説明

Smad7に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)及びその医療分野での使用

本発明は、好適に修飾されたSmad7に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド配列(ODN)と、それら配列の、医療分野における、特に、クローン病や潰瘍性大腸炎のような慢性炎症性腸疾患の処置における治療用生物薬剤としての使用とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Smad7に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)及びその医療分野での使用に関する。
【0002】
特に本発明は、好適に修飾されたSmad7アンチセンスODN配列に言及し、これは、Smad7発現の特異的阻害という驚くべき生物活性を示し、したがって、治療用生物薬剤として医療分野において、特に慢性炎症性腸疾患(IBD)の処置において使用可能である。
【背景技術】
【0003】
クローン病(CD)及び潰瘍性大腸炎(UC)は、ヒトにおいて主要な形態の慢性炎症性の腸疾患である。両疾患は、複合的な臨床実体であり、その病原は、様々な遺伝性、環境性及び免疫性因子の間での相互作用に強く依存している。
【0004】
CD及びUCは、病態生理学及び臨床レベルの両方において明確な差異を示すが、苦しむ患者に対する治療アプローチは多くの共通要素を有する。たとえ薬理学的な処置が第1の有力なアプローチを代表するとしても、病変の広がりやタイプ、及び合併症の種類など、臨床症状の多様性は治療法の選択に影響を及ぼす。
【0005】
サリチルアゾスルファピリジン及び5−アミノサリチル酸は、軽い形態のIBDの扱いにおいて及び緩解維持療法において実証済みの効力を有する薬である。
【0006】
中程度から重度の活性を有する相において、及び全身性の状態を伴う場合においては、コルチコステロイドの使用に移ることが必要である。主要な世界各国の病歴の中長期的な解析によれば、臨床的緩解は、コルチコステロイドを受けた患者の3分の2においてのみ得られ、それらの患者の50%においてのみ、薬の中断後にいかなる再発も起きないようである。
【0007】
コルチコステロイドの継続的投与は、薬物依存徴候を誘導することに加えて、非常に高い副作用の危険性のためにさらに厄介なものになる。
【0008】
免疫抑制処置も、しばしばコルチコステロイド療法とともに又はその代わりに用いられるが、炎症の封じ込めや症状の制御を常に保証するものではなく、さらには、多数の禁忌及び重度の副作用という不利点を有する(Podolsky、2002年)。
【0009】
1990年代に利用可能になった新薬の世代に生物薬剤がある。IBD自然史及び主要な病態生理学的機構についてのより詳しい知識は、具体的な医療介入の舵取りに貢献している。このように、特定の炎症「経路」を制御することを狙った生物療法の発展は、組換えのヒトタンパク質、モノクローナルキメラのヒト化抗体及び融合タンパク質を用いることによって起こった。その中で、CDの処置においてより良い効力を示した薬剤は、TNF−α、即ちIBDの罹患中に過剰生産される炎症性サイトカインのひとつをブロックするように向けられたモノクローナルキメラ抗体である(Seegersら、2002年)。この化合物は、現在のところ臨床試験の第四相にあるが、処置患者の約60〜70%において炎症封じ込めに有効である。しかしながら、幾つかの副作用が、かなりの発生頻度をもって、指摘されており、潜伏性の微生物感染の再活性化、過敏症徴候及び自己抗体の形成において確認もできている。後者の現象は、抗TNF−αが、多数の生物学的機能を有するサイトカインTNF−αを中和するという事実に基づいていることもありうる。
【0010】
炎症についての効果に加えて、TNF−αは、免疫寛容の誘導と維持に関与する機構に対しても役割を持っている。したがって、TNF−α活性のブロックは、逆説的であるが、過剰な免疫学的反応を促進しうるのである(Sandbornら、2002年)。
【0011】
これら全ての所見は、そのような病態に対する、より優れたそして長期的に耐えうる処置に用いられる新たな有効成分を同定することが可能なIBDの動物モデルについての新たな研究の必要性を示唆する(Fiocchi、2001年)。
【0012】
例えば、IL−10のごとき抗炎症サイトカインの投与のような他の生物療法と同様、抗TNF−α処置は、炎症細胞から分泌される分子の生物学的効果を制御することを狙った治療細胞外アプローチを代表する。
【0013】
サイトカインとその受容体との相互作用によって活性化されるシグナル伝達経路の研究は、重要な炎症性及び非炎症性分子の細胞内発現を特異的且つ選択的に変調することができる新たな治療戦略を用いる見込みを示した。
【0014】
通常の条件下で、腸粘膜は、「生理学的に」炎症性の浸潤物の座位であり、炎症性及び抗炎症性の分子の間の微妙なバランスによって維持されている。
【0015】
上記に関係して、TGF−β1、即ち多くの免疫性及び非免疫性の細胞の成長、分化及び活動を調節することができる多機能サイトカインによって、重要な役割が果たされている。
【0016】
インビトロ及びインビボ研究の両方が、TGF−β1は粘膜性の腸の炎症を制御することができる強力な免疫調節物質として働き、その活性の阻害は、CD又はUCとの免疫形態学的類似性を示す大腸炎の発生という結果になることを実証している(Powrie F.ら、1996年;Neurath M.Fら、1996年;Ludviksson B.R.ら、1997年)。
【0017】
実際、TGF−β1遺伝子欠損マウスは、やはり腸を含む重度の多巣性炎症応答を見せ、これは、多数のタイプの細胞による過剰な炎症性サイトカイン生産と関連がある(Shull M.M.ら、1992年;Christ M.ら、1994年)。
【0018】
同様に、マウスにおいてTGF−β1受容体RIIの優性のネガティブ変異体を発現させることによるTGF−β1シグナル伝達の阻害は、実験上の大腸炎の発生に対する感受性が増大するという結果になる。(Hahm K.B.ら、2001年)。
【0019】
最後に、T細胞における優性ネガティブTGF−β受容体タイプIIの発現によるTGF−β1シグナル伝達の特異的阻害は、肺及び結腸における重度の炎症性浸潤並びに循環性の自己免疫抗体の存在を特徴とする自己免疫疾患を引き起こすことを示した(Gorelik L.ら、2000年)。これらのデータは、1つの抗炎症性分子の活性の喪失が、腸の恒常性を改変するためにそして組織障害につながる免疫応答を許容するために十分でありうることを示唆する。
【0020】
TGF−β1の抗炎症活性は、該分子の、TGF−β1 R1とTGF−β1 R2とそれぞれ名付けられた2つのサブユニットからなるヘテロ二量体膜貫通セリン/スレオニンキナーゼ受容体の複合体との相互作用によって始まる。TGF−β1が結合すると、該受容体は、上記複合体内で相対的に回転して、リン酸転移プロセスが起き、続いて、構成的に活性且つ自己リン酸化の可能なTGF−β1 R2によるTGF−β1 R1の活性化が起きる。
【0021】
TGF−β1誘発されたシグナルの核への伝播は、Smadファミリーに属するタンパク質によって媒介される。活性化されたTGF−β1 R1は、Smad2及びSmad3タンパク質を直にリン酸化し、該タンパク質はSmad4と相互作用することが可能になり、こうして、複合体Smad2−3/Smad4が核に転位置することを可能にし、核において幾つかの遺伝子の転写調節に関与する(Heldin C−H.ら、1997年)。
【0022】
TGF−β1抗炎症活性におけるSmad3の役割は、動物モデルにおける研究によって支持されており、Smad3のコード遺伝子の欠失が、TGF−β1に対する細胞応答性の減弱と関連があり、及び胃腸レベルでの化膿性の膿瘍形成とT細胞の大量の浸潤とを特徴とする炎症性疾患の関連発生と関連があることが示されている(Yang X.ら、1999年)。
【0023】
また、他の細胞内タンパク質、例えばSmad7も、Smadタンパク質ファミリーに属している。そのようなTGF−β1 R1を占拠するタンパク質は、受容体へのSmad2/Smad3の結合に干渉して、リン酸化及び活性化を阻止する。それ故、Smad7タンパク質の増大した発現は、TGF−β1媒介シグナル伝達の阻害と関連がある(Hayashi H.ら、1997年)。
【0024】
IBD患者からの腸粘膜におけるTGF−β1発現の評価は、前記分子生産が、正常な患者からの内臓において証明されうるものに比べて、逆説的であるが、増大されることを示した(Lawrance IC.ら、2001年)。
【0025】
最近の論文において、本発明の発明者は、IBD患者からの粘膜試料は、高レベルのSmad7と、低減されたレベルの活性Smad3とを特徴としているが、これによって、IBDの罹患中には、TGF−β1媒介のシグナル伝達の機構が損なわれていることを指し示すことを示している。本発明の発明者はまた、特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド5’−GTCGCCCCTTCTCCCCGCAGC−3’(配列番号1)による選択的Smad7抑止は、TGF−β1に対する粘膜固有層単核細胞(LPMC)応答性を修復し、その結果、例えばTNF−αのような、炎症性サイトカイン生産の下方調節が起きることを示した。
【0026】
さらに、IBD患者からの腸粘膜試料で実行されたエキソビボ実験もまた、Smad7アンチセンスODNの投与が、TGF−β1シグナル伝達機構を修復するとともに、減弱されたサイトカイン生産を許容することを示した(Monteleoneら、2001年)。
【0027】
IBD罹患中に、腸粘膜は多数のT細胞で浸潤される。これらの細胞は、そのような疾患で働く組織傷害の主要な介在物であるとみなされる。
【0028】
IBD患者からの腸粘膜におけるT細胞の増大した個数は、部分的には、それら細胞の死(アポトーシス)を誘導する刺激に対するそれら細胞の抵抗性に依存する。
【0029】
T細胞のアポトーシスのブロックは、IBD罹患中に粘膜炎症応答で鍵となる役割を果たすと考えられている(Boirivantら、1999年)。確かに、T細胞死を増大させることは、腸の炎症を解消することと関連がある。IBDにおけるアポトーシスに対するT細胞の抵抗性の基礎をなす明確な機構は、局所的に放出されるサイトカインが関与しているように見受けられるとしても、まだ知られてはいない。
【0030】
細胞培養インビトロ実験及びインビボ研究からのデータは、TGF−β1はT細胞死を防ぐこともその引き金を引くこともできること、及び両応答を媒介する該因子の能力が部位特異的であることを示唆する(Han SH.ら、1998年;Arsura M.ら、1996年)。
【0031】
Smad3ノックアウトマウスは、腸レベルでの炎症細胞の個数に大きな増加を示し、これによって、腸レベルでの腸のT細胞アポトーシスを制御することにおけるTGF−β1の役割を示唆する(Yangら、1999年)。
【0032】
したがって、Smad7合成アンチセンスODNの使用によるSmad7阻害は、上記のように、TGF−β1に対するT細胞の応答性を修復することから、慢性炎症性疾患、特にIBDに対する新規で且つ容認される「内在性の」生物療法的アプローチを代表するかもしれない。
【0033】
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)は、上記特定の狙った阻害作用の標的タンパク質をコードする伝令RNA(mRNA)に相補的な短い合成オリゴヌクレオチド配列である。そのような配列は、該mRNAとハイブリッド形成し、二本鎖ハイブリッド形質を成し、これが、天然ではDNA複製の引き金を引くために発生するDNA/RNAハイブリット鎖を分解するRNアーゼHのような広く存在する触媒酵素の活性化につながり、これによって、タンパク質翻訳が阻止される。
【0034】
上記ODNとハイブリッド形成するための最も好適なmRNA領域及び配列の選択は、転写開始領域5’及びスプライシング領域に相補的なODNが通常はより有効であるという結果になるとしても、経験的な特性を有する。可能な標的部位を同定した後で注目すべき数のアンチセンスODNを設計することは、当該分野の専門会社が所有する最近の進歩した自動合成技術のおかげで、困難をもたらすことはない。
【0035】
逆に、可能な治療的応用のための、より活性の高いODNの同定は、定量的な試験において効力アッセイを通じた長期のスクリーニング作業を必要とする。上記に関係して、Smad7を含めた特定の標的に対するアンチセンスODN配列が既に知られている(米国特許第6,159,697、譲受人:ISIS Pharmaceuticals Inc.)。
【0036】
インビトロ及びインビボの両方での遺伝子調節のためのアンチセンスODNの使用は、多陰イオン性でありしたがって親水性であるというこれら分子の性質のために細胞膜を通過することが困難であること、及び急速な酵素的分解のような、幾つかの問題によって妨げられる。
【0037】
これらの障害を克服するためには、例えば、上記のSmad7特異的配列の場合のようにホスホロチオエート化(Monteleoneら、2001年)や、リン酸ジエステル結合の架橋酸素ではない酸素原子に換えて硫黄又は窒素原子を置換することであるホスホロアミデート化のような、アンチセンスODNの化学修飾という手段をとることが必要である。
【0038】
多くの生物工学的な製品と同様に、生物活性の実証によって潜在的な治療活性が指摘された。
【0039】
確かに、ODNは、様々な疾患の病原に関与する遺伝子及びタンパク質の両方の機能の研究においても、治療目的のためにもどちらにも用いることができる。前者の適用分野では、アンチセンス方法論は、その指針原理が簡素であることによって成功したが、インビトロからインビボ実験への移行はより複雑であり、特に、これら新薬の薬物動態学的、薬力学的及び中毒学的な側面に関して複雑である(Maggi A.、1998年)。
【0040】
例えば、本発明の発明者によって実行された先の実験に用いられたSmad7アンチセンスODN(配列番号1)は、インビトロで生物活性を示すが、インビボでは望ましくない効果の増大した危険性を示すことがありうる。実際、そのようなODNはヌクレオチドCG対を2つ含有し、これらは、ODN安定性を増大するために必須のプロセスであるホスホロチオエート化の後でCpGになる。後者は、免疫系の強力な刺激活性を備える配列であり、したがって、そのような上記ODNの使用は、クローン病及び潰瘍性大腸炎を含むいかなる免疫性の疾患の経過をも悪化させうる。
【0041】
インターロイキン12の刺激下においてTh1と名付けられたTリンパ球の特別なクラスによって媒介される病態であるクローン病の場合には特に、類似の治療アプローチを仮定することはできないであろう。確かに、IL−12合成の強力な誘導因子としてのCpG分子は、Th1細胞のさらなる発育を誘導しうるであろう。
【0042】
加えて、CpGジヌクレオチドを含有するアンチセンスODNのインビボ投与は、CpGを持たないオリゴヌクレオチドに比べて、副作用の増大した危険性を伴う。特に、脾臓、腎臓及び肝臓の細網内皮系の過形成の増大した危険性、並びに造血細胞の増大した増殖が判明している(Agrawal S.ら、2002年)。
【0043】
ODNの使用におけるもう1つの問題は、該分子は5’及び3’末端で保護されていないのでヌクレアーゼの攻撃をかなり受けやすく、その分解に由来する代謝産物の作用から結果として生じる副作用である。
【0044】
そこで、ホスホロチオエートアンチセンスODNバックボーンの、CpG対への及び5’と3’末端への化学修飾の必要性。にもかかわらず、ODN配列の上記の修飾は、Smad7合成の阻害の生物活性の低減又は損失及び、時には、インビトロ及びインビボの両方で望ましい活性の逆転につながる。
【0045】
同様に、インビボでの研究に適した実験IBDモデルを用意することが重要であろう。これによって、免疫応答の制御の損失を伴う機構とIBD病態の発症におけるその役割とについての、及びそのような応答を変調又は防止し、よって粘膜レベルでの炎症の進行を制限する可能性についての知識を拡大することが許容される。上記に関係して、TNBS媒介大腸炎は、ヒトCDとの顕著な免疫形態学的類似性を示す粘液炎症の、広範且つ妥当なモデルを代表する(Neurath M.ら、2000年)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0046】
上記を考慮に入れると、「内在性の」生物療法的アプローチ」を通じたIBDの処置用に、インビトロ及びインビボの両方で活性であるSmad7アンチセンスODNのような新たな治療用生物薬剤を用意することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0047】
本発明の発明者は、IBDの実験モデルにおいて示すSmad7発現の阻害のインビボ生物活性が、それらのインビトロ阻害活性と比較してより高くなる、好適に修飾されたアンチセンスODN配列を見出し、さらに、それは、同じ修飾を示し且つ同じモデルで試験した他の既知の配列の活性よりも高いものであることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
特に、インビボでより高い生物活性を見せるODN配列は、先の実験の過程において本発明の発明者によって用いられた、ヒトSmad7RNAの部位403を標的にしたホスホロチオエートアンチセンスODN配列である配列番号1に従って設計した。
【0049】
ヒト病態の処置用のそのようなSmad7ホスホロチオエートアンチセンスODNの潜在的且つ将来的な使用の観点から、前記配列は、既に記した免疫原性を理由に、それに含有されるCpGジヌクレオチド、以後XYとして指し示す、において修飾された。
【0050】
本発明者によって実行された研究は、様々な既知及び新規のSmad7アンチセンスODNのインビボ及びインビトロでの効力とその有りうる毒性とを試験することを許容するとともに、Smad7発現をブロックすることがIBDの実験モデルにおいて粘膜炎症の解消という結果になるかどうかを調査することを許容した。
【0051】
本発明による上記の好適に修飾されたアンチセンスODN配列は、インビボでより高い生物活性に加えて、同研究の経過において他の配列の投与の後に起きることからすると驚くほど副作用が無いことを示した。さらに、本発明によるODN配列は、リンパ性の浸潤とその後の炎症の伝播とを制限する効力を示し、これは、本件において試験した他のアンチセンスODN配列では見られなかった証拠のひとつである。
【0052】
これら実験モデルにおける研究から、生物学的な標的としてのSmad7の役割が、それの阻害の有りうる治療効果とともに明白になる。
【0053】
さらにまた、本発明の脈絡内において、IBD罹患中のT細胞アポトーシスの誘導についてのSmad7の役割が見出された。実際に、あるSmad7アンチセンスODNの使用を通じて、TGF−β1が腸のT細胞アポトーシスを調節すること、及びある欠損した因子活性がアポトーシス刺激に対する細胞の抵抗性の根拠となることが示されている。ここで、アポトーシス刺激は、粘膜炎症性応答を維持するための要因である。
【0054】
したがって、本発明の目的は、21ヌクレオチド長までのSmad7アンチセンスオリゴヌクレオチドホスホロチオエートであって、下記の配列(配列番号2)の少なくとも10ヌクレオチドの部分:
5’−GTXYCCCCTTCTCCCXYCAG−3’
(上式中、Xは、シトシンと5−メチルシトシンと2’−O−メチルシトシンからなる群から選択される窒素性塩基を含むヌクレオチドであり、Yは、グアニンと5−メチルグアニンと2’−O−グアニンからなる群から選択される窒素性塩基を含むヌクレオチドであり、但し、ヌクレオチドX又はYの少なくとも1つは、メチル化窒素性塩基を含む);
又はそれに対する相補配列を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドホスホロチオエートである。
【0055】
本発明の他の目的は、前記配列中に含まれるヌクレオシド間結合のリン原子に関するジアステレオ異性体及び鏡像異性体のような、様々なアンチセンスオリゴヌクレオチド立体異性体のオリゴヌクレオチド配列である。確かに、ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート又はメチルホスポネート(methylphosponate)であり、どちらの場合でも、4つの異なる化学基に結合したリンは、キラル中心を代表する。
【0056】
本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのメチルホスホネートヌクレオチドを前記配列中に有することができ、該メチルホスホネートヌクレオチドは、例えば、5’又は3’末端の一方のみ又は5’及び3’末端の両方に、或いは前記オリゴヌクレオチド配列に沿って位置している。
【0057】
好ましい実施形態では、前記メチルホスホネートヌクレオチドは、ヌクレオシド間結合が前記ヌクレオチドの間の結合である様態で、X又はYのどちらかにすることができる。
【0058】
前記アンチセンスODNの配列に沿って及び/又はその5’及び3’末端にさらなる修飾を施して、該分子の安定性を増大することもでき、これによって、ヌクレアーゼによる分解を防止するとともに、代謝作用に由来する望ましくない効果の危険性を低減する。
【0059】
本発明によるアンチセンスオリゴヌクレオチドはさらに、2’−O−メチルリボヌクレオチド5’−モノホスフェートである前記配列の少なくとも1つのヌクレオチドを有することができ、該2’−O−メチルリボヌクレオチド5’−モノホスフェートは、例えば、5’又は3’末端の一方のみに又は5’及び3’末端の両方に、或いは前記オリゴヌクレオチド配列に沿って位置している。
【0060】
本発明の別の目的は、アンチセンスデオキシリボヌクレオチド配列が、対応アンチセンスリボヌクレオチド配列になる様態で、2’−デオキシリボヌクレオチドがリボヌクレオチドに置き換えられており、2’−デオキシチミジンがウリジンに置き換えられている上記アンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0061】
本発明の好ましい実施形態は、配列(配列番号3):
5’−GTXGCCCCTTCTCCCXGCAG−3’
(上式中、Xは、5−メチル2’−デオキシシチジン5’−モノホスフェートである)
を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドで代表される。
【0062】
もう1つの好ましい実施形態は、配列(配列番号4):
5’−ZTXGCCCCTTCTCCCXGCAZ−3’
(上式中、Xは、5−メチル2’−デオキシシチジン5’−モノホスフェートであり、Zは、2’−デオキシグアノシンメチルホスホネートである)
を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドで代表される。
【0063】
もう1つの側面によれば、本発明の好ましい実施形態は、配列(配列番号15):
5’−ZTXGCCCCTTCTCCCXGCAZC−3’
(上式中、Xは、5−メチル2’−デオキシシチジン5’−モノホスフェートであり、Zは、2’−デオキシグアノシンメチルホスホネートである)
を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0064】
本発明によるアンチセンスODN配列は、医学分野で好都合に用いることができ、したがって、本発明の別の目的は、この分野の熟練者に知られている1種又は複数の製薬的に許容されるアジュバント及び/又は賦形剤とともに、上記開示されたアンチセンスオリゴヌクレオチドの少なくとも1つを有効成分として含む製薬組成物である。
【0065】
さらに、本発明は、Smad7発現に関連する病態の処置用の薬物の調製のための上記のアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用に関する。特に、Smad7発現に関連する病態は、例えばCD及びUCのようなIBDである。
【0066】
さて、本発明を、限定的でなく例示の目的で、同封の図面を具体的に参照して発明の好ましい実施形態に従って説明する。
【実施例1】
【0067】
本発明によるSmad7アンチセンスオリゴヌクレオチドの腸のT細胞アポトーシスへの効果についての研究
【0068】
材料と方法
アンチセンスODNの合成
全てのSmad7アンチセンスODNは、標準ホスホロアミダイト化学プロトコル(Lesiak K.ら、1993年;Xiao W.ら、1996年)を用いた自動DNAシンセサイザーを使った標準自動手法を採用してMWG Biotech AG(MWG Biotech S.r.l.、フィレンツェ(Florence))によって合成した。
【0069】
5−メチル−2’−デオキシシチジン(5−MedC)を含有するオリゴヌクレオチドは、商業的入手可能なホスホロアミダイトを用いて既知の合成方法(Sanghviら、1993年)に従って合成した。一方、メチルホスホネート基(MeP)を含有する修飾オリゴヌクレオチドの合成は、既知のプロトコル(Maier MA.ら、2002年)を用いて達成した。
【0070】
オリゴヌクレオチド分子の精製を、MWG Biotechによって開発されたHPSF技術で実行した。そのような精製方法は、例えば、n−1、n−2、n−x配列のような、標準的な精製用の典型的方法が取り除くことのできない、自動化学合成プロセス中に合成される失敗配列を取り除くことを許容するので、高い効率を見せた。
【0071】
上記の技術は、望ましくない失敗産物のない望ましい長さの配列の100%を得ることを可能にすることの他に、精製された配列には塩も金属イオンも含まれないので、その次の脱塩操作を回避することを許容する。
【0072】
いかなる塩も非存在ならば、オリゴヌクレオチドを、標準プロトコルに従ってMALDI−TOF質量分析手法で最終的に解析した(Guerlavais T.ら、2002年;Ragas JA.ら、2000年)。そして、オリゴヌクレオチドを滅菌して、得られた溶液をUV/可視光分光光度計で光学濃度(OD)として定量した。最後に、使用の前に、該分子を、滅菌したPBS1xに再懸濁した。
【0073】
全ての使用したアンチセンスODNは、ヒトとマウスの間で100%の相同性を有するSmad7 mRNA部位を標的とする。全ての下記のオリゴヌクレオチドにおいて、ヌクレオシド間の結合はホスホロチオエート結合である。
【0074】
本研究において用いられるアンチセンスODN配列は、先の実験の過程で本発明の発明者によって用いられたヒトSmad7 mRNAの部位403を標的としているホスホロチオエートアンチセンスODN配列5’−GTCGCCCCTTCTCCCCGCAGC−3’(配列番号1)に従って設計されている(Monteleoneら、2001年)。
【0075】
Smad7アンチセンスODN配列5’−MePGTMe−dCGCCCCTTCTCCCMe−dCGCAMePG−3’(配列番号4)は、ヒトSmad7 mRNAの部位403を標的とする。これは、配列番号1のCpG対に属するシトシンが5−メチルシトシン(以下Me−dCとして指し示す)で置き換えられた混合バックボーンオリゴヌクレオチドである。加えて、メチルホスホネート結合は、該分子の端に置かれた(以下、Mepとして指し示す)。
【0076】
Smad7アンチセンスODN配列5’−GTTTGGTCCTGAACATGC−3’(配列番号5)は、ヒトSmad7 mRNAの部位294を標的とする。
【0077】
粘膜試料を、中程度から重度のCDの患者6名及び重度のUCの患者4名の切除検体から取った。加えて、腸粘膜試料を、結腸癌腫のために結腸切除した無影響のIBD患者10名から取った(倫理的な承認を地方委員会から得た)。LPMCを、DTT−EDTA−コラゲナーゼ手順を用いて調製して、血清置換剤HL−1(Biowhittaker、英国ウォキンガム)を補充したRPMI 1640(Sigma−Aldrich S.r.l.、ミラン)中に再懸濁した。
【0078】
細胞を、TGF−β1(Sigma−Aldrich、最終濃度は1から5ng/ml)の存在及び非存在下で培養して、48時間のインキュベーション後に、アポトーシスのレベルに関して解析した。
【0079】
他の実験で、IBD患者の腸から単離されたLPMCを、HL−1を補充したRPMI 1640に再懸濁し、上記のSmad7アンチセンスODN(配列番号4、配列番号5)の存在及び非存在下、及びコントロールのセンスオリゴヌクレオチドの存在下(どちらも2μg/mlの濃度で用いた)で培養した。24時間後に、LPMCのアリコットを、タンパク質を抽出するとともにSmad7発現を評価するために用いた。残りの細胞を、よく洗い、HL−1を加えたRPMI 1640に再懸濁し、TGF−β1(5ng/ml)の存在及び非存在下で48時間培養し、アポトーシスについて解析した。
【0080】
フローサイトメトリーによるアポトーシスの解析
アポトーシスは、ヨウ化プロピジウム(PI)染色に続くフローサイトメトリーで解析した。
【0081】
細胞を洗い、15分間37℃で5μlのリボヌクレアーゼA(0.6μg/ml、30〜60Kunitz単位、Sigma−Aldrich)中でインキュベートし、氷で冷却した。ヨウ化プロピジウム(100μg/ml)を、フローサイトメトリーによる解析の前に添加した。
【0082】
T細胞を、特異的モノクローナル抗CD3抗体(DAKO Ltd.、英国ケンブリッジシャー)を用いて同定した。
【0083】
タンパク質抽出とウエスタンブロット解析
LPMCをホモジナイズして、全タンパク質を、10mM Hepes(pH7.9)、10mM KCl、0.1mM EDTA及び0.2mM EGTAを含有する緩衝液A中で抽出した。緩衝液に、1mMジチオスレイトール(DTT)、10μg/mlアプロチニン、10μg/mlロイペプチン及び1mMフェニルメタンスルホニルフルオライド(全ての試薬はSigma−Aldrichから)を補充した。
【0084】
Smad7タンパク質を特異的ウサギ抗ヒトSmad7抗体(1:400最終希釈、Santa Cruz Biotechnology,Inc.、米国カリフォルニア州)を用いて解析した。西洋わさびペルオキシダーゼに結合されたヤギ抗ウサギ抗体(Dako Ltd)を1:20.000最終希釈で用いて、一次抗体結合を検出するとともに、免疫反応性を、化学ルミネセンスキットを使って可視化した(Pierce、米国イリノイ州ロックフォード)。
【0085】
器官(organ)培養
患者の外科的検体から取った粘膜外植片を、Smad7アンチセンスODN(配列番号4、配列番号5、両方とも最終濃度10μg/mlで用いた)の存在及び非存在下で40時間培養した。
【0086】
ネガティブコントロールとして、粘膜外植片を、Smad7センスODNの存在下で培養した。
【0087】
培養の終わりに、粘膜外植片を収集して、免疫組織化学による粘膜固有層Tリンパ球の数の解析のために用いた。
【0088】
この目的のために、粘膜切片を調製して、モノクローナル抗CD3抗体(DAKO)で染色した。アルカリホスファターゼに結合したヤギ抗マウス抗体(DAKO)を、一次抗体結合を検出するために用いた。
【0089】
結果
様々な実験において得られた結果は、どのようにTGF−β1が、正常な被験者の腸から単離されたTリンパ球のアポトーシスを用量依存的に増大させたかを示す。
【0090】
表1は、48時間の培養の後のアポトーシスのTリンパ球の百分率を示す。番号は、4名の正常な被験者の腸から単離されたT細胞が用いられた4つの別々の実験の結果のことである。
【0091】
【表1】

【0092】
対照的に、4名のIBD患者から単離されたTリンパ球は、48時間の培養の後のアポトーシスのTリンパ球の百分率を示す表2に表した結果に示されるようにTGF−β1誘導アポトーシスシグナルに対して部分的な抵抗性を示した。
【0093】
【表2】

【0094】
特に、表2に示されるデータの解析から、IBD患者からのT細胞を、0.2ng/ml又は1ng/mlのどちらかのTGF−β1濃度の存在下で培養した場合には、アポトーシスにおける意味のある増大は見られなかった。対照的に、IBD患者からのT細胞への5ng/mlのTGF−β1による刺激は、アポトーシスにおいて若干の増大という結果になった。
【0095】
表3に表したTリンパ球の百分率値に示されるように、Smad7アンチセンスODN配列番号4によるIBD患者からのTリンパ球の処置は、TGF−β1に対する細胞応答性を修復し、増大した細胞アポトーシスという結果になった。データは、4つの別々の実験に対応しており、該実験では、4名のIBD患者の腸から単離されたT細胞を、培地だけで培養し(無刺激)、或いは培地とセンス(コントロール)又はアンチセンスオリゴヌクレオチドとで一晩前処置し、その後にTGF−β1(1ng/ml)で刺激した。
【0096】
【表3】

【0097】
さらに、エキソビボの器官培養を用いて、本発明の発明者は、本発明によるSmad7アンチセンスODNによるIBDバイオプシーの処置が、粘膜CD3+ T細胞の数をかなり減らすことを実証したが、その様子が、図1の免疫組織化学図に示されている。これは(latter)、アンチセンスODNによる処置が粘膜CD3+ T細胞の数を低減することを示す。
【0098】
総合して、これらの観察は、高いSmad7レベルが、T細胞の生存を延長することに重大な役割を果たしており、これによって、IBDにおける局所炎症の伝播に寄与するという可能性を示唆している。
【0099】
このように、Smad7をブロックすることは、これらの条件において粘膜炎症を制御するための有力な戦略を代表しうる。
【実施例2】
【0100】
TNBS誘導大腸炎の実験モデルにおけるSmad7アンチセンス及びセンスオリゴヌクレオチドの投与の効果に関するインビボ及びインビトロでの研究
【0101】
材料と方法
全てのSmad7アンチセンス及びセンスODNは、先に記述した標準的手法を使ってMWG Biotech S.r.i.(フィレンツェ)によって合成した。
【0102】
用いられたアンチセンスODNは、ヒトとマウスの間で100%の相同性を有するSmad7 mRNA部位を標的とする。次に示すオリゴヌクレオチドの全てにおいて、ヌクレオシド間の結合はホスホロチオエート結合である。次に示す配列の全てが、実験的誘導大腸炎モデルで実行された実験において用いられた。
【0103】
Smad7アンチセンスODN配列番号1(5’−GTCGCCCCTTCTCCCCGCAGC−3’)は、本発明の発明者によって先の論文(Monteleoneら、2001年)において出版された実験の過程で既に用いられたヒトSmad7 mRNAの部位403を標的とする。
【0104】
IBD患者の腸から単離されたLPMCにおけるT細胞アポトーシスの制御におけるSmad7の役割に関するさらなる研究のために、次に示すアンチセンスオリゴヌクレオチド配列、配列番号4 e、配列番号5を用いた。
【0105】
Smad7アンチセンスODN配列5’−MePGTMe−dCGCCCCTTCTCCCMe−dCGCAMePG−3’(配列番号4)は、ヒトSmad7 mRNAの部位403を標的とする。これは、配列番号1の位置3及び16のCpG対に属するシトシンが5−メチルシトシン(以下Me−dCとして指し示す)で置き換えられた混合バックボーンオリゴヌクレオチドである。加えて、メチルホスホネート結合が該分子の末端に置かれた(MePとして指し示す)。
【0106】
Smad7アンチセンスODN配列5’−GTTTGGTCCTGAACATGC−3’(配列番号5)は、ヒトSmad7 mRNAの部位294を標的とする。これに含まれるヌクレオシド間結合は、ホスポロチオエート(phosporothioate)結合である。
【0107】
Smad7アンチセンスODN配列5’−GTTTGGTCCTGAACAT−3’(配列番号6)は、ヒトSmad7 mRNAの部位296を標的とする。
【0108】
Smad7アンチセンスODN配列5’−GTTTGGTCCTGAACATG−3’(配列番号7)は、ヒトSmad7 mRNAの部位295を標的とする。
【0109】
Smad7アンチセンスODN配列5’−AGCACCGAGTGCGTGAGC−3’(配列番号8)は、ヒトSmad7 mRNAの部位577を標的とする。
【0110】
Smad7アンチセンスODN配列5’−MePAGCACMedCGAGTGMedCGTGAGCMeP−3’(配列番号9)は、ヒトSmad7 mRNAの部位577を標的とする。これは、配列番号8の位置6及び12のシトシンが5−メチルシトシンで置き換えられた混合バックボーンオリゴヌクレオチドである。加えて、メチルホスホネート結合が、該分子の末端に置かれた。
【0111】
Smad7アンチセンスODN配列5’−CGAACATGACCTCCGCAC(配列番号10)は、ヒトSmad7 mRNAの部位233を標的とする。
【0112】
Smad7アンチセンスODN配列5’−Me−d CGA ACA TGA CCT CMe−d CG CAC−3’(配列番号11)は、ヒトSmad7 mRNAの部位233を標的とする。これは、配列番号10の位置1及び14のシトシンが5−メチルシトシンで置き換えられた混合バックボーンオリゴヌクレオチドである。
【0113】
Smad7アンチセンスODN配列5’−GTMe−dCGCCCCTTCTCCCMe−dCGCAG−3’(配列番号12)は、ヒトSmad7 mRNAの部位403を標的とする。これは、配列番号1の位置3及び16のCpG対に属するシトシンが5−メチルシトシン(Me−dCとして指し示す)で置き換えられた混合バックボーンオリゴヌクレオチドである。
【0114】
Smad7アンチセンスODN配列5’−GATCGTTTGGTCCTGAA−3’(配列番号13)は、ヒトSmad7 mRNAの部位299を標的とする。
【0115】
Smad7アンチセンスODN配列5’−ATCGTTTGGTCCTGAAC−3’(配列番号14)は、ヒトSmad7 mRNAの部位298を標的とする。
【0116】
Smad7アンチセンスODN配列MePGTMe−dCGCCCCTTCTCCCMe−dCGCAMePGC(配列番号15)は、ヒトSmad7 mRNAの部位403を標的とする。これは、配列番号1の位置3及び16のCpG対に属するシトシンが5−メチルシトシン(Me−dCとして指し示す)で置き換えられた混合バックボーンオリゴヌクレオチドである。加えて、メチルホスホネート結合が、該オリゴヌクレオチドの末端の一方と、位置20のグアニン残基とに置かれた。
【0117】
大腸炎の誘導
5から6週齢オスSJL/Jマウスを特定病原体除去動物施設で保育した。大腸炎の誘導のために、3,5Fカテーテルを通じて、50%エタノール中の2.5mgのTNBS(pH1.5〜2.0、Sigma Aldrich)を直腸に投与してマウスを軽く麻酔した。カテーテルの先端を肛門縁から4cm中へ挿入して、100mlの流体(TNBS/エタノール)を結腸にゆっくりと滴下注入した。
【0118】
結腸及び盲腸の全体へのTNBS分布を保証するために、マウスを、上記注入の後30秒間、垂直位置に保った。マウスの幾つかには、同じ手法を用いて50%エタノールのみを投与して、コントロールとして用いた。
【0119】
大腸炎の組織学的評価
指し示された死亡の時刻にマウスから取り出した組織を、10%ホルマリン溶液(Sigma Aldrich)で固定し、パラフィンに包埋して、組織切片に切り、ヘマトシリンとエオシンで染色した。染色した切片を、リンパ球浸潤、陰窩の伸長及び又は歪み、明白な潰瘍形成、及び腸壁の肥厚の存在のような様々な判断基準を用いて大腸炎の証拠に関して調査した。
【0120】
結腸の顕微鏡断面の炎症の程度を次のように0から4の段階で評価した。
0: 炎症の証拠無し。
1: 強拡大視野(hpf=強拡大視野)の<10%で浸潤が見られる低レベルのリンパ球浸潤であり、構造的変化は観察されない。
2: hpfの<10〜25%で浸潤が見られる中程度のリンパ球浸潤であり、陰窩伸長、粘膜層を越えて広がってはいない腸壁肥厚。
3: hpfの<25〜50%で浸潤が見られる高レベルのリンパ球浸潤であり、粘膜層を越えて広がる腸壁の肥厚。
4: hpfの>50%で浸潤が見られる顕著な程度のリンパ球浸潤であり、高い血管密度、歪みのある陰窩伸長、潰瘍形成のある全層性腸壁肥厚。
【0121】
粘膜固有層単核細胞(LPMC)の単離、及び細胞のSmad7アンチセンスODNによる処置
粘膜固有層単核細胞(LPMC)を結腸検体から単離した。該検体をまず、カルシウムマグネシウム除去のHBSS(Hanksの平衡塩類溶液、Sigma−Aldrich)で洗い、0.5cm片に切った。そして、それらを2回インキュベートした。各回は、EDTA(0.37mg/ml)とジチオスレイトール(0.145mg/ml)とを含有するHBSS中において37℃で15分間であった。その後、該組織を、37℃の震盪インキュベータで、コラゲナーゼDを含有するRPMI(400U/ml、Boehringer Mannheim Biochemicals、インディアナ州インディアナポリス)とDNアーゼI(0.01mg/ml、Boehringer Mannheim Biochemicals、インディアナ州インディアナポリス)中で消化した。
【0122】
該組織から放たれたLPMCを、100%パーコール中で再懸濁し、40%パーコール勾配(Pharmacia Biotech AB、スウェーデン国ウプサラ)下で層状に置き、1800rpmで30分間遠心して、濃縮リンパ球集団を得た。
【0123】
Smad7アンチセンスODNのインビトロ効力を評価するために、TNBS処置マウスから単離したLPMCを、24ウェルプレート上で最終濃度1×10個/mlで血清置換試薬HL−1(Biowhittaker)を補充したRPMI 1640(Sigma−Aldrich)中に再懸濁した。アンチセンスODNの形質移入のために、2μlのリポフェクタミン2000試薬(LF、Invitrogen Italia SRL、サンジュリアーノミラネーゼ)を、プロトコルに従って細胞培地の各1mlに使用した。その後、2μg/mlのアンチセンスODNとLFを混ぜて、室温で20分間インキュベートした。得られた混合物を、その後、そのまま細胞に添加した。一晩の培養後、細胞を、プレートから取り出し、ウエスタンブロッティングによるSmad7の解析に用いた。
【0124】
Smad7アンチセンスODNによるマウスの処置
TNBSによる処置の2日後に、マウスの直腸に各Smad7アンチセンス又はセンスオリゴヌクレオチド150gを投与した。グループ毎に少なくとも5匹のマウスを調べた。5日目に、マウスを犠牲にして、腸全体の粘膜試料を取り、ウエスタンブロッティングでSmad7及びSmad3の含有に関して解析した。加えて、腸粘膜炎症程度実体を評価した。
【0125】
タンパク質抽出とウエスタンブロット解析
粘膜固有層単核細胞と全結腸検体の両方を、上記手順を用いてホモジナイズした。そして、Smad7発現をウエスタンブロッティングで明らかにした。
【0126】
終わりに、ブロット膜を、商業的入手可能な溶液(Pierce)を用いてストリッピングして、同量のタンパク質が各ウェルに充填されていたことを検証するために抗アクチン抗体(Sigma−Aldrich)でプローブした。検出は、化学ルミネセンスキット(Pierce)を用いて行った。バンドの強度を濃度計によって解析した。
【0127】
また、LPMCと全結腸検体試料タンパク質の両方を、リン酸化及び全量のSmad3タンパク質の含有に関して、特異的な商業的入手可能な抗体(Santa Cruz)を用いたウエスタンブロッティングによって解析した。
【0128】
リン酸化Smad3の解析のために、リン酸化Smad2/3タンパク質を抗原として認識することが可能な特異的なウサギ抗ヒト抗体(1:500最終希釈)、及び西洋わさびペルオキシダーゼ結合したヤギ抗ウサギ抗体(1:20000希釈)を用いた。免疫反応性を化学ルミネセンスキット(Pierce)で可視化した。
【0129】
検出の後で、ブロット膜を、商業的入手可能な溶液(Pierce)を用いてストリッピングして、特異的なヤギ抗ヒトSmad3抗体(1:500最終希釈)に続いて西洋わさびペルオキシダーゼに結合したウサギ抗ヤギ抗体(1:20000希釈)でインキュベートし、その後、免疫反応性を、上記の化学ルミネセンスキット(Pierce)で可視化した。
【0130】
試験ELISA
活性TGF−β1の量を腸粘膜試料において測定した。この趣旨のために、上記に指し示したTNBS誘導大腸炎に罹患した又は罹患していないマウスからの粘膜試料から全タンパク質を抽出した。活性TGF−β1のレベルを、商業的入手可能なELISAキット(R&D Systems、Space Import−Export Sri、ミラノ)を用いて解析した。光学濃度を、Dynatech MR 5000ELISAリーダーで、波長490nmで測った。データは、pg/全タンパク質100μgで表した。
【0131】
結果
TNBSを受けた後で、マウスは、大腸炎の誘導の証拠によって下痢と体重減少を示した。その結腸は肉眼的にも大きくなり、その粘膜の組織学的な解析は、中程度から重度の炎症性病変を示した。
【0132】
TNBS大腸炎がTGF−β1の生産における変化と関連があるかどうかを調べるために、結腸の検体を、大腸炎に罹患した又は罹患していないマウスから取り、活性TGF−β1の含有に関してELISAによって解析した。
【0133】
TGF−β1を合成する潜在力を有する幾つかの細胞のタイプが腸レベルで存在するので、LPMCだけではなく全体の腸粘膜を評価のために用いた。
【0134】
大腸炎の非存在下で、低レベルの活性TGF−β1が検出された(無刺激の及びコントロールのマウスそれぞれにおいて、全タンパク質中85±12及び94±26pg/μg)。有意に増大されたTGF−β1のレベルが、TNBS誘導大腸炎に罹患したマウスからの粘膜試料において測定された(全タンパク質中985±120pg/μg)(p<0.01)。この結果は、TNBS誘導大腸炎の罹患中には、TGF−β1活性の増大がありうることを示唆するよう見えるけれども、大腸炎に罹患したマウスから単離された腸LMPCにおける活性Smad3の細胞内レベルの解析は、驚くべきことに、Smad7の増大された誘導に関連づけられるSmad3のリン酸化の減少を見せる(図2と3)。特に、図2は、影響を受けていない腸から単離されたLPMCにおける活性(リン酸化)Smad2/3に対応するが、TNBS誘導大腸炎に罹患したマウスからのものではないバンドの存在を示す。図3では、2つのバンド、即ち、遊離のSmad7に対応する下方の47Kdaバンド、及びTGF−β1 R1−Smad7複合体に対応する上方102Kdaバンドが、TNBS誘導大腸炎に罹患したマウスの腸から単離されたLPMC検体においてのみに存在することが示されている。これらのデータは、局所的炎症がTGF−β1の合成を刺激するが、これは、粘膜炎症を緩和することができないということを指し示す。
【0135】
本発明によれば、Smad7アンチセンスODNによってTNBSマウスを処置するが、内因性のTGF−β1機能を修復し、進行中の炎症を制限することができるかどうかを評価した。
【0136】
第1に、インビトロ及びインビボの両方の実験で上記のSmad7アンチセンスODN(配列番号1と配列番号4〜15)のSmad7発現を低減する効力を試験した。
【0137】
インビトロ実験については、TNBS誘導大腸炎に罹患したマウスの腸から単離したLPMCにそれぞれのSmad7アンチセンスODNを形質移入し、一晩インキュベートした。Smad7解析を、ウエスタンブロッティングによって実行した。
【0138】
インビボ実験については、TNBS処置マウスに、Smad7アンチセンスODNを投与し、3日後に、その動物を犠牲にし、組織検体を取り、Smad7解析をウエスタンブロッティングによって実行した。
【0139】
表4は、これらの実験の結果をまとめたもので、インビトロとインビボの両方の実験においてそれぞれのSmad7アンチセンスオリゴヌクレオチドによって得られた阻害百分率を示す。データは、4つの別々のインビトロ実験の平均±標準偏差(SEM)及び5つの別々のインビボ実験の平均±SEMを指し示す。
【0140】
【表4】

【0141】
全てのアンチセンスODNは、TNBS処置ネズミモデルから単離されたLPMCにインビトロで形質移入されると、Smad7発現を低減することにおいて有効である。表4に示す阻害百分率の値の解析から、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列である配列番号4、10、11、12及び15が大きな効力を示したことは注目すべきことである。
【0142】
にもかかわらず、オリゴヌクレオチド配列である配列番号10と11によるインビボで処置によって得られたSmad7発現阻害の百分率は、記録されたインビトロ実験のそれと大きく異なることはなかった。
【0143】
代わりに、アンチセンスODN配列番号4及び12及び15によるマウスの処置は、明らかに、Smad7阻害の百分率が、得られたインビトロ実験のそれよりも大きいという結果になった。即ち、それぞれ、55%対34%、42%対32%、56%対34%(P<0.01)であった。
【0144】
対照的に、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列番号7によるマウスの処置は、インビボでのSmad7発現における減少を引き起こしたが、これは、該アンチセンスオリゴヌクレオチドをインビトロでLPMC内に形質移入させたときに結果として得られるものよりも低い実体のものであり、即ち、10%対17%、P<0.01であった。
【0145】
全体に、これらの結果は、Smad7アンチセンスODN配列への特定の修飾のみが、その薬物動態学的、生化学的且つ生物物理学的なプロフィールを向上させることができることを示唆する。
【0146】
アンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号1及び配列番号4〜15)を受けたマウスにおいては、いかなる急性毒性の兆しも記録されなかった。TNBSで処置すると、5匹中1匹が3日後に死亡した(20%)。類似して、Smad7センスオリゴヌクレオチドを受けたマウスの1/5が、4日後に死亡した。
【0147】
Smad7アンチセンスODN配列番号1及び配列番号4〜15によって処置されたマウスの群では死亡は記録されなかった。
【0148】
アンチセンスODN配列である配列番号13及び配列番号14の使用は、合理的なインビトロ阻害活性(それぞれ11%及び9.5%)と関連がある。にもかかわらず、そのような配列のインビボでの投与は、予想外に、大腸炎の著しい悪化を伴い、なんと、72時間の処置の後に全てのマウスの死亡を引き起こした。
【0149】
これらのマウスから取られた腸試料の肉眼による解析は、重度の大腸炎の存在を明らかにし、これは、腸でのSmad7発現のかなりの増大と関連があった。
【0150】
上に述べたように、進行中の炎症を制限するSmad7アンチセンスODNの効力を試験した。この目的のために、大腸炎誘導後のマウスに、各群5匹を考慮して、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列番号1、4、5及び15を投与した。
【0151】
Smad7アンチセンスODNによる処置に続いて、粘膜炎症の低減が明らかにされた。この結果は、アンチセンスオリゴヌクレオチド4及び15で処置したマウスにおいて特に明白であった。確かに、アンチセンスを受けなかった大腸炎に罹患したマウスにおいて大腸炎の重症度合3〜4が、アンチセンスオリゴヌクレオチド配列1又は5の投与後にはそれぞれ度合2又は3になり、一方で、オリゴヌクレオチド配列4又は15で処置されたマウスにおいて炎症は度合1を超えていない。
【0152】
Smad7アンチセンスオリゴヌクレオチドが、経口投与されたときにも有効であるかどうかを調べるために、TNBS誘導大腸炎に罹患したマウスを、大腸炎の誘導の翌日に、Smad7アンチセンスオリゴヌクレオチド4又は15又はコントロール(センス)で処置した。
【0153】
この目的で、オリゴヌクレオチドを炭酸水素塩溶液に再懸濁した。各マウスに投与した該溶液の最終体積は350μlであったが、これは、250又は500又は1000μgに相当するオリゴヌクレオチドの用量を含有する。そのような溶液を、カテーテルを通じて経口的に投与した。
【0154】
5日目に、マウスを犠牲にし、Smad7発現の及び炎症度合の解析を前段落に指し示したように評価した。アンチセンスオリゴヌクレオチドで処置したがコントロールのセンスオリゴヌクレオチドでは処置しなかったマウスの全ては、用いられていたオリゴヌクレオチドの用量に非依存的に、Smad7発現の意味ある低減と、増大したSmad3リン酸化とを示した。
【0155】
実質的に、Smad7阻害は、図4に示すように、体重回復と関連があった。図4は、Smad7アンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号15)又はコントロール(センス)で処置した又は処置しなかったTNBS誘導大腸炎に罹患したマウスの体重の百分率変化を表すグラフを示す。両方のオリゴヌクレオチドは、大腸炎誘導の2日後にカテーテルを通じて250μgの用量で経口的に投与した。3つの群のそれぞれにおいて2日目に記録することができた重量減少は、TNBSによる処置が大腸炎を誘導したことを指し示す。さらに、Smad7アンチセンスオリゴヌクレオチドで処置されたがコントロールでは処置されなかったマウスは、4日目から体重回復を示したことが判明した。TNBS誘導大腸炎に罹患したマウスにおいて5日目に見られる見かけ上の僅かな回復は、大腸炎に罹患したマウスの21.4%が4日目に死亡し、したがって、それらは5日目の体重の評価で考慮に入れられなかったという事実によるものである。
【0156】
Smad7阻害は、図5と6に示すように、組織炎症の著しい抑制と相関していた。図5は、TNBS大腸炎に罹患したマウスから及びSmad7アンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号15)で処置したTNBS大腸炎に罹患したマウスから摘出した結腸のイメージを示す。オリゴヌクレオチドは、大腸炎誘導後の2日目にカテーテルを通じて250μgの用量で経口的に投与した。TNBS大腸炎に罹患したマウスからの結腸は、ひどい炎症で、短縮し、肥厚していることが示されている。逆に、Smad7アンチセンスを受けたマウスは、正常な長さと厚さで、炎症の肉眼的兆しの無い結腸を示した。図6は、大腸炎に罹患していないマウスからの、或いはSmad7アンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号15)又はコントロール(センス)で処置した又は処置しなかったTNBS大腸炎に罹患したマウスからの結腸切片の組織学的な側面を示す。両方のオリゴヌクレオチドは、大腸炎誘導後の2日目にカテーテルを通じて250μgの用量で経口的に投与した。大腸炎に罹患していないマウスでは、腺が、粘液分泌性の細胞と固有層の炎症要素との正常な含有量を持って均一に且つ直線的に見えることが示されている。逆に、コントロールのオリゴヌクレオチドを受けた又は受けなかったTNBS処置マウスの結腸では、腺構造の全面的な破壊があり、固有層において粘液分泌性及び大量の炎症性細胞浸潤を伴っていた。TNBSで処置され且つSmad7アンチセンスオリゴヌクレオチドを受けたマウスの大腸切片において、正常な腺構造の存在と炎症の不在とが実証された。
【0157】
総合して、これらの観察から、アンチセンスODNの使用は、インビボ投与の後で、副作用を伴わないSmad7阻害のより高度な効力を示すが、特に、そのような効力及び毒性の特性を、Smad7インビトロ阻害において同じ効力を有する他のアンチセンスODN配列で達成される結果と比べた場合、IBD罹患中の粘膜炎症の制御において有望な治療戦略を代表しうることが示唆される。
【0158】
(参考文献)

【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】CD患者からの粘膜試料のSmad7ODNアンチセンス及びセンス5’−MePGTMe−dCGCCCCTTCTCCCMe−dCGCAMePG−3’(配列番号4)による40時間の処置の後における腸のTリンパ球の数への効果を示す。
【図2】TNBS処置マウス(TNBS)、無処置(Unt)、コントロールとしてエタノール(EtOH)で処置したもの、の腸から単離されたLPMCにおけるp−Smad2/Smad3複合体の及び全Smad2/Smad3複合体の発現の解析を示す。
【図3】TNBS処置マウス(TNBS)、無処置(Unt)、コントロールとしてエタノール(EtOH)で処置したもの、の腸から単離されたLPMCにおけるSmad7発現の解析を示す。
【図4】Smad7アンチセンスオリゴヌクレオチドMePGTMe−dCGCCCCTTCTCCCMe−dCGCAMePGC(配列番号15)又はコントロール(センス)によって処置した又はしなかったTNBS誘導大腸炎に罹患したマウスの体重の変化百分率を示す。該図は、各グループにつき14匹のマウスが研究された3つの別々の実験を表す。
【図5】TNBS誘導大腸炎に罹患したマウスから及びSmad7アンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号15)によって処置したTNBS誘導大腸炎に罹患したマウスから摘出した結腸の肉眼的側面を示す。該図は、各グループにつき14匹のマウスが研究された3つの別々の実験を表す。
【図6】大腸炎に罹患していない、或いはSmad7アンチセンスオリゴヌクレオチド(配列番号15)で処置した又はしなかった又はコントロール(センス)で処置したTNBS誘導大腸炎に罹患したマウスからの結腸切片の組織学的な側面を示す。該図は、各グループにつき14匹のマウスが研究された3つの別々の実験を表す。倍率40倍。
【配列表】








【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の配列(配列番号2):
5’−GTXYCCCCTTCTCCCXYCAG−3’
(上式中、Xは、シトシン、5−メチルシトシン及び2’−O−メチルシトシンからなる群から選択される窒素性塩基を含むヌクレオチドであり、Yは、グアニン、5−メチルグアニンe2’−O−メチルグアニンからなる群から選択される窒素性塩基を含むヌクレオチドであり、但し、ヌクレオチドX又はYの少なくとも1つは、メチル化窒素性塩基を含む)又はそれに対する相補配列の少なくとも10ヌクレオチドの部分を含む21ヌクレオチド長までのSmad7に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドホスホロチオエート。
【請求項2】
前記配列の少なくとも1つのヌクレオチドがメチルホスホネートである請求項1記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記少なくとも1つのメチルホスホネートヌクレオチドが、3’又は5’末端の一方のみ又は3’及び5’末端の両方に、或いは前記アンチセンスオリゴヌクレオチド配列に沿って位置している請求項2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記メチルホスホネートヌクレオチドがYである請求項2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記メチルホスホネートヌクレオチドがXである請求項2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記配列の少なくとも1つのヌクレオチドが、2’−O−メチルリボヌクレオチド5’−モノホスフェートである請求項1記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
前記少なくとも1つの2’−O−メチルリボヌクレオチド5’−モノホスフェートが、3’又は5’末端の一方のみに、又は3’及び5’末端の両方に、又は前記オリゴヌクレオチド配列に沿って位置している請求項6記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
2’−デオキシリボヌクレオチドが、対応するリボヌクレオチドで置き換えられている請求項1〜7のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
配列(配列番号4):
5’−ZTXGCCCCTTCTCCCXGCAZ−3’
(上式中、Xは5−メチル2’−デオキシシチジン5’−モノホスフェートであり、Zは2’−デオキシグアノシンメチルホスホネートである)
を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
配列(配列番号15):
5’−ZTXGCCCCTTCTCCCXGCAZC−3’
(上式中、Xは5−メチル2’−デオキシシチジン5’−モノホスフェートであり、Zは2’−デオキシグアノシンメチルホスホネートである)
を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
配列(配列番号3):
5’−GTXGCCCCTTCTCCCXGCAG−3’
(上式中、Xは5−メチル2’−デオキシシチジン5’−モノホスフェートである)
を有する請求項1記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
医療分野での使用のための請求項1〜11のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
1種又は複数の医薬的に許容されるアジュバント及び/又は賦形剤とともに、請求項1〜11のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの少なくとも1つを有効成分として含む医薬組成物。
【請求項14】
Smad7発現に関連する病態の治療用製剤の製造のための、請求項1〜11のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項15】
前記Smad7発現に関連する病態が慢性炎症性疾患である請求項14記載の使用。
【請求項16】
前記慢性炎症性疾患がクローン病及び潰瘍性大腸炎である請求項15記載の使用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
21ヌクレオチド長までのSmad7に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドホスホロチオエートであって、
下記の配列(配列番号2)の少なくとも10ヌクレオチドの部分
5’−GTXYCCCCTTCTCCCXYCAG−3’
(上式中、Xは、シトシン、5−メチルシトシン及び2’−O−メチルシトシンからなる群から選択される窒素性塩基を含むヌクレオチドであり、Yは、グアニン、5−メチルグアニン2’−O−メチルグアニンからなる群から選択される窒素性塩基を含むヌクレオチドであり、但し、ヌクレオチドX又はYの少なくとも1つは、メチル化窒素性塩基を含む);又は
それに対する相補配列、
を含む、アンチセンスオリゴヌクレオチドホスホロチオエート
【請求項2】
前記配列の少なくとも1つのヌクレオチドがメチルホスホネートである請求項1記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記少なくとも1つのメチルホスホネートヌクレオチドが、3’又は5’末端の一方のみ又は3’及び5’末端の両方に、或いは前記アンチセンスオリゴヌクレオチド配列に沿って位置している、請求項2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記メチルホスホネートヌクレオチドがYである請求項2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記メチルホスホネートヌクレオチドがXである請求項2記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記配列の少なくとも1つのヌクレオチドが2’−O−メチルリボヌクレオチド5’−モノホスフェートである請求項1記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項7】
前記少なくとも1つの2’−O−メチルリボヌクレオチド5’−モノホスフェートが、3’又は5’末端の一方のみに、又は3’及び5’末端の両方に、又は前記オリゴヌクレオチド配列に沿って位置している、請求項6記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項8】
2’−デオキシリボヌクレオチドが、対応するリボヌクレオチドで置き換えられている、請求項1〜7のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項9】
配列(配列番号4):
5’−ZTXGCCCCTTCTCCCXGCAZ−3’
(上式中、Xは5−メチル2’−デオキシシチジン5’−モノホスフェートであり、Zは2’−デオキシグアノシンメチルホスホネートである)
を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項10】
配列(配列番号15):
5’−ZTXGCCCCTTCTCCCXGCAZC−3’
(上式中、Xは5−メチル2’−デオキシシチジン5’−モノホスフェートであり、Zは2’−デオキシグアノシンメチルホスホネートである)
を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
配列(配列番号3):
5’−GTXGCCCCTTCTCCCXGCAG−3’
(上式中、Xは5−メチル2’−デオキシシチジン5’−モノホスフェートである)
を有する、請求項1記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項12】
下記の配列:
5’−GTXGCCCCTTCTCCCXGCAGC−3’
(上式中、Xは5−メチル2’−デオキシシチジン5’−モノホスフェートである)
を有する、請求項1記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
医療分野での使用のための請求項1〜12のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチド。
【請求項14】
1種又は複数の医薬的に許容されるアジュバント及び/又は賦形剤とともに、請求項1〜12のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの少なくとも1つを有効成分として含む、医薬組成物。
【請求項15】
Smad7発現に関連する病態の治療用製剤の製造のための、請求項1〜12のいずれか一項に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項16】
前記Smad7発現に関連する病態が慢性炎症性疾患である請求項15記載の使用。
【請求項17】
前記慢性炎症性疾患がクローン病及び潰瘍性大腸炎である請求項16記載の使用。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−521815(P2006−521815A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507636(P2006−507636)
【出願日】平成16年3月8日(2004.3.8)
【国際出願番号】PCT/IT2004/000117
【国際公開番号】WO2004/087920
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(505367017)ジュリアーニ インターナショナル リミテッド (9)
【Fターム(参考)】