T細胞の抗腫瘍エフェクター機能増進のための方法および組成物
IL13Rα2特異的IL13-ゼータカイン(zetakine)(IL13ζ)などの腫瘍ターゲティングキメラ抗原受容体(CAR)内での共刺激シグナル伝達ドメインの組込みは、共刺激受容体に対する発現されたリガンドの非存在下であってさえ、腫瘍に対するT細胞仲介性反応を増進する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府が支援した研究に関する言及
[0001] 本発明は、米国保健福祉省、米国衛生研究所から癌センター助成金番号P30-CA33572-21の形で、政府の援助を受けて行った。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
1.技術分野
[0002] 本発明は、生物医学の分野および特に癌療法に有用な方法に関する。特に、本発明の態様は、ヒト脳腫瘍および他の癌の治療において、キメラ免疫受容体を発現している遺伝子修飾されたTリンパ球の使用を含む、癌のための特異的CTL免疫療法戦略のための方法に関する。
【0003】
2.背景技術の説明
[0003] 腫瘍特異的T細胞に基づく免疫療法は、抗腫瘍治療のために研究されてきているが、T細胞は、十分に長い期間、in vivoで生存せず、そして活性なままではないという問題がある。しばしば、養子導入T細胞は、腫瘍細胞殺傷の望ましい強度および期間を持たない。したがって、当該技術分野には、より長期の抗腫瘍機能を持つ腫瘍特異的癌療法に関する必要性がある。
【0004】
[0004] 癌に向けられる免疫療法は、伝統的に、CD8+ CTL反応を誘発することに焦点を置いている。しかし、CD4+ T細胞(ヘルパー)反応の刺激もまた、癌に対する免疫療法の成功のために重要である。CD4+ T細胞は、CD40-CD40Lを介したプロフェッショナル抗原提示細胞の条件付けを通じて、そしてIL2およびIFN-γなどのサイトカインの産生を通じて、直接または間接的に、天然の腫瘍特異的CTL反応に影響を及ぼしうる。CD4+ T細胞が用いる細胞破壊的エフェクター機構は、腫瘍細胞表面上の死受容体を活性化するサイトカインの放出を通じて、または直接細胞接触を通じてのいずれかで仲介され、後者の場合、Fas/FasL、TNF関連アポトーシス誘導性リガンド(TRAIL)、またはグランザイム-パーフォリン依存性経路が、腫瘍細胞アポトーシスを仲介する。これらのヘルパー細胞は、一次CD8+ CTLエフェクターの初期クローン性拡大および生成を増大することも可能であり、そしてまた機能するメモリーCD8+ T細胞の生成および拡大の両方に影響を及ぼすことも可能である。
【0005】
[0005] 天然のCD4+ T細胞の完全な活性化には、T細胞受容体/CD3複合体と適切なペプチド/MHCクラスII複合体の会合を通じた抗原特異的シグナル、および共刺激シグナルの両方が必要である。これらの共刺激シグナルは、通常、特殊化抗原提示細胞上で選択的に発現されるリガンドによって送達される。T細胞共刺激は、この二次シグナルを送達しない組織によって発現される正常自己抗原に対する寛容性を維持するのを補助すると考えられる。大部分の腫瘍細胞は、正常組織同様、MHCクラスIIまたは共刺激分子を発現しないため、腫瘍細胞もまた、通常は、CD4+ T細胞刺激を直接促進しないのは当然である。この理論は、共刺激リガンドB7-1でトランスフェクションされた腫瘍細胞をワクチン接種することによる、T細胞仲介性抗腫瘍免疫増進を立証するいくつかの研究によって裏付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006] 共刺激分子の腫瘍細胞発現を改変することは、T細胞活性化の駆動を補助する1つの方法であるが、別の戦略、特に実際の共刺激リガンド(単数または複数)を必要とせずに、T細胞が共刺激シグナルを受け取り、そして該シグナルに作用するのを可能にすることを伴う戦略が非常に望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007] したがって、本発明の態様は、癌免疫療法のためのCD4+およびCD8+ T細胞の抗腫瘍エフェクター機能増進のための方法および組成物;そして特に細胞外ドメイン、膜貫通領域および細胞内シグナル伝達ドメインを含む、キメラ膜貫通免疫受容体(キメラ抗原受容体または「CAR」と称される)を提供する。細胞外ドメインは、細胞表面に細胞外ドメインを束縛可能な、場合による支持領域に連結された、可溶性受容体リガンド(ターゲット腫瘍抗原または他の腫瘍細胞表面分子に対して特異的である)で構成される。細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3複合体のゼータ鎖(CD3ζ)由来のシグナル伝達ドメインおよび1以上の共刺激シグナル伝達ドメイン、例えば、CD28、4-1BBおよびOX-40由来のものを含有する。細胞外ドメインは、認識要素であって、CARがT細胞表面上に発現された場合に、この認識要素がそれに対して特異的な受容体またはリガンドを発現している細胞に、T細胞活性を向けることを可能にする、該認識要素を含有する。例えば、腫瘍抗原に特異的な認識要素を含有する細胞外ドメインを含有するCARは、この抗原を所持する腫瘍細胞に、T細胞活性を向けることも可能である。細胞内領域は、T細胞が共刺激シグナルを受け取ることを可能にする。共刺激シグナル伝達ドメインは、好ましくは、CD28、4-1BB、OX-40またはこれらの任意の組み合わせから選択される。好ましいキメラ受容体は、ヒトCD4膜貫通領域、ヒトIgG4 Fcおよび腫瘍特異的な受容体またはリガンド、例えばIL13またはIL3分子を含む。IL13分子はE13Y突然変異を含有してもよい。
【0008】
[0008] 本発明の態様はまた、上述のものなどの受容体を、必要とする患者に投与する工程を含む、癌免疫療法の方法も提供する。IL13Rα2をターゲティングする好ましい方法は、例えば、神経膠芽腫、乳癌、頭部および頸部癌、腎臓癌、卵巣癌およびカポジ肉腫を含む癌の治療に有用である。該方法は、CAR上の認識要素に特異的に結合する要素を所持する任意のアクセス可能な腫瘍を治療する際に有用である。
【0009】
[0009] 本発明のさらなる態様は、受容体にCD28、および/または4-1BB、OX-40シグナル伝達ドメインを付加する工程を含む、腫瘍に対するキメラ抗原受容体(CAR)活性を増進させる方法を提供する。
【0010】
[00010] 本発明に含まれる特定の態様には、特異的認識要素、場合による支持またはリンカー領域、膜貫通領域、CD3ゼータ鎖および少なくとも1つのさらなる共刺激シグナル伝達受容体のシグナル伝達ドメインを含む、腫瘍特異的キメラ抗原受容体(CAR)が含まれる。こうしたCARには、2つの共刺激シグナル伝達受容体、例えば、CD28、4-1BBおよびOX-40からなる群より選択されるもの、例えばCD28および4-1BBを含むものが含まれてもよい。
【0011】
[00011] 本発明のCARには、膜貫通領域が、ヒトCD4膜貫通領域、ヒトCD28膜貫通領域、またはヒトIgG4 Fc領域であるものが含まれる。CARの特異的認識要素は、IL13分子、IL3分子、またはHer/2Neu、α3インテグリン、CD20、CD19およびEGFRVIIIからなる群より選択される抗原を認識する一本鎖免疫グロブリンの細胞外結合ドメインであってもよく、そして好ましくはIL13分子、最も好ましくはE13Y突然変異を含有するIL13分子、例えばIL13-CD28-41BBζである。
【0012】
[00012] 本発明の態様はまた、本明細書に論じるCARのいずれかをコードする単離ポリ核酸、および本明細書に論じるCARのいずれかを発現する単離Tリンパ球も含む。さらに、本発明の態様には、こうしたポリ核酸またはTリンパ球を、必要とする患者に投与する工程を含む、癌免疫療法の方法が含まれ、これには、以下の癌:神経膠芽腫、髄芽腫、乳癌、頭部および頸部癌、腎臓癌、卵巣癌、カポジ肉腫、急性骨髄性白血病、およびB細胞系譜悪性腫瘍のいずれかのための治療としての方法が含まれる。
【0013】
[00013] さらなる態様には、受容体にCD28および4-1BBシグナル伝達ドメインを付加する工程を含む、腫瘍に対するキメラ抗原受容体活性を増進させる方法が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】[00014] 図1は、IL13ζおよびIL-13-CD28-41BBζキメラ抗原受容体(CAR)タンパク質分子の略図である。
【図2】[00015] 図2は、示すような天然IL13配列上のIL13ζ CAR構築のための例示的なプライマーの位置を示す。矢印は、IL13配列上のプライマーの位置を示す。
【図3A】[00016] 図3(図3A〜図3Cとして提供する)は、IL13ゼータカインをコードする例示的なヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 5、上部鎖;SEQ ID NO: 6、下部鎖)を提供する。配列中のDNAセグメントには、GM-CSFRアルファ・シグナルペプチド(SEQ ID NO: 7)、IL13(E13Y)(SEQ ID NO: 8)、IgG4(SmP)(SEQ ID NO: 9)、CD4tm(SEQ ID NO: 10)およびCD3ゼータ(SEQ ID NO: 11)が含まれる。完全アミノ酸配列はSEQ ID NO: 4として提供される。
【図3B】[00016] 図3(図3A〜図3Cとして提供する)は、IL13ゼータカインをコードする例示的なヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 5、上部鎖;SEQ ID NO: 6、下部鎖)を提供する。
【図3C】[00016] 図3(図3A〜図3Cとして提供する)は、IL13ゼータカインをコードする例示的なヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 5、上部鎖;SEQ ID NO: 6、下部鎖)を提供する。
【図4】[00017] 図4は、ベクターIL13ゼータカイン/HyTK-pMGのマップである。こうしたベクターの例示的な配列を図5に提供する。
【図5A】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。IL13ゼータカインアミノ酸配列(SEQ ID NO: 15)およびHyTkアミノ酸配列(SEQ ID NO: 16)もまた示す。完全配列を構成するDNAセグメントには、hEF1p(ヌクレオチド6〜549;SEQ ID NO: 41)、IL13ゼータカイン(ヌクレオチド690〜2183;SEQ ID NO: 42)、後期sv40pAn(ヌクレオチド2230〜2498;SEQ ID NO: 43)、Ori ColE1(ヌクレオチド2499〜3245;SEQ ID NO: 44)、SpAn(ヌクレオチド3246〜3432;SEQ ID NO: 45)、hCMV-1Aprom(ヌクレオチド3433〜4075;SEQ ID NO: 46)、HyTK(ヌクレオチド4244〜6319;SEQ ID NO: 47)、およびBGh pAna(ヌクレオチド6320〜6618;SEQ ID NO: 48)が含まれる。
【図5B】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。
【図5C】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。
【図5D】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。
【図5E】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。
【図5F】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。
【図5G】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。
【図5H】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。
【図5L】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。
【図6】[00019] 図6は、例示的なCAR直鎖プラスミド構築物の2つの略図を含有する。図6AはIL13ζ構築物を示し、そして図6BはIL13-CD28-41BBζ構築物を示す。
【図7】[00020] 図7は、マウス抗ヒトCD3ζ特異的mAbを用いた、CAR発現に関する、偽、IL13ζおよびIL13-CD28-41BBζトランスフェクションCD4+ T細胞由来の細胞溶解物のウェスタンブロット分析を示す。
【図8】[00021] 図8は、IL13ζおよびIL13-CD28-41BBζ発現バルクCD4+細胞の細胞表面表現型を比較する8つのフローサイトメトリー分析のパネルである。
【図9】[00022] 図9は、U87神経膠腫ターゲット細胞上のアイソタイプ対照(白抜きのヒストグラム)に比較した、示すようなHLA-A2およびHLA-DR(MHC分子)、IL13Rα2、ならびに共刺激分子CD80、CD86、およびCD137-L(4-1BBL)(黒塗りのヒストグラム)の表面染色のフローサイトメトリー結果を示す6つのグラフのパネルである。
【図10】[00023] 図10は、それぞれの基質(すなわちP-cJun(リン酸化c-Jun癌原遺伝子)、p-GSK3(リン酸化グリコーゲンシンターゼキナーゼ3)およびP-ATF2(リン酸化活性化転写因子2))のリン酸化を介して測定される、JNKおよびp38(図3A)およびAKT(図3B)活性化の動力学を決定するキナーゼアッセイの結果を示す一連の免疫ブロットである。
【図11】[00024] 図11は、T細胞Th1サイトカインmRNA(図11A)、ならびにTh1およびTh2サイトカインタンパク質産生(図11B)に関する、IL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞のTh1極性化増進を示す。
【図12】[00025] 図12Aは、4時間のルシフェラーゼ細胞傷害性アッセイ(LCA)における、示すE:T比でのIL13ζ+ CD4+ T細胞(○)のものに比較した、U87ターゲットに対するIL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞(■)の細胞傷害性活性増進を示すデータを提供する。図12Bは、2:1のE:T比で48時間共培養し、そして次いで再び、同じE:T比で新鮮なターゲットを添加した後、さらに48時間共培養した、IL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞(黒いバー)およびIL13ζ+ CD4+ T細胞(白いバー)に関する、類似のデータを示す。図12Cは、接着性U87細胞と共培養した、示すCARを発現しているT細胞のビデオ画像化で得たデータを提供し、画像あたりの生存細胞数を示す。
【図13】[00026] 図13は、IL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞によるin vivoの確立された神経膠芽腫異種移植片に対して、持続された抗腫瘍効果を示す流動データを提供する。IL-13ζおよび偽トランスフェクションT細胞で観察された結果もまた示す。
【図14】[00027] 図14は、IL13-IgG4-cd28tm-CD28gg-ゼータ(CO)(SEQ ID NO: 36)の配列を提供する。
【図15】[00028] 図15は、以下の実施例に関して、用いられ/上に論じられる、IL13-CD28-41BBζとしてもまた本明細書に言及される、IL13-IgG4-cd4tm-CD28-4-1BB-ゼータの配列を提供する(SEQ ID NO: 37)。図1、6、7、8、10、11、12および13に記載しそして用いるような、IL13-CD28-41BBζ CARを発現するようにT細胞を遺伝子改変するのに、この配列を用いた。
【図16】[00029] 図16は、IL13-IgG4-cd28tm-CD28-Ox40-ゼータの配列を提供する(SEQ ID NO: 38)。
【図17】[00030] 図17は、IL13-IgG4-cd28tm-CD28gg-4-1BB-ゼータの配列を提供する(SEQ ID NO: 39)。
【図18】[00031] 図18は、IL13-IgG4-cd28tm-CD28gg^199-4-1BB-ゼータの配列を提供する(SEQ ID NO: 40)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[00032] 腫瘍特異的キメラ抗原受容体(CAR)を発現するTリンパ球を用いた養子免疫療法は、癌の治療のための強力な療法的戦略でありうる。CARは、膜貫通ドメインを通じて、CD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインに連結された細胞外特異的認識要素(腫瘍抗原に結合する受容体など)で構成される。したがって、これらの受容体は、MHC制限とは独立に、抗原に結合することもそしてT細胞活性化を伝達することもどちらも可能である。したがって、CARは、HLA遺伝子型とは関わりなく、抗原陽性腫瘍を持つ患者集団を治療可能な「普遍的」免疫受容体である。
【0016】
[00033] 本発明の態様にしたがって、CARは、細胞が腫瘍などのターゲットと会合することを可能にする特異的受容体に加えて、CD3ζのシグナル伝達ドメイン、およびCARを発現している養子導入された細胞のリサイクリング、生存および/または拡大をさらに促進する、1以上の共刺激受容体のシグナル伝達部分を含有する。共刺激受容体のシグナル伝達ドメインは、細胞において活性化シグナルを生じる各受容体タンパク質の細胞内部分である。例は、天然CD28分子のアミノ酸180〜220および天然4-1BB分子のアミノ酸214〜255である。特に好ましいCARは、ユニークな癌細胞表面受容体に特異的であり、in vivoで安定であり、そして低い免疫原性を有する、細胞外認識要素を含む。天然存在可溶性細胞シグナル分子からの誘導は、これらの目的を達成するのを補助する。
【0017】
[00034] 用語「CAR」は、細胞外認識ドメイン、膜貫通領域、および細胞内シグナル伝達ドメインを含有する組換え生体分子であるキメラ抗原受容体を指す。したがって、用語「抗原」は、抗体に結合する分子に限定されず、任意の受容体に特異的に結合可能な任意の分子を指す。したがって、「抗原」は、CARの認識ドメインを指す。細胞外認識ドメイン(細胞外ドメインとも称されるか、または単に該ドメインが含有する認識要素による)は、ターゲット細胞の細胞表面上に存在する分子に特異的に結合する認識要素を含む。膜貫通領域は、膜中にCARを係留する。細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3複合体のゼータ鎖由来のシグナル伝達ドメインを含み、そして場合によって、1以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0018】
[00035] E13Y突然変異を含むIL13ドメイン(IL13(E13Y))およびCD3ゼータ鎖シグナル伝達ドメインを含有するCARは、本明細書において、「IL13ζ」と称される。この用語には、IL13細胞外認識ドメイン(腫瘍細胞上のIL13Rα2を特異的に認識するドメイン)、膜貫通領域、およびCD3ゼータ鎖細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、任意のキメラ抗原受容体(CAR)が含まれる。こうしたCARの限定されない例を実施例8〜12に提供する。IL13(E13Y)を含有し、そしてまた場合による共刺激細胞内ドメインCD28および4-1BBも含有するCARを、本明細書において、「IL13-CD28-41BBζ」と称する。
【0019】
[00036] 当業者は、IL13(E13Y)をコードする任意のヌクレオチド配列もまたこの同じ目的に適しているであろうことを認識するであろう。IL13シグナル伝達ドメインの突然変異されていない配列もまた適している。天然配列に90%、95%、98%または99%相同性を持つ変異体を含む任意のIL13またはIL13(E13Y)コード配列が本明細書において使用可能である。したがって、IL13Rα2などのIL13受容体腫瘍抗原を特異的に認識するのに有用なこうした配列には、天然核酸にコードされるもの(その開示が本明細書に援用される、Smernovら, Gene 155:277-281, 1995を参照されたい)、E13Y突然変異を欠く同じ核酸配列、これらの配列に95%、98%または99%相同である配列、こうした配列を含むが、また3’または5’端のさらなるヌクレオチド、例えば3、6、9、12またはそれより多いヌクレオチド、あるいは約12、20、50または100までのさらなるヌクレオチドなどの任意の数のさらなるヌクレオチドまたはコドンも含む、より長い配列、および遺伝暗号の縮重のためこれらの核酸と同じアミノ酸配列をコードする任意の配列が含まれる。特に、所望の宿主による発現のためにコドン最適化された(CO)配列は、本発明の一部と意図される。
【0020】
[00037] 本発明で用いられる場合、可溶性認識要素は、実施例1中のIL13(E13Y)コード配列に関して記載するような新規合成ポリペプチドに由来するか、あるいはファージディスプレイライブラリーまたは化学的に合成されたライブラリーなどのコンビナトリアルライブラリーのポリペプチドに由来する。好ましい可溶性認識要素は、ヒト起源のものであり、そしてしたがって、非免疫原性であるが、突然変異誘発を通じてアフィニティまたは特異性が調整されていてもよい。T細胞上で発現すると、可溶性認識要素は、T細胞活性化を生じる方式で、ターゲット細胞上のターゲット要素に結合可能である(例えば腫瘍細胞に結合するが、いかなる認識可能な度合いにも非ターゲット細胞には結合しない)。したがって、本発明に適した可溶性認識要素は、細胞外環境中で安定であり、非抗原性であり、そしてより選択性である可能性がより高く、そしてしたがって好ましいため、本発明のCARにおいて、ターゲット特異性に関して、抗体断片または細胞接着分子に勝る、特定の利点を有する。適切な可溶性受容体要素の例には、自己分泌およびパラ分泌増殖因子、ケモカイン、サイトカイン、ホルモン、および必要な特異性を示す操作された人工的小分子リガンドが含まれる。天然リガンド配列を操作して、特定のターゲット細胞に対する特異性を増加させてもよい。特定のCARで使用するための認識要素の選択は、ターゲット細胞の性質、および上に論じる特性によって支配される。本発明の1つの好ましい態様において、CARは、認識要素としてIL13の突然変異体(E13Y)を用いて、T細胞をIL13Rα2発現腫瘍細胞に対して特異的に向けることによって、悪性神経膠腫、腎細胞癌腫および他の腫瘍によるIL13Rα2の腫瘍に制限される発現を利用する。それに対する選択的認識要素が知られているかまたは操作可能である、受容体抗原または任意の特異的分子を細胞表面上で選択的に発現する、任意の多様な癌細胞タイプに特異的な、類似の認識要素を生成可能である。
【0021】
[00038] 本発明とともに使用するのに適した支持(膜貫通)領域の例には、免疫グロブリンの定常(Fc)領域、ヒトCD8α、およびターゲット細胞へのアクセスおよび該細胞上の結合を改善するため、ターゲティング部分を細胞表面から離して移動させるように働く人工的リンカーが含まれる。好ましい支持領域は、IgG(例えばIgG4)のFc領域である。適切な膜貫通ドメインの例には、白血球CDマーカーの膜貫通ドメイン、好ましくはCD4またはCD28のものが含まれる。細胞内受容体シグナル伝達ドメインの例には、T細胞抗原受容体複合体、好ましくはCD3のゼータ鎖が含まれるが、CARを膜に係留するのに十分な任意の膜貫通領域が使用可能である。当業者は、多くの膜タンパク質において膜貫通ドメインを生じる、多くの膜貫通領域および構造要素(親油性アミノ酸領域など)を知っており、そしてしたがって任意の好適な配列を置換可能である。CAR発現細胞の機能および活性を改善するのに適したT細胞共刺激シグナル伝達受容体には、限定されるわけではないが、CD28および(CD137)としても知られる4-1BB、ならびにOX-40が含まれる。
【0022】
[00039] CD28を介したシグナル伝達は、IL2産生および増殖に必要であるが、T細胞機能および活性を維持するのに主な役割は果たさない。4-1BB(CD28活性化後に発現される腫瘍壊死因子受容体ファミリーメンバー)およびOX-40は、T細胞の長期生存およびT細胞の集積を駆動するのに関与する。これらの受容体のリガンドは、典型的には、樹状細胞および活性化マクロファージなどのプロフェッショナル抗原提示細胞上で発現されるが、腫瘍細胞上では発現されない。CD4+ T細胞において、CD28および/または4-1BBシグナル伝達ドメインを取り込むCARを発現させると、CD3ζシグナル伝達ドメインのみを含有するCARを発現するものに比較して、これらの細胞の活性および抗腫瘍強度が増進される。好ましくは、本発明のCARは、CD28および4-1BBシグナル伝達ドメインの両方を含有する。
【0023】
[00040] CARが腫瘍細胞をターゲティングするために、CARは、腫瘍表面マーカーに結合し、そして好ましくはユニークな腫瘍表面分子に特異的に結合する、細胞外結合分子を含有する。いくつかの癌は、免疫系の分子を発現するかまたは過剰発現する。神経膠腫は例えばIL13受容体を発現し、そして特に、高アフィニティIL13受容体を発現する。しかし、免疫系によって用いられるIL13受容体3分子複合体(IL13Rα1、IL4Rβ、およびγcからなる)とは異なり、神経膠腫細胞は、IL4Rβまたはγc44に対する必要性とは独立に、IL13に結合可能なユニークなIL13Rα2鎖を過剰発現する。その相同体であるIL4と同様、IL13は、CNSの外部で、多面的免疫制御活性を有する。IL13およびIL4はどちらも、Bリンパ球によるIgE産生を刺激し、そしてマクロファージによる炎症促進性サイトカイン産生を抑制する。
【0024】
[00041] 放射標識IL13でのオートラジオグラフィーを用いる詳細な研究によって、研究したほとんどすべての悪性神経膠腫組織上に豊富なIL13結合があることが示された。この結合は、腫瘍切片内で、そして単細胞分析において、非常に均質である。しかし、IL13Rα2 mRNAに特異的な分子プローブ分析は、正常な脳要素による神経膠腫特異的受容体の発現を検出せず、そして放射標識IL13でのオートラジオグラフィーもまた、正常CNSにおける特異的IL13結合を検出不能であった。これらの研究によって、共有されるIL13Rα1/IL4β/γc受容体は、正常CNSにおいて、検出可能には発現されないことが示唆される。したがって、IL13Rα2は神経膠腫の非常に特異的な細胞表面ターゲットであり、そして本発明に非常に適したターゲットである。当業者は、ターゲティングしようとする細胞上に発現されるかまたは過剰発現され、そして好ましくは他の細胞上で発現されないかまたははるかに低い度合いで発現される、CARの他の適切なターゲットを知っている。本発明のCARでターゲティングするのに適した腫瘍特異的ターゲットの別の例は、IL3受容体(IL3R;例えば急性骨髄性白血病(AML)細胞上で発現される)である。
【0025】
[00042] しかし、広く発現されるIL13Rα1/IL4β/γc受容体複合体に対する、IL-13に基づく細胞毒素の結合は、CNS外部の正常組織に対して、望ましくない毒性を仲介する潜在能力を有し、そしてしたがってこれらの剤の全身投与を制限する。IL13アルファらせんAにおけるアミノ酸13での天然グルタミン酸に対するチロシンのアミノ酸置換は、IL13のIL13Rα1/IL4β/γc受容体に対するアフィニティを選択的に減少させる。しかし、この突然変異体(IL13(E13Y)と称される)のIL13Rα2に対する結合は、野生型IL13に比較して50倍増加した。したがって、この最小限に改変されたIL13類似体は、神経膠腫細胞に対するIL13の特異性およびアフィニティを同時に増加させる。したがって、本発明の好ましい態様は、アミノ酸13での突然変異を含有するIL13を使用する。天然配列を有するIL13もまた、本発明で使用可能であるが、腫瘍塊内に直接注射することによるなど、修飾T細胞を局所的に投与しようとする状況において、特に有用でありうる。
【0026】
[00043] IL13Rα2を発現する腫瘍を特異的にターゲティングするためのCARの好ましいタイプは、CD4膜貫通ドメインおよび細胞質CD3ζシグナル伝達配列に融合されたヒトIgG4ヒンジ-Fcドメイン支持領域に連結され、IL13タンパク質がタンパク質のアミノ酸13で天然存在グルタミン酸に対するチロシンの置換を含有する、細胞外IL13突然変異体サイトカイン(本明細書において、IL13(E13Y)と称される)で構成される。図1、左側を参照されたい。このCARは、本明細書において、「IL13ζ CAR」と称される。このCARがまた、CD28および4-1BBシグナル伝達ドメインも含有する場合、該CARはIL13-CD28-41BBζと称される。図1、右側を参照されたい。
【0027】
[00044] 本発明記載の免疫受容体を当業者に知られる任意の手段によって産生してもよいが、好ましくは、組換えDNA技術を用いて産生する。好適であるように、当該技術分野に知られる分子クローニングの標準的技術(ゲノムライブラリースクリーニング、PCR、プライマー補助連結、部位特異的突然変異誘発等)によって、キメラ受容体のいくつかの領域をコードする核酸を調製し、そして組み立てて完全コード配列にしてもよい。好ましくは、生じたコード領域を発現ベクター内に挿入して、そしてこれを用いて適切な発現宿主細胞株、好ましくはTリンパ球細胞株、そして最も好ましくは自己Tリンパ球細胞株を形質転換する。
【0028】
[00045] 簡潔には、既知の方法を用いて、以下のように、IL13ζ CARを構築してもよい。既知のIL13 mRNA配列に基づくプライマーを用いたPCRによって、IL13突然変異体DNA IL13(E13Y)を合成してもよい。完全IL13遺伝子配列は、その開示が本明細書に援用される、Smernovら, “Tandem arrangement of human genes for interleukin-4 and interleukin-13: resemblance in their organization.” Gene 155:277-281, 1995に報告される。以下の表I、および図2に示す、順方向プライマーIL13P1、ならびに4つの逆方向プライマー、IL13P2、IL13P3、IL13P4、およびIL13P5を用いて、IL13(E13Y)の新規合成を行った。次いで、望ましい場合、このIL13突然変異体配列が5’リーダー配列を含有するように、これを修飾してもよい。ヒトIgG4-CD4膜貫通(IgG4-CD4tm)などの膜貫通アンカーおよびCD3ゼータカイン(CD3ζ)細胞質配列もまた、PCR融合技術または任意の好適な方法によって、3’端に付加してもよい。本発明の例として、完全IL13ζ配列を図3に提供する。同じ方法を用い、異なる認識要素を用いて、同等の分子を構築してもよい。次いで、最終構築物を任意の適切なプラスミド発現ベクター内に連結してもよい。好ましいプラスミド発現ベクターはpMG(InvitrogenTMより入手可能)である。
【0029】
[00046] IL13(E13Y)含有CARは、MHC独立方式で、T細胞が、IL13受容体α2(本明細書においてIL13Rα2と称される)を発現する神経膠腫細胞、腎癌腫細胞およびIL13Rα2を発現する任意の癌をターゲティングするように特異的に導く。抗腫瘍CD4+ T細胞エフェクターを生成して、CD3-ζ、CD28および4-1BB由来のシグナル伝達ドメインを含有するCARを用いて、腫瘍細胞を認識するように再指示した。非ウイルスプラスミドベクター(pEK)およびエレクトロポレーション法(Amaxa BiosystemsTMのNucleofector TechnologyTM、メリーランド州ガイザーズバーグ)を用いて、IL13ζまたはIL13-CD28-41BBζ CARいずれかをヒト初代T細胞にトランスフェクションした。いずれかのCAR(IL13ζまたはIL13-CD28-41BBζ)を発現するCD4+ T細胞を、エフェクターに関連するシグナル伝達経路を活性化し、サイトカインを産生し、ターゲット細胞を溶解し、そしてin vivo腫瘍増殖を制御する潜在能力に関して比較した。結果によって、IL13ζにCD28および4-1BBシグナル伝達ドメインを付加すると、CARを発現しているCD4+ T細胞の抗腫瘍エフェクター機能が増進することが示された。IL13-CD28-41BBζ免疫受容体を発現しているエフェクターT細胞は、共刺激が制限されていると予期される腫瘍環境において、JNK、p38およびAKTキナーゼを通じた共刺激シグナルを仲介することが可能であった。ヒト初代CD4+ T細胞における強制的な共刺激は、これらの細胞が、in vitroおよびin vivoの両方で、持続された抗腫瘍有効性と関連する方式で、Th1表現型に極性化することを支持する。CD4+ T細胞におけるCARの下流のエフェクターシグナルが立証された。これらのエフェクターシグナルは、in vitroおよびin vivoの両方で、観察されるTh1バイアスおよび抗腫瘍エフェクター活性の延長と相関した。
【0030】
[00047] CD3ζシグナル伝達は単独でERK活性化を駆動する。これは、ERK活性が、IL13ζ発現対照に比較して、IL13-CD28-41BBζ発現細胞では増進されない(どちらのCARもCD3ζシグナル伝達ドメインを含有する)という本明細書の知見とよく相関する。CD28でのCD3の共刺激は、JNKおよびp38の活性化を駆動し;CD3の4-1BB仲介性共刺激もまた、JNK活性化を伴う。JNKおよびp38はどちらも、IL2、IFN-γおよびTNF-αの産生を含めて、CD4+ T細胞によるTh1極性化免疫反応を駆動する際に主な役割を果たす。CD28および4-1BBの両方の別の下流シグナル伝達構成要素であるAKTキナーゼの活性化もまた、IL2およびINF-γの上方制御に関与するが、Th2サイトカインの上方制御には関与しない。IL13-CD28-41BBζ発現T細胞における、顕著なTh1表現型(以下の実施例を参照されたい)と、増進されたJNKおよびp38 MAPキナーゼ誘導ならびに持続されたATK活性化(以下の実施例を参照されたい)が関連していることから、CD28および4-1BBシグナル伝達部分が、このキメラ受容体において、CD3ζシグナル伝達ドメインとともに働いて、これらの共刺激受容体と通常関連する下流シグナル伝達経路に伝達する能力を保持することが強く示される。共刺激ドメインシグナルによって駆動される、活性化されたTh1表現型がどのくらい強いものでありうるかに関わらず、腫瘍微小環境内の機能する抗腫瘍エフェクターCD4+ T細胞の保持およびリサイクリングは、抗腫瘍強度の達成を大いに補助する。
【0031】
[00048] CD3ζ仲介性活性化のみに比較して、IL13-CD28-41BBζ CARを発現しているCD4+エフェクターT細胞は、増大した/維持されたMAPKおよびAKT活性、上方制御されたTh1サイトカイン産生、ならびに腫瘍ターゲットに対する増大した細胞溶解強度を示した。さらに、腫瘍での再発性刺激に際して、IL13-CD28-41BBζ+ CD4+細胞は、その溶解機能を保持/リサイクリングする一方、CD13ζ+ CD4+細胞は有効であるが、まもなく反応不顕性となり/消耗した。これらのin vitro観察は、共刺激CARを発現しているex vivo拡大されたCD4+ T細胞を養子導入することによって仲介される免疫不全マウスにおいて確立された同所性CNS神経膠腫異種移植片のin vivo制御増進と相関した。したがって、これらの研究は、CD3ζシグナル伝達事象と共刺激を統合すると、腫瘍微小環境において、機能維持のため、CD4+抗腫瘍エフェクター細胞が完全に活性化される効果があることを立証する。
【0032】
[00049] AKTを通じて仲介されるCD28および4-1BB共刺激シグナルは、抗アポトーシスタンパク質の上方制御を通じて、活性化が誘導する細胞死を阻害しうる。IL13-CD28-41BBζを発現するT細胞において見られるAKT活性化増進は、in vitroでの腫瘍特異的活性のリサイクリングの増進、ならびにin vivoでの腫瘍増殖制御の延長と関連した。したがって、共刺激CARは、養子療法プロトコルの臨床的有効性を有意に改善しうる方式で、抗腫瘍活性の期間および/または保持を増進しうる。
【0033】
[00050] それ自体の共刺激シグナル伝達ドメインを含有する腫瘍特異的CARは、これらの共刺激リガンドを発現しない、より広範囲の多様な固形腫瘍に対して、Tリンパ球を活性化するための新規アプローチを提供する。例えば、IL13Rα2は、乳癌、頭部および頸部癌、腎臓癌、卵巣癌、カポジ肉腫ならびに神経膠腫を含む、多様なヒト腫瘍上の過剰発現された細胞表面ターゲットとして同定されてきている。したがって、IL13ゼータカインおよびCD28および4-1BBを含有するCARを発現しているT細胞を用いて、神経膠芽腫(神経膠腫)および表面上にIL13ターゲットを有する、上に列挙するものなどの任意の癌を治療してもよい。
【0034】
[00051] 本発明は、細胞表面に発現された腫瘍ターゲット、例えば抗原に結合する部分を取り込むことによって、任意の腫瘍に向けられることも可能な、CD3ζ、CD28および4-1BB(および/または他の共刺激シグナル伝達ドメイン)を含有するCARを特に意図する。他の腫瘍特異的ターゲット結合剤の例には、Her2/Neu(ErbB-2)、α3インテグリン、CD20、CD19、EGFRVIII、IL3Rα(CD123)、LEA、CD44v6、またはCAR上に含有される共刺激シグナル伝達ドメインを発現しない腫瘍、好ましくは固形腫瘍に特異的な任意のターゲットが含まれる。したがって、この方式で、ヒト腫瘍をターゲティングするための構築物には、Her2/Neu(ErbB-2)、α3インテグリン、CD20、CD19、EGFRVIII、IL3Rα(CD123)、LEA、CD44v6、あるいはキメラT細胞受容体による結合にアクセス可能な任意の特異的腫瘍抗原または他の細胞表面構成要素に対する特異性を持つものが含まれてもよい。当業者は、これらの特異的腫瘍抗原および特定の腫瘍をターゲティングするのに利用可能な受容体を知っており、そしてこの方式でターゲティング可能な腫瘍を知っている。
【0035】
[00052] CD4+およびCD8+ T細胞エフェクター機能はどちらも、これらの受容体を介して誘発可能であり、したがって、これらのT細胞タイプはどちらも、本発明での使用が意図される。本発明のIL13 CARを発現しているCD8+ T細胞を用いて、これらの細胞の他の機能の中でもとりわけ、ターゲット細胞を溶解し、そしてターゲット細胞の存在下で、IL2を産生してもよい。CD4+およびCD8+ T細胞のいずれかまたは両方における適切な共刺激CARの発現を用いて、したがって増進されたおよび/または長期の生存および抗腫瘍活性を示すプロフェッショナルヘルパーおよびキラーT細胞のいずれかまたは両方からなる、養子免疫療法のための細胞の最も有効な集団を提供する。
【0036】
[00053] 本明細書に引用されるすべての参考文献は、その全体が本明細書に援用される。以下の実施例は、本発明の1つの態様を例示する目的のみのためのものである。
【実施例】
【0037】
実施例1. 初代ヒトTリンパ球におけるIL13Rα2特異的キメラ受容体のトランスフェクションおよび発現
[00054] 神経膠腫腫瘍抗原IL13Rα2との相互作用に際して、T細胞受容体(TCR)カスケードおよび共刺激様シグナル伝達カスケードの両方を関与させるため、CD28および4-1BB由来のシグナル伝達要素をIL13ゼータカイン(IL13ζ)キメラ抗原受容体(CAR)内に組み込んだ。好ましいIL13ζ CARは、ヒトCD4の膜貫通ドメインを介して、ヒト細胞質CD3ζに連結された、細胞外IL13(E13Y)突然変異タンパク質(mutein)、ヒトIgG4ヒンジ-Fcで構成される。図1を参照されたい。プライマーIL13P1、IL13P2、IL13P3、IL13P4、およびIL13P5を用いて、IL13(E13Y)コード配列の新規合成を行った。以下の表Iおよび図2を参照されたい。最終配列(417 bp)をEcoRI-BamHIで末端消化し、そして連結312#3としてプラスミドpSK(StaratageneTM)内に連結した。プライマーIL13 312#3 mut5-3およびIL13 312#3 mut3-5、ならびにテンプレートとして連結312#3を用いて、連結312#3を突然変異誘発し(StratageneTMキット、製造者の指示による)、欠失されたヌクレオチドを修復して、連結348#1(IL13ζ/pSK)を形成した。
【0038】
[00055] 標準的PCRスプライス重複伸長によって、IL13(E13Y)の5’端に、ヒトGM-CSFRアルファ鎖シグナルペプチド(hsp)コード配列を融合させた。プライマー5’:19hsp5’および3’:hsp-IL13FRを用いて、テンプレート連結301#10(hsp/pSK)からhsp配列を得た。表Iを参照されたい。プライマー5’:hsp-IL13FFおよび3’:IL13-IgG4FR、ならびにテンプレートとして連結312#3を用いて、IL13配列を得た。表Iを参照されたい。
【0039】
[00056] 同じ方法を用いて、IgG4 Fc、CD4膜貫通領域およびCD3ζ細胞質領域をコードする配列(IgG4m:ゼータ;図3の完全IL13ζ配列のヌクレオチド421〜1512(SEQ ID NO: 12))を、ヒト・シグナルペプチド-IL13融合配列の3’端に融合させた。プライマー5’:IL13-IgG4FFおよび3’:ゼータN3’(表1を参照されたい)を用い、テンプレートとして配列R9.10(IgG4mゼータ/pSK)を用いて、IgG4m:ゼータ配列を得た。テンプレートとしてそれぞれの配列を、そしてプライマー5’:19hsp5’および3’:ゼータN3’(表1を参照されたい)を用いて、1119 bpのIgG4m:ゼータ配列をhsp-IL13融合配列に融合させて、1522 bp hsp-IL13-IgG4m:ゼータ融合配列を生じた。末端をXbaI-NotIで消化し、そして連結351#7としてpSK内に連結して、プラスミドIL13ζ/pSK(4464 bp)を生成した(すなわち図3のpSKクローニングベクター内のIL13ζ配列)。
【0040】
[00057] IL13ζ/pSKをXbaI-NotIで消化し、そしてクレノウで平滑末端を生成し、そして生じた断片をプラスミドpMG^Pac(InvitrogenTM)(まず、SgrAIで開環し、クレノウで平滑化し、そしてSAPで脱リン酸化することによって調製)内に連結して、プラスミドIL13ζ/pMGを生じることによって、IL13ζコード配列を含有する発現ベクターを生成した。NotI-NheIで消化することによって、IL13ζ/pMGのハイグロマイシン耐性領域を除去し、そしてNotI-NheIでの消化によってプラスミドCE7R/HyTK-pMGから得られた選択/自殺融合物HyTKによって置換して、発現ベクターIL13ζ/HyTK-pMG(6785 bp)を生成した。このプラスミドは、塩基6〜549にヒト伸長因子-1αプロモーター(hEF1p)、塩基690〜2183にIL13ζコード配列、塩基2230〜2498にシミアンウイルス40後期ポリアデニル化シグナル(後期SV40pAN)、塩基2499〜3245に最小大腸菌(E. coli)複製起点(Ori ColE1)、塩基3246〜3432に合成ポリAおよび休止部位(SpAN)、塩基3453〜4075に極初期CMVエンハンサー/プロモーター(hCMV-1Aprom)、塩基4244〜6319にハイグロマイシン耐性チミジンキナーゼ・コード領域融合物(HyTK)、ならびに塩基6320〜6618にウシ成長ホルモン・ポリアデニル化シグナルおよび転写休止(BGh pAn)を含む。該プラスミドは塩基3233〜3240にPacI直鎖化部位を有する。hEF1p、後期SV40pAN、ori ColE1、SpAn、およびhCMV-1Aprom要素すべてを、親プラスミドpMG^Pacから得た。要約すると、IL13ζ/HyTK-pMGは修飾されたpMG主鎖であり、hEF1プロモーターからIL13ζ遺伝子を発現し、そしてhCMV-1AプロモーターからHyTK融合物を生成する。プラスミドIL13ζ/HyTK-pMGのマップを図4に示す。プラスミドの全長核酸配列を図5A〜図5Lに示す(SEQ ID NO: 13および14)。IL13ζ挿入物の配列もまた、図3に示す(SEQ ID NO: 5および6)。
【0041】
[00058] 抗ヒトCD3ζモノクローナル抗体クローン8D3(BD PharMingenTM、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて、グリコシル化阻害剤のツニカマイシンの存在下または非存在下で共培養したJurkat T細胞安定トランスフェクタント由来の全細胞溶解物を探査するウェスタンブロットによって、発現された構築物の完全性の評価を確認した。IL13ζ/HyTK-pMG発現ベクターをJurkat T細胞にエレクトロポレーションした後、陽性トランスフェクタントを選択しそして拡大することによって、Jurkat T細胞安定トランスフェクタント(Jurkat-IL13-pMGバルク株)を得た。24ウェルプレートのウェルあたり、Jurkat-IL13-pMGバルク株由来の2×106細胞を、5μg/mL、10μg/mL、または20μg/mLのツニカマイシンを伴いまたは伴わずに、プレーティングした。プレートを37℃で22時間インキュベーションした。各ウェルから細胞を採取し、そして各試料をPBSで洗浄し、そしてプロテアーゼ阻害剤(1錠剤/10 mL完全プロテアーゼ阻害剤カクテル)を含有する50μL RIPA緩衝液(PBS、1%NP40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS)中に再懸濁した。試料を氷上で1時間インキュベーションした後、14,000 rpm、4℃で20分間遠心分離した。遠心分離した溶解物上清試料を採取して、そして還元条件下で、1:3体積の試料緩衝液中で煮沸し、次いで12%アクリルアミドゲル上のSDS-PAGE電気泳動に供した。ニトロセルロースにトランスファーした後、T-TBS(Tris緩衝生理食塩水pH8.0中の0.1%Tween20TM)中、4%脱脂粉乳を含有するBlottoTM溶液中で、膜を1時間ブロッキングした。次いで、0.5μg/mLの濃度の一次マウス抗ヒトCD3ζモノクローナル抗体と膜を1時間インキュベーションし、洗浄し、そして次いで、1:3000希釈(BlottoTM溶液中)のヤギ抗マウスIgGアルカリホスファターゼ・コンジュゲート化二次抗体(Bio-RadTMImmunoStarTMキット)と1時間インキュベーションした。現像前に、膜をT-TBS中でさらに4回洗浄し、そして次いで、3 mLホスファターゼ基質溶液(Bio-RadTMImmunoStarTMキット)と、室温で5分間インキュベーションした。次いで、膜をプラスチック現像ホルダー(TropixTM)で覆い、そしてX線フィルムに曝露させた。野生型ヒトIL13の既知のグリコシル化パターンと一致して、発現されたIL13(E13Y)ゼータカインの電気泳動移動度は、非常にグリコシル化されたタンパク質を示し、これは、ツニカマイシンの存在下で発現された際、およそ54 kDaのアミノ酸主鎖に減少する。
【0042】
[00059] pcDNA3.1(+)(InvitrogenTM)内にクローニングされた、選択/自殺融合遺伝子HyTK、新規合成された自己切断可能口蹄疫2Aペプチド(tctagaggag catgccagct gttgaatttt gaccttctta agcttgcggg agacgtcgag tccaaccctg ggccc;SEQ ID NO: 49)、およびIL13ζ分子(図3)をコードするHyTK-2A-IL13ζ-pcDNA3.1(+)構築物で、共刺激CARの構築を開始した。メトトレキセート(MTX)に対する耐性を与えるため、HyTK遺伝子を、PCRによって、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(T細胞受容体のCD3鎖を認識するOKT3抗体で、3日間刺激した末梢血単核細胞(PBMC)から得られるcDNAライブラリーより増幅され、QuikChangeTM部位特異的突然変異誘発キット(StratageneTM)を用いて生成されたL22FおよびF33S突然変異を含有した)と交換した。次いで、生じたDHFRdm-2A-IL13ζ構築物をNheIおよびNotIで切除し、溶出し、そして同様に消化した哺乳動物プラスミド発現ベクターpEK内に連結した。該pEKベクターは、元来、CMVプロモーターおよびアンピシリン遺伝子を除去し、そしてこれらを、pMG(InvitrogenTM)由来のヒト伸長因子1αプロモーター(EF1p)遺伝子で置換することによってpcDNA3.1(+)から修飾されており、プラスミドDHFRdm-2A-IL13ζ_pEK(pJ01275-9)が生成された。CD28 cDNAをInvitrogenTMより購入し、そしてOKT3抗体で3日間刺激しておいた末梢血単核細胞(PBMC)に由来するcDNAライブラリーから4-1BBコード領域をPCRによって増幅した(プライマー41BB5’および41BB3’を用いる、表1を参照されたい)。
【0043】
[00060] CD28および4-1BBの細胞内シグナル伝達領域(それぞれ、天然CD28および4-1BB配列のアミノ酸180〜220および214〜255)を、PCR(表Iに提供するプライマーCD4-CD28F、CD28-4-1-BBR、CD28-4-1bbF、および41bb93)によって、CD4膜貫通および細胞質CD3ζ(天然CD3ζのアミノ酸52〜164)領域間の接合部内に融合させた。IL13ζ(図6A)およびIL13-CD28-41BBζ(図6B)直鎖プラスミド構築物例の略図を提供する図6を参照されたい。ヒトIL13突然変異タンパク質(E13Y)、ヒトIgG4ヒンジ-Fc(IgG4)、ヒトCD4膜貫通(tm)、ヒトCD3ζ細胞質(ゼータ)、CD28細胞質(28c)および4-1BB細胞質(BBc)セグメントを図6に示す。異なるPCR断片を挿入するのに用いた制限酵素部位もまた、予測される塩基対位置を括弧内に提供して、図6に示す(NheI、KpnI、NsiI、NotI)。図6Aに示すように、CAR、IL13-CD28-41BBζは、CD3ζのものに融合したCD28および4-1BBの細胞質ドメインを含む。図6Aに示す各構築物は、IL13Rα2特異的となるE13Y突然変異を含有するhuIL13ドメイン、ヒトIgG4ヒンジ-Fcドメイン(huγ4Fc)、ヒトCD4膜貫通(huCD4tm)ドメイン、およびヒトCD3ζ細胞質(huCD3ζcyt)ドメインを有し;IL13-CD28-41BBζ CARは、CD4膜貫通およびCD3ζ細胞質ドメイン間に挿入されたCD28および4-1BBのシグナル伝達(sig)ドメインを有する。プラスミドの構築に用い、そして発現分析に用いたPCRプライマーを表Iに提供する。
【0044】
[00061] 製造者のプロトコル(Miltenyi BiotecTM Inc.)を用いたMACSTM分離によって得たCD4+ T細胞のバルク培養を、10%FCS、1%L-グルタミン、2.5%HEPES緩衝液、50 U/mL rhIL2、10 ng/mL rhIL15および0.1μM MTXを含むRPMI培地中で維持した。ヒトT細胞の単離、活性化、およびエレクトロポレーションを、以下のように行った。同意を得た健康なドナーから得たヘパリン処理末梢血のFicoll-Paque(Pharmacia BiotechTM)上の密度勾配遠心分離によってPBMCを単離した。AmaxaTMヒトT細胞Nucleofectorキット(AmaxaTMInc.)を用いて、ヌクレオフェクション溶液中に細胞を再懸濁した。プラスミド(1μg/5×106細胞)を添加し、そしてAmaxaTMNucleofector I(AmaxaTM Inc.)、プログラムU-14を用いて細胞にエレクトロポレーションした。次いで、10%FCSを含むフェノールレッド不含培地中に細胞を採取し、一晩休ませ、そして次いで、10%FCSを含むRPMI中、30 ng/mL OKT3および5 ng/mL rhIL15で3日間刺激した。0.1μM MTXおよび5 ng/mL rhIL15を含有する培地を用いて、成功したトランスフェクタントを選択した。
【0045】
[00062] CD3ζに特異的な抗体を用いた免疫ブロッティング分析によって、CARの発現を評価した。既知の方法および商業的に入手可能なマウス抗ヒトCD3ζ特異的モノクローナル抗体、1D3を用いて、バルクMTX選択CD4+T細胞(偽、IL13ζ、およびIL13-CD28-41BBζトランスフェクション)の全細胞溶解物を、CAR発現(キメラCD3ζ)に関して試験した。こうした非常にグリコシル化されたタンパク質で予期されるように、予期される分子量内の多数のバンドが観察された。図7を参照されたい。
【0046】
[00063] フローサイトメトリーを用いて、膜結合IL13を検出することによって、CD4+ T細胞表面上に発現されるIL13ζまたはIL13-CD28-41BBζ CARのレベルを調べた。図8を参照されたい。IL13ζまたはIL13-CD28-41BBζ CARでトランスフェクションしたPBMCを、MTX(0.1μM)の選択的濃度下で平均10週間増殖させ、MACSTM分離によって、CD4+細胞に関して磁気的にソーティングし、そして示すように、IL13含有CAR(Y軸)、およびCD4、CD8、TCRα/β、またはCD28(X軸)の表面発現に関して調べた。アイソタイプマッチした蛍光mAbを用いて、象限を確立した。これらの遺伝子修飾されたT細胞集団は、CD4+細胞の磁気ビーズに基づくMACSTM精製後に予期されるように、主にCD4+およびCD8-であるだけでなく、高いそして同等のレベルの内因性TCR、および低いか検出不能なレベルの共刺激CD28も発現した。図8を参照されたい。
【0047】
[00064] また、これらの研究で用いたIL13Rα2+ヒト神経膠芽腫腫瘍細胞ターゲット株、U87もまた表現型決定して、これらの細胞が表面上にMHCクラスIおよびクラスIIを発現し、そして共刺激リガンドCD80/86または4-1BBLを発現しないことを確認した。フローサイトメトリーによって分析されるような、U87神経膠腫ターゲット細胞上のアイソタイプ対照(白抜きのヒストグラム)に比較して、示すようなMHC分子HLA-A2およびHLA-DR、IL13R、ならびに共刺激分子CD80、CD86、およびCD137-L(4-1BBL)(黒塗りのヒストグラム)の表面染色を示す、図9を参照されたい。
【0048】
[00065] フローサイトメトリー分析は、PEコンジュゲート化またはFITCコンジュゲート化抗ヒトIL13モノクローナル抗体(BD PharMingenTM)での染色による、IL13-CAR構築物の細胞表面発現を評価する工程を伴った。FITCコンジュゲート化抗CD4、抗CD8、および抗TCR α/β抗体またはPEコンジュゲート化抗CD28抗体(BD PharMingenTM)を用いて、初代ヒトT細胞トランスフェクタントの細胞表面表現型をアッセイした。FITCおよびPEコンジュゲート化アイソタイプ対照(BD PharMingenTM)に比較して、FITCコンジュゲート化抗HLA-A2、抗HLA-DR、および抗CD80抗体、またはPEコンジュゲート化抗CD86および抗CD137-L(4-1BBL)抗体を用いて、ヒトU87神経芽腫細胞の細胞表面表現型をアッセイした。ヤギ抗ヒトIL13Rα2(R&D SystemsTM)、その後、FITCコンジュゲート化マウス抗ヤギIgG(Jackson ImmunoResearchTM)を用いて、IL13Rα2発現をアッセイした。
【0049】
表I. CAR構築のためのPCRプライマー
【0050】
【表1】
【0051】
実施例2. IL13-CD28-41BBζによる持続AKTシグナル伝達でのJNKおよびp38 MAPKシグナル伝達の増強
[00066] 補助受容体CD28または4-1BBを伴うTCR-CD3複合体の会合によって刺激されるT細胞は、AKT、ならびにマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)を通じてシグナルを駆動することが知られる。共刺激CARがこれらの下流エフェクター経路に影響を及ぼす能力を調べるため、in vitroキナーゼアッセイを用いて、U87ターゲット細胞の会合後、IL13ζおよびIL13-CD28-41BBζ発現CD4+ T細胞において、AKTおよびMAPKファミリーメンバーERK、JNKおよびp38の活性を評価し、そして比較した。ヒト神経膠腫株U87をATCC(メリーランド州ロックビル)から得た。すべての腫瘍株は接着性であり、そして10%熱不活化FCS、25 mM HEPES、および2 mM L-グルタミンを補ったDMEM(Irvine ScientificTM)中で増殖させた。IL13ζまたはIL13-CD28-41BBζ CARを発現しているCD4+ T細胞を、アッセイ前に、図10に示す時間、U87神経膠腫細胞とインキュベーションした。
【0052】
[00067] IL-13ζまたはIL13-CD28-41BBζを発現しているCD4+ T細胞を腫瘍ターゲット細胞で最長48時間(図10A)または72時間(図10B)刺激した後、JNK、p38およびAKT総タンパク質基質(すなわち、それぞれ、cJun、ATF2、およびGSK3)およびリン酸化基質(それぞれ、P-cJun、P-ATF2、およびP-GSK3)レベルをウェスタン免疫ブロットによって測定した。キナーゼ活性の測定値としての各基質のリン酸化の倍増加を図10において各群の下部に示す。
【0053】
[00068] Hibiら, “Identification of an oncoprotein- and UV-responsive protein kinase that binds and potentiates the c-Jun activation domain.” Genes Dev. 7:2135-2148, 1993を修飾した方法を用いて、非放射性固体状態キナーゼアッセイを行った。穏やかな遠心分離(1000 rpm、<3分間)によって、ターゲット細胞から分離されているT細胞溶解物を用いて、ERK1/2、JNK、p38、およびAKTに特異的な抗体(Cell Signaling Technology Inc.TM)を用いて、選択されるキナーゼを4℃で一晩免疫沈降させた。免疫沈降した複合体を、溶解緩衝液(1%NP40、0.1%SDS、および0.5%デオキシコール酸ナトリウムを含むPBS)およびキナーゼ緩衝液(10 mM MgCl2および2 mM EGTAを含有する25 mM Tris、pH7.5)中で、免疫沈降した複合体を洗浄し、そして10μM ATPの存在下で、1μgの基質を用いて、30℃で30分間アッセイを行った。
【0054】
[00069] グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質:GST-ELK、GST-ATF2およびGST-GSK3β(Cell Signaling TechnologyTM Inc.)、およびGST-cJun(1-79)(Changら, Cell 124:601-613, 2006に記載されるとおり)を、それぞれ、ERK、p38、AKT、およびJNKキナーゼアッセイの基質として用いた。標準法にしたがって、生じた産物を12%NuPAGETM(InvitrogenTM)中に溶解し、そしてXcell IIブロットモジュールTM(InvitrogenTM)を用いて、ニトロセルロース膜にトランスファーした。ブロットを、ホスホ-ELK、ATF2、cJunおよびGSK3βに対する抗体(Cell Signaling TechnologyTMInc.)で探査して、リン酸化GST融合タンパク質を検出し、そしてGSTに対する抗体(BD PharMingenTM)で探査して、基質総量を検出した。次いで、免疫ブロットをIRDye 680コンジュゲート化ウサギまたはIRDye800コンジュゲート化マウス免疫グロブリン特異的抗体(LI-CORTM)とインキュベーションした。ブロットを前処理し、そして抗体を希釈するために、ブロッキング緩衝液(LI-CORTMより購入)を用いた。OdysseyTM赤外画像化系(LI-CORTM)を用いて、ブロットを視覚化し、そして記録し、そしてOdysseyTM v2.0ソフトウェア(LI-CORTM)を用いてバンド強度を定量化した。キナーゼ活性の測定値である基質のリン酸化を定量化して、そして対応する、免疫沈降キナーゼおよび総キナーゼ基質の検出された量に対して標準化した。IL13ζ+ CD4+ T細胞のt=0での相対キナーゼ活性に、任意の値1.0を与え;ダッシュ記号(-)は、倍相違が<1.0であることを示す(図10を参照されたい)。
【0055】
[00070] キナーゼアッセイは、U87神経膠腫細胞との共培養後、IL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞における、JNKおよびp38MAPK活性増進ならびにAKTキナーゼ活性延長を検出可能であった。図10に示すように、JNKおよびp38活性化は、IL13ζを発現するCD4+ T細胞よりも、IL13-CD28-41BBζを発現するものにおいてより強かった。図10を参照されたい。対照的に、別のMAPK、ERKの活性化は、2つの細胞種間で同程度であった。どちらのT細胞集団でもAKT活性化が観察されたが、IL13ζ+細胞においては、24時間までのみ上昇し、一方、IL13-CD28-41BBζ+細胞は、72時間までまたはそれより長く、上昇したAKT活性を示した。図10Bを参照されたい。したがって、どちらのCARも有効であったが、IL13-CD28-41BBζ CAR内の共刺激ドメインは、IL13ζCARで観察されるものに比較して、より持続されたAKT活性を生じた。
【0056】
実施例3. 共刺激シグナルは、腫瘍再指示CD4+エフェクターのTh1極性化を強化する
[00071] p38活性は、Th1細胞で検出されているがTh2細胞では検出されておらず、そしてJNK/p38活性化は、関連するTNF-αおよびIFN-γサイトカインのTh1産生を誘導することが知られるため、Th1関連サイトカインのCAR仲介性誘導に対するCD28および4-1BB共刺激機能の影響を調べた。IL13ζまたはIL13-CD28-41BBζを発現している遺伝子修飾されたCD4+ T細胞(106細胞)を、2 mLの培地中、異なる刺激因子細胞(5×105細胞)と、24ウェル組織培養プレート中で共培養した。刺激因子細胞は、図11Aに示すように、U87神経膠腫細胞(U87)、親NS0マウス骨髄腫細胞(NS0)、表面IL13Rα2を安定発現しているNS0細胞(NS0-IL13Rα2)または膜結合OKT3を安定発現しているNS0細胞(NS0-OKT3)であった。
【0057】
[00072] リアルタイム定量的RT-PCR(qPCR)を用いて、培養後の相対的mRNAレベルを測定した。遺伝子発現分析のため、RNeasyTMキット(QiagenTM)を用いて、CD4+ T細胞トランスフェクタントの総細胞RNAを単離した。体積30 mL(1×逆転写酵素緩衝剤、2.5 mMオリゴdT、0.25 mM dNTP、0.01 Mジチオスレイトール、20 UのRnasinおよび200 UのSuperScriptTMII RNAアーゼH-逆転写酵素(InvitrogenTM)を含有する)中、5μg総RNAの逆転写を用いて、cDNAを合成した。試料を42℃で1時間インキュベーションし、そして次いで、70℃で5分間加熱することによって、逆転写酵素を不活化した。SYBRグリーンTM PCRマスターミックス(Applied BiosystemsTM)およびDNA Engine Opticon 2TMリアルタイムPCR検出系(MJ Research Inc.TM)によって設計されたプライマーを用いて、0.2μgの総RNAと同等である、生じたcDNAをqPCR分析に供した。試験した遺伝子IL2およびIFN-γのプライマー配列は以下のとおりである:IL2順方向: CAAGAATCCCAAACTCACCAG、SEQ ID NO: 50;IL2逆方向:CGTTGATATTGCTGATTAAGTCC、SEQ ID NO: 51;IFN-γ順方向:ATCCCAGTAATGGTTGTCCTGCCT、SEQ ID NO: 52;IFN-γ逆方向:TCTTGCTTAGGTTGGCTGCCTAGT、SEQ ID NO: 53。シクロフィリンmRNAの平均サイクル閾値(CT)(Changら, “The E3 ubiquitin ligase itch couples JAK activation to TNFalpha-induced cell death by inducing c-FLIP(L) turnover.” Cell 124:601-613, 2006に記載されるとおり)を用いて、試験した遺伝子を標準化した。各実験条件において、各遺伝子に関する3つ組qPCR測定によって、平均CT値を決定した。
【0058】
[00073] 示すヒトmRNAのqPCR分析のため、T細胞総mRNAを、0時間(図11A、白いバー)、7時間(図11A、黒いバー)および24時間(図11A、影を付けたバー)で収集した。*は、対応のないスチューデントt検定を用いて、IL13ζ発現CD4+ T細胞の7時間の値に比較した際のp<0.05を示す。IL13Rα2ターゲット抗原の発現およびミコフェノール酸(MPA)に対する耐性を与えるIL13Rα2-IMPDH2_pMG(pJ00659)、またはMPAに対する耐性とともに、CD3架橋(そしてしたがってT細胞刺激性)OKT3分子の発現を与えるOKT3-IMPDH2_pcDNA3.1(+)(pJ01056)のいずれかを、マウス骨髄腫株NS0にエレクトロポレーションし、そして次いで6μMミコフェノール酸(MPA)の存在下でクローニングし、そしてヒトIL13Rα2導入遺伝子発現に関してスクリーニングした。U87およびNS0-IL13Rα2腫瘍細胞を用いた実験に関しては、n=3;NS0-OKT3およびNS0腫瘍細胞を用いた実験に関しては、n=1。
【0059】
[00074] IL2およびINF-γ mRNAのレベルは、U87神経膠芽腫細胞との培養後、IL13ζ+ T細胞におけるよりも、IL13-CD28-41BBζ+ T細胞において、より高かった。図11Aを参照されたい。NS0細胞と共培養した場合、どちらのT細胞集団でもIL2またはINF-γ mRNA誘導は観察されなかった。IL13Rα2導入遺伝子を発現するNS0細胞によって刺激すると、IL13-CD28-41BBζを発現しているT細胞ではIL2およびINF-γ mRNA誘導が回復したが、IL13ζを発現しているT細胞では回復せず、サイトカイン誘導遺伝子が、IL13Rα2依存性であることが示された。誘導されたIL2およびINF-γ mRNAの相対量は、U87および導入遺伝子を発現するNS0細胞上のIL13Rα2表面発現レベルと直接相関し;U87のレベルはNS0-IL13Rα2細胞のレベルよりも高い。対照的に、IL13ζ+ T細胞におけるIL2およびINF-γ遺伝子の誘導は、各集団を、CD3εの会合を介してT細胞を活性化するアゴニスト免疫グロブリン分子である膜結合性OKT3を安定に発現するNS0細胞と共培養した場合、IL13-CD28-41BBζ+ T細胞で見られるものと類似であった。これらの結果によって、IL13ζとIL13Rα2の会合によって仲介されるIL2およびINF-γ mRNAの誘導がより低いのは、これらのT細胞における本質的な欠陥によるのではなく、CAR内にCD28および4-1BB共刺激ドメインが欠けているためであることが示される。
【0060】
[00075] これらのCAR発現T細胞から放出されるTh1サイトカイン対Th2サイトカインタンパク質の量を定量化するため、これらの共培養由来の上清を、サイトカイン含量に関してアッセイした。24時間インキュベーションした後、IL13ζ+(白いバー)またはIL13-CD28-41BBζ+(黒いバー)の培養上清を採取し、そして製造者の指示(Bio-RadTM Laboratories)によって、ヒト17-Plex PanelTMキットを用いる、多重細胞数測定ビーズアレイによって、Th1サイトカインおよびTh2サイトカインに関してアッセイした。図11Bを参照されたい。
【0061】
[00076] U87神経膠腫またはIL13Rα2+ NS0細胞は、IL13ζ+ T細胞からよりも、IL13-CD28-41BBζ+ T細胞から、より多くのTh1サイトカイン放出(IL2、IFN-γ、TNF-αおよびGM-CSF)およびより少ないTh2サイトカイン放出(IL5、IL10およびIL13)を刺激した。OKT3を発現しているNS0細胞と培養したIL13ζおよびIL13-CD28-41BBζを発現しているCD4+ T細胞によって、同等のレベルのTh1サイトカインおよびTh2サイトカインが産生され、これらの細胞は内因性CD3を介したポリクローン性活性化に際して、極性化されないままであることが示される。T細胞を親NS0細胞と培養した場合、サイトカインレベルはすべて、低いか検出不能であった。T細胞を任意の腫瘍細胞株と培養した場合、Th2サイトカインIL4レベルは、低いか検出不能であった。総合すると、これらのデータによって、CAR内にCD28および4-1BB共刺激ドメインが存在すると、CD4+ T細胞のTh1様サイトカイン転写および分泌を駆動するのが補助されることが示される。
【0062】
実施例4. IL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞におけるリサイクリング抗腫瘍溶解活性の増加
[00077] 共刺激CARが、CD4+T細胞の腫瘍特異的細胞傷害活性に影響を及ぼすかどうかを決定するため、発光細胞溶解アッセイ(LCA)を行って、in vitroで、腫瘍細胞のホタル(firefly)・ルシフェラーゼ(ffLuc)導入遺伝子発光活性を検出した。0.14 mg/mL D-ルシフェリンおよびVictor2TMルミノメーターを用いて、Brownら, “Biophotonic cytotoxicity assay for high-throughput screening of cytolytic killing.” J. Immunol. Meth. 297:39-52, 2005によって記載されるように、このアッセイを行った。簡潔には、Victor2TMルミノメーターを用い、0.14 mg/mL D-ルシフェリン(XeonogenTM)を伴うLCAによって、腫瘍細胞のffLuc導入遺伝子発光活性をin vitroで分析した。4時間後、示すE:T比で、IL13ζ+ CD4+ T細胞(○)に比較した、U87ターゲットに対するIL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞(■)の細胞傷害活性増進を示す、図12Aを参照されたい。3つ組値の平均±SEを示す;*は、対応のないスチューデントt検定を用いたp<0.05を示す。
【0063】
[00078] ffLucでトランスフェクションしたU87ターゲット細胞と共培養した4時間後、IL13-CD28-41BBζ+細胞は、IL13ζ+細胞に比較して、溶解活性の統計的に有意な増進を示した。共培養を48時間まで延ばすと、IL13ζ発現細胞およびIL13-CD28-41BBζ発現細胞間では、細胞傷害活性の相違は観察されなかった(どちらの細胞でも100%特異的溶解に到達した)。図12Bのデータは、2:1のE:T比で48時間共培養し、そして次いで再び、新鮮なターゲットを添加した後、2:1のE:T比でさらに48時間共培養した、LCAアッセイによる特異的溶解を示す。3つ組値の平均±SEを示す;*は、示す共培養中で、IL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞(黒いバー)をIL13ζ+ CD4+ T細胞(白いバー)に比較したp<0.05(対応するスチューデントt検定)を示す。
【0064】
[00079] パーフォリンおよびグランザイムB mRNAレベルは、IL13ζ+細胞およびIL13-CD28-41BBζ+細胞において等しく上方制御されており、これらのCAR発現T細胞が、殺傷の同様の機構を用いうることを示唆した。しかし、同じCAR発現CD4+T細胞との48時間共培養の第二の周期のため、新鮮なffLuc+ターゲットを添加すると、IL13-CD28-41BBζ+細胞は、IL13ζ+細胞よりも、有意により高い溶解活性を示した(図12B)。これによって、共刺激CARは、CD4+ T細胞殺傷活性の期間および/またはリサイクリングに有益に影響を及ぼすことが示唆される。
【0065】
[00080] この現象をさらに調べるため、1.2×106のIL13ζまたはIL13-CD28-41BBζを発現しているCD4+ T細胞と、6×105接着性U87神経膠腫細胞の共培養のビデオ・タイムラプス顕微鏡(VTLM)を用いて、IL13ζ+またはIL13-CD28-41BBζ+ T細胞との共培養中のU87腫瘍細胞の生存度を分析した。培養を45時間後に洗浄し、そして次いで、新鮮なU87神経膠腫細胞(6×105)と再培養した。生存腫瘍細胞の数を42時間に渡って(最初の殺傷)、および45時間〜139時間まで(第二の殺傷)プロットした。図12Cを参照されたい。
【0066】
[00081] 各々、タングステン-ハロゲンランプ、GIF(緑色)フィルター、ELWD 0.3NAコンデンサー、Plan FluorTM 4×/0.13 PhL DL無限遠補正対物レンズ、D10NLC 1×無レンズCマウントアダプター(Diagnostic InstrumentsTM)およびVCB-3524 B/W RS-170ビデオ1/2”CCDカメラ(SanyoTMNorth America Corp.)を装備した4台のEclipse TS100TM顕微鏡(NikonTM Inc.)上、37℃の暖かい室内で画像を同時に撮影した。データを収集するため、1.2×106 T細胞(0.1%ヒト血清アルブミンを補充した200μLハンクス緩衝塩溶液中)を、6×105接着性U87細胞(3×105細胞/フラスコで1日前にプレーティングしたもの)を含有するT-25フラスコに添加した。画像化前に、フラスコを顕微鏡ステージ上で30分間平衡化させた。タイムラプス獲得速度は2分間間隔であった。各ビデオにおいて、腫瘍細胞のみの数フレームを獲得した後、T細胞を添加した。次いで、合わせた細胞を連続80時間記録した。T細胞を添加した後、各フラスコに5%CO2を10秒間ガス供給し、そしてパラフィルムで密封して、それぞれ、優れたpH調節(HBSS中の重炭酸塩)および安定したピントを確実にした。COH VTLFカメラ・オーガナイザーを用いて画像を獲得し、そしてMatroxTM 4チャネルフレーム・グラバーボードを用いて、640×480ピクセルでデジタル化した。MetaMorphTM 6.33(Universal Imaging/Molecular DevicesTMCorp.)の「対象を手動で計数」コマンドを用いて、10時間以下の間隔で、生存腫瘍細胞計数を行った。すべてのデータセットをMetaMorphTMにインポートし、そしてMetaMorphTMスタックおよびAVI動画として保存した。
【0067】
[00082] 遺伝子修飾されたCD4+ T細胞のいずれかが、共培養の最初の42時間中に腫瘍細胞を殺す能力は、実質的に同じであった(ほぼ100%のU87細胞が30時間までに殺された)。しかし、U87腫瘍細胞との第二の遭遇において、回復したIL13-CD28-41BBζ+ T細胞は、IL13ζ+ T細胞よりもより高い細胞溶解活性を保持した。重要なことに、U87細胞を2回目に添加する前に、T細胞を計数すると、細胞数の有意な相違はないことが明らかになった。さらに、U87細胞との共培養72時間に渡るCFSEに基づくアッセイは、in vitroで、IL13ζ+またはIL13-CD28-41BBζ+ T細胞の増殖において相違がないことを明らかにした。これによって、新鮮なターゲットの添加に際して細胞溶解活性がより大きいのは、より多くのキラーが存在するためではなく、個々のキラーが機能する能力が増進しているためであったことが立証される。総合すると、これらのデータによって、共刺激CARは、CD4+T細胞機能のリサイクリングおよび保持を支持することが示される。
【0068】
実施例5. IL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞によるin vivo腫瘍クリアランスの増進
[00083] 同所性ネズミ異種移植片モデルにおいて、確立されたU87腫瘍を用いて、CD28および4-1BBシグナル伝達ドメインを含むCARが、CD4+T細胞の抗腫瘍能を増進させる能力を評価した。in vivo研究のため、製造者の支持にしたがって、オリゴフェクチミン(oligofectimine)(InvitrogenTM)を用いて、U87細胞をffluc-ゼオシン_pcDNA3.1(+)(pJ00778、ホタル・ルシフェラーゼ酵素およびゼオシン薬剤耐性遺伝子のタンパク質融合物を発現するプラスミド)およびIL2(2)_HyTk-pMG(pJ00976、IL2サイトカインおよび選択/自殺融合遺伝子HyTKを発現するプラスミド)でトランスフェクションし、そして次いで、0.2 mg/mLゼオシンおよび0.1 mg/mLハイグロマイシンの存在下でクローニングした。
【0069】
[00084] 同所性神経膠腫異種移植片モデルを産生するため、マウスを以下のように治療した。250 radで照射した翌日、雄の6〜8週齢NOD-scidマウスを麻酔し、剃毛し、そしてCunninghamTMマウス/新生ラットアダプター定位固定装置拘束具(StoeltingTM)中で固定した。次いで、3〜5 mmに渡って、ブレグマに対して2 mm側方でそして0.5 mm前側で、腫瘍(U87神経膠腫)をマウスに定位誘導注射した。2μLのフェノール不含RPMI(Irvine Scientific、カリフォルニア州アービン)中に懸濁したU87-ffLucZeo/IL2+腫瘍細胞(2×105細胞/マウス)を、硬膜から2.5 mmの深さに注射した。腫瘍接種の7日後、IL13ζまたはIL13-CD28-41BBζのいずれかを発現している106 T細胞を2μL中で大脳の腫瘍座標に送達した(養子導入)。対照動物にはPBSのみを投与した(「偽対照」)。穿頭孔をボーンワックスで密封し、そして切開をNexabandTMグルーで閉じた。術後回復のため、動物に0.1 mg/kgのBuprenexTMを皮下注射した。このモデルにおいて、内因性免疫系の回復のため、腫瘍は注射の13〜14日後に自発的に退行し始めるため、実験を第12日までに完了した。
【0070】
[00085] ホタル・ルシフェラーゼ(ffLuc)およびヒトIL2を安定して発現する確立されたU87神経膠芽腫細胞における腫瘍由来のffLuc流動シグナルを監視することによって、同所性腫瘍増殖を非侵襲性に定量化可能である。Kahlonら, “Specific recognition and killing of glioblastoma multiforme by interleukin 13-zetakine redirected cytolytic T cells.” Cancer Res. 64:9160-9166, 2004に先に記載されるように、XenogenTMIn Vivo画像化系(IVIS)でマウスにおいてin vivo生体光子腫瘍画像化を用いて、in vivoルシフェラーゼ活性を検出した。簡潔には、ffLuc流動を監視するため、マウスに4.29 mg D-ルシフェリンを腹腔内注射し、マウスを麻酔し(1.5 L/分の酸素+4%イソフルラン)、そしてルシフェリン注射の14分後、1分間の積分時間に渡って、発光を測定した。関心対象の領域において、時間に渡って測定される総カウントとして、流動(光子/秒)を定量化した。図13中の結果を参照されたい。Y軸上の値は、腫瘍移植から示す日数後、偽群および治療群(各群n=6)由来のffLuc+腫瘍の総流動レベルの平均|SDを示す。「Tx」は、養子導入T細胞での治療を示す。
【0071】
[00086] CAR発現CD4+ T細胞の養子導入前、すべてのマウスは、予期されるように、腫瘍由来ffLuc流動シグナルレベルの増加を示した(図13を参照されたい;腫瘍移植2日後および6日後を比較されたい)。養子導入(Tx)2日後、腫瘍ffLuc流動レベルは、偽治療マウスに比較した際、IL13ζまたはIL13-CD28-41BBζのいずれかを発現するT細胞で治療したマウスにおいて減少した。しかし、T細胞治療5日後(移植12日後)、IL13-CD28-41BBζ+ T細胞で治療したマウスにおいて、腫瘍流動シグナルは低いままであり、一方、IL13ζ+ T細胞で治療したマウス由来の流動シグナルは、偽治療(対照)群のものと同様のレベルに増加した。CD28および4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメインは、遺伝的に再指示されたT細胞による腫瘍増殖制御を増進させ、そして/または延長させた。
【0072】
実施例6. 療法に適したT細胞の調製
[00087] 白血球フェレーシスによって、患者からTリンパ球を得て、そして自己T細胞がCARを発現するように遺伝子改変し、次いで、抗癌療法を達成するため、患者に投与し直した。
【0073】
[00088] 療法使用に適したIL13ζ+ T細胞を調製するため、臨床等級FicollTM上の遠心分離によって、白血球フェレーシスした血液から単核細胞を分離した。0.526 mM EDTAを含有する無菌リン酸緩衝生理食塩水中でPBMCを2回、そして次いで無菌PBS中で1回洗浄し、そしてRPMI 1640 HEPES、10%熱不活化FCS、および4 mM L-グルタミンからなる培地中に再懸濁した。培養にOrthocloneTM OKT3(30 ng/mL)を添加することによって、患者PBMC中に存在するT細胞をポリクローン性に活性化した。次いで、研究被験体用に指定されたインキュベーター中、通気孔を付けたT-75組織培養フラスコ中で、細胞培養をインキュベーションした。培養開始24時間後、rhIL2を25 U/mLで添加した。培養開始3日後、PBMCを採取し、遠心分離し、そして低張エレクトロポレーション緩衝液中、20×106細胞/mLに再懸濁した。400μLの細胞懸濁物とともに、25マイクログラムのプラスミドIL13ζ/HyTK-pMGを、無菌0.2 cmエレクトロポレーション・キュベットに添加した。各キュベットを250 V/40μsの単回電気パルスに供し、そして再び室温で10分間インキュベーションした。キュベットから生存細胞を採取し、プールし、そして25 U/mL rhIL2を含有する培地中に再懸濁した。フラスコを患者用に指定された組織培養インキュベーター中に入れた。エレクトロポレーション3日後、0.2 mg/mLの最終濃度でハイグロマイシンを細胞に添加した。エレクトロポレーションしたPBMCを培地と全部で14日間培養し、そしてIL2を48時間ごとに補充した。
【0074】
[00089] エレクトロポレーションしたOKT3活性化患者PBMCからの、ハイグロマイシン耐性CD8+ CTLのクローニングを、培養第14日に開始した。簡潔には、100×106凍結保存照射フィーダーPBMCおよび20×106照射TM-LCL(フィーダー細胞として働くEBV形質転換リンパ芽球細胞)の混合物に、30 ng/mL OKT3および50 U/mL rhIL2を含有する、体積200 mLの培地中、生存患者PBMCを添加した。この混合物を10枚の96ウェル・クローニングプレートの各ウェル内に0.2 mLプレーティングした。プレートをアルミホイルで包んで、蒸発損失を減少させ、そして患者用に指定された組織培養インキュベーター中に入れた。培養第19日、各ウェルに0.2 mg/mLの最終濃度のハイグロマイシンを入れた。第30日、倒立顕微鏡上で細胞成長に関してウェルを視覚的に調べ、そして再刺激のために陽性ウェルに印を付けた。
【0075】
[00090] 25 mL組織培地中の50×106照射PBMC、10×106照射LCL、および30 ng/mL OKT3を含有するT-25フラスコに、細胞増殖があった各クローニングウェルの内容物を個々に移した。再刺激の1日後、3日後、5日後、7日後、9日後、11日後、および/または13日後、必要な場合、フラスコに50 U/mL rhIL2および15 mLの新鮮な培地を添加した。また、刺激周期の第5日、フラスコにハイグロマイシン0.2 mg/mLも補充した。植え付け14日後、細胞を採取し、計数し、そして50 mL組織培地中、100×106照射PBMC、20×106照射TM-LCLおよび30 ng/mL OKT3を含有するT-75フラスコ中で再刺激した。フラスコの培養に、上に概略するとおり、rhIL2およびハイグロマイシンを添加した。
【0076】
[00091] FITCコンジュゲート化モノクローナル抗体WT/31(aβTCR)、Leu2a(CD8)、およびOKT4(CD4)を用い、蛍光活性化細胞ソーター上、免疫蛍光によって、療法におけるありうる使用のため、拡大するために選択したCTLを分析して、クローン表現型(αβTCR+、CD4-、CD8+、およびIL13+)を確認した。臨床使用のためのクローンの選択基準には、アイソタイプ対照FITC/PEコンジュゲート化抗体に比較されるような、均一なTCRαβ+、CD4-、CD8+、およびIL13+が含まれた。プラスミドベクター染色体組込みが単一部位であることをサザンブロット分析によって確認した。遺伝子修飾されたT細胞クローン由来のDNAをプラスミドベクターに特異的なDNAプローブでスクリーニングした。
【0077】
[00092] 標準法にしたがって、上述の抗CD3ζゼータ鎖抗体を用いて、キメラ受容体タンパク質を検出するウェスタンブロットによって、IL13-CD28-41BBζの発現を決定した。簡潔には、1錠剤/10 mL完全プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する1 mL RIPA緩衝液(PBS、1%NP40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS)中に2×107洗浄細胞を溶解することによって、トランスフェクションしたT細胞クローンの全細胞溶解物を生成した。氷上で80分間インキュベーションした後、遠心分離した全細胞溶解物上清のアリコットを採取し、そして等体積の装填緩衝液中、還元条件下で煮沸し、次いでプレキャスト12%アクリルアミドゲル上のSDS-PAGE電気泳動に供した。ニトロセルロースにトランスファーした後、次いで、T-TBS(Tris緩衝生理食塩水中、0.1%Tween20TM、pH8.0)中、4%脱脂粉乳を含有するBlottoTM溶液中で膜を1時間ブロッキングした。T-TBS中で膜を洗浄し、次いで、0.5μg/mLの濃度の一次マウス抗ヒトCD3ζモノクローナル抗体8D3(PharmingenTM)と1時間インキュベーションした。T-TBS中でさらに4回洗浄した後、膜を1:3000希釈(BlottoTM溶液中)のヤギ抗マウスIgGアルカリホスファターゼ・コンジュゲート化二次抗体と1時間インキュベーションした。基質を添加する前、膜をT-TBS中でリンスし、次いで、製造者の指示にしたがって、3 mLホスファターゼ基質溶液(Bio-RadTMImmunoStarTMキット)とインキュベーションした。
【0078】
[00093] 療法効果に適した用量は、好ましくは一連の用量周期中、用量あたり約106〜約109細胞の間である。好ましい投薬措置は、増大する用量の4回の1週間投薬周期からなり、第0日の約107細胞から始まり、第5日までに、約108細胞のターゲット用量まで徐々に増加する。適切な投与様式には、静脈内、皮下、腔内(例えばリザーバーアクセスデバイスによる)、腹腔内、および腫瘍塊への直接注射が含まれる。
【0079】
実施例7. ヒト患者における頭蓋内再発性神経膠腫の治療
[00094] 本発明にしたがってIL13-CD28-41BBζ発現T細胞を用いた、本明細書に記載するような神経膠腫または任意の他の癌の治療を以下のように行った。好ましくは実施例6に記載するようなT細胞クローンを:
a. TCRα/β+、CD4-、CD8+、IL13+細胞表面表現型;
b. 染色体に組み込まれた単一コピーのプラスミドベクターDNAの存在;
c. IL13-CD28-41BBζタンパク質の発現;
d. ヒトIL13Rα2+ターゲットの特異的溶解;
e. in vitro増殖のための外因性IL2に対する依存性;
f. マイコプラズマ、真菌および細菌無菌性、ならびに5EU/mL未満の内毒素レベル;ならびに
g. ガンシクロビルに対するクローンのin vitro感受性
に関して選択した。
【0080】
[00095] 好ましくは最初の切除術からの快復後、そしてステロイド漸減および/または最近の全身性化学療法から少なくとも3週間の時点より後に、白血球フェレーシスによって、患者から末梢血単核細胞を得た。ターゲット白血球フェレーシス単核細胞収量は、一般的に、5×109であり、そしてハイグロマイシン耐性細胞溶解性T細胞クローンのターゲット数は25であった。一般的に、in vitro拡大のため、すべての品質管理パラメーターを満たす、少なくとも5つのクローンが同定された。クローンを凍結保存し、そして連続X線検査および臨床検査によって患者を監視した。疾患進行の再発が実証された場合、患者に、再切除および/または腫瘍切除腔にT細胞を送達するためのリザーバーアクセスデバイス配置を行った。
【0081】
[00096] 手術からの回復およびステロイド漸減後、適用可能であれば、患者に以下のようなT細胞療法を開始した。患者は、少なくとも4回の1週間周期の療法のターゲットを受けた。最初の周期中、細胞用量増大は、第0日、約107細胞の初期用量、その後、第3日、約5×107細胞から、第5日、約108細胞のターゲット用量に進んだ。第2周期は、早くも第1周期開始の1週後から始めた。T細胞を投与する日、50 ccのPBS中で2回洗浄し、次いで、2 mL中、患者送達用の細胞用量を生じる体積で、薬学的保存剤不含正常生理食塩水に再懸濁することによって、拡大クローンを無菌的にプロセシングした。好ましくは、T細胞を5〜10分間に渡って注入し、その後、2 mL PFNSフラッシュを5分間に渡って投与した。分光法を用いて、MRI+/-ガドリニウム(gandolinium)によって、療法に対する応答を評価した。
【0082】
[00097] 一般的に、腔内LAK細胞(個々の細胞用量は最大109、そして累積細胞数は2.75×1010と同程度に高い)、ex vivo拡大TIL(最大109細胞/用量)およびアロ反応性リンパ球(細胞用量108から開始して、累積細胞用量は最大51.5×108)を使用する研究で投与される用量より、少なくとも1対数少なかった。低用量反復投与は、単回多数細胞点滴注入で起こりうる、潜在的に危険な炎症反応を回避するために好ましい。各注入は、好ましくは、単一T細胞クローンからなり、そして患者治療経過を通じて、好ましくは、同じクローンが投与された。
【0083】
[00098] 腫瘍退行を示し、MRI上で残った疾患がある患者には、X線評価に基づいて、疾患進行が立証されるか、または完全反応(CR)が達成される時点まで、これらの治療がよく許容されるならば、第7週以降に始まり、第3周期および第4周期の反復後、1週間の休止/再病期決定からなる、さらなる療法経過を有してもよい。一般的に認められる最大毒性は、グレード3未満であるが、これは治療する医師の判断による。
【0084】
[00099] ガンシクロビルでの治療は、CAR+HyTK+ CD8+ CTLクローンの消失を導く。したがって、起こりうる、療法に関連するいかなる副作用(頭痛、発熱、悪寒、吐き気等)を、状態に適した、確立された治療を用いて管理してもよい。例えば、新規グレード3毒性いずれかがグレード4に進行した場合、または治療する医師の意見で、患者が有意な医学的危険に置かれるグレード4治療関連毒性いずれかが観察される場合、患者にガンシクロビルを投与してもよい。非経口投与されるガンシクロビルは、12時間ごとに分けて、10 mg/kg/日で投薬される。患者は、ガンシクロビル療法の最初の72時間、監視目的のために入院しなければならない。症状が48時間以内にガンシクロビルに反応しない場合、限定されるわけではないが、コルチコステロイドおよびシクロスポリンを含む、さらなる免疫抑制剤を、治療する医師の判断で追加してもよい。毒性が重度である場合、ガンシクロビルとともに、デカドロンおよび/または他の免疫抑制剤もまた、治療する医師の判断で用いてもよい。
【0085】
[000100] IL13-CAR発現CTLクローンを頭蓋内再発性神経膠腫ヒト患者に投与する、上に概略するプロトコルを用いた予備的安全研究によって、T細胞の腔内投与とありうる相関を有する副作用のうち、唯一のグレード3事象は、現在まで2人の患者各々において、108細胞の投与で起こった頭痛であったことが示された。グレード4または5の副作用は、遺伝子改変されたT細胞の投与とはまったく関連しないことが見出された。したがって、本明細書のこの養子導入療法の全体的な安全性プロフィールは許容しうるものであった。
【0086】
実施例8〜12. 例示的CAR分子。
[000101] 図14〜18は、本発明にしたがったさらなるCARの配列を提供する。これらは、本発明の態様の限定されない例として働く。
【0087】
[000102] 図14は、IL13-IgG4-cd28tm-CD28gg-ゼータ(CO)CARの配列(SEQ ID NO: 36)を提供する。この配列は、(1)E13Y突然変異を含むIL13分子(腫瘍表面上の腫瘍表面受容体IL13Rα2のリガンドである(IL13))、(2)免疫グロブリンアイソタイプG4細胞外ドメインのFc部分(IgG4)、(3)共刺激分子CD28の膜貫通部分(cd28tm)、(4)発現を増加させる目的のため、2つのロイシンをグリシンに変化させたCD28のシグナル伝達ドメイン(CD28gg)、および(5)T細胞受容体のCD3ζ鎖のシグナル伝達ドメイン(ゼータ)をコードする。すべてのセグメントは、哺乳動物発現を増加させるため、コドン最適化(CO)された。配列の下線部分は、CD28ggのコード配列である。
【0088】
[000103] 図15は、IL13-IgG4-cd4tm-CD28-4-1BB-ゼータCARの配列(本明細書において、IL13-CD28-41BBζとも称される;SEQ ID NO: 37)を提供する。この配列は、(1)E13Y突然変異を含むIL13分子(腫瘍表面上の腫瘍表面受容体IL13Rα2のリガンドである(IL13))、(2)免疫グロブリンアイソタイプG4細胞外ドメインのFc部分(IgG4)、(3)CD4の膜貫通部分(cd4tm);共刺激分子CD28のシグナル伝達ドメイン(CD28)(4)共刺激分子4-1BBのシグナル伝達ドメイン(4-1BB)、および(5)T細胞受容体のCD3ζ鎖のシグナル伝達ドメイン(ゼータ)をコードする。配列の下線部分はCD28をコードし、そして配列の太字部分は4-1BBをコードする。
【0089】
[000104] 図16は、IL13-IgG4-cd28tm-CD28-Ox40-ゼータCARの配列(SEQ ID NO: 38)を提供する。この配列は、(1)E13Y突然変異を含むIL13分子(腫瘍表面上の腫瘍表面受容体IL13Rα2のリガンドである(IL13))、(2)免疫グロブリンアイソタイプG4細胞外ドメインのFc部分(IgG4)、(3)共刺激分子CD28の膜貫通部分(cd28tm)、(4)CD28のシグナル伝達ドメイン(CD28)、(5)共刺激分子OX-40のシグナル伝達ドメイン(Ox40)、および(6)T細胞受容体のCD3z鎖のシグナル伝達ドメイン(ゼータ)をコードする。cd28tmをコードする配列を下線で示し(アミノ酸364〜390);CD28をコードする配列を斜字で示し(アミノ酸391〜431);Ox40をコードする配列を太字で示し(アミノ酸432〜467);そしてゼータをコードする配列を下線および斜字両方で示す(アミノ酸468〜580)。
【0090】
[000105] 図17は、IL13-IgG4-cd28tm-CD28gg-4-1BB-ゼータCARの配列(SEQ ID NO: 39)を提供する。この配列は、(1)E13Y突然変異を含むIL13分子(腫瘍表面上の腫瘍表面受容体IL13Rα2のリガンドである(IL13))、(2)免疫グロブリンアイソタイプG4細胞外ドメインのFc部分(IgG4)、(3)共刺激分子CD28の膜貫通部分(cd28tm)、(4)発現を増加させる目的のため、2つのロイシンをグリシンに変化させたCD28のシグナル伝達ドメイン(CD28gg)、(5)共刺激分子4-1BBのシグナル伝達ドメイン(4-1BB)、および(6)T細胞受容体のCD3ζ鎖のシグナル伝達ドメイン(ゼータ)をコードする。配列の下線部分はCD28ggをコードし、そして配列の太字部分は4-1BBをコードする。
【0091】
[000106] 図18は、IL13-IgG4-cd28tm-CD28gg^199-4-1BB-ゼータCARの配列(SEQ ID NO: 40)を提供する。この配列は、(1)E13Y突然変異を含むIL13分子(腫瘍表面上の腫瘍表面受容体IL13Rα2のリガンドである(IL13))、(2)免疫グロブリンアイソタイプG4細胞外ドメインのFc部分(IgG4)、(3)共刺激分子CD28の膜貫通部分(cd28tm)、(4)発現を増加させる目的のため、2つのロイシンをグリシンに変化させ、そしてシグナル伝達活性を除去する目的のため、キナーゼドメインを欠失させた(すなわちSEQ ID NO: 39の陰性対照として)CD28のシグナル伝達ドメイン(CD28gg^199)、(5)共刺激分子4-1BBのシグナル伝達ドメイン(4-1BB)、および(6)T細胞受容体のCD3ζ鎖のシグナル伝達ドメイン(ゼータ)をコードする。配列の下線部分はCD28gg^199をコードし、そして配列の太字部分は4-1BBをコードする。
【技術分野】
【0001】
政府が支援した研究に関する言及
[0001] 本発明は、米国保健福祉省、米国衛生研究所から癌センター助成金番号P30-CA33572-21の形で、政府の援助を受けて行った。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
1.技術分野
[0002] 本発明は、生物医学の分野および特に癌療法に有用な方法に関する。特に、本発明の態様は、ヒト脳腫瘍および他の癌の治療において、キメラ免疫受容体を発現している遺伝子修飾されたTリンパ球の使用を含む、癌のための特異的CTL免疫療法戦略のための方法に関する。
【0003】
2.背景技術の説明
[0003] 腫瘍特異的T細胞に基づく免疫療法は、抗腫瘍治療のために研究されてきているが、T細胞は、十分に長い期間、in vivoで生存せず、そして活性なままではないという問題がある。しばしば、養子導入T細胞は、腫瘍細胞殺傷の望ましい強度および期間を持たない。したがって、当該技術分野には、より長期の抗腫瘍機能を持つ腫瘍特異的癌療法に関する必要性がある。
【0004】
[0004] 癌に向けられる免疫療法は、伝統的に、CD8+ CTL反応を誘発することに焦点を置いている。しかし、CD4+ T細胞(ヘルパー)反応の刺激もまた、癌に対する免疫療法の成功のために重要である。CD4+ T細胞は、CD40-CD40Lを介したプロフェッショナル抗原提示細胞の条件付けを通じて、そしてIL2およびIFN-γなどのサイトカインの産生を通じて、直接または間接的に、天然の腫瘍特異的CTL反応に影響を及ぼしうる。CD4+ T細胞が用いる細胞破壊的エフェクター機構は、腫瘍細胞表面上の死受容体を活性化するサイトカインの放出を通じて、または直接細胞接触を通じてのいずれかで仲介され、後者の場合、Fas/FasL、TNF関連アポトーシス誘導性リガンド(TRAIL)、またはグランザイム-パーフォリン依存性経路が、腫瘍細胞アポトーシスを仲介する。これらのヘルパー細胞は、一次CD8+ CTLエフェクターの初期クローン性拡大および生成を増大することも可能であり、そしてまた機能するメモリーCD8+ T細胞の生成および拡大の両方に影響を及ぼすことも可能である。
【0005】
[0005] 天然のCD4+ T細胞の完全な活性化には、T細胞受容体/CD3複合体と適切なペプチド/MHCクラスII複合体の会合を通じた抗原特異的シグナル、および共刺激シグナルの両方が必要である。これらの共刺激シグナルは、通常、特殊化抗原提示細胞上で選択的に発現されるリガンドによって送達される。T細胞共刺激は、この二次シグナルを送達しない組織によって発現される正常自己抗原に対する寛容性を維持するのを補助すると考えられる。大部分の腫瘍細胞は、正常組織同様、MHCクラスIIまたは共刺激分子を発現しないため、腫瘍細胞もまた、通常は、CD4+ T細胞刺激を直接促進しないのは当然である。この理論は、共刺激リガンドB7-1でトランスフェクションされた腫瘍細胞をワクチン接種することによる、T細胞仲介性抗腫瘍免疫増進を立証するいくつかの研究によって裏付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006] 共刺激分子の腫瘍細胞発現を改変することは、T細胞活性化の駆動を補助する1つの方法であるが、別の戦略、特に実際の共刺激リガンド(単数または複数)を必要とせずに、T細胞が共刺激シグナルを受け取り、そして該シグナルに作用するのを可能にすることを伴う戦略が非常に望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007] したがって、本発明の態様は、癌免疫療法のためのCD4+およびCD8+ T細胞の抗腫瘍エフェクター機能増進のための方法および組成物;そして特に細胞外ドメイン、膜貫通領域および細胞内シグナル伝達ドメインを含む、キメラ膜貫通免疫受容体(キメラ抗原受容体または「CAR」と称される)を提供する。細胞外ドメインは、細胞表面に細胞外ドメインを束縛可能な、場合による支持領域に連結された、可溶性受容体リガンド(ターゲット腫瘍抗原または他の腫瘍細胞表面分子に対して特異的である)で構成される。細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3複合体のゼータ鎖(CD3ζ)由来のシグナル伝達ドメインおよび1以上の共刺激シグナル伝達ドメイン、例えば、CD28、4-1BBおよびOX-40由来のものを含有する。細胞外ドメインは、認識要素であって、CARがT細胞表面上に発現された場合に、この認識要素がそれに対して特異的な受容体またはリガンドを発現している細胞に、T細胞活性を向けることを可能にする、該認識要素を含有する。例えば、腫瘍抗原に特異的な認識要素を含有する細胞外ドメインを含有するCARは、この抗原を所持する腫瘍細胞に、T細胞活性を向けることも可能である。細胞内領域は、T細胞が共刺激シグナルを受け取ることを可能にする。共刺激シグナル伝達ドメインは、好ましくは、CD28、4-1BB、OX-40またはこれらの任意の組み合わせから選択される。好ましいキメラ受容体は、ヒトCD4膜貫通領域、ヒトIgG4 Fcおよび腫瘍特異的な受容体またはリガンド、例えばIL13またはIL3分子を含む。IL13分子はE13Y突然変異を含有してもよい。
【0008】
[0008] 本発明の態様はまた、上述のものなどの受容体を、必要とする患者に投与する工程を含む、癌免疫療法の方法も提供する。IL13Rα2をターゲティングする好ましい方法は、例えば、神経膠芽腫、乳癌、頭部および頸部癌、腎臓癌、卵巣癌およびカポジ肉腫を含む癌の治療に有用である。該方法は、CAR上の認識要素に特異的に結合する要素を所持する任意のアクセス可能な腫瘍を治療する際に有用である。
【0009】
[0009] 本発明のさらなる態様は、受容体にCD28、および/または4-1BB、OX-40シグナル伝達ドメインを付加する工程を含む、腫瘍に対するキメラ抗原受容体(CAR)活性を増進させる方法を提供する。
【0010】
[00010] 本発明に含まれる特定の態様には、特異的認識要素、場合による支持またはリンカー領域、膜貫通領域、CD3ゼータ鎖および少なくとも1つのさらなる共刺激シグナル伝達受容体のシグナル伝達ドメインを含む、腫瘍特異的キメラ抗原受容体(CAR)が含まれる。こうしたCARには、2つの共刺激シグナル伝達受容体、例えば、CD28、4-1BBおよびOX-40からなる群より選択されるもの、例えばCD28および4-1BBを含むものが含まれてもよい。
【0011】
[00011] 本発明のCARには、膜貫通領域が、ヒトCD4膜貫通領域、ヒトCD28膜貫通領域、またはヒトIgG4 Fc領域であるものが含まれる。CARの特異的認識要素は、IL13分子、IL3分子、またはHer/2Neu、α3インテグリン、CD20、CD19およびEGFRVIIIからなる群より選択される抗原を認識する一本鎖免疫グロブリンの細胞外結合ドメインであってもよく、そして好ましくはIL13分子、最も好ましくはE13Y突然変異を含有するIL13分子、例えばIL13-CD28-41BBζである。
【0012】
[00012] 本発明の態様はまた、本明細書に論じるCARのいずれかをコードする単離ポリ核酸、および本明細書に論じるCARのいずれかを発現する単離Tリンパ球も含む。さらに、本発明の態様には、こうしたポリ核酸またはTリンパ球を、必要とする患者に投与する工程を含む、癌免疫療法の方法が含まれ、これには、以下の癌:神経膠芽腫、髄芽腫、乳癌、頭部および頸部癌、腎臓癌、卵巣癌、カポジ肉腫、急性骨髄性白血病、およびB細胞系譜悪性腫瘍のいずれかのための治療としての方法が含まれる。
【0013】
[00013] さらなる態様には、受容体にCD28および4-1BBシグナル伝達ドメインを付加する工程を含む、腫瘍に対するキメラ抗原受容体活性を増進させる方法が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】[00014] 図1は、IL13ζおよびIL-13-CD28-41BBζキメラ抗原受容体(CAR)タンパク質分子の略図である。
【図2】[00015] 図2は、示すような天然IL13配列上のIL13ζ CAR構築のための例示的なプライマーの位置を示す。矢印は、IL13配列上のプライマーの位置を示す。
【図3A】[00016] 図3(図3A〜図3Cとして提供する)は、IL13ゼータカインをコードする例示的なヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 5、上部鎖;SEQ ID NO: 6、下部鎖)を提供する。配列中のDNAセグメントには、GM-CSFRアルファ・シグナルペプチド(SEQ ID NO: 7)、IL13(E13Y)(SEQ ID NO: 8)、IgG4(SmP)(SEQ ID NO: 9)、CD4tm(SEQ ID NO: 10)およびCD3ゼータ(SEQ ID NO: 11)が含まれる。完全アミノ酸配列はSEQ ID NO: 4として提供される。
【図3B】[00016] 図3(図3A〜図3Cとして提供する)は、IL13ゼータカインをコードする例示的なヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 5、上部鎖;SEQ ID NO: 6、下部鎖)を提供する。
【図3C】[00016] 図3(図3A〜図3Cとして提供する)は、IL13ゼータカインをコードする例示的なヌクレオチド配列(SEQ ID NO: 5、上部鎖;SEQ ID NO: 6、下部鎖)を提供する。
【図4】[00017] 図4は、ベクターIL13ゼータカイン/HyTK-pMGのマップである。こうしたベクターの例示的な配列を図5に提供する。
【図5A】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。IL13ゼータカインアミノ酸配列(SEQ ID NO: 15)およびHyTkアミノ酸配列(SEQ ID NO: 16)もまた示す。完全配列を構成するDNAセグメントには、hEF1p(ヌクレオチド6〜549;SEQ ID NO: 41)、IL13ゼータカイン(ヌクレオチド690〜2183;SEQ ID NO: 42)、後期sv40pAn(ヌクレオチド2230〜2498;SEQ ID NO: 43)、Ori ColE1(ヌクレオチド2499〜3245;SEQ ID NO: 44)、SpAn(ヌクレオチド3246〜3432;SEQ ID NO: 45)、hCMV-1Aprom(ヌクレオチド3433〜4075;SEQ ID NO: 46)、HyTK(ヌクレオチド4244〜6319;SEQ ID NO: 47)、およびBGh pAna(ヌクレオチド6320〜6618;SEQ ID NO: 48)が含まれる。
【図5B】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。
【図5C】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。
【図5D】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。
【図5E】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。
【図5F】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。
【図5G】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。
【図5H】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。
【図5L】[00018] 図5(図5A〜図5Lとして提供する)は、例示的なプラスミドDNAベクターの配列(SEQ ID NO: 13、上部鎖;SEQ ID NO: 14、下部鎖)を提供する。
【図6】[00019] 図6は、例示的なCAR直鎖プラスミド構築物の2つの略図を含有する。図6AはIL13ζ構築物を示し、そして図6BはIL13-CD28-41BBζ構築物を示す。
【図7】[00020] 図7は、マウス抗ヒトCD3ζ特異的mAbを用いた、CAR発現に関する、偽、IL13ζおよびIL13-CD28-41BBζトランスフェクションCD4+ T細胞由来の細胞溶解物のウェスタンブロット分析を示す。
【図8】[00021] 図8は、IL13ζおよびIL13-CD28-41BBζ発現バルクCD4+細胞の細胞表面表現型を比較する8つのフローサイトメトリー分析のパネルである。
【図9】[00022] 図9は、U87神経膠腫ターゲット細胞上のアイソタイプ対照(白抜きのヒストグラム)に比較した、示すようなHLA-A2およびHLA-DR(MHC分子)、IL13Rα2、ならびに共刺激分子CD80、CD86、およびCD137-L(4-1BBL)(黒塗りのヒストグラム)の表面染色のフローサイトメトリー結果を示す6つのグラフのパネルである。
【図10】[00023] 図10は、それぞれの基質(すなわちP-cJun(リン酸化c-Jun癌原遺伝子)、p-GSK3(リン酸化グリコーゲンシンターゼキナーゼ3)およびP-ATF2(リン酸化活性化転写因子2))のリン酸化を介して測定される、JNKおよびp38(図3A)およびAKT(図3B)活性化の動力学を決定するキナーゼアッセイの結果を示す一連の免疫ブロットである。
【図11】[00024] 図11は、T細胞Th1サイトカインmRNA(図11A)、ならびにTh1およびTh2サイトカインタンパク質産生(図11B)に関する、IL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞のTh1極性化増進を示す。
【図12】[00025] 図12Aは、4時間のルシフェラーゼ細胞傷害性アッセイ(LCA)における、示すE:T比でのIL13ζ+ CD4+ T細胞(○)のものに比較した、U87ターゲットに対するIL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞(■)の細胞傷害性活性増進を示すデータを提供する。図12Bは、2:1のE:T比で48時間共培養し、そして次いで再び、同じE:T比で新鮮なターゲットを添加した後、さらに48時間共培養した、IL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞(黒いバー)およびIL13ζ+ CD4+ T細胞(白いバー)に関する、類似のデータを示す。図12Cは、接着性U87細胞と共培養した、示すCARを発現しているT細胞のビデオ画像化で得たデータを提供し、画像あたりの生存細胞数を示す。
【図13】[00026] 図13は、IL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞によるin vivoの確立された神経膠芽腫異種移植片に対して、持続された抗腫瘍効果を示す流動データを提供する。IL-13ζおよび偽トランスフェクションT細胞で観察された結果もまた示す。
【図14】[00027] 図14は、IL13-IgG4-cd28tm-CD28gg-ゼータ(CO)(SEQ ID NO: 36)の配列を提供する。
【図15】[00028] 図15は、以下の実施例に関して、用いられ/上に論じられる、IL13-CD28-41BBζとしてもまた本明細書に言及される、IL13-IgG4-cd4tm-CD28-4-1BB-ゼータの配列を提供する(SEQ ID NO: 37)。図1、6、7、8、10、11、12および13に記載しそして用いるような、IL13-CD28-41BBζ CARを発現するようにT細胞を遺伝子改変するのに、この配列を用いた。
【図16】[00029] 図16は、IL13-IgG4-cd28tm-CD28-Ox40-ゼータの配列を提供する(SEQ ID NO: 38)。
【図17】[00030] 図17は、IL13-IgG4-cd28tm-CD28gg-4-1BB-ゼータの配列を提供する(SEQ ID NO: 39)。
【図18】[00031] 図18は、IL13-IgG4-cd28tm-CD28gg^199-4-1BB-ゼータの配列を提供する(SEQ ID NO: 40)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[00032] 腫瘍特異的キメラ抗原受容体(CAR)を発現するTリンパ球を用いた養子免疫療法は、癌の治療のための強力な療法的戦略でありうる。CARは、膜貫通ドメインを通じて、CD3ζ細胞質シグナル伝達ドメインに連結された細胞外特異的認識要素(腫瘍抗原に結合する受容体など)で構成される。したがって、これらの受容体は、MHC制限とは独立に、抗原に結合することもそしてT細胞活性化を伝達することもどちらも可能である。したがって、CARは、HLA遺伝子型とは関わりなく、抗原陽性腫瘍を持つ患者集団を治療可能な「普遍的」免疫受容体である。
【0016】
[00033] 本発明の態様にしたがって、CARは、細胞が腫瘍などのターゲットと会合することを可能にする特異的受容体に加えて、CD3ζのシグナル伝達ドメイン、およびCARを発現している養子導入された細胞のリサイクリング、生存および/または拡大をさらに促進する、1以上の共刺激受容体のシグナル伝達部分を含有する。共刺激受容体のシグナル伝達ドメインは、細胞において活性化シグナルを生じる各受容体タンパク質の細胞内部分である。例は、天然CD28分子のアミノ酸180〜220および天然4-1BB分子のアミノ酸214〜255である。特に好ましいCARは、ユニークな癌細胞表面受容体に特異的であり、in vivoで安定であり、そして低い免疫原性を有する、細胞外認識要素を含む。天然存在可溶性細胞シグナル分子からの誘導は、これらの目的を達成するのを補助する。
【0017】
[00034] 用語「CAR」は、細胞外認識ドメイン、膜貫通領域、および細胞内シグナル伝達ドメインを含有する組換え生体分子であるキメラ抗原受容体を指す。したがって、用語「抗原」は、抗体に結合する分子に限定されず、任意の受容体に特異的に結合可能な任意の分子を指す。したがって、「抗原」は、CARの認識ドメインを指す。細胞外認識ドメイン(細胞外ドメインとも称されるか、または単に該ドメインが含有する認識要素による)は、ターゲット細胞の細胞表面上に存在する分子に特異的に結合する認識要素を含む。膜貫通領域は、膜中にCARを係留する。細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3複合体のゼータ鎖由来のシグナル伝達ドメインを含み、そして場合によって、1以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。
【0018】
[00035] E13Y突然変異を含むIL13ドメイン(IL13(E13Y))およびCD3ゼータ鎖シグナル伝達ドメインを含有するCARは、本明細書において、「IL13ζ」と称される。この用語には、IL13細胞外認識ドメイン(腫瘍細胞上のIL13Rα2を特異的に認識するドメイン)、膜貫通領域、およびCD3ゼータ鎖細胞内シグナル伝達ドメインを含有する、任意のキメラ抗原受容体(CAR)が含まれる。こうしたCARの限定されない例を実施例8〜12に提供する。IL13(E13Y)を含有し、そしてまた場合による共刺激細胞内ドメインCD28および4-1BBも含有するCARを、本明細書において、「IL13-CD28-41BBζ」と称する。
【0019】
[00036] 当業者は、IL13(E13Y)をコードする任意のヌクレオチド配列もまたこの同じ目的に適しているであろうことを認識するであろう。IL13シグナル伝達ドメインの突然変異されていない配列もまた適している。天然配列に90%、95%、98%または99%相同性を持つ変異体を含む任意のIL13またはIL13(E13Y)コード配列が本明細書において使用可能である。したがって、IL13Rα2などのIL13受容体腫瘍抗原を特異的に認識するのに有用なこうした配列には、天然核酸にコードされるもの(その開示が本明細書に援用される、Smernovら, Gene 155:277-281, 1995を参照されたい)、E13Y突然変異を欠く同じ核酸配列、これらの配列に95%、98%または99%相同である配列、こうした配列を含むが、また3’または5’端のさらなるヌクレオチド、例えば3、6、9、12またはそれより多いヌクレオチド、あるいは約12、20、50または100までのさらなるヌクレオチドなどの任意の数のさらなるヌクレオチドまたはコドンも含む、より長い配列、および遺伝暗号の縮重のためこれらの核酸と同じアミノ酸配列をコードする任意の配列が含まれる。特に、所望の宿主による発現のためにコドン最適化された(CO)配列は、本発明の一部と意図される。
【0020】
[00037] 本発明で用いられる場合、可溶性認識要素は、実施例1中のIL13(E13Y)コード配列に関して記載するような新規合成ポリペプチドに由来するか、あるいはファージディスプレイライブラリーまたは化学的に合成されたライブラリーなどのコンビナトリアルライブラリーのポリペプチドに由来する。好ましい可溶性認識要素は、ヒト起源のものであり、そしてしたがって、非免疫原性であるが、突然変異誘発を通じてアフィニティまたは特異性が調整されていてもよい。T細胞上で発現すると、可溶性認識要素は、T細胞活性化を生じる方式で、ターゲット細胞上のターゲット要素に結合可能である(例えば腫瘍細胞に結合するが、いかなる認識可能な度合いにも非ターゲット細胞には結合しない)。したがって、本発明に適した可溶性認識要素は、細胞外環境中で安定であり、非抗原性であり、そしてより選択性である可能性がより高く、そしてしたがって好ましいため、本発明のCARにおいて、ターゲット特異性に関して、抗体断片または細胞接着分子に勝る、特定の利点を有する。適切な可溶性受容体要素の例には、自己分泌およびパラ分泌増殖因子、ケモカイン、サイトカイン、ホルモン、および必要な特異性を示す操作された人工的小分子リガンドが含まれる。天然リガンド配列を操作して、特定のターゲット細胞に対する特異性を増加させてもよい。特定のCARで使用するための認識要素の選択は、ターゲット細胞の性質、および上に論じる特性によって支配される。本発明の1つの好ましい態様において、CARは、認識要素としてIL13の突然変異体(E13Y)を用いて、T細胞をIL13Rα2発現腫瘍細胞に対して特異的に向けることによって、悪性神経膠腫、腎細胞癌腫および他の腫瘍によるIL13Rα2の腫瘍に制限される発現を利用する。それに対する選択的認識要素が知られているかまたは操作可能である、受容体抗原または任意の特異的分子を細胞表面上で選択的に発現する、任意の多様な癌細胞タイプに特異的な、類似の認識要素を生成可能である。
【0021】
[00038] 本発明とともに使用するのに適した支持(膜貫通)領域の例には、免疫グロブリンの定常(Fc)領域、ヒトCD8α、およびターゲット細胞へのアクセスおよび該細胞上の結合を改善するため、ターゲティング部分を細胞表面から離して移動させるように働く人工的リンカーが含まれる。好ましい支持領域は、IgG(例えばIgG4)のFc領域である。適切な膜貫通ドメインの例には、白血球CDマーカーの膜貫通ドメイン、好ましくはCD4またはCD28のものが含まれる。細胞内受容体シグナル伝達ドメインの例には、T細胞抗原受容体複合体、好ましくはCD3のゼータ鎖が含まれるが、CARを膜に係留するのに十分な任意の膜貫通領域が使用可能である。当業者は、多くの膜タンパク質において膜貫通ドメインを生じる、多くの膜貫通領域および構造要素(親油性アミノ酸領域など)を知っており、そしてしたがって任意の好適な配列を置換可能である。CAR発現細胞の機能および活性を改善するのに適したT細胞共刺激シグナル伝達受容体には、限定されるわけではないが、CD28および(CD137)としても知られる4-1BB、ならびにOX-40が含まれる。
【0022】
[00039] CD28を介したシグナル伝達は、IL2産生および増殖に必要であるが、T細胞機能および活性を維持するのに主な役割は果たさない。4-1BB(CD28活性化後に発現される腫瘍壊死因子受容体ファミリーメンバー)およびOX-40は、T細胞の長期生存およびT細胞の集積を駆動するのに関与する。これらの受容体のリガンドは、典型的には、樹状細胞および活性化マクロファージなどのプロフェッショナル抗原提示細胞上で発現されるが、腫瘍細胞上では発現されない。CD4+ T細胞において、CD28および/または4-1BBシグナル伝達ドメインを取り込むCARを発現させると、CD3ζシグナル伝達ドメインのみを含有するCARを発現するものに比較して、これらの細胞の活性および抗腫瘍強度が増進される。好ましくは、本発明のCARは、CD28および4-1BBシグナル伝達ドメインの両方を含有する。
【0023】
[00040] CARが腫瘍細胞をターゲティングするために、CARは、腫瘍表面マーカーに結合し、そして好ましくはユニークな腫瘍表面分子に特異的に結合する、細胞外結合分子を含有する。いくつかの癌は、免疫系の分子を発現するかまたは過剰発現する。神経膠腫は例えばIL13受容体を発現し、そして特に、高アフィニティIL13受容体を発現する。しかし、免疫系によって用いられるIL13受容体3分子複合体(IL13Rα1、IL4Rβ、およびγcからなる)とは異なり、神経膠腫細胞は、IL4Rβまたはγc44に対する必要性とは独立に、IL13に結合可能なユニークなIL13Rα2鎖を過剰発現する。その相同体であるIL4と同様、IL13は、CNSの外部で、多面的免疫制御活性を有する。IL13およびIL4はどちらも、Bリンパ球によるIgE産生を刺激し、そしてマクロファージによる炎症促進性サイトカイン産生を抑制する。
【0024】
[00041] 放射標識IL13でのオートラジオグラフィーを用いる詳細な研究によって、研究したほとんどすべての悪性神経膠腫組織上に豊富なIL13結合があることが示された。この結合は、腫瘍切片内で、そして単細胞分析において、非常に均質である。しかし、IL13Rα2 mRNAに特異的な分子プローブ分析は、正常な脳要素による神経膠腫特異的受容体の発現を検出せず、そして放射標識IL13でのオートラジオグラフィーもまた、正常CNSにおける特異的IL13結合を検出不能であった。これらの研究によって、共有されるIL13Rα1/IL4β/γc受容体は、正常CNSにおいて、検出可能には発現されないことが示唆される。したがって、IL13Rα2は神経膠腫の非常に特異的な細胞表面ターゲットであり、そして本発明に非常に適したターゲットである。当業者は、ターゲティングしようとする細胞上に発現されるかまたは過剰発現され、そして好ましくは他の細胞上で発現されないかまたははるかに低い度合いで発現される、CARの他の適切なターゲットを知っている。本発明のCARでターゲティングするのに適した腫瘍特異的ターゲットの別の例は、IL3受容体(IL3R;例えば急性骨髄性白血病(AML)細胞上で発現される)である。
【0025】
[00042] しかし、広く発現されるIL13Rα1/IL4β/γc受容体複合体に対する、IL-13に基づく細胞毒素の結合は、CNS外部の正常組織に対して、望ましくない毒性を仲介する潜在能力を有し、そしてしたがってこれらの剤の全身投与を制限する。IL13アルファらせんAにおけるアミノ酸13での天然グルタミン酸に対するチロシンのアミノ酸置換は、IL13のIL13Rα1/IL4β/γc受容体に対するアフィニティを選択的に減少させる。しかし、この突然変異体(IL13(E13Y)と称される)のIL13Rα2に対する結合は、野生型IL13に比較して50倍増加した。したがって、この最小限に改変されたIL13類似体は、神経膠腫細胞に対するIL13の特異性およびアフィニティを同時に増加させる。したがって、本発明の好ましい態様は、アミノ酸13での突然変異を含有するIL13を使用する。天然配列を有するIL13もまた、本発明で使用可能であるが、腫瘍塊内に直接注射することによるなど、修飾T細胞を局所的に投与しようとする状況において、特に有用でありうる。
【0026】
[00043] IL13Rα2を発現する腫瘍を特異的にターゲティングするためのCARの好ましいタイプは、CD4膜貫通ドメインおよび細胞質CD3ζシグナル伝達配列に融合されたヒトIgG4ヒンジ-Fcドメイン支持領域に連結され、IL13タンパク質がタンパク質のアミノ酸13で天然存在グルタミン酸に対するチロシンの置換を含有する、細胞外IL13突然変異体サイトカイン(本明細書において、IL13(E13Y)と称される)で構成される。図1、左側を参照されたい。このCARは、本明細書において、「IL13ζ CAR」と称される。このCARがまた、CD28および4-1BBシグナル伝達ドメインも含有する場合、該CARはIL13-CD28-41BBζと称される。図1、右側を参照されたい。
【0027】
[00044] 本発明記載の免疫受容体を当業者に知られる任意の手段によって産生してもよいが、好ましくは、組換えDNA技術を用いて産生する。好適であるように、当該技術分野に知られる分子クローニングの標準的技術(ゲノムライブラリースクリーニング、PCR、プライマー補助連結、部位特異的突然変異誘発等)によって、キメラ受容体のいくつかの領域をコードする核酸を調製し、そして組み立てて完全コード配列にしてもよい。好ましくは、生じたコード領域を発現ベクター内に挿入して、そしてこれを用いて適切な発現宿主細胞株、好ましくはTリンパ球細胞株、そして最も好ましくは自己Tリンパ球細胞株を形質転換する。
【0028】
[00045] 簡潔には、既知の方法を用いて、以下のように、IL13ζ CARを構築してもよい。既知のIL13 mRNA配列に基づくプライマーを用いたPCRによって、IL13突然変異体DNA IL13(E13Y)を合成してもよい。完全IL13遺伝子配列は、その開示が本明細書に援用される、Smernovら, “Tandem arrangement of human genes for interleukin-4 and interleukin-13: resemblance in their organization.” Gene 155:277-281, 1995に報告される。以下の表I、および図2に示す、順方向プライマーIL13P1、ならびに4つの逆方向プライマー、IL13P2、IL13P3、IL13P4、およびIL13P5を用いて、IL13(E13Y)の新規合成を行った。次いで、望ましい場合、このIL13突然変異体配列が5’リーダー配列を含有するように、これを修飾してもよい。ヒトIgG4-CD4膜貫通(IgG4-CD4tm)などの膜貫通アンカーおよびCD3ゼータカイン(CD3ζ)細胞質配列もまた、PCR融合技術または任意の好適な方法によって、3’端に付加してもよい。本発明の例として、完全IL13ζ配列を図3に提供する。同じ方法を用い、異なる認識要素を用いて、同等の分子を構築してもよい。次いで、最終構築物を任意の適切なプラスミド発現ベクター内に連結してもよい。好ましいプラスミド発現ベクターはpMG(InvitrogenTMより入手可能)である。
【0029】
[00046] IL13(E13Y)含有CARは、MHC独立方式で、T細胞が、IL13受容体α2(本明細書においてIL13Rα2と称される)を発現する神経膠腫細胞、腎癌腫細胞およびIL13Rα2を発現する任意の癌をターゲティングするように特異的に導く。抗腫瘍CD4+ T細胞エフェクターを生成して、CD3-ζ、CD28および4-1BB由来のシグナル伝達ドメインを含有するCARを用いて、腫瘍細胞を認識するように再指示した。非ウイルスプラスミドベクター(pEK)およびエレクトロポレーション法(Amaxa BiosystemsTMのNucleofector TechnologyTM、メリーランド州ガイザーズバーグ)を用いて、IL13ζまたはIL13-CD28-41BBζ CARいずれかをヒト初代T細胞にトランスフェクションした。いずれかのCAR(IL13ζまたはIL13-CD28-41BBζ)を発現するCD4+ T細胞を、エフェクターに関連するシグナル伝達経路を活性化し、サイトカインを産生し、ターゲット細胞を溶解し、そしてin vivo腫瘍増殖を制御する潜在能力に関して比較した。結果によって、IL13ζにCD28および4-1BBシグナル伝達ドメインを付加すると、CARを発現しているCD4+ T細胞の抗腫瘍エフェクター機能が増進することが示された。IL13-CD28-41BBζ免疫受容体を発現しているエフェクターT細胞は、共刺激が制限されていると予期される腫瘍環境において、JNK、p38およびAKTキナーゼを通じた共刺激シグナルを仲介することが可能であった。ヒト初代CD4+ T細胞における強制的な共刺激は、これらの細胞が、in vitroおよびin vivoの両方で、持続された抗腫瘍有効性と関連する方式で、Th1表現型に極性化することを支持する。CD4+ T細胞におけるCARの下流のエフェクターシグナルが立証された。これらのエフェクターシグナルは、in vitroおよびin vivoの両方で、観察されるTh1バイアスおよび抗腫瘍エフェクター活性の延長と相関した。
【0030】
[00047] CD3ζシグナル伝達は単独でERK活性化を駆動する。これは、ERK活性が、IL13ζ発現対照に比較して、IL13-CD28-41BBζ発現細胞では増進されない(どちらのCARもCD3ζシグナル伝達ドメインを含有する)という本明細書の知見とよく相関する。CD28でのCD3の共刺激は、JNKおよびp38の活性化を駆動し;CD3の4-1BB仲介性共刺激もまた、JNK活性化を伴う。JNKおよびp38はどちらも、IL2、IFN-γおよびTNF-αの産生を含めて、CD4+ T細胞によるTh1極性化免疫反応を駆動する際に主な役割を果たす。CD28および4-1BBの両方の別の下流シグナル伝達構成要素であるAKTキナーゼの活性化もまた、IL2およびINF-γの上方制御に関与するが、Th2サイトカインの上方制御には関与しない。IL13-CD28-41BBζ発現T細胞における、顕著なTh1表現型(以下の実施例を参照されたい)と、増進されたJNKおよびp38 MAPキナーゼ誘導ならびに持続されたATK活性化(以下の実施例を参照されたい)が関連していることから、CD28および4-1BBシグナル伝達部分が、このキメラ受容体において、CD3ζシグナル伝達ドメインとともに働いて、これらの共刺激受容体と通常関連する下流シグナル伝達経路に伝達する能力を保持することが強く示される。共刺激ドメインシグナルによって駆動される、活性化されたTh1表現型がどのくらい強いものでありうるかに関わらず、腫瘍微小環境内の機能する抗腫瘍エフェクターCD4+ T細胞の保持およびリサイクリングは、抗腫瘍強度の達成を大いに補助する。
【0031】
[00048] CD3ζ仲介性活性化のみに比較して、IL13-CD28-41BBζ CARを発現しているCD4+エフェクターT細胞は、増大した/維持されたMAPKおよびAKT活性、上方制御されたTh1サイトカイン産生、ならびに腫瘍ターゲットに対する増大した細胞溶解強度を示した。さらに、腫瘍での再発性刺激に際して、IL13-CD28-41BBζ+ CD4+細胞は、その溶解機能を保持/リサイクリングする一方、CD13ζ+ CD4+細胞は有効であるが、まもなく反応不顕性となり/消耗した。これらのin vitro観察は、共刺激CARを発現しているex vivo拡大されたCD4+ T細胞を養子導入することによって仲介される免疫不全マウスにおいて確立された同所性CNS神経膠腫異種移植片のin vivo制御増進と相関した。したがって、これらの研究は、CD3ζシグナル伝達事象と共刺激を統合すると、腫瘍微小環境において、機能維持のため、CD4+抗腫瘍エフェクター細胞が完全に活性化される効果があることを立証する。
【0032】
[00049] AKTを通じて仲介されるCD28および4-1BB共刺激シグナルは、抗アポトーシスタンパク質の上方制御を通じて、活性化が誘導する細胞死を阻害しうる。IL13-CD28-41BBζを発現するT細胞において見られるAKT活性化増進は、in vitroでの腫瘍特異的活性のリサイクリングの増進、ならびにin vivoでの腫瘍増殖制御の延長と関連した。したがって、共刺激CARは、養子療法プロトコルの臨床的有効性を有意に改善しうる方式で、抗腫瘍活性の期間および/または保持を増進しうる。
【0033】
[00050] それ自体の共刺激シグナル伝達ドメインを含有する腫瘍特異的CARは、これらの共刺激リガンドを発現しない、より広範囲の多様な固形腫瘍に対して、Tリンパ球を活性化するための新規アプローチを提供する。例えば、IL13Rα2は、乳癌、頭部および頸部癌、腎臓癌、卵巣癌、カポジ肉腫ならびに神経膠腫を含む、多様なヒト腫瘍上の過剰発現された細胞表面ターゲットとして同定されてきている。したがって、IL13ゼータカインおよびCD28および4-1BBを含有するCARを発現しているT細胞を用いて、神経膠芽腫(神経膠腫)および表面上にIL13ターゲットを有する、上に列挙するものなどの任意の癌を治療してもよい。
【0034】
[00051] 本発明は、細胞表面に発現された腫瘍ターゲット、例えば抗原に結合する部分を取り込むことによって、任意の腫瘍に向けられることも可能な、CD3ζ、CD28および4-1BB(および/または他の共刺激シグナル伝達ドメイン)を含有するCARを特に意図する。他の腫瘍特異的ターゲット結合剤の例には、Her2/Neu(ErbB-2)、α3インテグリン、CD20、CD19、EGFRVIII、IL3Rα(CD123)、LEA、CD44v6、またはCAR上に含有される共刺激シグナル伝達ドメインを発現しない腫瘍、好ましくは固形腫瘍に特異的な任意のターゲットが含まれる。したがって、この方式で、ヒト腫瘍をターゲティングするための構築物には、Her2/Neu(ErbB-2)、α3インテグリン、CD20、CD19、EGFRVIII、IL3Rα(CD123)、LEA、CD44v6、あるいはキメラT細胞受容体による結合にアクセス可能な任意の特異的腫瘍抗原または他の細胞表面構成要素に対する特異性を持つものが含まれてもよい。当業者は、これらの特異的腫瘍抗原および特定の腫瘍をターゲティングするのに利用可能な受容体を知っており、そしてこの方式でターゲティング可能な腫瘍を知っている。
【0035】
[00052] CD4+およびCD8+ T細胞エフェクター機能はどちらも、これらの受容体を介して誘発可能であり、したがって、これらのT細胞タイプはどちらも、本発明での使用が意図される。本発明のIL13 CARを発現しているCD8+ T細胞を用いて、これらの細胞の他の機能の中でもとりわけ、ターゲット細胞を溶解し、そしてターゲット細胞の存在下で、IL2を産生してもよい。CD4+およびCD8+ T細胞のいずれかまたは両方における適切な共刺激CARの発現を用いて、したがって増進されたおよび/または長期の生存および抗腫瘍活性を示すプロフェッショナルヘルパーおよびキラーT細胞のいずれかまたは両方からなる、養子免疫療法のための細胞の最も有効な集団を提供する。
【0036】
[00053] 本明細書に引用されるすべての参考文献は、その全体が本明細書に援用される。以下の実施例は、本発明の1つの態様を例示する目的のみのためのものである。
【実施例】
【0037】
実施例1. 初代ヒトTリンパ球におけるIL13Rα2特異的キメラ受容体のトランスフェクションおよび発現
[00054] 神経膠腫腫瘍抗原IL13Rα2との相互作用に際して、T細胞受容体(TCR)カスケードおよび共刺激様シグナル伝達カスケードの両方を関与させるため、CD28および4-1BB由来のシグナル伝達要素をIL13ゼータカイン(IL13ζ)キメラ抗原受容体(CAR)内に組み込んだ。好ましいIL13ζ CARは、ヒトCD4の膜貫通ドメインを介して、ヒト細胞質CD3ζに連結された、細胞外IL13(E13Y)突然変異タンパク質(mutein)、ヒトIgG4ヒンジ-Fcで構成される。図1を参照されたい。プライマーIL13P1、IL13P2、IL13P3、IL13P4、およびIL13P5を用いて、IL13(E13Y)コード配列の新規合成を行った。以下の表Iおよび図2を参照されたい。最終配列(417 bp)をEcoRI-BamHIで末端消化し、そして連結312#3としてプラスミドpSK(StaratageneTM)内に連結した。プライマーIL13 312#3 mut5-3およびIL13 312#3 mut3-5、ならびにテンプレートとして連結312#3を用いて、連結312#3を突然変異誘発し(StratageneTMキット、製造者の指示による)、欠失されたヌクレオチドを修復して、連結348#1(IL13ζ/pSK)を形成した。
【0038】
[00055] 標準的PCRスプライス重複伸長によって、IL13(E13Y)の5’端に、ヒトGM-CSFRアルファ鎖シグナルペプチド(hsp)コード配列を融合させた。プライマー5’:19hsp5’および3’:hsp-IL13FRを用いて、テンプレート連結301#10(hsp/pSK)からhsp配列を得た。表Iを参照されたい。プライマー5’:hsp-IL13FFおよび3’:IL13-IgG4FR、ならびにテンプレートとして連結312#3を用いて、IL13配列を得た。表Iを参照されたい。
【0039】
[00056] 同じ方法を用いて、IgG4 Fc、CD4膜貫通領域およびCD3ζ細胞質領域をコードする配列(IgG4m:ゼータ;図3の完全IL13ζ配列のヌクレオチド421〜1512(SEQ ID NO: 12))を、ヒト・シグナルペプチド-IL13融合配列の3’端に融合させた。プライマー5’:IL13-IgG4FFおよび3’:ゼータN3’(表1を参照されたい)を用い、テンプレートとして配列R9.10(IgG4mゼータ/pSK)を用いて、IgG4m:ゼータ配列を得た。テンプレートとしてそれぞれの配列を、そしてプライマー5’:19hsp5’および3’:ゼータN3’(表1を参照されたい)を用いて、1119 bpのIgG4m:ゼータ配列をhsp-IL13融合配列に融合させて、1522 bp hsp-IL13-IgG4m:ゼータ融合配列を生じた。末端をXbaI-NotIで消化し、そして連結351#7としてpSK内に連結して、プラスミドIL13ζ/pSK(4464 bp)を生成した(すなわち図3のpSKクローニングベクター内のIL13ζ配列)。
【0040】
[00057] IL13ζ/pSKをXbaI-NotIで消化し、そしてクレノウで平滑末端を生成し、そして生じた断片をプラスミドpMG^Pac(InvitrogenTM)(まず、SgrAIで開環し、クレノウで平滑化し、そしてSAPで脱リン酸化することによって調製)内に連結して、プラスミドIL13ζ/pMGを生じることによって、IL13ζコード配列を含有する発現ベクターを生成した。NotI-NheIで消化することによって、IL13ζ/pMGのハイグロマイシン耐性領域を除去し、そしてNotI-NheIでの消化によってプラスミドCE7R/HyTK-pMGから得られた選択/自殺融合物HyTKによって置換して、発現ベクターIL13ζ/HyTK-pMG(6785 bp)を生成した。このプラスミドは、塩基6〜549にヒト伸長因子-1αプロモーター(hEF1p)、塩基690〜2183にIL13ζコード配列、塩基2230〜2498にシミアンウイルス40後期ポリアデニル化シグナル(後期SV40pAN)、塩基2499〜3245に最小大腸菌(E. coli)複製起点(Ori ColE1)、塩基3246〜3432に合成ポリAおよび休止部位(SpAN)、塩基3453〜4075に極初期CMVエンハンサー/プロモーター(hCMV-1Aprom)、塩基4244〜6319にハイグロマイシン耐性チミジンキナーゼ・コード領域融合物(HyTK)、ならびに塩基6320〜6618にウシ成長ホルモン・ポリアデニル化シグナルおよび転写休止(BGh pAn)を含む。該プラスミドは塩基3233〜3240にPacI直鎖化部位を有する。hEF1p、後期SV40pAN、ori ColE1、SpAn、およびhCMV-1Aprom要素すべてを、親プラスミドpMG^Pacから得た。要約すると、IL13ζ/HyTK-pMGは修飾されたpMG主鎖であり、hEF1プロモーターからIL13ζ遺伝子を発現し、そしてhCMV-1AプロモーターからHyTK融合物を生成する。プラスミドIL13ζ/HyTK-pMGのマップを図4に示す。プラスミドの全長核酸配列を図5A〜図5Lに示す(SEQ ID NO: 13および14)。IL13ζ挿入物の配列もまた、図3に示す(SEQ ID NO: 5および6)。
【0041】
[00058] 抗ヒトCD3ζモノクローナル抗体クローン8D3(BD PharMingenTM、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて、グリコシル化阻害剤のツニカマイシンの存在下または非存在下で共培養したJurkat T細胞安定トランスフェクタント由来の全細胞溶解物を探査するウェスタンブロットによって、発現された構築物の完全性の評価を確認した。IL13ζ/HyTK-pMG発現ベクターをJurkat T細胞にエレクトロポレーションした後、陽性トランスフェクタントを選択しそして拡大することによって、Jurkat T細胞安定トランスフェクタント(Jurkat-IL13-pMGバルク株)を得た。24ウェルプレートのウェルあたり、Jurkat-IL13-pMGバルク株由来の2×106細胞を、5μg/mL、10μg/mL、または20μg/mLのツニカマイシンを伴いまたは伴わずに、プレーティングした。プレートを37℃で22時間インキュベーションした。各ウェルから細胞を採取し、そして各試料をPBSで洗浄し、そしてプロテアーゼ阻害剤(1錠剤/10 mL完全プロテアーゼ阻害剤カクテル)を含有する50μL RIPA緩衝液(PBS、1%NP40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS)中に再懸濁した。試料を氷上で1時間インキュベーションした後、14,000 rpm、4℃で20分間遠心分離した。遠心分離した溶解物上清試料を採取して、そして還元条件下で、1:3体積の試料緩衝液中で煮沸し、次いで12%アクリルアミドゲル上のSDS-PAGE電気泳動に供した。ニトロセルロースにトランスファーした後、T-TBS(Tris緩衝生理食塩水pH8.0中の0.1%Tween20TM)中、4%脱脂粉乳を含有するBlottoTM溶液中で、膜を1時間ブロッキングした。次いで、0.5μg/mLの濃度の一次マウス抗ヒトCD3ζモノクローナル抗体と膜を1時間インキュベーションし、洗浄し、そして次いで、1:3000希釈(BlottoTM溶液中)のヤギ抗マウスIgGアルカリホスファターゼ・コンジュゲート化二次抗体(Bio-RadTMImmunoStarTMキット)と1時間インキュベーションした。現像前に、膜をT-TBS中でさらに4回洗浄し、そして次いで、3 mLホスファターゼ基質溶液(Bio-RadTMImmunoStarTMキット)と、室温で5分間インキュベーションした。次いで、膜をプラスチック現像ホルダー(TropixTM)で覆い、そしてX線フィルムに曝露させた。野生型ヒトIL13の既知のグリコシル化パターンと一致して、発現されたIL13(E13Y)ゼータカインの電気泳動移動度は、非常にグリコシル化されたタンパク質を示し、これは、ツニカマイシンの存在下で発現された際、およそ54 kDaのアミノ酸主鎖に減少する。
【0042】
[00059] pcDNA3.1(+)(InvitrogenTM)内にクローニングされた、選択/自殺融合遺伝子HyTK、新規合成された自己切断可能口蹄疫2Aペプチド(tctagaggag catgccagct gttgaatttt gaccttctta agcttgcggg agacgtcgag tccaaccctg ggccc;SEQ ID NO: 49)、およびIL13ζ分子(図3)をコードするHyTK-2A-IL13ζ-pcDNA3.1(+)構築物で、共刺激CARの構築を開始した。メトトレキセート(MTX)に対する耐性を与えるため、HyTK遺伝子を、PCRによって、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(T細胞受容体のCD3鎖を認識するOKT3抗体で、3日間刺激した末梢血単核細胞(PBMC)から得られるcDNAライブラリーより増幅され、QuikChangeTM部位特異的突然変異誘発キット(StratageneTM)を用いて生成されたL22FおよびF33S突然変異を含有した)と交換した。次いで、生じたDHFRdm-2A-IL13ζ構築物をNheIおよびNotIで切除し、溶出し、そして同様に消化した哺乳動物プラスミド発現ベクターpEK内に連結した。該pEKベクターは、元来、CMVプロモーターおよびアンピシリン遺伝子を除去し、そしてこれらを、pMG(InvitrogenTM)由来のヒト伸長因子1αプロモーター(EF1p)遺伝子で置換することによってpcDNA3.1(+)から修飾されており、プラスミドDHFRdm-2A-IL13ζ_pEK(pJ01275-9)が生成された。CD28 cDNAをInvitrogenTMより購入し、そしてOKT3抗体で3日間刺激しておいた末梢血単核細胞(PBMC)に由来するcDNAライブラリーから4-1BBコード領域をPCRによって増幅した(プライマー41BB5’および41BB3’を用いる、表1を参照されたい)。
【0043】
[00060] CD28および4-1BBの細胞内シグナル伝達領域(それぞれ、天然CD28および4-1BB配列のアミノ酸180〜220および214〜255)を、PCR(表Iに提供するプライマーCD4-CD28F、CD28-4-1-BBR、CD28-4-1bbF、および41bb93)によって、CD4膜貫通および細胞質CD3ζ(天然CD3ζのアミノ酸52〜164)領域間の接合部内に融合させた。IL13ζ(図6A)およびIL13-CD28-41BBζ(図6B)直鎖プラスミド構築物例の略図を提供する図6を参照されたい。ヒトIL13突然変異タンパク質(E13Y)、ヒトIgG4ヒンジ-Fc(IgG4)、ヒトCD4膜貫通(tm)、ヒトCD3ζ細胞質(ゼータ)、CD28細胞質(28c)および4-1BB細胞質(BBc)セグメントを図6に示す。異なるPCR断片を挿入するのに用いた制限酵素部位もまた、予測される塩基対位置を括弧内に提供して、図6に示す(NheI、KpnI、NsiI、NotI)。図6Aに示すように、CAR、IL13-CD28-41BBζは、CD3ζのものに融合したCD28および4-1BBの細胞質ドメインを含む。図6Aに示す各構築物は、IL13Rα2特異的となるE13Y突然変異を含有するhuIL13ドメイン、ヒトIgG4ヒンジ-Fcドメイン(huγ4Fc)、ヒトCD4膜貫通(huCD4tm)ドメイン、およびヒトCD3ζ細胞質(huCD3ζcyt)ドメインを有し;IL13-CD28-41BBζ CARは、CD4膜貫通およびCD3ζ細胞質ドメイン間に挿入されたCD28および4-1BBのシグナル伝達(sig)ドメインを有する。プラスミドの構築に用い、そして発現分析に用いたPCRプライマーを表Iに提供する。
【0044】
[00061] 製造者のプロトコル(Miltenyi BiotecTM Inc.)を用いたMACSTM分離によって得たCD4+ T細胞のバルク培養を、10%FCS、1%L-グルタミン、2.5%HEPES緩衝液、50 U/mL rhIL2、10 ng/mL rhIL15および0.1μM MTXを含むRPMI培地中で維持した。ヒトT細胞の単離、活性化、およびエレクトロポレーションを、以下のように行った。同意を得た健康なドナーから得たヘパリン処理末梢血のFicoll-Paque(Pharmacia BiotechTM)上の密度勾配遠心分離によってPBMCを単離した。AmaxaTMヒトT細胞Nucleofectorキット(AmaxaTMInc.)を用いて、ヌクレオフェクション溶液中に細胞を再懸濁した。プラスミド(1μg/5×106細胞)を添加し、そしてAmaxaTMNucleofector I(AmaxaTM Inc.)、プログラムU-14を用いて細胞にエレクトロポレーションした。次いで、10%FCSを含むフェノールレッド不含培地中に細胞を採取し、一晩休ませ、そして次いで、10%FCSを含むRPMI中、30 ng/mL OKT3および5 ng/mL rhIL15で3日間刺激した。0.1μM MTXおよび5 ng/mL rhIL15を含有する培地を用いて、成功したトランスフェクタントを選択した。
【0045】
[00062] CD3ζに特異的な抗体を用いた免疫ブロッティング分析によって、CARの発現を評価した。既知の方法および商業的に入手可能なマウス抗ヒトCD3ζ特異的モノクローナル抗体、1D3を用いて、バルクMTX選択CD4+T細胞(偽、IL13ζ、およびIL13-CD28-41BBζトランスフェクション)の全細胞溶解物を、CAR発現(キメラCD3ζ)に関して試験した。こうした非常にグリコシル化されたタンパク質で予期されるように、予期される分子量内の多数のバンドが観察された。図7を参照されたい。
【0046】
[00063] フローサイトメトリーを用いて、膜結合IL13を検出することによって、CD4+ T細胞表面上に発現されるIL13ζまたはIL13-CD28-41BBζ CARのレベルを調べた。図8を参照されたい。IL13ζまたはIL13-CD28-41BBζ CARでトランスフェクションしたPBMCを、MTX(0.1μM)の選択的濃度下で平均10週間増殖させ、MACSTM分離によって、CD4+細胞に関して磁気的にソーティングし、そして示すように、IL13含有CAR(Y軸)、およびCD4、CD8、TCRα/β、またはCD28(X軸)の表面発現に関して調べた。アイソタイプマッチした蛍光mAbを用いて、象限を確立した。これらの遺伝子修飾されたT細胞集団は、CD4+細胞の磁気ビーズに基づくMACSTM精製後に予期されるように、主にCD4+およびCD8-であるだけでなく、高いそして同等のレベルの内因性TCR、および低いか検出不能なレベルの共刺激CD28も発現した。図8を参照されたい。
【0047】
[00064] また、これらの研究で用いたIL13Rα2+ヒト神経膠芽腫腫瘍細胞ターゲット株、U87もまた表現型決定して、これらの細胞が表面上にMHCクラスIおよびクラスIIを発現し、そして共刺激リガンドCD80/86または4-1BBLを発現しないことを確認した。フローサイトメトリーによって分析されるような、U87神経膠腫ターゲット細胞上のアイソタイプ対照(白抜きのヒストグラム)に比較して、示すようなMHC分子HLA-A2およびHLA-DR、IL13R、ならびに共刺激分子CD80、CD86、およびCD137-L(4-1BBL)(黒塗りのヒストグラム)の表面染色を示す、図9を参照されたい。
【0048】
[00065] フローサイトメトリー分析は、PEコンジュゲート化またはFITCコンジュゲート化抗ヒトIL13モノクローナル抗体(BD PharMingenTM)での染色による、IL13-CAR構築物の細胞表面発現を評価する工程を伴った。FITCコンジュゲート化抗CD4、抗CD8、および抗TCR α/β抗体またはPEコンジュゲート化抗CD28抗体(BD PharMingenTM)を用いて、初代ヒトT細胞トランスフェクタントの細胞表面表現型をアッセイした。FITCおよびPEコンジュゲート化アイソタイプ対照(BD PharMingenTM)に比較して、FITCコンジュゲート化抗HLA-A2、抗HLA-DR、および抗CD80抗体、またはPEコンジュゲート化抗CD86および抗CD137-L(4-1BBL)抗体を用いて、ヒトU87神経芽腫細胞の細胞表面表現型をアッセイした。ヤギ抗ヒトIL13Rα2(R&D SystemsTM)、その後、FITCコンジュゲート化マウス抗ヤギIgG(Jackson ImmunoResearchTM)を用いて、IL13Rα2発現をアッセイした。
【0049】
表I. CAR構築のためのPCRプライマー
【0050】
【表1】
【0051】
実施例2. IL13-CD28-41BBζによる持続AKTシグナル伝達でのJNKおよびp38 MAPKシグナル伝達の増強
[00066] 補助受容体CD28または4-1BBを伴うTCR-CD3複合体の会合によって刺激されるT細胞は、AKT、ならびにマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)を通じてシグナルを駆動することが知られる。共刺激CARがこれらの下流エフェクター経路に影響を及ぼす能力を調べるため、in vitroキナーゼアッセイを用いて、U87ターゲット細胞の会合後、IL13ζおよびIL13-CD28-41BBζ発現CD4+ T細胞において、AKTおよびMAPKファミリーメンバーERK、JNKおよびp38の活性を評価し、そして比較した。ヒト神経膠腫株U87をATCC(メリーランド州ロックビル)から得た。すべての腫瘍株は接着性であり、そして10%熱不活化FCS、25 mM HEPES、および2 mM L-グルタミンを補ったDMEM(Irvine ScientificTM)中で増殖させた。IL13ζまたはIL13-CD28-41BBζ CARを発現しているCD4+ T細胞を、アッセイ前に、図10に示す時間、U87神経膠腫細胞とインキュベーションした。
【0052】
[00067] IL-13ζまたはIL13-CD28-41BBζを発現しているCD4+ T細胞を腫瘍ターゲット細胞で最長48時間(図10A)または72時間(図10B)刺激した後、JNK、p38およびAKT総タンパク質基質(すなわち、それぞれ、cJun、ATF2、およびGSK3)およびリン酸化基質(それぞれ、P-cJun、P-ATF2、およびP-GSK3)レベルをウェスタン免疫ブロットによって測定した。キナーゼ活性の測定値としての各基質のリン酸化の倍増加を図10において各群の下部に示す。
【0053】
[00068] Hibiら, “Identification of an oncoprotein- and UV-responsive protein kinase that binds and potentiates the c-Jun activation domain.” Genes Dev. 7:2135-2148, 1993を修飾した方法を用いて、非放射性固体状態キナーゼアッセイを行った。穏やかな遠心分離(1000 rpm、<3分間)によって、ターゲット細胞から分離されているT細胞溶解物を用いて、ERK1/2、JNK、p38、およびAKTに特異的な抗体(Cell Signaling Technology Inc.TM)を用いて、選択されるキナーゼを4℃で一晩免疫沈降させた。免疫沈降した複合体を、溶解緩衝液(1%NP40、0.1%SDS、および0.5%デオキシコール酸ナトリウムを含むPBS)およびキナーゼ緩衝液(10 mM MgCl2および2 mM EGTAを含有する25 mM Tris、pH7.5)中で、免疫沈降した複合体を洗浄し、そして10μM ATPの存在下で、1μgの基質を用いて、30℃で30分間アッセイを行った。
【0054】
[00069] グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質:GST-ELK、GST-ATF2およびGST-GSK3β(Cell Signaling TechnologyTM Inc.)、およびGST-cJun(1-79)(Changら, Cell 124:601-613, 2006に記載されるとおり)を、それぞれ、ERK、p38、AKT、およびJNKキナーゼアッセイの基質として用いた。標準法にしたがって、生じた産物を12%NuPAGETM(InvitrogenTM)中に溶解し、そしてXcell IIブロットモジュールTM(InvitrogenTM)を用いて、ニトロセルロース膜にトランスファーした。ブロットを、ホスホ-ELK、ATF2、cJunおよびGSK3βに対する抗体(Cell Signaling TechnologyTMInc.)で探査して、リン酸化GST融合タンパク質を検出し、そしてGSTに対する抗体(BD PharMingenTM)で探査して、基質総量を検出した。次いで、免疫ブロットをIRDye 680コンジュゲート化ウサギまたはIRDye800コンジュゲート化マウス免疫グロブリン特異的抗体(LI-CORTM)とインキュベーションした。ブロットを前処理し、そして抗体を希釈するために、ブロッキング緩衝液(LI-CORTMより購入)を用いた。OdysseyTM赤外画像化系(LI-CORTM)を用いて、ブロットを視覚化し、そして記録し、そしてOdysseyTM v2.0ソフトウェア(LI-CORTM)を用いてバンド強度を定量化した。キナーゼ活性の測定値である基質のリン酸化を定量化して、そして対応する、免疫沈降キナーゼおよび総キナーゼ基質の検出された量に対して標準化した。IL13ζ+ CD4+ T細胞のt=0での相対キナーゼ活性に、任意の値1.0を与え;ダッシュ記号(-)は、倍相違が<1.0であることを示す(図10を参照されたい)。
【0055】
[00070] キナーゼアッセイは、U87神経膠腫細胞との共培養後、IL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞における、JNKおよびp38MAPK活性増進ならびにAKTキナーゼ活性延長を検出可能であった。図10に示すように、JNKおよびp38活性化は、IL13ζを発現するCD4+ T細胞よりも、IL13-CD28-41BBζを発現するものにおいてより強かった。図10を参照されたい。対照的に、別のMAPK、ERKの活性化は、2つの細胞種間で同程度であった。どちらのT細胞集団でもAKT活性化が観察されたが、IL13ζ+細胞においては、24時間までのみ上昇し、一方、IL13-CD28-41BBζ+細胞は、72時間までまたはそれより長く、上昇したAKT活性を示した。図10Bを参照されたい。したがって、どちらのCARも有効であったが、IL13-CD28-41BBζ CAR内の共刺激ドメインは、IL13ζCARで観察されるものに比較して、より持続されたAKT活性を生じた。
【0056】
実施例3. 共刺激シグナルは、腫瘍再指示CD4+エフェクターのTh1極性化を強化する
[00071] p38活性は、Th1細胞で検出されているがTh2細胞では検出されておらず、そしてJNK/p38活性化は、関連するTNF-αおよびIFN-γサイトカインのTh1産生を誘導することが知られるため、Th1関連サイトカインのCAR仲介性誘導に対するCD28および4-1BB共刺激機能の影響を調べた。IL13ζまたはIL13-CD28-41BBζを発現している遺伝子修飾されたCD4+ T細胞(106細胞)を、2 mLの培地中、異なる刺激因子細胞(5×105細胞)と、24ウェル組織培養プレート中で共培養した。刺激因子細胞は、図11Aに示すように、U87神経膠腫細胞(U87)、親NS0マウス骨髄腫細胞(NS0)、表面IL13Rα2を安定発現しているNS0細胞(NS0-IL13Rα2)または膜結合OKT3を安定発現しているNS0細胞(NS0-OKT3)であった。
【0057】
[00072] リアルタイム定量的RT-PCR(qPCR)を用いて、培養後の相対的mRNAレベルを測定した。遺伝子発現分析のため、RNeasyTMキット(QiagenTM)を用いて、CD4+ T細胞トランスフェクタントの総細胞RNAを単離した。体積30 mL(1×逆転写酵素緩衝剤、2.5 mMオリゴdT、0.25 mM dNTP、0.01 Mジチオスレイトール、20 UのRnasinおよび200 UのSuperScriptTMII RNAアーゼH-逆転写酵素(InvitrogenTM)を含有する)中、5μg総RNAの逆転写を用いて、cDNAを合成した。試料を42℃で1時間インキュベーションし、そして次いで、70℃で5分間加熱することによって、逆転写酵素を不活化した。SYBRグリーンTM PCRマスターミックス(Applied BiosystemsTM)およびDNA Engine Opticon 2TMリアルタイムPCR検出系(MJ Research Inc.TM)によって設計されたプライマーを用いて、0.2μgの総RNAと同等である、生じたcDNAをqPCR分析に供した。試験した遺伝子IL2およびIFN-γのプライマー配列は以下のとおりである:IL2順方向: CAAGAATCCCAAACTCACCAG、SEQ ID NO: 50;IL2逆方向:CGTTGATATTGCTGATTAAGTCC、SEQ ID NO: 51;IFN-γ順方向:ATCCCAGTAATGGTTGTCCTGCCT、SEQ ID NO: 52;IFN-γ逆方向:TCTTGCTTAGGTTGGCTGCCTAGT、SEQ ID NO: 53。シクロフィリンmRNAの平均サイクル閾値(CT)(Changら, “The E3 ubiquitin ligase itch couples JAK activation to TNFalpha-induced cell death by inducing c-FLIP(L) turnover.” Cell 124:601-613, 2006に記載されるとおり)を用いて、試験した遺伝子を標準化した。各実験条件において、各遺伝子に関する3つ組qPCR測定によって、平均CT値を決定した。
【0058】
[00073] 示すヒトmRNAのqPCR分析のため、T細胞総mRNAを、0時間(図11A、白いバー)、7時間(図11A、黒いバー)および24時間(図11A、影を付けたバー)で収集した。*は、対応のないスチューデントt検定を用いて、IL13ζ発現CD4+ T細胞の7時間の値に比較した際のp<0.05を示す。IL13Rα2ターゲット抗原の発現およびミコフェノール酸(MPA)に対する耐性を与えるIL13Rα2-IMPDH2_pMG(pJ00659)、またはMPAに対する耐性とともに、CD3架橋(そしてしたがってT細胞刺激性)OKT3分子の発現を与えるOKT3-IMPDH2_pcDNA3.1(+)(pJ01056)のいずれかを、マウス骨髄腫株NS0にエレクトロポレーションし、そして次いで6μMミコフェノール酸(MPA)の存在下でクローニングし、そしてヒトIL13Rα2導入遺伝子発現に関してスクリーニングした。U87およびNS0-IL13Rα2腫瘍細胞を用いた実験に関しては、n=3;NS0-OKT3およびNS0腫瘍細胞を用いた実験に関しては、n=1。
【0059】
[00074] IL2およびINF-γ mRNAのレベルは、U87神経膠芽腫細胞との培養後、IL13ζ+ T細胞におけるよりも、IL13-CD28-41BBζ+ T細胞において、より高かった。図11Aを参照されたい。NS0細胞と共培養した場合、どちらのT細胞集団でもIL2またはINF-γ mRNA誘導は観察されなかった。IL13Rα2導入遺伝子を発現するNS0細胞によって刺激すると、IL13-CD28-41BBζを発現しているT細胞ではIL2およびINF-γ mRNA誘導が回復したが、IL13ζを発現しているT細胞では回復せず、サイトカイン誘導遺伝子が、IL13Rα2依存性であることが示された。誘導されたIL2およびINF-γ mRNAの相対量は、U87および導入遺伝子を発現するNS0細胞上のIL13Rα2表面発現レベルと直接相関し;U87のレベルはNS0-IL13Rα2細胞のレベルよりも高い。対照的に、IL13ζ+ T細胞におけるIL2およびINF-γ遺伝子の誘導は、各集団を、CD3εの会合を介してT細胞を活性化するアゴニスト免疫グロブリン分子である膜結合性OKT3を安定に発現するNS0細胞と共培養した場合、IL13-CD28-41BBζ+ T細胞で見られるものと類似であった。これらの結果によって、IL13ζとIL13Rα2の会合によって仲介されるIL2およびINF-γ mRNAの誘導がより低いのは、これらのT細胞における本質的な欠陥によるのではなく、CAR内にCD28および4-1BB共刺激ドメインが欠けているためであることが示される。
【0060】
[00075] これらのCAR発現T細胞から放出されるTh1サイトカイン対Th2サイトカインタンパク質の量を定量化するため、これらの共培養由来の上清を、サイトカイン含量に関してアッセイした。24時間インキュベーションした後、IL13ζ+(白いバー)またはIL13-CD28-41BBζ+(黒いバー)の培養上清を採取し、そして製造者の指示(Bio-RadTM Laboratories)によって、ヒト17-Plex PanelTMキットを用いる、多重細胞数測定ビーズアレイによって、Th1サイトカインおよびTh2サイトカインに関してアッセイした。図11Bを参照されたい。
【0061】
[00076] U87神経膠腫またはIL13Rα2+ NS0細胞は、IL13ζ+ T細胞からよりも、IL13-CD28-41BBζ+ T細胞から、より多くのTh1サイトカイン放出(IL2、IFN-γ、TNF-αおよびGM-CSF)およびより少ないTh2サイトカイン放出(IL5、IL10およびIL13)を刺激した。OKT3を発現しているNS0細胞と培養したIL13ζおよびIL13-CD28-41BBζを発現しているCD4+ T細胞によって、同等のレベルのTh1サイトカインおよびTh2サイトカインが産生され、これらの細胞は内因性CD3を介したポリクローン性活性化に際して、極性化されないままであることが示される。T細胞を親NS0細胞と培養した場合、サイトカインレベルはすべて、低いか検出不能であった。T細胞を任意の腫瘍細胞株と培養した場合、Th2サイトカインIL4レベルは、低いか検出不能であった。総合すると、これらのデータによって、CAR内にCD28および4-1BB共刺激ドメインが存在すると、CD4+ T細胞のTh1様サイトカイン転写および分泌を駆動するのが補助されることが示される。
【0062】
実施例4. IL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞におけるリサイクリング抗腫瘍溶解活性の増加
[00077] 共刺激CARが、CD4+T細胞の腫瘍特異的細胞傷害活性に影響を及ぼすかどうかを決定するため、発光細胞溶解アッセイ(LCA)を行って、in vitroで、腫瘍細胞のホタル(firefly)・ルシフェラーゼ(ffLuc)導入遺伝子発光活性を検出した。0.14 mg/mL D-ルシフェリンおよびVictor2TMルミノメーターを用いて、Brownら, “Biophotonic cytotoxicity assay for high-throughput screening of cytolytic killing.” J. Immunol. Meth. 297:39-52, 2005によって記載されるように、このアッセイを行った。簡潔には、Victor2TMルミノメーターを用い、0.14 mg/mL D-ルシフェリン(XeonogenTM)を伴うLCAによって、腫瘍細胞のffLuc導入遺伝子発光活性をin vitroで分析した。4時間後、示すE:T比で、IL13ζ+ CD4+ T細胞(○)に比較した、U87ターゲットに対するIL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞(■)の細胞傷害活性増進を示す、図12Aを参照されたい。3つ組値の平均±SEを示す;*は、対応のないスチューデントt検定を用いたp<0.05を示す。
【0063】
[00078] ffLucでトランスフェクションしたU87ターゲット細胞と共培養した4時間後、IL13-CD28-41BBζ+細胞は、IL13ζ+細胞に比較して、溶解活性の統計的に有意な増進を示した。共培養を48時間まで延ばすと、IL13ζ発現細胞およびIL13-CD28-41BBζ発現細胞間では、細胞傷害活性の相違は観察されなかった(どちらの細胞でも100%特異的溶解に到達した)。図12Bのデータは、2:1のE:T比で48時間共培養し、そして次いで再び、新鮮なターゲットを添加した後、2:1のE:T比でさらに48時間共培養した、LCAアッセイによる特異的溶解を示す。3つ組値の平均±SEを示す;*は、示す共培養中で、IL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞(黒いバー)をIL13ζ+ CD4+ T細胞(白いバー)に比較したp<0.05(対応するスチューデントt検定)を示す。
【0064】
[00079] パーフォリンおよびグランザイムB mRNAレベルは、IL13ζ+細胞およびIL13-CD28-41BBζ+細胞において等しく上方制御されており、これらのCAR発現T細胞が、殺傷の同様の機構を用いうることを示唆した。しかし、同じCAR発現CD4+T細胞との48時間共培養の第二の周期のため、新鮮なffLuc+ターゲットを添加すると、IL13-CD28-41BBζ+細胞は、IL13ζ+細胞よりも、有意により高い溶解活性を示した(図12B)。これによって、共刺激CARは、CD4+ T細胞殺傷活性の期間および/またはリサイクリングに有益に影響を及ぼすことが示唆される。
【0065】
[00080] この現象をさらに調べるため、1.2×106のIL13ζまたはIL13-CD28-41BBζを発現しているCD4+ T細胞と、6×105接着性U87神経膠腫細胞の共培養のビデオ・タイムラプス顕微鏡(VTLM)を用いて、IL13ζ+またはIL13-CD28-41BBζ+ T細胞との共培養中のU87腫瘍細胞の生存度を分析した。培養を45時間後に洗浄し、そして次いで、新鮮なU87神経膠腫細胞(6×105)と再培養した。生存腫瘍細胞の数を42時間に渡って(最初の殺傷)、および45時間〜139時間まで(第二の殺傷)プロットした。図12Cを参照されたい。
【0066】
[00081] 各々、タングステン-ハロゲンランプ、GIF(緑色)フィルター、ELWD 0.3NAコンデンサー、Plan FluorTM 4×/0.13 PhL DL無限遠補正対物レンズ、D10NLC 1×無レンズCマウントアダプター(Diagnostic InstrumentsTM)およびVCB-3524 B/W RS-170ビデオ1/2”CCDカメラ(SanyoTMNorth America Corp.)を装備した4台のEclipse TS100TM顕微鏡(NikonTM Inc.)上、37℃の暖かい室内で画像を同時に撮影した。データを収集するため、1.2×106 T細胞(0.1%ヒト血清アルブミンを補充した200μLハンクス緩衝塩溶液中)を、6×105接着性U87細胞(3×105細胞/フラスコで1日前にプレーティングしたもの)を含有するT-25フラスコに添加した。画像化前に、フラスコを顕微鏡ステージ上で30分間平衡化させた。タイムラプス獲得速度は2分間間隔であった。各ビデオにおいて、腫瘍細胞のみの数フレームを獲得した後、T細胞を添加した。次いで、合わせた細胞を連続80時間記録した。T細胞を添加した後、各フラスコに5%CO2を10秒間ガス供給し、そしてパラフィルムで密封して、それぞれ、優れたpH調節(HBSS中の重炭酸塩)および安定したピントを確実にした。COH VTLFカメラ・オーガナイザーを用いて画像を獲得し、そしてMatroxTM 4チャネルフレーム・グラバーボードを用いて、640×480ピクセルでデジタル化した。MetaMorphTM 6.33(Universal Imaging/Molecular DevicesTMCorp.)の「対象を手動で計数」コマンドを用いて、10時間以下の間隔で、生存腫瘍細胞計数を行った。すべてのデータセットをMetaMorphTMにインポートし、そしてMetaMorphTMスタックおよびAVI動画として保存した。
【0067】
[00082] 遺伝子修飾されたCD4+ T細胞のいずれかが、共培養の最初の42時間中に腫瘍細胞を殺す能力は、実質的に同じであった(ほぼ100%のU87細胞が30時間までに殺された)。しかし、U87腫瘍細胞との第二の遭遇において、回復したIL13-CD28-41BBζ+ T細胞は、IL13ζ+ T細胞よりもより高い細胞溶解活性を保持した。重要なことに、U87細胞を2回目に添加する前に、T細胞を計数すると、細胞数の有意な相違はないことが明らかになった。さらに、U87細胞との共培養72時間に渡るCFSEに基づくアッセイは、in vitroで、IL13ζ+またはIL13-CD28-41BBζ+ T細胞の増殖において相違がないことを明らかにした。これによって、新鮮なターゲットの添加に際して細胞溶解活性がより大きいのは、より多くのキラーが存在するためではなく、個々のキラーが機能する能力が増進しているためであったことが立証される。総合すると、これらのデータによって、共刺激CARは、CD4+T細胞機能のリサイクリングおよび保持を支持することが示される。
【0068】
実施例5. IL13-CD28-41BBζ+ CD4+ T細胞によるin vivo腫瘍クリアランスの増進
[00083] 同所性ネズミ異種移植片モデルにおいて、確立されたU87腫瘍を用いて、CD28および4-1BBシグナル伝達ドメインを含むCARが、CD4+T細胞の抗腫瘍能を増進させる能力を評価した。in vivo研究のため、製造者の支持にしたがって、オリゴフェクチミン(oligofectimine)(InvitrogenTM)を用いて、U87細胞をffluc-ゼオシン_pcDNA3.1(+)(pJ00778、ホタル・ルシフェラーゼ酵素およびゼオシン薬剤耐性遺伝子のタンパク質融合物を発現するプラスミド)およびIL2(2)_HyTk-pMG(pJ00976、IL2サイトカインおよび選択/自殺融合遺伝子HyTKを発現するプラスミド)でトランスフェクションし、そして次いで、0.2 mg/mLゼオシンおよび0.1 mg/mLハイグロマイシンの存在下でクローニングした。
【0069】
[00084] 同所性神経膠腫異種移植片モデルを産生するため、マウスを以下のように治療した。250 radで照射した翌日、雄の6〜8週齢NOD-scidマウスを麻酔し、剃毛し、そしてCunninghamTMマウス/新生ラットアダプター定位固定装置拘束具(StoeltingTM)中で固定した。次いで、3〜5 mmに渡って、ブレグマに対して2 mm側方でそして0.5 mm前側で、腫瘍(U87神経膠腫)をマウスに定位誘導注射した。2μLのフェノール不含RPMI(Irvine Scientific、カリフォルニア州アービン)中に懸濁したU87-ffLucZeo/IL2+腫瘍細胞(2×105細胞/マウス)を、硬膜から2.5 mmの深さに注射した。腫瘍接種の7日後、IL13ζまたはIL13-CD28-41BBζのいずれかを発現している106 T細胞を2μL中で大脳の腫瘍座標に送達した(養子導入)。対照動物にはPBSのみを投与した(「偽対照」)。穿頭孔をボーンワックスで密封し、そして切開をNexabandTMグルーで閉じた。術後回復のため、動物に0.1 mg/kgのBuprenexTMを皮下注射した。このモデルにおいて、内因性免疫系の回復のため、腫瘍は注射の13〜14日後に自発的に退行し始めるため、実験を第12日までに完了した。
【0070】
[00085] ホタル・ルシフェラーゼ(ffLuc)およびヒトIL2を安定して発現する確立されたU87神経膠芽腫細胞における腫瘍由来のffLuc流動シグナルを監視することによって、同所性腫瘍増殖を非侵襲性に定量化可能である。Kahlonら, “Specific recognition and killing of glioblastoma multiforme by interleukin 13-zetakine redirected cytolytic T cells.” Cancer Res. 64:9160-9166, 2004に先に記載されるように、XenogenTMIn Vivo画像化系(IVIS)でマウスにおいてin vivo生体光子腫瘍画像化を用いて、in vivoルシフェラーゼ活性を検出した。簡潔には、ffLuc流動を監視するため、マウスに4.29 mg D-ルシフェリンを腹腔内注射し、マウスを麻酔し(1.5 L/分の酸素+4%イソフルラン)、そしてルシフェリン注射の14分後、1分間の積分時間に渡って、発光を測定した。関心対象の領域において、時間に渡って測定される総カウントとして、流動(光子/秒)を定量化した。図13中の結果を参照されたい。Y軸上の値は、腫瘍移植から示す日数後、偽群および治療群(各群n=6)由来のffLuc+腫瘍の総流動レベルの平均|SDを示す。「Tx」は、養子導入T細胞での治療を示す。
【0071】
[00086] CAR発現CD4+ T細胞の養子導入前、すべてのマウスは、予期されるように、腫瘍由来ffLuc流動シグナルレベルの増加を示した(図13を参照されたい;腫瘍移植2日後および6日後を比較されたい)。養子導入(Tx)2日後、腫瘍ffLuc流動レベルは、偽治療マウスに比較した際、IL13ζまたはIL13-CD28-41BBζのいずれかを発現するT細胞で治療したマウスにおいて減少した。しかし、T細胞治療5日後(移植12日後)、IL13-CD28-41BBζ+ T細胞で治療したマウスにおいて、腫瘍流動シグナルは低いままであり、一方、IL13ζ+ T細胞で治療したマウス由来の流動シグナルは、偽治療(対照)群のものと同様のレベルに増加した。CD28および4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメインは、遺伝的に再指示されたT細胞による腫瘍増殖制御を増進させ、そして/または延長させた。
【0072】
実施例6. 療法に適したT細胞の調製
[00087] 白血球フェレーシスによって、患者からTリンパ球を得て、そして自己T細胞がCARを発現するように遺伝子改変し、次いで、抗癌療法を達成するため、患者に投与し直した。
【0073】
[00088] 療法使用に適したIL13ζ+ T細胞を調製するため、臨床等級FicollTM上の遠心分離によって、白血球フェレーシスした血液から単核細胞を分離した。0.526 mM EDTAを含有する無菌リン酸緩衝生理食塩水中でPBMCを2回、そして次いで無菌PBS中で1回洗浄し、そしてRPMI 1640 HEPES、10%熱不活化FCS、および4 mM L-グルタミンからなる培地中に再懸濁した。培養にOrthocloneTM OKT3(30 ng/mL)を添加することによって、患者PBMC中に存在するT細胞をポリクローン性に活性化した。次いで、研究被験体用に指定されたインキュベーター中、通気孔を付けたT-75組織培養フラスコ中で、細胞培養をインキュベーションした。培養開始24時間後、rhIL2を25 U/mLで添加した。培養開始3日後、PBMCを採取し、遠心分離し、そして低張エレクトロポレーション緩衝液中、20×106細胞/mLに再懸濁した。400μLの細胞懸濁物とともに、25マイクログラムのプラスミドIL13ζ/HyTK-pMGを、無菌0.2 cmエレクトロポレーション・キュベットに添加した。各キュベットを250 V/40μsの単回電気パルスに供し、そして再び室温で10分間インキュベーションした。キュベットから生存細胞を採取し、プールし、そして25 U/mL rhIL2を含有する培地中に再懸濁した。フラスコを患者用に指定された組織培養インキュベーター中に入れた。エレクトロポレーション3日後、0.2 mg/mLの最終濃度でハイグロマイシンを細胞に添加した。エレクトロポレーションしたPBMCを培地と全部で14日間培養し、そしてIL2を48時間ごとに補充した。
【0074】
[00089] エレクトロポレーションしたOKT3活性化患者PBMCからの、ハイグロマイシン耐性CD8+ CTLのクローニングを、培養第14日に開始した。簡潔には、100×106凍結保存照射フィーダーPBMCおよび20×106照射TM-LCL(フィーダー細胞として働くEBV形質転換リンパ芽球細胞)の混合物に、30 ng/mL OKT3および50 U/mL rhIL2を含有する、体積200 mLの培地中、生存患者PBMCを添加した。この混合物を10枚の96ウェル・クローニングプレートの各ウェル内に0.2 mLプレーティングした。プレートをアルミホイルで包んで、蒸発損失を減少させ、そして患者用に指定された組織培養インキュベーター中に入れた。培養第19日、各ウェルに0.2 mg/mLの最終濃度のハイグロマイシンを入れた。第30日、倒立顕微鏡上で細胞成長に関してウェルを視覚的に調べ、そして再刺激のために陽性ウェルに印を付けた。
【0075】
[00090] 25 mL組織培地中の50×106照射PBMC、10×106照射LCL、および30 ng/mL OKT3を含有するT-25フラスコに、細胞増殖があった各クローニングウェルの内容物を個々に移した。再刺激の1日後、3日後、5日後、7日後、9日後、11日後、および/または13日後、必要な場合、フラスコに50 U/mL rhIL2および15 mLの新鮮な培地を添加した。また、刺激周期の第5日、フラスコにハイグロマイシン0.2 mg/mLも補充した。植え付け14日後、細胞を採取し、計数し、そして50 mL組織培地中、100×106照射PBMC、20×106照射TM-LCLおよび30 ng/mL OKT3を含有するT-75フラスコ中で再刺激した。フラスコの培養に、上に概略するとおり、rhIL2およびハイグロマイシンを添加した。
【0076】
[00091] FITCコンジュゲート化モノクローナル抗体WT/31(aβTCR)、Leu2a(CD8)、およびOKT4(CD4)を用い、蛍光活性化細胞ソーター上、免疫蛍光によって、療法におけるありうる使用のため、拡大するために選択したCTLを分析して、クローン表現型(αβTCR+、CD4-、CD8+、およびIL13+)を確認した。臨床使用のためのクローンの選択基準には、アイソタイプ対照FITC/PEコンジュゲート化抗体に比較されるような、均一なTCRαβ+、CD4-、CD8+、およびIL13+が含まれた。プラスミドベクター染色体組込みが単一部位であることをサザンブロット分析によって確認した。遺伝子修飾されたT細胞クローン由来のDNAをプラスミドベクターに特異的なDNAプローブでスクリーニングした。
【0077】
[00092] 標準法にしたがって、上述の抗CD3ζゼータ鎖抗体を用いて、キメラ受容体タンパク質を検出するウェスタンブロットによって、IL13-CD28-41BBζの発現を決定した。簡潔には、1錠剤/10 mL完全プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有する1 mL RIPA緩衝液(PBS、1%NP40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS)中に2×107洗浄細胞を溶解することによって、トランスフェクションしたT細胞クローンの全細胞溶解物を生成した。氷上で80分間インキュベーションした後、遠心分離した全細胞溶解物上清のアリコットを採取し、そして等体積の装填緩衝液中、還元条件下で煮沸し、次いでプレキャスト12%アクリルアミドゲル上のSDS-PAGE電気泳動に供した。ニトロセルロースにトランスファーした後、次いで、T-TBS(Tris緩衝生理食塩水中、0.1%Tween20TM、pH8.0)中、4%脱脂粉乳を含有するBlottoTM溶液中で膜を1時間ブロッキングした。T-TBS中で膜を洗浄し、次いで、0.5μg/mLの濃度の一次マウス抗ヒトCD3ζモノクローナル抗体8D3(PharmingenTM)と1時間インキュベーションした。T-TBS中でさらに4回洗浄した後、膜を1:3000希釈(BlottoTM溶液中)のヤギ抗マウスIgGアルカリホスファターゼ・コンジュゲート化二次抗体と1時間インキュベーションした。基質を添加する前、膜をT-TBS中でリンスし、次いで、製造者の指示にしたがって、3 mLホスファターゼ基質溶液(Bio-RadTMImmunoStarTMキット)とインキュベーションした。
【0078】
[00093] 療法効果に適した用量は、好ましくは一連の用量周期中、用量あたり約106〜約109細胞の間である。好ましい投薬措置は、増大する用量の4回の1週間投薬周期からなり、第0日の約107細胞から始まり、第5日までに、約108細胞のターゲット用量まで徐々に増加する。適切な投与様式には、静脈内、皮下、腔内(例えばリザーバーアクセスデバイスによる)、腹腔内、および腫瘍塊への直接注射が含まれる。
【0079】
実施例7. ヒト患者における頭蓋内再発性神経膠腫の治療
[00094] 本発明にしたがってIL13-CD28-41BBζ発現T細胞を用いた、本明細書に記載するような神経膠腫または任意の他の癌の治療を以下のように行った。好ましくは実施例6に記載するようなT細胞クローンを:
a. TCRα/β+、CD4-、CD8+、IL13+細胞表面表現型;
b. 染色体に組み込まれた単一コピーのプラスミドベクターDNAの存在;
c. IL13-CD28-41BBζタンパク質の発現;
d. ヒトIL13Rα2+ターゲットの特異的溶解;
e. in vitro増殖のための外因性IL2に対する依存性;
f. マイコプラズマ、真菌および細菌無菌性、ならびに5EU/mL未満の内毒素レベル;ならびに
g. ガンシクロビルに対するクローンのin vitro感受性
に関して選択した。
【0080】
[00095] 好ましくは最初の切除術からの快復後、そしてステロイド漸減および/または最近の全身性化学療法から少なくとも3週間の時点より後に、白血球フェレーシスによって、患者から末梢血単核細胞を得た。ターゲット白血球フェレーシス単核細胞収量は、一般的に、5×109であり、そしてハイグロマイシン耐性細胞溶解性T細胞クローンのターゲット数は25であった。一般的に、in vitro拡大のため、すべての品質管理パラメーターを満たす、少なくとも5つのクローンが同定された。クローンを凍結保存し、そして連続X線検査および臨床検査によって患者を監視した。疾患進行の再発が実証された場合、患者に、再切除および/または腫瘍切除腔にT細胞を送達するためのリザーバーアクセスデバイス配置を行った。
【0081】
[00096] 手術からの回復およびステロイド漸減後、適用可能であれば、患者に以下のようなT細胞療法を開始した。患者は、少なくとも4回の1週間周期の療法のターゲットを受けた。最初の周期中、細胞用量増大は、第0日、約107細胞の初期用量、その後、第3日、約5×107細胞から、第5日、約108細胞のターゲット用量に進んだ。第2周期は、早くも第1周期開始の1週後から始めた。T細胞を投与する日、50 ccのPBS中で2回洗浄し、次いで、2 mL中、患者送達用の細胞用量を生じる体積で、薬学的保存剤不含正常生理食塩水に再懸濁することによって、拡大クローンを無菌的にプロセシングした。好ましくは、T細胞を5〜10分間に渡って注入し、その後、2 mL PFNSフラッシュを5分間に渡って投与した。分光法を用いて、MRI+/-ガドリニウム(gandolinium)によって、療法に対する応答を評価した。
【0082】
[00097] 一般的に、腔内LAK細胞(個々の細胞用量は最大109、そして累積細胞数は2.75×1010と同程度に高い)、ex vivo拡大TIL(最大109細胞/用量)およびアロ反応性リンパ球(細胞用量108から開始して、累積細胞用量は最大51.5×108)を使用する研究で投与される用量より、少なくとも1対数少なかった。低用量反復投与は、単回多数細胞点滴注入で起こりうる、潜在的に危険な炎症反応を回避するために好ましい。各注入は、好ましくは、単一T細胞クローンからなり、そして患者治療経過を通じて、好ましくは、同じクローンが投与された。
【0083】
[00098] 腫瘍退行を示し、MRI上で残った疾患がある患者には、X線評価に基づいて、疾患進行が立証されるか、または完全反応(CR)が達成される時点まで、これらの治療がよく許容されるならば、第7週以降に始まり、第3周期および第4周期の反復後、1週間の休止/再病期決定からなる、さらなる療法経過を有してもよい。一般的に認められる最大毒性は、グレード3未満であるが、これは治療する医師の判断による。
【0084】
[00099] ガンシクロビルでの治療は、CAR+HyTK+ CD8+ CTLクローンの消失を導く。したがって、起こりうる、療法に関連するいかなる副作用(頭痛、発熱、悪寒、吐き気等)を、状態に適した、確立された治療を用いて管理してもよい。例えば、新規グレード3毒性いずれかがグレード4に進行した場合、または治療する医師の意見で、患者が有意な医学的危険に置かれるグレード4治療関連毒性いずれかが観察される場合、患者にガンシクロビルを投与してもよい。非経口投与されるガンシクロビルは、12時間ごとに分けて、10 mg/kg/日で投薬される。患者は、ガンシクロビル療法の最初の72時間、監視目的のために入院しなければならない。症状が48時間以内にガンシクロビルに反応しない場合、限定されるわけではないが、コルチコステロイドおよびシクロスポリンを含む、さらなる免疫抑制剤を、治療する医師の判断で追加してもよい。毒性が重度である場合、ガンシクロビルとともに、デカドロンおよび/または他の免疫抑制剤もまた、治療する医師の判断で用いてもよい。
【0085】
[000100] IL13-CAR発現CTLクローンを頭蓋内再発性神経膠腫ヒト患者に投与する、上に概略するプロトコルを用いた予備的安全研究によって、T細胞の腔内投与とありうる相関を有する副作用のうち、唯一のグレード3事象は、現在まで2人の患者各々において、108細胞の投与で起こった頭痛であったことが示された。グレード4または5の副作用は、遺伝子改変されたT細胞の投与とはまったく関連しないことが見出された。したがって、本明細書のこの養子導入療法の全体的な安全性プロフィールは許容しうるものであった。
【0086】
実施例8〜12. 例示的CAR分子。
[000101] 図14〜18は、本発明にしたがったさらなるCARの配列を提供する。これらは、本発明の態様の限定されない例として働く。
【0087】
[000102] 図14は、IL13-IgG4-cd28tm-CD28gg-ゼータ(CO)CARの配列(SEQ ID NO: 36)を提供する。この配列は、(1)E13Y突然変異を含むIL13分子(腫瘍表面上の腫瘍表面受容体IL13Rα2のリガンドである(IL13))、(2)免疫グロブリンアイソタイプG4細胞外ドメインのFc部分(IgG4)、(3)共刺激分子CD28の膜貫通部分(cd28tm)、(4)発現を増加させる目的のため、2つのロイシンをグリシンに変化させたCD28のシグナル伝達ドメイン(CD28gg)、および(5)T細胞受容体のCD3ζ鎖のシグナル伝達ドメイン(ゼータ)をコードする。すべてのセグメントは、哺乳動物発現を増加させるため、コドン最適化(CO)された。配列の下線部分は、CD28ggのコード配列である。
【0088】
[000103] 図15は、IL13-IgG4-cd4tm-CD28-4-1BB-ゼータCARの配列(本明細書において、IL13-CD28-41BBζとも称される;SEQ ID NO: 37)を提供する。この配列は、(1)E13Y突然変異を含むIL13分子(腫瘍表面上の腫瘍表面受容体IL13Rα2のリガンドである(IL13))、(2)免疫グロブリンアイソタイプG4細胞外ドメインのFc部分(IgG4)、(3)CD4の膜貫通部分(cd4tm);共刺激分子CD28のシグナル伝達ドメイン(CD28)(4)共刺激分子4-1BBのシグナル伝達ドメイン(4-1BB)、および(5)T細胞受容体のCD3ζ鎖のシグナル伝達ドメイン(ゼータ)をコードする。配列の下線部分はCD28をコードし、そして配列の太字部分は4-1BBをコードする。
【0089】
[000104] 図16は、IL13-IgG4-cd28tm-CD28-Ox40-ゼータCARの配列(SEQ ID NO: 38)を提供する。この配列は、(1)E13Y突然変異を含むIL13分子(腫瘍表面上の腫瘍表面受容体IL13Rα2のリガンドである(IL13))、(2)免疫グロブリンアイソタイプG4細胞外ドメインのFc部分(IgG4)、(3)共刺激分子CD28の膜貫通部分(cd28tm)、(4)CD28のシグナル伝達ドメイン(CD28)、(5)共刺激分子OX-40のシグナル伝達ドメイン(Ox40)、および(6)T細胞受容体のCD3z鎖のシグナル伝達ドメイン(ゼータ)をコードする。cd28tmをコードする配列を下線で示し(アミノ酸364〜390);CD28をコードする配列を斜字で示し(アミノ酸391〜431);Ox40をコードする配列を太字で示し(アミノ酸432〜467);そしてゼータをコードする配列を下線および斜字両方で示す(アミノ酸468〜580)。
【0090】
[000105] 図17は、IL13-IgG4-cd28tm-CD28gg-4-1BB-ゼータCARの配列(SEQ ID NO: 39)を提供する。この配列は、(1)E13Y突然変異を含むIL13分子(腫瘍表面上の腫瘍表面受容体IL13Rα2のリガンドである(IL13))、(2)免疫グロブリンアイソタイプG4細胞外ドメインのFc部分(IgG4)、(3)共刺激分子CD28の膜貫通部分(cd28tm)、(4)発現を増加させる目的のため、2つのロイシンをグリシンに変化させたCD28のシグナル伝達ドメイン(CD28gg)、(5)共刺激分子4-1BBのシグナル伝達ドメイン(4-1BB)、および(6)T細胞受容体のCD3ζ鎖のシグナル伝達ドメイン(ゼータ)をコードする。配列の下線部分はCD28ggをコードし、そして配列の太字部分は4-1BBをコードする。
【0091】
[000106] 図18は、IL13-IgG4-cd28tm-CD28gg^199-4-1BB-ゼータCARの配列(SEQ ID NO: 40)を提供する。この配列は、(1)E13Y突然変異を含むIL13分子(腫瘍表面上の腫瘍表面受容体IL13Rα2のリガンドである(IL13))、(2)免疫グロブリンアイソタイプG4細胞外ドメインのFc部分(IgG4)、(3)共刺激分子CD28の膜貫通部分(cd28tm)、(4)発現を増加させる目的のため、2つのロイシンをグリシンに変化させ、そしてシグナル伝達活性を除去する目的のため、キナーゼドメインを欠失させた(すなわちSEQ ID NO: 39の陰性対照として)CD28のシグナル伝達ドメイン(CD28gg^199)、(5)共刺激分子4-1BBのシグナル伝達ドメイン(4-1BB)、および(6)T細胞受容体のCD3ζ鎖のシグナル伝達ドメイン(ゼータ)をコードする。配列の下線部分はCD28gg^199をコードし、そして配列の太字部分は4-1BBをコードする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特異的認識要素、場合による支持またはリンカー領域、膜貫通領域、CD3ゼータ鎖のシグナル伝達ドメインおよび少なくとも1つのさらなる共刺激シグナル伝達受容体のシグナル伝達ドメインを含む、腫瘍特異的キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記シグナル伝達ドメインが2つの共刺激シグナル伝達受容体のシグナル伝達ドメインを含む、請求項1のCAR。
【請求項3】
前記共刺激シグナル伝達受容体が、CD28、4-1BBおよびOX-40からなる群より選択される、請求項1のCAR。
【請求項4】
前記共刺激シグナル伝達受容体がCD28および4-1BBである、請求項2のCAR。
【請求項5】
前記膜貫通領域がヒトCD4膜貫通領域またはヒトCD28膜貫通領域である、請求項1のCAR。
【請求項6】
前記支持またはリンカー領域がヒトIgG4Fc領域である、請求項1のCAR。
【請求項7】
前記特異的認識要素が、IL13分子、IL3分子、またはHer/2Neu、α3インテグリン、CD20、CD19およびEGFRVIIIからなる群より選択される抗原を認識する一本鎖免疫グロブリンの細胞外結合ドメインである、請求項1のCAR。
【請求項8】
前記特異的認識要素がIL13分子である、請求項7のCAR。
【請求項9】
前記IL13分子がE13Y突然変異を含有する、請求項8のCAR。
【請求項10】
IL13-CD28-4-1BBζである、請求項1のCAR。
【請求項11】
IL13-CD28-4-1BBζである、請求項9のCAR。
【請求項12】
請求項1のCARをコードする単離ポリ核酸。
【請求項13】
請求項9のCARをコードする単離ポリ核酸。
【請求項14】
請求項1のCARを発現する単離Tリンパ球。
【請求項15】
請求項9のCARを発現する単離Tリンパ球。
【請求項16】
請求項1のCARを発現するTリンパ球を、必要とする患者に投与する工程を含む、癌免疫療法の方法。
【請求項17】
請求項14のTリンパ球を、必要とする患者に投与する工程を含む、癌免疫療法の方法。
【請求項18】
請求項15のCARを発現するTリンパ球を、必要とする患者に投与する工程を含む、癌免疫療法の方法。
【請求項19】
前記癌が、神経膠芽腫、髄芽腫、乳癌、頭部および頸部癌、腎臓癌、卵巣癌、カポジ肉腫、急性骨髄性白血病、およびB細胞系譜悪性腫瘍からなる群より選択される、請求項17の方法。
【請求項20】
前記癌が、神経膠芽腫、髄芽腫、乳癌、頭部および頸部癌、腎臓癌、卵巣癌、カポジ肉腫、急性骨髄性白血病、およびB細胞系譜悪性腫瘍からなる群より選択される、請求項18の方法。
【請求項21】
前記受容体にCD28および4-1BBシグナル伝達ドメインを付加する工程を含む、腫瘍に対するキメラ抗原受容体活性を増進させる方法。
【請求項1】
特異的認識要素、場合による支持またはリンカー領域、膜貫通領域、CD3ゼータ鎖のシグナル伝達ドメインおよび少なくとも1つのさらなる共刺激シグナル伝達受容体のシグナル伝達ドメインを含む、腫瘍特異的キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記シグナル伝達ドメインが2つの共刺激シグナル伝達受容体のシグナル伝達ドメインを含む、請求項1のCAR。
【請求項3】
前記共刺激シグナル伝達受容体が、CD28、4-1BBおよびOX-40からなる群より選択される、請求項1のCAR。
【請求項4】
前記共刺激シグナル伝達受容体がCD28および4-1BBである、請求項2のCAR。
【請求項5】
前記膜貫通領域がヒトCD4膜貫通領域またはヒトCD28膜貫通領域である、請求項1のCAR。
【請求項6】
前記支持またはリンカー領域がヒトIgG4Fc領域である、請求項1のCAR。
【請求項7】
前記特異的認識要素が、IL13分子、IL3分子、またはHer/2Neu、α3インテグリン、CD20、CD19およびEGFRVIIIからなる群より選択される抗原を認識する一本鎖免疫グロブリンの細胞外結合ドメインである、請求項1のCAR。
【請求項8】
前記特異的認識要素がIL13分子である、請求項7のCAR。
【請求項9】
前記IL13分子がE13Y突然変異を含有する、請求項8のCAR。
【請求項10】
IL13-CD28-4-1BBζである、請求項1のCAR。
【請求項11】
IL13-CD28-4-1BBζである、請求項9のCAR。
【請求項12】
請求項1のCARをコードする単離ポリ核酸。
【請求項13】
請求項9のCARをコードする単離ポリ核酸。
【請求項14】
請求項1のCARを発現する単離Tリンパ球。
【請求項15】
請求項9のCARを発現する単離Tリンパ球。
【請求項16】
請求項1のCARを発現するTリンパ球を、必要とする患者に投与する工程を含む、癌免疫療法の方法。
【請求項17】
請求項14のTリンパ球を、必要とする患者に投与する工程を含む、癌免疫療法の方法。
【請求項18】
請求項15のCARを発現するTリンパ球を、必要とする患者に投与する工程を含む、癌免疫療法の方法。
【請求項19】
前記癌が、神経膠芽腫、髄芽腫、乳癌、頭部および頸部癌、腎臓癌、卵巣癌、カポジ肉腫、急性骨髄性白血病、およびB細胞系譜悪性腫瘍からなる群より選択される、請求項17の方法。
【請求項20】
前記癌が、神経膠芽腫、髄芽腫、乳癌、頭部および頸部癌、腎臓癌、卵巣癌、カポジ肉腫、急性骨髄性白血病、およびB細胞系譜悪性腫瘍からなる群より選択される、請求項18の方法。
【請求項21】
前記受容体にCD28および4-1BBシグナル伝達ドメインを付加する工程を含む、腫瘍に対するキメラ抗原受容体活性を増進させる方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図5J】
【図5K】
【図5L】
【図8】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図5J】
【図5K】
【図5L】
【図8】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図4】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−501180(P2012−501180A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525168(P2011−525168)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/055029
【国際公開番号】WO2010/025177
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(598004424)シティ・オブ・ホープ (15)
【氏名又は名称原語表記】City of Hope
【住所又は居所原語表記】1500 East,Duarte Road,Duarte,California 91010−0269,United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/055029
【国際公開番号】WO2010/025177
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(598004424)シティ・オブ・ホープ (15)
【氏名又は名称原語表記】City of Hope
【住所又は居所原語表記】1500 East,Duarte Road,Duarte,California 91010−0269,United States of America
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]