説明

S1P受容体アゴニストおよびアンタゴニストを調製するための方法

本明細書において開示されているのは、S1P受容体ファミリーの1つまたは複数の各受容体のアゴニストまたはアンタゴニストである化合物を製造する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2009年2月10日に出願された米国仮出願第61/207,302号の優先権および利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)は、スフィンゴミエリン生合成経路の一部であり、複数の生物学的過程に影響することが知られている。S1Pは、スフィンゴシンキナーゼ(SK1およびSK2)によるスフィンゴシンのリン酸化を介して形成され、これは、パルミトアルデヒドおよびホスホエタノールアミンを形成するスフィンゴシンリアーゼによる開裂を介して、またはリン脂質ホスファターゼによる脱リン酸化を介して分解される。S1Pは血清中に高濃度(約500nM)で存在し、大部分の組織中に見られる。S1Pは、サイトカイン、成長因子およびGタンパク質共役受容体(GPCR)リガンドを含むいくつかの刺激に応答して多種多様な細胞中で合成され得る。S1Pを結合するGPCR(現在、S1P受容体S1P1−5として知られている。)は、百日咳毒素感受性(Gi)経路、ならびに百日咳毒素非感受性経路を介して共役することにより様々な過程を刺激する。S1Pファミリーの個々の受容体は、組織および応答の両方に特異的であり、したがって、治療標的として魅力的である。
【0003】
S1Pは、細胞および組織から多くの応答を惹起する。特に、S1Pは、5つのGPCR、S1P(Edg−1)、S1P(Edg−5)、S1P(Edg−3)、S1P(Edg−6)およびS1P(Edg−8)全てでアゴニストであることが示されている。S1P受容体でのS1Pの作用は、アポトーシスに対する抵抗性、細胞形態の変化、細胞移動、成長、分化、細胞分裂、血管新生、オリゴデンドロサイトの分化および生存、軸索電位の調節、ならびにリンパ球輸送の変更を介する免疫系の調節に関連付けられている。したがって、S1P受容体は、例えば腫瘍性疾患、中枢神経系および末梢神経系の疾患、自己免疫障害、ならびに移植における組織拒絶の治療のための治療標的である。これらの受容体はまた、3つの他のリゾリン脂質受容体である構造的に関係するリゾホスファチジン酸(LPA)のLPA1、LPA2およびLPA3と、50−55%のアミノ酸同一性を有する。
【0004】
GPCRは、複数の疾患領域にわたって多数の市販薬物の例がある優れた標的である。GPCRは、細胞の細胞外表面上でホルモンを結合し、細胞膜を横切って細胞の内側に信号を伝達する細胞表面受容体である。内部信号はGタンパク質との相互作用を介して増幅され、次いでそのGタンパク質は様々な第2のメッセンジャー経路と相互作用する。この伝達経路は、少数の例を挙げると、細胞骨格変化、細胞運動性、増殖、アポトーシス、分泌、およびタンパク質発現の制御を含む下流の細胞応答において顕在化される。S1P受容体は、個々の受容体が異なる経路を介して異なる組織および信号で発現され、個々の受容体を組織および応答両方ともに特異的にするので良好な薬物標的を作る。S1P受容体の組織特異性が望ましいのは、1つの受容体に選択的なアゴニストまたはアンタゴニストが開発されると、その受容体を含有する組織に細胞応答を局在化させ、望ましくない副作用を制限するからである。S1P受容体の応答特異性が重要でもあるのは、他の応答に影響することなく特定の細胞応答を開始または抑制するアゴニストまたはアンタゴニストの開発を可能にするからである。例えば、S1P受容体の応答特異性は、細胞形態に影響することなく血小板凝集を開始するS1P模倣剤を可能にすることができる。
【0005】
個々のS1P受容体を刺激することの生理学的意義は、受容体型選択的リガンドが欠如していることにもよりほとんど知られていない。S1P受容体に対する強力なアゴニストまたはアンタゴニストの活性を有するS1P類似体の単離および特性決定は限られていた。
【0006】
例えばS1Pは広く発現され、ノックアウトは大血管の断裂による胚性致死を引き起こす。S1Pノックアウトマウス由来のリンパ球を使用する養子細胞移入実験は、S1P欠損リンパ球が二次リンパ器官に隔離されることを示した。逆に、S1Pを過剰発現するT細胞は、二次リンパ器官よりむしろ血液区画に優先的に分配される。これらの実験は、S1Pが二次リンパ区画へのリンパ球ホーミングおよび輸送に関与する主要スフィンゴシン受容体であるという証拠を提供している。
【0007】
現在、S1P受容体ファミリーの個々の受容体の作動作用または拮抗作用に関係する未対処の医学的必要に取り組むため、S1P受容体ファミリーの個々の受容体のアゴニストまたはアンタゴニストである新規の強力で選択的な薬剤、ならびにそれを製造する方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、一つには、S1P受容体ファミリーの1つまたは複数の各受容体のアゴニストまたはアンタゴニストである化合物を製造する方法を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、式I:
【0010】
【化1】

の化合物またはこの塩を製造する方法であって、
式II:
【0011】
【化2】

の化合物またはこの塩、
式III:
【0012】
【化3】

の化合物またはこの塩、金属触媒、塩基および有機溶媒を混合するステップを含み、式中、
Rは、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリール、場合によって置換されているヘテロアリール、場合によって置換されているヘテロシクリル、場合によって置換されているアラルキル、場合によって置換されているヘテロアラルキル、場合によって置換されているシクロアルキルアルキル、または場合によって置換されているヘテロシクリルアルキルであり、
は、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリール、場合によって置換されているヘテロアリール、場合によって置換されているヘテロシクリル、場合によって置換されているアラルキル、場合によって置換されているヘテロアラルキル、場合によって置換されているシクロアルキルアルキル、または場合によって置換されているヘテロシクリルアルキルであり、
Xは、ハロゲンまたはスルホネートであり、
式IIIの化合物に対する塩基のモル比は、約2以上である、
方法に関する。
【0013】
本発明の別の態様は、有機溶媒中の(1−アミノ−3−フェニルシクロペンチル)メタノールおよび上記で定義した通りの式Iの化合物またはこの塩を含む混合物から(1−アミノ−3−フェニルシクロペンチル)メタノールを抽出する方法であって、該混合物を約9から約9.5の間のpHを有する水性炭酸カリウムと接触させ、それによって該混合物から(1−アミノ−3−フェニルシクロペンチル)メタノールを抽出するステップを含む方法に関する。
【0014】
本発明の別の態様は、上記で定義した通りの式Iの化合物の(R)−マンデル酸塩を調製する方法であって、有機溶媒中において(R)−マンデル酸および式Iの化合物またはこの塩を混合し、それによって式Iの化合物の(R)−マンデル酸塩を形成するステップを含む方法に関する。
【0015】
本発明の別の態様は、式IV:
【0016】
【化4】

の化合物またはこの塩を製造する方法であって、
上記で定義した通りの式IIIの化合物またはこの塩、式V:
【0017】
【化5】

の化合物、金属触媒および有機溶媒を混合するステップを含む方法(式中、
は、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリール、場合によって置換されているヘテロアリール、場合によって置換されているヘテロシクリル、場合によって置換されているアラルキル、場合によって置換されているヘテロアラルキル、場合によって置換されているシクロアルキルアルキル、または場合によって置換されているヘテロシクリルアルキルである。)に関する。
【0018】
本発明の別の態様は、上記で定義した通りの式IIIの化合物またはこの塩を製造する方法であって、式VI:
【0019】
【化6】

の化合物またはこの塩および還元剤を混合するステップを含む方法(式中、
Xは、ハロゲンまたはスルホネートであり、
は、アルキルである。)に関する。
【0020】
本発明の別の態様は、式IA:
【0021】
【化7】

の化合物またはこの塩を製造する方法であって、
式II:
【0022】
【化8】

の化合物またはこの塩、
式III:
【0023】
【化9】

の化合物またはこの塩、金属触媒、塩基および有機溶媒を混合するステップを含み、式中、
Rは、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリール、場合によって置換されているヘテロアリール、場合によって置換されているヘテロシクリル、場合によって置換されているアラルキル、場合によって置換されているヘテロアラルキル、場合によって置換されているシクロアルキルアルキル、または場合によって置換されているヘテロシクリルアルキルであり、
は、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリール、場合によって置換されているヘテロアリール、場合によって置換されているヘテロシクリル、場合によって置換されているアラルキル、場合によって置換されているヘテロアラルキル、場合によって置換されているシクロアルキルアルキル、または場合によって置換されているヘテロシクリルアルキルであり、
Xは、ハロゲンまたはスルホネートであり、
式IIIAの化合物に対する塩基のモル比は、約2以上である、
方法に関する。
【0024】
本発明の別の態様は、有機溶媒中の((1R,3R)−1−アミノ−3−フェニルシクロペンチル)メタノールおよび上記で定義した通りの式IAの化合物またはこの塩を含む混合物から((1R,3R)−1−アミノ−3−フェニルシクロペンチル)メタノールを抽出する方法であって、該混合物を約9から約9.5の間のpHを有する水性炭酸カリウムと接触させ、それによって該混合物から((1R,3R)−1−アミノ−3−フェニルシクロペンチル)メタノールを抽出するステップを含む方法に関する。
【0025】
本発明の別の態様は、上記で定義した通りの式IAの化合物またはこの塩の(R)−マンデル酸塩を調製する方法であって、有機溶媒中において式IAの化合物またはこの塩および(R)−マンデル酸を混合し、それによって式IAの化合物の(R)−マンデル酸塩を形成するステップを含む方法に関する。
【0026】
本発明の別の態様は、式IVA:
【0027】
【化10】

の化合物またはこの塩を製造する方法であって、上記で定義した通りの式IIIAの化合物またはこの塩、式V:
【0028】
【化11】

の化合物、金属触媒および有機溶媒を混合するステップを含む方法(式中、
は、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリール、場合によって置換されているヘテロアリール、場合によって置換されているヘテロシクリル、場合によって置換されているアラルキル、場合によって置換されているヘテロアラルキル、場合によって置換されているシクロアルキルアルキル、または場合によって置換されているヘテロシクリルアルキルである。)に関する。
【0029】
本発明の別の態様は、上記で定義した通りの式IIIAの化合物またはこの塩を製造する方法であって、式VIA:
【0030】
【化12】

の化合物またはこの塩および還元剤を混合するステップを含む方法(式中、
Xは、ハロゲンまたはスルホネートであり、
は、アルキルである。)に関する。
【0031】
特定の実施形態において、本発明は、Rがアラルキルである前述した方法のいずれか1つに関する。
【0032】
特定の実施形態において、本発明は、Rが−CHCHCHCHPhである前述した方法のいずれか1つに関する。
【0033】
特定の実施形態において、本発明は、Rがアルキル、置換されているアルキル、アリールまたはヘテロアリールである前述した方法のいずれか1つに関する。
【0034】
特定の実施形態において、本発明は、Rがアルキルである前述した方法のいずれか1つに関する。
【0035】
特定の実施形態において、本発明は、Rが−C(CHである前述した方法のいずれか1つに関する。
【0036】
特定の実施形態において、本発明は、Xが−Br、−Clまたは−Iである前述した方法のいずれか1つに関する。
【0037】
特定の実施形態において、本発明は、Xが−Brである前述した方法のいずれか1つに関する。
【0038】
特定の実施形態において、本発明は、金属触媒がパラジウムを含む前述した方法のいずれか1つに関する。
【0039】
特定の実施形態において、本発明は、金属触媒がビスホスフィンリガンドを含む前述した方法のいずれか1つに関する。
【0040】
特定の実施形態において、本発明は、金属触媒がビス(ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(DPEPhos)リガンドを含む前述した方法のいずれか1つに関する。
【0041】
特定の実施形態において、本発明は、金属触媒が(DPEPhos)PdClである前述した方法のいずれか1つに関する。
【0042】
特定の実施形態において、本発明は、金属触媒がPdCl(PPhである前述した方法のいずれか1つに関する。
【0043】
特定の実施形態において、本発明は、塩基がビス(トリアルキルシリル)アミド塩である前述した方法のいずれか1つに関する。
【0044】
特定の実施形態において、本発明は、塩基がLiN(SiMeである前述した方法のいずれか1つに関する。
【0045】
特定の実施形態において、本発明は、式IIIの化合物に対する塩基のモル比が約3である前述した方法のいずれか1つに関する。
【0046】
特定の実施形態において、本発明は、式IIIの化合物に対する塩基のモル比が約4である前述した方法のいずれか1つに関する。
【0047】
特定の実施形態において、本発明は、溶媒が1,4−ジオキサンまたはジメトキシエタンである前述した方法のいずれか1つに関する。
【0048】
特定の実施形態において、本発明は、Rがアルコキシ置換アルキルである前述した方法のいずれか1つに関する。
【0049】
特定の実施形態において、本発明は、Rが−CHCHCHCHCHOCHである前述した方法のいずれか1つに関する。
【0050】
特定の実施形態において、本発明は、Rが−CH、−CHCHまたは−CHCHCHである前述した方法のいずれか1つに関する。
【0051】
特定の実施形態において、本発明は、Rが−CHである前述した方法のいずれか1つに関する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】アリールアルキンの加水分解を介して位置異性体ケトンの混合物をもたらす反応スキームを示す図である。
【図2】[A]非保護アミノアルコールを含有する臭化アリールとヒドラゾンとのカップリングに失敗した化学文献からの反応ステップおよび条件、ならびに[B]所望の最終生成物を提供するのに成功した本発明の反応ステップおよび条件を示す図である。
【図3】本発明の選択反応を示す図である。
【図4】アルデヒドへのアルコールの酸化、およびそれに続くアルデヒドからヒドラゾンの形成を示す図である。
【図5】アミノアルコールへのアミノエステルの還元のための選択した反応条件および結果を示す一覧である。
【図6】アリールケトンを形成するためのヒドラゾンと臭化アリールとの金属触媒カップリング、ならびにヒドラゾンおよび臭化アリールの調製における選択したステップを示す図である。
【図7】末端アルキンおよび臭化アリールの薗頭カップリングの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、一つには、S1P受容体ファミリーの個々の受容体のアゴニストまたはアンタゴニストである化合物を製造する方法を対象とする。
定義
本発明において、以下の定義が適用できる。
【0054】
塩基性置換基を有する本発明の特定の化合物は、酸との塩(例えば、一級アミン)として存在することができる。本発明はこうした塩を含む。
【0055】
こうした塩の例として、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸およびリン酸、またはスルホン酸、カルボン酸、有機リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸、乳酸、酒石酸(例えば、(+)もしくは(−)−酒石酸またはこの混合物)およびアミノ酸(例えば、(+)もしくは(−)−アミノ酸またはこの混合物)などの有機酸との反応によって得られる塩が挙げられる。これらの塩は、当業者に知られている方法によって調製することができる。
【0056】
酸性置換基を有する本発明の特定の化合物は、塩基との塩として存在することができる。本発明はこうした塩を含む。こうした塩の例として、ナトリウム塩、カリウム塩、リシン塩およびアルギニン塩が挙げられる。これらの塩は、当業者に知られている方法によって調製することができる。
【0057】
本発明の特定の化合物およびこれらの塩は1種を超える結晶形で存在することができ、本発明は各結晶形およびこの混合物を含む。
【0058】
本発明の特定の化合物およびこれらの塩は、溶媒和物、例えば水和物の形態で存在することもでき、本発明は各溶媒和物およびこの混合物を含む。
【0059】
本発明の特定の化合物は、1つまたは複数のキラル中心を含有することができ、異なる光学活性形態で存在することができる。本発明の化合物が1つのキラル中心を含有する場合、該化合物は2種のエナンチオマーの形態で存在し、本発明はエナンチオマーおよびラセミ混合物などのエナンチオマーの混合物の両方を含む。該エナンチオマーは、当業者に知られている方法によって、例えば、例えば結晶化によって分離することができるジアステレオ異性体塩の形成;例えば結晶化、ガス液体クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーによって分離することができるジアステレオ異性体の誘導体または錯体の形成;エナンチオマー特異的試薬を用いる1種のエナンチオマーの選択的反応、例えば酵素的エステル化;またはキラル環境における、例えばキラル担体、例えば結合キラルリガンドを持つシリカ上で、もしくはキラル溶媒の存在下におけるガス液体クロマトグラフィーもしくは液体クロマトグラフィーによって分割することができる。上に記載されている分離手順の1つによって所望のエナンチオマーを別の化学実体に変換させる場合、さらなるステップを使用することにより所望のエナンチオマー形態を遊離させることができることは認められよう。別法として、特異的エナンチオマーは、光学活性の試薬、基質、触媒もしくは溶媒を使用する不斉合成によって、または不斉転換によって1種のエナンチオマーを他のエナンチオマーに変換することにより合成することができる。
【0060】
本発明の化合物が1つを超えるキラル中心を含む場合、該化合物はジアステレオ異性体形態で存在することができる。ジアステレオ異性体化合物は、当業者に知られている方法、例えばクロマトグラフィーまたは結晶化によって分離することができ、個々のエナンチオマーは上記した通り分離することができる。本発明は、本発明の化合物の各ジアステレオ異性体およびこの混合物を含む。
【0061】
本発明の特定の化合物は異なる互変異性形態で、または異なる幾何異性体として存在することができ、本発明は、本発明の化合物の各互変異性体および/または幾何異性体ならびにこれらの混合物を含む。
【0062】
本発明の特定の化合物は、分離可能であり得る異なる安定な立体配座形態で存在することができる。不斉単結合の周りの回転が制限されていることによるねじれ非対称、例えば立体障害または環ひずみのためのねじれ非対称は、異なる配座異性体の分離を可能にすることができる。本発明は、本発明の化合物の各立体配座異性体およびこの混合物を含む。
【0063】
本発明の特定の化合物は両性イオン形態で存在することができ、本発明は、本発明の化合物の各両性イオン形態およびこの混合物を含む。
【0064】
本発明の目的のため、化学元素は、元素周期表、CASバージョン、Handbook of Chemistry and Physics、第67版、1986−87、表紙裏に従って同定する。
【0065】
「a」および「an」という冠詞は、本明細書において、該冠詞の文法上の目的語が1つまたは1つを超える(即ち、少なくとも1つある)ことを指すのに使用される。一例として、「元素」(an element)は、1つの元素または1つを超える元素を意味する。
【0066】
「アルケニル」という用語は、本明細書で使用される場合、2個から10個の炭素を含有し、2個の水素の除去によって形成される少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する直鎖または分枝鎖の炭化水素を意味する。アルケニルの代表例として、これらに限定されないが、エテニル、2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、3−ブテニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル、2−ヘプテニル、2−メチル−1−ヘプテニルおよび3−デセニルが挙げられる。
【0067】
「アルコキシ」という用語は、酸素原子を介する親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのアルキル基を意味する。アルコキシの代表例として、これらに限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2−プロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシおよびヘキシルオキシが挙げられる。
【0068】
「アルコキシカルボニル」という用語は、本明細書で定義される通りの−C(=O)−によって表されるカルボニル基を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのアルコキシ基を意味する。アルコキシカルボニルの代表例として、これらに限定されないが、メトキシカルボニル、エトキシカルボニルおよびtert−ブトキシカルボニルが挙げられる。
【0069】
「アルコキシスルホニル」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義される通りのスルホニル基を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのアルコキシ基を意味する。アルコキシスルホニルの代表例として、これらに限定されないが、メトキシスルホニル、エトキシスルホニルおよびプロポキシスルホニルが挙げられる。
【0070】
「アリールアルコキシ」および「ヘテロアルコキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義される通りのアルコキシ基を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのアリール基またはヘテロアリール基を意味する。アリールアルコキシの代表例として、これらに限定されないが、2−クロロフェニルメトキシ、3−トリフルオロメチルエトキシおよび2,3−メチルメトキシが挙げられる。
【0071】
「アリールアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義される通りのアルキル基を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのアリール基を意味する。アルコキシアルキルの代表例として、これらに限定されないが、tert−ブトキシメチル、2−エトキシエチル、2−メトキシエチルおよびメトキシメチルが挙げられる。
「アルキル」という用語は、1個から10個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖の炭化水素を意味する。アルキルの代表例として、これらに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチルおよびn−ヘキシルが挙げられる。
【0072】
「アルキルカルボニル」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義される通りのカルボニル基を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのアルキル基を意味する。アルキルカルボニルの代表例として、これらに限定されないが、アセチル、1−オキソプロピル、2,2−ジメチル−1−オキソプロピル、1−オキソブチルおよび1−オキソペンチルが挙げられる。
【0073】
「アルキルカルボニルオキシ」および「アリールカルボニルオキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、酸素原子を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのアルキルカルボニル基またはアリールカルボニル基を意味する。アルキルカルボニルオキシの代表例として、これらに限定されないが、アセチルオキシ、エチルカルボニルオキシおよびtert−ブチルカルボニルオキシが挙げられる。アリールカルボニルオキシの代表例として、これに限定されないが、フェニルカルボニルオキシが挙げられる。
【0074】
「アルキルスルホニル」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義される通りのスルホニル基を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのアルキル基を意味する。アルキルスルホニルの代表例として、これらに限定されないが、メチルスルホニルおよびエチルスルホニルが挙げられる。
【0075】
「アルキルチオ」という用語は、本明細書で使用される場合、硫黄原子を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのアルキル基を意味する。アルキルチオの代表例として、限定されないが、メチルチオ、エチルチオ、tert−ブチルチオおよびヘキシルチオが挙げられる。例えば「アリールチオ」、「アルケニルチオ」および「アリールアルキルチオ」という用語は、同様に定義される。
【0076】
「アルキニル」という用語は、本明細書で使用される場合、2個から10個の炭素原子を含有し、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含有する直鎖または分枝鎖の炭化水素基を意味する。アルキニルの代表例として、これらに限定されないが、アセチレニル、1−プロピニル、2−プロピニル、3−ブチニル、2−ペンチニルおよび1−ブチニルが挙げられる。
【0077】
「アミド」という用語は、本明細書で使用される場合、アミド基が窒素を介して親分子部分に結合している−NHC(=O)−を意味する。アミドの例として、CHC(=O)N(H)−およびCHCHC(=O)N(H)−などのアルキルアミドが挙げられる。
【0078】
「アミノ」という用語は、本明細書で使用される場合、窒素原子を介して親分子部分に付いている非置換および置換アミン両方の基を指す。この2つの基は、それぞれ独立して水素、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルスルホニル、アリールカルボニルまたはホルミルである。代表例として、これらに限定されないが、メチルアミノ、アセチルアミノおよびアセチルメチルアミノが挙げられる。
【0079】
「芳香族」という用語は、nが整数の絶対値である4n+2個の電子を含有する環式共役分子成分を特徴とする平面構造または多環構造を指す。縮合環または連結環を含有する芳香族分子は、二環式芳香環とも称される。例えば、炭化水素の環状構造中にヘテロ原子を含有する二環式芳香環は、二環式ヘテロアリール環と称される。
【0080】
「アリール」という用語は、本明細書で使用される場合、フェニル基またはナフチル基を意味する。本発明のアリール基は、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルスルホニル、アルキルチオ、アルキニル、アミド、アミノ、カルボキシ、シアノ、ホルミル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、メルカプト、ニトロ、シリルおよびシリルオキシからなる群から独立して選択される1個、2個、3個、4個または5個の置換基で場合によって置換されていてよい。
【0081】
「アリールアルキル」または「アラルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義される通りのアルキル基を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのアリール基を意味する。アリールアルキルの代表例として、これらに限定されないが、ベンジル、2−フェニルエチル、3−フェニルプロピルおよび2−ナフト−2−イルエチルが挙げられる。
【0082】
「アリールアルコキシ」または「アリールアルキルオキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、酸素を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのアリールアルキル基を意味する。「ヘテロアリールアルコキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、酸素を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのヘテロアリールアルキル基を意味する。
【0083】
「アリールアルキルチオ」という用語は、本明細書で使用される場合、硫黄を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのアリールアルキル基を意味する。「ヘテロアリールアルキルチオ」という用語は、本明細書で使用される場合、硫黄を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのヘテロアリールアルキル基を意味する。
【0084】
「アリールアルケニル」という用語は、本明細書で使用される場合、アルケニル基を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのアリール基を意味する。代表例はフェニルエチレニルである。
【0085】
「アリールアルキニル」という用語は、本明細書で使用される場合、アルキニル基を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのアリール基を意味する。代表例はフェニルエチニルである。
【0086】
「アリールカルボニル」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義される通りのカルボニル基を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのアリール基を意味する。アリールカルボニルの代表例として、これらに限定されないが、ベンゾイルおよびナフトイルが挙げられる。
【0087】
「アリールカルボニルアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義される通りのアルキル基を介して親分子に結合している本明細書で定義される通りアリールカルボニル基を意味する。
【0088】
「アリールカルボニルアルコキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、酸素を介して親分子に結合している本明細書で定義される通りのアリールカルボニルアルキル基を意味する。
【0089】
「アリールオキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、酸素を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのアリール基を意味する。「ヘテロアリールオキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、酸素を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのヘテロアリール基を意味する。
【0090】
「カルボニル」という用語は、本明細書で使用される場合、−C(=O)−基を意味する。
【0091】
「カルボキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、−COH基を意味する。
【0092】
「シクロアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、完全に飽和しているまたは1つまたは複数の不飽和結合を有しているが芳香族基になっていない3個から12個の炭素原子を含有する単環式または多環式(例えば、二環式、三環式など)の炭化水素を意味する。シクロアルキル基の例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシルおよびシクロヘキセニルが挙げられる。
【0093】
「シクロアルコキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、酸素を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのシクロアルキル基を意味する。
【0094】
「シアノ」という用語は、本明細書で使用される場合、−CN基を意味する。
【0095】
「ホルミル」という用語は、本明細書で使用される場合、−C(=O)H基を意味する。
【0096】
「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、−Cl、−Br、−Iまたは−Fを意味する。
【0097】
「ハロアルコキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義される通りのアルコキシ基を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りの少なくとも1種のハロゲンを意味する。ハロアルコキシの代表例として、これらに限定されないが、クロロメトキシ、2−フルオロエトキシ、トリフルオロメトキシおよびペンタフルオロエトキシが挙げられる。
【0098】
「ハロアルキル」という用語は、本明細書で定義される通りのアルキル基を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りの少なくとも1種のハロゲンを意味する。ハロアルキルの代表例として、これらに限定されないが、クロロメチル、2−フルオロエチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルおよび2−クロロ−3−フルオロペンチルが挙げられる。
【0099】
「ヘテロシクリル」という用語は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、完全に飽和していてよい、または1つもしくは複数の単位の不飽和結合(誤解を避けるため、この不飽和結合の程度は芳香環系をもたらさない)を含有し、窒素、酸素もしくは硫黄などの少なくとも1個のヘテロ原子を含めた3個から12個の原子を有してよい、単環式、二環式および三環式の環を含めた非芳香族環系を含む。本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない例示の目的で、以下のものが複素環の例である。アゼピニル、アゼチジニル、モルホリニル、オキソピペリジニル、オキソピロリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピロリジニル、キヌクリジニル、チオモルホリニル、テトラヒドロピラニルおよびテトラヒドロフラニル。本発明のヘテロシクリル基は、例えばアルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルスルホニル、アルキルチオ、アルキニル、アミド、アミノ、カルボキシ、シアノ、ホルミル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、メルカプト、ニトロ、シリルおよびシリルオキシから独立して選択される0個、1個、2個または3個の置換基で場合によって置換されている。
【0100】
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書で使用される場合、これらに限定されないが、単環式、二環式および三環式の環を含めた芳香環系を含み、窒素、酸素または硫黄などの少なくとも1個のヘテロ原子を含めた3個から12個の原子を有する。本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない例示の目的で:アザインドリル、ベンゾ(b)チエニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、フラニル、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、インドリル、インドリニル、インダゾリル、イソインドリニル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、イソキノリニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピロロ[2,3−d]ピリミジニル、ピラゾロ[3,4−d]ピリミジニル、キノリニル、キナゾリニル、トリアゾリル、チアゾリル、チオフェニル、テトラヒドロインドリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チエニル、チオモルホリニル、トリアゾリルまたはトロパニル。本発明のヘテロアリール基は、アルケニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシスルホニル、アルキル、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルスルホニル、アルキルチオ、アルキニル、アミド、アミノ、カルボキシ、シアノ、ホルミル、ハロ、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、メルカプト、ニトロ、シリルおよびシリルオキシから独立して選択される0個、1個、2個または3個の置換基で場合によって置換されている。
【0101】
「ヘテロアリールアルキル」または「ヘテロアラルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義される通りのアルキル基を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りのヘテロアリールを意味する。ヘテロアリールアルキルの代表例として、これらに限定されないが、ピリジン−3−イルメチルおよび2−(チエン−2−イル)エチルが挙げられる。
【0102】
「ヒドロキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、−OH基を意味する。
【0103】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で定義される通りのアルキル基を介して親分子部分に付いている本明細書で定義される通りの少なくとも1個のヒドロキシ基を意味する。ヒドロキシアルキルの代表例として、これらに限定されないが、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシペンチルおよび2−エチル−4−ヒドロキシヘプチルが挙げられる。
【0104】
「メルカプト」という用語は、本明細書で使用される場合、−SH基を意味する。
【0105】
「ニトロ」という用語は、本明細書で使用される場合、−NO基を意味する。
【0106】
「シリル」という用語は、本明細書で使用される場合、シリル(HSi−)基(即ち、(ヒドロカルビル)Si−)のヒドロカルビル誘導体を含み、ここでヒドロカルビル基は、炭化水素、例えばエチル、フェニルから水素原子を除去することによって形成される一価の基である。ヒドロカルビル基は、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、tert−ブチルジメチルシリル(TBS/TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)および[2−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル(SEM)などの多くのシリル基を提供するため変動されてよい異なる基の組合せであってよい。
【0107】
「シリルオキシ」という用語は、本明細書で使用される場合、酸素原子を介して親分子に付いている本明細書で定義される通りのシリル基を意味する。
【0108】
「スルホネート」という用語は、本明細書で使用される場合、−S(=O)ORを意味し、式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキルである。スルホネートの例として、トシレートおよびメシレートが挙げられる。
【0109】
「触媒量」という用語は当技術で認識されており、反応物に対する試薬の半化学量論量を意味する。本明細書で使用される場合、触媒量は、例えば、反応物に対して0.0001から90モルパーセントの試薬、または0.001から50モルパーセント、または0.01から10モルパーセント、または反応物に対して0.1から5モルパーセントの試薬を意味する。
【0110】
「極性溶媒」は、DMF、THF、エチレングリコールジメチルエーテル(DME)、DMSO、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、t−ブタノールまたは2−メトキシエチルエーテルなど、2.9以上の誘電率(ε)を有する溶媒を意味する。
【0111】
アリールケトンの調製
図1に示されている通り、アリールケトンは、アリールアルキンの加水分解を介して形成することができる。しかし、アルキンの加水分解は、硫酸または水銀などのきつい化学薬品の使用をしばしば必要とする。さらに、加水分解は、分離するのが困難な恐れがある位置異性体ケトンをしばしば生ずる。一部の場合において、所望でないケトン異性体は、所望の異性体から分離できない。
【0112】
アリールケトンの調製の別の手法は、アリールハロゲン化物とアシルアニオン同等物との金属触媒カップリングを介する。文献の手順により、塩基としてNaOtBu(1.4当量)の存在下において、触媒としてPd(dba)(2.5mol%)およびDPEPHOS(5mol%)の使用が報告されている。Takemiya、A.;およびHartwig、J.F.「Palladium−Catalyzed Synthesis of Aryl Ketones by Coupling of Aryl Bromides with an Acyl Anion Equivalent」J.Am.Chem.Soc.2006、128(46)、14800−14801を参照されたい。
【0113】
TakemiyaおよびHartwigが臭化アリールとアシルアニオン同等物とのPd触媒クロスカップリング反応について報告したが、非保護アミノアルコールを含有するハロゲン化アリールとアシルアニオン同等物との間のPd触媒クロスカップリング反応の例は全く報告されていないと思われる。遊離アミン基および遊離アルコール基はパラジウム触媒反応を失速させることが知られているので、TakemiyaおよびHartwigは、遊離アミンまたは遊離アルコールの官能性を含有する臭化アリールの反応の例を全く示していない。実際に、上記参考文献の著者らは、反応が進行するのを可能にするためTBS保護基によって臭化アリール中の遊離OH基を保護しなければならなかった。保護形態または非保護形態のいずれかでNH基を含有する臭化アリールを用いる反応を試みることさえなかった。いかなる特別の理論に結びつける意図はないが、触媒被毒の問題に加えて、遊離OH基および遊離NH基は、該反応において所望のC−C結合の代わりにC−O結合およびC−N結合を形成する可能性が高い恐れがあると仮定される。Pd触媒のC−O結合およびC−N結合の形成反応の例が数千もあるが、臭化アリールとアシルアニオン同等物との間のPd触媒クロスカップリング反応の例は2つしかなく、Pd触媒のC−O結合およびC−N結合の形成反応のほうが容易であるという事実を強調していると思われる。TakemiyaおよびHartwigの参照でさえ、競合的C−N結合形成の報告がある。
【0114】
実際、TakemiyaおよびHartwigの反応条件が図2Aに示されているカップリングに適用される場合、認識可能な量の生成物は得られなかった。上記で指摘した通り、該反応の失敗の原因は、Pdにキレートし、触媒反応を失速させることが知られている非保護アミノアルコール官能基である可能性があると仮定された。具体的には、該触媒反応において塩基として使用されたNaOtBuは、アミノアルコール官能基を恐らく脱プロトン化し、触媒分解のプロセスを加速していた。
【0115】
不活性条件下において該反応を行うことが反応を成功させる鍵であり得ると認められた。したがって、該反応は、図3Bに示されている通り、塩基としてのNaOtBuの代わりに塩基としてLHMDS(リチウムヘキサメチルシリルアジド)を使用することに変更した。
【0116】
本明細書に開示されている結果の前には、臭化アリールと非保護アミノアルコールおよびアシルアニオン同等物とのPd触媒クロスカップリング反応における塩基としてのLHMDSの使用は知られていなかったと思われる。しかし、異なる型のPd触媒クロスカップリング反応(C−N結合形成)において塩基としてのLHMDSの使用が報告された。Harris、M.C;Huang、X.;Buchwald、S.L.「Improved Functional Group Compatibility in the Palladium−Catalyzed Synthesis of Aryl Halides」Org.Lett.2002、4、2885;ならびにShen、Q.、Ogata、T.およびJ.F.Hartwig「Highly Reactive、General and Long−Lived Catalysts for Palladium−Catalyzed Amination of Heteroaryl and Aryl Chlorides、Bromides and Iodides:Scope and Structure−Activity Relationships」J.Am.Chem.Soc.2008、130(20)、6586−6596を参照されたい。LHMDSがアルコールを脱プロトン化し、クロスカップリング反応が進行するのを可能にするリチウム凝集体を形成することが知られていたが、反応物のいずれかがNH官能基を含有すると塩基としてのLHMDSの存在下であってもクロスカップリング反応は進行できないことが報告された。
【0117】
しかし、いずれか1つの理論に結びつける意図はないが、α−アミノアルコール含有化合物に関して、OH基の脱プロトン化によって形成されるリチウム凝集体は、NH基を非常に立体障害的な環境に置き、それによってNHが触媒を被毒できない状態にすることがあると仮定された。驚くべきことに、この新規の合成手法は前例のない化学的性質をもたらし、ここで、非保護アミノアルコールを含有する臭化アリールとアシルアニオン同等物との間のPd触媒クロスカップリング反応が達成された。図3Bおよび図6Aに示されている通り、LHMDS 4当量の使用により、副生物としての約2−10%の脱ハロゲン化生成物とともに、80%を超える収率で生成物を形成した(図6Cを参照のこと。)。これまでに判明している最適な反応条件は、アリールケトンを形成するために、溶媒としてのDME中にて約80℃で、触媒として(DPEPhos)PdCl(図6Bを参照のこと。)および塩基としてLHMDSを用いる。
【0118】
つまり、本明細書において開示されるのは、非保護アミノアルコール官能基を含有する臭化アリールとヒドラゾンなどのアシルアニオン同等物との金属触媒カップリングを可能にした反応条件である。この反応の成功の鍵の1つは、NaOtBuの代わりに塩基としてLHMDSを用いることであった。
【0119】
精製方法
所望のアリールケトンの形成に加えて、図6に示されているカップリング反応は、2−10%の脱ハロゲン化副生成物も生成した(図6Cを参照のこと。)。この化合物は、強力に有害な不純物である。この不純物の量を低減するため、新規な後処理手順が開発された。特定の実施形態において、該不純物は0.2mol%濃度未満まで低減される。具体的には、CHCl中に懸濁された所望の化合物のHCl塩をKCO水溶液で洗浄することを伴う後処理手順が開発された。該水層のpHは9−9.5の間で慎重に保持された。この方法は不純物を該水層中に抽出し、有機層中の不純物の量を0.2mol%未満まで抑えた(一部の例において、水層中の所望生成物が5−6mol%だけ損失。)。水層のpHを9−9.5の間に維持することが極めて重要であり、より高いpHでは不純物が水層中に抽出されず、9より低いpHでは、水層および有機層の分離不可能混合物が形成された。この方法を使用する生成混合物からの任意の未反応出発原料の除去も期待される。
【0120】
重要なことには、上に記載されている精製手順の重要性を強調しても、特定の化合物に関して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー技術はスケールアップの可能性がなく、したがって商業的に実現可能ではない。
【0121】
薗頭カップリング
非保護アミノアルコール官能性を含有するハロゲン化アリールは、塩基として過剰なLHMDSが使用される場合、アルキンにカップリングさせることができる(薗頭カップリング)ことも見出された。図7は1つのこうしたカップリングを示している。
【0122】
様々な概論
本明細書に記載されている反応は、通常、穏やかな温度および圧力で進行することにより、アリールケトンなどの生成物の高収率が得られる。したがって、45%超、75%超および80%超の所望生成物の収率は、例えば、本発明による反応から得ることができる。
【0123】
本発明のリガンドおよびこれに基づく方法により、当技術分野において知られている方法を使用して認識可能な量の観察された生成物(単数または複数)をもたらすと思われない条件下で、遷移金属触媒反応を介して、炭素−炭素結合の形成が可能になる。反応が所定の一連の条件下で起こると言われる場合、例えば48時間以内、24時間以内または12時間以内に、大部分の出発原料が消費されるまたは有意な量の所望生成物が生成されるような反応速度であることを意味する。特定の実施形態において、本発明のリガンドおよび方法により、制限試薬に対して1mol%未満の触媒錯体、特定の実施形態において制限試薬に対して0.01mol%未満の触媒錯体、および追加の実施形態において制限試薬に対して0.0001mol%未満の触媒錯体を利用して前述した転換が触媒される。
【0124】
本発明の一態様は、アシルアニオン同等物とX活性化基およびα−アミノアルコール部分を持つ基質アリール基とを組み合わせることを含む遷移金属触媒反応に関する。該反応には、リガンドを含む遷移金属触媒の少なくとも触媒量を含み、該組合せは、金属触媒が該反応を触媒するのに適切な条件下で保持される。
【0125】
適当な基質アリール化合物として、ベンゼン、ナフタレン、アントラセンおよびフェナントレンなどの単純芳香族環(単一または多環);またはピロール、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ペリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジニン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリンなどの複素芳香族環(単一または多環)から誘導される化合物が挙げられる。特定の実施形態において、反応性基Xは、(より大きな多環の一部であり得るが)5員環、6員環または7員環上で置換されている。
【0126】
特定の実施形態において、アリール基質は、フェニルおよびフェニル誘導体、複素芳香族化合物、多環芳香族および複素芳香族化合物、ならびにこれらの官能化誘導体からなる群から選択することができる。単純芳香族環および複素芳香族環から誘導される適当な芳香族化合物として、これらに限定されないが、ピリジン、イミダゾール、キノリン、フラン、ピロールおよびチオフェンなどが挙げられる。縮合環系から誘導される適当な芳香族化合物として、これらに限定されないが、ナフタレン、アントラセン、テトラリンおよびインドールなどが挙げられる。
【0127】
活性化置換基Xは、良好な脱離基であることを特徴とする。一般に、脱離基は、ハロゲン化物またはスルホネートなどの基である。適当な活性化置換基として、単に一例として、塩化物、臭化物およびヨウ化物などのハロゲン化物、ならびにトリフレート、メシレート、ノナフレートおよびトシレートなどのスルホン酸エステルが挙げられる。特定の実施形態において、脱離基は、ヨウ素、臭素および塩素から選択されるハロゲン化物である。特定の実施形態において、脱離基は、トリフレート、メシレート、ノナフレートおよびトシレートから選択されるスルホン酸エステルである。
【0128】
特定の実施形態において、アミンの対応する塩は調製することができ、アミンの代わりに使用することができる。
【0129】
特定の実施形態において、アシルアニオン同等物はヒドラゾンである。ヒドラゾンなどを選択することにより、所望の反応生成物がもたらされる。ヒドラゾンなどは官能化することができる。ヒドラゾンなどは、これらに限定されないが、非環式、環式もしくは複素環式化合物、縮合環化合物またはフェノール誘導体を含めて、多種多様な構造型から選択することができる。芳香族化合物およびヒドラゾンなどは、単一分子の部分として含めることができ、これにより該反応が分子内反応として進行する。
【0130】
本発明の「金属触媒」には、この用語が本明細書において使用される場合、任意の触媒遷移金属および/または反応槽に導入されたときの触媒前駆体および必要に応じてその場で活性形態にその場で変換される触媒前駆体ならびにその反応に関与する活性形態を含むことが企図される。
【0131】
特定の実施形態において、遷移金属触媒錯体は反応混合物中に触媒量で提供される。特定の実施形態において、この量は、試薬が化学量論的過剰であるかどうかに依存して、芳香族化合物またはアシルアニオン同等物のいずれかであってよい制限試薬に対して例えば0.0001mol%から20mol%;0.05mol%から5mol%、または1mol%から4mol%の範囲である。触媒錯体の分子式が1種を超える金属を含む例において、該反応に使用される触媒錯体の量は、適宜調節することができる。一例として、Pd(dba)は2つの金属中心を有し、したがって、該反応で使用されるPd(dba)のモル量は、触媒活性を犠牲にすることなく半減することができる。
【0132】
適当な場合、対象方法に用いられる触媒は、アリール基ArXとアシルアニオン同等物とのクロスカップリングを媒介することができる金属の使用を伴う。一般に、任意の遷移金属(例えば、d電子を有する。)、例えば周期表の3−12族の1つからまたはランタニド系列から選択される金属を使用することにより、該触媒を形成することができる。しかし、特定の実施形態において、該金属は、後周期遷移金属、例えば5−12族からまたは7−11族からなる群から選択される。例えば、適当な金属として、白金、パラジウム、鉄、ニッケル、ルテニウムおよびロジウムが挙げられる。該反応に使用されるべき金属の特定の形態が選択されることにより、該反応条件下で、配位的に不飽和であり最も高い酸化状態ではない金属中心がもたらされる。該触媒の金属核は、Pdなど、Ar−X結合に酸化的付加を行う能力を持つゼロ原子価の遷移金属であるべきである。ゼロ原子価状態M(0)は、例えばM(II)からその場で発生させることができる。
【0133】
さらに例示すると、適当な遷移金属触媒として、パラジウムの可溶性または不溶性錯体が挙げられる。ゼロ原子価金属中心は、触媒炭素−炭素結合形成順序に関与すると推定される。したがって、該金属中心は望ましくはゼロ原子価状態である、または金属(0)に還元することが可能である。適当な可溶性パラジウム錯体として、これらに限定されないが、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム[Pd(dba)]、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム[Pd(dba)]および酢酸パラジウムが挙げられる。
【0134】
該カップリングは、パラジウムが、例示的目的だけであるがPd/C、PdCl、Pd(OAc)、(CHCN)PdCl、Pd[P(C、およびポリマー担持Pd(0)の形態で提供され得るパラジウム触媒によって触媒することができる。
【0135】
該触媒は、好ましくは、結合支持リガンド、つまり金属支持リガンド錯体を含む金属リガンド錯体として反応混合物に提供される。該リガンドの効果は、とりわけ、β水素化物脱離などの副反応よりむしろ生成物を生成する還元的脱離経路などを優先するのに重要であり得る。特定の実施形態において、対象反応は、ビスホスフィンまたはアミノホスフィンなどの二座リガンドを用いる。該リガンドは、キラルならば、ラセミ混合物または精製立体異性体として提供され得る。特定の例において、ラセミキレートリガンドが使用される。
【0136】
該リガンドは、下においてより詳細に記載されている通り、単に一例としてホスフィンおよびビスホスフィンのアルキル誘導体およびアリール誘導体などのキレートリガンドであってよい。該触媒錯体は、必要な場合追加のリガンドを含むことにより、安定な錯体を得ることができる。さらに、該リガンドは、金属錯体の形態における反応混合物に添加することができ、または金属の添加に対して別の試薬として添加することができる。
【0137】
対象方法の特定の実施形態において、該遷移金属触媒には、例えば、遷移金属触媒の安定性および電子移動特性を制御するおよび/または金属中間体を安定化するルイス塩基リガンドとして、1つまたは複数のホスフィンリガンドが含まれる。ホスフィンリガンドは市販されている、またはそれ自体知られているプロセスと同様の方法によって調製することができる。該ホスフィンは、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリプロピルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト、トリブチルホスファイトおよびトリシクロヘキシルホスファイト、トリフェニルホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリイソプロピルホスフィンもしくはトリシクロヘキシルホスフィンなどの単座ホスフィンリガンド;または2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(BINAP)、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジエチルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジプロピルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジイソプロピルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジブチル−ホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)プロパン、1,3−ビス(ジイソ−プロピルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジイソプロピルホスフィノ)−ブタンおよび2,4−ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)ペンタンなどの二座ホスフィンリガンドであってよい。
【0138】
適当なビス(ホスフィン)化合物として、決してこれらに限定されないが、(±)−2,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(および別のエナンチオマー)、(±)−2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(および別のエナンチオマー)、1−1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン(dppf)、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(dppp)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)−ベンゼン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル、9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニルホスフィノ)−キサンテン(キサントホス)および1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(dppe)が挙げられる。(±)−N,N−ジメチル−1−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]エチルアミン(および別のエナンチオマー)および(±)−(R)−1−[(S)−2−(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]エチルメチルエーテル(および別のエナンチオマー)などの混合キレートリガンドも本発明の範囲内である。特定の実施形態において、該ホスフィンリガンドは、ビス(ジフェニルホスフィノフェニル)エーテルまたはこの置換形態である。
【0139】
一般に、様々な塩基が、本発明の特定の態様の実施で使用され得る。該塩基は、塩基の金属配位をこうした配位が可能である状況で防止するため、立体障害性であり得る。特定の実施形態において、該塩基は、ビス(トリアルキルシリル)アミド(例えば、KN(SiMe、NaN(SiMeおよびLiN(SiMe)である。
【0140】
特定の実施形態において、塩基は、少なくとも2倍過剰で使用される。アリールケトンの調製のため、本発明は、所望生成物の良好な収率を得るために大過剰の塩基が必要であることを実証した。特定の実施形態において、3当量または4当量の塩基が必要とされる。
【0141】
当分野の技術者に明らかである通り、本発明の反応によって生成することができる生成物がさらなる反応(単数または複数)を受けることにより、これらの所望誘導体を得ることができる。こうした許容可能な誘導体化反応は、当技術分野において知られている従来の手順に従って実施することができる。例えば、有望な誘導体化反応として、エステル化、アルデヒドおよび酸へのアルコールの酸化、アミドのN−アルキル化、ニトリル還元、エステルによるアルコールのアシル化、アミンのアシル化などが挙げられる。
【0142】
本発明の反応は広範囲の条件下で行うことができるが、本明細書に列挙されている溶媒および温度の範囲が限定的なものではなく、本発明のプロセスの例示的様式に対応しただけであることを理解されよう。
【0143】
一般に、反応は、反応物、触媒または生成物に不利な影響を与えない温和な条件を使用して行われることが望ましい。例えば、反応温度は、反応の速度、ならびに反応物および触媒の安定性に影響する。該反応は、約25℃から約300℃の範囲または約25℃から約150℃の範囲の温度で通常行われる。
【0144】
一般に、対象反応は液体反応媒体中で実施される。該反応は、溶媒の添加なしで行うことができる。別法として、該反応は、不活性溶媒、好ましくは触媒を含めた反応成分が実質的に可溶性であるものの中で行うことができる。適当な溶媒として、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジグリム、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフランおよび水などのエーテル;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタンおよびクロロベンゼンなどのハロゲン化溶媒;ベンゼン、キシレン、トルエン、ヘキサンおよびペンタンなどの脂肪族または芳香族炭化水素溶媒;酢酸エチル、アセトンおよび2−ブタノンなどのエステルおよびケトン;アセトニトリル、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドなどの極性非プロトン性溶媒;または2種以上の溶媒の組合せが挙げられる。
【0145】
本発明は、溶媒の二相混合物中、エマルジョンもしくは懸濁液中における反応、または脂質小胞もしくは脂質二重層における反応も企図する。特定の実施形態において、該反応は、反応物またはリガンドを固体支持体に固定して行われる。
【0146】
特定の実施形態において、該反応は、窒素またはアルゴンなどのガスの不活性雰囲気下で行われる。
【0147】
特定の実施形態において、該反応はマイクロ波照射下で行われる。「マイクロ波」という用語は、約1ミリメートル(1mm)から1メートル(1m)の間の波長を持つ約300から300,000メガヘルツ(MHz)の間の電磁スペクトルの一部を指す。これらは当然任意境界であるが、高周波と称される上記のもの以外の赤外線放射の周波数未満に低下するマイクロ波を定量化するのに役立つ。同様に、周波数から波長の間の逆相関がよく確立されていると仮定すると、マイクロ波は、赤外線放射より長いが高周波の波長より短い波長を有する。マイクロ波補助の化学技術は、学術界および商業界で一般によく確立されている。マイクロ波は、特定の物質を加熱することにおいて一部の有意な利点を有する。特に、マイクロ波がカップリングできる物質、最も通常には極性分子またはイオン種と相互作用する場合、マイクロ波は、様々な化学反応を開始または加速させる十分なエネルギーを提供するこうした種において大量の動力学的エネルギーを即時に作り出すことができる。マイクロ波は、マイクロ波が所望の種と瞬時に反応することができるので周囲は加熱される必要がないという点で、伝導加熱を超える利点も有する。
【0148】
本発明の反応プロセスは、連続方式、半連続方式またはバッチ方式で行うことができ、所望の場合液循環操作を伴ってよい。本発明のプロセスは、好ましくはバッチ式で行われる。同様に、反応成分、触媒および溶媒の添加の方法または順序も一般に該反応の成功に肝要ではなく、任意の従来方式で達成することができる。一部の例において反応速度の亢進に至ることができる事象の順序において、塩基、例えばPhONaは、反応混合物に添加されるべき最後の成分である。
【0149】
該反応は、単一の反応ゾーンもしくは複数の反応ゾーンにおいて連続もしくは並行して行うことができ、または細長い管状ゾーンもしくはこうしたゾーンのシリーズにおいてバッチ式もしくは連続的に行ってよい。用いられる構成の材料は、反応中の出発原料に不活性であるべきであり、装置の構成要素は、反応の温度および圧力に耐えられるべきである。該反応の過程中に反応ゾーンにバッチ式または連続的に導入される出発原料または成分の量を導入および/または調節する手段は、特に出発原料の所望のモル比を維持するために該プロセスにおいて好都合にも利用することができる。該反応ステップは、出発原料の1つを他のものに増加的に添加することによって影響されることがある。また、該反応ステップは、出発原料を金属触媒に共添加することによって合わせることができる。完全変換が所望でないまたは得られない場合、出発原料は、生成物から分離し、次いで反応ゾーンに戻してリサイクルすることができる。
【0150】
該プロセスは、ガラスで裏打ちされたステンレス鋼または同様の型の反応装置のいずれかで行うことができる。該反応ゾーンは、過度の温度変動を制御するため、また任意の可能な「暴走」反応温度を防止するため、1つまたは複数の内部および/または外部熱交換器(単数または複数)と装着させることができる。
【0151】
さらに、1つまたは複数の反応物は、ポリマーまたは他の不溶性マトリックス中に固定化または組み入れることができる。
【0152】
例証
ここで一般的に記載されている本発明は、以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されるが、実施例は、本発明の特定の態様および実施形態の例示の目的で単に挙げられており、本発明を限定することを意図するものではない。
略語
acac アセチルアセトネート
ACN アセトニトリル
BBr 三臭化ボラン
エチレン
CuI ヨウ化銅(I)
DBAD ジ−tert−ブチルアゾジカルボキシレート
DCM ジクロロメタン
de ジアステレオマー過剰
DPEPhos ビス(ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル
DIEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMA N,N−ジメチルアセトアミド
DME 1,2−ジメトキシエタン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
dppf 1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
ee エナンチオマー過剰
EtN トリエチルアミン
EtO ジエチルエーテル
EtOAc 酢酸エチル
h 時間(単数または複数)
水素ガス
HCl 塩酸
HOAc 酢酸
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
CO 炭酸カリウム
LAH リチウムテトラヒドロアルミネート
LDA リチウムジイソプロピルアミド
LiHMDS リチウムヘキサメチルジシラジド
LiOH 水酸化リチウム
MeOH メタノール
MgSO 硫酸マグネシウム
NaHCO 炭酸水素ナトリウム
NaOH 水酸化ナトリウム
NaSO 硫酸ナトリウム
NBD ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン
Pd(PPhCl ビス(トリフェニルホスフィン)塩化パラジウム(II)
PPh トリフェニルホスフィン
PS−PPh ポリマー担持トリフェニルホスフィン
Rh ロジウム
RP 逆相
保持時間
RT 室温
(R)−BINAP (R)−(−)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン
(S)−BINAP (S)−(−)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
【0153】
分析方法
分析データは、一般的手順内、または実施例の表中のいずれかで定義されている。特に明記されていない限り、全てのHまたは13C NMRデータは、Varian Mercury Plus 400MHz機器またはBruker DRX 400MHz機器で回収された。化学シフトは、百万分率(ppm)で表されている。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)分析データは、実験内で詳述されているまたは表1において小文字の方法を使用してHPLC条件の表に言及されているのいずれかである。
【0154】
【表1】

【実施例】
【0155】
一般的合成スキーム/手順
この出願に開示されている化合物の大多数を構築するのに利用された一般的合成スキームは図に示されている。
【0156】
以下で、一般的合成手順および一般的手順に従って合成された化合物の例を記載する。特に明記されていない限り、以下に明記されている具体的な条件および試薬のいずれもが本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではなく、目的を例示するためだけに提供されている。一般的手順の全てが成功裏に行われ、各一般的手順の例証も提供されている。
一般的手順A
アルファ−ベータ不飽和ケトンへのマイケル付加
置換アリールボロン酸(1−3当量、好ましくは1.5当量)およびロジウム触媒(Rh(NBD)(S−BINAP)BF、ヒドロキシル[(S)BINAP]ロジウム(I)二量体、Rh(acac)(C/(R)−BINAP、または(R)−もしくは(S)−BINAPとのアセチルアセトネートビス(エチレン)ロジウム(I)など、好ましくは(S)生成物にはRh(NBD)(S−BINAP)BF、(R)生成物にはRh(acac)(C/(R)−BINAP)(1−5mol%、好ましくは1.25mol%)の有機溶媒(テトラヒドロフランまたはジオキサンなど、好ましくはジオキサン)および水中の溶液を窒素で脱気する。シクロアルカノンを混合物に添加する。反応物を、約20−100℃(約35℃など)で1−24時間(16時間など)の間不活性雰囲気下にて、有機塩基(好ましくはトリエチルアミン)の添加の有無にかかわらず撹拌する。反応混合物を減圧下で濃縮し、粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。
一般的手順Aの例証
(S)−3−(4−ブロモ−フェニル)−シクロペンタノンの調製
Rh(NBD)(S−BINAP)BF(22mg)およびS−BINAP(40mg)を、脱気した1,4−ジオキサン(3mL)中で一緒に混合する。混合物を約2時間RTで撹拌することにより、オレンジ色のスラリーが得られる。別のフラスコ中で、4−ブロモフェニルボロン酸(1g、1.5当量)を、ジオキサン(5.6mL)および水(1.4mL)中にRTで溶解し、次いで、触媒を含有するフラスコ中へ移動する。得られた懸濁液を窒素で脱気し、2−シクロペンテン−1−オン(0.273g、1当量)およびトリエチルアミン(0.336g、1当量)を添加する。赤色−オレンジ色の澄明な液を終夜RTで撹拌する。反応物を酢酸エチルと水との間で分離し、有機層を1回5%NaCl(aq)で洗浄し、次いで濃縮する。粗生成物を、ヘプタン中の20%酢酸エチルを使用するシリカゲルカラム上でさらに精製する。
【0157】
別法として、温度プローブおよび窒素バブラーを装備した3Lの三つ口丸底フラスコに、ジオキサン(1667mL)中の4−ブロモフェニルボロン酸(100g、498mmol)およびヒドロキシ[(S)−BINAP]ロジウム(I)二量体(6.20g、4.17mmol)ならびに水(167mL)をRTで投入した。生じた懸濁液を窒素で脱気し、2−シクロペンテン−1−オン(27.8mL、332mmol)を一度に添加した。混合物を5分間さらに脱気し、約35℃で約16時間加熱した。反応混合物をRTに冷却し、濃縮した。褐色の残渣をEtOAc(500mL)で処理し、濾過した。濾液をNaHCO(500mL)およびブライン(500mL)の飽和溶液で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮することにより、暗褐色の固体を得た。粗反応生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶出液として1:9のEtOAc:ヘプタン)によって精製した。生成物を含有する画分を合わせ、濃縮することにより、(S)−3−(4−ブロモ−フェニル)−シクロペンタノンを(キラルHPLCによる決定で、70.4g、89%、95%ee)象牙色の固体として得た。
【0158】
LCMS(表1、方法a)R=2.81分;特徴的な質量の検出なし;H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 7.47(d,2H)、7.27(d,2H)、3.35(m,1H)、2.55(m,1H)、2.25(m,4H)、1.85(m,1H)
別法として、ボロネートをその場で形成し、以下の通りに、エノンへのロジウム触媒による付加に使用することができる。ゴム隔膜および窒素入口針を装備した250mL丸底フラスコに、EtO(10.7mL)中の1−ブロモ−4−オクチルベンゼン(5.77g、21.43mmol)をRTで投入する。得られた溶液を約0℃に冷却する。約5分後、BuLi(8.21mL、21.43mmol)溶液を、シリンジを用いて約20分かけて滴下により添加する。反応混合物を約0℃で約30分間撹拌させた。次いで、得られた溶液を約−78℃に冷却する。約10分後、トリメチルボレート(2.395mL、21.43mmol)を、シリンジを用いて約5分かけて滴下により添加する。反応混合物を約−78℃で約30分間撹拌する。反応混合物を飽和NHCl 20mLおよびトルエン50mLで処理する。水性相を分離し、トルエン50mL分量で2回抽出する。有機相を合わせ、濃縮する。残渣をトルエンでさらに希釈し、濃縮することにより水を除去し、次いで真空で乾燥させる。得られた白色ペースト状の固体を次の転換で直接使用する。粗ボレートを、窒素入口アダプターを装着した還流冷却器を装備した200mL丸底フラスコに移動する一方、アセチルアセトネートビス(エチレン)ロジウム(I)(0.166g、0.643mmol)および(R)−BINAPエナンチオマー(0.480g、0.772mmol)をそれぞれ一度に添加する。該フラスコを脱気し、窒素を充填する(3サイクルで酸素を除去。)。該固体に、ジオキサン(40mL)、シクロペンタ−2−エノン(1.796mL、21.43mmol)および水(4mL)をそれぞれ、シリンジを用いて滴下により添加する。得られた懸濁液を約100℃で約16時間加熱する。
【0159】
得られたオレンジ色/褐色の溶液をRTに冷却させる。オレンジ/褐色の溶液を濃縮し、褐色の残渣をエーテル中に溶かし、1N HCl溶液で洗浄する。黄褐色エマルジョンが形成する。乳化された混合物を分離し、EtOAcで抽出する。水性相もEtOAcで抽出する。合わせた有機相を10%NaOHおよびブラインで洗浄し、次いで濃縮することにより、茶色のオイルを得る。粗試料をシリカゲル上のクロマトグラフィーによって精製し、無色オイル1258mgを得る。
一般的手順B
ケトンからヒダントインの形成
炭酸アンモニウム(1−10当量、好ましくは4.5当量)およびシアン化物塩(シアン化カリウムまたはシアン化ナトリウムなど)(1−3当量、1.1当量など)の水中混合物に、ケトン(1当量)を添加する。反応混合物を2−40時間(16時間など)の間加熱還流する。反応混合物をRTに冷却し、濾過によって固体を回収し、水で洗浄することにより、粗生成物が得られ、これはエーテルにより粉砕して精製することができる。
一般的手順Bの例証
(S)−7−(4−ブロモ−フェニル)−1,3−ジアザ−スピロ[4.4]ノナン−2,4−ジオンの調製
炭酸アンモニウム(268g、2.79mol)およびカリウムシアン化物(44.4g、0.681mol)が投入されている丸底フラスコに、水(1500mL、82mol)を添加した。混合物を約80℃で加熱し、(S)−3−(4−ブロモ−フェニル)−シクロペンタノン(148.09g、0.62mol)のエタノール(1500mL、25mol)中溶液を添加した。反応混合物を終夜加熱還流した。反応混合物をRTに冷却した。粗反応混合物を濾過し、水で洗浄した。該固体をエーテル(1.5L)で粉砕し、濾過し、エーテルで洗浄し、真空下で乾燥させることにより、(S)−7−(4−ブロモ−フェニル)−1,3−ジアザ−スピロ[4.4]ノナン−2、4−ジオン(181.29g、95%)を1:1のジアステレオマー混合物として生成された。
【0160】
LCMS(表1、方法a)R=2.24分;m/z:307(M−H)H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 10.61(s,1H)、8.29(s,1H)、8.24(s,1H)、7.49(d,2H)、7.27(d,1H)、7.24(d,1H)、3.14−3.35(m,1H)、2.45(dd,0.5H)、1.68−2.27(m,5.5H)
一般的手順C
N−アルキル化ヒダントインの形成
ヒダントイン(1当量)を含有するフラスコに、塩基(炭酸カリウムまたは炭酸ナトリウムなど)(1−3当量、1.5当量など)、およびDMFまたはDMAなどの有機溶媒を添加する。混合物をRTで10−30分(好ましくは約15分)の間撹拌し、次いで、ヨウ化メチル(1−2当量、1.1当量など)を添加する。反応物をRTで24−72時間(約48時間など)の間撹拌する。反応混合物を濃縮し、氷−水浴中で冷却し、水を添加する。沈殿物を濾過によって回収することにより、粗生成物が得られる。結晶化によって2種の立体異性体を分離することができる。
一般的手順Cの例証
(5R,7S)−7−(4−ブロモ−フェニル)−3−メチル−1,3−ジアザ−スピロ[4.4]ノナン−2,4−ジオンの調製
(S)−7−(4−ブロモ−フェニル)−1,3−ジアザ−スピロ[4.4]ノナン−2,4−ジオン(1:1のジアステレオマー混合物、180.3g、0.583mol)を含有するフラスコに、炭酸カリウム(120.9g、0.875mol)、続いてDMF(1L)を添加した。約15分間RTで撹拌した後、ヨウ化メチル(39.9mL、0.642mol)を一度に添加した。反応物をRTで2日にわたり撹拌した。反応混合物を真空中にて約25℃で部分的に濃縮し、およそ400mLのDMFおよび過剰のヨウ化メチルを除去した。粗混合物を氷水浴中で冷却し、水(2L)を添加した。約1時間撹拌した後、生じた白色の沈殿物を濾過し、水(1L)ですすいだ。フィルターケーキをハウスバキューム上で終夜乾燥させることにより、220gの粗(S)−7−(4−ブロモ−フェニル)−3−メチル−1,3−ジアザ−スピロ[4.4]ノナン−2,4−ジオンがジアステレオマー混合物として得られた。
【0161】
2種のジアステレオマーを、以下の通りに結晶化によって分離した。該原料をそれぞれ110gの2つのバッチに分けた。粗原料(110g)をACN(2.5L)中に懸濁し、ほぼ完全な溶解が生じるまで約70℃に加熱した。該原料を約70℃で急速に濾過し、約70℃のACN(2×500mL)ですすいだ。合わせた濾液(3.5Lの全容量)を、撹拌しながら約65℃に再加熱した。澄明な液が得られた後、混合物を約50℃にゆっくり冷却させ、この時点で、原料が溶液から析出し始めた。該溶液を、撹拌(100rpm)しながら約30℃にゆっくり冷却させた。約2時間経った後、該溶液を濾過し、固体を約65℃にてハウスバキューム下で3時間乾燥させることにより、(5R,7S)−7−(4−ブロモ−フェニル)−3−メチル−1,3−ジアザ−スピロ[4.4]ノナン−2,4−ジオン(22.2g、12%)が得られた。(注記:(S,S)−ジアステレオマー(2:1(S,S):(R,S))が濃縮したN−メチルヒダントインの混合物をアセトニトリルから再結晶させる試み中に、純粋な形態で少量の(5S,7S)−7−(4−ブロモ−フェニル)−3−メチル−1,3−ジアザ−スピロ[4.4]ノナン−2,4−ジオン(40mg)を単離した。)
LCMS(表1、方法a)R=2.50分;m/z:321(M−H)H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 8.56(s,1H)、7.50(d,2H,J=8.42Hz)、7.27(d,2H,J=8.53Hz)、3.16−3.31(m,1H)、2.84(s,3H)、2.46(dd,1H,J=13.62,8.40Hz,)、2.02−2.18(m,2H)、1.72−1.95(m,3H)
(5R,7S)−3−アリル−7−(4−ブロモ−フェニル)−1,3−ジアザ−スピロ[4.4]ノナン−2,4−ジオンの調製
異性体ヒダントイン(9.27g、30mmol、KF<0.4%に乾燥)、炭酸カリウム粉末(4.6g、33mmol)、臭化アリル(3.8g、31.5mmol)およびDMF(45mL)の混合物を、終夜RTでかき混ぜた。完了(HPLC)次第、反応物を水(45mL)で希釈し、スラリーを水(180mL)中に移した。生成物を濾過によって回収し、水、1:1のメタノール−水で洗浄し、50℃にて真空下で、10.8g、103%の白色固体に乾燥させた。
【0162】
アリルヒダントイン(1:1の異性体混合物、10.5g)をジオキサン(63mL)中に溶解した(加熱することが必要な場合がある。)。水の添加(40mL)および内容物を約4時間RTで混合することによって、所望の異性体を沈殿させた。生成物を濾過によって回収し、約55℃にて真空中で、2.8g(HPLCにより、10:1の異性体比)の白色固体に乾燥させた。
【0163】
TLCは、65:35のヘプタン/EAの液中における異性体の適切な分離を示した。
一般的手順D
対応するアミノ酸へのヒダントインの加水分解
N−アルキル化ヒダントイン(1当量)の水および有機溶媒(水/ジオキサンまたは水/DMSOなど)混合物中懸濁液に、無機塩基(水酸化リチウムまたは水酸化ナトリウムなど)(5−15当量、約8−10当量など)を添加する。混合物を16−48時間(約24時間など)の間加熱還流する。RTに冷却した後、反応混合物を希釈し、酸性化し、濾過する。フィルターケーキを適当な溶媒(水、酢酸エチルまたはメタノールなど)で洗浄し、必要な場合、トルエン中でスラリー化することにより過剰の水を除去し、真空下で乾燥させた。
一般的手順Dの例証
(1R,3S)−1−アミノ−3−(4−ブロモ−フェニル)−シクロペンタンカルボン酸の調製
(5R,7S)−7−(4−ブロモ−フェニル)−3−メチル−1,3−ジアザ−スピロ[4.4]ノナン−2,4−ジオン(79g、0.24mol)の水(1L)中スラリーに、2M水性NaOH(1L、2mol)およびジオキサン(200mL)を添加した。生じた混合物を約24時間加熱還流した。反応混合物をRTに冷却し、水(2L)で希釈し、沈殿物が形成し始めるまで(約pH7)濃縮HClで酸性化した。酢酸(約20mL)を添加し、濃厚な沈殿物を生成した。白色の沈殿物を回収し、水(2×1L)およびEtOAc(1L)で洗浄した。フィルターケーキをトルエン(1L)中に懸濁し、真空中にて約45℃で濃縮した。このプロセスをもう1度繰り返した。白色の沈殿物を真空下で恒量に乾燥させることにより、(1R,3S)−1−アミノ−3−(4−ブロモ−フェニル)−シクロペンタンカルボン酸(65g、95%)が得られた。
【0164】
LCMS(表1、方法a)R=1.56分;m/z:284/286(M+H)H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 7.55(d,2H)、7.3(d,2H)、3.3(m,1H)、2.65(m,1H)、2.3(m,1H)、2.1−2.2(m,2H)、2.0−2.1(m,1H)、1.85(t,1H)
別法として、上記からのアリルヒダントイン(2.65g、7.6mmol)をDMSO(15mL)中に溶解し、LiOH(3.63g、150mmol)および水50(mL)から調製された水酸化リチウム溶液と合わせた。生じた混合物を約17時間加熱還流した(105℃)。完了(HPLC)次第、反応混合物をRTに冷却し、pHを濃縮HClで約7に、次いで酢酸で約5に調節した(注意、起泡!)。生成物を濾過によって回収し、水、1:1のメタノール−水で洗浄し、エステル形成ステップに適当な灰色がかった固体2.6g(108%)に乾燥させた。
一般的手順E
酸からのエステルの形成
大過剰のメタノール中に懸濁した酸(1当量)を氷/水浴中で冷却し、塩化チオニル(5−20当量、8−12当量など)を滴下により添加する。得られた混合物を2−48時間(24−36時間など)の間加熱還流する。反応混合物をRTに冷却し、濾過し、濃縮乾固させる。残渣を適当な溶媒(EtOAcまたはエーテルなど)で粉砕し、真空下で乾燥させることにより、所望生成物が得られる。
一般的手順Eの例証
(1R,3S)−1−アミノ−3−(4−ブロモ−フェニル)−シクロペンタンカルボン酸メチルエステル;塩酸塩の調製
MeOH(1.8L)中に懸濁した(1R,3S)−1−アミノ−3−(4−ブロモ−フェニル)−シクロペンタンカルボン酸(79g、0.28mol)氷/水浴中で冷却し、塩化チオニル(178mL、2.44mol)を滴下により添加した。該添加に続いて、反応物を加熱還流し、ほぼ均質の溶液が生成された。2日後、反応混合物をRTに冷却し、濾過し、MeOH(2×200mL)ですすいだ。濾液を真空中で濃縮することにより、白色固体を生成した。白色固体をEtOAc(1L)で粉砕し、濾過によって回収し、EtOAc(2×500mL)ですすぎ、真空下で乾燥させることにより、(1R,3S)−1−アミノ−3−(4−ブロモ−フェニル)−シクロペンタンカルボン酸メチルエステル;塩酸塩が白色固体(79g、96%)として得られた。
【0165】
LCMS(表1、方法a)R=1.80分(ELSD);m/z:198(M+H)H NMR(400MHz,DMSO−d)δ 7.55(d,2H)、7.35(d,2H)、3.82(s,3H)、3.3(m,1H)、2.65(m,1H)、2.3(m,1H)、2.1−2.2(m,3H)、1.95−2.05(t,1H)
粗ラセミ(S)−1−アミノ−3−(4−ブロモフェニル)シクロペンタン−カルボン酸17.72g(62.3mmol)をMeOH(267ml)中でスラリー化し、次いで約5℃に冷却する。塩化チオニル(27.5mL、374mmol)を滴下により添加する。該添加に続いて、反応混合物を加熱還流する。約3−4時間後、反応混合物をRTに冷却し、Celite(登録商標)パッドに通して濾過する。濾液を真空中でほぼ乾固に濃縮し、100mLのEtOAcでスラリー化し、続いて真空で酢酸エチルを除去する。粗生成物を3%HO/EtOAc中で約20分スラリー化し、濾過することにより、15.88gの白色固体を生成する。ウェットケーキを次いで270mlの4%HO/DME中に溶かし(Kf=5−6%)、約50℃に約3時間加熱し、次いで終夜RTで撹拌する。濃縮した立体異性体を濾過することにより、7.8g(37%)(3S,1R)のアミノエステルを>98%deで生成する。キラルHPLCは、それぞれ1:8比および1:6比(3S,1R):(3S,1S)のEtOAc液およびDME液を示した。
一般的手順F
α−アミノアルコールへのα−アミノエステルの還元
図5に示されている通り、アミノエステルをアミノアルコールに還元する一方でハロ−アリール結合を還元しないため(例えば、((1R,3S)−1−アミノ−3−(4−ブロモフェニル)シクロペンチル)メタノール塩酸塩を調製するため)、いくつかの異なる還元剤(水素化ホウ素ナトリウムなど)を検討した。
一般的手順G
ヒドラゾンを調製するための手順
アルコールを有機溶媒(ジクロロメタンなど)およびTCAA中に溶解し、TEMPOをゆっくり添加する。アルデヒドが形成するまで(約15分間など)、反応物をRTで撹拌する。粗反応混合物を乾燥させ、濃縮する。ヒドラジン塩酸塩を2N NaOHに添加し、溶解するまで撹拌する。粗アルデヒドを次いで添加し、反応混合物を撹拌する(約15分間など)。酢酸を次いで添加し、反応混合物を12−24時間撹拌する。得られた反応混合物を乾燥させ、濃縮する。
一般的手順Gの例証
1−tert−ブチル−2−(5−フェニルペンチリデン)ヒドラジンの調製
5−フェニルペンタノールをジクロロメタン中に溶解し、TCCAを添加した。反応物を冷却し、TEMPOをゆっくり添加した。約15分後、反応が完了した。後処理は、濃縮炭酸ナトリウム溶液、次いで1N HCl、および最終的にブラインを用いる洗浄からなる。有機物を乾燥させ、オレンジ色のオイルに濃縮し、これを次のステップでそのまま使用する(約95%の収率)。全ての場合において、反応は予測通りに進行した。アルデヒドは安定な未希釈ではないが、ジクロロメタン溶液として安定である。
【0166】
上記からのジクロロメタン溶液を濃縮する。t−ブチルヒドラジンを2N NaOHに添加し、完全に溶解するまで撹拌する。前ステップからの未希釈アルデヒドを添加し、約10分間撹拌する。最終的に、酢酸を添加し、反応物を終夜撹拌する。水性物をジエチルエーテルで2回抽出する。有機物をブラインで2回洗浄し、乾燥させ、白色固体まで濃縮する。反応は終夜で完了したが、文献において示唆されている通りの3時間ではなかった。
一般的手順H
過剰なビス(トリアルキルシリル)アミドの存在下におけるPd触媒カップリング
全てのガラス器具を使用前に炉乾燥する。使用されるべき溶媒を、使用前に少なくとも1時間アルゴンでパージする。マグネチックスターラーおよび熱電対を装備したフラスコに触媒を投入する。触媒フラスコをアルゴンでパージする。磁気撹拌棒を含有する別のフラスコを、不活性雰囲気のグローブボックス内に入れ、ビス(トリアルキルシリル)アミドを投入する。塩基フラスコをグローブボックスの外に取り出し、該フラスコにハロゲン化アリールを添加し、続いて溶媒を添加する。反応混合物を、アルゴンでパージしながらRTで約30分間撹拌した。ヒドラジンを丸底フラスコ中に秤量し、溶媒を添加する。上に記載されている溶液を合わせ、約80℃で約5時間撹拌する。粗反応物を次いで新たなフラスコに移し、適当な溶媒を6N HClと一緒に添加する。混合物を約14時間激しく撹拌する。追加の溶媒を反応混合物に添加し、続いて溶液のpHが約9.5になるまでKCOを一分量ずつ添加する。得られた反応混合物を乾燥させ、濃縮する。
一般的手順Hの例証
1−(4−((1S,3R)−3−アミノ−3−(ヒドロキシメチル)シクロペンチル)フェニル)−5−フェニルペンタン−1−オンの調製
全てのガラス器具を使用前に4時間炉乾燥した。DMEを使用前に1.5時間アルゴンでパージした。マグネチックスターラーおよびJ−Kem熱電対を装備した1Lの三つ口フラスコに、ジクロロ[ビス(ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル]パラジウム(II)[DPEphosとしても知られている。](9.34g、13.05mmol)を投入し、三つ口フラスコを約30分間アルゴンでパージした。磁気撹拌棒を含有する別の1Lのフラスコを不活性雰囲気のグローブボックス内に入れ、LHMDS(175g、1044mmol)を投入した。該フラスコをグローブボックスから外に取り出し、((1R,3S)−1−アミノ−3−(4−ブロモフェニル)シクロペンチル)メタノール塩酸塩(80g、261mmol)を該フラスコに添加し、続いてDME(175mL)を添加した。反応混合物を、アルゴンでパージしながらRTで約30分間撹拌した。(E)−1−tert−ブチル−2−(5−フェニルペンチリデン)ヒドラジン(76g、326mmol)を250mLの丸底フラスコ中に秤量し、DME(25mL)を添加した。該溶液を1Lのフラスコにカニューレ移動した。該250mLのフラスコをDME(25mL)ですすいだ。該1Lのフラスコを約20分間アルゴンでさらにパージし、反応混合物を次いで該三つ口フラスコにカニューレで移した。該1LのフラスコをDME(50mL)ですすぎ、該三つ口フラスコにカニューレで移した。該三つ口フラスコを次いで陽圧のアルゴンで保持して有意な溶媒損失がないことを確実にし、約78℃で約5時間撹拌した。粗反応物を次いで5Lの三つ口フラスコに移した。THF(250mL)、MeOH(250mL)および6N HCl(400mL)を該フラスコに添加した。混合物を約14時間激しく撹拌した。CHCl(200mL)を反応混合物に添加し、続いて溶液のpHが約9.5になるまでKCOを一分量ずつ添加した。1−(4−((1S,3R)−3−アミノ−3−(ヒドロキシメチル)シクロペンチル)フェニル)−5−フェニルペンタン−1−オン(66.2g、72%)が得られた。
【0167】
上記で得られた粗反応混合物は、脱臭素化された出発原料の約2−10%(即ち、((1R,3S)−1−アミノ−3−(4−フェニル)シクロペンチル)メタノール塩酸塩)を副生物として含有していた。5Lのフラスコ中の上記反応混合物を4Lの分液漏斗に移し、CHCl(500mL)および水(500mL)で希釈した。有機層を分離し、水層をCHCl(200mL)で洗浄した。合わせた有機層を水(1L)で3回洗浄した。有機層を真空中で濃縮し、次いでIPAc(500mL)で希釈した。水層を500mLの5%システイン+10%KCO溶液で2回洗浄した。有機層を次いで、飽和塩化アンモニウム溶液(500mL)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、真空で濃縮した。1−(4−((1R,3S)−3−アミノ−3−(ヒドロキシメチル)シクロペンチル)フェニル)−5−フェニルペンタン−1−オン(58.9g、65%)が得られた。((1R,3S)−1−アミノ−3−(4−フェニル)シクロペンチル)メタノール塩酸塩の量は、約0.5mol%であった。該生成物の(R)−マンデル酸塩の形成は、((1R,3S)−1−アミノ−3−(4−フェニル)シクロペンチル)メタノール塩酸塩の量を0.2mol%濃度未満に低下させた。
【0168】
一般的手順Iおよびこの例証
α−アミノアルコール含有化合物とアルキンとの薗頭カップリング
図7に示されている通り、アルキンを反応混合物に約2時間かけて約65℃でゆっくり投入する。反応が実質的に完了していることをHPLCが示すまで、混合物を約65℃でさらに約6時間撹拌した。
【0169】
参照による組み込み
本明細書において引用されている米国特許および米国公開特許出願の全てを参照によって本明細書に組み込む。
【0170】
同等物
当業者は、本明細書に記載されている本発明の具体的な実施形態の多くの同等物を認識し、日常的実験法を使用するだけで確認できる。こうした同等物は、以下の請求項の範囲であると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物またはこの塩を製造する方法であって、
式II:
【化2】

の化合物またはこの塩、
式III:
【化3】

の化合物またはこの塩、金属触媒、塩基および有機溶媒を混合するステップを含み、
式中、
Rは、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリール、場合によって置換されているヘテロアリール、場合によって置換されているヘテロシクリル、場合によって置換されているアラルキル、場合によって置換されているヘテロアラルキル、場合によって置換されているシクロアルキルアルキル、または場合によって置換されているヘテロシクリルアルキルであり、
は、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリール、場合によって置換されているヘテロアリール、場合によって置換されているヘテロシクリル、場合によって置換されているアラルキル、場合によって置換されているヘテロアラルキル、場合によって置換されているシクロアルキルアルキル、または場合によって置換されているヘテロシクリルアルキルであり、
Xは、ハロゲンまたはスルホネートであり、
式IIIの化合物に対する塩基のモル比は、約2以上である、
方法。
【請求項2】
金属触媒がパラジウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塩基がビス(トリアルキルシリル)アミド塩であり、有機溶媒が1,4−ジオキサンまたはジメトキシエタンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
が場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリールまたは場合によって置換されているヘテロアリールである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Rが場合によって置換されているアリールアルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
有機溶媒中の(1−アミノ−3−フェニルシクロペンチル)メタノールおよび式I:
【化4】

の化合物またはこの塩を含む混合物から(1−アミノ−3−フェニルシクロペンチル)メタノールを抽出する方法であって、前記混合物を約9から約9.5の間のpHを有する水性炭酸カリウムと接触させ、それによって混合物から(1−アミノ−3−フェニルシクロペンチル)メタノールを抽出するステップを含む方法
(式中、
Rは、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリール、場合によって置換されているヘテロアリール、場合によって置換されているヘテロシクリル、場合によって置換されているアラルキル、場合によって置換されているヘテロアラルキル、場合によって置換されているシクロアルキルアルキル、または場合によって置換されているヘテロシクリルアルキルである。)。
【請求項7】
Rが場合によって置換されているアラルキルであり、有機溶媒が1,4−ジオキサンまたはジメトキシエタンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式I:
【化5】

の化合物の(R)−マンデル酸塩を調製する方法であって、
有機溶媒中において(R)−マンデル酸および式Iの化合物を混合し、それによって式Iの化合物の(R)−マンデル酸塩を形成するステップを含む方法(式中、
Rは、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリール、場合によって置換されているヘテロアリール、場合によって置換されているヘテロシクリル、場合によって置換されているアラルキル、場合によって置換されているヘテロアラルキル、場合によって置換されているシクロアルキルアルキル、または場合によって置換されているヘテロシクリルアルキルである。)。
【請求項9】
有機溶媒が1,4−ジオキサンまたはジメトキシエタンであり、Rが場合によって置換されているアラルキルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式IV:
【化6】

の化合物またはこの塩を製造する方法であって、
式III:
【化7】

の化合物またはこの塩、
式V:
【化8】

の化合物、金属触媒および有機溶媒を混合するステップを含む方法(式中、
は、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリール、場合によって置換されているヘテロアリール、場合によって置換されているヘテロシクリル、場合によって置換されているアラルキル、場合によって置換されているヘテロアラルキル、場合によって置換されているシクロアルキルアルキル、または場合によって置換されているヘテロシクリルアルキルであり、
Xは、ハロゲンである。)。
【請求項11】
金属触媒がパラジウムを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
有機溶媒が1,4−ジオキサンまたはジメトキシエタンであり、Rがアルコキシ置換アルキルである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
式III:
【化9】

の化合物またはこの塩を製造する方法であって、
式VI:
【化10】

の化合物またはこの塩および還元剤を混合するステップを含む方法(式中、
Xは、ハロゲンまたはスルホネートであり、
は、アルキルである。)。
【請求項14】
式IA:
【化11】

の化合物またはこの塩を製造する方法であって、
式II:
【化12】

の化合物またはこの塩、
式III:
【化13】

の化合物またはこの塩、金属触媒、塩基および有機溶媒を混合するステップを含み、式中、
Rは、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリール、場合によって置換されているヘテロアリール、場合によって置換されているヘテロシクリル、場合によって置換されているアラルキル、場合によって置換されているヘテロアラルキル、場合によって置換されているシクロアルキルアルキル、または場合によって置換されているヘテロシクリルアルキルであり、
は、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリール、場合によって置換されているヘテロアリール、場合によって置換されているヘテロシクリル、場合によって置換されているアラルキル、場合によって置換されているヘテロアラルキル、場合によって置換されているシクロアルキルアルキル、または場合によって置換されているヘテロシクリルアルキルであり、
Xは、ハロゲンまたはスルホネートであり、
式IIIAの化合物に対する塩基のモル比は、約2以上である、
方法。
【請求項15】
金属触媒がパラジウムを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
塩基がビス(トリアルキルシリル)アミド塩であり、溶媒が1,4−ジオキサンまたはジメトキシエタンである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
がアルキル、置換アルキル、アリールまたはヘテロアリールである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
Rが場合によって置換されているアラルキルである、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
有機溶媒中の((1R,3R)−1−アミノ−3−フェニルシクロペンチル)メタノールおよび式IA:
【化14】

の化合物またはこの塩を含む混合物から((1R,3R)−1−アミノ−3−フェニルシクロペンチル)メタノールを抽出する方法であって、前記混合物を約9から約9.5の間のpHを有する水性炭酸カリウムと接触させ、それによって混合物から((1R,3R)−1−アミノ−3−フェニルシクロペンチル)メタノールを抽出するステップを含む方法(式中、
Rは、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリール、場合によって置換されているヘテロアリール、場合によって置換されているヘテロシクリル、場合によって置換されているアラルキル、場合によって置換されているヘテロアラルキル、場合によって置換されているシクロアルキルアルキル、または場合によって置換されているヘテロシクリルアルキルである。)。
【請求項20】
Rが場合によって置換されているアラルキルであり、有機溶媒が1,4−ジオキサンまたはジメトキシエタンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
式IA:
【化15】

の化合物の(R)−マンデル酸塩を調製する方法であって、
有機溶媒中において(R)−マンデル酸を式IAの化合物またはこの塩に添加し、それによって式IAの化合物の(R)−マンデル酸塩を形成するステップを含む方法(式中、
Rは、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリール、場合によって置換されているヘテロアリール、場合によって置換されているヘテロシクリル、場合によって置換されているアラルキル、場合によって置換されているヘテロアラルキル、場合によって置換されているシクロアルキルアルキル、または場合によって置換されているヘテロシクリルアルキルである。)。
【請求項22】
Rが場合によって置換されているアラルキルであり、有機溶媒が1,4−ジオキサンまたはジメトキシエタンである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
式IVA:
【化16】

の化合物またはこの塩を製造する方法であって、
上記で定義した通りの式IIIAの化合物またはこの塩、式V:
【化17】

の化合物、金属触媒および有機溶媒を混合するステップを含む方法(式中、
は、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているシクロアルキル、場合によって置換されているアリール、場合によって置換されているヘテロアリール、場合によって置換されているヘテロシクリル、場合によって置換されているアラルキル、場合によって置換されているヘテロアラルキル、場合によって置換されているシクロアルキルアルキル、または場合によって置換されているヘテロシクリルアルキルである。)。
【請求項24】
金属触媒がパラジウムを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
有機溶媒が1,4−ジオキサンまたはジメトキシエタンであり、Rがアルコキシ置換アルキルである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
式IIIA:
【化18】

の化合物またはこの塩を製造する方法であって、
式VIA:
【化19】

の化合物またはこの塩および還元剤を混合するステップを含む方法(式中、
Xは、ハロゲンまたはスルホネートであり、
は、アルキルである。)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−517445(P2012−517445A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549328(P2011−549328)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/023607
【国際公開番号】WO2010/093616
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】