説明

TAAH回収装置の洗浄方法

【課題】テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAH)含有現像廃液を膜分離処理することにより、該廃液中の不純物を除去してTAAHを回収する装置で用いられる分離膜を短時間で効率的に洗浄する。
【解決手段】膜分離処理に用いた分離膜をTAAH溶液で洗浄するTAAH回収装置の洗浄方法。TAAH溶液のpHは12以上であることが好ましい。TAAH溶液を用いて洗浄することにより、分離膜を効率的に洗浄すると共に、押し出し洗浄工程を短縮することができ、結果として膜の洗浄工程に要する時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(以下、「TAAH」という。)含有現像廃液を膜分離処理することにより、該廃液中の不純物を除去してTAAHを回収する装置で用いられる分離膜を短時間で効率的に洗浄する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、結晶ディスプレイ、プリント基板等の電子部品等を製造する工程の一つにフォトリソグラフィー工程がある。この工程では、ウェハー等の基板上にフォトレジストの被膜を形成し、パターンマスクを通して光等を照射し、次いで現像液により不要のフォトレジストを溶解して現像し、さらにエッチング等の処理を行った後、基板上の不溶性のフォトレジスト膜を剥離除去する。このフォトレジストには、露光部分が可溶性となるポジ型と露光部分が不溶性となるネガ型があり、ポジ型フォトレジストの現像液としてはアルカリ現像液が主流であり、ネガ型フォトレジストの現像液としては有機溶剤系現像液が主流であるが、アルカリ現像液を用いるものもある。
【0003】
上記アルカリ現像液としては、例えばテトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(TAAH)、特にテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)や水酸化β・ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム(コリン)等の水酸化有機アンモニウム水溶液が用いられる。かかる現像工程や現像後の洗浄工程から排出される廃液には、通常、テトラアルキルアンモニウムイオンと、レジストとして使用されたノボラック樹脂の混合物又は縮合物(光分解型フォトレジスト)等の種々の感光性樹脂由来のレジスト剥離物が含有されている。
【0004】
TAAH含有フォトレジスト現像廃液は量が多く、また、TAAHの窒素が水質汚染の原因となるためにそのまま投棄することはできず、電気透析や膜分離、イオン交換樹脂などで廃液中の不純物を除去し、精製して再利用、あるいは減容化して廃棄量を削減することが試みられている(例えば、特許文献1〜8等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−118282号公報
【特許文献2】特開平7−328642号公報
【特許文献3】特開平11−262765号公報
【特許文献4】特開平11−192481号公報
【特許文献5】特開2002−253931号公報
【特許文献6】特開2002−361249号公報
【特許文献7】特開2003−215810号公報
【特許文献8】特開2007−323095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、TAAH含有現像廃液からTAAHを回収する方法について研究を重ね、TAAH含有現像廃液を中和することにより廃液に含まれるノボラック樹脂などのレジスト剥離物を不溶化し、これを膜分離処理すること、好ましくは、2段膜分離処理することにより、廃液から効率よくTAAHを分離回収することができることを見出した。
【0007】
しかしながら、TAAH含有現像廃液を中和すると、廃液中に含まれるノボラック樹脂や界面活性剤などが分離膜を汚染し、処理を継続することにより、膜の目詰りで採水量(透過液量)が低下することとなるため、一定期間の後に膜の洗浄が必要となる。
【0008】
汚染された膜の洗浄には水酸化ナトリウムなどのアルカリ薬剤を用いて洗浄することが一般的であるが、アルカリ洗浄薬液を用いると、洗浄後の薬剤残渣が回収液中の不純物となる。また、アルカリ洗浄にはpH12以上の薬液が必要であり、従って、洗浄後は、十分な押し出し洗浄が必要となる。即ち、系内にこのような高pHの洗浄薬液が残留していることに高pH条件となっていると、中和によりレジスト剥離物を不溶化したTAAH含有現像廃液の該不溶化物が再溶解して膜分離で除去し得なくなるため、十分な押し出し洗浄が必要となる。しかして、この押し出し洗浄の間は、膜透過液を回収せずに廃棄する必要があり、長期間の押し出し洗浄を必要とする上に、この押し出し洗浄で廃棄する液量が多いこと、また、洗浄廃液の中和処理が必要であること、が問題となる。
【0009】
本発明は、TAAH含有現像廃液を膜分離処理することにより該廃液中の不純物を除去してTAAHを回収する装置で用いられる分離膜を、短時間で効率的に洗浄する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、TAAH溶液を用いて洗浄することにより、分離膜を効率的に洗浄すると共に、押し出し洗浄工程を短縮することができ、結果として膜の洗浄工程に要する時間を短縮すると共に回収効率を高めることができることを見出した。
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0011】
[1] テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(以下、「TAAH」という。)含有現像廃液を膜分離処理することにより、該廃液中の不純物を除去してTAAHを回収する装置において、該膜分離処理に用いた分離膜をTAAH溶液で洗浄することを特徴とするTAAH回収装置の洗浄方法。
【0012】
[2] [1]において、該TAAHがテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(以下「TMAH」という。)であることを特徴とするTAAH回収装置の洗浄方法。
【0013】
[3] [1]又は[2]において、該TAAH溶液のpHが12以上であることを特徴とするTAAH回収装置の洗浄方法。
【0014】
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、該TAAHの回収装置が該TAAH含有廃液の中和設備と、該中和設備の後段に2段階に設けられた膜分離装置とを備えることを特徴とするTAAH回収装置の洗浄方法。
【0015】
[5] [4]において、該2段階に設けられた膜分離装置のうち、2段目の膜分離装置の分離膜を洗浄した液で1段目の膜分離装置の分離膜を洗浄することを特徴とするTAAH回収装置の洗浄方法。
【0016】
[6] [1]ないし[5]のいずれかにおいて、該分離膜の洗浄に用いたTAAH溶液を前記TAAH含有現像廃液と共に前記回収装置で処理することを特徴とするTAAH回収装置の洗浄方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、TAAH含有現像廃液の膜分離処理に用いた分離膜をTAAH溶液を用いて洗浄することにより、分離膜を効率的に洗浄して膜性能を回復させると共に、押し出し洗浄工程を短縮することができ、結果として膜の洗浄工程に要する時間を短縮してTAAH含有現像廃液の処理効率、回収効率を高め、ランニングコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のTAAH回収装置の洗浄方法を適用するTAAH回収装置の一例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の洗浄方法が適用されるTAAH回収装置の一例を示す系統図である。
【0021】
このTAAH回収装置は、廃液貯槽1内のTAAH含有現像廃液を中和槽2に送給し、この中和槽2内にて酸を添加してpH調製した後、精密濾過(MF)膜分離装置3で膜分離処理し、濾過液を中継槽4を介してナノフィルトレーション(NF)膜分離装置5に送給して膜分離処理し、透過液を精製TAAH溶液として回収するものである。なお、MF膜分離装置3及びNF膜分離装置5の濃縮液は、それぞれ一部が濃縮廃液として系外へ排出され、残部は中和槽2又は中継槽4に戻されて循環処理される。
【0022】
本発明の洗浄方法が適用されるTAAH回収装置は、TAAH含有現像廃液を膜分離処理する分離膜を備えるものであればよく、その構成には特に制限はないが、TAAH含有現像廃液からのTAAHの回収には、TAAH含有現像廃液に酸を添加して廃液中に溶解しているレジスト剥離物を不溶化して析出させ、析出したレジスト剥離物を膜分離処理により除去するものが好ましく、特に、この膜分離処理を2段階で行うことがTAAHの回収効率の面で好ましいことから、図1に示すように、中和槽(中和設備)2と、その後段に2段階に設けられた膜分離装置3,5とを備えるものが好ましい。
【0023】
なお、2段膜分離処理は、MF膜とNF膜の組み合わせに何ら限定されないが、前段でレジスト剥離物を粗取りするための分離膜としてはMF膜又は限外濾過(UF)膜が好ましく、後段で残留するレジスト剥離物を更に高度に除去するための分離膜としてはNF膜が好ましい。
【0024】
本発明で処理するTAAH含有現像廃液中に含まれるTAAHとしては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(以下、「TMAH」という。)、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド(以下、「TEAH」という。)、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジエチルジメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、トリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、ジエチルジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、メチルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、エチルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイド、テトラ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムハイドロオキサイドなどの1種又は2種以上が挙げられるが、通常、TMAH、又はTEAHが用いられる。
【0025】
本発明においては、このようなTAAH含有現像廃液に酸を添加してpH10以下、例えばpH8〜9.5に調整することにより、現像廃液中に溶解しているレジスト剥離物を不溶化して析出させる。この調整pH値が10より高いと、レジスト剥離物の析出が十分でなく、8.5未満の低pHとしてもそれ以上のレジスト剥離物の析出効果は得られず、pH調整に用いる酸の添加量が過大となり好ましくない。
【0026】
pH調整に用いる酸としては、二酸化炭素及び/又は炭酸が好ましい。塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸では、酸素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン等の無機アニオンが残留し、処理液(回収液である精製TAAH溶液)を再利用する際、半導体装置等に悪影響を及ぼし、好ましくない。
【0027】
前述の如く、pH調整後のTAAH含有現像廃液を膜分離処理する分離膜は、析出したレジスト剥離物を分離除去できるものであればよく、何らMF膜に限定されるものではないが、本発明では高アルカリ性のTAAH溶液で膜洗浄を行うことから、耐アルカリ性に優れたものが好ましく、また、低い操作圧力で十分な透過液量を得ることができるものが好ましい。
【0028】
このようなものとしてはポリスルホン又はポリエチレン製の、孔径1μm以下、好ましくは0.02〜0.1μmのMF膜、具体的には旭化成社製PSP−303等が好ましく用いられる。
【0029】
また、第1段目の膜分離処理で得られた透過液を膜分離処理する分離膜については、この透過液中に残留する不溶物や溶解成分等を除去することができるものであれば良く、特に制限はないが、逆浸透(RO)膜などと比較して低い操作圧力で十分な透過液量を得ることができる点において、NF膜を用いることが好ましい。
【0030】
NF膜としては、その表面が負に帯電した膜を使用するのが好ましい。現像廃液やそれに由来する処理液中では、通常レジスト剥離物は陰イオンとして存在しているので、表面が負に帯電したNF膜によればレジスト剥離物の除去率が向上し、且つ、NF膜面上へのレジスト剥離物の付着によるファウリングが起き難い。
また、このようなNF膜であれば、陰イオン系界面活性剤入りの現像廃液の場合も効果的に陰イオン系界面活性剤を濃縮液側に分離除去することができる。また、一般に、NF膜は非イオン系界面活性剤や陽イオン系界面活性剤等も濃縮液側に分離除去することが可能であり、第2の膜分離装置の分離膜として好適である。
【0031】
このNF膜についても、高アルカリ性のTAAH溶液で洗浄することから、耐アルカリ性に優れたものであることが好ましく、また、TAAHを除去することなく現像廃液中の不純物を効率的に除去するために、NF膜の分画分子量は200〜900程度であることが好ましい。
【0032】
このようなNF膜としては、例えば、KOCH社製MPS−34、MPS−36、NADIR社製NP030等を挙げることができるが、この限りではない。
【0033】
本発明においては、pH調整したTAAH含有現像廃液の膜分離処理に用いた分離膜をTAAH溶液を用いて洗浄する。
【0034】
この洗浄に用いるTAAH溶液は、pH12以上、特にpH13.5以上、例えばpH13.5〜14程度の高アルカリ性であることが好ましい。洗浄に用いるTAAH溶液のpHが12未満では、十分な洗浄効果を得ることができない。
従って、洗浄に用いるTAAH溶液は、pH13.5〜14程度であることが好ましい。
なお、洗浄に用いるTAAH溶液は、水酸化ナトリウム等の無機アルカリ剤のような膜を透過する薬剤を含まないことが重要である。水酸化ナトリウム等の無機アルカリ剤が含まれていると、これが膜透過側にリークし、洗浄後の押し出し洗浄に長時間を要するようになり、好ましくない。
【0035】
洗浄に用いるTAAH溶液は、pH12以上であれば、TAAH以外に膜を透過しない不純物を含むものであっても良く、従って、TAAH溶液はpH調整前のTAAH含有現像廃液であってもよい。即ち、pH12以上であれば、TAAH溶液中のレジスト剥離物等の不純物は殆ど膜に付着せず膜汚染物質となることはない。
【0036】
ただし、不純物を含むTAAH溶液を用いて洗浄を行った場合には、膜の透過側に不純物が透過するため、洗浄後、膜の透過液の一定量を押し出して廃棄する押し出し洗浄が必要となる。
膜洗浄に用いるTAAH溶液としては、このTAAH回収装置で得られる回収液(処理液)を、一般的に市販されている高純度かつ高濃度(例えばTAAH濃度10重量%以上)のTAAH溶液を用いてpH12以上に調整したものを用いてもよい。
【0037】
この洗浄で膜濃縮側から排出される洗浄廃液や、透過側から排出される不純物を含む洗浄廃液は、このTAAH回収装置で処理するTAAH含有現像廃液と共に、当該TAAH回収装置で処理することにより水回収率を高めることができ、好ましい。
【0038】
TAAH溶液による洗浄操作には特に制限はないが、例えば膜の一次側にTAAH溶液を循環通液する方法(循環洗浄)、圧力をかけ、一次側だけでなく二次側も通水循環する方法(通水循環洗浄)、膜の一次側にTAAH溶液を満たした状態で所定時間保持する方法(浸漬洗浄)、循環洗浄または通水循環洗浄と浸漬洗浄とを繰り返す方法などが挙げられる。
【0039】
洗浄効果は、用いるTAAH溶液のpH、液温、TAAH溶液と膜との接触時間、洗浄液量(循環液量)等に影響を受けるため、良好な洗浄効果が得られるように、洗浄方法を適宜組み合わせて行うことが好ましい。
一般的には、膜面及び膜内部をTAAH溶液が流通することによる物理的な洗浄効果も得られる点において、通水循環洗浄の方が循環洗浄や浸漬洗浄よりも効果が高いと考えられるが、通水循環洗浄を長時間連続して行うと、循環ポンプの発熱により洗浄液の液温が上昇し、膜の耐熱温度を超えてしまう場合があるため、浸漬洗浄の方が実用的である場合もある。
【0040】
例えば、60〜180分程度の循環洗浄とその後の60〜180時間程度の浸漬洗浄とその後の60〜180分程度の循環洗浄を組み合わせて行う方法は、洗浄効果の面で好ましい。
【0041】
なお、洗浄時のTAAH溶液の液温としては、30〜60℃であることが好ましいが、使用する膜の耐熱温度を超えてはならない。
【0042】
上記洗浄後は、TAAH含有現像廃液の通液を再開し、精製TAAH溶液として回収可能な純度の膜透過液が得られるまで押し出し洗浄を行った後、膜透過液を精製TAAH溶液として採水する。
【0043】
なお、上記膜洗浄は、所定時間のTAAH含有現像廃液の処理を行う毎に定期的に行ってもよく、膜の透過液量の低下又は操作圧力の上昇が見られる場合に不定期的に行ってもよく、これらを組み合わせてもよい。
【実施例】
【0044】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0045】
[実施例1]
図1に示す回収装置において、NF膜の洗浄を行った。この回収装置は、MF膜、NF膜として以下の膜を使用してTMAH含有現像廃液(TMAH濃度15重量%、pH14)の処理を行っているものである。
MF膜:旭化成社製「PSP−303」
NF膜:NADIR社製「NP030」
【0046】
TMAH含有現像廃液は中和槽2にて二酸化炭素を添加してpH9.5に調整した後、MF膜分離装置3及びNF膜分離装置5で順次膜分離処理した。
【0047】
膜洗浄に当っては、TMAH含有現像廃液の通液を停止し、中継槽4内の液を廃液貯槽1に移送した後、試薬のTMAHを純水で希釈して調製したTMAH溶液(TMAH濃度3重量%、pH13.5の水溶液、液温20℃)を中継槽4に導入した(水張り工程)。
次に、中継槽4内のTMAH溶液を循環ポンプ(図示せず)でNF膜分離装置5の一次側に圧力3.0MPaで送給して洗浄を行い、一次側及び二次側の洗浄液を再び中継槽4に戻す通水循環洗浄を150分行った(通水循環洗浄工程)。
次いで、NF膜の一次側にTMAH溶液が満たされた状態で循環ポンプを停止してそのまま10時間保持した(浸漬洗浄工程)。その後、再び循環ポンプを作動させてTMAH溶液を中継槽4とNF膜の一次側に60分循環させた(循環洗浄工程)。
【0048】
上記洗浄工程終了後、中継槽4内の洗浄廃液を排出し、TMAH含有現像廃液の処理を再開した。なお、中継槽4内の洗浄廃液は、廃液貯槽1に移送した。
【0049】
TMAH含有現像廃液の処理再開後、NF膜分離装置5で得られる透過液の水質をイオンクロマトグラフ法により調べ、ナトリウムイオン等を含まず精製TAAH溶液として回収可能になるまで系内の液を押し出し(押し出し洗浄工程)、その後精製TAAH溶液の採水を再開した。
この押し出し洗浄工程には5分を要した。
なお、この押し出し洗浄工程でNF膜分離装置5から得られる透過液は、廃液貯槽1に返送した。
【0050】
[実施例2]
実施例1において、洗浄液として、試薬を純水で希釈したTMAH溶液の代わりに、この回収装置の被処理液であるTMAH含有現像廃液を用いたこと以外は同様にして洗浄操作を行った。その結果、押し出し洗浄工程には15分を要した。
【0051】
[比較例1]
実施例1において、洗浄液として、試薬を純水で希釈したTMAH溶液の代わりに、pH13.5の水酸化ナトリウム水溶液を用いたこと以外は同様にして洗浄操作を行った。その結果、押し出し洗浄工程には120分を要した。また、この押し出し洗浄工程でNF膜分離装置5から得られる透過液は不純物(水酸化ナトリウム)が含まれているため、廃液貯槽1には返送できずに、その全量を廃液処分することとなった。
【0052】
以上の結果を表1にまとめて示す。
表1より、本発明によれば、押し出し洗浄工程に要する時間を大幅に低減短縮すると共に、押し出し洗浄液量を大幅に低減することができ、結果として洗浄時間の短縮、回収率の向上、ランニングコストの低減が可能であることが分かる。また、押し出し液をTAAH回収装置で処理するTAAH含有現像廃液と共に処理することも可能であり、この点からも水回収率の向上を図ることができる。
【0053】
【表1】

【符号の説明】
【0054】
1 廃液貯槽
2 中和槽
3 MF膜分離装置
4 中継槽
5 NF膜分離装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラアルキルアンモニウムハイドロオキサイド(以下、「TAAH」という。)含有現像廃液を膜分離処理することにより、該廃液中の不純物を除去してTAAHを回収する装置において、該膜分離処理に用いた分離膜をTAAH溶液で洗浄することを特徴とするTAAH回収装置の洗浄方法。
【請求項2】
請求項1において、該TAAHがテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(以下「TMAH」という。)であることを特徴とするTAAH回収装置の洗浄方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、該TAAH溶液のpHが12以上であることを特徴とするTAAH回収装置の洗浄方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該TAAHの回収装置が該TAAH含有廃液の中和設備と、該中和設備の後段に2段階に設けられた膜分離装置とを備えることを特徴とするTAAH回収装置の洗浄方法。
【請求項5】
請求項4において、該2段階に設けられた膜分離装置のうち、2段目の膜分離装置の分離膜を洗浄した液で1段目の膜分離装置の分離膜を洗浄することを特徴とするTAAH回収装置の洗浄方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、該分離膜の洗浄に用いたTAAH溶液を前記TAAH含有現像廃液と共に前記回収装置で処理することを特徴とするTAAH回収装置の洗浄方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−210566(P2012−210566A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77082(P2011−77082)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【出願人】(390034245)多摩化学工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】