説明

T細胞レセプターCDR3配列および検出のための方法

【課題】T細胞レセプターペプチドを利用することによって自己免疫疾患を処置およびモニタリングする方法を提供する。
【解決手段】MS患者集団において見出されるT細胞レセプターの核酸配列およびペプチド配列であって、約15〜約30ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドからなり、特定の配列、それらに対する相補体、またはそれらの誘導体からなる群から選択される配列をコードする配列の少なくとも10個連続したヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症(MS))の処置の分野に関する。より詳細には、本発明は、一部のMS患者で見出されるT細胞レセプター核酸およびT細胞レセプターペプチド、ならびにこの配列を検出するための方法に関する。さらに、本発明は、自己免疫疾患(例えば、MS)の処置のためのT細胞レセプターペプチド配列の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
細胞傷害性Tリンパ球またはTヘルパー細胞上のT細胞レセプター(TCR)と、抗原提示細胞(APC)上のMHC/ペプチド複合体とによって形成される細胞間認識複合体は、個々の生物内でのT細胞レパートリーの発達(ポジティブ選択;ネガティブ選択;末梢の生存)の間、ならびに適応免疫応答の制御(Tヘルパー)およびエフェクター段階(Tキラー)の間の両方でTCRを活性化する、細胞−細胞遭遇の多様なセットにおける共通の認識成分である。
【0003】
適応免疫応答において、抗原は、いかなる抗原も認識し得るに十分に多様な構造を有して発現される超可変分子(例えば、抗体またはTCR)によって認識される。抗体は、抗原の表面の任意の部分に結合し得る。しかし、TCRは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)のクラスI分子またはクラスII分子に結合したAPCの表面に提示される抗原由来の短いペプチドに結合することによって抗原の存在を感知することに制限される。ペプチド/MHC複合体のTCR認識は、T細胞の活性化(クローン拡大)の引き金を引く。
【0004】
TCRは、αβ(アルファ−ベータ)またはγδ(ガンマ−デルタ)であり得る、2つの鎖から構成されるヘテロダイマーである。TCRの構造は、免疫グロブリン(Ig)の構造と、非常に類似している。各々の鎖は、2の細胞外ドメインを有し、そして、これは免疫グロブリンの折畳みである。アミノ末端ドメインは、非常に可変的であり、可変(V)ドメインと呼ばれる。膜に最も近いドメインは、定常(C)ドメインである。これらの2つのドメインは、免疫グロブリンのドメインに類似しており、Fabフラグメントに似ている。各々の鎖のVドメインは、3つの相補性決定領域(CDR)を有する。膜の近くでは、各々のTCR鎖は、両方の鎖間のジスルフィド結合を形成するシステイン残基を有する短い連結配列を有する。
【0005】
αβヘテロダイマーをコードする遺伝子およびγδヘテロダイマーをコードする遺伝子は、T細胞系列においてのみ発現される。4つのTCR遺伝子座(α、β、γおよびδ)は、Igの生殖系列構成と非常に類似した生殖系列構成を有する。α鎖およびγ鎖は、VセグメントおよびJセグメントの再配列によって産生され、一方、β鎖およびδ鎖は、Vセグメント、DセグメントおよびJセグメントの再配列によって産生される。α鎖のV遺伝子セグメントとJ遺伝子セグメントとの間にあるδ鎖遺伝子セグメント以外は、TCR鎖についての遺伝子セグメントは、異なる染色体に位置する。δ鎖遺伝子セグメントの位置は、重要性を有する:α鎖遺伝子セグメントの増殖的再配置は、δ鎖のC遺伝子を欠失させ、その結果、所定の細胞においては、αβヘテロダイマーは、γδレセプターとともに共発現され得ない。
【0006】
マウスにおいて、約100個のVα遺伝子セグメントおよび約50個のJα遺伝子セグメントならびにほんの1つのCαセグメントが存在する。δ鎖遺伝子ファミリーは、約10個のV遺伝子セグメント、2個のD遺伝子セグメントおよび2個のJ遺伝子セグメントを有する。β鎖遺伝子ファミリーは、20〜30個のVセグメント、ならびに1個のDβ、6個のJβおよび1個のCβを含む、2つの同一の繰返しを有する。最後に、γ鎖遺伝子ファミリーは、7個のVおよび3個の異なるJ−C繰り返しを含む。ヒトにおいて、構成はマウスの構成と類似している、しかし、セグメントの数は変化する。
【0007】
α鎖およびβ鎖における遺伝子セグメントの再配置は、Ig再配置と類似する。α鎖は、Igの軽鎖と同様に、V遺伝子セグメント、J遺伝子セグメントおよびC遺伝子セグメントによってコードされる。β鎖は、Igの重鎖と同様に、V遺伝子セグメント、D遺伝子セグメントおよびJ遺伝子セグメントによってコードされる。α鎖遺伝子セグメントの再配置は、VJ連結をもたらし、そしてβ鎖の再配置は、VDJ連結をもたらす。再配置された遺伝子の転写、RNAプロセシングおよび翻訳の後、α鎖およびβ鎖は、T細胞の膜においてジスルフィド結合によって連結されて発現される。
【0008】
TCR遺伝子セグメントは、12ヌクレオチド(1回のターン)または23ヌクレオチド(2回のターン)のいずれかの介在配列を有するヘプタマーおよびナノマーを含む認識シグナル配列(RSS)が隣接している。Igと同様に、組換え活性化遺伝子(RAG−1およびRAG−2)によってコードされる酵素は、組換えプロセスの原因である。Ig再配置においてと同様の様式で、RAG1/2は、RSSを認識して、V−JセグメントおよびV−D−Jセグメントを連結する。手短に述べると、これらの酵素は、遺伝子セグメントとRSSとの間で1つのDNA鎖を切断し、そしてコード配列におけるヘアピン形成を触媒する。シグナル配列は、その後、切り出される。
【0009】
α鎖におけるVセグメントとJセグメントとのコンビナトリアル連結、ならびにβ鎖におけるVセグメント、DセグメントおよびJセグメントのコンビナトリアル連結は、多数の可能な分子を生じ、それにより、TCRの多様性をつくる。多様性はまた、遺伝子セグメントの代替的連結によって、TCRにおいて達成される。Igとは対照的に、β遺伝子セグメントおよびδ遺伝子セグメントは、別の方法において連結され得る。β遺伝子セグメントおよびδ遺伝子セグメントにおけるRSS隣接遺伝子セグメントは、β鎖においてVJおよびVDJを、そしてδ鎖においてVJ、VDJ、およびVDDJを作製し得る。Igの場合のように、多様性はまた、遺伝子セグメントの連結の可変性によって生じる。
【0010】
相補性決定領域(CDR)として公知のTCRの超可変ループは、MHC分子および結合したペプチドから作製される複合表面を認識する。αおよびβのCDR2ループは、APCの表面上のMHC分子だけに接触し、一方、CDR1ループおよびCDR3ループは、ペプチドおよびMHC分子の両方と接触する。Igと比較して、TCRは、CDR1およびCDR2のより限られた多様性を有する。しかし、TCRにおけるCDR3の多様性は、IgのCDR3の多様性より高い。なぜなら、TCRは、1つより多くのDセグメントに連結して、増大した連結多様性をもたらし得るからである。
【0011】
多くの自己免疫疾患の病因は、生物中に存在する自己抗原への自己免疫T細胞応答によって引き起こされると考えられている。クローン選択パラダイムとは矛盾して、全ての自己反応性T細胞が、胸腺において欠失するというわけではない。広い範囲の自己抗原についてのTCRを有するT細胞は、正常なT細胞レパートリの一部を表し、そして自然に末梢に循環する。自己反応性T細胞がなぜ、それらの進化の間、胸腺において分化を受けることができて、末梢に適応するかは、不明である。それらの生理的役割が理解されない一方で、これらの自己反応性T細胞は、活性化されると、自己免疫病状の誘導において潜在的危険性を提示する。自己反応性T細胞はまた、自己免疫疾患の結果ではない正常個体から単離され得る。単独での自己反応性の抗原認識が自己破壊的なプロセスを媒介するのに十分でないことが確立された。自己反応性T細胞が病原性であることについての必要条件のうちの1は、それらが活性化されなければならないということである。
【0012】
自己反応性T細胞は、自己免疫疾患(例えば、多発性硬化症(MS)および慢性関節リウマチ(RA))の病因において示される。MSにおける自己反応性T細胞の病因は、一般に、ミエリン抗原(特に、ミエリン塩基性タンパク質(MBP))に対するT細胞応答から生じ続ける。MBP反応性T細胞は、インビボでの活性化を受け、そして、コントロール個体とは対照的に、MSを有する患者の血液および脳脊髄液中で、より高い前駆体頻度で生じるとわかっている。これらのMBP反応性T細胞は、Th1サイトカイン(例えば、IL−2、TNF、およびγ−インターフェロン)を生産し、これは、中枢神経系への炎症性細胞の移動を促進して、MSにおけるミエリン破壊的炎症性応答を悪化させる。
【0013】
MBP反応性T細胞はまた、動物における実験的な自己免疫脳脊髄炎(EAE)(これは、多発性硬化症に類似する)の病因に関与していることが示されている。EAEは、アジュバント中に乳化したMBPを注射することによって感受性動物において能動的に誘発され得るか、またはMBP感作動物由来のMBP反応性T細胞株およびMBP反応性T細胞クローンを注射することによって受動的に誘発され得る。インビトロで活性化される場合、EAEを誘発するために、非常に少数のMBP反応性T細胞が必要とされ、一方で、同じ反応性を有する100倍多くの静止T細胞は、この疾患を媒介することができない。
【0014】
EAEを予防および処置するために用いられた、不活化MBP反応性T細胞を用いたワクチン接種(T細胞ワクチン接種と呼ばれる手順)が、EAEにおけるMBP反応性T細胞を枯渇させることが実証された(Ben−Nunら,Nature 292:60−61(1981))。T細胞ワクチン接種の根本の機構は完全に完全には理解されていないにもかかわらず、これは、TCRとの相互作用およびT細胞活性化マーカーとおそらく反応するいわゆる抗エルゴタイプ(anti−ergotypic)T細胞応答によるイディオタイプ調節ネットワークに関与すると考えられる。イディオタイプでかつ抗エルゴタイプの調節ネットワークは、T細胞ワクチン接種によって誘導される防御免疫にとって必須であると考えられている。なぜなら、T細胞ワクチン接種によって与えられる防御免疫は、ワクチン接種のために使用された自己免疫T細胞が誘発し得る疾患に特異的であるからである。さらに、免疫された齧歯動物から単離された抗イディオタイプのT細胞は、免疫するT細胞クローン/株を特異的に認識するが、別個のTCR構造特徴を発現するT細胞を認識しない。抗イディオタイプT細胞によって認識されるTCR決定基が、これらの領域中での特徴的な配列多様性によって予測したところ、CDR3またはCDR2中に存在する可能性が最も高いと考えられる。
【0015】
EAEにおいて、脳炎誘発性MBP反応性T細胞は、MBP上の非常に限られたエピトープに拘束される。病原性T細胞応答の多様性におけるこれらの拘束は、特異的免疫介入を許容する。種々の治療戦略は、したがって、感作動物におけるEAEの発症を予防する際にTCRのVβ領域を標的とするように設計されている。例えば、モノクローナル抗体は、Vβ遺伝子産物を標的としており、そして、ペプチドワクチンは、原因のVβ遺伝子のCDR2領域に基づいている。
【0016】
EAEについての研究のいくつかは、ヒトの自己免疫疾患にまで広げられた。例えば、TCR Vβ 5.2に対応するペプチドが、MSを有する患者を処置するために臨床試験において用いられ、そしてVβ14ペプチドが、RAを有する患者をワクチン接種するために用いられた。米国特許第5,614,192号(Vandenbark)は、CDR2の少なくとも一部を含む、15〜30アミノ酸の免疫原性TCRペプチドを用いた自己免疫疾患の処置を開示する。米国特許第6,303,314号(Zhang)は、免疫原性T細胞活性化マーカーペプチドと組み合わせて特定の免疫原性TCRペプチドを使うことによる自己免疫疾患の処置を開示する。
【0017】
TCRペプチドを用いたワクチン接種が改善され得る1つの領域は、(あるならば)共通のモチーフが、自己免疫疾患(例えば、MS)を有する患者の自己反応性TCRにおいて見出されるか否かを決定することによる。このような共有のモチーフは、このモチーフを含むTCRを有するT細胞を枯渇させる目的でMS患者において抗イディオタイプ免疫応答を活性化させるペプチドワクチンの基礎として、またはこのモチーフを含むTCRを有するT細胞を機能的にブロックもしくは直接的に枯渇させ得る抗体の調製の標的としてのいずれかとして用いられ得る。
【0018】
それゆえ、自己免疫疾患を有する患者由来の自己反応性T細胞のTCRにおいて特異的に見出される共通モチーフのアミノ酸配列を決定することが望ましい。また、便利な方法(例えば、PCR)によって患者サンプルにおいてこのようなモチーフを容易に検出し得ることもまた望ましい。さらに、検出されたモチーフと同一かまたは由来するペプチドを使用して、自己免疫疾患を有する患者を処置することが好ましい。また、このモチーフと特異的に結合する抗体を使用して、自己免疫疾患を有する患者を処置することもまた望ましい。
【0019】
米国特許第6,303、314号(Zhang)は、Vβ13.1 T細胞のサブセットのTCRにおいて見出されるこのような共通モチーフ「LGRAGLTYモチーフ」(これは、アミノ酸配列Leu Gly Arg Ala Gly Leu Thr Tyr(配列番号10)を有する)、ならびにPCRによるその容易な検出のための方法を開示する。このモチーフは、MBPのアミノ酸83〜99(本明細書中以後、「MBP83−99」)を認識するいくつかの自己反応性T細胞のいくつかのTCRにおいて見出される。LGRAGLTYモチーフに基づくペプチドは、Vβ13.1−LGRAGLTYが関連する自己免疫疾患(例えば、MS)を処置または予防するために、一部の患者にワクチン接種をするために用いられ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
LGRAGLTYモチーフは、MBP83−99を認識するいくつかのTCRだけに存在するので、MBP反応性T細胞によって共通に発現される他のTCR配列、より特にCDR配列を同定する必要性が残っている。さらに、MBP反応性T細胞によって共通に発現される他のTCR配列(CDR配列が挙げられる)を検出し得る必要性が残っている。最後に、他のTCR配列、より特にCDR配列に関連する自己免疫疾患についての処置を開発する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
約15〜約30ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドであって、配列番号4、配列番号5および配列番号6、それらに対する相補体、またはそれらの誘導体からなる群から選択される配列をコードする配列の少なくとも10個連続したヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチド。
(項目2)
配列番号4、配列番号5および配列番号6、それらに対する相補体、またはそれらの誘導体からなる群から選択される配列をコードする配列の少なくとも15個連続したヌクレオチドを含む、項目1に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目3)
配列番号4、配列番号5および配列番号6、それらに対する相補体、またはそれらの誘導体からなる群から選択される配列をコードする配列を含む、項目1に記載のオリゴヌクレオチド。
(項目4)
プライマー対であって、以下:
(a)約15〜約30ヌクレオチド長の第1プライマーであって、配列番号4、配列番号5および配列番号6、それらに対する相補体、またはそれらの誘導体からなる群から選択される配列をコードする配列の少なくとも10個連続したヌクレオチドを含む、第1プライマー;および
(b)該第1プライマーの配列を含まず、かつT細胞中のT細胞レセプター遺伝子のVβ〜Cβの領域で見出される、約15ヌクレオチド長および約30ヌクレオチド長の核酸を含む第2プライマー
を含み、ここで、該第1プライマーの配列および該第2プライマーの配列が、該T細胞レセプター遺伝子の同じ鎖において見出されない、プライマー対。
(項目5)
上記第2プライマーが、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択される配列を含む、項目4に記載のプライマー対。
(項目6)
オリゴヌクレオチドプローブであって、以下:
(a)約10〜30ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドであって、配列番号4、配列番号5および配列番号6、それらに対する相補体、またはそれらの誘導体からなる群から選択される配列をコードする配列の少なくとも10個連続したヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチド、ならびに
(b)標識部分
を含む、オリゴヌクレオチドプローブ。
(項目7)
上記標識部分が、32P、35S、ビオチンおよびジゴキシゲニンからなる群から選択される、項目6に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
(項目8)
配列番号4、配列番号5および配列番号6、またはそれらの誘導体からなる群から選択されるT細胞レセプターモチーフを発現するMBP83−99 T細胞を検出する方法であって、以下:
(a)MBP83−99 T細胞から核酸サンプルを得る工程;
(i)該核酸サンプルを、プライマー対と接触させる工程であって、該プライマー対が、以下:
(ii)約15〜約30ヌクレオチド長の第1オリゴヌクレオチドであって、配列番号4、配列番号5および配列番号6、それらに対する相補体、またはそれらの誘導体からなる群から選択される配列をコードする配列の少なくとも10個連続したヌクレオチドを含む、第1オリゴヌクレオチド、および
(iii)該第1オリゴヌクレオチドの配列を含まず、かつT細胞中のT細胞レセプター遺伝子のVβ〜Cβの領域で見出される、約15ヌクレオチド長および約30ヌクレオチド長の第2オリゴヌクレオチド
から選択され、ここで、該第1オリゴヌクレオチドの配列および該第2オリゴヌクレオチドの配列が、該T細胞レセプター遺伝子の同じ鎖において見出されない、工程;ならびに
(b)該T細胞レセプターモチーフをコードする核酸の存在を検出する工程
を包含する、方法。
(項目9)
上記第2プライマーが、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択される配列を含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
上記核酸サンプルのフラグメントが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅される、項目8に記載の方法。
(項目11)
上記検出工程が、以下:
(a)オリゴヌクレオチドであって、配列番号4、配列番号5および配列番号6、それらに対する相補体、またはそれらの誘導体からなる群から選択される配列をコードする配列を含む、オリゴヌクレオチド;ならびに
(b)標識部分
を含むオリゴヌクレオチドプローブを用いてプロービングすることを含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
上記検出工程が、オートラジオグラフィを含む、項目10に記載の方法。
(項目13)
約15〜約30ヌクレオチド長の第1オリゴヌクレオチドを含む、試験キットであって、該第1オリゴヌクレオチドは、配列番号4、配列番号5および配列番号6、それらに対する相補体、またはそれらの誘導体からなる群から選択される配列をコードする配列の少なくとも10個連続したヌクレオチドを含む、試験キット。
(項目14)
上記第1オリゴヌクレオチドの配列を含まず、かつT細胞中のT細胞レセプター遺伝子のVβ〜Cβの領域で見出される、約15ヌクレオチド長および約30ヌクレオチド長の第2オリゴヌクレオチドをさらに含み、ここで、該第1オリゴヌクレオチドの配列および該第2オリゴヌクレオチドの配列が、該T細胞レセプター遺伝子の同じ鎖において見出されない、項目13に記載の試験キット。
(項目15)
第2プライマーが、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択される配列を含む、項目14に記載の試験キット。
(項目16)
標識部分をさらに含み、該標識部分が、32P、35S、ビオチンおよびジゴキシゲニンからなる群から選択される、項目13に記載の試験キット。
(項目17)
自己免疫疾患をモニタリングする方法であって、以下:
(a)ヒトからMBP83−99 T細胞を得る工程;
(b)配列番号4、配列番号5および配列番号6、またはそれらの誘導体からなる群から選択される配列をコードする核酸の存在を検出する工程;
(i)MBP83−99 T細胞から核酸サンプルを得る工程;
(ii)該核酸サンプルを、プライマー対と接触させる工程であって、該プライマー対が、以下:
a.約15〜約30ヌクレオチド長の第1オリゴヌクレオチドであって、配列番号4、配列番号5および配列番号6、それらに対する相補体、またはそれらの誘導体からなる群から選択される配列をコードする配列の少なくとも10個連続したヌクレオチドを含む、第1オリゴヌクレオチド、および
b.該第1オリゴヌクレオチドの配列を含まず、かつT細胞中のT細胞レセプター遺伝子のVβ〜Cβの領域で見出される、約15ヌクレオチド長および約30ヌクレオチド長の第2オリゴヌクレオチド
から選択され、ここで、該第1オリゴヌクレオチドの配列および該第2オリゴヌクレオチドの配列が、該T細胞レセプター遺伝子の同じ鎖において見出されない、工程;ならびに
c.該T細胞レセプターモチーフをコードする核酸の存在を検出する工程;そして該核酸が検出される場合、
(c)該核酸の量を定量する工程
を包含する、方法。
(項目18)
上記第2プライマーが、配列番号7、配列番号8および配列番号9からなる群から選択される配列を含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
第1ペプチドを含み、必要に応じて薬学的に受容可能なキャリアを含む、ワクチンであって、該第1ペプチドは、配列番号4、配列番号5および配列番号6、またはそれらの誘導体からなる群より選択される配列を含む、ワクチン。
(項目20)
配列番号4、配列番号5、配列番号6および配列番号7、またはそれらの誘導体からなる群から選択される配列を含む少なくとも1つの第2ペプチド、および必要に応じて薬学的に受容可能なキャリアをさらに含み、ここで、該第1ペプチドの配列と該第2ペプチドの配列とが異なる、項目19に記載のワクチン。
(項目21)
自己免疫疾患を処置する方法であって、自己免疫疾患を有する患者に、項目19または20のいずれか1項に記載のワクチンを投与する工程を包含する、方法。
(詳細な説明)
本発明の理解を助けるために、いくつかの用語が以下で定義される。
【0022】
「PCR」は、例えば、米国特許第4,683,202号(1987年7月28日にMullisに発行された;本明細書中に参考として援用される)に一般的に記載されたポリメラーゼ連鎖反応を意味する。PCRは、選択されたオリゴヌクレオチド(すなわち、プライマー)が重合剤(例えば、DNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼ)およびヌクレオチド三リン酸の存在下で核酸テンプレートにハイブリダイズされ、それによって、拡張産物がこのプライマーから形成され得る、増幅技術である。次いで、これらの産物は変性され得、そしてそれらのその後の検出を容易にし得る、既存の核酸の数および量を増幅するサイクリング反応のテンプレートとして用いられ得る。種々のPCR技術が、当該分野で公知であり、そして本明細書中の開示と関連して用いられ得る。
【0023】
「ペプチド」は、天然物、合成物またはそれらの改変物のいずれであろうと、特定のペプチドまたはポリペプチド配列に対する免疫応答を惹起し得る、ペプチドを意味する。
【0024】
「プライマー」は、天然物、合成物またはそれらの改変物のいずれであろうと、テンプレート分子の特定のヌクレオチド配列と十分に相補的なヌクレオチド合成の開始点として作用し得る、オリゴヌクレオチドを意味する。
【0025】
「プローブ」は、天然物、合成物またはそれらの改変物のいずれであろうと、十分に相補的なヌクレオチド配列と特異的に結合し得るオリゴヌクレオチドを意味する。
【0026】
ヌクレオチド配列の状況において、「に由来する」とは、ヌクレオチド配列が、記載された特定の配列に限定されず、その配列におけるバリエーション(これは、記載された配列に対するバリエーションが、記載された配列の相補体と特異的に結合する能力を保持する程度まで、ヌクレオチドの付加、欠失、置換または改変を含み得る)もまた含むことを意味する。ペプチド配列またはポリペプチド配列の状況において、「に由来する」は、このペプチドまたはポリペプチドが、記載された特定の配列に限定されず、その配列におけるバリエーション(これは、列挙した配列におけるバリエーションが、記載された配列に対する免疫応答を惹起する能力を保持する程度まで、アミノ酸の付加、欠失、置換または改変を含み得る)もまた含むことを意味する。
【0027】
「免疫原性」とは、ペプチドまたはポリペプチドを記載するために用いられる場合、このペプチドまたはポリペプチドが、T細胞媒介性、抗体またはその両方の免疫応答を誘発し得ることを意味する。「抗原性」は、このペプチドまたはポリペプチドが、抗体により遊離形態で、および/または抗原特異的T細胞の場合、MHC分子の状況で、認識され得ることを意味する。
【0028】
「免疫関連疾患」とは、免疫系が疾患の病因に関与している疾患を意味する。免疫関連疾患のサブセットは、自己免疫疾患である。自己免疫疾患としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:慢性関節リウマチ、重症筋無力症、多発性硬化症、全身エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、グレーヴズ病、炎症性腸疾患、自己免疫ブドウ膜網膜炎(autoimmune uveoretinitis)、多発性筋炎および特定の種類の糖尿病。本開示を考慮すると、当業者は、本発明の組成物および方法によって処置され得る他の自己免疫疾患を容易に認め得る。
【0029】
「T細胞媒介性疾患」とは、T細胞がその生物において通常見出されるペプチドを認識することの結果として生じる疾患を意味する。
【0030】
「処置(treatment)」または「処置する(treating)」は、疾患からの動物の防御を言及する場合、その疾患を予防するか、抑制するか、抑圧するかまたは完全に除去することを意味する。疾患を予防することは、その疾患の発症の前に動物に本発明の組成物を投与することを包含する。疾患を抑制することは、その疾患の誘導後だがその臨床的出現の前に、動物に本発明の組成物を投与することを包含する。疾患を抑圧することは、疾患の臨床的出現の後に、動物に本発明の組成物を投与することを包含する。
【0031】
第1の局面において、本発明は、約4〜20アミノ酸長を含み、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6またはそれらに由来する配列のうちの少なくとも4個連続したアミノ酸を含むペプチドに関する。このペプチドはまた、以下のいずれかを含め、約4〜12アミノ酸長であり得る:(i)配列番号4もしくは配列番号6、またはそれら由来の配列のうちの4個、5個、6個または7個連続したアミノ酸、(ii)配列番号5またはこれから誘導した配列のうちの4個、5個、6個、7個または8個連続したアミノ酸。このペプチドはまた、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6、またはそれら由来の配列を含め、約4〜20アミノ酸長であり得る。このペプチドは、天然物、合成物またはそれら由来のものであり得る。
【0032】
このペプチドは、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6、またはそれら由来の配列を含むペプチドまたはポリペプチドに対する免疫応答を惹起するために、抗原として用いられ得る。以下でより充分に記載するように、このペプチドによって惹起される免疫応答は、処置、抗体の生産、抗体の精製の基礎として、および診断アッセイにおいて用いられ得る。
【0033】
このペプチドは、当業者にとって公知の多くの方法において、共有結合により改変され得る。ペプチドの選択された側鎖または末端残基は、一般的な誘導体化剤を使用して改変され得る。
【0034】
システイン残基を、α−ハロアセテート(および対応するアミン)(例えば、クロロ酢酸またはクロロアセトアミド)と反応させて、カルボキシメチル誘導体またはカルボキシアミドメチル誘導体を獲得し得る。システイン残基はまた、ブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミドゾリル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N−アルキルマレイミド、二硫化3−ニトロ−2−ピリジル、二硫化メチル2−ピリジル、p−クロロ水銀ベンゾエート、2−クロロ水銀−4−ニトロフェノールまたはクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応によって誘導体化され得る。
【0035】
ヒスチジン残基は、pH5.5〜7.0での、ヒスチジン特異的試薬であるジエチルプロカーボネートとの反応によって誘導体化され得る。パラ−臭化ブロモフェナシルもまた、pH6.0において、0.1Mカコジル酸ナトリウム中で用いられ得る。
【0036】
リジンおよびアミノ末端残基を、コハク酸無水物または他のカルボン酸無水物と反応させ得る。これらの薬剤を用いた誘導体化は、リジン残基の電荷を逆転させる効果を有し得る。α−アミノ含有残基を誘導体化するための他の試薬としては、以下が挙げられる:イミドエステル(例えば、メチルピコリンイミド);ピリドキサールリン酸;ピリドキサール;クロロ水素化ホウ素;トリニトロベンゼンスルホン酸;O−メチルイソウレア(methylissurea);2,4ペンタンジオン;およびグリオキシル酸とのトランスアミナーゼ触媒反応。
【0037】
アルギニン残基は、1またはいくつかの従来の試薬(中でも、フェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリン)との反応によって改変され得る。アルギニン残基の誘導体化は、グアニジン官能基の高いpKに起因して、アルカリ条件において実施され得る。さらに、これらの試薬は、リジン基ならびにアルギニンのε−アミノ基と反応し得る。
【0038】
チロシン残基は、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンと反応し得る。N−アセチルイミダゾールおよびテトラニトロメタンを用いて、それぞれ、O−アセチルチロシル種および3−ニトロ誘導体を形成し得る。チロシン残基は、放射免疫アッセイにおいて使用する標識タンパク質を調製するために125Iまたは131Iを使用してヨウ素化され得る。
【0039】
アスパラギン酸およびグルタミン酸のカルボキシル側鎖基は、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−(4−エチル)カルボジイミドまたは1−エチル−3(4−アゾニア4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドのようなカルボジイミド(R’−−N−−C−−N−−R’)との反応によって改変され得る。さらに、アスパルチル残基およびグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によって、アスパラギニル残基およびグルタミニル残基へと変換され得る。グルタミニル残基およびアスパラギニル残基は、対応するグルタミル残基およびアスパルチル残基へと脱アミドされ得る。あるいは、これらの残基は、穏やかに酸性の条件下で脱アミドされ得る。
【0040】
二官能性薬剤を用いたペプチドの誘導体化は、ペプチドを水不溶性の支持マトリックスにまたは他の高分子キャリアに架橋するために有用であり得る。一般的に用いられる架橋剤としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:1,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、4−アジドサリチル酸を有するエステル、ホモ二官能性イミドエステル(3,3’−ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)のようなジスクシンイミジルエステルを含む)およびビス−N−マレイミド−1,8−オクタンのような二官能性マレイミドを含む。誘導体化剤(例えば、メチル−3−[(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデート(methyl−3−[(p−azidophanyl)dithio]propioimidate)は、光の存在下で架橋し得る光活性化可能な中間体を生じ得る。あるいは、反応性水不溶性マトリックス(例えば、臭化シアン活性化炭水化物)および反応性基質(米国特許第3,969,287号;同第3,691,016号;同第4,195,128号;同第4,247,642号;同第4,229,537号;および同第4,330,440号に記載されている)が、タンパク質固定化のために使用され得る。
【0041】
このペプチドはまた、プロリン残基およびリジン残基のヒドロキシル化、セリン残基またはトレオニン残基の水酸基のリン酸化、リジン側鎖、アルギニン側鎖およびヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecule Properties,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,79−86頁(1983))、N末端アミンのアセチル化、そして、いくつかの場合には、C末端カルボキシル基のアミド化によって改変され得る。
【0042】
このペプチドの誘導体化は、ペプチドの溶解度、吸収、生物学的半減期などを改善し得る。誘導体化はまた、本明細書中に参考として援用されるRemington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.(1980)に開示されるように、ペプチドなどのあらゆる望ましくない副作用を排除し得るかまたは弱め得る。このペプチドの化学的改変は、特定の環境下でのさらなる利点(例えば、ペプチドの安定性および循環時間の増大、ならびに免疫原性の増大)を提供し得る。ペプチドの化学的誘導体化についてのより多くの情報については、その全体が本明細書中に参考として援用される米国特許第6,350,730号(Friedman)を参照のこと。
【0043】
このペプチドの免疫原性は、このペプチドをより長いペプチドもしくはポリペプチドに含めることによって、またはこのペプチドを標準的な連結技術を使用して「免疫学的」キャリア(例えば、KLH、血清アルブミン、破傷風トキソイドなど)へと結合体化させることによって増強され得る。種々のこのような方法(例えば、縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド)の使用またはリンカー(例えば、Pierce Chemical Co.,Rockford,Illから市販されるリンカー)の使用)は、当該分野で公知である。
【0044】
このペプチドはまた、動脈内投与経路、腹腔内投与経路、筋肉内投与経路、皮下投与経路、静脈内投与経路、経口投与経路、経鼻投与経路、直腸投与経路、頬側投与経路、槽内投与経路、鞘内投与経路、舌下投与経路、肺投与経路、局所投与経路、経皮投与経路、または他の投与経路のために処方され得る。
【0045】
このペプチドはまた、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6、またはそれら由来の配列を含むペプチドまたはポリペプチドと特異的に結合するTCRを有するT細胞を活性化させるために用いられ得る。T細胞は、当該分野で公知の多くの方法のいずれかを使用して、自己免疫疾患を有する患者から入手され得る。T細胞はまた、特定の部分集団(例えば、自己反応性T細胞)について富化され得る。次いで、単離されたT細胞は、このペプチドを用いてインビトロで刺激され得、このことは、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6またはそれら由来の配列を含むペプチドまたはポリペプチドと特異的に結合するTCRを有するT細胞を活性化し得、そして/またはこのT細胞の数を拡大し得る。次いで、活性化および/または拡大されたT細胞は、そのT細胞を誘導した患者へと投与され、それによって、これらは、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6またはそれら由来の配列を含むTCRを有する自己反応性T細胞と結合し、それにより、この自己反応性T細胞を枯渇させ得る。
【0046】
第2の局面において、本発明は、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6またはそれら由来の配列を含むエピトープと特異的に結合する抗体に関する。この抗体は、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEのクラス、ならびにそれらのフラグメントおよび誘導体(Fab、F(ab’)2、Fd、および単鎖抗体(scFv)が挙げられる)の抗体であり得る。この抗体は、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6またはそれら由来の配列を含むエピトープに対して充分な結合特定性を示す、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、アフィニティー精製された抗体、またはそれらの混合物であり得る。この抗体は、本発明の第1の局面において上記のように、当該分野で公知の1つ以上の化学的部分、ペプチド部分またはポリペプチド部分の結合によって誘導体化され得る。
【0047】
この抗体は、当該分野で公知の技術(例えば、それらの全体が本明細書中に参考として援用される、米国特許第5,565,332号(Hoogenboomら)、同第5,858,657号(Winterら)、同第5,871,907号(Winterら)、同第5,969,108号(McCaffertyら)および同第6,172,197号(McCaffertyら)に記載されるような、ファージディスプレイ)を用いて同定および単離され得る。この抗体はまた、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれら由来の配列に対する免疫応答を惹起し得る抗原で免疫された哺乳動物(マウス、ラット、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ブタまたはウシが挙げられるがこれに限定されない)から単離され得る。この抗体はまた、それらの全体が本明細書中に参考として援用される、米国特許第5,565,332号(Hoogenboomら)、同第5,858,657号(Winterら)、同第5,871,907号(Winterら)、同第5,969,108号(McCaffertyら)および同第6,172,197号(McCaffertyら)に記載されるような、ヒト抗体またはヒト化抗体であり得る。
【0048】
以下でより充分に記載されるように、この抗体は、処理のための基礎として、または診断アッセイにおいて、用いられ得る。この抗体はまた、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれら由来の配列を含むTCRを有する自己反応性T細胞の富化または精製のために用いられ得る。配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6またはそれら由来の配列を含むTCRを有する、富化または精製された自己反応性T細胞は、その全体が本明細書中に参考として援用される係属中の米国特許出願第09/952,532号(Zhang)に従って、自己免疫疾患を有する患者のためのT細胞ワクチン中で用いられ得る。
【0049】
第3の局面において、本発明は、第1の例示的な発明に従うペプチドまたはそれらのフラグメントを含むペプチドまたはポリペプチドをコードするオリゴヌクレオチドに関する。このオリゴヌクレオチドは、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6、それらに対して相補的なヌクレオチド配列、またはそれら由来の配列のフラグメントをコードする少なくとも10個連続したヌクレオチドを含め、約15〜約30ヌクレオチド長であり得る。このオリゴヌクレオチドはまた、以下のいずれかを含め、約15〜約30ヌクレオチド長であり得る:(i)配列番号4もしくは配列番号6、それらに対して相補的なヌクレオチド配列、またはそれら由来の配列のフラグメントをコードする、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個連続したヌクレオチド、(ii)配列番号5、それに対して相補的なヌクレオチド配列、またはそれら由来の配列のフラグメントをコードする、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個または26個連続したヌクレオチド。このオリゴヌクレオチドはまた、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6をコードするヌクレオチド配列、それらに対して相補的なヌクレオチド配列、またはそれら由来の配列を含め、約15〜約30ヌクレオチド長であり得る。
【0050】
遺伝暗号の縮重に起因して、多くのヌクレオチド配列は、本発明の第1の局面のペプチドをコードし得る。例えば、このオリゴヌクレオチドは、配列番号1、配列番号2もしくは配列番号3、それらに対して相補的な配列、またはそれら由来の配列のうちの少なくとも10個連続したヌクレオチドを含め、約15〜約30ヌクレオチド長であり得る。このオリゴヌクレオチドはまた、以下のいずれを含め、約15〜約30ヌクレオチド長であり得る:(i)配列番号1もしくは配列番号3、それらに対して相補的な配列、またはそれら由来の配列のうちの、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個または20個連続したヌクレオチド、(ii)配列番号2、それに対して相補的な、またはそれら由来の配列のうちの、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個または26個連続したヌクレオチド。このオリゴヌクレオチドはまた、配列番号1、配列番号2もしくは配列番号3、それらに対して相補的な配列、またはそれら由来の配列のヌクレオチド配列を含め、約15〜約30ヌクレオチド長であり得る。
【0051】
以下により充分に記載するように、このオリゴヌクレオチドは、PCRのためのプライマーとして用いられ得る。このオリゴヌクレオチドはまた、TCR遺伝子(またはそのフラグメント(これはまた、相補的ヌクレオチド配列またはそれら由来のヌクレオチド配列を含む))に結合してまたそれを検出するプローブとして用いられ得る。このオリゴヌクレオチドは、検出可能な部分を用いて標識され得る。検出可能な部分の多くの例は、32P、35S、ビオチンまたはジゴキシゲニンを含むがこれらに限定されず、当該分野で公知である。
【0052】
第4の局面において、本発明は、本発明の第3の局面によるオリゴヌクレオチドである第1プライマー、ならびに第1プライマーの配列を含まずかつT細胞におけるTCR遺伝子のVβからCβへの領域またはそれに由来する配列のフラグメントである、約15ヌクレオチド長および約30ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドである第2プライマーを含むプライマー対に関し、ここで、この第1プライマーおよびこの第2プライマーは、TCR遺伝子の異なる鎖と特異的に結合する。第2プライマーは、TCR遺伝子のVβ−Dβ−Jβ領域を含め、約400bpが、第1プライマーと第2プライマーとを隔てるように、Cβ領域の配列に相補的であり得る。
【0053】
以下でより充分に記載するように、このプライマー対は、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列、またはそれら由来の配列を含むヒトT細胞から、TCRをコードするヌクレオチド配列を増幅するために用いられ得る。
【0054】
第5の局面では、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列、またはそれら由来の配列を含むTCRは、本発明の第2の局面による抗体を使用して免疫アッセイを実施することによって、サンプルにおいて検出され得る。用語「免疫アッセイ」により、同時サンドイッチ免疫アッセイ、前方サンドイッチ(forward sandwich)免疫アッセイおよび逆サンドイッチ(reverse sandwich)免疫アッセイを包含することを意味し、これらは、当業者に周知である。
【0055】
配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列、またはそれら由来の配列を含むTCRの存在について試験されるべきサンプルは、T細胞レセプターβ鎖遺伝子を発現する任意の動物組織またはヒト組織(例えば、末梢血単核細胞(PBMC))から、直接的または間接的に単離され得る。
【0056】
第6の局面では、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6、またはそれら由来の配列(「標的配列」)をコードするヌクレオチド配列を含むTCR遺伝子は、この標的配列を含むTCR遺伝子のフラグメントを増幅することによってサンプルにおいて検出され得、ここで、この増幅は、本発明の第4の局面に従ってプライマー対を使用して実施される。
【0057】
配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6、またはそれら由来の配列をコードする標的配列を含むTCR遺伝子のフラグメントは、任意の特定のPCR技術または当該分野において公知の機器を使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅され得る。例えば、PCR増幅に続いて、以下の成分を含む反応混合物が調製される手順を行い得る:5μL 10×PCR緩衝液II(100mM Tris−HCl(pH8.3)、500mM KCl)、3μL 25mM MgCl、1μL 10mM dNTPミックス、0.3μL Taqポリメラーゼ(5U/μL)(AmpliTaq Gold,Perkin Elmer,Norwalk,Conn.)、30pmolの第1プライマー、30pmolの第2プライマー、および1μLのサンプルDNA。このポリメラーゼは、少なくとも95℃の温度で安定であり得、50〜60の進化性を有し得、そして1分間あたり50ヌクレオチドを超える伸張速度を有し得る。
【0058】
PCR反応は、95℃(変性)で1分間、56℃で20秒間(アニーリング)および72℃で40秒間(伸張)の合計40サイクルの増幅プロフィールで実施され得る。第1サイクルを開始する前に、反応混合物は、約5分間〜15分間にわたって最初の変性を受け得る。同様に、最後のサイクルが完了した後、反応混合物は、約5分間〜10分間にわたって最終的な伸張を受け得る。特定のPCR反応は、わずか15〜20サイクルまたは50という多くのサイクルで作動し得る。特定のPCR反応に依存して、増幅プロフィールの各工程について、より長いかまたはより短いインキュベーション時間およびより高いかまたはより低い温度が用いられ得る。
【0059】
この標的配列を含むTCR遺伝子の存在について試験されるサンプルは、核酸(例えば、ゲノムDNA、cDNA、PCRによって以前に増幅されたDNAまたは任意の他の形態のDNA)であり得る。このサンプルは、T細胞レセプターβ鎖遺伝子を発現する、任意の動物組織またはヒト組織(例えば、末梢血単核細胞(PBMC))から直接的または間接的に単離され得る。ゲノムDNAは、T細胞レセプターβ鎖遺伝子を発現する組織から直接単離され得る。cDNAは、T細胞レセプターβ鎖遺伝子を発現する組織から直接単離されたmRNAの逆転写によって間接的に単離され得る。
【0060】
配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6またはそれらに由来する配列をコードするヌクレオチド配列を含むT細胞レセプター遺伝子の存在を検出する能力は、2段階PCR反応によって、ゲノムDNA、cDNAまたは任意の他の形態のDNAの増幅によってサンプルDNAを間接的に単離することによって増強され得る。例えば、第1のPCR増幅反応は、第1プライマーおよび第2プライマーが逆の鎖に選択的に結合し得るフラグメントより大きくかつそのフラグメントを含む、予備フラグメントを増幅するために実施され得る。次いで、第2のPCR増幅反応は、第1プライマーおよび第2プライマーを有するテンプレートとして予備フラグメントを使用して実施されて、この標的配列を含むフラグメントを増幅し得る。第1プライマーまたは第2プライマーのいずれかが予備フラグメントを増幅するために第1のPCR反応において用いられる場合、第2のPCR反応は、「半入れ子(semi−nested)」にされる。第1プライマーまたは第2プライマーのいずれもが予備フラグメントを増幅するために第1のPCR反応において用いられない場合、この第2のPCR反応は、「入れ子(nested)」にされる。
【0061】
例示的な2段階PCR反応では、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6またはそれらに由来する配列をコードするヌクレオチド配列を含むTCR遺伝子のフラグメントは、TCR遺伝子のVβ領域にアニールする第1の予備プライマーおよびTCR遺伝子のCβ領域にアニールする第2の予備プライマーを使用した第1のPCR反応(これは、TCR遺伝子の中でVβからVβ−Dβ−Jβ連結部を通ってCβに及ぶ予備フラグメントを増幅する)を実施し、続いて入れ子または半入れ子にされ得る第2のPCR反応を実施することによって増幅され得る。本開示を考慮すると、当業者は、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6またはそれらに由来する配列をコードするヌクレオチド配列を含むT細胞からのTCR遺伝子のフラグメントのPCR増幅に適切なプライマーおよび反応条件下を選択し得る。
【0062】
配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6またはそれらに由来する配列をコードするヌクレオチド配列を含むTCR遺伝子のフラグメントの増幅の後、増幅産物は、多くの手順によって検出され得る。例えば、増幅産物のアリコートは、電気泳動ゲルへロードされ得、これに対して、サイズによってDNA分子を分離するために電界が印加される。別の方法では、増幅産物のアリコートは、SYBRグリーン、臭化エチジウムまたはDNAと結合して検出可能なシグナルを発する別の分子で染色されたゲルへロードされ得る。乾燥ゲルは、本発明の第3の局面に従って標識されたオリゴヌクレオチドを含み得、ここから、このゲルをフィルムに曝露することにより、オートラジオグラフが得られ得る。
【0063】
本発明の第7の局面では、試験キットは、本発明の第2の局面に従う抗体を備える。この試験キットは、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6またはそれらに由来する配列を含むTCR(またはその誘導体)の存在についてサンプルをアッセイするために用いられ得る。
【0064】
この試験キットはまた、自己反応性T細胞上のTCRのエピトープと特異的に結合する1つ以上のさらなる抗体を備え得る。上記の1以上のさらなる抗体が特異的に結合し得るTCRは、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれらに由来する配列を含んでも含まなくてもよい。配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれらに由来する配列はいくつかのTCRのみに存在するので、他のTCR配列、より特に他のCDR配列と結合する抗体を使用することは有益であると判明し得る。
【0065】
この試験キットはまた、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれらに由来する配列を含むTCR(またはその誘導体)の検出において用いられ得る1つ以上の試薬をさらに備え得る。この試薬は、緩衝液、ポジティブコントロール、ネガティブコントロールまたはそれらの組合せであり得る。このポジティブコントロールは、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれらに由来する配列を含む、ペプチド配列またはポリペプチド配列であり得る。このネガティブコントロールは、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれらに由来する配列のいずれをも含まない配列を含む、ペプチド配列またはポリペプチド配列であり得る。
【0066】
本発明の第8の局面では、試験キットは、本発明の第3の局面に従うオリゴヌクレオチドである第1プライマーを備える。この試験キットはまた、本発明の第4の局面に従うプライマー対である、第1プライマーおよび第2プライマーを備え得る。
【0067】
この試験キットはまた、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6またはそれらに由来する配列をコードするヌクレオチド配列を含むTCR遺伝子のフラグメントの増幅において用いられ得る1つ以上の試薬をさらに備え得る。この試薬は、緩衝液、デオキシヌクレオチド三リン酸、耐熱性DNAポリメラーゼ、ポジティブコントロール、ネガティブコントロールまたはそれらの組合せであり得る。この耐熱性DNAポリメラーゼは、Taqポリメラーゼであり得る。このポジティブコントロールは、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6またはそれらに由来する配列をコードするヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列であり得る。このネガティブコントロールは、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6またはそれらに由来する配列をコードするヌクレオチド配列を含まないヌクレオチド配列であり得る。この試験キットはまた、本発明の第3の局面に記載されるとおりの標識されたオリゴヌクレオチドを備え得る。この試験キットに含まれ得る他の試薬は、当業者に公知である。
【0068】
第9の局面において、自己免疫疾患を有する患者は、患者からサンプルを得て、そして配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれらに由来する配列を含むTCRを含む自己反応性T細胞の存在についてこのサンプルをアッセイすることによって診断され得る。このサンプルは、T細胞、自己反応性T細胞、または自己反応性MBP83−99 T細胞について富化され得る。この自己免疫疾患は、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6のペプチド配列またはそれらに由来する配列を含むTCRが、T細胞において見出される、任意の自己免疫疾患であり得る。
【0069】
この自己免疫疾患は、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれらに由来する配列を含むTCRを含むT細胞のレベルを、コントロール由来のこのT細胞のレベルと比較することによって診断され得る。T細胞のレベルは、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれらに由来する配列を含むTCRの存在を、本発明の第5の局面に従う免疫アッセイにおいて検出することによって決定され得る。T細胞のレベルはまた、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6またはそれらに由来する配列を含む配列をコードする核酸の存在を、本発明の第6の局面に記載される様式でPCRを用いて検出することによって決定され得る。
【0070】
第10の局面において、自己免疫疾患は、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれらに由来する配列を含むTCRを含む自己反応性T細胞を有する一部の患者において、本発明の第1の局面に従う免疫原有効量のペプチドを含むワクチンを投与することによって、処置され得る。ワクチンの投与は、免疫応答を導き得、ここで、患者は、抗体を生じ得、そしてワクチンの投与はまた、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれらに由来する配列を含むTCRを認識してこのTCRに結合するT細胞応答を誘発し得、これは、この自己反応性T細胞の枯渇をもたらし得る。
【0071】
このワクチンは、このペプチドを単独で、または免疫原有効量の他のTCRペプチド配列(特に、他のCDR配列)と組み合わせて含み得る。臨床研究は、自己T細胞ワクチン接種を受ける自己免疫患者が、MBP反応性T細胞に対する免疫の段階的な低下を示し得ることを示す。いくつかの場合には、再出現する自己反応性T細胞は、異なるクローン集団から生じ得、このことは、MBP反応性T細胞が、進行中の疾患プロセスと潜在的に関連したクローンシフトまたはエピトープ拡張を受け得ることを示唆する。クローンシフトまたはエピトープ拡張は、自己反応性T細胞によって媒介される自己免疫疾患の問題であり得る。自己反応性T細胞の複数の集団におけるTCRに対する免疫応答を誘発し得る複数の抗原性ペプチドを含むワクチンは、クローンシフトまたはエピトープ拡張に関する問題を回避し得る。
【0072】
配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれらに由来する配列を含むTCR、ならびに他のTCR配列(特に、CDR配列)が、自己免疫疾患を患っている患者およびこの疾患を患っていない正常個体の両方に存在し得るので、TCR(特に、CDRおよび最も特にCDR3)におけるエピトープに対する免疫応答を惹起し得るペプチドまたはペプチドの組合せを含むワクチンは、自己免疫疾患を有する患者および正常個体の両方に投与され得る。他のペプチド配列は、LGRAGLTYモチーフ(配列番号7)および米国特許第5,614,192号(Vandenbark)に開示されるCDR配列を含み得る。
【0073】
このワクチンは、T細胞活性化マーカーペプチドをさらに含み得る。このT細胞活性化マーカーペプチドは、本明細書中に参考として援用される、米国特許第6,303,314号(Zhang)にて記載されたとおりのマーカーペプチドであり得る。このワクチンはまた、免疫原に対する免疫応答を増強するために用いられ得る1つ以上の試薬をさらに含み得る。この試薬は、緩衝液、アジュバントまたはそれらの組合せであり得る。このアジュバントは、その全体が本明細書中に参考として援用される、米国特許第5,980,912号(Podolski)に従う、キトサンに基づくアジュバントであり得る。
【0074】
第11の局面において、自己免疫疾患は、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれらに由来する配列を含むTCRを有する一部の患者において、本発明の第2の局面に従う抗体を含む組成物を投与することにより、処置され得る。この組成物の投与は、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれらに由来する配列を含むTCRの枯渇を導き得る。
【0075】
この組成物は、抗体を単独で、または他のTCR配列(特に、他のCDR配列)に特異的に結合する他の抗体と組み合わせて含み得る。上記で考察したように、自己免疫疾患の進行は、自己反応性T細胞のクローンシフトまたはエピトープ拡張を含み得る。各々の抗体が自己反応性T細胞の複数集団におけるTCR(特に、CDR)の異なるエピトープと特異的に結合する複数の抗体を含む組成物は、クローンシフトまたはエピトープ拡張に関する問題を回避し得る。
【0076】
配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれらに由来する配列を含むTCR、ならびに他のTCR配列(特に、CDR配列)が、自己免疫疾患を患っている患者およびこの疾患を患っていない正常個体の両方に存在し得るので、TCR(特に、CDRおよび最も特にCDR3)におけるエピトープに特異的に結合する抗体または抗体の組み合わせを含む組成物は、自己免疫疾患を有する患者および正常個体の両方に投与され得る。
【0077】
本発明の第12の局面において、自己免疫疾患は、本発明の第6の局面に従う自己免疫疾患を有する患者由来のサンプルにおいて、配列番号1、配列番号2もしくは配列番号3の配列またはそれらに由来する配列を含むTCR遺伝子の存在を検出し、そして配列番号1、配列番号2もしくは配列番号3の配列またはそれらに由来する配列を含むTCR遺伝子の量を定量することによってモニタリングされ得る。
【0078】
自己免疫疾患の症状の重篤度は、自己反応性T細胞の数による、サンプルにおける検出されたDNAの量と相関し得る。さらに、サンプルにおける検出されたDNA量の増加は、症状の重篤度を最小にすることが意図される処置を適用し、そして/またはその疾患を症状の出現前に処置する指標として使われ得る。
【0079】
本発明の第13の局面では、自己免疫疾患は、本発明の第7の局面に従う自己免疫疾患を有する患者由来のサンプルにおいて、配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれらに由来する配列を含むTCRの存在を検出し、そして配列番号4、配列番号5もしくは配列番号6の配列またはそれらに由来する配列を含むTCRの量を定量することによってモニタリングされ得る。
【0080】
自己免疫疾患の症状の重篤度は、自己反応性T細胞の数による、サンプル中の検出されたペプチドまたはポリペプチドの量と相関し得る。さらに、サンプルにおける検出されたペプチドまたはポリペプチドの量の増加は、症状の重篤度を最小にすることが意図される処置を適用し、そして/またはその疾患を症状の出現前に処置する指標として使われ得る。
【0081】
第14の局面において、本発明は、薬学的組成物(例えば、本発明の第10の局面に記載されるワクチンおよび本発明の第11の局面に記載される抗体)の製造に関する。薬学的組成物は、当該分野で周知の方法を使用して生成され得る。
【0082】
疾患または障害の処置において前臨床治療剤および臨床治療剤として使用される薬学的組成物は、診断および処置の受け入れられた原理を用いて当業者によって生成され得る。このような原理は、当該分野で公知であり、例えば、本明細書中に参考として援用される、Braunwaldら編,Harrison’s Principles of Internal Medicine,第11版,McGraw−Hill,出版者,New
York,N.Y.(1987)に示される。この薬学的組成物は、この組成物の有益な効果を経験し得る任意の動物に投与され得る。この薬学的組成物を受ける動物は、ヒトまたは他の哺乳動物であり得る。
【0083】
この薬学的組成物は、それらの意図された目的を達成する任意の手段によって投与され得る。例えば、投与は、非経口経路、皮下経路、静脈内経路、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、経皮経路、または頬経路によってであり得る。あるいはまたは同時に、投与は、経口経路によってであり得る。この薬学的組成物は、ボーラス注射によってまたは経時的な段階的灌流によって非経口的に投与され得る。
【0084】
投与される投薬量は、レシピエントの年齢、性別、健康および体重、同時処置の種類(存在する場合)、処置頻度、および所望される効果の性質に依存し得る。薬学的組成物の投与のための用量範囲は、所望の効果を生じ、それによって、例えば、DHまたは抗体産生により測定した場合、そのペプチドに対する免疫応答が達成され、そしてこの自己免疫疾患が有意に予防、抑制または処置されるに十分な大きさであり得る。この用量は、有害な副作用(例えば、不必要な交差反応、全身性免疫抑制、アナフィラキシー反応など)を引き起こすほど大きくなくてよい。ヒトについての用量は、約0.001mg/kg体重〜約25mg/kg体重の間の範囲であり得る。
【0085】
この薬学的組成物は、薬学的に用いられ得る調製物への活性化合物の処理を容易にし得る賦形剤および補助剤を含む、適切な薬学的に受容可能なキャリアからさらに含み得る。薬学的組成物に対する添加物は、アジュバント(例えば、ミョウバン、キトサン、または当該分野で公知の他のアジュバント)を含むことを含み得る(例えば、本明細書中に参考として援用される、Warrenら,Ann.Rev.Immunol.4:369−388(1986);Chedid,L.,Feder.Proc.45:2531−2560(1986)を参照のこと)。この薬学的組成物はまた、当該分野で公知の方法および化合物を使用して、送達または生体活性を増強するために、リポソームをさらに含み得る。
【0086】
この薬学的組成物はまた、錠剤およびカプセル剤の形態で経口投与され得る。この薬学的組成物はまた、坐薬の形態で、そして注射または経口導入のための溶液の形態で直腸に投与され得る。
【0087】
この薬学的組成物は、約0.001〜約99パーセント、または約0.01〜約95パーセントの活性化合物を、賦形剤と共に含み得る。適切な賦形剤は、フィラー(例えば、糖類(例えば、ラクトースまたはスクロース)、マンニトールまたはソルビトール、セルロース調製物および/またはリン酸カルシウム(例えば、三リン酸カルシウムまたはリン酸水素カルシウム))、ならびに結合剤(例えば、(例えば、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、イネ澱粉、馬鈴薯デンプンを用いた)澱粉ペースト、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン)であり得る。
【0088】
経口的に用いられ得る他の薬学的調製物としては、ゼラチン製のプッシュフィット(push−fit)カプセル剤、ならびにゼラチンおよび可塑剤(例えば、グリセロールまたはソルビトール)製の軟質密封カプセル剤が挙げられる。このプッシュフィットカプセル剤は、フィラー(例えば、ラクトース)、結合剤(例えば、澱粉)、および/または滑沢剤(例えば、滑石またはステアリン酸マグネシウム)、および必要に応じて安定剤と混合され得る顆粒の形態の活性化合物を含み得る。軟質カプセル剤において、活性化合物は、適切な液体(例えば、脂肪油または流動パラフィン)中に溶解または懸濁され得る。さらに、安定剤が添加され得る。
【0089】
直腸に用いられ得る薬学的調製物としては、例えば、1つ以上の活性化合物と坐剤基剤との組合せからなる坐剤が挙げられ得る。適切な坐剤基剤は、例えば、天然または合成のトリグリセリドまたはパラフィン炭化水素であり得る。さらに、活性化合物と基剤との組合せからなるゼラチン直腸カプセル剤が用いられ得る。可能な基剤としては、例えば、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、またはパラフィン炭化水素が挙げられる。
【0090】
適切な非経口投与用処方物としては、水溶性形態のペプチドまたは抗体の水溶液(例えば、水溶性塩)が挙げられる。さらに、適切な油性の注射懸濁液としての、ペプチドまたは抗体の懸濁液が、投与され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油)、または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリド)が挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を上昇させる物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランが挙げられる)を含み得る。この懸濁液はまた、安定剤を含み得る。
【0091】
このペプチドおよび抗体は、注射による投与用の従来の薬学的に受容可能な非経口ビヒクルを使用して処方され得る。これらのビヒクルは、非中毒性および治療的であり得、そして、多くの処方は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(前出)に示される。賦形剤の非限定的な例は、水、生理食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液およびハンクス平衡塩溶液である。薬学的組成物はまた、微量の添加剤(例えば、等張性、生理的pHおよび安定性を維持する物質)を含み得る。
【0092】
このペプチドおよび抗体は、凝集物および他の物質を実質的に含まない、約1.0ng/ml〜100mg/mlを含む濃度の、精製された形態で処方され得る。
【0093】
自己免疫疾患を予防するか、抑制するかまたは処置する際に使用するためのこのペプチドおよび抗体の有効用量は、約1ng/kg体重〜100mg/kg体重の範囲にあり得る。用量範囲はまた、約10ng/kgと約10mg/kgとの間にあり得る。この用量範囲はまた、約100ng/kgと約1mg/kgとの間にあり得る。
【0094】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に開示される技術が、本発明者によって本発明の実施において良好に機能すると見出された技術を表し、従って、その実施のための好ましい形態を構成するとみなされ得ることが当業者によって理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示を考慮して、開示される特定の実施形態において多くの変更がなされ得、そして本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、同様または類似の結果がなおも得られ得ることを認識すべきである。
【実施例】
【0095】
(実施例1:MSを有する患者において同定されたT細胞レセプターVβ−Dβ−JβのDNA配列)
MBPの83−99免疫優性エピトープを認識するMBP反応性T細胞の20個のCDR3配列のセットを、Genbankから選択した。20個の配列のいずれかが共通に発現されたかどうかを決定するために、40人のMS患者および15人のコントロール個体由来の末梢血リンパ球標本を、その全体が本明細書中に参考として援用される米国特許第6,303,314号(Zhang)に記載されているRT−PCR検出に基づく2段階RT−PCRおよびプライマーを使用してスクリーニングした。
【0096】
手短に述べると、総RNAを、RNeasyミニキット(Qiagen,Santa Clarita,CA)を使用して、MS患者およびコントロール由来のT細胞から抽出する。総RNAから逆転写される第1鎖cDNAを、Vβファミリー特異的プライマーおよびCβプライマーを使用する第1回のPCR増幅、続いてVβ−Dβ−JβプライマーおよびCβプライマーを用いる第2回の入れ子または半入れ子にされたPCRに供する。増幅されたPCR産物を、1%のアガロースゲルにおいて電気泳動的によって分離し、そして5mHgで90分間にわたって減圧ブロット(Bio−Rad,Hercules,CA)を使用して、正に荷電したナイロンメンブレン(Boehringer Mannheim,Indianapolis,IN)に転写した。DNAを、UV架橋への3分間の曝露によってこのメンブレン上へ固定し、そして、68℃で少なくとも1時間にわたってプレハイブリダイズした。0.1mg/mlのポリ(A)を、プレハイブリダイゼーション溶液(5×SSC、1%ブロッキング溶液、0.1%のN−ラウリルサルコシン、0.02%のSDS)に添加して、非標的DNAへのプローブの非特異的結合を減少させた。ハイブリダイゼーション温度および洗浄条件を、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を確実にするために、異なるCDR3特異的プローブに従って最適化した。ハイブリダイゼーションを、5×SSC、1%ブロッキング溶液、0.1%のN−ラウロイルサルコシン、0.02%のSDSおよびCDR3領域をコードするヌクレオチド配列に特異的なジゴキシゲニン標識プローブ0.3pmol/mlを含む緩衝液中で実施した。
【0097】
DNAハイブリッド産物の検出を、Digoxigenin Luminescent Detection Kit(登録商標)を製造業者(Boehringer Mannheim,Indianapolis,IN)の指示に従って使用して実施した。次いで、このメンブレンを、室温で15〜30分間にわたってX線フィルムに曝露した。
【0098】
試験した20個の配列の中で、CDR3をコードする3つの配列が、コントロール標本とは対照的に、MS由来の標本の高い百分率において検出された。表1は、検出された3つのCDR3コード配列の各々を含むTCR遺伝子についてのGenbank登録番号、ならびに各々の配列についてのCDR3領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。表2は、MS由来PBL標本およびコントロールPBL標本におけるCDR3コード配列の正の検出の百分率の合計を示す。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

表2における結果は驚くべきである。なぜなら、多くの研究は、特定のVβ−Dβ−Jβ遺伝子産物の優先使用を支持しないからである。例えば、米国特許第6,303,314号(Zhang)に記載されるLGARAGLTYモチーフは、一部の個体で見出されるだけである。むしろ、MBP自己反応性T細胞クローンは、代表的に、個体において比較的制限されたVβ−Dβ−Jβ遺伝子の使用頻度の不均質パターンを示す。これは、一般に、当該分野において、Vβ−Dβ−Jβ遺伝子の使用頻度の不均質性は、病原性自己反応性T細胞を治療的に除去するためにペプチドワクチンに基づくアプローチを使用することの実行可能性をかなり損なうと考えられた。本明細書における結果は、1つ以上のペプチドベースのワクチンが病原性自己反応性T細胞の除去において有益であると判明し得ることを初めて記載する。
【0101】
(実施例2:抗MBP反応性T細胞レセプターモノクローナル抗体の調製)
抗MBP反応性T細胞レセプターモノクローナル抗体を産生するハイブリッド細胞株を調製するための手順は、BALB/cマウスの骨髄腫細胞と、特定のMBP反応性T細胞レセプタータンパク質由来のペプチドモチーフで初回免疫されたBALB/cマウスの脾臓細胞との融合を含む。
【0102】
(1.融合のための脾臓細胞の調製)
特定のMBP反応性T細胞レセプター由来のペプチドモチーフは、精製された組換えT細胞レセプターから、またはペプチド合成によって、単離され得る。このペプチドモチーフは、95%を超える純度まで精製され、そしてフロイント完全なアジュバント中に乳化した約30μgの皮下投与により成体BALB/c雄性マウスまたはC57B46雄性マウスを免疫するために用いられる。このマウスを、2週間後に、皮下に与えられた不完全アジュバント中のペプチドモチーフのさらなる接種により再度免疫した。さらに2〜6週間後に、20〜40μgのペプチドモチーフを静脈内投与し、そして2〜4日後に、マウスを屠殺し、そして脾臓細胞懸濁液を、Gefterら,Somatic Cell Genetics 3:231,1977によって教示される様式で調製する。赤血球を、NHCl(0.83%)中で40℃にて15分間のインキュベーションで溶解する。得られる細胞懸濁液を、熱不活化仔ウシ血清による遠心分離(800×g)、続いてタンパク質を含まない媒体(RRMI 1640、7.5mMのHEPESによって緩衝化、pH 7.2)中での遠心分離によって洗浄する。
【0103】
(2.融合のための骨髄腫細胞の調製)
Yeltonら,Curr.Top.Microbiol.Immunal.81:1−7(1978)によって記載されるとおりの、P3U1株由来でかつHPRT(E.C2.4.2.8)を欠損する骨髄腫細胞を、10%ウシ胎仔血清および15%ウマ血清を含むイーグル最小必須培地(MEM)中で維持する。骨髄腫細胞の増殖は、選択的なヒポキサンチン−アミノプテリン(aminopeterin)−チミジン(HAT)培地によって阻害される。
【0104】
(3.ハイブリッドの生成)
ハイブリッドの生成は、10個のBALB/c骨髄腫細胞と、ペプチドモチーフで免疫したBALB/cマウスまたはC57B 1/6マウスから得た10個の脾臓細胞とを混合することによって達成される。この細胞混合物を800×gで遠心分離し、そしてこれらの細胞を、Gefterら(1977)によって記載された手順に従って、血清を含まない最小必須培地(MEM)中に希釈されたポリエチレングリコール(PEG 1000)の50%(w/v)溶液中に融合のために再懸濁する。得られたハイブリドーマ細胞を、GalfreおよびMilstein Meth.Enzymol.73:3,1975に記載されるとおりの限界希釈によってヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地中でクローニングする。ペプチドモチーフを認識する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を選択する。
【0105】
(4.MBP反応性T細胞レセプター抗体の産生についてのクローンの試験)
Linbro(Flow Lab)マイクロタイター96ウェルプレートを、50〜100μgのペプチドモチーフまたはT細胞レセプタータンパク質でコーティングし、そして20℃で一晩インキュベートする。ウェルを0.1M Tris(pH7.5)(5%のCarnation Instant Milkおよび0.085のアジ化ナトリウムを含む1%のnonidet P−40)で3回を洗浄した後、0.05mlの培養上清を添加し、そして40℃で一晩インキュベートする。RIA緩衝液を用いた3回の洗浄後、上清を除去し、そしてHybridoma Screening Kit(Bethesda Research Labs)を用いて抗体を検出する。非特異的結合についてのコントロールは、第2の抗体または培養上清のいずれかを省略することによって含まれる。
【0106】
本発明はここで充分に記載されており、後述の本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、多くの変更および改変がそれらに対してなされ得ることは、従来技術において当業者にとって明らかである。
【0107】
本明細書において開示されて特許が請求される組成物および/または方法の全ては、本開示を考慮して過度の実験なしで作製され得、そして実施され得る。本発明の組成物および方法が好ましい実施形態に関して記載されているが、本明細書中に記載される組成物および/または方法、方法の工程または一連の工程にバリエーションが、本発明の着想、趣旨および範囲から逸脱することなく適用され得ることは当業者にとって明らかである。より詳細には、化学的および生理的の両方に関連した特定の薬剤で、同じまたは類似した結果を達成しつつ、本明細書において記載された薬剤を代用し得ることは明らかである。当業者にとって明らかな全てのこのような類似した置換および改変は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨、範囲および着想の範囲内であるとみなされる。
【0108】
(実施例3:MA患者の処置のために有効なペプチドベースのワクチンの同定)
この試験のための参入基準は、少なくとも2年間にわたって臨床的に確かなMS、RR−MSについては1.5〜6.5の、そして二次進行性MS(SP−MS)を有する患者については4.0〜8.0のベースラインの拡大身体障害状態スケール(EDSS)、および開放−軽減(releasing−remitting)MS(RR−MS)コホートについては研究への参加前の過去2年間における少なくとも1回の増悪を有する患者である。これらの患者は、この研究に参加する前に少なくとも3ヶ月間、ステロイドを含め、あらゆる免疫抑制薬物を服用していない。増悪が生じる場合、研究の間、ステロイドは許容される。疲労、痙縮および膀胱の病訴についての対症療法は、禁止されない。患者は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号10、または米国特許第5,614,192号(Vandenbark)において開示されるCDR配列を含むTCRを有する自己反応性T細胞の存在について試験されるべきである。
【0109】
配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号10、またはそれら由来の配列を含む配列を有するペプチドベースの抗原を免疫原有効量で含むワクチンが調製される。合計15のワクチンを、以下の通りに試験する;(i)4つの抗原のうちの1つ(合計4)、(ii)4つの抗原のうちの2つの組合せ(合計6)、(iii)4つの抗原のうちの3つの組合せ(合計4)および(iv)抗原のうちの4つの組合せ(合計1)。各々の患者は、2ヵ月の間隔で、試験ワクチンのうちの1つの3回の皮下注射を受ける。
【0110】
次いで、患者は、確認された不能の進行の発症までの時間、EDSS、再発率およびMRI病変活動性について観察される。これらの結果を、患者自体の処理前の経過、ならびにRR−MS患者およびSP−MS患者における2つの最近の臨床試験のプラシーボ部門(arm)(これは、MSの自然な履歴の評価((Jacobsら,1996),European Study Group,1998)として役立った)と比較する。進行までの時間を、少なくとも2ヶ月間持続した、EDSS(Poserら,1983)における少なくとも1.0の増加によって決定する。研究中の増悪を、神経学的検査における客観的変化(EDSSにおける少なくとも0.5ポイントの悪化)を伴う、少なくとも48時間持続する、新規の神経学的症状の出現または既存の神経学的症状の悪化によって定義する。患者は、予定の定期的な通院の間の事象を報告するように指示され、そして症状が悪化を示唆した場合、神経科医によって検査される。安全評価としては、有害事象、生命徴候および定期的な通院での理学的検査が挙げられる。ペプチドベースのワクチン接種の前および後での研究患者における臨床学的変数の相違は、Wilcoxon順位和検定を用いて分析される。
【0111】
(実施例4:ペプチドベースのワクチンを用いたMS患者の処置)
MSの臨床症状の進行を緩慢にすることに有効であると実施例3で同定されたワクチンを、MS患者に投与する。ワクチン処置を受ける患者は、任意の持続期間にわたってMSを罹患し得、そして公知の基準により診断され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2010−207226(P2010−207226A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85593(P2010−85593)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【分割の表示】特願2004−511467(P2004−511467)の分割
【原出願日】平成15年6月5日(2003.6.5)
【出願人】(391058060)ベイラー カレッジ オブ メディスン (16)
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
【出願人】(504051722)オペクサ ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】