説明

TCP構造体

【課題】配線可能なリード数を減少させること無く、インナーリードの変形を防止し、インナーリードと半導体素子とを精度良く接続してデバイスホールに配置できるTCP構造体を提供する。
【解決手段】フィルム基材9に開けられたデバイスホール1に一端縁からその対面する他端縁へ橋渡しする繋ぎ片9aが形成され、繋ぎ片9aの両側縁からその対面するデバイスホール1の周縁へそれぞれインナーリード8が橋渡しされて二点で固定されているので、インナーリード8の位置精度が確保され、半導体素子2との接続精度を向上させてデバイスホール1へ配置が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパーソナルコンピュータ(PC)やテレビ等のディスプレイの通電に使用されるTCP構造体における半導体素子の実装技術に係り、特にインナーリードの実装精度の向上を図る構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図4および図5は、一般的なTCP(Tape Carrier Package)構造体(以下、TCP構造体と称する場合がある。)を示すものであり、図4は上面図、図5は図4の要部拡大図である。
【0003】
図4、図5において、101はデバイスホール、102は半導体素子、103は出力アウターリード、104は入力アウターリード、105は引き回し配線、106はソルダーレジスト、107はTCP構造体の全体、108はインナーリード、109はフィルム基材を各々示している。
【0004】
図4、図5に示すTCP構造体107は、フィルム基材109にデバイスホール101が開口し、フィルム基材109の第1の主面には出力アウターリード103と入力アウターリード104とを相反する両端側に備えており、さらにデバイスホール101の内側へ突出するインナーリード108を有し、出力アウターリード103および入力アウターリード104とインナーリード108とを電気接続する引き回し配線105を有している。デバイスホール101へ配置する半導体素子102はデバイスホール101の内側へ突出したインナーリード108の接続面へバンプ等(図示せず)を介して実装されている。
【0005】
この様な形態のインナーリード108は、半導体素子102が実装される前はフィルム基材109によって片持ちされた状態でデバイスホール101内側へ突出しているので、特に固定されていない構造と成る。
【0006】
このため、デバイスホール101の内側へ突出したインナーリード108の先端部分が外的要因で変形する場合があり、半導体素子102の実装の際にバンプとの正確な位置精度を保てない恐れが有った。
【0007】
この課題を解決する従来のTCP構造体としては、例えば特許文献1に記載するものがある。図6は、特許文献1に記載された従来のTCP構造体を示すものである。図6において、図5と同じ構成要素については同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0008】
図6において、インナーリード108がデバイスホール101の一端縁から対向する他端縁へ橋渡しするように延伸し、デバイスホール101の一端縁と他端縁との両側においてフィルム基材109の第1の主面に固定されている。即ち、デバイスホール101を横切る様にインナーリード108を橋渡しすることで、インナーリード108の位置精度を確保するものであった。
【0009】
これによれば、バンプ(図示さず)等を介してインナーリード108の接続面へ半導体素子102を実装する際に、デバイスホール101への配置位置を正確に保つことが出来た。
【特許文献1】特開平11−40605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の構成では、インナーリード108がデバイスホール101を横切る形態なので、一本のインナーリード108がデバイスホール101の一端縁と対向する他端縁の2箇所においてデバイスホール101の周縁領域を占有すること成り、デバイスホール101の周縁領域に配置可能なインナーリード108の数が半減するとともに、インナーリード108から引き回し配線105を経て出力アウターリード103あるいは入力アウターリード104へ引き出し可能な配線の数が半減して配線密度が低くなる。
【0011】
即ち、TCP構造体として従来と同等の配線数を求める場合には大型化し、従来と同等のサイズに収める場合にはアウターリードの形成可能数が半減するという課題を有していた。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、大型化やアウターリードの形成可能数を減らすこと無く、インナーリードの位置精度を確保でき、デバイスホールへ半導体素子を正確に実装可能なTCP構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来の課題を解決するために、本発明のTCP構造体は、半導体素子を配置するためのデバイスホールが開口するフィルム基材と、前記フィルム基材の一方の主面に形成し、前記フィルム基材の相反する両端側に配置する出力アウターリードおよび入力アウターリードと、前記出力アウターリードおよび前記入力アウターリードの配列方向に沿って延伸し、前記デバイスホールの一端縁とその対向する他端縁とを橋渡しする前記フィルム基板の繋ぎ片部と、前記デバイスホールの一端縁および他端縁からそれぞれ対向する前記フィルム基板の繋ぎ片部へ橋渡して形成するインナーリードと、前記出力アウターリードと前記インナーリードとの間および前記入力アウターリードと前記インナーリードとの間を繋ぐ引き回し配線とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明のTCP構造体によれば、インナーリードはフィルム基材の繋ぎ片部とデバイスホールの周縁部とを橋渡して配置し、フィルム基材の繋ぎ片部とデバイスホールの周縁部との二点間で確実に固定して保持するので、変形や位置ずれを生じることが無く、且つ繋ぎ片部を中心として繋ぎ片部の両側にそれぞれインナーリードを配置可能であり、インナーリードの配置可能な数を減少させることが無く、出力アウターリードや入力アウターリード等のアウターリードの形成可能数を減らすことが無く、かつ大型化すること無く、インナーリードの位置精度を確保でき、デバイスホールへ半導体素子を正確に実装することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1〜図3は、本発明の実施の形態におけるTCP構造体を示すものであり、図1は上面図、図2は図1の要部拡大図、図3は図2のA−A線に沿った矢視断面図である。
【0016】
図1〜図3において、1はデバイスホール、2は半導体素子、3は出力アウターリード、4は入力アウターリード、5は引き回し配線、6はソルダーレジスト、7はTCP構造体、8はインナーリード、9はフィルム基材、9aはフィルム基材の繋ぎ片部を各々示している。
【0017】
図1〜図3に示すTCP構造体7は、半導体素子2と、半導体素子2を配置するための矩形のデバイスホール1が開口するポリイミド等から成る可撓性の絶縁性フィルム基材9と、絶縁性フィルム基材9の一方の主面、ここでは第1の主面に形成し、絶縁性フィルム基材9の相反する両端側に整列配置する複数の出力アウターリード3および複数の入力アウターリード4を有している。
【0018】
デバイスホール1にはフィルム基板9の繋ぎ片部9aが形成してあり、繋ぎ片部9aは出力アウターリード3および入力アウターリード4の配列方向に沿って延伸し、デバイスホール1の一端縁とその対向する他端縁とを橋渡しする形状をなす。
【0019】
フィルム基板9の第1の主面に形成する複数のインナーリード8がデバイスホール1の周縁に整列配置して、かつフィルム基板9の繋ぎ片部9aの両側縁とその対面するデバイスホール1の周縁との間に渡って設けてある。つまり、インナーリード8はデバイスホール1の一端縁および他端縁からそれぞれ対向するフィルム基板9の繋ぎ片部9aへ橋渡しした形状をなす。
【0020】
フィルム基板9の第1の主面に形成する引き回し配線5が出力アウターリード3とインナーリード8との間および入力アウターリード4とインナーリード8との間を導通して設けてあり、繋ぎ片部9aの両側から各々の対面するデバイスホール1の周縁へ橋渡しするインナーリード8から引き回し配線5を経て出力アウターリード3または入力アウターリード4へ配線してある。
【0021】
デバイスホール1に配置する半導体素子2がフィルム基材9の他方の面、ここでは第2の主面側からバンプ10を介してインナーリード8の接続面に実装してある。TCP構造体7の表層はソルダーレジスト6が出力アウターリード3、入力アウターリード4およびインナーリード8の接続面を除く全ての面または一部の面を被覆しており、引き回し線5とインナーリード8の非接続部を保護して絶縁している。
【0022】
以上の構成によれば、インナーリード8は繋ぎ片部9aとデバイスホール1の周縁部とを橋渡して形成し、かつ繋ぎ片部9aとデバイスホール1の周縁部との二点で確実に保持されるので、変形や位置ずれを生じること無く、且つ繋ぎ片部9aの両側縁にそれぞれインナーリード8を配置可能であり、インナーリード8の配置可能な数を減少させる制限も生じることが無い。
【0023】
よって、出力アウターリード3や入力アウターリード4であるアウターリードの形成可能数を減らすこと無く、かつ大型化すること無く、インナーリードの位置精度が確保でき、デバイスホール1へ半導体素子2を正確に実装することが可能となる。
【0024】
なお、本実施の形態では、半導体素子2をフィルム基材9の他方の面より実装するものとして説明したがこれに限定されるものでは無く、半導体素子2は一方の面より実装することも可能である。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0025】
上述した様なTCP構造体の製造方法は、例えば以下のものである。
パンチング工程
パンチング工程において、ポリイミド等から成る可撓性の絶縁性フィルム基材に金型でパンチングを施して、本発明の特徴の一つである繋ぎ片部を有する形状のデバイスホールを開けると共に該フィルム基材の外形を形成する。
ラミネート工程
パンチング工程の次に施されるラミネート工程において、銅等の金属箔をフィルム基材の一方の面のデバイスホールを含む全面にラミネートする。
レジストコート工程
ラミネート工程の次に施されるレジストコート工程において、金属箔の上全面に感光レジストを塗布してコートする。
露光/現像工程
レジストコート工程の次に施される露光/現像工程において、インナーリードと引き回し配線とアウターリードとから成る配線のパターンに対応するパターンに感光レジストに対してUV光を当てて露光/現像する。
裏止め工程
露光/現像工程の次に施される裏止め工程において、フィルム基材の他方の面からデバイスホールを塞いで該デバイスホールに露出する金属箔を覆う耐エッチング性の裏止め樹脂を設ける。
エッチング剥離工程
裏止め工程の次に施されるエッチング剥離工程において、金属箔をパターン化させるエッチングの後に、残存する感光レジストと裏止め樹脂とを剥離する。
ソルダーレジスト印刷工程
エッチング剥離工程の次に施されるソルダーレジスト印刷工程において、フィルム基材の一方の面および配線パターンを選択的に覆うソルダーレジストを印刷する。
実装工程
ソルダーレジスト印刷工程の次に施される実装工程において、フィルム基材の他方の面から半導体素子をインナーリードへ実装してデバイスホールに配置する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、TCP構造体として有用であり、特に入出力アウターリードの配線数を多数化する場合や小型化が必要なものに適している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態におけるTCP構造体の上面図
【図2】本発明の実施の形態におけるTCP構造体の要部拡大図
【図3】本発明の実施の形態におけるTCP構造体の断面図
【図4】一般的なTCP構造体の上面図
【図5】一般的なTCP構造体の要部拡大図
【図6】従来のTCP構造体の要部拡大図
【符号の説明】
【0028】
1、101 デバイスホール
2、102 半導体素子
3、103 出力アウターリード
4、104 入力アウターリード
5、105 引き回し配線
6、106 ソルダーレジスト
7、107 TCP構造体
8、108 インナーリード
9、109 フィルム基材
9a 繋ぎ片部
10 バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を配置するためのデバイスホールが開口するフィルム基材と、前記フィルム基材の一方の主面に形成し、前記フィルム基材の相反する両端側に配置する出力アウターリードおよび入力アウターリードと、前記出力アウターリードおよび前記入力アウターリードの配列方向に沿って延伸し、前記デバイスホールの一端縁とその対向する他端縁とを橋渡しする前記フィルム基板の繋ぎ片部と、前記デバイスホールの一端縁および他端縁からそれぞれ対向する前記フィルム基板の繋ぎ片部へ橋渡して形成するインナーリードと、前記出力アウターリードと前記インナーリードとの間および前記入力アウターリードと前記インナーリードとの間を繋ぐ引き回し配線とを備えることを特徴とするTCP構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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