SPARC結合ScFv
本発明はSPARC結合ScFcを含む組成物及びその用途を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
【0002】
本出願は、2008年12月5日に出願された米国仮出願番号61/120,228の利益を主張し、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
【0004】
酸性でシステインに富んだ分泌タンパク質(Secreted Protein, Acidic, Rich in Cysteines)(SPARC)(オステオネクチンとしても知られている)は、ヒトの体内で発現する303アミノ酸の糖タンパク質である。SPARC発現は、発生的に調節されており、SPARCは正常な発生の過程で又は傷害に応答し、主に再構築している組織において発現している。例えばLane et al., FASEB J., 8, 163-173 (1994)を参照のこと。例えば、高レベルのSPARCタンパク質が、発生中の骨及び歯(マウス、ウシ及びヒトの胚においては主に骨芽細胞、象牙芽細胞、軟骨膜の線維芽細胞、及び分化軟骨細胞)において発現する。SPARCは、組織再構築、創傷修復、形態形成、細胞分化、細胞移動、及び血管形成(これらの過程が病状に付随する場合を含む)の過程での細胞−マトリクス相互作用においても重要な役割を果たす。例えばSPARCは、間質性腎線維症において発現し、ブレオマイシン誘導肺線維症などの肺傷害への宿主応答において役割を果たす。
【0005】
SPARCは、正常な組織と比較して、種々の癌における腫瘍及びその周囲の間質において癌の種類に依存したパターンで異なって発現している。従って、その機能並びに癌の発生及び進行への寄与の全ての面を説明する統一的なモデルはない。1つのパターンにおいて、SPARC発現の増加が、乳癌(Bellahcene and Castronovo, 1995; Jones et al., 2004; Lien et al., 2007; Porter et al., 1995)、黒色腫(Ledda et al., 1997a)、及び膠芽細胞腫(Rempel et al., 1998)において報告されている。SPARC発現の増加は、これらの癌における腫瘍プロモーション又は進行において役割を果たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、炎症及びいくつかの癌におけるSPARC過剰発現は、SPARCを診断及び治療のための可能性のある標的にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
【0008】
本発明は、SPARC結合ペプチド(「SBP」)及び医薬上許容される担体と結合した治療剤もしくは診断剤を含む治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含む、哺乳動物における疾患部位に治療剤又は診断剤を送達するための組成物(「発明組成物」)(SBPが配列番号1〜117の1つ以上を含む場合を含む)を提供する。
【0009】
特に好ましい実施形態としては、例えば、1以上のSBPを含む、哺乳動物において疾患部位に治療剤を送達するための発明組成物が挙げられ、ここで該治療剤は、機能的抗体Fcドメインを含む抗体フラグメント(例えば、機能的抗体Fcドメインが配列番号118を含む場合を含む)である。
【0010】
更なる好ましい実施形態としては、哺乳動物において疾患部位に治療剤又は診断剤を送達するための発明組成物、例えばSBPが配列番号1〜112及び117のいずれか1つ以上に由来する少なくとも10個の連続するアミノ酸を含む場合の組成物が挙げられる。好ましくは、SBPは、配列番号1〜112及び117のいずれか1つ以上に由来する少なくとも10個の連続するアミノ酸を含み得る。他の実施形態としては、例えば、2以上の別々のSBPであって、個々のSBPが、配列番号1〜112及び117のいずれか1つ、好ましくは配列番号1〜5のいずれか1つ以上に由来する少なくとも10個の連続するアミノ酸を含む、組成物が挙げられる。実施形態としては、例えば、2以上の別々のSBPであって、個々のSBPが、配列番号1〜117の1つ以上を含む場合の組成物が挙げられる。
【0011】
本発明は、SBP、医薬上許容される担体、及びアルブミン結合ペプチド(「ABP」)(ここでABPは、配列番号119若しくは配列番号120又は配列番号119及び120の両方を含む)を更に含む医薬上許容される担体と結合した治療剤もしくは診断剤を含む治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含む、哺乳動物において疾患部位に治療剤又は診断剤を送達するための組成物も提供する。このような組成物としては、SBP及びABPが同じポリペプチド内にある場合、並びにSBP及びABPが異なるポリペプチド内にある場合が挙げられる。
【0012】
本発明は、SPARC結合ペプチド及び医薬上許容される担体と結合した治療剤もしくは診断剤を含む治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含む、哺乳動物において疾患部位に治療剤又は診断剤を送達するための方法(「発明方法」)(ここでSBPは配列番号1〜117を含む)を更に提供する。好ましい実施形態としては、例えば、SBPが、配列番号1〜112及び117のいずれか1以上、より好ましくは配列番号1〜5及び117のいずれか1つ以上に由来する少なくとも10個の連続するアミノ酸を含む組成物である場合の発明方法が挙げられる。
【0013】
他の好ましい実施形態としては、例えば、2以上の別々のSBPであって、個々のSBPが、配列番号1〜117のいずれか1つ以上を含む、発明方法が挙げられる。本発明は、それぞれ少なくとも1つのSBPを含む2以上の別々のポリペプチドがあり、SBPが配列番号1〜112のいずれか1つに由来する少なくとも10個の連続するアミノ酸を含む場合の発明方法も提供する。
【0014】
特に好ましい発明方法は、例えば、治療剤が、機能的抗体Fcドメイン(抗体フラグメントが配列番号118を含む場合など)を含む抗体フラグメントである場合の組成物を含む。本発明に沿ったこのような方法としては、例えば、治療剤が、補体活性化、細胞媒介性細胞傷害、アポトーシスの誘導、細胞死の誘導、及びオプソニン作用(opsinization)の1つ以上を仲介する抗体フラグメントである場合が挙げられる。
【0015】
本発明により提供される発明方法は、配列番号119若しくは120又は配列番号119及び120の両方を含む血清アルブミン結合ペプチド(「ABP」)も含む。本発明に沿った方法としては、例えば、SBP及びABPが同じポリペプチド内にある場合、並びにSBP及びABPが異なるポリペプチド内にある場合の両方が更に挙げられる。しかしながら、SBPは、配列番号1〜112のいずれか1つ以上に由来する少なくとも10個の連続するアミノ酸も含み得る。
【0016】
提供される発明組成物及び発明方法は、疾患部位が腫瘍である場合と哺乳動物がヒト患者である場合に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、結合ペプチドが治療剤又は診断剤へ融合する一般概念を示す。本図面では、治療剤は抗体Fcドメインである例を示す。
【図2】図2は、ファージディスプレイライブラリーの反復スクリーニングのための一般的戦略を示す。
【図3】図3は、SPARCへの結合についてペプチドファージディスプレイライブラリーをスクリーニングした後に同定された配列を、配列を単離した回数によって示す。
【図4】図4は、SPARCへの結合についてペプチドファージディスプレイライブラリーをスクリーニングした後に同定された配列を、(ODによって示されるように)SPARCへの結合の親和性によって示す。
【図5】図5は、PD 15又はPD21 Fc融合タンパク質を与えるための、pFUSE- hIgG1-Fc2ベクターへのペプチドPD 15又はPD21のいずれかのペプチドのクローニングを示す。
【図6】図6は、ペプチド−Fc融合タンパク質をコードするための、pFUSE- hIgG1-Fc2ベクターへのペプチド15及びペプチド21をコードする配列のクローニングから生じるDNA配列を表す。
【図7】図7は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動における、発現、精製したPD 15− Fc及びPD 21− Fc融合タンパク質を示す。
【図8】図8は、PD15及びPD21の的外れな結合を明らかにするために使用したプロトアレイ(Protoarray)を示す。
【図9】図9は、PD 15及びPD 21によるSPARC結合の親和性を、抗SPARC抗体のそれと比較した、ELISA結合アッセイのグラフである。
【図10】図10は、抗SPARC抗体(R&D Anti SPARC)を用いた、腫瘍のSPARC発現を表す、ヒト腫瘍の薄片について行った免疫組織学的研究の顕微鏡写真を示す。陰性対照である抗ハーセプチン抗体(Fcフラグメントのみ)及びスタブリン(Stablin)結合ペプチド−Fc融合タンパク質(stab―Fc)は、腫瘍を染色しない。
【図11】図11は、腫瘍のSPARC発現細胞へのPD 15及びPD 21の結合を表す、SPARC発現腫瘍の組織学的染色を示す。
【図12】図12は、エラスチン上の可能性のあるSPARC結合部位を示す。
【図13】図13は、ヒト前立腺癌/ヌードマウスモデル系におけるPD 15及びPD 21の抗腫瘍活性を示す。
【図14】図14は、ヒト乳癌/ヌードマウスモデル系におけるPD 15及びPD 21の抗腫瘍活性を示す。
【図15】図15は、SPARC結合活性を有する2つのsvFcポリペプチド、ScFv 3-l及びScFv 3-2を示す。
【図16】図16は、SPARC結合活性を有する2つのsvFcポリペプチド、ScFv 2-l及びScFv 2-2を示す。
【図17】図17は、scfv 2.-1、2-2、3-1、及び3-2のヌクレオチド配列を示す。CDRに下線を引いている。
【図18】図18は、細菌からのscfv2-lの精製を示す。
【図19】図19は、細菌からのscfv3-lの精製を示す。
【図20】図20は、ビアコア(Biacore)によるチップ上に固定化されたSPARCへのscfv2-lの結合を示す。ビアコアを使用した、SPARCに対するscfv 2-1、3-1、及び3-2についてのKdを記載する(HTI SPARC−HTIから得た、精製した血小板SPARC;及びAbx SPARC−アブラクシスにより製造された、組換えHEK293細胞由来のSPARC)
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
【0019】
SBP及びABPは「ペプチドリガンドドメイン」である。用語「ペプチドリガンドドメイン」とは、単独で及び/又はより大きなポリペプチド配列内でのいずれかで存在し得、特異性をもって別の生体分子に結合する、アミノ酸配列を意味する。例えば、脂肪酸、ビリルビン、トリプトファン、カルシウム、ステロイドホルモン及び他の生理学的に重要な化合物のための主要な血中輸送系は、血清アルブミンへのこれらの生体分子の結合を含む。これらの生体分子の結合は、アルブミンアミノ酸配列中の別々の部位において(すなわち、血清アルブミン中のペプチドリガンドドメインにおいて)起こる。
【0020】
本発明は、SPARC結合ペプチド(「SBP」)及び医薬上許容される担体と結合した治療剤もしくは診断剤を含む治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含む、哺乳動物において疾患部位に治療剤又は診断剤を送達するための組成物(「発明組成物」及び「発明方法」)を提供する。本発明は、SBPが配列番号1〜117のいずれか1つ以上、最も望ましくは、配列番号1〜5のいずれか1つ以上、又は配列番号1〜117のいずれか1つの、1つ以上のホモログの配列を有するペプチドを含む、組成物及び方法を含む。
【0021】
用語「ホモログ」とは、元の配列と実質的に同じアミノ酸配列を有し、元の配列により示される特性と実質的に類似の関連する特性を示すポリペプチドを意味する。このような特性の1つの例は、活性薬剤の組織分布を調節する能力であり、ここで、配列番号1〜117のホモログは、配列番号1〜117により提供されるものと実質的に類似のレベルの調節を提供することができるだろう。この文脈において、例えば、そして望ましくは、このような実質的に類似の調節を示す配列番号1〜117のホモログは、配列番号1〜117によって提供されるものと比較して、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%の活性薬剤の血中レベルを提供するだろう。或いは、用語「ホモログ」は、例えば、配列番号1〜112のいずれか1つ、最も望ましくは、配列番号1〜5のいずれか1つ以上の、少なくとも6個の連続するアミノ酸、好ましくは少なくとも7個の連続するアミノ酸、より好ましくは少なくとも8個の連続するアミノ酸、なおより好ましくは少なくとも9個の連続するアミノ酸、最も好ましくは少なくとも10個の連続するアミノ酸のペプチド配列のこともいう。
【0022】
本発明により提供される組成物及び方法は、配列番号119若しくは120又は配列番号119及び120の両方並びにそれらのホモログを含む、ABPも含む。本発明に従う方法としては、例えば、SBP及びABPが同じポリペプチド中にある場合、並びにSBP及びABPが異なるポリペプチド中にある場合の両方が更に挙げられる。
【0023】
元の配列と比較した変化に関して、元の配列のホモログは、望ましくは元の配列と少なくとも約80%同一であり、好ましくは元の配列と少なくとも約90%同一であり、なおより好ましくは元の配列と少なくとも約95%同一であり、最も好ましくは元の配列と少なくとも約99%同一である。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「配列同一性パーセンテージ」とは、比較ウィンドウに対して2つの最適にアラインされた配列を比較することにより決定される値を意味する。また、比較ウィンドウ中のポリペプチド配列の一部は、2つの配列の最適なアラインメントについての参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して、付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、両方の配列において同一のアミノ酸残基が現れる位置の数を決定し、マッチした位置の数を得る工程、マッチした位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数で割る工程、そしてその結果に100をかけて配列同一性パーセンテージを得る工程、によって計算される。好ましくは、最適なアラインメントは、Needleman及びWunsch(1970)J. Mol. Biol. 48:443 453の相同性整列アルゴリズムを使用して実施される。
【0025】
ホモログが同一のアミノ酸を含まない場合、変異は保存的アミノ酸変化のみをもたらすことも望ましい。従って、同一ではない残基の位置は、アミノ酸残基が類似の化学的特性(例、電荷又は疎水性)を有する他のアミノ酸残基に置換され、それゆえ分子の機能的特性を変えないように、異なる。配列が保存的置換で異なる場合、該置換の保存的性質について補正するために、パーセント配列同一性は上方に調節され得る。このような保存的置換により異なる配列は、「配列類似性」又は「類似性」を有すると言われる。この調節を行なうための手段は、当業者に周知である。
【0026】
本発明に関して「保存的」アミノ酸置換又は変化によって何が意味されるかをさらに例示するために、グループA〜Fを以下に記載する。以下のグループの一つのメンバーの、同じグループの別のメンバーによる置換は、「保存的」置換であるとみなされる。
【0027】
グループAは、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、システイン、トレオニン、及び以下の側鎖を有する修飾アミノ酸を含む:エチル、イソブチル、-CH2CH2OH、-CH2CH2CH2OH、-CH2CHOHCH3、及びCH2SCH3。
【0028】
グループBは、グリシン、アラニン、バリン、セリン、システイン、トレオニン、及びエチル側鎖を有する修飾アミノ酸を含む。
【0029】
グループCは、フェニルアラニン、フェニルグリシン、チロシン、トリプトファン、シクロヘキシルメチル、及び置換ベンジル又はフェニル側鎖を有する修飾アミノ残基を含む。
【0030】
グループDは、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸若しくはアスパラギン酸の、置換若しくは非置換の、脂肪族、芳香族若しくはベンジルエステル(例、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、シクロヘキシル、ベンジル、若しくは置換ベンジル)、グルタミン、アスパラギン、CO-NH-アルキル化グルタミン若しくはアスパラギン(例、メチル、エチル、n-プロピル、及びイソ−プロピル)、及び側鎖-(CH2)3COOHを有する修飾アミノ酸、それらのエステル(置換若しくは非置換の、脂肪族、芳香族、若しくはベンジルエステル)、それらのアミド、及びそれらの置換若しくは非置換のN-アルキル化アミドを含む。
【0031】
グループEは、ヒスチジン、リジン、アルギニン、N-ニトロアルギニン、p-シクロアルギニン、g-ヒドロキシアルギニン、N-アミジノシトルリン、2-アミノ(arnino)グアニジノブタン酸、リジンのホモログ、アルギニンのホモログ、及びオルニチンを含む。
【0032】
グループFは、セリン、トレオニン、システイン、及び-OH若しくは-SHで置換されたC1-C5直鎖若しくは分岐鎖アルキル側鎖を有する修飾アミノ酸を含む。
【0033】
本発明は、結合分子を含む組成物を更に提供し、該結合分子は活性薬剤と結合したペプチドリガンドドメインを含み、ここでペプチドリガンドドメインは、アミノ末端若しくはカルボキシル末端又は両末端に付加される、追加の約50までのアミノ酸、好ましくは追加の約25までのアミノ酸、より好ましくは追加の約15までのアミノ酸、最も好ましくは追加の約10までのアミノ酸を含む。結果として生じるポリペプチド(これらは本発明に従う)は、全長が50アミノ酸未満、40アミノ酸未満、30アミノ酸未満、25アミノ酸未満又は20アミノ酸未満であるポリペプチドを含む。
【0034】
本発明は、結合分子を含む組成物を更に提供し、該結合分子は活性薬剤と結合したSBPを含み、ここでSBPは、配列番号1〜117のいずれか1つ、最も望ましくは配列番号1、2、及び117のいずれか1つ以上を含む、1又は複数のSBPである。
【0035】
本発明は、前記追加のアミノ酸がアミノ及び/又はカルボキシ末端に付加されているものを含む、ペプチドリガンド結合ドメインのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを更に提供する。
【0036】
II.本発明に従ってペプチドを作製する方法
【0037】
本発明により提供されるペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、公知の技術を使用して、合成、検出、定量及び精製され得る。例えば、外因性ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドを発現する細胞は、当業者に周知の方法により、cDNAを強力なプロモーター/翻訳開始の制御下に置き、ベクターを適切な原核又は真核細胞内にトランスフェクト又は形質転換し、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドの発現を促すことによって、作り出され得る。或いは、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、当業者に周知の方法により科学的に製造され得る。
【0038】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、標準的な固相合成により調製され得る。一般に知られるように、必要な長さのペプチドは、妨害基のブロッキング、反応させるアミノ酸の保護、カップリング、脱保護、及び反応しない残基のキャッピングのための、製造業者の指示書に従って、市販の装置及び試薬を使用して調製され得る。適切な装置は、例えば、Foster City、CAのApplied BioSystems又はSan Raphael、CAのBiosearch Corporationから入手され得る。
【0039】
例えば、ペプチドは、適切に側鎖を保護したt−ブトキシカルボニル−α−アミノ酸を用いて、標準的な自動固相合成プロトコルを使用して合成される。完成したペプチドを、標準的なフッ化水素法を使用して固相支持体から除去し、同時に側鎖の脱保護を行う。0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)中のアセトニトリル勾配を使用した半分取逆相−HPLC(Vydac C18)によって、粗ペプチドを更に精製する。ペプチドを真空乾燥させ、アセトニトリルを除去し、0.1%TFA水溶液から凍結乾燥させる。純度を分析的RP−HPLCによって確認する。ペプチドを、凍結乾燥させ、次いで水又は0.01M酢酸中に1〜2mg/mLの重量濃度で溶解させ得る。
【0040】
上記の合成方法の使用は、コードされていないアミノ酸又はD型のアミノ酸がペプチド中に存在する場合に必要とされる。しかしながら、遺伝子にコードされたペプチドについては、市販の発現システムで容易に合成されたDNA配列を使用した組換え技術を通じてもまた得ることができる。
【0041】
従って本発明は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の発現を制御する因子を含む組換えベクターを提供する。また、本発明は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を提供し、ここで該細胞は原核細胞又は真核細胞である。微生物培養及び組織培養の方法は、当業者に周知である(例えば、Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (2001), pp. 16.1-16.54を参照のこと)。従って本発明は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドを製造する方法を提供し、該方法は以下を含む:(a)請求項1のポリペプチドをコードする核酸で細胞を形質転換する工程;(b)形質転換された細胞で該ポリペプチドの発現を誘導する工程;及び(c)該ポリペプチドを精製する工程。
【0042】
タンパク質の発現は、RNA転写のレベルに依存し、さらにDNAシグナルにより調節される。同様に、mRNAの翻訳は、最低限でも、AUG開始コドン(メッセージの5’末端の10〜100ヌクレオチド以内に通常位置する)を必要とする。AUG開始コドンに隣接する配列は、その認識に影響を与えることが示されている。例えば、真核生物のリボソームによる認識については、完全な「Kozakコンセンサス」配列と一致した配列中に埋め込まれたAUG開始コドンは、最適な翻訳をもたらす(例えば、Kozak, J. Molec. Biol. 196: 947-950 (1987)を参照のこと)。また、細胞内での外因性核酸の発現が成功するためには、得られるタンパク質の翻訳後修飾を必要とし得る。
【0043】
本明細書中に記載される核酸分子は、適切なプロモーター(例えば、真核細胞中で機能的なプロモーター)に作動可能に連結されたコード領域を好ましくは含む。RSVプロモーター及びアデノウイルス主要後期プロモーターなど(これらに限定されない)のウイルスプロモーターが、本発明において使用され得る。適切な非ウイルスプロモーターとしては、ホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーター及び伸長因子1αプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。非ウイルスプロモーターは、望ましくはヒトプロモーターである。追加の適切な遺伝因子(これらの多くは当該分野で公知である)も、本発明の核酸及び構築物に付加又は挿入され得、更なる機能、発現レベル又は発現パターンを提供し得る。
【0044】
また、本明細書中に記載される核酸分子は、転写を促進するためにエンハンサーに作動可能に連結され得る。エンハンサーは、隣接遺伝子の転写を刺激する、DNAのシス作用性因子である。多くの種由来の多数の異なる細胞型において、連結された遺伝子に対して高レベルの転写を付与するエンハンサーの例としては、SV40及びRSV−LTR由来のエンハンサーが挙げられるが、これらに限定されない。このようなエンハンサーは、細胞型特異的な効果を有する他のエンハンサーと組み合わせられ得、あるいは任意のエンハンサーが、単独で使用され得る。
【0045】
真核細胞におけるタンパク質産生を最適化するために、本発明の核酸分子は、この核酸分子のコード領域の後にポリアデニル化部位を更に含み得る。また、好ましくは全ての適切な転写シグナル(及び必要に応じて翻訳シグナル)は、外因性核酸が導入される細胞中で適切に発現するように正確に配置されよう。所望の場合、外因性核酸はまた、インフレームの全長転写物を維持しながらmRNA産生を促進するために、スプライス部位(即ち、スプライスアクセプター部位及びスプライスドナー部位)を組み込み得る。更に、本発明の核酸分子は、プロセシング、分泌、細胞内局在などのために適切な配列を更に含み得る。
【0046】
核酸分子は、任意の適切なベクターに挿入され得る。適切なベクターとしてはウイルスベクターが挙げられるが、これに限定されない。適切なウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、及び鶏痘ウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。ベクターは好ましくは、真核細胞(例えば、CHO−K1細胞)を形質転換するための、ネイティブの又は操作された能力を有する。また、本発明に関して有用なベクターは、プラスミド若しくはエピソームのような「裸の」核酸ベクター(即ち、ベクターを封入するタンパク質、糖、及び/又は脂質をほとんど又は全く有さないベクター)であり得、又はベクターは、他の分子と複合体化され得る。本発明の核酸と適切に組み合わせられ得る他の分子としては、ウイルス被膜、陽イオン性脂質、リポソーム、ポリアミン、金粒子、及び細胞分子を標的化するリガンド、受容体又は抗体などの標的化部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書中に記載される核酸分子は、任意の適切な細胞、典型的には真核細胞(例えば、CHO、HEK293、又はBHKなど)内へ形質転換され得、望ましくはペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド(例えば、本明細書中に記載の配列番号1〜120又はそれらのホモログを含むポリペプチドなど)の発現をもたらす。核酸分子の発現、ひいてはペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド(例えば、本明細書中に記載の配列番号1〜120又はそれらのホモログのアミノ酸配列を含むポリペプチドなど)を産生するために、細胞が培養され得る。
【0048】
従って、本発明は、本明細書中に記載の本発明の核酸分子で形質転換又はトランスフェクトされた細胞を提供する。外因性DNA分子で細胞を形質転換又はトランスフェクトする手段は、当該分野で周知である。例えば、限定されることなく、DNA分子は、当該分野で周知の標準的な形質転換又はトランスフェクション技術(例えばリン酸カルシウム又はDEAE−デキストラン媒介性のトランスフェクション、プロトプラスト(protoblast)融合、エレクトロポレーション、リポソーム及び直接的マイクロインジェクションなど)を使用して細胞中に導入される(例えば、Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, ColdSpring HarborLaboratory Press, New York(2001), pp. 1.1-1.162, 15.1-15.53, 16.1- 16.54を参照のこと)。
【0049】
形質転換法の別の例は、プロトプラスト融合法であり、高コピー数の目的のプラスミドを保有する細菌由来のプロトプラストが、培養哺乳動物細胞と直接混合される。細胞膜の融合(通常ポリエチレングリコールを用いる)の後、細菌の内容物が哺乳動物細胞の細胞質中に送達され、プラスミドDNAが核へ移行する。
【0050】
エレクトロポレーションは種々の哺乳動物細胞及び植物細胞への短時間の高電圧の電気パルスの印加であって、原形質膜にナノメートルサイズの孔を形成させる。DNAは、これらの孔を通過するか、又は孔の閉鎖に伴う膜成分の再分布の結果として、細胞の細胞質中に直接取り込まれる。エレクトロポレーションは極めて効率的であり得、クローン化した遺伝子(clones genes)の一過的な発現のため、及び目的の遺伝子の組み込まれたコピーを保有する細胞株の樹立のため、の両方に使用され得る。
【0051】
このような技術は、真核細胞の安定かつ一過性の形質転換の両方のために使用され得る。安定に形質転換された細胞の単離には、目的の遺伝子での形質転換と同時に選択マーカーの導入が必要である。このような選択マーカーとしては、ネオマイシンへの耐性を付与する遺伝子、並びにHPRT陰性細胞におけるHPRT遺伝子が挙げられる。選択には、少なくとも約2〜7日間、好ましくは少なくとも約1〜5週間の、選択培地中での長期培養が必要とされうる(例えば、Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (2001), pp. 16.1-16.54を参照のこと)。
【0052】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、組換え宿主細胞から発現し、精製され得る。組換え宿主細胞は原核又は真核であり得、細菌(E. coliなど)、真菌細胞(酵母など)、昆虫細胞(ショウジョウバエ及びカイコ由来の細胞株を含むが、これらに限定されない)、並びに哺乳動物細胞及び細胞株を含むが、これらに限定されない。in vitroであれin vivoであれ、細胞(例えばヒト細胞)内でペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドを発現させるときには、該ペプチドをコードするこのようなポリヌクレオチドのために選択されるコドンは、所定の細胞型(即ち種)について最適化され得る。コドン最適化のための多数の技術が当該分野で公知である(例えば、Jayaraj et al, Nucleic Acids Res. 33(9):3011-6 (2005); Fuglsang et al., Protein Expr. Purif. 31(2):247-9 (2003); Wu et al., “The Synthetic Gene Designer: a Flexible Web Platform to Explore Sequence Space of Synthetic Genes for Heterologous Expression,” csbw, 2005 IEEE Computational Systems Bioinformatics Conference - Workshops (CSBW'05), pp. 258-259 (2005)を参照のこと)。
【0053】
原核生物における最適なポリペプチドの発現のために考慮されなければならない問題としては、使用される発現系、宿主株の選択、mRNAの安定性、コドンバイアス、封入体の形成及び防止、融合タンパク質及び部位特異的タンパク質分解、コンパートメント指向分泌が挙げられる。(Sorensen et al., Journal of Biotechnology 115 (2005) 113-128(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。)
【0054】
発現は、通常は、適合性の遺伝的背景の系によって保持されたプラスミドから誘導される。発現プラスミドの遺伝的要素としては、複製起点(ori)、抗生物質耐性マーカー、転写プロモーター、翻訳開始領域(TIR)、並びに転写及び翻訳ターミネーターが挙げられる。
【0055】
任意の適切な発現系が使用され得、例えば、Escherichia coliは、その相対的な単純さ、高密度培養、周知の遺伝的特徴及び多数の適合性のツール(種々の入手可能なプラスミド、組換え融合パートナー及び変異株を含み、それらはポリペプチド発現に使用可能である)により、タンパク質発現を容易にする。E coli株又は組換え発現のための遺伝的背景は、非常に重要である。発現株は、ほとんどの有害な天然のプロテアーゼを欠損しているべきであり、発現プラスミドを安定に保持しているべきであり、そして発現系に関連する遺伝因子(例、DE3)を与えるべきである。
【0056】
プラスミドコピー数は、好ましくは緩やかな様式で複製する複製起点により制御される(Baneyx, 1999)。現代の発現プラスミド中に存在するColE1レプリコンは、pBR322(コピー数15〜20)又はpUC(コピー数500〜700)ファミリーのプラスミドに由来し、一方pl5Aレプリコンは、pACYC184(コピー数10〜12)に由来する。組換え発現プラスミド中の最も一般的な薬物耐性マーカーは、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール又はテトラサイクリンへの耐性を与える。
【0057】
E coli発現系としては、T7ベースのpET発現系(Novagenにより商品化された)、ラムダPLプロモーター/cIリプレッサー(例、Invitrogen pLEX)、Trcプロモーター(例、Amersham Biosciences pTrc)、Tacプロモーター(例、Amersham Biosciences pGEX)及びハイブリッドlac/T5(例、Qiagen pQE)及びBADプロモーター(例、Invitrogen pBAD)が挙げられる。
【0058】
転写されたメッセンジャーRNAの翻訳開始領域(TIR)からの翻訳開始は、シャイン−ダルガーノ(SD)配列及び翻訳開始コドンを含むリボソーム結合部位(RBS)を必要とする。シャイン−ダルガーノ配列は、開始コドン(効率的な組換え発現系において正準のAUGである)から7±2ヌクレオチド上流に位置する。最適な翻訳開始は、SD配列UAAGGAGGを有するmRNAから得られる。
【0059】
E. coliにおけるコドン使用頻度は、細胞質において得られる同族のアミノアシル化tRNAのレベルに反映される。主要なコドンは、高発現する遺伝子に存在し、一方マイナーな又はレアなコドンは、低いレベルで発現する遺伝子中にある傾向がある。E. coliにおいてレアなコドンは多くの場合、真核生物、古細菌(archaeabacteria)及び異なるコドン頻度嗜好性を有する他の遠縁の生物といった起源に由来する異種遺伝子に多い(Kane, 1995)。レアなコドンを含む遺伝子の発現は、マイナーなコドンのtRNAと結合したアミノ酸の取り込みを必要とする位置においてリボソームが停止する結果として、翻訳エラーにつながり得る(McNulty et al., 2003)。コドンバイアスの問題は、レアなコドンを塊(ダブレット及びトリプレットなど)で含む転写物が大量に蓄積する場合、組換え発現系において高度に優勢となる。
【0060】
タンパク質の活性のためには、正確な三次元構造へのフォールディングが要求される。熱ショックなどのストレス状況は、in vivoにおけるフォールディングを損ない、フォールディング中間体は、封入体と呼ばれる不定形のタンパク質顆粒へと会合する傾向がある。
【0061】
封入体は、組換えタンパク質が高速度で発現する場合に、多くの場合ストレス応答として生じるとされる、構造的に複雑な凝集体のセットである。E. coliの細胞質における200〜300mg/mlの濃度でのタンパク質の高分子の込み合いは、特に組換え高レベル発現の間の、非常に好ましくないタンパク質フォールディング環境を示唆する(van den Berg et al., 1999)。封入体が、折り畳まれていない鎖上の露出したパッチの間の疎水性相互作用によって、又は特異的クラスター化機構によって起こる受動的事象を介して形成するのか否かは不明である(Villaverde and Carrio, 2003)。精製された凝集体は、尿素及びグアニジン(guadinium)塩酸塩のような界面活性剤を使用して可溶化され得る。ネイティブなタンパク質は、希釈、透析又はオンカラムリフォールディング法のいずれかによって、可溶化された封入体からのin vitroのリフォールディングによって調製され得る(Middelberg, 2002; Sorensen et al., 2003a)。
【0062】
リフォールディング戦略は、分子シャペロンを含めることによって改善され得る(Mogk et al., 2002)。しかしながら所定のタンパク質についてのリフォールディング手順の最適化は、時間のかかる努力を必要とし、必ずしも高い生成物収量につながらない。封入体形成を防止するための可能な戦略は、分子シャペロンの共過剰発現である。
【0063】
組換えタンパク質の精製及び発現を単純化するために、広範なタンパク質融合パートナーが開発されている(Stevens, 2000)。融合タンパク質又はキメラタンパク質は、通常、特異的プロテアーゼのための認識部位により、乗客又は標的タンパク質に連結されたパートナー又は「タグ」を含む。ほとんどの融合パートナーは、特異的なアフィニティー精製戦略のために使用される。融合パートナーは、in vivoでも都合がよく、ここでそれらは細胞内タンパク質分解から乗客を保護し得(Jacquet et al., 1999; Martinez et al., 1995)、溶解性を増強し得(Davis et al., 1999; Kapust and Waugh, 1999; Sorensen et al., 2003b)又は特異的発現レポーターとして使用され得る(Waldo et al., 1999)。おそらくmRNA安定化の結果として、高い発現レベルは、多くの場合、N末端の融合パートナーから、発現が弱い乗客へと移され得る(Arechaga et al., 2003)。一般的なアフィニティータグは、ポリヒスチジンタグ(His−タグ)(固定化された金属アフィニティークロマトグラフィー(immobilized metal affinity chromatography)(IMAC)に適合する)及びグルタチオンベースの樹脂上で精製するためのグルタチオンS−トランスフェラーゼ(glutathione S-transferase)(GST)タグである。いくつかの他のアフィニティータグが存在し、広く総説されている(Terpe, 2003)。
【0064】
組換えで発現されたタンパク質は、原則として、3つの異なる場所、即ち細胞質、ペリプラズム又は培養培地に向けられる。種々の利点及び欠点が、特定の細胞内コンパートメントへの組換えタンパク質の方向性に関連する。生成物収量が高いため、細胞質における発現が通常好ましい。ジスルフィド結合形成は、E. coli内で隔離されており、Dsbシステムにより、ペリプラズムにおいて活発に触媒される(Rietsch and Beckwith, 1998)。細胞質におけるシステインの還元は、チオレドキシン及びグルタレドキシンによって達成される。チオレドキシンはチオレドキシンレダクターゼによって還元された状態に保たれ、グルタレドキシンはグルタチオンによって還元された状態に保たれる。低分子量グルタチオン分子は、グルタチオンレダクターゼによって還元される。2つのレダクターゼをコードするtrxB及びgor遺伝子は、E. coliにおいてジスルフィド結合の形成を可能にする。
【0065】
細胞ベースの発現系は、製造されるタンパク質の質及び量に関して欠点を有し、必ずしもハイスループットの製造に適切ではない。これらの欠点の多くは、無細胞翻訳系の使用によって回避され得る。
【0066】
in vitroの遺伝子発現及びタンパク質合成のための無細胞系は、多くの異なる原核生物及び真核生物の系について記載されている(Endo & Sawasaki Current Opinion in Biotechnology 2006, 17:373-380を参照のこと)。真核生物の無細胞系(ウサギ網状赤血球溶血液及び小麦胚芽抽出物など)は、in vitroで転写されたRNA鋳型の翻訳に必要とされる全ての構成要素を含む粗抽出物から調製される。真核生物の無細胞系は、翻訳反応のために、鋳型として、in vivo又はin vitroで合成された、単離されたRNAを使用する(例、ウサギ網状赤血球溶血液系及び小麦胚芽抽出物系)。共役した真核生物の無細胞系は、原核生物のファージRNAポリメラーゼを真核生物の抽出物と組み合わせ、in vitroタンパク質合成のために、ファージプロモーターを有する外因性DNA又はPCRで作り出した鋳型を利用する(例、TNT(登録商標)共役網状赤血球溶血液
【0067】
TNT(登録商標)共役系を使用して翻訳されたタンパク質は、多くの種類の機能的研究において使用され得る。TNT(登録商標)共役転写/翻訳反応は、オープンリーディングフレームを確認するために、タンパク質の変異を研究するために、及びタンパク質−DNA結合研究、タンパク質活性アッセイ、又はタンパク質−タンパク質相互作用研究のためにin vitroでタンパク質を製造するために、伝統的に使用されてきた。最近では、TNT(登録商標)共役系を使用して発現させたタンパク質は、酵母ツーハイブリッド相互作用を確認するためのアッセイ、in vitro発現クローニングを行なうためのアッセイ(IVEC)及び酵素活性又はタンパク質修飾アッセイ用のタンパク質基質を製造するためのアッセイにおいても使用されている。For a listing of recent citations using the 種々のアプリケーションにおいてTNT(登録商標)共役系を使用する最近の引用文献のリストについては、www.promega.com/citations/をご覧下さい。
【0068】
転写及び翻訳は、原核生物の系においては典型的には共役している;即ち、それらは内因性又はファージRNAポリメラーゼを含み、それが外因性DNA鋳型からmRNAを転写する。次いでこのRNAは、翻訳のための鋳型として使用される。DNA鋳型は、プラスミドベクター内にクローン化された遺伝子(cDNA)又はPCR(a)で作り出された鋳型のいずれかであり得る。リボソーム結合部位(RBS)は、原核生物の系において翻訳される鋳型に必要である。転写中、mRNAの5’末端が、リボソーム結合及び翻訳開始に使用可能となり、転写と翻訳とが同時に起こることが可能となる。原核生物プロモーター(lac若しくはtacなど;環状若しくは直鎖状DNAのためのE. coli S30抽出物系、又はファージRNAポリメラーゼプロモーター;環状DNAのためのE. coli T7 S30抽出物系)のいずれかを含むDNA鋳型を使用する、原核生物の系が利用可能である。精製されたペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドの溶解性は、当該分野で公知の方法によって改善され得る。例えば、(例えば、E. coli中で)発現したタンパク質の溶解性を増大させるために、Georgiou & Valax(Current Opinion Biotechnol. 7: 190-197 (1996))に記載されているように、増殖温度を低下させ、より弱いプロモーターを使用し、より低コピー数のプラスミドを使用し、誘導因子濃度を低下させ、増殖培地を変化させることによって、タンパク質合成の速度を低下させることができる。これにより、タンパク質合成の速度が低下し、通常、より溶解性の高いタンパク質が得られる。また適切なフォールディング若しくはタンパク質の安定性に必須な補欠分子族又は補因子を添加するか、増殖の間の培地中のpHの変動を制御するためのバッファーを添加するか、あるいはラクトース(これは、ほとんどの栄養豊富な培地(例えばLB、2×YTなど)中に存在する)によるlacプロモーターの誘導を抑制するために1%グルコースを添加することもできる。ポリオール(例、ソルビトール)及びスクロースの添加に起因する浸透圧の上昇は、細胞における浸透圧保護剤の蓄積をもたらし、これがネイティブタンパク質の構造を安定化するため、ポリオール(例、ソルビトール)及びスクロースも培地に添加され得る。エタノール、低分子量チオール及びジスルフィド、並びにNaClが添加され得る。また、シャペロン及び/又はフォールダーゼ(foldases)が、所望のポリペプチドと共に同時発現され得る。分子シャペロンは、フォールディング中間体と一過的に相互作用することによって、適切な異性化及び細胞内標的化を促進する。E. coliのシャペロン系としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:GroES−GroEL、DnaK−DnaJ−GrpE、CIpB。
【0069】
フォールダーゼは、フォールディング経路に沿った律速段階を加速する。3種類のフォールダーゼが、重要な役割を果たす:ペプチジルプロリル シス/トランスイソメラーゼ(PPI’s)、ジスルフィドオキシドレダクターゼ(DsbA)及びジスルフィドイソメラーゼ(DsbC)、タンパク質のシステインの酸化及びジスルフィド結合の異性化の両方を触媒する真核生物のタンパク質であるタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)。1つ以上のこれらのタンパク質と標的タンパク質との共発現は、より高いレベルの可溶性標的タンパク質をもたらし得る。
【0070】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、その溶解性及び産生量を改善するために、融合タンパク質として産生され得る。この融合タンパク質は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド及びインフレームで一緒に融合した第2のポリペプチドを含む。第2のポリペプチドは、それが融合されたポリペプチドの溶解性を改善するための、当該分野で公知の融合パートナーであり得る(例えば、NusA、バクテリオフェリチン(BFR)、GrpE、チオレドキシン(TRX)及びグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST))。Novagen Inc.(Madison、WI)は、NusA−標的融合物の形成を可能にするpET43.1ベクターシリーズを提供している。DsbA及びDsbCも、融合パートナーとして使用されるときには、発現レベルに対して正の効果を示しており、従ってより高い溶解性を達成するため、ペプチドリガンドドメインと融合する目的で使用され得る。
【0071】
このような融合タンパク質の一態様において、発現したペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、リンカーポリペプチド(プロテアーゼにより加水分解され得るペプチド結合を含むプロテアーゼ切断部位を含む)を含む。結果として、ポリペプチド中のペプチドリガンドドメインは、タンパク質分解により、発現後、該ポリペプチドの残りの部分から分離され得る。リンカーは、該結合のいずれかの側(プロテアーゼの触媒部位がそこにも結合する)に、1以上の更なるアミノ酸を含み得る(例えば、Schecter & Berger, Biochem. Biophys. Res. Commun. 27, 157-62 (1967)を参照のこと)。或いは、リンカーの切断部位は、プロテアーゼの認識部位から離れてあり得、切断部位及び認識部位の2つは、1以上(例、2から4)のアミノ酸により隔てられ得る。一態様において、リンカーは、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、約10、約20、約30、約40、約50又はそれ以上のアミノ酸を含む。より好ましくは、リンカーは、約5から約25アミノ酸長であり、最も好ましくは、リンカーは約8から約15アミノ酸長である。
【0072】
本発明に従う有用ないくつかのプロテアーゼが以下の参考文献において考察される:Hooper et al, Biochem. J. 321: 265-279 (1997);Werb, Cell 91 : 439-442 (1997);Wolfsberg et al., J. Cell Biol. 131 : 275-278 (1995);Murakami & Etlinger, Biochem. Biophys. Res. Comm. 146: 1249-1259 (1987);Berg et al., Biochem. J. 307: 313-326 (1995);Smyth and Trapani, Immunology Today 16: 202-206 (1995);Talanian et al., J. Biol. Chem. 272: 9677-9682 (1997);及びThornberry et al., J. Biol. Chem. 272: 17907-17911 (1997)。細胞表面プロテアーゼも、本発明に従う切断可能なリンカーと共に使用され得、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アミノペプチダーゼN;ピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼ;アンジオテンシン変換酵素;ピログルタミルペプチダーゼII;ジペプチジルペプチダーゼIV;N−アルギニン二塩基性転換酵素;エンドペプチダーゼ24.15;エンドペプチダーゼ24.16;アミロイド前駆体タンパク質セクレターゼα、β及びγ;アンジオテンシン変換酵素セクレターゼ;TGFαセクレターゼ;TNFαセクレターゼ;FASリガンドセクレターゼ;TNF受容体−I及び−IIセクレターゼ;CD30セクレターゼ;KL1及びKL2セクレターゼ;IL6受容体セクレターゼ;CD43、CD44セクレターゼ;CD16−I及びCD16−IIセクレターゼ;L−セレクチンセクレターゼ;葉酸受容体セクレターゼ;MMP1、2、3、7、8、9、10、11、12、13、14、及び15;ウロキナーゼ・プラスミノーゲン活性化因子;組織プラスミノーゲン活性化因子;プラスミン;トロンビン;BMP−1(プロコラーゲンC−ペプチダーゼ);ADAM1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び11;並びにグランザイムA、B、C、D、E、F、G、及びH。
【0073】
細胞結合型プロテアーゼに依存することの代替手段は、自己切断リンカーを使用することである。例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)2Aプロテアーゼが、リンカーとして使用され得る。これは、2A/2B接合部においてFMDVのポリタンパク質を切断する17アミノ酸の短いポリペプチドである。FMDV 2Aポリペプチドの配列は、NFDLLKLAGDVESNPGPである。切断は、ペプチドのC末端において、最後のグリシン−プロリンアミノ酸対において起こり、他のFMDV配列の存在には非依存的であり、異種配列の存在下であっても切断する。
【0074】
アフィニティークロマトグラフィーは、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドの精製において、単独で、又は、イオン交換、分子サイジング、若しくはHPLCクロマトグラフィー技術と組み合わせて、使用され得る。このようなクロマトグラフィーアプローチは、カラムを使用して、又はバッチ形式で実施され得る。このようなクロマトグラフィーによる精製方法は、当該分野において周知である。
【0075】
また、本発明は、配列番号1〜117の配列において、1以上のアミノ酸置換、及び約1個から約5個のアミノ酸、好ましくは約1個から約3個のアミノ酸、より好ましくは1個のアミノ酸の挿入又は欠失を有するペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドをコードする単離された核酸を提供し、ここで当該核酸は、元の配列により示される特性と実質的に類似の関連する特性を有する。
【0076】
変異誘発は、当該分野で公知のいくつかの方法のいずれかによって実施され得る。一般に、変異誘発は、配列の操作を容易にするために、核酸配列をプラスミド又はいくつかの他のベクター中にクローニングすることによって、達成され得る。次いで、更なる核酸配列がその核酸配列中に付加され得るユニークな制限部位が、同定されるか、又はその核酸配列中に挿入される。二本鎖合成オリゴヌクレオチドは一般に、二本鎖オリゴヌクレオチドが、標的配列に隣接する制限部位を包含し、例えば置換DNAを組み込むために使用され得るように、重複する合成一本鎖のセンスオリゴヌクレオチド及びアンチセンスオリゴヌクレオチドから作り出される。プラスミド又は他のベクターは、制限酵素で切断され、適合する付着末端を有するオリゴヌクレオチド配列が、このプラスミド又は他のベクター中にライゲーションされ、元のDNAを置換する。
【0077】
in vitro部位特異的変異誘発の他の手段は当業者に公知であり、達成され得る(特に、オーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、例えば、Parikh & Guengerich, Biotechniques 24:428-431 (1998)を参照のこと)。変化の部位と重複する相補的プライマーを使用して、500mMのdNTP、2単位のPfuポリメラーゼ、各250ngのセンスプライマー及びアンチセンスプライマー、並びにペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドをコードする配列を含む200ngのプラスミドDNAを含む混合物中で、プラスミド全体をPCR増幅することができる。PCRは望ましくは、DNA1Kbにつき2.5分間の伸長時間で18サイクルを含む。PCR産物は、DpnI(アデニンメチル化プラスミドDNAのみを消化する)で処理されて、Escherichia coli DH5α細胞中に形質転換され得る。形質転換体は、変異の組込みについて制限酵素消化によってスクリーニングされ得、次いでDNA配列分析によって確認され得る。
【0078】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドのタンパク質検出及び定量の適切な方法としては、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、銀染色、BCAアッセイ(例えば、Smith et al., Anal. Biochem. 150, 76-85 (1985)を参照のこと)、ローリータンパク質アッセイ(例えば、Lowry et al., J. Biol. Chem. 193, 265-275 (1951)に記載されている)(これは、タンパク質−銅錯体に基づく比色分析である)、及びブラッドフォードタンパク質アッセイ(例えば、Bradford et al., Anal. Biochem. 72, 248 (1976)に記載されている)(これは、タンパク質結合による、クマシーブルーG−250における吸光度の変化に依存する)が挙げられる。発現すると、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、イオン交換、サイズ排除、又はC18クロマトグラフィー等の伝統的な精製方法により精製され得る。
【0079】
III.ペプチドリガンドドメインをカップリングする方法
【0080】
適切な活性薬剤(例えば、治療剤、化学療法剤、放射性核種、ポリペプチドなど)などをペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドに「カップリング」(又は「コンジュゲート化」又は「架橋」)する方法は、当該分野において充分記載されている。本明細書中に提供されるコンジュゲートの調製において、ペプチドリガンドドメインへのコンジュゲート化又はカップリング部分の付着が、ペプチドリガンドドメインのその機能を実質的に妨げないか、又は活性薬剤の機能を実質的に妨げない限り、2つの部分を付着させるための現在当該分野において公知の任意の方法によって、活性薬剤は、ペプチドリガンドドメインに直接的か又は間接的に連結される。カップリングは、任意の適切な手段(イオン結合及び共有結合、並びに任意の他の十分に安定な会合を含むが、それらに限定されない)によることができ、それによって標的剤の分布が調節されるだろう。
【0081】
アミノ基とチオール基との間の共有結合を形成するため、及びチオール基をタンパク質に導入するために使用される多数のヘテロ二官能性架橋試薬が当業者に公知である(例えば、Cumber et al. (1992) Bioconjugate Chem. 3':397 401; Thorpe et al. (1987) Cancer Res. 47:5924 5931; Gordon et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. 84:308 312; Walden et al. (1986) J. Mol. Cell Immunol. 2:191 197; Carlsson et al. (1978) Biochem. J. 173: 723 737; Mahan et al. (1987) Anal. Biochem. 162:163 170; Wawryznaczak et al. (1992) Br.J. Cancer 66:361 366; Fattom et al. (1992) Infection & Immun. 60:584 589を参照のこと)。これらの試薬は、ペプチドリガンドドメイン又はペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドと、本明細書中に開示される活性薬剤のいずれかとの間の共有結合を形成するために使用され得る。これらの試薬は以下を含むがそれらに限定されない:N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP;ジスルフィドリンカー);スルホスクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SPDP);スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチルベンジルチオサルフェート(SMBT、妨害ジサルフェートリンカー);スクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(LC−SPDP);スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC);スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート(SPDB;妨害ジスルフィド結合リンカー);スルホスクシンイミジル2−(7−アジド−4−メチルクマリン−3−アセトアミド)エチル−1,3−ジチオプロピオネート(SAED);スルホスクシンイミジル7−アジド−4−メチルクマリン−3−アセテート(SAMCA);スルホスクシンイミジル6−[α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SMPT);1,4−ジ−[3’−(2’−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン(DPDPB);4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジルチオ)トルエン(SMPT、妨害ジスルフェートリンカー);スルホスクシンイミジル6[α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SMPT);m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS);m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(スルホ−MBS);N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノ安息香酸(SIAB;チオエーテルリンカー);スルホスクシンイミジル−(4−ヨードアセチル)アミノ安息香酸(スルホ−SIAB);スクシンイミジル4(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB);スルホスクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(スルホ−SMPB);アジドベンゾイルヒドラジド(ABH)。
【0082】
他のヘテロ二官能性の切断可能なカップリング剤としては、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノ安息香酸;スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノ安息香酸;4−スクシンイミジル−オキシカルボニル−a−(2−ピリジルジチオ)−トルエン;スルホスクシンイミジル−6−[a−メチル−a−(ピリジルジチオール)-トルアミド]ヘキサノエート;N−スクシンイミジル−3−(−2−ピリジルジチオ)−プロプリオネート;スクシンイミジル6[3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロプリオンアミド(proprionamido)]ヘキサノエート;スルホスクシンイミジル6[3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエート;3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸、S−(2−チオピリジル)−L−システインが挙げられる。更なる典型的な二官能性の連結化合物が、米国特許第5,349,066号、第5,618,528号、第4,569,789号、第4,952,394号、及び第5,137,877号に開示されている。
【0083】
或いは、例えば、ポリペプチドのスルフヒドリル基が、コンジュゲート化のために使用され得る。また、糖タンパク質(例、抗体)に結合された糖部分は、酸化され得、当該分野において公知の多数のカップリング手順において有用なアルデヒド基を形成し得る。本発明に従って形成されるコンジュゲートは、in vivoで安定であるか、或いは酵素的に分解可能なテトラペプチド結合又は酸に不安定なシス−アコニチル(cis-aconityl)若しくはヒドラゾン結合のように不安定であり得る。
【0084】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、任意に、1個以上のリンカーを介して活性薬剤に連結される。リンカー部分は、所望の特性に応じて選択される。例えば、リンカー部分の長さは、標的受容体へのリガンドの結合により誘導されるあらゆる立体構造変化も含めて、リガンド結合の動態及び特異性を最適化するために選択され得る。リンカー部分は、ポリペプチドリガンド部分及び標的細胞受容体が自由に相互作用することを可能にするのに十分長く、且つ十分柔軟であるべきである。リンカーが短すぎるか又は硬すぎる場合、ポリペプチドリガンド部分間で立体障害が生じ、細胞毒性となるかもしれない。リンカー部分が長すぎる場合、活性薬剤は、製造の過程において分解されるかもしれず、又はその所望の効果を標的細胞に効率よく送達しないかもしれない。
【0085】
当業者に公知の任意の適切なリンカーが本明細書中で使用され得る。一般に、化学的に製造されたコンジュゲートにおけるリンカーとは異なるセットのリンカーが、融合タンパク質であるコンジュゲートにおいて使用されよう。化学的に連結されたコンジュゲートに好適なリンカー及び結合としては、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、ヒンダードジスルフィド結合、並びにアミン及びチオール基などの遊離反応性基間の共有結合が挙げられる。これらの結合は、ヘテロ二官能性試薬を用いてポリペプチドの一方又は両方に反応性チオール基を生じさせ、次いで一方のポリペプチド上のチオール基を、他方上の反応性マレイミド基又はチオール基が結合され得る反応性チオール基又はアミン基と反応させることによって作り出される。他のリンカーとしては、ビスマレイミデオトキシプロパン、酸に不安定なトランスフェリンコンジュゲート及びアジピン酸ジヒドラジドなどの酸で切断可能なリンカー(これらはより酸性の細胞内コンパートメントにおいて切断されよう);UV又は可視光への暴露によって切断される架橋剤及びリンカーが挙げられる。いくつかの実施形態において、各リンカーの所望の特性を利用するために、いくつかのリンカーが含まれ得る。化学的リンカー及びペプチドリンカーは、リンカーをペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド及び標的剤に共有結合することによって挿入され得る。下記のヘテロ二官能性薬剤が、このような共有結合を行なうために使用され得る。ペプチドリンカーは、融合タンパク質として、リンカー及びペプチドリガンドドメイン、リンカー及び活性薬剤、又はペプチドリガンドドメイン、リンカー、及び活性薬剤をコードするDNAを発現させることによっても結合され得る。可動性リンカー及びコンジュゲートの溶解性を高めるリンカーが考慮され、本明細書では単独での使用又は他のリンカーとの使用のいずれかも考慮される。
【0086】
従って、リンカーとしては、典型的には1から約30アミノ酸、より好ましくは約10から30アミノ酸を含む、ペプチド性結合、アミノ酸及びペプチド結合が挙げられ得るが、これらに限定されない。或いは、ヘテロ二官能性の切断可能な架橋剤などの化学リンカー(N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノ安息香酸、スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノ安息香酸、4−スクシンイミジルオキシカルボニル−a−(2−ピリジルジチオ)トルエン、スルホスクシンイミジル6−a−メチル−a−(ピリジルジチオール)−トルアミド)ヘキサノエート、N−スクシンイミジル−3−(−2−ピリジルジチオ)−プロプリオネート、スクシンイミジル6(3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロプリオンアミド(proprionamido))ヘキサノエート、スルホスクシンイミジル6(3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエート、3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸、及びS−(2−チオピリジル)−L−システインが挙げられるがこれらに限定されない)。
【0087】
他のリンカーとしては、トリチルリンカー、特に、種々の程度の酸性又はアルカリ性における治療剤の放出をもたらすコンジュゲート属を作り出すための誘導体化トリチル基が挙げられる。こうして治療剤が放出されるpH範囲を予め選択できることにより得られる融通性によって、治療剤の送達に必要な組織間の公知の生理学的違いに基づくリンカーの選択が可能となる(例えば、米国特許第5,612,474を参照のこと)。例えば、腫瘍組織の酸性は、正常組織のものよりも低いように思われる。
【0088】
酸で切断可能なリンカー、光で切断可能なリンカー及び熱に感受性のリンカーも使用され得、ここで特に、より反応に利用しやすくするために、標的剤を切断することが必要であり得る。酸で切断可能なリンカーとしては、ビスマレイミドオトキシ(bismaleimideothoxy)プロパン;及びアジピン酸ジヒドラジドリンカー(例えば、Fattom et al. (1992) Infection & Immun. 60:584 589を参照のこと)及び細胞内トランスフェリン循環経路に入ることを可能とするのに十分なトランスフェリンの部分を含む、酸に不安定なトランスフェリンコンジュゲート(例えば、Welhoner et al. (1991) J. Biol. Chem. 266:4309 4314を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
光で切断可能なリンカーは、光に曝されると切断され(例えば、Goldmacher et al. (1992) Bioconj. Chem. 3:104-107を参照されたい(そのリンカーは参照により本明細書中に組み込まれる))、それにより光に曝されると標的剤を放出するリンカーである。光に曝されると切断される、光で切断可能なリンカーは公知であり(例えば、Hazum et al. (1981) in Pept., Proc. Eur. Pept. Symp., 16th, Brunfeldt, K (Ed), pp. 105 110(該文献は、システインに関する光で切断可能な保護基としてのニトロベンジル基の使用を記載する);Yen et al. (1989) Makromol. Chem 190:69 82(該文献は、ヒドロキシプロピルメタクリルアミドコポリマー、グリシンコポリマー、フルオレセインコポリマー及びメチルローダミンコポリマーを含む水溶性の光で切断可能なコポリマーを記載する);Goldmacher et al. (1992) Bioconj. Chem. 3:104 107(該文献は、近UV光(350nm)に曝されると光分解崩壊を被る架橋剤及び試薬を記載する);並びにSenter et al. (1985) Photochem. Photobiol 42:231-237(該文献は、光で切断可能な結合を生成するニトロベンジルオキシカルボニルクロライド架橋結合試薬を記載する)を参照のこと)、それにより光に曝されると標的剤を放出する。このようなリンカーは、光に曝される可能性のある皮膚又は眼の状態を光ファイバーを使用して治療するのに特に使用される。コンジュゲートを投与後、眼又は皮膚又は他の体の部分は光に曝されることができ、その結果、コンジュゲートから標的化された部分が放出される。このような光で切断可能なリンカーは、標的剤を除去することが望ましい診断プロトコルとの組み合わせにおいて有用であり、動物の体からの迅速なクリアランスを可能とする。
【0089】
IV.本発明は複数の活性薬剤を提供する
【0090】
本発明の種々の態様は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドが活性薬剤、即ち治療剤又は診断剤に結合されることを考慮する。
【0091】
本明細書中で使用される場合、用語「治療剤」は、治療的特性を有すると思われる、化合物、生体高分子、又は細菌、植物、真菌、若しくは動物(特に哺乳動物)細胞若しくは組織などの生体物質から作られる抽出物をいう(例、化学療法剤又は放射線療法剤)。本明細書中で使用される場合、用語「治療的」は、対象哺乳動物を苦しめている疾患又は関連する状態を治療又は予防する効果の改善(標的疾患(例、癌又は他の増殖性疾患)の機会の予防又は軽減により示される)をいう。治癒的療法は、哺乳動物における既存の疾患又は状態を、全部又は一部において、軽減することをいう。
【0092】
薬剤は、精製され、実質的に精製され、又は部分的に精製され得る。更に、このような治療剤は、リポソーム又は免疫リポソームの中に存在するか、又はそれと会合して存在し得、コンジュゲート化は、薬剤に、又はリポソーム/免疫リポソームに直接的であり得る。「リポソーム」は、薬物(例、薬物、抗体、毒素)の送達に有用な、種々の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤から構成される小胞である。リポソームの構成成分は、生体膜の脂質配置に類似する、二重層構造に通常配置される。
【0093】
本発明により考慮される様式でペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドに結合され得る治療剤の例としては、化学療法剤(例、ドセタキセル、パクリタキセル、タキサン及び白金化合物)、葉酸拮抗剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害薬、DNA損傷剤、アポトーシス促進剤、分化誘導剤、血管新生阻害剤、抗生物質、ホルモン、ペプチド、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、生物活性剤、生体分子、放射性核種、アドリアマイシン、アンサマイシン抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトテシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポチロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン、メトトレキサート、ラパマイシン(シロリムス)、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソ尿素、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン類、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソール、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、トランスプラチナ(transplatinum)、チロシンキナーゼ阻害剤(ゲニステイン)、及び他の化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
本明細書中で使用される場合、用語「化学療法剤」は、癌、腫瘍性、及び/又は増殖性疾患に対する活性を有する薬剤をいう。好ましい化学療法剤としては、アルブミンを含む粒子としてドセタキセル及びパクリタキセルが挙げられ、ここで50%を超える化学療法剤がナノ粒子の形態である。最も好ましくは、化学療法剤は、アルブミン結合パクリタキセル(例、アブラキサン(登録商標))の粒子を含む。
【0095】
適切な治療剤としては、例えば、生物学的活性剤(TNF、又は(of)tTF)、放射性核種(131I、90Y、111In、211At、32P及び他の公知の治療用放射性核種)、血管新生阻害剤(antiangiogenesis agents)(血管新生阻害剤(angiogenesis inhibitors)(例、INF−α、フマギリン、アンジオスタチン、エンドスタチン、サリドマイドなど))、他の生物活性ポリペプチド、治療増感剤、抗体、レクチン、及び毒素も挙げられる。
【0096】
本発明の適用に適した疾患としては、悪性状態及び善悪性状態、並びに増殖性疾患(増殖性疾患が、例えば、良性前立腺過形成、子宮内膜症、子宮内膜増殖症、アテローム性動脈硬化症、乾癬、免疫性増殖(immunologic proliferation)又は増殖性腎糸球体症である場合を含むが、これらに限定されない)が挙げられる。
【0097】
用語「治療上有効量」は、疾患又は状態と関連するか又はその原因である生理学的又は生化学的なパラメータを、部分的にであれ完全にであれ正常に戻す量を意味する。当該分野において熟練した臨床医は、特定の疾患又は状態に対して、治療上有効であろう医薬組成物の量を決定することができる。例として、好ましい実施形態(ここで治療剤はパクリタキセルである)に従って、投与されるパクリタキセル用量は、約3週間の投与サイクル(即ち、約3週間毎に1回のパクリタキセル用量の投与)で約30mg/m2から約1000mg/m2の範囲であり得、望ましくは、約3週間の投与サイクル、好ましくは約2週間のサイクル、より好ましくは週に一回のサイクルで、約50mg/m2から約800mg/m2、好ましくは約80mg/m2から約700mg/m2、最も好ましくは約250mg/m2から約300mg/m2の範囲であり得る。
【0098】
本発明は、診断に関する態様も有する。例えば、診断剤は、トレーサー又は標識(放射性薬剤、MRI造影剤、X線造影剤、超音波造影剤、及びPET造影剤を含むが、これらに限定されない)であり得る。治療剤に関連して記載された、これらの剤のカップリングも、本発明のこの形態によって考慮される。更に、用語「診断上有効量」は、関連する臨床背景において、組織及び器官における異常な増殖活性、過形成活性、再構築活性、炎症活性の存在及び/又は程度の、合理的に正確な決定を可能にする、医薬組成物の量である。例えば、本発明に従って「診断される」状態は、良性又は悪性腫瘍であり得る。
【0099】
本明細書中に教示される診断剤としては、抗体などのポリペプチドが挙げられ、それらは、共有又は非共有のいずれかで、検出可能なシグナルを提供する物質と結合することにより標識される。広範な種々の標識及びコンジュゲート化技術が公知であり、科学文献及び特許文献の両方において広く報告されている。適切な標識としては、放射性核種、酵素、基質、補因子、インヒビター、蛍光部分、化学発光部分、磁性粒子などが挙げられる。このような標識の使用を教示する特許としては、米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号;及び第4,366,241号が挙げられる。また、組換え免疫グロブリンが産生され得る(Cabilly、米国特許第4,816,567号;Moore, et al.,米国特許第4,642,334号;及びQueen, et al. (1989) Proc.Nat'l Acad. Sci. USA 86:10029-10033を参照のこと)。
【0100】
発明組成物及び方法による、腫瘍又は他の疾患部位への治療剤又は診断剤の送達は、任意の適切な方法(例えば、放射性標識又は放射線不透過性標識を組成物に添加すること、及び必要に応じて画像化することが挙げられ、当業者に周知である)により観察及び測定され得る。血漿コンパートメントにおける組成物の隔離は、任意の適切な方法(例えば、静脈穿刺(venupuncture)が挙げられる)により観察され得る。
【0101】
更に、そして関連する態様において、本発明は、化学療法剤への腫瘍の応答を予測又は決定する方法、並びに化学療法剤への増殖性疾患の応答を予測又は決定する方法、又は増殖性疾患(増殖性疾患が、例えば、良性前立腺過形成、子宮内膜症、子宮内膜増殖症、アテローム性動脈硬化症、乾癬、免疫性増殖(immunologic proliferation)又は増殖性腎糸球体症である場合を含むが、これらに限定されない)を治療する方法を提供する。
【0102】
V.本発明はペプチドリガンドドメインをポリペプチド活性薬剤に結合する融合タンパク質を提供する
【0103】
更に本発明は、融合タンパク質における、ポリペプチド活性薬剤へのペプチドリガンドドメインのカップリングを考慮する。例えば、限定されないが、ペプチドリガンドドメイン配列は、診断上有用なタンパク質ドメイン(例えば、ハプテン、GFP)、治療増感剤、活性なタンパク質ドメイン(例えば、限定されないが、tTF、TNF、Smar1由来p44ペプチド、インターフェロン、TRAIL、Smac、VHL、プロカスパーゼ、カスパーゼ、及びIL−2)又は毒素(例えば、限定されないが、リシン、PAP、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素)の上流又は下流に融合され得る。
【0104】
「融合タンパク質」及び「融合ポリペプチド」とは、一緒に共有結合した少なくとも2つの部分を有するポリペプチドをいい、ここで、該部分の各々は異なる特性を有するポリペプチドである。該特性はin vitro又はin vivoの活性などの生物学的特性であり得る。該特性は標的分子への結合、反応の触媒などの単純な化学的又は物理的特性でもあり得る。該部分は、単一のペプチド結合によって直接的に、又は1以上のアミノ酸残基を含有するペプチドリンカーを介して連結され得る。一般に、該部分及びリンカーは相互にリーディング・フレーム内にあるであろう。
【0105】
VI.抗体又は抗体フラグメント活性薬剤
【0106】
本発明の特定の態様において、治療剤は、補体活性化、細胞媒介性細胞傷害、アポトーシス、壊死性細胞死、及びオプソニン作用(opsinization)の1以上を仲介する抗体又は抗体フラグメントであり得る。
【0107】
本明細書中の用語「抗体」としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ダイマー、マルチマー、多重特異性抗体(例、二重特異性抗体)が挙げられるが、これらに限定されない。抗体は、マウス、ヒト、ヒト化、キメラ、又は他の種由来であり得る。抗体は、免疫系により生み出され、特定の抗原を認識して結合することのできるタンパク質である。標的抗原は一般に、複数の抗体上のCDRにより認識される、多数の結合部位(エピトープとも呼ばれる)を有する。異なるエピトープに特異的に結合する各抗体は、異なる構造を有する。従って、1つの抗原は、1を超える対応する抗体を有し得る。抗体としては、全長免疫グロブリン分子又は、全長免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、即ち目的の標的又はその一部の抗原を免疫特異的に(immunospecifically)結合する抗原結合部位を含む分子が挙げられ、このような標的としては、癌細胞又は、自己免疫疾患に関連する自己免疫性抗体を産生する細胞が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に開示される免疫グロブリンは、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)又はサブクラス(例、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)のものであり得る。免疫グロブリンは、任意の種由来であり得る。
【0108】
「抗体フラグメント」は、全長抗体の一部を含み、所望の生物活性を保持する。「抗体フラグメント」は多くの場合、抗原結合領域又はその可変領域である。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFvフラグメント;ダイアボディ;直鎖状抗体;Fab発現ライブラリーによって生成されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、CDR(相補性決定領域)、及び癌細胞抗原、ウイルス抗原若しくは微生物抗原に免疫特異的に結合する上記のうちのいずれかのエピトープ結合フラグメント、単鎖抗体分子;及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。しかしながら、抗体の他の非抗原結合部分は、本明細書中で意味するような「抗体フラグメント」であり得、例えば、限定されないが、抗体フラグメントは、完全な又は部分的なFcドメインであり得る。
【0109】
本明細書中におけるモノクローナル抗体としては、それらが所望の生物活性を示す限り、特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるか又は相同であるが、その鎖(複数可)の残りは、別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるか又は相同である「キメラ」抗体、並びにこのような抗体のフラグメントが挙げられる(米国特許第4,816,567号)。本明細書中において目的のキメラ抗体としては、非ヒト霊長類(例、旧世界ザル又は類人猿)に由来する可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列とを含む、「霊長類化(primatized)」抗体が挙げられる。
【0110】
「抗体依存性細胞介在性細胞毒性」及び「ADCC」は、Fcレセプター(FcR)を発現する非特異的細胞毒性細胞(例、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上の結合抗体を認識し、次いで標的細胞の溶解をもたらす細胞介在性反応をいう。ADCCを仲介する一次細胞、NK細胞は、Fc.γ.RIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。目的とする分子のADCC活性を評価するには、in vitro ADCCアッセイを行うことができる(米国特許第5,003,621号;米国特許第5,821,337号)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。或いは、又は更に、目的とする分子のADCC活性は、in vivo、例えばClynes et al. PNAS(USA), 95:652-656(1998)に開示されているような動物モデルにおいて評価され得る。
【0111】
「細胞死を誘導する」抗体は、生存細胞を生存できなくなるようにする抗体である。in vitroの細胞死は、抗体依存性細胞介在性細胞毒性(ADCC)又は補体依存性細胞毒性(CDC)により誘導される細胞死と区別するために、補体及び免疫エフェクター細胞の非存在下で決定され得る。即ち、細胞死についてのアッセイは、加熱不活化血清(即ち、補体非存在下)を使用して、免疫エフェクター細胞の非存在下で実施され得る。抗体が細胞死を誘導することができるか否かを決定するため、ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー又は7AADの取り込みにより評価される膜の完全性の喪失が、非処理細胞と比較して評価され得る。細胞死誘導抗体は、BT474細胞におけるPI取り込みアッセイにおけるPI取り込みを誘導する抗体である。
【0112】
「アポトーシスを誘導する」抗体は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞の断片化、及び/又は膜小胞(アポトーシス小体と呼ばれる)の形成により決定される、プログラムされた細胞死を誘導する抗体である。
【0113】
VII.活性薬剤の分布を調節する方法
【0114】
本発明の別の態様は、本明細書中に開示されるペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲートの特性を利用し、動物の組織内の活性薬剤の分布を調節する方法を提供する。該方法は、コンジュゲート分子(活性薬剤にコンジュゲートされたペプチドリガンドドメインを含む)を含む組成物を該動物に投与する工程を含み、ここで、ペプチドリガンドドメインは、配列番号1〜117又はそれらのホモログのペプチドを含み、そしてここで、動物への該組成物の投与は、活性薬剤単独の投与で得られる組織分布とは異なる活性薬剤の組織分布をもたらす。
【0115】
本発明の組成物及び方法は、望ましくは、疾患部位への活性薬剤の組織分布の調節をもたらす。これはそれ自身、望ましくは、疾患部位における活性薬剤の濃度、及び/又は活性薬剤の(半減期)血中レベルの増大又は延長の提供に現れ、それは、活性薬剤が(コンジュゲートされていない形態で)動物に投与された場合に提供されるであろうものよりも大きい。る。この調節は、コンジュゲートされたペプチド分子の組織取込み速度を増強すること、その標的部位における(即ち、腫瘍における)該分子の滞留を増加させること、組織におけるコンジュゲートされたペプチド分子の分散速度を増強すること、及び/又はコンジュゲートされたペプチド分子の組織中の分布を増強すること、及びコンジュゲートされたペプチド分子の組織取込み速度を1つ以上の組織受容体の内在化の速度に適合させること、によっても現れ得る。このような増強は、当該分野で公知の任意の適切な方法(例えば、X線撮影技術、顕微鏡技術、化学的技術、免疫学的技術又はMRI技術を使用する、適切に標識された活性薬剤の検出、局在確認及び相対的定量(quantization)が挙げられるが、これらに限定されない)によって測定され得る。
【0116】
「速度を増強すること」とは、少なくとも約33%大きい、好ましくは少なくとも約25%大きい、より好ましくは少なくとも約15%大きい、最も好ましくは少なくとも約10%大きいものである速度を意味する。「疾患部位におけるより高い濃度」とは、比較できる疾患部位において、コンジュゲートされていない活性薬剤の濃度よりも、少なくとも約33%大きい、好ましくは少なくとも約25%大きい、より好ましくは少なくとも約15%大きい、最も好ましくは少なくとも約10%大きい、疾患部位におけるコンジュゲート中の活性薬剤の濃度を意味する。
【0117】
適切な疾患部位としては、任意の身体組織(軟組織、結合組織、骨、固形臓器、血管などを含む)における、増殖の異常な状態、組織再構築、過形成、過大な創傷治癒が挙げられるが、これらに限定されない。このような疾患のより具体的な例としては、癌、糖尿病性の又は他の網膜症、炎症、線維症、関節炎、血管若しくは人工血管移植組織又は血管内装置などにおける再狭窄、白内障及び黄斑変性、骨粗しょう症及び他の骨の疾患、アテローム性動脈硬化症、並びに石灰化が頻繁に観察される他の疾患が挙げられる。
【0118】
好ましい態様において、本発明は腫瘍を診断及び/又は治療する方法を提供し、ここで腫瘍は、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨性腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、黒色腫、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、尿路腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系腫瘍、グリオーマ、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺の腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸腫瘍、子宮体部腫瘍、卵巣腫瘍、外陰部腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、陰茎の腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓の腫瘍、腎盂の腫瘍、尿管の腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病からなる群より選択される。また、本発明は、化学療法剤への腫瘍の応答を予測又は決定する方法、腫瘍の治療方法、及び化学療法剤への哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットを提供し、ここで腫瘍は、肉腫、腺癌、扁平上皮細胞癌、大細胞癌、小細胞癌、基底細胞癌、明細胞癌、オンコサイトーマ(oncytoma)、又はそれらの組み合わせである。
【0119】
別の態様において、本発明は、組成物及び前記組成物の使用方法を提供し、ここで、動物への該組成物の投与は、活性薬剤単独の投与で得られる血中レベルよりも大きい、活性薬剤の血中レベルをもたらす。活性薬剤の血中レベルの任意の適切な基準が使用され得、Cmax、Cmin、及びAUCが挙げられるが、これらに限定されない。「活性薬剤単独の投与で得られる血中レベルよりも大きい」とは、少なくとも約33%大きい、好ましくは少なくとも約25%大きい、より好ましくは少なくとも約15%大きい、最も好ましくは少なくとも約10%大きい、血中レベルを意味する。
【0120】
更に別の態様において、本発明は、組成物及び前記組成物の使用方法を提供し、ここで、動物への該組成物の投与は、活性薬剤単独の投与で得られる血中レベル半減期よりも大きい、活性薬剤の血中レベル半減期をもたらす。「活性薬剤単独の投与で得られる血中半減期よりも大きい」とは、少なくとも約33%大きい、好ましくは少なくとも約25%大きい、より好ましくは少なくとも約15%大きい、最も好ましくは少なくとも約10%大きい、半減期を意味する。
【0121】
VIII.製剤及び投与
【0122】
in vivoでの使用のために、ペプチドリガンドドメイン(配列番号1〜117及びそれらのホモログなど)を結合した活性薬剤は、望ましくは、生理学的に許容される担体を含む医薬組成物へと製剤化される。任意の適切な生理学的に許容される担体が、投与経路に応じて、本発明の文脈の中で使用され得る。当業者は、望ましい投与方法に適した医薬組成物を提供するために使用され得るそれらの担体を理解するであろう。
【0123】
本発明の医薬組成物の投与は、任意の適切な経路(静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、腫瘍内、経口、直腸、膣内、膀胱内、及び吸入による投与が挙げられ、これらに限定されないが、静脈内及び腫瘍内投与が最も好ましい)によって達成され得る。組成物は、特に組成物の安定性の増強及び/又はその最終用途のために、任意の他の適切な構成成分を更に含み得る。従って、本発明の組成物の、広範な種々の適切な製剤がある。以下の製剤及び方法は、例示に過ぎず、決して限定するものではない。
【0124】
医薬組成物は、所望の場合、更なる治療剤又は生物活性剤も含み得る。例えば、特定の適応症の治療において有用な治療因子が存在し得る。炎症を制御する因子(イブプロフェン又はステロイドなど)は、組成物の一部であり得、医薬組成物のin vivo投与に伴う腫大及び炎症並びに生理的苦痛を低減し得る。
【0125】
担体は典型的には液体であるが、固体、又は液体及び固体の成分の組み合わせであってもよい。担体は望ましくは、生理学的に許容される(例えば、医薬上又は薬理学的に許容される)担体(例、賦形剤又は希釈剤)である。生理学的に許容される担体は周知であり、容易に入手可能である。担体の選択は、少なくとも一部は、標的組織及び/又は細胞の位置、並びに組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定されよう。
【0126】
典型的には、このような組成物は、液体の溶液又は懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製され得る;注射前の液体添加により溶液又は懸濁液を調製するために使用するのに適した固体形態もまた、調製され得る;これらの調製物は乳化もされ得る。注射剤での使用に適した医薬製剤としては、無菌の水溶液又は水性分散物;公知のタンパク質安定剤及び凍結保護剤を含む製剤、ゴマ油、ピーナッツ油又は水性プロピレングリコールを含む製剤、及び無菌の注射可能な溶液又は分散物の即時の調製のための無菌粉末、が挙げられる。全ての場合において、製剤は無菌である必要があり、容易な注射可能性が存在する程度まで流動的である必要がある。製剤は、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、界面活性剤(ヒドロキシセルロースなど)と適切に混合した水中で調製され得る。分散物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれらの混合物中、並びに油中でも調製され得る。保存及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は微生物の増殖を防止する保存剤を含む。
【0127】
ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲート(など(such as))は、中性又は塩の形態で組成物へと製剤化され得る。医薬上許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)が挙げられ、それらは無機酸(例えば、塩酸又はリン酸など)又は有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)などと形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩は、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化第二鉄など)及び有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)などからも誘導され得る。
【0128】
非経口投与に適した製剤としては、水性及び非水性の、等張の無菌注射溶液(これは、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及びこの製剤を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る)、並びに水性及び非水性の無菌懸濁液(これは、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び保存剤を含み得る)が挙げられる。これらの製剤は、単回用量又は複数用量の密封容器(アンプル及びバイアルなど)中で提示され得、使用直前に、例えば水などの注射用無菌液体賦形剤の添加のみを要する、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。即席の注射溶液及び懸濁液は、以前に記載された種類の無菌の粉末、顆粒及び錠剤から調製され得る。本発明の好ましい実施形態において、ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲートは注射(例、非経口投与)のために製剤化される。これに関して、製剤は望ましくは腫瘍内投与に適しているが、静脈内注射、腹腔内注射、皮下注射などのためにも製剤化され得る。
【0129】
本発明は、所望の場合、ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲート(即ち、活性薬剤(ana active agent)にコンジュゲートされたペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド)が、ポリエチレングリコール(PEG)に更にコンジュゲートされる場合の実施形態も提供する。PEGコンジュゲート化は、これらのポリペプチドの循環半減期を増大させ、ポリペプチドの免疫原性及び抗原性を低下させ、それらの生物活性を改善し得る。使用される場合、PEGコンジュゲート化の任意の適切な方法が使用され得、メトキシ−PEGをペプチドの利用可能なアミノ基(複数可)又は他の反応性部位(例えば、ヒスチジン又はシステインなど)と反応させることが挙げられるが、これに限定されない。また、組換えDNAアプローチが、PEG−反応性基を有するアミノ酸をペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲートに付加するために使用され得る。更に、放出可能なハイブリッドPEG化戦略が、本発明の態様に従って使用され得る(ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲート分子中の特定の部位に付加されたPEG分子がin vivoで放出されるようなポリペプチドのPEG化など)。PEGコンジュゲート化方法の例は、当該分野で公知である。例えば、Greenwald et al., Adv. Drug Delivery Rev. 55:217-250 (2003)を参照のこと。
【0130】
吸入による投与に適した製剤としては、エアロゾル製剤が挙げられる。エアロゾル製剤は、加圧された適切な噴霧剤(ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素など)中に配置され得る。それらは、ネブライザー又はアトマイザーからの送達のために、非加圧調製物としても製剤化され得る。
【0131】
肛門投与に適切な製剤は、活性成分を種々の基剤(例えば、乳化基剤又は水溶性基剤)と混合することによって坐剤として調製され得る。膣投与に適した製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤として提示され得、これらは、活性成分に加えて、適切であることが当該分野で公知の担体などを含む。
【0132】
また、本発明の組成物は、更なる治療剤又は生物活性剤を含み得る。例えば、特定の適応症の治療において有用な治療因子が存在し得る。炎症を制御する因子(例えば、イブプロフェン又はステロイドなど)は、組成物の一部であり得、医薬組成物のin vivo投与に伴う腫大及び炎症並びに生理学的苦痛を低減させる。
【0133】
吸入治療の場合、本発明の医薬組成物は、望ましくは、エアロゾルの形態である。固体形態の場合、薬剤を投与するためのエアロゾル及びスプレー発生器が利用可能である。これらの発生器は、呼吸できるか又は吸入できる粒子を提供し、ヒト投与に適した速度で薬剤の既定の計量された用量を含む、ある体積のエアロゾルを発生させる。このようなエアロゾル及びスプレー発生器の例としては、当該分野で公知の、計量された用量の吸入器(inhalers)及び吸入器(insufflators)が挙げられる。液体形態の場合、本発明の医薬組成物は、任意の適切な装置によりエアロゾル化され得る。
【0134】
静脈内、腹腔内又は腫瘍内投与に関連して使用される場合、本発明の医薬組成物は、活性化合物の無菌の水性及び非水性注射溶液、懸濁液又は乳剤を含み得、これらの調製物は好ましくは意図されたレシピエントの血液と等張である。これらの調製物は、1つ以上の酸化防止剤、緩衝剤、界面活性剤、共溶媒、静菌剤、この組成物を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質、及び当該分野で公知の他の製剤成分を含み得る。水性及び非水性の無菌懸濁液は、懸濁剤及び増粘剤を含み得る。組成物は、単回用量又は複数用量の容器(例えば、密封アンプル及びバイアル)中で提示され得る。
【0135】
本発明の方法は、併用療法の一部でもあり得る。フレーズ「併用療法」とは、本発明に従う治療剤を別の治療組成物と一緒に、この組み合わせの有益な効果が治療を受けている哺乳動物において実現されるように、逐次的様式又は同時的様式で、投与することをいう。
【0136】
XI.本発明は多くの状態に適用可能である
【0137】
本発明の組成物及び方法は、種々の疾患(疾患部位が任意の身体組織(軟組織、結合組織、骨、固形臓器、血管などを含む)における、増殖の異常な状態、組織再構築、過形成、過大な創傷治癒である場合が挙げられるが、これらに限定されない)の診断又は治療における使用に適している。このような疾患のより具体的な例としては、癌、糖尿病性の又は他の網膜症、炎症、線維症、関節炎、血管若しくは人工血管移植組織又は血管内装置などにおける再狭窄、白内障及び黄斑変性、骨粗しょう症及び他の骨の疾患、アテローム性動脈硬化症、並びに石灰化が頻繁に観察される他の疾患が挙げられる。
【0138】
好ましい態様において、本発明は腫瘍を診断及び/又は治療する方法を提供し、ここで腫瘍は、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨性腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、黒色腫、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、尿路腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系腫瘍、グリオーマ、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺の腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸腫瘍、子宮体部腫瘍、卵巣腫瘍、外陰部腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、陰茎の腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓の腫瘍、腎盂の腫瘍、尿管の腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病からなる群より選択される。また、本発明は、化学療法剤への腫瘍の応答を予測又は決定する方法、腫瘍の治療方法、及び化学療法剤への哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットを提供し、ここで腫瘍は、肉腫、腺癌、扁平上皮細胞癌、大細胞癌、小細胞癌、基底細胞癌、明細胞癌、オンコサイトーマ(oncytoma)、又はそれらの組み合わせである。
【0139】
本発明は、疾患が哺乳動物(ヒトが挙げられるが、これに限定されない)における場合の実施形態を提供する。
【0140】
X.キット
【0141】
本発明は、医薬製剤及び腫瘍の治療における製剤の使用説明書を含む腫瘍の治療用キットを提供し、ここで医薬製剤は、活性薬剤にコンジュゲートされたペプチドリガンドドメインを含むコンジュゲート分子を含み、ここでペプチドリガンドドメインは、配列番号1〜137、139若しくは140、又は141〜143、或いはそれらのホモログのペプチドを含み、ここでペプチドリガンドドメインは、約700μM以下の平衡解離定数(Kd)によって特徴付けられるヒト血清アルブミンに対する親和性を有し、そして任意に、ここでコンジュゲート分子は、第二のペプチドリガンドドメインを更に含み、そして前記キットの使用説明書(例、FDAに認可された添付文書)を更に含む。
【0142】
XI. アフィニティー精製
【0143】
アフィニティークロマトグラフィー(アフィニティー精製とも呼ばれる)は、分子間の特異的結合相互作用を使用する。複合体の混合物がカラム上を通過する際に、リガンドへの特異的結合親和性を有するそれらの分子が結合するように、特定のリガンドが、固体支持体に化学的に固定化されるか又は「結合される(coupled)」。他の試料成分が洗い流された後、結合した分子が支持体からはがされ、元の試料からのその精製物がもたらされる。
【0144】
各特異的アフィニティーシステムは、固有の条件のセットを必要とし、所定の研究目的のための固有の特定の課題を提示する。他のタンパク質の方法の論文は、特定の精製システムに関連する因子及び条件を記載する(このページの末尾近くのサイドバー内のリンクを参照のこと)。それにも関わらず、関連する一般的原理は、全てのリガンド−標的結合システムについて同じであり、これらの考えはこの概説の焦点である。
【0145】
アフィニティー精製は、一般に、以下の工程を含む:
【0146】
(1)粗試料をアフィニティー支持体とインキュベートし、試料中の標的分子を固定化されたリガンドに結合させる。
【0147】
(2)未結合の試料成分を支持体から洗い流す。
【0148】
(3)結合相互作用がもはや起こらないようにバッファー条件を変えることにより、固定化されたリガンドから標的分子を溶出する(分離し、回収する)。
【0149】
血清又は細胞ライセート試料をアフィニティーカラムに一回通過させることで、特定のタンパク質の1,000倍を超える精製が達成され得、それゆえゲル電気泳動(例、SDS−PAGE)分析後には一本のバンドのみが検出される。
【0150】
一般的クラスのタンパク質(例、抗体)又は融合タンパク質タグ(例、6xHis)に結合するリガンドは、アフィニティー精製にすぐに使える予め固定された形態で市販されている。或いは、目的の特定の抗体又は抗原等のより特殊化したリガンドは、いくつかの市販の活性化されたアフィニティー支持体のうちの1つを使用することにより固定化され得る;例えば、ペプチド抗原が、支持体に固定化され得、該ペプチドを認識する抗体を精製するために使用され得る。
【0151】
最も一般的には、リガンドは、リガンド上の特定の官能基(例、第一級アミン、スルフヒロリル、カルボン酸、アルデヒド)と支持体上の反応性基との間の共有化学結合の形成により、固体支持体材料に直接的に固定化されるか又は「結合される(coupled)」(共有結合固定化に関する関連論文を参照のこと)。しかしながら、間接的結合アプローチも可能である。例えば、GSTタグ融合タンパク質は、第一に、グルタチオン−GSTアフィニティー相互作用を介してグルタチオン支持体に捕捉され得、次いで第二に、それを固定化するために化学的に架橋され得る。固定化されたGSTタグ融合タンパク質は、次いで、融合タンパク質の結合パートナー(複数可)をアフィニティー精製するために使用され得る。
【0152】
タンパク質:リガンド相互作用が関与するほとんどのアフィニティー精製手順では、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの、生理的pH及びイオン強度の結合バッファーを使用する。このことは、抗体:抗原又は天然タンパク質:タンパク質相互作用がアフィニティー精製の基礎としている場合に特に当てはまる。結合相互作用が起こると、試料の未結合の成分を除去するために、支持体は更なるバッファーで洗浄される。非特異的(例、単なるイオン性の)結合相互作用は、低レベルの界面活性剤を添加することにより、或いは結合バッファー及び/又は洗浄バッファー中の塩濃度の穏やかな調節により、最小化され得る。最後に、溶出バッファーが添加され、結合相互作用を壊し、標的分子を放出し、次いで標的分子はその精製された形態で集められる。溶出バッファーは、極端なpH(低又は高)、高塩(イオン強度)、一方又は両方の分子を変性させる界面活性剤又はカオトロピック剤の使用、結合因子の除去、又はカウンターリガンドとの競合によって、結合パートナーを解離し得る。ほとんどの場合、その後の透析又は脱塩は、精製タンパク質を溶出バッファーから、保存又は下流の分析により適したバッファー中へと交換するために必要とされる。
【0153】
タンパク質のアフィニティー精製のために最も広く使用される溶出バッファーは、0.1Mグリシン・HCl、pH2.5〜3.0である。このバッファーは、タンパク質構造に恒久的な影響を与えることなく、ほとんどのタンパク質:タンパク質及び抗体:抗原結合相互作用を効率よく解離させる。しかしながら、いくつかの抗体及びタンパク質は、低pHによって損傷を受けるため、溶出されたタンパク質画分は、1/10容量のアルカリ性バッファー(1M Tris・HCl、pH8.5など)の添加により、すぐに中和されるべきである。タンパク質のアフィニティー精製のための他の溶出バッファーとしては、以下が挙げられる:
【0154】
アフィニティー精製は、動かない物質(固相)に固定化されたリガンドとの結合相互作用における違いに基づく、溶液(移動相)中の分子の分離を含む。アフィニティー精製における支持体又はマトリクスは、生体特異的リガンドが共有結合したあらゆる物質である。典型的には、アフィニティーマトリクスとして使用される物質は、標的分子が見出される系において不溶性である。必ずしもそうではないが、通常、不溶性マトリクスは固体である。数百の物質が、アフィニティーマトリクスとして記載され、利用されている。
【0155】
【表1】
【0156】
有用なアフィニティー支持体は、高い表面積対体積比、リガンドの共有結合のために容易に修飾される化学基、最少限の非特異的結合特性、優れた流動特性並びに機械的及び化学的安定性を有するものである。任意の分離のためのアフィニティー支持体又はマトリクスを選択する場合、おそらく最も重要な答えるべき質問は、必要とされる質の所望のマトリクス物質について、信頼できる商業的供給源が存在するか否かである。
【0157】
固定化されたリガンド又は活性化されたアフィニティー支持体の化学は、いくつかの異なるフォーマットに使用可能である。最も一般的には、架橋されたビーズ状のアガロース又はポリアクリルアミド樹脂が、カラム又は小規模精製手順のために使用される。アフィニティーリガンドが固定化された磁性粒子は、細胞分離及び特定の自動化精製手順に特に有用である。ポリスチレンマイクロプレート(アッセイの目的でより一般的に使用される)でさえも、結合パートナーを精製するために、リガンドを固定化するための支持体として使用され得る。
【0158】
多孔質ゲル支持体は、一般に、タンパク質のアフィニティー精製のための最も有用な特性を提供する。これらの種類の支持体は、通常、直径50〜150μmのビーズとして溶液中で(即ち、水和して)製造される、糖又はアクリルアミドベースのポリマー樹脂である。ビーズ状のフォーマットは、これらの樹脂が湿ったスラリー(任意の大きさの樹脂ベッドでカラムを満たし、そして「詰める」ために、容易に分配され得る)として供給されることを可能にする。ビーズは、極めて多孔質であり、十分大きく、生体分子(タンパク質など)が、ビーズ表面の間及び周りで、可能な限り自由にビーズ内へ流れ、そしてビーズを通って流れることができる。リガンドは、種々の手段によりビーズポリマー(外部及び内部表面)に共有結合される。その結果、試料分子が固定化されたリガンドの広い表面積を通過して自由に流れることができる、疎性のマトリクスとなる
【0159】
タンパク質アフィニティー精製技術のための圧倒的に最も広く使用されるマトリクスは、架橋されたビーズ状アガロースであり、それは典型的には4%及び6%の密度で利用可能である。(このことは、1mlの樹脂ベッドでは、容量で90%以上が水であることを意味する。)
【0160】
抗体精製のいくつかの方法は、アフィニティー精製技術を含む。典型的な実験室規模の抗体製造は、比較的小容量の血清、腹水又は培養上清を含む。抗体が種々のアッセイ及び検出方法にどのように使用されるかに応じて、部分的に又は完全に精製されなければならない。3レベルの精製特異性として、以下のアプローチが挙げられる:
【0161】
硫酸アンモニウムでの沈殿。この単純な技術は、他の血清タンパク質からの全免疫グロブリンの粗精製を提供する。
【0162】
固定化プロテインA、G、A/G又はLでのアフィニティー精製。これらのタンパク質は、ほとんどの種及びIgGのサブクラスに結合する(IgGは、免疫原に応答して哺乳動物において産生される、最も豊富な種類の免疫グロブリンである)。これらのタンパク質を含むすぐに使用できる樹脂及びキットは、多くの包装サイズ及びフォーマットで入手可能である。
【0163】
固定化抗原でのアフィニティー精製。精製された抗原(即ち、宿主動物による抗体の産生を誘導するための免疫原として使用されるペプチド又はハプテン)をアフィニティー支持体に共有結合で固定化することによって、特異的抗体が、粗試料から精製されることが可能になる。活性化された樹脂及び種々の化学によって固定化された抗原を調製するための完全なキットが、入手可能である。以下も参照のこと:Seo et al., Characterization of a Bifidobacterium longum BORI dipeptidase belonging to the U34 family, Appl Environ Microbiol. 2007 Sep;73(17):5598-606; Clonis YD, Affinity chromatography matures as bioinformatic and combinatorial tools develop, J Chromatogr A. 2006 Jan 6;1101(l-2):l-24; Jmeian Y & El Rassi Z, Liquid-phase-based separation systems for depletion, prefractionation and enrichment of proteins in biological fluids for in-depth proteomics analysis, Electrophoresis. 2009 Jan;30(l):249-61。
【0164】
本発明は、配列番号113〜116のいずれか1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一であり、且つ少なくとも4x10−7M、好ましくは4x10−6M、より好ましくは7x10−5MのSPARCタンパク質についてのKD、或いは約3.3x10−7から約7.8x10−5のSPARCタンパク質についてのKDを有するscFvを提供する。また、本発明は、配列番号113〜116のいずれか1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一であり;配列番号113〜116におけるCDRのいずれか1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一であり、且つ少なくとも4x10−7M、好ましくは4x10−6M、より好ましくは7x10−5MのSPARCタンパク質についてのKD、或いは約3.3x10−7Mから約7.8x10−5MのSPARCタンパク質についてのKDを有するscFvを提供する。
【0165】
以下の実施例は、本発明を更に説明するが、当然のことながら、いかなる意味においてもその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0166】
実施例1
【0167】
本実施例は、ファージディスプレイ技術を使用するSPARC結合ペプチドの同定及び腫瘍治療のためのこのようなSPARC結合ペプチドの分子への組み込みを実証する。
【0168】
具体的には、主要な目的は、SPARC結合ペプチドが治療剤又は診断剤にコンジュゲートされた分子を作り出すことであった。特に、目的は、SPARC結合ペプチド−Fc融合タンパク質(図1)を作り出すことであった(ここで、抗体Fcドメインは、免疫機能(例えば、抗体依存性細胞毒性(ADC)又は細胞依存性細胞毒性(CDC)など)を刺激することにより、治療剤として機能する)。
【0169】
ディスプレイの方法論の一般的原理は、リガンド(ペプチド、タンパク質)をこのリガンドをコードする遺伝子に結びつけることである(図2を参照のこと)。ファージディスプレイ技術において、これは、リガンド遺伝子を、繊維状ファージのコートタンパク質をコードする遺伝子に融合させることにより得られる。次いで、組換えファージゲノムを、Escherichia coliに導入し、ここでハイブリッドタンパク質が全ての他のファージタンパク質と一緒に発現する。次いで、融合タンパク質は、ファージゲノム(リガンド遺伝子を含む)を含むファージコートに組み込まれる。リガンドを提示する分泌ファージ粒子を、固定化された標的上で選択することができるが、全ての非結合ファージは洗い流される。溶出工程の後、回収したファージを使用して、E. coliに感染させ、新たな選択のラウンドのため及び最終的には結合分析のために、このファージを増殖させる。
【0170】
従って、商業的なペプチドファージディスプレイライブラリー(M13においては12merペプチド)を、SPARCに結合するペプチドについてスクリーニングした。標的であるSPARCは、PIが4.6の酸性糖タンパク質である。pH9.6コーティングバッファーで96ウェルプレート上に固定化することにより、Ph.D.−12ペプチドライブラリーを4回スクリーニングし、ファージディスプレイ技術を使用してペプチドバインダー(binders)を選択した。具体的には、1回目のスクリーニングにおいて、結合したファージを、酸性溶出溶液で溶出した。次いで、標的タンパク質濃度を下げ、洗浄バッファー中のTween−20のパーセンテージを上げることにより、スクリーニングのストリンジェンシーを徐々に高める。同時に、過剰な標的での競合的溶出を採用し、スクリーニングの特異性を改善した。最後に、4ラウンドのスクリーニングの後、選択したクローンのssDNAを、DNA配列決定に供した。同時に、標的タンパク質への陽性ファージの結合を、ファージELISAを使用して確認した。
【0171】
SPARC結合ペプチドについてのペプチドファージディスプレイのこのスクリーニングの結果を図3及び4に示す。SPARC結合は、同じ配列を有するペプチドをコードする、単離されたファージクローンの数(図3)又はSPARCコートマイクロタイタープレートウェルへのペプチド発現ファージの結合により測定されるSPARC結合の親和性(図4)により定量し得る。ファージディスプレイにより同定されたペプチドのうち2つ、PD 15(配列番号1)及びPD 21(配列番号2)を更に特徴付けた。
【0172】
次いでPD 15及びPD 21を、発現ベクターpFUSE-hIg1-Fc2(図5)にクローン化し、その結果PD 15−Fc及びPD 21−Fc融合タンパク質をコードするプラスミドを得た(図6)。これらの融合タンパク質を発現させ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって実証されるように精製に成功した(図7)。
【0173】
PD 15及びPD 21のタンパク質マイクロアレイ分析(図8を参照のこと)は、アッセイしたアレイ上の5,000のタンパク質において、非SPARCタンパク質との最少限の交差反応性のみを示した(Invitrogen, ProtoArray v.3)。
【0174】
濃度依存性結合ELISAアッセイは、SPARCへのPD 15及びPD 21の結合が、抗SPARC抗体のものよりもわずかに弱いのみであることが示されることを実証した(図9)。PD 15のSPARC結合Kdは、4.1±0.6X10−8Mであり、PD 21のSPARC結合Kdは、1.0±0.7X10−7Mである。(試験した抗SPARC抗体は、6.2±3.4X10−9MのSPARC結合Kdを有しており、即ち、該抗体は、ごくわずかに高い親和性でSPARCに結合する。)
【0175】
図10及び11は、SPARCの同時局在(抗SPARC抗体での免疫組織化学的(IHC)染色により示される)並びにヒト脳腫瘍の切片におけるPD 15及びPD 21の結合(それらにはIHC染色のためにエピトープタグをつけた)を示す。図10に示されるように、PD 15及びPD 21は腫瘍組織に結合した(図11)のに対して、stab−Fcは腫瘍組織に結合しなかったため、SPARCへのスタブリン1の結合の文献報告は確かめられなかった。
【0176】
ファージディスプレイにより単離したSPARC結合ペプチドの配列相同性分析により、単離された多数のSPARC結合ペプチド配列が、図12に示すエラスチンの領域と配列同一性を有することが実証された。
【0177】
従って、本実施例は、SPARC結合ペプチドを、ファージディスプレイにより同定し得ること、及び同定したペプチドを更にどのように特徴付けるかを実証する。詳しく調べた2つのクローン(PD 15及びPD 21)のうち、PD 15は、ELSIA及びIHC実験において、PD 21よりもSPARCに対してより高い親和性を示した。
【0178】
実施例2
【0179】
PD 15及びPD 21−Fc融合タンパク質を、マウス−ヒトPC3前立腺癌異種移植モデルにおける抗腫瘍活性についてアッセイした。PD 15及びPD 21−Fc融合タンパク質はいずれも、統計的に有意な腫瘍増殖阻害を実証した(図13)。PD15は、PC3異種移植片に対してPD21よりも優れた抗腫瘍活性を示した。マウス−ヒトHT29結腸異種移植モデルにおける−PD21は、アブラキサンと厳密に同等の活性で、PD15よりも優れた抗腫瘍活性を示した(図14)。
【0180】
実施例3
【0181】
本実施例は、SPARC結合ペプチドの、免疫原性の可能性を実証する。
【0182】
ProPredは、抗原タンパク質配列中のMHCクラスII結合領域を予測するための、グラフィカルなウェブツールである(Singh et al.: ProPred: prediction of HLA-DR binding sites. Bioinformatics 2001, 17(12):1236-7を参照のこと)。サーバーは、文献から推定されるアミノ酸/位置係数表を用いて、マトリクスベースの予測アルゴリズムを実行する。予測されたバインダーは、グラフィカルインターフェースにおけるピークとしてか又はHTMLインターフェースにおける着色された残基としてかのいずれかで、視覚化され得る。このサーバーは、いくつかのHLA−DR対立遺伝子に結合し得る、乱雑な結合領域を位置付けるのに有用なツールであり得る。
【0183】
PD 21及びPD 15を含む、ファージディスプレイで同定されたSPARC結合ペプチドのProPred分析の結果、いくつかのHLA−DR分子のみがこれらのペプチドを提示することが示され、そしてこれらのペプチドがそれほど免疫原性を示さないことが示唆される。
【0184】
本明細書中に開示される任意のペプチド(例えば、高い親和性を示す、配列番号1〜112又は117を含む)は、免疫原性が低いか又は無いことについて、同様に分析され得る。
【0185】
実施例4
【0186】
抗体フラグメントも、異なるフォーマットを使用してファージ上に提示させ得る。単鎖可変フラグメント(scFv)は、短い(通常セリン、グリシン)リンカーと一緒に連結された、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変領域の融合物である。このキメラ分子は、定常領域の除去及びリンカーペプチドの導入にも関わらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持している。抗体ファージディスプレイのための最も一般的なフォーマットとしては、scFvライブラリーの使用が挙げられる。従って、抗体変異体の大きなコレクションを、抗原結合クローンの存在に対してスクリーニングし得る。
【0187】
全般的な戦略は、最初にSPARCを抗原とするELISAにより、ヒト抗体ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることであった。
【0188】
最初に、HuScL−3(登録商標)を4ラウンドスクリーニングし(酸性溶出で3回及び競合的溶出で1回)、17個の陽性クローンをファージELISAにより選択した。これらのクローンのDNA配列は、2つのユニークな抗体配列を明らかにし、それらの間で、第1の配列は15個の陽性クローンに共通であり、第2の配列は残りの2つの陽性クローンに共通であった。その後、2つのユニークな抗体の結合特異性を、可溶性scFv ELISAにより確認した。
【0189】
次に、HuScL−2(登録商標)を3ラウンドスクリーニングした(トリプシン消化溶出で2回及び競合的溶出で1回)。結局、30個の陽性クローンをファージELISAにより選択した。配列決定の結果によれば、29個のクローンは1つの抗体配列を共有しており、残りの1クローンは別のユニークな抗体をコードしていた。その後、これらの2つの抗体の結合特異性を、同様に可溶性scFv ELISAにより確認した。
【0190】
SPARCに対する4つのユニークなScFvを同定した(ScFv 3-1、ScFv 3-2、ScFv 2-1、及びScFv 2-2(配列番号113〜116))。図17は、抗原結合CDRに下線を引いた、ScFv 3-1、ScFv 3-2、ScFv 2-1、及びScFv 2-2(配列番号113〜116)の配列を示す。
【0191】
実施例5
【0192】
本実施例は、典型的なSPARC結合ScFvの精製を開示する。
【0193】
図18は、細菌から単離したscfv2.1の、ニッケルカラム精製並びに末端アミノ酸配列決定及びSDS−PAGEによるScFv2.1の特徴付けを示す(A、発現させた配列;B、アフィニティークロマトグラフィー;C、SDS PAGE;D、N末端アミノ酸配列データ)。
【0194】
図19は、細菌から単離したScfv3.1の、精製並びに末端アミノ酸配列決定及びSDS−PAGEによるScFv2.1の特徴付けを示す(A、発現させた配列;B、アフィニティークロマトグラフィー;C、SDS PAGE;D、N末端アミノ酸配列データ)。
【0195】
図20は、SPARCへの結合についての、精製したScFv2.1、scFv3.1及びscFv3.2のKDの決定を示す。A、SPARCを固定したチップ及びフロースルーとしてのScFv2.1を使用する、典型的なビアコア実験のセンサーグラム(Sesorgrams);B、(HTI SPARCは、HTIから得られる血小板SPARCである;Abx SPARCは、アブラクシスにおいて、操作されたHEK293細胞から精製されたSPARCである)に対するScFv2-l、ScFV3-l、及びScFV3-2のKD。
【0196】
本明細書中に引用された全ての参考文献(刊行物、特許出願、及び特許を含む)は、各参考文献が参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、またその全体が本明細書中で説明されたのと同程度まで、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0197】
本発明(特に添付の特許請求の範囲に関して)を記載することに関して、用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に別途示されない限り、又は文脈により明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」は、別途言及されない限り、オープンエンドな(open-ended)用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中に別途示されない限り、この範囲内に入るそれぞれ別々の値に個々に言及する省略方法として機能することを意図するに過ぎず、それぞれ別々の値は、それが本明細書中に個々に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に別途示されない限り、又はさもなくば文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施されうる。本明細書中に提供されるあらゆる、そして全ての例示、又は例示的語句(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をより明確にすることを意図するに過ぎず、別途主張されない限り、本発明の範囲を限定しない。本明細書中のいかなる語句も、主張されていない任意の要素を本発明の実施に必須なものとして示していると解釈されるべきではない。
【0198】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されており、本発明を実施するための、本発明者らが知る最良の形態を含む。それらの好ましい実施形態のバリエーションは、前述の記載を読めば、当業者に明らかになりうる。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのようなバリエーションを使用することを予期し、また本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたもの以外の方法で、本発明が実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法により許容されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された対象の全ての改変物及び均等物を含む。さらに、上記要素の全ての可能なバリエーションの中で、上記要素の任意の組み合わせが、本明細書中に別途示されない限り、又はさもなくば文脈により明らかに矛盾しない限り、本発明により包含される。
【技術分野】
【0001】
優先権主張
【0002】
本出願は、2008年12月5日に出願された米国仮出願番号61/120,228の利益を主張し、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
【0004】
酸性でシステインに富んだ分泌タンパク質(Secreted Protein, Acidic, Rich in Cysteines)(SPARC)(オステオネクチンとしても知られている)は、ヒトの体内で発現する303アミノ酸の糖タンパク質である。SPARC発現は、発生的に調節されており、SPARCは正常な発生の過程で又は傷害に応答し、主に再構築している組織において発現している。例えばLane et al., FASEB J., 8, 163-173 (1994)を参照のこと。例えば、高レベルのSPARCタンパク質が、発生中の骨及び歯(マウス、ウシ及びヒトの胚においては主に骨芽細胞、象牙芽細胞、軟骨膜の線維芽細胞、及び分化軟骨細胞)において発現する。SPARCは、組織再構築、創傷修復、形態形成、細胞分化、細胞移動、及び血管形成(これらの過程が病状に付随する場合を含む)の過程での細胞−マトリクス相互作用においても重要な役割を果たす。例えばSPARCは、間質性腎線維症において発現し、ブレオマイシン誘導肺線維症などの肺傷害への宿主応答において役割を果たす。
【0005】
SPARCは、正常な組織と比較して、種々の癌における腫瘍及びその周囲の間質において癌の種類に依存したパターンで異なって発現している。従って、その機能並びに癌の発生及び進行への寄与の全ての面を説明する統一的なモデルはない。1つのパターンにおいて、SPARC発現の増加が、乳癌(Bellahcene and Castronovo, 1995; Jones et al., 2004; Lien et al., 2007; Porter et al., 1995)、黒色腫(Ledda et al., 1997a)、及び膠芽細胞腫(Rempel et al., 1998)において報告されている。SPARC発現の増加は、これらの癌における腫瘍プロモーション又は進行において役割を果たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、炎症及びいくつかの癌におけるSPARC過剰発現は、SPARCを診断及び治療のための可能性のある標的にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
【0008】
本発明は、SPARC結合ペプチド(「SBP」)及び医薬上許容される担体と結合した治療剤もしくは診断剤を含む治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含む、哺乳動物における疾患部位に治療剤又は診断剤を送達するための組成物(「発明組成物」)(SBPが配列番号1〜117の1つ以上を含む場合を含む)を提供する。
【0009】
特に好ましい実施形態としては、例えば、1以上のSBPを含む、哺乳動物において疾患部位に治療剤を送達するための発明組成物が挙げられ、ここで該治療剤は、機能的抗体Fcドメインを含む抗体フラグメント(例えば、機能的抗体Fcドメインが配列番号118を含む場合を含む)である。
【0010】
更なる好ましい実施形態としては、哺乳動物において疾患部位に治療剤又は診断剤を送達するための発明組成物、例えばSBPが配列番号1〜112及び117のいずれか1つ以上に由来する少なくとも10個の連続するアミノ酸を含む場合の組成物が挙げられる。好ましくは、SBPは、配列番号1〜112及び117のいずれか1つ以上に由来する少なくとも10個の連続するアミノ酸を含み得る。他の実施形態としては、例えば、2以上の別々のSBPであって、個々のSBPが、配列番号1〜112及び117のいずれか1つ、好ましくは配列番号1〜5のいずれか1つ以上に由来する少なくとも10個の連続するアミノ酸を含む、組成物が挙げられる。実施形態としては、例えば、2以上の別々のSBPであって、個々のSBPが、配列番号1〜117の1つ以上を含む場合の組成物が挙げられる。
【0011】
本発明は、SBP、医薬上許容される担体、及びアルブミン結合ペプチド(「ABP」)(ここでABPは、配列番号119若しくは配列番号120又は配列番号119及び120の両方を含む)を更に含む医薬上許容される担体と結合した治療剤もしくは診断剤を含む治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含む、哺乳動物において疾患部位に治療剤又は診断剤を送達するための組成物も提供する。このような組成物としては、SBP及びABPが同じポリペプチド内にある場合、並びにSBP及びABPが異なるポリペプチド内にある場合が挙げられる。
【0012】
本発明は、SPARC結合ペプチド及び医薬上許容される担体と結合した治療剤もしくは診断剤を含む治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含む、哺乳動物において疾患部位に治療剤又は診断剤を送達するための方法(「発明方法」)(ここでSBPは配列番号1〜117を含む)を更に提供する。好ましい実施形態としては、例えば、SBPが、配列番号1〜112及び117のいずれか1以上、より好ましくは配列番号1〜5及び117のいずれか1つ以上に由来する少なくとも10個の連続するアミノ酸を含む組成物である場合の発明方法が挙げられる。
【0013】
他の好ましい実施形態としては、例えば、2以上の別々のSBPであって、個々のSBPが、配列番号1〜117のいずれか1つ以上を含む、発明方法が挙げられる。本発明は、それぞれ少なくとも1つのSBPを含む2以上の別々のポリペプチドがあり、SBPが配列番号1〜112のいずれか1つに由来する少なくとも10個の連続するアミノ酸を含む場合の発明方法も提供する。
【0014】
特に好ましい発明方法は、例えば、治療剤が、機能的抗体Fcドメイン(抗体フラグメントが配列番号118を含む場合など)を含む抗体フラグメントである場合の組成物を含む。本発明に沿ったこのような方法としては、例えば、治療剤が、補体活性化、細胞媒介性細胞傷害、アポトーシスの誘導、細胞死の誘導、及びオプソニン作用(opsinization)の1つ以上を仲介する抗体フラグメントである場合が挙げられる。
【0015】
本発明により提供される発明方法は、配列番号119若しくは120又は配列番号119及び120の両方を含む血清アルブミン結合ペプチド(「ABP」)も含む。本発明に沿った方法としては、例えば、SBP及びABPが同じポリペプチド内にある場合、並びにSBP及びABPが異なるポリペプチド内にある場合の両方が更に挙げられる。しかしながら、SBPは、配列番号1〜112のいずれか1つ以上に由来する少なくとも10個の連続するアミノ酸も含み得る。
【0016】
提供される発明組成物及び発明方法は、疾患部位が腫瘍である場合と哺乳動物がヒト患者である場合に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、結合ペプチドが治療剤又は診断剤へ融合する一般概念を示す。本図面では、治療剤は抗体Fcドメインである例を示す。
【図2】図2は、ファージディスプレイライブラリーの反復スクリーニングのための一般的戦略を示す。
【図3】図3は、SPARCへの結合についてペプチドファージディスプレイライブラリーをスクリーニングした後に同定された配列を、配列を単離した回数によって示す。
【図4】図4は、SPARCへの結合についてペプチドファージディスプレイライブラリーをスクリーニングした後に同定された配列を、(ODによって示されるように)SPARCへの結合の親和性によって示す。
【図5】図5は、PD 15又はPD21 Fc融合タンパク質を与えるための、pFUSE- hIgG1-Fc2ベクターへのペプチドPD 15又はPD21のいずれかのペプチドのクローニングを示す。
【図6】図6は、ペプチド−Fc融合タンパク質をコードするための、pFUSE- hIgG1-Fc2ベクターへのペプチド15及びペプチド21をコードする配列のクローニングから生じるDNA配列を表す。
【図7】図7は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動における、発現、精製したPD 15− Fc及びPD 21− Fc融合タンパク質を示す。
【図8】図8は、PD15及びPD21の的外れな結合を明らかにするために使用したプロトアレイ(Protoarray)を示す。
【図9】図9は、PD 15及びPD 21によるSPARC結合の親和性を、抗SPARC抗体のそれと比較した、ELISA結合アッセイのグラフである。
【図10】図10は、抗SPARC抗体(R&D Anti SPARC)を用いた、腫瘍のSPARC発現を表す、ヒト腫瘍の薄片について行った免疫組織学的研究の顕微鏡写真を示す。陰性対照である抗ハーセプチン抗体(Fcフラグメントのみ)及びスタブリン(Stablin)結合ペプチド−Fc融合タンパク質(stab―Fc)は、腫瘍を染色しない。
【図11】図11は、腫瘍のSPARC発現細胞へのPD 15及びPD 21の結合を表す、SPARC発現腫瘍の組織学的染色を示す。
【図12】図12は、エラスチン上の可能性のあるSPARC結合部位を示す。
【図13】図13は、ヒト前立腺癌/ヌードマウスモデル系におけるPD 15及びPD 21の抗腫瘍活性を示す。
【図14】図14は、ヒト乳癌/ヌードマウスモデル系におけるPD 15及びPD 21の抗腫瘍活性を示す。
【図15】図15は、SPARC結合活性を有する2つのsvFcポリペプチド、ScFv 3-l及びScFv 3-2を示す。
【図16】図16は、SPARC結合活性を有する2つのsvFcポリペプチド、ScFv 2-l及びScFv 2-2を示す。
【図17】図17は、scfv 2.-1、2-2、3-1、及び3-2のヌクレオチド配列を示す。CDRに下線を引いている。
【図18】図18は、細菌からのscfv2-lの精製を示す。
【図19】図19は、細菌からのscfv3-lの精製を示す。
【図20】図20は、ビアコア(Biacore)によるチップ上に固定化されたSPARCへのscfv2-lの結合を示す。ビアコアを使用した、SPARCに対するscfv 2-1、3-1、及び3-2についてのKdを記載する(HTI SPARC−HTIから得た、精製した血小板SPARC;及びAbx SPARC−アブラクシスにより製造された、組換えHEK293細胞由来のSPARC)
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
【0019】
SBP及びABPは「ペプチドリガンドドメイン」である。用語「ペプチドリガンドドメイン」とは、単独で及び/又はより大きなポリペプチド配列内でのいずれかで存在し得、特異性をもって別の生体分子に結合する、アミノ酸配列を意味する。例えば、脂肪酸、ビリルビン、トリプトファン、カルシウム、ステロイドホルモン及び他の生理学的に重要な化合物のための主要な血中輸送系は、血清アルブミンへのこれらの生体分子の結合を含む。これらの生体分子の結合は、アルブミンアミノ酸配列中の別々の部位において(すなわち、血清アルブミン中のペプチドリガンドドメインにおいて)起こる。
【0020】
本発明は、SPARC結合ペプチド(「SBP」)及び医薬上許容される担体と結合した治療剤もしくは診断剤を含む治療上又は診断上有効量の医薬組成物を含む、哺乳動物において疾患部位に治療剤又は診断剤を送達するための組成物(「発明組成物」及び「発明方法」)を提供する。本発明は、SBPが配列番号1〜117のいずれか1つ以上、最も望ましくは、配列番号1〜5のいずれか1つ以上、又は配列番号1〜117のいずれか1つの、1つ以上のホモログの配列を有するペプチドを含む、組成物及び方法を含む。
【0021】
用語「ホモログ」とは、元の配列と実質的に同じアミノ酸配列を有し、元の配列により示される特性と実質的に類似の関連する特性を示すポリペプチドを意味する。このような特性の1つの例は、活性薬剤の組織分布を調節する能力であり、ここで、配列番号1〜117のホモログは、配列番号1〜117により提供されるものと実質的に類似のレベルの調節を提供することができるだろう。この文脈において、例えば、そして望ましくは、このような実質的に類似の調節を示す配列番号1〜117のホモログは、配列番号1〜117によって提供されるものと比較して、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%の活性薬剤の血中レベルを提供するだろう。或いは、用語「ホモログ」は、例えば、配列番号1〜112のいずれか1つ、最も望ましくは、配列番号1〜5のいずれか1つ以上の、少なくとも6個の連続するアミノ酸、好ましくは少なくとも7個の連続するアミノ酸、より好ましくは少なくとも8個の連続するアミノ酸、なおより好ましくは少なくとも9個の連続するアミノ酸、最も好ましくは少なくとも10個の連続するアミノ酸のペプチド配列のこともいう。
【0022】
本発明により提供される組成物及び方法は、配列番号119若しくは120又は配列番号119及び120の両方並びにそれらのホモログを含む、ABPも含む。本発明に従う方法としては、例えば、SBP及びABPが同じポリペプチド中にある場合、並びにSBP及びABPが異なるポリペプチド中にある場合の両方が更に挙げられる。
【0023】
元の配列と比較した変化に関して、元の配列のホモログは、望ましくは元の配列と少なくとも約80%同一であり、好ましくは元の配列と少なくとも約90%同一であり、なおより好ましくは元の配列と少なくとも約95%同一であり、最も好ましくは元の配列と少なくとも約99%同一である。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「配列同一性パーセンテージ」とは、比較ウィンドウに対して2つの最適にアラインされた配列を比較することにより決定される値を意味する。また、比較ウィンドウ中のポリペプチド配列の一部は、2つの配列の最適なアラインメントについての参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して、付加又は欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。パーセンテージは、両方の配列において同一のアミノ酸残基が現れる位置の数を決定し、マッチした位置の数を得る工程、マッチした位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数で割る工程、そしてその結果に100をかけて配列同一性パーセンテージを得る工程、によって計算される。好ましくは、最適なアラインメントは、Needleman及びWunsch(1970)J. Mol. Biol. 48:443 453の相同性整列アルゴリズムを使用して実施される。
【0025】
ホモログが同一のアミノ酸を含まない場合、変異は保存的アミノ酸変化のみをもたらすことも望ましい。従って、同一ではない残基の位置は、アミノ酸残基が類似の化学的特性(例、電荷又は疎水性)を有する他のアミノ酸残基に置換され、それゆえ分子の機能的特性を変えないように、異なる。配列が保存的置換で異なる場合、該置換の保存的性質について補正するために、パーセント配列同一性は上方に調節され得る。このような保存的置換により異なる配列は、「配列類似性」又は「類似性」を有すると言われる。この調節を行なうための手段は、当業者に周知である。
【0026】
本発明に関して「保存的」アミノ酸置換又は変化によって何が意味されるかをさらに例示するために、グループA〜Fを以下に記載する。以下のグループの一つのメンバーの、同じグループの別のメンバーによる置換は、「保存的」置換であるとみなされる。
【0027】
グループAは、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、システイン、トレオニン、及び以下の側鎖を有する修飾アミノ酸を含む:エチル、イソブチル、-CH2CH2OH、-CH2CH2CH2OH、-CH2CHOHCH3、及びCH2SCH3。
【0028】
グループBは、グリシン、アラニン、バリン、セリン、システイン、トレオニン、及びエチル側鎖を有する修飾アミノ酸を含む。
【0029】
グループCは、フェニルアラニン、フェニルグリシン、チロシン、トリプトファン、シクロヘキシルメチル、及び置換ベンジル又はフェニル側鎖を有する修飾アミノ残基を含む。
【0030】
グループDは、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸若しくはアスパラギン酸の、置換若しくは非置換の、脂肪族、芳香族若しくはベンジルエステル(例、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、シクロヘキシル、ベンジル、若しくは置換ベンジル)、グルタミン、アスパラギン、CO-NH-アルキル化グルタミン若しくはアスパラギン(例、メチル、エチル、n-プロピル、及びイソ−プロピル)、及び側鎖-(CH2)3COOHを有する修飾アミノ酸、それらのエステル(置換若しくは非置換の、脂肪族、芳香族、若しくはベンジルエステル)、それらのアミド、及びそれらの置換若しくは非置換のN-アルキル化アミドを含む。
【0031】
グループEは、ヒスチジン、リジン、アルギニン、N-ニトロアルギニン、p-シクロアルギニン、g-ヒドロキシアルギニン、N-アミジノシトルリン、2-アミノ(arnino)グアニジノブタン酸、リジンのホモログ、アルギニンのホモログ、及びオルニチンを含む。
【0032】
グループFは、セリン、トレオニン、システイン、及び-OH若しくは-SHで置換されたC1-C5直鎖若しくは分岐鎖アルキル側鎖を有する修飾アミノ酸を含む。
【0033】
本発明は、結合分子を含む組成物を更に提供し、該結合分子は活性薬剤と結合したペプチドリガンドドメインを含み、ここでペプチドリガンドドメインは、アミノ末端若しくはカルボキシル末端又は両末端に付加される、追加の約50までのアミノ酸、好ましくは追加の約25までのアミノ酸、より好ましくは追加の約15までのアミノ酸、最も好ましくは追加の約10までのアミノ酸を含む。結果として生じるポリペプチド(これらは本発明に従う)は、全長が50アミノ酸未満、40アミノ酸未満、30アミノ酸未満、25アミノ酸未満又は20アミノ酸未満であるポリペプチドを含む。
【0034】
本発明は、結合分子を含む組成物を更に提供し、該結合分子は活性薬剤と結合したSBPを含み、ここでSBPは、配列番号1〜117のいずれか1つ、最も望ましくは配列番号1、2、及び117のいずれか1つ以上を含む、1又は複数のSBPである。
【0035】
本発明は、前記追加のアミノ酸がアミノ及び/又はカルボキシ末端に付加されているものを含む、ペプチドリガンド結合ドメインのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを更に提供する。
【0036】
II.本発明に従ってペプチドを作製する方法
【0037】
本発明により提供されるペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、公知の技術を使用して、合成、検出、定量及び精製され得る。例えば、外因性ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドを発現する細胞は、当業者に周知の方法により、cDNAを強力なプロモーター/翻訳開始の制御下に置き、ベクターを適切な原核又は真核細胞内にトランスフェクト又は形質転換し、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドの発現を促すことによって、作り出され得る。或いは、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、当業者に周知の方法により科学的に製造され得る。
【0038】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、標準的な固相合成により調製され得る。一般に知られるように、必要な長さのペプチドは、妨害基のブロッキング、反応させるアミノ酸の保護、カップリング、脱保護、及び反応しない残基のキャッピングのための、製造業者の指示書に従って、市販の装置及び試薬を使用して調製され得る。適切な装置は、例えば、Foster City、CAのApplied BioSystems又はSan Raphael、CAのBiosearch Corporationから入手され得る。
【0039】
例えば、ペプチドは、適切に側鎖を保護したt−ブトキシカルボニル−α−アミノ酸を用いて、標準的な自動固相合成プロトコルを使用して合成される。完成したペプチドを、標準的なフッ化水素法を使用して固相支持体から除去し、同時に側鎖の脱保護を行う。0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)中のアセトニトリル勾配を使用した半分取逆相−HPLC(Vydac C18)によって、粗ペプチドを更に精製する。ペプチドを真空乾燥させ、アセトニトリルを除去し、0.1%TFA水溶液から凍結乾燥させる。純度を分析的RP−HPLCによって確認する。ペプチドを、凍結乾燥させ、次いで水又は0.01M酢酸中に1〜2mg/mLの重量濃度で溶解させ得る。
【0040】
上記の合成方法の使用は、コードされていないアミノ酸又はD型のアミノ酸がペプチド中に存在する場合に必要とされる。しかしながら、遺伝子にコードされたペプチドについては、市販の発現システムで容易に合成されたDNA配列を使用した組換え技術を通じてもまた得ることができる。
【0041】
従って本発明は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の発現を制御する因子を含む組換えベクターを提供する。また、本発明は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞を提供し、ここで該細胞は原核細胞又は真核細胞である。微生物培養及び組織培養の方法は、当業者に周知である(例えば、Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (2001), pp. 16.1-16.54を参照のこと)。従って本発明は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドを製造する方法を提供し、該方法は以下を含む:(a)請求項1のポリペプチドをコードする核酸で細胞を形質転換する工程;(b)形質転換された細胞で該ポリペプチドの発現を誘導する工程;及び(c)該ポリペプチドを精製する工程。
【0042】
タンパク質の発現は、RNA転写のレベルに依存し、さらにDNAシグナルにより調節される。同様に、mRNAの翻訳は、最低限でも、AUG開始コドン(メッセージの5’末端の10〜100ヌクレオチド以内に通常位置する)を必要とする。AUG開始コドンに隣接する配列は、その認識に影響を与えることが示されている。例えば、真核生物のリボソームによる認識については、完全な「Kozakコンセンサス」配列と一致した配列中に埋め込まれたAUG開始コドンは、最適な翻訳をもたらす(例えば、Kozak, J. Molec. Biol. 196: 947-950 (1987)を参照のこと)。また、細胞内での外因性核酸の発現が成功するためには、得られるタンパク質の翻訳後修飾を必要とし得る。
【0043】
本明細書中に記載される核酸分子は、適切なプロモーター(例えば、真核細胞中で機能的なプロモーター)に作動可能に連結されたコード領域を好ましくは含む。RSVプロモーター及びアデノウイルス主要後期プロモーターなど(これらに限定されない)のウイルスプロモーターが、本発明において使用され得る。適切な非ウイルスプロモーターとしては、ホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーター及び伸長因子1αプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。非ウイルスプロモーターは、望ましくはヒトプロモーターである。追加の適切な遺伝因子(これらの多くは当該分野で公知である)も、本発明の核酸及び構築物に付加又は挿入され得、更なる機能、発現レベル又は発現パターンを提供し得る。
【0044】
また、本明細書中に記載される核酸分子は、転写を促進するためにエンハンサーに作動可能に連結され得る。エンハンサーは、隣接遺伝子の転写を刺激する、DNAのシス作用性因子である。多くの種由来の多数の異なる細胞型において、連結された遺伝子に対して高レベルの転写を付与するエンハンサーの例としては、SV40及びRSV−LTR由来のエンハンサーが挙げられるが、これらに限定されない。このようなエンハンサーは、細胞型特異的な効果を有する他のエンハンサーと組み合わせられ得、あるいは任意のエンハンサーが、単独で使用され得る。
【0045】
真核細胞におけるタンパク質産生を最適化するために、本発明の核酸分子は、この核酸分子のコード領域の後にポリアデニル化部位を更に含み得る。また、好ましくは全ての適切な転写シグナル(及び必要に応じて翻訳シグナル)は、外因性核酸が導入される細胞中で適切に発現するように正確に配置されよう。所望の場合、外因性核酸はまた、インフレームの全長転写物を維持しながらmRNA産生を促進するために、スプライス部位(即ち、スプライスアクセプター部位及びスプライスドナー部位)を組み込み得る。更に、本発明の核酸分子は、プロセシング、分泌、細胞内局在などのために適切な配列を更に含み得る。
【0046】
核酸分子は、任意の適切なベクターに挿入され得る。適切なベクターとしてはウイルスベクターが挙げられるが、これに限定されない。適切なウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、アルファウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、及び鶏痘ウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。ベクターは好ましくは、真核細胞(例えば、CHO−K1細胞)を形質転換するための、ネイティブの又は操作された能力を有する。また、本発明に関して有用なベクターは、プラスミド若しくはエピソームのような「裸の」核酸ベクター(即ち、ベクターを封入するタンパク質、糖、及び/又は脂質をほとんど又は全く有さないベクター)であり得、又はベクターは、他の分子と複合体化され得る。本発明の核酸と適切に組み合わせられ得る他の分子としては、ウイルス被膜、陽イオン性脂質、リポソーム、ポリアミン、金粒子、及び細胞分子を標的化するリガンド、受容体又は抗体などの標的化部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書中に記載される核酸分子は、任意の適切な細胞、典型的には真核細胞(例えば、CHO、HEK293、又はBHKなど)内へ形質転換され得、望ましくはペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド(例えば、本明細書中に記載の配列番号1〜120又はそれらのホモログを含むポリペプチドなど)の発現をもたらす。核酸分子の発現、ひいてはペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド(例えば、本明細書中に記載の配列番号1〜120又はそれらのホモログのアミノ酸配列を含むポリペプチドなど)を産生するために、細胞が培養され得る。
【0048】
従って、本発明は、本明細書中に記載の本発明の核酸分子で形質転換又はトランスフェクトされた細胞を提供する。外因性DNA分子で細胞を形質転換又はトランスフェクトする手段は、当該分野で周知である。例えば、限定されることなく、DNA分子は、当該分野で周知の標準的な形質転換又はトランスフェクション技術(例えばリン酸カルシウム又はDEAE−デキストラン媒介性のトランスフェクション、プロトプラスト(protoblast)融合、エレクトロポレーション、リポソーム及び直接的マイクロインジェクションなど)を使用して細胞中に導入される(例えば、Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, ColdSpring HarborLaboratory Press, New York(2001), pp. 1.1-1.162, 15.1-15.53, 16.1- 16.54を参照のこと)。
【0049】
形質転換法の別の例は、プロトプラスト融合法であり、高コピー数の目的のプラスミドを保有する細菌由来のプロトプラストが、培養哺乳動物細胞と直接混合される。細胞膜の融合(通常ポリエチレングリコールを用いる)の後、細菌の内容物が哺乳動物細胞の細胞質中に送達され、プラスミドDNAが核へ移行する。
【0050】
エレクトロポレーションは種々の哺乳動物細胞及び植物細胞への短時間の高電圧の電気パルスの印加であって、原形質膜にナノメートルサイズの孔を形成させる。DNAは、これらの孔を通過するか、又は孔の閉鎖に伴う膜成分の再分布の結果として、細胞の細胞質中に直接取り込まれる。エレクトロポレーションは極めて効率的であり得、クローン化した遺伝子(clones genes)の一過的な発現のため、及び目的の遺伝子の組み込まれたコピーを保有する細胞株の樹立のため、の両方に使用され得る。
【0051】
このような技術は、真核細胞の安定かつ一過性の形質転換の両方のために使用され得る。安定に形質転換された細胞の単離には、目的の遺伝子での形質転換と同時に選択マーカーの導入が必要である。このような選択マーカーとしては、ネオマイシンへの耐性を付与する遺伝子、並びにHPRT陰性細胞におけるHPRT遺伝子が挙げられる。選択には、少なくとも約2〜7日間、好ましくは少なくとも約1〜5週間の、選択培地中での長期培養が必要とされうる(例えば、Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (2001), pp. 16.1-16.54を参照のこと)。
【0052】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、組換え宿主細胞から発現し、精製され得る。組換え宿主細胞は原核又は真核であり得、細菌(E. coliなど)、真菌細胞(酵母など)、昆虫細胞(ショウジョウバエ及びカイコ由来の細胞株を含むが、これらに限定されない)、並びに哺乳動物細胞及び細胞株を含むが、これらに限定されない。in vitroであれin vivoであれ、細胞(例えばヒト細胞)内でペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドを発現させるときには、該ペプチドをコードするこのようなポリヌクレオチドのために選択されるコドンは、所定の細胞型(即ち種)について最適化され得る。コドン最適化のための多数の技術が当該分野で公知である(例えば、Jayaraj et al, Nucleic Acids Res. 33(9):3011-6 (2005); Fuglsang et al., Protein Expr. Purif. 31(2):247-9 (2003); Wu et al., “The Synthetic Gene Designer: a Flexible Web Platform to Explore Sequence Space of Synthetic Genes for Heterologous Expression,” csbw, 2005 IEEE Computational Systems Bioinformatics Conference - Workshops (CSBW'05), pp. 258-259 (2005)を参照のこと)。
【0053】
原核生物における最適なポリペプチドの発現のために考慮されなければならない問題としては、使用される発現系、宿主株の選択、mRNAの安定性、コドンバイアス、封入体の形成及び防止、融合タンパク質及び部位特異的タンパク質分解、コンパートメント指向分泌が挙げられる。(Sorensen et al., Journal of Biotechnology 115 (2005) 113-128(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。)
【0054】
発現は、通常は、適合性の遺伝的背景の系によって保持されたプラスミドから誘導される。発現プラスミドの遺伝的要素としては、複製起点(ori)、抗生物質耐性マーカー、転写プロモーター、翻訳開始領域(TIR)、並びに転写及び翻訳ターミネーターが挙げられる。
【0055】
任意の適切な発現系が使用され得、例えば、Escherichia coliは、その相対的な単純さ、高密度培養、周知の遺伝的特徴及び多数の適合性のツール(種々の入手可能なプラスミド、組換え融合パートナー及び変異株を含み、それらはポリペプチド発現に使用可能である)により、タンパク質発現を容易にする。E coli株又は組換え発現のための遺伝的背景は、非常に重要である。発現株は、ほとんどの有害な天然のプロテアーゼを欠損しているべきであり、発現プラスミドを安定に保持しているべきであり、そして発現系に関連する遺伝因子(例、DE3)を与えるべきである。
【0056】
プラスミドコピー数は、好ましくは緩やかな様式で複製する複製起点により制御される(Baneyx, 1999)。現代の発現プラスミド中に存在するColE1レプリコンは、pBR322(コピー数15〜20)又はpUC(コピー数500〜700)ファミリーのプラスミドに由来し、一方pl5Aレプリコンは、pACYC184(コピー数10〜12)に由来する。組換え発現プラスミド中の最も一般的な薬物耐性マーカーは、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール又はテトラサイクリンへの耐性を与える。
【0057】
E coli発現系としては、T7ベースのpET発現系(Novagenにより商品化された)、ラムダPLプロモーター/cIリプレッサー(例、Invitrogen pLEX)、Trcプロモーター(例、Amersham Biosciences pTrc)、Tacプロモーター(例、Amersham Biosciences pGEX)及びハイブリッドlac/T5(例、Qiagen pQE)及びBADプロモーター(例、Invitrogen pBAD)が挙げられる。
【0058】
転写されたメッセンジャーRNAの翻訳開始領域(TIR)からの翻訳開始は、シャイン−ダルガーノ(SD)配列及び翻訳開始コドンを含むリボソーム結合部位(RBS)を必要とする。シャイン−ダルガーノ配列は、開始コドン(効率的な組換え発現系において正準のAUGである)から7±2ヌクレオチド上流に位置する。最適な翻訳開始は、SD配列UAAGGAGGを有するmRNAから得られる。
【0059】
E. coliにおけるコドン使用頻度は、細胞質において得られる同族のアミノアシル化tRNAのレベルに反映される。主要なコドンは、高発現する遺伝子に存在し、一方マイナーな又はレアなコドンは、低いレベルで発現する遺伝子中にある傾向がある。E. coliにおいてレアなコドンは多くの場合、真核生物、古細菌(archaeabacteria)及び異なるコドン頻度嗜好性を有する他の遠縁の生物といった起源に由来する異種遺伝子に多い(Kane, 1995)。レアなコドンを含む遺伝子の発現は、マイナーなコドンのtRNAと結合したアミノ酸の取り込みを必要とする位置においてリボソームが停止する結果として、翻訳エラーにつながり得る(McNulty et al., 2003)。コドンバイアスの問題は、レアなコドンを塊(ダブレット及びトリプレットなど)で含む転写物が大量に蓄積する場合、組換え発現系において高度に優勢となる。
【0060】
タンパク質の活性のためには、正確な三次元構造へのフォールディングが要求される。熱ショックなどのストレス状況は、in vivoにおけるフォールディングを損ない、フォールディング中間体は、封入体と呼ばれる不定形のタンパク質顆粒へと会合する傾向がある。
【0061】
封入体は、組換えタンパク質が高速度で発現する場合に、多くの場合ストレス応答として生じるとされる、構造的に複雑な凝集体のセットである。E. coliの細胞質における200〜300mg/mlの濃度でのタンパク質の高分子の込み合いは、特に組換え高レベル発現の間の、非常に好ましくないタンパク質フォールディング環境を示唆する(van den Berg et al., 1999)。封入体が、折り畳まれていない鎖上の露出したパッチの間の疎水性相互作用によって、又は特異的クラスター化機構によって起こる受動的事象を介して形成するのか否かは不明である(Villaverde and Carrio, 2003)。精製された凝集体は、尿素及びグアニジン(guadinium)塩酸塩のような界面活性剤を使用して可溶化され得る。ネイティブなタンパク質は、希釈、透析又はオンカラムリフォールディング法のいずれかによって、可溶化された封入体からのin vitroのリフォールディングによって調製され得る(Middelberg, 2002; Sorensen et al., 2003a)。
【0062】
リフォールディング戦略は、分子シャペロンを含めることによって改善され得る(Mogk et al., 2002)。しかしながら所定のタンパク質についてのリフォールディング手順の最適化は、時間のかかる努力を必要とし、必ずしも高い生成物収量につながらない。封入体形成を防止するための可能な戦略は、分子シャペロンの共過剰発現である。
【0063】
組換えタンパク質の精製及び発現を単純化するために、広範なタンパク質融合パートナーが開発されている(Stevens, 2000)。融合タンパク質又はキメラタンパク質は、通常、特異的プロテアーゼのための認識部位により、乗客又は標的タンパク質に連結されたパートナー又は「タグ」を含む。ほとんどの融合パートナーは、特異的なアフィニティー精製戦略のために使用される。融合パートナーは、in vivoでも都合がよく、ここでそれらは細胞内タンパク質分解から乗客を保護し得(Jacquet et al., 1999; Martinez et al., 1995)、溶解性を増強し得(Davis et al., 1999; Kapust and Waugh, 1999; Sorensen et al., 2003b)又は特異的発現レポーターとして使用され得る(Waldo et al., 1999)。おそらくmRNA安定化の結果として、高い発現レベルは、多くの場合、N末端の融合パートナーから、発現が弱い乗客へと移され得る(Arechaga et al., 2003)。一般的なアフィニティータグは、ポリヒスチジンタグ(His−タグ)(固定化された金属アフィニティークロマトグラフィー(immobilized metal affinity chromatography)(IMAC)に適合する)及びグルタチオンベースの樹脂上で精製するためのグルタチオンS−トランスフェラーゼ(glutathione S-transferase)(GST)タグである。いくつかの他のアフィニティータグが存在し、広く総説されている(Terpe, 2003)。
【0064】
組換えで発現されたタンパク質は、原則として、3つの異なる場所、即ち細胞質、ペリプラズム又は培養培地に向けられる。種々の利点及び欠点が、特定の細胞内コンパートメントへの組換えタンパク質の方向性に関連する。生成物収量が高いため、細胞質における発現が通常好ましい。ジスルフィド結合形成は、E. coli内で隔離されており、Dsbシステムにより、ペリプラズムにおいて活発に触媒される(Rietsch and Beckwith, 1998)。細胞質におけるシステインの還元は、チオレドキシン及びグルタレドキシンによって達成される。チオレドキシンはチオレドキシンレダクターゼによって還元された状態に保たれ、グルタレドキシンはグルタチオンによって還元された状態に保たれる。低分子量グルタチオン分子は、グルタチオンレダクターゼによって還元される。2つのレダクターゼをコードするtrxB及びgor遺伝子は、E. coliにおいてジスルフィド結合の形成を可能にする。
【0065】
細胞ベースの発現系は、製造されるタンパク質の質及び量に関して欠点を有し、必ずしもハイスループットの製造に適切ではない。これらの欠点の多くは、無細胞翻訳系の使用によって回避され得る。
【0066】
in vitroの遺伝子発現及びタンパク質合成のための無細胞系は、多くの異なる原核生物及び真核生物の系について記載されている(Endo & Sawasaki Current Opinion in Biotechnology 2006, 17:373-380を参照のこと)。真核生物の無細胞系(ウサギ網状赤血球溶血液及び小麦胚芽抽出物など)は、in vitroで転写されたRNA鋳型の翻訳に必要とされる全ての構成要素を含む粗抽出物から調製される。真核生物の無細胞系は、翻訳反応のために、鋳型として、in vivo又はin vitroで合成された、単離されたRNAを使用する(例、ウサギ網状赤血球溶血液系及び小麦胚芽抽出物系)。共役した真核生物の無細胞系は、原核生物のファージRNAポリメラーゼを真核生物の抽出物と組み合わせ、in vitroタンパク質合成のために、ファージプロモーターを有する外因性DNA又はPCRで作り出した鋳型を利用する(例、TNT(登録商標)共役網状赤血球溶血液
【0067】
TNT(登録商標)共役系を使用して翻訳されたタンパク質は、多くの種類の機能的研究において使用され得る。TNT(登録商標)共役転写/翻訳反応は、オープンリーディングフレームを確認するために、タンパク質の変異を研究するために、及びタンパク質−DNA結合研究、タンパク質活性アッセイ、又はタンパク質−タンパク質相互作用研究のためにin vitroでタンパク質を製造するために、伝統的に使用されてきた。最近では、TNT(登録商標)共役系を使用して発現させたタンパク質は、酵母ツーハイブリッド相互作用を確認するためのアッセイ、in vitro発現クローニングを行なうためのアッセイ(IVEC)及び酵素活性又はタンパク質修飾アッセイ用のタンパク質基質を製造するためのアッセイにおいても使用されている。For a listing of recent citations using the 種々のアプリケーションにおいてTNT(登録商標)共役系を使用する最近の引用文献のリストについては、www.promega.com/citations/をご覧下さい。
【0068】
転写及び翻訳は、原核生物の系においては典型的には共役している;即ち、それらは内因性又はファージRNAポリメラーゼを含み、それが外因性DNA鋳型からmRNAを転写する。次いでこのRNAは、翻訳のための鋳型として使用される。DNA鋳型は、プラスミドベクター内にクローン化された遺伝子(cDNA)又はPCR(a)で作り出された鋳型のいずれかであり得る。リボソーム結合部位(RBS)は、原核生物の系において翻訳される鋳型に必要である。転写中、mRNAの5’末端が、リボソーム結合及び翻訳開始に使用可能となり、転写と翻訳とが同時に起こることが可能となる。原核生物プロモーター(lac若しくはtacなど;環状若しくは直鎖状DNAのためのE. coli S30抽出物系、又はファージRNAポリメラーゼプロモーター;環状DNAのためのE. coli T7 S30抽出物系)のいずれかを含むDNA鋳型を使用する、原核生物の系が利用可能である。精製されたペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドの溶解性は、当該分野で公知の方法によって改善され得る。例えば、(例えば、E. coli中で)発現したタンパク質の溶解性を増大させるために、Georgiou & Valax(Current Opinion Biotechnol. 7: 190-197 (1996))に記載されているように、増殖温度を低下させ、より弱いプロモーターを使用し、より低コピー数のプラスミドを使用し、誘導因子濃度を低下させ、増殖培地を変化させることによって、タンパク質合成の速度を低下させることができる。これにより、タンパク質合成の速度が低下し、通常、より溶解性の高いタンパク質が得られる。また適切なフォールディング若しくはタンパク質の安定性に必須な補欠分子族又は補因子を添加するか、増殖の間の培地中のpHの変動を制御するためのバッファーを添加するか、あるいはラクトース(これは、ほとんどの栄養豊富な培地(例えばLB、2×YTなど)中に存在する)によるlacプロモーターの誘導を抑制するために1%グルコースを添加することもできる。ポリオール(例、ソルビトール)及びスクロースの添加に起因する浸透圧の上昇は、細胞における浸透圧保護剤の蓄積をもたらし、これがネイティブタンパク質の構造を安定化するため、ポリオール(例、ソルビトール)及びスクロースも培地に添加され得る。エタノール、低分子量チオール及びジスルフィド、並びにNaClが添加され得る。また、シャペロン及び/又はフォールダーゼ(foldases)が、所望のポリペプチドと共に同時発現され得る。分子シャペロンは、フォールディング中間体と一過的に相互作用することによって、適切な異性化及び細胞内標的化を促進する。E. coliのシャペロン系としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:GroES−GroEL、DnaK−DnaJ−GrpE、CIpB。
【0069】
フォールダーゼは、フォールディング経路に沿った律速段階を加速する。3種類のフォールダーゼが、重要な役割を果たす:ペプチジルプロリル シス/トランスイソメラーゼ(PPI’s)、ジスルフィドオキシドレダクターゼ(DsbA)及びジスルフィドイソメラーゼ(DsbC)、タンパク質のシステインの酸化及びジスルフィド結合の異性化の両方を触媒する真核生物のタンパク質であるタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)。1つ以上のこれらのタンパク質と標的タンパク質との共発現は、より高いレベルの可溶性標的タンパク質をもたらし得る。
【0070】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、その溶解性及び産生量を改善するために、融合タンパク質として産生され得る。この融合タンパク質は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド及びインフレームで一緒に融合した第2のポリペプチドを含む。第2のポリペプチドは、それが融合されたポリペプチドの溶解性を改善するための、当該分野で公知の融合パートナーであり得る(例えば、NusA、バクテリオフェリチン(BFR)、GrpE、チオレドキシン(TRX)及びグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST))。Novagen Inc.(Madison、WI)は、NusA−標的融合物の形成を可能にするpET43.1ベクターシリーズを提供している。DsbA及びDsbCも、融合パートナーとして使用されるときには、発現レベルに対して正の効果を示しており、従ってより高い溶解性を達成するため、ペプチドリガンドドメインと融合する目的で使用され得る。
【0071】
このような融合タンパク質の一態様において、発現したペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、リンカーポリペプチド(プロテアーゼにより加水分解され得るペプチド結合を含むプロテアーゼ切断部位を含む)を含む。結果として、ポリペプチド中のペプチドリガンドドメインは、タンパク質分解により、発現後、該ポリペプチドの残りの部分から分離され得る。リンカーは、該結合のいずれかの側(プロテアーゼの触媒部位がそこにも結合する)に、1以上の更なるアミノ酸を含み得る(例えば、Schecter & Berger, Biochem. Biophys. Res. Commun. 27, 157-62 (1967)を参照のこと)。或いは、リンカーの切断部位は、プロテアーゼの認識部位から離れてあり得、切断部位及び認識部位の2つは、1以上(例、2から4)のアミノ酸により隔てられ得る。一態様において、リンカーは、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、約10、約20、約30、約40、約50又はそれ以上のアミノ酸を含む。より好ましくは、リンカーは、約5から約25アミノ酸長であり、最も好ましくは、リンカーは約8から約15アミノ酸長である。
【0072】
本発明に従う有用ないくつかのプロテアーゼが以下の参考文献において考察される:Hooper et al, Biochem. J. 321: 265-279 (1997);Werb, Cell 91 : 439-442 (1997);Wolfsberg et al., J. Cell Biol. 131 : 275-278 (1995);Murakami & Etlinger, Biochem. Biophys. Res. Comm. 146: 1249-1259 (1987);Berg et al., Biochem. J. 307: 313-326 (1995);Smyth and Trapani, Immunology Today 16: 202-206 (1995);Talanian et al., J. Biol. Chem. 272: 9677-9682 (1997);及びThornberry et al., J. Biol. Chem. 272: 17907-17911 (1997)。細胞表面プロテアーゼも、本発明に従う切断可能なリンカーと共に使用され得、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アミノペプチダーゼN;ピューロマイシン感受性アミノペプチダーゼ;アンジオテンシン変換酵素;ピログルタミルペプチダーゼII;ジペプチジルペプチダーゼIV;N−アルギニン二塩基性転換酵素;エンドペプチダーゼ24.15;エンドペプチダーゼ24.16;アミロイド前駆体タンパク質セクレターゼα、β及びγ;アンジオテンシン変換酵素セクレターゼ;TGFαセクレターゼ;TNFαセクレターゼ;FASリガンドセクレターゼ;TNF受容体−I及び−IIセクレターゼ;CD30セクレターゼ;KL1及びKL2セクレターゼ;IL6受容体セクレターゼ;CD43、CD44セクレターゼ;CD16−I及びCD16−IIセクレターゼ;L−セレクチンセクレターゼ;葉酸受容体セクレターゼ;MMP1、2、3、7、8、9、10、11、12、13、14、及び15;ウロキナーゼ・プラスミノーゲン活性化因子;組織プラスミノーゲン活性化因子;プラスミン;トロンビン;BMP−1(プロコラーゲンC−ペプチダーゼ);ADAM1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及び11;並びにグランザイムA、B、C、D、E、F、G、及びH。
【0073】
細胞結合型プロテアーゼに依存することの代替手段は、自己切断リンカーを使用することである。例えば、口蹄疫ウイルス(FMDV)2Aプロテアーゼが、リンカーとして使用され得る。これは、2A/2B接合部においてFMDVのポリタンパク質を切断する17アミノ酸の短いポリペプチドである。FMDV 2Aポリペプチドの配列は、NFDLLKLAGDVESNPGPである。切断は、ペプチドのC末端において、最後のグリシン−プロリンアミノ酸対において起こり、他のFMDV配列の存在には非依存的であり、異種配列の存在下であっても切断する。
【0074】
アフィニティークロマトグラフィーは、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドの精製において、単独で、又は、イオン交換、分子サイジング、若しくはHPLCクロマトグラフィー技術と組み合わせて、使用され得る。このようなクロマトグラフィーアプローチは、カラムを使用して、又はバッチ形式で実施され得る。このようなクロマトグラフィーによる精製方法は、当該分野において周知である。
【0075】
また、本発明は、配列番号1〜117の配列において、1以上のアミノ酸置換、及び約1個から約5個のアミノ酸、好ましくは約1個から約3個のアミノ酸、より好ましくは1個のアミノ酸の挿入又は欠失を有するペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドをコードする単離された核酸を提供し、ここで当該核酸は、元の配列により示される特性と実質的に類似の関連する特性を有する。
【0076】
変異誘発は、当該分野で公知のいくつかの方法のいずれかによって実施され得る。一般に、変異誘発は、配列の操作を容易にするために、核酸配列をプラスミド又はいくつかの他のベクター中にクローニングすることによって、達成され得る。次いで、更なる核酸配列がその核酸配列中に付加され得るユニークな制限部位が、同定されるか、又はその核酸配列中に挿入される。二本鎖合成オリゴヌクレオチドは一般に、二本鎖オリゴヌクレオチドが、標的配列に隣接する制限部位を包含し、例えば置換DNAを組み込むために使用され得るように、重複する合成一本鎖のセンスオリゴヌクレオチド及びアンチセンスオリゴヌクレオチドから作り出される。プラスミド又は他のベクターは、制限酵素で切断され、適合する付着末端を有するオリゴヌクレオチド配列が、このプラスミド又は他のベクター中にライゲーションされ、元のDNAを置換する。
【0077】
in vitro部位特異的変異誘発の他の手段は当業者に公知であり、達成され得る(特に、オーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、例えば、Parikh & Guengerich, Biotechniques 24:428-431 (1998)を参照のこと)。変化の部位と重複する相補的プライマーを使用して、500mMのdNTP、2単位のPfuポリメラーゼ、各250ngのセンスプライマー及びアンチセンスプライマー、並びにペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドをコードする配列を含む200ngのプラスミドDNAを含む混合物中で、プラスミド全体をPCR増幅することができる。PCRは望ましくは、DNA1Kbにつき2.5分間の伸長時間で18サイクルを含む。PCR産物は、DpnI(アデニンメチル化プラスミドDNAのみを消化する)で処理されて、Escherichia coli DH5α細胞中に形質転換され得る。形質転換体は、変異の組込みについて制限酵素消化によってスクリーニングされ得、次いでDNA配列分析によって確認され得る。
【0078】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドのタンパク質検出及び定量の適切な方法としては、ウェスタンブロット、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、銀染色、BCAアッセイ(例えば、Smith et al., Anal. Biochem. 150, 76-85 (1985)を参照のこと)、ローリータンパク質アッセイ(例えば、Lowry et al., J. Biol. Chem. 193, 265-275 (1951)に記載されている)(これは、タンパク質−銅錯体に基づく比色分析である)、及びブラッドフォードタンパク質アッセイ(例えば、Bradford et al., Anal. Biochem. 72, 248 (1976)に記載されている)(これは、タンパク質結合による、クマシーブルーG−250における吸光度の変化に依存する)が挙げられる。発現すると、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、イオン交換、サイズ排除、又はC18クロマトグラフィー等の伝統的な精製方法により精製され得る。
【0079】
III.ペプチドリガンドドメインをカップリングする方法
【0080】
適切な活性薬剤(例えば、治療剤、化学療法剤、放射性核種、ポリペプチドなど)などをペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドに「カップリング」(又は「コンジュゲート化」又は「架橋」)する方法は、当該分野において充分記載されている。本明細書中に提供されるコンジュゲートの調製において、ペプチドリガンドドメインへのコンジュゲート化又はカップリング部分の付着が、ペプチドリガンドドメインのその機能を実質的に妨げないか、又は活性薬剤の機能を実質的に妨げない限り、2つの部分を付着させるための現在当該分野において公知の任意の方法によって、活性薬剤は、ペプチドリガンドドメインに直接的か又は間接的に連結される。カップリングは、任意の適切な手段(イオン結合及び共有結合、並びに任意の他の十分に安定な会合を含むが、それらに限定されない)によることができ、それによって標的剤の分布が調節されるだろう。
【0081】
アミノ基とチオール基との間の共有結合を形成するため、及びチオール基をタンパク質に導入するために使用される多数のヘテロ二官能性架橋試薬が当業者に公知である(例えば、Cumber et al. (1992) Bioconjugate Chem. 3':397 401; Thorpe et al. (1987) Cancer Res. 47:5924 5931; Gordon et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. 84:308 312; Walden et al. (1986) J. Mol. Cell Immunol. 2:191 197; Carlsson et al. (1978) Biochem. J. 173: 723 737; Mahan et al. (1987) Anal. Biochem. 162:163 170; Wawryznaczak et al. (1992) Br.J. Cancer 66:361 366; Fattom et al. (1992) Infection & Immun. 60:584 589を参照のこと)。これらの試薬は、ペプチドリガンドドメイン又はペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドと、本明細書中に開示される活性薬剤のいずれかとの間の共有結合を形成するために使用され得る。これらの試薬は以下を含むがそれらに限定されない:N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP;ジスルフィドリンカー);スルホスクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SPDP);スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチルベンジルチオサルフェート(SMBT、妨害ジサルフェートリンカー);スクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(LC−SPDP);スルホスクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(スルホ−SMCC);スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート(SPDB;妨害ジスルフィド結合リンカー);スルホスクシンイミジル2−(7−アジド−4−メチルクマリン−3−アセトアミド)エチル−1,3−ジチオプロピオネート(SAED);スルホスクシンイミジル7−アジド−4−メチルクマリン−3−アセテート(SAMCA);スルホスクシンイミジル6−[α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SMPT);1,4−ジ−[3’−(2’−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ブタン(DPDPB);4−スクシンイミジルオキシカルボニル−α−メチル−α−(2−ピリジルチオ)トルエン(SMPT、妨害ジスルフェートリンカー);スルホスクシンイミジル6[α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(スルホ−LC−SMPT);m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS);m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル(スルホ−MBS);N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノ安息香酸(SIAB;チオエーテルリンカー);スルホスクシンイミジル−(4−ヨードアセチル)アミノ安息香酸(スルホ−SIAB);スクシンイミジル4(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB);スルホスクシンイミジル4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(スルホ−SMPB);アジドベンゾイルヒドラジド(ABH)。
【0082】
他のヘテロ二官能性の切断可能なカップリング剤としては、N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノ安息香酸;スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノ安息香酸;4−スクシンイミジル−オキシカルボニル−a−(2−ピリジルジチオ)−トルエン;スルホスクシンイミジル−6−[a−メチル−a−(ピリジルジチオール)-トルアミド]ヘキサノエート;N−スクシンイミジル−3−(−2−ピリジルジチオ)−プロプリオネート;スクシンイミジル6[3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロプリオンアミド(proprionamido)]ヘキサノエート;スルホスクシンイミジル6[3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエート;3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸、S−(2−チオピリジル)−L−システインが挙げられる。更なる典型的な二官能性の連結化合物が、米国特許第5,349,066号、第5,618,528号、第4,569,789号、第4,952,394号、及び第5,137,877号に開示されている。
【0083】
或いは、例えば、ポリペプチドのスルフヒドリル基が、コンジュゲート化のために使用され得る。また、糖タンパク質(例、抗体)に結合された糖部分は、酸化され得、当該分野において公知の多数のカップリング手順において有用なアルデヒド基を形成し得る。本発明に従って形成されるコンジュゲートは、in vivoで安定であるか、或いは酵素的に分解可能なテトラペプチド結合又は酸に不安定なシス−アコニチル(cis-aconityl)若しくはヒドラゾン結合のように不安定であり得る。
【0084】
ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドは、任意に、1個以上のリンカーを介して活性薬剤に連結される。リンカー部分は、所望の特性に応じて選択される。例えば、リンカー部分の長さは、標的受容体へのリガンドの結合により誘導されるあらゆる立体構造変化も含めて、リガンド結合の動態及び特異性を最適化するために選択され得る。リンカー部分は、ポリペプチドリガンド部分及び標的細胞受容体が自由に相互作用することを可能にするのに十分長く、且つ十分柔軟であるべきである。リンカーが短すぎるか又は硬すぎる場合、ポリペプチドリガンド部分間で立体障害が生じ、細胞毒性となるかもしれない。リンカー部分が長すぎる場合、活性薬剤は、製造の過程において分解されるかもしれず、又はその所望の効果を標的細胞に効率よく送達しないかもしれない。
【0085】
当業者に公知の任意の適切なリンカーが本明細書中で使用され得る。一般に、化学的に製造されたコンジュゲートにおけるリンカーとは異なるセットのリンカーが、融合タンパク質であるコンジュゲートにおいて使用されよう。化学的に連結されたコンジュゲートに好適なリンカー及び結合としては、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、ヒンダードジスルフィド結合、並びにアミン及びチオール基などの遊離反応性基間の共有結合が挙げられる。これらの結合は、ヘテロ二官能性試薬を用いてポリペプチドの一方又は両方に反応性チオール基を生じさせ、次いで一方のポリペプチド上のチオール基を、他方上の反応性マレイミド基又はチオール基が結合され得る反応性チオール基又はアミン基と反応させることによって作り出される。他のリンカーとしては、ビスマレイミデオトキシプロパン、酸に不安定なトランスフェリンコンジュゲート及びアジピン酸ジヒドラジドなどの酸で切断可能なリンカー(これらはより酸性の細胞内コンパートメントにおいて切断されよう);UV又は可視光への暴露によって切断される架橋剤及びリンカーが挙げられる。いくつかの実施形態において、各リンカーの所望の特性を利用するために、いくつかのリンカーが含まれ得る。化学的リンカー及びペプチドリンカーは、リンカーをペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド及び標的剤に共有結合することによって挿入され得る。下記のヘテロ二官能性薬剤が、このような共有結合を行なうために使用され得る。ペプチドリンカーは、融合タンパク質として、リンカー及びペプチドリガンドドメイン、リンカー及び活性薬剤、又はペプチドリガンドドメイン、リンカー、及び活性薬剤をコードするDNAを発現させることによっても結合され得る。可動性リンカー及びコンジュゲートの溶解性を高めるリンカーが考慮され、本明細書では単独での使用又は他のリンカーとの使用のいずれかも考慮される。
【0086】
従って、リンカーとしては、典型的には1から約30アミノ酸、より好ましくは約10から30アミノ酸を含む、ペプチド性結合、アミノ酸及びペプチド結合が挙げられ得るが、これらに限定されない。或いは、ヘテロ二官能性の切断可能な架橋剤などの化学リンカー(N−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノ安息香酸、スルホスクシンイミジル(4−ヨードアセチル)−アミノ安息香酸、4−スクシンイミジルオキシカルボニル−a−(2−ピリジルジチオ)トルエン、スルホスクシンイミジル6−a−メチル−a−(ピリジルジチオール)−トルアミド)ヘキサノエート、N−スクシンイミジル−3−(−2−ピリジルジチオ)−プロプリオネート、スクシンイミジル6(3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロプリオンアミド(proprionamido))ヘキサノエート、スルホスクシンイミジル6(3(−(−2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエート、3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸、及びS−(2−チオピリジル)−L−システインが挙げられるがこれらに限定されない)。
【0087】
他のリンカーとしては、トリチルリンカー、特に、種々の程度の酸性又はアルカリ性における治療剤の放出をもたらすコンジュゲート属を作り出すための誘導体化トリチル基が挙げられる。こうして治療剤が放出されるpH範囲を予め選択できることにより得られる融通性によって、治療剤の送達に必要な組織間の公知の生理学的違いに基づくリンカーの選択が可能となる(例えば、米国特許第5,612,474を参照のこと)。例えば、腫瘍組織の酸性は、正常組織のものよりも低いように思われる。
【0088】
酸で切断可能なリンカー、光で切断可能なリンカー及び熱に感受性のリンカーも使用され得、ここで特に、より反応に利用しやすくするために、標的剤を切断することが必要であり得る。酸で切断可能なリンカーとしては、ビスマレイミドオトキシ(bismaleimideothoxy)プロパン;及びアジピン酸ジヒドラジドリンカー(例えば、Fattom et al. (1992) Infection & Immun. 60:584 589を参照のこと)及び細胞内トランスフェリン循環経路に入ることを可能とするのに十分なトランスフェリンの部分を含む、酸に不安定なトランスフェリンコンジュゲート(例えば、Welhoner et al. (1991) J. Biol. Chem. 266:4309 4314を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
光で切断可能なリンカーは、光に曝されると切断され(例えば、Goldmacher et al. (1992) Bioconj. Chem. 3:104-107を参照されたい(そのリンカーは参照により本明細書中に組み込まれる))、それにより光に曝されると標的剤を放出するリンカーである。光に曝されると切断される、光で切断可能なリンカーは公知であり(例えば、Hazum et al. (1981) in Pept., Proc. Eur. Pept. Symp., 16th, Brunfeldt, K (Ed), pp. 105 110(該文献は、システインに関する光で切断可能な保護基としてのニトロベンジル基の使用を記載する);Yen et al. (1989) Makromol. Chem 190:69 82(該文献は、ヒドロキシプロピルメタクリルアミドコポリマー、グリシンコポリマー、フルオレセインコポリマー及びメチルローダミンコポリマーを含む水溶性の光で切断可能なコポリマーを記載する);Goldmacher et al. (1992) Bioconj. Chem. 3:104 107(該文献は、近UV光(350nm)に曝されると光分解崩壊を被る架橋剤及び試薬を記載する);並びにSenter et al. (1985) Photochem. Photobiol 42:231-237(該文献は、光で切断可能な結合を生成するニトロベンジルオキシカルボニルクロライド架橋結合試薬を記載する)を参照のこと)、それにより光に曝されると標的剤を放出する。このようなリンカーは、光に曝される可能性のある皮膚又は眼の状態を光ファイバーを使用して治療するのに特に使用される。コンジュゲートを投与後、眼又は皮膚又は他の体の部分は光に曝されることができ、その結果、コンジュゲートから標的化された部分が放出される。このような光で切断可能なリンカーは、標的剤を除去することが望ましい診断プロトコルとの組み合わせにおいて有用であり、動物の体からの迅速なクリアランスを可能とする。
【0089】
IV.本発明は複数の活性薬剤を提供する
【0090】
本発明の種々の態様は、ペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドが活性薬剤、即ち治療剤又は診断剤に結合されることを考慮する。
【0091】
本明細書中で使用される場合、用語「治療剤」は、治療的特性を有すると思われる、化合物、生体高分子、又は細菌、植物、真菌、若しくは動物(特に哺乳動物)細胞若しくは組織などの生体物質から作られる抽出物をいう(例、化学療法剤又は放射線療法剤)。本明細書中で使用される場合、用語「治療的」は、対象哺乳動物を苦しめている疾患又は関連する状態を治療又は予防する効果の改善(標的疾患(例、癌又は他の増殖性疾患)の機会の予防又は軽減により示される)をいう。治癒的療法は、哺乳動物における既存の疾患又は状態を、全部又は一部において、軽減することをいう。
【0092】
薬剤は、精製され、実質的に精製され、又は部分的に精製され得る。更に、このような治療剤は、リポソーム又は免疫リポソームの中に存在するか、又はそれと会合して存在し得、コンジュゲート化は、薬剤に、又はリポソーム/免疫リポソームに直接的であり得る。「リポソーム」は、薬物(例、薬物、抗体、毒素)の送達に有用な、種々の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤から構成される小胞である。リポソームの構成成分は、生体膜の脂質配置に類似する、二重層構造に通常配置される。
【0093】
本発明により考慮される様式でペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチドに結合され得る治療剤の例としては、化学療法剤(例、ドセタキセル、パクリタキセル、タキサン及び白金化合物)、葉酸拮抗剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害薬、DNA損傷剤、アポトーシス促進剤、分化誘導剤、血管新生阻害剤、抗生物質、ホルモン、ペプチド、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、生物活性剤、生体分子、放射性核種、アドリアマイシン、アンサマイシン抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトテシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポチロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン、メトトレキサート、ラパマイシン(シロリムス)、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソ尿素、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン類、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソール、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、トランスプラチナ(transplatinum)、チロシンキナーゼ阻害剤(ゲニステイン)、及び他の化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
本明細書中で使用される場合、用語「化学療法剤」は、癌、腫瘍性、及び/又は増殖性疾患に対する活性を有する薬剤をいう。好ましい化学療法剤としては、アルブミンを含む粒子としてドセタキセル及びパクリタキセルが挙げられ、ここで50%を超える化学療法剤がナノ粒子の形態である。最も好ましくは、化学療法剤は、アルブミン結合パクリタキセル(例、アブラキサン(登録商標))の粒子を含む。
【0095】
適切な治療剤としては、例えば、生物学的活性剤(TNF、又は(of)tTF)、放射性核種(131I、90Y、111In、211At、32P及び他の公知の治療用放射性核種)、血管新生阻害剤(antiangiogenesis agents)(血管新生阻害剤(angiogenesis inhibitors)(例、INF−α、フマギリン、アンジオスタチン、エンドスタチン、サリドマイドなど))、他の生物活性ポリペプチド、治療増感剤、抗体、レクチン、及び毒素も挙げられる。
【0096】
本発明の適用に適した疾患としては、悪性状態及び善悪性状態、並びに増殖性疾患(増殖性疾患が、例えば、良性前立腺過形成、子宮内膜症、子宮内膜増殖症、アテローム性動脈硬化症、乾癬、免疫性増殖(immunologic proliferation)又は増殖性腎糸球体症である場合を含むが、これらに限定されない)が挙げられる。
【0097】
用語「治療上有効量」は、疾患又は状態と関連するか又はその原因である生理学的又は生化学的なパラメータを、部分的にであれ完全にであれ正常に戻す量を意味する。当該分野において熟練した臨床医は、特定の疾患又は状態に対して、治療上有効であろう医薬組成物の量を決定することができる。例として、好ましい実施形態(ここで治療剤はパクリタキセルである)に従って、投与されるパクリタキセル用量は、約3週間の投与サイクル(即ち、約3週間毎に1回のパクリタキセル用量の投与)で約30mg/m2から約1000mg/m2の範囲であり得、望ましくは、約3週間の投与サイクル、好ましくは約2週間のサイクル、より好ましくは週に一回のサイクルで、約50mg/m2から約800mg/m2、好ましくは約80mg/m2から約700mg/m2、最も好ましくは約250mg/m2から約300mg/m2の範囲であり得る。
【0098】
本発明は、診断に関する態様も有する。例えば、診断剤は、トレーサー又は標識(放射性薬剤、MRI造影剤、X線造影剤、超音波造影剤、及びPET造影剤を含むが、これらに限定されない)であり得る。治療剤に関連して記載された、これらの剤のカップリングも、本発明のこの形態によって考慮される。更に、用語「診断上有効量」は、関連する臨床背景において、組織及び器官における異常な増殖活性、過形成活性、再構築活性、炎症活性の存在及び/又は程度の、合理的に正確な決定を可能にする、医薬組成物の量である。例えば、本発明に従って「診断される」状態は、良性又は悪性腫瘍であり得る。
【0099】
本明細書中に教示される診断剤としては、抗体などのポリペプチドが挙げられ、それらは、共有又は非共有のいずれかで、検出可能なシグナルを提供する物質と結合することにより標識される。広範な種々の標識及びコンジュゲート化技術が公知であり、科学文献及び特許文献の両方において広く報告されている。適切な標識としては、放射性核種、酵素、基質、補因子、インヒビター、蛍光部分、化学発光部分、磁性粒子などが挙げられる。このような標識の使用を教示する特許としては、米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号;及び第4,366,241号が挙げられる。また、組換え免疫グロブリンが産生され得る(Cabilly、米国特許第4,816,567号;Moore, et al.,米国特許第4,642,334号;及びQueen, et al. (1989) Proc.Nat'l Acad. Sci. USA 86:10029-10033を参照のこと)。
【0100】
発明組成物及び方法による、腫瘍又は他の疾患部位への治療剤又は診断剤の送達は、任意の適切な方法(例えば、放射性標識又は放射線不透過性標識を組成物に添加すること、及び必要に応じて画像化することが挙げられ、当業者に周知である)により観察及び測定され得る。血漿コンパートメントにおける組成物の隔離は、任意の適切な方法(例えば、静脈穿刺(venupuncture)が挙げられる)により観察され得る。
【0101】
更に、そして関連する態様において、本発明は、化学療法剤への腫瘍の応答を予測又は決定する方法、並びに化学療法剤への増殖性疾患の応答を予測又は決定する方法、又は増殖性疾患(増殖性疾患が、例えば、良性前立腺過形成、子宮内膜症、子宮内膜増殖症、アテローム性動脈硬化症、乾癬、免疫性増殖(immunologic proliferation)又は増殖性腎糸球体症である場合を含むが、これらに限定されない)を治療する方法を提供する。
【0102】
V.本発明はペプチドリガンドドメインをポリペプチド活性薬剤に結合する融合タンパク質を提供する
【0103】
更に本発明は、融合タンパク質における、ポリペプチド活性薬剤へのペプチドリガンドドメインのカップリングを考慮する。例えば、限定されないが、ペプチドリガンドドメイン配列は、診断上有用なタンパク質ドメイン(例えば、ハプテン、GFP)、治療増感剤、活性なタンパク質ドメイン(例えば、限定されないが、tTF、TNF、Smar1由来p44ペプチド、インターフェロン、TRAIL、Smac、VHL、プロカスパーゼ、カスパーゼ、及びIL−2)又は毒素(例えば、限定されないが、リシン、PAP、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素)の上流又は下流に融合され得る。
【0104】
「融合タンパク質」及び「融合ポリペプチド」とは、一緒に共有結合した少なくとも2つの部分を有するポリペプチドをいい、ここで、該部分の各々は異なる特性を有するポリペプチドである。該特性はin vitro又はin vivoの活性などの生物学的特性であり得る。該特性は標的分子への結合、反応の触媒などの単純な化学的又は物理的特性でもあり得る。該部分は、単一のペプチド結合によって直接的に、又は1以上のアミノ酸残基を含有するペプチドリンカーを介して連結され得る。一般に、該部分及びリンカーは相互にリーディング・フレーム内にあるであろう。
【0105】
VI.抗体又は抗体フラグメント活性薬剤
【0106】
本発明の特定の態様において、治療剤は、補体活性化、細胞媒介性細胞傷害、アポトーシス、壊死性細胞死、及びオプソニン作用(opsinization)の1以上を仲介する抗体又は抗体フラグメントであり得る。
【0107】
本明細書中の用語「抗体」としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ダイマー、マルチマー、多重特異性抗体(例、二重特異性抗体)が挙げられるが、これらに限定されない。抗体は、マウス、ヒト、ヒト化、キメラ、又は他の種由来であり得る。抗体は、免疫系により生み出され、特定の抗原を認識して結合することのできるタンパク質である。標的抗原は一般に、複数の抗体上のCDRにより認識される、多数の結合部位(エピトープとも呼ばれる)を有する。異なるエピトープに特異的に結合する各抗体は、異なる構造を有する。従って、1つの抗原は、1を超える対応する抗体を有し得る。抗体としては、全長免疫グロブリン分子又は、全長免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、即ち目的の標的又はその一部の抗原を免疫特異的に(immunospecifically)結合する抗原結合部位を含む分子が挙げられ、このような標的としては、癌細胞又は、自己免疫疾患に関連する自己免疫性抗体を産生する細胞が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に開示される免疫グロブリンは、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)又はサブクラス(例、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)のものであり得る。免疫グロブリンは、任意の種由来であり得る。
【0108】
「抗体フラグメント」は、全長抗体の一部を含み、所望の生物活性を保持する。「抗体フラグメント」は多くの場合、抗原結合領域又はその可変領域である。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFvフラグメント;ダイアボディ;直鎖状抗体;Fab発現ライブラリーによって生成されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、CDR(相補性決定領域)、及び癌細胞抗原、ウイルス抗原若しくは微生物抗原に免疫特異的に結合する上記のうちのいずれかのエピトープ結合フラグメント、単鎖抗体分子;及び抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。しかしながら、抗体の他の非抗原結合部分は、本明細書中で意味するような「抗体フラグメント」であり得、例えば、限定されないが、抗体フラグメントは、完全な又は部分的なFcドメインであり得る。
【0109】
本明細書中におけるモノクローナル抗体としては、それらが所望の生物活性を示す限り、特に、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるか又は相同であるが、その鎖(複数可)の残りは、別の種に由来する抗体又は別の抗体クラス若しくサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるか又は相同である「キメラ」抗体、並びにこのような抗体のフラグメントが挙げられる(米国特許第4,816,567号)。本明細書中において目的のキメラ抗体としては、非ヒト霊長類(例、旧世界ザル又は類人猿)に由来する可変ドメイン抗原結合配列とヒト定常領域配列とを含む、「霊長類化(primatized)」抗体が挙げられる。
【0110】
「抗体依存性細胞介在性細胞毒性」及び「ADCC」は、Fcレセプター(FcR)を発現する非特異的細胞毒性細胞(例、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上の結合抗体を認識し、次いで標的細胞の溶解をもたらす細胞介在性反応をいう。ADCCを仲介する一次細胞、NK細胞は、Fc.γ.RIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。目的とする分子のADCC活性を評価するには、in vitro ADCCアッセイを行うことができる(米国特許第5,003,621号;米国特許第5,821,337号)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。或いは、又は更に、目的とする分子のADCC活性は、in vivo、例えばClynes et al. PNAS(USA), 95:652-656(1998)に開示されているような動物モデルにおいて評価され得る。
【0111】
「細胞死を誘導する」抗体は、生存細胞を生存できなくなるようにする抗体である。in vitroの細胞死は、抗体依存性細胞介在性細胞毒性(ADCC)又は補体依存性細胞毒性(CDC)により誘導される細胞死と区別するために、補体及び免疫エフェクター細胞の非存在下で決定され得る。即ち、細胞死についてのアッセイは、加熱不活化血清(即ち、補体非存在下)を使用して、免疫エフェクター細胞の非存在下で実施され得る。抗体が細胞死を誘導することができるか否かを決定するため、ヨウ化プロピジウム(PI)、トリパンブルー又は7AADの取り込みにより評価される膜の完全性の喪失が、非処理細胞と比較して評価され得る。細胞死誘導抗体は、BT474細胞におけるPI取り込みアッセイにおけるPI取り込みを誘導する抗体である。
【0112】
「アポトーシスを誘導する」抗体は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞の断片化、及び/又は膜小胞(アポトーシス小体と呼ばれる)の形成により決定される、プログラムされた細胞死を誘導する抗体である。
【0113】
VII.活性薬剤の分布を調節する方法
【0114】
本発明の別の態様は、本明細書中に開示されるペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲートの特性を利用し、動物の組織内の活性薬剤の分布を調節する方法を提供する。該方法は、コンジュゲート分子(活性薬剤にコンジュゲートされたペプチドリガンドドメインを含む)を含む組成物を該動物に投与する工程を含み、ここで、ペプチドリガンドドメインは、配列番号1〜117又はそれらのホモログのペプチドを含み、そしてここで、動物への該組成物の投与は、活性薬剤単独の投与で得られる組織分布とは異なる活性薬剤の組織分布をもたらす。
【0115】
本発明の組成物及び方法は、望ましくは、疾患部位への活性薬剤の組織分布の調節をもたらす。これはそれ自身、望ましくは、疾患部位における活性薬剤の濃度、及び/又は活性薬剤の(半減期)血中レベルの増大又は延長の提供に現れ、それは、活性薬剤が(コンジュゲートされていない形態で)動物に投与された場合に提供されるであろうものよりも大きい。る。この調節は、コンジュゲートされたペプチド分子の組織取込み速度を増強すること、その標的部位における(即ち、腫瘍における)該分子の滞留を増加させること、組織におけるコンジュゲートされたペプチド分子の分散速度を増強すること、及び/又はコンジュゲートされたペプチド分子の組織中の分布を増強すること、及びコンジュゲートされたペプチド分子の組織取込み速度を1つ以上の組織受容体の内在化の速度に適合させること、によっても現れ得る。このような増強は、当該分野で公知の任意の適切な方法(例えば、X線撮影技術、顕微鏡技術、化学的技術、免疫学的技術又はMRI技術を使用する、適切に標識された活性薬剤の検出、局在確認及び相対的定量(quantization)が挙げられるが、これらに限定されない)によって測定され得る。
【0116】
「速度を増強すること」とは、少なくとも約33%大きい、好ましくは少なくとも約25%大きい、より好ましくは少なくとも約15%大きい、最も好ましくは少なくとも約10%大きいものである速度を意味する。「疾患部位におけるより高い濃度」とは、比較できる疾患部位において、コンジュゲートされていない活性薬剤の濃度よりも、少なくとも約33%大きい、好ましくは少なくとも約25%大きい、より好ましくは少なくとも約15%大きい、最も好ましくは少なくとも約10%大きい、疾患部位におけるコンジュゲート中の活性薬剤の濃度を意味する。
【0117】
適切な疾患部位としては、任意の身体組織(軟組織、結合組織、骨、固形臓器、血管などを含む)における、増殖の異常な状態、組織再構築、過形成、過大な創傷治癒が挙げられるが、これらに限定されない。このような疾患のより具体的な例としては、癌、糖尿病性の又は他の網膜症、炎症、線維症、関節炎、血管若しくは人工血管移植組織又は血管内装置などにおける再狭窄、白内障及び黄斑変性、骨粗しょう症及び他の骨の疾患、アテローム性動脈硬化症、並びに石灰化が頻繁に観察される他の疾患が挙げられる。
【0118】
好ましい態様において、本発明は腫瘍を診断及び/又は治療する方法を提供し、ここで腫瘍は、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨性腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、黒色腫、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、尿路腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系腫瘍、グリオーマ、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺の腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸腫瘍、子宮体部腫瘍、卵巣腫瘍、外陰部腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、陰茎の腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓の腫瘍、腎盂の腫瘍、尿管の腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病からなる群より選択される。また、本発明は、化学療法剤への腫瘍の応答を予測又は決定する方法、腫瘍の治療方法、及び化学療法剤への哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットを提供し、ここで腫瘍は、肉腫、腺癌、扁平上皮細胞癌、大細胞癌、小細胞癌、基底細胞癌、明細胞癌、オンコサイトーマ(oncytoma)、又はそれらの組み合わせである。
【0119】
別の態様において、本発明は、組成物及び前記組成物の使用方法を提供し、ここで、動物への該組成物の投与は、活性薬剤単独の投与で得られる血中レベルよりも大きい、活性薬剤の血中レベルをもたらす。活性薬剤の血中レベルの任意の適切な基準が使用され得、Cmax、Cmin、及びAUCが挙げられるが、これらに限定されない。「活性薬剤単独の投与で得られる血中レベルよりも大きい」とは、少なくとも約33%大きい、好ましくは少なくとも約25%大きい、より好ましくは少なくとも約15%大きい、最も好ましくは少なくとも約10%大きい、血中レベルを意味する。
【0120】
更に別の態様において、本発明は、組成物及び前記組成物の使用方法を提供し、ここで、動物への該組成物の投与は、活性薬剤単独の投与で得られる血中レベル半減期よりも大きい、活性薬剤の血中レベル半減期をもたらす。「活性薬剤単独の投与で得られる血中半減期よりも大きい」とは、少なくとも約33%大きい、好ましくは少なくとも約25%大きい、より好ましくは少なくとも約15%大きい、最も好ましくは少なくとも約10%大きい、半減期を意味する。
【0121】
VIII.製剤及び投与
【0122】
in vivoでの使用のために、ペプチドリガンドドメイン(配列番号1〜117及びそれらのホモログなど)を結合した活性薬剤は、望ましくは、生理学的に許容される担体を含む医薬組成物へと製剤化される。任意の適切な生理学的に許容される担体が、投与経路に応じて、本発明の文脈の中で使用され得る。当業者は、望ましい投与方法に適した医薬組成物を提供するために使用され得るそれらの担体を理解するであろう。
【0123】
本発明の医薬組成物の投与は、任意の適切な経路(静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、腫瘍内、経口、直腸、膣内、膀胱内、及び吸入による投与が挙げられ、これらに限定されないが、静脈内及び腫瘍内投与が最も好ましい)によって達成され得る。組成物は、特に組成物の安定性の増強及び/又はその最終用途のために、任意の他の適切な構成成分を更に含み得る。従って、本発明の組成物の、広範な種々の適切な製剤がある。以下の製剤及び方法は、例示に過ぎず、決して限定するものではない。
【0124】
医薬組成物は、所望の場合、更なる治療剤又は生物活性剤も含み得る。例えば、特定の適応症の治療において有用な治療因子が存在し得る。炎症を制御する因子(イブプロフェン又はステロイドなど)は、組成物の一部であり得、医薬組成物のin vivo投与に伴う腫大及び炎症並びに生理的苦痛を低減し得る。
【0125】
担体は典型的には液体であるが、固体、又は液体及び固体の成分の組み合わせであってもよい。担体は望ましくは、生理学的に許容される(例えば、医薬上又は薬理学的に許容される)担体(例、賦形剤又は希釈剤)である。生理学的に許容される担体は周知であり、容易に入手可能である。担体の選択は、少なくとも一部は、標的組織及び/又は細胞の位置、並びに組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定されよう。
【0126】
典型的には、このような組成物は、液体の溶液又は懸濁液のいずれかとして、注射剤として調製され得る;注射前の液体添加により溶液又は懸濁液を調製するために使用するのに適した固体形態もまた、調製され得る;これらの調製物は乳化もされ得る。注射剤での使用に適した医薬製剤としては、無菌の水溶液又は水性分散物;公知のタンパク質安定剤及び凍結保護剤を含む製剤、ゴマ油、ピーナッツ油又は水性プロピレングリコールを含む製剤、及び無菌の注射可能な溶液又は分散物の即時の調製のための無菌粉末、が挙げられる。全ての場合において、製剤は無菌である必要があり、容易な注射可能性が存在する程度まで流動的である必要がある。製剤は、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、界面活性剤(ヒドロキシセルロースなど)と適切に混合した水中で調製され得る。分散物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール及びそれらの混合物中、並びに油中でも調製され得る。保存及び使用の通常の条件下で、これらの調製物は微生物の増殖を防止する保存剤を含む。
【0127】
ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲート(など(such as))は、中性又は塩の形態で組成物へと製剤化され得る。医薬上許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)が挙げられ、それらは無機酸(例えば、塩酸又はリン酸など)又は有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)などと形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩は、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム又は水酸化第二鉄など)及び有機塩基(イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなど)などからも誘導され得る。
【0128】
非経口投与に適した製剤としては、水性及び非水性の、等張の無菌注射溶液(これは、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及びこの製剤を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る)、並びに水性及び非水性の無菌懸濁液(これは、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び保存剤を含み得る)が挙げられる。これらの製剤は、単回用量又は複数用量の密封容器(アンプル及びバイアルなど)中で提示され得、使用直前に、例えば水などの注射用無菌液体賦形剤の添加のみを要する、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。即席の注射溶液及び懸濁液は、以前に記載された種類の無菌の粉末、顆粒及び錠剤から調製され得る。本発明の好ましい実施形態において、ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲートは注射(例、非経口投与)のために製剤化される。これに関して、製剤は望ましくは腫瘍内投与に適しているが、静脈内注射、腹腔内注射、皮下注射などのためにも製剤化され得る。
【0129】
本発明は、所望の場合、ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲート(即ち、活性薬剤(ana active agent)にコンジュゲートされたペプチドリガンドドメイン含有ポリペプチド)が、ポリエチレングリコール(PEG)に更にコンジュゲートされる場合の実施形態も提供する。PEGコンジュゲート化は、これらのポリペプチドの循環半減期を増大させ、ポリペプチドの免疫原性及び抗原性を低下させ、それらの生物活性を改善し得る。使用される場合、PEGコンジュゲート化の任意の適切な方法が使用され得、メトキシ−PEGをペプチドの利用可能なアミノ基(複数可)又は他の反応性部位(例えば、ヒスチジン又はシステインなど)と反応させることが挙げられるが、これに限定されない。また、組換えDNAアプローチが、PEG−反応性基を有するアミノ酸をペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲートに付加するために使用され得る。更に、放出可能なハイブリッドPEG化戦略が、本発明の態様に従って使用され得る(ペプチドリガンドドメイン含有コンジュゲート分子中の特定の部位に付加されたPEG分子がin vivoで放出されるようなポリペプチドのPEG化など)。PEGコンジュゲート化方法の例は、当該分野で公知である。例えば、Greenwald et al., Adv. Drug Delivery Rev. 55:217-250 (2003)を参照のこと。
【0130】
吸入による投与に適した製剤としては、エアロゾル製剤が挙げられる。エアロゾル製剤は、加圧された適切な噴霧剤(ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素など)中に配置され得る。それらは、ネブライザー又はアトマイザーからの送達のために、非加圧調製物としても製剤化され得る。
【0131】
肛門投与に適切な製剤は、活性成分を種々の基剤(例えば、乳化基剤又は水溶性基剤)と混合することによって坐剤として調製され得る。膣投与に適した製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤として提示され得、これらは、活性成分に加えて、適切であることが当該分野で公知の担体などを含む。
【0132】
また、本発明の組成物は、更なる治療剤又は生物活性剤を含み得る。例えば、特定の適応症の治療において有用な治療因子が存在し得る。炎症を制御する因子(例えば、イブプロフェン又はステロイドなど)は、組成物の一部であり得、医薬組成物のin vivo投与に伴う腫大及び炎症並びに生理学的苦痛を低減させる。
【0133】
吸入治療の場合、本発明の医薬組成物は、望ましくは、エアロゾルの形態である。固体形態の場合、薬剤を投与するためのエアロゾル及びスプレー発生器が利用可能である。これらの発生器は、呼吸できるか又は吸入できる粒子を提供し、ヒト投与に適した速度で薬剤の既定の計量された用量を含む、ある体積のエアロゾルを発生させる。このようなエアロゾル及びスプレー発生器の例としては、当該分野で公知の、計量された用量の吸入器(inhalers)及び吸入器(insufflators)が挙げられる。液体形態の場合、本発明の医薬組成物は、任意の適切な装置によりエアロゾル化され得る。
【0134】
静脈内、腹腔内又は腫瘍内投与に関連して使用される場合、本発明の医薬組成物は、活性化合物の無菌の水性及び非水性注射溶液、懸濁液又は乳剤を含み得、これらの調製物は好ましくは意図されたレシピエントの血液と等張である。これらの調製物は、1つ以上の酸化防止剤、緩衝剤、界面活性剤、共溶媒、静菌剤、この組成物を意図されたレシピエントの血液と等張にする溶質、及び当該分野で公知の他の製剤成分を含み得る。水性及び非水性の無菌懸濁液は、懸濁剤及び増粘剤を含み得る。組成物は、単回用量又は複数用量の容器(例えば、密封アンプル及びバイアル)中で提示され得る。
【0135】
本発明の方法は、併用療法の一部でもあり得る。フレーズ「併用療法」とは、本発明に従う治療剤を別の治療組成物と一緒に、この組み合わせの有益な効果が治療を受けている哺乳動物において実現されるように、逐次的様式又は同時的様式で、投与することをいう。
【0136】
XI.本発明は多くの状態に適用可能である
【0137】
本発明の組成物及び方法は、種々の疾患(疾患部位が任意の身体組織(軟組織、結合組織、骨、固形臓器、血管などを含む)における、増殖の異常な状態、組織再構築、過形成、過大な創傷治癒である場合が挙げられるが、これらに限定されない)の診断又は治療における使用に適している。このような疾患のより具体的な例としては、癌、糖尿病性の又は他の網膜症、炎症、線維症、関節炎、血管若しくは人工血管移植組織又は血管内装置などにおける再狭窄、白内障及び黄斑変性、骨粗しょう症及び他の骨の疾患、アテローム性動脈硬化症、並びに石灰化が頻繁に観察される他の疾患が挙げられる。
【0138】
好ましい態様において、本発明は腫瘍を診断及び/又は治療する方法を提供し、ここで腫瘍は、口腔腫瘍、咽頭腫瘍、消化器系腫瘍、呼吸器系腫瘍、骨腫瘍、軟骨性腫瘍、骨転移、肉腫、皮膚腫瘍、黒色腫、乳房腫瘍、生殖器系腫瘍、尿路腫瘍、眼窩腫瘍、脳及び中枢神経系腫瘍、グリオーマ、内分泌系腫瘍、甲状腺腫瘍、食道腫瘍、胃腫瘍、小腸腫瘍、結腸腫瘍、直腸腫瘍、肛門腫瘍、肝臓腫瘍、胆嚢腫瘍、膵臓腫瘍、喉頭腫瘍、肺の腫瘍、気管支腫瘍、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、子宮頸腫瘍、子宮体部腫瘍、卵巣腫瘍、外陰部腫瘍、膣腫瘍、前立腺腫瘍、前立腺癌、精巣腫瘍、陰茎の腫瘍、膀胱腫瘍、腎臓の腫瘍、腎盂の腫瘍、尿管の腫瘍、頭頸部腫瘍、副甲状腺癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病からなる群より選択される。また、本発明は、化学療法剤への腫瘍の応答を予測又は決定する方法、腫瘍の治療方法、及び化学療法剤への哺乳動物の腫瘍の応答を予測するためのキットを提供し、ここで腫瘍は、肉腫、腺癌、扁平上皮細胞癌、大細胞癌、小細胞癌、基底細胞癌、明細胞癌、オンコサイトーマ(oncytoma)、又はそれらの組み合わせである。
【0139】
本発明は、疾患が哺乳動物(ヒトが挙げられるが、これに限定されない)における場合の実施形態を提供する。
【0140】
X.キット
【0141】
本発明は、医薬製剤及び腫瘍の治療における製剤の使用説明書を含む腫瘍の治療用キットを提供し、ここで医薬製剤は、活性薬剤にコンジュゲートされたペプチドリガンドドメインを含むコンジュゲート分子を含み、ここでペプチドリガンドドメインは、配列番号1〜137、139若しくは140、又は141〜143、或いはそれらのホモログのペプチドを含み、ここでペプチドリガンドドメインは、約700μM以下の平衡解離定数(Kd)によって特徴付けられるヒト血清アルブミンに対する親和性を有し、そして任意に、ここでコンジュゲート分子は、第二のペプチドリガンドドメインを更に含み、そして前記キットの使用説明書(例、FDAに認可された添付文書)を更に含む。
【0142】
XI. アフィニティー精製
【0143】
アフィニティークロマトグラフィー(アフィニティー精製とも呼ばれる)は、分子間の特異的結合相互作用を使用する。複合体の混合物がカラム上を通過する際に、リガンドへの特異的結合親和性を有するそれらの分子が結合するように、特定のリガンドが、固体支持体に化学的に固定化されるか又は「結合される(coupled)」。他の試料成分が洗い流された後、結合した分子が支持体からはがされ、元の試料からのその精製物がもたらされる。
【0144】
各特異的アフィニティーシステムは、固有の条件のセットを必要とし、所定の研究目的のための固有の特定の課題を提示する。他のタンパク質の方法の論文は、特定の精製システムに関連する因子及び条件を記載する(このページの末尾近くのサイドバー内のリンクを参照のこと)。それにも関わらず、関連する一般的原理は、全てのリガンド−標的結合システムについて同じであり、これらの考えはこの概説の焦点である。
【0145】
アフィニティー精製は、一般に、以下の工程を含む:
【0146】
(1)粗試料をアフィニティー支持体とインキュベートし、試料中の標的分子を固定化されたリガンドに結合させる。
【0147】
(2)未結合の試料成分を支持体から洗い流す。
【0148】
(3)結合相互作用がもはや起こらないようにバッファー条件を変えることにより、固定化されたリガンドから標的分子を溶出する(分離し、回収する)。
【0149】
血清又は細胞ライセート試料をアフィニティーカラムに一回通過させることで、特定のタンパク質の1,000倍を超える精製が達成され得、それゆえゲル電気泳動(例、SDS−PAGE)分析後には一本のバンドのみが検出される。
【0150】
一般的クラスのタンパク質(例、抗体)又は融合タンパク質タグ(例、6xHis)に結合するリガンドは、アフィニティー精製にすぐに使える予め固定された形態で市販されている。或いは、目的の特定の抗体又は抗原等のより特殊化したリガンドは、いくつかの市販の活性化されたアフィニティー支持体のうちの1つを使用することにより固定化され得る;例えば、ペプチド抗原が、支持体に固定化され得、該ペプチドを認識する抗体を精製するために使用され得る。
【0151】
最も一般的には、リガンドは、リガンド上の特定の官能基(例、第一級アミン、スルフヒロリル、カルボン酸、アルデヒド)と支持体上の反応性基との間の共有化学結合の形成により、固体支持体材料に直接的に固定化されるか又は「結合される(coupled)」(共有結合固定化に関する関連論文を参照のこと)。しかしながら、間接的結合アプローチも可能である。例えば、GSTタグ融合タンパク質は、第一に、グルタチオン−GSTアフィニティー相互作用を介してグルタチオン支持体に捕捉され得、次いで第二に、それを固定化するために化学的に架橋され得る。固定化されたGSTタグ融合タンパク質は、次いで、融合タンパク質の結合パートナー(複数可)をアフィニティー精製するために使用され得る。
【0152】
タンパク質:リガンド相互作用が関与するほとんどのアフィニティー精製手順では、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの、生理的pH及びイオン強度の結合バッファーを使用する。このことは、抗体:抗原又は天然タンパク質:タンパク質相互作用がアフィニティー精製の基礎としている場合に特に当てはまる。結合相互作用が起こると、試料の未結合の成分を除去するために、支持体は更なるバッファーで洗浄される。非特異的(例、単なるイオン性の)結合相互作用は、低レベルの界面活性剤を添加することにより、或いは結合バッファー及び/又は洗浄バッファー中の塩濃度の穏やかな調節により、最小化され得る。最後に、溶出バッファーが添加され、結合相互作用を壊し、標的分子を放出し、次いで標的分子はその精製された形態で集められる。溶出バッファーは、極端なpH(低又は高)、高塩(イオン強度)、一方又は両方の分子を変性させる界面活性剤又はカオトロピック剤の使用、結合因子の除去、又はカウンターリガンドとの競合によって、結合パートナーを解離し得る。ほとんどの場合、その後の透析又は脱塩は、精製タンパク質を溶出バッファーから、保存又は下流の分析により適したバッファー中へと交換するために必要とされる。
【0153】
タンパク質のアフィニティー精製のために最も広く使用される溶出バッファーは、0.1Mグリシン・HCl、pH2.5〜3.0である。このバッファーは、タンパク質構造に恒久的な影響を与えることなく、ほとんどのタンパク質:タンパク質及び抗体:抗原結合相互作用を効率よく解離させる。しかしながら、いくつかの抗体及びタンパク質は、低pHによって損傷を受けるため、溶出されたタンパク質画分は、1/10容量のアルカリ性バッファー(1M Tris・HCl、pH8.5など)の添加により、すぐに中和されるべきである。タンパク質のアフィニティー精製のための他の溶出バッファーとしては、以下が挙げられる:
【0154】
アフィニティー精製は、動かない物質(固相)に固定化されたリガンドとの結合相互作用における違いに基づく、溶液(移動相)中の分子の分離を含む。アフィニティー精製における支持体又はマトリクスは、生体特異的リガンドが共有結合したあらゆる物質である。典型的には、アフィニティーマトリクスとして使用される物質は、標的分子が見出される系において不溶性である。必ずしもそうではないが、通常、不溶性マトリクスは固体である。数百の物質が、アフィニティーマトリクスとして記載され、利用されている。
【0155】
【表1】
【0156】
有用なアフィニティー支持体は、高い表面積対体積比、リガンドの共有結合のために容易に修飾される化学基、最少限の非特異的結合特性、優れた流動特性並びに機械的及び化学的安定性を有するものである。任意の分離のためのアフィニティー支持体又はマトリクスを選択する場合、おそらく最も重要な答えるべき質問は、必要とされる質の所望のマトリクス物質について、信頼できる商業的供給源が存在するか否かである。
【0157】
固定化されたリガンド又は活性化されたアフィニティー支持体の化学は、いくつかの異なるフォーマットに使用可能である。最も一般的には、架橋されたビーズ状のアガロース又はポリアクリルアミド樹脂が、カラム又は小規模精製手順のために使用される。アフィニティーリガンドが固定化された磁性粒子は、細胞分離及び特定の自動化精製手順に特に有用である。ポリスチレンマイクロプレート(アッセイの目的でより一般的に使用される)でさえも、結合パートナーを精製するために、リガンドを固定化するための支持体として使用され得る。
【0158】
多孔質ゲル支持体は、一般に、タンパク質のアフィニティー精製のための最も有用な特性を提供する。これらの種類の支持体は、通常、直径50〜150μmのビーズとして溶液中で(即ち、水和して)製造される、糖又はアクリルアミドベースのポリマー樹脂である。ビーズ状のフォーマットは、これらの樹脂が湿ったスラリー(任意の大きさの樹脂ベッドでカラムを満たし、そして「詰める」ために、容易に分配され得る)として供給されることを可能にする。ビーズは、極めて多孔質であり、十分大きく、生体分子(タンパク質など)が、ビーズ表面の間及び周りで、可能な限り自由にビーズ内へ流れ、そしてビーズを通って流れることができる。リガンドは、種々の手段によりビーズポリマー(外部及び内部表面)に共有結合される。その結果、試料分子が固定化されたリガンドの広い表面積を通過して自由に流れることができる、疎性のマトリクスとなる
【0159】
タンパク質アフィニティー精製技術のための圧倒的に最も広く使用されるマトリクスは、架橋されたビーズ状アガロースであり、それは典型的には4%及び6%の密度で利用可能である。(このことは、1mlの樹脂ベッドでは、容量で90%以上が水であることを意味する。)
【0160】
抗体精製のいくつかの方法は、アフィニティー精製技術を含む。典型的な実験室規模の抗体製造は、比較的小容量の血清、腹水又は培養上清を含む。抗体が種々のアッセイ及び検出方法にどのように使用されるかに応じて、部分的に又は完全に精製されなければならない。3レベルの精製特異性として、以下のアプローチが挙げられる:
【0161】
硫酸アンモニウムでの沈殿。この単純な技術は、他の血清タンパク質からの全免疫グロブリンの粗精製を提供する。
【0162】
固定化プロテインA、G、A/G又はLでのアフィニティー精製。これらのタンパク質は、ほとんどの種及びIgGのサブクラスに結合する(IgGは、免疫原に応答して哺乳動物において産生される、最も豊富な種類の免疫グロブリンである)。これらのタンパク質を含むすぐに使用できる樹脂及びキットは、多くの包装サイズ及びフォーマットで入手可能である。
【0163】
固定化抗原でのアフィニティー精製。精製された抗原(即ち、宿主動物による抗体の産生を誘導するための免疫原として使用されるペプチド又はハプテン)をアフィニティー支持体に共有結合で固定化することによって、特異的抗体が、粗試料から精製されることが可能になる。活性化された樹脂及び種々の化学によって固定化された抗原を調製するための完全なキットが、入手可能である。以下も参照のこと:Seo et al., Characterization of a Bifidobacterium longum BORI dipeptidase belonging to the U34 family, Appl Environ Microbiol. 2007 Sep;73(17):5598-606; Clonis YD, Affinity chromatography matures as bioinformatic and combinatorial tools develop, J Chromatogr A. 2006 Jan 6;1101(l-2):l-24; Jmeian Y & El Rassi Z, Liquid-phase-based separation systems for depletion, prefractionation and enrichment of proteins in biological fluids for in-depth proteomics analysis, Electrophoresis. 2009 Jan;30(l):249-61。
【0164】
本発明は、配列番号113〜116のいずれか1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一であり、且つ少なくとも4x10−7M、好ましくは4x10−6M、より好ましくは7x10−5MのSPARCタンパク質についてのKD、或いは約3.3x10−7から約7.8x10−5のSPARCタンパク質についてのKDを有するscFvを提供する。また、本発明は、配列番号113〜116のいずれか1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一であり;配列番号113〜116におけるCDRのいずれか1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%同一であり、且つ少なくとも4x10−7M、好ましくは4x10−6M、より好ましくは7x10−5MのSPARCタンパク質についてのKD、或いは約3.3x10−7Mから約7.8x10−5MのSPARCタンパク質についてのKDを有するscFvを提供する。
【0165】
以下の実施例は、本発明を更に説明するが、当然のことながら、いかなる意味においてもその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0166】
実施例1
【0167】
本実施例は、ファージディスプレイ技術を使用するSPARC結合ペプチドの同定及び腫瘍治療のためのこのようなSPARC結合ペプチドの分子への組み込みを実証する。
【0168】
具体的には、主要な目的は、SPARC結合ペプチドが治療剤又は診断剤にコンジュゲートされた分子を作り出すことであった。特に、目的は、SPARC結合ペプチド−Fc融合タンパク質(図1)を作り出すことであった(ここで、抗体Fcドメインは、免疫機能(例えば、抗体依存性細胞毒性(ADC)又は細胞依存性細胞毒性(CDC)など)を刺激することにより、治療剤として機能する)。
【0169】
ディスプレイの方法論の一般的原理は、リガンド(ペプチド、タンパク質)をこのリガンドをコードする遺伝子に結びつけることである(図2を参照のこと)。ファージディスプレイ技術において、これは、リガンド遺伝子を、繊維状ファージのコートタンパク質をコードする遺伝子に融合させることにより得られる。次いで、組換えファージゲノムを、Escherichia coliに導入し、ここでハイブリッドタンパク質が全ての他のファージタンパク質と一緒に発現する。次いで、融合タンパク質は、ファージゲノム(リガンド遺伝子を含む)を含むファージコートに組み込まれる。リガンドを提示する分泌ファージ粒子を、固定化された標的上で選択することができるが、全ての非結合ファージは洗い流される。溶出工程の後、回収したファージを使用して、E. coliに感染させ、新たな選択のラウンドのため及び最終的には結合分析のために、このファージを増殖させる。
【0170】
従って、商業的なペプチドファージディスプレイライブラリー(M13においては12merペプチド)を、SPARCに結合するペプチドについてスクリーニングした。標的であるSPARCは、PIが4.6の酸性糖タンパク質である。pH9.6コーティングバッファーで96ウェルプレート上に固定化することにより、Ph.D.−12ペプチドライブラリーを4回スクリーニングし、ファージディスプレイ技術を使用してペプチドバインダー(binders)を選択した。具体的には、1回目のスクリーニングにおいて、結合したファージを、酸性溶出溶液で溶出した。次いで、標的タンパク質濃度を下げ、洗浄バッファー中のTween−20のパーセンテージを上げることにより、スクリーニングのストリンジェンシーを徐々に高める。同時に、過剰な標的での競合的溶出を採用し、スクリーニングの特異性を改善した。最後に、4ラウンドのスクリーニングの後、選択したクローンのssDNAを、DNA配列決定に供した。同時に、標的タンパク質への陽性ファージの結合を、ファージELISAを使用して確認した。
【0171】
SPARC結合ペプチドについてのペプチドファージディスプレイのこのスクリーニングの結果を図3及び4に示す。SPARC結合は、同じ配列を有するペプチドをコードする、単離されたファージクローンの数(図3)又はSPARCコートマイクロタイタープレートウェルへのペプチド発現ファージの結合により測定されるSPARC結合の親和性(図4)により定量し得る。ファージディスプレイにより同定されたペプチドのうち2つ、PD 15(配列番号1)及びPD 21(配列番号2)を更に特徴付けた。
【0172】
次いでPD 15及びPD 21を、発現ベクターpFUSE-hIg1-Fc2(図5)にクローン化し、その結果PD 15−Fc及びPD 21−Fc融合タンパク質をコードするプラスミドを得た(図6)。これらの融合タンパク質を発現させ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって実証されるように精製に成功した(図7)。
【0173】
PD 15及びPD 21のタンパク質マイクロアレイ分析(図8を参照のこと)は、アッセイしたアレイ上の5,000のタンパク質において、非SPARCタンパク質との最少限の交差反応性のみを示した(Invitrogen, ProtoArray v.3)。
【0174】
濃度依存性結合ELISAアッセイは、SPARCへのPD 15及びPD 21の結合が、抗SPARC抗体のものよりもわずかに弱いのみであることが示されることを実証した(図9)。PD 15のSPARC結合Kdは、4.1±0.6X10−8Mであり、PD 21のSPARC結合Kdは、1.0±0.7X10−7Mである。(試験した抗SPARC抗体は、6.2±3.4X10−9MのSPARC結合Kdを有しており、即ち、該抗体は、ごくわずかに高い親和性でSPARCに結合する。)
【0175】
図10及び11は、SPARCの同時局在(抗SPARC抗体での免疫組織化学的(IHC)染色により示される)並びにヒト脳腫瘍の切片におけるPD 15及びPD 21の結合(それらにはIHC染色のためにエピトープタグをつけた)を示す。図10に示されるように、PD 15及びPD 21は腫瘍組織に結合した(図11)のに対して、stab−Fcは腫瘍組織に結合しなかったため、SPARCへのスタブリン1の結合の文献報告は確かめられなかった。
【0176】
ファージディスプレイにより単離したSPARC結合ペプチドの配列相同性分析により、単離された多数のSPARC結合ペプチド配列が、図12に示すエラスチンの領域と配列同一性を有することが実証された。
【0177】
従って、本実施例は、SPARC結合ペプチドを、ファージディスプレイにより同定し得ること、及び同定したペプチドを更にどのように特徴付けるかを実証する。詳しく調べた2つのクローン(PD 15及びPD 21)のうち、PD 15は、ELSIA及びIHC実験において、PD 21よりもSPARCに対してより高い親和性を示した。
【0178】
実施例2
【0179】
PD 15及びPD 21−Fc融合タンパク質を、マウス−ヒトPC3前立腺癌異種移植モデルにおける抗腫瘍活性についてアッセイした。PD 15及びPD 21−Fc融合タンパク質はいずれも、統計的に有意な腫瘍増殖阻害を実証した(図13)。PD15は、PC3異種移植片に対してPD21よりも優れた抗腫瘍活性を示した。マウス−ヒトHT29結腸異種移植モデルにおける−PD21は、アブラキサンと厳密に同等の活性で、PD15よりも優れた抗腫瘍活性を示した(図14)。
【0180】
実施例3
【0181】
本実施例は、SPARC結合ペプチドの、免疫原性の可能性を実証する。
【0182】
ProPredは、抗原タンパク質配列中のMHCクラスII結合領域を予測するための、グラフィカルなウェブツールである(Singh et al.: ProPred: prediction of HLA-DR binding sites. Bioinformatics 2001, 17(12):1236-7を参照のこと)。サーバーは、文献から推定されるアミノ酸/位置係数表を用いて、マトリクスベースの予測アルゴリズムを実行する。予測されたバインダーは、グラフィカルインターフェースにおけるピークとしてか又はHTMLインターフェースにおける着色された残基としてかのいずれかで、視覚化され得る。このサーバーは、いくつかのHLA−DR対立遺伝子に結合し得る、乱雑な結合領域を位置付けるのに有用なツールであり得る。
【0183】
PD 21及びPD 15を含む、ファージディスプレイで同定されたSPARC結合ペプチドのProPred分析の結果、いくつかのHLA−DR分子のみがこれらのペプチドを提示することが示され、そしてこれらのペプチドがそれほど免疫原性を示さないことが示唆される。
【0184】
本明細書中に開示される任意のペプチド(例えば、高い親和性を示す、配列番号1〜112又は117を含む)は、免疫原性が低いか又は無いことについて、同様に分析され得る。
【0185】
実施例4
【0186】
抗体フラグメントも、異なるフォーマットを使用してファージ上に提示させ得る。単鎖可変フラグメント(scFv)は、短い(通常セリン、グリシン)リンカーと一緒に連結された、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変領域の融合物である。このキメラ分子は、定常領域の除去及びリンカーペプチドの導入にも関わらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持している。抗体ファージディスプレイのための最も一般的なフォーマットとしては、scFvライブラリーの使用が挙げられる。従って、抗体変異体の大きなコレクションを、抗原結合クローンの存在に対してスクリーニングし得る。
【0187】
全般的な戦略は、最初にSPARCを抗原とするELISAにより、ヒト抗体ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることであった。
【0188】
最初に、HuScL−3(登録商標)を4ラウンドスクリーニングし(酸性溶出で3回及び競合的溶出で1回)、17個の陽性クローンをファージELISAにより選択した。これらのクローンのDNA配列は、2つのユニークな抗体配列を明らかにし、それらの間で、第1の配列は15個の陽性クローンに共通であり、第2の配列は残りの2つの陽性クローンに共通であった。その後、2つのユニークな抗体の結合特異性を、可溶性scFv ELISAにより確認した。
【0189】
次に、HuScL−2(登録商標)を3ラウンドスクリーニングした(トリプシン消化溶出で2回及び競合的溶出で1回)。結局、30個の陽性クローンをファージELISAにより選択した。配列決定の結果によれば、29個のクローンは1つの抗体配列を共有しており、残りの1クローンは別のユニークな抗体をコードしていた。その後、これらの2つの抗体の結合特異性を、同様に可溶性scFv ELISAにより確認した。
【0190】
SPARCに対する4つのユニークなScFvを同定した(ScFv 3-1、ScFv 3-2、ScFv 2-1、及びScFv 2-2(配列番号113〜116))。図17は、抗原結合CDRに下線を引いた、ScFv 3-1、ScFv 3-2、ScFv 2-1、及びScFv 2-2(配列番号113〜116)の配列を示す。
【0191】
実施例5
【0192】
本実施例は、典型的なSPARC結合ScFvの精製を開示する。
【0193】
図18は、細菌から単離したscfv2.1の、ニッケルカラム精製並びに末端アミノ酸配列決定及びSDS−PAGEによるScFv2.1の特徴付けを示す(A、発現させた配列;B、アフィニティークロマトグラフィー;C、SDS PAGE;D、N末端アミノ酸配列データ)。
【0194】
図19は、細菌から単離したScfv3.1の、精製並びに末端アミノ酸配列決定及びSDS−PAGEによるScFv2.1の特徴付けを示す(A、発現させた配列;B、アフィニティークロマトグラフィー;C、SDS PAGE;D、N末端アミノ酸配列データ)。
【0195】
図20は、SPARCへの結合についての、精製したScFv2.1、scFv3.1及びscFv3.2のKDの決定を示す。A、SPARCを固定したチップ及びフロースルーとしてのScFv2.1を使用する、典型的なビアコア実験のセンサーグラム(Sesorgrams);B、(HTI SPARCは、HTIから得られる血小板SPARCである;Abx SPARCは、アブラクシスにおいて、操作されたHEK293細胞から精製されたSPARCである)に対するScFv2-l、ScFV3-l、及びScFV3-2のKD。
【0196】
本明細書中に引用された全ての参考文献(刊行物、特許出願、及び特許を含む)は、各参考文献が参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、またその全体が本明細書中で説明されたのと同程度まで、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0197】
本発明(特に添付の特許請求の範囲に関して)を記載することに関して、用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書中に別途示されない限り、又は文脈により明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含む(containing)」は、別途言及されない限り、オープンエンドな(open-ended)用語(すなわち、「含むが、それに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙は、本明細書中に別途示されない限り、この範囲内に入るそれぞれ別々の値に個々に言及する省略方法として機能することを意図するに過ぎず、それぞれ別々の値は、それが本明細書中に個々に列挙されたかのように、本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中に別途示されない限り、又はさもなくば文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施されうる。本明細書中に提供されるあらゆる、そして全ての例示、又は例示的語句(例えば、「など(such as)」)の使用は、本発明をより明確にすることを意図するに過ぎず、別途主張されない限り、本発明の範囲を限定しない。本明細書中のいかなる語句も、主張されていない任意の要素を本発明の実施に必須なものとして示していると解釈されるべきではない。
【0198】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されており、本発明を実施するための、本発明者らが知る最良の形態を含む。それらの好ましい実施形態のバリエーションは、前述の記載を読めば、当業者に明らかになりうる。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのようなバリエーションを使用することを予期し、また本発明者らは、本明細書中に具体的に記載されたもの以外の方法で、本発明が実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法により許容されるように、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された対象の全ての改変物及び均等物を含む。さらに、上記要素の全ての可能なバリエーションの中で、上記要素の任意の組み合わせが、本明細書中に別途示されない限り、又はさもなくば文脈により明らかに矛盾しない限り、本発明により包含される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも7.8x10−5MのKDでSPARCタンパク質に結合するScFvを含む組成物。
【請求項2】
ScFvが、配列番号113〜116のいずれか1つの配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
SPARCタンパク質に結合するScFvが、配列番号113〜116のCDRのいずれか1つと少なくとも80%同一である配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ScFvが治療剤又は診断剤と結合している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
治療剤又は診断剤が、白金化合物、葉酸拮抗剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害薬、DNA損傷剤、アポトーシス促進剤、分化誘導剤、血管新生阻害剤、抗生物質、チロシンキナーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、生物活性剤、生体分子、ホルモン、ペプチド、抗体、抗体フラグメント及びそれらの組み合わせからなる群から選択される治療剤である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
治療剤が、機能的抗体Fcドメインを含む抗体フラグメントである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
機能的抗体Fcドメインが、配列番号118を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
治療剤が、放射性核種、アドリアマイシン、アンサマイシン抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトテシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポチロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン、メトトレキサート、ラパマイシン(シロリムス)、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソ尿素、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン類、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソール、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、トランスプラチナ(transplatinum)、ドセタキセル、パクリタキセル、タキサン、5−フルオロウラシル、抗血管内皮成長因子化合物(「抗VEGF」)、抗上皮成長因子受容体化合物(「抗EGFR」)、ゲニステイン、tTF、TNF、Smar1由来p44ペプチド、インターフェロン、TRAIL、Smac、VHL、プロカスパーゼ、カスパーゼ、及びIL−2、非Fcドメイン抗体フラグメント、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
治療剤又は診断剤が、放射性薬剤、MRI造影剤、X線造影剤、超音波造影剤、及びPET造影剤からなる群から選択される診断剤である、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
医薬担体を更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
治療上有効量の請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を投与する工程を含む、疾患を有する哺乳動物の治療方法。
【請求項12】
疾患が、任意の身体組織における、細胞増殖の異常な状態、組織再構築、過形成、過大な創傷治癒、及びそれらの組み合わせである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
疾患が、糖尿病性の又は他の網膜症、炎症、線維症、関節炎、血管若しくは人工血管移植組織又は血管内装置などにおける再狭窄、白内障及び黄斑変性、骨粗しょう症、骨の疾患、アテローム性動脈硬化症及び石灰化が頻繁に観察される他の疾患である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
疾患が癌である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物がヒト患者である、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
少なくとも7.8x10−5MのKDでSPARCタンパク質に結合するScFvを含む組成物。
【請求項2】
ScFvが、配列番号113〜116のいずれか1つの配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
SPARCタンパク質に結合するScFvが、配列番号113〜116のCDRのいずれか1つと少なくとも80%同一である配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ScFvが治療剤又は診断剤と結合している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
治療剤又は診断剤が、白金化合物、葉酸拮抗剤、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害薬、DNA損傷剤、アポトーシス促進剤、分化誘導剤、血管新生阻害剤、抗生物質、チロシンキナーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、生物活性剤、生体分子、ホルモン、ペプチド、抗体、抗体フラグメント及びそれらの組み合わせからなる群から選択される治療剤である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
治療剤が、機能的抗体Fcドメインを含む抗体フラグメントである、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
機能的抗体Fcドメインが、配列番号118を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
治療剤が、放射性核種、アドリアマイシン、アンサマイシン抗生物質、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、カルムスチン、カペシタビン、クロラムブシル、シタラビン、シクロホスファミド、カンプトテシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、エポチロン、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メルファラン、メトトレキサート、ラパマイシン(シロリムス)、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニトロソ尿素、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、プロカルバジン、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、チオグアニン、チオテパ、タキサン類、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、タキソール、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、トランスプラチナ(transplatinum)、ドセタキセル、パクリタキセル、タキサン、5−フルオロウラシル、抗血管内皮成長因子化合物(「抗VEGF」)、抗上皮成長因子受容体化合物(「抗EGFR」)、ゲニステイン、tTF、TNF、Smar1由来p44ペプチド、インターフェロン、TRAIL、Smac、VHL、プロカスパーゼ、カスパーゼ、及びIL−2、非Fcドメイン抗体フラグメント、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
治療剤又は診断剤が、放射性薬剤、MRI造影剤、X線造影剤、超音波造影剤、及びPET造影剤からなる群から選択される診断剤である、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
医薬担体を更に含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
治療上有効量の請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を投与する工程を含む、疾患を有する哺乳動物の治療方法。
【請求項12】
疾患が、任意の身体組織における、細胞増殖の異常な状態、組織再構築、過形成、過大な創傷治癒、及びそれらの組み合わせである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
疾患が、糖尿病性の又は他の網膜症、炎症、線維症、関節炎、血管若しくは人工血管移植組織又は血管内装置などにおける再狭窄、白内障及び黄斑変性、骨粗しょう症、骨の疾患、アテローム性動脈硬化症及び石灰化が頻繁に観察される他の疾患である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
疾患が癌である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物がヒト患者である、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2012−511032(P2012−511032A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539780(P2011−539780)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/067032
【国際公開番号】WO2010/065969
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(508235494)アブラクシス バイオサイエンス リミテッド ライアビリティー カンパニー (22)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/067032
【国際公開番号】WO2010/065969
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(508235494)アブラクシス バイオサイエンス リミテッド ライアビリティー カンパニー (22)
【Fターム(参考)】
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