T細胞調節遺伝子およびその使用方法
【課題】免疫機能の調節および細胞の生存に関連するタンパク質の、遺伝子座および対応するファミリーを提供すること。
【解決手段】免疫機能および細胞の生存に関連するポリペプチドをコードする遺伝子ファミリーの遺伝配列が提供される。これらの遺伝子は、保存されたIgVドメインおよびムチンドメインを有する、細胞表面タンパク質をコードする。TIMファミリーを含有する遺伝子座は、一般的に、喘息を含む免疫不全に関連する。さらに、このTIM遺伝子ファミリーは、ヒトの第5染色体の領域内に位置付けられ、これは、悪性腫瘍および骨髄形成異常症候群において、共通して欠失される。遺伝子配列における多型は、気道の過剰応答性およびアレルギー性炎症の発達、ならびにT細胞のIL−4およびIL−13の産生に関連する。これらのタンパク質は、ヒトA型肝炎細胞レセプターのhHAVcr−1を含む。
【解決手段】免疫機能および細胞の生存に関連するポリペプチドをコードする遺伝子ファミリーの遺伝配列が提供される。これらの遺伝子は、保存されたIgVドメインおよびムチンドメインを有する、細胞表面タンパク質をコードする。TIMファミリーを含有する遺伝子座は、一般的に、喘息を含む免疫不全に関連する。さらに、このTIM遺伝子ファミリーは、ヒトの第5染色体の領域内に位置付けられ、これは、悪性腫瘍および骨髄形成異常症候群において、共通して欠失される。遺伝子配列における多型は、気道の過剰応答性およびアレルギー性炎症の発達、ならびにT細胞のIL−4およびIL−13の産生に関連する。これらのタンパク質は、ヒトA型肝炎細胞レセプターのhHAVcr−1を含む。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
免疫系の驚異的な複雑性は、その最大の威力である。1012−1214の潜在的な抗体特異性、様々な調節細胞およびエフェクター細胞間の精密な相互作用、MHC抗原によるT細胞応答の制限;これら全てが宿主の感染性因子および外来性と考えられる他の抗原に対して効率的に応答する能力に寄与する。しかし、この多様性はその欠点を有する。誤りが起こる:応答の標的が正常な自己タンパク質であることが判明し得る;炎症性応答が誤調節される;そして正常な応答が、移植片および移植細胞に対して望ましくなく向けられる。これらの状況下で、その系の複雑性は診断および治療を非常に困難にする。
【0002】
免疫応答の間にCD4+T細胞によって産生されるサイトカインのプロフィールが、免疫応答の結果を発生および調節するエフェクター機能の性質を決定する。Th1−優位の応答におけるIL−2およびIFN−γの産生は、激しい細胞媒介性免疫、IgG2aの誘導およびIgE合成の阻害、および細胞内病原体に対する抵抗性と関連する。対照的に、Th2−優位の応答におけるIL−4、IL−5、およびIL−10の産生は、体液性免疫および自己免疫病理からの保護と関連する。アレルゲン特異的CD4+T細胞によるTh2−サイトカインの過剰産生は、アレルギー疾患および喘息の発生を引き起こし得、一方Th1細胞は、様々な炎症誘発性疾患と関連していた。
【0003】
免疫関連疾患に対する1つのアプローチは、免疫療法である。免疫療法は、適当に用いた場合に有効であることが証明され、そして免疫学的介入の進歩は有効性をさらに改善すると希望される。代わりのアプローチは、サイトカインを使用して免疫応答をシフトさせようと試みた。マクロファージおよび樹状細胞によって産生されるヘテロダイマーのサイトカイン、IL−12は、未処置およびメモリーCD4+T細胞において、Th1サイトカイン合成の発生を強力に推進する。IL−13およびIL−4のような他のサイトカインが、T細胞のTh2型への分化と関連していた。
【0004】
喘息、アレルギー性鼻炎、およびアトピー性皮膚炎を含むアトピーは、遺伝的に感受性の個体において、環境的に誘発された免疫応答の結果として起こる、複雑な形質である。全てのアトピー性疾患の罹患率は、過去20年間の間に産業化諸国において劇的に増加した。喘息は小児期の最もよくある慢性疾患であり、そして合衆国において1500万人以上に影響を与え、1年あたり110億ドルを越える直接治療コストをもたらす。疫学的研究が、喘息罹患率の増加は、産業化社会における衛生状態の変化および感染(例えば結核またはA型肝炎)の頻度低下に起因することを示唆した。しかし、喘息罹患率の増加を引き起こす特定の分子的経路、および喘息感受性を与える遺伝的多型はあまり理解されていない。
【0005】
喘息の発現は、非相加的な方法でお互いに相互作用する、複数の環境的および遺伝的因子によって影響され、喘息感受性遺伝子の同定を複雑にしている。喘息感受性は、いくつかの染色体領域と連結されたが、分解能は5−10cMより低く、そこには通常数百の候補遺伝子が存在する。さらに、どの単一遺伝子における遺伝的変異の効果も、おそらく喘息の病因全体では中程度の効果しか有さないので、そして遺伝子−遺伝子および遺伝子−環境相互作用が分析を混乱させるので、ポジショナルクローニングに対して応答性の領域に推定感受性遺伝子を位置決めすることは、精密化が困難であることが判明した。それにもかかわらず、喘息感受性は第5染色体、第6染色体、第11染色体、第14染色体、および第12染色体に連結した。これらのうち、染色体5q23−35が、それはIL−9、IL−12p40、β−アドレナリンレセプター、およびIL−4、IL−5およびIL−13の遺伝子を含むIL−4サイトカインクラスターを含む多くの候補遺伝子(11、12、13、14、15、16、17、18)を含むので、最も注目を集めた。しかし、5qの連結領域の大きなサイズがその分析を複雑にし、そしてこの部位からの喘息遺伝子はまだ決定的に同定されていない。
【0006】
(関連する出版物)
ヒトA型肝炎ウイルス細胞レセプターの遺伝配列は、Genbank、登録番号XM_011327において見出し得る。関連する配列が、Genbank、登録番号BAB55044において提供される。非特許文献1は、Th1細胞に発現する細胞表面分子を記載する。特許文献1、特許文献2、特許文献3は、マウスTIM−3対立遺伝子に対応する配列に関連する。
【特許文献1】米国特許第5721351号明細書
【特許文献2】米国特許第6204371号明細書
【特許文献3】米国特許第6288218号明細書
【非特許文献1】Monneyら、Nature(2002)415:436
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
免疫機能の調節および細胞の生存に関連するタンパク質の、遺伝子座および対応するファミリーを提供することが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、例えば、以下の手段を提供する。
(項目1)
哺乳動物のTIM遺伝子配列を含む、単離された核酸分子。
(項目2)
上記哺乳動物のTIM遺伝子配列が、TIM−1、TIM−3およびTIM−4の対立遺伝子2、3、4、5および6からなる群より選択されるヒト配列である、項目1に記載の単離された核酸分子。
(項目3)
上記哺乳動物のTIM遺伝子配列が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4からなる群より選択されるマウス配列である、項目1に記載の単離された核酸分子。
(項目4)
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、または36のうちのいずれ1つに記載される、少なくとも20ヌクレオチドの連続配列を含む、単離された核酸。
(項目5)
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、または36のうちのいずれ1つに記載される配列を含む、単離された核酸。
(項目6)
TIM遺伝子多型の検出のためのプローブを含む、項目1に記載の単離された核酸分子。
(項目7)
項目6に記載のプローブの2つ以上を含む、オリゴヌクレオチドのアレイ。
(項目8)
項目1に記載の核酸組成物を含む細胞。
(項目9)
少なくとも50重量%のタンパク質を含む精製ポリペプチド組成物であって、そのタンパク質が、項目1に記載の核酸またはそのフラグメントの産物として存在する、組成物。
(項目10)
上記ポリペプチドが、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、および35に記載の配列を含む、項目9に記載の精製ポリペプチド。
(項目11)
哺乳動物のTIMポリペプチドに特異的な、抗体。
(項目12)
個体において喘息に対する素因を検出するための方法であって、その方法が、以下:
少なくとも1つの素因性のTIMの多型の存在についてその個体を分析する工程であって、ここで、その素因性の多型の存在が、その喘息に対する罹患率の増大を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目13)
上記分析工程が、上記個体のゲノムDNAまたはmRNAと、項目6に記載の1つまたは複数のプローブとの間の特異的な結合の検出を包含する、項目12に記載の方法。
(項目14)
上記分析工程が、上記個体由来の細胞またはタンパク質と、項目11に記載の抗体との間の特異的な結合の検出を包含する、項目12に記載の方法。
(項目15)
TIM遺伝子のノックアウトを含む、TIM遺伝獅機能についての非ヒトトランスジェニック動物モデル。
(項目16)
TIM機能を調節する、生物学的に活性な薬剤についてのスクリーニングの方法であって、その方法が、以下:
以下のいずれか1つと、生物学的に活性な薬剤の候補を混ぜる工程:
(a) 哺乳動物のTIMポリペプチド;
(b) 哺乳動物のTIMポリペプチドをコードする核酸を含有する、細胞;または
(c) TIM遺伝子機能についての非ヒトトランスジェニック動物モデル;および
TIM機能に対するその薬剤の効果を決定する工程、
を包含する、方法。
(項目17)
上記生物学的に活性な薬剤が、TIMの発現を下方制御または上方制御する、項目16に記載の方法。
(項目18)
上記生物学的に活性な薬剤が、上記TIMポリペプチドの活性を阻害するかまたは上昇させる、項目16に記載の方法。
(項目19)
個体において免疫不全を診断または段階付けするための方法であって、その方法が、以下:
少なくとも1つの素因性のTIMの多型の存在についてその個体を分析する工程であって、ここで、その素因性の多型の存在が、その免疫不全に対する罹患率の増大を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目20)
個体において癌を診断または段階付けするための方法であって、その方法が、以下:
少なくとも1つの素因性のTIMの多型の存在についてその個体を分析する工程であって、ここで、その素因性の多型の存在が、癌治療に対する耐性の増大を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目21)
個体において癌を診断または段階付けするための方法であって、その方法が、以下:
少なくとも1つの素因性のTIM−1発現プロフィールの存在についてその個体を分析する工程であって、ここで、そのTIM−1の発現プロフィールが、癌治療に対する耐性の増大を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目22)
個体において癌を診断または段階付けするための方法であって、その方法が、以下:
少なくとも1つの素因性のTIM−4発現プロフィールの存在についてその個体を分析する工程;ここで、そのTIM−4の発現プロフィールが、癌治療に対する耐性の増大を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目23)
個体において免疫学的障害を処置するための方法であって、その方法が、以下:
TIMポリペプチドの機能を調節する薬剤を、その個体に投与する工程、
を包含する、方法。
(項目24)
上記TIMポリペプチドが、TIM−1またはTIM−4である、項目23に記載の方法。
(項目25)
上記薬剤が、TIM−1に特異的な抗体または抗体フラグメントである、項目24に記載の方法。
(項目26)
上記薬剤が、TIM−1機能を阻害する化合物である、項目24に記載の方法。
(項目27)
上記免疫学的障害が喘息である、項目24に記載の方法。
(項目28)
上記免疫学的障害がアレルギーである、項目24に記載の方法。
(項目29)
上記免疫学的障害が湿疹である、項目24に記載の方法。
(項目30)
上記免疫学的障害が自己免疫疾患である、項目24に記載の方法。
(項目31)
上記薬剤が、TIM−4に特異的な抗体または抗体フラグメントである、項目23に記載の方法。
(項目32)
上記薬剤が、TIM−4の機能を阻害する化合物である、項目30に記載の方法。
(項目33)
個体において悪性腫瘍を処置するための方法であって、その方法が、以下:
TIMポリペプチドの機能を調節する薬剤を、その個体に投与する工程、
を包含する、方法。
(項目34)
上記TIMポリペプチドがTIM−1である、項目33に記載の方法。
(項目35)
上記薬剤が、TIM−1に特異的な抗体または抗体フラグメントである、項目34に記載の方法。
(項目36)
上記薬剤が、TIM−1の機能を阻害する化合物であり、そして化学療法剤または放射線治療の効果を増強する、項目35に記載の方法。
(項目37)
上記TIMポリペプチドがTIM−4である、項目33に記載の方法。
(項目38)
上記薬剤が、TIM−4に特異的な抗体または抗体フラグメントである、項目37に記載の方法。
(項目39)
上記薬剤が、TIM−4の機能を阻害する化合物であり、そして化学療法剤または放射線治療の効果を増強する、項目38に記載の方法。
【0009】
免疫機能および細胞の生存に関連するポリペプチドをコードする遺伝子ファミリーの遺伝配列が提供される。これらの遺伝子は、本明細書中でT細胞免疫グロブリンドメインタンパク質およびムチンドメイン(TIM)タンパク質と呼ぶ、保存されたIgVおよびムチンドメインを有する細胞表面分子をコードする。TIMファミリーを含む遺伝子座は、喘息を含む免疫機能不全と遺伝的に関連する。さらに、TIM遺伝子ファミリーは、悪性腫瘍および脊髄形成異常症候群において通常欠失しているヒト第5染色体の領域に位置している。TIM−1、TIM−3およびTIM−4において多型が同定され、それはTh1/Th2分化および気道過剰応答性(AHR)と関連し得る。
【発明の効果】
【0010】
核酸組成物を使用してコードされたタンパク質を産生し、それを機能的研究のために、治療薬として、および関連する生理学的経路の研究において採用し得る。核酸、抗体などを含むTIM特異的結合因子は、アトピーおよび喘息に対する遺伝的感受性を決定する診断薬として、そして癌治療に対する腫瘍抵抗性を評価する診断薬として有用である。TIM阻害薬は、免疫機能不全、および悪性腫瘍を含む細胞生存の障害の処置において治療薬として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施形態の詳細な説明)
喘息に対する感受性を含む、免疫機能に関連する遺伝配列が提供される。マウスTim−1、Tim−2、Tim−3およびTim−4の配列、およびヒトの対応する配列が、本明細書中で提供される。主要な多型の配列も提供される。遺伝配列は、欠失を含むこれらの多型は、スプライシング改変体ではなく、真の多型であることを示す。TIM−1およびTIM−3配列の改変体は、気道過剰応答性およびアレルギー性T細胞応答と関連しており、そして他の改変体はこれらの応答に対する保護に関連する。
【0012】
TIM遺伝子ファミリーメンバーの細胞外ドメインは、2つのドメイン(IgVドメインおよびムチンドメイン)を含む。このIg/ムチン構造はMAdCAM(粘膜addressin細胞接着分子)においても見出され、これは2つのIgドメインおよび1つのムチンドメインを含む;しかし、TIMとMAdCAMとの間には低いレベルの相同性しか存在しない。同程度の相同性が、TIM−1およびTOSO(NP_005440.1 GI:4885641)、TIM−1のように活性化T細胞に発現し、そしてT細胞をFasによるアポトーシスから保護するタンパク質の間にも存在する。
【0013】
T細胞は遺伝子のTIMファミリーを発現し、それはCD4T細胞の分化を決定的に調節する。Th1細胞は優先的にTIM−3タンパク質を発現し、一方Th2細胞は選択的にTIM−1タンパク質を発現する。TIM−1は、気道過剰応答性と連結し、そしてTIM−3は自己免疫疾患と連結し、従って分化するリンパ細胞における発現パターンおよびリンパ細胞におけるTIM−1発現の動態は、これら分子の機能を反映する。
【0014】
本発明の別の局面において、TIM遺伝子座における遺伝子型を決定することによって、個体の喘息およびアトピー性疾患の発生に対する感受性を決定する方法が提供される。スクリーニングは、例えば、本明細書中で提供された、または他の方法で決定されたTIM−1対立遺伝子、TIM−3対立遺伝子またはTIM−4対立遺伝子のいずれか1つにおける多型を分析し得る。そのような多型をスクリーニングする方法、例えばSSCP分析、サイズ多型等が提供される。
【0015】
本発明の別の局面において、Tim遺伝子またはポリペプチド機能を調節する生物学的に活性な薬剤をスクリーニングする方法が提供され、ここでその方法は、生物学的に活性な候補因子を、以下のもののいずれか1つと組み合せる工程:(a)Timポリペプチド;(b)Timポリペプチドをコードする核酸を含む細胞;または(c)以下の1つを含むTim遺伝子機能の非ヒトトランスジェニック動物モデル:(i)Tim遺伝子のノックアウト;(ii)外来性および安定に遺伝するTim遺伝子配列;または(iii)リポーター遺伝子に作動可能に連結したTimプロモーター配列;および当該因子のTim機能に対する効果を決定することを含む。
【0016】
TIMポリペプチドの活性を、免疫機能を指示するために調節し得る。TIM−1はTh2細胞に優先的に発現し、そしてTIM−1活性を調節する薬剤は、アレルギー、喘息等を含むTh2に関連する疾患の治療に有用である。TIM−3はTh1細胞において優先的に発現し、そしてTIM−3活性を調節する薬剤は、自己免疫疾患、移植片拒絶等を含む炎症誘発性免疫疾患の治療に有用である。
【0017】
(目的の状態)
アトピー性疾患は、遺伝的に素因のある個体において、環境的に誘発された免疫応答の結果として発現する複雑な遺伝的形質である。アトピー性または非アトピー性の個体はどちらも同じ環境因子にさらされるが、アトピー性個体を非アトピー性個体と区別する遺伝的差異が、ある個体においてアトピー性疾患を引き起こし、気管、皮膚または胃腸管におけるアレルギー性炎症、および上昇した血清IgE、好酸球増加、およびぜん鳴、くしゃみ、またはじんましんの症状によって明らかになる。それに加えて、アレルギー性炎症応答は、高レベルのIL−4、IL−5、IL−9およびIL−13を産生するTh2リンパ球の存在によって特徴付けられ、それは好酸球、肥満細胞、好塩基球およびIgEを産生するB細胞の増殖、分化、および/または補充を増強する。
【0018】
目的のアレルゲンは、イチゴ、ピーナッツ、乳タンパク質、卵白等のような食物に見出される抗原を含む。他の目的のアレルゲンは、草の花粉、動物の鱗屑、イエダニの糞等のような、様々な空気で運ばれる抗原を含む。分子的にクローニングされたアレルゲンは、Dermatophagoides pteryonyssinus(Der P1);ライグラス花粉由来のLol pl−V;jumper ant Myrmecia pilosula由来の毒液;Apis melliferaハチ毒液ホスホリパーゼA2(PLA2)および抗原5S;スズメバチVespula maculifronsおよびクロスズメバチDolichovespula maculata由来のホスホリパーゼを含む多くの昆虫毒液;カバ花粉、ブタクサ花粉、Parol(Parietaria officinalisの主要なアレルゲン)、および交差応答性アレルゲンParjl(Parietaria judaica由来)を含む多くの花粉タンパク質、およびOlea europaea、Artemisia sp.、gramineae等を含む他の大気中花粉を含む。他の目的のアレルゲンは、吸血節足動物、例えばカ(Anopheles sp.、Aedes sp.、Culiseta sp.、Culex sp.);ハエ(Phlebotomus sp.、Culicoides sp.)特にブユ、メクラアブおよびヌカカ;ダニ(Dermacenter sp.、Ornithodoros sp.、Otobius sp.);ノミ、例えばXenopsylla、PulexおよびCtenocephalides felis felis属を含むSiphonaptera目を含む、Dipteraによって引き起こされるアレルギー性皮膚炎を引き起こすものである。特異的アレルゲンは、多糖、脂肪酸部分、タンパク質等であり得る。
【0019】
多くの相互作用/上位アトピー遺伝子における多型は、アレルギー性障害への感受性を増強させると考えられる。ゲノム範囲での走査が、アレルギーおよび喘息の様々なパラメーターを特定の遺伝子の多型DNAマーカー、通常DNAの反復配列(ジ−、トリ−およびテトラ−ヌクレオチドリピートを含むマイクロサテライト)と連結させることによって、責任遺伝子を同定しようとした。これらの研究は、アトピーの病因に関与する可能性があるとしていくつかの染色体領域を同定したが、分解能は5−10cMにすぎず、そこには典型的には数百の候補遺伝子が存在する。それにもかかわらず、2つ以上のこれらゲノム範囲での走査研究によって、喘息感受性が、染色体5q23−31、染色体6p21、染色体11q13、および染色体12q(9−13)と連結された。
【0020】
喘息は、本明細書中で定義されるように、ある期間にわたる個体における可逆的な気流の制限である。喘息は、気道壁における好酸球、肥満細胞、好塩基球、およびCD25+Tリンパ球のような細胞の存在によって特徴付けられる。様々な伝達および生物学的エフェクター性質を有するサイトカインの活性に起因して、これらの細胞間には密接な相互作用が存在する。ケモカインは細胞を炎症部位に引き寄せ、そしてサイトカインはそれらを活性化して、炎症および粘膜への損傷を引き起こす。過程の慢性化と共に、基底膜の肥厚および繊維症のような2次的な変化が起こる。その疾患は、様々な刺激に対する気道過剰応答性の増加および気道の炎症によって特徴付けられる。喘息と診断された患者は、一般的にある時間にわたってぜん鳴、喘息発作、およびメタコリンチャレンジに対する陽性応答、すなわち約4mg/ml以下のメタコリンチャレンジに対してPC20を含む複数の徴候を有する。診断ガイドラインを、例えばNational Asthma Education Program Expert Panel Guidelines for Diagnosis and Management of Asthma、National Institutes of Health、1991、Pub.No.91−3042において見出し得る。
【0021】
喘息、アレルギー性鼻炎(枯草熱)、アトピー性皮膚炎(湿疹)および食物アレルギーは、同じ家族内で起こる疾患であり、共通の遺伝的メカニズムを示唆する。これらのアトピー性疾患はきわめて罹患率が高く、一般人口の20−40%に影響し、そして主要な公衆衛生問題となっている。これら疾患の経済的コストは莫大である。喘息単独で、1996年の推定健康管理コストは140億ドルであった。それに加えて、全てのアトピー性疾患の罹患率は、まだ明らかでない理由のために、過去20年間の間に産業化諸国において劇的に増加した。数字が最も正確である、産業化諸国における喘息の罹患率は、1982年から倍増し、そして2020年までに罹患率が再び倍増すると予測される。
【0022】
Th1型T細胞に関連する炎症誘発性疾患は、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、I型糖尿病等のような自己免疫疾患を含む。(RA)は世界人口の0.8%に影響する、慢性自己免疫炎症性滑膜炎である。RAの現在の治療は、免疫機能を非特異的に抑制または調節する治療薬を利用する。最近開発されたTNFαアンタゴニストを含むそのような治療は、根本的に治癒力のあるものではなく、そして疾患の活性は治療の中断後すぐに戻る。全身性免疫抑制または調節を引き起こさない、根本的に治癒力のある治療の非常に大きな臨床的ニーズが存在する。
【0023】
IFNガンマを分泌し得るミエリン−自己応答性T細胞の定量的増加が、MSおよびEAEの病因に関連し、MS患者の末梢血における自己免疫誘導剤/ヘルパーTリンパ球が、MS患者における脱髄過程を開始および/または調節し得ることを示唆する。その明白な疾患は、筋肉の虚弱、腹部反射の喪失、視覚の欠損、および感覚異常と関連する。前駆症状の期間中、リンパ球の脳脊髄液への浸透、炎症および脱髄が存在する。
【0024】
IDDMは、インスリン分泌β細胞の破壊および明らかな高血糖を引き起こす、細胞媒介性自己免疫疾患である。Tリンパ球がランゲルハンス島に侵入し、そしてインスリン産生β細胞を特異的に破壊する。β細胞の涸渇により、血液中のグルコースレベルを調節できなくなる。疾患の進行を、家族歴および遺伝的分析によって感受性であると診断された個体においてモニターし得る。最も重要な遺伝的効果は、主要組織適合性遺伝子座(IDDM1)の遺伝子で見られるが、インスリン遺伝子領域(IDDM2)を含む他の遺伝子座も、疾患との連結を示す(Daviesら、前出およびKennedyら(1995)Nature Genetics 9:293−298を参照のこと)。
【0025】
(遺伝子ファミリー)
提供されるTIMファミリー遺伝子およびそのフラグメント、コードするタンパク質、ゲノム調節領域、および特異的抗体は、喘息を発現するまたは抵抗する素因のある個体の同定に、および予防的および治療的目的のためにインビボで遺伝子活性を調節するために有用である。コードされたタンパク質は、特異的抗体を惹起する免疫原として、タンパク質の変化した形式を含む、活性または発現を模倣または調節する組成物の薬剤スクリーニングにおいて、および治療薬として有用である。
【0026】
TIMファミリー遺伝子は、介在遺伝子なしに、TIM−4、TIM−1、TIM−3の順番で、ヒト第5染色体上でお互いにすぐ隣接している。ヒト第5染色体のこのセグメントは、悪性腫瘍および脊髄形成異常症候群におけるような形成異常細胞集団でよく欠失する(Boultwoodら(1997)Genomics 45:88−98を参照のこと)。第5染色体、第12染色体、および第19染色体上にTIM偽遺伝子が存在する。TIM−4以外の各TIMタンパク質は、明らかな予測されるチロシンシグナル伝達モチーフを含む。TIM−1の細胞質領域は、2つのチロシン残基を含み、そして高度に保存されたチロシンキナーゼリン酸化モチーフ、RAEDNIYを含む。拡大領域、SRAEDNIYIVEDRPは、予測されるItkリン酸化およびEGFレセプターリン酸化部位を含む。
【0027】
マウスTim1遺伝子は、305アミノ酸の膜タンパク質をコードする。TIM−1の細胞質領域は、2つのチロシン残基を含み、そして高度に保存されたチロシンキナーゼリン酸化モチーフ、RAEDNIYを含む。TIM−1のムチンドメインは、複数のO−結合グリコシル化部位を有し、そして免疫グロブリンドメインに2つのN−結合グリコシル化部位が見出される。
【0028】
同様の305アミノ酸膜タンパク質であるマウスTIM−2は、マウスTIM−1に対して64%の同一性、ラットKIM−1に対して60%の同一性、そしてhHAVcr−1に対して32%の同一性を有する。TIM−1と同様、TIM−2は2つの細胞外N−結合グリコシル化部位および、多くのO−結合グリコシル化部位を有するセリン、スレオニンリッチなムチンドメインを有する。TIM−2はまた、細胞内チロシンキナーゼリン酸化モチーフ、RTRCEDQVYを有する。
【0029】
Tim3は、マウスにおいて281アミノ酸の膜タンパク質、そしてヒトにおいて301アミノ酸のタンパク質をコードし、それらは複数の細胞外グリコシル化部位および細胞内チロシンリン酸化モチーフを有する、同様の膜貫通糖タンパク質構造を有する。TIM−3においてムチンドメインはTIM−1およびTIM−2におけるほど顕著ではないが、T細胞に発現したTIM−3はAPCのリガンドと相互作用し、そしてAPC活性化を変化させる。TIM−3は4つのN−結合および5つのO−結合グリコシル化部位を有し、TIM−3は、TIM−1およびTIM−2と同様、多くグリコシル化されており、そして抗原提示細胞のような他の細胞に存在するリガンドと相互作用し得ることを示唆する。
【0030】
Tim4は、マウスにおいて344アミノ酸のタンパク質、そしてヒトにおいて378アミノ酸のタンパク質をコードする。予測されるTIM−4はまた、高度に保存されたシステイン残基を有するIgV様ドメイン、スレオニンリッチなムチンドメイン、および短い細胞内テイルを有し、他のTIMタンパク質の一般的な膜糖タンパク質構造モチーフを共有する。
【0031】
マウス配列の多型を、BALB/cおよびHBA/DBA株に関して配列表で提供する。TIM−1において、これらの多型は3つのアミノ酸の差異およびHBA/DBAにおける15個のアミノ酸欠失をコードする。7つの予測されるアミノ酸の差異がTIM−3で同定された。TIM−1およびTIM−4における多型は、シグナルおよびムチン様ドメインに位置し、一方TIM−3で同定された多型はIgドメインに集中している。
【0032】
ヒトTim1のコード領域における改変体を、配列表および図8で提供する。変異は、65%の染色体で観察される挿入(多型1と名称をつける)、157insMTTTVP、および65%の染色体で観察される欠失(多型5)、187△Thrを含む。他の多型は、T140A(多型7);V161A(多型2);V167I(多型3);T172A(多型4);N258D(多型6)である。多型4は、40%の染色体で観察され、そして他の多型はそれぞれ≦5%の染色体で観察された。これら変異のほとんどは(2−6)、最初のムチンをコードするエキソンであるエキソン3に位置し、そして全ての改変体はゲノムレベルで起こり、そしてスプライシング改変体ではない。Tim1と喘息感受性との間の関連は、ダニ感受性小児喘息の、Tim1から約0.5メガベースであるマーカー、D5S820に対する有意な連結(平均LODスコア=4.8)の報告によってさらに支持される。
【0033】
ヒト組織において、4.4kbのTIM−1 mRNAがほとんど全ての組織に存在するが、ほとんどにおいてかすかなものである。5.5kbのバンドが結腸および肝臓で観察された。7.5kbのバンドが脾臓、胸腺、および末梢血白血球で観察され、そしてより小さい4.4kbのバンドがいくつかの臓器で観察された。TIM−1 mRNAは、異なる細胞集団において、代わりの(alternate)5’非翻訳領域とともに発現する。低酸素および虚血が、上皮細胞においてTIM−1の発現を誘導し、そして照射がTIM遺伝子ファミリーmRNAの発現を誘導する。TIM遺伝子は腫瘍標本において発現している。ヒトTIM−4 mRNAは、神経膠芽腫組織において発現し、そしてそれはまた分裂促進物質で刺激した、または照射末梢血単球において検出される。
【0034】
1つの局面において、本発明は、TIM−1タンパク質、TIM−2タンパク質、TIM−3タンパク質もしくはTIM−4タンパク質、またはそれらのホモログもしくは改変体をコードする配列を含む、天然に存在する染色体以外の単離核酸分子を提供し、その改変体は気道過剰応答性およびアレルギー性T細胞応答に対する感受性と関連し得る。その核酸を、同一源または異種由来の宿主細胞において発現するために、ベクターおよび/または調節配列に作動可能に連結し得る。そのような宿主細胞は、コードされたタンパク質の産生に有用であり得る。本発明の別の局面において、TIM−1タンパク質、TIM−2タンパク質、TIM−3タンパク質もしくはTIM−4タンパク質、またはそれらのホモログもしくは改変体の精製ポリペプチドが提供され、その改変体は気道過剰応答性およびアレルギー性T細胞応答に対する感受性と関連し得る。別の局面において、TIM−1ポリペプチド、TIM−2ポリペプチド、TIM−3ポリペプチドもしくはTIM−4ポリペプチドに結合する抗体または他の特異的結合メンバーが提供される。
【0035】
ヒトおよびマウスTIM配列の配列が、以下のように配列表で提供される:
【0036】
【表1】
TimポリペプチドをコードするDNA配列は、cDNAまたはゲノムDNAあるいはそのフラグメントであり得る。プローブ、ポリペプチドの産生等のための目的のフラグメントは、1つ以上の多型残基を含み得る。Tim遺伝子という用語は、特定のTimポリペプチド、イントロンのいずれか1つをコードするオープンリーディングフレーム、ならびにコード領域を越えて約1kbまでの、しかしあるいはどちらかの方向にさらに遠くまで、発現の調節に関与する隣接する5’および3’非コードヌクレオチド配列を意味することが意図される。その遺伝子を、染色体外での維持または宿主への組込みのために適切なベクターに導入し得る。
【0037】
いくつかの実施形態において、Tim遺伝子配列は、配列表に示されるようなヒトTIM−1対立遺伝子1以外、および/またはマウスTIM−3 DBA対立遺伝子以外である。
【0038】
本明細書中で使用される「cDNA」という用語は、ネイティブの成熟mRNA種で見出される配列エレメントの配置を共有する全ての核酸を含むよう意図され、ここで配列エレメントはエキソンならびに3’および5’非コード領域である。通常mRNA種は連続的なエキソンを有し、間にあるイントロンは核RNAスプライシングによって除去されてTimタンパク質をコードする連続的なオープンリーディングフレームを作製する。
【0039】
目的のゲノム配列は、列挙した配列で規定されたような、天然染色体において通常存在する全てのイントロンを含む、開始コドンおよび停止コドンの間に存在する核酸を含む。それはさらに、成熟mRNAで見出される3’および5’非翻訳領域を含み得る。それはさらに、約1kb、しかしあるいはより長い、転写領域の5’または3’末端のいずれかの隣接したゲノムDNAを含む、プロモーター、エンハンサー等のような、特異的転写配列および翻訳調節配列を含み得る。ゲノムDNAを100kbpまたはより小さいフラグメントとして単離し得る;そして本質的に側面の染色体配列を含まない。
【0040】
5’領域の配列、ならびにさらに5’上流配列および3’下流配列を、エンハンサー結合部位を含むプロモーターエレメントのために利用し得、それはTim遺伝子が発現する組織における発現を提供する。組織特異的発現は、発現パターンを決定するために、およびネイティブの発現パターンを模倣するプロモーターを提供するために有用である。プロモーター領域に天然に存在する多型は、天然の発現における変異、特に疾患と関連し得るものを決定するために有用である。あるいは、突然変異をプロモーター領域に導入して、実験的に定義されたシステムにおいて変化した発現の効果を決定し得る。転写因子の結合に関与する特異的DNAモチーフを同定する方法、例えば公知の結合モチーフに対する配列類似性、ゲル遅延研究等が、当該分野で公知である。例えば、Blackwellら(1995)Mol Med 1:194−205;Mortlockら(1996)Genome Res.6:327−33;ならびにJoulinおよびRichard−Foy(1995)Eur J Biochem 232:620−626を参照のこと。
【0041】
調節配列を使用して、特に異なる組織または発達段階におけるTIM発現の転写または翻訳調節に必要なシス作用配列を同定し得、そしてTIM発現を調節または媒介するシス作用配列およびトランス作用因子を同定し得る。そのような転写調節領域または翻訳調節領域を、野生型または変化したTIMまたは他の目的のタンパク質の、培養細胞、または胚、胎児組織もしくは成人組織における発現を促進するために、および遺伝子治療のためにTIM遺伝子に操作可能に連結し得る。
【0042】
本発明の核酸組成物は、本ポリペプチドの全てまたは一部をコードし得る。伝統的な方法によってオリゴヌクレオチドを化学的に合成することによって、制限酵素消化によって、PCR増幅等によって、DNA配列のフラグメントを得ることができる。ほとんどの場合、DNAフラグメントは少なくとも15nt、通常少なくとも18nt、より通常には少なくとも約50ntである。そのような小さいDNAフラグメントは、PCR、ハイブリダイゼーションスクリーニング等のプライマーとして有用である。より大きなDNAフラグメント、すなわち100ntより大きなものは、コードされたポリペプチドの産生に有用である。PCRのような増幅反応で使用するために、1対のプライマーを使用する。プライマー配列の正確な組成は、本発明に決定的にではないが、ほとんどの適用に関して、プライマーは、当該分野で公知であるように、ストリンジェントな条件下で本配列にハイブリダイズする。少なくとも約50nt、好ましくは少なくとも約100ntの増幅産物を産生する1対のプライマーを選択することが好ましい。プライマー配列を選択するためのアルゴリズムは一般的に公知であり、そして市販のソフトウェアパッケージで入手可能である。増幅プライマーはDNAの相補鎖にハイブリダイズし、そしてお互いに向かって初回刺激する。
【0043】
TIM遺伝子は、実質的な純度で、一般的にインタクトな哺乳動物染色体以外として単離され、そして得られる。通常、DNAは、TIM配列またはそのフラグメントを含まない他の核酸配列を実質的に含まないで得られ、一般的に少なくとも約50%、通常少なくとも約90%の純度であり、そして典型的には「組換え体」であり、すなわち天然に存在する染色体で通常関連しない1つ以上のヌクレオチドに隣接する。
【0044】
DNA配列を様々な方法で使用する。それらを、TIM関連遺伝子を同定するプローブとして使用し得る。哺乳動物ホモログは本配列と実質的な配列類似性、すなわち本DNA配列のヌクレオチド配列と少なくとも75%、通常少なくとも90%、より通常には少なくとも95%の配列同一性を有する。配列類似性を、保存されたモチーフ、コード領域、隣接領域等のような、より大きな配列のサブセットであり得る参照配列に基づいて計算する。参照配列は通常、少なくとも約18nt長、より通常には少なくとも約30nt長であり、そして比較される完全な配列まで伸長し得る。Altschulら(1990)J Mol Biol 215:403−10で記載されたBLASTのような、配列分析のためのアルゴリズムが、当該分野で公知である。
【0045】
配列類似性を有する核酸を、低いストリンジェンシー条件下例えば50℃で10×SSC(0.9Mの生理食塩水/0.09Mのクエン酸ナトリウム)でのハイブリダイゼーションによって検出し、そして55℃で1×SSCでの洗浄にかけた場合に結合したままにする。配列同一性をストリンジェントな条件下、例えば50℃またはより高く、および0.1×SSC(9mMの生理食塩水/0.9mMのクエン酸ナトリウム)でのハイブリダイゼーションによって決定し得る。プローブ、特にDNA配列の標識プローブを使用することによって、ホモログまたは関連遺伝子を単離し得る。相同的遺伝子の供給源はあらゆる種、例えば霊長類種、特にヒト;ラットおよびマウスのようなげっ歯類、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウマ、酵母、Drosophila、Caenhorabditis等であり得る。
【0046】
そのDNAをまた、生物学的標本における遺伝子の発現を同定するために使用し得る。ゲノムDNAまたはRNAのような特定のヌクレオチド配列の存在に関して細胞をプローブする方法は、文献においてよく確立されており、そしてここで詳述する必要はない。mRNAを細胞サンプルから単離する。mRNAを、逆転写酵素を用いてRT−PCRによって増幅し、相補的DNA鎖を形成し得、続いて本DNA配列に特異的なプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応増幅を行なう。あるいは、mRNAサンプルをゲル電気泳動によって分離し、適当な支持体、例えばニトロセルロース、ナイロン等に移動させて、そして次いでプローブとして本DNAのフラグメントを用いてプローブする。オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、インサイチュハイブリダイゼーション、および固体チップ上に整列したDNAプローブへのハイブリダイゼーションのような他の技術も有用であり得る。本配列にハイブリダイズするmRNAの検出は、サンプルにおけるTIM遺伝子の発現を示す。
【0047】
本核酸配列を、特にそれらを細胞内で使用する場合、例えば遺伝子切断等のために核酸切断薬剤(例えば鉄またはクロムのようなキレート化金属)を結合させることによって、多くの目的のために修飾し得る。
【0048】
隣接プロモーター領域およびコード領域を含むTIM遺伝子座の配列を、当該分野で公知の様々な方法で突然変異させて、プロモーターの強さ、コードされるタンパク質の配列等における標的化変化を産生し得る。DNA配列またはそのような変異の産物は、本明細書中で提供される配列と本質的に同様である、すなわち少なくともそれぞれ1ヌクレオチドまたはアミノ酸が異なる、そして少なくとも2つ、しかし約10以下のヌクレオチドまたはアミノ酸が異なり得る。配列変化は、置換、挿入または欠失であり得る。欠失はさらに、ドメインまたはエキソンの欠失のような、より大きな変化を含み得る。他の目的の修飾は、例えばFLAGシステム、HA等を用いたエピトープタグ化を含む。細胞レベル下での局在の研究のために、グリーン蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質を使用し得る。そのような変異遺伝子を使用して、TIMポリペプチドの構造−機能相関を研究し得るかまたはその機能もしくは調節に影響を与えるタンパク質の性質を変化させ得る。例えば、構成的に活性な転写因子、または転写を活性化することなくTIM DNA標的部位に結合するドミナントネガティブに活性なタンパク質を、この方法で作成し得る。
【0049】
クローニングされた遺伝子のインビトロ突然変異生成技術は公知である。変異を調査するプロトコルの例は、Gustinら、Biotechniques 14:22(1993);Barany、Gene 37:111−23(1985);Colicelliら、Mol Gen Genet 199:537−9(1985);およびPrentkiら、Gene 29:303−13(1984)において見出され得る。部位特異的突然変異生成の方法は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、CSH Press 1989 15.3−15.108頁;Weinerら、Gene 126:35−41(1993);Sayersら、Biotechniques 13:592−6(1992);JonesおよびWinistorfer、Biotechniques 12:528−30(1992);Bartonら、Nucleic Acids Res 18:7349−55(1990);MarottiおよびTomich、Gene Anal Tech 6:67−70(1989);およびZhu Anal Biochem 177:120−4(1989)において見出され得る。
【0050】
アレイは、1つのサンプルにおいて多くのポリヌクレオチドをアッセイし得るハイスループット技術を提供する。本発明の1つの局面において、1つ以上のTIM遺伝子、タンパク質、または抗体を含む、好ましくはこれらの配列全てを含むアレイを構築し、そのアレイはさらにT細胞、単球等で上方制御または下方制御されることが公知の他の配列を含み得る。この技術を、差次的発現、または遺伝子型同定を試験する道具として使用し得る。ポリヌクレオチドプローブを、二次元マトリックスまたは結合したプローブを有するアレイに、基質(例えばガラス、ニトロセルロース等)に配置することによって、アレイを作成し得る。プローブを、共有結合または、疎水性相互作用のような非特異的相互作用のいずれかによって基質に結合し得る。アレイの構築技術およびそれらのアレイを使用する方法は、例えばSchenaら(1996)Proc Natl Acad Sci USA 93(20):10614−9;Schenaら(1995)Science 270(5235):467−70;Shalonら(1996)Genome Res.6(7):639−45;USPN5,807,522、EP799897;WO97/29212;WO97/27317;EP785280;WO97/02357;USPN5,593,839;USPN5,578,832;EP728520;USPN5,599,695;EP721016;USPN5,556,752;WO95/22058;およびUSPN5,631,734に記載されている。
【0051】
アレイにおいて利用されるプローブは、様々な型であり得、そして例えば比較的短い長さの(例えば20マーまたは25マー)合成プローブ、cDNA(全長または遺伝子のフラグメント)、増幅DNA、DNAのフラグメント(例えば制限酵素によって産生される)および逆転写DNAを含み得る。あつらえたアレイおよび一般的なアレイの両方を、差次的発現レベルの検出に利用し得る。あつらえたアレイを、特定の前もって選択したmRNA遺伝子配列の部分配列またはそれらから調製した増幅産物にハイブリダイズするプローブを用いて調製し得る。
【0052】
アレイを、例えば遺伝子の差次的発現を調査するために、および遺伝子機能を決定するために使用し得る。例えば、アレイをTIM遺伝子における差次的発現、または多型配列の発現を検出するために使用し得る。アレイの例示的な使用が、例えばPappalaradoら(1998)Sem.Radiation Oncol.8:217;およびRamsay(1998)Nature Biotechnol.16:40においてさらに記載されている。さらに、アレイを用いた検出方法の多くのバリエーションが、当該分野の技術の範囲内および本発明の範囲内である。例えば、プローブを固体支持体に固定化するよりも、試験サンプルを固体支持体に固定化し得、それを次いでプローブと接触させる。発現分析におけるマイクロアレイの使用に関するさらなる議論は、例えばDugganら、Nature Genetics Supplement 21:10−14(1999);Bowtell、Nature Genetics Supplement 21:25−32(1999);BrownおよびBotstein、Nature Genetics Supplement 21:33−37(1999);Coleら、Nature Genetics Supplement 21:38−41(1999);DebouckおよびGoodfellow、Nature Genetics Supplement 21:48−50(1999);Bassett,Jr.ら、Nature Genetics Supplement 21:51−55(1999);およびChakravarti、Nature Genetics Supplement 21:56−60(1999)において見出され得る。
【0053】
薬理遺伝学は、個人の遺伝子型およびその個人の治療薬に対する代謝または反応能力の間の連関である。代謝または標的感受性における差異が、薬物の生物活性投与量および血液濃度の間の関係を変化させることによって、重篤な毒性または治療の失敗を引き起こし得る。過去数年間の間に、多くの研究が代謝酵素または薬物標的における多型と応答および毒性両方との間に強い関係を確立した。これらの関係を使用して、治療投与量を個別化し得る。
【0054】
多型対立遺伝子の遺伝子型決定を使用して、個人が特定の治療レジメンによく応答するかどうかを評価する。多型配列をまた、薬物スクリーニングアッセイにおいて使用して、候補治療剤の投与量および特異性を決定する。候補TIM多型を標的治療でスクリーニングして、喘息治療における有効性に影響があるかどうかを決定する。薬物スクリーニングアッセイを、上記で記載したように行なう。典型的には2つまたはそれ以上の異なる配列多型を、治療への応答に関して試験する。
【0055】
本遺伝子を、完全なTIMタンパク質、またはそのポリペプチドフラグメント、特に機能的ドメイン;結合部位等に対応するフラグメントを、および本ポリペプチドの他のタンパク質またはその一部との融合を含んで、合成するために採用し得る。発現のために、誘導的または構成的であり得る、転写開始領域および翻訳開始領域を提供する、発現カセットを使用し得、ここでコード領域は転写開始領域ならびに転写停止領域および翻訳停止領域の転写調節下に作動可能に連結される。発現宿主で機能的な様々な転写開始領域を使用し得る。
【0056】
TIMポリペプチドのフラグメントである、特に目的のポリペプチドは、TIMポリペプチドの特定のドメインを含み、ここでドメインは例えば細胞外ドメイン、または細胞外ドメイン中のドメイン:ムチンドメインおよび/もしくはIgドメインを含み得る。ドメインはまた、細胞質ドメイン、例えばチロシンキナーゼリン酸化モチーフ、RAEDNIY、または拡大領域、SRAEDNIYIVEDRPを含むフラグメントを含み得る。可溶性スプライス改変体によってコードされるポリペプチドもまた目的のものである。Igドメインの配列は以下のとおりである:ヒトTIM−1 Igドメイン、配列番号第17、19、21、23、25、27番、残基21−126;ヒトTIM−3 Igドメイン、配列番号第29および31番、残基22−131;ヒトTIM−4 Igドメイン、配列番号第33および35番、残基25−133;マウスTIM−1 Igドメイン、配列番号第1および3番、残基21−129;マウスTIM−2 Igドメイン、配列番号第7番、残基22−128;マウスTIM−3 Igドメイン、BALB/c対立遺伝子、配列番号第9番、残基22−132;マウスTIM−3 Igドメイン、DBA/2対立遺伝子、配列番号第11番、残基22−132;マウスTIM−4 Igドメイン、配列番号第13および15番、残基25−135。
【0057】
機能的に等価なポリペプチドが有用であり得、ここで等価なポリペプチドは、サイレントな変化を引き起こす、アミノ酸残基の欠失、付加、または置換を含み得、従って経路遺伝子産物に対して異なって発現される機能的に等価なものを産生する。アミノ酸置換を、関与する残基の極性、荷電、可溶性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質における類似性に基づいて行ない得る。本明細書中で使用される「機能的等価物」は、TIM遺伝子によってコードされるポリペプチドと本質的に同様のインビボ活性を示し得るタンパク質を指す。
【0058】
ポリペプチドを、発現の目的によって、伝統的な方法によって原核生物または真核生物で発現し得る。タンパク質の大規模産生のために、E.coli、B.subtilis、S.cerevisiaeのような単細胞有機体、または脊椎動物、特に哺乳動物のようなより高等な有機体の細胞、例えばCOS7細胞を、発現宿主細胞として使用し得る。多くの状況において、TIM遺伝子を哺乳動物細胞で発現することが望ましくあり得、ここでTIM遺伝子は、天然のフォールディングおよび翻訳後修飾から利益を受ける。特異的ペプチドエピトープ、ドメイン等を含む小さいペプチドをまた、研究室で合成し得、ここでペプチドは通常少なくとも約8アミノ酸の長さ、より通常には少なくとも約20アミノ酸の長さ、完全なドメインまで、そして全長タンパク質である。ペプチドは、タンパク質の多型領域を含み得る。融合タンパク質も含まれ、ここでTIMタンパク質の全てまたはフラグメントを、異種由来のポリペプチド、例えばグリーン蛍光タンパク質、抗体Fc領域、ポリヒスチジン等に融合する。
【0059】
哺乳動物宿主細胞において、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等を含む、多くのウイルスに基づく発現システムを使用し得る。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合には、目的のコード配列をアデノウイルス転写/翻訳調節コントロール複合体、例えば後期プロモーターおよび3つに分かれた(tripartite)リーダー配列にライゲーションし得る。このキメラ遺伝子を次いでインビトロまたはインビボ組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入し得る。ウイルスゲノムの重要でない領域(例えばE1領域またはE3領域)における挿入は、生存可能であり、そして感染宿主において差次的に発現されるタンパク質または経路遺伝子タンパク質を発現し得る組換えウイルスを生じる。
【0060】
遺伝子の効率的な翻訳のために、特異的な開始シグナルも必要であり得る。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接する配列を含む。それ自身の開始コドンおよび隣接配列を含む完全な遺伝子が、適切な発現ベクターに挿入される場合には、さらなる翻訳制御シグナルは必要でないかもしれない。しかし、配列をコードする遺伝子の一部しか挿入されない場合には、外来性の翻訳制御シグナルを提供しなければならない。これらの外来性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然および合成どちらも、様々な起源であり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーター等を含むことによって増強され得る。
【0061】
発現宿主を使用することによって、ポリペプチドを大量に入手可能なら、ポリペプチドを伝統的な方法によって単離および精製し得る。発現宿主の溶解物を調製し得、そして溶解物をHPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、または他の精製技術を用いて精製し得る。精製ポリペプチドは、一般的には少なくとも約80%純粋、好ましくは少なくとも約90%純粋、そして100%純粋までおよび100%純粋を含み得る。純粋は、他のタンパク質、および細胞の破片を含まないことを意味する。
【0062】
ポリペプチドを、直接的または間接的いずれかで標識し得る。125Iのような放射性同位体;基質に曝露した場合に検出可能な比色定量シグナルまたは光を産生する酵素標識システム;および蛍光標識を含むがこれに限らない、様々な適当な標識システムのいずれかを使用し得る。間接的な標識は、目的のポリペプチドに特異的に結合する、標識抗体のようなタンパク質の使用を含む。そのような抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、FabフラグメントおよびFab発現ライブラリーによって産生されるフラグメントを含むがこれに限らない。
【0063】
(特異的結合メンバー)
本明細書中で使用される場合、「特異的結合メンバー」または「結合メンバー」という用語は、特異的な結合対、すなわち2つの分子、通常2つの異なる分子のメンバーを指し、ここで分子の1つ(すなわち第1の特異的結合メンバー)が、化学的または物理的手段で他の分子(すなわち第2の特異的結合メンバー)に特異的に結合する。特異的結合対の相補的なメンバーは、リガンドおよびレセプター;またはレセプターおよびカウンターレセプター(counter−receptor)と呼ばれることもある。本発明の目的のために、例えばアッセイが公知の結合対の結合を妨害する化合物を検出することに向けられる場合、2つの結合メンバーはお互いに結合することが公知であり得る。あるいは、目的の化合物の結合パートナーであることが予想される候補化合物を使用し得る。
【0064】
目的の特異的結合対は、炭水化物およびレクチン;相補的ヌクレオチド配列;ペプチドリガンドおよびレセプター;エフェクターおよびレセプター分子;ホルモンおよびホルモン結合タンパク質;酵素補助因子および酵素;酵素インヒビターおよび酵素;脂質および脂質結合タンパク質等を含む。特異的結合対は、もとの特異的結合メンバーのアナログ、誘導体、およびフラグメントを含み得る。例えば、レセプターおよびリガンド対は、ペプチドフラグメント、化学的に合成したペプチド模倣物、標識タンパク質、誘導体化タンパク質等を含み得る。
【0065】
好ましい実施形態において、特異的結合メンバーは抗体である。「抗体」または「抗体部分」という用語は、エピトープに適合およびエピトープを認識する特異的な形状を有する任意のポリペプチド鎖を含む分子構造を含むように意図され、ここで1つ以上の非共有結合相互作用が、分子構造とエピトープとの間の複合体を安定化する。TIMタンパク質の1つに特異的に結合する抗体を、抗TIMと呼ぶ。原型の抗体分子は免疫グロブリンであり、そして全ての供給源、例えばヒト、げっ歯類、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、他の哺乳動物、ニワトリ、他の鳥類等由来の、全ての型の免疫グロブリン、IgG、IgM、IgA、IgE、IgD等が、「抗体」であると考えられる。本発明で利用される抗体は、ポリクローナル抗体であり得るが、細胞培養によってまたは組換え的に複製し得、そしてその抗原性を抑制するために修飾し得るので、モノクローナル抗体が好ましい。
【0066】
ポリクローナル抗体を、標準的なプロトコルによって、産生動物にポリペプチドまたはインビボで発現したcDNAであり得る抗原性組成物を注射することによって産生し得る。例えばHarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、1988を参照のこと。タンパク質全体、またはタンパク質のより大きな部分を利用する場合、産生動物をタンパク質および適切なアジュバント(例えばフロイント、完全フロイント、水中油型エマルジョン等)で免疫することによって抗体を産生し得る。より小さいペプチドを利用する場合、ペプチドをより大きな分子に結合して免疫刺激性の結合物を作成することが有利である。そのような利用のために市販で入手可能な、よく利用される結合タンパク質は、ウシ血清アルブミン(BSA)およびカサガイヘモシアニン(KLH)を含む。多型残基のような特定のエピトープに対して抗体を産生するために、全長配列由来のペプチドを利用し得る。免疫原を、好ましくは前もって決定した1回またはそれ以上の追加免疫を含むスケジュールによって、動物宿主に注射し、そして動物は定期的に採血される。次いでポリクローナル抗体をそのような抗血清から、例えば適切な固体支持体に結合したポリペプチドを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって精製し得る。
【0067】
あるいは、モノクローナル抗体に関しては、接種動物の脾臓由来のような、刺激免疫細胞を単離することによって、ハイブリドーマを形成し得る。次いでこれらの細胞を、骨髄腫細胞または形質転換細胞のような不死化細胞と融合し、それらを細胞培養中で無限に複製し得、それによって不死の、免疫グロブリン分泌細胞株を産生する。利用される不死細胞株は、好ましくはある栄養素の利用に必要な酵素に欠損があるものが選択される。多くのそのような細胞株(骨髄腫など)が当業者に公知であり、そして例えばチミジンキナーゼ(TK)またはヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)を含む。これらの欠損は、それらの例えばヒポキサンチンアミノプテリンチミジン培地(HAT)上で増殖する能力によって融合細胞を選択することを可能にする。
【0068】
好ましくは、利用される不死融合パートナーは、免疫グロブリンを分泌しない株由来である。得られた融合細胞、またはハイブリドーマを、非融合細胞ではなく融合細胞の生存を可能にする条件下で培養し、そしてできたコロニーを、望ましいモノクローナル抗体の産生に関してスクリーニングする。大量の抗体を産生するために、そのような抗体を産生するコロニーをクローニング、発展、および増殖させる。KohlerおよびMilstein、1975 Nature 256:495(その開示は本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0069】
次いで、クローンをマウスの腹腔に注射し、そこから腹水を回収することによって、分泌ハイブリドーマ由来の大量のモノクローナル抗体を産生し得る。好ましくはプリスタン、または他の腫瘍プロモーターで初回刺激され、そして化学的にまたは照射によって免疫抑制されたマウスは、当該分野で公知の様々な適当なかぶのいずれかであり得る。腹水をマウスから回収し、そしてモノクローナル抗体をそこから、例えばCMセファロースカラムまたは他のクロマトグラフィー手段によって精製する。あるいは、ハイブリドーマをインビトロで、または懸濁培養として培養し得る。バッチ、連続培養、または他の適当な培養処理を利用し得る。次いでモノクローナル抗体を培養培地または上清から回収する。
【0070】
それに加えて、抗体または抗原結合フラグメントを、遺伝的操作によって産生し得る。この技術において、標準的なハイブリドーマ手順と同様、抗体産生細胞を望ましい抗原または免疫原で感作する。免疫脾臓細胞またはハイブリドーマから単離されたメッセンジャーRNAを鋳型として使用して、PCR増幅を用いてcDNAを作成する。それぞれ最初の抗原特異性を維持する、1つの重鎖遺伝子および1つの軽鎖遺伝子を含むベクターのライブラリーを、増幅免疫グロブリンcDNAの適当な部分を発現ベクターへ挿入することによって産生する。コンビナトリアルライブラリーを、重鎖遺伝子ライブラリーと軽鎖遺伝子ライブラリーを組み合せることによって構築する。これは、重鎖および軽鎖を同時発現するクローンのライブラリーを生ずる(Fabフラグメントまたは抗体分子の抗原結合フラグメントに類似する)。これらの遺伝子を有するベクターを、宿主(例えば細菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞、または他の適当なタンパク質産生宿主細胞)に同時トランスフェクトする。抗体遺伝子の合成がトランスフェクトされた宿主で誘導されると、重鎖および軽鎖タンパク質は自己集合して、抗原または免疫原を用いたスクリーニングによって検出され得る活性な抗体を産生する。
【0071】
キメラ抗体を、主にヒトドメインを有する抗体を産生するために、マウス(または他の動物由来の)ハイブリドーマクローンから得たマウス可変軽鎖領域および重鎖領域(VKおよびVH)を、ヒト定常軽鎖領域および重鎖領域と組み合せることによる組換え手段によって作成し得る。そのようなキメラ抗体の産生は当該分野で周知であり、そして標準的な手法で達成し得る(例えばその全体が本明細書中で参考として援用される、米国特許第5,624,659号によって記載されたように)。ヒト化抗体を、さらによりヒト様の免疫グロブリンドメインを含み、そして動物由来抗体の相補性決定領域のみを含むように、遺伝子工学的に操作する。これは、モノクローナル抗体可変領域の超可変ループの配列を注意深く調査し、そしてそれらをヒト抗体鎖の構造に適合させることによって達成される。表面的には(facially)複雑であるが、その過程は実際には単純である。例えば、その全体が本明細書中で参考として援用される、米国特許第6,187,287号を参照のこと。
【0072】
あるいは、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を、ヒト免疫グロブリンを産生するように遺伝的に変化させた動物から産生し得る。そのような動物を産生する、およびそこから抗体を得る技術は、その全体が本明細書中で参考として援用される、米国特許第6,162,963号および同第6,150,584号に記載されている。
【0073】
あるいは、一本鎖抗体(下記で記載されるようなFv)を、ヒト可変領域を含むファージライブラリーから産生し得る。米国特許第6,174,708号を参照のこと。一本鎖抗毒素、LMB−7[B3(Fv)−PE38]のクモ膜下投与は、ラットモデルにおいて癌性髄膜炎を治療することが示された。Proc Natl.Acad.Sci USA 92、2765−9、それらはその全体が本明細書中で参考として援用される。
【0074】
免疫グロブリン全体(またはその組換え対応物)に加えて、エピトープ結合部位を含む免疫グロブリンフラグメント(例えばFab’、F(ab’)2、または他のフラグメント)が、本発明において抗体分子として有用である。そのような抗体フラグメントを、ペプシン、パパイン、または他のプロテアーゼ切断によって免疫グロブリン全体から産生し得る。「フラグメント」または最低限の免疫グロブリンを、組換え免疫グロブリン技術を利用して設計し得る。例えば、本発明において使用する「Fv」免疫グロブリンを、可変軽鎖領域を、可変重鎖領域にペプチドリンカー(例えばポリグリシンまたはアルファヘリックスまたはベータシートモチーフを形成しない別の配列)を介して結合することによって産生し得る。
【0075】
Fvフラグメントは、可変重鎖ドメイン(VH)および可変軽鎖ドメイン(VL)のヘテロダイマーである。例えば、IgG全体に存在する重鎖および軽鎖ドメインのヘテロダイマーを、ジスルフィド結合によって連結する。VHおよびVLがペプチドリンカーによって連結された組換えFvは、典型的には安定である。これらは、特異性および親和性を維持することが見出された、そして腫瘍の画像化および腫瘍治療のための組換え抗毒素を作成するのに有用であることが見出された一本鎖Fvである。しかし、研究者らは、いくつかの一本鎖Fvは抗原に対して減少した親和性を有し、そしてペプチドリンカーは結合を妨害し得ることを発見した。その全体が本明細書中で参考として援用される、米国特許第6,147,203号において記載されたように、VHおよびVL領域間のジスルフィド結合の安定化を含む、改善したFvも作成された。これら最低限の抗体のいずれかを、本発明において利用し得、そしてHAMA反応を避けるためにヒト化されたものが、本発明の実施形態において使用するのに好ましい。
【0076】
それに加えて、化学的リンカー、蛍光色素、酵素、基質、化学発光部分等のような検出可能な部分またはストレプトアビジン、アビジン、もしくはビオチン等のような特異的結合部分を加えた、誘導体化免疫グロブリンを、本発明の方法および組成物において利用し得る。便利さのために、「抗体」または「抗体部分」という用語を、全体を通して一般的に脳腫瘍タンパク質標的のエピトープに特異的に結合する分子を指すために使用するが、その用語は、上記で記載したような、全ての免疫グロブリン、誘導体、フラグメント、組換えまたは遺伝子操作免疫グロブリン、および修飾免疫グロブリンを含む。
【0077】
候補抗体を、あらゆる適当な標準的な方法によって、活性に関して試験し得る。最初のスクリーニングとして、抗体を免疫原に対する結合に関して試験し得る。2番目のスクリーニングとして、抗体を、対立遺伝子間、およびTIMファミリーメンバー間の交差応答性に関してスクリーニングし得、そしてTIM機能の阻害活性に関して試験し得る。これらのスクリーニングに関して、候補抗体を検出のために標識し得る。TIMタンパク質の生物学的活性を変化させる抗体を、機能的形式でアッセイし得る。
【0078】
(診断)
TiM多型に関連する喘息またはアトピーの診断を、患者由来のあらゆる簡便なサンプル、例えば生検材料、血液サンプル、頬からの擦過等の、タンパク質、DNAまたはRNA配列および/またはハイブリダイゼーション分析によって行なう。TIMと関連し得る喘息を有する患者由来の核酸サンプルを、TIMにおける素因を与える多型の存在に関して分析する。典型的な患者の遺伝子型は、少なくとも1つの染色体上に、少なくとも1つの素因を与える変異を有する。遺伝子産物の活性または発現に影響を与え、そして喘息に対する増加した感受性を与える多型TIM配列の存在は、素因を与える多型と考えられる。喘息中性配列と比較して、素因を与える多型の存在に関してDNAまたはmRNAを分析することによって、個人をスクリーニングする。目的の特異的な配列は、臨床的気管支過剰応答性を引き起こす、または他の方法で喘息と関連するあらゆる多型を含み、コード領域配列、スプライシングに影響を与えるイントロン配列、またはタンパク質の活性および発現に影響を与えるプロモーターもしくはエンハンサー配列における挿入、置換および欠失を含むがこれに限らない。特定のTIM多型の例を、実施例で提供する。
【0079】
スクリーニングはまた、タンパク質の機能的特徴または抗原性特徴に基づき得る。TIMタンパク質において、素因を与える多型を検出するように設計されたイムノアッセイを、スクリーニングで使用し得る。多くの多様な変異が特定の疾患表現型を引き起こす場合、機能的タンパク質アッセイが、有効なスクリーニング手段であることが示された。
【0080】
TIMコード領域またはコントロール領域における候補配列多型が疾患と関連するかどうかを決定するために、生化学的研究を行ない得る。例えば、TIMの発現に影響を与えるプロモーター配列またはエンハンサー配列の変化は、喘息に対する素因を与え得る。候補異型対立遺伝子の発現レベルを、当該分野で公知の様々な方法によって、正常対立遺伝子の発現レベルと比較する。プロモーターまたはエンハンサーの強さを決定する方法は、発現した天然タンパク質の定量;簡便な定量を提供するβ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ等のようなリポーター遺伝子と共に異型コントロールエレメントをベクターに挿入すること、等を含む。コードされたTIMタンパク質の活性を、野生型タンパク質との比較によって決定し得る。
【0081】
特定の配列の存在に関して核酸を分析する多くの方法が利用可能である。大量のDNAが入手可能である場合、ゲノムDNAを直接使用する。あるいは、目的の領域を適当なベクターにクローニングして、そして分析のために十分な量を増殖させる。気管細胞のような、TIM遺伝子を発現する細胞を、mRNAの供給源として使用し得、それを直接分析し得るか、または分析のためにcDNAに逆転写し得る。核酸を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような従来の技術によって増幅して、分析に十分な量を提供し得る。ポリメラーゼ連鎖反応の使用はSaikiら(1985)Science 239:487に記載されており、そして現在の技術の概説を、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、CSH Press 1989、14.2−14.33頁において見出し得る。増幅をまた、多型に特異的なプライマーを使用することによって、多型が存在するかどうかを決定するために使用し得る。あるいは、多型を検出する手段としてオリゴヌクレオチドライゲーションを利用する、様々な方法が当該分野で公知であり、例えばRileyら(1990)N.A.R.18:2887−2890;およびDelahuntyら(1996)Am.J.Hum.Genet.58:1239−1246を参照のこと。
【0082】
検出可能な標識を増幅反応に含み得る。適当な標識としては、蛍光色素、例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、アロフィコシアニン、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシ−2’,4’,7’,4,7,−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、5−カルボキシフルオレセイン(5−FAM)またはN,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、放射活性標識(例えば32P、35S、3H)等が挙げられる。標識は2段階システムであり得、ここで増幅DNAを高親和性結合パートナー(例えばアビジン、特異的抗体等)を有する、ビオチン、ハプテン等に結合し、ここで結合パートナーが検出可能な標識に結合する。標識を、1つまたは両方のプライマーに結合し得る。あるいは、増幅産物に標識を組み込むために、増幅に使用するヌクレオチドのプールを標識する。
【0083】
サンプル核酸、例えば増幅またはクローン化フラグメントを、当該分野で公知の多くの方法の1つによって分析する。核酸を、ジデオキシまたは他の方法によって配列決定し得、そして塩基配列を中性TIM配列と比較する。サザンブロット、ドットブロット等による、異型配列とのハイブリダイゼーションもまた、その存在を決定するために使用し得る。US5,445,934またはWO95/35505において記載されたように、固体支持体に固定化されたオリゴヌクレオチドプローブのアレイに対するコントロールおよび異型配列のハイブリダイゼーションパターンも、異型配列の存在を検出する手段として使用し得る。一本鎖高次構造多型(SSCP)分析、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)、ミスマッチ切断検出、およびゲルマトリックスにおけるヘテロ二本鎖分析を使用して、電気泳動移動度の変化としてDNA配列変異によって産生される高次構造の変化を検出する。あるいは、多型が制限エンドヌクレアーゼの認識部位を産生または破壊する場合(制限フラグメント長多型、RFLP)、サンプルをエンドヌクレアーゼで消化し、そして産物をサイズ分画して、フラグメントが消化されたかどうかを決定する。分画を、ゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動(特にアクリルアミドまたはアガロースゲル)によって行なう。
【0084】
US5,445,934またはWO95/35505において記載されたように、固体支持体に固定化されたオリゴヌクレオチドプローブのアレイに対するコントロールおよび異型配列のハイブリダイゼーションパターンを、異型配列の存在を検出する手段として使用し得る。本発明の1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドのアレイが提供され、ここでアレイの別々の位置が、TIM遺伝子座のmRNAまたはゲノムDNAの少なくとも一部と相補的である。そのようなアレイは一連のオリゴヌクレオチドを含み得、それらの各々は、核酸(例えばTIM遺伝子座由来のmRNA、cDNA、ゲノムDNA等)に特異的にハイブリダイズし得る。
【0085】
TIM多型に特異的な抗体を、スクリーニングイムノアッセイに使用し得る。中性TIMの減少または増加、および/または喘息関連多型の存在は、喘息がTIMに関連することを示す。TIM関連喘息を有すると疑われる患者からサンプルを採取する。本明細書中で使用される場合、サンプルとしては、気管洗浄液、血液、脳脊髄液、涙、唾液、リンパ液、透析液等のような生物学的液体;臓器または組織培養由来の液体;および生理学的組織から抽出された液体が挙げられる。そのような液体の誘導体および画分もその用語に含まれる。生検サンプル、例えば気管擦過等が特に興味深い。サンプル中の細胞数は、一般的に少なくとも約103、通常少なくとも104、より通常には少なくとも約105である。固体組織の場合には細胞を分離し得るか、または組織切片を分析し得る。あるいは細胞の溶解物を調製し得る。
【0086】
診断を、多くの方法によって行ない得る。異なる方法は全て、TIMに素因を与える多型を有すると疑われる患者の細胞における、正常TIMまたは異常TIMの欠如または存在または変化した量を決定する。例えば、検出は、従来の方法に従って行なわれる、細胞または組織学的切片の染色を利用し得る。目的の抗体を細胞サンプルに加え、そしてエピトープへの結合を可能にするのに十分な時間、通常少なくとも約10分間インキュベートする。抗体を、放射性同位体、酵素、蛍光剤、化学発光剤、または直接検出のための他の標識で標識し得る。あるいは、2次抗体または試薬を使用して、シグナルを増幅する。そのような試薬は、当該分野で周知である。例えば、一次抗体をビオチンに結合し、2次試薬として西洋ワサビペルオキシダーゼ結合アビジンを加え得る。最終的な検出は、ペルオキシダーゼの存在下で色を変化する基質を使用する。抗体結合の欠如または存在を、分離細胞のフローサイトメトリー、顕微鏡、ラジオグラフィー、シンチレーションカウンター等を含む様々な方法によって決定し得る。
【0087】
診断の代替方法は、溶解物中における抗体とTIMとの間の結合のインビトロ検出に依存する。サンプルまたはその画分におけるTIM結合の濃度の測定を、様々な特異的アッセイによって達成し得る。従来のサンドイッチ型アッセイを使用し得る。例えば、サンドイッチアッセイは、まずTIM特異的抗体を不溶性表面または支持体に結合し得る。TIM特異的抗体が試薬および本発明の方法全体と適合性がある限り、結合の特定の方式は重要ではない。TIM特異的抗体はプレートに共有結合的にまたは非共有結合的に、好ましくは非共有結合的に結合し得る。
【0088】
他のイムノアッセイが当該分野で公知であり、そして診断薬としての使用を見出し得る。オークターロニープレートは、抗体結合の簡単な決定を提供する。ウェスタンブロットを、タンパク質ゲルまたはフィルター上のタンパク質スポットに対して、望ましいようにTIMに特異的な検出システムを用いて、サンドイッチアッセイに関して記載したような標識方法を簡便に用いて、行ない得る。
【0089】
TIM遺伝子は、例えば発現の発達および組織特異的パターンの決定において、TIM発現を分析するために、およびインビトロおよびインビボで発現を調節するために、有用である。遺伝子の導入に有用なベクターとしては、プラスミドおよびウイルスベクターが挙げられる。特に関心のあるのは、哺乳動物細胞において一時的にまたは安定に維持される、レトロウイルスベースのベクター(例えばマロニルマウス白血病ウイルスおよび改変ヒト免疫不全ウイルス;アデノウイルスベクター等)である。細胞ゲノムへの遺伝子のトランスフェクションおよび/または組込みのために、広く様々なベクターを採用し得る。あるいは、マイクロインジェクションは、遺伝子の適当な宿主細胞への導入のために融合等を利用し得る。例えば、Dhawanら(1991)Science 254:1509−1512およびSmithら(1990)Molecular and Cellular Biology 3268−3271を参照のこと。
【0090】
発現ベクターは、機能的mRNAを産生するように指向された転写開始領域を有する。天然のの転写開始領域または外来性転写開始領域を利用し得る。プロモーターを、インビトロで組換え方法によって、または配列の染色体への相同的組込みの結果として導入し得る。β−アクチンプロモーター、SV40初期および後期プロモーター、ヒトサイトメガロウイルスプロモーター、レトロウイルスLTR、メタロチオネイン応答要素(MRE)、テトラサイクリン−誘導性プロモーター構築物等を含む、多くの強力なプロモーターが、当該分野で公知である。
【0091】
発現ベクターは一般的に、核酸配列の挿入を提供するために、プロモーター配列の近くに位置する簡便な制限部位を有する。転写開始領域、標的遺伝子またはそのフラグメント、および転写終止領域を含む転写カセットを調製し得る。転写カセットを、様々なベクター(例えばプラスミド;レトロウイルス(例えばレンチウイルス);アデノウイルス;等)に導入し得、ここでベクターは細胞内で、一時的にまたは安定に、通常少なくとも約1日間、より通常には少なくとも約数日から数週間の間、維持され得る。
【0092】
アンチセンス分子を使用して、細胞内でTIMの発現を下方制御する。アンチセンス試薬は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)、特に天然核酸から化学的修飾を有する合成ODN、またはそのようなアンチセンス分子をRNAとして発現する核酸構築物であり得る。アンチセンス配列は、標的遺伝子のmRNAに相補的であり、そして標的遺伝子産物の発現を阻害する。アンチセンス分子は、様々なメカニズムによって、例えば翻訳のために利用可能なmRNAの量を減少させることによって、RNアーゼHの活性化によって、または空間的障害によって、遺伝子発現を阻害する。1つの、または組み合わせのアンチセンス分子を投与し得、ここで組み合せは複数の異なる配列を含み得る。
【0093】
アンチセンス分子を、適当なベクターにおいて標的遺伝子配列の全てまたは一部を発現することによって産生し得、ここで転写開始は、アンチセンス鎖がRNA分子として産生されるように指向される。あるいは、アンチセンス分子は合成オリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一般的に少なくとも約7ヌクレオチド長、通常少なくとも約12ヌクレオチド長、より通常には少なくとも約20ヌクレオチド長であり、かつ約500ヌクレオチド長より短く、通常約50ヌクレオチド長より短く、より通常には約35ヌクレオチド長より短く、ここで長さは阻害の効率、交差応答性の欠如を含む特異性、等によって支配される。7〜8塩基長の短いオリゴヌクレオチドが、遺伝子発現の強力かつ選択的なインヒビターであり得ることが見出された(Wagnerら(1996)Nature Biotechnology 14:840−844を参照のこと)。
【0094】
(トランスジェニック動物)
本発明の核酸を使用して、遺伝的に改変された非ヒト動物、または細胞株における部位特異的遺伝子改変を産生し得る。用語「トランスジェニック」は、TIM遺伝子活性の欠失または他のノックアウトを有する、宿主細胞において安定に遺伝する外来性TIM遺伝子を有する、またはリポーター遺伝子に操作可能に連結した外来性TIMプロモーターを有する、遺伝的に修飾された動物を含むように意図される。トランスジェニック動物を、相同的組換えによって作成し得、ここでTIM遺伝子座は変化する。あるいは、核酸構築物をゲノム中に無作為に組み込む。安定な組込みのためのベクターは、プラスミド、レトロウイルスおよび他の動物ウイルス、YAC、等を含む。トランスジェニック哺乳動物(例えばウシ、ブタ、ヤギ、ウマ等)および特にげっ歯類(例えばラット、マウス等)に特に関心がある。
【0095】
「ノックアウト」動物は、遺伝的に操作して、内因性TIM機能を本質的に減少させるか、または排除する。「ノックアウト」を達成するために、異なるアプローチを使用し得る。天然TIMホモログの全てまたは一部の染色体欠失を誘導し得る。非コード領域、特にプロモーター領域、3’調節配列、エンハンサーの欠失、またはTIM遺伝子の発現を活性化する遺伝子の欠失。機能的ノックアウトもまた、天然TIM遺伝子の発現をブロックするアンチセンス構築物を導入することによって達成し得る(例えば、LiおよびCohen(1996)Cell 85:319−329を参照のこと)。
【0096】
外来性TIM遺伝子を有するトランスジェニック動物を作成し得る。外来性遺伝子は、通常動物宿主とは異なる種由来であるか、またはそうでなければコード配列または非コード配列で変化している。導入遺伝子は、野生型遺伝子、天然に存在する多型、または遺伝的に操作した配列(例えばコードまたは非コード領域に欠失、置換または挿入を有する以前に記載したもの)であり得る。導入配列は、TIMポリペプチドをコードし得るか、またはリポーター遺伝子に操作可能に連結したTIMプロモーターを利用し得る。導入遺伝子がコード配列である場合、それは通常構成的または誘導的であり得るプロモーター、および宿主動物における発現に必要な他の調節配列に操作可能に連結される。
【0097】
目的の特異的構築物としては、TIM発現をブロックするアンチセンスTIM、ドミナントネガティブTIM変異体の発現、およびTIM遺伝子の過剰発現が挙げられるがこれに限らない。lacZのような検出可能なマーカーを、TIM遺伝子座に導入し得、ここでTIM発現のアップレギュレーションは、表現型にいて容易に検出される変化を引き起こす。
【0098】
TIM機能および調節の研究において、改変細胞または動物が有用である。例えば、候補薬剤の喘息に対する効果を決定するために、機能研究、薬剤スクリーニング等において動物を使用し得る。TIM遺伝子において一連の小さな欠失および/または置換を作成して、DNA結合、転写調節等における異なるエキソンの役割を決定し得る。それが通常産生されない細胞においてTIMタンパク質の発現を提供することによって、細胞の動きに変化を誘導し得る。これらの動物はまた、喘息の遺伝モデル(例えば優性対劣性);異なる対立遺伝子の相対的効果、およびTIMとゲノムの他の場所にある他の喘息遺伝子との間の相乗的効果を調査するのに有用である。
【0099】
相同的組換えのためのDNA構築物は、望ましい遺伝的改変を有するTIM遺伝子の少なくとも一部を含み、そして標的遺伝子座と相同的な領域を含む。無作為な組込みのためのDNA構築物は、組換えを媒介する相同的な領域を含む必要はない。簡便に、ポジティブおよびネガティブセレクションのためにマーカーを含む。相同的組換えによって標的化遺伝子改変を有する細胞を産生する方法は、当該分野で公知である。哺乳動物細胞をトランスフェクトする様々な技術に関して、Keownら(1990)Methods in Enzymology 185:527−537を参照のこと。
【0100】
本発明の動物モデルと組み合せて、薬剤スクリーニングを行ない得る。多くの哺乳動物遺伝子が、酵母およびより下等な動物にホモログを有する。そのようなホモログの生理的役割および他のタンパク質との相互作用の研究は、生物学的機能の理解を促進し得る。遺伝的相補性に基づくモデルシステムに加えて、酵母は、Chienら(1991)P.N.A.S.88:9578−9582において記載される、ツーハイブリッドシステムによって、タンパク質−タンパク質相互作用を研究する強力な手段であることが示された。ツーハイブリッドシステム分析は、TIMタンパク質による転写活性化を調査するために特に関心がある。
【0101】
(化合物スクリーニング)
TIMに結合する、TIMの作用を調節または模倣するリガンドまたは基質を同定し得る。調査の領域は、免疫障害、喘息、癌、虚血−再灌流障害、およびストレスに対する細胞反応に関連する他の疾患の処置の開発である。薬剤スクリーニングは、影響された細胞におけるTIM機能の阻害、置換、または増強を提供する薬剤を同定する。例えば、TIM機能を逆転または阻害する薬剤は、Th2サイトカインのレベルを減少することによって、喘息における気管支応答性を減少し得、そしてTIMインヒビターは、アポトーシスを誘導する放射線処置および化学療法剤処置の効果を増強することによって、癌治療に対する腫瘍の感受性を増強し得る。特に関心があるのは、ヒト細胞に対して低い毒性を有する薬剤のスクリーニングアッセイである。この目的のために、標識インビトロタンパク質−タンパク質結合アッセイ、タンパク質−DNA結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、タンパク質結合のイムノアッセイ等を含む、広範な様々なアッセイを使用し得る。精製タンパク質をまた、3次元結晶構造の決定のために使用し得、それを分子間相互作用、転写調節等のモデル化に使用し得る。
【0102】
本明細書中で使用される場合、用語「薬剤」は、シグナルチロシンキナーゼインヒビター、またはインテグリン結合部位のペプチドインヒビターのような、TIMの生理学的機能を変化させるまたは模倣する能力を有する、任意の分子(例えばタンパク質または医薬)を記載する。一般的に、複数のアッセイ混合物を、異なる薬剤濃度で並行して走らせ、様々な濃度に対する差次的反応を得る。典型的には、これら濃度のうち1つはネガティブコントロール(すなわち濃度ゼロまたは検出レベル以下の濃度)として供する。
【0103】
候補薬剤は、多くの化学的クラスを含むが、典型的にはそれらは有機分子、好ましくは50以上および約2,500ダルトン以下の分子量を有する、小さい有機化合物である。候補薬剤は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、そして典型的には少なくとも1つのアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基、好ましくは少なくとも2つの化学官能基を含む。候補薬剤は、多くの場合1つまたはそれ以上の上記の官能基で置換された、環状炭素または複素環構造および/または芳香族または多環芳香族構造を含む。候補薬剤はまた、ペプチド、サッカライド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、その誘導体、構造的アナログまたは組み合せを含むがこれに限らない生物分子中に見出される。
【0104】
候補薬剤を、合成または天然化合物のライブラリーを含む広範な様々な供給源から得る。例えば、広範な多様な有機化合物および生物分子の無作為および指向合成のために、無作為化オリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を含む、多くの手段が利用可能である。あるいは、細菌、真菌、植物、および動物抽出物形式の天然化合物のライブラリーが入手可能または容易に産生される。さらに、天然または合成的に産生されたライブラリーおよび化合物を、従来の化学的、物理的、および生化学的手段によって容易に改変し、そしてコンビナトリアルライブラリーを産生するために使用し得る。公知の医薬品に、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化等の指向性または無作為化学的修飾を行なって、構造的アナログを産生し得る。
【0105】
スクリーニングアッセイが結合アッセイである場合、1つまたはそれ以上の分子を標識に結合し得、ここで標識は直接または間接的に検出可能なシグナルを提供し得る。様々な標識としては、放射性同位元素、蛍光剤、化学発光剤、酵素、特異的結合分子、粒子(例えば磁気粒子)等が挙げられる。特異的結合分子は、ビオチンおよびストレプトアビジン、ジゴキシンおよび抗ジゴキシン等のような対を含む。特異的結合メンバーに関しては、相補的メンバーを通常、公知の手順に従って、検出を提供する分子で標識する。
【0106】
様々な他の試薬をスクリーニングアッセイに含み得る。これらは、塩、中性タンパク質、例えばアルブミン、界面活性剤等のような試薬を含み、それらは最適なタンパク質−タンパク質結合を促進するおよび/または非特異的またはバックグラウンド相互作用を減少するために使用される。プロテアーゼインヒビター、ヌクレアーゼインヒビター、抗菌剤、等のような、アッセイの効率を改善する試薬を使用し得る。成分の混合物を、必要な結合を提供するいずれかの順序で加える。インキュベーションを任意の適切な温度、典型的には4℃〜40℃の間で行なう。インキュベーション時間を、最適な活性のために選択するが、迅速なハイスループットスクリーニングを促進するために最適化し得る。典型的には0.1時間〜1時間の間が十分である。
【0107】
目的の他のアッセイは、TIM機能を模倣する薬剤を検出する。例えば、候補薬剤を、機能的TIMを欠く細胞に加え、そして機能的アッセイにおいてTIMを再生する能力に関してスクリーニングする。
【0108】
(治療方法)
TIM遺伝子またはタンパク質の活性を調節する薬剤(特にポリペプチドの活性または遺伝子の発現を阻害または上方制御する薬剤)は、治療または予防的介入点を提供する。発現を直接調節する薬剤(例えば発現ベクター、標的ポリペプチドに特異的なアンチセンス);およびタンパク質に作用する薬剤(例えば特異的抗体およびそのアナログ、触媒活性をブロックする小さい有機分子)等を含む、多くの薬剤が、この活性を調節するのに有用である。
【0109】
核酸を特定の細胞に選択的に伝達するための方法を設計し得る。そのような細胞の例としては、T細胞等が挙げられる。目的の細胞に発現ベクターを選択的に発現する、特定の処置方法を設計する。神経細胞における選択的発現を達成する1つの技術は、コード配列を、主に免疫系細胞で活性なプロモーター(例えばIL−2プロモーター、T細胞抗原レセプタープロモーター等)に操作可能に連結することである。あるいは、またはそれに加えて、核酸を、核酸を目的の細胞に標的化する薬剤と共に投与し得る。例えば、核酸を、細胞表面抗原に特異的に結合する抗体と共に投与し得る。リポソームを利用する場合、エンドサイトーシスに関連する細胞表面膜タンパク質に結合する基質を、リポソームに結合して、リポソームを神経細胞に標的化し、そして取り込みを促進し得る。
【0110】
アンチセンス分子を使用して、細胞における発現を下方制御し得る。アンチセンス試薬は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)(特に天然核酸から化学的修飾を有する合成ODN)またはそのようなアンチセンス分子をRNAとして発現する核酸構築物であり得る。アンチセンス配列は、標的遺伝子のmRNAに相補的であり、そして標的遺伝子産物の発現を阻害する。アンチセンス分子は、様々なメカニズムによって、例えば翻訳のために利用可能なmRNAの量を減少することによって、RNアーゼHの活性化、または空間的障害を介して、遺伝子発現を阻害する。アンチセンス分子を1つまたは組み合せて投与し得、ここで組み合せは複数の異なる配列を含み得る。
【0111】
アンチセンス分子を、適当なベクターにおける、標的遺伝子配列の全てまたは一部の発現によって産生し得、ここで転写開始は、アンチセンス鎖がRNA分子として産生されるように指向される。あるいは、アンチセンス分子は合成オリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一般的に少なくとも約7ヌクレオチド長、通常少なくとも約12ヌクレオチド長、より通常には少なくとも約20ヌクレオチド長であり、そして約500ヌクレオチド長より短い、通常約50ヌクレオチド長より短い、より通常には約35ヌクレオチド長より短く、ここで長さは阻害の効率、交差応答性の欠如を含む特異性等によって支配される。7〜8塩基長の短いオリゴヌクレオチドが、遺伝子発現の強力かつ選択的なインヒビターであり得ることが見出された(Wagnerら(1996)Nature Biotechnology 14:840−844を参照のこと)。
【0112】
内因性センス鎖mRNA配列の特異的領域を、アンチセンス配列と相補的になるように選択する。オリゴヌクレオチドの特異的配列の選択は、経験的な方法を使用し得、ここでいくつかの候補配列を、インビトロまたは動物モデルにおいて、標的遺伝子の発現阻害に関してアッセイする。配列の組み合せも使用し得、ここでmRNA配列のいくつかの領域をアンチセンス相補性のために選択する。
【0113】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを、当該分野で公知の方法によって化学的に合成し得る(Wagnerら(1993)前出、およびMilliganら、前出を参照のこと)。好ましいオリゴヌクレオチドは、その細胞内安定性および結合親和性を増加させるために、天然ホスホジエステル構造から化学的に改変される。多くのそのような改変が文献において記載され、それはバックボーン、糖または複素環塩基の化学を変化させる。
【0114】
バックボーン化学の有用な変化は、ホスホロチオエート;架橋していない酸素がどちらも硫黄で置換されたホスホロジチオエート;ホスホラミダイト;アルキルホスホトリエステルおよびボラノホスフェート(boranophosphates)である。アキラルなホスフェート誘導体としては、3’−O’−5’−S−ホスホロチオエート、3’−S−5’−O−ホスホロチオエート、3’−CH2−5’−O−ホスホネート、および3’−NH−5’−O−ホスホロアミダート(phoshoroamidate)が挙げられる。ペプチド核酸は、リボースホスホジエステルバックボーン全体を、ペプチド結合で置換する。安定性および親和性を増強するために、糖の改変も使用する。デオキシリボースのα−アノマーを使用し得、ここで塩基は、天然β−アノマーに関して転位する。リボース糖の2’−OHを、2’−O−メチルまたは2’−O−アリル糖を形成するように変化させ得、それは親和性を損なうことなく分解に対する抵抗性を提供する。複素環塩基の改変は、適当な塩基対形成を維持しなければならない。いくつかの有用な置換は、デオキシチミジンのためにデオキシウリジン;デオキシシチジンのために5−メチル−2’−デオキシシチジンおよび5−ブロモ−2’−デオキシシチジンを含む。5−プロピニル−2’−デオキシウリジンおよび5−プロピニル−2’−デオキシシチジンは、それぞれデオキシチミジンおよびデオキシシチジンを置換した場合に、親和性および生物学的活性を増加させることが示された。
【0115】
所望の薬理学的活性を有する化合物を、生理学的に受容可能なキャリア中で、TIM機能の欠損に起因する喘息の処置のために宿主に投与し得る。その化合物をまた、TIM機能を増強するために使用し得る。治療薬を、経口、局所的、非経口的(例えば皮下)腹腔内、ウイルス感染に従って、血管内等の様々な方法で、に投与し得る。吸入処置が特に興味深い。導入の方法によって、その化合物を様々な方法で処方し得る。処方中の治療的に活性な化合物の濃度は、約0.1〜100重量%で変化し得る。
【0116】
薬学的組成物を、顆粒、錠剤、丸剤、坐剤、カプセル、懸濁液、軟膏、ローション等のような、様々な形式で調製し得る。経口および局所使用のために適当な薬学的等級の有機または無機キャリアおよび/または希釈剤を使用して、治療的に活性な化合物を含む組成物を作成し得る。当該分野で公知の希釈剤としては、水性媒体、植物油および動物油ならびに脂肪が挙げられる。安定化剤、湿潤剤および乳化剤、浸透圧を変化させる塩、または適当なpH値を生じさせる緩衝液、および皮膚浸透増強剤を、補助剤として使用し得る。
【0117】
本発明は、変化し得るので、特定の方法論、プロトコール、細胞株、動物種または属、および記載された試薬に制限されないことが理解される。本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のためのみであり、そして添付の請求によってのみ制限される、本発明の範囲を制限することを意図しないことが理解される。
【0118】
本明細書中で使用される場合、単数形「a」、「and」および「the」は、文脈が明らかに他に規定しなければ、複数の指示対象を含む。従って、例えば「細胞(a cell)」への言及は、複数のそのような細胞を含み、そして「配列(the array)」への言及は、1つまたはそれ以上のアレイおよび当業者に公知のその等価物を含む等である。本明細書中で使用される全ての技術的および科学的用語は、明らかに他に示されなければ、本発明が属する当業者に通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0119】
本明細書中で言及された全ての出版物は、例えばここで記載される発明と関連して使用され得る、その出版物で記載された、細胞株、構築物および方法論を記載および開示する目的のために、本明細書中で参考文献に組み込まれる。上記および本文全体で議論された出版物は、本出願の提出日より前にそれらが開示されたためだけに提供される。本明細書中で何物も、以前の発明によって発明者がそのような開示に先立つ権利がないという承認として解釈されない。
【0120】
以下の実施例は、本発明の作成および使用方法の完全な開示および記載を当業者に提供するために述べられ、そして本発明として考えられるものの範囲を制限することを意図しない。使用された数(例えば量、温度、濃度等)に関して、正確さを保証するために努力がなされたが、いくらかの実験誤差およびずれは許されるべきである。他に示されなければ、割合は重量による割合、分子量は平均分子量、温度は摂氏、そして圧は大気またはその付近である。
【実施例】
【0121】
(実験)
喘息感受性遺伝子に関してヒト5q23−35領域を分析するために、発明者らはいくつかの潜在的な利点を提供するマウスモデルを利用した。環境の変化を調節し得、複数の表現型を同時に試験し得、そして同系交配株をアレルゲンで感作して、ヒト喘息の基本的な特徴である気道過剰応答性(AHR)を発現し得る。発明者らは、ヒト染色体5qに相同的な小さな染色体領域でのみ異なる、類遺伝子性の同系交配マウス株を利用し、それによってこの領域を、領域外の遺伝的変異の非存在下で研究することを可能にした。ポジショナルクローニングは、T細胞膜タンパク質(Tim)をコードする新規遺伝子ファミリー、TIM−1、TIM−2、TIM−3、TIM−4、TIM−5、TIM−6、およびTIM−7を明らかにし、このうちTIM−1、TIM−3およびTIM−4の主要な配列異型が、Taprと完全に同時分離する。
【0122】
IL−4産生および気道過剰応答性は、HBAマウスで減少される。発明者らは、個々のDBA/2染色体から受け継がれた別々のゲノム間隔を有する、BALB/cゲノムバックグラウンドで産生された類遺伝子性マウスを調査した。BALB/cマウスは、Th2に偏った、増強したAHRを伴うアトピーに似た免疫反応を発現し、一方DBA/2マウスは、AHRの発現に対して保護する、減少されたIL−4反応を発現する。これら類遺伝子性株のいくつかを、抑制されたTh2応答性に関してスクリーニングすることによって、発明者らは1つの類遺伝子性株、C.D2 Es−Hba(HBA)を同定し、これはヒト5q23−35に相同的な、DBA/2マウスから受け継がれた第11染色体の部分を含んでいた。図1aは、免疫コントロールBALB/cマウスからのリンパ節細胞が、予測される通り、高レベルのIL−4を産生することを示し、Th2に偏った免疫反応を発現するBALB/cマウスの傾向を確認した。対照的に、HBAマウス由来のリンパ節細胞は、DBA/2マウスで観察されるものと同様の、有意に低いレベルのIL−4を産生した。それに加えて、HBAマウスはBALB/cマウスと比較して、有意に少ないIL−13およびIL−10、そしていくらか低いレベルのIL−5を産生し、一方IFN−γの産生は図1bに示すように増加した。これらの結果は、ヒト5q23−35との保存されたシンテニーの大きな領域を有する、HBA第11染色体のDBA/2由来の領域は、抗原特異的IL−4、IL−13、およびIL−10産生を減少し、IFN−γ産生を増強し、そしてBALB/cサイトカイン表現型をDBA/2サイトカイン表現型へ転換する遺伝子を含むことを示した。
【0123】
HBAマウスを、Th2に偏った免疫反応と関連する、抗原誘発性気道過剰応答性(AHR)を発現する能力に関して調査した。アレルゲンによる感作およびチャレンジ時に、コントロールBALB/cマウスは高いAHRを発現し、一方同様に免疫したHBA類遺伝子性マウスは、DBA/2マウス同様、メタコリンに反応して通常の気道応答性を示した(図1c)。集合的に、これらの結果は、第11染色体上の単一の遺伝子座における遺伝的変異が、Th2サイトカイン産生およびAHRの両方を調節することを強く示唆し、従って発明者らは、HBAマウスにおける関連する遺伝的決定基を、単一遺伝子座、T細胞および気道表現型レギュレーター(Tapr)と仮に呼ぶ。
【0124】
本出願人らは(BALB/c×HBA)F1マウスもまた調査し、それはBALB/cマウス同様、高レベルのIL−4、IL−13、およびIL−10を産生し(図1aおよび1b)、そして上昇した抗原誘発AHRを発現した(図1c)。これらの結果は、第11染色体のDBA/2対立遺伝子が、IL−4合成を調節する他の遺伝子と独立して、劣性な様式でIL−4産生およびAHRを低減したことを示す。対照的に、(BALB/c×DBA/2)F1マウスは、低レベルのIL−4を産生し、そして免疫化に対して通常の気道応答性を有しており(図1)、DBAゲノムの他の領域由来の遺伝子座もIL−4産生および抗原誘発AHRを調節すること、そしてDBA/2対立遺伝子は、全体として優性な様式でIL−4産生およびAHRを制限するように機能することを示す。これらの結果は、アトピー性形質の多遺伝子、複雑な性質を強調し、そして喘息表現型にもまた影響を与える複数の上位遺伝子からの干渉なしに、単一遺伝子座を単離および特徴づけするために、類遺伝子性株を使用する潜在的な利点を示す。
【0125】
AHRおよびIL−4応答性を調節する遺伝子座、Taprの遺伝的マッピング。以前に、HBAマウスの類遺伝子性領域が、2つの第11染色体マーカー、ヘモグロビン−α2(hba−α2)およびエステラーゼ−3(es−3)遺伝子座を含む、36のゲノム範囲のマーカーで詳細に描写された。第11染色体の外側、HBAゲノムは、BALB/cから受け継がれた。DBA/2およびBALB/cマウス間で多型であることが公知の25個の単純配列長多型(SSLP)マーカーを用いたより正確な分析が、HBAマウスはDBA/2から第11染色体の2つの部分を受け継いだことを示した(図2、左カラム)。近位領域は、染色体5q23−35と相同性を有する20cMの部分を含んでおり、それはヒト喘息連鎖研究で関係した遺伝子座を、喘息のマウスモデルで同定し得る可能性を提供した。
【0126】
TH2−AHR調節遺伝子座、Taprをより高い分解能でマッピングするために、(BALB/c×HBA)F1マウスを、HBAマウスと戻し交配してN2動物を産生した。この戻し交配アプローチを用いて、HBA親によって寄与される対立遺伝子のセットを前もって決定し、そしてF1親によって寄与される対立遺伝子のセットを遺伝子型決定によって評価し得る。従って、類遺伝子性領域に情報を得られるハプロタイプを産生する組換えの発生を、N2マウスにおいて検出し得、そしてTaprの類遺伝子性間隔における遺伝子座への連鎖を評価するために使用し得る。Taprの劣性性質のために、本出願人らは、これら戻し交配由来のN2マウスを試験して、HBA Tapr表現型を与えるのに十分なHBA由来遺伝子の最低限のホモ接合体領域を同定した。2,000を超えるN2動物を産生し、そして遺伝子型決定した。SSLPマーカーを用いて、本出願人らは情報を得られる組換え発生を有するN2マウスを選択し、そしてこれらのN2マウスを、カサガイヘモシアニン(KLH)による免疫化に反応してIL−4を産生する能力に関して表現型決定した。この一次分析において、本出願人らは、関連する遺伝子座が、近位類遺伝子性領域、D11Mit135とD11Mit260との間に存在することを決定した。より高い分解能でTaprをマッピングするために、22のさらなるマーカーを同定し、そして関心のある領域で0.1−1cMの分解能を提供するために利用した。
【0127】
数ヶ月にわたって行なわれたIL−4サイトカイン分析の結果を正確に比較するために、各実験のIL−4指数を各N2マウスに関して生成し、(B−x/B−H)、ここでB=BALB/cマウス由来の細胞によるIL−4産生、H=HBAマウス由来の細胞によるIL−4産生、そしてx=評価されるN2マウス由来の細胞によるIL−4産生である。IL−4の高い濃度(BALB/c様)は、0に近い指数値で表され、そしてIL−4の低い濃度(HBA様)は、1.0に近い指数値で表される。“B”および“H”値は、本出願人らが試験した、情報を得られる組換えを有する3−6匹のN2マウスのグループそれぞれに関して、3−5匹のコントロールマウスで確立された。指数値は、二方式分布になり(図3a)、そこで非組換えHBA遺伝子型を有するN2マウスに関連する表現型指数は、非組換え(BALB/c×HBA)F1遺伝子型を有するN2マウスに関連する表現型指数よりも有意に高かった(P<0.0001、対の学生のt−試験)。
【0128】
独特の遺伝子型を有するマウスに関して、これは連鎖分析において重要であるので、本出願人らは数ヶ月を費やして、サイトカイン産生およびAHRの単回測定が適当であることを保証した。まず、関心のある組換えを有するN2マウスをそれぞれ試験するのと同時に、本出願人らは、遺伝子型が厳密にHBAまたはF1(BALB×HBA)である、各“組換えN2”の“非組換え”同胞も試験した。さらに、本出願人らは、その特定のN2遺伝子型を有する個々のマウスをより多く有するために、関心のある組換えを有するN2マウスのいくらかを、HBAマウスに戻し交配することによって、さらなるN3マウスを繁殖させた。全ての値は所定の遺伝子型を有する試験した個々のマウスの値の平均であった。この方法で、本出願人らは、サイトカイン産生およびAHRの測定、ならびに本出願人らは生物学的システムで固有の変動性によるアッセイの変動を克服したことを確信する。
【0129】
組換えハプロタイプを受け継いだN2マウスに関連するIL−4値は、二方式分布で分離したので(図3a)、高IL−4反応を調節する遺伝子座は、マーカーD11Mit271およびD11Mit22の間に位置することを示し得た(図3b)。さらに、高レベルのIL−4産生が、Kim1sscpに存在するBALB/c対立遺伝子を有する全てのマウスで観察され、そして低レベルのIL−4産生が、Kim1sscpにおいてホモ接合体HBA遺伝子型を有する全てのマウスで観察された。従って、Taprは、Kim1sscp、Rattus norvegicus Kidney Injury Molecule(Kim−1)のマウスホモログ中のイントロンマーカーと非組換え性である。対照的に、Taprは他の全てのマーカーから、少なくとも1つの組換えを有して分離される。TaprおよびKim1sscpが共に分離するという事実は、Tapr遺伝子座がKim1sscpの非常に近くに位置するか、または区別できないことを示した。D11Mit271とD11Mit22との間の組換えハプロタイプ頻度に基づいて、本出願人らは組換え頻度を0.0039と計算し、それは、Tapr遺伝子座は小さい0.3−0.5cM領域に位置することを示す。本出願人らはまた、TaprとIL−4との間の組換え頻度を0.08と計算した。従って、TaprはIL−4サイトカインクラスターから5−10cM離れた場所に位置するが、これは、ヒトアトピーおよび喘息に連鎖する5q23−35と高度に保存されたシンテニーを有するマウスゲノムの領域内にある。
【0130】
相似アプローチを用いて、本出願人らは、情報を得られる組換えハプロタイプを有するマウスにおいて、アレルゲン誘発AHR表現型の分離を調査した。指数化AHR値を用いて、N2マウスは明らかに親の表現型を示し、それは感作N2マウスのグループにおけるAHR指数値の柱状グラフにおいて、二方式分布を生成した(図3c)。1,000を超えるN2マウスに関連するAHR表現型の分離を分析することによって、本出願人らは、AHR反応を調節する遺伝子座も、マーカーD11Mit271とD11Mit22との間に位置し(図3d)、そしてAHR表現型はKim1sscpと非組換えであることを示した。従って、本出願人らは、IL−4応答性およびAHRはどちらも、Tapr遺伝子座と同時分離することを示し、それは同じ遺伝子座がIL−4発現およびAHRをどちらも調節することを示唆する(図3)。
【0131】
これらの発見はさらに、Tapr遺伝子座は、以前に「候補」アトピー感受性遺伝子または喘息感受性遺伝子と考えられていた、IL−4サイトカインクラスターおよびクラスター内のサイトカイン遺伝子に対して5cMを超えてcentromericであることを示す。本出願人らのマッピング結果はまた、Taprは、IL−12p40遺伝子およびTH1−IL12調節遺伝子座、Tpmを含むマウス第11染色体の領域のどちらとも遺伝的に分離することを確立した。
【0132】
マウスおよびヒトホモログは、Taprをヒト5q33に固定する(anchor)。Tapr遺伝子座の周囲に複合マップを構築するために、本出願人らは、Mouse Genome Database(MGD)連鎖、戻し交配、および照射ハイブリッド地図から入手可能な情報を統合し、そしてヒトゲノムの地図において保存されたシンテニーの領域を同定した。現在の照射ハイブリッドマップは、公知の遺伝子またはunigeneクラスターと広範囲の相同性を有する、いくつかの発現配列タグ(EST)を含む、D11Mit271およびD11Mit22の近くに存在するマーカーを、マウスゲノムの物理的地図に配置する。本出願人らはさらに、これらのマーカーおよびその関連するESTを、公知の遺伝子クラスターに対する、以前には同定されていない類似性に関して調査した。本出願人らは、ヒトゲノムに対する比較のために、これらのマーカーを骨組みに集合させた。このアプローチを用いて、本出願人らは、特定の照射ハイブリッドマーカーと以下のヒト遺伝子との間に有意な類似性を発見した:KIAA0171、Adam−19、Sox−30、Pir−121、Crsp9(Crsp33)、およびhHAVcr−1(hHAVcr−1)。図4は、一旦本出願人らがこれらの遺伝子を本出願人らの側面に位置するマーカー間のマウスゲノムの物理的地図に固定したことを示す。本出願人らは、Human Genome Browserにおいてそれらの遺伝子の位置決定をし得る。
【0133】
この領域におけるマウスおよびヒトゲノム間の高度の保存は、Tapr遺伝子座のヒト5q33.2に対する連鎖を示す。図4に示すように、本出願人らは、ヒト地図のこの領域における全ての公知の遺伝子およびESTを同定した。ヒトhHAV−crおよびKim−1のマウスホモログの近くにある特に関心のある遺伝子は、IL−2誘導性T細胞キナーゼ(Itk)およびSP−1転写因子(Crsp9)の補調節因子を含み、これらはどちらもT細胞の分化に関与することが知られている。本出願人らは、これら候補遺伝子由来のコード領域を配列決定し、そしてITKまたはCRSP−9のどちらにも多型を発見しなかった。
【0134】
新規T細胞表面タンパク質ファミリーのTapr領域への位置決定。ラットKim1のマウスホモログは、0.4cM領域内に位置し、そしてTaprと密接に連鎖するので、本出願人らは公共に利用可能なデータベースを調査し、そしていくらかの配列類似性を有するESTのクラスターを発見した。それらは部分的な適用範囲しか提供せず、そして大きな変異部分を含んでいた。Kim−1の最も近いヒトホモログは、ヒトA型肝炎ウイルス細胞レセプター、hHAV−crであり、そしてヒトゲノムのtBLAST検索は、おそらく遺伝子ファミリーのメンバーである、Kim−1の2つのさらなるホモログもまた、ヒト第5染色体およびマウス第11染色体に位置することを示唆した。
【0135】
conA刺激脾臓細胞由来のcDNAを使用して、本出願人らはKim1の2つのマウスオルソログを同定およびクローニングした。本出願人らはそれらをTim1およびTim2と名付け、図5Aに示すようにTapr領域に位置する。TIM−3は、3番目の、より関連が遠い、KIM−1のオルソログである。
【0136】
この遺伝子ファミリーの3つのメンバーは全て、刺激T細胞によって発現され、そして3つの形式は全てマウス第11染色体/ヒト第5染色体のTapr領域に位置し、ここでそれらは、免疫グロブリン(Ig)ドメイン、ムチンドメイン、およびリン酸化部位を有する細胞内尾部を含む、共通の構造モチーフを有する細胞表面糖タンパク質をコードする。これらタンパク質の細胞機能は未知であるので、本出願人らはその遺伝子を、T細胞、免疫グロブリンドメイン、ムチンドメイン(Tim)遺伝子ファミリーのメンバーと呼ぶ。マウスTim1は、ラットKim1およびアフリカミドリザルおよびヒトで同定されたHAVcr−1のマウスホモログである。Tim2は、本研究以前にはどの有機体においても同定されたことのない、以前には未知の遺伝子である。
【0137】
マウスTim1遺伝子は、305アミノ酸膜タンパク質をコードし、それはラットKIM−1と78%の全体同一性、そしてヒトHAVcr−1と35%の同一性を有する。図5Bに示した、マウスTIM−1、ラットKIM−1、ヒトHAVcr−1およびアフリカミドリザルHAVcr−1を用いたギャップ多重配列アライメント(gapped multiple sequence alignment)は、これらの種におけるTIM−1/KIM−1/HAVcr−1タンパク質間の相同性の程度を示す。TIM−1の細胞質領域は、2つのチロシン残基を含み、そして高度に保存されたチロシンキナーゼリン酸化モチーフ、RAEDNIYを含み、それはTIM−1の予測されるItk部位およびEGFRキナーゼ部位、SRAEDNIYIVEDRPと一体である。TIM−1のムチンドメインは、複数のO−結合糖鎖付加部位を有し、そして免疫グロブリンドメインに2つのN−結合糖鎖付加部位が見出される。
【0138】
同様の305アミノ酸膜タンパク質であるTIM−2は、マウスTIM−1と64%の同一性、ラットKIM−1と60%の同一性、およびhHAVcr−1と32%の同一性を有する(図5A、B)。TIM−1と同様、TIM−2は2つの細胞外N−結合糖鎖付加部位、および多くのO−結合糖鎖付加部位を有するセリン、スレオニン−リッチなムチンドメインを有する。TIM−2もまた、細胞内チロシンキナーゼリン酸化モチーフ、RTRCEDQVYを有する。
【0139】
Tim3は、複数の細胞外糖鎖付加部位および細胞内チロシンリン酸化モチーフを有する、同様の膜貫通糖タンパク質構造を有する281アミノ酸膜タンパク質をコードする。TIM−3においては、ムチンドメインはTIM−1およびTIM−2におけるほど顕著ではないが(図5A)、T細胞に発現したTIM−3は、おそらくAPC上のリガンドと相互作用し、そしてAPC活性化を変化させる。TIM−3は、4つのN−結合糖鎖付加部位、および5つのO−結合糖鎖付加部位を有し、TIM−3は、TIM−1およびTIM−2と同様、高度に糖鎖付加されており、そして抗原提示細胞のような他の細胞に存在するリガンドと相互作用し得ることを示唆する。
【0140】
Tim4は、マウスでは344アミノ酸のタンパク質、ヒトでは378アミノ酸のタンパク質をコードする。予測されるTIM−4はまた、高度に保存されたシステイン残基を有するIgV様ドメイン、スレオニン−リッチなムチン様ドメイン、および短い細胞内尾部を有して、他のTIMタンパク質の一般的な膜糖タンパク質構造モチーフを共有する。しかし、TIM−4は、他のTIMタンパク質に存在するリン酸化チロシンモチーフを欠き、従って他のTIMタンパク質の機能を調節し得る。
【0141】
各TIM Igドメインは、細胞接着、生存、および腫瘍形成、ならびにヘルパーT細胞の分化の調節に関与しているTIMのような膜貫通タンパク質である、オステオポンチンで見出されるSVVYGLRモチーフに似た、予測されるインテグリン結合モチーフを共有する。このインテグリン結合モチーフは、アルファ(9)特異性およびアルファ(4)特異性を示す。
【0142】
3つのTim遺伝子に関するBALB/cおよびHBA/DBAコード領域の配列比較は、TIM−1、TIM−3、およびTIM−4における主要な多型を明らかにしたが、TIM−2ではなかった。TIM−1において、これらの多型は3つのアミノ酸の違いおよびHBA/DBAにおける15のアミノ酸欠失をコードする。7つの予測されるアミノ酸の違いがTIM−3において同定された(図5c)。ゲノム配列が、欠失を含むこれらの多型は、スプライシング異型ではなく、真の多型であることを確認する。他のマウス株におけるTIM−1およびTIM−3のゲノム部分のさらなる配列決定によって、本出願人らは、低減されたTH2およびAHR反応を発現する傾向がある点でDBA/2と類似の株であるC57/BL6もまた、Tim1およびTim3のHBA/DBA対立遺伝子を有することを発見した。TIM−1およびTIM−4の多型は、シグナルおよびムチン様ドメインに位置し、一方TIM−3において同定された多型は、Igドメインに集中している(図5c)。Igおよびムチンドメインを有する糖タンパク質において、どちらかのドメインにおける異型は、MAdCAM−1で示されたように、レセプター−リガンド相互作用に影響し得る。TIM−1およびTIM−4の予測される切断部位はシグナル配列における多型によって変化しないが、多型が切断の効率および/またはレセプターの細胞表面への往来に影響し得ることが可能である。これらのTim配列および多型は、免疫反応、およびヒトにおけるHAVウイルス病原性に重要である。
【0143】
本出願人らのN2戻し交配由来のゲノムDNAサンプルの分析は(図3)、TIM−1およびTIM−3多型はTaprと完全に同時分離することを示した。これらの観察はTIM−1、TIM−3、または両方における変化がAHRおよびTH2による炎症の変化をどの程度担うか識別しないが、本出願人らはヒトTIM−1(hHAVcr−1)および/またはTIM−3における多型は、喘息感受性とヒト染色体5qとの間の強力な関連の基礎となることを示唆する。この考えは、ヒトTim1のコード領域における主要な異型が、ヒトゲノムおよびESTデータベースの調査で明らかであるという事実によって支持される。これらヒトcDNA異型と、以前に記載されたサルHAVcr−1の異型およびここで同定されたマウス異型との比較は、TIM−1の予測されるタンパク質配列において広範囲の変異が存在することを示す(図5b、c)。この高い変異の程度が、TIM−1およびそのファミリーメンバーを、喘息感受性候補遺伝子として最も綿密に研究されたサイトカインおよびサイトカインレセプターのような、他の多くの候補遺伝子と区別する。それに加えて、Tim1と喘息感受性との間の関連は、ダニ感受性小児喘息の、Tim1およびTim3から約0.5メガベースであるマーカー、D5S820に対する有意な連鎖(平均LODスコア=4.8)の報告によってさらに支持される(図4)。
【0144】
上記の遺伝的多型に加えて、選択的スプライシングによって生じる、TIM遺伝子におけるいくつかの発現多型が存在する。TIM−1、TIM−2、およびTIM−4 mRNAの選択的スプライシングは、いくつかのTIM異型を産生し、それらのいくつかは分泌される、可溶性形式のTIMレセプターである。これらのスプライシング異型は、代わりの(alternate)5’非翻訳領域を有するTIMスプライシング異型と共に、TIMタンパク質の細胞特異的、および状態特異的発現パターンに寄与し得る。
【0145】
T細胞はTaprに影響を与える。Tapr遺伝子座の機能をよりよく理解するために、本出願人らは、Taprの対立遺伝子異型が、T細胞または抗原提示細胞(APC)の機能に影響を与えるかどうか決定した。これらの実験のために、本出願人らは、HBAバックグラウンドを有する(HBA DO11.10)卵白アルブミン(OVA)−特異的T細胞レセプター(TCR)トランスジェニックマウス(Tg)を産生し、本出願人らはそれらをBALB/cバックグラウンドを有する(BALB/c DO11.10)TCR−Tgマウスと比較した。これら株のどちらか由来の精製CD4+T細胞を、OVAおよびBALB/cまたはHBA骨髄のいずれか由来の樹状細胞(DC)と同時培養し、そして産生されたサイトカインを評価した。照射脾臓細胞および他の組織は、高レベルのTIM遺伝子を発現することが発見されたので、この実験のためにAPCとして照射脾臓細胞は使用しなかった。
【0146】
BALB/c DO11.10 T細胞は、抗原提示細胞の供給源とは独立した方式で、HBA DO11.10 T細胞より高レベルのIL−4およびIL−13を産生した(図6A)。それに加えて、一次または二次刺激いずれかの間のAPCの供給源にかかわらず、CD4 T細胞の供給源が、各抗原濃度において産生されたIL−4/IL−13の量を決定した。細胞型の各組み合わせの培養上清において、同等レベルのIL−12が検出され、さらにBALB/cおよびHBA DC機能は同様であることを示した。さらに、BALB DO11.10およびHBA DO11.10 T細胞は、同等レベルのIL−2を産生し、そして2次培養中にOVAに反応して同様のレベルの増殖を示し、HBAおよびBALB/c T細胞は同様に活性化されるが、それらが産生するTh2サイトカインのレベルがかなり異なることを示した。
【0147】
本出願人らは図6Bにおいて、本出願人らのDO11.10/DCシステムにおける1次培養の最初の12時間以内に、本出願人らはTIM−1のmRNAがBALB/cおよびHBA CD4+ T細胞の両方によって発現されることを発見したことを示す。1次刺激から4日以内に、本出願人らはBALB/c DO11.10の上清において有意なレベルのIL−13を発見し、そしてHBA DO11.10の上清においては検出しない。この違いは、36時間においてmRNAレベルで検出可能である(図6B)。12および36時間の間に、IL−13 mRNAの発現はHBA CD4 T細胞において低減され、一方IL−13の発現はBALB/c CD4 T細胞において維持される。従って、抗原に対する1次反応の間に、BALB/c CD4 T細胞は、HBA CD4 T細胞よりも強力なTh2反応を発現する。本出願人らの発見は、Taprは、1次抗原特異的反応の間にヘルパーT細胞の分化を調節することを示し、そして本出願人らはこれらの反応の最も初期段階の間に、CD4 T細胞においてTIM−1の発現を検出する。
【0148】
成熟Th1およびTh2サブセットへの分化後に、ヘルパーT細胞は、Th1細胞はTIM−3を発現し、一方Th2細胞は選択的にTIM−1を発現するように、RT−PCRによって傾倒されたTIM発現を示す。全てのT細胞集団は弱いTIM−4発現を示す。TIM−1によるItkシグナルがTh2分化を促進するようであるが、TIMタンパク質によるEGFRシグナルが、エフェクターおよび特にメモリーT細胞集団における細胞生存を増強するようである。ItkはT細胞および肥満細胞にのみ発現されるので、TIM−1に対するItkキナーゼ活性は免疫細胞、特に喘息およびアレルギーに関与するものに制限される。しかし、EGFRのような他のタンパク質チロシンキナーゼが、虚血上皮細胞、照射脾臓細胞、および腫瘍細胞を含む、他の組織によって発現されるTIMタンパク質の機能に関与する。
【0149】
これらの研究において、本出願人らは、喘息の基本的な特徴であるTh2サイトカイン産生および抗原誘発AHRの発現を調節する遺伝子座である、Taprをマッピングした。本出願人らは、繰り返しアトピーおよび喘息に連鎖されてきたヒトゲノムの領域である、ヒト染色体5qに相同的な染色体部分を有する、間隔特異的類遺伝子性マウス(HBA)を用いて、Taprを位置決定した。この領域はまた、脊髄形成異常および腫瘍性細胞発生異常と関連する5q症候群に繰り返し連鎖された。複雑な形質をより単純な、あるいは単一の遺伝子、形質に変換するこの類遺伝子性マウス戦略を用いて、本出願人らはTaprの間隔を0.4cM間隔まで狭め、この領域におけるいくつかの候補遺伝子を配列決定し、そしてTIM遺伝子ファミリーをポジショナルクローニングした。
【0150】
TIM遺伝子ファミリーは、以前に記載されたことがない。本出願人らは、全長cDNA配列を同定およびクローニングし、そしてHBAマウスと比較してBALB/cのTIM−1タンパク質において有意な多型を発見した。本出願人らは、TIM−1およびTIM−3のBALB/c配列は、AHRおよびアレルギー性T細胞反応に対する感受性に関連し、一方HBA配列は、これらの反応に対する保護に関連することを見出した。TIM−3は、分化したTH1によって選択的に発現される。多型Tim3異型とTaprとの関連は、TIM−3がTH1およびTH2細胞機能を調節し得ることを示唆する。しかし、Tim3における変異をまた、Tim4またはTim1に緊密に連鎖したハプロタイプに帰し得る。
【0151】
本出願人らは、いくつかの理由により、TIM−1は免疫系の調節において(特に喘息およびアレルギー性疾患に関して)、およびストレス(低酸素、栄養素の欠損、照射、化学療法等)に対する反応における上皮および造血細胞の生存の調節において、非常に重要な役割を果たしていると考える。まず、Tim1は、Tim3と同様、Tapr効果が起こる可能性が最も高い時である、1次抗原刺激の間にCD4 T細胞に発現される。T細胞は、AHRの発現および喘息の病因に決定的な役割を果たし、本出願人らの結果は、Taprは、IL−13の産生および続くT細胞分化を調節することによって、Th2反応に対する初期のCD4の傾倒を増強することによって、喘息に影響を与えることを示唆する。2番目に、乳児または小児期におけるヒトでのHAV感染は、喘息およびアレルギーの発現と逆比例して関連する。本出願人らは、HAVのTIM−1/HAVcr−1との相互作用が、T細胞サイトカイン産生を変化させ得、そうでなければアトピーおよび喘息に罹患しやすい個人において、偏ったTh1/Th2バランスを逆行または予防でき得ることを示唆する。麻疹ウイルスレセプターであるSLAMは、ウイルス相互作用によって変化し得る方式でTh1/Th2バランスを調節する、別のT細胞表面糖タンパク質の例である。麻疹ウイルスに関するSLAM、またはHIVに関するCD4、CCR5、およびCXCR4のような、いくつかのウイルスレセプターは、宿主自身の免疫系のレセプターであるので、感染が成功しない場合でも、ウイルスレセプターによるシグナル伝達は、サイトカインの放出および疾患の発現を引き起こし得る。
【0152】
3番目に、TIM−1における多型は、本出願人らが観察する、異なる型のヘルパーT細胞反応と関連する。従って、TIM−1の異型はそれ自身、免疫異常のいかなる公知の環境的原因も存在しない場合に起こる、遺伝的Th1/Th2素因に寄与し得る。霊長類におけるHAVレセプターは、高度に変異することが公知であり、そして本出願人らは、ヒトTIM−1/hHAVcr−1の多型対立遺伝子は、本出願人らがマウスで同定したものと同様、Th2の偏りおよび喘息感受性における変異に関連し得ることを提案する。ウイルスレセプターとして作用し、そして感染に対する感受性を変化させる細胞表面分子の遺伝子における変異はまれなことではなく、従ってTIM−1およびTIM遺伝子ファミリーの他のメンバーにおける有意な遺伝的変異は、サイトカインのもののような他の遺伝子における変異よりも観察される可能性がより高い。なぜ喘息感受性対立遺伝子がヒト遺伝子プールにおいて優勢であり得るのかは明らかではないが、TaprとHAVcrとの関連は、喘息感受性対立遺伝子の残存に関して興味深い説明を提供する。ヒトの進化の間に、Tim遺伝子ファミリーのある対立遺伝子が、アトピー性疾患および他の免疫異常に対する抵抗性を与え得たが、それらの抵抗性対立遺伝子の選択は、ウイルス病原体に対する抵抗性を与える代替対立遺伝子の選択と平衡に達したのかもしれない。
【0153】
まとめると、本出願人らの研究は、強力な候補喘息感受性遺伝子を位置決定し、そしてこの複雑な遺伝的形質の調査における内在する困難を克服する、類遺伝子性マウス戦略の最初の成功した利用を提示する。本出願人らは、ヒト染色体5qに対して相同的な領域に存在する、以前には未知の遺伝子ファミリーを同定し、そしてそれはTh細胞の分化および喘息感受性において主要な役割を果たす。ヒトにおける以前の研究は、ヒト染色体5qにおいていくつかの候補遺伝子を同定したが、本出願人らの研究で同定されたTim1遺伝子産物はまた、HAV感染と喘息感受性の低減との間の逆比例関係に関する説明を提供する。
【0154】
CD4+T細胞(Th)の部分集団は、区別できるパターンのサイトカインを産生し、そしてこれはTh細胞間の機能的不均一性の概念を導いた。1型Th細胞(Th1)は、インターロイキン2(IL−2)および/またはインターフェロンγを産生し、遅延型過敏症(DTH)反応を誘発し、そしてマクロファージを活性化する。一方2型Th細胞(Th2)は、IL−4、IL−5およびIL−10を産生し、そして特にIgE産生および好酸球性炎症に重要であり、そして細胞による免疫を抑制し得る。Th2細胞は、アトピーの病因において中枢の役割を果たすと考えられる。いくつかの因子が、特定の免疫反応の間に、Tヘルパー細胞がTh2に対してTh1へ分化するかどうかを決定する。これらは、サイトカイン環境、TCRシグナルの強さおよび/または抗原密度、ならびに副刺激経路を含むが、必ずしもこれに限らない。CD4+Tヘルパー細胞のTh1またはTh2サブセットへの分化は、アトピー、自己免疫疾患、感染性疾患、および移植片拒絶の結果に深い影響を有する。
【0155】
非アトピー性の個人をアレルギー性疾患の発現から保護し、そしてアトピー性個人でアレルギー性反応を阻害し得る、免疫反応の特定の特徴はあまり理解されていない。いくつかのシステムにおいて、Th1細胞はTh2細胞を交差調節するので、アレルゲン特異的Th1細胞が、アレルギー性疾患および喘息を調節すると考えられた。Th1細胞はTh2細胞の発達および増殖を阻害し、そしてIgE産生はIL−4およびIFN−γによって相互に調節される。これは、アレルギーからの保護は、阻害性アレルゲン特異的Th1細胞の発達によることを示唆する。非アレルギー性個人の末梢血由来のアレルゲン特異的T細胞クローンは、Th1サイトカインを産生することが示された。これらの観察はまた、喘息の衛生状態仮説を支持し、それは感染、特にTh1反応を誘発するものの罹患率が、公衆衛生基準の改善ならびにワクチンおよび抗生物質の使用によって、西洋化社会において減少したことを示唆する。結果として、Th2反応およびアトピーが、Th1による反応の非存在下で、より激しくそして迅速に発現する。
【0156】
本明細書中で同定されたTIM遺伝子はまた、候補癌遺伝子である。TIM遺伝子による細胞株のトランスフェクションは、細胞死への抵抗性を与え、そしてTIM−1において記載された予測されるEGFRキナーゼモチーフは、この細胞生存が調節される可能なメカニズムを提供する。さらに、TIM−1は、細胞をFasによるアポトーシスから保護するタンパク質である、TOSOと有意な程度の配列同一性(約20%)および構造的類似性(IgVドメイン、ムチン/シンデカンドメイン、膜貫通ドメイン、および同様のリン酸化チロシンモチーフを有する細胞内ドメインを有する膜貫通糖タンパク質)を示す。TIM遺伝子と同様、TOSOはおそらく癌遺伝子であり、造血系悪性腫瘍および固形腫瘍において頻繁な変化を有するゲノムの領域に位置する。
【0157】
(方法)
動物。C.D2 Es−HBAを含む類遺伝子性株を、DBA/2NをBALB/cAnPtバックグラウンドに、イントログレス的に(introgressively)戻し交配することによって産生した。BALB/cBy、DBA/2J、および(BALB/c×DBA/2)F1マウス(CByD2F1/J)を、Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から得、一方BALB/cAnおよびDBA/2NをTaconic Labs.から得た。(BALB/c×HBA)F1マウスを、BALB/cByJとHBAとの間の交配によって産生した。N2マウスを、(BALB/c×HBA)F1をHBAに対して戻し交配することによって産生した。本出願人らの組換えN2動物の分析において、可能な場合にはいつも、組換えマウスを非組換え同胞と共に試験した。多数のアッセイにおいて個々のN2遺伝子型を調査するために、本出願人らは、選択されたN2マウスをHBAに対して戻し交配してN3マウスを産生することによって、選択された組換えハプロタイプを保存し、それを遺伝子型決定して組換えN2ハプロタイプを有するマウスを選択した。OVAペプチド323−339(pOVA323−339)を認識するTCRに関してトランスジェニックであり、そしてBALB/c(43)に対して戻し交配した、DO11.10マウスは、Dr.Dennis Lohによって親切に提供され、そして本出願人らの施設で繁殖させた。HBA DO11.10マウスを、DO11.10をHBAに対して戻し交配することによって産生した。DO11.10マウスを、TCR−Tgに関してFACS分析によって選択し、そして遺伝子型決定してD11Mit135とD11Mit168との間のHBA対立遺伝子に関して選択した。The Stanford University Committee on Animal Welfareが、全ての動物プロトコールを承認した。
【0158】
遺伝子型決定。D11Mit140とD11Mit269との間に存在する全ての利用可能な「D11Mit−」マーカーならびに、D11Mit271およびD11Mit22付近の全ての照射ハイブリッドマーカーを、DBA/2とBALB/cとの間のあらゆる多型に関して試験することによって、Tapr遺伝子座周囲のさらなるマーカーを同定した。MIT MapPairプライマーを、Research Genetics(Huntsville、AL)から得、そして全ての他のプライマーを、Protein and Nucleic Acid Facility(Stanford、CA)において合成した。PCRを以前に記載したように行い、そしてSSLP多型を4−5%のMetaphorアガロース(BioWhittaker、Walkersville、MD)で分離した。SSCPに関して分析される産物を、33P−dCTPを用いて増幅し、Sequi−Gen GT System(Bio−Rad、Hercules、CA)を用いて、40Wおよび4℃で変性アクリルアミドゲルにおいて分離した。
【0159】
免疫化プロトコール。サイトカイン産生アッセイにおいて研究されたマウスを、完全フロイントアジュバント(CFA)中のKLH(Calbiochem、La Jolla、CA)を用いて初回抗原刺激した(Dekruyffら、J Immunol 149、3468−76(1992))。気道過剰応答性の測定のために、マウスを0日目に硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)と複合体化したOVAで腹腔内(i.p.、50μg)に、そして7、8、および9日目の軽い麻酔後、鼻腔内(i.n.、50μlのPBS中50μgのOVA)に免疫化した。コントロールマウスには、ミョウバン単独のi.p.注射および鼻腔内PBSを与えた。吸入メタコリンに対する気道過剰応答性を、最後のOVA鼻腔内投与の24時間後(10日目)に測定した。
【0160】
気道応答性の測定。気道応答性を、以前に記載されたように(Hansenら、J Clin Invest 103、175−83(1999))、身体全体の体積記録器(Buxco Electronics Inc.、Troy、NY)においた意識のあるマウスからの、メタコリン誘発気流障害によって評価した。
【0161】
細胞培養。KLHで初回抗原刺激したマウス由来のリンパ節細胞を、以前に記載されたように調製した(Yeungら、J Immunol 161、4146−52(1998))。トランスジェニックDO11.10 CD4 T細胞を、抗CD4磁気ビーズ(Miltenyi Biotech、ドイツ)とのインキュベーション後、MACSカラムを用いてポジティブに選択した。2×104細胞/ウェルを、96穴丸底プレートにおいて250μg/mlのOVAおよび1×104細胞/ウェルの骨髄由来樹状細胞と共に培養した。7日後、DO11.10 T細胞を洗浄し、そして新しい抗原提示細胞および示した濃度の抗原で再刺激した。初代DO11.10培養の抗原濃度を、再刺激の間に滴定した。骨髄由来樹状細胞を、以前に記載されたように、いくらか改変して調製した;5×106の骨髄細胞を、直径9cmの組織培養皿で、20−25U/mlのGM−CSFを含む10mlの培地と共に培養した。ゆるく接着した細胞を、培養6日目に2番目の皿に移動させた;4日以内に、移したこれらの細胞を樹状細胞の供給源として使用した。
【0162】
サイトカインELISA。ELISAを、Macaulayら、J Immunol 160、1694−700(1998);およびMacaulayら、J Immunol 158、4171−9(1997)において以前に記載されたように行なった。
【0163】
モノクローナル抗体。ELISAおよびFACS分析のためのモノクローナル抗体を、硫酸アンモニウム沈殿およびイオン交換クロマトグラフィーによって、腹水液から精製した。抗クローンタイプ(clonotype)抗体KJ1−26.1は、Dr.Philippa Marrack、National Jewish Medical Centerによって寛大に提供され、そして抗体を、FACSの前に、標準的なプロトコールによってFITCと結合体化した。
【0164】
(実施例2)
(ヒトTim配列の同定)
Th2応答およびアレルゲン誘発気道過剰応答性の発達に対して保護を与える遺伝子座にあるTIM遺伝子ファミリーのポジショナルクローニングは、Th2により駆動される応答およびアトピー性疾患の調節に関する我々の理解を非常に改善する機会を与える。それに加えて、TIM−3はマウスTh1細胞に特異的に発現し、そして抗TIM−3 mAbは実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)の重症度の増加を引き起こす。これは、Tヘルパーサブセット調節におけるその遺伝子ファミリーの重要性を強調する。
【0165】
マウスTim−3およびTim−4のオルソログであるヒトTim cDNAを、PCRによってクローニングした。TIM−1のヒトオルソログを、A型肝炎ウイルスの細胞レセプターである、HAVcr−1としてクローニングした。TIMファミリー遺伝子は、ヒト第5染色体において、TIM−4、TIM−1、TIM−3の順番で、介在する遺伝子無しにお互いにすぐ隣接している。第12および19染色体にTIM偽遺伝子が存在する。その遺伝子ファミリーメンバーは中程度にしか関連していない。タンパク質配列およびTim遺伝子ファミリー間の関係を、図7に示す。
【0166】
TIM遺伝子ファミリーメンバーの細胞質ドメインは、マウスオルソログとヒトオルソログとの間で最も保存されたドメインであり、例えばヒトTIM−3細胞質ドメインとマウスTIM−3細胞質ドメインとの間で77%の同一性である。対照的に、TIM−3全体はヒトおよびマウス間で63%しか同一でない。各TIM遺伝子は、明らかな予測されるチロシンシグナル伝達モチーフを含む。TIM−1の細胞質領域は、2つのチロシン残基および高度に保存されたチロシンキナーゼリン酸化モチーフ、RAEDNIYを含む。SRAEDNIYIVEDRPの拡大した領域は、ItkおよびEGFレセプターリン酸化に対する推定部位を含む。Itkは、ホスホリパーゼC−γ(PLC−γ)をリン酸化し、そしてそれによってT細胞活性化およびヘルパーT細胞分化に関与するシグナル伝達事象のカスケードを引き起こすことが知られている。さらに、Itkシグナル伝達はTh1/Th2分化に影響を与え、そしてItk−/−マウスは強いTh2応答を発達しない。EGFレセプターキナーゼ活性は、細胞の生存および細胞死に対する耐性と関連する。同様に、TIM−3は、細胞質ドメインに別個の保存されたチロシンリン酸化モチーフおよびSH2結合モチーフを含む。これは、TIMのそのリガンドとの相互作用が、細胞内シグナル伝達経路に携わること、および各TIMはこのシグナル伝達において別々であることを示唆する。
【0167】
TIMタンパク質の細胞外IgVドメインはまた、α(9)β(1)インテグリン、α(4)β(1)インテグリン、およびα(4)β(7)インテグリンによる接着に関与する、オステオポンチンのSVVYGLRモチーフと類似の推定インテグリン結合モチーフを含む。300.19株のTIM−1をトランスフェクトしたプレB細胞は、トランスフェクトされていない300.19細胞と比較して、細胞培養において高度の接着性および生存増加を示す。TIM−1およびTIM−2をトランスフェクトしたCHO細胞もまた、トランスフェクトされていないCHO細胞と比較して、生存の増強を示す。これらの結果は、TIMタンパク質が細胞接着および死を調節することを示す。
【0168】
ヒトTim1遺伝子およびTim3遺伝子における遺伝子多型。ヒトTim1遺伝子に存在するSNPまたはヌクレオチド多型および欠失/挿入を同定する。SNPはゲノムにおいて非常にありふれており、300−600塩基対ごとに起こるので、Tim1のコード領域のみを分析した。さらに、よくある遺伝子変異も重要であるようである。最初に、30−40人の個人(60−80本の染色体)から取ったT細胞由来のcDNAを配列決定する。検出力の計算は、60染色体のコード領域において標的配列を調査することが、1%より大きい個体群頻度を有するSNPを容易に検出し、そして5%以上の個体群頻度を有する対立遺伝子を検出する機会を90%より多く有することを示す。従って、配列の異型に関して30−40人の個人をスクリーニングすることは、個体群中に存在する、ほとんどのよくある、機能的に関連する、非保存的なDNA異型を捕捉する。
【0169】
物理的にきわめて接近したDNA異型/SNPは、多くの場合強力な依存関係(すなわち連鎖不均衡)を示すので、DNA異型のグループ(SNPハプロタイプ)が一緒に受け継がれるかどうかを決定し、そしてこれらSNPの一部のみのスクリーニングがハプロタイプの同定に十分であるかどうかを決定した。様々な染色体の大きな領域の分析は、別個のハプロタイプブロック(数十から数百キロベース)が一般的に存在し、それぞれが見かけの組換え部位によって時々断続された、限られた多様性を有することを示す。ハプロタイプを発見するために、cDNAを配列決定し、そして複数の個人で繰り返し見られる配列変異の組み合わせを探す。
【0170】
末梢血単核細胞(PBMC)は38人のドナー由来であり、そしてインビトロでPHA(7.5μg/ml)を用いて24および72時間、またはコンカナバリン(Concavalin)A(2μg/ml)を用いて24時間刺激した。PMA(20ng/ml)およびイオノマイシン(1μM)を、刺激の最後の6時間に加えた。次いで細胞を回収し、そしてTrizol試薬(Invitrogen)を用いて全RNAを抽出した。配列決定のためのcDNA鋳型を得るために、Superscript II逆転写酵素(Invitrogen)を用いて、製造会社のプロトコールによって、RNAを逆転写した。このcDNAを用いて、Herculase Hot Starttm 高忠実度ポリメラーゼ(Stratagene)を用いて、Tim cDNAの全長をPCR増幅した。PCRプライマーは以下のものであった:(配列番号37)GTGTCTGACAGTGGCGTA(順向き)、(配列番号38)TTTGCCCAGGCAGAACCA(順向き)、CCACCCAAGGTCACGACT(逆向き)、(配列番号39)ATGCCACGGACTAAGACC(逆向き)。PCR産物を、Qiagen QIAquickゲル抽出試薬を用いて精製し、そしてTim1に関して4つの内部配列決定プライマーを用いて、そしてTim3に関して2つの内部配列決定プライマーを用いて配列決定した。
【0171】
活性化T細胞から全RNAを取り、そしてSuperscript IIおよびオリゴdTを用いてそれを転写することによって、全長Tim1 RT−PCR産物を、これらの個人においてクローニングした。Tim1 cDNAを、Expand高忠実度ポリメラーゼ(Roche)を用いて増幅して、Tim1コード領域にまたがる1kbの産物を産生し、それをPCR Purificationキット(Invitrogen)を用いて精製した。次いでこの精製産物をTOPO pEF6ベクター(Invitrogen)にクローニングし、続いてTOP10コンピテント細菌を形質転換した。細菌コロニーを、アンピシリン選択を用いてLBプレートで増殖させた。単一のコロニーを取り、そしてQiagenミニプレップキットを用いてプラスミドプレップを行った。HindIII消化を用いた制限マッピングを用いて、正しい方向で挿入を含むプラスミドを選択した。次いでこれらのプラスミドを、3つの異なるプライマー(順向き(T7)、内部および逆向き(BGH))を用いて配列決定し、そしてその配列をNCBIヒトTIM参照配列とSeqManプログラムにおいて整列させた。
【0172】
35人の個人由来の染色体(70個の染色体)からTim1を配列決定した後、Tim1におけるいくつかの多型を同定し、それらを図8に示す。これらの多型に1−7の番号をつける(左カラム)。NCBIデータベースに記載されているヒトTIM−1の全配列(NM_012206)を、参照ポイントとして図8で提供する。この配列は、コード領域における複数の優勢な配列多型の存在のために、配列決定した染色体の20%以下に存在する。6個のさらなる配列異型が同定され、図8に示す、そして全ての多型は、マウスでもそうであるように、ムチンの細胞外ドメインで観察されたが、特定の変異はマウスで見られるものと異なっていた。重要なことに、これら異型の間に、様々な組み合わせで、限られた程度の関連が存在する。最も明らかな変異は、65%の染色体で観察された、多型1(157insMTTTVP)と名付けられた挿入、および65%の染色体で観察された、多型5(187△Thr)の欠失である。多型4は40%の染色体で観察され、そして他の多型はそれぞれ≦5%の染色体で観察された。特に、これら異型(2−6)のほとんどは、最初のムチンをコードするエキソンであるエキソン3内に位置し、そして全ての異型はゲノムレベルで存在し、そしてスプライシング異型ではない。
【0173】
mRNAのこの配列分析に基づいて、より多数の患者/コントロールからのゲノムDNAを分析するより迅速な方法が開発された。図8に示した配列中に見られる変異に関して個人をスクリーニングするために、DNAをまず150PCR産物における単純配列長多型(SSLP)に関して試験し、それは主要な挿入(多型1)および欠失(多型5)を検出し得る。
【0174】
それに加えて、他の多型(2−4、6および7)を遺伝子型決定および新規多型を同定するために、PCR産物の一本鎖高次構造多型(SSCP)分析を用いる、比較的単純なアッセイを開発した。十分に最適化された条件において、SSCP分析は90%より多くの単一ヌクレオチド置換および全ての長さ多型を検出する。この分析のために、Tim遺伝子の各エキソンを増幅するPCRプライマーを同定し、そして標準的な非変性SSCPゲル電気泳動法を用いて異型を区別し得る(図9)。各エキソンの高分解能SSCP分析のために、ABI 377 DNA配列と共に非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用する。蛍光末端標識プライマーを合成および精製する。ハイスループット遺伝子型決定処理の間に検出された新規SSCPパターンは、新規異型を同定する。この方法を用いて、患者およびコントロールの遺伝子型を迅速に分析する。
【0175】
Tim3遺伝子を、本質的に同じ方法論を用いて分析した。活性化T細胞由来のmRNAを配列決定して、Tim3多型、およびTim1とTim3との間の長い範囲のハプロタイプを同定する。Tim3 cDNAを示す60個の染色体を配列決定した後、Tim3は、これがマウスゲノムにおける場合と同様に、多型性であることが見出された。しかし、1つの多型のLeu140Argのみが優勢であり、示される染色体の約12%に見出される。
【0176】
(実施例3)
(Tim配列の発現)
マウスTIM−3タンパク質は、Th1クローンに発現するが、未処理(ナイーブな)T細胞またはTh2細胞には発現しない。TCRトランスジェニックT細胞を用いると、TIM−3タンパク質は、1回または2回のTh1指向性分化後のTh1細胞に発現しなかったが、3回およびそれ以上のTh1への刺激後に発現した。TIM−3 mRNA発現がいくらか早期に検出された。TIM−3遺伝子発現がヒトにおいて同じであるかどうかを決定するために、ヒトTh1細胞におけるTIM−3 mRNA発現およびTIM−1 mRNA発現を、IL−12および抗IL−4 mAbの存在下で抗原を用いた刺激によって作製した破傷風毒素特異的T細胞を用いて試験した。TIM−1と喘息の関連を考慮して、ヒトTh2細胞におけるTIM−1 mRNA発現およびTIM−3 mRNA発現を試験した。Th2細胞株を、アレルゲン、IL−4、および抗IL−12 mAbによるインビトロ刺激によって、アレルギー性ドナーから産生した。RNAをPCRによってTIM遺伝子発現に関して分析した。
【0177】
TIM−3はTh1分化の後一般的に発現していたが、TIM−1は消失した。逆に、TIM−3はどのTh2にも発現しなかったが、TIM−1は全てのTh2細胞に発現した。おそらく、この混合した集団はTh1メモリー細胞およびTh2メモリー細胞をどちらも含むために、TIM−1およびTIM−3はどちらも、Th1細胞株およびTh2細胞株を誘導するために使用したドナー由来の、単球除去した未刺激末梢血単核細胞に発現する。これらの結果は、Th2に発現するTIM−1およびTh1に発現するTIM−3の相互関係を示唆する。このTIM−1およびTIM−3間の相互関係は、マウスにおいても観察された。
【0178】
ヒト組織において、4.4kbのTIM−1 mRNAは腎臓および精巣に非常に強力に発現した。4.4kb mRNAは、ほとんど全ての組織に存在したが、ほとんどにおいてかすかであった。5.5kbのバンドが結腸および肝臓で観察された。7.5kbのバンドが脾臓、胸腺、および末梢血白血球で観察され、そして4.4kbより小さいバンドがいくつかの臓器で観察された。これらの結果は、hTIM−1はほとんどのヒト組織においてあるレベルで発現しており、そして7.5kbのメッセージが、免疫学的目的のある組織においてhTIM−1をコードし得ることを示唆する。しかし、TIM−1のラットホモログであるKim−1(Kidney Injury Molecule−1)の発現は、虚血性障害時に腎臓において増加する。発現分析において使用したMTNブロットは、死体から抽出したmRNAから調製したので、腎臓におけるTIM−1発現の増加を再分析した。正常腎臓生検から得た腎臓RNAにおいて、TIM−1の過剰発現は見られなかった。従って、腎臓および精巣で観察されたTIM−1の高レベルの発現は、組織障害により起こるTIM−1発現のアップレギュレーションによるものであった可能性がある。損傷した腎臓は、流入する炎症性細胞を、破壊的なTh1応答より、より保護的なTh2応答へ向けるタンパク質を発現し得る。
【0179】
(実施例4)
(TIMリガンドおよび抗体)
抗体の産生。マウスTIM−1に対するモノクローナル抗体の産生は、異なる組織、細胞株およびマウス株におけるTIM−1の細胞表面発現を調査することを可能にする。マウスTIM−1の対立遺伝子の両方を、高タンパク質発現のためにベクター(Invitrogen、pEF6−TOPO)にクローニングした。ラットを両方のTim1 cDNA構築物で免疫および追加免疫し、細胞表面分子に対する抗体を迅速に産生した。cDNAワクチン接種を用いるこの方法は、Tim1 cDNAはAPCによって取り込まれ、それがTIM−1を細胞表面分子として発現するので、細胞表面エピトープに対するmAbの産生に有利である。BALB/c TIM−1およびHBA TIM−1の両方と同等によく(TIM−1の免疫グロブリンドメインのような、TIM−1の保存されたドメインに結合することによって)結合するmAbを産生するために、BALB/cおよびHBA Tim1 cDNAをどちらも(pEF6−mTIMbalbおよびpEF6−mTIMhba)を各ラットに注射した。
【0180】
Tim1 cDNA免疫ラットのさらなる追加免疫を、pEF6−mTIM−1−GFP発現構築物で安定にトランスフェクトしたCHO細胞で行なった。高レベルのマウスTIM−1を発現するCHOトランスフェクタントを、FACSによって分類し、そしてラットに注射した。別のmTIM−1を発現する細胞を、プレB細胞株300.19をpEF6−mTIM−1発現構築物で安定にトランスフェクトすることによって産生した。この株を使用して、ラット血清および抗TIM−1抗体のため融合後のハイブリドーマを、フローサイトメトリーによってスクリーニングする。非免疫ラット由来のコントロール血清と比較して、ラット血清(および2次FITC−ヤギ抗ラットIg)の、安定なpEF6−mTIM1トランスフェクト300.19細胞への結合によって検出されるような、抗TIM−1に対して高いポリクローナル力価を有するラットを産生した。非トランスフェクト細胞またはTIM−2でトランスフェクトした細胞では応答性が存在しないので、この染色は、TIM−1に特異的である。
【0181】
ラット脾臓を取出し、そして脾臓細胞を骨髄腫細胞株(SP/2)と融合してハイブリドーマを産生した。ハイブリドーマ上清を、TIM−1トランスフェクト300.19細胞株を使用してスクリーニングし、モノクローナル抗TIM−1を産生するハイブリドーマクローンを同定する。TIM−1に対する(そして他のTIMタンパク質ではない)mAbの特異性を、TIM−2トランスフェクト細胞、およびmTIM−3トランスフェクト細胞またはTIM−3 Ig融合タンパク質を用いて確認する。
【0182】
抗体染色。Th1細胞株およびTh2細胞株を、BALB/cおよびHBA DO11.10脾臓細胞両方から調製した。TIM−1 mRNA発現のRT−PCRは、標準的な偏向性条件下で2回の抗原による再刺激後、TIM−1はTh2株に発現するがTh1株には発現しないことを示した。Th2偏向性条件下で抗原/APCによる2回の刺激後のDO11.10T細胞は、ポリクローナルラット抗TIM−1抗血清で染色された。これらのTh2細胞は高レベルのTIM−1を発現した。
【0183】
Th2株におけるTIM−1の選択的な発現を示すこれらの実験を、抗Tim−1 mAbおよびノーザンブロットを用いて定量および確認する。BALBおよびHBA由来のDO11.10細胞を、抗原およびAPCと共に培養し、そして標準的な偏向条件(抗IL−12+IL−4または抗IL−4+IL−12)の下で1、2、および3週間再刺激する。刺激の各週後に、細胞を抗TIM−1 mAbで染色する。様々な時点において刺激細胞を回収することによって、Th1サブセットまたはTh2サブセットへの分化を受けたT細胞におけるTIM−1発現の動態を決定する。Tim−1表面発現がT細胞活性化後に変化するかどうかを決定するために、本発明者らはまた、いくらかの細胞をPMAおよびイオノマイシンで刺激することによって、抗原刺激の各回の1週間後に、休止T細胞および活性化T細胞におけるTIM−1発現を比較する。活性化細胞を、細胞内サイトカイン発現に関して染色し、T細胞のThサブセット分化を検証する。あるいは、刺激の各回の後に、PMA+イオノマイシンで活性化されたT細胞から回収したmRNAを用いた定量的RT−PCRまたはノーザンブロットを使用して、mRNA産生の相対的レベルを決定する。
【0184】
TIM−1−Ig融合タンパク質。TIM−1ポリペプチドおよびマウス免疫グロブリンのFc領域との間の融合タンパク質である、BALB/c TIM−1−mIgG2aを調製した。ベクターを、マウスIgG2a Fcにおいて、Fcレセプターへの結合を最小にする変異を含むように、遺伝子操作した。TIM−1融合タンパク質を、TIM−1機能の特徴付けにおいて利用する。TIM−1 Ig融合タンパク質は、TIM−1リガンドに結合することによってTIM−1機能を阻害すること、およびTIM−1/TIM−1リガンド相互作用を妨害することが予測される。
【0185】
ヒトIgG1のヒンジおよびFcフラグメントに融合したTIM−1のシステインリッチな免疫グロブリンドメインおよびムチン様領域の2/3を含む、精製したD1muc−Fc融合タンパク質(IgVmuc−hIg)を、ゲルに流した。このタンパク質をCHO細胞に発現させ、そしてIgVmuc−hIgタンパク質を、CHO上清からプロテインAアガロースカラムを用いて精製した。精製IgVmuc−hIg融合タンパク質は、約2logのHAV伝染性を中和する。それに加えて、IgVmuc−hIgによるHAVの処理は、HAV粒子の沈降に大きなシフトを引き起こし、IgVmuc−hIgはウイルスゲノムの非外被化(uncoating)を誘発したことを示す。一方、ムチンドメインを含まないIg様領域のみを含む融合タンパク質(IgV−hIg)は、それを引き起こさなかった。このHAV中和化システムおよびIgVmuc−hIg融合タンパク質を使用して、TIM−1/HAVレセプター対立遺伝子の機能を分析する。
【0186】
マクロファージの拡大および活性化に対する抗TIM−3 mAbのインビボ効果に基づいて、TIM−3リガンドは、骨髄株の細胞に発現するという仮説をたてた。1000U/mlのIL−4および800U/mlのGM−CSFを用いて、確立されたプロトコールによって、血液単球から樹状細胞(DC)を調製した。DCを、細胞を2日間、IL−1β(10ng/ml)、TNF−α(10ng/ml)、IL−6(1000U/ml)、およびPGE2(1μg/ml)を補充したIL−4(1000U/ml)およびGM−CSF(800U/ml)中に再プレートすることによって成熟させた。成熟DCは、hTIM−3−Igで陽性に染色されたが、ドナー間で変動性が存在し、成熟DCはTIM−3のIgVドメインに対するリガンドを発現することを示唆する。骨髄由来内皮細胞は非常に弱く染色され、そしてB細胞株はTIM−3−Igで染色されなかった。
【0187】
Tim1/huhavcr−1の細胞質内尾部は比較的短いが、それはマウス、ラット、ヒトおよびサル間で高度に保存された配列(RAEDNIYI)を含み、そしてそれはリン酸化され、そして他のシグナル伝達分子との相互作用によってシグナル伝達し得る。T細胞においてRAEDNIYIモチーフに結合し得る、最も可能性ある候補分子は、チロシンキナーゼItkである。インターロイキン2誘導性チロシンキナーゼのItkは、Tecファミリーの非レセプタータンパク質チロシンキナーゼであり、それはT細胞の活性化を引き起こす細胞内シグナル伝達事象に役割を果たす。Tecファミリーメンバーは、保存されたSH3、SH2、および多くのキナーゼファミリーに共通の触媒ドメインを含むが、それらはこの領域外の独特の配列によって区別される。ItkはホスホリパーゼC−γ(PLC−γ)をリン酸化し、そしてT細胞活性化およびヘルパーT細胞分化に関与するシグナル伝達事象のカスケードを引き起こすことが知られている。Itkシグナル伝達の非存在下で、Th2細胞は発達しない。これらの結果は、TIM−1/huhavcr−1が、Itkによってシグナル伝達し、それによってCD4 T細胞におけるサイトカインの発達を変化させ得ることを示唆する。
【0188】
(実施例5)
(TIMノックアウトマウス)
ノックアウト構築物を、Tim1欠損マウスの作出において使用し、それはTIM−1分子の非存在下で免疫反応の発達を分析することを可能にする。別のアプローチにおいて、TIM−1−Ig融合タンパク質または抗TIM−1モノクローナル抗体を用いて、Tim1+/+(野生型)マウスにおけるTIM−1の機能を阻害する。Tim1ノックアウトマウスおよび抗TIM−1 mAbアプローチは、T細胞分化および喘息の病因におけるTIM−1の役割の評価に関して相補的である。
【0189】
Tim1のHBAマウスゲノム配列は、エキソン4における組み込まれたL1レトロウイルスエレメントのために、BALB/c配列と比較して、エキソン4の欠失を有する。1つのエキソンの短縮がTIM−1機能を低減する場合、Tim1ノックアウトマウスの作出によるTIM−1機能の全ての欠失は、そのようなマウスのTh2応答を生じる能力を著しく制限するはずである。TIM−1 KOマウスを、cre−lox技術およびBALB/c ES細胞を用いて、TIM−1のエキソン1およびエキソン2を欠失させることによって作出し、それはTIM−1の細胞表面発現を排除するはずであり、それによってTh2細胞およびAHRの発達におけるTIM−1機能の重要性を示す。
【0190】
適当な標的化構築物を作製するために、TIM遺伝子ファミリーのメンバーを含む特異的BACを、高密度フィルターセットを用いて、C57/BI6 BACライブラリー(RPCI−23)をスクリーニングすることによって同定した。これらのBACクローンを使用して、Tim遺伝子ファミリーを含む約350kbのゲノム領域をカバーする、500kBのコンティーグおよび物理的地図を作成した。完全なTim1遺伝子を含む1つの特異的BAC、RPCI−23−222F8を、TIM標的化構築物を作製するために選択した。標的構築物は、プロモーター領域、シグナルエキソン、およびIgVエキソン(エキソン1および2)を含む4kbの領域を、この領域をはさむ5’および3’アームによる相同的組換えによって、欠失させる。標的化構築物の相同的アームは、BALB/cおよびHBA(C57BI/6)のDNAの両方と相同的であるので、この標的化ベクターを、C57BI/6またはBALB/cのES細胞のいずれでも使用し得る。構築物をES細胞に導入し、それをPCRおよびサザンブロットによって、標的化対立遺伝子に関してスクリーニングする。
【0191】
標的化ベクターのpLOXは、3つのloxP部位を含み、そして標的化ES細胞においてcreリコンビナーゼを発現することによって、組換えは標的化領域の3つの形式を形成し、そのうち2つの対立遺伝子のAおよびBを、Tim1 KOマウスを作出するために使用する。選択されたES細胞クローンを、胚盤胞に導入してキメラマウスを産生し、そしてノックアウトの生殖細胞系列の遺伝のために繁殖させる。尾部DNAを、ノックアウトの遺伝に関して分析する。まず対立遺伝子Aを使用し、そこでcre/lox組換えは一番外側のloxP部位を使用して、TIM−1のエキソン1およびエキソン2に加えてTKおよびネオマイシンの選択カセットを欠失させた。TIM−1ゲノム標的化領域からneoおよびTKのカセット全体を除去することは、同じファミリーの他の遺伝子にきわめて近接するneoの転写に対して、2次的に生じ得る人工産物を混同するのを防ぐ。あるいは、もし対立遺伝子Aが致死的または混乱させる表現型を産生する場合、標的化対立遺伝子Bを用いてマウスを作出し、それにおいてneoおよびTKのカセットが欠失し、そしてTIM−1領域がlox−p部位によって挟まれる。この条件付き標的化アプローチの使用は、T細胞特異的プロモーターの調節下にあるcreリコンビナーゼを発現するマウスにおいて、Tim−1のT細胞特異的欠失を可能にするはずである。
【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】図1aは、HBAマウスはBALB/cマウスよりも有意に少ないIL−4を産生することを示す。150μgのKLHで免疫したマウスのリンパ節細胞を回収し、B−細胞を涸渇し、そして10μg/mlのKLHを含むcDMEで培養した。96時間後に上清を回収、そしてELISAによってIL−4レベルに関して評価した。データの全範囲を表すIL−4レベルのボックスプロット(各グループにおいてn=10)を示し、ボックスは上位および下位の四分位数(quartiles)を含み、データセットの中央値を各ボックスの中に示す。BALB/c細胞および(BALB/c×HBA)F1細胞によって産生されたIL−4レベルは、HBAのIL−4レベルより有意に高い(P<0.0001(スチューデントt検定))。図1bは、HBAマウスはBALB/cマウスより有意に少ないIL−13およびIL−10を産生することを示す。示したデータは、各実験グループにおける10匹の個々のマウス由来のリンパ節細胞培養によって産生されたサイトカインの平均値、±S.D.である。HBAのIL−13レベルおよびIL−10レベルは、BALB/cまたは(BALB/c×HBA)F1のどちらの値より低かった(P<0.0001)(IL−5対BALB/c、P<0.05)(HBA IFN−γ対BALB/c、P<0.001)。図1cは、アレルゲン誘発気道過剰応答性は、HBAマウスよりもBALB/cマウスで有意に大きいことを示す。肺気流の障害を測定し、そして示したデータは、様々なメタコリン濃度における各グループの感作マウス間で平均したpeak enhanced pause(Penh)値、±S.E.M.を表す。(BALB×HBA)F1は、BALB/c表現型を示し、一方(BALB×DBA)F1マウスはDBA/2様の表現型を示す。
【図2】図2は、HBA第11染色体の領域は、DBA/2から受け継がれたことを示す。HBA第11染色体は、SSLPマーカーによって表される、hba−α2およびes−3の間の、DBA由来の2つの領域を含む。DBA/2遺伝子型を有するHBA第11染色体の領域を、左の図において(青色で)強調する。マーカー(左)は、D11Mit230に対して遠位の2−5cMの分解能を提供する。マウス第11染色体が5q23−35と高度に保存されたシンテニーの領域を有する場合、さらなるマーカーがBALB/cおよびDBA/2間の情報を与える多型によって同定され、この領域において0.01−2cMの分解能を与えた(右カラムのマーカー)。一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)マーカーを、SSLPマーカーと区別するために緑色で示し、そして赤色で表示された目的の特定の遺伝子の位置も示す。本発明者らのマーカー地図の配置がChromosome Committee ReportsおよびMIT連結地図と異なる場合、本発明者らの地図は以前の連結および物理的地図と一致する。
【図3】図3aは、N2マウスによるIL−4産生は、F1およびHBA表現型に対応するピークを有する双峰分布であることを示す。複数の実験において組換えN2マウスの相対的表現型を評価する方法として、本発明者らは複数の実験からのデータの整理統合を可能にする指数化関数(indexing function)を利用した。柱状グラフは、(BALB×HBA)F1、HBAホモ接合体、および示した組換えハプロタイプを有するN2マウスのIL−4指数値の、双峰分布を示す。F1およびHBAハプロタイプと関連する分布は独特である(P<0.0001、対応あるスチューデントt検定)。図3bは、IL−4の調節はKim1sscpと共に分離することを示す。組換えN2ハプロタイプを、IL−4指数値によって、高IL−4表現型(指数<0.35)および低IL−4表現型(指数>0.65)と関連するグループへ分類した。ボックスの各カラムは、組換えハプロタイプを示す。D11Mit269からD11Mit154までの間の遺伝子座におけるこれらハプロタイプの対立遺伝子に、遺伝子型によって明暗をつけた(濃い=F1;薄い=HBA)。高IL−4産生は、4つのハプロタイプと分離し(左)、そして低IL−4産生は4つのハプロタイプと分離する(右)。IL−4表現型はKim1sscpと連結する。図3cは、N2マウスのAHRは、F1およびHBA表現型に対応するピークを持つ双峰分布であることを示す。Penh値から計算した指数値を示す。柱状グラフは、N2マウスのAHR指数値の双峰分布を示す。(BALB×HBA)F1、HBAホモ接合体、および組換えハプロタイプを示す。F1およびHBAハプロタイプと関連する分布は別個である(P<0.0001、対応あるスチューデントt検定)。図3dは、AHR調節遺伝子座は、D11Mit22およびD11Mit271間のIL−4調節遺伝子座と同時分離することを示す。組換えN2ハプロタイプを、AHR指数値によって、高AHR表現型(指数<0.35)、および低AHR表現型(指数>0.65)と関連するグループへ分類した。ボックスの各カラムは、組換えハプロタイプを示す。D11Mit269からD11Mit154間の遺伝子座におけるこれらハプロタイプの対立遺伝子に、遺伝子型によって明暗をつける(濃い=F1;薄い=HBA)。高AHRは、4つのハプロタイプと分離し(左)、そして低AHR産生は3つのハプロタイプと分離する(右)。AHR調節遺伝子座は、D11Mit271およびD11Mit22間のKim1sscpと連結する。
【図4】図4は、Taprを含むマウス第11染色体の区間は、5q33と高度に相同的である。Tapr遺伝子座の周囲の複合地図を構築するために、本発明者らはマウス連結、戻し交配、および照射ハイブリッド地図から入手可能な情報を統合し、そしてヒトゲノムの現在の地図において、高度に保存されたシンテニーの領域を同定した(Human Genome Browser v3、UCSC、2001年3月)。マウス第11染色体(左)の物理的地図に位置するESTを、その登録番号で表示し、そしてヒト第5染色体(右)のESTに対応する、遺伝子に対する相同性によって整列させた(中央)。KIAA0171およびSgd間の公知の遺伝子を全て示す。
【図5a】図5aは、新規TIM遺伝子ファミリーおよびTIM−1およびTIM−3における主要な多型の同定、マウスTIM−1およびマウスTIM−2のクローニング、遺伝子ファミリーのメンバー、マウスTIM遺伝子ファミリーメンバーの配列を示す。陰をつけたボックスは、2つのマウスTIM遺伝子間の同一性を示す。conA刺激脾臓細胞由来の全RNAを、Gibco Superscript IIを用いて逆転写した。全長Tim−3 cDNAのPCR産物を増幅し、Qiagen QIAquick PCR Purification試薬で精製し、そしてBiotech Core(Mountain View、CA)によって直接配列決定した。Tim−1およびTim−2 cDNAのPCR産物を、TOPO−XLクローニング試薬(Invitrogen)を用いてelectrocompetent TOP10細胞にクローニングした。プラスミドを、標準的なアルカリ溶解プロトコールを用いて精製した。BALB/cおよびHBAプラスミドを、記載したように配列決定した。マウスTIM−1、ラットKIM−1、およびHAVcr−1の相同性。マウスTIM−1との同一性を、陰をつけたボックスによって表示する。おおよそのシグナル部位を白い反転した三角形によって表示し、そしてIgドメイン/ムチンドメイン境界を黒い菱形で示す。予測される膜貫通ドメインに下線を引く。BALB/cおよびHBA TIM−1およびTIM−3間の主要な多型を有するTIM−1およびTIM−3配列を示す。
【図5b】図5bは、新規TIM遺伝子ファミリーおよびTIM−1およびTIM−3における主要な多型の同定、マウスTIM−1およびマウスTIM−2のクローニング、遺伝子ファミリーのメンバー、マウスTIM遺伝子ファミリーメンバーの配列を示す。陰をつけたボックスは、2つのマウスTIM遺伝子間の同一性を示す。conA刺激脾臓細胞由来の全RNAを、Gibco Superscript IIを用いて逆転写した。全長Tim−3 cDNAのPCR産物を増幅し、Qiagen QIAquick PCR Purification試薬で精製し、そしてBiotech Core(Mountain View、CA)によって直接配列決定した。Tim−1およびTim−2 cDNAのPCR産物を、TOPO−XLクローニング試薬(Invitrogen)を用いてelectrocompetent TOP10細胞にクローニングした。プラスミドを、標準的なアルカリ溶解プロトコールを用いて精製した。BALB/cおよびHBAプラスミドを、記載したように配列決定した。マウスTIM−1、ラットKIM−1、およびHAVcr−1の相同性。マウスTIM−1との同一性を、陰をつけたボックスによって表示する。おおよそのシグナル部位を白い反転した三角形によって表示し、そしてIgドメイン/ムチンドメイン境界を黒い菱形で示す。予測される膜貫通ドメインに下線を引く。BALB/cおよびHBA TIM−1およびTIM−3間の主要な多型を有するTIM−1およびTIM−3配列を示す。
【図5c】図5cは、新規TIM遺伝子ファミリーおよびTIM−1およびTIM−3における主要な多型の同定、マウスTIM−1およびマウスTIM−2のクローニング、遺伝子ファミリーのメンバー、マウスTIM遺伝子ファミリーメンバーの配列を示す。陰をつけたボックスは、2つのマウスTIM遺伝子間の同一性を示す。conA刺激脾臓細胞由来の全RNAを、Gibco Superscript IIを用いて逆転写した。全長Tim−3 cDNAのPCR産物を増幅し、Qiagen QIAquick PCR Purification試薬で精製し、そしてBiotech Core(Mountain View、CA)によって直接配列決定した。Tim−1およびTim−2 cDNAのPCR産物を、TOPO−XLクローニング試薬(Invitrogen)を用いてelectrocompetent TOP10細胞にクローニングした。プラスミドを、標準的なアルカリ溶解プロトコールを用いて精製した。BALB/cおよびHBAプラスミドを、記載したように配列決定した。マウスTIM−1、ラットKIM−1、およびHAVcr−1の相同性。マウスTIM−1との同一性を、陰をつけたボックスによって表示する。おおよそのシグナル部位を白い反転した三角形によって表示し、そしてIgドメイン/ムチンドメイン境界を黒い菱形で示す。予測される膜貫通ドメインに下線を引く。BALB/cおよびHBA TIM−1およびTIM−3間の主要な多型を有するTIM−1およびTIM−3配列を示す。
【図6】図6は、TaprはCD4 T細胞のIL−4およびIL−13応答を調節することを示す。BALB/c DO11.10マウス由来のT細胞は、HBA DO11.10マウス由来のT細胞よりも、抗原に応答してより高いレベルのIL−4およびIL−13を産生する。脾臓CD4+細胞を、抗CD4磁気ビーズを用いてポジティブセレクションによって単離し、そして次いで骨髄由来のDCおよびOVAと同時培養した。7日後、細胞を再刺激した。2次培養の18−24時間後に上清を回収した。データは、増加するOVA濃度において検出された平均サイトカインレベル、±S.D.を示す。初回抗原刺激および分化の間の、精製CD4T細胞におけるTIM−1 mRNAの発現の検出。
【図7】図7は、ヒトおよびマウスTIMタンパク質配列の配列アラインメントを示す。
【図8】図8は、ヒトTIM−1における多型を示す。
【図9】図9は、ヒトTIM−1のSSCP多型分析を示す。
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
免疫系の驚異的な複雑性は、その最大の威力である。1012−1214の潜在的な抗体特異性、様々な調節細胞およびエフェクター細胞間の精密な相互作用、MHC抗原によるT細胞応答の制限;これら全てが宿主の感染性因子および外来性と考えられる他の抗原に対して効率的に応答する能力に寄与する。しかし、この多様性はその欠点を有する。誤りが起こる:応答の標的が正常な自己タンパク質であることが判明し得る;炎症性応答が誤調節される;そして正常な応答が、移植片および移植細胞に対して望ましくなく向けられる。これらの状況下で、その系の複雑性は診断および治療を非常に困難にする。
【0002】
免疫応答の間にCD4+T細胞によって産生されるサイトカインのプロフィールが、免疫応答の結果を発生および調節するエフェクター機能の性質を決定する。Th1−優位の応答におけるIL−2およびIFN−γの産生は、激しい細胞媒介性免疫、IgG2aの誘導およびIgE合成の阻害、および細胞内病原体に対する抵抗性と関連する。対照的に、Th2−優位の応答におけるIL−4、IL−5、およびIL−10の産生は、体液性免疫および自己免疫病理からの保護と関連する。アレルゲン特異的CD4+T細胞によるTh2−サイトカインの過剰産生は、アレルギー疾患および喘息の発生を引き起こし得、一方Th1細胞は、様々な炎症誘発性疾患と関連していた。
【0003】
免疫関連疾患に対する1つのアプローチは、免疫療法である。免疫療法は、適当に用いた場合に有効であることが証明され、そして免疫学的介入の進歩は有効性をさらに改善すると希望される。代わりのアプローチは、サイトカインを使用して免疫応答をシフトさせようと試みた。マクロファージおよび樹状細胞によって産生されるヘテロダイマーのサイトカイン、IL−12は、未処置およびメモリーCD4+T細胞において、Th1サイトカイン合成の発生を強力に推進する。IL−13およびIL−4のような他のサイトカインが、T細胞のTh2型への分化と関連していた。
【0004】
喘息、アレルギー性鼻炎、およびアトピー性皮膚炎を含むアトピーは、遺伝的に感受性の個体において、環境的に誘発された免疫応答の結果として起こる、複雑な形質である。全てのアトピー性疾患の罹患率は、過去20年間の間に産業化諸国において劇的に増加した。喘息は小児期の最もよくある慢性疾患であり、そして合衆国において1500万人以上に影響を与え、1年あたり110億ドルを越える直接治療コストをもたらす。疫学的研究が、喘息罹患率の増加は、産業化社会における衛生状態の変化および感染(例えば結核またはA型肝炎)の頻度低下に起因することを示唆した。しかし、喘息罹患率の増加を引き起こす特定の分子的経路、および喘息感受性を与える遺伝的多型はあまり理解されていない。
【0005】
喘息の発現は、非相加的な方法でお互いに相互作用する、複数の環境的および遺伝的因子によって影響され、喘息感受性遺伝子の同定を複雑にしている。喘息感受性は、いくつかの染色体領域と連結されたが、分解能は5−10cMより低く、そこには通常数百の候補遺伝子が存在する。さらに、どの単一遺伝子における遺伝的変異の効果も、おそらく喘息の病因全体では中程度の効果しか有さないので、そして遺伝子−遺伝子および遺伝子−環境相互作用が分析を混乱させるので、ポジショナルクローニングに対して応答性の領域に推定感受性遺伝子を位置決めすることは、精密化が困難であることが判明した。それにもかかわらず、喘息感受性は第5染色体、第6染色体、第11染色体、第14染色体、および第12染色体に連結した。これらのうち、染色体5q23−35が、それはIL−9、IL−12p40、β−アドレナリンレセプター、およびIL−4、IL−5およびIL−13の遺伝子を含むIL−4サイトカインクラスターを含む多くの候補遺伝子(11、12、13、14、15、16、17、18)を含むので、最も注目を集めた。しかし、5qの連結領域の大きなサイズがその分析を複雑にし、そしてこの部位からの喘息遺伝子はまだ決定的に同定されていない。
【0006】
(関連する出版物)
ヒトA型肝炎ウイルス細胞レセプターの遺伝配列は、Genbank、登録番号XM_011327において見出し得る。関連する配列が、Genbank、登録番号BAB55044において提供される。非特許文献1は、Th1細胞に発現する細胞表面分子を記載する。特許文献1、特許文献2、特許文献3は、マウスTIM−3対立遺伝子に対応する配列に関連する。
【特許文献1】米国特許第5721351号明細書
【特許文献2】米国特許第6204371号明細書
【特許文献3】米国特許第6288218号明細書
【非特許文献1】Monneyら、Nature(2002)415:436
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
免疫機能の調節および細胞の生存に関連するタンパク質の、遺伝子座および対応するファミリーを提供することが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、例えば、以下の手段を提供する。
(項目1)
哺乳動物のTIM遺伝子配列を含む、単離された核酸分子。
(項目2)
上記哺乳動物のTIM遺伝子配列が、TIM−1、TIM−3およびTIM−4の対立遺伝子2、3、4、5および6からなる群より選択されるヒト配列である、項目1に記載の単離された核酸分子。
(項目3)
上記哺乳動物のTIM遺伝子配列が、TIM−1、TIM−2、TIM−3およびTIM−4からなる群より選択されるマウス配列である、項目1に記載の単離された核酸分子。
(項目4)
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、または36のうちのいずれ1つに記載される、少なくとも20ヌクレオチドの連続配列を含む、単離された核酸。
(項目5)
配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、または36のうちのいずれ1つに記載される配列を含む、単離された核酸。
(項目6)
TIM遺伝子多型の検出のためのプローブを含む、項目1に記載の単離された核酸分子。
(項目7)
項目6に記載のプローブの2つ以上を含む、オリゴヌクレオチドのアレイ。
(項目8)
項目1に記載の核酸組成物を含む細胞。
(項目9)
少なくとも50重量%のタンパク質を含む精製ポリペプチド組成物であって、そのタンパク質が、項目1に記載の核酸またはそのフラグメントの産物として存在する、組成物。
(項目10)
上記ポリペプチドが、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、および35に記載の配列を含む、項目9に記載の精製ポリペプチド。
(項目11)
哺乳動物のTIMポリペプチドに特異的な、抗体。
(項目12)
個体において喘息に対する素因を検出するための方法であって、その方法が、以下:
少なくとも1つの素因性のTIMの多型の存在についてその個体を分析する工程であって、ここで、その素因性の多型の存在が、その喘息に対する罹患率の増大を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目13)
上記分析工程が、上記個体のゲノムDNAまたはmRNAと、項目6に記載の1つまたは複数のプローブとの間の特異的な結合の検出を包含する、項目12に記載の方法。
(項目14)
上記分析工程が、上記個体由来の細胞またはタンパク質と、項目11に記載の抗体との間の特異的な結合の検出を包含する、項目12に記載の方法。
(項目15)
TIM遺伝子のノックアウトを含む、TIM遺伝獅機能についての非ヒトトランスジェニック動物モデル。
(項目16)
TIM機能を調節する、生物学的に活性な薬剤についてのスクリーニングの方法であって、その方法が、以下:
以下のいずれか1つと、生物学的に活性な薬剤の候補を混ぜる工程:
(a) 哺乳動物のTIMポリペプチド;
(b) 哺乳動物のTIMポリペプチドをコードする核酸を含有する、細胞;または
(c) TIM遺伝子機能についての非ヒトトランスジェニック動物モデル;および
TIM機能に対するその薬剤の効果を決定する工程、
を包含する、方法。
(項目17)
上記生物学的に活性な薬剤が、TIMの発現を下方制御または上方制御する、項目16に記載の方法。
(項目18)
上記生物学的に活性な薬剤が、上記TIMポリペプチドの活性を阻害するかまたは上昇させる、項目16に記載の方法。
(項目19)
個体において免疫不全を診断または段階付けするための方法であって、その方法が、以下:
少なくとも1つの素因性のTIMの多型の存在についてその個体を分析する工程であって、ここで、その素因性の多型の存在が、その免疫不全に対する罹患率の増大を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目20)
個体において癌を診断または段階付けするための方法であって、その方法が、以下:
少なくとも1つの素因性のTIMの多型の存在についてその個体を分析する工程であって、ここで、その素因性の多型の存在が、癌治療に対する耐性の増大を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目21)
個体において癌を診断または段階付けするための方法であって、その方法が、以下:
少なくとも1つの素因性のTIM−1発現プロフィールの存在についてその個体を分析する工程であって、ここで、そのTIM−1の発現プロフィールが、癌治療に対する耐性の増大を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目22)
個体において癌を診断または段階付けするための方法であって、その方法が、以下:
少なくとも1つの素因性のTIM−4発現プロフィールの存在についてその個体を分析する工程;ここで、そのTIM−4の発現プロフィールが、癌治療に対する耐性の増大を示す、工程、
を包含する、方法。
(項目23)
個体において免疫学的障害を処置するための方法であって、その方法が、以下:
TIMポリペプチドの機能を調節する薬剤を、その個体に投与する工程、
を包含する、方法。
(項目24)
上記TIMポリペプチドが、TIM−1またはTIM−4である、項目23に記載の方法。
(項目25)
上記薬剤が、TIM−1に特異的な抗体または抗体フラグメントである、項目24に記載の方法。
(項目26)
上記薬剤が、TIM−1機能を阻害する化合物である、項目24に記載の方法。
(項目27)
上記免疫学的障害が喘息である、項目24に記載の方法。
(項目28)
上記免疫学的障害がアレルギーである、項目24に記載の方法。
(項目29)
上記免疫学的障害が湿疹である、項目24に記載の方法。
(項目30)
上記免疫学的障害が自己免疫疾患である、項目24に記載の方法。
(項目31)
上記薬剤が、TIM−4に特異的な抗体または抗体フラグメントである、項目23に記載の方法。
(項目32)
上記薬剤が、TIM−4の機能を阻害する化合物である、項目30に記載の方法。
(項目33)
個体において悪性腫瘍を処置するための方法であって、その方法が、以下:
TIMポリペプチドの機能を調節する薬剤を、その個体に投与する工程、
を包含する、方法。
(項目34)
上記TIMポリペプチドがTIM−1である、項目33に記載の方法。
(項目35)
上記薬剤が、TIM−1に特異的な抗体または抗体フラグメントである、項目34に記載の方法。
(項目36)
上記薬剤が、TIM−1の機能を阻害する化合物であり、そして化学療法剤または放射線治療の効果を増強する、項目35に記載の方法。
(項目37)
上記TIMポリペプチドがTIM−4である、項目33に記載の方法。
(項目38)
上記薬剤が、TIM−4に特異的な抗体または抗体フラグメントである、項目37に記載の方法。
(項目39)
上記薬剤が、TIM−4の機能を阻害する化合物であり、そして化学療法剤または放射線治療の効果を増強する、項目38に記載の方法。
【0009】
免疫機能および細胞の生存に関連するポリペプチドをコードする遺伝子ファミリーの遺伝配列が提供される。これらの遺伝子は、本明細書中でT細胞免疫グロブリンドメインタンパク質およびムチンドメイン(TIM)タンパク質と呼ぶ、保存されたIgVおよびムチンドメインを有する細胞表面分子をコードする。TIMファミリーを含む遺伝子座は、喘息を含む免疫機能不全と遺伝的に関連する。さらに、TIM遺伝子ファミリーは、悪性腫瘍および脊髄形成異常症候群において通常欠失しているヒト第5染色体の領域に位置している。TIM−1、TIM−3およびTIM−4において多型が同定され、それはTh1/Th2分化および気道過剰応答性(AHR)と関連し得る。
【発明の効果】
【0010】
核酸組成物を使用してコードされたタンパク質を産生し、それを機能的研究のために、治療薬として、および関連する生理学的経路の研究において採用し得る。核酸、抗体などを含むTIM特異的結合因子は、アトピーおよび喘息に対する遺伝的感受性を決定する診断薬として、そして癌治療に対する腫瘍抵抗性を評価する診断薬として有用である。TIM阻害薬は、免疫機能不全、および悪性腫瘍を含む細胞生存の障害の処置において治療薬として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施形態の詳細な説明)
喘息に対する感受性を含む、免疫機能に関連する遺伝配列が提供される。マウスTim−1、Tim−2、Tim−3およびTim−4の配列、およびヒトの対応する配列が、本明細書中で提供される。主要な多型の配列も提供される。遺伝配列は、欠失を含むこれらの多型は、スプライシング改変体ではなく、真の多型であることを示す。TIM−1およびTIM−3配列の改変体は、気道過剰応答性およびアレルギー性T細胞応答と関連しており、そして他の改変体はこれらの応答に対する保護に関連する。
【0012】
TIM遺伝子ファミリーメンバーの細胞外ドメインは、2つのドメイン(IgVドメインおよびムチンドメイン)を含む。このIg/ムチン構造はMAdCAM(粘膜addressin細胞接着分子)においても見出され、これは2つのIgドメインおよび1つのムチンドメインを含む;しかし、TIMとMAdCAMとの間には低いレベルの相同性しか存在しない。同程度の相同性が、TIM−1およびTOSO(NP_005440.1 GI:4885641)、TIM−1のように活性化T細胞に発現し、そしてT細胞をFasによるアポトーシスから保護するタンパク質の間にも存在する。
【0013】
T細胞は遺伝子のTIMファミリーを発現し、それはCD4T細胞の分化を決定的に調節する。Th1細胞は優先的にTIM−3タンパク質を発現し、一方Th2細胞は選択的にTIM−1タンパク質を発現する。TIM−1は、気道過剰応答性と連結し、そしてTIM−3は自己免疫疾患と連結し、従って分化するリンパ細胞における発現パターンおよびリンパ細胞におけるTIM−1発現の動態は、これら分子の機能を反映する。
【0014】
本発明の別の局面において、TIM遺伝子座における遺伝子型を決定することによって、個体の喘息およびアトピー性疾患の発生に対する感受性を決定する方法が提供される。スクリーニングは、例えば、本明細書中で提供された、または他の方法で決定されたTIM−1対立遺伝子、TIM−3対立遺伝子またはTIM−4対立遺伝子のいずれか1つにおける多型を分析し得る。そのような多型をスクリーニングする方法、例えばSSCP分析、サイズ多型等が提供される。
【0015】
本発明の別の局面において、Tim遺伝子またはポリペプチド機能を調節する生物学的に活性な薬剤をスクリーニングする方法が提供され、ここでその方法は、生物学的に活性な候補因子を、以下のもののいずれか1つと組み合せる工程:(a)Timポリペプチド;(b)Timポリペプチドをコードする核酸を含む細胞;または(c)以下の1つを含むTim遺伝子機能の非ヒトトランスジェニック動物モデル:(i)Tim遺伝子のノックアウト;(ii)外来性および安定に遺伝するTim遺伝子配列;または(iii)リポーター遺伝子に作動可能に連結したTimプロモーター配列;および当該因子のTim機能に対する効果を決定することを含む。
【0016】
TIMポリペプチドの活性を、免疫機能を指示するために調節し得る。TIM−1はTh2細胞に優先的に発現し、そしてTIM−1活性を調節する薬剤は、アレルギー、喘息等を含むTh2に関連する疾患の治療に有用である。TIM−3はTh1細胞において優先的に発現し、そしてTIM−3活性を調節する薬剤は、自己免疫疾患、移植片拒絶等を含む炎症誘発性免疫疾患の治療に有用である。
【0017】
(目的の状態)
アトピー性疾患は、遺伝的に素因のある個体において、環境的に誘発された免疫応答の結果として発現する複雑な遺伝的形質である。アトピー性または非アトピー性の個体はどちらも同じ環境因子にさらされるが、アトピー性個体を非アトピー性個体と区別する遺伝的差異が、ある個体においてアトピー性疾患を引き起こし、気管、皮膚または胃腸管におけるアレルギー性炎症、および上昇した血清IgE、好酸球増加、およびぜん鳴、くしゃみ、またはじんましんの症状によって明らかになる。それに加えて、アレルギー性炎症応答は、高レベルのIL−4、IL−5、IL−9およびIL−13を産生するTh2リンパ球の存在によって特徴付けられ、それは好酸球、肥満細胞、好塩基球およびIgEを産生するB細胞の増殖、分化、および/または補充を増強する。
【0018】
目的のアレルゲンは、イチゴ、ピーナッツ、乳タンパク質、卵白等のような食物に見出される抗原を含む。他の目的のアレルゲンは、草の花粉、動物の鱗屑、イエダニの糞等のような、様々な空気で運ばれる抗原を含む。分子的にクローニングされたアレルゲンは、Dermatophagoides pteryonyssinus(Der P1);ライグラス花粉由来のLol pl−V;jumper ant Myrmecia pilosula由来の毒液;Apis melliferaハチ毒液ホスホリパーゼA2(PLA2)および抗原5S;スズメバチVespula maculifronsおよびクロスズメバチDolichovespula maculata由来のホスホリパーゼを含む多くの昆虫毒液;カバ花粉、ブタクサ花粉、Parol(Parietaria officinalisの主要なアレルゲン)、および交差応答性アレルゲンParjl(Parietaria judaica由来)を含む多くの花粉タンパク質、およびOlea europaea、Artemisia sp.、gramineae等を含む他の大気中花粉を含む。他の目的のアレルゲンは、吸血節足動物、例えばカ(Anopheles sp.、Aedes sp.、Culiseta sp.、Culex sp.);ハエ(Phlebotomus sp.、Culicoides sp.)特にブユ、メクラアブおよびヌカカ;ダニ(Dermacenter sp.、Ornithodoros sp.、Otobius sp.);ノミ、例えばXenopsylla、PulexおよびCtenocephalides felis felis属を含むSiphonaptera目を含む、Dipteraによって引き起こされるアレルギー性皮膚炎を引き起こすものである。特異的アレルゲンは、多糖、脂肪酸部分、タンパク質等であり得る。
【0019】
多くの相互作用/上位アトピー遺伝子における多型は、アレルギー性障害への感受性を増強させると考えられる。ゲノム範囲での走査が、アレルギーおよび喘息の様々なパラメーターを特定の遺伝子の多型DNAマーカー、通常DNAの反復配列(ジ−、トリ−およびテトラ−ヌクレオチドリピートを含むマイクロサテライト)と連結させることによって、責任遺伝子を同定しようとした。これらの研究は、アトピーの病因に関与する可能性があるとしていくつかの染色体領域を同定したが、分解能は5−10cMにすぎず、そこには典型的には数百の候補遺伝子が存在する。それにもかかわらず、2つ以上のこれらゲノム範囲での走査研究によって、喘息感受性が、染色体5q23−31、染色体6p21、染色体11q13、および染色体12q(9−13)と連結された。
【0020】
喘息は、本明細書中で定義されるように、ある期間にわたる個体における可逆的な気流の制限である。喘息は、気道壁における好酸球、肥満細胞、好塩基球、およびCD25+Tリンパ球のような細胞の存在によって特徴付けられる。様々な伝達および生物学的エフェクター性質を有するサイトカインの活性に起因して、これらの細胞間には密接な相互作用が存在する。ケモカインは細胞を炎症部位に引き寄せ、そしてサイトカインはそれらを活性化して、炎症および粘膜への損傷を引き起こす。過程の慢性化と共に、基底膜の肥厚および繊維症のような2次的な変化が起こる。その疾患は、様々な刺激に対する気道過剰応答性の増加および気道の炎症によって特徴付けられる。喘息と診断された患者は、一般的にある時間にわたってぜん鳴、喘息発作、およびメタコリンチャレンジに対する陽性応答、すなわち約4mg/ml以下のメタコリンチャレンジに対してPC20を含む複数の徴候を有する。診断ガイドラインを、例えばNational Asthma Education Program Expert Panel Guidelines for Diagnosis and Management of Asthma、National Institutes of Health、1991、Pub.No.91−3042において見出し得る。
【0021】
喘息、アレルギー性鼻炎(枯草熱)、アトピー性皮膚炎(湿疹)および食物アレルギーは、同じ家族内で起こる疾患であり、共通の遺伝的メカニズムを示唆する。これらのアトピー性疾患はきわめて罹患率が高く、一般人口の20−40%に影響し、そして主要な公衆衛生問題となっている。これら疾患の経済的コストは莫大である。喘息単独で、1996年の推定健康管理コストは140億ドルであった。それに加えて、全てのアトピー性疾患の罹患率は、まだ明らかでない理由のために、過去20年間の間に産業化諸国において劇的に増加した。数字が最も正確である、産業化諸国における喘息の罹患率は、1982年から倍増し、そして2020年までに罹患率が再び倍増すると予測される。
【0022】
Th1型T細胞に関連する炎症誘発性疾患は、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、I型糖尿病等のような自己免疫疾患を含む。(RA)は世界人口の0.8%に影響する、慢性自己免疫炎症性滑膜炎である。RAの現在の治療は、免疫機能を非特異的に抑制または調節する治療薬を利用する。最近開発されたTNFαアンタゴニストを含むそのような治療は、根本的に治癒力のあるものではなく、そして疾患の活性は治療の中断後すぐに戻る。全身性免疫抑制または調節を引き起こさない、根本的に治癒力のある治療の非常に大きな臨床的ニーズが存在する。
【0023】
IFNガンマを分泌し得るミエリン−自己応答性T細胞の定量的増加が、MSおよびEAEの病因に関連し、MS患者の末梢血における自己免疫誘導剤/ヘルパーTリンパ球が、MS患者における脱髄過程を開始および/または調節し得ることを示唆する。その明白な疾患は、筋肉の虚弱、腹部反射の喪失、視覚の欠損、および感覚異常と関連する。前駆症状の期間中、リンパ球の脳脊髄液への浸透、炎症および脱髄が存在する。
【0024】
IDDMは、インスリン分泌β細胞の破壊および明らかな高血糖を引き起こす、細胞媒介性自己免疫疾患である。Tリンパ球がランゲルハンス島に侵入し、そしてインスリン産生β細胞を特異的に破壊する。β細胞の涸渇により、血液中のグルコースレベルを調節できなくなる。疾患の進行を、家族歴および遺伝的分析によって感受性であると診断された個体においてモニターし得る。最も重要な遺伝的効果は、主要組織適合性遺伝子座(IDDM1)の遺伝子で見られるが、インスリン遺伝子領域(IDDM2)を含む他の遺伝子座も、疾患との連結を示す(Daviesら、前出およびKennedyら(1995)Nature Genetics 9:293−298を参照のこと)。
【0025】
(遺伝子ファミリー)
提供されるTIMファミリー遺伝子およびそのフラグメント、コードするタンパク質、ゲノム調節領域、および特異的抗体は、喘息を発現するまたは抵抗する素因のある個体の同定に、および予防的および治療的目的のためにインビボで遺伝子活性を調節するために有用である。コードされたタンパク質は、特異的抗体を惹起する免疫原として、タンパク質の変化した形式を含む、活性または発現を模倣または調節する組成物の薬剤スクリーニングにおいて、および治療薬として有用である。
【0026】
TIMファミリー遺伝子は、介在遺伝子なしに、TIM−4、TIM−1、TIM−3の順番で、ヒト第5染色体上でお互いにすぐ隣接している。ヒト第5染色体のこのセグメントは、悪性腫瘍および脊髄形成異常症候群におけるような形成異常細胞集団でよく欠失する(Boultwoodら(1997)Genomics 45:88−98を参照のこと)。第5染色体、第12染色体、および第19染色体上にTIM偽遺伝子が存在する。TIM−4以外の各TIMタンパク質は、明らかな予測されるチロシンシグナル伝達モチーフを含む。TIM−1の細胞質領域は、2つのチロシン残基を含み、そして高度に保存されたチロシンキナーゼリン酸化モチーフ、RAEDNIYを含む。拡大領域、SRAEDNIYIVEDRPは、予測されるItkリン酸化およびEGFレセプターリン酸化部位を含む。
【0027】
マウスTim1遺伝子は、305アミノ酸の膜タンパク質をコードする。TIM−1の細胞質領域は、2つのチロシン残基を含み、そして高度に保存されたチロシンキナーゼリン酸化モチーフ、RAEDNIYを含む。TIM−1のムチンドメインは、複数のO−結合グリコシル化部位を有し、そして免疫グロブリンドメインに2つのN−結合グリコシル化部位が見出される。
【0028】
同様の305アミノ酸膜タンパク質であるマウスTIM−2は、マウスTIM−1に対して64%の同一性、ラットKIM−1に対して60%の同一性、そしてhHAVcr−1に対して32%の同一性を有する。TIM−1と同様、TIM−2は2つの細胞外N−結合グリコシル化部位および、多くのO−結合グリコシル化部位を有するセリン、スレオニンリッチなムチンドメインを有する。TIM−2はまた、細胞内チロシンキナーゼリン酸化モチーフ、RTRCEDQVYを有する。
【0029】
Tim3は、マウスにおいて281アミノ酸の膜タンパク質、そしてヒトにおいて301アミノ酸のタンパク質をコードし、それらは複数の細胞外グリコシル化部位および細胞内チロシンリン酸化モチーフを有する、同様の膜貫通糖タンパク質構造を有する。TIM−3においてムチンドメインはTIM−1およびTIM−2におけるほど顕著ではないが、T細胞に発現したTIM−3はAPCのリガンドと相互作用し、そしてAPC活性化を変化させる。TIM−3は4つのN−結合および5つのO−結合グリコシル化部位を有し、TIM−3は、TIM−1およびTIM−2と同様、多くグリコシル化されており、そして抗原提示細胞のような他の細胞に存在するリガンドと相互作用し得ることを示唆する。
【0030】
Tim4は、マウスにおいて344アミノ酸のタンパク質、そしてヒトにおいて378アミノ酸のタンパク質をコードする。予測されるTIM−4はまた、高度に保存されたシステイン残基を有するIgV様ドメイン、スレオニンリッチなムチンドメイン、および短い細胞内テイルを有し、他のTIMタンパク質の一般的な膜糖タンパク質構造モチーフを共有する。
【0031】
マウス配列の多型を、BALB/cおよびHBA/DBA株に関して配列表で提供する。TIM−1において、これらの多型は3つのアミノ酸の差異およびHBA/DBAにおける15個のアミノ酸欠失をコードする。7つの予測されるアミノ酸の差異がTIM−3で同定された。TIM−1およびTIM−4における多型は、シグナルおよびムチン様ドメインに位置し、一方TIM−3で同定された多型はIgドメインに集中している。
【0032】
ヒトTim1のコード領域における改変体を、配列表および図8で提供する。変異は、65%の染色体で観察される挿入(多型1と名称をつける)、157insMTTTVP、および65%の染色体で観察される欠失(多型5)、187△Thrを含む。他の多型は、T140A(多型7);V161A(多型2);V167I(多型3);T172A(多型4);N258D(多型6)である。多型4は、40%の染色体で観察され、そして他の多型はそれぞれ≦5%の染色体で観察された。これら変異のほとんどは(2−6)、最初のムチンをコードするエキソンであるエキソン3に位置し、そして全ての改変体はゲノムレベルで起こり、そしてスプライシング改変体ではない。Tim1と喘息感受性との間の関連は、ダニ感受性小児喘息の、Tim1から約0.5メガベースであるマーカー、D5S820に対する有意な連結(平均LODスコア=4.8)の報告によってさらに支持される。
【0033】
ヒト組織において、4.4kbのTIM−1 mRNAがほとんど全ての組織に存在するが、ほとんどにおいてかすかなものである。5.5kbのバンドが結腸および肝臓で観察された。7.5kbのバンドが脾臓、胸腺、および末梢血白血球で観察され、そしてより小さい4.4kbのバンドがいくつかの臓器で観察された。TIM−1 mRNAは、異なる細胞集団において、代わりの(alternate)5’非翻訳領域とともに発現する。低酸素および虚血が、上皮細胞においてTIM−1の発現を誘導し、そして照射がTIM遺伝子ファミリーmRNAの発現を誘導する。TIM遺伝子は腫瘍標本において発現している。ヒトTIM−4 mRNAは、神経膠芽腫組織において発現し、そしてそれはまた分裂促進物質で刺激した、または照射末梢血単球において検出される。
【0034】
1つの局面において、本発明は、TIM−1タンパク質、TIM−2タンパク質、TIM−3タンパク質もしくはTIM−4タンパク質、またはそれらのホモログもしくは改変体をコードする配列を含む、天然に存在する染色体以外の単離核酸分子を提供し、その改変体は気道過剰応答性およびアレルギー性T細胞応答に対する感受性と関連し得る。その核酸を、同一源または異種由来の宿主細胞において発現するために、ベクターおよび/または調節配列に作動可能に連結し得る。そのような宿主細胞は、コードされたタンパク質の産生に有用であり得る。本発明の別の局面において、TIM−1タンパク質、TIM−2タンパク質、TIM−3タンパク質もしくはTIM−4タンパク質、またはそれらのホモログもしくは改変体の精製ポリペプチドが提供され、その改変体は気道過剰応答性およびアレルギー性T細胞応答に対する感受性と関連し得る。別の局面において、TIM−1ポリペプチド、TIM−2ポリペプチド、TIM−3ポリペプチドもしくはTIM−4ポリペプチドに結合する抗体または他の特異的結合メンバーが提供される。
【0035】
ヒトおよびマウスTIM配列の配列が、以下のように配列表で提供される:
【0036】
【表1】
TimポリペプチドをコードするDNA配列は、cDNAまたはゲノムDNAあるいはそのフラグメントであり得る。プローブ、ポリペプチドの産生等のための目的のフラグメントは、1つ以上の多型残基を含み得る。Tim遺伝子という用語は、特定のTimポリペプチド、イントロンのいずれか1つをコードするオープンリーディングフレーム、ならびにコード領域を越えて約1kbまでの、しかしあるいはどちらかの方向にさらに遠くまで、発現の調節に関与する隣接する5’および3’非コードヌクレオチド配列を意味することが意図される。その遺伝子を、染色体外での維持または宿主への組込みのために適切なベクターに導入し得る。
【0037】
いくつかの実施形態において、Tim遺伝子配列は、配列表に示されるようなヒトTIM−1対立遺伝子1以外、および/またはマウスTIM−3 DBA対立遺伝子以外である。
【0038】
本明細書中で使用される「cDNA」という用語は、ネイティブの成熟mRNA種で見出される配列エレメントの配置を共有する全ての核酸を含むよう意図され、ここで配列エレメントはエキソンならびに3’および5’非コード領域である。通常mRNA種は連続的なエキソンを有し、間にあるイントロンは核RNAスプライシングによって除去されてTimタンパク質をコードする連続的なオープンリーディングフレームを作製する。
【0039】
目的のゲノム配列は、列挙した配列で規定されたような、天然染色体において通常存在する全てのイントロンを含む、開始コドンおよび停止コドンの間に存在する核酸を含む。それはさらに、成熟mRNAで見出される3’および5’非翻訳領域を含み得る。それはさらに、約1kb、しかしあるいはより長い、転写領域の5’または3’末端のいずれかの隣接したゲノムDNAを含む、プロモーター、エンハンサー等のような、特異的転写配列および翻訳調節配列を含み得る。ゲノムDNAを100kbpまたはより小さいフラグメントとして単離し得る;そして本質的に側面の染色体配列を含まない。
【0040】
5’領域の配列、ならびにさらに5’上流配列および3’下流配列を、エンハンサー結合部位を含むプロモーターエレメントのために利用し得、それはTim遺伝子が発現する組織における発現を提供する。組織特異的発現は、発現パターンを決定するために、およびネイティブの発現パターンを模倣するプロモーターを提供するために有用である。プロモーター領域に天然に存在する多型は、天然の発現における変異、特に疾患と関連し得るものを決定するために有用である。あるいは、突然変異をプロモーター領域に導入して、実験的に定義されたシステムにおいて変化した発現の効果を決定し得る。転写因子の結合に関与する特異的DNAモチーフを同定する方法、例えば公知の結合モチーフに対する配列類似性、ゲル遅延研究等が、当該分野で公知である。例えば、Blackwellら(1995)Mol Med 1:194−205;Mortlockら(1996)Genome Res.6:327−33;ならびにJoulinおよびRichard−Foy(1995)Eur J Biochem 232:620−626を参照のこと。
【0041】
調節配列を使用して、特に異なる組織または発達段階におけるTIM発現の転写または翻訳調節に必要なシス作用配列を同定し得、そしてTIM発現を調節または媒介するシス作用配列およびトランス作用因子を同定し得る。そのような転写調節領域または翻訳調節領域を、野生型または変化したTIMまたは他の目的のタンパク質の、培養細胞、または胚、胎児組織もしくは成人組織における発現を促進するために、および遺伝子治療のためにTIM遺伝子に操作可能に連結し得る。
【0042】
本発明の核酸組成物は、本ポリペプチドの全てまたは一部をコードし得る。伝統的な方法によってオリゴヌクレオチドを化学的に合成することによって、制限酵素消化によって、PCR増幅等によって、DNA配列のフラグメントを得ることができる。ほとんどの場合、DNAフラグメントは少なくとも15nt、通常少なくとも18nt、より通常には少なくとも約50ntである。そのような小さいDNAフラグメントは、PCR、ハイブリダイゼーションスクリーニング等のプライマーとして有用である。より大きなDNAフラグメント、すなわち100ntより大きなものは、コードされたポリペプチドの産生に有用である。PCRのような増幅反応で使用するために、1対のプライマーを使用する。プライマー配列の正確な組成は、本発明に決定的にではないが、ほとんどの適用に関して、プライマーは、当該分野で公知であるように、ストリンジェントな条件下で本配列にハイブリダイズする。少なくとも約50nt、好ましくは少なくとも約100ntの増幅産物を産生する1対のプライマーを選択することが好ましい。プライマー配列を選択するためのアルゴリズムは一般的に公知であり、そして市販のソフトウェアパッケージで入手可能である。増幅プライマーはDNAの相補鎖にハイブリダイズし、そしてお互いに向かって初回刺激する。
【0043】
TIM遺伝子は、実質的な純度で、一般的にインタクトな哺乳動物染色体以外として単離され、そして得られる。通常、DNAは、TIM配列またはそのフラグメントを含まない他の核酸配列を実質的に含まないで得られ、一般的に少なくとも約50%、通常少なくとも約90%の純度であり、そして典型的には「組換え体」であり、すなわち天然に存在する染色体で通常関連しない1つ以上のヌクレオチドに隣接する。
【0044】
DNA配列を様々な方法で使用する。それらを、TIM関連遺伝子を同定するプローブとして使用し得る。哺乳動物ホモログは本配列と実質的な配列類似性、すなわち本DNA配列のヌクレオチド配列と少なくとも75%、通常少なくとも90%、より通常には少なくとも95%の配列同一性を有する。配列類似性を、保存されたモチーフ、コード領域、隣接領域等のような、より大きな配列のサブセットであり得る参照配列に基づいて計算する。参照配列は通常、少なくとも約18nt長、より通常には少なくとも約30nt長であり、そして比較される完全な配列まで伸長し得る。Altschulら(1990)J Mol Biol 215:403−10で記載されたBLASTのような、配列分析のためのアルゴリズムが、当該分野で公知である。
【0045】
配列類似性を有する核酸を、低いストリンジェンシー条件下例えば50℃で10×SSC(0.9Mの生理食塩水/0.09Mのクエン酸ナトリウム)でのハイブリダイゼーションによって検出し、そして55℃で1×SSCでの洗浄にかけた場合に結合したままにする。配列同一性をストリンジェントな条件下、例えば50℃またはより高く、および0.1×SSC(9mMの生理食塩水/0.9mMのクエン酸ナトリウム)でのハイブリダイゼーションによって決定し得る。プローブ、特にDNA配列の標識プローブを使用することによって、ホモログまたは関連遺伝子を単離し得る。相同的遺伝子の供給源はあらゆる種、例えば霊長類種、特にヒト;ラットおよびマウスのようなげっ歯類、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウマ、酵母、Drosophila、Caenhorabditis等であり得る。
【0046】
そのDNAをまた、生物学的標本における遺伝子の発現を同定するために使用し得る。ゲノムDNAまたはRNAのような特定のヌクレオチド配列の存在に関して細胞をプローブする方法は、文献においてよく確立されており、そしてここで詳述する必要はない。mRNAを細胞サンプルから単離する。mRNAを、逆転写酵素を用いてRT−PCRによって増幅し、相補的DNA鎖を形成し得、続いて本DNA配列に特異的なプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応増幅を行なう。あるいは、mRNAサンプルをゲル電気泳動によって分離し、適当な支持体、例えばニトロセルロース、ナイロン等に移動させて、そして次いでプローブとして本DNAのフラグメントを用いてプローブする。オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、インサイチュハイブリダイゼーション、および固体チップ上に整列したDNAプローブへのハイブリダイゼーションのような他の技術も有用であり得る。本配列にハイブリダイズするmRNAの検出は、サンプルにおけるTIM遺伝子の発現を示す。
【0047】
本核酸配列を、特にそれらを細胞内で使用する場合、例えば遺伝子切断等のために核酸切断薬剤(例えば鉄またはクロムのようなキレート化金属)を結合させることによって、多くの目的のために修飾し得る。
【0048】
隣接プロモーター領域およびコード領域を含むTIM遺伝子座の配列を、当該分野で公知の様々な方法で突然変異させて、プロモーターの強さ、コードされるタンパク質の配列等における標的化変化を産生し得る。DNA配列またはそのような変異の産物は、本明細書中で提供される配列と本質的に同様である、すなわち少なくともそれぞれ1ヌクレオチドまたはアミノ酸が異なる、そして少なくとも2つ、しかし約10以下のヌクレオチドまたはアミノ酸が異なり得る。配列変化は、置換、挿入または欠失であり得る。欠失はさらに、ドメインまたはエキソンの欠失のような、より大きな変化を含み得る。他の目的の修飾は、例えばFLAGシステム、HA等を用いたエピトープタグ化を含む。細胞レベル下での局在の研究のために、グリーン蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質を使用し得る。そのような変異遺伝子を使用して、TIMポリペプチドの構造−機能相関を研究し得るかまたはその機能もしくは調節に影響を与えるタンパク質の性質を変化させ得る。例えば、構成的に活性な転写因子、または転写を活性化することなくTIM DNA標的部位に結合するドミナントネガティブに活性なタンパク質を、この方法で作成し得る。
【0049】
クローニングされた遺伝子のインビトロ突然変異生成技術は公知である。変異を調査するプロトコルの例は、Gustinら、Biotechniques 14:22(1993);Barany、Gene 37:111−23(1985);Colicelliら、Mol Gen Genet 199:537−9(1985);およびPrentkiら、Gene 29:303−13(1984)において見出され得る。部位特異的突然変異生成の方法は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、CSH Press 1989 15.3−15.108頁;Weinerら、Gene 126:35−41(1993);Sayersら、Biotechniques 13:592−6(1992);JonesおよびWinistorfer、Biotechniques 12:528−30(1992);Bartonら、Nucleic Acids Res 18:7349−55(1990);MarottiおよびTomich、Gene Anal Tech 6:67−70(1989);およびZhu Anal Biochem 177:120−4(1989)において見出され得る。
【0050】
アレイは、1つのサンプルにおいて多くのポリヌクレオチドをアッセイし得るハイスループット技術を提供する。本発明の1つの局面において、1つ以上のTIM遺伝子、タンパク質、または抗体を含む、好ましくはこれらの配列全てを含むアレイを構築し、そのアレイはさらにT細胞、単球等で上方制御または下方制御されることが公知の他の配列を含み得る。この技術を、差次的発現、または遺伝子型同定を試験する道具として使用し得る。ポリヌクレオチドプローブを、二次元マトリックスまたは結合したプローブを有するアレイに、基質(例えばガラス、ニトロセルロース等)に配置することによって、アレイを作成し得る。プローブを、共有結合または、疎水性相互作用のような非特異的相互作用のいずれかによって基質に結合し得る。アレイの構築技術およびそれらのアレイを使用する方法は、例えばSchenaら(1996)Proc Natl Acad Sci USA 93(20):10614−9;Schenaら(1995)Science 270(5235):467−70;Shalonら(1996)Genome Res.6(7):639−45;USPN5,807,522、EP799897;WO97/29212;WO97/27317;EP785280;WO97/02357;USPN5,593,839;USPN5,578,832;EP728520;USPN5,599,695;EP721016;USPN5,556,752;WO95/22058;およびUSPN5,631,734に記載されている。
【0051】
アレイにおいて利用されるプローブは、様々な型であり得、そして例えば比較的短い長さの(例えば20マーまたは25マー)合成プローブ、cDNA(全長または遺伝子のフラグメント)、増幅DNA、DNAのフラグメント(例えば制限酵素によって産生される)および逆転写DNAを含み得る。あつらえたアレイおよび一般的なアレイの両方を、差次的発現レベルの検出に利用し得る。あつらえたアレイを、特定の前もって選択したmRNA遺伝子配列の部分配列またはそれらから調製した増幅産物にハイブリダイズするプローブを用いて調製し得る。
【0052】
アレイを、例えば遺伝子の差次的発現を調査するために、および遺伝子機能を決定するために使用し得る。例えば、アレイをTIM遺伝子における差次的発現、または多型配列の発現を検出するために使用し得る。アレイの例示的な使用が、例えばPappalaradoら(1998)Sem.Radiation Oncol.8:217;およびRamsay(1998)Nature Biotechnol.16:40においてさらに記載されている。さらに、アレイを用いた検出方法の多くのバリエーションが、当該分野の技術の範囲内および本発明の範囲内である。例えば、プローブを固体支持体に固定化するよりも、試験サンプルを固体支持体に固定化し得、それを次いでプローブと接触させる。発現分析におけるマイクロアレイの使用に関するさらなる議論は、例えばDugganら、Nature Genetics Supplement 21:10−14(1999);Bowtell、Nature Genetics Supplement 21:25−32(1999);BrownおよびBotstein、Nature Genetics Supplement 21:33−37(1999);Coleら、Nature Genetics Supplement 21:38−41(1999);DebouckおよびGoodfellow、Nature Genetics Supplement 21:48−50(1999);Bassett,Jr.ら、Nature Genetics Supplement 21:51−55(1999);およびChakravarti、Nature Genetics Supplement 21:56−60(1999)において見出され得る。
【0053】
薬理遺伝学は、個人の遺伝子型およびその個人の治療薬に対する代謝または反応能力の間の連関である。代謝または標的感受性における差異が、薬物の生物活性投与量および血液濃度の間の関係を変化させることによって、重篤な毒性または治療の失敗を引き起こし得る。過去数年間の間に、多くの研究が代謝酵素または薬物標的における多型と応答および毒性両方との間に強い関係を確立した。これらの関係を使用して、治療投与量を個別化し得る。
【0054】
多型対立遺伝子の遺伝子型決定を使用して、個人が特定の治療レジメンによく応答するかどうかを評価する。多型配列をまた、薬物スクリーニングアッセイにおいて使用して、候補治療剤の投与量および特異性を決定する。候補TIM多型を標的治療でスクリーニングして、喘息治療における有効性に影響があるかどうかを決定する。薬物スクリーニングアッセイを、上記で記載したように行なう。典型的には2つまたはそれ以上の異なる配列多型を、治療への応答に関して試験する。
【0055】
本遺伝子を、完全なTIMタンパク質、またはそのポリペプチドフラグメント、特に機能的ドメイン;結合部位等に対応するフラグメントを、および本ポリペプチドの他のタンパク質またはその一部との融合を含んで、合成するために採用し得る。発現のために、誘導的または構成的であり得る、転写開始領域および翻訳開始領域を提供する、発現カセットを使用し得、ここでコード領域は転写開始領域ならびに転写停止領域および翻訳停止領域の転写調節下に作動可能に連結される。発現宿主で機能的な様々な転写開始領域を使用し得る。
【0056】
TIMポリペプチドのフラグメントである、特に目的のポリペプチドは、TIMポリペプチドの特定のドメインを含み、ここでドメインは例えば細胞外ドメイン、または細胞外ドメイン中のドメイン:ムチンドメインおよび/もしくはIgドメインを含み得る。ドメインはまた、細胞質ドメイン、例えばチロシンキナーゼリン酸化モチーフ、RAEDNIY、または拡大領域、SRAEDNIYIVEDRPを含むフラグメントを含み得る。可溶性スプライス改変体によってコードされるポリペプチドもまた目的のものである。Igドメインの配列は以下のとおりである:ヒトTIM−1 Igドメイン、配列番号第17、19、21、23、25、27番、残基21−126;ヒトTIM−3 Igドメイン、配列番号第29および31番、残基22−131;ヒトTIM−4 Igドメイン、配列番号第33および35番、残基25−133;マウスTIM−1 Igドメイン、配列番号第1および3番、残基21−129;マウスTIM−2 Igドメイン、配列番号第7番、残基22−128;マウスTIM−3 Igドメイン、BALB/c対立遺伝子、配列番号第9番、残基22−132;マウスTIM−3 Igドメイン、DBA/2対立遺伝子、配列番号第11番、残基22−132;マウスTIM−4 Igドメイン、配列番号第13および15番、残基25−135。
【0057】
機能的に等価なポリペプチドが有用であり得、ここで等価なポリペプチドは、サイレントな変化を引き起こす、アミノ酸残基の欠失、付加、または置換を含み得、従って経路遺伝子産物に対して異なって発現される機能的に等価なものを産生する。アミノ酸置換を、関与する残基の極性、荷電、可溶性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質における類似性に基づいて行ない得る。本明細書中で使用される「機能的等価物」は、TIM遺伝子によってコードされるポリペプチドと本質的に同様のインビボ活性を示し得るタンパク質を指す。
【0058】
ポリペプチドを、発現の目的によって、伝統的な方法によって原核生物または真核生物で発現し得る。タンパク質の大規模産生のために、E.coli、B.subtilis、S.cerevisiaeのような単細胞有機体、または脊椎動物、特に哺乳動物のようなより高等な有機体の細胞、例えばCOS7細胞を、発現宿主細胞として使用し得る。多くの状況において、TIM遺伝子を哺乳動物細胞で発現することが望ましくあり得、ここでTIM遺伝子は、天然のフォールディングおよび翻訳後修飾から利益を受ける。特異的ペプチドエピトープ、ドメイン等を含む小さいペプチドをまた、研究室で合成し得、ここでペプチドは通常少なくとも約8アミノ酸の長さ、より通常には少なくとも約20アミノ酸の長さ、完全なドメインまで、そして全長タンパク質である。ペプチドは、タンパク質の多型領域を含み得る。融合タンパク質も含まれ、ここでTIMタンパク質の全てまたはフラグメントを、異種由来のポリペプチド、例えばグリーン蛍光タンパク質、抗体Fc領域、ポリヒスチジン等に融合する。
【0059】
哺乳動物宿主細胞において、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス等を含む、多くのウイルスに基づく発現システムを使用し得る。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合には、目的のコード配列をアデノウイルス転写/翻訳調節コントロール複合体、例えば後期プロモーターおよび3つに分かれた(tripartite)リーダー配列にライゲーションし得る。このキメラ遺伝子を次いでインビトロまたはインビボ組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入し得る。ウイルスゲノムの重要でない領域(例えばE1領域またはE3領域)における挿入は、生存可能であり、そして感染宿主において差次的に発現されるタンパク質または経路遺伝子タンパク質を発現し得る組換えウイルスを生じる。
【0060】
遺伝子の効率的な翻訳のために、特異的な開始シグナルも必要であり得る。これらのシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接する配列を含む。それ自身の開始コドンおよび隣接配列を含む完全な遺伝子が、適切な発現ベクターに挿入される場合には、さらなる翻訳制御シグナルは必要でないかもしれない。しかし、配列をコードする遺伝子の一部しか挿入されない場合には、外来性の翻訳制御シグナルを提供しなければならない。これらの外来性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然および合成どちらも、様々な起源であり得る。発現の効率は、適切な転写エンハンサーエレメント、転写ターミネーター等を含むことによって増強され得る。
【0061】
発現宿主を使用することによって、ポリペプチドを大量に入手可能なら、ポリペプチドを伝統的な方法によって単離および精製し得る。発現宿主の溶解物を調製し得、そして溶解物をHPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、または他の精製技術を用いて精製し得る。精製ポリペプチドは、一般的には少なくとも約80%純粋、好ましくは少なくとも約90%純粋、そして100%純粋までおよび100%純粋を含み得る。純粋は、他のタンパク質、および細胞の破片を含まないことを意味する。
【0062】
ポリペプチドを、直接的または間接的いずれかで標識し得る。125Iのような放射性同位体;基質に曝露した場合に検出可能な比色定量シグナルまたは光を産生する酵素標識システム;および蛍光標識を含むがこれに限らない、様々な適当な標識システムのいずれかを使用し得る。間接的な標識は、目的のポリペプチドに特異的に結合する、標識抗体のようなタンパク質の使用を含む。そのような抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖、FabフラグメントおよびFab発現ライブラリーによって産生されるフラグメントを含むがこれに限らない。
【0063】
(特異的結合メンバー)
本明細書中で使用される場合、「特異的結合メンバー」または「結合メンバー」という用語は、特異的な結合対、すなわち2つの分子、通常2つの異なる分子のメンバーを指し、ここで分子の1つ(すなわち第1の特異的結合メンバー)が、化学的または物理的手段で他の分子(すなわち第2の特異的結合メンバー)に特異的に結合する。特異的結合対の相補的なメンバーは、リガンドおよびレセプター;またはレセプターおよびカウンターレセプター(counter−receptor)と呼ばれることもある。本発明の目的のために、例えばアッセイが公知の結合対の結合を妨害する化合物を検出することに向けられる場合、2つの結合メンバーはお互いに結合することが公知であり得る。あるいは、目的の化合物の結合パートナーであることが予想される候補化合物を使用し得る。
【0064】
目的の特異的結合対は、炭水化物およびレクチン;相補的ヌクレオチド配列;ペプチドリガンドおよびレセプター;エフェクターおよびレセプター分子;ホルモンおよびホルモン結合タンパク質;酵素補助因子および酵素;酵素インヒビターおよび酵素;脂質および脂質結合タンパク質等を含む。特異的結合対は、もとの特異的結合メンバーのアナログ、誘導体、およびフラグメントを含み得る。例えば、レセプターおよびリガンド対は、ペプチドフラグメント、化学的に合成したペプチド模倣物、標識タンパク質、誘導体化タンパク質等を含み得る。
【0065】
好ましい実施形態において、特異的結合メンバーは抗体である。「抗体」または「抗体部分」という用語は、エピトープに適合およびエピトープを認識する特異的な形状を有する任意のポリペプチド鎖を含む分子構造を含むように意図され、ここで1つ以上の非共有結合相互作用が、分子構造とエピトープとの間の複合体を安定化する。TIMタンパク質の1つに特異的に結合する抗体を、抗TIMと呼ぶ。原型の抗体分子は免疫グロブリンであり、そして全ての供給源、例えばヒト、げっ歯類、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、他の哺乳動物、ニワトリ、他の鳥類等由来の、全ての型の免疫グロブリン、IgG、IgM、IgA、IgE、IgD等が、「抗体」であると考えられる。本発明で利用される抗体は、ポリクローナル抗体であり得るが、細胞培養によってまたは組換え的に複製し得、そしてその抗原性を抑制するために修飾し得るので、モノクローナル抗体が好ましい。
【0066】
ポリクローナル抗体を、標準的なプロトコルによって、産生動物にポリペプチドまたはインビボで発現したcDNAであり得る抗原性組成物を注射することによって産生し得る。例えばHarlowおよびLane、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、1988を参照のこと。タンパク質全体、またはタンパク質のより大きな部分を利用する場合、産生動物をタンパク質および適切なアジュバント(例えばフロイント、完全フロイント、水中油型エマルジョン等)で免疫することによって抗体を産生し得る。より小さいペプチドを利用する場合、ペプチドをより大きな分子に結合して免疫刺激性の結合物を作成することが有利である。そのような利用のために市販で入手可能な、よく利用される結合タンパク質は、ウシ血清アルブミン(BSA)およびカサガイヘモシアニン(KLH)を含む。多型残基のような特定のエピトープに対して抗体を産生するために、全長配列由来のペプチドを利用し得る。免疫原を、好ましくは前もって決定した1回またはそれ以上の追加免疫を含むスケジュールによって、動物宿主に注射し、そして動物は定期的に採血される。次いでポリクローナル抗体をそのような抗血清から、例えば適切な固体支持体に結合したポリペプチドを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって精製し得る。
【0067】
あるいは、モノクローナル抗体に関しては、接種動物の脾臓由来のような、刺激免疫細胞を単離することによって、ハイブリドーマを形成し得る。次いでこれらの細胞を、骨髄腫細胞または形質転換細胞のような不死化細胞と融合し、それらを細胞培養中で無限に複製し得、それによって不死の、免疫グロブリン分泌細胞株を産生する。利用される不死細胞株は、好ましくはある栄養素の利用に必要な酵素に欠損があるものが選択される。多くのそのような細胞株(骨髄腫など)が当業者に公知であり、そして例えばチミジンキナーゼ(TK)またはヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)を含む。これらの欠損は、それらの例えばヒポキサンチンアミノプテリンチミジン培地(HAT)上で増殖する能力によって融合細胞を選択することを可能にする。
【0068】
好ましくは、利用される不死融合パートナーは、免疫グロブリンを分泌しない株由来である。得られた融合細胞、またはハイブリドーマを、非融合細胞ではなく融合細胞の生存を可能にする条件下で培養し、そしてできたコロニーを、望ましいモノクローナル抗体の産生に関してスクリーニングする。大量の抗体を産生するために、そのような抗体を産生するコロニーをクローニング、発展、および増殖させる。KohlerおよびMilstein、1975 Nature 256:495(その開示は本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0069】
次いで、クローンをマウスの腹腔に注射し、そこから腹水を回収することによって、分泌ハイブリドーマ由来の大量のモノクローナル抗体を産生し得る。好ましくはプリスタン、または他の腫瘍プロモーターで初回刺激され、そして化学的にまたは照射によって免疫抑制されたマウスは、当該分野で公知の様々な適当なかぶのいずれかであり得る。腹水をマウスから回収し、そしてモノクローナル抗体をそこから、例えばCMセファロースカラムまたは他のクロマトグラフィー手段によって精製する。あるいは、ハイブリドーマをインビトロで、または懸濁培養として培養し得る。バッチ、連続培養、または他の適当な培養処理を利用し得る。次いでモノクローナル抗体を培養培地または上清から回収する。
【0070】
それに加えて、抗体または抗原結合フラグメントを、遺伝的操作によって産生し得る。この技術において、標準的なハイブリドーマ手順と同様、抗体産生細胞を望ましい抗原または免疫原で感作する。免疫脾臓細胞またはハイブリドーマから単離されたメッセンジャーRNAを鋳型として使用して、PCR増幅を用いてcDNAを作成する。それぞれ最初の抗原特異性を維持する、1つの重鎖遺伝子および1つの軽鎖遺伝子を含むベクターのライブラリーを、増幅免疫グロブリンcDNAの適当な部分を発現ベクターへ挿入することによって産生する。コンビナトリアルライブラリーを、重鎖遺伝子ライブラリーと軽鎖遺伝子ライブラリーを組み合せることによって構築する。これは、重鎖および軽鎖を同時発現するクローンのライブラリーを生ずる(Fabフラグメントまたは抗体分子の抗原結合フラグメントに類似する)。これらの遺伝子を有するベクターを、宿主(例えば細菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞、または他の適当なタンパク質産生宿主細胞)に同時トランスフェクトする。抗体遺伝子の合成がトランスフェクトされた宿主で誘導されると、重鎖および軽鎖タンパク質は自己集合して、抗原または免疫原を用いたスクリーニングによって検出され得る活性な抗体を産生する。
【0071】
キメラ抗体を、主にヒトドメインを有する抗体を産生するために、マウス(または他の動物由来の)ハイブリドーマクローンから得たマウス可変軽鎖領域および重鎖領域(VKおよびVH)を、ヒト定常軽鎖領域および重鎖領域と組み合せることによる組換え手段によって作成し得る。そのようなキメラ抗体の産生は当該分野で周知であり、そして標準的な手法で達成し得る(例えばその全体が本明細書中で参考として援用される、米国特許第5,624,659号によって記載されたように)。ヒト化抗体を、さらによりヒト様の免疫グロブリンドメインを含み、そして動物由来抗体の相補性決定領域のみを含むように、遺伝子工学的に操作する。これは、モノクローナル抗体可変領域の超可変ループの配列を注意深く調査し、そしてそれらをヒト抗体鎖の構造に適合させることによって達成される。表面的には(facially)複雑であるが、その過程は実際には単純である。例えば、その全体が本明細書中で参考として援用される、米国特許第6,187,287号を参照のこと。
【0072】
あるいは、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を、ヒト免疫グロブリンを産生するように遺伝的に変化させた動物から産生し得る。そのような動物を産生する、およびそこから抗体を得る技術は、その全体が本明細書中で参考として援用される、米国特許第6,162,963号および同第6,150,584号に記載されている。
【0073】
あるいは、一本鎖抗体(下記で記載されるようなFv)を、ヒト可変領域を含むファージライブラリーから産生し得る。米国特許第6,174,708号を参照のこと。一本鎖抗毒素、LMB−7[B3(Fv)−PE38]のクモ膜下投与は、ラットモデルにおいて癌性髄膜炎を治療することが示された。Proc Natl.Acad.Sci USA 92、2765−9、それらはその全体が本明細書中で参考として援用される。
【0074】
免疫グロブリン全体(またはその組換え対応物)に加えて、エピトープ結合部位を含む免疫グロブリンフラグメント(例えばFab’、F(ab’)2、または他のフラグメント)が、本発明において抗体分子として有用である。そのような抗体フラグメントを、ペプシン、パパイン、または他のプロテアーゼ切断によって免疫グロブリン全体から産生し得る。「フラグメント」または最低限の免疫グロブリンを、組換え免疫グロブリン技術を利用して設計し得る。例えば、本発明において使用する「Fv」免疫グロブリンを、可変軽鎖領域を、可変重鎖領域にペプチドリンカー(例えばポリグリシンまたはアルファヘリックスまたはベータシートモチーフを形成しない別の配列)を介して結合することによって産生し得る。
【0075】
Fvフラグメントは、可変重鎖ドメイン(VH)および可変軽鎖ドメイン(VL)のヘテロダイマーである。例えば、IgG全体に存在する重鎖および軽鎖ドメインのヘテロダイマーを、ジスルフィド結合によって連結する。VHおよびVLがペプチドリンカーによって連結された組換えFvは、典型的には安定である。これらは、特異性および親和性を維持することが見出された、そして腫瘍の画像化および腫瘍治療のための組換え抗毒素を作成するのに有用であることが見出された一本鎖Fvである。しかし、研究者らは、いくつかの一本鎖Fvは抗原に対して減少した親和性を有し、そしてペプチドリンカーは結合を妨害し得ることを発見した。その全体が本明細書中で参考として援用される、米国特許第6,147,203号において記載されたように、VHおよびVL領域間のジスルフィド結合の安定化を含む、改善したFvも作成された。これら最低限の抗体のいずれかを、本発明において利用し得、そしてHAMA反応を避けるためにヒト化されたものが、本発明の実施形態において使用するのに好ましい。
【0076】
それに加えて、化学的リンカー、蛍光色素、酵素、基質、化学発光部分等のような検出可能な部分またはストレプトアビジン、アビジン、もしくはビオチン等のような特異的結合部分を加えた、誘導体化免疫グロブリンを、本発明の方法および組成物において利用し得る。便利さのために、「抗体」または「抗体部分」という用語を、全体を通して一般的に脳腫瘍タンパク質標的のエピトープに特異的に結合する分子を指すために使用するが、その用語は、上記で記載したような、全ての免疫グロブリン、誘導体、フラグメント、組換えまたは遺伝子操作免疫グロブリン、および修飾免疫グロブリンを含む。
【0077】
候補抗体を、あらゆる適当な標準的な方法によって、活性に関して試験し得る。最初のスクリーニングとして、抗体を免疫原に対する結合に関して試験し得る。2番目のスクリーニングとして、抗体を、対立遺伝子間、およびTIMファミリーメンバー間の交差応答性に関してスクリーニングし得、そしてTIM機能の阻害活性に関して試験し得る。これらのスクリーニングに関して、候補抗体を検出のために標識し得る。TIMタンパク質の生物学的活性を変化させる抗体を、機能的形式でアッセイし得る。
【0078】
(診断)
TiM多型に関連する喘息またはアトピーの診断を、患者由来のあらゆる簡便なサンプル、例えば生検材料、血液サンプル、頬からの擦過等の、タンパク質、DNAまたはRNA配列および/またはハイブリダイゼーション分析によって行なう。TIMと関連し得る喘息を有する患者由来の核酸サンプルを、TIMにおける素因を与える多型の存在に関して分析する。典型的な患者の遺伝子型は、少なくとも1つの染色体上に、少なくとも1つの素因を与える変異を有する。遺伝子産物の活性または発現に影響を与え、そして喘息に対する増加した感受性を与える多型TIM配列の存在は、素因を与える多型と考えられる。喘息中性配列と比較して、素因を与える多型の存在に関してDNAまたはmRNAを分析することによって、個人をスクリーニングする。目的の特異的な配列は、臨床的気管支過剰応答性を引き起こす、または他の方法で喘息と関連するあらゆる多型を含み、コード領域配列、スプライシングに影響を与えるイントロン配列、またはタンパク質の活性および発現に影響を与えるプロモーターもしくはエンハンサー配列における挿入、置換および欠失を含むがこれに限らない。特定のTIM多型の例を、実施例で提供する。
【0079】
スクリーニングはまた、タンパク質の機能的特徴または抗原性特徴に基づき得る。TIMタンパク質において、素因を与える多型を検出するように設計されたイムノアッセイを、スクリーニングで使用し得る。多くの多様な変異が特定の疾患表現型を引き起こす場合、機能的タンパク質アッセイが、有効なスクリーニング手段であることが示された。
【0080】
TIMコード領域またはコントロール領域における候補配列多型が疾患と関連するかどうかを決定するために、生化学的研究を行ない得る。例えば、TIMの発現に影響を与えるプロモーター配列またはエンハンサー配列の変化は、喘息に対する素因を与え得る。候補異型対立遺伝子の発現レベルを、当該分野で公知の様々な方法によって、正常対立遺伝子の発現レベルと比較する。プロモーターまたはエンハンサーの強さを決定する方法は、発現した天然タンパク質の定量;簡便な定量を提供するβ−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ等のようなリポーター遺伝子と共に異型コントロールエレメントをベクターに挿入すること、等を含む。コードされたTIMタンパク質の活性を、野生型タンパク質との比較によって決定し得る。
【0081】
特定の配列の存在に関して核酸を分析する多くの方法が利用可能である。大量のDNAが入手可能である場合、ゲノムDNAを直接使用する。あるいは、目的の領域を適当なベクターにクローニングして、そして分析のために十分な量を増殖させる。気管細胞のような、TIM遺伝子を発現する細胞を、mRNAの供給源として使用し得、それを直接分析し得るか、または分析のためにcDNAに逆転写し得る。核酸を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような従来の技術によって増幅して、分析に十分な量を提供し得る。ポリメラーゼ連鎖反応の使用はSaikiら(1985)Science 239:487に記載されており、そして現在の技術の概説を、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、CSH Press 1989、14.2−14.33頁において見出し得る。増幅をまた、多型に特異的なプライマーを使用することによって、多型が存在するかどうかを決定するために使用し得る。あるいは、多型を検出する手段としてオリゴヌクレオチドライゲーションを利用する、様々な方法が当該分野で公知であり、例えばRileyら(1990)N.A.R.18:2887−2890;およびDelahuntyら(1996)Am.J.Hum.Genet.58:1239−1246を参照のこと。
【0082】
検出可能な標識を増幅反応に含み得る。適当な標識としては、蛍光色素、例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、アロフィコシアニン、6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシ−2’,4’,7’,4,7,−ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、5−カルボキシフルオレセイン(5−FAM)またはN,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、放射活性標識(例えば32P、35S、3H)等が挙げられる。標識は2段階システムであり得、ここで増幅DNAを高親和性結合パートナー(例えばアビジン、特異的抗体等)を有する、ビオチン、ハプテン等に結合し、ここで結合パートナーが検出可能な標識に結合する。標識を、1つまたは両方のプライマーに結合し得る。あるいは、増幅産物に標識を組み込むために、増幅に使用するヌクレオチドのプールを標識する。
【0083】
サンプル核酸、例えば増幅またはクローン化フラグメントを、当該分野で公知の多くの方法の1つによって分析する。核酸を、ジデオキシまたは他の方法によって配列決定し得、そして塩基配列を中性TIM配列と比較する。サザンブロット、ドットブロット等による、異型配列とのハイブリダイゼーションもまた、その存在を決定するために使用し得る。US5,445,934またはWO95/35505において記載されたように、固体支持体に固定化されたオリゴヌクレオチドプローブのアレイに対するコントロールおよび異型配列のハイブリダイゼーションパターンも、異型配列の存在を検出する手段として使用し得る。一本鎖高次構造多型(SSCP)分析、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)、ミスマッチ切断検出、およびゲルマトリックスにおけるヘテロ二本鎖分析を使用して、電気泳動移動度の変化としてDNA配列変異によって産生される高次構造の変化を検出する。あるいは、多型が制限エンドヌクレアーゼの認識部位を産生または破壊する場合(制限フラグメント長多型、RFLP)、サンプルをエンドヌクレアーゼで消化し、そして産物をサイズ分画して、フラグメントが消化されたかどうかを決定する。分画を、ゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動(特にアクリルアミドまたはアガロースゲル)によって行なう。
【0084】
US5,445,934またはWO95/35505において記載されたように、固体支持体に固定化されたオリゴヌクレオチドプローブのアレイに対するコントロールおよび異型配列のハイブリダイゼーションパターンを、異型配列の存在を検出する手段として使用し得る。本発明の1つの実施形態において、オリゴヌクレオチドのアレイが提供され、ここでアレイの別々の位置が、TIM遺伝子座のmRNAまたはゲノムDNAの少なくとも一部と相補的である。そのようなアレイは一連のオリゴヌクレオチドを含み得、それらの各々は、核酸(例えばTIM遺伝子座由来のmRNA、cDNA、ゲノムDNA等)に特異的にハイブリダイズし得る。
【0085】
TIM多型に特異的な抗体を、スクリーニングイムノアッセイに使用し得る。中性TIMの減少または増加、および/または喘息関連多型の存在は、喘息がTIMに関連することを示す。TIM関連喘息を有すると疑われる患者からサンプルを採取する。本明細書中で使用される場合、サンプルとしては、気管洗浄液、血液、脳脊髄液、涙、唾液、リンパ液、透析液等のような生物学的液体;臓器または組織培養由来の液体;および生理学的組織から抽出された液体が挙げられる。そのような液体の誘導体および画分もその用語に含まれる。生検サンプル、例えば気管擦過等が特に興味深い。サンプル中の細胞数は、一般的に少なくとも約103、通常少なくとも104、より通常には少なくとも約105である。固体組織の場合には細胞を分離し得るか、または組織切片を分析し得る。あるいは細胞の溶解物を調製し得る。
【0086】
診断を、多くの方法によって行ない得る。異なる方法は全て、TIMに素因を与える多型を有すると疑われる患者の細胞における、正常TIMまたは異常TIMの欠如または存在または変化した量を決定する。例えば、検出は、従来の方法に従って行なわれる、細胞または組織学的切片の染色を利用し得る。目的の抗体を細胞サンプルに加え、そしてエピトープへの結合を可能にするのに十分な時間、通常少なくとも約10分間インキュベートする。抗体を、放射性同位体、酵素、蛍光剤、化学発光剤、または直接検出のための他の標識で標識し得る。あるいは、2次抗体または試薬を使用して、シグナルを増幅する。そのような試薬は、当該分野で周知である。例えば、一次抗体をビオチンに結合し、2次試薬として西洋ワサビペルオキシダーゼ結合アビジンを加え得る。最終的な検出は、ペルオキシダーゼの存在下で色を変化する基質を使用する。抗体結合の欠如または存在を、分離細胞のフローサイトメトリー、顕微鏡、ラジオグラフィー、シンチレーションカウンター等を含む様々な方法によって決定し得る。
【0087】
診断の代替方法は、溶解物中における抗体とTIMとの間の結合のインビトロ検出に依存する。サンプルまたはその画分におけるTIM結合の濃度の測定を、様々な特異的アッセイによって達成し得る。従来のサンドイッチ型アッセイを使用し得る。例えば、サンドイッチアッセイは、まずTIM特異的抗体を不溶性表面または支持体に結合し得る。TIM特異的抗体が試薬および本発明の方法全体と適合性がある限り、結合の特定の方式は重要ではない。TIM特異的抗体はプレートに共有結合的にまたは非共有結合的に、好ましくは非共有結合的に結合し得る。
【0088】
他のイムノアッセイが当該分野で公知であり、そして診断薬としての使用を見出し得る。オークターロニープレートは、抗体結合の簡単な決定を提供する。ウェスタンブロットを、タンパク質ゲルまたはフィルター上のタンパク質スポットに対して、望ましいようにTIMに特異的な検出システムを用いて、サンドイッチアッセイに関して記載したような標識方法を簡便に用いて、行ない得る。
【0089】
TIM遺伝子は、例えば発現の発達および組織特異的パターンの決定において、TIM発現を分析するために、およびインビトロおよびインビボで発現を調節するために、有用である。遺伝子の導入に有用なベクターとしては、プラスミドおよびウイルスベクターが挙げられる。特に関心のあるのは、哺乳動物細胞において一時的にまたは安定に維持される、レトロウイルスベースのベクター(例えばマロニルマウス白血病ウイルスおよび改変ヒト免疫不全ウイルス;アデノウイルスベクター等)である。細胞ゲノムへの遺伝子のトランスフェクションおよび/または組込みのために、広く様々なベクターを採用し得る。あるいは、マイクロインジェクションは、遺伝子の適当な宿主細胞への導入のために融合等を利用し得る。例えば、Dhawanら(1991)Science 254:1509−1512およびSmithら(1990)Molecular and Cellular Biology 3268−3271を参照のこと。
【0090】
発現ベクターは、機能的mRNAを産生するように指向された転写開始領域を有する。天然のの転写開始領域または外来性転写開始領域を利用し得る。プロモーターを、インビトロで組換え方法によって、または配列の染色体への相同的組込みの結果として導入し得る。β−アクチンプロモーター、SV40初期および後期プロモーター、ヒトサイトメガロウイルスプロモーター、レトロウイルスLTR、メタロチオネイン応答要素(MRE)、テトラサイクリン−誘導性プロモーター構築物等を含む、多くの強力なプロモーターが、当該分野で公知である。
【0091】
発現ベクターは一般的に、核酸配列の挿入を提供するために、プロモーター配列の近くに位置する簡便な制限部位を有する。転写開始領域、標的遺伝子またはそのフラグメント、および転写終止領域を含む転写カセットを調製し得る。転写カセットを、様々なベクター(例えばプラスミド;レトロウイルス(例えばレンチウイルス);アデノウイルス;等)に導入し得、ここでベクターは細胞内で、一時的にまたは安定に、通常少なくとも約1日間、より通常には少なくとも約数日から数週間の間、維持され得る。
【0092】
アンチセンス分子を使用して、細胞内でTIMの発現を下方制御する。アンチセンス試薬は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)、特に天然核酸から化学的修飾を有する合成ODN、またはそのようなアンチセンス分子をRNAとして発現する核酸構築物であり得る。アンチセンス配列は、標的遺伝子のmRNAに相補的であり、そして標的遺伝子産物の発現を阻害する。アンチセンス分子は、様々なメカニズムによって、例えば翻訳のために利用可能なmRNAの量を減少させることによって、RNアーゼHの活性化によって、または空間的障害によって、遺伝子発現を阻害する。1つの、または組み合わせのアンチセンス分子を投与し得、ここで組み合せは複数の異なる配列を含み得る。
【0093】
アンチセンス分子を、適当なベクターにおいて標的遺伝子配列の全てまたは一部を発現することによって産生し得、ここで転写開始は、アンチセンス鎖がRNA分子として産生されるように指向される。あるいは、アンチセンス分子は合成オリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一般的に少なくとも約7ヌクレオチド長、通常少なくとも約12ヌクレオチド長、より通常には少なくとも約20ヌクレオチド長であり、かつ約500ヌクレオチド長より短く、通常約50ヌクレオチド長より短く、より通常には約35ヌクレオチド長より短く、ここで長さは阻害の効率、交差応答性の欠如を含む特異性、等によって支配される。7〜8塩基長の短いオリゴヌクレオチドが、遺伝子発現の強力かつ選択的なインヒビターであり得ることが見出された(Wagnerら(1996)Nature Biotechnology 14:840−844を参照のこと)。
【0094】
(トランスジェニック動物)
本発明の核酸を使用して、遺伝的に改変された非ヒト動物、または細胞株における部位特異的遺伝子改変を産生し得る。用語「トランスジェニック」は、TIM遺伝子活性の欠失または他のノックアウトを有する、宿主細胞において安定に遺伝する外来性TIM遺伝子を有する、またはリポーター遺伝子に操作可能に連結した外来性TIMプロモーターを有する、遺伝的に修飾された動物を含むように意図される。トランスジェニック動物を、相同的組換えによって作成し得、ここでTIM遺伝子座は変化する。あるいは、核酸構築物をゲノム中に無作為に組み込む。安定な組込みのためのベクターは、プラスミド、レトロウイルスおよび他の動物ウイルス、YAC、等を含む。トランスジェニック哺乳動物(例えばウシ、ブタ、ヤギ、ウマ等)および特にげっ歯類(例えばラット、マウス等)に特に関心がある。
【0095】
「ノックアウト」動物は、遺伝的に操作して、内因性TIM機能を本質的に減少させるか、または排除する。「ノックアウト」を達成するために、異なるアプローチを使用し得る。天然TIMホモログの全てまたは一部の染色体欠失を誘導し得る。非コード領域、特にプロモーター領域、3’調節配列、エンハンサーの欠失、またはTIM遺伝子の発現を活性化する遺伝子の欠失。機能的ノックアウトもまた、天然TIM遺伝子の発現をブロックするアンチセンス構築物を導入することによって達成し得る(例えば、LiおよびCohen(1996)Cell 85:319−329を参照のこと)。
【0096】
外来性TIM遺伝子を有するトランスジェニック動物を作成し得る。外来性遺伝子は、通常動物宿主とは異なる種由来であるか、またはそうでなければコード配列または非コード配列で変化している。導入遺伝子は、野生型遺伝子、天然に存在する多型、または遺伝的に操作した配列(例えばコードまたは非コード領域に欠失、置換または挿入を有する以前に記載したもの)であり得る。導入配列は、TIMポリペプチドをコードし得るか、またはリポーター遺伝子に操作可能に連結したTIMプロモーターを利用し得る。導入遺伝子がコード配列である場合、それは通常構成的または誘導的であり得るプロモーター、および宿主動物における発現に必要な他の調節配列に操作可能に連結される。
【0097】
目的の特異的構築物としては、TIM発現をブロックするアンチセンスTIM、ドミナントネガティブTIM変異体の発現、およびTIM遺伝子の過剰発現が挙げられるがこれに限らない。lacZのような検出可能なマーカーを、TIM遺伝子座に導入し得、ここでTIM発現のアップレギュレーションは、表現型にいて容易に検出される変化を引き起こす。
【0098】
TIM機能および調節の研究において、改変細胞または動物が有用である。例えば、候補薬剤の喘息に対する効果を決定するために、機能研究、薬剤スクリーニング等において動物を使用し得る。TIM遺伝子において一連の小さな欠失および/または置換を作成して、DNA結合、転写調節等における異なるエキソンの役割を決定し得る。それが通常産生されない細胞においてTIMタンパク質の発現を提供することによって、細胞の動きに変化を誘導し得る。これらの動物はまた、喘息の遺伝モデル(例えば優性対劣性);異なる対立遺伝子の相対的効果、およびTIMとゲノムの他の場所にある他の喘息遺伝子との間の相乗的効果を調査するのに有用である。
【0099】
相同的組換えのためのDNA構築物は、望ましい遺伝的改変を有するTIM遺伝子の少なくとも一部を含み、そして標的遺伝子座と相同的な領域を含む。無作為な組込みのためのDNA構築物は、組換えを媒介する相同的な領域を含む必要はない。簡便に、ポジティブおよびネガティブセレクションのためにマーカーを含む。相同的組換えによって標的化遺伝子改変を有する細胞を産生する方法は、当該分野で公知である。哺乳動物細胞をトランスフェクトする様々な技術に関して、Keownら(1990)Methods in Enzymology 185:527−537を参照のこと。
【0100】
本発明の動物モデルと組み合せて、薬剤スクリーニングを行ない得る。多くの哺乳動物遺伝子が、酵母およびより下等な動物にホモログを有する。そのようなホモログの生理的役割および他のタンパク質との相互作用の研究は、生物学的機能の理解を促進し得る。遺伝的相補性に基づくモデルシステムに加えて、酵母は、Chienら(1991)P.N.A.S.88:9578−9582において記載される、ツーハイブリッドシステムによって、タンパク質−タンパク質相互作用を研究する強力な手段であることが示された。ツーハイブリッドシステム分析は、TIMタンパク質による転写活性化を調査するために特に関心がある。
【0101】
(化合物スクリーニング)
TIMに結合する、TIMの作用を調節または模倣するリガンドまたは基質を同定し得る。調査の領域は、免疫障害、喘息、癌、虚血−再灌流障害、およびストレスに対する細胞反応に関連する他の疾患の処置の開発である。薬剤スクリーニングは、影響された細胞におけるTIM機能の阻害、置換、または増強を提供する薬剤を同定する。例えば、TIM機能を逆転または阻害する薬剤は、Th2サイトカインのレベルを減少することによって、喘息における気管支応答性を減少し得、そしてTIMインヒビターは、アポトーシスを誘導する放射線処置および化学療法剤処置の効果を増強することによって、癌治療に対する腫瘍の感受性を増強し得る。特に関心があるのは、ヒト細胞に対して低い毒性を有する薬剤のスクリーニングアッセイである。この目的のために、標識インビトロタンパク質−タンパク質結合アッセイ、タンパク質−DNA結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、タンパク質結合のイムノアッセイ等を含む、広範な様々なアッセイを使用し得る。精製タンパク質をまた、3次元結晶構造の決定のために使用し得、それを分子間相互作用、転写調節等のモデル化に使用し得る。
【0102】
本明細書中で使用される場合、用語「薬剤」は、シグナルチロシンキナーゼインヒビター、またはインテグリン結合部位のペプチドインヒビターのような、TIMの生理学的機能を変化させるまたは模倣する能力を有する、任意の分子(例えばタンパク質または医薬)を記載する。一般的に、複数のアッセイ混合物を、異なる薬剤濃度で並行して走らせ、様々な濃度に対する差次的反応を得る。典型的には、これら濃度のうち1つはネガティブコントロール(すなわち濃度ゼロまたは検出レベル以下の濃度)として供する。
【0103】
候補薬剤は、多くの化学的クラスを含むが、典型的にはそれらは有機分子、好ましくは50以上および約2,500ダルトン以下の分子量を有する、小さい有機化合物である。候補薬剤は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、そして典型的には少なくとも1つのアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基、好ましくは少なくとも2つの化学官能基を含む。候補薬剤は、多くの場合1つまたはそれ以上の上記の官能基で置換された、環状炭素または複素環構造および/または芳香族または多環芳香族構造を含む。候補薬剤はまた、ペプチド、サッカライド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、その誘導体、構造的アナログまたは組み合せを含むがこれに限らない生物分子中に見出される。
【0104】
候補薬剤を、合成または天然化合物のライブラリーを含む広範な様々な供給源から得る。例えば、広範な多様な有機化合物および生物分子の無作為および指向合成のために、無作為化オリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を含む、多くの手段が利用可能である。あるいは、細菌、真菌、植物、および動物抽出物形式の天然化合物のライブラリーが入手可能または容易に産生される。さらに、天然または合成的に産生されたライブラリーおよび化合物を、従来の化学的、物理的、および生化学的手段によって容易に改変し、そしてコンビナトリアルライブラリーを産生するために使用し得る。公知の医薬品に、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化等の指向性または無作為化学的修飾を行なって、構造的アナログを産生し得る。
【0105】
スクリーニングアッセイが結合アッセイである場合、1つまたはそれ以上の分子を標識に結合し得、ここで標識は直接または間接的に検出可能なシグナルを提供し得る。様々な標識としては、放射性同位元素、蛍光剤、化学発光剤、酵素、特異的結合分子、粒子(例えば磁気粒子)等が挙げられる。特異的結合分子は、ビオチンおよびストレプトアビジン、ジゴキシンおよび抗ジゴキシン等のような対を含む。特異的結合メンバーに関しては、相補的メンバーを通常、公知の手順に従って、検出を提供する分子で標識する。
【0106】
様々な他の試薬をスクリーニングアッセイに含み得る。これらは、塩、中性タンパク質、例えばアルブミン、界面活性剤等のような試薬を含み、それらは最適なタンパク質−タンパク質結合を促進するおよび/または非特異的またはバックグラウンド相互作用を減少するために使用される。プロテアーゼインヒビター、ヌクレアーゼインヒビター、抗菌剤、等のような、アッセイの効率を改善する試薬を使用し得る。成分の混合物を、必要な結合を提供するいずれかの順序で加える。インキュベーションを任意の適切な温度、典型的には4℃〜40℃の間で行なう。インキュベーション時間を、最適な活性のために選択するが、迅速なハイスループットスクリーニングを促進するために最適化し得る。典型的には0.1時間〜1時間の間が十分である。
【0107】
目的の他のアッセイは、TIM機能を模倣する薬剤を検出する。例えば、候補薬剤を、機能的TIMを欠く細胞に加え、そして機能的アッセイにおいてTIMを再生する能力に関してスクリーニングする。
【0108】
(治療方法)
TIM遺伝子またはタンパク質の活性を調節する薬剤(特にポリペプチドの活性または遺伝子の発現を阻害または上方制御する薬剤)は、治療または予防的介入点を提供する。発現を直接調節する薬剤(例えば発現ベクター、標的ポリペプチドに特異的なアンチセンス);およびタンパク質に作用する薬剤(例えば特異的抗体およびそのアナログ、触媒活性をブロックする小さい有機分子)等を含む、多くの薬剤が、この活性を調節するのに有用である。
【0109】
核酸を特定の細胞に選択的に伝達するための方法を設計し得る。そのような細胞の例としては、T細胞等が挙げられる。目的の細胞に発現ベクターを選択的に発現する、特定の処置方法を設計する。神経細胞における選択的発現を達成する1つの技術は、コード配列を、主に免疫系細胞で活性なプロモーター(例えばIL−2プロモーター、T細胞抗原レセプタープロモーター等)に操作可能に連結することである。あるいは、またはそれに加えて、核酸を、核酸を目的の細胞に標的化する薬剤と共に投与し得る。例えば、核酸を、細胞表面抗原に特異的に結合する抗体と共に投与し得る。リポソームを利用する場合、エンドサイトーシスに関連する細胞表面膜タンパク質に結合する基質を、リポソームに結合して、リポソームを神経細胞に標的化し、そして取り込みを促進し得る。
【0110】
アンチセンス分子を使用して、細胞における発現を下方制御し得る。アンチセンス試薬は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ODN)(特に天然核酸から化学的修飾を有する合成ODN)またはそのようなアンチセンス分子をRNAとして発現する核酸構築物であり得る。アンチセンス配列は、標的遺伝子のmRNAに相補的であり、そして標的遺伝子産物の発現を阻害する。アンチセンス分子は、様々なメカニズムによって、例えば翻訳のために利用可能なmRNAの量を減少することによって、RNアーゼHの活性化、または空間的障害を介して、遺伝子発現を阻害する。アンチセンス分子を1つまたは組み合せて投与し得、ここで組み合せは複数の異なる配列を含み得る。
【0111】
アンチセンス分子を、適当なベクターにおける、標的遺伝子配列の全てまたは一部の発現によって産生し得、ここで転写開始は、アンチセンス鎖がRNA分子として産生されるように指向される。あるいは、アンチセンス分子は合成オリゴヌクレオチドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一般的に少なくとも約7ヌクレオチド長、通常少なくとも約12ヌクレオチド長、より通常には少なくとも約20ヌクレオチド長であり、そして約500ヌクレオチド長より短い、通常約50ヌクレオチド長より短い、より通常には約35ヌクレオチド長より短く、ここで長さは阻害の効率、交差応答性の欠如を含む特異性等によって支配される。7〜8塩基長の短いオリゴヌクレオチドが、遺伝子発現の強力かつ選択的なインヒビターであり得ることが見出された(Wagnerら(1996)Nature Biotechnology 14:840−844を参照のこと)。
【0112】
内因性センス鎖mRNA配列の特異的領域を、アンチセンス配列と相補的になるように選択する。オリゴヌクレオチドの特異的配列の選択は、経験的な方法を使用し得、ここでいくつかの候補配列を、インビトロまたは動物モデルにおいて、標的遺伝子の発現阻害に関してアッセイする。配列の組み合せも使用し得、ここでmRNA配列のいくつかの領域をアンチセンス相補性のために選択する。
【0113】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを、当該分野で公知の方法によって化学的に合成し得る(Wagnerら(1993)前出、およびMilliganら、前出を参照のこと)。好ましいオリゴヌクレオチドは、その細胞内安定性および結合親和性を増加させるために、天然ホスホジエステル構造から化学的に改変される。多くのそのような改変が文献において記載され、それはバックボーン、糖または複素環塩基の化学を変化させる。
【0114】
バックボーン化学の有用な変化は、ホスホロチオエート;架橋していない酸素がどちらも硫黄で置換されたホスホロジチオエート;ホスホラミダイト;アルキルホスホトリエステルおよびボラノホスフェート(boranophosphates)である。アキラルなホスフェート誘導体としては、3’−O’−5’−S−ホスホロチオエート、3’−S−5’−O−ホスホロチオエート、3’−CH2−5’−O−ホスホネート、および3’−NH−5’−O−ホスホロアミダート(phoshoroamidate)が挙げられる。ペプチド核酸は、リボースホスホジエステルバックボーン全体を、ペプチド結合で置換する。安定性および親和性を増強するために、糖の改変も使用する。デオキシリボースのα−アノマーを使用し得、ここで塩基は、天然β−アノマーに関して転位する。リボース糖の2’−OHを、2’−O−メチルまたは2’−O−アリル糖を形成するように変化させ得、それは親和性を損なうことなく分解に対する抵抗性を提供する。複素環塩基の改変は、適当な塩基対形成を維持しなければならない。いくつかの有用な置換は、デオキシチミジンのためにデオキシウリジン;デオキシシチジンのために5−メチル−2’−デオキシシチジンおよび5−ブロモ−2’−デオキシシチジンを含む。5−プロピニル−2’−デオキシウリジンおよび5−プロピニル−2’−デオキシシチジンは、それぞれデオキシチミジンおよびデオキシシチジンを置換した場合に、親和性および生物学的活性を増加させることが示された。
【0115】
所望の薬理学的活性を有する化合物を、生理学的に受容可能なキャリア中で、TIM機能の欠損に起因する喘息の処置のために宿主に投与し得る。その化合物をまた、TIM機能を増強するために使用し得る。治療薬を、経口、局所的、非経口的(例えば皮下)腹腔内、ウイルス感染に従って、血管内等の様々な方法で、に投与し得る。吸入処置が特に興味深い。導入の方法によって、その化合物を様々な方法で処方し得る。処方中の治療的に活性な化合物の濃度は、約0.1〜100重量%で変化し得る。
【0116】
薬学的組成物を、顆粒、錠剤、丸剤、坐剤、カプセル、懸濁液、軟膏、ローション等のような、様々な形式で調製し得る。経口および局所使用のために適当な薬学的等級の有機または無機キャリアおよび/または希釈剤を使用して、治療的に活性な化合物を含む組成物を作成し得る。当該分野で公知の希釈剤としては、水性媒体、植物油および動物油ならびに脂肪が挙げられる。安定化剤、湿潤剤および乳化剤、浸透圧を変化させる塩、または適当なpH値を生じさせる緩衝液、および皮膚浸透増強剤を、補助剤として使用し得る。
【0117】
本発明は、変化し得るので、特定の方法論、プロトコール、細胞株、動物種または属、および記載された試薬に制限されないことが理解される。本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的のためのみであり、そして添付の請求によってのみ制限される、本発明の範囲を制限することを意図しないことが理解される。
【0118】
本明細書中で使用される場合、単数形「a」、「and」および「the」は、文脈が明らかに他に規定しなければ、複数の指示対象を含む。従って、例えば「細胞(a cell)」への言及は、複数のそのような細胞を含み、そして「配列(the array)」への言及は、1つまたはそれ以上のアレイおよび当業者に公知のその等価物を含む等である。本明細書中で使用される全ての技術的および科学的用語は、明らかに他に示されなければ、本発明が属する当業者に通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0119】
本明細書中で言及された全ての出版物は、例えばここで記載される発明と関連して使用され得る、その出版物で記載された、細胞株、構築物および方法論を記載および開示する目的のために、本明細書中で参考文献に組み込まれる。上記および本文全体で議論された出版物は、本出願の提出日より前にそれらが開示されたためだけに提供される。本明細書中で何物も、以前の発明によって発明者がそのような開示に先立つ権利がないという承認として解釈されない。
【0120】
以下の実施例は、本発明の作成および使用方法の完全な開示および記載を当業者に提供するために述べられ、そして本発明として考えられるものの範囲を制限することを意図しない。使用された数(例えば量、温度、濃度等)に関して、正確さを保証するために努力がなされたが、いくらかの実験誤差およびずれは許されるべきである。他に示されなければ、割合は重量による割合、分子量は平均分子量、温度は摂氏、そして圧は大気またはその付近である。
【実施例】
【0121】
(実験)
喘息感受性遺伝子に関してヒト5q23−35領域を分析するために、発明者らはいくつかの潜在的な利点を提供するマウスモデルを利用した。環境の変化を調節し得、複数の表現型を同時に試験し得、そして同系交配株をアレルゲンで感作して、ヒト喘息の基本的な特徴である気道過剰応答性(AHR)を発現し得る。発明者らは、ヒト染色体5qに相同的な小さな染色体領域でのみ異なる、類遺伝子性の同系交配マウス株を利用し、それによってこの領域を、領域外の遺伝的変異の非存在下で研究することを可能にした。ポジショナルクローニングは、T細胞膜タンパク質(Tim)をコードする新規遺伝子ファミリー、TIM−1、TIM−2、TIM−3、TIM−4、TIM−5、TIM−6、およびTIM−7を明らかにし、このうちTIM−1、TIM−3およびTIM−4の主要な配列異型が、Taprと完全に同時分離する。
【0122】
IL−4産生および気道過剰応答性は、HBAマウスで減少される。発明者らは、個々のDBA/2染色体から受け継がれた別々のゲノム間隔を有する、BALB/cゲノムバックグラウンドで産生された類遺伝子性マウスを調査した。BALB/cマウスは、Th2に偏った、増強したAHRを伴うアトピーに似た免疫反応を発現し、一方DBA/2マウスは、AHRの発現に対して保護する、減少されたIL−4反応を発現する。これら類遺伝子性株のいくつかを、抑制されたTh2応答性に関してスクリーニングすることによって、発明者らは1つの類遺伝子性株、C.D2 Es−Hba(HBA)を同定し、これはヒト5q23−35に相同的な、DBA/2マウスから受け継がれた第11染色体の部分を含んでいた。図1aは、免疫コントロールBALB/cマウスからのリンパ節細胞が、予測される通り、高レベルのIL−4を産生することを示し、Th2に偏った免疫反応を発現するBALB/cマウスの傾向を確認した。対照的に、HBAマウス由来のリンパ節細胞は、DBA/2マウスで観察されるものと同様の、有意に低いレベルのIL−4を産生した。それに加えて、HBAマウスはBALB/cマウスと比較して、有意に少ないIL−13およびIL−10、そしていくらか低いレベルのIL−5を産生し、一方IFN−γの産生は図1bに示すように増加した。これらの結果は、ヒト5q23−35との保存されたシンテニーの大きな領域を有する、HBA第11染色体のDBA/2由来の領域は、抗原特異的IL−4、IL−13、およびIL−10産生を減少し、IFN−γ産生を増強し、そしてBALB/cサイトカイン表現型をDBA/2サイトカイン表現型へ転換する遺伝子を含むことを示した。
【0123】
HBAマウスを、Th2に偏った免疫反応と関連する、抗原誘発性気道過剰応答性(AHR)を発現する能力に関して調査した。アレルゲンによる感作およびチャレンジ時に、コントロールBALB/cマウスは高いAHRを発現し、一方同様に免疫したHBA類遺伝子性マウスは、DBA/2マウス同様、メタコリンに反応して通常の気道応答性を示した(図1c)。集合的に、これらの結果は、第11染色体上の単一の遺伝子座における遺伝的変異が、Th2サイトカイン産生およびAHRの両方を調節することを強く示唆し、従って発明者らは、HBAマウスにおける関連する遺伝的決定基を、単一遺伝子座、T細胞および気道表現型レギュレーター(Tapr)と仮に呼ぶ。
【0124】
本出願人らは(BALB/c×HBA)F1マウスもまた調査し、それはBALB/cマウス同様、高レベルのIL−4、IL−13、およびIL−10を産生し(図1aおよび1b)、そして上昇した抗原誘発AHRを発現した(図1c)。これらの結果は、第11染色体のDBA/2対立遺伝子が、IL−4合成を調節する他の遺伝子と独立して、劣性な様式でIL−4産生およびAHRを低減したことを示す。対照的に、(BALB/c×DBA/2)F1マウスは、低レベルのIL−4を産生し、そして免疫化に対して通常の気道応答性を有しており(図1)、DBAゲノムの他の領域由来の遺伝子座もIL−4産生および抗原誘発AHRを調節すること、そしてDBA/2対立遺伝子は、全体として優性な様式でIL−4産生およびAHRを制限するように機能することを示す。これらの結果は、アトピー性形質の多遺伝子、複雑な性質を強調し、そして喘息表現型にもまた影響を与える複数の上位遺伝子からの干渉なしに、単一遺伝子座を単離および特徴づけするために、類遺伝子性株を使用する潜在的な利点を示す。
【0125】
AHRおよびIL−4応答性を調節する遺伝子座、Taprの遺伝的マッピング。以前に、HBAマウスの類遺伝子性領域が、2つの第11染色体マーカー、ヘモグロビン−α2(hba−α2)およびエステラーゼ−3(es−3)遺伝子座を含む、36のゲノム範囲のマーカーで詳細に描写された。第11染色体の外側、HBAゲノムは、BALB/cから受け継がれた。DBA/2およびBALB/cマウス間で多型であることが公知の25個の単純配列長多型(SSLP)マーカーを用いたより正確な分析が、HBAマウスはDBA/2から第11染色体の2つの部分を受け継いだことを示した(図2、左カラム)。近位領域は、染色体5q23−35と相同性を有する20cMの部分を含んでおり、それはヒト喘息連鎖研究で関係した遺伝子座を、喘息のマウスモデルで同定し得る可能性を提供した。
【0126】
TH2−AHR調節遺伝子座、Taprをより高い分解能でマッピングするために、(BALB/c×HBA)F1マウスを、HBAマウスと戻し交配してN2動物を産生した。この戻し交配アプローチを用いて、HBA親によって寄与される対立遺伝子のセットを前もって決定し、そしてF1親によって寄与される対立遺伝子のセットを遺伝子型決定によって評価し得る。従って、類遺伝子性領域に情報を得られるハプロタイプを産生する組換えの発生を、N2マウスにおいて検出し得、そしてTaprの類遺伝子性間隔における遺伝子座への連鎖を評価するために使用し得る。Taprの劣性性質のために、本出願人らは、これら戻し交配由来のN2マウスを試験して、HBA Tapr表現型を与えるのに十分なHBA由来遺伝子の最低限のホモ接合体領域を同定した。2,000を超えるN2動物を産生し、そして遺伝子型決定した。SSLPマーカーを用いて、本出願人らは情報を得られる組換え発生を有するN2マウスを選択し、そしてこれらのN2マウスを、カサガイヘモシアニン(KLH)による免疫化に反応してIL−4を産生する能力に関して表現型決定した。この一次分析において、本出願人らは、関連する遺伝子座が、近位類遺伝子性領域、D11Mit135とD11Mit260との間に存在することを決定した。より高い分解能でTaprをマッピングするために、22のさらなるマーカーを同定し、そして関心のある領域で0.1−1cMの分解能を提供するために利用した。
【0127】
数ヶ月にわたって行なわれたIL−4サイトカイン分析の結果を正確に比較するために、各実験のIL−4指数を各N2マウスに関して生成し、(B−x/B−H)、ここでB=BALB/cマウス由来の細胞によるIL−4産生、H=HBAマウス由来の細胞によるIL−4産生、そしてx=評価されるN2マウス由来の細胞によるIL−4産生である。IL−4の高い濃度(BALB/c様)は、0に近い指数値で表され、そしてIL−4の低い濃度(HBA様)は、1.0に近い指数値で表される。“B”および“H”値は、本出願人らが試験した、情報を得られる組換えを有する3−6匹のN2マウスのグループそれぞれに関して、3−5匹のコントロールマウスで確立された。指数値は、二方式分布になり(図3a)、そこで非組換えHBA遺伝子型を有するN2マウスに関連する表現型指数は、非組換え(BALB/c×HBA)F1遺伝子型を有するN2マウスに関連する表現型指数よりも有意に高かった(P<0.0001、対の学生のt−試験)。
【0128】
独特の遺伝子型を有するマウスに関して、これは連鎖分析において重要であるので、本出願人らは数ヶ月を費やして、サイトカイン産生およびAHRの単回測定が適当であることを保証した。まず、関心のある組換えを有するN2マウスをそれぞれ試験するのと同時に、本出願人らは、遺伝子型が厳密にHBAまたはF1(BALB×HBA)である、各“組換えN2”の“非組換え”同胞も試験した。さらに、本出願人らは、その特定のN2遺伝子型を有する個々のマウスをより多く有するために、関心のある組換えを有するN2マウスのいくらかを、HBAマウスに戻し交配することによって、さらなるN3マウスを繁殖させた。全ての値は所定の遺伝子型を有する試験した個々のマウスの値の平均であった。この方法で、本出願人らは、サイトカイン産生およびAHRの測定、ならびに本出願人らは生物学的システムで固有の変動性によるアッセイの変動を克服したことを確信する。
【0129】
組換えハプロタイプを受け継いだN2マウスに関連するIL−4値は、二方式分布で分離したので(図3a)、高IL−4反応を調節する遺伝子座は、マーカーD11Mit271およびD11Mit22の間に位置することを示し得た(図3b)。さらに、高レベルのIL−4産生が、Kim1sscpに存在するBALB/c対立遺伝子を有する全てのマウスで観察され、そして低レベルのIL−4産生が、Kim1sscpにおいてホモ接合体HBA遺伝子型を有する全てのマウスで観察された。従って、Taprは、Kim1sscp、Rattus norvegicus Kidney Injury Molecule(Kim−1)のマウスホモログ中のイントロンマーカーと非組換え性である。対照的に、Taprは他の全てのマーカーから、少なくとも1つの組換えを有して分離される。TaprおよびKim1sscpが共に分離するという事実は、Tapr遺伝子座がKim1sscpの非常に近くに位置するか、または区別できないことを示した。D11Mit271とD11Mit22との間の組換えハプロタイプ頻度に基づいて、本出願人らは組換え頻度を0.0039と計算し、それは、Tapr遺伝子座は小さい0.3−0.5cM領域に位置することを示す。本出願人らはまた、TaprとIL−4との間の組換え頻度を0.08と計算した。従って、TaprはIL−4サイトカインクラスターから5−10cM離れた場所に位置するが、これは、ヒトアトピーおよび喘息に連鎖する5q23−35と高度に保存されたシンテニーを有するマウスゲノムの領域内にある。
【0130】
相似アプローチを用いて、本出願人らは、情報を得られる組換えハプロタイプを有するマウスにおいて、アレルゲン誘発AHR表現型の分離を調査した。指数化AHR値を用いて、N2マウスは明らかに親の表現型を示し、それは感作N2マウスのグループにおけるAHR指数値の柱状グラフにおいて、二方式分布を生成した(図3c)。1,000を超えるN2マウスに関連するAHR表現型の分離を分析することによって、本出願人らは、AHR反応を調節する遺伝子座も、マーカーD11Mit271とD11Mit22との間に位置し(図3d)、そしてAHR表現型はKim1sscpと非組換えであることを示した。従って、本出願人らは、IL−4応答性およびAHRはどちらも、Tapr遺伝子座と同時分離することを示し、それは同じ遺伝子座がIL−4発現およびAHRをどちらも調節することを示唆する(図3)。
【0131】
これらの発見はさらに、Tapr遺伝子座は、以前に「候補」アトピー感受性遺伝子または喘息感受性遺伝子と考えられていた、IL−4サイトカインクラスターおよびクラスター内のサイトカイン遺伝子に対して5cMを超えてcentromericであることを示す。本出願人らのマッピング結果はまた、Taprは、IL−12p40遺伝子およびTH1−IL12調節遺伝子座、Tpmを含むマウス第11染色体の領域のどちらとも遺伝的に分離することを確立した。
【0132】
マウスおよびヒトホモログは、Taprをヒト5q33に固定する(anchor)。Tapr遺伝子座の周囲に複合マップを構築するために、本出願人らは、Mouse Genome Database(MGD)連鎖、戻し交配、および照射ハイブリッド地図から入手可能な情報を統合し、そしてヒトゲノムの地図において保存されたシンテニーの領域を同定した。現在の照射ハイブリッドマップは、公知の遺伝子またはunigeneクラスターと広範囲の相同性を有する、いくつかの発現配列タグ(EST)を含む、D11Mit271およびD11Mit22の近くに存在するマーカーを、マウスゲノムの物理的地図に配置する。本出願人らはさらに、これらのマーカーおよびその関連するESTを、公知の遺伝子クラスターに対する、以前には同定されていない類似性に関して調査した。本出願人らは、ヒトゲノムに対する比較のために、これらのマーカーを骨組みに集合させた。このアプローチを用いて、本出願人らは、特定の照射ハイブリッドマーカーと以下のヒト遺伝子との間に有意な類似性を発見した:KIAA0171、Adam−19、Sox−30、Pir−121、Crsp9(Crsp33)、およびhHAVcr−1(hHAVcr−1)。図4は、一旦本出願人らがこれらの遺伝子を本出願人らの側面に位置するマーカー間のマウスゲノムの物理的地図に固定したことを示す。本出願人らは、Human Genome Browserにおいてそれらの遺伝子の位置決定をし得る。
【0133】
この領域におけるマウスおよびヒトゲノム間の高度の保存は、Tapr遺伝子座のヒト5q33.2に対する連鎖を示す。図4に示すように、本出願人らは、ヒト地図のこの領域における全ての公知の遺伝子およびESTを同定した。ヒトhHAV−crおよびKim−1のマウスホモログの近くにある特に関心のある遺伝子は、IL−2誘導性T細胞キナーゼ(Itk)およびSP−1転写因子(Crsp9)の補調節因子を含み、これらはどちらもT細胞の分化に関与することが知られている。本出願人らは、これら候補遺伝子由来のコード領域を配列決定し、そしてITKまたはCRSP−9のどちらにも多型を発見しなかった。
【0134】
新規T細胞表面タンパク質ファミリーのTapr領域への位置決定。ラットKim1のマウスホモログは、0.4cM領域内に位置し、そしてTaprと密接に連鎖するので、本出願人らは公共に利用可能なデータベースを調査し、そしていくらかの配列類似性を有するESTのクラスターを発見した。それらは部分的な適用範囲しか提供せず、そして大きな変異部分を含んでいた。Kim−1の最も近いヒトホモログは、ヒトA型肝炎ウイルス細胞レセプター、hHAV−crであり、そしてヒトゲノムのtBLAST検索は、おそらく遺伝子ファミリーのメンバーである、Kim−1の2つのさらなるホモログもまた、ヒト第5染色体およびマウス第11染色体に位置することを示唆した。
【0135】
conA刺激脾臓細胞由来のcDNAを使用して、本出願人らはKim1の2つのマウスオルソログを同定およびクローニングした。本出願人らはそれらをTim1およびTim2と名付け、図5Aに示すようにTapr領域に位置する。TIM−3は、3番目の、より関連が遠い、KIM−1のオルソログである。
【0136】
この遺伝子ファミリーの3つのメンバーは全て、刺激T細胞によって発現され、そして3つの形式は全てマウス第11染色体/ヒト第5染色体のTapr領域に位置し、ここでそれらは、免疫グロブリン(Ig)ドメイン、ムチンドメイン、およびリン酸化部位を有する細胞内尾部を含む、共通の構造モチーフを有する細胞表面糖タンパク質をコードする。これらタンパク質の細胞機能は未知であるので、本出願人らはその遺伝子を、T細胞、免疫グロブリンドメイン、ムチンドメイン(Tim)遺伝子ファミリーのメンバーと呼ぶ。マウスTim1は、ラットKim1およびアフリカミドリザルおよびヒトで同定されたHAVcr−1のマウスホモログである。Tim2は、本研究以前にはどの有機体においても同定されたことのない、以前には未知の遺伝子である。
【0137】
マウスTim1遺伝子は、305アミノ酸膜タンパク質をコードし、それはラットKIM−1と78%の全体同一性、そしてヒトHAVcr−1と35%の同一性を有する。図5Bに示した、マウスTIM−1、ラットKIM−1、ヒトHAVcr−1およびアフリカミドリザルHAVcr−1を用いたギャップ多重配列アライメント(gapped multiple sequence alignment)は、これらの種におけるTIM−1/KIM−1/HAVcr−1タンパク質間の相同性の程度を示す。TIM−1の細胞質領域は、2つのチロシン残基を含み、そして高度に保存されたチロシンキナーゼリン酸化モチーフ、RAEDNIYを含み、それはTIM−1の予測されるItk部位およびEGFRキナーゼ部位、SRAEDNIYIVEDRPと一体である。TIM−1のムチンドメインは、複数のO−結合糖鎖付加部位を有し、そして免疫グロブリンドメインに2つのN−結合糖鎖付加部位が見出される。
【0138】
同様の305アミノ酸膜タンパク質であるTIM−2は、マウスTIM−1と64%の同一性、ラットKIM−1と60%の同一性、およびhHAVcr−1と32%の同一性を有する(図5A、B)。TIM−1と同様、TIM−2は2つの細胞外N−結合糖鎖付加部位、および多くのO−結合糖鎖付加部位を有するセリン、スレオニン−リッチなムチンドメインを有する。TIM−2もまた、細胞内チロシンキナーゼリン酸化モチーフ、RTRCEDQVYを有する。
【0139】
Tim3は、複数の細胞外糖鎖付加部位および細胞内チロシンリン酸化モチーフを有する、同様の膜貫通糖タンパク質構造を有する281アミノ酸膜タンパク質をコードする。TIM−3においては、ムチンドメインはTIM−1およびTIM−2におけるほど顕著ではないが(図5A)、T細胞に発現したTIM−3は、おそらくAPC上のリガンドと相互作用し、そしてAPC活性化を変化させる。TIM−3は、4つのN−結合糖鎖付加部位、および5つのO−結合糖鎖付加部位を有し、TIM−3は、TIM−1およびTIM−2と同様、高度に糖鎖付加されており、そして抗原提示細胞のような他の細胞に存在するリガンドと相互作用し得ることを示唆する。
【0140】
Tim4は、マウスでは344アミノ酸のタンパク質、ヒトでは378アミノ酸のタンパク質をコードする。予測されるTIM−4はまた、高度に保存されたシステイン残基を有するIgV様ドメイン、スレオニン−リッチなムチン様ドメイン、および短い細胞内尾部を有して、他のTIMタンパク質の一般的な膜糖タンパク質構造モチーフを共有する。しかし、TIM−4は、他のTIMタンパク質に存在するリン酸化チロシンモチーフを欠き、従って他のTIMタンパク質の機能を調節し得る。
【0141】
各TIM Igドメインは、細胞接着、生存、および腫瘍形成、ならびにヘルパーT細胞の分化の調節に関与しているTIMのような膜貫通タンパク質である、オステオポンチンで見出されるSVVYGLRモチーフに似た、予測されるインテグリン結合モチーフを共有する。このインテグリン結合モチーフは、アルファ(9)特異性およびアルファ(4)特異性を示す。
【0142】
3つのTim遺伝子に関するBALB/cおよびHBA/DBAコード領域の配列比較は、TIM−1、TIM−3、およびTIM−4における主要な多型を明らかにしたが、TIM−2ではなかった。TIM−1において、これらの多型は3つのアミノ酸の違いおよびHBA/DBAにおける15のアミノ酸欠失をコードする。7つの予測されるアミノ酸の違いがTIM−3において同定された(図5c)。ゲノム配列が、欠失を含むこれらの多型は、スプライシング異型ではなく、真の多型であることを確認する。他のマウス株におけるTIM−1およびTIM−3のゲノム部分のさらなる配列決定によって、本出願人らは、低減されたTH2およびAHR反応を発現する傾向がある点でDBA/2と類似の株であるC57/BL6もまた、Tim1およびTim3のHBA/DBA対立遺伝子を有することを発見した。TIM−1およびTIM−4の多型は、シグナルおよびムチン様ドメインに位置し、一方TIM−3において同定された多型は、Igドメインに集中している(図5c)。Igおよびムチンドメインを有する糖タンパク質において、どちらかのドメインにおける異型は、MAdCAM−1で示されたように、レセプター−リガンド相互作用に影響し得る。TIM−1およびTIM−4の予測される切断部位はシグナル配列における多型によって変化しないが、多型が切断の効率および/またはレセプターの細胞表面への往来に影響し得ることが可能である。これらのTim配列および多型は、免疫反応、およびヒトにおけるHAVウイルス病原性に重要である。
【0143】
本出願人らのN2戻し交配由来のゲノムDNAサンプルの分析は(図3)、TIM−1およびTIM−3多型はTaprと完全に同時分離することを示した。これらの観察はTIM−1、TIM−3、または両方における変化がAHRおよびTH2による炎症の変化をどの程度担うか識別しないが、本出願人らはヒトTIM−1(hHAVcr−1)および/またはTIM−3における多型は、喘息感受性とヒト染色体5qとの間の強力な関連の基礎となることを示唆する。この考えは、ヒトTim1のコード領域における主要な異型が、ヒトゲノムおよびESTデータベースの調査で明らかであるという事実によって支持される。これらヒトcDNA異型と、以前に記載されたサルHAVcr−1の異型およびここで同定されたマウス異型との比較は、TIM−1の予測されるタンパク質配列において広範囲の変異が存在することを示す(図5b、c)。この高い変異の程度が、TIM−1およびそのファミリーメンバーを、喘息感受性候補遺伝子として最も綿密に研究されたサイトカインおよびサイトカインレセプターのような、他の多くの候補遺伝子と区別する。それに加えて、Tim1と喘息感受性との間の関連は、ダニ感受性小児喘息の、Tim1およびTim3から約0.5メガベースであるマーカー、D5S820に対する有意な連鎖(平均LODスコア=4.8)の報告によってさらに支持される(図4)。
【0144】
上記の遺伝的多型に加えて、選択的スプライシングによって生じる、TIM遺伝子におけるいくつかの発現多型が存在する。TIM−1、TIM−2、およびTIM−4 mRNAの選択的スプライシングは、いくつかのTIM異型を産生し、それらのいくつかは分泌される、可溶性形式のTIMレセプターである。これらのスプライシング異型は、代わりの(alternate)5’非翻訳領域を有するTIMスプライシング異型と共に、TIMタンパク質の細胞特異的、および状態特異的発現パターンに寄与し得る。
【0145】
T細胞はTaprに影響を与える。Tapr遺伝子座の機能をよりよく理解するために、本出願人らは、Taprの対立遺伝子異型が、T細胞または抗原提示細胞(APC)の機能に影響を与えるかどうか決定した。これらの実験のために、本出願人らは、HBAバックグラウンドを有する(HBA DO11.10)卵白アルブミン(OVA)−特異的T細胞レセプター(TCR)トランスジェニックマウス(Tg)を産生し、本出願人らはそれらをBALB/cバックグラウンドを有する(BALB/c DO11.10)TCR−Tgマウスと比較した。これら株のどちらか由来の精製CD4+T細胞を、OVAおよびBALB/cまたはHBA骨髄のいずれか由来の樹状細胞(DC)と同時培養し、そして産生されたサイトカインを評価した。照射脾臓細胞および他の組織は、高レベルのTIM遺伝子を発現することが発見されたので、この実験のためにAPCとして照射脾臓細胞は使用しなかった。
【0146】
BALB/c DO11.10 T細胞は、抗原提示細胞の供給源とは独立した方式で、HBA DO11.10 T細胞より高レベルのIL−4およびIL−13を産生した(図6A)。それに加えて、一次または二次刺激いずれかの間のAPCの供給源にかかわらず、CD4 T細胞の供給源が、各抗原濃度において産生されたIL−4/IL−13の量を決定した。細胞型の各組み合わせの培養上清において、同等レベルのIL−12が検出され、さらにBALB/cおよびHBA DC機能は同様であることを示した。さらに、BALB DO11.10およびHBA DO11.10 T細胞は、同等レベルのIL−2を産生し、そして2次培養中にOVAに反応して同様のレベルの増殖を示し、HBAおよびBALB/c T細胞は同様に活性化されるが、それらが産生するTh2サイトカインのレベルがかなり異なることを示した。
【0147】
本出願人らは図6Bにおいて、本出願人らのDO11.10/DCシステムにおける1次培養の最初の12時間以内に、本出願人らはTIM−1のmRNAがBALB/cおよびHBA CD4+ T細胞の両方によって発現されることを発見したことを示す。1次刺激から4日以内に、本出願人らはBALB/c DO11.10の上清において有意なレベルのIL−13を発見し、そしてHBA DO11.10の上清においては検出しない。この違いは、36時間においてmRNAレベルで検出可能である(図6B)。12および36時間の間に、IL−13 mRNAの発現はHBA CD4 T細胞において低減され、一方IL−13の発現はBALB/c CD4 T細胞において維持される。従って、抗原に対する1次反応の間に、BALB/c CD4 T細胞は、HBA CD4 T細胞よりも強力なTh2反応を発現する。本出願人らの発見は、Taprは、1次抗原特異的反応の間にヘルパーT細胞の分化を調節することを示し、そして本出願人らはこれらの反応の最も初期段階の間に、CD4 T細胞においてTIM−1の発現を検出する。
【0148】
成熟Th1およびTh2サブセットへの分化後に、ヘルパーT細胞は、Th1細胞はTIM−3を発現し、一方Th2細胞は選択的にTIM−1を発現するように、RT−PCRによって傾倒されたTIM発現を示す。全てのT細胞集団は弱いTIM−4発現を示す。TIM−1によるItkシグナルがTh2分化を促進するようであるが、TIMタンパク質によるEGFRシグナルが、エフェクターおよび特にメモリーT細胞集団における細胞生存を増強するようである。ItkはT細胞および肥満細胞にのみ発現されるので、TIM−1に対するItkキナーゼ活性は免疫細胞、特に喘息およびアレルギーに関与するものに制限される。しかし、EGFRのような他のタンパク質チロシンキナーゼが、虚血上皮細胞、照射脾臓細胞、および腫瘍細胞を含む、他の組織によって発現されるTIMタンパク質の機能に関与する。
【0149】
これらの研究において、本出願人らは、喘息の基本的な特徴であるTh2サイトカイン産生および抗原誘発AHRの発現を調節する遺伝子座である、Taprをマッピングした。本出願人らは、繰り返しアトピーおよび喘息に連鎖されてきたヒトゲノムの領域である、ヒト染色体5qに相同的な染色体部分を有する、間隔特異的類遺伝子性マウス(HBA)を用いて、Taprを位置決定した。この領域はまた、脊髄形成異常および腫瘍性細胞発生異常と関連する5q症候群に繰り返し連鎖された。複雑な形質をより単純な、あるいは単一の遺伝子、形質に変換するこの類遺伝子性マウス戦略を用いて、本出願人らはTaprの間隔を0.4cM間隔まで狭め、この領域におけるいくつかの候補遺伝子を配列決定し、そしてTIM遺伝子ファミリーをポジショナルクローニングした。
【0150】
TIM遺伝子ファミリーは、以前に記載されたことがない。本出願人らは、全長cDNA配列を同定およびクローニングし、そしてHBAマウスと比較してBALB/cのTIM−1タンパク質において有意な多型を発見した。本出願人らは、TIM−1およびTIM−3のBALB/c配列は、AHRおよびアレルギー性T細胞反応に対する感受性に関連し、一方HBA配列は、これらの反応に対する保護に関連することを見出した。TIM−3は、分化したTH1によって選択的に発現される。多型Tim3異型とTaprとの関連は、TIM−3がTH1およびTH2細胞機能を調節し得ることを示唆する。しかし、Tim3における変異をまた、Tim4またはTim1に緊密に連鎖したハプロタイプに帰し得る。
【0151】
本出願人らは、いくつかの理由により、TIM−1は免疫系の調節において(特に喘息およびアレルギー性疾患に関して)、およびストレス(低酸素、栄養素の欠損、照射、化学療法等)に対する反応における上皮および造血細胞の生存の調節において、非常に重要な役割を果たしていると考える。まず、Tim1は、Tim3と同様、Tapr効果が起こる可能性が最も高い時である、1次抗原刺激の間にCD4 T細胞に発現される。T細胞は、AHRの発現および喘息の病因に決定的な役割を果たし、本出願人らの結果は、Taprは、IL−13の産生および続くT細胞分化を調節することによって、Th2反応に対する初期のCD4の傾倒を増強することによって、喘息に影響を与えることを示唆する。2番目に、乳児または小児期におけるヒトでのHAV感染は、喘息およびアレルギーの発現と逆比例して関連する。本出願人らは、HAVのTIM−1/HAVcr−1との相互作用が、T細胞サイトカイン産生を変化させ得、そうでなければアトピーおよび喘息に罹患しやすい個人において、偏ったTh1/Th2バランスを逆行または予防でき得ることを示唆する。麻疹ウイルスレセプターであるSLAMは、ウイルス相互作用によって変化し得る方式でTh1/Th2バランスを調節する、別のT細胞表面糖タンパク質の例である。麻疹ウイルスに関するSLAM、またはHIVに関するCD4、CCR5、およびCXCR4のような、いくつかのウイルスレセプターは、宿主自身の免疫系のレセプターであるので、感染が成功しない場合でも、ウイルスレセプターによるシグナル伝達は、サイトカインの放出および疾患の発現を引き起こし得る。
【0152】
3番目に、TIM−1における多型は、本出願人らが観察する、異なる型のヘルパーT細胞反応と関連する。従って、TIM−1の異型はそれ自身、免疫異常のいかなる公知の環境的原因も存在しない場合に起こる、遺伝的Th1/Th2素因に寄与し得る。霊長類におけるHAVレセプターは、高度に変異することが公知であり、そして本出願人らは、ヒトTIM−1/hHAVcr−1の多型対立遺伝子は、本出願人らがマウスで同定したものと同様、Th2の偏りおよび喘息感受性における変異に関連し得ることを提案する。ウイルスレセプターとして作用し、そして感染に対する感受性を変化させる細胞表面分子の遺伝子における変異はまれなことではなく、従ってTIM−1およびTIM遺伝子ファミリーの他のメンバーにおける有意な遺伝的変異は、サイトカインのもののような他の遺伝子における変異よりも観察される可能性がより高い。なぜ喘息感受性対立遺伝子がヒト遺伝子プールにおいて優勢であり得るのかは明らかではないが、TaprとHAVcrとの関連は、喘息感受性対立遺伝子の残存に関して興味深い説明を提供する。ヒトの進化の間に、Tim遺伝子ファミリーのある対立遺伝子が、アトピー性疾患および他の免疫異常に対する抵抗性を与え得たが、それらの抵抗性対立遺伝子の選択は、ウイルス病原体に対する抵抗性を与える代替対立遺伝子の選択と平衡に達したのかもしれない。
【0153】
まとめると、本出願人らの研究は、強力な候補喘息感受性遺伝子を位置決定し、そしてこの複雑な遺伝的形質の調査における内在する困難を克服する、類遺伝子性マウス戦略の最初の成功した利用を提示する。本出願人らは、ヒト染色体5qに対して相同的な領域に存在する、以前には未知の遺伝子ファミリーを同定し、そしてそれはTh細胞の分化および喘息感受性において主要な役割を果たす。ヒトにおける以前の研究は、ヒト染色体5qにおいていくつかの候補遺伝子を同定したが、本出願人らの研究で同定されたTim1遺伝子産物はまた、HAV感染と喘息感受性の低減との間の逆比例関係に関する説明を提供する。
【0154】
CD4+T細胞(Th)の部分集団は、区別できるパターンのサイトカインを産生し、そしてこれはTh細胞間の機能的不均一性の概念を導いた。1型Th細胞(Th1)は、インターロイキン2(IL−2)および/またはインターフェロンγを産生し、遅延型過敏症(DTH)反応を誘発し、そしてマクロファージを活性化する。一方2型Th細胞(Th2)は、IL−4、IL−5およびIL−10を産生し、そして特にIgE産生および好酸球性炎症に重要であり、そして細胞による免疫を抑制し得る。Th2細胞は、アトピーの病因において中枢の役割を果たすと考えられる。いくつかの因子が、特定の免疫反応の間に、Tヘルパー細胞がTh2に対してTh1へ分化するかどうかを決定する。これらは、サイトカイン環境、TCRシグナルの強さおよび/または抗原密度、ならびに副刺激経路を含むが、必ずしもこれに限らない。CD4+Tヘルパー細胞のTh1またはTh2サブセットへの分化は、アトピー、自己免疫疾患、感染性疾患、および移植片拒絶の結果に深い影響を有する。
【0155】
非アトピー性の個人をアレルギー性疾患の発現から保護し、そしてアトピー性個人でアレルギー性反応を阻害し得る、免疫反応の特定の特徴はあまり理解されていない。いくつかのシステムにおいて、Th1細胞はTh2細胞を交差調節するので、アレルゲン特異的Th1細胞が、アレルギー性疾患および喘息を調節すると考えられた。Th1細胞はTh2細胞の発達および増殖を阻害し、そしてIgE産生はIL−4およびIFN−γによって相互に調節される。これは、アレルギーからの保護は、阻害性アレルゲン特異的Th1細胞の発達によることを示唆する。非アレルギー性個人の末梢血由来のアレルゲン特異的T細胞クローンは、Th1サイトカインを産生することが示された。これらの観察はまた、喘息の衛生状態仮説を支持し、それは感染、特にTh1反応を誘発するものの罹患率が、公衆衛生基準の改善ならびにワクチンおよび抗生物質の使用によって、西洋化社会において減少したことを示唆する。結果として、Th2反応およびアトピーが、Th1による反応の非存在下で、より激しくそして迅速に発現する。
【0156】
本明細書中で同定されたTIM遺伝子はまた、候補癌遺伝子である。TIM遺伝子による細胞株のトランスフェクションは、細胞死への抵抗性を与え、そしてTIM−1において記載された予測されるEGFRキナーゼモチーフは、この細胞生存が調節される可能なメカニズムを提供する。さらに、TIM−1は、細胞をFasによるアポトーシスから保護するタンパク質である、TOSOと有意な程度の配列同一性(約20%)および構造的類似性(IgVドメイン、ムチン/シンデカンドメイン、膜貫通ドメイン、および同様のリン酸化チロシンモチーフを有する細胞内ドメインを有する膜貫通糖タンパク質)を示す。TIM遺伝子と同様、TOSOはおそらく癌遺伝子であり、造血系悪性腫瘍および固形腫瘍において頻繁な変化を有するゲノムの領域に位置する。
【0157】
(方法)
動物。C.D2 Es−HBAを含む類遺伝子性株を、DBA/2NをBALB/cAnPtバックグラウンドに、イントログレス的に(introgressively)戻し交配することによって産生した。BALB/cBy、DBA/2J、および(BALB/c×DBA/2)F1マウス(CByD2F1/J)を、Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から得、一方BALB/cAnおよびDBA/2NをTaconic Labs.から得た。(BALB/c×HBA)F1マウスを、BALB/cByJとHBAとの間の交配によって産生した。N2マウスを、(BALB/c×HBA)F1をHBAに対して戻し交配することによって産生した。本出願人らの組換えN2動物の分析において、可能な場合にはいつも、組換えマウスを非組換え同胞と共に試験した。多数のアッセイにおいて個々のN2遺伝子型を調査するために、本出願人らは、選択されたN2マウスをHBAに対して戻し交配してN3マウスを産生することによって、選択された組換えハプロタイプを保存し、それを遺伝子型決定して組換えN2ハプロタイプを有するマウスを選択した。OVAペプチド323−339(pOVA323−339)を認識するTCRに関してトランスジェニックであり、そしてBALB/c(43)に対して戻し交配した、DO11.10マウスは、Dr.Dennis Lohによって親切に提供され、そして本出願人らの施設で繁殖させた。HBA DO11.10マウスを、DO11.10をHBAに対して戻し交配することによって産生した。DO11.10マウスを、TCR−Tgに関してFACS分析によって選択し、そして遺伝子型決定してD11Mit135とD11Mit168との間のHBA対立遺伝子に関して選択した。The Stanford University Committee on Animal Welfareが、全ての動物プロトコールを承認した。
【0158】
遺伝子型決定。D11Mit140とD11Mit269との間に存在する全ての利用可能な「D11Mit−」マーカーならびに、D11Mit271およびD11Mit22付近の全ての照射ハイブリッドマーカーを、DBA/2とBALB/cとの間のあらゆる多型に関して試験することによって、Tapr遺伝子座周囲のさらなるマーカーを同定した。MIT MapPairプライマーを、Research Genetics(Huntsville、AL)から得、そして全ての他のプライマーを、Protein and Nucleic Acid Facility(Stanford、CA)において合成した。PCRを以前に記載したように行い、そしてSSLP多型を4−5%のMetaphorアガロース(BioWhittaker、Walkersville、MD)で分離した。SSCPに関して分析される産物を、33P−dCTPを用いて増幅し、Sequi−Gen GT System(Bio−Rad、Hercules、CA)を用いて、40Wおよび4℃で変性アクリルアミドゲルにおいて分離した。
【0159】
免疫化プロトコール。サイトカイン産生アッセイにおいて研究されたマウスを、完全フロイントアジュバント(CFA)中のKLH(Calbiochem、La Jolla、CA)を用いて初回抗原刺激した(Dekruyffら、J Immunol 149、3468−76(1992))。気道過剰応答性の測定のために、マウスを0日目に硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)と複合体化したOVAで腹腔内(i.p.、50μg)に、そして7、8、および9日目の軽い麻酔後、鼻腔内(i.n.、50μlのPBS中50μgのOVA)に免疫化した。コントロールマウスには、ミョウバン単独のi.p.注射および鼻腔内PBSを与えた。吸入メタコリンに対する気道過剰応答性を、最後のOVA鼻腔内投与の24時間後(10日目)に測定した。
【0160】
気道応答性の測定。気道応答性を、以前に記載されたように(Hansenら、J Clin Invest 103、175−83(1999))、身体全体の体積記録器(Buxco Electronics Inc.、Troy、NY)においた意識のあるマウスからの、メタコリン誘発気流障害によって評価した。
【0161】
細胞培養。KLHで初回抗原刺激したマウス由来のリンパ節細胞を、以前に記載されたように調製した(Yeungら、J Immunol 161、4146−52(1998))。トランスジェニックDO11.10 CD4 T細胞を、抗CD4磁気ビーズ(Miltenyi Biotech、ドイツ)とのインキュベーション後、MACSカラムを用いてポジティブに選択した。2×104細胞/ウェルを、96穴丸底プレートにおいて250μg/mlのOVAおよび1×104細胞/ウェルの骨髄由来樹状細胞と共に培養した。7日後、DO11.10 T細胞を洗浄し、そして新しい抗原提示細胞および示した濃度の抗原で再刺激した。初代DO11.10培養の抗原濃度を、再刺激の間に滴定した。骨髄由来樹状細胞を、以前に記載されたように、いくらか改変して調製した;5×106の骨髄細胞を、直径9cmの組織培養皿で、20−25U/mlのGM−CSFを含む10mlの培地と共に培養した。ゆるく接着した細胞を、培養6日目に2番目の皿に移動させた;4日以内に、移したこれらの細胞を樹状細胞の供給源として使用した。
【0162】
サイトカインELISA。ELISAを、Macaulayら、J Immunol 160、1694−700(1998);およびMacaulayら、J Immunol 158、4171−9(1997)において以前に記載されたように行なった。
【0163】
モノクローナル抗体。ELISAおよびFACS分析のためのモノクローナル抗体を、硫酸アンモニウム沈殿およびイオン交換クロマトグラフィーによって、腹水液から精製した。抗クローンタイプ(clonotype)抗体KJ1−26.1は、Dr.Philippa Marrack、National Jewish Medical Centerによって寛大に提供され、そして抗体を、FACSの前に、標準的なプロトコールによってFITCと結合体化した。
【0164】
(実施例2)
(ヒトTim配列の同定)
Th2応答およびアレルゲン誘発気道過剰応答性の発達に対して保護を与える遺伝子座にあるTIM遺伝子ファミリーのポジショナルクローニングは、Th2により駆動される応答およびアトピー性疾患の調節に関する我々の理解を非常に改善する機会を与える。それに加えて、TIM−3はマウスTh1細胞に特異的に発現し、そして抗TIM−3 mAbは実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)の重症度の増加を引き起こす。これは、Tヘルパーサブセット調節におけるその遺伝子ファミリーの重要性を強調する。
【0165】
マウスTim−3およびTim−4のオルソログであるヒトTim cDNAを、PCRによってクローニングした。TIM−1のヒトオルソログを、A型肝炎ウイルスの細胞レセプターである、HAVcr−1としてクローニングした。TIMファミリー遺伝子は、ヒト第5染色体において、TIM−4、TIM−1、TIM−3の順番で、介在する遺伝子無しにお互いにすぐ隣接している。第12および19染色体にTIM偽遺伝子が存在する。その遺伝子ファミリーメンバーは中程度にしか関連していない。タンパク質配列およびTim遺伝子ファミリー間の関係を、図7に示す。
【0166】
TIM遺伝子ファミリーメンバーの細胞質ドメインは、マウスオルソログとヒトオルソログとの間で最も保存されたドメインであり、例えばヒトTIM−3細胞質ドメインとマウスTIM−3細胞質ドメインとの間で77%の同一性である。対照的に、TIM−3全体はヒトおよびマウス間で63%しか同一でない。各TIM遺伝子は、明らかな予測されるチロシンシグナル伝達モチーフを含む。TIM−1の細胞質領域は、2つのチロシン残基および高度に保存されたチロシンキナーゼリン酸化モチーフ、RAEDNIYを含む。SRAEDNIYIVEDRPの拡大した領域は、ItkおよびEGFレセプターリン酸化に対する推定部位を含む。Itkは、ホスホリパーゼC−γ(PLC−γ)をリン酸化し、そしてそれによってT細胞活性化およびヘルパーT細胞分化に関与するシグナル伝達事象のカスケードを引き起こすことが知られている。さらに、Itkシグナル伝達はTh1/Th2分化に影響を与え、そしてItk−/−マウスは強いTh2応答を発達しない。EGFレセプターキナーゼ活性は、細胞の生存および細胞死に対する耐性と関連する。同様に、TIM−3は、細胞質ドメインに別個の保存されたチロシンリン酸化モチーフおよびSH2結合モチーフを含む。これは、TIMのそのリガンドとの相互作用が、細胞内シグナル伝達経路に携わること、および各TIMはこのシグナル伝達において別々であることを示唆する。
【0167】
TIMタンパク質の細胞外IgVドメインはまた、α(9)β(1)インテグリン、α(4)β(1)インテグリン、およびα(4)β(7)インテグリンによる接着に関与する、オステオポンチンのSVVYGLRモチーフと類似の推定インテグリン結合モチーフを含む。300.19株のTIM−1をトランスフェクトしたプレB細胞は、トランスフェクトされていない300.19細胞と比較して、細胞培養において高度の接着性および生存増加を示す。TIM−1およびTIM−2をトランスフェクトしたCHO細胞もまた、トランスフェクトされていないCHO細胞と比較して、生存の増強を示す。これらの結果は、TIMタンパク質が細胞接着および死を調節することを示す。
【0168】
ヒトTim1遺伝子およびTim3遺伝子における遺伝子多型。ヒトTim1遺伝子に存在するSNPまたはヌクレオチド多型および欠失/挿入を同定する。SNPはゲノムにおいて非常にありふれており、300−600塩基対ごとに起こるので、Tim1のコード領域のみを分析した。さらに、よくある遺伝子変異も重要であるようである。最初に、30−40人の個人(60−80本の染色体)から取ったT細胞由来のcDNAを配列決定する。検出力の計算は、60染色体のコード領域において標的配列を調査することが、1%より大きい個体群頻度を有するSNPを容易に検出し、そして5%以上の個体群頻度を有する対立遺伝子を検出する機会を90%より多く有することを示す。従って、配列の異型に関して30−40人の個人をスクリーニングすることは、個体群中に存在する、ほとんどのよくある、機能的に関連する、非保存的なDNA異型を捕捉する。
【0169】
物理的にきわめて接近したDNA異型/SNPは、多くの場合強力な依存関係(すなわち連鎖不均衡)を示すので、DNA異型のグループ(SNPハプロタイプ)が一緒に受け継がれるかどうかを決定し、そしてこれらSNPの一部のみのスクリーニングがハプロタイプの同定に十分であるかどうかを決定した。様々な染色体の大きな領域の分析は、別個のハプロタイプブロック(数十から数百キロベース)が一般的に存在し、それぞれが見かけの組換え部位によって時々断続された、限られた多様性を有することを示す。ハプロタイプを発見するために、cDNAを配列決定し、そして複数の個人で繰り返し見られる配列変異の組み合わせを探す。
【0170】
末梢血単核細胞(PBMC)は38人のドナー由来であり、そしてインビトロでPHA(7.5μg/ml)を用いて24および72時間、またはコンカナバリン(Concavalin)A(2μg/ml)を用いて24時間刺激した。PMA(20ng/ml)およびイオノマイシン(1μM)を、刺激の最後の6時間に加えた。次いで細胞を回収し、そしてTrizol試薬(Invitrogen)を用いて全RNAを抽出した。配列決定のためのcDNA鋳型を得るために、Superscript II逆転写酵素(Invitrogen)を用いて、製造会社のプロトコールによって、RNAを逆転写した。このcDNAを用いて、Herculase Hot Starttm 高忠実度ポリメラーゼ(Stratagene)を用いて、Tim cDNAの全長をPCR増幅した。PCRプライマーは以下のものであった:(配列番号37)GTGTCTGACAGTGGCGTA(順向き)、(配列番号38)TTTGCCCAGGCAGAACCA(順向き)、CCACCCAAGGTCACGACT(逆向き)、(配列番号39)ATGCCACGGACTAAGACC(逆向き)。PCR産物を、Qiagen QIAquickゲル抽出試薬を用いて精製し、そしてTim1に関して4つの内部配列決定プライマーを用いて、そしてTim3に関して2つの内部配列決定プライマーを用いて配列決定した。
【0171】
活性化T細胞から全RNAを取り、そしてSuperscript IIおよびオリゴdTを用いてそれを転写することによって、全長Tim1 RT−PCR産物を、これらの個人においてクローニングした。Tim1 cDNAを、Expand高忠実度ポリメラーゼ(Roche)を用いて増幅して、Tim1コード領域にまたがる1kbの産物を産生し、それをPCR Purificationキット(Invitrogen)を用いて精製した。次いでこの精製産物をTOPO pEF6ベクター(Invitrogen)にクローニングし、続いてTOP10コンピテント細菌を形質転換した。細菌コロニーを、アンピシリン選択を用いてLBプレートで増殖させた。単一のコロニーを取り、そしてQiagenミニプレップキットを用いてプラスミドプレップを行った。HindIII消化を用いた制限マッピングを用いて、正しい方向で挿入を含むプラスミドを選択した。次いでこれらのプラスミドを、3つの異なるプライマー(順向き(T7)、内部および逆向き(BGH))を用いて配列決定し、そしてその配列をNCBIヒトTIM参照配列とSeqManプログラムにおいて整列させた。
【0172】
35人の個人由来の染色体(70個の染色体)からTim1を配列決定した後、Tim1におけるいくつかの多型を同定し、それらを図8に示す。これらの多型に1−7の番号をつける(左カラム)。NCBIデータベースに記載されているヒトTIM−1の全配列(NM_012206)を、参照ポイントとして図8で提供する。この配列は、コード領域における複数の優勢な配列多型の存在のために、配列決定した染色体の20%以下に存在する。6個のさらなる配列異型が同定され、図8に示す、そして全ての多型は、マウスでもそうであるように、ムチンの細胞外ドメインで観察されたが、特定の変異はマウスで見られるものと異なっていた。重要なことに、これら異型の間に、様々な組み合わせで、限られた程度の関連が存在する。最も明らかな変異は、65%の染色体で観察された、多型1(157insMTTTVP)と名付けられた挿入、および65%の染色体で観察された、多型5(187△Thr)の欠失である。多型4は40%の染色体で観察され、そして他の多型はそれぞれ≦5%の染色体で観察された。特に、これら異型(2−6)のほとんどは、最初のムチンをコードするエキソンであるエキソン3内に位置し、そして全ての異型はゲノムレベルで存在し、そしてスプライシング異型ではない。
【0173】
mRNAのこの配列分析に基づいて、より多数の患者/コントロールからのゲノムDNAを分析するより迅速な方法が開発された。図8に示した配列中に見られる変異に関して個人をスクリーニングするために、DNAをまず150PCR産物における単純配列長多型(SSLP)に関して試験し、それは主要な挿入(多型1)および欠失(多型5)を検出し得る。
【0174】
それに加えて、他の多型(2−4、6および7)を遺伝子型決定および新規多型を同定するために、PCR産物の一本鎖高次構造多型(SSCP)分析を用いる、比較的単純なアッセイを開発した。十分に最適化された条件において、SSCP分析は90%より多くの単一ヌクレオチド置換および全ての長さ多型を検出する。この分析のために、Tim遺伝子の各エキソンを増幅するPCRプライマーを同定し、そして標準的な非変性SSCPゲル電気泳動法を用いて異型を区別し得る(図9)。各エキソンの高分解能SSCP分析のために、ABI 377 DNA配列と共に非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動を使用する。蛍光末端標識プライマーを合成および精製する。ハイスループット遺伝子型決定処理の間に検出された新規SSCPパターンは、新規異型を同定する。この方法を用いて、患者およびコントロールの遺伝子型を迅速に分析する。
【0175】
Tim3遺伝子を、本質的に同じ方法論を用いて分析した。活性化T細胞由来のmRNAを配列決定して、Tim3多型、およびTim1とTim3との間の長い範囲のハプロタイプを同定する。Tim3 cDNAを示す60個の染色体を配列決定した後、Tim3は、これがマウスゲノムにおける場合と同様に、多型性であることが見出された。しかし、1つの多型のLeu140Argのみが優勢であり、示される染色体の約12%に見出される。
【0176】
(実施例3)
(Tim配列の発現)
マウスTIM−3タンパク質は、Th1クローンに発現するが、未処理(ナイーブな)T細胞またはTh2細胞には発現しない。TCRトランスジェニックT細胞を用いると、TIM−3タンパク質は、1回または2回のTh1指向性分化後のTh1細胞に発現しなかったが、3回およびそれ以上のTh1への刺激後に発現した。TIM−3 mRNA発現がいくらか早期に検出された。TIM−3遺伝子発現がヒトにおいて同じであるかどうかを決定するために、ヒトTh1細胞におけるTIM−3 mRNA発現およびTIM−1 mRNA発現を、IL−12および抗IL−4 mAbの存在下で抗原を用いた刺激によって作製した破傷風毒素特異的T細胞を用いて試験した。TIM−1と喘息の関連を考慮して、ヒトTh2細胞におけるTIM−1 mRNA発現およびTIM−3 mRNA発現を試験した。Th2細胞株を、アレルゲン、IL−4、および抗IL−12 mAbによるインビトロ刺激によって、アレルギー性ドナーから産生した。RNAをPCRによってTIM遺伝子発現に関して分析した。
【0177】
TIM−3はTh1分化の後一般的に発現していたが、TIM−1は消失した。逆に、TIM−3はどのTh2にも発現しなかったが、TIM−1は全てのTh2細胞に発現した。おそらく、この混合した集団はTh1メモリー細胞およびTh2メモリー細胞をどちらも含むために、TIM−1およびTIM−3はどちらも、Th1細胞株およびTh2細胞株を誘導するために使用したドナー由来の、単球除去した未刺激末梢血単核細胞に発現する。これらの結果は、Th2に発現するTIM−1およびTh1に発現するTIM−3の相互関係を示唆する。このTIM−1およびTIM−3間の相互関係は、マウスにおいても観察された。
【0178】
ヒト組織において、4.4kbのTIM−1 mRNAは腎臓および精巣に非常に強力に発現した。4.4kb mRNAは、ほとんど全ての組織に存在したが、ほとんどにおいてかすかであった。5.5kbのバンドが結腸および肝臓で観察された。7.5kbのバンドが脾臓、胸腺、および末梢血白血球で観察され、そして4.4kbより小さいバンドがいくつかの臓器で観察された。これらの結果は、hTIM−1はほとんどのヒト組織においてあるレベルで発現しており、そして7.5kbのメッセージが、免疫学的目的のある組織においてhTIM−1をコードし得ることを示唆する。しかし、TIM−1のラットホモログであるKim−1(Kidney Injury Molecule−1)の発現は、虚血性障害時に腎臓において増加する。発現分析において使用したMTNブロットは、死体から抽出したmRNAから調製したので、腎臓におけるTIM−1発現の増加を再分析した。正常腎臓生検から得た腎臓RNAにおいて、TIM−1の過剰発現は見られなかった。従って、腎臓および精巣で観察されたTIM−1の高レベルの発現は、組織障害により起こるTIM−1発現のアップレギュレーションによるものであった可能性がある。損傷した腎臓は、流入する炎症性細胞を、破壊的なTh1応答より、より保護的なTh2応答へ向けるタンパク質を発現し得る。
【0179】
(実施例4)
(TIMリガンドおよび抗体)
抗体の産生。マウスTIM−1に対するモノクローナル抗体の産生は、異なる組織、細胞株およびマウス株におけるTIM−1の細胞表面発現を調査することを可能にする。マウスTIM−1の対立遺伝子の両方を、高タンパク質発現のためにベクター(Invitrogen、pEF6−TOPO)にクローニングした。ラットを両方のTim1 cDNA構築物で免疫および追加免疫し、細胞表面分子に対する抗体を迅速に産生した。cDNAワクチン接種を用いるこの方法は、Tim1 cDNAはAPCによって取り込まれ、それがTIM−1を細胞表面分子として発現するので、細胞表面エピトープに対するmAbの産生に有利である。BALB/c TIM−1およびHBA TIM−1の両方と同等によく(TIM−1の免疫グロブリンドメインのような、TIM−1の保存されたドメインに結合することによって)結合するmAbを産生するために、BALB/cおよびHBA Tim1 cDNAをどちらも(pEF6−mTIMbalbおよびpEF6−mTIMhba)を各ラットに注射した。
【0180】
Tim1 cDNA免疫ラットのさらなる追加免疫を、pEF6−mTIM−1−GFP発現構築物で安定にトランスフェクトしたCHO細胞で行なった。高レベルのマウスTIM−1を発現するCHOトランスフェクタントを、FACSによって分類し、そしてラットに注射した。別のmTIM−1を発現する細胞を、プレB細胞株300.19をpEF6−mTIM−1発現構築物で安定にトランスフェクトすることによって産生した。この株を使用して、ラット血清および抗TIM−1抗体のため融合後のハイブリドーマを、フローサイトメトリーによってスクリーニングする。非免疫ラット由来のコントロール血清と比較して、ラット血清(および2次FITC−ヤギ抗ラットIg)の、安定なpEF6−mTIM1トランスフェクト300.19細胞への結合によって検出されるような、抗TIM−1に対して高いポリクローナル力価を有するラットを産生した。非トランスフェクト細胞またはTIM−2でトランスフェクトした細胞では応答性が存在しないので、この染色は、TIM−1に特異的である。
【0181】
ラット脾臓を取出し、そして脾臓細胞を骨髄腫細胞株(SP/2)と融合してハイブリドーマを産生した。ハイブリドーマ上清を、TIM−1トランスフェクト300.19細胞株を使用してスクリーニングし、モノクローナル抗TIM−1を産生するハイブリドーマクローンを同定する。TIM−1に対する(そして他のTIMタンパク質ではない)mAbの特異性を、TIM−2トランスフェクト細胞、およびmTIM−3トランスフェクト細胞またはTIM−3 Ig融合タンパク質を用いて確認する。
【0182】
抗体染色。Th1細胞株およびTh2細胞株を、BALB/cおよびHBA DO11.10脾臓細胞両方から調製した。TIM−1 mRNA発現のRT−PCRは、標準的な偏向性条件下で2回の抗原による再刺激後、TIM−1はTh2株に発現するがTh1株には発現しないことを示した。Th2偏向性条件下で抗原/APCによる2回の刺激後のDO11.10T細胞は、ポリクローナルラット抗TIM−1抗血清で染色された。これらのTh2細胞は高レベルのTIM−1を発現した。
【0183】
Th2株におけるTIM−1の選択的な発現を示すこれらの実験を、抗Tim−1 mAbおよびノーザンブロットを用いて定量および確認する。BALBおよびHBA由来のDO11.10細胞を、抗原およびAPCと共に培養し、そして標準的な偏向条件(抗IL−12+IL−4または抗IL−4+IL−12)の下で1、2、および3週間再刺激する。刺激の各週後に、細胞を抗TIM−1 mAbで染色する。様々な時点において刺激細胞を回収することによって、Th1サブセットまたはTh2サブセットへの分化を受けたT細胞におけるTIM−1発現の動態を決定する。Tim−1表面発現がT細胞活性化後に変化するかどうかを決定するために、本発明者らはまた、いくらかの細胞をPMAおよびイオノマイシンで刺激することによって、抗原刺激の各回の1週間後に、休止T細胞および活性化T細胞におけるTIM−1発現を比較する。活性化細胞を、細胞内サイトカイン発現に関して染色し、T細胞のThサブセット分化を検証する。あるいは、刺激の各回の後に、PMA+イオノマイシンで活性化されたT細胞から回収したmRNAを用いた定量的RT−PCRまたはノーザンブロットを使用して、mRNA産生の相対的レベルを決定する。
【0184】
TIM−1−Ig融合タンパク質。TIM−1ポリペプチドおよびマウス免疫グロブリンのFc領域との間の融合タンパク質である、BALB/c TIM−1−mIgG2aを調製した。ベクターを、マウスIgG2a Fcにおいて、Fcレセプターへの結合を最小にする変異を含むように、遺伝子操作した。TIM−1融合タンパク質を、TIM−1機能の特徴付けにおいて利用する。TIM−1 Ig融合タンパク質は、TIM−1リガンドに結合することによってTIM−1機能を阻害すること、およびTIM−1/TIM−1リガンド相互作用を妨害することが予測される。
【0185】
ヒトIgG1のヒンジおよびFcフラグメントに融合したTIM−1のシステインリッチな免疫グロブリンドメインおよびムチン様領域の2/3を含む、精製したD1muc−Fc融合タンパク質(IgVmuc−hIg)を、ゲルに流した。このタンパク質をCHO細胞に発現させ、そしてIgVmuc−hIgタンパク質を、CHO上清からプロテインAアガロースカラムを用いて精製した。精製IgVmuc−hIg融合タンパク質は、約2logのHAV伝染性を中和する。それに加えて、IgVmuc−hIgによるHAVの処理は、HAV粒子の沈降に大きなシフトを引き起こし、IgVmuc−hIgはウイルスゲノムの非外被化(uncoating)を誘発したことを示す。一方、ムチンドメインを含まないIg様領域のみを含む融合タンパク質(IgV−hIg)は、それを引き起こさなかった。このHAV中和化システムおよびIgVmuc−hIg融合タンパク質を使用して、TIM−1/HAVレセプター対立遺伝子の機能を分析する。
【0186】
マクロファージの拡大および活性化に対する抗TIM−3 mAbのインビボ効果に基づいて、TIM−3リガンドは、骨髄株の細胞に発現するという仮説をたてた。1000U/mlのIL−4および800U/mlのGM−CSFを用いて、確立されたプロトコールによって、血液単球から樹状細胞(DC)を調製した。DCを、細胞を2日間、IL−1β(10ng/ml)、TNF−α(10ng/ml)、IL−6(1000U/ml)、およびPGE2(1μg/ml)を補充したIL−4(1000U/ml)およびGM−CSF(800U/ml)中に再プレートすることによって成熟させた。成熟DCは、hTIM−3−Igで陽性に染色されたが、ドナー間で変動性が存在し、成熟DCはTIM−3のIgVドメインに対するリガンドを発現することを示唆する。骨髄由来内皮細胞は非常に弱く染色され、そしてB細胞株はTIM−3−Igで染色されなかった。
【0187】
Tim1/huhavcr−1の細胞質内尾部は比較的短いが、それはマウス、ラット、ヒトおよびサル間で高度に保存された配列(RAEDNIYI)を含み、そしてそれはリン酸化され、そして他のシグナル伝達分子との相互作用によってシグナル伝達し得る。T細胞においてRAEDNIYIモチーフに結合し得る、最も可能性ある候補分子は、チロシンキナーゼItkである。インターロイキン2誘導性チロシンキナーゼのItkは、Tecファミリーの非レセプタータンパク質チロシンキナーゼであり、それはT細胞の活性化を引き起こす細胞内シグナル伝達事象に役割を果たす。Tecファミリーメンバーは、保存されたSH3、SH2、および多くのキナーゼファミリーに共通の触媒ドメインを含むが、それらはこの領域外の独特の配列によって区別される。ItkはホスホリパーゼC−γ(PLC−γ)をリン酸化し、そしてT細胞活性化およびヘルパーT細胞分化に関与するシグナル伝達事象のカスケードを引き起こすことが知られている。Itkシグナル伝達の非存在下で、Th2細胞は発達しない。これらの結果は、TIM−1/huhavcr−1が、Itkによってシグナル伝達し、それによってCD4 T細胞におけるサイトカインの発達を変化させ得ることを示唆する。
【0188】
(実施例5)
(TIMノックアウトマウス)
ノックアウト構築物を、Tim1欠損マウスの作出において使用し、それはTIM−1分子の非存在下で免疫反応の発達を分析することを可能にする。別のアプローチにおいて、TIM−1−Ig融合タンパク質または抗TIM−1モノクローナル抗体を用いて、Tim1+/+(野生型)マウスにおけるTIM−1の機能を阻害する。Tim1ノックアウトマウスおよび抗TIM−1 mAbアプローチは、T細胞分化および喘息の病因におけるTIM−1の役割の評価に関して相補的である。
【0189】
Tim1のHBAマウスゲノム配列は、エキソン4における組み込まれたL1レトロウイルスエレメントのために、BALB/c配列と比較して、エキソン4の欠失を有する。1つのエキソンの短縮がTIM−1機能を低減する場合、Tim1ノックアウトマウスの作出によるTIM−1機能の全ての欠失は、そのようなマウスのTh2応答を生じる能力を著しく制限するはずである。TIM−1 KOマウスを、cre−lox技術およびBALB/c ES細胞を用いて、TIM−1のエキソン1およびエキソン2を欠失させることによって作出し、それはTIM−1の細胞表面発現を排除するはずであり、それによってTh2細胞およびAHRの発達におけるTIM−1機能の重要性を示す。
【0190】
適当な標的化構築物を作製するために、TIM遺伝子ファミリーのメンバーを含む特異的BACを、高密度フィルターセットを用いて、C57/BI6 BACライブラリー(RPCI−23)をスクリーニングすることによって同定した。これらのBACクローンを使用して、Tim遺伝子ファミリーを含む約350kbのゲノム領域をカバーする、500kBのコンティーグおよび物理的地図を作成した。完全なTim1遺伝子を含む1つの特異的BAC、RPCI−23−222F8を、TIM標的化構築物を作製するために選択した。標的構築物は、プロモーター領域、シグナルエキソン、およびIgVエキソン(エキソン1および2)を含む4kbの領域を、この領域をはさむ5’および3’アームによる相同的組換えによって、欠失させる。標的化構築物の相同的アームは、BALB/cおよびHBA(C57BI/6)のDNAの両方と相同的であるので、この標的化ベクターを、C57BI/6またはBALB/cのES細胞のいずれでも使用し得る。構築物をES細胞に導入し、それをPCRおよびサザンブロットによって、標的化対立遺伝子に関してスクリーニングする。
【0191】
標的化ベクターのpLOXは、3つのloxP部位を含み、そして標的化ES細胞においてcreリコンビナーゼを発現することによって、組換えは標的化領域の3つの形式を形成し、そのうち2つの対立遺伝子のAおよびBを、Tim1 KOマウスを作出するために使用する。選択されたES細胞クローンを、胚盤胞に導入してキメラマウスを産生し、そしてノックアウトの生殖細胞系列の遺伝のために繁殖させる。尾部DNAを、ノックアウトの遺伝に関して分析する。まず対立遺伝子Aを使用し、そこでcre/lox組換えは一番外側のloxP部位を使用して、TIM−1のエキソン1およびエキソン2に加えてTKおよびネオマイシンの選択カセットを欠失させた。TIM−1ゲノム標的化領域からneoおよびTKのカセット全体を除去することは、同じファミリーの他の遺伝子にきわめて近接するneoの転写に対して、2次的に生じ得る人工産物を混同するのを防ぐ。あるいは、もし対立遺伝子Aが致死的または混乱させる表現型を産生する場合、標的化対立遺伝子Bを用いてマウスを作出し、それにおいてneoおよびTKのカセットが欠失し、そしてTIM−1領域がlox−p部位によって挟まれる。この条件付き標的化アプローチの使用は、T細胞特異的プロモーターの調節下にあるcreリコンビナーゼを発現するマウスにおいて、Tim−1のT細胞特異的欠失を可能にするはずである。
【図面の簡単な説明】
【0192】
【図1】図1aは、HBAマウスはBALB/cマウスよりも有意に少ないIL−4を産生することを示す。150μgのKLHで免疫したマウスのリンパ節細胞を回収し、B−細胞を涸渇し、そして10μg/mlのKLHを含むcDMEで培養した。96時間後に上清を回収、そしてELISAによってIL−4レベルに関して評価した。データの全範囲を表すIL−4レベルのボックスプロット(各グループにおいてn=10)を示し、ボックスは上位および下位の四分位数(quartiles)を含み、データセットの中央値を各ボックスの中に示す。BALB/c細胞および(BALB/c×HBA)F1細胞によって産生されたIL−4レベルは、HBAのIL−4レベルより有意に高い(P<0.0001(スチューデントt検定))。図1bは、HBAマウスはBALB/cマウスより有意に少ないIL−13およびIL−10を産生することを示す。示したデータは、各実験グループにおける10匹の個々のマウス由来のリンパ節細胞培養によって産生されたサイトカインの平均値、±S.D.である。HBAのIL−13レベルおよびIL−10レベルは、BALB/cまたは(BALB/c×HBA)F1のどちらの値より低かった(P<0.0001)(IL−5対BALB/c、P<0.05)(HBA IFN−γ対BALB/c、P<0.001)。図1cは、アレルゲン誘発気道過剰応答性は、HBAマウスよりもBALB/cマウスで有意に大きいことを示す。肺気流の障害を測定し、そして示したデータは、様々なメタコリン濃度における各グループの感作マウス間で平均したpeak enhanced pause(Penh)値、±S.E.M.を表す。(BALB×HBA)F1は、BALB/c表現型を示し、一方(BALB×DBA)F1マウスはDBA/2様の表現型を示す。
【図2】図2は、HBA第11染色体の領域は、DBA/2から受け継がれたことを示す。HBA第11染色体は、SSLPマーカーによって表される、hba−α2およびes−3の間の、DBA由来の2つの領域を含む。DBA/2遺伝子型を有するHBA第11染色体の領域を、左の図において(青色で)強調する。マーカー(左)は、D11Mit230に対して遠位の2−5cMの分解能を提供する。マウス第11染色体が5q23−35と高度に保存されたシンテニーの領域を有する場合、さらなるマーカーがBALB/cおよびDBA/2間の情報を与える多型によって同定され、この領域において0.01−2cMの分解能を与えた(右カラムのマーカー)。一本鎖DNA高次構造多型(SSCP)マーカーを、SSLPマーカーと区別するために緑色で示し、そして赤色で表示された目的の特定の遺伝子の位置も示す。本発明者らのマーカー地図の配置がChromosome Committee ReportsおよびMIT連結地図と異なる場合、本発明者らの地図は以前の連結および物理的地図と一致する。
【図3】図3aは、N2マウスによるIL−4産生は、F1およびHBA表現型に対応するピークを有する双峰分布であることを示す。複数の実験において組換えN2マウスの相対的表現型を評価する方法として、本発明者らは複数の実験からのデータの整理統合を可能にする指数化関数(indexing function)を利用した。柱状グラフは、(BALB×HBA)F1、HBAホモ接合体、および示した組換えハプロタイプを有するN2マウスのIL−4指数値の、双峰分布を示す。F1およびHBAハプロタイプと関連する分布は独特である(P<0.0001、対応あるスチューデントt検定)。図3bは、IL−4の調節はKim1sscpと共に分離することを示す。組換えN2ハプロタイプを、IL−4指数値によって、高IL−4表現型(指数<0.35)および低IL−4表現型(指数>0.65)と関連するグループへ分類した。ボックスの各カラムは、組換えハプロタイプを示す。D11Mit269からD11Mit154までの間の遺伝子座におけるこれらハプロタイプの対立遺伝子に、遺伝子型によって明暗をつけた(濃い=F1;薄い=HBA)。高IL−4産生は、4つのハプロタイプと分離し(左)、そして低IL−4産生は4つのハプロタイプと分離する(右)。IL−4表現型はKim1sscpと連結する。図3cは、N2マウスのAHRは、F1およびHBA表現型に対応するピークを持つ双峰分布であることを示す。Penh値から計算した指数値を示す。柱状グラフは、N2マウスのAHR指数値の双峰分布を示す。(BALB×HBA)F1、HBAホモ接合体、および組換えハプロタイプを示す。F1およびHBAハプロタイプと関連する分布は別個である(P<0.0001、対応あるスチューデントt検定)。図3dは、AHR調節遺伝子座は、D11Mit22およびD11Mit271間のIL−4調節遺伝子座と同時分離することを示す。組換えN2ハプロタイプを、AHR指数値によって、高AHR表現型(指数<0.35)、および低AHR表現型(指数>0.65)と関連するグループへ分類した。ボックスの各カラムは、組換えハプロタイプを示す。D11Mit269からD11Mit154間の遺伝子座におけるこれらハプロタイプの対立遺伝子に、遺伝子型によって明暗をつける(濃い=F1;薄い=HBA)。高AHRは、4つのハプロタイプと分離し(左)、そして低AHR産生は3つのハプロタイプと分離する(右)。AHR調節遺伝子座は、D11Mit271およびD11Mit22間のKim1sscpと連結する。
【図4】図4は、Taprを含むマウス第11染色体の区間は、5q33と高度に相同的である。Tapr遺伝子座の周囲の複合地図を構築するために、本発明者らはマウス連結、戻し交配、および照射ハイブリッド地図から入手可能な情報を統合し、そしてヒトゲノムの現在の地図において、高度に保存されたシンテニーの領域を同定した(Human Genome Browser v3、UCSC、2001年3月)。マウス第11染色体(左)の物理的地図に位置するESTを、その登録番号で表示し、そしてヒト第5染色体(右)のESTに対応する、遺伝子に対する相同性によって整列させた(中央)。KIAA0171およびSgd間の公知の遺伝子を全て示す。
【図5a】図5aは、新規TIM遺伝子ファミリーおよびTIM−1およびTIM−3における主要な多型の同定、マウスTIM−1およびマウスTIM−2のクローニング、遺伝子ファミリーのメンバー、マウスTIM遺伝子ファミリーメンバーの配列を示す。陰をつけたボックスは、2つのマウスTIM遺伝子間の同一性を示す。conA刺激脾臓細胞由来の全RNAを、Gibco Superscript IIを用いて逆転写した。全長Tim−3 cDNAのPCR産物を増幅し、Qiagen QIAquick PCR Purification試薬で精製し、そしてBiotech Core(Mountain View、CA)によって直接配列決定した。Tim−1およびTim−2 cDNAのPCR産物を、TOPO−XLクローニング試薬(Invitrogen)を用いてelectrocompetent TOP10細胞にクローニングした。プラスミドを、標準的なアルカリ溶解プロトコールを用いて精製した。BALB/cおよびHBAプラスミドを、記載したように配列決定した。マウスTIM−1、ラットKIM−1、およびHAVcr−1の相同性。マウスTIM−1との同一性を、陰をつけたボックスによって表示する。おおよそのシグナル部位を白い反転した三角形によって表示し、そしてIgドメイン/ムチンドメイン境界を黒い菱形で示す。予測される膜貫通ドメインに下線を引く。BALB/cおよびHBA TIM−1およびTIM−3間の主要な多型を有するTIM−1およびTIM−3配列を示す。
【図5b】図5bは、新規TIM遺伝子ファミリーおよびTIM−1およびTIM−3における主要な多型の同定、マウスTIM−1およびマウスTIM−2のクローニング、遺伝子ファミリーのメンバー、マウスTIM遺伝子ファミリーメンバーの配列を示す。陰をつけたボックスは、2つのマウスTIM遺伝子間の同一性を示す。conA刺激脾臓細胞由来の全RNAを、Gibco Superscript IIを用いて逆転写した。全長Tim−3 cDNAのPCR産物を増幅し、Qiagen QIAquick PCR Purification試薬で精製し、そしてBiotech Core(Mountain View、CA)によって直接配列決定した。Tim−1およびTim−2 cDNAのPCR産物を、TOPO−XLクローニング試薬(Invitrogen)を用いてelectrocompetent TOP10細胞にクローニングした。プラスミドを、標準的なアルカリ溶解プロトコールを用いて精製した。BALB/cおよびHBAプラスミドを、記載したように配列決定した。マウスTIM−1、ラットKIM−1、およびHAVcr−1の相同性。マウスTIM−1との同一性を、陰をつけたボックスによって表示する。おおよそのシグナル部位を白い反転した三角形によって表示し、そしてIgドメイン/ムチンドメイン境界を黒い菱形で示す。予測される膜貫通ドメインに下線を引く。BALB/cおよびHBA TIM−1およびTIM−3間の主要な多型を有するTIM−1およびTIM−3配列を示す。
【図5c】図5cは、新規TIM遺伝子ファミリーおよびTIM−1およびTIM−3における主要な多型の同定、マウスTIM−1およびマウスTIM−2のクローニング、遺伝子ファミリーのメンバー、マウスTIM遺伝子ファミリーメンバーの配列を示す。陰をつけたボックスは、2つのマウスTIM遺伝子間の同一性を示す。conA刺激脾臓細胞由来の全RNAを、Gibco Superscript IIを用いて逆転写した。全長Tim−3 cDNAのPCR産物を増幅し、Qiagen QIAquick PCR Purification試薬で精製し、そしてBiotech Core(Mountain View、CA)によって直接配列決定した。Tim−1およびTim−2 cDNAのPCR産物を、TOPO−XLクローニング試薬(Invitrogen)を用いてelectrocompetent TOP10細胞にクローニングした。プラスミドを、標準的なアルカリ溶解プロトコールを用いて精製した。BALB/cおよびHBAプラスミドを、記載したように配列決定した。マウスTIM−1、ラットKIM−1、およびHAVcr−1の相同性。マウスTIM−1との同一性を、陰をつけたボックスによって表示する。おおよそのシグナル部位を白い反転した三角形によって表示し、そしてIgドメイン/ムチンドメイン境界を黒い菱形で示す。予測される膜貫通ドメインに下線を引く。BALB/cおよびHBA TIM−1およびTIM−3間の主要な多型を有するTIM−1およびTIM−3配列を示す。
【図6】図6は、TaprはCD4 T細胞のIL−4およびIL−13応答を調節することを示す。BALB/c DO11.10マウス由来のT細胞は、HBA DO11.10マウス由来のT細胞よりも、抗原に応答してより高いレベルのIL−4およびIL−13を産生する。脾臓CD4+細胞を、抗CD4磁気ビーズを用いてポジティブセレクションによって単離し、そして次いで骨髄由来のDCおよびOVAと同時培養した。7日後、細胞を再刺激した。2次培養の18−24時間後に上清を回収した。データは、増加するOVA濃度において検出された平均サイトカインレベル、±S.D.を示す。初回抗原刺激および分化の間の、精製CD4T細胞におけるTIM−1 mRNAの発現の検出。
【図7】図7は、ヒトおよびマウスTIMタンパク質配列の配列アラインメントを示す。
【図8】図8は、ヒトTIM−1における多型を示す。
【図9】図9は、ヒトTIM−1のSSCP多型分析を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物のTIM遺伝子配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項1】
哺乳動物のTIM遺伝子配列を含む、単離された核酸分子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2007−146(P2007−146A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211500(P2006−211500)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【分割の表示】特願2003−509084(P2003−509084)の分割
【原出願日】平成14年7月1日(2002.7.1)
【出願人】(501243030)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー (17)
【出願人】(500122857)デイナ−ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド (11)
【出願人】(504412945)ザ ブライハム アンド ウイメンズ ホスピタル, インコーポレイテッド (54)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【分割の表示】特願2003−509084(P2003−509084)の分割
【原出願日】平成14年7月1日(2002.7.1)
【出願人】(501243030)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー (17)
【出願人】(500122857)デイナ−ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド (11)
【出願人】(504412945)ザ ブライハム アンド ウイメンズ ホスピタル, インコーポレイテッド (54)
【Fターム(参考)】
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