S1P受容体アゴニスト/モジュレーターおよび免疫抑制剤の組み合わせ剤による、抗リンパ球抗体誘導
移植レシピエントの処置中のS1P受容体モジュレーター、1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体を組み合わせた免疫抑制性処置は、移植同種移植片の生存を延長する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に移植患者における処置中の、免疫抑制剤、S1P受容体モジュレーターおよび抗リンパ球抗体を組み合わせた免疫抑制性処置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の、例えば腎臓移植後の維持免疫抑制治療は、カルシニューリン阻害剤(シクロスポリンまたはタクロリムス)と、コルチコステロイド、アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸ナトリウムまたはマクロライド系免疫抑制剤(エベロリムス、シロリムス)を含む1種以上の免疫抑制剤を組み合わせる。これらの組み合わせは、急性拒絶事象の予防を最適化するため、そして副作用を最小にするかまたは避けるために開発されている。これらの努力は著しい進歩をもたらしているが、特に拒絶の割合および副作用に関する改善の必要性がまだ残っている。
【0003】
S1P受容体アゴニストと、抗リンパ球抗体処置を含む1種以上の免疫抑制剤の組み合わせは、さらに予期されない利点を提供する。特に、例えば腎臓または心臓移植後の、拒絶事象が、他の薬剤の投与量を最小限に維持しながら減少し、それにより改善された耐容性をもたらす。
【発明の開示】
【0004】
したがって、レシピエントにおける同種移植片拒絶反応を阻害する方法であって、治療的有効量のS1P受容体モジュレーターを1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体と組み合わせて、同時にまたは連続的に投与することを含む、方法が提供される。
好ましくは本発明の方法は、腎臓移植の処置に使用できる。
【0005】
S1P受容体モジュレーターまたはアゴニストは、1種以上のスフィンゴシン1−ホスフェート受容体、例えばS1P1からS1P5を標的とする化合物である。用語調節は、S1P受容体(複数もある)のアゴナイズまたは機能的拮抗を含むことを意図する。S1P受容体に結合するモジュレーターまたはアゴニストは、該受容体(複数もある)の、例えば活性化、内在化または脱感作をもたらす。これは、Gタンパク質を介したS1P受容体(複数もある)シグナル伝達の調節、異なるGタンパク質の会合または解離、Gタンパク質とS1P受容体(複数もある)の相互作用の変化、RGS(Gタンパク質シグナル伝達のレギュレーター)タンパク質によるGタンパク質の変化した制御、モジュレーターで満たされた受容体の増加したリン酸化、および/または下流シグナル伝達経路/キナーゼの活性化と関連し得る。
【0006】
S1P受容体アゴニストまたはモジュレーターの個々のヒトS1P受容体への結合親和性は、下記アッセイにより決定できる:
化合物のS1P受容体アゴニストまたはモジュレーター活性をヒトS1P受容体S1P1、S1P2、S1P3、S1P4およびS1P5で試験する。機能的受容体活性化を、適当なヒトS1P受容体を安定に発現するトランスフェクトしたCHOまたはRH7777細胞から調節した膜タンパク質への、化合物が誘導するGTP[γ−35S]結合の定量により評価する。使用するアッセイ技術は、SPA(シンチレーション近接に基づいたアッセイ)である。簡単に言うと、DMSOに溶解した化合物を連続希釈し、SPA−ビーズ(Amersham-Pharmacia)固定化S1P受容体発現膜タンパク質(10−20μg/ウェル)に、50mM Hepes、100mM NaCl、10mM MgCl2、10μM GDP、0.1%無脂肪BSAおよび0.2nM GTP[γ−35S](1200Ci/mmol)存在下で添加する。96ウェルマイクロタイタープレートでRTで120分インキュベーション後、結合していないGTP[γ−35S]を遠心分離工程により除去する。膜結合GTP[γ−35S]により惹起されたSPAビーズの発光を、TOPcount plate reader(Packard)で定量する。EC50を、標準曲線適合ソフトウェアを使用して計算する。このアッセイで、S1P受容体モジュレーターまたはアゴニストは、好ましくはS1P受容体に対して<50nMの結合親和性を有する。
【0007】
好ましいS1P受容体アゴニストまたはモジュレーターは、例えばそれらのS1P結合特性に加えて、また加速されたリンパ球帰巣特性を有する化合物、例えば全般的な免疫抑制を起こすことなく、循環から二次リンパ組織へのリンパ球の、好ましくは可逆性の再分布に由来するリンパ球減少症を惹起する化合物である。未処置細胞は隔離される;血液からのCD4およびCD8 T細胞およびB細胞は、リンパ節(LN)およびパイエル板(PP)への移動が刺激される。
【0008】
リンパ球帰巣特性は、下記血液リンパ球枯渇アッセイにより測定できる:
S1P受容体アゴニストまたはモジュレーターまたは媒体を、胃管栄養法によりラットに経口投与する。血液学的モニタリングのための尾血液を、個々の値の基準を得るために−1日目に、そして投与後2時間、6時間、24時間、48時間および72時間に採る。このアッセイで、S1P受容体アゴニストまたはモジュレーターは、末梢血リンパ球を、例えば<20mg/kgで投与したとき、例えば50%まで枯渇させる。
【0009】
適当なS1P受容体モジュレーターまたはアゴニストの例は、例えば:
−EP627406A1に記載の化合物、例えば式I
【化1】
〔式中、
R1は直線状または分枝した(C12−22)鎖であり
− これは、鎖中に二重結合、三重結合、O、S、NR6(ここで、R6はH、C1−4アルキル、アリール−C1−4アルキル、アシルまたは(C1−4アルコキシ)カルボニル、およびカルボニルである)から選択される結合またはヘテロ原子を有してよく、そして/または
− 置換基としてC1−4アルコキシ、C2−4アルケニルオキシ、C2−4アルキニルオキシ、アリールC1−4アルキル−オキシ、アシル、C1−4アルキルアミノ、C1−4アルキルチオ、アシルアミノ、(C1−4アルコキシ)カルボニル、(C1−4アルコキシ)−カルボニルアミノ、アシルオキシ、(C1−4アルキル)カルバモイル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシイミノ、ヒドロキシまたはカルボキシを有してよい;または
R1は
− フェニルアルキル(ここで、アルキルは直線状または分枝した(C6−20)炭素鎖である)であるか;または
− フェニルアルキル(ここで、アルキルは直線状または分枝した(C1−30)炭素鎖である)であり、該フェニルアルキルは
− 所望によりハロゲンで置換されていてよい直線状または分枝した(C6−20)炭素鎖、
− 所望によりハロゲンで置換されていてよい直線状または分枝した(C6−20)アルコキシ鎖、
− 直線状または分枝した(C6−20)アルケニルオキシ、
− フェニル−C1−14アルコキシ、ハロフェニル−C1−4アルコキシ、フェニル−C1−14アルコキシ−C1−14アルキル、フェノキシ−C1−4アルコキシまたはフェノキシ−C1−4アルキル、
− C6−20アルキルで置換されたシクロアルキルアルキル、
− C6−20アルキルで置換されたヘテロアリールアルキル、
− ヘテロ環式C6−20アルキルまたは
− C2−20アルキルで置換されたヘテロ環式アルキル
で置換されており、そして、
該アルキル部分は
− 炭素鎖中に、二重結合、三重結合、O、S、スルフィニル、スルホニルまたはNR6(ここで、R6は上記で定義の通りである)から選択される結合またはヘテロ原子を有してよく、そして
− 置換基としてC1−4アルコキシ、C2−4アルケニルオキシ、C2−4アルキニルオキシ、アリールC1−4アルキルオキシ、アシル、C1−4アルキル−アミノ、C1−4アルキルチオ、アシルアミノ、(C1−4アルコキシ)カルボニル、(C1−4アルコキシ)カルボニルアミノ、アシルオキシ、(C1−4アルキル)カルバモイル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシを有してよく、そして
R2、R3、R4およびR5の各々は、独立してH、C1−4アルキルまたはアシルである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;
【0010】
−EP1002792A1に記載の化合物、例えば式II
【化2】
〔式中、
mは1から9であり、そしてR'2、R'3、R'4およびR'5の各々は、独立してH、C1−6アルキルまたはアシルである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;
【0011】
−EP0778263A1に記載の化合物、例えば式III
【化3】
〔式中、
WはH;C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル;非置換またはOHで置換されたフェニルであり;R''4O(CH2)n;またはハロゲン、C3−8シクロアルキル、フェニルおよびOHで置換されたフェニルから成る群から選択される1個から3個の置換基で置換されたC1−6アルキルであり;XはHまたは、例えばC1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、オキソ、ハロC1−6アルキル、ハロゲン、非置換フェニルならびにC1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、ハロC1−6アルキルおよびハロゲンから成る群から選択される1個から3個の置換基で置換されたフェニルから成る群から選択される、pの炭素原子数を有する非置換もしくは置換された直鎖アルキルまたは(p−1)の炭素原子数を有する非置換もしくは置換された直鎖アルコキシであり;YはH、C1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、ハロC1−6アルキルまたはハロゲンであり、Z2は単結合またはqの炭素原子数を有する直鎖アルキレンであり、
pおよびqの各々は、独立して1から20の整数である。ただし6<p+q<23であり、m'は1、2または3であり、nは2または3であり、
R''1、R''2、R''3およびR''4の各々は、独立してH、C1−4アルキルまたはアシルである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;
【0012】
−WO02/18395に記載の化合物、例えば式IVaまたはIVb
【化4】
〔式中、
XaはO、S、NR1sまたは基−(CH2)na−であり、該基は、非置換であるか、または1個から4個のハロゲンで置換されており;naは1または2であり、R1sはHまたは(C1−4)アルキルであり、該アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換されており;R1aはH、OH、(C1−4)アルキルまたはO(C1−4)アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか、または1個から3個のハロゲンで置換された)であり;R1bはH、OHまたは(C1−4)アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換された)であり;各R2aは独立してHまたは(C1−4)アルキルから選択され、該アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換されており;R3aはH、OH、ハロゲンまたはO(C1−4)アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換された)であり;そしてR3bはH、OH、ハロゲン、(C1−4)アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか、またはヒドロキシで置換された)またはO(C1−4)アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換された)であり;Yaは−CH2−、−C(O)−、−CH(OH)−、−C(=NOH)−、OまたはSであり、そしてR4aは(C4−14)アルキルまたは(C4−14)アルケニルである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;
【0013】
−WO02/06268AIに記載の化合物、例えば式VII
【化5】
〔式中、
R1dおよびR2dは、独立してHまたはアミノ−保護基であり;
R3dは水素、ヒドロキシ−保護基または式
【化6】
の残基であり;
R4dはC1−4アルキルであり;
ndは1から6の整数であり;
Xdはエチレン、ビニレン、エチニレン、式−D−CH2−(ここで、Dはカルボニル、−CH(OH)−、O、SまたはNである)を有する基、アリールまたは下記に定義のグループaで置換されたアリールであり;
Ydは単結合、C1−10アルキレン、C1−10アルキレン(これは、グループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換された)、炭素鎖の真ん中もしくは末端にOもしくはSを有するC1−10アルキレンまたは炭素鎖の真ん中もしくは末端にOもしくはSを有するC1−10アルキレン(これは、グループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換された)であり;
R5dは水素、C3−6シクロアルキル、アリール、ヘテロ環式基、グループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換されたC3−6シクロアルキル、グループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換されたアリールまたはグループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換されたヘテロ環式基であり;
R6dおよびR7dの各々は、独立してHまたはグループaから選択される置換基であり;
R8dおよびR9dの各々は、Hまたは所望によりハロゲンで置換されたC1−4アルキルであり;
<グループa>はハロゲン、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、ヒドロキシ、低級脂肪族アシル、アミノ、モノ−低級アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノまたはニトロであり;そして
<グループb>はC3−6シクロアルキル、アリールまたはヘテロ環式基であり、各々所望によりグループaから選択される3個までの置換基で置換されていてよい;
ただしR5dが水素であるとき、Ydは単結合または直鎖状C1−10アルキレンの何れかである。〕
の化合物、またはそれらの薬理学的に許容される塩、エステルもしくは水和物;
【0014】
−日本特許願2002−316985に記載の化合物、例えば式VIII
【化7】
〔式中、
R1e、R2e、R3e、R4e、R5e、R6e、R7e、ne、XeおよびYeは特許願2002−316985に記載の通りである。〕
の化合物、またはその薬理学的に許容される塩、エステルもしくは水和物;
【0015】
−WO03/29184およびWO03/29205に記載の化合物、例えば式IX
【化8】
〔式中、
XfはO、S、SOまたはSO2であり、
R1fはハロゲン、トリハロメチル、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメトキシ、フェノキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、ピリジルメトキシ、シンナミルオキシ、ナフチルメトキシ、フェノキシメチル、CH2−OH、CH2−CH2−OH、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、ベンジルチオ、アセチル、ニトロまたはシアノ、またはフェニル、フェニルC1−4アルキルまたはフェニル−C1−4アルコキシ(これらの各フェニル基は所望によりハロゲン、CF3、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシで置換された)であり;
R2fはH、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルコキシ、C1−7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
R3fはH、ハロゲン、CF3、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、ベンジルオキシまたはC1−4アルコキシメチルであり;
R4fおよびR5fの各々は、Hまたは式
【化9】
の残基であり、
ここで、R8fおよびR9fの各々は、独立してHまたは所望によりハロゲンで置換されたC1−4アルキルであり;そして
nfは1から4の整数である;
例えば2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]エチル−1,3−プロパン−ジオール、2−アミノ−2−[4−(ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]エチル−1,3−プロパン−ジオール、2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールまたは2−アミノ−2−[4−(ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールである。〕
の化合物、またはその薬理学的塩、溶媒和物もしくは水和物;
【0016】
−WO03/062252A1に記載の化合物、例えば式X
【化10】
〔式中、
Arはフェニルまたはナフチルであり;mgおよびngの各々は独立して0または1であり;AはCOOH、PO3H2、PO2H、SO3H、PO(C1−3アルキル)OHおよび1H−テトラゾール−5−イルから選択され;R1gおよびR2gの各々は独立してH、ハロゲン、OH、COOHまたは所望によりハロゲンで置換されたC1−4アルキルであり;R3gはHまたは所望によりハロゲンもしくはOHで置換されたC1−4アルキルであり;各R4gは独立してハロゲン、または所望によりハロゲンで置換されたC1−4アルキルまたはC1−3アルコキシであり;そしてRgおよびMの各々は、WO03/062252A1においてそれぞれBおよびCとして示した意味の一つを有する。〕
の化合物、またはその薬理学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物;
【0017】
−WO03/062248A2に記載の化合物、例えば式XI
【化11】
〔式中、
Arはフェニルまたはナフチルであり;nは2、3または4であり;AはCOOH、1H−テトラゾール−5−イル、PO3H2、PO2H2、−SO3HまたはPO(R5h)OH(ここで、R5hはC1−4アルキル、ヒドロキシC1−4アルキル、フェニル、−CO−C1−3アルコキシおよび−CH(OH)−フェニルから選択され、該フェニルまたはフェニル部分は所望により置換されている)であり;R1hおよびR2hの各々は、独立してH、ハロゲン、OH、COOH、または所望によりハロゲノ置換されたC1−6アルキルまたはフェニルであり;R3hはHまたは所望によりハロゲンおよび/OHで置換されたC1−4アルキルであり;各R4hは、独立してハロゲノ、OH、COOH、C1−4アルキル、S(O)0、1または2C1−3アルキル、C1−3アルコキシ、C3−6シクロアルコキシ、アリールまたはアラルコキシ(ここで、アルキル部分は1−3個のハロゲンで置換されていてよい)であり;そしてRhおよびMの各々は、WO03/062248A2においてそれぞれBおよびCとして示した意味の一つを有する。〕
の化合物;
【0018】
−WO04/026817Aに記載の、例えば式XII
【化12】
〔式中、
R1jはハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキル−スルホニル、アラルキル、所望により置換されたフェノキシまたはアラルキルオキシであり、R2jはH、ハロゲン、トリハロ−メチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アラルキルまたはアラルキルオキシであり、R3jはH、ハロゲン、CF3、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオまたはベンジルオキシであり、R4jはH、C1−4アルキル、フェニル、所望により置換されたベンジルもしくはベンゾイル、または低級脂肪族C1−5アシルであり、R5jはH、モノハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシメチル、C1−4アルキル−チオメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、フェニル、アラルキル、C2−4アルケニルまたは−アルキニルであり、R6jおよびR7jの各々は、独立してHまたはC1−4アルキルであるか、またはR7jはまた式
【化13】
の残基であり、
ここで、R8jおよびR9jの各々は、独立してHまたは所望によりハロゲンで置換されたC1−4アルキルであり、
XjはO、S、SOまたはSO2であり、そしてnjは1から4の整数である、例えば2−アミノ−4−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]−2−メチルブタン−1−オールまたは2−アミノ−4−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]−2−エチルブタン−1−オールである。〕
の化合物;
【0019】
−WO04/103306A、WO05/000833、WO05/103309またはWO05/113330に記載の化合物、例えば式XIIIaまたはXIIIb
【化14】
〔式中、
AkはCOOR5k、OPO(OR5k)2、PO(OR5k)2、SO2OR5k、POR5kOR5kまたは1H−テトラゾール−5−イルであり、R5kはHまたはC1−6アルキルであり;
Wkは結合、C1−3アルキレンまたはC2−3アルケニレンであり;
Ykは、所望によりハロゲン、OH、NO2、C1−6アルキル、C1−6アルコキシで置換されたC6−10アリールまたはC3−9ヘテロアリール;ハロ置換C1−6アルキルおよびハロ置換C1−6アルコキシであり;
ZkはWO04/103306Aに示す通りのヘテロ環式基、例えばアゼチジンであり;
R1kは、所望によりC1−6アルキル、C6−10アリール、C6−10アリールC1−4アルキル、C3−9ヘテロアリール、C3−9ヘテロアリールC1−4アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルキルC1−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキルまたはC3−8ヘテロシクロアルキルC1−4アルキルで置換されたC6−10アリールまたはC3−9ヘテロアリールであり;ここで、R1kの任意のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシおよびハロ置換C1−6アルキルまたは−C1−6アルコキシから選択される1個から5個の基で置換されていてよく;
R2kはH、C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであり:そして
R3kまたはR4kの各々は独立してH、ハロゲン、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはハロ置換C1−6アルキルまたはC1−6アルコキシである。〕
の化合物、そのN−オキシド誘導体またはそのプロドラッグ、またはそれらの薬理学的に許容される塩、溶媒和物または水和物。
【0020】
本発明のさらなる態様によって、本発明において使用するS1P受容体アゴニストまたはモジュレーターはまた選択的S1P1受容体、例えば35S−GTPγS結合アッセイにおいて評価したS1P1受容体のEC50とS1P3受容体のEC50の比率により測定して、S1P3受容体よりも少なくとも20倍、例えば100、500、1000または2000倍S1P1受容体に選択性を有する化合物であってよく、該化合物は、35S−GTPγS結合アッセイにより評価して、100nM未満のS1P1受容体の結合に対するEC5を有する。代表的S1P1受容体アゴニストまたはモジュレーターは、例えば、その内容を引用により包含させるWO03/061567に記載の化合物、例えば式XIVまたはXV
【化15】
の化合物である。
【0021】
式IからXVの化合物が、1個以上の不斉中心を有するとき、本発明は種々の光学異性体、ならびにラセミ体、ジアステレオ異性体およびそれらの混合物を包含すると理解される。式IIIまたはIVbの化合物は、アミノ基を担持する炭素原子が不斉であるとき、好ましくはこの炭素原子でR−立体配置である。
【0022】
式IからXVの化合物は遊離または塩形で存在できる。式IからXIIIの化合物の薬学的に許容される塩の例は、無機酸との塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩および硫酸塩、有機酸との塩、例えば酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、メタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸塩、または、適当であるとき、金属、例えばナトリウム、カリウム、カルシウムおよびアルミニウムとの塩、アミン、例えばトリエチルアミンとの塩および2塩基性アミノ酸、例えばリシンとの塩を含む。本発明の組み合わせの化合物および塩は、水和物および溶媒和物形を含む。
【0023】
上記のアシルは、残基Ry−CO−(式中、RyはC1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、フェニルまたはフェニル−C1−4アルキルである)であり得る。特記しない限り、アルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルキニルは直鎖または分枝鎖であり得る。
【0024】
式Iの化合物においてR1としての炭素鎖が置換されているとき、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されているのが好ましい。炭素鎖が所望により置換されたフェニレンで中断されているとき、該炭素鎖は好ましくは非置換である。フェニレン部分が置換されているとき、ハロゲン、ニトロ、アミノ、メトキシ、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されているのが好ましい。
【0025】
好ましい式Iの化合物は、R1が所望によりニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されたC13−20アルキルであるもの、およびより好ましくはR1が所望によりハロゲンで置換されたC6−14−アルキル鎖により置換されたフェニルアルキルであり、該アルキル部分が、所望によりヒドロキシで置換されたC1−6アルキルであるものである。より好ましくは、R1がフェニルを直線状または分枝した、好ましくは直線状C6−14アルキル鎖で置換されたフェニル−C1−6アルキルである。C6−14アルキル鎖はオルト、メタまたはパラ、好ましくはパラに存在し得る。
好ましくはR2からR5の各々はHである。
【0026】
好ましい式Iの化合物は2−アミノ−2−テトラデシル−1,3−プロパンジオールである。特に好ましい式IのS1P受容体モジュレーターはFTY720、すなわち遊離形または薬学的に許容される塩形の、例えば:
【化16】
に示す通りの塩酸塩の2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール(以後化合物Aと呼ぶ)である。
【0027】
好ましい式IIの化合物は、R'2からR'5の各々がHであり、そしてmが4であるもの、すなわち遊離形または薬学的に許容される塩形、例えば塩酸塩の2−アミノ−2−{2−[4−(1−オキソ−5−フェニルペンチル)フェニル]エチル}プロパン−1,3−ジオール(以後化合物Bと呼ぶ)である。
【0028】
好ましい式IIIの化合物は、WがCH3であり、R''1からR''3の各々がHであり、Z2がエチレンであり、Xがヘプチルオキシであり、そしてYがHであるもの、すなわち遊離形または薬学的に許容される塩形、例えば塩酸塩の2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチル−ブタノール(以後化合物Cと呼ぶ)である。R−エナンチオマーが特に好ましい。
【0029】
好ましい式IVaの化合物は、FTY720−ホスフェート(R2aがHであり、R3aがOHであり、XaがOであり、R1aおよびR1bがOHである)である。好ましい式IVbの化合物は、化合物C−ホスフェート(R2aがHであり、R3bがOHであり、XaがOであり、R1aおよびR1bがOHであり、YaがOであり、そしてR4aがヘプチルである)である。
【0030】
好ましい式VIIIの化合物は(2R)−2−アミノ−4−[3−(4−シクロヘキシルオキシブチル)−ベンゾ[b]チエン−6−イル]−2−メチルブタン−1−オールである。
好ましい式IXの化合物は、XfがSまたはOであり、R1fがベンジルオキシであり、R2f、R4fおよびR5fjが各々Hであり、R3fがClであり、そしてnfが2である化合物である。
【0031】
好ましい式XIIの化合物は、XjがSまたはOであり、R1jがベンジルオキシであり、R2j、R4j、R6jおよびR7jが各々Hであり、R3jがClであり、R5jがヒドロキシエチルまたはヒドロキシプロピルであり、そしてnjが2である化合物である。
好ましい式XIIIaの化合物は、例えば1−{4−[1−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ)−エチル]−2−エチル−ベンジル}−アゼチジン−3−カルボン酸、またはそのプロドラッグである。
【0032】
S1P受容体モジュレーターまたはアゴニストと組み合わせる1個または複数の免疫抑制剤は、例えばカルシニューリン阻害剤、mTOR阻害剤、ミコフェノール酸、その塩またはプロドラッグ、例えばミコフェノール酸ナトリウムまたはミコフェノール酸モフェチル、またはステロイド、例えばプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメサゾン、トリアムシノロンアセトニド(triamcinalone acetinide)などである。
【0033】
ここで使用する用語“カルシニューリン阻害剤”は、例えばシクロスポリン、例えばシクロスポリンまたはISA tx 247またはFK506(タクロリムス)を含む。
【0034】
ここで使用する用語“mTOR阻害剤”は、ラパマイシンまたは同じ作用機序(例えば、mTOR活性の阻害)を有すると考えられ、そして免疫抑制性特性を有するその誘導体を含む。適当なラパマイシン誘導体は、例えば式A
【化17】
〔式中、
R1aaはCH3またはC3−6アルキニルであり、
R2aaはHまたは−CH2−CH2−OH、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチル−プロパノイルまたはテトラゾリルであり、そして
Xaaは=O、(H,H)または(H,OH)である。
但しXaaが=Oであり、そしてR1aaがCH3であるとき、R2aaはH以外である。〕
の化合物、またはR2aaが−CH2−CH2−OHであるとき、そのプロドラッグ、例えば生理学的に加水分解可能なそのエーテル、例えばR2aaが−CH2−CH2−O−Alk(Alkは、所望により鎖を1個または2個の酸素原子で中断されているC1−9アルキルである)である化合物を含む。
【0035】
式Aの化合物は、例えば引用により本明細書に包含させるWO94/09010、WO95/16691、WO96/41807、USP5,362,718またはWO99/15530に記載されている。それらはこれらの引用文献に記載の通りにまたは記載の方法に準じて製造できる。
【0036】
好ましいラパマイシン誘導体は、32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−ラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンおよび、より好ましくは、40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシンである。ラパマイシン誘導体のさらなる例は、例えばUSP5,362,718に記載のCCI779または40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパノエート]−ラパマイシンまたはその薬学的に許容される塩、例えばWO99/15530に記載のABT578または40−(テトラゾリル)−ラパマイシン、特に40−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシンを含む。ラパマイシン誘導体はまた、例えばWO98/02441、WO01/14387およびWO03/64383に記載の通りのいわゆるラパログ、例えばAP23573、AP23464、AP23675またはAP23841を含み得る。ラパマイシン誘導体のさらなる例は、TAFA−93、バイオリムス−7またはバイオリムス−9の名の下に開示されているものである。
【0037】
本発明によって、抗リンパ球抗体を、移植片許容を高めるための免疫応答の変更を誘発するために、移植レシピエントの免疫抑制性処置の種々の時点で、例えば移植後数週間後、数ヶ月後または数年後でさえ、および/または移植前および/または移植直後に投与できる。抗リンパ球抗体は、例えばポリクローナル抗体、例えば抗リンパ球グロブリン、抗胸腺細胞グロブリン(“ATG”)、例えばウサギまたはウマ由来の何れか、ATGAM(登録商標)およびThymoglobulin(登録商標);白血球受容体、例えばCD2、CD3、CD4、CD7、CD25、CD27、CD28、CD40、CD45、CD80、CD86、ICOS、OXA40に対する、またはそれらのリガンド、例えばCD154に対する、例えばキメラ、ヒト化またはヒトの抗体のようなモノクローナル抗体調製物、例えばOKT3、ムロモナブ−CD3、バシリキシマブ(Simulect(登録商標);Novartis AG, CH)およびダクリズマブ(Zenapax(登録商標);Roche AG, CH);またはCTLA4の細胞外ドメインの少なくとも一部またはその変異体、例えば非CTLA4タンパク質配列に結合した少なくともCTLA4の細胞外部分またはその変異体を有する組み換え結合分子、例えばCTLA4−Ig(例えば命名ATCC68629)またはその変異体、例えばLEA29Y(ベラタセプト)を含む。特に好ましいモノクローナル抗体は、キメラ(例えば、その内容を引用により本明細書に包含させるEP449769に詳しく記載された通りの)またはヒト化(例えば、その内容を引用により本明細書に包含させるWO90/07861に詳しく記載された通りの)何れかの抗CD25である。
【0038】
一連のさらに具体的なまたは別の態様において、本発明はまた下記を提供する:
1.1. レシピエントにおける同種移植片拒絶反応を阻害する方法であって、治療的有効量のS1P受容体モジュレーターを1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体と組み合わせて、例えば同時にまたは連続的に該レシピエントに投与することを含む方法。
【0039】
好ましくは本方法は固形臓器移植片レシピエントにおける臓器移植拒絶反応の予防または処置に使用する。好ましいS1P受容体モジュレーターは、化合物A、BまたはC、(2R)−2−アミノ−4−[3−(4−シクロヘキシルオキシブチル)−ベンゾ[b]チエン−6−イル]−2−メチルブタン−1−オール、またはXfがSまたはOであり、R1fがベンジルオキシであり、R2f、R4fおよびR5fjが各々Hであり、R3fがClであり、そしてnfが2である式IXの化合物、または式XIIIaの化合物である。
【0040】
本発明の方法に使用するための好ましい免疫抑制剤は、例えば
− 所望によりステロイド、例えばコルチコステロイド、例えばプレドニゾンと組み合わせたカルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリンまたはFK506;または
− 所望によりステロイド、例えばコルチコステロイド、例えばプレドニゾンと組み合わせたmTOR阻害剤、例えばエベロリムスまたはシロリムス;または
− 所望によりカルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリンまたはFK506、およびステロイド、例えばコルチコステロイド、例えばプレドニゾンと組み合わせたmTOR阻害剤、例えばエベロリムスまたはシロリムス;または
− 所望によりカルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリンまたはFK506、およびステロイド、例えばコルチコステロイド、例えばプレドニゾンと組み合わせたミコフェノール酸、またはその塩またはプロドラッグ;または
− 所望によりステロイド、例えばコルチコステロイド、例えばプレドニゾンと組み合わせた、ミコフェノール酸、またはその塩またはプロドラッグである。
【0041】
1.2 レシピエントにおける同種移植片拒絶反応を阻害する方法であって、治療的有効量のS1P受容体モジュレーターを1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体と組み合わせて、同時にまたは連続的に該レシピエントに投与することを含む(ここで、該抗リンパ球抗体を移植前および/または移植直後に投与する)、方法。
【0042】
抗リンパ球抗体は、いわゆる導入処置として、すなわち移植の非常に初期の相に、例えば移植直前および移植後3ヶ月までに1回または複数回投与するための短期処置として投与できる。好ましいS1P受容体アゴニストまたはモジュレーターおよび好ましい免疫抑制剤は、例えば上記の通りである。
【0043】
1.3. レシピエントにおける同種移植片拒絶反応を阻害する方法であって、治療的有効量のS1P受容体モジュレーターを、少なくとも移植の直前の抗CD25化合物またはCTLA4の細胞外ドメインの少なくとも一部またはその変異体を有する組み換え結合分子の投与を含む抗リンパ球抗体誘導と組み合わせた1種以上の免疫抑制剤と組み合わせて同時にまたは連続的に該レシピエントに投与することを含む、方法。
【0044】
2. 上記1.1から1.3の何れかに定義の通りの何れかの方法、例えばレシピエントにおける同種移植片拒絶反応の阻害において使用するための薬剤の製造における、1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体と組み合わせた(ここで、該薬剤を同時にまたは連続的に投与する)、S1P受容体モジュレーターの使用。
【0045】
3. 上記1.1から1.3の何れかに定義の通りの、例えば同種移植片移植レシピエントの処置において使用するための、S1P受容体モジュレーター、1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体を含む、組み合わせ、例えばキット。
【0046】
本発明の方法は、例えば固形臓器移植、例えば腎臓、心臓、肺または肝臓移植、好ましくは腎臓移植において指示される。
【0047】
本発明の方法において用いる各組み合わせパートナーの有効量は、用いる具体的な化合物または医薬組成物、投与形態、処置する状態の重症度に依存して変化し得る。通常の技術の医師または臨床医は、必要な単一活性成分の有効量を容易に決定し、処方できる。
【0048】
S1P受容体モジュレーターの1非投与量は、0.5から15mgで変化し得る。好ましい投与量は、移植直前の日を含み、1から15mg/日、より好ましくは2から5mg/日 p.o.である。より好ましくはS1P受容体モジュレーターを移植直前の日に5mgの用量で、その後2.5mg/日の用量で経口投与する。
【0049】
Cysの用量は移植後の日数に依存して、および血中濃度のモニタリングをするかしないかに依存して、0.5−10mg/kg/日 p.o.であり得る。
FK506の用量は0.05から0.2mg/kg/日 p.o.であり得る。
【0050】
抗体がバシリキシマブまたはダクリズマブであるとき、それは約2mg/kgの1回量で、または約1mg/kgの用量で4回、例えば移植前に2mg/kg、その後4回2週間間隔で1mg/kg投与し得る。Thymoglobulinまたはリンホグロブリンは1−3mg/kgの用量で投与し得る。抗リンパ球抗体の投与量は、週または月基準で、例えば必要に応じて、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間または8週間間隔で、定期的または不定期であり得る。LEA29Yは一定間隔で種々の投与量で、例えば移植前には10mg/kg、5日目および3ヶ月まで2週間毎、そしてその後毎月、例えば7ヶ月目に5mg/kgまで減らす用量で投与できる。
【0051】
mTor阻害剤は約0.5から30mgの1日量で、所望により分割して投与できる。ミコフェノール酸、その塩またはプロドラッグは、約150mgから3gの1日量で、所望により分割した形で投与できる。
【0052】
上記に具体的に示した疾患および状態の導入のためのS1P受容体モジュレーター、免疫抑制剤および抗体の組み合わせの有用性は、標準的な動物または臨床試験で、例えば、下記の方法に従って証明できる。
【実施例】
【0053】
治験:
患者を2処置群の一つに無作為化する:
グループ1:FTY720 5mg*、その後2.5mg QD + 所望の血中レベルを達成するために調節した8−10mg/kg/日のシクロスポリンA + コルチコステロイド**
グループ2:FTY720 5mg*、その後5mg QD + 所望の血中レベルを達成するために調節した3−4mg/kg/日のシクロスポリンA + コルチコステロイド**
* 最初のFTY720を、腎臓同種移植片血行再建術の2から12時間前に与える。0日目を治験薬の最初の用量の投与日と定義する。
** 上記処置レジメンの一つに加えて、全患者は、移植前に抗体導入(抗CD25)を、例えば2mg/kgで受ける。患者は、さらに2週間間隔で抗CD25 1mg/kgを4回受け得る。
【0054】
【表1】
【表2】
【0055】
FTY720での維持処置を、0日目または1日目、最初の投与後12および24時間の間に行う移植片血行再建術の後に開始する。
グループ1に無作為化された患者は、目標の血中濃度を達成するように調節されたシクロスポリンA 8−10mg/kg/日の2分割量の投与を始め、グループ2に無作為化された患者は、目標の血中濃度を達成するように調節されたシクロスポリンA 3−4mg/kg/日の投与を始める。
【0056】
12ヶ月の処置基期間中、患者は0日目、1日目、3日目、5日目、7日目(または7日目より前ならば退院した日)、14および28日目、および2ヶ月目、3ヶ月目、6ヶ月目、9ヶ月目および12ヶ月目に来院する。
中間安全性解析を、全患者が3ヶ月の処置を終了したときに行う。安全性および効果の最終解析を、全患者が12ヶ月の試験を終了したときに行う。
【0057】
重要な安全性評価:
有害事象/重篤な有害事象
感染/重篤な感染
有害事象(感染を含む)または検査値異常による治験薬投薬の中断
他の評価:
急性拒絶を証明する処置生検の事象
移植片損失の事象
死亡の事象
悪性腫瘍の事象
HCVウイルス負荷
BKポリオーマウイルス負荷
【0058】
試験の投与レジメンは、標準の免疫抑制レジメンと比較して有利な効果を有する。レジメンに依存して、薬剤レベルのモニタリングの必要性が低下し、固定された投与量での処置が可能となり得る。
【0059】
上記の臨床試験を、例えばグループ2で、異なる1日量のシクロスポリンAを用いて、例えば3−6mg/kgを2回に分けて投与して繰り返し得る。
【0060】
上記の臨床試験を、異なるS1P受容体アゴニストまたはモジュレーター、例えば式IXの化合物または式XIIIaの化合物を使用して繰り返し得る。
上記の臨床試験を、シクロスポリンAの代わりにエベロリムスを使用して繰り返し得る。
上記の臨床試験を、抗CD25の代わりにLEA29Yを使用して繰り返し得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に移植患者における処置中の、免疫抑制剤、S1P受容体モジュレーターおよび抗リンパ球抗体を組み合わせた免疫抑制性処置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の、例えば腎臓移植後の維持免疫抑制治療は、カルシニューリン阻害剤(シクロスポリンまたはタクロリムス)と、コルチコステロイド、アザチオプリン(AZA)、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸ナトリウムまたはマクロライド系免疫抑制剤(エベロリムス、シロリムス)を含む1種以上の免疫抑制剤を組み合わせる。これらの組み合わせは、急性拒絶事象の予防を最適化するため、そして副作用を最小にするかまたは避けるために開発されている。これらの努力は著しい進歩をもたらしているが、特に拒絶の割合および副作用に関する改善の必要性がまだ残っている。
【0003】
S1P受容体アゴニストと、抗リンパ球抗体処置を含む1種以上の免疫抑制剤の組み合わせは、さらに予期されない利点を提供する。特に、例えば腎臓または心臓移植後の、拒絶事象が、他の薬剤の投与量を最小限に維持しながら減少し、それにより改善された耐容性をもたらす。
【発明の開示】
【0004】
したがって、レシピエントにおける同種移植片拒絶反応を阻害する方法であって、治療的有効量のS1P受容体モジュレーターを1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体と組み合わせて、同時にまたは連続的に投与することを含む、方法が提供される。
好ましくは本発明の方法は、腎臓移植の処置に使用できる。
【0005】
S1P受容体モジュレーターまたはアゴニストは、1種以上のスフィンゴシン1−ホスフェート受容体、例えばS1P1からS1P5を標的とする化合物である。用語調節は、S1P受容体(複数もある)のアゴナイズまたは機能的拮抗を含むことを意図する。S1P受容体に結合するモジュレーターまたはアゴニストは、該受容体(複数もある)の、例えば活性化、内在化または脱感作をもたらす。これは、Gタンパク質を介したS1P受容体(複数もある)シグナル伝達の調節、異なるGタンパク質の会合または解離、Gタンパク質とS1P受容体(複数もある)の相互作用の変化、RGS(Gタンパク質シグナル伝達のレギュレーター)タンパク質によるGタンパク質の変化した制御、モジュレーターで満たされた受容体の増加したリン酸化、および/または下流シグナル伝達経路/キナーゼの活性化と関連し得る。
【0006】
S1P受容体アゴニストまたはモジュレーターの個々のヒトS1P受容体への結合親和性は、下記アッセイにより決定できる:
化合物のS1P受容体アゴニストまたはモジュレーター活性をヒトS1P受容体S1P1、S1P2、S1P3、S1P4およびS1P5で試験する。機能的受容体活性化を、適当なヒトS1P受容体を安定に発現するトランスフェクトしたCHOまたはRH7777細胞から調節した膜タンパク質への、化合物が誘導するGTP[γ−35S]結合の定量により評価する。使用するアッセイ技術は、SPA(シンチレーション近接に基づいたアッセイ)である。簡単に言うと、DMSOに溶解した化合物を連続希釈し、SPA−ビーズ(Amersham-Pharmacia)固定化S1P受容体発現膜タンパク質(10−20μg/ウェル)に、50mM Hepes、100mM NaCl、10mM MgCl2、10μM GDP、0.1%無脂肪BSAおよび0.2nM GTP[γ−35S](1200Ci/mmol)存在下で添加する。96ウェルマイクロタイタープレートでRTで120分インキュベーション後、結合していないGTP[γ−35S]を遠心分離工程により除去する。膜結合GTP[γ−35S]により惹起されたSPAビーズの発光を、TOPcount plate reader(Packard)で定量する。EC50を、標準曲線適合ソフトウェアを使用して計算する。このアッセイで、S1P受容体モジュレーターまたはアゴニストは、好ましくはS1P受容体に対して<50nMの結合親和性を有する。
【0007】
好ましいS1P受容体アゴニストまたはモジュレーターは、例えばそれらのS1P結合特性に加えて、また加速されたリンパ球帰巣特性を有する化合物、例えば全般的な免疫抑制を起こすことなく、循環から二次リンパ組織へのリンパ球の、好ましくは可逆性の再分布に由来するリンパ球減少症を惹起する化合物である。未処置細胞は隔離される;血液からのCD4およびCD8 T細胞およびB細胞は、リンパ節(LN)およびパイエル板(PP)への移動が刺激される。
【0008】
リンパ球帰巣特性は、下記血液リンパ球枯渇アッセイにより測定できる:
S1P受容体アゴニストまたはモジュレーターまたは媒体を、胃管栄養法によりラットに経口投与する。血液学的モニタリングのための尾血液を、個々の値の基準を得るために−1日目に、そして投与後2時間、6時間、24時間、48時間および72時間に採る。このアッセイで、S1P受容体アゴニストまたはモジュレーターは、末梢血リンパ球を、例えば<20mg/kgで投与したとき、例えば50%まで枯渇させる。
【0009】
適当なS1P受容体モジュレーターまたはアゴニストの例は、例えば:
−EP627406A1に記載の化合物、例えば式I
【化1】
〔式中、
R1は直線状または分枝した(C12−22)鎖であり
− これは、鎖中に二重結合、三重結合、O、S、NR6(ここで、R6はH、C1−4アルキル、アリール−C1−4アルキル、アシルまたは(C1−4アルコキシ)カルボニル、およびカルボニルである)から選択される結合またはヘテロ原子を有してよく、そして/または
− 置換基としてC1−4アルコキシ、C2−4アルケニルオキシ、C2−4アルキニルオキシ、アリールC1−4アルキル−オキシ、アシル、C1−4アルキルアミノ、C1−4アルキルチオ、アシルアミノ、(C1−4アルコキシ)カルボニル、(C1−4アルコキシ)−カルボニルアミノ、アシルオキシ、(C1−4アルキル)カルバモイル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシイミノ、ヒドロキシまたはカルボキシを有してよい;または
R1は
− フェニルアルキル(ここで、アルキルは直線状または分枝した(C6−20)炭素鎖である)であるか;または
− フェニルアルキル(ここで、アルキルは直線状または分枝した(C1−30)炭素鎖である)であり、該フェニルアルキルは
− 所望によりハロゲンで置換されていてよい直線状または分枝した(C6−20)炭素鎖、
− 所望によりハロゲンで置換されていてよい直線状または分枝した(C6−20)アルコキシ鎖、
− 直線状または分枝した(C6−20)アルケニルオキシ、
− フェニル−C1−14アルコキシ、ハロフェニル−C1−4アルコキシ、フェニル−C1−14アルコキシ−C1−14アルキル、フェノキシ−C1−4アルコキシまたはフェノキシ−C1−4アルキル、
− C6−20アルキルで置換されたシクロアルキルアルキル、
− C6−20アルキルで置換されたヘテロアリールアルキル、
− ヘテロ環式C6−20アルキルまたは
− C2−20アルキルで置換されたヘテロ環式アルキル
で置換されており、そして、
該アルキル部分は
− 炭素鎖中に、二重結合、三重結合、O、S、スルフィニル、スルホニルまたはNR6(ここで、R6は上記で定義の通りである)から選択される結合またはヘテロ原子を有してよく、そして
− 置換基としてC1−4アルコキシ、C2−4アルケニルオキシ、C2−4アルキニルオキシ、アリールC1−4アルキルオキシ、アシル、C1−4アルキル−アミノ、C1−4アルキルチオ、アシルアミノ、(C1−4アルコキシ)カルボニル、(C1−4アルコキシ)カルボニルアミノ、アシルオキシ、(C1−4アルキル)カルバモイル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシを有してよく、そして
R2、R3、R4およびR5の各々は、独立してH、C1−4アルキルまたはアシルである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;
【0010】
−EP1002792A1に記載の化合物、例えば式II
【化2】
〔式中、
mは1から9であり、そしてR'2、R'3、R'4およびR'5の各々は、独立してH、C1−6アルキルまたはアシルである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;
【0011】
−EP0778263A1に記載の化合物、例えば式III
【化3】
〔式中、
WはH;C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニル;非置換またはOHで置換されたフェニルであり;R''4O(CH2)n;またはハロゲン、C3−8シクロアルキル、フェニルおよびOHで置換されたフェニルから成る群から選択される1個から3個の置換基で置換されたC1−6アルキルであり;XはHまたは、例えばC1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、オキソ、ハロC1−6アルキル、ハロゲン、非置換フェニルならびにC1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、ハロC1−6アルキルおよびハロゲンから成る群から選択される1個から3個の置換基で置換されたフェニルから成る群から選択される、pの炭素原子数を有する非置換もしくは置換された直鎖アルキルまたは(p−1)の炭素原子数を有する非置換もしくは置換された直鎖アルコキシであり;YはH、C1−6アルキル、OH、C1−6アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アミノ、C1−6アルキルアミノ、アシルアミノ、ハロC1−6アルキルまたはハロゲンであり、Z2は単結合またはqの炭素原子数を有する直鎖アルキレンであり、
pおよびqの各々は、独立して1から20の整数である。ただし6<p+q<23であり、m'は1、2または3であり、nは2または3であり、
R''1、R''2、R''3およびR''4の各々は、独立してH、C1−4アルキルまたはアシルである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;
【0012】
−WO02/18395に記載の化合物、例えば式IVaまたはIVb
【化4】
〔式中、
XaはO、S、NR1sまたは基−(CH2)na−であり、該基は、非置換であるか、または1個から4個のハロゲンで置換されており;naは1または2であり、R1sはHまたは(C1−4)アルキルであり、該アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換されており;R1aはH、OH、(C1−4)アルキルまたはO(C1−4)アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか、または1個から3個のハロゲンで置換された)であり;R1bはH、OHまたは(C1−4)アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換された)であり;各R2aは独立してHまたは(C1−4)アルキルから選択され、該アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換されており;R3aはH、OH、ハロゲンまたはO(C1−4)アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換された)であり;そしてR3bはH、OH、ハロゲン、(C1−4)アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか、またはヒドロキシで置換された)またはO(C1−4)アルキル(ここで、アルキルは非置換であるか、またはハロゲンで置換された)であり;Yaは−CH2−、−C(O)−、−CH(OH)−、−C(=NOH)−、OまたはSであり、そしてR4aは(C4−14)アルキルまたは(C4−14)アルケニルである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物;
【0013】
−WO02/06268AIに記載の化合物、例えば式VII
【化5】
〔式中、
R1dおよびR2dは、独立してHまたはアミノ−保護基であり;
R3dは水素、ヒドロキシ−保護基または式
【化6】
の残基であり;
R4dはC1−4アルキルであり;
ndは1から6の整数であり;
Xdはエチレン、ビニレン、エチニレン、式−D−CH2−(ここで、Dはカルボニル、−CH(OH)−、O、SまたはNである)を有する基、アリールまたは下記に定義のグループaで置換されたアリールであり;
Ydは単結合、C1−10アルキレン、C1−10アルキレン(これは、グループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換された)、炭素鎖の真ん中もしくは末端にOもしくはSを有するC1−10アルキレンまたは炭素鎖の真ん中もしくは末端にOもしくはSを有するC1−10アルキレン(これは、グループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換された)であり;
R5dは水素、C3−6シクロアルキル、アリール、ヘテロ環式基、グループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換されたC3−6シクロアルキル、グループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換されたアリールまたはグループaおよびbから選択される3個までの置換基で置換されたヘテロ環式基であり;
R6dおよびR7dの各々は、独立してHまたはグループaから選択される置換基であり;
R8dおよびR9dの各々は、Hまたは所望によりハロゲンで置換されたC1−4アルキルであり;
<グループa>はハロゲン、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、ヒドロキシ、低級脂肪族アシル、アミノ、モノ−低級アルキルアミノ、ジ−C1−4アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノまたはニトロであり;そして
<グループb>はC3−6シクロアルキル、アリールまたはヘテロ環式基であり、各々所望によりグループaから選択される3個までの置換基で置換されていてよい;
ただしR5dが水素であるとき、Ydは単結合または直鎖状C1−10アルキレンの何れかである。〕
の化合物、またはそれらの薬理学的に許容される塩、エステルもしくは水和物;
【0014】
−日本特許願2002−316985に記載の化合物、例えば式VIII
【化7】
〔式中、
R1e、R2e、R3e、R4e、R5e、R6e、R7e、ne、XeおよびYeは特許願2002−316985に記載の通りである。〕
の化合物、またはその薬理学的に許容される塩、エステルもしくは水和物;
【0015】
−WO03/29184およびWO03/29205に記載の化合物、例えば式IX
【化8】
〔式中、
XfはO、S、SOまたはSO2であり、
R1fはハロゲン、トリハロメチル、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、トリフルオロメトキシ、フェノキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、ピリジルメトキシ、シンナミルオキシ、ナフチルメトキシ、フェノキシメチル、CH2−OH、CH2−CH2−OH、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルスルホニル、ベンジルチオ、アセチル、ニトロまたはシアノ、またはフェニル、フェニルC1−4アルキルまたはフェニル−C1−4アルコキシ(これらの各フェニル基は所望によりハロゲン、CF3、C1−4アルキルまたはC1−4アルコキシで置換された)であり;
R2fはH、ハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルコキシ、C1−7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり;
R3fはH、ハロゲン、CF3、OH、C1−7アルキル、C1−4アルコキシ、ベンジルオキシまたはC1−4アルコキシメチルであり;
R4fおよびR5fの各々は、Hまたは式
【化9】
の残基であり、
ここで、R8fおよびR9fの各々は、独立してHまたは所望によりハロゲンで置換されたC1−4アルキルであり;そして
nfは1から4の整数である;
例えば2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]エチル−1,3−プロパン−ジオール、2−アミノ−2−[4−(ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]エチル−1,3−プロパン−ジオール、2−アミノ−2−[4−(3−ベンジルオキシフェノキシ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールまたは2−アミノ−2−[4−(ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]プロピル−1,3−プロパン−ジオールである。〕
の化合物、またはその薬理学的塩、溶媒和物もしくは水和物;
【0016】
−WO03/062252A1に記載の化合物、例えば式X
【化10】
〔式中、
Arはフェニルまたはナフチルであり;mgおよびngの各々は独立して0または1であり;AはCOOH、PO3H2、PO2H、SO3H、PO(C1−3アルキル)OHおよび1H−テトラゾール−5−イルから選択され;R1gおよびR2gの各々は独立してH、ハロゲン、OH、COOHまたは所望によりハロゲンで置換されたC1−4アルキルであり;R3gはHまたは所望によりハロゲンもしくはOHで置換されたC1−4アルキルであり;各R4gは独立してハロゲン、または所望によりハロゲンで置換されたC1−4アルキルまたはC1−3アルコキシであり;そしてRgおよびMの各々は、WO03/062252A1においてそれぞれBおよびCとして示した意味の一つを有する。〕
の化合物、またはその薬理学的に許容される塩、溶媒和物もしくは水和物;
【0017】
−WO03/062248A2に記載の化合物、例えば式XI
【化11】
〔式中、
Arはフェニルまたはナフチルであり;nは2、3または4であり;AはCOOH、1H−テトラゾール−5−イル、PO3H2、PO2H2、−SO3HまたはPO(R5h)OH(ここで、R5hはC1−4アルキル、ヒドロキシC1−4アルキル、フェニル、−CO−C1−3アルコキシおよび−CH(OH)−フェニルから選択され、該フェニルまたはフェニル部分は所望により置換されている)であり;R1hおよびR2hの各々は、独立してH、ハロゲン、OH、COOH、または所望によりハロゲノ置換されたC1−6アルキルまたはフェニルであり;R3hはHまたは所望によりハロゲンおよび/OHで置換されたC1−4アルキルであり;各R4hは、独立してハロゲノ、OH、COOH、C1−4アルキル、S(O)0、1または2C1−3アルキル、C1−3アルコキシ、C3−6シクロアルコキシ、アリールまたはアラルコキシ(ここで、アルキル部分は1−3個のハロゲンで置換されていてよい)であり;そしてRhおよびMの各々は、WO03/062248A2においてそれぞれBおよびCとして示した意味の一つを有する。〕
の化合物;
【0018】
−WO04/026817Aに記載の、例えば式XII
【化12】
〔式中、
R1jはハロゲン、トリハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオ、C1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキル−スルホニル、アラルキル、所望により置換されたフェノキシまたはアラルキルオキシであり、R2jはH、ハロゲン、トリハロ−メチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アラルキルまたはアラルキルオキシであり、R3jはH、ハロゲン、CF3、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、C1−4アルキルチオまたはベンジルオキシであり、R4jはH、C1−4アルキル、フェニル、所望により置換されたベンジルもしくはベンゾイル、または低級脂肪族C1−5アシルであり、R5jはH、モノハロメチル、C1−4アルキル、C1−4アルコキシメチル、C1−4アルキル−チオメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、フェニル、アラルキル、C2−4アルケニルまたは−アルキニルであり、R6jおよびR7jの各々は、独立してHまたはC1−4アルキルであるか、またはR7jはまた式
【化13】
の残基であり、
ここで、R8jおよびR9jの各々は、独立してHまたは所望によりハロゲンで置換されたC1−4アルキルであり、
XjはO、S、SOまたはSO2であり、そしてnjは1から4の整数である、例えば2−アミノ−4−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]−2−メチルブタン−1−オールまたは2−アミノ−4−[4−(3−ベンジルオキシフェニルチオ)−2−クロロフェニル]−2−エチルブタン−1−オールである。〕
の化合物;
【0019】
−WO04/103306A、WO05/000833、WO05/103309またはWO05/113330に記載の化合物、例えば式XIIIaまたはXIIIb
【化14】
〔式中、
AkはCOOR5k、OPO(OR5k)2、PO(OR5k)2、SO2OR5k、POR5kOR5kまたは1H−テトラゾール−5−イルであり、R5kはHまたはC1−6アルキルであり;
Wkは結合、C1−3アルキレンまたはC2−3アルケニレンであり;
Ykは、所望によりハロゲン、OH、NO2、C1−6アルキル、C1−6アルコキシで置換されたC6−10アリールまたはC3−9ヘテロアリール;ハロ置換C1−6アルキルおよびハロ置換C1−6アルコキシであり;
ZkはWO04/103306Aに示す通りのヘテロ環式基、例えばアゼチジンであり;
R1kは、所望によりC1−6アルキル、C6−10アリール、C6−10アリールC1−4アルキル、C3−9ヘテロアリール、C3−9ヘテロアリールC1−4アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8シクロアルキルC1−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキルまたはC3−8ヘテロシクロアルキルC1−4アルキルで置換されたC6−10アリールまたはC3−9ヘテロアリールであり;ここで、R1kの任意のアリール、ヘテロアリール、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルは、ハロゲン、C1−6アルキル、C1−6アルコキシおよびハロ置換C1−6アルキルまたは−C1−6アルコキシから選択される1個から5個の基で置換されていてよく;
R2kはH、C1−6アルキル、ハロ置換C1−6アルキル、C2−6アルケニルまたはC2−6アルキニルであり:そして
R3kまたはR4kの各々は独立してH、ハロゲン、OH、C1−6アルキル、C1−6アルコキシまたはハロ置換C1−6アルキルまたはC1−6アルコキシである。〕
の化合物、そのN−オキシド誘導体またはそのプロドラッグ、またはそれらの薬理学的に許容される塩、溶媒和物または水和物。
【0020】
本発明のさらなる態様によって、本発明において使用するS1P受容体アゴニストまたはモジュレーターはまた選択的S1P1受容体、例えば35S−GTPγS結合アッセイにおいて評価したS1P1受容体のEC50とS1P3受容体のEC50の比率により測定して、S1P3受容体よりも少なくとも20倍、例えば100、500、1000または2000倍S1P1受容体に選択性を有する化合物であってよく、該化合物は、35S−GTPγS結合アッセイにより評価して、100nM未満のS1P1受容体の結合に対するEC5を有する。代表的S1P1受容体アゴニストまたはモジュレーターは、例えば、その内容を引用により包含させるWO03/061567に記載の化合物、例えば式XIVまたはXV
【化15】
の化合物である。
【0021】
式IからXVの化合物が、1個以上の不斉中心を有するとき、本発明は種々の光学異性体、ならびにラセミ体、ジアステレオ異性体およびそれらの混合物を包含すると理解される。式IIIまたはIVbの化合物は、アミノ基を担持する炭素原子が不斉であるとき、好ましくはこの炭素原子でR−立体配置である。
【0022】
式IからXVの化合物は遊離または塩形で存在できる。式IからXIIIの化合物の薬学的に許容される塩の例は、無機酸との塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩および硫酸塩、有機酸との塩、例えば酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、メタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸塩、または、適当であるとき、金属、例えばナトリウム、カリウム、カルシウムおよびアルミニウムとの塩、アミン、例えばトリエチルアミンとの塩および2塩基性アミノ酸、例えばリシンとの塩を含む。本発明の組み合わせの化合物および塩は、水和物および溶媒和物形を含む。
【0023】
上記のアシルは、残基Ry−CO−(式中、RyはC1−6アルキル、C3−6シクロアルキル、フェニルまたはフェニル−C1−4アルキルである)であり得る。特記しない限り、アルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルキニルは直鎖または分枝鎖であり得る。
【0024】
式Iの化合物においてR1としての炭素鎖が置換されているとき、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されているのが好ましい。炭素鎖が所望により置換されたフェニレンで中断されているとき、該炭素鎖は好ましくは非置換である。フェニレン部分が置換されているとき、ハロゲン、ニトロ、アミノ、メトキシ、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されているのが好ましい。
【0025】
好ましい式Iの化合物は、R1が所望によりニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシで置換されたC13−20アルキルであるもの、およびより好ましくはR1が所望によりハロゲンで置換されたC6−14−アルキル鎖により置換されたフェニルアルキルであり、該アルキル部分が、所望によりヒドロキシで置換されたC1−6アルキルであるものである。より好ましくは、R1がフェニルを直線状または分枝した、好ましくは直線状C6−14アルキル鎖で置換されたフェニル−C1−6アルキルである。C6−14アルキル鎖はオルト、メタまたはパラ、好ましくはパラに存在し得る。
好ましくはR2からR5の各々はHである。
【0026】
好ましい式Iの化合物は2−アミノ−2−テトラデシル−1,3−プロパンジオールである。特に好ましい式IのS1P受容体モジュレーターはFTY720、すなわち遊離形または薬学的に許容される塩形の、例えば:
【化16】
に示す通りの塩酸塩の2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール(以後化合物Aと呼ぶ)である。
【0027】
好ましい式IIの化合物は、R'2からR'5の各々がHであり、そしてmが4であるもの、すなわち遊離形または薬学的に許容される塩形、例えば塩酸塩の2−アミノ−2−{2−[4−(1−オキソ−5−フェニルペンチル)フェニル]エチル}プロパン−1,3−ジオール(以後化合物Bと呼ぶ)である。
【0028】
好ましい式IIIの化合物は、WがCH3であり、R''1からR''3の各々がHであり、Z2がエチレンであり、Xがヘプチルオキシであり、そしてYがHであるもの、すなわち遊離形または薬学的に許容される塩形、例えば塩酸塩の2−アミノ−4−(4−ヘプチルオキシフェニル)−2−メチル−ブタノール(以後化合物Cと呼ぶ)である。R−エナンチオマーが特に好ましい。
【0029】
好ましい式IVaの化合物は、FTY720−ホスフェート(R2aがHであり、R3aがOHであり、XaがOであり、R1aおよびR1bがOHである)である。好ましい式IVbの化合物は、化合物C−ホスフェート(R2aがHであり、R3bがOHであり、XaがOであり、R1aおよびR1bがOHであり、YaがOであり、そしてR4aがヘプチルである)である。
【0030】
好ましい式VIIIの化合物は(2R)−2−アミノ−4−[3−(4−シクロヘキシルオキシブチル)−ベンゾ[b]チエン−6−イル]−2−メチルブタン−1−オールである。
好ましい式IXの化合物は、XfがSまたはOであり、R1fがベンジルオキシであり、R2f、R4fおよびR5fjが各々Hであり、R3fがClであり、そしてnfが2である化合物である。
【0031】
好ましい式XIIの化合物は、XjがSまたはOであり、R1jがベンジルオキシであり、R2j、R4j、R6jおよびR7jが各々Hであり、R3jがClであり、R5jがヒドロキシエチルまたはヒドロキシプロピルであり、そしてnjが2である化合物である。
好ましい式XIIIaの化合物は、例えば1−{4−[1−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルオキシイミノ)−エチル]−2−エチル−ベンジル}−アゼチジン−3−カルボン酸、またはそのプロドラッグである。
【0032】
S1P受容体モジュレーターまたはアゴニストと組み合わせる1個または複数の免疫抑制剤は、例えばカルシニューリン阻害剤、mTOR阻害剤、ミコフェノール酸、その塩またはプロドラッグ、例えばミコフェノール酸ナトリウムまたはミコフェノール酸モフェチル、またはステロイド、例えばプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメサゾン、トリアムシノロンアセトニド(triamcinalone acetinide)などである。
【0033】
ここで使用する用語“カルシニューリン阻害剤”は、例えばシクロスポリン、例えばシクロスポリンまたはISA tx 247またはFK506(タクロリムス)を含む。
【0034】
ここで使用する用語“mTOR阻害剤”は、ラパマイシンまたは同じ作用機序(例えば、mTOR活性の阻害)を有すると考えられ、そして免疫抑制性特性を有するその誘導体を含む。適当なラパマイシン誘導体は、例えば式A
【化17】
〔式中、
R1aaはCH3またはC3−6アルキニルであり、
R2aaはHまたは−CH2−CH2−OH、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチル−プロパノイルまたはテトラゾリルであり、そして
Xaaは=O、(H,H)または(H,OH)である。
但しXaaが=Oであり、そしてR1aaがCH3であるとき、R2aaはH以外である。〕
の化合物、またはR2aaが−CH2−CH2−OHであるとき、そのプロドラッグ、例えば生理学的に加水分解可能なそのエーテル、例えばR2aaが−CH2−CH2−O−Alk(Alkは、所望により鎖を1個または2個の酸素原子で中断されているC1−9アルキルである)である化合物を含む。
【0035】
式Aの化合物は、例えば引用により本明細書に包含させるWO94/09010、WO95/16691、WO96/41807、USP5,362,718またはWO99/15530に記載されている。それらはこれらの引用文献に記載の通りにまたは記載の方法に準じて製造できる。
【0036】
好ましいラパマイシン誘導体は、32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−ラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンおよび、より好ましくは、40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシンである。ラパマイシン誘導体のさらなる例は、例えばUSP5,362,718に記載のCCI779または40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロパノエート]−ラパマイシンまたはその薬学的に許容される塩、例えばWO99/15530に記載のABT578または40−(テトラゾリル)−ラパマイシン、特に40−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシンを含む。ラパマイシン誘導体はまた、例えばWO98/02441、WO01/14387およびWO03/64383に記載の通りのいわゆるラパログ、例えばAP23573、AP23464、AP23675またはAP23841を含み得る。ラパマイシン誘導体のさらなる例は、TAFA−93、バイオリムス−7またはバイオリムス−9の名の下に開示されているものである。
【0037】
本発明によって、抗リンパ球抗体を、移植片許容を高めるための免疫応答の変更を誘発するために、移植レシピエントの免疫抑制性処置の種々の時点で、例えば移植後数週間後、数ヶ月後または数年後でさえ、および/または移植前および/または移植直後に投与できる。抗リンパ球抗体は、例えばポリクローナル抗体、例えば抗リンパ球グロブリン、抗胸腺細胞グロブリン(“ATG”)、例えばウサギまたはウマ由来の何れか、ATGAM(登録商標)およびThymoglobulin(登録商標);白血球受容体、例えばCD2、CD3、CD4、CD7、CD25、CD27、CD28、CD40、CD45、CD80、CD86、ICOS、OXA40に対する、またはそれらのリガンド、例えばCD154に対する、例えばキメラ、ヒト化またはヒトの抗体のようなモノクローナル抗体調製物、例えばOKT3、ムロモナブ−CD3、バシリキシマブ(Simulect(登録商標);Novartis AG, CH)およびダクリズマブ(Zenapax(登録商標);Roche AG, CH);またはCTLA4の細胞外ドメインの少なくとも一部またはその変異体、例えば非CTLA4タンパク質配列に結合した少なくともCTLA4の細胞外部分またはその変異体を有する組み換え結合分子、例えばCTLA4−Ig(例えば命名ATCC68629)またはその変異体、例えばLEA29Y(ベラタセプト)を含む。特に好ましいモノクローナル抗体は、キメラ(例えば、その内容を引用により本明細書に包含させるEP449769に詳しく記載された通りの)またはヒト化(例えば、その内容を引用により本明細書に包含させるWO90/07861に詳しく記載された通りの)何れかの抗CD25である。
【0038】
一連のさらに具体的なまたは別の態様において、本発明はまた下記を提供する:
1.1. レシピエントにおける同種移植片拒絶反応を阻害する方法であって、治療的有効量のS1P受容体モジュレーターを1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体と組み合わせて、例えば同時にまたは連続的に該レシピエントに投与することを含む方法。
【0039】
好ましくは本方法は固形臓器移植片レシピエントにおける臓器移植拒絶反応の予防または処置に使用する。好ましいS1P受容体モジュレーターは、化合物A、BまたはC、(2R)−2−アミノ−4−[3−(4−シクロヘキシルオキシブチル)−ベンゾ[b]チエン−6−イル]−2−メチルブタン−1−オール、またはXfがSまたはOであり、R1fがベンジルオキシであり、R2f、R4fおよびR5fjが各々Hであり、R3fがClであり、そしてnfが2である式IXの化合物、または式XIIIaの化合物である。
【0040】
本発明の方法に使用するための好ましい免疫抑制剤は、例えば
− 所望によりステロイド、例えばコルチコステロイド、例えばプレドニゾンと組み合わせたカルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリンまたはFK506;または
− 所望によりステロイド、例えばコルチコステロイド、例えばプレドニゾンと組み合わせたmTOR阻害剤、例えばエベロリムスまたはシロリムス;または
− 所望によりカルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリンまたはFK506、およびステロイド、例えばコルチコステロイド、例えばプレドニゾンと組み合わせたmTOR阻害剤、例えばエベロリムスまたはシロリムス;または
− 所望によりカルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリンまたはFK506、およびステロイド、例えばコルチコステロイド、例えばプレドニゾンと組み合わせたミコフェノール酸、またはその塩またはプロドラッグ;または
− 所望によりステロイド、例えばコルチコステロイド、例えばプレドニゾンと組み合わせた、ミコフェノール酸、またはその塩またはプロドラッグである。
【0041】
1.2 レシピエントにおける同種移植片拒絶反応を阻害する方法であって、治療的有効量のS1P受容体モジュレーターを1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体と組み合わせて、同時にまたは連続的に該レシピエントに投与することを含む(ここで、該抗リンパ球抗体を移植前および/または移植直後に投与する)、方法。
【0042】
抗リンパ球抗体は、いわゆる導入処置として、すなわち移植の非常に初期の相に、例えば移植直前および移植後3ヶ月までに1回または複数回投与するための短期処置として投与できる。好ましいS1P受容体アゴニストまたはモジュレーターおよび好ましい免疫抑制剤は、例えば上記の通りである。
【0043】
1.3. レシピエントにおける同種移植片拒絶反応を阻害する方法であって、治療的有効量のS1P受容体モジュレーターを、少なくとも移植の直前の抗CD25化合物またはCTLA4の細胞外ドメインの少なくとも一部またはその変異体を有する組み換え結合分子の投与を含む抗リンパ球抗体誘導と組み合わせた1種以上の免疫抑制剤と組み合わせて同時にまたは連続的に該レシピエントに投与することを含む、方法。
【0044】
2. 上記1.1から1.3の何れかに定義の通りの何れかの方法、例えばレシピエントにおける同種移植片拒絶反応の阻害において使用するための薬剤の製造における、1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体と組み合わせた(ここで、該薬剤を同時にまたは連続的に投与する)、S1P受容体モジュレーターの使用。
【0045】
3. 上記1.1から1.3の何れかに定義の通りの、例えば同種移植片移植レシピエントの処置において使用するための、S1P受容体モジュレーター、1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体を含む、組み合わせ、例えばキット。
【0046】
本発明の方法は、例えば固形臓器移植、例えば腎臓、心臓、肺または肝臓移植、好ましくは腎臓移植において指示される。
【0047】
本発明の方法において用いる各組み合わせパートナーの有効量は、用いる具体的な化合物または医薬組成物、投与形態、処置する状態の重症度に依存して変化し得る。通常の技術の医師または臨床医は、必要な単一活性成分の有効量を容易に決定し、処方できる。
【0048】
S1P受容体モジュレーターの1非投与量は、0.5から15mgで変化し得る。好ましい投与量は、移植直前の日を含み、1から15mg/日、より好ましくは2から5mg/日 p.o.である。より好ましくはS1P受容体モジュレーターを移植直前の日に5mgの用量で、その後2.5mg/日の用量で経口投与する。
【0049】
Cysの用量は移植後の日数に依存して、および血中濃度のモニタリングをするかしないかに依存して、0.5−10mg/kg/日 p.o.であり得る。
FK506の用量は0.05から0.2mg/kg/日 p.o.であり得る。
【0050】
抗体がバシリキシマブまたはダクリズマブであるとき、それは約2mg/kgの1回量で、または約1mg/kgの用量で4回、例えば移植前に2mg/kg、その後4回2週間間隔で1mg/kg投与し得る。Thymoglobulinまたはリンホグロブリンは1−3mg/kgの用量で投与し得る。抗リンパ球抗体の投与量は、週または月基準で、例えば必要に応じて、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間または8週間間隔で、定期的または不定期であり得る。LEA29Yは一定間隔で種々の投与量で、例えば移植前には10mg/kg、5日目および3ヶ月まで2週間毎、そしてその後毎月、例えば7ヶ月目に5mg/kgまで減らす用量で投与できる。
【0051】
mTor阻害剤は約0.5から30mgの1日量で、所望により分割して投与できる。ミコフェノール酸、その塩またはプロドラッグは、約150mgから3gの1日量で、所望により分割した形で投与できる。
【0052】
上記に具体的に示した疾患および状態の導入のためのS1P受容体モジュレーター、免疫抑制剤および抗体の組み合わせの有用性は、標準的な動物または臨床試験で、例えば、下記の方法に従って証明できる。
【実施例】
【0053】
治験:
患者を2処置群の一つに無作為化する:
グループ1:FTY720 5mg*、その後2.5mg QD + 所望の血中レベルを達成するために調節した8−10mg/kg/日のシクロスポリンA + コルチコステロイド**
グループ2:FTY720 5mg*、その後5mg QD + 所望の血中レベルを達成するために調節した3−4mg/kg/日のシクロスポリンA + コルチコステロイド**
* 最初のFTY720を、腎臓同種移植片血行再建術の2から12時間前に与える。0日目を治験薬の最初の用量の投与日と定義する。
** 上記処置レジメンの一つに加えて、全患者は、移植前に抗体導入(抗CD25)を、例えば2mg/kgで受ける。患者は、さらに2週間間隔で抗CD25 1mg/kgを4回受け得る。
【0054】
【表1】
【表2】
【0055】
FTY720での維持処置を、0日目または1日目、最初の投与後12および24時間の間に行う移植片血行再建術の後に開始する。
グループ1に無作為化された患者は、目標の血中濃度を達成するように調節されたシクロスポリンA 8−10mg/kg/日の2分割量の投与を始め、グループ2に無作為化された患者は、目標の血中濃度を達成するように調節されたシクロスポリンA 3−4mg/kg/日の投与を始める。
【0056】
12ヶ月の処置基期間中、患者は0日目、1日目、3日目、5日目、7日目(または7日目より前ならば退院した日)、14および28日目、および2ヶ月目、3ヶ月目、6ヶ月目、9ヶ月目および12ヶ月目に来院する。
中間安全性解析を、全患者が3ヶ月の処置を終了したときに行う。安全性および効果の最終解析を、全患者が12ヶ月の試験を終了したときに行う。
【0057】
重要な安全性評価:
有害事象/重篤な有害事象
感染/重篤な感染
有害事象(感染を含む)または検査値異常による治験薬投薬の中断
他の評価:
急性拒絶を証明する処置生検の事象
移植片損失の事象
死亡の事象
悪性腫瘍の事象
HCVウイルス負荷
BKポリオーマウイルス負荷
【0058】
試験の投与レジメンは、標準の免疫抑制レジメンと比較して有利な効果を有する。レジメンに依存して、薬剤レベルのモニタリングの必要性が低下し、固定された投与量での処置が可能となり得る。
【0059】
上記の臨床試験を、例えばグループ2で、異なる1日量のシクロスポリンAを用いて、例えば3−6mg/kgを2回に分けて投与して繰り返し得る。
【0060】
上記の臨床試験を、異なるS1P受容体アゴニストまたはモジュレーター、例えば式IXの化合物または式XIIIaの化合物を使用して繰り返し得る。
上記の臨床試験を、シクロスポリンAの代わりにエベロリムスを使用して繰り返し得る。
上記の臨床試験を、抗CD25の代わりにLEA29Yを使用して繰り返し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形臓器同種移植片の拒絶反応の阻害用薬剤の製造における、1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体と組み合わせた(ここで、該薬剤を同時にまたは連続的に投与する)、S1P受容体モジュレーターの使用。
【請求項2】
抗リンパ球抗体を移植の前および/または移植直後に投与する、請求項1記載の使用。
【請求項3】
抗リンパ球抗体を移植前に投与し、該抗リンパ球抗体が抗CD25化合物およびCTLA4の細胞外ドメインの少なくとも一部またはその変異体を有する組み換え結合分子から選択される、請求項2記載の使用。
【請求項4】
固形臓器同種移植片が腎臓である、請求項1記載の使用。
【請求項5】
レシピエントにおける固形臓器同種移植片の拒絶反応を阻害する方法であって、治療的有効量のS1P受容体モジュレーターを1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体と組み合わせて、同時にまたは連続的に該レシピエントに投与することを含む、方法。
【請求項6】
レシピエントにおける固形臓器同種移植片の拒絶反応を阻害する方法であって、治療的有効量のS1P受容体モジュレーターを1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体と組み合わせて、同時にまたは連続的に該レシピエントに投与することを含む(ここで、該抗リンパ球抗体を移植前および/または移植直後に投与する)、方法。
【請求項7】
抗リンパ球抗体を移植前に投与し、該抗リンパ球抗体が抗CD25化合物およびCTLA4の細胞外ドメインの少なくとも一部またはその変異体を有する組み換え結合分子から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
S1P受容体モジュレーター、1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体を含む、レシピエントにおける固形臓器同種移植片の拒絶反応の阻害用組み合わせ剤。
【請求項9】
S1P受容体モジュレーターが、明細書中に定義の遊離形または薬学的に許容される塩形の、式IからXVの化合物から選択される、請求項1記載の使用、請求項5または6記載の方法または請求項8記載の組成物。
【請求項10】
免疫抑制剤がカルシニューリン阻害剤、mTOR阻害剤、ミコフェノール酸、その塩またはプロドラッグおよびステロイドから選択される、請求項1記載の使用、請求項5または6記載の方法または請求項8記載の組成物。
【請求項11】
抗リンパ球抗体が抗CD25抗体、抗リンパ球グロブリンまたは抗胸腺細胞グロブリンまたはCTLA4の細胞外ドメインの少なくとも一部またはその変異体を有する組み換え結合分子である、請求項1記載の使用、請求項5または6記載の方法または請求項8記載の組成物。
【請求項1】
固形臓器同種移植片の拒絶反応の阻害用薬剤の製造における、1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体と組み合わせた(ここで、該薬剤を同時にまたは連続的に投与する)、S1P受容体モジュレーターの使用。
【請求項2】
抗リンパ球抗体を移植の前および/または移植直後に投与する、請求項1記載の使用。
【請求項3】
抗リンパ球抗体を移植前に投与し、該抗リンパ球抗体が抗CD25化合物およびCTLA4の細胞外ドメインの少なくとも一部またはその変異体を有する組み換え結合分子から選択される、請求項2記載の使用。
【請求項4】
固形臓器同種移植片が腎臓である、請求項1記載の使用。
【請求項5】
レシピエントにおける固形臓器同種移植片の拒絶反応を阻害する方法であって、治療的有効量のS1P受容体モジュレーターを1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体と組み合わせて、同時にまたは連続的に該レシピエントに投与することを含む、方法。
【請求項6】
レシピエントにおける固形臓器同種移植片の拒絶反応を阻害する方法であって、治療的有効量のS1P受容体モジュレーターを1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体と組み合わせて、同時にまたは連続的に該レシピエントに投与することを含む(ここで、該抗リンパ球抗体を移植前および/または移植直後に投与する)、方法。
【請求項7】
抗リンパ球抗体を移植前に投与し、該抗リンパ球抗体が抗CD25化合物およびCTLA4の細胞外ドメインの少なくとも一部またはその変異体を有する組み換え結合分子から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
S1P受容体モジュレーター、1種以上の免疫抑制剤および抗リンパ球抗体を含む、レシピエントにおける固形臓器同種移植片の拒絶反応の阻害用組み合わせ剤。
【請求項9】
S1P受容体モジュレーターが、明細書中に定義の遊離形または薬学的に許容される塩形の、式IからXVの化合物から選択される、請求項1記載の使用、請求項5または6記載の方法または請求項8記載の組成物。
【請求項10】
免疫抑制剤がカルシニューリン阻害剤、mTOR阻害剤、ミコフェノール酸、その塩またはプロドラッグおよびステロイドから選択される、請求項1記載の使用、請求項5または6記載の方法または請求項8記載の組成物。
【請求項11】
抗リンパ球抗体が抗CD25抗体、抗リンパ球グロブリンまたは抗胸腺細胞グロブリンまたはCTLA4の細胞外ドメインの少なくとも一部またはその変異体を有する組み換え結合分子である、請求項1記載の使用、請求項5または6記載の方法または請求項8記載の組成物。
【公表番号】特表2008−530024(P2008−530024A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554315(P2007−554315)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/004234
【国際公開番号】WO2006/086361
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/004234
【国際公開番号】WO2006/086361
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】
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