した。凍結乾燥を72h行い、酵母粉末を調製した。この酵母粉末をアルミパウチに梱包し、加速試験機内(40℃、湿度75%)で保管した。定時的に酵母粉末のサンプリングを行い、過塩素酸を用いてAdoMetの抽出を行った。AdoMetの測定にはUPLCを用いた。結果を以下の表9および図9に示す。結果は、各サンプルの調製時の値を100%として相対値で示されていることに注意されたい。
【0056】
【表9】

γ−CDによる安定性効果は添加濃度とともに上昇し、添加濃度4倍量以上のサンプルでは安定性効果に差はさほど見られず、8倍量を超えると、その安定化効果は下がった。
【0057】
(実施例10:γ−CDとの組み合わせにおける、フィチン酸の添加濃度のAdoMetの安定化効果への影響)
酵母を、5L容ジャーファーメンター(仕込み培地量:3L)を用いて培養した。この培養液を遠心分離(8,000rpm)し、上清を除いて、菌体を回収した。回収した菌体に除いた上清液を適量加え、菌体濃縮液を調製した。この菌体濃縮液をクエン酸を用いてpH3に調整した。濃縮液中のAdoMet濃度を測定し、含有AdoMet量の4倍量になるようにγ−CDを添加、1倍、3倍、5倍量になるようにフィチン酸を菌体濃縮液に添加した。調製したサンプルを−80℃で一晩凍結した。凍結乾燥を72h行い、酵母粉末を調製した。この酵母粉末をアルミパウチに梱包し、加速試験機内(40℃、湿度75%)で保管した。定時的に酵母粉末のサンプリングを行い、過塩素酸を用いてAdoMetの抽出を行った。AdoMetの測定にはUPLCを用いた。結果を以下の表9および図9に示す。結果は、各サンプルの調製時の値を100%として相対値で示されていることに注意されたい。
【0058】
【表10】

フィチン酸濃度1倍量と3倍量では安定性効果に差が見られたが、3倍量と5倍量では差は見られなかった。γ−CDと組合わせる場合、フィチン酸添加量は3倍量〜5倍量が好ましいと考えられる。
【0059】
(実施例11:α、β、γ−CDとフィチン酸の組み合わせによるAdoMetの安定化効果)
酵母を、5L容ジャーファーメンター(仕込み培地量:3L)を用いて培養した。この培養液を遠心分離(8,000rpm)し、上清を除いて、菌体を回収した。回収した菌体に除いた上清液を適量加え、菌体濃縮液を調製した。この菌体濃縮液をクエン酸を用いてpH3に調整した。濃縮液中のAdoMet濃度を測定し、含有AdoMet量の4倍量になるようにα−CD(α−100;パールエース株式会社)、β−CD(β−100;パールエース株式会社)もしくはγ−CDを、5倍量になるようにフィチン酸を菌体濃縮液に添加した。調製したサンプルを−80℃で一晩凍結した。凍結乾燥を72h行い、酵母粉末を調製した。この酵母粉末をアルミパウチに梱包し、加速試験機内(40℃、湿度75%)で保管した。定時的に酵母粉末のサンプリングを行い、過塩素酸を用いてAdoMetの抽出を行った。AdoMetの測定にはUPLCを用いた。結果を以下の表11および図11に示す。結果は、各サンプルの調製時の値を100%として相対値で示されていることに注意されたい。
【0060】
【表11】

α−CD、β−CD、γ−CDのいずれも安定性効果が見られ、最も高い安定性効果を示したのはγ−CDであった。
【0061】
(実施例12:γ−CDと、ピロリン酸またはポリリン酸との組み合わせによるAdoMetの安定化効果)
酵母を、5L容ジャーファーメンター(仕込み培地量:3L)を用いて培養した。この培養液を遠心分離(8,000rpm)し、上清を除いて、菌体を回収した。回収した菌体に除いた上清液を適量加え、菌体濃縮液を調製した。この菌体濃縮液をクエン酸を用いてpH3に調整した。濃縮液中のAdoMet濃度を測定し、含有AdoMet量の4倍量になるようにγ−CDを添加、10倍量になるようにピロリン酸Naもしくはポリリン酸Naを菌体濃縮液に添加した。調製したサンプルを−80℃で一晩凍結した。凍結乾燥を72h行い、酵母粉末を調製した。この酵母粉末をアルミパウチに梱包し、加速試験機内(40℃、湿度75%)で保管した。定時的に酵母粉末のサンプリングを行い、過塩素酸を用いてAdoMetの抽出を行った。AdoMetの測定にはUPLCを用いた。結果を以下の表12および図12に示す。結果は、各サンプルの調製時の値を100%として相対値で示されていることに注意されたい。
【0062】
【表12】

ピロリン酸、ポリリン酸ともにγ−CDと組合わせることによって単独で使用するより安定性効果が上昇することが示された。このことからγ−CDの効果は、フィチン酸以外の化合物にも有効であることが示された。
【0063】
(実施例13:デキストリン混合物とフィチン酸との組み合わせによるAdoMetの安定化効果)
酵母を、5L容ジャーファーメンター(仕込み培地量:3L)を用いて培養した。この培養液を遠心分離(8,000rpm)し、上清を除いて、菌体を回収した。回収した菌体に除いた上清液を適量加え、菌体濃縮液を調製した。濃縮液中のAdoMet濃度を測定し、含有AdoMet量の5倍量になるようにフィチン酸を添加、10、20、40、100倍量になるようにデキシパール SD−20(パールエース株式会社)を菌体濃縮液に添加した。デキシパールSD−20はデキストリンの混合物であり、デキストリン80%以下、全CD20%以上(Lot間の平均としてα−CD:9.3%、β−CD:8.6%、γ−CD:4.1%)の組成となっている。調製したサンプルを−80℃で一晩凍結した。凍結乾燥を72h行い、酵母粉末を調製した。この酵母粉末をアルミパウチに梱包し、加速試験機内(40℃、湿度75%)で保管した。定時的に酵母粉末のサンプリングを行い、過塩素酸を用いてAdoMetの抽出を行った。AdoMetの測定にはUPLCを用いた。結果を以下の表13および図13に示す。結果は、各サンプルの調製時の値を100%として相対値で示されていることに注意されたい。
【0064】
【表13】

結果から、デキシパールSD−20とフィチン酸を組合わせることにより安定性効果が得られた。この結果はγ−CDとフィチン酸の組み合わせよりさらに優れたものである。特に、デキシパールSD−20を10倍量添加した場合に、最も高い安定性効果が得られ、AdoMetの分解はほとんど見られなかった。このことから、環状デキストリンと非環状デキストリンを含むデキストリン混合物をフィチン酸と組み合わせることによって、大きな安定性効果が得られることが示された。デキストリンとフィチン酸の相乗効果に関しては、デキストリン混合物を5倍以上で添加して見られ、5倍量以下で添加しても、フィチン酸単独の効果しか見られなかった。
【0065】
(実施例14:デキストリンとの組み合わせにおける、フィチン酸とEDTAおよびコウジ酸とによるAdoMetの安定化効果の比較)
酵母を、5L容ジャーファーメンター(仕込み培地量:3L)を用いて培養した。この培養液を遠心分離(8,000rpm)し、上清を除いて、菌体を回収した。回収した菌体に除いた上清液を適量加え、菌体濃縮液を調製した。濃縮液中のAdoMet濃度を測定し、含有AdoMet量の5倍量になるようにデキストリン(デキシパールSD−20)を添加し、5倍量になるようにフィチン酸、EDTAまたはコウジ酸を菌体濃縮液に添加した。調製したサンプルを−80℃で一晩凍結した。凍結乾燥を72h行い、酵母粉末を調製した。この酵母粉末をアルミパウチに梱包し、加速試験機内(40℃、湿度75%)で保管した。定時的に酵母粉末のサンプリングを行い、過塩素酸を用いてAdoMetの抽出を行った。AdoMetの測定にはUPLCを用いた。結果を以下の表14および図14に示す。結果は、各サンプルの調製時の値を100%として相対値で示されていることに注意されたい。
【0066】
【表14】

EDTAまたはコウジ酸とデキストリンとを組み合わせた場合に比較して、フィチン酸とデキストリンとを組み合わせた場合に、顕著に大きな安定化効果が観察された。
【0067】
(実施例15:種々のデキストリン混合物の、フィチン酸との組み合わせによるAdoMetの安定化効果)
酵母を、5L容ジャーファーメンター(仕込み培地量:3L)を用いて培養した。この培養液を遠心分離(8,000rpm)し、上清を除いて、菌体を回収した。回収した菌体に除いた上清液を適量加え、菌体濃縮液を調製した。濃縮液中のAdoMet濃度を測定し、含有AdoMet量の5倍量になるようにフィチン酸を添加し、それぞれ10倍量になるようにデキシパール SD−20(パールエース株式会社)、デキシパール K-100(パールエース株式会社)、デキシパール K-50(パールエース株式会社)、およびデキシパール KS-20(パールエース株式会社)を菌体濃縮液に添加した。それぞれ、デキシパール K-100は、全CD量97%以上(内α−CD70%以上、γ−CD 5−8%)、デキシパール K-50は、全CD量50%以上(内α−CD30%以上、γ−CD 5−8%)、デキシパール KS-20は、全CD量18%以上(内α−CD10%以上)の組成となっている。調製したサンプルを−80℃で一晩凍結した。凍結乾燥を72h行い、酵母粉末を調製した。この酵母粉末をアルミパウチに梱包し、加速試験機内(40℃、湿度75%)で保管した。定時的に酵母粉末のサンプリングを行い、過塩素酸を用いてAdoMetの抽出を行った。AdoMetの測定にはUPLCを用いた。結果を以下の表15および図15に示す。結果は、各サンプルの調製時の値を100%として相対値で示されていることに注意されたい。4倍量のγ−CDと5倍量のフィチン酸との組み合わせを添加した場合を参考として示している。
【0068】
【表15】

この結果から、いずれのデキストリン混合物でもフィチン酸との相乗効果が得られた。しかしながら、その効果には差が見られ、混合物に関してはデキストリン50%以上かつγ−CDを5%以上含んでいるとより高い効果が得られることが示された。また混合物ではなく、単品による安定性効果はγ−CDで最も高い結果が得られた。
【0069】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、リン酸等によるAdoMetの安定化を示す。
【図2】図2は、各種物質におけるAdoMetの安定化を示す。
【図3】図3は、フィチン酸と、ピロリン酸Naまたはポリリン酸NaとによるAdoMetの安定化効果を示す。
【図4】図4は、AdoMetの安定化効果に対するフィチン酸のpHの影響を示す。
【図5】図5は、AdoMetの安定化効果に対するRICEOのpHの影響を示す。
【図6】図6は、AdoMetの安定化効果に対するピロリン酸NaのpHの影響を示す。
【図7】図7は、AdoMetの安定化効果に対するフィチン酸の添加濃度の影響を示す。
【図8】図8は、γ−CDとフィチン酸の組み合わせによるAdoMetの安定化効果を示す。
【図9】図9は、AdoMetの安定化効果に対するγ−CDの添加濃度の影響を示す。
【図10】図10は、γ−CDとの組み合わせにおける、フィチン酸の添加濃度のAdoMetの安定化効果への影響を示す。
【図11】図11は、α、β、γ−デキストリンとフィチン酸の組み合わせによるAdoMetの安定化効果を示す。
【図12】図12は、γ−CDと、ピロリン酸またはポリリン酸との組み合わせによるAdoMetの安定化効果を示す。
【図13】図13は、デキストリン混合物とフィチン酸との組み合わせによるAdoMetの安定化効果を示す。
【図14】図14は、デキストリンとの組み合わせにおける、フィチン酸とEDTAおよびコウジ酸とによるAdoMetの安定化効果を示す。
【図15】図15は、種々のデキストリン混合物の、フィチン酸との組み合わせによるAdoMetの安定化効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
S−アデノシルメチオニンと、フィチン酸とを含む、飲食用組成物。
【請求項2】
前記フィチン酸を、前記S−アデノシルメチオニンの2倍量以上の濃度で含む、請求項1に記載の飲食用組成物。
【請求項3】
前記フィチン酸を、前記S−アデノシルメチオニンの5倍量以上の濃度で含む、請求項1に記載の飲食用組成物。
【請求項4】
さらにデキストリンを含む、請求項1に記載の飲食用組成物。
【請求項5】
前記フィチン酸を、前記S−アデノシルメチオニンの3倍量以上の濃度で含む、請求項4に記載の飲食用組成物。
【請求項6】
前記フィチン酸を、前記S−アデノシルメチオニンの5倍量以上の濃度で含む、請求項4に記載の飲食用組成物。
【請求項7】
前記デキストリンを、前記S−アデノシルメチオニンの5倍量〜20倍量の濃度で含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
【請求項8】
前記デキストリンを、前記S−アデノシルメチオニンの5倍量〜10倍量の濃度で含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
【請求項9】
前記デキストリンが、環状デキストリンである、請求項4〜8のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
【請求項10】
前記環状デキストリンが、γ−環状デキストリンである、請求項9記載の飲食用組成物。
【請求項11】
前記デキストリンが、環状デキストリンと非環状デキストリンとを含む、請求項4〜8のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
【請求項12】
pHが4以下である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
【請求項13】
pHが3以下である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の飲食用組成物。
【請求項14】
S−アデノシルメチオニンの安定化法であって、該S−アデノシルメチオニンを含む組成物に、フィチン酸を添加する工程を包含する、方法。
【請求項15】
前記フィチン酸を、前記S−アデノシルメチオニンの2倍量以上の濃度で添加する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記フィチン酸を、前記S−アデノシルメチオニンの5倍量以上の濃度で添加する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記S−アデノシルメチオニンを含む組成物にデキストリンを添加する工程をさらに包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記フィチン酸を、前記S−アデノシルメチオニンの3倍量以上の濃度で添加する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記フィチン酸を、前記S−アデノシルメチオニンの5倍量以上の濃度で添加する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記デキストリンを、前記S−アデノシルメチオニンの5倍量〜20倍量の濃度で添加する、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記デキストリンを、前記S−アデノシルメチオニンの5倍量〜10倍量の濃度で添加する、請求項17〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記デキストリンが、環状デキストリンである、請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記環状デキストリンが、γ−環状デキストリンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記デキストリンが、環状デキストリンと非環状デキストリンとを含む、請求項17〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
pHを4以下に調整する工程をさらに包含する、請求項14〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
pHを3以下に調整する工程をさらに包含する、請求項14〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
S−アデノシルメチオニンと、フィチン酸とを含む、飲食用補填物。
【請求項28】
前記フィチン酸を、前記S−アデノシルメチオニンの2倍量以上の濃度で含む、請求項27に記載の飲食用補填物。
【請求項29】
前記フィチン酸を、前記S−アデノシルメチオニンの5倍量以上の濃度で含む、請求項27に記載の飲食用補填物。
【請求項30】
さらにデキストリンを含む、請求項27に記載の飲食用補填物。
【請求項31】
前記フィチン酸を、前記S−アデノシルメチオニンの3倍量以上の濃度で含む、請求項30に記載の飲食用補填物。
【請求項32】
前記フィチン酸を、前記S−アデノシルメチオニンの5倍量以上の濃度で含む、請求項30に記載の飲食用補填物。
【請求項33】
前記デキストリンを、前記S−アデノシルメチオニンの5倍量〜20倍量の濃度で含む、請求項30〜32のいずれか1項に記載の飲食用補填物。
【請求項34】
前記デキストリンを、前記S−アデノシルメチオニンの5倍量〜10倍量の濃度で含む、請求項30〜32のいずれか1項に記載の飲食用補填物。
【請求項35】
前記デキストリンが、環状デキストリンである、請求項30〜34のいずれか1項に記載の飲食用補填物。
【請求項36】
前記環状デキストリンが、γ−環状デキストリンである、請求項35記載の飲食用補填物。
【請求項37】
前記デキストリンが、環状デキストリンと非環状デキストリンとを含む、請求項30〜34のいずれか1項に記載の飲食用補填物。
【請求項38】
pHが4以下である、請求項27〜37のいずれか1項に記載の飲食用補填物。
【請求項39】
pHが3以下である、請求項27〜37のいずれか1項に記載の飲食用補填物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−18596(P2010−18596A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183252(P2008−183252)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(591062331)磐田化学工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】