説明

SLURP−1組成物及びその使用方法

【課題】神経障害の処置又は予防あるいは皮膚病を処置又は予防のためのSLURP−1の使用を開示する。本発明は更にアセチルコリン受容体活性の調節のためのSLURP−1の使用を開示する。SLURP−1及び関連タンパク質に対して生成される抗体も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広く神経障害及び皮膚病の処置又は予防のための並びにアセチルコリン受容体活性の調節のための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Ly−6/uPARスーパーファミリーの受容体及び分泌タンパク質は、カルボキシ末端共通配列モチーフCCXXXXCN(配列番号1)及びLy−6/uPARドメインの1又は複数のリピートを含み、これは8ないし10個のシステイン残基間の異なるジスルフィド結合パターンを特徴とする(Ploug et al. , J. Biol. Chem. , 268,17539-17546 (1993); Ploug and Ellis, FEBS Lett. , 349,163-168 (1994); Casey et al., Blood, 84, 1151-1156 (1994)を参照のこと)。
【0003】
前記スーパーファミリーは、GPIアンカリングシグナル配列の有無に基づいて2つのサブファミリーに分類されうる(Adermann et al., Protein Sci. , 8, 810-819 (1999)を参照のこと)。GPIアンカー型Ly−6/uPAR受容体タンパク質には、レチノイン酸誘導遺伝子E(RIG−E、又はヒトLy−6E)、E48抗原(ヒトLy−6D);Ly−6H;PSCA;CD59又はプロテクチン;Lynx1及びuPAR(Shan et al. , J. Immunol. , 160,197-208 (1998); Brakenhoff et al. , J. Cell Biol. , 129,1677-1689 (1995); Horie et al. , Genomics, 53, 365-368 (1998); Reiter et al. , Proc. Natl Acad. Sci. USA, 95, 1735-1740 (1998) ; Tone et al., J. Mol. Biol., 227,971-976 (1992)を参照のこと)が含まれる。E48遺伝子は、ヒトケラチノサイトにおいて発現しているが、リンパ球では発現していないことが知られており、そしてこれはケラチノサイトのデスモソームの細胞間接着を調節する(Brakenhoff et al., J. Cell Biol. , 129,1677-1689 (1995); Schrijvers et al., Exp. Cell. Res., 196,264-269 (1991) )。ウロキナーゼ型のプラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)は、動的会合でインテグリンと相互作用し、そして細胞の接着、遊走、増殖及び分化を変えるシグナル伝達現象を開始させる(Blasi and Carmeliet, Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. , 3,932-943 (2002)を参照のこと)。uPARは遠縁のLy−6/uPARファミリーのメンバーであり、そして、他のメンバーと異なり、Ly−6/uPARドメインの3連続コピーを含む。これらのドメインのディファレンシャルな開裂は、uPARの複数の機能を制御する(Palfree, Immunol. Today, 12,170 (1991) ; Montuori, et al., J. Biol. Chem. , 277, 46932-46939 (2002)を参照のこと)。
【0004】
Ly−6/uPARドメインを有するが、GPIアンカリングシグナル配列を有さない第二のサブファミリーには、SLUPR−1及びSLUPR−2が含まれる(Adermann etal., Protein Sci., 8, 810-819 (1999) 9 Tsuji et al., Genomics, 81, 26-33 (2003)を参照のこと)。SLUPR−1をコードする遺伝子の突然変異はメレダ病(Mal de Meleda(MdM))に関与しており、これはMdM遺伝子が染色体の8q24.3上のLy−6遺伝子クラスターに位置するためである(Fischer et al. , Eur. J. Hum. Genet., 6, 542-547 (1998) ; Fischer et al., Hum. Mol. Genet. , 10, 875-880 (2001); Eckl et al, Hum. Genet. , 112, 50-56 (2003); Ward et al. , J. Invest. Dermatol., 120, 96-98 (2003)を参照のこと)。
【0005】
本発明の要約
本発明は、有効量のSLURP−1又は関連タンパク質を神経障害に罹患している対象者に投与することにより対象者の神経障害を処置するための方法を提供する。
【0006】
本発明はまた、有効量のSLURP−1又は関連タンパク質を、神経障害を発症又はそれに罹患する危険性のある対象者に投与することにより対象者の神経障害の開始を予防又は遅延するための方法を提供する。
【0007】
更に提供するものとして、有効量のSLURP−1又は関連タンパク質を対象者に投与することにより当該対象者に神経保護を提供する方法があり、ここで、当該神経保護は、アセチルコリン受容体の機能障害によって生じる神経障害を予防するものである。
【0008】
本発明は更に、有効量のSLURP−1又は関連タンパク質を皮膚病に罹患している対象者に投与することにより、皮膚で発現しているアセチルコリン受容体の機能障害により生じた皮膚病を処置する方法を提供する。
【0009】
本発明はまた、有効量のSLURP−1又は関連タンパク質を、皮膚病を発症又はそれに罹患する危険性のある対象者に投与することにより、皮膚で発現しているアセチルコリン受容体の機能障害によって生じた皮膚病の開始を予防又は遅延するための方法を提供する。
【0010】
更に提供されるものとして、有効量のSLURP−1、SLURP−1ミメティック、又はそれらの組み合わせ及び担体を含む組成物であって、アルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体又は関連タンパク質の機能を調節する組成物がある。1つの好ましい態様において、当該組成物はキットで提供される。
【0011】
本発明はまた、アセチルコリン受容体と有効量のSLURP−1とを接触させることによりアセチルコリン受容体の活性を調節する方法であって、SLURP−1の有効量が約1.0pM〜10μMである方法を提供する。1つの好ましい態様において、アセチルコリン受容体の調節は当該アセチルコリン受容体の適切な機能を回復させる。
【0012】
本発明は更に、a)第一アセチルコリン受容体に候補化合物を曝露し、そして当該曝露後の第一アセチルコリン受容体の活性を測定し、b)第二アセチルコリン受容体に有効量のSLURP−1又は関連化合物を曝露し、そして当該曝露後の第二アセチルコリン受容体の活性を測定し、そしてc)最初の曝露後の第一アセチルコリン受容体の活性と、SLURP−1又は関連化合物の曝露後の第二アセチルコリン受容体の活性とを比較すること、により、アセチルコリン受容体活性の調節物質をスクリーニングする方法を提供する。当該方法において、第一アセチルコリン受容体の活性が第二アセチルコリン受容体の活性と同程度である場合、前記候補化合物はアセチルコリン受容体活性の調節物質である。
【0013】
本発明の好ましい態様において、処置及び/又は予防される神経障害は、アセチルコリン受容体の機能障害によって生じる病態であってもよい。例えば、神経障害には、疼痛、神経因性疼痛、統合失調症、認知障害、アルツハイマー病、及びパーキンソン病が含まれうる。同様に、処置及び/又は予防される皮膚病には、メレダ病、創傷治癒、及び乾癬が含まれうる。
【0014】
本発明の好ましい態様において、アセチルコリン受容体は、ニコチン性アセチルコリン受容体である。具体的には、ニコチン性アセチルコリン受容体は、アルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体又はアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体関連タンパク質であってもよい。
【0015】
態様によっては、SLURP−1は成熟型で対象者に投与される。本明細書で使用する場合、SLURP−1の成熟型にはSLURP−1のアミノ酸23〜103が含まれる。
【0016】
本発明はまた、有効量のSLURP−1、SLURP−1ミメティック、又はそれらの組み合わせ及び担体を含む組成物を神経障害に罹患している対象者に投与することによりアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体の機能障害によって生じた神経障害を処置する方法を提供する。
【0017】
更に提供されるものとして、本発明の組成物を、神経障害を発症又はそれに罹患する危険性のある対象者に投与することによりアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体の機能障害により生じる神経障害の開始を予防又は遅延するための方法を提供する。
【0018】
本発明は更に、有効量のSLURP−1、SLURP−1ミメティック、又はそれらの組み合わせ及び担体を含む組成物を皮膚病に罹患している対象者に投与することにより、皮膚で発現しているアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体の機能障害により生じた皮膚病を処置する方法を提供する。
【0019】
同様に、本発明はまた、皮膚病を発症又はそれに罹患する危険性のある対象者に本発明の組成物を投与することにより、皮膚で発現しているアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体の機能障害により生じる皮膚病の開始を予防又は遅延する方法を提供する。
【0020】
本発明は、SLURP−1に対し高度に特異的な結合親和性を有する抗体を提供する。本発明の抗体はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体又はヒト化抗体であってもよい。
【0021】
本発明の種々の態様において、SLURP−1の有効量は約1.0pM〜約10μMであってもよく、あるいは約1.0pM〜約10μMでアセチルコリン受容体に接触する溶液を形成してもよい。有効量のSLURP−1は、経口、静脈内、腹腔内、鼻内、又は筋肉内投与されうる。SLURP−1の投与にはまた、SLURP−1タンパク質を発現することができる発現ベクターを対象者に投与することが含まれてもよい。好ましくは、SLURP−1を受ける対象者は哺乳類である。更に好ましくは、当該対象者はヒトである。
【0022】
特に定義していない限り、本明細書で使用する全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する業界の当業者が一般的に理解するものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様の又はそれと等しい方法及び材料が本発明の実施又は試験するのに使用されうる。本明細書で言及する全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の引用文献は、引用によりそれらの全体が組み入れられる。コンフリクトの場合、本明細書は、定義を含めて調節される。尚、材料、方法、及び実施例は単なる例示であり、限定することを意図していない。
【0023】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から自明であろう。
【0024】
本発明の詳細な説明
本発明は、SLURP−1がアセチルコリン受容体活性を調節する能力に一部基づいている。SLURP−1は、ARS B遺伝子をコードする9kDaのタンパク質である。SLURP−1のアミノ酸配列は103のアミノ酸残基を有する:
MASRWAVQLLLVAAWSMGCGEALKCYTCKEPMTSASCRTITRCKPEDTACMTTLVTVEAEYPFNQSPVVTRSCSSSCVATDPDSIGAAHLIFCCFRDLCNSEL(配列番号2)。
【0025】
本発明は、神経障害又は皮膚病を処置し、予防し、又はその開始を遅延させる方法、並びにアセチルコリン受容体の活性を調節する方法を提供する。本明細書の以下の実施例1及び2に記載のように、SLURP−1はアミノ酸1〜22位にシグナルペプチドを含み、そして、N末端シグナル開裂によりグリコシル化されていない成熟型(配列番号2のアミノ酸23〜103)で分泌される。
【0026】
SLURP−1は、アセチルコリン受容体と相互作用することが本明細書で証明されとり、そしてそれらの活性を調節している。例えば、SLURP−1は、アセチルコリン誘発の巨視的電流の振幅を濃度依存的に増強した。具体的には、SLURP−1(200pMの濃度)は、アセチルコリン誘発の巨視的電流の振幅を421±130%(n=6)に増大し、そして20nMのSLURP−1は、当該振幅を1214±550%(n=4)に増強した。下記の実施例4を参照のこと。更に、SLURP−1は、電流の振幅及びアセチルコリンに対する感度の両方の増大並びにヒル係数の増大を誘導した。SLURP−1の利用はアセチルコリンの不在下で電流を誘発しなかったので、SLURP−1はリガンド又は神経伝達物質としては機能しない。むしろ、SLURP−1はその天然のリガンドの存在下でアセチルコリン受容体機能を調節し、これはSLURP−1がアセチルコリン受容体においてポジティブなアロステリックエフェクターとして働くことを示している。この発見は、更にアセチルコリン感受性の増大及びアロステリックエフェクターの特徴である見かけの協同作用の増大によって裏づけられている(Changeux and Edelstein, Curr. Opin. Neurobiol., 11,369-377 (2001)を参照のこと)。
【0027】
本発明はまた、表皮のカルシウム恒常性並びにケラチノサイトの増殖及び増殖を調節する方法を含む。SLURP−1は、単一ドメインのヘビ及びカエルの細胞毒、すなわちα−ブンガロトキシン(Bgtx)及びα−コブラトキシン(Cbtx)のサブファミリーと密接に関連している。下記の実施例3を参照のこと。SLURP−1とこれらのヘビ神経毒の間のこの高度な相同性は、SLURP−1がおそらく、イオンチャンネル、ニコチン性アセチルコリン受容体の筋肉及び神経のサブタイプ、並びにケラチノサイトで発現しているムスカリン性及びニコチン性アセチルコリン受容体の両方、と相互作用していることを示唆している(Grando and Horton, Curr. Opin. Dermatol., 4,262-268 (1997); Grando, J. Invest. Dermatol. Symp. Proc. , 2,41-48 (1997)を参照のこと)。表皮のニコチン性アセチルコリン受容体は、細胞接着、表皮ケラチノサイトの運動性及び創傷治癒に関与している(J. Invest. Dermatol., 105,774-781 (1995); Jacobi et al., Am. J. Pathol. , 161,97-104 (2002)を参照のこと)。
【0028】
これらのSLURP−1の相互作用は、Lynx1の作用に匹敵している。Lynx1は、中枢神経系のニューロンニコチン性アセチルコリン受容体と総合作用することが示されており、ここで、これは細胞のカルシウム透過性を調節する(Miwa et al., Neuron, 23,105-114 (1999)を参照のこと)。カルシウムは、哺乳類の皮膚の恒常性において確立された役割を有し、そしてケラチノサイトの増殖及び分化を調節する(Menon et al. , J. Invest. Dermatol. , 84,508-512 (1985); Elias et al. , J. Invest. Dermatol. , 119,1128-1136 (2002)を参照のこと)。更に、角化性掌蹠皮膚障害、メレダ病、そしてSLURP−1の突然変異の間の関係は、分泌型のSLURP−1タンパク質の変質性(alterationor)突然変異も皮膚の恒常性を破壊しうることを示唆している。更に、アルファ(α7)ニコチン性アセチルコリン受容体チャンネルを介するアセチルコリンシグナル伝達は、ケラチノサイトにおいて機能的であり、且つ表皮の恒常性にとって必須なようである。
【0029】
本発明はまた、炎症反応(例えば、皮膚炎症)を調節する方法も提供する。例えば、TNF−αは、多数の生物学的効果、例えば、炎症及び免疫制御反応を誘発する多面的な炎症誘発性サイトカインである(Kondo and Sauder, Eur. J. Immunol. , 27,1713-1718 (1997)を参照のこと)。TNF−αは、リポ多糖(LPS)、紫外(UV)光による刺激又は創傷治癒の後にケラチノサイトから放出されることが知られており、そして皮膚炎症に関与する(Kock et al., J. Exp. Med., 172,1609-1614(1990)を参照のこと)。アセチルコリンは、ブンガロトキシン感受性受容体依存的な機構を通じて、初代マクロファージ上でのTNF−α及び他のサイトカインの放出を阻害する(Borovikova et al., Nature, 405, 458-462 (2000)を参照のこと)。更に、α7ニコチン性アセチルコリン受容体サブユニットは、マクロファージによるTNF−α放出の阻害に必要であり(Wang et al., Nature, 421,384-388 (2003)を参照のこと)、そしてこの経路の不活性化は、内毒素血症又は他の損傷の間のサイトカインの過剰な全身的放出に寄与することがある。更に、メレダ病は著しい皮膚炎症を伴う臨床的表現型を特徴とし、そしてSLURP−1の不在又は突然変異に起因するので、SLURP−1は、ニコチン性アセチルコリン受容体の活性化により皮膚マクロファージ及びケラチノサイトにおけるTNF−αの放出を調節し、それにより炎症を軽減させるようである。従って、SLURP−1又はその変更(例えば、点突然変異、欠失等)は、マクロファージからのTNF−αの分泌を修飾することがあり、そして炎症反応を修飾することがある。
【0030】
SLURP−1とスリーフィンガータンパク質ファミリーの間の高度な構造的相同性は、アセチルコリン受容体活性を調節するSLURP−1の能力と合わせて、SLURP−1が更に前記毒と機能的にも相同であることを示唆している。従って、これは神経障害又は皮膚病を処置又は予防し、表皮のカルシウム恒常性並びにケラチノサイトの増殖及び分化を調節し、TNF−αの分泌を調節し、そして炎症反応を調節するのに有用である。
【0031】
SLURP−1を神経調節物質として用いる方法
本発明は、有効量のSLURP−1又はSLURP−1可憐タンパク質を神経障害に罹患している対象者に投与することにより当該対象者の神経障害を処置する方法を提供する。
【0032】
更に本発明が提供するのは、有効量のSLURP−1又は関連タンパク質を神経障害に罹患している対象者に投与することにより、当該対象者の神経障害の開始を予防又は遅延するための方法である。
【0033】
本発明は更に、有効量のSLURP−1又は関連タンパク質を対象者に投与することにより当該対象者に神経保護を提供する方法を提供し、ここで、当該神経保護は、アセチルコリン受容体の機能障害によって生じる神経障害を予防するものである。
【0034】
例えば、前記神経障害は、アセチルコリン受容体の機能障害によって引き起こされるあらゆる病態を含んでもよい。そのような障害には、限定しないが、疼痛、神経因性疼痛、統合失調症、認知障害、アルツハイマー病、及びパーキンソン病が含まれる。1つの好ましい態様において、アセチルコリン受容体は、ニコチン性アセチルコリン受容体又はムスカリン性アセチルコリン受容体である。好ましくは、ニコチン性アセチルコリン受容体は、アルファ7(α7)ニコチン性アセチルコリン受容体又はアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体関連タンパク質である。
【0035】
本発明の方法及び組成物において、SLURP−1は配列番号2のアミノ酸配列を有する。好ましい態様において、SLURP−1は成熟型である。更に好ましくはSLURP−1の成熟型にはSLURP−1のアミノ酸23〜103が含まれる。
【0036】
用語「対象者」又は「患者」は当業界でよく認識されており、そして本明細書では哺乳類、例えばイヌ、ネコ、ラット、マウス、サル、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラクダ、そして最も好ましくはヒトを言及するのに同義で使用される。態様によっては、対象者は処置を必要とする対象者である。しかしながら、他の態様において、対象者は、健常な対象者、例えば神経障害であることが知られておらず、又はそのように診断されていない対象者、例えば神経障害を有さない対象者であってもよい。あるいは、対象者は、既知の、診断済みの、又は疑わしい神経障害を有する。
【0037】
用語「処置」又は「予防」も当業界で認識されている。本明細書で使用する場合、これらの用語は、そのような処置が示唆される症状(例えば神経障害)を阻害、軽減、緩解、又は治療することを意味する。そのような処置の進行は、例えば当業界で知られている任意に手段によってモニタリングされうる。
【0038】
本発明の化合物又は医薬組成物(例えばSLURP−1、SLURP−1関連タンパク質、又は分泌型Ly−6/uPARファミリーの任意のメンバー)は、神経障害の処置に現在使用されている多数の周知の方で、対象者に投与されうる。例えば、神経障害の処置のために、本発明の化合物は、経口、静脈内、腹腔内、鼻内、又は筋肉内投与されうる。選択される投与量は、有効な処置を構成するのに十分なものであるべきだが、許容されえない副作用を引き起こすほど大量であるべきではない。病状(例えば神経障害)及び対象者/患者の健康の状態は、好ましくは投与の間又はその後の妥当な期間綿密にモニタリングされるべきである。投与には、SLURP−1タンパク質、SLURP−1関連タンパク質、又は分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバーを発現することができる発現ベクターを対象者/患者に投与することも含まれる。好ましくは、分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバーには、限定しないが、Lynx−1イソ型A、Lynx−1イソ型B(SLURP−2)及びRGTR−430が含まれる。
【0039】
用語「有効量」は当業界で周知であり、本明細書で使用される。これは、所望の結果、例えば阻害、軽減、緩解、又は治療を達成するのに有効な量を意味する。1つの態様において、本発明の化合物又は医薬組成物(例えば、SLURP−1、SLURP−1関連タンパク質、又は分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバー)は、約1.0pM〜約10μMの有効量で投与される。他の態様において、当該有効量は約10pM〜約1μM;約1pM〜約100nM;好ましくは約10pM〜約10nM;あるいは更に好ましくは約100pM〜約1nMである。
【0040】
本明細書で使用する場合、「SLURP−1関連タンパク質」は、SLURP−1(配列番号2)又はSLURP−1の成熟型(例えば、配列番号2のアミノ酸23〜103)に対し構造的相同性を示すタンパク質である。1つの態様において、SLURP−1関連タンパク質はSLURP−1又はSLURP−1の成熟型に対し約75%相同/同一である。他の態様において、SLURP−1関連タンパク質は約80%相同/同一;約85%相同/同一;好ましくは約90%相同/同一;更に好ましくは約95%相同/同一;又は最も好ましくは約99%相同/同一である。好ましい態様において、SLURP−1関連タンパク質はSLURP−1又はSLURP−1の成熟型と機能的に相同である。SLURP−1関連タンパク質は、限定しないが、分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバー(例えば、Lynx−1イソ型A、Lynx−1イソ型B(SLURP−2)及びRGTR−430等)を含んでもよい。
【0041】
相同性/同一性は典型的に配列解析ソフト(例えば、Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, WI 53705のSequence Analysis Software Package)を用いて測定される。類似のアミノ酸配列は、最大の相同性(すなわち同一性)を得るためにアラインされる。このために、人工的に配列内にギャップを導入することが必要な場合もある。一旦最適なアラインメントが設定されると、相同性の程度(すなわち同一性)が、両配列のアミノ酸配列が同一である位置の全てを、総位置数と比較して記録することで確立される。
【0042】
類似性のファクターには、類似のサイズ、形状及び電荷が含まれる。アミノ酸の類似性を決定する1つの特に好ましい方法は、引用により本明細書に組み入れられるDayhoff et al, 5 Atlas Of Protein Sequence And Structure 345-352 (1978 & Suppl.)に記載のPAM250マトリックスである。類似性スコアは、アラインされたペアワイズアミノ酸類似性スコアの合計として最初に算出される。挿入及び欠失は、相同性及び同一性のパーセンテージのために無視される。従って、ギャップペナルティーはこの計算に使用されない。続いて、生スコアは、候補化合物と参照配列のスコアの幾何平均で割ることで正規化される。幾何平均は、これらのスコアの積の平方根である。正規化された生スコアが相同性(パーセント)である。
【0043】
皮膚病を処置又は予防するためにSLURP−1を用いる方法
本発明は、有効量のSLURP−1又はSLURP−1関連タンパク質を皮膚病に罹患している対象者に投与することで、皮膚で発現しているアセチルコリン受容体の機能障害により生じた皮膚病を処置するための方法を提供する。
【0044】
更に、本発明はまた、有効量のSLURP−1又はSLURP−1関連タンパク質を、皮膚病を発症又はこれに罹患する危険性のある対象者に投与することで、皮膚で発現しているアセチルコリン受容体の機能障害により生じた皮膚病の開始を予防又は遅延するための方法を提供する。
【0045】
更に本明細書で提供するものとして、アセチルコリン受容体と有効量のSLURP−1とを接触させることにより表皮のカルシウム恒常性を調節するための方法があり、ここで、SLURP−1の有効量は約1pM〜約10μMである。
【0046】
本発明は更に、アセチルコリン受容体と有効量のSLURP−1又はSLURP−1関連タンパク質とを接触させることによりケラチノサイトの増殖及び分化を調節するための方法を提供し、ここで、前記有効量は約1pM〜約10μMである。
【0047】
本発明はまた、アセチルコリン受容体と有効量のSLURP−1又はSLURP−1関連タンパク質とを接触させることによりTNF−αの分泌を調節するための方法を提供し、ここで、前記有効量は約1pM〜約10μMである。
【0048】
更に、本発明は、アセチルコリン受容体と有効量のSLURP−1又はSLURP−1関連タンパク質とを接触させることにより炎症反応を調節するための方法も提供し、ここで、SLURP−1の有効量は約1pM〜約10μMである。
【0049】
好ましくは、アセチルコリン受容体はニコチン性アセチルコリン受容体又はムスカリン性アセチルコリン受容体である。例えば、ニコチン性アセチルコリン受容体は、アルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体又はアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体関連タンパク質である。
【0050】
1つの態様において、対象者に投与されるSLURP−1は、配列番号2のアミノ酸配列を有する。1つの好ましい態様において、SLURP−1は成熟型である。当業者は、SLURP−1の成熟型に配列番号2のアミノ酸23〜103が含まれることを認識するであろう。
【0051】
好ましくは、対象者は哺乳類である。更に好ましくは、対象者はヒトである。対象者は、処置が必要な対象者であってもよく、あるいは対象者は健常な対象者、例えば神経障害であることが知られておらず、又はそのように診断されていない対象者、例えば神経障害を有さない対象者であってもよい。他の態様において、対象者は、既知の、診断済みの、又は疑わしい神経障害を有する。皮膚病には、限定しないが、メレダ病、創傷治癒又は乾癬が含まれてもよい。当業者は、本明細書に開示されている方法及び組成物が、皮膚で発現しているアセチルコリン受容体の機能障害から生じるあらゆる皮膚病を処置又は予防するのに使用されうることを認識するであろう。
【0052】
本発明の化合物又は医薬組成物(例えばSLURP−1、SLURP−1関連タンパク質、又は分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバー)は、皮膚病の処置に現在使用されている多数の周知の方で、対象者に投与されうる。例えば、皮膚病の処置のために、本発明の化合物は、経口、静脈内、腹腔内、鼻内、又は筋肉内投与されうる。選択される投与量は、有効な処置を構成するのに十分なものであるべきだが、許容されえない副作用を引き起こすほど大量であるべきではない。適切な投与量の選択は当業者の技術範囲内である。病状(例えば皮膚病)及び対象者/患者の健康の状態は、好ましくは投与の間又はその後の妥当な期間綿密にモニタリングされるべきである。投与には、SLURP−1タンパク質、SLURP−1関連タンパク質、又は分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバーを発現することができる発現ベクターを対象者/患者に投与することも含まれうる。分泌型Ly−6/uPARファミリーの適当なメンバーには、限定しないが、Lynx−1イソ型A、Lynx−1イソ型B(SLURP−2)及びRGTR−430が含まれる。
【0053】
例えば、本発明の化合物又は医薬組成物(例えばSLURP−1、SLURP−1関連タンパク質、又は分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバー)は、約1.0pM〜約10μMの有効量で投与される。他の態様において、当該有効量は約10pM〜約1μM;約1pM〜約100nM;好ましくは約10pM〜約10nM;あるいは更に好ましくは約100pM〜約1nMである。
【0054】
神経障害又は皮膚病を処置又は予防するためのSLURP−1組成物
本発明はまた、有効量のSLURP−1、SLURP−1ミメティック、又はそれらの組み合わせ及び担体を含む組成物であって、アルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体又は関連タンパク質の機能を調節する組成物も提供する。1つの好ましい態様において、当該組成物はキットの一部として提供される。
【0055】
同様に、本発明はまた、本発明の組成物を神経障害に罹患している対象者に投与することによりアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体の機能障害によって生じた神経障害を処置する方法を提供する。
【0056】
更に提供されるものとして、本発明の組成物を、神経障害を発症又はそれに罹患する危険性のある対象者に投与することによりアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体の機能障害により生じる神経障害の開始を予防又は遅延するための方法を提供する。
【0057】
本発明は更に、本発明の組成物を皮膚病に罹患している対象者に投与することにより、皮膚で発現しているアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体の機能障害により生じた皮膚病を処置する方法を提供する。
【0058】
更に、本発明はまた、皮膚病を発症又はそれに罹患する危険性のある対象者に本発明の組成物を投与することにより、皮膚で発現しているアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体の機能障害により生じる皮膚病の開始を予防又は遅延する方法を提供する。
【0059】
本発明の方法及び組成物はまた、SLURP−1ペプチドミメティクス(peptide mimetics)(ペプチドミメティクス(peptidomimetics))、SLURP−1関連タンパク質ペプチドミメティクス、及び分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバーのペプチドミメティクスを包含する。ペプチドミメティクスを開発するための技術は当業界で周知である(例えば、Navia and Peattie, Trends Pharm Sci 14: 189-195,1993 ; Olson et al, J Med Chem 36: 3039-3049を参照のこと。これは引用により本明細書に組み入れられる)。具体的には、SLURP−1、又はSLURP−1関連タンパク質、又は分泌型Ly−6/uPARファミリーの任意のメンバーのアミノ酸配列、X線結晶学及び核磁気共鳴技術を、コンピューターによる分子モデリングと一緒に用いて、ファーマコフォア仮説が展開され、そしてペプチドミメティック化合物が作成され、そしてアッセイ系で試験される。
【0060】
例えば、本発明は、本発明の化合物又は組成物(例えばSLURP−1又は分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバーであって、1又は複数のペプチド結合がペプチダーゼによる開裂に影響を受けにくい別の型の共有結合で置換されているもの(「ペプチドミメティック」))を含む。対象者への注射の後の前記ペプチドのタンパク質分解が問題である場合、特に感受性のあるペプチド結合を非開裂性のペプチドミメティックで置換することは、生じたペプチドをより安定で且つ、その結果治療薬として更に有用なものとする。そのようなミメティクス、及びそれらをペプチドに組み込む方法は当業界で周知である。同様に、L−アミノ酸残基の置換は、ペプチドをタンパク質分解に対してあまり感受性のないものにする標準的な方法である。ペプチドミメティックの分子相互作用は、天然の分子のものと同様である。
【0061】
本発明の化合物、組成物又は医薬組成物(例えば、SLURP−1、SLURP−1関連タンパク質、又は分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバー)、並びにそれらの誘導体、フラグメント、類似体及び相同体は、投与に適した組成物に組み込むことができる。そのような組成物は、典型的に核酸分子、又はタンパク質、及び医薬として許容される担体を含んで成る。本明細書で使用する場合、「担体」又は「医薬として許容される担体」は、医薬の投与に適合するありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等を含むことが意図される。適当な担体は、当業界の標準的な参照テキストであるRemington's Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載されており、これは引用により本明細書に組み入れられる。そのような担体又は希釈剤の好ましい例には、限定しないが、水、食塩水、フィンガー溶液(finger's solutions)、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンを含む。リポソーム及び非水性賦形剤、例えば固定油も使用されうる。そのような媒体及び物質の医薬活性物質のための使用は当業界で周知である。常用の媒体又は物質は活性化合物と適合性がある限り、組成物におけるそれらの使用が考慮される。追加の活性化合物も組成物に組み込むことができる。
【0062】
本発明の医薬組成物は、その意図する投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例には、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、経粘膜、及び経直腸投与が含まれる。非経口、皮内、又は皮下への適用のために使用される溶液又は懸濁液は、以下の成分を含んでもよい:滅菌希釈液、例えば注射用水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩、及び等張性を調節するための物質、例えば塩化ナトリウム又はデキストロース。pHは酸又は塩基、例えば塩酸又は水酸化ナトリウムで調節されうる。非経口調製物は、アンプル、使い捨てのシリンジ又はガラス若しくはプラスチックで作られた複数回投与のためのバイアル内に封入されうる。
【0063】
注射用途に適した医薬組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液及び、滅菌注射溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末を含む。静脈内投与に適した担体には、生理食塩水、静菌性の水、Cremophor EL(登録商標)(BASF, Parsippany, N.J.)又はリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。いずれの場合にも、組成物は滅菌されている必要があり、そして容易に注射針から透過させる必要がある限り液体であるべきである。これは製造及び保存の条件の下で安定でなければならず、そして微生物、例えば細菌及び真菌の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)を含む溶媒又は分散媒、及びそれらの適当な混合物であってもよい。適切な流動性は、例えばコーティング、例えばレシチンの使用により、分散液の場合には必要な粒径の維持により、そして界面活性剤の使用により維持されうる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等により達成されうる。多くの場合、等張剤、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウムが組成物中に含まれるのが好ましいであろう。注射用組成物の長期の吸収は、組成物中に吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることで実現されうる。
【0064】
滅菌注射溶液は、必要量の本発明の化合物又は医薬組成物(例えば、SLURP−1、SLURP−1関連タンパク質、又は分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバー)を、上文で列記した成分のうちの1つ又はそれらの組み合わせと一緒に適切な溶媒に組み込み、必要に応じてその後濾過滅菌することで調製されうる。通常、分散液は、活性化合物を基本的な分散媒及び上文で列記したものに由来する必要な他の成分を含む滅菌した賦形剤中に活性化合物を組み込むことで調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥であり、これは予め無菌で濾過したそれらの溶液から活性成分と任意な追加の所望とする成分の粉末を生成させる。
【0065】
経口用組成物は、概して不活性希釈剤又は食用担体を含む。それらはゼラチンカプセル内に封入されていても、あるいは錠剤に圧縮されていてもよい。経口用治療薬投与のために、活性化合物は賦形剤と一緒に組み込まれ、そして錠剤、トローチ、又はカプセルの形態で使用されてもよい。経口用組成物はまた、マウスウォッシュとしての使用のための液体担体を用いて調製されることがあり、ここで、液体担体中の化合物は経口で適用され、そして口の中で広げられ、喀出又は嚥下される。医薬として適合可能な結合剤、及び/又は補助材料は、前記組成物の一部として含まれることがある。錠剤、丸薬、カプセル、トローチ等は、以下の成分のうちのいずれか、又は同程度の性質を有する化合物を含むことがある:結合剤、例えば微結晶性セルロース、トラガカントガム又はゼラチン;賦形剤、例えばデンプン又はラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、Primogel、又はコーンスターチ;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム又はSterotes;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えばスクロース又はサッカリン;あるいは着香料、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香味料。
【0066】
吸入投与の場合、前記化合物は、適当な推進剤、例えばガス、例えば二酸化炭素を含む加圧容器又はディスペンサー、あるいはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0067】
全身投与も、経粘膜的又は経皮的な手段によって行われることがある。経粘膜又は経皮投与の場合、浸透されるべき障壁にとって適切な浸透剤が製剤中で使用される。そのような浸透剤は広く当業界で知られており、例えば、経粘膜投与の場合、界面活性剤、胆汁塩、及びフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻用スプレー又は座薬の使用を通じて達成されうる。経皮投与の場合、前記活性化合物は、当業界で知られているような軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、又はクリームへと製剤化されうる。
【0068】
前記化合物はまた、直腸からの送達のために座薬(例えば、常用の座薬用基材、例えばココアバター又は他のグリセリドを用いる)又は停留浣腸の形態で調製されうる。
【0069】
1つの態様において、前記活性化合物は、身体からの迅速な排出から前記化合物を保護する担体と一緒に調製され、例えば徐放製剤であり、例えばインプラント及びマイクロカプセル化された送達系である。生分解性の生体適合性ポリマーが使用されることがあり、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸である。前記製剤の調製方法は当業者にとって自明であろう。前記材料もAlza Corporation及びNova Pharmaceuticals, Incから購入可能である。リポソーム懸濁液(感染細胞をウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で標的化したリポソームを含む)も医薬として許容される担体として使用されうる。これらは当業者に知られている方法、例えば米国特許第4,522,811号に記載の方法に従い調製されうる。米国特許第4,522,811号は引用によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0070】
投与のし易さ及び投与量の均一性のために、経口又は非経口組成物を投与単位形態(dosage unit form)で製剤化することが特に好ましい。本明細書で使用する場合、投与単位形態とは、単一の投与量として、処置されるべき対象者に適した物理的に別個の単位を意味する。各単位は、所望の治療効果をもたらすように算出された既定量の活性化合物と必要な医薬担体とを含む。本発明の投与単位形態の仕様は、前記活性化合物の独特な特徴及び達成されるべき特定の治療効果によって決定され、且つそれらに直接的に依存する。
【0071】
本発明の組成物は、投与の説明書と一緒に、キット、容器、パック、又はディスペンサー内に含まれてもよい。
【0072】
本発明の別の側面は、SLURP−1タンパク質、SLURP−1関連タンパク質、又は分泌型Ly−6/uPARファミリーの任意のメンバー由来のタンパク質、あるいはそれらの誘導体、フラグメント、類似体及び相同体をコードする核酸を含むベクター、好ましくは発現ベクターに関する。本明細書で使用する場合、用語「ベクター」は、連結されている別の核酸分子を輸送することができる核酸分子を意味する。ベクターの1つの型は「プラスミド」であり、これは追加のDNAセグメントがライゲーションされうる環状二本鎖DNAループを意味する。ベクターの別の型はウイルスベクターであり、ここで、追加のDNAセグメントはウイルスゲノムとライゲーションされうる。ベクターによってはそれらが導入されている宿主細胞において自己複製することができる(例えば、細菌性の複製開始点を有する細菌ベクター及びエピソーム性の哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性の哺乳類ベクター)は宿主細胞内への導入時に宿主細胞のゲノム内に組み込まれ、そしてそれにより宿主のゲノムと一緒に複製される。更に、ベクターによっては、作用可能に連結されている遺伝子の発現を方向付けることができる。そのようなベクターは本明細書では「発現ベクター」と称する。通常、組換えDNA技術において実用的な発現ベクターは、しばしばプラスミドの形態にある。本明細書において、「プラスミド」と「ベクター」は、プラスミドはベクターの最も一般的に使用される形態であるので、交換可能に使用することができる。しかしながら、本発明は、発現ベクターのその他の形態、例えばウイルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルス)であって、同等の機能を果たすものを含むことが意図される。
【0073】
本発明の組換え発現ベクターは、原核細胞又は真核細胞におけるSLURP−1、SLURP−1関連タンパク質、又は分泌型Ly−6/uPARファミリーの任意のメンバー由来のタンパク質の発現のために設計されうる。例えば、前記タンパク質は、細菌細胞、例えばエスケリッチャ・コリ(Escherichia coli)、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを用いる)、酵母細胞又は哺乳類細胞において発現されうる。適当な宿主細胞はGoeddel, GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)において更に考察されている。あるいは、組換え発現ベクターは、例えばT7プロモーター制御配列及びT7ポリメラーゼを用いて in vitroで転写及び翻訳されうる。
【0074】
アセチルコリン受容体活性を調節するためのSLURP−1の使用方法
本発明はまた、アセチルコリン受容体と有効量のSLURP−1又はSLURP−1関連タンパク質とを接触させることでアセチルコリン受容体の活性を調節する方法であって、前記有効量が約1pM〜約10μMである、方法を提供する。好ましい態様において、アセチルコリン受容体の調節はアセチルコリン受容体の適切な機能を回復させる。
【0075】
例えば、アセチルコリン受容体はニコチン酸アセチルコリン受容体又はムスカリン性アセチルコリン受容体である。好ましくは、ニコチン酸アセチルコリン受容体はアルファ7ニコチン酸アセチルコリン受容体又はアルファ7ニコチン酸アセチルコリン受容体関連タンパク質である。
【0076】
SLURP−1は配列番号2のアミノ酸配列を有している。1つの好ましい態様において、SLURP−1は成熟型である。更に好ましくは、SLURP−1の成熟型は配列番号2のアミノ酸23〜103を含む。
【0077】
用語「調節(modulate又はmodulating)」は当業界で認識されている。本明細書で使用する場合、当該用語は、刺激、誘導、上方制御、増強又は低下、阻害、減少、抑制を意味する。本明細書で使用する場合、「調節物質」は、アセチルコリン受容体の活性を刺激(すなわち誘導、増強又は上方制御)又は阻害(すなわち減少、抑制又は低下)する分子である。
【0078】
アセチルコリン受容体活性調節物質のスクリーニング方法
本発明は更に、a)第一アセチルコリン受容体に候補化合物を曝露し、そして当該曝露後の第一アセチルコリン受容体の活性を測定し、b)第二アセチルコリン受容体に有効量のSLURP−1又は関連化合物を曝露し、そして当該曝露後の第二アセチルコリン受容体の活性を測定し、そしてc)最初の曝露後の第一アセチルコリン受容体の活性と、SLURP−1又は関連化合物の曝露後の第二アセチルコリン受容体の活性とを比較すること、により、アセチルコリン受容体活性の調節物質をスクリーニングする方法を提供する。第一アセチルコリン受容体の活性が曝露後の第二アセチルコリン受容体の活性と同程度である場合、前記候補化合物はアセチルコリン受容体活性の調節物質である。
【0079】
1つの態様において、アセチルコリン受容体はニコチン酸アセチルコリン受容体又はムスカリン性アセチルコリン受容体である。好ましくは、ニコチン性アセチルコリン受容体は、アルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体又はアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体関連タンパク質である。
【0080】
SLURP−1は配列番号2のアミノ酸配列を有している。1つの好ましい態様において、SLURP−1は成熟型である。SLURP−1の成熟型は配列番号2のアミノ酸23〜103を含む。
【0081】
典型的に、本発明の化合物(例えばSLURP−1、SLURP−1関連タンパク質、又は分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバー)は、約1.0pM〜約10μMの有効量でアセチルコリン受容体に接触するための溶液を形成する。。他の態様において、当該有効量は約10pM〜約1μM;約1pM〜約100nM;好ましくは約10pM〜約10nM;あるいは更に好ましくは約100pM〜約1nMである。
【0082】
抗SLURP抗体
本発明により、SLURP−1に対して高い特異的結合親和性を有する抗体も提供される。当該抗体は、例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体又はヒト化抗体であってもよい。例えば、高い特異的結合親和性は、5.0x10-5M未満の解離定数で表されることがある。好ましくは、高い特異的結合親和性は、5.0x10-7M未満の解離定数で表される。更に好ましくは、高い特異的結合親和性は、5.0x10-9M未満の解離定数で表される。
【0083】
用語「抗体」は、本明細書で使用する場合、イムノグロブリン分子及びイムノグロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性の部分、すなわち抗原と特異的に結合(免疫反応)する抗原結合部位を含む分子を意味する。そのような抗体には、限定しないが、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、Fab、Fab’及びF(ab’)2フラグメント、並びにFab発現ライブラリーが含まれる。通常、ヒトから得られる抗体分子は、クラスIgG、IgM、IgA、IgE及びIgDのいずれかであって、当該分子に存在する重鎖の性質で互いに異なるものに関連している。クラスによっては、更にサブクラスを有することがあり、例えばIgG1、IgG2等である。更に、ヒトにおいて、軽鎖は、カッパ鎖又はラムダ鎖であってもよい。本明細書での抗体への言及には、全てのそのようなヒトの抗体の種クラス、サブクラス及び型への言及が含まれる。
【0084】
本発明の単離されたSLURP−1タンパク質、SLURP−1関連タンパク質、又はSLURP−1ペプチドミメティックは、抗原、又はそれらの一部又はフラグメントとしての役割を果たすことがあり、そして更に、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の調製のための標準的な技術を用いて、抗原に免疫特異的に結合する抗体を生成せしめるための免疫原として使用されることがある。完全長のタンパク質が使用されることがあり、あるいは、本発明は免疫原としての使用のための抗原の抗原性ペプチドフラグメントを提供する。抗原性ペプチドフラグメントは、完全長タンパク質のアミノ酸配列のうちの少なくとも6アミノ酸残基を含んで成り、且つそれらのエピトープを包含する。ここで、前記ペプチドに対して産生される抗体は完全長タンパク質又は前記エピトープを含む任意のフラグメントと特異的な免疫複合体を形成する。エピトープとは、ポリペプチドの抗原決定基を意味する。典型的に、エピトープは、ポリペプチドの特定の領域がその表面に位置し、そしてそして水性ベースの環境に曝露されうるように親水性アミノ酸を含む。好ましくは、抗原性ペプチドは、エピトープにとって独特な空間的配座で少なくとも3つのアミノ酸残基を含んで成る。通常、抗原性ペプチドは少なくとも5アミノ酸残基、又は少なくとも10アミノ酸残基、又は少なくとも15アミノ酸残基、又は少なくとも20アミノ酸残基、又は少なくとも30アミノ酸残基を含んで成る。更に、SLURP−1タンパク質、SLURP−1関連タンパク質、又はSLURP−1ペプチドミメティック、あるいはそれらのフラグメントはまた、保存領域を含むオリゴペプチドに対して産生されうる。
【0085】
SLURP−1タンパク質、SLURP−1関連タンパク質、又はSLURP−1ペプチドミメティック配列の疎水性解析は、どの領域が特に親水性であるか、つまり、抗体産生をターゲティングするのに有用な表面残基をコードする可能性があるを示す。抗体産生をターゲティングする手段として、親水性及び疎水性の領域を示すハイドロパシープロットが、当業界で周知な任意の方法、例えばフーリエ変換を用いる又は用いないKyte Doolittle法又はHopp Woods 法により行われうる。例えば、Hopp and Woods, 1981, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 78: 3824-3828 ; Kyte and Doolittle 1982,J. Mol. Biol. 157: 105-142を参照のこと。これらはそれぞれ引用によりその全体が本明細書に組み入れられる。抗原性タンパク質、あるいはそれらの誘導体、フラグメント、類似体又は相同体の中の1又は複数のドメインに特異的な抗体も本明細書で提供される。本発明のタンパク質、あるいはそれらの誘導体、フラグメント、類似体、相同体又はオルソログも、これらのタンパク質成分と免疫特異的に結合する抗体の産生における免疫原として利用されうる。
【0086】
当業界で知られている種々の手順が、本発明のタンパク質、あるいはそれらの誘導体、フラグメント、類似体、相同体又はオルソログに対するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体の産生に使用されることがある(例えば、Antibodies : A Laboratory Manual, Harlow E, and Lane D, 1988, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYを参照のこと。これは引用により本明細書に組み入れられる)。これらの抗体のうち幾つかは下文で考察する。
【0087】
ポリクローナル抗体の産生のために、種々の適当な宿主動物(例えば、ウサギ、ヤギ、マウス又は他の哺乳類)が、天然タンパク質、それらの合成変異体、あるいは上述のものの誘導体による1又は複数回の注射により免疫されうる。適切な免疫原性の調製物には、例えば天然の免疫原性タンパク質、当該免疫原性タンパク質に相当する化学合成したポリペプチド、又は組換えで発現した免疫原性タンパク質を含まれることがある。更に、前記タンパク質は、免疫される哺乳類において免疫原性であることが知られている第二のタンパク質と接合されることがある。そのような免疫原性タンパク質の例には、限定しないが、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリン及びダイズトリプシン阻害剤が含まれる。前記調製物は更にアジュバントを含むことがある。免疫反応を増大するために使用される種々のアジュバントには、限定しないがフロイント(完全及び不完全)、ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性剤(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳濁液、ジニトロフェノール等)、ヒトにおいて使用可能なアジュバント、例えばカルメット・ゲラン桿菌及びコリネバクテリウム・パルヴム、又は類似の免疫賦活物質が含まれる。利用されうるアジュバントの追加の例には、MPL−TDMアジュバント(モノホスホリル脂質A、合成トレハロースジコリノマイコレート(dicorynomycolate))及びCpGジヌクレオチドモチーフ(例えば、Krieg, A. M. Biochim Biophys Acta 1489(1) : 107-16,1999を参照のこと)が含まれる。前記免疫原性タンパク質に対するポリクローナル抗体分子は、哺乳類から(例えば血液から)単離されることがあり、そして更に、周知の技術、例えばプロテインA又はプロテインGを用いるアフィニティークロマトグラフィーによって精製されることがあり、これにより免疫血清のIgG画分を主に提供される。次に、又はその代わりとして、求めるイムノグロブリンの標的である特異的抗原、又はそのエピトープは、イムノアフィニティークロマトグラフィーにより免疫特異的抗体を精製するためにカラム上に固定化されうる。イムノグロブリンの精製は、例えばD.Wilkinson (The Scientist, published by The Scientist, Inc. , Philadelphia PA, Vol. 14, No. 8 (April 17,2000), pp. 25-28)によって考察されている。
【0088】
用語「モノクローナル抗体」(MAb)又は「モノクローナル抗体組成物」は、本明細書で使用する場合、独特の軽鎖遺伝子産物及び独特の重鎖遺伝子産物から成る抗体分子の分子種を1種類だけ含む抗体分子群を意味する。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は、前記群の分子全てにおいて同一である。従って、MAbは、独特の結合親和性を特徴とする抗原の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位を含む。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、例えばKohler and Milstein, Nature, 256: 495 (1975)に記載の方法を用いて調製されうる。ハイブリドーマ法において、マウス、ハムスター、又は他の適切な宿主動物は、典型的に、免疫物質と特異的に結合するであろう抗体を産生し、あるいは産生することができるリンパ球を誘発するよう免疫物質で免疫される。あるいは、リンパ球はin vitroで免疫されうる。
【0089】
モノクローナル抗体は、組換えDNA法、例えば米国特許第4,816,567号に記載のものによっても生成されうる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、常用の手順を用いて(例えばマウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによる)容易に単離され、そして配列決定されうる。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源としての役割を果たすことができる。一旦単離されると、当該DNAは発現ベクター内に配置されることがあり、これは、他の方法ではイムノグロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞にトランスフェクションされ、組換え宿主細胞内でのモノクローナル抗体の合成をもたらす。DNAはまた、例えば相同のマウス配列に代えてヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列に置き換えることにより(米国特許第4,816,567号;Morrison, Nature 368, 812-13 (1994))、又はイムノグロブリンコード配列に対し、非イムノグロブリンポリペプチドのコード配列の全部又は一部を共有結合させることにより修飾されうる。そのような非イムノグロブリンポリペプチドは本発明の抗体の定常ドメインと置換され、あるいは本発明の抗体の1つの抗体結合部位の可変ドメインと置換され、キメラ二価抗体を作出せしめる。
【0090】
本発明のタンパク質抗原に対する抗体は、更にヒト化抗体又はヒト抗体を含んで成ることがある。これらの抗体はヒトに対する投与に適しており、投与されたイムノグロブリンに対しヒトが免疫反応を起こすことがない。抗体のヒト化形態は、主にヒトイムノグロブリンの配列を含んで成り、且つ非ヒトイムノグロブリン由来の最小配列を含むキメライムノグロブリン、イムノグロブリン鎖又はそれらのフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2又は抗体の他の抗原結合配列)である。ヒト化はWinterと共同研究者の方法に従い(Jones et al., Nature, 321: 522-525(1986) ; Riechmann et al., Nature, 332: 323-327(1988) ; Verhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536(1988))を参照のこと)、げっ歯類のCDR又はCDR配列で相当するヒト抗体の配列を置換することで実施されうる(米国特許第5,225,539号も参照のこと)。ヒト化抗体は、任意にまたイムノグロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒトイムノグロブリンのものを含んで成る(Jones et al. , 1986; Riechmann et al., 1988 ; and Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2: 593-596 (1992)を参照のこと)。
【0091】
本発明は更に以下の実施例で説明されるが、これは特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0092】
SLURP−1が分泌型ペプチドであるか否かを評価し、そしてシグナル配列の推定上の開裂部位の存在を決定するために、N末端に赤血球凝集素(HA)タグを、そしてC末端にmycタグを有する組換えタンパク質SLURP−1を産生した。具体的には、プラスミドを構築した。具体的には、哺乳類細胞における発現のために、SLURP−1をコードするcDNAをPCRで修飾して5’HindIII及び3’XbaI制限部位を以下のプライマーでそれらの末端に付加した:
センス5'-AAGCTTGGAGCAATGGCCTCTCGCTGG(配列番号3)及びアンチセンス5'-TCTAGAGAGTTCCGAGTTGCAGAGGTC(配列番号4)。
【0093】
PCRフラグメントをアガロースゲルから精製し、そしてHindIII及びXbaIで消化したpBudCE4(Invitrogen)内にライゲーションして、ウェスタン解析による検出のためのC末端のmycタグの付加及び精製のためのHis6タグの付加を許容するプラスミドpBud−SLURP−1を生成せしめた。N末端及びC末端の両方にタグを有する組換えSLURP−1タンパク質を生成せしめるために、SLURP−1をコードするcDNAは、5’EcoRV及び3’BglII制限部位を末端に含み、且つmycタグを含むプライマーを用いたPCRによりpBud−SLURP−1から増幅した。以下のプライマーを使用した:
センス5'-GAGATATCGGAGCAATGGCC-TCTCG (配列番号5)及びアンチセンス5'-AGAGATCTTCACAGATCCTCTT-CTGAGATGAGTTT(配列番号6)。
【0094】
PCRフラグメントをアガロースゲルから精製し、そしてEcoRV及びBglIIで消化したpCRUZ−HA(Santa Cruz)内にライゲーションして、N末端赤血球凝集素(HA)タグの付加を許容するpCSLURP−1を生成せしめた。
【0095】
続いて、生じたプラスミドはコンピテントXL1−Blue細胞を形質転換するのに使用した。1つのコロニーを選択し、そしてプラスミドDNAを単離し、取扱説明書に従いQiagenの試薬を用いて精製した。昆虫細胞における発現のために、pBud−SLURP−1プラスミドをHindIII及びEcoRVで消化した。C末端にmycタグを有するSLURP−1のcDNAに相当するフラグメントをアガロースゲルから精製し、そしてHindIII及びXbaIで消化したpIZ(Invitrogen)内にライゲーションし、その結果、mycタグ及びHis6タグを含むpBud−SLURP−1と同一のタンパク質をコードするpIZ−SLURP−1を生成せしめた。全てのプラスミドの正確な挿入及びインフレームでのクローニングは配列決定により確認した。
【0096】
HEK293T細胞(ATCC CRL-11268)は、10%ウシ胎児血清(Gibco)、2mML−グルタミン、100ユニット/mlペニシリン、及び100mg/mlストレプトマイシンを補足したダルベッコ改変イーグル培地中、37℃、5%CO2加湿環境で培養した。細胞は90%コンフルエントに達したらトリプシン処理で回収し、そして1:5の分割比でプレーティングした。SLURP−1を発現する安定な細胞系は、既述のとおり(Jordan et al. , Nucl. Acids Res. , 24,596-601 (1996)を参照のこと)pBud−SLURP−1のリン酸カルシウムトランスフェクション及びゼオシン選択で生成せしめた。クローン細胞系を希釈法で単離した。イラクサギンウワバ(trichoplusia ni)(HigiFive, Invitrogen)細胞を27℃で Express Five(登録商標)SFM培地(Life Technologies)中で維持した。安定な細胞系を生成するために、10μgのpIZ−SLURP−1をHighFive細胞内にCellfectin(登録商標)を用いて取扱説明書に従いトランスフェクションした。ゼオシンを選択のために48時間後に添加した。クローン細胞系をクローニングシリンダーで単離した。
【0097】
N末端に赤血球凝集素(HA)タグを、そしてC末端にmycタグを有する産生した組換えタンパク質SLURP−1を図1Aに示す。このコンストラクトによる293T細胞の一過性トランスフェクションの後、48時間後の培養液中のSLURP−1を抗myc抗体を用いたイムノブロッティングにより同定した(図1Bを参照のこと)。図1Bに示すとおり、抗HA抗体によるイムノブロッティングは培養液中のSLURP−1の存在を示さなかった。これらの結果は、SLURP−1のシグナル配列が分泌前の細胞内プロセシングの間に開裂されていることを示している。
【0098】
組換えポリヒスチジンタグ付きSLURP−1は、Talon樹脂(Clontech)を用いたコバルトアフィニティークロマトグラフィーで精製した。具体的には、組換えSLURP−1は、培養液回収前に3日間培養した、安定トランスフェクションした哺乳類細胞及び昆虫細胞の培養液から、His6タグを用いて精製した。バッファーA(50mMリン酸ナトリウム;300mMのNaCl;pH7.4)に対する透析の後、上清はTalon樹脂(Clontech)と一緒に、添付されていた本来のバッファープロトコールでインキュベートした。洗浄後、融合タンパク質は150mMイミダゾールを含むバッファーAで溶出した。SLURP−1を含む画分は、バッファーAに対して透析するか、あるいはBioPrepSE-100/17ゲルろ過クロマトグラフィーカラム上に載せ、そしてバッファーAで溶出して純粋な組換えSLURP−1を得た。
【0099】
図2Aは、リン酸カルシウムトランスフェクション及びゼオシン選択で生成した293T−SLURP−1の安定な細胞系を示す。培養液は72時間後に回収した。His6タグ付きSLURP−1はTalon樹脂を用いて培養液から精製した。画分を15%SDS−PAGE上に流した。タンパク質は、銀染色又は抗myc抗体によるイムノブロッティングのいずれかで明らかにされた。レーン1、インプット;レーン2、フロースルー;レーン3、洗浄液1;レーン4、洗浄液2;レーン5、溶出液1;レーン6、溶出液2.図2Aの結果は、大部分のタンパク質が樹脂に結合せず、フロースルー画分に残っていたことを示す。
【0100】
図2Bは、Talon樹脂による精製及びサイズ排除クロマトグラフィーの後の組換えSLURP−1の銀染色したSDS−PAGE(15%アクリルアミド)を示す。図2Bの結果は、一緒に精製されたタンパク質がゲルろ過(BioPrepSE-100/17)で排除され、そして純粋な組換えSLURP−1が得られたことを示している。推定の最終的な収量は培養液1リットル当たり約100μgのタンパク質であった。
【実施例2】
【0101】
タンパク質のグリコシル化は生物学的特性を変化させることがあり、そしてSLURP−1はN64上に推定のNグリコシル化部位を含むので、部分的に精製されたSLURP−1を哺乳類細胞及び昆虫細胞内で産生して、そしてNグリカン鎖を加水分解するNグリコシダーゼFと一緒にインキュベートした。具体的には、昆虫細胞又は哺乳類細胞培養液のいずれかから部分的に精製された約10mgのmyc−His6タグ付きSLURP−1を25mMのリン酸ナトリウム(pH7.0)、25mMのEDTA、及び0.15%SDSの溶液中で希釈し、そして次に100℃で5分間加熱した。溶液を冷却した後、10%NonidetP−40及び0.6UのN−グリコシダーゼF(Roche)を添加し(最終的な界面活性剤濃度0.1%SDS及び0.5%NonidetP−40)、そして混合物を37℃で20時間インキュベートした。反応はSDS−PAGEサンプルバッファーを添加し、続いて100℃で5分間インキュベーションすることで停止させた。続いて試料を15%SDS−PAGEに流し、そして。一緒に精製したタンパク質をN−グリコシダーゼF活性のポジティブな内部標準として用いて、銀染色又は抗myc抗体によるイムノブロッティングのいずれかで明らかにした。これらの一緒に精製したタンパク質のうちの幾つかの移動度の変化は、酵素の適切な機能性を示した。図1Cの矢印は、N−グリコシダーゼ処理前には存在していない、一緒に精製された脱グリコシル化タンパク質を示す。図1Cの結果は、N−グリコシダーゼ処理がSLURP−1の移動度を変化させなかったことを示しており、このことはSLURP−1がグリコシル化されないことを示唆している。
【実施例3】
【0102】
SLURP−1はLy−6/αBgtxファミリーのメンバーであるので、他のタンパク質に対するSLURP−1の類似性を決定するために構造解析の研究が実施された。図3Aは、Ly−6/αBgtxファミリーの系統樹を示しており、これは分泌型のヘビ毒素とGPIアンカー型Ly−6/uPARファミリーとの関係を示唆している。系統樹の計算は配列距離の方法に基づいており、且つ近隣結合アルゴリズムを利用している(Saitou and Nei, Mol. Biol. Evol. , 4, 406-425 (1987)を参照のこと)。図4は、Ly−6/uPARファミリーのメンバーとヘビ毒の間のドメイン構成の比較を示している。当該ファミリーのタンパク質の全てが同一の共通ドメインを共有している。uPARは同一の構造を共有しているだけでなく、3つの連続したLy−6/uPARドメインを含んでいる。GPIアンカーシグナル配列は、GPI部分の付加後の開裂部位を示している。図3A及び図4のデータは、SLURP−1アミノ酸配列を基にした系統樹の解析が、単一ドメインのヘビとカエルの細胞毒素、すなわちα−ブンガロトキシンのサブファミリーと密接に関連していることを示している。このデータは更に、SLURP−1が、哺乳類のGPI−アンカー型受容体に対してよりもヘビ毒に対して系統樹的により密接に関連していることを示している。
【0103】
SLURP−1の構造を更に解析するために、3次元モデルが作られた。具体的には、SLURP−1の3次元モデルは、コンピュータープログラム3D−PSSM(Kelley et al. , J. Mol. Biol., 299, 499-520 (2000)を参照のこと)で構築された。3D−PSSM(3次元位置特異的スコアリングマトリックス)は、タンパク質の構造分類(SCOP)データベースにおいて類似の3次元構造の相同タンパク質の構造アラインメントを使用して、構造的に均等な残基を得る。これらの均等物は、標準的な配列サーチによって得られる多重アラインメント配列にまで拡張するために使用される。結果として生じる大きなスーパーファミリーベースの多重アラインメントは、PSSMに変換される。第二の構造マッチング及び溶媒和ポテンシャルとを組み合わせることで、3D−PSSMは相同タンパク質間の構造的且つ機能的関係を認識することができる(Kelley et al. , J. Mol. Biol. , 299,499-520 (2000)を参照のこと)。図3Bは、SLURP−1モデル(左)とCD59細胞外ドメインの実験的NMR構造(右。PDBコード:1ERG)の比較を示す。SLURP−1のシステインは、CD59の細胞外ドメインのジスルフィド結合として黄色で着色する。このデータは、CD59のジスルフィド架橋及びSLURP−1システインの相同的配置を示唆する。両タンパク質は、ヘビタンパク質の特徴的な「スリーフィンガー」の外観を構造的に採用しているか、採用することが予想される。分子のN末端及びC末端を標識する。図3BのSLURP−1の3次元構造解析は、SLURP−1が他のLy−6タンパク質及びスリーフィンガーのカエル及びヘビ毒、すなわちCD59及びα−ブンガロトキシンの三次元構造に似ていることを示す。
【実施例4】
【0104】
SLURP−1がニコチン性アセチルコリン受容体と相互作用し、そして機能的に前記毒と相同であるであるか否かを決定する研究を実施した。当該研究において、コントロール及び組み換えヒトα7ニコチン性アセチルコリン受容体を発現しているSLURP−1処置したアフリカツメガエル(Xenopus)の卵母細胞におけるアセチルコリン誘発型の巨視的電流応答を試験した。
【0105】
具体的には、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞を単離し、そして既述のように調製した(Bertrand et al., In: Methods in Neuroscience, Conn, M. (ed. ). Academic Press, New York, Vol. 4, pp. 174-193 (1991)を参照のこと)。卵母細胞の核内に2ngのヒトα7cDNAをインジェクションし、そして96ウェルマイクロタイタープレート内で18℃で維持した。88mMのNaCl、2.5mMのKCl、10mMのHEPES、1mMのMgCl2、及び2mMのCaCl2から成るOR2コントロール培地をNaOHでpH7.4に調節した。電気生理学的実験をcDNAインジェクションから2〜4日後に実施した。電気生理学的記録は二電極電圧固定法を用いて実施した(GeneClamp amplifier; Axon Instruments, Union City, CA, USA)。保持電位は−100mVとした。電極をホウケイ酸ガラスから引き抜き、そして3MのKCl中に入れた。溶液の交換は自動システムベースの液体処理ロボットで実施した。卵母細胞は、ペプチドインキュベーションの間を除き、OR2で連続灌流した。卵母細胞は実験の間18℃で維持した。用量反応曲線は、式y=Imax*{1(1+(EC50/[Ach]n}(ここで、Imaxは最大正規化電流増幅であり、EC50は半有効アゴニスト濃度であり、nはヒル係数であり、そして[Ach]はアセチルコリン濃度である。
【0106】
アセチルコリン誘発反応は、高度に精製したSLURP−1に対する曝露前後(2.5〜5分)に測定した。SLURP−1は、濃度依存的にアセチルコリン誘発型の巨視的電流の増幅を増強した。図5Aは20nMのSLURP−1に対する曝露の5分前及び後の電流応答を示す。電流は100mMのアセチルコリンの2秒の適用で活性化した。図5Aの結果は、200pMの濃度で、SLURP−1がアセチルコリン誘発型の巨視的電流の増幅を421±130%(n=6)に増大させ、そして20nMのSLURP−1がこの増幅をコントロールと比較して1214±550%(n=4)に増強したことを示す。図5Bに示す通り、用量反応曲線はSLURP−1がα7ニコチン性アセチルコリン受容体ホモペンタマーを増強することを示しており、これはEC50がコントロールの場合175μMアセチルコリンであり、そしてSLURP−1処理後に68μMアセチルコリンに低下したためである。図5Cは200pMのSLURP−1がアセチルコリン用量反応曲線(黒四角)を左の増大したEmax(黒丸)に増大させたことを示している。EC50はコントロールの場合178μMであり、そしてSLURP−1(200pM)への曝露から2.5分後には68μMであった。各データの点はn=6のものである。アセチルコリン用量反応曲線に対するSLURP−1の効果は、200pMが電流増幅及びアセチルコリンに対する感度、その両方の増大並びにヒル係数の増大を引き起こすことを示す。SLURP−1の適用は、アセチルコリンの不在下では電流を誘発しなかった。従って、SLURP−1は、リガンド又は神経伝達物質としては機能しないが、天然のリガンドの存在下、アロステリックな作用形態と一致する様式で受容体機能を調節する。
【実施例5】
【0107】
アセチルコリン受容体に対するSLURP−1活性の電気生理学を更に特徴づけ、そして相互作用部位を同定するために、キメラサブユニットをα7及び、SLURP−1によって増強されず、且つそれらをアフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞内で発現させるサブユニット、から構築する。SLURP−1の作用に関与している特定のアミノ酸残基は、1つの点突然変異を含むα7サブユニットを用いて同定される。電気生理学的研究は、培養物中のケラチノサイト及びSLURP−1のアセチルコリン受容体標的を発現している他の細胞型にまで及ぶ。ケラチノサイトの分化に対するSLURP−1の影響は、器官型の皮膚培養で研究する。
【0108】
SLURP−1とアセチルコリン受容体との相互作用は、分子レベルで特徴付けられる。突然変異型SLURP−1タンパク質の効果は、ホモマー及びヘテロマーのアセチルコリン受容体に対する天然のSLURP−1のものと比較される。SLURP−1とその標的との相互作用に必須の残基の同定は、スリーフィンガーの毒素とそれらの標的との相互作用が、クラスター形成しているか又は前記タンパク質の一次構造に沿って広がっているわずかに数アミノ酸を巻き込んでいるため(Kini, Clin Exp Pharmacol Physiol 29 (9): 815-22(2002)を参照のこと)、SLURP−1の効果を模倣又は拮抗する分子の設計を容易にする。
【0109】
SLURP−1及びその転写物のin situの局在を決定するために、抗SLURP−1抗体を用いるin situハイブリダイゼーション研究をヒトの生検に対して実施する。モノクローナル及びポリクローナルの抗SLURP−1抗体が、これら及び追加の研究のためにSLURP−1の特定のドメイン(すなわち内部ドメイン)に対して生成されうる。これらの研究は、種々の上皮にSLURP−1を局在化させて免疫組織化学的研究を補完するであろう(Kini, Clin Exp Pharmacol Physiol 29 (9): 815-22(2002)を参照のこと)。これらの研究は、幾つかの生理学、例えば皮膚の障害におけるSLURP−1の発現の変化を同定するであろう。
【0110】
in vivoでの遺伝子発現に対するSLURP−1の有効性を決定するために、ヒトの生検及びSLURP−1トランスジェニックマウスをマイクロアレイ解析にかける。これらのトランスジェニックマウスにおけるSLURP−1の発現はケラチン14プロモーターの制御下にある(基底層での発現)。これらの研究は、SLURP−1のin vivoでの正確な生理学的作用の同定を可能にする。
【実施例6】
【0111】
他の分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバー(Lynx−1イソ型A、Lynx−1イソ型B及びRGTR−430)の活性を決定するために、c−myc及びHis6タグを発現しているLy−6/uPARファミリーのメンバーの組換えタンパク質は、既述のように生成される(上記実施例1及びChimineti et al., Hum Mol Genet 12 (22): 3017-24 (2003)を参照のこと)。これらのLy−6/uPARファミリーのメンバーの組換えタンパク質は、既述のように固定化金属アフィニティークロマトグラフィー及びゲルろ過による2つの工程で見かけ上均質になるまで精製され(上記実施例1及びChimineti et al., Hum Mol Genet 12 (22): 3017-24(2003) ; Ibanez et al., Neuron 33 (6):893-903 (2002)を参照のこと)。更に、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体が特定の分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバーのタンパク質に対して生成される。これらの抗体は、特定のドメインに対して生成されうる。あるいは、分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバーのタンパク質間の相同性は低いので、ウサギは完全タンパク質又はGST融合タンパク質で免疫されうる。
【0112】
種々の組織が解析され、分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバーをコードする遺伝子の発現がRT−PCRを用いて決定される。研究により、SLURP−1、RGTR−430及びLynx−1イソ型Bの転写物は培養物の上皮及び正常なケラチノサイトにおいて高度に発現しており;一方、GPIアンカー型のイソ型CをコードしているLynx−1の転写物3の発現ははるかに多く偏在的に発現していることが示されている。更に、分泌型Ly−6/uPARファミリーのメンバーのタンパク質の効果は、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞において発現したリガンド依存性イオンチャネルに対して評価してもよく、その結果既述のようにアセチルコリン受容体活性に対するそれらの作用が同定される(上記実施例4;Chimineti et al., Hum Mol Genet 12 (22): 3017-24(2003)を参照のこと)。
【0113】
他の態様
本発明はそれらの詳細な説明と併せて説明されているが、前述の記載は、特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を例示することを意図しており、それらを限定することを意図していない。他の観点、利点及び改変は本発明の特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1Aは、HAタグ及びmycタグ付き組換えSLURP−1コンストラクトの略図である。図1B及び1Cは、それぞれ、SLURP−1のシグナル配列がプロセシングの間に開裂すること、及びSLURP−1がグリコシル化されていないことを示す、イムノブロットの相当の写真である。
【図2】図2A及び2Bは、SLURP−1の精製を示すイムノブロットの写真である。
【図3】図3Aは、SLURP−1、Ly−6/uPARファミリーのメンバー、そして種々のヘビ毒の間の構造的相同性を示す略図であり、そして図3Bはその相当の三次元モデルである。
【図4】図4は、Ly−6/uPARファミリーのメンバーと種々のヘビ毒の間の相同性の比較を示す略図である。
【図5】図5Aは、SLURP−1がアセチルコリン受容体の活性を調節することを示す電気生理学的記録であり、そして図5B及び5Cはその相当の棒グラフ及び折れ線グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の神経障害を処置するための薬物の製造における化合物の使用であって、当該化合物が有効量のSLURP−1を含んで成る使用。
【請求項2】
対象者の神経障害の開始を予防又は遅延するための薬物の製造における化合物の使用であって、当該化合物が有効量のSLURP−1を含んで成る使用。
【請求項3】
対象者の神経保護のための薬物の製造における化合物の使用であって、当該化合物が有効量のSLURP−1を含んで成る使用。
【請求項4】
皮膚で発現しているアセチルコリン受容体の機能障害により生じた皮膚病を処置するための薬物の製造における化合物の使用であって、当該化合物が有効量のSLURP−1を含んで成る使用。
【請求項5】
皮膚で発現しているアセチルコリン受容体の機能障害によって生じた皮膚病の開始を予防又は遅延するための薬物の製造における化合物の使用であって、当該化合物が有効量のSLURP−1を含んで成る使用。
【請求項6】
アセチルコリン受容体の活性を調節するための方法であって、アセチルコリン受容体と有効量のSLURP−1とを接触させることを含んで成り、SLURP−1の有効量が約1pM〜10μMである方法。
【請求項7】
アセチルコリン受容体活性の調節物質をスクリーニングする方法であって、
a)第一アセチルコリン受容体に候補化合物を曝露し、そして当該曝露後の第一アセチルコリン受容体の活性を測定し、
b)第二アセチルコリン受容体に有効量のSLURP−1又は関連化合物を曝露し、そして当該曝露後の第二アセチルコリン受容体の活性を測定し、
c)最初の曝露後の第一アセチルコリン受容体の活性と、SLURP−1又は関連化合物の曝露後の第二アセチルコリン受容体の活性とを比較すること、
を含んで成り、ここで、第一アセチルコリン受容体の活性が第二アセチルコリン受容体の活性と同程度である場合、前記候補化合物はアセチルコリン受容体活性の調節物質である、方法。
【請求項8】
神経障害がアセチルコリン受容体の機能障害によって生じる病態を含んで成る、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項9】
アセチルコリン受容体がニコチン性アセチルコリン受容体である、請求項3〜8のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項10】
ニコチン性アセチルコリン受容体がアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体及びアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体関連タンパク質から成る群から選択される、請求項9に記載の方法又は使用。
【請求項11】
神経障害が疼痛、神経因性疼痛、統合失調症、認知障害、アルツハイマー病、及びパーキンソン病から成る群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
皮膚病がメレダ病、創傷治癒、及び乾癬から成る群から選択される、請求項4又は5に記載の使用。
【請求項13】
SLURP−1の有効量が約1.0pM〜約10μMである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
有効量のSLURP−1が経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、鼻内投与、及び筋肉内投与から成る群から選択される方法で対象者に投与される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
前記化合物が対象者内でSLURP−1タンパク質を発現することができる発現ベクターを更に含んで成る、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
有効量のSLURP−1が約1.0pM〜約10μMでアセチルコリン受容体と接触する溶液を形成する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項17】
SLURP−1が成熟型である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法又は使用。
【請求項18】
SLURP−1の成熟型がSLURP−1のアミノ酸23〜103を含んで成る、請求項17に記載の方法又は使用。
【請求項19】
対象者が哺乳類である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
哺乳類がヒトである、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
アセチルコリン受容体の前記調節が当該アセチルコリン受容体の適切な機能を回復させる、請求項6に記載の方法。
【請求項22】
有効量のSLURP−1が約1.0pM〜約10μMでアセチルコリン受容体と接触する溶液を形成する、請求項7に記載の方法。
【請求項23】
有効量のSLURP−1、SLURP−1ミメティック、又はそれらの組み合わせ及び担体を含んで成る、アルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体又は関連タンパク質の機能を調節する組成物。
【請求項24】
請求項23に記載の組成物を含んで成るキット。
【請求項25】
アルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体の機能障害によって生じた神経障害を処置するための薬物の製造における化合物の使用であって、当該化合物が請求項23に記載の組成物を含んで成る使用。
【請求項26】
アルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体の機能障害により生じる神経障害の開始を予防又は遅延するための薬物の製造における化合物の使用であって、当該化合物が請求項23に記載の組成物を含んで成る使用。
【請求項27】
皮膚で発現しているアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体の機能障害により生じた皮膚病を処置するための薬物の製造における化合物の使用であって、当該化合物が請求項23に記載の組成物を含んで成る使用。
【請求項28】
皮膚で発現しているアルファ7ニコチン性アセチルコリン受容体の機能障害により生じる皮膚病の開始を予防又は遅延する薬物の製造における化合物の使用であって、当該化合物が請求項23に記載の組成物を含んで成る使用。
【請求項29】
SLURP−1に対し高度に特異的な結合親和性を有する抗体。
【請求項30】
モノクローナル抗体である請求項29に記載の抗体。
【請求項31】
ポリクローナル抗体である請求項29に記載の抗体。
【請求項32】
ヒト化抗体である請求項29に記載の抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−523678(P2006−523678A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506625(P2006−506625)
【出願日】平成16年4月16日(2004.4.16)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001716
【国際公開番号】WO2004/091646
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(599177396)アプライド リサーチ システムズ エーアールエス ホールディング ナームロゼ フェンノートシャップ (70)
【Fターム(参考)】