説明

TFP法により単層又は複層の繊維プリフォームを製造する方法

本発明は、力の変動に適合するように配列された繊維ストランド2−8,18を用い、TFP法により、面倒な裏張り層がなく、実質的に所望の材料厚さ、及び所望の表面幾何学形状を有する単層又は複層の繊維プリフォーム1,17の製造方法に関し、柔軟性及び弾性を有する基体9,19、特に、エラストマーにより形成された基体9,19上に、繊維プリフォーム1,17を形成するために縫製ヘッドから導かれる固定糸10,11を用いて繊維ストランド2−8,18を載置し付着させる工程と、基体9,19から繊維プリフォーム1,17を持ち上げる工程とを備える。この方法で製造された繊維プリフォーム1,17は実質的に最適な、即ち、実質的に力の変動に適合した繊維配列を備え、繊維配列中に容易に判断できる欠陥を有しない。この結果、過度な機械的応力に耐えると同時に軽量である構成材を、例えば、引続くRTM法によって、創ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力の変動に適合し得るように特に配列された繊維ストランドを用いたTFP法(Tailored Fibre Placement)による単層又は複層の繊維プリフォームであって、厄介な裏張り層の無い、実質的に所望の材料厚さを有し、且つ実質的に所望の表面幾何学形状を有する繊維プリフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量構造物、特に、航空機構造物の分野では、益々、繊維強化プラスチックからなる複合構成材が利用されている。このような繊維強化プラスチックは、過度な機械荷重に耐えることができ、同時に、高い減量性能を有する。これらの構成材は、強化繊維によって形成され、この強化繊維は、最終的な構成材を形成するために、後で、例えば、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂などの硬化重合体材料が、含浸又はしみ込まされる。
【0003】
このタイプの構成材における強化繊維の配列は、その剛性及び強度に重要な影響を与える。最適な機械的性質を得るためには、可能であるならば、強化繊維は荷重方向に対して順方向となるべきで、うねりを持たないようにすべきである。さらに、それぞれの強化繊維にとっては、一様な荷重下に置かれることが望ましい。
【0004】
重合体材料強化用の、例えば、織られた又は敷かれた繊維布などの従来の準完成品では、強化繊維が常に特定の配向で延びているので、全ての想到可能な繊維の配向が実現され得るとは限らない。
【0005】
荷重に従った繊維の配列に関する要求を満たし得る一つの方法がTFP法(Tailored Fibre Placement)である。この方法、機械的強化のために繊維ストランド(粗糸)を敷くことを含んでいる。この繊維ストランドは、所望の軌道曲線に沿って、相互に平行に走行する多数の離散的な強化繊維によって次々に形成され、固定糸の補助により裏張り層上に付着する。これにより、個々の繊維ストランドの配列を、完成された複合構成材に作用する力の変動に対して、実質的に最適に適合させることができる。この方法によって得られる繊維ストランドの機械的な負荷耐性能力の最適条件下での利用は、それらの本数を最小限にすることができ、その結果、重量も最小限にすることができる。さらに、構成材の断面を理想的な方法で局部的な荷重に適合させることができる。離散的な強化繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維やアラミド繊維などである。
【0006】
TFP法による繊維プリフォームの製造は、例えば、繊維産業で使用されるCNC制御自動縫製刺繍機によってなされる。必要な全ての層が繊維ストランドで形成されると、通常は既に要求される最終的な輪郭を有する完成された繊維プリフォームは、閉塞可能な型内に置かれて、硬化重合体材料がしみ込まされ、この後、完成された複合構成材を形成するために硬化される。これにより、多くのTFP繊維プリフォーム及び/又は強化繊維層は、相互に結合される。硬化重合体材料による繊維プリフォームへの含浸は、対応して設計された型内で、例えば、良く知られたRTM法(Resin Transfer Moulding)によって実施される。好ましくは、繊維プリフォームの既定の輪郭端部を越えて突出する裏張り材は、RTM法の実施前に切除される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、固定糸及び裏張り層について、TFP法は、繊維プリフォームの2つの構成材を、後の複合構成材において、如何なる機能も発現しないような状態とする。特に、多くの繊維プリフォームが積層される場合には、裏張り層は、層の理想的な連続性の実現において困難性を引き起こし、全体的な重量のバランスを損なわせる。また、裏張り層は、例えば、ガラス繊維織布、又は炭素繊維織布などの強化織布によって形成されるが、この場合においても、強化繊維の少なくとも幾つかのものは、荷重に従って配列されていない。更に、強化布は、TFP工程の間、縫製針の貫通力によって損傷され、このため特徴的な材料の価値が損なわれる。
【0008】
更に、3次元繊維プリフォームを形成するための支持構造としてソリッド・フォーム・コア(solid foam core)を使用することが知られており、固定糸はタフティング法によってフォーム・コアの上部側に強固に固定され、このため、付加的な下層の固定糸が不要である。しかしながら、この方法の場合、異なる幾何学表面を有する各繊維プリフォームのために、特別なフォーム・コアをストックしなければならない。
【0009】
したがって、本発明の目的は、実質的に所望の材料厚さを有し、TFP法に必要であり且つ繊維プリフォームに残存する裏張り層の悪影響がなく、また、異なる表面幾何学形状を有する繊維プリフォームの生産のために、汎用的な基本のものだけをストックしておけば足りるように、繊維プリフォームを製造するための公知のTFP法を改良することにある。加えて、この基体中の固定糸の付着を改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、請求項1に係る方法によって達成される。この方法は、柔軟性及び弾性を有する、特に、エラストマーによって形成された基体上に、繊維プリフォームを形成するために縫製ヘッドから導かれる固定糸を用いて、繊維ストランドを載置し、付着させる工程と、基体から繊維プリフォームを持ち上げる工程とを備える。
【0011】
基体が柔軟性及び弾性を備えるように形成されているので、3次元の異なる表面幾何学形状を有する繊維プリフォームを一つの同じ汎用の基体を基に製造することができる。
【0012】
本発明方法の有利な工夫によれば、繊維プリフォームの意図される表面幾何学形状への適合のために、繊維ストランドを載置し、付着する前に、基体の表面幾何学形状が変更される。これにより、最初から所望の表面幾何学形状を有する基体及びこれに載置されるべき繊維プリフォームの提供が可能となる。そして、TFP法を実施するのに適した装置、例えば、CNC制御装置を用いることで、所望の3次元の表面幾何学形状を実質的に有する繊維プリフォームを直ちに載置し、付着させることができる。更に、基体の表面幾何学形状の変動性は、異なる表面幾何学形状を有する数多くの異なるプリフォームを、一つの同じ基体を基にして生産することを可能にする。
【0013】
更に有利な工夫によれば、繊維プリフォームの意図される表面幾何学形状への適合のために、繊維プリフォームが持ち上げられる前に、基体の表面幾何学形状が変化される。この結果、基体を、初め、平面形状に形成することができ、TFP法により基体上に繊維ストランドを載置、付着させることができる。後に、基体は、実質的に所望の方法で、平面形状とは異なる、湾曲した3次元の表面幾何学形状にされる。これにより、繊維ストランドは、先ず、繊維プリフォームを形成するために、コンピュータにより制御される標準の自動縫製刺繍機械によって、xy平面上で載置され、付着される。この後、基体は異なる表面幾何学形状、例えば、半円筒状の表面形状と一致する形状にされる。繊維プリフォームを形成するために、縫製ヘッドがxy空間中に位置するという構成のみで、時間とコストを相当に節約して生産することができる、構造的により複雑ではない標準の自動縫製刺繍機械を使用することができる。
【0014】
更に有利な工夫によれば、基体の表面幾何学形状は、支持要素によって予め決定される。この工夫は、CNC制御された自動縫製刺繍機械などとの結合により、一つの同じ汎用の基体を基に、異なる表面幾何学形状の繊維プリフォームを生産することを可能にする。
【0015】
更に有利な工夫によれば、支持要素は、繊維プリフォームの意図される表面幾何学形状への適合のために、開ループ及び閉ループ制御装置によって動かされる。支持要素が、開ループ及び閉ループ制御装置によって個別に駆動されることは、基体に実質的に所望の表面幾何学形状を与える。支持要素は、例えば、一定の間隔で均一に、且つ基体の下でこれを支えるように配置される移動可能なラム又は支持体として形成される。そして、それらの移動に沿った軌道は、少なくとも或る空間容積内において、例えば、開ループ及び閉ループ制御装置又は手動により、監視される。好ましくは、基体を様々な形に変形させるために、位置決め可能なラムによって張力と圧縮力とが基体に作用せしめられる。基体の表面幾何学形状を変化させる開ループ及び閉ループ制御装置は、なるべくなら、TFP法を実施するためのCNC制御又はコンピュータ制御される自動縫製刺繍機に結合されるか、又はこの制御の一部として組み込まれるのが好ましい。
【0016】
更に有利な工夫によれば、繊維プリフォームは、柔軟性及び弾性を有する基体から持ち上げられる前に固化される。
【0017】
この結果、基体から持ち上げた際に、繊維プリフォーム内で生じる繊維ストランドの望ましくない変位が大いに避けられる。例えば、低い温度で溶融する熱可塑性粉体、硬化性接着剤などが、繊維プリフォーム中の繊維ストランドを固定するために使用される。
【0018】
本発明方法の更に有利な工夫は、他の請求項に表わされている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発方法における手順を図1及び図2に基づいて説明する。
【0020】
先ず、図1は、平坦な繊維プリフォーム1の構造に基づいた本発明方法における手順を示している。公知のTFP法(Tailored Fibre Placement)によって繊維プリフォームを形成するために、多数の繊維ストランド(粗糸)2−8が、裏張り層としての、柔軟性及び弾性を有する基体9上で、特に、力の変動に適合した方向に載置され、付着される。基体9は、例えば、エラストマーからなり柔軟性及び弾性を有するシート、特に、ゴムシート又はゴムマットなどによって形成される。繊維ストランド2−8は、図1において図の平面に対してほぼ垂直に走る多数の離散的な強化繊維(フィラメント)の積層によって形成される。強化繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などが使用される。繊維ストランド2−8の基体9上への載置は、自動縫製刺繍機によって実行される。この自動縫製刺繍機は、特に表されていないが、繊維ストランド2−8を案内するために形成された縫製ヘッドを有する。縫製ヘッドは、同時に、繊維ストランド2−8を弾性基体9上に付着させることにも利用される。好ましくは、繊維ストランド2−8に求められる載置曲線、特に力の変動に適合した曲線を創り出すために、縫製ヘッドは、表わされていない開ループ及び閉ループ制御装置、例えば、CNC制御などにより、監視される。
【0021】
繊維ストランド2−8は、縫製ヘッドに設けられた針により基体9に少なくとも部分的に導入される固定糸10,11によって基体9に付着される。固定糸のループ12−14の形成により、より下層の追加の固定糸(タフティング法)を要することなく、固定糸10,11を確実に基体9に固定することができる。固定糸のループ12−14は、基体9内における適当な摩擦条件により固定されることによって、強固に保持される。これにより、基体9上に載置された繊維ストランド2−8の抑制できない変位を回避することができる。好ましくは、繊維ストランド2−8は、ジグザグ縫いによって基体9上に付着される。
【0022】
柔軟性及び弾性を有する基体9における固定糸のループ12−14の強固な保持を保証し、同時に、後の異なる表面幾何学形状への適応性を保証するために、基体9は、エラストマー又は柔軟性及び弾性を有する他の材料から形成される。例えば、柔軟性及び弾性を有する基体9は、ゴムシート又はシリコンシートから形成される。基体9は、一般的に、従来のTFP法において必要な下層の固定糸とともに、織布と同種の裏張り層と同じ機能を果たすが、付加的に、それぞれ生産されるべき繊維プリフォームの表面幾何学形状に適応されたソリッド・フォーム・コアという形で、支持体を在庫しておく必要がなく、複雑な表面幾何学形状を有する繊維プリフォームを生産することができる。
【0023】
図1に示す典型的な実施例に見られるように、繊維プリフォーム1は、2つの層15,16を有する。ここに、繊維ストランド6,7,8は下層16内に載置され、繊維ストランド2−5は、上層15内に配置される。本発明方法により、実質的に所望の積層された複数層の繊維プリフォーム1を形成することができる。TFP法において、積層される繊維ストランド2−8の最大本数は、固定糸の通された針が、基体9の一部を含む全ての層を貫通しなければならないので、使用される針の長さによって実質的に制限される。
【0024】
繊維プリフォーム1の完成後、これを、繊維ストランド6,7,8の完全な状態に不利な影響を与えることなく、取り外すことができる。繊維プリフォーム1の取り外し後、これによって繊維プリフォーム1の機械的性質が大きく害されないようにすべく、固定糸10,11のみが繊維プリフォーム1中に残る。
【0025】
平坦な繊維プリフォーム1の生産が先ず述べられるべきであり、その後、基体9は、本方法の全工程を通して平坦な表面幾何学形状を有する。しかしながら、仮に、曲面状の表面幾何学形状を有する繊維プリフォームを生産する場合には、載置及び付着工程の完了前、及び/又は完了後に、意図する表面幾何学形状を備えた柔軟性及び弾性を有する基体9を提供するために、支持要素の使用が必要となる。
【0026】
図2は、当初平坦な表面幾何学形状を備えた繊維プリフォーム1を、ほぼ半円筒状の表面幾何学形状を有する繊維プリフォーム17とする形成例(図1と比較のこと)を例示している。
【0027】
まず、繊維ストランド18は、柔軟性及び弾性を有する平坦な基体19上に載置され、付着される。ここに、繊維ストランド18は、図面のより良い外観のために描写されていないが、より多くの繊維ストランドを表わしている。何時、最初の柔軟性及び弾性を有する平坦な基体19上に繊維ストランド18を載置し付着させるかについての手順は、図1についての記述中のものと一致する。
【0028】
最初の平坦な基体19の形成は、基体19によって定義される平面と平行な、座標系20のxy方向における縫製ヘッドの移動のみが必要であるので、特に、繊維ストランド18を載置し、付着させるために、簡単な構造の自動縫製刺繍機を使用することができるという有利な効果をもたらす。座標系20のz方向と平行な縫製ヘッドの追加の選択的な移動は不要である。
【0029】
この後、矢印21によって示されるように、基体9は、例えば、半円筒状の表面幾何学形状となるように形成される。この後、繊維プリフォーム17は、次の処理のために基体19上から持ち上げられる。半円筒状の表面幾何学形状に代えて、基体19は、例えば少なくとも一定部分が球曲面となった幾何学形状など、実質的に、考え得る表面幾何学形状をとることができる。
【0030】
柔軟性及び弾性を有する基体19の変形は、例えば、表わされていない支持要素によって達成される。これらの支持要素は、柔軟性及び弾性を有する基体19の下側に、均一且つ一定の間隔を置くように、マトリックス状に配置される。例えば、支持要素は、垂直に移動可能なラムなどによって形成され、実質的に所望の幾何学形状を有する繊維プリフォーム17を本発明方法によって形成するために、開ループ及び閉ループ制御装置により、座標系20のz方向において、それらの移動に沿った軌道が監視される。開ループ及び閉ループ制御装置は、柔軟性及び弾性を有する基体19を変形させる工程、及び繊維プリフォーム17を形成するために、繊維ストランドを載置、付着させる工程を、実質的に全自動且つ高精度なものとすることができる。この結果、実質的に所望の表面幾何学形状を有し、且つ高次元の安定性を備えた繊維プリフォーム17を、本発明方法によって、実質的に全自動で、多数生産することができる。更に、基体19は、特に、使用される基体が厚さの薄い材料の場合には、支持要素によって調整することも、支持することもなく、最初の実質的に平坦な表面幾何学形状を得るために、固定フレーム内に収納することができる。
【0031】
基体19を変形させる工程を完了した後、例えば、RTM法(Resin Transfer Moulding)によって、繊維プリフォーム17は基体から容易に取り外すことができ、最終的な繊維強化複合構成材とするために、容易に硬化させることができる。この目的のため、繊維プリフォーム17は、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの硬化重合体材料に浸漬又は硬化重合体材料が染み込まされる。繊維プリフォーム17を基体19から取り外した後、角を落とすことによって、繊維プリフォーム17の輪郭端部を予め設定した所望の寸法とすることが、前もって必要である。
【0032】
繊維ストランドの適正且つ確実な固定を確保するために、適当であるならば、基体19から持ち上げる前に、及び/又は基体19の変形前に、繊維プリフォーム17は追加的に結合材によって固定される。結合材としては、特に、50℃〜150℃の範囲で溶ける熱可塑性樹脂及び/又は適当な接着剤、例えば、ホットメルト接着剤が考えられる。これらの結合材は、例えば、粉体の状態で、繊維プリフォーム17中に及び/又は繊維プリフォーム17上に適用される。
【0033】
面倒な要素ではない固定糸はさておき、当該繊維プリフォーム17の機械的性質を損なう原因となる、特に、裏張り層などは、基体19からの繊維プリフォーム17の取り外し後も当該繊維プリフォーム17中に残っている。その結果、より厚い材料厚さを有する繊維強化複合構成材を生産するためには、RTM工程を実施するための型内に置く前に、複層の繊維プリフォームを形成するべく、形成された複数の一致する繊維プリフォームを順次積層することができる。このようにして形成された複層の繊維プリフォームの機械的性質は、TFP法で必要な裏張り層や他の中間的な層によって損なわれない。
【0034】
提示した個々の方法工程の手順は、典型的な特徴に過ぎないものであり、仮に説明した方法手順から逸脱しなければならないのであれば、それも可能である。
【0035】
本発明方法によれば、実質的に力の変動に適合した繊維の配列を有し、且つ平坦な形状から逸脱した表面幾何学形状を有する繊維プリフォームを簡単な方法で製造することができる。更に、繊維プリフォームは、相当に時間とコストを節約するために、縫製ヘッドが、xy平面内にのみ配置された、コンピュータ制御された自動縫製刺繍機械により製造することができる。本発明法方法によって形成された繊維プリフォームは、例えば、RTM法による複合構成材の生産に使用することができる。
【0036】
この方法で製造された複合構成材は実質的に最適な繊維配列、即ち、実質的に力の変動に適合した繊維配列を備え、積層プラスチック構造中に容易に判断できる欠陥を有していない。この結果、過度な機械的応力に耐えることができ、更に、極めて軽量である構成材を創ることができる。
【0037】
したがって、本発明は、力の変動に適合するように配列された繊維ストランド2−8,18を用い、TFP法によって、単層若しくは複層の繊維プリフォーム1,17を製造する方法であって、面倒な裏張り層がなく、実質的に所望の材料厚さを有し、実質的に所望の表面幾何学形状を有する繊維プリフォーム1,17の製造方法に関する。そして、この製造方法は、柔軟性及び弾性を有する基体9,19、特に、エラストマーによって形成された基体9,19上に、繊維プリフォーム1,17を形成するために縫製ヘッドから導かれる固定糸10,11を用いて繊維ストランド2−8,18を載置し付着させる工程と、基体9,19から繊維プリフォーム1,17を持ち上げる工程とを備える。
【0038】
繊維プリフォーム1,17の意図される表面幾何学形状への適応のために、繊維ストランド2−8,18を載置し、付着する前に、基体9,19の表面幾何学形状が変更される。
【0039】
繊維プリフォーム1,17の意図される表面幾何学形状への適応のために、例えば、繊維プリフォーム1,17が持ち上げられる前に、基体9,19の表面幾何学形状が変化される。
【0040】
基体9,19の表面幾何学形状は、支持要素によって有利に予め決定される。
【0041】
支持要素は、繊維プリフォーム1,17の意図される表面幾何学形状への適応のために、例えば、開ループ及び閉ループ制御装置によって動かされる。
【0042】
繊維プリフォーム1,17は、基体9,19から持ち上げられる前に固化される。
【0043】
繊維プリフォーム1,17の固化は、結合材、特に、熱可塑性材料及び/又は接着剤を用いて行われる。
【0044】
固定糸10,11は、例えば、縫製ヘッドに設けられた針により基体9,19を貫通することによって、基体9,19内に導入され、このようにして形成される固定糸のループ12−14が基体9,19内で強固に保持される。
【0045】
基体9,19に関する縫製ヘッドの位置は、基体9,19上における繊維ストランド2−8,18の載置曲線を実質的に所望のものとするために、特に、力の変動に適合させた曲線とするために、少なくとも2次元平面内で、開ループ及び閉ループ制御装置によって有利に監視される。
【0046】
少なくとも2つの層15,16を有する繊維プリフォーム1,17を形成するために、少なくとも或る領域内において、例えば、少なくとも2つ繊維ストランド2−8,18が基体9,19上に載置され、固定される。
【0047】
基体9,19からの取り外しの後、少なくとも、2つの繊維プリフォーム1,17は、複層の繊維プリフォーム1,17を形成するために、積層される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明方法によって、柔軟性及び弾性を有する基体上に形成される繊維プリフォームの断面図である。
【図2】柔軟性及び弾性を有する基体上に繊維ストランドを載置する典型的な形成工程を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1 繊維プリフォーム
2 繊維ストランド
3 繊維ストランド
4 繊維ストランド
5 繊維ストランド
6 繊維ストランド
7 繊維ストランド
8 繊維ストランド
9 基体
10 固定糸
11 固定糸
12 固定糸ループ
13 固定糸ループ
14 固定糸ループ
15 層
16 層
17 繊維プリフォーム
18 繊維ストランド
19 基体
20 座標系
21 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
力の変動に適合するように配列された繊維ストランド(2−8,18)を用い、TFP法によって、面倒な裏張り層を有することなく実質的に所望の材料厚さを有し、且つ実質的に所望の表面幾何学形状を有する単層又は複層の繊維プリフォーム(1,17)を製造する方法であって、
a)ゴムシート又はシリコンシートによって形成される基体(9,19)上に前記繊維ストランド(2−8,18)を載置し付着させる前に、意図される繊維プリフォーム(1,17)の表面幾何学形状に適合するように、当該柔軟性及び弾性を有する基体(9,19)の表面幾何学形状を変化させる工程と、
b)前記繊維プリフォーム(1,17)を形成するために、縫製ヘッドから導かれる固定糸(10,11)を用いて、前記繊維ストランド(2−8,18)を前記基体(9,19)上に載置し付着させる工程と、
c)前記縫製ヘッドに設けられた針によって、前記固定糸(10,11)を前記基体(9,19)中に差し込むことにより、前記固定糸(10,11)を前記基体(9,19)内に導入し、その結果形成された固定糸のループ(12,14)を基体9,19内で強固に保持させる工程と、
d)前記基体(9,19)から繊維プリフォーム(1,17)を持ち上げる工程とを備えてなることを特徴とする繊維プリフォームの製造方法。
【請求項2】
前記繊維プリフォーム(1,17)の意図される表面幾何学形状への適合のために、前記繊維プリフォーム(1,17)の持ち上げ前に、前記基体(9,19)の表面幾何学形状を変化させることを特徴とする請求項1記載の繊維プリフォームの製造方法。
【請求項3】
前記基体(9,19)の表面幾何学形状が、支持要素によって予め決定されることを特徴とする請求項1又は2記載の繊維プリフォームの製造方法。
【請求項4】
前記繊維プリフォーム(1,17)の意図される表面幾何学形状への適合のために、前記支持要素が開ループ及び閉ループ制御装置によって動かされることを特徴とする請求項1乃至3記載のいずれかの繊維プリフォームの製造方法。
【請求項5】
前記繊維プリフォーム(1,17)が、前記基体(9,19)から持ち上げられる前に固化されることを特徴とする請求項1乃至4記載のいずれかの繊維プリフォームの製造方法。
【請求項6】
前記繊維プリフォーム(1,17)の固化が、結合材、特に、熱可塑性材料及び/又は接着剤を用いて行われることを特徴とする請求項1乃至5記載のいずれかの繊維プリフォームの製造方法。
【請求項7】
前記基体(9,19)に関する縫製ヘッドの位置が、基体(9,19)上における繊維ストランド(2−8,18)の載置曲線を実質的に所望のものとするために、特に、力の変動に適合させた曲線とするために、少なくとも2次元平面内で、前記開ループ及び閉ループ制御装置によって監視されることを特徴とする請求項1乃至6記載のいずれかの繊維プリフォームの製造方法。
【請求項8】
少なくとも2つの層(15,16)を有する前記繊維プリフォーム(1,17)を形成するために、少なくとも或る領域内において、少なくとも2つの繊維ストランド(2−8,18)が基体9,19上に載置され、固定されることを特徴とする請求項1乃至7記載のいずれかの繊維プリフォームの製造方法。
【請求項9】
基体(9,19)からの取り外しの後、少なくとも2つの前記繊維プリフォーム(1,17)が、複層の繊維プリフォーム(1,17)を形成するために、積層されることを特徴とする請求項1乃至8記載のいずれかの繊維プリフォームの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−502548(P2009−502548A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521991(P2008−521991)
【出願日】平成18年7月24日(2006.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/064573
【国際公開番号】WO2007/010052
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(504467484)エアバス・ドイチュラント・ゲーエムベーハー (268)
【Fターム(参考)】