説明

STAT5siRNA含有組成物及びそれらの使用法

本発明は、STAT5発現を阻害する核酸分子を提供する。本核酸分子を使用する方法も、提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法119条(e)項の下で、2007年9月17日に出願された米国特許仮出願第60/973,060号の恩典を主張するものであり、この出願はその全体が引用により本明細書中に組込まれている。
【0002】
(配列表に関する陳述)
本出願に添付された「配列表」は、紙コピーの代わりにテキストフォーマットで提供され、これにより本明細書中に引用により組込まれている。「配列表」を含むテキストファイル名は、480251_405PC_SEQUENCE_LISTING.txt.である。このテキストファイルは、103KBであり、2008年9月18日に作製され、本明細書の出願と同時に、EFS-Web経由で電子提出された。
【0003】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、STAT5の発現を調整するsiRNA分子、並びにこれらのsiRNA分子の、STAT5発現の調整に反応する様々な癌、心疾患、炎症疾患及び炎症の軽減、代謝障害並びにその他の状態などのヒト疾患に関する治療薬としての適用に関する。
【背景技術】
【0004】
(関連技術の説明)
シグナル伝達性転写因子(Stat)は、その名が示唆するように、シグナル伝達ポリペプチドに曝露された細胞においてシグナル伝達因子と転写アクチベーターの二重機能を働くタンパク質である。このファミリーは現在、Stat1、Stat2、Stat3、Stat4、Stat5(A及びB)並びにStat6を含む(Brombergの論文、J. Chem. Invest., 109:1139-1142 (2002))。
【0005】
30種を上回る異なるポリペプチドが、様々な哺乳類細胞においてStatファミリーを活性化することができるものとして同定されている。STAT活性化の特異性は、特異的サイトカインに起因し、すなわち各STATは、少数の特異的サイトカインに応答性である。増殖因子などのその他の非サイトカインシグナル伝達分子も、STATを活性化することがわかっている。タンパク質チロシンキナーゼに結合した細胞表面受容体へのこれらの因子の結合も、STATのリン酸化を生じる。これらの様々なSTATは、今では多くの疾患に関係づけられている。例えば、STAT3、STAT5、及びSTAT6は、肥満症、癌、骨粗鬆症及び炎症のように多様な状態に寄与するレプチンのメディエーターとして説明されている。
【0006】
これらのSTATは、固有のチロシンキナーゼドメインを欠きかつJAKキナーゼを利用することによる、サイトカイン受容体により媒介されたインターフェロンシグナル伝達における重要なプレーヤーとして当初発見された。STAT5A(乳腺因子としても公知、MGF)及びSTAT5Bは、それらのN-末端で高度の相同性を共有している2つの異なるようにコードされたタンパク質である。STAT5Aは、プロラクチン-刺激されたヒツジの乳腺因子MGFとして当初同定された(Wakaoらの論文、Embo J., 13: 2182-2191 (1994))が、その後インターロイキン-2で誘導されたSTATタンパク質として同定された際に、STATファミリーのメンバーとして特徴づけられた(Houらの論文、 Immunity, 2: 321-329 (1995))。STAT5Bは、同様にインターロイキン-2により誘導されたSTATファミリーの追加メンバーとして同定された(Linらの論文、J. Biol. Chem., 271: 10738-10744 (1996))。ヒトSTAT5A及びSTAT5Bは、両方ともバンド17q11.2において第17染色体に局在化され、かつ非常に類似したゲノム構成を有する(Ambrosioらの論文、Gene, 285: 311-318 (2002);Linらの論文、J. Biol. Chem., 271: 10738-10744 (1996))。ヒトSTAT5A及びSTAT5Bは、アミノ酸レベルで91%の同一性を共有している(Linらの論文、J. Biol. Chem., 271: 10738-10744 (1996))。
【0007】
STAT5A及びSTAT5B転写産物は、脾臓、胃、脳、骨格筋、肝臓、腎臓、肺、胎盤、膵臓、心臓及び小腸を含むヒト組織において、遍在性に発現される(Ambrosioらの論文、Gene, 285: 311-318 (2002))。STAT5は、プロラクチン、様々なインターロイキン、エリスロポエチン及び顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子を含む、様々なサイトカイン、ホルモン、並びに増殖因子に反応して活性化される。STAT類は、細胞の増殖、分化及びアポトーシスに、特に造血及び免疫調節のプロセス、並びに生殖及び脂質代謝に影響を及ぼすシグナル伝達に関与している(Grimleyらの論文、Cytokine Growth Factor Rev., 10: 131-157 (1999))。
【0008】
STAT5A及びSTAT5Bは、高度な配列相同性を共有しているが、各STAT5は、個別の生物学的機能を有する。STAT5A-欠損マウスは、正常に発達するが、しかし妊娠時の乳房小葉腺胞増生は減少し、かつ雌のマウスは、乳腺分化の欠損のために、出産後の泌乳ができない(Liuらの論文、Genes Dev., 11: 179-186 (1997))。これらの結果は、STAT5Aは、成体の乳腺発達及び乳汁産生に必須であることを明らかにしている。マウスのSTAT5B遺伝子の標的化された破壊は、下垂体成長ホルモン分泌の性的二相性パターンに関連した複数の性的に分化された反応の著しい喪失につながる。雄のSTAT5B-欠損マウスは、野生型雌のレベルに比べ低下した身体発育率及び雄-特異的肝臓遺伝子発現レベルを示し、このことはSTAT5Bは、身体発育率及び肝臓遺伝子発現に対する雄成長ホルモンの生理的作用に必要であることを示唆している。発育率の中等度の減少のみが、STAT5B-欠損した雌において認められる(Udyらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94: 7239-7244 (1997))。この遺伝子破壊されたマウスの表現型は、発現のパターン、泌乳時のマウス乳房組織中のSTAT5Aの高い存在量、並びに未経産及び泌乳雌マウス及び雄マウスにおける筋肉組織中のSTAT5Bの高い存在量に相関している(Liuらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92: 8831-8835 (1995))。
【0009】
STAT5A及びSTAT5Bの両方の破壊は、各々個別の遺伝子の破壊に関連した表現型を生じ、かつSTAT5タンパク質は、成長ホルモン及びプロラクチンに反応する重複した機能を有することを明らかにしている。STAT5A及びSTAT5Bの両方を欠損しているマウスは、それらの野生型同腹仔よりもより小さく、かつそれらの雌は不妊である。これらのマウスから得た末梢T細胞は、T細胞受容体連結及びインターロイキン-2に反応して増殖することができず、このことはSTAT5は、T細胞調節において重要な役割を果たすことを示唆している(Teglundらの論文、Cell, 93: 841-850 (1998))。
【0010】
各STAT5遺伝子は、長いアイソフォーム及び短いアイソフォームの両方を生じる。これらの機能的に異なるアイソフォームは、個別の細胞集団において活性化されるが、これらはRNAプロセシングによっては生成されず、同じく個別の細胞集団に限定されるSTATS-切断するプロテアーゼ活性により生成される。インターロイキン-3は、成熟骨髄細胞株において完全長STAT5A及びSTAT5Bを活性化し、並びにより未熟な骨髄細胞株においてc-末端切断型を活性化する(Azamらの論文、Immunity, 6: 691-701 (1997))。これらの天然の切断型変種は、培養された哺乳類細胞において完全長STAT5機能を阻害することができるが、細胞増殖率には影響を及ぼさない(Morigglらの論文、Mol. Cell. Biol., 16: 5691-5700 (1996);Wangらの論文、Mol. Cell. Biol., 16: 6141-6148 (1996))。加えてヒトSTAT5Bの選択的スプライシング型が存在し、これはSTAT5B遺伝子内の選択的プロモーター及び5'エキソンを使用する。このSTAT5B転写産物は、胎盤組織においてのみ認められる(Ambrosioらの論文、Gene, 285: 311-318 (2002))。ラットSTAT5Aの選択的スプライシング型は、ラット乳腺から単離され、かつSTAT5A1及びSTAT5A2と命名された(Kazanskyらの論文、Mol. Endocrinol., 9: 1598-1609 (1995))。COOH-末端の40個のアミノ酸を欠いているSTAT5Bアイソフォームは、ラット肝臓から単離され、かつSTAT5B.DELTA.40Cと命名された(Rippergerらの論文、J. Biol. Chem., 270: 29998-30006 (1995))。
【0011】
STATタンパク質は、細胞周期のチェックポイント調節又はDNA修復に直接寄与することは知られていない。しかしこれらは、増殖因子シグナル伝達、アポトーシス及び血管新生におけるそれらの関与を介して腫瘍形成に寄与している。加えてこの転写因子ファミリーは免疫応答に参画するので、欠損STAT活性は、免疫監視を損ない、その結果癌細胞の生存を促進することができる。STAT5は一般に、いくつかの癌において構成的に活性化されることが認められている。今日まで、STATタンパク質の構成的リン酸化及び活性化の最も一般的機構は、過剰なJAKキナーゼ活性である(Brombergの論文、J. Clin. Invest., 109: 1139-1142 (2002))。
【0012】
STAT5は、IL2によるT-細胞活性化に対する反応の重要なメディエーターとして同定されている。Stat5によりその活性が調整され及び/又は媒介される一連の免疫細胞及びサイトカインは、かなり広範であるので、Stat5の様々な免疫学的状態への連結がある。STAT5aは、乳タンパク質遺伝子発現のレギュレーターとして当初説明され、その後乳房発育及び乳汁生産に必須であることが示された。乳房発育におけるSTATシグナル伝達分子の必須の調節の役割、及び乳房上皮細胞の生存及び分化におけるSTAT5a活性化の役割を考慮すると、構成的に活性化されたStat因子は、ヒト乳癌の特徴であるという発見は、驚くべきことではなかった。持続性のStat活性は、白血病を含む、様々な腫瘍においても説明されている。この持続された活性化の原因は明らかではないが、しかし恐らく多くのStat調節タンパク質のひとつの変異か、又はStat活性を調整する他のシグナル伝達経路の異常調節が関与しているであろう。Stat5aは乳癌発症に関与することが報告された。ひとつの研究において、WAP-TAgトランスジェニックマウスモデルにおける乳腺癌の割合は、ヒト乳癌同様に、構成的Stat5a/b及びStat3活性化を示すことがわかった。WAP-TAgマウスの、Stat5a遺伝子の生殖細胞系欠失を有するマウスへの交配によるStat5a対立遺伝子のヘミ接合体欠失は、乳腺発育を変化することなくStat5a発現のレベルを有意に低下した。通常のマウスと比較して、Stat5a対立遺伝子のヘミ接合体欠失は、触知可能な腫瘍を持つマウスの数及びそれらの腫瘍サイズを低下し、同じくこの腺癌における最初の腫瘍の出現を遅延し、かつアポトーシス指数を増大した(Renらの論文、Oncogene, 21: 4335-4339 (2002))。従ってStat5活性化レベルを低下させることは、乳癌細胞の生存を低下させる治療的アプローチであり得ることに加え、様々な免疫学的障害の治療に関する治療的アプローチであり得る。
【0013】
腫瘍開始及び進行のプロセスにおけるSTAT5の役割は、構成的STAT5活性と培養細胞の形質転換の間の連関により示されている。STAT5活性化は、造血前駆細胞の形質転換に十分である(Spiekermannらの論文、Exp. Hematol., 30: 262-271 (2002))。STAT5A及びSTAT5Bの両方は、K562白血病細胞において構成的にリン酸化され、かつ転写により活性化される(Carlessoらの論文、J. Exp. Med., 183: 811-820 (1996);de Grootらの論文、Blood, 94: 1108-1112 (1999);Weber-Nordtらの論文、Blood, 88: 809-816 (1996))。加えて増大したSTAT5の構成的活性化は、頭頚部の扁平上皮癌に由来した形質転換されたヒト扁平上皮細胞において検出された。アンチセンスオリゴヌクレオチドによるSTAT5AではなくSTAT5Bの標的化は、これらの扁平上皮細胞の成長を阻害した(Leongらの論文、Oncogene, 21: 2846-2853 (2002))。
【0014】
異常なSTAT5活性は、多くの癌、特に造血系悪性腫瘍に関連して実際に認められる。構成的に活性化されたSTAT5は、T-細胞及びB-細胞急性リンパ芽球性白血病(ALL)、成人T-細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、成人T-細胞白血病(ATL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)及び急性前骨髄球性白血病(APL-L)の患者から採取された細胞試料において認められる(Arnouldらの論文、Hum. Mol. Genet., 8: 1741-1749 (1999);Carlessoらの論文、J. Exp. Med., 183: 811-820 (1996);Chaiらの論文、J Immunol., 159: 4720-4728 (1997);Gouilleux-Gruartらの論文、Blood, 87: 1692-1697 (1996);Spiekermannらの論文、Clin. Cancer Res., 9: 2140-2150 (2003);Takemotoらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94: 13897-13902 (1997);Weber-Nordtらの論文、Blood, 88: 809-816 (1996))。まとめるとこれらのデータは、造血系の癌における活性化されたSTAT5の関与を明らかにしている。
【0015】
構成的に活性化されたSTAT5が癌細胞生存を促進し得るひとつの機構は、アポトーシスの阻害による。構成的に活性化されたSTAT5の導入は、デキサメタゾン-誘導したアポトーシスに対しマウスT細胞性リンパ腫の細胞を保護する(Demoulinらの論文、J. Biol. Chem., 274: 25855-25861 (1999))。逆に構成的活性チロシンキナーゼであるBCR/ABLを発現している細胞における小型分子インヒビターを使用するチロシンキナーゼシグナル伝達のブロックは、細胞増殖を阻害し、かつアポトーシスを誘導した(Donatoらの論文、Blood, 97: 2846-2853 (2001);Huangらの論文、Oncogene, 21: 8804-8816 (2002))。アポトーシスは、STAT5活性化の阻害に相関していた。CML初代細胞、CML細胞株又は前立腺癌細胞へのドミナントネガティブSTAT5a変異体のウイルス送達は、細胞死を誘導し、これは癌細胞の増殖及び生存におけるSTAT5シグナル伝達の役割と一致する(Ahonenらの論文、J. Biol. Chem., 278: 27287-27292 (2003);Huangらの論文、Oncogene, 21: 8804-8816 (2002))。
【0016】
STATタンパク質の不適切な活性化は、癌細胞が、サイトカイン及び増殖因子の非存在下で生存及び増殖することも可能にすることができる。STAT5活性化は、染色体転座から生じるBCR/ABLキメラ癌遺伝子の存在との相関において認められることが多い。BCR/ABL融合は、CML及びALLの両方において認められる(Cofferらの論文、Oncogene, 19: 2511-2522 (2000))。CML患者由来の細胞中のSTAT5活性化は、BCR/ABLキナーゼ活性に厳密に依存し、かつ造血細胞においてサイトカイン非依存型増殖をもたらすその能力に強力に相関している(Carlessoらの論文、J. Exp. Med., 183: 811-820 (1996);Shuaiらの論文、Oncogene, 13: 247-254 (1996))。構成的に活性化されたSTAT5は、BCR/ABLを発現しているいくつかのCML-由来の細胞株においても認められる。更にBCR/ABLは、AML患者からの末梢血においても発現され、かつ構成的に活性化されたSTAT5は、これらのAML患者の1人に見出された(Chaiらの論文、J. Immunol., 159: 4720-4728 (1997))。STAT5A及びSTAT5Bのα及びβアイソフォームは両方とも、AML患者の細胞において発現されることが認められ、かつタンパク質分解性切断よりもむしろ選択的mRNAスプライシングに起因することが提唱された(Xiaらの論文、Cancer Res., 58: 3173-3180 (1998))。加えて、STAT5は、STAT5を不適切に活性化するように作用するTEL-JAK2及びTEL-ABL融合タンパク質を含む、タンパク質チロシンキナーゼ活性を持つ他の白血病融合タンパク質の主な標的である(Spiekermannらの論文、Exp. Hematol., 30: 262-271 (2002))。
【0017】
急性前骨髄球性白血病(APL-L)症例は、レチノイン酸受容体α(RARA)遺伝子とSTAT5B遺伝子の間の融合の結果である、構造的に異常なSTAT遺伝子を示す。正常環境下でのSTAT5Bは、チロシンキナーゼ活性化時のみ核へ移行されるのに対し、STAT5B/RARA融合体は、核へ誤移行される(Arnouldらの論文、Hum. Mol. Genet., 8: 1741-1749 (1999))。この融合タンパク質は、STAT3活性を増強し、これは他のAPL融合タンパク質により共有される特徴である(Dong及びTweardyの論文、Blood, 99: 2637-2646 (2002))。
【0018】
従って証拠の集積は、STAT活性化レベルの低下は、STAT発現/活性化に関連した癌細胞の生存を低下させる治療的アプローチに加え、様々な免疫学的障害の治療に関する治療的アプローチであり得ることを強力に示唆している。
【0019】
RNAi技術は、特定の遺伝子産物の発現を低下させる有効な手段として登場してきており、従ってSTAT5の発現の調整に関する数多くの治療的、診断的及び研究の適用において独自に有用であることを証明できる。本発明は、RNAi技術を使用し、これらのタンパク質の発現を調整する組成物及び方法を提供する。
【0020】
以下は、RNAiに関する関連技術の考察である。この考察は、それに続く本発明を理解するためにのみ提供されている。このまとめは、以下に説明される研究は、主張される本発明に先行する技術であることの承認ではない。
【0021】
RNA干渉は、低分子干渉RNA(siRNA)により媒介された動物における配列-特異的転写後遺伝子サイレンシングのプロセスをいう(Zamoreらの論文、Cell, 101: 25-33 (2000);Fireらの論文、Nature, 391: 806 (1998);Hamiltonらの論文、Science, 286: 950-951 (1999);Linらの論文、Nature, 402: 128-129 (1999);Sharpの論文、Genes & Dev., 13: 139-141 (1999);及び、Straussの論文、Science, 286: 886 (1999))。植物における対応するプロセス(HeifetzらのPCT国際公開公報WO 99/61631)は、通常、転写後遺伝子サイレンシング又はRNAサイレンシングと称され、及び同じく真菌において鎮圧現象(quelling)と称される。転写後遺伝子サイレンシングのプロセスは、外来遺伝子の発現を阻止するために使用される進化的に保存された細胞防御機構であると考えられ、かつ多様な植物相及び門(flora and phyla)により一般に共有されている(Fireらの論文、Trends Genet., 15: 358 (1999))。このような外来遺伝子発現からの防御は、ウイルス感染に由来するか又は相同な1本鎖RNA若しくはウイルスゲノムRNAを特異的に破壊する細胞反応によるトランスポゾンエレメントの宿主ゲノムへのランダム組込みに由来する、2本鎖RNA(dsRNA)の生成に反応して発展し得る。細胞内のdsRNAの存在は、未だ完全には特徴づけられていない機序を通じ、RNAi反応の引き金をひく。この機序は、リボヌクレアーゼLによるmRNAの非特異的切断を生じる、プロテインキナーゼPKR及び2',5'-オリゴアデニル酸合成酵素のdsRNA媒介型の活性化から生じるインターフェロン反応などの、2本鎖RNA-特異的リボヌクレアーゼに関与した他の公知の機序とは異なるようである(例えば、米国特許第6,107,094号;第5,898,031号;Clemensらの論文、J. Interferon & Cytokine Res., 17: 503-524 (1997);Adahらの論文、Curr. Med. Chem., 8: 1189 (2001)を参照されたい)。
【0022】
細胞内の長いdsRNAの存在は、ダイサーと称されるリボヌクレアーゼIII酵素の活性を刺激する(Bassの論文、Cell, 101: 235 (2000);Zamoreらの論文、Cell, 101: 25-33 (2000);Hammondらの論文、Nature, 404: 293 (2000))。ダイサーは、低分子干渉RNA(siRNA)として公知のdsRNAの、短いdsRNA断片へのプロセシングに関係している(Zamoreらの論文、Cell, 101: 25-33 (2000);Bassの論文、Cell, 101: 235 (2000);Bersteinらの論文、Nature, 409: 363 (2001))。ダイサー活性に由来した低分子干渉RNAは、典型的には長さが約21〜約23のヌクレオチドであり、かつ約19の塩基対二重鎖を含む(Zamoreらの論文、Cell, 101: 25-33 (2000);Elbashirらの論文、Genes Dev., 15: 188 (2001))。ダイサーは、翻訳制御に関係している保存された構造の前駆体RNAからの21-及び22-ヌクレオチドの一過性低分子RNA(stRNA)の切り出しにも関係している(Hutvagnerらの論文、Science, 293: 834 (2001))。このRNAi反応は同じく、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)と通常称されるエンドヌクレアーゼ複合体を特徴としており、これはsiRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な配列を有する1本鎖RNAの切断を媒介する。この標的RNAの切断は、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の中央で生じる(Elbashirらの論文、Genes Dev., 15: 188 (2001))。
【0023】
RNAiは、様々なシステムにおいて研究されている。Fireらの論文(Nature, 391: 806 (1998))は、C.エレガンス(C. elegans)においてRNAiを最初に観察した。Bahramian及びZarblの論文(Molecular and Cellular Biology, 19: 274-283 (1999))並びにWianny及びGoetzの論文(Nature Cell Biol., 2: 70 (1999))は、哺乳類システムにおけるdsRNAにより媒介されたRNAiを説明している。Hammondらの論文(Nature, 404: 293 (2000))は、dsRNAでトランスフェクトされたショウジョウバエ(Drosophila)細胞におけるRNAiを説明している。Elbashirらの論文(Nature, 411: 494 (2001))及びTuschlらのPCT国際公開公報WO 01/75164は、ヒト胎児腎細胞及びHeLa細胞を含む、培養された哺乳類細胞における、合成21-ヌクレオチドRNA二重鎖の導入により誘導されたRNAiを説明している。ショウジョウバエ胚可溶化液における最新の研究(Elbashir らの論文、EMBO J., 20: 6877 (2001)、及びTuschlらのPCT国際公開公報WO 01/75164)は、効率的RNAi活性を媒介するために必須であるsiRNAの長さ、構造、化学組成、及び配列に関するある種の必要要件を明らかにしている。これらの研究は、21-ヌクレオチドsiRNA二重鎖は、3'-末端ジヌクレオチド突出を含む場合に、最も活性があることを示している。更にsiRNA鎖の一方又は両方の2'-デオキシ(2'-H)又は2'-O-メチルヌクレオチドとの完全な置換は、RNAi活性を無効にするのに対し、3'-末端siRNA突出ヌクレオチドの2'-デオキシヌクレオチド(2'-H)との置換は、許容できることが示された。siRNA二重鎖の中心における単独のミスマッチ配列も、RNAi活性を無効にすることが示された。加えてこれらの研究は、標的RNA中の切断部位の位置は、siRNAガイド配列の3'-末端よりもむしろ該ガイド配列の5'-末端により規定されることも示されている(Elbashirらの論文、EMBO J, 20: 6877 (2001))。別の研究は、siRNA二重鎖の標的-相補鎖上の5'-リン酸が、siRNA活性に必要であること、及びsiRNA上の5'-リン酸部分を維持するために、ATPが利用されることを示している(Nykanenらの論文、Cell, 107: 309 (2001))。
【0024】
研究は、2-ヌクレオチド3'-突出を有する21-mer siRNA二重鎖の3'-末端突出ヌクレオチドセグメントの、デオキシリボヌクレオチドとの交換は、RNAi活性に有害な作用を有さないことを示している。siRNAの各末端上の最大4個のヌクレオチドの、デオキシリボヌクレオチドとの交換は、良好に許容されるのに対し、デオキシリボヌクレオチドとの完全な置換は、RNAi活性を生じないことが報告されている(Elbashirらの論文、EMBO J., 20, 6877 (2001)、及びTuschlらのPCT国際公開公報WO 01/75164)。加えて、Elbashirらの論文(前掲)は、siRNAの2'-O-メチルヌクレオチドによる置換は、RNAi活性を完全に無効にすることも報告している。LiらのPCT国際公開公報WO 00/44914、及びBeachらのPCT国際公開公報WO 01/68836は、siRNAは、少なくとも1個の窒素又はイオウヘテロ原子を含むように、リン酸-糖骨格又はヌクレオシドのいずれかに対する修飾を含むことができることを予備的に示唆しているが、いずれの出願も、そのような修飾がsiRNA分子においてどの程度許容できるか仮定しておらず、またそのように修飾されたsiRNAの更なる指針や例も提供していない。Kreutzerらのカナダ特許出願第2,359,180号も、2本鎖RNA-依存型プロテインキナーゼPKRの活性化に対抗するために、dsRNA構築体において使用するある種の化学修飾、具体的には2'-アミノ又は2'-O-メチルヌクレオチド、及び2'-O若しくは4'-Cメチレン橋を含むヌクレオチドを開示している。しかしKreutzerらも、これらの修飾がどの程度dsRNA分子において許容されるかの例又は指針を提供することには失敗している。
【0025】
Parrishらの論文(Molecular Cell, 6: 1077-1087 (2000))は、長い(>25nt)siRNA転写産物を使用し、C.エレガンスにおいてunc-22遺伝子を標的化しているある種の化学修飾を試験した。この著者らは、T7及びT3 RNAポリメラーゼによるチオリン酸ヌクレオチドアナログの取り込みによる、チオリン酸残基のこれらのsiRNA転写産物への導入を説明し、並びに2個のホスホロチオエート修飾された塩基を伴うRNAも、RNAiとしての有効性を実質的に低下させることを認めた。更にParrishらは、2個よりも多い残基のホスホロチオエート修飾は、インビトロにおいてRNAを大きく不安定化し、その結果干渉活性はアッセイすることができないことを報告した。同文献、1081。この著者らは、長いsiRNA転写産物中のヌクレオチド糖の2'-位でのある種の修飾も試験し、デオキシヌクレオチドのリボヌクレオチドとの置換は、特にウリジンのチミジンへの置換及び/又はシチジンのデオキシ-シチジンへの置換の場合に干渉活性の実質的減少を生じたことを認めた。同文献。加えてこの著者らは、siRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖における、ウラシルの4-チオウラシル、5-ブロモウラシル、5-ヨードウラシル、及び3-(アミノアリル)ウラシルへの、並びにグアノシンのイノシンへの置換を含む、ある種の塩基修飾を試験した。4-チオウラシル及び5-ブロモウラシル置換は許容できるようであったが、Parrishは、イノシンは、いずれかの鎖に取り込まれた場合に、干渉活性の実質的減少を生じたことを報告した。Parrishは、アンチセンス鎖における5-ヨードウラシル及び3-(アミノアリル)ウラシルの取り込みは、更にRNAi活性の実質的減少を生じることも報告した。
【0026】
比較的長いdsRNAの使用も説明されている。例えば、BeachらのPCT国際公開公報WO 01/68836は、内在性に由来したdsRNAを使用し、遺伝子発現を減弱する具体的方法を開示している。TuschlらのPCT国際公開公報WO 01/75164は、ショウジョウバエのインビトロRNAiシステム並びにある種の機能ゲノム用途及びある種の治療的用途における特異的siRNA分子の使用を開示しているが;しかし、Tuschlの論文(Chem. Biochem., 2: 239-245 (2001))は、インターフェロン反応の活性化の危険性のために、RNAiを使用して遺伝疾患又はウイルス感染を治癒できるか疑っている。LiらのPCT国際公開公報WO 00/44914は、ある種の標的遺伝子の発現の減弱化のための、特定の長さ(141bp-488bp)の酵素合成又はベクター発現されたdsRNAの使用を開示している。Zernicka-GoetzらのPCT国際公開公報WO 01/36646は、ある長さ(550bp-714bp)の酵素合成又はベクター発現されたdsRNA分子を使用し、哺乳類細胞内の特定の遺伝子の発現を阻害するある方法を開示している。FireらのPCT国際公開公報WO 99/32619は、線虫における遺伝子発現を阻害するために、ある長さのdsRNA分子を細胞へ導入する特別な方法を開示している。PlaetinckらのPCT国際公開公報WO 00/01846は、特定の長さのdsRNA分子を使用し、細胞において特別な表現型を付与することに寄与する特異的遺伝子を同定するある方法を開示している。MelloらのPCT国際公開公報WO 01/29058は、dsRNA-媒介したRNAiに関与した特異的遺伝子の同定を開示している。PachuckらのPCT国際公開公報WO 00/63364は、ある長さ(少なくとも200ヌクレオチド)のdsRNA構築体を開示している。Deschamps DepailletteらのPCT国際公開公報WO 99/07409は、ある種の抗ウイルス薬と組合わせられた特定のdsRNA分子からなる具体的組成物を開示している。WaterhouseらのPCT国際公開公報99/53050、及び論文(PNAS, 95: 13959-13964 (1998))は、ある種のdsRNAを使用し、植物細胞における核酸の表現型発現を減少する方法を開示している。DriscollらのPCT国際公開公報WO 01/49844は、標的化された生物において遺伝子サイレンシングを促進することに使用される特異的DNA発現構築体を開示している。
【0027】
他のものは、様々なRNAi及び遺伝子サイレンシングシステムを報告している。例えばParrishらの論文(Molecular Cell, 6: 1077-1087 (2000))は、C.エレガンスのunc-22遺伝子を標的化する、特異的に化学修飾されたdsRNA構築体を説明している。GrossniklausのPCT国際公開公報WO 01/38551は、ある種のdsRNAを使用し、植物において、ポリコーム遺伝子発現を調節するある方法を開示している。ChurikovらのPCT国際公開公報WO 01/42443は、ある種のdsRNAを使用し、生物の遺伝的特徴を修飾するある方法を開示している。CogoniらのPCT国際公開公報WO 01/53475は、ニューロスポラ属(Neurospora)サイレンシング遺伝子の単離方法及びそれらの使用を開示している。ReedらのPCT国際公開公報WO 01/68836は、植物における遺伝子サイレンシングのある方法を開示している。HonerらのPCT国際公開公報WO 01/70944は、ある種のdsRNAを使用し、パーキンソン病モデルとしてトランスジェニック線虫を用いる、ある種の薬物スクリーニング方法を開示している。DeakらのPCT国際公開公報WO 01/72774は、ショウジョウバエにおけるRNAiに関連し得るショウジョウバエ由来の遺伝子産物を開示している。ArndtらのPCT国際公開公報WO 01/92513は、RNAiを増強する因子を使用することにより、遺伝子抑制を媒介するある方法を開示している。TuschlらのPCT国際公開公報WO 02/44321は、ある種の合成siRNA構築体を開示している。PachukらのPCT国際公開公報WO 00/63364、及びSatishchandranらのPCT国際公開公報WO 01/04313は、ある長さ(250bp以上)のベクター発現されたdsRNAを使用し、ある種のポリヌクレオチド配列の機能を阻害する方法及び組成物を開示している。EcheverriらのPCT国際公開公報WO 02/38805は、RNAiにより同定されたあるC.エレガンス遺伝子を開示している。KreutzerらのPCT国際公開公報WO 02/055692、WO 02/055693、及び欧州特許EP 1144623 B1は、dsRNAを使用し、遺伝子発現を阻害するある方法を開示している。GrahamらのPCT国際公開公報WO 99/49029及びWO 01/70949、並びにAU 4037501は、ある種のベクターで発現されたsiRNA分子を開示している。Fireらの米国特許第6,506,559号は、RNAiを媒介するある種の長いdsRNA構築体(299bp-1033bp)を使用する、インビトロにおける遺伝子発現を阻害するある方法を開示している。Martinezらの論文(Cell, 110: 563-574 (2002))は、Hela細胞においてRNA干渉を媒介するある5'-リン酸化された1本鎖siRNAを含む、ある種の1本鎖siRNA構築体を説明している。Harborthらの論文(Antisense & Nucleic Acid Drug Development, 13: 83-105 (2003))は、ある種の化学的及び構造的に修飾されたsiRNA分子を説明している。Chiu及びRanaの論文(RNA, 9: 1034-1048 (2003))は、ある種の化学的及び構造的に修飾されたsiRNA分子を説明している。WoolfらのPCT国際公開公報WO 03/064626及びWO 03/064625は、ある種の化学的に修飾されたdsRNA構築体を開示している。Hornungらの論文(Nature Medicine, 11: 263-270 (2005))は、TLR7を介した形質細胞様樹状細胞における低分子干渉RNAによるIFN-αの配列-特異的強力な誘導を説明している。Judgeらの論文(Nature Biotechnology, (2005) 電子版:2005年3月20日)は、合成siRNAによる哺乳類の先天性免疫応答の配列-依存性の刺激を説明している。YukiらのPCT国際公開公報WO 05/049821及びWO 04/048566は、低分子干渉RNA配列をデザインするある方法及び最適化された活性を伴うある種の低分子干渉RNA配列を開示している。Saigoらの米国特許出願公開第US20040539332号は、RNA干渉を実現するための、低分子干渉RNA配列を含む、オリゴ-又はポリヌクレオチド配列をデザインする方法を開示している。TeiらのPCT国際公開公報WO 03/044188は、細胞、組織又は個々の生物を、標的遺伝子の少なくとも部分的ヌクレオチド配列と実質的に同じヌクレオチド配列を有するDNA及びRNAを含む2本鎖ポリヌクレオチドでトランスフェクトすることを含む、標的遺伝子の発現を阻害するある方法を開示している。
【発明の概要】
【0028】
(発明の簡単な概要)
本発明のひとつの態様は、配列番号:1-250からなる群から選択される少なくとも1種のヌクレオチド配列を含む、単離された低分子干渉RNA(siRNA)ポリヌクレオチドを提供する。一実施態様において、本発明のsiRNAポリヌクレオチドは、配列番号:1-250及びそれらに相補的なポリヌクレオチドからなる群から選択される少なくとも1種のヌクレオチド配列を含む。更なる実施態様において、本低分子干渉RNAポリヌクレオチドは、STAT5ポリペプチドの発現を阻害し、ここで該STAT5ポリペプチドは、配列番号:255-258に示されたアミノ酸配列か、又は配列番号:251-254に示されたポリヌクレオチドによりコードされたアミノ酸配列を含む。別の実施態様において、本siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号:1-250に提供されたもの又はそれらの相補体などの本明細書に記載されたsiRNAポリヌクレオチドの任意の位置で、1、2、3又は4個のヌクレオチドが異なる。更に別の実施態様において、本siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、配列番号:1-250に示された配列からなる群から選択される配列のアンチセンス鎖の5'末端とセンス鎖の3'末端の間で少なくとも1つのミスマッチの塩基対が異なる。これに関して、このミスマッチの塩基対は、G:A、C:A、C:U、G:G、A:A、C:C、U:U、C:T、及びU:Tミスマッチを含むことができるが、これらに限定されるものではない。更なる実施態様において、このミスマッチの塩基対は、アンチセンス鎖の5'末端とセンス鎖の3'末端の間にゆらぎ塩基対を含む。別の実施態様において、このsiRNAポリヌクレオチドは、天然のヌクレオチドの合成ヌクレオチドアナログを少なくとも1種含む。ある実施態様において、本siRNAポリヌクレオチドは、レポーター分子又は磁気粒子若しくは常磁性粒子などの検出可能な標識に連結されている。レポーター分子は、当業者に周知である。例証的レポーター分子は、色素、放射性核種、発光基、蛍光基、及びビオチンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0029】
別の本発明の態様は、siRNA分子が、配列番号:251-254に提供された配列、又は転写活性(例えばSTAT5反応性遺伝子の転写)を有するそれらの変種を標的化する核酸を含む、STAT5遺伝子の発現を阻害する単離されたsiRNA分子を提供する。ある実施態様において、このsiRNAは、配列番号:1-250に提供された1本鎖RNA配列又はそれらの2本鎖RNAのいずれかひとつを含む。本発明の一実施態様において、このsiRNA分子は、RNA干渉(RNAi)を介して、STAT5遺伝子の発現をダウンレギュレートする。
【0030】
本発明の別の態様は、本明細書に記載されたsiRNAポリヌクレオチドの1種以上、及び生理的に許容し得る担体を含有する組成物を提供する。ある実施態様において、本組成物は、ポリエチレンイミンを含有する。別の実施態様において、本組成物は、ポリエチレンイミン及びNHS-PEG-VSを含有する。更なる実施態様において、本組成物は、正帯電したポリペプチドを含有する。これに関して、正帯電したポリペプチドは、ポリポリ(ヒスチジン-リジン)を含むことができる。更なる実施態様において、本組成物は、標的化部分を更に含有する。
【0031】
本発明の別の態様は、hSTAT5発現の調整に反応する様々な癌、心疾患、炎症疾患及び炎症の軽減、代謝障害及び他の状態を有するか又は有するリスクがあると疑われる被験体において、そのような疾患又は状態を治療又は予防する方法であって、該被験体に、本発明のsiRNA分子を含有する組成物などの本発明の組成物を投与し、それによりSTAT5に関連した疾患又は状態を治療又は予防することを含む、前記方法を提供する。これに関して、本発明は、STAT5発現の調整に反応する脳、食道、膀胱、子宮頸部、乳房、肺、前立腺、結腸直腸、膵臓、頭頚部、前立腺、甲状腺、腎臓、及び卵巣の癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、リンパ腫、白血病、神経膠腫、膠芽細胞腫、多剤耐性癌、並びに他の癌性疾患、心疾患(例えば、心筋症、心臓血管疾患、先天性心疾患、冠動脈性心臓病、心不全、高血圧性心疾患、炎症性心疾患、心臓弁膜症)、炎症疾患、又は他の状態を治療又は予防する方法を提供する。本発明の組成物は、遺伝性代謝障害を含む、数多くの既知の代謝障害のいずれかを治療する方法においても使用することができる。治療され得る代謝障害は、糖尿病、高脂血症、乳酸アシドーシス、フェニルケトン尿症、チロシン血症、アルカプトン尿症、イソ吉草酸血症、ホモシスチン尿症、尿素回路障害、又は有機酸代謝障害、プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症、1型グルタル酸尿症、酸性リパーゼ疾患、アミロイド症、バース症候群、ビオチニダーゼ欠損症(BD)、カルニチンパルミトイル基転移酵素II欠損症(CPT-II)、中心性橋髄鞘融解症、筋ジストロフィー、ファーバー病、G6PD欠損症(グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、ガングリオシドーシス、トリメチルアミン尿症、レッシュ・ナイハン症候群、脂質蓄積症、代謝性ミオパチー、メチルマロン酸尿症(MMA)、ミトコンドリアミオパチー、MPS(ムコ多糖症)及び関連疾患、ムコリピド症、ムコ多糖症、複合CoAカルボキシラーゼ欠損症(MCCD)、非ケトン性高グリシン血症、ポンペ病、プロピオン酸血症(PROP)、及びI型糖原病を含むが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明の組成物は、炎症疾患を有する又はそれらを発症するリスクがあると疑われる個体において炎症疾患を治療又は予防する方法、並びに非限定的に、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性腸疾患、強直性脊椎炎、ライター症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性紅斑性狼瘡、乾癬、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、変形性関節症、又は多発性硬化症などの炎症疾患を治療する方法においても使用することができる。本発明の組成物は、炎症を軽減する方法においても使用することができる。
【0033】
本発明の更なる態様は、STAT5の合成又は発現を阻害する方法であって、STAT5を発現している細胞を、1種以上のsiRNA分子と接触することを含み、ここで該1種以上のsiRNA分子は、配列番号:1-250に提供された配列から選択された配列、又はそれらの2本鎖RNAを含む、前記方法を提供する。一実施態様において、STAT5をコードしている核酸配列は、配列番号:251-254に示された配列を含む。
【0034】
本発明のより更なる態様は、STAT5発現の調整に反応する様々な癌、心疾患、炎症疾患、代謝障害及び他の状態の重症度を、それを必要とする被験体において、軽減する方法であって、該被験体に、本明細書に記載されたsiRNAを含有する組成物を投与し、それによりそのような疾患及び障害の重症度を軽減することを含む、前記方法を提供する。
【0035】
本発明の別の態様は、低分子干渉RNA(siRNA)の転写を指示することが可能である核酸を含む、組換え核酸構築体であって、該核酸が:(a)第一のプロモーター;(b)第二のプロモーター;並びに、(c)(i)配列番号:1-250のいずれか1つに示されたヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、及び(ii)(i)のポリヌクレオチドに相補的である少なくとも18ヌクレオチドのポリヌクレオチド:からなる群から選択される少なくとも1種のポリヌクレオチドを含む、少なくとも1つのDNAポリヌクレオチドセグメント;を含み、ここで該DNAポリヌクレオチドセグメントが、該第一及び第二のプロモーターの少なくとも1つに機能的に連結され、かつ該プロモーターが、該DNAポリヌクレオチドセグメント及びそれらの相補体の転写を指示するように方向づけられている、前記組換え核酸構築体を提供する。一実施態様において、この組換え核酸構築体は、前記第一のプロモーターへ機能的に連結された第一のエンハンサー及び前記第二のプロモーターへ機能的に連結された第二のエンハンサーから選択されるエンハンサーを少なくとも1つ含む。別の実施態様において、本組換え核酸構築体は、(i)前記第一のプロモーターにより指示された転写を終結するために該構築体中に配置されている第一の転写ターミネーター、及び(ii)前記第二のプロモーターにより指示された転写を終結するために該構築体中に配置されている第二の転写ターミネーター:から選択される少なくとも1つの転写ターミネーターを含む。
【0036】
本発明の別の態様は、本明細書に記載された組換え核酸構築体により形質転換又はトランスフェクトされた単離された宿主細胞を提供する。
本発明の一つの態様は、STAT5の発現をダウンレギュレートする核酸分子であって、該核酸分子がSTAT5 mRNAを標的とする核酸を含み、その代表的配列が配列番号:251-254に提供されている、前記核酸分子を提供する。対応するアミノ酸配列は、配列番号:255-258に示されている。一実施態様において、本核酸は、siRNA分子である。更なる実施態様において、本siRNAは、配列番号:1-250に提供された1本鎖RNA配列、又はそれらの2本鎖RNAのいずれか一つを含む。別の実施態様において、本核酸分子は、RNA干渉(RNAi)により、STAT5遺伝子の発現をダウンレギュレートする。
【0037】
本発明の更なる態様は、配列番号:1-250に示された本発明のsiRNA分子をいずれか1種以上含有する組成物を提供する。これに関して、本組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100又はそれよりも多い本発明のsiRNA分子を含有することができる。ある実施態様において、本siRNA分子は、STAT5a遺伝子、又はSTAT5b遺伝子、又はこれら2つの遺伝子の組合せを全て標的化することができる。これに関して、本siRNA分子は、配列番号:1-250に提供されたsiRNA分子、又はそれらの2本鎖RNAから選択されることができる。従って本siRNA分子は、STAT5を標的とすることができ、かつこの遺伝子又はSTAT5a及びSTAT5bの異なる領域を標的とするsiRNA分子の混合物であることができる。ある実施態様において、本組成物は、所望の細胞へこのsiRNA組成物を標的化する標的化部分などの、標的化部分又はリガンドを含むことができる。
本発明のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明を参照し明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
(図面の詳細な説明)
【図1】図1は、トランスフェクション48時間後の、10nM STAT5A siRNAでトランスフェクトされたHepG2細胞におけるヒトSTAT5A mRNAのノックダウンを示す棒グラフである。siRNAトランスフェクションは、リポフェクタミンRNAiMAXを用いて行われた。1-37:STAT5A/B 25-mer siRNA #1-37;Mock:偽トランスフェクション;Luc:陰性対照としての25-mer Luc-siRNA;データは、平均±STDとして表した。
【図2】図2は、トランスフェクション48時間後の、10nM STAT5B siRNAでトランスフェクトされたHepG2細胞におけるヒトSTAT5B mRNAのノックダウンを示す棒グラフである。siRNAトランスフェクションは、リポフェクタミンRNAiMAXを用いて行われた。2-48:STAT5A/B 25-mer siRNA #2-48;Mock:偽トランスフェクション;Luc:陰性対照としての25-mer Luc-siRNA;データは、平均±STDとして表した。
【図3】図3は、ヒトSTAT5A及びSTAT5Bの両方のノックダウンを示す棒グラフである。一部の25-mer siRNAは、ヒトSTAT5A及びSTAT5Bの両方を標的化し、かつトランスフェクション後48時間の、10nM siRNAでトランスフェクトされたHepG2細胞におけるヒトSTAT5A mRNA及びSTAT5B mRNAのノックダウンが可能である。siRNAトランスフェクションは、リポフェクタミンRNAiMAXを用いて行われた。2-37:STAT5A/B 25-mer siRNA #2-37;Mock:偽トランスフェクション;Luc:陰性対照としての25-mer Luc-siRNA;データは、平均±STDとして表した。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(発明の詳細な説明)
本発明は、STAT5の発現を調整する核酸分子に関する。ある実施態様において、本核酸は、リボ核酸(RNA)である。ある実施態様において、本RNA分子は、1本鎖又は2本鎖である。これに関して、siRNAなどの本発明の核酸ベースの分子は、STAT5の発現を阻害又はダウンレギュレーションする。本明細書においてSTAT5に関する言及は、概して、STAT5A及びSTAT5Bの両方に関して言及していることは注意されなければならない。STAT5A及びSTAT5Bは、個別に言及されてもよい。
【0040】
本発明は、STAT5遺伝子発現及び/又は活性の調整に反応する形質、疾患及び状態の試験、診断、及び治療のための、化合物、組成物、及び方法に関する。本発明は、STAT5遺伝子発現経路に関与する遺伝子の発現及び/又は活性の調整に反応する形質、疾患及び状態、又はそのような形質、疾患及び状態の維持若しくは発達を媒介する他の細胞プロセスに関係する、化合物、組成物、及び方法にも関する。具体的には、本発明は、STAT5遺伝子発現に対するRNA干渉(RNAi)を媒介することが可能である、低分子干渉核酸(siNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、2本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、及び短鎖ヘアピンRNA(shRNA)の分子などの小型核酸分子、そのような小核酸分子のカクテル及びそのような小核酸分子のナノ粒子製剤を含む、2本鎖核酸分子に関する。本発明は、そのような小核酸分子のカクテル及びそのような小核酸分子のナノ粒子製剤を含む、そのような内在性RNA又はそのような内在性RNAに関連したタンパク質(例えばRISC)の調節機能と干渉することにより、STAT5遺伝子発現を調整するための小核酸分子、例えばsiNA、siRNA、及び例えば内在性マイクロRNA(miRNA)(例えばmiRNAインヒビター)若しくは内在性低分子干渉RNA(siRNA)(例えばsiRNAインヒビター)などの内在性RNA分子の機能を阻害することができる他のもの、又はRISCの機能を阻害することができる他のもの(例えばRISCインヒビター)などにも関する。そのような小核酸分子は、例えば、被験体又は生物におけるSTAT5遺伝子の発現又は活性に関連した様々な癌、心疾患、炎症疾患及び炎症の軽減、代謝障害及び/又は他の疾患などの本明細書に記載された疾患の状況、状態、又は形質を、予防、阻害又は軽減する組成物の提供において有用である。
【0041】
「阻害する」又は「ダウンレギュレーションする」は、当該遺伝子の発現、又はSTAT5タンパク質をコードしているmRNAのレベル、STAT5タンパク質のレベル、又はSTAT5の活性が、本発明の核酸分子の非存在下で認められるものを下回るよう低下されることを意味する。一実施態様において、本発明の核酸分子による阻害又はダウンレギュレーションは、不活性対照の存在下、又は同じ標的mRNAに結合することができるが、そのmRNAを切断できない若しくはそうでなければサイレンシングすることはできない減弱された分子の存在下で認められたレベルを下回る。別の実施態様において、本発明の核酸分子による阻害又はダウンレギュレーションは、例えば、スクランブルされた配列又はミスマッチを伴う核酸の存在下で認められたレベルを下回ることが好ましい。別の実施態様において、本発明の核酸分子によるSTAT5の阻害又はダウンレギュレーションは、該核酸分子の存在下の方が、その非存在下よりもより大きい。
【0042】
「調整する」は、当該遺伝子の発現、又は1種以上のタンパク質サブユニットをコードしているRNA若しくは同等のRNAのレベル、又は1種以上タンパク質サブユニット(複数)の活性が、アップレギュレーション又はダウンレギュレーションされ、その結果その発現、レベル、又は活性が、本発明の核酸分子の非存在下で認められるものよりもより大きい又はより小さいことを意味する。
【0043】
「2本鎖RNA」又は「dsRNA」は、当該遺伝子の対応するmRNA転写産物を分解する細胞酵素を活性化することが可能である予め決定された遺伝子配列に合致する2本鎖RNAを意味する。これらのdsRNAは、低分子干渉RNA(siRNA)と称され、かつ遺伝子発現を阻害するために使用できる(例えば、Elbashirらの論文、Nature, 411: 494-498 (2001);及び、Bassの論文、Nature, 411: 428-429 (2001)を参照されたい)。本明細書において使用される用語「2本鎖RNA」又は「dsRNA」は、低分子干渉RNA「siRNA」を含む、RNA干渉「RNAi」を媒介することが可能である2本鎖RNA分子をいう(例えば、Bassの論文、Nature, 411: 428-429 (2001);Elbashirらの論文、Nature, 411: 494-498 (2001);及び、KreutzerらのPCT国際公開公報WO 00/44895;Zernicka-GoetzらのPCT国際公開公報WO 01/36646;FireのPCT国際公開公報WO 99/32619;PlaetinckらのPCT国際公開公報WO 00/01846;Mello及びFireのPCT国際公開公報WO 01/29058;Deschamps-DepailletteのPCT国際公開公報WO 99/07409;並びに、LiらのPCT国際公開公報WO 00/44914を参照されたい)。
【0044】
「遺伝子」とは、RNAをコードしている核酸、例えば、ポリペプチドをコードしている構造遺伝子を含むが、これらに限定されるものではない核酸配列を意味する。
「標的とする核酸」とは、その標的配列にマッチし、相補的であるか、又はそうでなければ特異的に結合若しくは特異的にハイブリダイズし、これによりその標的配列を含む遺伝子の発現、又は1種以上のタンパク質サブユニットをコードしているmRNA若しくは同等なRNAのレベル、又は該遺伝子によりコードされた1種以上のタンパク質サブユニット(複数)の活性を調整することができる、本明細書に記載されたような核酸を意味する。
【0045】
「相補性」は、伝統的ワトソン-クリック型又は他の非-伝統型のいずれかにより、別のRNA配列と水素結合(複数)を形成する、核酸の能力をいう。本発明の核酸(nucleic)分子に関して、核酸分子のその標的又は相補的配列との結合自由エネルギーは、例えば酵素的核酸切断、アンチセンス又は三重らせん阻害などを進行するために核酸の関連機能を可能にするのに十分である。核酸分子に関する結合自由エネルギーの決定は、当該技術分野において周知である(例えば、Turnerらの文献、CSH Symp. Quant. Biol. LII, 123-133 (1987);Frierらの論文、Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 83: 9373-9377 (1986);Turnerらの論文、J. Am. Chem. Soc. 109: 3783-3785 (1987)を参照されたい)。相補率は、第二の核酸配列と水素結合を形成することができる(例えばワトソン-クリック塩基対合)核酸分子中の隣接残基の割合を示している(例えば、10中5、6、7、8、9、10は、相補性50%、60%、70%、80%、90%、及び100%である)。「完全な相補性」は、核酸配列の全ての隣接残基が、第二の核酸配列中の同数の隣接残基と水素結合することを意味する。
【0046】
「RNA」は、少なくとも1個のリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。「リボヌクレオチド」又は「2'-OH」は、β-D-リボ-フラノース部分の2'位にヒドロキシル基を持つヌクレオチドを意味する。
「RNA干渉」又は「RNAi」は、一般に当該技術分野において公知であり、かつ低分子干渉核酸分子により媒介される、細胞中の遺伝子発現を阻害又はダウンレギュレーションする、生物学的プロセスを意味し、例えば、Zamore及びHaleyの論文、Science, 309: 1519-1524 (2005);Vaughn及びMartienssenの論文、Science, 309: 1525-1526 (2005);Zamoreらの論文、Cell, 101: 25-33 (2000);Bassの論文、Nature, 411: 428-429 (2001);Elbashirらの論文、Nature, 411: 494-498 (2001);並びに、KreutzerらのPCT国際公開公報WO 00/44895;Zemicka-GoetzらのPCT国際公開公報WO 01/36646;FireのPCT国際公開公報WO 99/32619;PlaetinckらのPCT国際公開公報WO 00/01846;Mello及びFireのPCT国際公開公報WO 01/29058;Deschamps-DepailletteのPCT国際公開公報WO 99/07409;並びに、LiらのPCT国際公開公報WO 00/44914;Allshireの論文、Science, 297: 1818-1819 (2002);Volpe らの論文、Science, 297: 1833-1837 (2002);Jenuweinの論文、Science, 297: 2215-2218 (2002);並びに、Hallらの論文、Science, 297: 2232-2237 (2002);Hutvagner及びZamoreの論文、Science, 297: 2056-60 (2002);McManusらの論文、RNA, 8: 842-850 (2002);Reinhartらの論文、Gene & Dev., 16: 1616-1626 (2002);並びに、Reinhart及びBartelの論文、Science, 297: 1831 (2002)を参照されたい。加えて、本明細書において使用されるように、用語RNAiは、転写後遺伝子サイレンシング、翻訳阻害、転写阻害、又は後成的修飾などの、配列特異的RNA干渉を説明するために使用される他の用語と同等であることを意味する。例えば、本発明のsiRNA分子を使用し、転写後レベル又は転写前レベルの両方で、遺伝子を後成的にサイレンシングすることができる。非限定的例において、本発明のsiRNA分子による遺伝子発現の後成的調整は、クロマチン構造のsiRNA媒介された修飾又は遺伝子発現を変更するためのメチル化パターンから生じることができる(例えば、Verdelらの論文、Science, 303: 672-676 (2004);Pal-Bhadraらの論文、Science, 303: 669-672 (2004);Allshireの論文、Science, 297: 1818-1819 (2002);Volpeらの論文、Science, 297: 1833-1837 (2002);Jenuweinの論文、Science, 297: 2215-2218 (2002);並びに、Hallらの論文、Science, 297: 2232-2237 (2002)を参照されたい)。別の非限定的例において、本発明のsiRNA分子による遺伝子発現の調整は、RISCによるRNA(コードRNA又は非コードRNAのいずれか)のsiRNA媒介された切断から、あるいは当該技術分野において公知であるように翻訳阻害から生じることができる。別の実施態様において、本発明のsiRNA分子による遺伝子発現の調整は、転写阻害から生じることができる(例えば、Janowskiらの論文、Nature Chemical Biology, 1: 216-222 (2005)を参照されたい)。
【0047】
低分子干渉RNA(siRNA)及びマイクロRNA(miRNA)の2種類の約21ヌクレオチドRNAは、動物における転写後遺伝子サイレンシングの引き金を引く。siRNA及びmiRNAは両方とも、dsRNA-特異的エンドヌクレアーゼのRNアーゼIIIファミリーのヌクレアーゼであるダイサーによる、2本鎖RNA(dsRNA)前駆体の切断により作製される(Bernsteinらの論文、Nature, 409: 363-366 (2001);Billy, E.らの論文、Proc Natl Acad Sci USA, 98: 14428-14433 (2001);Grishokらの論文、Cell, 106: 23-34 (2001);Hutvgnerらの論文、Science, 293: 834-838 (2001);Kettingらの論文、Genes Dev, 15: 2654-2659 (2001);Knight及びBassの論文、Science, 293: 2269-2271 (2001);Paddisonらの論文、Genes Dev, 16: 948-958 (2002);Parkらの論文、Curr Biol, 12: 1484-1495 (2002);Provostらの論文、EMBO J. 21: 5864-5874 (2002);Reinhartらの論文、Science, 297: 1831 (2002);Zhangらの論文、EMBO J. 21: 5875-5885 (2002);Doiらの論文、Curr Biol, 13: 41-46 (2003);Myersらの論文、Nature Biotechnology Mar, 21(3): 324-8 (2003)を参照されたい)。siRNAは、トランスポゾン、ウイルス又は内在性遺伝子が長いdsRNAを発現する場合、又はdsRNAが実験的に植物細胞若しくは動物細胞に導入され、遺伝子サイレンシングの引き金を引く場合に生じ、これはRNA干渉(RNAi)とも称される(Fireらの論文、1998;Hamilton及びBaulcombeの論文、1999;Zamoreらの論文、2000;Elbashirらの論文、2001a;Hammondらの論文、2001;Sijenらの論文、2001;Catalanottoらの論文、2002)。対照的に、miRNAは、その前駆体RNA転写産物が小型のステムループを形成することができ、そこから成熟miRNAがダイサーにより切断される、内在性の非コード遺伝子の産物である(Lagos-Quintanaらの論文、2001;Lauらの論文、2001;Lee及びAmbrosの論文、2001;Lagos-Quintanaらの論文、2002;Mourelatosらの論文、2002;Reinhartらの論文、2002;Ambrosらの論文、2003;Brenneckeらの論文、2003;Lagos-Quintanaらの論文、2003;Limらの論文、2003a;Limらの論文、2003b)。miRNAは、それらがその発現を制御するmRNAとは異なる遺伝子によりコードされている。
【0048】
siRNAは、RNA干渉(RNAi)経路の特異性決定因子として最初に同定され(Hamilton及びBaulcombeの論文, 1999;Hammondらの論文、2000)、ここでこれらは、それらの標的RNAのヌクレオチド鎖切断を指示するガイドとして作用する(Zamoreらの論文、2000;Elbashirらの論文、2001a)。ひな型的siRNA二重鎖は、2個のヌクレオチドの3'突出末端を伴う、19塩基対を含む、21ntの、2本鎖RNAである(Elbashirらの論文、2001a;Nyknenらの論文、2001;Tangらの論文、2003)。活性siRNAは、5'リン酸及び3'ヒドロキシルを含む(Zamoreらの論文、2000;Boutlaらの論文、2001;Nyknenらの論文、2001;Chiu及びRanaの論文、2002)。同様に、miRNAは、5'リン酸及び3'ヒドロキシル基を含み、ダイサーによるそれらの生成を反映している(Hutvgnerらの論文、2001;Malloryらの論文、2002)。
【0049】
従って本発明は、配列番号:251-254に提供された配列によりコードされるものなどの標的STAT5ポリペプチド又はそれらの変種の発現を特異的に調整することが可能である低分子RNAポリヌクレオチド配列の発見に一部関する。STAT5の発現を特異的に調整するsiRNAポリヌクレオチド配列の例は、配列番号:1-250に提供されている。理論に結びつけられることを欲するものではないが、本発明のRNAポリヌクレオチドは、低分子干渉RNA(siRNA)機序の動員を通じて、所望の標的ポリペプチドの発現を特異的に低下させる。特に本明細書においてより詳細に説明されるように、本発明により、所望のSTAT5標的ポリペプチドをコードしている対応するポリヌクレオチド配列に由来することができる、19、20、21、22、23、24、25、26又は27ヌクレオチドのある種の特異的RNAiオリゴヌクレオチド配列の同定に関連している組成物及び方法が提供される。
【0050】
本発明のある実施態様において、siRNAポリヌクレオチドは、STAT5標的ポリペプチド又はそれらの変種の発現と干渉し、かつそのヌクレオチド塩基配列において、例えば標的mRNA配列又はそのようなmRNAをコードしているエキソン配列などの標的ポリペプチドをコードしている標的ポリヌクレオチドの一部の配列に独自に対応する、RNAオリゴヌクレオチド又はRNAポリヌクレオチドを含む。ある実施態様において、本発明は、ある実施態様においてはヒトであり、かつある別の実施態様においては非ヒト哺乳類であるような、哺乳類における特異的ポリペプチドの発現と干渉する(時にはサイレンシングと称される)siRNAポリヌクレオチドに関する。従って非限定的理論により、本発明のsiRNAポリヌクレオチドは、STAT5などの、所望の標的ポリペプチドをコードしているmRNAの配列特異的分解を指示する。
【0051】
ある実施態様において、用語「siRNA」は、以下のいずれかを意味する:(i)長さが18 塩基対、19塩基対、20塩基対、21塩基対、22塩基対、23塩基対、24塩基対、25塩基対、26塩基対、27塩基対、28塩基対、29塩基対又は30塩基対であり、かつSTAT5ポリペプチド又はSTAT5ポリペプチド変種の発現及び活性と干渉することが可能である、2本鎖RNAオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドであり、ここでこのsiRNAの1本鎖は、STAT5ポリペプチドをコードしているRNAポリヌクレオチド配列、その変種、又はそれらの相補的配列の一部を含むもの;(ii)長さが18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、25ヌクレオチド、26ヌクレオチド、27ヌクレオチド、28ヌクレオチド、29ヌクレオチド又は30ヌクレオチドであり、かつ標的STAT5ポリペプチド又はSTAT5ポリペプチド変種の発現及び/又は活性との干渉が可能であるか、又は相補的配列とアニールし、標的ポリペプチド発現と干渉することが可能であるdsRNAを生じるかのいずれかである、1本鎖オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドであり、ここでそのような1本鎖オリゴヌクレオチドが、STAT5ポリペプチドをコードしているRNAポリヌクレオチド配列、その変種、又はそれらの相補的配列の一部を含むもの;若しくは、(iii)前述の(i)又は(ii)のいずれかのオリゴヌクレオチド、又はポリヌクレオチドであり、ここでそのようなオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドが、その中に1、2、3又は4個の核酸の変更又は置換を有するもの。本明細書に記載されたある種のRNAiオリゴヌクレオチド配列は、STAT5ポリペプチドをコードしている標的mRNAの3'非コード領域に相補的である。
【0052】
siRNAポリヌクレオチドは、RNA干渉の作用、転写後遺伝子サイレンシング機序を媒介するRNA核酸分子である。ある実施態様において、siRNAポリヌクレオチドは、2本鎖RNA(dsRNA)を含むが、そのように限定されることは意図されず、1本鎖RNAを含むことができる(例えばMartinezらの論文、Cell, 110:563-74 (2002)を参照されたい)。siRNAポリヌクレオチドは、他の天然の、組換えの又は合成の1本鎖又は2本鎖のヌクレオチドポリマー(リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド又は両方の組合わせ)及び/又は本明細書に提供されたようなヌクレオチドアナログ(例えば、典型的には5'から3'へホスホジエステル結合などにおける、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドなど)を含むことができる。従って、対象の発明のsiRNAポリヌクレオチドの転写を指示することが可能であるDNA配列として本明細書に明らかにされたある配列の例は、相補的ヌクレオチド塩基対合の良く確立された原理を考慮し、対応するRNA配列及びそれらの相補体を説明することも意図されることは理解されるであろう。siRNAは、鋳型として、RNAポリメラーゼプロモーター、例えばU6プロモーター又はH1 RNAポリメラーゼIIIプロモーターなどを含むDNA(ゲノム、cDNA、又は合成)を用いて転写されることができるか、又はsiRNAは、合成的に誘導されたRNA分子であることができる。ある実施態様において、対象の発明のsiRNAポリヌクレオチドは、平滑末端を有することができ、すなわち本二重鎖の一方の鎖内の各ヌクレオチドは、反対鎖のヌクレオチドと完全に相補的である(例えば、ワトソン-クリック塩基対合により)。別のある実施態様において、対象の発明のsiRNAポリヌクレオチドの少なくとも1本の鎖は、siRNAポリヌクレオチドのいずれかの鎖において、又はある実施態様においては両鎖において、3'末端で「突出」している(すなわち、反対鎖の相補塩基と塩基対合していない)ヌクレオチドを少なくとも1個、及びある実施態様においては2個有する。本発明の一実施態様において、siRNAポリヌクレオチド二重鎖の各鎖は、3'末端に2-ヌクレオチド突出を有する。この2-ヌクレオチド突出は、チミジンジヌクレオチド(TT)であることができるが、他の塩基、例えばTCジヌクレオチド又はTGジヌクレオチド、若しくは任意の他のジヌクレオチドを含むこともできる。siRNAポリヌクレオチドの3'末端の考察については、例えばWO 01/75164を参照されたい。
【0053】
ある例証的siRNAポリヌクレオチドは、約18〜30ヌクレオチド塩基対の2本鎖のオリゴマーヌクレオチドを含む。ある実施態様において、本発明のsiRNA分子は、約18、19、20、21、22、23、24、25、26、又は27個の塩基対を含み、別の特定の実施態様においては、約19、20、21、22又は23個の塩基対を、又は約27個の塩基対を含み、これにより先に説明されたように「約」の使用は、ある実施態様においてかつある条件下での、選択されたポリペプチドの発現と干渉することが可能である機能性siRNAポリヌクレオチドを生じることができる加工型切断工程が、絶対的に効率的ではない可能性があることを示している。従って、例えば「約」18、19、20、21、22、23、24、又は25個の塩基対のsiRNAポリヌクレオチドは、プロセシング、生合成、又は人工的合成における変動の結果として、非限定的理論により、1、2、3若しくは4個の塩基対だけ長さが異なり得る(例えば、ヌクレオチドの挿入又は欠失により)1種以上のsiRNAポリヌクレオチド分子を含むことができる。意図された本発明のsiRNAポリヌクレオチドは、(例えば、トランジッション又はトランスバージョンを含む、ヌクレオチド置換により)特定の配列から1、2、3若しくは4個のヌクレオチドが異なることによる変動を示すポリヌクレオチド配列も含むことができ、これらの異なりは、その2本鎖ポリヌクレオチドのセンス鎖若しくはアンチセンス鎖のいずれに位置づけられたかに関わらず、その分子の長さに応じて特定のsiRNAポリヌクレオチド配列の位置1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、若しくは19のいずれかで、又はsiRNAポリヌクレオチドの位置20、21、22、23、24、25、26、若しくは27で生じる。このヌクレオチド置換は、アンチセンス鎖内を例として、2本鎖ポリヌクレオチドの1本鎖においてのみ認められ、かつそれと置換ヌクレオチドが典型的には水素結合塩基対を形成する相補的ヌクレオチドは、センス鎖内で必ずしも対応するように置換されないことがある。ある実施態様において、本siRNAポリヌクレオチドは、特定のヌクレオチド配列に関して均質である。本明細書に記載されたように、本siRNAポリヌクレオチドは、STAT5ポリペプチドの発現と干渉する。これらのポリヌクレオチドは、プローブ又はプライマーとしての使用も認めることができる。
【0054】
ある実施態様において、本発明のsiRNA核酸による遺伝子/タンパク質サイレンシングの有効性及び特異性は、米国特許出願公開第2005/0186586号、第2005/0181382号、第2005/0037988号、及び第2006/0134787号に開示された方法を用い、増強されることができる。これに関して、RNAサイレンシングは、その二重鎖の第一鎖の5'末端と第二鎖の3'末端の間の塩基対強度を、第一鎖の3'末端と第二鎖の5'末端の間の塩基対強度と比べ、減らすことにより、増強されることができる。ある実施態様において、このRNA二重鎖は、少なくとも1個の平滑末端を含んでよく、2個の平滑末端を含んでもよい。別の実施態様において、この二重鎖は、少なくとも1個の突出を含み、及び2個の突出を含んでよい。
【0055】
本発明の一実施態様において、siRNA分子の標的遺伝子をサイレンシングする能力は、RNAi物質の第一鎖の、RNAiの媒介におけるガイド鎖として作用する能力を増強することにより、増強される。このことは、その二重鎖の第一鎖の5'末端と第二鎖の3'末端の間の塩基対強度を、第一鎖の3'末端と第二鎖の5'末端の間の塩基対強度と比べ、減らすことにより達成される。
【0056】
本発明の更なる態様において、siRNA二重鎖の有効性は、アンチセンス鎖5'末端(AS5')とセンス鎖3'末端(S3')の間の塩基対強度を、アンチセンス鎖3'末端(AS3')とセンス鎖5'末端(S5')の間の塩基対強度と比べ、減らすことにより、増強され、その結果有効性が増強される。
【0057】
ある実施態様において、siRNA二重鎖の所望の鎖のRISC複合体への移行を促進するために、本発明のsiRNA分子に修飾を施すことができる。これは、siRNA二重鎖の非対称性を増強することにより実現され、その結果所望の鎖の移行が促進される。これに関して、この非対称性は、この二重鎖の所望の鎖の5'末端と相補的鎖の3'末端の間の塩基対強度を、所望の鎖の3'末端と相補的鎖の5'末端の間の塩基対強度と比べて、減らすことにより増強される。ある実施態様において、第一鎖又はアンチセンス鎖の5'末端と第二鎖又はセンス鎖の3'末端の間のG:C塩基対が、第一鎖又はアンチセンス鎖の3'末端と第二鎖又はセンス鎖の5'末端の間よりもより少ないために、その塩基対強度は減っている。別の実施態様において、第一鎖又はアンチセンス鎖の5'末端と第二鎖又はセンス鎖の3'末端の間の少なくとも1個のミスマッチの塩基対のために、その塩基対強度は減っている。ある実施態様において、このミスマッチの塩基対は、G:A、C:A、C:U、G:G、A:A、C:C、U:U、C:T、及びU:Tを含むが、これらに限定されるものではない。一実施態様において、第一鎖又はアンチセンス鎖の5'末端と第二鎖又はセンス鎖の3'末端の間の少なくとも1個のゆらぎ塩基対のために、その塩基対強度は減っている。これに関して、ゆらぎ塩基対は、G:U又はG:Tであり得る。
【0058】
ある実施態様において、塩基対強度は、(a)第一鎖又はアンチセンス鎖の5'末端と第二鎖又はセンス鎖の3'末端の間の少なくとも1個のミスマッチの塩基対;並びに、(b)第一鎖又はアンチセンス鎖の5'末端と第二鎖又はセンス鎖の3'末端の間の少なくとも1個のゆらぎ塩基対:のために、減っている。従って、このミスマッチの塩基対は、G:A、C:A、C:U、G:G、A:A、C:C及びU:Uからなる群から選択されてよい。別の実施態様において、このミスマッチの塩基対は、G:A、C:A、C:T、G:G、A:A、C:C及びU:Tからなる群から選択される。ある場合において、このゆらぎ塩基対はG:U又はG:Tである。
【0059】
ある実施態様において、この塩基対強度は、少なくとも1個の塩基対が、イノシン、1-メチルイノシン、プソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、リボチミジン、2N-メチルグアノシン及び2,2N,N-ジメチルグアノシンなどの稀ヌクレオチド;又は、2-アミノ-G、2-アミノ-A、2,6-ジアミノ-G、及び2,6-ジアミノ-Aなどの修飾されたヌクレオチドを含むために、低下している。
【0060】
本明細書において使用される用語siRNA又はRNAi物質の「アンチセンス鎖」は、サイレンシングのために標的化された遺伝子のmRNAの約10-50ヌクレオチドの、例えば約15-30、16-25、18-23又は19-22ヌクレオチドの切片に実質的に相補的である鎖をいう。アンチセンス鎖又は第一鎖は、標的-特異的RNA干渉(RNAi)を指示するために、所望の標的mRNA配列に対し十分に相補的な配列、例えば、RNAiマシナリー又はプロセスにより所望の標的mRNAの破壊の引き金を引くのに十分な相補性を有する配列である。用語siRNA又はRNAi物質の「センス鎖」又は「第二鎖」は、前記アンチセンス鎖又は第一鎖に対し相補的である鎖をいう。アンチセンス鎖及びセンス鎖は、第一鎖又は第二鎖とも称され、第一鎖又は第二鎖は、標的配列に対する相補性を有し、かつ各々の第二鎖又は第一鎖は、該第一鎖又は第二鎖に対する相補性を有する。
【0061】
本明細書において使用される用語「ガイド鎖」は、RISC複合体へ移行しかつ標的mRNAの切断を指示する、RNAi物質の鎖、例えば、siRNA二重鎖のアンチセンス鎖をいう。
従って本発明のsiRNA分子のそれらの標的遺伝子との完全な相補性は、効果的サイレンシングが生じるためには必要ではない。特に、mRNAの切断を依然可能にするように適切に配置された、siRNA二重鎖のガイド鎖とその標的RNAの間の3又は4個のミスマッチは、RISC複合体からの切断された標的RNAの放出を促進し、これにより酵素代謝回転率を増大する。特にその切断効率は、G:Uゆらぎとも称される、G:U塩基対が、miRNAと標的の間に形成された複合体の5'末端又は3'末端の近傍に存在する場合に、より大きい。
【0062】
従って本明細書に記載されたRNA分子の少なくとも1種の末端ヌクレオチドは、標的mRNAの対応するヌクレオチドとワトソン-クリック塩基対を形成しないヌクレオチドにより、置換されることができる。
【0063】
本発明のsiRNAポリヌクレオチドであるポリヌクレオチドは、ある実施態様において、典型的にはスペーサー配列により隔てられた、1本鎖オリゴヌクレオチド断片(例えば、約18-30ヌクレオチド、これはヌクレオチド18個から30個までの整数全てを含むと理解されなければならない)及びその逆相補体を含む1本鎖ポリヌクレオチドに由来することができる。ある種のそのような実施態様に従い、このスペーサーの切断は、1本鎖オリゴヌクレオチド断片及びその逆相補体を提供し、その結果これらはアニールし(いずれか又は両方の鎖の3'末端及び/又は5'末端からの、1、2、3又はそれよりも多いヌクレオチドの付加又は除去を生じる追加のプロセシング工程を任意に伴い)、本発明の2本鎖siRNAポリヌクレオチドを形成することができる。ある実施態様において、このスペーサーは、該断片及びその逆相補体が、アニールし、かつスペーサーの切断(及び任意に、いずれか又は両方の鎖の3'末端及び/又は5'末端からの、1、2、3、4又はそれよりも多いヌクレオチドの付加又は除去を生じる引き続きのプロセシング工程)の前に2本鎖構造(例えばヘアピンポリヌクレオチドのような)を形成することができる長さである。従ってスペーサー配列は、2本鎖核酸にアニールされる場合にsiRNAポリヌクレオチドを含む、2つの相補的ポリヌクレオチド配列領域の間に位置づけされている、本明細書に提供されるような任意のポリヌクレオチド配列であることができる。一部の実施態様において、スペーサー配列は、少なくとも4個のヌクレオチドを含むが、ある実施態様において、このスペーサーは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21-25、26-30、31-40、41-50、51-70、71-90、91-110、111-150、151-200又はそれよりも多いヌクレオチドを含んでよい。スペーサーにより隔てられた2つの相補的ヌクレオチド配列を含む1本鎖ヌクレオチドに由来するsiRNAポリヌクレオチドの例が、説明されている(例えば、Brummelkampらの論文、Science, 296: 550 (2002);Paddisonらの論文、Genes Develop. 16: 948 (2002);Paulらの論文、Nat. Biotechnol. 20: 505-508 (2002);Grabarekらの論文、BioTechniques, 34: 734-44 (2003))。
【0064】
ポリヌクレオチド変種は、置換、付加、欠失及び/又は挿入を1つ以上含むことができ、その結果siRNAポリヌクレオチドの活性は、先に説明されたように、実質的に縮小されない。このsiRNAポリヌクレオチドの活性に対する作用は、一般に、本明細書に記載されたように、又は従来の方法を使用し、評価することができる。ある実施態様において、変種は、未変性のSTAT5をコードしているポリヌクレオチド配列の一部に対し、少なくとも約75%、78%、80%、85%、87%、88%又は89%の同一性を、及び特定の実施態様において、少なくとも約90%、92%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を示す。この同一率は、NCBIウェブサイト([オンライン]インターネット:<URL:ncbi.nlm.nih.gov/cgi-bin/BLAST参照)において入手可能であるAlign又はBLASTアルゴリズム(Altschulの論文、J. Mol. Biol. 219: 555-565 (1991);Henikoff及びHenikoffの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 10915-10919 (1992))などの、当業者に周知のコンピュータアルゴリズムの使用を含む任意の方法を使用し、該ポリヌクレオチドの配列を、当該技術分野において公知かつ本明細書において列挙されたものなどの完全長STAT5ポリヌクレオチドの対応する部分と比較することにより、容易に決定することができる。デフォルトのパラメータが使用されてよい。
【0065】
ある種のsiRNAポリヌクレオチド変種は、未変性STAT5遺伝子の一部に対し、実質的に相同である。そのようなポリヌクレオチド変種に由来した(例えば熱変性による)1本鎖核酸は、中程度にストリンジェントな条件下又はストリンジェントな条件下で、未変性のSTAT5ポリペプチドをコードしている天然のDNA又はRNA配列(又は相補的配列)にハイブリダイズすることが可能である。中程度にストリンジェントな条件下又はストリンジェントな条件下で検出可能にハイブリダイズするポリヌクレオチドは、特定のポリヌクレオチドに相補的な少なくとも10連続ヌクレオチド、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30連続ヌクレオチドを含むヌクレオチド配列を有することができる。ある実施態様において、そのような配列(又はその相補体)は、それについて発現との干渉が望ましいSTAT5ポリペプチドに対し独自であり、並びにある別の実施態様において、この配列(又はその相補体)は、それについてポリペプチド発現との干渉が望ましいSTAT5及び1種以上の関連ポリペプチドにより共有され得るであろう。
【0066】
好適な中等度のストリンジェントな条件及びストリンジェントな条件は、当業者に公知である。中等度にストリンジェントな条件は、例えば、5×SSC、0.5%SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の溶液中での予備洗浄;5×SSC、50℃〜70℃での、1〜16時間(例えば一晩)のハイブリダイズ;それに続く、各々0.05〜0.1%SDSを含有する2×、0.5×及び0.2×SSCの1種以上による、22〜65℃で、20〜40分間の1又は2回の洗浄を含む。追加のストリンジェンシーに関して、条件は、0.1×SSC及び0.1%SDS中、50〜60℃で、15〜40分間の洗浄を含むことができる。当業者に公知であるように、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーの変動は、予備ハイブリダイゼーション工程、ハイブリダイゼーション工程及び洗浄工程において使用される、時間、温度、及び/又は溶液の濃度の変更により実現することができる。好適な条件は、使用されるプローブの特定のヌクレオチド配列、及びブロットされる発端(proband)核酸試料のヌクレオチド配列によっても部分的に左右され得る。従って、好適なストリンジェントな条件は、1種以上のある種の発端配列とはハイブリダイズするが、ある種の他の発端配列とはハイブリダイズしないその能力を基に、望ましいプローブの選択性が同定される場合に、過度な実験を伴わずに、容易に選択され得ることは理解されるであろう。
【0067】
本発明の配列特異的siRNAポリヌクレオチドは、いくつかの判定基準の1種以上を用いて、デザインすることができる。例えば、関心対象のポリペプチド(例えば、STAT5及び本明細書に記載された他のポリペプチド)をコードしている配列と同一の19連続ヌクレオチドを有するsiRNAポリヌクレオチドをデザインするために、該ポリヌクレオチド配列のオープンリーディングフレームは、以下の特徴の1つ以上を有する21-塩基配列についてスキャンすることができる:(1)A+T/G+C比が、およそ1:1であるが、2:1又は1:2を超えないこと;(2)5'末端がAAジヌクレオチド又はCAジヌクレオチドであること;(3)内部ヘアピンループの融解温度が55℃未満であること;(4)ホモ二量体の融解温度が37℃未満であること((3)及び(4)に説明されたような融解温度の算出は、当業者に公知のコンピュータソフトウェアを使用し決定することができる);(5)少なくとも16個の連続ヌクレオチドの配列が、いずれか他の公知のポリヌクレオチド配列中に存在するものと同一でないこと(そのような評価は、公的に利用可能なデータベースを検索するために、BLASTなどの当業者が利用可能なコンピュータプログラムを使用し、容易に決定することができる)。あるいは、siRNAポリヌクレオチド配列は、様々な供給業者(例えば、OligoEngine(商標)(シアトル, WA);Dharmacon社(ラファイエット, CO);Ambion社(オースチン, TX);及び、QIAGEN社(バレンシア, CA))から市販されているコンピュータソフトウェアを使用し、デザインしかつ選択することができる。(同じく、Elbashirらの論文、Genes & Development, 15: 188-200 (2000);Elbashirらの論文、Nature, 411: 494-98 (2001)も参照のこと)。その後このsiRNAポリヌクレオチドは、当該技術分野において公知の方法及び本明細書において説明された方法に従い、標的ポリペプチドの発現と干渉するそれらの能力について試験することができる。siRNAポリヌクレオチドの有効性の決定は、ポリペプチド発現と干渉するその能力の考察のみではなく、siRNAポリヌクレオチドが、例えば、その細胞死がRNA干渉の望ましい作用でないような細胞のアポトーシス(例えば、細胞におけるSTAT5発現の干渉)などの、望ましくない毒性作用を示すかどうかの考察も含む。
【0068】
ある実施態様において、本核酸インヒビターは、任意の公知のSTAT5配列に相補的である配列であって、変更された発現及び/又は活性を有するそれらの変種、特に疾患に関連した変種を含むものを含む。STAT5変種は、配列番号:251-254に示されたものなどの、野生型STAT5配列に対し70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれよりも高い配列同一性を有する配列を含み、ここでそのようなSTAT5変種は、変更された(増加又は減少された)転写活性(例えば、STAT5反応性遺伝子の転写)を示すことができる。当業者に理解されるように、STAT5配列は、GENBANK又はSWISSPROTを含む、様々な公的配列データベースのいずれかにおいて入手可能である。一実施態様において、本発明の核酸インヒビター(例えばsiRNA)は、配列番号:251-254に提供された特異的STAT5標的配列、又は配列番号:255-258に提供されたアミノ酸配列をコードしているポリヌクレオチドに対する相補配列を含む。そのようなsiRNA分子の例は同じく、「実施例」において示されており、かつ配列番号:1-250で提供されている。
【0069】
標的ポリヌクレオチド(例えば、関心対象の標的ポリペプチドをコードすることが可能であるポリヌクレオチド)を含むポリヌクレオチドは、様々な技術のいずれかを用いて調製されることができ、これは具体的に所望のsiRNAポリヌクレオチドの調製、並びにsiRNAポリヌクレオチドにおいて使用されることが望ましい配列の同定及び選択に有用である。例えばポリヌクレオチドは、好適な細胞又は組織型から調製されたcDNAから増幅されることができる。このようなポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅されることができる。このアプローチのために、配列-特異的プライマーは、本明細書に提供された配列を基にデザインされてもよく、購入又は合成されてもよい。増幅された部分を使用して、周知の技術を用い、完全長遺伝子又はそれらの所望の部分を、好適なライブラリーから単離することができる。そのような技術内で、ライブラリー(cDNA又はゲノム)は、増幅に適した1種以上のポリヌクレオチドプローブ又はプライマーを用い、スクリーニングされる。ある実施態様において、ライブラリーは、大型分子を含むように、サイズ選択される。ランダムプライミングライブラリーも、遺伝子の5'領域及び上流領域の同定に好ましいことがある。ゲノムライブラリーは、イントロンを得、かつ5'側配列を伸長するために好ましい。本発明により意図されたsiRNAポリヌクレオチドに好適な配列は、siRNAポリヌクレオチド配列のライブラリーから選択されてもよい。
【0070】
ハイブリダイゼーション技術に関して、部分配列は、周知の技術を用いて標識できる(例えば、ニック-翻訳又は32Pによる末端-標識)。次に細菌ライブラリー又はバクテリオファージライブラリーは、変性された細菌コロニーを含むフィルター(又はファージプラークを含む菌叢)を、標識されたプローブでハイブリダイズすることにより、スクリーニングできる(例えば、Sambrookらの文献、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratories, コールドスプリングハーバー, NY, 2001を参照されたい)。コロニー又はプラークのハイブリダイズは、選択されかつ拡張され、並びにそのDNAは、更なる分析のために単離される。クローンは、追加配列の量を決定するために、例えば部分配列由来のプライマー及びベクター由来のプライマーを使用するPCRにより、分析されてよい。制限地図及び部分配列を作製し、1つ以上の重複しているクローンを同定することができる。完全長cDNA分子は、周知の技術を使用し、好適な断片のライゲーションにより作製することができる。
【0071】
あるいは、多くの増幅技術が、部分cDNA配列から完全長コード配列を得るために、当該技術分野において公知である。そのような技術内で、増幅は一般に、PCRにより実行される。そのような技術のひとつは、「cDNA末端の迅速増幅」又はRACEとして公知である。この技術は、内部プライマー及び外部プライマーの使用に関与しており、これらは、公知の配列の5'及び3'である配列を同定するために、ポリA領域又はベクター配列にハイブリダイズされる。様々な市販のキットのいずれかを使用し、増幅工程を行うことができる。プライマーは、例えば、当該技術分野において周知のソフトウェアを用いてデザインすることができる。プライマー(又は例えばプローブ及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、本明細書において意図された他の用途のためのオリゴヌクレオチド)は一般に、長さが15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31又は32ヌクレオチドであり、少なくとも40%のGC含量を有し、かつ標的配列に温度約54℃〜72℃でアニールされる。増幅された領域は、先に説明されたように配列決定され、かつ重複している配列は、近接配列に集成されることができる。本発明により意図されたある種のオリゴヌクレオチドは、一部の実施態様に関して、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33-35、35-40、41-45、46-50、56-60、61-70、71-80、81-90又はそれよりも多いヌクレオチドの長さを有することができる。
【0072】
概して、本明細書に記載されたポリペプチド及びポリヌクレオチドは、単離されている。「単離された」ポリペプチド又はポリヌクレオチドは、その元の環境から除去されたものである。例えば天然のタンパク質が天然のシステムにおいて同時に存在する物質の一部又は全てから分離される場合に、このタンパク質は単離されている。ある実施態様において、そのようなポリペプチドは、少なくとも純度約90%、少なくとも純度約95%であり、かつある実施態様において、少なくとも純度約99%である。ポリヌクレオチドは、例えば、それが天然の環境の一部ではないベクターにクローニングされる場合に、単離されていると考えられる。
【0073】
STAT5ポリペプチド発現と干渉するために有用な数多くの特異的siRNAポリヌクレオチド配列が、「実施例」で本明細書において説明されており、かつ「配列表」に提供されている。siRNAポリヌクレオチドは一般に、例えば固相化学合成を含む、当該技術分野において公知の任意の方法により調製されることができる。ポリヌクレオチド配列の修飾は、オリゴヌクレオチド指定部位特異的変異誘発などの、標準の変異誘発技術を用いて導入されてもよい。更に本明細書に記載されたようなsiRNAの血清安定性及び/又は送達特性を改善するために、siRNAは、更に化学的に修飾されるか又は複合されてよい。リボースがそこから除去されているような本明細書に記載されたsiRNAは、本発明の態様として含まれる。あるいは、siRNAポリヌクレオチド分子は、好適なDNA配列(例えば、PTPをコードしているポリヌクレオチド配列、又はそれらの所望の部分)のインビトロ又はインビボ転写により作製されることができるが、但し該DNAが、好適なRNAポリメラーゼプロモーター(T7、U6、H1、又はSP6など)により、ベクターへ取り込まれることを条件とする。加えて、siRNAポリヌクレオチドは、転写(及び任意に好適なプロセシング工程)を支援するDNA配列(例えば、本明細書に提供された組換え核酸構築体)として患者へ投与されてよく、その結果所望のsiRNAがインビボにおいて生成される。
【0074】
先に考察されたように、siRNAポリヌクレオチドは更に、所望の安定性の特徴を示し、かつホスホロチオエート、メチルホスホネート、スルホン、スルフェート、ケチル、ホスホロジチオエート、ホスホロアミデート、リン酸エステルのような結合、及び他のそのような結合を使用することにより、内在性核酸分解酵素による分解に抵抗するようにデザインされてよいが、必ずしもではない(例えば、Agrwalらの論文、Tetrahedron Lett. 28: 3539-3542 (1987);Millerらの論文、J. Am. Chem. Soc. 93: 6657-6665 (1971);Stecらの論文、Tetrahedron Lett. 26: 2191-2194 (1985);Moodyらの論文、Nucleic Acids Res. 12: 4769-4782 (1989);Uznanskiらの論文、Nucleic Acids Res. (1989);Letsingerらの論文、Tetrahedron, 40: 137-143 (1984);Ecksteinの論文、Annu. Rev. Biochem. 54: 367-402 (1985);Ecksteinの論文、Trends Biol. Sci. 14: 97-100 (1989);Steinの文献、「オリゴデオキシヌクレオチド、遺伝子発現のアンチセンス阻害因子(Oligodeoxynucleotides Antisense Inhibitors of Gene Expression)」、Cohen編集、Macmillan Press社、ロンドン、97-117頁(1989);Jagerらの論文、Biochemistry, 27: 7237-7246 (1988)を参照されたい)。
【0075】
本発明の任意のポリヌクレオチドは、インビボにおける安定性を増大するために更に修飾されてよい。可能性のある修飾は、5'末端及び/若しくは3'末端のフランキング配列の追加;その骨格におけるホスホジエステル結合よりもむしろ、ホスホロチオエート若しくは2'O-メチル結合の使用;並びに/又は、イノシン、キューオシン、及びワイブトシンなどの非従来型塩基、更にはアデニン、シチジン、グアニン、チミン、及びウリジンのアセチル-、メチル-、チオ-及びその他の修飾型の封入:を含むが、これらに限定されるものではない。
【0076】
本発明のポリヌクレオチドは、所望の作用を実現するために、様々な方法で化学的に修飾されることができる。ある実施態様において、本発明のオリゴヌクレオチドは、2'-O-置換オリゴヌクレオチドであってよい。そのようなオリゴヌクレオチドは、ある有用な特性を有する。例えば、米国特許第5,623,065号;第5,856,455号;第5,955,589号;第6,146,829号;第6,326,199号を参照し、ここで2'置換ヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド内に導入され、このオリゴヌクレオチドの相補的標的鎖への、結合の増大を誘導すると同時に、RNアーゼH活性の発現は、標的鎖を破壊することができる。同じくSproat, B. S.らの論文、Nucleic Acids Research, 1990, 18: 41を参照されたい。2'-O-メチル及びエチルヌクレオチドは、多くの著者により報告されている。Robinsらの論文、J. Org. Chem., 39: 1891 (1974);Cottenらの論文、Nucleic Acids Research, 19: 2629 (1991);Singerらの論文、Biochemistry, 15: 5052 (1976);Robinsの論文, Can. J. Chem.59: 3360 (1981);Inoueらの論文、Nucleic Acids Research, 15: 6131 (1987);及び、Wagnerらの論文、Nucleic Acids Research, 19: 5965 (1991)。
【0077】
多くのグループが、他の2'-O-アルキルグアノシンの調製を示している。Gladkayaらの論文(Khim. Prir. Soedin., 4: 568 (1989))は、N1-メチル-2'-O-(テトラヒドロピラン-2-イル)及び2'-O-メチルグアノシンを明らかにし、並びにHansskeらの論文(Tetrahedron, 40: 125 (1984))は、2'-O-メチルチオメチルグアノシンを明らかにしている。これは、グアノシンの9-β-D-アラビノフラノシルグアニン、すなわちグアノシンのアラビノアナログへの転換時の、酸化工程の少量の副産物として生成された。2'-O-メチルチオメチル部分の付加は、酸化手順時に利用されるDMSO溶媒からの人工産物(artifact)である。2,6-ジアミノプリンリボシドの2'-O-メチルチオメチル誘導体は、Hansskeらの刊行物においても報告された。これもDMSO溶媒からの人工産物として得られた。
【0078】
Sproatらの論文(Nucleic Acids Research, 19: 733 (1991))は、2'-O-アリル-グアノシンの調製を示している。グアノシンのアリル化は、更なる合成経路を必要とした。Iribarrenらの論文(Proc. Natl. Acad. Sci., 87: 7747 (1990))も、2'-O-アリルオリゴリボヌクレオチドを研究した。Iribarrenらは、2'-O-メチル-、2'-O-アリル-、及び2'-O-ジメチルアリル-置換したヌクレオチドをオリゴリボヌクレオチドへ取り込み、これらのRNAアナログのアンチセンス分析に対する作用を研究した。Iribarrenは、2'-O-アリル含有オリゴリボヌクレオチドは、RNA又はDNAのいずれかに特異的なヌクレアーゼによる消化に対し抵抗性があり、かつ二重RNA/DNA特異性を伴うヌクレアーゼに対し、2'-O-メチルオリゴリボヌクレオチドよりも、わずかにより抵抗性であることを認めた。
【0079】
ある種の例証的な修飾オリゴヌクレオチドは、米国特許第5,872,232号に開示されている。これに関して、ある実施態様において、オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオシドの2'-デオキシリボフラノシル部分の少なくとも1つは、修飾されている。ハロ、アルコキシ、アミノアルコキシ、アルキル、アジド、又はアミノ基が、付加されてよい。例えば、F、CN、CF3、OCF3、OCN、O-アルキル、S-アルキル、SMe、SO2Me、ONO2、NO2、NH3、NH2、NH-アルキル、OCH2CH=CH2(アリルオキシ)、OCH3=CH2、OCCHであり、ここでアルキルは、C1〜C20の直鎖又は分岐鎖であり、炭素鎖内に不飽和を伴う。
【0080】
PCT/US91/00243、米国出願番号第463,358号、及び米国出願番号第566,977号は、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド上の例えば2'-O-メチル基、2'-O-エチル基、2'-O-プロピル基、2'-O-アリル基、2'-O-アミノアルキル基又は2'-デオキシ-2'-フルオロ基などの取り込みは、該オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特性を増強することを開示している。これらの出願は、ホスホロチオエート骨格を含むオリゴヌクレオチドは、増強されたヌクレアーゼ安定性を有することも開示している。本発明の官能基化され連結されたヌクレオシドは、ホスホロチオエート骨格又は2'-O-C1-C20-アルキル(例えば2'-O-メチル、2'-O-エチル、2'-O-プロピル)、2'-O-C2-C20-アルケニル(例えば2'-O-アリル)、2'-O-C2-C20-アルキニル、2'-S-C1-C20-アルキル、2'-S-C2-C20-アルケニル、2'-S-C2-C20-アルキニル、2'-NH-C1-C20-アルキル(2'-O-アミノアルキル)、2'-NH-C2-C20-アルケニル、2'-NH-C2-C20-アルキニル又は2'-デオキシ-2'-フルオロ基のいずれか又は両方を更に含むように、増大されることができる。例えば、米国特許第5506351号を参照されたい。
【0081】
本発明において有用なその他の修飾オリゴヌクレオチドは、当業者に公知であり、かつ米国特許第7,101,993号;第7,056,896号;第6,911,540号;第7,015,315号;第5,872,232号;第5,587,469号に開示されている。
ある実施態様において、「ベクター」は、所望の核酸の送達に使用される、任意の核酸-及び/又はウイルス-ベースの技術を意味する。
【0082】
「被験体」は、本発明の核酸分子のレシピエントである生物を意味する。「被験体」は、本発明の核酸分子が投与されることができる生物もいう。ある実施態様において、被験体は、哺乳類又は哺乳類細胞である。更なる実施態様において、被験体は、ヒト又はヒト細胞である。本発明の被験体は、マウス、ラット、ブタ、及び非ヒト霊長類を含むが、これらに限定されるものではない。
【0083】
核酸は、Caruthersらの論文、Methods in Enzymology, 211: 3-19 (1992);ThompsonらのPCT国際公開公報WO 99/54459;Wincottらの論文、Nucleic Acids Res. 23: 2677-2684 (1995);Wincottらの論文、Methods Mol. Bio., 74: 59-68 (1997);Brennanらの論文、Biotechnol Bioeng., 61: 33-45 (1998);及び、Brennanの米国特許第6,001,311号に説明されたような、当該技術分野において公知のプロトコールを用いて合成されることができる。核酸の合成は、5'-末端でのジメトキシトリチル及び3'-末端でのホスホロアミデートなどの、通常の核酸保護基及びカップリング基の使用をもたらす。非限定的例において、小規模合成は、394 Applied Biosystems社のシンセサイザー上で、0.2μMスケールプロトコールを用い、2'-O-メチル化されたヌクレオチドに関して2.5分間のカップリング工程、及び2'-デオキシヌクレオチドに関して45秒間のカップリング工程で、実行される。あるいは、0.2μMスケールの合成は、Protogene社(パロアルト, CA)により製造された装置などの、96-ウェルプレートシンセサイザー上で、そのサイクルへ最小の修正を伴い実行される。2'-O-メチルホスホロアミデートの33倍過剰量(0.11Mの60μl=6.6μM)及びS-エチルテトラゾールの105倍過剰量(0.25Mの60μl=15μM)を、ポリマー-結合した5'-ヒドロキシルに対する2'-O-メチル残基の各カップリングサイクルにおいて使用することができる。デオキシホスホロアミデートの22倍過剰量(0.11Mの40μl=4.4μM)及びS-エチルテトラゾールの70倍過剰量(0.25Mの40μl=10μM)を、ポリマー-結合した5'-ヒドロキシルに対するデオキシ残基の各カップリングサイクルにおいて使用することができる。トリチル画分の熱量測定による定量により決定された394 Applied Biosystems社シンセサイザー上での平均カップリング収量は、典型的には97.5〜99%である。394 Applied Biosystems社シンセサイザーに関する他のオリゴヌクレオチド合成試薬は、以下を含む:脱トリチル化溶液は、塩化メチレン中3%TCA(ABI社)であり;キャッピングは、THF中の16%N-メチルイミダゾール(ABI社)及びTHF中の10%無水酢酸/10%2,6-ルチジン(ABI社)により実行され;並びに、酸化溶液は、THF中の16.9mM I2、49mMピリジン、9%水である。Burdick & Jackson社の合成等級のアセトニトリルを、試薬瓶から直接使用した。S-エチルテトラゾール溶液(アセトニトリル中0.25M)は、American International Chemical社から得られた固形物から作製した。あるいは、ホスホロチオエート結合の導入のために、Beaucage試薬(アセトニトリル中0.05M 3H-1,2-ベンゾジチオール-3-オン 1,1-ジオキシド)を使用した。
【0084】
「ヌクレオチド」は、リン酸化された糖とN-グリコシド結合した複素環式含窒素塩基を意味する。ヌクレオチドは、天然の塩基(標準)、及び当該技術分野において周知の修飾塩基を含むことが、当該技術分野において認められている。このような塩基は一般に、ヌクレオチド糖残基の1'位に位置している。ヌクレオチドは一般に、塩基、糖及びリン酸基を含む。ヌクレオチドは、修飾されないか、又は糖、リン酸及び/若しくは塩基部分で修飾されることができる(同じくヌクレオチドアナログ、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、非標準ヌクレオチドなどと互換的に称される(例えば、Usman及びMcSwiggenの論文、前掲;EcksteinらのPCT国際公開公報WO 92/07065;UsmanらのPCT国際公開公報WO 93/15187;Uhlman及びPeymanの論文、前掲を参照されたい))。Limbachらの論文(Nucleic Acids Res. 22: 2183-2196 (1994))によりまとめられたように、当該技術分野において公知の修飾された核酸塩基のいくつかの例が存在する。
【0085】
核酸へ導入されることができる化学的に修飾された核酸塩基及び他の天然の核酸塩基の例は、例えば、イノシン、プリン、ピリジン-4-オン、ピリジン-2-オン、フェニル、プソイドウラシル、2,4,6-トリメトキシベンゼン、3-メチルウラシル、ジヒドロウリジン、ナフチル、アミノフェニル、5-アルキルシチジン(例えば5-メチルシチジン)、5-アルキルウリジン(例えばリボチミジン)、5-ハロウリジン(例えば5-ブロモウリジン)又は6-アザピリミジン又は6-アルキルピリミジン(例えば6-メチルウリジン)、プロピン、キューオシン(quesosine)、2-チオウリジン、4-チオウリジン、ワイブトシン、ワイブトキソシン、4-アセチルチジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、5'-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメエチルウリジン、β-D-ガラクトシルキューオシン、1-メチルアデノシン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアノシン、3-メチルシチジン、2-メチルアデノシン、2-メチルグアノシン、N6-メチルアデノシン、7-メチルグアノシン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウリジン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メチルカルボニルメチルウリジン、5-メチルオキシウリジン、5-メチル-2-チオウリジン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、β-D-マンノシルキューオシン、ウリジン-5-オキシ酢酸、2-チオシチジン、トレオニン誘導体などを含む(Burginらの論文、Biochemistry, 35: 14090 (1996);Uhlman及びPeymanの論文、前掲)。この態様において「修飾塩基」とは、1'位でのアデニン、グアニン、シトシン及びウラシル以外のヌクレオチド塩基又はそれらの同等物を意味し;そのような塩基は、例えば、酵素的核酸分子の触媒中心内及び/又は核酸分子の基質-結合領域内などの任意の位置で使用されることができる。
【0086】
「ヌクレオシド」は、糖とN-グリコシド結合した複素環式含窒素塩基を意味する。ヌクレオシドは、天然の塩基(標準)、及び当該技術分野において周知の修飾塩基を含むことが、当該技術分野において認められている。このような塩基は一般に、ヌクレオシド糖残基の1'位に位置している。ヌクレオシドは一般に、塩基及び糖基を含む。ヌクレオシドは、修飾されないか、又は糖及び/若しくは塩基部分により修飾されることができる(同じくヌクレオシドアナログ、修飾ヌクレオシド、非天然ヌクレオシド、非標準ヌクレオシドなどと互換的に称される)(例えば、Usman及びMcSwiggenの論文、前掲;EcksteinらのPCT国際公開公報WO 92/07065;UsmanらのPCT国際公開公報WO 93/15187;Uhlman及びPeymanの論文を参照されたい)。Limbachらの論文(Nucleic Acids Res. 22: 2183-2196 (1994))によりまとめられたように、当該技術分野において公知の修飾核酸塩基のいくつかの例が存在する。核酸へ導入されることができる化学的に修飾された核酸塩基及び他の天然の核酸塩基の例は、例えば、イノシン、プリン、ピリジン-4-オン、ピリジン-2-オン、フェニル、プソイドウラシル、2,4,6-トリメトキシベンゼン、3-メチルウラシル、ジヒドロウリジン、ナフチル、アミノフェニル、5-アルキルシチジン(例えば5-メチルシチジン)、5-アルキルウリジン(例えばリボチミジン)、5-ハロウリジン(例えば5-ブロモウリジン)又は6-アザピリミジン又は6-アルキルピリミジン(例えば6-メチルウリジン)、プロピン、キューオシン、2-チオウリジン、4-チオウリジン、ワイブトシン、ワイブトキソシン、4-アセチルシチジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、5'-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、β-D-ガラクトシルキューオシン、1-メチルアデノシン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアノシン、3-メチルシチジン、2-メチルアデノシン、2-メチルグアノシン、N6-メチルアデノシン、7-メチルグアノシン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウリジン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メチルカルボニルメチルウリジン、5-メチルオキシウリジン、5-メチル-2-チオウリジン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、β-D-マンノシルキューオシン、ウリジン-5-オキシ酢酸、2-チオシチジン、トレオニン誘導体などを含む(Burginらの論文、Biochemistry, 35: 14090-14097 (1996);Uhlman及びPeymanの論文、前掲)。この態様において「修飾塩基」とは、1'位でのアデニン、グアニン、シトシン及びウラシル以外のヌクレオシド塩基又はそれらの同等物を意味し;そのような塩基は、例えば、酵素的核酸分子の触媒中心内及び/又は核酸分子の基質-結合領域内などの任意の位置で使用されることができる。
【0087】
本明細書に記載されたヌクレオチド配列は、確立された組換えDNA技術を用いて、様々な他のヌクレオチド配列へ結合されることができる。例えばポリヌクレオチドは、プラスミド、ファージミド、λファージ誘導体、及びコスミドを含む、様々なクローニングベクターのいずれかへ、クローニングされることができる。特に関心のあるベクターは、発現ベクター、複製ベクター、プローブ作製ベクター、及びシークエンシングベクターを含む。概して好適なベクターは、少なくとも1種の生物の複製起点機能、都合の良い制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1種以上の選択マーカーを含む(例えば、WO 01/96584;WO 01/29058;米国特許第6,326,193号;US 2002/0007051を参照されたい)。他のエレメントは、所望の用途によって決まり、かつ当業者には明らかであろう。例えば本発明は、インビボにおいて、STAT5ポリペプチドなどの所望の標的ポリペプチドの発現と干渉するベクターを含む、組換え核酸構築体の調製におけるsiRNAポリヌクレオチド配列の使用を意図しており;本発明は、siRNAトランスジェニック又は「ノックアウト」動物及び細胞(例えば、1種以上の所望のポリペプチド(例えば標的ポリペプチド)の発現が完全に又は部分的に損なわれている、細胞、細胞のクローン、系統若しくは分化系列、又は生物)の作出も意図している。従って本明細書に提供されたような所望のポリペプチド(例えば標的ポリペプチド)の発現と干渉することが可能であるsiRNAポリヌクレオチドは、本明細書に提供されたような被験体又は生物学的給源と、該siRNAポリヌクレオチドの非存在下で標的ポリペプチド発現が生じるのに十分な条件及び時間で接触される場合に、検出され得る標的ポリペプチド発現のレベルにおいて統計学的に有意な減少を生じる(あるいは発現の「ノックダウン」と称される)、任意のsiRNAポリヌクレオチドを含む。ある実施態様において、この減少は、当該技術分野において公知でありかつ本明細書に提供されたようなポリペプチド発現を決定する常法を使用して該siRNAの非存在下で検出されるポリペプチドの発現レベルに対し10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は98%大きい。ある実施態様において、細胞中の該siRNAポリヌクレオチドの存在は、望ましくない毒性作用、例えばアポトーシス、又はアポトーシスがRNA干渉の望ましい作用ではない細胞の死を生じないか又は引き起こさない。
【0088】
本発明は同じく、本発明のsiRNAポリヌクレオチドを含む又はコードしているベクター及び構築体に関し、特に先に提供された本発明により標的ポリヌクレオチド-特異的siRNAポリヌクレオチド(すなわち、mRNAなどの標的ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドに特異的なsiRNA)を生じるように転写され得る核酸を含む「組換え核酸構築体」に関し;本発明のベクター及び/又は構築体により遺伝子操作された宿主細胞に関し;並びに、組換え技術による、本発明のsiRNAポリヌクレオチド、ポリペプチド、及び/若しくは融合タンパク質、又はそれらの断片若しくは変種の生成にも関する。本明細書においてRNAポリヌクレオチドとして明らかにされたsiRNA配列は、対応するDNA配列を生じるように、本明細書において説明されたもののような良く確立された方法論を用い、操作できる。従って例えば、DNAポリヌクレオチドは、本明細書(「配列表」を含む)に記載された任意のsiRNA配列から作製でき、その結果本siRNA配列は、対応するDNAポリヌクレオチド(及びそれらの相補体)を提供することも認められるであろう。従ってこれらのDNAポリヌクレオチドは、例えば、それらからsiRNAが転写できる対象の発明の組換え核酸構築体に取り込まれることが、意図された発明内に包含される。
【0089】
本発明により、ベクターは、RNA分子の転写のための1種以上のプロモーター、例えばヒトU6 snRNAプロモーターを含む、組換え核酸構築体を含むことができる(例えば、Miyagishiらの論文、Nat. Biotechnol. 20: 497-500 (2002);Leeらの論文、Nat. Biotechnol. 20: 500-505 (2002);Paulらの論文、Nat. Biotechnol. 20: 505-508 (2002);Grabarekらの論文、BioTechniques, 34: 73544 (2003)を参照されたい;同じく、Suiらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 99: 5515-20 (2002)も参照されたい)。siRNAポリヌクレオチドの各鎖は、各々個別のプロモーターの指示の下で個別に転写されることができ、次に細胞内でハイブリダイズされ、siRNAポリヌクレオチド二重鎖を形成することができる。各鎖は、個別のベクターから転写されてもよい(Leeらの論文、前掲を参照されたい)。あるいは、STAT5配列に特異的なセンス配列及びアンチセンス配列は、単独のプロモーターの制御下で転写されることができ、その結果本siRNAポリヌクレオチドは、ヘアピン分子を形成する(Paulらの論文、前掲)。このような場合、このsiRNA特異的配列の相補鎖は、本明細書に記載されたように、少なくとも4個のヌクレオチドを含むが、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、14、16、94 18個のヌクレオチド又はそれよりも多いヌクレオチドを含むことができるスペーサーにより隔てられる。加えてヘアピンを形成するU6プロモーターの制御下で転写されたsiRNAは、転写終結シグナルとして作用する約4個のウリジンのストレッチを3'末端に有することができる(Miyagishiらの論文、前掲;Paulらの論文、前掲)。例証として、標的配列が19ヌクレオチドである場合、このsiRNAヘアピンポリヌクレオチド(5'末端で始まる)は、19-ヌクレオチドセンス配列、それに続くスペーサー(これは19-ヌクレオチドセンス配列の3'末端に隣接している2個のウリジンヌクレオチド)を有し、並びにこのスペーサーは、19ヌクレオチドアンチセンス配列に連結され、それに4-ウリジンターミネーター配列が続き、これは突出を生じる。そのような突出を伴うsiRNAポリヌクレオチドは、標的ポリペプチドの発現と効果的に干渉する(同文献参照)。組換え構築体は、siRNAポリヌクレオチド特異的配列に機能的に連結され得る別のRNAポリメラーゼIIIプロモーター、H1 RNAプロモーターを用いて調製することもでき、これはsiRNA特異的配列を含むヘアピン構造の転写又はsiRNA二重鎖ポリヌクレオチドの各鎖の個別の転写に使用することができる(例えば、Brummelkampらの論文、Science, 296: 550-53 (2002);Paddisonらの論文、前掲を参照されたい)。siRNAポリヌクレオチドの転写のための配列の挿入に有用なDNAベクターは、pSUPERベクター(例えばBrummelkampらの論文、前掲参照);pCWRSVN由来のpAVベクター(例えばPaulらの論文、前掲参照);及び、pIND(例えばLeeらの論文、前掲参照)などを含む。
【0090】
ある実施態様において、本発明の核酸分子は、真核生物プロモーターから細胞内で発現されることができる(例えば、Izant及びWeintraubの論文、Science, 229: 345-352 (1985);McGarry及びLindquistの論文、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 83: 399-403 (1986);Scanlonらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 10591-10595 (1991);Kashani-Sabetらの論文、Antisense Res. Dev., 2: 3-15 (1992);Dropulicらの論文、J. Virol., 66: 1432-1441 (1992);Weerasingheらの論文、J. Virol., 65: 5531-5534 (1991);Ojwangらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 10802-10806 (1992);Chenらの論文、Nucleic Acids Res., 20: 4581-4589 (1992);Sarverらの論文、Science, 247: 1222-1225 (1990);Thompsonらの論文、Nucleic Acids Res., 23: 2259-2268 (1995);Goodらの論文、Gene Therapy, 4: 45-54 (1997))。当業者は、核酸は、好適なDNA/RNAベクターから真核細胞において発現され得ることを認めるであろう。そのような核酸の活性は、酵素的核酸による一次転写産物からのそれらの放出により増大することができる(DraperらのPCT WO 93/23569、及びSullivanらのPCT WO 94/02595;Ohkawaらの論文、Nucleic Acids Symp. Ser., 27: 15-16 (1992);Tairaらの論文、Nucleic Acids Res., 19: 5125-5130 (1991);Venturaらの論文、Nucleic Acids Res., 21: 3249-3255 (1993);Chowriraらの論文、J. Biol. Chem., 269: 25856-25864 (1994))。
【0091】
本発明の別の態様において、RNA分子などの本発明の核酸分子は、DNA又はRNAベクターへ挿入された転写単位(例えば、Coutureらの論文、TIG., 12: 510-515 (1996)を参照されたい)から発現される。これらの組換えベクターは、好ましくはDNAプラスミド又はウイルスベクターである。RNA発現ウイルスベクターは、非限定的に、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、又はアルファウイルス上で構築されることができる。この核酸分子を発現することが可能である組換えベクターは、先に説明されたように送達され、かつ標的細胞において持続することが好ましい。あるいは、核酸分子の一過性発現を提供するウイルスベクターを使用することができる。このようなベクターは、必要に応じ反復投与されることができる。この核酸分子は、一旦発現されたならば、標的mRNAへ結合し、細胞内でRNAiを誘導する。核酸分子発現ベクターの送達は、静脈内投与又は筋肉内投与によるか、患者若しくは被験体から得て体外培養された標的細胞への投与とそれに続く該患者若しくは被験体への再導入によるか、又は所望の標的細胞への導入を可能にする他の手段によるなど、全身性であることができる(総説については、Coutureらの文献、TIG., 12: 510-515 (1996)を参照されたい)。
【0092】
ひとつの態様において、本発明は、本発明の核酸分子の少なくとも1種をコードしている核酸配列を含む発現ベクターを特徴とし、これが明らかにされている。本発明の核酸分子をコードしている核酸配列は、その核酸分子の発現を可能にする様式で機能的に連結されている。
【0093】
別の態様において、本発明は、a)転写開始領域(例えば、真核生物pol I、II又はIII開始領域);b)転写終結領域(例えば、真核生物pol I、II又はIII終結領域);c)本発明の核酸触媒の少なくとも1種をコードしている核酸配列:を含む発現ベクターを特徴とし;かつここで、該配列は、該核酸分子の発現及び/又は送達を可能にする様式で、該開始領域及び該終結領域へ機能的に連結されている。本ベクターは任意に、本発明の核酸触媒をコードしている配列の5'側若しくは3'側に機能的に連結されたタンパク質のオープンリーディングフレーム(ORF);及び/又は、イントロン(介在配列)を含むことができる。
【0094】
本核酸分子配列の転写は、真核生物のRNAポリメラーゼI(pol I)、RNAポリメラーゼII(pol II)、又はRNAポリメラーゼIII(pol III)のプロモーターから駆動されてよい。pol II又はpol IIIプロモーターからの転写産物は、全ての細胞において高レベルで発現され;所与の細胞型における所与のpol IIプロモーターのレベルは、近傍に存在する遺伝子調節配列(エンハンサー、サイレンサーなど)の性質によって左右される。原核生物のRNAポリメラーゼ酵素が好適な細胞において発現されることを条件として、原核生物のRNAポリメラーゼプロモーターも使用される(Elroy-Stein及びMossの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87: 6743-6747 (1990);Gao及びHuangの論文、Nucleic Acids Res., 21: 2867-2872 (1993);Lieberらの論文、Methods Enzymol., 217: 47-66 (1993);Zhouらの論文、Mol. Cell. Biol., 10: 4529-4537 (1990))。数名の研究者が、そのようなプロモーターから発現されたリボザイムなどの核酸分子は、哺乳類細胞において機能することができることを明らかにしている(例えば、Kashani-Sabetらの論文、Antisense Res. Dev., 2: 3-15 (1992);Ojwangらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 10802-10806 (1992);Chenらの論文、Nucleic Acids Res., 20: 4581-4589 (1992);Yuらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6340-6344 (1993);L'Huillierらの論文、EMBO J., 11: 4411-4418 (1992);Lisziewiczらの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 8000-8004 (1993);Thompsonらの論文、Nucleic Acids Res., 23: 2259-2268 (1995);Sullenger及びCechの論文、Science, 262: 1566-1569 (1993))。より具体的には、U6核内低分子RNA(snRNA)、トランスファーRNA(tRNA)及びアデノウイルスVA RNAをコードしている遺伝子由来のものなどの転写単位は、細胞においてリボザイムなどの所望のRNA分子を高濃度で作製する際に有用である(Thompsonらの論文、前掲;Couture及びStinchcombの論文、1996, 前掲;Noonbergらの論文、Nucleic Acid Res., 22: 2830-2836 (1994);Noonbergらの米国特許第5,624,803号;Goodらの論文、Gene Ther, 4: 45-54 (1997);BeigelmanらのPCT国際公開公報WO 96/18736)。前記リボザイム転写単位は、哺乳類細胞への導入のために、プラスミドDNAベクター、ウイルスDNAベクター(例えばアデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスベクターなど)、又はウイルスRNAベクター(例えばレトロウイルスベクター若しくはアルファウイルスベクターなど)を含むが、これらに限定されるものではない様々なベクターに取り込まれることができる(総説については、Couture及びStinchcombの論文、1996, 前掲を参照されたい)。
【0095】
別の態様において、本発明は、その核酸分子の発現を可能にする様式で、少なくとも1種の本発明の核酸分子をコードしている核酸配列を含む発現ベクターを特徴としている。この発現ベクターは、一実施態様において;a)転写開始領域;b)転写終結領域;c)該核酸分子の少なくとも1種をコードしている核酸配列:を含み;かつここで、該配列は、該核酸分子の発現及び/又は送達を可能にする様式で、該開始領域及び該終結領域へ機能的に連結されている。
【0096】
別の実施態様において、本発現ベクターは:a)転写開始領域;b)転写終結領域;c)オープンリーディングフレーム;d)該核酸分子の少なくとも1種をコードしている核酸配列:を含み;ここで、該配列は、該オープンリーディングフレームの3'末端に機能的に連結され;かつここで、該配列は、該核酸分子の発現及び/又は送達を可能にする様式で、該開始領域、該オープンリーディングフレーム及び該終結領域へ機能的に連結されている。更に別の実施態様において、本発現ベクターは:a)転写開始領域;b)転写終結領域;c)イントロン;d)該核酸分子の少なくとも1種をコードしている核酸配列:を含み;ここで、該配列は、該核酸分子の発現及び/又は送達を可能にする様式で、該開始領域、該イントロン及び該終結領域へ機能的に連結されている。
【0097】
更に別の実施態様において、本発現ベクターは:a)転写開始領域;b)転写終結領域;c)イントロン;d)オープンリーディングフレーム;e)該核酸分子の少なくとも1種をコードしている核酸配列:を含み;ここで、該配列は、該オープンリーディングフレームの3'末端に機能的に連結され;かつここで、該配列は、該核酸分子の発現及び/又は送達を可能にする様式で、該開始領域、該イントロン、該オープンリーディングフレーム及び該終結領域へ機能的に連結されている。
【0098】
別の例において、本明細書に記載されたように本発明の核酸(例えばそれからsiRNAが転写され得るDNA配列)は、標的ポリヌクレオチド-特異的siRNAポリヌクレオチドを発現する組換え核酸構築体として、様々な発現ベクター構築体のいずれかひとつに含まれてよい。そのようなベクター及び構築体は、染色体性、非染色体性及び合成DNA配列、例えば、SV40の誘導体;細菌プラスミド;ファージDNA;バキュロウイルス;酵母プラスミド;プラスミドとファージDNA、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、及び仮性狂犬病ウイルスなどのウイルスDNAの組合わせ由来のベクターを含む。しかし、任意の他のベクターを、それが宿主において複製可能かつ生存可能である限りは、組換え核酸構築体の調製に使用することができる。
【0099】
好適なDNA配列(類)は、様々な手法により前述のベクターへ挿入されてよい。概してこのDNA配列は、当該技術分野において公知の手法により、好適な制限エンドヌクレアーゼ部位(類)へ挿入される。DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、制限エンドヌクレアーゼなどが関与する酵素反応に関するクローニング、DNA単離、増幅及び精製に関する標準技術、並びに様々な分離技術は、当業者に公知でありかつ一般に使用されるものである。多くの標準技術が、例えば、Ausubelらの文献(1993、「分子生物学最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、Greene Publ. Assoc.社及びJohn Wiley & Sons社, ボストン, MA);Sambrookらの文献(「分子クローニング(Molecular Cloning)第三版」、2001、Cold Spring Harbor Laboratory, プレインビュー, NY);Maniatisらの文献(「分子クローニング(Molecular Cloning)」、1982、Cold Spring Harbor Laboratory, プレインビュー, NY)などにおいて説明されている。
【0100】
発現ベクター内のDNA配列は、mRNA合成を指示するために、少なくとも1種の好適な発現制御配列(例えばプロモーター又は調節プロモーター)に機能的に連結されている。そのような発現制御配列の代表例は、LTR又はSV40プロモーター、大腸菌lac又はtrp、ファージλPLプロモーター、並びに原核細胞又は真核細胞又はそれらのウイルスにおける遺伝子の発現を制御することがわかっている他のプロモーターを含む。プロモーター領域は、選択マーカーを伴うCAT(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)ベクター又は他のベクターを使用し、いずれか所望の遺伝子から選択できる。2種の好適なベクターは、pKK232-8及びpCM7である。特に名前が挙げられた細菌プロモーターは、lacl、lacZ、T3、T7、gpt、λPR、PL及びtrpを含む。真核生物プロモーターは、CMV極初期、HSVチミジンキナーゼ、初期及び後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、及びマウスのメタロチオネイン-Iである。好適なベクター及びプロモーターの選択は、当該技術分野の通常の技術レベルによく収まり、かつポリペプチド(例えば、PTP、MAPキナーゼキナーゼ、又は化学療法の標的ポリペプチド)をコードしている核酸に機能的に連結された少なくとも1種のプロモーター又は調節プロモーターを含むある特に好ましい組換え発現構築体の調製が、本明細書において説明されている。
【0101】
発現された組換えsiRNAポリヌクレオチドは、無傷の宿主細胞;無傷の細胞小器官、例えば細胞膜、細胞内小胞若しくは他の細胞の細胞小器官など;又は、細胞ホモジネート又は可溶化液、ミクロソーム、単膜小胞及び多重膜小胞若しくは他の調製物を含むが、これらに限定されるものではない破壊された細胞調製物:において有用であることができる。あるいは、発現された組換えsiRNAポリヌクレオチドは、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを含む方法により、組換え細胞培養液から回収しかつ精製することができる。最後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を、最終精製工程において利用することができる。
【0102】
本発明のある好ましい実施態様において、本siRNAポリヌクレオチドは、検出可能に標識され、かつある実施態様において、本siRNAポリヌクレオチドは、放射性シグナル又は蛍光シグナルを発生することが可能である。このsiRNAポリヌクレオチドは、当該技術分野において公知でありかつ本開示を基に、好適なレポーター分子又は部分、例えば32Pなどの放射性核種(例えばPestkaらの論文、Protein Expr. Purif. 17:203-14 (1999))、ヨウ素[125I又は131I]などの放射性ハロゲン(例えばWilburの論文、Bioconjug. Chem. 3:433-70 (1992))、若しくはトリチウム[3H]など;酵素;又は、利用される特定の蛍光検出技術に従い選択された様々な発光物質(例えば化学発光物質)又は蛍光物質(例えば発蛍光団)のいずれか:との共有的又は非共有的付着により、検出可能に標識されることができる。本明細書に提供されたような蛍光レポーター部分並びにsiRNAポリヌクレオチド及び/又はPTP基質を標識する方法は、例えば、Hauglandの文献(「蛍光プローブ及び探索化学物質のハンドブック(Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals)第六版」、1996、Molecular Probes社, ユージーン, OR;「蛍光プローブ及び探索化学物質のハンドブック第七版」、1999、Molecular Probes社, ユージーン, OR、インターネット:http://www.probes.com/lit/)、並びにそこに引用された参考文献に認めることができる。対象の発明の方法における発蛍光団それ自体の使用に関して特に好ましいのは、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、AlexaFluor-594、AlexaFluor-488、オレゴングリーン、BODIPY-FL、ウンベリフェロン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、フィコエリトリン又はCy-5である。好適な酵素の例は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ビオチン、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ及びアセチルコリンエステラーゼを含むが、これらに限定されるものではない。好適な発光物質は、ルミノールを含み、好適な放射性物質は、放射性リン[32P]を含む。本発明のその他のある好ましい実施態様において、検出可能に標識されたsiRNAポリヌクレオチドは、当該技術分野において公知でありかつ意図された用途に適しているよう、磁気粒子、例えば常磁性若しくは反磁性粒子、又は他の磁気粒子など(好ましくは微粒子)を含む。理論により限定されることを欲するものではないが、ある種のそのような実施態様に従い、磁気粒子を含むsiRNAポリヌクレオチドに結合された、吸着された、吸収された、インターナリゼーションされた、又はそうでなければ会合され始めた細胞を選択する方法が提供される。
【0103】
(核酸分子の使用及び投与の方法)
核酸分子の送達方法は、Akhtarらの論文、Trends Cell Bio., 2: 139 (1992);及び文献「アンチセンスオリゴヌクレオチド治療薬の送達戦略(Delivery Strategies for Antisense Oligonucleotide Therapeutics)」、Akhtar編集に説明されており;SullivanらのPCT WO 94/02595は、酵素的RNA分子の送達に関する一般的方法を更に説明している。これらのプロトコールは、事実上あらゆる核酸分子の送達に利用することができる。核酸分子は、当業者に公知の様々な方法により細胞へ投与されることができ、これはリポソーム内の封入、イオントホレシス、又はヒドロゲル、シクロデキストリン、生分解性ナノカプセル、及び生体接着性ミクロスフェアなどの他のビヒクルへの取り込みを含むが、これらに限定されるものではない。あるいは、この核酸/ビヒクル組合せは、直接注入又は輸液ポンプの使用により局所的に送達される。その他の送達経路は、経口(錠剤又は丸剤型)及び/又は髄腔内送達を含むが、これらに限定されるものではない(Goldの論文、Neuroscience, 76: 1153-1158 (1997))。他のアプローチは、例えば複合体及び生分解性ポリマーの使用によるなどの、様々な輸送システム及び担体システムの使用を含む。CNS送達を含む薬物送達戦略の包括的総説については、Hoらの論文、Curr. Opin. Mol. Ther., 1: 336-343 (1999)、及びJainの文献「薬物送達システム:技術と商機、決定リソース(Drug Delivery Systems: Technologies and Commercial Opportunities, Decision Resources)」、1998;及び、Groothuisらの論文、J. NeuroVirol., 3: 387-400 (1997)を参照されたい。核酸の送達及び投与のより詳細な説明は、Sullivanらの論文、前掲;DraperらのPCT WO93/23569;BeigelmanらのPCT WO99/05094;及び、KlimukらのPCT WO99/04819に提供されている。
【0104】
本発明の分子は、医薬品として使用することができる。医薬品は、被験体における疾患状態の発生を予防、阻害するか、又はこれを治療する(症状をある程度、ある実施態様においては全ての症状を軽減する)。
【0105】
本発明の負帯電されたポリヌクレオチドは、医薬組成物を形成するために、安定化剤、緩衝液などを含むか又は含まずに、任意の標準の手段により、被験体へ投与又は導入されることができる。リポソーム送達機構の使用が望ましい場合は、リポソームの形成に関する標準プロトコールに従うことができる。本発明の組成物は、経口投与用の錠剤、カプセル剤又はエリキシル剤;直腸投与用の坐剤;無菌液剤;注射投与のための懸濁剤;及び、当該技術分野において公知の他の組成物として、製剤されかつ使用されることもできる。
【0106】
本発明は、記載された化合物の医薬として許容し得る製剤も含む。これらの製剤は、前述の化合物の塩、例えば酸付加塩、例として塩酸、臭化水素酸、酢酸、及びベンゼンスルホン酸の塩を含む。
【0107】
本発明のsiRNA分子の組成物又は製剤は、細胞又は被験体、好ましくはヒトへの投与、例えば全身投与に適した形状の組成物又は製剤をいう。好適な形は一部、例えば、経口、経皮、若しくは注射によるなどの、使用又は進入経路によって決まる。そのような形状は、組成物又は製剤が、標的細胞に達することを妨害すべきではない。例えば血流に注入された薬理学的組成物は、可溶性であるべきである。他の要因は、当該技術分野において公知であり、かつ毒性及びこの組成物又は製剤がその作用を発揮することを妨害する形状などの考察を含む。
【0108】
「全身投与」は、インビボにおける血流中の薬物の全身性の吸収又は蓄積、それに続く体全体にわたる分布を意味する。全身吸収につながる投与経路は、以下を含むが、これらに限定されるものではない:静脈内、皮下、腹腔内、吸入、経口、肺内、及び筋肉内。これらの投与経路の各々は、所望の負帯電した核酸を、接近可能な罹患組織に曝す。薬物の循環系への進入経路は、分子量又はサイズの関数であることが示されている。本発明の化合物を含有するリポソーム又は他の薬物担体の使用は、この薬物を、例えば網膜内皮システム(RES)の組織などのある種の組織型内に、潜在的に局在化することができる。薬物のリンパ球及びマクロファージなどの細胞の表面との会合を促進することができるリポソーム製剤も、有用である。このアプローチは、癌細胞などの異常な細胞のマクロファージ及びリンパ球の免疫認識の特異性を利用することにより、薬物の標的細胞への増強された送達を提供することができる。
【0109】
医薬として許容し得る製剤は、本発明の核酸分子の所望の活性に最も適した物理的な位置で、それらの効果的分布を可能にする組成物又は製剤を意味する。本発明の核酸分子を伴う製剤に適した物質の非限定的例は、以下を含む:薬物の様々な組織への侵入を増強することができる、PEG複合された核酸、リン脂質複合された核酸、親油性部分を含む核酸、ホスホロチオエート、P-糖タンパク質インヒビター(プルロニックP85など);例えば植え込み後の持続放出送達のためのポリ(DL-ラクチド-コグリコリド)ミクロスフェアなどの、生分解性ポリマー(Emerich, DFらの論文、Cell Transplant, 8: 47-58 (1999))、Alkermes社, ケンブリッジ, MA;及び、血液脳関門を超えて薬物を送達することができ、かつ神経取り込み機序を変更することができる、ポリブチルシアノアクリレートにより製造されたものなどの、充填されたナノ粒子(Progの論文、Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry, 23: 941-949 (1999))。
【0110】
本発明は、ポリ(エチレングリコール)脂質を含む表面-修飾されたリポソーム(PEG-修飾された、分岐及び非分岐又はそれらの組合せの、又は長期循環するリポソーム又はステルスリポソーム)を含有する組成物の使用も特徴としている。本発明の核酸分子は、様々な分子量の共有的に付着されたPEG分子も含むことができる。これらの製剤は、標的組織における薬物の蓄積を増加する方法をもたらす。このクラスの薬物担体は、単核食細胞系(MPS又はRES)によるオプソニン作用及び排泄に抵抗し、これにより封入された薬物のより長い血液循環時間及び増強された組織曝露を可能にする(Lasicらの論文、Chem. Rev. 95: 2601-2627 (1995);Ishiwataらの論文、Chem. Pharm. Bull., 43: 1005-1011 (1995))。このようなリポソームは、恐らく新血管形成された標的組織における管外遊出及び捕獲により、腫瘍内に選択的に蓄積することが示されている(Lasicらの論文、Science, 267: 1275-1276 (1995);Okuらの論文、Biochim. Biophys. Acta, 1238: 86-90 (1995))。長期循環するリポソームは、特にMPSの組織において蓄積することがわかっている通常のカチオン性リポソームと比べ、DNA及びRNAの薬物動態及び薬力学を増強する(Liuらの論文、 J. Biol. Chem. 42: 24864-24870 (1995);ChoiらのPCT国際公開公報WO 96/10391;AnsellらのPCT国際公開公報WO 96/10390;HollandらのPCT国際公開公報WO 96/10392)。長期間循環するリポソームは恐らく、肝臓及び脾臓などの代謝が攻撃的なMPS組織における蓄積を避けるそれらの能力を基に、カチオン性リポソームと比べ、より大きい程度に薬物をヌクレアーゼ分解から保護する。
【0111】
更なる実施態様において、本発明は、US 2003/0166601に開示されたように調製されたsiRNA組成物などの核酸組成物を含む。これに関して、一実施態様において、本発明は、1)核酸(例えばsiRNA)及びポリエチレンイミンを含む、コア複合体;並びに、2)NHS-PEG-VS及び標的化部分を含む、外側シェル部分:を含有する、本明細書に記載されたsiRNAの組成物を提供する。
【0112】
従ってある実施態様において、siRNA配列は、カチオン性ポリマーとの静電結合により複合され、RNAi/ナノプレックス構造を形成する。ある実施態様において、このカチオン性ポリマーは、標的細胞の細胞質内に搭載されたそのsiRNAの細胞インターナリゼーション及びエンドソーム放出を促進する。更にある実施態様において、親水性立体ポリマーは、RNAi/カチオン性ポリマーナノプレックスに添加されることができる。これに関して、例証的立体ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)層を含む。理論に結びつけられるものではないが、この成分は、非特異的組織相互作用の低下、循環時間の延長、及び免疫原性の最小化を補助する。PEG層は、頻漏出性腫瘍血管系における血管透過性と滞留性亢進(EPR)効果の現象を通じて、腫瘍組織へのsiRNA分布を増強することもできる。
【0113】
更なる実施態様において、本発明は、米国特許第6,692,911号、第7,163,695号及び第7,070,807号に開示されたように送達のために調製された核酸組成物を含む。これに関して、一実施態様において、本発明は、米国特許第7,163,695号、第7,070,807号、及び第6,692,911号に開示されたようなポリ(ヒスチジン-リジン)コポリマー(HK)(ヒスチジンコポリマー)を、単独で、又はPEG(例えば、分岐若しくは非分岐PEG又は両方の混合物)との組合せ、又はPEG及び標的化部分との組合せのいずれかで含有する、組成物中の本発明の核酸を提供する。これに関して、ある実施態様において、本発明は、ポリリジン、ポリヒスチジン、リジン、ヒスチジン、及びそれらの組合せ(例えば、ポリヒスチジン;ポリヒスチジンとポリリジン;リジンとポリヒスチジン;ヒスチジンとポリリジン;リジンとヒスチジン)、グルコン酸-修飾されたポリヒスチジン又はグルクロニル化された-ポリヒスチジン/トランスフェリン-ポリリジンを含有する組成物中のsiRNA分子を提供する。ある実施態様において、本発明のsiRNA組成物は、分岐したヒスチジンコポリマーを含む(例えば、米国特許第7,070,807号を参照されたい)。
【0114】
本発明のある実施態様において、先に説明された標的化部分は、所望のsiRNA(類)の関心対象の細胞への標的化に利用される。これに関して、当業者に認められるように、標的化リガンドは、疾患及び送達されるべき関心対象のsiRNAに応じて、容易に互いに交換可能である。ある実施態様において、標的化部分は、腫瘍血管系内皮細胞上の活性化されたインテグリン、例えばαvβ3インテグリンなどに結合する、RGD(アルギニン、グリシン、アスパラギン酸)ペプチドリガンドを含むことができる。
【0115】
従ってある実施態様において、本発明のsiRNA分子を含有する組成物は、siRNA分子を含む組成物(「ベクター」)の標的組織又は細胞との高度に特異的な相互作用を可能にする、少なくとも1種の標的化部分、例えば細胞表面受容体のリガンド又は他の細胞表面マーカーを含む。より具体的には、一実施態様において、このベクターは好ましくは、防御されていないリガンド又は防御されたリガンドを含むであろう。このベクターは、標的化される細胞型に応じて、2つ以上の標的化部分を含むことができる。複数(2つ以上)の標的化部分の使用は、細胞標的化における追加の選択性を提供することができ、かつ該ベクターの標的細胞への結合のより高い親和性及び/又は親和力の原因であることもできる。1つよりも多い標的化部分が本ベクターに存在する場合、標的化部分の相対モル比は、最適な標的化効率を提供するように変動されてよい。この様式において細胞の結合及び選択性を最適化する方法は、当該技術分野において公知である。当業者は、細胞の選択性及び親和性及び結合効率を測定するアッセイは、当該技術分野において公知であり、かつ標的化リガンド(類)の性質及び量を最適化するために使用することができることを認めるであろう。
【0116】
組成物を特定の細胞に指向する様々な物質が、当該技術分野において公知である(例えば、Cottenらの論文、Methods Enzym, 217: 618 (1993)を参照されたい)。例証的標的化物質は、個々の細胞、細胞の小さい群又は細胞の大きい範疇と特異的に相互作用する生体化合物、又はそれらの部分を含む。有用な標的化物質の例は、低密度リポタンパク質(LDL)、トランスフェリン、アシアロ糖タンパク質、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のgp120エンベロープタンパク質、ジフテリア毒素、抗体、及び糖質を含むが、これらに限定されるものではない。その他の好適なリガンドは、以下を含むが、これらに限定されるものではない:内皮細胞の標的化のための血管内皮細胞増殖因子;血管の病巣及び腫瘍の標的化のためのFGF2;腫瘍の標的化のためのソマトスタチンペプチド;腫瘍の標的化のためのトランスフェリン;腫瘍の標的化のためのメラニン細胞刺激ホルモン(αMSH)ペプチド;LDL受容体の標的化のためのApoE及びペプチド;露出されたコラーゲン(collagend)の標的化のためのフォンヴィレブラント因子及びペプチド;コクサッキー-アデノウイルス受容体(CAR)発現細胞の標的化のためのアデノウイルス繊維タンパク質及びペプチド;ニューロピリン1の標的化のためのPD1及びペプチド;EGF受容体発現細胞の標的化のためのEGF及びペプチド;並びに、インテグリン発現細胞の標的化のためのRGDペプチド。
【0117】
標的化部分のその他の例は、(i)該組成物は、細胞-表面に葉酸受容体を有する腫瘍細胞の治療が意図されている場合の、葉酸(folate)、(ii)該組成物は、ウイルス-感染されたCD4+リンパ球の治療が意図されている場合の、ピリドキシル、又は(iii)該組成物は、炎症領域の治療が意図されている場合の、シアリル-ルイスo:を含む。他のペプチドリガンドは、ファージディスプレイ法(F. Bartoliらの文献、「組織特異的細胞表面受容体のペプチドリガンドの単離(Isolation of peptide ligands for tissue-specific cell surface receptor)」、治療的遺伝子送達に関するベクター標的化戦略(Vector Targeting Strategies for Therapeutic Gene Delivery)(コールドスプリングハーバー1999年会議の抄録), 1999, 4頁)及び微生物ディスプレイ(Georgiouらの文献、「微生物表面にディスプレイされかつFACSによりスクリーニングされたライブラリー由来の超高親和性抗体(Ultra-High Affinity Antibodies from Libraries Displayed on the Surface of Microorganisms and Screened by FACS)」、治療的遺伝子送達に関するベクター標的化戦略(コールドスプリングハーバー1999年会議の抄録), 1999, 3頁)などの方法を用いて同定することができる。この様式で同定されたリガンドは、本発明における使用に適している。
【0118】
標的化部分の別の例は、該組成物は、炎症領域の治療が意図されている場合の、シアリル-ルイスxである。他のペプチドリガンドは、ファージディスプレイ法(F. Bartoliらの文献、「組織特異的細胞表面受容体のペプチドリガンドの単離」、治療的遺伝子送達に関するベクター標的化戦略(コールドスプリングハーバー1999年会議の抄録), 1999, 4頁)及び微生物ディスプレイ(Georgiouらの文献、「微生物表面にディスプレイされかつFACSによりスクリーニングされたライブラリー由来の超高親和性抗体」、治療的遺伝子送達に関するベクター標的化戦略(コールドスプリングハーバー1999年会議の抄録), 1999, 3頁)などの方法を用いて同定することができる。この様式で同定されたリガンドは、本発明における使用に適している。
【0119】
「DNAシャッフリング」(W. P. C. Stremmerの文献、「DNAシャッフリングによる酵素及び経路の指向された展開(Directed Evolution of Enzymes and Pathways by DNA Shuffling)」、治療的遺伝子送達に関するベクター標的化戦略(コールドスプリングハーバー1999年会議の抄録), 1999, 5頁)などの方法は、標的組織及び細胞に対する強力かつ選択的結合を誘起する新規ペプチド配列を作製するために開発されており、並びにこれらの新規配列ペプチドは、本発明に適したリガンドである。多くの型で存在しかつ細胞により通常使用されるリガンドである天然の糖質などのリガンドの他の化学型(Kralingらの論文、Am. J. Path., 150: 1307 (1997))に加え、新規化学種が、本発明に適しており、その一部は、D-アミノ酸及びペプチド模倣薬などの天然のリガンドのアナログ、並びに、コンビナトリアルケミストリー(P. D. Kassnerらの文献、「発現によるリガンド同定(Ligand Identification via Expression)(LIVE.theta.):「コンビナトリアルライブラリーからの標的化リガンドの直接選択(Direct Selection of Targeting Ligands from Combinatorial Libraries)」、治療的遺伝子送達に関するベクター標的化戦略(コールドスプリングハーバー1999年会議の抄録), 1999, 8頁)などの医薬化学技術により同定される他のものであり得る。
【0120】
本発明は、所望の化合物の医薬有効量を、医薬として許容し得る担体又は希釈剤中に含有する、貯蔵又は投与のために調製された組成物も含む。治療的用途のために許容し得る担体又は希釈剤は、医薬技術分野において周知であり、かつ例えば「レミントン:薬学の科学と実践(Remington: The Science and Practice of Pharmacy)」第20版、ボルチモア, MD:Lippincott Williams & Wilkins, 2000年において説明されている。例えば、保存剤、安定化剤、色素及び香味剤が提供できる。これらは、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp-ヒドロキシ安息香酸エステルを含む。加えて、抗酸化剤及び懸濁化剤が使用できる。
【0121】
医薬有効量は、疾患状態の発生を予防、阻害するか、又はこれを治療する(症状をある程度、ある実施態様においては全ての症状を軽減する)ために必要とされるその投与量である。医薬有効量は、疾患の種類、使用される組成物、投与経路、治療される哺乳類の種類、考慮される具体的哺乳類の生理的特徴、併用薬、及び医学技術分野の業者が認めるであろうその他の要因に応じて決まる。一般に0.1mg/kg〜100mg/kg体重/日の間の量の活性成分が、負帯電したポリマーの効能に応じて投与される。
【0122】
本発明の核酸分子及びそれらの製剤は、経口、局所的、非経口、吸入若しくは噴霧により、又は経直腸的に、従来の無毒の医薬として許容し得る担体、補助剤及びビヒクルを含有する、単位剤形で投与されることができる。本明細書において使用される用語非経口は、経皮、皮下、血管内(例えば静脈内)、筋肉内、又は髄腔内の注射又は輸液技術などを含む。加えて、本発明の核酸分子及び医薬として許容し得る担体を含有する医薬製剤が提供される。本発明の1種以上の核酸分子は、1種以上の無毒の医薬として許容し得る担体及び/又は希釈剤及び/又は補助剤、及び望ましいならば他の活性成分と会合して存在することができる。本発明の核酸分子を含有する医薬組成物は、例えば、錠剤、トローチ剤、舐剤、水性若しくは油性懸濁剤、分散性散剤若しくは顆粒剤、乳剤、硬若しくは軟カプセル剤、又はシロップ剤又はエリキシル剤など、経口使用に適した形状であることができる。
【0123】
本発明の核酸組成物は、標的遺伝子(例えばSTAT5)の同じ若しくは異なる領域を標的とするか、又は関心対象の他の遺伝子を標的とする他の核酸組成物と組合せて使用することができる。本発明の核酸組成物は、化学療法、放射線治療、又は小型分子投薬計画などの様々な治療モダリティのいずれかと組合せて使用することもできる。
【0124】
経口使用が意図された組成物は、医薬組成物の製造に関する当該技術分野において公知の任意の方法に従い調製することができ、かつそのような組成物は、医薬として洗練されかつ味の良い調製品を提供するために、そのような甘味剤、香味剤、着色剤又は保存剤を1種以上含むことができる。錠剤は、本活性成分を、錠剤の製造に適している無毒の医薬として許容し得る賦形剤との混合物中に含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムなどの、不活性希釈剤;例えばトウモロコシデンプン、又はアルギン酸などの、造粒剤及び崩壊剤;例えばデンプン、ゼラチン又はアカシアゴムなどの、結合剤;及び、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクなどの、滑沢剤であることができる。これらの錠剤は、コーティングされないか、又は公知の技術によりコーティングされてよい。場合によっては、そのようなコーティングは、公知の技術により調製され、胃腸管における崩壊及び吸収を遅延し、これにより長い期間にわたる持続作用を提供することができる。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの徐放化剤を利用することができる。
【0125】
経口使用のための製剤は、本活性成分が、不活性固形希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセル剤、又は本活性成分が、水若しくは油媒体、例えばピーナッツ油、流動パラフィン若しくはオリーブ油と混合されている軟ゼラチンカプセル剤として提示することもできる。
【0126】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤との混合物中に、本活性物質を含有する。そのような賦形剤は、懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピル(hydropropyl)-メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアカシアガムなどであり;分散又は湿潤剤は、天然のホスファチド、例えばレシチンなど、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばポリオキシエチレンステアレート、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノールなど、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレン(polyethylene)ソルビタンモノオレエートであることができる。この水性懸濁剤は、例えばp-ヒドロキシ安息香酸エチル又はn-プロピルなどの1種以上保存剤、1種以上の着色剤、1種以上の香味剤、及びショ糖又はサッカリンなどの1種以上の甘味剤も含有することができる。
【0127】
油性懸濁剤は、本活性成分を、植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナツ油中、又は流動パラフィンなどの鉱油中に懸濁することにより、製剤されることができる。この油性懸濁剤は、増粘剤、例えば蜜ろう、固形パラフィン又はセチルアルコールを含有することができる。甘味剤及び香味剤を添加し、味の良い経口調製物を提供することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化物質の添加により保存することができる。
【0128】
水の添加による水性懸濁剤の調製に適した分散可能な散剤及び顆粒剤は、分散又は湿潤剤、懸濁化剤及び1種以上の保存剤との混合物中の活性成分を提供する。好適な分散若しくは湿潤剤又は懸濁化剤は、先に言及されたものにより例示される。追加の賦形剤、例えば甘味剤、香味剤及び着色剤も存在することができる。
【0129】
本発明の医薬組成物は、水中油型乳剤の形状であることもできる。この油相は、植物油又は鉱油又はこれらの混合物であることができる。好適な乳化剤は、天然のガム、例えばアカシアガム又はトラガカントガムなど、天然のホスファチド、例えば大豆、レシチンなど、並びに脂肪酸及びヘキシトール無水物由来のエステル又は部分エステル、例えばソルビタンモノオレエートなど、並びに該部分エステルのエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートである。本乳剤は、甘味剤及び香味剤も含有することができる。
【0130】
シロップ剤及びエリキシル剤は、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、グルコース又はショ糖と製剤することができる。そのような製剤は、鎮痛薬、保存剤及び香味剤及び着色剤も含有することができる。本医薬組成物は、滅菌注射用水溶液又は油性懸濁液の形状であることができる。この懸濁液は、先に言及されているような好適な分散又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用し、当該技術分野において公知のように製剤することができる。滅菌注射用調製物は、例えば1,3-ブタンジオールの溶液のような、無毒の非経口的に許容し得る希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液であることもできる。中でも利用することができる許容し得るビヒクル及び溶媒は、水、リンゲル液、及び等張の塩化ナトリウム溶液である。加えて、無菌の不揮発油が、溶媒又は懸濁媒体として慣習的に利用される。この目的に関して、合成モノ-又はジグリセリドを含む任意の銘柄の不揮発油を利用することができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸は、注射可能な調製物における使用が認められる。
【0131】
本発明の核酸分子は、例えば、本薬物の直腸投与のために、坐薬の形状で投与されることもできる。これらの組成物は、常温では固体であるが直腸温度では液体であり、その結果直腸内で溶融し薬物を放出するような、好適な非刺激性賦形剤と、本薬物を混合することにより、調製できる。このような物質は、カカオバター及びポリエチレングリコールを含む。
【0132】
本発明の核酸分子は、無菌媒体中で非経口的に投与できる。使用されるビヒクル及び濃度に応じて、本薬物は、ビヒクル中に懸濁されるか又は溶解されるかのいずれかであることができる。有利なことに、局所麻酔薬、保存剤及び緩衝化剤などの補助剤を、ビヒクル中に溶解することができる。
【0133】
1日に体重1kg当たり約0.01mg〜約140mgの桁の用量レベルが、本明細書に記載された疾患状態の治療において有用である(1日に1患者若しくは1被験体当たり約0.5mg〜約7g)。単独剤形の製造のために担体物質と組合せることができる活性成分の量は、治療される宿主及び特定の投与様式に応じて変動する。単位剤形は一般に、活性成分約1mg〜約500mgを含有する。
【0134】
任意の特定の患者又は被験体に関する具体的な投与量レベルは、利用される具体的な化合物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時刻、投与経路、及び排泄率、併用薬及び治療を受ける特定の疾患の重症度を含む、様々な要因に応じて決まることが理解される。
【0135】
非ヒト動物への投与に関して、本組成物は、動物用飼料又は飲料水に添加することもできる。この動物用飼料組成物又は飲料水組成物を製剤することは、動物がその食餌と一緒に本組成物を治療的に適量摂取するために、好都合であり得る。本組成物を、飼料又は飲料水へ添加するためのプレミックスとして提示することも都合がよいであろう。
【0136】
本発明の核酸分子は、全般的な治療効果を増大するために、他の治療的化合物と組合せて、被験体へ投与することもできる。適応症を治療するための複数の化合物の使用は、有益な作用を増大する一方で、副作用の存在を減少することができる。
【0137】
本発明の核酸-ベースのインヒビターは、直接添加されるか、又はカチオン性脂質と複合体化されるか、リポソーム内に封入されるか、又はそうではない場合標的細胞若しくは組織へ送達されることができる。この核酸又は核酸複合体は、生体ポリマー中にそれらを取り込むか又は取り込まずに、エクスビボにおいて関連組織へ、又は注射若しくは注入ポンプによりインビボにおいて、局所的に投与されることができる。
【0138】
本発明のsiRNA分子は、STAT5を発現している障害を有するか又は有するリスクがあることが疑われる被験体において、該障害を治療又は予防する方法において使用されることができ、これは本明細書に記載されたsiRNA分子の1種以上を、被験体へ投与し、これにより該障害を治療又は予防することを含む。これに関して、本方法は、配列番号:1-250に提供されたものなどの、本明細書に記載されたような1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又はそれよりも多いsiRNA分子、又はそれらのdsRNAを投与することにより、本明細書に記載されたような疾患を治療することを提供する。
【0139】
本発明は、ポリペプチド、又はそれらの変種の発現を妨害する方法であって、該ポリペプチドを発現することが可能である細胞を少なくとも1種含む被験体を、siRNAポリヌクレオチドと、該ポリペプチドの発現を妨害するのに十分な時間及び条件下で接触させることを含む、前記方法も提供する。
【0140】
本発明の核酸分子は、個別に又は他の薬物と一緒に又は組合せて、STAT5の変更された発現及び/又は活性に関連した疾患又は状態を治療するために、使用することができる。従って、本明細書に記載された小核酸分子は、例えば、被験体又は生物において、STAT5遺伝子の発現若しくは活性に関連した様々な癌、心疾患、炎症疾患及び炎症の軽減、代謝障害及び/又は他の疾患の状況、状態若しくは形質を予防、阻害又は軽減するための組成物を提供する上で、有用である。
【0141】
これに関して、本発明の核酸分子は、STAT5発現の調整に反応する、脳、食道、膀胱、子宮頸部、乳房、肺、前立腺、結腸直腸、膵臓、頭頚部、前立腺、甲状腺、腎臓、及び卵巣の癌、メラノーマ、多発性骨髄腫、リンパ腫、白血病、神経膠腫、膠芽細胞腫、多剤耐性の癌、及び他の癌性疾患、心疾患(例えば、心筋症、心臓血管疾患、先天性心疾患、冠動脈性心臓病、心不全、高血圧性心疾患、炎症性心疾患、心臓弁膜症)、炎症疾患、又は他の状態を治療、予防、阻害又は軽減するために使用することができる。本発明の組成物は、遺伝性代謝障害を含む、多くの公知の代謝障害のいずれかを治療する方法において使用することもできる。治療され得る代謝障害は、糖尿病、高脂血症、乳酸アシドーシス、フェニルケトン尿症、チロシン血症、アルカプトン尿症(alcaptonurta)、イソ吉草酸血症、ホモシスチン尿症、尿素回路障害、又は有機酸代謝障害、プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症、1型グルタル酸尿症、酸性リパーゼ疾患、アミロイド症、バース症候群、ビオチニダーゼ欠損症(BD)、カルニチンパルミトイル基転移酵素II欠損症(CPT-II)、中心性橋髄鞘融解症、筋ジストロフィー、ファーバー病、G6PD欠損症(グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、ガングリオシドーシス、トリメチルアミン尿症、レッシュ・ナイハン症候群、脂質蓄積症、代謝性ミオパチー、メチルマロン酸尿症(MMA)、ミトコンドリアミオパチー、MPS(ムコ多糖症)及び関連疾患、ムコリピド症、ムコ多糖症、複合CoAカルボキシラーゼ欠損症(MCCD)、非ケトン性高グリシン血症、ポンペ病、プロピオン酸血症(PROP)、及びI型糖原病を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0142】
本発明の組成物は、非限定的に、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性腸疾患、強直性脊椎炎、ライター症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性紅斑性狼瘡、乾癬、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、変形性関節症、又は多発性硬化症などの、炎症疾患を有するか若しくはそれを発症するリスクがあると疑われる個体において、炎症疾患を治療若しくは予防する方法、又は炎症疾患を治療する方法において使用することもできる。本発明の組成物は、炎症を軽減する方法においても使用することができる。
【0143】
本発明の核酸分子は、STAT5の変更された活性及び/又は発現に関連した疾患又は状態を、そのような疾患又は状態の発症のリスクが疑われる個体において予防するために、個別に又は他の薬物と一緒に若しくは組合せて使用することができる。例えば、STAT5の発現レベルに関連した疾患又は状態を治療又は予防するために、当業者に明らかであるように、治療に適した条件下で個別に又は1種以上の薬物と一緒に、該疾患又は状態を有する被験体か、又は該疾患若しくは状態を発症するリスクがあると疑われる被験体を、治療することができるか、又は他の好適な細胞を治療することができる。従って本発明は、STAT5発現の調整に反応する疾患又は状態を治療又は予防する方法であって、配列番号:1-250に示されたものなどの、本発明の核酸分子の1種以上を含有する組成物の有効量を、それを必要としている被験体へ投与することを含む、前記方法を提供する。一実施態様において、本発明は、STAT5の発現に関連した疾患を治療又は予防する方法であって、配列番号:1-250に提供されたものなどの、本発明の核酸分子のいずれか1種以上の有効量を、それを必要としている被験体へ、投与し、その結果該被験体におけるSTAT5の発現がダウンレギュレーションされ、これによりSTAT5の発現に関連した疾患を治療又は予防することを含む、前記方法を提供する。これに関して、本発明の組成物は、STAT5発現の調整に反応する、1種以上の本明細書に記載された疾患又は他の状態を治療又は予防する方法において、使用することができる。
【0144】
更なる実施態様において、本明細書において考察された状態又は疾患を治療するために、単離されたsiRNAなどの、本発明の核酸分子は、他の公知の治療と組合せて使用することができる。例えば、記載された分子は、STAT5発現の調整に反応する様々な癌、心疾患、炎症疾患及び炎症の軽減、代謝障害及び他の状態を治療するための1種以上の公知の治療薬との組合せで使用することができる。
【0145】
本明細書に記載されたようにSTAT5の発現に関連した疾患又は障害を有する被験体、又は有するリスクがあると疑われる被験体を同定するための組成物及び方法は、公知である。
【実施例】
【0146】
(実施例)
(実施例1 ヒトSTAT5発現の阻害のためのsiRNA候補分子)
STAT5 siRNA分子は、試験されたアルゴリズムを用い、かつ下記表1に示されたようなヒト及びマウスSTAT5遺伝子に関する公表された入手可能な配列を用いて、デザインされた:
【0147】
【表1】

【0148】
代表的配列を選択するために使用されるその他のhSTAT5A配列は、以下を含む:L41142、DQ471288、BC027036、U43185、AB208972、BC027036.1。代表的配列を選択するために使用されるその他のmStat5a配列は、以下の寄託番号を含む:AK090254.1、BC056647.1、AY299492.1、AY299491.1、AK178807.1、AK177615.1、AK154070.1、AK134012.1、U36502.1、U21103.1、Z48538.1、BC008998.1、BC013274.1。代表的配列を選択するために使用されるその他のhSTAT5B配列は、以下の寄託番号を含む:BC065227.1、AB208920.1、U48730.2、BC020868.1、BC029072.1。代表的配列を選択するために使用されるその他のmStat5b配列は、以下の寄託番号を含む:AK088966.1、AK009277.1、AK195662.1、AK191910.1、AK190610.1、AK150098.1、AK137889.1、AK037942.1、AK154664.1、AK154014.1、U21110.2、Z48539.1、AK004071.1、BC024319.1、AY044903.1、AY044902.1、AY044901.1、AY0429906.1、AY040231.1。
【0149】
ヒトSTAT5A遺伝子とSTAT5B遺伝子は、それらのコード領域内に高度の同一性を共有しているので、siRNA分子は、hSTAT5A及びhSTAT5Bの両方を阻害することができるようにデザインされた。従ってsiRNA分子の5群は、hSTAT5A/hSTAT5B及びマウスStat5の阻害のためにデアザインされ、かつ標準技術を用いて合成された。候補siRNA分子は、下記表2-6に示されている。
【0150】
【表2−1】

【表2−2】

【0151】
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【0152】
【表4】

【0153】
【表5−1】

【表5−2】

【表5−3】

【表5−4】

【0154】
【表6】

【0155】
表2-6に説明されかつ配列番号:1-250に示されたsiRNA分子は、ヒト及びマウスのSTAT5A及びSTAT5Bの発現を調整するために使用することができ、かつ例えば、被験体又は生物におけるSTAT5遺伝子の発現又は活性に関連した様々な癌、心疾患、炎症疾患及び炎症の軽減、代謝障害及び/又は他の疾患の状況、状態、又は形質の治療などの、様々な治療的設定において有用である。
【0156】
(実施例2 STAT5発現の阻害に関するsiRNA候補分子のインビトロ試験)
本実施例は、ヒト癌細胞株におけるSTAT5A及びSTAT5B発現の阻害に関するsiRNA候補のインビトロ試験を示す。
合計48種の平滑末端化された25-merヒトSTAT5 siRNAを、ヒト肝細胞系肝癌細胞株HepG2において、トランスフェクトされた細胞におけるSTAT5 mRNAのノックダウンにおけるそれらの効力に関して、試験した。48種のsiRNAにおいて、24種のsiRNA(#1-24、表7)は、STAT5A mRNAのノックダウンにおけるそれらの効力について試験し、24種のsiRNA(#25-48、表8)は、STAT5B mRNAのノックダウンにおけるそれらの効力について試験し、STAT5A及びSTAT5Bの両方を標的化するsiRNA群(表9)は、STAT5A及びSTAT5B両mRNAのノックダウンにおけるそれらの効力について試験した。STAT5ノックダウン実験の陰性対照として、25-mer活性Luc-siRNAを使用した。
【0157】
【表7−1】

【表7−2】

【0158】
【表8−1】

【表8−2】

【表8−3】

【0159】
【表9】

【0160】
全てのsiRNAトランスフェクションは、リポフェクタミン(登録商標)RNAiMAX(Invitrogen社、カールスバッド, CA)を製造業者の指示に従い96-ウェルプレートフォーマットで使用し、siRNA濃度10nMで、逆トランスフェクションプロトコールを用いて行った。siRNAトランスフェクション後48時間で、トランスフェクトされたHepG2細胞を収集し、かつ総RNAを、Cell-to-Ctアッセイキット(ABI社, フォスターシティ, CA/Invitrogen社, カールスバッド, CA)を用いて調製した。トランスフェクトされたHepG2細胞におけるヒトSTAT5A又はSTAT5B mRNAの相対レベルを、RT-PCRプロトコール及びヒトSTAT5A又はSTAT5B遺伝子発現アッセイ(ABI社)を用いてアッセイした。STAT5A又はSTAT5B mRNAのノックダウン率(%)は、偽トランスフェクション対照に対して算出した。
【0161】
試験したsiRNAの大半は、トランスフェクトされたHepG2細胞におけるヒトSTAT5 mRNAレベルのノックダウンにおける高い効力を示した(図1)。STAT5Aについて試験した29種のsiRNAの中で、10種のsiRNAが、トランスフェクトされたHepG2細胞におけるSTAT5A mRNAの70%よりも大きいノックダウンを示した(図1)。STAT5Bについて試験した32種のsiRNAのうちで、11種のsiRNAが、トランスフェクトされたHepG2細胞におけるSTAT5B mRNAの70%よりも大きいノックダウンを示した(図2)。STAT5A及びSTAT5Bの両方について試験した13種のsiRNAの中で、5種のsiRNAが、トランスフェクトされたHepG2細胞におけるSTAT5A及びSTAT5B mRNAの50%よりも大きいノックダウンを示した(図3)。
【0162】
従って、本実施例は、本発明のsiRNAは、STAT5A及び/又はSTAT5Bの発現を効率的にダウンレギュレートするために使用することができ、かつ本明細書に説明されたような様々な治療的適用において有用である事を示している。
【0163】
本明細書において言及され及び/又は出願データシートに列挙された米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許文献は全て、それらの全体が、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0164】
前述のことから、本発明の具体的実施態様は本明細書において例証を目的として説明されているが、本発明の精神及び範囲から逸脱しない限りは、様々な修正を行うことができることは理解されるであろう。従って本発明は、添付された「特許請求の範囲」によるものを除き、限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:5、6、37-40、21、22、49、50、77、78、59、60-62、65、66、33、34、23、24、143、144、167、168、215、216、219及び220からなる群から選択されるヌクレオチド配列、並びにそれらに相補的なポリヌクレオチドを少なくとも1種含む、単離された低分子干渉RNA(siRNA)ポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号:1-250からなる群から選択されるヌクレオチド配列を少なくとも1種含む、単離された低分子干渉RNA(siRNA)ポリヌクレオチド。
【請求項3】
配列番号:1-250からなる群から選択されるヌクレオチド配列及びそれらに相補的なポリヌクレオチドを少なくとも1種含む、請求項2記載のsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項4】
STAT5ポリペプチドが、配列番号:255-258に示されているか、又は配列番号:251-254に示されたポリヌクレオチドによりコードされた、アミノ酸配列を含む、STAT5ポリペプチドの発現を阻害する、請求項2又は請求項3のいずれか1項記載の低分子干渉RNAポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、配列番号:1-250に示された配列又はそれらの相補体からなる群から選択される配列の任意の位置で、1、2、3又は4個のヌクレオチドが異なる、請求項1〜3のいずれか1項記載のsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記siRNAポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、配列番号:1-250に示された配列からなる群から選択される配列のアンチセンス鎖の5'末端とセンス鎖の3'末端の間で少なくとも1つのミスマッチの塩基対が異なる、請求項3記載のsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記ミスマッチの塩基対が、G:A、C:A、C:U、G:G、A:A、C:C、U:U、C:T、及びU:Tからなる群から選択される、請求項6記載のsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記ミスマッチの塩基対が、アンチセンス鎖の5'末端とセンス鎖の3'末端の間にゆらぎ塩基対(G:U)を含む、請求項6記載のsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチドが、天然のヌクレオチドの合成ヌクレオチドアナログを少なくとも1種含む、請求項1〜3のいずれか1項記載のsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記ポリヌクレオチドが、検出可能な標識に連結されている、請求項1〜3のいずれか1項記載のsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項11】
前記検出可能な標識が、レポーター分子である、請求項10記載のsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記レポーター分子が、色素、放射性核種、発光基、蛍光基、及びビオチンからなる群から選択される、請求項11記載のsiRNA。
【請求項13】
前記検出可能な標識が、磁気粒子である、請求項12記載のsiRNAポリヌクレオチド。
【請求項14】
前記siRNA分子が、配列番号:251-254に提供された配列、又は転写活性を有するそれらの変種を標的化する核酸を含む、STAT5遺伝子の発現を阻害する単離されたsiRNA分子。
【請求項15】
前記siRNAが、配列番号:1-250に提供された1本鎖RNA配列又はそれらの2本鎖RNAのいずれかひとつを含む、請求項14記載のsiRNA分子。
【請求項16】
前記siRNA分子が、RNA干渉(RNAi)を介して、STAT5遺伝子の発現をダウンレギュレートする、請求項15記載のsiRNA分子。
【請求項17】
請求項1、2、3、14及び15のいずれか1項記載のsiRNAポリヌクレオチドの1種以上、並びに生理的に許容し得る担体を含有する、組成物。
【請求項18】
前記組成物が、正帯電したポリペプチドを含有する、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記正帯電したポリペプチドが、ポリ(ヒスチジン-リジン)を含む、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
標的化部分を更に含有する、請求項17〜19のいずれか1項記載の組成物。
【請求項21】
癌を有するか又は癌を有するリスクがあると疑われる被験体において、癌を治療又は予防する方法であって、該被験体に、請求項17〜19のいずれか1項記載の組成物を投与し、それにより癌を治療又は予防することを含む、前記方法。
【請求項22】
STAT5の合成又は発現を阻害する方法であって、STAT5を発現している細胞を、1種以上のsiRNA分子と接触させることを含み、ここでこれらの1種以上のsiRNA分子が、配列番号:1-250に提供された配列から選択された配列、又はそれらの2本鎖RNAを含む、前記方法。
【請求項23】
STAT5をコードしている核酸配列が、配列番号:251-254に示された配列を含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
被験体における癌の重症度を軽減する方法であって、該被験体に、請求項17〜19のいずれか1項記載の組成物を投与し、それにより癌の重症度を軽減することを含む、前記方法。
【請求項25】
低分子干渉RNA(siRNA)の転写を指示することが可能である核酸を含む、組換え核酸構築体であって、該核酸が:
(a)第一のプロモーター;(b)第二のプロモーター;並びに、(c)(i)配列番号:1-250のいずれか1つに示されたヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、及び(ii)(i)のポリヌクレオチドに相補的である少なくとも18ヌクレオチドのポリヌクレオチド:からなる群から選択される少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、少なくとも1種のDNAポリヌクレオチドセグメント:を含み、ここで該DNAポリヌクレオチドセグメントが、前記第一及び第二のプロモーターの少なくとも1つに機能的に連結され、かつ該プロモーターが、該DNAポリヌクレオチドセグメント及びそれらの相補体の転写を指示するように方向づけられている、前記組換え核酸構築体。
【請求項26】
前記第一のプロモーターへ機能的に連結された第一のエンハンサー及び前記第二のプロモーターへ機能的に連結された第二のエンハンサーから選択されるエンハンサーを少なくとも1つ含む、請求項25記載の組換え核酸構築体。
【請求項27】
(i)前記第一のプロモーターにより指示された転写を終結するために前記構築体中に配置されている第一の転写ターミネーター、及び(ii)前記第二のプロモーターにより指示された転写を終結するために該構築体中に配置されている第二の転写ターミネーター:から選択される転写ターミネーターを少なくとも1つ含む、請求項25記載の組換え核酸構築体。
【請求項28】
請求項25〜27のいずれか1項記載の組換え核酸構築体により形質転換又はトランスフェクトされた、単離された宿主細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−538661(P2010−538661A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525110(P2010−525110)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/076712
【国際公開番号】WO2009/039199
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(510073017)イントラドイグム コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】